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1958-10-24 第30回国会 衆議院 地方行政委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十四日(金曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 鈴木 善幸君    理事 内田 常雄君 理事 亀山 孝一君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 吉田 重延君 理事 川村 継義君    理事 中井徳次郎君 理事 門司  亮君       相川 勝六君    天野 光晴君       飯塚 定輔君    加藤 精三君       金子 岩三君    田中 榮一君       高橋 英吉君    津島 文治君       富田 健治君    中島 茂喜君       中村 寅太君    野原 正勝君       山崎  巖君    太田 一夫君       加賀田 進君    北山 愛郎君       佐野 憲治君    阪上安太郎君       下平 正一君    北條 秀一君       矢尾喜三郎君    安井 吉典君  出席国務大臣         国 務 大 臣 青木  正君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁長官官         房長)     原田  章君         警  視  監         (警察庁警務局         長)      坂井 時忠君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      原 文兵衞君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         総理府事務官         (自治庁行政局         長)      藤井 貞夫君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁行政局         振興課長)   吉浦 浄真君         総理府事務官         (自治庁財政局         財政課長)   細郷 道一君         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 十月二十四日  委員天野光晴君、西村直己君、森清君及び下平  正一君辞任につき、その補欠として保岡武久君、  富田健治君、中村寅太君及び北山愛郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員中村寅太君、保岡武久君及び北山愛郎君辞  任につき、その補欠として森清君、天野光晴君  及び下平正一君が議長指名委員に選任され  た。     ————————————— 本日の会議に付した案件  新市町村建設促進法の一部を改正する法律案(  内閣提出第二三号)  地方財政再建促進特別措置法の一部を改正する  法律案中井徳次郎君外十名提出、第二十九回  国会衆法第四号)  警察官職務執行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二七号)      ————◇—————
  2. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  新市町村建設促進法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより討論に入ります。討論の通告がありますので、順次これを許します。中井徳次郎君。
  3. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案になっておりまする法案につきまして、反対意見を申し述べたいと存じます。  この法案原案でありまする、またもう一つ先法案であります町村合併促進という問題につきましては、わが社会党も、四、五年前でございましたか賛成をいたしました。その結果、この間から大臣並びに政府委員から御説明のあったごとく、町村合併の問題につきましては、一万近くありました市町村が、今や三千五百になる。計画としては、非常な進捗状態を示しております。この点につきましては、社会党といえども、何でも反対というわけで、そういうことはけしからぬなどという気持は全然ありません。しかしながら私どもは、今提案になっておりまする法案の親法案、この法案が出ましたときに、町村合併促進法案というのは、あくまで主権在民の建前からあまり無理をしてはいけない。大体人口最低基準にいたしましても、八千ということにはなっておりまするけれども、これは必ずしもそれに固執をするというわけではもちろんありません。そういう観念からいたしまして、一応これだけの大事業をしたのであるから、それに政府がさらに国家権力をもって追い打ちをかけるというようなことは、ちょっとどうかと思うので、あの案について反対をいたしました。  その案がこの九月三十日に期限が切れる。政府とされましては、これを三月三十一日まで延ばそうというのでありまするが、だんだんとこの間から審議過程で御意見を伺ってみますると、現在問題になって残っておりますものは四百数十の町村、そうして来年三月までに、そのうち少くとも三割については自信を持っておる。だんだん審議の途中で三割のうち、八割程度までは何とかいける、こういうことであります。詳細な地図などもお配りをいただきまして、私ども検討いたしましたが、どうもしかし今残っておりまするこの四百数十という市町村につきましては、これは客観的には、もうにっちもさっちもならぬようになっている。県がずいぶん勧告をし、あるいは国の皆さんも陰から叱咤激励されているにもかかわらず、どうしても残ってきたものである。また親法案では、人口八千程度町村で、そういうものをがえんじないものには、いわゆる国八分のような形でもって、どうも交付金その他の点にまで手心を加えて、そうしてなるべく政府の意図に沿うようにというてやったにもかかわりませず、残った村である。ここに私は非常な問題があると思うのであります。われわれは、こういうようなさらに追い打ちをかけるという法案を出すということは、どんなものであろうかというのが、これがまず第二の理由でございます。  第三の理由といたしましては、最近の越県合併状況で見るごとく、昨日も青木国務大臣北條君との間に問答がございましたが、埼玉県と東京の問題、あるいはまた太田君から質問がありました岐阜県と長野県の問題、あるいは愛知県と三重県の問題、三重県と奈良県の問題等の越県合併政府やり方を見ますと、町村合併の原則に必ずしも沿っておらぬ。ことに埼玉県の問題、岐阜県の問題等は、地元の住民がこぞって東京都へいきたい、あるいは岐阜県へいきたいということでもって、正規議会の議を経まして、そうして町村合併促進審議会中央における中央審議会も、それはいい。こういうふうに判決を下して、そういう答申を政府にいたしております。にもかかわらず、政府は何事でありましょうか。県の意向をそんたくするというので、住民正規機関で決定し、審議会も決定しているものを、さらに政府はそれに横やりを入れて、なま木を裂くがごとき決定をされており、今や問題はずっと残っております。たとえば長野県におきましては、長野県に残りました島崎藤村先生の生まれた部落のごときは、大半は岐阜県に寄留をいたしまして、そうして今でも長野へとどまることをがえんじない、こういう状態でございます。また三重県の木曽岬村というところなどは、今や自治村を作りまして、新しい村長をきめて、税金も何も自治村の方に納めておる。自治村長はそれを供託いたしておるというふうなことで、この政府やり方というものにつきましては、憲法の基本的な理念でありまする国民主権というふうなことから、現実にはおよそ遠ざかった、まことに政治的な妥協的なことをやっております。そうしてこの問題については、この六月、七月でありましたか、前の国会におきまして、私は特に発言をして、青木自治庁長官に、こんなものは早くきめなさい、八月か九月になっても片づく問題ではありません。いずれ大騒動するのだから早くきめなさいと言ったにもかかわりませず、青木長官のいいところでありましょうか、悪いところでありましょうか、それはまあ御想像にまかせますけれども、私どもの判断によれば、九月末までぐずぐずいたしまして、自治庁に連日百五十人から二百人の人がすわり込んで、握り飯を持ってわんわん押しかけてくるということで、私は、その当時長官に面会を求めましたけれども長官は部屋に一同おらぬというふうな状態で、同じことでございます。これを延ばしましても、また来年の三月には同じ問題を起すのであります。この際社会党といたしましては、町村合併を大局的に見まして、一万が三千五百に減ったのでありますが、この残っておる四百数十を無理押しをするという態度については、もう少しこれこそ岸内閣得意の静観で、やはり二、三年はほっておかれる。そして双方で熱がさめたころに——もとより地方自治法元来に町村合併その他の法案があるのでありますから、そういう特別立法をさらに進めるというのじゃなくて、もとの姿に戻って間を置くのがいいのではないか、かように考えます。これが第三点であります。  最後に、あれだけ騒ぎました町村合併が、きのうからのわが社会党の各委員の質疑の中で明らかになりましたが、この裏づけであります財政措置というものは、口ではきれいに言っておりますが、現実はほとんど行われておらぬ。逆に税金が非常に高くなった。できたものは役場くらいのものであるというようなこと。あるいは町村合併について政府は金を出したといいますが、計画と見合いますと、およそけた違いの金額である。こういう面からいいまして、問題は、新しくでき上りました新市町村に対して政府が積極的に財政措置をする、こういう点にあるのではないかと考えておるのであります。  その他いろいろ申し上げたいことはございますが、私どもの大きな反対点としては、以上四、五点でございますが、そういう意味において、九月の終りの事態がまた来年の三月三十一日に延ばされるだけでありますから、政府は、もうこの辺のところで、かような法案は思い切って廃案にするというのが理の当然ではなかろうかと思うのであります。  以上をもちまして、はなはだ粗雑で恐縮でございましたが、社会党反対討論といたします。
  4. 鈴木善幸

  5. 吉田重延

    吉田(重)委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております新市町村建設促進法の一部を改正する法律案に対して賛成討論を行わんとするものであります。  今回の政府提案にかかる本法律案は、町村合併の現状にかんがみ、新市町村建設促進法の一部、すなわち主としてその第五章に規定されている町村合併に伴う争論処理及び未合併町村合併推進に関する規定中に改正を加え、未処理町村合併問題について、すみやかに終止符を打つことをそのねらいとしたものであります。  昭和二十八年十月町村合併促進法が施行されてから満五年、全国市町村数はおおむね三分の一に減少し、国の当初合併計画を上回る成果を上げ、今や町村合併大勢は、合併促進から新市町村建設へ大きく転換をはかるべき段階に立ち至ったことは、本案提案理由として説明された通りであります。これだけの大事業でありますから、その推進過程において若干の摩擦を生じ、また事後においても、合併に対する過大な期待や、早急な見解あるいは感情的な原因に基く非難どもあって、一部にとかくの批判や問題はありましても、全体として、今回の町村合併が非常な成功をおさめたことは疑いのない事実であります。全国市町村の区域を再編成して、ここに二千四百の新市町村を誕生せしめ、新憲法の要請する地方自治の新しい基盤を築き上げるという、わが国地方制度史上画期的な大事業が、比較的短い期間内に、民主的な方法によって成就したことは刮目に値する事実であります。しかしながら、町村合併目的は、ただ町村数の減少にあるのではなく、合併成果たる新市町村の新団体としての一体性の確保、その行政力の向上と内容充実及び健全な成長にあることはいうまでもなく、よってもって新時代の要請にこたえ得る新市町村建設し、住民の福祉を増進することが究極目的であります。それゆえにこそ、町村合併推進過程において、さきに町村合併促進法は新市町村建設促進法に切りかえられ、すでに合併を完了した市町村については、新市町村としての成長を育成するとともに、未合併町村については、その合併推進をはかるという方針がとられたのであります。  今や町村合併大勢が決し、新市町村建設努力を集中すべき段階に臨み、未処理町村合併問題に終止符を打つため、政府本法の一部を改正して、すみやかに残余の未合併町村に対する最終的な取扱い方針を確立しようとして本案提出したことは、きわめて時宜を得たものであると思うのであります。  これが私の本案に対する賛成の根本の理由でありますが、本案内容である都道府県知事勧告した町村合併に関する計画について、昭和三十四年三月三十一日までの間に計画変更ができるものとしたこと、及びこの計画変更に伴って生じた市町村境界変更に関する争論につき、同じ期限までは町村合併調整委員あっせんまたは調停を行うことができることとしたことは、右の見地に立てば適切当然の措置であって、すでに勧告した合併計画も、その後の事情変更によって、やむを得ないものはこれを調整し変更することを認めることが実情に即し、またこの計画変更に伴う紛争について同じ期限内に限ってあっせん調停の道を開いたことも、早期に未処理合併問題を解決し、画期的大事業である町村合併に一段落を遂げる上に効果があると信じます。また、新市町村が他の市町村合併して新団体を設置するか、あるいは他の市町村の全部または一部を合併した場合も、本法にいう新市町村としての扱いをすることを明らかにしたことは、疑義を除き、合併促進に有効であり、これまた賛意を表するものであります。  ただ本案審議過程において、本案は、ただ未合併町村処理の点のみを考慮し、新市町村育成強化の面に改正が加えられていないとの非難があったのでありますが、もとより多くの委員意見のありましたように、町村合併究極の理想を達成するためには、新市町村内容的充実に意を用い、その育成強化のため、政府はさらに積極的に施策を講ずべきであり、新市町村建設には、政府関係機関が協力の実をあげ、国の施策を総合かつ強力に行い、特に財政における助成の点について格段の努力をいたすべきことは、私が申すまでもございません。わが自由民主党としても、ここに着眼いたしまして、その努力を払っているのでございます。  さしあたり未合併町村問題の解決整理を行うべく、政府提案いたしました本案の主たる目標と、その具体的措置については全面的に賛成をいたすものでございます。  以上をもって私の賛成討論を終ります。(拍手)
  6. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決いたします。新市町村建設促進法の一部を改正する法律案賛成諸君起立を求めます。     〔賛成者起立
  7. 鈴木善幸

    鈴木委員長 起立多数。よって本案原案通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。ただいま議決いたしました本案に関する報告書の作成につきましては、前例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 鈴木善幸

    鈴木委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。     —————————————
  9. 鈴木善幸

    鈴木委員長 この際、中井徳次郎君外十名提出にかかる地方財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案について、発言を求められておりますから、順次これを許します。中井徳次郎君。
  10. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 ただいま議題になりました法案でございますが、実は前国会に、わが社会党からこの法案を出しまして継続審議になっております。  内容は、御案内の通り、現下の赤字再建団体にとりましてきわめて重要な内容を持っておるのであります。この赤字団体の問題につきましては、これが施行されましてから、その後いわゆる神武景気その他によりまして、ずいぶん状況も変化をして参りました。また交付税改正等一、二度行われまして、もうこの際方向転換の時期にあるのではないかと思うのであります。しかるに政府におかれましては、依然としてあの法案固執をされておりまして、今年に入りましてから大きな問題になりました赤字府県の職員の給与表等につきましては、ある県におきましては、給与表はできたけれども、実際予算に関係をするというのは四、五年あとになってくるというふうな、まことにささいな金額のことでありますが、そういうことつにきましても、自治庁事務当局において、いろいろと関係府県異議を申し立てまして、法律をあまり厳格に解釈をし過ぎまして、そうして地方におきましては、県が提案をし、議会の議決を経ました、自治県といたしましてきちっとまとまりましたものについてまで、これを再議決するにあらざれば、いわゆる利子補給などというものも差しとめるというふうな、まことにどうも現実事態と非常に離れた空理空論的な、へ理屈的なことでもって大事な地方自治の侵害をはからんといたしておるのであります。その後またナンセンスなことには、そういう問題が紛糾の途中で、人事院国家公務員の新しい表を作りました。そうして作ったところが、もう問題になっておるようなものは水没してしまう、それ以上の表を作りまして、そこで来年は各府県とも人事院勧告に基きまする国家公務員給与表に従ってまた修正をするというので、全く今や問題の焦点はどこかへ行ってしまって、ただ意地と張りと、大蔵省との関係だとか、つまらない事務的なことで、地方によりましては、この問題が非常な紛争の的になっておるというふうなことでございます。  従いまして、私どもは、法案を出しました以上は、自由民主党皆さんにおかれても、真剣に御討議がいただきたかった。     〔発言する者あり〕
  11. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  12. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 ところが、残念なことには、前の国会では一言の御質問もありません。これは私は、議会の正常の姿であるかどうか、まことに疑問に考えております。なるほど、皆さんからごらんになると、社会党の案はずさんきわまりない案であるかもしれません。しかしそれにしても、どこがどうずさんであるか、どこをどう改正すべきであるかというようなことについて、私どもがせっかく出しました法案について、全くどうも問題にせぬ、これこそ一党独裁の姿だと私は思う。地方団体では、どうせ社会党が出した案だから通りはせぬと思うておられるかもしれません。しかし、非常にみな期待をして、かっさいをして、よくやってくれた、どうぞ自民党皆さんと話し合って、その中からいい案を一つ生み出してくれぬか。今では、われわれは全く大蔵官僚に押えられて、地方自治の姿なんというものはここから先もないというて、私どもの方に続々陳情があるのであります。  本日は、昼から警職法の問題に入るというふうな事態で、はなはだ錯綜した中でこういうことを御発言申し上げるのは、皆さんにおかれても、どうかとお考えになるかもしれませんが、しかし、これは基本的なことでありますから、やはりこのようなことはきれいに掃除をして、今回の議会皆さん意見をとにかく伺って、それから一緒にこれは研究してもらいたい。  承わりますと、悪口は申しましたが、自由民主党諸君の中にも、なかなかいい案であるから一つどもも半分くらい乗って、共同で修正でもしてぜひ通そうというお気持があるやに私伺っておるのでございます。そういう意味におきまして、この案を議題にぜひしていただいて、そうして自民党皆さんからも御意見も伺い、さらにまた社会党——私は、提案者といたしまして説明をいたしましたので、これ以上のことは省略いたしますが、北山君あたりから、これに関連をいたしまして、政府の所見をこの際伺っておきたいものである。かように考える次第でありますので、委員長におかれましても、どうぞ適当な御処理をお願いする次第であります。
  13. 鈴木善幸

  14. 北山愛郎

    北山委員 ただいま中井君から、わが党の地財再建促進法改正案について考えを述べられたわけでありますが、今国会あるいは前国会におきましても、われわれの法案を十分な審議をしてもらえないということについては、私も同様に非常に遺憾に思うわけであります。しかし、これと関連をしまして、この臨時国会において、社会党地財再建促進法改正案のみならず、地方財政の問題、災害対策の問題あるいは地方交付税の問題、明年度地財計画の問題、こういうようなものを十分な審議をすることこそが地方行政委員会の任務ではなかろうか、こういうふうに思っておったし、また一般の人たちもそのように考えおると思うのです。この臨時国会性格というものは、皆さんが、毎日の公報で陳情請願等がたくさん出ておりますが、それでごらんのように、やはり経済不況対策の問題やら、あるいは厚生教育対策災害対策というような、この緊急な問題を処理をする、十分な審議をするということこそが、この国会性格ではなかろうか。従って国会の冒頭におきましても、衆議院議長は何と言ったか、この臨時国会においては、特に外交、貿易、あるいは経済財政厚生教育等の緊急な問題について対策を協議する、審議する国会である。こういうふうに衆議院議長がはっきりと式辞の中でも言っておるのです。こういうふうな国会が、残念ながら今日のような混乱になった。警職というものが突然として現われた。ちょうどキング・コングや怪獣バランというようなものが現われたと同じように、何ら予定をしておらなかったものが、秘密裏に検討されたと思いますが、突如として現われたために、国会の全体の審議混乱をして、そうしてこの地方行政委員会においても、本来やらなければならない以上のような問題が、何ら審議をされない。これでいいのかどうか。私は、この点について、単に社会党提案審議をされないというのみではなくて、こういう大きな問題について、国民の要望や期待に沿えない。こういう問題について、いいかどうかということを深く考えさせられるわけであります。  そこで私は青木さんにお伺いするのですが、青木大臣は、国家公安委員長であると同時に自治庁長官でもある。当面しておる地方財政の問題やそういうものを、警職法審議のために犠牲にしてもいいのかどうか。どう考えるか。今の災害対策について、政府部内の意見がまとまろうとしておるこの段階において、地方自治体の立場から、この災害対策について、この委員会において審議をしなくてもいいのかどうか。国家公安委員長の方の仕事が大事で、自治庁長官仕事がそのために犠牲になってもいいかどうか。こういう点について所信をまず伺っておきたいのであります。
  15. 青木正

    青木国務大臣 お話しのように、現在の日本地方財政は、きわめて重大な問題に直面いたしておるのであります。特に減税の問題等も、来たるべき通常国会には控えておりますし、これに関連して、日本地方財政をどうするか、これは御指摘のようにきわめて重大な問題であります。私は、国家公安委員会委員長をいたしており、同時に自治庁長官をいたしております。警察官職務執行法の問題、これもまた私、きわめて重大な問題と考えております。しかし、だからといって、地方自治関係の問題は等閑に付していいという問題でないことは言うまでもないのであります。警察官職務執行法の問題も重要でありますが、同時に、地方自治に関する問題もきわめて重大な問題であり、私どもは、決してこの問題を等閑に付すとか、あるいはこの法案に対して熱意は持たぬとか、こういうことではないのでありまして、提案されました法案を中心といたしまして、ある場合は国家公安委員会関係の問題、ある場合は自治庁関係の問題、いずれにも、私といたしましては全力を尽し、真剣に考えて参る。皆さんの御意見も十分伺って参りたい。かように存じておる次第でございます。
  16. 北山愛郎

    北山委員 大臣はそういう気持だかもしれませんが、大臣ごらんのように、この国会において、委員会においては、ほとんど地方財政や、あるいは減税をめぐる地方財政の問題、あるいは災害対策、そういうものが議論されておらないのですよ。審議されておらない。私が特に委員会に戻ってきた。何とかして少しでも地方財政の問題を議論しなければ、われわれの委員会としての任務が尽せないのじゃないか、こういう気持で戻ってきたわけであります。こういう気持は、おそらく与党の委員でも同じだと思うのです。社会党ばかりじゃないと思う。こういうような審議の姿でいいかどうか。政府が、警職法をどうしても、ぜひとも強行するということで、そうしてきょうから審議を始めるという結果、結果においては、その大事な問題の審議をされないということになってしまうのです。それでいいのかどうか。もし大臣が、警職法のみならず、やはり同じように地方財政の問題やら、災害対策の問題が大事である、審議をしてもらいたいというなら、率直にそういう気持を言ってもらいたいのです。どうでしょう。
  17. 青木正

    青木国務大臣 災害対策の問題につきましては、もちろん重大な問題でありますので、いずれこれに関連する補正予算の問題等国会の御審議をお願いすることとなると思うのであります。そうした場合に、もちろんその問題につきましても、いろいろ皆さんの御検討をお願いいたし、また私といたしましても、できるだけそれに対するわれわれの考え方を申し述べたいと存じております。委員会におきまして、付託されました法案に従いまして御審議をお願いする。こう私は申し上げるよりほかにないのでありまして、決して地方財政の問題を軽視するというような気持は毛頭持っておりません。
  18. 北山愛郎

    北山委員 そうしますと、大臣としては、この国会中に、災害対策やあるいは地方財政の問題を、この委員会審議してもらいたい、こういう希望なんですか。こう考えていいのですか。
  19. 青木正

    青木国務大臣 提案されました法案の順序に従って御審議を願うわけでありますが、そのほかにも、また、他のたとえば予算委員会等におきましても、補正予算等につきまして、いろいろ災害対策等の御審議を願う、かように存じております。
  20. 北山愛郎

    北山委員 しかし、これは自治庁——まあ私が自治庁大臣だと考えてみても、今非常に重大な時期に差しかかっておると思うのです。災害対策として、相当な臨時の財政需要が地方団体に生まれてきておるというときに、御承知のように、ことしは特別交付税が少いのです。従って、どうしてもこの災害対策その他の関係から、特別交付税をふやしてもらわなければならぬという問題が私はあると思う。従来の例からするならば、やはり自治庁とか大蔵省の対立になるのです。従ってこの地方行政委員会としては、与党、野党を通じて、やはり地方財政の立場から、一つこの委員会でもって十分その点を追及をし、大蔵省を鞭撻して、自治庁が大蔵省に負けないようにやってきて、やっと少しばかりは成果を上げておるとわれわれは考えておる。今その重大な時期に立っておる。おそらくこの臨時国会から来月あたりを通じて、減税問題が問題になってくる。その際に、この臨時国会で、この委員会がそれらの問題について審議をしないということは——やはり、かりに法案がなくても審議をすべきなのであって、それをしないということは、今年及び来年の地方財政に大きな影響があると私は考える。そういう点からいっても、私は、自治庁長官としての青木さんとしては、やはりこの国会の中で、まあかりにきょうでなくても、来週でも、地方財政なりあるいは減税問題なり、そういう問題を十分に審議をする時間を持ってもらいたいというような希望があってしかるべきだと私は思うのですが、いかがでしょう。
  21. 青木正

    青木国務大臣 地方財政の確立あるいは健全化のために、当地方行政委員会が常に非常な御協力と申しますか、御努力を賜わっておりますることは、私、常に深く感謝いたしておるのでありまして、お話しのように、この委員会が、地方自治の立場に立って、地方公共団体のために御努力なすっておること、まことに私ども感謝にたえないのでございます。そこで問題の、災害対策を中心とする地方公共団体側の立場に立った問題の処理の問題、このことにつきましては、現在のところ、政府といたしまして、案を検討中であります。また党内におきましても、この問題を中心として、今朝もいろいろ打ち合せをいたしておるのでありまして、私どもといたしましては、地方の立場に立って、できるだけ地方の御要望に沿うことができるように、現在いろいろ案を検討中でありまして、いずれその案ができましたならば、また予算委員会等で御審議を願うわけであります。現在においても、私ども努力いたしておりますが、従前通り地方行政委員会の皆様の御支援と御協力を心からお願い申し上げる次第であります。
  22. 北山愛郎

    北山委員 案がきまってからじゃおそいのですよ。きまる前に十分論議をして委員会の意思を、法案なり予算の中に盛り込むということでなければおそいのです。だから今が大事なんです。ところが、すでに新聞の報道では、九十億ぐらいの補正予算だということで、その予算全体について、私どもは非常に不満を持っておりますが、一体それならば今度の災害、あるいは十一号、十七号、二十一号、二十二号の重なる災害、これに対して、自治庁の立場としては、どういう対策を持ち、政府部内においてどういうことを要求しているか、具体的にお聞きしたい。
  23. 青木正

    青木国務大臣 まだ最終的な案に到達いたしておりませんので、ここではっきりと申し上げることはちょっと無理かと思うのでありますが、大よその考え方といたしましては、いわゆる補助災害についての地方で負担する起債の問題、それから単独災害についての地方債の問題、さらにまた災害によりまして減収がある、あるいはまた災害救助等によりまして予定以外の財政支出がある。こういうことによる地方財政の運営のために、やはり特別の起債を認めるというようなこともしなければならぬと思うのであります。しかして、それらのためには、言うまでもなく、特別の立法措置もしなければならぬ問題でありますので、そういう問題を中心にして検討いたしておるわけであります。補正予算に伴う地方負担の問題、それから災害による地方財政需要の問題、収入減の問題、これらに対する対策ということを、大体従来の災害の場合等を勘案いたしまして案を立てたい、かように存じておるわけであります。
  24. 門司亮

    ○門司委員 ちょっと関連して。今大臣からお聞きいたしておりますと、全部起債、全部借金を背負わせるというようなことですが、地方財政上非常に困っておるのに、災害があって借金をすれば、その借金を払わなければならぬ。それでは立ち上りができないと思う。この際、大臣にはっきり聞いておきたいと思いますことは、御承知のように昭和三十年度に、地方財政に関する特別措置法をこしらえております。そうしてこのときは、たしか百六十億だと数字は記憶いたしておりますが、当該年度に当然配付さるべき交付さるべき交付税の前食いみたいな形で出したことを私は記憶いたしております。この姿は、必ずしもいいとは言いません。あのときには、池田大蔵大臣にずいぶんやかましく言いましたが、交付税の前食いではないというようなことで、何か一応当年度の会計に入れて、そしてさらに翌年度ですか、これを振りかえることができるような特別立法をして、無理に百六十億の金を捻出して地方財政の方に繰り入れる、いわゆる臨時地方財政特別交付金といいますか、こういう名前をくっつけて出した事実がございます。私は、その金の出し方については、必ずしも当時政府やり方はよくないといって、かなり非難いたしました。しかし今度は政府は、特別交付金その他の形で財政措置をしてやらなければならぬ。今の大臣の御答弁のように、借金で全部これをまかなおうというような方策はやめてもらいたいと思う。国が補正予算として財源措置をする以上は、地方も、やはり借金にならない形においてぜひ財源措置をしてもらいたい。そうしなければ、先ほどから申し上げておりますように、地方財政というものはますます借金財政に追い込まれてしまいます。この点どうですか、考え直してもらいたいと思います。
  25. 青木正

    青木国務大臣 この前のときのやり方等につきましては、担当の課長から補足的に説明させたいと思います。この前のときのお話でありますが、私どもは、現在の段階におきましては、あの当時とも若干地方財政のあり方も違っておりますので、一応起債によって処理することを認めて、そしてその起債をつけてやって、その元利について国の方でめんどうを見るという行き方でいいじゃないか、こう考えております。
  26. 細郷道一

    細郷説明員 昭和三十年度に、百六十億の特別な補給金が出ております。これは当時御承知のように、非常に地方財政が窮乏でございまして、特に公債費対策等の財源に不足をしており、年度当初からそういう問題で問題を残しておりましたのを、年度途中においてそういう形で解決をした。同時にその翌年度から、交付税率の引き上げというようなこともある程度予想して、当時補給の制度をとったことは御承知の通りであります。従いまして、その当時は、年度当初からそういった問題が提起されておったのを、年度途中で解決をしたという形のものであったわけであります。
  27. 門司亮

    ○門司委員 だから私が言っておりますのは、地方債が非常にふえてきて、何とかしなければ地方財政がどうにもならないというときに、百六十億の金を出して、そして一時地方債を押えて、さらに交付税の税率を上げて公債対策を講じております。ところが今度の場合は、特別のそういう臨時的な交付金をやらないで、いわゆる起債でまかなうということですが、今の大臣の御答弁から申し上げますと、災害その他について、地方がやむを得ざる事情のもとに一時起債で間に合せたものについては、その起債の元利償還については、政府が責任を持ってこれを補てんするということだが、それをこの際もし言明できるなら、一つ言っておいてもらいたいと思います。
  28. 青木正

    青木国務大臣 御承知のように、今回の災害につきましては、静岡県の伊豆半島につきましては相当大規模と申しますか、非常な大災害でありますが、そのほかに、たとえば福島であるとか、青森であるとか、こういう地帯にも相当深刻な災害が襲っておるのであります。しかし、これらの災害は、いずれもいわゆる小災害が非常に多いようであります。そこで小災害に対してどういう形でやるのがいいか。小災害について、個々の災害復旧事業についてどうというようなことは、なかなかむずかしい問題もありましょうし、これは町村の責任においてやるようにすればいいか、いろいろ問題もありますので、小災害問題につきましては、なおいろいろ実態等も——大体わかっておりますが、検討をいたしているのであります。そして起債によって一時まかない、それに対する措置等についても、お話の点も十分考慮いたしまして検討していきたい、こう考えております。
  29. 門司亮

    ○門司委員 大臣一つ考えてもらいたいのは、今御答弁の中に小災害がある、こう言っておりますが、小害ほど地方は困るのですよ。大災害に対しては国からの処置がありますし、また起債の認可も容易にできるようにちゃんと法律ができております。しかし、小災害は救う道がないのであります。これは全部市町村の負担になるということが現行法の建前です。だから地方自治体は、小災害であればあるほど実際は困っているのです。今、悪くいえば、三つをまとめて大災害のようにごまかして補助金をもらおうというようなことを考えているところもあると思う。そうしなければ地方財政は保てない。もし大臣の今のお話のように、小災害が非常に多いとおっしゃるならば、なおさらこれを起債に仰ぐというようなことはやりにくいことになっているのですから、これを地方が背負わされたらどうにもならないと思う。だから少くとも今日の段階では、三十年にとられましたような、臨時に交付金を出してもらうということが立法化されるのが私は望ましい姿であると思う。そうしなければ救えませんよ。国の大きな立場から、表面上の大きな財政補てんはできましても、個々の自治体の財政の救済にはならないと私は思う。個々の自治体の財政の救済をしようと思えば、どうしてもこういう形で、臨時の地方財政交付金を出してもらうことをこの際考えてもらわぬと、ほんとうの救済には私はならぬと思う。この点についてもう一度お答えを願いたい。
  30. 青木正

    青木国務大臣 私の申し上げた趣旨も、小災害が多いから特にその点について検討せんければいかぬ、同じ考えであります。伊豆の場合と違って、小災害の地方になりますと町村の負担になります。そこで町村財政を圧迫することがないように、また町村が実際に小災害の復旧の仕事に差しつかえないようにしなければいかぬ。こういう考え方に立ってせっかく今案を検討中なんでありまして、考え方としては門司委員考え方と同じような気持で私たちも現在案を検討いたしておるのであります。
  31. 北山愛郎

    北山委員 案を検討しておるというが、すでにきょうの閣議できまるといわれておるし、新聞によれば補正予算は九十億ですね。九十億といえば、施設の災害が七百億以上あるから、それに対して普通ならば三・五・二の比率で、第一年度三割という計算でいくと、九十億じゃ足りないですよ。それ以外の今お話の小災害、市町村なんかでやらなければならぬ何千個所、何万個所というような災害の復旧はどうするか、こういうものは当然九十億の中には入っておらぬのじゃないかと思うのです。そこで問題だと思う。とにかくこれからひまをかけて検討するのじゃなくて、すでに最終的に政府災害対策がきょうきまるという段階でありますから、そこでもう少し具体的に、地方自治体の立場から、自治庁としてはどういう具体的な案を出してどういう折衝になっておるか、それをはっきりしてもらいたいと思う。
  32. 青木正

    青木国務大臣 災害の九十億ほどの補正予算のことにつきましては、お話のように、きょうの閣議で相談いたしたのであります。しかし、いわゆる小災害に対する対策としての起債の問題あるいはこれに対する元利補給の問題等につきましては、まだ政府部内においても、現在いろいろと折衝中でありますので、ここで確定的にどうということを申し上げる段階に至っていないのであります。その点、あしからず御了承願いたいと思います。
  33. 北山愛郎

    北山委員 小災害等に対する——小災害ばかりじゃないのですよ。たとえば減税をすれば税の減収になるのですよ。公営企業なんかでも、壊滅的な打撃を受けている。あるいは住宅にしても、失業対策事業にしても、いろんな問題がある。堆積土砂の処理その他たくさんの補助対象になり得ないような負担が地方団体にはあるわけですね。そういうものが相当な金額に上ると思うのです。昭和二十八年の災害の際には、二十六件の特別立法を作って相当にこまかく措置したわけですが、今度はそういうことがない。ないにしても、自治庁としては、この災害からくるそういうような小規模復旧なり、いろいろな面からくる災害対策の経費のために、相当額のものを要求しなければならぬと思うのです。どの程度金額を予定して折衝しているのか、起債のワクはどの程度になっているのか、元利補給をするとすれば、どういうふうになるのか。こういう点をもう少し具体的にお話しを願わなければ、今一応の対策が出されようとしておる際でありますから、この時期をはずしてしまえば、私はだめだと思う。この際はっきりしてもらいたい。
  34. 青木正

    青木国務大臣 御指摘の災害に伴う町村財政需要の問題、それから減収に対する対策、こういうことにつきまして、私どもも、やはり特別立法をする必要があるという考え方に立っておるのであります。特別立法によりまして、起債によって財政をまかなう、そうしてそれに対する元利の問題につきましてどういう形にするか等、まだ話し合いが残っておる問題があるのでありまして、その点はっきり申し上げかねることを遺憾に存じます。考え方としては、お話のように、今回の災害におきまして、町村等いろいろ財政需要が起っておりますし、減収等の問題もありますので、やはり特別立法によって起債のワクを新しく設けるということをせなければいかぬ、かように考えております。
  35. 北山愛郎

    北山委員 そういたしますと、今日の閣議で決定したものは一応の案であって、その後にさらに今のような問題は案として出て参る、こういうふうに考えていいですか。特別立法が出てくるわけですね。
  36. 青木正

    青木国務大臣 今日の閣議では、補正予算のことは決定いたしましたが、特別立法関係は、今日は別に正式に決定いたしていないのであります。ただ、こういう問題があるという問題だけは、いろいろと私も申し上げ、閣議で話し合いはいたしております。
  37. 北山愛郎

    北山委員 その立法措置というのは、この国会に出てきますか。
  38. 青木正

    青木国務大臣 もちろんこの国会提案する考えであります。
  39. 北山愛郎

    北山委員 とにかくこの災害の問題は、伊豆地方のみならず、相当広範囲にわたって相当大規模な被害もあるわけなんです。また、今お話しのように、小規模な災害も数知れないほどいろいろな個所に出てきておる。こういうことは大きな問題なんです。従って、こういう重大な災害復旧対策という問題が、ほかの案のために犠牲になるということのないように私は希望するわけなんで、委員会としては、やはり十分審議を尽したいと考えておるわけなんです。特に、今当面しておるいろいろな問題、災害にも関係するのですが、本年度の特別交付税が非常に不足をしておる。そこで交付税の問題をちょっとお伺いしたいのでありますが、特別交付税は、御承知のように全体の百分の八というのを、本年から百分の六に減らしたわけなんです。減らした上に、たとえば自転車税の廃止とか、あるいは木材引取税の問題とか、いろいろそういうことによって政府が特別交付税でもって措置いたしますという約束をしたものが相当あるはずなんです。おまけに、この前の交付税の配分によって、いわゆる特別態容補正といいますか、態容補正のやり方が昨年と非常に違ったために、後進県においては、予定しておっただけの交付税がこないということで、先だっては非常なトラブルを起したわけです。それも特別交付税でやる。こういうことになって、もともと特別交付税そのものが本年は減らされた上に、いろいろな約束をしておる上に、さらに今度は災害が重なってきたということでありますから、この特別交付税というものは非常に重大な意議を持っておると思うのですが、一体その内容はどうなっているのか。私の聞いているところでは、昨年の特別交付税に比べまして、七十億くらいは不足するのじゃないかということですが、一体どういう状態になるのか、これを一つお伺いしたいのであります。
  40. 細郷道一

    細郷説明員 今年の特別交付税は御承知のように六%でありますから、実額にいたしまして百三十四億であります。昨年は補正がございました関係上、特別交付税の総額が二百十一億になるのであります。二百十一億ございましたが、ただその中から、本年度に回して使うようにという意味合いのものも入っております。また、昨年特別交付税で処置をしたものについて、本年は普通交付税に組みかえたものもございます。従いまして、実額の開きほど実体的に開いておるということにはならないわけであります。ところが、本年は百三十四億の中で、どういった需要が大きく出て参るかといいますと、一つは、ただいま御指摘のありましたような、いわゆる激変緩和、そういうものに充てる分がある。第二には、今回起っております災害についてどういう措置をするかという問題があります。第三には、普通交付税の算定に当りまして見込んでおりました基準収入額、それが現実にどういう傾向をたどるであろうか、経済の不況を反映して若干減るのではないかといったような問題もあるわけであります。その辺のところをかみ合せて考えて参りませんと、その内訳について、なお確実なことを申し上げられないわけでありまして、なかんずく三番目の税収の問題になって参りますると、何分にも九月の決算が、御承知のように十一月に済むわけでありますが、その結果を見ませんと、本年度の税収の帰趨を見通すわけにいかないわけであります。その辺の資料等も待って全体的な調整をいたしたい、こう考えておる段階でございます。
  41. 北山愛郎

    北山委員 私の伺っておるのは自転車荷車税の廃止による調整がどのくらい、あるいは木引の調整がどのくらい、それから普通交付税の算定に伴った激変の緩和と申しますか、その分がどのくらいというような、きまった分を計算に入れて、あと災害なんかに回し得るのは一体どのくらいあるのか。今度の災害に、特別交付税で回し得る分というのは、一応のめどがあるはずであります。そういうものを差っ引いたあとに残ってくるものが七十億くらい不足じゃないか、こういわれておるのですが、そういうふうな数字のことをあわせてお伺いしたい。
  42. 細郷道一

    細郷説明員 ちょっと手元にこまかい数字を持って参りませんでしたから、正確でないかもしれませんが、お尋ねの激変緩和に要するものは約二十億と考えております。若干かけるかと思います。それから自転車荷車税の廃止に伴うものにつきましては、御承知のようにたばこ消費税が入れかわっておりまするので、一応総額の間においては、交付税の計算を通じて調整されているということになるかと思います。それから木材引取税の問題については、すでにこの委員会でも御審議願ったように、従来一ぱいに課税をしておったところについての減収の補てんを見るということで、これを個々の団体についてただいま照会をいたしておるわけでありますが、この数字はせいぜいあっても五億以内であろうと思っております。現在、お尋ねのはっきりした数字と申しますのは、そういったところであろうかと思います。
  43. 北山愛郎

    北山委員 自転車荷車税の関係は、これは特交で告干見るという話ではなかったのですか。というのは、たばこ消費税の配賦の分布状態等、それから自転車荷車税の関係で非常にマイナスになるところがある。きちっとはいがないわけです。また総額においても若干食い違いがあると思うのです。おそらく春の国会でしたか、自転車荷車税の関係については、特交で調整するというようなお話があったやに聞いておるので、その点あらためてお伺いいたしたい。  また同時に、普通交付税のいわゆる態容補正の関係で激減をしたものに対して特交で分配をするのは二十億といわれておりますが、その点について、最近も大蔵省から何か申し入れがあったやに新聞では書いておる。一体こういうように、あとで特別交付税でもって算定がえをしなければならぬような配分方式をきめることについて、どう思っているのですか。
  44. 細郷道一

    細郷説明員 自転車荷車税とたばこ消費税の入り組みにつきましては、総体としては合致をいたしておるのであります。個々の団体において、あるいはその税源の片寄りから若干の差が出て参るかと思います。それらの点については、個々の団体の問題として私ども処理をいたしたいという考えは持っております。  それからもう一つの激変緩和を特交でやるのはおかしいのではないかというお考えでありますが、それについて大蔵省から申し入れがあったかということでございますが、最近別に申し入れを聞いてはおりません。ただこういった措置をとろうといたしますのは、何分にも本年度の交付税法の改正におきまして、府県につきましては、基準財政需要額の三分の一に達するほどの額について、測定単位あるいは単位費用等の変更をいたしているわけであります。従いまして、各地方団体、特に府県の問題なのでありますが、府県が、年度の当初に見込みを立てようといたしますときに、非常にむずかしいだろうと思うのであります。そこで一応全国的な伸びの悪いということを頭に置いて予算を組むということもある程度是認される事柄でありますので、そういったことを考慮いたしまして、これほどの改正をいたしましたときには、むしろ激変の緩和という措置をとるべきではないだろうかというふうに私ども考えているわけでございます。
  45. 北山愛郎

    北山委員 しかし、あとで手直しをしなければならぬような案を作ること自体が間違いじゃないですか。そのために普通ならば特別交付税の方で配分を受けるべきところが、それだけの分を手直しの分にとられてしまう、こういうふうになった。もしも普通交付税の方の算定基準の変更というものがほんとうに正しいものであるならば、そんな手直しをする必要はないし、そんなことは初めから予想して考えなければならぬのであって、やはり大きな責任があると考えるわけです。これは長官にお伺いしたいのですが、こういう激変を緩和しなければならぬような交付税の算定方法は、将来変えるように再検討する考えがあるかどうかお聞きいたしたい。
  46. 青木正

    青木国務大臣 今年度の交付税率につきましてのお話でありますが、その点は、ああいう法律改正をやりまして、その結果出てきた問題であります。地方地方として、年度当初にやはり期待しておった額というものもありますので、その食い違い、これはやはり見なければいかぬという考え方で、先ほど申し上げたような処置をいたしたのであらます。しからば、明年度また変えるかという御質問でありますが、交付税というものはできるだけ安定した形——今回法律改正したために地方に非常に御迷惑をおかけしたということから見てもわかりますように、できるだけ交付税というものは安定した姿にしなければならぬという基本的な考え方は、そうなければならぬと思うのであります。ただ、明年度現実の問題になりますと、減税問題も関連いたして参りまして、交付税額がどうなるか、こういう問題も出て参りますので、明年度予算編成に当りましては、そういう面からは、やはり検討する必要も出てくるんじゃないか。これはそういう事態が起ると断言する意味ではないのでありますが、基本的には安定しなければならぬけれども明年度は、そういう特別の事情もありますので、あるいは検討するような必要も出てくるんじゃないかという気もいたすのであります。これはまだはっきりどうと申し上げる段階ではありません。
  47. 北山愛郎

    北山委員 この点については、大蔵省と自治庁の話し合いが、内容はよくわかりませんけれども、外部で見ておるところでは、必ずしも両者の意見が最終的に一致しておるとは見えない。普通交付税の算定を、こういうふうにこの前の基準のようにやるのが正しくないと大蔵省は考えておるらしい。そういう建前でおるらしいので、そうなれば、自治庁としてはそれをのむかどうか。私は、こういう問題が残っておるんではないかと思うのです。少くとも今度のこの態容補正のやり方を変えて、一応作業をしてみたときに、激変ということはすぐわかるはずなんです。そうしてその重大な結果が出てきたということを見ておりながら、そのまま外部に告示をしてしまう。そうしておいて、あとで突っ込まれて今度特別交付税で手直しをするなんということは、これは自治庁としては、はなはだしく失態だと思うんです。おかしいじゃないですか、どうですか。
  48. 細郷道一

    細郷説明員 激変緩和を生じさせておいて、あとで突っ込まれてやった。こういうふうにおとりのようでございますが、実は、私どももちゃんと試算をいたしまして、そうして態容補正については、ああいった方法をとることは既定の方向でもございましたので、その方向で処理をいたしたわけであります。その際から激変緩和の措置を実は考慮しておったわけでありまして、従いまして、七月でありましたか、府県の担当課長を集めて計算方法を指示いたしました。すでにそのことを申しっておったのであります。たまたま事柄の性質上、そのこと自体は当時そう公けにもされませんでしたので、結果においてこういった形に見えるかと思いますが、実は、私どもとしては、そこまでの責任を考えておったわけであります。
  49. 北山愛郎

    北山委員 それでは毎年同じようなことをやるわけですか。あの建前でやって、そうして一応告示をしたものを、大蔵省に文句を言われてストップをさせられて、手直しをするというふうにしか外部からは見えないのです。ああいうことを来年もやるつもりですか。
  50. 細郷道一

    細郷説明員 先ほども説明いたしましたように、本年度激変緩和措置をとるということは、法制度上非常な広範囲にわたって改正をしたというところからスタートしておるわけであります。あたかも自転車荷車税を廃止してたばこ消費税を起したというのも、制度的な改正であるわけであります。これも当初からわかっておれば、何らその困った点を救う必要もない。木材引取税についても同様なことであろうかと思いますが、やはり同じように制度として改正をいたしたものでありますので、経過的な措置としてこういう措置をとって参ったというふうに考えておるわけであります。それだからといって、明年以降も毎年激変を生ずるような改正をして、常に激変緩和で特交で処置をしていくのかということでございますが、私どもとしては、交付税の制度というものをできるだけ安定して参りたい。安定して、地方団体も、年度当初に来年の見込みを的確につけられるようにしたいということが念願でございます。従いまして、国のいろいろな施策によって変動を生じた場合は別でございますが、それでない限りは、できるだけ安定の方向に持って参りたいという気持で今後も対処して参りたいと思います。
  51. 北山愛郎

    北山委員 それは安定ができるなら安定はしたいわけです。ところが、外部の事情の方が安定させないんです。いろいろな自転車荷車税とか、そういう施策上の問題は別としても、ことしのように非常な災害が起る。おまけにあとでお聞きをするんですが、税収上の激変が起っておる。こういうように経済状態やら天候やらが非常に不安定なんです。これも政治が悪いせいかもしれませんが、そういうふうな不安定な事態において安定を希望するというのは、これは希望としてはいいかもしれぬけれども、実態に沿わないことになりゃしないか。これに関連してお伺いするのですが、どうも自治庁の見通しというものは、経済なりあるいは地方財政の実態をつかんでおらないのじゃないかと私は思う。見通しを誤まっておる。今度の国会には姿を現わしておりませんが、この前の春の国会に出た地方財政法及び再建促進法の改正案、これは今度は出さないようなんですが、あれも安定を期待した法案のはずです。これは今度出なくなったんですか、出なくなった事情を聞きたい。
  52. 青木正

    青木国務大臣 お話の法案につきましては、この前の国会審議未了になりましたので、私はできるならば臨時国会にも提案をしたい、かような考えもとにいろいろ準備をいたしたのでありますが、関係各省の間でなお話を詰めなければならぬ問題も生じましたので、この国会提案を見合わせたのであります。もう一つは、あれは御承知のように、年度末に特に必要になってくる問題等もありますので、通常国会提案いたしまして御審議をお願いいたしたい。かような考えもとに今回は提案を見合せたのであります。通常国会には、ぜひとも提案いたしまして御審議をお願いいたしたい、かように思っております。
  53. 北山愛郎

    北山委員 あの法案もやはり安定施策一つの現われで、地方団体に積立金制度を設けようというねらいです。ところが、去年からことしのように、経済状態がぐっと変ってきておるような状態で、積立金どころじゃないじゃないかという意見が、政府部内、与党部内にも出たやに聞いておるのであります。そういうふうに見通しを誤まって、安定を期待するのはいいけれども、不安定な実態をつかまないで、そういう方針だけを押し通そうとして、そうして壁にぶつかるというのが、やはり交付税の問題にも私は出ておるんじゃないかと思う。そこで今度の通常国会にあの法案を出すというのですが、さらに不安定な実態を申し上げたいのは、ことしの税収の問題であります。これは財政課長からもお話がありましたが、ことしの税収を見ると、地方財政は、ことしの後半あるいは来年度に非常に重大な事態になるんじゃないかというような徴候が見えておる。と申しますのは、当初の財政計画に予定した税収が本年度は確保できないんじゃないか。四月から九月までの税収の資料をいただいておるんですが、それを見ると、各月とも昨年の税収額よりも四・五%くらい下回って、九五・五%くらいになっておるんです。ですから昨年の税収よりも減っておるということなんです。そういうことは、この数年来地方財政にはあり得なかったことなんです、それでいきますと、大体三十二年度の決算の税収の全体が五千二百四十億くらいでありますから、それより少し減るような形になってきやしないかと思う。そうなれば、ことしの当初の財政計画の数字は五千百五億です。今年度は当初の税収見積りにかつかつのような徴税の実態になりはしないか、こういうふうに今までの数字から見ると想像されるわけです。こういうことはこの数年来地方財政にはないことなんです。毎年の財政計画と実際の決算の収入額を見ると、二十八年度は二百九十五億、二十九年度は百四十七億、三十年度は三百三十八億、三十一年度は五百二十二億、三十二年度は六百六十七億というように、当初の計画よりも実際の税収が上回ってきているんです。ところが、本年度は、財政計画の当初の見積りとかつかつの税収しかないペたをすると、それよりも下回るというような異常な事態になってきた。ですから、これは赤信号なんですね。ことしの後半になれば、私は、地方団体の中には相当赤字に転化する団体が出てくるんじゃないか、こういうふうに考えるのですが、それらの点について大臣あるいは財政課長の方から見通しをお伺いしたいのであります。
  54. 細郷道一

    細郷説明員 本年度の税収が昨年より好転はしないであろうということは、年度当初から予想されたことでございます。特に地方税の場合に、その年の景気を直接受けます税について、すなわち法人関係の税につきましては、そういったことも考慮いたしまして、昨年よりはかれこれ一割方低目な収入見込みを立ててきたわけであります。その他の一般的な税につきましては、大体計画にも沿ったような収入が上っていくのじゃないか。何分にも年度途中でありますから、年度末のことまで確約はできないわけでありまするが、そういう傾向をたどっておると見ておるわけであります。そこで法人関係の税収をどう見るかということが、今後の年度間の税収が計画に達するか達しないかのかぎであると思います。それにつきましては、先ほども申し上げましたように、年間の税収のかれこれ三分の一というものが九月決算に現われるわけであります。従いまして、この九月の決算の様子を見てみませんと、果して割るものかこえるものか、ちょっと見通しが立たないわけであります。少くともそれまでの姿で参りますと、八月末までの資料であったかと思いますが、総体において昨年同期よりは若干、一%かそこいらじゃなかろうかと思いますが、下っておったと思います。ただ御承知のように、八月は末日がちょうど日曜でもございましたので、収入を受け取れないという関係もございますので、果してそのもの自体が八月末の実態であるかどうかは、なおよく調べてみないとわからないと思います。いずれにいたしましても、税収自体については、いま少しく推移を見てみないと、年度一ぱいのことをちょっと申し上げかねるのではないか、こう思うわけであります。
  55. 北山愛郎

    北山委員 われわれの手元にあるのは、地方税については八月末、国税については九月末とあるのです。国税について八月末の数字を説明した場合には、最終の日が日曜であったからというようなことを言っておりました。ところが、九月末についてもやはり同じなんです。地方税もおそらく同じような傾向をたどるのじゃないか。九月期の会社の決算についても、政府の方の統計は出ておらないようでありますが、証券会社の方では、やはり前期よりも下回るといっておるのですよ。そういう数字が出ておるのです。今後、そういう法人税なんかの税収が上回る見込みは私はないと思う。それが普通の常識じゃないかと思う。しかも、そういうふうな証券会社等で調べたものはいわゆる、主要な会社なんだ。一億円以上というような大きな会社、いわばまだ不況の打撃をそれほど受けないような分について調べてみましても、成績が低下しておる。いわんや、中小企業なんかについてはもっと悪くなってくることは明らかに予想される。そういう事態で、少くとも当初の五千百五億というものが確保できるかどうか。やっとというのが現状の当りまえの観測ではないかと思うのですが、その点はどうなんです。
  56. 細郷道一

    細郷説明員 総体として見ましたときには、私どもも感触としては、計画見込額とんとん程度ではないだろうかというような感触は現在持っております。しかし、何分にも年度ももうここまで参りまして、年度一ぱいの税収をそろそろ的確に考えなければいかぬというような状態言ございますので、先ほど申し上げたようなことを申し上げたわけであります。
  57. 北山愛郎

    北山委員 ですから、当初の地方財政計画の見積りがやっとじゃないかということも、やはり、自治庁としてもそう考えるのが妥当ではないかと思う。それならば、今申し上げる通りで、地方財政というものは、すべての歳入歳出というものが地方財政計画の中に入っておらぬわけですよ。歳出の中で、地方財政計画以外のものが相当額ある。歳入の方も、毎年の計画以上の数百億の税の伸びがなければやっていけないというのが地方財政の実態であることは、地方財政のことをちょっとでも調べた人ならみんなわかるわけです。皆さんここにおられる人はみんなわかっているわけです。従って、昨年は六百数十億、三十一年度の五百二十二億も、地財計画以上の税収があったからやっとやってきたのであって、ことしのように、計画とんとんというような数字では、これは数年来の異常なことで、ここに切めて大きな転換を見るのであって、私は、地方財政の重大な危機ではないか、こういうふうに考えるのですが、青木長官はどのようにお考えですか。
  58. 青木正

    青木国務大臣 今年度の税収がどの程度になるか、いろいろ御指摘の点、私どもも、前年度に比べまして、ことしが相当減収というおそれもあることを考えないわけではないのであります。ただ、昨年あるいは一昨年度における税収の伸びというのは、御承知のように、一般のああいうような好況時でありましたので、あの当時は、非常な予想以上の伸びがあったと思うのでありまして、ああいうような伸びが今後ともずっと続くということは、とうてい考えられませんので、伸びが常にあるというような考え方も、これはどうかと思うのであります。ただしかし、今年度財政計画を立てました税収が確保できないというようなことになりますと、これは地方としても、非常に財政運営において重大な支障を来たすことになることは言うまでもないことでありまして、私どもも、そういうことのないように期待しておるのであります。しかし何分にも、先ほども細郷課長から申し上げましたように、九月末の数字もまだ出ておりませんので、ここで私ども、はっきりとどうという数字の根拠を持っておりませんので、ばく然と去年あるいは一昨年よりも伸びは少いだろうということは言い得ることでありますが、具体的な数字が出ておりませんので、ここでどうということは、私といたしましては申し上げかねるわけであります。
  59. 北山愛郎

    北山委員 自治庁の人は、壁にぶつかってみなければその実感が出ない、なぐられてみなければその痛さがわからないというようなお話のようであります。これは先ほどの財政課長のお話でも、ことしの税収というものが、どうも思った通り伸びないということの今年度の地方財政に与える影響というものは、ことしの後半期になってから出てくる。また、これに関連をして、やはりこれを調整する特別交付税というものが相当額なければ、特に法人税関係の所得割なり、事業税なり、そういうものが急激に減るような団体には、これは災害と同じなんですから、そういうものに対する調整措置はできないのではないか。こういうことこそ、自治庁は真剣になって今取っ組まなければならない問題ですよ。そうした場合に、特別交付税が非常に少いということが、ことしは問題じゃないか。この点について、特別交付税のワクをふやすとか、臨時交付金なり、そういうものを考えるというお考えはないのですか。  それからもう一つ、法人関係の収入に依存しておるような団体なり、あるいは中小企業、繊維の織物の地帯とか、そういうような集団的な不景気、これによって税収が大きく減るというような地方団体、こういう団体に対して、この交付税措置するというふうなお考えを持っておるか。この二つについて、この際お考えを聞いておきたい。
  60. 細郷道一

    細郷説明員 前段の方は、交付税のワクをふやしたらどうかということのようでございまするが、税収と申しましても、やはり同じ税源といいますか、国民から払っていただくわけであります。地方税が悪いときは、やはり国税も悪いわけでありまして、国の三税の伸びが非常にございますれば、それを引き当てにする補正予算ということも考えられるわけなんでございますが、何分にも、その点は国税においても同様な状態でありまして、今的確な見通しがつけられないという段階にあるわけであります。  それからあとの方の、税の激減した団体について、特交で見るかというお話でございますが、これは現在御承知のように、法人関係の税については精算制度をとっておりますので、制度として見るということになると思います。
  61. 北山愛郎

    北山委員 制度として見るということはどういうことですか。交付税の場合ですよ、交付税としてはどうなんです。
  62. 細郷道一

    細郷説明員 法人関係の税につきましては、年度当初に立てた基準財政収入額、これと実際の実収とが違っておりますときには、その年の特別交付税なり、あるいは翌年の普通交付税なりによって、順次その差額を精算をしていく。従いまして、見積りが非常に過大であったところには交付税が参る。逆に見積りが過小であった団体については、交付税が取り上げられるということで、全国的に見積りに大体合っておりますれば、とんとんになるわけであります。ただ、個々の団体については、御指摘のような事態が必ず起ると思います。
  63. 北山愛郎

    北山委員 法人だけじゃなくて、地域的に、福井であるとか、あるいは伊勢崎であるとか、あるいは今度の災害を受けた川口市であるとか、そういうふうな集団的に、不況なり、災害の影響でもって税収が落ちるというようなところ。必ずしも大きな法人ばかりじゃない。そういうものについても、やはり特交で見るのがこれは当然じゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  64. 細郷道一

    細郷説明員 その度合いが著しいものでありますれば、そういうことを考慮したいと思います。
  65. 北山愛郎

    北山委員 ところによると、著しいものが相当あるということは認めておるだろうと思うのです。そんなことは当然だと思うのですが、そうしますと、やはり交付税が私は足りなくなるのじゃないかと思うのです。先ほど財政課長は、政府の方の財源も少くなるからというように、まあ大蔵省の方を御心配したようなお話もあったけれども、これはやはり国全体の財政運営の大きな問題であって、自治庁としては、地方財政の立場から、主張すべきものは主張していく、こういうことが当然だと思うのですよ。今のような政治のやり方では、税金が足りないから仕方がないのだ、こうばかりはいえない。政治の全体を見ると、社会保障制度を拡充するとかなんとかいうけれども、そうでない。警察国家的な方向の経費が多くなってくる。防衛費にしても千四百億、それにプラスの、今度は千億もかけて、グラマンだか何だか知らんけれども、そういうものを、しょっちゅう落ちるやつを買おうとしておる。あるいは警察費にしたところで、あの昭和二十九年の警察法の改正のときには、人員を減らして、そうして経費も安くするのだ。こういう話だったけれども、今日では、中央地方を通じて七百五十億ぐらいの警察費がかかっておる。あの当時よりも相当ふくれておる。おまけに、三カ年でもって一万人も警察官をふやそうとしておる。刑務所もふえておる。金を——税金でとられるというようなことは、あまり国民は歓迎しない仕事でありますが、そのために中央地方を通じて、大体概算で四百五十億ぐらいかかっておる。だから、税務署と刑務所と軍隊と警察と、こういうふうな予算がふえていくんですよ。これこそ福祉国家への道ではなくて、これは警察国家、軍国主義の道だというようなことにもなりゃしませんか。今度の警察法で取り締るといっても、暴力団をあげても、一週間もたてばまた出してしまう。いつまでもこれを刑務所に入れておくわけにいかぬでしょう。こういうような費用だけがふえていくというような方向に対して、私は、やはり財源の問題というものは大きな政治の方針とつながるのであって、税金がみんな、税金だからといって、地方団体の方のことは遠慮するなんという心がまえでは私はいけないと思う。だから堂々と一つ今度は、ことしはそういうようないろいろな事情をからみ合せて、災害の問題もからみ合せて、一つ特別交付税をふやすという方針でいってもらいたいと思うのですが、青木自治庁長官はどう考えますか。
  66. 青木正

    青木国務大臣 他の国策関係のいろいろな経費の増高、これもまたいろいろそれぞれのやむを得ない事情もあると思うのでありますが、だからといって、地方財政の方がそのために圧迫を受けるということにつきましては、私どもも、それを了承するという気持にはとうていなり得ないのでありまして、やはり地方財政というものは、これを確立し守っていかなければならぬ、かような固い考え方に立って、自治庁の当局もその方針で常に努力いたしておるのであります。特別交付税を増額するかどうかという問題でありますが、これは三税の伸びの問題、それに伴う当然増加するかどうかという問題もあるでありましょうし、いずれにいたしましても、先ほど来申し上げておりまするように、今年度の税収見込み等もまだはっきりいたしておりませんので、また一方、これからの財政需要の問題につきましても、詰めた数字は出ておるわけではありませんので、この段階において、特別交付税を増加するというようなことを私、申し上げかねるわけであります。しかし、考え方としては、われわれは地方財政の運営に重大な支障を来たすというようなことになりますれば、これはどんな方法をとりましても、これを守っていくようにあらゆる施策を講じていかなければならぬという基本的な考え方につきましては、北山先生のお考えに私どもも全く同感であります。
  67. 北山愛郎

    北山委員 青木さんは、不幸にして、現在国家公安委員長仕事自治庁長官仕事を兼ねておられる。いわばハムレットみたいな格好です。この前の二十九年の警察法の改正のときに、これをやるということが府県財政に大きな負担をかけるぞということを、理由をあげてわれわれはこれに反対をしたのであります。ところが、あれを押し切られて通過をしてみると、都道府県においては、警察費のために五千万円なり、あるいは六千万円なりというものを、年々持ち出しをしなければならないようになって、その分だけほかの社会福祉関係、あるいは教育とか土木とか、そういう予算に圧迫を加えられた。こういう経験を経ておるのです。今度も、警職法の通過に、大臣が、公安委員長としての立場で、警察担当の大臣としての立場で、熱心にやればやるほど、そのしわ寄せが地方財政に響いてくる。こういう矛盾を一身に負っておられる。私は、当初申し上げたように、地方財政の問題は、今、私は簡単にいろいろな例をあげたのですが、非常に重大な時期に際しておると思う。特にまたその際に減税問題が起きておる。減税公約、これはこの前の選挙で、少くとも選挙民、国民に公約をした神聖な約束なんですよ。これだけの減税をしますという具体的な数字をあげ、税率も示して、減税の約束をしたのです。われわれも、構想としては正しいと思う。それだから選挙で、割合いい結果を自民党が得たでしょう。ところが、その具体的な税率をあげて、数字をあげてやったのだから、あとはもう調査会とか委員会だとかへかけないで、政府は、あとは作業して、この国会に減税法案でも出せばいいのです。それをまだ出さないで、委員会、調査会がいろいろ複雑な仕組みになっておるわけです。臨時税制調査会があり、それから植木委員会があり、亀山委員会があるというわけで、いろいろやっておる。そういうことであまり与党に心配をがけないで、政府の方で、国民に約束したことはどんどんまっすぐに実行する、それが当りまえですよ。今さらこまかい議論をする必要はない。ところが、自治庁としては、減税をされては困るという気持は私はよくわかるのです。減税は私は必至だと思うが、大蔵省の考え方、あるいは与党の内部における大蔵省関係委員たちの考え方は、減税のウエートを地方税に置いて、そうして地方財政の中でその減税分を消化させよう、地方団体の責任において減税の公約を果そうというのが、どうも大蔵省関係人たちのねらいじゃないかと思う。だから、これに対抗して、自治庁関係人たちは、いろいろな場所で、亀山委員会どもそういう機関だと思うのですが、対抗しているというような実態だと思う。われわれも減税は公約だし、減税を望んでおるのであるから、これは実行すべきであるが、それの財源補てんというものは、やはり全部国で背負ってもらわなければならぬという立場である。そういう問題が今これから、この臨時国会から十一月にかけてやられようとしておる。こういう重大な問題をかかえておるのです。われわれは自治庁を鞭撻しようとしておる。そういうことでありますから、そこで私は、この国会におきましても、われわれがそういう鞭撻をする場所というのはこの委員会しかないのです。だからこの国会で、今あげたような問題を一つ十分審議をしなければならないと考える。これは私だけが思っているのではなくて、おそらく与党の中の心ある人は、こういう重大な問題、災害の問題、地方財政の問題が、警職法ごときによって犠牲にされるということは忍びない、こう思っているに違いないと私は思う。大臣もそういう気持を先ほどちょっと漏らされたと思います。  そこで私は委員長さんにお伺いするのでありますが、今あげたような問題は一部であるし、私よりも、もっといろいろな意見のある人がたくさんあると思うのです。そこできようでなくてもいいのですが、この国会で、一つ十分これらの問題を審議するような場所、時間を持ってもらいたい。私はこれを強く要求する。これは地方団体の声だと思う。きのうでありますか、私の郷里の方の岩手県の町村長さんたちがたくさん陳情に参った。その陳情の要望事項は、決して警職法を早く通してもらいたいという陳情じゃないのです。今私が申し上げような、災害問題だとか、交付税の問題だとか、こういう問題であります。そこで私は、この町村長さんたちに申し上げたのですが、一つ自民党陳情してもらいたい。われわれがあなたたちの問題を委員会で取り上げようと思っても、何しろ与党の方では、警職法一点張りでやってきておるから、こういうものを論議する時間がない。だから自民党鈴木委員長なんかにも陳情してもらいたいと言っておいたのですが、これは国民の声だと思うのです。ですから一つ委員長もそういう点を考えられて、そういう重要な時間を持っていただくということを要望し、またそうしていただくならば、われわれ社会党提出しておる地財再建促進法改正案犠牲になってもこれはやむを得ない。こういうふうに考えますので、この点賢明なる取扱いを要望いたしまして、私の質問を終ります。
  68. 鈴木善幸

    鈴木委員長 北山君の御意見はとくと拝聴いたしました。本法律案につきましては、適当な機会に理事会に諮って、その取扱いをきめたいと存じます。から、御了承願います。亀山考二君。
  69. 亀山孝一

    ○亀山委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、本案についての所見を申し上げたいと思います。  中井君外十名提出地方財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案につきましては、種々なる事情から、今日まで十分なる審議をわが党においてできませんことをまことに遺憾に存じます。しかしながら、今後誠意をもちましてこれを十分検討いたしまして、何分の態度を決定するつもりでありますので、御了承をお願いいたします。
  70. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今党を代表してとのごあいさつでございまして、まあ種々の御事情ということでございますが、表現としては、集約すればそういうことになろうと思います。しかし、この前も申し上げました通り、この問題はまことに重要なものであるし、それから北山さんも先ほどからるる時間をさいて言うておられましたようなことでありますので、私どもといたしましては、自民党の皆様も、さぞや警職法でお忙しかとも思いますけれども、これはやはり大体いつごろまでにどういう御意見をお聞かせいただけるか、これをこの際ちょっと参考までに聞かせていただきたい。さように思う次第でございます。
  71. 亀山孝一

    ○亀山委員 ただいま中井君からの御、質問まことにごもっともでありますが、時期の問題は、この際申し上げかねますので、どうか御了承願います。いずれにしても、来たる通常国会中にはこれに対する何分の態度をきめまして、いろいろ御相談を申し上げる。こういう必要性がある法案だと私は思いますので、十分努力をいたしまして、ともにこの種必須の法案を通すことには協力をいたす覚悟でございます。
  72. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 率直な御見解であったと思うのでございますが、そうなりますと、さらにまたこれは継続審議ということになる。しかしながら、この法案の重大性から考えまして、それじゃもうきょうはこれだけでというわけには私は参らないと思う。警職法の問題は、まことに重要であり重大案件でありますけれども、決して急ぐ法案ではない。このことは、また国民大衆がよく存じておるところでありますから、私はやはり、今会期は十一月の七日で切れるように承わっておるが、その中でせめて一両日は、委員長の裁量におきまして、地方財政問題等について審議をする日をぜひともとっていただきたい。これを強く要望いたしておきます。
  73. 鈴木善幸

    鈴木委員長 この際暫時休憩いたします。     午後零時三十九分休憩      ————◇—————     午後三時十八分開議
  74. 鈴木善幸

    鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察官職務執行法の一部を改正する法律案議題といたします。この際、中井徳次郎君より発言を求められておりますので、これを許します。中井徳次郎君。
  75. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 この前の委員会でもって、私ども、ただいま議題になりました法案関連をいたしまして、赤城官房長官の出席を委員長に希望したのであります。これにつきましては、法案審議の日程等について、政府が一方的な、希望意見と彼らは言うておりまするが、そういうものを発表いたしまして、非常に世間を刺激いたしました。同時に、行政と立法との間の区別を混乱せしめる。議会があたかも何か翼賛議会のような形さえ考えられるというふうなことでありまして、私ども議員といたしましては、非常な問題でありますので、強く要請をいたしましたがあの問題につきまして、委員長としては、どういう取り計らいをしておられるか、これをちょっと議事進行という意味でありますが委員長にお尋ねをいたす次第であります。
  76. 鈴木善幸

    鈴木委員長 ただいまの中井徳次郎君の御要求につきましては、適当の機会に善処することにいたしたいと思います。
  77. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今、適当の機会に善処をするということでありましたが、しかし、出席はぜひお願いをいたしたい。この点についてどうですか。
  78. 鈴木善幸

    鈴木委員長 了承いたしました。
  79. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そこで、適当な機会という委員長の非常にやわらかな表現でありますが、できるだけ早い機会におやりになるつもりであるか、あるいはこの法案審議がずっと進みまして、われわれは仕上げには入らないと思いますけれども、なるべくおそい機会というのでお考えになるのか、その辺のところをちょっと伺っておきたい。
  80. 鈴木善幸

    鈴木委員長 赤城官房長官の御都合等も問い合せまして、できるだけ早い機会に出席を求めることにいたします。
  81. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 その点は了承いたしました。
  82. 鈴木善幸

    鈴木委員長 この際、柏村警察庁長官より発言を求められておりますのでこれを許します。柏村政府委員
  83. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 去る二十一日、当委員会におきまする警察官職務執行法の一部を改正する法律案提案理由説明の補足説明を私がいたしますに際しまして、不行き届きの点があり、皆様に大へん御迷惑をおかけいたしましたことにつきまして、ここに深く遺憾の意を表し、今後かかることのないように努めたいと思います。
  84. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 今、この前の委員会説明過程におけるいきさつについて、何らか釈明がありました。釈明はありましたけれども、これはおそらくあなたが、われわれに配っておりました説明書と違う説明をなさったそのいきさつ等につきまして遺憾の意を表されたわけでありますが、私どもの了解しているところによりますと、この警察官職務執行法原案、この法律昭和二十三年に芦田内閣のもとで成立いたしております。そのときの政府委員とか説明員等を調べてみますと、あなたがちゃんと入っている。ですから、こういう手続の問題について、ちょっと抜かっておったなんということではありません。あなたはまさしく国会におきまして、そういう慣例その他はよく熟知しているはずであります。私は、そういう軽率な態度が、今回天下の悪法案といわれているこういう法案を、事務的に、警察官の仕事がちょっとしにくい、直しておこうかというような簡単なことから、ここまで持ってきたと思う。私は、そういう意味における長官気持の軽率さというものが、冒頭からああいう問題を起したことを強く責めなければならぬと思うのです。私どもは、そういう態度でこの重大法案が軽卒にも出されたということに対しては、とうてい承服できません。そういう意味において、私は、警察当局がこの法案をそういうふうに簡単に片づけた心境等についてこの際伺っておきたい。これは法案審議に入る前提であります。前提として、これだけ天下の大問題になっておりますことを簡単に——しかもわれわれは、あなたの下僚から十月の一日には、今度の委員会には出しませんとはっきり言っているのを聞いている。そうして一週間たったら出してくるというようなこの態度等について、私は、警察官僚のトップにありますあなたに、さらに念を押しておきたい。私は、こいねがわくは、こういう法案は一ぺん顔を洗い直して出直してもらいたいんだ。そういう態度でもってこの法案を出してくるという立場、長年あなた方はやっておりますから、つい警察官僚のくせが出て、そういう軽卒な態度が出てくる。その点を私は言うておるのです。どうですか。
  85. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この法案提出の仕方が非常に軽卒のようなお話でございますが、われわれといたしましては、国家公安委員会方針にのっとりまして、長き間検討に検討を重ねて成案を得、これを政府提出を求める運びにいたしたわけでございまして、この法案の成立の過程と申しますか、準備の過程におきましては、きわめて慎重に検討を続けたつもりでございます。  それからまた十月一日に警察庁の官房長が、警察官職務執行法の一部を改正する法律案を出さないと言ったような御発言でございますが、私の聞いておりますところでは、風俗営業取締法の一部を改正する法律案提出いたしますということを申しただけでありまして、警察官職務執行法の一部を改正する法律案を出さないということは申していないというふうに聞いておる次第でございます。もちろん、その当時は、提出をわれわれが要望しても政府当局において、必ず提出するということに決定しておらなかったという事情のあったことはお含み願いたいと思います。
  86. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 あなたは慎重にやったと言うが、この法案の出し方が慎重でしたか。ちっとも慎重じゃないじゃありませんか。今の言葉でもうごまかしがある。私どもは、十月一日の午前十時の理事会で、今参議院で何か討論を済ませたそうでありますが、「あの法案だけですか」と言ったら、「だけです」と言った。「うわさにちらほら聞くようなものは出しませんか。」「出しません。」とはっきり言って、みな聞いておりますよ。あなたはその席上出ておらぬじゃないか。そうしてその席上おらぬにもかかわらず、部下はそう言っておりました。それじゃ納得できないです。どうなんです、その点は。出し方がちっとも慎重じゃないですよ。あなたは慎重にやっておると言うが、慎重じゃありません。かかる法案を極秘でやったということは認める。ちっとも慎重じゃない。何を言っているんだ。その点、もう一ぺん私は答弁を求めます。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察庁の官房長がそう申したと聞いておりますと申し上げたので、私はそのときにおりませんから、私、直接はそのときの発言は聞いておりません。
  88. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私は、事実まで曲げられてこんな法案審議に入れませんよ。事実は事実として認めてもらいたい。それから堂々となりましょう。
  89. 原田章

    ○原田(章)政府委員 私は、当日出席いたしまして、警察庁関係といたしましては、風俗営業取締法の一部を改正する法律案でございますと申し上げました。その際に中井先生から、警察官の身分云々というお話が出ましたが、亀山先生とお話し合いになりまして、その内容を聞き取ることができませんでした。私は、その後重ねて、ただいまのところは風俗営業取締法の一部を改正する法律案でございますというふうに申し上げた次第でございます。
  90. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 前半はよろしいです。聞えなかったのは聞えなかったでよろしい。私の言いましたのは、警察官の行為その他に関連する法案は出さないのかと言うて聞いたのであります。それはあなた、聞えなかったら聞えなかったでよろしい。しかし、ただいまのところとは絶対に言わなかった。これは私は、その次の理事会で自民党諸君とも話し合って、それはそうだったと皆言っておりました。これだけでありまして、この国会にはほかにはありません、こう言った。私は、何も一官房長を責めているのじゃないですよ。状況の変化で、自民党政府が強力に皆さんに出せと言ったにきまっているんですから……。しかしその事実を、ただいまのところはとか言いましたとか、そういうことを言うことは、私はこういう重大な法案審議するときに非常に重要であるから、これは実際私どもとしても、こういう問題を何回も言いたくありませんけれども、これははっきりしておかなくちゃならない。そういう意味で私は再度あなたの答弁を求めます。ただいまなんということは、私は、断じて言っておりません。
  91. 原田章

    ○原田(章)政府委員 私は申し上げました。
  92. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういうことを言われますと、私はきょう、これは議事進行でありまするから簡単に終るつもりでございましたが、終るわけには参りません。委員長ちょっと休憩して下さい。私はこういうことで、だんだん一週間、二週間たちますと話が変ってくるというふうなことでは、これからの審議はもうまるで、うそつき相手に話をせんならんようなことで、とてもたえられません。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 川村継義

    ○川村委員 私は、今の問題は、審議が始まったらいろいろお聞きするときもあったかと思って黙っておりましたが、あなた方は、事実は事実として認めて、そうして審議に臨むという態度をとられたらどうです。今、中井委員が言っておるように、一日の理事会においては、自治庁の方から、まずプリントしたものを出して、そうして第一の公職選挙法関係二つは、これはもう提案いたしました。新市町村と、それから地方財政法及び地方財政再建促進特別措置法の一部改正は、まだ与党との話が完全についていないから今のところはっきりいたしません。こういうふうに予定の法案審議について説明を終った。それから警察庁関係では、プリントも何もそのときに私の方に出ていない。警察関係では、風俗営業の取締法案を出します、こういう話があった。そこで私も、風俗営業取締法、この一部改正一本かと聞いたら、これ一本でございますとはっきり言ってある。それならば、あなた方は近いうちに道路交通取締法の施行令を改正したはずだから、その施行令についても詳細に審議しておいたらよろしかろうから、その資料を下さい。じゃその資料を出しましょう。その合間に中井委員から、さっき言ったように、官房長及び局長もおられたので、警職等のそういうものはないか、こういう話があったときに、ありません、これ一本でございますと、はっきり言っておるのです。長官、これが十月一日の理事会の曲げないところの事実なんだ。そういう経過をたどって出てきておるのですから、われわれはちゃんと慎重にやって参りましたとか、今言葉をごまかして、ちゃんと出す用意があったなどといって、何かしら、こちらの方からえらいあげ足をとっておるように思われて、言葉を曲げるということは、私は、いけないと思う。今、関連して、これだけはこの際はっきりしておかなければ、このままで審議に入るわけにいかない。こういうように私強く思いましたので、発言したわけであります。長官いかがですか。
  94. 原田章

    ○原田(章)政府委員 先ほどの件につきましては、明日あらためてお答えいたさせていただきます。     〔「本人があしたになって答弁をやるとは何だ」「委員会を侮辱するもはなはだしい」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  95. 鈴木善幸

    鈴木委員長 暫時休憩いたします。     午後三時三十九分休憩      ————◇—————     午後四時九分開議
  96. 鈴木善幸

    鈴木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、原田官房長から発言を求められておりますから、これを許します。原田政府委員
  97. 原田章

    ○原田(章)政府委員 さきの理事会の席上、今回は提出しないと受け取られるような言明をいたしましたことは、まことに申しわけありません。おわびを申し上げます。
  98. 鈴木善幸

  99. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 そういう程度の御発言があるのはこれは当然でありまして、あのときの空気をごらんになっておる皆さんも、さっきからのごたごたについては率先してこうやって自民、社会を問わず、両党で事態収拾ということをまじめに考えておるわけです。こういう重要な法案審議するのですから、長官以下冒頭で深く反省してもらわなければどうにもなりません。  そこでさっきの長官の答弁では、ぬけぬけと慎重にやりましたといっておるのが、ちっとも慎重じゃないじゃありませんか。慎重にやったやったというが、私は慎重にやったとはどうしても思えません。あなた方はお仕事関係でそれは調査はなすっておったでしょう。私はいろいろなことも聞いております。前の大臣の時代にどうであったということも聞いております。しかしきょうは私は議事進行でありますから、それはあとの種に残しておきますが、しかし少くとも長官が慎重にやりましたというこの表現は、これはちょっと思い上っておると私は思う。そういう点について最後に一つ所見を伺っておきたい。
  100. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど慎重にと申し上げましたのは、この法律案内容を検討するに慎重であったということを申し上げたのであります。
  101. 中井徳次郎

    中井(徳)委員 私どもに言わすと、どうしてうまいことごまかしてやろうかということに慎重であっただけであって、法の根本から見て、この法案憲法から何から全部違反をいたしておるし、まことに悪法案であるということを私どもは冒頭に申し上げて、議事進行でありますから、この程度で終りたいと思います。
  102. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これより警察官職務執行法の一部を改正する法律案について質疑に入ります。質疑の通告がありますから、順次これを許します。矢尾喜三郎君。
  103. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 私は質問に入る前にまずお伺いいたしたいと思うのでございまするが、青木長官が本日御出席になっておりまするのは、国家の代表としての大臣の立場から御出席になり、御答弁に相なるのか、国民の代表としての公安委員長としての立場から御答弁に相なるのか、ということをまず伺いいたしたいと思います。
  104. 青木正

    青木国務大臣 私が本日当委員会に出席いたしておりますのは、内閣が警察官職務執行法改正案提出いたしておりますので、国務大臣の立場において出席いたしておるのであります。
  105. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 私が今このような質問をいたしますることは、先年自治警察が廃止されまして、その法案国会提案されて国会が大混乱を来たしたことがございます。その際政府関係者は、その自治警の廃止に対しまして、今回自治警を廃止して新しい警察制度ができるが、これは決して国家警察ではない、国民から選ばれた国家公安委員を中心とした自治体警察であるということを繰り返し強く主張されたのでございます。しかしながらこの委員会に国務大臣委員長として就任することにつきましては、当時時の治安は国の責任であるから、責任の所在を明確にするためであると述べられておることは、当時の速記録で明らかでございます。そういたしますと、ただいま青木長官が国務大臣として臨席をしておると申されたのでございまするが、さきにこの法案提案されましたのも、国務大臣としてこれを提案されたのでございますか、または公安委員長としてこれを提案されたのでございますか、もう一回お伺いいたしたいと思います。
  106. 青木正

    青木国務大臣 申し上げるまでもなく、国家公安委員会は警察制度の企画に当る一つの任務を持っております。しかし法律提案権はないのでありまして、法律提出はあくまでも内閣の責任において提出いたしております。
  107. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 そういたしますと、本日は国家の代表たる国務大臣としてすべての御答弁に当られるということでございますね。  そこで私が第一にお尋ねいたしたいと思いますることは、先般の提案説明を聞いておりますと、今日までの警察制度の上において幾多の欠陥があり、また今後警察を運営していく上において御都合のいいことを羅列されまして説明しておられるのでございます。しかしながら今問題になっておりますこの法案が、さきにこの国会が開かれたときにおいては、警察庁当局におきましてもまだ出すか出さないかわからなかったというのが真実であろうと思うのでございます。当時は出すという意思はなかったと思うのでございまするから、その当時正直に申されたのでございまするが、しかしながらその後現実法案が出ておる。それとの矛盾につきましていろいろ今まで紛糾しておったのでございまするが、この法案をそれほど急いで出さなければならないような急迫した事態が現在起りつつあるのかどうか。私はこの法案を出されるまでの手続におきましても、民意に問うとかあるいは学識経験者に諮問するとか、いろいろの方策をとられて提案せられましても、決して現行法において今日起っておるあらゆる事態処理することができなかったという事実はないと思うのでございまするが、この点につきまして、いかなるお考えをもって急速にこれを出されたのでございますか。
  108. 青木正

    青木国務大臣 警察官職務執行法につきましては、お述べのように昭和二十三年に施行されまして、その後警察の管理に当っておりまする公安委員会側におきましてもいろいろ検討して参っておったのでありますが、昨年ごろから公案委員会等におきましても、現行の警察官職務執行法について改正の必要がある、こういう考え方になりまして、警察庁をしていろいろ検討いたさせておったのであります。私も国家公安委員長に就任いたして、前々からそういう問題があることを承知いたしておったのでございまして、これはいろいろ世間から御批判等もございますが、内部と申しますか、国家公安委員会関係しておる私の気持から申し上げますと、決して何か突如こういう法律案を出す必要ができたから出したということではないのでありまして、前々からこれはどうしても改正しなければならぬというようなことが内部に論議されており、そうしてでき得るならばなるべく早い機会にこの成立を期したいというのが、公安委員会側における意向であったのであります。ただしかし、申し上げるまでもなく、この法案提出するかどうかということは、政府の責任に属する問題でありまして、政府といたしましては、警察庁あるいは公安委員会側でそういう意向のあることは前から承知いたしておったのでありますが、その提案の時期につきましては、やはり政府としての判断に立ってきめなければなりません問題であり、臨時国会に出すのがいいのか、あるいはまた通常国会に出すのが適当であるか、そういうことにつきましては、いろいろと内部的に、また国会対策等の関係から検討いたしておったのであります。そこで臨時国会が召集される前までは、これははっきり申し上げるのでありますが、決して特別の意図があったとかどうとかということでなしに、果して臨時国会に出すことがいいかどうかということについて、はっきりとまだ踏み切っていなかったのであります。そういうことのために、その前には出すということを政府としても言う段階に至っていなかった。そうして党内の情勢、あるいは臨時国会対策、いろいろな情勢から考えまして、いよいよ提案しようという決意を固めたのでありまして、別に何か特別に差し迫ってこの法律を出さなければならぬという事態が新たに起きたために、突然これを出したというような問題ではないのであります。
  109. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 今青木長官意見を聞いておりますと、差し迫った理由はないけれども、前々から改正をしなければならないという意図があったので、はからずも今回の臨時国会に出したように言われておるのでございまするが、そういたしますと、私はこの法案を出されるに対しまして、このような国民全般に大きな影響のあるような大きな法案提案するのに対しまして、先般も本会議におきまして、中井君や門司君が申し上げましたように、なぜ岸総理が施政方針の中にこれを入れなかったのか、あと山村君あたりが何だかそれに当てはめようとするような理屈を述ベられておりましたけれども、このような法案がこの短期間の臨時国会に出されて、そうして自民党におきましては、あとの法案犠牲にしてでもいいから、この法案だけは通さなければならぬ、こういうような大きな法案を取り急いで出さなければなかったということにつきまして、もしも長官のおっしゃる通り、こういうような法案を出すような事態は起らなかったけれども、前々から出さなければならない、こういう考えの上に立って出したというのなら、なぜ学識経験者であるとか、そういうような人々に対しまして、十分なる審議意見を求めて、これを国会に出されなかったか、私はそういうようなことを承わりたい。また今申されました警察庁におきましても、最初においてはその予定はなかった、国会提案されました議事運営委員会におけるところの予定表の中にもなかった。議事運営委員会におけるところの予定表というものは、小さな一字や二字の字句を修正するような法案であっても、議事運営委員会の予定表の中には出されておるのです。それにもかかわらず、そういうようなものは出されておらない。そういうような点から考えますと、私は率直にお聞きしたいと思うのでございますが、急迫した事態はないとおっしゃいますけれども、最近におけるところの勤務評定の問題であるとか、あるいは全学連の問題であるとか、こういうようなデモンストレーションに対する対策として政府は急速に出されたのではないかと私たちは疑いを持たざるを得ないのであります。差し迫った理由がなければ、なぜそういうような審議会にかけるとか、学識経験者の意見を十分に検討されなかったかということにつきましてお伺いをいたしたいと思います。
  110. 青木正

    青木国務大臣 差し迫って急速にこの法案を出さなければならなくなったような特別の事情があったわけではないことは、先ほど私申し上げた通りであります。しかしながら先ほど申し上げましたように、警察に与えられた警察としての責務を果すためには、どうしても現行法では不十分であり、やはり改正しなければならぬという考え方は前々からあったのであります。そこで改正しなければならぬということであるとするならば、もちろんできるだけ早い機会に改正すべきことが当然であると私ども考えるのであります。そういう見地に立って、われわれはできるだけ早く改正する必要があるとするならばしなければならぬ。しかしながらそれを臨時国会に出すかどうかということにつきましては、臨時国会の召集の前ころまでなお党内その他におきまして、扱いについての考え方等におきましていろいろ異論もありましたので、政府としても決定をいたしかねたのであります。従って施政演説を述べる当時はまだ政府として方針を確定いたしておらなかったので施政演説の中に述べなかった、こういうことだけでありまして、決してそこに作為的のことがあったとか、あるいはまた抜き打ち的と申しますか、そういうような意図があったのではないということは、御了承いただきたいと思うのであります。
  111. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 長官意見を聞いておりますと、さっぱりその真意を私が考え出すのにも困難でございます。臨時国会が始まったときにまだ何ら考えておらなかった法案を急速に出された、そのことについて、こういうような重要な法案は十分検討して、あらゆる人々の意見を聞いて、協力を求めて、そして納得と理解の上に立ってこれを提案されたらどうかということを私はお伺いしておるのであります。聞くところによりますと、七日にあなたの方の党の地方行政部会におきまして法案の字句の審査をしたそうで、その際まだ結論が出ておらないにもかかわらず、八日の夜の閣議で、しかも持ち回り閣議で——持ち回り閣議というのは大体において形式的に判を押して歩くというようなものです。そういうようなことをしてこの法案国会に出されておるということを考えますと、今あなたは国務大臣として御答弁になっておるから、一方的に国家の立場から御答弁をしておられますけれども、一体国家公安委員というものは何のためにあるのか、何のために国家公安委員会というものは作られたのか、昔の警察は天皇の警察といわれ、あるいは権力の乱用をされるから、こういうことがあってはいけない。天皇の警察や天皇の名前において大衆を圧迫するというようなことはいけない。だから国民の警察にしなければならない。国民の警察にしなければならないという意向から、国家公安委員というものが、国民から選ばれた国民の警察として今日警察制度というものが作られたのじゃございませんか、長官。そういたしますと、今日、国家の立場からあなたは御答弁になっておりますけれども国民の代表として、国民の警察としてこれを監督していかなければならない、指導していかなければならないという立場から考えますならば、こういうような法案提出の仕方ということは、なっておらない。持ち回り閣議で、そうして一日か二日の何で出す、こういうような出し方というものは、私はふに落ちないのでございまするが、この点について御意見をお伺いしたいと思うのであります。
  112. 青木正

    青木国務大臣 日本の現在の警察制度、それに対する国家公安委員会の立場につきましては、お話の通りであります。私どもも全くその通り考え方に立っておるのであります。日本の警察は現在国家公安委員会がこれを管理いたしておるのでありまして、その国家公安委員会国家公安委員会として警察の制度についていろいろ企画をする立場に立っております。そういう立場に立っておる国家公安委員会において早くからこの問題を取り上げまして、そうして国家公安委員会ではぜひともこういう改正をする必要がある、こういう考え方に到達いたしまして、この改正国家公安委員会側から希望いたしておるのであります。申し上げるまでもなく、国家公安委員長は、国家公安委員会の御決定に基きまして、それを代表する立場に立っておりますので、国家公安委員会の意思がそこにありますので、私はその意思、意向を代表いたしまして、この法律案政府提出するように政府に求めたのであります。ただ、しかし、これを提出するかせぬかということは、申し上げるまでもなく政府の責任に属する問題でありますので、その提出の時期等につきましては政府の判断によったのであります。しかし、国家公安委員会としては、この法律はぜひとも改正すべきものである、こういう考え方に立ってこれの改正を求めておったのであります。いろいろ民間側の意見を求めなければいかぬというお話もごもっともであります。しかし、国家公安委員会国家公安委員会の責任において何回となく検討いたした問題でありますので、私は、国家公安委員会の決定に従って政府としてはその改正提案をするというのが筋書と思うのであります。なお、事前にもう少し国民皆さん方の理解を得なければいかぬのじゃないか、お話の通りとも存じます。しかし、提案するかどうか政府としては決定いたす段階に立っておりませんので、そういうことにおいてあるいは政府において欠くる点があったという御非難もあろうかと思うのでありますが、私の気持といたしましては、それはそれとして、国会の御審議を通しまして国民皆さん方にこの法案内容を正しく御理解願って、国家公安委員会考え方に対して御理解をいただけるようにお願いいたしたい、かように考えておる次第であります。
  113. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 そういたしますと、私は、この際長官にお聞きしたいのですが、この法案を実際にかくのごとく改正しなければならないという原動力には、公安委員会が中心になられたか、警察庁がなられたか、内閣がなったか。この点、どこが中心となってこの法律改正しようと主張されたかということについて承わりたいと思います。
  114. 青木正

    青木国務大臣 申し上げるまでもなく、警察制度の企画は公安委員会がこれを担当いたしておるのでありまして、公安委員会がこの改正の必要を認めた結果によるのであります。
  115. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 そういたしますと、この法案審議するために、内閣におきましては、八日の持ち回り閣議において決定されて提案されたのでありますが、その間において、公安委員会を何日と何日と何日、どれほど協議をしたかということについて、具体的に御説明を願いたい。長官でわからなければだれでもよいのですが……。
  116. 青木正

    青木国務大臣 私が国家公安委員長になります前のことにつきまして、これは単に書類等によって調べたのでありますが、二十八国会提案をしようという意向があったこと、御承知の通りと思うのであります。二十八国会提案するという考え方に立っての公安委員会の検討は、昭和三十二年の十月十日と、十一月二十一日と、十一月の二十八日、それらら三十三年になりまして、一月の三十日、これだけ公安委員会でこの問題を検討いたしておるようであります。それから、私が公安委員長になりましてからは、九月の十八日と九月の二十五日であります。しかし、これは全般的に検討したのがこの二日でありまして、それ以外にも、事務当局において関係各省と折衝等の間におきまして、いろいろ意見が出た場合、公安委員会の開催のつど、その間いろいろと報告もし、御意見も承わって参っております。
  117. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 そういたしますと、この法案につきましては、前々から二十八国会提出するというつもりで検討をされておったのでございまして、その間において相当長期間の時日があったと思うのでございます。そういうようなことにつきまして、この法案は公安委員会に諮られたことが、これを見ますと二十八国会以来六回ということになっておるのでございますが、私は、そのほかに、あなたの所属しておられます自民党の行政部会におきましては、たびたび審議されておったものであると考え得られるのでございます。そういたしますと、この法案というものは、政府自民党一党との間において作り上げられたものでございまして、国民の意思というもの、意見というものが何一つ入れられておらない。公安委員会は六回開かれましたが、その六回の公安委員会には、公安委員は全員参加されましたでしょうか。そうして一回の公安委員会というものの開かれました時間は大体どれほどかかって、これを慎重審議されておるのでございましょうか。国民の代表として警察を監督指導しなければならない公安委員が、最近におきまして警察当局からはじゃま者扱いにされ、また形式な存在と思われるうなよ状態になってきている。ただ単に、形式的に公安委員会に見せたらいいわ、形式的に公安委員会の議決を得たらいいわ、こういうようなことで、公安委員会そのものが軽視されようとしつつあるのでございます。私たちは、今日の国民の基本的人権を過去における警察国家から守るためには、公安委員が中心になってこれを守らなければならないと思う。その公安委員が形式的な存在に置かれ、ある地方におきましてはじゃま者扱いにされている。そういうような状態では、今後の公安委員会の制度につきましても、私たちは十分なる検討を加えていかなければならないと思うのでございますので、公安委員会の運営等につきましておわかりでございましたならば、御説明を願いたいと思うのでございます。
  118. 青木正

    青木国務大臣 国家公安委員会の使命の重要であることは、まことにその通りであります。私も日本の警察制度というものが民主警察として正しく成長し、そうしてまた、真に国民のための警察というあり方であるためには、公安委員会制度というものは、これはどこまでも守って、またさらに、公安委員会という存在を大きく取り上げていかなければならぬという点は全く同感であります。公安委員会の運営につきましては、定例的には申し上げるまでもなく、毎週一回、木曜日に開会いたしております。どういうふうに何時間ぐらいやるかというお話でありますが、十時から始めまして、大てい三時間程度——昼過ぎまで大体やっておりますので、三時間程度はやっております。その程度定例的にやっておるのであります。そうして、国家公安委員会の運営につきましては、これは警察の庁の当局から、いろいろの問題につきまして意見を求め、あるいは報告を聞き、それに対しまして公安委員の方々が、自由な立場に立って、いろいろ御意見を述べられ、検討し、そうして、いろいろとこういう問題についての意見の決定をいたしておるのであります。この点につきましては、公安委員の各委員皆さんが一致してこの案に御同意を下すったのであります。
  119. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 青木さんの説明を聞いておりますと、十分慎重審議されたように聞えますが、現在公安委員会は、今一回開くと三時間ぐらいということを述べられましたけれども、それは別にそこに臨席したのでございませんので、真偽のほどは私はこれははっきり言えませんけれども、公安委員会というものの運営につきましては、先に私が申し上げましたように、形式的に流れて、大体国家を代表し、公安委員の長である委員長がすべての指導権を握られて、その人の言いがままになっておるのではないかと思うのでございますが、今日まで公安委員長と公安委員との間において、意見が食い違うたとかなんとかいう問題が一回でもあったことがありましょうか、最近におきまして。
  120. 青木正

    青木国務大臣 公安委員会委員長である私と、意見が食い違ったことは、私が就任して一度もないのであります。なお念のために申し上げますが、私は国家公安委員会委員長でありますが、国家公安委員ではありませんので、採決に当りまして——採決できめたことは私はありませんが、私は表決権は持っていないのであります。国家公安委員会は、御承知のように、独自の多数制の行政機関でありますので、その行政機関の、その行政委員会の決定したことを、私は外部に対して代表する、こういうことでありますので、私は決して公安委員会会議内容について私がとやかく意見をはさんだり、それに対して、決定に対して私が採決に入るわけではないのでありますから、そういうことはいたしておりません。公安委員会の決定に従って、私は外部にこれを代表する、こういう立場に立っておるのであります。
  121. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 そうすると公安委員長は、公安委員会が開かれたときに委員長としてそこへ臨席されるということはないのですか。
  122. 青木正

    青木国務大臣 警察法の規定によりまして委員会会議委員長である私が主宰いたします。私の不在のときは委員会委員の中からあらかじめ定めた委員議長席に着く、しかし可否同数の場合は委員長は入りますが、そうでない場合は表決権は与えられないということになっております。
  123. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 そうすると先に御答弁になりましたときは、委員会の決に参画しない、委員会の決定したことを行うだけだといっておられたのですが、今伺っておりますと委員長の席に着く、私が不在のときはほかの者が着く、それは当然なんです。この委員会でも委員長が便所にでも行けば理事委員長席に着くのはさまっておる。そうするとやはり参画せられておるということです。  そういう議論をしていてはいたし方ありませんが、私はこの際一言お尋ねしたいと思うのは、前の委員長の正力松太郎氏が、第一次の岸内閣の国家公安委員長として就任されまして、私が地方行政委員長をしておりました当時に、正力さんが警察官に筋金を入れるために、その裏づけになる法律改正を命じたことがあるということが新聞に伝えられておるのでございますが、警察当局はそういうことを命ぜられたことがあったかなかったか、あってもないと言われるでしょうけれども、一応お尋ねしたいと思います。
  124. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 正力委員長が就任されまして警察の強化ということについて熱心な御発言があったことは事実でありまするし、また警察関係の法令についてとくと検討したらよかろうという御意見は拝聴いたした次第でございますが、私どもはこの委員長の指揮に基いて改正案考えるということではなしに、国家公安委員会の方々の、委員会方針に基いて立案をするという建前をとっておる次第でございます。
  125. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 その問題はその程度にいたしまして、この法案が一たび国会提出されまして、世間の人々はごうごうとしてこれを非難し、各階層の人々はこれに対しまして、政府に対して反抗的な気分さえ持っておるのでございます。私もきのうちょっと町に出まして、要所において、警職法反対の署名運動をやっておる実況を見ましたが、いつもの署名運動とは、署名を求めておるということにつきましては、署名に応じる人は、義理か厄介のように、いやいやながら、じゃまくさいけれども署名をしようというような気分でやっておりましたけれども、きのうあたりの現実を見ておりますと、われもわれもという工合に、何か切符でも優先的に買うというような気分において反対の署名運動をやっておるのでございます。この国民あげての——国民あげてと申しますと、自民党はその中に入っておらぬとこう言われるかもわからぬ。政府もそこに入っておらぬ、警察もそれに入っておらぬと言われるかもわかりませんけれども、そういうようなかす理屈は別といたしまして、国民的なこのような反撃のあるという原因はどこにあるかということです。私はそれは、戦前におけるところの日本の悪法中の悪法といわれました行政執行法、治安維持法、そういうような一連の悪法によって極度に人権がじゅうりんされました。私も二十数回にわたって投獄もされ、豚箱にもほうり込まれてきました。しかしながら私は一犯といえども犯罪を構成はしておらない。私みずからも、私はそれを羅列せよと言われるならば、私が受けた私みずからが体験してきたところの幾多の例を羅列することができる。あとから私は二、三の例につきまして申し述べたいと思うのでございますが、今日国民が反感を持ち、そういうようなことになっては、われわれの人権がじゅうりんされる。そうして過去におけるところの警察国家によって、天皇警察の名において、あらゆる暴圧、迫害を受けた人々が、新しい憲法の条項においてはそういうことはなくなり、そうして国民から選ばれたる、先ほども申し上げました公安委員を中心とした民主警察というものが作り上げられた。これをくつがえされて、また過去のような警察制度に逆戻りするのであるというところから、国民があげて反対をしておる。こういうことが私は大きな原因となっておると思うのでございまするが、長官はどういう考えを持っておられるか、承わりたいと思うのであります。
  126. 青木正

    青木国務大臣 現在の警察制度になる前の、いわゆる警察国家時代といわれた当時の警察のあり方につきまして、いろいろお話があったのであります。私自身はそういう経験は持っておりませんが、私の友人で、やはり同じような、あの治安維持法その他の法律によって、非常に迷惑を受けた方も多数承知いたしております。今日警察国家というような言葉が今なお残っておるそのこと自体、私どもといたしましては考えなければならぬことでありまして、新しい公安委員会制度のもとにおいて、今後の警察制度というものは、あくまでもそういうようなことがあってはならぬと私どもかたく考えるのであります。ただお話のように、治安維持法なりあるいは行政執行法なりによって、そういう悪い印象を今なおお持ちになっておる方々、そういう方々がまたああいう時代が再現するのじゃないかというような一つの危惧を抱く、その気持もわかるのであります。しかし、この法律ごらんになればおわかりの通り、決してこれは治安維持法の復活であるとか、行政執行法の復活であるとか、そういうような意図がないところが根本的に建前が違っておるのでありまして、そういう点につきまして、私は皆さん方の正しい御理解をいただきたい。なおまたいろいろ反対なすっている方々、それは基本的にあるいは根本的に考え方の違う方もおありかと思いますが、そうでなしに、そういうような誤解に基くもの、あるいはまた深く内容を知らぬで、昔の警察国家の再現のおそれがあるのじゃないか、こういうような、感情的と申しますか、そういう意味の御反対の方も少くないのではないかと思うのであります。しかし私どもは、こういう方々に対しましては、正しい理解を求めることによって、御納得をいただけることと考えますし、またそのほかに、この改正案につきまして、反対の方もあるかもしれませんが、一方においては、またこういう改正をしなければならぬという賛成の方も多数あることと私は確信いたしておるのであります。
  127. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 今長官は、いろいろ過去の事例があってはならないということを言われましたが、過去、治安警察法あるいは治安維持法、行政執行法、違警罪即決例、こういうようなものを一条心々続んでおりますると、みなもっともなことが書いてある。国民を弾圧するとか、何もしない人を引っぱるとか、そういうようなことは何も書いてないのです。あなた方は現在国務大臣として、また警察庁の長官としてやっておられて、これはこの法律通り行うんですと言う。こういうような治安警察法ができ、あるいは治安維持法ができ、こういうような法律ができたときに、当時の政府なりこれを提案した人は、決して国民を弾圧するものではありません、こういうように言っておるに違いありません。酒を飲んで泥酔をして、徘回をしておる。こういう人をけががあってはいけないから保護をするんだ、こういうのです。そうしてまた今度の法案においても、つけ加えて、過去の悪法中の悪法といわれたこの中に自殺のおそれある者、私が二十数回引っぱられた中で、自殺のおそれありとして引っぱられたのが六回あるのです。(拍手)自殺のおそれある者、なんで自殺しますか。私は昔新聞記者をしておりましたから、警察へ記事をとりに行くのです。そうして、きょうはどういうやつが引っぱられているかなと思って、検束簿というやつを調べるのです。そうすると、自殺のおそれがあるという、だれが自殺のおそれがあるか、泥酔して徘回しておった。保護検束。法文で見ると、自殺のおそれある者を保護するのがどこが悪いか、酒を飲んで徘回して川へでもはまって死んだらいかぬから保護したんじゃないか、これが理由なんですよ。悪用して、今度その自殺のおそれある者というのが、また一条入った。ははん、これはまた昔のを復活しようと思っているのじゃなと思った。自殺のおそれありというのです。自殺をするという現場をみつけるのならよろしいが、自殺のおそれあり、とだけいっても、これはだれが自殺するやせぬやわからぬ。自殺のおそれがあるということで検挙する。酒を飲んで徘回しておったら、これを検挙するというようなことなんです。だから、今日またデモにいたしましても、あるいは陳情をやるにしましても、私たちはその原因がどこにあるかということについては、私はこの委員会においては述べたいとは思いません。何のために労働者が行列をやりデモをやるかという原因を探求していきましたら、いろいろ理由もありましょう。しかしながら、その理由を別にいたしまして、自分がデモをやって、そうして間違ったことに対して陳情をし、これに対していろいろお願いに上るというようなデモをやったときにおいて、あまりにも今日の警察官というものは神経過敏になり過ぎておるですよ。メーデーにしてもそうです。五月一日の労働者の祭典において、労働者が組合旗を持って、そうして市中を正々堂々として歩いておる。多少のジグザグのデモがあったからというて、警察官がそれをだまって見ておってごらんなさい。何をするのですか。どういう危険があるのですか。国会陳情に来る。国会議員に対して暴行、脅迫をしようというような考えを持って来る人は一人もないのですよ。それを大げさに、国会のぐるりに二十台、三十台のトラックに警察官を乗せて、そうして来たらこれを何とかということでやってくるのですよ。そうしてまた和歌山におきましても衝突が起った。また今日勤務評定の問題においても各地において問題が起っておる。そうして校長に対して道徳教育。これは実際けんかを買うておるじゃありませんか。皆さん、今日の尋常一年や二年や三年の生徒を集めて道徳教育をするのなら、一堂に集めて道徳教育をしなければならぬけれども、人生すでに四十のよわいを過ぎて、すいも甘いもわきまえた校長を集めて、書いたものを見せたらわからぬですか。わからぬところは解釈をつけておいたらわかるのですよ。それを一堂に集めて、そうしておれはこうやるのだから、お前らもこうやれという。けんかを買うておるじゃありませんか。そうして和歌山の衝突でもそうでしょう。右翼団体と衝突した。これは私は、警察と右翼団体とが組んでどうしたというようなことは聞きましたけれども、私はそういうことは真実とは思いたくない。しかしながら、過去におきましてこういう事例というものは幾つもあるのです。過去において、昭和十年ごろ、今の旭化成の前身でありまする旭ベンベルグという人絹会社がございました。従業員は約四千人おりました。そのときに旭ベンベルグの従業員は十二時間の労働をやらされ、そうして化学薬品を使うために、自然に頭が悪くなる、長らく職場におると自然に気違いのような状態になる。人絹会社や、また製紙会社の工場に行くと、二硫化炭素のくさいにおいがするでしょう、それを長らく吸うと頭がぼうっとなる。こういうような仕事に従事しておる人々に対しまして何らの救済方法がない、そうして日に次いで気違い病院に入院させられておる。こういうような現実であったから、せめて三交代の八時間労働にしたらどうだといって、私たちは会社に要求をした。そうしたところが、会社はそういうようなことをやると困る、困るというのは利益が薄くなる、二割も三割も配当しておる会社なんです。利益が薄くなるから困る。しかしながら私たちはこの目的だけは、人権の立場に立ってもどうしても目的を貫徹しなければならない。しかしながら化学産業というものは 一たびストライキというようなものをやってしまえば、会社も大きな損害をする。国家の産業の上から見ても、大きな損害がくる。そうしてそれがひいては労働者にも大きな悪影響がくるから、ストライキというようなものはやってはならないという方針を私たちはきめました。しかしながら戦いに勝つためにはだんびらは抜いてはならない、ピストルは撃ってはならないけれども、撃つぞ、抜くぞという態勢は整えなければならない。私たちはそういう態勢を整えたときに、そうして二百人余りの私たちの同志が寄っておりましたら、警察がトラック二台を持ってきて、ぱっと検挙に来た。検挙に来たので、何で検挙に来たのだろうと思っておりましたら、会社の中のヒューズが切れた、争議団が赤い赤い電気をたくさんつけたものだからヒューズが切れた。そうしたら争議団が何かやったようにしてぱっと来たけれども、ヒューズが切れたということがわかって、警察は僕らが集会をしておるところをうろうろしておった。そうしてしばらくしたら一斉に検挙となって私はそのとき二十一日ほうり込まれました。そのときには、会社側が自家発電をやっておった。その発電所の中に一尺ぐらいの棒を突っ込んだ。これはしろうとにはわかりませんけれども、技術者が見れば、どこにどう突っ込めば大きな損害がなくしてぱっと大きな火が出て、そうして一見爆発したような状態になるということがわかる。そこでそういうことを会社みずからがやって警察へ応援を求めて、そうして争議団が今発電所を襲撃、爆発をした、そういうようなことによって、ぱっと検束せられて、二十一日ほうり込まれた。そうして帰ってきたら、警察の弾圧によって、幹部はみな首を切られて放逐されておった、こういうようなことがあるのですよ。こういうようなことをやるということにつきましても、法の運営というものを誤まれば、私たちはどういうような結果になるかということもお考えを願いたいと思う。今日出されましたこの条項については、自民党の私たちの親しい人々からいろいろここはこういうことだからどうもないじゃないか、これは正しいじゃないかと説明を受けております。条文を読めば、これならば別に差しつかえないじゃないかというけれども、昔の治安警察法、こういうものと同じことです。私は、きょうはこの委員会におきまして、社会党を代表いたしまして、緒戦でございますから、皆様方にこまかいことを一々申し述べたいとは思いませんけれども、やがてはわが党におきましては、過去におけるところの治安警察法がどういうものであったか、あるいは治安維持法がどういうものであったか、こういうようなことをすべて研究いたしまして、そうして今日の条項においては、言葉巧みにこの中に入り込められてはおるけれども、実際においては、昔の治安警察法、こういうようなものの復活であるということを、私たちは全国民に訴えるための資料を今作成中でございます。そういうような意味におきまして、今日法の条文を見れば、どの条文でも政府国民を弾圧するとか、そういうようなことは一つも書いておりませんけれども、一たびその運営を誤まるならば、そういうような泥沼の中に私たちは引きずり込まれなければならない。警察官は法を誤まって、しゃあしゃあとしておるでしょう。誤まったら仕方がない。そうしてまたこういうような膨大な法を一警察官の認定によって、おそれがあるとか、こういうことがあるとかいうようなことを想像して、そういうようなことを行わすというようなことはもってのほかである。一たびじゅうりんされた人権はだれが補償するのですか、皆さん長官もよく心得ていただきたい。幾たびも牢獄にもほうり込まれ、豚箱にもほうり込まれた、若い、前途のある青年が監獄から出てき、豚箱から出てきたならば、就職口もなければ、またいろいろの目をもってこれを見られなければならないという現実が起ってくる。今日警察当局がいかに言を左右にして弁明されようとも、その本質というものは、少くとも最近起りつつあるところの全学連やあるいは勤評反対のデモに対するところの取締りを強化しなければならない、これを何とかして合法づけよう、そうしてそれに違反するものはいろいろの理由をつけてこれを検挙しようというところにあると私たちは認定せざるを得ないのでございます。こういう立場に立ちまして、私たちは全委員十一名が明日からこの法律に対しましてすみからすみまで、政府当局、警察当局と相対決して、どちらが正しいか、数にものを言わしてこのようなものを決定するのではない、私はそう考えるのでございますが、長官はもしこの法律が通っても悪用されるというようなことはない、これはどこも間違いはないでしょうと言われるでしょうけれども、これは悪用されたときにはこういうような結果が出るということを私はお気づきを願いたいと思うのでございます。そういう意味におきまして、私は本日は一時間という約束でございますから、これをもって質問を終りたいと思いますが、警察当局におきましても十分検討されまして、そうして今後に対処していただきたいと思うのでございます。
  128. 青木正

    青木国務大臣 矢尾委員から御体験をまじえてのお話を承わりまして、昔の警察のあり方のためにどれくらい国民の皆様方に迷惑をかけたかということを私自身も想起いたしまして、お話を十分傾聴いたしたのであります。今回の改正内容につきまして私ども考え方につきましては、矢尾委員からもいずれ内容については追ってこまかく御質問ということでありましたので、そのときに詳細の内容は私なりあるいはその他の関係の当局から答弁いたさせることにいたしまして、こまかいことを私はこの機会に申し上げることは差し控えますが、全般の考え方といたしまして、私は現在の警察制度のもとにおきまして、先ほど公案委員会のお話がありましたが、公安委員会の管理のもとにある警察というものは、昔の警察とは根本的に違っておると思うのであります。     〔発言する者あり〕
  129. 鈴木善幸

    鈴木委員長 静粛に願います。
  130. 青木正

    青木国務大臣 このことは、いやしくも現在の警察制度というものをごらんになればおわかりのことでありますので、制度的にそういう心配は、昔に比べたならば、まるで違った状態になっておる。しかし単に制度がそうであるということだけで、警察官が権力の乱用をいたすのを防ぐことができるかどうか、この問題につきましては、もちろんまた考えなければならぬ問題であります。私の申し上げますのは、制度として昔と違っておるということが一つの問題。それからさらに個々の警察官の問題につきましては、私どもも、実際に法を運用いたしますのは人でありますので、人の問題につきましては現在も十分注意いたしておりますが、さらに一そう、万々一にも乱用にわたることのないように、単に口先だけでなしに、われわれといたしまして十分にそういうことのないようなあらゆる措置を講じていかなければならぬということは、お話の通りであります。私どももこの法案が幸いに通過いたした暁におきましては、そういうことのないように、これは単に警察当局がそう注意するというだけのことでなしに、あらゆる国家の機関がやはりそういう気持で、警察官が職権乱用にならぬように、万々一乱用した場合は、これに対して制裁措置を講じ、あるいは迷惑をかけた方々に対する賠償の問題、そういうふうな問題もあわせ考えて、運用に誤まりなきを期すようにしていかなければならぬ、かように考えます。
  131. 矢尾喜三郎

    ○矢尾委員 最後に、今の御答弁によりまして、一言お伺いしたい。この法律につきましては、万全を期して誤まりなきを期したいと、こう言われておりますが、私がさきに申し上げましたように、過去における法案も、みなそういうような趣旨に提案されたのです。しかしながらそれを悪用された。それでこれを悪用され、誤まってこれを用いられたときにおいて、被害をこうむった人に対する救済制度、ほんとうに警察が誤まりであったということで、これを救済するような法律を作って、人権を擁護していくことが、国民の代表として選ばれた国家公安委員としての役目ではないかと私は思うのです。それが取締り法案を出すとは、ほんとうの公安委員目的であり、趣旨である人権を擁護するという方針を打ち忘れられておるというような考えを持つのでございまするが、長官は、この際、被害をこうむった——今日人権擁護局が発表しております統計を見ますると、警察官の圧制によって、誤まった法の運用によって、幾多の人々が被害をこうむっておる。こういうような人が全部やみからやみに葬られておる。政府をして言わしむるならば、刑法によって、あるいは無罪になった場合には補償の方法がある、こんなことで、一たび身に受けた汚点というものはぬぐい消すことはできないのです。私たちは、誤まって汚点をつけたならば、国家権力によって、国家の手によって、その汚点を消すような方策を講じるのは当然のことであると思うのでございまするが、長官はこういうような幾多の誤まって被害をこうむった人々に対して救済をするような法案国会にお出しになるお気持はないか。このような法案を撤回して、人権擁護の立場に立って、憲法の第三章の人権を擁護するような法案国会に出すことこそが、私は公安委員としての責務であると思うのでございますが、この点に対しまして、どういうお考えを持っておりますか、お答えを願いたいと思います。
  132. 青木正

    青木国務大臣 お話のように、警察官が権限を逸脱して、その結果として国民の方々に御迷惑をかけた、こういう場合にどうするかという問題であります。御承知のように、現在国家賠償法もありますが、果してあれだけでそういう場合に救済できるかどうか、これは確かに研究すべき問題だと思うのであります。そういう問題につきましても、お話のように、今後なお私どもとしても研究していかなければならぬ、かように考えております。
  133. 鈴木善幸

  134. 渡海元三郎

    ○渡海委員 警察官職務執行法の一部改正は、今や全国民の注視の的になっております。それは、この法律国民の生活に関係が深く、国民の権利義務に重大なる影響を及ぼす点があまりにも多いからであります。私も、ただいま矢尾委員質問、身の体験をもっての烈々たる本法案に対する質疑を心から傾聴いたしたものであります。私たちも、今矢尾委員が述べられたような警察には断じてしてはならない、かく考えるものでございますが、国民も、あまりにもきびしかったあの昔のわが国の警察制度に対して、まだいろいろの不安を持っておることは、これは見のがすことのできない事実と存ずるのでございます。私は、この国民の関心にこたえ、本委員会審議を通じて、国民の疑問と不安を明らかにしなければならないと考えるのであります。このため、ただいま矢尾委員からも御質疑がございましたが、見解を異にする点もありますので、あるいは重複する点があるかとも存じますが、重ねてお尋ねをいたしたいと存じます。  国民は、近時のちまたにはんらんする不逞な暴力のばっこ、あるいは青少年犯罪の激増と悪化、または集団による流血の惨事等、あの忌まわしい現下の社会情勢を見て、これを憂えない者はありません。警察の積極厳正な活動によってこれらの社会不安を除去し、明るい市民生活を一日も早く実現せんことを願わぬ者は一人もないと考えるのであります。元来警察の任務というものは、いわゆる司法警察に属する犯罪の捜査と、行政警察に属する犯罪の予防並びに保護があります。近代医学が飛躍的に進歩したといわれるのは、私はこれは予防医学の進歩であったと思うのであります。よりよき消防というものは、起った火災を敏速に消すということではなくして、火災をなくすることであると思うのであります。警察が起った犯罪の捜査に敏速でなければならないことは言うを待ちませんが、よりよき警察というものは犯罪を未然に防止することでなければならぬと私は考えるのであります。(「その通り」)この犯罪の予防と保護の手段を規定しておるのがこの警察官職務執行法でありますが、本法が戦後早々の間に制定された結果、戦争前の余りにもきびしかった警察活動に対する反動として、ごく控え目に作られており、犯罪の予防に対し種々不備の点のあることは明らかであります。世間では、わが国の警察は犯罪や危険が起るまで待っておる、このような陰口さえたたかれておるのであります。今回の改正はこの不備を補い犯罪の予防に万全を期せんとせられるものであると考えます。  そもそも警察の任務は、警察法第二条に定めてありますが、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、公共の安全と秩序の維持に当ると、このように規定してあります。しかしながら、一方警察官がその職責を果すに当りまして、最も注意しなければならないのは、人権の尊重であることは言を待たぬのであります。人権の尊重はわが国憲法の基本精神であります。このため、本法の第一条におきましては「この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであって、いやしくもその濫用にわたるようなことがあってはならない。」と規定いたしております。この相反するがごとき二つの要請、すなわち人権の尊重と警察の職責の両者をともに完全に遂行せねばならぬところに警察の困難があると私は思うのであります。警察担当の青木国務大臣は、この人権尊重の憲法の精神を厳に守られながら、一方警察にかけられたこの重大なる責務を忠実に完全に果すために、現在の社会情勢下必要やむを得ないものとして、本改正案提出されたものと考えるのであります。わが国治安の最高責任者たる青木国務大臣は、この点に対し、いかなる確信と決心を持ってこの法案提出するに至られたか、まずこの点をお伺いいたしたいと存じます。
  135. 青木正

    青木国務大臣 この法案提出するに至りました基本的な考え方、また私の決心いかんという御質問であります。まず基本的に申し上げますと、御承知のように、警察のあり方、警察の基本というべき警察法の第一条に法律目的が書いてあるのでありますが、その第一条にも、「この法律は、個人の権利と自由を保護し、公共の安全と秩序を維持するため、民主的理念を基調とする警察の管理と運営を保障し、且つ、能率的にその任務を遂行するに足る警察の組織を定めることを目的とする。」とこういう条項がまず第一に掲げられ、しこうしてその第二条には、先ほど渡海委員から御質問のございましたように、警察の責務として「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもってその責務とする。」とこうはっきり警察の責務というものを規定しておるのであります。従って警察官というものが主権者である国民から命ぜられておることは、国民の公僕として個人の生命、身体、財産の保護に当るという責務と、もう一つは犯罪の予防、鎮圧、捜査、交通の取締り等によりまして公共の安全と秩序を維持する、この二つが警察の責務とこう規定されておるのでありまして、警察官が警察官として国民から負託されたこの二つの使命を果せるようなあり方でなければならぬと存ずるのであります。この警察法を受けまして警察官職務執行法がきめられており、その警察官職務執行法の中にはやはり同じように、警察官としては個人の生命、身体、財産を守ることと、それから公共の安全と秩序を守ること、この二つをすべきことを命ぜられておるのであります。ところが実際に警察官が仕事をするに当りまして働くところの法律になりますと、個人の生命、財産に関する規定はありますが、公共の安全秩序に対する警察官としての責務を果すべき規定におきまして、いささか欠ける点があると私ども考えるのであります。もちろん先ほどお話もありましたように、警察官というものは警察法第二条の二項にも規定されておるごとく、この法律を警察官がいやしくも職権の乱用にわたり、その結果として憲法で保障された国民の権利あるいは自由を侵害するようなことがあってはならないのであります。そういうことでありますので、公共の安全と秩序を守る責任があるからと申しまして、警察官がいたずらに公共の安全と秩序を守るという名のもとに人権を侵すというようなことがあっては、これは警察法第二条の精神にも反するばかりでなく、本来の警察官としてあるべき姿ではないのでありますので、私どもは問題の第五条におきましても、公共の安全と秩序を守るために警察官のやるべき仕事として、単にそれだけではなしに、犯罪が行われようとすることが明らかであって、しかも急を要する場合に限って警察官は犯罪の予防、防止、こういう立場からいたしまして、予防のために警告もし、制止することができるようにして、そうして第二条で命ぜられた警察官本来の責務を果すことができるようにさせていただきたい、こういうことなのであります。端的に申し上げますならば、警察官が国民から託された警察官としての責務を完全に果すことができるようにさせていただきたい、しかしながらそのことが国民の人権あるいは自由を妨げることになってはなりませんので、そういうことのないような配慮を法文の上にも明らかにいたしまして、そういうことのないように、しかし同時に警察官としてのやるべき仕事ができるようにさせていただきたい、こういう考え方に立っておるのであります。
  136. 渡海元三郎

    ○渡海委員 現行警察制度は戦後わが国の諸種の社会制度の変革の一端といたしまして、昭和二十三年に制定されたものでありますが、戦前のいわゆる警察国家を一変いたしまして国民の警察、民主警察へ切りかえられたのであります。そうしてこの民主警察制度の基盤をなすものが公安委員会制度であります。この公安委員会制度の運営その他につきましては、ただいまも矢尾委員との質疑応答においてお話がございましたが、この国民の良識の代表といわれる人たちの監視によりまして、警察の民主化と政治的中立性の確保をはかっておるのでありまして、これこそ天皇の警察から国民の警察に切りかえられたという現在の民主警察の基盤でございます。このために私はこの運営が果してこの目的をよく果し得るかどうか、十年間の運用にかんがみまして、この制度に対し所信のほどをお承わりしたいと思います。
  137. 青木正

    青木国務大臣 国家公安委員会、また地方における府県の公安委員会の姿、またあり方、このことにつきまして私どもはお話のように、この制度が採用されまして日本の警察制慶というものは、往年のいわゆる警察国家から完全に脱皮いたしまして新しいあり方の警察制度になった、かように確信いたしておるのであります。これは単にそう思うというだけでなくして、制度的にも御指摘のように、公安委員国民の良識を代表する方々であり、しかも国会の承認を得て内閣総理大臣がこれを任命いたしておりますので、その意味におきましては国民の代表である国会の意向も取り入れ、そうして各界の良識ある方々にお願いをいたしておるのであります。しかも御承知のように国家公安委員というのは一党に偏することができないような、制度上もそういう建前になっておるのでありまして、私ども昔の警察というものが内務大臣なり、あるいは警保局長なり、あるいはまたその他の内務省の官僚が警察に命令を下す、指揮を下す、こういうような昔のあり方を考え、今日現実に私が公安委員長の地位に立って今の警察というものを見るときに、これは全くもう当時の警察というものとは全然本質的に私は変っておると考えるのでありまして、御承知のように実際の警察の仕事は各県の本部が、警察本部長が責任者となって実際の仕事をやっております。この各県の警察本部長に対しまして、私が国家公安委員長として指揮命令はできるものではありませんし、またしようとも思いませんが、制度的にもそういうことは全然できないのであります。いわんや政府が警察本部長に対して命令をしたり、指揮したり、そういうことは絶対にできない建前になっておるのであります。万一そういうことがかりに内密に行われたといたすならば、国家公安委員会がその事態をとらえまして、これを十分に管理いたすのでありまして、私は現在の国家公安委員会制度というものはそういう意味におきまして、日本の警察の民主化、新しいあり方の警察、この制度を守っていく上におきまして国家公安委員会の現在まで果した使命はまことにとうといものがあり、今後もまたこの国家公安委員会がそういう重要な使命をになって、今後の日本の警察制度が昔のような国家警察に逆戻りするということを防ぐばかりでなく、さらに積極的にいわゆる民主警察として日本の警察制度をりっぱに成長させることができるものとかように確信いたすのであります。
  138. 渡海元三郎

    ○渡海委員 私はただいま矢尾委員からの質問もありましたが、条文には何も書いてないが——昔のあの治安警察法やあるいは行政執行法のような法律でも条文にはいいことばかり書いてあるが、現実にはこうであった、こう言われた。国民も今回の改正は、この改正をすることによって、いわゆるおいこらという警察ができるのだ、昔のああいう警察国家へ返るのだ、こういうばく然たる不安と宣伝が今行われておるのが現実の姿であります。今長官国家公安委員会制度あるいは府県公安委員会制度を中心とする制度の変革によって、そのような警察に返ることはないのだということを制度的に解明されたのでございますが、この点は最もよく国民の解明をしなければならないと願っておる点であろうと思うのであります。今制度の点についても触れられたのでございますが、私は法律的にも治安維持法もなくなり、治安警察法もなくなり、行政執行法もなくなり、また違警罪即決例もなくなった現在でございますが、制度的に法律的に昔の警察と現在の警察がいかに変化をしておるかという点を重ねてお聞きしたいと思います。
  139. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお尋ねの点でございますが、戦前におきまするただいまお話の治安維持法と申しますのは、「国体ヲ変革スルコトを目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務二従事シタル者ハ死刑又ハ無期若ハ五年以上ノ懲役若ハ禁錮二処シ」というような実体法でございます。また治安警察法は「政事二関スル結社ノ主幹者ハ結社組織ノ日ヨリ三日以内二」届出をしなければならぬ、警察官署に届けなければならぬ。また「公事二関スル結社又ハ集会ニシテ政事二関セサルモノト雖安寧秩序ヲ保持スル為届出ヲ必要トスルモノアルトキハ命令ヲ以テ」そういうことをやらせる。それから「屋外二於テ公衆ヲ会同シ若ハ多衆運動セムトスルトキハ発起人ヨリ十二時間以前二会同スヘキ場所、年月日時及其ノ通過スへキ路線ヲ管轄警察官署二届出ツヘシ」というような規定もございまするし、さらに、ただ単に「安寧秩序ヲ保持スル為必要ナル場合ニ於テハ警察官ハ屋外ノ集会又ハ多衆ノ運動若ハ群集ヲ制限、禁止若ハ解散シ又ハ屋内ノ集会ヲ解散スルコトヲ得」という集会についての非常に大幅な権限を与えておったわけでございます。そういうことで、これを読み上げますればさらに非常に広範な規定をいたしておるのでございますが、そういう非常に広い権限を警察に与えておったわけでございます。また行政執行法におきましても、「当該行政官庁ハ日出前、日没後二於テハ生命身体又ハ財産二対シ危害切迫セリト認ムルトキ又ハ博奕、密売淫ノ現行アリト認ムルトキニ非サレハ現居住者ノ意二反シテ邸宅二入ルコトヲ得ス」こういうふうにして日中においてはもちろん警察比例の原則等は考えなければならぬ筋でございますが、必要と認めて居住者の意に反しても邸宅に入ることができるというような規定があったわけでございます。こういうふうに過去の警察に関する規定はきわめて広範な権限を警察に与え、しかも先ほど来お話のありましたように、それが時に政治目的に使われるということがあったわけでございますが、現行法を改正いたしまする今回の改正案におきましては、全くそういうものとは精神を異にいたしまして、きわめて慎重に現在の憲法の精神にのっとって規定を考えておる次第でございまするし、また警察自体も先ほど来大臣からもお話のありましたように、戦前とはその建前が全く異なるということになっておりますことを、つけ加えて申し上げます。
  140. 渡海元三郎

    ○渡海委員 世上本案のごとき重要なる改正案が唐突に国会提案されたとして種々の疑惑を生んでおることは、ただいま矢尾委員から詳細質疑がございましたので、私はこれを重ねようとは思いません。もちろん私たちは本改正については砂川事件当時以来慎重研究討議してきた問題でありまして、決して突然決定されたものでないことはよく承知いたしておるのであります。またただいま述べられました民主警察運営の責任者である国家公安委員会が、十月九日に発表された声明を見ますると、「国家公安委員会においては、現行警察官職務執行法制定後、十年余の運用の実績と、その間における社会情勢の著しい変化の状況とに鑑み、その不備を是正する必要を認め、かねて現行法の改正について、警察庁事務当局に検討せしめていたのであるが、過般その成案を得るに至り、これを正式に決定して、国会提出することを承認したものである。世上一部には政府がこの改正を強く要求し、これを不当弾圧の具とするものであるかのごとき説が行われているが、国家公安委員会は常に警察の政治的中立について強い責任をもつものであって、かりそめにも一部勢力の政治的要求に基いて法の改正を企図するものでないことをここに強く声明する。」こう述べておられまして明らかなところでございます。この公安委員会における本法の研究に対する経過等は、先ほどの質問でございましたから、私はこれを求めません。国家公安委員会の民間委員の構成は、その政治的中立を保つために、特に法の上でも過半数以上の者は同一政党に所属せしめない、こういうふうな厳格なる規定が設けてあって、またさきに行われました警察法の改正のときは、国家公安委員の中にも反対であられる方もあったと聞きますが、今回の法案に対し、この政治的中立を守らなければならない国家公安委員の方々が一部反対があるのであるかどうであるか、この声明に出された通りに、全員この声明通りの御賛成の意思であるかどうか、この点詳細に御説明賜わりたいと存じます。
  141. 青木正

    青木国務大臣 国家公安委員会におきましては、ただいまお読みになりました通り、声明にも明らかなごとく、国家公安委員会としては全く国家公安委員会としての立場に立って、日本の警察をいかに正しく管理し運営するかという立場に立って、現行法のもとにおける警察官の職務執行についていろいろ検討した結果、警察官が警察法に定められた職責を果すためには、どうしてもこの程度改正をせなければならない、こういうことに各委員の方々完全に意見が一致いたしまして、そうしてこの法案提出するように政府の方に要望いたしたのであります。政府はこれを受けまして、国家公安委員会の全会一致の意思に基きまして、政府もこれを提案するという考え方に到達をいたしたのであります。
  142. 渡海元三郎

    ○渡海委員 昭和二十三年の警察制度の改正によりまして、国家警察から民主警察へ切りかえられたのでございます。このことはけっこうでございますが、戦後早々の間でございました結果、また占領下にあったというような特殊事情のもとに、わが国の実情に即さず、また種々の不備のあったということはこれを認めなければならないと私も考えるのでございます。たとえば規模も小さく財政もきわめて貧困でありますあの小さな自治体にまで、重要なる警察任務を担当さした自治体警察の制度というようなものは、明らかにこれはわが国の国情に合わない実例の一つと申して過言でないと思うのであります。幸い昭和二十九年の警察法の改正によりましてこれは改正されたのでございます。この当時におきましても、社会党の方々の中には、この制度の変革をもって昔の警察国家に返るのだ、おいこら警察に返るのだ、このような強い反対をされまして、このため、わが国憲政史上未曽有ともいうべきあの国会乱闘事件というような不祥事さえ生まれたのでございますが、その後四年間の運用にかんがみまして、私たちは、民主警察としての基盤はいよいよ固まり、しかも一方格段と能率的に運営されておる、かように考えるのでありますが、青木国務大臣は、この点いかに考えられますか、御答弁賜わりたいと存じます。
  143. 青木正

    青木国務大臣 かっての国家警察と自治警察と二本立の警察のあり方が、昭和二十九年の改正によりまして現行法のごとく一つの警察のもと改正された、この問題につきましては、御指摘のごとく当時ずいぶん反対の御意見もあり、その中には、こういう制度にすると、昔の警察国家のようなあり方に返るのじゃないかという御心配、あるいはまた、この制度にすると、かえって能率が悪くなるのじゃないかというような御非難、いろいろな御意見もあったのでありますが、実際に実施された結果は、御承知の通り、これによって日本の警察が決して警察国家の昔に逆転したという点は一つもないのみならず、私は、当時に比べれば、はるかに民主警察の姿に一歩前進しておると思うのであります。またこの新しい改正の結果、警察の装備の問題あるいは能率化の問題、そういう点におきまして、私は、格段の進歩を遂げ、近代的警察としての新しい科学的な捜査という方面にも長足の進歩をすることができ得た、かように考えるのでありまして、先般の警察法の改正は、日本の警察制度にとっても、また国全体の立場からいたしましても、私はまことに時を得た改正であった、かように存ずるのであります。
  144. 渡海元三郎

    ○渡海委員 今回の改正は警察の組織と並んで他の一面を受け持っております執行の部面に対する改正であろうと思います。先日の大臣提案理由説明の中に、「現行の警察官職務執行法は、昭和二十三年に施行され、以来約十年になりますが、この間の警察官の職務執行の実情にかんがみますと、この法律には、その規定に幾多の不備が見受けられます」と述べておられます。また実際不備と見受けられる点も多々あると私も認めるのでございますが、現行法を制定された当時はどうであったのですか。一方、当時は現行法の規定以外のことは必要性を認めなかったのであるか、または必要性を認めながらも占領下にあった特殊事情等から、不備と考えつつも対策が立てられなかったのであるか、当時のいきさつについてお伺いいたしたいと存じます。特に現警察庁長官は、当時国警本部の総務部長としてこの法案の立案の衝に当られたと聞いておりますが、あわせて御説明を賜わりたいと存じます。
  145. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお述べになりましたように、昭和二十三年に現行法が制定されました。その当時は占領下でありまして、また終戦後の国民気持も非常に落ちつかない時期でございまして、特に大きい問題につきましては、占領軍によって処理されるというようなことも多かったわけであります。われわれといたしましては、当時においてもこれで十分な法律であるというふうには考えておらなかったのでありますが、占領下の事情もあり、また当時の社会事情等もありまして、この程度でやむを得ないというふうに考えた次第でございまして、当時から不備な点は感じておった次第でございます。
  146. 渡海元三郎

    ○渡海委員 治安の点に不備があったけれども、当時は占領軍もおりました関係で、これらとの関係で現在の法律が不備であっても全うできたのであるかどうか、この点重ねてお伺いいたしたい。
  147. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 職務執行法の不備な点から警察が十分に活動し得ないということがありましても、占領軍がおったために、そのときどきに適切な措置をとるようなことができたために事態は一応おさまりを見たものであると考えておる次第でございます。
  148. 渡海元三郎

    ○渡海委員 同じく大臣の述べられました提案理由説明の中で「この際、この不備を補い、社会情勢の著しい変化に対応し得るようにしようとするものでありまして、これにより警察に課せられた治安の責めを全うする」ことにしたいと述べておられます。昭和二十三年当時の社会情勢と比較いたしまして、わが国の社会情勢のこの変化をいかに大臣は認識しておられるのでありましょうか。大体治安の根本は、民生を安んずることにあると私は考えるのであります。戦後のあの混乱した時代から比べますと、現存の国民生活が画期的向上しておるのにもかかわらず、治安の問題がかくも憂うべき状態にあるということは、私はまことに遺憾にたえないのでございます。青少年犯罪の激増は言うまでもありません。組織的、計画的な実力行使によって公然と法の秩序を破壊し、公共の安寧を乱す、傾向が漸次顕著となり、法治国としての権威と実体が次第に失われつつあることは、まことに遺憾のきわみといわなければならないのであります。勤務評定や道徳教育講習会の実施に対し、日教組、全学連、総評等の実力による妨害行為、あるいは王子製紙の争議における裁判所の命令執行阻止事件等、明らかに法の秩序をじゅりんする組織的、計画的な行動は、法治国とし断じて許されないところであると考えるのであります。さらに私がおそれますのは、このような違法闘争行為を積み重ねることによって、なしくずしに違法行為を正当化し、法の秩序を破壊しようとするものでありまして、多数であればどんなことでも正当であり、正義であるとされる錯覚がびまんされつつあるということであります。私はこのようなことは治安上絶対に許されないと考えるのであります。長官はこの治安の状況をながめ、これに対処し、真に法秩序を確立するためにこそ今回のこの改正をなされたものと思いますが、この点青木国務大臣の明快なる御答弁をお願いしたいと思います。
  149. 青木正

    青木国務大臣 この法律制定後、その後の情勢の変化とは何ぞや、またその情勢の変化に対応してなぜ一体こういう改正の必要があるか、こういう御質問考えます。警察当局といたしましては、警察当局の専門的な立場に立って、この法律に定めた職務執行上の技術的ないろいろな面から改正する必要をいろいろ見出し、またせなければならないという考えに到達した点もあると思うのであります。私は警察の専門家ではありませんので、そういう警察官の技術的な立場ということでなしに、私は私なりの考え方といたしまして、私は最近の情勢にかんがみ、どうしてもこのような改正をしなければならぬという点につきまして、およそ二つの点を考えておるのであります。  一つはお話にもありましたが、青少年犯罪の問題であります。これは先般昭和三十二年度の犯罪統計が発表されております。その統計を見ますると、最近青少年犯罪は非常な増加の傾向にありまして、二十九年に比べまして約二割増加いたしております。犯罪実数と申しますか、わかりやすく数字で申し上げますと、千人について一〇・四五、十人の青少年犯罪という数字を示しておるのであります。虞犯少年になりますと六十三万七千人でありますか、そういう数字が出ておるのであります。私どもお互いに今の日本をいかにりっぱに建設するか、お互いに努力をせなければなりませんが、しかしあとから続いてくる青少年というものは、さらに一そうりっぱに日本を再建することができるようなあり方でなければならぬ、そう考えまするときに、私どもは青少年問題につきましては、これは国のあらゆる力をあげて青少年が悪に染まることのないようにせなければならぬと思うのであります。もちろんそのことのためには決して警察だけでやるべき問題でなしに、むしろ警察は青少年の問題のごく一部を担当するにしかすぎないのであります。根本的には教育の問題あるいは環境の問題その他いろいろな問題がありますが、警察官は警察官として、やはり街頭に巡査が立っておりますので、そういう街頭におる警察官としての立場において、できるだけ青少年問題についても警察の立場において保護できるようなあり方にすべきではないか。もちろん青少年の人権、自由というものは尊重しなければならぬことは当然であります。しかしそういうことを配慮しつつ、同時に警察官は警察官として青少年問題についてできるだけの協力をして、そうして青少年が悪の道に行くことを防ぐようにしなければならない、こういう気持で、警察官というものが単に犯罪を取り締るとかどうとかいう殺伐たることでなしに、やはり警察官として青少年問題に対して、むしろあたたかい気持を持って青少年保護にも当るベきではないか。午前中もちょっと参議院でお話があったのでありますが、そういうためには警察官というものも場合によっては男の警察官でなしに、婦人警察官等につきましてももう少し考えまして、そういう青少年を補導する警察官につきましては婦人警察官という問題も、さらにまたあらためて検討する必要もあるのじゃないか、こういうことも考えるのであります。そういう見地からいたしまして現行の警察官職務執行法を見ますると、青少年保護の面におきましていろいろ警察当局で従来経験いたしました結果、もう少し規定を改めて、青少年保護について警察官が仕事がやれるようにする必要があるのではないか、こういう点が一つ考え方であります。  もう一つは先ほど治安のお話がありましたが、私どもは労働組合というものに対して警察が介入すべきものでないことはもう言うまでもないことでありまして、われわれは毛頭さような考えは持っていないのであります。むしろ私は日本の労働運動というものが正しく伸びるためには、そういうような血なまぐさい事態を伴わずにいくような姿にすべきではないか。現在のいろいろな労働問題がいろいろ紛糾した結果、ややもすれば血なまぐさい事件に発展していく、このことはやむを得ないことといって放任しておくべきかどうか。私はむしろそういう事態になることが明らかである場合には、警察官はそういう事態にならないように予防もし、制止もして、そうして労働組合運動というものも正しく伸びるようにむしろこれは協力すべきではないか。決して警察がなまいきな立場で労働運動にどうというのではないのでありますが、やはり警察は血なまぐさい事態に立ち至ってから、これに対して、その犯罪に対して、検挙とかどうとか、こういうことではなしに、そこへ至る前にやはり事前にそういうことを防止することが必要ではないか。また先ほど勤評反対運動あるいは道徳教育阻止の問題をお話しになりました。私どもはそれぞれの考え方に立ち、それぞれの立場に立って、政府なりあるいはその他の機関がやることに対して批判をし、反対することはもちろん自由であります。しかし反対することは自由であり、批判することは自由でありましても、自分の気に食わないことは実力をもって阻止する、こういう考え方に対しては、とうてい同調することはでき得ないのであります。そういうことが同調できないというばかりでなく、そのことが犯罪を伴い、流血の惨を見るというようなことになることそのこと自体が、非常に私はお互いに考えなければならぬことじゃないか。戦後すでに十三年もたった今日でありますので、お互いにもう少し静穏な世の中を作るべきではないか。その静穏な社会を作るためには、いろいろな思想的な対立あるいは考え方の違い、これはもうやむを得ないことであり、これを決してとやかく言うのではないのであります。そういうことのために社会の静穏を害するというようなところまで至ることを私どもは放任していいのかどうか。警察官としてやはりそういう事態に至る前にできるだけ警告もし、制止もして血なまぐさい事態が起らないようにやることは、私は警察官としての本来の立場ではないか、かように考えております。  またお話しにはならなかったのでありますが、たとえば大分におけるいろいろ暴力団の騒擾といいますか、ああいう事件、ああいうことがあるために、私聞いておるところでは、町の人たちまで窓を締めて非常に小さくなって事件を見守っておる、こういうことで住民の生活を非常に脅かすのであります。こういうことであってはなりませんので、そういうような事態になるおそれがある場合には、やはり警察は事前に制止いたしまして、できるだけ国民生活の静穏を保つことができるように協力する必要があるのではないか。  こういう点から考えまして、私は現行の警察官職務執行法は、そういった面において警察官が当然やらなければならない責務を果すことができない状態におかれておりますので、これを改正していただいて、青少年保護のためにも、社会の静穏を保つためにも、警察官としてやるべき仕事がやれるようにしていただきたい。決して警察官の権限を拡張しようというのではないのでありまして、警察官本来の使命を果すことができるようにしていただきたい。そのことのために人権あるいは自由の侵害等あってはなりませんので、そういう点につきましてはできるだけの配慮を加えたつもりであります。  法律上の問題につきましては、いずれ条文の説明等におきまして当局から詳しく御説明申し上げたいと存じます。
  150. 渡海元三郎

    ○渡海委員 ただいま具体的事例をあげて本改正案の必要性を説かれております。大体了承したのでありますが、警察が権限を与えられて、また執行することになっております法律は、刑事訴訟法とかあるいは道路交通取締法、銃砲刀剣類等所持取締令、軽犯罪法等数はきわめて多いのであります。さらに条例によっても種々の権限が警察に与えられておるのであります。これらの法令を忠実に執行することによって解決し得る事態は相当多いのではないかと考えるのであります。またそうすることによって、今回の改正は行わなくとも目的を達するのではないかといわれておるのでございます。逆に言えば、現在の職務執行法以外の法律の活用が不十分であるというか、忠実に執行されていないために現在困っておるのであります。他の法令によってなし得ることであれば、あえて今回の改正を行う必要はないと思うのでありますが、この点明解なる御回答を賜わりたい。
  151. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察の執行いたしまする法令というものは、ただいま御指摘のごとくに数多くあるわけでございますが、これらはいずれも刑事処分としての手続とか、あるいは交通の取締りとかをきめたものでございまして、国民の生命、身体、財産の保護に任じ、また公安の維持に当る警察の責務を果す上におきまして必要な手段を果すためのものではございません。そういう手段につきまして規定するのが警察官職務執行法でございますので、この執行法の不備な点を補いまして今回の改正をはかる次第でございます。
  152. 渡海元三郎

    ○渡海委員 わが国憲法が基本的人権の擁護を第一義としておることは申すまでもないところであります。戦前の行政執行法は、この憲法の人権尊重の精神に反するというゆえをもって廃止されました。現行の警察官職務執行法制定当時におきましても、この点に関しましては種々議論されたのでございますが、憲法第十三条の公共の福祉の規定もあり、本法憲法の精神に反するものでないとされて、学説もまたこれを認めておるのであります。今回の改正は、本法に規定しておるところの質問、保護、緊急避難、あるいは警告及び制止、立ち入りと、各項目につきおのおのその不備な点を整備拡充したものでありまして、本質的に何ら変るところがないのでありますから、この点は憲法違反という声もありますが、われわれは、しからずと、かく信ずるものであります。また当局におかれても、この問題の重大性にかんがみ、専門の権威者にも十分に意見を聴取されたことと思いますが、重大なる問題でございますから、この点さらに明確なる御答弁を賜わりたいと思うのでございます。  さらに学説には、憲法の第三十三条ないし第三十五条の規定は司法手続の規定で、行政手続を制限するものでないということが定説となっております。しかしながらいかに行政手続でありましても、憲法の精神はこれを守らなければならないことは当然であります。現行警職法が制定されました当時、時の国家地方警察本部長であられた斎藤昇氏は、国民全体の基本の権利を擁護するという建前から、警察官がその趣旨に沿って職務遂行のできるようにその基準を与えたいというのが一つの大きなねらいである、こう述べられて、この法律を作ることは人権を守るためなんだ、こう説かれておるのでございます。今回の改正に当って、種種改正されておるのでございますが、法文の上にこの憲法を尊重するという精神がいかに具体的に生かされておるか、詳細御説明を賜わりたいと思います。
  153. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 私ども憲法を擁護することは宣誓をいたしておりますので、憲法擁護につきましては細心の注意をもって立案に当ったのでありますが、お話の通り日本憲法国民主権を根本といたしまして、人権尊重ということを主軸といたしておるのであります。各条竜について各種の規定を整備いたしておるのでありますが、今回の職務執行法改正に当りましても、憲法のすベての条章につきまして精密な検討を加えたのであります。  御指摘になりました憲法第三章の、三十三条以下の規定が、刑事手続、刑事司法に関してのみ適用がある、行政手続についてはこの精神はもちろん非常に尊重すべきであるが、これは刑事司法に関する規定である、こういう点につきましても文献等も十分調べましたが、ほとんどすべての文献におきましては、これは刑事司法に関する規定である、これが定説になっておるのであります。そういう趣旨からいたしまして、第三条の保護にいたしましても、憲法三十三条には違反いたしません。しかもその兇器の取り上げ等に関する規定につきましても、憲法三十五条には違反いたさないというのが定説になっておりまして、これは憲法違反にならないということについては確信を持っておるのであります。  その他第二条の質問につきましても同様でおりますが、質問やり方等につきましては、二十三年の制定当時のものに改正を加えておりませんので、当時憲法違反でなかった点について今日も同様の考えを持っておる次第でございます。  その他条文の改正の各個につきまして、憲法の問題につきましては精密な検討を加えたのでありますが、今度の改正法律案につきまして憲法違反の疑いは全然ない、こういう自信を持っている次箒でございます。
  154. 渡海元三郎

    ○渡海委員 警察法の目的は警察法の第一兼に明記されており、また本法の策一条にもしるされておる通りでありまして、個人の権利及び自由の保護と公共の安寧しと秩序の維持にある、こう書いてあるのでございます。ところがこの警察官職務執行法内容には、公安の維持ということは何ら具体的な定めがしてないのであります。これで治安の保持を種々しようとしておりますのは明らかにこの法律の不備であったと申さねばならないと思うのでございます。ことに近時のような組織的計画的な秩序破壊行為あるいは集団による暴力事件が頻発する傾向にある状況においては、このような制度上の不備はすみやかに是正し、もって治安維持の万全を期することこそ私はきわめて当然のことと考えるのでございます。  ところが世間ではこの公共の安全と秩序という百葉があまりにも抽象的観今志であるために、この乱用によってと不当に労働運動が弾圧されるのではないか、このような不安が多分にあるのでございますが、この点当局はいかに考えられるや。法文を見ましても、明らかに犯罪が行われようとしており、そのまま放置すれば公共の安全と秩序に著しく乱れがある場合、こういうふうになっておりまして、また急を要する場合によると厳密に規定されるのでありますから、私はこのような乱用は行われる余地がない、かく確信するのでございますが、当局のこれに対する確信のほどを具体的に詳細御説明賜わりたいと存じます。
  155. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 条文を具体的に申した方がいいと思いますので、私から条文に基づいて正確にお答えいたしたいと思います。  御指摘は改正法律案第五条の規定でございますが、第五条の規定は、「公共の安全と秩序が著しく乱される虞のあることが明らか」なことということが一つの要件であります。この公共の安全と秩序という概念は、先ほど憲法の問題についてございましたごとく、上からの力の安全というのでございませんので、専制国家におけるごとく上からの力の安全という内容を持っていないのであります。お互いが共同生活するについての安全でございますので、お互いが共同生活するところの安全という問題についての認定ということについては、当該事態についての具体的に把握できる概念だと考えるのであります。そういう意味で、公共の安全という概念は具体的に把握できる概念でありますので、これは明確に把握できると思うのであります。しこうしてこの場合において公共の安全と秩序ということだけで制止するのではないのでありまして、制止する場合にはすべて犯罪が行われようとしている場合に限られるのであります。犯罪が行われようとしている場合に制止できるにすぎないのでありまして、犯罪が行われようとしているということは具体的にきわめて正確に把握できることでありますので、その両者をあわせて考えてみますると、この概念につきましてはきわめて明確に具体的に把握できると思うのであります。しかも急を要する場合にこれを制止できるということになっておるのでありまして、こういう三つも四つもの要件を加えて初めて警察官が制止という行政ができるのでありまして、相当慎重な手続要件を具備しているというふうに考えている次第でございます。
  156. 青木正

    青木国務大臣 ただいま条文の説明は中川局長から申し上げた通りであります。なお労働組合、労働運動に対しての考え方につきましては、先ほど私申し上げましたごとく、警察は労働運動に介入すべきものでないことは言うまでもないことであります。私たちはただその結果が血なまぐさい事件にならぬように、できるだけ、むしろ正しい姿で労働運動というものが伸びることこそ期待いたしておるのであります。
  157. 渡海元三郎

    ○渡海委員 本条の改正で最も危惧される点は、警察が時の権力によって支配される、政治目的に使われるという場合に、これが非常に不当に乱用されるおそれがあるのじゃないかと私は思うのであります。しかし現在は、ただいま矢尾委員発言にもありましたように、政治的中立を守るために国家公安委員会というものが警察の運営を管理しておるのであります。現在の国家公安委員の民間委員の中には、労働総同盟の会長であられる金正米吉氏もおられるのであります。一昨日のテレビ放送を聞きますと、本改正は岸内閣が行なったものではないのだ。国家公安委員会が一年半にわたる研究に基いて確信をもって立案したものだ、こう述べておられるのであります。またさきの公安委員会の声明の中にも、「広く法秩序無視の傾向が著しい今日これに対処して、その予防に努め、善良なる大多数国民の保護のため適切な措置をとることは、むしろ時代の要請であると信ずる。」このように述べられておるのでございますが、公安委員会におけるこの点の見解を重ねてお伺いいたしたいと思うのでございます。
  158. 青木正

    青木国務大臣 前段の御質問の、現行警察制度のもとにおいて政治的な意図をもって警察を動かすことができないという問題につきましては、御指摘の通りでありまして、警察法にはっきり規定されておりますごとく、警察法第二条による警察の責務は、各府県におきましては警察本部長、それから東京におきましては警視庁が全責任をもってこれを担当いたしておるのであります。従いまして公安委員会といえども、各警察に対して個々の問題につき指揮命令することはできないのであります。これは絶対にできない建前になっております。いわんや、一つの政党あるいは政府が、個々の事件等につきまして、警察本部長あるいは警視総監に対して指揮命令をするというようなことは、もう制度的にも絶対でき得ない建前になっておりますし、万一そういうようなことが行われたとするならば、また公安委員会が、これに対して警察を管理する立場においてこれを排除することになっておりますので、絶対にさようなことはないと私は確信いたすのであります。  それから後段の問題につきましては、ただいまお述べになりましたように、この警察官職務執行法改正の問題は、決して政府あるいは自民党がこれを要求してこういう法案を作らしたというものではないのでありまして、これは内部の事情をお知りの方はよくおわかりの通り、金正委員なりその他の方が申しておったことは、決して口先だけでそう言うのではないのでありまして、実際に公安委員会におきまして、改正の必要あり、こういう認識に立ってこの改正問題が持ち上ってきたのであります。これは単に国家公安委員会がそういう見解をとっているばかりでなく、地方の公安委員会の大方の方々もやはり同様な考えに立っておると私は確信いたしておるのであります。
  159. 渡海元三郎

    ○渡海委員 世上の一部では、今回の改正をもって、戦前のあの治安警察法の復活である、このような宣伝がなされております。先日の新聞を見てみますと、日本ペン・クラブの声明として「この改正案は表現の自由に対する抑圧に利用される可能性が濃い」このように述べておるのであります。御承知の通り、戦前のこれらの法律は主として思想並びに結社の制限でございまして、従って、暴力や犯罪の予防を直接の目的とします本法とはその本質を異にしていることは明瞭であります。また、この条文を見ましても、どこにもこういったことは規定されてないことは明瞭なんでございますが、この点、これらの不安を一掃するために当局の明確なる御見解を承わりたいと存じます。
  160. 青木正

    青木国務大臣 この法律改正案が思想の自由を侵すものであるというような一部の方々の御意見を承わって、むしろ私自身として、どういうことでそういうような御認識になっておるのか不思議に思うのであります。条文のどこをごらんになりましても、この法律が、思想の自由、表現の自由をじゅうりんするというようなにおいすらない。私はかように考えておるのであります。
  161. 渡海元三郎

    ○渡海委員 私たちは自由主義者である、自由を尊ぶものである。人権を少しでも制限するような法律は作りたくないのが私たちの立場です。しかしながら、組織なき大衆は現在ほんとうの自由、ほんとうの人権をむしろ侵害されておるのではないかと考えるのであります。御承知の通り現在の日本は、世界のどこの国よりも自由であると言われておる。自由を尊ぶ欧米の国におきましても、これしきの法律に対しましては、現行法よりも相当厳格な規定で取り締られておる。まして共産圏においてはしかりであります。中共で昨年十月にきめられました治安取締り規則なるものを見てみますと、むしろわが国の戦前の治安維持法、治安警察法以上の規定がされておる。これが現状であるのであります。先般和歌山においてございましたあの勤務評定反対運動に対しまして、この運動に参加しなかった一教員が、他の教員たちから村八分的な行動を受けたあの人権じゅうりんの問題、また文部省がやっておる道徳教育を妨害したあの事件等は、明らかに人権のじゅうりんであり、憲法に定められた集会の自由の侵害であります。私は、組織なき大衆が集団の暴力で侵害されておるのが現在の状態ではないかと思うのであります。自由も尊ばなければなりません。人権も尊重しなければなりませんが、自由を侵害するような、打ち破るような自由、人権を侵害するような人権は断固として取り締らなければならぬと思うのであります。この点、青木国務大臣はいかなる御見解を有せられるや、お伺いいたしたいと思います。
  162. 青木正

    青木国務大臣 お話しのように、憲法の基本的な考え方、また民主主義の基本的な考え方は、言うまでもなく、人権の尊重と自由の尊重にあることは御指摘の通りであります。そこでたとい犯罪人の人権といえども尊重しなければならぬことは言うまでもありません。しかしながら、一人の犯罪人の人権を尊重しなければならぬからといって、他の九十九人の自由を奪うということがあってはならないのであります。私たちは、犯罪人の人権も尊重しながら、同時に他の九十九人の自由を守る。そういうことも当然しなければならぬと思うのであります。お話しのように自由を無視するものの自由のみが認められ、あるいは人権をじゅうりんするものの人権が主張されるというあり方であってはならないのでありまして、一人の人権、一人の自由も尊重しなければなりませんが、同時に、多衆の自由、多衆の平和、多衆の人権も尊重しなければならぬことは当然であると私は考えるのであります。
  163. 渡海元三郎

    ○渡海委員 以下少々具体的になりますが、現在世間で最もおそれられておって、このようなことにならないかと不安に思っております国民の心配な問題を私は端的にお聞きしたいと思いますから、具体的に簡潔にお答え願いたいと思います。  第二条は、質問に当って兇器の一時保管の規定をしておるのでありますが、この規定によって、あのいまわしい身体検査がまた再び復活するのじゃないか、こういわれておるのでございますが、この点はどうでございましょう。  第三条で、青少年の保護のためにこの規定を設けられたことは、私はまことに時宜に適したものだと思うのでございます。しかしながら、この規定のために、善良なる子女や、また全学連のあの学生たちが、弾圧の意図を持って、不当に保護という名前で拘引されるのではないか、検束されるのではないか、このような疑いを持っておるのでございますが、この点どうでございましょうか、以上お伺いいたします。
  164. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 第二条の改正規定についてお答えいたします。第二条の改正規定によりましては、身体の捜索はできません。ただ改正規定が規定しておりますのは、凶器というものに限りまして、またこれに類する身体に危害を加える物件を含めますが、危ないものを提出させる。それから提出させるために、所持品を向うから提出させてこれを調べる。こういうことを規定しただけでございまして、身体を捜索するということはできない旨を四項に明確に規定いたしたのでございます。  それから第三条の保護について申し上げますが、保護につきましては、真に保護に値するものだけに限定いたしたのであります。社会通念上、真に保護に値するものと考えられるものをきめて、制限列記しておるという点が第一点でございます。そしてその制限列記したものを保護いたすのでありますので、保護の目的に照らし、保護した場合におきましては、できるだけすみやかに家族等に引き取ってもらう、こういう旨を規定いたしておるのであります。  街路上におきまして、泥酔のために横たわっておる、それで人に迷惑をかけておるという泥酔者に対して、警察が保護を加え、できるだけ家族に引き取りを求める、こういう趣旨でございます。泥酔者に限りませんが、その他の一号から四号までの各規定とも、そういう趣旨に規定あれておりますので、これがいわゆる予防検束とか保護検束とかいうことは全然考えられないのであります。加うるに旧法時代、戦前の立法体系におきましては、司法官憲のコントロールの規定が全然なかったのでございますが、この職務執行法につきましては、家族の引き取り等について手間どって、二十四時間等をこえる場合におきましては、司法官憲の許可状の制度を設けておりますので、これまた戦前の制度と根本的に性格を異にしておる次第でございます。
  165. 渡海元三郎

    ○渡海委員 第四条は避難等の措置で、これは最近起りましたあのアジア大会、あるいはその他の劇場におけるところの過剰収容の事件等にかんがみまして、適切な規定を設けられたと思うのでございますが、この規定によって、また警官が、集会に際し、不当に門に立ったり、あるいは立ち入りをしてきたり、あるいは内容について不当な干渉を行なったりするのじゃなかろうか、こういったことを心配される向きもあるのでございますが、この点についてお答え願いたいと思います。
  166. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 御質問の四条の改正規定は、おおむね現行法の規定の趣旨に沿うた規定でございまして、現行法におきましての若干不備だと認められる点のこまかい点の改正を加えておりますが、この改正によりまして結社を制限するとか、言論を抑圧するとかいうことはどこを見ても考えられないのであります。
  167. 渡海元三郎

    ○渡海委員 第五条の規定で、公共の安寧秩序という規定を挿入されたのでございますが、この規定に対しまして、正当な労働運動が圧迫されるのではないか、このことは先ほどお聞きしたところでございますが、私は、正当な示威運動、あるいは労働争議が正当なる手段として認めましたところのピケ、これらのことが、この規定によって警告や制止が与えられるような事態は起るはずがない、かように確信をいたすものでございます。現在右翼等の問題が非常にやかましくなっておるのでございますが、この規定の改正によって、故意に右翼によるところの混乱を誘発したり、あるいは私服警官によって混乱を作ることによって警察の発動を誘発するのではないか、このようなむしろ悪意と思われるような宣伝すらなされておるのでございますが、この点に対して的確なる御答弁を願いたい。  もう一つ私は申し上げたいのでございますが、このごろ陳情ということが集団的に行われておるのでございますが、私は、この陳情も、集団的に行われる陳情は決して悪くないと思うのでございます。自分の苦衷を人の数でやることによっていかに苦しいかということを訴える意味において、たとい集団の陳情でありましても、これが整然と平穏に行われる限りにおいては、当然認めらるべきものと思うのでございますが、このような場合でも、不当弾圧をされるようなおそれがこの規定から生まれてこないかどうか、この点明確にお答え願いたいと思います。
  168. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第五条の公共の安全と秩序の解釈につきましては、先ほど刑事局長から申し上げた通りでございますが、これの適用になります制止が行われる場合は、これまた先ほど御説明申し上げましたように、犯罪が行われようとしており、しかもそれが公共の安全と秩序を著しく乱し、しかも緊急を要するということでしぼっておるわけでございまして、ただいま御指摘のような、正常な労働運動はもちろんのこと、陳情等におきましても、数が多いからということによってこれを制止するというようなことは、この規定のどこからも出て参りませんし、そういう考えは毛頭ございません。
  169. 渡海元三郎

    ○渡海委員 第六条で立ち入りの規定をしておるのでございますが、私は、こんなことはどこから出てきたか、このようにすら思うのでございますが、この規定によって旅館への昔の臨検が再び行われるのではないか、こういうようなうわさがちまたで流布されておりますが、この点どうでございますか、お伺いいたしますC
  170. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 旅館に関する六条二項の立ち入りの規定は、現行規定と改正規定とはほとんど違いません。言葉をむしろ明確にしたのでありまして、「その他多数の客の来集する場所」を、第三条の関係に「公開の施設」という言葉を用いましたので、その言葉を表わすためにこの規定を変えたということが一つ理由でございますので、むしろ現行法よりも明確になる。一言にしていえば、公開された施設については、すなわちだれでも入れるところには、おまわりさんだからといって入ってはならぬということにはならない。こういう趣旨の規定でございます。そうして現行法も改正法も、旅館の個室につきましては立ち入りをすることは許されないのであります。
  171. 渡海元三郎

    ○渡海委員 最後に、私は警察官の教養の問題についてお伺いいたしたいと思います。ただいままでいろいろ本法に対するところの疑問点を明らかにしてきたのでございますが、いかに法が正確にできておりましても、これを執行するものは下級の警察官でございます。この法律を円滑に運用するには、直接執行の衝に当る警察官の素質の向上こそ欠くことのできない要件であると考えるのでございます。今回の改正案に対する世上多くの心配も、素質の悪い一部の警察官が、拡張された職権を乱用し、不当に国民の自由を拘束することになるのではないか、こういう点にあるのだろうと思います。この点、大臣は本会議の議場において、質疑に答えて、確信を持ってお答えになっておられましたが、いかなる根拠をもってこの点を確信されたかどうか、明快にお答え願いたいと思います。
  172. 青木正

    青木国務大臣 お話のように、法律は人がこれを実施するのであります。従って、どんなりっぱな法律を作りましても、これを扱う人が間違っておりましては、法の目的とするところを達成できないばかりでなく、逆に御指摘のように乱用の結果、間違った運用が行われるおそれがあるのであります。そこで警察官の教養の問題は、まことに真剣に考えなければならぬ問題と存じております。もちろん現在の警察官が、私はすべてもう申し分ない、こう断言するものではありません。われわれは、さらに今後も引き続いて警察官の教養の問題につきましては力を入れていかなければならぬことは当然であります。ただ現状を申し上げますと、今日警察官は試験採用をいたす場合、高等学校を卒業して大体二十倍程度の競争率で入っておるのでありますが、入りました警察官は、まず県の警察学校におきまして一年間教育をいたし、それからだんだん上るに従いまして管区の警察学校、さらに国の警察学校に半年程度の入学をいたさせまして教育をいたしておるのであります。それのみに限らず、現任中も、いわゆる現任教育と称しまして、ある期間外で勤務いたしました場合は、これを学校に入れまして現任教育をいたしまして、常に警察官が教養の点において欠くることのないように、またいろいろの法規の点におきましても、十分の知識を持たせるように、さらにまた情操教育等につきましても、できるだけの配慮をいたしておるのであります。しかし、もちろん現段階をもってこれで十分と私ども考えのではないのでありまして、さらに一そう警察官の教養につきましては力を尽していかなければならぬ、かように考えております。なおまた警察官の職務の乱用につきましては、乱用にわたった場合、行政上の処分もありますし、刑事上の処分もあるわけでありますが、さらに、私がしばしば申し上げましたごとく、現在の警察制度におきましては、国家公安委員会がこれを管理しておりまして、いわゆる端的に申し上げますれば、警察官にたずなをかけておるような姿であります。公安委員会におきまして、その従来のいろいろな警察上の問題の報告を聴取いたしまして、万一行き過ぎがあった場合には、公安委員会がこれに注意を与える、職責の足りない点がありました場合におきましては、これに対して職責を果すように忠告もするというようなあり方をいたしておりますので、私は、全体的に見ましても、また個々の警察官という面から見ましても、乱用にわたること、昔のようなおそれはないのではないかと思います。しかし、私どもは決してこれをもって満足するものではないのであります。さらに一そう警察官の教養に力をいたしまして、いやしくも法の乱用あるいは権力の乱用になることのないように配慮していかなければならぬ、かように考えております。
  173. 渡海元三郎

    ○渡海委員 ただいまの御答弁で大体了承したのでございますが、人権擁護局の報告によりますと、ことしの一月から六月までの警官の人権侵害が四百十七件、昨年の二倍もあった、こういうふうに伝えられておる。また新聞記者の取材するのに対する傷害事件等が伝えられておるのでございますが、この点、いかなる状態でありましたか。疑問を明らかにする意味におきましても詳細御説明いただきたいと思います。
  174. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 人権擁護局で受理しました件数は、昭和三十年が五百三十三件、三十一年が三百三十八件、それから三十二年が二百五十八件、三十三年に、これはちょっとふえまして百六十八件ということになっております。これは受理件数でございますが、これにつきまして刑事事件として告発されたものは、三十年は一件、三十一年、三十二年、三十三年はございません。それから処分を勧告されたものは、昭和三十年は一件、三十一年が四件、三十二年、三十三年はございません。それから一般勧告をされたもの、これが昭和三十年に四件、三十一年が五件、三十二年が一件、三十三年が四件、それから処分猶予となったものは、三十年が九十二件、三十一年が九十件、三十二年が五十八件、三十三年が六十件ということでございまして、受理件数は三十年から逐次減っておって、三十三年にふえておりまするけれども、これについても、処分猶予となったものにつきましては、むしろ三十三年におきましても六十件を数えているような状況でございます。
  175. 渡海元三郎

    ○渡海委員 警官の教養の問題に関連いたしまして、薄給に甘んじている警官が、身を挺して治安の任に当っているのでございますが、このごろの治安状況におきましては、あの暴力的な集団事件等によりまして、受傷あるいは殉職する数が多数にふえていることもまた見のがすことができないことだと思うのであります。昭和二十九年度に五百八十八件であったものが、三十二年度におきましては八百九十二件と、率も七割もふえているのでございます。さらにおそろしいのは、挑発的な計画的な警官に対する挑発行為であります。和歌山の勤務評定のときに、新宮に行われました労働組合の勤務評定反対運動のときに、取材記者が傷害を受けた。このことを労働組合の幹部に抗議を申し込んだところ、労働組合の幹部のこれに対する答弁は、警官をなぐるつもりでつい間違ってなぐった、こう答えておられる。また、先般行われましたあの道徳教育の上野の会場において、全学連の学生の一人であろうと思いますが、社会主義学生同盟の委員長である中村某なる者は、大衆に向いまして、われわれ社会主義を目ざす学生は、ある決定的瞬間には暴力革命も辞さない、暴力革命は今も正しい。きょうは警官は手足しか使わなかった。しかしやがてこん棒を抜き、ピストルを向けてくる。彼らが武器を使えば、われわれも武器を使って彼らを殺す。岸政府を倒すためにはどうしたらいいか、それは警官を殺してしまうことだ。このような演説をやっている。このような状態に対しまして、いかに長官は対処されんとするか、この点お伺いをいたしたいと思うのであります。
  176. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話のように、最近、法秩序を無視すると申しますか、集団の暴力によりまして秩序を乱す傾向が相当に激しくなっているように思うのでございますが、これらにつきましては、もちろん人権を尊重しつつ、しかも警察の力というものを強化して参り、これらについての取扱いの万全と申しますか、効果的なる方法を考えるということが必要だと思いますが、今回お願いをいたしておりまする改正案等が成立いたしますれば、こういうものに対しましても、事態が非常に急迫してしまう前におきまして、制止等の措置によって未然にそうした事案を防ぐことができるのではないかということを考えまして、ぜひともこの法案の成立を期待いたしたいと考えております。
  177. 渡海元三郎

    ○渡海委員 ただいまの答弁で大体了解いたしましたが、この問題の解決の最も大きな主眼というものは、警察官が民衆に親しまれることでなければならぬ。大体警察官には、司法警察官としての任務と行政警察官としての任務がありますが、わが国の警察官は司法警察官としての任務の部面におけるあの峻厳さというよりも、むしろ行政警察官としての親しまれる、公僕としての警察官になるようにすることが、私はこういったものを未然に防ぐことの中では、最も重要な要素になるのではないかと思うのでございます。教養の面においても種々ございますが、私は、本法改正が円滑に施行されるために、むしろ親しまれる警察官、民衆の警察官になるように、教養の訓練において特に格段の御配意を賜わりたいと思うのでございます。なお本法改正は、いろいろ今質疑をいたしましたが、法文がいかにりっぱでありましても、これができたというその精神的な影響によりまして、今まで抑圧された警察官というものが、あるいは反動的に、精神的な面から不当に行使するというふうなおそれも多分にないか、かような心配もするのでございます。公安委員会のあの声明の末尾には、「もとよりその運用に当る警察官の教養を高め真に国民の信頼を得る民主警察とすることは、われわれ公安委員の任務でもあり、今後一層の努力を傾け、国民各位の期待に応えんことを期するものである。」このように結んでおられます。このことは、慎重の上にも慎重を期せられ、この法律改正が通過いたしましたなれば、円滑に実施されるよう格段の御努力を賜わらんことを特に要望いたしまして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  178. 北條秀一

    北條委員 関連質問。簡潔に一つだけ青木国務大臣質問したいと存じます。先ほど来聞いておりますと、この法律案については、政府としては、特に慎重に国会において審議してもらいたい。法律案提出する前に、民間の学識経験者等の意見を聞いて慎重にやるべきであったけれども、それをやらずに、国民の代表としての国会にこれを持ち込んだのであるから、国会において慎重な検討をされることを期待するというお話でございました。また渡海委員のお話の中にありましたように、この法律を作るために一年半の日子が使われたということでございます。青木国務大臣の言明によりますと、昭和三十二年の十二月から今日まで、約一カ年間の時間がかけられ、その間に公安委員会が六回開かれて、一回が三時間といたしましても、十八時間が審議に使われておるのであります。しかもこの法律は、警察行政をやっておられるところの専門家の皆さんが真剣に検討されたのであります。私どもは、警察行政についてはしろうとでございますから、先ほど来矢尾委員が言っておりますように、この法律案についての非常に多くの疑惑を持っておるわけであります。またおそれを持っておるわけであります。従って私どもとしては、青木国務大臣の御要請の通りに、心いくまでに、納得のいくまでに慎重にこの問題を審議をしようと決心をするのであります。皆さんは、そこにたくさんの資料を持っておられますが、その資料は、警察として人民を取り締る側の資料でありまして、私どもは、警察から取り締られた側、抑圧された側としましても、皆さんの資料以上の資料をたくさん持っておるわけであります。これだけの膨大な資料を審議するためには、相当な日子が必要であることは当然なことであります。従いましてこの際、政府の代表としての国務大臣青木正氏に責任ある言明を願いたいのでありますが、御説の通りに慎重に、野党の意見も十分にいれて審議されるだけの寛容さと準備をお持ちであるかどうか、この点をお伺いいたします。
  179. 青木正

    青木国務大臣 もちろん法案の検討につきましては、政府として、十分の御検討を願いたいわけでありますが、しかし国会審議の問題は政府として、国会に対してとやかく申し上げる筋合いではないのでありまして、国会委員会あるいは本会議等、国会側の御意向によって御決定をお願いするほかはないと存じております。
  180. 鈴木善幸

    鈴木委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後六時四十五分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕