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江口政府委員 去る九月二十六日及び二十七日にわたりまして、
本土を襲いました
台風第二十二号の
被害につきまして、簡単に御
報告を申し上げます。
第二十二
号台風による
被害は、御
承知のように非常に広い範囲にわたっておりまして、
東京、
神奈川、
静岡などを初めとし、三都一道二十七県にわたって
被害があったのでありますが、これをまず
最初に
全国的な総数を申し上げまして、さらに
特色のある面につきましては、後ほどこれもまた簡単な
概要を申し上げたいと思うのであります。
まず
全国の総計を申し上げますが、これはお手元にも
資料を配付いたしておりますので、詳しくは後ほど
ごらんをいただきたいと思いまするが、非常に大きな
被害をもたらしておるのであります。なお、
静岡県の
被害につきましては、今もって
調査中の面がたくさんございまして、現在行方不明という欄に載っておりますのが、将来は続々と
死者の方に加わっていくものと推測いたされまするので、
死者の数が
相当ふえて、従って行方不明はだんだん減っていくということになろうと思います。
まず
人的被害から申し上げますと、
死者は、昨日現在におきまして、八百二十六人に上っております。
負傷者が九百七十四名、行方不明が四百四十一名というのが昨日までの
数字でございます。
次に
建造物の
被害でございますが、
全壊家屋が千二百十四戸、
半壊が二千三十三戸、
流失が八百二十四戸ということに相なっております。なお
床上侵水が十三万二千百五十三戸、床下に至りますと、三十八万九千四百八十八戸の多きに上っておるわけでございます。
さらに田畑の
被害あるいは道路の
決壊という面につきまして、
警察としましては
一つの型がございまして、その
報告を
調査した
数字が御配付いたしておりまする
資料の
通りでございまするけれ
ども、この点につきましては、あるいは
関係各省から出て参りまする
被害の
調査と
相当の食い違いがあるかと考えます。また
警察としましては、
被害のありました当初に調べました
数字から、その後におきましてはこういう面につきましては必ずしもふえて参らないので、あるいは
農林省等の
資料を御信用といいますか、
ごらんをいただいて、彼此御判断をいただきたい、こういうふうに思うのであります。
なお、ただいま申し上げました
人的被害あるいは
家屋の
被害等につきまして、多少詳細に主要なる都県につき概況を申し上げますと、大体次の
通りになるものと思うのであります。
まず第一に、
東京都におきましては、
死者三十名を出しておりますが、これは
倒壊家屋の
下敷きとなりました者を初めとし、次にはがけくずれ、感電というような
原因で死人を出しておるのであります。次に
負傷者は四十八名で、これもがけくずれや
倒壊家屋の
下敷きになったというのが大
部分でございます。次に行方不明が十二名、
全壊家屋が八十一、
半壊が五十四、
流失が十七、
床上浸水が七万六千戸というような
被害が
東京都についての
大要でございます。
次に
神奈川県につきましては、
死者九十四名を出したのでありますが、
神奈川につきましては、いつもそうであると聞いておりますが、非常にがけくずれが多いのでございまして、この九十四名も主としてがけくずれによる死亡でございます。
負傷者の百三十三名は、がけくずれもありましょうけれ
ども、
倒壊家屋の
下敷きになった者が多く、次に
飛散物によるということに相なっております。行方不明が十二名、
全壊家屋が二百七十九、
半壊が二百五十、
床上浸水が一万五千四百六十四戸ということに相なっております。
次に
静岡県でございますが、これは御
承知のように、今回の
台風による最も大きな
被害を受けましたところでございまして、現在までわかっております
死者が六百五十七名、これは
狩野川の濁流にのまれた者を初めとし、
倒壊家屋の
下敷きになった
者等でございます。その以外に、
静岡県としましては
伊東、下田に
相当の
死者を出したのでございます。
負傷者は六百七十一名でありますが、これは
倒壊家屋の
下敷きになった
者等でありますけれ
ども、特にこの
負傷者のうち半数以上の者が
伊東市において発生いたしておるという点を注目いたしてもらいたいと思うのでございます。行方不明が三百八十一名、これはやはり
狩野川の
関係でございます。この分が大
部分死者として六百五十七名に加わるものと考えられるのであります。
全壊家屋が二百七十八、
半壊家屋が六百十二、
流失が七百十七、
床上浸水が七千八百五十ということに相なっておるのであります。
次に
埼玉県において、
死者一名を初めとする多少の
被害、
茨城県において
死者五名を初めとする
被害、
福島県において
死者八名を初めとする
被害、
青森県におきまして
死者三名を初めとする
被害、こういうのが今回の第二十二
号台風による
全国的な
被害の
大要でございます。
次に、今回の
被害状況から見ました特徴のある点はどうであるかという点でございますが、今回の
台風二十二号は、その規模におきまして
中心示度が八百八十ミリバール、また
最大風速が七十五メートルにも及んだという戦後におきまする
最大のものだといわれておるのでありますが、その後、
本土に接近するに従いまして多少は勢力も弱まって参りましたけれ
ども、
上陸寸前におきまして、それでも
中心示度九百五十ミリバール、瞬間
最大風速が五十メートルというような
相当な偉力を持ったものであり、かつ
特色として非常に多くの雨量を伴っておったという点でございます。ちなみに、
東京都内におきましては平均四百ミリも降っております。
静岡県の湯ケ島におきましては、二十五日から六日にかけまして五百八十ミリも降ったということであります。
神奈川県芦ノ湯で三百六十ミリ、群馬県の赤城山で二百二十五ミリ、栃木県の黒部で三百五十二ミリ、
青森県の八甲田山で二百四十七ミリというふうに、局地的な豪雨を伴ったということのために、この雨による
被害が
各地に続発した点に
特色があると思うのであります。特に注目いたされまする点は、この雨による
被害が特に
中小河川の
はんらんという形で現われたというのが
一つの
特色でございます。すなわち、
静岡県の
狩野川の
はんらんによりまする大仁町ほか一市三町五村にわたって
被害を初めといたしまして、
東京都下におきましても、呑川の
はんらんによりまする
浸水及び流出、
神奈川県におきましても、鶴見川及び支流の
はんらんによる
被害、
埼玉県におきましても、芝川の
はんらんによりまする川口市全市にわたりまする
浸水というような
事態、
茨城県の七瀬川の
はんらんによりまする鉾田町の
浸水、
福島県の新田川の
はんらんによりまする
相馬市内の
浸水及び
家屋の
流失、岩手県の久慈川の
はんらんによりまする久慈町内の
浸水及び
流失というふうに、
中小河川が急激に増水しまして、
計画流量をはかるに上回りましたために、随所に
堤防決壊や溢水が発生いたしたという点が、今回の
台風の
特色であろうかと考えております。また、雨が多かったため、ことに瞬間的に局地的に雨が多かったというようなことのために、当然がけくずれが従来の
台風に比しまして非常に
各地に発生しまして、そのための
人的被害が多かったことは、
先ほども申し上げた
通りでございますが、たとえば
神奈川県におきまして、横浜市やその周辺だけでも七百六十一のがけくずれを生じております。
東京都内でも四百三十七というような多くの個所においてがけくずれを生じ、千葉県三百六、宮城県百四十三、
福島県百六というふうに、がけくずれの多かった点も今回の
台風の
被害の
特色であろうかと私たちの方では見ておるのであります。
先ほども申しましたように、なおこのうちには、
静岡県
伊豆地方におきまする
被害の
状況がさらに日を追うに従って増していくであろうということをつけ加えまして、
概要の御
報告といたします。