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曾祢益君 私は、
日本社会党を代表して、昨日、本院における
岸首相の
施政方針に関し、
首相並びに
関係閣僚に対して、以下若干の
質問を行いたいと存じます。
まずもって、
総理の
施政方針演説がまことに無内容、おざなりのものであって、
国民の期待を大きく裏切ったことは、はなはだ遺憾に存じます。しかも一方においては、目に余るような金の力による
選挙の結果、それに酔って、
国民の圧倒的多数の
支持を受けたという、自信の過剰のみがあふれ出ていることに対し、早くも心ある
国民は、
民主主義の前途を憂えているのであります。
首相は、一方においては、
わが国の
民主主義の
基盤がなお弱いことを認めておきながら、
民主政治の健全な発達のための
措置としては、単に
国民に対し法の権威を守ることを要求し、
民衆団体に対しては、
国会の威信をかさに着て、権威と権力をもって臨もうとする面ばかりを強調しておるのであります。(
拍手)なるほど
演説の末尾において、
首相は一応、国政の
運営に当っての謙虚な
気持を表明することを忘れてはおらないのでありますが、われわれがこの
首相の言を真に受けるには、あまりにも
国会の
内外における
政府与党の多数の横暴と、
権力主義を見せつけられていることを指摘しなければなりません。われわれの憂えるところは、
選挙の結果を、
国民の
自民党に対する
圧倒的支持と誤認し、
自民党と
岸内閣が
内外の施政と
国会の
運営に当り、謙虚なる心がけを欠き、多数横暴をもって処するならば、やがて
国会運営の不円滑と、国内における
階級対立の激化とは、
国民全体の
民主主義議会制度それ自体に対する失望を招き、
左右両極の
独裁制に道を開くおそれがあるということであります。従って私はまず最初に、あらためて
民主主義に対する
総理の信念を伺い、ことに、さきに指摘いたしましたように、
首相の
所信の冒頭と末尾との間における矛盾について、明確な解明を求めるものであります。
次に、同じく
民主主義の基本に触れる問題として、ぜひこの際伺っておきたいことは、
選挙中から露骨となって、新
内閣の人選、ことに
労働大臣や
文部大臣のそれにおいて、すでにそのほこ先が一そう明らかになったところの
労働運動に対する
強圧政策であります。良識ある
国民はだれしも、
全逓労組員の
職場集会の行為を、
郵便法違反として罰しようという
政府のやり口を、
民主主義に逆行する危険な傾向として警戒の目をもって見守っております。
郵便法第七十九条の規定を
争議行為に適用しないことは、制定当時、当局もまた認めたところであります。
政府はこの際、
郵便法、
鉄道営業法その他の
事業法の規定を、
労働運動の弾圧に悪用するごときは取りやめるべきと信ずるが、
政府の明確な所見を、
首相、
労相、
逓信大臣、
運輸大臣、法務大臣から、それぞれ伺いたいと存じます。
さらに、
全逓労組の
職場集会、
教員組合の一斉
休暇闘争、ないしは全
司法労組の
順法闘争などに対する
当局側の取締りと
対抗措置は、明らかに社会の通念を越え、これに反したところの
政治的弾圧であります。ことに
全逓関係における
検察側の
態度は非常識きわまりないものであって、証拠の隠滅や逃亡のおそれがないという裁判所の判決に対し、なおも準抗告、次いで
特別抗告の追い打ちをかけようとしております。
政府はこのようなファッショ的な
検察当局の行動を抑制すべきが当然であると思うが、
首相、法相から明確なる返答を承わりたいのであります。(
拍手)
良識ある
国民はまた、
政府がその
文教政策の貧困をよそに、文教行政なるものを口にするけれども、実は、
教職員組合に対する
政治的攻撃の道具に、行政を悪用している傾向を特に危険な兆候と見ております。
教員の
勤務評定が元来科学的、合理的な
基礎を欠いているばかりでなく、これを天下り的に押しつけようとする結果は、
教員のはつらつとした創意と民主的な
教育活動を阻害し、
教員をして、単に
評定権を握る校長や上司の鼻息をうかがう、
こそくな
地方吏員に堕落させ、新しい
民主主義教育と
民主政治の
基盤を掘りくずすであろうことは、すべての良識ある
国民の憂えるところであります。しかも、
検察側の組合に対する手入れがいかなるものであったかについては、私は最近の
有力紙の報道の一節が最も雄弁に語っていると思うのであります。これを引用いたしたいと思います。「警察官がドヤドヤと学校に乗りこんでくる。
教職員組合の分会を家宅捜索するためだ。土曜日の午後を選んではいるが、それでも校庭にはまだ
こどもたちが残っている。ものものしい
捜索ぶりをおびえた表情で、窓からのぞきこんでいる。これは去る七日警視庁が東京都教組の
下部組織を手入れしたときの風景だ。信頼している
先生たちが目の前で
犯罪人扱いを受ける。
こどもたちにどんな印象を与えたかと思うとやりきれない
気持になる」、われわれは、この記事の筆者と全く同感であるばかりでなく、単にやり切れない
気持以上に、激しいふんまんと、
民主主義の前途に対する深刻な不安を禁じ得ないのであります。(
拍手)
政府は、このような
勤務評定の強行と
教員組合に対する
弾圧措置を直ちに取りやめるべきであると思うが、
総理、文相、
警察担当大臣の
見解を求めたいと思います。
さらに、
石田労政から
倉石労政に移って間もない今日、すでに
倉石労相は、
仲裁裁定の完全な実施の公約を、いわゆる尊重の線まで逆戻りさせるとともに、ILOの結社の自由と
団結権擁護に関する条約の批准問題についても、もう批准を行わない腹をきめ、公労法の改悪、さらに
労調法、
労基法等の改悪を意図していることが伝えられておるのであります。
政府は、果してこのような
労働政策の
反動化を意図しているのか、この際、
首相並びに
労相の明確なる
所信を伺いたいと存じます。(
拍手)
次に、
外交問題について、若干当面の問題に限ってお尋ねいたします。第一は、
国際緊張の緩和に対する
政府の
見解であります。
首相はその
演説の中で、
国際緊張緩和の
努力が続けられ、特に
東西巨頭会談の
動きには大いに注目すべきものがあると、きわめてあっさり、あたかも対岸の火災を見るような
態度をとっておられる。むろん
国際緊張緩和に対する
わが国の貢献の面には限界があります。しかし東西の冷戦が
核兵器、
ミサイル競争の
段階に突入した今日、
わが国の置かれている地政学的な条件から見て、
わが国の
外交の
方向や、ないしはその一挙手一投足が、
国際緊張に与える影響は決して過小評価すべきではなく、少くとも
総理のように、
わが国の国際平和における責任に、ほおかぶりをするような
態度は断じて許されないと信じます。たとえば
日米関係についても、近く
外相または
首相の
アメリカ訪問が行われ、
日米安全保障条約の改訂や沖縄施政権問題について、
アメリカ譲歩を勝ちとるために、これと引きかえに
自衛隊の装備のいわゆる
高度化に踏み切る
意見が、閣内で台頭しているやに伝えられておるのであります。このことは、憲法の改正、再軍備の強化と
自衛隊の
核兵器、
ミサイル武装化並びにこれらの兵器の
持ち込みに通ずる問題でありまして、
国際緊張激化の
方向にほかならないのであります。同様に、
大陸中国との間の不幸なる対立を
よそ目に、
日本と台湾との間の
民間の政治的な
動き、並びに
日韓交渉が続けられておりまするが、万が一にも、台湾や韓国の
動きや、その他の
外部勢力のそそのかしに乗ぜられて、
軍事同盟とまで行かずとも、
反共連盟などの
方向に走ることがありとするならば、これまた、
わが国の平和と安全を脅かし、
国際緊張を強めることは言を待たないところであります。従って私は、次の二点について明確な
方針を
首相並びに
外相からお伺いいたしたいのであります。
第一に、
外相または
首相の渡米と防衛問題に対する
基本方針、なかんずく
自衛隊の
核兵器、
ミサイル武装に関する明確な
所信を、あらためて示していただきたいのであります。
第二に、
日韓会談、
日台交流に関連し、
アジア極東軍事同盟とか、あるいは
アジア反共連盟に参加する
意向があるのかないのか、ないのならば、これを明確に断言されたいのであります。
首相はまた、大国間の
軍縮とあわせて、
原水爆の
実験はもとより、その使用、製造、貯蔵の
全面禁止の実現にたゆまざる
努力を誓っておられます。しかし、
国際情勢の現
段階において特に必要なことは、このような単なる抽象的な願望や悲願ではなく、
核兵器の
禁止と
軍縮を、いかなる順序で
国際政治の現
段階においてこれを実現させるかのプログラムと、これに伴う現実的な
努力でございます。われわれの最も遺憾とするところは、過般のソ連の
原水爆実験の一方的停止の宣言以来、
米英ソ三国の間に
核爆発の
探知制度を含む
協定によって、一切の
核実験の停止を、
核兵器の
全面禁止や
軍縮全般から切り離して、まずこれを実現し、これを契機として、
軍縮、
国際緊張緩和並びに
東西巨頭会談への大道を開こうとする
方向がようやく固まり、七月初めからジュネーヴにおいて、この
探知制度を中心とする
専門家会議が開催されようとしているさなかに、それにもかかわらず、
政府が依然として
核実験の
禁止を、他の問題から切り離して、まず実現を要求する政策をここに明らかにし得なかったことは、そうしてその優柔不断と不誠意に対しては、われわれは断固としてこれを追及するものであります。しかもこの問題こそ、
東西巨頭会談の成功の重要なかぎであり、ある意味では、
日本こそが、強力かつ有効的に推進し得るところなのであります。よって、あらためて
核実験禁止協定を、他の問題から切り離して成立させる点についての
首相の熱意ある御
答弁を期待いたしたいと存じます。
核兵器問題の第三の面は、
日本及び沖縄に
核兵器、
ミサイルを持ち込ませないことであります。この問題についての前
国会における
審議の経緯は、今さら多言を要しないところでございまして、要するに、法律的、条約的には、沖縄はむろんのことであるけれども、
日本本土についても、
アメリカによる
持ち込みを断わる根拠がないのであります。従って、単に
政府の政治的な
見解の表明では、
内外の不安と不信とを取り除き得ないから、われわれは、
国会の意思を院議によって確定することを提案したわけであります。不幸にいたしまして、前
国会におきましては、各派の御賛同を得ないまま、幕切れとなってしまったのであります。従いまして、さらに
選挙期間中、わが党から
自民党に対し、この
趣旨を含んだ
日本の
非核武装宣言を共同で行うことを提案いたしましたが、遂にこれまた拒否されたのであります。ついては、この際あらためて、
一つには
自民党総裁としての
岸首相が、この
趣旨の
国会の議決に賛成されるかいなか。二つには、このような
国会の機能とは別に、
首相として、何らかの形式において、
アメリカの
核兵器持ち込みを禁ずる
趣旨の国際取りきめを行う御
意向があるかないか、この際はっきりとお答え願いたいのであります。(
拍手)
次に、
日中関係につきましては、
首相は、
わが国の現在の
立場において可能な
最大限度に
貿易や
文化交流を促進し、漁業問題を解決したいという
方針を述べ、国交未回復の
現状のもとにおける相互の
立場を理解し合うことの期待を表明されました。われわれは、この表現が少くとも前
国会の未期から
選挙中にかけて、もっぱら否定の面のみを強調した
政府の言動に比べて一進歩であると、これを一応額面
通り受け取るとして、今後の
実行振りを見守りたいと思います。またわれわれは、ここにいたずらに、過去の
政府の失敗を追及ないしはわれわれの正しい主張である
人民共和国を唯一の
中国として認めるべきことをあらためて論じようとは思いません。より現実の問題として、私は
日中貿易の完全なる
途絶と
漁業協定の効力を失なったこと、その他事実上
文化交流もとだえがちである、この不幸な
現状を打開することが、
わが国の
経済の
至上命令であるばかりでなく、
日中両国の
友好親善と互恵平等の
経済の発達のために、両国にとってきわめて望ましいという認識に立って、以下
質問を申し上げたいと存じます。
その第一は、
基本精神の問題でありまするが、これは前に申し上げましたごとく、
中国との
友好親善を口、にすれば、ただちに
承認問題に触れるから、これを避けると言わんばかりの
態度を、
日本政府側がまず一興することが必要でございます。言うまでもなく、
中国においても、当面
承認問題に触れず、しかし真に
友好親善の
基礎に立つ限り、
積み上げ方式に異存がないとわれわれは今日でも確信いたしております。従って、要は、
日本政府側の
気持と
態度いかんに帰着すると思うが、この
友好親善の
基本方針についての
総理の明確な
所信を承わりたいと存じます。
第二に、さしあたって必要なことは、すでに
民間三団体と先方との間に締結した第四次
貿易協定を完全に実施するための
政府の
支持と協力を与えることであります。それがために、特に
中国の
国旗に対する
日本政府の三百代言的な
態度を改める必要があります。
国旗に対して尊敬を払うことは、これは常識の当然であって、これは
国際慣例でもあります。そのことと国家ないしは
政府の
承認とが直接
関係のないことは、これは
国際法上議論の余地がないのであります。いわんや
新興国家の場合、
国旗に対する
考え方は、われわれの想像をはるかにこえる強烈なるものがあります。その
気持を尊重するところに、初めて
国際友好親善の
基礎が固まるのであって、
国旗に対する損壊などを、未
承認国の場合には
毀棄損壊罪をもって処理しようなどという
日本政府の交通巡査的な
考え方を、まずもって清算することが肝要だと思うのであります。これは良識の問題であります。
政府は、よろしく
長崎事件について遺憾の意を表明するとともに、いかなる国の
国旗に対しても、十分の尊重と保護を確保することが当然だという
態度を、あらためて表明すべきであります。私は、この問題がきわめて機微なることを十分に承知しておりますが、もし
総理において同感ならば、はっきりと肯定的な
答弁を願いたい。しかし、特に御注意を促したいことは、不用意な言辞や不適当な
答弁をなさるくらいならば、むしろ私は沈黙を希望いたします。(
拍手)
次に、
民間代表部の処遇の問題でありますが、これもまた
承認問題とは何ら
関係のない事項であって、要は相互に
通商事務に必要な便益と保護を与え合うことでありますので、
首相も、万御異存ないと信じまするが、そのような御
答弁を期待いたしたいのであります。
このように考えて参りますると、第四次
日中貿易協定を軌道に乗せ、これによって
貿易漁業等の行き詰まりを打開することは、今日なお可能であり、わが党としても、
政府の
出方いかんによっては、あえて協力を惜しむものではないし、
中国側に対しても、−われわれはわれわれなりこ自主的な
立場から大局を説く心がまえを持っていることを、ここに明らかにしておきたいと存じます。(
拍手)要は
政府が、
首相の抽象的な
見解の表明にとどまらず、すみやかに閣内、党内の
意見を統一し、
現状打開の手を打つのか、それとも一部の
強硬論に押し流されたり、安易な
楽観論たとえば
中国の方が困るであろうというような、そういうような誤まれる論に傾いて、ここ数カ月の間無為にして静観の
態度で送ろうとするのか、この点であります。
政府がいずれの
態度であるか、特に
首相、
外相及び
通産相から、はっきりとした御
意見を伺いたいのであります。
なお、われわれ
社会党といたしましては、前に述べたように、
政府の
決意を促しつつ、しばらくその出方を見て行くものであるけれども、他面、
日中経済危機打開の
国民運動の先頭に立って、世論の喚起に努める
意向であることを、はっきり申し上げておきたいと存じます。(
拍手)
次に、日中漁業問題でありまするが、われわれとしては、不幸にして
民間協定が効力を失った後においても、
中国側に対し、
日本側業者が
協定を確実に守るための
決意をしているから、さしあたり
協定の範囲における漁撈を黙認してくれるよう要請した次第であります。しかし、
協定の侵犯に対する制裁は、もはや
業者にまかしておけない
段階に至りましたので、この際、
政府としては、適当な
行政措置によって
協定の履行が実質的に確保できるようにすべきと思うが、これまた
首相並びに
農林大臣の
見解を承知いたしたいのであります。
次に、
財政経済問題に関して
質問をいたします。われわれはさきの
国会における三十三年度
予算の
審議に当って、この
予算の
基礎とされた三十三年度
経済計画が、すべて
輸出三十一億五千万ドル達成を中心として組み立てられたものであり、しかも、この
輸出目標自体がきわめて安易な
楽観の上に立った架空のものであることを指摘し、従って、この
予算がその
基盤から崩壊するであろうことを警告したのであります。しかるに今日では、本
年度輸出目標三十一億五千万ドルの達成はもはや不可能であり、せいぜい二十八億ドル程度ではなかろうかという
見通しになってしまいました。かくして本
年度予算編成の最も重要な柱の
一つはくずれ去り、三十三年度
経済計画は、根本的に再検討の余儀なきに至りました。今や
岸政権の
外交の失敗の結果、
日本の商品は、
中国においてはシャット・アウトされ、東に向えば
アメリカからも突き返されておる。言うならば、
往復ビンタでも食らわされたような情ないありさまになっておるのであります。
そこで、まずお伺いしたいことは、
政府は本
年度輸出目標三十一億五千万ドルを達成する確信を持っておられるかどうか。もし達成し得ると言うならば、その根拠を具体的に計数をもって明らかにされたいのであります。
日中貿易に関する
外交措置につきましては、すでに
質問いたしました
通りでありまするが、かりに
日中貿易の
途絶が相当長期にわたって続くとするならば、この面だけから見ましても、年間少くとも一億ドルの
輸出の不足をいかにして他の面でカバーされるのであるか。その
対策があるならば、これを明確にお示し願いたいのであります。また現在まで、
貿易途絶のために受けた
業者の損害は約三百五十億円に達すると算定されておりまするが、これらの損害の
補償、なかんずく
中小企業あるいは
日中専業の
貿易業者等に対する
補償ないし救済を、いかにしようと考えておられるか、この際伺っておきたいのであります。
さらに、
東西貿易促進の機運が世界的に高まっているこの際、
わが国は率先して
ココム制限の撤廃を提唱すべきと思うが、この点をいかにお考えであるか。一方、最近の
アメリカにおける
日本商品の
輸入圧迫の企図に対しては、
政府は、真に重大な
決意をもって画期的な
外交措置を講ずべきと思うが、
関係閣僚の派米その他の風説を含めて、いかなる
具体策を用意しているか、お示しを願いたいのであります。なお、対
米貿易に関する
恒久方策としては、
家内工業における極端な低
賃金をただ
一つの武器とする
飢餓輸出麦るいは
出血受注、雑貨の
投げ売り競争、こういう
貿易並びに
産業構造を改め、
中小企業と
下請産業の特色を生かしつつも、逐次、
高級雑貨、
精密工業、
機械類の
輸出増進に努めなければならないと思うのであるが、それにつけても
最低賃金制の名に値する
最低賃金法、
家内労働法等の制定によって、
わが国の
経済構造と
社会秩序を近代化することが急務と信ずるが、
政府の
所信を伺いたいのであります。
第二に、現在の
不況打開の
対策についてであります。この点につきましても、
輸出の
見通しと同様、前
国会の
予算審議において、われわれは
政府の見込みのように四−六月をもって不況が底をつき、漸次
経済が上向きになるというような、安易な
楽観は絶対に禁物であることを警告したのであります。今日、繊維、
鉄鋼産業等を初めとする
操業短縮はますます強化され、大資本に対する
インフレ金融を
よそ目に、破産、倒産する
中小企業や、窮乏化する農民は、デフレの犠牲となって打ちひしがれ、
失業者は四月五十五万をこえるありさまであります。この大衆の
購買力の減少の前に膨大な
設備投資が
過剰設備として立ちはだかり、供給と
有効需要との
アンバランスはますます
深刻化の様相を示しております。加えて
中共貿易の
途絶、さらに凍霜害、
日干害その他の災害の発生を見るに至って、
不況対策はまさに一刻もゆるがせにできない緊急な課題となったのであります。そこで、
不況対策の根本は何であるべきかと言えば、まずもって、前に申しましたように、三十三年度
予算の
基礎がすべて崩壊したのであるから、
政府はこの際、いさぎよくその
見通しの立て直しを断行するとともに、
補正予算を提出するのが当然でなければならないと考えるのでありますが、まず
政府の
財政経済の
見通しと
補正予算に対する
見解を伺いたいのであります。(
拍手)
次に、現下の
不況対策の根本は、
輸出振興策と並行いたしまして、従来の大
企業本位の
緊急政策を改めるとともに、国内の需要の抑制ではなしに、
勤労大衆の
購買力を増強し、
過剰生産に基因する需給の
アンバランスを回復することに重点が置かれなければならないと信じます。この意味から、さしあたって
経済基盤強化の名目でたな上げされる四百三十六億円の
資金を
資金運用部に預託し、大
産業向けに運用する方式は取りやめ、これを直接、
失業対策、
中小企業、
農林漁業の諸
対策に充当し、景気を振興する
方針に切りかえるべきと思うが、果して
政府がこれを断行する
決意があるかどうかを伺いたいのであります。
さらに具体的には、次に申し上げるような緊急諸
対策を講ずる必要があると思うが、
首相並びに
関係閣僚の所見をそれぞれ承知いたしたいのであります。
第一は、
失業対策事業の拡大でありまするが、
吸収人員を三十五万人に増員し、
就労日数を二十五日まで確保し、
失業保険金の
給付期間を三カ月ないし六カ月延長すること、第二、国の責任において、
雇用拡大のため、
公共事業費の繰り上げ支出、特に
雇用度の高い
事業、たとえば
土地改良、灌漑、漁港、
港湾工事、道路及び
住宅建設に重点を置くこと、第三、糸価の安定、凍
霜害補償、麦価の
減収加算の
措置を講ずること、第四、
零細企業、
農林漁業に対する融資を増額し、金利の引下げ、
利子補給、
損失補償、
債務保証を実施すること、第五に、公務員の
夏期手当を〇・二五カ月分追加支給すること、以上についてのお答えを願いたいのであります。
最後に
質問いたしたいのは、
選挙公約の実施と、これを含んだところの
明年度予算編成の
方針についてであります。
自民党幹部は、
選挙に当って、七百億円の減税と、他方、明年度からの無醵出老令年金の実施、さらに明後年には
国民健康保険の完全実施を
国民に公約しました。
岸内閣が、三十三年度
予算において、われわれの反対にかかわらず、社会保障に対し何らの熱意を示さなかったにもかかわりませず、
選挙を前にして、木に竹を継いだように唱えたこれらの社会保障の充実のスローガンであるがゆえに、その真実性に対して、われわれは多大の疑問を抱いたのは当然と言わなければなりません。(
拍手)いずれにいたしましても、今日、
国民は、
自民党の
選挙公約なるものが、例のごとくから手形であるのか、それとも実現の運びに至るものであるかを注目して見守っておるのであります。まず、減税でありまするが、その財源であるところの税収の自然増は、もはや今日期待できないのみならず、現下の不況のもとにおいて、税収の主軸である法人税は、自然増どころか、かえって見積りにも達しない、税務署はやっきとなって、ほこ先を
中小企業に向けておるありさまであります。従って、ここに伺いたいことは、
政府は、果して明年度七百億円と言われる減税の公約を実行する確信と誠意を持っておられるのかどうか。もし持っておられると言うならば、その確信の根拠、特に、今年度の税収の見込みをいかに算定しておられるかを明らかにされたいのであります。具体的には、標準世帯月収二万五二円までの無税、個人
事業税は所得二十万円以下は免税、これは必ず実行するものであるかどうか、その場合、例のように、間接税の増徴というようなごまかしの奥の手を使うものでないかどうか、この点も明確にお答えを願いたいのであります。(
拍手)
次に、
国民年金と
国民皆保険の実施について伺いたいのであります。
国民年金は、まず無醵出老令年金一万二千円という、全く老令年金の名に値しない内容のごとくでありまするが、しからば無醵出の母子年金、障害年金はどう計画されておるのか、さらに、醵出制の年金をどう考えておられるのか、その全貌を、大綱なりともこの際お示し願いたいのであります。
国民健康保険につきましては、明後年度完全実施というような、鬼が笑う公約ならばいざ知らず、少くともまじめな計画ならば、明年度における計画の概要を明示すべきであると思うけれども、明年度、明後年度にわたって、各被保険者の数何名を目標とするか、国の負担割合をいかにするか等の財政的、
基礎的計数を教えていただきたいのであります。
私は、以上をもちまして一応
質問を終りたいと存じまするが、どうか
首相並びに各閣僚は、率直かつ明快にお答え願いたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣岸信介君登壇、
拍手〕