○林
説明員 八月十二日に起りました全日空機のダグラスDC3型の
事故に関しましては、その後航空局におきまして
調査をいたしました。その結果は、大体まとまったものを一応基礎にいたしまして、推定し得たいろいろの事態、
事項につきまして、九月の二日に総理
大臣の出席いたしておりました航空安全対策に関する懇談会に
説明をいたしまして、同時に同日各新聞に発表いたしたのでございます。その
内容に関しましては、お手元にお配りいたしました
資料に相当詳細に書いてございます。
その
内容につきましては、
事故発生までのJA五〇四五機の行動、それから大体
事故発生等の原因として推定される
事項等につきまして、大体お手元の
資料の
事故発生の原因の項を見ていただきますとわかるのでございますが、「(1)左発動機の不調及び停止」という項目、これにつきましてもいろいろ推定をいたしまして、左発動機の不調及び続いて起った同発動機が停止したというだけの
事項では必ずしもあのような惨事を引き起した直接の原因とは認めることがちょっとむずかしいということを申しております。
なお次に、「(2)ジャイロの不作動」の件につきまして、不作動になったという事実はいろいろと通信その他からわかるのでありますが、この原因を推察いたしまして、ここに「イ、空気吸出系統配管の損壊又は漏洩」「ロ、空気吸出ポンプの故障」「ハ、ジャイロ系統の空気吸出ポンプ選択弁が左発動機側に位置し、同発動機の故障後右発動機側への切換がなされていなかった場合」こういう場合を想定いたして、その当時の状況についての推定を加えておるのであります。
ただ、この航空機が、特に全日空の運航いたしております同型の航空機の中でただ一機だけこの型式がちょっと変っておりまして、ジャイロの切りかえがこの航空機だけに特有であったという事実もここに掲げておるのであります。この事実についての
会社側の操縦士への周知徹底というものに多少の疑いを持っているのであります。
さらに、当該航空機のこのような
事故になった原因をもしほかに求めるならば、あるいは発動機よりの発火であるとか、右の動力装置が推力を失ったといったような場合であるとか、あるいは操縦装置の故障または損壊といったような幾つかの場合がなおほかに、あるいは
可能性は少いだろうけれ
ども考えられるということもあわせてあげておきました。
これらの原因を、どれといって特にその
一つに断定することは現在の状況のもとにおきましては困難であるという
趣旨の発表をいたしたのであります。これに関しましてわれわれは、問題が非常に複雑でもあり、また責任の問題についてもいろいろとむずかしい点があるのでございまして、この全文について新聞に詳しく
説明をいたしたのであります。ただ新聞におきましては、当日ほかのいろいろの記事もございました
関係もありまして、これらの発表全文を載せない
関係上、あるいはその
内容につきましては、これを別に誤まって伝えているとは
考えないのでありますが、見出し等におきましていろいろ与える印象が相当違っておった面もあったのではないかと想像されるのであります。本日、けさ実は操縦士協会の方から要望書というものが出て参りました。この点につきまして操縦士協会の人たちが、けさの新聞等によりますと、いろいろとこちらで発表した
内容を新聞で見まして、それに対してわれわれの方に要望書を出したということを新聞の方に語っておられるのであります。ただこの件につきましては、特に操縦士協会といたしましても言われております
内容は、約十二、三の項目について言っておりますが、私も実はさっきこれを見たばかりでございますので十分よく検討はしておりませんけれ
ども、第一に新聞がよくDC3型につきまして、これは中古品であるということでそのことを非常に問題にしているという点につきまして、操縦士協会におきましては、この中古品という概念は自動車その他の機械類と同様に一般人には
考えられるが、航空機の場合、あくまでゼロ・アワーとして航空局の厳密な検査に合格して初めて飛行できるものであるということをよく認識してもらいたいといったような項目も入っておりますし、また五〇四五が少し積み過ぎであったのではないかというようなことに対しましては、五〇四五の当日の座席数はマニュアル通りであって、過重ではないということも書いております。またある新聞によれば機長の資格について疑問を持っているように見受けられる記事があるが、この資格については、戦後は航空局の厳重な国家試験を受け、中でも定期航空の機長の資格は最も高度のもので、これをパスした機長の技量、資格に対しては絶対に信頼できるものであるということを書いております。なお
事故機に対して航空局の行いました
調査に対しまして、専門家を起用して官民合同の
調査を行うことが最も妥当と
考えるということを書いております。さらに、
事故の公式発表を見ても、推測が多い、推測的な発表は差し控えるべきであるというような
意見が出ておるのであります。この点につきましては私
ども、専門家の
意見を聞く件につきましては、もちろんわれわれとしましても、専門家の
意見を広く集めるべきは当然でございます。この問題につきましても、バンドその他の試験、その他につきましても、民間の専門家の御
意見なりまたお力も拝借しまして、いろいろ
調査もいたしております。また五〇四五機そのものにつきましても、全日空の他のパイロットあたりからいろいろと状況の
説明等を聞いておるのでありまして、ただ、この点につきましては、われわれは、集
まりました材料が、どうしても機体を引き揚げるというところまでできながった
関係上、推測になった面はあるのでございますが、何といたしましても、この問題についての推測される幾つかの問題を何にも言わないでおくわけに参りませんので、とにかく、いろいろ問題になる点を摘記いたしまして、そうして発表をしたのでございます。決してわれわれの方で推測によって断定をしたというようなやり方はいたしておらないのであります。その次に、当時の天候その他の状況から判断して、失速もしくは異常状態に陥ったとは
考えられないというような項目がございます。この点は、実はわれわれの方は、揚収いたしました機体の一部その他に加わりました力等を十分に科学的に検討いたしまして、それから、これが決して着水しようとして起ったものでないことを判定したのでございまして、そういう状態であったことは、われわれの方としては確信を持っておるつもりでございます。その他、ジャイロの警告灯がつくからこれを見落すことはあり得ないといったようなことも書いてございます。この問題は、警告灯がつくということだけの事実はあるのでございますけれ
ども、この航空機の切りかえその他についての十分なる知識またはそういう操作がこの非常事態においてとられるかどうかということと、このこととはその問題が別でございまして、私
どもの方ではこういう事実ももちろん知っておったのでございます。その他いろいろと出ておりますが、新聞等に言論が発表される場合に誤まった
考え方を一般に持たせる場合があるという、これは一般的な操縦者の
立場から見まして一般の
人々の言論についての注文と申しますが、近代航空というものを十分理解してその言論をなしてもらいたいというような注文も入っております。なお当時における全日空の僚機の行動に対する非難についての釈明的なことも書いております。その他最後に、伊豆方面の通信が時と場合により、またその高度等によりまして、非常に通信状態が悪くなるという事実をあげまして、伊豆方面の無線中継所をできるだけ早く設置するように要望するということと、それから不時着その他についての
整備等を十分にやってもらいたいということ、またこの飛行場
整備とかあるいは新設が何か再軍備と結びつけられる傾向があるが、これをわれわれとしては打破しなくてはならないという、民間航空のパイロットの
立場からこれを申しておるのであります。これらの点につきましてはわれわれの方におきましてさらに十分の——実は何を申しましても、けさもらいましてここに出てくるときに十分読むこともできない状態でございましたので、実は十分にこなしておらぬ点がございますが、そういう状況でございますので、さらに検討をいたしたいと思います。
これがただいままでの全日空機の
事故に対する
措置の模様でございます。