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1958-06-18 第29回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月十八日(水曜日)    午後一時三十九分開会     —————————————   委員の異動 六月十二日委員横川正市君辞任につ き、その補欠として藤原道子君を議長 において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青山 正一君    理事            大川 光三君            一松 定吉君            棚橋 小虎君            宮城タマヨ君    委員            大谷 瑩潤君            赤松 常子君            亀田 得治君            後藤 文夫君            辻  武寿君   政府委員    警察庁長官   石井 榮三君    警察庁警備局長 山口 喜雄君   事務局側    常任委員会専門    員       西村 高兄君   説明員    経済企画庁調整    局参事官    富谷 彰介君    法務省刑事局長 竹内 寿平君    法務省刑事局公    安課長     川井 英良君    法務省人権擁護    局長      鈴木 才蔵君    水産庁漁政部漁    業調整第二課長 諏訪 光一君    通商産業省企業    局産業施設課長 川原 英之君    通商産業省繊維    局紙業課長   橋本 徳男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○検察及び裁判の運営等に関する調査  の件(本州製紙江戸川工場事件に関  する件)     —————————————
  2. 青山正一

    委員長青山正一君) 本日の委員会を開会いたします。  本日は、ただいま社会問題となっております本州製紙江戸川工場汚水廃液等放流による河川汚濁に基く紛争事件につきまして、特に人権侵犯問題及びかかる漁民の生活問題に根ざしている偶発的な騒乱事件予防対策等について、若干の調査を行うことにいたしたいと存じます。  それではまず、本件事案概要につきまして、警察庁通産省水産庁、各関係当局から御説明願いたいと存じます。  まず第一に、警察庁の御説明を願いたいと思います。山口警備局長
  3. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 当日の概況について御説明を申し上げます。  六月十日、浦安漁民代表人々約七百人が、バス十五台に分乗いたしまして、国会にまず陳情に見えたのであります。で、二時四十三分ごろ、この参議院常任委員会の玄関のところで相当混乱を起しまして、このドアのガラス一尺四方のもの二枚を破壊し、なお付近の植木ばち等をひっくり返す等の事態が起ったのであります。で、このあと三時五十分ごろ、今度は都庁の方に、まあ陳情と言いますか、抗議にいくということで、皇居前の広場の楠公銅像前に集合いたしまして、代表の方が都庁に行きまして、そうして大河原指導部長、あるいは産業施設課長と会って陳情をしておられるのであります。でこのときに——その日は本社の方に陳情にいくというようなことであったようでありますが、急にこの予定が変更されまして、工場現場にいくというようなことになったのであります。で、当日の国会に参りましたときの状況、あるいは参議院常任委員会会館入口の場所における混乱、その他の模様から見まして、これは工場の方に行きますと——五月二十五日ですか、二十四日の日に、やはり相当数浦安町の漁民の人が、工場におきまして暴行等をやっておられるのであります。従って、事態を十分に注視し、万一の場合に、警察としてこの予防措置がとれますように、このときに機動隊を、警察官工場側にまあ配置をする必要を認めたのであります。で、午後警察官がまず到着いたしましたのは、五時半過ぎに約二百名あまりの警察官工場に到着いたしました。で、工場側では、まあ警察官がこの正門付近等で見えまして、かえって相手方を刺激してもいけないというようなお話もありましたし、また、警察側といたしましても、先方を刺激するというようなことは避けるつもりで、工場正門から内部に約二百メートルばかり入りました食堂の中に、警察官を、まあ目につかないようにして待機をさせておったのであります。  で、六時八分にこの工場の前に到着しました浦安町の漁民人々は、直ちに車からおりて、そして正門がまあ閉じてありましたので、正門、あるいはへいを乗り越えて、一挙に工場の中に乱入というような形で入られたのであります。そうして正門から工場内部に、まあなだれを打つようにして入って、工場の事務所、それから応接間、あるいは倉庫、会議室等窓ガラスを、石を投げて破り、あるいは付近材料置場にありました丸太棒等を振りかざして破り、さらに事務室会議室等の中に入って、まあそこら辺相当乱暴をされるというような事態になったのであります。  で、このときに食堂の中に待機をしておりました警察官が、一挙にどっとなだれ込んできましたので、出ていったわけであります。そしてこの工場内の建物のところで双方が対峙するような形になったのであります。このときに相当激しい投石、石を漁民側から投げられたのでありまして、まあ運悪くその工場の敷地内には相当大きな石も無数にころがっておるというような状況でありました。こぶし大の石、あるいは材料置場にありました棒、丸太棒等相当乱暴をしてこられたのであります。このときに、投石によりまして警察官側に二十数名の負傷者を出しております。もちろん事態がそういうようになるということまでも考えておりませんでしたので、鉄帽等もかぶっておりませんし、ほとんど大部分の者が頭、顔面等負傷をいたしたのであります。  で、六時三十五分ごろ、事態が一時小康状態となって、警察の者と、漁民の側とが対峙というような形で、若干その間にいろいろ小ぜり合いと言いますか、そういう状況が続いておったのであります。町長さんは、警察側マイク等を通じまして、非常に漁民人々を静めるために、非常に御尽力をされておられたように聞いておるのであります。このときに四人の者を現行犯で逮捕いたしております。この逮捕された者を釈放しろというので、盛んにやりとりがあったわけでありますが、その後、さらに八時十分ごろに至って、また、激しい——七時三十分、あるいは八時十分ごろというように、ときどき激しい投石うしろの方から盛んに行われるというような状況で、警察側もとてもこれは大へんだというので、相当交代をいたしておるのでございます。こういうようにして、いわば対峙状況にあったわけであります。まことに残念なことには、おなかはだんだんすいてこられるということもありまして、付近銘酒屋に行って、あまり食べものもないというのでございますが、相当酒、しょうちゅう等を入れかわり立ちかわり飲食をされて、そうしてまた、警察側対峙状態が続いておったということであります。なお、九時ごろ新聞社関係者がやはり投石で頭にけがをしておられるのであります。九時半ごろ、じわじわと警察側正門の方に向けて押し返しておったのでありますが、突然、こういう方向へ押しているのと、もう一つこちら側に部隊がおったのですが、こちら側の部隊に対して自動三輪車を先頭にして突破しようとする組があったのであります。何のためにこっちに来るのかと聞きますと、けが人が出たから、けが人を医者に連れて行くのだ、それは工場の中の方に向ってでありました。そうこう話しているうちに、突然自動三輪車うしろ側におった人々が激しい投石をしたので、そこで九時四十五分に、警察側としましては、とうていこのままではけが人がどんどん続出しますので、やむを得ず実力行使で外に出すということで、そこで押して出たわけであります。このときに、警棒を前方におりました約……人数はあとで申し上げますが、前面におりました者が警棒を抜いております。これは指揮官の命令によって抜いておるのであります。ところが、そうしますと、漁民人々は、警察がこう一挙に出ようという態勢になりましたので、また、すっと一斉に正門の方に引いていかれる、この間約一、二分のことであったということです。一応正門の外に出たのでありますが、そこで警察側対峙をしておる。さらにその間に再び門内に入ってくる、あるいはまた、うしろの方から石が投げられるというような状況が続いておったのであります。この際に、正門のところで、なお九時五十分から十時十五分にかけて、さらに四人検挙いたしております。結局そういうような状況が続きまして、午前零時に至りまして、ようやく引き揚げられたということであります。この日の事件で、浦安漁民の方々の方にも、また、警察側の方にもそれぞれ負傷者相当出ておるので、まことに残念なことだと存ずる次第であります。  ごく概要でございますが、以上御説明いたしました。なお、御質問にお答え申し上げます。
  4. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、通産省の方一つお願いいたします。
  5. 橋本徳男

    説明員橋本徳男君) 私、繊維局紙業課長橋本でございます。  私の方で調べました経過をかいつまんで御報告いたします。最初は、五月二十三日以前でございますが、二、三回、漁民側から江戸川工場に対しましてSCP廃液についての苦情があったようでございます。それから二十四日になりまして、約八百人程度漁民江戸川工場に押しかけまして、排水管等投石しております。工場側では結局操業を停止いたしまして、漁民交渉に入ったわけでございます。で、会社側の話によりますと、二十四日から六月の一日まで工場を停止いたしておりましてその間、漁民側といろいろ折衝をいたしましたが、十分な解決は得られなかったというふうな状態でございます。で、六月の二日に、工場操業を再開しております。  この前に、前後さかのぼりますが、たしか先月、五月の末だと思いますが、会社側から私のところに実は御連絡がございまして、こういうふうな情勢になっておる、どうしたものであろうという御相談がきたわけでございます。それで私の方としましては、会社側に対して、従来各地で起きておりまする例から見ましても、結局地元でありまする東京千葉県、この両者が直接的な関係がございますので、この両者調停役に依頼してはどうか、そうして両者調停案についてこれが妥当ならばそれによるというふうな形をとるのが、従来各地で行われておる例でもあるしするから、こういうふうにしてはどうかというふうなことを指示したわけでございます。会社側としましては、東京千葉県に依頼したようでございます。  それから六月の六日に、東京都の建設局から操業を一時停止するようにという口頭勧告があったようでございます。それで工場側といたしましては、七日、八日操業を停止して、再び県の漁民交渉を続けてきたようでございますが、進展は見られなかったというふうな情勢でございます。  九日になりまして、工場側は再び操業をやっております。九日の午前中に、私の方に操業をやっておるというニュースが入りましたので、私の方も、この前東京千葉県というものを一応調停に立てるようにというように話した経緯もございますので、とにかく一応東京都から操業を停止して話を続けるようにというふうな勧告が出ておりますので、この線に沿うようにということで、私の方も大体九日の一時から一時半ころの間と思いましたが、会社側に、操業をやめなさい、そうして話し合いをしなさいということを指示しております。で、それを指示いたしましてから約一時間ほどたちまして、二時半ごろに川島代議士がおいでになりまして、実は地元漁民が非常に騒いでおるがという話を持ってこられましたので、この様子はよくわかりますので、実はたった今、会社操業をとめていただくように話をいたしましたということを川島代議士に話をいたしました。そうすると、川島代議士も、これでまあある程度漁民を押えることもできる、ということで、一応喜んで帰られたわけでございます。その後また再び、三時過ぎに、福田副幹事長さんから連絡がございまして、漁民側が来ておるから来てくれぬかという話がございましたので、私参りました。このときにも同じことを繰り返しまして、ついさっき一応とにかく会社操業停止するようにという話はいたしましたからということで、漁民お話しいたしまして、五時前にそこを出たわけでございます。で、再び繊維局に帰りまして、ほんとうにとまったかどうかということで会社側に照会いたしましたところ、実はいろいろな事情があってまだとまってないというふうな、まあ御連絡があったものですから、これではいかぬということで、もう一度会社の方を繊維局に呼びました。大体五時半ごろだと思いましたが、呼びまして、重ねて操業をやめるようにということで指示をしたわけでございます。で、そのとき会社側としましては、別に他意あってのことではなさそうなんで、むしろ人を通じてただいま漁民と話を進めております、従って大体自分の方の見通しとしましては、話がつきそうなんだ、だからもうちょっとすればつきそうだから、というふうな見解をとっておられました。ところが、私いまさっき漁民代表の方と会ってきて、なかなか話はつきそうにないというふうに私は受け取りましたが、ということで、若干そこで話が食い違いがございましたが、とにもかくにも一応あまり事態を拡大さしてからだと、かえって調停はむずかしいと思いますので、とめてもらうようにということで指示をいたしまして、会社としては、さっそくまた帰りまして、重役会を開いて、それで結局まあとまったのが、会社報告によりますと、午前二時ごろという話でございます。で、午前二時ごろに結局まあとまったようなんでございますが、不幸にして当日十日の日にいろいろああいう事件がまあ起きたというふうな状態になっております。で、その後私の方といたしましても、会社側には、とにかく会社内部として今回のこの問題につきまして、十分誠意をもって解決するように、会社内にいろいろな組織を設けて、しかし、その解決も秩序ある解決をするようにということで、会社内部対策本部も設けるようにという、そしてまた、科学的な調査もやってくれということで今日依頼しております。
  6. 青山正一

    委員長青山正一君) 次に、水産庁の方にお願いいたします。
  7. 諏訪光一

    説明員諏訪光一君) 私、水産庁調整課長諏訪であります。御報告申し上げます。ただいままでに大体の経過お話がありましたので、水産庁といたしましては、この事件につきまして、どういう監督をしていたかという経過について御報告申し上げようと存じます。  本年の四月上旬と思いましたが、本工場が、SCPパルプ操業試験的にやっておるというような東京都の報告がございまして、それで、東京都からぜひ一度工場を視察して、そしてその内容について一つ見てくれというようなことがございましたので、私どもの方の担当係長が参りまして、東京都の水産課係官一緒にこの工場べ参ったわけでございます。その際に、まだ操業はいたしておりませんで、ほんの試運転中だったのでございますが、私どもの方で参りました日は、ちょうど機械を運転していなかったという話でございましたが、中を拝見いたしましたところ、処理施設がない、沈澱槽がないというようなこともわかりましたので、東京都の係官に、こういったようなことでは、いずれ問題が出やせぬか、工場でどういう処理をなさるか知らぬけれども沈澱施設がないということは危いんじゃないかという御注意を申し上げましてそれから当日、会社側で御案内してくれた人にも、沈澱槽がなくて大丈夫なんですかというようなことも話したそうですが、当時のその案内した会社の方は、十分にきれいにいたしますから、沈澱槽がなくてもいいんじゃないでしょうかというようなことを言ったそうです。いずれも口頭の話ですから、はっきりしたことは申せませんが、そういったような報告を受けておりまして、私どもその報告を受けたときに、沈澱槽がないということは危いなと、東京都に十分注意しておこうということを申しまして、東京都の水産課の方にはさよう連絡はしておりました。その後、都からの報告によりますと、四月の二十二日に本格操業を開始して、汚水が出ておるというので、四月の二十三日には傘下の漁業組合あるいは内水面の漁場管理委員会にも、そういったような漁民から、本格操業で、きたない水が出ておるけれども、何とか東京都の方で処置してくれというような陳情があったそうでございます。それで東京都の方から、さようなことがございましたので、どういう排水が出ておるか、それをよく調査するようにということを指導いたしまして、五月の八日に、漁場管理委員会水産試験場及び水産課の者が工場を視察いたしまして、その排水は正確な調査による決定はできないけれども、今までの経験上から見て、かような水は大体悪質であって、漁業被害が起る可能性が十分あるというすうに断定いたしまして、設備の改善方工場側の方に、水産課の方から申し入れております。そしてそれと同時に、水産課の方から建築局指導部長の方にも、排水処理施設をやってくれというようなことを依頼しております。それと同時に、私どもの方といたしましては、この水質分析による被害ということは、非常に高度な技術を要するというような点もございますし、また、時間もかかるということがありますので、問題の起きないうちに、一つ早く調査をするようにというふうに指導をいたしまして五月の十三、十四と二日間にわたりまして、都の水産試験場でもって生物試験水質調査を行なっております。そしてその結果をもって、即時に汚水なりと断定するわけには参りませんが、どうも危いらしいというので、一つ徹底的に調査をしようという段階に進んでおりましたときに、五月の二十四日だったと思いましたが、漁民工場に参りまして、排水口をとめて、そうしてその汚水工場の中に入ったというような事態があったことを聞いております。そこで、私どもといたしましては、こういう問題が起きれば、当然漁業被害ということがあり得るのだから、被害調査を即時行うということと、水質試験を早く進めるように指導いたしております。それでその事件が起きまして、そういう順序で進んでおりますときに、六月の九日、十日にかけての事件が起きましたので、これは至急にやらなければいけないといって連絡いたしましたところ、潮どきのかげんで、六月の十八日前後に、徹底的な被害調査を行いたいという都の水産課長からの報告がございましたが、詳細な調査はそのときにするとしても、被害があったかないかという程度のラフな調査でもいいから、早くやるようにということを指導いたしまして、たぶん六月の十二日か三日かだと思いました。日にちはちょっとずれるかもしれませんが、私どもの方で係長現場に参りまして、大体調査方法などを指導しながら、被害が大体あるかないかという程度のラフな調査を行なっております。その結果は簡単に申し上げますと排水口から若干下においては、その当時は六月九日の事件がありましてから排水をとめましたので、非常に川の水はきれいになっておったそうでございますが、その方は別といたしまして、過去の汚水による川の底の方の沈澱物を主として見たそうでございますが、わずか下流のところにおきましては、何と申しますか、あさり、はまぐりを取るかごのような、このくらい大きな目のかごがあるのですが、それでひっかいてみましたところが、そのかごの中に、ちょっとひっかきますとこのくらいの泥のかたまりが取れてきて、そして多分パルプ残渣じゃなかろうかというような汚物が非常にたくさん上ってきた。通常、普通ならぱこんな大きな目ですから全部流れてしまうのが、相当なかたまりが取れてきた。そして、それを手に取ってかいでみると相当くさかったというようなことから、相当腐敗もしているのじゃなかろうかということがみられた。それから今井橋付近で見ましたときに、その層は相当薄くなっておって、パルプ残渣ということが認められるか認められないかはわからないが、かなり腐泥らしいものが上った。それからずっと下に下りまして、河口から海面に寄ったところでやってみましたところが、そこでは層が一センチくらいしがなくて、しかもその層になりますと、もはやパルプ残渣であるか何であるかはわからないけれども、ともかく新しい腐泥が一センチくらい積って一おってその下はきれいな砂になっておったと、これがどういうものから出たかということは断定はできませんが、新しいような腐泥があって、しかもそれは手で握ってにおいをかいでみても、まだくさくはなっていなかったというようなことが報告されております。その後も、昨日でしたか、今度は技術的に、われわれ行政官じゃなく、技術者もこれを見ておいてもらいたいということで、水産本庁ではございませんが、東海区水産研究所担当官にも一緒に行って見てもらいまして、そして東京都の水産試験場及び水産課の人間に調査方法などを指導しながら現場を見ておりますが、まだその報告は受け取っておりません。  以上、大体私どもの方で、都及び千葉県の水産課及び水産試験場指導いたしまして、汚水排水についての調査及び排水施設などにつきまして監督いたした経過は以上のようでございます。
  8. 青山正一

    委員長青山正一君) 最後に、経済企画庁にお願いいたします。
  9. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 経済企画庁調整局参事官富谷と申します。  昨年の春以来、私どもの方で各省の御依頼を受けまして、この水質汚濁規制に関する立法措置準備をいたして参りましたので、その概要を申し上げます。   〔委員長退席理事一松定吉君着席〕  現在の日本の法律で申しますと、たとえば河川の方は河川法がございまして、その水をよごすことは禁止されております。その権限は都道府県知事の方にまかされているような形になっております。また、産業関係で申しますと、鉱山などの場合には、鉱山保安法がございまして、鉱山排水が害を及ぼすような所為がないように監督することになっております。まあそういったようなわけで、大体河川にしろあるいは海にしろ、よごすという行為はすでに各種の立法措置によって禁止されておりまして、しかもそれぞれの所管官庁がこれを取り締ることになってはおりますが、これまで実効があまりに上っておりませんのは、要するにどのくらいまでよごしたら害ありとして取り締るかといったような、一般的な基準がない、そのものさしがないということに大体帰結するようでございます。そこで、経済企画庁の方では各省を通じまして、この水をよごすことの取締り基準というものを作ろうではないかというので、実は昨年の春から関係各省意見調整を行いまして、去る二十八国会に提案すべく準備を重ねたのでございますが、残念ながら、最終的な意見の一致を見ることができませんで、ただいまなお引き続きまして、次の通常国会には、ぜひとも間に合うように、また、取締り実効が上りますような方法を講ずるように努力中でございます。  以上簡単でございますが、従来の経過を申し上げました。
  10. 一松定吉

    理事一松定吉君) ただいま一応の説明が終りましたので、何か御質疑のある方は、この際発言をしていただきます。
  11. 青山正一

    青山正一君 ただいま各関係官庁から、去る十日の夕刻、本州製紙江戸川工場において発生いたしましたこの騒乱事件は、警官側、あるいは漁民など合せまして約二千人近い多数の人々が入り乱れて、そのために警官側は二十七、八名、それから漁民側が百五十名くらいの重軽傷者を出して、世間の注視を浴びておる。水産庁の統計によりますると、最近十カ年の間に、この水質汚濁による紛争事件はおそらく約二千件余りもあり、その被害は、金額に見積って約二十億から十五億に達しておろうと思いますが、今回は、本州製紙事件のような大規模な不祥事態を引き起したことは、ほとんど見当らないのであります。そこで、われわれは、この事件漁民の単なるこの自然発生的な暴力事件としては見のがすわけにはいかないので、事件の真相を究明し、問題の真因がどこにあるかについて深くこれは掘り下げることによって、将来再びこのような不祥事件の発生することを防止すべき責任と、それから義務を痛感するものであります。特にこの事件は、日本国のこの憲法によって保障されておりますところの生活権と基本的人権の擁護を叫ぶ漁業者側に、国家社会の治安維持を担当すべき警官の介入によりまして、問題は犯罪捜査、あるいは検挙、身柄拘束など、いわゆる治安対策が人の生活権、あるいは生存権に根ざしている場合、いかに対処すべきかという治安対策の根本にこれは触れる重要な課題になっておると思われるのであります。そこで、当委員会がこの事件を取り上げたこれは大きな理由がここにあることをまず第一に強調しておきたいと、こういうふうに考えております。  そこで、まず第一に、水産庁のお方にお聞きいたしたいと思います。  今回のこの本州事件関係のある漁民は、主として千葉県の浦安、あるいは行徳、それから東京都の葛西浦、それから江戸川などの八組合に属するのでありますが、これらの漁民は漁業一本にたよっているのか、それとも半農半漁に属するのか、その点について御説明を願いたいと存じます。
  12. 諏訪光一

    説明員諏訪光一君) お答えいたします。数字の根拠がなくてはなはだ失礼でございますが、八組合のうち最も大きい東京都の葛西浦、それから千葉県の浦安、両組合は昔から専業をもって有名な組合でございます。そういう観点から、最も大きいところは専業であるということが言えるのじゃなかろうかと思います。
  13. 青山正一

    青山正一君 この種の事件は、年に何百件となく起っておりますが、根本の対策として、先ほど経済企画庁のお方が申しておった通りに、水質汚濁防止について確固とした法律を作るべきと思うのでありますが、これについての所見は、どういうふうにお考えになっておりますか。
  14. 富谷彰介

    説明員富谷彰介君) 先ほど申し上げましたように、去る二十八国会に間に合せるべく準備いたしてきたのでありますが、残念ながら結論を得ませんでしたので、引き続きまして、ただいま各省意見調整中でございます。一日も早く実効の上るような水質の汚濁を取り締る法規を作りたいというふうに、現在努力中でございます。
  15. 青山正一

    青山正一君 通産省のお方にお聞きいたしたいと思いますが、最近の統計によりますると、昭和三十一年度における通産省所管の事業所において、有害物を放流することに非常に漁民側の抗議を受けた工場が、全国で、私の調べた範囲内では、四百七十六工場もあるように思われるのであります。そこで、その被害総額は約六億五千万円と言われておりますが、これに対して、どのように監督指導とかあるいは取締りをしておられるか、その根拠となる法律は一体何か、その点についてお伺いいたしたいと思います。
  16. 川原英之

    説明員(川原英之君) お答え申し上げます。実は、ただいま企画庁の富谷参事官から御説明がございましたように、排水問題につきましての具体的な監督法規といたしまして、鉱山に関しましては鉱山保安法というようなものがございます。で、一般的な基本法といたしまして、実は、先ほど来お話がございましたように、関係いたします各省集まりまして、昨年来いろいろとこの根本的な工業汚水排水処理に関します規制法を作成いたしますべく協議を重ねて参ったわけでございまして、われわれといたしましても、現在、具体的な鉱山保安法を除きまして、具体的な事業について直ちに監督をいたします法律がございませんので、事実上はいろいろ行政指導、あるいは、いろいろ技術研究に伴います工業化によります処理方法の促進というような面につきましての補助措置、あるいは、特に中小企業の密集いたします地域につきましては共同排水路の建設というような具体的な措置をもちまして、従来、極力こういう事態が起きませんように進めて参ったのでありますが、根本的には、ただいま企画庁から御発言のございましたような法律を各省共同で一日も早く作り上げようということで、実は昨年来努力をいたして参ったわけであります。ただ、今も富谷参事官からお話がございましたように、はなはだ残念でございますが、先国会に提出の運びに至りませんでしたが、なお、現在引き続きこの調整をはかりまして、すみやかにこの水質汚濁の規制に関します基本法をまず作りまして、それとあわせまして、これを実効を上げ得るような工場関係の規制法というものを同時にわれわれとしては用意をいたしておるわけでございます。
  17. 青山正一

    青山正一君 水産庁にお伺いしたいと思いますが、先ほどから、企画庁の参事官なり、あるいは、紙業課長でしたかあるいは施設課長ですか、こういつた方々から、水質汚濁防止法案というものを前の国会に出した、それがなかなかまとまらなかった、それをまた通常国会に出して、何とかまとめ上げたい、こういうふうにまあ言うておられますが、今まで、この水質汚濁防止法案、こういったものがどうしてこれが成立できなかったか。たとえば、この前出そうとしておったいわゆる企画庁案なるものが、水産業者あるいは漁業者にとって非常に不利であるというふうなことを聞いており、また、その相手方の会社側に非常に有利であるということも聞いておるわけでありますが、その辺の経緯を一つ承わりたいと思います。
  18. 諏訪光一

    説明員諏訪光一君) お答え申し上げます。私どもの方で水質汚濁防止に関する法律はぜひ作っていただきたいという強い希望もございまして昭和二十八年の暮れ以来関係各省といろいろと相談して参ったのでございますが、関係各省のみではなかなか調整がとれませんので、昨年の四月以来、経済企画庁調整をお願いして参ったわけでございます。その後、企画庁でいろいろと調整なさいまして、私どもも協力して参ったのでございますが、ただいままでに示された案を拝見いたしますと、実効が期せられないのじゃなかろうかという不安を持っているわけでございます。私どもの方で最初にいろいろお願いしたのは、昭和二十六年に経済安定本部で作りました水質汚濁に関する勧告が出ておりますが、そこまではいかないまでも、そういったような近い線で努力して参ってきたのでございます。そして水質問題につきましては、調停あっせんということが非常に重要な問題でございますので、これは水質基準を作るということが非常にむずかしいということと、それのために各産業間の調整が必要じゃなかろうか、そして産業間の調整ができ上がって初めてそういったような基準というものが漸次きめられていくので、いきなり基準というものは科学的に作るということは非常に困難じゃないかというような主張をいたしまして、調停あっせんの機関と申しますか、機関を新設するか、あるいは、案に盛られた審議会において調停あっせんをやるということをぜひ明文化していただきたいというお願いをしておったのでございますが、その点につきましては、いろいろと法制上の疑義もございまして、まだ調整がついておりませんのでそういったようなことも盛り合せ、あるいは、この法律によって水質汚濁が規制できる何らかの権限を持っていただきたいというような希望も持ちまして、企画庁と今折衝中でございまして、まだ関係各省の間で調整がつかないので、提案に至らないわけでございますが、水産庁といたしましては、もう一歩進めた、もう少しいい実効の期せられる案にしていただきたいという希望をもって、まだ調整がつかないという段階に至っております。
  19. 青山正一

    青山正一君 これから本題に移りたいと思いますが、まず第一に確認しておきたいことがあるのでありますが、これは通産省紙業課長ですか施設課長ですか、つまり、この本州製紙の場合については、通産省の紙業課の課長補佐の土山さんというお方ですか、それが新聞紙上に、非は明らかに工場側にあると認めておられる。それに対して、どのような措置をとられてきたか、また、今後どのような方針で進められるか、その点について承わりたいと思います。
  20. 橋本徳男

    説明員橋本徳男君) お答えいたします。新聞の記事は、必ずしもうちの課長補佐の趣旨をそのまま表現したものではないのじゃないかというふうに思っております。ただ、この本州製紙の問題につきましてこれがほんとうに害があるかどうかという問題は、実はわれわれの所でははっきりすべきデータはございませんので、わかりません。従いまして、先ほど言いましたように、こういうものがほんとうに害であるかどうかということは、それぞれ検査機関を持っておるような所の認定にまかしたいということで、調停東京都、千葉県に先ほどのように依頼いたしましたので、結局、こういった所が漁業を専門的にやる角度から、ほんとうに害があるのかどうかということのデータが出まして、それをはっきり科学的にした場合に初めて害があるという観念……しかし、いろいろ今日までのところでは、感情問題等も相当発生しておりますので、とりあえずの問題としましては、操業を停止し、少くとも各工場に共通的に持っておりまするいわゆる貯水池というものを速急に作りまして、その貯水池ができるまでは少くとも会社側としてはとめていただく、そして貯水池ができましたら、その貯水池を一回通したところで、東京都なり水産試験場なりでもう一度検査をしていただく、そしてそこで初めていわゆる水質の検査をやり、生物検査をやった上で、ほんとうにまだ影響があるようでしたならば、さらに次の施設をやるということでやっていくように指導したいと考えております。
  21. 青山正一

    青山正一君 ただいまの御発言でありますが、これは去る六日、東京都が工場側操業の中止を勧告しておる、こういう事実はもうあなた御承知になっておるだろうと思いますが、その事実は認められるだろうと思います。それで東京都の勧告が事実行われているとすれば、たとえば九日の朝に至って突然工場側が問題の廃液を流したことは、明らかにその工場側の非と認むべきでありますが、当局はこの本州製紙のこのような暴挙をどういうふうに認めますか、その点をはっきりしていただきたいのです。また、これに対する措置について承わりたい。たとえば完全に廃液が有害でないということが十分科学的に証明されるまでにどのような処理設備あるいはその期間はどれくらいかというような点について一つ述べていただきたいと思います。
  22. 橋本徳男

    説明員橋本徳男君) 確かに六日に東京都から操業停止のあれが出ております。従いまして、七日、八日休んで、九日に会社側操業したことはまことに遺憾なことだと考えております。従いまして、私たちの方におきましても、九日、事件の起る前日に二回にわたりまして操業をとめるように話をしております。ただ工場側の言い分からいいますと、それはいろいろな漁民側との話し合いがつくというような見通しに立って運転したということを言っておりますが、しかし、動かした事実は非常に遺憾であり、工場側としては、おそらくそれだけの欠点があったと考えております。ただ今後の設備問題につきましては、いろいろな会社側のデータ、それから東京都なり千葉県あたりのデータ、いずれも食い違っております。従って、この前の実は決算委員会でも、この食い違っているところを究明する、データが食い違っておりますので、そのデータの食い違いを究明いたしまして、それをはっきりさせるということが一応問題となっておりますので、それはそれぞれの専門家に究明していただくことにいたします。ただこちらといたしましては、従来ほかの工場におきます例からいいますと、大体いずれも紛争は生じておりましても、多くの工場で貯水池を通じて流した場合には害が認められぬというデータも実はあるのでございます。たとえば、王子製紙の春日井工場あたりでは、一応紛争は生じておりますけれども貯水池を通じて水を流しますと、生物試験をやりましても、水質試験をやりましても、害がなかったというふうな結果が出ておりますので、まあ一応今回の場合にも、とりあえずは速急に貯水池を作って、その貯水池を通じた水を検査してもらって、それで有害であるかどうかということを検討してからの問題にしたいというふうに考えております。
  23. 青山正一

    青山正一君 あなたのそういうふうな考え方が、水質汚濁法案ができない原因の一つであろうと私はそういうふうに断定いたします。そこで、私は警察のお方にちょっとお聞きいたしたいと思いますが、先ほど山口警備局長からるる御説明がありました。しかし、それは漁業者の悪い点のみをいろいろお話しになって、警察側を非常に擁護しておるというふうにもとられる面が非常に多いんじゃないか、たとえば損害の点は、警察官は二十七、八名の損害があった、漁民側が百五十名もいろいろ重傷なり軽傷を受けておるわけなんですが、その数に触れていないというふうな一事を見ましても、ただ警察側を擁護することのみに集中しておられたというような感がするのであります。そこで、本事件関係する漁民の世帯数は約五千、これは三組合で五千でありますが、かりに家族の数を四人とすれば二万人というような人の生活権が大きく左右される。特に浦安のようなところは皆さんも御存じのように、耕すべき一片の土地もない。ノリなどは屋根の上にほしておるというふうな状態であります。もっぱら魚介類とかノリの生産によってのみ生活を営んでおる。そこで、先ほど通産省からはそういったはっきりした御意見はなかったのですが、この本州製紙の廃水が流れ、そのために魚介類、海産物にもし害があるとすれば、それによって漁民の生活は根底からくつがえされる。当局はこの漁民の暴力を防止するために多数の警官隊を配置されたようでありますが、先ほどの山口警備局長お話によりますと、二百人というふうにお話しになっておりますが、これは漁業者のお話によると七百人といわれておる。その辺はどういうふうに……この数がかけ違っておるじゃないか。当局は漁民の暴力を防止するために多数の警官隊をいろいろ配置されたわけでありますが、この二万人の生活権を剥奪するような本州製紙のやり力。しかも、関係官庁のいろいろな勧告を受けておる。東京都でありあるいは通産省でありあるいは千葉県である。そういった官庁の勧告も、漁民側の約束も、先ほどから報告の通りに非常に無視しておるような本州製紙のやり方と果してどちらが大きな暴力であるかという点について、警察当局の長日の御意見を承わりたいと思います。
  24. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 先ほど山口警備局長が概略を申し上げましたが、警察の直接関係した部面を申し上げたのでありまして、従いまして、十分でない点は私もこれを率直に認めます。今回六月十日にああいう不祥事を起しまして双方に相当けが人を出しましたことはまことに遺憾なことであります。本州製紙工場浦安その他の漁民の方々との間の紛争の問題につきましては、特に漁民の方にとっては生活に直結する重大問題でありますだけに、その心情のほどは私どもは十分にわかるのでございまして、監督官庁の適切なる指導監督と、また、両当事者の誠意ある自主的な話し合いによりまして、一刻もすみやかに円満な解決を見ることを私は心から期待をいたしておるのでございます。警察はこうした問題につきましては、直接介入すべきものでないことば申すまでもないところでございまして、従来この問題につきましては、いろいろ関係者の動き等につきましては深い関心を持ってこれをながめておりました。警察警察の立場におきまして、いわゆる不法な事態が発生するならばこれを未然に防止し、不幸にして不法事態が発生した場合には、これに対する適切なる措置をとらなければならぬというのが警察の任務であります。今回の場合も、先ほど警備局長が御説明いたしましたように、当初は私どもこんなことになるというようなことは予想もいたしておらなかったのでございまして、国会における陳情、それから東京都庁の方に陳情されるということも、平和的に陳情がなされるものというふうに考えておりまして、交通整理その他の必要最小限度の警戒員をそのつどその場所に配置をするという程度で事足りるものというふうに考えておったのであります。不幸にいたしまして、国会での陳情の場合、先ほども説明いたしましたように、入口の窓ガラスを破壊するといったようなこともございまして、人数も多いことでございますから、あるいはさきの五月二十四日にトラブルがございましたようなことにかんがみまして、大勢のものが夜間に江戸川工場の方に行かれるということになると、あるいは遺憾ながら若干のトラブルも起る危険性もあろうかと、かように考えまして、急遽、そうしたもし不幸な事態が起った場合、適切なる措置がとれる程度の最小限度の警察力を一応用意しておく必要があろうかと、こういうことから第二機動隊員約二百名を現地においては用意しまして、しかもそれを漁民の方々等の目につくところに事前に配置をしておくということになりますと、いわゆる刺激的になりますので、目の触れないところに、しかるべきところにこれを秘匿待機さして情勢の推移をながめておった、こういう状況に相なっておるのであります。当初二百名の機動隊員を派遣いたしたのでございまして、最終的には警察官は六百三十名くらいが出動したことになっておるというように私は聞いております。警備局長が先ほど約二百名と申しましたのは、最初に事前配置として秘匿待機させた第二機動隊が大よそ二百名という数字なのであります。正確に申しますと二百十三名でございますか、端数がございますが、さらに地元の小松川警察署の署員三十数名もこれに加わりまして、当初に工場待機しておりました警察官の数は合計二百四十五名という数字であったと私は記憶いたしておるのでございます。とにもかくにもそういうことでございまして、警察側に三十七名の負傷者を出しましたと同時に、漁民の方の側につきましては、私ども詳細に調査をいたしましたが、正確にあるいは把握しておらないかもしれませんが、私の聞いておりますところでは四十三名の方が負傷されておるというふうに聞いております。そのほかに、新聞記者の方三名、工場の守衛の方が三名負傷されておる、こういうふうに私は報告に接しておるのでございます。いずれにいたしましても、こうした不祥な結果になりましたことはまことに遺憾しごくでございます。私ども警備いたしまする警察の立場といたしまして、この事案につきましては十分反省検討いたしまして、もし警察の、いわゆる警備実施について行き過ぎと申しますか、適切でない点がありますならば、これは将来十分戒心していくようにいたしたい、かように考えておる次第であります。
  25. 青山正一

    青山正一君 ただいま警察庁長官から非常に御丁寧なお話がありましたのですが、しかし、まだ確認しておきたい事柄が二、三あるわけでありますが、この前の決算委員会の席上におきまして、たとえば十日には多数の警官を配置されましたが、これは工場側の要請に基くのか、それともあらかじめ不測の事態を防止するという意味合いからして、警察の方で自発的にそういった警官を配置されたのか、その点がまだはっきりしないわけでありますが、その点について、警備局長なり、あるいは長官から御説明を願いたいと思います。
  26. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 先ほどもお答えいたしましたように、当日、当初はそんな事態になろうとは思っておらなかったのでございまして、従って、大げさな警備配置計画といったようなものは考えておらなかったのでございます。ところが、漁民の方々の陳情をされる状況等から見まして、先ほど申しましたように、国会参議院常任委員会会館に行かれまして、ドアのガラスをこわされ、また、植木ばちをひっくり返されたというようなことがあったものでございますから、それから都庁陳情に行かれ、さらに江戸川工場に行かれるについては、時間も相当おそくなることではあるし、人数も多いことでございますから、あるいは不測の事態が起るかもしれないということで、そこで先ほど申しましたように、第二機動隊を念のための用意として派遣をいたすことにしたわけでございます。これは、どこまでも警察がそうした状況の推移にかんがみましての情勢判断に基く独自の見解によって、そうした事前配置の措置をしておくことが適当であろうというふうに考えたのであります。たまたま会社側におかれましても五月二十四日の事案等もありますし、多数の者に押し寄せてこられそうだという情報に接して、おそらく同じような懸念を持たれたのでありましょう、警察側にも何分の警備措置をお願いしたいという申し出があったのでございまして、期せずして、警察側の見解と工場の出動要請と申しますか、御依頼とが意見一致したという結果に相なっておるのでございます。
  27. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。警察官を多数動員された理由の一つとして、何か、参議院常任委員会の方に陳情に来たときに、何か割ったというようなことをおっしゃっておるのですが、私どもこれは今初めて聞くので、今専門員室の方に、管理者の方に問い合せてもらっておりますがね、しかし、どうもそういうことははたから聞いておると、はなはだこう警察一流のやり方で、一つの理由をことさらつけておるという感じがする、と言いますのは、この参議院の方に陳情に来て、おっしゃるようなことは私どもないと思うのですが、もしあったとしてもそれは単なる過失ですね、何も参議院自体に対して漁民の方が敵意を持っているわけでも何でもないのですから。だからそういうことが私はどうして理由になるのかという感じがするのです。会社側との間で何かほかに問題があったとかいうのなら、それはあるいは警察の立場として多少考慮の余地があるかもしれませんがね。陳情に来た、そこで何かこわした、そんなことはあったっていいじゃないですか——いいとは言わぬがね、それはあったとしたって、そんなことは間違いですね、私はやはりそういう理屈にもならぬようなことを理屈にされるところに、会社側と結托して漁民の側に対して圧力をかけようという、やはりそういう意図が動いておったような感じを逆に受けるんですがね。そんなことがどうして理由になるのですか。長官にもう一度聞きたい。
  28. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 五月二十四日に、漁民の方々が工場に行かれましてこの際、工場の総務課長でありましたか、旗ざおで殴打するというようなこと、また、事務所の窓ガラスをこわすとか、マンホールにれんがを投げ込むといったような事犯があったのでございます。しかし、まあ、これは初めてのことでもありますし、まあ偶発的なことであろうということにしまして、当時は警察としましても、現場においての警告措置にとどめておったというような実績があるのでございます。そうしたことも考えあわせ、六月十日には、先ほど申しました通り、国会への陳情の際に、これも偶発的なことであるかもしれませんが、そうしたこともあった、大ぜいの人が集まると、ついどうしてもそういうことは起りがちである。特に六月十日に国会都庁への陳情あと江戸川工場の方に行かれるということになりますと、時間的にも相当おそくなることでもありますし、かなり気も立っておられるでありましょうしするから、あるいは五月二十四日のような不祥の事犯を繰り返すおそれもあるのじゃないか、こういう見地に立って、先ほど申しましたような措置をとったものと考えるのでございます。
  29. 青山正一

    青山正一君 十日のこの警官の配置状況については、まあ先ほど山口警備局長からほんの少々触れておられますが、私のところへ陳情に来られました漁民側代表お話によりますると、これは町会長なりあるいは町長、そういった漁業組合の人、そういった代表者でございますが、漁民側は、十日には川島幹事長に会って、非常にこれが窮状を訴えまして、川島さんからいろいろな返事を聞いてから東京都庁に行った、そうして東京都の建築局指導部長とそれから施設課長に同道してもらって工場側に抗議文を手渡すだけの目的で、しかもこれは同行して行ったわけです。同道してもらって工場側に抗議文を手渡すだけの目的で、これはきわめて平静な状態工場の門にたどり着いた、これは漁業者の言い分です。ところが、工場の鉄門がかたく閉ざされておって、立ち入り禁止、あの大きい立て札のみが振られおって、その背後に警察官がおられた。それで漁民側代表者の数名だけ、その中に町長もおれば、大会の議長もおる、あるいは漁業組合長、町会長、そういった方が、五人のお方だけが入門して抗議文を手渡すため、こういうふうな気持で進んでおった。そういうふうなことで、その代表者も漁民の連中を納得させておった。その間も絶えずこの入門禁止の立て札をこうして振っておった。いかにもそれが警察官指示でそういうことをやっておったと、こういうふうに言うておるわけでありますが、そういうところに偶発的に暴力が発生した、こういうふうに私どもは考えておるわけでありますが、当日の警官の配置や、それから工場の態度に漁民を挑発するようなところがあったかなかったか、その点について、一つまっすぐに御返事願いたいと思うのです。
  30. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 東京都の指導部長課長は別の車で先に行かれたように私聞いております。それでそのあとをバスで、漁民の乗られたバスが追っかけて、これは相当のスピードでやはり行かれた。警察としましては、国会陳情に見えたときに相当気勢が上っておった模様がありますし、そういうわけで、そのバスのあとを実は警察の車でずっとつけて行ったのですが、警察の者が正門に車が着いておりて制止するといういとまもないくらいに実は正門を乗り越えて中に入られたという状況であります。  それから今回の問題につきまして、警察側漁民を挑発するというような考えももちろんございませんし、また、当日の模様を聞きましても、そういうようなあれは私なかったと思います。むしろ、工場の中に二百メートルぐらいの奥のところに姿が見えないようにして待機して、万一の場合に備えておったのであります。一挙にどっとなだれを打って七百人ばかりの方が入ってきて、その辺、非常に建物その他を破壊されたという状況工場の中に入って五、六分ぐらいたって、警察官はその食堂から出て、漁民の人と対するような状況になっておるのでございます。  なお、警察は当初、先ほど言いましたように、二百四十名ばかりの警察官、その後非常に投石されたりなんかしまして、けが人が出るし、状況が悪いというので、応援の要請がございまして、部隊応援の要請がございまして、七時半に応援隊があとから着いておる。しかも、工場の中には重要な施設と言いますか、重要と申しますのは、非常に危険性のあるものを貯蔵している施設がありますので、そういうような重要な危険施設の方にも警察官はさいて当てておったような状況であります。
  31. 青山正一

    青山正一君 警備局長からいろいろ話がありましたのですが、それならば、その警官は、晩その事件が起きるちょっと一時間ほど前に待機しておったものか、朝からずっとその用意のために待機しておったか、その点と、それから、漁民側には多少付和雷同性もあったかもしれませんが、警察側もそれ以上付和雷同性があって、たとえば、当日門より百五十メートルも離れたところでバスをとめて、その周辺にぼんやり立っておったところの多くの漁民が突然付和雷同性の警官隊の突撃にあったという、そういう事実があったかどうか、その点について承わります。
  32. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 先ほど申しましたように、当初は本社の方に行くというような予想であったのでありますが、途中から工場に行くというようにバスが工場に向ったわけです。そこで、急に部隊を出すことになりまして、着きましたのが——一番初めの部隊が着きましたのが五時三十二分であります。  それから漁民の方々が着かれたのは六時八分。
  33. 青山正一

    青山正一君 それは朝ですね。
  34. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 午後の五時三十二分。  それから、もう一点お尋ねの件につきましては、私全然聞いておりませんが、そのバスの近くにおられた漁民警察側が何か刺激的なこと、あるいは挑発したというようなことは、私はちょっと考えられないのでございますが、もう少し事情は詳細に調べてみたいと思います。報告を受けておりません。
  35. 青山正一

    青山正一君 そうすると、ただ、その被害程度が非常に多いので、たとえば、警官が二十七、八名と、それから漁業者が百五十名というふうなことから考えてみますると、その百五十名全部の人が工場内に入っておって、それがたたかれてそういうふうになったのかどうか、その点がどうも私はふに落ちないわけです。そこであとに、警備局長から先ほど御説明があった、つまり、あの拘束された八人のうち、一人は新聞紙上を見ますると、横腹の骨を二本ですか、三本も折られて全治が二カ月とか三カ月、それで今入院中である。できるならば、これは委員会あたりに来てそのお話をしたいというような気持を多分に持っておられるようでもございますが、そういうふうにして全治二、三カ月もかかるような重傷を受けた人もおれば、また、ほかにも全治二週間なり三週間、あるいは五週間もかかる傷を受けたということを聞いておりますが、こういう重傷者を拘留するということは、基本的人権の侵害にならないのかどうか。その点について、一つ法務省側の御意見を承わりたいと思います。
  36. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) この事件は、先ほど来御説明がありましたような事情で起っておると思うのでございますが、被疑者といたしましては、八名の者が逮捕されまして、現在は身柄は釈放になっておりまして、検察庁では鋭意捜査を進めておるところでございます。もとより、この集まりました人々は、平素におきましては善良なる漁民でございます。その方々が、七百名も来て、乱暴ろうぜきを働くという事態でございまして、はなはだ治安の面から申しましても遺憾に存じておる不祥事と申すべき案件でございます。しかしながら、この問題の事件処理といたしましては、いろいろな角度から慎重に検討をいたしまして、適正な結論を得るように努力をいたしておるのでございます。適正な結論を得ますためには、工場汚水処理に関する行政官庁の監督指導状況等もつぶさに実態を調査する必要がございます。また、工場漁民との間の汚水処理に関する交渉経過等も証拠に基いて調べてみたいと思っておるのでございます。さらにまた、ただいま警察当局からお話がございました警備の状況、この警備の状況につきまして、警察側漁民側を挑発するという意図がないことは、これは私どもも信じて疑わないのでございますが、漁民側にとりまして、そういう意図ではないにしても、挑発されたと思うような客観的な何事か事態があったかどうかというようなことも、これは情状を判断いたします上においてきわめて重要なことでございます。そういう点につきましても、十分調査をいたしたいと思うのでございまして、さらに紛争の今後の見通し等も見きわめました上で、適正なる検察的な判断をいたして事件処理をいたしたい所存でございます。
  37. 青山正一

    青山正一君 ちょっと人権擁護局長から、先ほど肋骨を三本折られたという問題について私触れておったわけですが、それについてのお考え方を一つお聞きしたいと思います。
  38. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 本件につきましては、人権擁護局といたしまして、まず、漁民の方の汚水による生存権の問題でございます。広い意味の人権にも関する問題であります。これに関連いたしました公けの害、公害による問題が方々に起きておりますので、全般的にこういう種類の事件についてよく注意はしております。ただ、ただいまはこの事件に関連いたしまして、留置場におきまして苦痛を訴えたにかかわらず、すみやかなる医療処置を許されなかったという佐藤金蔵さんの問題を今検討中であります。事の真相は、まだ十分にきわめるに至っておりませんが、ただいま入院をしておられます佐藤金蔵さんのお話によりまするというと、この事件が起きました六月十日の日でありますが、大体乱闘が終ったあとのころに、この佐藤さんが、会議室の部屋の戸のガラスを二枚を、足でけって割られたそうであります。そのときに、七、八名の警官の方が来まして、佐藤さんを引きずり倒し、そうして警察官の囲みの中で、足でけったり、踏んだりされた。そうしてこの佐藤さんは、その日の六時ごろに逮捕されまして、そうして小松川の警察署に、午後八時ごろ連行されたようであります。そのときに取調べを受けられましたけれども、非常に胸が痛むので、手当を要求したけれども、聞いていただけなかった。ようやくその翌日の、十一日の午後三時ごろになりまして、警察医の加藤という方が、型通りの診察をされたようでありますが、大したことはないというふうな程度であったようであります。しかし、本人の方は、非常に胸が痛むので、看守の手当を要求されたそうでありますが、十分な手当をされなかった。ようやく十二日の午前中に、加藤病院でレントゲンをとっていただき、そうしてエキホスを患部に塗ってもらった、こういう状態であります。そうして翌十三日の午後一時ごろに、検察官の取調べがありまして、四時ごろにようやくレントゲンで、骨折があるということがわかったというのであります。留置場におきまして、被疑者が留置をされた場合には、やはりその健康疾病については十分の、また、すみやかなる処置をすべきではなかったかと思うのであります。佐藤さんの供述によりますと、やや、この点におきまして、この被疑者留置をされた方の健康上の配慮につきまして遺憾の点があったように思われるのであります。
  39. 青山正一

    青山正一君 ただいま人権擁護局長の鈴木さんから、いろいろお話があったこと、一つ警察側の方でけんけん服膺して、おとめおき願いたいと思うのでありますが、その他、私どもが常に考えることでありますが、この事件のために毎日十人くらいの漁業者が参考人として小松川警察の方へ呼ばれておる。現在は、先ほど水産庁なりあるいはその他から御説明があるように、ただ、ノリあるいは貝をとるというふうな零細なる漁業者、しかもそれによってのみ生活をやっておる、こういった連中ばかりでありますが、そういった方々が、毎日十人くらいずつ、その問題を起した小松川の警察べ呼び出されまして、これは参考人かどうか知りませんが、そのために働くことができずに非常に困っておる、こういうことについて、警察なりあるいは人権擁護局の方でその生活権を、さしあたりの生活権の擁護というような観点から考えて、一体どういうふうな配慮をなさいますか、その点を一つ承わりたい。
  40. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) これは、国家の警察権あるいは検察権の問題と、それから個人の人権の問題、この関連が非常に重要な問題で、できるならば、検察庁、あるいは警察におかれましても、この取調べに当られましては、できる限りその生活に影響のないように、やはり十分の考慮を払われんことを、人権擁護局としては希望いたす次第であります。
  41. 青山正一

    青山正一君 一つ警察庁長官なり、あるいは警備局長にお聞きいたしたいと思いますが、負傷者の多くは後頭部、あるいは背中に傷を受けておるというようなことを聞いておりますが、これは逃げるのを追いかけた警官もいたのではないか、こういうふうに考えております。しかし警察官警棒警じょう使用及び取扱規程の中の第四条でございますか、その第二項に、「警棒または警じょうで頭部を打つことのないよう注意すること」、こういう条項があるのであります。また、第四に、「不注意な使用によっていたずらに民衆を刺激することのないようにすること」、こういうふうな個条があったわけでありますが、この個条をみずからが破ったというようなことになるわけでありますが、その点の一つ御見解についてお聞きいたしたいと思います。
  42. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 警察官警棒を使う場合につきましては、厳格にこれをしぼっておるのでございまして、先ほど御指摘がありましたように、確かに警棒を使うことが許される場合であっても、必要な限度をこえてはならないことはもとよりのこと、振り上げたり、頭部を打つことのないようにすべしという注意規定は、確かに使用及び取扱規程に規定をいたしておるのであります。今回警棒をきわめて短時間、しかも最前線の少数の者が最後の実力行使をした場合に実施いたしたということは、先ほど山口警備局長からお答えした通りであります。この警棒の使用によって負傷者を出したものであるかどうかという点につきましては、きわめて重大なことでございますので、警視庁の方におきましても、十分にこの真相を究明せしめておる段階であります。私ども正確詳細な調査に基かないで想像をまじえてお答えするのははなはだ申しわけないと思いますが、かりに後頭部にけがをしておられるような方が漁民の方々の中にあるとしますならば、こういうことが考えられるのではないかと思うのであります。あの大ぜいの方々が、先ほど来たびたび申し上げました通り、警察官の方に向ってかなりしばしば投石をされておるのであります。そのために、警察官相当数けが人を出したわけでありまして、漁民の方々がうしろの方から投げられた石が、不幸にして同じ仲間の漁民の方々にうしろ側から当るということも、私はあり得るのではないかと思うのでありまして、そういったような場面も  不幸にしてけがをされた方、後頭部に負傷を負っておるというようなことが、あるいはああいう場合のことで、夜のことであり、しかも大ぜいがこんがらかっておる際でございますので、あり得たのではなかろうかと思うのでございます。これは私現場を見たわけでもなし、単なる想像でございますので、はなはだ申しわけないお答えになるかもしれませんが、まああれこれ実情を確かめるということはきわめて大事なことでございますので、目下鋭意真相の調査をせしめておるところであります。御了承願います。
  43. 青山正一

    青山正一君 最後の一点ですからして、皆さんのお許しを得て、最後の一点だけお話し申し上げたいと思いますが、まあただいま長官のおっしゃったことは、ある意味で、非常に警察官を擁護することに役立つかもしれませんが、そういった事柄は、これはまあ病院か、お医者さんのところへ行けば警棒でなぐったか、あるいは石で何されたものかはっきりするわけでありまして、その点は私は追及しません。しかし、翻っていろいろ考えて見ますると、この問題を起したことであなたが非常に責任を感じておられるわけでありますが、おそらくこの小松川警察署長のとった態度は、この紛争の問題、あるいはいろいろ人権擁護的な建前から見てどうかというふうに、私はいろいろ考えられる節が非常に多いわけであります。たとえば、これはへ理屈かもしれませんが、拘留されたものの中で、留置場内で医師の手当を受けた。ところが、釈放されるときにその治療代をぜひ置いていけ、こういうふうな命令を受けた。ところがその治療代はない。これははだしのままで収監されたわけでありますから、今ないから、一つ組合か、町役場へ取りにきてくれというふうに言うたというようなこともあるし、あるいは自分が自分のところへ帰るにも電車賃も何もなしに、その電車賃すらみんな投げ出して、そうしてそれをかき集めて置いてきたというような事例もあるわけでありますが、そういうことを聞いて、どうも僕は人の名前をあげるわけじゃありませんが、相当小松川警察署長あたりのとった行き方というものは、ちょっと度をこしているのじゃないか、こういうふうに考えておりますが、そういう建前から一つ長官、まあこれはどうせいとか、こうせいとかいうことじゃありませんが、悪かったなら悪かったとはっきりおっしゃっていただきたいと思いますし、それから人権擁護局長から、こういった点は、一体あなたはどういうふうに考えるか、その点について一つ、これは私の一番最後の質問でございます。あとは皆さんからいろいろ質問があると思いますので。
  44. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 小松川警察署長が、今回の事件に関連しましていろいろとりました措置の中に、あるいは行き過ぎと申しますか、適正を欠くような点がありますかどうか、そういう点、ただいま御例示になりましたような点も含めまして、私は全般的によく真相を調査してみたいと思っております。そうしてもし不幸にして行き過ぎの点がありますならば、将来十分戒めると同時に、また、必要なる措置をとらしめるよう、かように警視庁に対しましては勧告をいたすと申しますか、注意を喚起したいと、かように考えております。  なお、先ほどお尋ねになりました点に、私はあるいは十分にお答えをしてなかったかと思いますが、この事件処理につきましては、漁民の方々のまことに同情に値すべき御事情のあります点を十分に考慮に入れまして、事件処理につきましては、できるだけすみやかに結了するように、また、御迷惑をかけることを最小限にとどめるように、重ねて注意を喚起しておきたいと思います。
  45. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 本件の事件に関連いたしまして、今後におきましても留置場内における留置されております者の人権の尊重ということにつきまして、また、それに関連いたしまして、ただその留置の管理をしている人を責めるばかりでなく、留置場に関する規定が非常に不備であるように思います。やはりこの設備の点は、また、その管理者の人権感覚における緊張感等につきまして、人権擁護局といたしまして、一般的にこの留置人の人権の尊重ということをよく考えていただきたいと、本件に関連いたしまして、よく今後調査いたしまして、要望いたしたいと思います。
  46. 赤松常子

    ○赤松常子君 今度のこの事件は、東京に近いところでこれほどの問題が起きたということを、私非常に遺憾に思うのでございますが、ちょっと私聞き漏らしたかもしれませんが、これだけの警官の動員は、警察当局みずからの自主的判断でなすったのでしょうか、会社側の要請でなすったのでございましょうか、まずちょっと、その点を伺わせていただきます。
  47. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 先ほどお答えいたしましたことを繰り返すことになりますが、警察独自の情勢判断に基く結果、たまたま会社側の要請と合致しましてああいうふうに出動をいたしたのでございます。
  48. 赤松常子

    ○赤松常子君 私どもの方の調査も一応いたしておる資料がございますのですが、それをずっと逐次見て参りますと、非常に会社側に誠意がございませんでしたこと、それから東京都などもその間に入っていながら、この問題の解決に熱意を示さなかったこと、それから川島幹事長などの口入れで、一応会社口頭では汚水を流さないと言いながら、それを実行しなかったこと、こういうふうなことが積り積りまして、こういう事態になった次第だと思うのでございますが、そういう前のいきさつ、漁民の方々の生活権を奪う、こういう大問題に対して、今申しますような関係当局関係官庁が少しも誠意を示さなかったということの前提があるわけなんでございます。それがたまたま六月の十日に至りまして、こういう不祥事が起きたわけでございますけれども、私ども調査によりますと、工場の回りにすでにバリケードを張ってあったし、それから工場の中に警察官の方々が二、三百名も待機をしていた、こういうふうな状態なんでございます。それで私がお尋ねしたいことは、こういう非常に刺激をする、あるいは生活権が奪われる、こういう非常に深刻な状態になっているときの、そういう場合の取締り、問題を未然に防ぐ、こういう責任を持っておいでになる警察側といたしまして、会社に立ち入り禁止の立て札を立てたり、それを振り回したり、また、バリケードがちゃんと作ってあったり、その中に警察官の人が待機していたりというような、こういう状態で果してこういう事態が未然に防げるとお思いになる取締り状況であったのか、これを私伺いたいと思うのでございます。たまたまできたことではなくて、もう五月の初めからこういうことが積り積ってきておる、そういう場合の状態を悪化させないように未然に防ぐ、その取締り状況としてこういうことが工場側にちゃんとなされていたということ、それから工場の中に警察官が待っておいでになるというようなことが、こういうことを未然に防ぐ最善の方法であったかどうか、石井長官にお聞きしたいと思います。   〔理事一松定吉君退席、委員長着   席〕
  49. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 工場にバリケードをめぐらしておったというようなことは、私は聞いておらないのでございます。いずれにいたしましても、先ほどもお答えいたした中に申し上げたかと思うのでございますが、警察といたしましては、工場漁民の方々との間のこの紛争そのものには直接に関与すべきものでないのでございます。これはそれぞれの指導監督の立場にある関係各省、あるいは東京都庁と申しますか、そういう方々の適切なる指導監督に待たなければならぬのであり、また、両当事者、工場並びに漁民の方方のお互い誠意ある自主的な円満解決への努力に期待しなければならぬと思うのでございます。警察といたしましては、そういった関係者の御努力によりまして、一日もすみやかに円満な解決を見ることを念願をいたしておるのでございます。ただその推移を日ごろ警察といたしましては、常にながめておる、そうして万一不測の事態が発生するようなおそれがあります場合には、機を逸せず、これに対して必要な措置をとらなければならぬ、こういう立場にあるわけでございます。従いまして、従来とも工場のいろいろおとりになった態度とか、また、漁民の方々がいろいろ工場と折衝したということにつきまして、そういった両当事者の動きにつきましては、警察といたしましても深い関心を持ってきておったわけでございます。先ほども申しましたように、五月二十四日に漁民の方々が工場に行かれたときに若干トラブルがあったというようなこと、そうしてまた、六月十日の当日の漁民の方々の動向、こういったものをあわせ考えまして、六月十日の夜、江戸川工場に再び大ぜい行かれるということになると、また、何か問題が起るおそれがあるのではないかというその直前に、初めて警察としましては、必要最小限度の警察官の配置をいたした。こういう状況になっているのでございます。あくまでもこうした問題につきましては、警察としましては、関係者の方々の御努力によりまして円満に事態解決することを念願いたしているのでありまして、警察がこうした問題に直接介入するということは絶対避くべきものであります。不幸にしていわゆる不法事態が発生するというようなことになった場合、初めて警察が表に出るべきものである、かように考えております。
  50. 赤松常子

    ○赤松常子君 もちろん問題の直接の解決は、関係当局の方々がなさるべきことは申すまでもございません。けれども、その空気、その動きというものを、今あなたも非常に関心を持っているとおっしゃっておりますから、その推移なり、あるいは予想される事態というものは、私は敏感におわかりになっていらっしゃると思う。長い経験もおありでしょうし、専門でいらっしゃいましょうから、こういうことはどういうふうにしたならばどういうふうになるかということは、私は大体予想がおつきになれると思うのであります。それを未然にお防ぎになれなかったということに、私は手落ちがあったと思っているのでございますが、まあ遺憾の意を表しておいでになるお気持もわかりますけれども、その被害、その犠牲というものがあまり多過ぎると思う。これほどに立ち至らなくても何とか私はそのときのいろいろな配慮、あるいはその以前になさるべき処置というものがあれば、こんなにひどい被害、犠牲を両方が受けるまでに立ち至らなかったと思います。そこに私は少しお手落ちがあったと思うのでございます。先ほどから挑発をされたとか、あるいはされないとかおっしゃっておりまするが、バリケードを築いて内でけんかしに来い、待っておるぞ、こういう感じを与えられるということが賢明であったか、不賢明であったか、私はあまりに犠牲が多いので賢明な処置でなかったと思う。私はもう少しほかにとるべき配慮、あるいは考慮があったはずと、私は思うのでございます。これはあなたの側から見れば、やむを得ないことだ、起きたことはしようがない、こういうお気持でございましょうか、いかがでございますか。
  51. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 警察側が挑発してああいう事態に至らしめるような態度に出たということは、私は絶対ないと確信をいたしているのでございますが、しかし、いろいろ御意見もございますので、なおよく慎重に真相を究明いたしまして、もし警察側にそうした意図がなくても、相手側から見られて、そういうふうに感じとられるような節がありますならば、そうした点は、今後十分戒心すべき反省の材料にしたいと思っております。
  52. 赤松常子

    ○赤松常子君 どうぞほんとうに真相をはっきりさせて、また、御報告願いたいと思います。  私ちょっと注意を申しておきたいと思いますが、今竹内局長は御退席でございますけれども、先ほど局長のお言葉の中に、漁民が乱暴ろうぜきを働くから警察がと、こういう言葉があったということは、私はこの席上で非常に不穏当だと思うのです。乱暴ろうぜきを働く原因をだれが作っているか、やむなくそういう動きになったとは二章え、それを乱暴ろうぜきを働く、何か不逞のやから、何かけしからぬことをやっているというような印象を持たれるような言辞は、こういう席上では慎んでいただきたい。これは私、今局長さんおいでになられませんので、大へん残念でございますけれども、よくお伝え下さいますように、どうぞ真相の御報告を一日も早くお願いいたします。
  53. 大川光三

    ○大川光三君 これは石井警察庁長官と竹内刑事局長に伺っておきたいのであります。  暴力追放は現内閣の基本的な政策の一つでありまして、これは申すまでもないことでございまするが、このたびの本州製紙江戸川工場事件で、漁民の暴力に報いるに警察官自体が暴力をもってしたという印象を受けるものでありますが、いわゆる公務執行、正当防衛の域を逸脱いたしました警察官の暴力に対しまして、いかなる処置をし、いかなる取締りをせられるお考えであるか、これを伺いたいのであります。
  54. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 警察官が職務執行に当りまして、いわゆる行き過ぎの行為がありますならば、その程度に応じまして、それぞれ懲戒処分と申しますか、その他の適当な処置をとるのは従来の例に徴しても明らかな通りであります。今回の事案につきましても、もし警察官の個々の行為の中に行き過ぎの点がありますならば、そうした点は十分その程度に応じての措置をとりたいと考えております。
  55. 川井英良

    説明員(川井英良君) 警察官のいわゆる実力の行使の規定といたしましては、警察官職務執行法があるわけでありまして、その規定にはいろいろと要件が規定してございますので、その要件の満されるような範囲内におきまして、行われた警察官の正しい行動でありまするならば、これは問題ないのでございますけれども、御指摘のような、その要件なり、あるいは正当防衛の要件を逸脱して、何らか不法な暴力が行われたというふうな事案があるといたしまするならば、それに対しましては、法の命ずる適当な措置をとらなければならない、かように考えております。
  56. 大川光三

    ○大川光三君 そこで本件に関しまして、先ほど人権擁護局長でございましたか、確かに確認されておる事実として佐藤金蔵さんが七、八名の警官に連れられて、そうして踏む、けるの暴力を受けた。その結果として肋骨骨折が起っておるのであるという具体的な事実を人権擁護局が確認されておるのでございますが、この事実に対しまして、警察当局は遅滞なく事件の取調べに当り、しかもさような事実が事実とすれば、それに対して処罰するというお気持があるのでございましょうか、伺いたいと思います。
  57. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 佐藤さんのけがをされました状況について、ただいま私の方に参っております報告に基いて御説明を申し上げます。なお、本件につきましては、十分に調査をいたしたいと思います。  ただいままでわかっておりますところによりますと、六時十五分ごろ、先ほど申しましたように、正門から門を乗り越え、へいを乗り越えて、わっとなだれを打つように入ってこられ、入ってこられるなり、石を投げたり、棒切れでガラス、建物をこわしてずっとこっちへ見えた。その工場会議室入口のとびらを足でけってガラスを破っておる人を現認をいたしまして、逮捕しようとしまして、警察官が一人左手をつかんだわけです。そうしましたら、その付近におった七、八名の漁民の人が何をするのだということで、その逮捕しようとした警察官に暴行を加えてきた。そこで、それを見たもう一人の警察官がかけつけて応援をしたわけです。そこで、さらにあと五、六人の警察官が行って被疑者を向うに奪い返されるのを防止というか防いだ。その間に、両者の間に激しいもみ合いがあったということは報告を受けております。おそらくその際にけがをされたのではないかと思いますが、先ほど人権擁護局長がおっしゃいましたように、一人の人をとっさに七、八人の警察官が囲んでやったというのではなくして、逮捕しようとする、それを防止しようとするそういう両者のもみ合いの状況であったというように報告を受けております。  なお、これは十日の日でありますが、医者に見せましたのは、先ほど十一日の午後三時というように御発言があったのでありますが、私の方に参っております報告によりますと、十一日の午前九時半にお医者さんが見えて診断をされた。胸が痛いということを言われましたのは、当日被疑者が相当多かったものですから夜おそくなりまして、調べが済んで、それから言われたものですから、翌日すぐに病院の方に御連絡をしたと、そして翌日さらに、レントゲンを、十二日の日にレントゲンをとって、そして十三日にそのレントゲンの結果がお医者さんから知らされて、骨折があるということを知ったわけであります。十三日の夕方に、釈放になっておる、こういう関係でございます。
  58. 鈴木才蔵

    説明員(鈴木才蔵君) 先ほど私が申しました事実内容は、佐藤金蔵さんが病院において私の方の係官に申された供述に基いて述べたのであります。客観的な事実とあるいはそごいたしておるかもしれませんが、この点につきましては、もう少し懐重に警察官の方の話も伺いまして真相を確かめてみたいと存じます。
  59. 亀田得治

    ○亀田得治君 山口さん、あなたの今の御説明で、これは警察官だけから聞いたやつでしょう。佐藤金蔵さんの言い分はそこに入っておるのですか、この点を。
  60. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 私の方に参りました警察からの報告でございます。調書をとっております。
  61. 亀田得治

    ○亀田得治君 佐藤金蔵さんのやつは入っておりませんか。
  62. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) おりません。私の今申し上げたのには入っておりません。
  63. 大川光三

    ○大川光三君 いずれ慎重調査の上、真相が判明すると存じまするけれども、先ほどの御説明のように、佐藤金蔵さんを奪い返そうとする、あるいは渡すまいとするいざこざの際に、肋骨の骨折が起るということは想像がつかぬのであります。私どもとして人権じゅうりん事件で、警察官に対して傷害致死罪事件をみずから告発したことがございましたが、この場合でも結局は、警察官がくつで胸をけったということが、肋骨骨折の原因になっておるのでありまして、一応先ほどの御答弁のように、佐藤金蔵さんの奪い合いによって、その間知らず知らずの間に、助骨骨折が起ったというようには考えられません。少くともそこにもう少し突き進んだ警察官による故意があったという想像がつくのでございますから、この点は十分お取調べを願いたい。なお、人権擁護の建前から、先ほど大体の御説明を伺いましたが、これを要約いたしまして、私の特に御留意を賜わりたいと存じまする点は、まず、十日の午後九時ごろですか、非常に胸が痛むと言うて、佐藤金蔵さんが苦痛を訴えておったにもかかわらず、その当日医者にかけなかったこと、これが一つのやはり人権じゅうりんの現われであると考えます。第二に、十一日の午後三時ごろ、加藤というお医者さんが来て、助骨骨折の疑いがあるからレントゲンをとるようにという注意をいたした、加藤さんは、新聞でさように申しておるのであります。先ほどの説明では、加藤さんは、いやこれは大したことではないという話であったという点についての食い違いがありますが、少くとも胸の苦痛を訴えているその佐藤金蔵さんに対して、しかも肋骨骨折の疑いありという加藤医師の言葉が真実であれば、その加藤医師の言葉に従って、すみやかにレントゲンをとらなかったということも、人権じゅうりんの一つではなかろうか。その次に、十二日に加藤病院で片手に手錠をかけたままでレントゲンをとったという事実でありますが、いやしくももはや逃亡の憂いはない、医者に連れて行く佐藤金蔵さんに対して、手錠をかけたままで医者に連れて行って、レントゲンをとるということも、人権じゅうりんの疑いがある。それからさらに、肋骨骨折と診断されておりながら、そのままその病人を雑居房に留置をいたしておる、そうしてその翌日いよいよレントゲンの結果、肋骨骨折とわかって初めて釈放したということでありまして、いやしくも肋骨骨折と診断されておりながら、依然として雑居房で留置したということにも人権じゅうりんの疑いがあると、かように考えまするので、そういう点を総合されまして、人権擁護局長としては善処されんことを望んでおきます。
  64. 亀田得治

    ○亀田得治君 私は、たびたび警察官がよけいなおせっかいをするために、必要以上の被害がたくさん起る、こういうことをだびたび経験するのですが、本件なんかも私はその一番いい例だと思うのです。これはもうほとんど起るべき社会的な大きな原因というものがあるわけですね。警察がいつも発動する場合に、いやおれはそういう原因なんかは知らないのだ、公正に法律だけをたてにとってやっているのだ、表だけはいつもそういうことをおっしゃる。しかし、実際は、そういう裏の社会的な事情というものにほんとうの認識がなくして、正しい法の発動ということができるものじゃないのです。それをまるで知らぬことがいいようなことを絶えずおっしゃるわけですがね、そういうことは果していいことなのか、どうなんです。それじゃ危なくて大へんですよ。気違いに刃物を渡しているようなものです、そうでしょう。社会のための警察が、社会的な原因というものはよくわからぬで、どっちを向いているかわからぬ、どっちへ飛んでいくのかわからぬでしょう、それじゃ。そういう基本的な考え方について、ちょっとお伺いしておきたい。どうですか、長官。
  65. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 警察は、常に社会事象あらゆる面につきまして深い観察の眼を向けまして、その動向推移いかんによって、いわゆる不法事態が発生するおそれがありますならばこれを未然に防止し、一たび不法事態が発生しました場合には、これに対する適切な取締り、その他の措置を講ずるというのが、警察の任務であろうと思うのでございます。私どもは常にそういう見地でいろいろの社会事情に対しまして、常にその動向、推移というものをながめております。警察が注意をしなければならぬ場合、いわゆる警告制止の段階に至れば警告制止もいたしましょうし、実力をもってこれを阻止しなければならぬ段階に至りますれば、実力の行使もいたす、こういうことに相なろうかと思うのでございまして、第一線の警察官におきましては、絶えずそういう心がまえで物事を、社会事象の推移というものを十分に観察をいたしておるつもりでございます。
  66. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいまの長官のお答えに対する官庁側の態度として、竹内刑事局長、何か御意見があったら。
  67. 竹内寿平

    説明員(竹内寿平君) この問題につきましては、先ほども申し上げましたように、原因、動機となりましたいろいろの交渉経過、あるいは監督官の監督しておった状況、あるいは工場側の方に対する態度、そういうようなものを十分慎重に検討いたしまして、この刑事事件処理をいたしたいという考えを持っておりますことは、先ほど申し上げた通りでございますが、なお、この根本的な解決策といたしましては、先般行政庁の方からお話がございましたように、法的措置におきましても、私どもも欠くる点があるように考えるのでございます。そういう点も十分措置すべきものは措置いたしまして、お説のように、全国至るところ、大小のこのような紛争が発生しているのでございまして、合理的な科学的な方法解決ができる道を開いていただくのが適当かと考えております。
  68. 亀田得治

    ○亀田得治君 まあその基本的な問題について、今十分お互いに論議をする時間もないわけですが、警察が社会情勢の推移に注目しておるというのは、何か事が起りやせぬか、そうしたらおれは出て行くのだが、そういう角度だけから社会事象の推移を見ておる、だから非常に皮相なんです。私たちが言うのは、長官なり大臣なりというものは、もう少しそういう治安問題になる一歩先の事情というものをよく検討しておらないと間違うということを言っておる、そういう角度がきわめて欠けておる、これはもう基地問題でもいろんな労働問題の場合だってみんなそうですよ。一つの動くべき社会的な基本的な事情というもの、これが大事なんです。警察というものはそのためのものですから、そんな何も、どこかで何か事件が起きやせぬかと、そういうことを絶えず見張っておるそんなことを私は求めておるのじゃありません。ほんとうにもう一歩基本的なそういう社会的な動きというものを見ておってもらえば、警察権の発動というものが妙なことにならないで済むわけであります。こういう問題は、私もまあ農民組合の責任者であるものですから、実にしゃくにさわっておるのです。どこでも、もう日本中どこに行ったってそうですよ。大工場を建てるとあとの始末は一つも考えないで、自分の都合のいいように工場だけ建てて、そして何かあとから問題が起るともうすでに建ててしまったあとだ、建てられる方はこっちから何とか話しかけていかなければならぬ。こんなことは、根本的に第一間違っておる。いやしくもあなた、人の迷惑になるようなものを作ろうというなら、建てる前にほんとうはきっちりすべきなんです。道路を作るにしたって何だってそうですよ。公共事業だなんというと、よけいそういう横暴なことをやる、そういうことと同じ問題なんです、これは、怒らない方がおかしいですよ。憤慨する方が当りまえなんです。だから、私はあれだけの交渉経過をもってなおかつ、工場が問題を自主的に処理しないということになれば、ある程度被害が起るのは私は当りまえだと思います。だから長官は、去る五月二十四日、参議院の専門室に来た場合のことは、あとからはちょっと小さな声になったから言いませんが、五月二十四日に何か多少工場で問題があった。こういうふうなことを先ほども説明されておりましが、五月二十四日の被害程度は何です、こんなもの。私は何もないところにこんなことが起きていいとは何も言うのじゃないですよ。こんな程度被害なんですよ、五月二十四日の被害なんて。六月十日の場合でも、警察が出ないでほっておけば、これは五月二十四日の程度かもしれぬのですよ。日本全体の社会的な損害という点から見たらこんなものはわずかなものでしょう。しかも漁民に対して今まで会社が与えておる大きな被害から見たらこんなものは微々たるものです、そういうことをもっと考えてほしいということです。六月十日には警察が出たためにこの人的な被害までお互いに起きているわけでしょう。個々のこまかい人権侵害の問題等は十分調査願わなければならぬのですが、警察が出たために結局ずいぶん多数の人的損害まで起きておる、金にかえられぬ問題でしょう。こういうことを警察庁長官はどう思っておるか。五月二十四日程度の損害を防止するために、その五倍も十倍もするような損害を起して、それで警察は自分の職務を果したと思っておるのですか、何か問題があればそこへどんどん警察官を何人でも動員してつかまえさえすればいい、そんなものじゃないですよ、これは。私はこの事件あとの反省として、そういう被害の比較という問題を長官としてはどういうふうにほんとうにお考えになっておるか、はなはだ残念であったとおそらく私は考えていると思う。人権を守るという立場に立っている警察ならそうですよ。あるいは被害を少くしたいという立場に立っておる警察ならそうなんです。五月二十四日と六月十日を比較してどういうふうに長官はその点お考えです。もし六月十日に警察が出なかったなら、暴動にでもなって大へんなことになった、そう考えているのですか、私はそうはなっていないと思う。漁民の方の目的ははっきりしておるのですから。何も政治的に内閣をひっくり返してやるとか、そんなものではない、そこの点をどういうふうにお考えです。
  69. 石井榮三

    政府委員(石井榮三君) 確かに五月二十四日の工場におきごます漁民の方々による器物の損壊等は軽微なものであったようでございます。それだけに警察としましても、当時は、これは偶発的な問題であるということで単なる警告にとどめてあったわけであります。六月十日に警察が出動したから事態があんなに大きくなったのではないかという御意見でございますが、双方に多数の負傷者を出しましたことは、私、当初にも遺憾の意を表しました通りまことに残念なことと思っております。警察が出たからこそ警察官にもけがが出たわけでございまして、警察が出動しなければ警察官のけがはなかったということは、これは論理的に正しいかと思いますが、警察が出ましたのは、先ほど来たびたび申し上げます通り、万一の場各に備えて秘匿待機しておったのでございます。ところが、漁民の方々が午後六時八分ですか、もうへいを乗り越えて一時に多数工場の中に入られて、工場の事務所の窓ガラス等多数破壊されるという事態になったものでございますから、警察としましては秘匿待機しておったものが、これはそのままにしておけないというので、初めて姿を現わして警告制止の措置をとった、こういうことに相なっておるのでございます。初めからいわゆる漁民の方々が何もしないのに、警察自体が前面に踊り出て、それが挑発的な結果になって事態混乱を来たしたというものではないのでございます。まあいずれにいたしましても、先ほど来しばしば申し上げます通り、今回のこうした事案の発生しましたことはまことに遺憾でございます。そこで、この真相を十分に究明いたしまして、警察といたしましても、今後不幸にして類似の事案が他の場所に、他の時期にかりに起ったとします場合、起りそうな場合にどうあるべきかということにつきましては、十分これを貴重な反省の資料といたしまして検討して参りたい、かように考えております。
  70. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから先ほどからも御質問がすでに相当あったわけですが、この佐藤金蔵さんの場合ですね、人権擁護局長山口局長のその報告は非常な食い違いがある。佐藤さんの方はとにかく警察官の六、七人の諸君に取り巻かれて暴行された、意識的にやられたように言っておるわけです。ところが、山口局長の先ほどの報告ですと、どうも佐藤さんの言い分というものをよく聞いておらぬようですね。私はそんなことはおかしいと思うのですね。警察が悪いことをやったというて問題になっておる事件について、加害者の警察のことだけを警察の長官が、上の人が聞いて、そうしてそんなものを国会報告してもらったって何もならぬですよ、それはやはり被害者の佐藤さんの言い分をよく聞いて、そうしてどちらが正しいかという報告でなければ、両者意見が合わないならば合わないように報告をしてもらわなければならぬし、そういうところに私ども警察官のこういう職権乱用行為というものを、どうも警察というものは自分たち仲間だからということでかばい合う、こういう疑惑で見られている。先ほどのあなたの報告を聞きましても、私鈴木局長のああいう報告あとだけに非常にその点遺憾に思っているのです。私は佐藤さんという、こういう漁民の方が、警察の問題について多少遠慮気味に表現することがあっても必要以上に大げさなことを言うはずがないと私は大体考えておる。私どもの今までの経験からして。だからそういう点から言うと、山口さんの報告というものは、これは全く警察官をかばうための何か作りごとですな。最初佐藤さんが入ってきて何かこわして、そこで次にどうこうというのは。なぜもっと佐藤さん自体をこれだけの問題になっておることについて、部長みずからが調べるようにして、そうしてこちらに報告ができないのでしょうか。間接的に大体そういうことを調べさしておること自体にも私ども不満なのです。問題が起きた場合には、もう長官みずからが、場合によっては出かけてほんとうに真相をつかんで、行き過ぎたものについてははっきりそれはいかぬというふうにやってこそ、警察も多少まだ将来よくなる見込みがある、こういうふうなまた印象も受けるわけです。あんな、まるきり自分らだけでかばい合うような印象はもうきわめて悪い。なぜその佐藤さん自体を今までよく暴行の点について調べておらぬのか、ここをもう少しお聞きしたい。
  71. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) この問題が起りましたので、これはまずやはり警察関係の者を私の方としては事情を聞くのがまず第一歩であろうと思います。もちろんそれによって警察側にいろいろな非違があるというようなことであれば、これはまた被害を受けられた方の方にお当りすることもありますけれども、こういうような場合には、やはり人権擁護局とか、そういうようなところが佐藤さんの方に当られる方が御本人も事情を述べやすいでしょうし、まあ警察側がタッチしますよりも、その方が御本人としても真相をお述べになりやすいのではないかと私はそう思いますが、ただ私が申し上げましたのは、私の方に参っております報告と、たとえば医者の診断を受けました時間、それから佐藤さんを介抱する際に問題が起っておったという点が違っておりましたので御参考に申し上げたのであります。これはもちろん事件とかいうことでありますれば、これは両方調べるべきでございますが、また、私の方でも佐藤さんに当りますればそれはその方がよろしいかと思いますが、こういう場合には、まあやはり人権擁護局というような第三者の方がお尋ねになる方が適当な場合もあろう、こういうようにまあ私は考えておったわけであります。
  72. 亀田得治

    ○亀田得治君 そういう考えですかね。ともかく自分の部下で公務執行上非常に大きな間違いがあったのではないかという疑惑が持たれておる場合に、第三者がお調べになればいい、それだけじゃ私は済まないと思うのですがね。それは第三者ももちろん調べていいでしょう。しかし、警察自体が調べて、そうして内部的にそれを粛正していく、私はできればそれが一番いいと思うのです。もしそういうことなら、それじゃ人権擁護局が調べて一つの結論を出したらそれに完全に従いますか。自分の方はやらぬのだから、じゃ一つあなた方の方でやってくれ、その代り完全にそれに従ってもらわなきゃならぬ、この点どうです。
  73. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 私の方で調査をしないということを申し上げておるわけではございません。場合によっては、過去におきましてもそういう場合にずいぶんと直接御本人に当ったりした場合もございます。それから私の方としましては、関係の、現場に居合した警察官について、詳細に当時の状況を一人々々事情をただしまして、書類にして報告を取っておるのでございます。で当時の状況は、先ほど申し上げた通りです。人権擁護局との関係について御質問がございましたが、人権擁護局で御調査になります場合には、私の方から私の方のまた調査したところを十分にお知らせいたして、人権擁護の調査が万全に行えますように御協力を申し上げておるつもりでございます。
  74. 亀田得治

    ○亀田得治君 どうも自主的にお取調べになるのに気が進まぬようですね。事情を私よくわかりませんが。まあともかく人権擁護局では一つこれは鈴木さんにお願いしておきますが、できるだけ早く公正な結論を出してもらいたいと思います。  そこで先ほど長官が、佐藤さんだけではなく、負傷者などのことについて取調べ中だと、こういうことをさっきちょっとおっしゃったんですが、それはどういうふうにしてお調べになっているんでしょうか。調べのやり方ですね。数十名の漁民側負傷者のことについて一々医者にからだを見てもらって、そうしてお調べになっておるのかどうか。ちょっとお聞きしておきたい。
  75. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 負傷者のことにつきましてまとめて御報告申し上げます。漁民の方々の側の負傷者は四十三名、この四十三名はあの付近の病院について翌日詳細に全部調べたものです。で大部分は葛南病院の手当を受けておられます。そのほか病院としましては大体四カ所ないし五カ所くらいで治療を受けておられる。その方々は四十三名でございます。それから報道陣が三名、守衛が三名、警察官が三十七名、こういうことでこれが私の方の負傷者調査です。負傷者状況は、地元千葉県でもございますし、地元側の方は主として千葉県の警察をして調査をさせたので、まあこれは直接本件にも関係がございませんでしたので、比較的地元関係もありますし、調査は行き届いておるものと、私はかように考えております。
  76. 亀田得治

    ○亀田得治君 その調査の人数が、大体今お聞きしましたが、内容的な報告はまだ来ておらないのでしょう。たとえばですね、投石によるもの等、問題は投石によるものか、警棒によるものか、この二つが大きな分れ目です。あるいはそれ以外に、ついでに偶発的に起きたというものもあるかもしれない。しかし、私たちの一番知りたいのは、その警棒によるものですね。これはまた砂川事件だってはっきりしたものがたくさんあるわけですから、そういうものが幾つくらいあるのか、今までの調べでは。まあだれがやったかと、どの警官がやったかということは、なかなか突きとめにくい問題ですが、ともかく警棒でなぐられた、突かれた、そういったことの点をわれわれ知りたいわけですがね、そういうような内容的な点について。
  77. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 負傷された方々の一人々々についてその原因といいますか、警棒であるのか、あるいは乱闘の際のほかのけがによるものか、そういうことまではまだ実は調査が完了いたしておりません。私の方の手元に持っておりますのは、負傷者が、大体どのくらいのけがをされた方が何名くらいだとか、けがの状況、医者から見たけがの状況というような報告は参っております。
  78. 亀田得治

    ○亀田得治君 それは医者は原因が何であろうと、ともかく結果だけを調べているのでしょうが、そうじやなしに、警察がこういう人権問題としてすでに問題が持ち上っている事情は、警察としてはその点はよく調べてもらわなければいかぬわけです。なかなかわかりにくいのもあろうと思うが、たくさんの中には必ずある、あってこれを突き出すのですが、私ども問題が起きますと、第二段としては、あっちがやった、こっちがやった、結局うやむやにされることが多いのですけれども、しかし、事実自体は私ははっきりしてほしいと思うのですね。これは追ってでもいいですから、その点を十分一つ至急調査して出してもらいたい。医者の見解などつけてもらえば私は大よそわかると思うのですが、そういうものは出ますか、そういう資料は。
  79. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) できるだけ努力いたしたいと思います。
  80. 亀田得治

    ○亀田得治君 それから最後に、この取り調べを、こういう問題を起した小松川署ですか、こういうところが今でもやっている、そうですね、刑事事件の取調べ。
  81. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 所轄署でございますか。
  82. 亀田得治

    ○亀田得治君 所轄署……。
  83. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) そうでございます。
  84. 亀田得治

    ○亀田得治君 こういうこともはなはだ不適当じゃないかと思うんですね。ああいう問題が起きている経過等を見ればこれは単なる取締りじゃなしに、やはり一つの憎しみを持っております、必ずこれは。だからそういうものに正当な事件の取調べなんかできるもんじゃないですよ。どうしてもやらんければならぬのなら県警でやるとか何とか、やり方が幾らでもあるわけなんです。こういう点、はなはだ不適当だと思うのですが、これは普通のほかの事件の場合だってよくあることでしょう。法律にだって書いてある。あまり親密な関係とか、敵対関係がある場合には、裁判官ですら忌避されるのがそれが常識です。ところが、あれだけの問題を起して双方でやり合っているわけでしょうが、原因関係は別として、起きた事態というものは。そうして一方警察官の方は、自分たちの暴行関係はなるべくひた隠しにしていこう、どうしたってそういう傾向ですよ。そうすれば相手方を悪く、悪くすれば警察の方もちょっとやったのが仕方がなかったかなあで、こういうふうに判断されやすくするというのは、これは警察官としての人情なんです。そういう場合の、私はそういうことでは事件自体の取調べにも曲ったものが出てくると思う。そうして世間が第一納得しません。そんな形式では。それからそういう点、私ははなはだ不適当だと思うのですが、どういうふうにお考えでしょう。
  85. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) これは小松川警察署が所轄の警察署でございますから、ここで事件を捜査して送致するということはそれは当然だと思います。  それから負傷者警察側負傷者が出ておりますのは、ほとんど全員が機動隊関係者でございます。小松川の警察署からは人数の制約もありますし、あまり出ておりませんし、あのときのトラブルにはほとんど直接関係しておらないという状況、そういうような状況でございまして、本件は小松川の警察署で事件を取り調べましても、ただいまおっしゃいましたような不都合が非常にあるというようには考えられないのであります。
  86. 亀田得治

    ○亀田得治君 小松川署でそういう負傷者等がないということなら、これはまあ、多少そういう心配はないかもしれぬと思うのですが、まあその点に対しては固執しません、そういう状況なら。  それで私はこれは委員長にお願いしたいわけですが、できましたら、次回に佐藤さん自体を一つ証人なり、参考人なり適当な形で呼んでもらいたいと思います。こういう問題はやはり直接の当事者から聞かないと、なかなか間接的な報告ではよくわかりません。で佐藤さんが来ることになれば当然それに関連して適当数の方に来てもらった方が私いいと思うのですが、ともかくその点、要望して私のきょうの質問は終ります。
  87. 青山正一

    委員長青山正一君) ただいまの亀田君の申し入れの佐藤氏召喚の問題に、理事会に諮って決定いたしたいと思います。
  88. 辻武寿

    ○辻武寿君 これはあれですか、漁民工場側は今も対立しているわけですか。それとも工場側の方で七、八両日、排水の放流を停止したのに、九日突然に放流したということで相済まぬというような表現でもあるわけなんですか。だれが答えてくれるか知らないけれども、どうでしょう。
  89. 諏訪光一

    説明員諏訪光一君) 私の方では、水産庁といたしましては、正式には伺っておりませんが、水産課からの申し入れで建築局指導部、これが公害防止条例の管轄の部だそうでございますが、その方から停止を命令した。そうして工場側では、申しわけなかったということを言っていたということは聞いております。
  90. 辻武寿

    ○辻武寿君 漁民には非常に私も同情するところでありますが、六月十日に参議院窓ガラス、植木ばちを引っくり返したというような話を聞きましたけれども、それは故意にやったのですか、それとも間違いで起きたことなんでしょうか、この点はどうなんでしょう。
  91. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 当日の状況を少しく申し上げますと、二時四十三分に永田町……。
  92. 辻武寿

    ○辻武寿君 故意か、間違いか、どちらかでいいのですよ。
  93. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) そうですね、これは約五百人ばかりがあの玄関に押しかけて入れろ、入れないでわあっとなったんですから、故意と言えば故意、間違いと言えば間違いで、ちょっと事案そのものは偶発的なものでしょうが、相当あそこがそうぞうしかったことは間違いないじゃないかと思います。
  94. 辻武寿

    ○辻武寿君 やむにやまれぬ事情でこういう暴力が起きたとしても、暴力は私は許されないことだと思う。明治大正の米騒動とか、百姓一揆のような問題も大衆的な怒りが爆発して起きたので、ある一種の通ずるものは私はあると思うのですよ。問題なのは漁民工場に押しかけて行って暴力をふるうということは、何かそういう確証でもつかんで、警官は二百名先に待機したのか、万一起ると困るからといったような想像で私は行ったように聞いているのですけれども、何かそういうことがあって待機させたんですか。
  95. 山口喜雄

    政府委員山口喜雄君) 当日の国会陳情の前後における模様が、相当さっき言いました参議院常任委員会の部屋の前の問題もありますし、これは相当荒れそうだという現場におった警察官が見たわけです。一つは、五月二十四日に、やはりトラブルが工場の中で起っておる。何しろそういう排水をしておる工場に、七百人ぐらいの、非常にまあ生活に直接関係する被害を受けておる漁民として、そういう者が行けば、相当やはり中には興奮して、いろいろな問題が起るんじゃないか、こういう判断をしたわけです。
  96. 辻武寿

    ○辻武寿君 荒れそうだという判断の予測で二百名も先に待機させておくということは、私はやはり警察官の方が不穏当じゃないかという気がします。  これは最後に要望ですけれども、留置場内の取扱いについては、非常にたくさんの不備な、いろいろ粗末な扱いを私は聞くわけです。今度もこういうことが起きましたので、非常に遺憾に思います。今後は十分に気をつけて、念には念を入れて、民主的な取扱いをしてもらうようにお願いします。  以上であります。
  97. 青山正一

    委員長青山正一君) 最後に、一言当局の方々にお願いしておきたい。今回の本州製紙の事態は、はなはだ遺憾のことでありましたが、これに対処すべく、法務当局と警察当局には、憲法に保障されておる生活権と基本人権とを十分に配慮されまして治安問題に対処していただきたいということ、水産庁経済企画庁当局におかれては、かかる事態を根本的に、急いで水質汚濁を防止する法案を作っていただきたいこと、通産省当局においては、工場廃液の問題は、常に社会問題を引き起すことを念頭に置かれ、視野を大きく広げていただいて、単に所管の工場、事業所をどうするかということ以外に、国家的立場に立ってかかる問題に対処していただきたい。先ほど水産庁当局にもお願いした通り、水質汚濁防止法案の成立に御努力をお願いするわけでありますが、何分まだ関係事態調査の未了のものもありますので、本日の委員会はこの程度にとどめ、自後の取扱いについては、委員長及び理事打合会において協議することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  98. 青山正一

    委員長青山正一君) 御異議ないと認めます。  それでは、次回は、明後二十日午前九時三十分、検察行政について開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十三分散会