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1958-10-08 第30回国会 衆議院 建設委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月八日(水曜日)     午前十時十六分開議  出席委員    委員長 堀川 恭平君    理事 木村 守江君 理事 佐藤虎次郎君    理事 瀬戸山三男君 理事 二階堂 進君    理事 南  好雄君 理事 中島  巖君    理事 三鍋 義三君       逢澤  寛君    井原 岸高君       川崎末五郎君    砂原  格君       橋本 正之君    服部 安司君       村瀬 宣親君    石川 次夫君       久保田 豊君    兒玉 末男君       塚本 三郎君    武藤 武雄君       山中 吾郎君    山中日露史君  出席国務大臣         建 設 大 臣 遠藤 三郎君  出席政府委員         建設政務次官  徳安 實藏君         建設事務官         (大臣官房長) 柴田 達夫君         建設事務官         (計画局長)  美馬 郁夫君         建 設 技 官         (河川局長)  山本 三郎君         建 設 技 官         (道路局長)  佐藤 寛政君  委員外出席者         建設事務官         (住宅局長)  鬼丸 勝之君         専  門  員 山口 乾治君     ————————————— 十月八日  委員東海林稔辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長指名委員に選任された。同  日委員久保田豊辞任につき、その補欠として  東海林稔君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として東  海林稔君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十月七日  中信地区以北道路積寒対策道路に指定の請  願(原茂紹介)(第一二三号)  同(増田甲子七君紹介)(第一二四号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  台風二十二号による災害対策に関する件  派遣委員報告に関する件      ————◇—————
  2. 堀川恭平

    堀川委員長 これより会議を開きます。  まず、石川県における豪雨災害並びに今回の台風二十二号による災害調査報告派遣委員より聴取いたします。三鍋義三君。
  3. 三鍋義三

    三鍋委員 去る九月五日より四日間にわたりまして、委員会を代表して、佐藤虎次郎理事と私は、石川県における県未曽有といわれる水害実情視察調査して参りました。この機会に、その概要を御報告いたしたいと思います。  私たちは、九月五日東京を立ち、石川県庁に到着と同時に、県当局から、今次水害実情説明を聴取した後、直ちに金沢市を出発いたしまして、羽咋市、志賀町、富来町、門前町、輪島市、柳田町、能都町、珠洲市、穴水町、中島町、七尾市、小松市、加賀市、山中町と、能登加南地区中心に、今次災害のほとんど全市町村を詳細に視察調査するとともに、被災市町村民の直接の声を聞いてきたのであります。  まず、今回の豪雨災害特徴被災概況を申し上げます。石川県を襲った豪雨は、台風第十一号の置きみやげといたしまして、七月二十三日夜九時半ごろから奥能登地方集中豪雨をもたらし、翌二十四日夜明けから二十六日午前八時までに、連続雨量百五十ないし三百ミリの大降雨となりまして、同地方では、昭和三十一年七月の大水害をしのぐ大災害となりまして、三十一年災害がまだ完全に復旧を見ないうちに、再び水魔の見舞うところとなり、この再度の災害による一般住民打撃は、非常に深刻なものがあったのであります。さらに、この豪雨前線は、県下を南北に停滞いたしまして、次第に南下し、二十五日朝には、七尾羽咋地方に七十年来の豪雨をもたらし、さらに二十六日には、加賀方面昭和九年の手取川大水害以来の大損害を与えたのであります。  その公共土木施設被害概況を申し上げますと、河川関係四億七千七百万円、道路関係二億八千三百万円、橋梁関係二億七千九十万円、砂防関係二千三百万円、海岸関係四千四十万円等、その被害総額は十億九千五百七十万円に達しているのであります。  以上簡単に水害特徴被害概要を申し述べましたが、次に、災害現地の人々の要望事項と、調査の結果、特に配慮を要すると認められる点を御報告いたしたいと存じます。  一、災害復旧について。先ほど申し述べました災害防止対策としては、中河川、小河川ともに早急に改修工事実施して民心の不安を除去し、生活の安定を期さなければならないが、従来よりこれら事業は容易に進まない状況であって、今次災害を契機として早期改修が強く叫ばれておる現況であります。なお、本県には小中河川が実に多く、これに伴う国庫補助対象とならない小災害は至るところにあり、その被害額は莫大なものに達するのでありまして、これが何らかの対策は、ぜひ必要であることを痛感したのであります。  七月二十四日から二十六日の水害による土木関係災害は、県工事関係八億一千余万円、市町村工事関係二億八千余万円の復旧費を要する見込みでありまして、これが早期復旧につき、特に御配意願いたいというのであります。  二、中小河川改良事業及び災害復旧事業増額要望について。現在実施中の町野川、河原田川、二宮川は、いずれも今回の出水により未改修区間被害がはなはだしいので、予算増額し、早期完成し得るよう、特に御配慮願いたいというのであります。なお若山川、八ケ川、山田川、鵜飼川、富来川、熊木川、米町川、小又川、鈴屋川、大谷川等の諸河川は、今回のような出水に際しては再度の災害は避けがたく、何らかの災害助成的方途を講ずる必要を感じた次第であります。  三、永久橋復旧方について。今回の大水害においては、国県道橋八十三橋、市町村道橋百三十八橋が被災したが、これら被災橋梁は、主として木橋でありまして、永久橋はほとんど被害していないのでありまして、最近の豪雨出水状況から見まして、木橋がいかに脆弱なものかを立証しているのであります。被災橋梁は、極力永久橋復旧配慮すべきでありまして、災害現地要望も、この点最も強かったのであります。  四、我谷ダム事業着手について。今回の水害において、加賀市、山中町では市街地の九割を水浸しにし、大部分の道路冠水したのでありますが、大聖寺川上流部において目下実施調査中の我谷ダム建設は、防災上最も重要な懸案事項であり、早期実現は、地元住民の特に強い要望であったのであります。  五、緊急砂防地すべり対策等について。今回の水害では、各所地すべりを頻発し、また荒廃河川上流には、土砂の堆積が多く、早急にこれを扞止する必要を認めたのであります。  その他宝立正院松任海洋等海岸工事促進小松—大聖寺間七尾金沢線の舗装、改良、また宇出津—飯田間、十八束隧道の拡幅等、地元民の強い要望があったことを御報告いたしておきます。  最後に、この調査報告を終るに当りまして、本県の鳳至郡能都町について一言申し述べたいと存じます。能都町は、能登半島の東北部にある人口約六万六千の町であります。能都町は、昭和三十一年の大洪水により、当時未曽有の大災害をこうむったのであります。この水害惨状をまのあたり見た町長数馬角四君は、かくのごとき洪水は、必ずまた来るに違いないと判断いたしまして、町民を説き、町議会を動かし、町政の重点を防災の一事に置き、町の全知全能を傾けて、災害復旧と来たるべき洪水対策に尽力してきたのであります。しかし町財政にも限界があり、三十一年災より日浅くして今回の豪雨に見舞われたため、全町をあげての必死の水防活動にもかかわらず、ついに山田川はんらんとなって、能都町は甚大な被害を受けたのであります。しかしながら、町長を初めといたしまして、町民努力はむだではなかったのであります。その受けた被害は、今回のごとき豪雨に襲われながらも、比較的少くすることができたのであります。このような町長町民努力との成果は、他町村の範とするに足るものとして、われわれは心から賛辞と敬意を惜しまなかったのであります。  以上で御報告を終ります。     〔委員長退席瀬戸山委員長代理着席
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長代理 次に堀川恭平君から御報告願います。
  5. 堀川恭平

    堀川委員 台風二十二号に伴う被害状況のうち、私の派遣されました東京神奈川千葉都県状況につき御報告いたします。私は十月一日及び二日、農林社会労働文教の各委員とともに、各都県庁を訪れ、議員各位よりの見舞金を贈呈して状況を聴取し、各被害現場視察したのであります。  二十二号台風は、九月二十七日神奈川県下から本土に上陸したのでありますが、この台風の接近に伴い、本土南方に停滞していた前線によりまして、静岡県、関東東北地方に未曽有豪雨をもたらし、東京都内各地でも二百ミリないし四百ミリという、気象庁開設以来の降雨量を示し、これがため各所中小河川はんらん、がけくずれ、下水の溢流等が発生し、随所に床上床下浸水を見たのであります。これによる東京都の公共土木施設被害額は、河川四億四千五百七十七万五千円、道路二億五千三百六十六万二千円、橋梁九千二百六十七万円等で、その他の被害額合せ総額八億五千七百八十四万八千円に達する模様であります。  今回の災害特徴は、いわゆる雨台風でありまして、改修の済みました大河川には大した被害がなく、未改修中小河川、下水路等による被害が多いのであります。特に東京都内で数日にわたり湛水したのは、荒川放水路の外側、すなわち足立葛飾等の各区でありまして、足立区は、埼玉川口市より流入する荒川はんらんがその因をなすもので、この方面には、従来ポンプ場の設置がなかったことにもよりますが、中川放水路工事促進芝川綾瀬川等改修工事計画の樹立も、この際検討すべき問題と認めた次第であります。なお下水道事業促進も、このたびの災害において痛感された問題で、下水道が整備されていたならば、市街地浸水を著しく緩和し得たと認めたのであります。  次に、千葉県でありますが、公共土木事業被害額は、建設省関係二億七千三百五十万円、運輸省関係、港湾四百三十万円、農林省関係、漁港一千七百二十七万円、計二億九千五百七万円という状況であります。市川を流るる真間川は、市川市内中心住宅街を流れ、今後工業地帯として急速に発展を予想される地域を通って海に注ぐ小河川でありますが、沿岸はんらんし、甚大な被害流域に与えたのでありまして、木更津市を流れる小櫃川とともに、この際根本的改修を行う必要を認めたのであります。  次に、神奈川県でありますが、同県下におきましても、大河川にはさしたる被害はなく、鶴見川、帷子川、境川、柏尾川等平地部河川沿岸に甚大な被害を与えております。これによる公共土木施設被害は、河川六億七百六十九万円、道路三千四百七十三万円、その他を合せて計六億七千百五十四万八千円に上ります。  この際特に付加して申し上げておきたいことは、河川改修事業促進でありまして、鶴見川のごとき、昭和十三年に非常なる災害を受けて、直轄工事として改修計画が立てられ、自来これを進めて参っておりますが、二十年かかってわずかにその二一%しか施工できず、これでは、今後数十年かかるという状況であります。災害復旧対策を進めるとともに、河川改修費増額をして、改修工事促進をはかることが根本の問題であることを申し上げておきたいと存ずる次第であります。  また今回の災害に当りましては、自衛隊が非常に復旧活動に貢献いたしたのでありまして、東京千葉神奈川都県におきまして、ひとしく感謝しておりましたことを付言して、報告を終る次第であります。     〔瀬戸山委員長代理退席委員長着席
  6. 堀川恭平

    堀川委員長 次は、佐藤虎次郎君。
  7. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 私は、二十六日夜半より静岡神奈川東京関東一円、東北を襲いましたあのおそるべき台風による災害視察の第二班として、静岡県に派遣されたのであります。その調査報告前に、委員諸君を初めとし、建設省当局言葉お礼を申し上げたいと思うのであります。  このたびの静岡県を襲いましたるこの災害というものは、かつて私どもが全国に見ざる未曽有の大災害であったのであります。これに対しまして、委員各位から非常なる御配慮を賜わり、今日政党政派を超越して、一日も早くこの救済に当らなければならないというお言葉を聞いて、意を強ういたしておるものであります。特に建設委員会といたしましては、重点的に静岡県のことについて御配慮されておることを、県民とともに皆様に厚くお礼申し上げます。建設省当局は、全員を動員されまして、日夜を分たず、あの交通不便にもかかわりませず、ほんとうに真剣に、復旧に、御調査努力下すったことを厚くお礼申し上げます。  去る十月一日、二日の両日にわたって、農林社会労働文教の各委員とともに、静岡県下における台風二十二号による災害地視察した結果について、御報告申し上げます。  台風二十二号は、去る九月二十六日伊豆半島をかすめ、江ノ島付近より関東地方に上陸したのでありますが、この台風はいわゆる雨台風でありまして、当時本土南岸にありました不連続線の活動と相待って、東海道以東各地に記録的な豪雨をもたらしたのであります。特に中伊豆地方におきましては、狩野川上流一帯に降った豪雨は、湯ケ島において五百十・五ミリ、修善寺においては二百二十一・八ミリという未曽有降雨量を示し、このため天城山一帯から山くずれによる泥土を含んだ濁水が狩野川に押し寄せ、修善寺橋付近において流木や流失家屋にせきとめられた水は、一挙に同橋を押し流し、修善寺横瀬部落及び修善寺中学校校舎をのみ、さらに水は大仁橋下流左岸において堤防を千メートルにわたって破り、熊坂部落約二百戸は一瞬にして流失、さらに下流十数カ所において堤防決壊し、大仁、伊豆長岡など、田方平野一帯はんらんしたというのが、今回の中伊豆地方水害概況であります。なお伊豆半島においては、中伊豆地区のほか、西海岸松崎町、南岸下田町、東海岸伊東市においても、河川はんらんのため相当の被害を出しております。この伊東より下田に至りまする道路がことごとく亀裂したために、視察に行くことができ得なかったのであります。  本災害の発生するや、被災十九市町村に対しては、直ちに災害救助法が適用せられ、県当局は、三島市に災害応急対策本部を直ちに設置して、応急対策に当り、一方自衛隊も、災害発生と同時に出動し、九月三十日現在において、約八千名がその機動力を生かして、被害状況調査人命救助食糧補給並びに復旧工事に全力をあげて活動している状況であります。その被害は、十月二日現在として静岡災害対策本部の発表したところによれば、死者五百二十六名、行方不明三百八十一名、重軽傷者六百二十七名、家屋被害は全壊、流失合せて千三百五十一戸半壊七百七十四戸、浸水せるもの一万四千九百二戸となっており、農地の流失埋没は二千百四十八町、その他家畜の被害等も甚大であり、被害総額は、百四十八億七千万円といわれております。これが十月二日の現況でありました。以上まだ日に日にふえておるのであります。  このうち土木施設災害について申し上げますと、河川被害千二十四カ所、道路被害九百四十八カ所、橋梁被害百七十八カ所、その他海岸、砂防等合せて被害個所二千二百二十三カ所、被害の額は四十九億円となっておりますが、これもふえていく予定であります。  災害概況は、以上の通りでありますが、次に、われわれ一行の視察の所見並びに現地当局要望等について申し上げます。  現地状況は、予想以上にひどいものでありまして、狩野川流域は、風光明媚をうたわれた中伊豆地方の面影も全く見られぬ惨状を呈しておりました。また直接地上に見ました修善寺横瀬部落付近伊東市におきましては、水の暴威のすさまじさに今さらながら驚かされたのであります。  さて、今回の狩野川中心とする大水害は、予想外降雨量のため、計画水位をはるかに上回る水量となったことがその主たる原因であることは、いうまでもないと思われますか、これまでの狩野川治水計画並びにその実施状況についても、なお検討すべき点が多々あるのではないかと考えられます。特に狩野川放水路については、すでに早くから計画されていたにもかかわらず、補償問題のため着工がおくれ、着工後もいわゆるこま切れ予算年間予算僅少のため、その進行は遅々として進まぬ状態でありました。もしこの放水路早期完成を見ておりましたならば、今回の被害も、少くとも田方平野北部においては、よほど少くて済んだことと推察されるのであります。また今回の災害に当っては、田方平野一帯はんらんしたため、下流三島市、沼津市においては幸いにして大きな被害を免れたのでありますが、将来において、万一これら人家密集した市街地において今回のごとき災害が発生することを考えますならば、その被害は、まことに戦慄すべきものがあると思われるのであります。これらの点より見て、この狩野川放水路による分水の可及的すみやかなる完成は、目下の急務であると考えられるのであります。  次に、橋梁についてでありますが、今回も橋梁被害は多く、特に修善寺橋のごときは、鉄橋であるにもかかわらず、数百メートルの下流に押し流されるという状態を呈し、また大仁橋は、橋そのものは無事でありましたが、取付築堤流失のために用をなさぬ状態でありました。このような橋梁流失は、交通途絶を来たし、中伊豆地方の場合のごとく、地形の制約により、交通がいわゆる下田街道一本にたよるほかないような場合には、災害後の応急対策、あるいは復旧工事に対し、致命的な打撃を受けることとなるので、今後の復旧に当っては、もちろんのこと、全般的に橋梁の架設に当っては、その位置、構造について慎重を期し、橋梁流失による交通途絶を防ぐとともに、橋梁洪水に対するウイーク・ポイントとなることのないようにすることが必要と考えられます。  次に、水防活動と関連のあることでありますが、罹災者の話などによりますと、堤防ができ上ったので安心していたところ、急に水が来て、着のみ着のままで逃げた、あるいはそのまま押し流されたというようなこともあったようで、このような点にもかんがみ、洪水警報伝達組織等についても、さらに完璧を期するような努力が必要であると思われます。  なお、以上の諸点のほかに、地元県当局からは、狩野川直轄区域の延長、狩野川上流地帯における緊急砂防事業等推進公共土木災害復旧事業の査定の早期実施災害公営住宅建設及び住宅金融公庫の災害復興住宅融資の早急な実施などが強く要望されておりますので、政府当局におかれては、これらの諸点についても実情を十分把握し、それぞれ適当な措置をとられるよう特に強く要望するものであります。  最後に、今回の災害は、きわめて甚大なるものがありましたが、これが復旧に当っては、単なる原形復旧といった点にとどまらず、進んで恒久対策を確立し、民生安定をはかり、禍を転じて福となすような積極的な対策を行う必要があると思われるのであります。また全般的に見まして、ここ数年来は、災害が比較的少かったせいもありましょうが、治水対策費は必ずしも十分ではなかったように思われるのでありますが、この際治水事業につきましては、極力十分なる予算措置を講じて、今後予想される水害による被害僅少で済ましますよう強く要望いたしまして、調査報告といたします。
  8. 堀川恭平

  9. 木村守江

    木村(守)委員 私は、今回の台風二十二号の災害地視察団建設農林社労文教委員会により編成せられるにあたり、第三班に現地参加として武藤武雄委員とともに加わり、十月一日から三日間にわたり、埼玉茨城福島のり三県の被害状況を見て参りましたので、各県の公共土木施設災害概況と、要望のありました主なる事項につきまして、簡単に御報告いたします。  埼玉県におきましては、総雨量は浦和の四百二・七ミリを初めとして、秩父で三百四十六・九ミリ等、荒川流域に最も雨量が多く、従っておもなる災害は、荒川の沿線に起っております。被害額は、県単独災害を含めまして三億三千余万円、本年災害総額は、六億円余となっておりますが、本県の特異な災害としましては、川口市全域にわたる浸水でありまして、これは、荒川水位上昇により、市内を貫流する芝川はんらんし、現在の排水能力では、全くこれを排除するのが困難な状況であります。従って、当地区におきましては、遂に五万数千戸が浸水するに至ったのであります。当市は、機械、鋳物工場を主とする地帯でありますのに、すべての機材が冠水せるため、その損害もまた百数十億円に達する莫大な数字に上るとのことであります。この芝川は、目下中小河川改良事業として実施中でありますが、この地の水害根本的に除去するためには、新芝川放水路完成にあることを力説せられ、これが早期完成につきまして強い要望があったのであります。  次に、茨城県における降雨量は、岩井の三百十五ミリ、牛堀の三百七・九ミリを初め、県南部地方は二百ミリ以上、その他全般に百ミリ以上の豪雨があり、また水戸では風速三十六メートルをこえる暴風がありましたので、霞ケ浦、常陸川、那珂川及び久慈川等流域が、破堤あるいは決壊等多くの災害を発生し、被害額は、五億五千万円に達しております。本県におきまして特に著しいのは、田畑浸水冠水が実に多いことでありまして、ことに県南部平坦地におきましては、減水が緩慢でありますため、広域にわたる冠水田が実に一万二千町歩をこえるといわれております。しこうしていまだ至るところに冠水状況を望見できる状態でありまして、現状では、稲の収穫がきわめて憂慮されるものがあったのであります  本県は、今までに台風二十二号の損害を含めまして、総額約十六億円に上る土木災害がありますが、これに対して県より要望のありましたおもなるものを申し上げますと、応急対策としましては、災害復旧事業国庫負担金の早急な交付及びそれに伴う起債の特別考慮のほか、特別交付税大幅交付、並びに低湿地帯における通路の敷き砂利流失等を含むいわゆる小規模災害についても、国庫負担災害対象にしてほしいとの強い要望があったのであります。  恒久対策としましては、河川改良事業大幅促進と、道路防災工事推進につきまして要望がありました。特に、利根川流域一帯は、化土層地帯なるため、容易に破堤、決壊を惹起するため、河川改修築堤にあたりましては、特別の考慮を要するものと考えて参りました。  次に、福島県の状況でありますが、雨量小高三百六十九ミリ、相馬三百三十六ミリ、富岡川三百二十五ミリ、吾妻山三百六ミリ、その他県下全般に百ミリ以上の豪雨がありまして、主として浜通り地方会津地方に、また中通り地方にそれぞれ甚大な被害をこうむっております。中でも浜通りにおける大熊町以北、浪江町、原町市、鹿島町、相馬市を中心とする地方におきましては、前田川を初め井出川、請戸川、太田川、新田川、真野川、宇田川の各河川の破堤、決壊並びに橋梁の大半が流失災害をこうむり、またこれに伴う家屋浸水田畑冠水等は、実に目をおおう惨状を呈しておったのであります。全町軒下に及ぶ浸水鹿島町と、自衛隊の出動も効なく破提冠水の福浦、新沼の干拓地は、損害きわめて甚大であり、これが対策に苦慮している状態であります。会津地方におきましては、宮川、藤川、野尻川、伊南川を初め、阿賀川、只見川水系の各河川が甚大な被害を受けており、中通りにおいては、福島市内松川荒川の破堤、家屋橋梁流失を初め、杉田川、阿武隈川の支川が大災害をこうむっております。  これら台風二十二号による土木被害のみでも、約十七億円に上る状況であり、本年の被害総額は、三十億円の巨額に至っております。  これらの被害に対しまして、災害早期復旧と、これに要する復旧資金として予備費の早期支出、十万円以下の小災害に対する特別措置特別交付税の大幅な交付等につきまして、それぞれ陳情がありましたが、要するに特例法を設けて、国庫金の高率負担を実現されるよう県より強く要望があったのであります。  また従来改良工事を行なった河川におきましては、今次の台風に際し非常に効果を発揮している事実が、一様に認識されておりまして、改良事業大幅促進とともに、中小河川として改修されざる小河川改良工事の促進につきましても、強い要望を受けて参ったのであります。  以上、各県の概況を申し上げましたが、各県に共通している事情といたしましては、相次ぐ災害の発生にかかわらず、予算がこれに伴わず、ために、このような旧に倍する災害をもたらすに至っていることは明らかでありまして、災害復旧の画期的促進をはかるとともに、この際改良事業を大幅に取り上げ、実施していかなければ、国土の保全と民生の安定は期しがたいことを痛感した次第であります。この点を強く要望申し上げまして御報告を終ります。     —————————————
  10. 堀川恭平

    堀川委員長 この際、政府当局より発言を求められておりますので、これを許すことにいたします。徳安政務次官。
  11. 徳安實藏

    徳安政府委員 ただいま各委員の方から、現地に関しまする災害の詳細な御報告を聴取いたしまして、皆様の御労苦に対して心から感謝いたします。同時に、建設省といたしましても、最善を尽しまして災害復旧について努力するつもりでございますから、皆様の絶大なる御支援を切にお願いいたしたいと思います。  なお、この機会に、先回の委員会におきまして、現地について国政調査をいただきました御報告を拝聴いたしましたが、これに対しまして御答弁を留保いたしておきました。本日この機会に、各関係局長より御答弁を申し上げたいと思いますから、御聴取を願いたいと思います。
  12. 山本三郎

    ○山本政府委員 この前の委員会で御報告の中にありました件につきまして、河川局の関係のことにつきましての方針につきまして御答弁申し上げます。  まず、中島先生から御報告がありました、河川における砂利の採取に対する罰則の限度額を引き上げて、河川管理の徹底をはかるべきではないかという点でございますが、これにつきましては、御指摘の通り、現在におきましては罰則が非常に低いのでございまして、そのために管理の徹底を期することができないという実情にありまして、河川管理者でありまする都道府県知事も非常に困っておるというような実情でございます。その点にかんがみまして、今回におきましては、河川法の一部を改正いたしまして、砂利の採取につきましては、都道府県知事の許可を受けなければいけないということにいたしまして、それに伴いまして罰則も、海難法等の例にならいまして強化をいたすというふうに考えております。  それから、河川改良工事の促進でございまして、大井川、狩野川、木曽川、豊川、黒部川、常願寺川、庄川、小矢部川、それから井田川外八本の中小河川につきましての御報告がございましたが、これらにつきましては、いずれも改修をいたしておるわけでございまするが、御説の通り改修費が非常に少うございまして、特に狩野川のごときにおきましても、実例が示したごとく、やることはやっておるわけでございますが、なかなかテンポがおそいという点から、災害の原因をなしておるわけでございまして、これらの事業促進につきましては、今後におきまして、私どもといたしましても極力努力いたしたいというふうに考えております。  引き続きまして、九州の方面河川の関係の問題でございますが、六角川の改修の問題につきまして、早く計画を立てて、根本的な面に立って改修をしろというお話でございます。これは、ごもっともな仰せでございまして、三十一年、三十二年の二カ年にわたる調査をいたしたわけでございますが、今後におきましても、まだ不十分なところもございますので、これらを、至急水門等の問題を含めて調査をいたしまして、その上に立って工事を促進していきたいというふうに考えております。  次は、本明川でございますが、これにつきましては、下流部は直轄河川改修といたしまして、上流部は県の災害助成といたしましてやっておるわけでございます。この河川促進につきましては、あの異常なる災害にかんがみまして早く仕上げたいというふうに考えておりますが、目下のところは、三十七年までにはこの改修を終りたいというふうに考えております。  その他球磨川、川内川につきましては、やはりこれも事業促進が必要なものでございまして、努力をいたしたいと思っております。  それから球磨川の洪水予報の無線のお話がありましたが、三十四年度以降におきまして、できるだけ早くこれを設置したいというふうに考えております。  それから川内川の鶴田ダムの問題でございますが、これにつきましては、三十三年度までに予備調査を完了いたしまして、三十四年度は実施調査をいたしたいというふうに考えております。  引き続きまして東北の分でございますが、東北河川は、いずれもその改修度が非常に低いわけでございまして、これを促進するということが東北地方の開発の根源であるというふうに考えておる次第でございますが、最近におきましては、特にダム等には相当の主力を注いでおるわけでございますが、なおこれでは不十分でございますので、今後におきましては、これを大いに促進したいというふうに考えております。  なお、岩木川が本年度非常なる災害を受けたわけでございますが、特に弘前付近におきましては、ことしになりまして二回もその市の大きな部分が浸水を受けたわけでございまして、洪水の直後より調査に着手いたしまして、できるだけ早く計画を立てて、工事に着手したいというふうに考えております。  それから福島県の藤原川の洗炭による水質汚濁の対策につきましては、目下水質汚濁の法律を関係各省寄りまして立案中でございます。これの成立と、それから鉱山保安法による監督を厳重にしていただくように通産関係に県から申し入れをいたしております。汚濁防止関係の法律が成立したならば、こういう面についてもはっきりした方策がとれるものと考えております。  以上、前回までの委員会の御報告に対する御答弁を申し上げた次第でございます。
  13. 佐藤寛政

    佐藤(寛)政府委員 先般本委員会で御報告になりました東海、北陸地方並びに九州地方の御調査の御報告に対します当局の所見並びに事情の御説明を簡単に申し上げたいと思います。  道路関係について御説明いたしますと、まず東海関係につきましては、中島先生からいろいろ御報告がございましたが、最初御指摘になった点は、一級国道一号線等をごらんになって、盛んに事業をやっておるのみならず、維持、修繕をまたやっておる、これらを見ると、必ずしも満足な形にはいっておらない、来年からはさらにその直轄管理も延びるし、修繕も延びるようになるとすれば、もっと当局の機構を充実していく必要があるのではないかという趣旨の御指摘だったと存じますが、これらにつきましては、御指摘通り三十四年度におきましては、直轄道路改修事業がさらに飛躍して参りますと同時に、ただいま実施しております修繕、維持等の区間もさらに追加されますので、地方建設局の機構とか人員の問題につきましては、相当拡充を要する見込みでございます。この内容につきましては、予算的な面につきまして、目下大蔵省といろいろ折衝中であるわけでございます。中央建設局の本局につきましては、本年の六月に機構の改正をやりまして、御承知のように、道路部というものを設置したのでございますが、本局機構といたしましては、この道路部をもっと強化拡充し、事業実施に遺憾のないようにしていかなければなるまいかと存じております。  それからまた現場態勢でございますが、これは、工事事務所及び出張所を適当な区間に適切に設けるということかと存じますが、来年度の事業を勘案いたしますと、事務所並びに出張所は相当ふえる見込みでございます。ただいまの予定では、事務所が大体五カ所ぐらい、出張所は大体四十カ所ぐらい増設いたさなければならぬかと存じております。これらに伴う所要人員といたしましても、当然相当なものを整えなければならない実情でございますが、職員の増員は、できるだけ最小限度にとどめるようにいたしまして、なるべく部内操作によって有無相通ずることを考えておりますが、それにいたしましても、直轄事業の増大関係で約三百名ほど、それから修繕、維持の指定区間の関係で約二百名ほど、それから道路管理を担当いたします関係で約百名ほど、これくらいのものはどうしても要るんじゃないかと考えて、ただいまそれらの予算面につきましては、大蔵省方面といろいろ交渉しておるのでございます。  それからなおまたいろいろな点において御指摘になり、当局の善処を御要望でございましたが、これらにつきましては、よく御趣旨を拝聴いたしまして、今後の処理の上に十分反映さして参るつもりでございます。  それから九州地方でございますが、九州地方の御調査報告の中の道路関係では、六つの点を御指摘になっておるのでございます。  第一の点は、九州の一級国道の中の三太郎峠を中心とする三号線の改修は、どういうふうになっているか。できるだけ早く進めるようにという御趣旨のようでございましたが、これにつきましては、道路整備五カ年計画におきましてできるだけ改良を進捗させる予定でございますが、ただいまのところでは、全線というわけには参りませんので、おおむね北の門司から始まりまして、大体熊本の八代ぐらいまではいけるかと存じておるのでございますが、この三太郎峠を含めまして、それから先につきましては、交通困難な非常に悪い部分に対しましては、一つ改良の手を打って参りたい。たとえば三太郎峠に対しましては、これはなかなか大へんな峠でございますので、五カ年計画で完成というわけには参りませんが、一応交通に支障のない程度には進めて参りたい。具体的に申しますと、大体三分の一ぐらいはできようか、従いまして、三分の二が残るわけでございますが、これらにつきましては、五カ年計画の間でできるだけ工事態勢を整えるようにいたしますので、あとの残りに対しましても、そう長くかからないで事業実施ができるような取り計らいをしていきたい、こういうふうに考えております。三太郎峠以外の南の方の交通困難な部分に対しましても、おおむねそのような取り計らいをして参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  その次は、北九州の国道百九十九号の改修についてどういうふうに考えておるか、こういうことでございましたが、この北九州の二級国道は、あの工業地帯の中を通っております道路でございまして、計画を立てるのに非常にむずかしい路線でございます。ただいま道路の形がないようなものでございまして、重要工場の中をどこをどういうふうに通すかという点につきましては、各方面にいろいろな意見がございます。また各省関係におきましてもいろいろ意見がございますので、これらの調整をはかりまして、できるだけ早く進めるようにいたしたい、こういうふうに考えております。  それから上寺橋につきましては、これは、非常な長大橋でございますので、簡単に着手というわけにも参りませんので、目下調査をいたしておりますが、これは、慎重な調査をした上できるならば着手するように考えたい、こういうふうに思っております。  第四番目は多比良—長州間のフェリー・ボート関係でございましたが、これは、重要な路線でございまして、ただいまはこの両端に接します接続道路を長崎県側、熊本県側は相当実施いたしておりますが、これらの取りつけ道路の整備完了を相待って、フェリー・ボートの計画を進めていきたい、こういうふうに考えております。  それからその次に、第五番目には霧島にある有料道路、南北にございますが、その南北道路の連絡関係の御質問でございましたが、これにつきましては、この春完成いたしました南北霧島の有料道路が、現在のところでは非常に経営状態がよろしくないわけでございます。しかし、これはまだ開始されたばかりでございますので、これらにつきましては、もう少し様子を見たい。そういう状態でございますから、この二つをつなぐ新たな有料道路事業を起すかどうかということにつきましては、目下調査いたしておりますが、そういう関係をよく調査いたしまして、採算性等を十分検討いたしまして採択の可否を決するようにいたしたい、こういうふうに考えております。  それから第六番目には、鹿児島地方等にございます特殊土壌、シラス地帯に対するコンクリートの側溝等、特別な道路事業に対して特別な措置をする必要があるという御指摘でございましたが、これは一々ごもっともでございまして、技術的にいろいろ研究を進めながら対策を講じておるところでございまして、こういう特殊土壌地帯に対しましては、他の道路事業と異なる設計をいたさなければなりませんので、御指摘の点十分考慮いたしまして、今後の事業に反映させて参りたい、こういうふうに考えておる次第であります。  以上簡単でありますが、これで終ります。
  14. 鬼丸勝之

    ○鬼丸説明員 前会の御報告の中で能代、大館の火災復興事業に関しまして、防火建築帯事業国庫補助金が非常に少いために、事業が思うようにできない、強力に推進していただきたいという御指摘と御要望がございましたが、この点、まことにごもっともでございまして、従来この補助予算が単年度予算であり、また年々相当増減いたしております。このために、能代の場合は、三十一年度全体の予算が非常に少なかったというようなことで、いわゆる災害の場合の法律補助の金額が十分に出せなかったような事情になっております。大館市の場合は、三十二年度の国庫補助額もふえましたので、相当めんどうが見れたという事情でございますが、いずれにいたしましても、今後はこの防火建築帯造成計画を容易ならしむる方途といたしまして、単に補助金だけでなく、融資の道もあわせて考えて参らなければ、なかなかこの事業は伸びない、そこで、来年度におきましては、融資の方途もあわせて講ずべく、予算の面でも要求いたしておるようなわけでございまして、今後は、できるだけ強力に推進して参りたいと考えております。
  15. 美馬郁夫

    ○美馬政府委員 私どもの方の関係は三点ございますので、簡単にお答えいたします。  最初は、魚津の火災復興の問題でございまして、経費の増額、特に墓地移転の経費の増額でございますが、これはいろいろいきさつがございましたが、結局昭和三十一年度から始めまして三十三年度で打ち切りの事業でございまして、特に問題となっておりました墓地の移転経費の単価等につきましても、相当他の府県に比べまして高額に見ておりまして、これ以上の経費の増額はなかなか困難かと思います。ただ全般的な火災復興事業につきましては魚津もそうでございますが、その他大館等にいたしましても、相当経費の不足を要望せられておる向きもありますので、現在まだ幹線街路の整備が十分できていない点がございますので、そういう街路整備の問題として今後十分考えていきたい、こういうふうに考えております。  第二点は、名古屋港南部の埋め立ての問題でございますが、この名古屋港南部の工業地帯の問題につきましては、私どももここにあります報告の趣旨を十分了承しております。特にこの地帯は、日本で五つの工業地帯として、国におきましても各般の工業施設を重点的に整備する方針をとっている地域でございまして、お話のような点については、建設省といたしましても十分に御協力をいたしたい、こういうふうに考えております。  第三番目の九州班のうち、諌早市の水害復興の土地区画整理事業の推進の問題でございますが、この問題は、私ども三十四年度の予算といたしまして、残事業は全部三十四年度をもって終了せしめたいという方針のもとに、目下大蔵省に予算を要求しておるような次第でございます。
  16. 堀川恭平

    堀川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕     —————————————
  17. 堀川恭平

    堀川委員長 速記を始めて。  それでは、台風二十二号による災害対策に関しまして調査を進めたいと存じます。これに対しまして質疑の通告がありますから、順次これを許すことにいたします。瀬戸山委員
  18. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 ただいま委員長から二十二号台風災害というお話がありましたが、私は、二十二号のみならず、いわゆる災害対策及びその根本をなす治水対策と申しますか、そういう二つの面について、ごく基本的な点だけについて政府の、特に建設大臣の御所見を承わっておきたいと思います。  ことしの現在までの台風、あるいは豪雨災害の様子を見ますと、大体昭和二十九年の災害程度になっておるようであります。二十一号もそうでありますが、特に今お話しの二十二号台風は、静岡その他のいわゆる局部的と申しますか、部分的には、非常な深刻なものである。今日まで日本の状態は、御承知の通り、不幸にして毎年災害を受けております。今も御陳情がありましたように、静岡等においては、今日までちょっと例のないような災害状況が見られるわけであります。こういう災害については、われわれがここでとやかく議論をするまでもなく、先ほど申し上げましたように、いわゆる台風の国であり災害の国でありますから、それに対する手段方法というものは、すでにほとんど確立しておる。ただ要は、その各般の対策をすみやかに実行に移して、一日も早く民生の安定をはかる、これに尽きるわけであります。  そこで、私が大臣にお伺いいたしておきたいというのは、まず第一に、政府も国会もでありますが、政府は早急に災害対策本部を設置して、特に最も被害の程度の大きいといわれておる静岡県下にその本部を移動して、それぞれ調査あるいは対策等について真剣に取り組んでおられることはみなわかっておる。そこで、もちろん仕事をするについては調査が必要でありますが、先ほどもお話がありましたように、だんだん寒くはなりますし、何といっても一日も早く民生の安定をはかるために、それを実行に移さなくちゃならぬ。それには金が要ります。そういう点において、政府も考えておられるようでありまするが、具体的に伺いたいのは、補正予算を早急に組む必要がある、それに対してどういう考えを持っておられるかということであります。私どもは、今日まで災害等の場合経験しておりますことは、なるほど政府に熱意がないというわけではありませんが、こういう国民が塗炭の苦しみをしておるのを眼前に置いて、何となくこそくな手段でまかなおう、こういう空気が残念ながらしばしば見受けられる。特に政府の一部の大蔵省あたりでは、その気分が濃厚であります。これは、私どもとしてはきわめて遺憾であります。もちろん政府は、各般の調査をして、すみやかな調査のもとに計算が出るわけでありましようけれども、大体今日までの私ども手元にある資料によって計算しますと、建設関係だけでも国費にして五十億余、建設関係以外の各省所管の災害復旧をまとめてみましても、七十億ないし八十億の国費の予算が要る。これはどういうことかというと、本来ならば、できるだけすみやかにやる必要があるわけでありますけれども、そうも参りませんので、御承知のように、少くとも当年災の災害復旧は最低二割五分以上やる、こういう計算に基いておるのであります。それにしても、今申し上げたように、七十億余の国費としての需要があるという状態であります。そこで、現在予備費が、私の知っておるところでは四十億そこそこあるということであります。先般来旱害対策について各般の措置をいたしておりますが、これについては、今後支出をしなければならない相当額が残っておる、こういう状況であります。そこで、大臣の御説明を聞きながら、こういう災害対策についての補正予算についてどういう考えを持っておられるか、これをまず第一に承わりたいと思います。
  19. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 先ほど来のいろいろな問題についての報告、その他建設委員会の各位が、今回の災害復旧の問題について非常に御熱心に御審議いただいておりまして、建設大臣として感謝にたえません。ただいまお尋ねの補正予算の問題でありますが、お示しのように、予備費がなお若干残っておったのであります。しかしその後の調査の結果によりますと、予備費ではとうてい足りないということがはっきりわかって参りました。従って、政府としましては、補正予算を組むという方針を大体決定したのでございます。ただその補正予算の金額がどの程度になるかにつきましては、もう少し査定をいたしまして金額を確定しなければなりません。今それぞれ現地に査定官を派遣をいたしまして、大車輪、大馬力でもって、それぞれ災害損害の査定を進めておるようなわけであります。普通のやり方で参りますと、十月一ぱいくらいかかるのでありますけれども、特に急がせまして、今月の中ごろを期してコンクリートな数字を固めたい、そして中ごろに数字が固まりましたならば、でき得る限りこの国会に間に合うように、臨時国会に提案をする、こういう考えでおります。御了承願いたいと思います。
  20. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 政府の大体の考えはわかりました。  そこで、今月半ばを目途として最大の努力をしていただくのはまことにけっこうでありまするが、従来の実例を見ますると、災害が起りますと、約二カ月を要して初めて大体の災害の見込みをつけておる。そういうことでは、これは、毎回そうでありますけれども、特に今回の場合は、そういうことでは国民が納得いたしません。それは当然であろうと思います。せっかく御努力を願っておるところで、別に文句を言うわけじゃありませんが、どうか一つ今の御決意のほどを実行に移していただきたい。特に大蔵省流の考え方で、事こまかにこういう緊急な事態に調査して、そうしてそろばんをはじいてやるというようなことは、これは政治を考える者のなすべきことではないと思っております。常識的にというと非常におかしな話でありますけれども、これは、毎年やっておる仕事でありますから、この台風状況を見ておって、大体ことしの災害総額は幾らであるか、私どもにはわかるのであります。総額ことしは一千四、五百億だとちゃんと見ておる、こういう考えを持っております。これは、各種の農作物被害を入れての話であります。そうしますと、公共土木その他でどのくらいだ、もちろん一銭一厘も違わないような予算を組もうという、そういう政治は誤まりだとは言わないが、政治にはならない。かりに十五日までにそういうことができないでも、多々ますますいいのですから、しかも一面においては御承知のように国民からあずかっておる税金は、たな上げをして遊ばせておる金がある。こういう国民の困っておるときには、あまりしゃくし定木に考えないで、そうして法律、規則一点ばりでなしに、あたたかいやり方をしていただきたい。  もう一つ決意を聞いておきまするが、大蔵省あたりは、現在どう考えておるか知りませんけれども、従来のやり方を想像しますと、最低二割五分の緊急復旧をしようという予算でさえも、これを何とか二割一分あるいは一割八分に削ろうという逆な努力をする常習があります。そういうことは一切許さないという決意をもって、あるいは三割でもけっこうなんであります。こういう場合には、特に生活その他に困っておるものを救済するという考え方をもって、ただ公共施設をもとへ戻すという考え方ではなしに、それによって生活のかてが得られるような災害復旧の方法を講ずるという考え方で進んでもらいたいのですが、最低二割五分以上を必ず維持するという建設大臣の、特に当所管の建設大臣の決意を私はこの際聞いておきたい。これは国務大臣としても、どうか一つそういう決意で進んでもらいたいという考えを持っておるのでありますが、この際特に確かめておきたいのであります。
  21. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいま御指摘の前段の方の問題でありますが、なるほどおっしゃる通り予算の正確な査定をするためには二カ月くらいかかります。しかし何円何十銭まではっきり見て参りますと、非常に期間もかかって参りますので、私の考えておりましたことは、災害の激甚地、中心地の模様がわかれば、他の方は大体の推定でいける。現地調査の結果、皆さん御承知の通り、例の狩野筋と大見筋の奥の方の砂防工事がどの程度になるかという見当がついて参りますと、予算がもう組めると思うのであります。その他の災害の一般的な情勢は類推で参りますし、大体の見当がついて参りますから、その激甚地の災害がはっきりしたならば、それでもって予算を組んでいこう、こういう考えでありますから、もちろん今月の中ごろ予算を編成するといたしましても、ある程度推定の部分が入っていくことはやむを得ないじゃないか、こういう考えで進めておりますから、その点も一つ御了承いただきたいと思います。  それから、あたたかい気持でこの災害復旧をやらなければいかぬじゃないかというお尋ねでありますが、これはごもっともでありまして、あの突然な大災害にあって、住民は右往左往しております。しかもこの寒さを迎えて、非常に不安動揺、心配しておるのであって、政府としては、その気持にこたえるようなつもりで、あくまで親切に、行き届いた災害復旧をやらなくちゃならぬと思っております。ただいま最低二割五分の復旧事業を今年度にやれということでありますが、もう二割五分以上のことは当然やらなくちゃならないので、それ以上のことをやらなくてはいかぬじゃないかと思っているわけであります。それは、堤防もほとんどなくなっておりますので、一応この次の台風予想される時期までの間に、安心ができる程度の工事を進めて参りませんと、非常に不安がつのっていくわけであります。でありますから、この次の普通の台風がやって参りましても、もう大丈夫だという程度の工事は、何をおいてもやらなくちゃならぬじゃないか、そういう考えで進めるつもりでありますから、この点も御了承いただきたいと思います。
  22. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 建設大臣の決意を承わって、当然なことではあるのでありますけれども、非常に敬意を表します。どうか一つそれを必ず実行に移して、困っておる人々に対して、政治というものはなるほどありがたいものだという気持を起させるように御努力を願います。  災害対策は、さきに申し上げましたように、いろいろここで議論をしなくてもいいのでありますから、問題はすみやかに効果のあるようにしていただくということを申し上げておきます。ただ災害についてもう一つ伺っておきたいことは、先ほど知事会の御陳情があった後に、他の委員から質しておられましたが、住家の問題、これは、御承知のように、災害の場合には、あるいは被害の三割については緊急な措置を講ずるとか、あるいはまたいわゆる住宅金融公庫の災害についての融資を早急にする道を今日まで開いております。それは、もちろん大いに活用して、現在その効用を発揮しているということを聞いておりますが、ところが大臣十分御存じの静岡地方のように、一挙にして総なめにされたという特に農村において、それで間に合うかどうかということを、私は心配をいたしております。私がここに案を持っておるというわけではありませんが、こういう場合に、いわゆる都市災害のような、ちゃちな三割程度の家を建てる、それも非常に応急な場合でありますからけっこうでありますが、それから農村あたりでは、金融公庫の金で建てるということだけでは、なかなか間に合わない事態があるのではないかと思うのです。特に今度は、農村の場合が非常に多いようでありますから、今までの現行の諸制度で間に合わないのではないかという気が私はしております。何か新しい方途を講ずるか、特に農村は気の毒な状態で、先ほど大臣が言われた通り、何か方法を考えなくちゃならぬと思うのですが、これについて、何か現在お考えがあるかどうかということを承わっておきます。
  23. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 住宅の問題につきましては、先ほど静岡の知事からの陳述もありましたが、非常に困っております。そこで災害の公営住宅を、さしあたりできるだけ作ろう。現行の法律の関係では、三割の住宅を作ることが認められておるのでありますが、やりくりをいたしまして、もう少しほしいということでありましたので、四割程度の住宅を作ることを今進めておるわけであります。この住宅を作ってみまして、なお足りないようでありますれば、公営住宅全体として、なお予算の上では余裕を持っておりますから、その情勢に応じて予算の運用をしていきたい、こう考えております。…応災害公営住宅建設が済みまして、雨を避ける建物ができたというようなことになりましたならば、そのあとは本格的な住宅問題に入っていくわけでありますが、その本格的な住宅問題に入っていきます場合には、なお十分その情勢を考えて、地元の事情に合うような住宅政策を、この地方に進めていったらどうか、こういう考えを持っておるわけであります。現在のところでは、四百戸程度の災害公営住宅で、ほぼ間に合っておるというふうに私は聞いておったのでありますが、なお事態が進むに応じて、地元の意見を聞いて、十分にこれに対処していきたい、こう考えております。
  24. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 先ほど静岡の知事のお話を聞いておっても、それで間に合うんじゃないかというような御意見でありまして、けっこうなことです。けっこうなことですけれども、それはとにかく、もう寒さはくるし、しかもその台風のあとに、御承知のようにだらだら雨が降っておる。とにかく入る場所がほしいのですから、そういう場合には、どこでもいいから、何坪でも入れさえすればいいという気持があるわけなんです。それは非常にけっこうなやり方で、必要なことなのですけれども、農村の場合には、そんなことじゃ間に合わないのじゃないかと思うのです。ですから、これは、今すぐというわけではありませんけれども、農村に合う特殊な構造があるわけですから、しかも、ほとんどの農作物が荒されてしまって、同じ家族の生命もなくなったというような状態のときには、その家ということについて、ただ四、五坪の家を与えておくというだけではいかぬじゃないか。でありますから、これについては、今というわけではありませんが、それぞれ専門家に一つ研究をさしていただきたいということをお願いしておきます。  それから、私は災害対策については申し上げませんが、これは、建設大臣も十分そういうお考えであると思っておりますけれども、この際特に私どもは反省をし、またその反省に基いて政治をやらなくちゃならぬと思いますから、ここで多少議論をしておきますが、先ほど申し上げましたように、ことしの災害は、大体総額を検討して、昭和二十九年程度の災害だったといわれておりますが、こういう災害は、実は毎年あるわけなのです。そして災害のたびに、こうやってあちらこちらで悲惨な状況が起る、そして政治家も国民も右往左往する、これは、私は実際はとんでもない間違いだという感じを常日ごろ持っておりますが、この際国民の政治をあずかる者は大いに反省をして、政治のやり方を、多少といいますか、大いに変えなくちゃならぬという気を持っております。というのは、根本的な治水対策が足らないということなんです。これは、大臣も考えておられると思うのでありますが、ただ考えているだけではいけません。ことしはもう間に合いませんが、少くとも昭和三十四年度以降においては、こういう苦しみを毎年していくようなことはばかのやることじゃなかろうかというくらいの考えを持って、治水がいかに大事かということは、これは、今さら言わぬでもわかっていることですから、実際に大事な政治を実行に移すということをやってもらいたいということなんです。  これは、私が申し上げるまでもないことでありますけれども、御承知のように、昭和二十八年には総額五千億余りの損害を受けた。公共施設だけでも一千二百億余りの損害を受けた大災害であった。それに時の政府はびっくりして、御承知のように、大騒ぎをいたした。そして建設省は、いわゆる治水の対策について根本的な再検討を加えて、その計画を立てていることは大臣御存じの通りであります。最近になって、こういうアッピールの資料もいただいているわけであります。そのとき、御承知のように一兆一千六百九十一億円余の治水計画を立てました。この一兆一千六百億余りの治水計画というのは、これをやっても何も満足な、これで国民が安心できるという治水計画じゃなかったのです。これをやれば、相当程度損害をなくして、しかも民生の安定がはかれるという、これは、相当に遠慮したと申しますか、控え目の計画であります。それも、先ほど申し上げたように、二十八年に五千億余りの損害を受けてびっくりして、さらに再検討をして新たに計画を立てた。ところが、御承知のように、その後の治水計画は一体どうなっているか。その後出しました治水費というものは、この建設省で出されている書類だけを見ましても、その計画に基く治水が一千六百億円の、国費といいますか、事業がなされている。計画に対して一四%。これは、私は政治家は大いに反省しなければ、政治家などといわれた義理じゃないと思います。しかも、その間に受けた損害は幾らかというと、ことしの損害は大体一千四、五百億と思いますが、一千億として、その一千億を加えても六千億の、いわゆる台風豪雨等の損害がある。昭和二十八年にそういう計画を立てて、昭和二十九年かち三十三年まで五カ年のうちに、六千億余りの台風豪雨による損害を受けております。その間にいわゆる治水の事業費を出したのが、先ほど申し上げたように一千六百億、こういう政治は、一体世界のどこの国でやっているでしょうか。今貿易だとか、あるいは産業の振興だとかいうことは非常に議論されております。非常に議論されておりますが、戦後の一年間の損害の平均は、大体二千五百億であります。御承知のように、最近数年間比較的災害が幸いにして少かった。その少いときの統計が、今申し上げましたように五年間で六千億余りであります。その間に国は、それを治める政治として一千六百億、そういう政治が一体政治といわれるのでしょうかということを言いたいのです。これは常に叫び続けていることでありますけれども、それが行われない。しかも、こういった災害が起ると、全国民が右往左往して騒いでいる。日本の状況は、私から申し上げるまでもなく、太平洋の西にあって、しかも大陸に接岸しておりますから、地形の状況から、必ず台風災害はくるものです。明治十九年以来の統計を見ましても、一年間にくる台風の回数は大体二・六回です。こない年もありますけれども、四、五回来る年がある。そこで、毎年平均にして二回以上の台風が襲うということは、地勢から申しても、歴史的な事実から申しても、当然なことなんです。ですから、台風が来てあわてるというのは、特に日本の場合はとんでもない話だということを常に私どもは考えて、主張してきておりますが、このごろは黙っておりました。もう幾らそういう議論をしても、大体世論も、この治水というものについては、災害が起ると大騒ぎしますけれども、あとは忘れて知らぬ顔をしているというのが日本人の癖であります。一般国民、あるいは言論機関にたよる必要はありませんから、政治家と申しますか、特に政治の実権を握っておる政府は、その点を大いに一つ反省してもらいたい。建設大臣が非常に治水に熱心で、来年度以降について各種の計画を立てておられるということは、私も十分承知いたしております。そしてまたその御熱意に対しては、深甚の敬意を表しておるのでありますけれども、いかに建設大臣がそういう熱意を持っておられても、今の政府の全体の考え方では、なかなか建設大臣のその所信を実行に移すということは、困難な情勢にあると私は見ております。何も政治家になって、そうたくさんの仕事をする必要はありません。特に日本の場合においては、昔からいわれておる言葉でありますけれども、言葉を知っておって、その言葉を実行しないというのが日本国民の悪い常習であります。これを一つ改めるという意味において、建設大臣は、来年度以降の予算編成においては心血を注がれたい、こういうことを私はあなたにお願いするのです。  私は、たびたび建設大臣にそれを要望いたしております。しかし、なかなかそれが実行に移されておりません。この席に見えると、必ず治水について熱意を持つということを言われますけれども、年々の予算等については、それが実行に移されておらない。これは、もちろん一建設大臣だけの責任ではありません。どうか一つ、総理あるいは大蔵大臣等にそのゆえんを伝えてもらいたいと思うのです。総理も大蔵大臣も、もちろん天下の有能な士でありますから、そういうことを御存じないはずはない。ところが、こういう事態になりますのは、率直に申し上げますが、大蔵官僚が、ただそろばんをはじくという政治をするところに原因があると私は見ておる。商売のことは一生懸命やります。貿易がどうであるとか、金利がどうであるということは、専門家でありますからよくやりますけれども、政治の根本に触れた、国民生活の根本に触れた問題については、なかなか政治らしい政治が行われないというのは、そこに原因しておると私は思うのです。そういう意味において、建設大臣の治水に対する所信というものをここで承わっておきたいと思うのです。
  25. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 日本の将来の治水計画についてのお尋ねでありましたが、全く私は同感でございます。お話しのように、年々平均して二千四百億円以上の災害がありまして、その災害復旧のために常に追われておる、これが今までの実情でありました。一度災害があると、非常に騒ぎ立てますけれども、すぐその翌年は忘れてしまうということを繰り返しておったのであります。治水関係の予算が非常に少かったということについては、私は弁解も何もしないで、率直にその通りですと言って認めたいと思うのであります。しかし、こういうことをいつまでも繰り返しておりましたならば、日本の国土というものはよくならない。しかも、これは純経済的に見ましても、私は、今回治水五カ年計画というものを立てて計算をしてみたのでありますが、五カ年間に三千五百億円の治水投資をやって参りますと、改修のできた河川は一つも災害を受けないという事実から申しましても、五カ年計画の完遂の後には、二千四百億円ずつ毎年損害があったのが、一千億円くらいに減じて参ります。そういう計算がはっきり出て参ります。これは、純経済的に見て、国家投資としても非常に有利な投資である。いわんや大きな洪水があって、人命をそこなう、家を流してしまう、そうして不安動揺きょうきょうとしておるといったような、国民の生活の安定という見地から見ましても、これは、計算ができない非常に大きな問題でありますので、どうしても政府としては、治水事業にもっと力を入れねばならぬということが私の持論であったのであります。  昭和三十四年度の予算の編成につきましても、治水計画については、相当思い切った五カ年計画のもとに三十四年計画というものを提案をしております。この提案をいたしました当時は、建設省が膨大な予算を出しているのは、だいぶ非難も受けたのでありますけれども、これは、非難に当らないということで突っぱって参りました。私は、今度は国会の皆さんに十分の御審議を願って、この治水五カ年計画というものをどうしても実行して参りたい。今までの五カ年計画もありましたし、治水の基本政策というものもありますが、なるほど二十八年に立ちました一兆一千六百億円の計画も、これは閣議に報告をした程度のことになっております。二十九年の五カ年計画も、これは建設省で立てた計画になっております。まあそういうことを言うと怒られるかもしれませんが、いわば政府全体の施策の片すみの方におったという感じであります。これは、非常に差しさわりがあるかもしれませんが、差しさわりがあっても、私は事実は事実として認めて、その上に新しい考えを立てていかなければならぬと思いますので率直に申し上げるのですが、そういうようなことでは、その年その年の予算の苦しい状態についでも押されてしまうのであります。でありますから、今度はどうしても五カ年計画というものを立て、しかもその裏打ちになる治水事業促進法というものを制定をいたしまして、国の基本策としてはっきりきめて、そうして年次計画を立てて治水事業を進めていきたいというのが、私の念願でございます。今この治水事業促進法の立案を進めておるのでありまして、できれば通常国会にこれを提案をしたい。そして皆さんの御援助によって、国全体としての治水の国策をきめていきたい。それをきめるについては、十分皆さんの御審議を願い、御批判を願って、足りないところは一つ補っていただきたいし、また計画のまずいところは、一つ直していただきたいと思うのでございますが、そういうことで、国民全体の支持のもとに相当はっきりした治水計画というものを立案をし、それを進めて参りたい、こういう考えでおりますことを、一つ御了承いただきたいと思います。
  26. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 大臣は、かねがね治水について非常な熱意を持っておられて、まことに仕合せであります。どうか、一つその決意を、実行に移してもらいたい。ただいま、できれば通常国会にそういう提案をしたいというお話でありましたが、できればではなくて、必ずやるという熱意を持って、必ずやっていただきたい。われわれも大いに力のある限り御協力を申し上げます。これは、失礼でありますけれども、建設大臣の考えというよりも、政治の根本の問題として一つ御努力を願いたいと思います。そこで、いつでもそういうことはわかっておるが、問題は、日本は貧乏だから、結局国家財政がそれほどないので間に合わないんだ、こういう議論が必ず出て参ります。そこに、日本の地勢と今日までの歴史的事実に対する認識があるかないかということを疑われる根本の原因がある。私がえらい口幅ったいことを言いますけれども、先ほど来少し長く申し上げたのは、こういう実情であるから、何はさておいてもこの問題を解決する政治をすることが、いわゆる日本の国民の仕合せになる政治をするゆえんだ、こういう考え方に立つならば、国家財政が貧乏であっても、根本問題であるから、これを解決しなければ日本の貧乏を取り除くことはできないんだという政治感覚があれば、貧乏の中にも、この問題を解決するという努力がなされるはずであります。そこで、もしこの根本問題を解決するについて——なるほど日本は豊かでありません、そういうことはみんな知っておるわけなんです。そういう場合には、国防費をふやすことをやめて、この問題を解決することが第一要件だということを建設大臣は考えていただきたい。国民が安心して生活ができるという状態を作らなければ、国防の根本観念は出て参らないというのが私どもの考え方であります。(「その通り、その通り」)社会党さんとは違って、国防そのものを否定するわけじゃありません。いわゆる従来とってきておりますように、国力に応じてわが国を守るという努力をすることは、当然でありますが、その国力というところに問題があるのです。治水、あるいは私どもが常に主張しておる道路、これは、日本の土台を築く仕事であるからということで努力をいたしておるのであります。この土台を築かないでおいて、商売のことや、あるいはその上に立った国防のことだけに熱中するということは、土台がくずれてきて真の国防にならないということを平素主張して、今日まできておりますが、一つそういう考えで——道路のことは、ほとんど既定の事実になっておりますから、きょうは申し上げませんけれども、それより以上に大事なこの治水の問題について取り組まれたい、これを申し上げておきます。  それと、もう一つは、少しこまかく入りますけれども、まず第一に、そういうふうに治水の仕事に多くの国家投資をやるということをきめるために努力をしていただくということ、そのもとにおいて、大臣もよく御存じの通りに、今回の委員諸公の視察報告を聞いておりましても、近年の災害というものは、割合にいわゆる中小の河川中心として災害が頻発しております。その災害が非常に深刻な状態を呈しております。これが近来の現象であります。これは、当然なことでありまして、大河川は、まあ十分ではありませんけれども、それにしても、直轄河川等については相当努力を進めておりますから、その数年の努力の結果が、大河川はんらんというものをまず不完全ながら防いでおる。そういうところに、大河川にそれほどのはんらんがないという原因があるのです。これは、申し上げるまでもなく、治水事業というものが、いかに民生の安定に効果を現わしておるかという一つの証左であります。これは、何も近年だけ中小河川災害が多いという現象ではありません。中小河川災害が多いというのは、その点についてのいわゆる治水対策が行われておらないから、そこに集中してこういう災害が起るという現象になっておる。一面においては、治水の効果が現われており、一面においては、治水の事業が不満足だという状態を現わしておるということなんだと思います。でありますから、今日各地で叫ばれておりますように、いわゆる中小河川に対しても——これは、全部中小河川中小河川で生きておるわけではありません。大河川の支派川としてこれが効用を発揮しておる。しかも、時と場合によっては、こういう水害を起すのでありますから、これについても同様の対策を、一挙にはできませんが、計画的に進めていく必要がある、こういうふうに考えております。建設大臣も、かねがねそういう所信を持っておられますから、ここに一つ所信を実行に移す決意を披露してもらいたいと思います。
  27. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいま御指摘のように、ここ数年来の災害は、大河川はんらんが比較的少くて、いわゆる中小河川以下の、むしろ小河川とも言うべき河川はんらんが非常に多かったのであります。これは、一方におきましては、大河川につきましては、三百ミリ程度の降雨からくるところの洪水を目標に、着々治水事業が進んでおった、ところが小河川の方については、ほとんど手がつけられてなかったのではないか。川は小さくても、被害が非常に大きい川がたくさん出て参りました。この間の十一号台風、十七号台風、二十一号台風、さらにまた二十二号台風というふうに重ねて来たのでありますが、これらの多くは小河川でありました。小河川はんらんが非常に大きな被害を及ぼしておりましたので、今回計画しております五カ年計画におきましては、小河川改修方面にも相当力を入れなくちゃならぬ、私は、そういう考えで予算の編成にも留意をして参っております。小河川が現状のようなままに放置されておりますと、これから大きな災害を何回も何回も繰り返していくことになりますので、どうしてもまた小河川の方をやっていきたい。それと同時に、五カ年計画におきましては、先般の旱魃によりまして、海の潮が逆流をして、農地に非常に損害を与えたような事例もたくさん出て参りましたので、潮どめの河川工事等についても、新しい計画においては考慮をしていかなくちゃならぬのじゃないか。そういう点等をも考え——もちろん大河川改修は忘れてはいかぬ、いつ大きなはんらんがあるかわかりませんから、大河川改修ということについては、これをなおざりにするわけには参りませんが、幅を広げて、小河川あるいは潮どめの問題等まで、広く河川事業というものを総合的に進めていきたい、こういう考えであることをお答えしておきたいと思います。
  28. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 他の委員諸公もたくさん質疑をされると思いますので、私は、あと一点だけ、大臣のお考えがもしありましたならば伺っておきたいと思います。  今まで申し上げましたことは、要するに、治水は、日本の政治においては中心課題であるから、政治全般からいって、これに強力なる措置をとるべきだということに尽きます。ただ、それにしても、何といってもやはり財政には限度がありますから、そう口で言うようには参らないと思います。そこで、たとえば今度の二十二号台風水害状況を見ておりまして、これは、全国的にいわれることでありますけれども、ここをこうしておけば、こんな苦しみはなかったのだというところが相当に起っておる。これはいつの災害でも、当然だといえば当然でありますが、たとえばあなたの地元である、よく御存じの狩野川にいたしましても、あの狩野川は、日本の河川の流れからすると、逆の方に流れておるような格好になっておる。これは、地形がそうなっておるからでありますけれども、そこで、御承知のように、途中において放水路と申しますか、分流する計画が進められておる。これがあと十億前後あれば、それさえやれば、上流の山間部は別といたしまして、今度の災害を相当軽減することができたということは、だれしもわかっておる話なんです。しかもそのことは、事前にちゃんとわかっておる。川口のあの浸水状況でも、やはりあそこに今着手いたしております放流といいますか、放水路といいますか、それさえできておれば、あの川口の市街ほとんど全域を水浸しにすることはなくても済むということは、事前にわかっておる。しかも、それが一部工事に着工されておる。なぜそれができないかというと、問題は金が足りない、こういうことなんです。そこで、それならば、かりに狩野川の例の放流工事は、十億前後の金を足せばいいんだから——一カ所に十億の金をつぎ込んで、二年くらいの工事でやれるかというと、建設省の実際の仕事からいうと、そういうことは事実上できない相談になっておる。いかに建設大臣が、自分のところであるからこれをやってやろう、平年度の予算措置の中から、狩野川について二年間に十億の金をつぎ込むということは、行政当局としてできない相談であります。やってできないことはありませんけれども、そういうことをやれば、ほかの、全国至るところ同じような状態になっております河川状況を見ますと、ある面をほったらかしてここに集中するということになれば、同じことが他の部面にまた来年は起ってくるという状況でありますから、それはできません。しかも、今申し上げたように、くどいようでありますが、そういう工事を早くすれば、これほどの災害がなくて、国民にこれほどの塗炭の苦しみをさせないということは、現にわかっておる。そのわかっておることを実行しないところに政治の貧困がある、私は、こういうふうな考えを持っておる。そこで、こういう特別な措置が——私全部は知りませんけれども、建設省は、河川を全部ずっとながめておりますからわかっておるはずです。全部一挙にというわけにいきませんならば、たとえばこの狩野川状態、あるいは川口状態、ほかにもありますけれども、そういうところについては特別の措置を講ずる必要があると思う。これは、一般治水費を一千億というふうにふやせばできないことではありませんけれども、それは言うても間に合いませんから、そこで、こういうところには、たとえば今多目的ダムで、各種の資金を集めて早急に事業しようじゃないかという方法をとっております。こういう方法をとって、治水計画道路計画というものは、将来長い間の事業を近々にやろうというのでありますから、ここにいわゆる一般会計予算でなしに、特別なる予算を作って、別途の資金をここに吸収して、一年あるいは数年において、そういう効果のある事業を早く完成するという制度を作る必要がある。そうしなければ、いくら議論いたしましても、今申し上げたようなことはできなくなります。そういう点について考えを持っておられるかどうか。私は、この際こういう特別の問題については、特別なる資金方法を考えて、そうして国民の期待に沿う政治をいたしたいものだ、こういうふうに考えますが、大臣、何かお考えがありましたら伺いたいと思います。
  29. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまのお尋ねの点でありますが、今回の狩野川の大きな洪水の問題に関連いたしまして、あの放水路計画が非常におくれておった、あれがもし完成しておれば、少くも下流部の侵水の被害は、相当減少されておったであろうということでありますが、その点は、おっしゃる通りだと思います。それで、あの狩野川放水路の開さく工事がおくれておったことについても、私は、一つも弁解する考えはありません。これは、確かにおくれておった。そのおくれておったことは、予算が足らなかったんだ、こういうことも率直に認めたいと思います。従って、今度は、この狩野川放水路の開さくも、スピードを上げまして、そうして三年ないしおそくも五年ぐらいの間には完成するという措置を講じなくちゃならぬという決意を、私は持っておるのであります。ただしかし、この問題をやります場合には、たとえば狩野川と同じような条件にある、愛知県の豊川の問題があり、広島県の太田川の問題があります。同じような条件であります太田川、豊川を放置しておいて、狩野川だけやっていくというわけに参りません。従って、予算全体のワクを払大することがもちろん必要でありますが、一般会計のワクにもおのずから限度がございます。何か工夫をしまして、今御指摘のような新しい財源を求める手はないものかということで、今せっかく検討しておるところでございます。願わくば、何か新しい財源を求めて、そういう緊急を要する河川、ことにもうあすにでも洪水が出れば、はんらんをし、大被害を及ぼすだろうと予想されるような河川については、それぞれ手当をしていく工事を急速に進めていくという、そういう方法を講じなければならぬのではないかと考えております。なお、その具体的な問題については、もう少し検討して参りたいと思っております。
  30. 瀬戸山三男

    ○瀬戸山委員 考えておられるそうでありますが、これは、ぜひ実行したいものです。そうしなければ、こういう問題は解決しません。ですから、たとえば、今日建設省でも、多目的ダムということで特別会計を作っておりますが、農林省あたりでも、同じ土地改良をいたしますについても、特に重要なものについては、別途の特別会計を持って、その工事の促進をはかるようにいたしております。河川においても、特別な方法を講じないと、これは、幾ら議論してもなかなか解決はできない。将来長きにわたった治水を、この際一挙にやろうというんですから、そういう方法を講じないと——何も国家に損のいくわけはないのですから、どうかそういう特別会計というか、技術的なことはわかりませんが、そういう方法を講じて資金を吸収して、そうしてそういう特別な工事を早期完成する、こういう方途をぜひ一つ立案して、実現するようにしていただきたい。これをお願いして、私の質疑を終ることといたします。
  31. 堀川恭平

    堀川委員長 久保旧委員
  32. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、今度の伊豆の災害地から出身しております代議士であり、同時に被災者であり、しかも狩野川の問題につきましては、私どもは、父祖伝来の血をかけてやって参った者であります。従いまして、今度のようなことがありましたことにつきましては、私どもは非常に遺憾に思いますが、同時に、それに対しまして、遠藤さん初め当委員会の皆さんから、大へんなお骨折りをいただきましたことにつきまして、厚く御礼を申し上げると同時に、今後よろしくお願いをいたしたいと思うのであります。  一番私どもの考えておりました治山治水の根本問題については、今戸瀬山さんから、ほとんど私どもが考えておると同じようなことが述べられております。実は、いつもこういう議論が起りまして、そうして議論倒れになって、実行にならない。その結果、現地被災者、つまり農民やなんかはどうなるかというと、私どもは父祖伝来長く苦しんで参りましたが、そのときそのときの政権に、おれの方にくっつけばやってやろう、おれの方にくっつけばやってやろうといって、引っぱり回されました。私どもの方の経験からしまして、私のおやじなんかは、あるときには三千名が一致して政友会に入党し、あるときは三千名が一致して政友会を脱党して民政党に入党している。そしてさんざっぱら引きずり回されて、しかも、災害が起ったときは騒いでおりますが、その次あたりからは知らぬ顔、こういうことをやられて、歯ぎしりをかみながら苦しんでおるわけであります。こういうことは、今瀬戸山さんがおっしゃったように、私は、政治の基本要件だと思います。予算的に見ますれば、一定の計画を立てて、これは、何よりも優先をして予算措置を講ずべきだと思う。毎年々々政府が変り、あるいは政策の重点が変るそのたびに、予算や何かがあっちにふらりこっちにふらりということでは、完成を期せられるはずがありません。今問題になっておりまする堤防も、約四十年ぐらい、私どものおやじやおじいさんたちが運動をいたしまして、そして着工してから何年かかったかというと、二十七年かかった。そのときすでに放水路の問題が出ておったにもかかわらず、今日の状況であります。そして、あの堤防を作りました。そして、約二百四十町歩の良田をつぶしまして、今日なお安心ができないという状態であります。私は、これは決して保守だ、革新だと言って非難をするつもりはありません。私は、機会があれば岸さんにも申し上げるつもりでありますが、これは、政治の基本要件なんです。何といっても民主主義の基本要件は、多数決でもなければ、民意を尊重するでもなければ、議会政治でもありません。一番根本は民生の安定です。民生の安定を欠いた議会政治なんて意味はない。その民生の安定には、社会的な面と自然的な面があることは御承知の通り。その自然的な面で一番中心をなすのは治山治水です。これなくしては、とうてい私はできないと思う。ぜひそういう意味において、内閣全体としてもお考えを願いたい。特に当面の担当者でありまする遠藤建設大臣におかれましては、ぜひ一つ強い決意を持って、言葉が少し過ぎるかもしれませんけれども、場合によっては、それを軌道に乗せるために職を賭するくらいの大きな御覚悟をもって、来年から、一気には私はなかなかいくまいと思う、しかし、そういう強い心がまえをもって臨んでいただきたい。特に私は、今回犠牲になりました千有余名の犠牲者は、皆そのことを考えておったと思う。私自身があの災害のまん中に立って——ちょうど私どもの裏が、御承知の通り半町ばかりで狩野川です。夜中じゅう助けてくれ助けてくれという人の声が絶えないのであります。私どもは、断腸の思いでこれを聞きながら、しかも、そのときにしみじみ、私自身がひざの上まで水につかっておりながら感じたことは、政治のあり方が根本的に間違いだ、これは、ぜひ一つ改めなければいかぬということを痛感いたしたわけであります。これは、決して私は保守党だからどうだ、革新ならこうやるとか言って、みえ場でもって、お互いに国会で議論をするような上っつらの問題ではない。そういう上っつらに扱われてきたところに、治水の問題なり治山の問題が今日のような状況になってきた根本があると思う。どうか、一つそういう点については遠藤大臣も、狩野川の問題についてはよく御承知の通りでありますが、これは、ひとり狩野川だけでありません。全国の河川について全部同じだと思う。しかも、経済的な効率がどうだとかなんとかいいますけれども、私どもの推測によりますと、三百万以上の人々がこの災害によって始終実際に被害をこうむり、それ以上に多くの人が、ほとんど今年はやられはせぬか、来年はやられはせぬか、こういう気持で不安におののいている。こういう上に咲いたところの議会政治とか多数決とかいうことは、私はばか花だと思う。ぜひこの議論を十分体されて、今瀬戸山さんのおっしゃったような強い線でもって御対処をいただきたい。これを、まず第一にお願いするわけであります。  それから治水の根本策の問題でありますが、二、三私の気のついた点を御質問申し上げたいと思う。一つは、どうも今度の災害等を見ますると、いわゆる治山関係の方に対する考え方、やり方が非常に不十分ではないか。今度の狩野川災害のごときも、山でもってくずれたところが、全部で二千カ所近くございます。その中で、大きなところが約九百カ所、こういう状態であります。農林省全体としましても、例の五カ年計画の中でも、進渉率はわずずか一一%と思います。今度のはまずああいう山がくずれて、そうして土砂と木材が一緒になって、御承知の通り河川へどんどん出てきて、小河川をとっ払って、沿岸のたんぼや家やなんかを全部流して、橋にぶつかってそれをこわして、さらに続いて次々にやってきたというのが実情であります。  私は、今までの建設省のやり方は、大体において大河川中心主義だと思う。これについては問題がたくさんございますが、やはり川を治めるには山を治めなければだめであります。今度の経験でつくづくそのことを感ずるのであります。どうかそういう意味で、私は治山計画について、もう少し建設省としては徹底した考えをもって予算もよけい充てて、計画的に実行しなければだめではないかということを感ずるわけであります。これについては、もちろん建設省だけではございません。農林省関係の仕事もたくさんございます。ところがこの両者の間にどの程度の計画的な連携がとれているかというと、あまりとれておらない。農林省の方もあまり積極的ではありません。保安林の設置については、御承知の通り多少進捗しておりますが、地すべり、砂防その他いろいろの問題については、農林省の方としてもあまり熱心にやっておらない。建設省自体についても、この方はともすると忘れがちであります。この点も、この際もう一度根本的に考え直していただいて、そうして農林省のやる治山計画との連関において、建設省のおやりになる治山計画というものをもっと徹底して、しかも、計画的にやっていただくことがぜひ必要ではないかというふうに考えるわけですが、これらにつきまして、建設大臣の方において何かお考えがあるのか、あるいは具体的に今検討を始めているのか、ありますればお伺いをいたしたいと思うのであります。     〔委員長退席、二階堂委員長代理着席〕
  33. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 まず冒頭に、久保田委員罹災者の一人になっておられることに対して、お見舞を申し上げたいと思います。  ただいまの、治水事業全体についての心がまえの根本についての最初のお尋ねでありますが、全く同感であります。民主主義とかなんとかいいましても、民生の安定を得られない政治というものは、全くゼロであります。その考え方については、全く同感でありますので、そういう考え方を徹底して進めたいと思います。  それから治山治水の問題につきましてお尋ねがあったと思いますが、実は、はっきりと申し上げてしまいますと、あの川の上流部の砂防工事については、今まで六億円程度の投資はしてございます。しかし、計画通りやって参りますと、なお四億円程度の事業をやらなければならなかったはずでございますけれども、これが実はおくれておった。私は、はっきりそれを認めていきたいと思うのであります。しかし、問題は、御指摘のように、私もあの川の上流部を、災害の翌日ヘリコプターでずっと見て歩いたのでありますけれども、問題は山腹崩壊、至るところ崩壊をしておる。その土石の流出によって、家の流れたもの、あるいは材木の流出等によって、非常に大きな災害をだんだん下流部に押し流していった、こういうことが、実情であります。  そこで、今回は、災害の経験にも徴しまして、どうしても砂防を徹底的にやらなければならない。そこで、今建設省の係官を奥の方へだんだん入らしておるのでありますが、砂防工事の計画を立てなければなりません。しかし、砂防工事は、お話のように、建設省関係のその角度からの砂防だけではなく、農林省の山地砂防の問題、治水関係の造林の問題と関連をさしていかなければ、これは不徹底に終ります。それで、今まで両省が努めて連絡をとるという考え方でいっておったのでありますけれども、あるいは連絡にあまり緊密な点が欠けておったのではないかという懸念もいたしますが、しかし今後は、それは許されないのであります。今後は、私は今事務当局に申しまして、農林省の山地砂防をやる係官と建設省の砂防ダムの工事をやる係官とが一緒になって行きまして、おれの方から見た治水事業はこういうふうにやったらいいというふうに、こっちの意見も言い、それから農林省の方の山を治めるという見地から見た意見をも聞いて、一体になっていかなければいけないのじゃないかと言うて、農林大臣とも話しまして、両省の係官を一体にして、あそこにやることにいたしました。今その話し合いを事務的に進めております。これは、私は口だけで言うのではなくして、事実それをやらなければだめだと思いますので、それを徹底的に励行していきたい、こういう考えであります。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点は、ぜひ一つそんなふうにお願いしたいと思います。特にほかのところでもそうだろうと思いますけれども、今度の災害実情を見ますと、国有林については、全部でもって大崩壊、山くずれが大体九百、そのうちで国有林が七十から八十、あとは全部民有林です。そういう状態から見ても、その方に相当に政府の方が直接におやりになる面、あるいは農林省がやる面、あるいは民間にやらせる面、こういう点に分けて、民間にも小規模のものはある程度できるわけですから、これについての補助制度なり何なりというものを、あるいは民間の町村なり森林組合なり、あるいは県なりにやらせる面についてももう一度御検討をいただいて、基本線については、建設省と農林省がほとんど不離一体の関係で総合的に計画を立て、その実施についてもやられる、ばらばらになっては意味がありません。その線を中心にして、これを助成していくといいますか、補完をしていく意味において、地方の県なり町村なり森林組合なり、各人のやる民間の治山事業に対しましても、格別にこの際私は、全国的な視野からも考え直していくということが必要だろうと思います。ぜひこの点は、御研究をいただくと同時に、実行していただきたい。少しでも一歩前進をするようにお運びいただきたいということを申し上げておきます。  それから第二の点は、さっきこれも瀬戸山さんからお話がありましたけれども、この数年来、特に今度の経験等を見まして、上流の支川ないしは支流、これが今のような山くずれないしはそういうものと結びついてほとんどやられている、その被害下流にきておるというのが、今度の実体であります。そこで、中小河川について力を入れるというのはもちろんでありますけれども、その具体策として、私は今の本法河川といいますか、あるいは直轄河川といいますか、そういうものは、たとえば狩野川に例をとってみれば、一番おもな上流狩野川なり、あるいは大見川の八幡、あるいはその近郊までむしろ建設省の直轄に移して徹底した改修をやりませんと、下流で、本流の面を幾らやってもだめではないかというふうに考えるわけです。この上流の直轄でない面と、建設省が補助をして県でやっている何とか河川、それと指定のない普通河川、これは、結局金がないから地方公共団体がやらないということです。やらなければどうにもこれは進めようがないわけなんです。いつもこの点で苦しんでいるわけでありまして、ぜひ砂防とあわせて、今のように河川の管理の態勢をこの際改める必要があるのではないか。それがないと、いかに災害復旧の計画はある程度いきましても、そのあとの維持管理なり改修というものが徹底しませんければ、また少し大きな雨でも来れば、まず上流がくずれて下流も一緒にやられてしまう。こういうことになりますので、直轄河川とその上の何と言いますか、専門家でないものですからちょっと忘れましたが、県で管理をして本省が補助を出している河、それから普通河川、この関係を、やはり国の直轄部面をずっとふやす。それから県なり何なりもう少し普通河川の分なりに力を入れるような法体制なり、同時にこれに対す予算措置、あるいは技術的な措置等をぜひこの際とる必要があるのではないかと考えますが、この点について大臣のお考え、あるいは今現に進んでいる計画等がありますれば、お伺いをいたしたいと思います。
  35. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 直轄河川と補助河川の問題についてお尋ねでありますが、あるいは御承知のように、修善寺橋までが直轄河川に指定さております。しかし今回の災害状況を見ておりますと、お話しのように、あそこまで直営事業でやって参りましても、問題は解決しておらないのであります。従って、当然直轄の部分を拡大しなければならぬと思っております。ただし直轄河川として入れる必要のある区域が、あるいは八幡の程度まで必要であるかどうかということについては、技術的な検討をしてみなければならぬのであります。本流の方では、上狩野の辺までやるのがいいのであるか、いずれにしても技術的な検討をする必要があろうということで、私はどの程度まで、どこまで直轄河川を拡大する必要があるかどうかを今検討さしております。今河川調査に行っている人たちは、その点をもあわせて見て来ることになっております。いずれにしても、拡大をしていこうという考えを持っておることをお答えしておきます。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 狩野川に非常に時間をとられまして、同僚議員の皆さんには御迷惑かと思いますが、もう少し言わしていただきたいと思います。  さっきも大臣からお話がありまして御承知の通り、大体狩野川は、三百から三百五十の雨量を標準にして下流が成り立っているのであります。今度のように五百というようなことは、私どもが承知をしているのでも、五十年の間で今度で三回目ではないかと思うのであります。そういうことですから、異例には違いありませんが、しかし治水工事なり改修工事が進みますれば、その異例の場合によってこうむる災害は、あれのない場合に比べまして非常に少いのであります。私ども小さいときから、水は何回となく食ってきております。大正三年から私ははっきり覚えておりますが、あの堤防ができなかった場合は、毎年水は何回かつきました。しかしながら、今度のような大きな災害を受けたことはありません。水そのものは相当高くなっても、災害は少なかった。私どもが覚えているのでは、大正九年かと思いますが、広瀬川がはんらんして、四十四、五名が山くずれでやられたのが、これが最近における狩野川の最高の被害だったと思います。それに比べますと、今度は問題にならないほど規模が深刻であります。こういう事実にかんがみまして、私は、根本的にやることは非常に困難かもしれませんが、まず最高雨量なり最大流量なりというものからもう一度検討し直すことが必要ではないかということで、特に私は、この際それに関連してお考え願いたいのは、どこの川でも同じだと思いますが、今度堤防の切れたところを見ますと、従来いわゆる堤防のウィーク・ポイントとしまして、故老がここは危ない、ここは危ないと言ったところ、そして私どもが、山本さんもおいでになりますけれども、今まで建設省の現地当局やその他に、あそこを何とかしてくれということを申し上げておったにかかわらず、これは、当時の現場当局としては、予算がないからということでやむを得なかった事情もあろうと思いますが、ほとんどこれに対しては改修を加えておらない、そのところが今度はほとんど全部切れております。私が承知しております限りでは、あの狩野川のウィーク・ポイントのうち切れなかったのは、二点だけであります。あとの七点は全部切れております。こういう実情であります。ですから、狩野川だけではございません、各河川について、こういう点をぜひもう一度根本的に再検討していただいて、特に今度切れたようなウィーク・ポイントについては、金がかかりましょうけれども、特別交付で、特別にこれを強化していただくことがぜひ必要ではないか。それでないと、この次にあれに匹敵するような水が出れば、また必ず切れます。これは必ず切れると言って差しつかえない。その場合に起ります災害というものは、おそらく今度よりまたひどくなるのではないかということが考えられるわけであります。ですから、この点もあわせまして一つ御検討いただきたい。  それからもう一つは、どこの河川についてもそうだと思いますが、狩野川についても、下流の樋門がほとんどだめであります。下流の樋門は制式が古いので、機械が弱っておるので、動きがとれません。しかも樋門が全体として足りません。ですから、水がどうしても引かない、決壊しなければ引かないという状態です。こういう状態では、下流のああいういいところが、あれを作ったためにほとんど意味をなさぬということになります。ですから、下流樋門の改造なり、それから増設なり、こういう点についても一つ十分に考えて御実行いただきたい。その際特に私はお願いしておきますのは、近来の科学的な観点からいいますと、故老の言うことは大して意味がないように思われます。近代科学でもって分析した方が正しい結論のように思われますけれども、しかしその近代科学の結論なるものが、予算その他によってゆがめられてきておるのが今日の実情です。従って、そういうものについては、故老の言うこと等も——私は、今度はしみじみ感じました、古老が前から、ここは今度危ないよと言っておったところが全部切れております。そういう実情ですから、そういう点も、十分技術当局等を動員される場合にお考えをいただきまして、ぜひそういう点の基本的な計画なり工法なりというものの再検討をお願いしたい。法制論については今お話がありました。ぜひ一つそういうお考えで、今後三年なり五年なりの間に、特別の措置を通じまして完成をしていただきたい、こういうように考えるわけですが、これらについてどんなようにお考えになりますか。
  37. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 今後の改修の方針の問題でありますが、技術官がそれぞれ調査に参りまして、その意見を私は聞いておったのでありますが、堤防の高さも、五百ミリ程度の雨を予想して参りますと、現在の高さよりも一メーターないし一・五メーターかさ上げをしなければならない、こういうことが技術的に出てきておるようでありますが、それを目標にやっていこうということが一つ。  第二は、あの河川決壊個所を見て参りますと、大仁橋のあの辺あたりは、非常にのど首のようになっておって、狭いところである。従って、あの地域だけではありませんが、河川の幅をもう少し広げなければならぬところがある。それも一つやらなければいかぬ。これが第二点であります。  第三点としましては、今建設省の中部地建の技術者を総動員して、仮の堤防を作っております。これは、ある程度むだになると思います。むだになりますけれども、全然野っ原のようになって堤防がないところでは非常に不安でありますし、ちょっとした水が出ても、すぐまたつかってしまいますから、むだになってもいいから一つやれということで、仮の堤防を今作らしております。これは、私は国会で皆様の御了承を得なければならぬと思うのでありますが、多少むだになる点が出て参りますけれども、あの罹災者の民心の安定をはかる上からいって、どうしても必要でありますから、私は、私の責任においてやろうということでやらしております。  樋門の問題については、御指摘のように、確かに樋門が用をなさなかったものがたくさんあります。でありますから、こういう問題についても、今後は再検討をして参りたいと思います。そういうふうに全体をながめて、故老の言うもっともなところはすんなり聞いて、すんなりした気持でもってあれをやっていきたい。さらに私は、つけ加えておきたいのでありますが、あの災害復旧の仕事をやって参りますと、普通の場合には、決壊個所をもと通りに回復するという考え方が災害復旧でありますけれども、もと通りに回復しただけではこれは済まないのでありまして、決壊しないところも同時にやっていかなければならない。これは、改良事業になって参ります。改良事業災害復旧とをあわせて進めていくという考え方を、あの川については持たなければならない、そういう考えで進めて参りますことをお答えしておきます。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点、ぜひそういうふうにやっていただきたい。それに連関いたしまして、今大臣からもお話がありましたのは、今後必ず出てくる問題があるので、これも十分一つお考えいただきたい。というのは、あの上流部にいたしましても、本川部分、特に修善寺橋以降の方をやるにしましても、相当私は耕地がつぶれると思います。つぶれなければ、あそこのあれはできないわけです。ところが、あれから上流部については、御承知の通り耕地が非常に少いところであります。少いところでありますから、あの耕地は決して経済効果でもって、一反歩作れば幾らとれる、そしてそれを供出すれば幾らになるという勘定ではないのであります。あれは、もうあの辺の農民の血になり肉になっておる生活の一部分であります。これを、こうやれば交付が安くあがるようになるというのが、現地に来る場合の皆さん方お役人さんの考えの中心である。しかし、河川改修をするために、必要な川幅なり何なりは絶対にとらなければならない。ですから、私は、その点については十分政府の方でお考えをいただきたい。これに対しましての今までのやり方は、単に金をまけばいいということです。それも規定がありまして、できるだけ金を安くやればよろしい、こういう考えで現地に臨まれますが、これでは治水問題は解決しません。今の放水路の問題にいたしましても、私どもが一番苦労したのは、その問題であります。政府の方は、一応補償料を出すだけだ。それでは、たとえば今の連中にしましても承知しない。そこで苦労しまして、政府ではできませんから、土地の交換をしたり、土地改良をしたり、あらゆる苦労をして、現地のつぶれ地の回復処理をいたしたわけであります。こういう点も、今後の河川改修については至るところで出て参ります。これは、建設省の直接の所管ではございませんので、農林大臣にも申し上げますが、こういう点については、遠藤さんよく御承知のはずであります。ですから、こういう点も、今までの建設省のやり方一点ばりで、なるべく安く、早く、めんどうがなく上ればいいのだという式でなく、やはりその川に依存して生きております住民の立場というものを十分一つお考えになってお進めいただきたい。従って、具体的なものとしては、あの辺ではなかなかかえ地の獲得は困難だと思います。従って、結局あの辺にあります畑地の未開墾地の適地が相当ありますから、そういうところを新しく開墾してやってやる、あるいは最近の牧畜の関係からいって、牧草地の開発をやるとか、そういう措置をあわせてやっていただくということが一つ。この点を、どんなふうにお考えになっておるかということを伺いたい。  もう一つ、これは、どこの川でも山間部はそうだと思います。狩野川に限らないと思いますが、農地の復旧計画と河川改修との関係をもっと密接にやっていただきたいということであります。今後おそらく大仁から上の河川改修をやる場合においては、農地の回復ということも当然ひっかかってくるわけです。ところが、河川改修河川改修で勝手にやってしまう、農地は農地の方でやってしまうということになりますと、水の取り入れ口、はけ口、そういう問題からして、非常に困った問題が続出するわけであります。もちろん取水口の両側の例の二十五メートルの問題もあります。こういう問題もありますけれども、それらを含めて、農地改良と農地の回復なり何なりと河川改修との問題を、これまた農林省と御連絡の上で、一つ住民のこうしろという意図を、むしろそういう面から促進するようなやり方をやっていただきたいということが一つ。  それから特にもう一つ、これは大局から見れば小さな問題でしょうけれども、これまた建設省と農林省でお考えをいただきたいのは、たとえばあの熊坂部落、あるいはあそこにありまする白山堂部落、沖ノ原部落、ああいう部落を考えましたときに、建設省が相当徹底をした改修工事をやっても、またこれは何十年か先には、再び今度のような災害をこうむる形勢は多分にある。これは、決して建設省の仕事をけなしたり、あるいはけちをつけるという意味ではありません。そういう気持はありませんが、ぜひこの際は、住民の移転を含めて——必ずしも移転と限りませんけれども、移転も含めて、ああいう全滅した部落の部落計画というものを、建設省の方の指導と、そしてある程度経費を持っていただきまして、立てさして、できるだけああいう危険な地域に、ああいう不完全な部落を作らないような措置をこの際とられることがぜひ必要ではないか。大災害の場合においては、おそらくこの問題が必要であろう。これも含めた改修計画というものを、ぜひ一つ立てて実行していただきたい。これは、当面私どもがぶつかっておりまするのは狩野川だけでありますけれども、おそらく全国の今後の問題としても、私は当然出てくる問題だろうというふうに考えるわけであります。この点についてお考えがありましたら、一つぜひ聞かせていただきたい。
  39. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまの御質問の中に、要点が三つあると私は思うのであります。  その第一の点の、工事をやって参ります場合の補償その他の問題、農民の生活等のことを考えてやっていくということについては、われわれの方では、できるだけそういうふうにしたいと思います。ただ私は、しょっちゅう言っておるのでありますけれども、災害にしろ、道路にしろ、道路をこっちへ持ってこい、災害復旧をやれという声が非常に高くて、いよいよさあやろうということになりますと、道路なんかでは、敷地を通さないとかなんとかということでえらく力んで、なかなか工事が進まない。狩野川改修の問題についても、いよいよ改修計画がきまって、予算も確定をして、始めますと、いろいろ問題が出てくると思うのであります。これは、私の方から久保田委員にもお願いしておきたいのですが、ぜひそういうときには、われわれの方でもできるだけのことをやっていきますから、まとめる考えで、これは、一つ政党政派を超越していこうじゃないか、そういうことで一つお願いしたいと思います。  それから第二は、農地改良の問題との関連でありますが、お話の点は、道路の場合も河川改修の場合も、しょっちゅう問題になっております。先般も農林大臣との間に話し合いをしておったのでありますが、建設省の方の予算も、もう少しそういう方面に行き届いた手当をしていくような対策を立てていきたいということで、話し合っております。しかし、これは具体的な問題になりますので、具体的な問題に臨んで、農林省と密接な連絡をとってやっていこうという話をしておるわけであります。事務的には、いろんな原則論の話し合いを今さしております。私の方の事務次官と農林省の事務次官との間に、原則論の話し合いをしまして、道路河川等の工事をやっていく場合に、それから派生してくる土地改良だとか、その他のいろんな公共施設を横切っていくとか、あるいは破壊をしていくといったような場合の対策の問題について、十分あたたかい気持でやっていくようにしたい、こう思っておるわけであります。  第三の部落計画の問題でありますが、これは、私は考え方としては、全く同感であります。同感でありますが、これは、建設省限りでやっていける問題でもございませんし、内閣へもこの問題を提示しまして、関係各省協力して、こういう問題についての、将来安心のできるような町作り村作りをやっていく考えを、あわせて盛っていくようにしたいと思います。その程度以上に今申し上げることができないわけであります。御了承願います。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 もう一点、最後に基本的な問題を一つお伺いしておきたいと思います。今度の災害復旧で、国庫負担法の四条の規定でいきますと、おそらく県の段階でもあるいは町村の段階でも、私は、地方財政というものが持たぬと思います。大体において。特に負担は、県のごときも、これは相当な負担になって、とてもやり切れないという問題があります。従って、今度のようなああいう災害があります場合には、当然これは、何らかの別個の処置をとらなければならない。われわれが普通に考えられますのは、例の二十八年災のときの特別措置ですね。法律適用ということは、当然そういう処置をしなければならぬというふうに私は考えます。これは非常にむずかしい。これは政府側が、二十八年災とほぼ同様な特別措置法を今度お考えになっておるのかどうか。私どもは、どうしてもそれが必要だと思う。単にこれは、河川道路橋梁だけの問題でなく、全体について非常に連関事項が多うございますので、それらをうまく片づけていくには、どうしてもそうしなければいかぬと考えておりますが、建設省の連関面においても、そういうふうなお考えを持っておるのか、持っておらないのか。また持っておらないとすれば、川の改修についてはどうするか、道路改修についてはどうするか、橋の改修についてはどうする、あるいはその他の公共施設の復興についてはこれをどうする、そうすれば、地方団体の負担が軽くなる、こういう点で、何らかの具体策が、もうすでにぽつぽつ大臣のお手元ではできておることと思うのであります。この点について、一つ率直にお答えをいただきたい、こう思うわけです。
  41. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 例の特別措置法の問題について、実は私は、こういう考え方を持っておったのであります。それは、狩野川の今回の二十二号台風に限って特別措置法を作るかどうかという点を、まず検討する。そうしますと、昭和二十八年の災害のときには五千五百億円も損害がありましたけれども、二十九年の災害は、ほぼ今回の二十二号台風と同じくらいであります。そこで形式論としましては、二十九年の災害のときに特別立法を作らないで、しかも公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法の改正によりまして、補助率を上げて参りますし、連年災害の場合にはどうするといったような工合に、非常に積み上げていくような方でもって、地元の町村なり府県なりの財政を援助するような仕組みができておりましたので、その仕組みによって二十九年災はやっていったわけです。従って、一応形式的には、今回の災害についても、二十九年災と同じような扱いをすることが公平だろう、こういう考え方を持っておったのでありますが現地調査の山口国務大臣が参りまして、その結果どうすることが一番正しいかというその報告を聞いて、最終的な決定をすることが適当だろう、こういうふうに考えてきたのであります。山口国務大臣から一応の話は伺いました。伺いましたが、なおこの点につきましては十分検討いたしまして、そして大蔵当局とも話し、関係各省とも話をしてみまして、政府の最終的な方針をきめたいと思っております。かりにもし二十二号台風について特例法を新たに作らないということになるとすれば、お話のように、河川改修についてはこうする、あるいは道路についてはこうするという具体的な案を作って、災害復旧を進めるべきであるし、要は地元の公共団体の財政にゆがみを与えないということでありますから、その実際の必要にこたえ得るやいなやという具体的問題を検討した上で、この特例法の問題は結論を出していきたい、こういう考えでおることを率直にお答えしておきます。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 当面の問題としまして、その点が明らかになりませんと、実は一番大きな問題になろうと思います。現地は、ご承知の通りでありまして、ほとんど各町村とも機能停止であり、喪失であります。その上にもってきて、おそらく今後は、税金はとれないと思う。それにまた、建設省関係だけでありません。いろいろの問題がかかってきます、とても税金はとれぬ、そうしてやる仕事はよけいになるということで、現地はどうにもならぬ。私も、御承知の通り村長をやっておりまして、あの当時、今に比べれば問題でないような小さなアイオン台風でございましたけれども、それらの跡始末をしてみましても、けっこう負担がよけいになって苦しくなるわけです。ですから、この点は、私どもといたしましては、ぜひ一つこの際政府としては特別措置法で、大体二十八年災を基準としたようなものを作って、そして、その地域指定なり何なりというものは相当局限されてもいいのではないか、しかし、ひどいところはひどいところなりに見てやるということをしないことには、これは、どうにもいかぬのじゃないかと思います。党の方としてはどういうふうな結論になるか、私どもの方でその研究を進めておりますが、しかし、要は片方において早く実効が上るということが必要なことであります。だから政府の方で、私どもが満足のできるような、特別措置法という形はとらないでも、現実にこうやるならば負担がよけいにならぬということが明らかになって参りますれば、私どもは、必ずしもそれに同調するにやぶさかなものではないのでありますから、建設大臣の御所管が一番多いわけですし、ぜひこの点については、一つ真剣に具体的に御考慮の上、適当な機会に御発表いただきたい、こう思うのであります。  それからもう一点は、住宅復興の問題であります。これは、さっきも瀬戸山さんからお話がありましたが、今度相当大きく住宅復興資金なり何なりというものを出していただかなければならぬ。応急のものについては、先ほどお話がありました。何とかその辺で私どもはおさまるのじゃないかというふうに考えております。ただ問題は、百姓にしましても中小企業者にしましても、五坪のバラックでは商売になりません。どうしてもある程度最低のものでも作らなければならぬということになる。その場合に、今の住宅金融公庫は、金額については法律上の制限はありません。ありませんが、大体において普通の場合は、二十五万円ということで押えておるようであります。これでは足りません。私は、農家があまり借金することを好まないわけですが、今度はどんなに考えましても、いろいろのことを考えまして、大ざっぱに勘定してみまして、七十万円借金しなければ流された連中は立ち上れない。たとえば五分五厘で勘定いたしましても、約四万円利子がかかるわけです。それに元本までということはなかなかできないわけです。そんなことをすれば、復興して数年たって首をくくる以外にありません。だから、できるだけ借金を少くして、そうして利子を安くしてもらう、そうして長期にしてやるということでなければ立ち上りはできません。  そこで、ぜひお伺いしたいのは、今の貸し出しの限度を、行政措置でできるものならば、農民の場合ならば大体三十万円見当、商工業者の場合は大体五十万円くらいにふやしていただくことが必要であり、それから利子につきましては、今五分五厘でありますが、農民の場合、あるいは中小商工業者の場合は、三分五厘くらいの特例を設けていただいて、これをもってやっていただくということ、それから償還期間につきましては、今三年据置の十五年ですか、そういうことになっておると思いますが、これを大体三年据置の二十年くらいの年賦償還、こういうことにして、半壊はその半分でけっこうでしょう、金額といたしましてはその程度の資金ワクを設けて、手続をどこでやらせるかは別といたしまして、保証条件等も相当緩和して簡便に早く出してやるということをぜひこの際お運びをいただきたいと思うのですが、この点について、どんなふうにお考えですか。
  43. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 住宅の問題についてのお尋ねでありますが、さしあたり緊急の四割程度の公営災害住宅の問題に今追われておりまして、あとの農家の住宅問題等については、まだ詳しい報告が来ておりません。そこで、私あまりでたらめなことを言うわけにも参りませんので、住宅局長にこの問題の研究をさせておったのですが、住宅局長から詳しいことはお答えするようにしたいと思います。
  44. 鬼丸勝之

    ○鬼丸説明員 大臣から御答弁がございましたように、災害公営住宅は、三割までが原則になっておりますけれども、それ以上要望に応じてできるだけ建設して参るように取り運びたいと存じております。これは、坪数は一戸当り約十坪のものでございます。そのほかに、御承知の住宅金融公庫の融資による災害復興住宅、これは、新築と補修と両方ございますが、これを相当希望に応じまして、できるだけすみやかに供給して参りたい。これは、やはり坪数の点が相当押えられております。二十坪というふうに限定されておりますので、農家あるいは商店等におきましては窮屈だと思います。しかしながら、作業場とか納屋とか、あるいは店舗等の業務をいたす部分につきましては、この坪数の外において考えるような運用をはかって参りたいと存じております。  それからなお住宅金融公庫におきまして、一般の貸付の分を災害の府県に特別にワクを設けて、これは、全体として今五百戸分くらい用意しておりますが、この中から供給して参りたい。この分につきましては、お話しのように、貸付条件は、据置期間を三年認めるという以外におきましては、一般の貸付条件と同様になっておりますので、いろいろ罹災者の方の御希望に沿いがたい点がございますが、金利あるいは償還年限等につきましては、法律事項になっております点もありますので、今後の問題として十分検討させていただきたいと思います。資金の点は、現在の条件のもとにおきましては、大体五百戸で十分御希望に沿い得るんじゃないかと考えておる次第であります。
  45. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点について、私どもも的確に確かめておりませんが、さっき知事からの話がありました通り、私ども見て参りましても、半壊という扱いになっておるのが、実際入ってみると、柱が折れておるのが多いわけであります。私の家もそうです。柱が数本折れてるんです。全部かえないまでも、ひどいところは、ほとんどかえなければならないという状態です。そういう状態を考えますと、大体千戸程度が全壊ないしは流失をした、半壊まで含めて千五百戸程度だ、だから、応急住宅は大体において七百戸やって、あと五百戸やったらいいだろうということですが、私は、そういう計算ではいかないと思います。ですから、だれも実は借金をしたい者はありません。できれば借金をしたくないのが人情であります。あとでやはり返さなければなりません。特に貸付ということになりますと、おそらくこれは、町村長なり何なりの保証なり、あるいは証明なりというものが要ることになりますから、そういう点で、ある意味ではきゅうくつな面があります。ぜひそういう点は、今の四割とか三割とかいうことにこだわらずに、この際はぜひ一つワクとしてお考えをいただきたい。私どもも、決してよけい借りるという指導もいたしませんし、できるだけ私どもは、借金をさせないように指導していきたいと思っております。ただ金利の点、それから償還期間の点です。償還時間の点は、わずか二年くらいの差ですから、場合によればこれは話し合いでもいいかと思いますが、ほかにもいろいろ借金をしなければならぬわけです。住宅の方は住宅だけのことをお考えになる。しかし、今度の災害の場合は、ほとんど生活の根拠を失なったわけですから、ほとんど借金をしなければやれないわけです。農民にしますと、住宅の問題も考えなければならぬし、営農の問題、生活の問題も考えなければならない。ところが農協の方から、預金も大してないが、出してしまえば、農協がつぶれるという状況であります。こういう深刻な事態になっておりますので、一つこの点についても、ぜひ今度のような事態に応じて、ただ住宅は住宅という視角だけからごらんにならずに、受けるもの全体の生活という立場、これが立っていくというふうな立場から再検討願って金利の問題については、ぜひ三分五厘程度に引き下げていただきたい。必要があれば、この利子補給は政府がするというような措置をあらかじめとっていただきたい、これをぜひ御検討をお願いしたいと思います。  最後に、もう一点だけ私はお願いをしておきますが、御承知の通り現地は、ほとんど町村等は大体において調査能力も企画能力も喪失しておるのが実情であります。従って、今各被害調査にいたしましても何にしましても、中央なり何なりから行って、正直な話をいいますと、県の連中が行って、上から手荒っぽくぽんぽんやっておるわけです。これは、さっきもお話しのように、非常に緊急を要するという点では、ぜひそうしなければならぬわけでありまして、ぜひこれは続けていただきたいが、今のような緊急事態がある程度解消されてきますと、そこにいろいろの問題がまた出てくる可能性が非常に多いわけであります。ですから、今の段階では手荒くやって、早く補正予算を作っていただくことをお願いしたいし、ぜひこれを進めていただきたいが、同時に、ほんとうに最後実施予算なり何なりの場合には、さらに詳しい具体的な調査をされた上で、そうしてこれに対する実施計画というものをほんとうに立てられるという親切さがないと、今の事情には合いません。どうかこの点は、一つ大臣におかれましても、事情が事情でございます、片方において、早急に予算化してくれ、片方において、実施の面については丁寧にやってくれというのは無理なお願いですが、ぜひこの点についても、格別の御考慮をいただきたいということをお願いして終ることにいたします。
  46. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまの最後の御意見でありますが、おっしゃる通りの考え方で進めておりますから、御了承願います。
  47. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 佐藤虎次郎君。
  48. 佐藤虎次郎

    佐藤(虎)委員 私は、時間もありませんので、大臣に、特別立法は作るか作らないかという久保田議員からの御質問があって、御答弁がありましたが、これをいささか補足し、道路局長河川局長とにあわせて御質問し、一問一答の質問はやめたいと思います。  なぜ特別立法を作らなければならないかということについては私は、土木災害につきましては起債で認可になる、この起債に対しては、九五%の地方交付金によっていささかでも補われるのでありますが、農林、漁業、中小企業災害に対しましては、その恩典がないように見受けておりますために、どうしてもこの特別立法が必要ではないか。そこで、ただいま久保田議員の御要望もございましたごとく、償還期間を延期してくれ、あるいは利子補給も何とかしてくれというようなことも、あわせて罹災者の大きな声だと思います。ちょうど大臣は、あの災害の起りましたあくる日に直ちに参られまして、交通遮断がされておるためにヘリコプターか何かで行かれた。私は、ちょうど三島に行く、大臣は飛行機で飛び出す、これはいかぬということで、長岡に参りまして、以後久保田議員とも常に会っておりましたが、四日間にわたって奥地までジープで行ったり来たりして参ったのですが、その要望です。そこで、どうしてもこの際特別立法を作らないことには、罹災者が安心しないじゃないかということでありますから、特にこの点にお力を入れて、閣議において実施されるように要望いたします。  そこで、道路局長に、一応要望であり意見を申し述べたいと思いますが、なぜこのための災害が起きたか。狩野川災害の根源をなしたのは、治山治水にも因がありますが、一つは、あの天城山脈から大木が根こそぎ流れてき、あるいは林野庁の天城の材木が何万石と押し流されて参りました。そこに、当時はその計画であったからよろしかったが、修善寺橋という永久橋があります。この永久橋に全部つかえまして、ダムになってしまった。この永久橋は、持ちこたえることができ得ず、崩壊しなければならぬ。その永久橋修善寺橋が崩壊するまでには、危険水位を突破するだけの水量であったのです。それに修善寺橋が崩壊したために、一度に流れてきた水が、危険水位以上に約三メートルの高さできた。これが押し寄せてきたために、修善寺のあの中学校、あの堤防を押し流し、そうして大仁橋を流し、熊坂を一なめにしていく、あるいは大仁の中島なり、よって来たったこの惰力で、長岡の堤防が切れ、あるいは江間の堤防が切れたという一つの原因となった。ちょうど今日の電源開発のダムが、あれだけの水圧で持ちこたえられなくて流れてきたのと同じような結果が、このたびのこの大災害をもたらしたのであります。これは、私は今後橋梁は、道路計画による橋梁の場合には、今までのような橋げたであってはいけない、ああいうスラブであってはいけない、少くともアーチ式のものにして、そういう立木が流れてきても、そこにつかえないような橋梁計画を立てなければならぬと思うが、これに対して、そういうお考えがありますかどうかということです。  いま一つ簡単に尋ねます。御承知の三島から修善寺に通ずる二級国道でありますが、蛇ケ橋より長崎、ちょうどここに久保田議員もおられますが、久保田議員の原木あるいは韮山、いわゆる長岡の駅に通ずるところが非常に道路が狭いのです。今までは、土地の問題がどうだこうだという理屈もありまして、なかなか拡幅ができなかった。しかしながら、このたびまた行ってみますと、異常の惨害であります。見る影もない災害のありさまで、泥だらけで、何としてこれを除去することができるかというような哀れなる姿であります。これは、三十四年度にはいずれにいたしましても、この道路は拡幅しなければならない道路であります。そこで私は、村長初め久保田議員とも打ち合せまして、この際土地の価格が安い高いというよりも、何とか政府にも余分に金を出していただいて、今これを払幅してしまおうじゃないか。そこで、来年度の予算をことしいただければ、いささかでも移転しなければならないような住宅の資金にも、一応繰り入れられることになるではないかということを、村長、村議会議員、久保田議員とも話し合ったところが非常に喜ばれまして、ぜひそのようにしていただきたい、こういうのでありますから、これは一つ実施していただいて、災い転じて福となるように、私どもも直ちにはせ参じ、久保田議員とともに御協力申し上げたいと思いますから、地元の要望にこたえてやっていただきたい。  そこで、河川局長にお願いいたしますことは、どういたしましても、今の堤防計画というものが、流れていったやつを見ますと、あの堤防のてんばに水がたまり、前から切れるよりもむしろうしろから切れてくるのがいつの災害でも多いのでございます。このたびの長岡の切れたのを見ますと、事実そういうように聞き及んでおります。裏から食われてきて、前の水圧で持ちこたえられなかった。ちょうど久保田議員にも御協力願いましたのですが、あの千歳橋から水宝閣に参ります間、てんばは舗装道路にして、そうして一方交通にして、いま一段下げて、それも舗装道路にしてあります。これは、東京急行があそこを経営しておるために、何とか上を舗装にできないかというので、建設省の御了解を求め、御認可を得てやったのですが、ここは微動だもしない。てんばを舗装しない、いま一段下には水が出ておるというようなことがあった。そこで、長岡から大仁に通ずる、今度流れました堤防のきわまで思い切ってやってくれないかというので、私が東京急行の五島慶太社長に頼んだら、それもよかろうというのでありましたが、当時紀本という沼津の土木所長のわからず屋やろうがいやがって、こいつが全然認可しない。そのために、それが流れたではないか。てんばがあって、その裏をいま一段下に下げて、やはり舗装道路にしておったならば、りっぱなものになって、今日の災害を除去することができたじゃないかというようなことも私どもは考えておるのでありますから、今後恒久的堤防を構築する場合には、前も必要でありますが、どうか裏の方の土固めを十分にしていただきたいということを、私は要望しておきます。  そこで、大臣にお願いと申しますか、お考えがあるかどうか。第一、このたびのこの災害というものは、非常に山くずれが多かった。それに伴うところの治山、いわゆる砂防計画がなかった、こういうことであります。一体建設省が河川改良をいたしましても、砂防計画ができておらなかったら何にもならないというのが、これはいつの時代にも明瞭にわかっております。そこで、今日私どもが考えておるのは、特に建設大臣は、農林行政の大家であります。でありますから、特に私は御意見を承わっておきたいのですが、河川改修はし、改良はいたしておりますが、農林省におきまする治山施設事業というものがあります。これらを、自分たちは自分たちだけでやる。河川河川でやれというようなことであって、いわゆるなわ張り根性を持っております。大臣は、これを今度話し合ってやるというが、なかなかなわ張り争いというものは、いつまでたっても解決のつくもんじゃないことは、大臣みずからが御承知のはずです。そこで、幸いこの内閣におきましては、行政改革を叫んでおります。そこで、私は、少くとも行政改革でありますから、こうした災害を取り除くために、一丸として、農林省におきまする治山施設事業とかなんとかという項目がだいぶあるようです。あるいは港湾に至りましては、農林港湾とか漁港とかいうもの、水のはけるところに港湾ができる。あるいは山には、自分たちの砂防計画が十分にできておらぬということは、大きな災害を今後日本じゅうにもたらすものでありますから、一つのなわ張り根性をやめさせまして、幸いにして行政改革によって、このたび大臣も十分決意されて、閣議で御発言願って、全部一丸として土木事業というものに対しては建設省に包含して——名前は何とくっつけようとかまいません、この災害を一つの契機として、再び災害が繰り起らないように一つ一つ解決するようにしていただきたいのであります。特にこれは、社会党が喜ぶことでございましょうが、私どもは現地を歩いて、鈴木茂三郎先生にもわざわざ行っていただいて、そのときの新聞発表を見ると、自衛隊がよく働いておることに感謝するということを申されております。大臣みずからが、国会で、自衛隊の御好意によりと言ったので、だいぶヤジられたとか嘲笑されたとかということがあったじゃないかということを、今度現地に行って、ちょうど久保田君の村です、韮山村の役場へ行ったら聞きました。とんでもないやろうだ、国会議員なんというやつは、ろくなやつがいない、大臣が所管大臣であるから、現地に見にきて、そうして自衛隊の涙ぐましいこの働きに対して感謝するということは、自分が罹災者の一員になった気持で発言をしたのであろう、もしそれを笑ったりばかにするような者があるならば、われわれ罹災者は許さないぞというような心がまえでおったのですから、大臣は悲観をしないで、大いに奮斗していただきたいと思うのであります。これは、ほんとうに私が聞いてきた声であります。  そこで、このたびの災害で、一番自衛隊がお働きになって下すったことに私も感謝はいたしておるのでありますが、自衛隊要望として、私どもに一番ほしいものがあります。何だと聞いたら、ヘリコプターだそうであります。このヘリコプターは、電信電話が不通になり、あるいは食糧輸送、あるいは被害者の救助その他の点について、大なる活躍をされたのでありますが、遺憾ながらわずかに五台しか用意ができ得ない。しかも高田の連隊、あるいは練馬の連隊、豊橋の連隊という方からみな持ってきたというお話であります。自衛隊にも、今後グラマンを買うとかロッキードを買うとかいっている話ですが、余分のことではありますが、各自衛隊には十分にヘリコプターを与えてやっていただきたい。これは、毎年ある災害でありまして、私どもは二十八年の九州の災害も見ました。これは、非常に必要なことだということを、私どもは毎度体験しておるのであります。どうか、行政機構改革に伴うところの土木事業の所管省は、全部建設省に包含して、国土省なり何なり必ず作るという決意をもって臨んでいただきたい。しこうして、このたびの災害は、静岡県、あるいは福島、あるいは青森あたりが相当ひどいようであります。これらにつきましても、特別立法の処置を講じられまするように、一段の御努力と御奮斗をお願いして、私のお願いといいますか、質問はこれで打ち切ります。
  49. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまいろいろの問題についてのお尋ねがありましたが、第一の特別立法の問題につきましては、先ほど久保田委員にもお答えいたしました通り、せっかく今検討をしております。もうしばらく一つ時間をかしていただきたいと思います。  それから行政機構の問題ですが、これは、先般の参議院の委員会でも非常にもやかましい議論がありました。貴重な御意見として拝聴しております。政府全体としまして、この問題も十分討議していきたいと思います。なお橋の構造の問題、さらに二級国道の問題、あるいは堤防の問題等につきましては、それぞれ所管局長から説明させます。
  50. 佐藤寛政

    佐藤(寛)政府委員 道路関係の御質問が二点ございましたから、私からお答えいたします。  第一点は橋梁の問題、修善寺橋について、今回の災害の実例を見ましても、今後ああいうものの計画設計には十分考えなければならない点があるということを、御指摘いただいたわけでございますが、橋梁の設計につきましては、その上を通す交通が安全確実に通れるように、十分な構造計算をいたしておるわけでございますが、それと同時に、何せ川の上を渡っておるのでございますから、川の出水によって被害を受けないように、たとえば橋脚の深さとか強さ等の問題につきましても、いろいろ研究いたしておるわけでございます。のみならず、川の中に橋脚等を立てて川の流水断面のじゃまをいたすわけで、縮小いたすわけでございますから、それらにつきましても、いろいろ研究いたしておるわけでございます。  なおまた今回の場合は、特別な場合かと存じます、非常事態といたしましては、こういうふうに思わないものが上流から流れてくる。土砂のみならず、流木、また今回のように、家屋の木材等の場合もございます。そういうようなことも、普通考えられないのでございますが、今回の実例にかんがみまして、なお特に橋梁の設計につきまして、一般橋梁につきましては言うまでもございませんが、特に山間部の谷の迫っておるような場合には、特別に考えなければならぬかと存じますので、今後の計画、設計には、なお一そう注意いたしまして、この貴重な経験を生かして参るようにいたしたいと存ずる次第でございます。  第二点でございますが、これは、今回災害を受けました未整備道路の整備でございますが、これは、全く佐藤先生の御指摘の通りに私ども考えております。実は、すでに私といたしましては、局内に、御指示のような考え方で実施いたす方針といたしまして、そういう取扱いをいたすような指示をしたのでございます。ただその際に、家屋流失いたしておりまして、全然新しく建てるような場合には、ぜひ一つ道路のことも考えて、それに要する土地をあけるようにして建てて参りたい。その他損害を受けた家屋等に対しましては、この際現地において非常にお気の毒な状態でありますから、それにつけ加えて、そういう移転等のことを申し上げることはいかがであるか、場合によっては御遠慮しなければならぬかもしれない、そういう点も配慮して、よく地元の方に御了解を得て、御理解をいただいた上でそういうふうな考え方にいたしたい、こういう考え方で指示をいたしました。ただ、所要経費のことでございますが、経費につきましては、ただいま直ちに一般道路事業でそちらの方に向ける経費というものもございませんので、これは、ただいま執行中の予算に、いろいろ地方々々の関係で事情がございますので、もしどこかで余裕がございますような場合には、その経費をこの地方に流用いたしまして、災害費にプラスして改良ができるようにいたしたい。それからまた、将来道路に関する経費がいただけるような機会がございましたら、こういうような災害にプラスして、改良の経費をその中に見込んで参るようにいたしたいと考えまして、ただいま準備をいたしておるような状態でございます。
  51. 山本三郎

    ○山本政府委員 ただいま堤防の作り方と申しますか、そういう点につきまして、貴重な御意見を伺いました。私も現地を見まして、堤防が人家の上から切れてきたのでは、あのような人命がそこなわれるような重大事態になるが、あれがもし下の方から入ってきたんなら、水がつくだけだという点を、今さらながら痛感をいたしたわけでございます。仰せの通り道路になっておる部分は切れないで、その下のつけ根が切れたというような点から、私らといたしましても、今後の河川計画におきましては、それらの点を十分勘案いたしましてやらなければいかぬというふうに考えております。狩野川の場合につきましても、今後の堤防計画を立案するにはもちろんのこと、今回の災害に当りましても、堤防の切れた、たとえば大仁橋上流等の復旧に当りましては、堤防が切れることのないように、上を越しても、切れさえしなければ、ああいうふうな人命等の大きな損害はないということが明らかにされたわけでございますので、それらの点を十分加味いたしまして、災害復旧なり今後の改修計画の立案等に当りたいと考えております。
  52. 三鍋義三

    三鍋委員 政府当局にこの際お願いしておきたいのですが、この災害に関する質疑は、次会もなお続行されると思うのでありますが、それがいつ終るかわかりませんが、終ったならば、次の段階に入らなければならぬと思います。それにつきましては、あらかじめお願いしておきたいのでありますが、まず第一点は、この臨時国会と通常国会に建設省として提案なされようとしておるところの法案、これは、官房長にお願いしたいと思いますが、それを提示していただきたいと思います。  もう一つは、三十四年度の建設行政に関する予算の大綱をお示し願って、大臣から御説明願いたいと思います。  第三点は、あの道路整備五カ年計画の実施案ですね、これは、まだできなのでしょうか。いいかげんにやらぬと、もう年度が終ってしまうのですが、これを提示していただきたい。しかし、まだ作業中でありますれば、御無理は申しませんけれども、これは、当然もっと早く出ておるべき筋合いのものでございますから、これを一つ示していただきたい。これだけ要望しておきます。
  53. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいまお尋ねの三点でありますが、それぞれ次回の委員会に用意をして説明したいと思います。ただ道路整備五カ年計画の予算の問題でありますが、新聞等で御承知のことと思いますが、従来九千億計画というものを立てて参ったのであります。その後諸般の情勢の変化に応じまして、五カ年間に一兆円の投資をするという計画ができて参りまして、一兆円投資計画というものを閣議で決定をいたしました。ただし、その一兆円のうちの一千億円の配分の問題について、実はまだ決定をいたしておりません。いろいろ議論がございまして、一方においては、その一千億円で公共事業をもう少しやらなければいかぬじゃないかという意見と、有料道路その他の方をもう少しやれという意見と、いろいろありました。まだ実はその結論が出ておりません。なるべく早く結論を出しまして、これを国会の方にお諮りしたいと思います。  ただ五カ年計画のうちの三十三年度分につきましては、すでに予算もきまっておりますし、着々仕事が進んでおりまして、むしろ仕事は、繰り上げ実施をやっておりまして、例年になく今年度は事業が進んでおります。でありますから、五カ年計画の内容の決定がおくれたがために事業に支障は来たしておりません。  そういう事情でありますから、五カ年計画の第二年度、三十四年度以降の計画については、もうしばらく御猶予をいただきたい。そのことを申し上げておきたいと思います。
  54. 二階堂進

    ○二階堂委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたすことといたします。  散会いたします。     午後二時三分散会