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1958-10-24 第30回国会 衆議院 社会労働委員会 第12号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十三年十月二十四日(金曜日) 午前十時五十四分
開議
出席委員
委員長
園田
直君
理事
大石 武一君
理事
大坪 保雄君
理事
田中 正巳君
理事
八田 貞義君
理事
藤本 捨助君
理事
小林 進君
理事
五島 虎雄君
理事
滝井
義高
君 小川 半次君
加藤鐐五郎
君 川崎 秀二君 藏内
修治
君
河野
孝子君
齋藤
邦吉
君
志賀健次郎
君 谷川
和穗
君
寺島隆太郎
君
中村三之丞
君 中山 マサ君
二階堂
進君 古川
丈吉
君
柳谷清三郎
君 亘 四郎君
伊藤よし子
君 大原 亨君
河野
正君 多
賀谷真稔
君 堤 ツルヨ君
中村
英男君 八木 一男君
出席国務大臣
労 働 大 臣 倉石 忠雄君 国 務 大 臣 三木 武夫君
出席政府委員
総理府事務官
(
経済企画庁調
整局長
) 大堀 弘君
労働政務次官
生田 宏一君
労働基準監督官
(
労働基準局
長) 堀 秀夫君
委員外
の
出席者
労働事務官
(
大臣官房労働
統計調査部長
)
大島
靖君 専 門 員 川井
章知
君
—————————————
十月二十四日
委員藏内修治
君、
齋藤邦吉
君、
寺島隆太郎
君及
び二階堂進
君
辞任
につき、その
補欠
として
加藤
常
太郎
君、
大森玉木
君、
赤澤正道
君及び
椎名悦
三郎君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同日
委員赤澤正道
君、
大森玉木
君、
加藤常太郎
君及
び椎名悦三郎
君
辞任
につき、その
補欠
として寺
島隆太郎
君、
齋藤邦吉
君、
藏内修治
君及び二階
堂進
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。
—————————————
本日の
会議
に付した案件
参考人出頭要求取止め
の件
最低賃金法案
(
内閣提出
第一九号)
最低賃金法案
(
勝間田清一
君外十六名
提出
、衆 法第一号)
家内労働法案
(
勝間田清一
君外十六名
提出
、衆 法第二号)
——
——
◇—
——
——
園田直
1
○
園田委員長
これより
会議
を開きます。 この際お諮りいたします。去る二十二日の本
委員会
において、
内閣提出
の
国民健康法案
及び
国民健康保険法施行法案
並びに
滝井義高
君外十三名
提出
の
国民健康保険法
の一部を改正する
法律案
について、
参考人
より
意見
を聴取することに決定いたしましたが、
理事各位
と協議の結果、
参考人
よりの
意見聴取
は取りやめることといたしたいと存じます。これに御
異議
ございませんか。 〔「
異議
なし」と呼ぶ者あり〕
園田直
2
○
園田委員長
御
異議
なしと認め、そのように決します。
—————————————
園田直
3
○
園田委員長
次に
内閣提出
の
最低賃金法案
並びに
勝間田清一
君外十六名
提出
の
最低賃金法案
及び
家内労働法案
の三案を
一括議題
として審査を進めます。 この際、
労働
省より昨日
提出
された
賃金関係
の
資料
について
説明
を聴取することといたします。
大島労働統計調査部長
。
大島靖
4
○
大島説明員
お配りいたしました「
賃金関係資料
」につきまして簡単に御
説明
申し上げます。 第一表、第二表、第三表は、
わが国
の
就業構造
を示します
資料
として
三つ
あげたわけであります。 第一表は、
就業者
の
従業
上の地位によって分けてあります。すなわち
自営業主
、
家族従業者
、
雇用者
、この
三つ
に分けてみますと、その
比率
は
自営業主
が二五%、
家族従業者
が三〇%、
雇用者
が四四%、これはたとえば
アメリカ
の場合ですと、
雇用者
の
割合
が八割を越えるわけであります。 第二表は、
就業者
全体が
産業別
にどういうふうに分れておるかという表であります。第一次
産業
が三八・二%、第二次
産業
が二五%、第三次
産業
が三六・七%であります。これも同じく
アメリカ
の
就業者
の
構造
は第一次が一二%、第二次が三四%、第三次が四八%、こういうふうな
数字
になっております。
わが国
の第一次
産業
の
就業者
の
比率
が非常に高い。 第三表は、
規模別
に
事業所
がどう
分布
して起るか、
従業者
がどう
分布
しておるかという表であります。まず
事業所
の方は、
総数
が三百二十八万
事業所
でありますが、これを一〇〇とおきますと、一人から四人までの
事業所
が八〇・二%、以下一七・八%、一・七%となりまして、九十九人以下すなわち百人以下の
事業所
の数は、この
三つ
合せますと九九・七%になります。ほとんど大部分であります。右の方の
従業者
の
比率
は、
総数
が一千七百万人でありますが、これを一〇〇としますと、一人から四人までが二八・六%、以下
三つ
合せまして、すなわち百人以下を合せますと、七六%になります。すなわち
従業者
の数では百人以下のところに七六%集中しておるわけであります。これを各国の様子と比べてみますと、
日本
は今申しますように、百人以下に七六%集中しておる。
アメリカ
が二五%、
イギリス
が二六%、
ドイツ
が二四%であります。すなわち
米英独
におきましては百人以下のところにわずかに四分の一でありますが、
日本
の場合は百人以下に四分の三が集まっておる。大体以上のような
就業構造
になっております。 第四表以下は、先日来御質疑のありました
賃金
の
各種
の
格差
についての
資料
であります。第四表から六表までは
地域別
の
賃金格差
を示しております。第四表をごらんいただきますと、これは
賃金
の総
平均
で見ました場合、全
産業
及び各
産業別
、各
府県別
にどういうふうな
賃金
の
格差
があるかという表であります。この一番左の全
産業
をごらんいただきますと、
最高
が上から
三つ日
の欄の下の方にあります
神奈川
県一一七、
最低
がその次の欄の
福井
県で六七、
最低
と
最高
の幅が二倍弱になっています。その次の欄の
製造業
でごらんいただきますと
最高
が下から二番目の欄の
福岡
県で一三七、
最低
が先ほどの
福井
の下の
山梨
で五四、これは
製造業
の場合だと
最高
、
最低
の開きが二倍強になっています。それから
五つ
自の欄の卸売、
小売業
、これをごらんいただきますと、
最高
が下から四つ自の欄の
大阪
府で一三四、
最低
が上から二番目の一番上にあります
山形
の五三、これも二倍強になっています。これは今申しましたように、全
産業別
に全
労働者
の
平均賃金
の
地域格差
であります。 その次の第五表をごらんいただきますと、これは一応
製造業
だけについて
労職別
、
労務者
と
職員別
に分け、さらに
男女別
に分けて、
地域格差
がどういうふうになっているかということを示しております。一番左の
生産労働者
、これは
最高
が
福岡
県で一四九、
最低
が
山梨
県で五三、これは
最低
、
最高
の幅が二・八倍くらいになっております。その次の
管理
、
事務
及び
技術労働者
、これはいわゆる
職員
であります。これの
最高
は上から二番目の青森県の一五三、
最低
が
山梨
県の六三、この幅は二・四倍になります。その次の男はどうかと見ますと、
最高
が
福岡
県で
最低
が
山梨
県で、これは大体二倍になります。女の場合は
最高
が
東京
の一二一、
最低
がやはり
山梨
の六五で一・八倍、これは
労職別
、
男女別
に見た
地域格差
であります。 その次の第六表をごらんいただきますと、今度は
企業規模
を固定いたしまして、それから特殊の
職種
について調べてみた場合どうなるか、
企業規模
が十人から三十人までのところ、小
規模
の方を押えてみますと、
事務職員
の男で、
新制高校卒業
、
紡織産業
について見ますと、
山形
が五三で、
大阪
一一五、二倍強になっております。その次の
旋盤工
の男、
機械工業
において見ますと、
山形
が五二で、京都が一〇四、ちょうど二倍であります。
旋盤工
は
熟練
を要します
労働者
といたしまして代表的に選んだものであります。その次の
営業用貨物自動車運転手
、これは特殊の
技能
を要するということで、一定の免許とか、資格を要する
労働者
、こういう形で選んでみました。これは静岡が四五で
大阪
が一〇九、二倍以上になっております。今度は
企業規模
を千人以上にとってみますと、
事務職員
が
山形
と
大阪
で二倍強、
旋盤工
が今度は群馬が低くて兵庫が高い、これは二倍弱であります。
貨物自動車運転手
になりますと、岡山が六七で
大阪
が一一四、これも二倍弱であります。こういうふうに、
平均
の姿とそれから
職種
とか
規模
、あるいは
男女別
、こういうふうに分けてみますと、いろいろ変った
数字
が出るわけであります。 そこで
産業構成
、各県の
産業構成
、それから
労働者
の
構成
、
労職別
あるいは
男女別
、こういうものを
全国平均
同じ
価値
に直して計算いたしてみますと、
最高
がやはり
東京
になります。
東京
を一大と置きますと、
大阪
が九五、
神奈川
が九五、大体その辺が上になりまして、
最低
の方は鳥取か五九、徳島が六一、長野が六四、こういうふうな
数字
になります。すなわち、ここでの幅は二倍弱になるわけであります。 以上のように、実際に
格差
は物価とか
生計費
あるいは各県における
生活構造
の差、あるいは
労務
の需給、
労働者
の
移動
が必ずしも全国的に円滑でない、あるいは各県の
産業構造
の差、すなわち各
企業
、
産業
における
付加価値率
の相違とか、あるいは
農業
が多い、非
農業
が多い、こういうふうな結果からくる総体的な事情の違いとか、いろいろな点が作用しているものと思われます。 その次に、第七表からは
産業別
の
賃金格差
をあげてあります。どの
産業
が
賃金
が高いかということを比べてみますと、一番左が
昭和
二十七年で、右の端が三十二年になります。たとえば二十七年で申しますと、一番高い
数字
は一番下のその他の
公益事業
で、
運輸
と
通信
のほかにその他の
公益事業
、これは
電気
、
ガス
、
水道
、これが一番高い。それから高いものとしては、下から四、五番目の
金融
、
保険
が一三四、それからちょうど
まん中あたり
の紙及び
類似品製造業
、これが一三二、この辺が高い。それから低い方は上から四、五番目にある
衣服
及び
身の回り品製造業
、これが四八・四で
最低
。その上が
紡織業
六雄、その下が
木材
及び
木製品製造業
で、五八・三、この辺が低い。三十二年をごらんいただきますと、やはり一番高いのが一番下のその他の
公益事業
の
ガス
、
電気
、
水道
、それから
金融
、
保険
、
まん中あたり
にあります
石油
、
石炭製品製造業
、この辺が高い。それから低いのはやはり
紡織
、
衣服
及び
身の回り品製造業
、この辺が低いのであります。これは全体の
平均
であります。 そこで今度は第八表へ参りまして、これを
規模別
に見たらどうなるか。左の欄は
昭和
三十年、右の欄が
昭和
三十二年になります。
規模
五百人以上のところをごらんいただきますと、
最高
がちょうど
まん中あたり
になります
石油
及び
石炭製品製造業
一四二というのが
最高
になります。それから
最低
が上から
五つ
くらいの
紡織業
五三・九、これが
最低
。それから
規模
百人、五百人のところ、これがやはり
最高
が
石油
、
石炭製品
で一四五、
最低
か
衣服
、
身の回り品
で四三、それから
規模
三十人から九十九人のところでごらんいただきますと、
最高
が下の方にある
金融業
及び
保険業
の一五五、それから
最低
が
衣服
及び
身の回り品製造業
。この
産業別
の
格差
は、本来各
産業別
の
資本構成
の
高度化
の
程度
あるいは
生産技術
の発達の段階に従って、
企業
あるいは
産業
の
付加価値率
の差あるいは
労務比率
の差、こういうふうなものに支配されますし、さらにその
産業
あるいは
企業
の必要といたします
労働力
の
資質
、こういうものに作用されるわけでありますが、一般的にただいま申し上げましたような表から言えますことは、高
水準
の
賃金
の
産業
としましては、さらにその
産業分類
をこまかくいたしますと、
航空運輸
の
飛行機会社
、この辺が非常に高い。銀行、信託が高い。第一次金属、
鉄鋼業
、それから
輸送用機械製造業
、この辺が高い
水準
にあります。大体こういうふうな
産業
は、本来大
企業性
の
産業
であります。それから第三次
産業
が比較的高い。それから
労働力
の
資質
としてはやはり複雑、
熟練
、
技能
を要する
労働力
を持っておる
産業
、こういうものが高いということになります。低い方を見ますと
木材関係
の仕事、
衣服
、
身の回り品
、家具、
装備品
、
食料品
、こういうふうな
消費財生産部門
が比較的低い。それから本来小
規模
生産的なものあるいは全国的な
規模
でなしに
地方性
の
産業
、こういうふうなものが大体において低い
水準
の
賃金
を持っておるわけであります。ただこれは今申しましたように
全般
の
平均
であります。 そこでたとえば
労務者
と
職員
の
構成
あるいは
男女
の
構成
、こういうものを固定して調べてみますと、たとえば
男子
の
職員
の各
産業別
の
最高
と
最低
を見ますと、一〇八と八五、それから
男子
の
労務者
では一八七と八二、こういうふうに
産業別
の
格差
は、
男女別
の
構成
とかあるいは
労識別
の
構成
を固定いたしますと、
格差
はだいぶん縮まってくるということであります。以上が第八表までの
産業別
の
格差
の問題であります。 第九表と第十表は
規模別
の
賃金格差
でございます。第九表は、
規模別格差
が最近各年次的に見ましてどうなっているかという趨勢を示しております。
昭和
二十六年で五百人以上のところを一〇〇と置きますと、百人
——
五百人のところで七九・五に落ちております。それから、二十人
——
九十九人、百人以下のところになりますと六一まで落ちております。それが一番下の欄の三十二年で見ますと、五百人以上を一〇〇と置いて、百人
——
四百九十九人のところが七〇・八、三十人
——
九十九人が五六・〇、こういうふうに
規模別
の
賃金格差
は遺憾ながら年々開いて参るという
状況
を示しております。 それからその次の第十表、
産業別
に
規模別賃金格差
を見たらどうなるか、六大
産業
を合計いたしますと、五百人以上を一〇〇と置きますと、百人—四百九十九人のところで八二%、三十人—九十九人のところで七一%、五人—二十九人のところで五四%、四人以下になりますと三五%に落ちております。ただこの点は先般も申し上げました通り、通勤、住み込みの
労働者
、小
規模
に非常に多いのですが、これが一緒になっております。さらに、従って
現物給与
というものがかなりその方面においては多いのでありますが、これはその中に入っておりません。キャッシュだけの労賃であります。ただ一番下の欄にありますように、
運輸通信
その他の
公益事業
、これになりますと、この
産業
では四人以下になりましても六割
程度
にとどまっておるというふうに
産業別
の違いはございます。これも全
労働者
の
平均
の数学でありまして、
職種別
にもあるいは
男女別
にも
年令別
にも見てみなくてはいかぬわけでありますが、たとえば
職種
を固定いたしますと、
事務職員
の場合は千人以上一〇〇と置きますと、三十人以下のところは六割
程度
でございます。従って五百人以上を表のように一〇〇とおきますと、大体七割
程度
になるのではないか。
鋳物工
、
旋盤工
を
職種
を固定いたしますと、やはり七割
程度
、こういうふうに
規模別格差
は
全般
としては四割、三割と、下へいきますと非常に小さくなる。そういうふうに
職種
を固定いたしますと、小
規模
といえども、六割ないし七割
程度
にしか下らないわけです。さらにこれを
年令
を固定し、
男女
を固定すると、たとえば男の十八才から三十才
程度
を固定して、
年令
と
男女別
を固定してみますと、大体七割から八割
程度
にしか落ちない。それから
職種
と
年令
をかみ合せて固定いたしますと、たとえば
鋳物工
の二十才から二十五才の
程度
、この辺だと大体九割
程度
にしか落ちない。従って
全般
の
平均
といたしましてはこういうふうな
数字
を示しておるのでありますが、
職種
とか
男女別
、
年令
というものを固定して考えてみますと、必ずしも
規模別格差
はこのように落ちないということであります。(
多賀谷委員
「五百人に対して九割ですか。」と呼ぶ)あとで申し上げました
数字
は、千人以上を一〇〇と置いた計算になっております。ただ五百人と千人以上の場合大体一割
程度
の割引をして考えれば、五百人になると思います。 次の第十一表は
職種別
の
賃金格差
であります。大体今まで申し上げたのがいわゆる
社外賃金格差
これからが
社内賃金格差
になるわけであります。
職種別
は非常にたくさんございまして、二百種、三百種とあるわけなのでございますが、そのうちで
共通職種
、大体各
企業
において
共通
にあると思われる
職種
を選んで調べたのが第十一表であります。これで見ますと
事務管理職員
、いわゆる
管理者
、これを一〇〇と置きますと、
三つ目
の
事務職員
の男が五一・三、
五つ目
の
事務職員
が二六・〇、
自家用貨物自動車運転手
三七、
守衛
の男が五四、こういう
職種格差
を示しておるわけです。そこで
事務職員
の男を
基準
にして考えますと、
事務管理職員
の男は二倍弱になります。それから
事務職員
の女は約半分。
自家用貨物自動車運転手
は約七割、
守衛
の男は
事務職員
の男よりも若干高い、こういう
数字
になります。ただ、たとえば
平均年令
をとってみますと、
事務職員
の男の
平均年令
が三十二才、
事務管理職員
は四十四才、
勤続年数
をとってみますと、
事務職員
が七年に対して
事務管理職員
が十四年、こういうふうに
平均年令
ないし
勤続年数
はかなり違うわけです。たとえば
守衛
の場合は
平均年令
が四十三才、
勤続年数
が七年、
労働
時間も長い、こういうふうな作用もあって、
事務職員
よりも若干高いという
数字
が出ております。 第十二表は
男女別
の
賃金格差
であります。これは
調査産業総数
で、女子の
賃金
を
男子
の
賃金
で割りますと四一%、
三つ日
の
製造業
では三七%、大体こういうふうな
数字
を示しております。ただこれは総
平均
の
数字
でありまして、たとえば
産業別
に
男女賃金
を調べてみますと、
たばこ製造業
では一〇八と、逆に女の方か高い、
紡織産業
でみますと、九一、ほとんど違わない。さらに
たばこ製造業
の十八才から二十才、この辺の
高校卒
をとってみますと、
経験年数
六カ月
未満
の新しいところでは一〇二、六カ月から一年の
勤続
では一二五、逆に女の方が高い。デパートの店員の
経験年数
三年から五年というところは九八、ほとんど男と変らない、こういうふうな
数字
が出て参ります。これが
男女別
の
賃金格差
であります。 その次の第十三表、
年令別
の
賃金格差
、これは
事務職員
の男と
事務職員
の女について示してありますが、十八才
未満
から六十才以上までの各
年令グループ
に分けております。
事務職員
の男で申しますと、十八才
未満
が四六、二十才から二十五才までを一〇〇としております。そうしますと四十才から五十才が
最高
になり二三七、そこからずっと年をとるに従って下って参ります。女についても十八才
未満
が五六、四十才から五十才までが一六九で
最高
であります。それから以下下って参ります。この
最低
と
最高
の幅の大きいものといたしましては、
事務
的な
職員
、技術的な
職員
、こういうふうな
事務技術職員
、それから
熟練
を要します
職種
、たとえば
旋盤工
、そういったものは
最高
と
最低
の幅が非常に大きいわけでございます。それから今度は
単純労務
とか
能率給
、
出来高払い
の
労働者
、たとえば
採炭夫
、こういうふうな
労働者
につきましては、
最高
と
最低
の
年令別
の幅は非常に小さいわけでございます。以上
年令別
の
賃金格差
であります。 第十四表は
勤続年数別
の
賃金格差
であります。これも
年令別
の
賃金格差
と若干重複するわけでありますが、
年令
の場合は今申しましたように、大体四十五才から五十才のところを
最高
として、あと逓減いたして参りますが、同一
年令
で
勤続年数
を分けてみますと、
勤続年数
に比例して最後まで逓増するわけであります。以上大体
各種
の
賃金格差
を示します表であります。 第十五表は
所得階級別雇用者累積度数割合
であります。
分布
、
累積
、
分布
、
累積分布
となっておりますが、左から二番目のところと一番右の端の欄をごらんいただきますと、上から
二つ目
の
数字
、四千円から六千円、これの
累積
のところで三百三十五万四千人という
数字
、すなわち
月収
六千円
未満
の
雇用労働者
は三百三十五万、全体の
労働者
の一九・六%、その次の
月収
八千円
未満
の
労働者
が五百六十五万人、三三・%、すなわち
月収
六千円
未満
の
労働者
は約二割、八千円
未満
は約三分の一ということであります。 その次の第十六表以下第二十二表までは
規模別賃金格差
が生じます理由について一応の
統計
をあげたわけであります。第十六表をごらんいただきますと、結局
賃金格差
の生じますのは
生産性
の
格差
によるものであるという点を示す表であります。それを
日本
の場合と
米英独
の三国との対比において示しております。そうしますと、
日本
の場合一人
当り賃金
は、先ほど申しましたように逐次四割
程度
に落ちてくるわけです。
生産性
は
規模別
にどういうふうに低くなって参るかと申しますと、一人
当り付加価値
というのがあります。これが
生産性
を示すわけであります。これが千人以上を一〇〇と置きまして、四人から九人のところで二七・六まで落ちてくる。ところが米国の場合は一人
当り付加価値
、
生産性
は、一人から九人のところであっても七割
程度
にしか落ちないわけであります。従って一人
当り賃金
も六三%にとどまる。
イギリス
の場合は十人から四十九人のところで
生産性
は九一%、ほとんど違わない。一人
当り賃金
は八二%までしか落ちない。
ドイツ
の場合もまたしかりで、
生産性
が七六・四で
賃金
が八一・七、こういうことであります。結局は
賃金格差
の問題は
規模別
の
生産性
の問題に帰するのではないかと思われます。 第十七表以下は、
規模別
に見まして
労働者
の
構成
がどういうふうに違っておるか、
労働力
の
構成
がどういうふうになっておるかという点を示す
各種
の
統計
であります。第十七表は、新しく入職して参ります者の前歴がどう違うか、それを未
就業者
と
既就業者
に分けて、全然新しく入ってきます者と、
転々
として変って参って入ってきます者、これに分ける。そうしますと、未
就業者
の小計では五百人以上は四七%、五人から九人の一番下では三九・六、すなわち大
企業
の方が未
就業者
の
割合
が多い。ことにその次の
新規学卒者
、フレッシュ・マンの
割合
は大
企業
は三三・八%、
小企業
は二一%、
既就業者
は大
規模
が五二%、小
規模
は六三%、これが
経験
があるならいいわけですが、むしろ
転々
として
移動
のはげしいという
状況
を示しておるものと思われます。 その次の第十八表は、どういうふうな経歴を経て職場に入ってくるか、
安定所経由
、
学校紹介
、
縁故
に分けて参りますと、大
企業
は
安定所経由
が四三・六、小
規模
の場合はわずかに九・八%、
学校紹介
は大
企業
が一〇・五%
小企業
が四・五%。逆に
縁故
は大
企業
三三・五%に対して、
小企業
の方は五二・八%、半分以上は
縁故
であります。 第十九表は
労働異動率
、新しく入ったり離職したりする者の率はどうか、またそれらを合せた
異動率
はどうかであります。全
常用労働者
について見ますと、大
規模
のところで
異動率
は二二・四%、小
規模
で八八%、約四倍の激しい
異動率
を示す。
異動率
は入
職率
と
離職率
を足したものであります。ことに
常用労働者
の場合は、大
企業
は一二・六%でありますが、
小企業
は七七%も異動し、非常に大きな
異動率
を示します。 第二十表は
特定職種
の
勤続年数
、
経験年数
はどうなっておるか。
鋳物工
と
旋盤工
を例にとってみますと、
鋳物工
の場合は、
勤続年数
は千人以上が十年、十人—二十九人の場合は二五年、
経験年数
はほぼ同じ。
旋盤工
の場合は、
勤続年数
は九・九年、小
規模
で四・二年、
経験年数
は同じであります。すなわち一つの
企業
に落ちついておるという点では約倍の違いがある、こういうことであります。 それから次のページの二十一表、
年令別
の
労働者構成
、これを
規模別
に見ればどうか。左の端の千人以上のところをごらんいただきますと、二十才
未満
が一六%、それからその次の
三つ
、二十才から四十才までのところを合せますと六四%になります。それから五十才以上が四・五%。それから今度は右の端の欄をごらんいただきますと、中ほどの二十才から四十才までの
三つ
の
数字
を合せますと五四%、五十才以上が一〇%、すなわち二十才から四十才までの
中堅労働者
、これは大
企業
においては六四%、
小企業
においては五四%、一割の違い。五十才以上の老
令労働者
は小
規模
に非常に多いということを示しております。 第二十二表は
学歴別
の
構成
であります。これでごらんになりましても、小学、
新中卒
は小
規模
に多く、逆に旧大、新大卒は大
企業
に多いということが示されております。こういうふうに
規模別賃金格差
は、一つは
生産性
の問題によりますし、また一つは
労働力
の
構成
それ自体から
賃金
の差を生じておることがわかるわけであります。 第二十三表は業者間協定の締結
状況
を示しております。最初は協定の締結
状況
及び実態調査をやっております
状況
であります。締結件数は総計四十八件、協定参加
事業所
数は四千七百十三、それから適用を受けます
労働者
は三万六千六百四十七、実態調査実施中の件数は六十八。これは三十二年の四月に業者間協定に関する
事務
次官通牒というものが出ましてから、ことしの八月までの
数字
であります。 その次のページからは具体的に、各県において締結されました業者間協定の参加
事業所
数、適用対象の
労働者
数、あるいは協定
賃金
以下の
労働者
の
賃金
増加率、実施時期、こういうものを四十八件について示しておるわけであります。 以上で御
説明
を終ります。
園田直
5
○
園田委員長
質疑を行います。大原亨君。
大原亨
6
○大原
委員
ただいま前回の
委員会
で問題となりました点について非常に明快なる
資料
をいただきました。ちょうど企画庁長官がお見えになりましたので御質問いたします。ただいまのお話によりましてもはっきりいたすのですが、詳細に
格差
の問題を分析いたしましたら、これは
日本
の国民経済の
構造
を分析する上におきまして、非常に大切な問題がたくさんございます。ただいまもお話がありましたように、最近のこういうような
数字
が示しておることは、好況不況を通じまして、特に一つ例をとりますと、
規模別
の
賃金格差
が増大をしておることであります。私が経済企画庁長官にお尋ねいたしたい点は、前回の
委員会
でも審議いたしてきたのですが、最賃法案を政府が提案される際に、
賃金格差
の拡大を阻止していきまして、
賃金格差
を縮小していく、
労働
大臣の話によりましてもこれははっきりいたしておるのですが、企画庁長官もおそらく、進歩的な保守政党と言われるのですから、そういう理解は非常にあると思うのでありますが、上を下げるのではなしに下を上げていく、上の大部分の
労働者
が高いからこれを下げるというのではなしに、下を上げていく、そうして下を上げることによって国民生活の
水準
が上ってくるのだ、こういう考え方がここにあると思うのです。しかし私は前会にも質疑応答でいろいろと究明いたしましたが、遺憾ながら、特に中
小企業
を対象といたしておるわけではありませんが、
最低
賃金
制は経営上その他あらゆる面で中
小企業
にとって非常に大きな問題だと思います。そこでほんとうに有効な
最低
賃金
制を実施するためには、労使の関係を正しい形に安定させなければならぬ。あるいは労使の間にあるところの問題を正しく解決しなければならぬ。その基本は国民生活の
水準
を引き上げる、底を上げていくんだ、こういう考えであります。従って労使の関係の問題から
賃金格差
の問題について、あらゆる角度からこれを究明いたしまして、そうしてほんとうにこの
最低
賃金
制の法案が国際的に見ましても、歴史的に見ましても、あるいは
日本
の現状を見ましても、そういう要請にこたえるかどうか、こういうことを私どもは真剣に考えてみました場合に、
格差
についていろいろな原因があるのであります。その
格差
の原因をできるだけ正しく究明いたしまして、その中において
賃金格差
の拡大を阻止するという
最低
賃金
制がどういう役割を持っておるか、こういう点について究明いたしていきたいわけです。 最初に企画庁長官にお尋ねいたしたい点は、質問の通告をいたしておきましたが、最近の
産業別
の、あるいは分配国民所得といいますか、そういう観点からいたしますところの国民所得の動向といいますか、特に
昭和
三十二年度の上期以降より最近に至る問題で、
数字
が出ておる場合もあると思うんですが、予測できる場合もあると思うんですが、そういう点に対する一つの傾向をどういうふうに把握しておられるか、こういう点につきまして最初に御質問をいたしたいと存じます。
三木武夫
7
○三木国務大臣
賃金格差
並びに所得
格差
の問題があると思います。
賃金格差
の問題については、政府
委員
からいろいろお話があったようでありますが、結局は中
小企業
と大
企業
との
賃金格差
、その根本は、やはり
生産性
の問題、中
小企業
が低い
生産性
、俗に
産業
の二重
構造
といわれている、こういう点から中
小企業
の年産性が低い、
賃金
も従って低い、こういう問題と、もう一つは、高額所得者と低額所得者、この国民所得の
格差
、こういう二つの問題があろうと思う。その傾向をどういうふうに見ておるかということであります。
賃金
の
格差
については、先ほど政府
委員
から御
説明
があったようであります。おそらくこれは
労働
省の
統計
を使っておることと思います。やはり大
企業
五百名以上の
統計
ですが、それに比して、百名以下あるいは五百名以下というものの
賃金
と大
企業
の
賃金
の
格差
は、非常に大きいものではありません。その拡大が非常に顕著だとはいえませんけれども、しかしその
賃金
の
格差
は拡大していく傾向を持っている。たとえば
昭和
二十六年の
平均
をとってみれば、百人以上四百九十九人、これは五百人以上の大
企業
に比して
賃金
は七九・五であります。それが、今大原さんも御指摘の三十二年には七〇・八に、それから三十人から九十九人まで、これは
昭和
三十六年が六一・七、それが三十二年には五六、こういうふうに非常に大きい数年ではないけれども、
格差
は広がっていくという
数字
を
統計
は示しておるのであります。 それから所得であります。勤労世帯の実収入というものを四千二百世帯はかりにわたって調査した
統計
がここにあるのであります。それで、これをその調査した五分の一から、次の五分の一、五分の一というふうに五階層に分けて、低額所得者といわれる調査の中の一番低い階層の五分の一、これを
昭和
二十九年を一〇〇としてみると、
昭和
三十二年は対前年比一〇六・一、これが一番低額所得者。ところが一番高額所得者の方は一〇八・一ということで、その間にも所得の
格差
——
これも大きな
数字
だといえませんが、
格差
は拡大しておる傾向がある。こういうふうに
賃金格差
、国民の所得
格差
というものが拡大するという傾向は、
統計
を通じて認めざるを得ないという現状であります。
大原亨
8
○大原
委員
そういうふうに長官の方では客観的に分析していただいたわけですが、しかし企画庁は、もちろん通産省等が直接そういう対策の第一線の実施機関でございますけれども、やはり各省ばらばらのそういう政策というものを科学的に分析しまして、大きな方向を与えるのが私は仕事だと思うのです。一時は有名無実になっておりましたが、だんだん態勢が強化されてきている。それはだれも認めるところなんですが、そういう
格差
が増大をする、特に経営千面も含んでなんですが、その原因についてどういう、ふうに大臣は大体お考えになっておりますか。
三木武夫
9
○三木国務大臣
日本
の場合における
賃金格差
、それは所得
格差
にもつながるのですけれども、やはり問題は、中
小企業
の後進件
——
これはやはり
生産性
あるいは技術
水準
あるいは
労働
組合の組織等も問題になって参りましょう。こういう点で、中
小企業
が本質的に、大
企業
に比べて、設備の面においても、あるいは技術
水準
においても立ちおくれておる。やはり近代的な大
企業
に比べて非常に前近代的な中
小企業
というものが併存して、
産業
が二重
構造
になっておる。大
企業
は、
企業
の技術革新などによって非常な速度で進歩するし、設備も更新していく。これが、中
小企業
はいろいろな面でその速度が立ちおくれている。こういうことで、これは結局
生産性
ということに集約されるわけですが、
生産性
が大
企業
に比べて低い。
賃金
の
格差
というものがついていく原因はこういうところにある、こう考えております。
大原亨
10
○大原
委員
ただいま御指摘になりました原因につきましても、大体において私了承できるのですが、中
小企業
の
生産性
が非常に低い。御承知のように、神武景気ころまでは、大
企業
を中心といたしまして、機械化、技術革新ということが怒濤のように進んで参りまして、それが行き過ぎました。それは言われておる通りです。しかしそれと一緒に、やはり分配所得、国民所得もその方へ集中いたしまして、中
小企業
が非常に困難になったところで
金融
引き締めがございました。そこでそれをしおにいたしまして、共同化あるいは経営の近代化等にようやく中
小企業
が努力しようと思ったときに
——
これは食堂の前に行きまして、入ろうとしたところが、鉄のとびらがぱっとおりたようなものでありまして、あらゆる施策にいたしましても、中
小企業
は冷飯を食いまして、ますますその
生産性
、近代化、
労働者
一人当りの物的あるいは技術的な条件というものが、大
企業
との間に開きを生じて参りまして、中
小企業
はますます経営が困難になりました。中
小企業
が団結をいたしまして、自分たちの主張を貫徹しなければならぬという気持も一部起きましたが、これはなかなかできない理由が、分析すればたくさんございます。その一つの理由の中で、私どもが指摘いたしましたのは、やはり今も大臣が言われましたように、
労働
組合の組織の問題も含んで、
企業
の中における後進性、封建性の問題であります。経営が全然科学的に分析されない。大福帳式でやっておる。そうして大
企業
に比較いたしまして高い資材を買い入れる。
電気
にいたしましても非常に高いのです。大
企業
は量的にもいろいろな条件で恵まれておりますが、中小へ
企業
の方は非常に高い動力源を使っておる。物を売る場合におきましても、PRその他で立ちおくれをとりまして、中間搾取を受けたり、非常にみじめです。そのしわが一切
労働者
へ寄りますから、
労働者
は組織力も非常に低いし、
労働
省のそういう面に対する指導も行き届いておりませんので、いろいろな違った角度で抵抗いたしてきます。そして仕事の能率は上らない、仕事が抜ける、そういうことで、これは例をあげれば私幾らでもあげられるのでありますけれども、時間かせぎに質問いたしておるのではありませんから、そういう点は私は御理解いただけると思うのでお話しするのでありますけれども、
労働
組合も認めない。従って正しい要求が反映しないし、経営全体が科学的に分析されない。金が別宅へ出ているじゃないか、あるいはこういう点は、どうなんだとか、こういう点をやはり
労働者
が経営という立場に立ちながら指摘して、どんどん相協力していくような、そういう態勢ではないわけです。そういうことがこんがらがって、中
小企業
は非常に経営全体が悪化いたしまして、そのしわ寄せがすべて
労働者
へ来ていると思うのです。大体私はイデオロギーとかそういうことでなしに、近代化以前、合理化以前の、そういう近代性以前の問題について原因を指摘いたしたのでありますけれども、やはりそういう面からも国民経済の
構造
、政策を考えていただかなければならぬ大臣といたしまして、どういう御見解をこれに対してお持ちになるか、お伺いいたしたいのでございます。
三木武夫
11
○三木国務大臣 大原さんの御
意見
は、
労働
組合運動に重点を置いてお話しになったけれども、私はそうは考えない。やはり中
小企業
も
労働
組合組織をさるべきだと私は思う。しかしそれが中
小企業
の
賃金
の
格差
を大きくしておるのだとは思わない。やはり問題は中
小企業
の持っておる
生産性
の低さということにある。この低い状態をそのままに放置しておいて
労働
組合を作り、強力な組織力によって中
小企業
の
賃金
水準
を上げていくということが問題の解決ではない。やはり中
小企業
の、今言った後進性、これはむろん
労働
組合組織がないということもその中に入れられましょうけれども、それが根本の問題です。いかにして中
小企業
の立ちおくれておる設備を近代化していくか、あるいは技術
水準
の低い状態をどうして高めていくか、あるいはまた中
小企業
の持つ過当競争に対して、もう少し中
小企業
が一つの組織か
企業
自体を通じて、全体として中
小企業
の問題を解決していかなければ、
労働
組合を結成されるということたけで中
小企業
の問題が解決できると私は考えていない。
大原亨
12
○大原
委員
非常に政治的な御答弁をなさいましたが、私はこういうことを申し上げたのです。近代化という中には、
生産性
の問題も
労働者
の問題もある。
労働者
の問題というのは、これは人道的な、人間としての問題であります。それで一つ大臣にお伺いしたいのだが、あなたは企画庁の長官といたしまして、
最低
賃金
制ということについてどういうお考えを持っておられるか。根本問題ですから一つお聞きいたしたい。それが御理解ないと、総合的な施策を立てる際に、人間を尊重する雇用の問題、失業の問題その他、これは口では国民
水準
を上げる、不況対策をやると言いましても、内的にそういう原因があるのです。それを科学的に究明しないと政策は立たない。だから
最低
賃金
制の問題に対する御見解をお伺いいたしたい。
三木武夫
13
○三木国務大臣 やはりそう急激な、一律な
最低
賃金
制というようなものが実情に沿わないことは大原さんも御承知の通りでありますが……。(承知じゃない」と呼びその他発言する者多し)いや、それは現実ですよ。
日本
の中
小企業
の問題というものが、いわゆる
労働
面だけで解決できるものでない。
労働
面だけでもいろいろ問題があることは御指摘の通りでありますか、ほかにもいろいろ本質的な問題があるのでありますから、これを一律に
最低
賃金
制などという、中
小企業
の全体が崩壊するようなものが現実の政治だとは思わないのでありますが、しかし徐々に
最低
賃金
制をしいていく、これくらいの給料を支払えない
企業
というものは、
企業
としてやはり成一前しない、こういう状態に持っていくことは傾向として私は必要だと思う。そのためにこの言
最低
賃金
制があるいは不徹底なものだと言われるかもしれませんが、一歩前進である。これを保守党が提案して、
最低
賃金
を用いて、ここから将来は
最低
賃金
制というものを一律にすべきものでしょう。そういう方向に向って踏み出していったというところに大きな意義もあるし、これは必要である、こういうふうに考えます。
大原亨
14
○大原
委員
今の御答弁ですが、初めはよくてだんだん悪くなった。あなたは非常に口の言い回しが上手な人なんで、倉石
労働
大臣と双壁です。あなたは非常に進歩的な方なんだというので私は初めは
意見
が一致しておったのですが、だんだん分れつつある。じゃ、端的にお尋ねするのですけれども、あなたは
最低
賃金
制とは中
小企業
の
労働者
や一般勤労者の
賃金
を
最低
に押えられるのが
最低
賃金
制だというのですか。それとも生きていける、人間としてのそういう条件を整えていく、これを中心として考えていくのが
最低
賃金
制だ、国民経済の中で再生産できるような
労働力
をつちかっていく、どっちが
最低
賃金
制だとお考えですか。
三木武夫
15
○三木国務大臣 それは大原さんのおっしゃる通り、物理的にいって人間らしいという理由だけでなしに、文化的生活のできる条件を充たす
賃金
であること。ところが現在そういう意味からいったならば、中
小企業
の持っておる後進性がそれだけの貸金を与え得ないところに、やはり
日本
の
産業
の
構造
の大きな問題があるのでありますから、考え方としてはあなたと私は違いはない。しかしそれを現実にはできないのじゃないか。それがやはり
日本
の
産業
の一つの姿である。それを徐々にそういうところに持っていくところに問題の点があるのだと考えます。
大原亨
16
○大原
委員
だいぶ問題が前進しましたが、私が次にお尋ねしたいのはこういうことなんです。
最低
賃金
制の観念については、三木長官の感覚では理解できると思うのです。ただ、さっき
労働
省がずっと指摘されましたし、あなたも言われましたが、
賃金格差
はだんだんと増大しておるのです。その原因については
生産性
の問題を言われたのですね。
生産性
の問題といいましたら、一人当りの
労働者
の、簡単に言えば、その生産の効率の問題だと思うのです。その前提となっているものは中
小企業
者の経営全体を含んで、政府が今日まで、どういう施策をとってきたか、ここに根源があるのです。
格差
が増大しているというのは、口では中
小企業
対策を言われながら、実際には中
小企業
対策は前進していない証拠じゃないのですか。そこに問題があるのじゃないのですか。この問題を的確に国民経済の中で解決しないと、
最低
貸金制はいつまでたってもあなたが言われるように前進しませんよ。だから近代化とか
生産性
を高めていく、こういう問題について、それを妨げている原因は、特に
金融
引き締め以来、神武景気以来、たとえばけさの新聞を見ましても、本年度の下半期の財政投融資の予測について企画庁では出しておられたけれども、そういう問題については、むしろそういう点においてその原因をどういうふうに把握しておられるかという点が
最低
賃金
制と関連して大切な問題であって、これが非常に具体的な問題だと私は思うのです。一つお考えを承わりたい。
三木武夫
17
○三木国務大臣 これは通産省などで来年度の予算とも関連して考えるべきことでありまして、国務大臣としての私の責任もあるわけであります。やはり一つには中
小企業
の設備近代化のために相当な努力をいたしたいと私は考えております。来年度の予算においても、
機械工業
振興法などによっていろいろな便宜がありますが、それでは足りないと私は思っております。もう少し予算の面においても中
小企業
が設備をとりかえられる、そういう条件を満たすために努力をしたい。今年度でもそういう予算があることは大原さん御承知の通り。こういうことによって中
小企業
の設備を近代化していく、また中
小企業
の
労務者
に対して、技術的な再教育といいますか、こういう施設もあるのでありますけれども、十分であるとは思いません。こういう点にも、やはり中
小企業
の
労働者
というものが、
労働
の質の上において低いことは明らかでありますので、それを何とかして技術
水準
というものを高めるように政府の施策も拡充していく、国務大臣として予算の獲得には努力したいと思っておる。設備近代化、技術、それから一方において中
小企業
が、個々には零細な
企業
がたくさんに分れておるのでありますから、どうしてもやはりこれは協同組合とか団体法によるいろいろな組織化をはかって、またみずからもいろいろ中
小企業
の経営の近代化のために、組合単位でいろいろ努力していくという面も要るわけです。そういう助長もしなければならない。また一方において、御指摘のような財政投融資などにつきましても、これは重要
産業
における財政投融資は年々ずっと減って、むしろ中
小企業
の面に
——
金額としてはやはり大原さんも大
企業
に比べて低いと言われるだろうと思いますが、しかし大
企業
といってもそれは電力とか鉄鋼とかそういうふうな、それ自身は大
企業
といっても中
小企業
に関連性を持っておる、こういう基礎的な
産業
というものが相当発展をしてこないと、中
小企業
というものとも関連を持っておりますから、ただ資本金の大小ということばかりで財政投融資というものは考えられない。その質という問題も考えなければならぬわけでありますが、しかし今後財政投融資がそういう傾向にはあるけれども、これはやはり中
小企業
にもっと重点を置いていくべきである。こういう点については、今のが満足だとは思っておりません。もう少しやはり中
小企業
というものに重点を置くことが経済政策としては非常に大事である、こう考えております。
小林進
18
○小林(進)
委員
関連で企画庁長官にお伺いいたしたいのですが、ただいまの御答弁の中に私は非常に重大な
——
というのは悪い意味ではないのですよ、傾聴に値する貴重な御
意見
があったと思うのであります。それは一定の
賃金
を支払えぬような
企業
は
企業
として成り立たないのである、こういうお言葉がございました。これは私どもが常日ごろ考えていることでございまして、私は実に長官の名御答弁であると思うのでございまするが、その
賃金
というのは何かとおっしゃれば、それは動物的、物理的
賃金
ではないのだ、やはり人間として文化的あるいは一定の教養、娯楽をかまえた生活を営み得る
賃金
をいうのである、そういう大臣のお言葉をそしゃくしてみまするならば、今の
地域別
、業種別、職業別の
賃金
とあるものをそのままに認めていこうという
賃金
が、果して大臣のおっしゃるような文化的な人間としての生活を営み得るような
賃金
がそこにでき上るかどうか。今政府の考えていられるような最賃法でいくならば、そういう大臣のおっしゃるような一定の
賃金
が一体でき上るかどうか、われわれはでき上らないと思う。そういうでき上らない
賃金
を固定化することが果して一体中
小企業
者や
日本
の
産業
やらを助成するものになるかどうか。私はやはり文化的に人間らしい生活を営む
賃金
というものには、だれが考えても一つの常識的な限界がある、一定の率があると思う。それが六千円であるか八千円であるかわかりませんけれども、具体的に
数字
の上に現われるものが八千円と仮定いたしましても、その八千円を支払えないような
企業
は、さっきの大臣のお言葉をそのまま活用させていただきますれば、その
企業
として成り立たないのだ。そういう成り立たないような
企業
に、四千円とか三千円とか二千円とかという動物的な
賃金
を固定化して立法化し、あるいは合法化するような最賃法の今の行き方は非常に間違っているのではないか、私はかように考えます。この点、一つ大臣のお考えをもう一回お伺いいたします。
三木武夫
19
○三木国務大臣 小林さんの御
意見
と私は大きな違いがあるとは思わない。ただしかし違うことは、そうあるべき理想の姿を描いて、今それをやれということは中
小企業
として成り立たぬのだ、今はやれぬ、将来はやはりそうなくてはいかぬ、それはあなたの言われる通りだと思う。ただそれを、現実にはそれができないじゃないか。それをやれば
企業
の大半というものは成り立たぬわけですから、雇用の機会を失うわけです。そういう意味において
最低
賃金
制というものが、業者協定という不徹底なものであっても、一ぺん
日本
の
企業
の中にこうした制度を設けたところに大きな意義があるのではないか。これをやがてはあなたの言われるような
最低
賃金
制に持っていくところに、私は政治の前進性があると思う。これが実行できないから、今にわかにあなたの言われるような
最低
賃金
制とかいっても、そんなものは
企業
の大半がつぶれれば、
賃金
どころか雇用の機会を失うのでありますから、そういう意味において、不徹底でも一歩前進じゃないか。そういう意味で、
最低
賃金
制が実施されるということは意義がある。将来のあるべき姿としてはあなたと同感です。現実にそれをすぐにやれぬというところが
意見
が違う。
小林進
20
○小林(進)
委員
大臣のおっしゃる気持はよくわかりましたが、それでは動物的でなく、人間らしい
賃金
を払えないような
企業
は
企業
として認めるわけにいかぬ、成り立たない、しかしそれは理想だ、現実においてはやはり人間らしい
賃金
を払えないような零細
企業
が充満しているのであるから、それはそのまま認めて、残念ながら今のところは動物的な
賃金
——
人間らしい
賃金
ではないが、動物らしい
賃金
を払っていくというこの最賃法も、悲しむべき
日本
の現状から見ては一歩前進ということで認めなければならぬではないか、こういう御
説明
であると理解してよろしゅうございますかどうか、承わっておきたい。
三木武夫
21
○三木国務大臣 いろいろ形容詞はあれですけれども、あなたがお使いになった動物的とか人間的とか、そういうことはいろいろ誤解を生じます。いろいろ見解が違うわけです。動物的というようなこととは考えられません。低い
水準
ではあっても、動物的、それほどの低い
水準
だとは私は思わない。そういうあなたの形容詞を全都除けば、賛成であります。
小林進
22
○小林(進)
委員
関連ですから、自分の時間ではありませんので、これは了解をし得ないままに一応私はほこをおさめます。あらためて
労働
大臣に御質問を申し上げて、その機会にゆっくりやらしていただくことにいたしまして、私の関連質問を終ることにいたします。
堤ツルヨ
23
○堤(ツ)
委員
先ほどからの御答弁を伺っておりまして、三木企画庁長官にちょっと関連してお聞きしたい点があります。
賃金格差
から、中
小企業
の問題の核心に触れられたと思いますが、私は大臣の御答弁を非常に了承いたします。中
小企業
の零細な中で、
労働
組合の強化だとか、働く者の権利というものだけを主張してみても
生産性
の向上にならない、中
小企業
自体の自主性といいますか、
生産性
向上のためのほんとうにやらなければならぬことは、違う面にあると思う、これは私同感でございます。非常にいい御答弁だと思いますけれども、大臣は大原さんに、それに対するところの具体的な、予算的な裏づけをもって、中
小企業
自体の中から救っていくのだという気概をお見せになりましたけれども、しかしここで大臣が答弁なさっても、実際には窓口へ行きますと、大臣はああいうことを答えておるけれども、スズメの涙、二階から目薬のたぐいしか予算がとれておらないのだという結果に終っておる前例が、ここ十数年続いておると思う。ですから、大原さんにお答えになった漫然とした抽象的な、中
小企業
の設備近代化のために予算獲得に私は努力するとか、中
小企業
に働く
労務者
の再教育のために予算をとるのだ、こういうことをおっしゃいましても、実際はおぼつかないのではないか。大蔵省との相撲をおとりになって、実力者でいらっしゃるから、相当金をおとりになると思いますけれども、実際はおとりになれないのではないかという危惧を持つわけで、まことに疑うようで恐縮でございますけれども、実際はどれくらいを要求していらっしゃって、ほんとうにどれくらいとるのだということをはっきり言っていただきたい。そうでないと、大きなことをお吹きになっても、実際の政治の中には生きてこない、こういう結果になっておる。 それからもう一つお尋ねいたしたいのは、今の小林さんの質問でございますけれども、政府は
最低
賃金
法を今度お出しになって、私たちは私たち独自の
賃金
法を出して、今国会で審議の途上にあるわけですけれども、一番案じますことは、業者間協定を中心としたような行き方でいって、今行われておる
最低
賃金
は人たるに値する、
労働者
に当然報われなければならない
賃金
という意味でなしに、今非常に低く払われておる、世間一般にある零細
企業
間における
賃金
、この
賃金
を
最低
賃金
と認めて、むしろこれに法的根拠を与えるような結果に政府が終らしめるのではないか。そうすると、一般中小零細
企業
の経営者の立場からいえば、自分たちの薄弱な立場の上に立って、むしろ
労働者
に与えない
賃金
の言いわけを政府がしてくれたんだ、私はこういう法律に終るのではないかと思って、非常に案ずるのですが、企画庁長官はどうですか。今度お出しになった政府の
最低
賃金
法をお通しになれば、安易なそうした法的根拠をお与えになって、むしろ
労働者
が今後たとい五百円ずつでも前進して、三年の後には
最低
六千円、七千円、五年の後には九千円になるのだという希望を与えしめる
最低
賃金
法にならないと思うのです。そういうことに対して、
労働
大臣からもお答えをいただいておかなければならないと思いますが、企画庁長官としては中
小企業
に非常に親心を持っていらっしゃるのですし、これは労使双方にお考えになる必要があるのですから、
企業
として成り立っておるといえるだけの
賃金
が払える中
小企業
を育てていくというところの予算面からの企画庁長官のあたたかい手と、同時に働く
労働者
の立場も五分々々に考えてもらわなければなりませんから、変な最賃法を今度通していただきますと、法的根拠を与えて、零細な
労働
賃金
に甘んじるところの
労働者
を泣かせたまま、弱い
企業
しか持たない人たちだということに便来しがちな経営者を守る最賃法に終る、こういう考えを持つのですが、そこを一つはっきりしておいていただきたいと思います。
三木武夫
24
○三木国務大臣 予算のお話がありましたけれども、これはまだ予算の編成期にもなっていないのであります。しかし私はやはり中
小企業
の問題に対して非常に関心を持っておる一人です。そういう意味において、これは今言ったように所管ではございませんけれども、国務大臣として設備の近代化あるいは技術
水準
の向上という点については、まことに微力ではありますけれども、予算をもう少しふやすべきであるという論者であります。これをふやすような努力をしたい。幾ら幾らということはまだ申し上げる段階ではないが、私はできるだけ尽したいのだ。そうでなければ
日本
のいろいろな問題、
産業
の二重
構造
からいろいろな経済問題ばかりでなく、あるいは社会問題、政治の安定にも結びついておる問題でありますから、非常な関心を持って、できるだけの努力を今言ったようなことに対してしたいのです。 それから
最低
賃金
制というものが低い
水準
で押えるようなことにならないかということでありますが、そうはならないと思います。やはり
最低
賃金
制というものは、できる限り将来は今皆さんの考えられておるような方向にいくべきでしょう。しかしそれは今は現実にはできないのでありますから、徐々にそういうふうに持っていくよりほかにない。むろん安い
水準
できめるということになれば、そういうところには
労働者
も集まりはしないし、そういうことはできるわけはないのであります。そういう弊害はない。これは一方
労働者
の生活の向上のための一歩前進であることは間違いはない。これがかえってうしろ向きになってきて、
労働者
の
労働
条件を引き上げるような効果というものは絶対にないと思います。これは速度はおそくとも一歩前進である、こう信じております。
堤ツルヨ
25
○堤(ツ)
委員
私の質問の時間でありませんから、もとの軌道に、大原さんに返しますけれども、しかし一本くぎをさしておきます。三木大臣は、今非常に政治的な答弁で私をごまかそうとなさいましたけれども、しかし各省の中に私たちが足を踏み入れるときに、局長以下部課長、係官に至るまで全部
会議
で、もう二カ月くらい面会ができない。それはなぜかといえば、大蔵省に対する予算要求というものは各省ウの目タカの目なのです。そして
数字
をみんな具体的に出していらっしゃる。今三木先生は私の前をごまかされましたけれども、しかし真に中
小企業
の設備近代化のために、
労務者
の技術再教育のために、財政投融資のためにあなたがやろうという三十四年度のプランがあるならば、
数字
はすでに出たはずです。三木さんの机の上にあるはずです。それは幾らおとりになられるか知らないけれども、もしここで誠意ある答弁ができるとするならば、とれぬかもしれないけれども私はこれだけの要求をしておるのだ、あなた方に言わせれば五億は少いかもしれないから、これに十億要求しておるのだ、こういうような
数字
のある答弁ができるはずなのです。ところがなさらないということは、ここでらっぱをお吹きになっただけで、実際は手に持っていらっしゃらないのじゃないかという危惧を持ちますので、ここで三十四年度予算が出ましたときのために、念のために三木国務大臣に一木くぎをさしておきます。 それから最賃法につきましては、今の人たるに値しないところの零細な
労働者
の
賃金
を法的に根拠づけるものではない、前進を目ざしたものであるということをおっしゃっておりますが、これはほんとうにそういう自信があるのか、計画があるのか、これは私はまた時間を別にして、
労働
大臣や皆さんにお聞きしたいと思います。どうぞ一つ私たちに希望を持たしていただくよう計画性を持っていただきます。
大原亨
26
○大原
委員
私は業者間協定とか、あるいは今お話にあった
最低
賃金
制にすら値いするかどうかという問題は、これはまた一つゆっくりと各方面から
労働
大臣にお尋ねするといたしまして、きょうは長官に私の質問を進めていきたいと思うのですが、やはり何といいましても
賃金
を払う母体、基礎が経営であるということについては、中
小企業
の場合でも、私は直接的にこれはよくわかっておる。だれも知っておる。だから経営の問題について、
最低
賃金
制を前進するような格好で、国民経済全体を進めていただかなければならぬ。そういう意味において、総合経済企画の元締めであるあなたのところに、私どもも審議権の焦点を向けて話をいたしておるのであります。そのつもりであとしばらくの問題につきまして、あまり政治的な答弁をされぬように、率直にお答えいただきたいと思うのです。 岸内閣の
金融
引き締め政策の緩和、これは一つの例ですが、そういうことが、最近不景気じゃない、不況じゃないという前提で、経済調整の一つの施策になっています。先ほど申し上げたように、本年度の下半期の財政投融資にもはっきりわかっている。今までもそうですが、大きな
企業
は系列銀行を持っており、財閥銀行があるわけです。その上に総合的に国家の投融資を含んで、そういうように緩和される。その恩恵を受けるのは一体だれか、最近そういうふうに手直しをされつつあるときに恩恵を受けているのはだれかといえば、これは中
小企業
じゃないと思うのです。一つには、そこにやはり大きな
賃金格差
が拡大しており、後ほど申し上げるけれども、所得がそういう不公平になっている一つの大きな根源がある。もう一つは税金のとり方、とる率が悪くて、とり方が過酷である、こういうことも私は
資料
をあげればありますけれども、これは申し上げておくにとどめます。それから買う場合における共同化の問題とも関連いたしますが、原料や資材を買う場合の価格が高い。売る際に、先ほど申し上げたように、非常に安くたたかれる。苦しいものだから、
労働者
の方にしわ寄せしてきておいて、正しい方向で問題を解決するのでなしに、
労働者
へしわ寄せしてやるから、経営が悪循環になって、ここに
労働
問題が起る。これは一体なものです。そういう点について、基本的に機械その他について、融資をどうした、こうしたというても、これは全体から見ればスズメの涙です。そういう基本的な観点について、一つ雇用とか人間の尊厳とかいうことを中心にして問題を解決していく、そうでなければ決して労使の関係は安定しない、正しく解決できない。そういう基本的な
最低
賃金
の問題について、あるいは
労働
組合の問題について、非常に政治的な答弁をされたが、私はそういう根本の二つ
三つ
の点について、あとで第二の質問に入ります前に、はっきりお聞きしておきたい。
三木武夫
27
○三木国務大臣 今のお話、いろいろ
最低
賃金
制に限らず、政治の出発点が人間の尊厳を中心にやられることは異存はございません。その通りだと思います。
大原亨
28
○大原
委員
次に第二は、独禁法の改正が経営の
格差
にどういう影響を及ぼすか、あるいはそれがひいては
賃金
の
格差
を増大させて、
賃金
を低いところにくぎづけするのじゃないか、そういう疑惑があるわけですけれども、これについて、大臣お急ぎのようですが、相当質問が残っておるのですけれども、できるだけ端折って質問したいと思うのです。あまり観念的なことを言いましてもいけませんので、第一の質問に関連いたしまして、私いろいろ調べた
資料
によりますと、
昭和
三十二年下半期ごろを一つの契機といたしまして、ずっと最近の
数字
や
統計
というものは、
産業別
国民所得や、分配国民所得に対して、数々の特徴的な傾向が現われておって、それが非常に深刻になりつつある、こういう見方をしておる。その点で、この
産業別
国民所得の特徴点は何かと申し上げますと、第二次
産業
、鉱工業、建設業、この所得の増加率がにぶったという点です、非常に停滞しているという点です。それから第一次
産業
は農産物その他でありますから、豊作その他がありまして、これはややいいというわけです。それから第三次
産業
、卸、小売とかサービス業はわずかに上昇しておるのですが、ここへ流れ込んでいる人口が非常に多いので、過当競争やいろんな問題があって、雇用問題、失業問題がここにあるわけです。つまり政府の失業対策はきいてないという一つの証拠なんです。実効が上ってない。そういう特徴を示しておる。それから分配国民所得につきましては、こういう三十二年度下半期以降からの傾向を持っておると思うのです。勤労所得は四兆五千億円なんですが、これは前年比一二・九%増で、増加率はやや同じです。これは内容を分析いたしましたら、
労働
省の最初御説所になりましなようないろいろな問題がありますけれども、これはやめます。それから法人所得は九千八百億円なんですが、これは二七%の前年比増加でありまして、非常に根強い上昇率を示しておる。それから個人業所得は二兆八千四百億円でありまして、前年比六%の上昇なのですが、このうち農林水
産業
の、いわゆる業種所得が豊作その他で若干ふえておりますから、これ以外の業種の個人業の所得は減退しておるのです。そこで法人所得が非常に根強い上昇率を示しておる中において、これは
数字
をずっと
説明
いたしましたら少し長くかかりますけれども、一つ概括的にお話しいたしますと、中
小企業
は、今言われたように、経営の上においても
賃金
の上においても、
格差
が拡大いたしまして困難になっておる。大法人の方へそういう法人所得がふえておる。これは三十三年度の上半期も同じです。それは繊維とか紡績その他いろいろな
産業
がございまして、
産業
の種類によって違いますけれども、全体といたしましては、大きな法人の所得が根強く上昇して、法人全体としては上昇しておる中において、中
小企業
の方は下っておる。だから私は、
最低
賃金
制を確実に前進させていく、そしてほんとうに生きるに値するだけの生活を保持して、底をぐっと上げることによって国民生活
水準
を上げて、失業対策の一つとして社会保障、減税等を含んで、やはり国民の正当な購買力をつけていくということが、不況対策としても基本的な問題だと思う。そのためには、当然中
小企業
やそういう面について補正予算を組みなさいと言っているのが社会党の主張です。この点について、そのことは論議いたしませんけれども、そういう傾向です。そこで今回独禁法を改正されるわけですが、これが正しく改正されればいいのですが、カルテルとかシンジケートというふうな形のものがほとんど手放しのような形になりまして、そういう資本の集中、富の集中、生産の集中、そういう中でますます
格差
を増大していく。そういうことをずっとあげましたら、これは演説になりますからやめますが、そういう傾向に拍車をかけるのじゃないか。民主主義の原則から、人間を尊重するという建前に立って、
最低
賃金
制を国際的な批判の中でやろうとしている。しかしながらそれが
——
法律的ないろいろな問題については、後に担当大臣や
労働
省と十分各方面から徹底的に審議したいと思う。しかし独占禁止法の今回の改正は、そういう
格差
をますます増大させまして、中
小企業
をたたきつけるのじゃないか。こういう判断を私はいたすのでございますけれども、そういう点について、経済企画庁長官の主管大臣としての御見解をお伺いしたいのであります。
三木武夫
29
○三木国務大臣 独禁法は私の主管ではございませんけれども、経済の
全般
とも関連をいたしますので、お答えをいたします。独禁法の今回の改正の精神を貫いておるものは、カルテルを認めることによって、それが中
小企業
、消費者、農民に不利益をこうむらしてはならないのだということが、やはり貫いておる精神でございます。従って、もしそういうものがあるならば、カルテルはみな認可制になっておるわけでありまして、公正取引
委員会
も、ただ
企業
の合理化というだけでなくして、独禁法の中には経済司法的な機能もあるので、公正取引
委員会
の機能は強化すべきだと私は思う。そういうことで、もしそのカルテルというものが価格をつり上げたり、不必要に消費者の利益を阻害したり、あるいはまた大
企業
が中
小企業
を圧迫するような場合があるならば、カルテルを許さない。ただ独禁法のねらいは、過当競争の弊害から
日本
経済を守りたいということが精神であります。過当競争によって、大
企業
も非常な損をするけれども、中
小企業
だって、過当競争の弊害というものは受けておるのでありますから、そういう意味において、これは大
企業
を擁護するというものでなくして、
日本
の経済をノーマルな状態におきたい、このような過当競争のために、どれだけ国民経済全体が損失を招いておるかということについて、この法律の改正をやろうということであります。中
小企業
とか農民、消費者が非常な圧迫を受けるような独禁法の改正には、私自身も反対であります。
大原亨
30
○大原
委員
最後に言われた言葉をとらえるわけではないのですが、そういうふうに大資本の利益を擁護する独禁法改悪には、私どもは反対なんで、この改悪がなされれば、中
小企業
やあるいは
農業
協同組合、一般消費者も、今言いましたごとく資材費が上っていく。そして、いわゆる大きな資本はPRが増加しまして、中
小企業
の品物はてんで話にならなくなる。こういうことでまたダンピングが始まる。そういうことを助長するのだ。国民の法人所得も今日の傾向を助長するのだ。たとえば雪印やクローバーのような、市場の六割を占めているような乳製品の合同を認めましたり、そういうことが示しているように、そういうことだったら完全に値段をつり上げるに違いない。政党政治の中においては、そういういろいろな弊害が出てくると思いますけれども、しかし大臣が今お話しになった点につきましては、これは全然了解できません。私は事実の
数字
をあげて最近の傾向を示した。イデオロギーでなしに、事実を示して御質問いたしたのでありますが、答弁についてはきわめて遺憾であります。 もう一つ、やはり何といいましても、
最低
賃金
制を実施する際に、低
賃金
が国際貿易、国際市場に進出していく際に、大きな武器になるという考えが一つある。そういう点から考えてみまして、国際的な批判は逆でありますが、
賃金
やあるいは国民生活の
水準
が低いことが、
日本
の貿易を進めていく一つの大きな武器だということが、根強く考えられている。それは大
企業
の
賃金
を含めて考えられておりますけれども、この
賃金
水準
を上げていくという問題から考えて、貿易と
最低
賃金
制との関連をどういうふうに把握されておるか。これはILOへ持っていけぬとか何とかいうことじゃない。そういうことは
労働
大臣の方の話です。そういう話はまた別にしますが、そういう経済的な、あるいは貿易上国際市場に進出するという
——
これは雇用量を増大して、そして国民経済を拡大していくという上からは、だいぶと言われておりますが、
最低
賃金
制との関連において、あなたはどういうふうにお取りになっているか、こういう点のお考えを聞かせていただきたい。
三木武夫
31
○三木国務大臣
賃金
水準
というものが、
賃金
の絶対額からいえば、非常に低いことは御承知の通りであります。今
昭和
三十一年の
統計
で見ますと、
日本
を一として
アメリカ
は七・九倍、
イギリス
は一・八倍、イタリアが一・五倍で、そういう絶対量からいったら低いのであります。しかし
賃金
水準
というものは、やはり国民総生産、この
水準
からも見なければならぬので、全体としての
水準
が
日本
は低いわけであります。そういう点から考えてみますと、やはり総生産の上においてそれだけの開きがある。だから
賃金
水準
というものが、
アメリカ
が幾らだから低いと、こう一がいにいえないものがあります。それはその国の国民総生産を基礎にして考えなければならぬ。従って、お尋ねの
日本
の
賃金
が絶対額において低いということは、貿易の上において武器になっていることは、私は否定できないと思います。しかし世界は、今日では
日本
の
労働
賃金
をソーシャル・ダンピングだとはいわない。全体としてそういうことをいうならば、それは
イギリス
だって、
ドイツ
だって、イタリアだって、
アメリカ
などの
賃金
に比較すれば、みなソーシャル・ダンピングであります。そういうのでなくして、今日世界が問題にしているのは、一つの
企業
、紡績なら紡績という
企業
について、ほかの
賃金
と比較して低いとか高いとかいうことで問題にしているのだと思うのです。そういう全体としての
賃金
水準
で問題が起っているとは、私は承知していません。しかし
賃金
は、今言われたように、これはなるべく高能率、高
賃金
ということが人類の向うべき方向でありましょうけれども、しかし、そういって世界とすぐ比較しても、いろいろ条件も違うので、世界と絶対量を比較して、それで
賃金
を世界
水準
まで上げなければならぬという理屈も、少し論理の飛躍だと思います。しかし、今はそれが武器にはなっておりますけれども、
賃金
はできるだけ高くなっていっても、国際競争力を持つように、それ以外の技術やいろいろな面でやることが理想であることは、これはやはりその通りだと思います。しかし現在は、
日本
の貿易の中で、
賃金
水準
が低いことも有利な武器になっていることは否定しません。しかし、それだからといってすぐにその
賃金
を世界
水準
にということは、これは条件が許されないと思います。
大原亨
32
○大原
委員
言われることは、大体筋としてはわかるのですが、これは
程度
の問題を言っているのです。私はあまりひど過ぎるということを言っているのです、
日本
の実情を全然無視して言っているのではなして。鉱工業の生産は
昭和
九—十一年を基礎にいたしましたら、二五七になっておる。しかし国民の消費
水準
は一三七なんです。だから大衆購買力が少い。それで富や生産が集中しているのに、大衆購買力が少い。失業者がたくさんあって雇用問題が非常に大きい。こういうことが
日本
の
賃金
を低めていると同時に、
日本
の経済全体を不健全にしている。
賃金
が高いことが
日本
の
産業
をおくらしておるのではなくて、
賃金
の低いことが
日本
の
産業
の技術的な努力をおくらさしておるのですよ、そういう近代化という問題を
賃金
の面から考えたら。たとえば
賃金
の高い
アメリカ
の自動車だって、
日本
にどんどん入ってきているでしょう。だから、私の郷里なんですけれども、東洋趣味というものが
アメリカ
や豪州や
イギリス
に普及しておる。これは駐留軍に占領された一つの成果であります。そこで広島から品物が出ていくのですよ。たとえば五尺の紙のコイのぼりなんかが出ていく。これはあとでまた
最低
賃金
を論議するときに具体的に申し上げますが、五尺のコイのぼりが
アメリカ
へいきます際に、これは家内工業なんですけれども、原価で三円九十銭。それを
アメリカ
で幾らで売っているかと市場調査をしてみると、九十円で売っている。この家内工業の手間賃を十倍にしても、これは東洋趣味で貿易できるのです。そういうものは九十円でも安いのです。それがハイヤーやその他ずっとあって、中間搾取がひどいのです。そういう問題について政府が共同化やあるいは合理化を進めて計画的にやっていけば、これはまだまだできるのです。貿易は幾らでも振興できる。こんな例を
日本
の貿易であげていたらきりがない。だから家内
労働
の
賃金
——
最低
賃金
の歴史はここから始まっている。苦汗
労働
、そういう問題を中心として世界の歴史はできている。ですからそういう具体的の例を一つ申し上げただけでも、これは家内
労働
の
賃金
が安いとか、あるいは中
小企業
の
賃金
が安いとかいうことが貿易上の大きな武器ではないのです。これは大きな障害なのです。これは国民所得の中において悪循環しておるのです。だから私は
最低
賃金
制の問題は国民経済の中で、あるいは貿易の問題の中で、もう少し計画的に具体的に立てなければいかぬと思う。おざなりにこれをジュネーヴのパス・ポートでもってやるのではいけない。これは基本的には国民経済の
構造
を変えていくというようなことを考えていかなければならない。私はその点、一つ一つについて御
意見
を聞ければいいのだが、時間もだいぶ迫ってきました、何かぶうぶう言っておられる人もあるし、あと一つ御質問いたします。
最低
賃金
制のようなこういう大きな仕事を進めていく上においては、総合的な政府の経済施策の中において協力が必要なのです。こういう点についてはどうお考えなのですか。たとえば
最低
賃金
制を実施するためには、金繰りやその他当面の問題は相当ありますよ。これは一年二年を経過いたしましたらだんだんとある
程度
——
経営者としていやしくも
労働者
を雇う以上は、その社会的な責任として食える
賃金
を
——
だれが考えても、今のエンゲル係数五八%というのは動物的ですよ。それが失対なんかの
賃金
水準
にずっときている。だからそういう問題を解決するためには、当面においては財政の投融資とか融資の面なんか要るのです。だから
最低
賃金
制を実施する際に、たとえばそれを一つの対象として、それをてこにして近代化していこうという、そういう中
小企業
に対しまして融資をするような、これは外国でもちょいちょいございますけれども、そういう
最低
賃金
のための
金融
機関というふうに抽象的に申し上げておきますが、そういうことをやりましても
——
当面の問題を解決いたしまして、そういうものをだんだん食える
賃金
まで引き上げていったものに対しては、当面の問題を処理しながら、国民経済全体の中でそのあり方を今みたいに野放しでなしに規定していく。おそらく自由競争でいったら力を持っておるものか勝つ、金を持っておるものが勝つのです。それについて中
小企業
を救うためには計画性が要る。計画をどうとっていくかということが問題ですが、そういう中において、そういう
金融
措置とその他を含んで、ほんとうに
最低
賃金
制をやるバックを作っていくためのそういう施策を、たとえば
最低
賃金
制のための
金融
機関、そういうふうなものについても総合施策の中で考えていく、こういう観点について企画庁長官は、どういうお考えを持っておられるか。特に真剣に取っ組むか取っ組まぬかの問題でありますから、そういう点についてお考えを伺いたいと思います。
三木武夫
33
○三木国務大臣 中
小企業
の場合はやはり
最低
賃金
制も問題でありますけれども、経営者だって中
小企業
がつぶれたり興ったり、実に不安定な基礎にあるのでありますから、全体としての
労働者
の
最低
賃金
制を高めるような条件を作るために、中
小企業
の安定がないと、
労働者
だけが安定して経営者が不安定という状態はあり得ないわけであります。そういう意味で、全体として今後の
日本
財政投融資の面における中
小企業
への比重、あるいはいろいろ政府の
産業
政策を通じて中
小企業
の近代化のための施策に力を入れていく。これは
最低
賃金
制いかんにかかわらず、今後の政府の経済政策の大きな方向だと思うので、そういう点には力を入れて参りたいと考えております。
大原亨
34
○大原
委員
もう一つだけ残っております。現在の国民の生活
水準
を規定するのに、非常に大きな問題になっておる勤労者の
賃金
水準
は、
日本
の実情を考えてみましたらこういうふうになっておると思うのです。というのは生活保護費の
基準
が具体的な問題ですよ。そういう問題が非常に大きな影響があると思うのです。それから不況対策その他で問題となって、あとで関連をして承わりたいですが、失対
労働者
の
賃金
水準
が中
小企業
その他の
労働者
の
賃金
水準
をきめる大きな問題になっておる。それを基礎にいたしまして、臨時工とか社外工とか大きな
企業
における
賃金
水準
の問題、今も問題になりましたが、
格差
の原因になっておる。そういう
賃金
水準
の問題があると思うのですが、完全失業者とかそれらの部類の中に入っておるボーダー・ラインの半失業者、潜在失業者一千万以上、そういうものが一つの条件になって
日本
の
賃金
水準
がきまっておると思うのです。これが国民の生活
水準
をきめておることにもなるし、米価の一つの
基準
にもなっておると思う。そういう観点からしますと、社会保障制度とか
最低
賃金
とか完全雇用とかいう問題は、どれを一つとりましても分離していない問題だと思うのです。だから人間を尊重する、あるいは雇用問題を重視する、不況対策の中においても本質的な問題だ、そういう観点から問題を進めていく中で
最低
賃金
制の問題がある。
最低
賃金
の問題が具体的に解決される。私が申し上げましたそういう見解に対しまして、一つ長官のお得意の所信を伺いたいと思います。
三木武夫
35
○三木国務大臣 得意でもありませんけれども、言われる通りだと思います。やはり長期経済計画というものをわれわれが立てますのも、完全雇用を目標にして、そして国民の生活
水準
を高めていきたいということが長期経済計画の目標でありますから、大原さんの言われるようなそういう
最低
賃金
、あるいはそれを大きく言えば国民の生活
水準
、あるいは雇用の計画的増大、こういうものを総合的に考えていくことが必要である、それが今日の政治であるということは全く同感であります
大原亨
36
○大原
委員
もう簡単に終りますが、やは完全雇用もだんだんと不完全雇用となっておりますし、それから社会保障制度も、何やら最近は年金の方もだんだんと雲行きが悪くなって参りましたし、医療保障、生活保護、たくさんあるわけです。それが雇用
状況
が悪くなっている、
賃金
の
格差
も増大している、こういう現実がある。政治は現実の上に立つのですから、皆さんがおっしゃる通りに現実を無視した政治はないのですから、具体的に話を進めてきたわけです。今お話になりました三木企画庁長官の政治理想は非常に貴重なものでありますけれども、
意見
が一致するのですが、現実の政治の中から生まれている現実というものはますます深刻になって、不景気になってきている。不況になってきている。この不況はあらゆる角度から分析しなければならぬが、しかしそれは低
賃金
労働者
に対しては非常に困難な条件になっている。その中で、
最低
賃金
をやりながら国民経済全体の
構造
を健全にしていって、そうして九千万の国民か生きていけるような政治をしていくのが私は政治の理想だと思います。こういう点を逐次今まで指摘してきたつもりです。そういう点を指摘いたしておきまして、それについて大臣か政治理想を言われたんだが、しかし実際には現実の政策で答えてもらいたい。この点について一々論争いたしておりますと、また時間がかかりますので、長官に対する質問は一応以上を持って打ち切りまして、次の質問に入っていきたいと思います。
園田直
37
○
園田委員長
午前中はこの
程度
にとどめ、午後二時まで休憩をいたします。 午後零時五十二分休憩
——
——
◇—
——
——
午後二時四十一分
開議
園田直
38
○
園田委員長
休憩前に引き続き
会議
を開きます。
内閣提出
の
最低賃金法案
外二法案について質疑を継続いたします。大原亨君。
大原亨
39
○大原
委員
今度は政府案の
最低
賃金
制の中で問題となりますおもな点につきまして、お尋ねいたしたいと思います。その前に、政府が今日までおやりになりました次官通達による業者間協定ですが、これの
状況
につきましては、きょうの表にやや詳細に出ておりますけれども、次官通達による業者間協定によります
最低
賃金
の法的な根拠につきまして明らかにしていただきまして、そこから一つ質問していきたいと思います。
堀秀夫
40
○堀政府
委員
業者間協定に対する援助につきましては、
労働
省に設置されております
労働
問題懇談会におきまして、一昨年以来現在の
最低
賃金
を各
企業
の間に導入するにはどのような方法が適切であるかということについて審議されておったのでありますが、昨年の二月に
労働
問題懇談会の中山会長から労使、中立
委員
の全員一致の形で
意見
書が
提出
されたわけであります。その
意見
書によりますると、政府は中央
賃金
審議会をすみやかに再開するということと、業者間協定の普及につきまして適切な援助を行うようにすることが適当である、このような
意見
が
提出
されたわけであります。そこで
労働
省といたしましては、この
意見
書を尊重いたしまして、昨年の四月に
事務
次官通達を地方の
基準
局長あてに出しました。それによって現在まで事実上援助を行なってきたわけであります。その根拠といたしましては、ただいまの
労働
問題懇談会の全員の
意見
一致によりまするところの
意見
書を尊重するということと、法的には
基準
法の百五条の二によりまして、
労働
大臣は労使双方に対して
労働者
の福祉向上のため必要のあるときは勧告援助を行わなければならない、こうあります。この規定等に基きまして、現在まで援助を行なっておるわけでございます。
大原亨
41
○大原
委員
百五条によって、
労働者
の福祉の問題として、諮問
委員会
を設けておやりになっておる、こういう御答弁でありますが、この二十八条から三十九、三十、三十一と
最低
賃金
制に対する規定がございますけれども、それとの関係はどういうことなんでしょう。
堀秀夫
42
○堀政府
委員
基準
法には御承知のように二十八条以下に
最低
賃金
に関する条章がございます。そこでこの
最低
賃金
に関する条章が設けられておりましても、いろいろな事情のために、現在までこれが実施されておらないわけでございまして、その問題も含めまして
労働
問題懇談会に御討議をお願いしたわけであります。
労働
問題懇談会におきましては、このような情勢を見まして、とにかくこの法律によるところの
最低
賃金
を実施するためには、現在の
基準
法の規定だけではこれは適当でない点が多いのではないか、そこで中央
賃金
審議会をすみやかに再開して、
わが国
の実情に即した
最低
賃金
制を実施するための準備をすみやかに行うように、こういう
意見
書を出されたわけです。それと並行して、そのとき業者間協定を政府が援助する、これが現段階においては適切である、このような
意見
書でございました。従いまして、二十八条以下の条章が実施されないという点を勘案されながら
労働
問題懇談会でこの
意見
書を出されたわけであります。政府といたしましてはそういう見地から、一方において中央
賃金
審議会を昨年の七月以来再開いたしまして、その答申が昨年の末に
提出
されましたので、それに基づきましてこの法案を
提出
することにいたした次第でございます。
大原亨
43
○大原
委員
どこで何したのですか。中央
賃金
審議会の答申ですか。
堀秀夫
44
○堀政府
委員
最初に
労働
問題懇談会から
意見
害が
提出
されました。それが第一でございます。それから第二には、中央
賃金
審議会から昨年の末に出されました答申、この二つをもとにしておるわけでございます。中央
賃金
審議会の答申には、御承知のように今度考えられる
最低賃金法案
の中には業者間協定に基く方式を法制の中に入れることが適切である、このような答申をされておるわけでございます。
大原亨
45
○大原
委員
それでは百五条ではなくて二十八条以下でおやりになった、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
堀秀夫
46
○堀政府
委員
二十八条以下の条章に基いて
最低
賃金
制を実施することは現段階では問題がある、そこで
最低
賃金
を法制によって実施するならば
最低賃金法案
を新たに策定して、それに基いて実施することが適当であろう、こういう中央
賃金
審議会の答申でございます。そこでただいま実施しております業者間協定の援助
事務
は、二十八条に基くものではなくて、百五条の二に基いて事実上の援助を行う、こういう形で援助をいたしておるわけでございます。
大原亨
47
○大原
委員
労働
大臣にお尋ねいたしたいのですが、政府は
労働
法を非常によくお守りになって、
労働
問題のけじめをつけるとよく言われるのですが、現実に二十八条以下では
最低
賃金
制に関するいろいろな規定があるのであります。
労働
問題懇談会というのは、どういう法的な根拠でできておるかわかりませんけれども、それをたなに上げておいて、二十八条以下を空文にしてもよろしいのですか。
倉石忠雄
48
○倉石国務大臣 この前の
委員会
にも同様のお話がございましたときに申し上げましたように、今日の段階で、正確な、われわれが期待いたしておるような方式で
最低
賃金
制を設けるには、やはりあれだけでは足りないということで、新立法をする方がいい、こういう見地に立って新しいものを立案したわけでございます。
大原亨
49
○大原
委員
ちょっと繰り返してお尋ねするのですが、まだ政府の提案の
最低賃金法案
は日の目を見ていないのであります。現実にないのであります。しかし
労働
基準
法には、
労働
条件の重大な一つといたしまして、二十八条以下に法律があるので、もちろんこれは
労働者
の福祉の
全般
的な問題ですけれども、法律といたしましては、特にそれは規定いたしておるのですから、そういう二十八条、二十九条、三十条、三十一条を離れてやるということについては、ただいまの御答弁では納得できないのですが、重ねて一つ御答弁いただきます。
倉石忠雄
50
○倉石国務大臣 今申し上げましたように、現実の事態に即して、今われわれが一番いい方法であると考えられる法制を実施することが一番妥当である、こういうふうに考えましたから新立法をいたしたい、こういうことを申し上げておるわけであります。
大原亨
51
○大原
委員
それから
労働
法、
労働
基準
法の中に
賃金
決定に関する原則があると思うのですが、業者間間協定一本で、しかも次官通達でこれをやっていく。諮問機関その他におきまして、いろいろお諮りになったということはわかるのですが、しかし、これは諮問機関であり、任意のそういう
意見聴取
の機関でございますが、そういう業者間協定一本で、しかも次官通達でこの問題を扱われるということは、私は
労働
法、
労働
基準
法の精神からいって、その精神を、政府がいつも言われるように、法律の精神からいえば無視されているのじゃないか、そういう点、私はまた後ほどでも条文を指摘いたしますが、しかも二十八条、二十九条、三十条、三十一条と、特別の法文があるのに、それを離れてそういう措置をとられるということについては、私納得できませんけれども、どういうお考えですか。
倉石忠雄
52
○倉石国務大臣 今お話のように、まだ本法は成立しておりません。そこで本法が成立した場合には、業者間協定というもの、そのほかに御承知のように
三つ
ほど方式はありますが、業者間協定というものは、これで標準
賃金
をきめるということではないのでありまして、業者間の協定が行われて、それが出て参りましたならば、それを
賃金
審議会にかけて、そしてこれが法文化するということでありますから、業者間協定というものはそれができて、そしてそれをもう一度審議会という濾過装置にかけて、それが法律になるわけでありますから、業者間協定そのものがすぐに法的効果を持つということではないことは法文の示しておる通りであります。それからまたその他の方式もありますので、従って業者間協定が即
最低
賃金
の
基準
をきめるということにはならないというふうに御了解を願いたいと思います。
大原亨
53
○大原
委員
それでは次官通達による、業者間協定による
最低
賃金
取りきめ、これは全然法的な根拠はない、こういうふうに考えてよろしいですか。
堀秀夫
54
○堀政府
委員
先ほど申し上げましたように、
労働
問題懇談会の
意見
書に基くと同時に、
基準
法の百五条の二に基いて援助を実施しておるわけでございます。
大原亨
55
○大原
委員
そういたしますと、その決定いたしましたものについては、これは法律上の規制があるのですか、ないのですか。
堀秀夫
56
○堀政府
委員
ただいま実施しておりまする業者間協定は、これは事実上の協定でございますので、法律上の効果はございません。
最低賃金法案
が成立いたしまして、これが実施されることになりますれば、先ほど大臣から御答弁がありましたように、労使、中立三者
構成
の
賃金
審議会の議を経て、
労働
大臣が
最低
賃金
として決定する。これによって法的効果が生ずるわけでございます。
大原亨
57
○大原
委員
法律的な根拠はない、法律的な拘束力も今の協定はない、こういう御答弁だと思いまするが、これで間違いないですか。よろしいですね。
——
この業者間協定、いわゆる次官通達によります業者間協定ですが、これは今お話しいたしましたように、大体御推察になっていると思われるように、
賃金
決定の原則に反しており、あるいは
労働
法の精神に反しておるし、
労働
条件の中での最も大切な、一番中心的な
賃金
の問題に対する行政官庁の、業者を集めてだけの、そういう取扱い、決定、こういうものは、いやしくも
労働基準局
が取り扱うべきものじゃない。
労働
問題懇談会といっておられますけれども、その中に
労働
代表が入っておろうが、総評が入っておろうが、全労が入っておろうが、全然法律的には関係ない。そういう点については、これは
労働基準局
がおやりになる仕事といたしましては、百五条に基いてやっておるのだ、そういう行政指導だ、こういうことだと思うのですが、法律的な拘束力その他はない、こういうことなんですが、将来は
賃金
審議会へかけて、そして
最低
賃金
制としていく、こういうお考えのようですが、間違いないですか。
堀秀夫
58
○堀政府
委員
その通りでございます。
大原亨
59
○大原
委員
業者間協定によりまして、どういうふうに
賃金
が変ってきたか、なかなか宣伝されておるようですけれども、その内容を一つ承わりたいと思います。
堀秀夫
60
○堀政府
委員
ただいままで実施されました業者間協定は四十八件ございます。四十八件の実施によって、どのような
賃金
の変化を生じたかというお尋ねでございますが、これにつきましては、三〇%以上従来の
賃金
が増加した件数が二件でございます。二〇%から三〇%
賃金
が上昇しましたものが六件でございます。一〇%から二〇%
賃金
が上昇したものが二十九件でございます。五%から一〇%まで
賃金
が増加したものが九件でございます。五%以下は二件ということになっておりまして、合せて四十八件になるわけでございますが、われわれといたしましては、業者間協定が実施された結果、従来の
労働者
の
賃金
が大体このように一割から二割
——
それより高いものもありますし、低いものも二件ばかりございますが、大体といたしまして一割から二割
程度
上昇しておるということを報告を受けております。
大原亨
61
○大原
委員
ちょっと大切な問題があると思うのですが、二〇%とかあるいは二五%
賃金
が業者間協定で上った、こういう御答弁でありますが、それは全体の
賃金
なんですか、それとも初任給なんですか。
堀秀夫
62
○堀政府
委員
協定
賃金
以下の
労働者
の
賃金
が、ただいま申し上げた率だけ増加したということでございます。
大原亨
63
○大原
委員
これは価格協定といわば同じような性質であって、法律的にも全然拘束力がないというものであると思いますが、今お話のように二〇%、三〇%
賃金
が上った、こう言われるのは、ずっと全体の
賃金
の総額がふえたのかといいますと、今聞けばそうではなくして、たとえば
新中卒
のところが、その
賃金
が二〇%か三〇%上っただけである。私はいろいろ実態を調査しておりますが、あなたの方で的確な
資料
が出るかどうかと思うのですけれども、上ったわけです。しかしこれは実際によく検討してみますと、たとえば中
小企業
は、けさほどからも言われたように、非常に過当競争であって、きびしい競争をしております。たとえば協同組合なんかで売る値段については、こういうふうにしようといって申し合せいたしまして、それを調整法などにかけて拘束しようと思いましても、針でもゴムでも、いろいろな業者がありますが、今度はきめたあくる日に行きまして、うちの協同組合はこういうふうに協定しておるのだが、わしのところはそれ以下で売るからうちのやつを買ってくれ、こういう調子なんです。そういう価格の協定というものは、私はこれは実情をお話しするのですが、実際には
労働
組合があって、そしてこれを正しく守らなかったならばいけないというふうな自覚がそれぞれの業者にないと、たとえば価格協定が乱れてきまして過当競争になりましたら、それで市場で太刀打ちができるのにダンピングをやるようになりまして、それのしわ寄せは中
小企業
に来る。だからますます
賃金
が低くなってくるのです。条件が悪くなってくる。
賃金
と
労働
条件は同じなんです。中
小企業
の経営者のちょっと専門家であればすぐわかる。裏づけがないわけです。今日までこの業者間協定を次官通達でやられましたけれども、私は寡聞にして、組織的ないわゆる労政がこういうことと並行して私はやられていないのじゃないかと思うのです。
基準
局長の方は非常に組織問題を回避しまして、組織をそっちのけにしておいて、業者だけとお話し合いになって今日まで進んでこられた。私はこれが大きな将来の基礎になると思って問題にしているのですが、そうじゃないのですか。
堀秀夫
64
○堀政府
委員
ただいま援助しております業務は、今まで申し上げましたように、あくまでも事実上の行政措置でございます。そこでその援助に当りましては、業者間協定の締結に際して、なるべく
従業
員側の
意見
も反映するように考慮してもらいたいということを次官通達の中にもうたっておるわけでございます。しかしこれだけではやはり法律に基く措置ではございませんので、徹底を欠きます今回の
最低
賃企法案が実施されますならば、業者間協定の申請がありますれば、それが
労働者
側を含む
賃金
審議会によって審議、検討を願う、その上でその
意見
を尊重して
労働
大臣が適当なものは
最低
賃金
として決定する、こういう手続になりますので、この過程を通じて
労働者
側の
意見
は十分反映されるものではないか、このように考えておるわけでございます。
大原亨
65
○大原
委員
二〇%上ったとか、あるいは三〇%上ったとか言われても、これは次官通達であって、法律的な根拠はないわけですが、業者間協定で上った、こういうふうに盛んに言われるのです。しかしただいま申し上げたように、その実情を調査してみますと、具体的に出せといえば出しますが、こういうことなんです。つまり
新中卒
の
賃金
相場がもう大体きまっている。ずっと全国的に一つの大きな流れだと思うのですが……。この
新中卒
を基礎にいたしました
賃金
でありますけれども、その
賃金
をきめているときに、そこだけ動いて二〇%、三〇%上った、百十円が百三十円になった、百四十円になった
——
これは非常に低い
賃金
であって、希望をもって働いたりするような
賃金
じゃないのですけれども、まあそういうことになっているのです。しかし実際によく
従業
員に聞いてみますと、
労働
時間を延長いたしましたり、工場へ入ってくる時間を早くしましたり、あるいは
労働
のいろいろな規制、あるいは超過勤務を削る、そういうようにして業者間協定というのはずっと中へ食い込んでいまして、表面はそういう協定をしたがごとく見えて、実際にはそれほど上っていないのです。良心的なところはこれに従って上げています。しかしながら
全般
的な問題は解決していないのです。だから二〇%か三〇%上ったといって
基準
局長や
労働
省の方が御宣伝になるのは間違いだと思いますが、これはいかがですか。
堀秀夫
66
○堀政府
委員
先ほど申し上げましたように、四十八件の従来まで報告された内容を分析してみますと、協定
賃金
以下の
労働者
の
賃金
は、多い者で三〇%、低い者で五%でございますが、大体一〇%から二〇%
程度
上っている、このようなことになっております。そこでその協定対象以外の
労働者
の
賃金
がどうなっておるか、こうお尋ねになるわけでございます。この点は結局
最低
賃金
の間接的な影響がどのようになるかということになるわけであります。
わが国
におきましては、御承知のごとく
賃金
形態は一般的に
年令別
、
勤続
別を積み上げまして
賃金
体系が積み上げられる、このような慣行になっております。従いましてこれは間接的な影響でございますから、われわれとしても今後もう少したって時日をかけて、それが協定
賃金
労働者
以外の
労働者
にどのような影響を与えたかということを調査をいたしたいと思っておりますが、二、三の例を聞いてみますと、やはり協定
賃金
以外の
労働者
も、この影響を受けてその
賃金
が上ったという事例が報告されております。これは
年令別
、
勤続
別に
賃金
体系が
構成
されておるという
わが国
の
賃金
構成
に基くものであろう。従いまして間接的な影響は、これは直ちに出ませんけれども、少し今後時間をかけて調査いたしますならば、やはりこれによって相当の
賃金
上昇を来たすのではないか、このように思っているわけであります。 なお、時間外
労働
等を実施することによって、実際に
最低
賃金
幾らということを規定したのを脱法するようなことに影響がある、このお尋ねでございますが、現在実施しております
最低
賃金
の業者間協定は、事実上の協定でございますから、そういうようなことがありましても、これを防ぐのはなかなかむずかしいわけでございますが、今度の
最低賃金法案
が成立、実施されまするならば、
最低賃金法案
の中には、御承知のように、時間外あるいは通常の
労働
時間以外の
賃金
は
最低
賃金
の中に算入しないという規定もはっきりと設けてございますので、そのような弊害は防げるのではないか、このように考えておるわけでございます。
大原亨
67
○大原
委員
私は本
最低
賃金
制の政府提案の法案に入る前の問題として、次官通達による業者間協定というものが端的に政府のお考えを表わしていると思う。こういうことで二〇%上った、三〇%上ったという宣伝は、
最低
賃金
制の趣旨からいうと違うのです。そういうことはあり得ないのです。だからそういう全体の中
小企業
の
労働者
の
賃金
が上ったというようなことは、
労働
条件との相互的な勘案で初めて判定できることであって、このことは私は主張の根拠かあるから、言えといえば指摘いたしますが、これは広島県やその近くのことですが、これはそうじゃないのです。だからそのことをもって皆さんの方で御宣伝になるということは間違いである、そういう
数字
は不確実な
数字
である、こういう点について私は指摘をしておきたいと思う。これは法的にも百五条をもってやるとか、あるいは二十八条から三十一条までも、実質上これは法の適用をしていないか、あるいは拘束力かない。
労働
問題懇談会と言われたが、これはもう法律的な規制はないのです。そういう法律的にも規制のないことで業者だけ
賃金
の協定をされるということは実質を伴わない問題だ、こういうふうに私どもは判断をいたしておるわけであります。そこで、業者間協定につきまして将来どういうふうな見通しを持っておられるのですか。現在適用中なのが三万六千六百四十七人、それで懸案になっているのが六十八件とございますね。これはどういう見通しをもっておやりになっておりますか、一つお聞かせいただきたい。
堀秀夫
68
○堀政府
委員
現在まで成立いたしました協定が四十八件で、その協定の対象
労働者
が三万七千人ですか、ということになっております。なお現在業者間協定を締結しておりませんが、ぜひ業者間協定を締結したい、それについて
賃金
、経営の実態、その他の実情を調査把握いたしたいからということで
基準
局に援助を求めてきております件数が、そこにございますように六十八件さらにあるわけでございます。われわれといたしましても六十八件が全都成立するかどうか、今後を見なければわかりませんが、この相当部分はやはり業者間協定として近い将来に締結、成立するのではないか、このように期待しておるわけでございます。
大原亨
69
○大原
委員
最低
賃金
制の対象になっておる
労働者
の数は大体どのくらいあるとお思いになりますか。
堀秀夫
70
○堀政府
委員
この
最低賃金法案
の対象は、
労働
基準
法の適用を受ける
労働者
に原則として適用になります。それと船員法の適用を受ける船員に原則として適用になるわけでありまして、合せまして約千二、三百万ではないか、このように思っております。
大原亨
71
○大原
委員
対象になるべき
労働者
が千二、三百万ある中で三万六千名ほどできたというのですから、これは緒についたばかりだと思うのです。その問題に入る前にお尋ねするのですが、こんなものを無数に作っていかれる、そしてそれを実際上おやりになるのは
基準
局なんですね。これは
賃金
の決定も、それからこれを監督指導するのも、取締りをするのもみなやられるのです。そこで
基準
局長にお尋ねしたいのだが、今の
基準
法でも、故意かあるいは事実上そうなったのかも知らないけれども、守られていないところがたくさんあるのです。それでこういう業者間協定によって現実にやってこられたものが、対象人員千二、三百万の中で次官通達以来三万六千六百四十七名、これは中央、地方において目ぼしいのは大体あると思うのですけれども、そういうことをやれる人的あるいは物的な条件が政府にあるのですか。その点一つ政府にお尋ねしたい。
堀秀夫
72
○堀政府
委員
最低賃金法案
の実施は、現在ございます各地の
労働基準局
、
労働
基準
監督署並びに
労働基準監督官
がこの業務を行うわけでございますが、業者間協定の締結にいたしましても、その申請がありました上で労使、中立三者
構成
の
賃金
審議会の御審議をお願いいたしまして、それは適当であるということになりますれば決定告示するという、こうような段階になるわけでございまして、この
最低賃金法案
が実施されまして漸進的に各業種、
職種別
に全部普及していくためには、現在の地方の監督署の陣容をもってして、もちろん十分であるとは申せませんが、まず大体円滑に実施できるのではないか、このように考えているわけであります。
大原亨
73
○大原
委員
千二、三百万ほど対象があるのに三万六千くらいでありますと、千百九十六万何ぼ今残っておるわけでありますが、こういうのをおやりになろうとする際に、人的なあるいは予算上の措置というものは、今日までの
経験
にかんがみてどういうふうにお考えになるか、そういうことをお尋ねしておるのです。今でも
基準
局は穴だらけなんです。たくさんあるのです。一時は、中
小企業
は
基準
法は理想案だと言っておったが
——
この間も諮問
委員会
がありまして、こういうものは経営者の社会的な責任、国の責任で守ることが、
日本
の経済を健全化して
労働者
の福祉を守るのだという見地から諮問になっておる。これは無理ないと言っていたけれども、実際にそこまでの
基準
をやるべきだ。政府与党を含んでこういうように変ってきておると思う。私はそういうことは
最低
賃金
制でも同じように考えられるのですが、やはり進んでどんどん条件を整えてやっていけば、政府が前から御
説明
になっておるように無理ではないと思う。人的にも今でも足りないのに、あるいは予算上の措置がなしにこういうことをやるということは、百年河清を待つというか、千年たってもできないのではないですか。どうですか。
堀秀夫
74
○堀政府
委員
現在
基準
法の実施に当っております各地の
基準
局、監督署の
職員
の陣容は必ずしも十分であるとは申せませんが、しかしそれにつきましては最近
基準
法に基くところの、たとえば書面的な手続
事務
の簡素化を極力はかっております。それと同時に各
基準
局、監督署の機動力を増加するための諸種の予算的な手配もしておるわけであります。これとあわせまして今回の
最低賃金法案
の策定に当りましては、本年度の予算におきましても、一つはこの
賃金
審議会その他広報関係の
事務
のために約一千百万
程度
の予算を計上すると同時に、中
小企業
の調査のための予算はそのほかに約三千万
程度
増額しておるわけであります。これらのことを勘案いたしまして、それと同時に現在ある
基準
局の
職員
を能率的に動かしていくことによりまして、この
最低
賃金
法の実施に遺憾なからしむるを期したい、このように考えておる次第であります。
大原亨
75
○大原
委員
ただいままで質問しましたことで、これは法律的には根拠のないことだったのだ。
基準
法で規定してあるのだから、おやりになったことは根拠のないことだと思う。実際上何%上ったと言うけれども、これについては
新中卒
の百十円とか、百十五円とか、きわめて低い一部の人のみであって、全体の
賃金
水準
が上ったのではないのだ。この千二百万、あるいは三百万と言われておる対象となる低
賃金
労働者
を、
最低
賃金
制によってそういうふうに逐次上げていこうというのに、現在までに三万六千ということであります。そういたしますと、人員についてもあるいは予算上の措置にいたしましても、きわめて微々たるものであります。印刷費
程度
であります。そういうことになりますと、政府が
最低賃金法案
について本気で取っ組んでおられるのかどうかということにつきまして、非常に疑問に思うわけであります。これは
労働
大臣にお尋ねするのですが、これは前からずっと討論して積み上げてきましたけれども、予算上の準備もないという現状において、どういうお考えで、ほんとうに本気でおやりになるつもりか、そういう点について
労働
大臣の御答弁をお願いいたします。
倉石忠雄
76
○倉石国務大臣 先ほど来、それから前
委員会
においても政府の立場を申し上げておりますように、ぜひこれはやっていきたいという考えはもちろんのことであります。まだ法案が通過しておりませんけれども、この法案を練ります前にも、先般も申し上げたかもしれませんが、全国にあります商工
会議
所の連合会、なかんずくそういうところの零細
企業
の方々は、非常にこの問題を重視いたしまして、熱心に研究討論いたしましたし、また今ごろこういうことをやられては困るというふうな熱心な反対論者もありましたし、今もまだ継続しております。政府が
法律案
を国会に
提出
してこれが法文化したということになれば、いろいろな面でそれを実施しなければならないという気持を従来も、経営者もあらゆる人たちはお持ちになるのでありますから、この
法律案
が通過さえいたしましたならば、私は急速度に業者間協定というものは各地に実施されて参ると思いますし、また現にたとえば清水あたりで、輸出カン詰ではある
程度
の業者間協定がある。そうしますと、その付近にあります同じような花がつおの業者はそれより低かった。ところが低い協定などを結んでおったのでは同じ地域のそういう業種に人が集まらないというふうなことになってくるのでありまして、従ってこういう法案が通過いたしますと、非常な勢いでこれが出てきますし、
労働基準局
ばかりではございませんで、通商
産業
省の出先も協力一致して、早くこういう協定がどんどん結ばれて、実質的に
最低
賃金
制が実施されるように政府は努力をいたすのでありますから、私どもはそういう面から考えまして、もちろん非常な熱意を込めておるのでありますし、これは着々と成功いたして参る、こういう自信を、持ってやっておるわけであります。
大原亨
77
○大原
委員
大臣のお話によりましても、この業者間協定というものが
最低
賃金
制の法案の一つの大きな柱になっておるし、今日までもそういうつもりでやってこられたと思うのですが、今までの
経験
によりますと、こういう場合に成功している。今言われる通り、求人が困難な場合、あまり安くて、百十円で働いて百円は全部食費にとられてあと十円くらいしかないんで、またあちらこちらとがたがたする、これじゃいかぬというので、これが出てきやすい。あるいは輸出関係の業者で、ダンピングの批判をされる、そういう場合。それからこの二つがありましても、業者の団体の中に統制力のあるものがいないとこれはできないのです。先ほども言ったように組合が共同化されて、
労働
組合の組織が連合体があって、その中で話し合ってできたことだったら、
労働者
の立場に立てば協定を実施しないということは、
共通
の利害がありますからそのささえになるのですが、
労働
省としてはその二つの指導をずっとしていってこれをやるんだったら、それはある
程度
予算がなくてもできる。団体協約の締結方式あるいは審議会方式、一律方式、
三つ
の方式があります。これは国際的にはそうなんですが、業者間協定を第一に置いておいて、業者がねじれたらいつまでたってもまとまらぬ、こういうふうな
最低
賃金
はどこにもない。予算がなくても、そういう労政局の指導と
基準
局の指導が両々相待ってずっといって、経営の組織化、
労働者
の組織化と一緒にこれが進んでいったのでしたら、時代の変化に即応し、協定が守られ、予算はたくさん要らぬかもしれぬ。しかし業者間協定というのは、将来は非常に予算を食うんですよ。しかも有力者がおらなければ、今までの
経験
ではできぬのです。こういう
三つ
の条件のところができているのです。私どもの近くの
経験
によりましてもそうなんですけれども、今申し上げた
三つ
の条件についてそういうところができているんだ。そういう点について、実際やってこられた局長はどういうふうに判断になっておりますか。
堀秀夫
78
○堀政府
委員
ただいままでの
状況
を見てみますと、お話のように、一つは求人がこれによって容易になるという実益がある場合にやりやすいということは事実であります。また輸出
産業
等におきまして国際的な信用を回復したい、こういう見地から締結されたものもございます。それからそのほかにも業者間で過当競争が存在いたしまして、お互いに非常に苦しい競争を行なって、それに伴って
賃金
を切り下げて、しかもお互いに苦しい、こういうような共同の不利益がある場合に業者間協定は成立の機会がきわめて多いということになっておるわけでございます。そこで従来までの
状況
は、ただいまお話にもなりましたが、有力な統制力がない場合にはなかなかできないだろう、アウトサイダーが存在する場合には業者間協定が、それがしこりになりまして円滑に実施されない、このようなことがあるわけであります。そこで今回の法案には、アウトサイダーがある場合には第十条の地域的
最低
賃金
の拡張適用方式をつけ加えまして、今のような障害は排除するというようなことも考えておるわけでございます。また同時に、業者間協定と同じように
労働
協約によるところの
最低
賃金
につきましても、アウトサイダーがあるためにこれが円滑に実施されないというような場合に、同じく十一条によってこれを地域的に拡張適用して
最低
賃金
を決定する、このような方式も組み合せておるわけであります。なおこの
最低
賃金
法の実施につきましては、
労働基準局
が一応法律的には形式的に、実施主体になっておるわけでありますが、この実施に当りましては県の労政関係の人たち、そのほか経済関係の各出先機関と緊密な連絡をとりまして、この
最低
賃金
法の円滑な実施をはかって参るようにいたしたい、このように考えておるわけであります。
大原亨
79
○大原
委員
たまたま将来の条文のことに触れられましたが、その九条の業者間協定に基く
最低
賃金
の中で、その当事者の全部の合意による申請があったとき、アウトサイダーの話があったけれども、全部の合意による申請があったとき、こういうのは、全部の合意によらなければ、業者だけの協定合意が成立しなかったらできない、そういうものができますか。
堀秀夫
80
○堀政府
委員
第九条にありますように、業者間協定の申請は、その業者間協定に基いて
最低
賃金
をきめてもらいたいということについて、その当事者全部の合意が必要である、このようになるわけでありますが、その理由は、申請によりまして、
賃金
審議会の議を経まして
最低
賃金
を決定するわけでございますが、それか決定されました以後は、かりに自分はもういやだから脱退したいというような業者がありましても、これは脱退してもやはり
最低
賃金
の効力は及ぶ、要するに脱退しても
最低
賃金
の効力は及ぶ、こういうことを第九条の二項で規定いたしまして
最低
賃金
が正確に守られるように、こういう保障をしておるわけであります。そこでそういうような二項がある以上は、やはり第九条第一項に基く
最低
賃金
決定のための申請は、一応それを全員が合意して申請してくるものでなければならない、こういうものになっておるわけでございます。なおアウトサイダーの問題は、ただいまのようにして
最低
賃金
がまず九条によって決定されました場合に、自分はいやだというものがありましても、それは今まで
最低
賃金
協定を結びまして、それに基いて
最低
賃金
の適用を受けておりますので、第十条を適用いたすことによってアウトサイダーは第二段的に包含される、このような仕組みになっておるわけであります。
大原亨
81
○大原
委員
第九条、これはまたあとで質問しようと思ったんですが、足がかりができましたので、この話を少し進めますが、第九条は全部の合意ということを第一項にきめておいて、そこでその申請があった場合、申請者は当事者、当事者というのは業者である、従って業者全部の合意というのは実際上あり得ない。しかも
最低
賃金
の決定をすることができるというのが第一項の締めくくりなんですよ。これは一つも拘束力というのはないんです。そういうものを前提としておいて、いろいろと次から次へと論理を展開していかれる。そういうようなことはちょっとおかしいじゃないですか。ついでに、第十条の「大部分」というのはどういうことなんです。
堀秀夫
82
○堀政府
委員
第九条に「できる。」と書いてありますのは、業者間協定によって、あまり低い、要するに
最低
賃金
として適当でないと思われるような低い
賃金
をきめてきて、それが申請がありました場合に、
賃金
審議会にかけまして御審議を願うわけでございますが、できるじゃなくて、かりに、なければならないとありますれば、業者間協定の申請があれば、それをそのまま
最低
賃金
にいかなる場合にもしなければならない、こういうことになるのでありまして、よく
労働者
から心配されておりますように、業者間協定がそのまま
最低
賃金
になるのである、だからこれは
労働者
の方にかえって非常に不利益な形をもたらすのだ、こういう批判にこたえまして、
賃金
審議会がこれを審議して、これは
最低
賃金
としてはあまり低過ぎて適当でないということになりますれば、九条の
最低
賃金
として決定しない。要するに適当なものは
最低
賃金
として決定する。こういう意味で「できる。」と書いてあるわけでございます。 それから第十条は「大部分」と書いてあります。これはその場合々々に応じて、社会通念として、過半数よりは多い観念でございますが、要するに使用者の大部分がその一定地域において同種の使用者であり、それから
労働者
が同種の
労働者
であります場合には、少数のアウトサイダーの存在によりまして、せっかくきめた
最低
賃金
が有効に実施されない。こういうことになる弊害を伴いますので、その場合には大部分の申請によりまして、そうして第十条に基づく地域的
最低
賃金
をきめて、アウトサイダーもその規制を受けるようにしていこう、これが第十条の趣旨でございます。 なお第九条の「全都の合意」というものは、事実上なかなかできないのじゃないかというお話がございましたが、全都の合意というのは、必ずしも全部が判を押して署名して申請するということは必要ではありませんので、たとえば団体等ができておりまする場合に、その団体の定款その他によって、適法に決議その他によって全員が合意したというようなことが証されれば、その代表者の申請をもって足りる、このように解釈されるわけでございます。
大原亨
83
○大原
委員
その合意というのは、
賃金
の内容は入っておりますか。
堀秀夫
84
○堀政府
委員
ここにある合意と申しまするのは、要するに第九条に基く
最低
賃金
として決定をしてもらいたいという申請をするについての合意の意味でございます。もちろんその前提といたしまして、
最低
賃金
の線を引きまして、たとえば五千五百円なら五千五百円以下で使わないということについての合意は、もちろんその前提として必要でございますが、この第九条の合意というのは、その申請をすることについて全部が合意したということでございます。
大原亨
85
○大原
委員
五千五百円以下では使わないという意味の合意ということがありましたが、概括的な合意だと思うのですが、そういう
基準
はどこでだれがきめるのですか。
堀秀夫
86
○堀政府
委員
この申請の前提としての合意、当事者間の協定の場合には、それは当事者の使用者がその
最低
賃金
五千五百円なら五千五百円以下では使わないようにしようという協定をするということが必要になるわけでございます。 なお、九条の
最低
賃金
を最後的にきめまする場合には、その申請を
労働者
代表を含む
賃金
審議会で作るようにしていただきまして、その
意見
を尊重して、適当なものであれば
労働
大臣もしくは
基準
局長が
最低
賃金
として決定をする、こういうことになるわけであります。
大原亨
87
○大原
委員
賃金
審議会の性格やそういう運営の仕方あるいは権限等につきましては、これはまた一つ後に申し上げたいと思います。これはここまで入るつもりじゃなかったのでありますが、十二条の
異議
の申し出をする。「使用者で申請に係る
最低
賃金
又は
労働
協約の適用を受けていないものは、前項の規定による公示があった日から三十日以内に、
労働
大臣又は都道府県
労働基準局
長に、
異議
を申し出ることができる。」「
労働
大臣又は都道府県
労働基準局
長は、前項の規定による申出があったときは、その申出について、中央
最低
賃金
審議会又は地方
最低
賃金
審議会に
意見
を求めなければならない。」こういうことなんですが、
異議
の申し出というのは、これは前の全部とか大部分というような、全部の合意、こういうものとはどういう関係なんですか。
堀秀夫
88
○堀政府
委員
異議
の申し出が認められまするのは、第十条もしくは第十一条によって業者間協定に基く
最低
賃金
あるいは
労働
協約に基く
最低
賃金
が、その地域内のアウトサイダーにも拡張適用して決定されるという場合の問題でありまして、アウトサイダーは、要するに自分の意思に基かずして、強制的に
最低
賃金
の拘束を受けるということにこの場合なるわけでございます。そしてこの
最低
賃金
法に基くところの法律的な拘束力を受け、また罰則も受ける、このようなことになるわけでございまするので、その場合に適当な理由がありますにもかかわらず、強制的にアウトサイダーが
最低
賃金
の拡張の決定を受けるということになりますると、救済の道をつける必要がそこに生じてくるわけでございます。従いましてアウトサイダーは適当な理由がある場合には、理由を付して
異議
の申し出をすることができる。
異議
の申し出がありました場合には、これは
最低
賃金
審議会にかけまして、その申し出が果して理由ありやいなやということを審議いたしまして、それに基いて
労働
大臣が適当な措置をとるということが四項、五項に規定してあるわけであります。
大原亨
89
○大原
委員
第十条の「
労働
大臣又は都道府県
労働基準局
長は、一定の地域内の事業場で使用される同種の
労働者
及びこれを使用する使用者の大部分が前条第一項の規定による一の
最低
賃金
の適用を受ける場合又は同項の規定による二以上の
最低
賃金
で
最低
賃金
額について、実質的に内容を同じくするもののいずれかの適用を受ける場合において、これらの
最低
賃金
の適用を受ける使用者の大部分の者の合意による申請があったときは、」ということでありますが、
異議
の申し立ての場合に、第九条は関係はありませんね。
堀秀夫
90
○堀政府
委員
第十条は第九条の
最低
債金の決定がありました場合、さらにそのほかにアウトサイダーが存在するという場合に、必要があればそれを地域的に拡張して
最低
賃金
を決定するための規定でございます。
大原亨
91
○大原
委員
それで第九条の「全部の合意」ということが問題になるわけです。全部の合意ということが、全部の合意か、大部分の合意かということは、実際上法律を運営していく場合に困るのです。これは余談になりますが、私の知っている
基準
局のエキスパートは、私がこれは実際上できるかと申しましたら、
基準
局の第一線
職員
は忙しくなってしょうがない。どうしてかというと、たくさんある各業者を回ってそれを指導しなければならぬ。そして納得させなければならぬし、納得しなかったら、すぐその価格協定も変りますし、これは何日間も酒を飲んで話をしても片がつかぬ。そう言って私に話をしましたけれども、これは
労働
基準
法を適用する際に業者のいろいろな問題がありますけれども、業者との関係が問題になっているのです。
基準
法はできるだけ寛大にしてもらえばもうかりますからね。だから百万円ももうかるという場合に、一万円、二万円出しても採算が合うという考えも実質的にあるのです。これはお認めになるでしょう。私も知っています。そうすると、こういうものを納得させて適用していこうという場合には、たくさん人が要りますし、これは忙しくてしょうがないじゃないですか。実際上全部とか一部とかいっても、作業所、
事業所
はものすごい数ですが、そういうことが事実上できるのですか。全部の合意、大部分の合意とか、しかも客観的に規定していないことが実際上できますか。
堀秀夫
92
○堀政府
委員
先ほど御答弁申し上げましたように、全部の合意というのは、別に全員が署名捺印して申請することが必要ではないので、団体がありますような場合に、その団体の定款その他によって適法な手続を経て決議等が行われる。それに基いて代表者が申請を行う。これをもって足りるわけでございます。従いまして、もちろん最賃低金法ができますれば、地方の
基準
局、監督署の業務は増加いたします。忙しくなることはわれわれも覚悟しております。しかし先ほどお話がございましたが、その内容については、ただいま申し上げたような手続が行われるわけでございまして、現在各地の
基準
局、監督署の
職員
一同は、やはり
労働者
保護のためにこのような
最低賃金法案
を一日も早く成立さしてもらいたいということを全員
——
若干の例外はあるかと思いますが、大部分の
基準
局の
職員
は、一日も早く本法案が成立実施されることを、
労働者
保護の見地からも熱望しておるわけでございます。
大原亨
93
○大原
委員
それは行政に当っておる人とすれば仕事がふえて
——
一時は
基準
局は閑古鳥が鳴いていて、だんだん影が細っていたのです。そうしたら最近この問題が出てきた。私どもはこれは絶対やらなければならぬし、
基準
法がやはり底が抜けているので、このことをやらなければ
労働者
の
労働
条件は守られない。こういうことを実際に考えておるのです。実際そうなんです。そういうときに、この問題について期待をされるのは当然なんです。仕事もふえるし、社会的にもやりがいがある。私が今例を引いたのは、やめた
職員
のことを言うたのですが、みんなが飲むとは言いませんけれども、そういう人も実はおったわけです。実際問題はあるのです。これは業者に聞いてごらんなさいよ。ちゃんとそういうことを言うのだから。そこで私どもが言うのは、そういう業者間協定でそうやって、全部の合意といって機関の決定で、有力者がおって、ぴしゃっと押えればいいのですが、押えなかったら、研究しようではないか、というて幾らでも延ばすのです。やらぬじゃないかといったら、いや研究しよりますといって逃げちゃうのです。その人が反対と言い出したらみんな反対です。最初私は、次官通達による業者間協定によって出た場合の条件のことを言いましたが、相当有力者がおって、説得力のある、統制力のある人がおって、たとえば銀行その他にいって、その人の顔で
金融
もできる、あの人に頼めばいろいろな経営の援助ができるから、少々無理でも聞こうかい、こういう気持になっておる人がほとんどだった。そういう場合には、この問題について、これは時勢の流れだから当然やって、そしてお互いに
従業
員の考え方も統一し、経営者も経営上の責任を明らかにして、そして大きな資本が横暴すれば、それに対して税金でも、
金融
でも、資材の購入でも、共同化してやろうじゃないか、こういうちゃんとした近代化の基礎を作る。そういうときに、そういう説得力のあるのがおるかというと、実際はなかなかいないのですよ。いなかったら横にねじれて、これは法律がこうなっておるからずるりずるりと時間を延ばして、やりよります、やりよりすと言うておけば、一生涯言うてもよかろうということに実際はなるのです。これは一生延ばそうじゃないかというわけで、法律ができればすぐ裏をかくのです。ところが今ここで御
説明
される場合に、行政官庁として一つの考え方でやられましても、法律はひとりでに動くのですよ。それを武器にいたしまして、経営者の考えでできるだけ
賃金
を上げないようにがんばるのです。そうして
基準
監督署やほかの方で忙しくなるという話も出るわけです。そういたしますと、これは作るのは作るけれども、実際上、今の
基準
監督行政の実情は、人員からいいましても、予算面からいいましても、これはなかなかできぬのです。全部合意というのは、そういう自分の経営について二十円上げる、三十円上げる、五十円上げる、今の百二十円くらいのものを二百円くらい上げることになれば、相当の決意を持って、大福帳を科学的に経営分析をいたしまして、いろいろな点において共同化を促進していかなければならぬのですよ。大体そういう決意なしに逃げていく。それで隣よりちょっと安くしてたくさん売る、そればかり考えておる。そうやって過当競争しておるのが中
小企業
の実情です。それがみじめになればなるほど競争がきびしくなる。だからこれは全部の合意ということは機関の決定だ、機関が決定する、だから一人々々の金額まで裏づけは必要ないんだとあなたが御
説明
になりましても、法律の今までのいろいろな経過からいいまして、建前からいいまして、全部の合意ということは実際にできないですよ。そうしてこれはずっと延ばせたら延ばすのが得策ですよ。五十年も百年もこの法律が出たら延ばしていく。これは実際私は無理言っているんじゃない、事実を言っておるのです。だから、この法律で業者間協定をやれやれといいましても、輸出とか求人の困難とか、そういうところで価格協定と同じくらいなつもりでやるという結果になれば、これが
最低
になるのです。これ以上やったら、有力者がお前おかしいじゃないかといって指摘するようになる。いわゆる
最低
に押しつける
賃金
になっちゃう、くぎづけになっちゃうと思う。私が申し上げますのは、二点において申し上げたのですが、全部の合意はそう簡単じゃないように思うけれども、これはもう一度
基準
局長の責任ある答弁をお伺いしたいと思う。
堀秀夫
94
○堀政府
委員
業者間協定はなかなか締結しないんじゃないか、こういうお話でございますが、実はこの前の
労働
問題懇談会の
意見
書に基きまして、法律的な根拠は、
基準
法百五条は無理でございますが、それ以外には何も具体的な規定はありません。それに基きまして事実上援助を行うというような形で始めました仕事でございます。そこで最初は、これは初めてのことでもありまするし、なかなかこの締結される数は少いんじゃないか、このようにわれわれは思っておりましたが、その予期に反しまして、現在までこの一年しばらくの間に四十八件がすでに締結され、さらに引き続いて六十八件が締結のための準備作業を行なっているという事情でございまして、われわれとしては、当初の予期以上に事実上の指導に基く業者間協定が多数成立した、かように思っておるわけでございます。これが今度の法律に基きまして実施されるということになりますれば、ただいまお話がございましたが、従来以上にこの業者間協定が締結されて申請があることは大体間違いなく期待できるのではないかと考えております。またこの法律の十四条にも、業者間協定締結の必要があると認めるときは、
労働
大臣、
基準
局長は、使用者またはその団体に対して勧告権も認められておるところでございまして、これらのものを併用して実施していく。それから全部の合意による申請と先ほどもお話しいたしましたように、適法なその団体の定款等に基く手続があれば、それをもって認める、このように運用していくわけでございます。それでもなお締結しない、必要であるにもかかわらず五十年も百年も引き延ばされるおそれがないかということでございますが、それを予期いたしまして、第十六条には、協定その他によって
最低
賃金
を決定することが困難、不適当な場合には、職権で
最低
賃金
審議会の調査審議を求めて
最低
賃金
を決定できるという定めも置いているわけでございます。これらを併用して参りますれば、
最低
賃金
法による
最低
賃金
は漸次円滑に各業種に普及していくのではないか、このように期待いたしておるわけでございます。
大原亨
95
○大原
委員
第四の方式、これは職権の方式というのですか、審議会といいましても諮問
委員会
でありますが、この問題は別の問題ですが、その基礎になっておるからお話しするのです。その条項も、必要と認めたり、あるいは困難なときという判断が要る。これは第一が前提であることに間違いないし、第一の趣旨に反対する人は実際上ないのです。一年間でこういうふうな成果があった、三万六千、これはわずかなものですけれども、この上ったときの条件は、先ほど指摘したように、求人困難な場合、あるいは輸出関係で業者がそのことのために不利になることがはっきりしている場合、国際的な批判を受けたり、実際上不利になる場合、業者の統制力、指導者の統制力、こういうことの条件の中で社会党も
最低賃金法案
を出したし、
労働者
も言うし、とにかくこれは何とか早くきめた方がいい、こういう空気の中で、行政指導、
基準
法の一般の監督権の問題とも関連しまして、これはちょっと上げておいて低目にきめておいた方がいいだろう、こういう気分の中でわあっときめられたのです。現在の
最低賃金法案
に対する認識というものは、これはやはり早くやらぬといかんだろう、こういう空気の中で実際はきまったのです。しかしいざ法律ができてきますとそうはいかないのです。先ほど申し上げたような条件のところがきわめて少いのです。そして業種がばらばらになっていて、輸出という問題にしても、一致したりしなかったり、全国的に他の地域に散乱しておったりします。そうしましたら事実上全部の合意なんかということは、たとえば広島県なら広島県だけで地域的に業者間協定を結びましても、同業者が他の県や全国的に散らばっていますので、重点はここだ、こういうようにしましても他の府県の方は、
労働
大臣が何といいましても、それは決定しない方がいい、正直に言ったら決定した方が損をする、というのはコストが高くなる、それでうちの方はまた協定しておりませんから安く売りますと宣伝をする。だからあなたは全部の合意ということについて、機関が非常に権威のあるように、法的拘束力があるように言われる、そうして今までやってきたことが非常に進んだ、こういうふうに言われるけれども、私は最初にこれは論駁しておいた。それを考えてみましても、これはなかなかそんなものじゃないですよ。 そこでもう一つお聞きしますけれども、一たんきめますね、全国に無数にずっときまるといたしますと、それで
賃金
はくぎづけになるのです。それを情勢の推移や生活費の上昇や、国民生活
水準
の向上や、そういうこれに準じて変っていく条件というものは、またもう一回繰り返さなければいかぬ。これは情勢の推移に応じてという文章がありますけれども、実際に
最低
賃金
の決定について拘束力を持たそうといたしましたら、またこういうことをやる。これはあなたが考えておられるように
事務
はそんなに簡単で、今の
基準
局の態勢で進むものじゃない。全部の合意ということは、そういう点で法律ができるんですから、全国的に競争者がおるのですから、一地域の輸出業者ということではない、一千二百万も三百万もおるのですから、そういう部分的なあるいは地域的な業者間の協定を、業者だけの合意においてやろうといたしましても、私は事実上できないのではないか。全部の合意という点についてもう一回
——
これは審議は記録へ載っているのですから、将来これがどういう経過をたどるかということは、当然目に見えてくることなんです。そういう点では今までの
経験
や実情等から考えて、口では実態に即すると言われるけれども、これはそうその場のがれの答弁をしてもらっては困る。全部の合意というものはそんなに簡単なものじゃないですよ。その点一つ。
堀秀夫
96
○堀政府
委員
全国的に同じような業種が散らばっておる場合に、先に決定すれば損だからなかなかやらぬだろう、こういうお話でございますが、これは今までの業者間協定を見てもわかりますように、たとえばカン詰作業については、清水だけでなしに、他の地域にもあるのでありますが、清水地区で率先してやっております。内容は必ずしも適当とは思いませんけれども、とにかく
最低
賃金
協定を結んでいるわけであります。またそのほかに、たとえば合板関係の作業につきましても、秋田なら秋田というところで先に結んでいる。また繊維関係の作業においても桐生なら桐生というところで先に結んでいる。要するに業者間
最低
賃金
をきめるということは、
労働者
の保護のためというだけでなしに、
企業
間の過当競争を防止して、それによって
労働力
の質を向上していく、それによって
企業
経営の基盤を近代化し、合理化していくことができる、こういう近代的な認識に立ってきたゆえんであると私は思っておるのであります。このような考え方を今後も極力PRして参りたいと思っております。従いまして、法律に基かないですでに相当実績が上っておりますものは、法律ができますならばさらに促進されるのではないか、このように思っております。またできた場合に
賃金
が固定化されるのではないか、物価や
生計費
等が、インフレその他になって、事情が著しく変化した場合、その場合に前のやつにくぎづけされるのは不合理ではないかというお話でありますが、これは三十六条その他において、事情が著しく変更して不適当になったと思われます場合には、
労働
大臣は改正、廃止の決定を命令することができるというようなことも規定してあるわけであります。以上のようなことを勘案いたしまして、お話の全部の合意というようなことも、先ほど申し上げましたように、総会の決議というようなことで全員の合意とみなすというような運用をいたしますことによって、この法文で、この法案の内容を円滑に生かしていくことができるのではないか、このように期待しているわけでございます。
大原亨
97
○大原
委員
十条の「使用者の大部分」これが非常に問題なんです。総会云々と今言われましたけれども、全国的あるいはブロックぐらいにしても、大へんな人がいるのです。大部分というのはどういう
基準
なんです。
堀秀夫
98
○堀政府
委員
大部分というのは過半数よりは広い概念だと思っております。要するに大多数という意味でございまして、たとえば
労働
組合法第十八条等に大部分というような言葉が使ってございますが、要するに過半数よりは広い。その何分の何というふうに規定しますよりは、その地域その
産業
、その職業等におきまして、具体的に社会通念として見て大多数の者が適用を受けるに至っているというふうに判断される場合にこの適用があるわけでありまして、その具体的な判断の
基準
は
賃金
審議会が具体的場合に応じまして御検討願って決定していく、このように考えているわけであります。
大原亨
99
○大原
委員
この条文全体が、すっとしてどこへいっているのかわからぬような法律の構想なんです。ちょっと筋が通っているかと思うと、あちらこちらへすっと抜けていって正体がつかめない法律なんです。それで実際上考えてみると、何といっても
基準
局長の職権、
労働
大臣の職権で審議会に諮問する、そういう手を尽してあとの結果なんですよ、これは。業者がちょっと知恵を働かせたら、協力しているがごとくせざるがごとく、この法律を読んでみると、これはずっと持っていったらつかみようがないのです。しかも使用者の大部分という
——
法律の知識はあまりないけれども、大部分というのは初めて聞くのですが、大部分というような法律がありますか。
堀秀夫
100
○堀政府
委員
ただいま申し上げましたように、
労働
組合法第十八条等には、拡張適用の場合に大部分と書いてあります。
大原亨
101
○大原
委員
この問題についてはまだ質問を保留しておきます。
園田直
102
○
園田
委員
長本日はこの
程度
にとどめ、次会は来る二十八日午前十時より開会することとし、これにて散会します。 午後四時一分散会