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帆足委員 他の議員に御迷惑をかけても何ですから、
新関参事官がお
見えになりましたら、先ほどの問題の結末をつけさしていただきます。御
督促を願います。
それから今の
映画とテープについての
大蔵省当局の
考え方については、私はまず最初に事務的なことより、あとで局長さんその他に言うておいてもらいたいのですが、これを理解する教養とやさしい心を持っておるかどうかということを私はお尋ねしたい。鬼の心を持って
文化政策をやろうなんということは、無理なんです。また
大蔵省は質屋だとは言いませんけれ
ども、質屋の番頭のような気持で
文化政策をやるのだったらわれわれはお断わりしたいと思います。
文化政策は
外務省の方におまかせしたい、こう言いたくなるわけです。それをまず伺っておる。従いまして、社会党はこういうふうにやさしい心持を持っております。そこで
レコードのことは、さっき申し上げましたように、やはりテープを入れるという通産省の
政策は私は公平に見て正しいと思う。従って
レコードを入れるということは例外中の例外であって、ただ
日本で再生するには枚数が少い。たとえばチェコスロバキアのプラハのオペラ劇場の「売られた花嫁」というのはすぐれたもので、四枚続きのものです。それを
日本でテープにするのにはまだちょっと時期尚早である。しかし五十枚か百枚くらいは、
日本の熱心な
愛好者がおる場合にはドルで輸入させる。これは無制限に営業会社が競争して入れるものではありません。そういう心配は絶対にないわけです。従いまして、そういうものはたとい商業用であっても若干は入れ得るようにしたらどうか。一人の安サラリーマンの月給ほどのものでしかない。それからもう一つは、今のテープの問題なんです。テープが基本になることはいいけれ
ども、それも小さい国に対しては年間十万円から二十万円の
印税を払えばやっていけるのじゃないか。従ってそういうことをもっと理解していただきたい。
それから
映画のことにつきましてはきょうは深く論じませんが、この次に
資料で出していただきたいのは、私のうちの近所にも
アメリカ映画のセコンド・ランの劇場がありますから、子供を連れて始終行きますけれ
ども、
アメリカ映画の中で非常に優秀なものがあることは御
承知の
通りであります。しかし同時にギャング
映画、それから人殺しのスリラーの
映画がどのくらいの割合になっておるか、この割合をお知らせ願いたいと思います。
日本で入れている
外国映画の総
本数の国別と、その内容、
西ヨーロッパではほとんどギャング
映画というのはないように思います。ギャング
映画の本場は
アメリカですから、その
アメリカ映画のギャング
映画とスリラー
映画とその他
芸術映画との割合、
西ヨーロッパ映画の中で、やはりそういう人殺し、ギャング
映画があったならば、どのくらいの割合になっておるか。私のこれに対する対策としては小さな国々の
文化映画及
劇映画、たとえば
インドの
映画の中にも非常に優秀なものがあります。先日申し上げましたようにブルガリアの
文化映画は、小さな国で、朝鮮ほどの国ですけれ
ども、非常にすぐれたものです。
エジプトの
映画の中にも最近おもしろいものがあります。そしてこういうものには従来の松竹さんとか東宝さんとか、そういうところはあまり着目しないのです。それはむしろもっと金もうけ本位にお
考えになっておりますから、そこまで心が届かないわけです。
従って、そういう小さな国々の
文化映画をせめて年に四本くらい、
劇映画をせめてニ本か三本くらいは無条件にだれが入れてもいい。そういうものを入れたあとの残りは商売の対象になるものであるから、過去の実績本位にするというようなことを
考えになるなら当然ですけれ
ども、ある特定の国の
映画を国民が見る権利がないということはおかしいと思うのです。それでは今ボーナス制度があるから、ボーナスで君入れたらよかろうといいますけれ
ども、
エジプトの
映画を大事なボーナスつから入れる人はないと思うのです。それは
西ヨーロッパの大きな国の、もっともうかる
映画を入れると思います。従いまして、小さな国々の
劇映画を二、三本と、
文化映画を四、五本はだれが入れてもいいのです。もちろん入れる人はそうもうけようと思って入れやしない。どうにか償えばいいと思って入れるのです。しかしそれは非常によいことだと思う。
日本は貿易の国海の国で、
世界を理解せねばならぬ国である。
エジプトで事が起った、バグダッドで事が起ったと
いっても、バグダッドの風俗も人情も何も知らないじゃありませんか。それを知らないでよい貿易圏になり貿易商人になるということは私は不可能だと思いますし、
世界は
アメリカだけでないのですから、
世界の国々の風俗人情等を
日本国民が知る機会を与えるべきだと思います。従いまして、そういうものの申し出があった場合には、このくらいの
本数までは無条件でよろしい。それだけの
本数までは
映画全体のワクから別に一応準備しておく。いつまでに希望者がないときは、それを過去の実績の中に繰り入れるとかいうことであってもよいでしょうけれ
ども、物を知る権利は憲法において保障された権利だと思うのです。同時に、
アメリカ映画につきまして先日私が申し述べましたように、非常に優秀なものがありますけれ
ども、非常に悪いのがある。特に道徳的に青年に悪い影響を及ぼす
映画が非常に多い。これは勤評や道徳
教育をするよりも、
映画政策にも少し
文化性を持たした方がよい。もちろんこれは役人がこの
映画がいいとかあの
映画は悪いとかいうことを指示することでなくして、国民の感覚及び興行者、
文化人などの自発的な良識がおのずから
行政に反映するような対策をとることが必要だと思いますけれ
ども、今日
日本の青少年の犯罪は
世界一だといわれます。青年の自殺は、今や結核にかわって最高の死亡率をあげておる。それと
映画がどうして
関係がないといえるでしょう。従いまして、
アメリカ映画の内容を検討していただきたい。同時にその分類を私にいただくだけでなくて、本来ならば
文部省あたりで南博君あたりに頼んで、
アメリカ映画が青年に与えた影響等について一ぺん分析させてみたらいいだろう。エリック・ジョンストン君は、
アメリカ映画協会の
会長として優秀な人です。これは先日私が申し述べましたように、ニューディーラーで、
アメリカの
教育を全部
映画にかえよう、地理や歴史などを暗記ものとして
教育するのはばかげたことだ、子供の
世界一周という
映画を作って、十六ミリで
教育をしようといったほどの進歩的な人ですけれ
ども、商売人として一たび
日本に参りますると、われわれに圧力を加える。こういう
状況であって、
アメリカの
映画の圧力とその蓄積円の圧力は、大きな政治力になって
日本の
文化政策を阻害していると思うのです。戦争前には
日本はどちらかといえば
アメリカ派ではなかった。
日本はヨーロッパ派であった。
音楽でもそうです。
日本はヨーロッパのゆかしい
文化を吸収し得る国であった。しかるに今日
日本は
アメリカ一色に塗りつぶされようとしておる。犯罪の手口までが
アメリカのスリル式
映画の手口になってしまった。これは私は堅実な保守党の諸君も民族的感情においてわれわれと同じ気持であろうと思うのです。
日本のように伝統のゆかしい国がもっと
フランスから学び、英国からも学び、それから
西ヨーロッパのゆかしい小国からも学び、また
アジアの国々には伝統豊かな国が多いのですけれ
ども、その民族芸術は隠れてしまった、その隠れた
アジアの民族芸術を発掘することも必要です。そういうことのためにも
映画の輸入
政策や
文化の輸入
政策に対して力をかすことが私は
外務省なり
文部省の仕事の一つだと思う、
占領政策の余弊でありますけれ
ども、
アメリカから学ばねばならぬことは非常に多いにもかかわらず、
アメリカ映画が量的にびまんして
日本の
映画館を全部その商業
政策で圧倒しておるということは、私は伝統の深い
日本民族にふさわしくないことだと思います。従いまして私は絶対に
アメリカ映画の優秀性を排撃するものではありませんけれ
ども、量的に悪い
映画がたくさんき過ぎておる。これはダレス君の名誉のためにも自粛してもらわねばならぬ。一体
アメリカはズロースを脱いで恥部を
世界にさらけ出しているようなものじゃありませんか。私は
アメリカの国務省としては海外に出す
映画に対しては、これも統制するという
意味ではなくて、よく
考えて、この
映画はあまりひどいから
日本に出すのが恥かしいと
アメリカ自身が引っ込めるべきだと思うのです。こういう
映画が
外国に出されたときにその国の青少年にどういう影響を与えるであろうか、子供を不良にするような
映画を
アメリカがただ商業
政策のために輸出を放任しておるということは、
アメリカの名誉のために慎しんでもらいたい。こういうことがありますから、単に割当をどうするとかなんとかいう小さな見地からでなくして、
日本の
外務省としても
文部省としても、貿易の国、
日本の生きる道を探し求めるために、また子供たちに海の国、貿易の民族としての教養を与えるために、どうか健全な
映画政策、
文化政策を一つ再検討していただきたい。その見地のもとに若干の実績主義もあとで考慮する、こういうことにやっていただきたい。
これからは安保
条約の審議という民族の生死にかかわる問題とわれわれ
外務委員会は取り組まなければなりませんから、こういうこまかな問題に触れる機会は少いと思います。ちょうど昼近くになりますと総理が参るということでありまして、時間がありましたから
委員長のお許しを得まして、こういうさまつなことにわたりまして
同僚委員に御迷惑をおかけいたしましたが、ただいま
要求いたしましたことについての再検討と、同時に必要な統計
資料をお寄せ下さいますことをお願いいたします。また私が今申し上げた
ソ連映画のこともまたは
インド映画のことも、これはできるだけそういうことには便宜をはかるということが当然のことであることは、
委員長も御了承下さると思いますから、一つ
委員長からも言っていただいて、御善処のほどをお願いします。
これで終ります。