運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-06-18 第29回国会 参議院 本会議 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月十八日(水曜日)    午前十時十八分開議   ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第六号   昭和三十三年六月十八日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件   (第二日)   ━━━━━━━━━━━━━
  2. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 諸般の報告は、 朗読を省略いたします。   ━━━━━━━━━━━━━ 昨十七日議長において、左の常任委員 の辞任を許可した。  商工委員      小山邦太郎君  建設委員      吉田 萬次君 同日議長において、常任委員補欠を 左の通り指名した。  商工委員      吉田 萬次君  建設委員      小山邦太郎君 同日各委員会において当選した理事は 左の通りである。  大蔵委員会   理事 栗山 良夫君(小笠原二三    男君の補欠)  文教委員会   理事松永忠二君(竹中勝男君    の補欠) 同日内閣から予備審査のため左の議案 が送付された。  経済基盤強化のための資金及び特別  の法人の基金に関する法律案 同日内閣から予備審査のため左の議案 が送付された。よつて議長は即日これ を大蔵委員会に付託した。  外国為替資金特別会計法の一部を改  正する法律案 同日社会労働委員長から提出した左の 委員派遣変更要求書記載通り議長 は、即日これを承認した。    委員派遣変更承認要求書  昭和三十三年六月十二日提出し、六  月十二日議長承認を得た中共地区  引揚者の実情調査のための委員派遣  承認要求書派遣委員中「木島虎藏」  とあるのを「勝俣稔」に変更いたした  い。  右要求する。   昭和三十三年六月十七日       社会労働       委員長  久保  等    参議院議長松野鶴平殿      —————・—————
  3. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)  昨日の国務大臣演説に対し、これより順次発言を許します。曾祢益君。   〔曾祢益君登壇、拍手
  4. 曾禰益

    曾祢益君 私は、日本社会党を代表して、昨日、本院における岸首相施政方針に関し、首相並びに関係閣僚に対して、以下若干の質問を行いたいと存じます。  まずもって、総理施政方針演説がまことに無内容、おざなりのものであって、国民の期待を大きく裏切ったことは、はなはだ遺憾に存じます。しかも一方においては、目に余るような金の力による選挙の結果、それに酔って、国民の圧倒的多数の支持を受けたという、自信の過剰のみがあふれ出ていることに対し、早くも心ある国民は、民主主義の前途を憂えているのであります。首相は、一方においては、わが国民主主義基盤がなお弱いことを認めておきながら、民主政治の健全な発達のための措置としては、単に国民に対し法の権威を守ることを要求し、民衆団体に対しては、国会の威信をかさに着て、権威と権力をもって臨もうとする面ばかりを強調しておるのであります。(拍手)なるほど演説の末尾において、首相は一応、国政の運営に当っての謙虚な気持を表明することを忘れてはおらないのでありますが、われわれがこの首相の言を真に受けるには、あまりにも国会内外における政府与党の多数の横暴と、権力主義を見せつけられていることを指摘しなければなりません。われわれの憂えるところは、選挙の結果を、国民自民党に対する圧倒的支持と誤認し、自民党岸内閣内外の施政と国会運営に当り、謙虚なる心がけを欠き、多数横暴をもって処するならば、やがて国会運営の不円滑と、国内における階級対立の激化とは、国民全体の民主主義議会制度それ自体に対する失望を招き、左右両極独裁制に道を開くおそれがあるということであります。従って私はまず最初に、あらためて民主主義に対する総理の信念を伺い、ことに、さきに指摘いたしましたように、首相所信の冒頭と末尾との間における矛盾について、明確な解明を求めるものであります。  次に、同じく民主主義の基本に触れる問題として、ぜひこの際伺っておきたいことは、選挙中から露骨となって、新内閣の人選、ことに労働大臣文部大臣のそれにおいて、すでにそのほこ先が一そう明らかになったところの労働運動に対する強圧政策であります。良識ある国民はだれしも、全逓労組員職場集会の行為を、郵便法違反として罰しようという政府のやり口を、民主主義に逆行する危険な傾向として警戒の目をもって見守っております。郵便法第七十九条の規定を争議行為に適用しないことは、制定当時、当局もまた認めたところであります。政府はこの際、郵便法鉄道営業法その他の事業法の規定を、労働運動の弾圧に悪用するごときは取りやめるべきと信ずるが、政府の明確な所見を、首相労相逓信大臣運輸大臣、法務大臣から、それぞれ伺いたいと存じます。  さらに、全逓労組職場集会教員組合の一斉休暇闘争、ないしは全司法労組順法闘争などに対する当局側の取締りと対抗措置は、明らかに社会の通念を越え、これに反したところの政治的弾圧であります。ことに全逓関係における検察側態度は非常識きわまりないものであって、証拠の隠滅や逃亡のおそれがないという裁判所の判決に対し、なおも準抗告、次いで特別抗告の追い打ちをかけようとしております。政府はこのようなファッショ的な検察当局の行動を抑制すべきが当然であると思うが、首相、法相から明確なる返答を承わりたいのであります。(拍手)  良識ある国民はまた、政府がその文教政策の貧困をよそに、文教行政なるものを口にするけれども、実は、教職員組合に対する政治的攻撃の道具に、行政を悪用している傾向を特に危険な兆候と見ております。教員勤務評定が元来科学的、合理的な基礎を欠いているばかりでなく、これを天下り的に押しつけようとする結果は、教員のはつらつとした創意と民主的な教育活動を阻害し、教員をして、単に評定権を握る校長や上司の鼻息をうかがう、こそく地方吏員に堕落させ、新しい民主主義教育民主政治基盤を掘りくずすであろうことは、すべての良識ある国民の憂えるところであります。しかも、検察側の組合に対する手入れがいかなるものであったかについては、私は最近の有力紙の報道の一節が最も雄弁に語っていると思うのであります。これを引用いたしたいと思います。「警察官がドヤドヤと学校に乗りこんでくる。教職員組合の分会を家宅捜索するためだ。土曜日の午後を選んではいるが、それでも校庭にはまだこどもたちが残っている。ものものしい捜索ぶりをおびえた表情で、窓からのぞきこんでいる。これは去る七日警視庁が東京都教組の下部組織を手入れしたときの風景だ。信頼している先生たちが目の前で犯罪人扱いを受ける。こどもたちにどんな印象を与えたかと思うとやりきれない気持になる」、われわれは、この記事の筆者と全く同感であるばかりでなく、単にやり切れない気持以上に、激しいふんまんと、民主主義の前途に対する深刻な不安を禁じ得ないのであります。(拍手政府は、このような勤務評定の強行と教員組合に対する弾圧措置を直ちに取りやめるべきであると思うが、総理、文相、警察担当大臣見解を求めたいと思います。  さらに、石田労政から倉石労政に移って間もない今日、すでに倉石労相は、仲裁裁定の完全な実施の公約を、いわゆる尊重の線まで逆戻りさせるとともに、ILOの結社の自由と団結権擁護に関する条約の批准問題についても、もう批准を行わない腹をきめ、公労法の改悪、さらに労調法労基法等の改悪を意図していることが伝えられておるのであります。政府は、果してこのような労働政策反動化を意図しているのか、この際、首相並びに労相の明確なる所信を伺いたいと存じます。(拍手)  次に、外交問題について、若干当面の問題に限ってお尋ねいたします。第一は、国際緊張の緩和に対する政府見解であります。首相はその演説の中で、国際緊張緩和努力が続けられ、特に東西巨頭会談動きには大いに注目すべきものがあると、きわめてあっさり、あたかも対岸の火災を見るような態度をとっておられる。むろん国際緊張緩和に対するわが国の貢献の面には限界があります。しかし東西の冷戦が核兵器ミサイル競争段階に突入した今日、わが国の置かれている地政学的な条件から見て、わが国外交方向や、ないしはその一挙手一投足が、国際緊張に与える影響は決して過小評価すべきではなく、少くとも総理のように、わが国の国際平和における責任に、ほおかぶりをするような態度は断じて許されないと信じます。たとえば日米関係についても、近く外相または首相アメリカ訪問が行われ、日米安全保障条約の改訂や沖縄施政権問題について、アメリカ譲歩を勝ちとるために、これと引きかえに自衛隊の装備のいわゆる高度化に踏み切る意見が、閣内で台頭しているやに伝えられておるのであります。このことは、憲法の改正、再軍備の強化と自衛隊核兵器ミサイル武装化並びにこれらの兵器の持ち込みに通ずる問題でありまして、国際緊張激化方向にほかならないのであります。同様に、大陸中国との間の不幸なる対立をよそ目に、日本と台湾との間の民間の政治的な動き、並びに日韓交渉が続けられておりまするが、万が一にも、台湾や韓国の動きや、その他の外部勢力のそそのかしに乗ぜられて、軍事同盟とまで行かずとも、反共連盟などの方向に走ることがありとするならば、これまた、わが国の平和と安全を脅かし、国際緊張を強めることは言を待たないところであります。従って私は、次の二点について明確な方針首相並びに外相からお伺いいたしたいのであります。  第一に、外相または首相の渡米と防衛問題に対する基本方針、なかんずく自衛隊核兵器ミサイル武装に関する明確な所信を、あらためて示していただきたいのであります。  第二に、日韓会談日台交流に関連し、アジア極東軍事同盟とか、あるいはアジア反共連盟に参加する意向があるのかないのか、ないのならば、これを明確に断言されたいのであります。  首相はまた、大国間の軍縮とあわせて、原水爆実験はもとより、その使用、製造、貯蔵の全面禁止の実現にたゆまざる努力を誓っておられます。しかし、国際情勢の現段階において特に必要なことは、このような単なる抽象的な願望や悲願ではなく、核兵器禁止軍縮を、いかなる順序で国際政治の現段階においてこれを実現させるかのプログラムと、これに伴う現実的な努力でございます。われわれの最も遺憾とするところは、過般のソ連の原水爆実験の一方的停止の宣言以来、米英ソ三国の間に核爆発探知制度を含む協定によって、一切の核実験の停止を、核兵器全面禁止軍縮全般から切り離して、まずこれを実現し、これを契機として、軍縮国際緊張緩和並びに東西巨頭会談への大道を開こうとする方向がようやく固まり、七月初めからジュネーヴにおいて、この探知制度を中心とする専門家会議が開催されようとしているさなかに、それにもかかわらず、政府が依然として核実験禁止を、他の問題から切り離して、まず実現を要求する政策をここに明らかにし得なかったことは、そうしてその優柔不断と不誠意に対しては、われわれは断固としてこれを追及するものであります。しかもこの問題こそ、東西巨頭会談の成功の重要なかぎであり、ある意味では、日本こそが、強力かつ有効的に推進し得るところなのであります。よって、あらためて核実験禁止協定を、他の問題から切り離して成立させる点についての首相の熱意ある御答弁を期待いたしたいと存じます。  核兵器問題の第三の面は、日本及び沖縄に核兵器ミサイルを持ち込ませないことであります。この問題についての前国会における審議の経緯は、今さら多言を要しないところでございまして、要するに、法律的、条約的には、沖縄はむろんのことであるけれども、日本本土についても、アメリカによる持ち込みを断わる根拠がないのであります。従って、単に政府の政治的な見解の表明では、内外の不安と不信とを取り除き得ないから、われわれは、国会の意思を院議によって確定することを提案したわけであります。不幸にいたしまして、前国会におきましては、各派の御賛同を得ないまま、幕切れとなってしまったのであります。従いまして、さらに選挙期間中、わが党から自民党に対し、この趣旨を含んだ日本非核武装宣言を共同で行うことを提案いたしましたが、遂にこれまた拒否されたのであります。ついては、この際あらためて、一つには自民党総裁としての岸首相が、この趣旨国会の議決に賛成されるかいなか。二つには、このような国会の機能とは別に、首相として、何らかの形式において、アメリカ核兵器持ち込みを禁ずる趣旨の国際取りきめを行う御意向があるかないか、この際はっきりとお答え願いたいのであります。(拍手)  次に、日中関係につきましては、首相は、わが国の現在の立場において可能な最大限度貿易文化交流を促進し、漁業問題を解決したいという方針を述べ、国交未回復の現状のもとにおける相互の立場を理解し合うことの期待を表明されました。われわれは、この表現が少くとも前国会の未期から選挙中にかけて、もっぱら否定の面のみを強調した政府の言動に比べて一進歩であると、これを一応額面通り受け取るとして、今後の実行振りを見守りたいと思います。またわれわれは、ここにいたずらに、過去の政府の失敗を追及ないしはわれわれの正しい主張である人民共和国を唯一の中国として認めるべきことをあらためて論じようとは思いません。より現実の問題として、私は日中貿易の完全なる途絶漁業協定の効力を失なったこと、その他事実上文化交流もとだえがちである、この不幸な現状を打開することが、わが国経済至上命令であるばかりでなく、日中両国友好親善と互恵平等の経済の発達のために、両国にとってきわめて望ましいという認識に立って、以下質問を申し上げたいと存じます。  その第一は、基本精神の問題でありまするが、これは前に申し上げましたごとく、中国との友好親善を口、にすれば、ただちに承認問題に触れるから、これを避けると言わんばかりの態度を、日本政府側がまず一興することが必要でございます。言うまでもなく、中国においても、当面承認問題に触れず、しかし真に友好親善基礎に立つ限り、積み上げ方式に異存がないとわれわれは今日でも確信いたしております。従って、要は、日本政府側気持態度いかんに帰着すると思うが、この友好親善基本方針についての総理の明確な所信を承わりたいと存じます。  第二に、さしあたって必要なことは、すでに民間三団体と先方との間に締結した第四次貿易協定を完全に実施するための政府支持と協力を与えることであります。それがために、特に中国国旗に対する日本政府の三百代言的な態度を改める必要があります。国旗に対して尊敬を払うことは、これは常識の当然であって、これは国際慣例でもあります。そのことと国家ないしは政府承認とが直接関係のないことは、これは国際法上議論の余地がないのであります。いわんや新興国家の場合、国旗に対する考え方は、われわれの想像をはるかにこえる強烈なるものがあります。その気持を尊重するところに、初めて国際友好親善基礎が固まるのであって、国旗に対する損壊などを、未承認国の場合には毀棄損壊罪をもって処理しようなどという日本政府の交通巡査的な考え方を、まずもって清算することが肝要だと思うのであります。これは良識の問題であります。政府は、よろしく長崎事件について遺憾の意を表明するとともに、いかなる国の国旗に対しても、十分の尊重と保護を確保することが当然だという態度を、あらためて表明すべきであります。私は、この問題がきわめて機微なることを十分に承知しておりますが、もし総理において同感ならば、はっきりと肯定的な答弁を願いたい。しかし、特に御注意を促したいことは、不用意な言辞や不適当な答弁をなさるくらいならば、むしろ私は沈黙を希望いたします。(拍手)  次に、民間代表部の処遇の問題でありますが、これもまた承認問題とは何ら関係のない事項であって、要は相互に通商事務に必要な便益と保護を与え合うことでありますので、首相も、万御異存ないと信じまするが、そのような御答弁を期待いたしたいのであります。  このように考えて参りますると、第四次日中貿易協定を軌道に乗せ、これによって貿易漁業等の行き詰まりを打開することは、今日なお可能であり、わが党としても、政府出方いかんによっては、あえて協力を惜しむものではないし、中国側に対しても、−われわれはわれわれなりこ自主的な立場から大局を説く心がまえを持っていることを、ここに明らかにしておきたいと存じます。(拍手)要は政府が、首相の抽象的な見解の表明にとどまらず、すみやかに閣内、党内の意見を統一し、現状打開の手を打つのか、それとも一部の強硬論に押し流されたり、安易な楽観論たとえば中国の方が困るであろうというような、そういうような誤まれる論に傾いて、ここ数カ月の間無為にして静観の態度で送ろうとするのか、この点であります。政府がいずれの態度であるか、特に首相外相及び通産相から、はっきりとした御意見を伺いたいのであります。  なお、われわれ社会党といたしましては、前に述べたように、政府決意を促しつつ、しばらくその出方を見て行くものであるけれども、他面、日中経済危機打開国民運動の先頭に立って、世論の喚起に努める意向であることを、はっきり申し上げておきたいと存じます。(拍手)  次に、日中漁業問題でありまするが、われわれとしては、不幸にして民間協定が効力を失った後においても、中国側に対し、日本側業者協定を確実に守るための決意をしているから、さしあたり協定の範囲における漁撈を黙認してくれるよう要請した次第であります。しかし、協定の侵犯に対する制裁は、もはや業者にまかしておけない段階に至りましたので、この際、政府としては、適当な行政措置によって協定の履行が実質的に確保できるようにすべきと思うが、これまた首相並びに農林大臣見解を承知いたしたいのであります。  次に、財政経済問題に関して質問をいたします。われわれはさきの国会における三十三年度予算審議に当って、この予算基礎とされた三十三年度経済計画が、すべて輸出三十一億五千万ドル達成を中心として組み立てられたものであり、しかも、この輸出目標自体がきわめて安易な楽観の上に立った架空のものであることを指摘し、従って、この予算がその基盤から崩壊するであろうことを警告したのであります。しかるに今日では、本年度輸出目標三十一億五千万ドルの達成はもはや不可能であり、せいぜい二十八億ドル程度ではなかろうかという見通しになってしまいました。かくして本年度予算編成の最も重要な柱の一つはくずれ去り、三十三年度経済計画は、根本的に再検討の余儀なきに至りました。今や岸政権外交の失敗の結果、日本の商品は、中国においてはシャット・アウトされ、東に向えばアメリカからも突き返されておる。言うならば、往復ビンタでも食らわされたような情ないありさまになっておるのであります。  そこで、まずお伺いしたいことは、政府は本年度輸出目標三十一億五千万ドルを達成する確信を持っておられるかどうか。もし達成し得ると言うならば、その根拠を具体的に計数をもって明らかにされたいのであります。  日中貿易に関する外交措置につきましては、すでに質問いたしました通りでありまするが、かりに日中貿易途絶が相当長期にわたって続くとするならば、この面だけから見ましても、年間少くとも一億ドルの輸出の不足をいかにして他の面でカバーされるのであるか。その対策があるならば、これを明確にお示し願いたいのであります。また現在まで、貿易途絶のために受けた業者の損害は約三百五十億円に達すると算定されておりまするが、これらの損害の補償、なかんずく中小企業あるいは日中専業貿易業者等に対する補償ないし救済を、いかにしようと考えておられるか、この際伺っておきたいのであります。  さらに、東西貿易促進の機運が世界的に高まっているこの際、わが国は率先してココム制限の撤廃を提唱すべきと思うが、この点をいかにお考えであるか。一方、最近のアメリカにおける日本商品輸入圧迫の企図に対しては、政府は、真に重大な決意をもって画期的な外交措置を講ずべきと思うが、関係閣僚の派米その他の風説を含めて、いかなる具体策を用意しているか、お示しを願いたいのであります。なお、対米貿易に関する恒久方策としては、家内工業における極端な低賃金をただ一つの武器とする飢餓輸出麦るい出血受注、雑貨の投げ売り競争、こういう貿易並びに産業構造を改め、中小企業下請産業の特色を生かしつつも、逐次、高級雑貨精密工業機械類輸出増進に努めなければならないと思うのであるが、それにつけても最低賃金制の名に値する最低賃金法家内労働法等の制定によって、わが国経済構造社会秩序を近代化することが急務と信ずるが、政府所信を伺いたいのであります。  第二に、現在の不況打開対策についてであります。この点につきましても、輸出見通しと同様、前国会予算審議において、われわれは政府の見込みのように四−六月をもって不況が底をつき、漸次経済が上向きになるというような、安易な楽観は絶対に禁物であることを警告したのであります。今日、繊維、鉄鋼産業等を初めとする操業短縮はますます強化され、大資本に対するインフレ金融よそ目に、破産、倒産する中小企業や、窮乏化する農民は、デフレの犠牲となって打ちひしがれ、失業者は四月五十五万をこえるありさまであります。この大衆の購買力の減少の前に膨大な設備投資過剰設備として立ちはだかり、供給と有効需要とのアンバランスはますます深刻化の様相を示しております。加えて中共貿易途絶、さらに凍霜害、日干害その他の災害の発生を見るに至って、不況対策はまさに一刻もゆるがせにできない緊急な課題となったのであります。そこで、不況対策の根本は何であるべきかと言えば、まずもって、前に申しましたように、三十三年度予算基礎がすべて崩壊したのであるから、政府はこの際、いさぎよくその見通しの立て直しを断行するとともに、補正予算を提出するのが当然でなければならないと考えるのでありますが、まず政府財政経済見通し補正予算に対する見解を伺いたいのであります。(拍手)  次に、現下の不況対策の根本は、輸出振興策と並行いたしまして、従来の大企業本位緊急政策を改めるとともに、国内の需要の抑制ではなしに、勤労大衆購買力を増強し、過剰生産に基因する需給のアンバランスを回復することに重点が置かれなければならないと信じます。この意味から、さしあたって経済基盤強化の名目でたな上げされる四百三十六億円の資金資金運用部に預託し、大産業向けに運用する方式は取りやめ、これを直接、失業対策中小企業農林漁業の諸対策に充当し、景気を振興する方針に切りかえるべきと思うが、果して政府がこれを断行する決意があるかどうかを伺いたいのであります。  さらに具体的には、次に申し上げるような緊急諸対策を講ずる必要があると思うが、首相並びに関係閣僚の所見をそれぞれ承知いたしたいのであります。  第一は、失業対策事業の拡大でありまするが、吸収人員を三十五万人に増員し、就労日数を二十五日まで確保し、失業保険金給付期間を三カ月ないし六カ月延長すること、第二、国の責任において、雇用拡大のため、公共事業費の繰り上げ支出、特に雇用度の高い事業、たとえば土地改良、灌漑、漁港、港湾工事、道路及び住宅建設に重点を置くこと、第三、糸価の安定、凍霜害補償、麦価の減収加算措置を講ずること、第四、零細企業農林漁業に対する融資を増額し、金利の引下げ、利子補給損失補償債務保証を実施すること、第五に、公務員の夏期手当を〇・二五カ月分追加支給すること、以上についてのお答えを願いたいのであります。  最後に質問いたしたいのは、選挙公約の実施と、これを含んだところの明年度予算編成方針についてであります。自民党幹部は、選挙に当って、七百億円の減税と、他方、明年度からの無醵出老令年金の実施、さらに明後年には国民健康保険の完全実施を国民に公約しました。岸内閣が、三十三年度予算において、われわれの反対にかかわらず、社会保障に対し何らの熱意を示さなかったにもかかわりませず、選挙を前にして、木に竹を継いだように唱えたこれらの社会保障の充実のスローガンであるがゆえに、その真実性に対して、われわれは多大の疑問を抱いたのは当然と言わなければなりません。(拍手)いずれにいたしましても、今日、国民は、自民党選挙公約なるものが、例のごとくから手形であるのか、それとも実現の運びに至るものであるかを注目して見守っておるのであります。まず、減税でありまするが、その財源であるところの税収の自然増は、もはや今日期待できないのみならず、現下の不況のもとにおいて、税収の主軸である法人税は、自然増どころか、かえって見積りにも達しない、税務署はやっきとなって、ほこ先を中小企業に向けておるありさまであります。従って、ここに伺いたいことは、政府は、果して明年度七百億円と言われる減税の公約を実行する確信と誠意を持っておられるのかどうか。もし持っておられると言うならば、その確信の根拠、特に、今年度の税収の見込みをいかに算定しておられるかを明らかにされたいのであります。具体的には、標準世帯月収二万五二円までの無税、個人事業税は所得二十万円以下は免税、これは必ず実行するものであるかどうか、その場合、例のように、間接税の増徴というようなごまかしの奥の手を使うものでないかどうか、この点も明確にお答えを願いたいのであります。(拍手)  次に、国民年金と国民皆保険の実施について伺いたいのであります。国民年金は、まず無醵出老令年金一万二千円という、全く老令年金の名に値しない内容のごとくでありまするが、しからば無醵出の母子年金、障害年金はどう計画されておるのか、さらに、醵出制の年金をどう考えておられるのか、その全貌を、大綱なりともこの際お示し願いたいのであります。  国民健康保険につきましては、明後年度完全実施というような、鬼が笑う公約ならばいざ知らず、少くともまじめな計画ならば、明年度における計画の概要を明示すべきであると思うけれども、明年度、明後年度にわたって、各被保険者の数何名を目標とするか、国の負担割合をいかにするか等の財政的、基礎的計数を教えていただきたいのであります。  私は、以上をもちまして一応質問を終りたいと存じまするが、どうか首相並びに各閣僚は、率直かつ明快にお答え願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  5. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  曾祢君は、私の所信表明を最初に言っていることと、最後に言っていることとの間に、何か矛盾があるようにお話しでありますが、私は絶対に矛盾はないと思います。大体、言うまでもないことでありますが、お互いに民主政治民主主義というものを完成して行く上におきましては、やはり社会の秩序と法律というものを守るということが前提要件でなければならぬ。もしも、われわれが民主的に作り上げたところの法律が社会の状態に合わないとか、あるいは適当でないという場合においては、これを民主的にわれわれは国会を通じて修正、改正して行くという方法が明らかにあるわけでありますから、その前提であるところの法や社会の秩序を守らないで、これを一つの実力で押しつぶそうとする動きというものは、何といっても、その思想的背景のいかんを問わず、それは民主主義の敵であり、民主主義をこわすものである、こういうことをお互いに十分に理解し合って、そこに初めてわれわれの民主政治、平和な社会というものが成り立つという考えのもとに、そういう間違った行動に対しては、やはり国政を運営し、民主主義を守るという意味から、これに対して適当な取締りを加えるべきことは、これは私は当然であると思います。決して曾祢君の言われるように、何かそれが反動的な、弾圧的な、あるいは権力的なというような言葉で、これを非難すべき性質のものではないと思います。そういう意味におきまして、よく私の申し上げたことを翫味いただくならば、最初と終りとの間に決して矛盾がないのであります。(拍手)  労働問題及び勤務評定その他文教政策等に、何か弾圧的なものがあるじゃないかというお考えでありますが、決してそういうことを私どもは考えておりません。今申しました根本の、民主主義の前提であるところのものの上に立って考えてみるとき、勤務評定にいたしましても、これは公正な人事管理の上から言って、勤務評定がされるということは私は当然であると思う。ただもちろん、今お話がありましたように、勤務評定の内容としての事項が、果して実際に適しているか、あるいは適当であるかどうかという問題に関しましては、これは私は建設的な立場から十分検討もしなければならぬ、人間が作るのでありますから、最初から万全であるということは言えないのであります。しかしながら、勤務評定そのものに反対するという考え方というものは、私はとらないのであります。(拍手)  なお、全逓の運動、争議に対しまして、いろいろな刑罰、刑法その他事業法等を適用すること、郵便法等を適用することは適当でないじゃないかというお話であり、郵便法制定のときのお話がありましたが、これは御承知の通り郵便法制定された当時と、その後におきまして、全逓の職員が、立場、地位が変っております。従いまして、その行為が公労法に一面において違反し、あるいは一面において、事業法にかわる郵便法に抵触するという場合におきましては、法の解釈として、これの適用がないのだという解釈は間違っておる。これは前国会におきましても、その点を明らかに法律解釈は申し上げております。それからもちろん言うまでもなく、労働運動の正しいあり方というもの、すなわち労働者が団結してその生活権を確保し、また、その労働条件を改善して生活を向上して行くという、この正しい労働運動の目的なり、あるいは労使間のよき慣行を作り上げるということにつきましては、これは弾圧すべきものでないことは言うを待たないのでありまして、従来とも、そういう方針政府はずっと一貫しておることも、これは御承知の通りであります。ただ、その行き過ぎなり、今申し上げました根本的の前提を破るという場合におきましては、これは当然民主主義を守る意味から、われわれとしては法の命ずるところによって取り締る、こういうことであります。(拍手)  次に、国際問題に関しまして、国際緊張緩和の問題に関連してのいろいろな御質問でありましたが、私やあるいは外相の訪米するというようなことが新聞等にちらほらいたしておりますが、私どもは、まだそれを具体的に決定はいたしておりません。そういうようなことが一部で言われておるというだけでございまして、従いまして、今日私どもが訪米する意図をきめておるわけでないということであります。従って、そういうことについていろいろな御質問の点は、前提がそうでありますから、お答えするまでもないと思います。  また、日韓あるいは台湾等との関係から、軍事同盟や、あるいは反共連盤というものに参加する考えはないかという御質問でありますが、そういう考えは一切持っておりません。明確に申し上げておきます。  核実験禁止の問題でございますが、これはそのことについて、そのことが軍縮やその他の問題と切り離されて、そういう国際協定ができることに対して、どう思うかということでありますが、私は非常に望ましいことであり、一日も早くそういう国際協定ができることを望んでおります。また、日本に対する核兵器の問題につきましては、しばしば私が明確に申し上げておりますように、自衛隊核兵器をもって武装する意思はない。また、核兵器持ち込みは、これを認めないということを明確に申し上げておりますが、その考えは将来といえども変らないということを申し上げておきます。また、そのことに関して、持ち込み禁止について、日本アメリカというような、何か国の間に国際協定を作ったらどうかというお考えでありますが、私は今のところ、そういう必要は認めておりません。  それから次に、日中関係の問題でありますが、曾祢君の御意見のように、現在の状態は非常に日中両国にとって不幸な状態であり、望ましくない状態である。これが改善されることを私も称君と同様に望んでおります。しかし、この問題に関しては、私の所信表明のうちにも明瞭にいたしておりますように、今日、両国は、まだ国交が正式に回復されておらない、その状態において、われわれは文化交流もし、あるいはまた貿易関係も増進していって、友好親善を進めて行こう、こういう立場にあることを、お互いに冷静に十分に理解し合っていくということにおいて、私はこの問題が打開される道ができると思います。国旗問題その他についてのお話がありましたが、これは非常なデリケートな問題であり、また、こういう問題についていろいろ仮定的な事例をあげて、それに対する法律の解釈だとか何とかということをすることが、非常な誤解の意味も作っておるように思います。私は、従いまして、今申しました根本的の私の考えで、御了承を願いたいと思います。  それから貿易関係は、そういう意味におきまして、中共との間における今までの行き詰まりが打開されて、これが文化交流やその他の問題とともに開けて行くことを私が望むということで申し上げたのでありますが、これに関連して、国内における中共側との貿易に専業しておった中小貿易商等、あるいは中小企業等が、相当な損害を受けているじゃないか、これに対する救済はどうするかという問題でありますが、今申しましたように、私としては、この問題が、両国の先ほど言ったような考え方に基いて打開されて、そういう状態が改善されるということを前提として今日の状況においては考えることが適当であろうと、こう思っております。  それから貿易全体の問題につきまして今日、日本の置かれている国際情勢から見て、貿易前途が必ずしも楽観を許さないということは、その通りであります。しかし、われわれが三十三年度の目標としておる三十一億五千万ドルの輸出というこの目標を、今直ちに改めなければならぬ、それは不可能であると、こう論断することは、私はまだ早いと思います。決して私ども楽観をして、これが必ずできるというふうな安易なことを考えているわけではございませんけれども、まだ年度が始まりまして第一四半期が終ったばかりでありますから、今後、貿易振興に関する積極的な各種の方策を立てることによって、ぜひともその目的を達成するようにいたしたいと思います。たとえば、この貿易振興の問題につきまして、われわれは特に東南アジア方面に対する貿易の振興ということを重点に考えておりますが、それにつきましては、従来行なっておるところの延べ払いの方式というようなものを、さらに拡張することによって、この貿易を増大する道も私は具体的に考えて行きたい、こういうふうに考えておりますが、いずれにしても、この目標は、日本経済上から非常に重要な問題でありますから、私どもとしては、ぜひ三十一億五千万ドルを達成するように、今後とも格段の努力をいたすつもりでおります。  さらに、対米貿易の問題及びココムの禁止の問題についての御質問でございましたが、ココムの問題につきましては、いわゆるチンコムの制限については、これを一般東欧の共産国に対する並みに改めたことは御承知の通りでありますが、さらにこれを根本的に、一切の共産国に対する制限をなくするかどうかという問題に関しましては、今ココムの品目に上っておるものが、いわゆる戦略物資と称せられているところのものでありまして、これの検討は、ハリにおいて、委員会においてやっております。われわれとしては、なるべくこれが広がることの方向努力をすべきものであると、かように考えております。  対米貿易の問題は、アメリカ日本商品に対していろいろな輸入制限や、制限的な措置や、あるいは関税の障壁を高めるというようなことは、はなはだ私は遺憾な状態であると思います。これに対してアメリカ側の反省を求めることはもちろん、また、これに対して日本側として措置すべきものは、個々具体的に措置しながら、これが打開をはかって行く必要があると考えております。また、今お話がありましたように、対米輸出の品物をだんだん高度化して行く必要があるじゃないかというようなお考えは、私も同感であります。  最低賃金法につきましては、私ども先国会にもこれを提案いたしたのでありますが、不幸にして議決を得るに至っておりませんが、私どもは、あの提出した最低賃金法案が、最も日本の事情に適しておる、適当なものであると考えまして、一日も早くこれが成立を望んでおるわけであります。  最後に、不況対策についてのお話でありますが、昨年来とって参りました総合緊急対策の大きな目的であった国際収支の関係は非常に改善されておりますが、国内における過度の設備投資の行き過ぎ等に対する整理や、あるいは制限等の措置は、私どもが最初考えておったより多少おくれておる状況でございます。しかし、その基調なり、あるいは大筋というものは私は間違っておらない。従って、今お話がありましたが、経済計画をすべて根本的に再検討して、これを変えなければならぬというような事態では私はないと思います。  それから、補正予算の問題でありますが、すでに三十三年度予算を編成する場合におきまして、この総合緊急対策に伴うところの整理自体における失業者のふえること、またこれが中小企業や農林水産業に及ぼす影響等も考慮いたしまして、これに対する対策については、一応、三十三年度の予算にこれが盛り込まれておることは御承知の通りであります。従いまして、今日、今すぐに補正予算を出して、これに対処するという必要は私は認めておりません。それから、将来必要があれば、そういうことをすることは当然でありますけれども、現在のところはその必要はない。さらに最後に、公務員の給与の夏期手当について〇・二五を引き上げるという問題については、私どもは法律の規定通り〇・七五を支給することにして、すでに支給をいたしております。(「減税問題の答弁がない」と呼ぶ者あり)  減税及び社会保障の問題につきましては、私がこの施政所信において申し述べましたように、両方とも、これを必ず万難を排して実行するという私は考えであります。なお、具体的の数字等につきましては関係大臣からお答えいたします。(拍手)   〔国務大臣愛知揆一君登壇、拍手
  6. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 全逓労組の問題につきましては、総理大臣からお答えを申し上げた通りであります。  公労法の第十七条によりまして、今回の職場離脱というものは禁止されておる違法な行為でございます。従って、その行為郵便法第七十九条その他の刑事罰に触れる限りは、処罰を免れないものでございます。従って、法に照らしまして捜査を進めるに至ったものでございまして、正当な労働運動に介入して、これを刑事罰をもって規制するというような意図は持っておりません。(拍手)  次に、検察官におきましては、本件の事案の規模や罪質や捜査の範囲等の事情を考慮いたしまして、被疑者の身柄を拘束して取調べを行わなければ罪証を隠滅されるものと考えまして、勾留請求の措置をとったのでございます。裁判所はこれと見解を異にしておるのでございまするが、検察官の捜査の主宰者といたしまして、本件捜査の責務にかんがみまして、法に定めるところによって不服申し立ての手続をとったのでございます。決してそれ以外特別の意図を持っておるものではございません。かくのごとき検察側の捜査の手続上の措置を、ファッショ的な行動と断ずるわけには参らないのでございます。(拍手)   〔国務大臣寺尾豊君登壇、拍手
  7. 寺尾豊

    国務大臣(寺尾豊君) 曾祢議員から私への御質問は、総理並びに法務大臣から詳細御説明いたしましたから、私はその分を避けまして、この事件が一般の破廉恥罪と異なり、いわゆる公安事件として微妙なものでありますので、検察、警察側に十分の事情を説明いたしまして、捜査に当りましては、監察官は郵政業務に関する専門的な分野における物的資料の収集、保全の面において協力をいたしました。強制捜査、すなわち家宅捜査、被疑者の逮捕取調べのような捜査は、独自の立場におきまして検察、警察両当局がやっておることを御了承願います。(拍手)   〔国務大臣永野護君登壇、拍手
  8. 永野護

    国務大臣(永野護君) 曾祢議員の御質問に対して、私の関係しておりまする部門についてのお答えをいたします。  鉄道営業法運営に関する御質問でございまするが、これに関しましては、すでに総理大臣及び法務大臣から一般的のお答えはあったのでございまするが、特に鉄道に関しまする限り、私の所信を申し上げます。  この鉄道営業法は、御承知の通り、純然たる商事法規でございまして、いわゆる労働法規ではないのでございますから、その運営はあくまでも、その商事法規の本質の範囲内にとどめる所信でございます。  次に、港湾工事のような公共事業費を少し増して、この不景気対策に加えたらどうであるかというような御意見もごさ、ましたか、この点は全く御同感でございまして、昨年度に比べまして、すでに御協賛も得ました予算で十二億円の増額になっておりますけれども、なおこの上、経済基盤強化資金運営等の実施に当りましては、御期待に沿うように努力をして参るつもりでございます。それだけでございます。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇、拍手
  9. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 私が文部大臣に就任いたしましたことにつきまして、何か教職員組合に対して政治的攻勢をかける、あるいは弾圧をするとかいうような使命を持っておるかのごとき御発言でございましたが、さような意図は毛頭ございません。ただ、私といたしましては、教職員組合がいわゆる職員団体として、しかもまた学校の先生という、そういう身分を持った人の職員団体として、もっと品格のある、また誇りのある行動をやってもらいたい。(拍手)同時にまた、法令で定められておりますところの教職員組合の性格から逸脱しないような、正常な行動をやってもらいたい、このことを念願するものであります。今回の勤務評定の問題につきましては、問題はきわめて単純な事柄であります。学校の教職員の人事を適正にやって参りますために、勤務評定が必要であるということは申すまでもございません。同時にまた、このことは法令で定められておることであります。この法令の規定に基いて、地方の教育委員会がその実施をはかろうといたしておるのであります。これは決して押しつけとか、天下りとかいう性質のものではございません。問題は、この法令の施行に当りまして、各方面の意見を聞くということは、これは当然のことであります。教職員の諸君の意見にいたしましても、もちろん建設的な意見については、これを聞くにやぶさかであってはならぬと思います。しかしながら、今日の状況を見ておりますというと、教職員組合といたしまして、この法の施行を頭から拒否をする、かような態度でいろいろ行動しておられるような事実が少くない、まことに遺憾千万に存じておる次第であります。われわれといたしましては、あくまでも、この法令の施行ということについては、教職員の方々の御協力を得たいと思っております。ぜひ協力していただきまして、りっぱな勤務評定実施するようにいたしたいと考えておる次第であります。これに反対するの余りに——反対の意見もけっこうであります。筋道の立った反対なら何も差しつかえございません。けっこうでありますけれども、この反対の余りに、法規に違反し、教職員組合として、その性格から逸脱した行為をするということは、どう考えましても容認するわけには参らないのであります。このために、まじめな現場の先生には、非常に苦しんでおられる方が多いと思います。同時に、また、世間の父兄の方々も、かような事態に対しまして、深い憤りを感じている人も少くないのであります。  願わくは、ただいまのごとき教職員組合の諸君の行動は、まじめな先生を苦しめ、また、世の親御さん方の憤りを買い、日本の教育のために百害あって一利ないと考える。私どもは教職員諸君とともどもに、日本の教育をもっとよくしたいと考え、この念願のもとに行政に当って参りたいと考えておりますので、さよう御了承願いたいと思います。(担手)   〔国務大臣倉石忠雄君登壇、拍手
  10. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 政府労働政策はどういうことかということでございますが、一口に申し上げますならば、自由民主党の労働政策の壁頭にうたっておりますように、われわれの基本的理念は、福祉国家の建設ということでありますから、そういう方向の線に沿って、勤労者の幸福をはかりながら産業平和を維持して行きたい、これが労働政策基本的理念であります。  そこで、全逓の従業員の問題についてお話がありましたが、すでに各大臣から御説明がございましたが、労働省側から申し上げられることは、保護を受ける労働運動は、法律に定めてあるように、正当なる労働運動ということでありまして、正当ならざるものは、当然、法の保護を受けないということは、これは常識であります。  第二の点は、仲裁裁定について何か後退したのではないかというお話でありますが、一昨年、私が労働大臣の当時に、公共企業体等労働関係法の改正をいたしました。そのときに、仲裁裁定というものが出たならば、これはあとう限り移流用をやって、これが実現できるようにという努力義務をわざわざつけ加えた法案を出したのは、私自身であります。その私が後退するはずはないのでありますが、そこで、その仲裁裁定が下った場合に、何か新聞の記事のことについてお気づきになったのかろうと思いますが、仲裁裁定というものが下りましたときには、これは最終的に決定する者はだれであるかと言えば、国会であるというのが、この法の建前であります。従って、政府尊重して法の命ずるところによって、国会の最終的御意思によって決定されるということであって、その国会が意思決定をなさるために、政府がこれを、ともにその実施をいたすことに協力をするということは当然なことでありまして、岸総理大臣、石田前労働大臣が、しばしば声明されましたときと、少しも政治的な考え方において変っておらないのであります。  第二の、ILO条約の八十七号につきましては、これは私の考え方は、先般、公共企業体等労働関係、公共企業体についての審議会を政府が設けまして、これによる答申が出ております。時間がありませんでしたから、第一次岸内閣においては、この答申について、まだ態度が決定しておらないようでありますが、もし、これが何らかの形で行われるということになれば、それに伴う公労法というものは、当然大幅な改正を要するわけであります。法律というものは、朝令暮改すべきではないのでありまして、そういうような大幅な改正が行われるようなときには、四条三項についても、われわれは、当然いろいろな議論が出るでありましょうし、また、この条約の批准というものは、曾祢さんもすでによく御存じのように、国会の御意思の決定を必要とするのでありますから、その国会の御意思、すなわち多数党である自由民主党のそういう方々の御意見が、十分これを批准するという機運になったときでなければ、政府と与党との考え方が違っておるときに、批准を要求しても、何も意味がないのでありますから、そういう意味で、私はそういうことを説明いたしたのであります。  第三にお尋ねのありましたのは、いわゆる労働三法の改正についてであります。いわゆる労働三法というものにつきましては、私どもの考えは、御承知のように、自由民主党内にあります労働問題特別調査会というところでは、七、八カ月前から熱心に、こういうことについて検討を続行しておるのでありまして、その結論はいつ出るか私にはわかりませんが、そういう結論が出た場合には、あるいはこれは党として世論に問うような場合もありましょうし、研究を続けておられるのでありますから、その結果、どういうことになるかということは、そのときの情勢に応じて考えられることでありまして、今直ちに、こういう法律について改正の手をつけるというようなことについては、ただい事決定いたしておりません。  それから、失業、雇用の問題についてでありますが、この点につきましては、私どもも心配いたしておる一人でございますが、御承知のように、先々月と先月の情勢は、大体、失業状況というものは横ばいでございます。そういうような状況に応じて、ただいま国際収支改善に伴う財政経済政策総理大臣から御説明がございました。ああいう状況下における失業をどうするかということは、やはり三十三年度予算においては、御承知のように、昨年よりも吸収人員を二万五千人もふやしておりますし、あるいは財政投融資等による公共事業の増強などということで、曾祢さんのお話の中にも、そういうことを期待いたしておられるところがございましたが、私どもも、そういうことによって、今出ております失業問題については対処して行くつもりでありますが、この問題については、政府はさらに努力を継続して参りたいと思っております。どうぞ御協力一つお願いいたします。(拍手)   〔国務大臣青木正君登壇、拍手
  11. 青木正

    国務大臣(青木正君) 勤務評定反対運動に対する警察の取締りの問題につきまして、御答弁申し上げます。  申し上げるまでもなく、勤務評定は、教育委員会その他学校管理当局責任でありまして、警察側は介入すべきものでないことは申し上げるまでもありません。ただ、しかし、その反対闘争が地方公務員法第三十七条の違反等の疑いがある場合は、警察当局として、これを取り調べることはやむを得ないと思います。また、むしろそうする責任があると考えております。その場合に取調べの必要上、学校に出入することも、これは必然的に起ってくる問題であかます。ただ、警察当局といたしましては、原則といたしまして、日曜、土曜以外は学校に行かないようにいたしておるのであります。ただ、相手方の都合によりまして、また希望によりまして、場合によってはそれ以外に参ることもあるのであります。しかしその場合も授業に支障のないように十分注意すべきことは当然でありまして、そのことが学校の児童等に心理的な影響を与えることにつきましては、警察当局も十分注意せなければなりませんし、また、そういうことのあることは極力私どもも注意いたすように、今後も十分指示いたすつもりであります。(拍手)   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍   手〕
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 私の渡米の問題に関する御質問があったわけでありますが、先ほど総理がお答えになりましたように、まだ渡米を決定はいたしておりません。ただ、日本の外務大臣といたしまして、各国の外務大臣その他と常時いろいろな話し合いを気軽にいたしますことは、日本外交展開上非常に必要なことだと思います。特にアメリカとの関係は、われわれ友好親善関係を樹立して参りたいと思っておりますので、従ってアメリカ側に対しまして、占領後今日までの情勢のいろいろな変化によって、日米関係基本的にいろいろ調整して行かなければならぬ問題もあるわけであります。日本側の立場を率直に言い、またアメリカ側も日本側の立場を率直に聞き、反省してもらう必要もある点があろうと思うのであります。ことに先ほど御指摘になりましたような対米貿易の問題等につきましても、わが国中小商工業者立場を、もっと明確にアメリカ側に理解してもらいますことは非常に必要なことであります。そういう見地に立ちまして、私は適当な機会を得られますれば、アメリカに参りまして、十分、将来両国関係基礎になるような問題について、いろいろ話し合いをいたして参りたい、こう存じております。  また、核実験禁止の問題につきましては、昨年、国連総会に提案しました以後、今日世界の情勢がいろいろ変化をいたしております。従いまして、それらの情勢にも対応しながら、新たな構想をもちまして、国連総会等に提案をいたしたいと、鋭意ただいま研究をいたしておるのであります。  日中貿易の問題につきましては、われわれは日中貿易拡大と振興ということを、岸第一次内閣以来支持協力いたしておりますので、そういう問題が達成せられるように、現在、静観をいたすのが適当だと思います。(拍手)   〔国務大臣高碕建之助君登壇、拍   手〕
  13. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 日中貿易関係につきまして、昨年一月から十二月までの輸出数量は六千万ドルに達しております。で、本年におきましても、四月、五月におきましては、大体二千万ドルを超過いたしておるような状態でありまして、わが国経済関係におきましても、きわめて重要なるアイテムと存じますから、できるだけ早く、この両国関係を正常化されるように希望する次第であります。  それから対米貿易の問題につきましては、今日アメリカで問題となっております問題は、主として日本の中小工業の製品がアメリカの市場に出ておるわけであります。それがちょうどアメリカにおきましても、アメリカの中小工業がやっておるのと同一の品種でありまして、先ほど曾称議員が指摘されたごとく、従前、日本の中小工業の製品がダンピングに近い、労働賃金の安いということをモットーにいたしておったのでありますが、これをだんだん改良いたしまして、技術の向上と商品高度化をはかりまして、同時に不当競争を防止するというような方法を講じますと同時に、できるだけ経済外交を推進するために、先方の当業者日本の当業者がよく折衝し合うという機会を作るように、政府は指導して行きたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣三浦一雄君登壇、拍手
  14. 三浦一雄

    国務大臣(三浦一雄君) 曾祢君のお尋ねに対しまして、第一は日中の漁業協定に関しますることであります。この日中の民間側で提起されました漁業協定尊重と、この格守につきましては、日中漁業議会が中心になって自主的にとり行なって参りました。しかしながら、この協議会が忠実にやって参りまして、特にきびしい制約のもとにやって参りました。制裁委員会等を設けまして、そうして適切な措置を講じて参ったのでございますが、その統制を政府側としましても支持し、保護し、援助するために、水産庁等におきましては監視船等を派遣いたしまして、そうして今日まで何らの支障なくとり行なって参ったのでございます。不幸にして協定が今日で切れて参ったのでございますが、従来、日中漁業協議会等がやり来りましたこの実績に徴しまして、今後ともこの方針をとり行うことにいたしたいと考えておるわけであります。  第二番は、不況打開対策につきまして、特に緊急施設として、農林漁業に対する融資の拡大、金利の引き下げ等の御提唱がありましたが、御承知の通り、本年度の農林予算等につきましては、すでに協賛をいただきました通り、相当増額いたしておりまして、これから実施期に入るわけであります。これから実施されることになりますから、これは雇用の上におきましても役立つべきことは申すまでもございません。さらに融資の点につきましては、農林漁業金融公庫等の融資も拡大いたしておりますし、自作農創設資金等も相当の増額をいたしております。かようなことでございますから、これも役立つべきことは申すまでもありませんし、同時に、金利等の引き下げにつきましては、経済基盤強化に関しまする資金が運用されますると、主として金利低減の方途にこれを充てたい考えでございます。  なお、不況対策といたしまして、特に御指摘になりました点につきまして申し上げたいと存じます。第一は蚕糸対策でございますが、皆様御承知の通り、昨年の秋の夏秋蚕の増収と、本年春先の豊況に伴いまして、相当繭の増産が拡大して参りました。他面、糸の需要面は、近年まれな低調なことになったので、むしろ糸の過剰を生み、同時にまた繭糸価の対策が必要と相なったのでございますが、繭の対策につきましては、すでに千四百円程度の繭価は維持して行きたいと、こういうことを言うておるのでございますから、これが実効を期し得まするように、ただいま具体的な法案を準備中でございまして、近く皆様の御協賛を仰ぐ関係でございます。  第二番の凍霜害につきましては、すでにこれは霜雪害対策実施要領を前内閣でとりきめまして、所得税の減免措置、さらに農業災害補償法の適用等をいたしまするほか、天災融資法に基く営農資金の供給、肥料、農薬等に対しまする助成等の措置を現に講じて参りました。すでに所期の目的を達しておるような次第でございます。  なお、繭の減収加算についてのお尋ねでございますが、この点は農業保険、その他災害対策等と関連を持ちますので、これらの観点から十分検討をいたさなければなりません、かつ、繭の減収を基礎づける資料等もまだ整備しておりませんので、現に検討中でございまして、善処いたしたいと考える次第でございます。(拍手)   〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手
  15. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私に対する御質問は、本年度の輸出目標である三十一億五千万ドルの達成が可能かというお話であります。曾祢君御承知のように、アメリカやヨーロッパの景気の低迷、あるいはわが国輸出市場である東南アジアの外貨不足、あるいは輸出価格の低落等によって、なかなか輸出が所期の予定通りの数字に達しないことは御指摘の通りであります。けれども、まだ年次計画は出発以来二、三カ月でございますから、あの三十一億五千万ドルを目標とする輸出振興策に対しては、あらゆる手を打ちたい。民間協力も得て、できるだけ困難ではあるけれども、目的の数字に近づけたい。これが現在の考え方でございます。(拍手)    〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手
  16. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたしますが、盛りだくさんのお尋ねでございましたが、総理大臣を初め、関係各大臣からそれぞれすでに御答弁がありましたので、残っております特に税に関する問題についてお答えをいたしたいと思います。  御承知のように、前回の選挙を通じまして、わが自由民主党は公約事項をうたっておるのでございますが、政府といたしましても、与党である自民党公約事項は、忠実にこれが実施をする考え方で準備を進めておるのでありまして、すでに昨日の閣議におきましても、税制調査会を設けて、中央税並びに地方税、これを一緒にいたしまして、総合的な税制の改革調査をいたす考え方でございます。その際におきまして、特に標準家族についての給与所得月収二万五千円までを非課税にすることであるとか、あるいは個人事業税について二十万円まで免税とする点につきまして、税制改正全般の中の重要な一環として、ぜひ実現するよう努力いたしたいと考えておるのでございます。  なお、税制改正に関しまして、特に間接税の増徴等について御心配があるやの御意見でございましたが、税制改正は、各般の事情をにらみ合せ、全体としてバランスのとれた、一そう公平な税制を実現することを目途とすることは当然でございます。特に間接税を増徴するというように、あらかじめ予定した態度で来年度の税制改正に臨むようなことは考えていない。この点を明確にいたしまして、お答えといたします。(拍手)   〔国務大臣遠藤三郎君登壇、拍手
  17. 遠藤三郎

    国務大臣(遠藤三郎君) 道路、河川等の公共事業失業対策の問題についてのお尋ねでございましたが、御承知のように、昭和三十三年度の予算におきまして、特別失業対策費二十四億円、さらに臨時就労対策費として七十四億円の予算を計上してございます。この三十三年度の予算を急速、施行して参りますれば、御趣旨に相当沿い得ると思うのでございます。従いまして、急速にこの予算の施行をして参りまして、失業対策に遺憾なきを期したいと存じます。(拍手)   〔国務大臣橋本龍伍君登壇、拍手
  18. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 国民年金の問題に関しましては、先に内閣から社会保障制度審議会に諮問をいたしておったのでありますが、それが審議会から先般答申がございまして、私も総理とともに委員長の報告を承わりまして、この報告の線に沿いまして、なるべくこれを完全に実施するようにいたして参りたいと考えております。で、委員長の御報告でも、一応、財政計画の標準を示しましたけれども、これはいろいろ弾力性のある問題なので、なお検討してほしいということでありました。御承知のように、厚生省の中で五人の国民年金委員を設けておりまするので、この社会保障制度審議会の答申を国民年金委員の手によって、さらに検討いたしまして、八月くらいまでの間に具体計画を立てたいと考えておる次第であります。  基本的な問題に関しましては、答申の趣旨にもありまするように、現在の各種の年金制度の適用を受けておりません被用者、あるいはまた自営業者、農民等を対象にいたしまして、醵出制度を原則とする年金制度、それに無醵出を併用して実施をいたすつもりでございます。  なお、曾祢議員から、一万二千円では国民年金の名に値しないという御意見がございましたけれども、この点も、都会で暮しておりますると、そういう感もいたしまするが、農家の家庭などで、老人が月千円、年に一万二千円の手当を持つということは、これは非常にやはり家庭内における地位の改善という点におきましても、意味があると考えておりまするので、国民年金の名に値しないと考えておりません。むしろ、なるべく早く実施をすることが必要だと考えておるのであります。で、社会党が御提案になりました法律におきましても、竹中議員に伺いましたところだと、この年額八万四千円というのは、約二十五年くらいかかるとのことでありまして、当座、御実施になりまするものは、所得や年令によって違いまするが、一番安いのは年額六千円、それから一万二千円、二万四千円ということでありました。六千円でも一万二千円でも、十分、国民年金の名に値するものであるというお考えのようであります。私どもも、そう考えておりまするので、どうか、そういうような趣旨に従って、実施についての御協力をお願いいたしたいと思います。(拍手)  なお、国民健康保険の問題に関しましては、国民健康保険の普及四カ年計画を立てておりまして、昭和三十三年度におきましては、約四百十万人被保険者を増加いたしまして、年度末に三千八百四十万人といたし、また、自後は毎年五百四十万人ずつ増加をいたしまして、三十四年度末には四千三百八十万人、三十五年度末には四千九百二十万人に達する予定であります。その際、被用者保険の被保険者が四千二百八十万人でございまするので、これで国民皆保険を達成する計画であります。  財政面の問題につきましては、医療費の国庫負担二割、さらにこの十月から調整交付金を五分つけまして、事務費につきましても、合理化をはかりながら、全額国庫負担をやって参るつもりであります。  財政計画の問題につきましては、十分これの実現をはかって参るつもりであります。それよりも、むしろ国民皆保険の実施につきましては、やりやすいところは、むしろ今までの間に相当実施をいたしておりまして、残っておりまするところは、あるいはこの保険税の徴収でありますとか、あるいはまた医師会との関係等で、なかなか骨が折れるわけでありますから、財政面の処理も十分できると思いまするが、それよりも、ほんとうに熱をもって実施についての助成と言いますか、助力というものをする必要があると考えておるのでございます。その面については、われわれもきわめて責任が重大であると考えておりまするので、この上とも実施についての御協力をお願いする次第でございます。(拍手)   〔政府委員淺井清君登壇、拍手
  19. 淺井清

    政府委員(淺井清君) 期末手当の問題について、お答えを申し上げます。  公務員の給与が改善せられることは、まことにけっこうだと考えておりまするが、人事院といたしましては、この種の手当は、常に民間における同種の手当と均衡を保たせる方針でございます。もし不均衡と認められますれば、増額の勧告をいたして参っておるのでございます。そのために、毎年、大規模の民間の給与調査をいたしております。ところが、今年度の給与調査がまだ結論に達しておりませんために、今日の時点におきましてこれを増額するという結論は出しておりません。(拍手
  20. 曾禰益

    曾祢益君 再質問をお願いいたします。
  21. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 曾祢君。   〔曾祢益君登壇、拍手
  22. 曾禰益

    曾祢益君 各大臣の御答弁の中で、非常にまだ納得しない点が多いのでありますが、これらについては、いずれも委員会あるいはその後の本会議等において、同僚議員の方からそれぞれ御質問があると思いまして、詳細は触れませんが、ただ、三点だけ重要な問題でお伺いしたいのは、第一には、総理民主主義考え方について、法律を守るのは当然ではないか、法を守らないような問題に対しては、これを守らせるようにするのは当りまえだ。そういうような観点から、ただ権力的な態度労働運動や民衆運動に臨もうとしておる。私はそのことが第一間違っておる。もとより労働組合の行動が、すべていかなる場合においても完全無欠ということは私は言えないと思う。しかし問題は、政府考え方総理考え方の中に、これは法律だから、それを守ってこい、自分の方から権力で押しつけるという、こういう考え方そのものが、これはやはり多数の横暴権力主義の現われだ。こういう点、日本のまだひ弱い民主主義のもとにおいて、権力者の考え方から直して行くことが、私は民主主義のために必要であると思う。この点もう一ぺんはっきり申し上げて、さらに御意見を伺うことができるならば幸いだと思う。  第二の問題は、核兵器の問題でありますが、総理が率直に、実験禁止の問題は、これを切り離して、大国間の協定ができることが望ましいと言われたことは、これは私は了とします。ただ、日本に対する核兵器持ち込みについて、現状においては、そのような協定の必要がないからやらない。これは私どもはどうしてもわからないのであります。これは率直に、私が総理のような頭のいい人に法律論や条約論をするつもりはありませんが、これは明々白々たる事態であって、これは安全保障条約行政協定、ないしはあなたのやってこられましたアイクとの共同コミュニケによって、どうしてもカバーすることのできない一つの欠点である。だから、法律上こういうことこそは、かりに同盟国であっても、そういうことを英米間においても、びしびしと、きめるべきは国際協約できめるのが当りまえだ。それをいいかげんに政治論でやって行こうというところに、私は岸内閣の自主性のない姿を発見せざるを得ないことを、はなはだ残念に思います。ですから、この点ははっきりと、条約的な効力のある国際措置をとっていただきたい。  それから核兵器のこの問題について、先ほどお答えが一つなかったのは、私は特に総裁の立場において、去る国会の末期において、私どもが提案いたしました日本の非核武装の宣言、これは二つの内容からなっておりまして、一つは、日本みずから核武装しないということと、第二に、特に重要な点は、核兵器を持ち込まないということを、国会のこの意思によってはっきりきめておこう、この問題に対して、自民党は常にあいまいな態度をとっておる。これははなはだ私として情ないと思うのであります。従って、この点について、今、首相としてアメリカとの約束を今日やることが適当でないと思うお考えであるならば、国会の意思として、自民党社会党の提案に当然賛成すべきことと思うが、この日本国会における核非武装共同宣言と言いますか、決議案と言いますか、これについての明確なお答えを願いたいのであります。  最後に、日中貿易の問題については、私はこれ以上こまかく追及と言いまするか、質問を続けるのは適当でないと思います。従ってやめますが、ただ一点だけ申し上げたいのは、最後に岸総理の言われた中で、私のまた伺いだい質問一つ根本はと言いまするか、重要点は、一体いわゆる静観の態度で行くのか、それともすみやかに措置するのか、積極性なのか、見送りなのか、これが私の最も伺いたいところであります。不幸にして総理の御答弁は、この点において非常に不明確であります。むしろ避けられたのかもしれません。ところが外務大臣の御答弁は静観、通産大臣の御答弁は、すみやかにこれの事態を改善したい。私は決してつまらないいやがらせの意味で、両大臣の根本的な答弁の食い違い等を問題にするのではなくて、この点は非常に、私の質問の中にもありましたように、閣内、党内においても意見を統一すべき段階にきていると思う。だから、そのゆとりを私は持って初めから御質問したのであるけれども、基本的には、友好親善立場に立って、すみやかに軌道に乗せるように努力する方向なのか、それともやはりいわゆる静観の態度をもっていくのか、この点、はっきりと総理から御答弁願いたいと思います。(拍手)   〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  23. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  民主主義の本旨として、私は法律なり秩序を守るということが前提になるのだということを申し上げましたが、従って、もしもこれに違反をし、法律を順守しないというようなことは、正当なる、私は民主主義のもとに許される労働運動だとか、あるいは民衆運動ではないと考えております。そういう事態ができ上るということが私は遺憾でありまして、そういうことのないように大いに注意をすべきものである。しかし不幸にしてそういう事態があれば、やはり政府としてこれを取り締るということは、決して私は権力主義であるとかいうものではなくして、これは当然、国政の運営をはかる意味から申しまして当然のことである、こう思っております。  核兵器の問題につきまして、協定を日米間においてやったらいいじゃないかというお考えも一つのお考えでございます。しかし私は、今日安保条約のもとにおけるところの日米共同委員会ができております。こういうところにおいて、十分にこういう問題を話し合う機会があるのでありまして、従って、そういうことをするのが日米間においては適当である。私自身がきわめて明瞭に私の意思を、政府の意思を、中外に声明をいたしております。これに対して、アメリカ側は、何らの異論を唱えるとか、あるいは一部で心配されておるような持ち込みの事実があるとかいうようなことは絶対にない現状におきまして、特に協定を作る私は必要を認めないということを申し上げたのでございます。  それから核兵器禁止と言いますか、核兵器で武装しない、持ち込みをさせないという私の声明を国会の決議にすることに対して、自民党総裁として何と考えるかという御質問でございますが、私は、そういう国会の議決ができるということに対して、別に反対をいたす考えはございません。私自身がそういうことをはっきりと声明をいたしておるのでありまして、国会がさらに決議をする必要ありとお認めになるのならば、私は趣旨において反対をいたしておらないということを申し上げておきます。  中共貿易に関して静観かどうかという問題でありますが、私は先ほど申し上げましたような趣旨において、現在の状態は、不幸の状態であり、望ましくない状態であるから、これを改善しなければならぬということを申しております。その改善をしなければならぬ方法として、どういう方法をとることがこの際において適当であるかという問題として、私は静観ということを申し上げたのであります。静観ということは、ただ腕をこまねいて、そうして傍観をしておるという意味では決してないと御了承願いたいと思います。(拍手)   〔小林孝平君発言の許可を求む〕
  24. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 小林孝平君、何ですか。
  25. 小林孝平

    ○小林孝平君 先ほど厚生大臣の答弁中、社会労働委員長竹中勝男君の名前をあげまして、同君が、事実無根であると認定されるような御答弁がございました。従いまして、もう一度明確に、先ほどの御答弁がどういう答弁であったかということを、詳細御答弁を願いたいと思います。その結果によりまして、再びその答弁の取り消しを要求するかどうかの態度を保留いたしたいと存じます。
  26. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) ただいまの小林君の議事進行に関する発言は、厚生大臣もお聞きの通りでございます。厚生大臣からお答えを求めます。   〔国務大臣橋本龍伍君登壇、拍手
  27. 橋本龍伍

    国務大臣(橋本龍伍君) 私の言葉に誤解がありましたら、恐縮でありますが、実は前に大内さん、末高さんと一緒に、私が割合に近いころ放送座談会に出ました際に、社会党の御案についてもお話があったのであります。その際に、この金額のことが問題になりまして、大体やはり金額は少くとも、早く実施をした方がいいじゃないか。そういう場合に月一千円というのは少いようだけれども、大体その辺が常識的な発足の金額じゃないか。これで大体国民年金として発足していいのじゃないかというようなのが大体の御意見でございました。その際に、わが党の方の話も出ましたし、竹中氏からも、社会党の案につきまして、年令や所得によって六千円、一万二千円、二万四千円という案があって、そういうところで当座は発足をいたしたい。それで八万四千円ということが、完全に実施されるまでには二十五年ぐらいかかる。しかし当面の問題としては、やはりそういうような比較的低いところでも、早く発足した方がいいという御意見だったと承わっておるのであります。それを実は申しました次第であります。(拍手、「進行々々」「議長々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)   〔小林孝平君発言の許可を求む〕
  28. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 小林君。
  29. 小林孝平

    ○小林孝平君 ただいまの厚生大臣の御答弁を承わりますと、━━━━━━━━━━また、その発言は、放送討論会において行われたものでありまして、正式な発言ではないのであります。かくのごとき発言を取り上げまして本会議場においてわが党を攻撃するがごとき発言をされたのは、きわめて遺憾であります。従いまして私はこの機会に、竹中勝男君に一身上の弁明をさせていただきたいと思います。(「必要なし」「もっと誠実にやれ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)  〔竹中勝男君「私は一身上に関する弁明をいたしたいと思います」と述ぶ〕
  30. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 竹中君に申し上げます。一身上の弁明は、本人において通告すべきものでありますが、竹中君は、弁明をされたいのですか。
  31. 竹中勝男

    竹中勝男君 やります。
  32. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 竹中君に発言を許します。   〔竹中勝男君登壇、拍手
  33. 竹中勝男

    竹中勝男君 ただいま橋本厚生大臣が、去る数カ月前の放送討論会における座談、懇談のときの私の言葉に根拠を置いて、本国会において、あたかも社会党を誹謗するような発言をされたことにつきましては、国会運営の正常化の上において、両党の今後のあり方において、私は、はなはだ遺憾に思います。もし、国会のかかる本議場の質問に対する厚生大臣の答弁であるならば、社会党は、すでに社会党の年金法案を公表いたしております。われわれは印刷物において、明確に社会党の年金制度における計数的な発表をいたしておるのでありますからして、厚生大臣であるならば、責任のある発言をするものであるならば、その資料に基いて発言をしていただきたいのです。それを、あたかも小手先のような言葉の端をとらえて、これを議場においてしかも、私の発言を正しくとらえていない……(「ここは放送討論会じゃない」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  34. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 静粛に願います。
  35. 竹中勝男

    竹中勝男君(続) 発言をするというようなことは、……(「しっかり」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  36. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 静粛に願います。
  37. 竹中勝男

    竹中勝男君(続) これは社会党を誹謗し、両党におけるところの国会の正常な運営自民党みずからが破壊するところの発言であると私は思わざるを得ないのです。重ねて言いますが、社会党は、国民年金保険の中で無醵出の年金は三つ、母子年金、身体障害者年金、老令年金の三つをはっきり出しております。そうして母子年金月三千円、身体障害者月三千円、老令年金月二千円、曾祢君の言われる通りに、自民党の月一千円は、あまりにも老令を保障するものとして、過少ではないか、低いではないかということは、まさに当然であります。……
  38. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 竹中君、一身上の弁明にとどめて下さい。
  39. 竹中勝男

    竹中勝男君(続) まさに私は、放送討論会において橋本君が今言われるような発言をしたことはないのです。もし、橋本厚生大臣が、何かの勘違いを基礎にして言われたのであれば、私は、はなはだ遺憾である。━━━━━━━━━━社会党は、国民年金保険法案をすでに前国会において提出いたしておるのです。社会党は、国民社会保障計画の中で、老後の生活の保障をきわめて忠実に、計数に基いて、そうして可能であると考える、架空でないところの年金法案を出しておるのでありますから、自民党は、どうぞ社会党の年金法案を忠実に取り上げてもらいたい。真剣に取り上げてもらいたい。ことに厚生大臣は、こういう座談会の言葉をもって社会党を誹謗するというような意図をもっては、わが国における養老年金あるいは国民年金制度の確立は、きわめてむずかしいと考えるのでありますからして、厚生大臣たるものは、はっきりわれわれは出しておるのですから、その他記録に従って、印刷物に従って発言していただきたいのです。私としては、厚生大臣がかかる発言をしたことについて、取り消しを要求するものであります。(拍手、「懲罰々々」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)     —————————————
  40. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 佐藤尚武君。   〔佐藤尚武君登壇、拍手
  41. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私は、緑風会を代表しまして、昨日の総理大臣の施政方針演説に対し、以下二、三の点につき質問いたします。   〔「おかしいぞ」「どうするんだ」と   呼ぶ者あり、その他発言する者多   し〕
  42. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) お静かに願います。
  43. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君(続) 日本は、昭和三十一年国連に加盟し、また、昨年十月には、安全保障理事会の非常任理事国に当選したのでありますが、日本の国連に対しまする関心は、主として政治的方面に払われてきたと見られるのであって、経済方面の活動は、むしろ二次的に考えられていたように見えるのであります。戦後十年を経てようやく国連に加盟し、また、その後、国連の重要組織である安保理事会への加入を急いだ日本といたしましては、無理からぬ経過であったと言うべきでありましょうが、しかし、日本としては、政治問題に没頭することのみをもって足れりとするわけには参らないのであって、あすとも言わず、直ちに経済方面への進出をはかるべきであると信ぜられます。よって、これらの問題について、総理大臣並びに外務大臣の注意を喚起し、所信をお尋ねしたいと思うのであります。  まず第一に問題とする点は、日本として、国際経済の方面にできる限りの力を注がなければならないという点であります。米英を初め、世界各国の経済が、国際的のつながりを持っていることは、事新しく申すまでもありません。日本経済もまた、国際的基盤の上でなければ、とうてい拡大発展は望まれないのであります。しからば、経済の国際的基盤をいずれに求めるかと言えば、それは国際連合の機構を通じての経済活動であり、すなわち国連総会、経済社会理事会、その他数多くの専門機関の活動に待つのが最も効果的であると言わねばなりますまい。果してしからば、日本も、国連の経済活動にでき得る限りの力を注がなければならないのであって、さしあたり本年九月の国連総会に、識見豊富にして、そうして国際的に活動のできるような有能な財界人を政府代表として派遣し、総会、経済委員会を通じて、肝木経済の進展をはかるとともに、世界民福の増進に寄与するていの手段を講ずる要があるものと認めます。問題が起きたたびごとに、あわてて外国に泣きつき、救済を求めるのではなくして、常時世界的な場面に手を打ち、日本経済発展の地盤を築くことに力を入れねばならないと考えるものであります。いわんや米英の経済界は深刻な不況に襲われ、その余波を受けて世界各国の経済は著しく萎縮しておる今日、強度に相互依存の関係にある世界経済の回復は、おそらく米国一国の力にのみたよることのできない問題であると思われます。かるがゆえに、ドル不足に悩む各国は、みな今秋の国連総会に嘱目をして、有力な代表者を派遣して鳩首合議、何とかして景気挽回の方策を見出すべく努力するに相違ないと思われるのであります。現にマクミラン首相は、最近アイゼンハワー大統領を訪問し、帰途カナダに立ち寄っております。むろん不況対策や、後述する後進国経済開発問題のごときも話題に上ったことでありましょう。また、日本の財界を襲った不景気も、表面に現われているより以上に深刻なものがあるように見えるのでありまして、なまやさしい対策では、この不況を切り抜けるということは困難ではないかとおそれられるのであります。こういう際といたしまして、日本も袖手傍観は決して許されないのであって、積極的に乗り出す必要ありと信じまするが、首相、外祖は、果して今秋の国連総会に対して、その経済方面の活動を重視して、十分力を入れる用意がおありかどうか、お尋ねいたすのであります。  第二に、これに関連した問題でありますが、いま一つの課題があります。日本は現在は安保理事会に一議席を占めておりますけれども、一年半の後には、引き下らなければならないのであります。よってその後は、直ちに経済社会理事会に肩がわりをするように今から努力の必要があると認められる点であります。経済社会理事会が安保理事会と並んで、経済社会、文化、保健の各部門にわたり重要な役割を演じているのは、いまさら多言を要しません。日本もこれに有能な代表者を配して、常時経済方面の世界的地歩を固むべく努力の要ありと信ずるものであります。首相外相の御所見を承わりたいと思います。  第三の点は、アジア開発基金の問題であります。岸総理は、昨年来、東南アジア各国を訪問されて、各地において開発基金並びに技術訓練センターの設置の考案を提唱されたのでありまするが、この構想は、豊富な天然資源を保有する国々の利益増進をはかるのを目的とすると同時に、技術及び熟練工を提供する余力を持つ国々にとりましても、また大なる魅力であることは申すまでもございません。しかし、アジア開発基金の構想は、単に日本一カ国ではとうていしょい切れないほどの大問題であります。必ずや米国その他の資本供給国との連携を待って、初めて成果を上げ得るものと思われるのでありますが、実は私は、これは個人的な意見でありますけれども、他の資本国との協同のみをもって足れりとしないのであって、これを国際連合のワク内に入れることが、きわめて望ましいと信ずるものであります。なぜならば、開発基金ができたといたしましても、受け入れ国側において、安心して受け入れられるような形にしてやらなければ目的達成は困難と思われるからであります。かりに日本が他の資本国と提携しまして基金の設定に成功したといたしましても、国民経済力がまだ脆弱な後進国にとりましては、ほとんど例外なく、基金援助の陰にひそむ重圧を感じ、その受け入れをちゅうちょするだろうと信ぜられます。ところが、アジア諸国に対しては、従前より米国の直接援助ないしはコロンボ計画の援助等があるのでありますけれども、今後相当の長年月を費さなければ所期の効果をおさめることは不可能な模様であります。やはり受け入れ国側の不安を除くことが先決問題であって、これには援助基金計画を国連のワク内に移すことが何よりも必要なことになると信ずるものであります。同じ基金の投下でも、国連の旗じるしのもとでやるとなりまするならば、受け入れ国側にも直接供給者たる大国側よりする重圧を感せずして済むのでありまして、すでに小規模ながら、国連の機構として設置されておる彼のSUNFED、つまり国連特別経済開発基金でありまするが、このSUNFEDの組織の拡大強化をはかるということが、大いに望ましいと考えるものであります。総理大臣のこの点に関しまする御所見を承わりたいと存じます。  第四の問題といたしましては、第一次岸内閣当時に、政府のとったきびしい金融引き締め政策によって、民間業者にかなり酷な犠牲を払わせたのでありますが、結果としては、日本の国際収支が改善されて、幾分の黒字を出すことができるようになった模様であります。しかし、日本経済はようやく不況を切り抜け得たものの、いかにもわが財界の底力の貧弱さが如実に示されたのは、おおうべくもありません。国際収支改善のため、もっぱら輸出振興が唱えられておるのでありますが、そうしてまた輸出拡大努力を要することは、これは万人の認めておるところであって、異論のないところではありますけれども、しかし、現在のような萎縮した世界の経済の中で、下手に輸出を伸ばしまするならば、かえって焦げつき債権を累積するということになり、結局は国民の負担に帰してしまうおそれが十分にあると思うのであります。そこで、日本としてはどうしても貿易以外の国際収支、すなわち見えざる輸出を考えなければならぬということになるのであります。それには豊富な日本の観光資源を開発整備して、外客を誘致し、そうして彼らをしぼるというのではなく、日本人一流の親切心をもって彼らを接遇し、心から内地の観光を楽しましめ、好感をもって帰途につかしむることのできるような手段を講ずる要があると考えるのであります。しかしそのためには、まずもって国内の整備を急がなければならないのでありまして、整備の整わないうちに外客を誘致するのでは、事態はかえって反対の結果を来たすことになるでありましょう。しかるに、従来の政府のやり方を見ますると、むしろ国内整備が不十分な間に外客誘致を急いだ感があります。もっとも、観光の海外宣伝と言いましても、まだ十分ではなくて、外来の観光客もわずかに十余万人を数え得るにすぎない今日でありまするが、そういう事情ではありまするが、今にしてわが国の観光を正常な軌道に上さないことには、不測の結果を招くことをおそれるものであります。民間の観光事業の方面におきましても、近時、幸いにこれらの欠陥を痛感いたしまして、国内整備と国外宣伝の事業を一元化する機運が逐次かもし出されておる模様であります。この傾向は、わが国観光事業の促進に寄与するものと考えるのでありまするが、政府はこの傾向をどういうふうに見ておられるか、また、どういうふうに対処されるお考えであるか、お尋ねいたしたいと存じます。これは運輸大臣にお願いしたいと思います。  最後に、私は第五の問題といたしまして、教育問題について一言いたしたいと存じます。先ほど、曾祢議員の質問に対しまして、総理大臣から御答弁がありました。その御答弁趣旨は、私どもの考え方と大部分一致しておる模様であり、その他、法務大臣ないしは文部大臣、その他関係大臣から、それぞれ御答弁があったのでありまするけれども、以下述べまするところは、緑風会の意見としてお聞き取りを願いたいのであり、それに対しましての御所見を承わりたいと存ずるのであります。  最近の青少年犯罪の激増は、実に戦慄を感ぜしめられるありさまであります。毎日の新聞記事の中には、まさに目をおおうものがあります。これには、映画、ラジオ、週刊雑誌等の露骨な、挑発的な出し物が大なる影響を与えているであろうことは、看過できない点であります。また一面、われわれ父兄の立場から言いまするならば、義務教育を担当する小学校の教員諸君の行動に対しましても、はなはだしく納得しかねるものがあります。(拍手)いずれの社会におきましても、勤務評定の制度のないところはないと思われるのでありまして、従って、教育社会においても勤務評定実施されるということは、その事自体に対して教員諸君が反対する理由はないはずだと思われるのであります。(拍手)ただ、勤務評定の内容とか、その実施の方法等について異論があるというならば、それは当局との間に協議決定することができるはずのものであると考えます。しかるに、日教組は、この挙に出ないばかりでなく、和歌山におけるあの実例のごときは、ついに実力行為にまで出てしまったという重大事態さえ招致したのであります。このようにして、教員諸君は、ほしいままに教場を捨て、教員としての義務を怠った、そういう結果を来たしている実情であります。こういうことが青少年たちに及ぼす悪影響の大なることは、言を待たないと思うのであります。(拍手)このような事態を前にして、政府はどういうふうに考えておられるか、また、いかような処置に出られんとしておるかにつきまして、総理大臣並びに文部大臣の御所見を伺うことができれば幸いと存じます。  私の質問を終ります。(拍手)  〔国務大臣岸信介君登壇、拍手
  44. 岸信介

    国務大臣(岸信介君) お答えをいたします。  国際連合の活動は、政治問題ばかりでなくして、経済面における活動も非常に重要なものであり、ことに国際経済というものの有機的な関係を考えると、日本経済の立ち直りの上におきましても、国際連合のさらに経済活動に日本が積極的に協力して行かなければならぬという御意見につきましては、私ども全然同感に考えております。従来もそういう意味において、国際連合の経済的活動には、できるだけわれわれ協力をし、またそれに参加して参ったのでありまするが、この点に関してお尋ねの二点、すなわち、ことしの総会に対しては、経済に関して特に知識経験のある財界人を代表の中に加えたらどうかという御意見でありますが、私は必ずしも財界人と限るわけではございませんが、経済知識、もしくは、ことに国際経済に関して見識を持っておるところの有力な人を代表のうちに加えるように、その選任をいたしたいと思います。また、経済社会理事会の理事の問題に関しましては、すでに日本といたしましても、これに立候補するような準備を進めております。  次に、東南アジア開発基金の問題を、むしろ国際連合のワク内においてこれをやることが、いろいろな面において望ましいんじゃないかという御意見であります。もちろん、この私の構想は、日本だけでできるわけではございません。従って、東南アジア諸国にもこの構想を話をし、またアメリカ、カナダその他の国々にも話をいたしております。最初いろいろな、十分に理解がいかない点もありましたが、近時、この構想そのものに対しては、よほど理解がいっております。私はしかし、これを国際連合よりも別の、一つの私の構想として別に作らなければならぬというようなことは絶対に考えておりません。あるいはさらに、国際連合の中の今ある基金をさらに拡大し、これを通じてやるというようなことが、東南アジア諸国の多数の国の希望でもあり、またこれに資金を出す国々が、そのことが望ましいというようなことであるならば、そういう方法も、もちろん私は適当であると考えております。  次に、観光事業については、私どもは全然同感でありまして、大いにこれを推進したいと思いますが、その具体的なことにつきましては、運輸大臣からお答えをいたします。  文教問題に関しましては、青少年の問題、私の所信表明のうちにもその点に触れまして、青少年の不良化を防止することについて、特に考えなければならぬということを申しております。まことに憂うべきような事態もあります。これにはやはり社会環境をよくして、青年に希望と情熱を持たせるような諸施設をして行く必要があると思っております。  また、勤務評定の問題につきましては、すでにお答え申し上げましたように、私はこれは実行すべきものだ。ただ、その方法や内容等について、いろいろな方面の建設的な意見については、十分取り入れて行くように努力をすべきものであると、かように思っております。(拍手)   〔国務大臣藤山愛一郎君登壇、拍   手〕
  45. 藤山愛一郎

    国務大臣(藤山愛一郎君) 国連の機構の中を通じて、経済の問題を重要な課題として取り扱うということにつきましては、私どもも全く御同感でありまして、実は、昨年の冒頭演説におきましても、ドル不足の問題その他に対して、何らか国連が考えるべきではないかという趣旨のことを申し述べておったわけであります。その第二の委員会において、萩原代表は実際上の委員長として活躍し、SUNFEDがなかなか進んで参りませんので、それに直接かわるとは申し上げかねますが、直接動いて行く必要のあるような機構として、国連特別基金の設置というようなものを提案されました。これが採択されておりまして、おそらく今度の七月一日から始まるジュネーヴの経済社会理事会におきまして、この問題がさらに具体化されるような方向に進むのではないかと思っております。  なおエカフェ等の地域活動につきましても、できるだけ協力をいたしておるのでありまして、そういう意味において、国連の機能におきます経済的な機能を十分に生かして参ることが必要だと思うのであります。そういう意味において、今後とも対国連の政策の面に十分盛り込んで参りたい、こう存じております。(拍手)   〔国務大臣永野護君登壇、拍手
  46. 永野護

    国務大臣(永野護君) お答えいたします。  観光事業の重要性に関しましては、佐藤議員のお説と全く御同感であります。私、運輸省の仕事をまだ十分に研究しておりませんが、今日まで私どもの知り得た範囲内におきましても、運輸行政の中で観光事業に関する努力は、なお十分に勉強し、これを増進して行かなければならない余地が非常に多いと痛感いたしておるのでございます。最近いろいろな国際会議日本で行われますし、また、オリンピック大会の日本に招致されることも期待されますので、それまでには、どうしても外国からこられるお客さまの満足のいくような受け入れ態勢を整えたいと念願いたしておりますけれども、これが、みんな財政支出に関係のある問題でございまするから、その成案ができました節には、議会の皆さま方の御協力を切にお願いいたす次第でございます。  これをもちまして答弁といたします。(拍手)   〔国務大臣灘尾弘吉君登壇、拍手
  47. 灘尾弘吉

    国務大臣(灘尾弘吉君) 文教に関する御質問でございますが、大体、総理大臣がお答えになりました通りでございます。  最近の教育界の状況は、決して快い姿ではないと思うのであります。ことに勤務評定の問題を中心といたしまして、各地にいろいろな事態が起っておりますことは、私まことに残念に存じております。日教組の健全な発達ということについては、われわれ心から願うところであります。また、そのために必要があれば、いかなる御助力もいたしてみたいと思うのでございますが、しかしながら、今日の日教組のあの状態につきましては、ただ遺憾千万と申すほかないのでございます。一日もすみやかに正常な組合の状態に立ち返っていただきたいと思うのでございます。これにつきましては、もとより私どもといたしましては、いやしくも法に違反するとか、あるいは法を無視した行動をするというようなことにつきましては、はっきりした毅然たる態度を持して参りたいと思います。同時にまた、地方の教育委員会の方面におかれましても、その心持をもって対処してもらいたいと思うのでございます。いやしくも不当な圧力によりまして、行政の秩序を乱すというようなことは、断じて容認のできないことでございます。この問題は、結局何と申しましても、組合を構成する教職員諸君の反省と自覚に待つのほかはないと思うのであります。(拍手)われわれといたしましても、この方向において、できるだけ努力もいたしたいと考えますし、地方のまた教育委員会におきましても、冷静に、かつまた辛抱強く、この自覚と反省を促すために努力してほしいと思うのでございます。もちろん教職員自体の方が、すみやかに正常な組合運営に立ち返って参りますことを、心から念願するものであります。同時に、教職員諸君の自覚と反省を促すためには、やはりいわゆる世論の公正な批判と協力がなければならないと思うのでございまして、この意味におきましても、私どもは、さらに一そうの努力を継続するつもりでございます。  これをもってお答えといたします。(拍手)   〔小林孝平君発言の許可を求む〕
  48. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 小林君。
  49. 小林孝平

    ○小林孝平君 議事進行について……。先ほど厚生大臣の発言に関しまして、竹中君より一身上の弁明がありましたが、橋本厚生大臣の発言中、事実と相違する点があるように存ぜられますので、議長において速記録を調査の上、善処されんことを望みます。
  50. 松野鶴平

    議長松野鶴平君) 御発言の趣きは承わりました。議長は、速記録を調査の上、善処いたします。  これにて質疑の通告者の発言は、全部終了いたしました。質疑は、終了したものと認めます。  次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後零時四十七分散会      —————・————— ○本日の会議に付した案件  一、日程第一 国務大臣演説に関   する件(第二日)      —————・—————