○清澤俊英君 私は、
日本社会党を代表いたしましてただいま提案になりました
繭糸価格の安定に関する
法律案に対して、若干の
質問をいたし、
政府の所信を承わりたいと存ずるのであります。
昨年の末から始まりました生糸の生産過剰の状況は、繭価の安定法施行以来初めての
政府買い入れによって、糸価を辛うじて維持して参ったのであります。三月初めに至りまして、滞貨の増大は価格の落勢を生じましたが、
政府は、先ほど言われる
通り、四十九億一円の買い入れ資金の増額や、製糸業者一に対する二割の操短等を慫慂することによって、四、五月は辛うじて維持価格を支持することができたのであります。だが、六月に入りまして、買い入れ資金もまことに少くなりまして、従って、製糸業者並びに業界に不安を招来して、非常に生糸の暴落の傾向が見えて参ったのであります。そこで
政府は、生糸換算五万俵のうち、買い入れ資金として百五十億円の増額案を打ち出しました。生糸換算で五万俵の買い入れを決定して、そのうち、生糸二万俵に対しましては、メーカー別に買い入れ限度三千俵としたため、買い入れに対するワクをはめた等の
措置が決定せられたのでありますが、かかる方法では、事実上恒久的に価格の維持は困難である、かつ、春繭の作柄の影響等を受けることもありまして、春繭が安く買付ができる等の観測から、ついに十六万円台に生糸の大暴落を来たしたのであります。この十六万円ということは、
繭糸価格安定法ができて以来七年にして、初めて出て参りました市場価格であるのであります。この大暴落に当りまして、
政府、自民党は、六月二十日に至りまして買い入れ資金を五十億増額し、百五十億円としまして、生糸の無制限買い入れを発表したのであります。この無制限買い入れがききまして、大幅に生糸は大暴騰して参りまして、現在十八万円台に相場は引き戻されたのであります。さきの大暴落といい、あとの大暴騰といい、いずれも
政府の心がまえ一つで定まる
政策価格であることは間違いないのであります。従って
政府は、本
法案を提出なさるに当りまして、価格維持に対してどれまでの確信があるのでありますか、この
法案をもって確信を持たれるのでありますか、その点をお伺いしたい。同時に、万一、
政府が企図せられまする価格維持が困難の場合は、次善の策を直ちに講じて、あくまでも
法律に定められた価格の維持をやり通す決心をもって本案を提出せられたのかどうか、価格維持に対するその決心をお聞きしたいのであります。
すなわち、五月の大暴落は、不用意にも買い入れ条件に制限をつけて、買い入れのワクをつけたり、あるいはまた、買い入れ資金をちくちくと増額する等、大局的な見通しに立った大幅な増額を行わず、いつも小刻みにやったりする自信のない蚕糸
対策が、
関係業者をして、
政府は安定価格の維持をどこまでやるのかやらぬのか、何が何だかさっぱりわからなくしてしまったのであります。業者の気迷いから不安になり、ついに暴落を演じたのであると思うのであります。私は、かりにこの
法案の
内容が、価格の維持に適正であったといたしましても、いろいろ、こんがらがった現在の市場情勢から見まして、確信を持ってこの
法案で糸価の安定を期するとは申されないと思うのであります。それは、
政府の施策に対する不信と不安とが中心になって、それにいろいろの思惑が加わって生ずる結果が、そういうことになると思うのであります。従いまして、本
法案の施行とともに、
政府が価格安定法の精神をどこまでも守り、企図せられたる糸価の維持をどこまでもやり通す決心であるということを、この場合、はっきりと御証明して披瀝していただきますことが、本
法案よりもなお重大の影響を及ぼすことと私は
考えまするので、特に
政府の所信をお伺いしたいのであります。
次に、輸出業者団体は、支持価格十六万円台引き下げを、現在、
政府に要請しているのであります。これに応ずるごとく、全国織物業者団体もまた支持価格の引き下げを決議いたしまして、現に買い控えをやっているやに伝えられているのであります。これと相呼応するがごとく、製糸業者も千二百円繭価、十六万円糸価等を叫ばれているということを聞いているのでありまして、こういう情勢に対しまして、
政府は一体どう
考えておられるのかどうか、こういう諸情勢を克服して、どうしてもこの
法案で企図せられましたる価格維持を続けられる決心であるのかどうか、これを明確に
お尋ねをしたいと思うのであります。
次に、本
法案に盛られました百五十億の安定資金は、三十三年度養蚕年度中の使用資金として取り扱われております時限法であることに間違いありません。提案
説明書によりますと、春繭
対策として百五十億円が用意せられたようにも書かれてあり、また、自民党一の蚕糸業に最も
関係の深い代議士等からお聞きしますならば、五十億円の乾繭資金は、これは春繭にだけ使うのであって、春繭だけに使えば余るくらいであるから、少しも
心配は要らない、従って、自余の夏秋蚕等に対しまする処置に対しましては、金が足らぬ場合には、
政府は直ちにこれに対して対応する処置ができておるのだと、こういうように
説明せられておるのであります。従って、ただいまの提案
説明をお伺いいたしますると、生糸の買い入れ及び繭の共同保管に必要な資金については、適時円滑に供給せられるよう処置したいと存じますと、農林
大臣はこれに答えておられるのであります。私は、この存じますは、いつでも
政府で行われまするところの逃げ口上であって常識的には、何をしたいと思うという意味に解することが適当であると思うのでありまして、この場合、まことに不明確な表現だと思います。従って、いま一歩突っ込んで、だれしもが安心のいける
説明をお願いしたいと
考えるのであります。
第三番目には、
政府は、本
法案提出の前提条件としましてただいまの蚕糸界の不況情勢を一時的なものと見ておられるのか、恒久的な現象と見ておられるのか、従って、本
法律によって目前の緊急状態を切り抜ければ、三十四年度からの見通しは明るくなるのかどうか、どう
考えておられるのか。提案の
説明を見ますると、本
法案によつて目前の緊急事態を臨時に
措置しておいて、なお
根本的に、恒久的にいろいろ施策を決定せられるようにも
説明せられておりますが、一体全体、この見通しに対しては、どちらを中心にして本
法案を提出せられたのか、明確に
お答えを願いたいと思います。
次にお伺いしたいことは、本年の夏秋蚕を自主的に二割制限させようという点であります。
政府は、養蚕連幹部との話し合いによって養蚕農民に自主的に二割生産制限の話し合いをさせようと
考え、これを
政策に盛っておられるのでありますが、私は、
政府の
意図の実現は、まことに困難であり、不可能であると
考えるのであります。それは、去る十七日、共済会館で開かれました養蚕農民全国大会におきまして、原案でありますところの二割の生産制限案を、圧倒的多数でもって原案はくつがえされ、否決せられ去ったのであります。この情勢下において
政府は、夏秋蚕二割減は実現の可能性ありと
考えておられるのかどうか、ないといたしますならば、その
対策はどう
考えておられるか、その点を明らかにしていただきたい。聞きますれば、
政府は強硬に二割減を遂行するため、六月四日の閣
議決定に従いまして、蚕種の売り出し制限を行わしめて、蚕種で押えて行く、そうして蚕種で押える強硬手段をもって、その売りどめされた蚕種には、損害賠償をいたすことを中心として、
政府と蚕種業者の間に話し合いが進められておるということを聞いているのであります。従って、一般の養蚕
関係者、ことに指導的
立場にありまするところの人
たちは、かようなことをいたしますれば、蚕種のやみが横行して参りまして生産制限を無効に終らせるばかりでなく、繭の生産上に混乱を来たすばかりでなく、将来、繭の生産業に対して憂慮すべき状態が残るということを
心配しておるのであります。
政府は、表に民主的納得によって、話し合いをもって制限を打ち出そうと言いながら、裏からは強力な
権力的行政
措置によって、二割制限の目的を達成しようとしておられるのでありまするが、この点はどうなっておるのか、明確な
お答えをお願いしたいと思います。
思うに私は、これらのことが、先ほどお伺いいたしました現今の蚕糸業態が一時的なものか、また恒久的なものかによって、
政府の
意図が明確になるに従って、減産に対する桑苗の補償、作付転換の指導または営農資金の融資等の処置とあわせて明確な見通しに立った農民の納得する方針を指示、指導せられますならば、いま少し別な結果が大会において出たものと
考えるのであります。
政府の自信のない蚕糸
対策が大会の空気を支配したのではないかと思うのであるが、重ねて、現今の不況が一時的なものか、恒久的なものかを、明確にしていただきたい。同時に、養蚕農民の大部分は、主要生産県の一部の農民を除きましてその大部分は山間部におきまする零細農民が、盆の小づかいの現金を得る主要な財源であるのでありまして、一割でも二割でも、減産が農家経済に重要な影響を与える実情をよくお
考えの上、慎重にして懇切なる御答弁をお願いしたいと思うのであります。
次に、乾繭の共同保管につきましてお伺いいたします。本
法律案によりますと、五十億の乾繭資金は、保管会社が生産団体の乾繭いたしました繭を買い入れるようになっておりまして、繭の生産者団体が乾繭するまでの手続については、提案
説明にも明確を欠いておるのであります。従って、繭代金の支払い、乾繭の種々の費用等は、いかに
措置せられ、指導せられようとしておるのでありますか、この点を明確にしていただきたいのであります。
次に春繭出回り、夏秋産の近く出回りを前にいたしまして、各県ごとに繭価協定や数量について団体契約等が行われておると言いますが、ある地区では、春繭の大部分が玉繭の価格で売買を完了しておる地区もあるのであります。ただいま小山さんが言われたように、長野県のごとく、千四百円で保証された価格で協定のできておる所もあるのでありますが、大体におきましては、価格協定は不成立のまま、指定価格の八割ないし六割からの支払いをすることにいたしまして、繭を引き取ることだけは了承せられておるようであります。こういう状況下において、
政府は
政府決定の千四百円の繭代金の確保をいかにして達成しようとしているのか、また、はなはだしく残金の支払い等がおくれました場合には、いかなる
措置を
考えておちれるのか、お伺いしたいのであります。
かような情勢が出て参りましたことは、余った繭に対し、生産団体として乾繭共同保管をいたさせようと
考えておりましても、ただいま小山君が言う
通り、戦前の乾繭設備はほとんど使用不可能となり、その能力はわずかしかないのであります。しかも、各地に散在して実際に利用し得る施設というものは、わずかに限られた地区にあるだけであります。
政府はかかる情勢に対して、生糸の買い入れについては、
政府指示の千四百円で買い上げた繭で作った生糸だけを業者から買い上げようとするという、ワクをつけておられるということが伝えられておるのでありますが、その点はどうなっておるのでありますか、明確な御答弁をお願いしたいのであります。万一、実勢繭価を主張する製糸家が、
政府指示を実行せず、消費者側の一要求に負けて、実勢糸価の決定に傾き、下値売り出しをしました場合には、せっかくの維持価格は御破算となり、本
法案の
趣旨も一片のくずと消え去るのであります。養蚕農家は、究極的には相場のしわ寄せをこうむり、泣きを見ることになるが、この点の危険に対しまして
政府はいかなる用意があるか、こういう危険をどうして防止しようとしておられるのか、明確な御指示をお願いしたいと思うのであります。
以上をもちまして私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣三浦一雄君
登壇、
拍手〕