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1958-09-26 第29回国会 参議院 法務委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年九月二十六日(金曜日)    午前十一時開会     —————————————   委員の異動 八月十一日委員椿繁夫辞任につき、 その補欠として藤原道子君を議長にお いて指名した。 八月二十日委員矢嶋三義辞任につ き、その補欠として山口重彦君を議長 において指名した。 九月九日委員青山正一辞任につき、 その補欠として鈴木万卒君を議長にお いて指名した。 九月十日委員亀田得治辞任につき、 その補欠として島清君を議長において 指名した。 本日委員鈴木万卒君辞任につき、その 補欠として青山正一君を議長において 指名した。     ————————————— 出席者は左の通り。    委員長     野本 品吉君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            青山 正一君            雨森 常夫君            大谷 瑩潤君            小林 英三君            藤原 道子君            後藤 文夫君            辻  武講君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○派遣委員報告検察及び裁判運営等に関する調査  の件  (報告書に関する件)     —————————————
  2. 野本品吉

    委員長野本品吉君) それでは、これから委員会を開会いたします。  本日は・派遣委員報告を聴取することにいたしたいと存じます。  去る七月、検察及び裁判運営等に関する調査の一環といたしまして、第一審強化に関する諸問題、監獄法改正少年法等改正及び売春防止法等運営につきまして、東北、近畿及び四国、九州地方委員を派遣し、実地調査をいたしておりますので、各班ごとに順次御報告をお願いいたしたいと存じます。  それでは、第一班の東北地方棚橋君にお願いいたします。
  3. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 それでは、私から派遣委員を代表いたしまして、第一班の報告をいたします。  第一班は、青山、赤松の両委員及び私の三名が派遣委員となり、西村専門員及び田向調査員を随行として、去る七月二十一日から二十七日まで一週間、宮城、福島、山形、秋田、青森五県の順に、第一審強化、少年法、法、売春防止法等に関する事項について調査して参りました。  調査に当りましては、最高裁より海部総務局総務課長、同じく今井事務官、法務省より村岡営繕課長補佐、同じく建持係長が同行せられ、また現地関係者からも、千数百ぺ−ジに上る有益な資料が提出される等、各方面から甚大な協力にあずかりました。特に冒して、深甚の謝意を表する次第であります。  以下、調査事項について順次説明いたしますが、時間の関係上、なるべく簡単にとどめ、詳細は報告書に譲り、調査室に備えて御参考に供しますから、御了承を得たいと存じます。  第一、第一審強化に関する事項、この事項につきましては、審理促進の対策と状況、第一審強化方策地方協議会運営状況法曹一元化と裁判官の待遇改善その他の方策、判事補制度の検討、地裁調査官制度の採用、裁判所書記官等裁判書原本浄書事務の実情、裁判所、検察庁の職員の待遇改善策、庁舎、法廷等施設の状況、以上八項目にわたり、仙台、福島、秋田の三カ所において、裁判所、検察庁及び弁護士会の関係者と懇談を行い、福島、秋田、青森では、庁舎の現況を視察して参りました。  まず、審理促進の対策と状況については、便宜上第一審強化方策地方協議会運営状況とあわせて申し上げますが、各地とも裁判所、検察庁及び弁護一士会側委員からなる協議会をすでに数回にわたって開き、審理促進に関連するあらゆる問題を研究討議し、現在は、そこで採決された事項を実行に移している段階にあり、一般的には相当の成績をおさめているようであります。しかしながら、このような現地の努力も、結局においては、予算あるいは訴訟法の制約を免れず、根本的には裁判官、検察官の増員、法廷等施設の充実、訴訟法の改正をはかることが肝要であるとされているのであります。  次に法曹一元化と裁判官の待遇改善その他の方策については、いろいろ意見が出ましたが、最も多いのは、やはり裁判官の待遇の大幅な改善であります。すなわち、弁護士からの裁判官任官による収入減少及び将来退官後の生活に対する不安を除くため、裁判官の給与を相当程度引き上げ、かつ、弁護士在職年数を任官後の在職年数に通算するよう恩給制度を改正すべきことは、異論のないところであります。また、裁判書ないし訴訟手続を簡易化すべき方向にも異論がなく、さらに裁判官の仕事の内容を訴訟指揮、事実認定、法の解釈適用、量刑等に限定し、機械的事実的仕事は、他の補助機関の権限とすべき意見も出ております。法曹一元化については、将来弁護士、検察官から裁判官になるコースを制度化すべきものと思いますが、この点は、今回主として横察側から主張せられました。  次に、判事補制度については、現在の実情にかんがみ、その年限を五年に短縮してもいいのではないかという意見が秋田の直截支部から述べられたほかは、各庁とも現状維持説であります。ただし、任官後日の浅い判事補は、もっと活用する余地がある、このため二人合議制の採用を考慮すべきであるという意見が出ております。  次に、地裁調査官制度については、過般売春防止法の一部改正案の審議過程において、最高裁、法務省間に意見が分れ、結局本制度の採用方について検討すべき旨の本委員会の付帯決議が付せられたことは、記憶に新しいところでありますが、現地でも、今なお裁判所と検察庁とで意見を異にし、裁判所側が早急に制度化する必要ありとするに対し、検察側は、刑事訴訟公判中心主義当事者主義の見地から反対しているのであります。  次に、裁判所書記官等裁判書浄書事務の実情について申し述べます。昨秋以来秋田、熊谷その他の裁判所において、裁判書原本浄書拒否、すなわち奉仕労働返上闘争が進められ、さきに本委員会でも、これに関連する亀田委員の質疑があったことは、記憶に新しいのでありますが、第一班では、秋田の闘争が被懲戒処分者まで出すに至った状況から、特に同地を中心として、法曹懇談書記官等との懇談を行い、職場の実際を視察して参りました。なお、仙台、福島、山形、青森各地の組合支部からも、浄書事務の実情を説明した文書が寄せられました。  さて、秋田では、昨年十月全司法すなわち全国司法部職員労働組合中央委員会の秋期年末闘争指令に基き、同組合秋田支部の役員を中心とする一部書記官等が、地裁、簡裁、家裁家事部等において仮処分、仮差し押え、支払命令、略式令状その他一部の決定命令書審判書等調製浄書の事務を拒否して参り、総拒否件数は明らかでありませんが、本年三月二十四日から四月七日ごろまでの二週間内には六十二件を数みへこれについて、去る四月十六日拒否老中七名免職、五名停職の懲戒処分がとられたのであります。拒否という言葉については、組合側は、本来書記官が職務としてではなく、奉仕的にやってきた裁判書の浄書をやめる、つまり奉仕労働の返上だと言っておりますが、ここでは便宜上拒否という言葉を使用しておきます。拒否の理由は何かと申しますと、それは、裁判所法第六十条第二項その他民刑事訴訟法の解釈や、昭和二十三年のいわゆる三淵通達の趣旨から、機械的労働にすぎず、かつまた、書記官の名で作成するのでない裁判書の浄書は、書記官の職務ではない。事務官や雇は、書記官の補助者であって、裁判官の補助者ではない。それから、浄書には浄書者の判断が相当介入する実情であって、これでは裁判官による真の裁判ということはできないというのであって、これを代表する全司法木部の詳細な見解が資料におさめてあります。裁判所側の見解はもちろんこれに反対であって、書記官、事務官は、裁判所法その他関係規則、通達により、裁判官を補佐して訟廷事務たる浄書をする職務がある。また、裁判書原本作成の最終完全な法律上の責任は裁判官にあるけれども、それは、裁判官みずから筆をとってすることを意味するものではないとしております。これは、過般本委員会で表明さあります。秋田地裁民刑事首席書記官及び家裁上席主任書記官の意見もこれに同調的でありましたが、弁護士の中には、書記官の職務の公証官的性質をあげて、現状にやや批判的意見を述べた人もありました。  秋田が最も闘争的であったことについては、別段そこの書記官等の負担が他に比較して過重であるというような特殊事情は見受けられず、これは、中央で決定された低賃金打破、完全休養その他の目標達成の戦術として同地が闘争拠点に選ばれて強行されるに至ったもので、現地の組合側も、闘争目的の一つは、低賃金のもとで奉仕労働を押しつけられている実情を訴えることにあったと述べておりますが、しかし、そのゆえに懲戒処分を受けるとは、全く予期しないところであったと述懐しておりました。従って組合側の立場から考えれば、これは一般的に待遇改善問題として盛り上げ、あまり浄書事務の権限という観念論、解釈論的行動に深入りしないよう、十分その運動方法を吟味すべき余地があったかと思いますが、それはとにかく、今般の問題については、その根本に触れて、私どもの気づいた事柄を若干指摘しておきたいと存じます。  その一つは、事件の激増に伴う裁判官の一般的不足を解消する必要であります。これは、今さら申し上げる必要もないほどで、現地でも審理促進対策としてその増員を要望していることは、先に述べましたが、十年前に比較しますと、第一線裁判官事件負担率は、民刑事全部含めて三倍前後の過重振りであります。そして書記官、書記官補の場合も、事務官、雇の分担を別とすれば、二倍半前後の負担率となっていますから、一応浄書事務の面で翼記官の負担が量的に増加したばかりでなく、質的にもその負担にしわ寄せレなることは、自然の勢いと考えられます。従って、裁判官の増員及び裁判専務の合理化、能率化、簡素化をはかろことが必要であります。  その二は、書記官の地位にふさわしい待遇改善の必要であります。書記官は、昭和二十四年裁判所法改正に上り、事務官から独立し、固有の専属的職務権限を与えられ、裁判官を補佐して、事務処理の中心となる高い地位にありながら、その待遇は、一般公務員に比し必ずしも高いとは言えないようであります。この点は、最高裁当局の説明を聞かなければ、具体的な待遇の差は判然しませんが、とにかく待遇引き上げを検討する必要があるかと存じます。なお、灰関するところによれば、当局では、現在裁判官の権限にある各種の事務を書記官に移譲し、これとの見合いにおける待遇引き上げを具体的に検討中であるということでありますが、これが事実とすれば、法曹一元化の推進にも寄与し、浄書事務の現状にも沿う注目すべき改革であります。  その三は、浄書事務に対する指導監督の強化の必要であります。浄書の中には、支払命令略式命令その他、書記官等が一々裁判官の具体的指示を受けることなく、あらかじめ与えられている包括的指示あるいは慣行により、自分で一件記録を調査、浄書の上裁判官の判断を仰ぐものが多いのですが、この種浄書に対し、往々裁判官の記録精査が十分でなく、中には機械的に審査してめくら判を押す例があったとの非難が書記官懇談の際述べられ、また、弁護士からもその一例があげられております。もとよりこれは、裁判官の多忙等による例外的現象でありましょうが、浄書事務に従事している者は、書記官に限らず、雇、廷吏も含まれており、しかも、これらの者は、法律知識も十分でないにもかかわらず、実際は相当浄書事務に従事している実情でありますから、裁判官はもちろん書記官も、その指導監督に十分意を払う必要がある。特に一部の決定命令については、それが通常定型的に処理し得られる性質のものであるということから、厳密正確な審査がおろそかにされることのないよう、この点常に裁判官による厳格な事後審査が書記官の補助のもとに遂行されることを特に望んでおく次第であります。  次に、裁判所、検察庁職員待遇改善については、職員の福利厚生施設を充実してもらいたいという希望が最も多くを占めております。次いで裁判所の方では、書記官の待遇改善の要望でありますが、これは、ただいま申し述べましたから省略いたします。それから検察庁では、検察事務官の大部分に公安職俸給表(二)が適用されていますが、これを全事務官に適用して、公平をはかってもらいたい。また超勤手当は、実働の二〇%という微々たる有様であるから、予算増額を望むとの声が秋田でありました。  最後は、庁舎、法廷等施設の状況でありますが、最近新装成った青森の裁判所等一部を除いては、概して施設が古く、かつ不備の点が多いようであります。私どもが視察した福島、秋田の地裁のごとき、見るからに老朽建物で、新改築を要するものと認められましたが、その他にも、老朽あるいは戦後の粗雑な建物で、新改築を要するとされているものは相当多いようであります。施設の不備としては、秋田地裁を初め一般に調停室が不足しており、法廷の不足も、仙台、秋田等これに次いでおり、また裁判所、検察庁が同居しているため、相互に狭院不便を来たしているのが支部に比較的多いように聞いております。これらは状況のごく一端にすぎませんが、東北地方のような積雪寒冷地においては、庁舎の諸施設に特別の考慮が払われて然るべきであると感じて参った次第であります。  第二に少年法に関する事項。この事項につきましては、少年法の運用並びに少年院の運営の状況、少年犯の年令引き下げ、少年犯に対する検察官の先議制の各問題等四項目にわたり、仙台の青葉女子学園の視察ほか各地の法曹懇談を通じて調査いたしました。  現地の少年犯罪の趨勢は、全国的な現象と軌を一にし、年長少年悪質犯罪及び道路交通事犯の増加が顕著であります。ここでは一々数字をあげることを差し控えておきますが、かような少年犯罪の動向から、近来少年犯の年令引き下げあるいは検察官先議制の採用があらためて論議を呼んでいることは、御承知の通りであって、現地でも、おおむね保護優先主義を貫こうとする裁判所及び保護執行機関と、治安維持を重視する検察庁との間には、その採否をめぐって意見の対立が見られました。もっとも、保護執行機関仙台矯正管区及び青葉学園)では、現行体制を支持する前提として、少年院の機構を人的物的に一そう強化する必要ありとしております。最近全国における非行少年の約半数は、一度保護処分の門をくぐったことを指摘されていますが、現地でも、仙台地検の受理した少年犯罪者の三四%、青葉女子学園在院者の約半数が同様であって、このことは、さきの二つの問題に関連して、少年院機構の強化について検討の必要を示すものと考えられるのであります。  それから、現在家裁の審判に対しては、検察官の不服申立方法がないため、その道を開けとの要望が検察側一般にありますが、この点は秋田で話が出て地裁側も賛同いたしております。これも、今後少年法改正に当って十分考慮すべき問題と存じます。少年の道路交通事犯については、検察側から、保護処分に親しまない犯罪であるから、少年法の適用からはずす方がよいという意見が出ましたが、裁判所側の態度は明らかでありません。その他少年審判全国的基準を確立せよとか、少年院の種類をさらに細別せよとか、観護措置の更新を二回以上できるように法改正をせよとか、いろいろ要望、意見がありましたが、割愛して報告書に譲ることにいたします。  第三に監獄法に関する事項。この事百項については、法の運用並びに刑務所の運営の状況、法改正上の問題点のうち、外泊休暇制及び通勤作業制の採用、作業賞与金、懲罰、差し入れ等の合理化。未決拘禁法分離確立等の諸項目にわたり、山形刑務所視察懇談及び各地の法曹懇談をを通して意見を聴取して参りました。  山形刑務所は、明治十六年以来の古い施設であって、今では近代行刑施設としての機能に欠けるところ多く、場所的にも山形市の中心部に位置しているため、同市の協力を得て、郊外に三万坪の移転地を入手し、本年度から四年計画で、すでに移築工事に着手しております。視察当時の拘禁率は、構外を除いて二二二%、仙台管区内でも最も高いランクにあります。  今回取り上げられた監獄法改正上の問題点は、従来から論ぜられているものの一部にすきませんが、外泊休暇制通勤作業制の採用については、社会感情との関係から慎重な検討を要する。差し入れについては、衛生、再犯防止等の観点から、差し入れ資格者を業者、保護者等に制限する方がよい。懲罰については、人権尊重の建前から、十分な審理が保障されるように具体的に規定すべきである。作業賞与金については、現状はあまりに少な過ぎるから、相当増額の必要はあるが、これを本人の請求権まで持っていくことは疑問である等の意見が管区及び刑務所から述べられました。懲罰は、現行法に十二種類規定されていますが、山形刑務所の過去一年間の状況は、軽屏禁が最も多く、次いで作業賞与金減削、叱責、文書図画閲読禁止の順となっております。去る八月二十一日の新聞に大阪地裁か運動禁止、減食及び重解禁の懲罰を憲法違反であると判決したことが大きく報道され、注目を引きましたが、山形では、これらの懲罰が課せられた例は最近一年間にはないのであります。また、いまの判決は、新聞、時事論説の閲読禁止も違憲であるとしたとの報道でありましたが、この点について管区でも、閲読を認めるべきだと申しております。それから、山形の昨年度作業賞与金高は、一人当り月最高八百九十円、最低十円、平均百十八円で、きわめて微々たるものであります。  未決拘禁法については、各地の地検も含めて、監獄法から分離確立すべきことに全く異論がなく、なおこれに伴い、既決、未決の施設を分離すべきことが要望されております。それから現在は、警察の代用監獄死刑確定者に関する独自の規定を欠いておりますが、これの確立も望まれております。  第四、売春防止法等に関する事項。この事項については、法の運用並びに婦人相談所等の運営の状況、性病対策等三項目について、福島、山形、秋田三県庁における懇談及び各地の法曹懇談を行い、山形県の保護収容施設、秋田県の婦人相談所及び保護収容施設を視察いたしました。  今春刑罰規定の実施を前に、三県内の業者、従業婦等は、一応転廃業を完了した形になっていますが、転業業者の経営状態は一般に不良な上に、旧従業婦の方も、次第に食い詰めて、漸次旧雇い主をたよって舞い戻ってくる傾向にあるといわれ、各県とも本年度は、一般に対する法の趣旨の普及徹底、保護更生措置の強化、取締りの適正化等を基本方針として、関係機関の密接な連係のもとに、鋭意売春対策を推進しております。  旧従業婦の保護更生には、一般の理解とあたたかい就職の世話が必要でありますが、山形県では、他にあまり類例のない職親制度の開拓に力を注ぎ、職親として登録した理解ある業者に就職させる措置をとっております。しかし、これには依託費を要する場合があるため、その国庫補助化を要望しているのであります。秋田県では、従来売春婦の供給源といわれてきた汚名をそそぐため、婦人活動に熱を入れ、婦人保護施設婦人会館と名づけて、婦人センターとしての広い性格のものに持っていくことに努力しております。しかし、三県を通観すれば、婦人の協力や団体活動は、必ずしも活発とはいいがたいようであります。ちなみに、福島県の保護施設は、しゃくなげ寮と名称してあります。山形県は、視察当時建設中でありました。保護施設に収容する精薄度の高い婦女子については、分類収容を考慮する必要があるという意見が福島県から出ております。それから同じく、施設長の権限を強化し、収容保護者の行動をある程度規制したり、無断退去者の遺留品を保管処分できるようにする必要があるとの意見でありました。  婦人相談員の選任状況は、福島定員現員とも七名、うち男五名、女二名、山形定員七名、現員六名、うち男二名、女四名、秋田定員五名、現員四名、これは全部女性となっておりました。相談ケースは、一般に妊婦、精薄、子持ち等むずかしい条件を持つ傾向にあり、また、自前酌婦の指導更生はすこぶるむずかしいということでありますが、福島県の意見としては、相談員を高度の知識を持つ専門職に改善する必要があるということでありました。  次に、売春事犯については、防止法違反で起訴された者、福島管内十一人、山形管内二十二人、秋田管内六人、いずれも業者等であって、売春婦はありません。罪種は、場所提供が最も多く、次いで管理売春、周旋の三つで、判決のあったのは、福島二件、…形二件、いずれも求刑より下回っております。各地とも組織売春はありませんが、福島県警察本部から、将来その発生のおそれありとして、常習売春の処罰立法の要望がありました。  性病対策については、赤線解消に伴い、各県一様に、性病予防思想の普及、接触者調査の強化、検診治療費減免措置等に乗り出しておりますが、患者の受診率は低く、届出患者は、実際の数分の一程度と見られております。これは、経済上の事由が最大の誘因と考えられるため、現地では全面的な検診治療費公費負担制度の採用を要望しているのであります。  最後に、秋田において、北秋田郡森吉町長等より簡裁区検設置促進の陳情を受けましたので、つけ加えておきます。  以上、概要でありますが、御報告といたします。
  4. 野本品吉

    委員長野本品吉君) 順次第二班、第三班とお願いいたします。
  5. 大川光三

    大川光三君 私から第二班の現地調査の結果を御報告いたします。  第二班は、亀田委員と私が、奥村調査員及び三嶽法制局参事を伴い、七月二十一日から六日間にわたり、愛知、兵庫、和歌山の各県及び大阪府において、第一審強化問題等四項目について現地調査を行なって参りました。  すなわち、第一審強化問題につき、七月二十二日、同二十五日と、それぞれ名古屋、大阪各高等裁判所法曹各界と懇談し、他方裁判所職員とも懇談を遂げ、さらに同二十三日、二十五日と、それぞれ神戸、大阪の交通事件裁判の実情を視察いたしました。少年法問題については、各地の法曹懇談で意見を徴するとともに、七月二十五日浪速少年院を視察し、監獄法問題につきましては、同月二十四日和歌山刑務所をたずね、大阪婦人補導院分院和歌山婦人寮もあわせて視察いたしました。また、売春防止法運用問題は、七月二十三日兵庫県庁、翌日和歌山県庁と、連日調査を行い、兵庫県では、婦人保護施設神戸婦人寮」を見学し、和歌山市の調査後、和歌山地方裁判所長の要請により、同裁判所営繕の視察を行なったのであります。なお、本調査に当り、最高裁判所事務総局人事局西山給与課長及び樋田事務官は終始同行され、諸便宜を供与されたことをこの際御報告いたします。  第一、第一審強化問題について。第一審強化問題は、従来より論議のある司法の緊急問題であり、審理促進の障害の一としては、一般に裁判官の不足が訴えられているのでありますが、名古屋大阪谷町等裁判所管内裁判官の陣容を見ますると、本年七月現在で、名古屋定数二百三名中七名の、大阪定数三百七十四名中十一名の欠員補充すらそれぞれ困難な状況であるといわれ、大阪の場合、昭和二十三年当時からはわずかに一割程度の増加でしかないのに、事件数は倍加しておるのであります。昭和三十二年度大阪店等裁判所管内裁判所民刑事事件新受、未済総件数に例をとり、昭和二十四年度と比較すれば、民事事件においては二七八倍の十四万二千六百三、未済が三・七倍の四万八千五百十八、刑事事件において二・四三倍の六十八万五千二一百工、未済が〇・九倍の一万六千五百九十六となっております。このため、昭和三十一年七月十九日の最高裁判所通達に基き、名古屋、大阪各地方裁判所でも第一審強化方策地方協議会を開催、民、刑事各部申し合せ事項の実行に当っていますが、にわかにその成果をあげることは困難のようであります。検察庁でも人員の不足を訴えており、たとえば、昭和三十二年度大阪地方検察庁新受事件総数は、昭和二十五年の二・二倍に達するにかかわらず、現在検察官を含めた検察庁全職員の配置定員は、昭和二十三年度の一割以上の減となっており、なかんずく検察事務官等の減員が目立ち、少くとも現人員の三割増加は絶対必要であり、職員の待遇改善の根本策は人員の増加であるとする点、各地一致した要望、意見であったのであります。庁舎、法廷等の施設については、各地の裁判所検察庁から施設の不完全、狭隙、老朽化が訴えられ、名古屋高等裁判所は狭隘で、いまだ和解調停室はなく、三階に便所なく、大阪高等裁判所では雨漏り、まだ足りない二千百一坪の敷地、裁判官宿舎の老朽化、少くとも一開廷日一カ部一法廷に増加してほしい法廷事情、使える自動車が四台しかないといった現状であり、ただ、同居の大阪高検、地検については、最近移転の話が具体化する予定と聞いたのは何よりでありました。弁護士会でも、裁判所に記録閲覧室を、検察庁内−に控室をそれぞれ設けることの要望がなされていました。  以上のような現状に対し、第一審の審理促進の対策の一つ、人員の増加についてこれは法曹一元化とも関連しますが、名古屋高等裁判所では、将来の人的資源確保のため、司法試験制度を再検討し、大量採用するか、あるいは裁判官の地位待遇を大幅に向上させるか以外にないという意見が出ており、また検察庁から、法曹一元化の対策として、これを妨げる隘路の除去が先決問題で、その隘路としては、裁判官の待遇もあるが、それ以外に各法曹のセクショナリズムがあるという意見が出て、いずれも注目されたのであります。  第一審強化問題と関連して、現行判事補制度並びに地方裁判所調査官制度の採用について意見を求めましたが、各地検察庁弁護士会は不満ないし否定的見解であり、裁判所と対立いたしております。  次に、裁判書原本浄書事務の実情について申し上げます。  この問題は、昨年八月組合員の待遇改善闘争の一環として、全司法、すなわち全国司法部職員労働組合が全国に指令した裁判書原本浄書拒否運動に関連するのでありますが、名古屋、大阪各高等裁判所管内における裁判書原本作成浄書事務の実際を主として申し上げたいと思います。  裁判所側から示された裁判書原本作成浄書事務の処理方式として、従来判決は裁判官が起案し、タイプライトした後検討し、署名捺印して原本完成するのが通例で、決定、命令においては、抗告、異議事件のごとく複雑なものは判決と同様手続であり、内容の簡明なものについては、裁判官は主文、理由等の趣旨を告知、書記官等がその告知の通り記載し、書面を作成し、またはタイプライトし、これを裁判官が検討し、署名捺印して原本を完成するのが原則であり、この場合、定型的文言を不動文字で印刷し、必要事項の記載欄を空白にしてあらかじめ準備する用紙を用いる場合と、用紙のない場合とがあるということでありますが、書記官等の説明では、略式命令支払命令、家庭裁判所の一部審判書、決定等について、裁判所の説明するような裁判官からの告知、大綱指示はほとんどなく、書類作成後の不許可、訂正もあったことはなく、実質ヒ初めから書記官等の手により裁判書原本書類が作成され、裁判官は追認の形で署名捺印するだけであると言っても過言でないと非難しており、これは全司法の主張と同様であります。  書記官等との懇談から拾った二、三の具体例を申し上げますと、名古屋、神戸、大阪各地方裁判所管内共通ですが、勾留状発布手続に警察官が介入、協力していることであって裁判所の事件簿記入、勾留状、尋問調書までも警察官があらかじめ準備している現状であり、ただ大阪では、昨年秋から令状部を設け、専任判事が配置されてから、尋問調書のうのみという事例は改められたと聞いています。  保全事件は、内容が定型的でも保証金の決定の際に大綱が示される唯一のものであり、強制執行競売事件における配当表についても、計算等はすべて書記官等の仕事であり、簡易裁判所の過料事件中戸籍法違反過料裁判も、あらかじめ渡された解怠期間による過料金額一覧表に基き金額を記入、原本書類完成の後裁判官の署名捺印を受けるのが実際で、訂正された例もなく、また、家庭裁判所保護処分決定も、名古屋では、最近まで裁判官は送致の言い渡しのみで、主文、非行事実その他意見等は、すべて書記官等が合議して作成することが多かったのであります。大阪では、少年の夜間緊急同行状発布にも、裁判官は不関与であったと言っても過言でなく、従来当直限りで発布したが、最近改められたとはいえ、電話連絡だけであり、依然少年審判規則にも反し、未解決のままであります。  一般的に裁判官としても、事件の増加に伴い、裁判書原本書類の事後審杏も形式的ないしはめくら判となりがちで、はなはだしきは、裁判官の印章も書記官等に預け放しの例が民事競売事件の決定、刑事勾留更新決定について存在したことは、一部裁判官についての事例とはいえ、注目に値するのであります。  さらに、各地裁判所書記官等から、家事審判法による調停期日に裁判官が出席することはほとんどないという実情が訴えられ、問題とすべき事例であると思われました。  以上、一部の決定、命令の裁判書原本作成の実質的事務担当者は書記官等であることが懇談等を通じ判明したとともに、裁判官不足のためのしわ寄せ等が感じられたのであります。裁判書原本作成浄書事務について、裁判官事後審査という事務処理方式をかりに是認するとしても、裁判の権威を高めるためには、裁判官の人員増加の必要を強く感ずると同時に、書記官等待遇改善には十分留意されんことを望むものであり、近時伝えられる書記官への職務権限委譲問題の検討も大いに期待されるのであります。  次に、交通裁判の模様について申し上げますと、神戸簡易裁判所交通部は、兵庫県警察神戸市警察部木造庁舎二階にあり、警察、検察庁の各室が隣接して並び、多数の人々で混雑しており、八名の職員が年間四万三千件、一日約百五十件を処理し、一人の裁判官が機械的に認印している実情であり、また、大阪簡易裁判所交通即決部も、書類送付にベルト・コンベアを使用し、事務能率をはかってはおりますが、一日平均五百二十件を二人の裁判官、十六名の職員が短時間に処理しなければならない関係上、多忙、混雑をきわめる状況で、このような裁判手続に対しては、批判の余地があると思われますが、特に神戸の場合、独立庁舎の建設が望まれます。  結局、第一審における訴訟促進強化の根本は、裁判官検察官並びに職員の増強であり、物的施設の整備強化であると考えるのでありますが、何しろ予算面の制約を緩和することが先決で、これに邁進努力すべきことを痛感させられたのであります。この際、裁判所、法務当局には、積極的に裁判並びに司法行政の現状を明らかにすると同時に、世の認識を深めることについて、創意工夫あらんことを望むものであります。  第二、少年法問題について。まず、少年犯罪状況については、刑法犯、特別法犯とも毎年増加し、総件数の過半が特別法犯で、その八割が少年による交通違反事件であり、昨年度大阪では五万四千件にも上っております。罪種別では、凶悪犯以外は増加し、性犯罪、傷害、暴行、恐喝事犯が目立ち、大阪高等検察庁管内で、本年三月までの成人を含めた受理人員に対する少年犯罪の百分比は、性犯罪中四五%、恐喝中六二%、暴力行為、銃砲等所持中三八%の状況といわれ、そしてこの種犯罪は、年少少年に多いということは寒心にたえないものがあります。  少年犯罪の現状に対しては、検察庁は強い態度で臨んでいますが、逆送される件数は、裁判所受理件数の二ないし三%にすぎず、その六、七割が裁判所の不処分、不開始に終ってしまう状況に対して、治安当局として強い不満があり、少年法全般の運用に対して鋭い批判が生じている現状であります。  少年院の運営に関しては、大阪府の浪速少年院を視察しましたが、同少年院では、不順応少年の増加が目立ち、全収容少年の三割が適正処遇を受けるに困難な状況にあるといわれ、院長の対策として、少年院種別の指定は矯正管区で行うよう改めること、入院中の不順応少年に対しては、処分取り消し、変更、検察官送致ができるよう改めること、処遇、職業補導態勢の整備等があげられ、根本的には少年院の人的物的貧困に起因し、これが整備充実すれば、あえて少年年令引き下げの要もないという意見があったのでありますが、すべて感を同じゅうしたのであります。少年の年令引き下げ問題、少年犯罪に対する検察官の先議権の採用問題には、裁判所は反対し、検察庁は積極的意見であることはどこでも一致しており、また、家庭裁判所の決定に対する検察官の抗告権を認めるよう改めることには、裁判所検察庁とも賛成の立場でありました。その他少年刑事事件管轄、十六才未満少年の検察官送致、成人事件の公訴提起等に関しても、裁判所検察庁からそれぞれ意見が出されましたが、要するに、効果的な少年問題対策を確立するには、犯罪原因の分析や非行少年の矯正効果の測定、少年院等の処遇技術の改善、更正保護施設の充実など実証的研究の結果を待ち、慎重に対策を立てることが肝要で、今後当委員会においても研究課題の一つであると考えます。  第三、監獄法問題について。和歌山刑務所は、昭和十九年から女子受刑者の収容施設とされ、初犯、累犯、精薄、精神異常の拘禁分類により、七月二十日現在三百六十二名を収容していますが、従来入所者中から改善可能な者を毎月十名ずつ笠松刑務所に移送する関係上、残るは短期刑の者と悪質の者が大半という状況であり、拘禁分類も多様なため、処遇も困難をきわめ、最近は、社会不況も反映してか、反覆犯罪に陥る者も多く、質的低下、性道徳の頽廃が日立つ状況であります。  目下処遇上の問題点として精神異常者に対する特殊拘禁舎房の確立、人工妊娠中絶の予算裏づけ確保、所内分娩禁止の確立、携帯乳児、同性愛傾向があげられ、早急の解決が強く望まれております。なお同所では、三田所長の努力で、女子受刑者釈放後の更生に資するため、昭和二十八年全国矯正施設に先がけて美容学校を設立し、今日まで成果を上げ、他方調理士講習、洋和裁、茶道等の養成にも力を注がれておることは、敬意に値するものであります。  刑務所の運営に関し、同所保安課女子職員の勤務状況については注意すべきものがあり、例えば、年間休暇日数は、本所、支所合せて一人平均七。五日で、一カ月一日にも満たず、超過勤務手当の支給率は七割という状況で、女子職員の疲労緩和、健康管理のためにも、せめて夜勤勤務の二部制を三部制に、超過勤務手当も十分に支給されたいと強く要望されました。その他受刑者に対する外泊休暇制、民間企業への通勤作業も、現情からは実現困難であるとされ、作業賞与金、懲罰、差し入れ禁止等の合理化、未決拘禁の分離確立問題には、刑務所検察庁弁護士会は賛意を表しております。参考意見として、裁判所検察庁から監獄内の医療施設の完備が要望され、在監者事故による災害補償制度の確立、作業時間の明確化、休日制の確立、病患者のための別異拘禁施設の完備、性処理の解決等について有益かっ適切な意見ないし要望が刑務所から提出されました。  第四、売春防止法等の運用について。まず、検察庁における売春防止法違反事件の処理状況を見ますと、本年四月から六月までの事件受理は、名古屋五十一名、神戸二百八十三名、大阪八百三十八名で、起訴率は、神戸四三%、大阪三四%、名古屋二〇%と、いずれも低率を示し、一方裁判所の刑事処分状況については、名古屋では、本年五月公判請求四件のうち一件だけが処理され、大阪では、本年四月から六月まで通常事件受理が二百十二件、未済が半数以上の百三十二件となっており、刑事処分面の困難さがわかるのでありますが、まだ少い件数とはいえ、今後の運用の適正を期するため一段の検討が要求されます。  また、大阪家庭裁判所では、すでに二名の少女を売春防止法違反で少年院に送っていますが、売春防止法違反により少年院送致した少女を収容する特別補導少年院の設置が望まれています。  次は、兵庫、和歌山両県における売春防止法運用状況として、まず、業者、従業婦の動態ですが、昨年四月日現在では、兵庫県下赤線業者五百十三名、従業婦二千四百三名であったものが、本年三月十五日にはその大半が転廃業し、自粛態勢を示したのでありますが、最近においては、料理屋、旅館、飲食店等に転廃業した旧赤線業者は、その後の営業不振等から、漸次もとの売春企業に復帰する傾向を示し、その手段も悪貿、巧妙化しており、一方従業婦も四割が復帰し、現在約千名近くに増加しているものと見られます。和歌山県下では、本年二月末現在で業者二百九十二名、従業婦四百二十名を数えましたが、今日では相当数減少したものと見られており、兵庫県と対照的であります。  婦人相談所相談員の処理状況としては、本年四月以降相談件数は激減し、その内容も就職あっせん等に変りつつあり、現に神戸では、相談所、組談員の職務範囲を明確にするとともに、人員強化、設備拡充等強い要望が見られたのであります。  婦人保護施設は、兵庫県に三カ所、和歌山県に一カ所あり、最近の状況として、売春婦はこれら施設に入ることをきらい、その利用度ははなはだしく低下している実情であります。県の委託経営である神戸婦人寮を視察いたしましたが、収容者には五十一才の高齢者もおり、病弱、精薄者が多く、社会復帰の可能性の少い状態であることには暗然たるものがありました。兵庫県における更生資金貸付は、保証人不要という積極的なものでありますが、いまだ十分に活用されてはおらず、和歌山県のごとき、全然その貸付実績がないという有様であります。  また兵庫、和歌山両県とも、性病患者の増減については今や不明状態で、罹病者発見についても、性病予防の点からは捕捉しがたくなっており、任意検診の徹底をはかっておりますが、現在の行政力では疑問で、根本的性病対策の樹立が望まれています。  次に、取締り方面では、兵庫県警察は、本年四月から七月二十日までに売春事犯四百五十五件、四百六十二名を検挙し、白線化しつつある売春事情に対処しているのでありますが、今後も重点を暴力売春、散娼、街娼、管理売春の取締りに置き、その徹底を期しており、和歌山県でも同様取締りに努めていますが、注目すべきは、売春防止法第五条違反事例は皆無であるということで、地方の売春事情の一端がうかがえるのであります。  大阪婦人補導院分院和歌山婦人寮は、本年七月五日和歌山刑務所の一部を区画し、本院完成するまでの仮院として出発、定員五十名のところ現在二十三名を収容、六名の職員が補導に当っていますが、いまだ本格的とは言えず、本院の完成が一日も早からんことを望むものであります。ここで問題とすべきは、収容者中一名の精神病者があることであって、裁判所検察庁の刑事処分の実際について慎重検討を要する面があるのではないかと思われるのであります。  最後に、各地売春調査の結果認められることは、法施行後も売春行為は依然あとを絶たず、いわゆる白線化し、異なった面で違った形で盛り返し継続されている模様であります。それにもかかわらず、婦人更生のための相談、保護諸施設の運営は形式に流れんとしており、新設の婦人補導院の建設管理も不円滑の状態であり、警察取締りも困難をきわめ、刑事処分の実際も低率であり、他方性病予防面でも無策であることを認めざるを得ないのであります。  今日法律運用の適正化の点で、売春防止法ほど至難なものはなく、その目的、性格からも、国民感情、法の権威のためにも、政府は深く今後の対策等について検討し、対処する腹がまえが必要であると存じます。  以上、詳細は報告書等に譲ることとし、第二班の報告を終ります。
  6. 宮城タマヨ

    宮城タマヨ君 第三班の委員派遣報告を申し上げます。  第三班の派遣委員は、野本委員長と私でございました。随行は天久調査員でございました。この一行で去る七月十六日から二十三日までの八日間・福岡、大分、愛媛及び香川の四県を回って参りました。  すなわち、第一審強化に関する事項等につきましては、福岡高等裁判所及び松山地方裁判所において現地法曹関係者懇談の形で行いました。矯正関係事項につきましては、各庁において説明を聴取し、各施設視察いたしました。また、売春防止法に関する事項については、大分県庁において関係者より聴取いたしました。それから、日程外ではございますが、大分市においては、大分県青少年更生保護会及び成人更生保護会の要請によりまして、成人及び青少年保護施設視察もいたしました。  以下、調査要綱記載の順序に従いまして、現地一般的な見解を概略申し上げます。  なお、本調査には、最高裁判所家庭局森田課長及び法務省の矯正局福井課長が御協力下さいましたことに謝意を表します。  まず、第一審強化に関する事項のうち審理促進対策状況についてでありますが、これについての現地一般の考え方は、訴訟手続上の合理化能率化等について、いろいろの議論があるところでありますが、手続面の改善だけでは審理促進の目的達成には不十分でありまして、結局は、これと並行して、裁判官検察官、その補助者である職員増員と諸施設の充実強化を十分しなければ解決できない事柄であるから、すみやかに職員増員と諸施設の充実強化をはかるべきであるとの見解でございます。ある裁判所では、この問題と関連して、簡易裁判所の事物管轄を拡張して、これによって生じた裁判官の余裕を大都市の地方裁判所事件もしくは高等裁判所事件に当らしめることも考えられるとの意見がございました。  次に、第一審強化方策、地方協議会運営状況でございますが、各地ともその運営は良好のようでありました。協議会での議決事項も漸次実行に移されて、多大の効果をあげつつあると認められました。  法曹一元化については、もちろん反対の意見もありませんでしたが、現実の問題として幾多の難点が含まれておりますので、これをいかに打開するかが議論の中心となりました。結局は、弁護士在職年数任官後の恩給年限に通算する措置を講じ、官舎や自動車の支給等の物質面においてもっと優遇の道を考慮すべきであるとの見解でありました。  判事補制度については、裁判所側の考え方は、制度そのものを再検討するよりも判事補の活用を考えるべきで、たとえば簡易裁判所の事物管轄を拡張すると、自然地方裁判所の第一審とする事件が簡易裁判所に移行するので、地方裁判所の第一審事件を今よりもはるかに多く合議体で審議することができ、その合議体に任命後三年未満の判事補を加えまして、そこでみっしり実務を身につけさせた上、簡易裁判所判事として単独で簡易裁判所事件をさばいていけるようにいたしますと、結局は、事件審理促進及び第一審強化に役立たせた上、結果においては、若い判事補の活用に大いに役立つことになるということでございます。検察庁側は、現在の判事補制度は過渡的なものであるから、おいおいこの制度を廃止して、判事は検事または弁護士の優秀者から任命することにすれば、法曹一元化の理想にも通ずるものとしてその廃止を要望しております。弁護士会側は現行法の十年を五年に短縮すべきであるとの意見でありました。  家庭裁判所要望として、現行判事補制度を効率的に運用する趣旨において、職権特例の付される期間を三年(現在五年)に短縮して、これを高裁、地裁簡裁に配置活用して、それによって生ずる判事を可及的に家裁に回すべきであり、また家裁の性格からみると、若い理論的な人よりも人生経験の豊富な人を必要とする旨の意見が去りました。  福岡地検から逮捕、勾留状等の発付、保釈等の機微にふれる事件について、経験の浅い判事補がその大半を飾り扱っているために、ときに適正妥当を欠くと認められる場合もあるから、経験の豊かな者に取り扱わしむべきであるとの意見がありました。  地方裁判所調査制度採用については、裁判所側は事案の情状調査のため調査制度の必要性を強調し、検零庁弁護士会側は現行刑事訴訟手続の構造にマッチしないから、その必要を認めないとする見解でありました。さらに検察庁側は、専門家による特殊犯罪についての情状調査は望ましいが、人を得るに困難で制度として設けるとき無用の長物と化するおそれがあり、また売春防止法違反事件に関する調査制度であるならば、すでにおもな地検において発足している更生保護相談室を充実強化すべきであると強く主張しておりました。  裁判所書記官等裁判書原本浄書事務実情についてでありますが、本件の事件の経過等については第一班の報告と同一でありますので、この班では現地の声を伝えるだけにとどめたいと思います。  裁判所側見解を申しますと、当委員会においてこの事件に関し亀田委員よりの質問に対し、最高裁判所事務総長から御説明がありました通り判決以外の付随的な定型的な裁判書すなわち決定、命令のうち思考を要しない軽微な裁判書の原本浄書は従来から書記部門のそれぞれの係において担当していることは古い慣例であるとし、それに対し全国司法部職員労働組合は、決定命令等も裁判である以上付随的な定型的な裁判書であろうが裁判官自身がなすべきであると主張しております。今まで自分たちがこのような事務を不満も言わないでやってきたことは全く奉仕的なものであって、これを返上するために合法的な組合運動を行なったために、一方的に公務員法違反として餓首等の処分を受けることは当を得てないとしてあくまで闘争を続ける決意を表明しておりました。  この問題の発生原因は他にもその理由はあると思いますが、裁判所職員待遇改善問題から端を発し、組合のいろいろの要求が満たされない上、かつその職務性質裁判所においては重要な役割を果しているのであるが、割にその職務の内容が最近の大学出の若い者にとって魅力を失った上、高給者の定員が少い関係から俸給は頭打ちになり、将来に希望を失ったところから発生したのではないかと思考されました。ちなみに一般公務員待遇裁判所職員待遇を比較いたしますと、一般公務員の総平均税込み収入が一万九千二百二十円、裁判所職員の総平均税込み収入は一万六千三百二十三円であります。その差額は二千八百九十七円であります。この総平均収入の算出は、学歴、扶養家族等も勘案されますので厳格なことは申されませんが、一応の参考にはなると思います。これは大蔵省主計局給与課が昭和三十二年十月一日現在で調べたものでございます。この原因を打開するには制度上の考慮を図らなければいけないのではなかろうかと思いました。ある裁判所ではこの待遇改善の打開策として、簡易裁判所裁判官や家庭裁判所審判官に大幅に任用するか、あるいは裁判官事務のうち裁判以外の事務書記官に移譲して、これらの給与を引き上げ、または機構を改めて、課を増設して管理職種を増設する等が考えられると述べ、その実現を要望しておりました。  施設面については概して裁判所側は官舎及び法廷検察庁側は同じく官舎及び取調べ室がなかんずく貧弱でありました。第一審強化にからんで施設面の充実強化各地とも強く要望されておりましたから、政府及び最高裁判所の格段の努力を望むとともに、本委員会においても予算審議その他の機会に十分留意すべき点であろうかと思います。  少年法運用状況は、少年犯罪昭和二十六年ごろは急激に増加し、その後昭和二十九年まではむしろ減少の傾向にあって、一応安定の状態にあったようでありますが、昭和三十年以降再び急激な増加を示してきたようであります。凶悪犯もさることながら、なかんずく都市における交通事件が驚異的な激増を示しておりました。この現象は都市における自動車の急速な増加によるものと考えられます。  少年院運営状況でありますが、少年院運営に当り最近どの少年院にも共通的な問題となっておりますものは次の三点にあるようであります。  すなわち、収容者の悪質化のために反省独居室の不足、結局施設面の充実強化の必要性、  二は、収容者の給養の向上、すなわち現在の少年院における衣食住において現実社会とはるかにかけ離れていること、  三は、職員不足、すなわち少数の職員で、矯正指導をなし、かつ保安の任に当っているので、個別指導が十分行き届かない状態であること、等でありました。この問題を解決しなければ、現在の行刑化しつつある少年院を是正し、少年院本来の性格を発揮することができないから、すみやかに予算増加を切望している実情でありました。さらに最近学生犯罪が激増し、しかも以前は十八才以上の者が多かったようでありますが、昨年から中学生の犯罪が目立ってきたことは憂慮すべき問題として現地では重大視しております。  少年犯年令引き下げ問題については、従来から裁判所検察庁の間に意見の相違がありましたが、このたびの調査においても両者の対立は氷解されておりません。すなわち裁判所側年長少年の凶悪化の傾向にある現象から見ますと、一般予防の面も十分考慮を払うべきことはもちろんでありますが、年長少年の凶悪犯罪の発生原因を見ますと、精神面の未発達や環境その他の外的条件の影響に左右されることが多いことを理由として賛同できないとし、検察庁側は、少年犯罪はますます悪質化し、集団化し、憂慮すべき事態にあるので、これら凶悪犯を防渇し、社会の治安を維持するためには少年犯罪の年令を引き下げるのが国民の要望にこたえるものだとし、矯正関係庁は現在の施設予算では検察庁と同じ意見でありました。しかし施設を充実強化し、予算の裏づけが十分であれば、現行法を維持すべきであるとの見解でありました。  検察官先議制については、裁判所及び矯正関係庁は現行制度を維持すべきだとし、検察庁側は年令引き下げが諸般の情勢から不可能であれば、せめて凶悪犯と道路交通取締法違反だけでも検察官先議の建前にした方がよいとのことでありました。  少年法並びに少年院法の運営改正を要する点について、第一線の声を総合いたしますと、  少年法第九条のうち「特に少年鑑別所の鑑別の結果を活用して、これを行うように努めなければならない。」とありますのを「少年鑑別所の処遇意見と家庭裁判所審判の結果が著しく異なる場合には少年鑑別所と協議しなければならない。」と改めること、  少年法第二十七条の二の保護処分の取り消し事由として「らい病及び精神病並びに教育不可能な不具廃疾者と判明し、且つ発病した場合」を追加すること、  少年審判規則第三十七条第一項後段の「少年院の種別を指定する。」を廃止して、単に「少年院に送致する。」にとどめること、  少年院法第二条の少年院の種別を廃止し、分類収容によること、等の改正意見がありました。  刑務所運営状況については、福岡管区における収容の状況は全体的に見ると過剰拘禁の傾向にありまして、その処遇上幾多の困難を招来していると訴えております。この対策として、比較的拘禁率の低い高松、広島の両管区の各刑務所へ行政移送を行なって、その緩和に努めているのでありますが、右両管区も最近過剰収容のため、決定的な緩和策とはなし得ない実情にありました。既存施設に改修等を加えまして、収容設備を増加しておりますが、実質的増加を期待することができないようであります。  この状態を解消するためには、少くとも約二千名を収容できる新しい刑務所を設置するか、地管区に移送するかしなければ解決できないと訴えております。  次に高松管区のうち、松山、高松両刑務所においても敷地の狭隙、施設老朽化を訴えております。特に暴力事犯の取締りが強化されるに伴い施設不備が痛感されるので、その充実強化をはかってもらうべきであると特に強い要望がありました。  職員増員についても各刑務所とも暴力事犯の取締り強化に伴い職員増加要望しております。  外泊休暇制と民間企業への通勤作業制採用については異論はありませんでしたが、ただ外泊休暇制度については一定の条件を付して実施すべきであるとの見解でありました。  作業賞与金懲罰差し入れ禁止等の合理化については、作業賞与金請求権を認めるかいなかについて論議がありました。なお現行の賞与金制度については実に少額で、可及的すみやかな機会に増額すべきであるとの意見が圧倒的でありました。懲罰制度は基本的人権に関する重要な問題であるから、慎重検討を要する問題として議論が多岐に分れていますので、詳細の説明を除かせていただきます。差し入れ禁止は大体現行法通りでよいとの見解もありました。  未決拘禁法の分離確立は、行刑に関するものと未決拘禁に関するものとに分けるべきであるとの見解がありました。  麓婦人寮は福岡婦人補導院麓婦人寮として本院の完工まで暫定的に設けられたものであります。本婦人寮は従来の麓刑務所(女囚)の第一舎を改造して、階上を婦人寮に充て、階下は女囚の収容施設として使用するように、本年四月十六日より模様がえに着手し、内部工事は、単独室を除きましてすでに完了し、収容可能になっておりました。模様がえ工事全般といたしましては七月末日までに完了の見込みでありました。収容人員は五十名で、当時は収容者は一人もおりませんでした。  婦人補導院は矯正教育を目的としておりますのに、暫定的または、予算関係とはいえ、女囚刑務所と同一構内で、しかも一棟の建物の階上階下で、性格の異なった収容者を収容することは果して当を得た措置であろうか、いささか疑問を持つものであります。可及的すみやかに本院の完工を期せられるよう、特に当局の方々に要望いたしておきます。  売春防止法運用状況についてでありますが、本法の適用を受けた事案は各地とも極少でありました。その後の業者従業婦の動きはきわめて憂慮すべき傾向にあるようであります。まず業者は本法の全面的実施を前に一応転廃業をいたしましたが、これらの業者の中には法の威力の前にひとまず転廃業の形をとったに過ぎない者も相当数あり、また従業婦の中には、一応帰郷したものの、最近再び舞い戻ってくる傾向が強く認められるようであります。かれらはいわゆる形勢観望の状態でありまして一部違反者も検挙せられてはおりますが、問題はむしろ今後にあるようでございます。婦人相談所婦人相談員婦人保護施設運営状況については、大分県においては良好でありましたが、愛媛県における保護施設が夫設置でありました。今秋までには設置完了の見込みであると、検察当局の説明がありました。  以上簡単でありますが、御報告を終ります。
  7. 野本品吉

    委員長野本品吉君) ただいまの御報告につきまして、いろいろと御質問等もおありであろうと思いますが、それぞれの調査事項につきましては、次回において、次期国会において調査を継続することといたしまして、派遣委員報告聴取は一応この程度で終了することにいたしたいと存じます。  なおこの際一言申し上げておきたいと存じますが、継続事件となっております検察及び裁判運営等に関する調査はもとより、閉会中の調査はまだ未了でございますので、委員長から未了の旨の報告書議長に提出しておきたいと存じますが、この点御了承願いたいと存じます。  それでは本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十五分散会