○矢尾
委員 今
長官は、いろいろ過去の事例があってはならないということを言われましたが、過去、治安警察法あるいは治安維持法、行政執行法、違警罪即決例、こういうようなものを一条心々続んでおりますると、みなもっともなことが書いてある。
国民を弾圧するとか、何もしない人を引っぱるとか、そういうようなことは何も書いてないのです。あなた方は現在国務
大臣として、また警察庁の
長官としてやっておられて、これはこの
法律の
通り行うんですと言う。こういうような治安警察法ができ、あるいは治安維持法ができ、こういうような
法律ができたときに、当時の
政府なりこれを
提案した人は、決して
国民を弾圧するものではありません、こういうように言っておるに違いありません。酒を飲んで泥酔をして、徘回をしておる。こういう人をけががあってはいけないから保護をするんだ、こういうのです。そうしてまた今度の
法案においても、つけ加えて、過去の悪法中の悪法といわれたこの中に自殺のおそれある者、私が二十数回引っぱられた中で、自殺のおそれありとして引っぱられたのが六回あるのです。(拍手)自殺のおそれある者、なんで自殺しますか。私は昔新聞記者をしておりましたから、警察へ記事をとりに行くのです。そうして、きょうはどういうやつが引っぱられているかなと思って、検束簿というやつを調べるのです。そうすると、自殺のおそれがあるという、だれが自殺のおそれがあるか、泥酔して徘回しておった。保護検束。法文で見ると、自殺のおそれある者を保護するのがどこが悪いか、酒を飲んで徘回して川へでもはまって死んだらいかぬから保護したんじゃないか、これが
理由なんですよ。悪用して、今度その自殺のおそれある者というのが、また一条入った。ははん、これはまた昔のを復活しようと思っているのじゃなと思った。自殺のおそれありというのです。自殺をするという現場をみつけるのならよろしいが、自殺のおそれあり、とだけいっても、これはだれが自殺するやせぬやわからぬ。自殺のおそれがあるということで検挙する。酒を飲んで徘回しておったら、これを検挙するというようなことなんです。だから、今日またデモにいたしましても、あるいは
陳情をやるにしましても、私たちはその原因がどこにあるかということについては、私はこの
委員会においては述べたいとは思いません。何のために労働者が行列をやりデモをやるかという原因を探求していきましたら、いろいろ
理由もありましょう。しかしながら、その
理由を別にいたしまして、自分がデモをやって、そうして間違ったことに対して
陳情をし、これに対していろいろお願いに上るというようなデモをやったときにおいて、あまりにも今日の警察官というものは神経過敏になり過ぎておるですよ。メーデーにしてもそうです。五月一日の労働者の祭典において、労働者が組合旗を持って、そうして市中を正々堂々として歩いておる。多少のジグザグのデモがあったからというて、警察官がそれをだまって見ておって
ごらんなさい。何をするのですか。どういう危険があるのですか。
国会へ
陳情に来る。
国会議員に対して暴行、脅迫をしようというような
考えを持って来る人は一人もないのですよ。それを大げさに、
国会のぐるりに二十台、三十台のトラックに警察官を乗せて、そうして来たらこれを何とかということでやってくるのですよ。そうしてまた和歌山におきましても衝突が起った。また今日勤務評定の問題においても各地において問題が起っておる。そうして校長に対して道徳教育。これは実際けんかを買うておるじゃありませんか。
皆さん、今日の尋常一年や二年や三年の生徒を集めて道徳教育をするのなら、一堂に集めて道徳教育をしなければならぬけれ
ども、人生すでに四十のよわいを過ぎて、すいも甘いもわきまえた校長を集めて、書いたものを見せたらわからぬですか。わからぬところは解釈をつけておいたらわかるのですよ。それを一堂に集めて、そうしておれはこうやるのだから、お前らもこうやれという。けんかを買うておるじゃありませんか。そうして和歌山の衝突でもそうでしょう。右翼
団体と衝突した。これは私は、警察と右翼
団体とが組んでどうしたというようなことは聞きましたけれ
ども、私はそういうことは真実とは思いたくない。しかしながら、過去におきましてこういう事例というものは幾つもあるのです。過去において、
昭和十年ごろ、今の旭化成の前身でありまする旭ベンベルグという人絹会社がございました。従業員は約四千人おりました。そのときに旭ベンベルグの従業員は十二時間の労働をやらされ、そうして化学薬品を使うために、自然に頭が悪くなる、長らく職場におると自然に気違いのような
状態になる。人絹会社や、また製紙会社の工場に行くと、二硫化炭素のくさいにおいがするでしょう、それを長らく吸うと頭がぼうっとなる。こういうような
仕事に従事しておる人々に対しまして何らの救済方法がない、そうして日に次いで気違い病院に入院させられておる。こういうような
現実であったから、せめて三交代の八時間労働にしたらどうだといって、私たちは会社に要求をした。そうしたところが、会社はそういうようなことをやると困る、困るというのは利益が薄くなる、二割も三割も配当しておる会社なんです。利益が薄くなるから困る。しかしながら私たちはこの
目的だけは、人権の立場に立ってもどうしても
目的を貫徹しなければならない。しかしながら化学産業というものは 一たびストライキというようなものをやってしまえば、会社も大きな損害をする。国家の産業の上から見ても、大きな損害がくる。そうしてそれがひいては労働者にも大きな悪影響がくるから、ストライキというようなものはやってはならないという
方針を私たちはきめました。しかしながら戦いに勝つためにはだんびらは抜いてはならない、ピストルは撃ってはならないけれ
ども、撃つぞ、抜くぞという態勢は整えなければならない。私たちはそういう態勢を整えたときに、そうして二百人余りの私たちの同志が寄っておりましたら、警察がトラック二台を持ってきて、ぱっと検挙に来た。検挙に来たので、何で検挙に来たのだろうと思っておりましたら、会社の中のヒューズが切れた、争議団が赤い赤い電気をたくさんつけたものだからヒューズが切れた。そうしたら争議団が何かやったようにしてぱっと来たけれ
ども、ヒューズが切れたということがわかって、警察は僕らが集会をしておるところをうろうろしておった。そうしてしばらくしたら一斉に検挙となって私はそのとき二十一日ほうり込まれました。そのときには、会社側が自家発電をやっておった。その発電所の中に一尺ぐらいの棒を突っ込んだ。これはしろうとにはわかりませんけれ
ども、技術者が見れば、どこにどう突っ込めば大きな損害がなくしてぱっと大きな火が出て、そうして一見爆発したような
状態になるということがわかる。そこでそういうことを会社みずからがやって警察へ応援を求めて、そうして争議団が今発電所を襲撃、爆発をした、そういうようなことによって、ぱっと検束せられて、二十一日ほうり込まれた。そうして帰ってきたら、警察の弾圧によって、幹部はみな首を切られて放逐されておった、こういうようなことがあるのですよ。こういうようなことをやるということにつきましても、法の運営というものを誤まれば、私たちはどういうような結果になるかということもお
考えを願いたいと思う。今日出されましたこの条項については、
自民党の私たちの親しい人々からいろいろここはこういうことだからどうもないじゃないか、これは正しいじゃないかと
説明を受けております。条文を読めば、これならば別に差しつかえないじゃないかというけれ
ども、昔の治安警察法、こういうものと同じことです。私は、きょうはこの
委員会におきまして、
社会党を代表いたしまして、緒戦でございますから、皆様方にこまかいことを一々申し述べたいとは思いませんけれ
ども、やがてはわが党におきましては、過去におけるところの治安警察法がどういうものであったか、あるいは治安維持法がどういうものであったか、こういうようなことをすべて研究いたしまして、そうして今日の条項においては、言葉巧みにこの中に入り込められてはおるけれ
ども、実際においては、昔の治安警察法、こういうようなものの復活であるということを、私たちは全
国民に訴えるための資料を今作成中でございます。そういうような
意味におきまして、今日法の条文を見れば、どの条文でも
政府は
国民を弾圧するとか、そういうようなことは
一つも書いておりませんけれ
ども、一たびその運営を誤まるならば、そういうような泥沼の中に私たちは引きずり込まれなければならない。警察官は法を誤まって、しゃあしゃあとしておるでしょう。誤まったら仕方がない。そうしてまたこういうような膨大な法を一警察官の認定によって、おそれがあるとか、こういうことがあるとかいうようなことを想像して、そういうようなことを行わすというようなことはもってのほかである。一たびじゅうりんされた人権はだれが補償するのですか、
皆さん。
長官もよく心得ていただきたい。幾たびも牢獄にもほうり込まれ、豚箱にもほうり込まれた、若い、前途のある青年が監獄から出てき、豚箱から出てきたならば、就職口もなければ、またいろいろの目をもってこれを見られなければならないという
現実が起ってくる。今日警察当局がいかに言を左右にして弁明されようとも、その本質というものは、少くとも最近起りつつあるところの全学連やあるいは勤評
反対のデモに対するところの取締りを強化しなければならない、これを何とかして合法づけよう、そうしてそれに違反するものはいろいろの
理由をつけてこれを検挙しようというところにあると私たちは認定せざるを得ないのでございます。こういう立場に立ちまして、私たちは全
委員十一名が明日からこの
法律に対しましてすみからすみまで、
政府当局、警察当局と相対決して、どちらが正しいか、数にものを言わしてこのようなものを決定するのではない、私はそう
考えるのでございますが、
長官はもしこの
法律が通っても悪用されるというようなことはない、これはどこも間違いはないでしょうと言われるでしょうけれ
ども、これは悪用されたときにはこういうような結果が出るということを私はお気づきを願いたいと思うのでございます。そういう
意味におきまして、私は本日は一時間という約束でございますから、これをもって
質問を終りたいと思いますが、警察当局におきましても十分検討されまして、そうして今後に対処していただきたいと思うのでございます。