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1958-07-08 第29回国会 参議院 大蔵委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月八日(火曜日)    午前十時二十分開会   —————————————   委員の異動 本日委員仲原善一君辞任につき、その 補欠として木暮武太夫君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     前田 久吉君    理事            木内 四郎君            西川甚五郎君            栗山 良夫君            平林  剛君    委員            青木 一男君            岡崎 真一君            木暮武太夫君            迫水 久常君            塩見 俊二君            田中 茂穂君            土田國太郎君            廣瀬 久忠君            松野 孝一君            宮澤 喜一君            山本 米治君            荒木正三郎君            大矢  正君            戸叶  武君            野溝  勝君            河野 謙三君            杉山 昌作君            八木 幸吉君            岩間 正男君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    通商産業大臣  高碕達之助君   政府委員    大蔵政務次官  佐野  廣君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    通商産業省通商    局長      松尾泰一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○経済基盤強化のための資金及び特別  の法人基金に関する法律案内閣  提出衆議院送付) ○外国為替資金特別会計法の一部を改  正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○たばこ小売手数料引上げに関する請  願(第二一号)(第四四号)(第五  九号)(第七六号)(第一〇五号)  (第一六五号)(第一七四号) ○税法上の用語不具者改正に関する請  願(第八七号) ○映画の入場税減免に関する請願(第  一〇六号) ○講和条約発効前の占領軍による被害  者補償処遇改善請願(第一七五  号) ○富城県多賀城町所在の旧海軍工しよ  う敷地返還に関する請願(第一七九  号)   —————————————
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) ただいまから委員会を開きます。  委員の変更について報告いたします。本日付をもって、仲原善一君が辞任され、その補欠として木暮武太夫君が委員に選任されました。
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 昨日大矢君より散会の動議、木間君より質疑終局、直ちに討論採決に入ることの動議がそれぞれ提出されましたが、大矢君の動議は自然消滅し、木内君の動議は本日の理事会協議の結果、撤回されましたことを報告いたします。  これより昨日に引き続き、経済基盤強化のための資金及び特別法人基金に関する法律案並びに外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、両案について質疑を続行いたします。  この際委員長より一言申し上げます。本日は会期の最終日でありますので、ただいま議題となっています二法案の審議を促進するため、質疑及びこれに対する答弁は、要点だけを簡明に発言されるよう要望いたします。それでは質疑を続けます。
  4. 平林剛

    平林剛君 私は、昨日質問を続行中の外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について質疑を行います。昨日このインドネシア焦げつき債権為替資金損失として全額整理することは、結局政府輸出政策の失敗であり、それを国民負担に肩がわりさせることだ、その結果政府国民一人当りにすると幾らの損害を与えたか、こういう質問に対し、政府当局からは、国民一人に対して六百一十八円の損害を与えた、こういう答弁があったのであります。これは聞きっぱしにすると大へん重大な答弁であり、また関係大臣も幾人かおられたにかかわらず、一言もこのことについて触れず、その後の質疑が続けられたことは、私は政府国民に対してとるべき態度として、まことに遺憾なることだと思うのであります。少くともこの事態に対しては、当院に対しても、また国民に対しても、一言釈明措置がなされなきやならぬ。(「異議なし」と呼ぶ者あり)しかるに、何事もなく進められるということは、政府がきわめてこの問題を軽く取り扱われているという印象を与えました。私、いろいろ考えてみたが、政府態度として、まことに遺憾なことだと考えたのであります。しかし、本日は時間もありませんから、さらに質問を続けます。  日本経済の発展のために輸出振興が大事なことであることや、政府輸出第一主義をとることを現状として認めることができましても、結果的に金にならない輸出をして、焦げつき債権を作り、そのしわ寄せを国民に戻してくるということでは、国民がますます損をするという結果になるわけであります。今回の処理にいたしましても、私は公平な立場から考えても、国民だけが損している。この貿易振興役割りを請け負った商社はちっとも損をしていない。ちっともふところが痛んでいないということは、大へん矛盾をしたことだと思うのであります。たとえば、インドネシア焦げつき債権の総額一億七千六百九十一万四千ドルにいたしましても、輸出商社である伊藤忠、丸紅、飯田、東洋綿花、第一物産、これだけの主要なる、その他主要なる貿易商社は一体どれだけ利潤を上げていたのか。昭和三十二年度における貿易商社の所得がどのくらいあるか。こういうことが漸次明らかになりますと、国民全般はその矛盾にますます苦しむであろうと思うのであります。本来であれば、このことについても私は政府にその実情を明らかにしてもらいたいと思うのでありますが、私はここで一つ意見でありますが、このような場合、輸出商社だけがふところを痛めず、そして国民だけが損をするということはきわめて矛盾なことであるから、一つ意見ではありますが、こういう場合には貿易商社に対しても、ある程度損失負担をさせる、こういうことを考えるべきではないか。私は政府輸出第一主義をいけないとか、輸出振興に水をかけたりするつもりはないのでありますけれども、今回の措置国民の側から見た場合に、どうも納得ができません。今後政府輸出政策によって、このような問題が重ならないとは限らないわけであります。そうしてそのつど国民負担がふえる、こういうことになりますと、一つ意見ではありますが、貿易商社にある程度損失負担をカバーさせるということも考えていいのじゃないか、こう思うのでありますが、政府考えをお聞きしたいのであります。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今回、当面いたしております政府輸出振興の方策に関連しまして、前回とられましたインドネシア債権を放棄したことについて、ただいま平林議員から国民にだけ損失を与えて、一体政府責任はどうなる、こういうおしかりでございます。昨日来政府といたしまして、また私自身も一言お話をする機会が与えられなかった、私も実はただ黙しておりました。その点はまことに無責任であり、あげて政府責任であるかのようなお話であります。  問題は、輸出振興に対しての御意見と、イドネシアの焦げつき債権処理、この二つを結びつけての御意見のように思いますが、今回法律案を出して御審議をいただいておりますのは、前国会において、日本インドネシアにおいて過去の債権をいかにするかという議定書を作りまして、全会一致でその議定書は御承認を得たのでございます。その御承認を得た事件について、もう一度むし返してのお話であるように伺うのでございますが、私はこれは当時、この債権を放棄すると、さような措置はとりましたが、同時に一面国際親善を進める、かような効果もあって、国として最終的な意思決定をいたしたものだと、かように考えているのでございますが、過去の問題についての御批判は必ずしも当るわけではないのじゃないか、こういうように感ずる次第であります。ただ問題は、今後政府のとります輸出振興につきまして、御指摘のような債権が焦げついて国民負担がかかる、かようなことは私どもといたしまして、黙視するつもりは毛頭ございません。今日までの委員会を通じて毎回御説明しておりますように、清算勘定にいたしましても、あるいは延払い方式にいたしましても、あるいはまた円クレジット設定等においても、この点については特に慎重な審議をいたしまして、最終決定をいたしまして、ただいま御指摘になりましたような、国民負担をかけて商社がもうかり、国民全般損失をこうむる、損害をこうむるというような事態の起らないように、これは一そう政府として注意して参るつもりでおります。その点から、ただいま御指摘になりましたように、商社に対してその損失負担さす方法はないか、かようなお話でございますが、非常にもうかった場合におきまして、商社政府に対して特別納付金等制度を設けていることは御存じの通りであります。しかし、今回の輸出振興の問題につきましては、事前にかような損害の起らないように、かような処置を十分考慮いたす次第でございますので、ただいま御提案になりましたような点については、今日まだ考えを持っておらない、その点を明確にいたしておきたいと思います。
  6. 平林剛

    平林剛君 私は、今後の事態の推移によっては、一つ意見ではあるが、ただいまのようなことも検討しなければならぬということを要望いたしておきたいと思うのであります。  そこで次の質問は、この法律インドネシア共和国との焦げつき債権処理にとどまるのでありますが、先般政府から提出されました資料を拝見すると、このほかにも焦げつき化のおそれがあるのではないかという疑問を感じますので、政府において、この機会にさようなことがないという御言明があればしていただきたい。実情はどうなのかということを明らかにしていただきたいと思います。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 清算勘定その他につきましては、弊害のあることは御指摘通りでございます。従いまして、私ども最善の努力を払いまして、かような事態の起らないように一そう注意する考えでございます。
  8. 平林剛

    平林剛君 具体的にお尋ねをいたしますが、韓国に対する債権、これはなおいろいろ議論をいたしませんで、結論的に申し上げるのはどうかと思いますが、時間がありませんから短刀直入お尋ねをいたします。  今回インドネシア債権棒引きの波紋から、結局、韓国に対する債権についても、日本がこれを放棄せざるを得ないのではないかという観測が行われているのであります。説明をしないと私の意が十分でないかもしれませんが、今日まで何回も議論をされてきているところでありますから、繰り返しません。そこで韓国に対する今後の輸出政策はどういう配慮のもとに行おうとしているのか。すなわち韓国自体も、インドネシア焦げつき債権棒引きをされて、今度のような処理をされると、韓国自体もまだ賠償問題についても十分な満足を得られない、そこで日本政府輸出をして、これが帳じりにおいてたまっているものを、同じような方法処理しようとする希望が起きてくる。その場合に、やはりインドネシア共和国と同じようなことを繰り返して、また国民負担になってはかないません。従って政府としては、韓国に対する輸出政策については、輸出振興という大事な目標はあっても、慎重を期さなければならない。こういう意味から一体どういう方針をとられようとしているのか、これをお伺いいたしたいのであります。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま日韓間におきましては、清算勘定オープン勘定でやっていることは御承知通りでありますが、過去におきまして、当方で受け取らなければならない金額は四千六百万ドル強でございますが、この金額につきましては、スイング協定がございますので、その超過分についての現金支払いを再三にわたって要求いたしておりますが、今日まで実現しておらない。この点はまことに遺憾でございます。しかし韓国におきましても、この事態を改善するという立場に立ちまして、昭和三十年の二月以来、輸入権制度というものを設けております。韓国から日本に対して輸出したその金額に見返る範囲輸入を許すという制度であります。その結果ただいまの債権は、その後は大体均衡が保たれておる、増加の形はとっておらないという状況でございます。従ってただいま申す四千大百万ドルというのは、三十年までにでき上っているものでございまして、これはスイング協定は二百万ドルということでありますから、その超過分についてはもちろん現金決済を要求し、また交渉する筋のものであります。で問題はひとり韓国ばかりではございません。オープン勘定の場合において受取勘定スイングを超過いたします場合に、現金決済を要求するばかりでなく、やはり相手国から品物を買い取ることも可能かどうか、そういう点をもよく勘案いたしまして、この収支づらにおいて受取勘定が残らないような工夫をしていく。これは一国だけの貿易ではございませんので、各国との勘案各国々とも勘案いたしまして、このオーブン清算勘案の国からまたわが国に対して有用な物資を輸入しているような、かような国に対しまして勘定じりを合せていく、かような方法をとっていく考え方でございます。  同時に、ただいま問題になっておりますところの清算勘定の国は、台湾は比較的良好の結果をたどっております。今日あるいは危険の様相を来たすのではないか、かように心配をしてみなければならない国はエジプトあたりではないかと思います。トルコ、ギリシャ等は今日日本といたしましても、オープン勘定で別に困るような事態ではございません。これだけ申し上げておきます。
  10. 平林剛

    平林剛君 ブラジルとの間におけるオープンアカウント勘定について、最近の措置は二カ月問の延期をするということになったと聞いておりますが、その後の折衝状態はどうなっているか、二カ月の間に新しい協定を結び、それまでの間に協定に達しないときは、政府も何らかの措置をとると聞いておりますが、具体的な折衝状態進展をしているかどうか。  それからもう一つは、この二カ月の間にインドネシア共和国との間に行われたと同じようなかけ込み輸出が行われて、債権処置が長引く結果となったら、再び国民負担になったりすることのない配慮は具体的にはどう行われているか。先ほど来私が申し上げておりますように、輸出をすることは大事なことだが、輸出をすることは国民経済がよくなる方向で努力せねばならぬ。かえって国民負担になるような輸出第十主義はごめんこうむりたい、こういう意味から、この二ヶ月の間にも再びかけ込み輸出が行われて、そのために日本経済全般が損をするということのない配慮が、この法律処理をめぐっても私は当然必要で、政府としても配慮せねばならぬ、こう思うのでありますが、一つ最初質問外務大臣から、次の質問大蔵大臣通産大臣、それぞれ一つお答えを願って、私の質問を終りたいと思うのであります。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 実は今入ってきたので、最初質問というとあれでございますけれども、おそらく経過のことではないかと思います。それでよろしゅうございますか。
  12. 平林剛

    平林剛君 ブラジルとの間のオープンアカウント勘定が二ヵ月間延期されている。政府は二ヵ月の間に何らかの協定に達しなければ、この措置について新たな角度で、もうそれ以上は延ばさないということをきめられておるようであります。まだ、これが報道せられてから期日は短かいので、具体的折衝はあるかないかわかりませんが、私はその具体的進展があらたかどうかという質問をいたしたのであります。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、ブラジルとの間のオープンアカウントの今までの協定は、六月三十日で切れることになっております。従って、五月以来各省関係者ブラジルに渡航いたしまして、そうして向う政府折衝をいたしておるのでありますけれども、進んでおりません。従ってさらに二ヵ月延ばしまして、そうしてその間に新たな協定を作るかどうかという問題をもう一ぺん検討をしてみようということなんでございます。従って今日では二ヵ月たちましたならば、無協定状態になるか、あるいは日本側の要望するような協定になるか、あるいは何か新方式による協定ができるか、その間にきめてしまおう、こういうことでやっております。外務省立場から申しますと、ちょうどブラジル移民五十年祭もやっておりますし、三笠宮殿下おいでになって、非常に向う関係日本に対して友好親善関係にあります。従いまして、まだ話し合いがある余地があると思うのでありまして、それらをあわせて二ヵ月間には何とか最終的結着をつけるという立場で、通産大蔵大臣に御相談を申したわけであります。その結果通産大蔵大臣も二ヵ月のうちに何か今申しましたように、新しい協定ができるか、それは従来のオープンアカウント弊害等もできるだけ押えたものができるか、あるいは無協定状態になるか、まあ二ヵ月以上は交渉を延ばさぬということで折衝をいたしております。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの外務大臣お話で、私から申し上げることはないかと思いますが、ただいま外務大臣お話しになりましたように、二ヵ月の猶予期間を置いた、これは二ヵ月であるというところに特に意味を持たしたつもりであります。普通の延期でございますならば、三ヵ月であるとかいうのがまあ普通とられる措置でございますが、今回はこの期間中にぜひ新しい協定を結ぶと、こういうことをねらいといたしておりますので、特に二ヵ月、まあ二ヵ月もあれば必ず協定を結び得るだろうということでやっておるのでございます。で、先ほどそういうような延長をすることによって、かけ込み輸出等の危険はないかということでございますが、この点ではブラジル政府当方協力をいたしておりまして、輸出についても、向う輸入ですが、一応のワクをきめておりますので、その範囲内でおさまると思います。また当方といたしましても、にがい経験もあるのでございますから、十分事務当局も目を光らしておりますので、さような御心配はないかと思います。
  15. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) この清算勘定におきまして、大きな焦げつきをしてしまって、その損失国民負担さすということは、まことに遺憾なことでありまして、今後そういうことのないために、できるだけもう清算勘定というものはやめたいという方針でありますが、相手国希望によりますれは、必ずしもこれを即刻やめるわけにいかない。しからば、これをどういう方法で取り締っていくかということになりますというと、現在韓国において、三十年二月以来実行いたしておりますごとく、厳重なるバーターをもってやるという、そのつど厳重なるバーターをもってやるということにすれば、これが第一の方法だと思います。第二には、輸入を先行する。まず向うから先に物を取って、その金額に応じて輸出をするというのが第二の方法でございます。  第三の方法とすれば、これは相当ドラスチックになりますけれども、オーバーした場合には、つまり受取勘定がオーバーした場合には、スイング以上オーバーした場合には、この輸出を停止するという方法をとりたいと思います。こういうふうな方法をとりまして、今後は取り締っていきたいと存じております。もう今後はこういうことは再びないと私は信じております。
  16. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は主として高碕通商産業大臣にまずお尋ねをいたします。それから続いて藤山外相が御出席いただきましたので、二、三お尋ねを申し上げたい、こう思うのであります。  まず第一に、高碕通商産業大臣官僚出身でございません。ほんとうの産業人でありますので、産業経済政策考え方、あるいはその構想並びに御発表等も非常に伸び伸びといたしておりまして、私どもといたしましても、日ごろ敬意を表しておるのであります。その高碕通商産業大臣政治家として内閣にお入りになりました立場から、従来のお考え岸内閣通商産業大臣としてのある一つワクの中にお入りになっておるというわけでありますから、その間の調整をどういう工合にお考えになるか、この点を三、三お尋ねをいたしたいと思うのであります。  まず第一に、過日のこの委員会でいろいろ質問が出てお答えになっておりまするが、東南アジアを中心といたしまする貿易振興であります。輸出振興であります。これにつきましては、相手国がそれぞれ購買力が非常に乏しい、ドルの手持ちが非常に少いというので、その経済力の少いのを日本が援助をしながら取引をいたしたい、こういう構想を述べられて、そうしてあるいは円クレジット設定をするとか、あるいはまた東南アジア開発基金設定をするとか、さらには延べ払いを行うとか、いろいろ具体的な手続上のお話を承わったのであります。私が心配いたしまする一番大きな原因は、先ほども平林君から鋭く政府の今までとられましたインドネシア焦げつき債権に対する処理について追及がございましたが、一番おそれることは、そういう工合にして経済力の薄い所へ手かげんをいたしまして、輸出を増進いたしました場合に債権焦げつきになる。そうして結局回り回って国民負担を直接かける、こういうことになっては、いかに雄大な構想でありましても、これにはチェックをしなければならぬということになると思うのであります。てこであなたは、こういう構想を、通商産業大臣として今後強力に実行に移しておいでになると思いまするが、債権の確保ということについて、具体的にどういうようなめどを持っておやりになるか、この点をとくとお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  17. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは、私は根本におきまして考えたいと思いますことは、先ほど今のインドネシア焦げつき勘定が問題になっておりましたごとく、商社はもうけて、それで政府はそれをしりぬぐいをするというふうなことに相なっては、まことに困ると思いまして、東南アジアにおける経済協力にいたしましても、プラント輸出にいたしましても、その責任プラント輸出した商社あるいはメーカー、あるいは経済協力したその日本における責任者、それが全体の責任を負うべきものだと存じまして、そういう方針で進むつもりでございます。で、それにつきましては、政府としてとるべき方針は、そういうふうな経済進出の仕方、あるいはプラントのやり方について、できるだけ政府は便宜をはかろうということにいたしましてとどめたい、こう存ずるわけでございますが、御承知のように東南アジアにおきましては、最近に非常に外貨が不足しておるわけでありますが、それに向うためには、相当の延べ取引をしなければはならぬと考えております。しかし相手国政情が不安であるとか、あるいは政局の変遷ということのために起った損害があれば、それは当然この輸出保険を実行いたしまして、その保険でカバーするということにいたしたいと思いますが、いずれにいたしましても、相手国経済状態とか、相手国における政情の将来とかいうことにつきましては、外務省におきまして十分検討を加えまして、外務大臣のところにおいて御検討の上において実行いたしたいと思います。
  18. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこがやっぱり岸内閣の閣僚としての御答弁でございますが、私は、日本内閣国民一つに分けるわけにいかないのであります、これは一体でありまするから。従って、政府が損をしなければいいんだ、すべては民間経済団体責任を持つんだ、経済団体が損をしてもかまわんのだと、そういうようなことではいけないと思うんです。やはり、政府が損をしないと同時に、民間団体も結局において長い目で損をするということであれば、これは絶対に許されないことであります。で、問題は、国際問題はそれでよろしいんです。高碕さんがおっしゃる通りでわかりますが、相手国経済力のない所へ日本輸出をしていきまする場合に、その売上代金の取り立てというものが、現在は何ら向うに資力がない、ところが、将来にわたっておそらく資力ができるかもしれない。まあ、できるために援助をするわけでしょう。その将来に対してできるであろう資力あるいは資源、そういうものをどういう格好で確認することができるか。その確認の基準というものはどの程度でやっていくか。これはやはり政府として民間を指導せられる立場にありまするから、十分お考えにならなきゃなりません。いくら向うが商品を買いたいと申しましても、にわかに資力もできる見通しもない所へどんどんやるわけにもいかないでしょうし、また、資力ができたとしましても、そのできた資力で急遽方向を転換してそれが欧州貿易の方へ流れてしまったり、アメリカ貿易の方へ流れてしまったりするようなことでは、それはよくない。だから、そういうことをどういうふうにお考えになりますか。相手国の要するに信用の問題でもありまするが、相手国のそういう診断をどうしておやりになるか、また、どういう基準をお持ちになっていられるか、こういう点を伺いたいと思うのであります。
  19. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) それは、相手国における政局がどういう政情であるかということが一番大きな問題であります、第一番に。第二の一番重大な問題は、その国が天然の資源なりそのほかの資源関係におきまして持てる国であるかいなや。それだけの投資をし、それだけの経済協力をして、それがペイするかどうかということは、政府としてもよく検討いたしまするが、まず、そういうふうなことは、その相手国に対して……
  20. 前田久吉

    委員長前田久吉君) お静かに願います。
  21. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 自分が実行をしたいという人たちなり商社なりあるいはそのメーカーは、自分の責任十分検討を加えてやりますから、その点は、私は、むしろ政府がある責任を持ってしまって、そうして無責任な人たちにやらせるよりも、その方がいいと思います。それが自由経済のほんとうの進み方だと存じております。
  22. 栗山良夫

    栗山良夫君 さらに、私はきのうも申したのでありますが、何と申しましても、ただいまドルが世界経済の上に占めておる力というものは偉大なものであります。これは東南アジアも、もちろんそうであります。ところが、われわれが最近耳にいたしますことは、日本の生産技術あるいは日本の生産能力、こういうようなもので、一番近距離である日本が十分にまかない得るような東南アジアの地域に対しまして、ヨーロッパ各国がせり込んでくることは、これはまたちょっと立場が違うのでありまするからよろしいんでございまするが、まあよろしくはないけれども、やむを得ないのでありますが、アメリカがこの東南アジアの市場において日本と盛んに競合をしておるという事実があるのです。競合しておる事実がある。従って、私は、きのうもどなたかから質問がありましたが、さらに敷衍をいたしますると、対米貿易は、輸出額の三倍にわたる輸入超過になっているわけですね。従って、何としてもこれを回復しなければ、互恵平等の通商にはならんわけでありますから、従って、アメリカ政府と強硬なる交渉を行われて、少くとも東南アジア貿易ぐらいは日本にまかせろと、アメリカはあんまりそこまでも出てこないでまかしたらどうだ、こういうことで、日本の生産能力でまかない得るものについてはあんまり競争をしないようにしようではないか、こういうことを通商産業大臣は御熱心におやりになる必要があるんじゃないか——藤山外相どこか行かれちゃったんですか。これは藤山外相は最近アメリカヘおいでになるわけでありますから、外相からもお聞きをしたい。これは、今の日米貿易の打開のために、東南アジア貿易促進のためにも、やっぱり一番ポイントだと私は思う。そしてしかも、経済外交として取り上げる一番重要な点だと思う。これをおやりになる御決意があられるかどうか、これを伺いたいと思います。私は重ねて藤山外相質問いたしませんから、藤山外相おいでになったときには、藤山外相からも一つこの御決意のほどを承わりたいと思うのであります。
  23. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 対米貿易につきましては、これは非常な支払勘定になっているというお話でございますが、昨年は特殊の事情のために非常な支払勘定になって十億ドル以上の貿易勘定になっておりますが、平年といたしまするというと、貿易は約五億ドル輸出をし、そのほかに特需関係においてかれこれ五億近くありまして、だいたい輸出輸入とは特需を入れますればとんとんになっておったわけです。昨年だけは特殊の事情がありまして、本年は同様に特需を入れますと輸出輸入とはとんとんになると、こういうふうな考えで進んでおりますが、しかしながら、アメリカに対しては、今のお説のごとく、できるだけ日本の国のために好意をもってやってもらうように交渉いたしたいと存じております。
  24. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや、そういうふうにおっしゃると、私もさらに意見を述べなければなりませんが、昨年は特別であるとおっしゃいましたけれども特別であってもなくても、少くとも日本がアメリカに対して政治、外交、経済を通じてこれだけ特異な協力をしておるのでありまするから、その意味からいっても東南アジア貿易から手を引いてくれとは私は言いませんが、対等の立場になって競争をするようなことは慎しんでもらわなくちゃいかんのじゃないか。やはりこの決意がなければ、高碕通商産業大臣はどんなに貿易振興を唱えられましても、私どもは実効は上がらんと思う。特に去年は例外であって、その前はそうでなかった、バランスはとれておる、こうおっしゃいましたが、アメリカにおける最近の日本貿易に対する態度はどうでありますか。これは私は本会議の討論でも明かにいたしたいと思っておりますが、互恵通商協定の延長に関する法案は、七月末の国会においては下手をすれば通るおそれがあります。それからさらにペインの修正案は、六月三十日に大統領の署名を終っております。そうしてこのために域外買付を一挙に五〇%に減らそうとしている。その五〇%に減らされる相手国のいちばん大きいものは日本であります。日本が受ける損害は一億五千万ドルに及ぶであろうと言われている。さらにマックという人は、ベニヤ板に対しまして昨年の全米の消費量の六〇%を日本輸出しておりまして、それを特別にわざわざ法律を作って一五%におさえつけてしまう、こういうことを現に国会に出している。また、キング氏は、一番問題になっているマグロのカン詰に対しまして、これはあなたの御専門でありますが、冷凍マグロは今まで関税はなかった。これを一ポンド六セントにする、また、カン詰マグロについては一二・五%の関税税率でありましたものを一挙に三五%、三倍近くに引き上げようとしておる。こういう動きが、今までは関税委員会を動かして、そうして税率を少しずつ上げてくれというようなことを運動しておったのですが、今度は堂々とアメリカの国会に法案を出しておる。これでもって日本の商品のボイコットをやろうとしておる。こういう動きがずっとますます顕著に拡大しておるときに、今高碕さんのおっしゃるような、そういうのんきなことでよろしいですか。この点、私大へん不満足であります。従いまして、ここで——藤山さん早く来られんですか。よく一つども理解のいくように、これは実績をお願いしているわけじゃありませんから、高碕さんの腹ですね、御決意を聞かしていただきたい、こう思うんです。
  25. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは現在日本からアメリカに輸出しております商品の大部分は、アメリカの中小工業者の作っておるものでありまして、アメリカの中小企業者になるというと、これに対してできるだけ阻止運動をしたいというので、これを国会議員に頼み、国会議員がこれを取り上げて、今これを問題にしておりまして、先ほどお話のペインにいたしましても、キングにいたしましても、マックにいたしましても、各地方の要求をもって国会に出しておるわけでございます。アメリカ政府方針とすれば、大体は日本には好意的でありまして、大部分のものは大統領の権限をもってこれを阻止してくれているようでありますが、今後におきましても、対米貿易の伸張を期するためには、国会対策、あるいはパブリック・ヒヤリング等におきまして、日本側といたしましても、十分この主張をいたしたいと存ずるわけなのでございますが、ただ大局的に申しまして、アメリカの大衆は日本の商品がくるということについて喜んでおるわけでありますから、これはボイコットする、ボイコットというような感じは全然ないわけでありまして、一部分の製造業者が国会を通じて騒ぎを大きくしておる、これが現状でございますが、これに対抗するためには適当な方法をとるべきだと思います。
  26. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問通産大臣に今の問題を予算委員会質問したときにも不十分な答弁でしたが、昨年の対米貿易はノーマルな状態ではない、一昨年においてもそうです。特需関係及び船の運賃等の貿易外収入等を加えれば大体バランスがとれておる、これはアメリカ側の言い分ですが、私は、昨年におけるところの輸入は十六億一千万ドル、輸出は五億九千万ドルというような非常にアン・バランスな状態になっており、しかもあなたが認めるように、特需関係とか、あるいは船の運賃、その他の貿易外収入を入れても、これはアン・バランスになると思う。しかも、昨年のはノーマルな状態でないという形において逃げ込むのでなくして一昨年も昨年もそうであるが、われわれの要求しているのは、貿易面におけるところのギブ・アンド・テイクの原則によるところのバランスをとることであります。それがアメリカ側の言い分として、特需やあるいは貿易外収入というものを加えてのバランスというものを向う考えている。そうしてアン・バランスの状態というものを持続させていくことがアメリカの日本に対するところの貿易考え方です。このノーマルでない、アメリカ側の勝手に考えている考え方というものを押しつけられておるところに、ゆがんだ状態の日本貿易の姿がある。高碕さんも御承知通り、こういう形をいつまでも持続していく、こういう形をいつまでも持続するようになれば、貿易に依存するところの日本の不健全な貿易というものが、ゆがんだ形において、日本の産業というものをいびつ、三角にさせていくものだと思うのです。この問題に対する回答はわれわれ不満です。安易な逃げ方をしておると思う。  もう一点は、やはりアメリカ側は日本商品を歓迎しておる。それは安くていいものが入っているから歓迎するのかもしれませんが、その一面において、ボイコットの根底となっているのは、今あなたも言っているように、アメリカの中小企業、零細企業が日本の製品に脅かされること、チーフ・レーバーによるソーシャル・ダンピングに脅かされている。日本の労働賃金が国際水準から見て非常に低い状態、日本のILO条約の批准の問題も、今日問題になっているように、日本の労働運動というものが、政府の権力的抑圧によって不健全な形になっている。こういう形は、ガットに加入し、ILOに加入して、国際社会の一員となっている日本として立ちゆく形ではない。そのことを、国内におけるところの態勢というものを岸内閣は当然作らなければならない。あなたたちのその意向というものは受け取らないで、倉石なんという労働大臣はひどいことを言っている。ILO条約は批准しない、労働組合運動は弾圧する、首切りをやる、低賃金を要求する、低米価、低麦価を農民にしいる。賃金を安くさえすれば貿易は盛んになる、こういう古ぼけた原理に立っている限り世界貿易は進出しない。それは高碕さん百も知っているはずなんです。それにもかかわらず、日本の政治の現実というものは、その逆の反動性を露呈している。これがかえって、アメリカだけじゃない、今後においてはいかなる国々をも脅かして、日本貿易の障害となっていく。その一番大きな障害を国民に知らせないでいる限りにおいては、私は今後の日米関係というものは、アンチ・アメリカの感情は政府責任だと思う。国民は知らないと思う。なぜ日本輸出する倍もの物をアメリカから輸入しながら、日本の物を買ってくれないのか、この現実の姿を目の前にして戦っている。その言いわけとして、ただ特需貿易その他の貿易外収入においてバランスがとれるといっても国民は納得しない。そこにアンチ・アメリカの抵抗というものが出てくると思う。それは私は極左的な人たちがいるのじゃなくて、日本政府が真実を国民に知らせず、真実をアメリカに訴えず、日本貿易における自主性を確立しないところに私は起きるのだと思う。これは重要な問題でありますから、私は高碕さんからもっと明確な回答をこの機会に求めておかなければいけないと思う。
  27. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) お説の通り、この特需関係、これらによってバランスがとれているということは、これは本式じゃありません。どうしても輸出貿易がバランスがとれるということにならなければなりませんが、逐次この特需関係というものはなくなってしまう。これに従って日本輸出を増加し、同時に先方から入るものをチェックするということにいたしてゆきたいという所存でございます。ただいまお話しの、日本の商品が今日アメリカにおいていろいろ問題を起しております一番大きな理由は、御承知通り値段が安過ぎるということが一つの原因であります。それと同時に不当競争するということが一つの原因であります。で、この不当競争を防止すれば値段は当然高くとれるというわけでありますから、政府もこの意味をもちまして、今度は貿易振興策等につきましても不当競争を防止するというようなことについて法律も作り、努力いたしたいと思っております。
  28. 栗山良夫

    栗山良夫君 私はまだどうも十分な御決意のほどを伺ったというわけにいきませんが、これは強要するわけに参りませんから、まあ理解はしておきます。ただ問題は、藤山外相がきのう、アメリカへ自分は行く、行くのだが、具体的な問題で行くのではなく、日米親善関係の基本線を調整に行くのだ、こういうような意味のことをおっしゃいました。私は、選挙後の新らしい岸内閣ができたからといって、アメリカまで何も認証式に行く必要はないと思う。藤山外相岸内閣を代表して認証式になぜ行く必要がありますか。そういうことでなくて、もしおいでになるならば、今一番日米関係で重要な問題は経済問題、貿易問題なんです。ですからあなたも一緒に行かれて、藤山さんと高碕さんと並んで、いずれも産業人です、いずれも大臣なんです、これが並んで行って、今の日米貿易に対する日本の強い要望というものを、各方面に知人を持っておいでになるわけでありますから、切々と訴えて、そうして、ほんとうに日本輸出振興の成り立つようにおやりになる御決意はございませんか。
  29. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私が渡米するとかせぬとかいう問題は別といたしまして、いずれにいたしましても、私は日本におりましても、これを打開したいという熱意は十分持っております。十分努力いたしたいと存じます。
  30. 栗山良夫

    栗山良夫君 それからその次に、これは方向を変えますが、今度は中共問題で一言お尋ねをいたしたいと思います。あなたは前々からアジア経済共同体というものを作りたいという御熱心な構想を持っておいでになることは私も承知をいたしております。特に過日衆議院でも御発言があったように承わっておりますが、昭和三十年でありますか、アジア・アフリカ会議がありましたときに、あなたは日本の派遣国の代表になって向うおいでになって、そうしていろいろと構想をお述べになっておる、その中で私どもが期待しておる幾つかの問題がございますが、もう一度この席上であなたのお考えになっておりまするアジア経済共同体というのですか、それの構想をお聞かせをいただきたい。
  31. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 最近ヨーロッパでやっております欧州の共同市場というものがありますが、これは好むと好まざるとにかかわらず、これはいろいろ議論がありましょうが実行されることと存じております。またアメリカにおいてもこれは実行されると思います。そういった場合に、やっぱりアジアの連中は寄ってまた同様なものを作るべき運命にくるものだと存じております。特に私は中国との関係におきましては、将来両国の戦争を防止するということのためにドイツとフランスがあの製鉄事を共同体にしてしまって、両国ともこの鉄に関する主権をなげうってしまったという、いわゆるシューマン・プランがあるわけでありますから、こういうものが両国の間に将来結ばれることを私は希望する次第であります。
  32. 栗山良夫

    栗山良夫君 今のお考えは、あなたは前にたしか直接中共の責任者とも会われて、そうして大いに肝胆相照らされたということを聞いたことがあります。ですから信念として依然としてお変りになっていないという点について私は非常な敬意を表したいと思います。思いますが、しからばここ数日来われわれは中共貿易の打開につきましていろいろ政府の所信をただしておりますが、岸総理を初めとにかく今行き詰まっておる中共貿易をこちらから積極的に打開をしようという意味の動きを読み取ることができませんでした。大へん遺憾でありますができなかったのであります。しかし今のようなお考えをお持ちになれば、おのずから中共から日本が敵視をされることはないと思うんです。中共は岸内閣が敵視しているからいかぬと、こう言っておる。しかし今のようなお考えを基本にして発展させられるならば中共の誤解を解くことを私はできると思います。そういう意味においてあなたは岸内閣の閣僚ではありまするが、今岸総理大臣がとっておられます対中共政策というものは、どこか一つ抜けておるところがありやしないか、そういう工合にお考えになりませんか。今のままでやはりよろしい、シューマン共同体まで持ち出してぜひともアジアにもやりたい、このアジア経済共同体の中には行く行くは中共も入れなければならぬ、こういう構想をお持ちになっておるあなたが、今岸首相がやっておられるところのああいうやり方で果していいのかどうか、必ずや御批判を私はなさっておると思う。これはいろいろ差しさわりのあることでございますから、高碕さん個人の御意見でけっこうでございます。お開かせをいただきたいと思います。
  33. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私はアジアにおける将来の方針について先ほど申したのでありますが、これを実行に移しますためには、現在山岸内閣がとっておりますいわゆる静観をやっていくということは正しいことでありまして、岸内閣方針に従っていきたいと存じます。
  34. 栗山良夫

    栗山良夫君 そこのところ何かちょっと話が飛躍しませんか。やはりどうも、私日本語が大体よくわかるつもりでおりますが、よく理解できないんです。少し話が飛躍しておるじゃありませんか。それならば重ねて伺いますが、高崎さんとしては、この行き詰まっている日中貿易の打開は、貿易の所管大臣といたしまして、どういう工合にやったらいいのだと、ただ黙っておるのでは、ノー・コメントだけでは、これは問題は前進しないと思うのですが、どうしたら一体いいとお思いになりますか。これを一つ腹を割ってお聞かせ願いたい。
  35. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私は今日の、現在の情勢におきまして、私の考えをここで申し述べますことは、かえって事態を悪くすると思いますので、どうかこの点はごかんべん願いたいと思います。
  36. 栗山良夫

    栗山良夫君 それで私は話が飛躍した意味がわかりました。あなたがほんとうに言いたいと思って腹の中に持っておいでになることは今ちょっと出せないのだと、ほんとうに考えておることは、言いたいのだけれども出せないのだというお気持がよくわかります。従いましてこの問題につきましては、これ以上触れませんが、どうか一つ、中共貿易は今日のような事態にしておいたのでは、これは両国の善隣友好の関係からも好ましくありませんし、何とか手を打たなければならぬと思いまするので、とくと一つ御努力を願いたいと思います。  それからさらに中共問題でありますが、最近私どもが聞くところによりますと、イギリスはココムの制限を撤廃いたしまして、全面的に共産圏との貿易をやりたいというので非常な激しい動きをしておるということを聞いております。これに対する状況を一つお知らせいただきたい。  それから第二には、 フランスのドゴール首相が中共貿易をやりたいと、フランスもやはり経済的には非常に今困っております。アルジェリアの問題をあれほど熱心にやっておるのでもわかりますが、困っております。従って、いっそのことイギリスにならって中共を承認したらどうか、こういう動きがあるということも聞いておるのであります。そればかりではなくして、アメリカの国内においても——アメリカの国内というとばく然としておりますが、アメリカの中央政府の中においてすら、中共政策はこの際考え直して転換しなければいかぬ、こういう動きがあるということを私どもは聞いておる。これは直接向う責任者に会って聞いたわけではありません。従ってよくわかりませんので、政府機関におられるあなたでありまするから、的確なる情報をお持ちになっておると思いますから、これを一つ逐次詳細にお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  37. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 私どもも新聞で見るくらいの程度でありまして、それ以上はあまり詳しいことは存じませんが、とにかくココムが緩和されれば、これは各国ともこれに対して非常な攻勢に出てくるでしょう。またこれはひとりフランス、イギリスだけでなくて、アメリカも出るでしょう。で、一方におきましてもつとおそるべき問題は、中共の、今日の状態におきましては、われわれの市場であると考えておる東南アジアに対する進出は、これまた予想外のものがあるであろうと思いますから、そういう意味からおきまして一日も早く中共と日本との貿易関係が従前に復することを熱望するわけでございます。
  38. 栗山良夫

    栗山良夫君 ただいま私が三つの国の動きを指摘いたしましたが、大体のそういう動きがあるということは間違いないのじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  39. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) これは私は想像でございますが、当然あり得ると考えております。
  40. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしまするというと、結局各国とも貿易を通じて自国の経済拡張のためには、相当な転換をやっても、従来の主張にこだわらないで、若干曲げても踏み切っていかなければならぬ、こういう決意に燃えているときに、日本だけがだんだん後退していくようなことをやっておって、日本経済の発展ということは望まれるでありましょうか。この点に私非常に今疑問を持っているのです。松尾通商局長もお見えでありますが、きょうは大へん立て込んだ時間でお願いをしておりますから、いずれまた機会をあらためまして、局長にも詳しくお聞きをしたいと思いますが、とにかく少し日本人の頭はこのごろ変になったのかどうかしりませんが、世界の趨勢に立ちおくれておる、こういう工合考えられてならないのでありますが、アジア経済共同体の大きな構想等をお持ちになっている高碕通商産業大臣としては変に思われないでしょうか。この点を、もう大へんくどいようでありますけれども一言お聞きをしておきたいと思います。
  41. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 今御質問通りの状態にあるということは私どもよく存じておるわけでございまして、岸総理の言う静観というものは、必ずしもじっとしておるのではなくて、鳴かぬホタルが身をこがす、口には出さぬけれども身をこがすだけの心配はしておるのであります。(笑声)どうぞ御了承願いたいと思います。
  42. 栗山良夫

    栗山良夫君 幾らホタルが身をこがしても昼では見えないのですからね、夜でなければ。(笑声)それはこがしても、相手はこがれて来ませんよ。従って私は昼こがしてもだめですということを申しておる。夜こがしてもらいたい。掛内閣は昼こがしているからだめなんです。そんなことでは絶対に実効があがらないからだめです。こんなことを申し上げておるのですが、まあ高碕さん御自身のお考えというものは大体わかりました。  そこで、最近聞くところによりますと、政府が在外公館の有力大使を東京へ召還をせられまして、そして政治、外交、貿易等の重要な案件について情報を集め、そしていろいろと構想を練られて新しいスタートを切るための会議をお持ちになるということを聞いておりまするが、これには高碕大臣が御参加になるわけでありますか。
  43. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 当然参加いたしまして、私は非常にこれは希望をもって迎えておるわけなんであります。
  44. 栗山良夫

    栗山良夫君 その会議のときにはどうか一つ、各大使はやはり岸総理大臣なり岸内閣のやはり鼻色をうかがっていろいろと報告をせられるのじゃないかと思って私は心配しております。従、ってどうかありのままを率直に報告をさせ、そしてそれに基いて判断を誤まらないように、——あなたが誤まっておいでになるという意味ではありませんよ、大体お話を聞いてわかりましたからいいのですが、率直に一つお聞きをいただいて、そして、願わくは、私どもが今主張をしておりますような、事、貿易問題に関しては、しておりますようなことに、実効のあげられるように一つぜひとも御努力をお願いいたしたい、これを強く要望いたします。  それから藤山外相おいでになりませんから、ちょっとしばらく待ちたいと思います。
  45. 八木幸吉

    ○八木幸吉君 最近の新聞に現われました二、三の輸出振興関係のある問題について、外務大臣がおられませんから、通産大臣にお伺いいたします。  第一点は、アメリカのペイン上院議員は、互恵通商法の延長法案の審議のときに修正案を出して、外国製の毛織物に対する品種別の関税引き上げ、並びに外国製の綿製品に対する輸入関税の引き上げ等の措置考えておる。これについて在米大使館は割合に楽観しておられるようでありますけれども、本人の方は相当これが有望であるというように見ておる。これについて通商産業省の方で情報がありましたら伺いたい。対策がありましたならばこれを伺いたい。これが第一点。  それから第二点は、東南アジア貿易の問題でありますけれども、渡航や滞在に相当の制限があって、支店の設置や、人員の増加という問題について、非常に活動が制限されておる。それがために輸出の伸張についてかなり障害になっておるということを伺っておりますが、これについてどういうふうに打開しようとお考えになっておるか、それが第二点。  それから第三点は、アラブ連合に対して日本は六十億円あまりの援助をするというふうなことを向うの工業大臣が新聞紙上に発表しておるということが新聞に出ておるのですけれども、こういったようなお話があるかどうか。  それから最後に、東京の商工会議所が主催になって、来年インド、東南アジア等の会議所会頭の会議を東京で開いて、アジアのいわゆる経済協力一つの側面攻撃をしようというふうに伝えられておるのです。これらの四つの点についておわかりになっておる限りお伺いしたい。
  46. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君) 順序がちょっとかわりますけれども、アラブ連合国との間に六十億円の援助というふうなことは、これは全く間違いでございます。調査団を出しまして、どういう仕事が適するかということを見ますというと、大体六十億円くらいのブラント輸出なり経済協力をすればいいと、こういうふうないわゆる数字は出ておりまして、今後どういう条件であるということ等はまだ何ら折衝いたしておりません。  それから東南アジア貿易振興のために、もっと人を長期に滞在せしめるということにつきましては、これは外務省を通じて十分努力いたしておるわけでございます。  それからペイン法のことにつきましては、ちょうど通商局長が参っておりますから、通商局長からお話をいたします。
  47. 木内四郎

    木内四郎君 この際、両案に対しまして質疑を打ち切りまして、直ちに討論、採決に入られんことの動議提出いたします。(「賛成」「反対」と呼ぶ者あり)
  48. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 今の動議議題といたします。  本動議に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  49. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 多数と認めます。よって両案に対する質疑はこれにて終局し、直ちに討論、採決に入ります。  これより経済基盤強化のための資金及び特別法人基金に関する法律案について討論を行います。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  50. 平林剛

    平林剛君 討論に入る前に一言遺憾の意を表します。特別国会における重要法案の審議は、質疑打ち切り動議をもって多数をもって慎重審議の建前をくずしたことにつきまして、私は討論に入るに先立ち遺憾の意を表してお雪ます。政府与党は常に国会においては少数意見を尊重することが民主主義の大事な原則であるということを認めながら、行動におきましては絶えずこれを無視し、この結果、国民経済に重要な法律である本法案の取扱いにつきましても、まだ栗山委員外務大臣に対する質疑が残っているのに打ち切られてしまう。こういう結果、もし国民経済に重大な損害を与える結果になるといたしましたならば、動議提出者もその責任の一部を負わなければならない。私はこのことを一言警告いたしておきます。  日本社会党を代表して、経済基盤強化のための資金及び特別法人基金に関する法律案に対し反対の意思を表明するとともに、その理由を明らかにいたしておきたいと思うのであります。  反対理由の第一は、政府構想による経済基盤強化資金としてのたな上げ措置は、財政の原則から見て不健全であり、財政法から見ても適当な措置でないということであります。健全財政の第一条件は収支権衡の財政であることが要請されるものでありまして、財政法第十二条は、「各会計年度における経費は、その年度の歳入を以て、これを支弁しなければならない。」と規定をいたしておるのであります。従って、国の需要を満たすための支払いの財源となるべき収入は、各会計年度に必要とする経費の範囲内にとどめるべきでありまして、各年度に必要とする経費以上に過大の税金をとり、その年の財源に充てることは、財政法第十二条の会計年度独立の原則に対する逸脱行為であり、重大な疑問があるとの見解に立つものであります。政府には、今回の経済基盤強化資金は、財政法第四十四条の規定に基く資金で、資金とはもともと一年度の間に消費し尽さない予定をもって保有され、年度にわたって費消または運用される性格のものであるから、この制度は財政法上認められたもので問題はないと解釈しておりますが、資金という以上、回転して運用しながら、そこに経済的財政的効果を上げるものと解すべきで、景気を刺激するから使わない。使えないからたな上げをする。この経済基盤強化資金なるものは、財政法第四十四条からも疑問があると思うのであります。  いずれにいたしましても、このような措置は、政府が昨年国際経済の見通しと、日本経済実情に対する判断を誤まり、経済拡大をあおり立てて、過剰投資と、輸入増による国際収支の悪化を来たした結果、財政法第六条の解釈によると、余裕財源は当然その一部を国債の償還に充て、残ったものは予算に組み入れるべきものを、佐藤大蔵大臣の言葉を借りると、いろいろ工夫した結果の苦肉の策であると私は思うのでありまます。しかし、こういう前例を一たび開きますと、五百億円でも、一千億でも、今後、同様な措置をとることができるという理屈になりまして、その結果、徴税の権限を持つ政府が、いろいろと名目をつけて、国民の納税負担、担税力の限界をこえる歳入をはかり、権衡予算の原則と、経済全般の混乱を生ぜしむるおそれを感ずるのであります。  反対理由の第二は、この法律の性格がきわめてあいまいでありまして、政府の説明は私ども納得することができないからであります。政府の提案理由と、法律案第一条の目的によりますと「わが国の経済の基盤の強化と健全な発展に資する」と掲げられておりますが、この言葉はまことにあいまいもことしております。昭和三十一年度の一般会計における決算上の剰余金から、国債償還等の法定財源を充当する額を控除した四百三十六億三千万円を、世評はいわゆる余裕財源のたな上げとして論評を加え、また、一部では景気調節資金と呼んで、定説がないのであります。この法律による資金及び基金の総額四百三十六億は、言うまでもなく国民の税金でありまして、いかに世界に類例のない異常性に基く剰余金といたしましても、その処理に当っては、国民全般にもっと理解のできる明確さが必要であったと思うのであります。岸総理の、ホトトギスの鳴き声は聞く人の立場によって異なるという名文句と同じように、経済基盤強化資金の性格の分析は、昨年の国際収支悪化に際して、あわてて経済緊急対策なるものをとりまとめ、景気を刺激するような措置を極力避けるために、剰余金のたな上げ措置を、一たびは構想し、実施に移そうとながら、過半の総選挙を控えて、自由民主党の基盤を確保するための五つの特別法人基金二百十五億円を、新たに分割構想したところから始っておると思うのであります。経済基盤強化資金というものが、財政政策における、いわゆる景気調整資金または財政調整資金とは、一体、性格を異にするものであるかどうか疑問であります。強化資金の使い方は、道路整備、港湾整備、科学技術振興、異常災害復旧、産業投資特別会計への繰り入れに充当することとなってはおりますが、これらの経費は、一般会計または特別会計にも計上されており崩して、見方を変えれば、この資金は、道路整備等の予備費的性格を持つものとの解釈もできます。また強化資金の取りくずしは、経済情勢がどのように変化した場合に一体使うものであるか、岸内閣の閣僚にはわかっておりましても、国民の代表たる私ども議員、これは野党に限らず、与党の議員、国民の代表としての与党の議員も、いつ取りくずすのかわからない。国民の代表がわからない。こういう性格を持つものであります。また、いわゆる余裕財源のたな上げ、これは景気に刺激を与えないため実施をする、こういう提案説明がありましたが、この資金は、資金運用部に預託をされて運用されるものでありますから、結局、財政投融資を通じて景気に刺激を与えることができますし、財源をたな上げしておくことにより、財政の膨脹を防ぎ、民間投資や民間消費を押えることをねらっておったにもかかわらず、逆に民間の思惑の対象となっていたことにも矛盾があったのであります。これらきわめて不可解な法律といわなければなりません。これが私どもの反対理由の第二であります。  反対の第三は、これは、最も重大な反対の理由でありまして、経済基盤強化のための資金及び特別法人基金に関する法律案が、初め構想され、提案をされた当時の経済情勢と、今日とでは、その情勢が重大な変化を来たしておるにもかかわらず、これをそのまま提案をし、新情勢に対処する有効適切な提案でないということであります。なるほど、たとえ苦肉の策でありましても、昨年九月の経済情勢のもとにおきましては、政府が、将来の経済情勢とにらみ合せて苦心をされたことは情状を酌量いたすにいたしましても、当面の経済情勢と、昨年、そうして本年度の予算編成をした当時の経済見通しと変化していない、こういう見解をとり、そのまま提案をする無神経と無策とは、私ども断じて認めることはできないのであります。卒直にいいまして、この法律の基調となったのは、昨年九月における国際収支の悪化に対処してのたな上げ構想でありまして、私どもは、余裕財源は、減税や社会保障費に使うと、消費インフレを起し、輸入をふやし、国際収支改善の妨げになるという政府の論拠が当らないことを指摘して参りましたが、今やその国際収支の改善も、一応大蔵省の見解でも年間三億ドルの黒字はだいじょうぶと言われるに至り、法律案を提案をした根拠は、すでに解消しておると思うのであります。そうして、当面する日本経済実情は、今日まで論争を通じて明らかにして参りました通り、とうに景気もおさまり、かえって、設備過剰と有効需要の低下によりまして、過剰生産的な不況の時代に入りつつあります。しかも今後の経済の基調をはかるために樹立した政府の経済目標、輸出三十一億五千万ドルを達成する見通しは、国際経済の停滞ないしは不況、あるいは政府みずからが中国貿易を杜絶したことによりまして、このままでは縮小均衡あるいは不況の長期深刻化の様相を呈し始めておるのでありますから、この際、政府の引き締め政策の犠牲となって、倒産と生活苦、失業に悩む国民層に対して、新たな経済政策の転換により国内需要の増加をはかることが急務となっているのではないか。政府の言うがごとく、もう少し経済の推移をながめ、八方ふさがりの国際貿易の伸展をはかる——楽観といっては当らないかもしれませんが、放任静観政策では、本格的不況の進行の前にかえって国民経済は混乱をし、疲弊をしてしまうのではないか、この際、この経済基盤強化資金なるものを取りくずし、他の公共投資、一般財政支出、国民消費の適度の増加のための経済政策を実行に移すべきである。私どもこの日本経済実情を無視して超然たる法律案を再び提案をしていることに対して賛成し得ない理由がここにあるのであります。  私どものこの反対の理由は、今日、政府の頑迷な態度と痛烈な国民の声を代弁する野党の立論に対して、立場上、与党の議員も賛成し得ない、多数で法律案を通過させようといたしましても、いずれ近い将来、すなわちこの特別国会を終るとともに、たちまち豹変して、来たるべき臨時国会には、今日私どもが主張するような経済情勢の分析と認識に立って、経済基盤強化資金を取りくずし、暑気振興、不況対策のための財政措置をとらざるを得ないということは、おそらく腹の中では認めておられると思うのであります。政府みずからも、婉曲ではありますが、日本経済は底入れの情勢であるから、国際収支のワク内で経済政策を進めたいと言い、いかなる事態になっても景気刺激策をとらないわけではないと言いわけをし、情勢の推移に応じて適切な手を打つことをちゅうちょするものではないと答えたりいたしまして、すでに補正予算の必要性は暗々に漏らしているのであります。従ってこの際政府の誤まれる方針を正す意味で私どもの主張に賛成をし、本案を否決するか、継続審査に移し、国民に対する責務と要望にこたえられるように私は希望いたすものであります。  これをもちまして私の反対討論を終ります。(拍手)
  51. 山本米治

    ○山本米治君 私は、自由民主党を代表いたしまして本案に賛成するものであります。いずれその詳細は、本会議の討論においてやりますから、これに譲ることといたしまして、ここでは簡単に申し述べたいと思います。  まず第一に本案は、すでに国会を通過いたしましたところの昭和三十三年度予算と裏腹をなすものでありまして、国会の意思の統一性ということから見ましても、当然この法案に賛成すべきものと考えておるのであります。  それから日本経済は昨年以来調整過程に入っておりますが、その推移は、われわれの見るところをもってすれば、大体順調に進んでおると思うのであります。もとより経済界の一部に相当深刻な様相も現われておりまするけれども、われわれは、日本の経済の根本条件から見まして、この種の不況対策というものは、どこまでも国際収支に悪影響を及ぼさない、こういうのが限界でなければならないと思うのであります。  もとより最近国際収支は、若干好転してはおりまするけれども、今ここで社会党の諸君の言われるような膨大な不況対策的補正予算その他の不況対策をやるということは、せっかくここまで持ってきた日本経済を再びもとのもくあみに返らせるおそれがないでもないのであります。それでありますから、われわれは、この際といたしましては、まずこの法案を通し、そうして今後情勢の推移に応じ、適宜適切な措置をとり得るようにすることが妥当だと考えるのでありまして、はなはだ簡単ながらこれをもって賛成の討論といたします。(拍手)
  52. 岩間正男

    ○岩間正男君 討論に入るに先立ちまして、委員長並びに同僚委員諸君の了解を得まして、少数意見を尊重していただきまして討論を展開することを非常に感謝する次第であります。岸総理の所信表明の中にも、二大政党の中にあっても少数意見は尊重されなければならないということが言われておるのでありますが、こういうような点について委員長が善処されたことを非常に喜ぶものであります。  私は日本共産党を代表して、ただいま議題となっております法案に反対するものであります。  反対の第一の理由は、本法案は現下のわが国の経済的見通しを誤った一方的独断的措置であるからであります。政府は本年度予算編成当時から今日までの間に、経済的見通しを二転させ、三転させておるのであります。しかもなお、その点での政府部内の意思はいまだに統一されていない。この点での閣僚間の意見の食い違いは急速に調整されなければならないはずなのに、国会開会中、国民の面前でこれを行うことを避け、ことさらにこれを閉会後に引き延ばそうとしておるのであります。なぜこのような醜態をさらけ出さなければならなかったか、その根本的原因は何か、それは言うまでもなく、今日アメリカを中心とする資本主義社会を襲っている世界経済恐慌の波であります。アメリカの鉄鋼の操業率は五〇%台に落ち、失業者は七百万に達しております。今日ではもはやアメリカ経済が容易に安定できるなどという見通しを述べるアメリカ人は一人もいないのであります。昨五七年初め、世界の貿易は前五六年よりも一四%もふえておるのに、最近では昨年より六%も減っておるのが実情であります。この世界不況の波は当然日本にも波及し、この一月、政府は三十一億五千万ドルの輸出見通しを立てたが、今ではそれが夢にすぎないものになっております。このように今日の不況は、世界恐慌をして不可避的なものたらしめ、その結果はわが国の経済と国民生活の上に重くのしかかってくるものでありますから、この際、空しい希望的観測や小手先のごまかしをやめ、それに対する根本的な対策を立てなければならない性質のものであります。現に従来、資本主義社会、ことにアメリカの恐慌のしわを寄せられ、その都度国民生活の危機を招き、社会不安を激成してきた後進諸国、ことにAA諸国は、アメリカや資本主義諸国への一辺倒的政策をやめ、平和共存の方向へ向けて、自主独立の広域経済政策をとろうとしております。ところが岸内閣は、これとは逆に反共軍事同盟の方向で中国を敵視し、アメリカヘの依存をより深めながら、アジア、アラブ諸国への経済的、政治的進出をはかろうとすむものであります。この結果、岸内閣の政策は、全く大資本の利益のみを保護するやり方で恐慌からの脱出をはかるものであり、その結果は、すべて国民大衆に転嫁するものであります。われわれはこのような法案に絶対賛成することはできないのであります。  反対理由の第二は、以上述べたように岸内閣の経済政策はわれわれをアジア、アラブと世界から孤立させ、必ず失敗するだろうということであります。この法案の最大の眼目は、さきに述べたように独占資本の強化拡充、東南アジア開発資金を中心とするところのいわゆる輸出振興であります。さらに労働協会をでっち上げ、国民の抵抗に対してクッションを作ることであります。いずれもアメリカを中心とする反共的軍事同盟を決して無関係ではありません。日中貿易に対して従来とってきた岸政府の数々の不信行為、大多数国民の多年の希望を踏みにじって第四次貿易協定や鉄鋼協定を廃棄させ、その逃げ道を東南アジアの開発と貿易振興に求めているのであります。しかし中国はもはや決して昔の中国ではない。新中国は今や世界、ことにアジア、アラブの中に抜きがたい指導的地位を占めているのである。まずこれを対外貿易の発展の上から眺めてみるならば、その一九五七年の貿易額は五年前の五二年に比し六〇%の増加を示し、その取引相手国の数も五二年の五十五カ国から八十二カ国に達している現状であります。年間の貿易額約四十四億ドル、うちA・A諸国との取引は五年前に比して六〇%増大し、西欧との取引は六倍に及んでいるのであります。こうした事実は、何よりも新中国が経済面でもアジアの原動力になりつつあることの何よりの証左であります。従ってソビエトやベトナム民主共和国、朝鮮民主主義人民共和国、モンゴル人民共和国等は言うまでもないこと、アジア、アラブの資本主義諸国でも、インド、セイロン、インドネシア、カンボジア、エジプト、シリア、アフガニスタン、ビルマ等の諸国は、進んで政府協定による貿易を実現し、その経済的結びつきは日に日にその深さ々加えつつある現状であります。この原因はアジア、アラブの民族的立ち上りによる自主独立の経済外交にあることはもちろん、その根底には平和五原則に根ざした平等互恵の貿易政策が広くA・A諸国の支持と共感を受けている結果であります。こうした中で、中国敵視の政策を続けて、日中貿易をサボっている岸内閣の政策は、A・A諸国から歓迎されないのは当然であります。政府貿易の不振と日中貿易の中絶からくるしわを東南アジアに向け、貿易振興に名をかりて、五十億の開発資金を準備しても、その使用の時期、方途については具体的見通しすら立たないのは当然であります。  本法案に対する私の第三の反対理由は、このような独占資本擁護の政策が、国民の窮乏をよそにして、しかも国民の大きな犠牲によって行われていることであります。国民は今日すでに恐慌の負担にたえかねています。政府の最近の発表、たとえば経企庁経済月報七月号によりますと、農村は蔬菜、酪農製品、繭など、軒並みの暴落で苦しんでいます。また都市では企業整備は昨年の約三倍、毎月六百件で、整理人員は月々二万を超えています。保険の給付は新たに受ける者は昨年の五〇%もふえている現状です。この状況の上に、さらに世界恐慌の重みがのしかかってくるのであります。今日神武景気のほとぼりがなおあるとしたら、政府は一刻も早く国民生活を恐慌から守るために、これに耐えていけるゆとりをつけさせねばならないのであります。しかるに政府国民生活にゆとりをつけ、襲いくる恐慌に耐えていけるようにするかわりに、逆にこのような反人民的な法案を強行しようとしています。これこそは、これから冬を迎えようとする国民大衆からはいとど薄着の着物の中からそのあわせをはぎ取り、反対に大資本家に対しては厚着の衣服にさらに綿入れを着せようとするような政策であります。今年度予算によって国民は、米価や繭価に対する農民の要求は無視され、公正なるべき米価審議会の答申は無視され、さらに健康保険の診療所の負担がふえ、保育所の措置基準は悪化し、生活保護や失業対策費は縮小され、労働者は実質賃金の引き下げ、労働強化、労働災害の増加がもたらされているのであります。自民党岸政府は減税を公約しながら、その反面地方税増強も、その基準としての地方財政の赤字も、ほおかぶりしている現状であります。このようなきわめて露骨なる独占資本擁護の本法案に反対し、日本共産党は、政府がすみやかに中央、地方を含めての減税を行い、社会保障費を大幅にふやし、来たるべき冬、つまり世界恐慌の深化に備えて、国民生活に少しでもゆとりをつけるために、最善の努力を尽すことを要求するものであります。
  53. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、これにて討論は終局したものと認めて、これより採決に入ります。  経済基盤強化のための資金及び特別法人基金に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  54. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 多数であります。よって本案は可決すべきものと決定いたしました。   —————————————
  55. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、外国為外資金特別会計法の一部を改正する法律案について、討論を行います。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。
  56. 大矢正

    大矢正君 私は社会党を代表して、ただいま議題となっております外国為林資金特別会計法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行おうとするものであります。  ところでこの法律案が提案をされた理由のものは、日本インドネシア共和国との間の平和条約、さらに両国の賠償協定、そうして最終的には請求権の処理に関する議定書、この三つの内容に基きまして、本法律案が提案されたのでありますが、前もってお断わりしておきたいことは、私は決してインドネシアとの間における平和条約や賠償協定に反対の理由をもって、本法案に反対をするのではないということであります。  念のために申してみますれば、このような措置によって、焦げつき債権処理しようとする政府考え方、その意図に、いかにしても割り切ることのできない点がございますので、反対を申し上げている次第でございます。ただ請求権の処理に関する議定書につきましては、私どもも多少疑義のあるところでございます。なぜかと申しまするならば、両国の平和条約及び賠償協定を含めた話し合いのさなかにおいては、インドネシア共和国側の意向としても、必ずしも債権棒引きするという原則に従って、平和条約や賠償協定を結びたいという意図があったとはうかがうことができないのであります。従ってこういう立場からいきますれば、焦げつき債権焦げつき債権として、貿易上の問題としてこれを処理することの方が妥当でなかったかという意見を持っておりますが、すでに国会において、本件については承認をされていることでありますので、特段反対を申し上げるつもりはございませんが、ただ政府処置と交渉の過程においては、疑義があるものと私は言わなければならないのであります。  そこで具体的に反対の理由を述べたいのでございますけれども、御承知のごとく、この法律案は、わずか数条に過ぎない短い文章でございますので、法律案それ自身の具体的な条文についての疑義はありませんけれども、これがねらいとするところに非常に大きな問題点が隠されていると思います。たとえば政府が、平和条約やそれから賠償協定に基いて、政治的に両国において取りきめられたその内容を、単に特別会計の、しかも外為会計資金の中だけで処理をしようとするこの意図については、おそらく何らか特段の、いわば思惑と、それから意図があってなされているのではないかと感じ取られるのであります。たとえば岸総理は、みずからの手によって、過去においてみずからが犯したあやまちの処理を、先般は行なったのでございますが、その行い方の中で、おそらく戦争に対する国民の痛手を、再びここで呼び戻さしてはいけないという、こういう気持から、外為の資金の中だけで一億七千万ドルという膨大なものを落すことによって、国民はみずからには何ら負担がないような錯覚を持たさせるような、こういう特別の意図があったということは私は疑う余地のない問題だと思うのであります。もしそうでないとするならば、これは一般会計の中において正式に処理をされるべき問題であると私は思うのでございますけれども、それを特別会計の中で処理をされるということは、明らかに国民に知らしたくないという、こういう意図からなされたものであると考えます。  また昨日の平林委員質問に対して、会計の資金運営上では何ら影響がないというような御発言が為替局長から行われておったようでございますけれども、私は現実にこの資金の運営の中においては債券の発行なりあるいはまた資金の受け入れ、また対外的には世銀の借款等、総体的にはこの一億七千万ドルの焦げつきによって多くの問題が運営上出てきておると考えております。従って為替局長が私どもをごまかすような、こういう資金運営上に何ら影響がなかったという言い方についても納得することができません。特にきのうのお答えにもありましたように、一人当り六百三十八円という膨大な負担をしなければならない法律でありまするからして、政府はその取扱いについて国民の納得のいくようにすなおに、私は政府のやった今回の措置が非合法だとは申しませんけれども、より国民に理解をされる形で、より国民に戦争の賠償という問題はかくあるものだという立場から、一般会計の中でなすべきであったと思うのでありますが、これが行われていないということはまことに残念であり、私は以上のような理由に基いて、この処理につきまして絶対反対をいたしたいと思う次第であります。  以上簡単でございますが、反対理由といたします。(拍手)
  57. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 他に御発言もなければ、これにて討論を終結したものと認め、これより採決に入ります。  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  58. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 多数と認めます。よって本案は可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案に対する諸般の手続等は、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議がございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 御異議がないと認めます。よってさよう決定いたしました。   —————————————
  60. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、請願審議入ります。審査の便宜上、初めに専門員より簡単に内容の説明を聴取いたします。  速記を中止し審議をお願いしたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 前田久吉

    委員長前田久吉君) では、さよう決定いたします。   〔速記中止〕
  62. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記をつけて下さい。  請願二十一号、たばこ小売手数料引き上げに関する請願、採択。請願八十七号、税法上の用語不具者改正に関する請願、採択。百六号映画の入場税減免に関する請願、採択。請願百七十五号、講和条約発効前の占領軍による被害者補償処遇改善請願、採択。請願百七十九号宮城県多賀城町所在の海軍工廠敷地返還等に関する請願、採択。  諸般の手続は委員長に御一任願います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)  休憩いたします。    午後零時十四分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕