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1958-10-03 第30回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年十月三日(金曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 岩本 信行君 理事 佐々木盛雄君    理事 床次 徳二君 理事 戸叶 里子君    理事 松本 七郎君       菊池 義郎君    小林 絹治君       武知 勇記君    中曽根康弘君       福家 俊一君    福田 篤泰君       前尾繁三郎君    大西 正道君       田中 稔男君    帆足  計君       森島 守人君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         外務政務次官  竹内 俊吉君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         外務事務官         (アメリカ局         長)      森  治樹君         外務事務官         (条約局長)  高橋 通敏君  委員外出席者         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 九月九日  委員高田富之辞任につき、その補欠として西  村関一君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員西村関一辞任につき、その補欠として久  保田豊君が議長指名委員に選任された。 同日  委員久保田豊辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員に選任された。 十月二日  委員石田博英君及び宇都宮徳馬辞任につき、  その補欠として菊池義郎君及び武知勇記君が議  長の指名委員に選任された。 同月三日  理事穗積七郎委員辞任につき、その補欠とし  て戸叶里子君が理事に当選した。     ————————————— 九月三十日  日本国ポーランド人民共和国との間の通商に  関する条約締結について承認を求めるの件(  条約第一号)  通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの  間の協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  国政調査承認要求に関する件  日本国ポーランド人民共和国との間の通商に  関する条約締結について承認を求めるの件(  条約第一号)  通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの  間の協定締結について承認を求めるの件(条  約第二号)国際情勢等に関する説明聴取      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項国交回復に関する事項国際経済に関する事項の三項目について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事穗積七郎君が去る七月三十日に委員辞任せられました結果、理事が一名欠員となっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、慣例によりまして、委員長より指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なければ、理事戸叶里子君を指名いたします。     —————————————
  6. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、日本国ポーランド人民共和国との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件及び通商に関する日本国ニュー・ジーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件、右両件を一括して議題といたします。政府側より提案理由説明を求めます。竹内政府委員。     —————————————     —————————————
  7. 竹内俊吉

    竹内政府委員 ただいま議題となりました二件につき提案理由を申し上げます。  まず、日本国ポーランド人民共和国との間の通商に関する条約締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  昨年二月に署名された日本国ポーランド人民共和国との間の国交回復に関する協定は同年五月に発効いたしましたが、同協定の第五条において、両国は、「その通商及び海運の関係を安定した、かつ友好的な基礎の上に置くために、条約又は協定締結するための交渉をできる限りすみやかに開始すること」を約束しております。  日波両国間には、地理的遠距離関係もあり、従来見るべき貿易もありませんでしたが、今後の両国間の通商関係発展を促進するため、右の国交回復に関する協定第五条に従い、政府は、本年三月七日より、東京においてポーランド代表との間に交渉を始め、自来、折衝を重ねました結果、四月二十六日日本側全権委員山田外務事務次官ポーランド側全権委員ゼブロウスキー大使との間に通商に関する条約署名調印を了した次第であります。  この条約共産圏の国を相手とするものとしては、昨年十二月六日に署名され、本年五月に批准書交換により発効したソ連との間の通商に関する条約に次ぐものでありまして、その内容も日ソ条約にならったものであります。その骨子は、関税通関手続に関する最恵国待遇船舶出入港及び船舶の取扱いに関する内国民待遇及び最恵国待遇内国税に関する最恵国待遇、為替及び輸出入制限に関する無差別待遇の相互許与等について規定するとともに、貿易実施に関連して問題となる仲裁判断の執行の条件を規定しております。  この条約締結によりまして、両国間の通商の促進のための基礎が固められ、両国間の今後の貿易発展が期待される次第であります。  よって、ここに、この条約批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。  次に、通商に関する日本国ニュージーランドとの間の協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  ニュージーランド政府は、従来わが国に対し関税及び輸入制度差別待遇を行い、また、昭和三十年わが国ガットに正式加入いたしました際にも、英国、オーストラリア等諸国に追随して、ガット第三十五条を援用し、わが国との間に正式なガット関係を設定することを拒否して参りました。  このような対日差別制限の結果、わが国の対ニュージーランド輸出は近年さしたる伸張振りを示していなかったのでありますが、これに反して、わが国は、ニュージーランドから、羊毛、食肉、原皮、牛脂、くず鉄等の原材料を毎年相当量買い付けてきたため、両国間貿易は、原則としてわが方の入超となり、昭和三十一年においては、わが国輸出二百十二万ポンド、輸入三百三十六万ポンド、昭和三十二年においては、輸出二百七十三万ポンド、輸入九百七十六万ポンド、本年一—六月においては、輸出九十六万ポンド、輸入四百十七万ポンドという状況でございます。  政府といたしましては、ニュージーランドにおけるこのような差別待遇を一日もすみやかに撤回せしめるため、従来から機会あるごとにニュージーランド政府との間に公式、非公式に折衝を続けてきた次第でありますが、本年五月ごろ東京におきまして、在本邦ニュージーランド大使館との間に通商協定締結方に関し予備的な折衝を行なった結果、ニュージーランド側においても通商協定交渉の開始につき原則的に異議ないことが確認されたため、本年七月下旬代表団をウエリントンに派遣し、同国政府交渉を行なってきたのでありますが、約一カ月半にわたる折衝の末交渉は妥結し、去る九月九日同地において、在ニュージーランド島津特命全権大使とW・ナッシュ総理外務大臣との間に協定署名を行なった次第でございます。  この協定骨子は、両国相互関税に関する最恵国待遇及び輸出入許可制度に関する無差別待遇を与えることにありますが、相手国からの輸入の急増の結果、自国産業が危殆に瀕する場合には緊急措置をとり得ることになっております。なお、本協定は、批准書交換の日から正式に効力を発生することになっており、昭和三十六年九月八日の後にはいつでも三カ月の予告をもってこれを終了することができるようになっております。もっとも、政府といたしましては、わが国商品に対する最恵国税率の適用及び差別的輸入制限の廃止は一日も早くこれを実現することが有利と考えたので、本協定署名の日から行政上可能な限度において本協定を仮実施することとして、今日に至っております。  よって、ここにこの協定批准について御承認を求める次第であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  8. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これにて提案理由説明は終りました。  両件に対する質疑は次会に譲ることといたします。     —————————————
  9. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際情勢等に関して調査を進めます。  外務大臣より発言を求められておりますので、これを許します。藤山外務大臣
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 九月三日に東京を出立いたしまして、カナダワシントンを訪問し、同時に第十三回国連総会出席して参りました御報告を申し上げます。  カナダに参りましたのは、カナダ政府からの招待がありましたので参ったわけであります。オタワに参りまして、ディーフェンベーカー総理初め、スミス外務大臣フレミング大蔵大臣チャーチル通産大臣等会談をいたしました。この参りますときに、日本カナダとの間の通商貿易の拡大ということを話しますことが一つ目的であったわけであります。  御承知のように、カナダ日本との貿易関係は最近著しく改善はして参っておりますけれども、まだ二対一、日本が倍の輸入をいたしておるような状況でございます。従いまして、私といたしましては、今日の日本貿易振興の見地から見ましても、特に硬貨圏において、しかも日本輸入超過の国が、もっと日本の品物を買ってくれるということが当然であり、またさしあたり最も必要な輸出振興一つ方途であるわけでありますから、その意味においてカナダ政府とも懇談をいたしたわけであります。  カナダ政府は、御承知のように昨年ディーフェンベーカー総理が内閣を組織せられまして、さらに本年の選挙において多数をとって、安定した政治をやっておられるわけでありますが、色彩から申しますと、どちらかといえば、保護貿易主義のような感じをわれわれも抱いておったわけであります。しかしながら懇談してみましたところが、カナダ政府といたしましても、現在のような事態において必ずしも旧来のような保護貿易政策をとるという考え方はないのだ。ただカナダ国内における産業の健全な発達の上からいって、特にカナダは御承知のように工業等もまだ必ずしも十分発達いたしておりません。農林水産関係輸出でもって国を立てておる国でありますから、若干発達しかけてきております中小企業、たとえば織物等のような業者が、日本がもし不秩序な輸出をするのであればやはり影響をこうむるから、そういう点について日本側も十分な注意をしてもらいたい。そうしていたずらにそれらの業者摩擦の起らないようにしてもらえば、カナダ政府は、必ずしもあなた方の想像しているように産業保護立場関税等の問題を考慮するというような、いわゆる昔の保護貿易政策をとっておるのではないというような説明もあったわけであります。従いまして私としましては、むろん日本としても、カナダ業者の方々と摩擦までしてやるということは、お互いに共存の立場からいって適当でないので、できるだけオーダリー・マーケッティング等をやると同時に、日本も最近はかなり綿糸製品以外の諸般工業製品等が技術的にもあるいは質的にも発達してきておりますし、また価格の上においても低廉な場合が多いのであって、そういうものの新販路開拓によって、できるだけカナダ業者摩擦を起さないようにして、そうして日本輸出を伸ばすという方針をとっていきたいから、ぜひともそれに協力してもらいたいということで、円満な話し合いをいたしたわけであります。なお、当時御承知のように英連邦経済会議が行われまして、十三日からモントリオールにおいて約十日間これが開かれておったのであります。カナダのその会議出席する態度等についても、今申し上げたような趣旨、また単にイギリス本国だけを尊重するという形でなく、アメリカとの関係日本との関係をも考慮してこの会議に臨むのだというような趣旨のことを申しておりました。なお直接日本カナダとの問題は主として経済問題でありまして、その他に政治的な特殊の問題はございません。むろん日米加漁業条約等運用等の問題もございますけれども、その他に特段の大きな問題はございません。国連総会等においては、常にカナダもしくは北欧三国というようなものは、われわれとともに手を携えて国際政治の上で緊密な連絡をとっておりますので、ディーフェンベーカー総理もしくはスミス外務大臣等に対しましては、その点を力説いたしまして、今後ともできるだけ共同の立場をとって、相連絡しながら国際政治の問題について十分世界平和のために貢献していくということにおいては、趣旨は一致いたしております。なおカナダにおきましては、御承知のように、先般アメリカとの間に中共貿易の問題でいろいろ議論が行われました。また解決を見た点もあるようであります。それらに対しまして、カナダ中共貿易に対する態度なり、あるいはただいま起っております台湾海峡中心にした問題等について、意見交換をいたしたわけであります。私といたしましては、その意見交換を通じて非常に得るところがあったと考えております。  次にワシントンに参ったわけであります。ワシントンに参りました目的につきましては、すでに出発前に申し上げておる通りでありまして、日本岸内閣として長期に政権を担当して参ります以上、当然最も緊密に連絡し、日本外交の基底をなす日米協力の建前を進めていく上において、日米間の相互了解と、そうして懸案になっておりますいろいろな問題等につきまして、お互い意見の率直な交換をするということで参ったわけであります。しかしながらそれらの問題を進めて参ります上におきましては、具体的な両国間の懸案問題等を例示をいたして話すつもりでおったのであります。ワシントンに参りまして、ダレス長官と十一、十二の両日約二時間にわたって会談をする約束をして参ったわけでありますが、しかしながらこの時間は必ずしも多いというわけではないのでありますから、従って予備的に私が話します問題等につきまして、事前にマッカーサー大使と打ち合せをいたしながら時間の節約をはかるために話をいたしたわけであります。それらの問題につきましては、日米間の問題の焦点であります日米安全保障の問題、あるいは両国経済関係の問題、極東の情勢に関する問題等に関して話し合いをいたす予定をもって、あらかじめ準備をいたして参ったわけであります。参りますと、ダレス長官の方から、十一日、十二の両日の話では時間が十分でないだろう、従って自分としては第一日を日米間の安全保障条約の問題を中心にして、沖縄あるいは小笠原その他の政治的な問題を話し、二日目は国際情勢を含めて中共との問題、あるいは現在の台湾海峡に起っている問題等について話し合いをする。そうして経済問題に対しては時間がないだろう、それで一ぱいだろうから、ディロン次官と別に話をしてくれ、そしてその話し合い十分ディロン次官を通じて聞くからということのあれがありましたので、私も十分な時間を以上のような問題についてダレス長官と話しますことは適当と考えましたので、経済問題は向うの言います通りディロン次官と話をすることにいたしたわけであります。ディロン次官に会見をいたしましたのは二日目の十一時半からということでございますが、順序上ダレス長官との話から御報告を申し上げたいと思います。  ダレス長官と会いまして、そうして日米間の諸般の問題をいろいろ話をしたいということで、まず第一に安全保障関係の問題について日本側意見を申し述べたわけであります。安全保障問題については、昨年岸総理が渡米されまして、アイゼンハワー大統領に対してこの問題を話しておられます。当時その話し合いの結果として日米安保委員会ができまして、一年間運営されてきたわけであります。それを通じまして、日本国民願望と現在の安全保障条約を適切に運用する方途委員会審議したのであります。この委員会が満足に進行してきたということは両国のために喜ばしいということを申し、またダレス長官も同じことを繰り返して私に申しておられました。私はさらに進みまして、安保条約ができた当時と今日の日本状態というものは大へんに変っている。第一、日本は当時国際社会に復帰をしておらなかった。一昨年暮れ日本国連に加盟をし、昨年はさらに国連中枢機関である安全保障理事会の非常任理事国の地位を選ばれて獲得したのであって、その結果として日本国連内においても国際経済社会政治の問題について重要な役割を現在果しつつある。これは全く安保条約制定の当時の日本国際的地位と違っておるわけです。同時に日本は当時日本自身の守りをするのにも手薄であったのだ。今日では自衛隊というものがある程度数もしくは質において充実してきておって、そうして日本国内の安全を守るということに対する努力はできるようになってきたのだ。そこで日本のこれらの自衛力の増強というものも当時の事情とは全く変っておるわけであります。その点も考えてもらわなければならぬ。  第三に、経済力においても、当時日本経済は復興の過程にあって、われわれが今日から回想してみても、今日と当時の日本事情は大へんに違っているということは申すまでもないところである。ところが日本経済力というものはまだまだわれわれは完全に充実したとは思っておらぬ。それは底が浅いものであって、必ずしも完全ではないと思う。しかしながら当時とは経済力充実程度も十分違っておるのであって、日本政府施策さえよろしければ、世界の大きな不景気の波というようなものが来てもそう動揺しないような状態にもなりつつあると思う。  なお、社会的な面においても、戦後の荒廃した気持が自然に落ちついてきて、すさんだ気持もなく、着実に日本国民全体が努力を続けて、そうして独立国家としての世界に対する貢献をしようという安定した気持になりつつあるんだ。こうした条件が当時と全く変りつつあるのであって、その面から考えてみると、当時それらの条件の満たされておらなかったときに作られた安全保障条約というものは、必ずしも今日の日本国民気持には相応しておらないんだ。従って日本国民としては国際社会に出て貢献している以上は、もっと自主的な立場でもって安全保障の問題を考えたい、また考えなければ国際社会に対する独立した国家としての行動もしにくいのであって、そういう面から、大局から判断してこれらの問題についての改善日本国民願望として考えておるのだということを申したのであります。  ダレス長官としては、自分安全保障条約の生みの親であるから、安全保障条約というものがあのときに制定されてよかったし、また、それがうまく運営されてきておるというふうに思う。しかし同時にあなたの言われるように、日本の今日のすべての状況が当時と全く違っているということも、自分もまたよく理解するところである。それから話は安全保障条約に関するいろいろな問題について話し合いをいたしたのであります。  私は過去一年間幸いにして国会に出席をいたしまして、皆様方の論議を通じて国民の意のあるところを承知いたしておるつもりでありますので、それらの論議の点等につきましていろいろアメリカ側に申したわけであります。その結果ダレス長官は、それでは自分としてもこの問題について一つ真剣に考えてみよう。そこでこれを考えるならば、外交交渉においてこれらの問題を取り上げて考えていくことが適当であると思うので、あなたが帰国後に通常外交ルートによってこれらの問題について話し合いを進めてみたいという考え方を表明されたわけであります。これが安全保障条約に関する私の話し合いの全貌でございます。  なお、沖繩の問題につきましては、土地問題の解決等に対するアメリカ政府努力を感謝いたすと同時に、沖繩国民日本国民なのであって、われわれは同胞だと思います。施政権の返還を将来当然予期しておるのであって、沖繩人たちは戦前においても経済的に必ずしも恵まれておらなかったのであって、これらの者は本土の方から十分な補給と援助をしなければならなかった。今後われわれとしては、沖繩産業開発その他についてもできるだけ協力をしていきたいと思う。それらについて十分な理解をしてもらいたい。そういう点についてはダレス長官は、今後日本考え方、またそうした方策等があるならば、外交ルートを通じてアメリカ政府にも働きかけてもらいたいということであったわけです。  その他のBC級戦犯の赦免の問題もしくは小笠原帰島連盟の意のあるところ等を申し上げました。これらの問題は、いずれもアメリカにおいても議会関係等もあるから確言はされませんでしたけれども、とにかく小笠原帰島問題については、十分外交上において補償方法等において相談をした上で議会に諮るということを言われたわけです。  なお、翌十二日のダレス長官との会談は、国際情勢一般につきまして、共産諸国自由主義諸国との間の諸般問題等につきまして、いろいろな情勢の分析その他の交換をいたすと同時に、現在起っております台湾海峡の問題あるいは中共に関するアメリカ側考え方等について懇談をいたしたわけであります。それらの懇談を通じて、アメリカ側の考えておるところもある程度はっきりわかりましたし、今後日本施策の上に非常に利益であったと存じます。  デイロン次官との経済問題の話につきましては、東南アジア開発基金の問題の話をまずいたしたわけであります。この問題につきましては、私の聞きたいところは、アメリカが二国間の援助計画以上に、集団的に援助をする方式を昨年以上に考慮しつつあるかどうかということが一つの点であります。申すまでもなく、皆様御承知通りラテンアメリカに対して、あるいは中近東に対しての援助方式というものが多角的な援助方式を採用するようになりつつあります。従って、もし東南アジア方面にそうしたことが起ってくるならば、そうした中近東、もしくはラテンアメリカ方面と同じような考え方でこれらの問題を処理するだろうかという点であったのであります。デイロン次官は、アメリカ考え方はその点について若干変ってきておる。しかしながら、これはアメリカ指導者になって、そうした形を作るというようなことは、アメリカとして必ずしも考えていない。当面二国間の問題として援助計画が出てくれば、それはケース・バイ・ケースで、できるだけのことを東南アジアの将来の幸福のために考えていくのであって、それは進んで進めて参りたいと思う。もし、集団的な機構による援助計画というものが当該地域において、話し合いによってできてくるならば、今言ったように方針変更等もあるし、財政等も見合いながらわれわれはそれを考えていくというのがディロン次官の私に対する回答、話し合いの筋であります。私といたしましてはその点について得るところがあったと存じております。  なお日本財政経済等の実情について十分詳しく話をいたし、日本財政というものは決して現在悪い状態ではないんだ、ある意味から言えば世界でもりっぱな健全財政を堅持しているんだということを申し述べますと同時に、さらに貿易問題について日本輸出で食べていかなければならぬ、アメリカとの貿易はやはり現在輸入超過になっておるのであって、これらの観点から見ても、日本商品をもっともっと買ってもらわなければならぬ。たまたま日本の方で秩序ある輸出方策をとらなければならぬけれども、しかしながらそれをとりながらも、なおかつ上院等において業者からの問題提起があり、いろいろ関税問題あるいは輸入制限問題等審議されるのだから、これらのものは日本としてもできるだけ善処をするが、アメリカ政府としてもそういう問題について高所大所からみんなを指導し、また日本輸出貿易に依存していかなければならぬ立場というものを十分政府として理解して善処をしてもらいたいということを申し述べたわけであります。ワシントン政府としても当然日本輸出貿易で食べていくのであるし最近では日本のオーダリー・マーケッティングというものがだんだん軌道に乗っていることは自分たちも認める。従ってできるだけそういう国内におけるいろいろな議論に対して、日本の実情等を説明しながら一つ指導して参りたいということを申しておったわけであります。  以上がワシントンにおきます会談の内容であります。  引き続いて私は国連の十三回総会に出席いたしたわけでありますが、国連の総会は十六日に開かれました。私は国会等の関係で帰国を急いでおりましたので、十八日に冒頭演説をいたしまして日本の第十三回国連総会に対処いたします考え方を申し述べたわけでございます。  当時、開会と同時に、各国代表団の関心はやはり台湾海峡の問題、それから中近東の問題の二つに大体しぼられておったと思います。核実験禁止の問題についてもむろん重要な関心を持ち、日本代表団としても深い関心を持っておったわけでありますが、しかしこれは御承知通り十月三十一日から三国間で協定を始め、話し合いをするという状態でありましたので、それを期待する態度を持っておるわけであります。ただ中近東の問題につきましてもあるいは台湾海峡の問題につきましても、これらの問題が将来国連等において相当な問題になるような予感もするので、従ってそれらの問題についてはみな非常に注意深く見守っております。しかし何としましても中近東に関しましては、九月三十日のハマーショルド報告が出る前は、その報告を見た上にしよう、また台湾海峡の問題は、ワルシャワにおける米中会談の結果、平和裏に会談の成立する日を成功を祈りつつ見ていようということでありまして、何か波乱含みではありますけれども、あらしの前の静けさと申しますか、私のおりましたときには底流においてそれらの問題がいろいろ心配されておりましたけれども、冒頭演説における例のごとき激しいやり合いはございましても、総会全体の空気としては時期待ちというようなことで、みんなが見ておったというようなことでございます。われわれ代表団といたしましてもそれらの点を考慮しながら、今後の活動に備えていくという状態努力いたしておるわけでございます。  なお総会出席に当りまして、例のごとく総会劈頭には各国の外務大臣がすぐ集まって参ります。ことしは昨年よりもさらにふえておりまして、出席の通知をいたしております国が五十数カ国あったようでありますが、私のおりましたときにすでに四十二カ国ほどの各国の外務大臣がニューヨークに集まってきておったわけであります。私といたしましては、東南アジア外務大臣あるいは国務大臣等閣僚の席にある方々と昼食会等をして意見交換をし、またその他の会合にも出席をいたしまして、それぞれ共産圏自由主義諸国外務大臣と、昨年参りましたから大体顔見知りになりつつありますので、それらの者と余暇に話し合いをいたしました。が、特に私といたしましては日本が近接地域であります台湾海峡においてただいま問題が起っておりますので、アメリカと同時に極東にかねて深い利害関係を持っております、しかも中共を現に承認いたしておりますイギリスの考え方等を聞いておきますことは、今後の日本の外交政策を考えて参ります上に非常に有益になるかと思いまして、特にロイド外相とは二時間にわたる懇談を申し入れたわけであります。快くロイド外相は時間をさいて会見をしてくれたわけであります。この会見におきまして中共並びに台湾海峡に対しますロイド外相のいろいろな意見また英国の立場等につきまして私的に懇談をいたしました。非常に有益であったと私は考えております。ただ私的の会談でありますからその内容を申し上げるわけにはいかぬのはまことに残念であります。何かそういう私的な会談で、申し上げないためにいろいろの誤解のあったということは残念だと思っております。あまり私的な会談の内容を申すと、相手国外務大臣がこれから会ってくれなくなると困ります。その点は皆さんの御了承を願いたいと思います。  以上をもちまして大体私の今回、回って参りました報告といたします。
  11. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 議事進行に関して。今われわれの理事会の申し合せによりまして、外務大臣はこれから開かれます予算委員会に御出席を願うことに両党の間で大体話し合いはできたようでありますが、私は、外務委員会本来の使命から考えまして、本日はせっかく両党の国会対策委員長の間において話のまとまったことでありますから、まずやむを得ないといたしましても、予算委員会が常に優先するのだというような原則を打ち立てることは、当委員会の権威に関することであり、従いまして事外交問題に関してはあくまでも当該委員会は外務委員会でありますから、外務委員会が優先するという鉄則に立って、今後ともかかる場合におきましては、委員長におかれましては外務委員会の自主性を堅持されるように、この外務委員会の優先審議が進められますように、その点は今後のこともありますから両党の国会対策委員長によくそのことをお伝え願いたいと思います。
  12. 松本七郎

    ○松本(七)委員 これは国会対策、国会運営全般の問題にかかわる重要な問題だと思います。今までもこういう事件が大なり小なりたびたび起っておる。従ってこれはひとり与党のみならず社会党においても、やはり常任委員会制度というものが中心になって運営さるべき今日、予算委員会が優先されるという傾向は、すみやかに改むべきであると私どもは考えております。外交問題については、やはり外務常任委員会中心になって論議をやるという新しい運営の仕方を今後確立するために、委員長においても格段の努力をしてもらいたいし、またわれわれも一そうその点について努力をしたいと思いますから、佐々木委員の御意見に全面的に賛成の意をここで表しておきたいと思います。
  13. 櫻内義雄

    櫻内委員長 両君の御意見を尊重し、委員長において善処いたします。  一時まで休憩をいたします。     午前十一時一分休憩      ————◇—————     午後一時十四分開議
  14. 櫻内義雄

    櫻内委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢等に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。佐々木盛雄君。
  15. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 午前中に藤山外務大臣から、今回のアメリカ訪問の経過、内容等につきまして詳細承わりました。この間の本会議におきましては、まるで汽車の時間表を見るようでございましたが、本日は非常に詳細な御報告を受けまして、私たちも大いに意を強うしたわけであります。以下私は主として安保条約に関連する問題について、政府条約改訂に臨まれる基本的な態度について承わりたいと思います。  本日私が何か質問するというので、非常に党の執行部の方からも手控えるようにというお話でありましたが、私は事外交上のことに関しましてはやや心得ておるつもりでありますから、そういうことについては一つ御心配のないようにお願いいたします。しかしながら、私は事国家の運命に関する問題につきましては、決して茶坊主ではないわけでありますから、必要な場合には私はお聞きいたしますから、可能なる範囲において御答弁を願いたいと思います。  安保条約を全面的に廃棄せよという社会党の主張というものは、共産主義の侵略が現にヨーロッパにおいても、アジアにおいても行われておりまするこの事実に目をおおって、われわれ日本国民を侵略の脅威の前に立たせようというようなものでありまするから、われわれ保守党の立場からするなれば、こういう方々の日本に対する忠誠心をも疑わざるを得ないわけであります。そこで私は、祖国防衛というものは、いかなることにも優先して絶対的な、民族的な要請であると思います。しかしながらまだ自力により防衛能力のない現段階におきましては、最も信頼し得る国であり、また最強の軍備を持った国と同調提携する以外には道はないのでありまするから、日本としては現段階におきましては必然的に米国との協調防衛体制を確立する以外には方法はないと思います。そうだといたしまするならば、現行の安保条約におきまする日本の片務的な規定というものを、日米対等の立場に改めて、日本の自主性を貫く条約に切りかえることは、けだし私は祖国を思う日本人ならば何ら反対する理由はなかろうと思うのであります。従って藤山外務大臣アメリカ訪問は、こういう国民的な願望を背景として行われたものでありまして、私はここに本席を拝借いたしまして藤山外相の労苦に対し敬意を表するとともに、この国民的な悲願が無事達成されまするように今後の御健闘を期待したい、こういう見地に立って私は御質問を申し上げるわけでありまするから、社会党の方々の立たれておる観点とは根本的に異なった立場から承わるわけであります。  そこでこれから具体的な問題を承わりたいと思いまするが、この現行の日米安保条約において、日本に課せられておりまする片務性というものを清算して、そうして日米対等の立場に立った条約に切りかえることを主張するのであります。これは先刻も予算委員会におきまして総理の答弁もあったわけでありまするが、ややその間におきまして明確にされなかった点がありましたので重ねて承わるわけであります。これは単に旧来の安保条約をところどころを手直しするというようなものの考え方ではなくして、やはり対等の基礎の上に新しい条約を作り出すんだというものの考え方に立つべきではないかと私は考えるわけであります。こういう見地から考えまするならば、アメリカとフィリピンや、アメリカと韓国や、アメリカと台湾との間に結ばれておりまする相互防衛条約と同じような性格を持ったものに切りかえるべきではなかろうかと思う。従って日米安全保障条約からさらに進んで、日米相互防衛条約といった性格を持ったものに切りかえるというか、新しくそういうものを作り出していく、こういう考え方に立つべきであると私は思うのでありまするが、念のために御所見を承わりたいと思います。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 安保条約ができましたときと今日と情勢が違っておりますることは、ただいま御指摘の通りでもありますし、私もアメリカに参りまして、当時のことと今日との違いを十分に説明したわけであります。従いまして、今回安保条約を改正して参ります上においては、日本国際社会に立っております自主的な立場というものを主体にしまして問題を考えていくことは、これまた当然なことであります。従いましてその見地から、今回の問題を取り上げておるわけでありまして、昨年岸総理アイゼンハワー大統領と話された、日米間に新時代が来たという、その新時代に即応するような形において、問題を進めて参りたい、こういうふうに考えております。従いまして、日本の自主性を高めるという点において、われわれはその目的を貫徹して参りたいと存じておりますが、他の条約と比べてどうであるかああであるか、似たものにするとか似たものにしないとかいうような問題は、おのずから今後の問題でありまけれども、他の条約と同じようにしなければならぬというふうには、私ども考えておりませんので、日本の自主性を貫き得るような改正をやって参りたい、こう考えております。
  17. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それではまだ新しいものに切りかえてしまうのであるとか、あるいは一部分を改正するとか、あるいはまた——しかしもう今度は、少くとも現行の安保条約をそのままにして交換公文やその他でという考え方はなかろうと私は思うわけでありまするが、その点の構想を少し明らかにしていただきたい。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたような精神をもって作ることでありますから、新しい条約で参りますことが適当だと考えております。今後の交渉のことでありますから、今後のことについては申し上げかねますけれども、気持としてはわれわれはそういう考え方を持っております。
  19. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私も今お説のように、新しい立場に立って新しい条約締結されることを大臣同様に希望いたしております。  次に、簡単な御答弁でけっこうでありまするが、現行の安保条約日本にとって非常に片務的であるという最大のものは、アメリカ日本に基地を持つ権利はあるけれども、防衛する義務がないんだということが、最大の改正点になろうかと思うのであります。念のためでありまするが、この問題だけは基本的な問題として、もとより条約の上には明らかに規定されると思うのですがいかがですか。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 相互対等の立場で問題を扱って参ります。ただ日本は憲法上の制約がございますから、その範囲以上には出ることはできないことは当然であります。従ってそうした問題を頭に入れながら、相互対等の立場で問題を解決して参りたい、こう考えております。
  21. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に、現行安保条約におきまする片務的だといわれまするところの第二点は、アメリカ軍は日本の領土内を自由に通過移動できるし、また極東の平和や安全のためには、日本を基地としての海外出動も法律上はできることになっておりまするが、新しい日米の防衛条約におきましては、これらの点についても当然調整が行わるべきものだと私は考えるわけでありまするが、いかがですか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 具体的な一々の問題につきましては申し上げかねますが、先ほど申し上げましたように、憲法の範囲内において、対等の立場ですべて起ってくるべき問題を考えていきたいということで御了承を願いたいと思います。
  23. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 次に、新しい日米間の相互防衛条約というものはどういう範囲に適用されるかという問題でありますが、現行の安保条約におきましての米軍使用の範囲というものは、一つには日本に対して外部からの武力攻撃が加えられた場合であります。二つには、外国の教唆や干渉によって日本国内に大規模な内乱や騒擾が発生した場合であります。三つには、極東における平和と安全維持の場合、この三つの場合が現在の安保条約に明記されておるわけでありますが、これから新条約交渉に入られるに当って、私はこの三つの点について私の希望を述べたり、また御意見を承わりたいと思いますが、まず第一に、日本に対して直接武力攻撃が加えられた場合は、もとより言うまでもないことでありますが、そこで日本ということの概念の範囲というものを私たち少くとも常識的に考えるならば、日本の領土、領海、領空をさすと考えるわけでありますが、その日本の領土、領海、領空に対して武力攻撃が加えられた場合においては、もとより発動すべき条約であろうと思うのでありますが、この点はいかがでございますか。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本安全保障のために他国と条約を結ぶということは、申すまでもなく今日の世界においてこういうように科学兵器が発達しておりますときに、一国だけで自分を守れない。従って相寄る国によって国を守るということは当然のことだと思います。その見地から見て、われわれはアメリカとのこうした問題を解決して参とたいと思っておるわけであります。従いまして侵略というような問題が起ります場合に、それを防衛する立場を考えますことは私は当然のことと考えております。
  25. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 大臣、少し私の質問を誤解されておるのじゃないかと考えますが、その条約が適用される、つまり共同防衛の責任をアメリカ日本も持つ用意というものは、今言う日本の領土とか領海とか領空が武力侵略を受けた場合には、当然この条約を発動すべきものである、きわめてわかり切ったことであると思うのでありますが、いかがでありますか。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、日本自体が他国から侵略を受ける、そういうときに今日の軍事情勢からいたしまして、一国だけの力でもってこれを守るということはなかなかできないことは当然なことだと思うのであります。従いまして日本国への侵略の場合には、これが当然この条約目的になるわけだと思います。
  27. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 そこで承わりますが、領土、領海、領空というものはいずれも日本の主権の及ぶ範囲でありますが、これは外務大臣が直接専門でなければ条約局長に承わっておきますが、一体今の日本政府は、日本の主権の及ぶ範囲というものをどのようにお考えになっておりますか。北海道、本州、九州、四国という四つの島はもとより現に日本の主権の及んでおる範囲でありますが、それでは早い話が、南千島に対する日本の領土権は捨てたわけではございません。また沖繩小笠原等はアメリカの行政の管理下にはありますけれども、日本の潜在主権は認められておるわけであります。日本の潜在主権が認められ、ないしは日本が領土権を放棄していないところは、やはり日本の主権の及ぶべき範疇である、こういうふうに考えておられるのですか。
  28. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、これはやはり言葉の問題と申しますか、主権をどういうふうに考えるかとか、管轄権をどういうふうに考えるかとかいうようなことで、そういうような言葉でどういうふうに実体を表現するかという問題になるかと考えております。従いまして、もちろん日本の領域と申します場合に、領土、領海、領空が含まれるということは当然でございます。御承知通り沖繩には潜在主権がありますし、これは今後具体的なそういう実体をどういうふうに表現するかという問題になるかと思います。
  29. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 外務大臣沖繩小笠原等のいわゆる日本の潜在主権のあるところも、やはりこれは日米共同の力によって防衛すべきであるというふうにはお考えにならないでありましょうか。つまりまだできない条約でありますから将来のことをいうのもなんでありますが、基本的な考え方として日本が潜在主権を主張しておきながらそれを防衛しないというのも理論的な矛盾がありはせぬか、私はこう思うのでありますが、その沖繩とか小笠原等に対しては、まず日本人の希望としてはどんなふうなお考えでございましょうか。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約の内容につきましてはこれから審議を進めて参るわけであります。交渉をして参るわけでありますから、それらの点について今法律的な領土ということだけで問題を考えるわけにいかぬかと思います。
  31. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はそれでは大臣よりむしろ条約局長についでに承わっておきたいのでありますが、今これから予想されますところの、交渉に入ろうとされます日米の新条約とは関係なくして、私は現行の安保条約の範囲内において当局の意向を承わるのでありますから、これだけは御答弁ができると思います。  そこで、日本が潜在主権を認められておる沖繩小笠原等に対して日本が大体軍隊を出動させるということは、現行憲法の範囲内において禁止された範疇の中に入るでありましょうか。私はそれらの地域が侵されたときに日本の自衛隊が出動してもこれは自衛権の発動であって憲法違反ではないという考え方を持っておりますが、いかがでございましょうか。
  32. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、私から法律問題としてお答えすべくあまりにもむずかしい、法律的にも非常にむずかしい問題ではないかと考えております。沖繩につきましてはアメリカが統治権を持っているということは条約に書いてあるところでございますが、それ以上に出ましてそういう問題になりますとちょっと私からお答え申し上げかねる次第であります。
  33. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は大臣をことさら追及するわけではありませんが、社会党の諸君もしきりに大臣の見解を求めたいと言っておりますので、この際一つ御答弁を願いたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 これらの問題は非常にデリケートな問題でありますので、私から今、条約審議に入ります前にいろいろ私の意見を申し上げることは適当でないと思います。
  35. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私はこのことを深く追及するわけではございません。ございませんが、先ほど私が一つの問題を提起したごとくこの問題は非常に重大な問題であると考えますから、この点については遺憾のないような措置を講ぜられることを希望して私は質問を打ち切っておきます。  次に現行安保条約の中に明記されております外国の教唆や干渉によって日本国内に内乱や騒擾が発生した場合に、アメリカ軍を使用することができることは御承知通りでありますが、これが私の日本人の率直な国民感情からいたしますならば、日本の国内に起った内乱を外国人の軍隊によって鎮圧される場合によっては日本人が外国人の撃ち出す機関銃や大砲の前で殺されていくということを現実には見なければならぬということにもなるわけでありますから、国民感情としてまことに忍びがたいところでありますから、この新しい条約に臨まれるときには、この条項は一つ削除すべきであるという考え方もあるわけでありますし、そうでないという意見もあるわけでありますが、この問題については基本的な問題でありますから、大ざっぱなところでいいですが、大臣の希望を一つお述べ願いたいと思います。
  36. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本日本内地におきます治安を日本人によって維持することは当然なことだと思うわけであります。それだけの努力をしなければならぬとと考えております。それ以上条約上どうなるというようなことについては、今日申し上げかねるわけであります。
  37. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは今申しますような大規模な内乱が起ったと仮定いたしました場合に、アメリカ軍の出動を見なくても今日の警察力やあるいは自衛隊の力によって十分なる治安対策ができるかどうかという点については、治安を憂うる人々は一片の憂慮なきを得ないであろうと思います。これらにつきましては関係当局と十分御折衝の上であろうと思いますが、大体アメリカ側で差しつかえがなければ、あるいは日本側においては、どうしてもこの内乱の場合においてはかっての条項を削除するという場合におきましては、日本の現下の実力でもって十分であるというふうなお考えのもとに立って交渉に臨まれようというのでありましょうか、いかがでありましょうか。
  38. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は先ほども申しましたように、日本の国内の問題はできる限り日本人の手によって片づけるべきであって、そうしてそれらの努力をすべきであると考えております。従いまして日本の治安に対します対策というものにつきましては、国内行政の上において十分社会的にも秩序の維持をはかっていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  39. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 日本人の力によって日本の内乱を鎮圧することはもとより当然なことでありますが、現在の実情においてはさりとて野放しに楽観することのできないという事実もあるわけでありますから、これらの点につきましてはこの条約締結と並行して関係治安当局とも十分な対策をお立て願うことを私は要望しておくわけであります。  次に極東におきまする平和と安全の維持のために現行安全保障条約によってアメリカ軍を出動することになっておりますが、申すまでもなく日本は憲法によって海外派兵は禁止されておりますし、また新条約も総理の再三の御答弁によっても明かなように、憲法の範囲内において規定をするというのでありますから、海外派兵のできないということは大臣の御答弁を待たなくても明らかなところでありますが、ここに私は疑問を投げかけるわけであります。それはもし極東地域におきまして平和や安全を確保するために極東の地域の公海に日本の軍隊が出動することは、私は当然憲法の範囲内に属すると思うのでありますが、公海上におきまするわが自衛力の行使ということは、どのようにお考えになっておるのでありますか。
  40. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が憲法上の制約を受けておりますことは当然のことでありまして、その線に沿ってわれわれとしては問題を取り扱っていかなければならぬ、これまた当然のことであります。従いまして憲法の問題につきましてはわれわれは十分慎重に考慮しながらこれを今後の交渉でやって参りたい、こう考えております。
  41. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私の質問はそうではなくて、公海上における日本自衛力を使うことができるかどうか。今回の新条約関係のない立場において承わりますが、これは憲法の範囲内においては、たとい自衛の場合においてもできないというようなお考えでありましょうか、重ねて私は承わっておきます。新条約とからませてお考えになりますと非常にむずかしくなると思いますが、新条約ではなくして、早い話が現行の安保条約そのものにおきましても、原則論としてどのようにお考えになっておるか。外務大臣の見解、なければ条約局長の見解でもこの際承わりたいと思います。
  42. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 ただいまの問題も憲法上いろいろな疑義のあると申しますか、解釈上非常にむずかしい問題ではないかと考えております。従いまして公海上において具体的にどういう場合が起ってどういうふうな事態に遭遇したという現実の場合に沿って考えなければ非常にむずかしい問題じゃないかと考えております。従いまして、たとえば日本船舶が公海上で攻撃を受けた場合に、自衛権として救助に行くかどうかとか、そういう個々の具体的な問題でないと、一般的に解釈として申し上げることは私はちょっと困難じゃないかと思います。
  43. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それでは具体的に伺いますが、今あなたのおっしゃった通り極東の平和と安全維持のために公海上にあった日本の自衛艦が不当なる侵略を受けて攻撃されたような場合、これを助けるため日本の自衛艦を公海上に出動させる、これはいかがでありますか。
  44. 高橋通敏

    ○高橋(通)政府委員 純粋な自衛権の行使という場合でございますれば——確定した解釈を私が申し上げることはできませんが、私が今そういう事態を頭に入れました場合、たとえば日本の自衛艦が公海上にありましてそれに対して攻撃を受けたら、当然自衛権を行使してもいい問題じゃないかと考えておりますが、私、確定的な解釈を申し上げる地位にございません。
  45. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 最近の外務省はきわめて消極的な、あいまいな態度でおられるが、当りまえのことで、そういうたよりのないことを外務当局が考えておられるのでは困ると思う。アジアの公海上において極東の平和のために遊よくしておる艦船を撃沈された場合に自衛権が発動できないというようなことは、とんでもない暴論だと思う。しかしこの問題は今後の新しい日米の防衛条約を作る上におきましても必ず問題になるものでありますから、この問題を出したわけであります。たとえて申しますと、現にアメリカの第七艦隊が横須賀を基地として、あるいは第五空軍が日本の空軍基地を基地としてて台湾海峡にも出動しておるのはいなめない現実であります。そういう場合におきまして日米が共同の軍事行動をとることになりますと、これが遠い他国へ行っておったときは、日本は海外出兵の義務はございませんけれども、安保条約にもうたってありますような極東における平和、安全を維持するためにやっておりますときに、これが不当な攻撃を受けた場合には、共同防衛の義務が発生するのは当然のことだと思うのであります。でありまするが、これにつきましても外務大臣の御所見は今のところなかなか微妙なようでありますから私はあえて答弁を求めませんけれども、これは必ず問題になることであり、国民もこれに対しては重大な関心を払っておることでありますから、何らかの機会に明確な答弁ができるように、国民の前にすべてあいまいにするのでなくて、こういったことは国民に言ったからといって別に悪いことではない、国民はむしろ安心をするくらいのことでありますから、この点についてはとくと御研究願いたい。いつまでたってもわれわれの意見が確定をしておりませんで、条約に臨むことはできないのですから、すみやかに見解を確定し、統一していただくことをお願いしておきます。  それから条約実施上の問題や在日米軍の基地使用の問題あるいは共同作戦の問題等につきましては、将来かりに結ばれます日米相互の防衛条約におきましても、今の安保条約と同じように行政協定のような具体的な細目取りきめをするところがなければならぬと思うのであります。これはやはり藤山さんの構想としては、基本的な相互の防衛の条約を結んで細目は行政協定その他の取りきめに譲るべきである、こういうお考えでありましょうか。
  46. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 条約上十分規定しなければならぬ基本的な問題については、当然条約上に規定すると思います。それから派生してくるような問題については、むろん本条約にきめませんでも行政協定に譲りあるいは別個の規定に譲るということがあり得ると思います。
  47. 櫻内義雄

    櫻内委員長 佐々木君に申し上げますが申し合せの時間がきましたので、お取りまとめ願います。
  48. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 なるべく簡単にやります。  そこで、将来日米の共同作戦ということについておそらくは事前協議ということが行われると思うのです。これは当然のことだと思うのですが、事前協議をやるときに、日米双方に拒否権というか断わるというような項目を設けた方がいいでしょうかいけないでしょうか。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いろいろな場合に当然協議することになるべきはずだ、自主的に改正をして参りますればそうなると思います。協議をする以上は日本側の意思がそこに十分発露されるということも、これまた当然であると思うのでありまして、そういう見地に立ちまして条約審議に臨んで参りたいと思っております。
  50. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 その場合に、双方の意見の一致しないときにおいては、拒否し得る権利は、条約の上に明記さるべきものとお考えになっておるのかどうかという点をちょっと承わっておきます。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この場合条約上にどういうことを明記するかしないかというような問題については、今後の交渉の過程によって決定していくことだと思いますが、しかしながら私がやろうとしております条約に臨む態度は、ただいま申し上げたような態度で臨んで参りたい、こう思っております。
  52. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 もう二項目だけ一つお許しを願いたいと思います。  もう一つ承わりたいことは、七年前の現在の安保条約が成立いたしましたときに、やはりこの安保条約の冒頭には無責任な軍国主義の脅威の前に日本が置かれておるということが前提されております。私は、この事態は今日依然として存在しておると考えております。そのことを裏づけするかのごとくに藤山外務大臣はこの国会の報告におきまして、ダレス国務長官との会談において国際共産主義が依然として世界平和の脅威となっておることについてアメリカ政府意見が完全に一致したと報告なさっております。そこで私はそういう観点に立って考えますと、ここに新しく結ばれるべき日米相互の防衛条約というものは、反対する側の方々から言えば全く見解を異にするわけでありますが、私たち保守党の立場から言うならば、やはり事は日本アメリカとの運命共同の立場に立った共産主義に対する防壁的な役割を演ずべきものであると私は考えるわけです。この点についてはいかがにお考えですか。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 もちろんアメリカ日本とがともに手を携えて平和を念願する意味において、この問題を取り扱っていくわけであります。ただ条約文上に、前文にいろいろなことを書くかもっと簡素にするかというような問題につきましては今後の折衝の過程から出てくる問題だと思います。
  54. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 それからこれはまた重大な点ですからこの国会を通して明らかにしておきたいと思いますが、きのう岸総理大臣が参議院でお答えになっておりますところによりますと、日米間に結ばれるべき新しい条約においては、在日米軍の核兵器の持ち込みを認めないようにするというような意味に解される答弁がありまして、この問題をめぐっていろいろと総理の意中も揣摩憶測する向きもあるようでありますから、その意味において私は承わるのでありますが、私は今日世界の各国、永世中立国のスイスまでが核武装しておるというような段階におきまして、日本防衛の責任を担当しなければならないアメリカの持ち込む兵器について、たとえば核兵器がいいとか悪いとかそういったことまで縛りつけるということは、真に日本の防衛上とるべき態度ではない、私はかように考えるわけでありまして、核武装の問題のごときは条約上に明記をすべきではないという考え方を持っておる。反対の意見もあるようでありまするが、私はそういう考え方を持っておりまするが、藤山さんの御意見もこの際承わっておきたいと思います。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 総理が言われたことについて若干の誤解があるようでありまするが、条約を作ります上において配備その他の問題につきましては協議をいたしていくという立場をわれわれは考えておりますので、そういう立場からこの問題を扱って参りたい、こう考えております。
  56. 佐々木盛雄

    ○佐々木(盛)委員 私は重ねて申し上げまするが、核武装の問題は条約などに明記しないようにしていただきたい。おそらく今の社会党の人たちはそういうことは好みません。好みませんけれども、私は今日の兵器の進歩の現段階におきまして、このことを明記して金縛りにすることはどうかと考えるわけであります。  最後に一点承わっておきたいのは条約の期限の問題につきましても、これはあまり無期限のものでも困ると思うのでありまするが、どのようなことをお考えになっているかということと、私は許された時間がだんだんなくなって参りましたので、もう一点それにつけ加えて質問いたします。これとは全然別個のことでありますが、本日の新聞によりますと、ソ連のフェドレンコ大使から日本の外務省に向って日ソの平和条約締結しようじゃないかという申し出があるようであります。私は領土問題に対する双方の見解が非常に食い違っております今日の段階におきましては、簡単にこれに応ぜられないような立場にあるのではなかろうかとも考えられるのでありますが、この問題に対する外務大臣としての所見を最後に承わって私の質問を終りたいと思います。
  57. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 期限の問題は、当然国際条約にはあることでありますから、そういう観点に立ちまして私は交渉をして参りたい、こう存じております。  なお、フェドレンコ大使が何か外務省に平和交渉の申し入れをしたというのは若干誤解があると思います。昨日当該局長のところに着任のあいさつで儀礼的に見えたと同時に、そのときに今までのいろいろな関係について意見交換をした事実があります。それが誤まり伝えられたのではないかと思っております。まだ正式に申し入れをしたというような段階ではございません。日本といたしましては、むろん領土問題が解決しない限りにおきまして、日ソ平和条約を作るわけにいかぬことは、これは国民的な要望でございます。従いまして、それらの点についていろいろ明瞭になってきますれば、交渉に応じても差しつかえないと存じておりますけれども、明瞭になりません段階において交渉に入りまして、いたずらに日本国民の感情を刺激いたしますことは、かえってソ連との友好関係を害することになろうと思いますので、私どもはそうした点について十分な見通しがついてから入るのが適当だ、こう考えております。
  58. 櫻内義雄

    櫻内委員長 森島守人君。
  59. 森島守人

    ○森島委員 私は先日は総理大臣の施政方針演説、藤山外務大臣のいわゆる旅行報告というものを拝聴いたしました。そうしたところが台湾海峡に直面する日本の重大危機にもかかわらず、ワルシャワ会談の成功を祈る、あるいは平和的解決を望むのだというだけでございまして、何ら具体的な方針政府は明らかにしておりません、今朝もまた引き続いて藤山さんの報告を承わりましたが、安全保障条約その他の点につきましては、相当詳しい御説明がございましたにもかかわらず、ことさらに台湾海峡等の問題については説明を回避するがごとききらいのありましたことは、きわめて遺憾であります。私は国民とともにこの点に非常なる失望を感ぜざるを得ないのでございます。私は時間の関係もありますので大体中国の問題を中心といたしまして重要なる諸点について質問をいたそうと思うのでございますが、冒頭に一つお聞きしたいのは、現政府は、今までもなお外交の三原則というものを掲げております。そうして矛盾撞着がないのだということを唱えておる、藤山さんもこれに同意をしておる。しかし中近東問題に関する国連総会、安保理事会等における論議を見ますと、私は政府もすでに馬脚を現わしておる、その矛盾を露呈したと信じておるのでございますが、今日でもなお藤山さんは矛盾がないのだということを御確信になっておるかどうか、この点を簡単に伺います。
  60. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は今日政府がとっております三原則、国連中心にしてあるいはアジアの一員としての立場、自由主義国との協調、こういうものが私は特に矛盾をしておるものとは考えておりません。むろん世の中のことでありますから全然矛盾のないようなものが絶無であるということは——蒸溜水みたいなものでなければないわけでありますから、それはいろいろの問題のときに困難もありましょう。しかしやはりわれわれはアジア人の立場としての、自分立場を十分理解した上で、その上に立ってやるということは必要なんでありまして、従ってそれを先進国あるいは自由主義陣営の西欧の側に十分説明していくということも、われわれの当然とらなければならぬ外交上の立場だと思うのであります。従ってそういう意味においてわれわれとしては矛盾に特に感じてはおりません。
  61. 森島守人

    ○森島委員 そこでお聞きしたいのは、岸総理は一日の参議院本会議において加賀山議員の質問に答えまして、外交三原則の自由主義、民族主義の矛盾は、よく掘り下げれば必ずどちらかに間違いがある、これを国連中心に是正していくというのが日本外交の基調だと、きわめて岸さん一流のソツのない御答弁でございますが、私は率直に言って岸さん自身も矛盾のあることをこの際表明しておるものだ。ただいまの藤山さんの御答弁を承わりましても、従来は矛盾がないのだということで片づけられておりましたが、矛盾することがあるのだということを表明せられたものとこう受け取るのでございます。  なお次にお聞きしたいのは、私が最も確実な筋から聞いたところによりますと、外務省首脳部におきましては、レバノン問題が論議されたときに、当初はレバノン問題は内政問題だ、従って第三国の干捗や介入を許さないのだという方針を確認しておった。しかるに米国の派兵が決定いたしますると、直ちにこれは米国が共産主義陣営と対決をする重大決意をしたのだという仮想なる結論に達して即日決定がくつがえったという事実があるのでございますが、私は今度の台湾海峡の問題に対しましても政府が何らの意見を発表しないというのは、このあつものにこりてなますを吹くの類であって、政府の無定見と無方針とを露骨に示したものと断定せざるを得ないのでございます。そこでワルシャワ会談に関しましては、岸総理は新聞記者の会見において、ただ具体的にどう処理していくかについては、利害関係と歴史的な過去のいきさつを持っておる関係国が検討するのが筋であり、第三者的な国がこれに干渉すべきでないと信ずると述べておりますが、藤山さんは、日本はこの問題に関して第三者的な立場に立っておるということをお考えになっておるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 言葉の意味において、第三者的な立場であるかどうかということは、言葉の上の問題だと思います。しかし日本として、この問題が非常に重要な利害関係を持っておるということは、私ども十分承知しております。従いまして、持っておれば持っておるだけに、われわれとしては軽率に発言もできないし、ワルシャワ会談の成功を祈る、そして刻々に動いております事情等につきましても、十分われわれは了知しながらこれに将来対処していくことを考えなければならぬ、こう考えております。
  63. 森島守人

    ○森島委員 第三者的立場に立っておるということは岸さんは断定しておる。私はかかる問題については、日本が一番密接な利害関係を持っておるものでありますから、積極的に進んで日本方針を明らかにして、アメリカの誤まれる政策を是正するだけの熱意を持たなければならぬと思うのでございますが、この点については、日本の安全を確保する点から申しましても最も重大な問題でありまして、私はこの点に対して政府はほおかぶりしているということは許すべからざることで、国会を通じまして、国民の前にその方針を明らかにされることが必要である、こう確信いたしておるのでございます。私はこの点に関しましては、英米両国意見は今日までのところ相当に食い違っておる。今朝の新聞を見ますと、ダレス長官アメリカ国内の世論、内外の世論に押されまして、態度を変えてくるというきざしが見えておりますけれども、今日までのところは英米は完全に対立しておる。この間に処しまして、日本は果していずれをとろうとするのか、この点を明らかにしていただきたい。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は必ずしも英米が完全に対立しておるとは存じておりません。またいずれの国がやることにつきましても、その国が完全にいいとか、悪いとか、あるいはその国だけがひとりいいのだということはあり得ないと思うのでありまして、私としては、率にどの国に対しても忠告すべきものは日本立場から忠告をする、そうしていくというのが適当だと考えております。
  65. 森島守人

    ○森島委員 私は抽象的に忠告をするとか、勧告をするとかいうことを聞いておるのじゃない。この問題に関していかなる意見を具体的に出されたかということを承わっておる。この点に関連しまして、ロイド外相との間に藤山さんが取りかわされたという会談の内容を、たとい輪郭でも明らかにされることがこの際必要だと思う、こう確信しておるのでございますが、この点に関する御意見を承わりたい。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ロイド外相と私との話し合いは、全く私的な懇談であります。同時に、お互いに率直に話し合いをしたのでありまして、それらの意見を一々申し上げますことは、今後国連等におきまして、他の国の外務大臣に会いますときに、藤山と話をすれば何でも漏れてしまうということであっては相ならぬと思いますので差し控えねばならぬと思います。
  67. 森島守人

    ○森島委員 この点につきましては、岸総理は二十九日の内閣記者団との会見中、外交折衝の内容を公表することは、国際信義の上からも、外交慣例の上からも許さるべきではない、一つのチャンスを待つ必要がある、こう言っておられる。秘密を守ることの必要なことは私も存じております。しかしかかる日本の運命に至大の関係を有する問題でございますが、藤山さんが私的な会談であって、これを漏らしてはこれから話ができぬとおっしゃる。それならイギリスの外務大臣と打ち合せられて、日本にこういう重大な関係があるのだということをお示しになって、イギリスの外務大臣とお話し合いの上で、これを発表されるつもりがあるかないかということをあらためて承わりたい。
  68. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 将来の問題としてそういう必要がありますれば、会談に当りましてそういう心組みで会見をすることにいたして参りたいと思います。
  69. 森島守人

    ○森島委員 私は将来の会見のことを言っているのではない。すでに意見交換されたその内容について、大体の輪郭を、イギリスの外務大臣の了解を取りつけた上で、国会において御発表になるつもりはないかどうかということを尋ねておるのです。
  70. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 先般の問題の内容、話し合いました経緯につきまして、今ロイド外相に何か了解を取りつけて、そしてそれを発表するという考え方は現在持っておりません。
  71. 森島守人

    ○森島委員 それでは今後この種の問題につきましては、お話し合いの際には、日本国民にある程度のことを発表するだけの自由を確保してお話し合いにならんことを私は要望しておきます。  中華人民共和国との関係が最悪の事態に陥っていることは御承知通りです。これは貿易協定に対する善後措置を政府が誤まったという点と、長崎の国旗事件に対する政府の態度に出ていると思います。根本はやはりアメリカに追随して、中華人民共和国との間に正常な国交を回復しないという政府の根本的な方針に出ているものと私は了解しているのであります。すでに中華人民共和国は、私が指摘するまでもなく十年近くも確固たる政権を保持しております。国土の大半を支配しており、そしてバンドン会議やあるいはソ連との間における交渉において、平和五原則あるいは平和十原則に加盟をしております。この点から考えますと、私はすでに中華人民共和国との間に正式に国交を回復し、これに正式承認を与うべき資格は十分に持っておる、こう信じておるのでございますが、これに対してもあえて正式承認を与えないという理由が果してどこにあるか、この点について明確なる答弁を承わりたい。
  72. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本として、むろん歴史的ないろいろな事実を見て参らなければならぬことは当然であります。他面におきまして中華民国と日本が正式関係を持っておるということも考えて参らなければならぬわけであります。従いまして、そうした問題がやはりいろいろな角度から解決されていくというようなことを考えて参らなければならぬと同時に、やはり国際社会における中共地位等につきましても、われわれとしては十分考えて参らなければならぬのでありまして、たとえばイギリスにおいても、承認はいたしておりますけれども、中共の代表権という問題については現在反対しておるというような実情は、われわれも十分考慮して参らなければならぬ世界中共に対する見方だと存じます。われわれはそういう観点からして、こういう問題についてはできるだけ慎重に考えて参らなければならぬ、こう思っております。
  73. 森島守人

    ○森島委員 ただいまの御答弁を承わりましたが、私は一、二点批評を加えて私の所見を述べて、御質問したいと思います。  中華民国との関係とおっしゃいますが、いつまでも、中華民国との間に平和条約を結んだんだ、これで中共との間に正常な国交を回復できないのだというふうな態度をおとりになりますと、いつまでたってもこの窮状を打開できない。すでにスペインの革命政府の実例というものを見ましても、一国に革命が起きて二つの政権が対立しました場合に、これに承認を与えているという例は幾多ございます。現にアメリカのごときもこの例があるのでございまして、戦後のことでございますが、ポーランドはロンドンに亡命政府を作った、アメリカはこれに正式承認を与えておる。しかるにルブリンに別個の政府ができますとアメリカは百八十度の転換をして、ルブリン政府承認をした事例があるのであります。私は日本と中国との密接なる関係から申しましても、中華民国の関係があるからといって承認はできないというのは理解できない。中華人民共和国を承認して、あと台湾政府との関係をいかに是正するかということは別個の問題と考えていい。この点にこだわる必要はないと思う。  第二点の国連代表権の問題、これはなるほどイギリスはその通りなんです。しかし国連代表権の問題が片づかぬからといって、これを承認しないということは誤まりである。現に国連におきましては、両回にわたって決議をいたしております。国連の代表権の問題と承認の問題とは別個の問題であるという明確なる決議をしておるのでございまして、この点にあえてこだわる必要は私はないと思う。  それからもう一つは、きょうは岸さんも述べておりましたが、侵略者の決議を国連がやっているのだということがございます。なるほど侵略者の決議を国連はやっております。しかしながら侵略者の決議なるものは、すでにジュネーヴで朝鮮に関する休戦協定が成立しました。そのときに事実上解消しておると見るべきでありまして、この決議を十年一日のごとく、金科玉条としておる政府の態度は私は誤まっておると思う。しかも国連の決議自体が必ずしも正しいかどうかということになりますと、私はそこに問題があると思う。たとえば一昨年でありましたか、イスラエルがエジプト領に侵入しました。これは不法行為であることはもちろんでありますが、これに対しても、当時の国連は侵略者という決議をいたしておりません。かくのごとき不公正、へんぱな行動が国連にあるにかかわらず、この侵略者という国連の決議に今日もなお拘束されるというがごときは、私は政府としてとらざるところであるということを述べておきたいと思うのでございます。  次に貿易協定の問題でございますが、去る七月三十日本委員会で私は中国の根本的態度は敵視政策を放棄すること、二つの中国の陰謀に加担しないこと、三つ目には、国交の正常化を妨げないことの三点にあることを指摘いたしました。岸総理に対して中国との話し合いに入るきっかけを作るために、モスクワ、ジュネーヴ等の第三国において中国官憲と非公式に接触する機会を作ったらどうかということを述べたのであります。接触する機会を作るにいたしましても、時期はすでにおそきに失しているのではないかということを質問いたしましたら、岸さんはこれを全面的に肯定いたしております。しかるにその後政府としては何らの御措置もなく、依然として拱手傍観、静観的態度を持続しておるようでございますが、政府はこの間におきまして、何らかの御措置をおとりになったことがありますかないか、また今後おとりになる意向があるかないかを承わっておきたいと思います。
  74. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共との貿易関係その他を正常化していくという問題については、政府といたしましても、むろん重要な問題でありますので、できるだけそれらの打開の道について考えております。ただしかしながら、現在までのように、いたずらに日本だけが悪いというような立場政府が行動をするということは考えておりません。やはりお互いに反省しながら問題を考えて、両国の平和のために、隣邦の親善のために尽していくという考え方でいきたいと存じております。むろんただいまお話のありましたような、方法論として大使会談を開くというようなことも一つの方法でありまして、われわれはそういう問題につきましては適当な時期においてはあえて大使会談を開くことにやぶさかでないわけでありまして、そういう問題等については、われわれもあらかじめ研究をいたしておるわけでございます。
  75. 森島守人

    ○森島委員 私は全体からいいまして、責任の大半は日本にある、こう断定いたしておるのであります。従ってなるべく早い機会に、こういうきっかけを作る機会を作っていただいて、この席上において日本の真意も伝え、そうして話し合いに入る段取りにいかなければ、いたずらに拱手傍観をしておっては時期を失するのみであると私は信じておるのであります。  なお、貿易協定拒否の問題につきましては、淺沼書記長の代表質問に対して、岸総理大臣は日・鮮・台の同盟の否認、核兵器の持ち込み禁止などは日本が自主的に考えるべき問題である。打開交渉条件とすべき問題ではないということをおっしゃいました。私は全面的にこれを肯定いたします。しかし日本がほんとうに真意を伝えんといたしましたならば、今何らの折衝機関のない、しかも何らの関係のない日中両国関係でありますから、私は何らかの機会をとらえて日本の真意をほんとうに中国側に伝えるだけのことをしなければならぬ、こう思っておるのであります。ことに岸さんは国会で声明しておるからいいじゃないかというふうな御態度でございますけれども、岸さんのそつのない答弁については世に定評があります。これはだれも信用していない。その内容いかん、誠意いかんについては非常な疑惑を持っておる今日であるから、この空気が中国側に反映していることは私は当然であると思う。日本政府から進んでこういう真意を伝える機会を作ることが必要であると私は信じておるのであります。  次に、国旗事件に対しては陳謝をしろというふうな質問は了解ができないのだということで、はなはだ木で鼻をくくったようなあいさつをしておられますが、藤山さんもすでに御承知でしょう。岸さんは、かかる事件の起きたこと自身に対して、これは手落ちがあったということを、国会において遺憾の意を表しておられる。この点について私があなたに質問をいたしましたときにも、事件全体に関して遺憾の意を表するんだということを御答弁になったことは速記録を見ていただけば明らかになっております。そういたしますれば、岸さんの答弁に対して、岸さんの声明に対して内外が信をおけない今日、直接中国側の代表者に対して、今申しましたような遺憾の意を表せられるということは、私は何ら差しつかえないと思う。この点に関する御意見を承わりたい。
  76. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 長崎の国旗事件というものは、起りました事件そのものはそう大きな事件であろうともわれわれは思っておりません。また日本が国をあげて陳謝をしなければならぬほどの何か計画的な問題でもなかったと思います。総理の心持で遺憾であったということをもって私は十分に日本政府の態度は示されているのではないか。ことにそれが国会の席上で言われなかった以上は、これははっきりしたものではないか、それ以上に何か陳謝の特使を出すとか、そういう程度までこの問題を日本側が卑屈に考えるのは、必ずしも適当ではないのではないか、こういうふうに考えております。
  77. 森島守人

    ○森島委員 国旗の問題に関しましては、政府の措置に非常に誤まりがあった。岸さんは布切れでも取り扱うような答弁をしておって、一国の国務大臣の答弁ではありません。法務省の刑事局長あたりの答弁くらいをやっておる。これでは両国の間に正常な外交関係を打ち立てる、また関係をよくしていくという上においては非常に手落ちになると思う。すでに国会において遺憾の意を表せられた以上は、さらに中国側に対して遺憾の意を表せられても何ら卑屈とは私は思わない。間違ったことをやれば悪かったと改めるのは何らおかしいことではない。私は政府の考えは間違っておる、こう思うのであります。  次に私が承わりたいのは、こういうふうにして考えてきますと、私はこの際、貿易協定の問題について妥結の道を開く最もいい方法は、民間協定に一歩を進めて政府間のレベルにおいて、民間協定と同様の内容を有する貿易協定を結ぶという方針に切りかえられることが私は適当じゃないか、こう思うのでございますが、その点に関する御意見を承わりたい。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日中間の関係を打開するためには、いろいろな方法が将来にわたって考えられると思います。従いましてわれわれとしましても、その方法論としてはいろいろな問題をむろん研究して参らなければならぬと思います。ただ現在の段階におきまして中共側と日本側とがすぐに交渉するというのには、今申し上げましたような事情からして非常に困難ではないかと私は考えるのであります。
  79. 森島守人

    ○森島委員 私は全般の政治情勢中共承認の方へ持っていくように日本が働きかけることが必要だと思う。その意味におきまして、ただいま申し上げましたような政府間のレベルにおける貿易協定ということを提示した次第でございますが、この点につきましても前例がないわけではございません。岸さんは満州国の要職についておられた。そのときに岸さんは、満州国政府日本立場が違うかもしれませんが、ドイツに対して貿易協定を結んでいる実例があります。また別に通商代表部を相互に設置した実例がありますから、岸さんとしてはこれは別に異存はないのじゃないかと私は思います。またもっと大きな問題——貿易協定関係なく、政治的な関係を有する重大問題を、両方の承認問題と別個であるという建前のもとに締結した実例もございます。その実例の一つとしましては、やはり満州国が東支鉄道を買収したという協定がございますが、このときもこの協定の調印は承認、不承認の問題とは別個であるという建前のもとにりっぱな政治協定を行なっておるのであります。もう一つ例を引きますれば、蒋介石のひきいる北伐軍が北進しまして武漢に政府を作った。蒋介石は亡命いたしましたが、共産系の勢力が台頭しまして武漢政府というものを作っております。そのときには、さすが利害に目の鋭い、現実的な点から打算する英国でございますから、英国政府は北京の中央政府が、あるにもかかわらず、この漢国に根拠を持つ武漢政府相手としまして、九江、漢国の租界返還の協定を結んだ。これは陳友仁・オマレー協定として有名であります。これらを見れば、政府としても腹さえおきめになれば、この貿易協定の難関を政府協定に切りかえて一挙に解決する道があると私は信じておるのでありますが、この点に対する藤山外相の御所見がありましたら、承わりたい。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日本が現在中共承認しないという立場をとっておりますことはむろんでありますが、先ほど森島委員の言われました中共承認するという立場でなしに、中共を現在承認してないという立場でもって大使会談を開くということも一つの方法ではあるとわれわれも考えております。しかしそれらの問題につきましては、将来の具体的な経過を見てからでなければ、何も現在の段階では申し上げかねます。
  81. 森島守人

    ○森島委員 具体的な経過を見てからとおっしゃいますが、きわめてばく然とした表現で、具体的な経過というのは一体どういうことをおっしゃるのですか。
  82. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま中共側においては、日本岸総理のとっておられる態度あるいは日本態度等について、私どもから推測すれば誤解があると思います。またしいて誤解を積み重ねていくような状態になりますことは、私どもは避けなければならぬと思います。従って静観ということを申しておるのであります。従ってこういう状態のもとにおいてすぐそういういろいろな打開の方策の手が打てるとは私ども思っておらないのでありまして、もう少し情勢を見ながら参らなければならぬというのが、私どもの今日の態度であります。
  83. 森島守人

    ○森島委員 依然として積極的静観といいますか、消極的静観といいますか、静観主義。これではいつまでたちましてもこの重大な日中関係というものは打開できません。私は政府が一日もすみやかに何らかの具体的な措置に出ることを希望してやまないのでございます。  これ以上は、議論になると思いますから、差し控えますが、最後に一つお聞きしたいのは、佐々木さんからも今お話のありました通り、国際共産主義が依然として世界平和の大きな脅威となっておることについて、米国政府との間に完全な意見の一致を見ましたという御説明がございましたが、これは具体的に言ってどういうことでございますか。抽象論でなしに具体的に、ことに極東において、アジアにおいてどこに共産主義の脅威という格好で現われておるかということを一つお示し願いたい。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在共産主義国家にいたしましても、平和共存の道を歩き、おのおのの信条を尊敬しながらいくという国もあるわけであります。しかし国際共産主義のなにによって何か世界革命を企図するという動きが絶無とは私は申し上げかねると思います。従いましてそういう点につきましては、われわれ自由主義を信奉しておるものから見ますれば、やはり相当警戒もし、それらの問題に対しては十分な対策を講じて参らなければならぬと思うのであります。これはある意味からいえば思想のなにでもあり、あるいはそれがいろいろの形の行動にも出てくるわけでございまして、そういう意味においてやはり私は国際共産主義の脅威は現在あると思っております。
  85. 森島守人

    ○森島委員 非常な抽象論で私は納得できないのです。これは藤山さんがダレス一派の先人主に支配された世界観によって動かされたと見るほかないのでございます。  私はさらにお尋ねいたしますが、今台湾海峡に起っている事件に関しましては、これは国際共産主義の脅威であるかどうか、この点をお聞きしたい。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現在起っております台湾の事態そのものが直接に国際共産主義の脅威であるかどうかということは、私はむずかしい問題だと存じます。しかしながら先ほど申し上げましたように、国際共産主義が、直接世界革命を意図するというような問題によってそれぞれ活動しておりますこともまたこれ事実なのでありまして、決してそれを私は否定する必要はないと思います。現状のそうした動きというものはわれわれ自由主義陣営におりますものは、はっきりつかんでいくべきが適当だと思います。
  87. 森島守人

    ○森島委員 きわめて不明決な御答弁で、私は満足できないのでございますが、一つお聞きしたいのは、台湾海峡において米国が武力を用いておる。これは元来国内問題であるべき台湾の問題に関して第三国の不当な武力干渉によって起きているのが現在の金門、馬祖両島の問題でございます。台湾問題も同様でございます。これに対しては藤山さんは一体どうお考えになりますか。
  88. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 どの場合におきましても、事件が起ると、全く白紙の状態に事件が起るということはないのでありまして、やはり過去の歴史的ないろいろな流れがあるわけでございます。従ってその歴史的な事実の中にはあっちが悪い、こっちが悪いといって一方だけが悪いというわけにはいかぬ点がたくさんあるわけであります。従ってそういうことをわれわれは十分考えて参らなければ、ほんとうの現実というものはつかめないのであります。従って事件が起ったら、すぐどっちが悪いんだとその問題を断定するわけには私はいかぬと思います。そういう意味においてわれわれは考えていかなければならぬ、こう思っておるのであります。
  89. 櫻内義雄

    櫻内委員長 森島君、大体時間が参っております。
  90. 森島守人

    ○森島委員 じゃ私はもっと突っ込んで一つだけお伺いいたしますが、台湾問題の根本は、私は元来は国内問題であるべき台湾問題に関して、米国が不当に台湾と条約を結んで、ここに駐兵をやっておるところに原因があると思う、日本もこれと同様でありまして、台湾は元来あの大陸の全部を支配している中共に帰属すべきことは当然であります。それにもかかわらず台湾を切り離してこれと条約を結んだところに日本の対中国政策の根本的過誤があるということを私は信じております。これについてはいろいろ御意見もあると思いますが、私はこの見地に立ちまして、中共承認問題のときも、台湾の問題をあとに残しておいて解決する道があるということを確信しておる。一国に革命が起きまして、一方の政府が大きく支配する。これと手を結ぶということは当然なんです。あとは中国の問題につきましては、台湾の関係は別個に是正するという方法もあると思うので、私は今政府もこの根本的見地に立って中国問題に対して根本から考えを改められんことを要望して、私の質問を終ります。
  91. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後二時三十一分散会