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1958-10-21 第30回国会 衆議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十一日(火曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 加藤 鐐造君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡本  茂君       鹿野 彦吉君    加藤 高藏君       木倉和一郎君    坂田 英一君       始関 伊平君    關谷 勝利君       中村 寅太君    野田 武夫君       野原 正勝君    濱田 正信君       細田 義安君    山手 滿男君       渡邊 本治君    板川 正吾君       井手 以誠君    今村  等君       内海  清君    大矢 省三君       勝澤 芳雄君    小林 正美君       鈴木  一君    堂森 芳夫君       水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁保安局         長)      原 文兵衞君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 小出 榮一君         通商産業事務官         (鉱山局長)  福井 政男君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      小岩井康朔君  委員外出席者         議     員 赤路 友藏君         総理府事務官         (自治庁財政局         理財課長)   山野 幸吉君         通商産業事務官         (石炭局長)  樋詰 誠明君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十月二十一日  委員水谷長三郎君辞任につき、その補欠として  井手以誠君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十月二十日  小売商振興のための法律制定に関する請願(内  田常雄紹介)(第六五三号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第六五四号)  同(中井一夫紹介)(第六五五号)  同(西村英一紹介)(第六五六号)  同外一件(林讓治紹介)(第六五七号)  同外一件(山崎巖紹介)(第六五八号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第七一八号)  同(岡崎英城紹介)(第七一九号)  同(田中彰治紹介)(第七二〇号)  同(田中龍夫紹介)(第七二一号)  同(高瀬傳紹介)(第七二二号)  同(高橋清一郎紹介)(第七二三号)  同(竹山祐太郎君外一名紹介)(第七二四号)  同(津島文治紹介)(第七二五号)  同(福田篤泰紹介)(第七二六号)  同(増田甲子七君紹介)(第七二七号)  同(山下春江紹介)(第七二八号)  同(山本猛夫紹介)(第七二九号)  同(世耕弘一紹介)(第七七〇号)  同(田口長治郎紹介)(第七七一号)  同(塚田十一郎紹介)(第七七二号)  同(平井義一紹介)(第七七三号)  同(平野三郎紹介)(第七七四号)  水質汚濁防止に関する特別法制定に関する請願  (石山權作君紹介)(第六六一号) の審査を本委員会に付託された。 十月十七日  日中貿易促進に関する陳情書  (第  一三四号)  公害防止策樹立に関する陳情書  (第一五九号)  小売商振興のための法律制定に関する陳情書  (第一七一号)  三重県伊勢湾臨海工業地帯東海製鉄所誘致に  関する陳情書(第  一七二号)  輸出振興に関する陳情書  (第一七三号)  繊維工業及び陶磁器業振興に関する陳情書  (第一七四号)  繊維産業不況対策に関する陳情書  外二件(第一七  六号)  探鉱奨励制度拡充強化等に関する陳情書  (第一七七号)  普通輸出保険制度とその運用改善に関する陳情  書(第一九三  号)  工業用水道事業に対する国庫補助増額等に関す  る陳情書(第二一一号)  日中貿易正常化に関する陳情書  (第二三五号)  水質汚濁防止法制定に関する陳情書  (第二三七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  水質汚濁防止法案赤路友藏君外四十六名提出、  衆法第三号)  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三号)  鉱業法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四号)  自転車競技に関する件      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  去る十月十七日付託になりました赤路友藏君外四十六名提出水質汚濁防止法案議題とし、審査に入ります。  まず趣旨説明を聴取したいと存じます。提出者赤路友藏君。
  3. 赤路友藏

    赤路友藏君 ただいま議題となりました水質汚濁防止法案につきまして、その提案の理由を御説明申上げます。  申上げるまでもなく、水は国民生活にとって最も重大な関係を持っており、水質管理が正しく行われるかいなかは、国民の生存と産業発展にとって、絶大な関係を持っております。国民福祉のためには、飲料水清浄にして病源菌及び有毒物質を含まず、魚貝は良好な生活環境を与えられ、農作物は良質の灌漑水に恵まれるよう管理されねばなりません。工業発展もまた、良質工場用水を得るかいなかによって左右されること論を待ちません。  しかるに、国民の繁栄と福祉にとって至大な関係を有する水質管理重要性がほとんど無視され、公共用水域汚濁するにまかせられているのがわが国の現状であります。ことに、戦後の都市人口の飛躍的な増大、各種鉱工業の急激な復興発展に伴い、これら関係施設から排出される汚水廃水等の量が著しく増大し、農水産業はもとより、公衆衛生に及ぼす被害が激増し、これら廃水等放出をめぐる紛争が年と共に激化していることは、最近発生いたしました本州製紙問題、富士フィルム工場汚水放出による酒匂川のアユ全滅問題を初め幾多の事件が示す通りであります。  以上のように、水質汚濁に基く被害が続出し、それにかかる紛争が激化するにつれ、水質汚濁防止並びにこれにかかる紛争解決の急務が痛感されるに至ったのであります。この法案は、このような事態にかんがみ、水質管理を実現し、公共用水域における水質汚濁防止するとともに、工場事業場から排出される廃液等にかかる紛争に関し、あっせん調停及び仲裁を行うことによって公衆衛生向上水資源及び水産資源保護をはかり、あわせて工場事業場から排出される廃液等にかかる利害関係者間の利害の調整に資することを目的として立案いたしたものであります。  内容を簡単に御説明申し上げますと、まず第一に、効果的に水質汚濁規制を行うために次のような措置をとることといたしております。 (一)公共用水域のうち、公衆衛生向上水資源及び水産資源保護の見地から水質清浄を確保する必要がある水域を、その水域汚濁に密切な関係を有する地域とともに、水質汚濁規制区域として指定することといたしております。 (二)水質汚濁防止委員会は、前項規制区域を指定いたしましたときは、関係行政機関の意見を聞いて、当該規制区域にかかる水質汚濁許容基準を定め、これを官報で公示せねばならないことといたしました。同時に、規制区域にかかる水質汚濁許容基準を定めたときは、水質汚濁防止委員会は、当該許容基準に基いて当該区域内の工場事業場水質汚濁防止委員会規則で定めるものから、規制区域内の公共用水域に排出される廃液等汚濁度許容基準及びその適用期日を定め、当該工場事業場事業主指示するとともに、これを公表しなければならないことといたしております。 (三)前項指示に不服がある場合はその指示を受けた日から三十日以内に、委員会規則の定める手続に従い、異議の申立をすることができることとし、申立があった場合は、水質汚濁防止委員会は、申立のあった日から三十日以内にこれについて決定し、これを申立人に通知せねばならぬことを規定いたしております。 (四)この法律規定により廃液等許容基準が定められた工場事業場主は、廃液等許容基準適用期日以後は、当該廃液等許容基準をこえて廃液等規制区域内の公共用水域に排出してはならないことといたしました。そして事業主がこの項の規定に違反したときは、当該事業主に対し、期間を定めて除害施設設置又は改善その他の措置をとるべき旨を命ずることができることを規定いたしました。(五)水質汚濁防止委員会は、前項命令をする場合、廃液等による被害がとくに著しいと認めるときは、当該事業主に対し、同項の命令にかかる措置がとられるまでの間、事業の全部または一部の停止を命ずることができるようにいたしております。(六)規制区域内において、委員会規則で指定する事業新規に開始しようとするものは、あらかじめ、その廃液等処理方式につき水質汚濁防止委員会許可を受けなければならないことといたしました。従って、これらの事業主は、その許可を受けた後でなければ、その事業を開始してはならないわけであります。(七)清掃法下水道法その他、この法律に含めることのできなかった法律並びにこれらの法律実施するための命令実施を所掌する行政庁は、法令の規定により、規制区域にかかる廃液等の排出を許可し、命令しまたは、制限しようとする場合は、当該規制区域につき定められた水質汚濁許容基準によらねばならないことといたしました。この規定にもかかわらず、なお、規制区域内において、水質汚濁許容基準に適合する水質を確保するため必要があると認めるときは、水質汚濁防止委員会は、行政庁に対し、必要な措置をとるべき旨を請求することができることもあわせて規定いたしました。  第二に、パルプ工業製紙工業繊維工業澱粉工業醸造業その他、その事業の性質上有害な廃液汚水または固形物を排出する事業で、別に法律で定めるものの工場事業場事業主は、その業務上排出する廃液汚水または固形物によって他人に損害を与えたときは、その損害を賠償する責めに任ずることとし、いわゆる無過失賠償について規定いたしました。  第三に、紛争処理についてでありますが、次のように規定いたしました。(一)まず、あっせん調停についてでありますが、工場事業場から排出される廃液等による被害に関して紛争が生じたときは、関係当事者は、委員会規則で定める手続に従い水質汚濁防止委員会に対し、紛争解決につき、あっせんまたは調停申請することができることとするとともに、右申請があったときは、委員会当該紛争解決につき、あっせんまたは調停をしなければならないことといたしました。あっせんまたは調停は、当事者の一方の申請によっても行いうるようにいたしたわけであります。  なお、あっせんまたは調停は、委員会規則の定めるところにより、その指定する水質汚濁防止委員会委員もしくは特別委員または水質汚濁防止委員会事務局の職員がこれを行うこととなっております。(二)仲裁申請は、双方の合意によらねばならないこととなっております。これは、水質汚濁防止委員会の行う仲裁については、この法律に別段の定めがある場合を除いて、仲裁委員仲裁人とみなして民事訴訟法第八編の規定を適用することとし、その効力を一段と強めることといたしたことによるものであります。  なお、水質汚濁防止委員会による仲裁は、三人の仲裁委員がこれを行うこととし、そのうち少くとも一人は、弁護士法第二章の規定により弁護士となる資格を有する者でなければならないと規定されております。仲裁委員は、水質汚濁防止委員会委員または特別委員のうちから選ばれることになります。  第四に、以上の主務官庁として、国家行政組織法第三条第二項の規定に基いて、総理府の外局として水質汚濁防止委員会設置することにいたしました。そしてこの委員会が強力な水質管理機能を発揮することができるよう、現在関係各省に分有されております水質管理汚水防止に関する権限をできる限りこの委員会に統合することといたしました。なお、この委員会には強力な事務局を置き、全国八ブロックに地方事務所を、置くことになっおります。  第五に、水質汚濁防止の完璧を期するため、除害施設に対する助成を行うことといたしました。すなわち、国は、規制区域内の工場事業場事業主に対し、当該工場事業場除害施設設置または改善に要する経費の一部を補助し、または当該設置または改善に要する資金の融通についてあっせんをすることができるよう規定するとともに、他方で地方税法及び租税特別措置法の一部を改正して、除害施設に対する固定資産税の免除及び除害施設に対する特別償却措置規定いたしました。  第六に、この法律の厳格な実施を保証するために、罰則を規定し、正直者がばかをみることのないよう配慮いたしました。  以上が、本案提出するに至りました理由及び法案内容説明であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願いいたします。
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 以上で趣旨説明は終りました。なお本案についての質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 鉱山保安法の一部を改正する法律案及び鉱業法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。渡邊本治君。
  6. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 鉱山保安法の一部を改正する法律案について二、三簡単に質問いたしたいと思います。  まず第一は第二十五条の三であります。「被災者救出するため必要があると認めるときは、鉱業権者に対し、必要な措置を講ずることを命ずることができる。」となっておりますが、これは炭鉱災害が起った場合、この規定によって命令いたしましても、鉱業権者が十分な資力がないために、鉱業権者のみの力をもってしては救出が不可能の場合は、政府行政代執行法によって代執行するという御説明でありました。そこでこの命令規定は必要な措置を講ずれば死亡を免れしめると考えるときにのみ適用するのか、それとも明らかに死亡しておると思われる場合にも適用することが考えられるのかということであります。  実は御承知のように、昨年十一月に起りました東中鶴炭鉱災害は、十八名の罹災者を出したのでありまするが、今日に至ってもいまだ救出されていないという、まことに気の毒な実情にあるのであります。このような場合については、この規定による命令、さらには政府行政代執行が考えられるのかどうか、お伺いいたします。
  7. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 鉱山に天災が起りました場合には、その全責任鉱業権者にあるのでございまして、当方の考え方といたしましては、すべての災害に伴います跡の始末は、鉱業権者に全責任を持ってもらっておるわけです。しかし鉱業権者が非常に経済的に微力でありまして、人員につきましても資材につきましても、あるいは技術的な方法につきましても十分でない場合がございます。かような場合に、鉱山保安監督部長命令をいたしまして、被災者救出に、万全を期したいというのが今回の命令趣旨でございます。ただいまの御質問のように、もう罹災者がはっきりなくなってしまっておる、こういうような場合には、もちろん鉱山保安法の一番大きな目的は人に対する危害防止でございます。鉱山労働者危害防止するということが一番大きな建前になっておりますので、もうすでにはっきり死亡してしまっておるということがわかっております場合には、この保安法内容で扱うことは不適当かと存じますので、死亡のはっきりした場合には適用いたすことは考えておりません。
  8. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 去る七月われわれ商工委員国政調査九州班は、東中鶴炭鉱に参りまして遺族方々をお見舞したのでありますが、その際遺族方々は、国の力でも一刻も早く救出してもらいたい旨の陳情があったのであります。通産大臣も現地を見舞われましたので、その際同様な陳情を受けられたはずであります。またさきに参議院の社会労働委員会において、国費をもっても救出すべきであるという決議がなされたと聞いております。私は東中鶴炭鉱災害のように、坑内事情がきわめて悪いために救出作業に非常な困難が伴い、従って救出には数カ月あるいは一年以上もかかるような事例は、きわめてまれな例であると思うのであります。従いまして政府においても、このような特例については、人道上の立場からも、何らかの方法によって援助する必要があると思うのであります。この改正案が成立しました際、東中鶴炭鉱災害について行政代執行ができるよう運用されるか、あるいは本法によらなくても予備金の支出を認めるか、何らかの方法によって熱意を持って処置されるよう切に望むものでありますが、本問題についての政府の御見解を承わりたいと思います。
  9. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 東中鶴炭鉱の場合におきましては、先ほど申し上げましたと同様に、非常に災害の規模が大きいために、現在の租鉱権者においては十分な始末がつきかねておるのであります。そこで私ども最善方法をとりまして、実は災害が起りまして一、二カ月租鉱権者が手を上げておった。そこで親権者であります大正鉱業に相談いたしまして、現在の租鉱区内の稼行の炭層を増してもらいまして、従来の契約に入っておりません炭層を現在採掘しながら収容作業を続行いたしておるわけでありますが、非常に日数がかかりまして、現在まだ三分の一程度の取上げでありまして、まだ相当の日数がかかる点については非常に残念に考えておりますが、いかんせん取上げ作業が非常に困難をきわめておりまして、現在三交代で取上げ作業は続けております。しかしまだ相当日数もかかることではありますけれども建前といたしまして鉱業権者に全責任を持ってもらって、でき得る限りこの方向に沿いますように、政府としては最善の努力をいたしておるつもりでございます。稼行炭層の掘れるようにいたし、なお技術的その他の面においてもでき得る限りの援助をいたして、鉱業権者責任において、できる範囲内の最善を尽して参りたい、かように考えております。
  10. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 次に古洞図整備についてお伺いいたします。昨今頻発しております炭鉱災害は、古洞にぶち当り出水したものがほとんどであります。北九州、ことに筑豊炭田古洞が網の目のように、しかも幾重にも重なり合っている状態であります。すべての炭鉱古洞にぶち当る危険にさらされていると申しても過言ではないのであります。従いまして古洞所在を明らかにすることが、炭鉱災害防止上最も必要な課題となっておるのであります。特に中小炭鉱は、明治以来鉱業権者が何代も変り、鉱業権の移転に際しましては、鉱区を高く評価して売買するために、すでに採掘したところも故意に坑内図を抹消することが往々にして行われたと思うのであります。しかも福岡通産局に保管されていた古洞図は先年の火災によって焼失しており、このため今日古洞図所在は全く不明のまま放置されておるのであります。従いまして施業案自体不満足な内容のまま認可されているような現状であります。施業案通り採掘いたしましても、古洞にぶち当る危険がある実情でございます。これを業界に調査させることは、資金的にもまた技術的にも不可能であると思うのであります。従って政府所要予算措置を講じて、早急に古洞図整備をはかる必要があると、切に思うのであります。この点通産省はどのような対策を考えておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  11. 樋詰誠明

    樋詰説明員 古洞調査につきましては今のお説の通りでございまして、私どももできるだけすみやかに古洞連絡図を完成いたしまして、災害防止に努めたいと思っております。とりあえず本年度といたしましては、現在の予算の中から二百万円の流用を大蔵省との間に折衝いたしまして、ほぼその了解を得ております。さしあたりは各鉱山が持っております原図を全部出させまして、それとの照合調査といったようなことから始めなければなりませんので、とりあえずは本年度二百万円の予算を流用して原図を出させ、そして調査照合ということから発足いたしますが、来年度は二千八百万円、再来年度は二千三百万円、合計いたしまして、大体三年間、二年半でございますが、三年度にわたりまして五千三百万円の予算によりまして、原図照合から調査科学的測量をいたしまして、一応完全な古洞連絡図を作ることによって、災害を未然に防ぎたいと考えております。
  12. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 次に鉱害復旧について簡単に伺っておきたいと思います。  御承知のように、現在臨鉱法によって鉱害復旧が行われておるのでありますが、本法制定の際は十年間に百十億円の鉱害量復旧を計画いたしていたのであります。しかしながら本年度まで六年間にわずか五十億円の復旧しか達成されない見込みとなっておるのであります。このようなテンポではあと四年間に六十億の復旧工事が達成されることは、まことにおぼつかないと思うのでありますが、通産省はどのように考えておられるのか、お伺いいたします。
  13. 樋詰誠明

    樋詰説明員 現在の臨鉱法は御承知のように三十七年で終ることになっておりますが、われわれといたしましては鉱害を完全に復旧するということを理想として、この鉱害時限法制定して運用しているわけでございまして、できるなら、この期間内に現在残っております五十億ばかりの鉱害は全部片づけたい、そう思っております。しかし政府といたしましては、これはさらに先のことでございますが、臨時法でなしに、むしろ恒久法というようなことにこの法律を切りかえるというようなことにつきましても、当然考えるべきではないか、そういうふうに先の問題としては思っております。しかしとりあえずは現在の法律存続期間中に、現在残っております鉱害については、できるだけ片づけるということで、所要予算措置等についても大蔵省と折衝いたしまして、できるだけすみやかな復旧ができるようにしたいと考えております。
  14. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 本年度より飛躍的な予算の増加を実現してもらわなければなりませんが、今後の予算獲得につきまして、通産大臣は強い決意を持って鉱害被害者の期待にこたえるよう努力されんことを強く要望しておきます。さらに将来の鉱害対策でありますが、臨鉱法によって百十億円の鉱害復旧しましても鉱害がなくなるのではありません。毎年々々復旧するあとから新たな鉱害が発生しているのであります。人によっては年間十億円といい、また六億円といい、新規発生量の推定はまちまちでありますが、とにかく鉱害石炭採掘がある限り起るものと考えなければなりません。従いまして恒久的な立法措置が必要であります。現在の臨鉱法は三年後には廃止されることになっておりますので、臨鉱法改正あるいは単独の恒久立法制定について考えなければならない時期が来ておると思うのであります。現行臨鉱法は施行上いろいろ不備な点があります。鉱区境鉱害復旧の問題とか、破断角に関連する認定の問題とか、紛争が絶えないのであります。恒久的な立法制定する際はこれらの欠陥を補い、実情に即した改善を行わなければなりません。また現行法のもとにおいては鉱業権者被害者の間の話し合いは、常に敵対した険悪な空気のうちに進められておる現状であります。この点も何とか改善されなければなりません。さらに臨鉱法では加害者被害者との間に話がつかなければ復旧計画に載せられないことになっておるのであります。この点にも問題があると思うのであります。私はこれらの点を改めるには、やはり鉱業権者からトン当り幾らかの納付金を納めてもらい、これに政府補助金を合せてこの資金によって復旧することとし、復旧工事については現行鉱害復旧事業団のような型の政府機関が一手にこれを引き受けることにすれば、鉱区境復旧ども問題なく片づき、計画的な復旧工事が進められることができるのではないかと思うのであります。政府においても御検討を願いたいと思うのでありまするが、この際御意見をお伺いいたしたいと思います。
  15. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現行鉱業法の骨子となっておりまする鉱業権制度及び監督措置の問題等は、これはずいぶん古く明治三十八年ごろきめられたものでございますので、新しい経済事情に照らし検討を要する点があるようでございまして、現在の境の実情に照らしまして、これに即応するように鉱業権改正委員会を急速に作りまして、抜本的に検討いたしたいと存じます。ただいまの御意見のごときは非常に貴重なる御意見として一つ参考にいたしたいと存じます。
  16. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 ここでぜひお伺いいたしておきたいと思うことは、石炭不況対策についてでございます。政府は最近の石炭不況について、どのような現状分析を行なっておられるのか、さらに今後どのような対策を講じられようと考えておられるのか、まずお伺いいたしたいと思います。
  17. 樋詰誠明

    樋詰説明員 御承知のように、本年度石炭の生産は、合理化審議会におきまして五千三百五十万トンというふうに定められたのでございますが、その後鉱工業の生産が予定よりもはかばかしくいかないということ、あるいは非常に雨が降りまして電力用の石炭の需要が減ったというようなことのために、上期の石炭の消費は非常に予定を大幅に下回わったわけでございます。下期におきましては大体鉱工業の生産も上期に比べまして六・五%程度上昇する、こう思われますし、また下期の外貨の予算におきまして重油の輸入量を削減するということもいたしましたので、石炭の消費量はほぼ二千八百万トン程度、上期は二千二百万トン弱でございますが、二千八百万トン程度の消費があるものというふうに考えております。ただ御承知のように現在すでに一千七十万トンという非常な貯炭をかかえておりますために、下期におきましてこれを極力減らしまして、そうして来年の上期、いわゆる不需要期に向うころには、大体正常貯炭に近いような格好に持っていくということのためには、二千八百万トンの需要に対しまして、生産の方は二千五百万トン程度に押えざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。従来政府は五月二十九日の閣僚懇談会におきまして、まず貯炭融資につきまして大体九月の末に四百二十万トン程度の業者貯炭ができるように、金融をつけようということをきめまして、日本銀行を通じ各金融機関に流したのでございますが、これは御承知のようにほぼ所期の目的を達しまして、九月末の業者貯炭が四百三十万トン持っていたという大部分は、この特別融資のおかげであったというように考えております。それからその際に、下期につきましては、輸入炭あるいは重油といったような石炭と競合する外国からの輸入エネルギーをできるだけ削減しようという申し合せがなされまして、それに基きまして先ほど申し上げましたように、重油につきましては大体当初よりも五十万キロ予定よりも切るということにいたしまして、できるだけ国内炭を使うようにという措置をとったわけでございます。  それからまた、電力等の大口需要者に対しましては、極力予定通り石炭を引き取ってもらうようにということを、通産省全体として業界に要望いたしました結果、大体現在すでに四百万トンという普通の貯炭量の約倍に相当する貯炭量を電力業界では引き取ってくれておりますし、今後も大体年間、当初の予定量はある程度無理でも、水が出て電力界の方も資金的には相当楽になっておるのだから、この際石炭不況を乗り切るために大いに協力しましょうという能度で、千二百万トン程度までは引き取ってくれるという約束がつい三、三日前にでき上ったばかりでございますので、一番大口需要の電力界が予定量を引き取ってくれるということになれば、相当石炭事情は好転するのではないかと思っております。さらに国鉄その他大口需要等につきましても、できるだけ長期契約を結んで、円滑に引き取るように通産省といたしまして各方面にお願いしておる次第でありまして、今後ともさらにこういう努力を続けることによりまして、御承知のように石炭の生産制限は非常に困難な問題を伴いますが、需給面等に支障を来たさないということによりまして、現在の炭価等も維持できるように最大の努力をしていきたいと考えております。
  18. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 政府の見方は非常に甘いのではないかと思うのであります。現実はもっと深刻だと思うのであります。通産省調査によりますと、九月末における業者貯炭は四百二十三万トン、需要者貯炭は六百四十万トン、合計一千七十三万トンに上っておると報ぜられておりますが、今後も貯炭の量は増加するものと予測されておるのであります。昭和二十九年の石炭不況は業者貯炭が四百万トンをこえるころから、あの深刻な不況に突入したのでありますが、今回の不況ももはやぎりぎりの線まで来ておるのであります。二十九年当時以上に底の深い深刻な恐慌状態に立ち至るおそれは十分にあると心配しておるのであります。御承知のようにこの十月から明春まで大手炭鉱は一五%、中小炭鉱は一〇%の出炭制限に踏み切ったのでありますが、現在の状況では中小炭鉱の休山、廃山は相次いで起りつつあって、失業者も次第にふえているのであります。未払い賃金にかわる金券は流れ、失業者は生活保護の集団申請までしていると伝えて参っておるのであります。今後の出炭制限によりまして、さらに深刻な事態に立ち至るものと予測しなければならないと思うのであります。大手筋はこのような不況期に際しましても大銀行の背景がありますが、中小炭鉱はそのようなうしろだてがありません。従いまして政府の力で何とか特段の不況対策を早急に講じていただきたいわけであります。中小炭鉱には中小企業金融公庫という金融機関がありますが、実際にはあまり金融条件が厳格過ぎまして、ほとんど活用されていないのであります。今日のような深刻な不況期に際しましては、石炭鉱業について特別のワクを設けるとか、融資条件を緩和するとか、何らかの特別の金融措置が必要であろうと思うのであります。中小炭鉱不況対策、特に金融対策について、政府はどのような措置を考えておられるのか、この際伺っておきたいと思います。
  19. 樋詰誠明

    樋詰説明員 石炭業界の危機が非常に深刻な要素をはらんでおりますことは、今先生の御指摘の通りでございますが、現在ございます業者貯炭のほとんど大部分はいわゆる大手の貯炭でございまして、一応中小炭鉱の貯炭といいますものは、現在われわれの調べではそう多くない。ほとんどが大手炭鉱か貯炭しておる。中小炭鉱は御承知のように石炭鉱整備事業団で、すでに二百四十万トン買い上げも済んでおります。それからまた不幸にして今までに休廃山のやむなきに至った山も若干ございますが、それ以外の現在残っております大部分の中小炭鉱は、いわゆる自衛上からも売れる程度しか掘らないということを、すでに実行をされております結果、統計の上では中小炭鉱の貯炭は、あまり大きな格好になっておらないわけでございます。ただ今お詰のありました四百三十万トンという非常に膨大な貯炭が、主として大手の方面にあるということのために、炭業が非常な圧迫を受けておりますことは仰せの通りでございますので、われわれといたしましてはこれ以上中小炭鉱が非常な苦境に立たないように、できるだけの措置をしたいと考えております。ただいろいろ金融機関から金を貸すというようなことにつきまして、たとえばわれわれ、いろいろ中小炭鉱が協同組合を作って、いわゆる組合金融、お互いに信用を補完し合って、金を借りるようにということをいろいろ指導してきたのでございますが、残念ながら今までのところ西九州あるいは北海道等につきましては、そういう組合の結成されたところもございますが、一番中小炭鉱の数の多い北九州等につきましては、中小炭鉱間の足並みがなかなかそろわないというようなことのために、組合の結成ということにまだ至らないといった事態は、非常に残念に思っておるところでございます。要はいかにして中小炭鉱の信用力を補強して、金を引き出すようにし得るかということでございますので、われわれといたしましては、たとえば信用保証協会あるいは中小企業信用保険公庫といったようなものを活用することによりまして、現在の中小企業金融公庫あるいは商工中金というようなところから金が引き出せるようにということについて、できるだけの援助もし、また金融機関等に対しましても石炭業界の不況を訴えまして、そうして石炭業界から申し出があった場合には、できるだけ寛大な態度で貸すようにということについては、できるだけあっせんしたいと考えております。要は先ほど申し上げました信用力をいかにして補強するかということにございますので、できるならお互いに助け合って信用力を補強するといったようなことに、業界の方面でもさらに努力されるように、役所の方としても及ばずながらできるだけの努力はしたい、こういうふうに考えております。
  20. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 それでは北九州の中小炭鉱が鉱業組合のようなものを組織すれば、金融のあっせんはしていただけるわけでございますか。
  21. 樋詰誠明

    樋詰説明員 協同組合を作るようになりますれば、商工中金の組合金融というベースが、制度に乗り得るわけでございますので、できるだけ一つの炭鉱でなしに、お互いの炭鉱が相協同して、そうして共同責任で金を貸りるということになれば、一つで貸りるよりははるかに貸りやすい、こう思われますので、まず組合を結成されること自体を、われわれとしては通産局を通じて非常にお勧めしているわけでございまして、そういう組合を作り、そうして個別の炭鉱ではなしに、組合金融という制度で共同して危機を乗り切っていただくようにやっていただきたいというわけでございます。
  22. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 その組合炭鉱の組合加入者は、何鉱以上とかいう制限はあるのでございますか。
  23. 樋詰誠明

    樋詰説明員 その炭鉱の数には、別に何も制限はございません。ただ一人でなしに、お互いに信用し合う業者が寄り集まって、そうして信用力を補強してやっていこうということでございますので、三人以上とか、五人以上でなければいかぬとか、そういうことではございません。
  24. 渡邊本治

    渡邊(本)委員 最後に私は、今日の不況を招来した原因は、根本的には政府のエネルギー政策の貧困にあると申したいのでございます。まず本年度の出炭生産計画でありますが、当初五千六百万トンと計画し、石炭業者もこの要請にこたえるべく、設備増加等、あらゆる増産態勢を整えたのでありますが、七月には五千三百五十万トンに計画の改定を行い、さらに最近では、五千万トンにも生産制限をしなければならない状況に立ち至っておるのであります。これでは政府の計画があまりにも机上のプランであり、ずさんに過ぎるのではないかと思うのであります。さらに遺憾なことは、計画を立てたら、その計画を達成するために、政府はあらゆる処置を講ずるべきではないかと思うのでありますが、政府の計画達成のための行政的指導力は、きわめて貧弱であるばかりか、何ら機動性のある有効な処置はとられていないのではないかと思うのであります。電力用炭が最もよい例でありまして、四月から九月までの実績では、電力用炭は計画五百七十七万トンに対して四百十八万トンで、七二・四%にとまっております。これにかわって、一方重油は、四月から九月までは、計画に対して一〇三%となっておりますが、七月までの実績を見ますと、一二二%という実績を示しておるのであります。政府は、このような電力用炭の引取減に対しまして、両業界にあっせんに乗り出したのでありますが、その後一向進展しておりませんが、これはただいま局長さんの説明によって、二、三日前話が片づいたというから、これは進んでお聞きいたしません。石炭産業は、労働人口四十万人、家族を含めますと、二百万人の人口を養っておるのみならず、石炭産業並びにその関連産業の消費する生活必需物資、生産資材の量は、莫大な額に上るのであります。従いまして、基礎産業たる石炭産業の衰微は、国家的に莫大な損失を来たすものといわなければなりません。石炭国であるドイツ、フランス、イギリス、またアメリカにおいては、このような考え方に立って、石炭産業の育成には、あらゆる保護育成処置を講じておる現状であります。石炭が唯一の国内資源であるわが国においては、これらの国以上の育成対策を考えられるべきであると信ずるのであります。長期エネルギー計画の達成途上にある今日、重油が一時的に値下りしたからといって右往左往するようでは、まことに心もとないと思うのであります。このような議論が今ごろされているのは、私は政府のエネルギー政策指導が貧弱であり、徹底しないためではないかと思うのであります。政府は、機会のあるごとに、石炭産業に対し、炭主油従の政策を強力に推進すると言明しながら、現実は全く反対の結果を招来しつつあるのであります。果して政府はこの破局に瀕した石炭産業に対して、いかなる対策を打ち立てんとするか、所信を伺いまして、私の質問を終ります。
  25. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問は、まことにごもっともな点でございます。政府は長期にわたるエネルギー政策を立てて、それで、その初年度、本年は五千六百万トンという数字を持っていたのであります。五月になって、これが五千三百五十万トンになり、さらに今日これを五千万トンに節減されたということになれば、一番先にこうむるのは、石炭産業である、この点はごもっともであると存じます。大体政府の方針といたしましては、長期における石炭の採掘というものは、一ぺんに生産を増強することもできないと同時に、これをまたそのときに応じて生産を減退させれば、原価も高くなり、失業者も出るということで、これを輸入する油の資源によって加減しよう、こういうふうな考えをもって初め当ったのであります。ところが御承知のごとく昨年来スエズ運河問題のときに一時に油が切れるというので、油の業者は長期におけるタンカーの契約をするとか、あるいは一般の海運界の不況のために油の運賃が下った結果、原価が下るというふうなことのために、政府はいろいろ行政指導をやっておるけれども、値段が安い、こういうふうなことがおもなる理由で、なかなか政府命令通り、また希望する通りに油の消費を節約してくれなかったということのために、御説のごとく石炭の消費は減っていながら油の消費はふえる、こういう状態でありまして、これはまことに情ないわけである、こう存じまして、今年下半期におきましても石炭に競合する重油の輸入を減じたい、こういうふうな考えで進んだのでありますけれども、不幸にして重油ということにつきましては、どうしても特殊の重油は必要だ、こういうふうなことのために思い切ってこれを切ることができず、やむを得ず原油及び重油を通じまして五十万キロリットルを切った、こういうふうなことで、その対策は幾らか講じておるようなわけでありますけれども、どうしても今後のエネルギー長期対策に当りましては、石炭というものについては消費と生産とを常にマッチするようにしていって、その景気不景気によって生じたエネルギーの差だけは重油によって調整していきたい、こう存ずるわけで、そういうふうな方針でもって進みたいと存じております。
  26. 小平久雄

    ○小平(久)委員 私は今の渡邊委員の質問に関連して、政府に資料を一つ要求しておきたいと思います。ただいまの質疑応答を伺っておりまして、鉱山保安局長の答弁によりますと、鉱山保安法というものは鉱山災害があった場合に、すでに人命がなくなっておるというような場合には適用にならないのだ、こういったような趣旨でありました。それと関連して私は日ごろから実は一つの不審を抱いておるのですが、全般に言って人命救助なりあるいは死体の収容なりそういうことについて、一体国家の責任と、それから事業主なり本人の責任というか、そういうものの限界というものは、どういうふうに今の法制上なっておるのか、日常われわれが見聞する限りにおきましても、時には大へん矛盾を感ずる。卑近な例がこの間全日空ですか、あれの飛行機が墜落した、そのときに海上保安庁かの艦艇が出動して盛んに救助作業に当った、それが結局国の負担でやっておるのか、会社の負担でやっておるのか、あるいは遭難者の負担でやっておるのか、私はそこまで知りませんが、そういう点は一体どういうことになっておるのか、また警察等においてもいろいろな事件などが起きた場合に、いろいろ御活躍なさいますが、そういうのを一体どういう限度において、どういう負担の仕方においてやっておるのか。自衛隊についても同じようなことが言えると思うのです。個々のケースによって国家の手の比較的広くあるいは深く及ぶ場合もあるようであるし、また国の方では一こうかまわぬ場合もある。今度のこの鉱山保安法などの場合も、何かもっぱら鉱業権者責任なんだ、結局はそういうところに行ってしまっっておるようですが、そういうことでどうも一般国民から見て、先ほど申した通り人命救助なり死体収容ということについて、国の責任というものは一体どこまで今の法制上やっておるのかどうもよく理解ができないのです。そういう関係でありますので、その辺のことは一体どういうふうになっておるのか、われわれ国民はどう理解したらいいのか、現在の法制上どこどこに関係があるのかも私は実はよく存じませんが、そこをよく調べて、こういう規定によってはこういうことになっているのだ、こういう場合にはこうなんだということを一回資料として提出していただきたいと思います。私は私の方で一つ調べたいと思いますが、あまりまちまちなんで、鉱山保安法関係も、私は根本はその関係じゃないかと思うので、この際資料をぜひお願いしたいと思います。これだけ要求しておきます。     —————————————
  27. 長谷川四郎

    長谷川委員長 先刻の理事会において決定いたしました通り田中武夫君より要求のあります自転車競技に関する件について、緊急の発言を許可いたします。田中武夫君。
  28. 田中武夫

    田中(武)委員 私はしばらく時間をいただきまして、競輪の特別益金の配分の関係と、その寄付を受けた先の関係につきましてお伺いいたしたい、こう思うわけでございます。実はオリンピックの後援会が一千万円以上の大穴をあけて、今問題になっておることは御承知通りであります。このことにつきましては先日文教委員会においても取り上げられたようであります。そこで私はそのことに関連して、本委員会へ文部省の体育局の関係の方も来てもらおうと思っておりましたが、何だか富山の国体の方へ幹部全員行かれておるということで、文部省関係が見えていないので、その方の関係は後日に譲りまして、通産省関係、その点に重点を置いて二、三お伺いいたしたいと思います。  先日われわれは競輪の特別益金の配分、寄付の資料の三十二年度のものをもらいましたが、その中にもオリンピック後援会に、三十二年度で八千七百九十七万九十四円という金が出ておるわけなんです。この前にも私申し上げましたが、特別競輪益金すなわち競輪から上ってくるところの金は、いわば公共の金ともいうべきものであって、その配分については十分注意をし、その趣旨にのっとっての配分をやらなければならぬ、こう思うのですが、配分に当って寄付先がその金をどのように使うかを十分調べた上で、配分を決定せられておると思うのですが、そういうような点についてはいかがでございましょうか。
  29. 小出榮一

    ○小出政府委員 競輪の中で、特にいわゆる特別競輪という名前で呼ばれておりまするものの配分につきましては、御指摘の通り特別競輪という制度が、そもそも競輪関係法規の御審議の際に、国会の付帯決議において御要望のありましたスポーツの振興なりあるいは社会公共福祉のためにこれを使うという、まずその使途が明らかにせられております。従いまして、その使途の範囲内におきまして、具体的にどういうふうな配分をするかということにつきましては、特別競輪益金使途配分委員会というものを設けまして、全国施行者協議会の会長であります現東京都知事を委員長といたしまして、関係官庁の委員あるいは関係のそれぞれの有識者を委員といたしました委員会において、公正に決定をするわけでありまするが、その際にまずあらかじめ申請をとるわけでありますが、その申請のそれぞれの団体の内容、それからどういう目的にこれを使うかというその使い道につきましては、もちろんその申請書の内容に出てくるわけであります。それらを十分に審査いたしました上で、寄付をいたします相手方と、それから寄付をいたします金額の予定を決定いたしておるわけであります。従いまして、その寄付をいたしましたあとで、これがどういうふうに使われるか、言いかえまするならば、示されました目的通りにこれが使われるかということがもちろん前提でございまして、それらにつきましては、それぞれの所管庁を通じまして監督をしていただく、かような措置になっております。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 特別益金の配分の年々の跡を見ますと、オリンピック後援会に一番多数の金が出ているように思うわけです。一体最初から今日までオリンピック後援会に幾らの金が出ておるのか、私の手元にもらっている資料では三十二年度、去年のやつだけはもらっておりますが、その点からも出ておるのですが、一体幾らの金が出ておるのか。それから他にもたくさん公共事業とか公共施設、福祉施設、こういうものがありますが、オリンピック後援会にのみ毎年多額の金が出ておるというのは、何か特別な理由があるのではないかと思うのですが、どういうような特別な理由があって、特にオリンピック後援会にたくさんの金を出されたのか、それをお伺いいたします。
  31. 小出榮一

    ○小出政府委員 特別競輪の中で特にオリンピック関係の問題でありまするが、これは最初これを出すことになりました経過、当時の事情から御説明申し上げますると、昭和三十年の七月に財団法人日本体育協会並びに日本オリンピック後援会両方の連名でもって、請願が参議院に提出されまして、その七月の十九日にこれが採択されたのでございます。その請願内容は、結局メルボルンオリンピックあるいはアジアの競技大会等の後援ということの意味におきまして、特別競輪を開催し、これに応援してもらう、こういう趣旨のものでございます。従いまして、政府といたしましては、十分この問題につきましては慎重に検討する必要があるということで、オリンピックというようなアマチュア・スポーツに競輪といういわばプロ・スポーツ団体から、その収益を寄付するということが適当かどうかというような問題につきましても、いろいろ諸外国の国際的な例等も勘案いたしまして検討いたしまして、最終的には三十年十一月の閣議において、特にオリンピック後援の特別競輪の開催ということを認めて、これに対して援助するということを決定したのでございます。従いまして、オリンピックの問題につきましては、特別競輪の中でも特に重点的の問題の一つとして、最初から取り上げられておるわけでありまして、しかもその申請は大体年度別の関係において出ておりまして、実は昭和三十六年度くらいまでの予定として出てきておるわけであります。永久的に出してもらいたいというような希望もあったわけでありますけれども、そういうような永久的な希望のものにつきましては、一応五カ年間で打ち切るというような前提のもとに、そういう趣旨で決定しておるのであります。そこで実際に出ておりまする金額は、最初の昭和三十年のオリンピック、これはいわゆるメルボルンの大会でございますが、これに対しましては七千九百三万百五十八円という金額が総計において出ております。その内訳は全国競輪施行者協議会あるいは自転車振興会の連合会、日本競輪選手会、全国競輪施設者協会というふうなそれぞれのものから出ておりますが、主たるものは全国競輪施行者協議会が大部分、六千六百万円ということになっております。これが昭和三十年でございます。それから昭和三十二年度におきましては合計八千八百四十八万四千三百十六円という金額を醵出いたしております。それから御承知通り昭和三十三年度といたしまして、先般特別競輪の委員会において一応支出予定として内定いたしましたものが七千五百万円、こういう数字になっております。今年度のみならず特別競輪の全体の中で、確かにオリンピックの占める金額は相当大きいのでございまするが、最初のオリンピック後援ということの趣旨、そのいきさつ等から見まして、またこれに要しまする不足金額がかなり大きいというような点から、勢いこういうふうな多額の金額にならざるを得なかったのではないか、こういうふうに考えております。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 今局長も言われたように、私ども考えましても、神聖なオリンピック競技に派遣する人を賭博の延長のような、こういう競輪の益金で送るというようなことはどうかと思うのです。なおそれに政府が当然出すべき金を、こういったものによって出そう、毎年そういうことで七、八千万円ずつ恒久的な予算を作ったような格好で行われている点については、大きな疑問を持つのです。そういうような点について大臣は政治的にどのようにお考えでありますか。神聖なるスポーツ、しかも国際的なオリンピックに国が代表選手を送るのに、ばくちの手先で送る。そんなさもしいことはおやめになったらどうですか。
  33. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 田中さんの御意見のような御意見も、これは当然あると思います。現在競輪を許しておる上におきましては、これを単純なばくちだというだけに私は認めておりませんで、競輪を許すということには競輪を許すだけの理由があって許しておるわけであります。そうすればオリンピックのような金の要るところには、できるだけ出してやろうじゃないかという政治的な考慮から支払われておるのでありまして、もちろん国においてそれだけの余裕があれば、できるだけそういうものは別途に支出するということはいいだろうと思いますが、それがないときは、これはやむを得ないと存じております。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 金があるとかないとかいうことはおかしな議論になりますが、出そうと思ったら幾らでも出せる。始末するところは幾らでもできるし、余分のものも出ているわけです。そこで今さら大臣とここで討論をして、自衛隊の飛行機一機始末したら送れるじゃないか、こういうことも今さら言おうとは思いませんが、安易だろうと思います。当然国として考えるべきものを、競輪といったような安易な手段によってまかなうという。しかもそれが今のお話のようですと、大体七千万円から八千万円の金が、毎年予算を組むがごとく予定せられて行われておる。はなはだ寒心にたえないと思うわけです。  それから局長にお伺いしますが、あなたも配分審査委員会委員の一人として、配分のことにつてい協議をせられる際には、寄付先の目的あるいはその団体の成果、こういうようなものは十分に御検討になったと思う。もちろん今日一千万円以上の大穴をあけて問題を起しておりますが、その当時は、オリンピック後援会というものは藤山さんのような人まで関係をしておられるので、そういうことに疑念を持っていなかったと言えばそれきりだと思うのですが、一千万円もの金を一日や二日で使うものではないと思うのですが、そういうようなことについて、ある程度委員会自体も配分に当って調査をせられるとか検討をせられたと思うのですが、そういうようなことについて何ら危惧の念を持つようなことがなかったのか、あるいはそういうことについてはもう事務的に、こうきまっているのだからというようなことで、簡単に寄付を決定せられたのか、そういうような点はいかがです。
  35. 小出榮一

    ○小出政府委員 特別競輪益金の配分につきましては、先ほどもお答えいたしましたように、委員会において審議した結果、これに基きまして決定するわけでございますが、委員会を開きます前に、もちろん幹事会その他におきまして十分不審査をいたすわけでございます。そこにはスポーツの振興関係でございますれば文部省、また結核予防その他ガンの研究というような社会公共福祉関係でありますれば厚生省というふうな、それぞれの公益法人が主でございますが、公益法人を主管しておられます各関係官庁の方もおられまして、それらの方々の御意見なり、従来の経緯等も十分伺った上で慎重に審議したわけでございます。しかしながら今回問題にされておりますような事態につまきしては、それがどういうふうな事態になっておりますか、ただいま私の方も文部省にお願いをいたしまして詳細調査をいたしております。ある程度の報告も受けております。従いまして一応委員会といたしましては、もちろん申請団体の内容あるいは申請されました金の使途等につきましては、慎重に審議して参るということで従来はやってきております。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 大体三年間に二億何千万円という金が出ているわけです。その金が一応競輪というものから出てきた金であるということならば、それを管轄しておるところの通産省においても、そういう膨大な金がどのように使われていくかというようなことについては関心を持って調査をし、あるいはそういうことについて、こういう問題が起きるまでに気をつけていなくてはならぬのじゃなかいと思いますが、そういうような点については少し抜かっておったんではないかと思いますが、いかがでしょうか。今日までこういう問題が起きておりますが、そういう配分をきめる当時、この後援会については別にそういった心配といいますか、あるいは危惧の念は持たれなかったのでしょうか。
  37. 小出榮一

    ○小出政府委員 競輪の益金の中から助成をいたしまして寄付をいたしました相手先の団体についての使途の調査と申しますか、監督につきましては、競輪というものそれ自体は通産省が所管いたしておりますので、通産省としても重大な関心を持たざるを得ないということは当然でございますが、それぞれの寄付をいたしました相手方の団体、その個々につきまして直接通産省所管のものでありますれば、なんでございますが、通産省所管以外の団体が大部分あるいは全部でございますので、それぞれの団体につきましては、やはりそれぞれの所管を通じまして監督をしていただくというのが適当ではありますし、また最も能率的である、かように考えて従来はそういうふうにやって参りました。しかしながら、今回、今問題になっっておりますような点が明らかになりました以上は、通産省といたしましても実は今回の問題が起ります前に、今年度の夏行われました特別競輪の益金使途委員会の益金配分に当りましては特に通牒を発しまして、それぞれの寄付を受けました団体から直接報告をとって、どういうふうな使途に、いかにこれを使ったかというような報告を詳細にとるようになっております。従来はその点につきましてはそれぞれの所管庁において大体御調査をしていただくような建前にはなっておりましたけれども、今後はさらに一そう厳重にやりたいと考えております。  それからなお第二段の点でございまする日本オリンピック後援会の内容につきましては、これは先般の益金の審査配分の委員会におきましては、特に今回明らかにされましたような問題点につきましては問題にならなかったようであります。と申しまするのは通産省といたしましては、申請をいたしまする際に、その申請団体の所管省でありまするオリンピック後援会でありますれば、文部省の副申がついておりまして、この内容につきましては非常に妥当であるから、ぜひこれに交付してもらいたいということを受けておりまするし、一応それらの点も信頼をいたしまして審査を行なった、こういうふうな経緯になっております。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 競輪の経理の問題を、何回かここで取り上げてやっておるのですが、悪銭身につかずとでもいいますか、ともかく労せずして得た金であるというようなことからではなかろうかと思うのですが、競輪関係の経理はどの点を取り上げましてもずさんきわまりないものではなかろうかと思うわけです。今のお話ですと、この配分の委員会は文部省の副申があるからそれで信用して出したのだ、こういうことですが、自分の金を八千万円、七千万円と出すのならもっと調査するだろうと思うのです。あまり労せずして得た、ぬれ手でアワの金であったために、簡単に事務的に分けたように思いますが、そういうような点について遺憾であったということはお考えにならないでしょうか。
  39. 小出榮一

    ○小出政府委員 先ほどお答えを申しました中に、文部省の副申があったから、それをただ無条件でうのみにしたという意味ではございませんので、そういう点もございましたし、また幹事会は相当ひんぱんに開きましたし、十分に練りました上で、幹事会で一応作りました原案を委員会にかけました。委員会におきましても、その審議の内容は先般もある程度申し上げましたけれども、実は私自身も非常に激論をいたしました点もございました。相当真剣な議論が各方面において行われました結果配分をきめたのであります。ただ具体的に、オリンピック後援会の問題については特に問題にはならなかった、こういうことでございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 政府はいつもこういった委員会とか、調査会の議事録は公開せぬ、こういうようにいわれておりますが、この問題についてもその委員会においてどのようなことが討議せられたか、私知りたいのですが、その議事録がありますか。
  41. 小出榮一

    ○小出政府委員 特別競輪使途委員会は先ほど申しましたように、委員長は安井都知事でありまして、その事務局には当然議事録は保管してあると思います。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 その議事録を一応見せていただきたいと思います。  それから先ほど申しましたように、あまり苦労せずに入ってくる金だから、配分あるいは使途等についても案外気安に、案外無責任に使われておる、こういうように思いますので、十分気をつけてもらいたいと思います。  それから本年度七千五百万円を予定しておる、こういうことですが、こういった問題が起きた今日、この予定はどういうようにせられるお考えですか。あるいはまた体育協会の方へ振り向ける、こういうようなことをお考えになっておるということも聞いておりますが、この体育協会とオリンピック後援会とはその構成メンバーもほとんど同じ人であって、表裏一体をなすものである。そういう点からオリンピック後援会がこうなった、だからその金は体育協会へ出すのだ、こういうことは私許されないと思うのです。同時にまた体育協会の方も、オリンピック後援会があのようなことになっても、この七千五百万円の金があるから、あとは大丈夫だ、こういうようなたかをくくっているようです。言うならば、こういうことによって競輪の特別益金が毎年大体予算と同じようにもらえるというようなことから、安易な運営といいますか、安易な使い方がせられておる、こういうように思うのです。その結果が今日のような問題を起したと思うのです。その点についてはいかがでしよう。
  43. 小出榮一

    ○小出政府委員 三十三年度の配分は一応先ほど申しましたように、日本オリンピック後援会に対しまして七千五百万円という配分の内定をいたしておるわけでありまして、まだ金が出ておるわけではございません。そこで今御指摘になりました、先般来問題になっておりまするオリンピック後援会あるいは体協の問題でありますか、その辺のことは詳細承知いたしておりませんが、これらの内容が新聞等に伝えられておりまするような、本来の使途をはずれた不当な支出があったというような事態が、もしはっきりいたしますれば、これは当然特別競輪益金使途委員会としても再検討し、一応内定いたしたものにつきましても再考慮をしなければならぬ、かように考えております。ただいまその具体的な後援会なり体協の内容につきましては、監督官庁でありまする文部省において究明、調査をしていただいておる段階でございます。  それから日本オリンピック後援会は申請者でありまして、財団法人日本体育協会もたしか連名で申請があったかと思います。それで文部省の報告によりますれば、日本オリンピック後援会、これは任意団体だそうでありますが、これ自体は三十三年の七月末日に、一応解散をして現在清算の段階に入っておる、こういう関係になっております。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 だからオリンピック後援会が解散をしたから、その予定をしておる七千五百万円は体育協会に出すんだ、こういうふうに言っておられるわけだと思うが、そんなものは出すべきでない、こう言っておるわけです。いかがでしょう。
  45. 小出榮一

    ○小出政府委員 特別競輪益金使途委員会は八月の十三日に開催をされたのであります。その際に決定になったのでございますが、その際の決定といたしましては、一応最初の申請はオリンピック後援会とそれから財団法人日本体育協会の連名でございましたけれども、すでに七月末日をもって任意団体である後援会の方は解散いたしておりまするので、寄付の相手方といたしましては、財団法人日本体育協会ということで配分委員会においては決定になっております。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 だから大体その任意団体に何千万円という金を出すこともおかしいと思うのですが、それの主体をなしておるといいますか、共同申請をしてきた体育協会、これが後援会と表裏一体で関係の人も一緒である、こういうところから今問題を起していることにつきましては、体育協会のメンバーがやはり私は問題だと思うのです。そういうところに出すべきじゃない、こういうふうに申し上げているわけです。大臣いかがですか、あなたは大臣としてはっきりと、もうそういうところには出さない、こういうようなことを言ってもよいんじゃないかと思うのですがどうですか。
  47. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 通産省といたしましては、益金使途委員会というものを通じて、そうしてその使途委員会において幹事会なり、委員会においてできるだけ相手方の使途について検討を加えまして、その結果これが是なりと信ずれば、あとの使い道は監督する係の省に十分責任を持ってやってもらうということにしてやっていきたい、こういうふうに存じております。今のような問題がいろいろ起りますことにつきましては、これは当然益金使途委員会においてできるだけの主張をいたしたいと存じております。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣の御答弁ではまだ私は満足はしませんが、大臣の言われることは一応益金使途委員会において結論を出した後に考える、こういうことでありますので、私はその委員の一人である小出局長にはっきりと申し上げておきますが、こういうことに出すと、ますます競輪の経理というものについて疑惑を持たれると思います。十分気をつけてもらいたいと思います。  それからオリンピック後援会が一千万円以上の穴をあけた、こういうようなことに関連して、その関係者は相当政治的な運動資金を使った、こういうようなことを言っておるわけです。その中に通産省方面にも、と言われておる、そうなると、こういった金をもらうために、通産省関係者に相当な運動資金が使われたのではなかろうかといったような疑惑を持つのです。今局長にそういうことがあるかと言ったって、そういうことがございますとはお答えにならないと思うのです。しかし一千万円以上の穴の中で、そういうことに使われたということを聞いていることだけははっきり言われておるし、そういうことが新聞の記事になって出ることによって、世間は疑惑を持っておるということだけははっきり申し上げます。そういうことについて通産省、ことにこういった競輪の疑惑を持ちやすいことを、直接監督しておられる局長は十分考えてもらわなければいけない、このように思うわけですが、どうでしょうか。
  49. 小出榮一

    ○小出政府委員 まず日本オリンピック後援会とと体育協会との関係でございますが、日本オリンピック後援会というのは、日本オリンピックの後援会規約というものに基く任意団体ではございますが、本来その性格は日本体育協会の活動を財政的に援助するということが、この後援会の目的になっておるわけでございます。従いまして日本オリンピック後援会というものと体育協会というものとは御指摘の通り表裏一体の関係にある。従いまして日本オリンピック後援会が解散いたしましたあとは、一応競輪益金使途委員会においては、日本体育協会を相手方として、これに対する寄付ということを決定したわけでございます。  それから今第二段といたしまして御指摘がありました、いわゆる疑惑の持たれております体育協会なり、あるいはオリンピック後援会の経理の内容につきまして、かりに通産省関係者においてもそういう疑惑を持たれるようなことが——私はもちろんないと信じておりますけれども、そういうことがあってはならないということは当然でございまして、一つ十分調査をいたしまして、その調査の結果によって善処をいたしたい、かように考えます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 世間の疑惑を一掃するような調査と、それに対する態度をはっきりしてもらいたい、このように思います。  それからこの前に私この点について申し上げたときに、特別競輪の益金の配分について、申請あるいは配分の基準、そういうようなことについて明確にしてくれ、こういうことを言っておったのですが、そういうことについて何かお考えになっておるかどうかお伺いいたします。まだ考えておられないのですか。
  51. 小出榮一

    ○小出政府委員 先般お答えいたしましたように、特別競輪の目的なり、そういうものを開催いたします本来の趣旨は、一番根源は国会における附帯決議ということでありまして、スポーツの振興と社会公共の福祉というこの二つの柱が当然基本になっておることはもう明白であります。そこでその基準に合せるために、どういうふうな具体的な基準を作るかということにつきましては、私どもといたしましてはもちろんただいま原案を考えまして、関係のそれぞれの所管庁とも十分相談をいたして決定いたしたい。なおこういうような疑惑が起りましたような事件の内容が明らかになりましても、もし伝えられますような事態が、かりに事実であるということになりました場合におきましては、特別競輪という制度それ自体についても、相当の再検討を加えなければならぬじゃないか、かように考えております。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 いずれにしてもはっきりしていただきたい、このように思います。委員長の方から時間が約束の三十分を過ぎたからということですので、いろいろお尋ねしたいのですが、またあとの機会に譲りたいと思います。  そこでこの際、この前に御質問したときに関係者がおいででなかったために、答弁が保留のような格好になっている点について、ちょっとお伺いします。まずそれは自治庁関係の方にお伺いするのですが、特別競輪の益金の配分に関連してですが、これは一応競輪を主催した地方自治体へその金が入ってくるわけなんです。そしてそれから今度金が出されるわけですが、そうしますと地方財政法第四条の四の割当的寄付金の禁止という条項に違反してくるのじゃないか、こういうように考えますが、その点いかがでしょうか。
  53. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答え申し上げます。地方財政法の四条には御指摘の通り国が強制的な寄付を割り当てちゃいかぬということが書いてございます。これは御案内のように国が当然負担すべきものを、寄付金の形で地方公共団体に割当徴収してはいかぬという趣旨でございますが、今度の特別競輪の益金の問題につきましては、団体の方から出します場合にこれが強制的な寄付そのものであるかどうかということは、これはあくまで建前は自主的に地方団体がお出しになっているのじゃないか、また寄付先につきましても問題はございましょうけれども、一応形式的にはそれぞれの社団なり財団に寄付されておるわけでございまして、いろいろそこにあやはございますけれども、形式的な法律論としては、直接地方財政法四条の四に違反するというようには解釈しておらないわけでございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 一たん競輪をやって、その金が主催者の財政に入るわけですね。そして今度出すわけなんです。ところがそれに幾らか配分を予定するわけなんですね。そうすると吸い上げる金は自主的というよりか、幾ら幾ら出せという格好になるわけです。そこで強制的割当というようになりませんか。
  55. 山野幸吉

    ○山野説明員 自治体の歳入に入ってきますのを、あくまでその団体としては自主的にその金を施行者協議会に支出されるわけでございますから、従いましてこれは必ずしも強制的に国がそのものを指示して、国へ納めなさいという場合の強制寄付にはならないという工合に解釈しております。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 小出局長、この特別競輪益金を吸い上げるといいますか、取り上げるときに、これは言われるようにあくまで自主的なんです。
  57. 小出榮一

    ○小出政府委員 特別競輪というのは、御承知のように一応通産省といたしまして通達いたしました予定の開催日のほかに、特にこういう目的をもって特別競輪を開催するということを自治体の方から申請を受けまして、それに対してこれを承認する、こういう格好になっておりますので、やはり自治体の方の自発的な意思によってやるという格好になっております。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 どうも言葉のあやでごまかされているように思うのですが、先ほど自治庁の方も、言葉のあやはあるが、こういうようなことだったのですが、どうもすっきりわからぬのです。ともかく形式的には違反でない、それでは実質的にはどうかということになるわけなんで、どうもこういった法規にかかるのじゃないか。少くともまっ正面から正当である、間違いないというような感じを受けないようなことは、なるべく差し控えた方がいいのじゃないか、このように思うわけです。そういう点から特別益金の配分あるいはこれに関連する自転車競技の施行等々についても再検討すべき必要がある、このように思います。  それから警察庁の方が見えておりますが、これものこの前ちょっとお伺いしたときに、私はお呼びしておったのですが、お見えにならなかったので、質問をいたしまして答弁が保留になっておるので、ちょっとお尋ねいたします。当委員会は競輪の経理の関係について何回か開いておることは御承知通りだと思いますが、その中に、暴力団関係に場内整備費として出されておるというようなことがあり、一つの観点からこれを調べた。そうしておると、警察官にも、ところによって違うと思いますが、一日大体一人四百円程度の金が出ているらしい、しかしその金はもちろんその警官が個人で受け取るのでなく、そこの県の警察本部あるいはその代理者として所轄の警察署長が領収書を入れて受け取っておるらしい。その金は県の本部へ入るらしいが、それから先が問題なんです。出動した警官にはその身分、階級によって若干金が出ているらしい。それはところによって違うと思いますが、平巡査で一日百二、三十円出ているらしい。そうするとあとの金は一体どういうことに使われておるのか。それは県の警察でいいますが、正式な予算の歳入としてあげられておるのか、その点はどういうことなんです。
  59. 原文兵衞

    ○原(文)政府委員 お答え申し上げます。かって競輪、競馬の施行者から直接警察に警備費として、その費用が支出されておったことはあるのでございますが、これはもちろん好ましくないことでありますので、昭和三十一年の五月に関係各省通産省、運輸省、農林省等とも警察庁の中におきまして協議いたしまして、それ以後は都道府県が施行する場合はもちろん別でありますが、都道府県以外の市町村が施行する場合におきましては、その警察に競輪、競馬あるいは競艇等の開催の場合に警備の出動を要請するのでございます。それはほとんどのものが要請しておりますが、それに充てまするその警察官の出動に対しまして、警備費として、昭和三十一年の五月二十五日以降は全部県の歳入に入れまして、そうして県におきましてこれを都道府県の歳入といたしまして経理をしている。そうしてそれはどういう方面に使われるかといいますと、御承知のように現在は都道府県の県費でもって警察の大部分の費用がまかなわれているわけでございますが、警察官の超過勤務の費用の一部分に充てられているというふうになっております。以上でございます。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 県の方に入るということは私も聞いております。しかしその金額がたとえば四百円程度である、ところが受ける超過勤務手当は百二、三十円、これは階級によって違うそうですが。そうすると相当県警察がピンはねしておるのではないか、こういうふうに思うのです。  なお引き続いて申しますが、もう一つは、ともかく要請をして超過勤務手当を出す。こういうことだとだれでも警官を雇うことができるのです。そういうことになろうと思うのです。昔の請願巡査のような格好ではなかろうかと思います。なお警職法等が問題になっていますが、ああいうことが実施せられた場合、これはもう暴力団と変らぬことになってしまって——暴力団による競輪場の警備をわれわれは問題にしておる。私調査したところ、暴力団の親分が言っているのですけれどもわれわれだけやかましく言うな、サツのだんなもテラっているよ、こう言うのです。そういうような点について、警察庁としては十分考えておかなければいけない。
  61. 原文兵衞

    ○原(文)政府委員 ただいま申し上げましたように、県の歳入に入りまして、そうして警察本部等ではもちろん直接には全然関与いたしておりません。それから警察の超過勤務費用というのは、この競輪、競馬あるいは競艇等から県の方の歳入に入れたものの額ではもちろんないのでありまして、その歳入は、入ったものが直接のそれぞれの競輪、競馬に出動した警察官の超過勤務に割り当てられるのではないので、全部プールして警察官の超過勤務の中で県としてやる。もちろん……(「ごまかしだ」と呼ぶ者あり)ごまかしではございません。その通りでございます。それから今四百円というお話が出ましたが、それは昭和三十一年の五月に、ただいま申し上げましたように各関係省と協議の結果、直接県の歳入にするということがきまりましたときに、最高一人当り四百円以下の——四百円は最高でございます。以下の計算でもって県の方の歳入に入れる、こういうふうになっておるのでございます。と申しますのは、それ以前にそれぞれの開催団体、施行者におきましてまちまちでございましたので、最高が四百円とした。従って現在におきましても各県の施行者である市町村によりまして、県の歳入に入れているものがまちまちであるようでございます。なお直接警察署長なりあるいは警察本部長がこの額を取り扱っているということは絶対にございませんので、従いまして超過勤務といたしましては、全部他の超過勤務と同様に経理をしているのでございます。同様に経理をするというよりも、超過勤務一本でもって、その中に入ってくるのでございますから、特別に競輪、競馬場の出動としての超過勤務を別に扱っているわけではございません。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 いわば警察がアルバイトしているわけですね。それによって入ってきた金のうちから、一部分は超過勤務、その事の出動に当った人にやる、あと残ったものはほかの人の超勤に充てる、こういうことであるなら県の警察部がアルバイトしておる、このように思うわけです。それから、こういう金を警察がもらうことについての法律的な根拠はあるのですか。どういった法律に基いてもらっておるのか。そうでなければ私はこれもやはり一つの汚職の関係が出てくるのではなかろうかというように思うわけです。それを受け取る法律的な根拠を示して下さい。
  63. 原文兵衞

    ○原(文)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、これは県の財政収入として入るのでございまして、その一部分を県として警察官に対する超過勤務に充てているか充てていないか。充てている県もありましょうし、それを直接警察官の方に充てていないかもしれません。これは県のそれぞれの財政の経理によってやっておるのでございまして、警察が直接これをもらっているわけではございません。全部県の歳入として入っているのでございます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ自治庁の方にお伺いしますが、県は警官をアルバイトさせて金を受け取るような財政上の根拠はありますか。
  65. 山野幸吉

    ○山野説明員 私は直接その責任者じゃございませんし、なおかつ各府県におきますその取扱いが最近どうなっておりますか、今のところ手元に資料を持っておりませんので、よく実態を調べましてからお答えした方が間違いがないかと思いますので、御了承願います。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 自治庁、警察庁それから通産省三つに私申し上げます。今の警察庁の保安局長の御答弁を聞いておると、私資料を要求したいのであります。一体各府県各競輪場において警察官にどのような手当が幾ら出るかを至急調べて出してもらいたい、それから自治庁の方は受け取った各府県が、どのようにこれを使っておるか調査してもらいたい、それからそういうものを受け取る法律的根拠がどこにあるかを示してもらいたい、これだけの資料できますか。  それから警察庁に申し上げますが、今日警察官職務執行法の改正をめぐっていろいろと論議があることは御承知通りである。しかるにこういった金をもらって、とにもかくにも出動するということ、こういうことは許されない。しかもそういうことによって一般の見る目は、暴力団と警察官がアベックで国営賭博場の競輪場その他の場所を警備しておる。そこに暴力団と警察のくされ縁が出てくる、こういうように一般は見ております。また見られております。そういうことに対して、十分誤解を解き、明朗な警察である、こういうことが一般に示せるような方法を直ちに講じてもらいたい。以上申し上げます。
  67. 原文兵衞

    ○原(文)政府委員 重ねて一言申し上げますが、警察は競輪場、競馬場あるいは競艇場に警備のため出ますが、これはただ頼まれて金をもらって出るというような趣旨では絶対にございません。あるいは花火の大会であるとか、そのほか大きないろいろの催しもの等につきまして多数の人が参る、そこでいろいろと雑踏もありますし、あるいはまたいろいろの混乱も生ずるおそれが多分にありますので、そういうような犯罪の予防あるいは雑踏の整理、混乱の防止という警察の当然の任務として出動しているのでございます。なお先ほど来申し上げましたように、そのことによって直接に警察官が金をもらうようなことは全然ございません。それは主催者団体の方が県の方に金を出して県の歳入として、支出しているのでございます。直接警察の関与するところでございませんので、以上お答え申し上げます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 私は競輪場の警備は警察がやって暴力団を使うな、こう言っておるのですから、出たことを云々しておるのではない。金をもらって出て行くところに問題がある。そのことを申し上げている。花火大会なりその他のいろいろ人が寄って、あるいは混雑するというようなところへ出て行くのは当然です。当然の任務として警察が出ていっておるのに、なぜそういう金が出ておるのかということに不審を持っている。当然なことに警官が任務として出る、それに金が出るということに疑問を持っているわけです。
  69. 原文兵衞

    ○原(文)政府委員 警察は金をもらうがゆえに出ているのではございません。先ほど来申し上げますように、混乱の防止、あるいはまた犯罪の予防のために、当然の任務として出ているものでございます。従いまして、かりに将来において市町村から、市町村といいますか競輪を施行するものから県に対して支出をしなくなり、県の歳入がなくなりましても、警察は当然競輪、競馬場の警備に出るのでございます。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 当然のことをおっしゃっているように思うのです。そこまで出ていって警備をするのは当りまえなんです。当りまえのことをやっておるのに、その出る方法が——県へ入っておるのか、警察が受け取るのかは別として、警察官が出ていたという事実に対して、金が出るということだけは間違いないわけです。大臣、あなたは競輪の施行者の親分でありますが、どうです、そういうことに金を出すということについてどう思いますか。
  71. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 よく取り調べましてからお答えいたします。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 時間もないようですし、委員長からだいぶ督促の目の合図があるようですからやめますが、私が今申し上げましたような一つ資料を作って出してもらいたい。そのことに基いてさらに質問することを委員長にお願いしておきます。と同時に、文部省の体育局関係の人が帰ってきたらもう一度やりたい。なお文教委員会の方で、オリンピック後援会の問題に関連して参考人を呼ぶというようなことを言っているようであります。あるいはその際に向うでやるか、こちらの方にもそういう参考人に来てもらうか、理事会で相談したいと思いますので、よろしくお取り計らいを願います。
  73. 長谷川四郎

    長谷川委員長 本件についての質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  74. 長谷川四郎

    長谷川委員長 鉱山保安法の一部を改正する法律案及び鉱業法の一部を改正する法律案につき質疑を続行いたします。鈴木一君。
  75. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 鉱山保安法の一部を改正する法律案について質問を申し上げたいと思います。先ほど渡邊委員からも質問があったようでございますが、第二十五条の三の行政代執行の際に、罹災者死亡が確認されているというような場合は、この法律の適用を受けないというふうに聞いておりましたが、事実その通りでございますか。
  76. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 先ほどの答弁と同じなのでありまして、でき得る限り広範囲に処置をとりたいという考えを持っているのでございますが、鉱山保安法の唯一の目的といたしておりますのは、いわゆる危害防止でありまして、人に対する危害防止を一番主要な目的にしておりますので、すでにはっきり死体となって、生きていないということが判明した、それまでを鉱山保安法規定することは、少し無理かと存じているわけでございます。
  77. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 その際は事業主責任において死体の発掘や何かやるということになるわけですか。
  78. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 先ほど申し上げましたように、災害が起きました場合に、その処置につきましては、全面的に一応経営者が全責任を負うという考え方を持っているわけであります。従ってすべて経営者に処置をしてもらうのでありますけれども、たまたま経営者が非常に微力でありましてできない場合には、命令政府がかわりにやる、しかもそれも災害が起りまして、まだ人が生きている、その救助のための場合には命令ができる。これがはっきり東中鶴のような、すでに一年近くになりまして、もう全然生きている見込みがないという場合に適用するということは、少し無理じゃないかというふうに考えております。
  79. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 しかし遺族、生きている側からすれば、死んでいることも生きていることも、これは医学的には全然別のことになるかもしれませんけれども、生きている側、遺族の側からすれば、当然これは発掘してもらって死体を引き取りたいというのが人情だと思います。これは人間生活においては当然だろうと私は思うのですけれども、単に金がないから、経費がかかるからそこまでやらないのか、あるいは死体を発掘しても経済的には何ら効果がないからやらないのか、そういう点はどうなんですか。
  80. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 これは経営者に全責任を負わしてしまって、政府側は知らない、こういうのでは決してないのでありまして、東中鶴の場合におきましても、災害が起りまして、もう一、二カ月で経営者が手をあげてしまっておりますけれども政府といたしましては全責任を経営者に負わせるという線に沿いまして、その範囲内で最善の努力をいたしたわけでございます。先ほどのお話のように、そのままほっておきますれば、収容の作業も続行できないというような事態に立ち至りましたので、親権者であります大正鉱業に相談いたしまして、掘ることになっておりません炭層を掘れるようにいたしました。その出炭が現在災害前の半分あまりになっておりますが、その炭が掘れるようになりまして、その利益の一部を収容作業の経費に補てんしながらこの作業を続行しておる、そのようなわけでございまして、政府としましては全然放棄するというのではなくて、鉱業権者責任を持ってもらえる範囲内で、最善の努力をいたす、こういう考え方であります。
  81. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 あまりにも、人情というか、人間性を無視していると思うのですね。たとえば戦争中に外地で戦没した人の遺骨でも、国が経費を出して最近遺骨収集までしているというふうなこともありますし、経営者の能力がつくまで、結局は放置しておくというようなことは、人間社会の一つの徳義としても、私は許せないことだと思うのです。経営者ができないことこそ、国家がこういう法律に基いてやってやるというのが、私はこの法律趣旨であらなければならないと思うのでありますが、通産大臣はかって満州におられたころ、総裁の当時、非常な人情の美を発揮されて、いまだにあなたの美徳に泣いておる人もあるわけでありますけれども、こういうような法律は当りまえだ、仕方がないのだというふうにお考えでしょうか。
  82. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 今回改正いたしたい鉱山保安法の一部分は、生命をまず守るということが、第一の趣旨で提案いたしたわけでありまして、この保安法の適用は、法的に申しますれば生命をどうしてつなぐかということの問題が主体でありますけれども、鈴木委員のお話のごとく、遺族といたしますれば、生きておるということよりも、死んだ遺骸をどうするか、これについては同じような感情を持っておるということは、私は全く御同感でございまして、先ほど小平委員から御質問のありましたような工合に、国家とすれば、ときには死体でも、これを収容するために国家の費用を払って、そうしてこれを収容しておるではないか、こういう事実もあることでありますから、ただいま保安法と離れまして、行政指導の一部分におきまして、死体が上らない、死体が出ないという場合には、これはできるだけ努力いたしておりますが、この点につきましては、もっともっと深く掘り下げて検討いたしたいと存じておりますが、ただいまのところ、この保安法の一部分の改正は、生命をどうして危険に瀕ささぬようにやるか、また生きておるという場合には、どういうふうなことをやれるかということに力を注いだだけでありまして、一歩進んで、今の鈴木委員のお話のような点も考慮いたしたいと存じております。
  83. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 結局局長と同じ答弁なんですけれども、少くとも私は通産大臣に期待したいことは、もっと積極的に、こういうことも実際やるのだ——この法律以外に遺体の収容というようなことの法律的な根拠はないわけですから、この法律を拡大解釈して、遺体もやるのだ、経営者に能力のない場合には遺体の収容もやるのだということを、大臣から私ははっきり答弁してもらいたいと思うのです。
  84. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 先ほど御説明いたしましたように、現在の鉱山保安法では、もうはっきりなくなってしまったというところまで拡大することは困難かと存じております。ただし、最近も中小炭鉱調査いたしました結果、非常に最近の鉱区が細分化されておりまして、一度事故が起きました場合には、責任を持ってその収容の万全を期せられるというような山が、かなり少い。特に中小の小におきましては、かなり困難な状態でありますので、それらの点につきましては、今後鉱業法改正の場合に、資力あるいは技術、そういった面で十分でないものについては、なるべく許可をしていかない、零細のものを作らないという方向に持っていきまして、間接的にそういったケースを減らしたいというふうに考えております。
  85. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 鉱業法を抜本的に改正されるというふうなお話ですけれども、それはいつのことだかわからないし、また鉱業法にはいろいろ問題もあると思うわけでありますけれども、現在の段階で、もし積極的に遺体の発掘までやろうとすれば、私はできないことはないと思うのです。私はあまりにも人情のない措置だと思うのですよ。生きている遺族からすれば、死も生も一緒なんですよ。そこまで思いをいたしてこの法律を拡大解釈することによって、遺体の発掘までできるようにすることは、差しつかえないと思うのですよ。どうしてそれができないか、私はどうしても理解に苦しむのですがね。
  86. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 私どもも、かような考え方はいたすわけでありますけれども、東中鶴の場合におきましても、決して収容作業を放棄しているというわけではございません。現在続行中でありまして、しかも三交代で、これ以上人数を増しましても、いたずらに人数がふえるだけで、作業は進まないという、最善の、マキシマムの方法で、取り上げ作業をやっております。ただ今後日にちが相当長くかかるという点につきましては、非常に残念に思うのでありますけれども、決してこの収容作業を放棄したわけではございませんで、でき得る限り急速に収容いたしたいというふうに考えております。
  87. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 それぞれの個人なり、あるいはまた団体なりあるいは法人その他でできないことを国家がやってやる、いわゆる社会保障制度というふうなものも、私はそこからくると思うわけでありますけれども、この場合もそういったような観点から、企業者の方でその能力がない場合には国がやってやるのだ、この法律改正の機会にそうするのだということが、どうしてできないのか。ただ将来鉱業法を抜本的に改正した場合に加味したいとか、そういうことでは実際おさまらないだろうと思うのです。毎日とにかく地下何千尺の下に入って生命を危険にさらしておる人たちあるいはその遺族の人たちにしてみれば、万一こういう事態が発生した場合は、国が責任を持ってやってくれるのだということで、初めて安心して坑内に入り、増産にも力が入ると思うのですけれども、そういう措置がどうしてできないのか、どうしても了解に苦しむところです、一つ大臣からお答え願いたいと思います。
  88. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問でございますが、現在の鉱山保安法の一部を改正する案におきましては、法律的には、ただいま申しました通りに、これは死体になりますれば法の適用を受けないということになっておりますが、これは法律の問題であります。実際問題といたしますれば、これは適用したと同じような工合に政府としては行政指導をもって実行に移していきたい、こう思っております。
  89. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 都合のいいときは、法律はどんどん拡大解釈されまして、都合の悪いときは、もう法の精神がこうだから、どうにもならないのだということになってしまうのでありますけれども、大臣の答弁には、多少私の質問に対して答えるかのごときにおいもありますので、一応この辺にしまして、次に進みたいと思います。  それから今度の改正の九条の二でありますけれども鉱業権者がボ夕山を譲渡あるいは放棄したあとであっても、この保安上の措置は講じなければならないということでありますけれども、その鉱業権者が善良なる人間であっても、経済的にその措置がなし得ないような場合もあるだろうと私は思う。また同時にどこべ行ったか行方不明だというような場合もあり得るわけでありますけれども、そういう際は結局自然に放置されておくという現象になるだろうと思いますけれども、そのときの措置はどういうふうなことになるのですか。
  90. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 地すべり防止法におきましては、鉱業権者に所属しないもの、保安法の対象にならないもの、こういうものだけを扱っておるのであります。保安法の対象にならないものといいますと、現在のところは所有者の不明のもの、あるいは鉱業権者の所有でないほかの者の持っておるボタ山、こういうものだけについて適用を受けておるわけであります。従いまして、それ以外のものについては保安法の適用を受けている、こういうような関係になるわけであります。そこで保安法の適用を受けておりますボタ山が、長い間に鉱業権の譲渡その他で変化している間にだんだんと不明になってきて、鉱業権者以外のもの、あるいは所有者不明のものがどんどんふえて参りますと。非常に国の経費もよけいかさみまして支障を来たすということになりますので、現在保安法の適用を受けておりますものは、鉱業権者が変りましても随時承継していく、そういうような形をとりませんと、いたずらにそういった不明のボ夕山がどんどんふえていくという点を防ぎますために、この改正をいたしまして、現在鉱業権者のもので保安法の適用を受けておるというものにつきましては鉱業権が移転になりましても必ず継承されていくのだということをうたったわけでございます。
  91. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今局長のおっしゃるように、継承はされておっても実質上経済的に保安の任に当るだけの能力も全然ない、再三注意されても全然対策も立てられないというような場合はどうなるのですか。
  92. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 これは保安法に対します一般の取締りと同様でありまして、常時石炭なら石炭の繰業をいたしておりますときに、鉱業法あるいは保安規則の違反をやっております場合には、これに対しましていろいろの通達なり命令なりをいたします。これらの指示に対しまして実行ができないというような場合には、やはり場合によりましては繰業の一部停止というようなことにもなるかと思います。
  93. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 操業の一部停止もけっこうだと思いますけれども、それでもボ夕山はそこにあるわけなんですね。しかもそれが危険だというふうな場合にはどうなりますか。
  94. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 これは鉱業を営みます以上、保安法、保安規則にうたわれておりますことは実行していただける資格のある者という前提で認可しておるのでありまして、操業中に指示された事項が実施できないというような点につきましては、鉱業を営む力がないというふうに考えておるわけでありまして、実際問題としてどうしても命令をしましてもできないというようなものがございますれば、別途に何らかの処置をとらなければならないのじゃないかというふうに考えております。
  95. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 聞きたかったのはその何らかの措置だったのです。どういうことをするのか、それを聞きたかったのです。
  96. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 これはどうするということは考えておりませんが、現在のところ監督しております場合に、私の方でいろいろ指示をいたしまして、どうしても経済上聞かれないというような場合は、ほとんど実例がございません。操業中に指示をいたしまして、指示通りにできない、やる力がないというような場合には、現在ございませんけれども、もしそういう事態にぶつかれば操業をやめてもらうか、どうしてもやるのであれば、何らかの方法を講ぜざるを得ないのではないかという点を申し上げたのであります。
  97. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 そういうふうな事態がたくさんあるのじゃないか、そのために災害も多くなるというふうに考えて、私は実情をよくわきまえていないので質問したわけでありますけれども、そういうことがなければ、わざわざこういうふうな改正案を出す必要がないのじゃないかというふうにも考えられるのであります。どうも今度の鉱山保安法の一部改正は、いろいろ災害が起って国会でも騒がれた、何らか一つそれに対してこたえなければならぬというので、安易なものを出してきた、ごまかし的なものを出してきた、そうして責任のがれをしようというふうな感じを非常に強く受けるわけでありますけれども、その点私の感じでありますから答弁は要りません。  その次にお聞きしたいことは、石炭鉱整備事業団では、事業団が炭鉱を買い上げる際、大体原則としてボ夕山は買わないということになっておるようでありますけれども、その際山を売った経営者は、ボタ山に対してはほとんど関心がなくなるのが事実だろうと思いますけれども、そういう際はどういうふうなことになりますか。
  98. 樋詰誠明

    樋詰説明員 原則として、石炭鉱整備事業団が鉱山を買い取ります際には、ボタ山も一緒に買うということにいたしております。
  99. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 次に、鉱業法の一部を改正する法律案についてお伺いしたいと思います。第三十二条の二の追加の項でありますけれども、せっかくこういうふうな改正をしましても、果して実効が上るかどうかということを懸念するわけであります。というのは、取り消しをされたことを知っている人は、その当人なんです。そして二カ月、六十日たったあとで、その人が第二十七条の精神によって先願してきた場合、またこれを認めなければならないわけです。それではただ二カ月間時間を置いたというだけのことで、また悪質な業者が鉱業権を取得するというような事態になるだろうと私は思うわけでありますが、これでは実効を上げ得ないのではないかというふうな感じがするわけであります。その点いかがですか。しかも二カ月、六十日というふうにした根拠——行政上二カ月にすれば大体何とかなるというようなことでありますれば別でありますけれども、そういったような点についても詳しくお伺いしたいと思います。
  100. 福井政男

    ○福井政府委員 ただいま鈴木先生から御指摘のございました点は全くその通りでございまして、実はこの改正案を部内で議論いたします際にも、ただいま御指摘の点が最も大きい問題の一つであったわけでございます。ただ鉱業法は御承知のように先願主義をとっておりまして、今までの現行法では取り消しを受けました場合に、何らの制限がなかったということでございますが、今後その取り消しを受けた当該者は出願の権利がないというふうな重いところまで規定をすることができますれば、この改正案の企図いたしております趣旨が全く徹底するわけでございますが、御承知のように現在の法制の建前は、鉱業法は出願者につきまして能力主義をとっておりません。それで今回企図いたしております鉱業法改正審議室では、鉱業出願の資格につきまして現在のままでいいかどうか、その点に能力主義を加える必要がないかどうかということを、非常に大きい問題の一つとして検討いたして参りたい、かように考えております。それで今回の改正案に盛られております二カ月間の期間を置くということは、極端に申し上げますれば、非常に中途半端な改正案になるわけであります。そういうことになるわけでございますが、現在の全然期間のない現行法よりも一歩進みまして、少くとも二カ月間だけさら地であるということを、一般のだれにでも知らせる期間を置きまして、そしてその期間申請者が出てくればその者に認可がされる、こういう形をとったわけでありまして、これによりまして、御説のように徹底的に解決ができるかといえば、徹底的な解決を望むことはできないのでありまして、この点は一応一歩の進歩をしたという程度でございまして、今後の全面的な改正問題を取り上げます場合に一緒に検討して参りたい、かように考えております。なおそのほかの罰則等の規定との関連もございまして、一応今のような中途半端な案になっておるわけでございまして、取り消しを受けました者が出願の権利がないというところまで、徹底的な罰則を課し得なかったような状況でございます。
  101. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 五十五条の違反の場合に、本人は非常に善良な人間であるけれども、経済不況とかそういうことからやむを得ず違反したとかいうふうな場合もあると思うのでありますが、そういう者に対しては情状酌量の余地も大いにあると思いますけれども、最初から悪質な者に対しては、再び認めないところまでいかなければ、この実効は上らないと思うのですね。ただ二カ月くらい空間を置いてやるのだということでは、本人がまた先願してくる場合もあるでしょうし、あるいはまた他人の名義でその者がやってくるという場合も、私はあり得ると思いますので、この際やるなら悪質な者に対しては認めないというところまでいくのが、ほんとうだと私は思う。将来抜本的な改正を考慮すると言いますけれども、いつでも抜本的な改正で逃げてしまう。せっかくここで改正するならば、そこまで堂々と出すべきだと思うのです。当局は少し自信がなさ過ぎますよ。
  102. 福井政男

    ○福井政府委員 仰せの点につきましては、今後十分検討して参りたいと存じますが、本人が全然出願の権利がないというふうにとってしまいましても、今先生の御指摘になりましたように、他人名義で申請をいたしますと鉱業権の出願ができるというような関係もございまして、漸進的な解決策で手ぬるいという点はございますけれども、一応本案のような案にいたした次第でございます。
  103. 長谷川四郎

    長谷川委員長 本会終了後、午後二時に再開することとし、この際一たん休憩をいたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  104. 長谷川四郎

    長谷川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前の質疑を続行いたします。鈴木一君。
  105. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 先ほど悪質なものに対しましては、再び出願した場合でもこれを認可するなというようなお話をしたわけでありますけれども、もしその措置があまりにも苛酷過ぎるのだというふうなお考えであるならば、同一人の出願に対しましては通産局長のところで自由裁量の権限を与える、そして再び許可すべからざるものに対しては断固はねるというふうな方法をとるのは、この際やむを得ないことではないかというふうな感じもするわけです。決して私役所の権限をみだりに強化しよう、そのために努力するという意味ではないのでありますけれども、それ以外に措置はないじゃないかというような感じがするわけですが、そういう点に対して、当局はどういうふうなお考えですか。
  106. 福井政男

    ○福井政府委員 一回取り消しを受けましたものにつきまして、あと出願がありました場合に、通産局長に自由裁量の権限を与えて処置するようにしたらどうかというお話でございますが、この点私ども現在の鉱業法は御承知のように自由裁量の余地が全然入れられておりませんので、将来の法律改正の問題につきましては、一つの大きいポイントであろうかと存じますが、この問題につきまして自由裁量を入れまして処置するということにつきましては、問題も非常に大きい問題に触れるわけでございますので、将来ほかの条項と関連いたしまして十分検討いたして参りたい、かように考えております。
  107. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 従来鉱業権の取り消しの事実が相当あるのかどうか、あまりこういうものはないのだ、そう重要視する必要はないというふうなことなのか、あるいは相当鉱業権の取り消しの事実があり、しかもまた同一の人間に鉱業権がまた取得されているというようなことなのか、その辺の事情を詳しくお知らせ願いたいと思うのです。
  108. 福井政男

    ○福井政府委員 仰せのような点がございまして、従来の取り消しの条項の運用につきましては、鉱業権を持っておりますけれども、長い間ほったらかしいたしまして稼行していないというようなものにつきまして取り消しの処置をいたした例が相当ございますけれども、そのほかの事案につきましてはそう多くの例はございません。
  109. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 次に、追加になりました第百九十一条並びに同条の二の点でありますが、三年の懲役を五年に、三十万の罰金を五十万に改めておりますけれども、この程度の罰則を重くすることによりまして、不当行為が完全に絶滅することができるというふうなお考えなのか、いろいろ問題だから多少重くしたという程度のことなのか、その辺一つ伺いたいと思います。
  110. 福井政男

    ○福井政府委員 これは従来の法律の例から申しまして、五年の五十万というような相当重くした規定になっております。ただ私どもこの規定で考えておりますような事例を全部排除し得るというふうにはもちろん考えておりませんので、行政指導ももちろん必要でございますが、そういうことの行われないように一般の常識が向上するということが基本問題であろうと存じております。
  111. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 従来改正以前にこの罰則を適用した事例がどの程度あるのか、具体的に数字がおわかりならば、この際お知らせ願いたいと思います。
  112. 福井政男

    ○福井政府委員 従来適用いたしました例は、それほど多くはないと存じておりますが、若干のケースはあったことと承知しております。
  113. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 従来の例を私が聞いたところでは、一応体刑にはなっておるけれども大部分が執行猶予になっておる、従って軽く取り扱われているというふうなことも聞いておるのですが、それは事実でしょうか。
  114. 福井政男

    ○福井政府委員 石炭の方につきましては、三十二年中に福岡通産局管内におきまして盗掘に対する摘発件数が百八十件ございますが、そのうちの処分状況を申し上げますと、起訴が四十四件ございます。うち体刑が三十二件ほどございまして、罰金刑が二件、公判中のものが九件、不起訴のものが百十七件、起訴処分前のものが五件、その他が十四件、こういうような福岡通産局管内の盗掘に関します例はございます。
  115. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今お伺いした、執行猶予になっているというふうなことを聞いておりますけれども、その点はどうですか。
  116. 樋詰誠明

    樋詰説明員 大体今申し上げました数字のほとんど大部分は、お説の通り執行猶予になっております。
  117. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 そうだとすれば、三年を五年にしても、三十万を五十万にしてみても、これは大した実効が上らないのじゃないかというふうな感じもするわけでございます。盗掘の起る原因は一体どこにあるか、おそらく生活保護を受けているような人、従って貧困者はこういうふうな行為はしないだろうと思うのです。むしろやはり暴力だとかあるいはそれに近いようなものが組織的に——盗掘といえどもやはりこれは一つの企業でもありますから、一つの組織的にやっておるのだろうと思うのでありますが、そういう盗掘の実態はどういうふうになっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  118. 樋詰誠明

    樋詰説明員 ただいま鈴木先生のおっしゃいました通り、大体北九州及び山口県下におきましては、相当組織的な暴力行為による脅迫等を伴った盗掘といったようなものが相当あるわけでございます。そういう場合には、もちろんそれ自身の脅迫等の関係でも処罰されますし、またあるいは火薬等の不法所持という見地からも犯罪を構成するわけでございますので、通産局といたしましては、警察と連絡をとりまして、できるだけ発見次第これを告発し、そうして現場を急襲して証拠を押えるということに努めておるわけでございます。しかし何分にも予算、人員等の制約がございまして、現場を押えるという場合にも、ただ行ってみたら逃げられたといったようなこともございますので、たとえば鉱業監督関係予算といったようなものも、三十三年度の約四倍のものを三十四年度には要求いたしております。現在九十三万七千円という鉱業監督予算をとっておりますが、それを三百八十万程度来年要求することによりまして、人員並びにいろいろな、たとえば什器とかスクーターといったようなものを整備して、できるだけ動かぬ証拠を押えることによって、はっきりしたその次の処置がとれるというようにやりたいということで、ただいま大蔵省予算関係の折衝をいたしております。
  119. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 とかくこういったような暴力行為に類するものが、見のがされるような傾向が非常にあると思います。この際悪質な組織的な暴力団の盗掘に対しては、むしろ刑法二百三十五条の窃盗罪というふうなものを適用した方が、かえって効果が上るのではないかというような感じがするわけでございます。鉱業権の性格そのものが、どちらかというと何でもかんでも早く届出した者に排他的な、独占的な占有権が確立されるというふうなことになっておりますけれども、それがあくまでも一応ここは自分のものだということを宣明するというか、俗な言葉で言えば、ここはおれのものだということでつばをつけた程度のものであって、それがはっきりした所有権まで確立されているというふうに鉱業権が解釈されないというか、適用がそういうふうになっていないために窃盗罪にひとしいものに対して比較的軽い取扱いをしておるのじゃないかというような感じもするわけでございます。また警察の方も、こういうものを摘発するに当って、刑法上の犯罪であれば大いに点数かせぎにもなるだろうと思いますけれども、どうもこういうふうな鉱業法の罰則については、あまり積極的な熱意も示さないのじゃないか、また同時に暴力団との関係はないといっても、やはり従来のいきさつから相当深くつながりがあるために実績が上らないというふうな感じもするわけでございますが、実際悪質な——善良なものは別でありますけれども、悪質な暴力行為を伴うような、あるいは脅迫行為を伴うような盗掘者に対しては厳罰に処する意味で刑法の適用を考えたらどうかというふうにも考えられますが、その点いかがですか。
  120. 福井政男

    ○福井政府委員 お話のように御指摘になりました問題点につきましては、確かに一つの御意見であろうと存じております。この盗掘につきましてはほとんど大部分が石炭山でございまして、金属山につきましてはあとで製練をいたさなければなりません関係もございますし、またほとんど盗掘の行われるような事情がないようでございますが、石炭山につきましては盗侵掘という問題が常にございまして、今回の法律改正も石炭鉱業についての問題を対象に主として考えておるわけでございます。それで窃盗罪を適用してはどうか、こういう問題でございます。この点につきましては、実は鉱業法建前が、旧鉱業法におきましてはいまだ掘採されざる鉱物は国の所有とするというように、まだ掘っておりません地下の鉱物につきましては、国の所有であるというふうな規定が元の鉱業法にはあったわけでございます。従いましてこれを掘りました場合に窃盗罪ということも考えられるわけでございますが、改正になりました現行鉱業法では、第七条に、まだ掘採されない鉱物は鉱業権によるのでなければ掘ってはいかぬという規定がしてあるわけでございまして、法律上の鉱物の性格といたしましては無主物というような法律的の観念で取り扱っておるわけでございます。そこら辺が窃盗罪を適用することの問題がある点でございまして、今回の問題の罰則の規定の仕方につきましても、直接に窃盗罪を適用することができないようなことで、書き方がこの改正法律案にあるような書き方に相なっておるわけでございます。従いましてこの点も非常に大きい鉱業法の問題点として将来考えていかなければならぬ点でございまして、採掘されない鉱物を、どういうふうに考えていくかという点は、今後他の条項と同じように十分検討いたして参らなければならない点だと考えております。
  121. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 鉱業法の性格にかかってくるわけでございますが、そういう点については、もっと掘り下げて鉱業法改正の際考えられる方針なのかどうか、その点だけ伺っておきます。
  122. 福井政男

    ○福井政府委員 十分考えて参りたい、さように考えております。
  123. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 大体政府が出されましたこの鉱業法の一部改正に関する法律については、この程度にしたいと思いますけれども、先ほどからも、他日また抜本的な改正をしたいというようなお話でございますが、実際そういうようなことをお考えになっておるのか。近い将来やるのか、まだまだいろいろな検討する事項もあるので二、三年はかかるのか、その点の見通しを一つお聞かせ願いたいと思います。
  124. 福井政男

    ○福井政府委員 お話の点につきましては、至急に検討いたして参りたい、かように考えておりまして、現在でも内部で検討いたしておりますが、来年度予算鉱業法改正審議会の経費も要求いたしまして、予算をつけていただきますと同時に、設置法も改正願いまして、鉱業法改正審議会を設置していただきたい、かように考えて関係方面と相談をいたしております。
  125. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今までの問題に直接間接関連してくると思うのでございますが、鉱業法の十七条の鉱業権者の資格でございますけれども、この条文を見ると、日本国民並びに日本国法人であればだれでもがこの権利者になれるということになっておりますけれども、これは国民機会均等というような思想からすれば、一面うなづける点も多々あると私は思います。しかし他面鉱業権のような非常に高価な、しかも排他的な、独占的な権益が、鉱業の事業を行う能力がないにもかかわらず、ただとにかく先願さえすれば自動的に権限が与えられるというふうなところに、いろいろ複雑な問題を発生する原因にもなっておるだろうと私は思います。鉱業権の取得に対して、先ほどからも局長が言われるように、能力主義を併用するということが従来いわれておるわけでございますけれども、どのような形においてこの能力主義を織り込むのか、そういったような基準というか、大体のお考えがおありになればこの際一つお聞かせ願いたいと思います。
  126. 福井政男

    ○福井政府委員 現行鉱業法改正をいたしまして能力主義を取り入れるかどうか、この問題は鉱業法が現在先願主義をとっております最も大きい問題点の一つでございまして、外国の立法例について調べてみましても、先願主義を採用いたしておりますところもありますれば、能力主義を加味しておるところもあるようでございます。それでは能力主義をとりまして鉱業権者の資格でありますとか、あるいは能力でありますとか、こういった点につきましてどういう要件を加味したらいいかということになりますと、いろいろ問題点もございまして、現在のところ能力主義を採用するかどうか、この点を非常に大きい問題といたしまして、でき得れば能力主義を採用いたしたい、こういう考え方で考えてはおりますけれども、影響するところが非常に広うございますし、また運用の問題もむずかしい点が考えられますので、改正審議会で——この審議会には各方面の権威者の方々委員になっていただきたいと思っておりますが、ここで十分御検討をいただこう、かように考えております。
  127. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 その能力主義の採用について、ここで十分に検討してもらいたいということなんですか。
  128. 福井政男

    ○福井政府委員 能力主義を取り入れるかどうか、取り入れるとすればどういうふうに取り入れるか、こういった問題につきまして法律上の問題といたしまして御検討をお願いしよう、かように考えております。
  129. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今の点はまた他日に譲ることにいたします。  日本の鉱業開発、地下資源の開発の経過を見ると、国はそういう開発の点について、特にこの開発のスタートであるところの探鉱ということについてはあまり力を入れてない。それで鉱山ブローカー、いわゆる山師、山師という言葉はここから出たのだろうと思いますが、この山師が山野を跋渉して露頭を見つける。そうしてこの見つけた露頭に対して鉱業権を取得し、ある程度試掘を試みて大体有望だということになってくると、それを転売したり、あるいはまた大企業がそれを見に行って、たたいて買うというような形で、日本の鉱業が発達して今日まで来たと思うのでございますが、日本の過去の発展過程からすれば、そういうふうな時代も一つの過程としてやむを得なかったことと思いますけれども、今日のような段階にくれば、特に資源の少い日本の実情においては、もう少しそういう鉱山ブローカーとか山師の探鉱にたよることなく、国自身が相当の予算をもって、そうして探鉱事業に積極的に参画し、そうしてこれなら大丈夫だというものが見つかったならば、これを入札制か何かにして事業者に売り渡すとか、そういうような形をとることも、この際必要な段階に来ていやしないかという感じまでするわけでありますが、そういう点に対しては当局はどんなような考えでございますか伺いたいと思います。
  130. 福井政男

    ○福井政府委員 仰せのように鉱業にとりましては、探鉱ということが基礎的な問題でございまして、すべては探鉱から出発するわけでございます。日本の鉱業の発展の歴史を見ますと、政府は常に非常な助成をやっておりますけれども、探鉱の問題につきましては今鈴木先生から御指摘のような点も確かにあるわけであります。私ども現在鉱業に関する行政を預かっております者といたしましては、探鉱ということはやはり非常な重点を置いていろいろ考えておるわけでございますが、ただ今の建前ではできるだけ企業の自主的な探鉱に、政府がそれが行われやすいように助成をするという行き方を主としてとっております。そういうことから主として中小鉱山の探鉱につきましては、本年度も五千万円の探鉱補助金を出しておるわけでございますが、三十四年度予算におきましてもさらに増額をして出したい、かようなことで大蔵省と折衝をいたしておるわけでございます。そのほか税制上の優遇措置をもとっておるようなわけでございます。なお、直接やったらどうかという点につきましては、前国会で北海道地下資源会社というのができたわけでございますが、これが北海道の地域に限定されてはおりますけれども、国の地下資源の探鉱をやるという使命でできておる会社でございます。
  131. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今の問題ですが、直接やるのも私一つの方法だろうと思いますし、また県を通じて補助金を流して、そうして探鉱事業に助成をしていくということも、一つの方法だろうと思いますけれども、現在のところあまりにも予算が少くて、各県におりていった金額なんというものは全く微々たるもので、国が積極的に探鉱事業を補助しているという性質は、私持っていないというように考えられますので、今後鉱業法改正の際、探鉱に対する補助ということに対しても考えられるならば、一つ積極的な施策を考えてもらいたいと希望をいたしておきます。  それから七十七条の租鉱権の問題でございますが、地下資源の開発は、原則的にあくまでも鉱業権者当人が、これの鉱業経営をやっていくということが望ましいと思います。そのために鉱業権を取得したのだろうと思うわけでございますが、しかしわが国のような経済的な、あるいはまた自然的な特殊性からしまして、また従来の経過から見ましても、この租鉱権制度も地下資源の開発の一つの方法としてやむを得ない一面もあると私思います。しかしこの租鉱区の面積があまりにも零細過ぎるために、鉱業経営の規模も零細となって、鉱業法あるいはまた鉱山保安法規定されておりますところのいろいろな義務の履行をなし得ないような弊害も生ずるおそれなしとしないと思うのでありますし、また最近のような石炭業界あるいは一般鉱業界の不景気からすれば、こういったふうな租鉱区が非常に零細化する可能性も大いにあるのではないかという懸念もされるわけでございます。従ってこの租鉱区の面積に対してはある程度経営規模を考えながら、一定の制限をする必要もありはしないかというふうにも考えられるわけでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  132. 福井政男

    ○福井政府委員 租鉱権の問題につきましても、主として石炭鉱山について問題があるわけでございまして、これも昔の法律ではなかったのでございます。いろいろ斤先掘り等の脱法的な行為が行われまして、現行鉱業法では租鉱権ということで、新しく経済上の実情に合うような制度が設けられたわけでございますが、この租鉱権の上に、また今度斤先掘りみたいなものが行われるというような、非常に複雑な事態も探鉱上についてはあるようでありまして、ここら辺の問題等につきましてもただいま仰せのような点、十分今後検討いたして参りたいと存じておりますが、この租鉱権の面積につきましては法律上制限はないのでございまして、ただ残鉱を処理するというのが一つの目的になっております関係上、経済的にどうしても自然面積が制限されてくる、こういう実情に相なっているわけでございます。今後十分検討いたして参りたいと存じます。
  133. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今私が申し上げましたような租鉱権者において、鉱業法あるいは鉱山保安法規定された義務の遂行ができないというような事態は従来なかったのですか。
  134. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 従来租鉱炭鉱におきましては非常に期間の短かいのがございまして、大体法定の期間も五年以内になっております。実際問題といたしましては、一年、二年といったごく短期間のものが多いわけです。従って保安規則のいろいろな要求をいたしましても、でき上るころにはもう済んでしまうというような状態のものがございまして、全般的には非常に悪いわけです。従って租鉱炭鉱災害も非常に多くて、最近の重大災害でも租鉱炭鉱から起っておるものがかなりございます。これは東中鶴がそうでございますし、名古屋の七福炭鉱もそうでございます。そのほかにも重大災害で租鉱炭鉱から起りましたのも数多くございます。概して非常に鉱区が狭いのと期間が短いので十分な保安施設ができないというような状況でございます。
  135. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今の点も将来大いに検討していただきたいと思います。それから鉱区の分割の問題が最近方々で起っておるようでありますが、特に経済不況というようなことから鉱業権の一部譲渡の方法として、鉱区を分割して他に売買するというようなことも盛んに行われておるようにも聞いておりますけれども、これによって鉱業経営上、あるいはまた鉱山保安上弊害を生ずるおそれがあるような感じがいたしますけれども、かような事実がないのかどうか、あるとすれば、これに対する対策、それは勝手に売買するのだからどうにもならないということなのか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  136. 樋詰誠明

    樋詰説明員 鉱業の施行は御承知のように施業案の認可によって行なっておりまして、その施業案の認可の際に、保安の見地からも十分検討して認可いたしてあるわけでございますので、その施業案に従って行われる限りにおきましては、特に面積の大小ということは直接は関係ないわけでございます。ただ先ほどからいろいろお話がございます租鉱区の問題でございますが、これは残炭を整理するというような意味から、むしろ面積も非常に自然的に限定され、あるいは期間法律的に制限されているのが実情でございます。しかし同時に大炭鉱あたりでまだ働けるけれどもやめるといったような人で、ほかに行きようがないといったような人、一種の社会救済的な面でやむを得ず大炭鉱が新しく租鉱権を出してやらせるというようないろいろな例等もございますので、単に経済的な問題のみならず、社会的な問題を含んでいるというような点から、それが保安的に支障を生じないような合理的な格好で運用されるということにつきましては、今後できるだけ注意していきたいと考えております。
  137. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今施業案の話が出たので、これに関連してお伺いしたいと思いますが、鉱業行政上、施業案の認可ということは、非常に重要な問題であろうと思います。現在聞くところによれば、この施業案の認可に関して、各通産局がやることになっておりますけれども、その認可の記載の要領とか、認可の基準がそれぞれまちまちで統一されていないというようなことも聞いておるのであります。従ってそのために種々行政上の欠陥もあるやに聞いておりますが、果して事実そうなのか。もしそうだとするならば、これは当然記載しやすいように、できるだけ簡単に規格の統一をする必要がありはしないかと思うのでありますが、その点は実態はどうなっておりますか。
  138. 樋詰誠明

    樋詰説明員 お説の通り現行では各通産局長が、それぞれ要領を定めてやるということになっておりますが、いろいろ最近重大災害の頻発というようなことにもかんがみまして、かねて内部で統一して検討しておったわけでございますが、すでに成案を得まして、関係各局の各通産局からも担当者を全部呼びまして一応の説明会を終りました。ごく近い機会に全国統一した要領を告示するということになっております。
  139. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 その点は了承しました。せっかく規格を統一して基準を統一して施業案を作られても、果してその施業案を認可した通り操業が行われているかどうかということが問題であると思います。そこに災害発生の重大な問題がひそんでおると思いますけれども、現在の行政官庁の予算あるいは人数ではとても足りないのだ。金もない、人もいないために施業案通り実行されるかどうかの十分な監督ができないのだ、あるいはまた指導ができないのだというようなことになりはしないかと思いますけれども、今の人数は十分なのか足りないのか、金は十分なのか足りないのか、そういう点についても、せっかく大臣もおられることでありますから、十分お聞かせ願いたいと思います。
  140. 樋詰誠明

    樋詰説明員 現在の予算は鉱業監督に要する費用が大体中央に十万円、地方に九十八万七十円、本年度はいただいたわけでございます。しかしこれは非常にわれわれといたしまして不満足な金でございますし、また人員的にも不足いたしておりますので、三十四年度は金の面におきまして四倍の三百九十万円地方に、それから中央の十万円は、これはただ事務費でございますので、そのままにいたしております。大体地方の分を四倍要求いたしております。それから人員につきましてもまだ行政管理庁あるいは大蔵省は非常に難色を示しておるわけでありますが、とりあえず最低限として鉱業監督のために十人ぜひふやしてくれということで、予算要求を現在いたしております。
  141. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 これは鉱業経営上のみならず、ひいては人命にも大きく影響するところでございますので、一つこの予算の獲得については大臣も積極的に熱意を示して、事務当局の要求はおそらくこれは十分ではない控え目な要求じゃないだろうかと思いますが、少くともこれくらいは通るような大臣の格別の努力を要望したいと思います。
  142. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この監督官の実際の仕事を見てみますと、実に予算が足りないために中小炭鉱のごときは一年に一回くらいしか行っていない。しかもそれは走りで行っておるということでありますから、これはどうしてもやはり予算をふやして十分監督しなければならぬということは、私はこの間実地に参りまして痛感したのであります。ぜひこれは来年度予算について十分予算をとって実行いたしたいと思っております。
  143. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 はなはだ率直でけっこうだと思いますが、ぜひこういう問題については積極的な熱意を示してもらいたいと思います。それからこまかい問題でありますけれども、施業案の審査に相当日にちがかかるというふうなことも聞いておりますが、施業案というものは提出すればそんなに日にちも要せず簡単に認可になるのかどうか、その点と、それから施業案の違反の行為は相当あろうかと思います。その中には違反はしたくないけれども資金難のためにやむを得ず違反するのもあるだろうと思いますし、また同時に最初から役所に出す書類はこれでいいのだ、しかし実際はこうだということで、悪質な違反行為も中にはあるだろうと思うのでございますが、それに対して悪質なものに対する第百九十二条の規定による罰則の適用というものが実際あるのかどうか、ただ罰則は有名無実なものなのかどうか、そういう点について一つお聞かせ願いたいと思います。
  144. 福井政男

    ○福井政府委員 施業案につきましては、御承知のように鉱物を合理的に開発するという見地からの問題と、それから保安上の見地からの問題と、こういう二通りが施業案の一つの使命になっておるわけでありまして、問題になるのは主として保案上の見地からの点が問題になるわけでございまして、通産局に出されました場合に具体的に申し上げますと、鉱山部とそれから保安監督部と両方が相談をいたしまして決定をいたしておるわけでございますが、格別の問題がないものはせいぜい二週間前後で、私は処理されておるように承知いたしております。ただ特別の問題のございますのは、なかなか手間を取る、こういうのが実態であるわけでございます。
  145. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 今の百九十二条の適用が相当あるのかどうか、ほとんどこういうものは適用されていないのかどうか、そういう点も一つお聞かせ願いたいと思います。
  146. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 施業案違反につきましては、特に中小炭鉱で相当違反事項がございます。最近調査いたしました中小炭鉱の——九州でございますが、実態調査におきましても、相当施業案違反をやっておる。極端に申しますと、中小の小の方では施業案違反、しかしこの施業案違反につきましては非常に重要な事項の違反でありますので、もちろん過般の調査のときに発見されましたときでも、施業案違反の場合には直ちに全区をとめたケースもございますし、作業の一部を中止させた場合もございます。詳細はここで御説明いたしませんけれども、施業案違反によって作業の全部または一部をとめた例はかなりございます。
  147. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 この点も一つ監督が行き届くようにお願いしたいと思います。大体石炭業なんかに携わっておる人はどうも柄が悪いというか、少し言葉が過ぎるかもしれませんけれども、むちゃくちゃな人が多いような感じもしますので、人数をふやすなり予算を多くするなりして、この問題についても十分監督なり積極的な、いい意味においての監督ができるようにしていただきたいと思います  それから百十七条の供託の問題でございますが、この供託金制度はなかなかいい制度だろうと思います。しかし果して法の定むるところによりまして確実にこの供託金制度が実行されておるのかどうか、その点の事情もお聞かせ願いたいと思います。
  148. 樋詰誠明

    樋詰説明員 大体石炭について申し上げますが、石炭の一年間の鉱害は推定年間約八億くらい発生しておると思います。そのうちこの供託金制度、もう一つ安定した鉱害に対しまして例の未払金を留保する制度が三十二年から認められております。この未払金を留保しておりますのは、当然自分で払う意思があるという格好でございますが、大体八億のうち四億八千万程度に相当するものが未払金を留保いたしております。従いまして未払金を留保してない、いわゆる供託金で最後の担保をしなければいかぬというものは鉱害の量にしまして三億二千万円一応あるわけでございますが、現在の臨鉱法の一建前で行きますと、炭鉱の負担が大体う〇%となっておりますので、一億六千万円程度金が積まれれば、大体三億二千万ある鉱害は十二分にやって行けるということになっておるわけでございます。御承知のように、この規定によりまして最高二十円までということになっておりますので、一億六千万円を積むために、一体一億六千万円の鉱害を抱えている炭鉱がどの程度の出炭をしているかということを計算いたしてみますと、今のわれわれの計算では、千百万トン程度になっておりますので、一億六千万を千百万で割りますと平均的に十五円ということになるわけでございます。従いまして二十円の範囲でやっておれば、大体未払金制度と併用いたしまして十分カバーできるということになっておりますが、実は個々の炭鉱について見ますと、どうも払い方があまりよくないというものもございますので、現在のこの法律の定めております二十円の範囲内におきましてできるだけ——これは鉱害の最後の担保でございますので被害者が安心できるように、十分に積ませるように努力したい、こう思っております。
  149. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 これも少し行き過ぎたことになるかもしれませんけれども、供託金制度は非常にいい制度だと思います。従ってこの制度を履行できないような能力のないもの、資力のないものに対しては施業案の認可はしないというふうなところまで、この制度はいい制度として必ず実行できるように追い込んでいくような法改正も必要じゃないかというような気もするわけでございますが、そういう点はいかがでしょうか。
  150. 樋詰誠明

    樋詰説明員 施業案は大体作業を始めます際に、あらかじめ保安的の見地から、こういう保安上の注意をやって掘りたいといった大体の傾向を示しますので、一度施業案をとれば、あとその施業案を変更しない限り、大体そのままで行なっておれば、もう一度認可してくれというものは出てこないわけでございますが、むしろこれは今おっしゃいました、できるだけ鉱害を安定さして、被害者あたりが安心できるようにという格好で、その鉱害をいかに処理するかという見地からは、先ほど申し上げましたように、積み方の足らぬ人間にはできるだけ規定通り積むように、また二十円以下で——個々の炭鉱によって金額が違っておりますので、状況によって二十円以下において、もう少し金額を引き上げるということについては、できるだけの措置を講じていきたいと思っております。
  151. 福井政男

    ○福井政府委員 ただいまの点につきましては施業案認可を中止するというお話でございましたが、現行法の百二十条に供託金を供託しない場合には、事業の中止を命ずることができるという罰則に相当する規定が置いてございます。
  152. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 最後にお伺いしたいんですが、鉱業の実施と一般公益並びに他産業との調整というふうな問題が、最近特に多くなっておる、またなりつつあるというふうに見ているわけでございますが、非常に人口が多くて土地が少い。従って資源も少いというわが国においては、こういう事象が起るのは当然であろうと思います。九州の高松炭鉱の例もその典型的な一つの例だろうと思うのでございますが、こういうふうな調整に関してそれぞれケース・バイ・ケースで処理するというふうなことも、一つの方法だろうと思いますけれども、将来のことも見通して何らかこういう問題が自動的にスムーズに処理されるというふうな立法的な処置も必要ではないかというふうな感じもするのでございますが、こういう問題がすみやかに処理されないために、非常に迷惑をしておる鉱業権者もおるということを、これに関連して申し上げてみたいと思うのでありますが、そういうふうな点に対して当局はどういうふうなお考えがあるか、お聞かせ願いたいと思います。
  153. 樋詰誠明

    樋詰説明員 今の問題につきましては、実は問題がいろいろあると思うのでございます。まず地上の権利と地下の採掘権利をどう調整するかという際に、地下を掘らさないように制限するという面が一つ、それから地上でいろいろな施設をする場合に、その施設自体を制限するという問題と、大きく分けると二つあるというふうに考えるのでございます。その中でまず地下を掘る方の問題につきましては、御承知のように地上の公益との関係が非常に重大であるといったような場合には、土地調整委員会鉱区禁止区域の申請をいたしまして、府県知事から土地調整委員会の方にこういうところは鉱区にされては困るということを申請して、土地調整委員会でそれを認められた場合には、そこには鉱業権は設定してはならないという制度もございますし、一般的には鉱業権を付与する際に、十分府県知事あたりとも相談して付与するということにしております。さらに付与したあとで、いよいよ鉱業採掘をするところまで、いろいろ時間がかかるといったような場合につきましても、これは鉱害防止ということにつきましては、現在保安監督部長が責任を負っておりますが、通産局長は保安監督部長と十分打ち合わしてやるということになっておりますので、現行法のもとにおきましても地下の権利を制限するということ自体につきましては、現行法を運用すれば大体いくのではないか。問題はむしろ地上に建てるいろいろな建物なり、あるいは施設なりというものを、若干でも制限せにゃいかぬというような場合に、その制限するために生ずる損害、あるいは価値の減少というものをだれが負担するか、あるいはどの程度強い規模で、地上に施設をさせるかということについて、何らかの規準を設けなければならないという問題が起れば、今先生の御指摘になりましたのは多分あとの方の問題、たとえば地上に建物を作る場合にどの程度強くさせるか、その費用はどういうふうにやるべきか、またイギリスなんかのように、そういう場合に三%増加分までは地上の権利者が持って、それ以上は鉱業権者が負担するんだといったような例が、ドイツあるいはイギリスのように非常に古くから鉱業が行われまして、鉱業法自体が百年も百五十年も経過しておるようなところでは、昔からこういう地上の権利と地下の権利との摩擦問題がありましたために、どの程度掘ればどの程度鉱害が起るだろうかということにつきましても、おのずから経験的な数字が出ておりまして、それを基準にしていろいろな制度ができておるわけでございます。ただ残念ながら日本におきましては、鉱害理論がまだ十分に確立されておらない、従ってどこをどのくらい掘れば、地上にどれだけの影響を来たすかということにつきまして、非常に自信のあるような基準というものをまだ持っておらないわけでございます。そこで現行の法のもとにおきましても特別掘採区域、たとえば九州の小倉あるいは飯塚市といったようなところ、あるいはその他いろいろ、この間問題の瀬板のところもそうでございますが、ああいうところは特別掘採区域として特別の掘採計画を出さして、それを十分に検討して認可するということになっておる際に、認可基準が当然要るわけでございますが、その認可基準も実は一般標準的なものを作るだけのデータがないということのために、一件々々仕方がないので専門部会を設けまして、ここのところはどうだ、あそこのところはどうだということをやっておるわけでございます。従いましてもしこれらのデータがそろった場合には、現在の特別掘採計画というものの認可基準でいってもそれはできぬことはない。その際にあらためて別の法律を作るかどうかという問題が起りますが、もしそういうデータさえ集まれば、現行の特別掘採区域の認可基準にそれを当てはめても、大体おっしゃる通りのきちっとしたものができるはずでございまして、むしろ現在の段階では早くいかにしてこういうデータを得るかということに問題がございますので、われわれは現在それをできるだけ早く得るために鉱害測量を実施しておるわけであります。すでに二千件ばかりの測定を実施しておりますが、二十四年度におきましても、これにさらに二千件ばかりを追加するということで、大体今後三年くらいの間には、北九州から宇部、これが一番鉱害の多いところでございますが、さらにその済んだあとは、常磐あたりにつきましても鉱害測定の完成を待ちまして、そうすれば大体地上と地下との関係、どこをどう掘ればどれだけ上に響くか、従ってどの程度の強い建物を作らなければいけないというような関係も、はっきりわかると思うわけでございますので、そうなりました場合には、新しい特別の法律を出すか、あるいは現在の特別掘採計画の認可基準をそのまま引き当ててやるかということはそのときの問題で、とりあえずデータを得たいということのために、鉱害測量の予算の要求を来年度も今年度以上にやりたいと考えております。
  154. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 いずれにしましても特別な立法をするか、あるいはまた現行法でやるかということにつきましては、これは当局の自由だと思いますけれども、早くそういったようなデータが整い、こういう問題がすみやかに解決されるような方途を講じてもらいたいと思います。  今土地調整委員会の話が出ましたのでお伺いしたいのでありますが、土地調整委員会の方で鉱業の問題に関連しまして意見を述べるというか勧告をした場合、あなたたちはそれに従いますか。
  155. 樋詰誠明

    樋詰説明員 鉱業権がまだ設定されておらないところ、これが鉱区禁止区域になりますれば、鉱業権を与えてはいけないのでありますから、従うも何も、そこから出てきた出願は認可しないということでございます。すでに鉱業権が与えられておる場合、そのときには一応土地調整委員会から勧告がくるわけでございますが、その勧告が来た場合には、現在考えられておる施業案に基く採掘の程度と、それから地上でどういう理由から禁止されたのかということを比較勘案いたしまして、そこは行政官庁の責任といたしまして、これ以上掘らすべきでないということであれば、その勧告に従い、わざわざ掘らさぬでもいいのじゃないかということであれば、一応勧告を受けたけれども、こういう理由だからという理由は、当然土地調整委員会の方に建議せざるを得ないと思いますが、場合によっては従わないこともあり得るかと考えております。
  156. 福井政男

    ○福井政府委員 土地調整委員会との関係につきましては、法律に土地調整委員会の方から通産大臣に勧告をすることができるということが、御承知のようにあるわけでございますが、通産大臣は独自の見解で、これを処置していい法律上の建前になっております。ただ政府部内の問題でありますから、両方の意見ができるだけ食い違わないように措置していきたい、かような運用をやるようにしております。
  157. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 それでは具体的な問題で一つお伺いしたいと思いますが、これは特に鉱山局長にお伺いしたいと思うのであります。秋田県の採掘権登録第百七十一号に関する問題でありますが、これは国立公園との関係でいろいろの問題が発生して、いまだに解決を見ないでいるわけであります。この経過は、私から申し上げるまでもなく局長の方でおわかりだろうと思いますけれども、秋田県の当局において、この鉱区に対して国立公園にしたいということから、土地調整委員会あてに鉱区禁止地域の指定の要求がなされたわけであります。その当時の知事は前の秋田県知事の池田徳治でありますが、この請求は昭和二十九年五月三十一日付の官報で告示されまして、それで同年八月二十七日に官報をもって、右地域は鉱区禁止地域に指定されるに至ったわけであります。同時に土地調整委員会は仙台通産局長に対して、鉱区については当該地域が国立公園法の規定により特別保護地域またば特別地域に指定されたときは、鉱業法第五十三条の規定により減区または取り消しの措置をとられたいというような勧告文が出ているわけでございます。ここから問題が発生したわけでございますが、二十八年の七月十七日付で仙台の通産局に対して、経営者であるところの八幡硫黄株式会社が施業案の認可を申請しておったわけであります。同年十月に施業案の一部変更願を提出しまして、これの認可を受ける経緯は次の通りでありますが、右の土地調整委員会の通達を受けた仙台通産局は、この会社から申請中の施業案の一部変更願に対して、保留の措置をとってきたわけでございます。そのために、施業案が認可にならないために、営林局の方では土地も貸さないというようなことで、実際上鉱山の操業が不可能になってしまったわけであります。その間、国立公園の指定に関する国の行政措置が延び延びとなりまして、三十年の十一月十二日に仙台の通産局、前に出しておりました施業案を認可する、国立公園の方が見通しがつかないので、前の施業案を認可するということを業者の方に通告をしてきたわけでございます。ところが二年間も仕事を休んでおった関係上、十一月になって施業案の認可がおりても、非常に積雪深いところでございますので、ここで操業するためには、相当の食糧とか越冬のためのいろいろな措置を講じなければならないために、経営者の側では、認可を受けたけれどもその年は操業ができない。そして翌年に操業が持ち越されるというような事態になったわけでございますが、この間秋田県当局はこの鉱区を含む一帯の地域を国立公園とするために関係当局に陳情するとともに、この会社に対しましても知事の名前で公文書をもって、国立公園に指定したいために極力協力してもらいたい、また国立公園の審議会の方からの一つの条件としまして、その地域内において鉱業活動はさせない、秋田県が責任を持ってそういう措置をとるならば国立公園にしてやる、こういうふうなことであったのでありますから、知事は一生懸命になってそういう運動をして、業者からもいわゆる操業を停止してもいいという判をとったわけでございます。その間秋田県知事は時の通産大臣であるところの石橋さんあるいはまた官房長官であるところの根本さんにも十分相談をして、もし国立公園にすることによって操業が不可能になった場合、鉱業法五十三条によって補償の措置をとってもらいたいということを陳情したところが、大臣もそれは当然であろうということで、一応の了解をされ、当時の局長さんたちに知事がお会いしたかどうか知りませんけれども、緊急を要する事態であったので、最高責任者であるところの通産大臣に会い、また官房長官にも会って、そういうふうな場合は、補償をしてやるということを内諾と申しますか話し合いをつけたので、業者の方でもやむなく国立公園にすることによって、自分たちが操業できなくなることに対して承諾の書類を提出したというふうなことになっておるわけでございます。その後三十一年の七月十日に国立公園に指定され、しかもその地域が特別地域に指定されておるにもかかわらず、土調委の勧告に対しては、何ら行政当局の方から回答がないということになっておるわけであります。従って二年間も三年間も放置されたために、せっかく施設した機械器具は全部腐触してしまって使いものにならないということになり、また同時に相当多くの債権者に対しては支払いができないということで、地元にも相当の迷惑をかけておるような事態もあるわけでございますが、こういったものの措置に対して、当局ではどういうふうにされるのか、一つ詳しく具体的に御意見を承わりたいと思うわけであります。
  158. 福井政男

    ○福井政府委員 お話のございました点は具体的なケースでございますが、一般的に申しまして自然公園法という厚生省所管の法律ができまして、国立公園なり国定公園に指定をいたします場合に非常に鉱業とかち合うというような問題が方々に起きております。ただいまお話のございました秋田県の問題は、鉱種は硫黄だと存じますが、硫黄の出ますところは特に火山地帯でありまして、非常に景色のいいところだものですから、国立公園なり国定公園という指定問題が方々にあるわけでございます。特に地元の地方庁としますと、観光というようなことで国立公園にしたいというような運動が一面あるわけでございます。そういうことで東北でございますとか、あるいは北海道でございますとか、硫黄鉱山の操業と自然公園法によります国立公園との関係が問題になるわけでありますが、ただいま仰せの問題につきましては、だいぶ長い間の懸案になっておるようであります。現在私の承知いたしておりますところでは、厚生省に対して自然公園法の規定によりまして、硫黄掘採の許可申請を会社からしておる。厚生省といたしましては法律でそれを許可しますと、そこの風致を害するというようなことでじっと握っておるわけです。それを取り消しますと、今度自然公園法で補償しなければならぬ、こういう問題になるわけでございまして、ただいま問題の出ました鉱業法五十三条で取り消しをしなければならぬという問題は、現在のところ私は起きていないと承知いたしております。厚生省は現在のところは、その会社側から出ました申請書をそのまま握っておる、こういう段階のようでございます。  ただ三十二年に、たしか会社が厚生大臣に対して申請をいたしたように承知いたしておりますが、それでは今かりにそれが厚生省から認可になって会社側は操業ができるか、こういうことになりますと、その間も操業もずっとやめておりますから、今厚生省から認可を受けましても、これはまあ法律による認可ではあるけれども、会社としては現実に作業ができない。特に御承知のように、化繊工業の不振に関連いたしまして、硫黄鉱業は各鉱種のうちでも最も不振な業種の一つになっております。操業率は全体で四割から操短いたしておるような実情でございますので、硫黄をとってみても売れるわけではございませんから、現実問題としてはできないわけでございます。  この問題につきましては、先般実は私ちょうど秋田県知事にお目にかかりまして、厚生省の方に善処方を要望しておるということを伺ったばかりでございます。そういう状況になっております。
  159. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 いずれにしましても、この業者には何らの落度はなかったろうと私は思う。もちろん操業の過程においては、施業案の認可を待たないで仕事をしたということもあるわけでございますが、それに対してだいぶ苦情も出て始末書も出したようでございます。しかし、そのときの施業案が保留になって、認可が出されなかったわけでありますけれども、そこが国立公園にならなかったために、時間はかかったが、あと通産省の方から許可も出ているというようなことでありまして、この件に関しましてはそれ以外に業者に落度は何にもないだろうと思うのです。結局国立公園にするとかしないとか、あるいは補償してやるとかりしないとかいうことで、ずるずる時間がたってしまって、せっかく施設した設備も全くもう使いものにならず、スクラップ同様になり、しかもこのスクラップ同様になったものに対して債権者が通告をよこして、いつ何日までに金を持ってこなければスクラップとして処分するというようなことまでして、結局処分されて、現在は跡形もないというような状態になっておるわけであります。われわれとしては、法律建前もいろいろあると思いますけれども、いずれにしてもこの問題については、公共の福祉ということを尊重して、私企業を停止せざるを得なかったわけでございますから、国においてその損失分は補償してやるというのが私は当然だろうと思う。だから石橋さんも根本さんも、当時の大臣あるいは官房長官として、それは当然だと言われたのは私うなずけるわけでございますが、通産省の方に行けばそれは厚生省でやることだ、こういうことでありますし、厚生省の方に行けば土調委でああいう勧告を出しているのだから、自動的に勧告に従って五十三条によって取り消したらいいのじゃないかということで、まるで責任のキャッチ・ボールみたいなもので、あっちへ行けばこっちへたまを投げてくる、こっちへ行けばあっちにたまを投げていくということで、この問題に対しては何ら過失のない、全然善良なる業者が取りつく島もないというような実情になっておるわけでございます。もし通産省の方じゃなくて厚生省の方が自然公園法に基いて補償すべきだというようなお考えであるならば——おそらく厚生省としても出された施業案に基いて、その地域を採掘することは国立公園の決定的な要素をなくするから反対だろうと思うわけであります。そうすればどうしてもこの鉱区の禁止をしなければならないということに相なると思いますけれども、その際鉱山局の方では、業者の立場を積極的に守るというような行政的な立場に立っておるわけでございますから、厚生省に対して積極的にあなたの方から出向いていっても早く補償すべきである。しかし補償のいろいろ具体的な資料の作成については、厚生省の方では人もいないでしょうし、また材料もないと思いますから、おれの方で手伝ってもいいけれども、とにかくすみやかにこの業者に対して補償すべきだというような強い立場をとるのが、あなたたちの行政の立場だと思うのです。都合のいいときはどんどん法を拡大解釈して、あらゆるところに進出するけれども、一たび不利に、しかも補償問題のようなめんどうな問題になってくると、全然関心を示さないという態度では、鉱山行政も十分に私は行えないだろうと思うわけですが、そういう点について一つどういうふうな態度で今後この問題を処理するのか、局長から伺いたいと思います。
  160. 福井政男

    ○福井政府委員 この問題につきましては、問題の起きました当初から、通産省といたしましてはもちろん先生の今御指摘になりましたように、私ども鉱山の採掘ということを保護育成する立場をとっておるわけでありまして、鉱業側から厚生省にずっと折衝をいたして参ったような次第でございます。この問題が起きました当時、秋田県の方の国立公園に指定したいという非常な御要請から、鉱業用地を使わせないようにするというような意見の表明がありましたとか、あるいはまた当時秋田、岩手両県にまたがりまして、国立公園指定運動を非常に盛んにいたしまして、そういう客観的な状況がだいぶこの問題の処理を支配いたしておったように承知いたしておりますが、こういう問題は一般的にその当時の雰囲気と、それから数年たちました後の今度冷静な議論ということになりますと、よほどこの問題の解決にいろいろ食い違う点が出るようでございまして、特に山の方の問題につきましては、こういう例がよくあるわけであります。その点私ども非常に遺憾に存じておりますが、この問題につきましても、今後とも厚生省とも十分私ども鉱業保護の見地から折衝いたして参りたい、かように考えております。
  161. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 厚生省の方でこの施業案の認可は困るのだ、その地域を認可することによって国立公園としての価値を半減する、あるいはなくするんだというようなことであるならば、当然これは鉱区を禁止して、また業者に対しては損失補償を私はすべきだろうと思いますけれども、その点局長の所見はどうですか。
  162. 福井政男

    ○福井政府委員 今先生のおっしゃいましたような見解に立ちますと、これは厚生省は自然公園法によりまして損失を補償していく、こういう建前になろうかと存じます。
  163. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 なろうかと思いますというのじゃなくて、あなたはそういうふうにすべきだ、当然これはしてもらわなければならぬというふうなお考えなのかどうか。
  164. 福井政男

    ○福井政府委員 その点は、自然公園法三十五条にそういう補償をしなければならぬという規定がございます。
  165. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 その際鉱山局長としては、積極的にそれを実行するように、強く厚生省の方に交渉なさいますね。
  166. 福井政男

    ○福井政府委員 ただいま申し上げました通り鉱山保護の見地から十分私ども厚生省と折衝いたして参りたいと考えます。
  167. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 この問題については、私通産局側にも鉱山局側にも責任があると思う。というのは、一度施業案を出した後保留しておった、その間国立公園になりそうだというので、保留しておいて、なかなかならないというので、今度は再びそれを認可したということでありますけれども、おそらく業者としても日本人である限り、国立公園として重要な役割を果しておりますところの、俗に言う泥火山まで掘ろうという気はなかっただろうと思う。むしろそこを残しておいて、あとは掘らして漸次仕事をやめさせるというような行政的な指導があれば、こういう問題も起さずに私は済んだろうと思いますけれども、厚生省の方から文句が出たというので、施業案を保留しておいて、それで国立公園にはなかなかなりそうもない、国立公園でなくて国定公園になった、そこで今度施業案を認可したというようなことは、通産局あるいは鉱山局としても相当責任を感じなければならぬ問題だろうと思います。それからまたこの補償について今度は厚生省だ、厚生省の方に行くと、まず通産省がやってくれれば一番いいんだ、土調委の勧告もあるし、何のために土調委が勧告したのだというような議論の蒸し返しで、秋田県知事もこの中入って非常に困っておるような状態でありますけれども、補償を受ける側からすれば、厚生省から金をもらおうと通産省から金をもらおうと、別に金の価値には変りがないわけですから、いずれにしてもとにかく現行法において、やりやすい形においてすみやかに補償するのが建前だろうと思いますけれども、大臣から一つ責任ある御答弁を願いたいと思います。
  168. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 実情を十分調査いたしまして、厚生省とも折衝いたしました上において、お考えに沿うように善処いたしたいと存じます。
  169. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 大臣も突然こういう秋田県の山の中の小さいことについて聞かれても、おわかりにならないだろうと思うから、今の答弁もこれは議会答弁としてはやむを得ないかもしれませんけれども、しかし事は小さくても非常に大きな問題であり、今後こういうことが先ほどの公共の福祉と鉱業活動との関係において続発する可能性が私はあるだろうと思うわけでございます。ですから実情も十分調査され、あるいはまた前の石橋さんもこれは当然やるべきだということまで、はっきり知事に言っておるわけでありますから、もしそうだと言うなら、私は証人にここへ来ていただいてお話を承わってもいいと思いますが、少くとも年内にこの問題についてははっきり処理してもらいたいと思います。これは厚生大臣と通産大臣の間で話をつけるべきであって、その下の局長さんたちではどうも責任のなすり合いで、責任というボールのキャッチボールばかりやって、らちのあかない問題でありますから、厚生大臣と一つ十分話し合って、少くとも年内にはこの問題の解決を、大臣やってもらいたいと思います。この問題は論議をする段階は過ぎております。だいぶ前から結論を出さなければならぬものを、あえて故意に、あっちへ行けばこうだ、こっちへ行けばああだということで、結論を出さないで今日まで来ておるわけでございますから、事ここに至っては、小さい問題だと思いますけれども、しかしまた考えようによっては重大な問題でありますので、大臣と大臣の間ではっきり話をつけて、あとは事務処理を局長さんたちにやってもらうというふうにしてもらいたいとつ思います。
  170. 福井政男

    ○福井政府委員 十分大臣の御指示を得まして、解決いたしたいと思います。
  171. 鈴木一

    ○鈴木(一)委員 一応これで終ります。
  172. 長谷川四郎

    長谷川委員長 今村等君。
  173. 今村等

    ○今村委員 今非常に石炭産業界が不況である、これは全国的な状態であるようであります。繊維産業、造船、石炭というのが非常な不況状態に入っておる。この石炭産業の不況がどういうところから来たのであるか。もちろんこれは石炭の生産過剰の点が原因であるのか、あるいは政府の石炭産業に対する一貫した方針が、まだ完全に立っていないというところにも基因するだろうと思いますが、この石炭不況の状態をどうして乗り切るかという、この対策を当局として持っておられるのか、この点を一つお伺いしておきたいと思うのであります。
  174. 樋詰誠明

    樋詰説明員 石炭の不況につきましては、今年度五千三百五十万トンの出炭をするということをことしの夏に合理化審議会でおきめいただいたのでございますが、当時はまだ四月、五月、六月までの雨の状況、あるいはまた鉱工業の状況というようなものを基礎にいたしまして、大体五千三百五十万トンを掘れば、国内の需要面にマッチするのではないかというつもりで、そういうことをきめていただいたのでございます。しかしながら、その後、七月、八月、九月と予期に反しまして非常な豊水で、電力関係だけでも百六十万トンの消費の減があった。それから一般産業が、御承知のように、今年度は大体四・二%程度昨年に比べて鉱工業が伸びると思っておりましたのが、今ほとんど横ばいというような格好になっておりますために、はなはだ残念なことでございますが、上期の石炭の消費は当初の予定を相当大きく下回りまして、大体二千二百万トン程度にとどまった次第でございます。しかし、下期は、大体われわれの方といたしましても、石炭の需要期にも入りますので、上期に比べて下期の鉱工業の伸びが大体六%半くらいあると考えておりますし、また雨の関係等も平水ということを予定いたしますと、少くとも二千八百万トン程度の石炭の消費はあり得ると考えております。ただ御承知のように今年度の九月の末に千七十万トン——需要者におきまして六百四十万トン、炭鉱において四百三十万トンの貯炭を持っておりますので、これを需要期である下期の間に、できるだけ減らすということをいたしませんと、来年度不需要期の上期に向った際に、本年は切り抜けたけれども、来年は非常に苦しいということになりますので、われわれ、石炭業界に対して生産制限を課するということは非常に忍びがたいことでございますが、しかしまず自分でできるだけのことはやるというのが第一だと考えまして、下期の出炭を二千五百万トン程度に押えるように、一応業界に要望いたしておるわけでございます。それと並行いたしまして、上期に閣僚懇談会で決定し、閣議で了解されております貯炭融資——これは大体上期の末に四百二十万トン程度、石炭業界で石炭を持てる程度に、民間の金融機関で金融をつけてほしいということを決定していただいたわけでございますが、大体それが円滑にいった結果だと思います。しかし先ほど申し上げましたように一応四百三十万トンの貯炭をかかえて炭況が圧迫されて苦しいのでございますが、とにかく上期を乗り切ることができた。それから下期におきましては、重油の使用でございますが、年度当初は全産業で大体五百万キロ程度の重油が消費されると考えておったのでございますが、その五百万キロのうち、いわゆる石炭と競合いたしますボイラー用の重油については、できるだけの削減を加えまして、そして下期で約五十万キロの油を節約するということにいたしているわけでございます。それからまた事業団による非能率炭鉱の買い上げ、これは当初三百万トンの年間能力まで買い上げるということにいたしておりましたが、これをやはり七月の合理化審議会において一割増の三百三十万トンまでワクをふやすということを御決定いただきまして、現在までに大体二百五十万トン程度買い上げを行なったわけでございますが、この買い上げによって買い上げられた炭鉱につきましては、普通の窮して倒れた炭鉱と違いまして、労務者の整理においてもスムーズに行われておることは皆様御承知通りでございます。そこで今後も、われわれといたしましてはできるだけ関係の大口産業に石炭を引き取ってもらうということを、さらに積極的に推し進めることによりまして、まず石炭を使ってもらう、使わぬまでも引き取ってもらう。引き取った結果貯炭が相当ふえても、来年度それだから石炭は要らぬということは言わぬで、とにかくこの苦しい際に、各産業にできるだけ応援してもらいたいということで、過般来一番大口需要部門でございます電力業界に対しまして、石炭の引き取り方を交渉して参ったのでございますが、つい数日前に大体石炭界と電力界と話がつきまして、大体当初の年間に予定した通りの石炭を引き取ろう、具体的に申しますと、電力界で千二百万トン程度石炭を引き取ろうということに話がつきました。現在電力界だけで約四百万トンの貯炭を持っておるわけでございますが、来年の豊水期に向う上期に、電力の立場からいえば百五十万トン程度に貯炭を減したいといいますのを、大体倍の三百万トンぐらいは持って、しかもそれをたいてくれという申し入れを、一応今のところ電力界の方でも快くといいますか、数字の検討の結果のんでくれたという格好になっておりますので、今の最大の需要部門である電力界の協力のもとに、ある程度今後の需給につきましても愁眉を開いたという格好になっておりますが、さらにそれ以外の大口の部門につきましても、できるだけ長期に安定した取引をやっていただくように、各業界に対して強く要望をいたしておりますので、こういう面についてできるだけの努力をするということによって、貯炭を減らすということをやっていきたいと考えております。
  175. 今村等

    ○今村委員 今いろいろ拝聴いたしましたが、それはさいぜん渡邊委員の質問に対してお答えになったのとあまり変らぬようであります。政府は石炭の関係の不況というものを非常に甘く見ておられるように考えるのであります。われわれが地方の山々を回ってみると、ただいまただ説明を承わったようなそういう簡単なものでなく、きわめて深刻な状態にあるのであります。もちろん石炭産業も営利産業でありますから、政府々々と何でも政府責任を持たせるという考え方は、われわれもいけないと思うのです。自主的にそれぞれの対策を立てていくということも当然であります。しかしながら、今石炭関係が不況に陥ってくると、労働者も失業状態に多くの人が入って、ことに直方のごとき集団的な失業問題で騒いでおるという現状において、これは労使ともに考えなければならない問題であると思うのでありますが、大体われわれが多く聞くところによると、石炭は現在一千万トン近くの貯炭がある。ただいまの答弁を聞いてみると、これを電力会社に入れるようにしたとか、あるいは下半期、上半期を通じて漸次貯炭の始末がついていくであろうという、きわめて想像的なお考えなのでありますが、電力会社にいたしましても、さように政府が申されるように、現在相当貯炭量を持っておるのが、果してその山元にある石炭を入れることができるかどうか、こういうことが非常に問題になりはしないかとわれわれは考える。  そこでまず、油の問題が出されたのでありますが、この油の輸入問題は長い間この商工委員会において相当論議をされておると思うのであります。しかし、いまだにその問題の解決がついておらない。油の輸入を政府の方針によって減らすということになると、自由経済云々である油会社、同時に油関係に働く労働組合の方面からも反撃を食う、こういう非常に痛しかゆしなところに来ておるのでありますが、しかしさいぜん大臣は生産と消費のバランスをとるような方法を講ずるというような何か御説明があったようでありますが、なかなか石炭産業の生産と消費のバランスというものが講じられぬ。簡単にどういう方法でやるかということは非常にむずかしい問題であると思うのでありますが、果してそういうことができ得るかどうかということなのであります。しかし今日油の問題を一体どう取り扱うか。自由経済であってやむを得ない、こういうことであれは、石炭燃料を基礎とするところに油の進出が石炭産業を侵しておるということも考えられる点があるのでありますが、こういう問題について一体どういうふうにお考えになっておるか、あるいはまたどういう処置をおとりになるか。これらのことは議論ばかりしておっても目前に来ておる問題でありますから、明確に今お考えがあるならば一つ承わっておきたいと思います。
  176. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 石炭政策の第一年度において頭打ちをしたことはまことに遺憾でございますが、エネルギーの長期の対策から申しまして、現在石炭換算で一億七百万トンというこのエネルギーは、どうせ将来においてもっと増加すべきものだ、本年は昨年に比較いたしましていろいろな関係上予定のごとく消化しておりませんが、今後日本の経済の発展に伴っては相当増加すべきものだ、こういう前提をもって私どもは考えなければならぬと存じております。その意味から申しますと、石炭が本年五千六百万トンというものが五千万トンに減ったということはまことに遺憾でございますが、明年はそれじゃ五千万トンでいいか、この問題になりますとこれは必ずしも五千万トンでは満足できない数字が出る、こう存じまして、それにしてもなおかつエネルギー全体として本年輸入の油等もどの程度になるかということもよく考えなければならぬと思っておりますが、私は石炭という鉱業から考えまして、これは本年無理をして減産をし、その結果失業者も出るということが心配されておるわけでありますから、これはどうしてもできるだけ合理的に、失業者も出さずに、現在の設備を生かしていくという精神で来年の方針は立て、そしてそれによってエネルギーの全体から考えまして、油が本年よりもふえればけっこう、もし油を本年通りにやってもエネルギーが余るということになれば、さらに本年より以上に油の輸入を節減する、こういう方針でやっていきたいと存じておるわけであります。もちろん油におきましても、非常に大きな減産の結果、失業者は出るという心配もあるでしょうと思いますが、油において出る失業者の数よりも石炭において減る失業者の数字が非常に多いのみならず、なかなか伸ばしたり減らしたりすることが、石炭の方がむしろ困難でありますから、その点は石炭に重点を置いて油でかげんしたい、こう存じております。
  177. 今村等

    ○今村委員 油の問題ももちろん関係がありますが、通産省の白書によりますと、外国炭が相当入っている。外国炭が入っているのは、これは原料炭として入るのでやむを得ないと思うのであります。ところが今まで外国から輸入されている石炭は無煙炭、強粘結炭、それから最近弱粘結炭に一般炭というのが入っているということが、白書に明瞭にされているのであります。しかもその一般炭というものは八十二万トンが一九五七年に入りまして、しかもそれがアメリカから大半入っている、こういうことでありますが、これはやはり日本の石炭が足らなかったという関係で入ったのであるか、あるいはまたアメリカから来る石炭の価格が安いから輸入されたのであるか、この点、どういう関係で入ったのか。それとも国内の石炭が需要を満たすだけの産出ができずして、足らずして、一般炭をアメリカから輸入されたのであるか、こういうのは一体どういうところに原因があるか。
  178. 樋詰誠明

    樋詰説明員 現在までに入り、また今入っておるのでございますが、これはただいま御指摘の通り大部分が原料炭であり、一部無煙炭、ごく一部一般炭が入っております。この一般炭でございますが、これは昨年ソ連との貿易協定の関係で、どうしても協定上入れざるを得ない。しかも当時、まだ国内的に石炭のむしろ逼迫ぎみの時代の話が、その後石炭が相当だぶつき出してから一部入ってきたということがあったのでありますが、ソ連の一般炭は、これは協定の関係で、しかもその協定のときには、ある程度入れても差しつかえないというような需給状態から判断して、入れたわけでございます。それ以外の粘結炭でございますが、強粘結炭、これは御承知のように北松以外にほとんど日本にできませんのでやむを得ない。それ以外の弱粘につきましては——こういうことは当然すでに申し上げておると思いますが、大体弱粘でも非常に灰分の少いのは、優良な原料炭ということでコークスを作っておるわけでございますが、その灰分の関係からどうしても入れざるを得ないというものを入れておるわけでございます。それから無煙炭につきましても、これは仏印のヴェトナムあるいは韓国というところから入るわけでありますが、これにつきましても、国内の無煙炭をまぜてそれで練炭を作るとか、あるいはカーバイドを作るのにどうしても必要不可欠なものを、大体一年間四十万トン程度に限って入れておるわけでございまして、これは国内では間に合わぬのでやむを得ぬことであります。そういうことであります。
  179. 今村等

    ○今村委員 今の説明を聞いておりますと、一般炭はソ連から、こういうことのようでありますが、しかしあれにはアメリカ、オーストラリア、それからソ連——ソ連は主として樺太であるが、大半がアメリカじゃありませんか。これは一般炭についてです。それから石炭の価格が、国内の石炭の価格よりもアメリカから来る一般炭の石炭の価格が安いということになってはいないですか。
  180. 樋詰誠明

    樋詰説明員 アメリカから入るものあるいは豪州から入るものと、原料炭を入れているわけでございますが、われわれの方はあくまでもこれは原料炭を入れているわけでございまして、一般炭は、ただ一つ先ほど申し上げました協定の関係で、ソ連から入れた、これは唯一の例外でございます。もし一般炭を入れるというようなことでありましたならば、われわれ石炭局といたしまして当然アメリカあるいは豪州というようなところから一般炭を入れることは断固としてお断わりしたい、こう思っております。今までわれわれの承知している限りにおきましては一応全部原料炭ということになっております。
  181. 今村等

    ○今村委員 私何も議論していやみを言う意味ではありませんよ。ただ通産白書に出されておることでは、大体アメリカが主で、この原料炭はもちろん、無煙炭、強粘結炭、弱粘結炭、これは国内の石炭でないものもあろうし、無煙炭といっても北海道に少々しかないわけでありますから、もちろん輸入されるのは当然でありましょう。しかし国内でもコークス原料くらいの石炭は出るのじゃないかということを考えるのと、それから一般炭がソ連ソ連といわれるけれども、どうもアメリカ、オーストラリア、それからソ連としても樺太ですね、樺太から日本的なものが一部入ったということを、白書には出しておられるようであります。それで国内の石炭が当時需要を満たすだけのものがなくて、それでその必要上一般炭を外国から輸入された、従ってアメリカからくる石炭の方が、日本の石炭よりも価格が安いという関係はありませんか、そういうことになってはおりませんかということを私は聞いておるのであって、何も別段そうでもない、こうでもないという追及をするのではありませんから、正直に一つお話が願いたいと思います。
  182. 樋詰誠明

    樋詰説明員 私不勉強で先ほど少し誤まったことを申し上げたかと思いますが、当時の状況を今よく調べてみますと、国内の石炭の逼迫しているときに、やむを得ずアメリカから緊急輸入という格好で、一般炭を昨年の初めに一回入れたことがあるそうであります。訂正いたします。
  183. 今村等

    ○今村委員 わかりました。それは昨年の上半期に当りますね。下半期から外国から入ってくる石炭の価格が非常に下った、ことにアメリカから入ってきたのは非常に価格が下ってきた、こういうようなものも関係して、あるいは一般炭全体を合せて八十二万トンというものが輸入されておる。そうすると昨年来から非常に石炭不況、石炭不況ということで石炭界は騒いでいる。金融難に陥った、石炭は出すけれども買手はない、貯炭場には石炭が山のように積まれておるにもかかわらず、八十二万トンでもアメリカ三界から、あるいはソ連三界から船で運んできて入れるということは、ちょっとおかしいじゃないかということを私は聞くだけであって、こういうことが石炭産業に対する政府の一貫した方針を立てておられないからこういう結果を生むのではないか。いわば要するに政府の各機関がばらばらになっておるところに、縦の関係があっても横の関係、連絡がないからこういうようなことになるのじゃないのか、こういうことを私は聞いておるのであって、のみならずこの油の問題でもまたそうではないかと思う。  通産大臣がことしの八月ごろであったか、九州においでになって、石炭産業の調整のためには、油の輸入を減さなければならぬということを盛んに主張されておる新聞を見ました。それからまたそういうような関係で、石炭産業がそこまで追い詰められておるのに、いかにその方針が立てられておるかというても、ただこの委員会で議員の質問に適当に答えれば事が済むんだという考えではなくして、やはり率直に、こういう問題についてはあげ足をとるとかなどでなくて、やはり真剣に考えてやらなければ、業者ももちろんであります、それから経営者ももちろんでありますが、そこに働く労働者というものも非常に不安であります。同時にたくさんの失業者が出て集団的な行動をやる、そこに大きな社会問題が起ったり、思想上の非常な変化を来たして、そこに共産党あたりが相当入り込んでいって、おだてるというような問題も起って参りますと、石炭産業界も非常な混乱に陥るという危険がある。ただ単なる事業経営がうまくいくとかいかぬとかいう問題でなく、社会問題の非常にうるさい問題が浸透しつつあるということも考えなければならぬではないかと私は考えます。これに対して政府のほんとうの考えのあるところを、今度率直に一つ大臣から明確に御説明を願いたいと思います。
  184. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく貯炭がだんだんふえて参りましたから、先般九州に参りましたときも、またいかなる場合でも、この下半期の油の輸入は手かげんする、できるだけ打ち切るということで進んできたのでありますが、実際問題として当ってみますと、石炭に対抗する重油の輸入はきわめて少量であり、しかもそれは特殊の重油であるということのためになかなか思うように打ち切れず、原油を打ち切れば、ある程度重油がこれによって減ぜられますけれども、また軽油の方が足らなくなるというようなことからいろいろ苦労いたしまして、ようやく石炭百万トンに相当する五十万キロ・リットルくらい輸入を制限したわけでありますが、今後は、来年度におきましては、新しい年でありますから十分この点は考慮いたしたいと存じます。またお説のごとく、かりに石炭が日本に余っておっても、このままぼんやりしておりますと、いろいろな名前で安い石炭を取り入れることを企てる人も相当あるようでありまして、現に豪州の粘結炭が安いからといって原料炭としてとるものはいいが、そのほかの目的に弱粘結の石炭を持ってこようというような希望者もあるようでありますから、これは厳に取り締りまして、そういうものは今後させないつもりでおります。
  185. 今村等

    ○今村委員 いろいろ鉱業法改正とか、法案が保安監督の関係も出ておりますが、この法案内容を見てみますと、ただ単に法案改正だけで果して万全な対策が立つか、これにはやはり予算が伴わなければ意味をなさぬのではないかという考えを私どもは持つのであります。石炭産業は、諸外国においても相当保護産業のように取り扱われておる関係もあり、税金のごときも、アメリカのごときは保護政策をとったりしてやっております。わが国においても、もちろんいろいろ金融方面においてもそういう対策を立てておられるけれども、石炭業関係の大手筋は別として、中小企業の炭鉱経営者というものは、こういう席上で言っていいかどうか知らないけれども、ずいぶん悪徳な者もおることはわれわれも知っておるのであります。昔から伝統的な一つの習性があって、炭鉱はかってはいわば下罪人でやられておった非常に荒っぽいところで、経営者の中には、荒っぽい、また悪徳な、実にずるい、だらしのないという者もありますが、それは全部ではないのであります。しかし国家にとっては石炭産業は非常に重要な問題でありますから、一がいにその経営者の問題だけをくさしておってもしようがないと私は考えます。  それからまたこの鉱区税というものは漁業権みたいなもので、掘って石炭を出さなければわがものにならないということになるのですが、魚もとらなければ、漁業権を持っておっても、これは自分のものにはならない。漁業権や特許権には税金はかかっておらないが、鉱区願いを出せば直ちに鉱区税がかかる。石炭産業に関する政府の方針としては年額六億とかあるそうですが、そういう税金は、鉱山、監督、保安とか、あるいは何とかいうような開発方面に使うとか、そういう目的税に変えて、鉱山を完全に調整していくという、そういう方法に使うということも最も必要であろうと思う。たとえば鉱業法のごときでも、これは全面的にやらない限りにおいては、問題が起ったときだけ取り上げて一部を変えて、それで事足れりというようなことでは、これはとてもいかぬのじゃないかと、私どもはそう思うのでありますが、しかし政府は一体これに対してどういうお考えを持っておられるか。たとえば鉱業権のごときは、全く同じような漁業権や特許権については税金がかからないけれども鉱区を願い出せば直ちに鉱区税がかかる。全国を通じて年額六億ぐらいの税が入っておるそうでありますが、こういうものは目的税にする、そうしてこういうものはすべて鉱業方面に、その開発をするとか、あるいは保安上の関係に何かこれを適当に使用することとかいう方法に出られるということは何でもないと思うのですが、どういうふうにお考えになっておるか。そういう意思があるか、また政府はそれだけの勇気があるか、そういうことの御意見を一つ承わっておきたいと思います。
  186. 福井政男

    ○福井政府委員 鉱区税の問題につきましては、御承知のようにこれは地方税になっておりまして、総額といたしましては、ただいま今村先生から御指摘になりましたように、七億弱ぐらいもございます。これにつきまして、目的税にしてほしいという希望は、私どもも実はかねがね持っておりまして、中小鉱山の鉱業会からも最近そういう陳情が税制調査会を初め、関係当局の方にも出ておりまして、まあこれは通産省だけでできる問題ではございませんので、税制全般に関係することでございますので、でき得れば私どもこれを、ただいま御指摘のように目的税にしていただければ大へんありがたい、こういうことで、関係の方にお願いをいたしておるようなわけでございます。
  187. 今村等

    ○今村委員 それでは、この鉱業法の一部改正のところに、今までない、たとえば鉱業権者の取り消しですね、その間六十日の期間を置いて、さいぜんこれは鈴木君からも御質問があったようでありますが、私が聞かんとするのは、この先願主義の六十日間の期間を置かれて、そうして、その後でなくては採掘を許さない、こういうことになっておるのでありますが、しかし前の悪徳なことをやった経営者がさらに、先願でありますから、先に届を出した場合にはどうなるのか。これは規制されておらないのであります。それからもう一つ重ねて、六十日間も期間を置かれるということになると、これは鉄工所とかその他の工場と違って、鉱山はほとんど六十日もほったらかしておけば、水がたまるとか、坑内が変なふうになるとか、いろいろなことによって、おそらく直ちに作業を開始することはできない。これは一体どうなるのか。きょう取り消して、きょう先願人があって、直ちに着手することができますか。炭鉱は、六十日間も期間を置けば、相当水がたまってしまう。水がたまってしまったならば、その炭鉱は、いかなる大炭鉱といえども、よくできない。これらの保安関係は一体どういうふうに取り扱われるか。これは鉱業法の適用がしてないようでありますが、どんなふうにお考えでありましょうか。
  188. 福井政男

    ○福井政府委員 御質問の第一点でございますが、先ほどお答え申し上げましたように、六十日間を置くということは、取り消しを受けました旧鉱業権者を排除いたしておるわけではございません。従いまして、非常に中途半端な改正ということになるわけでございまして、六十日間を過ぎましたときに、従来の取り消しを受けましたものが鉱区の出願をしてもいい建前になっておるわけでございます。従いまして、本来ですと、この旧鉱業権者についてはそういう出願の権利がないというふうなところまで参りますと、非常に罰則としては徹底するわけでございますけれども、ほかの条項との関係等で、この部分だけにそういうふうに特別の強い制裁を置くことはどうかということで、後日の検討に譲ることにいたしまして、この際はとりあえずほかのものも申請をし得るという道を開いただけでございまして、その点は、御指摘のように、一歩進んだという程度でございまして、中途半端な点が確かにあるわけでございます。
  189. 今村等

    ○今村委員 どうもきわめてあいまいであって私もわからぬです。そうすると、取り消しを受けたものは、六十日間の期間を経過した後に、さらに出願をすればまた作業がやれる、ただその六十日間は反省期間を与えるということになるのですか。
  190. 福井政男

    ○福井政府委員 仰せのように、六十日間を過ぎまして取り消しを受けました旧鉱業権者が先願で出て参りますと、法律建前で、そのものがやはり鉱区を獲得し得る、こういうことに相なるわけであります。ただ先ほどもちょっと申し上げましたように、かりにこれを罰則を加えまして旧鉱業権者が全然出願し得ないという建前をとりましても、一応名義は子供の名義でありますとか、あるいは妻の名義でありますとか、そういうふうに名義はほかの者でやるというような脱法的なこともできないわけではないわけでございまして、その点今回徹底し得なかった一つの理由でもあったわけでございます。
  191. 今村等

    ○今村委員 そうすると、石炭が変なことになるのです。六十日間取り消しを受けて、そうして六十日後に前の取り消しを受けたものが先願で届出を出せばそれでよろしいと、こういうことになるわけですね。
  192. 福井政男

    ○福井政府委員 さようでございます。
  193. 今村等

    ○今村委員 そうすると、その六十日間という間のその山の監督というのですか、維持というのですか、その間の責任はだれが持ってその山を監督するか、それからその六十日間に山というものは、これはむろんあなた方も御承知通りに、ほうったらかしておけば水は一ぱいになります。水が一ぱいになったら、中の機械からあるいは天井落盤というようなものがあって、あとは使いものになりませんよ、これはどうなんですか。
  194. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 ただいまの場合は鉱業権の取り消しでありまして、鉱区がなくなったわけでありますから、私の方といたしましては正規の監督もいたしませんし、その間責任を問う相手がございません。一応御心配になっておる点は、二カ月間遊びますと水没するおそれも当然ございます。しかし水没いたしましても二カ月間は鉱区の設定をいたしませんから、二カ月になりまして前の権者が出願を再度する場合、あるいはほかのものも同時にしてくる場合も当然考えられますので、前の鉱業権者に必ずしも行くというわけではありません。行く場合もあるかもしれませんけれども、ほかの人に移る場合も考えられます。従ってその間は鉱業権がございませんから、鉱山保安法鉱業法との姉妹法の関係で、正当な鉱業でなければその間は保安法を適用するわけには、私は行かないのではないかと思います。
  195. 今村等

    ○今村委員 私の聞かんとするところはそこなんです。そうなりますと、石炭は大事である。ことに地下鉱物を非常に育成し、かつ大事にして国家の利益、経済のために苦労さんたんして出すのが現状なんですね。それを施業違反等のことによって鉱業権を取り消して、二カ月の間そのままにほったらかしておくということでは、おそらく水が入って、あとは石炭の出るような山にはなりにくい。それでもかまわぬのか。それが大事なのか。地下に埋没しているところの鉱物を、せっかく資本を投資して掘進をやって石炭を出し得るのを、それをささいな違反によって取り消して、二カ月もほったらかして水が一ぱいになって、あとはどうなるか。石炭が出ないじゃないか。そういうところをほったらかしておくところに、今度はいわゆる横の鉱区あたりの盗侵掘なんかがあって、水が浸出したりする危険もそこに伴う、こういうような問題が起るのではありませんか。これがただ単に監督の意味からばかりではなく、国家経済の全体から考える必要がありはしないか。あなた方も炭鉱は御承知でありましょうが、二カ月もほっておいて水がたまれば使いものになりませんよ。それは坑口から坑内まで水浸しになってしまう。どんな機械を入れても直ちに仕事にかかることはできません。あるいはよほど盤の固いところで、いいところでやれば別ですよ。しかしそうでない大部分の中小炭鉱の山で、浅いところの山であるならば相当の被害をこうむってしまう。だれがあとやるかわからない。あるいは前の人がやって資本を投資しておりながら、捨ててしまわなければならない。そういうようなことは罰則としてもけっこうでありますが、国家の大事な地下鉱物というものを見捨ててしまうことになりはしないかということを私は聞くのです。それでいいのですかということを聞いたわけなんですが、議論をすることではありませんから、その点は悪く思わぬで下さい。
  196. 福井政男

    ○福井政府委員 ただいま先生から御指摘のようなケースは一応考えられるわけでして、一応私どももそういうことを議論いたしたわけでありますが、ただ現実問題としましては、取り消しをいたしますような場合には取り消したあとの問題と、それから経済的な価値の問題、そういったあらゆる点を考慮いたしてやる場合が普通でございますし、またそれがあとずっと続いていくのに、非常に有望な資源を埋蔵しているというような場合には行政指導も十分やり得る。またやる者がそれだけの負担能力を持って実施しておるというような場合が普通であろうと思いまして、大体こういう取消権を発動いたしますような場合には、その山がほとんどもうやる価値がないような場合が、普通の場合は多かろうかと存じております。
  197. 今村等

    ○今村委員 どうもあまり理屈ばかり申して相済みませんが、私は納得ができかねる。そこらの二つや三つの機械を入れて下請けするというような工場なら、まかりならぬといってもかかえて持っていけるけれども、石炭の山というものは持っていかれやしませんよ。ことに石炭産業というものは、相当な資本を投資しなければ石炭というものは出ないのです。そう簡単に出るものではありません。それはあなた方お役人さんが机の上で法律をいじくって論じたりすることではありませんよ。この点をもう少し実際に即して判断をして、その法の罰則等を作っておかれませんと、その法の罰則そのものができただけで、何にも意味をなしませんよ。これは考えていただかぬといかぬと思うのです。炭鉱行政ではないから、別段その点を追及してどうこうということではありません。その点は後日に譲ります。  それから今度の鉱山保安法の一部改正関係ですが、これでもたとえば今度他に売った場合の鉱害問題等もありますが、鉱害問題と申しますと、御承知通り一番鉱害問題のひどいところは北九州であろうと思う。それに最近は長崎県から至るところの鉱山地帯の鉱害が問題になって参ります。炭鉱が老衰していくに従って鉱害問題は非常に熾烈になるでしょう。そこで今度鉱山政策が鉱山開発ということよりも、むしろ保安方面にカを入れなければならぬということになってきたと思うのであります。そのためにここに鉱山保安法の一部改正ということで出されておりますが、この改正案内容等を考えてみますると、これは昨年十一月の東中鶴とか籾井、あるいは本年二月の小倉、あるいは四月の嘉穂、五月の長崎県の江口、それから六月の本添田等の災害、水害ということによって失業者になったという問題が連続的に起ってきておる。起ってきたからというので、今日保安法の不備の点を改正される、そういうことにとられるのであります。東中鶴の問題でありますが、これは大体考えてみると、多少盗侵掘の関係があったのではないか。これは考えられる点がある、それからそうでなかった場合に、あすこまで行くについて、一度や二度のあるいは保安監督部なんかの忠告、警告がなされたか。あるいはそうであったのか、なかったのかということについて、当局はお調べになっておるか、今日ではあれは相当盗侵掘が進んで行った結果が古洞にぶつかって、水が入ってああいう悲惨事を生んだ、こう言われておるのでありますが、これは調査の結果はどういうふうな判断を下しておられるのか承わっておきたいと思うのです。
  198. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 東中鶴の災害は仰せの通り租鉱炭鉱でありますが、親権者の大正鉱区の中に設定されたものであります。その租鉱炭鉱の一部でありまして、親権者鉱区に一部——侵掘であります。侵掘をしまして、あすこは何重にも設定になっておりますが、親鉱区に重なっておる他人鉱区古洞にぶつけまして水を出した変災であります。現在でもまだ死体が上りませんで、私どもも非常な苦労をいたしておるのでありますが、この原因は、もちろん租鉱権者鉱業権者の方から測量をしてもらっておりました関係で、侵掘をしておったということは租鉱権者側も事実知っております。これは親の鉱区を借りておるという軽い気持もあったかもわかりませんが、数日前に鉱務監督官も監督に参っておりまして、明らかに侵掘した事実を承知いたしたわけであります。しかし当時の方針といたしましては、保安法としてはむしろ侵掘した区域については監督をするなというような方針をはっきり立てておったわけであります。これは鉱業法関係で、もちろん侵掘関係保安法の方でとめるという条項はございません。鉱山保安法鉱業法の姉妹関係でありまして、正当な鉱業に対して保安法を適用するという建前をとっておりました関係で、監督官が参りまして注意はいたしましたけれども、法的にはっきりやるということはいたしませんで、戻りまして通産局長に連絡をとって、通産局の方から処置をつけてもらうことにいたしておりましたのですが、その間に変災が起っておるというようなケースであります。従って国会で問題になりまして、せっかく鉱務監督官が侵掘の事実を知りながら、そこでとめることもできないということは、法の不備ではないかという御質問がありまして、それは当然直すべきだという関係で、今回の保安法改正で、鉱務監督官が侵掘の事実を知った場合には監督部長でも、緊急な場合には鉱務監督官でも、これをとめることができるというふうにいたしておるわけであります。当然今後は、この法が通りますれば、保安法において侵掘の事実がわかればとめることができるようになる、かように考えるわけであります。
  199. 今村等

    ○今村委員 そういう事情がわかっていれば、今すぐ法の精神からいって告発されますか。  それからもう一つボ夕山の問題ですが、このボ夕山は、かりに炭鉱を他に移譲した場合、今度の法規によってはボタ山も一緒に買った者が継承する、法はそう命じてあるのですね。ところがここに問題が多少ありはしないかと思うのです。というのは、大体新しく開発されておる山はそうでもありませんが、北九州のごときあるいは佐賀県のごとき古い山がそこらここらにありますところでは、ボ夕山たるものは炭鉱を移譲したその山のボダ山にあらずして、その炭鉱のずっと前にやった炭鉱の、廃鉱になっておるところのボ夕山がごちゃまぜになっている場合があるのです。最近はこの例が非常に多いのです。現在飯塚から入っております鯰田炭鉱の向うの方にその問題がたくさんある。そういう場合は一体どういうふうにあの法律規定するかという問題なんです。これは三十年前三菱が掘った山だ、これは十年前三井が掘りた山だ、ボタ山がここにあるではないか、お前の方がしたからこれは三井だ、こういう場合がたくさんあるのですね。こういう問題は一体どうするのかという問題が起ってくるのです。ただその何々会社の山というものが一つあって、何里も離れてずっと山があるところなら明瞭ですよ。ところが前に掘った山が二つも三つもあるところに、今度こっちから掘ってボタ山を作った、どこまでがどの山のボタ山かということがわからないような場合があるのですね。ことに鉱害というものは山の古いところが鉱害がひどい。最近長崎県の地すべりを、何かある学者は鉱害関係だとされて、だいぶ炭鉱あたりでえらい問題を起しているようでありますが、北九州になりますと、そういうことがたくさんあるのですね。そういう限界を一体どういうふうにされるか、これは非常にむずかしい問題じゃありませんか。ただボタ山まで一緒に売った、それで事は済まないのですね。古い山に限って結局災害が多い。家が埋没するとか、井水がとまったとか、あるいは水田の水が漏れてしまうとか、そういうのがたくさんあるのですね。そういう山の場合に、一体どこからどこまでという限界をそこにとって、法律上の裁定を役所はどうされるのか、これは問題なんだ、どういうふうに考えておりますか。
  200. 小岩井康朔

    小岩井政府委員 最初の御質問でありますが、東中鶴炭鉱は九月の二十六日に福岡の地検に租鉱権者佐藤強と炭鉱の鉱長前田豊、この二人を告発いたしております。  それから第二の質問でございますが、ボ夕山というのは非常にむずかしい問題でありますけれども、地すべり防止法ができましたときに非常に問題になりまして、一体所有者不明とか鉱業権者以外のボタ山がどうして現存するかというような問題が出まして、これは一応調査の結果二百数十個、これだけの鉱業権者以外のものという認定ができまして、現在は地すべり防止法、の適用を受けられるものと、それ以外のものはすべて鉱業権者の対象になるわけです。従って現在はこのどちらかに属しておるわけで、二百数十のボタ山以外ほだれかの鉱業権者に所属しているものというふうに考えております。しかしこれをそのままほっておきますと、現在ありますボ夕山がだれのものかという点については、なかなか表面明瞭でございません。一見鉱区内にありますので、この鉱業権者のものかと考えておりますと、地代も払っていなかったり、まるで放棄したような姿になっておる。しかしこれがまたある時期が来まして価値が出て参りますと、おれのものだという主張をするというような関係で、なかなか所有がはっきりいたしませんので、この法によりまして、現在あります鉱業権者に所属しているボ夕山は鉱業権の譲渡とともに継承されていくというふうに一応うたってございます。しかしただこれだけうたいましても、現実的にはなかなか不明瞭な場合も出てくるという関係で、現在あらゆるボ夕山を詳細な項目につきまして、土地所有者との関係あるいは鉱業権者との関連というものを、相当詳細に調査いたしまして、かなりはっきり実情がわかっております。またなお新しくボ夕山を積む場合には、炭鉱で申しますと、洗炭場の設置認可の場合には、どこにどういうふうにして積むということを図面に入れさせるようにいたしてございます。従って今後のボタ山については、かなりはっきりするのでありますけれども、従来積まれておりますボタ山はかなり不明瞭なものがございますので、これは全般にわたって調査を済ませまして、大体どこの鉱業権者のものかということは、かなりはっきりしておりますが、中にはごく小さいものがありまして、これはボ夕山として扱っていいかどうかというような程度のものもございます。これらの限界については一応基準を作りまして、基準に該当するものについては今後はっきり押えて参りたい、かように考えております。
  201. 今村等

    ○今村委員 時間もあまり長いようですから、長く質問はいたしませんが、私はどうも今の御説明には納得ができないのです。今調査をして、はっきりさせた、そう仰せになるならば、現在の九州あたりの炭鉱の図面というものは明瞭になくてはならない。明瞭にあるとすれば、おそらくは古洞あたりに突き当って、そして浸水の結果行方不明になるということは起らないはずだ。ところが先般から承わっておりますと、戦災で図面を焼いてしまった、その図面が明瞭なものがない、そういうところに一つの危険がある、こう私は受け取っておるのです。図面の整理ができておらないのに、ボタ山の整理ができるなんということはおそらく不可能です。大体古いボ夕山というものはすでに松の木や杉の木が植わって家の用材になるようなところもあります。終戦後に石炭が足らないときには、そういうものもどんどん水洗した。水洗したところがたくさんの石炭が出て、水洗業者はもうけたというような山になっておるところがある。そうすると、そこは役所はわからないといえども、村の古老の人は、そういう問題が起ってくると、これはだれそれがやっていたときのボ夕山だ、だからこの人にも責任があるという問題が必ず起ってくるのです。そういうような場合に、法、法と言われるけれども、この法律では法それ自体によって何の価値もないという結果になるのです。取扱いができやしないじゃないですか。それで鉱山保安が完備し、かつ鉱害問題が完全になるなんという甘っちょろい考え方が非常に間違っておるのではないかと思うのです。要するに鉱害問題のごときも、ボタ山問題で争うて鉱害問題の解決をつけるような政策ではなくて、もう少し石炭産業に対する大方針を政府はお立てになる考えはないのかと私は考える。鉱害問題は何としても予算が伴います。予算が伴うからというので、山は営利産業として経営者が掘ってもうけて、掘ったあとはほったらかして、鉱害問題は社会問題として、あるいは問題が起って騒いでくるからというので、政府がこれに対策せねばならぬというばかばかしいことはあり得ないことだが、実際はそのばかばかしいことをやらなければいかぬというのが今日の現状なんです。そこでやはり経営者に対しても負担をさせるという方針を立てられる方針はないのかと私は考える。鉱害問題が起った場合は政府に、どんどんしなさい、団体を組んで、団体の圧力によって、どうするかこうするかとやる。先般商工委員が九州を回って、飯塚あたりで旗を立てて歓迎を受けた一面、そういう問題でどんどん騒がれる。われわれも取り巻かれて、わいわい言われなければならない、こういうことですから、この問題を処理していくについては、やはり鉱害対策に対する一時的なものでなくて、永久性の、何か保険制度性のものを作るという、もっと飛躍した考えを当局はお持ちにならないか。たとえば石炭経営主が一トン掘り出せば、鉱害の負担金としてかりに一トンから百円なら百円、五十円なら五十円を積み立てさせて、そしてその金を集約して、そういう問題の処理に当るとか、何とかそこに対策を立てなければ、法律の一部改正をしておいて鉱害問題の完全を期するなんということは、私どものような炭鉱を知っておる者から見ますると、実にばかばかしいような気がする。たとえば今度の鉱業法改正でも、かつては違反を犯した者は罰金が三十万円ですか、それが五十万円に上げられて、そういう罪を重くした。金で済むこと、あるいは三年を五年にしたとしても、一体今まで五年も三年も監獄に行った者がありますか。今までは三年という刑期をちゃんと法律上認められておるが、そういう違反を犯して三年もたたき込んだ、またたたき込まれた者がおりますか。何にもならないような法律改正されておるのですよ。三年間を五年間に上げたのはおどしになるかもしれぬけれども、これは鉱山保安監督官あたりがやっておいて、炭鉱の者をつかまえてぶち込むというようなことはとんでもない。そんなことをしておればえらいことになってしまうのです。国が法治国であるから法律を尊重しなければならぬということは、お互いにわかるのです。しかしだれだってつかまえられてぶち込まれるのはいやだから抵抗します。ことに鉱山はそういうことが非常にやりにくいではないかと考えられる。それでありますからおそらく鉱害問題のごき、もっと大臣あたりは飛躍したところのものを考えていただきたいと思うのです。法律だけ改正しておいて鉱害問題の解決がつくでござるの、保安法だけ改正しておいて坑内の保安が完全にいくなんていうことは、現在の状態においてはとうてい不可能なんです。本来ならば私ども鉱業法からも炭鉱関係を除いて、今度は炭鉱だけの独立法を作って、そうしてこの対策を立てていくのがほんとうではないかと思う。そういう思い切った政策をとられなければ、明治時代からのやんやらやっと一部々々作り上げてでっち上げたところの法律を、今当てはめて、それで全体を安全にしていくというようなことは、どうも私たちは納得がいかない。さいぜんから六十日間も休んで、そして炭鉱は優先権を持った者にやらす、鉱害問題については、ボタ山はだれそれのものであると大体整理がついたと、あなた方は言われるけれども、整理はついておりませんよ。何十年間の歴史を持つところの鉱山が、ボタ山はどこが持っておるかというような整理はついておるわけがない。そういうことをおやりになることよりも、もう少し進んで飛躍した対策を立てられることが必要ではないか、こう私は考えますが、これに対して一つ大臣の御意見を承わりたいと思うのです。
  202. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 お説のごとく鉱業法制定されましたのは明治三十八年、それ以来抜本的の改正はできていないのであります。今回提出されました案は、保安法の一部の改正にいたしましても、鉱業法改正にいたしましても、先般来、私通産大臣就任以来一番先に心配したことは、毎日々々あんなに被害を受けておって、現状のままでほんとうにいいのだろうか。これをまず最初に保安の方の問題だけを何とかして法律の力を持たして、一歩でも前進するようにやろうではないか、こういうふうなことで、できるだけ今回の改正案については予算の伴わないことでやってくれ、こういう注文を出して、今回この二つの法律改正案が出たわけでありまして、これはただいま今村委員のおっしゃるごとく、断じて抜本的でなく、ほんとうに間に合せであるということは、私どもも重々よく存じておるわけでございますが、これによってもなおかつ一歩幾らか進んだということだけを認めていただきたいと思うのであります。今回できますればこれを一つよく御審議願って通過させ、ていただきまして、引き続き鉱業法の抜本的な改正に重点を置いていきたいという考えでございまして、それについては先ほどるるお説を拝聴いたしまして、鉱区の問題のごときも、できますれば目的税に変えて、もっと鉱区税をとって、これを目的税に使いたい。今までのような調子だとただ単に一片の出願で、優先的に出願したからといって、鉱区はそのまま持っておるというようなことは、大いに考慮しなければならぬ問題だと思いますから、そういう場合には鉱区をかりに持っている人はできるだけ鉱区税をよけい出してもらって、それを目的税に使っていくというような方法も考えたいと思っているわけでありまして、要するに鉱業法を抜本的に改正する審議会なり委員会をできるだけ早く作りたいと考えておりますから、その点御了承願いたいと思います。
  203. 今村等

    ○今村委員 これ以上は質問しません。幾ら議論したって同じですから、大臣の御意見を拝聴して、私は大臣を信頼して、これで私の質問を終ります。また時をあらためて……。自民党もたった一人しか来ておらないので、どうも張り合いがないし……。
  204. 長谷川四郎

    長谷川委員長 本日は、これにて散会いたします。  次会は明二十二日午前十時より理事会、午前十時十五分より委員会を開会いたします。     午後四時四十八分散会