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1958-07-01 第29回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月一日(火曜日)    午前十一時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り    委員長     泉山 三六君    理事            伊能 芳雄君            小幡 治和君            剱木 亨弘君            迫水 久常君            佐多 忠隆君            中田 吉雄君            松澤 兼人君            森 八三一君    委員            石坂 豊一君            大川 光三君            古池 信三君            小山邦太郎君            塩見 俊二君            下條 康麿君            田中 啓一君            館  哲二君            鶴見 祐輔君            苫米地義三君            苫米地英俊君            一松 定吉君            本多 市郎君            亀田 得治君            坂本  昭君            鈴木  強君            曾祢  益君            高田なほ子君            戸叶  武君            矢嶋 三義君            吉田 法晴君            加賀山之雄君            田村 文吉君            千田  正君            八木 幸吉君   国務大臣    内閣総理大臣  岸  信介君    法 務 大 臣 愛知 揆一君    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    文 部 大 臣 灘尾 弘吉君    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君    農 林 大 臣 三浦 一雄君    通商産業大臣  高碕達之助君    運 輸 大 臣 永野  護君    労 働 大 臣 倉石 忠雄君    国 務 大 臣 青木  正君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    内閣官房長官  赤城 宗徳君    内閣官房長官 松本 俊一君    内閣官房長官 鈴木 俊一君    法制局長官   林  修三君    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警備局長 山口 善雄君    自治庁財政局長 奧野 誠亮君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省条約局長 高橋 通敏君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    文部政務次官  高見 三郎君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    厚生省保険局長 高田 正巳君    農林省蚕糸局長 須賀 賢二君    食糧庁長官   小倉 武一君    水産庁長官   奥原日出男君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君         —————    最高裁判所長官    代理者    (事務総長)  横田 正俊君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○継続調査要求の件 ○委員派遣承認要求の件 ○予算執行状況に関する調査の件  (予算執行状況に関する件)   —————————————
  2. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまより委員会を開会いたします。  まず理事会において協議いたしました左記二件についてお諮りいたします。その一つは、閉会中の継続調査要求書を、本院規則第五十三条によりまして、議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認めます。  なお、要求書作成及び手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  その二つは、同じく閉会中に委員派遣を行いたいと存じますが、本院規則第百八十条の二により、委員派遣要求書議長に提出しなければなりませんので、その内容及び手続等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。   —————————————
  6. 泉山三六

    委員長泉山三六君) では、これより昨日に引き続き、質疑を続行いたします。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 昨日、全司法の問題につきまして、私、最高裁長官出席を求めたわけでありますが、いろいろ要求通り問題がうまく進行しないようです。ただし、現在控えておる全司法不当弾圧問題自身調査を全然放棄するというわけにも参りませんので、私はこの程度で本日は一応質疑を続けたいと思います。  ただし、ここで委員長に特に申し上げて、御善処を願いたいと思いますことは、昨日も申し上げましたように、憲法第六十二条の国政調査権は、明らかに、今回のような司法行政に関する問題の調査権を明確に含んでおるのであります。最高裁は、常日ごろ憲法の番人だ、こういうことがよく言われる。私は最高裁こそ憲法に最も忠実でなければならぬと思う。そうであれば、国会に対して、司法行所上の国政調査権が認められておる以上は、そういう国会の職責が全うできるように協力する、これが私は最高裁としての当然の態度でなければならないと思うのです。しかし、そういう点についての国会法上の不備、これが多少あることも私どもわかります。従いまして、議論としては、この程度以上はしないわけですが、どうか一つ委員長におかせられましても、そういう国会法上の不備の点の再検討、そういったようなことも含めて、国会最高裁判所との関係、こういうものがもっとスムーズに正常な状態でいくように、こういうふうに一つ何らかの工夫と努力をしてもらいたい。これは予算委員長だけとしてはできない問題でありまするので、どうか一つこの問題を参議院の議長並びに議運の方にも御連絡をとっていただきまして、何分の御検討をお願いしたいと思うのであります。この点についての委員長の御所信のほどを一応承わっておきたいと思います。
  8. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 委員長かお答えをいたします。亀田君のただいまの御発言につきましては、事きわめて重要件に富むようでありまするので、憲法上の疑義の問題、あるいは国会法改正問題等はお説の通り、単に本委員会ということよりも、むしろ国会自体、かように委員長判断をいたします。かようの見地から、ただいまの亀田君の御発言並びに御要望に対しましては、委員長におきまして、委員長責任において、すみやかに議長並びに議院運営委員会の方に連絡をいたし、善処を、要望いたします。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 事務総長に対する質問の前にもう一つ委員長にお願いしておきますが、それは、昨日農林大臣が、次回の閣議に米審の、米価の問題をかける、明確にこれは言われた。ところが、本日の閣議には、かからなかったようです。これは私は今速記録調査もお願いしているわけですが、重大な食言だと思いますので、農林大臣をもう一度呼んでもらいたい。その点についてだけ若干私、昨日の引き継ぎでありますから、確かめたいと思います。  それから、なお事務総長に対する質問を続けている間に、岸総理文部大臣その他要求大臣等を全部一つそろえてもらうようにお願いをしておきます。いいですか。
  10. 泉山三六

    委員長泉山三六君) お答えいたします。  農林大臣につきましては、ただいままだ出席いたしておりませんので、委員長からすみやかに連絡をいたしまして、答弁をいたさせるように善処をいたします、御要望大臣につきましては、だんだん御質問の進捗次第によりまして、適当に調節をいたします。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 それではまず事務総長にお尋ねいたします。  先般裁判所では、いわゆる裁判書浄書を拒否した、こういう問題に関連をいたしまして、十九名の者が懲戒処分に付せられた。この問題についてお尋ねしたり論議すべき問題は非常に多いの、ですが、予算委員会で時間がきわめてわずかですから、端的に私は、最も重要な点だけについてお聞きするわけですが、裁判所では書記官諸君が、裁判官が作った裁判書浄書、つまり世間からみると、何かそれを清書をすることを断わった、こういうふうなものの言い方をしているようです。ところが実態はそうではない。裁判所の今度の処分が不当だと書記官諸君が言っているのは、浄書を断わったのじゃないので、裁判官自体がやるべき裁判裁判官がしないで、実際上書記官裁判をさせている。これは決定とか命令、これが中心の問題です。実際上、書記官に、裁判官判断する以前に問題を処理させている。そういうことが裁判本質からいって、間違いではないか。また、国民の権利を守る、人権という立場からいっても、間違いではないか。そういうことをやっていると、いろいろなたとえば白紙令状とか二重逮捕とか、そういったような間違いが起る。だから、そういう書記官自体にまず決定命令判断をさせている、こういうことはやめてもらいたい、こういう問題なんです。裁判官が作り上げたものを形式的に清書をするのを断わる、そういう問題ではこれはない。その点を事務総長としてはどういうふうに解釈をされているのか、ほかの問題に入る前に、問題自体のとらえ方が違っている。そうして私は、実際に下部の裁判所状態というものを私ども若干聞いてみても、書記官がいうような実情にあることが間違いない、その点を事務総長はどういうふうにお考えになっているのか、まず明確にしてほしい。
  12. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 裁判所で今問題にしております浄書拒否のいわゆる浄書という中には、今お示しのような、裁判官が作りました原稿に基きまして、それを清書するという問題だけでなく、決定命令等で、いわゆる定型的なものにつきましては、そういう原稿がなくても、その他の資料によりまして、その決定命令内容は確定し得るものにつきましては、裁判官かそれを指示しますことによりまして、原本になる書面書記官に作らせます。それを書記官が拒否する、こういう問題を含めて浄書、いわゆる浄書の問題として言っているわけでございます。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、問題は二つになりますね、裁判官が作ったものを清書する問題と、そうでなしに、今の説明だと、定型的なものについてはまず書記官にやらす、この二つの問題、これは別です。私は前の方の問題なんか、こんなこと問題にしておりません。あとのことを問題にしている。一体あとのような、そういうことをやらしていいのかどうか、裁判一体定型にいうようなものがあるのかどうか、裁判官自体の頭にはあるでしょう、判断の基準とかそういうものは。しかし個々裁判一つの型で処理をしていくというようなことが一体裁判本質に合うのかどうか、一つ明確にしてほしい。
  14. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 定型的と申しましたのは、いわゆる判決は御承知のようにその理由が千差万別でございまして、これは裁判官がその内容を明確に示しませんければ、それに基いて浄書というようなことはできないことでございますが、「定型的な」という言葉は、あるいは語弊があるかもしれませんが、たとえば支払命令略式命令等はその個々内容は違っておりますが、しかし、これには申立書あるいは請求書等内容がもうそういう書面によってきまっておりまして、それに基いて原本作成されるという点におきましては、非常に機械的な事実的な行為でございまして、そこに何ら書記官判断を加える余地はないので、従いまして、原稿に基きまして書く場合と全然同じに考えられるわけでございます。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 事務総長あたりがそういう古い固定的な考えを持っておるから物事が間違うのです。略式命令を今例に出されましたが、たとえば東京簡裁の例をとってみましょう。こういうことをやっているわけです。検察官からの起訴状略式請求書科刑意見書が送られてくる、そうすると書記官の方がまず受けつけて、訴状通りの罪となるべき事実、さらに検察官意見通り罰金処分、それから換刑処分などについては、適宜こういうふうにして作成をしてしまって、それから裁判官署名捺印をしてもらっておる、ずるい裁判官は初めからはんこを渡してしまって見ないのもありますよ。実際にタッチしておる自身からの資料ですから間違いない。これは一体だれが裁判しているのです、こういう裁判は。
  16. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) そういう決定命令のいわゆる原本を作らせまする手続には、いろいろなやり力があると思います。記録裁判官が見まして、その記録書記官の方に渡して作らせます場合と、おそらく最初はそういう手続がとられておったと思いますが、しかしだんだん、ことに事件が輻湊しておりますような場合につきましては、一々裁判官がそういう形式的な指示をいたしませんでも、大体その他の書類によりまして、一応原本を作るということが一つ裁判所の慣習になって参っているところもあろうかと思います。この場合に書記官が作りますものは、やはりそこらにございます書類内容によってきまるわけでございますからして、何もそこで書記官自身判断を加えて裁判をしているわけではないのであります。先ほどから、内容決定は結局裁判官がいたしますのでございますが、この決定というのは、最終段階に至るまでの間に行われるわけでございまして、従いまして、一応書記官がそういう書類に基きまして用意いたしました書面を、裁判官が直す場合も幾らもあるわけでございまして、結局最後署名捺印をいたしますまでの間が、裁判官判断をいたす時期でございまして、従いまして、一応用意いたしました書面があるいはむだになる場合もあり、あるいはそれに修正が加えられる場合もございますが、書記官のやっておりますことは、あくまでも事実上の行為でございまして、裁判では決してないわけでございます。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 署名捺印書記官がやっているのはどうですか。
  18. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) そういうことはあり得べからざることでございまして、もしそういうことがあれば、それは私としても非常に間違った、とんでもないことだと思います。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 それからこの署名捺印以前に問題があるでしょう。原本書記官が作るということはこれは間違いなんです。なぜならば、略式命令が出てきた、事務総長はこれは専門家だから私から言う必要もないでしょうが、何も検察官の言う通り処理するわけではないでしょう。本来はそれを調べて、これは略式じゃなく公判に回すべきものだとか、あるいは検察官請求通り罰金ではなく、もっと高く、もっと低く手加減できるわけですよ。ところがまず書記官にそういう罰金まで書かしてしまって、それでそういう個別的な手加減を判事がやっているとどうして言えるのです。形式的には、いや裁判官責任を持っているのだ、皆さんがそういうことを言ってみたって、世間は承知しませんよ。原本までどんどん作ってしまって、サインの判だけ押したって、どうして法律上認められたそういう個別的な判断というものを加えたということになりましょうか、ならぬですよ。そのことを言っている。そういうことまで書記官にさせてもらっては困るということ。  それからもう一つ私から例を申し上げましょう。そんなものはざらにある。たとえば今度処分を受けた浦和地方裁判所熊谷簡裁です。ここでは新井徳次郎という判事が、三月十八日に小川書記官戸籍法違反事件過料については、一週間以内は処罰しない、一ヵ月以上おくれた者に対しては百円、二ヵ月以上おくれた者に対しては百五十円、三ヵ月以上おくれた者に対して二百円、あとずっとあるのですが、時間がないので省略いたしますが、こういう表を渡して、これで一つやってくれ、こう言っているのですよ。こんなことはいいのですか。小川書記官は、裁判というものはそんな表でやれるものではないと思う、個別的に幾ら軽微な事件であっても、具体的な事情というものを検討してそして書くべきものだ、こういうので断った。ところがおれの責任でやるからということで、この表を押しつけているわけです。こういうことはいいことですか。
  20. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 過料裁判やり方につきましても、いろいろ考えられますが、今お示しのような表をあらかじめ作りまして、書記官にそれに基いて、将来裁判所裁判原本となるべき書類を作らせるということも一つやり方だと思います。問題はやはり書記官裁判官判断に従ってその書面を作っているわけでございますから、これは書記官裁判をしているわけでは決してないわけでございますし、なおそうしてできましたものにつきまして、裁判官としては最終的な判断を加える余地もあるわけでございます。そういうやり方も決して違法ではないと私は考えます。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 これは法務委員会でもっと追及しましょう。事務総長自体裁判というものをそういう形式的に考えてはだめですよ。たとえば今問題になっている戸籍法ですね、これは戸籍法ではいろいろな届出をしなければならぬ。届出を怠った場合の過料の問題、ところが戸籍法の百二十条を拝見すると、正当な理由がなくて期間内に届出しなかった者については云々と、こうなっておるでしょう。そうでしょう。そうすれば、この正当な理由というものは裁判官が一々書類に当らなければどうしてわかるのです。こういう正当な理由があれば、私はたとえば三ヵ月あるいは五ヵ月延びたといっても、この法律の精神からいったら処罰すべきではないと思う。正当な理由がなければ、私は場合によっては一週間以内であっても処罰しなければならぬものもあるかもしれぬ。法律自体がそういう価値判断要求しておる。要件をつけておるのに、こういう表を出して一体裁判になりますか。もっと裁判裁判官自体がまじめに考えてもらいたい。皆さん過料なんというものは一番これは軽微なものだと思っておるかもしれぬが、受ける方の立場というものをもっと真剣に考えなければだめですよ。こんなことはざらにたくさんある。そういう今おっしゃったようなことで裁判をやっているようなことも考えて、こんなことを国民全部が知ったらあきれ返りますよ。どうしてこういう表を出して作らして、正当な理由なくという裁判官価値判断個々に加わってくるのですか。一たんちゃんと原本ができてしまえば、そんなものを訂正した私は裁判行の例なんか聞いたことはない、どうですか。戸籍法の百二十条の条文に照らし合せて、こういうことが一体していいことか悪いことか、考えてごらんなさい。
  22. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 先ほどから繰り返し申し上げますように、その書面はあくまでも一応の用意された書面でございまして、結局最後裁判官署名捺印をいたしますまでの間に裁判官判断をいたしておると思います。これは戸籍法の問題のみならず、その他の決定命令等につきましても、裁判官書記の用意いたしましたものにいろいろと手を入れたり、ある場合によってはそれを没にいたしましたりしている例が相当あると思います。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 あなたは裁判官らしくない。事実をことさらに曲げて説明する。そんなことはいかぬですよ。現実の実態というものをお互いに見て、しかしそれに対しては、しからばどう手を打った方がいいのか、こうならなきゃこんなことはだれが承知するものですか。略式命令の例を申し上げましょうか。これは私は現場も知っております。大阪交通事件略式命令を受けるのが毎月平均六百ないし七百です。多いときは九百くらいある。二人の判事でやっているが、二人の判事でとてもやれるものではない。従って原本は全部書記官罰金まで書いて、そうして整理をして判事のところへ持っていっている。判事の一件当り費される時間はまあ忙しいときなんかは三十秒から四十秒ですよ。こんなことで一体その価値判断を加えていると言えますか。三十秒や四十秒でどうして裁判ができるんですか。はんこさへ押してあれば責任裁判官が持っているんだ、どうしてそんなことが言えますか。
  24. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 東京大阪等は非常に事件が輻湊しておりまして、今おっしゃったような時間になるかどうかはよくわかりませんが、かなり短かい期間のうちにたくさんの事件処理しておりますことは事実でございます。しかし、やはり先ほどから申しておりますように、裁判官はその個々事件について最終的な責任を持って処理をいたしているわけでございまして、決して裁判官書記官裁判そのものを押しつけているというようなことは言えないと思います。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 まあそのうち、よく実態調査やりましょう。大阪で六月十六日にこの問題で裁判官会議が開かれた、最高裁見解を支持する裁判官は至って少い、実情を知っているから。それで現状ははなはだよくないということを稲田大阪地裁所長がみずから言明しているんです。根本的にはこれは判事の数が少いからだ、こういふうに述べております、はっきり。実際はそうでしょう、原因は。だからそういう実情にあるということだけは、裁判官でない者が裁判をしている。これは従来も長くそういうことをやっておった。たまたまいろいろなほかの問題に関連してきて、この際そういうことはもうやめようじゃないか。書記が一切の書類を作ってしまう、そんな権限法律上もないし、またこれは人権問題から言っても大へんなことです。これはもう裁判官書記官もそう言っているわけです。現場ではみんな知っているわけです。だからそういう状態にあるということだけは、どうしてあなたは認められないのですか。解決の手段はいろいろ考え方があっていいと思うんです。どうです、大阪地裁所長がそう言っているんですよ。
  26. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 事件が非常に輻湊いたしまして、ことに交通事件等につきましては、近年この二、三年の間に著しい増加を見ましたために、いろいろ裁判所内部に手不足を来たしていることは事実でございますが、しかし実際の取扱いが、大体亀田さんがおっしゃっているようなことになっていることも私も十分よく知っております。(「知っておったら始めからそれを言えよ。そこが問題だ」「そういうことはよくないことだ」と呼ぶ者あり)ただ事実の見方が、大体そういう仕事をだれがやるかというその根本が、結局亀田さんとは見解の相違がございますので、その問題に対する判断が違ってくるわけでございます。なお、ただいま稲田所長というようなお話がございましたが、これは稲田所長から詳細な報告が私どもの方に来ておりますが、それによりますと、その新聞記事は大へん間違っているようでございます。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 どこが間違っているんです。どういうふうに間違っているんです。
  28. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 非常に多くの判事最高裁と違った考え方を持っているというようなことでございます。そういうようなことは、稲田所長報告からは全然出てきておりません。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 それは最高裁に遠慮して、そういう積極面から書いていないということだけですよ。最高裁の主張を支持するといった空気なんというものは全然ありませんよ。で、事実上そういうことが今申し上げたような裁判官が実際上価値判断できないような状態になっていること自体は、事実の問題としてこれは認めているわけです。だから私はこの解決書記官処分したり、そんなばかげたことじゃないのでしてね、裁判官をうんとふやすか、あるいは書記官自体裁判官権限の一部を渡して、そのかわり書記官の地位ももっと高める、給与ベースだって一般の公務員よりうんと低い、だからそういうようにするか、これはどっちかしかないわけです。どう思いますか。
  30. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 裁判官の数をふやすということは、言うはやさしゅうございますが、非常にむずかしいことでございます。現に欠員もあるような状態でございますが、書記官の職務権限を拡げるということにつきましては、亀田さんも御承知のように、現在最高裁判所が中心になりまして、鋭意研究をいたしておるわけでございますが、われわれの考えておりますのは、単に裁判官命令でそういう書類を作るというようなことでなくて、もう少し書記官自身判断をして、裁判のうちのあるものを書記官責任においてやれるような体制にする。これはあるいは書記官というような名前がそのままの形でいいかどうかは別でございますが、今の裁判官でない種類の高級の職員に判断をさせる、その責任においてある程度裁判をさせるというようなことも考えておることは事実であります。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 その場合の待遇の改善はどうなるのですか、そういう重大な仕事をさせる以上は……。
  32. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) この待遇の改善につきましては、大体現在職員からは、非常に一部の人々からはきらわれておりますが、書記官につきましては、厳重な試験とか研修とかいうようなものをやりまして、その素質の向上をはかるために、かなりの努力を払っておるわけでございます。従いまして、もしそれがだんだん実を結んで参りますれば、おのずから書記官権限の拡張と相待ちまして、地位の向上、従いまして、それに対する待遇の改善ということは当然に伴ってくるべきはずでございますし、またその方向に向ってわれわれはあくまでも努力するつもりでございます。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 まあこういうわけで、これは非常に重大な問題を含んでいるのです。疑義もあるのです。無理もあるのです。なぜこういう問題について、懲戒される人の言い分をよく聞いてやったり、そういうこともしないで、いきなりぽんと首を切ってしまうと、こういうことをやるのか。私は、こういう手続は一切一つ取り消して白紙にしてもらって、そうしてこの問題について、しからばどう解決したらばいいかというふうに出直すべきだと思うのですね。その点どうですか。
  34. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) いかにも突如として処分をいたしたように申されますが、やむを得ずこの処分をいたしますまでの間には、裁判所側といたしまして、かなりいろいろ手を尽しておるはずであります。それから、取り消す意思があるかどうかという点でございますが、これは裁判所といたしましては、毛頭取り消す意思はございません。
  35. 亀田得治

    亀田得治君 私の時間あまりありませんから、関連しての詳細なことは法務委員会等でさらにお尋ねしたいと思いますが、ともかく非常に無理なことをやっているのですよ。それを、長年やってきたからこれで辛抱してくれと、そんなことじゃ、いつまでたっても陋習というものは直らぬですよ。根本原因はそこにあるんですから、それをよく一つ考えてもらいたい。私は最高裁長官に来てもらいたいと言っているのは、区々たる理屈じゃない、現実の実態について長官がどう認識しておるか、そこの一点だけ私ははっきりしてもらいたかったから呼んだわけなんです。あなた自身から聞いたって、実際にそういうことがわかっているようでもあるし、わからぬようでもあるし、そんなことではとても改革の足場になるものじゃないですよ。まあこの程度にあなたに対する質問はしておきます。
  36. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっと亀田君に申し上げます。あなたの緊急御要求農林大臣が多用の中を特に来られました。農林大臣に対して……。
  37. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 今の問題関連して、重要な問題だから……。
  38. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君簡単にお願いします。
  39. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 事務総長にお伺いいたします。この問題は、きわめて重要な問題でありますので、当院の内閣委員会におきまして、事務総長の御出席をいただき、調査する必要がありという態度を決定いたしまして、御出席を要請いたしました。委員会の前日までは御出席するやに委員部を通じて承わっておったわけですが、委員会当日の朝になって、最高裁判所の最終結論として、委員部を通じて内閣委員会に伝えられたことは、最高裁判所としては、衆参の法務委員会には出席をするが、要求されている内閣委員会並びに予算委員会には出席をしない、このことが最高裁判所の最終結論であるという通達があったからということが、委員部から伝えられたのであります。しかるに、本日この予算委員会にあなたが出てきたのは、方針を変えられたのか、その理由いかん。それから、今後内閣委員会から事務総長要求があった場合には、出られるのか、出られないのか、これを第一点として明確にしていただきたい。私は国会法その他を調べましたが、やや最高裁判所としてはわがままではないか、こういう結論を持っております。この立法府と司法部との関係につきましては、いずれ、亀田委員発言によって、当院の議院運営委員会等によって検討されると思いますが、当面の問題としてそれをお答え願いたい。  それから、何がゆえに内閣委員会として御出席を願ったかということをこの際明確にしておきたい。それは、裁判所の職員は国家公務員の特別職です。処分された場合には、公平審査の請求ができるわけであります。その公平委員会の構成はいかにあるべきか、またこれをいかように運営することが立法精神に沿うかということは、特別職である裁判所の職員並びに国会の職員、さらには一般国家公務員である各省庁の公務員にとって通ずる問題で、きわめて大事なことなのです。ところが、今まで最高裁判所は、処分者を出した場合に、公平審査を請求いたしますと、処分したその人が公平委員にたる、または処分者が任命する人が公平委員になる。こういうことで一体公平審査ができるかどうか。わが参議院の例を申し上げますならば、処分者が出た場合、苦情処理委員会に訴えます。その苦情処理委員会は、国会職員と、それから国会議員とで構成されます。それで話がまとまらない場合には、公平委員会に審査を請求いたします。その公平委員会は三人から構成されておりますが、完全に第三者機関によって構成されておる。私はそれで初めて公平な審査ができると思います。同じ国家公務員の特別職でありながら、立法府の特別職に対しましては、公平審査請求というものはそういうふうに審査されることになっておる。ところが、おたくの方では、先ほど申したように、処分者が公平審査をすることになっておる。行政訴訟を起せば、処分した最高裁判所が最終的に結論を出す。それでは、私は公平審査制度、公平委員会の立法精神にやや——ややじゃない、すいぶんともとるところがあるのではないか。従って、人事院総裁並びにあなたの方の御見解を承わり、この公平審査請求に対してどういう委員会の構成、並びに運用をされておるかという点についてただしたいというので、参議院の委員長理事打合会の決定に基いて御出席をお願いしたわけであります。私ども立法府といたしましては、あなは方の裁判そのものに干渉しようとか、容喙しようとかいうのではないのです。あなた方の処分をされた公務員の特別職身分とか、給与等はいずれも立法府で審議をいたしておるわけです。そういう出席要求に対して、法務委員会には出るが、内閣委員会予算委員会には出席をしない、これが最高裁判所の最終結論になっていることを、あなた方の事務当局から国会の事務当局を通じて、われわれ委員会に伝わった。ところが本日出てみますと、この予算委員会にあなたはおいでになった。どういうわけでおいでになったのか。今後内閣委員会要求したら出るのかということ、その点と、ここでお答え願いたいのは、その公平委員会の構成は、いかようにして公平に審査をするつもりであるのか。それからもう一点は、亀田委員からも触れられておるけれども裁判所職員も特別職ですから、私も調べてみましたが、裁判所法の六十条の二項からいって、果してこれが書記官の職務の範囲に入るのかどうかということには、ずいぶんと疑問があります。この亀田委員との質疑応答をみましても、これはあなたみずから認められておられる。こういう事情があるにかかわらず、十三人という人を直ちに首を切っているのです。これは他の省庁に見られない、きわめて過酷なるやり方です。権力主義が極端に出ております。これは他の省庁だったら、せいぜい戒告ぐらいのところです。公務員にとって首を切られるということは死刑ですよ。そういうことをやられたということは、ずいぶん裁判所やり方についても公平審査をしなければならぬ。ところがその公平審査機関が、先ほど申し上げたような事情では、あまりにもかわいそうではありませんか、裁判所の職員は。従って第三点の質問としては、亀田委員質問と重複いたしますが、あの十三人の首切りと六人の停職は、一応白紙に返して、そうしてまた根本的に再検討することが、とるべき態度ではないかと思いますので、以上三点について明快なるお答えを願います。
  40. 横田正俊

    最高裁判所長官代理者横田正俊君) 内閣委員会出席いたさなかった理由は、私ども国会出席する義務があるとかないとかということは、できるだけ申し上げないで、国会の御審議に御協力いたすというつもりでおりますが、御承知のように裁判所に関しまする問題は、ほとんどそのすべてが従来法務委員会処理されて参っておるわけでございますが、私どは御協力をいたしやすい形にしていただいて、衆参両院とも法務委員会に問題を集中していただきまして、そこでわれわれの意見を申し上げる。こういうふうにしていただきたいというのが私どものお願いでございまして、結局そういう形にしていただきましたことを非常に感謝をいたしておるわけでございます。予算委員会は、これは他の委員会とやや性格を異にしておるように思いますので、この点につきましては、衆議院にも参議院にも出席をいたした次第でございます。  なお、公平委員会の構成につきましては、大体原則として最高裁判所事務総局の職員をもって構成する建前になっておりますが、これは法律の規則の規定にもございますように、他の官庁の役人、あるいは第三者を加えることができることになっておりますので、今回の処分の公平審査に関しましては、そういう事務局職員以外の者を、できるだけ加えまして、その公正を期したいと考えております。なお処分の取消しの問題に関しましては、亀田さんにお答えいたしました通り、これを取り消す意思はございません。
  41. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 先ほどこの立法府と司法府の関係については、亀田委員の要請によって、当院の議院運営委員会において検討するよう、委員長におかれましても、善処するという御発言があったわけですが、ただいま事務総長発言からも、私特に委員長に要請いたしたい点は、たとえば裁判所職員関係の給与の法律を審議するのを法務委員会で審議している。同じ特別職でも防衛庁の職員の給与については、これは給与を所管する内閣委員会調査審議をしているわけです。私は国家公務員の一般職、特別職を通じて、公務員の給与がどういう状態にあり、どういうふうにしなければならぬかということは、一つの窓口で総合的に私は審議しなければ、適正な審議ができないということを常に主張しておるわけです。従って、今後は三権分立の建前から検討されると思いますが、そういう給与の問題は、法務委員会でなくして内閣委員会で審議するようにすべきである。そういう点が曲っておるから、だから今事務総長発言のように、できるだけ都合がいいように法務委員会一本にしてもらいたい、内閣委員会には出ない、法務委員会で公平委員会の機関その他について審議できますか。これは公平委員会はいかにあるべきかというようなことは人事院が一番詳しい。法務委員会はそういうことを取り扱っていない。そういうものを取り扱っておる国会委員会は内閣委員会です。そういうものに限定して調査審議するという場合に、法務委員会には出るが、内閣委員会には出ない、しかし予算委員会は特別の委員会であるから出る。それでは三権分立の今の法律から見ても、最高裁判所は少しわがままだと思う。私はそう考えるのです。これらの点について委員長に要請するわけです。亀田委員からも提議がありましたわけですから、この機会に、十分近い機会において検討して、その関係を明確に一つしていただくことを委員長に特に要請をいたしておきます。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣に突然来てもらったわけですが、これは一点ちょっとお聞きしたいのは、昨日あなたは、二回私が質問して、結局次の閣議に米価の原案を、原案というか、閣議にかける案というか、閣議にかける案というものを農林大臣として出すと、きのうおっしゃった。きょう閣議があるということは、これは私たちもお互い知っておるわけです。だから、きのうおっしゃるわけですから、あす、ちゃんと出す腹づもりがあっての私はあれはお答えだと思っていたわけです。お聞きしてみますと、どうもきょうの閣議には何かごちゃごちゃと報告のようなものがあったが、いわゆる議案としてそれが出され、審議されるということにはならなかったということらしいのですが、きのうの言明とはなはだ私は違っておると思うのですが、その点どうでしょう。
  43. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) 今お尋ねの問題につきましては、私といたしましては、次の閣議にお諮りして、そうして取り進めたいと、こう申しあげておりましたが、私は次の閣議決定するというようなことは申したことはございません。本日この問題の何は答申案の趣旨を説明し、同時に取扱いにつきましてもお諮りしまして、そうして来たる四日にめどを立てまして、その際に原案を出す。関係庁とのいろいろな連絡がありますから、さように取り進めて参っておる次第でございまして、お尋ねの問題につきましては、私は別に食言をいたしておるというようなことはございません。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 これは確かに食言です。決定というところまでははっきり言われなかった。総理もそこまでは言われなかった。しかし提案する、そういうことは、はっきり言われておる。あなたとしても提案をする……ところが今のお話ですと、提案まで行っておらぬわけです。今のお話ですと、もう一つ先の四日に提案ということのようですね。はっきりこれは違いますよ。きのうと。もう一ぺん速記録委員長、調べさしてくれませんか。
  45. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ちょっとお尋ね申し上げますが、そこで亀田さんの御要求の点はどういう点でございますか。閣議に提案が延びました点についての……御意見を御開陳願います。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 いや、私の聞きたいのは、それはまあ事情によって延びることも、これはやむを得ない場合があるでしょう。しかし、そのきのうの状態で提案をするとおっしゃる以上は、これは案というものがなきや、そんなことは言えぬわけなんです。だから、そこがあまりにも違うじゃないかと、したけれども決定はこういう事情でどうなったとか、あるいは審議は次回に持ち越したとか、そういうことならわかる。
  47. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 農林大臣、御答弁願います。
  48. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) きのう申し上げた趣旨をもう一度申し上げますと、私といたしましては、次の閣議にお諮りして取り進めたいという考えで、ただいま急速に準備中でございますと、こういうふうな趣旨でお答えしております。従いまして、閣議決定案を出すと、こういうふうなことには、私は、昨日はそういうことでもありませんし、そういうようなことにはお答えをしておらぬことでございますから、そこの点は行政上の都合等もありますものですから、さように申し上げた次第であります。
  49. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 御了承願います。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 いや、ちょっとこれは私も記録を見ないと了承できませんがね。その点は記録を見てからにしますが、ちょっとお聞きしておきますが、それじゃ四日には提案をされて、四日には決定の方針をお打ちなんですか。これはまあ決定の部分は総理にちょっとお聞きしておきたい。
  51. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) 手続といたしましては、御承知の通り、関係庁との打ち合わせ等もございますから、めどを、四日の閣議へその原案を出すように準備しまして、そこでお取りきめを願うようにただいま考えて、準備を進めておるわけであります。
  52. 亀田得治

    亀田得治君 あとから速記録を見てから、この点ちょっと触れたいと思います。  文部大臣は来ていますか。あとはもう文教関係だけです。
  53. 泉山三六

    委員長泉山三六君) けさも申し上げました通り、きょうは、ただいまの段階では調整がつきませんので、政務次官が代理に見えております。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 それで、文部大臣は今委員会に出ていないのでしょう。
  55. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 文部大臣は、文教委員会の関係でこちらに参られませんので、代理として高児政務次官が参られております。御答弁申し上げます。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 これは、きのうからの要求ですからね。(「委員長とぼけちゃだめだ」「議事進行」と呼ぶ者あり)
  57. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君、何とぞ簡単にお願いします。
  58. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長のただいまの発言は、きわめて重大だと思うのですがね。国会法律、規則とよりよき慣例によって運営されているわけですがね。私ども今までいろいろな委員会に所続して、ぜひとも大臣の御出席を願いたいという場合に、あるいは参議院の予算委員会、あるいは衆議院の予算委員会出席されているので、当該委員会には出席できない、予算委員会出席が優先するのだということが長きにわたる慣例になっているのです。本日に限って委員長質疑者が文部大臣出席要求をしているにもかかわらず、文教委員会出席しているので、当委員会出席できぬということは、大委員長がそういうような前例を破るのは心外千万で、それはぜひとも今日文部大臣にちょっとでも委員長としては出席要求すべきだと思う。これは重大ですよ。
  59. 泉山三六

    委員長泉山三六君) お答えいたします。私は本日の理事会の劈頭において、この問題について私から発言並びにお願いをいたしております。申し上げるまでもなく、当委員長といたしまして、予算委員会の重要性については十分に認識をいたしております。されば、国会そのものの運営上本会から見まして、今回のわが予算委員会は特殊の性格を持ちます。従いまして、同一の問題が他の委員会に上程せられ、しかも具体的の案件がそちらにあり、こちらにございません場合には、委員長としてはその方を優先的に考えたい、かようのことをお願いかたがた申し上げておるようなわけでありまして、何とぞ御了承願います。
  60. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 議事進行。先ほど委員長理事会でもってお話があって、了承したというようなお話があったのですけれども、この点は理事会では、私、特に発言いたしまして、委員長の方針で、文教委員会には法案がかかっておるのだからそれは優先だと、こういう方針を示されるということは、私としては了承できない、こういうことを申し上げまして、その委員長のいわゆる御方針というものは、一応はたな上げと申しますか、取り消しになったようなことで、あとは時間の調整がつけば出席してもらえるというふうに私は了承しているわけなのでこの点はただいまの委員長の御発言は、前段だけはたしかなのですけれども、後段のところは私ちょっと違っておると思いますので、御訂正を願いたいと思います。
  61. 泉山三六

    委員長泉山三六君) お答え申し上げます。ただいまの松澤さんの御発言はごもっともであります。ただし、私が委員長の方針として申し上げたのではございませんので、本委員会の運営を重からしめる、こういう意味合いから希望的発言をいたしたのであります。しかるに、ただいま松澤さん御先言の通り理事として御発言がありました。それではできるだけ調整をして、それで皆さんの御要望に沿うと、こういうことに相なりましたのは事実であります。しかるに文教委員会は開会中である、かようの委員長への報告でありましたので、私はこの前提に基いての判断をいたしたのでありましたが、ただいま即刻のお話では、あたかも休憩中のようでありまして、なるべく出席をいたすように、委員長において取り計らうようにいたします。何とぞ御進行願います。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 せっかく休憩中ですからね、こちらも一つ休憩させてもらいます。すぐ呼んで下さい。
  63. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 今呼んでおります。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 これは何も文教委員会にかかっておる法案のことを、同じことを聞くわけじゃないのです。別なことなのですから……。じゃ、暫時このまま一つ……。
  65. 泉山三六

    委員長泉山三六君) どうぞ発言を続行願います。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 いやいや、文部大臣に対する質問なのですか……。
  67. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 労働大臣も法務大臣もお見えになっておりますから。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 これは文部大臣と関連して来てもらっているだけなのです。
  69. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 今亀田さんの御要求文部大臣は、委員長として申し入れております。(「委員長々々々」と呼ぶ者あり)ほかの問題ですか……。それなら戸叶君どうぞ御発言願います。
  70. 戸叶武

    戸叶武君 委員長は、予算委員会委員長であるから、予算委員会の運営が円滑にいくように努むべきであるが、取締り当局みたいな言動をしばしば発し、先ほどは非常に私はがまんにならないような発言があったと思うのですが、当委員会においては具体的な問題がされてないと思われるような発言内容をいたしましたけれども、少くとも国会におけるところのわれわれの審議の対象というものは、具体的データをとって、そうして論議しなければならないのです。予算委員会におけるところのわれわれは、ここへ最高裁長官にしろ、出席要求しているのは、その具体的な事実を確かめなければならないので、国会における生命というものは審議権なのです。その大切な審議権を侵すような発言委員長が軽々にやったのでは、われわれの審議というものが正確を期すことができないと思うのです。これはさっきの最高裁における事務総長か何かの発言においても、言われておるのですが、非常に便宜的で、今までの慣例からいけば、法務委員会において問題を集中して、そこで片づければ非常に都合がいいので、そういう形において、法務委員会以外のところにあまり出席しないような発言をしておりますけれども国会——この立法府と行政府だけでなく、司法部当局に対してでも、はっきり憲法を理解してもらいたいのは、憲法四十一条において明確に規定されているように、国会は国権の最高機関であると同時に、国の唯一の立法機関であるのです、最高裁といっても、司法の形における最高機関にすぎないのです。内閣といっても、行政の形における最高機関にすぎないのです。この国の最高機関である、唯一の立法府に対して、立法府の要求するところの審議権を阻害するような発言とそういう行為がなされるということを、これを取り締り、これを守るのが、予算委員会における委員長の役割です。行政府のために使われるような態度、あるいは司法部のために、慣例をたてとして、憲法の本来の趣旨に反するようなことに迎合するような態度が寸毫でも持たれるというような形においては、この国会における予算委員会の権威というものを保つことはできないと思うのです。人柄がいいから、委員長の言うことを今までわれわれはかんべんして(笑声)許していたのですが、今後そういうような軽率な言動があったら、まかりならぬと思うのです。よく今後気をつけてもらいたいと思う。
  71. 泉山三六

    委員長泉山三六君) お答えをいたします。ただいま戸叶君のお話、御趣旨はよく了承いたしました。その諸君の審議権を守らんがためにこそ苦労をいたしているわけでありまするので、どうぞ十分御了承願います。  ただいま……文部大臣が間もなく見えられます。(「文部大臣がいつまでも来なかったら、ちょっと昼食したらどうですか、もう一時ですよ」「委員長、休憩ですか」と呼ぶ者あり)
  72. 亀田得治

    亀田得治君 文部大臣にお聞します。例の勤評百反対運動がだんだん強くなっていっております。それで、まあこれはいろんな立場からの見方がありますが、ともかく、勤評に賛成あるいは反対、どういう立場をとるにしても、これは教育問題ですね。どうしたら教育がよくなるか、こういう立場検討されておるはずなんです。で、私はそういう点が是認されるとすれば、おおよそこういう問題とこの刑事弾圧というものは全く相いれないものだ。犯罪という概念というものは少しもないでしょう。どうしたら教育がよくなるんであろう、そういう働きなんです。目的と手段とは違うとか、そんなこまかい小手先のことを考える必要はありません。どうしたら教育をよくするかということで社会の大きな部分というものはこう動いておるわけなんです。こういうものを私は刑事問題のワクとかそういうものとは全然これは違ったものだと思うのですね。文部大臣自身、ときどき勤評反対運動に対して警察等がちょっかいを出しておるんですが、こういう点をどういうふうに評価をされておるか、あなた自身一つ見解をお聞きしたい。
  73. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 勤評問題をめぐりましていろいろ論議がありますことはお話の通りでございます。この勤評問題につきまして、今日御承知のように、地方の都道府県教育委員会におきまして、これを実施するために必要な規則を設け、またその計画を立てて事を進めておるわけでございます。これに対しまして、反対の意見があり、また改善を要望する意見があるということも、これも十分あり得ると思うのであります。お話の通りに、だれしも教育のために考えておることと申して差しつかえないと思うのでございますけれども、ただ、その反対の仕方の問題が結局問題になってくると思うのでありまして、今日御承知のように、勤評問題を実施するという地方の委員会の行動に対しまして頭からこれを拒否する。そうしてその実施をどこまでも阻止するという考えのもとに反対闘争が行われておる。しかも、その闘争の中には、御承知のように、いわゆる地方公務員法に違反をする、こういうことがあるように見受けられるのでありまして、この地方公務員法の違反という事実に対しまして、警察当局が動いてきておる。私はこの教育界に警察権が入ってきて、いろいろ問題があるということはまことに不幸なことだ、きわめて残念なことだと思っておる次第でございますが、教職員の組合員がその性格を逸脱いたしまして、法に触れるような行為がないようにということがわれわれの心から念願するところでありますが、それにもかかわらず、さような行動が各地で見受けられるのであります、これに対しまして警察権が出てくるというふうなことは、まことに残念でありますけれども、私はやむを得ないと思います。願わくはすみやかに本来の組合の姿に帰っていただきまして、さような混乱を起さないようにお願いしたいというのが私の切望でございます。
  74. 亀田得治

    亀田得治君 教育問題というものに対して、文部大臣がほんとうに真剣に考えておれば、警察なり検察当局に対して、こういう問題には手出しをしてくれるなと、実はこういう態度をとるべぎなんです、地公法の違反といったようなことも言っておりますが、それを私は最初言ったように、これを地公法違反などにもつていく、そういう考え方が根本的に間違っておる、形式からいっても、労働基準法の三十九条の一応手続もとり、できるだけ合法的になるように行動しているわけですね。だから、むしろその点はなかなか丁寧にやっている、動いておるというくらいに見てやるべきなんです。目的そのものは罪とか、犯罪とか——犯罪というものは社会を悪くするものですよ、そういうものとこれは全然質的に違う。少くとも社会のずいぶんたくさんの人がこの問題を憂えておる。しかも、内容的には良識の人ですよ。そんなものがどうして狭い刑事というような概念に入ってくるんです。私はあなたが——賛成反対は別にしましょう。こういう問題は結局そんな刑事弾圧的なことをやったって解決するものじゃない。反対運動がほんとうに悪ければ、これは世論の批判を受けるでしょう。どっちになるかということはだれもわからない。そういう問題に警察や検察庁が出てくる、これは教育の権威の立場からしても、文部大臣としては、やめてくれ、そういうことは。おれとしては勤評は実行する——あなたは自信があるというなら、自信があればあるほど、そんなことはやめてくれとむしろ言わなきやならぬ。逆にいえば、自信がないから刑事弾圧を加えるということにもなるかもしれぬ。だから、ほんとうに純粋にもう少し教育という問題に大臣が取っ組んでおるのであれば、ときどきちょっかいを出すような、そういうものは遠慮してもらいたい、どうしてそういうことが言えないのか。——基本的にはどうもこういうことが刑事問題にならぬ方がいいということは言うんですが、最後のところへいくと、どうもその辺がやはり、手段が少しまずいからそういうことのないようにということで、これをぼかすわけですが、ほんとうにこの問題を憂えている人はそんなぼかし方で決して納得するものじゃありません。だから、現にこれは、逮捕してみたって、みんな黙秘権でしょう。よく考えてごらんなさい。堂々と黙秘権を使っておる。逮捕したって黙秘権行使されて、これは信念があるから黙秘権というものは使える。憲法上、黙秘権が認められているからだれでも使うと、そんなわけにこれはいくものじゃないんですよ、絶対。だから、それだけを見ても刑事事件にならぬわけでしょう。書類のできないものをどうして事件にできるんです。私は、ここに長官もおられる、法務大臣もおられますが、こういうものを地公法違反とかなんとかへ理届をつけて、そうして刑事問題にもっていく、そういう考え方をどうしてこれは文部大臣立場からしてもっととめられないのか、これを私はあなたにお願いしている。事件になると思いますか、全部が黙秘権を行使されて。——してみたってならぬじゃないですか、どうなんです。
  75. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 教職員組合の性格なり、またその活動の範囲がどうであったかということは御承知の通りであります。われわれといたしましては、ややもすれば教職員組合の行動がそのワクを越えてと申しますか、逸脱いたしまして法律に触れる、また、従ってあるいは刑事罰に触れるというような事態がおうおうにしてあるわけです。そういうことのないように、そういうことをやれば違法になる、あるいはまた、刑事罰に触れるおそれがあるから自重してほしいということは従来しはしは申したことでありますけれども、今回の勤評問題をめぐりましても、やはりそういう行き過ぎがあると申しますか、問題となり得るような事態が起っているわけであります。私は、ことに教育に関係する問題でございますだけに、もちろん警察権がこれに、手を出すにつきましても、よほど慎重を期していただきたいというふうな意味におきましては、私のみならず、従来文部省といたしましては、警察当局にも申し入れまして、事の慎重を期していただきたいということをしばしば申しておるわけでございますけれども、現在の状態におきまして、違反の容疑ありとして警察権が出ていかれるということに対しまして、私はこれをおとめするだけの勇気がございません、やむを得ないと思う。従って願わくは、さような事態の起らないように教職員組合においてもよく考えてほしい、というのが私の切なる願いでございます。
  76. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間が経過いたしましたから、なるべく結論をお急ぎ願います。
  77. 亀田得治

    亀田得治君 文部大臣がそんな教育に対して自信のない態度を持っているから、警察などがどんどんいいことにして入ってくるんです。ともかく日本の警察は、本来自分がやるべき仕事をほったらかしておる。たとえば横井社長のああいう傷害事件、いまだにあがらないじゃないですか。ああいうものこそ、これは刑事事件——刑事の典型的なものだ、そんな問題は——私時間がないという御注意ですから、あまりこまかくも言いませんが、ああいう問題をむしろ一部、いわゆる暴力団関係にまかしてある、実際は警察は手を引いておる。そうして、この重大な社会問題なんかにごちゃごちゃ手を出してくる、両方で信用を落している、そんなことは警察自体として慎むべきですよ。  私、それでは長官か法務大臣に聞きますが、せんだって新聞に出ておりましたが、高知県の高岡郡で勤評促進派のPTAなりボスの諸君が、この警察をしり目にかけて、教員住宅をくぎづけにしたり、電気、水道の使用ができないようにしたり、それから電話などが使用できないようにしたり、あるいは授業中にどなり込んだり、こういう乱暴ろうぜきをやっております。こういうものこそ、これもまた社会的な運動に随伴した刑事の範囲に入る問題なんです。教員組合がやっておるのは、形式的には労基法を守り、ちゃんと一定の手続をとってやっておる。これなんかはどこの面から検討したって許さるべき行為ではないんですよ。こういう問題については、一体一方では教組に対してああいう弾圧的ないやがらせの捜査なりそんなことをやっておって、こういう問題は、即時に逮捕するなり取調べをしておるかどうか、ちょっと関連してお聞きしたい。
  78. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 高知県高岡郡で今お話のような事件があったことは、私はまだ報告に接しておりません。早速実情調査いたしまして、お話のような事実でありますならば、これは相当重要な問題であります。刑事事件になるべきところは当然捜査をすべきものと、かように考えております。  なお、先ほど横井社長の傷害事件等について、捜査が緩慢ではないかというおしかりを受けましたが、警視庁におきましては、鋭意捜査をいたしておるのであります。何分にも、いわゆる暴力団等、組織を持っておるものにつきましては、なかなか捜査のむずかしい点があるのでございますが、そうした点はどこまでも鋭意努力をいたしまして、克服いたしまして、一日もすみやかに事件解決をはかりたい、かように考えておるのであります。
  79. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連。ただいま高知県の事例について長官から取り調べるという発言がありましたから、それに付随してもう一点お願いしておきたいと思います。  それは六月の五日未明、高知県の警察本部長は百八十名の警察官を動員して教育委員会を取り巻き、その中で高知県における勤評実施の決議を行いました。このことについて長官はすでに報告を受けているかどうか、お尋ねいたします。
  80. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 高知県で勤務評定の規則をきめる教育委員会が開かれたのは六月五日でございましたか、七日でございましたか忘れました。そこのところははっきり記憶いたしておりませんが、とにかくそのころ高知県教育委員会においては勤務評定に関する規則の制定をされたように聞いております。その際に、それを阻止すべく、当日朝早くから、県の教組の関係、その他の方々が、県の教育委員長またその他の教育委員あるいは教育長、そうした関係者が出勤できないように阻止をしたという事態があったので、そうした人が出勤、登庁できますように、警察としましては適当な処置をとったと、こういう報告を受けております。
  81. 坂本昭

    ○坂本昭君 当時の実情では、三十名近い教組の人たちが教育委員会の門前におりましたが、実に百八十名も動員しなければ委員会の部屋に入ることができないというような、そういう実情ではありません。これはまた本部長自身が説明するところによると、警察の仕事はタクシーの業者みたいなもので、だれからでも事態によって出動を要請された場合には、何も教育委員立場だけ守るために出動するのではないということをはっきり申している。そしてその当時別に教育委員の各人が中に絶対に入ることのできないような状態では決してありません。私はもう一度調査をし直して、今のような百八十名も動員しなければ教育委員の身辺の安全を守ることがほんとうにできなかったかどうか。それに反してただいま亀田委員の指摘された通り、教員の住宅にくぎを打って中に入れないような措置をとった。そういうことこそ身辺の自由を奪うものであるが、それに対して高知県の警察本部かどういう処置をとったか。十分その点を明らかにして後日御答弁願いたい。
  82. 亀田得治

    亀田得治君 法務大臣にちょっと関連して一つ伺っておきます。  検察庁法の第四条ですね。ここに検察官の公訴権の根拠というものが明示されておる。あそこに書いてある言葉は「検察官は、刑事について、公訴を行い、」こう書いておるのです。こういう刑事という言葉は刑事訴訟法上でも専門語としては使っておりません。大体ここだけです。ここの刑事という意味ですね。これは私は法務難局なり検察庁ではよく翫味してほしいと思うのですね。これは戦前からの慣用語です。民事、刑事——民事に対した刑事です。これは非常に一定の狭い範囲の概念なんですね。私からあまりこんなことを説明するまでもないのですが、たとえば戦前であれば軍事とか祭事とか、これなんか截然と区別されている。民事、刑事、それから教育なんかはその中間に若干来るのでしょうが、およそ物事の社会的な常識に基くワクがあるわけなのです。法律違反は全部処理するという意味じゃない。「刑事について、公訴を行い、」これは非常に味のあることなんです。検察官のおよその仕事というものはそこに尽きておるわけなんです、ワクは。こういう点を法務大臣はどういうふうにお考えになっておるか。これは特に公安事件か何かについての態度に大きくこれは影響してくる。何でもかんでも警察や検察が手を出してもいい、そんなものではない、これは。刑事という言葉自体からこれは明確である。私はこういうことを文部大臣の方では、文部大臣自身の、教育という立場からもっと刑事という問題について毅然たる態度を持ってほしい。両方ともあまりそういう境界を侵害することのないようにやってもらいたいと私は思っておるのですが、法務大臣、こういう点どういうふうに解釈しておられますか。
  83. 愛知揆一

    ○国務大臣(愛知揆一君) 法律専門家である亀田君からのお尋ねでございますから、私の申し上げることが常識的に過ぎるかと思いまするけれども、お尋ねの要点は、たとえば教職員組合の今回の捜査あるいは検挙を受けた者自体に対する具体的なお尋ねに関連しておると思いますから、そういうような意味でお答えをいたすのでありますが、私は刑事という概念はどう解釈するかということは、これは長年の慣行もあり、また通説もあるのでありまして、それを検察当局か守ってやっておるか。まず第一にこう解釈いたします。従ってその次には地公法の第三十一条と六十一条の関連におきまして、今回のような一斉に授業を放棄するというようなこと、その行為が禁止されてあることをあおりまたはそそのかすということかいわゆる刑罰法規として明定されておるのでありますから、これに違反をする者を捜査をし、必要に応じて検挙をするということは、ただいま御指摘の刑事という概念の中に私は完全に入るものと理解いたしております。
  84. 亀田得治

    亀田得治君 文部大臣、どうです。
  85. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 教育に関係の多い場合、やたらに警察権が入るというようなことは、先ほど申しましたように、よほど取扱いを慎重にしていただきたいということは私は申しておるわけですから、今の愛知法務大臣のいわゆる刑事という問題に対する御答弁は、私も同様に考えております。
  86. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 関連して一言。国民の関心を持っておる当面非常に重大な問題が今論議されておるわけですが、私関連いたしまして承わりたいと思います。  片々たる一事象を捉えて、あるいは法律的に、あるいは形式的な立場から論議しておったのでは、それだけでは今の日本の教育は救われない。私は今の日本の教育界は非常に国民の一人として懸念を抱いておる。文部大臣あるいは警察庁長官あるいは法務大臣の答弁を承わっておると、そういうことでは解決できない、救われない、こういう私は考えを持っておりますので、これを前提にしていささか意見を述べて御答弁をお願いいたします。   日本の教員というものは、それほどあなた方から憎まれなければ、いじめられなければならない教員でしょうか。私は戦後日本の教育が発足して幾らかの批判はありながらも、ああいう戦後の混乱から日本の教育が今日まで続けられてくる過程には日本の教師の努力と理解というものは相当高く評価されていい。ところが文化国家を指向しているわが国の現代教育、文化、学術の、世界に誇って述べ得るような政策が最近の保守政権にあると言えるでしょうか。教育、文化の政策というものは私はないと思う。一貫して流れておるものは日本の教員、教職員組合への、いじめるといいますか、弾圧といいますか、それが大きく流れて、その大きな筋からちょっちょっとすし詰め学級解消とか何とか、危険校舎云々という政策が出ているので、これは政策として誇るべきものでない。大きく流れておるものは弾圧、抑制一本のもの、もう少し私は日本の教育の振興という立場から、教師を十分能率をあげて働いていただけるような環境におくような考えにならなくちゃならない。今の自民党の諸君の中でも、これはずいぶん正論を持っておる人もあります。しかし今の政府与党の中は、なんでしょう、日教組の悪口を言う、日本の教職員の悪口を言わなければ党内で失却するというふうでしょう。
  87. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君、簡単に願います。
  88. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 簡単にします。ですから、総理以下、文部大臣、各関係者がとにかく悪口ばかり言っておる。こういうような雰囲気があれば、教師が何らか反発してくるというのは、水の低きに流れる自然の姿だと思う。その現われた事象だけとらえて、子供の前で、学校に警官が乗り込んで行って、逮捕ということを繰り返していったのでは、ますます救われない事態になって参る。たとえば東京都教組の問題に関して、警察が日教組小林委員長宅を捜索する。その次に福岡県教組に関係して捜索する。今度は和歌山県、高知県というふうに繰り返す。そういうようなことを、力を背景とするような権力政治をやったって、日本の教育は救われるかということなんですね。こういう点を——私は岸総理におってもらいたかったのですが、退席されておりますが、文教の責任者としては、ほんとうに心静かに反省して対策を講じなければ、子供がかわいそうじゃありませんか。文部大臣就任以来の発言を見ましても、そういう反省というものはいささかもない。私は具体的に答弁を要求する点は、ともかくこういう事態になっているについては文教行政政策を扱っておる文部大臣、ときの政府というものも、主権者である国民に対しては責任をとらなくちゃならない、ある程度責任を感じておるのかどうか。文部大臣責任を感ずるのかどうか。責任を感ずるならば、いかように対策を立てようとするのか、これが一点。  もう一つは、今管理職手当が審議されておりますが、これらも商い見地から眺めるならば、先ほど私が言いました大きな筋として、日教組対策以外の何ものも文教政策にはない、そのもの一つだということがはっきりすると思う。ところが一部では、管理職手当は国会で今審議されておりますが、最も重要だからあるいは会期を延長してやるとか、あるいは中間報告を求めてまでもこれを通すというような風説まであるわけですが、会期を延長するとか、中間報告を求めるということは、立法府できめることですが、こい法案は内閣から提出されておるわけです。文部大臣としては、会期を延長しても、あるいは中間報告というような非常手段を通してでも、日本の教育を振興させるために、この管理職手当に関するような法案を通さなければならぬ、こういうような考えでおるのかどうか。  それから第三点は、警察庁長官に伺いますが、これはあなた方捜査権をもっておるから自由でしょう。しかし東京都、次は福岡、次は和歌山、高知と、同じ日本教職員組合の本部、さらに小林日教組委員長の自宅を捜索するというのは、私は必要以上の強制捜索だと思うのです。これは威嚇政治だと思うのですね。そんな必要はないと思う。さらに逮捕にしても、東京都教組の各支部長を逮捕しておりますが、これも必要以上の事柄ですよ。しかも準抗告は却下されても、ばかの一つ覚えみたいに特別抗告までしている例があるわけです。こういう点は私は反省してしかるべきじゃないか。またこのことについて、文部大臣から、何らかの閣内において意思表示があってしかるべきじゃないか、かように私は考えます。今のあなた方の御答弁を承わっても、また伝えられるあなた方の対策をもってしては、今の私は日本の教育は救われないと思う。もう少し根本に思いをいたして、いかにこの日本の教育を、子供を救うかという立場から、同じ日本人なんですから、また何もあなた、教職員をいじめなくても、憎まなくてもよろしい。むしろたたえてしかるべき点もあるのです。今の状態というものは、これはまことに与党諸君には失礼ですが、政府与党の長きにわたる日教組対策以外に何ものもない貧困な日本の教育、文化、学術政策をもたらすものであるというこの点にも、相当の私は反省をし、それから打ち立てていかなければならないと思うのですが、非常に重大なことでございますので、関係者に、以上申し述べた点について、答弁を求めます。
  89. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 日教組、いや学校の教職員をいじめるのじゃないかという、憎んでいるじゃないかというようなお言葉でございますけれども、私どもはさような気持は毛頭ございません。どこまでも教職員の諸君の御努力によりまして、日本の教育というものを、ますます向上さして参りたいと、かように考えている次第でございます。お言葉を返すようでありますけれども、この点については、さような考え方をいたしておらないというふうに、一つ御了承を願いたいと思うのであります。  問題は、日教組、いわゆる教職員組合の諸君の活動状態が、あれでよろしいのかというところに問題があるわけでございます。今回の勤務評定の問題につきましては、あまり法律論めいたことを申し上げるのは、私、好まないのでありますけれども、現に法律があるわけです。この法律に従って、これを実施しようというので、これにつきまして、勤務評定そのものについて、いろいろな御意見もあろうと思います。あるいはまた御要望もあろうと思います。それをかれこれ申すのじゃございません、ただ勤務評定の実施ということについては現行法があることでございますので、教職員の諸君もこれに協力してほしいと思うのであります。しかるに現在の活動状況からみますというと、頭からこれを拒否する、実力をもってしてでもこれが実施を阻止する、こういう態度で動いておられるわけでございます。この実力でもって阻止するというその手段、方法は、先ほど申しましたように、今日のいわゆる地方公務員法に違反するような行為をとっておられるわけです。私はこの勤務評定に対する教職員の諸君の意見なり希望なりを述べられることについて、これをかれこれ申し上げるのじゃございません。また関係当局もそういう意見なり要望等に対しましては、心を広くして、十分これを聞いて、できるだけスムーズに物事を運ぶことが望ましいと考えている次第でありますけれども、全然これを頭から拒否して、きかなければ実力でもってやるのだ——大事な子供の教育のことをそっちのけにいたしまして、そういうような行動に移られるということは、いかにしても不穏当だと思うのであります。従ってさような場合に、法律違反の容疑ありとして、警察権が出て参りましても、まこと残念なことでありますけれども、いかんともしがたいのです。やむを得ないという私は心持がいたすのであります。願わくはすみやかに本来の姿に返ってもらいたい。そうして筋道を立てた行動をとっていただきたいというのが、私の希望でございます。  また第二に、管理職手当の問題についてのお尋ねでありますが、この管理職手当は、私どもといたしましては、学校長の職責にかんがみまして、管理職手当を出すということが適当であると考えている次第であります。これも何か非常に大きな意味のあることのようにおとりになっていらっしゃるのですけれども、そうではございません。その地位にかんがみまして、その管理職手当を出そうとしているに過ぎないのございます。この法律案を今国会におきまして、私は成立することを切望いたしております。会期延長とかあるいは何とかいうふうなことは、私、ただいま何も考えておりませんけれども、願わくは皆様方の御協力のもとに、この国会において、成立さしていただきたいと、念願をいたしている次第でございます。  なおまた、警察の問題につきましては、先ほど申しあげました通りでございまして、私は教育界に警察が出入りするというようなことは、まことに望ましくないことであります。できるだけ事を慎重に運んでいただきたいと思っている次第でございますが、同時にその原因となるような行動をぜひ教職員の組合の方々も慎んでもらいたいと考えておる次第であります。
  90. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 警察庁長官、答弁を求めます。
  91. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 勤務評定実施につきましての反対あるいは賛成、いろいろお立場によって御意見の分れていることは、これは無理からぬことであります。私ども警察としましては、そのこと自体には何ら関与し介入する意図は持っておりません。願わくば目的のためにあくまで正しい手段方法によって運動が行われることを念願をいたしておるのでございます。不幸にして、いかに目的が正しくとも、合法のワクを逸脱した手段方法がとられますならば、しかもそれが刑罰法規に触れるということでありますならば、これは法秩序を維持いたします警察の任務といたしまして、放任するわけに参らないのでございまして、今日若干の県におきまして、いわゆる勤務評定反対闘争のために、地方公務員法三十七条、六十一条の違反の容疑行為のありますことはまことに遺憾であります。私ども警察といたしましては、何も文部当局から依頼を受けてこうした事案の取締りをやっておるというようなことは絶対にないのでございまして、警察は警察独自の立場におきまして法秩序の維持の責務にかんがみまして、違法の事案がありますならば、これを真相を究明し、法に照して処置すべきものは処置する、こういう意図以外にないのでございまして、捜査に当りましては、特に学校の児童生徒等に与える影響、教育に与える影響等を考えまして、極力慎重にまた必要最小限度にいたすように、都道府県の関係者には私は繰り返し要望いたしておるのでございまして、現実のいろいろな取締りの実態に対しましては、私も常に深い関心を持って(「行き過ぎがある」と呼ぶ者あり)都道府県の報告を求めまして、行き過ぎがありますならば、これは十分に是正せしめるように、今後とも注意をいたして参りたいと思います。
  92. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 委員長
  93. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間がだいぶ経過しておりますので、関連は御遠慮願います。
  94. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 文部大臣の不用意の発言があったので、ちょっと一言。
  95. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 矢嶋君にお願いいたします。御意見はお差し控え願います、御質問だけお願いいたします。
  96. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 ずいぶんと討論したいことはあるのですが、関連質問ですから省きます。ただ一言伺う点は、管理職手当で文部大臣は重要なる法律を誤まって解釈している。だから勉強してもらいたいことを要望する。それは、あなたは衆議院の委員会におきましても、ただいまの答弁でも、この管理職手当は、校長の管理者として職責上当然だと思うから与える、こういうことを言われているのですが、給与法の四条とそれから今の給与体系を審議したときの委員長報告、それらを勉強してもらいたい。重大なこれは間違いなんです、こういう点が。だからそれを押し切ってやるところにあの管理職手当に先生方がいろいろ意見を持つ、それから一貫した文教政策に納得できないでああいう行動が出てくるので、だから私はこの管理職手当は十分慎重に審議しなければならぬということを言っているわけですが、繰り返してその点だけ明確に答えてもらいたい。文部大臣は何ですか、校長の管理職としてのその職務に対して今後の管理職手当を出す、こういう解釈をとられているのですが、重大なる間違いですよ。特別調整額というのはそういう、趣旨で出ているのじゃないのです。給与法を変えないでそんなことできません。
  97. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 矢嶋さんのお尋ねでございますが、管理または監督の任にある者に対しましては、いわゆる特別調整額というものを国家公務員については出しておるわけであります。すでに国立大学の学長とか、あるいは学部長というような者に対しましては、これは出ておるわけでございます。今回は国立の高等学校以下の学校長に対してもこれを出すということにいたしておるわけでございます。同時に地方の高等学校以下の校長に対しましても出そうという考えに立っておるわけでございまして、別段法律上の問題はないと私は考えております。
  98. 矢嶋三義

    ○矢嶋三義君 もっと勉強して下さい。大きな間違いですよ。
  99. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ最後に、もう一言お聞きしておきます。  それは先ほど刑事に関する両大臣見解をお聞きしましたが、もう少しゆとりのある勉強をしてもらいたいと思います。そういう考え方でやったら全くこれは危険です。家の中でうっかり夫婦げんかでもしたりしたら警察官が勝手にどんどん入ってくるというようなことになるかもしれぬ。しかしそういうことはないでしょう。これは家事なんです。家のことなんです、これは。だからおおよそみんなこう社会のワクがあるので、刑事なんというものは全くその一部なんです。だからそういう点をよく検討されたら、ああいう結論なんかは出てこないわけです。で、まあ私は管理職のことには触れないつもりでいたのですが、矢嶋君の関連質問から出てきましたので、一言だけこれは聞いておきます。それは管理職手当を政府が出そうという根拠等は別として、一番納得のいかぬことは、それをいただくはずの校長ですね、こういう人たちが要らぬと言っておる。中にはお金のことですから欲しいという人もあるかもしれぬが、しかし本来ならばもっともっと強い要求がある、どういう場合でも予算要求なんかについては。だから大部分の校長が、そういう余裕のある金が政府にあるなら、もっと学校の給食婦の方の待遇とか、教育関係を実質的によくするためのいろいろなことがたくさんこれは控えておる。少しでもいい、そういう方に回してもらいたい、そういう意見がむしろ圧倒的なんですよ。もらう方がそう言うておるのに何もあなたの方が出そう出そう——そうしてこれだけ大きな世論を巻き起して、押し切って、それを出そう、私はこういう態度がどうしても腑に落ちない、理屈は別です。普通こういう予算の使い方なんというのはないでしょう、ぎりぎりの予算でやるわけですから。ともかく要求者からの十分な希望には沿えないけれども、この程度一つ何とかがまんしてもらいたい、そういうことでやっておるのが普通ですよ。どの項目をとったって大体そうなんです。これに限って、もらう校長会なり、一人々々の力にしたって、もっとほかに使ってもらっていいのだという気持のあるのに、何でさあ取ってくれと押しつけるような出し方をしなければならぬのか、私はこんなことは、法規とかいや大学の部長とか、そういうものの釣り合いとか、そんなことをもうこえて、世間の常識に反すると思うのです。そういう点を常識に反しないとあなたは思っておりますか、全体の予算の組み方等から見て、こういうやり方で無理やりに取らすようなことは……。
  100. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 管理職手当については、校長連がこれはいや受け取りたくない、こういうふうに私どもは実は考えておりません。(「そう言うておる人がたくさんおるよ」と呼ぶ者あり)と同時に従来文部省といたしましては、管理監督の責任はきわめて重要なことでございますので、そういう意味合において、だんだんと管理職手当をつけていくという方法でやって参りました。先ほど申しましたように、すでに国立学校の学長あるいは学部長等には今日ついておるわけです。それ以下にさらにつけようという考えであります。その考えております点は、管理職手当を支給し、また校長さんたちがその管理職という地位を十分自覚せられまして、学校の管理運営の上におきましても、しっかり勉強してもらいたい、こういう意味にほかならぬのであります。
  101. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 午後二時半まで休憩いたします。    午後一時四十分休憩    ————・————    午後二時五十五分開会
  102. 泉山三六

    委員長泉山三六君) ただいまより委員会を再会いたします。  午前に引き続き質疑を続行いたします。
  103. 森八三一

    ○森八三一君 大へん暑いときですから、なるべく楽な気付でお伺いをし、お答えを願うことがいいと思います。ことに上着が質疑をするわけではございませんので、委員長一つ上着をお取りになりまして、総理も一つ上着をお取りいただきまして、自由な姿勢でやるようにいたしたいと思いますので、私も上着を取らしていただきます。  最初に、総理にお伺いをいたしますが、今度の選挙の結果、第二次の岸内閣を組織せられまして、できるだけ大衆の中にとけ込んで、よく民意を把握することに努力をされておるという姿には、私、心から敬意を表するのであります。しかし、内外の情勢はきわめて多端なときでありますので、あまり若さと健康に信頼を置き過ぎて無理をなさいますというと、思わざる問題にぶっつかるという危険がないわけではないと思いますので、健康には一つ十分注意をなさいまして、あまりこびを売るような態度にまで、と言うことは少し表現が行き過ぎるかもしれませんが、度を過ぎまするというと、やはり年は年ですから、争われぬ結果が招来し、それが国政の上に非常な問題を巻き起すということは非常な心配でありまするし、私も首班指名に岸さんに投票した一人として非常に心配をするものでありますから、健康に十分注意をされたいと思うのであります。  そこで質問の第一でありまするが、昨年、本院は院議をもちまして、地方の公職にある方々、中央にいたしましても同様でありまするが、そういうような公けの職にある権力を持った人々が、営利の仕事に直接関係をしておるということは禁止すべきであるということで、公職者の兼職禁止に関する発案をいたしました。本院はそれを議決いたしましたが、たまたま衆議院の方でそれが廃案というようなまことに残念な結果に相なっております。そのときの論議はいろいろございました。ございましたが、有力な一つの意見として、これは伝え聞いたことでありまするので、あるいは間違っておるかもしれません、また、他の院のことでありますので、そういうようなきらいがないわけではございませんが、選挙をするときにすでにそういうような状態にあったということを十分了解の上で選挙をしたことなんだから、当選して現にその職にある人に禁止をするということは、選挙民の気持というものをあとから修正をするというようなことになっておもしろくないのじゃないかという意見があったやに聞くのであります。がしかし、公けの職にある首班者が営利事業等に直接結びついておることはよくないということは、これは万人が認めておる。そこで明年は地方の首班を初めとして公職にある権力者の選挙がたくさん行われるわけでありますので、そういう前にそういう措置をしておきますれば、もし立とうとする人がありましても、そのことの禁止に触れるとすれば、どっちかをやめるという判断もつきましょうし、結果としては、国民多数の要望しておることが具現すると思うのでございます。でございますので、明年の地方選挙の前にそういうような措置をする必要が私はあるのではなしか。そして日本の中央、地方を通ずる政治行政が変な格好にならぬように、また、国民から疑惑を待たれないようにしていくことが非常に大切な問題だと思うのでありますが、そういうことについて、総理として何らかの措置をおとりになりますお気持がございまするかどうか、その点を最初にお伺いをいたします。
  104. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 権力にある者が営利事業を兼務するということはいろいろな弊害を生ずるおそれもあるし、少くとも一般国民の信頼について好ましくない事態が起る、これを兼ねべきではないという議論は私は考え方としてそういうことは賛成であります。従って、閣僚につきましては、内閣た組織しますと同時に、最初の閣議におきましてそういうことを申し合せをし、特にどうしても兼ねなければならぬという事情があるならば、総理大臣の特に許可を受けてやるという申し合せをいたしまして、現在、前の内閣におきましても、営利に関するところの仕事につきましては、国務大臣になると同時にこれを解任するように手続をとって参っております。ただ公職にある者として、それを立法の形にしますときにおいてはどの範囲にこれを限定すべきか、普通の議員等については、公職の選挙によってされるわけでありますが、議員の職務についてはおそらくことごとくそれを兼ねることはできないとすることは実情に私は合わぬと思います。あるいは知事とか国務大臣とか限定することに立法するとすれば、なると思いますが、趣旨としては、そういう御趣旨のような考えを私も持っておりますから、今申しましたように、閣僚についてはそういう考えを持っておりますし、その考え方は、一般に私はそういう方向に指導すべきものである。ただ立法措置でやるということになりますと、いろいろな手続上、その他いろいろな従来の研究によりますというとめんどうなことがありますので、立法化するかどうかという問題については十分に一つ研究し、専門的研究をすべきである、こう思っております。
  105. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げましたのは、知事とか市長とかいうような、地方に例をとりますれば、そういう立場の人を対象に申し上げたのでありまするが、立法上いろいろ考慮しなければならぬことは、法定するとすれば当然これは重要な問題であるわけでありまするが、すでに本院におきましては、全会一致をもちまして具体的に立法をして可決をしておるというような歴史もあるわけでありますので、そういうようなすでに院議をもって決定されておるという事実を参考に願いますれば、必ずしもこれはそう長時間かけて論議を尽しませんでもおおむねの結論は出てくると思います。中央の政府につきましては、歴代の内閣が今総理のお話しになりましたように措置をされておりまするので、これは私ども今ここで直接問題にしようとは思っておらないのでありますが、これとてもそういうような方針とか申し合せによって措置するということではなくて、法定されておりますれば、きわめて明確なことでもございまするから、あわせて一つ十分趣旨を御了解である限りはすみやかにその趣旨が具現されまするように配慮を願いたい。その配慮は、中央政府の方は一応現実の問題としては具体的に措置されておりまするが、地方につきましては、そういう措置が今とられておらないというところに問題がある。しかも明年はそれが大多数改選になるということでありますので、改選の前にそういう措置をしておくということが、これは非常に将来論議を起さないポイントになると思うのであります。現に衆議院ではそういうような論議のもとに、それだけではありませんけれども、そういうことが一つの議論の中心としてあの法律案というものが廃案のうき目を見ておるというふうにも聞いておるのでありますが、選挙の前にそういう措置をしておくことが大切であるというように考えますので、十分御考慮を願いたいと思います。これは希望として、御同感である限りは実現するようにという注文をいたしておきます。  その次に、昨日もこの席で御論議があったようでありますが、非常に重要な米麦の価格の問題についてお伺いをいたしたいのであります。私も米価審議会の委員といたしまして、数日間このことに関係をして参りましたが、今のような姿で国民生活、国民経済全体に重要な関係を持っておりまする米麦価格の問題を論議しておりましたのでは、いたずらに国民からも疑惑を受けまするし、また、世評も政治米価だ、何だかだと言って悪評を浴びせかけるということでありますので、この際、こういう問題についてはすっきり割り切っていくという態度に出ずべきではないかと思うのであります。もちろんそのときの情勢によりまして、行政上いろいろの措置をしなければならぬことはあるとは思いまするが、基本的な米価、基本的な麦価というものについては、これはすっきりした計算ができる。その上にそのときの事態によって、あるいは不作の対策を立てるとか、いろいろ問題はありましょう。これは政治的に考慮されてしかるべきだと思いますが、基本米価、基本麦価というものについては明確にすべきものであると思うのであります。そういう観点から考えて参りまするというと、何と申しましても、現在の法律に明定されておることは一応守っていかなければならぬ。法律不備であるとすれば、これを法律を修正するという態度に出ずべきであると思うのであります。そこで具体的に一つ総理の所信をお伺いいたしたいのは、二十六日の日に、米価審議会は麦価に関して政府の諮問にお答えをいたしました。それが二十七日の閣議決定をされたのでありまするが、決定の結論は、政府の諮問案通り決定をされたのであります。現在の食糧管理法には麦の価格のきめ方について食糧管理法の四条の二、並びに施行令の二条の三というところにきわめて明確な規定があります。四条の二の原則規定は、麦の価格につきましては、昭和二十五年と六年の政府買い入れ麦価というものの平均を基準として、その後の物価指数の変動をかけ合せてはじき出すパリティ計算によって出てくる金額を下ってはならない。これが第一、その次に、生産事情及び経済事情を参酌するということが明定されております。最後に押えとして再生産を確保することを旨として定む。こういうように法律は規定をいたしております。そこでその第二に申し上げました生産事情を加味するということは、どういう方式で、どういう考え方で加味するかということを施行令の二条の三に規定をいたしておるのであります。今回政府の計算せられましたのは、そういうことで計算をして参りまして、最後にことしの生産事情、すなわち作柄というものを勘案せられました結果、特別加算という名称で十円を差し加えるという案であったのであります。その特別加算の考え方がどういう基準に基いて計算をされたかということをだんだんお尋ねいたしますると、施行令の二条の三にはきちんと基準年次の生産、その年の生産予想というものを勘案してきめるという明確な算式が示されておる。その算式によってはじき出したものを二十五年、六年の平均麦価に物価指数をかけて出て参りました金額に加えるということで、一応生産事情というものは加味されるという形にいたしておるのであります。ところが、その計算に、全国各都道府県をながめますると、北陸地方のように基準年次に比べて一〇二%、一〇四%というような生産をあげておる県もありまするし、愛媛県や高知県あるいは九州北部のように、八〇何%という生産の県もございます。そこでそういうような府県別にながめた作況の不同な指数というものをならしまするために、分散度係数というものを一つ新しく取り入れて、それではじき出しておられる結果が、今申しますように十円ということに相なったのであります。ところが法律にはそういう分散度係数というものを使うということは書いておりません。ただ最後に、経済事情を参酌して定めるということは書いてありますが、分散度係数というものは、これは経済事情と見るべきではない。これはあくまでも生産事情のしんしゃくである。だからそういう計算を取り入れてやるということはおかしいじゃないかという議論が一つございました。私もその論議は理論としては正しいと思います。そこで審議会は、政府の出しておる金額には触れませんで、やはり法律を守っていくという現政府の態度、これは私は当然だと思います。これは勤評の問題にいたしましても、労働問題にいたしましても、法律を守っていくという岸総理の態度に敬服いたしております。その通りであります。当然のことであります。そこで、そういう法律の規定というものをきちんと当てはめて計算をした結果、三十円でも、四十円でも出てくる。それをつけ加えるということでなければならぬということでございませんので、一応それはそれとしてつけ加える。しかし、その次に書いてある経済事情を参酌した結果こうなる、こういう判断でございますれば、これは一応法律を順守してやっておるという姿になると思うのでありますが、そういうことでなしに、法律に明定されておる以外のファクターをもってきて計算して、こうなりましたということでは、少しおかしいのではないかと思いますのでございます。でございますから、麦価の問題は一応すでに告示をされてしまったのでございますが、そういうふうな法律に定められておることを別のファクターで修正をするということはいかがな問題であろうと思います。  米価の問題に移りまするが、米価の問題につきましては、これは総理は十分こういう専門的なことは御記憶がないと思いまするが、また、御記憶もあろうかとも思いまするが、最初には昭和九年から十一年まで、三カ年間の自由経済時代の平均をとることが物価の基礎にするのには一番妥当であるということで、これは商工物資から農林物資あらゆるものの統制時代には、九年−十一年の平均を基礎として、その後における物価指数その他の変動を加味して、公定物価というものが定められて参ってきておりました。米についても同様なことで、ずっと進行してきておったのであります。ところが、昭和二十七年になりまするというと、昭和九年−十一年というような戦前の数字を持ってくることはもうすでにナンセンスだということで、学者の諸君を政府がお集めになりましていろいろ御考究の結果、昭和二十五年と六年の平均をとることが一番実態に即するということで、昭和二十五年、六年の政府の買い入れ米価というものの平均をベースにして、それを基準価格としてずっと昭和三十一年まで計算をされて参りました。麦の場合にはそのことが法律に明記してあるのです。昭和二十五年、六年の平均を基礎として、パリティ方式によって算出すべきであるということが明定してあります。米についてはそういうことはございません。しかし、その趣旨はずっと取り入れられまして、昭和三十七年以降、それでずっと計算されて参ったのであります。ところが、昭和三十二年差の米の計算をするときに、その昭和二十五年、六年の平均をとることはまた実情に即さなくなったということで、昭和二十九年から昭和三十一年まで、最近三カ年の平均をベースにして計算をされたのであります。そこで、本年の米価を計算するときに、昭和二十五年、六年をとることは、去年のいきさつからいって妥当でないといたしますれば、問題点が一つ残りまするのは、麦についても、昭和二十五年、六年をとることは、妥当でないということにならなければおかしい、そのことは法律に明定されておるからやむを得ずやるということでは、これはいかがなものであろうか。もし昭和二十五年、六年の平均をとることが妥当でないという結論でございますれば、去年からことしまで一カ年間、その間に国会は二回開かれておるのですから、その二十五年、六年の平均をとることは妥当でないなら、法律を修正するという手続はこれは当然おとりになってしかるべきではなかったろうかと思う、その手続はおとりになっておらぬ、そうしてことし、最近三カ年をとらずに、去年と同じように二十九年から三十一年まで、一年飛ばしたその前の数字を持ってきていらっしゃるのであります。そうして説明を聞きますると、昭和二十九年から三十一年までの平均が比較的平年作を物語るようなことで妥当であろうという御説明ではございまするが、昭和三十二年までの最近三カ年間をとりますると、結論の数字は変ってくるのであります。そこで変って参りますということから、生産者にしてみますると、いかにも政府は安い米価、安い米価に抑えるために、そのときそのとき御都合のいい数字を持ってきて、あとから理屈をくっつけてはじき出しておるのだ、去年は昭和三十五年、六年をとることは妥当でないということで、二十九年−三十一年の平均にした、ことしは最近三カ年でなくてやはりその数字を基礎にしている、いかにもそのときどきの財政上その他の都合によって、安い数字、安い数字が出てくるようなことばかり考えているのではないかというようなことの疑惑を持つのであります。こういうような疑惑を生むようなことを今後も繰り返しておりましたのでは、これはとうてい国民生活にきわめて重要な関係を持つ米価の問題をすっきりして参りまするわけには参りかねると思う。どうしてもここで基本米価についてはもう論議をいたしませんでも、数字的にきちんとはじき出せるような方式というものを考えなければならぬと思うのであります。そのことはあとでお尋ねをいたしたいと思いまするが、いずれ昭和三十三年産の政府買い入れ価格についても御決定になるのでありまするが、その際に今申し上げましたように、基準価格のその基礎となるべき数字の取り方について、昭和二十七年までの経過、その後昭和三十一年までの経過と、三十二年のおとりになった対策と、そうしてまたことしのものというようにいろいろ変遷がございまするが、昭和三十二年産米と三十三年産米を比較いたしました場合に、最近三カ年をとるということになりますると、一石で六十五円上るのです。これは物価指数の関係で、そのために政府は約二十億円の財政負担がふえます。このことは確かに財政上問題ではあろうと思います。確かに考慮しなければならぬ問題点ではあろうと思いますけれども、六、七年間踏襲してきた二十五年、六年のことをやめて、昨年は最近三カ年をとったといたしますれば、ことしも最近三カ年を、たとえその結果、上ろうと上るまいととらなければ、たまたまそれか上るというような実情が出てくるものですから、なおさらもって生産農民としては不快な感を持ち、いいかげんなことをやっているのだ、こういうことの判断をすると思うのであります。さて二十九年−三十一年の三ヵ年間の平均がほんとうにベターなもので、いいものかということを議論いたしますると、これはその道の専門家の大川博士に聞きましても、その他に聞きましても、そんなことは断定できません。ことに昭和三十年は御武以来の大豊作の年です。そういう年が中にはさまっておるときに、それへ持ってきて一番都合のいい平潤の状態を現わしているという説明は、これはどうしてもできません。それから二十九年から三十一年までをとるか、あるいは最近三カ年、三十二年までを入れることにするかということは、論議は論議をしても水かけ論だということを申しておるのであります。そこで御決定をなさりまするときには、できるだけ生産農民に不快な感を持たせませんで、便宜主義的にやっておるという感じを持たせませんで、一俵でも多く法規の命ずる統制のルートに乗せまして、消費者に対する増配ができるように御工夫をいただきたいと思う。その結果がたまたまこの計算をしますと、上るということから、ちょっと感じが悪いのですけれども、上ろうと下ろうと、とにかく最近三カ年をとるということがありますれば、やっぱり最近三カ年をとるということにことしは考えてもらいませんと、非常に結果的にまずいのじゃないかという感じを持つのでありますが、これは専門家でない総理として理論的にどうお考えになりますか、これは食糧庁長官農林大臣に聞きまするというといろいろ御説明はあります。私も耳にタコができるほど聞きましたが、そういうことでなくて、ずっと経過を今申し上げましたように、去年は二十五年、六年の平均が適当でないからやめたと、最近三カ年間をとりましたと、ことしも三カ年をおとりになる方がやっぱり生産者としては納得がいくのじゃないかとこういうように感ずるのでありますが、農林大臣の御報告を得られまして、最終閣議決定の際にどうお考えになりまするのか、そのお気持だけを一つ聞いておきたいと思うのであります。
  106. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 生産者米価を定める場合におきまして、やはり年年米価審議会中心にし、いろいろな論議が行われておることは、根本的に少くとも基準米価については論議の起らないように、すっきりした何か方式を考え、これによってはっきりするようにしていくというと、農民も安心をするし、いろいろ米価がそのときどきの事情によっていいかげんにきまるというふうな疑惑を一掃することは、この生産、再生産を支持し、この国民の主要食糧の確保の上において望ましいことである、そういう意味において、すでに今度の審議会の答申案に、いわゆる生産者所得、補償方式を、パリティ方式でなしにとるという問題につきましても、政府としては真剣に研究して、来年度までに何らかの方式を一つ研究をしようという考えであります。こういう問題でありますが、本年度の何としても今御質問のありました、私も実は専門的にどういう意味において二十九年ないし三十一年までの三カ年の平均を基礎とするか、あるいは森委員が言われるように、それが最近三カ年という意味において、年々こう一年ずつずっていくという考え方がいいのか、どういうふうにそういう沿革がなっておるのか、まだつまびらかに実はいたさないのであります。いろいろ森委員のお話のように、一つの審議をするときにおいて一つの方式がきまり、最近三カ年という一つの方式がはっきりときまっておるものとすれば、あるいは一年たった今日においては、最近三カ年にすることは当然のことであります。しかし、お話のように、少し議論があるかもしれませんが、二十九年ないし三十一年度の三カ年の平均というものが、日本の米価の状況として一応基準にまだ考えることが昨年は適当であったが、本年も適当であるというふうな何らかの理由がそこにあるのかどうか、こういうことを一つ専門的に食糧庁とかその他農林大臣からよく聞いてみまして検討をいたしたい、こう考えます。
  107. 森八三一

    ○森八三一君 もちろん、いろいろ専門的に聞いて参りますれば、くっつける説明の仕方はどうとってもこれはなし得るのであります。これは私がその衝に立てば二十九年−三十一年が正しいという説明もできます。あるいはもっと変ったことを説明するかもしれません。これは説明しようとすれば幾らでも説明の幅のある問題なんです。そこで、麦の場合には二十五年、六年の平均をベースにして計算をしなさいということが法律に定められておりますから、それでずっと来ておる。米の場合には書いてない、しかし、米も同様だということで同じようにやってきた。ところが、三十二年産米のときにそれを変更したと、その変更したときに二十九年−三十一年に変更することが、それがほんとうに基準価格としては正しいものだ、こういうかくかくの理由によってこれが正しいのだということをきわめてできておったとすれば、今さらもう私は議論をする必要はちっともないと思う。それは九年−十一年平均を、二十五年、六年に変えたときには相当論議を尽してこれが正しいということを皆が納得の上で変えたからずっと三十一年まできたのです。三十一年のときに、そういう詳細の論議を尽さずに、急遽変ったのです。その変ったいきさつを、私の承知しておりますことを申し上げてもいいんですが、時間がございませんから申し上げません。申し上げませんが、そのときのいろいろな情勢から論議を十分尽しませんで、三十一年まで最近三カ年間の平均にぱっとすり変えた、だから農民にしてみれば、今までのやり方が、最近三カ年に追っかけられた感じを持っているのですよ。ことしは一年飛ばしてこうやりますると、これがそのぴったり金額が同じになれば大した問題はないと思います。何せ一石六十五円違うのですから。だからいかにも政府は御都合主義で安い金額の出るように、出るようにと考えておるのだという感じが持たれたのです。だから二十九年−三十一年の平均をとることが正しいという理屈がつくと思います。説明は私にやれといえばやります。幾らでもやりますが、そういうことで私は説明にならぬと思う。やっぱり農民に喜んで協力をさせまするためには、去年急遽変えた最近三カ年というものを、やっぱりことしもおとりになりますることが、これが供出を促進せしめる、また、生産意欲をかきたてていくのには非常に私役立つと思いますので、このことは十分一つ考えいただきたいと思うのであります。答申には、基準年次の取り方について再考を要するものと認める、こういう表現をいたしております。でございまするから、今政府の諮問原案に出ておりまするごとく、二十九年−三十一年の平均ということではなくて、もう一ぺんどうしても私は考え直してもらいませんと、ただ安い、安いということに政府は無理をしておるのだという感じしか与えないということになると思います。このことは、ほんとうに一つ真剣に考えていただきたい。私は別案として考えますれば、必ずしも最近三カ年ということがいいかどうかわかりません。わかりませんが、あるいは五カ年をとって、そのうちの最豊作の年と、最凶作の年を一つはずしてみて、三年でやるというような方法もあろうかと思います。そういう点も含めて再考慮を要するといっておりますが、しかし、少くとも米審としては、やはり去年と同じように、最近三カ年をとるべきであるという主張が相当濃厚であったということは、これは農林大臣にも口頭で御報告を申し上げていることでございますので、感じを悪くさせないということは、これはどうしてもやってもらわなければならぬ。二十九年−三十一年がベターだなんていう説明はやろうと思えばできますが、それはこじつけなんですね。私にやれといえばやります。やりますが、これは多数の農民諸君は、これではほんとうに岸政治というものに心服するゆえんではないと思います。これから長い間やってもらうのに信頼を失っちゃいかぬのですから、こんなところで多数の農民に反撃を買うようなことは、政治としては私は愚かな政治だと思う。ただ二十億の負担がどうこうという問題私はないと思います。特に順法精神をでは言っていらっしゃる立場からいきますと、農民としては法律に評いてございませんから、別に順法精神を論議する必要はございませんが、やっぱり一つ法律行為的に多数の無知なと言ってはいけませんが、農民諸君はこれは考えておるのですから、そういうことをほんとうに政治の機微に触れる問題として十分考えていただきたいと思います。  その次に、岸総理もお触れになりましたが、こういったような論議を繰り返しておってはいけませんから、昭和三十四年産米からは、基本米価についてはタイプで打てばすぐ出てくるようにすべきであると思います。そのほかにいろいろな行政上の必要によって、あるいは早く出してもらうために早場の奨励金を出すとか、あるいは一俵でも多く統制のルートに乗せるための予約をしっかりやってもらうということで、予約の加算金をつける。これは基本米価ではございませんので、これは別に政策的に考慮していいと思います。基本米価というのは、すなわち基本になる米価というものはもう論議の必要はないと思います。ただ当てはめておる、算式に用いておる数字がうそかほんとかということだけを技術的にきめればよろしいので、この基本米価については論議しないということにしたいと思うのであります。それにはどうしてもことしの米審でも、昨年も一昨年も続いて答申をいたしておりまするいわゆる生産者所得補償方式というものにすべきであると私は思います。思いつきでことしの米審が言ったのではなしに、すでに四カ年にわたって学識経験者がお集まりになって討論をされた委員会において、そういう結論が年々出されておる。政府はこのことをできるだけ尊重いたしますということを答弁で繰り返しておっしゃっておる。ただ実際問題として、この方式に当てはめて計算をするためには実にむずかしいのです。私がここで簡単に言えるほどのものではございません。労銀がどうとか、投下資本利子をどう考えるとか、バルク・ラインをどこに引っぱるかという問題は微妙な問題であり、むずかしい問題で簡単にはいきません。といってむずかしいからといっていつまでも投げやりにしておったのでは、米価に対して不信を感ずるので、必ずしも政治家としてはとるべき態度ではないと思います。だから結局バルク・ラインを八〇に引くのがいいか、七八に引くのかいいかということはあらゆる角度で検討していけば、おのずからそこに多数の意見というものか固まってくると思います。労銀にいたしましても、どういう労銀計算でやるのかいいという基礎計算の方式だけに論議を費すならば、私はそういう一年も半年もかかるものではないと思うのでございますから、これは一つ政府は十分お考えいただきまして明年はとんなややこしい議論をせぬでもいいというようにぜひやっていただきたい。そのために必要でございますれは、あるいは学識経験者をお集めになりまして調査会をお作りになる、あるいは現在の審議会の中に委員会をお作りになる方法はいろいろございます。私はその方法については繰り返して申しあげません。これは総理の御判断に譲っておきますが、とにかく三十四年産米ではあんな見苦しい論議を一つやめにしていただきたい。そうでなければ、国民は米価に対して信頼せぬと思います。消費者もほんとうにすっきりした感じを持たぬと思いますので、生産者、消費者両方に不快の感を与えて、世の中からは政治米価だと、こういう非難を受けることはいかぬと思います。基本米価だけはどうしてもすっきりきめるということにして踏み切っていただきたい。あと一年ありますから、私はできると思います。そのことを一つ総理に熟考していただきまするようにお願いを申し上げておくのであります。時間がございませんので、米価の問題はまだいろいろ申し上げたいのですが、総理は今の基準年次の取扱いについてほんとうに一つ真剣に考えてやっていただきたい。便宜主義的な感じを与えておるということは払拭してもらいたい。米審はそういう意味で、できますれば最近三カ年をとるべきである。とりますれば二十億の負担がふえるということがはっきりしますが、二十億の問題ではないということを一つよくお考え願いたいと思います。それからほんとうに基本的な計算方程式を作ることに御努力を願うということを希望として最後に申し上げておきます。  その次に、これも当面の問題ですが、蚕糸問題について農林大臣にお伺いをいたしたい。今度出していらっしゃる臨時措置法によりますると「政府は、昨年末以来の生糸の需給事情の悪化に対処いたしますために、」こういう提案要旨の説明を冒頭に申されておるのであります。そこでお伺いいたしたいのは、一体昨年以来何がために需給事情か悪化したか、農林省は一体どうこれを受け取っておられるのかということをお伺いしたい。私は昭和三十三年度の予算を審議いたしまするこの席におきましても、当時赤城農林大臣は重要な任務を帯びてソ連へ行っていらっしゃいましたので、代理の石井副総理に質疑をいたしたわけでありますが、この一つの重要な要素として、繭糸価格安定法の運用を誤っておるのではないかということを指摘したのです。これも総理もよくお聞きを願いたいのでございますが、安定法によりますると、審議会というものが設けられまして、そうしてその年の生産事情その他を勘案して、ことしは最低値を幾らとする、最高値は幾らだ、こういうことを公定して発表をいたすのであります。ところが、生糸はただ普通の生糸だけではございません。玉糸もございます。普通の絹糸については最低値を十九万円と昭和三十二年度は公定をした。現在もそれを踏襲されております。玉糸については十六万五千円というものをその当時一応支持したのであります。ところが、昨年の十一月からずっと市況か悪くなって参りまして、玉糸の価格が下ってきた。その当時普通の糸は十九万円維持をしておりました。ところが 年末になって糸価安定審議会をお開きになりまして、十六万五千円を支持しておった玉糸の価格を十五万円と修正されたのです。私はそのときに役所に参りまして、これは年度の途中にその支持している最低価格をいじくる、実勢が下ったからこれを変えるなんていうばかげたことがあるか、実勢によって動かしていくなら安定法は要らない、その年の生産事情によって一応策定したものはそう軽々に海外の市況が変ったからといって動かすべきものではない。もしそんなことをやれば十九万円を維持しておりましたけれども、普通の糸価にも影響するだろう、これは日本の政府の糸価安定法というものに対する疑惑が生まれることは当然ですから、市況が下ってくる、実勢か下れば年度の途中でも下げていくんだということをやれば、これは普通の生糸の十九万円の方も実勢を悪くしてやればもっと下げてくる、こういうふうなことに発展する。普通の糸にも影響を持つことになりはしないか。僕はそういう心配を持つ、そういうことをやるべきじゃないということを申しましたが、審議会がそういうことをきめるんですから、別に政府が一方的にやったのではない。民主的な協議を経てやったというかもしれませんが、そういう行為が行われている。安定法によって一応きめたものを、その年度の途中で市況が悪くなったから、実勢に合せるために変えるんだということなら、これは私は安定法は必要がないと思います。そういうところに一つの大きな私は錯誤があったのではないかと思うのであります。そういうようなこと、さらにまた、この絹糸の輸出の窓口というものは一本ではない。私は今統制をしようとは思いません。思いませんが、現在のようにばらばらになって勝手にそういう商行為が行われているという姿に、これは獲得した優先外貨の使用によっての問題も考えられましょうし、いろいろな問題が考えられるということから、この重要なる輸出農産物である絹糸の市況というものをいろいろな混乱させるということは、日本国全体の利益ということじゃなくて、その取り扱う商社自体の利害だけに頭を向けなければ、すぐ起きてくる問題なんでございますから、そういうような生糸輸出の機構上の問題にもまだ十分知恵が回っていないのではないか、この辺を少し考えなければ、たとえ今度法律を作って百五十億の金を出してやってみましても、混乱というものを必ず避けられるという確信は私は持てないのではないか、こういう感じを持つのであります。そこで私の感じでございますが、農林大臣がこの法律を付議されまする冒頭に、政府は昨年以来の生糸の需給事情の悪化に対処するために、こういうことでこの対策を考えて、こういう金を使う、こうおっしゃっているんですが、今私の申し上げましたようなことがこの生糸事情の悪化という重要なファクターであるとすれば、この対策だけではこれは目的を達しない、こういうことになるのであります。でございますから、そういうような点について一体どういうことをまあ意味しているのか。政府の見解としては、「生糸の需給事情の悪化に対処いたしまするために、」という、この対処の方策として、これだけでよろしいのか、今私の申し上げましたようなこともお考えになっているのかどうか。そんなことは君が考えているだけで、それは悪化のファクターとしては取り上げるべきものではないということでございますれば、その御説明もいただきたいのであります。要するに、私の質問はこの事態を惹起いたしました原因なり、もとが、どこに、那辺に存在しているかということをしっかりつかまなければ、その対策は出ようはずはないんです。悪くなった、原因というものをきわめてそれを直していくということでなければいかぬはずですから、どこに原因があったといったことを、今政府はお考えになっているのか。それを明確にまずお尋ねをいたしたいのであります。
  108. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) 悪化の事情に対処してと、こう申しておりますが、先ほども御質疑がありましたが、五カ年計画等で予想しておりました繭の生産におきましても、年々百万程度の増錘は見込んでおった。従いまして、市況等がかりに平常でございますと、これに対処いたしまする場合におきましても、それぞれの限度において対策もあったと思うのでございます。しかしながら、片方におきましては、昨年の夏秋蚕等は非常に増産されまして、そうして三千三百万貫になって、平常の生産よりもはるかに、二百六十万程度の増産をここに出しておる。さらにまた、一面において、市況の方も不幸にして沈滞して参って、そうして糸価の下落を見たと、こういう予想せざる二つのファクターが加わりまして、そうして異常な事態になったものでございますから、アメリカ等の市場におきましても、不安定なことでは生糸の買付か進められないという事情にも相なったのでございまして、この点は見込み違いであると同時に、また非常に失敗したと、こういう御非難を受ければ、まことに恐縮でございますが、実態は、両方の面に異常な事態が生じて参ったのでございますから、この臨時措置をとる必要を生じて参ったのでございます。  従いまして、今御提唱になりました糸の一手販売の機構の改革等もいろいろございますけれども、まず私たちは、昨年取りきめられました繭価千四百円、同心に糸価の十九万円を安定させることによって、そうして養蚕家に対しまする千四百円の繭価を維持して参りたい、これをとりきたったのでございまして、異常な事態と申しまするのは、生産並びに消費の面に、ともに異常な状況が競合して参ったのでございます。この点に対処して今の政策を打ち出しておると、かようなことでございまして、今度の対策によりましてこの大宗は解決すると、こう考えております次第であります。
  109. 森八三一

    ○森八三一君 国際的な不況ということが天然絹糸の需要を減退せしめた、それに逆に国内における生産は、天候、農民諸君の努力、いろいろなものが相重なりまして、予期以上の生産をした、そこで需給のバランスを失ったから糸価が暴落したのだというように説明されておりまするが、現象としては、私はそういう現象はあったと思います。そういうときがあればこそ、それに対処する対策として繭糸価格安定法といのものをわれわれは作ったはずなんです。そういうことがなければ、別にこんなものを作っておく必要はないので、そういうことがやがて起きるであろう、またそういうことも予測せられるということで、繭糸価格安定法という法律を作って、そういう事態が未然に防止されるようにと努力をしてきたはずであります。  そこで、生産事情等からいたしまして、価格はどういう程度の価格に安定せしめることが適当であるかということをいたしてきておるのであります。その価格を年度の途中でいじくるなんということをやったら、これはアメリカにおける取引先の商社の諸君は、日本の政府のやっておることはでたらめだ、安定法で約束をしておいて、その約束しておる年度中に需給関係で実勢が下ったからといって、どんどん安いものが出てくるということをやられたんじゃ、これは取引する連中はまじめに取り組んでくるわけに参りかねるということは、当然なことと思います。私が向うへ参りましたときも、向うの宣伝所の、これは政府も八千万円ですか助成金を出しておるわけですが、所長さんなんかと一緒に向うの商社を回りましても、連中は絹糸の価格の高い安いということよりか、むしろ安心して取引できるような安定帯というものをほんとうに作ってほしいと。私がそのときに聞きましたことは、最高値の二十四万円ということはちっとも議論に出ませんで、三十五万円、六万円でもよろしいという議論が出たのです。高い、安いという問題ではなくて、その他の繊維のように、工業繊維はきちんと安定して価格が出てくる、だから取引というものはきわめて安心だ。ところが、天然絹糸の方は、上ってみたり、下ってみたり、これは困るのだ。だから、どうしても安定さしてくれというのは、一致した要望でした。だから、こっちには繭糸価格安定法という法律があって、諸君にそういう不安の感を抱いてもらわぬで、安心して取引してもらえるように、日本政府は努めているのだから、心配は無用だと、こういうことを申してきたのですが、そういうことを申したとたんに、年度の途中に価格をいじくられるということでは、これは取先は日本政府のやっていることを信頼しないと思うのですね。だから、今後はこういうことは絶対になさらぬということでなければならぬと思うのです。  年度の途中にその支持価格というものを変更するということを、わけもなくやっておったのでは、これは問題にならぬと思う。どうですか、今後はやはり、実勢が上ってくれば、あるいは実勢が下ってくれば、その価格をいじくるということをお考えになりますかどうか。
  110. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) 繭糸価の安定の対象となりますものは、申すまでもなく、いわゆる白繭糸の価格が重要な要素でございまして、この方面につきましては、十九万円を維持しようというので一貫して参ったのでありましたが、その他の生糸につきまして、七時の市場における実勢価格の変動がありましたために、ご指摘のような事態が生じたと思いますが、今後はその他の生糸につまきしても、さような不安定なことがないように、そうして運用の何を尽していきたいという考えでございます。
  111. 森八三一

    ○森八三一君 普通の糸が中心であることは、これはもうよくわかります。わかりますが、その他の糸についてはそうでないから、間接的だからと申しましても、一応政府の買い入れ価格と申しますか、保管会社の買い入れ価格なんかについては、やはり審議会に諮られまして価格はきまっているのです。それを今後はいじらぬとおっしゃいまするから、一応は納得いたしまするが、途中でそれをいじっちゃ、そのことが普通の糸の力にも波及するであろうことは、これは敏感な商社の諸君はすぐ想像することなんです。だから、今後はそういうことのございませんように、十分注意を願いたいと思うのであります。注意どころではない、これはしっかりやってもらわなければならぬと思うのであります。  そこで、普通の糸については、今、糸価安定審議会できめられまして、政府が公表されておるように、十九万円を維持するために非常な国費を費して施策をとっておられますることは、一応了解いたします。いたしまするが、その他の糸についても、どういうような構想でお進みになろうとするのか。ことに全私がここに問題といたしておりまする玉糸は、生産量の八五%くらいは輸出になっておる。生糸の方は、全生産量から見ればごく微量であります。そういうような、ほとんど全生産量をあげて対米輸出に振り向けられておるというのに、直接の対象になっておらぬからということで放任されておる姿は、おかしいのです。そこで、今年の予算編成のときには、一萬田大蔵大臣にも、従来大蔵大臣が財政上の立場から御反対になっておるということで進まなかったと聞いているがどうだ、この対米輸出のウェートの上からいけば、その生産量においてほとんど全部を占めておると言われる玉糸は、どうしても政府の直接買い上げの対象にすべきじゃないかということ申し上げたら、大蔵大臣は、その通りだ、農林省の方でそういうことを考えてくれば、そういう措置をとることにやぶさかではないということは、はっきりおっしゃっておるし、速記録にも載っております。農林大臣は、そういう大蔵大臣の、言明であれば、当然農林省としては考えなければいけません。当然その手続をやってもらわなければならぬ。これは法律行為ではなく、政令でできるのだから、すぐやってほしいということを申し上げておったのであります。それがもとでこの混乱を巻き起してきているのだとも思いますの、で、そういうことを注文申し上げておるのに、自来三カ月月たちましても、何らの措置が講ぜられておりません。そういうような不安定な状態に置かれているということは、やはり問題はどうしても普通糸にも影響してくるという危険を感じますので、その措置をいつおとりになるのか。一萬田大蔵大臣ははっきり約束しております、農林省の意思一つにかかっていると。いつおとりになるのか、その点をはっきり承わっておきたい。
  112. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 玉糸の買い入れにつきましては、前国会の当委員会でお尋ねがございまして、その際にわれわれの方針を申し上げたわけでありますが、その後、前国会におきましてお答えを申し上げました方針によりまして、その後の手順を取り進めて参ったのでございますが、現実の事態は、一般糸につきましても、五月末で一応政府の直接買い入れを打ち切りまして、今回提案をいたしておりまする臨時措置法によって、保管会社によって買い入れをいたすことになったわけでございます。従いまして 今回の提案いたしております法律には、その中にこの一年間は一般糸につきましても政府の直接買い入れはいたさないということにいたしておるわけでございます。そこで、この一年間の臨時措置をやっておりまする間の扱いといたしましては、玉糸につきましては九条の三の規定によりまして 保管会社で特別買い入れをいたす。それから一般糸につきましては、今度の法律で保管会社で買い入れをやるということに相なるわけでございます。いずれにいたしましても、この一年間は玉糸、一般糸を通じまして、政府直接買い入れは事実上行われないことになったわけであります。そこで玉糸は九条の三で買い入れて、一般糸は保管会社で買い入れるということにいたしたいと思います。  なお、来年度以降の問題につきましては、玉糸、一般糸を通じまして、今後、繭糸価格安定制度のあり方と共通の問題として、十分検討いたしたいと考えております。
  113. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、今後一カ年だけを保管会社の特別買い入れの制度で同様の取扱いをする。それが済んだあとは、繭糸価格安定法に基きまして、これまた同様の取扱いをするというように了解してよろしいのかどうか。それから、特別買い入れの制度で参りまする場合に、一般糸については十九万円という一応の支持価格を維持する。玉糸の場合には十六万五千円というところへ戻されるのか、十五万円というところでおやりになるのか。その点はどうお考えになるのかを明確にしていただきたい。
  114. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 来年度以降の繭糸価格安定制度の具体的なあり方を考えます場合、玉糸、乾繭糸をどういうふうに扱うかという問題は、従来のこの問題の経緯にかんがみまして、十分慎重に検討して参りたいと考えております。  それから、玉糸の買い入れ価格は、現在は一般糸、いわゆる標準生糸との格差によってきめております。これは他に、生産費を基礎にいたしますか、あるいは適当な方法で、妥当なものが見出せる線でもございますれば、その方法によることももちろん必要だと思うのでございますが、現段階におきましては、格差による以外に適当な算出方法がまだ事務的にも十分積み上っておりません。ただいま買い入れております方法は、格差によって価格を算出をいたしまして、買い入れをいたしております。
  115. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、普通糸については、一応の価格というものが固定する。その他の糸については、その普通糸の実勢価格との格差において、そのときどき変っていくということになる。そうなりますると、これはやっぱりその糸価の安定を希望している海外の商社から見れば、これは非常に不安定なものだということになるのです。それでは日本の蚕糸対策としては完全なものではないと思います。相手方が、買ってくれる人が安心をして取引のできるように持っていかなければ、これは輸出はできっこないのです。だから、不安定な状態に置くということをお考えになっておるというようにしか受け取れませんが、そうでございますか。それでは私はおかしいと思う。
  116. 須賀賢二

    政府委員(須賀賢二君) 単純に格差によりまする場合は、ただいまお話がありますように、格差が現実に変動いたしますと、その割合によって変動いたして参るわけでございます。ただいまの格差一本でやっております方式は、ただいま御指摘のような欠点を免れないのであります。ただいまのところ、先ほど申しますように、他にかわる適当な方法がまだ積み上っておりませんので、それまでの間、やむを得ずその方法を採用いたしております。しかし、お話しもございますように、玉糸につきましても適当な水準で、本糸と同様に、最低線はこれを動かない線で維持していくという方法をとることは、最も望ましいことでございます。その方法につきまして、できるだけすみやかに私どもの方も研究いたしたいと考えます。
  117. 森八三一

    ○森八三一君 その場合に、やはり取引の相手方に安心を与えるということを基礎にして考えてもらわなければならぬと思うのですが、これは事務的のこともありますので、いずれまた機会をあらためまして、他の委員会等で、もっと具体的の論議を尽したいと思います。  なお、その他酪農問題、蚕糸問題等お尋ねしたいこともございますが、時間が来たので、あとは他日に譲りまして、以上で質疑を打ち切りますが、特に、最後にもう一ぺん、総裁に米の問題だけ真剣に考えていただきたい。いやらしい論議を尽さぬで、安心のできるようなお考えをいただきたい。昭和三十三年産米につきましても、私の申しました基準年次の取り方、これもほんとうに疑念を持っておりますので、そういうことを払拭していただきたいということで、さようなものではないということをしっかりお考えいただきたいということを繰り返して申しまして、質疑を終ります。
  118. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 第一に、総理にお伺いいたしたいことは、選挙公約で、自民党が非常に大きな柱として掲げておりました減税の問題でありますが、これはどの程度の規模のものをどういうふうにして減税をやられるか、この見通しについて、まず第一にお伺いしたいと思います。
  119. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 自民党は過ぐる総選挙におきまして、減税について、所得税を中心としての減税、また地方税については事業税、特に中小企業に対する事業税の減税を考えるというふうなことをあげておりまして、大体の規模を平年度七百億程度の減税をしようということを公約をいたしております。これがやり方並びにその具体的の正確な数字等につきましては、なお通常国会に至るまでの間に十分に検討をいたしまして、これを具体化するように政府としても進んでいきたい、かように考えております。
  120. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 選挙は済んだのでありまして、今度はその公約を実現する段階に入ってきたのであります。今回の特別国会は、院の構成及び内閣の構成、これを中心としたいわゆる特別国会でありますから、その具体的な内容や、あるいはまた法律的あるいは予算的な措置を講じられないということは、これは当然のことであります。しかし、現在の段階は、すでに公約実現という段階に入ってきたのでありますから、そこで、その構想をお聞かせいただくということは、これは当然のことだろうと思うのです。その程度のことでありますならば、私どもも選挙の最中に承わりましたし、そういうことは私たちも聞いているのであります。しかし、私たちが聞きたいことは、この予算委員会を通じて少くとも具体的な、また現実的な減税の内容なりあるいはその見通しというようなことを聞きたい、こう考えているのでありまして、もう少し詳細にお示し願いたいと存じます。
  121. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) ただいま総理からお話しいたしましたように、公約いたしました事項につきまして、鋭意これが実現と申しますか、これを実行に移すということで、ただいま、いろいろ研究いたしております。ただ、松澤さんからも御指摘がありましたように、問題は、来年度予算を編成する際に取り上げる基本的な問題でございますので、今日の段階でこれを計数的に御説明することはまことに困難でございます。この点は御了承を賜わりたいと思うのでございます。
  122. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 しかし、七百億の減税とうたいました場合には、やはりその財源がどういうふうになっておるかということは当然考えて、七百億ということを打ち出されたことだろうと思います。ですから、三十三年度ではどれだけ自然増収があるのだ、あるいは三十二年度の剰余金がどうなっておるのだということをお示しになって、七百億はこういう財政的な、財源的な裏づけがあるのだからできるのだということをはっきりお聞かせ願わなければならぬわけです。
  123. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 財源といたしましては、自然増収分並びに既定経費の節減等も考えて参りたい、かように考えております。
  124. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 あまりそれでは木で鼻をくくったと申しますか、やはり大蔵大臣であれば、全部固まったということはないかもしれません。しかし、その二つだけではないでしょう。剰余金の問題だってあるんじゃないですか。だから、その財源的な措置として考えておられることは一応は列挙して、まだ未確定の部分があるならば、この点については将来考える、こういうふうにお答えをいただかなければ、大蔵大臣としての値打ちがない。
  125. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 数字をもう少し正確にというか、予定される数字ということでございますが、ただいまの段階では、まだ数字を申し上げるまでには実はなっておりません。ただ、私ども考えておりますものは、ただいま申し上げる税の自然増収分もございますし、あるいは剰余金もございますし、さらにまた、公約事現を優先的に実現するといたしますれば、さらに既定経費等からも場合によりましたらこれを捻出していく、生み出していく、こういう私どもの基本的な構想をただいま申し上げておる次第でございまして、この点は、もう少し時間をかしていただかないと、数字的な説明はまだ時期が早い、まことに相済みません。
  126. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今、申された自然増収と経費の節減、それから剰余金、この三つのものをおあげになった。逆に言って、それでは来年は予算規模はどうなるのだというようなことでも、やはり大蔵大臣としては考えておかなければ、この七百億減税ということは出てこない。だからこれこれ要る、これこれは入ってくる。そこで七百億減税ということは可能であるのだ、こういう結論にならざるを得ない。もう少し数字についてお話しを願いたい。
  127. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 数字をただいままだ申し上げる段階でございません。ただ、私どもは、先ほど来申し上げておりますように、公約事項はまず優先的にこれを取り上げるという、この基本的な考え方をいたしております。従いまして、ただいま財源として考えられるものも二、三列挙いたしたわけでありますし、さらに優先的に公約事項を実現する、こういう場合におきまして、財政規模、予算規模等ともよく勘案いたします。そういう場合には、さらに既定経費等についても削減を考えざるを得ないのじゃないかということを実は申しておるのでありまするが、今日、もうそろそろ来年度の予算規模についても構想を持っているだろうと言われますが、来年度の予算について、ただいま申しますような公約事項を優先的に実現したい、またその方向で物事を考えてきたいということは申しておりますが、何を申しましても、まだ年度が始まりまして一、二ヵ月のことでございますから、来年度予算編成大綱にかかるにしても、まだあと一、二ヵ月後の問題でございます。これらの点も事情を御了承いただきたいと思います。
  128. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 大蔵大臣はまだ就任早早でありまして、十分に勉強ができてないということであるかもしれませんし、時期的にいって、まだ現在では、来年の予算のことについて話をする時期ではないということも言われるかもわかりません。それでは事務当局にお伺いするのですが、大体、来年度予算の財源となる自然増収、それから剰余金、それらのものがどのくらい見積られるのか、この点と、それからもう一つは、あるいは減税に七百億必要である。そのほか経費の自然増もあるでしょう。あるいは恩給についても増があるでしょう。大体これは事務的に計算できることだと思います。できる範囲内において一つ御説明願いたい。
  129. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 来年度の自然増収以下に関するお尋ねでございますが、現在、御承知のように、年度もまだ二月を経過いたしました程度のところでございまして、本年度の税収につきましての見当がつかないのでございます。従って、明年度におきまする自然増収がどの程度であろうかということについての見当は、目下まだ申し上げる段階に逃していないのであります。  剰余金でございますが、これは御承知のように、七月三十一日をもちまして決算の確定をいたします。そのときに数字が出ますので、もう少々お持ちを願いますれば、はっきりと剰余金の数字が出るかと思います。  あと来年度の経費の増加のにつきましても、これはいわゆる当然増とか、あるいは自然増ということを申しますけれども、これにはおのおの毎年数字の検討を要しますので、従いまして、今日どのような来年度の経費増加になるかということにつきましても、十分まだお答えをすることを差し控えさせていただきたいと思います。
  130. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 経済計画というものは、その経済の成長率が三十三年度で三%とか、あるいは三十四年度で六・五%とかという基本的な数字があるのでありまして、どの程度の経済成長率ならば自然増収がどのくらい、あるいは国民所得がどのくらいというような一応の計算ができるはずだと思う。それを勘案して考えれば、はじき出されるのではないかというふうに考えるのですが、それでも主計局長は、この際、明確でないから説明できないとおっしゃるのですか。
  131. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 国民所得の増加に対します税収の増加率というものは、ある関係はあると思います。ただ、しかしながら本年度の状況、来年度の状況ということを考えまする場合に、相当大きく法人税がどうなるだろうかというような点がございまするので、今、歳入の見積りといたしましては、国民所得が何パーセント伸びればどのくらいになるだろうかということまで申し上げまするのは、少々危険ではないかという意味におきましてお答えを差し控えておるのであります。
  132. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは角度を変えてお伺いするのですが、やはり公約としまして、やはり大きな柱になっておりました社会保障制度あるいは国民年金、これの構想はいかがでございますか、厚生大臣
  133. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) 社会保障制度の強化拡大の計画は、医療保険についての国民皆保険計画の達成と、国民年金制度の創設とをおもな内容といたしているわけであります。まず国民比保険について、その年次計画を申し上げますと、現在実施中の国民健康保健全国普及四カ年計画によりますれば、昭和三十三年度以降、約四百万ないし五百万の被保険者の増加を見込みまして、三十五年度末には被保険者数四先九百二十万に進する予定であります。その際、被用者保険の適用数は四千二百八十万人に達しまして、国民皆保険を達成することとなっております。  次に、国民健康保険の財政面につきましては、三十三年度以降、調整交付金制度の創設、その他治療給付費に対する国民負担の強化をはかっておるのであります。加入人員の増加等考慮いたしまして、国庫負担額も逐年贈加いたしまして、今年度は百五十六億五千八百万円でありますが、三十五年度末には約二百億円をこれに充てる予定となっておるのであります。なお、国民健康保険以外の保険につきましては、日雇い等で三十億円ぐいらの国庫負担が出ると考えております。健康保険のことは別にいろんな問題があるわけでありますが……。  なお、国民年金制度の具体的な年次評画及び財政措置に関しましては、先般すでに社会保障制度審議会の答申が提出されました。この社会保障制度審議会の答申には、一応事務費をのけまして、醵出金に対しまする国庫の補助、それから無醵出金の支出等を合して、一応五百八十億円という計算をしておられます。これに関しましては、社会保障制度審議会の答申もまだまだいろいろあいまいな要素を持っておりまして、厚生省に設けられました国民年金委員にこれを委嘱いたしまして、内容の掘り下げをいたしておるのであります。つまりどういう立て方をいたしますると、どういう項目で幾らぐらいかかるという基礎計算がなかなかむずかしいものがございまして、大体これを今のところの予定では、八月一ぱいぐらいに、一応どういう立て方をすると、どういう項目で幾らぐらいかかるという、この内容検討をいたしまして、それを基礎にして、大蔵省等と相談しながら、国民年金制度に関しまする実施の具体計画を立てて参りたいと考えておるのでありまして、今日のところ、非常に具体的にこの年次計画、財政措置について申し上げるまでに至っておりません。
  134. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連質問。  ただいま国民健康保険の問題について厚生大臣のお答えがありましたので、それについて一言緊急な点に関しましてお尋ね申し上げたい。実は最近、地方自治団体の国保経営難というものは非常な重大な問題になって、これはおそらく、最近、厚生大臣のところへも連日陳情があることと存じております。特に今回、昨日、新点数表の告示が行われましたけれども、それによって国保が十月一日からどういうふうになるか。特に国保の場合、私の推察するところでは、すべての国民健康保険の理事者は、医師会が修正案として出しました乙表、これを全部使うのではないか、この点についての厚生大臣の御返事をいただきたい。
  135. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) 坂本委員の御質問にお答えを申し上げます。国保の財政が非常に窮迫している現状であるというふうな仰せでありますが、これは実は私の方で調べておりまするところと違うのでございまして、国保財政全般につきましては、近年好転しつつある状況でございます。すなわち、昭和三十一年度におきましては、単年度としてはおおむね収支償っておりますし、昭和三十一年度につきましては、まだ資料は整っておりませんけれども、諸般の事情からいたしまして、過去の赤字を解消するまでにさらに好転していると思われるのでございます。もちろん一部の保険者につきましては、診療報酬の未払いを持っておるものがあるのでございまして、従いまして、これらの未払いを待ちまする一部保険者に対しましては、年次計画を立てて、計面的にこれを解消するように指導いたしておる次第でございます。また、本年十月一日からは診療報酬の引き上げにより、同職財政にも相当影響のあることが予想されておりまするが、これにつきましては、財源手当もいたしておりまするし、適正保険料の負担に努力をいたしまして、うまくいくように指導をいたしていく所存でございます。  なお、この点数表につきまして、全部乙表をとるのではないかというお話がございますが、この点数表につきましては、これは国保といわず、ほかの関係といわず、御承知のように今回の点数表は、甲表について特に合理化を徹底いたしまして、診察料等を、技術料を高く評価する。それからなお、いろいろ手術料等についても差等がつけられておるのでございますが、これはやはり医者の側といたしましても、これはその、医者の考え方によりまして利害得失がいろいろございますので、それから国保にいたしましても、都合でやっておりますもの、地方で、農村でやっておりまするもの、いろいろな点がございますので、厚生省といたしましては、今回の告示に当ってあくまでも甲案というものを理想として掲げました。しかしいろいろなやはり経過的な意味で乙表もつけて、現状との調和をはからなければならないという考えでいたしましたが、必ずしも乙表ばかり、甲衣ばかりということでありませんで、これは実施をしてみなければ状況はわかりませんが、必ずしも今のお話のように乙次に片寄るというふうには考えておりません。
  136. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は国保に関連をしてお尋ねしたわけですが、厚生大臣は新点表のことに触れられました。もう少し国保についてお尋ねをしたいのです。ただいま触れておられましたが、診療報酬の引き上げに伴うところの国保の被保険者負担増というものは、ただいま現在でもあまり経営は困っていないということを厚生大臣は指摘せられましたけれども、実際は、昭和三十二年度の事務費に対するところの国の負担さえも十分にいっておらないのが実情でございます。私は、厚生大臣が現在の国民健康保険の、実態をまことに御承知でない。こういうことで、どうして国民皆保険ができるか、その点を私は非常に危ぶむのであります。いずれにいたしましても今度の被保険者の負担増によって、さらに国保の保険料が引き上げにならないかということを最も憂うるのであります。現在すでにことしの四月以降各県においては保険料の引き上けが指示されております。そして平均二割、中には三割から、ひどいところは六割程度も引き上げているところがあるのです。こういうようなことで、国民がほんとうに喜んで皆保険に協力すると考えられるか。私はこの現状認識から総理大臣に、今のような状態で真に国民皆保険ができ得るとお考えになるかどうか、あらためてお伺いいたしたいのです。
  137. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) 実は私のことを申し上げて恐縮でありますが、私は、私の県の国民健康保険を十年もみずから責任者としてやっておりまして、平素、国民健康保険の内容といたしましては、全国中央会の関係といたしましても、私の直接責任を持っております部面につきましても、特に心して研究をいたしているつもりでございます。実情については相当把握をいたしているつもりでございまして、ただいま御指摘のございました事務費の問題に関しましても、これは今日の国庫補助率は確かに低うございますが、国民健康保険団体の側といたしましても、やはり相当合理化をし、節約をしながら財政負担をあまりふやさないように気をつけながら、もっと増加するという方向に両々相待って努力をして参りたいと考えている次第でございます。で、もう少しやはり大蔵省にも御奮発を願って、事務費についてはなお充実する必要のある部面はあると思います。  それから、保険料の問題でございますが、坂本委員も御承知のように、年年受診率もだんだんに上って参りまするし、それから、いろいろ治療行為内容の向上等によりまして、一件当りの点数も上って参りまするので、これは年々ある程度ずつ保険料が上って参りまするのが実情でございます。それは同時に内容の向上を伴っているわけでございます。で、今回の、十月一日からの新点数表の実施、これはやはり国民医療費といたしまして、総体八・五%の増加をはかるわけでありまして、昭和二十六年以来、七年間据え置いてきたものに対する、医療担当者の待遇改善の問題が入っておりまするから、これはある部分は私は影響がないとは申しませんけれども、この十月一日からの新点数表の実施だけで、国民健康保険料率がひどく上げられるといとことは考えられないと思います。
  138. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 坂本君、簡単にお願いいたします。
  139. 坂本昭

    ○坂本昭君 どうも厚生大臣が的をはずれた返事をいたしますので、やむを得ず少し長くなりますけれども、ただいま厚生大臣は、自分の関係しているところの国民健康保険の経営がうまくいっているということを言われましたけれども、これはどうも根本的に誤まっていると思うのであります。第一に、国保で結核の患者がどの程度入院しているか、これは厚生大臣調べていますか。今日、長期入院の結核患者は生活保護法の患者が非常に多いのでありまして、国保で入院することがとうていでき得ないというところに、今日の国民健康保険の一番大きな欠点がある。そうして、そういう欠点をほうったまま国民皆保険を強行するところに、私たちとしては非常な不安を覚えているのであります。先ほど厚生大臣は、昭和三十三年度末に三千八月四十万人を国保に加入させて、将来、三十五年末に四千九百万人の国保の加入者を作るというような説明をされたのでありますが、私はとうていこういうことは不可能だと思うのであります。今のままならば……。もし皆さんの方で、国民健康保険の新しい法律、これでは二割五分——二割の国庫負担と五分の調整交付金を考えておられますが、二割五分でも私はなかなかこれは経営は困難である。先ほどちょっと一言漏らされましたが、大蔵省からもっと援助をしていただきたい、私はそれはほんとうだと思うのです。少くとも公平に見て、三割の国庫負担が必要である。しかも、三割の国庫負担だけではなしに、今度は、加入者の給付率を上げなければ、今のような結核患者は入院することはできない。少くとも七割程度に給付率を上げなければならぬ。だから、先ほど来の公約をほんとうに実施するためには、三割の国庫負担と七割の給付を本年度内において、新しい法案を出すと一緒に補正予算も組んで、これを強硬に実施しなければ、皆さんの公約はとうてい実施不可能である。私はそういうふうに考えるものでございます。その点について厚生大臣の所見と、さらにこれは何といっても岸総理が一番強く公約せられた点でありますから、総理の意決を一つぜひお伺いいたしたいのであります。
  140. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) 誤解のないように申し上げたいと思いますが、国民健康保険の経営というものが非常に苦心を要するものであることは確かでございます。ただ非常に悪化しておるというお話でございますが、そうでなくて、割合につましい財政の中でもいろいろ苦労をいたしまして、割合に近年、財政総体といたしましては、これは府県によっていろいろ状況が違いますけれども、厚生省のつかんでおります総体的な資料としては、国保の財政としましては、近年だんだんに国庫負担額もふやして参りましたので、従前に比べてさらに悪化するというような方向には行っていないのでございます。ただ、ただいまお話のございましたこの二割五分の国庫負担をさらに三割に上げるということ、給付率を七割に上げるということは、非常に望ましいことでございますけれども、今日の実情といたしましては、先般国会に提案いたしました新国保法の精神にありますように、当面二割五分の国庫負担、給付率につきましては最低基準を五割に置いて、その上はさらにできるようにする行き方で、これはさらにもっと財政に余裕がありまして、国庫負担ができればけっこうでありますが、当面の問題といたしましては、こうした状態で、国民健康保険の経営の推進に当って参りたいと考えております。もちろん、結核の問題等もございまして、なかなか骨の折れることでございますから、私はこれを放置しておいてできるものとも思いませんし、それから、財政負担はできればふえる方がけっこうだと思いますが、やはり困難でありますだけに、ただ金をふやしてもなかなかできませんので、保険者の方々とも真剣に語り合って、むずかしいところがあれば、厚生当局として、そのむずかしいところの排除のためにお互いに努力するというような熱を加えまして、先ほど申しました国民皆保険の計画についてもかまえてこの年次計面を実施して参りたいと私は考えておる次第でございます。
  141. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 坂本君、簡単に……。
  142. 坂本昭

    ○坂本昭君 非常に重大な点が出ておりまして、また総理にもお伺いいたしたいのでありますが、総理には一応最後に結論的にお述べいただくとしまして、社会保障に関連して、特に予算的に緊急対策を要する重大な点が実は数点あるのであります。特に今国保のことについては若干触れましたので、これは省きます。  なお、保育所と、今、厚生大臣の触れました医療の新点数、このことにつきまして、円満、御理解ある委員長の特別なお許しを願って、質問を若干申し述べさしていただきたいと思うのです。
  143. 泉山三六

    委員長泉山三六君) なるべく御意見の御開陳は別席にお願いすることにいたしまして、質問の要点だけをお願いいたします。
  144. 坂本昭

    ○坂本昭君 実は、御案内の通り、本年度に入りましても、景気の回復のきざしはまだ見えておりません。で、完全失業者及び潜在失業者の数がふえ、内職あるいは日雇いによってその日の生活を送る者の数は減少していないのが実情でございます。で、前年度におきましても、保育に欠ける措置児はすでに二十五万人をこえております。今日の事態におきまして、親が後顧の憂いなく働くためには、保育所というものは絶対に必要欠くことのできない社会施設であって、乳幼児の保護、教育、同町に親の社会活動のために、保育所は、万難を排してこれを増設すべき社会的な必要性がますます増大してきているというふうに私は感ずるのでありますが、ここで一言、今まで総理大臣は、保育所のことなどお聞きになったことないと思いますけれども、今お孫さんもいらっしゃることと思いますから、保育所の存在理由と増設の必要について、総理大臣はどういうふうにお考えになっておられるか、一言、御所信を承わらしていただきたいと思います。
  145. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 自由民主党として、社会保障制度の拡充整備ということは、大きな政策の一つの基本に考えております。特に、社会保障制度の問題については、第一に、国民皆保険の問題と、そうして国民年金の問題を二大柱としてこれを実現していくということを考えて参ったのであります。もちろん、これが実現には、いろいろな財政的の面における非常な困難もございますし、また技術的に見ましても、研究を要する点がたくさんありますし、また、内容的にも、一応国民年金といい、国民皆保険といっても、われわれの理想とするものが一時に実用できるわけのものでもありませんけれども、   〔委員長退席、理事剱木亨弘君着席〕 これらの手順につきましては、党としては従来も研究をいたしております。私としても、ぜひ困難があっても、この二つは実現をしたいという熱意を持って、特に政府としても、あらゆる困難を克服して、十分に検討を加えて、実現をしたいと、かように思っております。  なお、保育所の問題についての御質問でありましたが、実は、三十三年度の予算編成に当りましても、もちろん十分な保育所に対する予算を増額することはできなかったのでありますけれども、一部その問題に関しましても私も関心を持って、その増設及び内容の改善ということは考えたのでございます。特に、御承知のように好きな子供の点についてしょっちゅうあらゆる機会に発言をいたしておる私として、その点を全然無視しているというふうな気持はございません。保育所の問題については、この前も予算編成のときに私ある程度考慮をいたして参っております。
  146. 坂本昭

    ○坂本昭君 その今の保育所が全国的に九千数百、これは公立、私立がほぼ半々で、そこに六十数万の乳幼児が保育されておるのです。先進諸国は保育事業というものが単純な社会事業ではなくて、国家の義務施設になりつつあるのです。ところが、この六月の七日の厚生次官通牒をもって新しい措置費改善の方式を七月の一日から強行実施することと相なりまして、この新しい行政措置により、全国の保育所の経営が非常な赤字を呈するようになってきたのみならず 親の負担すべき保育料も非常な増額になって、日本の保育問題が今や重大な支障を来たすように相なってきたのであります。東京都でありますと、きょうも資料を厚生省からいただきましたが、四百三十一施設のうち三百四十、すなわち八割が赤字の経営であります。年間、東京都で合計五千万円の赤字、北海道は二千万円、高知県では四千万円、福島県では二千二百万円、こういった赤字の経営になると同時に、親の負担すべきところの保育料の徴収が、現在より二割三分、総額にしまして、日本全国で約六億円の徴収強化となるのであります。特に、失対労務者の乳幼児の保育料徴収強化の実例は、数日前、私も調べました八施設九十八名についた結果では、従来合計一万一千三百五十円の保育料を取っておりましたのが、新しい方式によりますと、二万九千九百九十円、すなわち二・六倍にはね上りまして、さなきだに生活に苦しむ親たちが、働くために乳幼児を保育所に預けることができないというような状態に相なって参ったのであります。全国において保育所の統合品、閉鎖、保育所の職員、特に保母の首切り、さらに乳幼児の保育所からの退所——総理も非常に子供さんをかわいがっておられます。その子供も保育所から出ていこうという現象が現われ、この七月の一日からまさに起ろうとしているのであって、まことにゆゆしい状態が惹起しつつあるのであります。保育問題というのは、社会保障の重大な要素でありまして、特に国民経済が困難な時期に際しまして、保育所は万難を排して守らなければなりません。それで、かかる不当な行政措置が、実はかねて検討を加えておりました国会、特に参議院の審議を待たずして、特別国会前に、厚生大臣更迭の混乱時に実施の事務手続をとったということは、まことに不当きわまるものでありまして、すべからくかかる行政措置をすみやかに撤回すべきであると私は考えるのでございますけれども、総理並びに厚生大臣のお考えはいかがでありますか、お伺いいたしたいのであります。
  147. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) ただいまの保育所の保育料の問題は、非常に大きな問題でございまして、私も引き継ぎましてから、この問題の措置に鋭意努力をいたしておる次第でございます。ただ、この本年度の予算にきまりました保育料の問題は、坂本委員御承知だと思いまするが、従来この保育所の経営につきましては、保育料で六四%取り、公費負担が三六%で、それを国と県と市町村で八一・一で負担するという形になっておって、徴収基準表もあったのでありますが、実際はその通り行われませんで、この保育料の徴収額は非常に低い。従って公費負担の面が大きくなっておるということで、会計検査院その他からも非常な指摘を受けたのであります。全国的にいろいろな無理がありまする点は、やはり基準を立てて参らなければなりませんので、今回この保育料の基準額を改正いたしまして、過去における全国平均徴収実績額等を基礎として決定したのでありますが、特に生活保護法被保護世帯及びこれに準ずる世帯等につきましては、保育料の全額免除、または少額にする方の点を明らかにいたしまして、従来、財政面でほんとうはこれだけ取るという建前に対しては、相当の緩和をはかったわけであります。ただ、実際の徴収率が非常に低かったために、現実にはかなり影響が出て、それからまたもう一つは、保育所の施設に関しまする人等の経費につきまして、一定の基準を守らずにやっておりましたものですから、それを今回、保育所の問題が非常に大切になり、坂本委員の御指摘のように、今後これをぐんぐんふやして参らなければならぬ。この関係の予算もどんどんふえていかなければならぬということに当りまして、会検計査院、行政管理庁、大蔵省等の御指摘がありまして、厚生省といたしましても、将来の保育所の予算の真剣な増大をはかって参りまするためには、やはり保育の単価なり保育料なりというものは、これをもう一度見直してきめて参らなければならないと思いまして、今回の決定のようにいたした次第でございます。  従いまして、大体、全国の保育所の中では、今回の決定によりまして、経理の楽になるものと、経理の苦しくなるものとございまして、経理の当面苦しくなるものの方がやや数が多いのでございます。これにつきましては、次官通牒によりまする基準は基準といたしまして、予算を捻出して、経過的に、全部とは参りませんけれども、ある程度の経営の負担軽減をはかって措置をいたしておる次第でございます。
  148. 剱木亨弘

    理事(剱木亨弘君) 坂本君に申し上げます。松澤君の関連質問の範囲としては多少逸脱しておるのじゃないかと思いますので、時間も相当経過しましたので、関連質問の範囲におきまして、きわめて簡単にお願いします。
  149. 坂本昭

    ○坂本昭君 先ほど理解ある委員長のお許しを得ましたものですから、私は簡単にお尋ね申し上げておる次第であります。  ただいま、厚生大臣からも御説明がありましたが、要は、特に総理大臣に聞いていただきたいのですが、厚生予算が少いということであります。厚生予算が少いために、厚生省の事務当局は四苦八苦をして、結局そのしわ寄せがいたいけな子供を預かっている保育所の人たちにかかってきているのです。でありますから、私はこの際、特に大蔵大臣にお尋ね申し上げたいのですけれども、まことに小さい、乳幼児の保育予算ではございますけれども、この保育予算に対しては十分責任ある措置をとっていただきたいのです。新任の大蔵大臣は純真無垢であると私は信じております。本年度の補正予算及びこの八月から始める来年度の予算編成に対しまして、大蔵大臣としてどのような御配慮をこの保育予算についてしていただけるか。ただいま大蔵大臣の御説明によりますと、公約の社会保障は優先的に実施すると言われておりますが、大蔵大臣の保育予算に対する御配慮、特に本年度やむを得ない場合には補正予算を組む、それだけのつもりがあるか、そのことを一言お伺いいたしたい。
  150. 佐藤榮作

    ○国務大臣(佐藤榮作君) 先ほど申しましたように、予算の編成にまでまだ時期がしばらくございます。従いまして、ただいま、どういうことだということを申し上げるわけに参りません。ことに予算編成に当りましては、歳入と歳出の関係、各費目等よく検討しなければならないのでございます。ただいまお話しになりました保育に関する予算等についても、御意見をこの機会によく伺っておきます。
  151. 坂本昭

    ○坂本昭君 私は、もうこれで終りますが、一言、先ほどから厚生大臣が新点数表のことについて再三説明せられましたので、このことについて関連質問することだけをお許しいただきたいと思います。  実は、昨日告示せられた新点数表でございますが、これについて世間は非常な認識の誤りがあると思うのであります。大体これは二十六国会、すなわち、昨年の三月におきまして健康保険法の一部改正が強行されたときに、そのときの審議の過程で、医師の待遇改善が付帯決議として上程されたのであります。そのときの文章では、点数並びに単価を含む診療報酬支払い方式を再検討し、医療担当者の待遇改善をすみやかに行うことが要望されたのです。それが約一カ年を経て昨日の告示となって現われたのであります。従って、今回の告示に対しては、厚生大臣は、あらかじめ国会に諮って、付帯決議の趣旨に沿っているかいないかを審議すべき義務が私はあったと思うのであります。われわれは、前大臣からも、また新大臣からも、何らの相談か受けておりません。委員会においては審議をしていないのであります。このことは衆議院においても全く同じであります。このようなことでは、国会に席を置くわれわれとしまして、厚生大臣に、自分も協力もできないことではありませんから、私は厚生大臣のお考えをぜひ承わりたいのであります。
  152. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) ただいまの御質問にお答えを申し上げます。  この点数表の告示は、これは省でできまする行政措置ではございますけれども、御承知のように、きわめて重要な問題でございまするので、まあ本来から申しまするならば、委員会等でも御質問があれば十分お答えを申し上げて、なおまた内容をお諮りをして参るということを、私、絶対にしないというようなことを申しておるわけではございません。ただ、この点数表の問題につきましては、御承知のようないろいろないきさつがございまして、私は実は、厚生省原案として出ましたものにつきましては、実は議員さん力のお手元にはすでに配布されておったのではないかと考えておったのでありますが、私、就任いたしましてから、この六月中に告示をするという政府の方針に従いまして、いろいろ関係団体等とも練って、そうして話をできるだけ承わりまして、この告示をいたしたわけであります。その間、時日もございませんでしたので、手続としては不十分であったかと存じまして、はなはだ恐縮に思っております。今後の問題といたしましては、やはり、特に私、委員会の御審議を拒否するつもりもございませんので、いろいろこうしてお尋ね等ございますれば、皆様方の御意見も十分承わって参りたいと考えておる次第でございます。今回は、何分にも私、担当いたしましてから、政府の方針に従いまして、六月中に告示をいたしますのに間がございませんでしたので、実は衆参両院でいろいろ御意見や御質問のございましたのは、原案はごらんの上での御意見なり御質問なりと思いまして、それを私はできるだけ参考にいたしまして善処したつもりでございます。
  153. 坂本昭

    ○坂本昭君 実は、二十六国会には今の付帯決議よって、直接この新しい百万というものか方向づけられてきたのでありますが、実はこの付帯決議にはこれだけのことが付いておったのではありません。そのほかに特に必要だと思うのは、「国民皆保険の完全な実現を期するため、健康保険に対する国庫負担制度の根本理念を明確にすること」ということが決議されておるのであります。なぜこういうような重大なる決議事項について、その後検討を加えられ、また、実行が行われていないか、私はその点について非常に不可解に感ずるのであります。この点、厚生大臣の御返事を承わりたい。
  154. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) 健康保険の国庫負担の問題はきわめて重大でありまして、従来、厚生省といたしましては、健康保険につきましても国庫補助をはっきりきめることを要望いたして参ったわけであります。まだこの点については十分政府部内でも意見が熟しておりませんで、先般の予算の際にもいろいろな論議があったわけであります。私も就任早々で、まことに恐縮でございますが、ただいま御指摘のあり下した付帯決議のありましたことは、私も記憶いたしておりますので、この点についてはなお鋭意検討いたして参りたいと存じます。
  155. 坂本昭

    ○坂本昭君 これ以上告示のこまかいことについては質問いたしませんが、これは総理大臣も御存じないと思いますが、いわゆる盲腸の手術——虫垂炎の手術、これが四通りあります。四千二百円である場合、四千円である場合、三千三百七十五円である場合、三千百二十五円である場合、こういうふうになっておりまして、一つの手術でさえも四通りもの値段がついております。こんな診療報酬というのは世界中どこにもないと思う。しかも、こういうような診療報酬を作ることによって、国民皆保険の基礎を推進しようとしておるのが実態である。こんなばかげたことは、これは世界中どこにもありません。また、甲表、乙表という区別があるのですけれども、これは、国立病院、療養所あるいは社会保険病院、こういう所の今までの統計を見ますというと、厚生省の推奨している甲表による収入の増よりも、厚生省があまり感心していない乙表の方が収入がよくなるのであります。ですから、おそらく現実の問題としては、厚生省の甲表をとらないで、乙表、特に修正された医師会の乙表をみんながとるようになるのではないか。厚生省は、おそらく苦しまぎれに、国立病院、療養所あるいは社会保険病院については、甲表を、とれという強制をするのではないかと思うのですが、私は、今度の裁定の結果は、日本の医療の重大なトラブルが起ってくると思うのであります。この点、総理大臣とせられては、この問題を単なる厚生省の問題と考えられないで、国民皆保険の重大な問題として十分心得ておいていただきたいのであります。特にきょう私は、厚生省に資料要求をしました。新しい十月一日からの例の新点数によって、どういうふうに国庫負担の額が変ってくるか、この資料要求しましたところ、いただいたものは、三月に当予算委員会においてわれわれがいただいた資料と同じものなんであります。要するに、厚生省では、この新しい告示案によって、まだ何らのそろばんをはじいていないということであります。こういうふうな、そろばんもはじいていないということは、予算的な措置が十分検討されていないということであります。私は、当然次の臨時国会の劈頭においても、この点は明らかにする義務が当予算委員会においてあると思うのであります。私は、こういうふうなずさんな扱い方によってこの告示を強行したということ、私は、これも撤回を要求するものであります。少くとも十月の一日までの間に、基本的にこれは直してしまう必要があるのではないか。特にこの医師会が、最初十八円四十六銭単価を引き上げるのを固執しておって、最後に単価を一円上げるだけで、何と言いますか、龍頭蛇尾に終ったということは、私は、まことにもの笑いであると思うのであります。しかしながら、もの笑いなのは医師会だけではありません。そもそも厚生省原案からして非常におかしいのであります。堀木前大臣は、新しい告示を評しまして、こんなこっけいな表があるか、今度の大臣は何という頭か、言うべき言葉がないということを言っておられますが、私から見れば、これは、目くそ鼻くそを笑うたぐいであって、私は前大臣が事務当局にいたずらに振り回されて、一番大事な点を忘れておられると思うのであります。一番大事な点はどこにあるかと申しますと、これは、医療保障の真の具体的な政策を樹立することであって、私は三つあると思うのです。この三つの点について、総理のお考えを承わりたいと思います。  第一は、医療労働者としての医療担当者に、確実に生活を保障するに足る賃金をまず与えなければならないということが第一点。  第二番目には、被保険者と被扶養者の負担を軽減して、給付率を引き上げるために、国庫負担を増加しなければならないということが第二点。  三番目には、結核対策をどうしても確立しなければならないということであります。  私たち社会党では、全額国庫負担の結核医療法というものを前国会に提案しておりますが、この三つの医療担当者の賃金を確立するということ、それから被保険者、被扶養者の負担を軽くし、給付率を引き上げるために国庫負担をやれということと、結核問題を解決するということ、この三つを抜きにして、単に告示問題だけで大騒ぎして世間を騒がしても、これは、国民皆保険の基本的な解決には何もならないということであります。この三つのことについて、最後に総理の御所見を伺いまして、私の関連質問を終ります。   〔理事剱木亨弘君退席、委員長着席〕
  156. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 結核対策につきましては、私も従来から、日本の結核対策というものはまだ不十分であり、これを強化していかなければならぬ、また、それが健康保険の経済に非常な悪影響を与えておるという事実も、ある程度承知しておりまして、これが改善をしなければならぬということを考えております。また、今度の新点数表が医療担当者の所得を増加し、その地位をある程度上げていくという考え方は、十分あるかどうかは別として、これは持っておると思うのであります。国庫負担の点につきましては、これはやはり財政とのにらみ合せもございますし、もちろん国民健康保険を実現していく上から申しますと、第一には、その基礎として健康保険経済を確立しなければならない。その点について、国庫が適当な負担をしていくということは、これは十分に考えなければならぬと思っております。いずれにいたしましても、具体的の数字であるとか、そのやり方内容であるとかというふうなものにつきましては、十分に専門的に各方面から研究して、趣旨としてはそういう方向に努力するということを考えておるわけであります。
  157. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 この際、私の持ち時間もあまりございませんので、私が要求しております大臣の御出席一つお願いしたいと思います。
  158. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 要求大臣は全部そろっております。どうぞ御質問下さい。
  159. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、先ほど公約の実現につきまして、その財政的見通しのことをお尋ねしたわけですが、結局現在の段階では、何も数字のことは申されなかった。これは、当りまえのことと大蔵大臣考えておられるかもわかりませんけれども、選挙が済んで、国会の段階になりましたら、もう選挙の演説とは違うのでありますから、もう少し数字的な裏づけのある、具体的なものを出していただきたいと思います。これはしかし、現在の段階としてできないということであれば、やむを得ません。  そこで、岸総理にお伺いしたいのでありますが、臨時国会の問題がいろいろ言われているのでありまして、川島幹事長の話によりますと、この九月に臨時国会を召集するということが、岸総理と川島幹事長の間でお話があったということを聞いているのであります。果して事実でありますかどうですか。少くとも総理は、中南米なりあるいはアメリカなり、旅行されるという意図を持っておられる。それに関連して、臨時国会の日取りということが決定されるということになると思うのであります。私たちは、今回の国会は特別国会でございますから、数字的なものを強く御要請申し上げる考えはございません。しかし、臨時国会になりますというと、いわゆるたな上げ資金の取りおろしというような問題や、あるいはまたは、補正予算ということが問題になってくると思うのであります。そこで、臨時国会をわれわれは要求しておりますし、少くとも補正予算を組むべきであるという主張は、内閣なりあるいはまたは自民党に申し入れをしていると思うのであります。そこでわれわれは、臨時国会がいつ開かれるか、そこで数字的な論議ができるのかどうかということに、非常に大きな関心を持っているわけであります。この点につきまして、総理の御所見を承わりたいと思います。
  160. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) まだはっきりと、臨時国会の日取り等につきまして、党として方針をきめてるわけではございません。しかし、この特別国会におきましても、社会党の方からは、補正予算の編成についていろんな御意見もございましたし、われわれの見通しから見ましても、これは、経済界の推移と現実に見合せなきゃなりませんけれども、いろんな調整の時期も多少おくれておるけれども、大体の見通しが、七、八月ごろには大体経済の調整の問題もほぼ見通しがつくんじゃないかというふうな考え方をいたしておりますので、できれば九月の中旬ないし下旬くらいから価当な期間で臨時国会を開いていきたい。ことに、先ほど来問題になっております国民健康保険のこの問題に関する立法の問題もございますので、これらをあわせて考えていきたい、こういうふうに思っております。
  161. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 臨時国会は大体その時期に開かれるということでありますが、そこでただいま、調整はまあ七月、八月くらいで終る、これは非常に楽観的な見方でありまして、これほどはっきり総理が言われるということには、よほど自信がおありと思うのであります。しかし、果してその時期に調整が終了するかということになりますと、これは、大蔵大臣に尋ねましても、通産大臣に尋ねましても、あるいは経企長官にお伺いいたしましても、みなそのニュアンスが違うと思うのです。  そこで第一に、私は輸出入の問題につきましてお伺いしたいのでありますが、通産大臣からまずお答えを願いたいと思います。通産大臣は、すでにいろいろの会合や、あるいは新聞記者会見などにおきましては、大体本年度三十一億五千万ドルということはむずかしい。昨年同等か、あるいはそれよりちょっと下回る、二十八億五千万ドル程度じゃないか、こういうようなことを言われておるのでありますが、三十一億五千万ドルというこのいわゆる輸出目標というものは、もはや絶対に達成はできない、現在の状態としては、二十八億ちょっと上回る程度というお考えでありますか。まず第一に、これからお伺いしたい。
  162. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申し上げます。現在まで二カ月間の推移を見ますというと、各業種別、産業別によっていろいろ検討いたしますというと、お話のごとく、本年の見通しにつきましては、三十一億五千万ドルということはしごく困難であるという感じでございます。大体二十九億そこそこか、こういうふうな感じでございますが、しかしながら、輸出の目標といたしましては、わずか二カ月でございますから、今後の推移を見まして、この三十一億五千万ドルを目標として努力いたしたいという感じを持っておりますから、今にわかに目標を変えるという感じはないわけであります。
  163. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 しかし、実際上この一月から五月までの、平均を考えてみまして、昨年の同期に比べて、わずかに四%くらいの伸びにすぎない。こういう状態であれば、三十一億五千万ドルというものは達成が困難である、こういう結論だろうと思うのであります。これはこれといたしまして、輸入におきましてもやはり同様であろうと思います。本年の輸入目標というものが三十二億四千万ドルですか、これも、それよりは下回るという見通しだと思うのですが、この点はいかがでありますか。
  164. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 輸入につきましては、三十二億四千万ドルという数字は、現在の状態でございますれば、これは下回ると、こう考えております。
  165. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そうすると、輸出入とも三十三年度の目標を下回るということであれば、鉱工業生産の目標二六五・九%というものも、これは変更しなければならない、こういうことになるのではないですか。
  166. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 現在二カ月間における実績から見ますというと、輸出輸入ともそれだけ減退するというわけであります。従いまして鉱工業生産も、幾らかこれに準じて減退すると思います。しかしながら、これは努力によってさらにふやしたいと、こういうふうに思います。
  167. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、上期においては大体目標を達成することができないけれども、下期においては、あるいは非常に伸びが、大体目標を達成することができるというふうに、こういうふうにお考えですか。
  168. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 大体お説の通りでございまして、これは、に世界の暑気とも相待つわけでございますから、毎年下期におきましては、輸出等も増進するわけであります。まず、お話しのごとく、上期においては現在は困難だろうと思いますが、下期においてこれを取り返したいと思います。
  169. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 外国の経済事情というものは、アメリカを中心とした問題だろうと思うのです。下期になれば輸出が伸びるということは、非常に楽観的ではないかと思うのです。その中心でありますところのアメリカ経済が、下期に回復するという見通しを持っておられますか。
  170. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) アメリカの経済事情は、いろいろ人によって見方は違いますが、最近の情報によりますと、アメリカにおける鉱工業生産なり、あるいは失業者の数から申しますというと、底を突いて幾らか上昇気分にあるということを、楽観的に見れば見る人もありましょう。しかしながら、非常な大きなアメリカの景気が回復するということは望みないと思いますが、現在の状態を、横ばいから幾らかよくなるだろうというふうに私ども考えております。
  171. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それは、通産大臣非常に楽観的でありまして、もちろんいろいろ説をなす者があります。日本経済が下期に非常に上向いてくるという見通しなり、あるいは希望的観測を持っておられる方は、アメリカの経済観測につきましても、楽観的な説を採用されるでありましょう。しかしこれは、ここでは時間がありませんから議論いたしませんけれども、しかし、非常に冒険過ぎるのではないか。それにのみすがりついて、日本の経済が、海外の市況の好転によって、下期には上向いていくという見通しを立てるということは、非常に困難ではないかというふうに考える。それでもやはり通産大臣としては、そういう見通しのもとに、今後の経済努力というものを続けられるお考えでありますか。
  172. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) もとよりアメリカ経済の動向ということは、非常に日本の経済に関係があるということはもちろんでございますが、しかし、アメリカ経済の動向によってのみ日本の経済が動くというわけにも考えておりませんで、そのほかの方法におきましても、輸出増進等におきまして、景気の増進につきまして努力いたしたいと思っております。
  173. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、日本の国内的な事情はともかくもとしまして、海外の経済事情ということでアメリカのみならず、他にそれでは日本の輸出が伸びていく市場というものはどういうところですか、またその条件というものはどういうものですか。
  174. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 豪州及びアフリカ等の市場、もちろん東南アジアにおきましても、この国々がアメリカの経済の動向によりまして、ある程度これは動かされることは事実でありますが、日本の現状といたしましては、われわれが要求しておるところの原材料等は、これらの国々で相当埋蔵し、あるいは保有しておるわけでありますから、このものとの貿易関係を新しい方式をもって考えていけば、何ほどか輸出を増進できるだろう、こういうふうなことに私どもは期待をかけておるわけであります。
  175. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで問題は二つあると思うのですが、一つは通産大臣がいつも言っておられるように、輸出を伸ばそうとするなら輸入をしなきゃならぬ、輸入をし輸出を伸ばすのだ、こういう一つの方式、この問題があると思います。そうすれば輸出が十分に伸びない、そうすれば輸入も十分伸びない、結局は縮小均衡という形になる、それでもよろしいというのであるか。あるいはまたは拡大させなきゃならぬ、拡大させてそうして均衡をとるようにさせなきゃならないというとであるか。この問題が一つあると思う。
  176. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お答え申します。輸入を減少しそれから輸出はこれによって減る、というふうなことになればこれは縮小になります。どうしてもこれは輸出をふやすためには輸入もふやして、拡大方向に持っていかなければならぬと存じております。
  177. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そこで大蔵大臣見解が違うという、オープン・アカウントの問題が出てくるのだろうと思いますけれども、この問題はまあ別といたしまして、それではもう一つお伺いしたいことは、アメリカのみでない、他にもアフリカであるとかオーストラリアであるとか、あるいは東南アジアであるとかいうふうに地域を列挙されましたけれども、ドル不足なり、あるいはまたはアフリカあたりにおける輸入制限の問題、あるいは東南アジア、インドネシアにおける中共の商品の進出の問題につきましては、どういうふうにお考えですか。
  178. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お話の中共の進出につきましては、これは相当重大な問題でございまして、特に東南アジア市場におきましては、われわれは昨年六億三千二百万ドルばかりの輸出をしておりますが、それに対して中共は一昨年度四億六千万ドルばかり輸出をしております。それはだんだん伸びてくると思いますが、これに対しましては中共の製品と違った方面に出していきたい、たとえば中共の現在作っておりますものは下級品であって価格の安いものであります。これに対しまして、われわれは中共の製品とは品質において、あるいは品種において違うものを出していきたい、こう存じております。また豪州等におきましても、新しく先方からある製品を輸入することによってこちらの輸出を増進する、アフリカにおきましては先方における新市場開拓等に努力いたしまして持っていきたいと思っておりますが、いずれの国もお説のごとくドル不足、外貨不足ということは事実であります。幸いに現在の状態で参りますと、日本の輸出入のバランスは最初一億五千万ドルということを予定しておりましたが、現在の状態でいきますれば、これはもっと黒字がふえるだろうと存じまして、ある人は二億五千万ドルと見る、あるいは三億ドルと見るという見方もありますが、要するに黒字がふえるということになりますから、そういうふうなものと勘考いたしまして、できるだけわれわれの取引条件を長期に延べ取引に持っていくということにすれば、相当輸出は増進すると思います。
  179. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 ちょうどお話を聞いてておりますと非常にいいお話ばかりでございまして、もし実際にそうであればという感じがするのであります。どうもしかし絵にかいた餅みたいでございまして、本年度中にもちろん黒字は出るでしょう。黒字は出ますけれども、昨年に比べて拡大した国際収支というようなことは、ちょっと期待できないのじゃないかというふうに考えるのであります。  しかしその問題はそういうところにとどめておきまして、そこで経済企画庁長官にお伺いしたいのでありますが、今もお聞きの通り、まあ貿易は最初の目標を達成することはできない、これが第一であります。そういたしますと、どうしても昭和三十三年度経済計画というものは改訂されなければならないと考えるのでありますが、現在の段階としてはこの経済計画を改訂するというお考えはないのですか。
  180. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 輸出の三十一億五千万ドル、鉱工業生産の四・五%、これは今高碕通産大臣もお話のあったようになかなか困難だという見通しであります。ただしかし政府としても輸出に対しては思い切った手を打とうというので、なるべく目標に近づけたいと思っておるわけであります。しかし、いずれにしてもその数字が困難であるということは間違いがないと思います。しかしまだ四、五とまあ二カ月ばかりを経過したところで、この目標を改訂するということも、もう少し経済界の推移、輸出振興の努力、こういうものを見てみたいという気がするわけであります。いよいよどうしてもこの目標の達成が困難であるときには、これは年度計画は改訂といいますか検討を加える、できない数字にこだわる意思はない。ただしかし今の段階では少し時期が早過ぎるのじゃないか、もう少し様子を見たいという考えであります。
  181. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 もう少し様子を見るというのは、いつごろまで様子を見られるのか。いずれは秋ということであろうかと考えるのでありますが、その時期はどうか。新聞は国会が済んだらそういう作業に着手するのだというような、国会がある間はうるさいと、済んでからやるのだというような話もあるわけなんです。その時は一体いつなのか。
  182. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 国会が開会中であるからどうかという、そういう政略的な考え方はないわけであります。三、四ヵ月様子を見た上でということであります。
  183. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 一体経済指標というものは、計画目標ということであるのか、あるいは努力目標であるのか、この点重要な問題だと思うのであります。輸出はもちろん三十一億五千万ドルから三十二億、あるいは三十三億になりましてもよろしゅうございます。しかし輸入が三十一億四千万ドルというものが三十五億になったらおかしいわけです。ですからその経済指標というものは努力目標として考えておられるのか、それだけは達成できるのだという経済目標として考えておられるのか、これは重要な問題だと思う。いかがですか。
  184. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 自由民主党の立場が自由経済というものを原則にしておるわけであります。社会主義的な計画経済をやらない以上は、これは一つの努力目標というか、あるいは期待である、好ましいという観念であります。これをできる限り、しかしそれはただ努力目標ということだけで、絵にかいたものであるということではない。その目標に向って政府の施策も全力を尽すことではありますが、しかしそれを計画経済という形において金融も産業も統制をして、そこまで絶対的に目標を達成するのだという経済の仕組みとは違う。それはだから今の御質問に従って答えれば、あらゆる政府の施策を通じてそういう達成をしたいという政府の努力の目標を示すものである、こういうふうに考えております。
  185. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 経済指標というものは努力目標である、そういうようなことで考えておられるならば、三十三年度もあるいは五ヵ年計画というものもこれは全然何にもらぬわけです。それを努力いたしたいのだけれども、できなければやむを得ない、こういうことであれば、われわれはこういうものをいただいて読んでおったって何にもならない。そうじゃなくて、その数字の上に予算が乗っかっており、国民の経済活動というものがその上に乗っかっているものじゃないのですか。下の方はどうでもいいのだ、できればよし、できなければそれまでだ。それじゃその土台の上に建てられている一体上のうちというものはどうなりますか、絶えず動揺している。そういうところに建てたうちというものはどういうものですか。がらがらしてくずれたってかまわないというなら別ですけれども、上の構造はがっちりと組み立てていこうということであれば、下の構造もがっちりとしたものでなければならぬわけでしょう。その点いかがですか。
  186. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) それはたとえば輸出貿易の数字にしましても、これは世界の市況というものも影響をする。当然世界の経済の推移というものをあらかじめ予見しなければならぬ、ということは政府の責任にも属しましょう。しかしそこにはおのずから限界があるわけです。そういう意味において、たとえば輸出とかの問題については、必ずしも三十一億五千万ドルときめたからこれを必ず達成したいとは思うけれでも、現実において達成ができるという保証はない。どうしてもやはり対象は動くものである。そういうところで現在のこの輸出の三十一億五千万ドルも、政府は全力を尽してその目標の達成のために努力をするのだ、ということが限界であると私は思います。
  187. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そういうことを言われるということはまことに心外です。それなら三十一億五千万ドルできますか、できますかということをこの通常国会を通じて私たちは念を押した。それはできると太鼓判を押しておるじゃないですか。今になってだんだん二十八億ドルになったから、三十一億五千万ドルというものはこれはもう努力目標だと、できればよし、できなければいいのだ、こういうことを今になって言われるということは、これはまことに心外です。これは総理大臣いかがですか。あなただってこの通常国会を通じて三十一億五千万ドルは必ず達成します、ということを繰り返し申されたでしょう。
  188. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) わが自由民主党の立場及びわれわれ政府が立っております立場からいいまして、長期経済計画というものがこれが必ずその通りに実現できるか、また実現するためには権力も用いてやるという性格のものでないことはもちろんであります。それが企画庁長官が言っておる本質的に努力目標といったものでありますが、会松澤委員のお尋ねのようにできたらいいのだ、努力目標というものができたらいいのだ、できなければ仕方がないのだというような意味における努力目標ではないのでありまして、政府はこの目標を達するために政策上のあらゆる努力を、政治上の努力をそこに集中してそれを実現していく。しこうしてもちろん経済界の問題でありますから不確定の要素もありますし、ことに日本経済のように国際経済に依存する度の多い経済におきましては、われわれがいかに努力をいたしましても、国際経済から来るところの影響によってその目標が動くという場合も、これはあるのであります。しかしながら私どもはこの計画を立てる場合においては、あらゆるデータを検討して日本経済の一つの発展の、成長の趨勢なり、また実勢なりというものにももちろん根拠を置き、それが単なる絵にかいたもちであるとか、あるいは単純な努力目標というような性格でこれを立てたわけではもちろんございません。従いましてその目標というものは、初めからこれはできないものを立てておるわけではなしに、あらゆるものを検討してそういうものを立てた。同時にそれが不確定の要素に支配される部分もあるという前提のもとにおいては、やはり努力目標という性格である、こう考えておるわけであります。決してこれが初めからわれわれの説明しておる性格が違っておるわけではないのでありまして、何か努力目標と言うというと、すぐそれは何か絵にかいたもちのようなものであって、実現性のない、できなくても、できなければ仕方がないじゃないかというような、簡単に考えておる努力目標ではないという意味に御了承願います。
  189. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 経企長賞にお伺いするのですが、石炭の三十三年度の生産目標は五千六百万トン、ところが五月二十九日の閣僚懇談会では、出炭目標を改訂して五千二百八十万トンというふうに修正された。ところが三十三年は五一十六百万トンということで、業者もその線に合わせて努力し、貯炭もふえたということであります。ところがふえ過ぎた。需要がそれだけ伴わない。だから出炭目標を五千二百八十万トンというふうに改訂した。国外的な貿易の問題は、海外の経済事情の変化ということがある、だからこれはやむを得ないと総理はおっしゃった。国内の問題につきましてはどうですか。五千六百万トンというものを五月二十九日に五千二百八十万トンというふうに改訂をした。これは経済目標を改訂していく話であります。いかがですか。
  190. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 今石炭の問題は目標までは改訂はしてないようでありますが、とにかく松澤委員のお話は、やはり国際的な輸出のようなものは海外の市況も影響するが、国内の問題はなるべく計画の線に沿うべきではないかというお話は、やはりわれわれも一つの資本主義の中において計画性を立てておる。計画経済ではないけれども、計画性を持たなければこれはいろいろな面においてロスがある、という立場で長期計画を立てたわけであります。しかしその間に長期計画を達成するのには、いろいろな工夫をこらしていかなければならない。ただこれを一つの共産経済のような統制経済、こういうことでやらないで、国民の自由創意というものを原則的に認めながら計画性を持たそうというのでありますから、長期計画の達成にも現在のままで完全だとは私は思っていない。いろいろな点でもう少し、計画の達成には実際の面との結びつきというものは、工夫を加えなければならぬと考えておりますが、なるべく、国内のいろいろなそういう実際の数字を、計画に合していく責任があるのではないかということは、私もさように考えておるわけであります。
  191. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは通産大臣にお伺いしたいのですが、鉄鋼も減産であります。鉄鋼の操短あるいは減産ということについてどんなふうにお考えでございますか。
  192. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 現在の景気から申しますというと、最初の計画よりも幾らか減産していなければならぬという、こういう状態にあることは事実でありますが、しかしあれだけの設備が完全にできておる企業でありますから、これはできるだけ完全操業をし得るようにして、そうして鉄鋼の生産を増加していきたいという考えでございます。
  193. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 そんな簡単な答弁をされてはまことに困るのであります。たとえば、厚板鋼板は三十二年度の三三%減産を行う、あるいは形鋼については四〇%、棒鋼については三三%、これは通産省も立ち合ってこれをきめておられるんじゃないですか。こういうことを何にも言わずに、多少減産であったというようなことを言われると、非常に迷惑です。こういう点はいかがでありますか。
  194. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 御説のごとく現在の市況そのものから、考えまして、通産省もこの減産の数字等につきましては、よく協議をした上においてこれに当っておるということは事実でございます。私はただいまその数字を持っていませんですから、もし必要でございますれば、政府委員を呼んで、詳細な数字をお答え申し上げたいと思います。
  195. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 こういうふうに、私は、そのほか繊維であるとか、あるいは電力需用の頭打ちであるとか、いろいろな数字はそろえてあるわけであります。それで、もちろん本年に入りましてから四、五、六、七月に入ったばかりですから、今すぐに変えるということは果してどうかということを考えます。考えますけれども、しかし、その基礎の上に予算が立てられているという、その基礎の数字がだんだんと動いてきているのでありますから、私は少くとも現在の時期におきましての政府の経済計画というものを再検討する必要があるということは言えるのではないかと思う。これはすでにあなたのところの政府職員なり、あるいは通産省の係の人たちが寄り寄り話をして、どうも今までの数字が実際に合わないということで寄り寄り集まって相談しているという事実がある。それで、経企長官は、政治的な立場があって、今すぐにこれを変更するという意思はない、どうせ秋にそういうことをおやりになるということだろうと思うのでありますけれども、数字はすでに動きつつあるのです。この事実をお認めになりますか、どうですか。
  196. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 輸出においては、まあ三十一億五千万ドルを達成するためには一億五千万ドルくらい毎月なければならぬ。それを下回っておる。四・五%の鉱工業生産を上昇するためには、これは去年の実績に比べて上らなければならぬわけです、毎月。それは四、五月の統計ではその目標には達していない。この二ヵ月の数字から見れば、お説の通りでありますが、一方において、輸出の点においては、政府も今まで言われておる輸出振興策に加えて、新しいいろいろ輸出振興の手も考えていきたい、こういうことで努力をしてみたいというのですから、十二カ月の経済計画を、二ヵ月の実績でここで直ちに数字を、経済の指標を今後全般にわたって改訂するという行き方は、少しこれは軽はずみではないか、そういう意味において、しばらく経済の推移を見たいということは、何も、一ぺんきめたのであるからその数字にこだわっておるということではありません。こだわってもこだわり通せるものではない、実績が示すのでありますから。そういう意味ではなしに、やはりもう少しこの経済の推移を見たいというこの政府の立場というものは御了承が願えるものだと、こう考えるのであります。
  197. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 松澤君に申し上げます。要求大臣のうち、文部大臣は他の委員会との調整、お話し合いの結果、ただいまこちらに参りました。ただし、文部委員会は、散会、休憩というようなことではなく、即事会のために一時休憩でありますから、なるべくならば、文部大臣への御質疑をお急ぎ願います。
  198. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 今三木経企長官のお話でありますが、四、五、六の実績を見て今すぐに改訂しろということも無理かもしれませんが、しかし、逆にいって、経企長官ともあろう人がこれをこのままにしておいていいと、動いている数字というものに目をおおっているということは、これは逆にいってあまりのんき過ぎはしないかと、こう思うのです。長官はわれわれに御了承願うとこう言われる。私はしかし経企長官に対しましては、個々の数字はどうあろうとも、もう全体の数字がそういうふうに改訂を必要ならしめている。この趨勢というものははっきり認識していただかなければならぬ。今改訂するのが、悪ければ、それはもう少し将来でもよろしい。しかし、この現実に、今までその上に予算の数字を積み立ててきた基礎になるところの経済指標というものは動きかけているのだというこの事実だけは考えていただきたいと思うのであります。  それで、文部大臣が見えておりますけれども先ほどから長い時間待っていただいておりますあとは青木自治庁長官にちょっとお尋ねしたいと思うのです。先ほど大蔵大臣に対しまして減税の問題についてお伺いをしたときに、地方税としての事業税の問題について検討している、あるいは減税したいという意向があるように承わりました。そこで、一体国及び地方を通する税制改正あるいは税源の再配分ということについてはどういう考えを持っておられるか、これを第一にお伺いしたい。
  199. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) ただいまの地方税の減税の問題でありますが、特に事業税のお話があったのでありますが、御承知のように事業税は府県税の中心をなしておるわけてあります。しかし一方におきまして、中小企業者等の方面から、また全般的に考えましても、この税を軽減しなければならぬという要請もあるわけであります。またさらに、他の方面から考えますと、御承知のように地方財政は長く窮乏状態にあったのでありますが、最近ようやくやや安定の域に達して参ったのでありまして、この安定の域に達しました地方財政を再びここで混乱に陥れるようなことがありましては、これはまことに取り返しのつかないことになりますので、国の財政の面、それから地方財政の健全化の問題、さらに事業税に対する軽減の要素、こういう諸般の情勢を勘案いたしまして、国と地方と全体を通じて最も調整のとれた姿に、そうしてまた国の財政の健全化、また地方財政の安定、こういう各方面から検討して、最終的な案を決定しなければならぬと、かように考えております。
  200. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 青木長官は、まあだれが考えたって、そういう答弁だろうと思うのです。長官が施政方針と申しますか、おれが自治庁長官になったのだから一つこれをやってみよう、こういう気魄のある御答弁がなさなければならないと思うのです。それに対して、あるいは国の税との摩擦があるならば、それは十分に話し合ってみようという答弁を私たちは期待している。あっちも考えこっちも考えて、いずれよく検討してみますということであれば、これはもう予算委員会であなたに質問したって何もならない。何かやはり国民国会を通じて、自治庁長官はどういうことを言うだろうか、何を考えているか、何をしてくれるだろうかということを期待しているのです。私たちもそういうことを聞きたいために、衆議院におきましても、参議院におきましても、こういう予算のない予算委員会を開いているわけなんです。ですから、あなたも、自治行政はしろうとではないのですから、平素考えておられることの一端ぐらいはこの際明らかにしていただきたいと思います。どうですか。
  201. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、地方財政がようやく安定の域に達したと申しますものの、地方の行政水準等におきましては、まだまだとうてい満足すべき状態になっていないことは、御承知の通りでありますので、私どもはさらに行政水準の向上等に向いまして一そうの努力をいたし、また、その実現をしていかなければならぬことは当然と考えるのであります。しかしながら一方におきましては、減税に対する強い要望もありますので、その点を勘案しつつ、しかし、方向といたしましては、せっかく安定しかけた地方財政でありますので、さらにこの地方財政の健全化あるいは行政水準の向上、こういう方面に一そうの努力を傾けていかなければならぬと、かように存じております。
  202. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 事業税を廃止すれば、かわり財源が要るということ、これはよくわかるのです。まさか事業税を廃止したままで置いておきなさいということをいう人はないと思う。そのかわり財源はどうなのかということをわれわれは承わりたいと思うのであります。たとえば交付税交付金をふやしてあげるとか、あるいはたばこの税を引き上げるとかいうような何か考えていらっしゃることがあるのじゃないかと、こういうふうに思う。あなたはとにかく新任でありましても、やはりあなたの下には財政をあずかっておる人もあるし、税をあずかっておる人もあるし、そういう人が今度は大臣、こういうことを一つやってみたいと思うがどうかというようなことは、内々でお話しなすっていらっしゃるはずなんだ。そういうことを私は聞きたいと思う。だめですか。
  203. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) かわり財源として、たとえば交付税とか、あるいはたばこ消費税とかいう問題もあろうと思うのでありますが、この問題につきましては、先ほど大蔵大臣も申したごとく、一そう慎重に具体的に検討せなければならぬ段階でありますので、今直ちにここでかわり財源として交付税あるいはたばこ消費税ということを申し上げる段階に至っていないのであります。国全体の財政の関係もありますし、大蔵省方面ともともとと相談いたしまして、最終的の考え方を取りまとめたいと、かように思っている次第であります。
  204. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 それでは、自治庁長官に対する最後質問は、地方公務員、特に町村職員の給与というものが、全体の国家公務員の給与水準から比べてみますというと、非常に低いというふうにいわれているのでありますが、この給与水準の引き上げにつきましては、何かお考えがございますか。
  205. 青木正

    ○国務大臣(青木正君) 地方公務員の給与水準、特に町村の地方公務員の給与水準の低いということ、松澤先生前前から常に御指摘になっている通りでありまして、私どもも町村の地方公務員の方々の給与というものが、法律で定められておりますように、なるべく国家公務員の基準に近寄ることを念願いたすのであります。ただしかし、申し上げるまでもなく、町村の生計、生活水準と申しますか、そういう関係もありますし、また、町村の沿革と申しますか、そういう点もありますので、なかなか思うようにその水準が上っていないというのが実情であります。そこで、できるだけいろいろな機会に国家公務員の水準に近寄らせるように努力しなければならぬことは当然と考えるのでありますが、ことしの七月一日をもって、御承知のように地方公務員の給与の実態調査をいたしますので、その結果等を見まして、さらに自治庁として県を通し、指導あるいは監督する面がありましたらば、そのときに具体的に考えていきたいと、かように存じている次第であります。
  206. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 文部大臣にお伺いいたします。先ほどもお話があったのでありますけれども、勤務評定につきまして、各方面で教育そのものがいろいろと問題にされております。もちろんそれは勤評の問題に対する賛成反対ということで教育が混乱しているという事実は認めなければならないのでありますけれども、しかし、こういう現状は勤評そのものに対する意見は別といたしまして、これは何としても早く教育が安定した、そして正しい姿に返ることが国民すべての要求しているところじゃないか、こう思うのであります。勤評そのものの問題と離れて、少くとも文部大臣としてこういう事態を収拾する何らかの考えがおありではないかというふうに考えますが、その点お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  207. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) お答えを申し上げます。お話の通りに、今日勤評問題を中心にいたしまして、教育界に混乱を生じておりますことは、まことに遺憾に存じております。きわめて残念なことでございます。勤評問題の可否を離れて何か考えがないかというふうな御趣旨の御質問でございますが、問題は勤評問題から発生いたしているわけでございますから、しかもこの勤評制度は現在現行法にあることでございます。事柄といたしましても、人事管理をさらに合理化し、適正化いたしまするためには、これを実施した方がよろしいとわれわれも考え、また同時に、地方の責任者でありますところの委員会におきおまして、現にそれぞれ計画を立て、これが実施に向って進んでいるところでございます。御承知のように、今日すでに三十数府県におきましては、勤評に関する規則も作り、また、その内容等についても計画を立て、実施の期日も大体予定をいたしているような状況でございます。これを離れて考えるということは、なかなか困難な状態にあると私は思うのでございます。願わくば、それぞれの委員会におきましてさらに一そう努力をいたしまして、その趣旨の徹底をはかっていただきたいと思いますと同時に、勤評制度そのものを頭から否定するような、また、これが実施について頭から拒否するような教職員組合の態度についても、組合の側におかれましても十分事態を冷静に判断していただきまして、お考え直しを願いたい。そうして、一日もすみやかに正常な形において教育行政が行われるようにありたいものと念願をいたしておりまして、その趣旨をもちまして、地方教育委員会の努力をわれわれは期待いたしている次第でございます。
  208. 松澤兼人

    ○松澤兼人君 文部大臣あるいは文部省は、表面は全く地方の教育委員会の自主性にまかせているのだ、こういうふうに表面糊塗しておられるのでありますけれども、しかし、実質は文部大臣なり、あるいは文部省なりの意向といいますか、指導といいますか、指示といいますか、それによって地方の教育委員会が必ずしも好きこのんで混乱を巻き起してまでこれを強行しようというふうには考えておらない。しかし、文部省からはそれぞれの役人が行って、お前のところはまだか、いつやるのだというようなことを強要しているというふうな事態がある、そこで、文部大臣が日教組あるいは教職員の方々にのみ反省を求めておられるということは、それは文部大臣立場としては当然かもわかりませんけれども、しかし教育を預かっておられる大臣としては、ただ一方の了解なりあるいは反省なりを求めるというだけではいけないのでありまして、ここを取拾するには、あるいは警察官を動員したりあるいは話し合いをしないで強行するということでなしに、何か文部大臣として教育をもとに戻すというか、正常の関係に戻すためにお考えがあるならば、かつまた何か指示されるならば、私はそれによって教育の混乱が正常の状態になるということを期待いたしたい。これは、ただ教職員組合あるいは教職員にのみ反省を求めるという考え方でなくて、大臣としても何かやわらかい、あたたかい一つの指示を与えていただきたい、あるいは期待したいということについて、さらに御親切な御答弁をいただきたい。そうでなければ、勤評は強行するんだ、これに反対するということけしからぬのだという一方的な判断、その判断の上に立って混乱が起ってくるということを考えざるを得ない。国民の多くの人たちは、何とかしてこの状態を安定した正常な状態に返してもらいたい、おそらくは大臣のところにもそういう投書なりあるいは要請なんというものがあるだろうと思うのです。一方的に、ただ教職員組合の反省を求め、反対がいけないのだという状態であってはならない。こう思うのです。さらに御答弁を願います。
  209. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) 今日のような事態がすみやかに正常化するということを期待することにおきましては、私も同じような考え方を持っておる次第でございますが、ただ問題は、お互いに筋道を立てて考えてみなければなるまいかと思うのでございます。勤評制度というものにつきましては、これは現在、法に規定せられておるところでございます。これを実施するということは、これは行政当局の責任に属することでございます。ただ、いかなる方法で、いかなる内容のものをやっていくかということについてはいろいろ御議論もあり、御意見もあろうかと思うのでございます。そういうふうな面につきまして、建設的な合理的な御意見があれば、これは地方の当局といたしましても、十分これを尊重して、実施して参ったらよろしいと思うのでございます。その前に、この勤評制度というものに対しまして、あくまでもこれの実施を阻止するという態度だけは、どうも私は納得がいきかねるのであります。勤評制度を実施するという建前に立って、いろいろとまた建設的な話し合いが行われるということなら、かれこれ申し上げる筋じゃございません。願わくはその線に早く乗って、物事が進行するようにやっていただきたい、かように考えておる次第であります。
  210. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 初め主として日中問題についてお尋ねをいたしたいのでありますが、民間の努力によって打ち立てられて参りました日中両国人民の交流、友好が政府の非友好的態度でこわされ、しかも政府は依然として台湾政府との関係を中心にして静観すると言っておられます。これに対して日本の国民は、さきに中央において日中緊急事態打開国民大会を開き、また二十八日には福岡で同西日本国民大会を開いて、岸内閣の政策、態度の変更を求めております。現に西日本国民大会の超党派的な代表が上京して、政府及び国会各方面に運動を続けております。私は、社会党及び日中貿易、東海、黄海の漁業、その他日中の交流、日中の友好をこいねがう国民を代表して、この国会においてこの問題について総括的な質問をいたしたいと思うのであります。日中の緊急事態打開を要望しております国民要望にこたえる答弁をしていただきたいと思うのでありますが、まず日中関係の行き詰まり、緊急事態の結果、どういう影響が日本の国民生活、日本の経済に起って参るか、漁業関係、貿易関係、作業経済及び長期経済計画に対する関係、それから国民生活に及ぼす影響について、農林大臣、通産大臣経済企画庁長官等から御答弁をいただきたいと思います。
  211. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 日中貿易は、現在の停頓状態であるために、輸出において、一億ドル以上の期待をいたしておりました輸出がここに停頓いたしましたことは、はなはだ遺憾に存ずるわけでございます。また輸入におきましても相当の品物を予期しておったわけでありますが、これがまた停頓いたしましたこともはなはだ遺憾に存じております。しかし、これが妥結は一日も早く希望する次第でございますが、漁業問題その他におきましても、これまた現在の状態におきましてははなはだ困った状態であるということも事実でございます。ただ国民生活に、輸入が途絶したがために直接非常な問題が起こるかということになりますというと、これは大体この輸入品につきましては、市場転換をし得る関係がありますから、直後これに対する甚大なる影響はないと、私は存じております。
  212. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) ただいまの御質疑の要旨は、漁業協定がなくなったことに、よって漁業上の影響はどうかと、こういうお尋ねと伺いますが、実は六月十二日失効して以来のことでございますが、たまたま七月から八月までは漁のないときにちょうど際会いたしておりますので、その面から見ますると、さような事態でございますので、ちょうど閑漁期に当りますから、漁獲が非常に減っているということでございまして、漁業協定に対する影響よりも、そっちの方面の漁のないときでございますので、さよう御了承願いたいと思います。
  213. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 経済の長期計画に対してどういう影響があるかとの私に対するお尋ねでございます。大体中共に対しての輸出は、一億ドルくらいなものを期待しておったわけであります。そういうことで、これが中絶することは貿易計画に影響を与えることは事実であります。ことに日本は重化学工業に対して、中共貿易に対してのウェートをある程度かけておったのであります。しかし、だからといってこれが致命的なものでないにしても、日中の貿易というものが非常に相互に便利である、原料品を輸入して、重化学工業の製品を輸出するというところに相互の経済的な利便をもたらすものでありますから、そういう意味において、この問題が打開されることを希望するものであります。
  214. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 数字をあげて御答弁をいただきたいと考えたのでありますが、高碕通産大臣が一億ドル以上の貿易の穴があるという点をあげられたほかは、具体的な数字をおあげいただけなかったのでありますが、しかも農林大臣は、閑漁期に入るから大した影響はなさそうだというお話、私どもは聞くところによると、これは協定がすぐに継続せられる状態ではございません。そうすると、東海、黄海での漁業に不安が残るわけでありますが、三十数万トン、百数十億に上る漁業に関係がある、そうして大衆魚でありますから、九州はおろか京阪神に及ぶ国民生活に重大な影響がある。かまぼこにしても、一本十円の価格の相違はあろうと、こう言われておるのでありますが、もう少し具体的に御答弁をいただきたい。  それから長期経済計画について、これは経済企画庁長官にお尋ねをいたしますが、前の二十八通常国会予算を審議いたします際に、通産省、企画庁、これは局長クラスでありますが、出席をされた予算委員会の分科会において、海南島の鉄鉱石を含んで四十万トン、これは鉄鋼協定の中にありましたこの関連のある数字でありますが、四十万トンは長期経済計画の中に入れていきたい、あるいは米炭も漸次中国炭に切りかえていきたい、こういう御説明がございましたが、長期経済計画にとっては日中貿易というものは織り込み済みで、それは経済計画にとっては日中貿易は必要ではないかと、前の国会の際の局長等の答弁からは私どもは了解するのでありますが、その点は企画庁長官として、どういう工合にお考えになりますか。それから、日中関係の行き詰まりによります国民生活に及びす影響等については、御答弁がいただけませんでした。具体的に御答弁をいただきたいと思います。
  215. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 御指摘があったように、海南島の鉄鉱石は、将来は四十万トンぐらい、それくらいまあ鉄鉱石を輸入しようという考え方もあったのであります。しかし、それが具体的な決定というわけじゃないけれども、長期経済計画の中には、そういうことも考えておったということは事実であります。  国民生活に対しての影響でありますが、御承知のように、日中貿易が中断をされて、大体約定済みで、LCを発行してないもので、三百五十億円くらいのものが残っているということです。それがやはり硫安あるいは機械、鉄鋼、人絹、医薬品、こういう点にその貿易の中断からくる産業上の影響はある。中共からの輸入では、高碕通産大臣が仰せになったように、まあ大して輸入がないからといって、日本の産業、国民生活の上に、今影響の出るものはない。近い将来に影響が出るとしたら、ウルシぐらいのものだ、こういうことで、現在のところの国民生活の影響という御質問に対しましては、そういう影響はある。ただ、中共貿易というものに対して、中共も御承知のように、経済の自立態勢をみずからやっているわけでありますから、大きな期待を中共貿易に国民が持つことは私はどうかと、これはみずから東南アジアの市場においても、中共商品と相当競争相手になっている事実に考えて、昔の中国に対する貿易、こういう点から割り出してみて、非常に大きな期待を中共貿易に考えることは、中共内部の経済建設が進んでいる今日、それは一つの誤まりを犯すのではないかという感じはいたすのであります。
  216. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 漁業関係について、農林大臣から御答弁をお願いしたいと思います。
  217. 奥原日出男

    政府委員奥原日出男君) 従来、日中、日韓漁業協定によりまして操業いたしておりました底びき及びトロール船によりまする漁獲量は、年間両者を合せまして八千五百万貫見当であろうかと、かように存じます。そこで従来民間協定によりまして、中国の沿海に底びぎ及びトロールの入漁禁止区域を設定し、またその沖合いにおきまして、六つの共同入漁海区を作りまして、それぞれ入漁の隻数をきめておりました。その制約下におきましてとりました漁獲量が、ただいま申し上げました数字でございます。  で、六月十三日をもちまして、民間協定が切れた次第でございまするが、民間業界といたしましては、それぞれの従来取りきめました制限を自主的に尊重して、整然として操業すると、こういう態勢にありまする次第であります。従いまして、私は民間協定が切れたことによって、特に顕著に漁獲量が減ると、かようには考えておりません。  なお七、八月のこの期間は、これは閑漁期でございまして、漁獲量は減るのでございます。たとえば年間七千六百万貫ばかりを占めております底びきについて申し上げますれは、七月は四百万貫、それから八月は三百万貫はかりに減るのでございます。魚価はそのためにこの期間は高騰するのでございまして、たとえば昨年の例をとってみますれば、六月におきましては平均が貫当り百六十円見当でありましたのが、七月には百九十円に上った。これは例年の現象でございます。従いまして、今若干魚価が値上りしているということが、直ちにこの協定が切れたためにそういう現象が起ったというふうには、われわれは考えておらない次第でございます。
  218. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 時間がございませんから論争をしている間はないのですが、日韓と日中一緒にされて以西底びきの数量をあげられましたが、日中関係の行き詰まり、漁業協定の不継続による影響——七月、八月が漁閑期であることは私も知っております、そうじゃなくて、年間の影響を開いておるのでありますが、重ねて日中関係の漁業協定不継続による年間の影響が、数字が出ますならば、お答えを願いたい。
  219. 奥原日出男

    政府委員奥原日出男君) ただいま申し上げましたように、私たちはこの協定が切れるということによりまして、直ちにそこに顕著な減収が起るというふうには考えておらない次第でございます。やはり従来とれておりました八千万貫から八千五百が貴見当の、以西の底びきやトロールによりまする漁獲は、引き続きあげ得るのではないか、かように考えております。
  220. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 あとで問題をもう一ぺん質問をいたしますから……、その問題は水産庁の認識がきわめて不十分であるという点を指摘をいたしまして、次の問題に移ります。  現在においては一億ドルでありますが、これが二億ドル、三億ドルになる見込みはこれはそうむずかしい問題ではないと考えますが、それよりも鉄鉱石あるいは強粘結炭の仕入先について、転換をする必要があるのではなかろうか、と通産省あるいは企画庁の局長クラスが言われますように、アメリカ向けに輸出もあるいは輸入もほとんど日本の貿易の大半を依存するということは、これは問題であって、漸次貿易構造の変化をアジア、それからアジアの中で一番大きな中国に向け変えていかなければならぬのじゃなかろうかと、こういう点はこれはひとしく国民考えておるところでありますが、これについて高碕通産大臣、企画庁長官の御意見を承わりたい。
  221. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) お説のごとく、日本の鉄鋼業という点から考えますと、隣接したる中国においては海南島の鉱石なり開らんの粘結炭があって、これが眠っておる。これを一日も早く日本に持ってきて、日本が遠方から輸入しておるところのあの粘結炭なり鉄鉱石に置きかえるということは、これは両国のために非常に好ましいことと存じておるわけなんでございまして、そういうふうな工合で国交が回復いたしますれば、日本の鉄鋼政策については相当の変化を来たすだろうと存じます。まあ貿易面におきましても、これを戦前の貿易のごとく大きな依存率をもって中国に依存するということは、これは間違いだと思っておりますが、しかしながら現在の一億ドルをわれわれは目標といたしております。輸出の数字はさらにこれはふやすことはできると思います。
  222. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) 日本がやはりアジアの経済圏に属するということは、これは地理的にいってもそうでありますが、御承知のように中国自身も経済建設が進んできて、現に見られるように、東南アジア市場における競争相手のような形にもなっておる。東南アジア諸国も非常に資本の不足でありますが、貿易を拡大しようとするならば、ある程度のやはり資本も伴わなければならない。商品と資本の流れというものがこれは軌を一にする傾向を持っておるわけてあります。そこにやはり、日本もいろいろ東南アジアの経済協力に岸内閣が非常な関心を持っておる。日本のやはり自力による経済協力には限度もある、そういうことを考えてみると、今直ちに日本の貿易構造というものを、中共やあるいは東南アジアに転換せよとかということは早急であり、やはり日本は世界各国に対して貿易を増大するような方法を講じていくことが、現在の貿易のあり方としては正しいのだ。将来多少の重点はそういうようにかかるとしても、今貿易構造を変えて、そうして中共や東南アジアに日本は重点をかけるということは、現在の状態としては時期は早い。やはり日本は世界各国に向って貿易の振興のために努力をすることが、輸出貿易の振興策である、かように考えるわけでございます。
  223. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 高碕通産大臣経済企画庁長官の答弁ははっきり食い違いましたが、三木企画庁長官に重ねてお尋ねをいたしたいのでありますが、世界各国に貿易を求める。これは言葉で言えばそれはだれも賛成、反対する者はない。しかし、アメリカを中心にして輸入にしても輸出にしても大半依存してきた。ところがアメリカヘの輸出というものについては限度があるということを、これはこまかく申し上げませんけれども、現実が示しておる。そうして、その結果が中国に対しては、貿易をしたいということを実は遠慮してきている。これは役人の皆さんにしても、経済企画庁や通産省の職員にしても、あるいは八幡の製鉄所あたりにしてもそうです。鉄鋼関係にしてもそうだろうと思う。それが近ごろは、中共貿易に踏み切らざるを得ないというのは、これは日本の経済の実情からしてそういうところが出てきたのだと私は思うのでありますが、今さら世界各国と貿易をするのだ、そうして貿易構造の変化をするというのは時期が早い、こういうのは、これは顧みて他を言うごとく思うのでありますが、議論をするつもりはございませんが、あなたの下僚といいますか経済企画庁の局長諸君は、あるいは鉄鉱石についてもあるいは強粘炭についても漸次切りかえていかなければならぬのじゃなかろうかと、こう言っておられるのです。それが日本の経済の実態ではないか。あるいは貿易構造についても、それが決定的に今通産大臣が言われたけれども、戦前のような形で大陸に依存するというところまではいかぬと思いますけれども、方向としてはアメリカ一辺倒と申しますか、大半たよっておったものを漸次切りかえていくという方向には、これはなければならぬのではなかろうかということをお尋ねしておるわけであります、重ねてお答え願いたいと思います。
  224. 三木武夫

    ○国務大臣(三木武夫君) アメリカに対しても輸出入のアンバランスというものは、これはできるだけバランスをとるような努力、経済外交の努力があると思うのであります。そこで今お話のように、日本がアジアの経済に対して将来重点を置くようになるだろう、その見通しに異存を言うわけじゃないのです。今、日本の貿易構造は変えるべきじゃないか、そういうふうな大きな大変革を考えるということは、それはやはり実情に即さないのだ。あるいはアメリカにしてもカナダにしてもオーストラリアにしても、やはりアジア以外で貿易を伸ばし得る余地は、高碕通産大臣も午前の答弁の中にありましたごとく、こういってあるのだから、現在輸出を増進しようとする、これを経済政策の一番目標に掲げようとする以上は、やはり現在伸ばし得る世界各国、余地のある国に対して輸出増進のために最善を尽すべきだ、こういうふうに考えておるわけであります。
  225. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 総理にお尋ねをいたしたいのでありますが、多少こまかいことも論じましたけれども、中国貿易なりあるいは日中の交流を強化しようとせられるか、それとも逆の方向であるか、基本的な岸首相の所見を一つ承わりたいと思います。
  226. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) しばしは私も国会会議その他におきましてお答えをいたしておりますように、中共との間の貿易、経済交流の問題についてはできるだけこれを増進したいという考えを従来も持っておりますし、今日も同様に考えております。
  227. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 ところが現在ごく最近でありますが日中貿易促進議員連盟を解散をする、それから国際貿促、輸出入組合等を改組したい、こういう方針が自民党の中にあるやに聞きます。現に日中議連の解散という意向はこれは出て参っております。ところが日中議連の解散をするということになれば、第四次貿易協定を調印をいたしました団体の一つがなくなるということになります。あるいは国際貿促、輸出入組合にいたしましても、あるいは自民党からは好ましくない人間が責任者でおられるかもしらぬ、しかし改組をもし進められるということになれば、そういう協議責任者があるいはその地位にとどまるかどうかもわからない。これでは第四次貿易協定を自民党がこわそうとしておられる、こういうように、言われても私は仕方がないと思うのでありますが、これは総理というよりも自民党の総裁として、それから貿易協定がどうなるかという点もございますので、通産大臣から所見を承わりたいと思います。
  228. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 第四次貿易協定に対しましては、すでに御承知の通りはっきりと政府はこれに回答を出しております。従いまして政府としての扱いにつきましては、その内容とかあるいは中国側においてこれを受け入れない、とかいうような問題は別といたしまして、私どもは取り扱いとしてはっきりと、政府のこれに対する回答を出しておるわけであります。また調印をいたしました三団体の問題に関しましては従来いろいろとこれに対する改組の問題や、あるいはそれのあり方の問題等について議論があったことは、吉田委員も御承知の通りであります。今日日中貿易促進議員連盟の問題につきまして、自民党内におきまして、自民党の党員がこれにあの形においてそのまま参加しておるということは、適当でないのじゃないかというふうな議論がありましたことは、私も聞いております。もちろんこの議員連盟が解散するかしないかということは、これは議員連盟においてきめられるべき問題であると思いますが、これに自民党の党員も参加しておりますので、自民党としてそのあり方についても、批判ないし党員の態度について議論があることは、私はこれは当然であろうと、こう思っております。
  229. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) ただいまの総理の御答弁に尽きていると思いますが、民間の団体につきましては政府といたしましては、これは今どうこうするという考えはいたしておりません。
  230. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 議論をすることは自由であります。これはその通りだと思うのでありますが、しかし日中貿易協定についてその発効、あるいは実施を望まれるとするならば、その協定に調印いたしました日中議連なりその他の団体がなくなるということは、しかもそれを自民党からなくしよう、解散しよう、こういう動きが出てきている、そうすると第四次貿易協定を破壊しようとしておる、こういう非難はこれは免かれぬのではありませんか、こういうことを申し上げています。議連は自民党の理事を除いて継続を決定をいたしました。議連の中の、これは議連に任せてもいいのでしょうが、留易協定の継続とあるいは実施を望まれるか、そうするならば議連その他の調印団体が解散をするということは、これは自民党に非難がいくことになりますが、それでもよろしゅうございますか、こういうことをお尋ねしているのです。
  231. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほどお答え申し上げましたように、第四次貿易協定は調印をいたしました民間団体から政府の意向を求めて参りまして、検討した上において政府はこれに対してはっきりした態度を明らかにし、支持と協力を与えるということを答えております。従いまして私ども政府がこれを破壊しようというような考えは待たないことは言うを待たない。そしてそれが実施を見ないというのは、中共側においてこれを拒否しておるということからきておるわけでありまして、私どもとしてはあくまでも民間のこの協定を尊重して、支持と協力を与えるというはっきりした返事を出しておりますし、これをこわそうというようなことを考えておるわけではありません。
  232. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まあはっきり言われませんけれども、千田君の質問に答えて自民党も最終的にきまっているわけではない、こういう御答弁があったようでありますし、議連をなくし、調印団体をなくするということは好ましくないと、こういう工合に考えておられると了解してよろしゅうございますか。
  233. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) もちろん私の聞いているところによりますというと、議連というもの、現在あるなにをやめて、そしてこれにかわるような何かのものを作ろう、善後処置の問題はもちろん考えられておるようであります。しかしながらこの議連をやめるとかやめないとかいうものは、議連において決定される問題でありまして、議連は存続するということを決定されているようでありまして、その点においてはそういうことを考える必要もなかろうかと思います。
  234. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 本会議で、この契約の取り消し、その原因責任がどこにあるかということはここでは申し上げませんけれども、われわれも民間で積み上げてきたものを政府で、これは官房長官の談話なりあるいはその他非友好的な態度でされたというふうに、私どもは理解をしておりますが、従って被害についても私は政府に責任があると思うのですが、被害の補償については明答をせられませんでした。いわばそのうちに友好関係あるいは貿易関係も復旧するだろう、こういう御答弁でしたが、被害の補償については明言をされません。むしろ消極的に私ども答弁を聞いたのですが、この今の岸内閣の日中貿易問題についての態度の裏には、ここで一時中断をし、中小商社等がつぶれたら、大企業を中心に、日中貿易の、何と申しますか、輸出入組合にしても、あるいは貿易それ自身を、大資本を中心にやっていくつもりと、こういう想像が相当強く行われておる、これは補償の問題とも関連をいたしますが、そういう非難あるいは想像に対して、岸首相はどういう工合に考えられるか、あるいはこれは通産大臣の所管でありますかどうかわかりませんが、補償問題については、本会議で曾禰君が岸首相の答弁を求めた点でありますから、できれば岸首相からお答え願いたい。
  235. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 吉田委員のお尋ね中に、こういう事態ができたことは、日本側の非友好的な措置ということを、前提としてお話のようでありますが、とかく中共側はそういう非難を岸内閣に対して加えておりますが、われわれは、初めから中共に対して敵意を持つとか、非友好的な態度をとるというようなことは絶対にないのであります。そこで、こういうことになったことは、そうしてまた、そういうふうな非難を加えられておるということは、何かの誤解に基くものじゃないかというたとを、私としては申しておるのでございまして、お言葉ではありましたけれども、政府の非友好的な態度なり措置によって云々ということは、私どもは、実はそう考えておらないということを明瞭に申し上げておきます。  なお、日中貿易がこういうふうな支障を来たしておりまして、それによっていろいろと貿易上のこの損害なり、いろいろな事態も起きておるのでありまして、それは非常に遺憾なことであって、これに対して、政府として適当な措置を講じなければならぬことは、私は当然であろうと思うのです。あるいは中小企業や、あるいは中小貿易業者等のこの販路の転換であるとか、あるいは貿易のほかにおいて、それの償いをするように、将来の問題を考えるとか、いろいろな問題についても、もちろんこれは政府としては考えていくべきであって、決して中小貿易業者を倒して、大企業によって、それの力によって日中貿易を復興しようというような下心をもってこれに対してはおらないのであります。事情等につきましても、それぞれ通産省等におきまして十分調査もいたし、これに対する措置も考えて参りたい。しかし私どもは、ぜひともこの中共貿易というものを、先ほど来いろいろ議論がありましたように、これは日本の経済に非常に大きく影響して、日本の経済としてさしあたり非常に困るとか何とかという問題ではなくして、むしろ中国大陸との商にせっかく積み上げてきたところの友好関係、それの一つである貿易、また、これの貿易が伸びることは、日中両国の理解と親善を深める上にも役立つ、経済の上にもとにかく役立つ問題でありますから、何とかしてこれが復活を期待をいたし、また、その意味において私どもが現在静観をしておるということを申しておるのも、心の底におきましては、これの復活を願っておるゆえんでありますので、そういうことともにらみ合して、処置としては考えて参りたい、かように思っております。
  236. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 そうすると、第四次貿易協定がこわれた、あるいは、実施できないでおるわけでありますが、これの実施を希望せられるのか、あるいは別の協定を考えられるのか、この点は、従来明らかにせられませんが、今の答弁をもってすると、第四次貿易協定が実施せられることを望むと、こういうことでしょうか。
  237. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 御承知の通り第四次協定ができます経過を見まするというと、相当長い経緯とこれに関係した人の非常な努力によってでき上ったものでありまして、従いまして、それに対して、政府としては慎重に検討した上で支持と協力を与えるという回答を出しておるのでありますから、私としては、一応これが実施されることが適当であり、それが望ましいと思っております。しかし、さらに両国の間において、これにかわる、また、それよりもいいものができるとなれば、これをもちろん否認するということじゃございませんけれども、あの成立した経緯からも、また、政府がこれに協力と支持を与えるということを責任を持って回答を出しておるいきさつにかんがみまして、これが実施されることを望んでおると御了解を願いたいと思います。
  238. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まだ小さいところございますが、あとでもう三度お伺いすることにして、漁業問題について、なぜ漁船の拿捕が起ったか、あるいは協定を締結することができなかったかということについて、農林省なり、あるいは水産庁、認識も不十分だし、あるいは反省も私は足らぬように思うのであります。というのは、昨年の十月、国慶節に参加した後、伊東猪六氏がこれは漁業会の副会長であります。高碕さんが会長、伊東氏は副会長。ところがその際は、政府間協定へ努力をするという項目がございましたけれども、ことし政府間協定へ切りかえることはむずかしい。しかし継続が可能であろうかどうかという打診について、そのときは、これは今のまま、これは第四次ですが——漁業協定を締結することに異議がない、こう言われておった。ところがその後、ことしの三月以降でありますけれども、百件をこす侵犯が起り、あるいは人命に関する問題まで起ってきた。こういうことから拿捕が起り、あるいは日本と中国の関係一般に関しますいわゆる岸内閣の非友好的な言動というものが、さらに日中間の漁業問題を悪化させた一つの原因でありますが、しかし、その中でもやっぱり友好的な態度をもってしました六隻の船については、やっぱり帰ってくるという実態もある。そこで、これはまあ反省、それから理由等については、お尋ねをする前に私の方から申し上げましたが、政府として東海、黄海において漁民が安心をして操作し得るようにするためには、現在さしあたり、政府は、どういう方策をお持ちなのか、それを一つ承わりたい。
  239. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) 漁業協定はすでに失効したのでございますが、わが方の業界におきましては、漁業協定が存続しておりましたと同様に自粛いたしまして、そして禁止区域の侵犯のないように、協定しておりました所に、そういう侵犯もしくは協定に違反しないように、厳粛に自省して参りましたのであります。そうしてこの自省する手段は、御承知の通り日中漁業協会等が中心になりまして、そして現地におきましては、農林省等は監視船を派遣いたしまして、そうしてその状況をよく監視しておる。もしも違背もしくは違背の危険のある場合には、直ちにこれに戒告を出して、同時にまた、漁業協会の制裁委員会等にも連絡いたしまして、各方面も自粛的な態度をとって参ったのでございまして、かような自粛いたしました厳格な態度をとりますならば、これらの協定の侵犯もなく、平穏に推移するものと考えるのでございますが、これを農林省等は推進する意味におきまして、先ほどのような協力をして参ったのでございます。この線に沿うて漁民がやはりそのことをよく守って、そして操業するということに進まなければならぬものと考えておる次第でございます。
  240. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 西日本国民大会の要求の中には、政府間協定の実現をはかるという一項がございます。自主的な規制にまかせ、それでこの協定がなくなっても、協定の精神、あるいはラインから十海里手前で操業をしておればいいのではないか、こういうまあお話でありますけれども、それでもこれは保障はない。そこで漁民は心配をして、こうしたら安心して操業できるという方策を見つけてもらいたい、こういう点が政府に対する要望。それからその中に、これは第四次協定にあったせいでもございましょうけれども、政府間協定の実現に努力をするというこういう項目から出てきているのだと思うのですが、農林大臣でありますから、政府としてどういう方策をお打ちなのか、あるいは所見をお持ちなのか、重ねて伺いたい。
  241. 三浦一雄

    ○国務大臣(三浦一雄君) 政府間の協定に持っていくわけに参りませんことは、もう御了承の通りであります。政府としましては、かつての協定の線を、漁業関係の人たちが、前提としましてこれを守るということが先決問題でございまして、これを守らせるために最大の協力をして、そしていこうということにしてるいわけでありまして、これを正しく守り、そして厳にこれを実行することによって、私は所期の目的を達し得るものと考えているわけであります。
  242. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 現在の日中関係の行き詰まりでありまするが、交流のほとんど断絶に近いところまでの事態に対して、全国の代表も会合を持ちましたが、西日本の各県から、これは党派は自民党から社会党まで、あるいは共産党も加えて、全西日本の関係者、その中には岸首相の出ておられます山口の代表もバスを連ねて参加をしたのであります。一千をこします参加者の決議の中には、すでにあけました漁業協定についての項、それから貿易協定に安全な支持と協力を与えることというほかに、長崎の中国国旗事件について遺憾の意を表明し解決をはかること、文化の交流、人事の往来上の障害を除去すること、中国へ政府代表もしくは全権委任の代表を派遣すること、両国の国交正常化のため積極的措置をとること、こういう各項目があります。そしてこの基本には、これは宣言の中にございますけれども、岸首相の中国に対する非友好的な態度を改めてもらいたいという一項があります。少くとも岸内閣の政策態度の変更を求めております。宣言文は読み上げません。官房長官を通じて首相にお日にかけたと思うのでありますが、岸首相は、この国民要望にいかにこたえられるか、一つ伺いたいのであります。
  243. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私は、先ほどから申しておりますように中共に対して非友好的な態度をとっておるとは自分は考えておりません。これは、私自身一貫して国会を通じて責任をもって申しあげておることでありますから、そういう非難がありましても、私はそういう考えではございません。もちろん民主政治の本体としまして、国民要望につきましては、十分にこれを尊重すべきことはもちろんでありますが、今おあげになりました項目のうちにおきましては、われわれとして直ちにこれを採用することのできない事項も含まれておるのであります。しかし、私どもは終始一貫中共との間に、たとえ政治形態やあるいは思想その他が違っておっても、経済交流やあるいは文化交流を積み重ねて、友好親善を深めていくという方針につきましては、一貫して変っておりません。あるいは今おあげになりましたことの本来の具体的のなににつきましては、今申しましたように、直ちにこれをそのままとるわけには参りませんけれども——参らない事項もあるようでありますが、しかし、その根底を流れておる中共との間に親善関係を深め、経済交流を深め、貿易関係等を友好的に、できるだけ努力をするというこの考え方については、全然私も同感でございますし、また、国民の意のあるところもそこに存するとして、十分に尊重していく考えであります。
  244. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 まだ決議宣言は、お手元へ届いておらぬようであります。一部ございますから、ここでお渡しをいたします。(拍手)この宣言の最後に、「この大会を契機としてさらに各地で大会を、開き徹底した国民運動をもって、政府に猛省をうながすと共にわれわれはこの目的達成のために、国民と共に最善の努力を尽すものである。」こういう言葉がございます。これは、おそらく岸首相に投票したであろう山口県人もこの宣言決議に参加をいたしておるのであります。個々の項目について答弁がいただけなかったのは大へん残念でありますが、まあそのうちの第三番目の「中国国旗事件に付き遺憾の意を表明し解決を図ること」については、別の機会にも遺憾の意を表明をされたようであります。国旗が尊重されるように、あるいは国旗が侮辱されないように、最善の努力をしたい、こういう答弁等もございました。今これは了承をいたします。ただ、その他の点について、まだ決議あるいは国民の意思が通じておらぬようでありますから、次の機会に御答弁をいただければ幸いでありますが、今の答弁の中に、非友好的でもないし、それから敵視しているわけでもない、こういうことを繰り返し言われるのでありますが、少くとも過去においては、非友好的な言動があったことは間違いがないようであります。それからなお、現在、自衛隊あるいは在日米軍等に、中国を戦略目標としておるのではないかということの強いあれがございます。私どもも、非公開でございますけれども、防衛庁あるいは自衛隊の書類の中にも、そういうものがあるやに承知をしておる。あるいは日台間の反共連盟と申しますか、あるいは軍事同盟と申しますか知りませんが、矢次一夫氏等を派遣して、日韓の、何というか、より緊密な関係に努力をしておられる。しかも、矢次氏は台湾にも行き、あるいは蒋介石とも会われたという話を聞く。あるいはこの秋には蒋介石氏の日本訪問のうわささえあります。それで、岸首相・李会談の実現に矢次氏は努力をしておるのではなかろうかと想像をされておるし、あるいは岸内閣の方針として、NEATOの結成に努力をしておるのではなかろうかと、強いこれは想像がございます。これらの点について、岸首相のはっきりした答弁を願いたいと思います。
  245. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 私は、先ほどお答え申し上げましたように、私がかつて中共に対して非友好的な態度をとっておったというふうなお言葉でありますが、私自身は終始一貫そういうことは考えておらないのであります。私の施政方針の中にも、従来から、われわれができ得る最大限度において貿易や文化の交流その他の関係を確めていくという方針をとってきたし、また、これをとっていくつもりだということを言っておることが、それに尽きておると言うのであります。しこうして、さらにこの日韓あるいは日本と国民政府−台湾との関係等をおあげになりまして、これとの間に軍事同盟を作り、もしくはそれに類似したような何らかの関係を作るんじゃないかということでありますが、これまた、明瞭にかつて国会でお答え申し上げましたように、そういうことは一切考えておりません。  また、日韓の問題につきましては、御承知の通り日韓の正式会談が始まっておりまして、それを今後スムーズに行わしめ、進行せしめるという使命をもちまして矢次君を韓国に送ったことはございますが、それ以上、何らのおあげになりましたような意図があったわけではございません。  また、防御の問題、自衛隊の問題にいたしましても、これもしばしば国会で言明いたしておる通り、われわれとしては、祖国が不当に外部から侵略されるとか、あるいは内部において侵略行為が行われるということに対して防衛をするという意味以外に、全然、ある特殊の国を仮想敵国として、いろいろな施設やあるいはその他のことを進めておるというような自実はございません。あくまでも私は善隣友好の関係を進めるために、貿易の増進やあるいは文化の交流やあるいは漁業問題等、従来から友好的な両国の間に取り紡げれた関係が復活され、それが増進されることを心から願っておるものであります。
  246. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問
  247. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 簡単に願います。
  248. 戸叶武

    戸叶武君 簡単にします。今までの総理大臣の答弁を聞いておると、一番日本で問題になっているこの貿易の不振の行き詰まり打開に対する具体的な策というものが一つも打ち出されていない。それもわれわれは一年間以上これは立ち往生している。去年の六月下旬ワシントン、ニューヨークをたずねて以来、岸首相は具体的中共貿易の問題でも、前年度における輸出六千万ドル、輸入八千万ドルをおのおの一億ドル経度にまで拡大するのにすぎないのであるから、中共貿易に対しての誤解を一掃してもらいたいという形でアメリカの朝野の人たちに訴えたはずであります。また、日米貿易においては輸出の倍の輸入になっておるが、このアンバランスを是正して、もらいたいということを訴えたはずである。それが一九五六年においては、五億二千六百万ドルの赤字となり、一九五七年には十億二千百万ドルの赤字となっている。倍あるいは三倍、こういうアンバランスの状態が、現実において矛盾が増大している。あるいは中共だけの問題じゃない、貿易の不振を打開する以外に、今日の苦境に対する根本的な解決の回答がないということを去年以来一貫して言いながら、この一年間中共貿易においていかなる具体的の打開かやったか、日米貿易においていかなる具体的な打開をやったか。これは一年という歳月は今日の時代においては非常に重大な時の刻みです。この一年間、安閑として中共に対しても、あるいはアメリカに対しても貿易の行き詰まりを具体的に打開していない、努力していると言うが。これは相撲なら努力敢闘賞というのもあるのでしょうが、岸内閣にはおそらく努力敢闘賞も上げられない。もっと私は具体的に、経企長官なり通産大臣なり総理大臣はまじめに予算委員会において答弁してもらいたい。しかも、アメリカ側においては、このアンバランスの点を日本は特需、あるいは船の運賃等の貿易外の収入等によって得るところがあるというようなことを指摘し、もう一つは、日本のチーフ・レーバーによるソーシャル・ダンピングによって、アメリカはボイコット防衛をせざるを得ないのだということを言っておる、こういうことは国民の前にはっきり知らせて、しかも、具体的の数字を知らせて国民に了解を得なければ、日米関係も中共との関係も、おのおの感情的に悪化してくると思う。これは容易ならぬ事態が生れてくると思うのだが、通産大臣におきましても一九五六年、一九五七年においていかなる特需あるいは貿易外収入というものが数字的にあっておるか、そういうことも明らかにしてもらいたい。
  249. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 中共貿易のことにつきましては、大体予定のごとく進んできたものが現在停滞状態にあるということは、まことに遺憾であります。これは一日も早く解決せんことを希望する次第であります。日米問題につきましては、御税のごとく従前日本の支払い勘定が五億ドル見当でありましたが、昨年は日本のあの政策のために輸入が非常に増大いたしまして、ただし、輸出はやはり増大しております。にもかかわらず、十億ドルの支払い超過になっておるということは、これは異常の状態でありまして、これは本年におきましては、当然従前のごとく約五億ドル程度にバランスをとりたいと、こう存じておる次第であります。同時に、輸出の方におきましては、アメリカにおいてはいろいろ問題がございますが、米国政府といたしましては、日本に対しての相当の好意を持って大統領の拒否権等も使っておるわけでありますけれども、これは昨日も申し上げました通り、日本の輸出商品が先方の中小工業の製品と合致しております関係上、実際以上にこれが高いわけでありますが、これに対しましては、政府はあらゆる手段を講じまして、打開に努めております。
  250. 戸叶武

    戸叶武君 私は通産大臣質問したのは、特需関係及び貿易外の収入というものがどういうふうになっているか、貿易のアンバランスをどれだけそれが助けているか、そういう具体的の数字を尋ねておる。
  251. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 詳細なる具体的数字は今持っておりませんが、大要を申しますと、大体の貿妨のアンバランスは城外買付その他の特需関係におきまして、ほぼ同額になっております。昨年は十億ドルの赤字になっておりますが、しかし、特需関係の方は前年と同じく五億ドルそこそこあるわけであります。今後におきましても、大体この特需関係その他の貿易外の収入等をもちますればバランスはとれる見込みであります。
  252. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 日中関係の行き詰まり、あるいは緊急事態というものをどうすれば打開ができるか、あるいは復旧し、友好関係を確立されるかということについて、何ら方策もないし、それからまともな、何と申しますか、認識も私はないと考えるのでありますが、そして貿易協定にしても、大好関係にしても、ただ復活を望む、これだけでは実際には友好関係を復活するということは、なかなか困難だと思うのであります。この間赤城官房長官は談話を新聞記者諸君に発表されました。その中に——善意を認めないわけではございません、個人的な意見で、あるけれども、将来は日中間の関係を改善した上で、国連などの動きも考慮した上、中共を承認できるような国際的な条件を作っていくべきだと思う。こういう点もございますが、そのあとで一番御問題の二つの中国、特に全然二つの国だと、こういう工合に言い切って、これは非常な大きな反響を起しております。きょうの夕刊の報ずるところでありますけれども、池田国務大臣もセーリグマン氏の言葉を引いて「中共を承認し、同時に台湾の独立と安全を国際的に保障する」、こういう意向が、岸首相の訪米の際にもダレス氏から同様の趣旨の話が行われるのではないか、こういうことで、きょうはこれは池田国務大臣が日中関係について大きな水をさしている。こういう事態が起って参っております。認識がないだけでなくて、次から次にぶちこわしの発言がなされるのでありますが、岸首相はこういう不用意な発言を、そして日中関係をさらに悪くするような発言については、十分これは制御せらるべきだと考えるのでありますが、御所見を一つ承わりたい。
  253. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 日中関係を先ほど来申し上げておるように、私はこういう状態を非常に遺憾と考えておりまして、それが打開をされて、そうして善隣友好の関係が進められ、貿易、経済、文化の交流が行われていくことを心から念願しておりまして、そういう意味におきまして、この際いろいろ誤解を生ずるがごとき、もしくはこういうデリケートな問題に関して、十分に真意が伝えられないような言動等は、厳に慣しむべきものであると思います。そういう意味において、私が特に静観ということを申しておるのでありまして、決して無為無策、このままほうっておいて時期のくるのを待つんだというような意味ではございません。これは外交上そういう機微な状態になっておるときにおきまして、たとえ一個人でありましてもいろいろな誤解を招くがごとき言辞は、十分私は慎しむべきものである。閣僚または官房長官等の言動につきまして、新聞等に伝えられたことにつきましては、十分に、私は内閣の首班としても、そういう今申しましたような心持で、この際は十分に慎重に言動するように注意を喚起していきたいと思います。
  254. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 吉田君に申し上げます。時間が参りましたようでございますから御質問の終局をお急ぎ願います。
  255. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この内閣にはバンドン会議出席をせられました高碕通産大臣がおられます。私は、バンドン会議の決議、その基調をなす平和五原則、バンドンでは十原則でありますが、その中心をなしますのは、中国の周恩来総理とネール首相との間に取りかわされました平和五原則、これが中心をなしておると考えますが、平和五原則を対中国政策と申しますか、態度の指導理念とせられるならば、現在の日中関係の事態は改善できるのではないかと考えるのでありますが、バンドン会議出席せられました高崎通産大臣がどのように考えられるか。それからバンドン会議の決議及びこれを貫くバンドン精神は、これは岸内閣ではございませんけれども、日本政府を代表して、アジア、アフリカ五十数カ国会合いたしました際に、日本政府を代表して出席をいたしました高碕氏でございますので、この決議あるいは精神については、首相も承認、尊重せられると考えられるのでありますが、いかがでしょうか。
  256. 高碕達之助

    ○国務大臣(高碕達之助君) 御承知のバンドン会議の決議の精神は、きわめて崇高なるそうしてりっぱなものでありまして、わが国としてもこれに最も率先して協力したわけなんであります。従いましてこの原則が幸いに、バンドン会議出席した国だけでなく、全世界の人たちにこれがいれられるということになれば、私は、現在問題となっております日中の友好関係等は、必ず解決し得ると信じております。
  257. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) バンドン会議において採択せられました決議、並びにバンドンの会議におけるこの決議を貫いている精神というものは、これは私はやはり日本として尊重していくべきものである、かように考えて、おります。
  258. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 外務大臣せっかく御出席でございますし、外務大臣の所見を一つ承わりたい。
  259. 藤山愛一郎

    ○国務大臣藤山愛一郎君) バンドン会議の十原則というものは、当然日本がアジアにおいて外交政策を展開する上の大きな目標であることは、申すまでもないわけでありまして、われわれもそういう精神に沿って努力をして参りたいと、こう思っております。
  260. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 首相及び外相に。中国との友好関係を復活するためには、領土主権の相互尊重、内政不干渉、相互不可侵、互恵平等、平和共存のこの五原則によって初めて打ち立てられるのではないか、ということをお尋ねするのでありますが、時間がございませんから私から多少の説明をいたします。バンドン会議に集まりました五十数カ国の国民、民族の共同の意思感情は、アジア、アフリカの諸民族の独立の達成、相互協力による経済の発展の促進、そのための反植民地主義の貫徹、新しい形の植民地主義のアジア、アフリカからの排除ということであったと思うのであります。こういうバンドン精神、アジア、アフリカ諸国民の共同の熱望に首相は共感を感じ、協力せられるかどうか。西ニューギニアはインドネシアの一部であるという判断が、バンドン会議の決議の中に入っております。日本の沖繩等についても同様の感情、理解がありまして、で中国と台湾の関係についても同様であったと思います。周恩来総理は出席されましたけれども、台湾代表というものは出席しておりません。で、バンドン会議の趣旨精神からしまするならば、中国と台湾との問題、これはいわゆる台湾問題は中国の内政問題と解すべきだと思うのであります。鳩山内閣の外交方針には、国交未回復国との国交の調整という大きな方針があって、ソ連との国交回復等については、そこに松本さんもおられますけれども努力せられました。次に、中国との国交調整ということは残っておったのはではないか、という私の質問に答えて、鳩山首相、重光外相は率直にこれを取り上げてそうであったろうということで、二つの中国の解決に努力せられたと信じております。で、この気持が周恩来総理にも会ってもよろしいという言葉になって、当時報告されたと思います。  なおこれは岸総裁のもとにおける自民党の党員の人でありますが、大阪の組織委員長をいたしておられる福川政則君、それから先ほど名前をあげましたが、伊東猪六氏、これは自民党員でありますけれども、自民党員としても、台湾問題は中国の内政問題であるということに賛成をせられたのであります。こうして日中の友好を増進し、あるいは国交への努力、国民運動を起したいという自民党の党員にしても、はっきり意志表示をされて参ったのであります。  そこで岸総理最後に重ねて伺いますが、この鳩山内閣当時に返って、二つの中国を作るのをやめて、中華人民共和国との間に友好関係を復活するには、領土主権の相互尊重、内政不干渉、相互不可侵、互恵平等、平和共存の関係を日中の間に打ち立てられる決意がないか。この平和五原則をもって日中関係の今の行き詰り、あるいは危機、あるいは緊急事態というものを打開するつもりはないか、最後にお伺いいたしたいと思います。
  261. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 先ほどもお答え申し上げましたように、バンドンで決議されておる十原則、及びこれを貫くところの精神はこれを尊重していくという考えでございます。具体的に中国大陸と台湾との関係についてお話がございましたが、これは先ほど赤城官房長官の言辞につきまして、私は、こういう際にこの問題に関してああいう言辞をすることは適当でない、ということを申しております。御承知の通りこの関係は非常に微妙な状況でございまして、私どもも、この関係についてこういう席において意見を述べることは、適当でないと思いますから、これに対する御返事はいたしませんが、バンドンの精神及び決議についてはこれを尊重して、あらゆる国との友好関係を進めていくと、こういう考えでおります。
  262. 坂本昭

    ○坂本昭君 関連質問……。
  263. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 時間が大へん経過しておりますから、きわめて簡単に一言だけお願いします。
  264. 坂本昭

    ○坂本昭君 きわめて重大でございますので……。総理の御意見を伺いますと、敵視はしていない、それから友好を結びたい、友好を積み重ねたいと言っておりますが、今日の状況では、なさざるはむしろ拒むに近いのではないか。大へん失礼でございますが、満州帝国建設以来の岸総理の中国大陸に対するお考は、一貫して非友好的ではないかと思われるのであります。今日世界の危機は、むしろアメリカとソビエトの対立よりは、アメリカと中共との対立によって促進せられておる、そういうふうにも見られるのであります。米国の対中共観は、朝鮮戦争以来、米国民一般の非常に強い憎悪感で貫かれております。私はこの際申し上げたいことは、日本と中国との問をどうこうするというよりも岸総理におかれては、アメリカと中共との間にあって、積極的な居中調停の労をとる御意思はないか、そのことを一言総理にお伺いしたい。  それからなお同時に外務大臣には、アメリカの中にも中共との提携を説く人もあるのであります。アドライ・スティーヴンソン、あるいはヘンリー・フォードの息子のフォード二世などは、昨年の春、商工会議所の会議で、はっきりそういう点を指摘せられております。私は、藤山二世も同じようにこの点において積極的なお考えをとる御意思はないか、その点を伺いたい。
  265. 岸信介

    ○国務大臣(岸信介君) 中共と日本との関係は日中両国の関係であると同時に、今日の世界の情勢からいいますというと、国際的の諸種の情勢なり環境というものが、これを取り巻いておることも否定できません。今お話がありましたアメリカの態度というものもいろいろ影響を持っておることは、これは事実でございます。従ってこういう国際の、われわれはあくまでも先ほど吉田委員からおあげになりましたような精神に基いて、平和を推進し、そうして世界の恒久的な平和を作り上げてゆくという念願、その一環として日中の問題も解決されなければならない部面がごいますので、そういう点につきましてももちろん私が友好関係を進めたいといっているのは、ただ日中だけの関係を取り離して、この友好関係を進めるということが効果的にあがるわけでもございませんから、あらゆる面においてそういう努力をいたして参りたい、かように考えております。
  266. 藤山愛一郎

    ○国務大臣藤山愛一郎君) アメリカに、日本がアジアの一員としております立場から感じております問題、そうした問題を率直にアメリカ側と話し合いますことは、日本のためにも、あるいは極東平和のためにも、あるいは世界平和のためにも非常に必要なことだと私は考えております。従いまして私としては、アメリカ当局とは、そういう問題についても基本的にいろいろな面からこれを検討し、またわれわれの考えていることを率直に申すつもりでございます。
  267. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 厚生省大臣を大へんお待たせいたしましたが、厚生省が最近中国殉難者の遺骨を政府でやりたい、こういうことで地方自治体の民生部長あてですか、通牒を出されたということでありますが、しかし中国側からいいますと殉難、日本側からいいますと戦争中の華人労務者と、こういうことになりますが、どうしてこられたか、閣議決定に基いて強制連行し強制労働につかせた。その中から劉連仁氏の問題が起ったのでありますが、これらについて全然経過、責任を明らかにせずして、そうしてあるいは行方不明者の調査、あるいは中国に残っております日本人の帰国、こういうことが実現すると考えておられるんでしょうか。これは今までの経緯を無視して政府でやろうと思われても、おそらくこれは中国側でそういう態勢に私は応じないと、これは坪総理は、劉連仁氏の問題等については、官房長官から報告だけ受けられたかもしれませんけれども、どうしてこられたか。劉連仁氏らしき人、こういう言葉さえ使っている。ですから北海道の山の中で発見をされますと、出入国管理令違反の疑いがある、こういうことで出頭を求めたりいたしました。そうして十三年間も山の中にわられたということについては、気の毒だから見舞金を出しましょう、しかしどうしてこういうことになったのかこいうことについては全然触れようとされない。あるいは外務省の中にあります書類さえもこれを見よう、あるいは見せようとしない。あるいは遺骨問題等を含めまして、人道的な諸問題の相互解決のために一番問題になっております、あるいは中国側が知りたがっおる千名をこします労働者の事情の調査、これが外務省にある。それを出すということは有田さんが約束されたり、いろいろされたのですが、それを出そうとしない。説明をしようとしない。そこでかえって、せっかく十万円の金を出そうとしたけれども、受け取られない。官傍長官の手紙だけは持って帰られた。その結果、向うで、かくのごとく岸内閣は戦争中の行為について反省がないのだ。あるいは閣議決定に基いて強制連行された。強制労働に従事された。こういうことについて一片の遺憾の意を表するという誠意がない。こう言って、潜在的な帝国主義が残っておるということで……。
  268. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 吉田君、簡単に願います。
  269. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 劉連仁氏の芝居ができ、あるいはニュースが報道せられた。これは私は、日中関係についても一つの大きなマイナスになっておると思うのです。これは、岸総理にも今申し上げたことでありますが、厚生省は、こういうことで日中関係の人道問題を片づけられようとされるのかどうか……。
  270. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 吉田君、メモをごらん下さい。
  271. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 この政府の態度を明らかにしていただきたいと思います。  それから、文部大臣を待たせておりますが……。
  272. 泉山三六

    委員長泉山三六君) それじゃ、この辺でいかがですか。
  273. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 それではついでに、ついでというと、大へん申しわけございませんが、立ったついでに、答弁を待つ前にお尋ねをいたしておきたいと思うのですが、岸内閣の文教政策は、日教組の弾圧、分断というのがその中心であると私ども想像するのでありますが、文部省が、地方公務員法違反として、東京都教組あるいは日教組に強制捜査をし、あるいは勾留をする、警察権の発動を促したと解釋をせられるのでありますが、文部委員会で否定をせられましたけれども、しかし、政府が日教組分断あるいは弾圧政策をとろうとしておられる。あるいは警察権、検察権の発動を促したということは間違いがないと思う。ところが、勾留の請求に対しても、却下があったにかかわらず、引き続いてこれは勾留状の事後効力として勾留を続ける。法的な根拠がないのに、憲法上の根拠がないのに勾留をする。あるいは強制捜査の対象が特定せられないような捜査をやる。これは、亀田君等が指摘いたしましたが、裁判それ自身裁判官がやらぬということは、一つの現われだと思うのです。そうしてまで、この違法な行為を政府があえてしてまで、どうして日教組の弾圧、分断作戦をやらなければならないのか。これは、総理及び文部大臣最後にお尋ねをいたしたいと思います。
  274. 泉山三六

    委員長泉山三六君) 灘尾文部大臣、まず御答弁を願います。(「厚生大臣」と呼ぶ者あり)文部大臣は大へん多忙でありますから。
  275. 灘尾弘吉

    ○国務大臣灘尾弘吉君) お答えをいたします。日教組を弾圧するとか、あるいは分断するとかいう目的のために、何か教職員に対して警察権が介入しておると、こういうふうな御趣旨のお尋ねのようでございますが、さような事実はございません。問題は、今回の勤務評定をめぐる争いの中におきまして、教職員の諸君に地方公務法の違反の容疑があるために、警察権が手を出しておるような次第である。このここにつきましては、先ほども申しあげたと思うのでございますが、私は、教育界に警察の手が伸びるというようなとは、まことに不祥なことと考えております。きわめて不幸なことでもございます。従って、さようなことはなるべくないようにいたしたいのです。(「文部省がやっている」と呼ぶ者あり)その意味におきましては、検察、警察当局に対しましても、事の運び方は特に慎重を期してもらいたいということと常に申しておるところでございます。しかしながら、犯罪の容疑があるといたしまして、警察が動くということについて、これをとめるわけにも参らぬ、今回の事態におきましては、私は、やむを得ざるものがあるように(「ノー、ノー」と呼ぶ者あり)考える次第でございます。警察当局側におきましては、十分に慎重を期してもらいたいし、日教組の諸君におかれましては、かような問題を起さないように、十分お考えを願いたいと思うのでございます。
  276. 橋本龍伍

    ○国務大臣(橋本龍伍君) お答えをいたします。この中国人労務者の死亡せられた方の遺骨の送還に関しまして、突際その遺骨を送還するに当りまして、中国側がどういうふうに言われるかは、これはむしろ外務省の関係で、私の方にはわかりませんが、いずれにしましても、中国側の方からは、このなくなられた方の遺骨を探して返してほしいという要望は、李徳全氏の来られた際その他しばしばあるのでありまして、政府といたしましては、できるだけ誠意をもって調べまして、これの解決をはかりたいと考えておる次第でございます。前大臣から申し継ぎがございまして、私、就任いたしましてから、つい先ごろでございますが、御指摘のありましたように、このなくなられた方々の状況調査に関しまして、都道府県知事に対して指令を出して、目下調査中でございます。相当困難なようでありますけれども、できるだけ手を尽して参りたいと思っております。
  277. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 最後に、これで終りますが、厚生大臣に、この従来わかっておる事情ですね、これは外務省にあるのです、書類は。あるのですが、そういうものも出さないで、こちらの誠意を示さないで、それから、今までのことは申しませんが、それで誠意が示される、こういうものではなかろうと思うのでありますが、この就労事情調査について、中国側にお出しになるつもりがあるのかどうか、その点、一点だけ伺っておきたい。
  278. 橋本龍伍

    ○国務大屋(橋本龍伍君) 私の方は、この就労せられたとときのいろいろ因縁というようなことは、私の方で考えておりませんので、とにかく中国側からの御要望に応ずるために、なくなられた方々の状況、その遺骨等というものを……、遺骨を調べるということを、それから、調べてわかりましならば、それを何とかして中国側にお送りをしたい。そういう趣旨で、その方への調べに専念するつもりでございます。
  279. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 もう時間がございませんから、質問をもういたしませんが、過去は問わぬ、責任は明らかにしない、こういうことで、ただ遺骨を送りたい、これは、ほとんど今まで大半のものは民間で集めたわけですが、これは、劉連仁氏に対するのと同じことです。それではせっかく集めて——送り返してやろうというまああれがあるかもしれませんけれども、日中関係について、むしろ逆な効果しかない。過去日本のやって参りましたことについてのやっぱり反省と責任を感ずるところがあって、そうしてこの御遺骨はどういう御遺骨でございます、こういう点説明がなければ、向の方で、受け取ることは私はなかろうと思うのです。そういう点が政府に対しては求められているところなんです。それが人道問題について、政府間協定にいくかいかぬかが問題でございますので、これはひとり遺骨問題、劉連仁問題あるいは貿易問題に限らず、全般にのる問題でありますから、その点について政府関係各大臣の、何と申しますか、一そうの御反省と銘記とをお願いをいたしまして、質問を終わります。
  280. 泉山三六

    委員長泉山三六君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。なお、亀田委員から昨日来本日にかけまして強い要請のありました問題、すなわち最高裁判所長官の出頭に関しましての問題につきましては、御要請に基きまして、委員長において本日直ちに議長並びに議院運営委員会連絡をいたし、善処を要請いたしておきました。御報告を申上げます。  本委員会は、これにて散会いたします。    午後七時三十一分散会