○岡本(隆)
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました、社会党
提案にかかわるところの
国民健康保険法の一部を改正する
法律案に賛成し、
政府提案の
国民健康保険法案及び
国民健康保険法施行法案、さらに自民党
提案にかかわるところの同
法案に対する
修正案及び同施行
法案に対する
修正案に対して、反対の意思を表明せんとするものであります。
国民皆
保険の声は、これはすでに
国民年金を要望する声とともに、国内にとうとうたることは言うまでもありません。その声に応じて自民党は
国民健康保険法を新たに改正せんとして、
政府が
提出いたして参りましたけれ
ども、しかしながらその内容を検討いたしてみますと、きわめてお粗末しごくなものといわなくてはなりません。
国民健康保険がすでに
国民の中に強く要望されているものであるのに、なおかつ今日までの間、全
国民に広く普及しなかったということは、これは従来の
法律の中で
国民保険の実施をやりますと、非常に地方
財政の負担が強くなるということが一番大きな理由であったと思うのであります。そしてまた現実の姿といたしまして、今日
国民健康保険を実施しておるところの市町村にありましては、その九割までが地方自治体からの
財政的な犠牲の上において、その実施が見られているのでありまして、従いましてこれを広くあまねく
国民全体に及ぼそうとするなれば、
ほんとうに皆
保険をやっていこうとするなれば、もとより
政府は大きな
財政的な負担というものを覚悟してかからなければならなかったはずであります。ところが出してきました
政府案は、現行は二割、ところが新法におきましても、二割の
国庫負担に対してさらにまた五分の調整金を加えたのみでありまして、これをもってしては地方
財政に及ぼすところの
財政的な負担というものを抜本的に解決することはできません。しかもそのような形において各地方自治体に義務設置を要求するといたしますなれば、それはまさにやせ馬にむちを当てるようなものでありまして、地方自治体が好んでこれにみずから賛成して、その普及の実施に協力するということは
考えることができません。従って声のみの皆
保険に終ってしまう心配があると思う。
さらにまたその内容とするところを見ましても、療養
給付費の五割を被
保険者が負担せなければならないことになっておる。この五割の被
保険者の負担というものは、これは従来から非常に強い被
保険者の間におけるところの不満になっておるし、さらにまた大きな矛盾でもあったわけであります。しばしばこの
委員会でも取り上げられました
通り、実質的には
国民保険が実施されます。そしてすべての住民が義務として
保険料を払っておる。さあ
病気になった。そのときには今度はお医者に持っていかなければならない半額の一部負担金がございません。そのために受診をためらいます。ためらう間にだんだん重くなって手おくれになるという場合がしばしばあるわけでありまして、
ほんとうに
国民皆
保険というものであり、しかもその
医療保障の一環としての
国民保険を口にする限り、これはどうしても被
保険者の負担率というものをさらに軽減しなければ
意味をなしません。現在の五割
給付の形におきましては、まさにこれは貧しい人たちがかけておる
保険金、これがかけ捨て、払い込み捨てになってしまいまして、それを利用して、貧しい人の犠牲において、比較的豊かな人が
医療保障の恩恵を受けておる、これが現実の姿であります。従いまして日本社会党が、今般の
保険制度、
医療保障制度改正の機運に際しまして、どうしても三割の
国庫負担をやらなければならない、さらにまた診療報酬、療養
給付費の七割は
保険者が負担しなければならない、こういうような
法律案を出して参りましたのも、そこに理由があるわけであります。
さらにもう
一つ、大きな問題点として指摘しなければならない点といたしましては、今日五人
未満の零細
事業場に働いておる人たちが
健康保険の網の目からは漏れておる、そしてまた今度それらの人たちが
国民保険の中に包括されようとしておるのであります。しかしながら注目しなければならないことは、
国民保険と被用者
保険としての
健康保険との違いというものは、その対象となる人が自営者であるかあるいは雇われておる人であるか、この二つにおいて大きな違いがあるということを、出発の当時から頭に入れて出発してきておるということを、私たちは注目していかなければなりません。自営者の場合にはこれは
病気になりましても、たとえば家族の者が補ってそのかわりを勤めるとか、いろいろな形において収入の道がはたととだえることはございませんが、しかしながら被用者の場合におきましては、その被用者であるところの戸主が
病気になった場合には、収入の道が立ちどころにとだえるわけであります。そのために被用者
保険には
傷病手当金の
制度ができておる。従ってその
傷病手当金の
制度というものがなくては、どうしても気楽に養生することができない。
零細企業に働いておる、小さな町工場で働いておる、そういう理由だけのゆえをもって、五割の一部負担金をお医者に持っていかなければならぬ、さらにまた
傷病手当金は全然もらえない、こういうふうな形の
保険の中へ投げ込んでしまうということは、これは非常に冷酷無情な
考え方であるといわなければなりません。これはそれらの人たちは標準報酬が低いから、それらの人たちを
健康保険の中へかかえ込むとするなれば、大きな
財政負担を背負わなければならない、その
財政的な負担を
政府がきらって、ことさらにそういう
国民保険の方に入れてしまっておるというふうに私たちは理解せざるを得ません。従いましてこういうふうな非情な姿をもしこのまま持っていくとしますなれば、それらの人たちを対象として
考えましても、どうしても
給付率をもっとよくし、さらにまた
国庫もそれだけのものを
国民保険の中へ導入するということは、
政府のなさなければならない義務であり、五人
未満の
零細企業に働く人たちを今日すでに
健康保険の中に取り入れていなければならなかった怠慢というものを、私たちはこの際あらためて
政府に対して責めなければならないと思うのであります。
さらにまた今日、療養担当者に対するところの診療費をめぐりまして非常な紛争が長く続いております。そしてまた甲表、乙表というような診療費が出て参りました。これは被
保険者も非常に困るでありましょうし、同時にまた療養担当者の方でもこれには非常な迷惑が出て参っております。従いまして、こういうふうな事態が起りましたということも、今までの
政府の適正な診療報酬
制度というものを築き上げていくことに対する怠慢によるものであります。ところが今度の
政府提案を見ましても、何らそれらの点に考慮が払われておりません。少くも厳正な、中立的な
立場に立って適正な診療報酬をきめ、長い間続いておる紛争、ことにこれから先またいつまで続くかわからない紛争について円満な解決をはかり、
保険者も被
保険者も療養担当者も、すべての人が喜んでこの中において協力するというふうな形の
国民皆
保険の
制度を作っていかなければならないのに、本
法案においては何らそれらの点についての考慮が払われておりません。今日グラマン三百機を買うのに一千億をこえるところの金を使おうという自民党
政府に、やろうと思ったならば、
国民が
ほんとうに心から望んでおるところの
国民保険はもっとりっぱな形のものを出してくることができるはずである。まさに今般出された
政府提案というものは、おぼれんとする者にわらを与えるような形であって、私たちはこのようなお粗末な
政府提案に賛成するわけには参りません。
日本社会党は
国庫負担三割、
給付率七割を主軸としたところの
国民健康保険法改正案を
提案しておりますが、自民党諸君も従来の勤労者に対する冷酷非情な態度をお捨てになって、何とぞあたたかい社会党
提案にかかるところの改正案に御賛成あらんことを心から希望いたして討論を終ります。(拍手)