○
説明員(
内藤誉三郎君) ただいま
大臣から改訂の基本
方針の御
説明がございましたので、私から特にその要旨を簡単に申しますと、道徳
教育につきましては、これは去る三月実施要領を出しまして、これに基いて現在各学校で実施されているわけです。大体その実施の
状況は、朝日
新聞の
報告によりますと、七、八割
程度は実施しておるということ、でございまして、この道徳
教育は現在のところ、従来の特別
教育活動の中における生活
指導あるいはホーム・ルームというようなものを、さらに発展的にいたして、生活
指導の上に道徳的な判断力あるいは道徳的心情をつちかうという点について、特に配慮されておるわけでございます。決して一時間の時間だけじゃなくて、全
教育活動で道徳
教育を行うという建前を尊重しながら、この一時間によって足らない点を補い、さらに深く掘り下げて、断片的なものを統合するというような意味で、全体計画の中における位置づけを明確にするようにいたして、ただいま、いろいろ道徳
教育には検討を重ねております。九月から学校
教育法施行規則の位置づけを明確にいたしまして、
指導要領を作成し、かつ全国において実施ができるように促進をはかりたいと考えておるのでございます。
それから、基礎学力の充実でございますが、これは先般の学力
調査にもございましたように、最近国語、算数の基礎学力が大へん落ちております。こういう点を
強化する意味で、特に国語、算数はあらゆる教科の基本でございますので、算数、国語の
指導時数を増加した。大体五、六時間
程度ふやしまして
強化した。特に国語の場合には、大体従来は漢字配当がばらばらに出ておりましたので、学年別に漢字配当をして、他の教科を読みやすく、また学習の効果を上げ得るようにしたこと、あるいは従来ひらがなが中心で、かたかながおろそかにされておりましたので、かたかなの学習を一年から
強化し、二年で大体終るようにするとか、あるいはローマ字は四年以上において実施する。従来はローマ字は選択でございましたが、非常に多数の時間をかけておりましたが、その割に効果が上らなかった。今後は、かたかなと同じような意味で、
相当ローマ字が普及して参りましたので、ローマ字の教科書は使いませんけれ
ども、四年から確実にローマ字を必修するようにいたしたのでございます。
それから毛筆習字につきましては、これは大体四年以上において課することにいたしまして、従来通り選択でございますが、大体一週間に一時間
程度を履修させるようにいたしておるのであります。
それから算数は、大体ほぼ戦前の
程度に引き上げた。終戦後、少し
程度が落ちておりましたので、これを小数、分数等を入れまして、戦前の
程度まで向上をはかった。
中学校の段一階に参りまして、国語の方は、日本のやさしい古典が理解できるように、読み書きの読解力をつけるように、あるいは作文の能力を充実するようにする。
それから算数の方は、数学の方は、二次方程式を加えるとか、あるいは幾何の証明等、少し数学の
程度を高めたわけであります。しかし現在の数学が非常にある意味ではむだなものが多いと申しますか、株式計算とか利息の計算とか、あるいはそういうような数準の本則から申しますと、多少枝葉にわたっておる点が非常に多いのでございますので、そういう点を整理して、基本的な原理原則的なものをしっかり理解し、また応用する能力を身につけるようにいたしたのでございます。
それから科学技術
教育の向上につきましては、特に最近の産業科半の急速な進展に対応いたしまして、科学技術の向上刷新をはかっていく。その中で数学や理科の
指導時数を特に中学の場合にふやした。これは
小学校、
中学校を通じて、従来とかく理科が
内容が多過ぎる、実習が困難でありたと言われておるので、これは先般の学力
調査でもよく現われておりますので、このたびは、
内容が多過ぎるので、そういうものをできるだけ精選して、基本的な事柄を徹底的に学習するようにした。それから実験、実習、観察、こういうような点に重点を置きましたので、特に理科については、
一つごらんをいただきたいと思うのですが、こういう点は実験、実習、観察が十分に行えるように、
教育課程にも配慮し、また、
設備その他教員の再
教育等も行い、まして、理科
教育、科学
教育が忌速に進展できるようにいたしました。
それから、そのほかに技術・
家庭科というものを新設いたしたのでございまして、これは物を生産し創造するという喜びを味わわさせ、同時に勤労に対する態度なり意欲をつちかいたいということが、
一つのねらいになっておるのでございます。同時に日常生活において、あるいは生産において、近代的な技術に対処できるような、そういう基礎的な態度を養い、従来の職業
家庭科は御承知の通り、実習におきましては、農・工・商・水産課程を少しずつつまみ食いをしておった。このたびの改訂では、必修にする。職業
家庭科は、大体男は工内内秤を中心に、工作技術を中心に、女は衣食住等の
家庭科的な
内容を中心にしたわけでございまして、選択教科にした。職業
家庭科というのは、これは廃止いたしまして、農・工・商・水産課程というふうに、はっきりと区別いたしまして、その
一つ以上を履修させるようにしたのであります。これは
社会へそのまま出て働く
人たちに職業の準備的な
教育を徹底し
強化しようとするねらいでございます。特に
中学校の段階では、理科の面で従来同然とかあるいは生物とかそういうものを含めておったのですが、このたびは物理、化学的なものを非常に重視した。従来物理、化学的な要素が非常に少なかった。物理、化学的な面を
強化するために、物理、化学的な分野、生物、地学等の分野、二つの分野に分けて系統的学習ができるように、学習能率が向上できるように意図したのでございます。特に理科の場合には基本的な事柄を、原理上原則的なことを十分理解して応用能力が身につくようにいたしたわけでございます。
それから地理、歴史
教育につきましては、これは目標なり、
内容を精選いたしまして、特に
小学校の場合、従来大体
小学校の
社会科は
家庭、学校を中心に隣近所、町村の辺までは割合
子供が理解できるわけですが、郷土学習の四年に参りますと、この郷土学習というものが大体県を単位にいたしておりますので、この郷土学習というものは最小限にとどめまして、できるだけここから日本全国の地理的な特色のある概観を出していく。そうして瀬戸内海とかあるいは寒冷地なり、あるいは湿潤地帯とか、いろいろな面をスポット的に出していく。そうして同時に、日本の風景あたりも景色のいいところもついでに出していく、地理的なものが中に入りながら。そして五年にいって地理の大体のあらましを――日本地理のあらましを理解していく。
それから歴史につきましては、四年のころに、交通機関の今と昔というようなものは大体歴史的な芽ばえを四年におきまして、六年で日本歴史の概観が把握できるようにいたしたわけでございます。
中学校に参りまして、一年生が地理、二年が歴史、三年が政治、経済、
社会、こういう三分野に分けて学年指定をしたのでございます。特に
中学校の地理、歴史につきましては、日本の地理、歴史が中心でございますけれ
ども、世界史との関連において、世界地理との関連において、日本がどういう地理的環境にあるのか、あるいは日本がどういう世界歴史との
関係において歩みを続けてきたか、こういう世界史的観点において日本の地理、歴史をながめていこうという態度なり能力を養成するようにしたわけでございます。
それから情操の陶冶あるいは身体の健康、安全というような問題にりきましては、音楽や、図画、工作、美術というような
教育を通じてできるだけ美的情操の陶冶をいたしまして、日常生活に潤いあるようにいたしたわけでございます。そして
子供たちに健康なからだができるように、特にいわゆる基礎体格を充実し、また保健、衛生にも意を用いて、健康なる精神は健康なる肉体に宿ると言われておりますので、りっぱな健康体の
子供たちを作ると同時に、いわゆるスポーツ精神であるフェア・プレーの精神をこの中で十分養成していくように配慮したのであります。
それから最後に、第六番目に生徒の進路、特性に応ずる
教育を十分行えるようにしたこと。
中学校は義務
教育の最終段階でございますので、中学の二年において、半数はそのまま
社会に出てしまうし、半数は高等学校、定時制に進むわけでございます。この点を十分考慮いたしまして、従来は外国語と職業、
家庭が選択でございますが、この選択の幅をもう少し広めた、すなわち必修教科である数学、音楽、美術の上に、選択でも数学を課するようにした。つまり上級学校へ行く人には数学が必要でございますので、数学の力をさらにつける。これは、一般に数学を仲ばすことはかえって
子供たちへの負担を大きくするという点もございますので、数学、音楽、美術を選択の教科にした。それから従来の職業
家庭科の選択があいまいでございましたので、この職業
家庭科という選択を廃止いたしまして、農・工・商水・産・
家庭、こういうふうにはっきり分野を分けたのでございます。
それから、各小、
中学校の間に一貫性、系統性がなかった。これは占領中司令部の
関係が大きな
原因でございますけれ
ども、
小学校の係と
中学校の係が別々にございまして、そこに系統的発展性が十分考慮されていなかった。こういう点は今回十分改めまして、系統性、発展性を考慮した。同時に、各教科間に非常に重複が多かった。むだがある意味では多かった。これも
子供たちの身辺からいろいろの問題をとらえるということは非常にけっこうですけれ
ども、これが行き過ぎになりますと、身辺の雑事だけを羅列するような傾向がございますので、こういう点はできるだけ整理いたしまして、それぞれ教科の正しい位置づけをいたしまして、重複のない能部的な学習ができるようにいたしたわけでございます。
それから、各教科の目標、
内容をできるだけ精選した。今のところ非常に
子供たちの負担が多いのでございまして、なかなか
子供たちも自分の力でまとめるのに骨折りをいたしますので、できるだけ目標、
内容を精選して、基本的な事柄に学習の重点を置いた点が大きな点でございます。
それから、この
教育課程の最低の
基準を明示いたしまして、できるだけ地方の
実情なり、現場の先生方が創意工夫できるような余地を残して、できるだけよい
教育が行えまするようにいたしたわけでございます。従来
学習指導要領は、千何百、
小学校だけでも二千ページくらいあったわけでございます。これを今回は二百ページ
程度のものにいたしたわけでございまして、
指導書、手引書に類するようなものはこれを
学習指導要領からはずして別個に著作物として出したい。
指導要領では大体各教科の目的、目標、ねらい、
内容その取扱いに対する重点的な事柄にしぼったわけでございます。で、そういう意味で非常に簡潔になりましたのは、教職員の理解を便にし、また学習効果を上げるように一般国民の理解と御協力を得るに容易ならしめたわけであります。
以上が大体このたびの改訂案の御趣旨でございます。