○山下
説明員 ただいま御
質問のございました基本的な
輸出振興策でございますが、第一番に必要なことは、
日本で作ります船の造船コストを、諸外国に比して有利な条件になすということが一番肝心なことであります。その点につきましては、現在の
日本の造船所の技術というものは
相当程度に達しておりまして、材料の節約またば工数の節減ということが徹底的に行われておりまするけれ
ども、一番大きなネックになっておりますものは、船に積みます機械類の製造につきまして、まだ完全な合理化が行われていないということでございます。従いまして、この点につきましては私
どもいろいろ業界と相談をいたしまして、これが現在よりもはるかに合理化され、安い価格でいいものができるような指導をいたしております。それが第一の点でございます。第二の点につきましては、これは
市場の確保の問題でございます。現在の
日本の造船の注文は、ほとんど八割
程度までが
アメリカのギリシャ系の船主の注文でございます。御承知のように、ギリシャ系の船主は非常に先をよく見ると申しますか、悪く言いますと、多少投機的に走る傾向がございます。注文があるかと思うと、とたんに注文がなくなるというように、非常に不安定な面がございます。しかし何しろ大きな注文先でございますので、これらの船主につきましても、戦前も行き届いていたと思いますが、これらについても今後一生懸命
努力するということと、そのほかに後進国の
市場といたしまして東南アジア方面とか、中南米方面、また中近東に極力
市場を開招していく
努力を続けていきたい。これらの諸国につきましては、あるいは賠償を通じて船を出すということ、または
向うから研修生を受け入れ、研修生を通じて
日本の技術を
紹介するということもいたしますし、また従来
貿易振興費の中から、東南アジア方面には
向うの海運の状況の調査、または小型船舶がいかに使われ、どんなものが使用されておるかというような調査等もいたしております。しかし何と申しましても、ドルの手持ちが非常に少いわけでございまして、これらにつきましては、国としての大きな援助の力を向けませんと、急速に
市場を開拓するというわけには行きかねると思います。この点につきまして、私
どもは今後これらの
市場を培養するということに極力全力を尽していきたいと思っております。
それから第三の点といたしましては、やはり
市場の開拓の面でございますが、現在欧州またはイギリス等に有力な船主がたくさんございます。それらの船主は内部の蓄積資本が十分ございまして、
景気のいいときには船は割合に差し控えて作りませんが、不
景気になりますと、古い船を処分して新しい船に置きかえるというような、いわゆる海運の常道を歩む行き方を従来よりもとっております。従いましてこういうような堅実な船主を、
日本の将来のお客にするということは絶対に必要なことでございまして、この点につきまして私
どもはぜひ力を注いでいきたい、こういうふうに
考えております。昨年度あたりの実績を見ますと、欧州からの有力な船主の注文というものはせいぜい一〇%を越えるか越えないか、その
程度のものでございますが、これらを極力
一つ伸ばしていくというような
努力を続けたいと思います。それにつきまして一番問題がございますのは、欧州の船主はおもに運賃その他をポンドでもらっておるわけです。ところが
日本の通商
政策といたしまして、ポンド払いの船を受注するということが非常に困難な状況にございます。昨年じゅうに
相当ポンド契約について、
向うの船主から引き合いがございましたが、
日本の方でポンド払いの船を受け得る準備がございませんので、それらを断わっております。簡単に実例を申し上げますと、
昭和三十二度におきまして引き合いのありました件数を合計いたしますと八百三件、千百五十一隻、
昭和三十年の四月一カ月のみで七十九件、百四十四隻の多きに達しております。このおもなものは英国を中心とする欧州諸国からの引き合いでございまして、約六四%を占めておる。それらの船を延べてみますと六百九十万総トン、船価にしまして約二十四億ドル、
昭和三十三年四月一カ月のみで約八十万総トン、船価にしまして二億三千万ドルの巨額に達しております。しかしこれは外国船主は
一つの船を数社の造船所に引き合いを出しますので、この重複率がかりに十倍と見ましても
昭和三十二年度には六十九万総トン、約一億四千万ドルでございます。また三十三年の四月約八万総トンといたしますと二千三百万ドルに達しております。こういうようなわけで、為替損失補償法等がポンド払いの船に適用できるならば、船舶の
輸出というものは、さらに一段と伸びるだろうというような
考えを持っております。もちろんこの点につきましては大蔵省または
通産省はよりより相談をいたしておりまして、わが国の造船上から無理のないように処理をお願いするというふうな段取りをいたしております。そのほかこれは直接の
貿易振興の面ではございませんが、
大臣が先ほ
ども申されましたように、国内の金融上の措置とか、または
輸出に対する税制上の問題とかいろいろの点がございますが、それらにつきましても、
政府といたしまして今後なお一そうの
輸出振興ができるように
努力をいたしたいと
考えております。