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三木国務大臣 社会党の諸君が非常に
不況ということで言われることもわかります。
部分的には
不況産業もあるわけです。しかし
経済の実態をそうあまり悲観的に見るということに私は賛成しない。今の
事態は、今いったような
経済指標というものが、今までの速度が早過ぎたのですよ。それが鈍ってきたことは事実です。しかしとにかく重立った
経済指標というものは上昇のカーブをとっておるわけです。今までのような大きな幅でないまでも、それは上昇のカーブをとっておるのでありますから、そう悲観して、今にも
経済界がつぶれるような、ことさらに悲観論を振りまくことは、私は弊害があると思います。やはり
経済の動きの中には心理的なエレメントというものは相当にあるわけであります。そういう点でもしそういうふうな背景であるならば私は賛成できない。そうは見ないけれ
ども、しかし今言ったように、今までに比べれば国民
経済の成長率も低いわけであります。今までは一〇%から八%も伸びてきておったわけで、そういう点が一・八%というのは低いわけでありますが、しかし上向いておることは事実です。成長していくことは事実なんです。また去年と平均をしてとってみると、大体企画庁などで
考えておる
経済成長の線とあまり逸脱していないですね。一年だけをとれば
経済指標に対しては非常に修正を加えました。加えたけれ
ども、去年とつき合わせてみると、大体成長線というものと大きな逸脱はない、こういうことでありますから、やはり今後の
経済政策というものは大事だと思います。これは各国ともやはり景気政策というものに対しては、
政府も非常な力を入れているのです。各国がやるのは大体金利政策ですよ。オープン・マーケット・オペレーションというようなことが景気政策の中心題目で、それはもうひんぱんに公定歩合を上げたり下げたり、それに当然市中金利というものは遊離しませんし、
政府の短期証券なんかも金融が緩慢になったら売り出したりしておる。そういうことをやっておる。
日本は金利が非常にノーマルではないですから、そういう点で、そういう金融政策の面からする
政府の景気政策という武器は失われておる。これはやはり金利が正常化されて、そういう面からも景気政策をとっていく
政府の武器でなければならぬわけです。だからこれは次第にノーマルな
状態に返そうとしておりますが、今のところ
政府のやり得ることは財政あるいは財政投融資、金利政策もありましょう。こういう面から
政府はやれるわけです。国際収支というものは相当な黒字があっても、公債でも発行してやろうというときには、そのワク一ぱいやれるでしょうが、その下にやはり財政のワクというものがあるわけですね。従ってやれる範囲といえば公債を発行すれば別だけれ
ども、そうでなければワクは小さい財政あるいは財政投融資、その範囲内でやはり今後の景気を刺激していくのにも、最も好ましい形がいいのだ。それにはやはり何といっても
日本は公共投資というものがおくれておるのだから、今後道路な
ども相当困難はあるけれ
ども、一兆円の予算でやろう、港湾な
ども特別会計を設けて港湾の整備をやろう、こういうふうな基幹
産業などに対しても財政投融資で、相当重点を置いておるわけであります。こういう形で、
日本の将来の
産業構造というようなものを
考えながら、また立ちおくれている公共施設、こういうものを
政府が充実していって、それがまた景気の刺激の一面を持つ、こういう
経済政策ということが好ましい。民間の企業に対しては、民間も相当金融はゆるんできますから――第三・四半期には三千五百億円近くの散超になる。金融は非常にゆるんでくるわけでありますから、こういう点で、一面からいったら、これは一応の景気刺激にもなるわけです。しかしこれがまたいろんな昔のような
状態で
行き過ぎた
状態になってもいけませんから、それはいろんな
経済政策を伴わなければならぬが、それは民間の方にまかすとして、やはり
政府がやれるいわゆる財政あるいは財政投融資を通じて、将来の
産業構造も
考えながら立ちおくれた投資をやっていく。それがやっぱり景気の刺激にもなるということが、
一つの大きな――
不況産業に対して個々に手を打つことは必要でしょう。しかし大きな
経済政策の通筋というものはそうだ、こう思います。