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永野国務大臣 日本の
海運行政の
基本的理念はどんなことであるかという御
質問だと思います。当
委員会では私はあるいはその辺の
機会が今までなかったかとも思いますが、お説の
通り、実はいろいろな
機会に、私の
理念と申しますか、信念は申し上げたことがあるのであります。と申しまするのは、この四つの島に九千万の人口が閉じ込められておる
日本人がどうして生きるかという、その基本問題の解決に
海運の
関係が大きく重点を置いて
考えられなければならないと私は
考えておるのであります。これは
日本の
民族性、それから
日本の
立地条件、いろいろな点を
考えまして、
日本の
経済自立を達成する
基本的政策の中に
海運政策が大きな力を占めなければならぬと私は確信しております。それが皆さん御
承知の
通り戦争によって根こそぎなくなってしまって、しかもそれに対する
保険金すら棒引きになったのでありますから、何らかの
国家助成をすることによってこの
基本国策、すなわち
日本の
経済の
自立をはかっていく上に欠くことのできない
海運事業に対する
保護育成ということは
考えていかなければならぬと
考えております。少くとも
最小限度に見ましても、
海運だけの
国際収支の残が莫大な、年々数億ドルという
支払い勘定になっておるというような
状態は、
最小限度に見ても回復しなければならない。戦前は、
海運関係の
運賃収支に関する
国際収支のバランスは絶えず
黒字になっておって、
一般貿易の赤字はこれで補てんしておったのが、今では
貿易の
黒字を、あるいは
貿易外のいろいろな収入の
黒字を
海運の
関係でむしろ減しておるというような
現状は一刻も早く脱却したい、こう
考えております。従いまして、
海運の
助成政策というものはどうしても
考えられなければならぬ、こう
考えておるのでありまして、私、
専門家でございませんからこまかいことはよく存じませんけれ
ども、漫然と、六百万トン
程度は今申しました
日本の目的を達する上に必要だ、こう
考えまして、それをどうして作っていくかということが具体的の
海運行政の使命だ、こう
考えております。十四次造船の問題についても、御
承知の
通り非常に
不況でありましたので、場合によったら十四次造船は見送ってもいいのではないかというような議論もあったのでありますけれ
ども、私の今申しますことは
日本の
基本国策であって、目先の一年、二年、景気、不景気によって左右すべきではない、こう
考えて、十四次造船の計画をそういう反対論があるにもかかわらず強行して参ったのであります。そういうような意味におきまして、大局から見て
海運行政の中にそういう
助成政策をどういう形で取り入れるかということがいろいろ
考えておられます中の
一つとして
利子補給の問題があるのであります。いろいろとすでによく論じられていることでありますから、くどくどしく申し上げるまでもないと思いますけれ
ども、とにかく三千億になんなんとする
海運業者の借金は、
保険金がもらえたらその借金はなかったはずのものが、国家の
政策の犠牲になって
保険金を取られたがゆえに出てきた借金であるから、せめてそれの利息ぐらいは補給してくれないかというようなことが理論づけられる根拠になっているのであります。従いまして、
海運というものを
日本の
基本国策の中に取り入れてこれを
助成しなければならぬということが決定しておりますと、何らかの形でそれを行政の上に具体化するという今の行政に応じてまず
利子補給ということも
考えられる
一つの
方法だと思いまするので、三十四年度には一応私
どもの責任において
利子補給の金額を大蔵省に要求しております。私は、これはぜひ認めていただきたいと思うのであります。ただ、今申し上げます
一般論は、うぬぼれかもしれませんが、大体世間の同情を得ていると思うのでありますけれ
ども、それに対しまて、実に残念なことではありますけれ
ども、そういう理論を抜きに、
利子補給という問題にからまるあまり明朗でない空気がなお払拭し切れないでおるので、
利子補給というと何かいやな問題が伴うのではないかという理屈でない
一つの空気があるのが
一つと、それから、これは
海運業者に対していわゆる自粛自戒を求めるという形でたびたび論議されているのでありますけれ
ども、
海運業者の仕事の運営ぶりが、今こそしゅんとしておりますけれ
ども、一、二年前までは非常に派手な時代がありました。これは全体の経費から申しますときわめてわずかなことなんでありますから、理論的に申しまするとそんなものは九牛の一毛でありますけれ
ども、印象的にそういうつまらないことが、大きな問題を
考えるときにかなり大きな
影響を与えておるのであります。従いまして理論一本やりではこの問題を踏み切るというのはなかなか困難でありまして、そういう第三義的、第四義的の論拠と申しますか、反対論もこれを払拭しておきませんと、本筋のこういう主張は実現がなかなかむずかしいのであります。そこでつまらぬことのようだけれ
ども、こういう点に気をつけてもらいたいということを
海運業者に対して非常に求めております。しかしそういう第三義的、第四義的のことよりは、第一義的の問題として、一体
海運業者の数が多過ぎるんじゃないかという基本的の問題、これが無用な競争をする。従って思い切ってここに抜本的の大なたをふるって、
海運業者の数を減して、適正な数にまでこれを圧縮する必要があるのではないかという基本的の説があります。こういうことをひっくるめまして、
日本の
海運がいかにあるべきかということを研究の目的とする合理化審議会でも、それをしきりに
考えていただいております。私
どもはそういう練達堪能の経験者の意見を取り入れまして、本質的、抜本的の計画を
考えてみたい、こう
考えておりますしかしいずれにいたしましても、絶えず波を打つ
海運界の扱い方を、目先のただことし、去年の数字だけに基いて
日本の
海運界全体を悲観したり楽観したりする態度はとりたくないと
考えております。運輸省といたしましては今の基本的の
海運国策に基いて、目先の波はむしろ目をつむって一貫してやっていきたい、こう
考えております。