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説明員(磯崎叡君) 私、国有鉄道の営
業局長の磯崎叡でございます。
ただいま御指名によりまして、私の方で今
考えております公共
政策割引の
措置につきまして、簡単に御
説明をさせていただきます。お手元に資料を配付させていただきましたので、それによりまして御
説明をいたします。
まず、第一枚目の公共
政策割引貨物の割引額調、これは昭和三十二年度の実績でございます。この実績によりますと、現在私の方の貨物運賃は、国有鉄道運賃法によりまして、貨物の賃率表とそれから貨物の等級表とこの
二つによって、たくさんの荷主から運賃を収受いたしておりますが、その賃率表にも等級表にもよらない特別の割引を、公共
政策割引というふうに申しております。この公共
政策割引の実績は、その一番初めの表の左側にございますようにトン数といたしまして千六百六十一万トン、木材類四百八十八万トンを筆頭といたしまして、薪炭が二百三十万トン、魚介が百五十万トン、野菜が百二十万トン、以下、生果、雑穀、食料品、家畜、肥料、農機具、わら工品等の
農林水産物資のほかに、無煙炭三十六万トン、鉱石類三百七十八万トン——これは石灰石その他でございます——等、
農林水産物資全体を合せますと千六百六十万トンでございまして、これは私の方の昭和三十二年度の一年間の貨物の輸送実績が一億七千七百万トンでございます。ちょうど全体の貨物輸送量の約一割に相当する数量でございます。これをもし現在の運賃法によりまして定められました貨物の賃率表並びに等級表によりまして、所定の運賃を算出いたしますると、ごらんの
通り二百二十五億三千六百万円何がしになるわけでございます。この所定の運賃に対しまして、それからある程度の、品目によって非常に率は異なっておりますが、割引をいたしております。その割引の額が、ごらんの
通り二十三億七千七百万、二十四億になんなんとする、私の方にとりましては、非常に膨大な割引額の実績を示しておるわけでございます。
内容を念のために申し上げますと、木材類が大体半分近くの約十億、薪炭類が三億八千万、魚介が二億二千万、野菜が一億七千万、以下こまかい物資になりますが、ずっと飛びまして、通産物資の無煙炭が一億三千万、鉱石類が一億三千万、合計いたしまして約二十三億、そのうちの通産物資が約三億、農林物資が約二十億ということに相成っておるわけでございます。しからば、その割引の
内容はどういう
内容かと申し上げますと、その次の紙に書いてございます。この第二枚目の表は、公共
政策割引貨物の品目別の割引率調べでございます。木材類から以下ずっと書いてございますこの品類は、第一ページの品類と同様でございます。その次に、おもな品名といたしまして、この各品類のうちにたくさん実は、約百三十ばかり品名がございますが、そのうちから数量の多い品名だけを抜き出しまして、おのおのの品名につきましての割引率を書きましたのが、以下の表でございます。先ほど申しました私どもの方の貨物等級表は、普通等級と特別等級と
二つに分れております。普通等級は、全体で私どもの方で輸送いたします約七千近い物資を十二の等級に分類いたしております。この等級
制度と申しますのは、鉄道が陸上輸送につきましてほとんど独占的な地位を占めておりました時代の
一つの運賃
制度でございまして、すなわち
経済価値の高い貨物からは運賃をうんと取る。
経済価値の低い貨物からは低い運賃を取る。そして高い運賃で低い運賃をカバーする。こういう運賃
制度がこの等級の基礎をなしておるものでございます。すなわち一級から十二級までございまして、一級から四級ぐらいまでの運賃は、原価を上回った運賃を取っております。逆に六、七級から下の方の運賃は原価を下回った運賃を取っております。従いまして、原価を上回った運賃で原価を下回った運賃をカバーし、そして大体全体でとんとんになるというのが、私どもの方の現在の等級
制度の基本でございます。これと著しい対照をなしますものは、現在のトラックの等級運賃
制度でございまして、トラックはこういう分け方は一切ございません。たとえば、荷役がしやすいとか、いたみやすいとか、そういったものによる割増しはございますが、品名による割増し、割引によるその運賃の高低は一切ございませんで、一律に全部トラックの原価を中心にいたしまして運賃をきめております。従って、トラックで輸送いたしますと、どんなものでも一応原則としては、運賃は同額でございます。それが鉄道運賃は、先ほど申しました
通り、一種の根本的な、
政策的な運賃を取っておりまして、等級に分けて、そうして貨物の高い
価格のものから高い運賃を取るという
制度になっております。この等級のうちの数が多いほど
価格の低い物資、すなわち運賃の安い物資、数の少いほど等級の高い物資でございます。この等級はトン当りの貨物の値段を客観的に算出いたしまして、それを機械的に十二の等級に当てはめたものでございます。これは、こういう機械的な当てはめ方は、若干社会
政策的な考慮が払われないことがままございますので、それを特別等級というものによりまして修正をいたしておるわけでございます。すなわち、七千数百の品名の中から、特に国民生活に直結する
農林水産物資、あるいはその他の物資のうちから、約数百のものを選びまして、それを特別等級というふうに格下げをいたしております。大体格下げいたします割引の引下率は二割前後でありましてそこに書きました
通り、たとえば薪炭類で申しますと、木炭は
価格だけから申しますと五級に相当するわけでございますが、それを二割二分引きまして二十二級という等級に格下げをしておるわけでございます。特別等級は二十一、二十二、二十三の三つの等級がございまして、この二十台に該当いたしますものは、一応普通等級の等級をとっておりますが、それから約二割ないし三割、ごらんの
通り、農機具の脱穀機、耕耘機等になりますと、約三割八分の引き下げをしておりますが、それによりまして、二十二級というふうに下げております。米穀、麦等は二十一級になっております。こういたしまして、普通等級で数千の貨物を分類いたしたものから、さらにそれを社会
政策的な
意味で特別等級に格下げいたしまして、この特別等級までが一般の貨物に適用される運賃でございまして、この特別等級、普通等級と、先ほど申しました距離によります賃率、この
二つをかみ合せまして荷主から具体的な運賃をいただいております。
これに対しまして、今問題となっております公共
政策割引と申しますのは、これをさらに下回りまして、特別な品目につきまして特別な割引率をきめておるのが、現在の公共
政策割引でございまして、従いまして、この公共
政策割引は、現在の運賃法によりますところの貨物の賃率表にも、また貨物の等級表にも載っておりませんものでございます。これは
日本国有鉄道運賃法の第八条によりまして、国有鉄道総裁が変更するということによってきめられておるわけでございます。この割引率は、ごらんの
通り、品名、品類によりまして非常に違っております。一番高いのは上から三枚目にございますまきの二割二分ないし二割八分、それから、大体二割以上のものは
一つ二つございます。わら工品なども二割から二割一分、それから非常に低いのは一分から六分、さまざまございますが、これは昨年の運賃を改訂いたしました際に、遠距離逓減の修正をいたしましたので、その遠距離逓減の修正があまりにも過度にならないようにという趣旨から、若干の訂正を距離によっていたしたわけでございまして、その距離による割引率の差異によりまして、この最高最低が出ておるわけでございます。この最高最低の率と、さらに距離別の数量と、この
二つをかけ合せました結果が、その次の平均割引率でございます。ごらんの
通り、品目によりまして二割以上のものもあれば、四分三分といったものもあるわけでございまして、いろいろさまざまな平均割引率になっておるわけでございます。これは三十二年度の割引の実績によりまして、距離、数量等の加重平均をいたしたものがこの平均割引率であります。この最高最低割引率によりまして各品目別にトン数をかけ合せまして、そして割り引きいたしました額が、先ほど申し上げました
通り、その表の一番右側にございます二十三億七千万、木材類の十億を筆頭といたしまして、その品目別に割り引くことによって算出いたしましたのが、この二十三億の額でございます。これが現実に私の方で三十二年度に割り引きいたしました額でございます。
次に、三枚グラフが入っておりまするが、これは大体同じようなグラフなので、
説明が長くなりますので、一枚だけで省略させていただきます。たとえば一番上は鮮魚、その次がバレイショ類、それから三枚目が木材、品目によりまして若干賃率が違いますので、こういった違った表を作成いたしましたが、一番上の鮮魚によって御
説明申し上げますと、一番上の太い黒い線が、先ほど申し上げました鮮魚の
価格による等級によって運賃を算出いたしました場合のグラフでございます。縦が運賃の額でございまして、横が距離でございます。すなわち距離が増加するに従って運賃の絶対額はもちろんふえて参りますが、運賃のキロ当り運賃はだんだん下っていっておるわけでございます。従ってこの三つは四十五度の角度を描かずに、さらに鋭角になって進んでいっておるわけでございます。この普通等級から特別等級へ、ごらんの
通り二十二級と書いてございますが、下っております。これが普通等級を一〇〇といたしますと七八になっておるわけであります。この特別等級に該当する品目はたくさんございますが、特にこの鮮魚につきましては、さらにそれから割引をいたしております。ごらんの
通り五百キロのところで横から線が出ております。五百キロの距離につきましては一番下の点線のごとく割引いたしまして、結局普通運賃の一〇〇に対しまして七四の割引の実態、すなわち二割六分の平均割引をいたしておるということに相なるわけでございます。そしてこれに実は原価の曲線を入れておりませんが、原価曲線で申し上げますと、大体原価は五級の前後を走っておりますが、その原価は、今度距離別に申し上げますと、大体私どもの方の運賃は、非常に率直に申し上げさしていただきますと、近距離でもうけて遠距離で損をする、こういう運賃
制度になっております。すなわち
日本の国土の
関係その他から申しまして、相当強度な遠距離逓減制をとっておりますために、約三百キロから二百キロは原価を上回るような運賃をいただいております。そしてそれから距離が遠くなるに従いまして、原価を逆に割っていくという方法になっておりますので、先ほど申しましたように等級別、すなわち品目別に見ますると、高い値段の貨物の運賃でもって低い値段をカバーし、距離的に申しますと、近い貨物の運賃で遠い貨物の運賃をカバーする、これが私どもの方の縦と横の運賃
制度の基礎になっておるわけでございます。こういう
事情からいたしまして、ごらんの
通り、遠距離にいくに従って、この幅が開いておるわけでございまして、これはこの次のバレイショの表も、また三枚目の表も同じことに相なっておるわけでございまして、この割引をいたしております。
今度は品目につきまして簡単に申し上げますと、次の表の「設定品目からみた割引品目数調」というのがございます。これは先ほど申しました
通り、私の方で輸送いたします貨物は、全体で約七千ございます。その七千の貨物をそのまま等級表に入れますと、非常に複雑になりまして、事務的にも煩瑣にたえませんので、これを千三百六十の品目に圧縮いたしております。大体同じ
価格、同じ性格のものを
一つにまとめまして、これを、品目といたしましては千三百六十にまとめております。ごらんの
通り、鉱産品から危険品に至るまで、さまざまな数が入っております。このうちで、今申しました
通り、特別等級まではさまざまございますが、特別等級からさらに割り引きする、あるいは一般的に公共
政策割引を適用いたしておりますものは、その次にございます
通り百十五品目でございます。従いまして、逆に千二百四十五の品目につきましては割引がない。と申しますことは、一般の賃率と一般の等級表
通り運賃をいただいている。すなわち、全体の約一割弱のものだけが特別に一般の等級表以下に運賃を暫定的に設定しているということに相なっているわけでございます。
次に、北海道の表が一番最後についておりますので、これを簡単に御
説明させていただきます。この北海道の表は、ちょっと今までの表と性格が異なっておりますので、簡単に申し上げますと、実は、この表は、北海道から出ます貨物の運賃で、北海道から内地へ参りますもの及び北海道から出まして北海道へ届くものの
二つにつきまして、三十一年度の実績と三十二年度の実績について、どの程度去年の
値上りが実際に運賃面に出ているかという表でございます。まず、北海道の問題につきましては、
二つ問題がございます。
一つは、青函航路のキロ程の問題でございます。
一つは、今問題になっております公共
政策割引の問題でございます。この
二つの問題がございます。青函航路キロ程につきましては、実は、私どもが昨年当
委員会において御
説明いたしました際には、青函航路キロ程は百キロメートル短縮いたすということでもって原案を御
説明させていただきましたが、もし百キロメートルのままで参りますと、運賃の
値上り率は一六・一%ということに相なっておったわけです。それからさらに御審議の
過程におきまして、五十キロ短縮しろ、すなわち、四百五十キロであったものを私どもは三百五十キロにするという案でございましたが、それをさらに五十キロ短かくしろ、三百キロにしろ、三分の一を減らせという
お話がございましたので、それを三分の一減らしまして、百五十キロ短縮いたしました。その結果、全体の
値上り率は一四・八九%に下っておるわけであります。ここで約二億一千万円の私どもとしては持ち出しになったわけであります。さらにその次に、割引の方でございますが、従来の範囲による割引の継続、北海道につきましては、昭和二十八年に実は青函航路キロ程の修正をしろという御要望が非常に強かったわけでございますが、これが種々な
関係でできませんで、そのかわり、北海道につきましてのみ特別な割引を実施いたしたのでございます。実は、それは、私どもといたしましては、当然、百五十キロ短縮された場合には削除していただくというつもりでおったのでございますが、しかしながら、それをさらに残せという
お話がございまして、ここで約五億三千万入れまして、結局一一・九一%にこれが下ったわけでございます。さらに、北海道につきましても距離割引をしろという
お話もございまして、距離割引を約六百万円追加いたしまして、結局一一・八七%ということに相なっておるわけであります。車扱いとして、全体の
値上り率は、全国的に見ますと一四・九%、これを、北海道について正確に申しますと、一四・三%、それを北海道の青函を修正いたしまして一四・九%、これが一三%を上回りますことは、小口貨物の賃率が非常に下ったことと、車扱い以外のいろいろな扱い方を変えたというようなことのために、一・数%が財源になっておりますが、いずれにいたしましても、全国平均の
値上り率が一四・三%に対しまして、北海道から出るものにつきましては一一・八七%という相当低位に押さえたつもりであったわけでございます。従いまして、私どもといたしましては、今回いろいろ北海道につきまして問題も出ておるようでございますが、この北海道に関します限り、昨年の運賃値上げにつきましては、相当ほかの地域とは違った扱い方をした結果になっているということを申し上げるために、この表を作ったわけでございます。
最後に、結論を申し上げますと、私どもといたしましては、ただいま申しました
通り、約二十五億の割引を実施一いたしておりますが、これらの中には、相当昨年度の運賃改正の際に、お前のところの業務量の増加でまかなえというふうに、何と申しますか、言われて、お引き受けした割引があるわけでございます。ところが、御
承知の
通り昨年の下半期からの
経済不況によりまして、私どもは、昭和三十二年度におきましても約二十億近い貨物運賃の予算に対する減収をいたしております、もちろん割引額を引きました上で約二十億近い減収をいたしておりますが、ことに本年度になりましては、非常に減収の度がはなはだしく、現在までにすでに約一カ月十億近い減収を続けています。もちろんある程度旅客面でカバーいたしておりますが、旅客面の増収は、わずかに五、六億にすぎませんで、とても貨物の全体のカバーをするだけに至っておりません。従って、私どもといたしましては、何らかの若干の増収を企図したいということで、この公共
政策割引につきましてある程度の減額をさしていただきたいということが、私どもの案でございまして、私どもの原案といたしましては、二十三億に対しまして、各物資ごとに、先ほど申しました
通り、割引率は相違いたしておりますが、二分の一ないし三分の一を削減いたしたい、逆に申しますと、半分ないし三分の二を残しまして、二分の一ないし三分の一を削って参りたいというのが私どもの案でございます。そういうふうに、非常に不明確なことを申しますのは、非常にこれは技術的な問題でございまして、先ほどこらんの
通り、割引率が非常にさまざまでございまして、二分の一、三分の一と申しましても、四捨五入あるいは二捨三入等の
関係もございまして、あるいはそのまま残るものもあれば、あるいは四捨五入の
関係で切り上げになるものもあるといったような、さまざまな割引に対する率のかけ方で変って参りますので、二分の一ないし三分の一と申し上げておるわけでありますが、全体で約七、八億の金額をぜひお戻し願いたいというのが、私どもの
考え方であります。農林物資、通産物資別に申しますと、大体三分の二が農林物資、三分の一が通産物資ということに相なるかと思います。
以上、はなはだ簡単でございますが、御
説明といたします。