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1958-10-23 第30回国会 衆議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十三日(木曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 小山 長規君    理事 綱島 正興君 理事 福田  一君    理事 坊  秀男君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    奧村又十郎君       押谷 富三君    鴨田 宗一君       竹下  登君    西村 英一君       濱田 幸雄君    細田 義安君       毛利 松平君    山下 春江君       山村庄之助君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山花 秀雄君    山本 幸一君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君  委員外出席者         外務事務官         (経済局次長) 佐藤 健輔君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十月二十一日  米軍祝園弾薬補給廠敷地返還に関する請願(岡  本隆一君紹介)(第七九八号)  国及び地方公共団体有の寺院旧境内墓地返還に  関する請願木村守江紹介)(第八〇一号)  同(山手滿男紹介)(第八〇二号)  同(綾部健太郎紹介)(第八八七号)  同外四件(植木庚子郎君紹介)(第八八八号)  同(菅野和太郎紹介)(第八八九号)  同(坂田英一紹介)(第八九〇号)  同(渡海元三郎紹介)(第八九一号)  同(前田正男紹介)(第八九二号)  同(増田甲子七君紹介)(第八九三号)  松川葉価格引上げに関する請願武藤武雄君紹  介)(第八〇九号)  たばこ小売手数料引上げに関する請願田中武  夫君紹介)(第八一〇号)  漆器の物品税撤廃に関する請願飯塚定輔君紹  介)(第八一一号)  同(植木庚子郎君紹介)(第八一二号)  同(坂田英一紹介)(第八一三号)  同(坊秀男紹介)(第八一四号)  同(三和精一紹介)(第八一五号)  同(稻葉修君紹介)(第九〇〇号)  同(増田甲子七君紹介)(第九〇一号)  酒税法施行令の一部改正に関する請願小沢貞  孝君紹介)(第九〇二号)  同(中澤茂一紹介)(第九〇三号)  同(松平忠久紹介)(第九〇四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第五号)  賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正す  る法律案内閣提出第三五号)  税制に関する件  金融に関する件  補助金等に係る予算の執行の適正化に関する件      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  御質疑はありませんか。——質疑がないようでありますから、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。  なお、本案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  これより採決に入ります。採決いたします。本案原案通り可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、本案原案通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成並びに提出等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     —————————————
  6. 早川崇

    早川委員長 賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案議題として、質疑に入ります。質疑の通告があります。これを許します。  石野久男君。
  7. 石野久男

    石野委員 賠償等特殊債務処理特別会計法の一部を改正する法律案のこの改正された内容は、ラオスとの間に日本が結ぶ協定の問題についての処理方法であります。この際大蔵大臣お尋ねいたしますけれども、この種のラオスとの間の経済及び技術協力協定の出された内容の問題を、政府としては、大体賠償延長行為だという見方で見ておるのであるかどうか。その考え方の問題を、まず最初に大臣から御説明を願いたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、法律案提出の際にも説明でちょっと触れましたが、賠償とは全然別個のものでございまして、日本の自発的な経済協力経済援助、こういう考え方でスタートいたしております。
  9. 石野久男

    石野委員 賠償とは全然関係のないものだという見方であるということになりますると、賠償等特殊債務処理というような範疇の中に入れないで、別途な扱い方があろうかと思うのですが、そういうことについての、政府処理方法についての考え方をなされなかったかどうか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この基本法自身賠償等となっておりまするが、普通の輸出ということとは内容的にはやや違っておる。この経済協力経済開発援助、こういう意味のことが、本借款というか本計画遂行主眼点になっておる。こういう意味で、理論的には在来一般輸出振興から計画されるものとは区別して考える、こういう気持でございます。
  11. 石野久男

    石野委員 輸出増強のために、特に経済協力の問題をこういうように考えたということの中には、やはりこの地域戦争行為の行われたところであって、しかも向う賠償請求をしなかったということに基いて処理をなさったのだと思う。従って、賠償の問題との関連はないとはいうけれども、やはり、その裏づけにおいて、政府はこういうような無償経済協力をしようという考え方をなされたものと思いまするが、それには二つの問題があると思うのです。そのことによってどれだけの用益が今後出てくるかという問題があろうと思います。もう一つは、賠償請求向うがしなかったからということに対するこちらの打ち返しの行為だという、二つの問題かあると思うのです。特に、この政府考え方の中で、そのどちらに重きを置いておるか。こういう取扱いをするについて、かりに賠償の問題との関係は全然なくして、将来の経済協力の問題に用益を果すのだということであるとするならば、その計算上成り立つ今後の経済関係における発展のめどというものは、どういうふうに見通されておるかということについての、一応の見通しを聞きたいと思います。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 全然関係なしにこの種の行為皆様方にお諮りするわけでないことは、御指摘の通りでございます。ラオス賠償放棄したいという問題も、もちろん今回のような措置をとる場合に考慮に入っておることは、申し上げるまでもないのであります。ただ、理論的に申しまして、賠償問題と関連があるかどうか、あるいはどういうような理論的関係があるかとお尋ねになりますと、先ほど申し上げましたように、理論的にはこれを割り切って申し上げる、こういう性質のものでございます。そこでどちらの方に重点を置いておるかということでございますが、これはまことに説明のしにくいことだろうと思います。諸般の事情を勘案してかような措置をとった、かように申し上げるより方法がないことだと思います。経済開発の今後の見通しにつきましてですが、これは、ラオス経済事情なり、また国力なり、それらのものを考えて参りますと、これによって非常な拡大がこの際直ちに期待される、こういうことは言えないだろうと思いますが、私どもの見るところでは、東南アジア地域国交親善をし、そしてそれが、大局に立って経済協力あるいは経済開発、こういうことに寄与する、こういうことを考えますならば、東南アジア地域との国交調政の上から見ましても、さらにこのこと自体が、これはこの範囲においてその国の経済開発に寄与する、かような考えから、この問題をお諮りしておる次第であります。
  13. 石野久男

    石野委員 このような処置をした後に、ラオス日本との間の経済関係がどういうふうになるか、また、特に、大臣が言うように、貿易関係の面で非常な拡大が早急には望めないというような時期において、それがどういうような成果を上げるかということについては、いろいろな問題があると思います。ただ、しかし、私は、そういう将来の予測の問題については、ここでとやかく論議をしてみても始まりませんから、特にこの際お聞きしたいことは、やはり大臣がこの法案を提案するときにも言っておるように、賠償請求権放棄する旨をラオスから通告してきましたので、政府は今回ラオスの好意ある処置を考慮して、今日のこのような協定を締結するということを説明されているわけです。従って、私は、こういうような問題がもし戦争行為が行われた各国との間に出てきた場合に、やはり同じような配慮をなさるかどうかということを、一つお聞きしておかなければいけないと思うのです。たとえば、ラオスに隣しているところのカンボジアにも、おそらくこういう問題があるだろうと思いますし、あるいはまた、その他の地域において、賠償請求をしないことを明示しておる国がほかにもございます。そういうようなところに対して政府はやはり同様の処置をする考えであるかどうか、この際明確にその意思を表明されたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは賠償で片づけるがいいとか悪いとかいう問題があろうと思いますが、その国の考え方もいろいろあるわけでございます。そこで、今回、ラオスについては、この種の措置をとることが、国交親善上、また長期にわたっての観点に立って、最も好ましい方法だということで、特にこの処置をとったわけでございます。そこで、問題は、こういうことが一つ先例になるのじゃないかというお尋ねだと思います。私は、これが先例であって、この通り必ず処置します、こういうふうに言い切れるものでないと思いますが、国交親善一つの方策としての具体的方法として、将来もこの種の形のものが場合によったら考えられるということは、申し上げ得るのじゃないかと思うのであります。この形が先例になって、この形で処理するのかというお尋ねでありますが、厳格にこういう方式を必ずとりますとか、こういう方式先例にしないとかいうことを申し上げることは困難であります。むしろ、こういうこともあったということで、その国との具体的折衝の場合に、いかなる処置をとるかをきめるべきだ、かように実は考えております。
  15. 石野久男

    石野委員 賠償の問題は、日本国民にとりましては、戦後処理の問題として重要な問題だと思うのです。かって戦いを交えた各国に対する戦後処理として賠償の問題を処理するに当っては、政府には一つの明確な方針がなければいけないと思います。この機会に大蔵大臣——外務大臣がおれば外務大臣に聞いておきたいのですが、そういうような、かつて戦いを交えた国に対する戦後処理の問題としての賠償の問題に対する考え方の中で、国が積極的にどういうような意思を持つかということは、今後この問題を取り扱うについて非常に関係が深いのでございますが、今の大臣の答弁のように、これを先例としないとは言い切れない、けれどもこういう場合もあり得るかもしれないというような、非常にあいまいな態度でありますると、われわれは、これに対する討議をするに当って、非常に混迷するわけであります。しかも、これに引き当てらるべき——無償経済協力をする。ここでは約十億円の金でございまするが、これはみなやはり国民の税金を引き当てることになるわけでございまするから、政府が勝手にそういうふうにきめられては困るのであります。従って、やはり、この問題については、明確な考え方が明示されなければいけない、こう思います。そこで私ははっきりお尋ねいたしたいのですが、賠償については、向うから賠償要求をしないというように提案があった国々に対しては、もう戦後処理の問題はぴしっとそれで切ってしまって、別途の形での取扱いをするのか、それとも、そういう好意ある態度を示された国には、こちらは、積極的に経済協力の態勢、こういうラオスに与えるような措置をとるような態度で進むのかということに対する政府考え方を、ここで明確にお聞かせ願いたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、戦争をした国との問の解決といたしましては、賠償という問題で扱うのが一番はっきりしておる。しかしながら賠償という形で片づけることが、なるほど理論的には正しくても、必ずしもその通りが実際問題として適切なりやいなやという問題はあります。これはやはり両国の間で十分話し合うことか第一だと思うのであります。今回の無償経済援助の問題にいたしましても、これは一方で賠償放棄した、だから日本側からこれの代償としてこれこれを提供した、こういうものでは実はないと思います。やはり外交交渉の形におきまして、賠償処置でいくのがいいのか、あるいはまた、両国間の関係において、これが経済開発経済協力経済援助の形でいくことが、国交親善を一そう深めていく上に最も有効適切であるか、こういうことを十分考えて、外交的な折衝もし、その結論を出すべき問題だと思うのであります。そういう意味から、比較的金額の少額なものに対しましてこの種の形をとる、こういうことなんですが、もちろん、これは、相手方の意向といいますか、その考え方も十分織り込まなければならない問題でございますので、私先ほど申すように、非常に慎重な態度をとってこれに臨むべきである。だから、形の上から申せば、割り切った考え方を申せば、交戦国間の解決方法は、それは賠償だ、こういうことははっきり言えると思いますが、     〔委員長退席足立委員長代理着席〕 それだけが必ずしも国交親善関係を深めていくということに十分の効果があるかどうか、こういう問題が具体的に考究せらるべきじゃないかというのが、私ども考え方でございます。
  17. 石野久男

    石野委員 交戦国の間の戦後処理の問題として賠償が非常にはっきりした態度であるというようなことは、だれもわかっているわけです。ただ相手方の出方によって、どういうようになるかということも、また適宜処理しなければならないこともよくわかっております。しかし、私たちにとって一番大切なのは、やはり政府がどういう態度をとるかということなのです。たとえば戦争行為につながっている問題であるということははっきりしたことであるけれども、そうでないもののごとくに処理が行われていることがありますと、われわれが判断する上に非常に困難が生じて参ります。たとえば、すでに本国会を通過し成立したものでありますけれどもインドネシアにおけるところの焦げつき債権の問題のごときは、われわれから見れば、賠償の一環として見られる。ところが、政府は、そう見ないで、将来の経済交流発展のためにということで処理なされた。ラオスの場合は、事後処理とは違って、事前処置なんです。ラオスとの間の経済交流事前処置をここでやろうとするわけなんです。これを事後にすれば、ちょうどインドネシア賠償処理の問題と同じ形になってくるだろう。私は事案の内容というものは大体同じものだというように思います。それを事前無償経済援助という形でやっていくわけでございます。従って、これの扱い方としては、国の中での扱い方の問題でも、非常に問題が出てくると思うのでございます。インドネシアの場合は、外為会計の問題としてこれを処理してしまいました。今度は賠償等特殊債務処理特別会計処理されるわけなんでありますが、こういう点、同じ内容を持っておるもので、ただそれが時期的な関係の違いがあり、処置するに当ってこういう処置の仕方が違ってくるということは、非常に不明朗だと私は思います。なぜこういうような処置の仕方になってくるかということについては、明確な政府考え方が表明されなければいけないと思いますが、そういう点についての当局考え方をこの際お聞かせ願いたい。
  18. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 従来の経緯もございまするので、便宜私から御説明を申し上げたいと存じます。  ただいまの御質問の中にございましたインドネシアの焦げつき債権でございますが、これは、石野委員承知通りに、インドネシアとの貿易関係で生じました債権につきまして、先般その処理について特別の取りきめをいたし、これに関連をいたしまして国会で御審議を願ったことは、お話通りであります。これは全く戦後における貿易関係の帳じりの処理でございまして、今回のラオス賠償放棄に対して、こちらとして経済協力をいたすということとは、その本質において全く異なっておるということは、申し上げるまでもないと思うのであります。ただ、石野委員の御趣旨は、インドネシアに対してはそういう措置をとり、ラオスに対しては今回またこういう措置をとるというごとく、国によってその取扱いが区々ではないかという点に御質問重点がおありのようでございまするが、これは、先ほど大蔵大臣お答えになりましたように、その国々によりまして相当いろいろの事情も違っておりまするので、必ずしもこれを画一的にどういう方針処理するというふうにはなかなか参らぬ、こういう御趣旨お答えであったと思うのであります。先ほど御質問のございましたように、カンボジアというものが別にございますが、これについては目下外務当局において御交渉中でございます。外交の基本的な態度といたしまして、一つ先例なり方式なりにこだわるということは必ずしも有利ではないのじゃなかろうか、これはやはり、そのときの情勢によりまして、また従来の経緯等にかんがみまして、最も有効でありかつ適切な方法によって処理していくという態度に出ざるを得ないのではないか、かように考える次第でございます。
  19. 石野久男

    石野委員 この処置の問題につきましてはいろいろ問題がありますが、やはり基本的な問題は、こういうものをどういうように考えるかということにあると思うのです。先ほど大臣から話があったように、戦争事後処置としての賠償の取扱い方については、その国々によっていろいろ違いがあり、また今度のラオスとの関係のような問題は先例にしないと言い得ないというようなお話があるとしますると、当然われわれはこれだけで済むのかということを聞きたくなるわけです。たとえばラオスの隣にあるカンボジアについては、大体今どういうような交渉が進んでおるのか、そのまた隣にある北ヴェトナムの方では、賠償請求は一応しないと前には言ったわけです。しかし、最近は、南ヴェトナムとの賠償交渉がいろいろとあれこれ論議されておる過程の中で、北ヴェトナムの方では、また賠償に対するいろいろな意見が相当出てきておるやに聞いております。これらの問題について、それではこれと同じような形の取扱いをするのかどうか、この際政府考え方をはっきり聞かしてもらいたい。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外務省から局長が見えていますので、外務省局長から答弁いたさせます。
  21. 板垣修

    板垣政府委員 ただいまの御質問のうち、ラオスと同じような経済援助が行われる国といたしましては、実はただいまカンボジア交渉をいたしております。カンボジアも、御承知のように、三年前に日本に対しまして正式に賠償請求権放棄いたしました。先ほどからお話に出ている戦後処理の問題といたしましては、ラオスにおきましても、カンボジアにおきましても、賠償請求権放棄ということで終っておるわけでございます。しかし、日本政府といたしましては、ただいま大蔵大臣よりお話のありましたように、今後の積極的な友好関係の樹立という意味も含めまして、日本の自発的な好意措置といたしまして、若干の経済援助をするという方針が決定されました。カンボジアにつきましては、約十五億円の見当で農業牧畜開発のための経済援助をするということで、ただいま交渉をいたしておりますが、まだ交渉の途上でありまして、妥結には至っておらない次第でございます。それから、ヴェトナムにつきましては、御承知のようにここは賠償要求いたしております。サンフランシスコ平和条約関連いたしまして、戦後処理の問題といたしまして賠償請求をしておる国は四ヵ国ございまして、これがビルマ、フィリピン、インドネシアという順序に三ヵ国はすでに片づきまして、残る国はヴェトナム一国だけになったわけでございます。これにつきましては、ただいまヴェトナムに対しまして賠償を支払うという建前で、交渉をいたしておりますが、まだ妥結に至っておりません。従って、賠償という問題につきましてはこの四ヵ国で終りでございます。それから、ラオスカンボジアにつきましては請求権放棄した。これで終りましたが別の意味におきまして経済援助交渉をやっておる、こういう状況になっておる次第でございます。
  22. 石野久男

    石野委員 今のお話だと、カンボジアとの間に十五億円の経済援助の問題が出ておるとすれば、この際なぜ同じようにやはり法案提出とかなんとかいう問題を考えないのか、またすぐこれと類型の法案提出要求をされるのかどうか、そういう問題についての考え方はどうなんでありますか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外交折衝ができ上りますと、またお願いをしなければならないと思います。ただいまの段階では、ちょっと時期が早いように思います。
  24. 石野久男

    石野委員 カンボジアとの間でもしそういう問題が出た場合には、その資金はやはり依然として予備費の中から支出するという考え方ですか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいままだ交渉中でございますので、そのときになりましてはっきりと申し上げたいと思います。
  26. 石野久男

    石野委員 こういう問題は、従前岸総理東南アジアを歩いたときに話が進んでおったものなんですか、それともその後にこういう問題が出てきたのですか。
  27. 板垣修

    板垣政府委員 カンボジアにつきましては、賠償請求権放棄を通知して参りましたのが三年前でございまして、その直後におきまして、日本が、金額はきまっておりませんでしたが、若干の経済援助をするという話はすでに起っておりましたから、岸総理の御訪問とは関係ございません。ラオスにつきましては、大体岸総理訪問前後ではありましたが、これも必ずしも岸総理の御訪問とは関係ないのでありまして、ただ岸総理ラオスカンボジア訪問された際に、またその点につきまして一応の確認が行われたという事実はございます。
  28. 石野久男

    石野委員 カンボジアの方の十五億については、農業牧畜についての援助をなさるような、そういう話し合いだと聞いておりますが、今のラオスの方の十億円のこの金は、二年間に大体どういうふうに使う予定をなさっておりますか。
  29. 板垣修

    板垣政府委員 ラオスにつきましては、ラオス側が、初めは河川用舟艇その他七項目についての経済援助をしてほしい。もちろんこれは賠償請求権の見返りという意味ではないということを向うははっきり言って参りましたが、その後向う側で変えまして、ヴィエンチアン市の上下水道、鉄橋、できれば発電所、こういうような項目についての経済援助要求して参ったわけであります。政府といたしましては、これを全部やるということになると相当大きな金額になりますので、とりあえず昨年の暮れ技術調査団を派遣いたしまして、上水道その他の一応の調査をいたしました。その結果ヴィエンチアン市の上水道——現在ヴィエンチアン市の人口は約六、七万でございますが、将来若干ふえることを見込みまして、十万人の上水道施設を設置するとすればどのくらいになるか。それがたまたま十億円というような金額になりましたので、まず日本政府としましては、日本の財政状態も考慮いたしまして、このヴィエンチアン市の上水道を建設することについて協力しようという経緯から、この十億円という数字がきまったような次第でございます。
  30. 石野久男

    石野委員 向うで上水道の建設をするというような場合になりますと、資材なんかは全部日本のものを持っていってやるのか、現地でいろいろ処置するのか、どういうような考え方になるのですか。
  31. 板垣修

    板垣政府委員 これは日本側が責任を持って水道の建設をやるわけでございますから、資材は全部日本から持っていってやるということになります。その後現地で要する労務費等の費用はラオス政府が出すということになりましたので、幾分余裕が出てきておる次第でございます。
  32. 石野久男

    石野委員 この際お聞きしますが、こういうような行為、無償の援助等をやりました場合に、その国に対する感情的な問題は非常に好感を受けられると思いますが、今のところ、ラオスカンボジア経済的な実情等を勘案しまして、すぐ日本との間に——性急なことは言いませんけれども、大体見通される限りにおける経済交流の形での用益というものは、どういうふうに出てくるという見通しですか。その点ちょっと……。
  33. 板垣修

    板垣政府委員 ただいまお話しのように、経済援助行為によってすぐ右から左に効果が上るということは、私ども期待いたしておりませんけれども、もともとラオス日本と非常に友好的な関係を持っております。さらに、経済援助、ことに市民全般に利益のわたる上水道の建設というような行為と通じまして、私どもはますますラオス日本の間の友好関係は増進されると思います。現在ラオス日本貿易関係を見てみますと、これはどうしても、今まで特に貿易関係が深かったわけでありませんので、そう金額は大きくございません。しかしながら、五百万ドル見当の貿易か行われております。しかも、日本ラオスから買うのは一つもないのであります。全部日本から出るだけで五百万ドル、この中でアメリカの援助によるICA資金による発注がございます。今後友好関係を増進するにつれまして、ラオス政府といたしまして、日本から買ってやろうというような気運が増進されるということが期待されるのでありまして、確かに私どもすぐ右から左へ効果を期待することは妥当でないのでありますが、実際上そういう点は十分期待できるのではないかというふうに考えております。
  34. 石野久男

    石野委員 賠償関連していろいろな御措置をされる中で、カンボジアと今のラオス——カンボジアではそういう形になってきますが、なおヴェトナムにおける賠償交渉の問題があります。それから、フィリピンとの問題についても、またビルマについても、なおやはりいろいろな問題があると聞いておるわけであります。ことにヴェトナムについては、今南の方との交渉をしておりますけれども、北の方にも問題があるはずだと思います。北の方との問題の処置については、今外務省はどういうような考え方をしておりますか。
  35. 板垣修

    板垣政府委員 確かに、ヴェトナム交渉につきましては、不幸にもあの地域では分裂しておりますので、いろいろな基本的な問題があることは事実でございます。しかしながら、南ヴェトナム政府は、サンフランシスコ会議に参加して、日本との平和条約の調印国でございますので、これが、平和条約の十四条に基きまして、ヴェトナム全体に起りました損害について日本賠償要求をしておるという関係からいいまして、日本政府といたしましては、やはり日本と正式の外交関係のある南ヴェトナム政府交渉を開始せざるを得ないという実情にあるわけであります。従いまして、将来ヴェトナムができるだけ早く統一することをわれわれは期待はいたしておるわけでありますが、いずれにいたしましても、南ヴェトナム政府との賠償交渉によって、日本ヴェトナム人民全体に対する賠償義務を終息されたものとみなさざるを得ないのでありまして、そういう方向で進んでおる次第でございます。
  36. 石野久男

    石野委員 今この問題については非常に重要な点があるわけです。ヴェトナムにつきましては、板垣さんもわかっておるように、今度の戦争行為の中で、日本が、物質的にも、いろいろな面において被害を与えたのは、主とし北ヴェトナムです。それでありますから、賠償交渉をするに当っては、やはり南北ヴェトナムを含むところの問題として日本が取り扱わなくちゃならぬことは、当然でございます。それを今南だけでやっておるから、かつて北の方では賠償請求しないというような意思表示をしたというのが、最近は、南と日本との間の交渉が非常に激しく一方的にやられるものだから、それに非常な不満を表明して、われわれも賠償請求をしようという態勢さえ出てきたということになりますと、板垣さんが幾ら全ヴェトナムを含むということを言われても、現実に北の方からそういう要求が出るときに、外務省はそれに対してはどういうふうに対抗し得るものの考え方をしておられるのかどうか。これは、あなただけの独自の問題じゃなくて、日本人全体の問題になりますので、そういう点についての明確な政府考え方を聞かしてもらいたい。
  37. 板垣修

    板垣政府委員 先ほど申し上げましたように、日本と正式の外交関係にありますのは南ヴェトナム政府でございます。従いまして、北ヴェトナム政府日本に対する賠償についていかなる考えを持っておるのか、放棄するのか、要求するのか、これは存じませんが、いずれにいたしましても、北ヴェトナム政府日本政府との間には何ら関係がないわけでございますので、この賠償問題についての交渉という問題は起り得ないわけであります。
  38. 石野久男

    石野委員 これは大蔵大臣もしっかり聞いておいてもらいたいと思います。われわれが賠償する場合に、賠償をやる金は全部大蔵大臣の手元から出ていくわけです。そうすると、これは国民の間から出るわけですから、われわれ賠償をやることは、戦争の終末処理としてするのであると同時に、将来にわたって悪いことが残らないようにしなくちゃならぬという使命が、賠償の中に一つあるわけです。賠償をやったけれども、あと依然としていろいろな問題が残るような賠償は、意味が何もない。そこで、外務省ヴェトナムに対する賠償折衝をしておるときに、今南だけと交渉かあるから、南とするんだ——現実に外務省は北との交渉はしていないわけです。ところが、北というものは現実として十七度線以北にあるわけです。そうなって参りますと、外務省はその現実を無視するわけにはいかないと思うのです。世界地図の中で、あそこだけ穴をあけてしまうわけにいかない。現実にあそこは地続きなんです。そういうような事情考えたときに、外務省が、幾ら交渉がないからといって、現実にある事態を無視して政治折衝をするというようなことは、全くおかしなことになると思うのです。ですから、私は、外務省が大蔵省との話合いの中で、賠償問題を討議するに当っては、当然、ヴェトナム全人民に対する賠償としての成果が上るような交渉をしていただくことが、非常に大事だと思います。     〔足立委員長代理退席、委員長着席〕 このことについては、私、今度東南アジア視察団の一員としてヴェトナムに参りまして、ゴ・ディェンディエム首相とも会って参りました。水田氏あたりと一緒に行ったときに、私はこの問題についてゴ・ディェンディエム首相に聞いた。賠償問題については、社会党はこういう考え方をしておる。社会党は、今度の戦争において日本国民ヴェトナム人民に与えた被害に対して、賠償はしなければならぬという考え方を持っておる。けれども、社会党の持っておる賠償考え方というのは、あなたの国の憲法が規定しているように、ヴェトナム全部、しかも、北ヴェトナムの憲法が規定しているようなヴェトナム全土、全人民に対する賠償であるという考え方で、われわれはものの考え方をしておるんだ。そこで、今日本ヴェトナムの間における賠償が非常に混迷を来たしておるゆえんのものは——社会党は、この十七度線以下における交渉では、まだ北の方が残るから、これでは完全な交渉にならないと思っておるんだ、ということを私が言ったら、ゴ・ディェンディエム首相は、社会党の協力を求めます、とこう言った。そのとき、私は、協力はする、するけれども、今言ったように、ヴェトナム全土、全人民に対する賠償をやらない限りは、日本ヴェトナムとの間の賠償の問題は解決しない、と言ったら、首相は、それはそうだ、われわれはヴェトナム全土を代表する、こう言うのです。しかし、現実は二つに分れているじゃないか、だから、一日も早くこの二つを統一することにして、その後に賠償の問題を交渉するのが一番妥当なんだと言ったら、ゴ・ディエンディエム首相は返事をしなかった。そういうような事情は、私ども個人でも言えるわけです。それを外務省はなぜ言えないのですか。皆さんは南ヴェトナムだけの話をしておる。日本国民全部を代表する外務省が、なぜその折衝ができないのですか。しかも、ヴェトナムのゴ・ディエンディエム首相はこう言っている。われわれは、一日も早くヴェトナムを統一して、御意のようにするつもりだ。しかし、今はまだ統一できない。なぜか。それは、北と南を統一したときに、ここに来る人々を取け入れるだけの十分な態勢が整っていないから、北と一緒になったときに、その人たちを十分食わしてやるように対処してからだ。こう言うのです。しかし、実際には、外務省自身もわかっておるように、北と南と一体をなして、二つに分けては経済が両立しないので、これは一つにしなければならぬことはわかっておる。だから、ヴェトナムに関する賠償については、北と南を同時に解決するようなやり方をしないと、将来にわたって必ず二重賠償をしなくちゃならないような状態になってくると思う。そうなってきたら、大蔵大臣に私はお聞きしたいのですが、あなたはそういう二重賠償をしなくちゃならない事態が出てきても、なおかつこの賠償の問題を処理するというような外務省のやり方については、それでよろしいという見方をしておるのかどうか。それでは国民に対するあなた方の責任はないじゃないか、こういうように私は言いたいのですが、この問題について大蔵大臣外務省当局考え方一つ明確に聞かしてもらいたい。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外務省から、ただいまヴェトナム賠償扱い方について、政府の所信をお話をいたしたと思います。ただいま御懸念になっておりますような二重賠償問題が起きたらどうするのだ、こういうようなお尋ねでございますが、もちろん、政府といたしましては、二重賠償などする考えはない。これは非常にはっきりしている。だから、さような問題が起きたらどうするというお尋ねには、実は私お答えする要はないと思います。問題は、二つヴェトナム、今政府交渉しておりますものがヴェトナムの代表政府であるかどうかという一事に尽きるだろうと思いますが、先ほど来の外務省説明で、私どもば納得をいたしておる次第でございます。
  40. 板垣修

    板垣政府委員 外務省といたしましても、今お話しのような趣旨交渉いたしておるわけでありまして、日本政府が将来もし妥結をすれば払うことあるべき賠償というものは、ヴェトナム全人民に対する賠償でございます。ただ、交渉相手方が、今日本と正式な外交関係にあめる南ヴェトナム政府交渉をしているということでございます。この点ははっきり現在の交渉相手に申し入れてやっておる次第でございます。従って、将来二重賠償は起り得ないと思いますし、また、日本政府としては、そういうことを考え交渉はできないはずでございます。
  41. 石野久男

    石野委員 賠償関連するいろいろな行為をわれわれが問題にするのはなぜかというと、これは結局国民の負担になってくるからなんです。国民の負担にならないで物事がやはり事よく進んでいくならば、何もわれわれは文句を言う必要はない。一番大事なことはどういうふうにして国民の負担を軽くしつつ、しかも外国との関係をよりよくしていくかにあろうと思います。私は、今外務省が言っておるように、北ヴェトナムの問題を無視して、全ヴェトナム人民と国土に対してだというけれども、現実にはやはり十七度線で画然と区切られておるということは事実なんです。しかも、今度の問題については、戦争行為の結果として災害を与えたのは北ヴェトナムであって、南に与えていない。ゴ・ディエンディエムは何と言っておるか。今度の賠償の問題について私の要求したいことは、社会党の皆さんにも理解してもらいたい。それは、われわれは戦争によるところの実害に対しての罪科に対する請求じゃないのだ。御承知のように、今度の戦争を通じて、日本軍はヴェトナムから物資の徴発をした。その徴発の結果として約九十万の人が餓死した。その餓死したことに対する人道的な立場からの賠償を、一つ考えてもらいたい。こういうのが南ヴェトナムのゴ・ディェンディエムの言い分です。その言い分は当然である。南ヴェトナムには賠償に対する要求すべき何の実態もない。だから結局精神的な賠償要求として今度の額を要求している。賠償の実質的な要求の資格を持っているのは北ヴェトナムです。この北ヴェトナムからもし要求が出たときに、どうなんです。そういうようなことを考えると、そういう一人よがりの外交はいけないのであって、二重賠償にならないとは言っても、結局は二重賠償になってくる。そういうようなことをしてはいけないと言っているわけですから、この点は外務省態度を明確にしてもらわなければいけないと思うのです。それと同時に、今ヴェトナム賠償交渉はどういうふうに進んでおるかということも、やはり、その意見と同時に、政府説明一つこの際聞かしてもらいたい。
  42. 板垣修

    板垣政府委員 先ほどから申しまするように、私どもは全ヴェトナムということで賠償をやっておりまするし、今事実上北ヴェトナム南ヴェトナムに分れておることは事実でございまするけれども、しかし、損害が北に起ったか南に起ったかということをあまり強く出すということは、結局二つヴェトナムを認めることであって、これは将来の政治的統一という世界全体の希望からいっても、乖離するということになります。しかしながら、現実には二つに分れておることは事実である。従って、日本政府としては、賠償交渉をあそこが完全に統一するまで待てるならば別問題でありますけれどもサンフランシスコ平和条約締結以来四、五年にわたりまして、ともかく日本と正式な外交関係にある政府から賠償要求を受けておるわけであります。従いまして、やはりこの問題は進めざるを得ない。そうすれば、やはり日本としては正式外交関係にある南ヴェトナム交渉せざるを得ぬという実情にある次第でございます。従って、損害が北に起ったか南に起ったかということは私どもは問題にせずに、やはり全ヴェトナム政府に対して賠償を払うという建前で行い、かつ、その結果、たとえば、ダニム発電所ができますれば、これは南に今のところ行われましても、将来統一されますれば、やはりヴェトナム国全体として利益を受けるわけでありますから、多少のフィクションはございまするけれども、そういう方針交渉いたしておる次第でございます。  それから、現在の交渉の状況につきましては、従来、彼我の間に相当金額の開きがございまして、難航を続けてきたのは御承知通りと思いまするが、今年になりましてから、ヴェトナム側でもだいぶ譲歩いたしまして、現在におきましてば、大体賠償につきましては三千九百万ドルという数字で交渉が行われております。金額につきましては大体両者の意見の一致を見ておるわけでありまするが、まだ細目の点につきまして現在交渉中でありまして、いつ妥結になりまするかは、まだ申し上げる状態ではございません。
  43. 石野久男

    石野委員 戦争の災害がどういうふうに起きたかということは問題でなしに、ただサンフランシスコ講和条約の要請に基いての請求に対して折衝しなければならないということでこの問題を処理するというには、あまりにも重要な問題だと思うのです。かりにそういうような関係があろうとも、ヴェトナムは厳然として今二つに分れておるし、しかもその意思の統一が行われていない。あなたが言うのは、統一後の日本ヴェトナムとの関係の想定の上に立ってやるというのでありまするけれども、北の方は、厳然として主権は別だということで、今南と対立しておるのです。それだったら、ヴェトナムに対するわれわれの賠償の実体としては、南北の統一がされるということは内政問題だということで考えれば、それは一向にわれわれ差しつかえないと思う。それをもし今のような状態のままでやるとすれば、当然私が憂えるような二重賠償という事態が出てくるわけです。そういうこととも関連の中で、ラオスの問題、カンボジアの問題がやはり別の形態をとって、いろいろ無償経済協力とかいうことになってくるわけです。各国との間の友好関係を進めるためにいろいろな行為をすることには、われわれは当然協力せざるを得ないと思いまするけれども、しかし、日本国民に過重な負担、二重な負担があえて予測されるような問題をここで認めつつ、そういうような行為をすることはできない。だから、ヴェトナムに対する問題については、今アジア局長からいろいろお話がありましたけれども、それは非常に現実を無視したりやり方であって、それでは私が憂えるような二重賠償の動きが出てくる。これはもっと真剣に考えてもらわなければいかぬと思います。今アジア局長の言うようなことについては私は不満なのです。あなたは、そういう問題について、もし北ヴェトナムから意見が出てきた場合には、アジア局はどういう態度をとるのですか。
  44. 板垣修

    板垣政府委員 先ほど申し上げましたように、北ヴェトナム政府日本政府外交関係も何もございませんので、おそらく申し入れてくることもないと思いまするし、日本政府としては、現在の問題としてはこれを取り上げようがない次第でございます。
  45. 早川崇

    早川委員長 石野君に申し上げますが、あとに二人質問をお待ちになっておる委員がありますので、ぼつぼつ結論的なことを……。
  46. 石野久男

    石野委員 時間がありませんから、簡潔にしますが、今の問題は、アジア局長お話を聞きますると、今は交渉がないから将来はそういう要求はないだろう、こういうのです。大蔵大臣に聞きますが、大蔵大臣も御存じのように、南ヴェトナムがあり、また北ヴェトナムが現実に存在しておる。そうすると、ここには一つの主権の存在があり、政府の成立があるわけです。そうすると、これは永久に日本とこの北ヴェトナムとの間に国交関係を回復しないという前提に立てば、今アジア局長の言うことは私は納得しますよ。だけれども、あなた方の考え方は、北ヴェトナムとの間のこの地域との交渉はしないつもりであるのか。また現実に北ヴェトナムとの間の経済交流貿易はあるわけです。南ヴェトナムと大体同額程度の貿易はあるし、北ヴェトナムには日本貿易輸出超過なんです。むしろ要求北ヴェトナムにあるような実情を無視して、将来そういう気はないだろう、またあり得るはずはないという考え方は、非常に冒険的な言い方だと思うのです。そんなむちゃなことはありません。大蔵大臣はやはりそれを是認しますか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、ヴェトナムの代表政権とヴェトナム賠償については交渉するということが建前でございます。その観点に立っていろいろ政府は準備を進めておるというのが、今日の段階でございます。
  48. 石野久男

    石野委員 私は、この問題については、アジア局長の言い分は非常に不満です。これはやはり外務大臣にもう一ぺん聞かなければいかぬ。場合によれば首相の考え方も聞かなければならぬ。これは、そういうような外交態度をとっていきますと、現実に土地があるという事実までもよう見ないような、そんなふし穴の目で日本外交ができるものですか。土地はあるのです。人民はりっぱにおるのです。しかも日本人ばそれとの交渉をしているのです。民間では貿易をやっているのです。その事実があることを無視して、そんな空虚な形で、観念的な外交でこの国の今後の開発ができるという考えであるならば、これは実にゆゆしき大事だと思う。これは、アジア局長の言い分は、もう一ぺん取り消されるか、さもなければ、私は外務大臣または総理大臣にあらためて意見を聞きたいと思う。岸内閣の外交政策の根底にそういう考え方があるとするならば、これは非常に間違いだと私は思います。  それでは、私は最後に一つだけ大蔵大臣にお聞きしておきますが、ラオスの問題はこういうようになにされ、またカンボジアの問題もそういうふうになって参るとしますると、これらの類似の行為として、私は、ビルマに参りましたときに——今度はビルマの政変がありましたが、ウー・ヌー氏からこういうことを言われた。やはり、インドネシアやその他の賠償の経過にかんがみて、日本経済は非常に復興しているように見受けられる。この際やはりビルマの賠償については増額要求をしたいということを、一つは言っておりました。もしそれができないならば、やはり賠償を短期に繰り上げることを考えていただきたいということの話があった。おそらく、これは、政府が変ってもそういう考え方は当然出てくるだろうと思いますが、そういう問題に対して大蔵大臣はどういうふうなお考えを持っておられるか、一つこの機会に御意見を承わりたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ビルマは、御承知のように、日本交戦国中では率先して賠償を決定した国でございまするし、特に賠償の決定に際しましても、ビルマの経済開発、ここに重点を置くというのが、ビルマ政府要求でもございます。ビルマ自身は、賠償そのものよりも、ビルマの経済独立ということに特に主眼点を置くということで、あの経済協力の規定条項まで実は入ったのでございます。今回私インドに参りました際にも、ウー・ヌー政権の大蔵大臣に実は会ったのでございますが、ただいま御指摘になりましたようなお話はまだ出ておりません。これは、東南アジア地域を親しく御視察になりました議員団の皆様方に対しては、ただいまのようなお話があったかわかりませんが、私ども政府機関に対しましては、政府の機関を通じて具体的な話はただいまのところはないのでございます。ただ、御指摘になりましたようにウー・ヌー政権が変っておりますので、私が会いました大蔵大臣もこの二十八日までで、それから大蔵大臣をやめるのだ、こういうことを申しておりましたので、あるいはそういうこともあって具体的な話をしなかったかとも思います。私は、このビルマにつきましての基本的な賠償協定なりあるいは経済協力協定なり、この内容を十分勘案いたしまして、当初ビルマ政府が念願しそおるようなビルマ経済の自立開発、これに日本が積極的に協力するという態度を堅持して参りたいと思います。具体的の問題の出ておりません際に、ただいま先ばしった見通しなど申し上げるということは、両国間の国交の上から申しましても、必ずしも望ましいことではございませんし、基本的な賠償並びに経済協力について、他の国に率先して協定をいたしましたビルマ国並びにビルマ国民の意向については、十分私どもも理解と同情を持っておるつもりでございます。しかし、両国間の協定事項を今回別な観点に立って云々するということは、ただいま申し上げますように、具体的にそういう時期になっておらなということだけで、御了承いただきたいと思います。
  50. 石野久男

    石野委員 同僚議員の質問の時間もありますので、私はこれでおきます。ただ、委員長に、この問題については特に外務大臣の御意見を聞きたいので、いずれ次の機会に外務大臣に御質問さしていただきたい。  なお、賠償の問題についてはまだいろいろな意見もありますけれども、時間の関係で、あとでまた聞かしていただくといううことを留保して、私の質問は終ります。     —————————————
  51. 早川崇

    早川委員長 次に、税制に関する件、金融に関する件及び補助金等にかかる予算の執行の適正化に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。  春日一幸君。
  52. 春日一幸

    ○春日委員 私は、前回の委員会で、例の北国銀行のから荷証券の不正融資とおぼしき問題、それからもう一つは、株券の名儀貸しの不正事件、これら当委員会の所管に属する諸問題について当局のとった措置について質問をしたいと通告いたしておるのでありますが、本日はもう時間が残っていないようでありますから、本日は、特に緊急を要する当面の問題といたしまして、乳製品の緊急買上計画の実施上の諸問題について、お伺いをいたしたいと思います。従いまして、前二案件につきまして、一応審議をできるだけ促進する意味におきまして、今までどういう措置当局がとってきたが、これを文書で本委員会にあらかじめ御提出おきを願っておきたいと思います。  そこで、乳製品の緊急買上計画の実施上の諸問題についてお尋ねをするのでありますが、八月の二十二日の閣議には、当面の酪農事情に対処して緊急に次の対策を講ずると銘打たれまして、一つには、乳業者は生産者乳価の引き上げをせず、六月の水準を保て、二つには、飲用牛乳の消費者価格は八月中に引き下げよ、そのかわりに本年度の学校給食用飲食用牛乳は、既定計画を拡大して、滞荷処理のために政府が財政的な措置をとる、こういうことを決定いたしておるのであります。これは当面の緊急対策として政府が打ち出されたものでありますが、一体この閣議決定の背景となっておる当時の乳製品の事情はどういう状態にあったのか。すなわち、七月三十日現在における乳業各社の少くとも乳製品の象徴的なものである脱脂粉乳の在庫量がどの程度のものであったのか。閣議でこのような緊急対策を講ぜられるに当っては、当然滞貨実数等を調査されると思うのでありますが、この際農林省の畜産局長から、七月三十日現在における乳業各社の脱脂粉乳の在庫量を、代表的なもの、すなわち明治乳業、森永乳業、協同乳業、雪印、クロバー、それに日本製酪組合、全国酪農協同組合各社並びに各団体について、その当時の在庫現在量がどういうものであったのか、これを一つお伺いをいたします。
  53. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 農林省の畜産局長でございます。  八月二十二日の閣議決定によりまして、当面の乳価対策が決定されまして、予備費約九億二千万円を支出する。これによりまして、滞貨を中心にしました製品を買い上げ、学校給食に充てようといたしましたことは、お話通りであります。
  54. 春日一幸

    ○春日委員 時間を節約する意味で、私が質問したことだけ答えていただきたい。
  55. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 その滞貨をお話の三目的に向けようということでございますが、当時の滞貨は、生乳換算で約八十万石分が想定されまして、その後年末に向いまして、なお消費は生産に及ばない、こういう状況であったからであります。牛乳換算八十万石分の滞貨のうち、脱脂粉乳は約二十万石前後、その各社別は当時必ずしも明瞭でございませんでした。
  56. 春日一幸

    ○春日委員 少くとも予備費九億七千万という巨額を支出して——当時滞貨がはなはだしくて、市場を圧迫をしており、酪農産業の非常な混乱が予想されるので、これが救済対策として、この緊急対策要綱というものができたと思うのです。従って、その背景となるところの滞貨の実情がどういうものであったか、これが明確でないはずはない。絶対量がどのくらいあったか。その絶対量の基礎をなすところの各社別の滞貨がどのくらいのものであったか。それだけの統計がなくして、どうして絶対量の推定が出てきますか。少くとも、わが国における乳業関係の企業体というものは、大企業が五社、それから中小企業並びに農民団体が二つ、これは七つに局限されておると言えると思うのです。だから、この七社の七月三十日現在における在庫量がどのくらいのものであったかということが、あなたの方で調査、統計がとれずして、どうしてこういう閣議決定がなし得るのですか。資料というものが明確でなければ、何も、対策要綱を決定しようと思ってもしょうかないじゃありませんか。  この際、私の質問に対して答えてもらいたい。いろいろ聞けば複雑であろうから、とりあえず乳製品の象徴的なものである脱脂粉乳に局限して、五社と二団体の七月三十日現在における在庫量がどれだけのものであったのか、それから閣議に出されたところの脱脂粉乳のその当時における滞貸が一体どれだけあったのか、これをこの際伺いたい。
  57. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 閣議決定の基礎にいたしましたのは、農林省で調査をいたしております牛乳の生産量調査、その中で飲用牛乳の消費、乳製品用の消費を調べておりますので、それから推した在庫を基礎にしたのであります。
  58. 春日一幸

    ○春日委員 だから、その在庫はどれだけだったかと聞いておるのです。
  59. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 その推計は、約八十万石分の原料乳をもって生産された製品である。脱脂粉乳は約三十万石ということであったわけであります。
  60. 春日一幸

    ○春日委員 わが党が調査をいたした資料で、七月三十日現在における乳業各社の脱脂粉乳在庫調というのがある。それによりますと、これは協同乳業と雪印とクロバーについて当ったものである。すなわち、協同乳業は三万七千カン、雪印は九万カン、クロバーは七万カン、それから日本製酪協同組合、これは中小企業参加三十数社、これが一万七千カン、農民団体の全国酪農協同組合が五千カン、こういう数字になっておる。今あなたの言われた推定数量を二十六万一千カンといたしますと、明治乳業と森永とは、これを逆算いたしまして、明治が一万七千カン、森永がかれこれ二万五千カン、こういうような推定数量にならざるを得ないということであります。この際あなたにお伺いをいたしますが、どういう理由でか、あなたはこの数量を明確にされておらない。少くとも、官庁が緊急対策を講ぜんとするに当っては、これら関係企業体の手持ち在庫数量を明確に調査することなくして、需給の調整のための行政措置をとるということはできないことである。当然あなたの方はとっていると思うが、何が理由か明らかにされていない。従って、私はここで申し上げるが、わが党が調査をしたこの数字は、当らずといえども遠からずという程度のものであるか、それとも全然これは違うのか、この点を一つ明確に御答弁願いたいと思います。
  61. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 当時閣議決定によりましたのは、生産者の乳価維持と、学校給食用の消費増大、その他の三目的を持った対策を講じようとしたのでありまして、そのときの資料は、先ほど申しました牛乳生産量調査からかねて推計をいたしておりました程度の牛乳のだぶつきと、価格の見通し、すなわち、乳業者が生産農民に向いまして買上値段を引き下げしようとする申し出に対して、全体の乳業関係経済状態に対してとったのでありまして、各社別、製品別の詳細な在庫量を調査する態勢になっておらなかったと私は聞いております。
  62. 春日一幸

    ○春日委員 だれに聞いたのですか。君が主管責任者ではないですか。
  63. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 前任者から聞いておるのであります。
  64. 春日一幸

    ○春日委員 いつごろかわったのだ。(笑声)八月二十二日の閣議決定を見ると、当面の酪農事情に対処して緊急に次の要綱によって対策を講ずるということが冒頭に書かれて、だから、今言われたように、乳業者から生産者団体に値下げをしろと言って、それでは酪農民の事業と住活を脅かすから、下げてはならぬ、そのためにはこうしてやるのだということで、政府が滞貨を買い上げる、こういう措置がとられ、貴重な予備費から九億七千万円という格別の支出が考慮されたわけであります。こういうような非常の措置をとらなければならぬという背景の中には、供給が需要を上回って滞貨になってきておる、こういう事情の証明がなければならぬ。その証明の具体的な裏づけとなるものは、各社において一体どのくらい滞貨が現実にあるだろうかということを調査することなくして、どうして閣議で説明ができるのですか。ただ五十万石なら五十万石だというような、架空ではないであろうけれども、捕捉しがたい数字を故意にしつらえて判断をあやまたしめる、あるいは国会議員の国政調査の焦点をぼやかしてやろう、こういう佞奸邪知なやり方というものは、現実の問題として許さるべきものではない。私は一ぺん大蔵大臣にお伺いをいたしますが、あなたの方は、この緊急対策要綱の中で、十二月までの分として九億七千万、それから一月から三月の分として別途三億七千万の支出予定がされておるように聞いておる。そのときに、あなたの方は、こういうような巨大な予備費の支出を行わねばならぬについては、これを支出するにあらざれば、乳製品業界が混乱に陥り、その結果生産者農民に対して大へんなしわ寄せがくる、事態容易ならずという認識の上に立って、これに対してオーケーを与えたものと思う。どういう説明がなされておるのか。大蔵大臣は支出については非常にきびしい人だと聞いておるが、非常に気楽に九億七千万と三億七千万の支出の約束をされておるが、あなたが応諾し得るに足るところの証明がなされたか、その資料は一体どういうものか、この際これを明らかにされたい。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま畜産局長を別に弁護する必要はないと思いますが、おそらく急でございますので、資料等をこの席に持ってきてないので、先ほど来の説明をいたしておることだろうと思います。もし御入用なら、農林省に言いつけて、資料は提出さしていいことだと思います。問題は、乳価対策をいたしました当初の基本的な考え方は、申すまでもなく酪農業者が生乳をとにかく抱きかかえている。生乳自身、同時にまた乳製品も、やや程度は違いますが、同様でありまして、保存なり保管なりの非常に困難なものでございます。変質しやすいものであります。生乳は明らかに長期にわたちてはこれを保存するわけにいかない。そこで、ただいま御指摘になりましたように、生乳を乳製品に切りかえることが可能でありますならば、これも一つ方法であります。当時の乳製品の価格は、輸入ものと国産ものでは相当の開きがございます。そういう意味で、直ちに輸入乳製品と国内乳製品の均衡をとらすというわけには、そう簡単に短期間に生産の合理化も可能ではない、そういうことから、酪農業者に対しましても、先行き牛乳が安くなる、こういう心配があり、非常な損害を与えるということで、急遇対策をとった。そこで、その対策の方法としては、学校給食を拡大するということと、同時にまた、乳製品も相当量買い取らなければ——在庫の調整ということもさることですが、学校給食の性質から見まして、これを広範囲に実施するという場合におきましては、やはり乳製品も買い取らなければならぬ、こういうことで二つ処置をとりまして、酪農業者の損失に対する対策を立てた。こういう意味で、非常に甘い処置をとったというおしかりではございますが、私は、当時の実情から申しますと、それが牛乳というなまのものであるだけに、この種の措置をとることが酪農農民に対しましての当然の処置ではないか、かように実は考え処置をとった次第でございます。数量そのものを詳細にただいま御説明するだけの材料を持っておらないことを、まことに遺憾に思いますが、考え方はただいま申し上げた通りでございます。
  66. 春日一幸

    ○春日委員 なるほど、学校給食としてこれを普及せしめるために、政府が補助金を出しておる。けれども、本年度の当初計画が、あらかじめそういうような必要を想定して、すでに当初予算で七億円というものが予定されて計上されておる。しかるに、今回この九億七千万と三億七千万とが、九億円の方は支出が決定され、三億七千万は支出が大体予定されておる、こういうことでありますが、これだけのものを拡大しなければならぬというのは、その閣議決定がされた当時において、今お話のあったように、すなわち非常な滞貨がある、供給があるけれども、その供給は消化し尽し得ない状態になって、いつしか大きな滞貨になっている。この滞貨が乳製品業界を非常に圧迫しておる。その圧迫が必ずや酪農農民に対してしわを寄せてくる。だから、この際緊急な対策を講じなければならぬ。こういうことで、政府は九億七千万を支出して、これを補助金として学校の方を拡大していった、こういうことなんです。これはそこまではよくわかっている。ところが、そうしなければならぬについては、あなたをも、そうして全国民をも納得せしめるに足るだけの資料がなければならぬ。需要が供給を上回ったというだけのことでは説明にならない。そのようなことならば何でも言えることなんだ。あらゆる製品について言えることなんだ。私は、少くとも、この酪農事業というものを酪農行政計画の中においてこういう状態にほうっておいては大へんなことになる、という証明がなければならぬと思う。だから、少くとも当時わが国における国内製品の滞貨というものがどの程度あったのか。それから、その当時の滞貨は、たとえば、わが党の資料によっては、脱脂粉乳について七百三十万ポンドといっているのですが、七百三十万ポンドとあなたの方が言うならば、名社別にその明細というものがあってしかるべきなんだ。しかもそれか無限にあるというのではない。企業体においてはわずかに五社であり、その他の団体においてはわずか二つである。だから、この七つのものについて、明細というものがここで言えないはずはないと言っているのですよ。それを聞きたいと言っている。それをあえてあなたは質問をはぐらかして答弁しょうとしない。もことした数字によってこれを瞞着しようとしている。春日一幸、そんなことでごまかされるはずがない。(笑声)その明細を言って下さい。明治と森永はその当時滞貸があったのか、なかったのか。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど申しましたように、今畜産局長が資料を持っておりません。また、私ども、閣議決定の際には、総体の数量についての説明を聞きまして、そうして判断をし対策を実は講じたのであります。従いまして、先ほど申し上げますように、この生乳換算の数量が出ておる、そこにポイントがあるのでございまして、その換算の基礎になるものはきっと農林省は持っておる、こういうように思います。今言われるように、各乳製品業者はどの程度持っていたものかあるのかということでございますが、ただいまここに資料がないので、そういうものはまた別に農林省に注文されていただきます。
  68. 春日一幸

    ○春日委員 これは九億七千万円の予備費の支出をめぐって非常なくさみがしてかなわない。と申しますのは、われわれが調査した範囲内においては、中小企業関係並びに酪農農民団体、こういうものと他の三社、それにはその当時相当滞貸があった。ところが、明治、森永においてはその当時滞貸がなかったというような情報、資料がここに提出されておる。だからこそ、われわれはこの処置に対して非常に疑わざるを得ない。従いまして、私は、この際委員長を通じて特にお願いを申し上げておきます。すなわち、八月二十二日に閣議決定がされたが、閣議に提出された弁証資料としては、その当時における乳製品の滞貸状態がどういうものであったか、これの各社別の明細書を本委員会に御提出を願いたい。このことを強く要求をいたしておきます。  それから、次いでお伺いをいたしたいのでありますが、これは実に昭和三十三年の八月二十日でありますから、閣議決定がなされた二日前、このときに日本乳製品協会と全国飲用牛乳協会と日本製酪協同組合の各会長、理事長の名で農林大臣の三浦君に対して請書が提出されておる。それによりますと、これらの三団体は乳製品の学校給食用使用数量について述べておる。脱脂粉乳六百四十五万ポンド、バター百五十万ポンド、全脂粉乳十五万ポンド、しかして、特に問題になるのは、入庫期限を九月末日まで、こういう工合に請書を出しておる。九月末日までにこれだけの品物を納めます、納めることができます、こういうふうに言っておる。それから、同じ日に、農林省の当時の畜産局長の谷垣君と、それから社団法人の日本乳製品協会の植垣君、全国飲用牛乳協会長の植垣君、この三者によりまして覚書が取りかわされておる。この覚書によりますと、日本学校給食会との売買契約は九月十日を目途として手続を完了するようにする、すなわち、請書の方においても、これだけの在庫がありますから、九月の末日までにこれだけ納めます、それから、その契約その他一切の手続、取りきめ等については、九月の十日を目途としてその手続を完了するようにやるといっておる。それから、この覚書と請書を資料として、閣議においては、緊急対策要綱になっておるんだから、従って、緊急にその当時あった滞貸を対象として政府が買い上げ、そうして渋滞をしておる流通を円滑ならしめることによって、事態の救済をはかっていこう、ここに意図があった。そういう工合に考えてよろしいか。畜産局長、その間のいきさつはどうです。
  69. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 お持ちのような請書、覚書によりまして、農林省と関係業者と申し合せによってやることにいたしたのは、その通りであります。その内容は、話し合いによりまして業者の方にもっと負担を持たしてもいいという条項等は受け渡し期限等についてございますが、基礎はその通りであります。
  70. 早川崇

    早川委員長 先ほど春日君から要望のありました在庫品の資料は政府委員の方で、この次の委員会に用意して提出するようにして下さい。
  71. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 私は前任者から御要求通りにこたえ得るような資料の引き継ぎを受けておりませんが、またその間は農林委員会等においてもそういう論議があったのでありますが、できる限りにおいて努力いたします。
  72. 春日一幸

    ○春日委員 衆議院の大蔵委員会が資料の要求をして、できる限りのなんというとぼけた答弁で満足すると思いますか。すぐ行って探してこいと言いたいところだけれども、これは審議の支障になるから、あしたまで宥恕しますが、このような九億七千万円の支出の根底をなすところの資料かあるかないかわからぬという、そんなばかげたことではいけないですよ。不謹慎きわまる。  しかるに、私が今申し上げたのは、閣議が八月の二十二日で、その二日前に、少くともこれらの三団体が、農林大臣に対して、これこれの滞貨がありますから、これは九月の末日までに現品納入できます。さらにその覚書が取りかわされて、一切の手続ば九月の十日までにやろう。だからこの閣議は当面の緊急対策と銘打っている。特にこの冒頭宣言というものを重視しなければならぬ。そういうわけで、早期にこの問題の応急の処理をしようじゃないか、こういうことになっておるにかかわらず、その後に至って決定された、すなわち昭和三十三年八月二十二日付閣議決定に基く学校給食用乳製品供給事業実施要綱なるものを見ると、これは閣議決定の趣旨というものを全然裏切ってしまって、その執行というものは全然それとは逆の方向へいってしまっている。すなわち、昭和三十三年十月から昭和三十四年三月までの間において、学校給食用国産乳製品を供給する事業の実施及びこれに対する国の助成については次の定めによる、こういう工合にプリントされてきておるところのものによりますと、そのうちの第六項目によると、これは脱脂粉乳の受け渡しは昭和三十三年十二月一日から五日までの間に駅貨車積み渡し、こういう工合に、すなわち閣議決定当時の在庫量とは何ら関係なしに買い上げることに改ざんされてしまってきておるわけです。すなわち、何と言いましょうか、たとえば八月、九月ころには非常な滞貨で困っておる。早急にこの滞貨を処理しなければならぬ。だがら、関係団体は荷物を納め得ると言っておるし、学校乳製品の協会の方も九月の十日までに手続が完了でき得る、したいという態勢になっておる。にもかかわらず、そういう趣意でスタートいたしましたこの特別措置が、今の昭和三十三年八月二十二日付の閣議決定に基く学校給食用乳製品供給事業実施要綱という、これによると、全然すりかわってきている。現実問題として応急対策でも何でもない。九月の末に品物が納まるし、十日に手続を完了したい、学校の方もそれで買いたいと言っておる。それを、いたずらに時間をずっとずらして、十二月の一日から五日までに延ばしてしまった。これは一体何のためですか。何のためにこのタイミングをはずしてしまったのか。ここに問題と疑惑があるのです。というのは、そのものずばりで私の疑惑を言うならば、世上伝えられておるところによると、またわが党の調査した資料によると、その当時明治、森永は在庫がなかった。在庫がなかったから、九月十日に売買契約をして、そうして九月の末に荷物を渡そうとするならば、ないから、ないが意見の総じまいだ。納めようとしても納めることができない。従って。明治、森永はこの行政のフェーバーを受けることができないから、おれたちは在庫がないけれども、あるような顔をしてこれから作る、十二月までに作るから、時間を先へずっとずらしてくれれば、おれの方も間に合せ得るのだ、だから、九月の十日に契約をしたり、九月の末に品物を納めさすというような閣議決定や行政措置は、これは一つ宥恕してもらいたい、そのかわりおれの方はなま乳の販売価格を一円まけるのだから、その反対給付をしてうんともうかるようにしてもらわなければどうにもならぬ、こういうようなやみ交渉が行われて、当然九月の十日にやるべきところの緊急対策——九億七千万というような国費を支出する。それが特定の業者、特定の個人に利得を得せしめる形において、これがなされておるという疑いがきわめて濃厚であめる。この点はどうでありますか。私が農林省の責任者と大蔵大臣にお伺いをいたしたいことは、当面の緊急対策要綱であり、請書も覚書もことごとく九月十日、九月末として、その当時における問題の処理をここに約束しておるにもかかわらず、特にこれを十二月までずらしていったというその理由は何であるか。何のためにこういうむちゃをやったのか。この点を、国民が、また全国の酪農業者が納得できるように御説明を願いたい。
  73. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 お話の入庫期限を九月末にするというふうに申し合せましたのは、農林省と関係業者でございまして、その用途は当時から学校給食用に向ける、また使用時期を当時から来年の一月から三月までに使用することを予定して、その後不変でございました。そこで、荷物を受け渡しする時期を、当初農林省と業界で期限として九月末日までと約束をいたしましたが、消費者側の学校給食会、文部省の御意見によりまして、来年の一—三月に使用するものであるから、なるべく品物もいいもの、また保管料等が買い受け者側及び国家で負担を持たないように、もう少し業者側で持ってもらいたいという話が出まして、それで業者を納得せしめたので、受け渡しが十二月の一日から五日までになったという経過になっております。また、九月十日までと申しまするのは、その売買契約をいたしますのが九月十日までという予定でまず最初きめましたが、文部省の準備等もありまして、農林、文部間で、九月中旬を目途として契約を行う、そういうことにあとでなりましたので、さらに業界との話し合いを重ねまして、二十万石相当分の脱脂粉乳を九月十九日に売買契約をなしまして、その他のバター、全脂粉乳を、若干おくれましたが、十月の上旬に契約をした次第でございます。
  74. 春日一幸

    ○春日委員 少くとも実際は何がもとだということなんです。これは八月二十二日の閣議決定というものがことごとくもとになる。このときの精神、このときに証明された実情に即して執行されなければならぬ。八月二十二日に閣議に出された資料には、当然その当時のいろいろな背景となる乳製品業界の実情、それから、この荷物はこういう措置をとってもらって、こういうふうに処理するのだという、大体の処理見通しとなる資料がいろいろ出されておる。その中の一番大きな資料というものがこの請書である。こういうふうに農林大臣あてに三団体代表が請書を出しておる。しかも、その入庫期限というものは九月末日と、はっきり銘を打っているのです。農林大臣がこういう請書を取るからには、当然その間において文部大臣とも——閣議なんですから、省議で勝手に決定したのではない。閣議の中には当然文部大臣が入っておる。こういう請書でこういう荷物が納まってくるのだ、契約は九月十日にやる、九月三十日に荷物は納まる、ですからこういうふうに九億七千万という金を出してくれと言った。そのときに、文部大臣が、それはいかぬならいかぬと言えば、閣議決定でこういうふうにきまるものではない。そのときに文部大臣をも含めて閣議で決定されたことは、九月末日に品物を納める、そうしてその当時にあった資料の混乱状態がこれによって調整されていく。これは当時の農林省畜産局長の谷垣さん、全国の乳製品協会の植垣さんまた飲用牛乳協会の植垣さん、これらの諸君が、あらゆる情勢を検討して、そうしてすべての承認の上に立ってこういう処理がなされておったに相違ない。また、そうでなければ、そんな閣議決定が軽々になされるはずはないと思う。にもがかわらず、こういうことで閣議決定に基いてスタートしたという行政措置が、その後の実施に当って、閣議決定の趣旨にも、またその当時取りきめられた要綱とも全然変った形で、その趣旨に反し、その方向に背馳して執行されるということは、了解することができぬじゃありませんか。そしてまた、一方私の質問に対しては答弁もできない。たとえば、請書の在庫数量がどうだったか。われわれの調査によると、その当時明治、森永は在庫はなかった。あるいはあったかもしれませんけれども、これはきわめて僅少である。実際の滞貨をなしておったものは、雪印とか、クロバーとか、協同乳業だとか、あるいは中小関係の諸君である。あるいは酪農関係の農民団体である。現実にそういうところに七百三十万ポンドと、いう滞貨があった。ですから、これを買い上げするにあらざれば、市場が渋滞して、酪農産業の将来に非常な悪影響を及ぼす。よろしい買おうということになったら、その実施に当ってタイミングをすっとずらしてしまって、歯に衣を着せずに言うならば、その当時在庫のなかった明治や森永にこのような実施要綱がきめられた。それから、新しい生産を始めても、十二月一日の入庫に間に合うように、こういう不正な、インチキな措置がとられたことを国民が判断したり、あるいはこういうふうに疑ったりするということは、当然じゃないですか。少くとも国民にそのような疑惑を与える執行というものは避けなければならない。もしそんなことが実際にあったとするならば、これは疑獄であり、汚職であり、重大問題です。これは私は軽々に見のがすことのできない問題であると思うが、この点に対して、もしそうだとすれば、一体大蔵大臣はどういうふうにお考えになるか。きめられている実施要綱を何のために十二月に延ばしたのか。九月に買うべかりしものを十二月に延ばした理由を、国民に納得できるように御説明願いたいと思います。
  75. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 意外な御意見を実は伺ったのでございますが、先ほど来申し上げますように、酪農の負担軽減と申しますか、乳価変動のためにこの種の措置をとったのでございますが、その際は、申し上げるまでもなく需要を増すという意味において、学校給食の範囲を拡大した。ところが、学校給食もすでにある程度の準備をいたしておりますし、実際に学校給食として品物が要りますのは一月以降ということでございます。これは先ほど局長からも申しております。そういうところに実施上の問題がある。これを非常に早く買いますならば、今回値段が高くなりましたものといたしまして、学校給食の面でも非常に負担が加重される。そこへもってきて、早く買い取れば倉敷料その他の負担が一そう拡大されるという問題が生ずるのでございます。ただいま実施要綱としてきめられましたものは、実際の必要に合うという観点を骨子にして、あの実施要領ができ上っておるのです。問題は、当時森永、明治に在庫があったとかなかったとかいうような点に、いろいろ疑惑があるようでございますが、大蔵省並びに政府に関する限り、ただいま言われるような、特殊の乳製品業者を助けるというような意味でこの種の措置がとられたものではない。どこまでも実施の観点に立ちまして、必要な時期に必要な物を買い取る、こういう観点から実施要領が立っておりますので、ただいま御指摘になりましたような疑惑がありますならば、この点はどうか御了承をいただきたいとお願いする次第であります。
  76. 春日一幸

    ○春日委員 今、同僚田万君が、大蔵大臣をも含めて関係者がだまされておる、こう言っておる。そうい意味で、あなたは十分この問題と取り組んで御検討願いたい。一つの政策としてこれを論ずるならば、こういう結果になるのです。これはだれが判断してもそうなんだか、当時在庫のなかった明治、森永が、昨年の七、八月の生産実積を基準として按分的な割当を受けるのですから、従って、これは巨大メーカーであるから、当然その割当量というものは一番大きい。そういたしますと、明治、森永は、大量の買い上げを受けるので、結果的にはこれから大量に生産していかなければ、十二月一日の納入時期にはそれだけの現物が間に合わない。ですから、大量の生産をこれからやっていかなければならない。不況でも何でもない。彼らは正常な経営をしておって滞貸がない。品物が入ってくればそのまますと売れていって、融通がきわめてスムーズに行われる。そういうようなところへさらに新しい学校給食の需要がプラスされて、彼らはいよいよもうけが拡大されてくる。これに反して、当時在庫の多かったその他のものは、買上額、絶対額が定められているから、明治、森永がたくさんになれば、その他のものはおのずから少くならざるを得ない。そういうことになれば少量の買い上げにとどまるので、滞貸は依然として残存する。何らの救済も受けられない。個人の会社が救済を受けられようと受けられまいと、それはこの際われわれの論ずるところではないとする。ところが、そういうようなことになれば、結局、明治、森永以外の、これらの三社並びに団体の滞貸というものは依然として残るわけなんです。残るわけだから、自分の事業を継続していこうと思えば、窮余の策として、当然市中に投げ売りが予想される。そうなって品物がどんどん投げ売りされて、それが相当の量にわたるということになれば、市場が暴落をしてくるから、政府は、市価を安定せしめようと思って、九億七千万という財政支出を行なった。ところが、それは、明治、森永が大部分のものを独占することによって、現実に滞貨を持っておるものにはフェーバーが及ばない。だとすれば滞貨を持っておる者は困るから、これを市場に投げ売りする。売手と買手で、買手がなければ、値段は当然どんどん切って売らなければならぬ。かりにこの値段がぐっと下ってきたら、九億七千万という貴重な国費を支出して、こんな大きな政策をとって国民の大きな犠牲の中でやったって、政策の効果は上らないのです。私は架空の論議をしているわけではない。もしそれ、かりに、この脱脂粉乳を一ポンド百五円で政府が今度学校給食で買い上げるということになっておるが、十二月になってこの百五円の市販価格が一円でも二円でも五円でも切れたらどうなる。これは重大な政治責任ですよ。いいですか。この市価を安定せしめる。そうしてこの酪農関係産業を何とかして国の政治力でささえていく。一方学校給食は百五円で明治、森永その他の者はどんどん納めておる。そしてその滞貨がそちらに向けられれば、明治、森永の値段というものはささえられるであろう。ところが、その他の者がそれから下に持っていけば、百五円のものが下回ってしまう。これは経済現象だから、政府の意図いかんにかかわらず、またどのような巧妙な説明をあなた方がここで加えようと、結局市価が下ってきたら、その政治責任は現実に重大だ。よろしいか。現にこの結果によりましてその乳価というものはどんどん下ってきておるのですよ。こういう問題を一体あなたはどう考えておられるか。とにかく九億七千万、来年度の分を含めるとかれこれ十何億という巨大な支出が行われる。その結果、政策効果が何も上らないで、明治、森永だげが巨大な利益を受ける。富める者はますます富み、富まぬ者は一そう塗炭の苦しみに陥れられる。こんなばかげた酪農行政というものがありますか。こんなむちゃな方向にとうとい国費を使って、それで許されると思いますか。どうですか。
  77. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま乳製品業者森永、明治の話が出ておりますが、今回の乳価対策は、何と申しましても、第一次製品である酪農業者の扱いますなま牛乳の処置を第一に考える。申すまでもなく、なま牛乳は長く置けば変質腐敗する。その変質腐敗を防ぐためには、やはりこれを乳製品にするということも必要なことは御了承いただけると思う。そこで、基本的には、このなま牛乳は学校給食用にそのまま直接に回すが、それだけでは足らない。なお生産数量が多い。そこで乳製品にさせたものをはかすという、これはそういう意味で在庫を少くする、こういうのが考え方でございます。この処置としては、おそらくこの処置自身はだれも異存がないだろうと思います。  しかし、問題は、実施に当りまして、特殊の業者が非常に利益を受け、特殊の者が非常に不当に損害をこうむる、こういう事実があるかどうかということになるのだろうと思います。第一次はどこまでも酪農業者そのものを対象にして考え、同時に乳製品業者、これの協力を得なければならないというところに、今回の措置主眼点があったのでございます。閣議で各乳製品業者の在庫数量を調べたかというお話がございました。それも必要だと思いますが、私どもが最も必要を痛感いたしますのは、なま牛乳の総生産量、それからなま牛乳並びに乳製品をも含めてどういうような需要になっておるか、この需給のバランスをとることが私ども主眼点であります。従いまして、閣議に各業者の在庫数量まで出す、そこまでの要求はしなかった。ただなま牛乳とそれから乳製品をも含めての需要はどうなっておるかという数量だけの検討は十分にした。それが閣議決定の決定の考え方でございます。私は、これが実施に当りまして、ただいま御指摘になりましたような弊害が果してあるかどうか、またそういうような特別な意図があったかどうか。大蔵大臣まで含めてお前たちはだまされたんだ、目玉が節穴じゃないかと仰せられますが、私どもは、ただいま申し上げたような観点に立って今回の処置をとり、そうしてこれが実施に当りましては、実際に学校給食として必要な時期、これは一月以降であります。もうすでに学校給食につきましては外国製品に依存しておりますので、この年内にはそれらのものを切りかえるわけにはいかないという状況でございますから、外国から入ってくるものは一応とり、そうしてあと融通のつく期間において国内の滞貨を処理していく、こういう考え方であります。この実施要領が一月以降ということに実はなるのであります。私どもは別にだまされたとも思いませんし、また特に政府の一部において特殊な業者だけに利益を与える、こういうような考え方でかような処置をとったものではない。これだけははっきり申し上げ得ることであります。
  78. 春日一幸

    ○春日委員 私は、とにかく、学校給食で学校側、学校給食の事業に当る側が新しいものがほしい、たとえば一月以降に充てるのだからできるけ新しいものがほしい、従って納付の時期を先にずらしたなどという子供だましの理論というものは、現実に照らしても全然問題になりませんよ。私は、特に、本委員会ではかってアメリカから輸入した粉ミルクを学校給食関係で横流しをした疑獄問題を取り上げて、ずいぶん論じたのです。従って、この学校給食関係がどういう品物をどういう扱い方をしておるかということは、われわれは審議の過程を通じてこれをつまびらかにいたしておる。特に申し上げたいことは、現在、学校給食関係は、アメリカからこういう乳製品を輸入しておるけれども、これは物によりますと、実際三年、五年のそういう古いものを輸入しておるし、またカン詰製品というものは、それでも何ら衛生上の支障がない。また栄養分についても差しつかえがない。こういうようなことで、新しいものを——新しいにしかずではあるけれども、三年、五年という古いものを現実にはアメリカから慣行として輸入しておる。そうしてそれが実用にたえておる。こういうような事態から考えて、これは二カ月、三カ月というようなものを争うべき性質のものではないと思うのです。たとえば一月から使うものだから十二月に作ったものかほしいなんという、ばかげた理論がこの国会の場所において論ぜられますか。そんなことが現実の問題として言いわけになりますか。許さるべからざることです。  さらに、私は——これは委員長もよく聞いておいていただきたい。これは委員長も一緒に怒ってもらいたい。早川君、あなたは冷静過ぎます。そこで、現実の問題としてさらに許すべからざることは、これが滞貨を買うにしても、五月以降の滞貨であるといわれておるのです。五月以降に生産されたものの現物を納めてもらいたいということが、学校給食関係と農林省当局との間で話し合いができておる、こういうことでありますが、畜産局長、そうですが。その点の御答弁を願いたい。
  79. 安田善一郎

    ○安田(善)政府委員 学校給食会の方からの申し出、希望で、その通りでございます。
  80. 春日一幸

    ○春日委員 だとすれば、これはなおさらなんです。なおさらだということは、たとえば、中小企業団体であるとか、あるいは酪農団体であるとか、明治、森永以外のそれらの企業体が持っておるところの滞貸は、これはずっと需要供給のアンバランスが滞貸になってきておるのですから、従って五月以前の製品というものは相当現実にあるのです。だから、そういうようなものを買い上げ対象のらち外に故意にけ落していくための陰謀なんです。そうして明治、森永の新しい製品をより多く買い得るような、そういう客観情勢をここに積み重ねておる。捏造しておる。故意にこれを作り上げておる。こういうような政治的陰謀というものが、この政商たちが政府と結托して、あるいは政府の官僚と結托をして、こういうような悪事を働くというようなことがもし事実であるとすれば、これは全く重大事件です。しかも十億円になんなんとする巨額な国費の支出が正当な政策目的に使用されない。私は、今一部を利して一部を不利に陥れるということを申し上げたけれども、これは論外のさたとして、ときにはそういうような立場に置かれることがあり得るとしても、政策として、これば、だれが考えても、品物のないのにたくさん買い上げをすれば、彼らは困らないばかりか大喜びなんです。何も、救済対策でもないし、応急対策でもないし、当面性もない。滞貸のうんとあるものに少ししか買い取らないという形になれば——問題はここなんですが、それらの処分はどうしてもこれを投げ売りしていかなければならぬ。政府に陳情しても買ってくれない。それで滞貸が現存する以上は、この滞貸をどこかに売っていかなければならぬ。これは、需要供給の原則で、市価をくずして安く売っていかなければならぬ。だから、百五円をだんだん下っていくという現象は必至の情勢であり、ここに来ておる中沢君あたりも、これは酪農のベテランであるが、この男の言っておるのは、だんだん値が下ってきておる。現に下ってきておる。憂うべき現象がすでに招来されておる。そういうような状態であるとすれば、この措置によって逆に市価の暴落を来たすのですよ。いいですか。今回の緊急措置意味というものがまるきり没却されてしまうのみならず、反対の現象を招来するということです。これは全く国費の乱費である。国民の血税を明治、森永へこういうような手品によってやるようなものです。そんなばかなことは国民として許されるべきことではない。従って、私は、委員長を通じて重ねてお願いを申し上げるけれども、時間も参っておりますし、質問もいろいろしなければならぬけれども、この際、七月三十日現在において閣議決定を要請するための農林省の原案の中に、滞貨の現在高、需要供給を証明するところのそれぞれの数字上の資料というものがある。なくして論ぜられるべきはずはございません。従いまして、前にも申し上げましたように、脱脂粉乳の問題と、それから今度買い上げの対象になった三品目の酪農の製品について、七月三十日現在高が各社別にどういう状態であったのか、この資料を一つ提出を願って、次回の本委員会に農林大臣の御出席を求めて、そうしてここで重ねて質問をいたしたいと思います。本日私が強く大蔵当局に御要請しておきたいことは、非常に疑義があるということ。ことごとく応急対策として、全部の書類も九月中に処理ができるようになっておるのを、十二月に延ばしたということ。そうしてその資料というものが提出されない。これは私がここで唐突に申し上げているのではなくて、いろいろな団体から農林省にこの資料の提出を求めたが、隠蔽してこれを明らかにしない。ここにくさみがある。特に、学校給食においては、一年、二年というようなアメリカから輸入したものを使っておる。少くともカン詰製品は一カ月や二カ月を争うべき問題ではない。それを五月以降のものでなければならぬというところに非常にくさみがある。こういうような事柄は白か黒か明らかにしなければなりませんので、この質問を続行いたしたいと思います。本日は時刻もすでに過ぎておりますから、私の質問は留保いたしまして、この次続けて行うことにいたします。
  81. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来の大蔵大臣としてのお答えであるいは異議はないかと思いますが、もう一度つけ加えさせていただきたい。それは、実施要綱が非常に時期がおくれているということ、先ほどちょっと触れておきましたが、金利、倉敷の負担を考えたということを申しましたけれども、学校給食会そのものといたしましても、金利や倉敷料を負担することは避けたい。ことにただいまお話しになりました国内乳製品の価格百五円ということ、これが輸入されるいわゆるアメリカ製品のものは金額として非常に安い。これはもう、けたはずれに安い。そういうように金額的にも非常に差がある。そういうことが父兄の負担になってくるというようなことをも考えまして、特に金利や倉敷までさらに負担することは困る、こういう点が一つの論拠になったということ、この点だけは私つけ加えて申し上げておきますので、あわせてお考えをいただきたいと思います。
  82. 早川崇

    早川委員長 委員長として政府委員に申しますが、春日君の資料の要求は妥当と認めますので、次の委員会まで御提出を願いたいと思います。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 私は質問をやめるつもりでしたが、今の大蔵大臣の御答弁に関係して、ちょっとこれは記録にとどめずにいたしましては誤解を与えますから、私は重ねて一言申し上げておきますが、あなたは倉敷料なり金利負担のことを言っておられるけれども、しかしながら、五月以降の製品に限るということは、金利や倉敷料には関係がありませんよ。五月以降のものであろうと、それをいつ納めようと、そんな問題は業者が持つわけだから、そんな金利や何かは業者の負担であって、学校給食会の負担には何もならない。全然関係のないことである。だから、二つも三つも要素が集積しておるのだから、詭弁をもってのがれようということを考えないで、もしも不正が農林省あるいは農林省の一部において行われておるとすれば、大蔵省が、予算執行の責任者として、当然みずからこれを精査するという、そういう気力と責任を持って事に当っていただかなければならぬ。農林省と一緒にぐるになって、農林省を弁護するようなやり方をやったって、この大蔵委員会では通りませんぞ。
  84. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もう申し上げるつもりはなかったのですが、ただいま五月以降のことでお話が出てきたのでありますけれども、これは農林省や大蔵省の意向ではありませんので、学校給食会そのものができるだけ新しい乳製品がほしいという希望を述べておるのです。これは直ちに金利、倉敷になにするわけではないが、問題は、先ほど御指摘のございましたように、大蔵大臣をも含めてだまされておるのだというお話がございましたが、私は、この処置は当然の帰結であった、かように実は思っております。あとは、問題は農林省でどういうように実施に当ったかということで、これはまた別に説明を聞いていただきたいと思います。
  85. 早川崇

    早川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十四日午前十時半より開会することとし、これにて散会いたします。     午後零時三十七分散会      ————◇—————