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1958-07-02 第29回国会 参議院 農林水産委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月二日(水曜日)    午前十時四十五分開会     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     重政 庸徳君    理事            藤野 繁雄君            堀本 宜実君            東   隆君            北村  暢君            梶原 茂嘉君    委員            秋山俊一郎君            雨森 常夫君            関根 久藏君            田中 啓一君            堀  末治君            横川 信夫君            大河原一次君            河合 義一君            清澤 俊英君            北 勝太郎君            千田  正君            北條 雋八君   国務大臣    農 林 大 臣 三浦 一雄君   政府委員    農林政務次官  高橋  衛君    農林大臣官房長 齋藤  誠君    農林省蚕糸局長 須賀 賢二君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省蚕糸局糸    政課長     保坂 信男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○繭糸価格の安定に関する臨時措置法  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 重政庸徳

    政府委員長(重政庸徳君) ただいまから農林水産委員会を開きます。昨日に引き続いて、繭糸価格の安定に関する臨時措置法案を議題にいたします。質疑の向きは御質疑を願います。
  3. 北村暢

    北村暢君 まずお伺したいのは、今反の臨時措置法を出すに至った原因についてきのう説明がありましたけれども、春繭の五万俵のたな上げというここが、需要の減った分と、それから豊作による増収分という面からして、従来の繭糸価格安定の措置ではまかない切れなくなってきた、こういうことで臨時措置法が出ているようでございますが、この豊作ということと、従来農林省政府のとって参りました蚕糸振興政策、こういうものの関連について若干お伺いしたいのですが、大体三十三年度の政策面における状況を見ましても、政府は、今までの政策の中で価格安定に対する処置として、この前の二十八国会で、一応の処置として四十億の買い入れ限度額をふやして、そうして百六億、こういうことでもって一応の処置をしておるようでございますが、いろいろな蚕糸関係増産のための助成策がとられておるわけでございますが、そういう面と今度の豊作との関係ですが、私は、今までこのちょっとした豊作ぐらいでこれくらいの混乱を来たすという場合に、蚕糸振興策としていろいろな助長政策がとられ、これとは非常に矛盾するのではないかというふうに考えられるのですが、この点は、どういうふうに考えておりますか。
  4. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 今回のような著しい生糸供給過剰と申しますか、非常に生糸が余って参りました一つ原因として、繭の増産が大きな要素になっておるということは、昨日も申し上げたところでございますが、これと、今後の特に繭生産の面におきまする各種施策との関連でございますが、これは、現在蚕糸関係予算の中に上っておりまする助成措置等は、主として繭の生産費合理化して参るというところに力を入れておるわけでございます。長期的な方向といたしましては、繭の生産費、それから生糸加工費、この両面につきまして、できる限り合理化をはかって参るということは、どうしてもこれは、そういう施策を続けて参らなければならないわけであります。現在の予算等も、ほとんどその面だけにしぼられて予算がついております。今後におきましても、そういう方向におきまする施策は続けて参らなければならないと考えておりまするし、来年度以降につきましても、そういう考え方でやって参りたいと思っております。
  5. 北村暢

    北村暢君 私は、まあ桑園なりを改良をして反収を上げて、いろいろな技術面を動員して、品種の改良なりあるいは病害虫に強い桑を養成していく、こういうことは当然のことなんですがね。当然のことなんですが、この増産政策の中に、はっきりと政府の出しております新長期経済計画の中においても、この作付面積がふえていっているのですよ。それで、昭和二十二年に十七万二千町歩でありましたものが、三十一年に十九万三千町歩、それから、新長期計画によりますというと、二十力三千町歩ということになって、桑園面積をふやすということになっておるのですよ。そうすると、この計画から申しますと、面積がふえる、しかもいろいろな技術を導入して改良をして、そして反収もふやすということになれば、これは、今までの振興政策というものは、今申した合理化の面だけでなしに、はっきりこの増産計画というものを進めてきている。これは私は、否定できないのじゃないかと思う。どうなんでしょうか。
  6. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 五カ年計画を策定いたしました当時の考え方といたしましても、桑園面積を積極的にふやしていくという考え方は、私どもとっておらないわけでございます。ただ、この面積が若干ふえておりまするのは、特殊土壌地帯防災桑園をだいぶ前から指導いたしておるのでありますが、これが非常に良好な成果をあげておりまするので、その分が織り込まれて、若干面積が増加することになっております。ただ、この五カ年計画全体を通じまして、できるだけ早い機会に十分検討をやり直す必要のあることも考えております。これは、今後われわれが恒久対策検討に当りまして、十分総合的な角度から、もう一度よく考えたいと思っております。
  7. 北村暢

    北村暢君 今の蚕糸局長のは言いのがれでありまして、若干ふえたというようなものじゃないのです。これは、二十二年に十七万二千町歩であったものが三十一年に、十カ年で十九万三千町歩、これは、農林統計書にはっきり出ておるのですから、ごまかしはきかないです、これは。それで、約二万町歩しかふえていないのですね。それで、昭和三十七年までの計画で、二十万三千町歩にするということは、昨年出した新政策の中にちゃんと出ておる、これははっきりと。だからこれは、若干ふやすというものじゃない、年間に二千町歩ぐらいずつ計画的にやっていかないというと、これは、五年や六年で一万町歩というものはふえないわけです。そういう増産計画の中に立っておるのです。これはどういうことなんですか。それでも、若干ふえる程度で、あなた方は、これを面積をふやすということについて、経済審議庁長期計画に参加していないのかいるのか。それは経済審議庁計画だといって、農林省は関知しないものなのかどうか。
  8. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 三十年の十  二月二十三日に決定をいたしました経済自立五カ年計画の中に、蚕糸計画に  ついて計画の内容をうたっておりまするところによりますと、この計画は、主として反当り収繭量の増加と繭品質  の向上により達成し、桑園の拡大は、原則として特殊土壌地帯防災桑園にとどめるということをはっきり計画の中にうたっているわけでございます。従いまして、先ほど申し上げましたように、私どもといたしましては、一般的に桑園を拡大する方針というものは、この当時におきましても、計画考え方としてとっておらないわけであります。
  9. 北村暢

    北村暢君 それは、五カ年間に約一万町歩ふえるのですがね、計画によると。その防災のための桑園というのは、一万町歩−になるのですか、そういうものは。これは今、蚕糸局長は、三十年の五カ年計画と言いましたが、三十年の五カ年計画は、これは破綻を起しちゃって、昨年これを七カ年計画でもって作り直しておるのですよ、これは。そういう古いときの資料を持って来てここで説明されても困る。ここにあるこれを見て下さい。これは、この委員会に正式に出された資料なんですから。
  10. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) もちろん、この経済自立五カ年計画は、その後手直しがあったわけでありますが、蚕糸部門につきまして、桑園の面についての考え方は、私が先ほど来申し上げておりまするような考え方で進んでおったわけであります。
  11. 北村暢

    北村暢君 まあこの問題は、だいぶ苦しいようですから、私はあえて言いませんが、とにかく面積の問題を特に取り上げるのは、やはり今後の蚕糸行政の中で、今局長の言っております合理化という面について、反収を上げて生産性を上げていくということは当然のことだから、私は、それはとやかく言わないですが、しかし、そういうふうに上げていきますと、現在の面積を保有し、さらにこの五カ年計画によるというと、一万町歩もふえることになっておる。そういう中で合理化計画をやり、何もやるというと、これは、生産量が二割、三割と増収になってくることは必然なんです。そしてまた、従来の統計数字から見ましても、増収になっておる。これは、減ることはないです。毎年々々ふえてきておるわけです。従って、そういう面について、その増産政策をやっている中でこの豊作ができたくらいで、一年か二年の豊作だというのだが、その豊作というものは、米にいたしましても、三カ年続きの豊作というけれども、これは豊作じゃなくて、平年作に変りつつある。これは技術の勝利だと、こういうふうに農林省は言っておるわけだ。これは、−桑の場合においても、当然そういうことが言い得るのであって、あらゆる、凍霜害の防除のための重油をたく補助金まで出して増産をはかっているわけです。それに対して、災害がなくて豊作だったということは、これは非常に天然の幸運ばかりじゃないですね。これはやはり、相当な技術の進歩からして、苦労されて、この豊作というものが生み出されてきておる。偶然の豊作ではない。従って、私はやはり、蚕糸局としては、こういうものを計画の中に置いて、蚕糸行政というものはなされるべきでなかろうかと思っておるのです。そういう点からするならば、今度の臨時措置をとらなければならなくなったということは、需給の一面について出てきた事情もわかるのだが、実際、需要なり供給なり経済事情なりというものと無関係増産政策をやってきた、これが今日の非常に大きな問題をかもしておる原因じゃないかというふうに私は感ずるのです。従って、まあこれは、今後の長期対策について考えられることであろうと思うのですが、私は、こういう行政指導政策とり方そのものが、物の増産のみに力を入れてきた非常に悪い欠陥が今日現われてきた、これは、前に大臣に対して、私が所信表明のときに申し上げたのでございますが、これははっきり出てきているというふうに思うのです。この点は、今後の長期の恒久的な対策のときには、十分一つ考えてもらわなければならぬ。  それから、もう一つ、お伺いしたいのは、今年度の予算で、中央蚕糸協会ニューヨーク事務所に二千万円ですか、増額をいたしまして、輸出振興のための対策を立てておる。これについて、生糸ニューヨーク市場の現状は、こういう金をつぎ込んで輸出振興をやっておるが、一体どういう結果が出てきたのか。また、どういう結果を期待しているのか。具体的にお伺いしておきたい。
  12. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) ニューヨークにおきまする生糸消費宣伝事業でございますが、これは、ただいまお話がありましたように、本年度は、前年度より実質的に二千万円を増額いたしまして推進いたしております。今回の二千万円の事業は、現地についてただいま計画を具体的に立てさしております。それが上って参りますのを待ちまして、取り進めて参る手はずにいたしておりますが、考え方といたしましては、テレビを媒介とする大衆向け消費宣伝に新しく着手してみたいと考えておるのでございます。今までは、さような例がなかったのでありますが、いろいろ、マグロの場合でありますとか、あるいは最近アメリカにおける各種日本商品宣伝方法等を参考にいたしますと、これが一つの目のつけどころである、この方面に手を伸ばしていきたいと考えております。どのような効果が上って、参ったかということでございますが、これは宣伝のことでございますので、長期的に効果の上って参りますことを期待いたしておるわけでございます。不幸にして、今年の上半期は、景気関係もありまして、特にアメリカ向け輸出は必ずしもいい結果が上っておらないのであります。この結果だけで宣伝効果を云々いたしますことは、少し考え方が端的に過ぎると思いますが、さらに宣伝を継続いたしますことによって効果を上げて参りたいと思います。特に今回の場合は、生糸需要増進につきまして、特に業界側で一段と積極的な手を打っていくことを強く業界に対しても要請いたしておるわけであります。今後蚕糸業恒久対策を立てて参るにつきましても、需要増進の裏づけがございませんと、いずれにいたしましても、今後の伸びというものの基礎は固まりません。その面に特に業界側の強い企業努力を要請いたしておるわけでございます。
  13. 北村暢

    北村暢君 今、宣伝効果なんて、そんなことを期待している……。戦前はあんた、アメリカヘの輸出が、昭和十一年に六十二万俵ですか、今七、八万俵というような状態でしょう。ですから、生糸アメリカ向け輸出面における期待というような、そんなことはもちろん思っていない。そんなことではないので、今言われました、テレビ宣伝するなんて、今始めなければならない……二千万円の予算を増額して、今年からテレビに入れて日本生糸宣伝するなんて、これはまた、のんびりした話で、大体これじゃ自由競争に勝っていけないじゃないですか。日本商品宣伝、まあその宣伝の面はそれにいたしましても、どうですか。きょうの新聞に出ておりますが、輸出にたよって今の不況を乗り切ろうというのが基本政策で、引き締め政策をやっておる、これをそろそろ内需面を刺激して、そしてこの景気を乗り越えるという積極策をとらなければならないというようなことが閣内でも問題になってきたようでございます。それで、従来の輸出一本やり考え方というものをそろそろ改めなければならな・い、こういうような考えすら出てきて一いるようでございます。そういう時期において、他の化学繊維との関係において、生糸輸出に対する依存度というものが非常に大きいが、これに対して今言っておるような振興策は取っておるんでしょうけれども、今、テレビ宣伝するのを今年から始めるようなことで、輸出貿易需要がそんなに伸びるというふうにはなかなか考えられないのじゃないかと思う。まあアメリカの不景気という問題とも関連するわけですが、全般の経済面における不景気という問題とも関連するわけでございますが、そういう面からして、今後のこの緊急事態に対して、輸出面にたよる打開策というものの見通しをどの程度考えておられるのか、一つお答えを願いたい。
  14. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 今からテレビをやるというような段階であるかというお尋ねでございますが、これは、少くとも昨年上半期ごろまでの生糸状況を振りかえってみますると、そういう程度販売努力と申しますか、一応の宣伝計画で、一応生糸さばきがついておったというような実態にあったわけでございます。大体一昨年あたりまでは、三十万俵以上作ります糸が、内需輸出でほぼとんとんの均衡をいたしておりまして、業界側の態勢といたしましては、強い販売努力がそこに実際問題として出てこなかったような実態であったわけであります。作ったものは、大体右から左にさばきがついたというような状況にありましたので、ただいまお話になりますような生糸宣伝活動実態に相なっておった。しかしながら、今日の事態から考えますと、この際、販売努力について一段と積極的な措置をとりませんと、今後の需要増進に対して十分な期待を持つことが困難であります。現実問題といたしましては、従来業界海外宣伝に出しておりました業界側経費負担は約三十万ドル、一億程度であったのでありますが、今年度からこれを各業界でさらに分担増額いたしまして、少くとも三倍から四倍ぐらいには増額したいということで、具体的に話は取り運んでおるわけであります。そういうことと相伴いまして、輸出向け販売努力は、さらに強化をして参りたいと考えておるのであります。数字的にどの程度のものを見積るかというお話でございますが、これは、もう少し景気状況その他を、十分いろいろな要素を積み重ねまして検討をいたさなければなりません。今日輸出見通し等について、具体的な数字をあげてお話を申し上げるという段階にはまだなっていません。
  15. 千田正

    千田正君 議事進行について。農林大臣は、きょうはゆっくり御出席願って差しつかえないですね。
  16. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) はい。
  17. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) なお、新規用途開拓につきましては、今回の臨時措置法の中でも、この措置によりまして買い上げましたものは、新規用途開拓のために適切な計画が出ました場合、その試作用として、若干割安の価格で売却することも考えておるのであります。これは輸出面国内面、両者を通じての問題でございまして、特に国内面におきましては、絹の交織の研究が日本では、いろいろな消費習慣その他の関係で、非常におくれておるのでございますが、この面につきまして、この際積極的に手を伸ばして参りたい。具体的には、通産農林両省専門技術者と民間の専門家で、一つ企画グールプのようなものを作りまして、そこでみずからも検討いたし、また企業の側からも適当な計画が出て参りました場合、これを十分審査いたしまして、適切な計画が出て参りますれは、それに対して試作をいたしまする生糸は特に便宜をはかって参りたい、さように考えております。
  18. 北村暢

    北村暢君 今、局長が、輸出に対してめどがあるような、ないような、さっぱりわからないようなお話ですが、ところが、昭和三十年が八万六千俵、それから三十一年が七万五千俵、三十二年が七万三千俵と、輸出は毎年毎年減ってきておるわけです一これは景気が、アメリカなり欧州なり景気に左右せられたという面も若干ある。しかしながら、景気に左右された面はやはり昨年あたりからである。こういうふうに見れば、この漸減の傾向にある輸出というものに対して、いかに業界努力し、いかに宣伝をしても、この輸出に対して期待というものをどれほど持っていいのか、これをやってみなければわからないようなことで、目標を立てるということについては、非常に問題があるのじゃないかと思うのです。ですから、今後毎年々々下ってきている輸出というものについて、どういうふうな腹がまえで臨んでいくのか、一つその点を大臣からお伺いしたいと思うのです。
  19. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 実は、その対米輸出の問題でございますが、二十二年以来の足取りを見ましても、相当フラクチュエーションがあるのです。それはいろいろの原因がありましょうと思いますが、これは、アメリカ絹糸界の一番の要点は、安定した価格供給してほしい、そしてフラクチューションのない、安定したものであってほしいというので、これは、絹業界の年来の主張でございまして、そしてまた、実際そうであろうと思うのです。そこで、二十二年のときには、統計によりますと、三万二千俵、さらにその後、好転した二十五年くらいになりますと、八万七千俵というふうに上昇して参り、それから二十八年にはまた落ちて、六万五千俵となっておりますが、二十九年、三十年になりますと、また八万俵をこえるというふうなことになっておりまして、ここ数年間の足取りを見ましても、そう、仰せのように、悲観的材料ばかりではないと思うのです。そして今回のように、一面においては繭の生産が、五カ年計画との関連もありますけれども、伸びてきておる。同時に、天候等関係もありましたでしょうが、増産になった。ところが、繊維界が一般に、ただに生糸ばかりでなくて、他の繊維界も非常に下降傾向をたどって参りました。これは、世界的な一つの現象であると思うのです。そうしますと、これはやはりここしばらくの異常な状態だと、こう思わざるを得ないのでありますから、これを克服して、そして安定したものとして、アメリカ等に対する対米の輸出にも安定した線でもってその供給をはかり、同時にまた、アメリカ絹業界等に理解と何を進めて、そして取り進めるということは、やはり重要な施策だと考えます。ですから、この方面に進めて参りたい。同時に、よく皆さん御指摘になる通り生糸が減退しておるけれども、他面絹織物が相当に伸びて参った。これは業界努力の結果だと思いますが、そうしますと、その方面創意工夫と申しますか、その方面新規用途開拓期待せざるを得ない。幸いにも通産大臣も、その方面については特に施策を拡大していこうと、こういうお話でもありますし、今、蚕糸局長が申しました通り、これに対応して、こちらでも準備を整えておりますから、両々相待って、この窮状の打開に進んで参りたい。こういう考えでおります。
  20. 清澤俊英

    清澤俊英君 昨日法案審議の際に、ただいま出された安定の臨時措置法は、今年一年限りのものであって、同時に、来年の見通しに対しては、三十四年度の見通しは、三十二年をさかのぼるような、終戦後以来の順調な足取りをもって回復するかどうか、この観測はどうなるか、これは、ほんの一時的な世界景気や三十二年度の方策によって一時的の混乱も起しているのだから、今年一年しずめれば、これを何とか切り抜ければ、三十四年度から明るくなるという建前でいってるのかどうか、こういう根本的な問題をお伺いしましたところ、それがどうもはっきりした御回答がないのです。そこまで見ますと、今問題になってるようにもってって……。そうなりますと、結局輸出をこれからこういう宣伝をやるとか、あるいはこういう改良をやるとかいうことで、振興するということは希望であって、その希望に立っての観測というものが固まっておらない。われわれはこう解釈しております。それじゃ、三十四年度が明るいということは、まだはっきり言えないじゃないか。それは希望の範囲だ。だから、希望でなく、今の大臣お話を聞いておりますと、前にもあるし、このたびの世界的の不況も反映して、御説明通り、今年だけの異常状況なんであって、三十四年度は、前提として明るくなるのだ、こう了承しておいて差しつかえございませんか。
  21. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) われわれとしましては、この事態を見きわめまして、そうしてその目標を立てて、窮境打開していくということでございまして、来年度以降直ちに仰せのように上昇線をたどり得るかどうかは、もうしばらく情勢を見ないと、これはなかなか断言がしかねると思うのです。しかしながら、少くとも最悪の事態にやはり対処して、これに応じてこの窮境を切り抜けていくということをいたしませんと、依然やはりこれが一つの隘路になり、一つの病になりますから、これだけ片づけておいて、そうして出てくる情勢に即応する措置だけはやらなければならぬということでございます。同時に、将来の見通しといたしましては、困難な事情はありましょうと思いますけれども、われわれとしては、逐次好転して参るということを期待しつつ、同時に、われわれの具体的な政策を推進するのが当面の急務であると、こう考えております。
  22. 清澤俊英

    清澤俊英君 くどいようですが、そうすると、今年の分は今年だけで考えて、恒久対策としての考え方ですね。三十四年度以降というものは、その見通しは明らかでないから、従って恒久対策の根本的のものはまだ固まっておらぬ、こうおっしゃるわけですね。私はそう思う。明るいところがきまれば明るい恒久対策は立つ。それが希望であり、観測が……観測でもいいが、こういう希望のものがあればこういう明るい観測ができるという、はっきりしたものがあれば、それがまた恒久対策として立てられますが、今のようなお答えだというと、まだ恒久対策の基本的なものは固まっておらぬ、こう解釈してよろしゅうございますか。
  23. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) ちょうどこれは、本年の六月までの趨勢がこの何をたどってきたわけでございます。従いまして、その恒久対策をいわゆる楽観的な見通しのもとに発展的に立て得るか、あるいは好転し得ざるまま、それを前提としてシヴィアな計画を立てるか、こういうことに相なろうかと思いますが、現在としましては、別に楽観もしておりませんし、また依然困難な事情が累加するとは考えませんけれども、もうしばらく情勢を見つつ、今後の、三十四年度以降の対策につきましては、対処して具体的の方策を立てて参りたい、こういう考え方でございます。
  24. 清澤俊英

    清澤俊英君 ただいまのお話でよくわかりましたが、結局、まだ見通しははっきりついておらぬから、今後それは見通しをつけてやる。それから、恒久対策の根本的の考え方は固まっておらぬ、そう解釈して、御答弁は要りません。
  25. 北村暢

    北村暢君 先ほどの御答弁で、輸出価格の問題で、割安にする、こういうふうにおっしゃられましたが、割安にするということは、現在の最低価格の十九万というものを割るということになりますか、どうですか。
  26. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 今、蚕糸局長説明しましたのは、新規用途に新しい考案をするというときに、原料は生糸になりますから、その生糸を、この処置をした者から供給する場合には、若干値引き等の特典と申しますか、新規用途開拓のために必要な一つのある程度の便宜を与える、こういうことでございまして、輸出生糸の方々下げるという意味じゃなかったと思いますが……。
  27. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) ただいま大臣からお話をいただきました通り、別に私の方で、輸出価格を引き下げるというようなことを申し上げたつもりではございません。なお、先ほど三十年以降の輸出の動向についての御指摘がございましたが、三十年は、これは世界的な好況でありまして、この年は、一非常に輸出が伸びたわけであります。この年のような事態は、その後漸減はいたしておりません。ただその後、生糸そのものの輸出は、やや漸減いたしておりますが、この分は織物輸出でこれを十分補い、なお若干はそれを上回っておるような格好になっておるわけであります。
  28. 北村暢

    北村暢君 そうすると、特殊な新規市場開拓のために新しい製品を作るために、そういうものに振り向けられる生糸については、政・府が助成をして、値引きをしてやる措置も講じたい、助成策としてやりたい、こういう考えでありますね。こう理解しましたから、その点はいいのですが。  そこで、方向を転換しまして、今度の買い入れ限度額生糸百億、それから乾繭の共同保管の五十億、これはまあ限度額としてでございますが、もしこの限度額をこえて買ってもらいたいという希望が出た場合、これは予算で、こういうふうに予算的にまあ融資の面、このあとの措置はどうなるかわかりませんけれども、とにかくこの輸出保管会社が限度額をこえたものについては、絶対に買えないのかどうなのか。希望のあった場合には、これをこえてもある程度のものは買うのかどうか。そこの点を一つ
  29. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) この限度額は、政府で将来肩がわりをいたしまする場合の輸出の限度額でございまするので、それ以上保管会社が買い入れました場合には、自己の負担においてこれを処分をしなければいけないような事態が出ることが予想されます。従いまして、現実の問題といたしましては、保管会社は、この政府買い入れの限度内において業務を営むことに相なると考えるのでありますが、われわれといたしましては、本年度の価格支持の裏つけといたしましては、今回の生糸五万俵、共同保管の繭二百五十万貫、この二つの手当をいたすことによりまして、十分価格支持を行い得る見込みを持っておるのでございます。従いまして、現実にこれ以上に保管会社が買い入れを必要とするというような事態は、実際問題としてないという考え方で進んでおるのでございます。
  30. 北村暢

    北村暢君 これはまあ、蚕糸局長がないということのようですけれどもね。当初の計画では、自民党の中ですら、これは二百億出せ、こういう意見があったのも御承知の通りだし、それから、十七日の全養連の大会において、無制限の買い入れをせよと決議されたことも事実なんです。そういう点からいたしますと、これでまかなえるというふうに言われても、限度額がきまってしまっていれば、買えないということになるわけなんで、私は、まあ蚕糸局長の見解がそういう見解だとしか考えられない。これをこえることはあり得るのではないか。もし見通しと違って、そういうものが瀞繭について出てきた場合に、それでもなおかつ、希望があっても買わないのか。また、今申しておられるように、会社が損をすることが予想せられるので、買わないだろうというのだが、会社に買わしておいて、あとで政府で処理をするというようなことが考えられないだろうか、どうですか。
  31. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) ただいま御指摘のありましたように、この金額がまとまります過程において、いろいろの考え方が出たわけでございますが、それらは、いずれも無制限買い入れという態勢を示すために、金額の幅を大きくしておくということが、糸価維持のために非常に有効であるという考え方から出ておるわけなんでして、二百億という考え方が出ましたあとも、十万帳の生糸を現実に買うということは、何らこれは予想いたしておらないのであります。私ども今回百五十億で手当いたしましたものの、現実に五万俵を買うという事態になりますかどうか、これは、今後の需給事情の推移によるわけでございまして、七万五千俵相当分の買い入れ手当をしたということは、春繭について、それからできます糸の約半量を手当をしたということになるのでございます。実態は、無制限買い入れと同じような態勢を整えたことになっておるわけでございます。従いまして、われわれといたしましては、これ以上に保管会社が現実に買い入れを必要とする事態が出るということはないという考え処置をいたしております。
  32. 北村暢

    北村暢君 そういう非常に自信のあることで、糸価もそのようにいけばけっこうな話ですが、この前の全養遡の大会の空気から見まして、簡単にそういうようなふうには理解できない。しかも、そういう、土実質的に血…制限買い入れと同じだと、こうおっしゃるのだったならば、そのことを限度額幾らということでなしに、無制限買い入れをするということを私はここで言明してしかるべきだと、そのことが繭糸価格安定のために一番いいことであって、きのうから清澤委員もしつこく質問しておるのは、その点だと思うのです。大臣が、とにかくこの百億と五十億でもって、無制限買い入れと同じ結果になるということに非常に自信があるとするならば、これはこの席で、無制限買い入れいたしますと、こう言明されることが糸価安定のために非常にいい結果を及ぼすのではないかと、こう思うので、一つ清澤委員のきのうからの質問ですから、これを大臣から答えていただきたい。
  33. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 蚕糸局長から説明しました通り、この春繭から生産される生糸の総量のほとんど半ばを凍結するようなことであります。それから、前提としてこれは業界の自粛でいく、同時にまた、この非常時に備えて、ある程度の自制的な措置もとる、操短という言葉が直ちにいいかどうかは別ですが、そういうふうな態勢をとって、両々相待っていくのですから、業界といえども、この情勢を悪化させたりあるいは軟化させたりする方法はとらないようにだんだん変ってきた。そこへもってきて、結果的に見ますと、生産量の半ばをつかまえるということでございますから、その実効を上げ得るものと考えるのでございます。ただいま北村さんや清澤さんの御指摘の通り、これはいさぎよく声明とまでは、放言は別といたしまして、法律案をもってそしてお諮りするということになりますと、やはり実効を上げ得る限度だけはお示ししなければならぬということでございますので、私たちは、実効を上げ得る限度でもって操作をして必要な効果を上げ得ると、こう考えておりますから、御了承を願いたいと思います。
  34. 清澤俊英

    清澤俊英君 ついでですが、昨日お伺いしたのは、夏秋蚕に対する対策は実質の二割制限で、大体こういう手当は要らない、こういう御解釈なので、これではどうも不安じゃないか。従って、夏秋蚕に対する対策一つ関係者と御協議の上、確信ある御答弁を願いたい。こういうことをきのう申したのでありますが、その点はどうなりますか。
  35. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 夏秋蚕に対しまするなには、るるたびたび御説明申し上げたような態勢をとっている。おおむねそれは所期の効果をあげ得るであろう。こういうことで、確信を−もって進みたいと、こう申し上げたのであります。しかしながら、まだその事態がはっきりいたしません。同時に一また、夏秋蚕の事態におきましても、われわれの予想せざる異常な事態に立ち至ったということがかりにも出て参る場合に、手をつかねてこれを放任するというわけには参りませんから、それで、その情勢に応じて適切な措置を講じなきゃならぬということはこの際申し上げておきたい。ただし、具体的にどうするかということは、今申し上げかねる段階でございますけれども、われわれとしては、手をつかねて傍観するという態度でないということを申し上げておきたい、こう存じます。
  36. 北村暢

    北村暢君 次にお伺いしたいのは、乾繭の共同保管制度の問題ですが、これと関連して、繭の最低価格千四百円、この問題でございますが、実際に、この最低価格千四百円というものを保証すると言えばあれでしょうけれども、これを最高価格と最低価格の間で値幅を維持して、繭糸の価格を安定していくと、こういう考え方に立ってこれをきめているわけですね。そしてそのきめている千四百円が守られていく処置、これについていかような措置考えられておるのか。実際には乾繭一共同保管の施設が養連の設備ではまかない切れない状態で、これはもうはっきりしている。従って、製糸業者に玉繭でどうしてもこうしても持って行ってもらう。こういう実態の中で、この千四百円という最低価格を維持するということを守っていくということは非常に困難な問題だと思う。これについていかなる妙手があるのか。いかなる対策考えておるのか。守られるというふうに考えておられるのか。そこら辺の点を一つお聞きしておきたい。
  37. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 糸価を十九万円に安定させるということが、つまり千四百円の保証をする源泉になるわけであります。それですから、糸価を十九万円程度に安定して持っていく。そうすれば、今度出ていくものが十九万円程度の糸価を維持できれば、それが現実になって、千四百円というものが団体交渉に移るわけでありますが、その仕組みは技術にわたりますから、どういう考え方で、どういう双方の結びつきでそういうようなことにするかということについては、局長から説明いたします。
  38. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 今当面いたしておりまする春繭の問題としてお答えを申し上げますが、春繭は、二百何十万貫を残しましては、現在ほとんど全部の繭が製糸業者の手に引き渡されておるわけでございます。これは、大部分のものは千円内外の内渡し金を一応受けておりまして、あとは精算払いという約束でもって引き渡されております。従いまして、この繭について千四百円の最低価格が保証されまするのには、これから行われまする繭価の協定におきまして、千四百円の協定が結ばれませんと、現実に千四百円の価格は保証されないということに相なるわけであります。そういうような筋道になりまするので、先般来業界と種々協議を重ねまして、今回の政府の買い入れ措置を裏付けといたしまして、今回の春繭の収納いたされました分につきましては、千四百円を下回らない繭価協定を結ぶように種々指導して参ったわけでございます。大体その話が九分九厘まで固まりまして、近日製糸の方で理事会を開きまして、全体の基準を取りまとめをいたしますが、ことしの春繭で団協で買い入れましたものは、千四百円を下回らない価格で買うということが一点、それから、現在製系では操短をやっておりますから、操短計画を確実にやっていくという、この二点について、政府に対して各製糸から約束をしていただくことに話が進んでおるわけでございます。この約束が入りましたものを対象といたしまして、その約束をいたしました製糸から、政府生糸を買い入れる場合は買い入れるということにいたすわけでございまして、その約束が入りませんと、生糸の買い入れはいたさない。さような考え方でその裏付けをいたすわけでございます。全機械製糸につきましては、全体の態勢がそういう態勢で、政府との間に約束を結ぶという態勢に固まって参りましたので、ことしの春繭につきましては、ただいま申し上げましたような措置と手順によりまして、千四百円の繭代が農家に支払われることに相なるわけでございます。
  39. 北村暢

    北村暢君 今の答弁の中で、団協で買い入れたものと、こう言いましたね。団協で買い入れたものについては、千四百円を下回らないようにするのだと、それじゃ、団協以外でやるものがあるのですか。
  40. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 大部分の繭は、これは団協で取引をされるわけでございますが、一部、たとえば座繰り業者が使います繭でありますとか、あるいは玉糸業者が使います繭でありますとか、そういうものは当用買いで、団協によらないで、売買されておるも・のがございます。こういうものは、現実の問題として、農家がそういう個々の売買として処分をいたすわけでございます。ここまで、全部のものを千四百円で押えるということは、現実の問題としてこれはなかなかできないわけでございまして、従いまして、団協によって取引されますものが最低価格が保証されるという態勢が整いますれば、一応その最低繭価の保証という態勢は、十分これはとり得たものと私どもの方は考えております。
  41. 北村暢

    北村暢君 それじゃ機械製糸の場合は、そうするというと、もうほとんど全部が団協による買い入れによるものと解釈して大体差しつかえないですね。
  42. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 機械製糸が購入いたします繭は、大部分団協によるものとお考えいただいて差しつかえないと思います。
  43. 北村暢

    北村暢君 それじゃもし、千四円で買い入れるように指導はしているが、してないものには、最終的に政府で買い入れるときには買い入れないのだと、こういうまあ報復、手段でやられているようですが、まあここで今、大臣も言っているように、生糸価格が十九万で最低価格が維持せられる。そういう場合は、実際千四百円を支払わないということは、これは不当だからということで、それは言い得ると思うのです。ところが現実には、十九万を今割っておるという事象があちこちに出ているわけです。十九万を最低——これは、十九万を割らしてはいけないわけなんです。割らしてはいけないのですが、実際には取引が十九万を割っておる。これの処置ですね。一体どういうふうにとられるか。
  44. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 最近の横浜現物相場は、昨日あたり現在で十八万六千円でございます。十八万六千円ということは、ほぼ十九万の線にきわめて近い線まで接近しておるわけでございます。私どもは、さらに十九万円の線まで戻るように、いろいろ措置はとって参りたいと考えておりますが、現在の現物相場をもっていたしましても、千四百円の支払いを製糸が保証いたしますことは、必ずしも私は不可能じゃないと考えております。
  45. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、大臣のおっしゃる十九万というものを維持することの前提において、千四百円というものが維持されるのだ。こうおつしゃられましたが、そうするというと、十八万幾らでも、あるいは十六万幾らという場合もあったはずですが、そういう場合が出てくるというと、守られない可能性というものが出てくるのですが、今の局長の活によるというと、十八万六千円の相場でも、千四百円というものは守られないものでもないと思うということであって、これは十九万ということが守られることによって千四百円というものが成り立つのですから、これを欠けたということになれば、それを理由として引き下げないということは、これは言えなくなってくるのじゃないかというふうに思うのですが、そういうことはないとおっしゃるのですか。
  46. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 十九万円の場合は、繭代が千四百円といたしまして、原料費は端的に申し上げまして十四万円、加工費が五万円という計算になります。十九万円を若干割っております程度の相場であります場合、これは、加工販売費につきましては、これは企業の面におきましても、いろいろ企業努力の幅も若干あるわけでございます。もちろん十九万円を大幅に割りましては、これはもう千四百円を保証する裏づけにはなりませんが、十八万六千円あるいは七千円という程度のところであれば、企業努力も入れまして、製糸に千四百円の繭代を保証させるということは、私は、現実問題として、必ずしも実際的でないというふうには考えておりません。
  47. 北村暢

    北村暢君 そうするというと、十九万を割って売買されておるということは現実に起っておるわけでありますが、これは、最低価格十九万というものをきめている建前からいくと、どういうふうになりますか。
  48. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) なお、先ほど来私が申し上げておりますような措置によりまして、各製糸が千四百円を支払うという約束を対政府との関係において結んでもらい、それを裏づけとして、政府で今回の買い入れをするという措置がここ数日の間に具体的になって、現実的になって参るわけでございます。そうなって参りますれば、おそらく横浜相場は、十九万円にきわめて近い線まで回復をしてくるものと考えております。
  49. 北村暢

    北村暢君 十九万円でも、今、操短をやり、何をやっておる企業家としては、製糸業者としても、企業努力だのなんだのという問題でなしに、もう赤子を出している業者がたくさんあるわけですよ。だから、農民の方ばかりでなしに、企業者にとっても、やはり製糸業者というのは非常に気の毒な状態にある。これははっきりしていると私は思うのです。しかも、今までの政府政策としての蚕糸振興という立場からいきますと、相当な努力をした結果で、なおかつ操短ということで、非常に矛盾した中で、私は製糸業者も苦しのられていると思っているんです。ですからこれは、やはり最低十九万ということになれば、この十九万は政府が保証するという立場をとらなければなりないのじゃないかと思うのですが、どうなんでしょう、そこら辺。政府が行政的に、今後の問題になるか知りませんけれども、予算措置等を講じて、この最低価格というものを保証してやるという考え方はないのですか。
  50. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 保証をするというただいまのお話の内容をちょっとつかみかねるわけでございますが、政府で、今回、百億の資金を手当して、さらに生糸の買い入れを続けるということは、これは、十九万円という線に現実の糸価がなりまするように、その裏づけを行なっておるわけでございまして、それで、十九万円の糸価というものが維持されますれば、製糸に対しては十九万円の糸価収入が確保されることになるわけでございます。
  51. 北村暢

    北村暢君 現実に十九万を維持せられるというのですが、現実にもう割っておるわけです。割っている事態に対して、最低価格といってきめているんですから、それを割っているものに対して、この百億なり五十億の裏づけがあれば十九万円になるのだと、こう一方的に言ってみたところで、現実の相場が十九万を割っているという事態において、これを何らかの処置考えない限り、問題の解決にはならないのじゃないかと思う。その百億なり五十億のたな上げというものが、十九万を維持できないということの実態がここに出てきている。しかも、これが一カ月、二ヵ月と続くということになると、やはり企業家としても、相当な痛手を負うということは、もうはっきりしているのじゃないか。そういう場合において、政府がそれで何らの処置をしないということになると、何のためにこの最低価格十九万ということをきめたのか、わからなくなってくるのですが、そこら辺の説明はどういうふうに……。
  52. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 私は、単に私どもの方の一方的見解として、十九百万円に戻ってくるということを申し上げているのではないのでございます。今回のこの措置を裏づけましたことによって、十六万円台から十八万六千円まで現実に戻ってきておるわけであります。従いまして、今回、繭代を千四百円を払うということが全体の態勢として固まって参りますれば、製糸といたしましても、それに見合った採算線までは市場価格を引き上げていく必要が当然あるわけでございます。それには、生糸買入れの裏づけを持っておるわけでありますから、製糸側の方といたしましても、十九万円に直結する線に相場の回復は、当然考えていくものと考えております。
  53. 清澤俊英

    清澤俊英君 議事進行。  ただいまの問題、なかなか議論が乾かぬと思う。私は、委員長の名前において、この委員会の決議で、一つ養連の会長のところへ、明日の午前中くらいまでに、電話でもって、現に団交がどう行われているか、各地の状況を明確に問い合せによって資料を提出してもらいたい。ということは、局長が言われているような団交が行われて、そうして団交の結果、繭価協定において千四百円が定まり、八千七百五十掛で買入れがきまり、支払い方法がきまり、数量がきまりますれば、そうめんどうなことは、私はこれはないと思う。今はもう大体出回りは早くなっているのですから…・−、ところが今新聞などを見ますと、いつもならば、どこでは幾らできまった、どこでは幾・らできまったというのですけれども、まだそういうものが一つも見当らない。われわれの聞く範囲においては、長野県では千四百円で大体きまった、こういうことを小山君がこの間本会議で言わ・れて非常に喜んでおられた。そのほかはほとんど、団交において数量もきまらなければ、繭価協定もでき上っておらない、実勢できめるんだというような空気が強いのであります。それがほんとうだとすれば、これは局長の言うことは希望であって、われわれは、まだ現場からあれがきておらない。話し合いがついてからいくだろうという話は聞いているけれども、現場から、こうなっているんだという出先の話は聞いておりません。この間も、ここに埼玉県の養連の大幹部であられます関根一さんがおられるが、高田君の話を聞くと、実勢価格できまるような状態で、なかなか千四百円ではきまらないと言う。だがしかし、養蚕家の現実としては、共管体制も整っておらぬから、一応は製糸家に預けんければならぬだろう、こういう体制で、あとはどうなるだろうということで首をかしげるわけです。こういう実情にありますので、できまするならば、もう春繭は出ているのだから、きまっていなければならぬ。必ず今までは、どこがどうきまった、どこがどうきまったと新聞で見るのだけれども、最近忙しかったために、疎漏であったかどうか知りませんけれども、一つも見ることができない。これじゃ心配になる。委員長、そういう取扱いをしていただけませんか。もう局長ではだめだ。
  54. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) それは、政府がそういう調べをして出せばいいじゃないですか。
  55. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 私から御参考までに最近の状況を申し上げますが、ことしはお話のありましたように、非常に状況が例年と違いまするので、繭価協定は現実にはまだ各地とも進んでおりません。明日、製糸と養蚕の両者の代表が、中央でまず話し合いをいたしまして、中央で、これから各地で協定が行われます基本の事項について、話し合いをすることになっているそうでございます。そういう場面におきまして、先ほど来私が申し上げておりますような基本線が出て参りますれば、それによって現実に、各地において繭価協定が行われるということに相なると思います。
  56. 清澤俊英

    清澤俊英君 そこなんです、今ごろまだ中央の基本線も出ない、地方では繭が出てしまうということになったらどうなるのか、製糸家が私はいやだということになったら、これはどうなるのです。そこで、現実の取引状況が中心になって、北村さんのような議論が出るのです。現実不確定の上に立っては実体は解決はできませんよ、幾ら議論していたって……。あなたは、こういう話だからこうなるだろうという希望だけ言っていらっしゃるけれども、現実はちっとも進んでいないのです。それでこれを通して、繭価は安定したと言って、農民のところへ持っていって、これでよろしいのですか、製糸家のところへ行って、これでよろしゅうございますかと言っても、これでいいのですか。さっきから言うが、局長の言うことは、みんな希望なんです。こうしたいという希望だから、まだ確定しておらないのです。なかなか製糸家側の腰は強いという話です。ということは、それは今の法案に対してですが、これを審議する上にも、このほかにもいろいろ重要性を持つものがあるから、最後に私はお伺いをしようと思うので、私はその点は残しますが、私が危惧を持つ原因がまだほかにあるのです。そんなことじゃだめですよ。
  57. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 私は希望を申し上げておるのではないのでございます。繭価協定が、私が先ほど来申し上げておりまするような線で結ばれるように取り運ぶ手順を申し上げているのです。単なる私の希望なり観測なりを申し上げておるのではございません。
  58. 清澤俊英

    清澤俊英君 いや、どうも申しわけございません。精神はそうだけれども、通らなければ希望に終ると、こういうことです。
  59. 関根久藏

    ○関根久藏君 先ほど局長お話によりますと、団体協約によります糸価の決定については、大体九九%−九分九厘まで話がついた、こういう話であります。先ほど清澤さんもおっしゃいました通り、実は私は埼玉県の養連の会長なのでありますが、団体協約の問題は、御承知のように、その出荷中心日から前後の二週間の横神市場の清算、現物の取引価格の総平均の価格を基準として相談をしよう、ただし、あるいは経済情勢、糸価の動向その他の条件によって、これを参酌して相談を進める、こういうことになっておるのです。ところで、先ほどのお話に、埼玉では実勢価格で承知をした、こういうことでありますけれども、少しも私の方は、実勢価格で一承知をして団体協約を結んでおるのではないのです。そこで、ちょうど出荷中心日から近く、多分七月二、三日のころが協約を開始する時期になっておりますけれども、本年は異常の年でありますので、大体、全国的に、中央で政府の指導によって基本方針をきめてもらってからやろう、こういうことになっておるのであります。従って今回の措置によりましてわれわれは、千四百円が確実に保証されるのだと、かように実は確信を持っておるのです。
  60. 千田正

    千田正君 私、あとで質問しますが、法案に対する疑義がありますので、もう一ぺん大臣に、午後から来られるかどうか確約をして下さい。それによって議事を進めていただきたいと思います。
  61. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 午後も参ります。
  62. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記を始めて。  では、ここでしばらく休憩いたしまして、午後一時から再開いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  64. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き、繭糸価格の安定に関する臨時措置法案を議題にいたします。  御質疑の向きは御質疑を願います。
  65. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 二、三の点についてお伺いしたいのでありますが、第一は、繭糸価格安定法と今度の臨時措置法との関係であります。言うまでもなく、現在の繭糸価格安定法というのは、先般起りました需給の異変あるいは価格の異変に対処するための制度として私できておると思うのであります。ところで、そういう事態が発生したのに対して、本来の繭糸価格安定法を発動するということでなくて、臨時の立法を特別にするという一体理由はどこにあるのかという疑問であります。
  66. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) ただいまのお尋ねでありますが、大体、繭の生産は年間三千万貫、その足取りをたどって、もとより若干ずつの増産の気がまえがありましたんですが、大体三千万貫程度足取りをとってきたのでございます。ところが、昨年は、夏秋蚕におきましてその増産傾向が特に顕著に出て参りまして、そして昨年の夏−秋蚕だけても二百数十万貫の増産になって参った。異常の豊作を出したわけでございまして、引き続き本年の春も増産の気がまえでございまして、これらはその面において非常な異常な事態をかもしたのであります。他面、生糸に対しまする需要は、一般的に繊維界におきまする不況に伴いまして、そしてこれまた非常な低落の状況を呈しました。ここに両面の事情から異常な事態を生じたのでございまして、そして、この春以来応変の措置を講じて参ったのでございまするが、特にことしの春繭の積み重なっておりました事態にかんがみまして、春繭事態に緊急な措置を講じなけりゃならぬ、こういうことになったのでございまして、これは、いわば、異常な事態に即応してそこで臨機の措置を講じたいという考え方からいたしたのでございまして、全くこれに備えるためでございます。同時にまた、日本輸出生糸保管株式会社を利用いたしまして、弾力のある運用をするということが当面の事情にもこたえるゆえんでございまして、かような見地から今度の臨時措置法をとりました次第でございまして、そこの点を御了承いただきたいと思います。
  67. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちょっと納得が実はできないのであります。現在の繭糸価格安定法というのは、最低最高の価格制度を置いて、そうして最低価格は、言うまでもなく支持政策の基調をなしておる、その対象になるのは、需給の異変であるとかあるいは価格の変動があってそうして最低価格を割るというときには無制限に買い入れをしててこ入れをするというのが現在の制度であろうと思う。その異変の起ってくる原因とか状況は、これはいろいろありましょう。しかし、そういう異変に対処して繭糸価を安定するというのが現在の制度であろうと私は思う。従って、当然今度のこういう異変に対しては、繭糸価格安定法が本来の使命を果すべき筋今日いであろうと思うのであります。もちろん、言うまでもなく、現在の安定法の裏づけをなしておりまする資金の面とかという面においては補強をしなければいかぬことは当然でありまするけれども、その本来の制度というものを一応たな上げにしてそうして三十三年度だけの応急的な立法をするということが私にはちょっと納得しかねるのであります。もし大臣の言われるようなことであれば、すでに現実現在においては繭糸価格安定法というのはその機能を失つちまっている。少くとも制度本来の機能を資金的に持っていれば、今度の事態はあるいは起らなかったかもわからない。ところが、機能を失っておって、しかも、今度はそれをたな上げしちまう。さっと一年間たな上げされちゃう。そうすれば、将来といいますか、三十四年度以降は、一体繭糸価格安定法という基本的の制度というものは、じゃ、どうするのか。これを改正するとか、またそれに戻るとか、そういう点についての一つ考えを伺いたい。本来の安定法を必要があればこの際に改正をして、あるいは補強をして、その運営に待つべきじゃなかろうか、臨時の事態に対処する臨時法というけれども、臨時の事態というのは安定法において予想しておる事態ではないか、こういうのが私の質問の趣旨であります。
  68. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 今回惹起されました異例の需給関係は、戦後糸価安定制度を実施して以来の初めての事態でございまして、かような事態に対処して、今回は臨時措置をとりたい・と、こう考えておるのでございますが、従来の糸価安定制度を今後どういうふうにして運用して参るかということでございますが、これらは今後の蚕糸対策に対しまする恒久的な考え方と合せて、この際再検討して参りたい所存でございます。要は、昨年の秋以来の異常な事態に即しまして、そして弾力のある措置を講じて運用して参りたいという趣旨から今回の臨時措置をとったのでございますから、その点を特に御了承を得たいと思います。
  69. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 これ以上は考え方の相違がありますので申し上げませんけれども、せっかく基本的な制度があって、そうして蚕糸政策の基調をなして今日まできておるわけです。たまたまその制度が予想した事態が起ったという場合に、それをたな上げしてしまって、臨時の制度でしかも弾力的な措置をとると、こういうお考えと了解するのでありますけれども、本来の安定法の建前、趣旨からいうと、多分に私は疑問を感ずるのであります。  それから次は、糸に対して百億、それから五十億の乾繭の買い入れ、これはどういう根拠で、この数字が出たのか、これを一つ局長から伺いたい。
  70. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 昨日、今回の需給推算の基礎につきまして数字的に御説明を申し上げたのでございますが、今年の春繭生産予想、それから夏秋蚕を二割程度抑制をいたしますことを前提といたしまして、本年度の糸の需給計画は約五万俵程度のたな上げが必要になる需給推算に相なります。それで五万俵のたな上げを糸でいたすことといたしたのでありますが、さらに共同保管につきましては、春蚕につきまして現在二百五十万貫程度の共同保管の計画が具体的に進められておる。これはこれで将来、来年の三月まで共同保管の形において保管されました場合、それを保管会社を通じて政府が引き受ける必要がありますので、それの裏づけとして五十億を別に用意いたしたわけでございます。従いまして生糸につきましては、この際、五万俵のたな上げが可能な状態にまで買い応ずる態勢を整えますことが、糸値を回復させる最も有効な手段でありますので、生糸に・つきましては五万俵の買い上げができるような資金を用意する。共同保管は、一方二百五十万貫という計画春繭について具体的に進められておりますので、これを最後に政府が引き受けます場合の資金を別に五十億用意するという考え方でいたしたわけであります。
  71. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 この百億と五十億によって買い応ずる態勢がお話のようにできるわけであります。それの一つ見通しといいますか、見込みといいますか、これを伺いたい。言いかえますと、今の需給の状況、その他から見て、一応政府のいっておられる春繭を対象にしまして、この百億及び五十億というものがどの程度消化されていくか、これは全部消化されるというふうに見ておられるのか、買い応ずる態勢ができたから結果においてはそれほど現実には入ってこないというふうに見ておられるのか。そこら辺の一つ見込みといいますか、お見通しを伺いたい。
  72. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 共同保管の二百五十万貫につきましては、これはこの春繭が共同保管されまして、来年の三月ごろまでの繭の需給関係によってきまって参ります。二百五十万貫共同保管されましたものが、共同保管の形でそのまま来年三月まで持ち越されるような事態がありますと、これは、この五十億円の金でその二百五十万貫の繭を引き受けるということに相なります。従いまして、五十億円が全部引き受けに使われるかどうかということは、この共同保管されました繭が今後約九カ月ほどの間にどのように処理をされていくかということによって最後の数字がきまるわけであります。それから、糸の五万俵につきましては、これは今回は、十分の資金を用意いたしまして、買い応ずる態勢で糸価維持をはかっていくという考え方に立っておりますから、買い入れの条件等は、けさほど来申し上げておりますように、繭代金の支払いについて最低繭価見合いのものを支払う、あるいは現在製糸が操短をやっておりますが、その操短を確実に実行するという二つの条件ははっきりときめまして、その他につきましては、たとえば毎月の買い入れ額を設定いたしますとか、あるいは業者別に買い入れの額を作るというようなことは、今回の場合は政府側からはそういう措置はとらないつもりで進めておるわけであります。従いまして、現実にどの程度の数量のものが入って参りますかは、ただいまの段階で確たる見通しを立てることは困難でありますけれども、十九万円の糸価を維持するという態勢は、四月、五月において四十億円の資金をもってその先がどういうふうになるかということが必ずしも具体的になっていなかった当時の情勢とは、非常に条件が変って参っておりますので、必ずしも四月、五月のような形において政府に持ち込まれるというふうな実勢にはならないのではないかと思うわけであります。業界の方に対しましても、今回の措置を裏づけにいたしまして、十九万円の価格を維持することにつきまして業界側の協力態勢に対しましても、この際、全体の態勢を締め直すような方向で具体的にいろいろ話し合いを進めておりますので、現実の持ち込み量は今のところ数字的に幾らということを予測して申し上げることは困難でございます。百億円の資金を今後の糸価維持の全体のささえにいたしまして、最も有効に使っていくような形にいたして参りたいと思います。
  73. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 先のことですから、的確な見通しはもちろんつかないというのが当然であろうと思います。ただ、春蚕の千五百万貫を対象にいたしまして、繭及び糸を——百五十億円と言いますと、かれこれ出回り量の半分近くを対象にしておるわけであります。普通の常識といいますか、ありふれた考え方で言いますと、出回り量の半分をいわゆる価格支持という意味合いで買うということは、これはまあないのじゃないかというふうな考え方ができると思います。もちろん思わざる事情の変化で、あるいは全部政府に入ることもないでもないでしょうが、とにもかくにもこれまですでに五万俵程度はたな上げされておる、新しく春蚕の約半分見当を握るということは、これはまずないのではないかと常識的に考えられるのであります。ただ、政府の運営いかんによってはそういう結果が出てくるかもわかりませんけれども、ノーマルな運営においてはまずないであろうと一応考えられるのであります。あるいはその態勢が効果を奏して、現物的にはそう入ってこないということもないわけでも決してないと思います。その場合、私伺いたいのは、閣議の方針、また大臣の言っておられる説明を拝聴いたしますると、この百五十億は春繭対象であると言っておられるのであります。しかし、この法案には別に百五十億が春繭の対象であるということは出ておらない、三十三年度の繭対象と、こうなっておるのであります。従って、春繭政府持ち込みが先ほど言いましたようなことで少くて済んだと、言いかえれば将来買い取るべき繭が少なかったというような場合には、その買い入れ限度の余裕というものは、この法案上当然夏秋蚕に及ぶのだと、解釈上ですね、こういう、ふうに考えられるのですけれども、その点はどういうことに相なるのか、これを一つ伺いたい。
  74. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 共同保管の分については、これは現実に春繭で二百五十万貫程度のものが保管をされますが、これは五十億の資金の裏づけになりまして、事実問題といたしまして、春繭が対象になって、資金もそれでふさがるという事態に相なります。  糸の方につきましては、これは春繭の糸という区別は実際問題として技術的にもできないわけで、夏秋蚕が出回って参りますと、春繭と夏秋、あるいは晩秋の繭とは、これは混ぜ引きをされまして、夏−秋蚕というものは、相当長い期間にわたって現実に製糸の操糸過程に上って参るわけでございます。それで春繭を重点として今回の対策考えておりますことは、昨日来繰り返し申し上げておる通りでございますが、糸の買い上げは、現実には五万俵のワクをもって買い応ずる態勢をとったわけでございますので、そのワクで買い上げを続けております間は、実際問題としては夏−秋蚕にも及んで参る格好に相なるわけでございます。
  75. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それでけっこうであります。  それからもう一つ伺いたいのは、現在の安定法においては、御承知のように完全なるたな上げなのです、一度政府の買った糸は、出す場合は最高価格の線で出す、完全なるたな上げでありますが、この臨時措置の法案においては、状況によって出していくわけです。これは会社が出していくわけであります。農林大臣の承認を得るんですか……もちろん、従って、政・府の政策に即応しながら出していくごとになるわけでありますが、出し方についての方針といいますか、どういう考え方で、一度入ったものを出していかれるのか、これを伺いたいのであります。ということは、その出し方いかんによっては、出し方いかんが非常な、まあ私は価格に影響を持ち、最低価格十九万円に糸価を焦つかしめる効果も出てくるのでありまして、一体どういう考え方、どういう基準でこの会社に入ったものを放出していくかということについて一つお答えを願いたい。
  76. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 今回の措置によって買い入れます生糸は、従来、本来の糸価安定特別会計によりまして政府が買い入れましたもののほかに、約五万俵の糸を保管会社が手持をする可能性が出てきたわけであります。本来の糸価安定特別会計で買いましたものが約五万俵、そのほかに新たに保管会社が買い入れる可能性の生じましたものが五万俵ということになるわけであります。本来の糸価安定特別会計が持っておりまする五万俵につきましては、これは糸価安定本来の筋から考えまして、これは上値押えのために保有をしておくという考え方でございます。従いまして二十三万円になりました場合にこれを放出する。今回の場合は、最低価格を下回らない価格で販売できる機会があれば販売をすることを考えているのでございますが、もちろんその売却に当りましては、糸価に悪影響を及ぼすというようなことになりますことは当然これは避けなければならぬわけでございまするので、糸価がある程度上向き線をたどって参った、現実には十九万円以上の糸価になって参りました場合に、十九万円以上の価格で入札等の方法によって売却をしようといたしました場合、現実にそれを十九万円以上の価格で買い手があります場合に売って参る、こういうような売り方をすることを現在考えております。
  77. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私はその点に相当今後問題が起ると思うのでありまして、とにもかくにも五万俵のストックがたな上げされている、これはお話しのように二十三万円の線でなければ出ないのでありますから、市場を圧迫するという懸念はまずまずない。しかし、この臨時措置によって政府が吸収する五万俵−五万俵集まるかどうかこれは別といたしまして、その五万俵というものはともかく十九万円を越すといいますか、十九万円を割らない見当において放出されていくということになりますと、これは市場に対して非常に強い弱材料であり、圧迫材料になることは、これは当然であります。現在の安定法の制度は、ともかく最低最高の幅を置いて、その間に価格を適当に存在せしめるという建前であります。その建前を今度の臨時措置法というものは、まあ、こわすと言うと言葉は語弊がありますけれども、その建前と連って、吸収したものは、いわゆる最低価格の線を見ながら出していくということになりますと、相当の違いがこの両制度の間に出てくるわけでございます。そのやり方いかんによっては、蚕糸価格というものが常に十九万円の最低の線にくぎづけしていくような操作上の効果が予想されるのであります。そういうやり方が果していいのかどうか、私まあ疑問とする点でありますが、できますならば大臣からお考えを承わりたい。
  78. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) この臨時措置法は、もう申し上げるまでもなく、十九万円の糸価を維持して、そして参るということが一面において根本の趣旨でございます。従いまして、今度生糸保管会社にこれを運用させるわけでございますが、その根本趣旨は、これはこわしちゃ何にもならぬことでございますことは、今、梶原委員御指摘の通りであります。従いまして、その方針を堅持しながらも、情勢のいかんによっては、やはりここに弾力のある運用を措置するということが、やはり必要だと考えましたので、かような措置をとるわけでございますが、その間に、いやしくも今度の糸価を十九万円に維持して参る、そして、それがやがて生産者に貫当り千四百円の繭価を維持する、そして、これを保護するという趣旨を貫かなければならぬことでございますので、その運用は常にそこに重点を置きまして、そして、いやしくも値がくずれないように、かつまた本法運用の根本趣旨を没却せざる範囲において適切な措置をとって参る、これが私ども当局の最も念願とするところであります。
  79. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ただいま大臣の御所信で私満足するのであります。これまでの制度においては、最低、最高であって、その幅の中で国内においても、またアメリカその他においても生糸が動いて参ったと思うのであります。ところが、十九万円を支持するということは、支持する効果はなるほど今回の百五十億円で達成できる。反面において、その操作いかんによっては上るべき繭糸価が、最高の価格の範囲内において上るべき繭糸価が、常に政府手持の糸の圧力によって十九万円にくぎづけされるというような結果になりますと、一面において、非常に、大臣の言っておられる繭糸価の安定という面においては目的を達したかもわからないけれども、生糸の取引の円滑という点からいいますというと、いろいろ思わざる逆効果が予想されるのでありますから、その点は特に注意をして運営をお願いしたい、こう思うのであります。  次に十九万円の問題であります。私、十九万円のこの問題につきましては、とやかく申し上げるつもりは実はなかったのでありますけれども、これが生産制限と不可分の関連に立つということになりますと、将来ひとり蚕糸対策だけじゃなしに、繭糸価格対策だけではなしに、一般農産物の価格制度と非常に重要な関連と影響を持ってくると思われますので、特にお伺いしたいと思うのであります。従来、蚕糸政策において価格を維持するために、価格を支持するために生産制限のごとき事柄を生産面において実行したいという例は私そう存じないのであります。あるいは、あったかもわかりません。御承知のように、アメリカの農産物の価格支持政策というものは、支持する価格と、価格いかんによって生産制限の問題が、生産制限の施策関連しておるものであります。言いかえれば、支持する価格が相当高い場合において生産制限という施策をそれに合わせることによって、糸価もそのいずれをとるか、言いかえれば、支持価格を多少低くしても生産制限をせずにいくという方向をとるか、生産制限をしてもいい・から若干高い値の支持価格を採用するかという、この二つの政策の選択というものは、大臣御存じのように生産者、農民の選択にまかしておるのであります。ところが、今度は十九万円というものを維持するために、生産制限というものは政府の行政指導によって行われるわけであります。そうなると、果して十九万円というものが、その生産制限を伴うだけの適正な必要な水準であるのかどうかという点、私、これはきわめて重要じゃないかと思います。そういう意味で十九万円、これは先般政府においておきめになったのでありますが、十九万円というものの一応内容を御説明願いたい。法律においては生産費の八五%のところに線を置いて、その他のいろいろの事情を参酌しておきめになっておると思う。普通のこれも常識といいますか、普通のありふれた考え方で判断いたしますると、昨年は夏秋蚕においてもお話のように豊作であった、豊作であれば当然生産費が下る、これはまた当然のことであります。他の繊維の価格も相当下っておる。需要も減退しておる。かれこれ考えれば、常識論をもってすれば、十九万円が多少下るということを、これは私肯定される線だろうと思う。ところが、そうじゃなくて、以前非常に景気のよかったときの十九万円の線を堅持して、しかもそれを確保する裏づけに生産制限の施策を持ち出してこられたわけであります。一体、十九万円というもの、生産制限をしてまで、それを裏づけにして確保すべきその内容であるのかどうか、これを一つ説明願いたいと思う。
  80. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 本年三月に、繭糸価格安定審議会に諮問をいたしまして決定をいたしました資料から見ますると、生糸生産費は、繭の生産費が一貫目当り千六百四十三円ということになっております。それから出て参ります繭代が十六万一千十四円、それから繭の取扱い手数料が三千三百九十七円かかっております。それから生糸の製造販売費は五万二千二百五十九円に相なっております。これを積算いたしまして二十一万六千六百七十円、これが本年の安定審議会の際に用いました生産費計算でございます。これによりまして八割五分が、この八五%が支持価格の最低線でありますが、従来きめておりまする十九万円という線を小幅に動かしますことの影響等もいろいろ考えまして、従来通りの十九万円という線に答申をされたわけであります。従いまして本年度の価格支持率は二十一万六千六百七十円に対して八七%程度の支持率に相なっておるわけであります。
  81. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 一応計算はそういう計算になるのでありましょう。ただ、先ほど申しましたように、繭は増産であった。ほかのいろいろな物価の趨勢というものは一昨年来下落ぎみで下っておる。しかも、特に加工繊維でありまする人絹、その他ももちろん下っておる。そういう事態から判断すると、多少下っていいのじゃないかという一つの常識論があるということを申し上げたのでありまして、私下げるという議論をしておるわけじゃないのであります。ただ、十九万円というものは安定法の立場においては、先ほど申しましたように、生産制限の問題はないのであって、政府の無制限買い入れの基準として適当と考えるのであります。その場合に八五%の線をお取りになった。ところが、今回は生産を抑制するという施策をあわせて行う、二割の生産の抑制をまる。これは私、相当蚕糸政策からいいましても、農業の実態からいいましても非常に大きな問題だと思う。特に蚕糸業生産農家の立場からいうと、非常に問題があると思う。果してそれと対比して考えて、この十九万円というものをやはり維持しなければいけないかどうか、若干下ってもこの際としては生産制限というようなことをせずにいくということは、あるいは多数生産農家の気持かもわからぬ。先ほど言いましたように、アメリカにおいては農産物の価格支持政策生産制限を伴う場合においては、その選択は農民の意向によってきめていることは御承知の通りなんです。それを、単に政府の一存で十九万円は支持一する、そのかわり君たちは生産を少し減らせということは、どうも私、今回の施策が高飛車適ぎるという感じがするのであります。しかも、これは臨時の措置だ、恒久的には引き続いて検討していく、大臣はこの安定法も機能を喪失して、このあり方についての再検討をすると言っておられる。そうだとすれば、この際、生産抑制的なことを行わずに基本的な、より根本的な施策を立てるということが、こういう蚕糸業のような恒久的な農業、恒久的な問題に対してとるべき態度じゃなかろうか、私はこう思うのであります。なぜこのわずかな、しかも繰り返し繰り返し言われておるように、特殊な一つの何といいますか、事態に対処する方策、そうだとすればなおさら買い入れの線をもっと確保するとかいうことでやって、そうして生産制限というような問題は、制度全体として一つ検討するということが好ましいのじゃないか、こう思うのですけれども、これは 一つ大臣の御見解を伺いたいと思います。
  82. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) この臨時措置法の運用の前提として、この措置をとります前提としての諸条件、いわば一換言しますならば、環境そのものをやはり一つのものにまとめて参らなければならぬ。そこでこれだけの措置をやるのでございますが、やはり関係者の協力、それから同時に相互の了解がなければ進まぬことは申すまでもございません。十九万円を維持しますということにつきましての先決条件は、家に昨年来だんだん取りきめて参りました繭価千四百円を確保していきたい、これが当然前提になっておるわけでございまして、これを維持しますためには、糸価の安定を十九万円程度のめどに置いて、そしてそこに支持しながら同時に、海外市場もこれを期待し、同時に国内消費もその水準によって進めて参りたい、こういうことでございます。さすれば、その間に製糸の過程におきましても若干の操短を要請して、その協力を求める。そうして同時に、その条件の満ちたるもの・につきましては、ワクをきめずにそして百億の限度ですけれども、糸価を、糸を買い上げてやるという操作をする。そういうことでございますので、養蚕家の方に対しましても、やはり一つのソリダリティと申しますか、一つの連帯的な関連において、自衛的にこの際調整してほしい、こういうことを打ち出しておるわけでございます。この場合においても、今の御指摘でございますと十九万円を維持するために、むしろ減産を強要しておるかのごとき傾向じゃないかと、こういうことでございますが、われわれといたしましては、将来の問題は別といたしまして、この際、先ほど来——養蚕家に対しましては千四百円の繭価を維持してあげたい。そしてこうむるところの損害を軽減といいますか、カバーしてそして損失をなからしめるようにするということに進めたい、と同時にその方法としましては、ここ十九万円の糸価を維持して、そのことを完遂して参りたいという所在でございますので、将来この考え方としましては、ただ単に一定の糸価を想定してそれをどうこうする、運用するために、養蚕家等に対しましての生産制限であるとか、あるいはこれに類すべきところの施設を強要するという考え方であってはならぬと考えております。要は、今後の需給の事情、それから生産者を保護すべきところの限界、あるいは製系と養蚕との接触点における諸問題を合理的に勘案いたしまして、そしてこの安定の方策を貫きつつこの問題を処理して参りたい、かように考えるわけでございます。
  83. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 他の、まあ日本の綿業を見ましても、長年にわたって操短等が自主的にできるような仕組みになっておるようで、それが日本の綿業の、言いかえれば非常な一つの強味であります。人絹、スフ等の繊維においてもそうであります。ただ繭につきましては、多数の農家が生産するのでありますから、一時の異変によって生産というものを押えるとかというふうなことは、私はよほど基本的な対策ができて、その線に沿っていく場合においては、それはそれでけっこうである、そうすべきだと思う。ことに将来の生糸及び日本蚕糸業考えれば、そういう基本的な問題をほんとうに検討すべき段階に来ておることは大臣お話通りであります。そうだとすれば、この際において、そういう基本的な問題を目の前にしてこれまで続けてきた安定法というもの、これはほんとうに完全に動いておればこういう問題は起らない。そういう方は機能を喪失してたな上げにされてしまって、そして三十三年だけの臨時のあれが出て、そして十九万円を支持する、これはそれでいい。ところが、その十九万円を支持するという制度の裏に生産を抑制する、何と申しますか、非常に重要な問題が出てきておる。それは製糸家なり養蚕農家の協力を得てやると言われますか、その通りでありましょう。それは当然のことでありましても、そういうことで協力を求めるということ自体がこの段階としては無理じゃなかろうか。今後はこうなるのだから一つこうやろうじゃないか、それはそれで話がよくわかります。それはいずれやるのたから、とりあえず生産を抑制してはこうかといういき方は、蚕糸業の性質から見ていささか私は疑問だというここを申し上げたわけであります。今後一つ検討を願いたい。それから、政府長期計画をお持ちになって、そうしていろいろその長期計画の線に沿って政策が立てられ、進のられているわけでありますが、繭の関係生糸関係、これは今の五カ年計画をこの面において再検討をされるということになるのかどうかという点を最後にお伺いしておきます。
  84. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 五カ年計画につきましてはもちろん再検討と申しますか、最近の情勢等も織り込みまして十分検討をいたす必要があるわけでございます。引き続きその作業に入るつもりでございますが、ただその場合の考え方といたしまして、今の時点の需給の関係を基礎におきまして、それをそのまま引き延ばすというような考え方を用いるというような考え方はいたしておりません。やはり十九万円の現在の糸価安定制度をさらに充実して参りますことと並行いたしまして、今後の需要増進、その他の施策の裏づけをもちまして、どういうふうに蚕糸業の規模をこれからの将来の問題として考えて参るかという見地から十分検討はいたしていきたいと思っております。
  85. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 最後に一点だけ、これは大臣にお伺いしたいのでありますが、生産の制限といいますか、抑制する場合に、先般来局長からもその考え方をいろいろお話しがあったのでありますが、どうもはっきりしないのであります。まあ、生産が比較的合理的といいますか、安く上るといいますか、そういう面は残していって、立地条件その他で比較的割の合わないようなところを一つ減らしていくということに一応聞きとれたのでありますけれども、そこのところはどういう考え方で抑制していかれるのか、もう一度一つお伺いしておきたいと思います。
  86. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 先ほど梶原委員から御指摘になりました通り、今度は十九万円を、糸価を維持する、それが究極養蚕農家に千四百円の繭価を維持してやる、こういうことのために業界に協力的な何を求める、これはその業界でも困難がありますけれども、だんだんその環境を作っていこうということになっておったのでございます。でございますから、実は生産制限を要請した結果じゃなくて、この窮状を打開するために一つ自衛的にこの措置をとってもらいたいということを逆に勧めていることでございまして、先ほど来御指摘になりました通り、相反した矛盾もないわけじゃないわけであります。ただしかしながら、この際、全面的に将来の蚕糸業が悲観的だということで、桑園を改植せいとかそういう意味で打ち出しおることじゃないことは御承知の通りであります。しかしながら、五カ年計画等におきましても、従来の生糸の需給の足取り等を見まして組み上げたのでございますけれども、さらに実態に即しまして検討は怠ってはならぬと思っております。しかしながら、御承知の通りわが国の養蚕地帯は、いわば土地が抑角にして高嶺地帯が多い、いわば転換の作物等を選ぶにしてもなかなか容易ならざる条件にあるわけであります。同時にまた畑作等を奨励いたしましても困難な点があります。端的に申し上げるならば、養蚕以外にはいい産業がないというふうな土地もあるわけ−でございます。従いまして、これらはただ単に養蚕業の見地から生産制限をすると、こういう意味合いじゃなくて、むしろ他の立地条件から、同時にまたその地帯におきまする産業転換と申しますか、あるいは安定した農業経営を営むために、そこに転換の余地があるかどうか、それ誓ういう倉岳薪して参るかということだろうかと思うのでございまし、て、できるならばそれらの諸地方につきましては地域的にもよく見、その地方の農家経済の実態もよく洗い出して、そうしてまた農林省の持っております技術方面等も総動員いたしまして、そうして対策を立てて、その間にいい方法を求めたい、こういうふうに考えて参りたいとただいまのところ存じておる次第でございます。
  87. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 局長お話も、大臣お話しもその点になると非常に抽象的というと失礼でありますが、つかみにくい。おそらく、それだけにどういう対象をどういうふうにつかんでいくかということは非常にむずかしいことであろうと私は思っております。ただ、その場合に大事なことは、何といいますか、コストが安いとか、あるいはその地帯においては非常に有利な条件でできるとか、何といいますか、コスト主義的な考え方でやるのではなくて、やはり何といいますか、多少生産費を割っても養蚕をやらしていく、そのことの方が、いわゆる金銭経済的な観念からいえばつじつまは合わないかもわかりませんけれども、蚕糸業の将来を考えるとそういうところに相当の注意を払っていかないというと、かえって私蚕糸業というものが弱体化するという懸念を持つのであります。この点は、今後十分御検討をお願いしたいと思います。終ります。
  88. 北村暢

    北村暢君 夏秋蚕の問題について今、梶原委員からの質問もございましたが、重ねて御質問いたしたいのですが、昨日の答弁によると、二割生産制限する場合に、種の業者に対しては、これは繭として使うようにして千九百円ですか、これを補助金として出す、こういうことのようでしたが、実際に種の業者は大体これは非常に少いのでありまして、業者として統計では七十一人ですか、製造業者の事業所で百幾つか、こういう非常に少いものです。で、そういう二割制限に伴う補助金を出すんだが、ところが一方、この制限をされたからといって急に桑園が減少するわけではない。桑はできるものはできてしまう。従って養蚕農家がそのために二割制限を受ければ二割減収という結果が出てくるんじゃないか、これに対して何らの処置考えておらない、しかもこの養蚕農家というものは大体八十万世帯ある、こういう零細な農家というものに対す産制限に伴う被害といいますか、減収といいますか、そういうものに対してはこれは何らの施すべき手がない。ただあるのは価格を支持するだけだ、価格を維持するだけだ、減収が価格支持に役立つ、従って価格支持が間接的に利益になる、こういうようなことだと思うのですが、しかし、それではこれはやはり実感として農民は、私はこれに簡単に承知しないのじゃないかというふうに思うんです。それも今年度だけの問題で、承わればこれは一年ですから、農民も忍んで忍べないことはないかもしれませんけれども、この恒久対策との関係から言っても、ここら辺は非常に今、梶原委員からも言われておりますように、非常に微妙なむずかしい問題だ、こういうふうに思うんです。従って、今までの増産政策をとってきて、それに協力した農民、養蚕農家というものが、こういう経済状態になったからといって、直ちにそのしわ寄せを農民だけが受けなければならない、養蚕農家だけが受けなければならない、こういうことは、私はやはり相当問題があるのじゃないか、こういうふうに思いまするので、この農家に対する減収に対していかなる処置をしようとしているのか、対策があるのか、これについてお尋ねしたい。
  89. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) ただいまお尋ねの件でございますが、種繭に対して補助をいたしまする考え方はこれは昨日も繰り返して申し上げましたように、現実にはすでに三月から種繭を作り始めているわけでございます。六月になりまして、現実に種繭ができ上ったところで、このような措置に転換をいたしましたのでございます。現実にそれだけの余剰となりました分につきましても、相当の生産費をかけまして、種繭を作ったわけでございます。これをそのままにしておきますと、余剰の種がいろいろな形において流れまして、農家にはからざる迷惑をかけることも考えられますので、現実にかかった経費の一部を補償する意味において、種繭に対しては補助いたしたわけでございます。農家に対しましては、今回の生産制限によって出て参りまする収入減と申しますか、いわゆる計算上の収入減を補償するという考え方は、これはとっておりませんことは、昨日から申し上げている通りでございます。これは一千四百円、少くとも最低原価の線に繭値が支持されますために、農家の協力を要請をいたしているわけでございます。従いまして直ちに桑が、桑の葉っぱが幾ら余るからということが補償の対象になるという考え方よりも、全体千四百円の繭価支持の線が、現実に支持せられますことの利益の方が農家にとってはるかに大きいわけであります。その線にぜひ協力をしてもらうというふうに考えているわけでございます。なお、今後の問題といたしましては、農家でいろいろ営農設計等を変えまして、桑園の廃止をいたしましたり、あるいは桑園を他作物に転換をいたしますような場合におきましては、必要な援助の手段を講ずることは今から準備をいたしているわけでございまして、これは現実には秋以降の問題に相なりまするので、それまでの間に農林省といたしましても、関係局が一体となりまして、その面の準備を進めて参りたいと考えております。
  90. 北村暢

    北村暢君 それから先ほどの答弁でですね、今度の生糸の買い入れたな上げ限度の百億と、それから乾繭共同保管への五十億ということは、これは春繭に限っていないのだ法律的には、ですから夏秋蚕もこれは余裕があるとすれば、私どもはないとこう見ているのですが、局長さんの話としては十分だと言っている。十分であって、余ったとすれば、この区別がつかないから夏秋蚕に対しても買い入れることがあり得るんだ、こういう説明のようでしたが、そうすれば夏秋蚕の二割制限をやるということと、それから夏秋蚕に対しても買い入れをしていく、たな上げをしていくという考え方が入ってきてこれはいいのですか。そういうふうに理解していいのですか。
  91. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 糸につきましては、現実に春繭の糸、夏秋蚕の糸という別は現実にはっかないわけです。これは両方の繭を、今はちょうど春繭だけしかありませんから春繭だけ引いておりますが、初秋、晩秋の繭が出て参りますと、混ぜ引きをいたしまして、相当の期間製糸は、おそらく来年の三月ごろまで春繭の混ぜ引きをやると思います。これは繭の品質その他から考えまして、そういう方式、過程をとりますことは、一番糸を紡ぐ上に工合がいいわけであります。従いまして糸につきましては、初秋の糸、夏秋の糸という区別は現実にはつきませんので、五万俵の糸を買い入れることは、これから現実に政府買い入れの申し込みがある糸を買い入れるということになるわけなんであります。従いまして考え方といたしましては、春蚕の約半量に近いものを糸繭によってたな上げをして、この国会で価格維持をはかり、夏秋については生産を抑制することによって全体の価格維持をはかりたいという孝え方の組み立て方でございますが、現実の問題といたしましては、糸につきましては、これから五万俵のワクの範囲内で、現実に買い入れ申し込みのあるものを買っていくということになっております。
  92. 北村暢

    北村暢君 ここでもう一回確かめておきたいのは、夏秋蚕の二割減産はあくまでもこれは行政指導でしかも協力を求めなければできない、実際には。桑は永年作物ですから、そう簡単に作付を減らすというわけにはいかないですし、これはもうできてくる。そうすれば、種繭でもって一応規制はいたしましても、なかなかそれを減産するというのがそう計画通りにいくかどうか。また、この豊作というふうなことで、二割減産が上回るような形が出てきた場合、一体、これは一年間の時限立法であるから、夏秋蚕の二割制限だけにたよって処理しようとしているわけですから、しかも行政措置でやる、こういう何らの強制力というものはもちろんない。協力ということに期待をかけているだけです。従って私は、この立法についての、春繭についてのたな上げ措置、これだけにやはりたよるわけにいかないので、もしこれが夏秋蚕の現実の問題として価格維持に、繭糸価格の安定のために問題が起きてきた場合、大臣としてはそのときそのときにまた一つ考えるというのか、どうなのか。そこら辺の、実は絶対に夏秋養については一切何もやらないのか、この点を二つ伺っておきたいのであります。
  93. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) まだ、将来の見通しでございますから、何とも言えないわけでございますけれども、手をこまねいてそうして悪化するようなことはいたしたくない、こう考えておって、従って、情勢によっては、また何らかの手を打たなければならないと、こう思いますが、今のところ、既定方針で進みたいと考えております。
  94. 北村暢

    北村暢君 それからもう一点お伺いいたしたいのは、この繭糸価格安定法の十七条に罰則の規定があるわけなのです。これはまあ最高価格に関する不当な利得を目的として買い占めをやる場合の罰則規定でございますが、これはまあ当然そういうことは考えられるのだが、しかし、事情は非常に変って参りまして、最高価格でなくて、今問題になっているのは、最低価格が非常に問題になっている。これが守られるか守られないかというのは、先ほどの論議でもずいぶん出ている。従って、これはやはり繭糸価格の安定ということで、政府ということで、政府がもしそれに対してほんとうにやる気があって、熱意があるとするならば、やはりこの最低価格を維持する点についても、この罰則規定を設ける必要があったのじゃないか、こういうふうに感ずるのですが、この点に対して見解をお伺いいたしたい。
  95. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) この十七条の規定は、法律の十条を受けているわけでございますが、法律の十条は、「禁止価格をこえる契約等の禁止」でございます、これは、現在の最高価格が二十三万円になっておりまして、二十三万円の最高価格は、政府が手持ちの生糸を二十三万円で放出することによって、それ以上に価格が上っていくことを防止しようという建前で運営しております。ところが、この法律——この新しく禁止価格の規定を入れました当時の考え方は、現実にこの特別会計は、一俵の生糸も持たないで発足いたしたわけでありまして、その結果、二十七年の暮れから二十八年の初めだったと思うのでありますが、例の生糸が二十七万円まで暴騰いたしました事態が起きました場合に、何らこれに対処することができなかったのであります。こういう二十四万円の禁止価格を設定いたしまして、それを戦時中の物価統制令の観念で取り扱ったのであります。禁止価格として、罰則を背景として取り締るという措置をとったわけであります。これは、何らその際現物を持っておりませんで、ただ価格取締りという立場からだけの法規で目的を達しようといたしましたから、こういう措置をとつたのであります。  最低価格の場合につきましては、これは本来の、繭糸価格安定法が最高価格、最低価格の、そのおのおのの支持を、また、その売買を通じて支持価格による買い入れ、最高価格による売り渡しという、売買を通じてその支持価格が実現されることを意図しているこれは法規でございます。その支持価格そのものを直ちに禁止価格的な、いわゆるその価格による取引そのものを禁ずるという建前で全体の組み立てができておりません。従いまして、今回のような場合におきましても、支持価格はあくまでも支持価格という観念でありまして、その取引自体を−価格による取引自体を、罰則をもってこれを取り締るという考え方は、この法律全体の組み立て方の中では、ちょっと取り入れることが困難ではないかと、かように私どもは考えております。
  96. 千田正

    千田正君 私のお尋ねしたいのは法案の条文の中に、多少疑義がありますのでお尋ねいたしたいのでございますが、それは第四条とそれから第七条、並びに付則にあるところの補助金の交付の問題は、先般来、いろいろ同僚委員からのお尋ねに対してのお答えのうちにも多少触ふておられるので、ある程度はわかりますが、第七条のうちで、「政府は、会社が第二条第一項の規定による事業を行うことにより損失を受けたときは、当該損失をうめるため、予算の範囲内において、会社に補助金を交付する」ということになっておりますが、これは一体「予算の範囲内」というのは、どういう程度のことを指しておられるのか、その点を一応伺っておきたいと思います。
  97. 保坂信男

    説明員(保坂信男君) ただいまお尋ねのございました、今回の法律の第七一条の補助金の交付に関してでございますが、これは第四条で、会社が生糸、一繭を売り渡します場合には、時価によって売り渡すことができると規定してあるわけでございます。従いまして、会社が製糸会社から生糸を買い入れました後、相当の期間、金利、倉敷等を加算してコストがかかる場合がございます。なお乾繭につきましても、協同組合から引き取りました場合には、その引き取り価格に、その後の保管等の費用がかかるわけでございますが、売却の価格、時価は、必ずしもその原価に相当する一それを上回るとは限らない場合があるわけでございます。そうした場合において売却をいたしました場合には、当然、会社に差損を生ずる結果になるわけでございますので、そういうような事情のもとに、想定されます損失につきましては、国が会社に対して損失をかけないように補助金を交付するという考え方で、この「予算の範囲内」と申しますのは、一応会社が自己の責任でない範囲内において損失が生じましたような場合に、これを補助するという考え方に立っておるわけでございます。
  98. 千田正

    千田正君 そうしますというと、第四条のただし書きのうちに、「ただし、整理のために売渡を行う場合を除き、」ということがありますが、整理という問題は、やはりある程度の一この法案によりますと、三十四年の五月三十一日限りでこの会社が一応清算に入る、そういう場合に、残った糸を、整理のためと、それを繭価を割って売る場合もある。そういう場合は、この中に入るのか、入らないのか、これはどうなんですか。
  99. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) この第四条のただし書きで、「整理のために売渡を行う場合を除き、」と書いてございますのは、これは安定法の書き方を踏襲したのでございまして、これは実は会計法上の一つの用語になっておるわけでございます。整理売却という観念のものがございます。これは事故品を生じましたような場合、それを事故品処分として売るというような場合が整理売却に当るわけでございまして、この会社が持っておりますのを、一定の期日に整理のためにそれを全部処分するのだというような場合ではございません。事故品の処分の場合だけが整理売却である、こういうことであります。事故品であります場合、たとえば半端物を生じました場合、そういう場合に、そういうものを若干値引きして売るというような場合が整理売却でございまして、会社が手持ちのものを全部整理する、そういう観念のものではないのであります。
  100. 千田正

    千田正君 今の局長の御説明によるというと、たとえば半端物のようなものというまあ一つの事例をとっておっしゃっておりますが、かりに、一応五万俵のうちに四万俵が売れ行きがあった、あとの一万俵という問題が残ったとしますと、そのうちに、あるいは保管上の疎漏、その他によって当時の原価を割って売らなくてはならない。たとえば今のようなあるいはくず繭として清算しなくちゃならぬ問題が出てきた、あるいは何かの方法で時価よりも安く売らなくちゃならぬという問題が出てくると思います。これは損失という方面には勘定には入らないのか、入るのか。ただし書きによるというと、そういうものは入らないという一つの条文になっておりますが、どうなんですか。
  101. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) この第七条は、「会社が第二条第一項の規定による事業を行うことにより損失を受けたときは、当該損失をうめるため、」ということになっております。従いまして、会社が第二条の二にきめております仕事を現実に行いました結果出て参りました損失は、これを三十四年度におきまして予算を積算いたしまして、これに補助金をつけて埋めるわけであります。従いまして、ただいまお話のありましたように、現実に買い入れました生糸及び繭を、将来一定の理由のもとに減価をして販売しなければならぬ、処分をしなければいけないような事態が生じました場合には、それはその会社の損失になります。これは補てんをするつもりでおります。ただその場合、会社の責めに帰すべきものと、帰すべからざるものとの区分は、はっきりといたすつもりでおります。会社のの責めに、たとえば何か業務上の誤まりを犯した、従って、そういうことで会社の責めに帰すべきものは、これは国が補償すべきものではありません。販売価格とか、一定の理由のはっきりありますもの、これは補てんをして参るつもりであります。
  102. 千田正

    千田正君 国際マーケットとにらみ合せあるいは国内の内需状況等とにらみ合せて、この法案のいわゆる効力をわれわれは期待しておるのでありますが、しかし、現実の問題として、なかなかそういうふうにいかなかったという場合、一カ年を経過した場合においてそういう状況に立ち至った場合は、この法案はあるいは延長する、それだけの余裕を考えておられるのかどうか、これはむしろ大臣からお答え願いたいと思います。この法案によりますというと、この生糸会社は昭和三十四年五月三十一日限りとなっておる。その三十一日になって、実際在庫品そのものがうまく売りさばきができて、当初の目的を達すればいいけれども、しかし、国際情勢の市場の状況、あるいは国内の状況等において、いかなる状況の変化があるかもわれわれははかり知れない。そういう場合において、その損害があるいは相当多い、あるいは手持ちしてもう一年見送らざるを得ないという状況に立ち至る場合においては、この法案をあるいはもう一年延長して、来年の春繭に対しても同じような方法をとらなければならぬという状態に陥るかもしれません。そういう場合においては、この法案というものは、一年限りということはわれわれは予想されない。そういうときの考え方はどういうふうになっておりますか。
  103. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) この法案はただいま御指摘のありましたように、一年間の、来年五月三十一日までの事態考えておるのでございます。従いまして、この会社がこの法律で買い入れました生糸及び繭は、来年五月三十一日の時点におきまして、会社が持っておりますものをそのまま政府に肩がわりする、五月三十一日の時点において持っておりますものをそのまま政府が六月一日に肩がわりをするという考え方になっておるわけでございます。従いまして、現在の見通しといたしましては、おそらくこれによって買い入れます生糸は、年度中にそう大量なものが保管会社の手を離れて、保管会社がみずから処分をするという事態は、必ずしも実際問題としてはそう多くは期待できない。来年六月一日に政府で肩がわりをする数量が相当数量あるだろうということを想定いたしております。従いまして、この法案の立て方といたしましては、この一年間保管会社として業務を行わせまして、それを来年六月一日に政府において肩がわりをする、こういう考え方になっておるわけでございます。
  104. 千田正

    千田正君 そうしますと、この法文にありますところの、付則に掲げられたところの第二項の「補助金の交付に関する一切の歳入歳出は、この会計の所属とする。」というのは、これは特別会計の中に勘定を設けて、そこによってこれを処置するというのですか。それとも政府としましては、別個のいわゆる一般会計のうちにそういう政府が−肩がわりするところのオーバー・ストック品の買い取りという問題を予算の上に表示させる、こういう考え方でこの法案を作っておるのか、どっちですか。
  105. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) これは付則の二項にもありますように、「糸価安定特別会計法の一部を次のように改正する。」ということで、この条項を一つ加えておるわけでございます。従いまして、今度の臨時措置法によりまして買い入れました生糸等を、政府が肩がわりをいたします場合は、その会計の所属は、糸価安定特別会計になるのですが、明年度の三十四年度糸価安定特別会計予算に、これに必要なる予算の裏つけをいたすように相なるわけでございます。
  106. 千田正

    千田正君 大体わかりましたが、ただ問題は、オーバー・ストックをいかに将来処置するか、あるいは先ほど来、清澤委員やあるいは北村委員からのお尋ねに対しても、夏秋蚕の問題あるいは来年度における国際市場の見通し、国内の内需の問題等を勘案しました場合において、必ずしも政府考えておるような順調なはけ方をし得るということは断定できない。将来ずっと何かの政策、たとえば政府考えておるような減反政策、養蚕農家に対する減反政策を持つとか、あるいは内需の拡張に向けていくとか、国外におけるところの市場の開拓というような、総合的なことを考えていかれるでありましょうが、なおかつ、それでいってもストック品は残るというような予想のある場合には、どういう処置をとられるのか、その点を承わりたいと思います。
  107. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) すでに政府でたな上げいたしておりますもの、それから今回たな上げを新たにいたしますものも、これを処分をいたしますのには、過去の経験等からいたしましても、相当の長い年月をかけており、過去におきまして政府生糸を持ちました一番多かったのは十数万俵でございますが、これを処分するのには、やはり相当の日子をかけてやっております。従いまして今回の場合も一応五万俵はこれはいわゆる糸価が相当大幅の騰貴をいたしましたような事態に備えまして、その場合の値上り防止用の目的に一つ取っておかなければいけませんから、今回の五万俵につきましては、やはりこれは、相当計画的に漸次なしくずすには、市場に還元をさしていくことは、どうしても考えざるを得ない。あまり大量のものを政府でそのまま持ちこたえますことは、経費の面からいきましても非常な負担になって参りまするし、どうしてもこれは、市場にある程度の割合で還元して参ることは、考えていかなければならないわけでありまして、ただ、現実の問題といたしましては、市価に悪影響を及ぼしましたり、いろいろな制約がございますので、実際に新たに買い入れます五万俵分のさばきをつけていきますのには、やはり過去の経験等からいたしましても、相当な日子は、これはかけることはあらかじめ考えておかなければならないと、かように考えております。
  108. 千田正

    千田正君 最後に一点だけお伺いいたします。第七条の「予算の範囲内」という面においては、来年度予算が計上される事前において、大体損害の査定ができるという予定のもとに、こうした条文を掲げておられるわけですね。
  109. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) 大体来年度の予算を積算いたします場合に、ほぼ見当をつけまして、その見当の範囲内で予算に計上いたします。もし、それで不足するようなことがございましたら、また事後的に手当することにいたすわけでございます。大体の見積りをつけて予算に計上することになっております。
  110. 東隆

    ○東隆君 私はこの法律を見ますと、製糸業者の条件が非常によくなっておりますけれども、養蚕農家の方面については、ただ千四百円を準備すると、こういうようなことに対して、これははっきりしたところが出ておりませんけれども、その点が一つ考えられる一思うのであります。ところが、そのことをやるために、実は自主的統制であるとか、いろいろな形でもって生産制限の問題にまで及んでおるわけで、これは非常に今回問題を解決するのには都合がいいかもしれませんけれども、将来に向って養蚕農家の安定という方面については、これは非常に大きな欠点になるのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。そこで、どうしても養蚕農家の力をつけて、そうしてやっていくためには、やはり農業協同組合を強化していかなければならぬ。こいつをやらないで問題をそのままに放置しておくと、解決はつかないと思う。農業協同組合の場合には、もうすでに乾繭処理の施設というのは、もうほとんどなくなっておる。共同保管の施設も非常に貧弱になっておる、そういうようなものがみんな製糸業者の手に移っている、こういう形なんですが、抜本的に養蚕農家の安定のために政府が手を打つとするならば、私は、やはり農協の施設にそういうようなものを持ってこなければ問題にならぬと思うのです。そういう点は、今のままでもって政府はおやりになるつもりですか。もう少し、   〔委員長退席、理事藤野繁雄君着席〕 農業協同組合に力を入れて、そして農業協同組合自体がいろいろな設備を持って共同販売の態勢を確立していく、団体交渉をする場合における有利な条件を持つと、こういうようなことをお考えになりませんか。この点をお伺いいたします。
  111. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) これはことしの春繭の経験等からいたしまして、乾繭共同保管を行います場合の乾繭施設等を対象としてのお話であると考えますが、これはお話のように、農協自体に乾繭施設を持たせまして、製糸業者との間の取引で農協側に実力をつけていくということは、非常に好ましいことであり、それは確かにけっこうなことであると考えます。ただ、現実の問題といたしまして、その手段といたしまして、ただいまの段階におきましても農林漁業金融公庫等からの融資の道は開かれておるのでございます。農協でそういうような施設を持とうと思えば、これは持てないことはないのでございます。しかしながら、現在乾繭施設を新たに作りますと、これは相当の金額のものになるわけでございまして、果してそういうものを農協が持つことのまあ経済的な優位さというような点につきましては、両面からいろいろ深く検討を要する面があるわけでございます。従いまして、農協といたしましても、この段階で新たに乾繭施設を持つという希望が、積極的に持ち上って参るかどうかは、これからの様子を見ませんとわかりませんのでありますが、実際問題としては、そう簡単に持って、しかも経済的に運営をして参るということは、そう容易なことではないと思うわけでございます。従いまして、われわれは、今後の問題といたしましては、特にこれは夏秋蚕の場合におきましても、ことしの春のような事態が繰り返される危険性のあることは、十分考えておかなければなりません。今日の段階から、秋におきまして、夏秋蚕について乾繭共同保管が行われます場合、製糸業者がその施設を利用、提供せしめることについて、今から両者の間に入って私どもはあっせんし、話し合いをつけて参りたいと思っておるわけでございます。ことしの春の経験から見ますると、果して製糸業者が施設の提供を拒んだことが、繭価において最後までそれが有利であったかどうかはわからない。おそらく製糸、養蚕両者でおのおの反省をして、もう一度考えておる余地が多分に出てきておると思うのであります。従いまして、今からよく準備してかかれば、必ずしも農協が新たに投資をして乾繭施設を持つという、態勢だけを整えるという線に考えなくても、既存の設備を使いまして、円滑に共同保管をやらせていくという道もあり得ると思います。そういう点についても、私ども今から十分用意してかかりたいと考えております。
  112. 東隆

    ○東隆君 私は、この農協が乾繭施設その他を持つのは、ちょうど酪農の場合における集乳所を会社が持つか、あるいは農協が持つか、これと非常に似ておると思う。その場合に、農協が集乳所を持った場合には、これは相当有利な販売態勢を確立することができる。ところが、ただいまの情勢は、大てい会社が集乳所を持ち、そうしてやっているということによって、脂肪検定であるとか、その他の点においてもいろいろ問題が起きている。それが、普通そのいい状態においてどんどん会社側が買い取ると、こういうな状態では問題ないのですけれども、一たび品物が余り、会社でもって操短をしなければならぬと、こういうような情勢のもとにおいては、非常に違ってくるわけであります。そういうような場合が問題なのでありまして、従って、養蚕の場合においても、私は、十分に考えられることではなかろうかと思う。従って、農林省が今後養蚕農家の安定ということに重点を置くならば、私は、やはり乾繭施設あるいは共同保管の設備、そういうようなものに対しては、単に融資というような問題でなくて、別途な形でもって会社の持っているところのものも買って、国が補助をし、そうして作ったものが相当ある。そういうようなものが、昔の特約組合のような養蚕組合、それから、製糸会社との間に、そういうようなものが、なれ合いのもとに移管をしていった、こういうふうに見ていい。そういうような体制ができ上っているのじゃ−ないか。だから、私は、この際、抜本的にお考えになるならば、やはり農家の組織であるところの農協が、そういうようなものをもってやっていく。これがもしうまくいかないというならば、これは連合会の区域でもってやる。こんなような体制でも作り上げていって、そうして養蚕家の組織を通して製糸業者と、はっきり団体交渉によって解決がつくような体制まで持っていく必要がある。この法案を見ますと、最後のところでは国が補給をして、そうしてやるのですから、製糸業者の方面については非常に安定した法律になるわけです。しかし、これは外国に輸出をするというような問題にからんでそういう手が使われておるのですけれども、しかし、なかなか末端の万の繭を生産する農家の方面には、千四百円をはっきりと確保するというところまではいっておりませんから、そこで私どもは、千四百円を割って買うような場合には、それに対して何か強行規定、そういうようなものが必要ではないか、こういうふうに考えるわけです。その強行規定はなくて、ただ製糸業者の方面でもって、会社の方でマイナスのときには、それに対して予算の範囲内のものを補給する、こういうことにも考えられますので、製糸業者の方は都合がいいかもしれないが、それだけのことを考えておるならば、千四百円でもって買わないものには罰則の適用であるとか、そういうような強打規定をこしらえて、そうしてやるならば、補給をするという考え方がこれに出てきますし、そっちの方だけ考えて、そうして片方の方はほったらかしある。こういうので、この法律は製糸業者本位の安定である、養蚕農家に対しては安定でなくて不安定な感じを与える法律だ、こういうふうに考えるのですが、その点はどうですが。一つ慣行規定をこしらえる意思はございませんか。
  113. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 農協が、今御指摘になりましたような体制を整えるという方向に発達しますことは、好ましいことでございます。往年、農林省が乾繭共同保管の施設を拡充強化しまして、奨励した時代もございます。しかしながら、今日では情勢が非常に及って参りまして、先ほども蚕糸局長が申した通り、これがどうも相当膨大は資金を投じ、施設を講ずるということになりますと、その負担がなかなか容易ならざることと思うのでございまして、昨今、そこまで、東さん御指摘のように、農協の方が積極的な体制を整え得るかどうか、多少われわれとしましては、まだ認識を持っておらぬわけでございますが、そういうことに進みますことは、まことに好ましいことだとは思っております。それが前提になりませんと、なかなか生産も立ちにくいだろうと思います。  次に、乾繭装置の利用のことでございますが、現在の段階では、強力に行政指導をいたしまして、とにかく春以来のことは、所期の目的を達するようにだんだんしわ寄せして参ってきたわけであります。これを強制権をもってしようということになりますと、現行憲法その他の法規上からいいますと、一種の強制収用のことでございますので、立法はすこぶる困難だと実は考えております。今のところ、東さんが御指摘のように、農協側が体制を整えて、そうしてある程度経済的負担にも耐え得るという限度においてその施策を進めるということと同時に、今のところ、共同保管等につきましては、むしろ農林省等は積極的に行政的な指導も加え、両者の協力態勢に基いて、この問題を当面解決するということでなければならぬかと思うわけでございまして、ただ単に強制的な立法措置ということは、ただいまのところ、きわめて困難であろうかと考えておるのでございます。   〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席〕
  114. 清澤俊英

    清澤俊英君 関連して。今の場合、どういうものですか、製糸会社の施設を、政府が一応使用契約ですかで、そういうものをやった場合、それに応ずる見込みは全然ありませんですか。これは今言われた通り、個人会社にし論議でもずいぶん出ている。従って、ろ、何なりにしろ、所有権を無視して行政措置でこれを使うということは、これは無理でしょうが、しかし政府が、こういう事態であるから、それに対応するために、何カ年なら、何カ年の間、非常措置のような、臨時使用契約というようなものをお結びになって、それはこのたびの場合だが、そうしておいて、政府が千四百円で買うのだ。ただし、支払いは概算払いでもいいと農民が言うならば、まあ一応そういう形で製糸会社にお預けしていただければ一番安心です、農民の場合。そうすれば、一ぺんでものは解決するのじゃないかと思いますが、そういう考え方はどうなんですか。
  115. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) これは別に政府が借り受けて、それを農協に使わせるというような、そういう現実の賃貸借契約等を用いなくても、私は、夏秋蚕以降の問題といたしましては、今から十分事前に用意をしてかかることによりまして、春繭におきますようなトラブルは起さないように、極力やって参るつもりでございます。これはお説のように、乾繭施設というものは、一年に、繭出回り最盛期十日間か、十五一日の間だけに集約的に使われるものでございますから、これはもう製糸会社の方も、そのときにフルに使っていただくと、あいているものを貸さぬというのではないのであります。そのときに、使っている乾繭計画の中に、共同保管のものも一緒にかまして乾燥をしていくということで、ごく短時間の間にこれをやらせるということでありますから、そうそれを政府で一方的に借り受けて、契約で取り上げてしまうというようなわけには、現実の問題としては参らない。やはり両者が円満に、そこをいろいろ調整して使うということに話し合いでいくようにしなければ、現実問題としては、円滑にいかないものだと考えております。
  116. 東隆

    ○東隆君 今の問題なんですが、乾繭施設、あるいは共同保管施設を農協で買い受けてやる方法はどうですか。これは、そこまでいかないと、農協の場合には、共同販売の体制というものはできないと思うのです。乾繭施設を持っていない、共同保管の体制も持たないで共同販売をやろうというのは、これは問題なんでありまして、こいつがなくて製糸会社に太刀打ちをすることを考えるのは間違いだろうと思う。そうして農協は弱いんだか、ら、熱意がないのだからと、こういったのでは、まるで昔やってきたあの特約組合のような——養蚕組合というのは特約組合です。従って、特約組合と、それから製糸会社との間に話しがまとまって、そうして国が助成をして作ったところのものが、いつの間にか会社の方に移管されてしまった−こういうこと。これが現実の姿じゃないかと思う。そういうふうに考えてきたときに、私はこの際、もう一度乾繭施設であるとか、そういうようなものを農協の手に移す。それは、一応変えてもいいのではないかと思うのです。そういうような形でもって体制を整えて、そうして共同でもってやる、団交をするったって、団協をするにしても、そこまでの体制が整わないのでは、話しようがないと思う。私は、過去におけるところのやり方を、今のような状態に持ってきたので……、だからこの際、養蚕農家の組織であるところの農協を強化するということを考えていかなければ、養蚕農家の安定ということは、これは考えられない。そのために当面商品として売り出すのですから、それが、しかも乾繭処理の施設というようものがなければ、これはもうなま物を持って、そうしてそれを商う場合の弱みは、どっちにあるかといえば、農家の方にあるのですから、そんなふうなあり方で進めるのは、これは間違いなんで、やはりがん張れるだけの体制を養蚕農家に持たせなければ問題にならない。そうして最後において輸出をする場合に、補給をしなければならぬという問題が起きた場合には、これは、そういうようなところまでいっておるときには、初めて補給ということも考えられる。今のような場合で補給をするような、そういうようなことをやれば、生糸業者にばかりの安定だ、こういうふうに考えられても仕方がない、この法案は、農家の方にやはり相当の犠牲を強要している、そうして生糸業者の安定ばかりを考えておる。そういうふうに見ざるを得ない。ただ千四百円というところで、表面は非常に養蚕農家の安定を考えておるようでありますが、これには罰則も何もくっついておらないので、従って、相当団協その他においては弱い、その実現をはかるのには非常に不安である、こういうことも考えられますし、自主的な生産制限をやるといっても、これは農協の力を借りないで、自主的制限ということをやれば、結局、一番弱い養蚕農家の方にしわ寄せされてしまって、そうして場合によっては、非常に強いものが、この機会にたくさんやった方がこれはいい、こういうような形が、私は出てくると思います。やはり農協を非常な強力なものにして、そうして農協の中におけるところの総会でもって決定をして、そうして自主的な統制をやっていく、総会を通さないで、ちりぢりばらばらの形でもって生産制限なんかされたら、これはとんでもないことになる。自主的統制の意味は、やはり農協を通してやるのだ、こういうことをはっきりお考えにならんければいかぬと思う。それを、ただ種繭を制限したから、それで制限になる、これは総体では制限になるかもしれぬが、しかし、村の中に入ってくれば、非常に不公平な制限が行われて、そうして弱いものは半分以上もあるいはやめてしまうものもいる、そんなようなことが起きてくるかもしれぬ、だから、やはり自主的な統制というのは、農協を通して農協の中でそれが行われていかなければならない、それがほんとうの意味の自主的統制、制限なんかの場合におけるやり方である。だからやはりこれは農協を強めていく、ここに私は集中していかなければ、ほんとうの意味の価格安定、従って養蚕農家の安定、こういうことにはいかぬと思う。非常にそういう点に欠けていると思うのですが、その点、もう一度一つお伺いしておきたいと思います。
  117. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 農協のあり方、同時にあるべき姿は、御承知の通りだと思うのですが、ただそれを裏づけるための農協自体の経済力と申しますか、それが同時に伴わなければいけまいと存じます。同時にまた、過去の乾繭の共同保管の施設等におきましも、やはり農協の力だけでは維持し得ないというところから、今日の状態にもなったと思うのでございますが、将来の問題でございますから、農協が強化され、同時に養蚕農民の団結によって、そういうふうな非常に理想的な姿に発展しますことは、これはもう希望しますし、また、それはよく助けては参らなければならぬと思いますけれども、その間に非常に困難な事情がありはせんか、こう考えます。同時にまた、農協の内部における自主的な統制の問題でございますが、これは逐次そうなければならぬと思います。ただ単に政府の干渉でもっていこうと、こうきめられるべきものじゃないのですから、それはさように思います。ただ、乾繭施設のごとき、相当な投資を必要とし、維持管理等につきましても相当の経費を要するものでございますがゆえに、これはただ単に一片の、農協好ましいあり方ということだけでは、なかなか片づかぬ問題でございますから、やはりわれわれとしましては、農協すなわち養蚕の協同団体の将来の進め方、それには熱意をもってしなければなりませんけれども、今急に共同保管の乾繭装置等の施設、設備を、この際一挙にとは申しませんが、急速な当面の問題の処理の根本的な解決に対しては、なかなか容易じゃなかろうと考えておりますわけであります。
  118. 清澤俊英

    清澤俊英君 大臣朝から独占しておりますので、衆議院の方でも大臣が要るようでございますので、ごく簡単に二点だけお伺いしょうと思います。  その一点は、先ほど夏秋蚕に対しましての基準に対して、まあ大体今やっている法案に盛られたような方法で、安定の目的が達せられる、こう思う、こういう自信を持って仰せられて、それで、万一不測の場合が出て目的が達せられないような場合には、適切な手を打って何とかするであろう、こういうことを考えている、こういうお話で、何とかいろいろな方法は考えられますが、いずれ資金面等が出て参りますが、それらの点は、大体関係筋と御了解ができておったのかどうか、私は一日ぐらいおくれてもいいが、一つ御相談していただいて、一つ御返事を願いたいと、こう思っているのでありますから……。ただ、大臣がそういうことをしなければならぬと考えておるし、そうもしてやりたいと、こうお考えになっている気持はよろしいが、それがすぐ何かの方法で、予算やそういうようなものが了解済みで、現実にやっていけるのかどうか、そういうようなところまでお話し合いでお話し下すったのかどうか、この点一つお伺いしたい。
  119. 三浦一雄

    国務大臣三浦一雄君) 先ほどの問題につきましては、昨日も申し上げた通りであります。手をこまぬいて漫然としているわけではない、その事態に処して、適切な措置は講じて参る、ただし、今、清澤さんは、これに伴う予想せられるいろいろな予算措置と、こうおっしゃられましたが、その予算措置等も、まだそう今のところ、ああだこうだということは、私は的確に把握できない。同時に、関係方面との話し合いがついているかということでございますが、先般も本会議の際に、万一の事態等があった場合に、しゃっきりでいくのかということに対しまして、大蔵大臣は、多少弾力のある御返事があったくらいでございます。ましてや私は当面の責任者でありますから、いかような困難があっても、これは一生懸命になってがん張らなければならぬと思うのでございますから、その点は一つ御了承いただきたいと思います。今的確にどういう予算措置を講ずるということの打ち合せば、まだいたしておりませんが、事態に即応して私としては最善を尽して参りたい、こういう所存でおります。
  120. 清澤俊英

    清澤俊英君 ところで、自民党の内部においては、今、大臣はやめられましたが、前の大蔵大臣は、六月三日に閣議後の新聞記者との会見で「生糸は戦前に比べると輸出量もがた落ちだし、国内消費もずっと少くなっている。新しい化学繊維の登場でその重要性はきわめて小さくなった。三日きまったのは差しあたりの応急対策だが、ここらで生糸生産を他に転換する根本的な対策を立てる時期だと思う。応急対策に使う金も、ほんとうは桑の作付転換その他の根本対策に使いたいと思うくらいである。」今は閣僚ではないが、その当時は閣僚であったそういう主要な有力な人の中に、まだこういう空気が存在しているということなんです。そうしますると、なかなか好意ある農林大臣考え方がスムースにいくかいかないか、非常に心配なんです。だから私はそういう老婆心で聞いたが、言われた通りだと思いますので、その上は、私は申し上げません。結局、閉会中に出て、順々にあれするというようなことを言われても実は困る。できれば大蔵大臣からでも、出てきて、予備金からでもその場合には出すことになるんだ、そういうような御言明があれば一番安心するのですが、それも要らないほど御確信をお持ちのようです。一つそういう配慮において私は了承して、質問を打ち切りたいと思います。その点は、めんどう言えば、意地悪すれば、大蔵大臣に出てきてもらって、農林大臣が言う通りか、一つ予備金からでも何でも出して持っていって、そのときに何とかする、こういうお話を実は承わりたいと思うのですが、そこまでいきません。  そこで第二点としてお伺いしておきたいことは、先ほどから輸出の振興とかいろいろな議論が午前中からありました。その振興それ自身を考え、十六万円に暴落以後の経過につきまして、きのうもちょっとお伺いしましたが、輸出業組合の人たち、こういう商社関係の人たちが寄りまして、そうして糸は十六万円にするなら相当需要量がふえるから、そういう価格に支持価格を持っていってもらいたいと言うのであるか、その内容ははっきりわかりませんが、新聞に、そういう要請を農林省にした、こういうことが新聞に出ておりますが、そういった事実があったのかなかったのか、これが一つ。  それからその次には、やはりこれも新聞でありますから、確認しておきますが、国内の消費者関係である織物の全国協議会とでもいいますか、協会のようなものが、全織物地の、内地消費の織物を売っている人たちが集まって、どうしても化繊やその他の関係上、やはり十六万円くらいにやっていただかなければ、この上の消費拡大はできない、こういう決議をいたしまして、そうして現実にその需要を制限している、こういうようなことが新聞に伝えられている。それにマッチしますがごとく、製糸業者も大体の内外の需要状況を見て、一応今までは十九万円の最低支持価格を維持しておったが、もうこういう情勢になって、一俵十六万円という線が出た限りにおいては、まあこれを十九万円に引き上げるとしましても、なかなか海外市場においてこれは受け入れるのに困難性を持つのでありますから、ここらで十六万円くらいに一応落ちつかせることが妥当じゃないか、こういう空気が、あらゆるそういう関係機関におきましても充満している一つの空気だと思う。私は世論だと思う。だから、このたびの暴落騒動に対して、結局はこの支持価格にしました安定法自身が非常に間違いのもとなんだから、これを一つ根本的に考え直さなければならぬということは、安定法ができましたことは、とりもなおさず終戦後非常にまだ養蚕業が回復しないで、回復しない中に需要の方が先行してしまった。そういうことで繭が不足でありましたから、従って、天井知らずの価格になりまして、問題を起して二十七、八万まで行ったことがあるのです。そういう際にできましたのが糸価安定法であって、これは一つの抑制法であった。ところが最近の場合には、繭が余る状況に入ってきているのだから、従ってこの際は、価格の線を考えて、そうして支持価格をやはり十六万円くらいに下げて、そうして、そこに需要の増大をはかるべきが振興の中心ではないか。私は、昨今いろいろ議論を聞きますが、消費する人にしましても、売る人にしましても、それはいずれもが価格を中心にした経済的関係によっている。こういう空気が出ている際に、まだ農民の生産コストというものが、そこまで追いっかないとき、こういうものが出たら大へんな問題だ、われわれはこう考えておる。これはみんな農民にしわ寄せされるだけの話で、結局、今まで政府振興政策にあやつられてどんどん作りましたが、もうここでいいから、お前らごみになれという話と同じことになるので、こういうことだからがん張るのでありますが、大体そういう空気ですが、今申しました三つの線がそういうものを出している。その世論に対するお考え方、これを一つはっきりしてもらいたい。それは間違った世論なんだ。だから十九万円でどうしても、どこどこまでも政府としては押えていくのだから、清澤そういう心配は要らない、こう言われるのかどうか。これは一つの世論であり、私は蚕糸振興の力であると思う。そういう政府の力で、経済の振興を力で押えることはできないと思う。だからここに、夏秋蚕に対しましても、来年の問題に対しましても、私は非常な脅威を感じているのはそこにある。それが、どんどん上げ相場、そういう実勢上の力が蚕糸業の上にあります、私はさほどの心配はないと思う。この点を一つ明確にお教えを願いたいと思います。
  121. 須賀賢二

    政府委員須賀賢二君) ただいまお話のありました点、先般来の動きは、端的に申し上げますと、需要の面からも、化繊糸の価格その他の比較において十九万円が高いから、もう少し下げてくれないかという意見が、製糸業者に対して需要家から出てきたことは、そういう時期がかつてあったと思うのでございます。その場合、製糸家のとりました態度というものは、最終的には繭にしわ寄せをすることによりまして、十六万円なら十六万円の価格を実現するという態勢をとったわけであります。しかし、その後の措置によりまして繭にしわ寄せをするということは、現実問題としてできないという態勢になりましたので、現段階におきましては、十六万円改訂論というものは、漸次終息をいたしまして、十九万円の線を再確認をする態勢に、全体の調子が戻ってきております。
  122. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  123. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) それでは速記をつけて。  本法律案に対する質疑は、以上をもって終了したものと認めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 重政庸徳

    委員長重政庸徳君) 御異議なしと認めます。  本法律案の討論採決は、明日の委員会の当初に行うことにいたします。  本日の会議はこの程度にいたしまして、これをもって散会いたします。    午後三時四十六分散会