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1958-10-08 第30回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月八日(水曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 長谷川四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君    理事 加藤 鐐造君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    加藤 高藏君       菅野和太郎君    木倉和一郎君       坂田 英一君    田中 榮一君       中井 一夫君    中村 寅太君       野原 正勝君    細田 義安君       山手 滿男君    渡邊 本治君       板川 正吾君    今村  等君       大矢 省三君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    堂森 芳夫君       中嶋 英夫君    水谷長三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   宮川新一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         通省産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業事務官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (重工業局長) 小出 榮一君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局通商政         策課長)    大畑 哲郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      小室 恒夫君         通商産業事務官         (中小企業庁振         興部長)    川瀬 健治君         専  門  員 越田 清七君     ――――――――――――― 十月七日  中小企業金融公庫資金増額等に関する請願(原  茂君紹介)(第八二号)  同(増田甲子七君紹介)(第八三号)  長野県に中小企業金融公庫支店設置に関する請  願(原茂紹介)(第八四号)  同(増田甲子七君紹介)(第八五号)  日中貿易再開促進に関する請願原茂紹介)  (第八六号)  同(増田甲子七君紹介)(第八七号)  対米輸出ミシン商社わく設定反対に関する請  願(田中武夫紹介)(第八八号)  小売商振興のための法律制定に関する請願外一  件(赤澤正道紹介)(第八九号)  同(今井耕紹介)(第九〇号)  同(臼井莊一君外二名紹介)(第九一号)  同(植木庚子郎君外二名紹介)(第九二号)  同(遠藤三郎紹介)(第九三号)  同(大平正芳紹介)(第九四号)  同(大久保武雄紹介)(第九五号)  同外一件(川野芳滿紹介)(第九六号)  同(菅野和太郎紹介)(第九七号)  同(小林絹治紹介)(第九八号)  同(小島徹三紹介)(第九九号)  同外一件(櫻内義雄紹介)(第一〇〇号)  同(大橋武夫君外二名紹介)(第一〇一号)  同(坂田道太紹介)(第一〇二号)  同(田中榮一紹介)(第一〇三号)  同(田中正巳紹介)(第一〇四号)  同(高瀬傳紹介)(第一〇五号)  同(津島文治紹介)(第一〇六号)  同外一件(中村幸八君紹介)(第一〇七号)  同外一件(中村三之丞紹介)(第一〇八号)  同(中井一夫紹介)(第一〇九号)  同(原田憲紹介)(第一一〇号)  同(濱田幸雄紹介)(第一一一号)  同外一件(八田貞義紹介)(第一一二号)  同(福家俊一紹介)(第一一三号)  同(山手滿男紹介)(第一一四号)  同(粟山博紹介)(第一一五号)  同(山口好一紹介)(第一一六号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ――――◇―――――
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について、質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。中井一夫君。
  3. 中井一夫

    中井(一)委員 この際企業局長に、先般来本委員会において問題になり、政府から報告されればならぬ問題につきお伺いをいたします。百貨店日本信用販売株式会社関係については、私主張のごとく、その行き過ぎを規制せねばならぬということとなり、先月の六日、通産省は、大臣並びに企業局長の名をもって、百貨店に対し、自粛勧告をせられたのでございます。この勧告は、百貨店法施行されて以来初めての勧告でありまして、私は大臣並びに通産当局に対し、小売業者のために、厚く感謝をいたします。ただしこの勧告の効果がどの程度に現われるかということについては、今までの委員会においてすでに問題となったところでありまして、通産省は、百貨店に対し、自粛を要求せられたけれども、その自粛は、百貨店側において協議の上、案を具して申し出るということにせられたのであります。私どもは、そんな手ぬるいことでは、結局はその目的を達することはできない、もしそうなれば、通産省威信にかかわることにもなるから、企業局長格別の努力をなさるべきであると警告いたしておいたわけでございます。その後この勧告に対し、百貨店側はいかなる態度を決定いたしましたか、承わりたいと思います。
  4. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ただいま御指摘がございました点は、実は前回私から御説明をいたしましたあのころから、寄り寄り百貨店側では相談をしておるようでございます。ただ、この問題は、単に百貨店日信販関係ということだけではなくて、百貨店の行なっております割賦販売制度の全体について自粛をしていただきたい、特に信用販売会社との関係で行われておる割賦販売について、小売商との関係に問題があるというような形で自粛要望をいたしておるのであります。従いまして百貨店日信販との関係というだけではないような事情にありますので、百貨店としても単に東京なり京阪神の百貨店だけの集まりで、この問題を相談するわけにはいかないような事情にあるわけでございまして、従いまして百貨店側としては先般来何回か全国百貨店のおもな人たち集まりで寄り寄り相談をしておるようであります。私どももその相談様子等は、ある程度われわれの耳にも入っております。また内々そのような話も聞いておりますけれども、ただ、今の段階ではまだ百貨店側としては最後相談結論というところまでにはいっていない様子でございますので、私どもももう少し百貨店側で案を練って、私どももいろいろ考えておるところもございますが、その辺とよく突き合せた上で、最後自粛具体案の取りきめをしてもらうようにしてもらいたいというので、今そのような百貨店側相談と、私ども考えとの突き合せをできるだけ早い機会にとりまとめたいというような気持で進んでおるわけであります。勧告をいたしましてから相当時日もたっておりますから、私どもも一日も早くそのような具体策を得るようにということで、百貨店側にも督促をいたしておりますが、何分にも全国百貨店相談ということになりますと、そのような話し合いがなかなかまとまりにくいような状態にあるようであります。私どもとしては一日も早くこのまとめをいたしたいというふうに考えております。
  5. 中井一夫

    中井(一)委員 私どもの懸念をいたしておりました通りの経過をたどってきておるようであります。事には結果も必要でありますが、大切なのはタイミングであります。勧告が出てからすでに一カ月余を経過をいたしておる。しかるに今なおどうなるかわからぬということでは、せっかくの勧告もその威信がないではありませんか。しかも勧告を出されたときには、すでに本月の初めから臨時国会が開かれるということも明らかであった。従って通産省としても、その結果はこの臨時国会において、ぜひ報告をせねばならぬということもお考えであった。それゆえ通産省におかれては全力をあげて、しかるべき自粛案百貨店協会において作ってくるように尽力をされておると信ずるのであります。決して当局がこの問題をなおざりにしておられるとは思わない、それにもかかわらず、所期の目的を得ることができないのは、結局百貨店法上上勧告というものが、これに従わざる場合において何らの制裁も、強制力政府が用いることができないところに、通産当局尽力も、百貨店側から軽く取扱われる原因があると信ずるのであります。しかして今回大臣初め局長らは親しく、百貨店側態度をごらんになり、勧告も従わぬときには、法律上の強制力を発動することができぬ以上、何にもならぬことがおわかりになったはずでありますから、今こそ百貨店法の九条を改正して、勧告には強制力制裁とを付加するようにする必要があると思うのでありますが、当局のお考えはいかがでございますか。
  6. 松尾金藏

    松尾(金)政府委員 ただいまお話のございました百貨店側態度いかんの点でございますが、これは今御指摘のございましたように、現在すでに一カ月有余を経ておりますけれども百貨店側としてはもうこの辺のところで、最後のぎりぎりの相談結論を出す時期にすでにきておると思います。その結論に対して私どもの方からどういう最後措置をするかというところに、実は時期的にはきておると思いますので、これ以上そう長く遅延をすることは私はないと思います。ただ本委員会のこの席で、これをいついつにどうということは、ちょっと申し上げかねることであるというようなことでやむを得ないと思いますけれども百貨店側としてもすでに出されました自粛要望に対して、ただ自粛要望にこたえないというような態度であるとは私ども考えておりません。ただ何分にも全国百貨店話し合いでございますので、その点に対する時日がかかっておるということでございます。私どもとしましても、最終的に自粛要望に対して百貨店が必ず応えるであろうということは、大体これまでの百貨店側の動きその他から見て、その点は百貨店側態度に誠意がないというようには、私どもは今判断をいたしておりません。いずれにいたしましても、この信用販売制度に対する取扱いの問題は、百貨店小売商との間の摩擦、特に百貨店関西方面等におきまして、信用販売会社と次々に新しい契約を結ぶ形勢にある。そういう状態に対するトラブル、摩擦をとりあえず取り静めたというところに第一の目的があったわけであります。その点だけは一応百貨店側もすでに自粛をいたしております。  さらにすでにやっておる百貨店についての自粛問題でありますが、この点につきましてもただいま申し上げましたようなことであると、私ども判断をいたしておりますので、この点から直ちに百貨店法の規定について、罰則を強化するとか、直ちに法律改正強制力を持たす必要があるかどうか、その辺はもう少し事態の推移を見た上で判断が必要であるだろうというふうに考えております。
  7. 中井一夫

    中井(一)委員 新聞その他の伝えるところによりますと、百貨店が今協議中の内容、すなわちクーポン券の共通の問題、また品種、最低金額問題等について、ほとんど有名無実のような取りきめを相談していると言われておるのであります。勧告に対し百貨店側がこれを無視するようなことをしないであろうと言われる局長気持はわかりますが、しかし自粛いたしますという名だけで、その実のないようなことをきめられたのでは、全く通産省勧告は無視せられたと同じ結果になるわけであります。従ってこの際通産省におかれては、あくまでも小売商業者擁護の立場に立って、有力な百貨店側を押えて、互いに共存共栄ができるように、格別尽力を要請する次第であります。  重ねて申し上げておきますが、百貨店側通産大臣勧告をばかにするような態度をとる。今日わが国政治上、社会上、どうしても解決しなければならぬ小売業者の困難な状態を救うという大問題につき、百貨店側が自分の利益の追求に専念して、いわば国策輿論に協力をしないということであるならば、国会国家の力をもって彼らの行き過ぎを押えることは当然であると思うのであります。従いまして百貨店法改正の断行もやむを得ないことを強く申しておきます。かつそのときにおいては、政府百貨店側に対し、穏やかにいたしたいという態度を一変して、われらとともに百貨店法律の力で押え込むということにつき、踏み切っていただきたい、くれぐれも申し上げておく次第であります。  なおお伺いいたしたいのは、小売商特別措置法についてであります。これはすでに大臣からたびたびの御声明があり、この臨時国会提出されることは信じて疑わぬのでございます。ただ小売市場許可制等の問題について、政府部内、特に法制局あたり意見通産省意見に一致せざるものがあり、当局はその調整に御尽力中であることを承知いたしますが、最近新聞小売商特別措置法は、この議会には提出できないであろうと伝えられましたため、各方面に非常なセンセーションを起している事実があります。ついては政府は必ず提出するということを、あらためて御声明を願いたいと思います。
  8. 川瀬健治

    川瀬説明員 ただいまの小売商特別措置法の今国会提出の問題でございますが、お話にもございましたように、なお法案の内容の一部につきまして法律的な問題が最後まで結着いたしておりませんので、提出時期が延びておるわけでございますが、新聞等にちょっと出ました、今月の十日までに閣議決定云々ということは、一般的な問題でございまして、小売商業特別措置法につきましては、多少それよりおくれることはございましても、今国会提出するという方針でただいま進めておりますので、御了承を願いたいと思います。
  9. 中井一夫

    中井(一)委員 この点につき特に申し上げたいことがございます。この委員会を通じて関係当局にお知らせを願えれば幸いであります。すなわち市場許可制には憲法上疑義ありとして、今なお法制局が踏み切られぬことは、まことに遺憾にたえないのであります。しかし事はもはや法律上の問題でなく、全く政治的な、社会的な大問題となっておるのであります。法制局が持たれる市場許可制の疑義は、一つの御議論ではあるけれども、決して権威のある御議論とは私どもは思わぬのであります。法律家の末席につらなる私として、これを許可制に踏み切られても、決して憲法違反ではない、公共の福祉という一点から考えても、その営業自由の原則の外にあるものだということを信じて疑わぬのであります。しかし小売商擁護の問題は、もはや区々たる法律論を離れたる政治上、社会上の大問題なのでありますから、政府におかれても、その覚悟で対処せらるべきであると思うのであります。この問題について考えられますことは、最近至るところに現われておる労働運動の行き方であります。団体の力をもってピケを張り、あるいは押しかけてすわり込みをやる、中にはしばしば治安上穏かならざることまで行われておるのに、それが法律上の違反とせられないということを見まして、心ある国民は労働組合のいかにも行き過ぎ状態を放置してよいのであるか、これでは労働団体利益のみが守られて、その以外の民衆の利益は踏みにじられてもかまわぬ、そういうような結果になるのではないかと心配しておる現状において、何ゆえに力の弱い団結力を持たぬ商工業者のみがほっとかれておいてよいのであるか。私はこれらの人々を、国家全体の利益のために国家が救済し、援護し、育成するということは当然の政治である。またまさにわが国の重大なる社会問題解決の方法であると信ずるのであります。それならば、政府法制局においても格段な考え方をもって、見られてしかるべきである。いわんや農林省経済局あたりが、この問題についてかれこれ異議をはさまれるというようなことは、実にけしからぬことと思うのであります。実はこの問題について私は昨年、当時農林省経済局長、現在は食糧庁長官である渡部さんにお目にかかって、農林省市場許可制について反対だというが、どういうわけであるかと尋ねましたところ局長は、農林省においては、家畜市場を勝手にどんどん作られてはいろいろな点において弊害があるから、これを規制するため、家畜市場については許可制をしきたいというので、法制局相談したところ、それは営業の自由に反するというので断わられた。私の方も断わられたのだから、小売市場許可制についても、農林省としては反対せざるを得ないのだといわれたので、私は驚いた。私は渡部局長にかように申しました。農林省家畜市場の新設を規制したいというのは、国家のためである、法制局がこれに反対をしたのは不当であるとお考えであるならば、まず国会において、社会党も自由民主党もともに意見の一致しておる小売市場許可制を、まず法律に実現せしめ、その上で小売市場許可制が実現したのだから、家畜市場許可制も当然できてよいではないかというように、なぜ持っていかれないのであるか。農林省が不当に押えられたから、よその方も押えられねば気が済まぬ、そんな乱暴な考え方があるかといって、私は激怒して、局長に抗議をしたことがあるのであります。しかるに局長は、何と言われても私の方は法制局反対されたことにこだわりを持ちます。よその方にもこだわりを持って反対をいたしますと、実に乱暴千万な意見を平気で開陳されたことがございます。渡部さんは今農林省経済局におられませんけれども、いまだにそういうようなへんぱな官僚的な考え方経済局内にあるのではないか、もしさようであるならば、断じて許されないことであります。  私どもは、このたびの小売商特別措置法の問題につきまして、無理解なる法制局並び農林省等態度に対して、きわめて遺憾の意を持っておることを明らかにしておく次第であります。私はここに通産省が、すみやかにこの小売商特別措置法を御提案あらんことを切望いたして質問を終ります。
  10. 長谷川四郎

  11. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 昨日に引き続いて三木経済企画庁長官質問をいたしたいと思います。  昨日の三木君の御答弁は、率直に申しまして少しおざなり過ぎるような気がいたします。私がこうした地味な問題について長々と質問いたしまするのは、今日の日本不況は、現在政府考えておられるようなものでなく、非常に深刻な、しかも長期にわたるものであると考えるから、今日の日本の、いや世界の景気が大きく曲り角にきておるということを、多くの人から言われておるところでございまするが、世界経済のそうした大きな曲り角に直面して、世界貿易状況一つの深刻な悩みに逢着しておるというのが、今日の貿易沈滞状況ではないかと思うわけでございます。従って世界経済の一環としての日本経済も、よほどここで根本的な方針を立てないと、切り抜けていけないのじゃないかということを考えるわけですが、昨日のあなたの御答弁を聞いておりましても、私が一つの問題を提起すると、何かそれは一つの特殊な事情にすぎないというような御答弁であったように思います。たとえば鐘紡工場閉鎖の問題を取り上げましても、それは鐘紡だけの特殊な事情があるのではないかというような御答弁でございました。そしてまたさらに繊維だけが不況のような御答弁であったけれども、しかし他の重化学工業方面におきましても、現在その稼働率は平均六五%を割っているということは大体統計に現われているところでございます。従って今日の不況は、決して単に繊維とか軽工業とかいうような一部のものでなく、日本産業全体のものだということが言えるわけです。そこで、話は昨日の続きになりますが、昨日私は特に東南アジア輸出貿易の問題について、中共華僑に対して日本商品ボイコットを指令して、今や日本消費物資は、少くとも中共の打ち出した日本商品ボイコット方針に基いて、完全に東南アジア市場から締め出しを食わされてきておる。この問題は昨日のあなたの御答弁のように、単に中共に非常にすぐれた商品ができ出したというのは、あるいは陶磁器の一部であるとかいうような問題でなく、新聞等にも伝えられており、あるいはまた現地を視察してきた商社人たちが伝えておりますように、政府もおそらくはその資料は持っておられると思いますが、繊維のごときも、日本繊維に比較してすでに劣らぬ繊維を作り、輸出をしておる。昨日お話した陶磁器のごときも、日本商品に比べてすぐれたものができておるという事実が歴然としております。特に陶磁器のごときはもうすでに中共の国内において――景徳鎮その他六カ所の都市において、日本で第一の工場といわれる名古屋の日本陶器に肩を並べる、あるいはそれ以上の設備を持ち、従業員三千人以上を持ったところの工場が六カ所においてできておる。そうして日本のいわゆる零細企業によって生産されるようなものでなく、こうしたすぐれた資本設備をもって経営されておるところの大工場が六つもできておる。その結果、少くとも東南アジア市場に対して現在陶磁器については一千万ドルのライセンスをおろすことが可能であるということが、先般現地を調査してきた有力な商社によって報告されておる。こういう事態を見ますときに、私は少くとも東南アジアにおいては、軽工業関係消費財関係においては、日本商品は、もはや商品そのものでは売ることができないということが言えると思う。東南アジア市場を大きく支配しておりますのは華僑でございます。その華僑が、今日もう日本商品を扱う必要はない、中共日本商品を質においても、量においても凌駕するところの商品を生産して輸出しておるのだからして、何も好んで高い日本商品を扱う必要はないというので、もう日本商品を仕入れることをしないようになって、現在の手持ち商品はどんどん投げ売りをしておるというような実情であるということが伝えられておる。これはおそらく通産省通商局あたりはこの事実を調べておられると思いますが、こういう事態に直面しておるということを、まず岸内閣のプラン・メーカーであるあなたが認識しなければならぬ。その上に立って、昨日あなたの言われた東南アジアとの経済提携技術提携という考え方がそこに起ってこなければならないと思うわけです。従って、私は根本の考え方においてはあなたと意見は一緒だけれども、今日の事態、そうした少くとも従来日本輸出の大きな部分を占めておった消費財が、しかも全輸出の相当の部分を占めておるところの東南アジアにおいて、完全に締め出しを食おうとしておるところの事実、これを一つ認識して、その上に対策を立てていかなければならないと考えるわけですが、もう一度この点についてのあなたのお考えを承わりたい。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 加藤君の御質問、私もやはり中共東南アジア市場に台頭してくるというこの事実を軽く見ておるわけではありません。しかし今中共市場というものから、日本商品が駆逐されているというふうには私は見ていません。陶磁器とか、あるいはまた繊維などに対してはそういう傾向もございますけれども、全体として東南アジア貿易中共に駆逐されておるということには見ていない。それだけ中共工業水準というものを評価はしてないのであります。問題はむしろ今後五年なり、十年なりの先の問題で、今すぐこれが中共東南アジア市場というものが駆逐される、そういうふうには見ていません。しかしいずれにしても、日本は長い目で見れば、東南アジア市場というものを日本として重視しなければならぬ。大きい意味において、やはり日本はアジアの一つ経済の大きなブロックに入るわけであります。そうなってくると、東南アジア貿易というものが、どういうところに問題があるかというと、結局ああいう独立をやったけれども資本の蓄積もないという点で、いろいろな事業を起そうにもなかなかやはり資本不足でやれない。だから、東南アジアには商品を売るということばかりではなくして、やはり資本商品の流れというものが、何か軌道を一にするような傾向を持ってきているわけです。ただ買え買えというだけではなくして、やはり東南アジアには東南アジアとして、ある程度の工業力というものを養いたい。そういう点で、今後日本の国際収支あるいは財政規模、そういうものの許す限りにおいて、東南アジア諸国に対しては、クレジットなり、延べ払いなり、そういう方式によって、単に商品を売るということだけでなくして、やはり東南アジア自体の工業化ということに対しても、日本が寄与するだけの善意を、東南アジア諸国に持たなければならぬという加藤君の御心配、あるいはまたそういう御意向は、私も考え方としては同感であります。ただ、中共自体の今日の東南アジア市場におけるウエートを、加藤君のようには評価しない、こういうことだけの違いであります。
  13. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 これは議論すれば際限のないことですが、中共のいわゆる生産力の伸びというものを、どうも軽く見ておられるんじゃないかと私は思う。御承知のように、中共ではもうここ数年前から、重工業生産から軽工業生産に転換――転換というよりも、軽工業生産に大いに力を注ぎつつある。その結果が、今日今私がお話ししたような状況になってきておるわけです。単にこれは中共内で生産される消費財というものが、東南アジア輸出される。すでに輸出されつつあるものは、繊維陶磁器だけではない、自転車にいたしましても、ミシンにいたしましても、そうした軽機械類に至るまで相当に生産されて、すぐれたものが進出しつつあるという事実を、われわれは無視するわけにいかないということを申し上げているわけです。そこで、今おっしゃる通り、借款を供与するとか、延べ払い方式によって輸出の振興をはかるという考え政府にあるようですが、これは私をして言わしめますれば、今日の実情から考えまして、瀕死の病人にカンフル注射をする程度の効果しかないじゃないかというふうに思うわけです。しかしそれは当面の問題としてどうしてもやらなければならない方法、手段だと思いまするが、これについてもうすでに数カ月前から、政府ではこういう方針をとろうというような意見が強く出ておるようですが、しかし大蔵省が反対をしておるとかいうようなことで、まだ実現の運びにまでは至っておらないようです。一体これは政府部内の考えは統一されておらないのかどうか、いつから、どういうふうにそうした国々におやりになる方針か。これは経審長官としては、そこまで詳しく御答弁できないといたしますれば、大ざっぱな御説明でよろしいけれども、御質問いたします。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、今円クレジットの問題はインド、パキスタン――これはインドの方も、まだ日本のクレジットをどういうようにするかということで、向うの意見もなかなかまとまらないで、時間もかかっております。佐藤大蔵大臣も向うで話をするようであります。これは促進されなければならぬ。クレジットとしては、今きまっておるのが、インドとエジプト、それからパキスタン、セイロン、ビルマ等も話がある。延べ払いについては、これは相当広範囲に輸出入銀行で――今まで延べ払いというものは瀕死のカンフル注射だと加藤君は言われましたけれども、やはり東南アジアというものは長い目で見れば――むろん中共の問題も打開されなければなりませんけれども、しかし中共がすべてではない、むしろ東南アジアにはたくさんな国々があり、たくさんな人口があるわけです。しかもそれは末長く日本と友好関係を続けていかなければならぬ諸国でありますから、これはカンフル注射というようなことで、簡単に片づけられるものではなくして、長い目で見ればこういう東南アジア諸国が、ある程度の工業化をしたいということは、後進国の一致した願望であるに違いない。原料生産国だけではやっていけない。ある程度の、少くとも日常自分が消費する物資は作りたいという意欲は当然に起るわけです。それには今言ったような資本力もないのでありますから、これを延べ払いの条件――このごろではやはり十年くらいは認めようということであります。こういう条件によって、ある程度の工業化を日本が助けていくという、この事実は加藤君ももっと評価すべきでないか。そういう点でこれはできる限り、もうどの国というのでなくして、それが日本を――こげつきになっても困るけれども、多少のリスクはある、これは後進国の特徴である。しかし大体これが償還の能力もあるということを、輸出入銀行が判定するならば、政府はあまり干渉しない、通産省だ、大蔵省だといっては、なかなか問題が片づかないので、政府はこれを輸出入銀行にまかそう、資本のワクだけで政府は縛ればいいということで、こういう点には、そういう後進諸国に対してできる限りそのワク内でのプラント輸出などの延べ払い条件による輸出をやろうという考え方であります。これはやはり大事な日本東南アジア経済協力の一面である、こう考えておるわけでございます。
  15. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 クレジットの供与、特に延べ払い方式というものが一つの呼び水となって、輸出の振興をはかれれば非常にけっこうだと思うのですが、ただ漫然とこれをやって、インドネシアのようにこげつきをますます大きくするというのでは、何もならぬということを申し上げたいと思うわけでございます。  それから先般来、特にインドネシアの賠償問題にからんで、消費財をいわゆる現物賠償の一部に充てるというような話がありました。繊維その他のものが振り当てられるというようなことが、すでに前特別国会から政府答弁等の中に現われておりましたが、その後この問題はどうなっておるか。昨日の御答弁の中にも相手の意向にもよることだからということでしたが、これは急速に実現の可能性があるかどうか。その場合大体どんな商品考えられておるか。何しろストックで、いわゆる滞貨で困っておる今日の状況でございまするから、この問題はできれば急速に話を進めていただきたいと思うわけですが、どの程度話が進んでおりますか。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように賠償は生産財というものが原則であったわけであります。しかしインドネシア、ビルマ等も消費物資をという希望があった時期もあるわけです。そのときはやはりなるべく賠償の原則を貫きたいということで、日本が消極的な時期もあったわけであります。しかしたとえば加藤委員の御指摘のような陶磁器、人絹、こういうものが相当な滞貨があるわけでありますから、一部消費物資を賠償に繰り入れてもいいじゃないか、しかし政府の方としては、これを相手国に押しつけるべき性質のものではない、先方の方が希望があるならば、日本としては消費物資を賠償の一部に繰り入れてもいいじゃないかということで、今向うとの折衝をしておる段階であります。御承知のようにこれは日本から押しつけるべき性質のものではないですから、話にいろいろ時間もかかっておるわけでありますが、その話がつけば、大体今言ったようなインドネシアに対しては、人絹とか陶磁器等を考えておるのであります。
  17. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 私が聞いたところでありますと、どうもこの問題について政府は消極的ではないかというように聞いております。なるほど繊維陶磁器、その他、先方の希望があれば充てるというような品目はあげられておるが、今あなたがおっしゃったように、こちらが押しつけるものではないことは、あるいは賠償というものの性質からいって、ただとれないかもしれないけれども、折衝は積極的にすべきではないか。私が聞いたところによると、品目だけあげて一向折衝はしておらぬというようなことも聞いておりますが、その点について、どうですか。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 私は消極論者じゃありません。やっぱりこの際にそれができるならばそういう形は好ましいということで、これは企画庁自身というものではないから、外務省などに対しても、相当積極的に話をするようにということを要望いたしておるわけであります。必ずしも政府は全体が消極的というものではありませんが、加藤君も今お述べになりましたように、こちらが押しつける性質のものでないところに交渉のむずかしさがある。しかしこれは何も品目だけをあげてそのままにしておるわけではなくて、交渉は続いておる。これがある程度妥結されることは、今日のような滞貨の多い物を先方が希望するならば、これは双方の希望に合致することで、好ましいことだと考えておる次第でございます。
  19. 松平忠久

    ○松平委員 今の賠償と日本の生産財の問題について、関連して質問したいと思います。今三木企画庁長官もこれを是認されたわけであるけれども、南方諸地域、ことにインドネシア、ビルマからは消費財の賠償繰り入れの問題を日本側に提示をして参っておる。そして日本側はこれを断わったいきさつがあるわけであります。日本消費財の賠償繰り入れを欲しておるにかかわらず、先方からその申し入れがあったときに、政府部内で相談をしてその上で、対策をとるべきであったと思うのだけれども、そういうことをせずに、外務省の一方的な意思によったのであるかどうか知りませんけれども、これを断わってしまった。そうして断わったあとで、今になってから、日本消費財を入れてくれということを向うに頼まなければならぬというのが賠償の実態であります。その当時三木国務相は企画庁長官ではなかったろうと思うけれども、そういうことがあった場合には、企画庁自体がこれを取りまとめて外務省をして交渉せしめるというようにしなければならなかったと思いますが、その間のいきさつを三木国務相は一体御承知であるかどうか、これを伺いたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 松平君も御指摘のように、私の企画庁長官に就任前のことで、私は、詳細聞いておりません。
  21. 松平忠久

    ○松平委員 それは一つお調べになったらわかると思う。当時私はたしか三月ぐらいじゃなかったかと思うのですが、先方は日本側から消費財をもらいたいのだ。ところが、その当時日本としては生産財という建前論に固執しまして、そして日本経済の実態、ことに生産過剰になっているところの消費財というものをどうしたらいいかということが、実は去年の十一月ごろからすでに問題になっておったわけであります。そうして人絹のようなものは、インドネシアにぜひ賠償に入れてくれということを、われわれも陳情を受けておる。当時インドネシアのスカルノ大統領が日本に来ておって、そこに一緒についてきた者も、消費財がほしいということをわれわれのところに言ってきておるのみならず、正式に外務省に対して消費財を入れたいという話があった。ところが日本は建前論でもって、すぽっとそれを断わった。断わったあとになってから、政府部内で高崎通産大臣なんかは、そういうのをやりたいということを言っておりましたが、あとになってから、消費財を向うに逆に日本の方から持ちかけるというような不手ぎわをこの賠償についてはやっている。これがいきさつだろうと思うのです。従ってこれはまことにまずい外交をやったものだというふうに私は思う。これはあとで私は委員長に話して外交当局をここに呼んでそのいきさつをただしたいと思うのですが、そういう賠償については関係各省でいろいろ打ち合せてやっていると思うのだけれども、そういう部内の意思の統一を欠いたようなことは、今後やめたらどうかと思うのです。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 従来の考え方は、おそらくそうやって消費物資を賠償に繰り入れますと、通常貿易のワクを食うてしまうものだから、できるだけ賠償は生産財という建前であったのであります。そういう事情は聞いておりませんが、もし松平君の御指摘のような事情があるとしたならば、そういう配慮から生産財という建前を貫きたいと思ったからでありましょう。今日はお説のように必ずしも先方が熱意を持っておるとも見られませんが、しかし今日では相当事情も変っておりますので、先方と話がつけば私は消費物資を賠償に繰り入れていいんだという意見、こういう点で政府意見も、これは微妙な問題ですから、あんまり鐘太鼓で今度は消費物資を繰り入れるのだというようなこともいかがかと思いますので、そうこれを大きく、いろいろこういう問題が出ることが国の利益になるかどうかは別として、考え方はそういう考え方政府も固まっておるわけでございます。
  23. 松平忠久

    ○松平委員 通常貿易を阻害するということは私も考えられるのです。従ってもし通常貿易を阻害するということで、日本政府自体としてこれを断わってしまったということであれば、ますますこれは変なことになる。政府考え方が、わずか数カ月の間に変ったということになるわけであって、この点はよほど政府自体として全般の経済をにらみ合せて初めから考えを立てるべきであった、こういうふうに思うのです。今日の状況のもとにおいては生産財だけもらっても、向うは財政はどこの国もよくありません、従って工場を運営するといって、運転資金というものはないわけだから、この運転資金をどうやってかせぐかといえば、結局政府が向うのインドネシアその他にしても国民に何か売って、そうしてそれによって運転資金というものをかせがなければ、こちらから持っていった生産財だけの賠償物資によって工場の運転はできないというのが、当時のインドネシアの考え方であったのです。ですから、私はそういうことをよく見て、そうして政府の部内の意思というものを統一して初めからかかっていけば、そういうことが望ましかったということを指摘したいわけでありますが、これはもう少し私はこの問題を掘り下げて、この委員会でも問題にしようというふうに思っておりますので、これは関連でありますから、以上で私は終ります。
  24. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 この問題は、要するに現在滞貨の重圧でつぶれようとしておるところの日本の企業を救済しようという点から、私はこれは非常に必要なことだと考えております。それからこういうことは政府考えたならばなるべく早く実行してもらいたい。通産省意見と大蔵省の意見と違う、外務省がまた違うというふうでは、これはせっかくいい思いつきでもなかなか実行できないし、実行するころには最初考えた効果が薄くなるということもありまするから、一つできるだけ早く、先方の都合もあるでしょうけれども――どうも私が今まで聞いたところによりますと、そんなふうな政府部内の意見不統一から消極的であったということですから、御注意を申し上げたわけです。そこであと質問者がだいぶあるようですから、質問を次に進めますが、今までのあなたの御答弁から考えても、政府としてもいわゆる景気転換の大きな要素である輸出の発展ということについては、急速に望むことができないという状態にあるということが言えると思うのです。ヨーロッパの市場状況東南アジアまたはアメリカ、アメリカのいわゆる片貿易、不均衡貿易はますますはなはだしくなりつつあるというような状況から考えて、景気転換の一つの大きな要素である輸出の振興が急速には望まれないということが判断できると思うわけなんです。そこでもう一つの景気転換の大きな要素であるところの国内需要をどうするか、こういう問題だと思うのです。政府の内部でも景気刺激策をとるのか、とらないで静観的な態度をとるのかということについては、両論あるように伝えられておりまするが、これもどうも政府部内で不統一のままで、いつまでもこうした状態でいくということは、これは岸内閣が弱体内閣であるということを示す一つの証拠になると思うのですが、それはさておき、私はこの国内需要を喚起するということについて、その反対意見であるところの物価騰貴を来たす、国内の需要を増せば物価騰貴を来たすという考え方は、今日の段階では私はそういうことはある程度は考えられないというふうに思うわけです。というのは、今日まず第一に技術革命の時代に入ったと言われておりまするが、いわゆる技術の革新から非常にコストが安くなりつつあるということ、それからもう一つは現在軽工業はもちろん重化学工業方面においても、先ほども言ったようにその稼働率は六五%を割っておる。こういうところから相当のコスト高が現われておるわけで、この六五%を割っておるところのいわゆる稼働率を少くとも八五%くらいまで引き上げていく過程において物価騰貴は起らないということを私は考える。従ってなお長期不況の見込まれる今日、国内の需要度を高めていくという方針、いわゆる景気刺激策をとるということは必要ではないかと思うわけですが、この点どうお考えになりますか。
  25. 三木武夫

    三木国務大臣 景気刺激策、ある程度の景気水準を維持するということは経済政策として必要であります。ただしかし景気刺激策というものが個人消費という面から、あるいはまた産業設備投資、民間の設備投資でありますが、これをあふっていくということは賛成できない。個人消費も御承知のようにこれは非常に堅実な伸びを示しておるわけであります。今年度全体を通じましても四・五%の個人消費の年間の伸びを見ておる。消費水準です。また一方において相当設備過剰のような企業があるわけでありますが、ものによったらそうでもないわけで、全体が設備過剰というわけではないが、これでまたやはり生産力を急に増大するような投資、そういう面の刺激もできそうになってくると、やはり一番好ましい形というものは、日本の立ちおくれておる公共投資、これは二十年来道路とか港湾、その他公共投資というものは、いろいろ戦争などもあって非常に立ちおくれておると思う。それからまた産業関連の施設、どうしても国がやらなければ民間ではできないようなものがたくさんあるわけでありますから、こういう面に力を入れていって、それがやはり景気の刺激になるという効果は持ちましょう。そういうことが好ましい。今個人消費をあふったり、あるいはまた設備過剰になっておるような現状に、一律に生産力の効果をすぐ上げるような形で景気の刺激をするよりかは、いわゆる公共投資、産業関連の投資、こういう面で力を入れていくことは必要だと思う。そのために政府は何もしてないわけではないのであります。将来この下期の経済の見通しなどについても、なべ底は落ち込まない、やはり多少の上向きをするのだという背景の中には、じっとしておるのじゃないのだという、いろいろなことをやるのだという努力もその中に入っておるわけです。たとえばこの下期の見通しの中で考えてみましても、公共事業などに対しては、第三・四半期は、公共事業を繰り上げてやったりして、進捗率は八〇%、これは大体六五%くらいのものです。それを八〇%にやる。財政投融資でも、昨年などは三九・七%でしたが、今年の上半期の進捗率は四九・三%、このように財政投融資あるいは公共事業、こういうものをやはり相当繰り上げてやっていこう。毎年公共事業でも百億円くらいは年度末に繰り越しになる、そういうことをなくして、やはりこういう経済の沈滞期には、こういう最も好ましい投資であり、一面においては景気刺激策とも言える、そういう最も好ましい形でやっていこう。また一方においては輸出などについても、普通であれば延べ払い方式などということは、非常な便宜を相手国に与えるわけです。こういうことをしてまでもクレジットを与えたり、あるいは延べ払い方式によって輸出もやっていこう、あるいはまた金融の面においても公定歩合というものが二回も下ったわけであります。それに準拠して市中銀行の金利を引き下げてもらうということで、これはまだ世界の金利水準から高いにしても、金利は低下の傾向にある。これはまた一面において企業の負担も軽くなるし、そういう意味において景気政策と関連なしとはいえない。こういう総合的な政策をとって景気の水準を維持していこうという方法を行なっておるわけであります。これ以上進んで個人消費を喚起すべし、あるいはまた一方においていろいろな生産力の効果をすぐ上げるような面における投資を増大しようというような刺激策ではないけれども、もっと堅実な景気対策というものは政府が考慮してやっておるのだということを申し上げておきます。
  26. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 政府が各種の好景気転換策を実施しておるのだというお話ですが、それは要するに景気転換の要素としては弱過ぎるというところから、今日この長期不況が少しも好転しないということになってきておると思います。そこで私はもう少し日本経済というものを根本的に考え直して、単に経済の発展を輸出のみにたよらないで、もう少し国内需要を喚起する、要するに国民経済の発展という点に、もう少し力をそそぐべきではないか、そういう点から申し上げておる。国民の消費が伸びておるとおっしゃいますけれども、国民経済の発展を考える上からいって国民消費が伸びるのは当然ですが、それをもう少し伸ばしていくことが、今日この景気を転換する上において必要ではないかということを私は言っておるわけです。そこで今あなたのおっしゃった国民消費を伸ばさないで、公共事業その他いろいろな建築等を大いに起して、あるいはまた公共事業をできるだけ早期に実施して、一つの転換策とするということは、これは当然必要なことだと思うわけですが、その点についても政府部内にいろいろな意見があって、なかなか統一しないというようなことを新聞等で見ておるわけです。これも先ほど言ったように、どうもこの岸内閣は閣僚の意見がなかなか統一しないという点が、あらゆる場合に現われておると思うのですが、やるべきことはできるだけ早く意見を統一してやるということにしないと、時期を失してしまうということを痛切に思うわけです。そこで今おっしゃった通りに、今まで本年度予算できまっておるところのいわゆる公共事業費、あるいは財政投融資によって、そうしたことをやっていくということで一体追っつくのかどうかということを、われわれは考えるわけです。先般来政府部内でもあるいはこの意見があると聞いておりますが、われわれがすでに特別国会以来主張して参りました、いわゆる岸内閣がとっておりますところの超緊縮政策からきておるところのたな上げ資金、経済基盤強化資金を、この際そうした方面に放出すべきではないか、そうして、今あなたがおっしゃったようなことを積極的にやるべきではないかというふうに考えるわけですが、この点についてあなたの考えはどうかということを伺いたい。
  27. 三木武夫

    三木国務大臣 たな上げ資金というものは、一つの弾力的な財政の運用のためにたな上げしたので、これをいつまでも使わないでたな上げするという性質のものではない。必要なときには使うべき性質のものである。ところが現在は、公共事業にいたしましても、繰り上げてやっておるわけです。これを年度末にはやはり次年度に繰り越すようなことのないようにやりたい、こういうふうに考えておるわけであります。そういうことがどうしてもなかなか困難だというとき、その場合には考えなければならぬが、現在のところで、今すぐこのたな上げ資金を――たな上げ資金というものは、使途が明記されておるわけであります。個人消費をどうしようといったって、そういうふうに使えるものではないわけです。従って、現在のところは、このたな上げ資金を取りくずすことはいたしませんが、必要があったら、むろんのこと、このたな上げ資金は必要に応じてくずしてよろしいのだ、そういう性質のものだ、こう考えております。
  28. 加藤鐐造

    加藤(鐐造)委員 次の質問者が待っているので、この辺で切り上げますが、どうもあなたのおっしゃることにも一つの矛盾があるように思う。今あなたのおっしゃったような公共事業費の繰り上げで大いに事業を起して、一つの転換策をはかるということも、やはり個人消費を増すということになってくる。だから形式的に、先ほど私が言った、要するに国民消費、国内需要を大いに刺激することによって生産を増していくということは否定するけれども、いわゆる公共事業費の早期使用によって、要するに一つの景気転換策とするというようなこととは一致しておるわけだと思うのです。私はどうしてもこの際この長期を予想されるところの不況を打開する道は、急速には輸出振興をはかれない――輸出振興をはかるところのいろいろな施策は当然やらなければならないけれども、しかしながら、その施策は、今日どうしても一つの根本対策として打ち出していかなければならぬ。そうすると、やはりそれはどうしても早期にその効果を上げることは望まれないということがいわれると思うので、どうしても私は、国内需要を刺激するということによってできるだけ早く、すでに一年有余にわたって続いておるところの不況を好景気に転換させるところの方策をとらなければならない、こういうふうに考えるわけです。この点については、私は単に希望として申し上げておくわけですけれども、要するに、国民消費を高めるということ、消費力を高めるということに、一つの恐怖心を現政府は持っておるのではないか、あなたもやはりそういう考えに陥っておるのではないかということを私は指摘しておきたい。私は、国民消費を伸ばすことによって物価が上らないとすれば、これは当然やるべきではないかと思う。あなたは単に、国民消費を伸ばすことは危険だとおっしゃったけれども、一体どういう点で危険かということを、今おっしゃらなかった。私はその危険があるとすれば、いわゆる物価騰貴を来たすという点にあると思うわけですが、今あなたは、私が申し上げたことについて、設備投資がまたあらゆる産業について大いに行われるということになると、そこに危険が起ってくるとおっしゃいましたけれども、そこは、やはり今日いろいろな施策によって、不当なるところの、あるいはまた過当競争に陥るようなところの危険のある設備投資ということは、これはやはり押えていかなければならぬ。それはやはりいろいろな施策によってできることであって、そういうことを私は今心配する必要はないと考える。この点について、もう一応あなたの見解を承わって、私の質問を終ることにいたします。
  29. 三木武夫

    三木国務大臣 たとえば公共事業費などを繰り上げ支給をいたしまして雇用の機会を与える、それは国民所得に、また個人消費に転化される、そういうことは好ましいことであり、日本のような過剰人口を擁しておるところでは、できるだけ人口というものを生産的に使っていくということは当然のことであります。そういう点で雇用の機会をふやすことは、むろん政府のやらなければならぬ責任であります。今後十年間の日本の景気というものは、雇用の拡大ということが経済政策の中心題目です。それ以後になってくると人口の構成もだいぶ変ってきます。そういうことでは否定しないのですが、消費購買力を喚起すべしということになってきて、そういう形の雇用の機会が増大されて、それで当然に所得がふえ、購買力がふえるのはよいのです、それはやらなければならぬ、いい悪いよりもそういうことをやるのが政府経済政策であります。しかし今この上に追加購買力みたいなものを起せというと、賃金を上げたりあるいはまた農作物の価格を引き上げたり、そういう面のことで国民の消費購買力をあおることは弊害がある、それは物価騰貴を当然に来たします。大体国民の消費水準というものは堅実な伸びである、これは相当伸びておりますよ、都市なんかの消費水準でも先月は七%くらい伸びております、やはり非常な伸びなんです。しかしそれは不健全なものとは思わない。やはり文明というものは生活水準が高まっていくことでしょうから、その程度の生活水準が高まることは不健全だとは思わないが、景気政策として非常な購買力をあおる、そうなってくるとそれはインフレになってくる。アメリカなどがコスト・インフレといっておることは、やはりそういうことからくるわけでありますから、今言ったような形でいわゆる国民の消費購買力をふやすことは、雇用の機会を増大して、そうしてふえていくことはけっこうなことで、やらなければならぬ。しかし今のいわゆる賃金のある程度の値上りというのはやっておるけれども、購買力をふやすために、なお一そうの賃上げをやったり、農作物の価格をつり上げたりするような形の景気刺激策というものは弊害があるということを申し上げておるので、根本においては加藤君の考え方と、そう違わないということを申し上げておきます。
  30. 長谷川四郎

    長谷川委員長 板川正吾君。
  31. 板川正吾

    ○板川委員 私は昨日の三木経済企画庁長官の所信表明に関連しまして、またただいまの加藤議員の質問に関連いたしまして二、三御質問申し上げたいと思います。三木長官は所信表明の中で、日本経済の現状を、不況ではない、生産も一時的停滞である、こういうふうに表現をされたと理解しておるわけでありますが、生産の停滞とは表面の現象でありまして、生産の停滞を引き起した原因は不況ではないかと思うのでありますが、その点に関して長官の御意見はいかがでございましょうか。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 今不況であるかないかという議論はいろいろあるようでありますけれども、私はあまりこれを重視していない。不況ということが昔のような景気変動の幅が非常に大きくて、不況といえば非常な恐慌みたいな、そういうサウンドを不況が持つならば、これは不況でないといえるでしょう。景気の沈滞を不況というならば不況と言ったっていい。そういう問題はあまり重視しておりません。しかしいろいろ論議がかわされておるので、私は景気沈滞とい言葉を使った。いわゆる不況の概念から、これをもし不況だということになってくると、国民の心理的な影響というものは、恐慌みたいな感じを持つので、政府も警戒して使わぬのだと思います。今の状態は景気がいいとは思いません。それだから沈滞と言ったわけでありますが、不況という言葉自体は、内容は別として、私は両万が、そうむきになってやる問題ではないと思う。そういうふうに考えておるわけであります。しかし全体からいえば国民の経済の成長も一・八くらいはふえるわけです。消費もふえる。投資は減るわけです。投資は去年に比べれば一四%くらい減るわけです。しかし財政の面では、去年よりは財政の購買力はふえております。ほとんどの経済指標というものは上向いておることは事実なんです。そういう点で、これを不況なりと断定することはいろいろな誤解を生ずると思って、政府不況と言わぬのだと思いますが、私は大した意味はないと思う。景気は沈滞であることは間違いないと思います。
  33. 板川正吾

    ○板川委員 三木長官も言われましたように、不況という表現を使うことと、景気の停滞なり沈滞なりという言葉を使うのとでは、国民に与える影響もニュアンスが違うと思います。われわれ野党は不況という経済の現実を直視して、これに対して積極的な対策を持つべぎだ、こういう考え方を持っておるわけであります。不況だと言うと、野党が不況だと言うから政府不況ではない、停滞だ。どうもこう言っておる感じがしてならないのであります。昨年の通常国会の初めに、われわれの方で宇田企画庁長官に国際収支は非常に悪化するのではないか、こういう質問を再三重ねたのであります。そのときに宇田長官は、いや国際収支は収支とんとんだということを何回も強弁されたと聞いておりますが、国際収支が収支とんとんだと言っておるわずか二、三カ月後に、ついに五億ドルかの外貨の不足を来たして、いわゆる金融引き締め政策をとったことは御承知の通りであります。従って不況論争ではありませんけれども不況の実態を政府は直視して、この現実を国民に知らせて、その上に立って不況打開の政策を打ち出すべきではないか、こういうふうに私は考えるわけであります。子供が生まれて二年間たっても歩けないのを、これは成長の停滞だというように表現をしておるようなものでありまして、二年間もたって歩けない子供は、これは不況という一つの病気状態だ、そういうふうに私は判断をするわけであります。ただいま加藤委員も申されましたが、この不況の現実を把握して、これに対する対策というものについて、もう一度具体的に御発表願いたいと思います。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 社会党の諸君が非常に不況ということで言われることもわかります。部分的には不況産業もあるわけです。しかし経済の実態をそうあまり悲観的に見るということに私は賛成しない。今の事態は、今いったような経済指標というものが、今までの速度が早過ぎたのですよ。それが鈍ってきたことは事実です。しかしとにかく重立った経済指標というものは上昇のカーブをとっておるわけです。今までのような大きな幅でないまでも、それは上昇のカーブをとっておるのでありますから、そう悲観して、今にも経済界がつぶれるような、ことさらに悲観論を振りまくことは、私は弊害があると思います。やはり経済の動きの中には心理的なエレメントというものは相当にあるわけであります。そういう点でもしそういうふうな背景であるならば私は賛成できない。そうは見ないけれども、しかし今言ったように、今までに比べれば国民経済の成長率も低いわけであります。今までは一〇%から八%も伸びてきておったわけで、そういう点が一・八%というのは低いわけでありますが、しかし上向いておることは事実です。成長していくことは事実なんです。また去年と平均をしてとってみると、大体企画庁などで考えておる経済成長の線とあまり逸脱していないですね。一年だけをとれば経済指標に対しては非常に修正を加えました。加えたけれども、去年とつき合わせてみると、大体成長線というものと大きな逸脱はない、こういうことでありますから、やはり今後の経済政策というものは大事だと思います。これは各国ともやはり景気政策というものに対しては、政府も非常な力を入れているのです。各国がやるのは大体金利政策ですよ。オープン・マーケット・オペレーションというようなことが景気政策の中心題目で、それはもうひんぱんに公定歩合を上げたり下げたり、それに当然市中金利というものは遊離しませんし、政府の短期証券なんかも金融が緩慢になったら売り出したりしておる。そういうことをやっておる。日本は金利が非常にノーマルではないですから、そういう点で、そういう金融政策の面からする政府の景気政策という武器は失われておる。これはやはり金利が正常化されて、そういう面からも景気政策をとっていく政府の武器でなければならぬわけです。だからこれは次第にノーマルな状態に返そうとしておりますが、今のところ政府のやり得ることは財政あるいは財政投融資、金利政策もありましょう。こういう面から政府はやれるわけです。国際収支というものは相当な黒字があっても、公債でも発行してやろうというときには、そのワク一ぱいやれるでしょうが、その下にやはり財政のワクというものがあるわけですね。従ってやれる範囲といえば公債を発行すれば別だけれども、そうでなければワクは小さい財政あるいは財政投融資、その範囲内でやはり今後の景気を刺激していくのにも、最も好ましい形がいいのだ。それにはやはり何といっても日本は公共投資というものがおくれておるのだから、今後道路なども相当困難はあるけれども、一兆円の予算でやろう、港湾なども特別会計を設けて港湾の整備をやろう、こういうふうな基幹産業などに対しても財政投融資で、相当重点を置いておるわけであります。こういう形で、日本の将来の産業構造というようなものを考えながら、また立ちおくれている公共施設、こういうものを政府が充実していって、それがまた景気の刺激の一面を持つ、こういう経済政策ということが好ましい。民間の企業に対しては、民間も相当金融はゆるんできますから――第三・四半期には三千五百億円近くの散超になる。金融は非常にゆるんでくるわけでありますから、こういう点で、一面からいったら、これは一応の景気刺激にもなるわけです。しかしこれがまたいろんな昔のような状態行き過ぎ状態になってもいけませんから、それはいろんな経済政策を伴わなければならぬが、それは民間の方にまかすとして、やはり政府がやれるいわゆる財政あるいは財政投融資を通じて、将来の産業構造も考えながら立ちおくれた投資をやっていく。それがやっぱり景気の刺激にもなるということが、一つの大きな――不況産業に対して個々に手を打つことは必要でしょう。しかし大きな経済政策の通筋というものはそうだ、こう思います。
  35. 板川正吾

    ○板川委員 大きな立場から景気振興上の対策を立てる、その一つとして金利政策も大切である、こういうお話がありましたが、最近伝えられるところによりますと、閣内の池田さんが、公定歩合を二厘引き下げるべきだ、こういう談話をある地方で発表いたしております。日本の公定歩合は、先ほど言いましたように、各国と比較すると非常に高いのであります。これは日銀の決定事項だといえばそれまででありますが、この公定歩合の引き下げについて、長官としてはどういう御見解をお持ちであるか、お聞きしたいと思います。
  36. 三木武夫

    三木国務大臣 公定歩合はやはりこれが市中の金利に対して関連性を持つところに意味がある。そうでなければ、意味がないこともないけれども、半減される。日本の金利水準は世界一高い。ギリシャとどっこいすっこいというところでありますから、これは下げないと企業も――企業の資本構成は七割まで他人資本で、金利は世界一、こういうことではなかなか企業の健全な競争はしていけない。そういう意味で金利は下げなければならぬ。そのためには公定歩合の引き下げは導火線になるわけです。池田君が旅先で言われたことは私も新聞で読みましたが、これは日銀の政策委員会等に対して、あまり党や政府が公定歩合のことでイニシアチブをとるのもどうかと思いますが、しかしこれは検討すべき問題だと思います。これは確かに大蔵大臣あるいは日銀の政策委員会などが検討する課題の一つだと思います。方向としては金利はもっと下げられなければならぬ。そうでなければ、これだけの企業の金利負担というものは非常な重圧になっておると思います。今すぐに池田君の説を私がここでコメンドするわけにはいきませんが、確かに検討すべき課題ではあると思います。
  37. 板川正吾

    ○板川委員 私、昨年以来政府のとってきた経済政策というものは、どうも私どもから考えて、幾つかの間違いを犯しておるのではないか、こういうふうに感じておるわけです。第一に政府の犯した経済政策の誤まりというものは、先ほども言いましたように、昨年度の国際収支の見通しを非常に大きく誤まって経済界を指導した、こういうことが一つであろうと思います。第二は、昨年神武景気に引き続いて政府は長期経済建設の計画を発表され、進歩的保守党をもって任ずる自民党が長期計画を持つということは、それ自体には私賛成であります。この長期計画は生産の面については一つの増産態勢をとって参って、それ自体はいいのでありますが、しかしどうも供給に見合う需要の問題、有効需要の問題についてはあまり考慮が払われなかった、こういう感じがいたしてならないのであります。その結果需給のバランスがくずれて、いわゆる過剰生産の状態を招来せしめた、こういう責任は私は大きなものがあろうと思うのです。国民は牛乳をもっと飲みたい、これはスエーデンの三十分の一あるいは欧米諸国の二十分の一程度の牛乳消費量でありますから、もっとその消費をいたしたいという欲望を持っておるわけであります。また繊維もほとんどの産業が半分近く、あるいはそれを越えて操業短縮を行なっておる実情でありますが、しかし国民の繊維の消費量は大体アメリカの三分の一、イギリスの三分の一だそうであります。まだまだ消費欲望を持っておるにかかわらず、貧困のために買えない。滞貨の山があって生産を制限しておる。一方において国民大衆は窮乏のために、そうした滞貨の山を目前に置いて消費できない。いわば豊富の中における貧困の生活をしておるという状況であります。政府の生産制限あるいは調整政策というものは、私は国民の立場から言うならば、貧困の中に均衡をはかろうとする政策であろうと思うのです。これは本来ならば豊富の中に均衡を求むべきだろうと思うのであります。従って私は、政府は有効需要を喚起する方法として、先ほど言われましたような、内需をもっと刺激すべきだという建前をとっております。同時に外需、いわゆる輸出を伸ばさなくてはならぬ、こういう考え方を持っておるわけでありますが、この国際貿易上の見通しといいますか、輸出を伸ばす振興上の政策について、具体的にどういう措置をとっておるかという点に関連をしておるかと思いますので、三木長官に大きな立場から輸出振興策についての所見を承わりたいと存じます。
  38. 三木武夫

    三木国務大臣 前段お述べになりましたことは、政府も国民年金制度を実施したり、低額所得者の減税、こういう点で、なるべく国民の低額所得者の購買力の維持ということには意を用いておることは御承知の通りであります。  後段の貿易については、いわゆる後進地域と申しましょうか、ドル不足の地域に対してはクレジット、延べ払いあるいはオープン・アカウントもまだ残っております。こういうことで一つの信用力を供与して貿易を拡大する。また購買力を持っておる国――欧州にしてもアメリカあるいは豪州、こういう国々に対しては貿易使節団などをやりまして、そうして市場の開拓に対して――きのうも稲垣団長がアメリカにたったわけでありますが、そういうこととジェトロなどの、ああいう常設的な貿易振興機関を通じて、市場調査などもいたしていく、そういうふうな事業を今後拡充していこうということで、貿易は一時にどうということではありませんで、長い目で見なければならぬ。できるだけのことはしておるのですが、やはり全体としての世界貿易が拡大する傾向でないと、今日のように貿易が縮小するような傾向のもとにおいてはなかなか困難である。これは日本の努力あるいは世界の景気の動向にも関連をいたしますが、世界でもこれは大きな問題になっておるわけです。縮小均衡ということが国際政治のまた一面の大きな課題でありますが、こういうことで貿易の前途をそう悲観的には見ていないわけであります。
  39. 板川正吾

    ○板川委員 貿易の問題は長期的に考えるべきだ、こういうお話もございましたが、私、日本貿易の実態を見ますると、何といっても対米、対オーストラリアとの片貿易が非常に大きいものと思うのです。長期的に見て、計算してみたところ、過去八年間において対米片貿易の赤字は四十二億ドルに達しております。オーストラリアとの関係は、ドル換算で三十億ドルをこえておると思います。昨年一カ年間を見ましても、対米貿易の超過支払いは十億ドルに達しておると思いますし、オーストラリアが三億二千万ポンドでありまするから、これまた十億近いと思うのであります。そのほかカナダ等においても一億ドルの片貿易になっておって恒久化しております。こういう状態日本の外貨の面におきましても、それからまた輸入市場を転換することによって輸出が拡大するのに、こういう片貿易を是正しないところに輸出の伸びがないという原因があると私は思うのであります。こういう諸地域、アメリカあるいはオーストラリア等の片貿易についてこれを是正する見解がありましたらお伺いいたしたい。
  40. 三木武夫

    三木国務大臣 今度貿易使節団を豪州あるいはアメリカ等に送りましたが、御指摘のように片貿易になっておることは事実でありまして、こういうことも話し合って、そして貿易のバランスをできるだけとるようにしたい、アメリカなどもほかの国との貿易は減っておるのですけれども日本はふえておるわけです。だんだんに是正はされておりますけれども、絶対額においてアンバランスであることは事実であります。今後こういう片貿易の地域に日本貿易を拡大してもらう、今後やはり経済外交といいますか、そういう面へ重点を置かなければならぬ一つであります。今まで使節団を出したりしたのもこういう努力の現われでありまして、今後努力して是正していきたいと思います。
  41. 板川正吾

    ○板川委員 どうも長期的に見て過去八年間を計算しても、年々非常な片貿易を続けておる。それをそのままにしておったわけでありますが、片貿易を是正して輸入市場の転換をはかれば、従って輸出市場の拡大もはかれると思うのでありますが、政府はそういう政策を放置しておいて、そうして市場をわざわざ狭めて、狭い市場でお互いに過当の競争をさせる、過当の競争になるからカルテルを緩和する、こういうような状態になっておるのでありまして、私は政府日本経済の自立をはかる上においても、すみやかにこうした国々との片貿易是正のために努力すべきであろう、こういうふうに要望を申し上げるわけであります。  最後に、昨日来加藤委員三木長官との間に行われました日本産業構造を変えていくべきだということの論争の中心点でありますが、長官が言われましたように、日本産業構造が軽工業から脱却して今重工業の中間にあるというふうにわれわれは理解をいたしております。将来日本産業構造は重工業あるいは重化学工業等に移行をする必然性があるということも、われわれ全く同感であります。この過去八年間の日本輸出の実態を見ますと、総輸出の四八%が繊維類であります。しかし現在それが三五%に下ってきております。また八年前には機械の輸出は八%か九%でありましたが、現在は二二%にふえております。こういうように日本産業構造が変ってきておるということも、われわれ理解できるわけであります。アメリカの輸出品目の構成を見ますると、機械類の輸出が七十億ドルで全体の三〇%を占めております。日本は将来産業構造が重工業に転移をしていく場合に、何といっても機械類の輸出が大きい役割を輸出の面で果すであろうと思うわけであります。昨年日本貿易で機械類は六億三千万ドル出ております。その輸出市場を見ますると、アメリカはわずか五千万ドルでありまして、大半はアジア・アフリカ地域、いわゆる後進国地域であろうと思うのです。これは実績がそうなっておりますから一目瞭然でありまして、日本が将来輸出市場を拡大する場合、何といっても付加価値の多い機械類に重点が置かれなくてはならない。そのためには東南アジア、アフリカ、この後進国地域の市場の開拓が、私は大きい問題になろうかと思うのであります。このアジア・アフリカ地域においては中共の力というものを無視することはできないと思う。アジア・アフリカの中に中共も含めてわれわれは日本貿易考えなくてはならないのでありますが、この中共との問題は、現在不幸にして中絶状態にある。政府はこれを静観をすると言っておりますが、一体日中関係がこのままで、いつまでも静観しておっていいのかどうか、これは将来日本産業構造の転移、輸出事情等を考慮すると、もう一日もすみやかに中共との貿易再開をはからなければならぬと思いますが、中共貿易に関する三木長官の熱意といいましょうか、一つ考え方、所信をこの際御表明願いたいと思います。
  42. 三木武夫

    三木国務大臣 中共貿易は、岸内閣としてもやろうという方針がきまっておるわけです。いろいろ不幸な結果になっておるのでありますが、しかし非常にむずかしい点は、中共は現在承認はできない、しかし将来は中共問題が当然起ってくるでしょうが、現在の段階ではそういうことです。そのワクの中で貿易もやろう、文化の交流もやろうというのですから、その困難な立場を両方がやはり理解し合わないとなかなかできない不自然な関係です。国交が回復してないのに貿易や文化の交流をやろう、こういう国際関係は過去にあまりない。その過去にあまり国際的に慣行のないことをやろうというのでありますから、日本ばかりがその困難な立場を理解するだけでは問題は解決しない。やはり向うもそういう立場を理解し合って、そうしてそういう困難な条件の中でも貿易をやろうということに歩み寄らなければならぬ。これは承認まで踏み切れば別です。それができぬという以上は、やはり向うだってその困難な事情を理解し合うよりほかにない、こういうことで、こういう両国のいろいろな誤解とか、あるいはまた不信、こういうものが長いアジアの将来のために払拭されて、そうしてこの困難な立場を理解し合って、貿易が再開されることは望ましいと思うが、日本側としては中共になし得る外交政策で一つの限界を持っておる、こういう状態であります。
  43. 板川正吾

    ○板川委員 でき次第やろうということもどうかと思います。承認するというならば別だということをただいま言われておりますが、私の理解するところでは、中共は今直ちに国交の回復を求めてはいないと思うのです。しかし日中問題の破壊した原因というのは、五月九日かに岸総理が新聞談話で、この九十二条の国内法でこれを処罰することはできない、しかしこれはこれとして、これを国内法で処罰しろというのは日本の内政干渉だ、こういう表現をしたことから、私は最悪の事態に突入してしまったと思うのです。向うでも国内法に準拠して処罰せよとかいうことを言っているとは私は思いませんが、また向うでも今直ちに承認しろとも言ってない。そこは政治的に表現すべきでなかったかと私は思うのです。とにかく承認を今直ちに求めておるのではないのでありますから、そういう中で私は貿易再開の道を講ずることがあると思うのであります。その第一は、第四次貿易協定のすみやかな承認であろう、これができれば、この貿易再開の道はとにかく第一段階が開かれるものと思うのであります。第四次貿易協定をすみやかに承認をすべきであろうと思うのでありますが、これに対する長官の所見を承わりたいと思うのであります。  以上をもって私の質問は終ります。
  44. 三木武夫

    三木国務大臣 板川君御存じのように、政府は第四次民間貿易協定に対して支持と協力を与えるということの声明をしたわけであります。それで、全体としては政府はあの第四次貿易協定を承認するという立場で、ただ国旗なんかの問題が起きてきましたが、大体民間協定でありますから、なるべくやはり困難な両国の事情をお互いに理解し合うという態度がないと、なかなかうまくいかない。民間協定の中に国旗を掲揚する権利というものを入れるのが適当だとは私は思わなかった。そういうことがやはりいろいろな物議をかもしたわけです。何とかしてこれは貿易協定の中から除けないかということを、池田正之輔君の行くときにも言ったのであります。全体としては政府はこれに対して支持と協力を与えるという約束でありますが、たまたま派生的な問題として国旗の問題が問題になって、そういうことが誤解に誤解を生んだんでしょうし、あるいはまた中共自身の対日外交政策というものに一つの違いがあったのかもしれませんが、とにかく両方が国交を回復していないにかかわらず、貿易や文化の交流をしようという困難な情勢を、あまり両方がやはり感情的にならないで、理解し合わなければ、この問題をほぐしていく糸口はできない。だから、これは日本もそうであります。国旗のごときは、これはどこへ行ったところで、国旗というものはみな国の象徴であるし、その国の国民からすれば大事にするものであります。国旗に対して日本が保護を加えることは当然のことであります。それをあまり法律で九十二条が何だかんだといって、法理論になってくると、いろいろな厄介な問題が起るので、全体としては、よその国の国旗は承認しておるまいが、承認しておろうが、これは尊重しなくていいという国際倫理はない。やはり尊重しなければならない。それをあまり両方が、国交を回復していないのだから、どの条文というように突き詰めていろいろ言うと、やはり問題が起ってくる。それをそういう不自然な形で貿易をやろうというのですから、その不自然というものを相互に理解し合う寛容さがないとなかなか問題が解決できない。私は日本ばかりに罪があるとは思っていない。中共もまたそういう困難な事情を理解してやるという心持でないと、一方的に日本だけがやるということでは問題は解決できない。そういうことで、すみやかにそういう問題が解決されて、中共貿易が再開されるということは、長いアジアの将来から見て必要なことだ、こう思っております。
  45. 板川正吾

    ○板川委員 まあ国旗問題は法律をたてに、掲揚する権利を認めないと言っているのは日本政府でありまして、その点は中共側が法律をたてに、それを処罰しろと言っておるとは私は理解しておりません。しかしこれはいずれまた機会をあらためて質問したいと思いますので、以上をもって私の質問を終りますが、通産大臣になお所信表明について質問がありますから、次回に願いたいと思います。
  46. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次会は明九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会をいたします。     午後一時八分散会