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佐藤国務大臣 財政投融資の原資の問題は先ほど正示君が
お話しした
通りでございます。私
どもただいまあります手元で今日の状態に対処して参る考え方でございます。ただいま直ちに変更するとか、こういう段階ではないように思っております。
次に、景気の見方でございますが、これは、もう、本
会議等におきまして総理あるいは企画庁長官等もお答えいたしたように、
皆様方は、大
へんな不景気だ、従って不景気に対する対策を早急に立てろ、こういう御主張でございますが、私
どもは、在来から御
説明申し上げておる
通り、今日の景気不振の状態は調整の
期間のズレだ、こういう見方をいたしております。なるほど、この調整の
期間におきまして、二、三の業種において非常な摩擦を生じておることは、事実そのものでございます。しかし、この状態を直ちに取り上げて、経済全般が非常な不況だから、これに対する特別な対策を立てろ、こういうような結論には、不幸にして私
どもは皆様と同じような意見を持つことができないのであります。と申しますのは、なるほど各産業の面におきまして調整の段階に入ってはおりますものの、わが国の経済を非常に強くささえておる農産物の面におきまして、ことに米自身が非常な増産である。これは、天候に恵まれた、あるいは
政府の施策と相まってよくなったというような議論もございますが、とにかく、
現実の問題といたしまして、農村の面においては調整が強く響いておらない。他の産業の面、たとえば繊維
関係のように非常な調整段階で操短をやっておるというようなことが指摘されますが、農村の面においては比較的そういう点は薄いとか、あるいはまた、第三次生産部門等におきましては、依然として同じような、これもあまり調整というものを受けないで済んでおる。あるいは、給与水準そのものも、程度は非常に大きくはないにしろ、とにかく給与水準もふえておる。こういう事柄が、消費の面において、都市、地方を通じて依然として底固いものがある。こういうことがいわれておるゆえんでございます。こういう点を勘案して参りますと、景気そのものが全面的に非常に不況のどん底にある、こういうような見方には私
どもはならない。ことに、今御指摘になりました失業の状況にいたしましても、三十三
年度予算を想定いたしました際に、失業者六十五万人ベースということであの
予算案は組まれたと思いますが、今日まで非常に失業者がふえた、ふえたといわれますが、その想定されたべ一スから見ますと、まだ開きがある。先月に対して今月は二万人ばかり減っておる。あるいはまた非常にやかましくいわれて参りました倒産件数が非常に多いとか、こういうようなことも、あるいはまた不渡り手形の件数が非常にふえたとか、あるいは
金額な
どもどんどんふえてきておるとか、このようなことを考えますと、これらの点は前年同期に比べましても、やや件数あるいは
金額等も減少しておるような状況であります。こういうような各方面の材料をそろえてみますと、これはいわゆる全面的な不況という
言葉にはあるいは当らないかわからない。しからば、一部言っておるように、非常な好況にこれが向うようないい材料があるのか、こういう点でございますが、この点におきましては、これという非常にいい材料があるとも実は考えられません。考えられませんが、ただいま
お話しになっておりますアメリカの景気そのものは一体どうなのか。もうすでに金利の引き上げの方向に実は行っておる。ボストン連邦準備銀行が
最後までがんばっていたようですが、これも最近全面的に引き上げの方向に行っている。むしろインフレに対しての警戒気がまえだということがいわれている。これが、そのうち、おそらく響いてくるだろうと思います。あるいはまた、輸出の面におきまして、なるほど
金額こそ所定の三十一億五千万ドルには達しておりませんけれ
ども、数量的に見ますならば、必ずしも悲観すべき筋ではない。これなどは国際物価の低落の結果だといえると思います。ことに、最近になりまして、電気
関係その他においてやや増産の傾向も出て参っておる。こういうことなどを考えて参りますと、いわゆる二重なべ底にあるとか、こういうような危険はまずないのではないか。とにかく、ただいま御指摘になりました農村であるとか、あるいは中小企業であるとか、零細企業であるとか、そういうものが非常な重圧を受けて、大企業だけが特別な資金的な援助を受けて、そうしてこの不況を乗り越えているのではないかという御指摘に対しては、私は、先ほど来申し上げるような材料から、必ずしも全面的に賛成するわけにいかない。私
どもの見方では、今後どうしても輸出もさらに進めて参るし、そうして生産を上向きの方向に持っていきたい、こういう努力を実はいたしておる最中でございます。
さきに公共事業費の繰り上げ使用というような問題もきめまして、これな
ども現実に工事そのものが非常に繰り上げられて進んでおるかどうか、いろいろ
検討もいたしておりますが、これはむしろ支払い
方法として、私
どもが特に取り上げたもの、そういう効果はただいま出ております。しかし、最近になりまして、セメントあるいは木材等の面においては、あるいはこれが好影響を与えてはいないかとも思うし、あるいは、工事労働の面におきましては、やや就労
関係等においては好影響を与えておるのではないかと思います。あるいはまた、金利を、公定歩合が二回にわたって引き下げられたこと、さらにまた散超の時期に入っておるとか、これなどは、ただいまの
金融の面から見ましても非常に苦しんでおる産業面に対してはやや好影響を与えておるのではないかと思います。しかし、こういうことだけで事態を推移するわけにはいかないと思います。先ほど来いろいろ
お話のありました、来
年度予算編成に際し、
一般会計の編成であるとか、あるいは財政投融資の資金の確保であるとか、また
金額の盛り方であるとか、こういうものを、今後の経済の動向に合わして、やはり私
どもも取り組んでいかなければならない。そういうことによりまして、やはり経済は二重のなべ底だというような状態はもう脱したい、どうしても苦しい状態から生産拡大、増強の方向へ持っていきたい、こういうことでせっかく努力いたしておるのであります。今日までいろいろの議論が行われております。在庫の面の議論につきましても、今日までのところは、在庫調整を進めるという意味で、在庫を減らす、こういうような考え方で、輸出を進めたり、あるいは設備投資に対して手控えをしたりいたして参りましたが、過去の設備投資などまことに大きいものがありますので、そう簡単に短
期間のうちにこれがとまるものとも考えられません。今日なお継続的なものが見られます。また、生産在庫の面も、少し在庫の減りが生じますれば、そのつど今度は生産の方の操短をできるだけ緩和するとか、こういうような
方法で、その調整そのものはまあ横ばいの状況にあるように私は見ますが、しかし、この横ばいをしておる
期間中においても、経済そのものは成長いたしておりますので、そういう見方をすると、この横ばい自身はやはりある程度の在庫調整の効果も上げておるのだ、こういうようなこともいえるのではないかと思います。もちろん、私は、アメリカの景気の転向、これが三ヵ月前からあるいは四ヵ月前ごろからいわれておる。その状況から見まして、もうそろそろ
日本に響いていいのじゃないか、こういうような議論もございますが、それは別といたしまして、今日の
日本の経済の姿そのもの、実態を見て、現状で楽観は絶対にいたしませんが、同時にまた、非常に悲観し、そうしてここに特別な積極的な刺激策をとる、こういう必要までは痛感をいたしておりません。労働
関係の
予算等におきましては、この就労といいますか、雇用の面の摩擦が一番大きな政治上の問題であり、社会上の問題であり、経済上の問題であることは、よく私
ども承知いたしておりますので、特にこの点には留意をいたしておりますが、これは、幸いにして三十三
年度予算編成当時に一応想定されたような線をたどっておる、こういうように見ておるのでございます。問題は、次の
予算編成に際しまして、来年想定される経済情勢に対応するようなものを何としても作り上げたい、こういう考え方でございます。