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1958-10-29 第30回国会 衆議院 社会労働委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月二十九日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 大坪 保雄君 理事 田中 正巳君    理事 八田 貞義君 理事 藤本 捨助君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 滝井 義高君       大橋 武夫君    藏内 修治君       河野 孝子君    齋藤 邦吉君       田邉 國男君    谷川 和穗君       寺島隆太郎君    二階堂 進君       古川 丈吉君    柳谷清三郎君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    岡本 隆一君       河野  正君    多賀谷真稔君       堤 ツルヨ君    中村 英男君       八木 一男君    山口シヅエ君       吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君  出席政府委員         厚生政務次官  池田 清志君  出席公述人         全国町村会会長 山本 力蔵君         新潟高田市長 川澄 農治君         神奈川小田原         市長      鈴木 十郎君         日本医師会常任         理事      蓮田  茂君         日本歯科医師会         専務理事    鹿島 俊雄君         日本薬剤師協会         理事      水野 睦郎君         早稲田大学教授 末高  信君         大阪市立大学教         授       近藤 文二君  委員外出席者         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  国民健康保険法案国民健康保険法施行法案及  び国民健康保険法の一部を改正する法律案      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民健康保険法案及び国民健康保険法施行法案並びに第二十九回国会に払出されました滝井義高君外十三名提出国民健康保険法の一部を改正する法律案の三法案について公聴会を開会いたします。  御出席公述人全国町村会会長山本力蔵君、新潟高田市長川澄農治君、神奈川小田原市長鈴木十郎君、日本医師会常任理事蓮田茂君、日本歯科医師会専務理事鹿島俊雄君、日本薬剤師協会理事水野睦郎君、早稲田大学教授末高信君、大阪市立大学教授近藤文二君、以上の各位であります。  この際、公述人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、当公聴会公述人として御出席下さいましたことを厚く御礼申し上げます。申すまでもなく、本日御意見を伺うことになっております各案件は、国民保険達成を期するとともに、国民健康保険給付内容を改善せんとするため提案されたものであり、医療保障制度の一環として、きわめて重要な意義を持つものであります。本委員会は、これらの法律案について、あらゆる角度から慎重に検討を進めておりますが、本日は直接これらの提案を担当される方々医療機関方々、あるいは大学教授方々の御出席を願い、それぞれの立場から忌憚のない御意見を伺いたいと存じます。公述の時間はお一人十五分程度といたし、その後委員よりの質疑にお答えを願いたいと存じます。  なお念のため申し上げますが、衆議院規則の定めるところによりまして、公述人方々発言をなさいます際には、委員長の許可を得なければなりませんし、発言内容については、意見を聞こうとする問題の範囲を越えてはならないことになっております。また、委員公述人質疑をすることができますが、公述人方々委員質疑をすることができません。以上お含みおきを願います。次に公述人方々が御発言の際は、職業並びに御氏名をお述べ願いたいと存じます。なお発言の順序は、勝手ながら委員長においてきめさしていただきます。  それではまず公述人公述を願います。全国町村会会長山本力蔵君。
  3. 山本力蔵

    山本公述人 私は全国町村会会長山本力蔵でございます。本日、委員会におきまして御審議中の品民健康保険法案等につきまして、意見を述べさせていただく機会を与えられましたことを深く光栄と存ずるところでございます。法案に対する私の考えを簡単に申し上げまして、御審議の御参考に供したいと存じます。  まず私は、全国町村会会長として、また国民健康保険事業経営者の一人といたしまして、率直に申し上げたいのは、本法案の一日も早く、しかも原案通りに成立させていただきたいということでございます。その理由といたしましては、全国町村会におきましては、昭和三十一年度以来国民健康保険の全市町村全面実施を提唱して参りましたが、この法案によりますれば、昭和三十五年を期しまして国民健康保険全面実施となりますことは、まことに欣快にたえないところでございます。しかしながら、町村財政の現況をつぶさに考えまするときに、全面実施をいたすにつきましては幾多の前提としての条件があるのでございます。それは医療給付の率を七割に引き上げることでございます。さらにまた、国庫医療費に対する負担額を四割に引き上げるということを主張して参ったのでございます。しかるに今回の改正法案によりますると、国庫補助率は一律に二〇%、そのほかに調整交付金の五%を法定化しております。これは私どもが従来から主張して参りました点から見ますると、不満な点が多々ございますが、しかしながら一応従来に比しまして一歩前進しておるということでございまして、一応この法案に基きまして了承し、実施をしていただきたい、こう思うわけでございます。  さらにまた、今回の法案によりますると、医療機関指定制度の問題でございます。国民健康保険全国全面実施に伴いました際には、一般社会保険指定医療制度を持っておるのでございますから、これに準じまして医療機関指定制をとることは当然であろうと考えるのでございまして、これにつきましては賛成いたし、ぜひ実施をしていただきたいと存ずるわけでございます。  次に、一部負担金の問題でございまするが、従来はいわゆる保険者徴収窓口払いの二本立になっておるのでございますが、今回の法案によりますると窓口払い一本に改正されております。従来は二本立関係でいろいろ複雑な点もありますし、なお乱診、乱療等事態もございます。今回の窓口一本に改正されましたということは、私ども保険財政の上から見ましても非常にけっこうなことでございまして、ぜひこれらにつきまして原案通り御決定を願いたい、こう存ずるものでございます。  さらに、この機会国保運営上につきまして、お許しをいただきまして要望を申し上げたいと存じますが、国庫負担金交付時期の問題でございまするが、国保補助精算制度をとっております建前上、補助金年度をこえておりることが多く、資金繰りに非常に困っておりまして、国保財政運営に困難を来たしておるわけでございます。従いまして、医療費支払い等も延びておる現状もございますので、このようなことが起らないように一つ特段措置をしていただきたい。一般会計からの繰入金は、三十二年度におきまして、国保全体から見まして三十八億円を上回っておる次第でございます。次に事務費でございますが、実質事務費全額補助を絶えず要望して参ったのでございますが、本年度は一人当り九十円でございまして、実際の事務費よりはるかに寡小でございます。これらにつきましても、国保財政健全化の上から見ましてもぜひ実費の支給を下さいまするように、国庫補助増額要望いたしたいと存ずる次第でございます。  次に、国保運営におきましては、優秀な保健婦をどうしても雇う必要があるのでございますが、これらの補助額が、補助単価が十一万余でございまして、さらに補助率も三分の一でございます。これらにつきましても、補助率引き上げ、さらに単価引き上げ等に御配慮をいただきたい、こう願うわけでございます。  次にまた国保運営につきましては、直診の必要な場合がございますが、これらに対しての財政措置等もお考えを願いたいと存ずるわけでございます。  以上簡単でございますが、私からの公述を終りたいと存じます。
  4. 園田直

    園田委員長 次に、新潟高田市長川澄農治君にお願いいたします。
  5. 川澄農治

    川澄公述人 私は、高田市長であると同時に、新潟県の国保連合会理事長を勤めておるものであります。ただいま御指名をいただきまして意見を申し述べますことをまことに光栄に存じておる次第でございます。  目下審議されつつありまする国民健康保険法改正案につきましては、私どもその内容にわたりまして必ずしも全面的にけっこうだとは申し上げかねる点も多々あるのでありますが、しかし、今日の社会情勢から考えまして、一日もすみやかにこの法律実施されることが適切である、かように考えますので、不満足ながら、現在の原案早期一つ議決をいただいて、家施するように持っていっていただきたいということが、最後の結論であります。  そこで、しからばどういう点が不満であるかと申しますと、今山本さんからもおっしゃいましたけれども、私ども国庫の二割の負担金につきましては満足しがたいのであります。私どもブロック会議におきましても、各町村実情から申しまして、三割以上四割程度負担金国庫から出していただきたい、そういうことでなければ、ほんとう保険財政の確立が期しがたいというふうに、実は各末端からも強く要望されておるのであります。私どもは、必ずしも二割よりも三割がよろしい、三割よりも四割多くもらえばよろしいというような簡単な考えではないのでありまして、現在の医療給付五割ではまだ不足だ、ほんとう社会保障一端として医療制度を確立するためには、何としても七割ないし八割の医療給付が必要である、かように考えておるのでありますが、現在の保険料の限度というものは、もうこれ以上いかんともすべからざる状態にまできておりますので、何としても国が責任をしょって、この社会保障一端医療保障制度を確立させるためには、国に相当額負担をしょってもらわなければ、市町村財政が成り立たぬわけでございます。さような意味からいたしまして、国庫負担金を増加すると同町に、漸次医療給付を増加して参りたい、かように考えておるのであります。しかし、これは国の財政関係もあることでございますので、あるいはにわかには実現しがたい点もあろうかとは存じますけれども、とにかく私どもは、その点に対しましては、実は大きな不満を抱いておるのであります。  さらにまた、今もお話があったようでありますが、医療は単に病人をなおすということよりも、病人を出さないように、医療費を減少せしむるということが大きな問題だと思うのであります。さような意味から考えまして、予防行政重点を置いて相当な力を加えるということを、常に私ども念願に置いておるわけでございます。しかるに、それに対する保健婦助成金が三分の一であるということでは、優秀な保健婦を取り入れることができないと同時に、ほんとう予防衛生を実現させることはできないと存じますので、少くも二分の一の補助金をいただきたい。  それから事務費の問題は、ただいまお話がありましたが、全額補助ということになっているにもかかわらず、実質は三分の二以下である、半額程度であるということは、私どもはまことに不満でございまして、単価の値上げによりまして——一方的に大蔵省が単価をきめるということでなしに、実態を把捉して、全額助成をしていただきたいということを強く要望せざるを得ないのであります。  それからまた、一般会計から繰り入れしている現在額は三十八億円になっておるのでありますが、これは市町村衛生行政の大きな中核をなすところの医療行政の費用でございますので、この繰り入れをある程度高率化してもよろしいということにしてもらいたい。現在繰り入れのところも、町村財政によって、赤字財政のところでは自治庁の勧告が非常にやかましいので、なかなか円滑に行っておらぬのであります。従って、これを適当に法制化すると同時に、町村一般財政需要額の中に算入していただきまして、交付金の資料に取り上げていただきたい、こういうことを私ども考えておるのであります。  それからまた、それに伴いまして、今の補助金交付金負担金交付が実に遅いのでありまして、一つこれは適正な概算交付をするということを明確に示してほしいと考えておるのであります。  さらにまた、医療機関等指定につきましていろいろ批判があり議論があるようでありますが、私個人といたしましては、新潟県、また高田市等におきましては、療養担当者との関係が非常に円滑でございますので、必ずしもこうした面より統制を固執する意思は持っておりませんが、しかし、私は、団体責任者として、また、他府県下の今日までの療養担当者保険者との関係等の実例を考えますと、やはりこうした指定に持っていくよりほか仕方がないと存じますので、この点はこのままでよろしい、こういうふうに考えておるのであります。  さような意味で、こうした三、四の点につきまして非常に不満でありますが、何としても早く実現するということに私は重点を置いて考えておりますので、この点委員会等におきまして修正が可能ならば私が申し上げた事柄をある程度取り上げていただけばけっこうであります。しかし、それを取り入れんがために法案が通過しないということは、私ども年来熱望しておったことが実現しないことになりますので、何としても早期にこれが実現するように取り計らいいただきたいという意味から、原案に賛成をしておきたい、かように考える次第でございます。  以上であります。
  6. 園田直

    園田委員長 次に、神奈川小田原市長鈴木十郎君にお願いをいたします。
  7. 鈴木十郎

    鈴木公述人 神奈川小田原市長鈴木十郎でございますが、同時に、神奈川県の国保連合会理事長をいたしております。本日この社労委員会におきまして国民健康保険法改正案の御審議に私ども意見を述べさしていただきます機会を与えられましたことは、私にとりまして非常な喜びでございまして、厚く御礼を申し上げる次第でございます。  今日、もうあらためて申し上げるまでもございませんけれども国民健康保険ほど苦難の道を歩んで参ったものは少いと思うのであります。私ども関係いたしまして以来さかのぼって考えてみましても、この国民健康保険運営の面ではずいぶん苦心をいたしております。もちろんこれに対しまして、厚生省御当局初め関係各方面からいろいろ御援助をいただいていていることはいうまでもございませんけれども、今までの法律の上におきまして、私ども非常に不満な点の多かったことを申し上げなければならぬのであります。そこで、この改正が取り上げられますことを、私ども国保関係者といたしましては、久しい間待望いたしておったのでございます。従いまして、今回のこの改正案は、ぜひ通過さしていただくことをお願いいたすものでございます。それにつきまして、私どもが最も関心を持っております問題が数点あるのでございます。ただいまいろいろ町村会会長さんあるいは高田市長さんからもお話がございましたけれども、私どもとして要望する点は多々ございます。しかしながら、何としてもこの法律案は早く通過さしていただいて、せめて今まで非常に不備でありましたものを補っていくということでありたいと私ども念願するものでございます。そこで、今回の改正案におきまして私どもが特に関心を持っております点二、三申し上げたいと思うのであります。  その一つといたしまして、療養担当者制度であります。もう一つは、負担金徴収に関することであります。もう一つは、国庫負担の問題でございます。医療保険におきましては、保険事業人的中核をなしますものは療養担当者でありますことはもちろんであります。従いまして、療養担当者協力を得ることなしに国民健康保険事業の円滑な運営の望めないことは言うまでもございません。この点におきまして、保険者療養担当者と被保険者の三者がお互いに納得のいく制度が期待されるわけでございます。従来の制度について言いますと、私ども保険者側立場から見まして、この療養担当者制度につきまして、幾多の矛盾と不合理とを感じて参ったのであります。私ども当事者は、この不合理がすみやかに解決されることを念願いたしておるものでありまして、私どもはこのことにつきましては非常な関心を持っておるものでございます。ただいま私は療養担当者保険者と被保険者、この三者が一体になって、そしてその間にほんとうに理解し合っていかなければならぬということを申し上げましたが、すでに今日までいろいろ実施されております各地方の実情を見まして、必ずしも全部が全部この間が円滑にいっていないということを申し上げるのではありません。ただいま高田市長さんからお話がございましたように、高田におきましても大へん療養担当者保険者との間が円滑にいっているということでございますが、そういうふうにうまくいっておりますところも相当あるとは思います。現に私の方の小田原市におきましても、医師会方々の御理解によりまして非常な協力を得ております。従って、運営におきましても、私どもへん便益を与えていただいていることは言うまでもございません。この点は療養担当者の方に感謝をいたしております。しかしながら、全国一般の状況というものを見ますと、必ずしもそう参っていないのであります。従って、私はここに一般論といたしまして申し上げたいと思うのでありますが、現在の制度では御承知通り保険者医師歯科医師薬剤師の申請に基き、いわゆる単価等は協議して定めることになっているのであります。従いまして、その間の契約は、それぞれの契約ごとに非常に区々でございます。いわんや全国保険者を通じてみて、その間の不均衡はいやでも避けがたいものがあるのでございます。そのことから見ても、現行の契約制度はその立法の意図に反しまして、実際の施行面では幾多の弊害を生じているのであります。たとえば医師会は、強力なその団体的力をもちまして市町村に臨みまして、制度個別契約の趣旨はややともすると無視されまして、その結果診療協定団体契約として締結されるものが相当数あると聞いておるのであります。そしてときにはこの団体協約に際しましては、保険者にとっては非常に困難と思われる条件が付せられるなど、本事業遂行上不測の事態を生ずる場合もあるやに聞いているのであります。国民健康保険を別といたしますと、現在の健康保険制度はもとより、医療保険各法を初めといたしまして、医療保障関係のほとんどが指定医療機関制度を採用しておるのであります。なかんずく、医療保険では健康保険保険医療機関が、医療保険療養担当者制度の大宗としての地位を占め、各種医療保険制度は、療養担当者としての法律的及び実寅的中心健康保険制度に求め、各制度は共通の基盤に立って療養給付による被保険者の利益の擁護を全うし得るのであります。これはきわめて合理的であると思うのでありますが、医療保険中核たる国民健康保険においては、この合理性は貫かれていないのであります。これは何としても改める必要があると存じます。いやしくも市町村国保実施義務を定める以上は、本事業遂行上必須の医療機関は国の責任で解決すべきであります。国民保険実施上は、療養担当者とともに、市町村立場も保護されなければならないと考えるのであります。しかも現在の制度は、国保地域保険であり、従ってそれぞれの地域特殊性を生かした各保険者ごと契約が、制度の本旨ではないかといった議論によって支えられていることは、時代錯誤であると私は考えます。これまた実に不合理なことであるのではないかと思うのでありまして、このことはきわめて明瞭であると思います。  今日では、医療技術は高度に近代化しております。国民の生活は社会の発展につれて複雑化し、とみに行動半径も広域化しておるのでありまして、従来のように市町村内のお医者さんだけしか利用できないようでは、皆保険の理想に反するといわなければなりません。  さらに、これこそ本質的なことでありますが、医療保険の本来の要請として、医療内容は統一され、適正医療というものが設定されて参りました。これは制度の上からも当然のことであります。従いまして、医療技術的内容につきましては、市町村がそれぞれの市町村ごとに異なった内容医療を要求するということは考えられないのであります。本法案は、これらの要請に基きまして、指定医療機関制度を採用したことは、はなはだ適正な方策と考えております。  さらに、国民健康保険におきまして問題とされておりますものに一部負担金の問題がございます。特に被保険者療養給付を受けます場合に、いろいろな事情で支払えない場合がありますが、従来ですと、この徴収責任は何でもかでも保険者にあるということで、実際問題として非常に困ったのであります。今回の改正案によりますと、一部負担金につきましては、医療機関徴収責任を負う。そして支払い困難な者に限り、法律で定める場合の減免及び徴収猶予措置を講ずることとしております。理論的な規定になっていると思うのであります。  次に国庫負担の件でありますが、現在国民健康保険給付範囲給付率は、御承知のように健康保険よりは劣っているのが実情であります。給付内容を向上させて、給付率を少くとも七割とし、あわせて未実施市町村への普及をはかるためには、やはり国庫負担三割の増額がぜひとも必要であります。国民保険の政策を掲げるからには、これは国の責任としてぜひともすみやかに実現していただきたいと考えるのであります。  そのほか、事務費が、私のところでは昭和三十二年度には、実質的事務費の約六〇%くらいしか交付されていない実情であります。これをぜひとも全額負担すること、保健婦単価引き上げるなどの強い要望を持っておりますが、本法案は、給付率被用者保険の被扶養者並みにいたし、漸次その向上をはかっているようでありますが、療養給付費国庫負担を定率二割とし、新規に調整交付金制度を設ける等の国民保険達成に不可欠の改善が見られますので、本法案の成立を強く要望いたす次第でございます。  以上簡単でございますが、所信の一端を述べたのでありますが、これをもって私の公述を終ります。御清聴を感謝いたします。
  8. 園田直

    園田委員長 次に、日本医師会常任理事蓮田茂君にお願いいたします。
  9. 蓮田茂

    蓮田公述人 私は日本医師会常任理事蓮田茂でございます。開業医師であります。本日国民健康保険法案に対しまして、医療担当者立場から私ども意見を申し述べさせていただきまする機会を得ましたことを厚くお礼を申し上げます。私どもは本法案に対しましては幾多修正をお願い申し上げておる次第でございまして、これからそれらの点につきまして申し上げたいと存じます。  まず私どもがお改め願いたいと申し上げておりまする第一点は、医療機関指定制の問題であります。つまり新法案では医療機関指定いたしましてこの医療機関によって療養担当をするということになっておるようでございますが、私どもはぜひこの医療機関の推定を廃止していただいて、医療担当者の登録という形にしていただきたいとお願い申し上げたいのでございます。申し上げるまでもないと思うのでございますが、医療はどんな大きな病院でございましても医師責任において行われるものでございまして、機関責任において行われるものではないのでございます。この点につきましては、法律におきましても医師法の第十九条で私ども医師応招義務を課しておりまして、決して医療機関応招義務を課しておるものではないのでございます。これはつまり、医療においてはわれわれ医師責任者であるということをはっきり明確にされたものと思うのでございます。今回の改正の御趣旨によりますと、医療機関指定するということは、県内どこのお医者さんにもかかれるようにするのである。第二点は、保険者がより好みをできないようにすることであるということのようでございますが、もしそうであるといたしますならば、この機関指定の問題には幾多の問題点がございますので、何も機関指定にしていただかずともわれわれ医師を登録していただくことでもってその目的は達せられるはずでございますので、どうぞ一つそうお願い申し上げたいというのでございます。文明国等におきましてもオ—プン・システムの場合はすべて医療責任主体は医師になっておりまして、機関になっておる国はどこにもないのでございます。今回の機関指定にするということのお考え方の理由に、患者さんは医師をたよって診療を求めるのではなくて、機関をたよって診療を求めるのである、従って社会保険の全扱い件数においても病院において扱う件数が非常に圧倒的に多くて、個人の医師においてこの件数は非常に少いのだというような誤認に基いておるようでございますが、私どもが実際に社会保険診療報酬支払い基金の実態について調査をいたしてみますと、必ずしもそうではないのでございまして、全社会保険診療件数のうち七二・五%は実に個人の開業医師によって扱う件数でございまして、病院によって扱う件数はわずか二七・五%でございます。しかも病院の扱う件数の中には病院の中の個人のお医者さんの御紹介によって扱われておりますものが多々ありますことを考えますときにはこの数はさらに変ってくるのでありまして、これらはいかに日本の国民全体が医師自身をたよって診療を求めているかということの実証であろうかと思うのでございます。私どもはそれらの点からいたしまして以下述べます二、三の実例をあげまして、医療機関指定に対しましてはぜひお改め願いたいとお願い申し上げたいのでございます。  まず第一点は、医療機関指定という形であります場合には、開設者が死亡またはその他の事故によりまして機関指定の取り消しを受けました場合に、あらためてまた機関指定を受けます間に一定の空白期間が起るのでございます。しかもこれが山間僻地等におきまして、医療機関一つしかないというような場合には、その地に全然保険診療を扱う者がいなくなるというような非常に憂慮すべき事態も起るのでありまして、現にこれは起りつつあるのであります。従いましてそれらのところでは保険医がおりましても保険診療ができないというところから、かりにその事故によって機関指定がなくなりました場合には、そこに入院しておられる方、あるいはその先生のお預かりの患者さんは、一時他に移ってもらわなければならぬというような不便な実態が起るのであります。これに対しましては、本年の八月でございますか、さかのぼって指定してもよろしいのだというようなことが通牒として出ておるようでございますが、私ども国民保険の建前から申しますと、こういう制度のもとに皆保険を置くということに対しましては、何といたしましても反対せざるを得ないのでございます。  次の問題といたしましては、医療機関指定という形から、すべて医療の主体が開設者の手に握られるという結果から、将来われわれ医師というものが単なる技術提供者の地位に転落せざるを得ないというようなことも憂慮されるのであります。また開設者がしろうとでありますような場合には、そのしろうとの方によりまして医療の主体が曲げられる、医療内容が左右されるということが起りまして、医療の本質をゆがめるのであり、またその開設者の不正の請求等によりまして、善良な、無実の、そこに勤めます医師及び看護婦等の生活権をも無視されまして、巻き添えを食って取り消しを受けなければならぬという結果に至るのでございまして、これははなはだえげつない言葉ではありますが、いわゆる封建時代のお家断絶というような格好のものでありまして、これらのものが現に起りつつあるのであります。私どもといたしましては、こういうものの憂慮されますような機関指定という形はぜひお改めを願いたい。そうして私ども医療担当者を登録という形で置いていただきたい点ということがまず第一点のお願いでございます。  次に第二点のお願いといたしまして、中立の裁定機関を置いていただきたいということでございます。これはひとり今回の国民健康保険法に限ったことではないのでありますが、皆保険という体制を目ざします改正である限りにおきましては、ぜひこういうものを新設されることをお願い申し上げたいのでございます。医療協議会等におきますいろいろな決定が、将来私どもの身分上に決定的な打撃を与えまして、生活権の問題にまで立ち至るのでありまして、これらの決定に不服ある場合に、現在では裁定を求める機関がないのでございます。従いましてこれはこういう形で参りますと、保険者の独裁というようなことも起りかねないのでありまして、私どもといたしましては、ぜひこういうものをこういう大改正の際に一つ置いていただきたいことをお願い申し上げたいのでございます。形といたしましては、例を引きまして恐縮でございますが、中央労働委員会のような格好のものを中央及び地方に置いていただきたいということでございます。  第三点のお願いは、われわれ療養担当者に対します給付上の差別の待遇をやめていただきたい。これは二点あるのでございますが、第一点は一部負担金の問題でございます。四十条で一部負担金は被保険者にわれわれの窓口で五〇%を支払うように義務づけられております。ところが四十一条によりますと、ある市町村では減額をしてもよろしいように書いてございます。しかもその市町村と特定の契約をなさった医療機関においては、減額をされたまま払えばよろしいということが第二項に定めてございます。こういうことになりますとわれわれの間には、減額されたままの一部負担金を受け取るところと、五割を受け取るところとばらばらになるわけでありまして、これはわれわれの側から申しますと、非常に不利になるのであり、また被保険者一般方々に対しましては、医師選択の自由というものが、心ならずも経済上の理由から阻害されるという結果が起るのでありまして、これらはぜひ一つお改め願いたいということでございます。  第二点、は診療報酬の問題でございます。四十三条で、今回は健康保険と同じになるように定めてございますが、その三項を見ますと、特定の医療機関では割引診療をしてもよろしいように書いてございます。これはただいまの一部負担金の問題と同じく、われわれ医師から見ますと、われわれ医師の間に、あるところでは減額され、あるところでは健康保険通りということになりますと、これも私どもとしては非常に困る問題であり、また被保険者側からは先ほど申し上げました一部負担金の問題とともに、心ならずも経済上の理由から医師の選択の自由が阻害されるという結果になりまして、非常に私どもとしては困る問題でございますので、これらの点をお改め願いたい。  少くとも国民保険のもとにおきましては、医師の選択は被保険者の自由でなければならぬという建前から、一つお改めを願いたいとお願い申し上げたいのでございます。  それから第四点は、療養給付期間の問題でございます。今回の法律では三年と定めてございますが、国民保険の建前から申しますならば、国民方々はいずれかの法律によって医療が保障されなければならないということであろうと思うのであります。ところが国民健康保険の被保険者が三年で療養給付を切られるという結果は、この方々は生活保護法に落ちる以外には他に求める道がないのでございまして、三年後は全然皆保険の外にほうり出されることでありまして、私どもといたしましては、これは忍び得ない問題でございます。ぜひ一つ給付期間は限定しないでいただきたいということをお願い申し上げたいのでございます。  次に、給付内容及び診療報酬の統一の問題でございます。今回の法律では給付内容健康保険と同じになる。診療報酬も健康保険と同じになると書いてごいますが、施行法を見ますとばらばらでよろしいように書いてございます。これは私どもといたしましては非常に困る問題でございまして、具体的に申し上げますと、県内の一覧表でも作っておいて、机の前に張り出しておいてながめないと、今後は一々被保険者証をあらためるか、そういうことをしないと患者さんが扱えないということになって非常に困る問題でございますので、給付内容と診療報酬は即時統一していただきたいということのお願いでございます。  次に助成交付金の問題でございますが、新法では一律に二割、それに調整交付金を五分加えまして、二割五分が交付されるような格好になっておりますが、少くとも私どもは被保険者の実態から推しまして、国の御負担は御困難でございましょうが三割に引き上げていただかなければ、全国の普及は望めないものであろうと思うのでございます。従いましてこれらをくるめまして、第四点としてお願い申し上げたいのでございます。  その次は第五点といたしまして、私どもの診療報酬請求者の審査委員会の問題でございます。私どもの診療報酬と審査というものは、申し上げるまでもないのでございますが、私どものやりました医療が果して医学的な要請に基いた適正なものであるかどうかということを御審査願うのが、審査委員会の趣旨でございます。しかるに今回のように連合会内にこれを置くということになると、経済的な要請から審査が起りやすいというおそれが出て参るのでありまして、私どもといたしましてはあくまでも医学的な要請に基く審査の行われますような、中立公平な機関としていただきたいということが、診療報酬審査委員会に対します私どものお願いでございます。  次は第六点といたしまして、保険者義務と、支払いの最終責任を明確にしていただきたいということのお願いでございます。この中にも二点ほどあるのであります。第一点は一部負担金の問題でございます。今回の法律を拝見いたしますと、四十条と四十三条との関係から、一部負担金は被保険者と私ども関係に置かれまして、保険者方々は全然関知しないという形になっております。これでは私どもとしては非常に困るのでありまして、もちろん一部負担金を故意にとらないなどということはしないはずであり、また私どもとして一部負担金をとる努力は十分いたしますが、とれないものがそのまま私ども責任にされることは非常に困るのでございます。ことに国民保険ともなれば他に私どもの生活の道がないのでありまして、保険一本になるにおきましては、一部負担金を故意にとらないなどということはあり得ないのでありまして、とるだけの努力は十分いたしますが、とれないものの責任一つ最終的に保険者の方が負うていただくというように、明確にしていただきたいということが第一点のお願いでございます。  その次のお願いは、診療報酬の支払い期日の問題でございます。現在診療報酬の支払い期日は非常にばらばらでございまして、今なお数ヵ月あるいは十ヵ月もおくれておるところがございまして、非常に問題になっておるのでありますが、一つそれらのものを今回はぜひお改め願いまして、診療報酬の支払い期日を明確にしていただきたい。これは本法であえて改めていただきたいということではないのでありまして、あるいはその他の規則等でもけっこうでございますから、一つどもが安心して治療ができますように、診療報酬の支払い期日を明確にしていただきたいことでございます。これが保険者義務と支払いの最終責任を明確にしていただきたいということのお願いの第二点でございます。  第七点といたしまして、私ども療養担当者の不平処理の道を開いていただきたいということでございます。今回の法律を見ますと、第八十八条に国民健康保険審査会の規定がございますが、この審査会におきましては、被保険者方々の不平を取り上げることにはなっておりますが、私ども医療担当者の不平を取り上げる形にはなっておらないのでありまして、これを一つ現行法の五十条のごとく、私どもの不平もお取り上げ願って、国民健康保険審査会でごあっせん願えるように、一つお願い申し上げたいというのでございます。これが第七点のお願いでございます。  次は第八点といたしまして、運営協議会の問題でございます。今回の法律を見ますと、運営協議会は任意規定ということになっておりまして、置いても置かなくてもよろしいようになっておるようでございますが、少くとも国民健康保険地域保険である限りにおきましては、地域保険としての特性を生かす道は、私どもとしては運営協議会を通じてのみしかないと考えておるのであります。従いまして運営協議会はこれをぜひとも義務制にしていただきたい。そうして職務その他任務等は、すべて現行法のごとくにしていただきたいということが第八点のお願いでございます。  大体私ども国民健康保険法案に対しまして修正をお願い申し上げたい点は以上の通りでございます。  次に国民健康保険法の一部を改正する法律案に対します意見をごく簡単に申し上げたいと存じます。ただいま私が申し上げたことで大体おわかりいただけたと思うのでございますが、この一部を改正する法律案にございますところの給付率引き上げの問題でございますが、もはや私ども医療担当者が全国的に被保険者の実態をながめますときには、現行の五〇%給付ということでは、真にこの制度を利用する価値のある諸君が利用できないという結果が現われつつあるのでありまして、ぜひともこれは改正法律案にございますように、給付率七〇%に引き上げていただくということは、国民保険を目ざす限りにおきましては、当然の措置であろうと思うのでございまして、この点につきましては賛成でございます。  なおこの法律案の国の負担の三〇%という問題につきましても、御困難ではございましょうが、これらに対しましてもぜひお考えいただきますように、これは原案に賛成いたしたいと思います。  以上私ども医療担当者としての立場からの意見を申し述べさせていただいた次第でございます。ありがとうございました。
  10. 園田直

    園田委員長 次に、日本歯科医師会専務理事鹿島俊雄君にお願いします。
  11. 鹿島俊雄

    鹿島公述人 私は日本歯科医師会専務理事鹿島俊雄でございます。御下問によりまして、ただいまから主とて歯科医療担当者立場から公述を申し上げます。  公述に当りまして、まず総論的に、私ども歯科医療担当者といたしましては、国民保険の趣旨につきましては、十分御協力を申し上げることを前提といたしております。しかしながら、国民保険のこの国民健康保険法案は、運営のかぎともいうべきものでございまして、これは十分に各方面の意見をおくみ取りの上で御審議、御成立を賜わりたいのであります。特に歯科医療担当者といたしましては、多年保険医療報酬、保険医療費の総ワク中におきまする種々なる犠牲のしわ寄せを多分に私どもはこうむっております。にもかかわりませず、できる限りの誠意を私どもも捧げまして今日に至っております。この法律案審議に当りましては、私どもの納得のいく線によってこの法案が成立して、施行していただけるよう、格段に、特にこの点をお願いする次第でございます。  各条文を追いまして意見を申し上げます。  第一に、法案第十一条の国民健康保険運営協議会の件でございまするが、これは法案によりますと「置くことができる。」かようになっております。しかし私どもはこの点はなはだ納得のできないものでございまして、従来ともわれわれ医療担当者側と保険者側とは十分の話し合いの場をこの協議会の点に求めまして、運営を行なって参りました。従いましてこれがもし設置し得ない場合を考えますると、きわめて一方的な運営がせられる危険もございまして、かようなことになりますると完全な国民健康保険運営は不可能であります。従いましてこれを必須設置とする、置くことにする、かように御改正を願いたいのであります。  次に、法案第三十七条に関連いたしまする指定医療機関に関する件であります。これは従来とも私ども歯科医療担当者はこの方策については反対でありまして、特に私ども個人開業医の場合におきましては、個人に対して二つの法的性格が与えられる。すなわち機関としての人格と、保険登録医としての人格が与えられます。これに対して非常に不合理な面はすでに御承知通りでありまして、ある場合に医療報酬請求上の瑕疵がありまして指定機関を取り消される、しかしながら保険登録医としての立場はそのまま残る。また逆に医療内容の件に関係いたしまして、保険登録医の立場は取り消される。その場合には指定医療機関としての資格が残る、かようなことはとうてい個人の場合にはあり得ないことであります。しかし、かようなことが行われますことにつきまして、特に私どもは反対の意見を今まで述べてきたところであります。この際に、この線はぜひとも是正をお願いしたい点でございます。  なお、この際にできますれば、私ども保険者団体契約を締結したい。都道府県区域の単位の医師会歯科医師会、薬剤師会等の団体の会員である保険医との団体相互契約的なものを締結さしていただきたい。もしこれが不可能な場合におきましては、何らかの形におきまして実質団体契約の形を生かしたようなことを要望するものでございます。  医療内容等に関連いたしまして、個々の保険医との間に保険者側との交渉というものは現在やられておりませんし、特に歯科医療の場合におきましては、従来とも歯科補綴給付等につきましては、その地域ごとに相当格差のある契約が行われております。これらは保険経済の財政措置に起因するものと存じますが、ある場合には社会保険給付並のもの、ある場合には一部制限を加えまして契約が行われ、ある場合には歯科補綴医療給付というものが行われておらないというようなものもあるのでございます。こういった事柄は、今後保険経済の面から見まして、やはり一面さようなことを考慮の必要がある。こういったことに関しましては、やはり団体交渉で話し合うことでないとうまい運営ができない、かように考える次第でございまして、なおこういった理由からも私どもはこの際に指定医療機関制度の廃止を行い、われわれとの任意契約の線に戻していただきたい、かように要望する次第であります。  次に、法案第四十条に関しまして従来の医療給付率の五割をこの際少くとも七割に引き上げていただきたい。理想といたしましては十割給付が理想でございます。保険経済等の関連もございましょうし、漸進的に私どもはこの際少くとも七割に引き上げることが必要であると思う。そうでありませんと、低所得層の被保険者の場合には、この受診に相当の影響がくるのでありまして、かようなことはこの国民健康保険法の立法の趣旨にも私は反するものと存じます。特に給付率を高めることを御要望する次第であります。  続いて、法案第四十三条に関連いたしまして、一部負担等の不払いに関しまする問題であります。従来被保険者のこの一部負担金の不払い等は、医療担当者と被保険者との間の債権債務となりまして、なかなかこの徴収ができないのであります。しかしながら私どもは、特に初診時等におきまして一部負担金の不可能な被保険者が来院した場合、これの受診の拒絶はできないわけであります。これはとうてい私ども医療担当者側の良識から申しましてもできない。そういった場合に、私どもは当然受診を行う。その結果さようなものは不払いとなってくるというような場合を考えますると、私どもはまことに納得のいかないものがあるのであります。従いまして少くとも、特に支払いが不可能であるというような被保険者の場合におきましては、保険者側においてその最終支払いの責任を持っていただきたい、かように要望するものであります。  なお、これに関連いたしまして、法第四十三条第四項につきまして、療養給付に関するこれらの医療報酬の支払い期日の問題でございます。従来この支払い期日の確定がございませんで、非常に格差を持った支払いがされておる。これでは私ども保険医といたしまして、生計の計画も立たないという実態でございます。従いまして、この際、少くとも支払いの期日を法文上に明確にしていただきたい。少くとも私どもの希望といたしましては、五十日以内に払うことをはっきりと確定していただきたい、かように要望する次第でございます。  続いて、法案第五十条に関連いたしまする療養給付期間の問題でございます。従来転帰まで給付をするとありますけれども、今回三年と限定されました。これは医療の本質から見まして、給付権を限定するということはまことに不合理である、当然これは転帰まで給付すべきものである、かように考えます。かように修正せられるように要望する次第であります。  続いて、法案第六十六条、第六十七条に関連いたしまして、療養国庫負担に関する問題であります。すなわち、国民健康保険の事務の執行に要する費用は全額療養給付及び療養費の支給に要する費用は少くとも十分の三以上とすること、これを私ども医療関係団体は数ヵ年にわたってこの要望を続けております。この際に、この国保法の施行に当りまして、特にこの点を御留意いただきまして十分の三以上の国庫負担の実現をお願いする次第でございます。  続いて、法案第八十四条に関連をする点であります。私ども診療報酬請求書の審査に当りまして、今回の法案によりますると、審査委員会連合会内に置くということになっております。これは私どもは、決して連合会の御審査に対して格別な不信の念をもって前提とするものではありません。少くとも、支払い義務者側において一方的にかような請求書の審査を行われるということは公正を欠くことになるであろうことは私どもの危惧するところであります。従いまして、私どもの納得のいく場においてこの請求書の審査が行われ為ことを切に希望するものであります。各都道府県内におきまして、この審査の中立性と公正を期すべきものと存じまして、さように御訂正を願いたいのであります。  最後に、これは法案の中にございません。私どもの診療報酬請求明細書等の審査に当りましては、どうも一方的にこれが行われまして、不服等がありました場合におきましても、この再審等に関する確定的な機関がございません。すなわち、私どもの異議の申し立てを公正に処理する機関がないのであります。これをこの際、どうしても設置したいということをお願いする次第であります。第九章の中に、特別にかような機関の設置を規定願いたい、仮称としては、国民健康保険診療審査会というようなものを設置願いたいのであります。  大体以上が私どものこの法案に対しまする修正の御要望でございます。格別な御配慮を賜わりまして、私ども要望につきましておくみ取りの上御審議を賜わらんことをお願いいたしまして私の公述を終ります。
  12. 園田直

    園田委員長 次に、日本薬剤師協会理事水野睦郎君にお願いいたします。
  13. 水野睦郎

    水野公述人 私は日本薬剤師協会理事をしております水野睦郎であります。本委員会で御審議を行なっておられる国民健康保険法について日本薬剤師協会として意見を申し上げたいと思います。  社会保障の中で最も貧困と直接つながって、また頻度の大きいのは医療であるということは周知の事実でございます。この医療保障をするということは、現在最も急務であるということは、われわれが薬剤師として医療担当者の一員であるという立場から、医療保障の充実のために大きな関心事と申しますより、大きな責任を感じておる次第であります。この意味から、国民健康保険法がいかに改正され、いかに運営されるかということに関しまして、意見を述べさしていただきます。  第一に、国民健康保険は自営者であるとか農民とかそういった人を被保険者としている医療保険でございますが、市町村保険を行なっていない場合には、その住民というものは現在医療保険に加入できなかったわけであります。その住民が病気になって医療にかかる、その人々が貧しくなればまたその市町村財政は悪くなる、財政が悪くなれば結局市町村としてこういう保険があるとは知りながら、その保険実施でき得なかったということのために、現在国民保険ということが非常に大きな問題になっていても、それが全般的な実施ができ得ないというような状態にあるのではないかと思います。またその一般の農業自営者というものが、他の給与所得者よりも非常に所得が多い、そうは考え得られないのでありまして、反対に自営者とか農民とか——農民というとおかしいのでありますが、普通の一般の小売業、そういう人たちは、身体が不具であるとか、老齢であるとか、失業したとか、そういうために自営者になっている人が非常に多いということは当然いえることだろう、こう考えます。で、その人たちが働いている職業、一般の小売業とか農村というのは、勤労時間というものはほかに比して非常に長い、そういうことはいえると思います。また環境としては非常に恵まれていない環境である、そういうこともいえると思います。ですからこれらのことを考えあわせますと、国民の皆保険ということを達成するために相当強力な施策というものが必要になってくると思われるわけでございます。三十五年度末を目標にしておられるこの法案を見まして、実際に市町村が勧告を受けるということは法案にも出ておりますが、現在これだけ国民一般社会保障というものに対して熱意を持っている、また国会とか政府とかにおかれまして、強い関心を示しておられるのに、市町村がなぜこの保険を行えないかということについては、やはりそれだけの財政的の理由があるのではないかと思われるわけでございます。低額所得者が多いとか、人口の移動が激しいとか、そういうことのために保険料の収納が円滑に行えない、そういう面で国保というものをこれ以上に進めるためには結局国庫保険料の一部を補償する、国保保険料負担するというような方策がとらるべきである、現在の二割負担、それによってすでにでき得ない限界点に達しているということは、先ほどの公述人の方から申されたと思うのですが、その辺を考えていただければ国庫負担増額ということが国保法と申しますか、国民保険達成のため非常に必要なことであるということがいえると思います。  第二に、薬局——私薬局をやっておりますが、薬局という立場は、医療の中で最も国民に近いといいますか、民衆に溶け込んでいるといいますか、病気にかかったらまず薬局へ来るというのが一つ国民習慣なんでありますが、最近目立って参りましたのは、保険の被保険者であっても、保険医療を受けられないという人が次第にふえているのでございます。と言いますのは、保険があっても半分払わなければならないということと、もう一つは、たとえば国民病である結核などの治療に関しまして、保険で半額を支払ってもらっても、半年、一年とたつに従って、すでに処方箋を書かれて投薬されたその薬を買えない人たちがふえつつあるということなんでございます。これは、医療費の半額の補償ではやはり理想的ではないということを示しているのではないかと思います。全額給付が行われなければならないということは当然なんでございますが、保険財政その他のことを考えあわせまして、社会保障制度審議会の勧告でありますが、やはり七割は最低として給付を行うべきである、そう考えるのでございます。現在のままでは、結局これから皆保険ということになりまして、保険制度が非常に大きくなるにしましても、生活保護法の適用を受けていない、いわゆる低額所得者が受益者になり得ないということになるのではないか、そういうことを危惧しております。  第三は、給付内容というものが、健康保険と比べて少し差があるのではないかということでございます。少くとも国民は、全国民が均等な医療を受けるという権利を持っていると思いますので、この点に関してお考えいただきたいと思います。これらは改正の前提としてぜひお考えいただきたいということでございます。  次に、薬剤師として、医療従事者の立場から少し申し上げます。これは先ほど医師会歯科医師会の方が申されたのとほとんど同じでございますが、薬剤師協会といたしましても、多少変った形で申し上げたいと思います。先ほど指定医療機関のことが問題になりましたが、薬剤師協会としては、指定をされても、たとえば団体契約の形でも、保険は全部同じ統一した形で行なっていただきたい。たとえば健康保険法がこうである、国民健康保険法はこうである、生活保護法がまた違うというような規定の方式をとっていただきますと、非常に困るのであります。この点を考えていただきまして、理想である保険医療機関というものをお作りいただきまして、むしろそれに全部統一した形で考えていただきたいと思います。  それから、一部負担金支払いの不能のものというのがかなりあるのでございます。先ほど申し上げましたように、五割の給付で薬代の半額も払えない人がやはりふえていると申しますか、ある状態なのでございまして、これらに対しての措置考えていただきたい。ことに薬局におきましては、薬事法で調剤を拒否することができないというように義務づけられています。また反対に、被保険者立場からいえば、薬のない診療というものは、ことに長期の診療では無意味であるということを考えまして、その辺を、われわれ医療従事者が不当な損害をしないように考えていただきたいと思います。  それから、療養給付の費用を一定の期日までに支払っていただきたいということなんでございます。これは先ほども申されましたが、こういうことによって医療機関の経済的な内容が悪くなるということが、直接医療内容に結びつくのではないかということを危惧しております。  それから保険給付期間の問題でございますが、私たち薬局をやっておりまして一番気にかかるのは、たとえば小児のてんかんであります。それから外傷による神経痛のようなもの、ほとんどなおる見込みのない人たちが長期の薬をもらっているということなんでございまして、その人たちが三年でばっさり保険給付を打ち切られてしまうということは非常に気の毒であると申しますか、ことに小児てんかんだとか、そういうものは全く自分の責任で病気になったものではないのでございますから、そういうこともぜひ考えておいていただきたい。またこれらは、ほかの法律によってお考えになっていただいてもけっこうだと思いますが、ぜひそのようなこともお聞きおきいただきたいと思います。  それから、国民健康保険運営協議会、任意の設置となっておりますが、やはり必ず設置して、国民健康保険運営を円滑に行えるように、またわれわれの医療担当者立場というか、そういう意見と聞く場にしていただきたい、そういうことを考えます。  もう一つは、よく薬局へ薬をもらいにくる方が、保険から私費に戻ってしまうというときに、その理由を聞きますと、どうもほかへ病気の内容が知れてしまうということがあるのです。ですから、ぜひとも国民健康保険法を——健康保険法でも、そういう一連の法律の中に、被保険者の権利の保護のために、医療内容がほかへ漏れないような形をぜひ作っておいていただきたい。これは医療担当者としてはすでに義務づけられていることでございますが、ほかへいろいろ書類が回ったりしますと、そういうことが往々にしてあるのではないかということが考えられます。これは非常に残念なことであります。やはり法律ではっきりきめておいていただきたい、こういうことを考えております。  以上述べましたように、われわれ薬剤師といたしまして、国民健康保険法が施行されましてからすでに二十年を経過しておる。その間に、社会保険に対する考え方というものは、戦争を契機としまして大きく変動して参りました。全面的な改正をして、国民の権利としての社会保障という立場に立てば、この改正というものは非常に意味があると考えます。国民保険のために、そういう意味で法を改正されて、すみやかに実施されることを望みます。
  14. 園田直

    園田委員長 次に早稲田大学教授末高信君にお願いします。
  15. 末高信

    末高公述人 私、早稲田大学の教授末高信であります。  今から二十年前に、健民強兵施策の一翼をになって始められましたこの国民健康保険制度が、現在全国民に対し、健康で文化的な生活を保障する社会保障制度の最も重要な一環として寄与をしていることは、まことに意義深いものがあると考えるのであります。そして、現在医療保障のうちに占めるこの国民健康保険制度の役割が、一そう完全に果されまするよう、国民健康保険法の全面的改正が今行われようとしているわけでございます。私ども国保という方式を通じて、医療保障が推進せられることを首を長くして待っております者といたしまして、まことに慶賀にたえないものがございます。  さて、この法案は、各市町村に対し、国民健康保険制度の設立を義務づけるということが第一点。第二点といたしまして、そのためにその裏づけといたしまして、医療給付に対するところの国庫補助率を引き上げる等のことをその主要の内容とするものでありまして、そのいずれもが、国民医療に対する国の責任を果すための当然の施策であります。この方針は、方針そのものとして私の全面的に賛意を表するところでございます。  しかしながら世上、この法案に対しまして種々の批判が行われております。その一つは、国民健康保険国民医療のための中核的の制度として、この際飛躍的に発展させるためには、この法案に盛られている程度改正では物足りないとするものであり、他の一つは、特定の、特に技術的の点につきまして、一部の方々からの反対でございます。けれど私ども国民大衆の立場に立つ者といたしましては、この法案はその大筋においては承認せらるべきものであると考えるものであります。  以下、それら世上に行われておりますこの法案に対する批判ないし反対に関連いたしまして、私の所見を述べさしていただきます。  第一の部門は、国民健康保険制度はこの法案程度では不十分であり、この際給付率はこれを少くとも七割とし、給付に対するところの国庫補助率は、これを少くとも三割にせよという主張でございます。   まず最初の問題といたしまして、この法案では給付率を最低五割と規定している問題でございますが、社会保障制度審議会におきましては、国民健康保険診療の本人の負担を三割、従って給付率を七割とすべきことを、すでに勧告いたしております。まことにこの七割給付は望ましいことは論がないのでございますが、現在多数の貧弱町村におきましては、かりにこの際国庫負担率を一挙に三割引き上げましても、なお保険料とかあるいは保険税でもってまかなう部分を四割ということになるわけでございまして、この四割を保険料保険税でまかない得るということであれば、問題はきわめて簡単でございます。ところが貧弱町村におきましては、四割を保険税ないし保険料でもってまかなうということは、現実においてはできがたいものが多々あると思うのであります。従って、当分の間給付率を最低五割ということに法定いたしまして、余裕のある町村におきましては、給付率を六割あるいは七割という工合にすることを、国の施策として、推進するということは、もちろん望ましいことでありますが、法律の体系といたしまして、五割——今日給付率でいう最低の線を引いたということは、やむを得ないのではなかろうかと思うのであります。特に未開始の町村におきまして、いきなり七割給付制度ということが強制せられるということになりますと、それ自体おびえてしまいまして、その町村国民健康保険制度を開始することがなかなかできない、かえって逆効果を来たすのではなかろうか。私ども今日念願いたしますことは、この国民健康保険制度を通じての社会医療の全国民への浸透、徹底ということが第一の問題である。その問題を一つとらえますと、七割負担を今日肯定するということは、なかなかむずかしいのではなかろうかと思うのでございます。  次は国庫負担を二割五分——国庫補助率を均等二割、調整交付金の形において五分保留いたしまして、平均いたしますと、二割五分ということになる。貧弱町村に対して三割、四割を投入するということは、望ましいことでございますが、それがための方策として、いろいろ、たとえば再保険の方式はどうか、つまり各保険者から保険料徴収いたしまして、国庫でもってあるいは中央政府でもってこれをプ—ルしておきまして、事実赤字が出た、欠損を生じたところの町村に対しては、これを再保険の形でもって補給するということはどうかというような御議論も、前にあったかと思うのでありますが、均等二割国庫負担、あとの五分はいわば保険料というような形におきまして、国でもって保有いたしまして、それで重点的に三割、あるいは、これは限度がないのでございますから、倍ならば四割もの、調整交付金を入れましてのその町村に対する資金の投入が可能である。こういうふうに考えますと、今日のところは、私はこの程度やむを得ないのではなかろうかと思うのであります。しかし、ただいまの法案におきましては、二割の均等負担と五分の調整交付金ができるという形で規定せられておりまして、必ずしも国の義務規定になっておらないということが、確かに物足らない点でございまして、これはさっそく、国の義務であるということを明らかにする。そうなりますれば、補助金なんというようななまぬるいことであってはならない。国が国民保険あるいは社会医療の推進ということに、ほんとうに施策の重点を指向するんだということになりますれば、当然国の義務として、これは国の負担という形において明確に規定すべきことではなかろうかと思うのであります。  なぜ私が、法案におきまして、五割の給付程度において当分しんぼうをすべきであるということを申したかと申しますと、もちろん給付率の七割、従いまして、別に国庫負担の三割ということは望ましいこととは思うのでございます。私もその一員でありますところの社会保障制度審議会が、全会一致をもって総理大臣に勧告をしている線でございますから、筋としてはまさにそうあるべきでございます。しかしながら、国民医療国民全体に対しての医療を確保するというのは——この席でどうかと思いますが、国保だけではないのですね。国民健康保険だけが推進されれば、それで国民医療国民保険が完成するというものではないと思うのであります。たとえば医療機関の適正配置、無医町村の解消、あるいは医療制度の合理化、さらに現在漸減しつつあるところの結核の死亡率、これに対してさらに追い打ちをかけるという意味におきまして、重点的に結核予防対策にも国の資金を投入しなければならない。それぞれによりまして、初めて国民の健康というものが守られるんだということを考えますと、国民健康保険に対する国庫負担率を、総計して二割五分の程度においてこの際始まるということは、やむを得ないのではなかろうかと思うのであります。しかし、これに関連して私が特に申し上げたいことは、予防給付というものが国保給付内容の中に入っておらないことであります。すべての病気はまず予防からでございます。あらゆる災害は予防からであって、特に病気におきましては予防からでございます。その予防をおろそかにいたしまして、病気になってから、さて注射だ、手術だということは、ここにお医者さんの方々がたくさんおられると思うのでありますが、もはや手おくれの感なきを得ないのでありまして、ぜひ予防給付に対する——これはある限定を必要といたしましょうが、社会保険として、特に健康保険義務的な給付として取り入れるということが必要ではなかろうかと思います。  第三の部門は、一部の方々から特に技術的とでも申すべき御反対があるやに聞いております。現に本日の私の前にお述べになられました公述人方々の御意見の中に多々それを見るのでありますが、それらの方々の御意見に触れて、御意見を反駁しようとか、あるいはそれを批判しようとかいうのではございません。それが世上最も重要な問題であり、当衆議院におきましても法案決定におけるそれがかぎであると考えられますので、私一人の市民として、また大学に職を奉ずるところの教員としての見解を申し上げてみたいと思うのであります。第一は、保険医療機関を都道府県知事の指定とすることは困るということ、第二点は、中立の裁定機関を規定しなければならないということ、それから第三は、本人負担の部分の支払いの最終責任者保険者にしなければならない、被保険者に置いておくことは困る、その他いろいろ問題があるようでございますが、問題はその三点にしぼることができるのではなかろうかと思うのであります。  そこで、まず医療保険機関指定の問題でございますが、現行法におきましては、保険医の指定市町村長が現に行なっておるわけでございます。その契約内容——給付をどうするか、その他契約内容につきましては、医療担当者保険者との契約に待つというのが現行法なのでございます。そういう現行法のもとにおきましては、もちろん保険者の側にも、それから医療担当者の側にもうまみがある——はっきり俗な言葉を使わせていただきますとうまみがある、というのは、小さな地域の力関係になりますからして、その契約内容をどういう工合に持っていこうかということについてのうまみが双方にあると思うのであります。お医者さんの方が強い場合、医療担当者の側が強い場合におきましては、医療担当者にうまみのある契約内容になり、それから保険者の方の強い場合におきましては、保険者によって医療内容がたたかれたりあるいはつまみ食いをする、えり好みをするというような例が、従来全然なかったわけではないと私考えております。今度の法案におきましては、医療内容健康保険程度に一応基準が引かれておりまして、医療内容その他につきましては契約の余地がもうないんですね。それは健康保険の水準においてこれをやるんだとなっております。そういたしますと、これをどのお医者さんにお願いするかということを、市町村長というような方よりも一段上級でもって、全県下に目の届く知事にされることが、むしろ私は適当であると思うのであります。そこでその方々の御主張によりますと、登録制にしろというお話でございますが、登録制というものは登録のための帳簿にその方々が文字を書いてくれば、自分の名前を書いてくれば、当然なるというものではないのです。いかなる登録制でも録を受け付けるか受け付けないか、あるいは登録制を拒否するか拒否しないかということは、登録簿を備えておる側において権利を持っておるのが普通でございます。でありますから登録制ということになると、かえって私は主張されておる方々の利益を害するということに理解するのです。私はあらゆる他の登録制度というものを知っておりますけれども、登録というのは単に登録簿に字を書いてくれば当然登録が行われるというものではなくて、登録簿に字を書いていただくかいただかないか、その登録を認めるか認めないかということは、結局登録簿を備える側において権利を持つのが普通の姿であります。もちろん登録というものをそういう工合に御理解にならないで、登録簿に字を書いてくれば当然保険医として機能を果すことかできるというようにお考えになる方もあるかもしれませんが、それは一般にいう登録の概念とはほど遠いものがあると私は考えているのであります。そこで従来の契約形式が温存せられるということは万々あり得ないと思うのでありますが、現在の契約形式が温存せられた場合、どういうことになるかというと、現在の契約形式は非常にうまくいっておるところが大多数であるということは、私自身も承認するのでございますが、そうでない場合も多々あるのであります。たとえば医療担当者側におきましては、協力費の名におきまして保険単価よりも実質的に上回ったものを請求せられている、その請求に応じなければ国民健康保険を認めない、あるいは直診の新設は今後一切まかりならぬという一札を入れさせなければ協力を絶対にしない、こういうような事例が必ずしも少くない。こういうことでありますると、せっかく国民保険——医療担当者保険者もそれから被保険者も、打って一丸となって国民健康保険の形式でもって皆保険を推進しようという場合におきまして、かえって汚点を残すのではなかろうか。今度の改正案は、それら従来存在しているところのいろいろな弊害を一掃するということを目的といたしておりまして、私ただいま申し上げましたような理由から、これが指定方式が最善唯一のものであると必ずしも申し上げるわけではありませんが、少くとも一歩前進という意味において、けっこうなことではなかろうかと思うのであります。  それから次に、中立の裁定機関を設けなければならないということでございますが、その、苦情処理ですね。医療担当者保険者との間の苦情というものは一体どこに発生するかというと、請求書に対して点数が減点されるかされないか、この点だろうと思うのであります。手術のやり方が間違ったとか、あるいは投薬の処方せんが妥当でなかったということについては、国民健康保険自体は関与できない問題でございます。これは医学、医術の問題でございまして、もしそういう問題が発生すれば、おのずから場は別のところに求めなければならない。国民健康保険関係する点は、いわばあくまでも経済的な点でございます。一面においては、保険料をどういう方法でもって集めるか、賦課方式をどうするか、従ってある世帯に対してどれだけの保険料を課せられるか、課せられたものが不当であるか不当でないかというような経済的紛争、それからまた医療担当者保険者との紛争というものも、他の部面の紛争はかりにあったとしても、国民健康保険は関知すべきではないのでありまして、要するにどれだけのお金が払えるか、払えないか、払うべきであるかということの紛争であろうと思うのでありますが、これは診療報酬審査会において一応やっております。これがいわば中正な方式、ちょうど中央労働委員会におけるように三者構成になっておりまして、医療担当者の方はそれぞれの母体から推薦を受けたところの者が参画をして御議論が尽されているわけでございます。従いまして、そこでの決定になお不服があるということになりますると、第二審的な意味でもう一段上級のものもあるいは必要ではなかろうかというふうにも考えられるのでございます。この点、医療担当者側の御主張のように、上級のものをもう一つ、つまりすべての紛争を一審で決定をするということは、それがいかに三者構成でもって民主的なものであろうとも、なかなか御納得のできない方々があるかもしれない、少くとももう一審、一級だけ紛争を処理するところの機関を設けるということがむしろ当然のことではなかろうか、かように考えているわけでございます。  それからさらに、一部負担の支払いの最終責任が被保険者にることは困る、これはやはり保険者でなければならないということでございます。この改正案におきましては、一部負担窓口払いに統一いたしております。そこで、事実負担能力のない者、支払い能力のない者につきましては、減免の規定を設け、一時金を持っておらないという方に対しましては、猶予の規定があるわけでございます。ところが、診療担当者であられる方々窓口において認定をいたしまして、その認定に従いましてすべて保険者がかぶるということになりますると、一体どういう弊があるでありましょうか。私はあえて申し上げますが、たとえば、どうもちょっと取れないということになりますと、まあいいよということになる。そういたしますると、自然お医者さん方の中では、開業しておられる方がかなりたくさんございますので、隣のお医者さんはそういうように非常に寛大に扱ってくれるので評判がいい、それじゃ私の方の医院でもそれをやらなければならないだろうということになるおそれが絶対ないということを確認ができれば、私は、窓口で認定したその認定に従いまして減免あるいはその他のことをやっていいと思うのでありますが、これもそこで一応決定したことが、第二審的な意味におきまして、三者構成でありまするところの協議会等におきまして、事実これを減免すべきかいなかということを村内全体、町内全体公平にこれを観察いたしまして、その減免を決定するということの方がむしろ妥当な方針ではなかろうか、かよう考えますので、これは一応医療担当者の方に徴収の努力をしていただくという意味におきまして、現在の法案に盛られているところの規定に対しまして賛意を表するものでございます。第二十八国会におきましてこの法案が流れたために、国民保険の推進のテンポは非常に鈍ってしまったのであります。東京、大阪のような大都市における国保財政は一齊に見送られているのが現在の状態でございます。このことは大都市の住民、わけても零細企業の方々あるいは五人未満で零細企業に従事しているような一番医療保障を必要とする方々が、医療保障のお預けを食っているという立場に追い込まれているわけでありまして、医療保障の推進という立場から申しまして、これほど遺憾のことはないと考えるのでございます。  以上、いろいろの点につきまして意見を述べたのでございますが、私は今日の段階におきましては、大筋といたしましてはこのたびの改正案に対して賛意を表する、すみやかなる成立を希望するものでございます。
  16. 園田直

    園田委員長 最後に、大阪市立大学教授近藤文二君にお願いいたします。
  17. 近藤文二

    近藤公述人 私、大阪市立大学の近藤文二でございます。  実は、率直に言わしていただきますが、私、従来社会党から提案の法案はずいぶん理想的なものが多かったように考えるのであります。ところが、今回一部改正案として御提出になりましたものを拝見いたしますと、私のその考えが誤まりであるということを発見したのであります。なるほど今末高先生が御指摘になりましたように、一部負担金を三割以下にするといったようなことだとか、国庫補助を二割から三割に引き上げるというようなことは、これは理想的な考え方であって、現実的でないという批判もあるかもわかりません。しかし、もしそういうことを言うならば、三十六年度までに国民健康保険を通じて皆保険を実現するということの方が、私ははるかに理想的だと思います。ことに、従来農村を中心として出発いたました国民健康保険を、いわばそのままの形で東京、大阪等の大都市に一律に強制設立させるということは、これは実際問題として非常にむずかしいと思うのであります。しかし、あえてそのむずかいことを政府も社会党もやろうと言われるのでありますから、事のついでと申すとはなはだ失礼でございますが、それがやれるならば、七割給付、三割国庫補助ということがやれないはずはない。そういう意味において、社会党の御提案は現実的であるというふうに私は考えたのでございます。もちろん七割給付ということは、末高先生御指摘のように市町村によっては非常にむずかしい。そういうことをやればせっかくの国民保険の道がとざされるという御意見も確かにあると思います。しかし、それはやり方によって私は解決できるのではないかと思います。たとえば、結核公費負担の問題であるとか、あるいは予防の問題を取り入れることによりまして、保険料をそれほど上げずとも七割給付が実現できるのではないか。ことに財政の豊かな市町村等におきましては、一般会計への繰入金を法律によって明確にするというような措置が取れるといたしますならば、私は必ずしも実現困難であるとは考えておりません。もし今すぐ全部七割給付がむずかしいというのであるならば、これまた皆保険の場合と同じように猶予期間を設けまして、七割給付のできるところから七割給付をやっていただいて、その市町村には国庫補助を三割にするという、きわめて現実的な道があるわけであります。それをなぜ採用されないのか、私は不思議に思うのでございます。しかも、もっと突っ込んで申しますならば、給付を七割に上げるということと、この国庫負担の三割ということとの関係は、国庫補助をそれほど大幅に引き上げることにならないのであります。現在の給付費の二割の国庫補助と申しますのは、現実に保険財政から支払われる金で見ますと、四割でございます。これは給付の五割が一部負担になっているから、計算上そうなるのであります。この建前を貫いていきまして、七割給付の場合を考えますと、二割八分の国庫補助をいたしませんと、現在よりも国庫補助率は下ることになるのであります。従いまして社会党の御提案のように、三割に上げましたところで、実質的にはわずかに二分の引き上げにすぎないのであります。政府の御提出になりました案では、二割の国庫補助のほかに五分の調整交付金が新設されております。これはそろばんのはじき方によりますが、補助率の点から申しますと、政府の方がよけい金を出そうとしておられるんじゃないかとも考えられるのであります。この辺は、御審議いかんによりまして、適当結論が出るんじゃないかと思うのであります。  しかし、ただ一つ社会党の御提案について残念なが賛成できませんのは、社会党御提案の改正法案では、国民健康保険組合の新設をお認めにならないような方針が出ておりますが、私は後に述べますような理由で賛成いたしかねます。  次に、政府の御提案になりました案でございますが、これは皮肉な言い方になるかもしれませんが、非常に理論的なまた理想的な案であるように思われるのであります。しかも、その中に矛盾が残っておるという奇妙な案であるような感じを受けるのでございます。まず第一に国民健康保険を強制設立、あるいは義務制にするというのでありましたならば、その内容もこれに伴いませんと、逆効果を生ずるのではないかという点を心配するのであります。たとえば、五割でないとやっていけないというので、この五割の現在の制度をもし大都市に義務制で強制するといたしますと、大都市の人々は国民健康保険ができるまで作ってくれ、作ってくれといいますが、さてできたら、何だ、半分費用を自分が持つのかというので、反対することは火を見るよりも明らかであります。今日国民保険は一部負担の問題を考えずに賛成しておられる向きがかなりあるんじゃないかと思います。現に農村におきましても、豊かな農民の医療費をまかなうために、貧乏な農民が保険料をかけ捨てにしておるという声があるのであります。一部負担金の五割といった大幅の負担を前提にして、国民保険とは一体いかなる皆保険であるか、私はこの点どうも納得がいきかねるのであります。その意味におきまして、今回のこの画期的な国民健康保険法改正に当りましては、政府はどうか社会保障制度審議会の勧告や答申をもう一度とっくりとお読み願いたいと思います。  次に、保険医療機関指定の問題でございますが、政府は国民健康保険の診療並びに報酬支払い方式を健康保険と同じようなワクでやろうとお考えになっているように見受けるのであります。しかしこれは問題だと私は思います。国民保険あるいは社会保険医療が真に国民医療の全部を担当するという段階になりましたならば、当然そうならなければならないという一つの理想的な考え方である。この理想的な考え方を現在のままで推し進めていくということは一体どういうことを意味するか。率直にいわしていただきますが、現在健康保険における診療報酬支払い方式は甲表、乙表という実に不可解な選択制をとっておるのであります。この不可解な点を改めることなくして、それをそのまま国民健康保険に持ち込むという場合に——健康保険の場合は、被保険者の家族のみが一部負担を大幅に負担するのでありますから、この甲表、乙表の影響があるにすぎないのでありますけれども国民健康保険の場合は、被保険者の全部がこの甲表、乙表の影響を受けまして、甲表病院に行くか、乙表の病院に行くかによって、同じ手術を受けながら、払う一部負担金が違うという非常に奇妙な結果をこうむらなければならないのであります。これをそのままにしておいて健康保険に統一するということは、私はどうしても賛成できかねるのであります。むしろ国民健康保険の方がそういう奇妙なものを破る意味において、各地方において——地方と申しましても、私は都道府県あるいは大都市、そういった地域を限定いたしまして、それぞれの地域に適当したところの診療報酬支払い方式を採用するというような道を開く方がむしろいいのではないかと考えるのであります。この点第四十三条第三項は、ちょっとしろうとが読みますと、こういうことがやれるようにも読めるのでございますけれども、これがまた奇々怪々なる条文であるかのように聞いておりまして、国立病院だけ健康保険より安い値段で引き受けるようなのものがあれば、それも認めるというような解釈が世上に流布されておるのでありまして、そういう誤解を引き起すようなこの条文はもっと明確に、私が今主張いたしますような意味にだれが読んでも読めるようにしていただくならば、この点に賛成できるのでございますが、私といたしましては、むしろこのやり方に原則を置いていただきたいと思います。しかし指定制の問題は、この診療報酬支払い方式を健康保険に準ぜしめようという目的をもってだけ主張されておるのではないと思います。医師の中には、残念ながら不当不正な行為をする方がたまにはあります。そういう方を指定取り消しをするというような意味を含めて指定制を主張されておると思うのでございまして、その点は私も必要だと認めるのでございます。しかしながら今回の国民健康保険の場合における指定制は、医療機関指定制一本の建前をとっております。なるほど健康保険指定医療機関の場合は、健康保険における二重指定がそのまま生きて参りますけれども、もしかりに国民健康保険だけの診療をする医療機関があるとするならば、その医療機関機関指定だけを受けることになります。個人担当医としての登録は必要でないような格好になっております。これまた私は実に不可解なことだと思うのでございます。私は二本建ての指定制度に対しましは批判的な見解を持っております。私個人の意見といたしましては健康保険国民健康保険指定制をとるならば、病院並びに開設者が非医師であるところの診療所、これには二重指定制が必要でございますけれども、一人のお医者されが診療しておられるような診療所における二重指定制というのは一体何を意味するのか、この点も御検討願いたい思うのでございます。そういうような問題を持っておる二本立ではございますが、健康保険に準ずるならば、いさぎよく全部準ずべきであって、半分だけ準ずるというのが、どうも私には納得できないのおります。もしこの場合に登録制を採用するとどうなるか。末高先生は登録制について明快な説明をなさいましたけれども、それは登録制の説明でありまして、開業医の登録制の説明ではございません。開業医の登録の場合は明らかに取り消しの制度があるのでございます。つまり開設者を目標にするか、担当医を目標にするかというところに機関指定と登録の分れ目があるのでございまして、私はこの際登録制をとりましても、政府が意図するところの効果は十分に上げ得るのではないかと考えるのでございます。  次に、最終責任の問題でございますが、国民健康保険健康保険と違いまして、最初から一部負担保険給付内の一部負担として出発したのであります。それゆえにこそ保険者徴収ということが原則として明記されていたのであります。ところが今回政府の御提案を拝見いたしますと、給付内の一部負担であることを認めながら、その徴収責任医療機関に課するがごとき内容を持っております。もし医療機関に最終責任を課するのでありますならば、健康保険の被扶養者の場合のごとく、一部負担給付外とすべきであります。ところがそれをなぜやらないか。もし一部負担給付外といたしますと、国庫補助率に響いてくることを御心配になっておるのではないかと思うのであります。国庫補助率は、本人の負担は一部負担を含めて、医療給付費とし、それの何割ときめております。だからそれをはずしますと大へんなことになるというので、こういう奇妙な法律をお作りになった、その実情は私も同情せざるを得ないのでございますけれども法律の建前としては一体どうなるのか。むしろそういうふうにされるのならば、現行法のようにはっきりした考え方でもってこれを進めるべきではないか。一部負担の減免措置というような技術的な対策は、末の末でございます。基本的な考え方を法律というものは明らかに規定しなければならないと思います。いろいろ疑問を持つような法律は、今後は作っていただかないことを、国民の一人として希望する次第でございます。  それから三年で打ち切るというお考えが出ておりますが、これは健康保険と違うのでございますから、社会保障制度審議会から申しておりますように、非常な改悪でございます。  最後に、今申しましたことを全般的に考えてみますと、指定制の問題、最終の責任の問題、結局国民健康保険健康保険に近づけようとしておられるようでありまして、その考え方が間違っておるとは私は思いません。しかしこれは非常な改革でございまして、そういう改革をやろうとするならば、やはり筋の通った改革をやる必要があると思うのでございまして、その意味において、私は農村の国民健康保険の型をそのまま大都会の国民健康保険に振り当てようという考え方が、どうも納得ができないのであります。いわゆる公営優先主義、これは農村においては私は妥当な主義であると思うのでございますが、東京の特別区とか、さらに特別区よりも大きい、おそらく全国で一番大きい対象を持つ大阪市の場合のごときは、強制加入の職域の国民健康保険組合を作らせまして、それ以外のものを市が国民健康保険の対象とする、そしてそうなれば貧困層がかなり多く入ってくると思うのでございますが、それに対しましては、それだけ国庫負担の方で考えるというようなやり方が現実的であると思います。大都市の国民健康保険は、ただ単に法律を作って義務制にするということだけでは実現できません。大都市の国民健康保険をどうするかという問題に対しまして、解決のかぎを与えないような法律改正であります。ならば、私はむしろやらない方がいいんじゃないかというのが、本日の私の意見の結論でございます。  失礼なことを話の中で申しておるかもわかりませんが、私の率直な感じを申し上げて御参考に供する次第でございます。
  18. 園田直

    園田委員長 以上で公述人公述は終りました。  質疑の通告がありますので順次これを許します。  公述人のうち早稲田大学教授末高信君は、やむを得ざる所用のため、一時三十分で退席されますので、まず末高信君に対する質疑のみを実施を願います。八田貞義君。
  19. 八田貞義

    ○八田委員 末高先生に御質問申し上げたいと思います。実は今度の政府提案の新国民健康保険法案によって、今までの市町村指定が知事指定ということに変って、市町村のつまみ食いを防止する、こういう形になったのです。ところがそういった県一本にまとめるという思想は、私は賛成でございますが、いろいろ見て参りますると、差をつけております。たとえば一部負担金の取扱いにおいて差ができておるのでございます。時間もございませんから、質問を一、二点にしぼって参りますが、四十一条によりますと、第一項に「保険者は、政令の定めるところにより、条例又は規約で、前条に規定する一部負担金の割合を減ずることができる。」と書いてございます。そして第二項になりますと、「前項の規定により一部負担金の割合が減ぜられたときは、保険者が開設者の同意を得て定める指定医療機関から療養給付を受ける被保険者は、前条の規定にかかわらず、その減ぜられた割合による一部負担金を当該指定医療機関に支払うをもって足りる。」と書いてあります。第三項も同じような思想でございますが、これを指定医療機関と結びつけて考えて参りますと、こういったことの法律条文を起しておきますと——現在直営診療所というのがございまして、十割給付をやっているところもございます。一般の開業者は五割給付をやっている。こういうふうな差か厳然と——直診においては十割給付をやっていけるんだ、一般開業の医者は五割給付でいけということになってしまうんですね。そうしますと、近ごろ一国保一直診というふうなことがはやっておりまして、一つ国民健康保険を施行すれば、そこに一つの直営診療所を作らなければならないというようなことで、医療担当者との間に非常ないざこざを起している。この四十一条を認めておきますと、現在のいざこざが、将来も続くというような格好になってくるわけなんです。この条文について、「政令の定めるところ」という内容も厚生省から出してもらってよく調べなければならぬわけですが、こういった条文の起し方に対して、先生の御見解を一つ率直にお教え願いたいと思うのです。
  20. 末高信

    末高公述人 お答えをいたします。非常にむずかしい問題でございまして、直営診療所が公的医療機関であるか、あるいはその部類に属さないかということも問題であると思います。しかしかりに公営の医療機関であるといたしますと、その開設の費用についてある程度国なり開設者が資金を投入することができる。それによりまして地区住民の医療に対しまして、特段の優先的取扱いをするというのが現在の多くの公営診療機関のあり方ですね。そのことがいいか悪いか、たとえば国立病院のごとく、今までも法定せられている点数を何割か引くとか、何円減額したものでもって計算するとかいうものもあると聞いておりますが、それらのこととこれは同じ系統の問題であると思うのであります。そこでこの問題についての終局的な調整は、これは国民健康保険法の中だけではとれない。しかし私自身の気持を率直に申し上げます。別段これは研究をしたり全面的な調査の結果を申し上げるわけではございませんで、今私の考えている気持を申しますと、公営の医療機関について逐次そういうようなことが推進せられることは、私は日本の医療制度が向くべき方向であるというふうに考えておりますので、この点を私は原案に対しましてあまり疑問を持たなかった、こういうわけでございます。
  21. 八田貞義

    ○八田委員 先生の医療公営という御思想から、そういうふうな御判断をなさっておると思うのであります。ところが今度の指定医療機関は、直診も一般の開業医療機関も同じようにみなすのだといっておりながら、給付のところにおいては段階をつけておるのです。そうすると、開業医はだんだんつぶれてしまうのです。ほんとう医療国営になってしまう。そうすると、医療担当者国民保険に対して協力する範囲というものが狭まってくるというふうに考えるわけです。こういうことについてもいろいろまた私の考えを申し上げたいのですが、時間がございませんようでございますから、あともう一つお願いしたいのは、先ほど近藤先生もお触れになっておりましたが、四十三条の三項という規定があります。これなんか、ほんとうに私ちょっとけしからぬと、与党議員でありますけれども考えるわけであります。というのは、こういう条文を起していけば、特定の機関と特別の単価契約ができて、僻地に持っていかなければならぬ直診を町のまん中に持ってきて、医療開業医との間にますます争いを大きくしていく、こういうことになってくるのです。私は、こういった特定の医療機関と特別単価契約が結び得るというような規定をわざわざここに載っけておいて、ますます直診と開業医機関との争いを起すようなことは、国民保険とか皆医療というような場合には非常に問題になると思うのです。というのは、この新国民健康保険法案を見ますると、いろいろな基礎条件として不備な点はございますが、土台は一応敷いてあるわけです。これは国民保険という屋根をふこうとしておるのですが、柱となるべき医療担当者に対してはただ圧迫なんです。将来性がないような状態になっておるのです。柱が全然協力できないような格好になっておって屋根をふこうたって、人が入るわけにいきません。こういうところに、国民健康保険に、直診と開業医の医療機関と、指定においては同じように取り扱うんだというけれども給付の面においていろいろな条項を設けて差をつけておるのだ、こういうことは非常に開業医の協力分野というものを狭めていき、国民保険の前途に対して、かえってむしろ暗い面を考えなければならぬのだ、こういうふうな疑念を持っておるわけでございます。こういった四十三条の三項の規定につきまして、先生の御見解をもう一度お伺いしたいと思います。
  22. 末高信

    末高公述人 お答えを申し上げます。ただいまの御質問は、あるいは御意見は、私が前にお答えいたしましたものと同系統に属するものと理解いたしますので、大体前のお答えでもっていいんじゃないかと思いますが、しかし多少補充をいたします。  現行の開業せられているお医者さん方との大きな摩擦は、御指摘の通り国民保険の推進に大きな暗い影を残す、これは私も十分そう考えるのでございます。従いまして、直診というものを、およそ国保のあるところ必ず直診ありという形の、従来の厚生省の指導方針がよかったかどうか、これは批判の余地があると思うのです。たとえば、山間僻地でもって、とうてい開業の方は引き合わないとか、いろいろな理由でもって、あるいは文化的の刺激がない、あるいは学問的に補習の方法がないというので御開業にならないというような場所は、どうしても直診があるべきだと思うのです。従いまして、直診というものは必ずしもその村の、あるいはその支配し得る範囲の住民の数だけではいけない、限定はできないと思います。申さば山間僻地なんというのはごく普通の俗語でありまして、法律用語としてどの程度のところかわけがわからぬということになりますると、これは国会なり、あるいはこういうことを管掌しているところの厚生省なりにおきまして十分研究せられまして、直診というものの設立を認めるところの地区と、しからざる地区とを分けて直診というものを認めるところの地区は大体今の開業医の方々も御納得がいって、ああ、あそこじゃ自分たちもどうも手がつかぬとか、いやだとかというころは、これは直診を認める、そういうような一つの線を何らかの方法によってお引きになって、今後はこの方針でやる。それでもなおいけなければ、既存の直診につきましても整備方針というようなものを打ち出しまして、既存のものでもあまりに摩擦が多いとか、あるいはりっぱな医院なりあるいは病院なりがたくさん存在しているというようなところは、これを整備するというような方法が、現在開業医というものと、国あるいは公共団体の公営するところの医療機関との競合している状態におきましては、まさにとるべき方策ではないか、かように考えます。
  23. 八田貞義

    ○八田委員 先生の御意見もよくわかりました。結局問題は、今日の直診の配置の姿が問題になっており、これはやはり僻地に直診は多くすべきものだというお考えであります。そこで結局先生の御意見は、やはり四十一条の「政令の定めるところにより」という政令の内容に入ってこなければならぬと思います。先生はたぶんこの政令の内容について御研究になっておられると思うのですが、その中にはやはり今の御思想を制度の中に織り込むべきものだというふうに了解してよろしゅうございましょうか。
  24. 末高信

    末高公述人 お答え申し上げますが、私は今政令の内容などにつきまして厚生省から直接聞いているんだということは一つもございません。しかしこの社労の委員会の特別の御希望なりあるいは決議なり、あるいは私及びそれを外部からいろいろ御協力申し上げるような者は、厚生省とさらに協議をいたしまして、政令の内容をそう定めることが私自身の意見としては望ましいということははっきり申し上げます。
  25. 八田貞義

    ○八田委員 これで終りますが、末高先生、実際今まで国会におきましては、戦前の国会は政令、省令等についても全部内容を明示してもらって、審議したことになっておったのです。ところが戦後は政令、省令にゆだねると、政令、省令にはほとんどわれ関せずえんということになっておった。これはわれわれ国会議員の怠慢であったかもしれませんが、重要な政令の内容もわれわれはほとんど審議せずに参ったことなのであります。先生も今、政令の内容について十分に検討しなければならぬということをおっしゃいましたが、私も同様な意見でございます。ぜひとも先生の御思想を、われわれはこの政令の内容の中に織り込んでいきたい、こういうふうに考えるわけであります。どうもありがとうございました。
  26. 園田直

  27. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと末高先生に先にお尋ねいたしたいのですが、さいぜん末高先生の御意見の中で、今回政府の出した法案の中で給付率が五割になっている。これは五割以上にあまり上げるということはむしろ逆効果ではないかという点について、近藤先生からもいろいろ反対の意見が述べられたのですが、私ども社会党の立場で、今回三割の国庫負担と七割の給付を出しているのですが、それは先生は、国保を推進するためには国保ばかりというわけにはいかないだろう、どうしても医療機関の適正配置、無医地区の解消、医療制度の合理化、結核対策、こういうものに金をどうしてもこの際まんべんなく入れて、全般的な医療保障制度の推進をはかるべきだという先生の御意見のように承わったわけです。実はわれわれは現在のいろいろの政府の政策の立て方を見て、われわれもそういう主張をしておるのですが、それが一つも実現をされないということなんです。たとえば医療機関の適正配置の問題についても、一番適正配置を阻害しておるのはだれかというと公的医療機関なんです。県立病院があるその横にどっかりと年金病院が建つ。年金病院の横にどっかりと御殿のような労災病院が建つ。こういうように国費のロス、むだな投資が政府当局によって行われておる。厚生大臣がそれらの医療機関を一元的にぴちっとやるだけの権限が、現在の岸内閣ではないということです。従ってこれはだめだ。いくらいってもやれないのです。それから無医地区の解消も、今八田君からありましたが、直診が町のまん中に出て、開業医が家を建てておる近所に直診ができる。これもやはり税金のむだ。これをあえて政府が奨励してやっておる、あるいは保険者がこれに目をつぶっているというのが現実です。それから医療制度合理化については、合理化をやっておるけれども、なかなか厚生官僚の独善的な立場のためにこれがうまくいかない。あとでもそれは具体的に示しますが、結核対策については、われわれがここ数年来二分の一をさらに三分の二に引き上げる、あるいは厚生省自体も八割にしたらどうだといっております。あるいは都道府県の四分の一の負担義務的に設置をして、少くともまず当面国の四分の一、県の四分の一を義務設置にしていわゆる二分の一を義務的に支出するものにしたらどうだというけれども、これもやらない。そうしますと、今先生の言われたようなものは、われわれが口をすっぱくし、先生もすっぱくしたけれどもやらない。そうすると、われわれ野党の立場からすれば、この際やはり三割と七割給付を確立しておかなければ、日本の皆保険はできないという認識に立ったわけです。その最も具体的なものは、御存じの通り、先生もわれわれも主張しておりますいわゆる年金の問題が出てきたのです。いろいろ政府当局の答弁を聞いていると、すでに結核の時代は過ぎたといっております。結核の死亡は半減した。四万台になったじゃないか。つまり大蔵省当局は、あるいはそれは岸内閣の意向でもあるが、結核に金を出す時期ではない、皆保険の時代だと昨年から一昨年まで言い出しました。ところが皆保険のために何ぼ政府が金を出したかというと、先生御存じの通り健康保険で三十億出したものが二十億に取り返された。そして今日本の九千万国民の皆保険のために政府が出しておる金を全部総ざらいして二百二十五億です。そして今度は皆保険の呼代は過ぎたと今年言い始められた。そし年金の時代が来た。年金のために政府は今年二百二十億厚生省第一次案は出そうとしていますが、その二百二十億さえも現在百三十億か、百三十五億に削られようとしておるあやしい状態になっております。皆保険の時代は過ぎた。年金の時代がきたのだ。その年金にも金を出せない。そして一方には昭和三十六年には、いわゆる政府が主張される恩給は一千三百億になる。そして日米安全保障条約が出てくると、われわれは少くとも確実にグラマンというもので御存じの通り三億も四億もするものを百機も二百機も買わなければならない。こうなると、実際にこの機会に皆保険を政府がやろうとするならば、野党としてはどうしても三割と七割をこの機会にやらなければやる機会はない。今反対意見を述べられたのも先生一人なんです。あとの方は全部それをやらなければだめだという。これは岸総理大臣の言葉でいえば、末高さんを除いては世間が全部三割と七割ということになっておる。そこで私が末高先生に、学者的な良識で私の今説明した客観的な情勢を見て、なお五割で皆保険というものが実施できるという御確信があれば、それを私はお教え願いたいと思うのです。
  28. 末高信

    末高公述人 お答えを申し上げます。私が国庫負担三割、給付率七割というのは、私多年の持論でございます。しかし今日の客観的情勢が滝井先生が御指摘のような客観情勢であることもよく存じております。そこで、私は今日ここへ公述人として出ておるのでございまして、政治の衝に当る委員として出ておるのではございません。従いまして、そういうどちら先にどちらをあとにすべきかというような問題について、ここでは私の見解を申し上げることを差し控えたわけでございます。そこで、現在のような岸内閣の方針のもとに可能の限りにおいて国民健康保険を推進するのは、この程度が精一ぱいであろうということを申し上げたのでありまして、私の持論はあくまでも図庫負担三割——三割必ずしも十分であるとは思いません。これは究極においては、医療なんていうのは人間の生命を守るもの、これは生存権とかなんとか申しましても、これは人間の最も基本的な欲求と申しますか、人間生存の土台でございますから、これに対しまして金を払わなければ医者にかかれない、あるいは保険料を払っておかなければ医者にかかれないというような状態はむしろいけない。できるならばイギリスのような、これは私はいろいろの機会でもって申し上げておるわけでございすが、全部の国民に対して医療を無料の形にしなければならないというところまで考えておるわけでございます。従って三割の国庫負担なんていうような問題は、私の立場からいえばまだるいといわざるを得ないのでございます。しかし岸内閣の今日の情勢から判断をいたしまして、精一ぱいのところはこの程度でございましょう。それで岸内閣のやっておりまする各般の厚生行政、医療行政をそのままにしておいてこの給付率の七割というようなことを実施することは、むしろ逆効果を来たすんじゃなかろうか、こういうようないわば逆説的な意味で申し上げておることを御了承願いたいと思います。
  29. 園田直

    園田委員長 公述人関係で時間の制限を受けております。質疑滝井君をふくめてあと四名でございます。従って質疑者も答弁者も考慮の上お願いいたします
  30. 滝井義高

    滝井委員 この一問で終りますが、末高先生、今度政府が出した国民健康保険法案の中の療養給付の中に、一部負担金が含まれておるかどうかということは、実はいろいろ読んでみるとはっきりしないのです。療養給付費の中に一部負担金が入るのか入っていないのかという点について、もしおわかりなっておればこの条文で一部負担療養給付の中に入るということをお教え願いたいのです。
  31. 末高信

    末高公述人 お答えを申し上げます。簡単に申しますると、私は法律あるいは法制を特に研究しておるものではございませんで、経済という面からこういう制度について迫ってきておるという立場にありますので、法制的に字句はどうかということの御追究を受けますと、はなはだ苦しいのでございますが、しかし、私はむしろ全額給付というような考え方はとりまして、逐次具体的に給付するものが給付であるという考え方に立った方が、あらゆるものの考え方がすっきりいくんではなかろうか、その給付の割合は法律によりまして、あるいは制度によりまして逐次伸びていくんだという考え方をとる方が、私はものの実体に即した考え方ではなかろうか、かように考えます。
  32. 園田直

    園田委員長 八木一男君。
  33. 八木一男

    ○八木(一男)委員 末高さんにお伺いをいたしたいと思います。今度政府が提出した国民健康保険法案について、末高先生はあまり批判的でなかったわけでございまするが、この国民健康保険法案を政府が提出した手紙の点でちょっと伺いたいのです。政府はこのようなものを提出するときには、社会保険審議会並びに社会保障制度審議会に諮問をし、答申を受けて、この意見を尊重しなければならぬということが法規の明文に載っておるわけです。医療保障全体について社会保障制度審議会は医療保障勧告をした。この勧告と法案とは大いに内容が違っておりますが、それはさておきまして、本年の二月、この国民健康保険法案について諮問をした、立法について具体的な答申をした、それが一つも尊重されておらない、その点で制度審議会設置法第二条の違反でございます。そういう点について、その違反の法律を直して出してくるのが当然であるという御意見に当然なられると思いますが、その点についての御意見をお伺いいたします。
  34. 末高信

    末高公述人 社会保障制度審議会設置法に、政府が提出しようとするところの重要な法案審議会にかけなければならない、それを尊重しなければならないということは、私の理解するところによりますると、憲法のいろいろな条章と同じようなことでもって、いわば道義的心がまえ、心得をいっているのではなかろうかと解釈いたしております。従って八木先生の御指摘の点は、政府に対しましてその道義的な違反を追及せられることは、私はけっこうだと思うのでありますが、そのこと直ちに、いわば貸借につきまして債務支払いをしないというようなことの、法律違反であるとか契約違反であるとかいうような意味の違反であるかどうかということにつきましては、八木先生と多少違ったニュアンスで理解をいたしております。
  35. 八木一男

    ○八木(一男)委員 しなければならないというのは、日本語で見たらしなければならないそのままであって、それをいろいろな解釈でひん曲げて、しなくてもいいんだということはできないのが、日本人の考えている日本語だったら当然だと思います。特に社会保障制度審議会というものは、与野党議員が参加し、学識経験者が参加し、各団体の代表者が参加しておる。でございますから、当然それだけの尊重を受けていいわけです。もちろん提案についてでございます。提案の内容をどうするかは国出家がきめることでありますが、提案をすることについては、その尊重をした提案をしなければということを、文字通り解釈すべきであります。そのことについて、この国民健康保険法案は非常に間違ったものであると思います。その点もう一度はっきり伺いたい。
  36. 末高信

    末高公述人 お答え申し上げます。同じ答弁を繰り返さざるを得ないのでございますが、それはあの法律内容から見ましても、それから従来の扱いから見ましても、あれはいわば一つの基準を示すというものであって、あれに書かれたことは全部法文に盛り込まなければ、政府として社会保障制度審議会設置法違反であるというところまでいくかどうかということにつきまして、これも私先ほどお断わり申し上げましたように、憲法学者であるとかあるいは法律学者でございませんので、法理論的にどうこうという見解を述べる力はございせんけれども、しかしながら私の理解するところにおきましては、あれを目標として国が努力をしろ、こういう意味のものである。私ども審議会の審議に実は多少携わっておるものでございますが、その場合におきましても、結局私どものやっていることは政府の努力目標を一つ設定するのであって、これがそのまま法案になる、これがそのまま制度になるということを必ずしも私自身は考えておりません。私の考えが間違っておりますれば、あるいは国会なりにおきまして、おしかりをこうむってけっこうでありますが、私はさよう理解をいたしております。
  37. 八木一男

    ○八木(一男)委員 その問題は、末高先生と私は大いに意見を異にしておりますが、時間の関係上その問題はそのままにいたしまして、少くとも努力を一つもしていないということは明らかな法案だと思います。しかもこの医療保障勧告というような基本的な大きなものではなしに、国民健康保険法案についての答申をして、そこの中から五項目にわたって——もっとたくさんございますが、七割給付すべきである、三分の一国庫負担をすべきである、医療給付については転帰までの給付を原則とすべきである、それからもう一つ窓口払いの最終責任はこれは保険者の方で負うべきである、それから審査機関は中立なものとすべきである、事務費全額国庫負担とすべきであるというような具体的な答申が出ておるわけであります。そこで先回りをして、予算の関係があるというようなことでできないということもあるかと思いますが、少くともそれと関係のない、ほとんど政府のちょっとした努力でできるようなことが一つ法案に盛られていない。この前出たときには、出てすぐ訂正の時期がないから国会に修正してもらうという、そういう言いわけも成り立つかもしれない法案であったけれども、それから六ヵ月も七ヵ月もたって、当然尊重すべきものであるから、できるものは盛り込んで新法案に出してこなければいけないと思う。そういうような手続の点で、非常にけしからぬ出し方であった、そういうような背景のある法案であったということをお認めになるかどうか。
  38. 末高信

    末高公述人 はなはだうがったことを申し上げますが、私厚生省の代弁をするつもりはございません。しかしあれをもとのままでお出しをして、厚生省といたしましては、あるいは政府といたしましては、国会でもって適当に修正をせられるということの方が、むしろ国会の権威を高めるものではなかろうか、こういうような配慮があるやに聞いております。はっきりしたことは知りません。しかしそれが大臣なり次官から聞いたのではございませんで、非常に末輩と申しては悪いのでありますが、末端の方からそういうような配慮があるやにも聞いております。従いまして八木委員の御懸念は、大いに国会たるのを権威において悪い点は御修正になることが適当ではなかろうか、かように考えております。
  39. 八木一男

    ○八木(一男)委員 今おっしゃったことについて簡単に申しますと、国会は当然審議をするのです。どんな案を出してきても十分な審議をいたします。審議会の立法のときに意見を出して、それを尊重しなければならないということについて今のような御意見を述べられますと、末高先生自体が社会保障制度審議会設置法の否定論者だ、そういうことはちょっと私としては困ります。ほかにも質問者がおられますから私はこれで打ち切りたいのでありますが、そういうことについて、もう少し制度審議会の委員としての態度で一つ御答弁を願った方がよかったのではないかと思います。
  40. 末高信

    末高公述人 私がここに引っぱり出されましたのは、別段私が社会保障制度審議会の委員として引っぱり出されたとは考えておりません。早稲田大学の教授として引っぱり出されたと考えております。  それで、私は審議会におきまして少数意見を数々述べておりますが、一本にまとまりますと、ああいうような答申になります。今八木委員の御指摘のような問題点につきましては、大体私自身も先ほどから申しますように、賛成でございます。腹の底はまさにそうあるべきであるというふうに考えております。しかし私がここへ出て参りますと、審議会から離れました一個の人間といたしまして、あるいは申し上げることをお許しを願いますれば、学者といたしましてお話を申し上げる、こういう自由を八木委員からお認めを願いたいと思います。私の意見を全部審議会の意見一本にしぼれというならば、大内先生をここにお招きになった方が適当であったと考えます。
  41. 八木一男

    ○八木(一男)委員 実はそういうようなお考えで返答されましたけれども、私が個人の早稲田大学教授末高先生と、それから制度審議委員末高先生を混同しているのでございました、度度審議会の意見と違う意見を言われることは困るということを申し上げわけでございますが、混同していないからそういうことは言っていない。手続として、社会保障制度審議会の意見は尊重しなければならなといういう法律がある。その法律を守らないやら方についてどうかということを、社会保障学者としての末高先生に何っているわけです。そういうつもりで伺っているのですからその点は了解していただきたい。
  42. 園田直

    園田委員長 中村英男君。
  43. 中村英男

    ○中村(英)委員 それでは私も末高先生にお伺いしたいと思います。もちろん制度審議委員としての先生の御発言は、参考人としてもきわめて重要なものですが、私のお聞きした範囲ではステップ・バイ・ステップですか、現在の岸内閣では財政上非常に困難だから、七割あるいは十割の国庫負担を現在の状態で望むのはむずかしいだろう、だから早く法律を通してもらいたいという御意見のように拝聴いたしましたが、御承知のように国保の被保険者内容はきわめて種々雑多なものです。ことに日本の経済は農業を主体として発達してきた。しかも大阪、東京その他の都市においては、これを早く推進しろという要望が高まってきた。こういう事情ですが、今農村におきましては御承知のように病気の実態というものが非常に変化してきておる。特に戦後は増産の関係で農薬なり農機具を使っているため、病気の形態というものが非常に変ってきた。農民の職業病とさえいわれるような病気も発生してきておる。そこに農民本来の特殊な病気がたくさん出てきておるのです。ところが社会保障は、炭鉱労働者のごときはけい肺法があって特別な立法措置がなされておるが、農民にはそういう職業病であると断定されながら、特殊な国家の保障というものは何らない。だからそういう点からも、今度の国民保険実施については農民は非常に期待しておるのです。ところが先ほどどなたかがおっしゃいましたように、あべこべなんです。富農が金を出して貧農を助けなければならないという社会相互扶助の精神の上に立脚しておるこの保険が、貧農が富農のかわりに掛け捨てをしておるという現実が出てきておる。これはきわめて重要なことなんです。そういうときにこういうふうな内容のものを出された。調整金なんか当てになりませんよ。二割の負担で五割の給付内容、こういうことで三十六年度から国民保険実施するということは、ことに今度の方法は従来の相互扶助的なものから社会保障制度に切りかわった、非常に大きな転換をしておるのです。そういう点からいっても、この法律は慎重にかまえてやるべきで、ぜひこれは三割、七割をやりたいという世論があるのです。さっき岸内閣の財政を御心配なさいましたが、滝井君が指摘されましたように、今が一番チャンスなんです。このチャンスを逃がしたら三割、七割ということは非常に望み薄な客観情勢に国はあるのです。そういう意味からいっても私どもは三割、七割を希望しておるのです。  もう一つ非常に重要なことは、医療担当者の方がるる述べられましたように、少くともこの法律内容については、医療担当者が非常に不満を持っており、協力しにくいような点がたくさんあるわけです。従ってこれからはどうしてもこれを究明していかなければならないけれども、おそらく医療担当者の諸君は、これを修正しなければ今のままで納得されないでしょう。この保険の発達は、やはり被保険者医療担当者もあるいは保険者も、三者どころか四者、国も協力して初めてあり得るのです。しかしながら医療担当者もどうも不満だ、被保険者もどうも金を出しても十分な治療をしてもらえない、掛け捨てを五割出すのだ、こういうふうなことで一体保険というものが発達し得るかということで、私は実は心配しておるのです。そういう点からいって、先生の参考人としての御意見は重要ですから、十分内容を検討して、そうして時間は私どもは一月でも早い方がよろしいですけれども、こういう実態を考えて十分慎重に、医療担当者協力する、被保険者も安心して掛け捨てにならぬ、しかも病気になったらすぐかかれるというような——今の保険なんというものは医学の発達と反対なんですよ。予防的な措置としなければならぬのに、保険があるために医学の発達がない。そういうきわめて重要なものですから、十分慎重に検討して医療担当者協力する、被保険者も喜ぶような法律を早く作ろうという主張があってしかるべきだと思うのですが、いかがですか。
  44. 末高信

    末高公述人 お答えを申し上げます。いろいろな点につきまして御質問を受けたわけでありますが、農薬を使い、耕耘機を使って耕作をしておる現在の農業は、従来の農業と業務の状態がだいぶ変ってきた。従ってそういうような場合の災害につきましては特に十割給付をすべきである、こういうのが御質問の第一点であったかと思いますが、確かに御指摘の通りでございます。しかしながら無条件全額負担をいたしておりますのは、いわゆる災害補償法という法律もございまして、雇い主が労働者に対する責任、労働者は雇い主の立場からいえば、今日の資本主義の形態におきましてはいわば利潤を生むところの一つの道具のようなものである、ちょうど耕耘機がこわれたとか、あるいは原動機がこわれたとか、電動機がこわれたのと同じような意味におきまして、それらの自分の使用人に対しては全額補償をいたしております。しかし国民健康保険におきましては、国民国民としてつかまえておるのでありまして、労働関係、使用人とそれから雇い主との関係においてつかまえているわけではないということをお考え下さいますと、国民健康保険の中におきましてそういう業務災害に類するものを全額給付するということは、少しく筋が違うのではなかろうかと考えるわけでございます。  それから国庫三割の負担の点につきまして、各委員方々からいろいろ御追及をいただいておるわけでございますが、私がこういうことをここで表明することはどうかと思いますが、平和国家を堅持する、それから再軍備は撤廃すべきであるという根本的の方針におきましては、おそらく御質問をせられた方々と全く同じ意見でございます。そういうようなことにつきましては、私の今後残るところの人生を全部捧げて、こういう国を、平和国家を守りたい、かように考えておるわけでございますが、しかし現在われわれが置かれておる政治が、皆様方のお力によりまして、グラマン機の購入もやめる、再軍備も逐次撤廃をする、自衛隊も国土開発隊に転換をするというような雄大な御構想が裏打ちせられるならば、私は皆さん方と同調をする、あるいは先頭に立って旗を振ることをここでもって表明したいと思うのでございますが、しかし現在の政府のもとにおきましては、逐次医療保障というものを推進するうという立場をとらざるを得ない。私は皆さん方とその究極の理想においては同じであるといたしましても、直ちに革命であるとかあるいは革新であるというような方針に対しましては、必ずしも賛同ができない。そういたしますと、物事には順序があるのだ、逐次現在の環境のもとにおきましてよりよき状態を推進していくにはどうしたらいいかということを考えましての上の所論であるということを一つ御了察を願いたい。  そこでこの問題につきまして、国庫三割負担であるとか、あるいは医療給付率七割ということは、戦い取った後の段階におきましては、即座に私も声を大にいたしまして、皆様方と共同の戦線を張りたいと思っておるのでございますが、現在ここに置かれておるものをつぶすことは非常に困るのだ、つぶすと、先ほど申しましたように、大都市の勤労者、自営業者等が首を長くして待っておるところの国民保険というものができなくなるのではなかろうか、あるいは予算が足踏みをすることは、かえってその方々に苦痛を与えるものではなかろうか、こういう判断でありまして、私の判断が間違いでありますれば、一つ国会におきまして、十分別内容の御決定を願いたい。そのことはおそらく私の本心に合致するところの御決定であろうということをここで申し上げたいと思うのであります。
  45. 園田直

    園田委員長 岡本隆一君。
  46. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 時間がございませんから、ごく簡単に、一問だけお聞きしたいと思います。  先ほど裁定機関についての先生の御意見を承わりますと、診療報酬の審査の結果について不満がある場合には、もう一つ上級の機関でもってきめるべきであるというふうな仰せでございました。なるほど仰せの通りでございます。しかしながら、今委員会で問題にしております裁定機関というものは、もう少し形の違ったものを考えております。それは診療報酬のきめ方、甲表、乙表というものが出て参りまして、被保険者もあれでは困るし、医療機関もあれでは困っているところへそういうものが出て、これから先、いつになったら解決できるのか、あるいはまた、医療担当者の、診療報酬の決定についての非常な不満というものが、診療報酬のきめ方そのものに——現在では中央医療協議会があって、それに医師や被保険者、政府、医療担当者、いろんな利害関係者が出て行って、そこで議論をするものだから、小出原評定のようになって、いつまでたっても結論が出てこない。だから、診療報酬とか、そういう重要な問題をきめていくのには、公務員の給与をきめる人事院のようなものを作って、その決定というものは——絶えず調査機関を持っておって、いつもその当時の物価あるいはその当時の医学の進歩に伴う設備に見合ったところの診療報酬のきめ方というものを研究している機関があり、それが二年とか三年ごとに、この程度にきめるべきだという線を公正な立場で出してきめて、それを政府に勧告する、その勧告は人事院勧告のように尊重されなければならない、そういう中立的な機関をもって診療報酬をきめるのでなければ、これから先、いつまで続くぬかるみぞということになるわけでございます。そういうものを作るということが今問題になっておるのですが、学者としての先生方の、そういう考え方に立っての裁定機関についての御意見を、この席で承わることができれば承わりたいと思います。
  47. 末高信

    末高公述人 お答えいたします。今御指摘の裁定機関でありますと、審議範囲がきわめて広いのです。今厚生省にある審議会はどの程度のものがあるか存じませんが、たとえば、医療審議会であるとか、あるいは医師の試験の審議会であるとかいろいろあるかと思うのでありますが、そのほかに、医療機関のあり方について特に審議するという審議会があるべきであると思うのです。すでに設置せられているかどうか、私今勉強して参りませんのではっきりお答えを申し上げられませんが、たとえば今の開業医の方々の業務の状態を見ますと、私乏しい経験でありますが、アメリカあたりとだいぶ違う。たとえば、お隣のお医者さんではレントゲンのこういうものを買った、おれのところでも買わないと患者が来ないだろうというので、二重設備どころではなく、何十何百倍の投資が行われている。ところが、そのメディカル・センターというようなものがございまして、ここでは一応そういう設備をする——私どもが見ましたアメリカあたりのお医者ですと、オフィスはテーブルと聴診器だけあればよい、あと試験であるとか検査とかいうようなものは全部メディカル・センターに送ると、おそくも明日になるとそのデータが参りましてはっきりした診断がつく。そういうやり方にいたしますと、日本のお医者さんの持っているような何十何百と重なった投資が省けまして、そういう面におきましても開設費、それに対する利子負担であるとか、家質であるとか、地代であるとかいうようなものは、何分の一か何十分の一か存じませんが低減せられることになりまして、結局患者自体あるいは国民全体が幸福になるのではなかろうというようなことまでも含めて医療のあり方について根本的な検討をすべき機関が存在すべきであるということにつきましては、全く同感でございます。ただ、不服に対する裁定ということがありますれば、現在の一審制度でも、三者構成でありますので大して不便はなという思うのであります。しかし、皆様方の御要望が非常に強い、それから三者構成でもって民主的だということだけで突っぱねることはできない、せめてもう一つ上級の機関を設けて御納得のいくような裁定をすべきであるという点は、その程度でもってお許し願えますれば、私はそういうことに対して賛成するものである、こういうことを申し上げたわけでございます。
  48. 岡本隆一

    ○岡本(隆)委員 末高先生のお考えでありますと、日本の医療制度を根本的に考えていくあり方という問題が大きく出てきたわけなんです。しかし、先生のようなお考えを持ってくると、すべての事業について、みんなそういうことが当てはまって参るわけでありましく、国じゅうを計画経済にしなければならないということになってくるわけであります、単に医療だけをそういうふうに計画的な何で、施設の二重とか重複を防ごうというところへ持っていこうということが出て参りましても、今まで日本の医療機関の育ってきた長い過程から考えて、短時日の間にそういうことをやろうと思っても、それは革命的な改革でありますから、社会党が政権をとり、さらにそれが完成して社会主義社会にならなければ、先生のようなお考えは実現しないと思います。またそういうことを実現しようと思っても、今日の医療担当者その他の間に、おれたちだけがなぜそんなに強い計画経済の中に置かなければならないか、完全な官僚統制の中に置かなければならないのかということで、大きな不満が出てくると思います。従って今日の医療機関保険者との間の診療報酬のきめ方について、その紛争をめぐる解決方策というものは、やはり保険者立場にも立たない、医療機関立場にも立たない、そして一に中立的なほんとうに現在の形における医学の進歩、あるいはまた医療担当者の生活経費、そういうものから見合ったところの、第三者的な公正と見られるような診療報酬というものをきめて、そしてこれが正しい線だから、どちらもこれでいきなさいというふうな公正な意見をきめるところの、勧告をするような機関を設けなければ、このぬかるみはとれない、こういう考え方を私は持ち始めておるのでありますが、先生のお答えはそういうことについてちょっと方向がずれておったように思いますので、もう一度お答え願いたいと思います。
  49. 末高信

    末高公述人 今私が申し上げたことが、どうも官僚統制ととられたように思うのでありますが、アメリカの医療くらい自由診療の医療はございませんで、こうまつも官僚統制になっておりません。自然発生的にそういうことになったのです。私がそういうことを申し上げましたのは、医療担当者の方が、日本の国民層の中におきまして最高の知識人であり、最高の科学者であるということに敬意を表しているとということでありまして、従いまして自分たちの経営を合理化するためには、やはり協同ですね。統制ではございません。お互いに数名あるいは十数名の者が協同して、そういうセンターを持って、おのおのの御所管であるそれぞれのオフィスにおきまして——オフィスというのは個人の住宅であります。住宅におきまして、それぞれの患者を持ち、それでそのセンターに参りまして看護婦あるいは技術者を駆使してやる場合でも、院長であるとか責任者とかいうものがだれ一人もございません。全部自動車で一緒に参られましたところのお医者さんの責任におきまして、それらの器具器材を使って診療をするんだ、こういうような意味におきまして、その投資の二重あるいは三重というものが避けられる。従いまして利子負担であるとか、償却費であるとか、家賃であるとか、地代であるとかいうものが非常に軽減せられて、診療費が安くなるということになるのではなかろうか、こういうことを申し上げたのでございます。  それから後段のことにつきまして、どううも私、先生の御意見がちょっとのみ込めない節があるのでございますが、私が先ほど申しましたように、医療担当者とその他の国民との紛争というようなものが、医療技術に関する限り、これは国民健康保険の関知するところではないのです。あれはあくまでも医療技術家だけが寄ってたかりまして、あるいは批判をする、あるいは是正するというようなことがあってしかるべきであると思うのでありますが、このお金の面ですね、点数がどうなったとか、こうあるべきであるというようなことにつきましての紛争でございましたならば、あるいはいろいろなトラブルがございましたならば、私が申し上げましたような方式が適当ではなかろうか、かように申し上げておるわけです。
  50. 園田直

    園田委員長 河野正君。
  51. 河野正

    河野(正)委員 時間がございませんから、二点につきまして末高先生に御質問申し上げたいと思いますが、その第一点は、具体的な問題につきましては、今までいろいろ論及した通り、たとえば五割の給付を理想的には十割にする、あるいはまた国庫負担率を三倍にして参りたい、いろいろ具体的な点につきましてはあるわけでありますが、いずれにいたしましても、国民保険という形で前進した法案であるということは否定することはできないと思います。しかしながら私はそういう皆保険という立場から前進した法律でございますけれども、しかしその中で、私は皆保険という建前から考えてみて、非常に大きな誤謬を犯した点が一点あると思うのです。と申しますのは、皆保険という建前をとります以上は、国民のすべてが医療保障のワク内に吸収されるという建前をとらなければならないのです。これは当然のことだと思うのです。ところが御承知のように、療養給付期間を三年に限定したということ、このことは法律の規制によって、三年後には医療保障のワク外に追い出してしまうという方針をとって参るということですね。このことを私は少くとも国民保険の建前から、非常に大きな誤謬を犯す結果になっておりはしないかということを強く感じるわけです。そこでせっかく法律を作って、そして国民のすべてを医療保障のワク内に吸収しようというにもかかわらず、法文の規制によって医療保障のワク外に追い出してしまうというようなことで、私は非常に矛盾した結果になっておるというふうに判断をするわけです。そういう点につきまして御所見を承わって参りたいと思いますが、そのためにはいろいろな弊害が伴って起って参ります。たとえば三年たちますと給付が切れるわけです。従ってAという町村の住民がBという町村に移住して新しい資格を取得する、あるいはまたAという町村からBという町村に移ってまたAという町村に帰ってきて新しい資格を取得するという、被保険者保険者を逆に選択するというような弊害が起って参りますし、なおまた政府当局に言わせますと、被用者保険が三年給付であるのでそれに準じたというような答弁もありますけれども被用者保険国民健康保険が非常に違う点は、なるほど被用者保険は、三年給付が終ると給付が打ち切られますが、そのあとに国民健康保険という制度が待ち受けておるわけです。国民健康保険は、三年間で給付が打ち切られると、あとそれを吸収する制度はないわけです。そこで私は被用者保険が三年給付なので、従ってそれに準じて国民健康保険給付期間も三年間だとおっしゃいますけれども、性格上、制度の上からも、被用者保険の場合と国民健康保険の場合とは非常に違うという意見、もう一つ大きな矛盾は、三年で給付が切れますけれども保険税は納めるということ、保険税は納めますけれども給付は受けられない、こういうまことに珍奇な、怪奇な現象が起ってくるという点から考えて参りますと、本質的には国民保険でありながら、この制度では皆保険のワク外に押し出され、それに伴いまして、税金は納めるけれども給付は受けられなという、さっき申しますように、逆選択という立場をとるような弊害も起ってくる、こういう点を考えますと、私は、この給付期間を三年に限定いたしますことは、本質からも具体的な点からも、いろいろな弊害をもたらす点からも、相当考慮すべき点ではないかと考えますが、この点に対する御所見を承わっておきたいと思います。
  52. 末高信

    末高公述人 皆保険というのは今日合言葉になっておりまして、何でもかんでも保険でもって医療の保障をするというような錯覚を国民全体に与えておるのではなかろうか。皆保険と申しましても、その目的とするところは、社会医療と申しますか、社会の全員に適切に医療を与えるための皆保険であろうと思うのであります。そこで国民健康保険だけがわれわれの命を守る、健康を守るというものではないと私は理解しておるのでございます。この理解が違えば先生のおっしゃる通りになるのでございますが、そこであとに残るものは、非常に残念でございますが、生活保護における医療保護というものが、ちゃんとあとに国としては最後の網を張っておるのでございます。そこで、保険というものは、ここで申し上げるほどの必要はないと思うのでございますが、一定の収入でもって一定の支出をまかなうということでないと、保険制度そのものはなくなってしまう。意味がないのでございます。もしも無限に国民健康保険でもってその病気を直すのだということになれば、極端に申しますれば、無限に国民健康保険に対して国なり保険なりの形でもってつぎ込むものがなければならない。保険というものは有限の保険料あるいは国庫負担というものをもちまして、予想するところの危険に対して保障を与えておるのが、わざわざ保険という形をとるゆえんであって、初めから単なる医療扶助ではないわけであります。そういたしますと、他の健康保険と同じように、一応三年に限るということは、やむを得ないことではなかろうか、かように考えております。ただしその際、医療は受けられないけれども保険料はふんだくられるとか、あるいは非常に悪い人がございまして、A村にいたとき医療給付を三年受けた、そして給付が切れたから今度はB村に行って、そしてまたA村に帰ってくるというようなことに対しては、これは例外だからほっておけというわけではございません。何とかそういうような抜け道は多少処置する方式があるのではなかろうか、そういう方式は、当然水漏れのしないようにという意味におきまして、医療の公平なる分散あるいは公平な均霑を国民が行い得るような医療の工夫は行うべぎである、かように考えております。
  53. 河野正

    河野(正)委員 もう一点だけ、最後にお尋ね申し上げておきたいと思います。それは私の理解が不十分だったかと思いますけれども、先ほど先生が公述されました中に、この登録制度の弊害といったような点が若干触れられておったようであります。それは登録と指定の二重の制度の問題から、登録制度の弊害というものが述べられたと思います。登録する側にいろいろな権限を与えると、そこからいろいろな弊害が生まれるというような御説明のようでございます。それは言葉をかえて申し上げますと、その点につきましては、指定制度の場合においても当然そういう点が生まれてこようと思いますし、なおまた先生の言葉を裏返して考えますというと、そういう弊害が起った場合、たとえば具体的に申しますならば、いわゆる療養担当者がえり好みをするというようなこともあると思いますが、そういう弊害を除くためには、むしろ指定制度をとるべきだという御見解のようであったと思います。そうしますと、この指定制度におきましても、やはり指定をする側に権限を与えるわけでありますから、従って登録制度と同じような弊害が当然生じてきやしないかというようなことを私ども感ずるわけです。  それからさっき先生の御説明の中にもいろいろございましたように、この保険医療というものは、生命を守るというふうなきわめて重要なる、崇高なる使命が含まれておるというような御説明もあったようでございます。ところが、そういった医療保険が生命を守るというようなことが基調になっておりますならば、その点に対しまする責任は当然療養担当者が負わなければならぬということだと思うわけでございます。そういたしますと、今度の指定機関指定する制度というものが、そのような考え方から正しいかどうか、むしろそういった生命保護というようなことが基調になるとしますならば、生命保護に対する責任を持つべきいわゆる療養担当者が当然任命さるべきであって、機関指定ということが正しい論拠にはならぬというような感じを先生の説明の中から持つわけであります。なおまた国民保険の精神というような感じを先生の説明の中から持つわけであります。なおまた国民保険の精神というもは、国民ひとしく保険医療の恩典に浴するということでございます以上は、この療養担当者の選択の自由、権利というものも当然あるわけでございますから、国民ひとしくが医療保険の恩典を得るとともに、なおまた療養担当者も、すべての療養担当者機会均等という形でひとしく医療担当するという立場を一方におきましてはとらなければならぬと私は思う。そういたしますと。今度の法案でいわゆる指定機関指定を受けるという制度をとりますことは、私は先生の説明の中からも非常に大きな矛盾を感じますし、また家際に責任を持って医療行為を担当するという考え方からも非常に大きな矛盾を感ずると思いますが、その点に対しまして、一つもう一たび御説明を願っておきたいと思います。
  54. 末高信

    末高公述人 登録と指定の問題でございまするが、指定につきましていろいろ御懸念があるかと思います。法案を読んでみますと、都道府県の知事が指定するのが本則のようでございますが、指定をしない場合は、特別に協議会にかけてその決定をやらなければ指定をしないことができないということになっておりまして、むしろ指定するのが本則であって、指定しないという場合は非常に例外の場合である。そういう意味におきまして、登録よりも一そう広く医療担当者の側が保険医療に従事する機会があるのではなかろうかと思います。登録ということになりますと、医師たるの資格を持っておれば、だれでも帳面に書いてくれば登録せられるというものの、それならば登録ではないのです。なお、医師であればだれでも保険医になることができるのですから、登録である以上、何かこういうようなものにつきましては登録を拒むというようなこと、あるいは一ぺん登録いたしましてもこれを消すことができるということが私どもの常識になっている。登録制度は全部そうでございます。これがもしも保険医に関する登録だけで、お医者さんが参りまして自分の姓名を書いてくれば当然これは権利になるのだという登録ならば、それは登録しない方がけっこうでございます。登録する必要はないのです。医師たるものは当然そういうことができるわけでございます。そこで、そういうような登録制度でありますると、もちろんそれについて登録を拒否する場合にはどうするというような、さらに特別な規定でもあれば別でございますが、これはやわり事務官なり担当者なりの一応の基準、内規などというようなものはできましょうけれども、それに従って処理せらるべきものであって、ある者は登録を受け、ある者は登録を拒否せられるというようなことになると、むしろ現在規定せられているところの指定制度の方がかえって公平にお医者さん方に保険診療に参加していただくところの道ではなかろうか、かように申すわけでございます。そういたしますると、結局大部分の、あるいはほとんど全部のお医者さんが、地区におきましては保険医たることの指定を当然受けられるということになりますれば、御指摘のような患者の方からの医療担当者選択の自由が阻害せられるというようなことはおそらく事実としては起きてこない。それは理論的には考えられることでもございますが、私の乏しい経験によりますると、事実としては起き得ないことではなかろうか、かように考えておる次第でございます。
  55. 園田直

  56. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 一言だけお尋ねいたしたいのですが、市町村が経営主体でございますから、保険料並びに保険税につきましても、また療養給付内容についても差が出てくるわけでございます。医療にいわば地域差といいますか、それが現実は出てくる。そこで日本の社会保障制度というのは、保険経済から最初出発して、でき得る者だけが集まって作れというような形からだんだんできた関係で、歴史上やむを得ない点もあるかと思いますけれども、しかしこの際皆保険に踏み切るということになりますと、やはり国民の中に差があってはいけない。やはり平等でなくてはいけない。調整交付金なんか考えましても、市町村財政の差というものは非常なものです。財政の差がすなわち所得の差、大体同じようなものですから、そういたしますると、今踏み切らなければ今後統一するということはますます困難になるのではないか。ですから、皆保険を踏み切ったこの段階において、いわゆる国一本、政府管掌といいますか、あるいは国が主体になる、そういうふうに踏み切るべきではないか。その点について、社会保障制度審議会等においても何ら答申が出ていないような気がするのですが、その点についてどういうふうにお考えですか。
  57. 末高信

    末高公述人 私どもの最も基本的な宝でありまするところの自分の生命を守る医療につきまして国民の間に厚薄があってはならない、このことは御所見の通りでございまして、私全面的に賛成するものでございます。そこで、今度の法案におきましても、健康保険の線におきまして医療は行うということになっております。それを逐次手拍子のようにこの法律施行のときからやれるかどうか。これは旧来の惰性もございましょうし、かすに数ヵ月あるいは数年の歳月が必要であろうと思うのでありますが、法案の指向するところは、私の考えでは、やはり中央社会保険医療協議会の定めたところの、いわばわれわれ国民の命を守るためには、この程度医療ならば、非常にぜいたくではないけれども、必要にして多分十分なものであろうというのが——そうでないというおしかりを受けますれば、私またその点については思い直すわけでございますが、中央社会保険医療協議会において、そういう医療水準というものの線が出ているわけでございます。そこで国民健康保険もその線でやるということになったものでございますから、従いまして医療内容あるいは水準というものが手拍子を打つように直ちにそろうかどうかということは私は九千万国民を扱うところの国の行政とうものはそう敏速、潤滑には動かないということも承知しておりますので、多少の歳月は必要であろうと思うのでありますが、指向するところはそういうところにあるのだということで御了承が願えれば幸いであると思います。
  58. 園田直

    園田委員長 早稲田大学教授末高信君に対する質疑は終了いたしました。末高公述人には長時間まことにありがとうございました。  午前中はこの程度にとどめ、午後三時まで休憩をいたします。     午後二時四分休憩      ————◇—————     午後三時二十五分開議
  59. 園田直

    園田委員長 休憩前に引き続き公聴会を開きます。  公述人に対する質疑を継続いたします。滝井義高君。
  60. 滝井義高

    滝井委員 お帰りになったのは山本さんですね。それでは川澄さんと鈴木さんにお尋ねをしたいのですが、御存じの通り現在の国民健康保険給付率は、五割がほとんど全部なんですね。中には六割、七割をやっているところもあります。私たちが承知しておるところでは、五割の給付では国民健康保険保険証をもって結核療養所に入院できる人が非常に少いということなんです。そうしますと、どうしてもこれは結核の問題から考えても、給付率を上げなければならぬという客観情勢があるわけです。  それからもう一つは、さいぜん近藤先生からも御発言があったと思いますが、農村に行ってみますと中農以上の人たちの保険証の利用率というものは非常に高いのです。しかし中農以下の貧農の保険証の使用率というものは非常に低いのです。いわば中農以上の医療保障を完全なものにするために、貧農が保険料を支払ってやるということが結果的に出てきている。その具体的な一つの現われが、たとえば農村においては配置薬というものが非常に盛んになってきつつあるということです。こういう点から考えても、この際皆保険をやるとすれば、七割給付がまず第一段階でできなければ、少くともやはりこの際六割くらいにやらなければほんとう意味の皆保険というものはできないのではないかという感じがするのです。特に小田原鈴木市長さんのところは模範的な国保実施の市であるということを実は私聞いて、鈴木市長さんをぜひ呼んでいただきたいという希望を述べた一人なんですが、小田原は比較的東京にも近いし、都市国保のある程度の矛盾なんかもその胎内に持っておると思うのですが、一つ七割の給付といかなくても、暫定的には六割からだんだん七割に持っていく、今の五割では皆保険はうまくいかないのではないかという、そいううことに対する御意見をお二方に聞きたいのですが、特に鈴木市長さんには、都市国保実施をする場合の一つの矛盾点と申しますか、こういう点が一つの大きな隘路になってなかなかうまくいかないというのがあれば、その御体験になったことを一つお示しいただければけっこうだと思いますが、その点いかがですか。
  61. 川澄農治

    川澄公述人 小田原市長からもお答があるかとも存じますが、ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げたいと思います。  五割の給付では完全な社会医療としても目的を達成することができないことは、先刻私当初に申し上げておいた通りであします。何としても七割程度まではぜひ実施したい、一気にいかないにしても、漸進的に六割、七割と前進をすることが必要だろう、かように私どもは信念を持っておるのでありますが、ただ保険者財政の点から申しますと、ただいまの一部負担保険料程度では、どうしても七割給付は及びもつかぬこでありまして、何としても国家の負担において、義務においてやる以上は、当然国保負担金を増加してもらわなければ給付率を増加することはできないということになるわけでありまして、われわれは医療給付を少くとも七割までやっていきたいということに対しましては、全面的に御意見通りでございます。
  62. 鈴木十郎

    鈴木公述人 ただいまの七割給付、あるいは七割まででなくても六割という御意見に対しましては、川澄さんもお答えになった通りでありまして、私どもはこの給付の率をできるだけよくいたしまして、そして給付内容をよくするということは、保険者として当然考えておることでございます。しかしながら、これはただいまも御意見がありましたように、家際上の経済上の問題から、ないかなかそれができませんので、現在五割ということでやっておるわけでありますが、保険税にいたしましても、保険料にいたしましても——私ども保険料でやっておりますが、保険料にしても、もうある限界に達しておりますから、それ以上保険料を上げるわけに参りません。従って、国の補助増額されて、しかもそれが確実に補助されるということになりますれば、私どもとしては給付率引き上げということは長い間念願としておるところでございますから、それはもうぜひ望みたいことでございます。  そこで、ただいま中農以下の方の保険証を利用することの率が少いという御意見でありますが、ただいまもお言葉の中にありました通り、私の方は中都市と申しますか、都市でございますので、農村関係等に見られますような現象は比較的少いのでございます。私どもの見ましたところでは、特に零細な人々しかこの利用がないというような顕著な例は出ていないのでございますが、しかしながら一般的に見ますと、そういうこともあり得るかと思うのであります。そこで、これは何と申しましてもいろいろ零細な人々、主として中産階級以下、そういう階級の方々を対象とした——国保の被保険者というものは大体そうでございますので、従って私どもは、これを向上して参りますためには、どうしても政府の補助というようなこと、さらに言うならば、政府の責任をもってこれらの問題に熱意を示していただきたいと考える次第でございます。  さらに、小田原の場合で、今日までにいろいろ隘路があった点はないか、また五割の給付でうまくいかないような点はなかったか、こういうことでございますが、私どもは幸いにしまして、先ほども申し上げたのでございますが、療養担当者方々から非常に御理解をいただきまして、協力をしていただいているのでございます。そして被保険者国民健康保険に対します理解が非常に深まっておりまして、従って私どもは常に療養担当者のお立場というものを考えながら、運営に当っておりますし、また同時に被保険者に対します考え方も、常にできるだけ行きとどいてやっていきたいというようなことでやっております結果でありましょうか、幸いにして運営が大へんうまくいっておるのでございます。しかしながら、自分のところの例だけあげて考えましても、ほかはなかなかそういかないところが非常に多いという実情も、私どもは見逃すことができないのでありまして、これらの点について、今回の改正がぜひ実現をしていただくことをお願いをするものでございます。  都市の国保におきましての矛盾はないか隘路はないかということでございますが、何と申しましても、都市になりますと住民の移動というようなことも相当ございますし、それからまた私どもの例を申しますと、保険料徴収におきましても、できるだけ被保険者の理解と協力ということを絶えず訴えておるのでございますが、しかしながら、いろいろ家庭の事情もございますから、理解はあっても納められぬというような方があります。そこで隣保組織というようなものをできるだけ活用することによりまてて、お互い同士の保険だから——これはできるだけ強制になるようなことになりませんように、そういう気持を大いに助長いたしまして、納めてもらうようにしておりますので、この徴収率も大へんよくいっておりますが、一体都市におきましてはそういう点が非常に困難があると思うのであります。従って、この事務費補助につきまして私ども長い間要望をしておりますが、都市におきましての保険税あるいは保険料徴収というものは、なかなか困難な点がございますので、この事務を担当いたします者の仕事の分量も非常に多くなっており、またなかなかむずかしさも伴ってくるということでございます。従って、その意味から申しましても、私ども事務費補助というようなことを強く要望いたしておるわけでございます。先ほども申し上げましたが、実質事務費と、今日われわれが補助を受けております事務費との問に相当の開きがありますから、これをどうしても増額をしていただかなければ、都市の国保というものは絶対にうまくいかないと考えるものでございます。そこで、徴収がうまく参りませんと、療養担当者に対します支払いも自然おくれてくるというような結果が起ってくるわけであります。そうしてこの療養担当者の支払いがおくれるということになりますと、理解は持っておっても、患者さんの扱い方も、自然そこに気持の上にも現われてくるでありましょうし、従って被保険者といたしましては、保険証を使っても、どうも気持よく診療を受けられないというような結果が起きるということになりまして、その点が相関連いたしまして、いい循環はよく循環をして参りますけれども一つ悪いことが起こりますと、それがまた循環をしてことごとくが悪くなる。こういうふうなこととで、運営が非常にむずかしくなって参るわけであります。そういう点から考えまして、そのどれかがうまくいかなくなると、すべて相関連をすることがございますので、従って事務費補助というようなものにつきましては、十分認めていただくことが必要ではなかというふうに考えるわけでございます。  そこで、都市におきますと、それぞれ公的の医療機関一般の開業医さんとの間のむずかしさというものも起って参ります。農村や町村におきましても、直診と開業医との関係がございますけれども、都市の場合には、ことに私どもは市立病院の相当大きなものを持っておりますけれども、それとの間の関係の非常なむずかしさも起ってくるということがございまして、公的の医療機関が進んで参りますと、その持っております性格と一般のお医者さん方の性格というものと、そこに幾らか差をつけて考えていかなければならぬのじゃないか。すなわち手術や、そのほか検査でありますとか、そういうものに公的な機関ができるだけ重点を置いてやっていくというようなことで参りますれば、おのずから一般の開業医さんとの分野に異なったものができてくるというようなことで、私どもの方の例を申しますと、そういう点で、これは完全にはいっておりませんけれども、公的の医療機関一般の開業医さんとの間の問題を、いろいろ調整をいたしておるのでございます。しかしながら都市におきます国保になりますと、これらの問題のなかなかむずかしさも起ってくるということを考えておるのでございます、
  63. 滝井義高

    滝井委員 次は未払い金の問題ですが、いつか物の本で読みましたら、新潟県のいわゆる患者の負担する五割の一部負担の未払いが、累積一億数千万になっているというのを読んだことがあるのですが、川澄高田市長は、新潟県の理事長をされておるそうでございますが、この問題は一体どういう工合に現場で処理をされつつあるかということなんです。現在の国民健康保険法、新法でなくて、今までの国民健康保険法は、最終責任市町村にあることがはっきりしておるわけです。はっきりしておるけれども、いわば法律用語で言えば訓示規定のような形であって、保険者が最終責任を持たなければならぬことになっておるが、保険者が全部取り立てて、医師にそのお金をやるということは、現実には厳格には行われていないと私は承知しておるのです。  われわれのところでもずいぶん一部負担に対する未払いはあるが、法律上では保険者の最終責任になっておるが、実際はそれはそのまま放置されておる。あるところで、役場の差し押えをやろうかといろ問題が起ったこともありましたが、実際は差し押えは行われなくて、そのまま、終戦の昭和二十年のころまでは、ほとんど全国に国民保険ができて、そのときの未払いがたくさんあったのです。しかし療養担当保は全部それをたぶん棒引きにしてやって、新しい国保に入っていったと思うのです。そういう点があったのですが、現在新潟あたりではその問題は具体的にどういうことになりつつあるのか。今度の法律では、最終責任保険者にあるがごとく、なきがごとく、実はよく知らないのですが、近藤先生もさいぜんそういう御公述をされておったようでありまして、その点あとで近藤先生にお尋ねしたいと思いますが、未払金の問題は、新潟あたりでは一体どういうことになっておるのか、御説明願いたいと思います。
  64. 川澄農治

    川澄公述人 滝井さんの御質問は、新潟県の未納が膨大な数字になっておるという御質問でありますが、私の記憶ではそうした数字になっておりません。一番最高にあったのが九千万円だと存じております。と申しますのは、御承知通り二十九年から三十年にかけまして町村合併が非常に急速に進行したために、三百七十八町村が百十幾つになったということで、そのために新町村に引き継ぎする場合における整理というものは、まことになっておらなかった。よくやっておったところもありますれども、非常にまずく、経営が困難であった町村も相当あったわけですが、その整理をつけないで、そのまま新町村建設をしたということが、この大きな数字を来たした最も大きな原因だと思うのです。そこで私どもは県と共同いたしまして、何としてもそうした問題を解決しなければ医療担当者に対する信用がなくなるし、今後の運営にも支障を来たすということであるので、実地について私どもも指等し、これを減らしております。現在では四千万円くらいになっておると思いますが、漸次減少しておりますので、ここ一、二年のうちには、ほとんどそうした問題は心配しなくてもよくなるだろう、かように実は考えておるわけであります。
  65. 滝井義高

    滝井委員 未払いが急激に増加をした一つの原因が、町村合併にあったということはよくわかりました。そこで、現在のように最終責任を持つ市町村国保運営上の主体であり、あくまでも皆保険の基礎的なにない手である市町村が、住民が払えなかった場合に、地方自治体でございますので、住民の福祉の増進をやる一番末端の機関である市町村がそれを負えないという、何か理論的な根拠を御説明できれば教えていただきたいと思うのです。
  66. 川澄農治

    川澄公述人 私の方では、最終責任市町村が引き受けられないという理由は別段ございません。今日の法も、また新法も、究極するところは同じところにいくと思うのです。ただ中間における手続上の問題で、いささか明瞭を欠いておるところも私はよくわかっておるのでありますが、それに対しましても、もう少し特例を設けなければならぬ場合も出てくるだろうということを私は考えております。と申しますのは、あらかじめ減免する人、あるいは全額免除する人の指定を受ける場合は別ですが、急病人の場合なんかに、窓口に飛んできたとき、お前の資格はどうなるかという認定は、おそらく療養担当者は急速にでき得ないと思うのです。現に生活保護の問題につきましても、そうした線を引くということに対しましては相当に困難を感じておると思いますので、そうした急速の場合における特例をいかにするかということは、取扱い上の問題として私も大きな疑問を持っておりますが、しかしその問題は円滑に話し合いができる特例ができれば、やはり最終は市町村がある程度責任を責うということに結果的になると思うのでありますから、その点は御質問のように、われわれは全然回避するという意味ではないのであります。
  67. 滝井義高

    滝井委員 市長さんの立場はよくわかりました。  次には、給付期間が今まで転帰までというのが、たぶん七割ぐらいが現行法では保険者の態度であったと思うのです。ところが三年ということになったわけでありますが、さいぜん河野委員も指導をしておりましたが、三年たちますとその病気ではかかれなくなるわけです。そうしますと、その人を拒否した場合に、保険料は当然徴収しなければならぬ。他の病気が発生した場合には保険証でかかれるわけですから、そうしますと、この場合に一体うまく保険料がとれるかどうかということなのであります。この問題が一つ。  それからいま一つは、御存じの通り国民健康保険には停年退職をした健康保険なり共済組合の被保険者が、最終的には全部流れ込んでくるわけです。従って、今後の日本における病気の状態を見てみますと、もはや青年の病気である結核というものはずっと低くなって、六位とか七位になってきている。それで老人病である脳溢血とかガンとか心臓病というものが大きなものになってきております。このことは結局、慢性的な疾患すべてを国民健康保険によってまかなわなければならないという客観情勢が、日本では大体明白になって参りました。そして日本の人口構成は老人が非常に多くなっているという形が出ております。その老人の医療というものはほとんど国民健康保険がまかなわなければならぬ、こういう客観情勢がはっきりしてきた。そうしますと一体日本における老人——ちょっとこういう言葉はどうかと思いますが、特に農村においては今から二百年前に大原幽学があの正条植をやって以来、日本の農村の主導権というものは若い農民が持つのではなくして、やはり一家における御老人が主導権を握っております。従って、農村における権威といふものは御老人なんです。その権威というものが慢性の疾患にかかって、今度はそれが保険から拒否されるということになれば、その権威がかかれないので、保険料が入るかということです。ここに私は一つの大きな問題が出てくるのじゃないかという感じがいたします。非常に老人病がふえてきているという現実、日本の人口の四割を占める農村においては、老人が昔ながらの権威を依然として持っておる。こういう形から考えてみますと、今まで転帰まで見ておるのが七割以上あったのが、これを三年で打切ると保険料徴収が非常に困難になるのじゃないかという心配があるのですが、こういう点どうお考えになりますか。どちらでもけっこうでございます。
  68. 鈴木十郎

    鈴木公述人 ただいまの三年で打ち切るという問題は、お説の通り慢性の病気等になりました場合に、三年で打ち切られるということになりまして、あとの保険料が果して入るかどうかという問題。これは保険料がとれる、とれないという問題ばかりではございません。医療制度の確立という上から考えましても、私どもは三年で打ち切っても仕方がないとは思っていないのでありますから、従って、これらにつきましてもできるだけ患者のためになるようにということが私どもの念願とするところであります。しかしながら、何といってもいろいろ経済上の問題が、今日保険者にとりましては非常に大きな悩みになって参っているわけであります。従ってそれらの経済上の問題というものは、国庫補助増額され、その他いろいろ配慮されて参りますれば、その点につきましては、私どもとしては必ずしも三年で打ち切られるということがいいとは考えておりません。そしてただいま老人病の問題がございましたけれども、これらはどうしてもこれから私どもが、特に力を入れて考えていかなければならぬ問題である。ガンの問題も同じでございます。従って先ほど末高先金ですか、御意見がございまして、医療扶助でそういう場合にいく方法もあるではないかということもございましたけれども、それももちろんございます。しかしながら医療扶助には一応法的に制限がございますから、だれでも受けられるというわけではございませんし、そういう問題がございますから、この三年で打ち切られるという問題については、なおわれわれも十分検討いたしたいと思いますし、同時にこれに対してできるだけ手厚くできますれば、それに越したことはない。問題は経済上の問題が大きな理由だと思います。
  69. 滝井義高

    滝井委員 経済上の問題だけであるようでございますので、それは別途に一つそういう、たとえば三年以上の患者が非常に多いということになれば、そういう場合にやはり調整交付金というものも働かせるというような考え方も出てくるだろうと思います。  その次の問題はこの二重指定、いわゆる健康保険医療機関というものが国保指定医療機関になるという、この問題についてでございます。これはさいぜん末高先生の御意見の中にも、たとえば協力費というようなものを要請をされる、それから直診を作る場合にすぐに反対が出て来る、従って市町村立場は非常に弱いので、医師は圧力団体として非常に強い、だから何とかもう少し上のところで医療機関というものの、何と申しますかゆるめたり締めたりというような調節をしてもらうところが必要だから、県知事の方がいいだろうというような御意見もあったのですが、御存じの通り現在の国民健康保険法で参りますと、診療報酬の額を決定をするのは、健康保険の診療報酬の額を基準にして、それぞれ市町村契約して定めることができることになっておるわけであります。ところがたまたま市町村が、自己の住民によりよき医療を受けせしめるために、たとえば単価でいえば十一円五十銭とか十二円五十銭を上回るもので契約すると、県の保険料が待ったと言って、やらせないわけですね。いわゆる保険者の自主性があるがごとくして、実はないという形が出ておるわけなんです。そういうところから、おそらく協力費というような問題が出てくるのではないかと推測しておるわけなんですが、何かこの健康保険医療機関国保医療機関に右へならえをすることによって、末高先生が言われたような協力費とか、それから直診の反対とかいうことでなくて、何か今までの経験を通じてこういう工合に切りかえた方が非常に利点がある、日本の医療の進展の上に非常に役立つという点があれば、お教え願いたいと思うのです。
  70. 川澄農治

    川澄公述人 先刻、私冒頭に申し上げたときにもその点に触れたのでありますが、地域ごとにおそらく特殊な事情がありまして、これを画一的に論ずるわけにいかぬと思うのであります。現在新潟県におきましてもそうでありますし、私の高田市におきましても、そう痛切に変更しなければならぬという感じを持っておりません。それほど実は医療担当者との仲がうまくいっておるわけでありまして、従って今御質問のような協力費だとか、特殊な何か経費を出させるということはございませんで、私個人としてはそういうことは必ずしも強調しなくてもよろしいと思うのであります。しかし全体をながめますと、新潟県におきましても過去にそういう実例が一、二あったのですが、契約の条項が非常に過酷であって、それを受けなければ辞退するという問題もあったわけであります。ことに他府県の状況等を承わりますと、そうした事例が非常に多い。先ほどもちょっとどなたかおっしゃいましたが、保険者の弱いところはすべて圧迫を受けておる、それからまた保険者の強いところはそうした問題がないというような御意見もあったのでありますが、そうした面もおそらく相当に全国にある実例だと思うのでございます。  そこで今回これが指定されるということは、私は一つの基本的な考え方として、先生と別な考えになるかもしれませんが、各種の社会保険は統一さるべきものだというふうに、従前から実は主張して参ったのであります。十幾つかあるそうでありますが、いろんな社会保険が個々の立場でやっておるということは、非常な矛盾がある。しかもその給付内容におきましても、取扱いにおきましても、徴収費におきましても、区々別々であるということに対しては、私は国民保険という線をまず大きく打ち出すにはそれらを統一すべきである、こう考えるのであります。それが直ちに実現しがたい現況でありますので、今回の新法によりますと、まずもって健康保険に近づけようという根本趣旨がはっきりわかっておるようでありまして、そうした面で健康保険国民健康保険との医療機関というものを同一の線に持っていこうという趣旨には、私は賛成せざるを得ないのであります。またこうして医療機関を自由に利用するという立場から考えましても、これは当然そうあるべきだと思います。むしろ私は今まで市町村長の選定にまかしておった権限が縮小されることになるので、理論から申せば申し分のないことであります。これは当然そういう線に持っていかなければならないことだ、こう考えておるわけであります。
  71. 滝井義高

    滝井委員 私も各種保険を統合していくということは全く同感なんです。現在各種保険が各種割拠の形でばらばらに並立しておるところに、われわれの税金が実にむだに使われておるわけであります。従ってこれをすみやかに統合すべきであるという意見というものは、相当強く出てきておるわけであります。よく政府がなかなかやれないと言うが、どうしてやれないかというと、日経連なり経団連という大きな企業の団体というものが反対をしておるわけであります。小さいところはみんなそれを望んでおるわけであります。なぜそういうことになるかというと、結局こういう政策が一個の労務政策として利用せられておる。日本の社会保険昭和二年に労務政策として発展をしてきて、そしてその発展をしてきたものがそのままの形で、昭和二年にできた、あのかたかなで書いた健康保険法の条文が、まだこの二十世紀の原子力の時代に生きておる、こういうことなんです。だからそういう点については、全く皆さんとわれわれは同じなんです。ぜひ一つ保険者団体としても、すみやかに被用者保険の統合をなすべしという声を起していただきたいと思います。被用者保険国民保険と二本立ならば、実にすっきりしてくると思います。そういう点は、全く今言われたことは同感です。しかしただ健康保険は、御承知通り事業主が保険料の半額を負担しておるのです。ところが国民健康保険はそれがないのです。ここにやはり理論的にいって、国が事業主にかわっても、少くても事業主の出している半分くらいは出してもらわなければ、貧しい農村なり都市の、ボ—ダ—・ライン層をたくさん持っている五人未満の事業所というものを国保に吸収していくのですから、これはなかなか不可能だと思います。そういうところからも、やはり国庫負担の理論が出てくるのではないかという感じがする。全く今の高田市長さんの御意見、私は同感ですから、どうか一つそういう方向に市町村も行っていただきたいと思います。  次に近藤先生にお尋ねしたいのですが、末高先生にお尋ねしたところ、どうも自分は経済学者であるので条文のことはよくわからないという意味の、結論的には御答弁があったようですが、どうも私は頭が悪いのか、この国民健康保険法案を読んで見て、療養給付というのは一体何なのかということがよくわからないのです。療養給付という定義がどこにもない。三十六条なんかを見てみますと、「市町村及び組合は、被保険者の疾病及び負傷に関しては、次の各号に掲げる療養給付を行う。」こう書いてありまして、そうしてその二項には、入院をしたり、それから看護というようなものは、これは保険者が必要と認める場合に限って給付になっておるわけなんです。で、一体そういう三十六条のような形になると、その場合の一部負担金というようなものは給付になるのかならぬのかということなんです。たとえば入院とか看護というのは、非常にこれは現在の日本の社会医療では一番金を食うところなんですが、その金を食うところが給付の対象になったりならぬだりするということなんです。そうして、これは健康保険と一緒にしますぞ、こうおっしゃっておるんですが、どうもそういうところから見ると、さいぜん近藤先生も、何かどうもこの条文を見るとはっきりしないということをおっしゃっておったのですが、私も、どうもはっきりしない。療養給付費の中に一部負担金が包含をせられるという明白な条文がどこにもない感じがするんです。私の見落しかもしれませんけれども、そういう感じがするんですが、近藤先生は法律家じゃないので、また末高先生のように断わられると工合が悪いのですが、何かさいぜんの先生の御公述の中にも、給付の中に一部負担というものを無理に認めるような態度がこの条文にはどうもあるような感じがするというような御公述があったような感じがするんです。今までの慣例でやっておったからそうするのだといえば、これは話が別ですが、どうも条文の中にそういうものがないような感じがするんですが、そういう条文がはっきりしたところがあれば、お教え願いたいと思うのです。
  72. 近藤文二

    近藤公述人 私、末高先生と同じ経済方面の勉強をしておるものございまして、法律の専門家でありませんが、従って間違っておることを申し上げるかもわかりませんが私の知っております限りで、私の意見を述べさしていただきますと、この国民健康保険法では、療養給付というものにつきまして特別の説明もございません。これは、おそらく健康保険法の第四十三条に、「被保険者ノ疾病又ハ負傷ニ関シテハ左ニ掲グル療養給付ヲ為ス」として、列挙してございますが、そういうものをおそらく意味するのではないかというふうに考えるのでございまして、一部負担の問題は国民健康保険法では、第八条ノ九のところに書いてあります。この八条ノ九によりますと、「保険者療養給付ニ要スル費用ノ一部(以下一部負担金ト称ス)ヲ其ノ給付ヲ受クル者(給付ヲ受クル者世帯主タル被保険者に非ザル場合ニ於テハ其ノ属スル世帯の世帯主タル被保険者)ヨリ徴収シ又ハ其ノ者ヲシテ療養担当者ニ支払ハシムルコトヲ得」と書いてございます。これは現行法でございます。保険者療養給付に要する費用の一部を、その給付を受くる者から徴収する。すなわち保険者徴収の原則がここにうたってございまして、そうして例外的に療養担当者に支払わしむることを得というようになっておるのでございますが、この場合の解釈は先ほども申し上げましたように、療養給付というものは本人が一部負担するものも含めて、全部を療養給付に要する費用というふうにしか了解できません。従いまして、一部負担給付内における費用の一部を被保険者負担する、従って保険者がこれを徴収する責任があるというふうに一応すっきりしておるのじゃないかと思います。この点につきましても多少疑義があるらしいのですが、大体すなおに読めばそれでわかると思うのです。これに対しまして健康保険法の方は第五十九条ノニのところに、「被扶養者ガ第四十三条第三項各号ニ掲グル病院若ハ診療所又ハ薬局ノ中自己ノ選定スルモノニ就キ療養ヲ受ケタルトキハ被保険者ニ対シ家族療養費トシテ其ノ療養ニ要シタル費用ニ付之ヲ支給ス」「家族療養費ノ額ハ療養ニ要スル費用ノ百分ノ五十二相当スル額トス」というふうに書いてございまして、これは給付外というふうにはっきり規定しておるわけであります。従って同じ一部負担と申しましても、健康保険法の場合と現行の国民健康保険法の場合とでは違っておる。ところが今回の御提案になりました新しい法規によりますと、第四十条におきまして「第三十六条第三項の規定により指定医療機関から療養給付を受ける者は、その給付を受ける際、当該給付につき第四十三条第二項又は第三項の規定により算定した額の二分の一に相当する額を、一部負担金として、当該指定医療機関に支払わなければならない。」と書いてございます。前段の解釈からいけば、現行国民健康保険と同じように、療養給付というものについての考え方は、本人の負担の分も含んでおりますので、ここに一つの矛盾が出てきておるのじゃないか。本来保険者徴収すべきものを、かわりに医療機関徴収するのならばわかっておりますが、この書き方は、その辺がどうも責任の所在がはっきりしていない、こういうあいまいな法律は困るということを私はさっき申し上げたのであります。しかし先ほど市長さんなんかのお話がありましたように、そういう取扱いをすると、非常に減免のときなんかは実際上困るというお話でございますが、医療機関に診察を受けたときに、金が払えないというような場合があり得るといたしまして、そのときは金を払わずに済ましておきまして、そうして際実際上その人が払えないというものにつきましては、減免の措置保険者がとりまして、本人から徴収することを免除する。しかし減免の措置必要なしと考えられるものにおいては、保険者がそれを徴収に行けばそれでいいのであって、そういうことをやれば先生方の方で、そのときにとられなかったのは先生方の方が同情してとられなかったのか、ほんとうに払えないものからとられなかったのか、あるいは勝手で、払わぬものからとられなかったのかということがはっきりいたしますとともに、保険者の最終責任において減免措置をやるという筋道も立つと思います。であるから、これはやり方によって現行法の考えで押していってもやれるのじゃないか、もしそれがいかぬというならば、はっきりと現在の健康保険法のように、保険料は五割しか出さないのだ、あとの五割は保険給付でないのだというふうに規定してしまいませんと、医療機関に最終責任を持たすというのは立法上疑問が出てくるのではないか、しろうとの考えでございますが、私はそういうふうに考えます。
  73. 滝井義高

    滝井委員 大体よくわかりました。もう一つの疑問点は、最終責任がはっきりしていないが、していないにもかかわらず、一応今まで、この新国民健康保険法では最終責任保険者にないのだ、療養担当者にあるのだ、こういうことが世間一般にいわれておるわけです。この条文から。ところが最終責任療養担当者にあると世間にいっておるにもかかわらず四十二条においては自由自在に保険者がこれを減免したり猶予したりすることができるということなんです。そうするとそういうものならば、保険者が自由自在に減免をし猶予し自分の勝手な認定によってやることができるならば、どうも四十二条を見ると、やはり最終責任保険者かなという感じがしてくるのです。この点、この四十二条の感じはどういうお感じでございましょうか。
  74. 近藤文二

    近藤公述人 その点、私まだはっきりわからないのですが、この第四十二条の場合の減免という場合は、もう少し内容が広いのでないかというような気がするのですが、この四十条に関連のあるものが四十二条に出ておるとするならば、四十条と四十三条の考え方は法律的に矛盾すると思います。
  75. 滝井義高

    滝井委員 どうもそこらあたりわかりませんので、政府に尋ねさせていただきたいと思います。  次にもう一つ近藤先年の御意見をお伺いしたいのは、国民保険実施いたしますと、私の経験を通じてみますと、同じようなスケ—ルの、同じような財政の市なり町なりで、一方は国保実施し、一方は国保実施していないと、生活保護の内容というものががらっと違ってくるわけです。国保実施していないところが生活、医療扶助が多くて、実施しているところは少いのです。国保がそれだけ吸収していっておるわけです。皆保険をやると、全国でおそらく二、三十億くらいの生活保護費は優に浮くだろう。東京だけでも相当浮くといわれております。そうしますと、生活保護の金は、郡部の町村においては大体県が二割を持つわけです。市は市自身が二割持つ。そうしますとそこから、皆保険実施したために、政府の出す生活保護の財政支出がそれだけ軽減されてくるわけでございます。同時にまた県なり市の財政支出も、その分軽減されるわけです。二割分だけは軽減されるから、そこで政府なり知事が指定をするということになると、県が幾分の財政負担義務的に、国保をやる場合には出すということが、財政的にも生活保護の関係で余裕が出てくるので、理論的に出てくるような感じがするのですが、国保実施の場合における生活保護と国保との関係というものを、近藤先生どういう工合にお考えになっているのか、それを一つお教え願いたいと思います。
  76. 近藤文二

    近藤公述人 国民健康保険と生活保護の関係は、いろいるな問題を含んでおるのでございますが、生活保護法で医療扶助を受けるような方があります場合には、国民健康保険実施されておりますときには、その本人の負担の分を生活保護法からの医療扶助として出すという行き方が筋合でありまして、現にそういう方法がとられておるのですが、それが手続でおくれたりいたしますので、そういう点を将来ぜひ改めていただきたいという希望を一つ持っておるのでございます。それは一応やり方の問題でありますが、今先生のおっしゃった国民健康保険のあるところとないところとの違いは、確かにあると思います。先ほどのお話では、七割に給付引き上げるということは経済的、財政的に困難だと市長さん方がおっしゃっておりますが、七割給付にした場合に、どういう形で困難が出てくるか、またどういう形で財政負担が出てくるかということを、それぞれの都市において研究しておられるかということを私はむしろ伺いたいと考えておるものでございまして、この費用が五割から七割に上るから、それだけ上るのだ、あるいは、五割が七割に上れば当然受診率が上る、こういうようなお考えもありましょうが、受診率が上りまして早く病気がなおるということになると、それだけ財政的に費用が少くて済むということも考えられます。ことに生活保護法で医療扶助を受けるということは、とどのつまりのときにそういう形が出てくるのを、国保でもってあらかじめ早いときに処置するということになりますと、当然今滝井先生のおっしゃいましたように、医療扶助に要する費用というものは浮いてくるはずであります。そういうものを市町村なり都道府県なりが、その軽減した財源を国民健康保険の方に、一般会計の繰入金のような形、あるいは補助金のような形で出すということは当然のことでありまして、そういうふうにして浮いた金をそのまま知らぬ顔をしているということではないのであります。従いまして、そういう意味において大蔵当局が反対しておられるということでありますが一応自治体からの国民健康保険に対する繰入金というような制度も、私は考える必要があると思います。従いまして、結論的に申しますと、国民健康保険が普及すれば当然今おっしゃったような生活保護法の費用も減ってくる、その財政的な調整というものをもっと筋道を立てて考える、それがいわゆる財政的な補助として国保運営を前進させ、七割給付引き上げの根拠にもなるというように考えております。
  77. 滝井義高

    滝井委員 ありがとうございました。  最後に蓮田さんに一つたけお尋ねして、同僚諸君がたくさんおられますので終りますが、今回甲乙二表の診療報酬表で十月一日から健康保険なり国民健康保険の診療報酬の請求が行われることになったわけでございます。これで問題になりますのは、甲表は今のところ請求明細書に何も書かなくていいことになっておりますが、乙表はいろいろのことを今まで通り書くことになりそうです。蓮田先生はいろいろ医療の問題は御経験になって日本医師会理事に就任されたと思いますが、審査委員会の意向としては、一体甲表に何も書かずに審査ができるかどうかということです。甲表に何も書かずに、保険者は黙ってこれで支払えるものかどうか。これは蓮田さんに、審査ができるかどうかを一つ専門的な立場からお尋ねしたい。それから保険者方々川澄さん、鈴木さんにお尋ねしたいのですが、甲表はこれから何も書かぬわけです。注射の名前も何も書きません。そういうことでお支払いできるかどうか、この点です。
  78. 蓮田茂

    蓮田公述人 お答えいたします。審査委員会の問題につきましては、午前中に私るる申し上げた通りでございますが、その診療報酬請求書の医療内容が果して医学的に適正なものであるかどうかということを審査するのが審査の目的でございます。従いまして、今回のような形になりまして、あの甲表で初診時基本診療料ということで、小さな行為等が全部書かれなくなってくるということになりますと、その内容がどういうものであるかわからないわけでございまして、従って審査は不可能になって参ります。そういう意味で、私の承知いたしておりますところでは、審査委員会としては、甲表に何も書かないでは審査は意味がないというような御意見が多分に出ておりますことを承知いたしております。
  79. 川澄農治

    川澄公述人 まだ始まったばかりで、甲表、乙表に対する書類の書き方等につきましては、私はまだ存じておりません。しかし審査委員会の中には医療担当者も当然入っておられますことでございますので、そうした技術的な問題は当然解消されていくものだと思います。また解消されないで審査ができるわけのものでもないと思います。何らかの方法で解決されるのではないかと思います。その場合に医療担当者が入っておらないということになりますれば、そういう問題に支障を来たすわけでありますが、当然参加されますので、いいのじゃないかと考えております。
  80. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと保険者としては審査委員の中に医療担当者が入っておるので、その審査委員の人たちが大体審査ができるということになれば、今のは甲表の問題ですが、乙表についても大体右へならえしても差しつかえないだろう、こういうことになるのでしょうか。
  81. 川澄農治

    川澄公述人 そうなります。
  82. 園田直

    園田委員長 八木一男君。
  83. 八木一男

    ○八木(一男)委員 簡単な数点だけ御質問申し上げます。  まず鈴木さんか川澄さんにお伺いをいたしたいのでありますが、私どももいろいろ保険者の方からの御陳情を受けておりまして、今まで保険者方々がいろいろ財政的に御苦心になった点を十分に伺ってそれを乗り越えて国民健康保険を一生懸命やっておられることに対して敬意を表するのでありますが、この要望事項の中に、結核の医療費に対する全額国庫負担とか公費負担とかいう要望が入っておらないのでございますが、それについてどのようにお考えでございますか。どちらでもけっこうでございますが。
  84. 川澄農治

    川澄公述人 結核予防につきましては、治療費が非常に増高いたしておりますので、これはこういう負担はしてもらわなければならぬということで、別個に私どもは常に申し上げておるのでございます。しかも国の補助金に対して県が義務的な負担をしないことによって市町村が非常な迷惑をこうむっているという事柄からして、これは関連的な問題として当然国費、県費によって助成をしてもらわなければならぬという考えを持っておりますが、国民健康保険そのものに対するものと切り離して陳情しているつもりであります。
  85. 八木一男

    ○八木(一男)委員 切り離して御陳情だそうでございますので、それでけっこうでございますが、私どもの方にも国民健康保険法の今度の三割ということを陳情されておりますし、いま一歩前進の意味で、今度国庫補助について幾分の増額した案を早く通してくれという御要望を伺っておるわけでありますが、私ども考えでは、御要望が非常に遠慮がちにすぎると思うわけでございます。というのは、社会保障制度審議会の例を申し上げますと、これは与野党の委員が全部入りまして、それから学識経験者が入られる、各団体の代表が入られる、そこでいろいろと論議をして国民健康保険法に対する答申も出たわけであります。そこで先ほど末高さんのいろいろなお話もありましたが、現実的な、政府でほんとうに決心したならばできるという考え方でこの議が行われ、答申、勧告が行われる。そこでは少くとも国民健康保険法は三割の国庫負担をする、それと切り離して、お出しになるのではなくて、それと密着して、同時に結核医療費全額公費負担制度審議会の勧告はそういうことをうたってあるわけです。切り離してはいかぬということをいっておるわけです。そういたしますと、これは結核患者の数も違うでしょうし、組合々々によって違うと思いますけれども、結局換算いたしまして、両方合せまして五割近くの公費負担、そういうことを勧告しておるわけでございます。それが私どもの感じでは、財政に非常に苦心をされておられます保険者団体の方で、三割でできるのだというふうに受け取れるような陳情の仕方しかあまり聞いておらないのでございますが、その点で、もっと遠慮なしにやられたらいいんじゃないか、少くとも今度政府が出してきたような少い補助でなしに、段階としても、三割即座にやるべきであるというくらいの強い態度でなさっていいのではないか、そう思うのでございますが、それにつきまして一言。
  86. 鈴木十郎

    鈴木公述人 ただいまの御意見は、私ども伺っていまして非常に意を強うする次第でございますけれども、何分にも先ほど来申し上げておりますように、国保が今日まで非常な苦しい歩みを続けて参りまして、従ってずいぶん陳情に陳情を重ねて参りましたが、いつもその陳情で、私ども要望いたしますことが一部でもいれられればよろしいのですが、なかなか取り上げていただけないというような状態でございます。もちろん補助も二割補助されるということもすでに法律化されましたし、事務費補助等も増額をされて参っておりますし、そのほかいろいろなものが増額をされて参りましたけれども、あまり大きく出してけられてしまうよりもというような、臆病になっておる考え方がありますことは事実であります。しかしながら私どもはこういう機会でございますから、これに対してわれわれが平素要望しておりますことが十分盛られますならば、これにすぎた幸いはないと考えております。  ただいまの結核の公費負担の問題は御説の通りでございますが、これらも一どきにあまりたくさん並べるよりも、とにかく現在の案を通していただきたいということが、さしあたりの強い要望になったわけでありますが、その上さらにだんだんお願いをしたい。こういうような、非常に内輪過ぎるかもしれませんけれども、率直に申しますとそういうことであります。
  87. 八木一男

    ○八木(一男)委員 保険者団体の方のお話を伺っておりますと、この御心配がすべて財政の問題につながっておるように思うのであります。けれども保険者方々といたされましたら、財政が当面非常に苦しい状態にありますから、その御心配がそこにいかれると思いますけれども国民健康保険をやっていくという点の一番根本の問題は、国民健康保険がうまく運用されて被保険者のために非常にりっぱな制度であるということが先のように思います。国民健康保険に熱心なお二方は、もちろんそういう前提を持っていらっしゃると思いますが、きょうのところは時間の関係財政を主眼にして言われたと思いますが、その点についてどちらの方でもけっこうでありますから、もう一言お願いしたいと思います。
  88. 川澄農治

    川澄公述人 目前の窮迫な事情が財政にあるものですから、勢いそこへしぼらざるを得ないのでありますが、もちろん私たちは市の住民のために国民健康保険が真に社会保障の重要なる一環をなすものであるという意味におきまして、これを育てるためには重大な関心を持って努力をしておるわけであります。しかし今申し上げます通り財政の面は勢い保険料に直結いたしておりますので、保険料が一体どこまできておるか、まだ取り得る可能性があるかどうかということが目前の問題になりますので、勢いそこから出発して論ずるような格好になります。しかしどこまでも国民全体の医療中核をなす国民健康保険法の育成に対しましては、最大の努力を払うつもりであります。
  89. 八木一男

    ○八木(一男)委員 たとえば先ほど問題が出ましたような、転帰までの給付を三年に限定しようという案の内容がございます。こういうことは被保険者にとりましては、一部その点だけ後退することになるわけであります。そういう点も、ほかの財政と少し豊かにしようという案とまざって出ておりますので、それで総体的に見て早く通した方がよかろうという御意見でございましょうけれども、このようないい点と悪い点がごたごたになった点については、いい点はいいけれども、悪い点はやめにした方がよかろうというような、保険者として被保険者に対する親心からそういう態度を示していただいた方が、よりいいのではないか、こう私ども考えるわけでございます。大へん恐縮でございますが、その点についてお伺いいたします。
  90. 鈴木十郎

    鈴木公述人 私どもはただいまも、非常に遠慮がちに陳情などをしてきたと申し上げましたけれども、これはただいま川澄さんのおっしゃったた通り、私どもといたしましては国民医療制度の確立、社会保障制度の確立ということで、強い熱意を持ちましてこれに当って参っておるわけであります。それは全く住民の福祉のためにということ以外にないのでありまして、特に私ども保険者だけのためにということは毛頭考えていないのであります。財政上の問題を申し上げますことも、財政の点で非常にあやうくなりますと、結局私どもが福祉を念願しておりましても、そのようなことになり得ないということも憂慮いたしますから、従って私どもといたしましては財政のことも申し上げる次第でございます。ただいま、後退するような部分があっても、この際は一応これを通したいことから、そういうふうな態度に出るのではないかという言葉でございますが、その点は私ども、いかなる場合でも後退をするような部分につきましては、それが後退をしないようになればこれに超したことはないわけでありまして、そのため片方のいろいろの財政上の問題等におきましてお願いしている部分が、さらにそれで両立していきますならば、これに越したことはないわけでございます。従ってただいまの御意見に対しましては、私どもはぜひ一つあらゆる面においてこれが内容が向上いたしますためにお願いいたしたいと思います。
  91. 八木一男

    ○八木(一男)委員 お二方の御答弁で非常に意を強ういたしましたが、どうかそういうお気持を端的に、もっと強力に方々で現わしていただくと非常にけっこうだと思います。  もう一つ、診療担当者の方々の御主張と保険者方々の御主張は、私ども聞いていまして、歴然と違う点があるわけでございます。しかし保険者の方といたされましては、もちろん被保険者のためが一番おもな問題であって、被保険者の方をよくするために診療担当者の協力を求められる立場におありになるわけでございまするから、財政の問題に大きな影響のない限りにおいて、診療担当者の方々立場が立つようなやり方の方が国民健康保険組合の運営が非常によくなって、本来の目的、趣旨に沿うと思うわけでございます。そういう点で一つ一つについていろいろ問題があると思いますけれども財政の面が解決されたならば、そういう面については診療担当者が快く協力されるような方法をとりつつ、保険者の方も御協力になっていただければ非常に問題がスムーズにいくのではないかと思うのですが、この点について、個個の点はけっこうでございまするが、総体的にお気持を聞かしていただけましたら非常にけっこうだと思います。
  92. 川澄農治

    川澄公述人 指定機関の問題が非常に批判の的になっておるようでありますが、私たちは先ほども申しましたように、保険者療養担当者、被保険者、三者がほんとうに渾然として一体にならなければほんとうの成果を上げることはできないという信念を持っているわけであります。そのために常に療養担当者との問題を極力避けることに注意はいたしておるのですが、しかしさっきも申しましたようにまた特別な地域におきましてはいろいろな問題が発生しておりますので、そうした点でいろいろ政府当局もこの点に非常な苦心を払われておることと思う。先ほど医療担当者蓮田さんの御意見の中にも、登録制になればいいんだというような御意見もあったように承わっておるのでありますが、私は法律的に指定がどうか、登録がどうかというようなことはそう詳しくここで考えておりません。先ほどお話もありましたように、登録制も指定制も究極するところは同じ面にいくのではないかというような御説明も末高先生がされたようでございますが、そうした問題も私は適当な国の責任において、また皆さん方の審議の過程において適当に調整をされることが望ましいことであって、私どもはどこまでもみぞを作らないでいこうという気持は十分持っております。
  93. 八木一男

    ○八木(一男)委員 保険者の方に対する御質問は終りまして、近藤先生に伺いたいと思います。先ほど末高先生に伺ったわけでございますが、むしろ先に近藤先生に伺いたかったわけでございます。ところが末高先生はお急ぎなので、順序が逆になってしまって非常に残念なのでございますが、先ほどの社会保障制度審議会の答申についての手続の問題でざいます。この審議会では近藤先生もちろんその中核になっておられまして、私もこの審議に参画をいたしたわけでございますが、ここで、答申には明らかに数点のことが具体的に出してあるわけでございます。この前の国会でありましたならば、手続的に間に合わないから国会の審議の中てやるというようなことも——これはいけないのでございますが、まだそういう政府側の逃げ言葉も許し得る余地があったかもしれませんが、それから六ヵ月もたって、審議会が答申したことを一つも入れずに、原案のまま出すことについては、非常に厚生省の出し方の手続が間違っていると私は感ずるわけでございますが、近藤先生の御意見一つ伺いたい。
  94. 近藤文二

    近藤公述人 先ほど八木先生のおっしゃいました設置法との関係で問題にいたしますならば、設置法違反とか何とかいう問題ではないと思います。しかしわれわれがせっかく苦心いたしまして答申しましたところのものをほとんど無視されたような形になったということに対しましては、まことに遺憾であるとともに、政府としましてはやはり道徳的な責任はある、こういうふうに考えておるのであります。
  95. 八木一男

    ○八木(一男)委員 そういうことについて私どもは政府の責任を追及しなければならないと思いますので、そういう観点に立って、この法案審議を私どもやっていって、そういう非常に大切な機関審議された意見を重んじてこの法律審議をやって参りたいと考えておるわけでございます。そういうことをすべきだと当然お考えだと思いまするが、それについて伺っておきたいと思います。
  96. 近藤文二

    近藤公述人 それはもうおっしゃる通りだと思います。
  97. 八木一男

    ○八木(一男)委員 ほかの方の御質問に出ませんでしたので、その点だけを申し上げますと、国民健康保険について、当然これをやられる前に健康保険の五人未満の事業所に対して、健康保険を適用するということを当然やらなければならないと思うわけでございますが、それをやらないでおいて国民健康保険を強制適用する、それでその問題を流してしまって、当然健康保険制度の適用を受けるべき労働者を国民健康保険でほうっておくというような考え方が、この背景に現われているように思うわけでございますが、この点について近藤先生の御意見を伺いたいと思います。
  98. 近藤文二

    近藤公述人 その点は私も社会保障制度審議会のときに厚生当局に質問したのでございますが、その後私の知っております範囲では、当然適用すべき五人以上の従業員のあるところで漏れておるものがやはりかなりあるんじゃないかと思うのです。その点につきましては法律的に申しますと、二年間さかのぼって事業主の支払うべき保険料を払い込まなければならないという問題が、特に零細企業の事業主としては非常に苦しいという実情がありますので、なかなか把握適用が困難であると思うわけでございますが、大阪等ではできるだけ便宜な方法を講じまして、そういうものは当然漏れないようにするという措置社会保険出張所を通じてやっておられるようであります。また五人未満の任意包括加入の場合におきましても、従来のように、その都道府県の平均標準報酬以下であるという理由から適用を認めないというような態度は、最近改められておる。私の知っております大阪の場合はやっておられるようでございますが、ほかの地方については遺憾ながらこの点存じておりません。しかし、厚生省は前よりは多少前進してやっておられるように私は受け取っておるのであります。
  99. 八木一男

    ○八木(一男)委員 次に診療担当者の方にお伺いをいたしたいと思います。先ほど指定の問題あるいは登録の問題について、あるいはまた窓口払いの最終責任の点につきまして末高先生から相当こまかく、いろいろの他国の例などもあげて御説明を受けたわけでございますが、それについて診療担当者の側でもいろいろ御研究だと思いますので、一方的になりますと審議に困りますので、その点について診療担当者の方でだれかもし御意見があったら伺わせてもらいたいと思います。
  100. 蓮田茂

    蓮田公述人 先ほどから指定と登録の問題が出ておりますので、これについて申し上げます。私どもが今日修正をお願いしておりますのは、医療機関指定がいけないと言っているのでございまして、ただ単に指定と登録とばく然としておるのではない。医療機関指定をやめていただきたい。つまり医療の際の主体は医師にあるのでございますから、医師保険者ないし医師対患者の関係に置いてもらいたい。療養給付担当するという形で機関指定するという形をやめていただきたいということをお願いしているわけでございます。その点が先ほどから伺っていますと、指定と登録という点が出ますと、何を指定し、何を登録するかということで、ちょっと御混乱といっては失礼でございますが、ちょっとそういう感じを受けますので、この点をはっきりいたしておきたいと思います。  それから一部負担金の最終責任の問題でございますが、私は法律の専門ではございませんのであまり申し上げることは失礼と存じますが、私どもがこれまで経験して参りましたところで、少し意見を申し上げさしていただきたいと思うのでございます。現行法では、先ほどから各公述人の方からお述べの通り、一部負担金の最終責任は、市町村経営の場合、それから組合経営の場合には、最終責任保険者にあるということははっきりいたしております。ただ社団法人経営の場合だけ、われわれ医療担当者と特定な契約等によって、最終責任までも委譲できるという法律的の見解だということを承わっております。従って私どもは今回は、そういう形からやはり最終責任保険者が打つ形にしていただきたい。しかも今度の法律を見ますと、先ほど御指摘のように四十条と四十三条との関係では、ちょっとこまかいことを申し上げて恐縮でございますが、四十条では、被保険者に五割の一部負担金窓口で払いなさいと義務づけております。四十三条では、私ども医療担当者は、被保険者の払わなければならないところの一部負担金を差し引いた額が、われわれが市長さんに請求できる額だときめられております。そうしますと、一部負担金を被保険者が払おうが払うまいが、われわれは五〇%しか給付できないという格好になりまして、一部負担金は全然保険者との関係に置かれていないと私どもは解釈する。ところが四十二条を見ますと、一部負担金保険者の方が減免できるように書いてございます。そうすると、どうもこれは一部負担金が最終に保険者にもあるようにも見受けられるのであります。どうもこの点で、この法律でははっきりしておりません。そこで私どもは経済上の実態をながめてきておるのでありますが、現在国が医療給付費として負担しております二〇%というものは、保険者負担分の五割、一部負担金等を加えた医療費の総額に対して二〇%でございます。従ってその意味からも一部負担金は当然保険者責任があるのである。国が全体に対して負担をしておるのだから、当然一部負担金もその療養の中に入るものであって、保険者責任であるという解釈をとっております。それらの点から、しかし私どもは決して一部負担金を故意にとらないということはいたしたくないので、とる努力は十分するが、せめてわれわれが十分努力してとれなかった分だけでも、一部負担金の最終責任を負うようにしていただきたい、こうお願いしておるのでありまして、午前中に私が申し上げました点に補足的な分と思いますが、意見として申し述べさしていただきました次第でございます。ありがとうございました。
  101. 鹿島俊雄

    鹿島公述人 八木先生の御質問にお答えいたします。指定医療機関の問題につきましては先ほども申し上げましたが、私どももこの保険医療契約につきましては、保険医療担当者保険者との任意契約により何ら差しつかえがないと信じます。しかもこの指定医療機関の付設せられました理由等は、きわめて私は薄弱であると思う。どうしてこれをやらなければならないのかという点につきましては、どうも納得のいく点がございません。従いまして従来通り行われておりました、特にこの国民健康保険等におきまする成り立ちの実態を見ますと、その給付内容につきましても、直ちに健保並みの給付も不可能であるというふうな現状も見られましたし、特にこの点、任意契約の線にこれを持っていっていただきたい、かように考えるのであります。また機関指定一つの理由として、その機関責任を、たとえば医療報酬の請求上の責任を明確にするとかいうような、いろいろな問題もありましょうと思いますが、その場合には、機関の登録医の連帯責任ということになれば目的は達せられると思います。従いまして個々の登録医の責任のみでなくても解決はつくと思います。従って私どもはこの指定医療機関制度には反対である。特に個人に関しましては二つの性格が与えられる。他方の取り消しがありましても、たとえば指定機関取り消しがありましても、保険登録医の資格が剥奪されても指定機関が残るということは、当然個人としてはきわめて不合理なことであると考えております。そういった面から特に指定医療機関制度を残すという場合に関しましては、個人に関しては絶対必要がない、かように、考えるものであります。それから支払いの報酬金の最終責任の問題につきましては、私どもといたしましては医療法等の規定により、また医療人として、一部負担金等の支払いが不可能であるというような初診時の被保険者に対して、診療拒否もできない、これはまたすべきでないと考えるのであります。従ってこういう場合の責任は、当然保険者にはとっていただかなければならぬ。また一部負担金というものは医療給付の、当然受けるべき被保険者の受診権の中において、保険料の追徴と等しいものと私は考えております。従いましてこれは当然保険者側において責任をもっていただくべきものである。給付外診療に関するものではないのであります。従いまして給付内診療に対する被保険者保険料の追徴的なものでもあるとすら考えております。従いまして、そういった面から最終責任保険者において持っていただく。私ども決してこれを無限に乱用する意思はございません。どうしても取れないという場合にこれを確保するということが趣旨でございます。この点をお願いする次第でございます。
  102. 水野睦郎

    水野公述人 今八木委員から質問になりました点につきまして、私どもといたしましてはちょっと変っておりますので、その変っておる点を申し上げたいと思います。たとえば指定医療機関といいますのは、開設者というものが開設するわけでございますが、薬局の場合には薬事法の規定によって、同一の開設者で非常にたくさんの支店を持つことができるということがございます。ですから大阪における開設者が東京に支店を持つことも可能である。そういうことを考えますと、開設者が機関指定された場合に、実際の責任というものはほんとうに持てるのかどうかということもちょっと疑問になります。あとは別に申し上げることはございません
  103. 小林進

    ○小林(進)委員 私午後からは用事がありまして出たり入ったりしておりましたので、あるいは同僚委員諸君の質問と同じことを繰り返すようになるかもしれませんが、この点は一つお許しをいただきたい。  それでは保険者代表として小田原市長さん、今一人は担当者の代表で蓮田さんにお願いすることにいたします。これは私のは何も新しい問題ではございません。先ほどから話を承わっておりましたら、いろいろ細部の条項の希望や意見が述べられましたが、大綱から見ますと、問題が四つに分れておるというふうに私は解釈をいたしまして、そのうちの三割を国庫負担実施してくれ、七割の給付の実現をしてくれという点は、全会一致で意見の相違はない、私はかように拝承をいたしました。若干末高教授の間に違いがあるかと思いたしたけれども、せんじ詰めていいましたら、ちっとも違っていないのでありまして、この点は公述人方々に問題はないのでありまするが、今度は一番大きな相違点といいますと、あとの二つでございまして、いわゆる一部負担金の一合の保険者を支払いの最終責任者として明確に義務づけてくれというのが医療担当者の方の強い御希望でございますし、保険者の方は、なに窓口でいいじゃないかというような御意見、この二つの意見をお聞きいたしまして、もっと理り下げていったら、これはどうも相一致しない本質的な問題があるのではないか。なぜ一体窓口の支払いにとどめてもらわなければならぬのか、なぜ一体最終責任者保険者にしてもらわなければならないのか。とにかくこの点はむしろ保険者の側から、先ほどの末高教授でしたか、お話の中に、若干実は協力金などといって、何かいろいろもやもやとしたようなお話がございまして、どうもはたで聞いておりますと理解に苦しむようなところもありましたが、こういうようなこともわれわれしろうとが聞いてもなるほどと思えるような明確な回答を一つお知らせ願いたいと思います。  それからいま一つの点は、医療機関指定の問題でございます。この問題も、どうも両々はっしと相打ち合いまして、どこへいっても一致点が見出せないではないかというふうに感じました。これは医療機関医療担当者の二重指定制度がどうしても必要ならばその必要なるゆえんを、これも私は医療担当者の方よりむしろ保険者方々からいま少し明快なお答をしていただきたいと思います。先ほどの説明を聞いて、われわれ新潟県の方は医療担当者の方と円滑円満にいっておりますから、大してその点は心配ございませんが、他の府県においてはそれでうまくいっているのかなと思いまして、私は休憩時間に私の会館へ行きますと、あにはからんや、やはり市町村保険者の方がおいでになって、医療担当者だけということになりますと、何しろ団結してお医者さんの大きな圧力の前で協力金や何やかやをとられて、とてもわれわれがよわい町村保険者はたえられないから、これはどうしても指定機関というふうにしてもらわなければ、この次のあなたの選挙も覚悟がございますぞ、といったような話がある状況でございまして、ややわれわれの判断が公正を欠くようなうらみかございます。時間も切迫いたしておりますので、条件は省略いたしますが、この二点につきまして明確なる御回答をいただきたいと思います。
  104. 鈴木十郎

    鈴木公述人 ただいまの二点、明確にというお言葉でございますが、なかなかむずかしい問題でございます。私ども、最終責任の問題は、先ほど来しばしば出ておりますように、保険者がもちろん療養担当者の方のお立場というものを十分理解して参らなければならぬわけでございますから、何でも療養担当者の方に押しつけてしまえばいいというような考えを持っておるものでは毛頭ございません。従ってどうしても払えないというような人に対しての減免の措置等もある。それは結局において保険者責任を持たなければならぬようなことにもなってくるわけでございますけれども、ただこれは弊害の方を考えますことはよくないかもわかりません。先ほど来、医療担当者の代表の方のお言葉にも、決してこの療養担当者窓口でとることに対していいかげんにしておいて、それを保険者に回すというようなことにはしないというお言葉でございます。それはそうであろうと思いますけれども、しかしながら、これが結局最後は何でも保険者が持つんだ、こういうことになるといたしますと、どこまで一体保険者に回ってくるのかわからないというふうな、ほんとうにその被保険者が困って払えない人であります場合、これはもちろんわれわれ真剣に考えなければなりませんけれども、その間に被保険者の方におきましても、あとで払おうとして忘れたというふうな場合もあるいはあるかもしれませんし、またその間に私どももそういう疑念を持つことはいけませんけれども、何としても最後は結局保険者が持つんだというふうなことになりますと、それでなくともいろいろ運営に非常に困難しております保険財政というものは、根本においてきわめて大きな影響を受けてきやしないかという心配が非常にあるわけでございます。従って私どもはただ療養担当者の方に押しつけておけばいいというような考えでは決してないのでありまして、保険者がともども療養担当者方々に御協力いたしまして、もしとれないような場合がありましたならば、それに対して私どもも力を尽すことは言うまでもございませんけれども、ただ最終の責任は全部保険者にあるんだということになりますと、ただいま申し上げるようなことで、これは悪意にのみ解することはいけませんけれども、現在非常に微妙な国保運営でございますから、保険者としてはそういうことも大いに考えておるわけでございます。  そこで指定の問題でございますが、これもまた私どもが悪い面ばかりを考えることはいけないかもしれませんが、従来の契約が、先ほども先生のところへ保険者が大ぜい伺ったということでございますが、どうも契約につきましてはずいぶん難航をしております例がたくさんあるのであります。先ほども私、公述の際に申し上げましたが、私の市も幸いにいたしまして療養担当者の方の非常な御理解、御協力をいただいておりますので、その点はまことに円滑にいっております。いっておりますけれども、そういう例が多い、というよりは、むしろなかなか困難をしておりますところも非常に多いことは事実でございます。たとえば、ただいまもお言葉がありましたが、それに対しまして療養担当者の方へ保険者として相当まとまった金額をまた別個に出さなければならぬということのあることも事実であります。そんなことで、なかなか契約の上に困難さがあるというふうなこともございまして、従来の長い問の経験からして、この契約国保運営の上に困難をもたらすことを考えておりますので、従って今までの契約制度をこの際改めていただきたい、こういう趣旨でございます。
  105. 蓮田茂

    蓮田公述人 一部負担金の問題につきましては、たびたび申し上げたところでございますが、皆保険を目ざします法律改正であります限りにおきましては、将来私どもは一部負担金を故意にとらずして医療の経営などは成り立つものではないのでございます。すべてが将来は保険患者になるのでございます。故意にとらないなどということはでき得ないのでございます。しかも御承知通り、ただいま一般健康保険におきましては、ニヵ月目に一度くらいまとめて入ってくるのでございます。従って将来皆保険ともなりますと、ほとんどまとめて月に一度入ってくることになりますので、日々多少とも一部負担金の収入のありますことは、運転資金の確保という点からも非常にけっこうなことでございまして、一部負担金を故意にとらぬなどということはもう考えられないのでございます。従って私どもはとる努力は十分いたします。どうしてもとれないものは一つ負っていただきたいと、言っておるのでありまして、これはただいまの鈴木市長さんのおっしゃることと、私どもの最終責任を負っていただきたいという考えとは違うということをお含みおきいただきたいと思います。  それから機関指定の問題については、これもるる申し述べたところであります。あくまでも医療というものは、どんな大病院であろうとも、医師責任主体において行われるものである。このことは先ほど例にも引きました通り医師法におきましても、その十九条においてわれわれ医師医療義務を課して、機関に課しておるのではない。これはわれわれ医師医療の主体であるということをはっきり認めたものである。もう一つは理念的に、私ども医療に実際従事する者といたしまして、何としても機関医療を行うという、この考え方には理念的に賛成いたしかねるのでありまして、私どもとしては医師医療の主体であるという建前から、機関指定されて、これが療養給付担当するという形をお改め願いたいとたびたびお願い申し上げておる次第でございます。
  106. 小林進

    ○小林(進)委員 医師医療担当最終責任者であるというお言葉は私は十分了承いたし、その通りだと思っております。しかし一方保険者の言われる、お医者さんが最後の責任をお持ちになると、団結の力で、これは私は団結は非常によろしいと思います。大いにおやり下さい。よろしいが、その力で、一握りの別口の金を出さなければ契約に応じないとか、それがおっかない、そう言われる。それがおっかないから、この点はやはり機関ということにしていただいて、そしてその機関指定というところでそのおそるべき団結の威力をのがれる手を一手設けておいてもらいたいという切実な保険者の声を今出されたのですが、この問題に対して一体医療担当者として、あなた方はどうお考えになっておるか、これを一つお聞かせ願いたい。
  107. 蓮田茂

    蓮田公述人 おそらくそれぞれの地域において、そういう問題の起ったと申しますのは、それぞれの地域の事情に応じて、われわれ医療担当者としてはそういうことを要求せざるを得ない地域事情であったと私は思うのでございます。決してこれは無理に、何ら理由なしにそういうことを要求したのではなかろうと思うのでございます。そういうところから、一々のその事情を、どこでどういう問題がどうということを一々例を引きまして申し上げるまでに今至っておりませんが、おそらくそういう点で、地域の特殊な事情に応じての要求であろうと思うのでございます。
  108. 小林進

    ○小林(進)委員 お話はよくわかりました。もはや質問ではありませんけれども、しかしそういう経済的な大きな問題がやはり正面に出ないで、医療担当者保険者との問に何かやみ取引みたいなことが行われ、しかもそれが三者相待って皆保険の方向へいけないという当面の大きな障害があるということになれば、私どもはその問題を見のがしておくわけにはいきません。それは確かにあなたのおっしゃるように、われわれは病院に行ったところで、やはりその病院の中のだれが一体われわれを見てくれるかということが重大な条件ですから、理論的にはあなたの方がすぐれていると思う。しかしやはりそこにまっすぐいけないという理由は、そういう経済的な大きな問題があるために、やはりこの国会なりあるいは法律の面なり、行政の面、何らかにおいてそれを解決しなければならないということを感知いたしました。しかもあなたはある特殊地域の特殊なる事情、そういうことをおっしゃいましたが、片方の保険者の方は大多数がみなそうです。どうもそういうことで契約が難航しているとおっしゃいますので、願わくはそういう全国的なデ—タを一つ委員長に要求いたします。これは委員長にお願いしておきます。これを早急にそろえていただいて、その上で私どもは正当なる結論を出したいと思います。  以上お願いいたしまして、私の質問を終ります。
  109. 園田直

    園田委員長 公述人に対する質疑は終了いたしました。  この際一言ごあいさつ申し上げます。公述人方々には御多用中のところ、長時間にわたり種々貴重な御意見をお述べいただき、本案審査の上に多大の参考となりましたことを厚く御礼申し上げます。  これにて公聴会を終了いたします。     午後五時六分散会