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1958-10-02 第30回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二日(木曜日)     午後二時十八分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 綱島 正興君 理事 福田  一君    理事 坊  秀男君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       鴨田 宗一君    小山 長規君       進藤 一馬君    西村 英一君       細田 義安君    山下 春江君       山村庄之助君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山本 幸一君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 九月二十九日  委員石坂繁君辞任につき、その補欠として進藤  一馬君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 九月二十九日  所得税法の一部を改正する法律案佐藤觀次郎  君外十三名提出、第二十九回国会衆法第七号)  国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第五号)  接収貴金属等処理に関する法律案内閣提出  第六号)(予)  の審査を本委員会付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一  部を改正する法律案内閣提出第五号)  接収貴金属等処理に関する法律案内閣提出  第六号)(予)  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 これより会議を開きます。  佐藤大蔵大臣より発言を求められております。佐藤大蔵大臣
  3. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 この機会に、大蔵委員皆様方に御了承をお願いしたいと思うことがあるのでございます。  すでに、新聞等に出ておりますので、御承知のように、IMF世銀等総会が、十月六日から十日まで五日間、インドのニューデリーにおいて開催されることになっております。時あたかも臨時国会召集中でございます。従いまして、この総会に出席することにつきまして、いろいろ考究もし、まことに苦しい立場で考えて参ったのでございます。先月も、参議院委員会におきまして質問がございました。国会の重要な点、同時にまた今回開かれます総会の意義のある点等から考えまして、二つを果し得るような方法はないか、かようなことで苦慮しておる、こういうお話をいたしたような次第でございます。今回の総会並びに在来の総会の形を見ますと、総務であります国の大蔵大臣——大蔵大臣総務でございますが、総務が欠席したことは、ただいままでないのでございます。もちろん、過去におきましては、臨時国会とそれが期日を同じくするというようなことはなかったかと思います。総務である各国の大蔵大臣はこの会議を大へん重要視いたしておるのであります。従いまして、今回の総会におきましても、遠近を問わず、総務諸君ニューデリーに集まる、こういうことになっております。私どもが特に苦慮いたしましたのは、そういう過去の慣行とでも申しますか、過去の実績は別といたしましても、今回初めて東南アジアにおいて総会が開かれるのであります。私といたしましては、わが国の置かれておる地理的環境等から見ましても、東南アジアで初めて開かれる総会、これにはやはり出かけることが、国際親善上と申しますか、今後の仕事を遂行していく上において大へんいいのではないか、かようにも考えておったのであります。同時にまた、今回の総会におきましては、理事の選任といいますか、改任、こういう時期にもなっておるのであります。日本は、日本グループとでも申しますか、他の三国と協同いたしまして、一人の理事を出しておるのであります。ちょうどその改選の時期になっておりますので、これらのグループを取りまとめる、そうして、従前同様日本から理事を出していく、こういうこともぜひとも努力したいと思っておる次第であります。  さらにまた、かねてから借款を申し込んでおります世銀最高主脳ともいろいろ協議を持ちまして、今日まで未解決になっております懸案等について、来年度予算の編成も差し迫っておるこの際でございますので、十分見通しをつけて参りたいとも思います。その他、東南アジア諸国との間におきましては、今日まで、貿易、輸出振興観点に立ちまして、いろいろ交渉を持っておりますが、これらのことも具体的に進めていきたい、かような考え方を持っておるのでございます。  冒頭に申しましたように、普通の時期でございましたならば、皆様方の御了承も直ちに願い、私が出かけることも容易であったかと思いますが、今回は臨時国会開催中でございます。しかも、その劈頭において、いかに期間を短縮するとはいえ、留守をいたしますことは、私自身みずから省みまして、職責上大へん心配もいたしておるのでございます。できるだけ期間を短縮いたしまして、国会審議に支障を来たさないように最大の努力をするということにいたしまして、会議開催前に行われますいろいろの予備的な会合等はこれを見送ることにし、四日の夜出発いたしまして、六日の開会に間に合うようにし、これを終えまして、そうして東南アジアの国の諸君とも話し合いを終了させて、十四日には帰って参りたい。かような非常に短期間の旅行にいたしますので、皆様方に特に御了承を賜わりますようお願いを申し上げる次第であります。  留守中におきましては三木企画庁長官大蔵大臣代理を勤めるということにもなっております。この点もあわせて御了承を賜わりまして、大事な国会開会中に外国に使いする、この点何とぞ御了承を賜わりたいと存じます。よろしくお願い申し上げまして、一言ごあいさつといたします。     —————————————
  4. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会におきましては、毎会期議長承認を得て所管に属する事項につき国政に関する調査をいたしておりますが、本会期中におきましても、税制に関する事項金融に関する事項外国為替に関する事項国有財産に関する事項専売事業に関する事項印刷事業に関する事項造幣事業に関する事項及び補助金等にかかる予算の執行の適正化に関する事項の八項目につきまして国政に関する調査をいたしたいと存じますので、議長に対して承認方を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。
  5. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、要求書作成並びに提出等手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。     —————————————
  6. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 次に、九月二十九日付託になりました国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一部を改正する法律案及び同日予備付託になりました接収貴金属等処理に関する法律案の両案を議題として、提案理由説明を聴取いたします。佐藤大蔵大臣。     —————————————
  7. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいま議題となりました国家公務員のための国設宿舎に関する法律の一部を改正する法律案外一法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  国家公務員のための国設宿舎に関する法律昭和二十四年八月から施行されたものでありますが、何分にも占領下に制定された法律でもあり、施行後十年になる今日におきましては、制度、運用の両面にわたり是正補完すべき事項が少くありませんので、この際実情に即して改正しようとするものであります。  次に、主たる改正点につきましてその概要を申し上げます。  第一は、宿舎審議会の廃止であります。宿舎審議会は、もともと、法律制定時におきましては、多年不統一に放任されてきた宿舎制度に関する諸問題を一挙に解決することが困難でありましたので、本来は法律に明定すべき宿舎維持管理基準有料宿舎使用料基準等重要事項を、その調査審議の結果を待って決定するという建前をとらざるを得なかったために設置されたものであります。しかしながら、宿舎制度がおおむね確立された今日におきましては、これらの重要事項は、当然法律に明定すべきものと考え、今回の改正案に織り込むことといたしましたので、この際行政簡素化の趣旨に即して、これを廃止しようとするものであります。  第二は、宿舎貸与の印象となる国家公務員範囲が不明確でありますので、宿舎設置目的等にかんがみまして、その範囲原則として常時勤務に服する国家公務員に限ろうとするものであります。なお、臨時職員でありましても、その職務の性質上宿舎貸与の必要があるもの等につきましては、政令で定めるところにより宿舎を貸与し得ることとして、実情に即した配慮を加えることといたしました。  第三は、宿舎設置に関しまして、その基本となります設置計画作成及び変更の手続を明確にし、また、公邸の備品、光熱水料等費用負担区分及び無料宿舎を貸与する者の範囲を明確にしたことであります。  第四は、宿舎維持管理に関してであります。有料宿舎使用料は、原則として宿舎設置等に要する費用を回収する建前のもとにその算定方法を合理的なものに改め、また被貸与者宿舎使用上の義務を明確にし、さらに宿舎明け渡し事由損害賠償金について必要な規定の追加を行うこととしたものであります。  以上のほか、所要の規定の整備をはかり、事務処理円滑化をはかったものであります。  次に、接収貴金属等処理に関する法律案について申し上げます。  終戦後、連合国占領軍は、本邦において政府及び民間から金、銀、白銀ダイヤモンド等貴金属等を接収したのでありますが、講和条約の発効とともに、これらの貴金属等政府に引き渡したのであります。そこで、政府といたしましては、さきに、接収貴金属等数量等報告に関する法律によって、貴金属等を接収された者から必要な報告を徴し、その内容調査を進める一方、連合国占領軍から引き渡された貴金属等調査を実施し、その状況もおおむね明らかになりましたので、これらの接収貴金属等について返還その他の処理をいたしますため、この法律案提出した次第でございます。  なお、接収貴金属等処理に関する法律案は、御承知通りさきに、第二十六国会において衆議院を通過し、第二十六国会から第二十八国会にわたって参議院において御審議願いましたが、今回提出いたしました法律案内容は、前回御審議願いました法律案内容とほぼ同じでございます。  以下、この法律案概略を御説明申し上げます。  まず第一に、貴金属等を接収された者は、この法律施行の日から五カ月以内に、大蔵大臣に対してその接収された貴金属等返還請求することとし、接収された者がその請求をしない場合には、接収された貴金属等所有者が、法律施行の日から七カ月以内に、返還請求を行うことを認める等、返還請求手続を定めることといたしております。  第二に、返還請求に対しまして、大蔵大臣は、その接収貴金属等種類形状品位個数及び重量等を、証拠に基いて認定することとし、認定された貴金属等につきましては、それが大蔵大臣の保管している貴金属等のうちで特定する場合には、そのものを返還し、特定しない場合には、大蔵大臣の保管している貴金属等から特定するものを除いた残りの貴金属等を、認定にかかる貴金属等種類形状品位及び重量のそれぞれの明確度に応じて、その個数または評価額の割合により按分して返還することといたしております。  第三に、この法律により返還される貴金属等につきましては、国、公共企業体地方公共団体及び日本銀行所有にかかるものを除き、連合国占領軍から政府が引き渡しを受けて以来返還されるまでの間の管理費用に相当する額として、返還を受けた貴金属等の価額の一割に相当する金額を国に納付させることとしております。  第四に、接収された貴金属等のうちには、交易営団社団法人中央物資活用協会または社団法人金銀運営会が、戦時中、政府の金、銀、白銀またはダイヤモンド回収方針に基き、政府の委託によって民間から回収したもの、金属配給統制株式会社が、政府指示に基いて、交易営団または中央物資活用協会の回収した貴金属を買い入れたもの、金銀運営会が、戦時中、政府指示に基き、旧日本占領地域における通貨価値維持等目的をもって金製品を輸出するため、旧金資金特別会計から払い下げを受けたもの、及び、軍需品製造に従事していた者が、軍需品製造または修理するため、その材料として、戦時中、旧軍または軍需省から買い入れたものがありますが、これらのものは、すべて国に帰属させるとともに、これらの者に対しては、貴金属等の取得の代金及びその手数料または加工費に相当する金額をそれぞれ交付することといたしております。  第五に、接収貴金属等処理を慎重かつ適正に行うため、認定返還、不服の申し立ての処理その他の重要事項につきましては、接収貴金属等処理審議会に付議し、その議決に基いて処理することとするとともに、大蔵省管財局臨時貴金属処理部を設けてその事務を専担させ、処理の万全を期することといたしております。  第六に、国に帰属または返還された貴金属等一般会計に所属するものは、無償で貴金属特別会計の所属に移して管理することといたしております。  なお、この法律案提出前において、百円銀貨の製造の用に供するため、国の所有にかかる接収銀のうち事実関係権利関係も明白なものに限り、民法の規定に基いて処理いたしました。この点については、さきIMFに出資するため日本銀行に金を返還いたしました例もございますので、この法律施行前に返還したものにつきまして、この法律施行後すみやかにその明細を公告することといたしております。  以上がこの二法律案提案理由及びその内容概略でございます。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  8. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 これにて提案理由説明は終りました。両案に対する質疑次会に譲ります。     —————————————
  9. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 この際御報告いたしますが、先刻議決いたしました国政調査承認要求に対しただいま議長より承認がありました。     —————————————
  10. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 これより、税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。横山利秋君。
  11. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 いろいろとお尋ねしたいことがたくさんあるのでありますが、時間もあまりないようでありますから、率直に要点をとらえて御質問をいたしますから、そのように御承知願います。その意味で、私は、まず最初に、七月二日に大臣参議院大蔵委員会でおっしゃったことを朗読いたします。減税公約の問題であります。「これは自民党公約いたしましたものでございまするが、この自民党税制改正案としての減収見込額、国税におきまして、所得税初年度二百五十億、これは平年度二百八十億でございます。これは公約事項にはっきり述べておりますように、月収二万五千円までを免税にするという建前でございます。」「地方税におきまして、事業税で、個人事業税初年度六十五億、これは平年度も同額でございまして、六十五億、それから法人事業税の場合は、初年度百億、平年度百六十億、以上が特に公約事項として強く出ているものでございます。」「その他、固定資産税軽減、あるいは法定外普通税、これも数字を言わないと金額が合わないのでありますが、固定資産税初年度百八十億、これも平年度も百八十億、法定外普通税初年度十億、平年度も十億、それで大体初年度六百五億、それから平年度六百九十五億、こういうことでございます。そうして間接税その他、これは金額は出ておりませんが、間接税の中には、全部軽減ばかりでもないでございましょう。いろいろ税制の再検討の問題もあると思いますが、そういうようなものも入れまして、合計初年度七百億、平年度八百億、こういうふうな金額になっております。これは誤解のないようにお願いいたしますが、自民党改正案でございますので、やはり私どもの手にかかって参りますと、こういうような金額が果してきっちり出てくるのかどうか、これはもう少し精査を必要といたします。大体私の方の事務当局といたしましても、押えるところは、ただいま御説明いたしましたように、勤労所得税月収二万五千円以下、あるいは事業税個人並びに法人について、あるいはその他の事項等について、さらに精査いたさないと、数字——これは大きく狂うことはございませんが、幾分が相違すると思います。」以上の大蔵大臣の御答弁に続いて、八月十二日に私はあなたに質問をいたしました。八月十二日における大蔵大臣答弁は、平年度七百億、初年度は五、六百億というふうに数字が違って参りました。今政府及び与党公約実行税制の小委員会が開かれ、岸総理大臣は、本会議で、公約については絶対にこれを守る、こういうふうに言っておられるのであります。私は、この間の経緯をつくづく考えてみますと、佐藤大蔵大臣がこれほど具体的に、これほど精密に参議院大蔵委員会でおっしゃったことが間違いであったとは言えないと思うのであります。この点についてまず御説明をお伺いしたい。
  12. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいま、七月に申し上げましたことは、速記になっておる通りでございます。
  13. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 そういうことをお伺いしておるのではありません。七月二日と八月十二日、参議院における態度衆議院における態度と百億違ったのは、何ということであるかということであります。
  14. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいまお読みになりました通り速記録について党の公約事項はどうなっておるかというお尋ねに対しまして、党の公約事項、党で研究いたしました結果を詳細に御報告いたしたと思います。なお、別に言葉としてどうこう言うわけではございませんが、その中にもありますように、私の手にそれが移ると若干変って参るでございましょうということは、はっきりお断わりしておったはずでございます。今日私ども減税案として具体的に研究いたしておりますものは、平年度七百億円見当というところを目標にして検討を進めておる、こういう実情にございます。
  15. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 大臣詭弁もはなはだしいではありませんか。だからこそ、私は最後までわざと読んだのです。私どもの手にかかると多少のてにをはは違うけれども、これは大きく狂うことはございませんと、わざわざ念を押してあなたはおっしゃっておられる。これは、多少どころではない。百億の減税をするかしないかということが、多少ということでごまかされるのでは、一体公約とは何ぞということに国民が疑惑を抱くのは当然であります。もしあなたが参議院で言ったことが間違いであったということならば、これは話はわかる。しかし、参議院も間違いではない、衆議院においても間違ったことを言っていない。とするならば、一体与党公約というものは、政府の手にかかったら百億違うのか、一体国民に言っておることはどういうことなのか、これは重大な問題になって参ります。どちらを一体、選挙の際において、あなたも与党の当時の責任者として、公約をなさったのであるか。一体それを誠実に実行しようとなさる決意があるのかないのか。もし誠実に実行しようとなさるのであるならば、参議院における平年度八百億ということは、当然のごとくこれは予定せられなければなりません。私は、ただそれだけではなくて、少くとも平年度八百億、初年度七百億ということにも議論があると思うのです。選挙の際に国民公約されたことが、これは来年から実現なされる——あなたのこの答弁の中のほかのところにも出て参りますけれども、来年から実現をされるということが明白になっております。だから、初年度という、何と申しますか、国民にとってはごまかしの言葉でございます。私は、もしあなたが速記録通りだとおっしゃるならば、平年度八百億、初年度七百億、これが貫かれていかなければならぬと思う。なぜそれが貫けないのか、明白にしていただきたい。
  16. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 経過は先ほど来申し上げた通りでございます。党においての公約としての減税、これはいろいろいわれております。数字を合わしてみて七百億、八百億等になったり、あるいは予定されない金額等もあると思いますが、いろいろ審議会等の結果から税制全般についての計画を進めて参りますと、幾分かそこに変化がある。言葉幾分かだとかあるいは多少だとかということで、言葉の筋についての詭弁だとかいっておしかりを受けておりますが、ただいま計画が進められ、審議されておりますのは、七百億見当という数字で進んでおります。これが現実の問題でございます。
  17. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 現実の問題だから、私は特にあなたにただしておきたいと思うのです。これが十億とか五億のはした、半端ということならば、当然これは理解される。けれども、平年度八百億、初年度七百億といって具体的な数字をおっしゃっておいて、そうしてただいま与党あるいは政府において作業にかかっているのは、はっきり初めから平年度七百億、初年度五、六百億と割り切って、初めから別のワクを作っておられるから、間違いがある。これが当初の約束のようにやってみてここまでなったというのならば、また多少の違いなら恕すべき点もあるけれども片方でそう言っておいて、片方では別のワクを作って、これが公約だったですよという言いのがれは許されない。あなたが誠実にお話をなさるのであるならば、私も誠実に質問をしていきましょうが、今の御答弁ではまるっきりだれが聞いてもおかしいですよ。どうしてそういうことになるのか。諸般の事情からいって公約が守られない、港湾も道路も作らなければならぬ、あれもやらなければならぬから、こういう約束であったけれども、この際守られないというならば、当然それを了として別の観点から話を進めましょうけれども、やってみたならば、これだけくらいしかならぬというのでは、話が違う。事実と相違する。平年度七百億、初年度五、六百億というワクを別に作って、あたかもこれが天下に約束した公約かのごとくおっしゃるのは、これはいかぬというのです。
  18. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 いかぬと言われますが、当時選挙中に出しましたものは、先ほど申すような事柄である。しかし、今日具体的に進んでおりますものは、七百億見当減税案が進められておる。私は別に詭弁を申すわけではない。ありのままを実は申し上げておるのであります。これは約束と違う、こういうようなお話のようにとれますが、私どもが、大事な、特に力を入れておりますものは、勤労所得税月収二万五千円までを無税にする、こういう点は具体的にはっきり申し上げております。また、事業税なり固定資産税等については、おおよその見積りを申し上げております。そういう点から数字最後のところでだんだんと詰まって参りますと、そういう項目が落ちているとかいうことでおしかりを受けるならば、これは別でございますが、数字で詰めた結果、ただいま申し上げるような七百億見当ということになっておる。この実情を一つ御了承いただきたいとお願いするのでございます。
  19. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 私の聞いているのは、なぜ数字が百億変ってきたかということです。あなたは、変ってきた理由として、数字をなぶって検討していったらそういう数字になった、こうおっしゃる。それでは私は公約は実行されないことになりますよ、こういう立場です。ところがそういう説明も事実と相反する。あなたの方は参議院ではこう言っているけれども、さて実行段階になると、別のワクを作って、平年度七百億、初年度五、六百億という別のワクで作業をしているのではないか。初めのワクではない。初めのワクはたな上げしてしまって、あたかも別のワク公約の実行のごとき言い方をしているのではないか。これは違うではないか。そろばんをはじいたらこうなったのではなく、別のワクを作って、そこで議論をなさるから、これは間違いがあるのじゃないか。あなたが今公約をしたことは、平年度八百億、初年度七百億であるということをおっしゃったのですから、その点については率直におっしゃった。だから私はそれを了といたします。それに間違いありませんね。
  20. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 公約と申しますか、ただいまのおそらく八百億というのは、当時積み重ねた結果そういう数字になったと思います。私は、ただいまも御説明申し上げますように、減税項目等をそれぞれ羅列いたしまして、それに一応の数字等が出ておったと思いますが、ただいまその項目が全然落ちてしまうとか、こういうことだと公約の骨子が失われることになるでございましょう。しかし、ただいま申し上げるように、金額の面におきまして、いろいろ早々の間に査定したものでありますし、それから、数字の間違いというか、誤算もあったかと思います。ただいま検討いたしておりますものが、平年度七百億見当である。この事実をはっきり申し上げまして、この公約に違うとか違わないとかいう議論は、やはり国民の批判に待つことにさしていただきたいと思います。私は、選挙の際の公約としては、大きく減税案が出ておりますが、その際には、ただいま参議院で私が説明を求められたような、当時は数字に基いて私説明したと思うのでございますが、その通りが発表されていたかどうかは、私も明確にはいたしておりません。ただ、党の公約として当時研究されましたもの、それから手元にあるものについて私説明したように思いますから、当時私うそを申し上げたわけではございません。しかし、それに取り上げられました項目は、それぞれ拾い上げられており、そうして今日減税案として懇談会等でいろいろ意見を徴しておりますものが七百億円見当、こういうものでただいま作業は進んでおる。こういう事実を申し上げておる次第であります。
  21. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 あとからいろいろな議論もございますが、これはさらに後日に譲りますけれども最後に一つだけ聞いておきましょう。今も、あなた自身が、公約数字が不的確な状態であります。あなたは、参議院で七月二日おっしゃって、八月十二日私にお答えになったのですけれども、一体何が公約であるか。参議院で言ったことはうそであるか。公約というのは、平年度七百億のことであるのか、八百億のことであるのか、どちらがほんとうの公約であるか、それを一つ明確にして下さい。
  22. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げますように、私ども公約事項については忠実にこれを実施する責任があると思います。これは御指摘の通りでございます。当時の公約といたしまして言われておりますものが、金額としてはあるいは正確を欠いておるかもわからないと私思います。しかし、少くとも取り上げました項目は、それぞれ減税の対象として、これをつかんでいる。特に、そのうちでも、勤労所得税軽減については、御約束通り、これは出ておる。こういう実情にあることを一つ御了承願いたい。
  23. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 総額として幾らでしたかということを聞いておる。
  24. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 そういうものはおそらく項目としては出ておらないで、それが当時私の手元にありましたもので申し上げて、それが七、八百億ではなかったろうかと思います。思いますが、この点は、とにかくこの際に公約がどうであったとかこうであったとか申しますよりも、参議院で一度申し上げたこともちゃんと速記録に残っておる通りでございます。ただいま七百億見当減税案を研究を進めつつあることも事実でございます。その二つで御判断を賜わりたいと思います。
  25. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 御判断をお願いしたいのはこちらの方なのであります。まことに驚き入ったことであります。税制を担当される大蔵大臣が、選挙公約した金額は幾らだったかな。二つに一つ、どちらですかと言って聞いておるのに、どうもはっきり答えられないというばかげたことは、私はないと思うのであります。これはこのままにしておきましょう。これはまことに私は醜態だと思うのであります。きのう総理大臣が本会議であれだけかたく言った減税公約の実行というものが、一体大蔵大臣として幾らであったのか、私にまともに答えられないということは、何としても醜態きわまることだと私は思うのであります。しかし、今答えられないならば、私は歩を進めて、ほかの面からあなたにお伺いをいたしておきたいと思います。
  26. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 これは当時選挙公約として政策大綱註解としてパプリシティしたものでありますが、この中に、こういう書き方がいたしてございます。その点が誤解を招いた点だろうと思います。一例を申しますと、たとえば「固定資産税軽減合理化をはかる。」こういう項目がございまして、それに注が加わっております。その結論のところに、「仮に標準税率を一・二%程度に下げるとすると年一八〇億円程度の軽減になる。」こういう説明がいたしてあるのでございます。これは、全文を読んでみますと、「固定資産税は現行では標準税率が一・四%となっているが、これについては地域によって不均衡が甚しいとか、農林漁業・中小企業等には負担が過重であるとか、いろいろ問題点もあるので充分に再検討して相当の負担軽減をはかる方針である。仮に標準税率を一・二%程度に下げるとすると年一八〇億円程度の軽減になる。」こういうような注釈が加わっておるのでございます。こういう点が、金額として幾らになるかということを非常に問い詰められました際に、おそらくこういう金額を皆様に参議院説明のときにお話をしたことだろうと思います。この点には、党の公約自身としては、相当仮定的な書き方がしてある。先ほど来私申し上げますように、減税項目そのものについては、私ども忠実にこれを取り上げておりますので、その点、先ほどから申しますように、七百億であるとか、あるいは八百億であるとか、そういう議論もさることですが、今回私どもがやっておる事実は、七百億見当減税案である。そうして各項目について、これが落ちているというようなことはございません。こういう意味で御判断を賜わりたいということを実は申し上げておるのでございます。
  27. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 お話の御説明を聞いても、私が言った参議院の七月二日の説明とあなたの説明と矛盾撞着をいたしておる事実は、おおい隠すことができないのであります。私は、あなたに率直にお答えを願えればけっこうなのでありまして、別にいやがらせをしようというわけではない。ただ、一カ月の間に、参議院の答えと衆議院の答えが百億違っておる。この点は僕は見のがすわけには参らない。そこで、きちんとした御説明をこの際なさっておいて、そうして、政府として国民約束したことはこれである。国民の方の受け取り方が違っておるとするならば、あなたの方の受け取り方が違うのです、私はこう言った。こう言ってもよろしいけれども、あなたがこれほどきちんと数字もあげておっしゃったのでありますから、これは何ともならぬのであります。この議論はそれではこの辺にしまして、後日にさらに持ち越したいと思います。  そこで、明年度、たとえばあなたが言う平年度八百億にして、あるいは平年度七百億にして、これは議論の進め方がないのでありますから、どちらでもいいのでありますが、それを実行する上においてどういう根拠の上に立っておるかという点を、まず数字的に——これは主税局長でも主計局長でもけっこうでありますが、明らかにしていただきたいと思うのであります。まず第一に、来年度の租税収入はどのくらいに考えられておるか。第二番目には、たばこの専売益金をどういうふうに想定しておられるか。第三番目は、日銀の納付金の収入が非常に来年度は減ると予定される。私は、少し問題外のようでありますけれども、七百億なり八百億の減税が実施されるかどうかという、そのための足がかりとして聞いておるのでありますから……。第四番目は、前年度剰余金、これは計算上で百九十七億ばかり減となる。それから経済基盤を取りくずしされるというお話でありますから、これは二百二十一億でありますが、最初の三つの、自然増収とたばこの専売益金と日銀の納付金の収入減というものは、大体どのくらいに見ておられるか、それをお伺いいたしたいと思います。
  28. 原(純)政府委員(原純夫)

    ○原(純)政府委員 租税収入につきまして申し上ます。三十四年度の租税収入が幾らになるかというのは、まだただいま確定的に申し上げかねる時期ではないか。これからいろいろと経済の動き、政策の動きというものを見まして、予算を取りまとめますのに十分間に合うような時期に固めて参りたいと思っております。ただ、それではこういう御論議に不便であろうというので、在来国民所得が幾ら伸びれば税は幾ら伸びますというような形で申し上げて参りました。その数字が、今までは千億ということを申し上げて参っております。それは、租税収入一兆円ちょっと、国民所得が六・六%伸びれば税はまずその五割増し、約一〇%伸びるということで——どの程度のものであろうということならば、そういう検討をして、大きな議論のべースとしてはそういうことでよろしゅうございましょうと申し上げて参りました。その後、御案内の通り、本年度並びに来年度の経済の見通しについてだんだん作業が行われておりますが、その中では、国民所得はどうも六・五%伸びないのじゃないかということになっております。それでは、それが幾らになるかということまではまだ固まっておりませんが、四%とか五%とか、あるいは六になりますかどうですか、その辺の数字がいわれております。かりに国民所得が五%伸びるということになりますと、ただいまの方式を使いますと、租税の自然増収は七、八百億だというような数字が出て参ります。ただ、ただいまの段階で、それだけで言いっぱなしにできませんことは——ただいま申しました数字は、三十三年度の実績に対してそれだけふえるであろうということであります。そこで、三十三年度の実績がぴたり予算通り一兆二百五十九億円という収入になるということを前提にするのは非常に危険なわけでありまして、何分一兆という大きな税収の中でありますから、百億、二百億、あるいはもう少しの増収がありましたり、場合によっては若干の減があるということは十分あり得るわけであります。ただいまの数字は、ただいまの段階では、本年度は幾ら増減収が出るかということは、ちょっと御判断になりにくいといいますか、なっては困る数字であります。本年度はもう半分過ぎているのだからわかるではないかということでございましょうが、経済がどう動いていくかということは、御案内の通り非常にみな議論しているところでありますから、この辺、きめこまかく幾らふえるか減るかというあたりのところは、もう少し待っていただきたい。つまりそこを十分心にとめていただいて、最初の数字を御判断いただきたい、こういうふうにお願いいたします。
  29. 石原政府委員(石原周夫)

    ○石原政府委員 専売益金が来年度どうなるであろうかというお尋ねでございますが、ただいま主税局長がお答えを申し上げましたように、来年度の経済情勢をどう見るかということがございまするので、今日この程度の数字に相なるだろうということを申し上げ得る時期ではございませんが、一つ申し上げられますことは、最近のような趨勢が続いておりますれば、少くともたばこの関係におきましては若干の増収があるだろうということが一つと、それから、塩の関係におきましては、塩業整備ということがございますのでこれをどういうふうにいたしますか、これを編成の段階におきまして結論を出さなければならないのでありますが、それらはほかのプラス・マイナスのファクターがどうなるかということがございますから、経済情勢の全般の問題と関連をいたしまして、今後専売公社の予算を査定をし、その結論が出て参りますときに、数字が明らかになるだろうということを申し上げます。  日本銀行納付金の関係も、これまた経済情勢あるいは来年度金融政策なり、金融情勢——これまた申し上げにくいのでありますが、御承知のように公定歩合を引き下げておりますから、現在のような金融情勢で考えますれば、若干の減少があるということは考えられますが、それではどの程度減少するかということにつきましては、これまたもう少し見通しをつけまして後に通知をいたします。
  30. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 議論はありますけれども、かりに租税収入を、成長率、あなたのおっしゃる中間をとって五%としまして、八百億としましょう。専売益金が、今のお話を推定して、たばこと塩とプラス・マイナスとんとんだという説が一つある。それから、日銀の納付金は、若干とおっしゃるけれども金融情勢の推移から見ると、相当僕は減ると思う。百六十五億は本年度でありますけれども、多分百億くらいは減るのではないかと私は見ておる。これを推計して、さらに歳出の地方交付税の清算払いの問題が計算上すぐ出て参りまするが、三十億の九億の減、国債費の減が、増が減となって、百六億のプラスになっておる。経済基盤の財源として四百六十三億、これを全部プラス・マイナスしますと、あなた方のお話を大体推定して、来年度の新規財源となるものは千二、三百億になるのではないだろうか、こういうふうに、若干の問題はありますけれども、推定をされるわけです。一方において、大蔵省の先般の御説明を聞きますと、地方交付税、公務員給与、旧軍人、義務教育、生活保護、一点単価等の自然増が六、七百億は完全に要るというお話であります。あと、そうしますと、二つで割った自由財源というものは、政府のいろいろな公約にかかわらず、私は大目に見て言っておるのでありますが、非常に僅少なものになります。そうすると、どうしてもここに増税という議論が出てくる。第一には増税でありましょう。第二には公債発行の議論も出て参りましょう。あるいは第三には既定経費の節約の問題も出て参りましょう。これらが出て参りますが、それらの中における増税の占める地位について、お伺いをいたしたいのであります。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、まず最初に、八月十四日ごろの与野党の連絡会議でほぼ内定をして、三木さんが先般記者会見で言明をしたガソリン税、これは一体どのくらいに見つくろっておられるか。九千億を一兆にするというために、将来はガソリン税の増税はどのくらいになるのか、どういう構想があるのか。第二番目には、問題となっております原油、重油及び砂糖輸入関税の引き上げ等が、やはりこれと関連をして出て参っておりますが、これらはどういうふうに構想が立てられておるのか。第三番目には、売上税、間接税は、あなたも、軽減ばかりではない、増税もあるということを参議院で言っておられた。この間接税の増税というものがそこで正面に上ってきますが、売上税というものはどういう考えに立っておられるのか。さしあたり今問題になっております三つの増税についての御説明、御構想を承わりたい。
  31. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 総体といたしましては、ただいま主税局長並びに主計局長から申し上げました通りに、ただいまの歳入見積りを立てることは時期的に非常に困難でございます。しかし、本年の自然増収なり、あるいは専売益金なり、あるいは繰り越し剰余金なり、あるいはたな上げ資金なり、それらの財源を見、また既定経費を節減するとしても、特に公約のうち私どもが実施に全力をあげております減税であるとか、あるいは年金制度を設けるとすると、予算編成上非常に困難なことは御指摘の通りであります。しかしながら、今日この段階において、歳入見積りの立たないこの状況のもとにおいて、このガソリン税を一体幾らにするのか、あるいは軽油税はどうなのか、あるいは砂糖関税はどうするのだ、こういうようなお尋ねをいただきましても、ただいまそういうことについての具体的な答弁をする段階では実はございません。私どもが歳入見積りを十分立てまして、そうして所要経費を考え、そしてそこであんばいして、いろいろのものが具体化してくる、こういうことでございます。ただいま各省から出ております予算要求についても、まず第一回の、一応各省から出てきた、なお今日の段階におきましても、非常な重要な項目において未提出の分もございますし、ただいま各省の担当官に来てもらって、主計局が予算要求の概要を伺っておる、この程度でございますので、ただいまのそれぞれのお尋ねの案につきましては、ただいままだ申し上げる時期になっておりません。言いかえますれば、私ども具体的な案をただいま持っておらない、こういう状況であります。
  32. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 単に新聞に伝えるところという意味で言っているのではありません。八月十四日にすでに与野党の連絡会議できまって、内定して、そして三木さんが新聞記者会見で言っておることなんです。片一方の売上税はあなた方の方の臨時税制調査委員の会合で、しばしば話が出ておるところなのです。私は、具体的な内容がきまっていないならばいないで、それでもよいけれども政府大臣が新聞記者を通じて国民に語っておることなのでございますから、この三つの増税が一体前へ進む方向であなたの構想の中にあるのか、増税をやむを得ざるものとしてするつもりであるのか、しないのか、これは、ただにここだけの議論にはとどまらないのでありまして、関連の業界なり、あるいは消費者から非常な注目と反響を浴びておるわけでありますから、方向をこの際明確にされるということは、大臣として必要なことではありませんか。
  33. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 その方向を明確にしろとおっしゃるお話ならば、私どももはっきり申し上げる。ただ一体率をどうするのかというようなお尋ねのように伺ったものですから、その段階じゃないということを申しました。ガソリン税、軽油税等についての引き上げを考えております。その方向で研究をいたしております。また、砂糖につきましては、一部関税ということも考究させております。これはその方向でございます。ただ、最後におあげになりました売上税という問題につきましては、いろいろの議論がございますが、私ども大蔵の責任者としては、まだその方向すらもきめてはおりません。はっきり申し上げます。
  34. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 関連して一つお伺いをしたいのでありますが、財源の捻出をするために既定経費の節約ということがいわれております。政府筋から伝わった話でありますと、五%で百五十億くらいといわれております。これはまだしもとしましょう。公債を発行することを政府が真剣になって議論をされておると聞いておるのであります。一体、そういうことが、今の話ではありませんけれども、前進する方向として具体化の方向で議論されておるのかどうか、あるいは外為のインベントリーからの繰り戻しが来年度予算の中で具体化する方向で議論をされておるのかどうか、これが二つであります。最後にお伺いしたいことは、私は先ほど公務員宿舎提案理由説明を聞きながら痛感をしたのでありますけれども、膨大な国有財産が今日ございます。これはもう、一萬田大蔵大臣の当時より、三分の一にそれを圧縮して日本経済の発展に充てるという一つの方向がきまっておるのでありますけれども、これをこの際非常にめんどうな今の手続とかあるいはワクというものを大幅に緩和をして、国有財産の整理をする、そうして一つには乱脈であると当時いわれておった国有財産を整理し、一つには国庫収入をこれによって大幅に引き上げるという方向はお考えにならないものであるかどうか。具体的な説明を私もいろいろしたいのでございますが、時間がありませんから、大筋として聞いておるのでありますが、公債の発行と外為の中にあります繰り戻し、国有財産の整理、この三つの点について大臣の御見解を伺います。
  35. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 先ほど来、新税とでも申しますか、あるいはその税率を引き上げる、こういうような問題で、砂糖や石油の問題についてその方向だけ申し上げました。これは必ずしも一面財源確保というか、増加というだけの目的でないことは、御了承おき願いたいと思います。また、公債論あるいは外為のインベントリーをくずすとか、あるいは国有財産を払い下げするとかいうような必要があるかというお話でありますが、ただいままであるいは公債発行論等も一部伺ったことはあります。あるいは、それと同様な意味においての外為のインベントリーを少しくずしたらどうかという話も、一部から伺っておるのでございます。国有財産の積極的な払い下げという意見はあまり私の耳には入っておりませんが、前二者については、ただいまのようなことを伺ったことがございます。しかし、先ほど来申しましたように、なお歳入見積りの十分立たない今日、非常に先走った議論をすることは、大蔵当局としては厳に慎しまなければならないところでございます。従いまして、これは、部内と申すよりも、あるいは党内からあるいは外部からそういうような意見を伺ったことはございますが、大蔵大臣としては、ただいまそういう問題について積極的にそういう方向で物事を考えておる段階でないことを、これまたはっきり申し上げておきます。
  36. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 三番目の国有財産の整理をしたらどうかということは私の意見であります。その点についてあなたのお考えを承わりたいと思います。
  37. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 国有財産を積極的に処理する問題は、今日までも国有財産の管理の面からいろいろ議論のあるところでございますが、財源確保のために積極的に国有財産を整理するということは、私は、個人として、大蔵大臣としては実は賛成しかねる状況であります。
  38. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 大臣のお聞きのがしの点はあまりなかったかもしれませんが、膨大な国有財産を整理していくという方向は、一萬田大蔵大臣から池田大蔵大臣とずっと継承されておるわけであります。残念ながら、それが、私の感ずるところは、大企業中心であること、それから手続が非常に複雑であって、大へんな手数がかかること、それから公開があまり十分にされていないこと等の大へんな隘路があるわけであります。私は前から言っておるし、これはもう大蔵省の一つの方針なんですよ。その道をあけて法律を改正し、通達も変える、そうしてこの際膨大な遊休の国有財産を国の産業の発展のために充て、財源確保のために充てるお気持はないか、こういう意見であります。
  39. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 お尋ねの点、少し誤解していたようでございます。ただ財源確保の公債論やインベントリーを一緒に出されましたので、そういう意味でお答えしたのですが、ただいま御指摘になりますように、国有財産が死んだままで管理されていくということはまことに残念なことであります。そういう意味においてこれの活用をはかれという観点については、私も同様の考え方でございます。
  40. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 具体的には後日さらに政府にお伺いすることにして、第二番目の大きな問題は、先ほどあなたが大蔵委員会をこれから休んでインドへ行くと言われた問題であります。少くとも、あなたがおっしゃったように、この臨時国会の冒頭に大蔵大臣臨時国会に出ないと言うことについては、特別な理由がなければなりません。あなたは、先ほど、それについて、大蔵大臣はいつも出席するものだとか、あるいは総務会があるとかおっしゃったけれども、これは積極的な理由ではないのであります。あなたが行こうとされる理由は、どうも、最後におっしゃった、世銀から金を借りたいといろところに、あなたのほんとうの使命があるような気がするのであります。そこで、この際お伺いをいたしたいのでありますが、伝うるところによれば、IMFと世銀に対して、アメリカは出資を倍額にしろ、それに対して日本政府は賛成をしておる。そうだといたしますならば、合計約五億ドルの出資を日本はいたしておるのでありますが、さらにそれに五億ドル追加をすることになる。もちろん五億ドル全部が全部直ちに出資するわけではございますまいが、それにしても、日本の国家財政に与える影響というものは相当大きなものがあるわけであります。この点について、私どもとしては、将来の国家財政に与える甚大な影響というものを通観するときに、出資を倍額にすることについて簡単に御賛成をなさるべきこれまた積極的な理由が一体どこにあるかということが第一と、第二番目には、それでは、あなたが世銀からお金を借りようと考えておられる第三次借款は、どのくらいの構想を持ってそうして一体それは何に充てようとしておるのであるか。それをこの際明らかにされて、これほどの重要な問題であるから私は行きたい、こんな御説明を一つ聞きたいと思うわけであります。
  41. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 世銀並びにIMF等のクォータ増額の話は御指摘の通りでございます。現実に払い込みをいたしますのはIMFの四分の一ですか、たしか世銀の方はただいまのところないです。それで四分の一程度でございますので、金額の点は為替局長から御説明いたさせますが、非常に少額であるように私は伺っております。正確な数字為替局長から説明させます。問題は、世銀がどういうわけで増資を計画しておるかと申しますと、世銀の投資相手国といいますか、融資先の国は最近非常にふえて参っておりますが、資金繰りから見まして、世銀は一年間に総額として大体七億ドル程度ではないかと思うのであります。そういたしますと、世銀の融資総額が非常に少い、こういう意味で、世銀から借りたい国は非常にある、こういうところに一つの問題があるのであります。世銀はこの際に資本金の増額することによって世銀債の発行がふえる、そうすれば融資総額もふやし得る、こういうことになるのではないかと思うのであります。わが国は、すでに、ことしの世銀年度におきまして、電力関係やあるいは製鉄関係等で相当の金額の融資を受ける承認を得ました。しかし、なお残っておりますもので私どもが急を要すると考えますものは、道路公団であるとか、あるいは電源開発であるとか、あるいは地方の電力会社、あるいは特殊の事業等についての融資要望が実はあるのであります。これらの、今特に名前をあげました電源開発であるとか、あるいは道路公団であるとか、この二つにつきましては、来年度予算編成とのにらみ合いもございますので、ぜひとも積極的にこの際話を固めたい、そういう意向でおるのでございます。
  42. 酒井政府委員(酒井俊彦)

    ○酒井政府委員 ただいまの世銀並びにIMFのクオータの増額に伴ってどのくらい金が要るかということでございますが、IMFにつきましては、これは、倍額増資をするという説と、五割増資にしたいという説と、いろいろございます。そこで、倍額増資にいたしますと、日本が現在二億五千万ドルでございますから、その四分の一で六千二百五十万ドルであります。それからその半分、五割増資といたしますと三千百二十五万ドルという計算になっております。それから、世銀の方は、これはアメリカにおける世銀債募集のワクがすでに資本金の関係で一ぱいになっているので、ここで増資をしてワクを広げたいということでございますので、いずれにいたしましてもノミナルに広げるだけで、払い込みはございません。大体今いわれているところはそういうことでございますが、総会でどういう決議になりますか、今まで伝えられたところではさような計算になります。
  43. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 横山委員に申しますが、受け持ちの時間がきておりますので、結論的な御質問を願います。
  44. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 今大臣のお答えになったのは、第二次借款で残っているものの話ではありませんか。残っている道路とか電発の二億数千万ドルを固めたいとおっしゃるが、私の聞いているのは、第三次の世銀借款をあなたがやりたいという話では、どうなっているのか。私の聞いている分では、約二億九千万ドルの借款を、九州電力とか八幡製鉄、富士製鉄、原子力発電、国鉄東海道新線にと聞くが、これは何もお話がないのはどういうわけでありますか。
  45. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりました点は、実は簡単にその他と申したのでございますけれども、特に来年度予算編成に直接関係があると考えられますものが、今申しました電源開発並びに道路公団でございます。特に、今御指摘になりましたうちから、財政投融資に関係のあるもの、あるいは今計画されている鉄道幹線であるとか、あるいは原子力の問題だとか——原子力の問題は一番あとにおくれるでございましょうが、こういうものがございますが、これはこれから話を進める段階でございます。今日まで資料が出ておりません。今まで出ておりますもの自身も御承知のようにあまり進んでおらない、そういうものをまず先に固めることが実際的な問題である、こういう意味で申し上げた次第でございます。
  46. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 私の意見を言う時間がございませんが、少くともどんどんどんどん世銀借款が行われる。その過程において生ずる結果については、これは後日大臣の所見を十分にただしたいと思っているわけであります。  もう一つだけ、最後委員長にお願いをいたしまして聞きたいのですが、そういうものが、今大臣のおっしゃるように、財政投融資の問題に関連をして参るが、今年の財政投融資の中で、どうしてももう本年度の財政投融資計画を変更しなければならない段階になっていると私は思うわけであります。たとえば、不況によって開銀の海運関係の五十億が回収不能であるといはれ、世銀からの電発の百二十三億が今年じゅうに間に合わないといわれ、国鉄の収入減からくる資金不足で、やはり百五十億を計上しなければならないといわれている。政府は一体本年度の財政投融資計画を増額修正をするのかしないのか、もしそれをするとなれば、どうしたってこれらの問題は来年度関係して参りますから、来年の財政投融資計画とかみ合ってしなければならなくなるのであるけれども、一体財政投融資計画はどういうふうにこれからなさるおつもりであるか、それをお伺いをいたします。
  47. 正示政府委員(正示啓次郎)

    ○正示政府委員 ただいま数字をおあげになりましての御質問でございますから、便宜私からお答えを申し上げます。  御指摘になりましたように、開銀の回収が若干減る、また世銀の借款が若干時期的にずれるというような問題、さらにまた国鉄の収入の減少というよな問題にからみまして、財政投融資の実行上アジャストを必要とするという点につきましては、これは、当初たしか国会におきましても、さような場合のあり得ることを想定をいたしまして、財政投融資につきましては弾力的運営をはかるということを特にお断わりを申し上げたことは、御記憶の通りと存じます。ただいま、それらの点につきましては、なお今後の情勢の推移を見まして、ことに今回大蔵大臣がわざわざIMF総会においでになりまして、先ほどもお述べの通り、電源開発等につきましてはなお一そうの御努力をなさることになっております。私どもといたしましては、でき得る限り当初の予定通りに進むことを希望いたしておりますが、万一若干のズレ等が生じまする場合に備えまして、御承知のように、資金運用部には約三百九十億余りの原資をリザーブをいたして、これらはつなぎ資金的に活用いたしまして、できる限り重要なる産業の開発計画というものにつきましては支障が生じないようにやっていきたい、かように考えております。
  48. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 事務当局の御答弁はそれでいいのですけれども大臣は、もうすでに財政投融資計画が本年度のやつが破綻に瀕しておるということは、お察しの通りだと思う。いかに余裕がありましょうとも、これらをまかなうに足るということにはなかなか参りません。大臣としては財政投融資計画をどういうふうにいつごろ変えようとなさるのか、それを承わりたいというのが一つであります。  それから、もう一つは、時間がなくなったので、これを最後として端的にお伺いをいたしますが、今の景気の動向を、重ねて——先般の私に対する御答弁から二カ月たっておるのでありますが、今の景気の動向をどういうふうにお考えであるか。先般来、あなたは、横ばいにさせる、こうおっしゃいました。全般的な横ばいはあるいは続いておるかもしれません。しかし、一方における政府のいうところのアメリカの景気が少しよくなったという材料も、日本にそれが響いてくるには、かりにそれが事実だといたしましても、どうしても半年や一年は当然にかかってくる。一方においては、操業短縮で、持ち切れなくって、来年あたりからさらに大量の解雇という形を伴ってくる。なぜ一体世間がそうも騒がないのだろうか。要すれば、大企業の方では、とにかく滞貨金融とか、あるいは継続工事とか、あるいは神武以来のもうけで居食いをするとか等々によって、辛くもささえていらっしゃる。ところが、中小企業の方は、どんどんしわ寄せがきて、いびつになっておるわけであります。そのいびつを全般をひっくるめて横ばいだとおっしゃるならば、これは私は政府としてきわめて片ちんばなものの見方であると思う。この景気を一体どういうふうに把握をしておられるのか。この間今後の経済運営の態度というものが閣議了解で出ました。私はそれを見て痛感いたしますことは、下の方といいますか、中小企業やあるいは労働者やお百姓さんのことが、一番最後にちょっぴり、対策に遺憾なきを期するということで片づけられておって、全般の問題については、やっぱり楽観説が横行しておると思うのであります。しかも、アメリカで一、二の銀行が公定歩合の引き上げをしたとか、あるいはインフレの気がまえであるとか、そういうよその国の、いつこちらに影響してくるかわからないことをとらえて、あたかも好影響を与えるかのごとき印象をばらまいておられるのは、私は政府として軽率な態度ではないかと思う。この景気の動向と、それに処する大蔵大臣のものの考え方を、最後に承わりたいのであります。
  49. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 財政投融資の原資の問題は先ほど正示君がお話しした通りでございます。私どもただいまあります手元で今日の状態に対処して参る考え方でございます。ただいま直ちに変更するとか、こういう段階ではないように思っております。  次に、景気の見方でございますが、これは、もう、本会議等におきまして総理あるいは企画庁長官等もお答えいたしたように、皆様方は、大へんな不景気だ、従って不景気に対する対策を早急に立てろ、こういう御主張でございますが、私どもは、在来から御説明申し上げておる通り、今日の景気不振の状態は調整の期間のズレだ、こういう見方をいたしております。なるほど、この調整の期間におきまして、二、三の業種において非常な摩擦を生じておることは、事実そのものでございます。しかし、この状態を直ちに取り上げて、経済全般が非常な不況だから、これに対する特別な対策を立てろ、こういうような結論には、不幸にして私どもは皆様と同じような意見を持つことができないのであります。と申しますのは、なるほど各産業の面におきまして調整の段階に入ってはおりますものの、わが国の経済を非常に強くささえておる農産物の面におきまして、ことに米自身が非常な増産である。これは、天候に恵まれた、あるいは政府の施策と相まってよくなったというような議論もございますが、とにかく、現実の問題といたしまして、農村の面においては調整が強く響いておらない。他の産業の面、たとえば繊維関係のように非常な調整段階で操短をやっておるというようなことが指摘されますが、農村の面においては比較的そういう点は薄いとか、あるいはまた、第三次生産部門等におきましては、依然として同じような、これもあまり調整というものを受けないで済んでおる。あるいは、給与水準そのものも、程度は非常に大きくはないにしろ、とにかく給与水準もふえておる。こういう事柄が、消費の面において、都市、地方を通じて依然として底固いものがある。こういうことがいわれておるゆえんでございます。こういう点を勘案して参りますと、景気そのものが全面的に非常に不況のどん底にある、こういうような見方には私どもはならない。ことに、今御指摘になりました失業の状況にいたしましても、三十三年度予算を想定いたしました際に、失業者六十五万人ベースということであの予算案は組まれたと思いますが、今日まで非常に失業者がふえた、ふえたといわれますが、その想定されたべ一スから見ますと、まだ開きがある。先月に対して今月は二万人ばかり減っておる。あるいはまた非常にやかましくいわれて参りました倒産件数が非常に多いとか、こういうようなことも、あるいはまた不渡り手形の件数が非常にふえたとか、あるいは金額どもどんどんふえてきておるとか、このようなことを考えますと、これらの点は前年同期に比べましても、やや件数あるいは金額等も減少しておるような状況であります。こういうような各方面の材料をそろえてみますと、これはいわゆる全面的な不況という言葉にはあるいは当らないかわからない。しからば、一部言っておるように、非常な好況にこれが向うようないい材料があるのか、こういう点でございますが、この点におきましては、これという非常にいい材料があるとも実は考えられません。考えられませんが、ただいまお話しになっておりますアメリカの景気そのものは一体どうなのか。もうすでに金利の引き上げの方向に実は行っておる。ボストン連邦準備銀行が最後までがんばっていたようですが、これも最近全面的に引き上げの方向に行っている。むしろインフレに対しての警戒気がまえだということがいわれている。これが、そのうち、おそらく響いてくるだろうと思います。あるいはまた、輸出の面におきまして、なるほど金額こそ所定の三十一億五千万ドルには達しておりませんけれども、数量的に見ますならば、必ずしも悲観すべき筋ではない。これなどは国際物価の低落の結果だといえると思います。ことに、最近になりまして、電気関係その他においてやや増産の傾向も出て参っておる。こういうことなどを考えて参りますと、いわゆる二重なべ底にあるとか、こういうような危険はまずないのではないか。とにかく、ただいま御指摘になりました農村であるとか、あるいは中小企業であるとか、零細企業であるとか、そういうものが非常な重圧を受けて、大企業だけが特別な資金的な援助を受けて、そうしてこの不況を乗り越えているのではないかという御指摘に対しては、私は、先ほど来申し上げるような材料から、必ずしも全面的に賛成するわけにいかない。私どもの見方では、今後どうしても輸出もさらに進めて参るし、そうして生産を上向きの方向に持っていきたい、こういう努力を実はいたしておる最中でございます。さきに公共事業費の繰り上げ使用というような問題もきめまして、これなども現実に工事そのものが非常に繰り上げられて進んでおるかどうか、いろいろ検討もいたしておりますが、これはむしろ支払い方法として、私どもが特に取り上げたもの、そういう効果はただいま出ております。しかし、最近になりまして、セメントあるいは木材等の面においては、あるいはこれが好影響を与えてはいないかとも思うし、あるいは、工事労働の面におきましては、やや就労関係等においては好影響を与えておるのではないかと思います。あるいはまた、金利を、公定歩合が二回にわたって引き下げられたこと、さらにまた散超の時期に入っておるとか、これなどは、ただいまの金融の面から見ましても非常に苦しんでおる産業面に対してはやや好影響を与えておるのではないかと思います。しかし、こういうことだけで事態を推移するわけにはいかないと思います。先ほど来いろいろお話のありました、来年度予算編成に際し、一般会計の編成であるとか、あるいは財政投融資の資金の確保であるとか、また金額の盛り方であるとか、こういうものを、今後の経済の動向に合わして、やはり私どもも取り組んでいかなければならない。そういうことによりまして、やはり経済は二重のなべ底だというような状態はもう脱したい、どうしても苦しい状態から生産拡大、増強の方向へ持っていきたい、こういうことでせっかく努力いたしておるのであります。今日までいろいろの議論が行われております。在庫の面の議論につきましても、今日までのところは、在庫調整を進めるという意味で、在庫を減らす、こういうような考え方で、輸出を進めたり、あるいは設備投資に対して手控えをしたりいたして参りましたが、過去の設備投資などまことに大きいものがありますので、そう簡単に短期間のうちにこれがとまるものとも考えられません。今日なお継続的なものが見られます。また、生産在庫の面も、少し在庫の減りが生じますれば、そのつど今度は生産の方の操短をできるだけ緩和するとか、こういうような方法で、その調整そのものはまあ横ばいの状況にあるように私は見ますが、しかし、この横ばいをしておる期間中においても、経済そのものは成長いたしておりますので、そういう見方をすると、この横ばい自身はやはりある程度の在庫調整の効果も上げておるのだ、こういうようなこともいえるのではないかと思います。もちろん、私は、アメリカの景気の転向、これが三ヵ月前からあるいは四ヵ月前ごろからいわれておる。その状況から見まして、もうそろそろ日本に響いていいのじゃないか、こういうような議論もございますが、それは別といたしまして、今日の日本の経済の姿そのもの、実態を見て、現状で楽観は絶対にいたしませんが、同時にまた、非常に悲観し、そうしてここに特別な積極的な刺激策をとる、こういう必要までは痛感をいたしておりません。労働関係予算等におきましては、この就労といいますか、雇用の面の摩擦が一番大きな政治上の問題であり、社会上の問題であり、経済上の問題であることは、よく私ども承知いたしておりますので、特にこの点には留意をいたしておりますが、これは、幸いにして三十三年度予算編成当時に一応想定されたような線をたどっておる、こういうように見ておるのでございます。問題は、次の予算編成に際しまして、来年想定される経済情勢に対応するようなものを何としても作り上げたい、こういう考え方でございます。
  50. 横山委員(横山利秋)

    横山委員 お名前がお名前だけに、私はずいぶん甘い考えだと思います。もう時間がございませんから、私の質問は大体そのくらいにしておきます。
  51. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 石野君。
  52. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 大蔵大臣が今横山同僚委員からの質問に答えた線を、まだ私も納得しない点がありますので、そこから一つ質問していきたいと思う。  国会が始まってまだほとんどその運営に入っていないときに、大臣が会期の三分の一以上海外に出るのですが、われわれは、今度の臨時国会というものは、少くともやはり不況段階に対する対策を講ずるのが主たる目的だと思っておるので、そういう期間を三分の一、しかも最初の時期に出ていくということは、非常に無責任だと思います。で、それについては、大臣はやはり日本の経済に対する考え方の相当はっきりした線を閣内で固めておられて、それをお残しになるのだろうと思うのですが、今お聞きしておりますと、非常に経済界は横ばいだ、調整の期間中だというような話であるけれども、それならば、私はお尋ねしますが、継続しておる設備投資が完了する大体のめどは年末あるいは年度内と見られますけれども、その時期における政府の見ている生産と需要との大体の関係でございますが、需給の関係をどういうふうに見ておられるか。全設備が稼動する時期におけるいわゆる生産過剰というものは、大体どういう状態になってくるというめどで、今のような御所見をなされておるのかどうか。そういう点について一つこまかい政府の考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  53. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 大へんむずかしいお話でございます。ことに、設備投資、あるいは生産力の問題と、それから需要の問題、これは実は国内需要並びに国外需要等々、全体で勘案しなければならない問題でございます。ことに産業部門が一律ではございませんので、こういう意味で、なかなかむずかしいお尋ねだと私は拝聴いたしたのでございます。で、もちろん今日調整の段階だということを申しますが、設備投資なら設備投資の例をとってみまして、過去の設備投資がいつになったら完了するのだ、こういうわけのものではなく、まあ過去のものもだんだん完了もして参りますが、同時に新しいものもまた出て参る。それが経済の実情だろうと思います。こういう場合に、設備投資が偏重をしないことが実は望ましいのではないか。過重投資、あるいは二重投資、三重投資にならないような工面がやはりされなければ、経済としては困りはしないか。ただいま非常な不況産業としていわれておる一つの例で、肥料なら肥料、硫安なら硫安をとってみますと、この生産能力自身は、日本も非常な過剰生産でございますが、ほとんど世界各国とも過剰生産である。こういうものが、それではみな、いつになったらはけるのか、かように申されましても、これはだれも答え得る者はなかなかないのじゃないか。ただ、私どもが考えておりますものは、大体想定される国内需要と、同時にオーバーするものを輸出の面で引き取ってもらう、こういうことでこの生産を対応させていきたい。こういう点から、国内の面においての供給、これも確保するし、同時に輸出に特に力を注いで参っておるのであります。今日までのところ、この意味で輸出の目標を達成しない、こういうことであらゆる努力を進めてきているというのが現状でございます。しかし、私は、一般的に、各部門にわたっての消費あるいは需要というものが強くなってくるような傾向に置かれておるのじゃないか、そういうような状況になりますと、今の国内の操短々々といわれておりますものも、よほど事情が変ってくるのではないかと考えております。また、他の例で、たとえば石炭なら石炭というものをとってみますと、最近石油動力源の方が非常にいい、一部で炭主油従というような一つの政策も主張されてもおりますが、同時にまた非常に経済的である石油でなければ困るという議論もある。こういう面から見て、日本の石炭生産というものを今後どういうところへ持っていくか。これは財政政策、経済政策と申しますよりも、むしろ産業政策そのものの立場に立って、これからいろいろ考えていかなければならない問題である。ただこれを需給の関係だけで割り切るわけにはいかないような気がいたす次第でございます。
  54. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私は、時間があまりありませんので、深くここでその問題について論議するのはやめますが、大体私どもの見ておるところでは、来年の四月ごろから先に対しての日本の経済の事態を見ますと、生産とそうした需給との関係から来る差というものは、生産能力というものは、少くとも年間を通じて一兆円くらいの過剰になってくるんじゃないかというふうに見られます。その問題については、あとでまた論議するといたしましても、今、大蔵大臣は、そういう問題を調整するために、特に輸出の問題に大きな努力を払うんだということをおっしゃられた。それじゃどういう方向へ輸出を今伸ばしていこうとするのか。特に今度大臣IMF会議へ出られるに当って、東南アジアとの経済関係を緊密化することを非常に強くおっしゃられたのでございますが、そういう観点に立って、大蔵大臣としては大体どういうふうな輸出の増強策を持っておられるか。通産大臣の持つ分野については、ここでは聞きませんが、大蔵大臣観点からする輸出増強に対する考え方というものはどういうものであるかということを、この際一つ聞かしていただきたい。
  55. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 第一は通常貿易を伸ばすこと、これは申すまでもないことでございます。しかし、今の状況におきましては、各国とも非常に激甚な輸出競争をいたしておりますので、この輸出競争に負けないような方法を講じなければならない。こういう意味で、最近は議論が集中されますものが、延べ払いであるとかあるいは円クレジットの設定であるとか、こういう方向であります。最近私ども新しい行き方として一つの分野を開いたものと考えられますのは、最近調印をしましたエジプトと日本との関係、こういうような式が一つの方法ではないかと思います。さらにまた、東南アジア諸国に対しては、日本といたしまして賠償の責任を持っておりますので、この賠償との結びつき、これなども一つの方法ではないか、こういうふうに考えます。あらゆる面におきまして、外国との輸出競争に負けないように努力すると同時に、国内的には過当競争を防遏いたしまして、やはり国一本でできるだけ内部的な競争によって、そうして安く品物を売らないような処置も講じたいものだ、こういうふうに考えております。
  56. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 ただいまお話になりました、東南アジアだけではなく、世界各国との競争で負けないようにということで言われた延べ払いとか円クレジットあるいは賠償の問題、過当競争、それからエジプトと日本との間に今度新しくなにした話し合いというものは、いろいろ考慮される道だとおっしゃられた。しかし、実際に見ましても、世界の競争に立ち向う、そういうような態勢を組み上げるだけの力が日本にあるかどうかという問題が一つの問題になってくると思います。たとえば、延べ払いにしましても、円クレジットの設定につきましても、相当日本に経済的な力と、それを可能にするような外貨なり何なりなければ、とてもできることじゃないと思います。今度私ども東南アジア国会から派遣されて見て参りましたところによりますと、少くとも、東南アジア実情というのは、確かに日本の製品を受けようとする態勢はある。あるけれども、どこでもやはり外貨は少い。だから買うことはできない。それで、各国に対しては、日本がほとんど全部輸出超過になっておる。だから、どの国もやはり日本のものを買わなければいかぬが、日本の方で何か買ってくれなければ、私の方は買えませんよということを、はっきり言っておるわけであります。そういうような事情の中で、われわれがやはりこの円クレジットの設定をするとか、あるいは延べ払いの力さえあればそれは可能でありますけれども、とても簡単には正常な貿易だけで貿易量をふやすということは困難だろう、こう思います。そういうときに、たとえば、延べ払いにしても、日本の延べ払いの形式と、ソ連、中共やアメリカあたりの、米ソ両陣営からきているところのいわゆる延べ払いの形式とでは、ずいぶん段階が違うと思う。こういうような問題を具体的にわれわれが見ておって、日本の資金的な操作をそれじゃどうするかという問題が出てくるわけであります。大蔵大臣はそういう問題についてはどういう態度で臨むか、それからまた外貨に対しての考え方はどういうふうに考えておるかということについて、一つここで御所見をお聞かせ願いたいと思います。
  57. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、輸出振興という場合に、いろいろの方法が考えられておりますが、基本的に最後に詰まって参りますものは、一つはやはり日本の輸銀の資金の確保の問題にも実はなるのであります。今日の国内生産力から見ますれば、外国に出し得るだけの能力は十分にある。むしろこれは出してほしいほど十二分にある。また、外貨事情そのものは、幸いにして、貿易の額こそ予定した通りにはなかなか達しておりませんが、ことしは大へん貿易決済の面においては黒字がふえております。今日までのところ、もう三億ドル以上に達するのではないかという想定が立つのであります。こういうことを考えて参りますと、国際決済上の面から延べ払い等をいたしましても、これは決済上困るというような事態はまず考えなくてもいい。そういたしますと、国内的な資金の面、この確保が、最後に実は一つの制約として残るのではないか、こういうように考えます。この面で、大蔵当局だけではなく、政府そのものといたしましても、いろいろ工夫しておるということが今日の段階でございます。特にただいまおあげになりました、ソ連であるとかあるいは中共であるとか等の共産国の海外進出、その問題につきましては、一時、東南アジア方面におきましても、中共の品物が非常に安い値で進出している。日本はこれと競争することが非常に困難ではないかということが、この夏時分大へん大きい声で私どもの耳にも響いて参ったのであります。もともと私ども考えておりますのは、特別な理由からああいう乱売がされているのではないか、これが果して長続きするだろうかどうだろうかという見方をいたしておったのでございますが、最近は中共商品の進出の声はやや鈍って参ったように思います。ただ、資金的援助の面におきまして、これはなかなかコマーシャル・べースを割った資金的援助方法を立てている、こういうのでございますので、これとの競争は真正面から取り組むことは、これはまことに至難かと思います。  また、東南アジアの諸国は、ただいまお話しになりましたように、今回御視察になりました通り、わが国の品物がたくさん行き、向うから買い取るものは非常に少い、こういう意味で、外貨の不足しておる今日、それらの国が日本からの貿易の拡大を希望しながらも、実際には決済方法がないということで、なかなか進まない、こういう状況に置かれておるのは御指摘の通りであります。こういうような国柄に対して、円クレジットであるとか、あるいはいわゆる経済協力ということによりまして、これらの後進諸国の経済を拡大していく、こういうことに役立ちますならば、一時的な借款供与というものが、将来になりましてはさらに実を結んで返ってくる、こういうことにもなるのでございます。両国間の、また東南アジア諸国との関係におきましては、できるだけ私ども東南アジアから品物を買うということもいたしますが、同時に、これら後進国の経済がやはり拡大し成長していくことに私どもが力をいたすこと、そして経済的な自立、独立ができる、そういう国柄との経済提携こそが最も望ましい方法であり、私どもの経済を拡大していくゆえんでもある、こういうようにも考えておるのであります。こういった意味におきまして、後進諸国に対する延べ払いであるとか、あるいは円クレジットであるとか、こういうようなものが具体的に取り上げられ、あるいは賠償協定に付帯して考えられて結ばれました、いわゆる経済協力方式というようなものがまた具体化してくるということでもあるのでございます。
  58. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 お話は非常にごもっともですが、たとえば、延べ払いにしても円クレジットにしても、後進国の経済の開発のために役に立つようにしようとする意図はあっても、日本にそれをやるだけの力がなければどうにもならない。それで、問題になるのは、そういう円クレジットを与えるだけの力の限界というものが、そこに出てくるはずであります。その問題と、今日本が保持するところの外貨との関係、それを政府はどういうふうに見ておるのか。とにかく円クレジットを設定するための外貨と、日本が必要とする外貨とがあるわけなんです。それを大体どの程度に見ておって、そしてその上になお円クレジットを設定するだけの力がいかほどあるかということについての見解です。これを一つ聞かしてもらいたい。
  59. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 先ほど簡単に申し上げたのでございます。円クレジットやあるいは延べ払いを作ります場合に、果してそういうことが可能かどうか、三つの面から実は考える。一つは日本の生産力が輸出を増強するだけの力があるかどうか。これはもうすでに御指摘のように、操短その他をやっているのだから、日本産業としては、現在の設備そのもので外国に出し得る状況だ、これは別に制約にならない、こういうことが言える。第二は、最近の黒字の状況から見ますと、これがある程度延べ払いや円クレジットを設定しても、国際収支の面に非常に支障を来たす、こういったことではない、これは言えると思うのであります。ただ、そういう場合に、しからば二億ドルは可能かとか、一億ドルは可能かとか、そういう金額的な明示は非常にむずかしい実は査定にもなるのであります。ところが、現実の問題は、国際収支の面よりも、何といっても制約をこうむるのは輸銀の資金ワクではないかということに、実は最後にはなってくるように思うのであります。この三つの点、国内の生産力、同時に国際収支の外貨の保有の状況、さらに輸銀の資金と、この三つで見まして、今日の状況のもとで円クレを設定したり、あるいは延べ払いをする場合に、一番制約を受けるもの、それは一体何か、もう一番先にぶつかっていくのは輸銀のワクだ、こういうことに実はなるのでございます。これは財政資金の面でいろいろ工夫し苦心していかなければならない問題でございます。そういう状況でございまして、お尋ねになりました国際収支の面で、外貨幾らを割り当てるかということは、これはなかなか説明しにくいことでございますが、そういう点よりも輸銀のワクの方が第一にもうぶつかってくる、こういう状況にあることを御了承願いたいと思います。
  60. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今輸銀のワクが一番輸出を増強するためにガンになっているのだということの意味は、裏を返せば、輸銀の資金をもう少し幅を広げようという考え方を持っておるということに受け取られるわけですが、それも一つありますけれども、延べ払いなどをするときに、やはり外貨の保持というものが相当強い力になって影響してくるわけです。その場合に、私はどれだけ外貨割当ができるかどうかということも、ここでははっきり出ないとおっしゃるけれども、しかし、少くとも輸出を増強しようとするには、それは絶対に必要な条件なんだから、それについての政府の方針というものは出てなければならないし、方針というのは大体現在の実情がどうかということを基底にしなければできないものだと思います。現在の外貨事情というのは、それを可能にするだけのものになっているのかどうかというこの考え方が非常に大事なのでありまして、私は、その点では、若干の外貨収支がよくなっているからといって、それを可能にする段階まで来ているとは言えないような事情に考えます。そういう点についての大蔵大臣の見解はどうですか。
  61. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 実は、私今石野さんがお尋ねになりましたような意味で、事務当局に相談してみたのであります。適正外貨保有は一体幾らに見ればいいか、そういうものがそろばんが立つかどうか、こういう話で、金融の面をやっております者に直接ぶつかってみましたが、こういうことは、これは石野さんをしろうとと申すわけではございませんが、私自身しろうとであることを実は笑われていることでもあるわけでございます。従いまして、私先ほど来申し上げますように、幾らが適正保有外貨であるか、こういうことを言うことはまずできにくいことではないか。これが今後の、来年、再来年等を見通した場合に、国際収支の決済に支障を来たすようなものになるのか、ならぬのかということで見ていかなければならないのですが、経済もその間膨張して参りますし、また為替の変動その他もございますし、また資金確保の面におきましての操作もあるし、なかなかいろいろなものがありますので、そう簡単にこの金額を、三億あればこれは適正だとか、五億あれば適正だとか、十億あれば大丈夫だ、こういうことはなかなか言いにくいことだということを実は申し上げておるのであります。そういう尺度でもありますならば、非常に楽で、今の円クレジットを設定するとかあるいは延べ払いを進めていくとかいう場合におきましても、ワク内に入れていくならばいいじゃないかという議論も成り立つわけでございますが、これとても相手方の信用等を考えてみなければならないので、これが信用の面から支払いが非常に確実であります場合には、延べ払いなりあるいは円クレジットの設定は非常に楽な気持で立て得るのでございます。しかしながら、ただいまの状況で円クレジットを設定したり、あるいは延べ払い方式を採用するとか、特別な競争から来ている場合なら比較的やりやすいのでございますが、こういうものを要求している国柄の経済そのものが非常に弱いのだということを前提にいたしますと、これこれを言ってきているが、なぜこれをやらないのか、これはまだ国際収支の面から黒字だからいいじゃないか、こういうような議論になかなかなりにくいということを実は申し上げておるのでございます。問題は、一応今のような黒字がことしなど国際収支の面で生じた、さらにまた、来年なり再来年なり、いわゆるわが国の経済五カ年計画というものが、その差こそあれ、パーセンテージ通りにはいかないにしろ、その方向で策定されるといたしました場合に、やはり国際収支の面においても相当の黒字というものが考え得る、赤字は一昨年のような極端な赤字を考えなくても済む、こういうことは大まかには言えるだろうと思います。しかし、これは、先ほど横山委員から、それはお前の楽観ではないかと言われるように、こういう点では十分の検討をしなければならないものだと思うのでございますが、そういう意味で、まず私どもの見るところでは、国際収支の面ではあまり制約にならないのではないか。いわゆる今日の保有外貨の面から見まして、直接の制約ということを考えぬでもいいのじゃないか。しかし、お尋ねのような端的な幾らが適正保有か、こういうものは出て参りませんが、まずそう制約というようなことはないだろう。一番制約になってくるのは、現実の問題として、相手国も信用があるし、相手国からの要望も非常に強い、こういう場合に、こちらが出そうとしてもぶつかってくるのが輸銀のワクになってくる、こういうことを実は申し上げておるのでございます。
  62. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 輸出を増強するために相手国が強い支払い能力を持っているかどうかということは非常に大事なことなんで、実を言うと、東南アジアの問題などを考えた場合に、それがみな弱体なんです。弱体であるだけに、こちらが経済的に相当強い力を持っていなければ、それを可能にし得ない条件があるわけなんです。それだからこそ、私はわれわれの力がどれだけのものであるかということを聞いているわけなんです、外貨保有はどれだけが適正かということを私もしゃくし定木で聞こうとは思っていないのです。ただ、今日の情勢の中でどの程度に——たとえば今日外貨保有が七億ドルになったときに、実際輸入材料のためにこの程度のものを残せば、二億なり三億は円クレジットにしてもいいんじゃないかというような目算が出ているのじゃないだろうか。そういうものがあるならば、それはどういうめどになっているかということを私は聞いているわけなんです。そういう面を政府の方で大体出ておれば一つ聞かしてもらいたい。
  63. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 お尋ねの御趣旨はよく了解しました。また同時に私もそういう意味でお答えをしておるのですが、それは私自身もまだつかみ得ないで、ただいま事務当局に命じておる程度でございますから、御了承いただきたいと思います。
  64. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 外貨の事情がこのまま続けば案外順調にいくだろうというふうな見方については、私は非常に甘いような気がする。確かにまだ輸入原材料の在庫率はそう減ってはいないのですから、当分は輸入原材料というものは生産にこたえる量があるだろうと思いますけれども、しかし、実際にはだんだんと輸入の量がふえてきていることは事実です。政府が今度通関統計の中で出している面でも、あるいはまた実質上の輸出入のなにから見ましても、輸入がふえてきております。こういう事情から見ますると、必ずしも黒字が長続きするという見通しは立ちにくいだろうと思う。それから、皆さんが計算している中から、今中共貿易をとめていることによって受ける外貨収支面に与える圧力も相当出てきておることは事実だろうと思います。そういうことを考えましたときに、そう簡単に国際収支の事情が今の状態で続き得るかどうかということは困難なように思うのです。そういう点から、この輸出増強という問題について、意欲的には相当いい方向を見ておりましても、実質的には足がそれに追いついていかないような事情にあるように思われる。たとえば、円クレジットの設定をするにしましても、延べ払いの問題にしましても、口にはしても、できないのじゃないか。それをやろうとすると、どうしてもどこかで不穏当を覚悟しなければならない。そういう意味で、たとえば海外に円クレジットを設定するための基金としてのものを国内的に操作できるか。あるいはまた、ほかの借款などにつなぎ合せてそういうものを考えているのかどうか、そういう点について政府はどういうふうにお考えになっておりますか。
  65. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 あるいはもうちょっと御説明申し上げた方がいいのかと思いますが、円クレジットの場合に、先ほどエジプトとの間の場合非常にいい新しい形だということを申し上げました。これはどういう方法にしておるかというと、一応のワクをきめまして、そのワク内で向うからほしいものをそれぞれ計上をいたしまして、延べ払い方式でその代価が払われるような方法でございます。ところが、いきなりこちらから五千万ドルなら五千万ドルを相手国に渡して、相手国が自由にそれを使うような方法も実はあるのです。その方法だと、なかなかわが国の経済の伸張の上において非常な好影響をもたらすとも言えないものがある。なかなか話が一緒にならないで、せっかく五千万ドルは向うへ渡したが、それから先の話がちっとも進まない、こういうようなものもあるのです。これはインドに対しての問題でございますが、インド国内において五千万ドルの使い方を各省間でいろいろ奪い合いもしておるようだし、わが国の方でも、それに対応して、自分が出たい、自分が出たいで、いろいろ競争しておる、こういうことで、なかなか話が進んでおらない。しかしながら、エジプトのような方式で、一応ワクを設定して、そのワク内で必要なプラントを延べ払い方式で出すようにする。これは、円クレジットでもあるが、同時に延べ払い方式による決済方式だということで、非常にうまい方法じゃないか、こういうので、ただいま御指摘になりましたように、一体円クレジットを設定する場合のその資金はどこにあるのか。実はインド方式は今後の行き方としてはあまり考えられない、こういうことを申し上げたい。また、国によっては、日本に対して一応四千万ドルなら四千万ドル借りたいのだ、しかし、その四千万ドルというワクは作るが、その中でのプラントは世界各国が実は競争入札するのだ、だから、その競争入札で安いところ、たとえば日本が競争入札で勝てば、その四千万ドルのうちの一部が延べ払いで出ていくのだ、こういう方法をとっておるところもある。だから、いわゆる円クレジットあるいは延べ払い方式といいましても、なかなか一様でないということを御了承いただき、外貨準備その他につきましてもこれまた一応ごかんべんを願いたいし、また、わが方の通って参りますのが輸銀でございますので、その意味において、輸銀のワクというのがまた最後に問題になってくる、こういう実情は、これを御了承いただきたいと思います。
  66. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今エジプトの例を出して、これは非常にいい方法だとおっしゃった。インドの場合などは、ことしの初めに五千万ドルのクレジットの設定をした。これはもちろん向うの側にも事情があるだろうし、こちらでも事情があって進まない。インド自体では、これはせっかくもらっても、持ちぐされて何にもならないのだ。そのあとで、たとえばチェコだとかからどんどん借款の事態が出てきて、日本の話は全くほごになってしまう、こういう実情を見てみますと、円クレジットはただかけ声だけだということになる。そういうことになるのでは、これは輸出の増強にも何にもならない、私はそういうことを申し上げた。たとえば、インドとの間における円クレジット設定についてのまだ未解決の問題については、今どういうふうになっておるのかということを、この際一つ聞かしていただきたい。
  67. 酒井政府委員(酒井俊彦)

    ○酒井政府委員 今五千万ドルのインドの円クレがどういう段階にあるかということでありますが、御承知通り、たしかことしの二月だったと思いますが、先方と輸出入銀行との間に契約ができたわけであります。それをインドへ持って帰りまして、実はインドは三年間に五千万ドルということでございますが、全部の計画のうちの何を乗せるかということで、各省間の調整が片づかずに最近まできたわけであります。最近ようやく調整がつきまして、その全部の調整がついた上で、本年度は輸銀資金五十億円という約束になっておりますので、本年度として何を入れるかということが今問額になってきておるわけであります。手続の問題もことしの二月にちゃんとできたのでありますが、お互いに了承して書いたものを持って帰りまして、インド側から若干手続を変えてくれ、こういう話がありました。そこで、これは六月でございますが、輸出入銀行の方で、前にきまったことだし、一応前の通りでどうかということを向うに回答したわけでございますが、これに対して先方は何ら反響がございません。もう少しこういうふうにしてくれということを言って参りません。こういう関係がありまして、非常に延び延びになっておったのでありますが、最近そういう工合で各省間の割り振りがついた。それから第一年度であることしの事業がだんだん進んでいくということになるかと思います。その間、さっき大臣がおっしゃったように、各省間で非常に猛烈な取り合いをすると同時に、日本側の業者も円クレに入れてもらいますと、非常に条件がよろしいものでございますから、向うへ行って非常な過当競争になるというような騒ぎもございました。大体今日問題は片づいて、これから始まるだろうと思います。
  68. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 クレジットの問題についてはまだいろいろありますけれども、実際にクレジットを叫んでも、効果が出てこなければ何もならないので、そんなことでは輸出の増強にはならないのだから、あまり実のないことを、大きいことを言わないようにしてもらった方がいいのではないか、私はそう思っております。  それから、先ほどのインドの話などでも、向うの方にもせり合いがあるけれども、こちらにもせり合いがあるということを大臣が言っておられるが、その通りなんです。輸出における過当競争というものは、これは非常に輸出増強のためのガンになっておるし、また事実上こちらにも損が出ているということが言えると思う。この過当競争に対しては、今政府はどういうふうな対策を考慮しておられるのか。これはまた通産行政でもありましょうけれども、これらの問題については何か規制する考え方があるのかどうか、一つその点を伺いたい。
  69. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 この過当競争の面につきましては、あらゆる機会に業界の自粛、注意を喚起して参っておるようでございます。しかし、ただ行政的な指導だけでなかなか効果が上らないというのでございますので、通産省におきましては、この国会に、輸出取引法といいますか、輸出入取引法、そういう法律を整備する予定ではないかと思いますが、これは通産省の方の所管でございますから、その方に譲らしていただきたいと思います。
  70. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 過当競争に対しては手当をするという考え方だということを承わりました。  それから、先ほど、大臣は、輸出増強については最後に輸銀のワクが非常に問題なんだ。——それでその輸銀のワクを、それでは輸出を増強するために、今日大蔵当局としてはどういうふうにしようと考えておられるのか、その点をこの際聞かしていただきたい。
  71. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 本年内の資金はまだ余裕がございます。従いまして、本年特に処置をとるという必要はないかと思います。しかしながら、来年度予算編成に当りまして、財政投融資計画を立てるに当りましては、やはり増加の方向で考えていかなければならないんじゃないか、かように考えております。
  72. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 輸出の問題に関連して、先ほど賠償の問題が大臣から言われておりますが、賠償の問題については、これは向うの現地で聞きますると、みな賠償物資というものが非常に割高なんだということで、きわめて不評判である、そういうことが一つあるということ、それからまた、賠償問題に関連して、ビルマなどでは実質的にやはり賠償の増額を要求するという面も、ビルマのウー・ヌー氏あたりが言っておりました。それから、もしそうでなければ、むしろ早期支払い、繰り上げ支払いをしてくれというようなことも言っておったわけです。こういう問題は各所にいろいろと問題が出ておると思います。私は、こういうような賠償問題を契機として、かえって現地で不評判を買うような結果が出たのでは、輸出の増強には何もならないんじゃないかと思います。そういう点について政府はどういうふうにお考えになっておられるか。
  73. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただいま石野委員が御指摘になりました通り、うまく賠償協定と結びつくならば、わが国の貿易伸張に必ず役立つ、しかし、同時に、これが悪用されますならば、御指摘のような弊害を至るところに生ずるであろう、こういうことで、特に実施の状況について各省力を合せて一つ監視しようじゃないか。品物が高くなることだとかいうような点については特に留意して、また通常貿易を阻害するようなことがあってもおもしろくないだろう、こういうような観点から、この賠償の実施を誠実に行うという考え方で、賠償の実施をもう少し監視、指導してみよう、こういう考え方でおります。  同時にまた、貿易の問題と結びつけまして、ただいま御指摘になりました、たとえば賠償の繰り上げであるとかいうような問題、これについての研究もいたしておりますが、ただいまのところ、賠償の繰り上げ支給ということはまず考えられないというのが結論でございます。  同時にまた、賠償に対しては生産財というものを主に考えております。その価格は適正でなければならないことは、ただいま御指摘の通りでございますが、これに消費物資を充てることができるかどうか、こういう一つの問題がある。ただいまのところでは、消費物資を直接賠償の対象にすることは、これはむずかしいことだろう、しかしながら賠償に結びつけることも可能ではないだろうか、こういう方向で実は考えております。しかしながら、それは当方から要求する筋のものでなくて、相手国からの要求があればそれに応ずるということが可能ではないか、こういうような考え方でおるのでございます。  御指摘になりましたように、いろいろ賠償実施については、扱う品物について、また支払い方法、これは主として繰り上げの方法でございますが、その繰り上げの方法であるとか、あるいは価格、これらの点でいろいろ注文もことにまた批判もいただいておりますが、適正な賠償実施、これを監視、指導するという政府の考え方でございます。
  74. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今、監視、指導するために、特に何かやはり機構的なものを設けるとかいうことを考えておるのですか。それはどうですか。
  75. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 別に機構的なものを考える必要はないと思います。ただ、今担当の外務省の方でやっておるようでございますが、実施がおくれたり、あるいはまた実施上の面においていろいろ批判を受けておるようでございますので、こういう意味からまず指導したい、かように思っております。
  76. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 最後に、私は、今の経済界をどういうようにしてよくするかという問題については、政府も考えておるだろうけれども、われわれはもっと真剣に考えておる。実質的に政府が言っておるように、横ばいとか調整期の段階ということよりも、むしろ見通される限りでは悪条件が重なっておると思います。その悪条件が重なっておるときに、輸出の問題は非常に重要だと思います。その輸出増強のためには、われわれはやはりいろいろな輸出のための政策的な操作もしなければならないが、他面から見ると、やはり輸出製品に対するコストの問題も非常に大事だと思っております。コストの問題で特にわれわれが前々から申しておったことですが、現地に参りまして、東南アジアなどに参りますと、日本の商社の方々が特に鉄鋼材を安くしてくれということを強く言っている、材料を安くしてくれということを言っている。このことは、やはり、現地におけるところの、各国との競争の中で占めるウエートが非常に大きいということを意味しているのだと思います。そういうことから考えますると、私は、この原材料を安くせよということは、輸入材料に多くの部門をたよらなければならない日本の貿易構造の問題について、非常に大きな考えるべき問題があるんじゃなかろうかということを考えるのです。そういう点から、やはり日本の貿易構造の問題で、原材料輸入の仕入地というものを、もう少し政府は政策的な面からも考え直さなきゃならぬ段階にきているんじゃなかろうか、こういうふうに私は思うのです。それと同時に、また外貨を確保し、国際収支をよくするためにも、アメリカとの関係では非常に大きな額の輸入超過になっておるわけです。それで、昨日通産大臣は最近のアメリカとの輸出入の状況はよくなってきておると言いまするけれども、しかし、それは微々たるものであって、その大綱を動かすものではないということははっきりしております。対米関係、特に北米関係におけるところのいわゆる輸出入の関係からくるアンバランスというものは非常に大きい。これはとても今のような状態では十年たっても回復できない事情だ、こういうふうに思います。そういうところから、私は、政府が貿易構造の問題、特に原材料の輸出入の仕入地の問題等について考えなくちゃならないことが一つ。それから、先ほど大臣東南アジアに進出している中共製品は最近進出のテンポが鈍っておると言いましたけれども、実はそうじゃないと私は見て参りました。事実上中共の製品は日本の製品より大体一割安で売っておりますし、どこに行ってもダンピングなどとだれも言っていない。所定のマージンをみなとっておるわけです。そういうところの中で見られることは、いわゆるコマーシャルのコストを切っての競争というよりも、むしろ資本主義生産と社会主義経済における生産とのコストの競争になっておるのだというように私は見て参ったわけです。そういう点から見ましたときに、日本のコストを低下させるということについての輸入原材料の仕入地変更というものは、きわめて重大な意義を持っておるように私は思っておるのです。外貨をよく確保しようという立場に立っておる大蔵省の建前からすると、貿易についてはそういう面で相当強い意見を述べてもらわなければならないのではないかというように私は考えまするが、そういう点について、あまりにも過大な輸入超過になっておるアメリカとの貿易構造を中心とした貿易構造の問題についての構造変化という問題を、大蔵省はどういうようにお考えになっておるかということを、この際一つお聞かせ願いたい。
  77. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 輸出品のコストを下げる。これは、ただいま言われる貿易構造というか、原材料の仕入地、これを一つやれ、あるいは直接の生産費を安くする、あるいは金利の問題があったり、あるいは労銀の問題があったり、いろいろの条件があるだろうと思います。とにかく、安い品物を、しかも良質のものを出す、そういう建前からあらゆる工夫をしていかなければならぬことはもちろんでございます。そういう意味で、貿易構造という御指摘でございますが、原材料の仕入地を選ぶということ、これは最も大事なことだと思います。それで、日米貿易を一つの例にとって申されましたが、日米貿易ばかりじゃなく、たとえば手近な砂糖なら砂糖という問題をとりましても、遠いキューバからとるよりも、東南アジアの諸地域からとった方がいい、こういうふうな御議論もあろうかと思いますが、これなども、どうも東南アジアの方が非常に価格が高い、こういうような意味で、現在のような自由経済の面にまかしておきますと、やはり安いところに行く。ただ、共産地域との貿易は、今日まだ必ずしも順調に参っておりません。自由に参っておりませんから、そういう地域をも含めれば、あるいはもっと安いものが入ってくるかもわかりません。鉄鉱石等についてのねらいであるとか、あるいは燃料炭であるとか、こういうようなものについて特殊なものが考えられる。かねてから中共貿易を特に心から希望しておりますのも、こういう点に実はあるのであります。ただ、御指摘になりました日米間の貿易の帳じりの問題でございますが、ことしの貿易はよほど改善されてきておる。これは数字の上で高碕通産大臣が本会議説明した通りでございます。一昨年ですか、非常に貿易が片寄りまして、十億ドル前後の赤字輸出であったとか、帳じりの面からそういうような大きな輸入超過になっている。こういう状態は改善されて、順次正常な状態に返りつつあるのではないかと思います。問題は、特定の地域と貿易をやめてしまう。積極的にそういう意図はないにしろ、そういうような状況の起きておることは、まことに私ども遺憾しごくに思いますので、これは貿易地域が拡大され、そして、貿易に関する限り、とにかく通常に行われるような事態が一日も早く出てくることが望ましいことでございます。また、東南アジア諸地域等においても、原材料等において、その原材料が品質の面において満足がいかなかったり、あるいは価格の面において相当高くついたりするようなことがありますと、なかなか、地理的関係だけでは、この仕入地の変更などはできないだろうと思います。しかし、御指摘になりましたような面において工夫をして、そうして良質なものをできるだけ安い価格で生産するように、産業界を指導し、また政府も協力する。これは御指摘の通りでございます。
  78. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今の問題で、私は、貿易構造を変化せよということの大きな理由の中には、東南アジアなどは、非常に力のない、経済的には弱い国々であるし、そこに持ってきて、また日本の方の輸出超過の状態になっておる。こういう状態を考えますると、やはり非常に輸入超過の多いところから輸入の仕入地変更をしまして、そちらの方から買うとか、あるいはまたその方向に影響の出るような形で——たとえば中共の問題などがあるわけです。中共市場で買い付けることによって、今度は東南アジアに影響が出てくるような、三角になるか複数になるかわからないけれども、そういう関係のアジア貿易への転換というものをしないと、恒常的な国際収支の正常化というものは確保できないのではないかということを、私は痛感して参りました。特に東南アジア貿易拡大のために、中共を無視してはとても伸展するものでないということを、しみじみと私はあそこで見て参ったので、そういう点については政府としても真剣に考えてもらわなければならないと思います。そういう点については、大蔵大臣は、インドの方にも今度は参られるし、東南アジア諸国諸君といろいろひざを交えてお話もなさると思いますけれども、向うの実態というものは、当然中共を無視してはとてもできないというような実態に置かれておるというこの事実は、やはりわれわれはただ観念的に否定しておってもだめなんです。事実がそうなっておりますから、その実情をやはりはっきりつかんで、世界政策の中でのアジアのあり方というものについて、もっと政府が積極的に考えていただくべきだと私は思います。これはもちろん通産政策と大蔵大臣の何は違うかもしれませんが、大蔵大臣は、国際収支の所管者として、そういう点について強い御意見と何を抱いていただきたいと思います。そういう点について、最後大蔵大臣の御意見だけをお聞きして、私の質問を終ります。
  79. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 先ほど来申し上げた通りでございます。特に、最近東南アジア諸地域を視察して参られました石野さんの御意見は、十分伺って参りたいと思います。
  80. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 春日一幸君。
  81. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 私は、まず最初に、大蔵大臣国会開会中に海外に行かれるという問題について、厳粛に警告をいたし、特に重ねて御反省を求めたいと思うわけであります。  申すまでもなく、今次国会は総選挙後に初めて開かれる政策論議の国会といたしまして、与党と野党とが政策を中心として初めてここに相まみえることになるわけであります。前国会が首班指名の特殊の任務の特別国会であることを考えまして、特に今度の国会はそういう格別の意義を持っております。なお、政府は、来春の参議院選挙のことを考えて、特にこの国会には重要法案と目さるべき諸法案を多く上程いたしております。言うならば通常国会の繰り上げ国会といわれておるわけであります。しかも、当面するわが国の経済状勢というものは、これは動かすべからざる不況事態である。何と政府与党詭弁を弄されても、私はあとで論じたいと思うのであるが、これは不況な事態である。だから、不況対策のために国会がしかるべき施策を講ずべしということは、あげて国民の世論であります。そこへ加えて第二十二号のああいう台風がやって参りまして、災害は非常に大きなものである。当然、これは、政府与党がどんなに考えておりましょうとも、補正予算を組まずしてこの事態は解決することができ得ないと思います。こういう重要な国会に、あなたは国会を外にしてまさに海外に出かけようとされておる。さらに糾弾すべきことは、しばしばわが党の国会対策委員会が議運を通じてあなたに申し入れた、すなわちこのような今次臨時国会の性格にかんがみて財政演説をなすべしという強い要求に対しても、かたくなに耳をかさず、そのことをなさず、いきなり行ってしまう。まるきり乱暴ろうぜきと言っても過言ではないと思うわけであります。あなたの御説明によると、今度のIMF総会こそは重要な総会である、特に各国は総務として大蔵大臣を任命しておるから云々と言いますけれども、しかし、このIMFの機構は、あらかじめ大蔵大臣がなるべき総務に事故あることを仮定して、総務代理として各国は中央銀行総裁をその任に充て、総務に事故ある場合に備えておるわけであります。ここに総務代理として任命されております山際日本銀行総裁、この人は現に行かれるわけであります。私は、この総会なりあるいはIMFの年次総会は、もとより重要な会議ではあろうと思うけれども、申し上げるまでもなく、これは一つのポイントを限る問題であろうと思う。わが国財政経済全般を論議しなければならないこの国会の任務の比重から考えて、いずれを重しとするか、私は、この点はあなたが十分判断を要すべき問題であろうと思う。申し上げるまでもなく、国会は国権の最高の機関である。しかも、このような重要な臨時国会であって、政策を論じ、財政措置を講じ、不況対策を論じ、特に災害復旧のために必要な財源措置もせなければならぬ。これをみんなほっておいてあなたは行ってしまうんです。余人をもってかえがたいとは言えない。これは日本銀行総裁山際君が行かれるのだから、しかも彼は総務代理であるから、彼をしてなさしめられるではないか。私は、藤山愛一郎君でも外務大臣が勤まるのだから、山際日銀総裁をもって日本政府代表が勤まらぬはずはないと思う。あなたは国会を何と心得ておられるか。私は、こういうような国会軽視の前例が今後とも認められていくということであるならば、国会の威信というよりも、国会の機能というものが大へんに阻害されるということを最もおそれざるを得ないと思います。あなたは国会を重しとされているのか、それとも、この際一ぺん海外へ行って気分を晴らしてきたい——ということでもあるまいけれども、少くともそんなことに便乗してこの重要な国会を外に旅行されるということは、国会軽視もはなはだしきものと断ぜざるを得ません。あなたはこれに対していかなる反省をお持ちになっておるか、一ぺん所見を伺いたいと思います。
  82. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 国会開会中に外国に使いする。私自身も、御指摘の通り、いろいろ誤解を受けはしないかと非常に心配しておる事柄なのであります。私は、外国へ出かけることが直ちに国会軽視という結論になるとは、必ずしも考えません。そういう意味で、皆様方の御了承を特にお願いをしておるのでございます。今日開かれておる国会が重要なものであることは、私もよく承知しておるつもりであります。私は一つのからだで二つの仕事をするというわけで、大へん申しわけない次第でございますが、いましばらく時間をかしていただいて、そうしてここ十日ばかり外国へやっていただき、帰りましたら十分に国会の使命達成のために全力を尽す、一つその働きを見ていただきたい、かようにお願いする次第であります。
  83. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 あなたが一つのからだで二つの任務を持っておられることは私も当然知っておる。けれども、今私が論じておることは、二者択一、いずれを重く見るかということなんです。現に予算委員会が開かれんとしておるけれども衆議院では予算委員会はわずか一日しか論じられない。参議院は、開こうとしても肝心のあなたがいないから、開くことができない。こういうわけで、国会の機能はついに麻痺した状態に陥っておるんですよ。このことに対してあなたが責任がないということは、私はあなたの政治家的良心を疑わざるを得ません。私は、この問題についていろいろ論じたいんだけれども、時間がないから、次の問題に入ります。  ついででありますから外為局長に伺うが、今度のIMFの議案には増資の事柄が含まれておると思うわけであります。わが国は二億五千万ドル出しておるが、さらにわが国の側からする増資の希望があるといわれておる。そこで私は伺いたいが、出資増をあえて必要とするところの積極的理由は何か、この点についてお伺いいたします。
  84. 酒井政府委員(酒井俊彦)

    ○酒井政府委員 IMFの増資につきまして、これは各国からいわゆる国際流動性の増加という問題が持ち出されております。御存じのように、終戦直前にIMFの仕組みが考えられたわけでありますが、当時から比べますと、世界の貿易はほとんど倍に当るような大きな伸展を遂げております。従いまして、IMFの資力としてもこの辺で当然ふやした方がいいのじゃないか、世界貿易に対する比率からいって非常に少いのじゃないか、こういうことで増資が唱えられております。これには五割増資というような話もありますし、それから倍額増資という話もございます。おそらく、増資しようということは総会においてどこからか提案をされまして、具体的な数字がきまるのは来年の総会だと思います。わが国としてこれになぜ出すか、こういう問題でございます。御承知のように、昨年のような経済危機が参りましたときに、IMFからわれわれは一億二千五百万ドル借りたわけであります。増額の四分の一だけ金で出資をいたしますと、この分につきましては無利子でいつでも借りられる格好になっております。従いまして、国際収支の一つの……。
  85. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 時間がありませんから、特にこの際増資を行わんとするわが国からする積極的理由……。
  86. 酒井政府委員(酒井俊彦)

    ○酒井政府委員 増資を行わんとする積極的理由は、さっき申し上げました流動性をふやす、そして、わが国としては、そこに出資をしても、その出資分だけはいつでも無利子で借りられる。外貨準備金と同じように考えていいのじゃないか。それによって世界経済が流動性を回復して貿易がさらに伸展するということに貢献すれば、わが国としても応分の増資をしようということであります。
  87. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 そこで伺いますが、たとえば、カナダ提案のごとく一律に倍額増資あるいは五割増資というような提案がなされる場合のわが国の態度と、そういうような情勢のない場合におけるわが国だけの出資増の申し込みと、そこはそういう点があるように思われるわけです。たとえば台湾が五億五千万ドル出して日本が二億五千万ドルでは少いから云々、というような点もあるだろうと思いますが、そういうような一律増資の行われない場合においても、わが国単独の増資を主張されるのであるかどうか、この点を伺います。
  88. 酒井政府委員(酒井俊彦)

    ○酒井政府委員 ほかの国が全然増資を要求しないのに、日本側が増資を要求するということは考えておりません。
  89. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 ちょっと伺いますが、九月二十三日の日経の報道の記事によると、たとえば本年度貿易輸出入のバランスが三億ドルの黒字を出した場合といえども、実質的には結局米輸出入銀行からの農産物借款一億一千五百万ドル、これも新規の綿花借款による繰り延べ分と相殺してなお六、七千万ドルの返済は見込まなければならないなど、マイナス材料を相当含んでいるから、従ってグランド・トータルすると、三億ドルの黒字になっても、三億ドルくらいになるようなことしでも、なおかつ結局一億ドルしか黒字にならない、一億ドルもなお危ないのではないか、こう予想される。それだから、かりにこれが二億ドルの黒字のような場合は、一億ドルの赤字になるわけであります。さらに、来年度の貿易の輸出入の収支の関係によって黒字がそんなに多く見込まれない場合は、現経済情勢のもとにおいても非常に手持ち外貨の情勢が悪くなる、従って将来より多く拡大した形で借り入れ得る態勢をここで確保しておかなければならぬから、この際積極的に増資の段取りをつけるのだ、こういうような内容ではないか。この点を伺っておきます。
  90. 酒井政府委員(酒井俊彦)

    ○酒井政府委員 その前に、ちょっとお断わりしておきますが、その今の新聞記事の中で、三億ドルがふえても、農産物借款のエキジムの一億一千五百万ドルがあるから、差し引けば少いということでありますが、われわれが考えております三億ドル近く——これは今後の模様によりますが、これはエキジムの借款を返した上でそれぐらいの黒字になるという数字でございます。  それで、あとの方の問題でございますが、これは、IMF日本が加入いたしましたときの状況と現在の状況と比べますならば、日本のあるべき姿というものは、もう少し各国に比較して大きくなってもいいのじゃないかという議論もあるわけであります。しかし、これは、実際問題として、各国の増資の話し合い、それからIMF事務当局の研究というものにまかされますので、今から日本だけが特別に増資するということを、はっきり申し上げるわけにはいかぬと思います。
  91. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 この問題はさらに数字をあげてお尋ねいたすべきでありますが、またの機会に伺うことにいたします。わが国の外貨事情の前途というものについて、また先行きの見通しというものについて、十分この点は研究をして明らかにせられたいと考えております。  そこで、特に私がこの際明らかにいたしておきたいことは、経済の見通しと不況対策についてであります。今横山委員等に対する大臣の御意見の中で、たとえば不渡り手形なんかが減ってきているんだから、ことしは去年よりもいいんだというようなニュアンスのある御答弁がございましたけれども、私たちがいろいろと調査いたしております範囲では、全然それとは逆の資料ばかりが出てくるわけなんです。ここに、これまた日経の記事でありますけれども、九月十七日から「不況産業を解剖する」という連載記事がずっと載っております。そのタイトルだけ言いますと、海運、造船がまるっきりひどい。すなわち、ピーク時に比べると、海運界では不定期船が六分の一、タンカーにおいては三分の一の状態である。約三十万トンが係船されようという状態である。から船台というものがどんどんふえていく事態である。効果的な対策がない。造船にそのまま響いてきて、社外工に特に非常なしわ寄せがされてきて、大へんな状態だと言っておる。次には、繊維産業については、もう対策というものは出尽してしまったから、この際思い切った荒療治をしなくちゃだめだ。綿糸以外は採算割れをしている。合成繊維にも操業短縮を行わなければならない事態になってきている。市況が再び暴落してきている。こう言っておる。次に、鉄鋼なんかは、新鋭設備が遊んでおる。だから減産一方よりしょうがないじゃないか。また減産の効果も上っていない。今までの需要の多かった薄板にまでこの不況事態が現われてきている。肥料なんかは相ついで人員整理である。需要の急増は望めない。だから、切開手術みたいなものをやって回生をはかる以外に道はないと言ってきておる。それから、石炭、石油なんというものは、これは大へんなことになって、ガソリンなんか採算を割っておる。石炭も同然、貯炭は非常にふえてきておる。こういう状態で、さらに労働の状態はどういうふうになっておるかというと、これは大へん目立ってきたのは、工場閉鎖と人員整理である。それから賃金の値下げというような形になって現われてきておる。これは皆さん御承知通りであろうと思うが、各健全企業においても、このごろでは逆に賃下げの団体交渉が行われて、これが労働問題の大きな課題となって、センセーションを巻き起しておるわけです。あなた方はおそらくはこの資料は信頼されるであろうが、経団連は、こういうような事態を集約して、こんな統計を発表しております。これは特に大臣に目を通しておいていただきたいと僕は思うのだが、九月二十三日経団連は六月末現在の各産業の操業状態を調べた。これは鉄鋼、石炭など二十九業種について品目別に調べたものだが、なべ底景気を反映して、一部の産業を除いては、軒並みに操業短縮の状態が著しくなってきておる。そこで前よりも今はどんなに悪いかということですね。大臣は去年よりもことしの方がちょっといいように思うと言っておられるが、そうではない統計が現われておる。それは、調査の対象は八十五品目、そのうち七〇%以上の高度の操業率を持っておるものが三十九品目であって、全体の四五・九%である。これが前の三月末の調査のときはどうであったかというと、これは五十五品目であって六四%という状態。これがこんな具合に悪くなってきておるといっておる。それから、操業度が五〇%以下、すなわち月のうち十五日しか働いていない、こういうひどい業種が、品目は十八品目であって、二〇%。前回は十三品目で一五%。要するに不況事態が激化しておるわけです。これは経団連の資料ですから、あなた方は信憑性最も高きものとされるであろうが、そういうわけで、大臣が言われたように、昨年よりも悪くないのだ、だから不況対策は講ずる必要はないのだということは、これらの資料から考えると、これはどうにもそういうような判断は成り立ち得ないと思う。なるほど、水田報告は、この現在の経済状態をさして、これは不況事態ではない、経済の発展における一つの渋滞状態だ、こういう新しい表現をしておられる。そういうようなゆがんだ、また実態に沿わないような見方をしないで、まともに物事を見て、それに適切な施策を講ずるにあらざれば、これは国を誤らしめますよ。経済がこわれてしまえば大へんなことですよ。だから、よかれあしかれ、過去の責任は問わず、現在の状態が悪いならば、やはりそれに対する適切な施策を講ずるということが、政府並びに国会の義務だと私は思う。そこで、適切な施策は何であるか。これはどういうことであるかというと、これは全く予算の組み方とか、あるいは購買力を持たせるための減税措置とか、あるいは輸出を振興するためのさまざまな措置だとか、あるいは財政投融資の繰り上げ支出とか、そういう施策を講じなければならぬのだし、それをやれと言って、われわれはこの国会開会要求をしてきた。その施策とは何ぞやと山本君が言うが、たとえばあの経済基盤強化に関する二百二十一億の金だって、そういう方向に使えということは、われわれが口をすっぱくして言ってきた。ところが、あなたの方は、これは不況事態と認めがたいから、従ってその必要なしということで、ほおかむりで今日に至っておる。三月にそのことを言うたが、あなたの方はやらなかった。だんだんよくなるであろう、横ばい状態であろうと言っておったのだが、ところが横ばいでなくて二重底である。二重底を突き破って三重底であろうと、さらにいわれてきておる。だから、私は、今にして政府並びに国会が、この事態を適切にキャッチして、そうしてそれに対する経済刺激の政策を講ずる、これは必要にして欠くべからざる事柄であると思うのです。大臣は、今までいろいろな行きがかりがあって、とにかくそういう方針はとらぬのだといってやってきておられるけれども、そういう頑迷不遜な態度をとられればとられるほど、わが国の経済が悪化の一途をたどっておる。責任重大だと反省していただかなければならぬ。あなたは、こういうような資料があっても、なおかつこれは不況事態ではないと断言することができるのであるか。この点一つ伺っておきたいです。
  92. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 いろいろ経団連や新聞記事等も引っぱられてお話しになりましたが、私、今の状況が昨年より悪くないとか、いいとか、こういうように全体としての批判をしたことはございません。先ほどの横山君に対して申しましたように、調整の過程において非常な数の産業部門において摩擦を生じておる、これは率直に認めております。しかしながら、それをもって直ちに非常な不況だということは、どうも言い過ぎではないか。こういう面においてはこういうような材料があるのだということを実は申し上げたので、今の経済状況が不振であること、それは別に不況といったってちっとも差しつかえないと思うのです。こういう状態であること、不振といいますか、不況の状態にあることは認めていい。これを否認するものではございません。昨年より今年の方がよりよくなっているなど絶対申したことはございません。ただ不渡り手形の面で見れば、これは必ずしも昨年より件数はふえておらぬとか、金額はふえてはおりませんぞ。また、賃金の面においては、ただいま御指摘になりましたような賃下げ交渉というお話もございますが、これは、人事院の調査等に見ましても、やはり上向いているというか、少しずつふえてきている。あるいは、消費の面においては非常に底力の強いものがあるということを実は申しました。けれども、これはそういうようにいいものもある。悪いものもある。そこで、全体の経済の批判ということが非常にむずかしい。これらの状況から、二、三の産業、たとえば繊維産業そのものをとってみて、これは今操短もやり、給与まで引き下げる、あるいは人員整理をやるとか、こういうことがうわさされておる際に、繊維業がいいなぞと絶対に申しはしません。しかし、ただいま御指摘になりましたものでも、いろいろの見方がある。その後の情勢の推移は別といたしまして、造船業は非常に悪いと言われる。これはいわゆる造船ブームといわれたその時期に比べれば、今の造船業界がいいとは私申しませんが、最近の情勢で、外国からの造船の注文もぼつぼつまた始まっておる。こういうことを考えてみますと、今そこに書いてある通りの状況でもない、こういうことが言えると思います。あるいは、鉄鋼関係について薄板までストックがふえた、こういうお話がございますが、同時にまた、最近の関西の鉄鋼四社などは、やはり増産計画を立てておるという新聞記事も出ておる。あるいはセメントそのものについては最近需要がふえておる。こういうことで、それぞれの産業には、産業のそれぞれの特殊性というか、事情を異にするものがあるので、これを一がいに、経済全般が不況だ、それでこれに対して対策を立てろという言い方には賛成できないということを実は申し上げている。私どもは、この調整の期間内において、各種産業に生じておるいろいろの摩擦面であるとか、やや不振の状況のものに対しては、それぞれ応急の処置を講じてきている。総体といたしましては、三十三年度予算編成の際に一応考えた線を実施することで、まず一応しんぼうができるのじゃないだろうか、こういうのが私どもの見方であります。ことに労働の面における点等については、そういう見方をしておるのであります。従いまして、これは、いろいろただいま御指摘になりましたような材料もございますし、その材料を私頭から否認するものではない。しかし、私は、いい方の材料だけ取り上げて、お前は非常に楽な見方をしておるのじゃないか、こういう非難は必ずしも当らないことも、一つ御了承いただきたいということを申し上げておるのでございます。
  93. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 恐縮ですが、時間がございませんので、私もできるだけ簡単にやりますから、大臣もできるだけ簡単に……。  あなたは本年度予算の原案を執行する形において云々と言っておられるけれども、経済というものは生きているのだから、生きたものに合せて政策をこらしていかなければならない。現に、三十二年度なんか、予算を立ててみたって、その通り実行できなかった。だからこそ、七月に、対外収支の逆調克服のための総合金融政策なんかやって、財政投融資を大幅にぶった切ったりしている。だから、予算が組んであるからといって、それに拘泥して、あえてそれに対する補正追加をやらないということは、適切なものではないのです。やはり、経済の実態に合せて、国民生活の現状に合せて、その当初予算というものによって弁じ切れないような事態が起きてきたら、それに合せて政策を組んでいかなければならないし、われわれが今こそその施策を講じなければならぬということは、繰り返し繰り返し主張してきているが、その問題は短時間で解決ができない。それならば、景気対策について池田さんがこんなことを言っていますよ。これはどうしても何とかしなくちゃならぬ、こういうことが前提になるのだが、大臣のようなことはおっしゃってはいないのだが、そこで、景気挽回策として、少くとも金融行政からこんなことをやってみてはどうか、やるべきだと言っているのは、預金金利を引き下げて、貸出金利を引き下げて、投資活動を刺激しよう、こういうことを言っておられる。これはあなたの所管に属する事柄であるが、預金金利を引き下げて、貸出金利を引き下げて、そうして事業家たちの投資活動を刺激するような適切な施策を、これは予算を伴わないと思うのだが、こういうことはお考えになっておるかどうか。あるいはこの池田構想に対するあなたの所見は何であるか、この際お伺いしておきます。  それから、もう一つ、それについてこういう増資免税復活論を提唱しておられますね。すなわち、自己資本を充足するために、増資の場合の免税を復活して、そうして自己資本充実のためにそういう方向に窓口を開こうとしておられる。新しい提唱をなされておるが、この二つに対するあなたの所見を伺っておきたい。
  94. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 これは簡単にとおっしゃいますが、なかなかそう簡単に答えかねます。先ほどの議論にもありましたように、やはり事業については金利が大きな問題である。負担である。これはもう御指摘の通りであります。過去におきまして公定歩合を二回にわたって下げて参りました。同時に、市中の貸し出しの金利もそれに追随して参っております。大体低金利の方向に向っておる。一面に、預金の金利は、貯蓄奨励という観点に立ちまして、金利を上げている。銀行の採算という点にもその限度がある。それにだんだん近づきつつある。こういうところから、一面で預金金利も下げ、さらに貸し出しの金利も下げたらどうか、これも私はりっぱな意見だと思います。直ちにこれを実施するという意味にはとっていただいては困りますが、これはりっぱな意見だと思います。今日私どもが採用いたしておりますものは、一面において貯蓄奨励もしておりますし、また金融の金利を国際金利水準にさや寄せさせるという基本的な考え方も持っております。この意味から申しますならば、日本の貸出金利が高い、そうしてそれが、一面において、その……。
  95. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 解説は要りません。池田構想について反対かどうか。あなたも飛行機に乗らなければならぬようだし、私だって用事があるのだから、短時間でやらなければなりませんから、解説は要りません。
  96. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 きょうは乗りません。
  97. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 なるべく簡単に願います。
  98. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 従いまして、今申しましたように、池田構想というものは実にりっぱな意見だということを実は申し上げております。
  99. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 だから、それをやるかやらないか。
  100. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 直ちにやるということは、必ずしも今日やれとまでは言っていないだろうと思います。これはやはり全部の準備というものが必要でございます。
  101. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 積極的に下げさせて、経済活動に刺激を与えるべきであるという考えを言っております。これは景気対策として言っておるんですね。
  102. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 ただ、時期的な問題としては、今日直ちにということは無理だろうと思います。これは過去において公定歩合を二回下げてきた。市中金融もこれに追随してきている。こういう状況でございますので、いましばらくこの経過を見させていただきたい、この考え方はそういう意味でございます。  第二は、増資減税。事業の資本構成という観点に立ちまして、私どもいろいろ工夫をいたしておるのでございます。これは、今日本の産業の弱さというか、この点では内部蓄積が非常に少いということ、概して申せば、おそらく自己資本によるものが三〇%、七〇%は金融によっておる、こういうふうに申してもいいかと思うような事業経営をしておる。こういう意味で、やはり事業を強化する、資本蓄積を強化する、こういう方向で指導していかなければならないと思います。今日ただいまいう増資減税というか、資本減税というか、こういうようなことも一つの案だと思いますが、これは、一つだけ取り上げて、それを直ちに実施するということは、なかなか困難なことでございます。長い間の日本経済のしきたりがございますので、これこそほんとうに腰を据えて十分検討して参る、そうして各方面から結論を出すべきことじゃないか、こういうように思います。幸いにしてただいま税制の問題と取り組んでおりますから、そういう意味で、この問題も、実施をお約束するわけではございませんが、もちろんその検討の対象になっておるということは申し上げ得ると思います。
  103. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 池田さんは現岸内閣の閣僚の一人であり、特に大蔵行政についてはベテランであることは自他ともに許されておる人なんであります。この人が、打開策としては、次の景気回復政策を早急に実施し、国民総生産の増大をはかるべきである、こう言っておるのです。こういうことも考え方の一つだといって、一つのプリンシプルを持たしておるのではない。これを早急に実施して、そうして国民総生産を刺激して、景気の回復をはかるべきだということを、あなた方の内閣の閣僚の一人であり、あなたの前任者であられるこの人が言っておられるのです。だから、あなたは、こういう提示されておるところの構想に対して、賛成であるか、反対であるか、これをお伺いをしておるのです。私は、せっかくの機会だから、これをあなたから伺って、池田さんはこう言っておるし、あなたはそれに反対するなら反対でいいんだし、賛成ならそういうふうになると国民は期待を持とうし、そういう方面から景気回復のいわゆる不況対策というものも、われわれが要求するがごとくには講じられないけれども、他の側からかくのごとくに手が打たれているのだという希望も持てる。何にもやらないのか、何かやるのか、これだけでもわかると思うのです。だから、池田さんが言っておられるように、これは早急に実施すべきだというこの考え方に対する現所管大臣の所見は何であるか、これを一つ端的に述べられたい。
  104. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 実施については慎重でございます。
  105. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 春日君、もう大体議論は白熱しておりますし、時間でありますから、簡単に願います。
  106. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 これは、誤解を与えますから、一つだけ聞いておきたいのです。私は明年度税制改正の構想などについて伺いたいと思っておったが、時間がないから、この点だけを明らかにしてもらいたい。あなたの横山君に対する答弁では、明確であったようで、かつないのだか、それは重油税とガソリン税、これは増徴する方向で研究をしておるとおっしゃいました。すなわち、これは増徴するということについては、大体あなたの考え方、大蔵当局の考え方は決しておるものかどうか、これが一点。それから、売上税は、方向を、かけるともかけないとも今のところきめていないと言われたのです。この問題について、たしか九月の十七日だったと思うのだが、河野さんが岐阜へ来られて、そこで記者会見をされ、そこで発表されておるところによると、減税公約した自民党がここに増税をやるなんということはとんでもないことだ。従って、売上税なんかはもってのほかだという見出しで、これは記事になって全国に知れ渡っておるのです。それで、方向をきめていないということと、総務会長であるところの河野さんのもってのほかだという言葉とは、だいぶ実体が違うと思う。それはもってのほかであるのか、それともかけるかもしれないが、かけないかもしれないというような状態なのか、どっちがほんとうなのか、この点だけ明確に——国民は売上税をかけられるのじゃないかと非常に疑心暗鬼になって心配しておるから、方向がきまってないのか、それとも河野さんのもってのほかなのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  107. 佐藤国務大臣(佐藤觀次郎)

    佐藤国務大臣 第一段の揮発油税、軽油税、これは増税の方向で取り上げておるということでございます。  第二段の売上税という問題は、実はそういう質問を受けることすら私ども意外に思っておるので、私どもの頭に全然そういう問題が彷徨しておらぬということを実は申し上げておる。ただ一部においてそういうことを言っておる人があるという状況であります。それでおわかりだと思います。
  108. 春日委員(春日一幸)

    ○春日委員 それでは最後にしますが、あなたに伺うことができないので非常に残念だが、私は、これだけのことを、次の委員会までに、責任者から明確に調査の上、一つ本委員会において御報告を受けて、質問をいたしたいと思います。  それは、北国銀行のから荷証券に対する擬装融資、これは銀行局において当然おあずかりになっておると思う。これは刑事事件にまで発展して、目下検察当局において調査中であろうと思うんだが、さきにも千葉銀行事件があり、今回は北国銀行事件があり、こういう不正融資が行われたということはきわめて遺憾である。丸益に小さい銀行から十四億の不正融資をしておるということは、これは金融機関の性格から考えて私は断じて許すべからざることだと考えている。ほんとうに検査権が厳粛に行使されておるかどうか疑わざるを得ません。従いまして、この北国銀行のから荷証券事件というものがどういうことになっておるのかということの真相を明らかにして、預金者の不安を一掃するために、厳粛な態度をとってもらいたい。  それから、もう一つは、例の証券の名義貸しの問題です。これは大きな脱税を伴って、これまた大きな刑事事件になっておる。これはその後大蔵省は一体どういう工合に取り扱っておるのであるか、かつまた国税当局はこの脱税に対してどういうような執行を行なったか、これを明確にして、一つ御調査の上、次の委員会において御報告を願って、それに対して私の質問をさせていただきたい。  以上で私の質問を終ります。     —————————————
  109. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 次に、小委員会設置の件についてお諮りいたします。先刻議長において承認になりました国政調査の各事項に関する調査のため、税制並びに税の執行に関する小委員会金融及び証券に関する小委員会国有財産に関する小委員会及び専売事業に関する小委員会の四小委員会設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  110. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、設置するに決しました。  なお、各小委員の員数はそれぞれ十名とし、小委員及び小委員長の選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  111. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  では、追って公報をもって小委員及び小委員長を指名いたします。  また、小委員及び小委員長の辞任並びに補欠選任等につきましても委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  112. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  本日はこの程度にとどめ、次回は来たる七日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後五時十七分散会