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坂本昭君 円満に片づけば
人権がどんなに
侵害されてもいいということは、そういう言葉は私はどこにも通用することはできないと思います。
まず、今の情報というものはきわめて不的確であります。第一、この重大な問題に関して責任ある県警の本部長も現地にはもちろん行っておりません。それからまた、所管の一番責任ある高岡郡の中心都市である須崎市の署長も行っておりません。今の
報告はおそらくは警部補並びに駐在所の
報告だと思うのです。非常に大事な点が欠けているのです。私は一々こまかいことは反駁しませんが、まず大事な点でし上げたいことは、第一にくぎづけこ関して事前に駐在所では知っておったということですよ。これは重大なことであります。今のあなたの
報告の中にも書かれておりますが、すでに事前に駐在が
承知しておった。ただし、くぎづけをするということを口頭をもっての校長に対する連絡はそんなに前からあったのではありません。二十七日の朝、一斎休暇闘争のあけた翌日に村民は非常に感情的に激高して、そうして一斎休暇に対して陳謝と、それからこういうことをされる先生では困る、
一つ交代してもらいたい、そういう要求をもって校長のところへ押しかけて行った。そのときにも別にまだくぎづけなんかしていません。しかし、とにかく興奮した
状態が村下にあったということは事実です。それからあなたの方では部落民有の住宅ということを言っておられますし、特に学校に近接した学校の外であるということですが、実は校内の敷地の上に建てられた建物、ただし、その建物については県なり国なりが補助を出さないで校下民がこれを建てたということは事実です。従って、これは後ほど文部省に伺って、こういう寄付によって校内の敷地に建てられた場合にはこれは一体部落民有だか、あるいは学校のものだか、村のものだか、そういうことも検討しなければならない。今のいろいろな所有権についての基本的な点も明らかにする必要がある。ただ、そういう
状態の中でくぎづけをしたのはもうお昼近くなってからくぎづけをしている。なるほどあなたの言われた
通り、先生との間にいろいろな交渉をした。しかし、交渉の間に、くぎづけをしてよろしいです、私の家をくぎづけをしてしまって、水も使えない、ふろにも入れない、台所で炊事をすることもできないというような、そういうことをよろしいという先生はあるはずはありませんよ。むしろその激高した、いつ人身に対する危害が加えられるかもしれない場合だから、警官は常にその場におって危害が加えられた場合にはこれを守るというのが警官としての当然の態度であったはずだと思う。実際はそういう交渉をして、そうして、いわば交渉がととのわなかった。ととのわなかったのはもう午後です。ととのわなかったので、村民
たちは、しからば便所、炊事場、ふろ場、これはくぎづけをしますということで、先生
たちは台所の炊事場のなべからかまから、くぎづけされたら困りますから、急いでとって返して、それを取り出そうと思ったところが、もうそのときには、なべやかまは部落民が全部勝手に持ち出してしまって、全部くぎづけになっておった。つまり、無断で中のなべやかま類は全部持ち出してしまったという事実があるのです。それからさらに大事なことは、その日の午後になって九名の人が来て、徹底的に、中へ入ることのできない、使用のできないような
状態にしました。今私はここに写真を持っております、見て下さい。これはもうとにかく相当なものですよ。人間なんか通れっこありません。もちろん人が通れぬことはない、犬のようになって、下をくぐったら通れることのできる
場所が一カ所ある。一カ所あるけれ
ども、人
通りに面したところで、女の先生
たちが犬のようになってはって行って下をくぐるなんということが許されますか。当然これは重大な私は
人権侵害だと思う。のみならず、先生
たちが補給米を買いに行こうとしたら売ってくれません。それから出産後十一カ月の女の子を抱いた先生がおられたのですが、今の水の出るところのふろと炊事場をくぎづけされたために、二日間おむつをかえることもできなかった、こういう事実があるのですよ。こういう大事なことについては、あなたの部下である警官は
一つも
報告していない。そしてさらに、二十八日の日にこの校下民
たちは、やはり非常に激高しておって、早く明け渡してもらいたい、早く出て行ってもらいたいということを要求しました。しかし、これは非常な不穏な事態であって、そのときになって初めて村の教育
委員は、これはこういうことをやっておったのでは一大問題であるというので 今
指摘された土釜という教育
委員、その方が二十八日の午後三時になって、これはいけない、実は前日二十七日の夕方、教育
委員会ではこれは即刻取りはずそうということをきめたから、私が取りはずしますということを言って、土釜教育
委員が、一部のさくと便所のさくを取りはずして、炊事場のくぎを抜いて使えるようにしたのです。しかしさらに激高した村民
たちは、その後、二十八日の夕刻に学校の中へ入って行って、学校の中の
電話、この
電話もおれ
たちが寄付をして引いた
電話だから、これは使わせないと言って、
電話の前にすわって、二時間以上
電話を不法占拠しているのです。こういうことは警官は
一つもお知りにならない。学校の先生の住宅をくぎづけしただけじゃない、学校の中へ入って行って、
電話を激高のあまりに二時間も使わせないようなことをしたのですよ。そしてあくる二十九日の日の朝になりまして、校下民
たちもようやく激高からさめたのでしょうね、その中の一人が、私が責任を持つと言って、一応今までの大多数のくぎをはずし、さくを取りのけたのです。そのときに、一人で責任をとれるかと言って学校の方では質問もしております。が、いずれにしてもくぎはのけました。そののけた
あとに、十時ごろになって駐在の警官が御到着になっているのです。そしてその日の午後一時半になって、いよいよ校下民の
人たちが三人来られて、残っておったくぎも何もかも全部撤去しました。その撤去した
あとにまた警官は、それに追い討ちと言ったらおかしいのですが、追い討ちをして、全部のけなくちゃいかぬ……。ですからいつも警官はうしろから見ているだけなんですよ。うしろから見ているだけであってまあ幸いにしてこの学校の先生方が、ひどい目にあつたけれ
ども、歯を食いしばって、われわれは別に村の人に恨みはないのだ、それよりも勤務評定を強行する権力に対してわれわれは反抗しているのであって、村人には反抗しているのでないのであるからと言って、だからもちろん告訴もしません。しかし、歯を食いしばってがまんをしてそのときに事態を円満に解決することをこいねがっておる、一方においては、
人権がむざんにしいたげられていっているじゃありませんか。結局最後に、警部補が来て、片づいた
あとに、さあ全部取ってしまえと言って片をつけたのです。しかし、実はまだ一、二本のくぎは窓に残っておるようであります。これはこの前後を通じての
実情でございます。私はこの
実情が十分に
警察庁にも届いていないということは、これはあなた方の情報網がいかに怠慢であるかということを、これを
指摘せざるを得ないのです。高知県の県警本部長も知っていないですよ。何で知っているかというと、新聞を通じて知っているだけであります。私は新聞の切り抜きを持って来ましたけれ
ども、新聞を通じて大体事態がどうなっているかということを知っているだけなんです。今文部大臣も来ておられますから、
あとで伺いますが、こういう重大な
事件が実は高知県下には、二十七日以後全県下十九校起っている。そういうふうな場合において、
警察当局のとった処置というのは今のようなことしかとっていないのです。私は今の点について、長官並びに
局長が今法的に
説明をしておられましたが、これが
人権じゆうりんでないか、あるいは住宅
侵害、住宅侵入にならないか、御
説明いただきたい。