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1958-07-02 第29回国会 参議院 大蔵委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月二日(水曜日)    午前十時二十七分開会   ―――――――――――――    委員異動 六月三十日議長において松野孝一君を 委員に指名した。 七月一日委員松野孝一君及び塩見俊二辞任につき、その補欠として木島虎 藏君及び近藤鶴代君を議長において指 名した。 七月二日委員森田豊壽君及び木島虎藏辞任につき、その補欠として迫水久 常君及び塩見俊二君を議長において指 名した。   ―――――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     前田 久吉君    理事            木内 四郎君            西川甚五郎君            栗山 良夫君            平林  剛君    委員            青木 一男君            岡崎 真一君            木暮武太夫君            塩見 俊二君            迫水 久常君            土田國太郎君            廣瀬 久忠君            宮澤 喜一君            山本 米治君            大矢  正君            野溝  勝君            河野 謙三君            杉山 昌作君            鮎川 義介君   国務大臣    大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 原  純夫君    大蔵省理財局長 正示啓次郎君    大蔵省管財局長 賀屋 正雄君    大蔵省銀行局長 石田  正君    大蔵省為替局長 酒井 俊彦君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君   説明員    宮内庁次長   瓜生 順良君   ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○租税及び金融等に関する調査の件  (財政一般問題に関する件) ○国有財産法第十三条第二項の規定に  基き、国会の議決を求めるの件(内  閣提出) ○連合審査会開会の件   ―――――――――――――
  2. 前田久吉

    委員長前田久吉君) これより委員会を開きます。  議事に入ります前に委員異動を報告いたします。  去る六月三十日付をもって松野孝一君が委員に選任され、七月一日付をもって委員松野孝一君及び塩見俊二君が辞任され、その補欠として木島虎藏君及び近藤鶴代君が委員に選任されました。また七月二日付をもって森田豊壽君、木島虎藏君が辞任され、その補欠として迫水久常君、塩見俊二君が委員に選任されました。   ―――――――――――――
  3. 前田久吉

    委員長前田久吉君) まず、大蔵大臣に対し、財政一般について質疑を行います。
  4. 平林剛

    平林剛君 大蔵大臣に対し、財政金融全般について若干の質問をいたしたいと思いますが、その前に、大蔵委員を代表して大蔵大臣に遺憾の意を表しておきたいと思います。大蔵委員長は大へん気持が湖のように広いものでありますから、冒頭あなたに対し御注意を申し上げませんでしたけれども大臣就任以来、この委員会に呪われましたのはきょうで二回目であります。第一回はきわめて簡単なごあいさつ、それ以来、私どもはこの委員会こそ財政金融全般について新しい大臣のお考えをお尋ねする唯一の場所であると考えておりましたが、本日に至るまで御出席がございませんでした。私どもとしては、与党の理事委員お話をいたしまして、先月の二十六、七日それぞれ予定を立てあなたの御出席をお待ちしておったのであります。ところが当日はこの委員会に御出席になりませんでした。事情を聞きますと、衆議院大蔵委員会において法律案が先議であるから、そこに御出席をなさったということ、もう一つ理由としては、期日が切迫をしておるからという、二つの理由を述べられたのでありますが、私まことにこの理由は納得できないと怒ったのであります。怒りましたら地震が起りました。あなたがおいでになりましたら雨が降りましたけれども、とにかくこういうことはまことに遺憾なことです。二十七日の衆議院大蔵委員は、当日は十時四十分ごろに開会をされておるわけでありますから、少くともこの委員会約束通り午前十時に御出席になる時間はたっぷりあったはずだ、大蔵大臣がお見えにならないというのは、当委員会を軽視なさっておられるのではないか、こんな気持も起きたのであります。私ども委員一同憤慨にたえませんでしたので、適当な機会にあなたに釈明を求めたいと思っておりました。幸い本日おいでになりましたので、この機会に一言まず冒頭釈明を願いたいと、こう思います。
  5. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま委員会から要求があったにもかかわらず出席しなかった、そのことは参議院軽視、あるいは当委員会を軽視しておるのではないかという御注意でございますが、御承知のように、今回の会期まことに短期間でございます。ただいま御指摘になりましたように、衆参とも委員会が開催されたり、あるいは本会議があったり、あるいはまた予算委員会開会されたり、各委員会に実は引っぱりだこでございまして、私も一つの体をずいぶんいかように使おうかと苦心もいたして参ったのでございます。で、お話のありましたように、参議院を軽視するとか、あるいは当委員会を軽視するとか、こういう考え方は毛頭ございません。この点はぜひ御了承賜わりたいのでございます。大へん期間の短かいこの国会中に、衆参両院の御要望にこたえたい、極力努力をいたしております。この実情だけはどうか御同情賜わりたいとお願いいたす次第であります。
  6. 平林剛

    平林剛君 算今度の特別国会期間が短かいこと、予算委員会その他の委員会大蔵大臣が引っぱりだこになっておるという実情はよく承知しております。しかしそれを承知の上で、当日は御出席できたのに、なぜおいでにならなかったかということについて、私は釈明を求めておるわけであります。しかし一言遺憾の意を表すれば、これ以上追及しても始まらない話で、残った期日はどうか連日この委員会に御出席なすって、われわれの法案質疑に答えられるように希望いたしておきます。  もう一つ財政金融問題に対する質問に入る前に、大蔵大臣に私この機会をかりて一言申し上げておきたいことがあるわけであります。それは六月九日付の告示で、清酒の二級酒を初め、大衆酒小売価格引き上げを行なったことに関してです。このごろ大へん暑さもきびしいので、一般国民は夕方になると、せめて一合の酒で暑さを忘れようと考えておるのが、このごろの毎日だと思います。そのたんびに、おそらく忘れることができないのは、六月九日付で政府が行なった大衆酒小売価格引き上げであろうと思う。第一次岸内閣のことでありますから、今さらこんな問題を取り上げるのはどうかと思いますが、一般国民はおそらく忘れてはいないだろう。そういう気持から、私はこの機会大蔵大臣にお考えをただそうといたすものであります。大蔵委員会におきましても、この大衆酒引き上げの問題につきましては、いろいろと審議を行いましたが、第二次岸内閣が誕生するごたごたでありましたため、政府から満足な答弁を得ることはできませんでした。当時の大蔵大臣も御出席にならず、政務次官も一日限りの命でありましたから姿を見せず、われわれの疑問に対して政府最高責任者からのお答えを得ることができなかったのであります。そのため期日は大へんおくれましたが、私どもはいまだにこの措置に対しては疑問を感じ、これは岸第一次内閣最後悪政であると、まあ多少御批判を申し上げたのであります。私の疑問とするところは、一つは、この四月に大衆酒減税の際にも、原料であるイモ値上り等理由にして若干の小売価格引き上げが問題になりましたが、そのときの値上りの幅は、清酒二級酒については二円、しょうちゅうにおいては五円という程度の幅であったのであります。ところが六月九日付の告示は、清酒二級酒においては五円、しょうちゅうは十円、わずか二ヵ月の間に二倍の値上りになってしまいました。一体これはどういうわけだ、これが私の第一の疑問なんであります。政府当局お話しによりますと、四月当時はいろいろの方面に無理をさせて、がまんをさせておったから、初めは二分の一程度で済んでいたのだ、こういう説明があったのであります。しかし、選挙の前と選挙あと値上りの幅が倍になるというのは、まことに不可解なことであります。選挙の前には無理をさせて、がまんをさせておったが、選挙あとはそういう神通力がなくなってしまうということもまことに奇態な話しで、この理由はわかりません。政府の中にも、物価政策の見地からみて異論を唱えたものがあったのに、こういう結論になったのは、大蔵大臣一つ解説をしていただく以外には私ないんじゃないかと思うのであります。大蔵大臣は、第一次岸内閣のときも、自由民主党の重鎮として、総務会長をなさっておったわけであります。当然政党政治の建前から、この問題については直接関係があったと思うのでありますから、私の疑問に答えてもらいたい。私は単なる数字の説明を求めようとするのじゃございません。政治道義の上から大蔵大臣のお考えをお聞きしたいのであります。
  7. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私から大衆酒価格決定の当時の基本的な考え方、これを申し上げまして、ただいま御指摘になりました、当時二円を予定したものが五円になった、また五円を予定したしょうちゅうが十円上った、こういう点については私はまだ就任早々でありまして、そこまで伺っておりませんから、これは事務当局から後に説明さしたいと思います。  ただいまお話しのありましたように、大衆酒は、これは申すまでもなく、大衆のために、低廉であり、良質である、これはもう私どものねらっておるところでございます。ことに最近のような暑さの時期に向いますれば、今御指摘になりましたように、一ぱいのしょうちゅう、一ぱいの冷酒、これがおそらく一日の労働をいやしてくれるほんとうにありがたいものであろうと思うのであります。しかし同時にこの酒類を作っております方の立場も一応考えまして、適正価というものをやはり考えていかなければならない。ただいま御指摘になりましたように、大衆酒についての減税をいたしますと同時に、まあ適正価格というものをいろいろ考えて参ったのであります。ただいま御指摘になりましたように、原料値上りになる。そういたしますならば、大衆の負担を軽減する、また大衆に喜んでいただくという意味において、これは値段が安くなることはもちろんでありますが、事業自体もやはり適正な価格のもとに経営されるということが望ましいのですから、原料が高くなったら、これはやはりある程度値段引き上げなければなるまい。同時にまた原料が安くなれば、そういう際には目をつぶっていくということもいけない。だからこの点を明確にして、この原料の非常に大きな値幅がある際には、上る場合でも、下る場合でも、値幅が非常に変ってきた、こういう場合においては、原材料を基礎にしてやはり価格を上下すべきである、こういう考え方から、一面で減税はするが、一面でやはり生産費というものを考えてみて、そうして、適正価格を作ろう、こういう考え方でおったのでございます。当時国会等でいろいろ御審議をいただき、当時の御審議の経過からみますと、値上げがなかなか困難である。これは選挙だからどうこうという問題ではなかったと私は思います。思いますが、結果からみますと、選挙の前だから値上げを差し控えた、こういうような御批判があろうかと思いますが、当時の国会審議状況からみますと、適正価格を直ちに実施することができなかった、こういう状況にあったと思うのであります。ただいま御指摘の点については、一応、私、適正価格を作ることが、これは同町に最後的には大衆に還元されまして、やはり適正にして、そうして良質のものが提供される、こういうことになると考える次第であります。  ただいま御指摘になりました金額をほとんど倍額にした、これにつきましては、冒頭申し上げましたように、私まだそこまで研究を続けておりませんので、事務当局から説明させます。
  8. 平林剛

    平林剛君 事務当局説明は要りません。私も、きょうは本題は別でありますから、この問題についてはあまり追及しませんが、ただこ大衆酒引き上げの問題が、今後の岸内閣の、そうして同時に大蔵大臣考え方をただす上において格好の問題ではないか。そこであなたに特に政治道義の問題からお答えをいただこうと思ったのにすぎないのでありまして、今のお話のように、適正な価格にするという堂々たる主張があるならば、私はなぜ第一次岸内閣最後の段階を選んでこれを実施したか、こう言いたいのであります。医療費の問題などにつきましては、当時医師会の強い要望もあったためでありましょうが、結局新内閣で行うという方針をきめながら、大衆の酒の問題についてはあのごたごたの際にきめてしまう。こういうことではまことに首尾一貫しないのではないか。イモ値上りによる調整と言いましても、酒類業者はもうこの問題は半年も一年も前から議論しておったのでありまして、何も一日二日急いで処理するほどの緊急性はなかったはずであります。早目にやるというならば、むしろ今度の国会に対し、国民全般不況で悩んでおるときに、不況対策を一日も早く出すというのが当然である。こういう意味からいって、私は大衆酒値上げに対しては、今御指摘のような理由以外のものがあるのではないかと、国民に思われても仕方のない悪政である。一つ今後大蔵大臣は、岸内閣一つの柱として、国民の台所を預かり、また直接生活につながる大事な役割を背負うわけでありますから、影響するところはまことに大きい、この内閣において、いささかも国民に疑問を起させるような政治はおやりにならないでもらいたい、ということを一番最初に要望いたしまして、本日の質疑に入りたいと思います。  そこで、私が大蔵大臣に最初お尋ねいたしたいのは、日本経済の当面する実情を、一体あなたはどう理解なさっているか。また今後の経済政策としてとるべき政府の基本的な考え方を示してもらいたい。予算委員会や、その他の委員会でしばしば説明をされておりますが、この委員会には初めて御出席になったのでありますから、一つどもに理解のいくように、総合的な方針をお聞かせ願えたら、まことに幸いであると存じます。
  9. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 当面する経済実情並びに今後の対策いかんというお尋ねでございます。基本的な問題でございますので、少し時間をいただきましてお話しをいたしてみたいと思います。  今日当面しております経済は、申すまでもなく、昨年の異常経済ののち、これに引き続いている経済状態でございますが、この見方につきまして、昨年緊急対策を種々の面でとって参りました。あるいは金融の面でとったり、あるいは三十三年度予算編成等におきまして、この三十三年に招来するであろう経済状態を一応念頭において、予算編成並びに金融政策をとってきた、これは御承知通りでございます。  大体予想される事態といたしましては、どういうことかと申せば、三十二年度におきまして非常な投資の過大を招来した。そのために経済状態が非常な不均衡と言いますか、一時的な均斉を破った状態を招来した。これをとにかく是正することが、まず第一だということでございます。また同時に、こういうような三十二年度の経済状態から、中小企業に対しての圧力が加ったり、あるいは失業相当ふえるであろうとか、あるいは農水産等の弱い事業体において、いろいろ社会的な摩擦も生ずるであろう、こういうことを一応想定いたしまして、三十三年度の予算を作って、この経済状態に対処いたして参ったのでございます。幸いにいたしまして、昨年の緊急措置は、私どもが予想したような状況を今日生み出しているように考えるのであります。  その一、二の例をとって申せば、緊急措置のおかげだと思いますが、岡内の投資につきましては、ある程度これを押えることができたと思いますし、同時にまた在庫調整等が行われて、国内需給のバランスがよほど改善されてきたり、あるいはまた国際収支の面におきましても、赤字で悩んでおりました国際収支も見違えるようになったと申しますか、これは見方によりましては、正直に申して、私ども考えたより以上の黒字を招来したということが言えるのではないか。上半期におきまして一億五千万ドルの黒字を招来しておる、こういうような状況経済が変って参りました。この経済状態を一口に申しますならば、これはいわゆる変動が一応やんだ、下降が一応停止した、こういうことも言える。いわゆる底入れ状態だ、こういうことを実は感じておるのであります。しかし、かような異常な経済のもとにおける底入れ状態ができたとは申しましても、その間に生じましたいわゆる社会面摩擦、またたとえば失業の面であるとか、あるいは中小企業であるとか、あるいは特殊事業に対する緊急措置の圧迫、これは見方によりましては、これまた率直に申し上げますが、私どもが予想したよりもあるいは幾分か程度の大きな摩擦が生じておるかとも考えるのであります。しかし基本的に、大局から見ますと、経済情勢そのものは、価格も一応安定して参りましたし、いわゆる底入れ状態であって、これからの先は一体どうなる。今日まで相当社会摩擦面は生じてきておるが、これより以上は下降状況を辿らなくても済むのじゃないか、この実は見方をいたしておるのであります。この点についての見方がいろいろあると思います。今日まで衆参両院委員会等を通じての御質疑では、不幸にいたしまして、私どものようなかような見方に対して、これは少し楽観に過ぎる、もっと深刻なものがある、さらに経済は悪化するだろう、こういうような御意見ももちろん伺っておりますが、ただいま政府並びに私の見るところでは、一応底入れ状況をきたしておる、こういう考え方をいたしておるのであります。  そこで、今後の状態、ただいま申すような国際収支状況黒字に転向してきている、あるいは今の物価の問題にいたしましても一応横ばいの状況である、こういうようなこと、さらにまた在庫調整がある程度進んできた。少しは時期的なズレは感じておりますが、これも在庫調整が徐々ではあるが、効果をおさめつつある、こういうことを考えて参りますと、いわゆる経済異常状態からは一応脱する気がまえが起きたのではないか、かように考えております。  そこで、日本経済の実態から見まして、これは日本経済一つ特質というものがあるのじゃないか、その特質は一体何かと申せば、これは申すまでもなく、多数の人口を擁しておるということ、人口を擁しておるということが、生産力の面から見ましても、あるいはまた消費の面から見ましても、経済を維持する上において大きな条件であることは、見逃せないところでございます。さらにまた他面、戦後の日本経済といたしまして、技術的にも非常におくれておる、あるいは機械設備等においても非常に旧式なものというか、近代化がおくれておる、こういうような点が日本経済の弱点だとも言われるが、同時に経済を成長さすという場合に考えますと、強い力でもあると思うのであります。この意味において、国内消費はなお相当強いものを感じておる。ここに日本経済の将来といいますか、これからの施策自身によりましては、これをさらに成長さし、向上さしていく、そういう基礎的な条件を備えておる経済ということが言えると思うのであります。  こういうような特賞を持っている経済でありますから、今後の対策が当を得ますならば、必ず経済を上向きさすことができる。またわれわれ政局を担当するものといたしましては、経済はやはり縮小経済でなくて、やはり拡大方向に持っていく、こいうことを考えていかなければならないのでございます。この拡大経済方向へ進めていくといって考えました場合に、いろいろな条件を勘案しなければならないと思いますが、それはただいま申し上げましたように、日本経済特異性というものがあるが、同時に日本の国だけで日本経済だけを繁栄さすというわけにはいきません。やはり世界経済のワクのうちにおいて、多分にその影響を受けて日本経済は成長していくということになるだろうし、世界経済影響を受けて、また日本経済圧力を感ずる、こういうものだと思うのであります。  そこで世界経済の動向というものを一応考えてみますと、これはなかなか油断ができないと言いますか、なかなか深刻なものを感じている。ここに経済を進展さす上において、非常に強いブレーキになるような要素も感ずるわけであります。この世界経済不況というものが、特に私どもに強く響いて参ると考えますのは、日本経済発展さすために、私ども最も強く必要性を感じているのは、申すまでもなく、輸出振興にあるのであります。貿易拡大にあるのであります。ところが世界経済自身が停滞の状況である、その影響を受け、ことに物価自身が八%ないし見方によりましては一割近くも下降するというような世界物価の趨勢から見ますと、なかなか金額で盛りました貿易努力目標を達成することは非常に困難である。同時に各国も自国経済健全性、さらにまたそれを進めていく上から輸入制限をしたり、あるいはまた輸出の面においては、いわゆる相手国に対してゆるやかな条件を提供して自国の品物を売りつける、非常に激烈な輸入競争を展開いたしております。  こういう意味でわが国の経済あり方等考えました場合に、非常な努力を要するものと思います。しかし輸出を振興する。考え方によりましては、この異常経済の立て直しのため国内需給調整し、考え方によってはもう一歩進めて、国内消費をある程度押えることまでしても輸出を進めていく、こういうことを経済の基本として考うべきことではないかと思う。先ほど来申し上げましたように、私どもはただいま申し上げるような見方で、輸出振興に特に重点を置いて参りたいと思いますが、経済の現況に対する見方の相違から申しますと、この際、輸出はなかなか思うようにいかない、それならば国内の需要を高めるような方法はとれないのか、そうすることによって日本経済拡大方向に持っていく、こういう努力政府は払えないか、こういうような御意見も伺っておりますが、冒頭に申したように、当面している経済異常経済の直後を受けて、ただいま底入れ状態である。言いかえればこれこそ調整の時期に入っていると、私は考えているのであります。この調整の時期に入っている際に、特にこれに刺激を与えるような政策は、今しばらく四囲を見てしかる後にやるべきで、この際、直ちに採用すべきものでないのではないか、ここに相当意見があるように思うのであります。日本経済自身は、日本経済のような、先ほど御指摘いたしましたような特異な経済であり、膨張しようという力を持っている場合には、非常に強く上昇しようというような形を示す場合もあるだろう。こういう場合においては、財政金融の面でこれにブレーキをかけるのは当然でございます。しかし同時に、経済が非常に萎靡する、非常に弱まっている、こういう場合には、これに支柱を与える、これは当然のことです。そういう場合のねらいはどこまでも健全な、しかも着実な経済上昇発展をはかっていくということでなければならぬ。これが急激に膨張するとか、急激に萎縮するということは、あらゆる面で避けていく、これはその努力を払うべきだと思います。今日の状況については、ただいま申しますように、発展は不十分でございますが、今調整の時期に入っておるのだから、しばらく推移を見る、で、本来日本経済の持つ特異性から見まして、四囲状況さえ好転していきますならば、これは上昇する形の経済と見て間違いない。ただそれを瞬間的に早めるという場合に非常にスピード・アップすることは危険なことなんです。着実な発展には寄与しない。まして調整の時期に入っておる際に、財政的なてこ入れをすることは、一時的にはいかにも問題を解決したように見えるが、経済の本体を強める、こういう観点に立ちますと、多分の疑問を存する。だからそういうことは避けたい、かような考え方をしている次第でございます。  大へん簡単でございますが、私の感じております点を御披露いたした次第でございます。
  10. 平林剛

    平林剛君 大蔵大臣の御方針をお聞きしまして、大へん幅の広い御意見とお聞きしたのでありますが、問題は今の情勢を政府が的確につかんでおるかどうかという点において多少各面にわたって、なお、こまかくお尋ねをいたさなければならぬと思うのであります。  お話のありましたように、当面する日本経済状態に対して、確かに見解は二つございます。今ごらんのように、投資景気もおさまったし、国際収支もよくなった、卸売物価も落ちついて生産調整も大体終り、まあ経済的には小康を得たので、ただいまお話のような条件考えて時期を見るというお話でありますが、もう一つ見方としては、現在の経済不況はもっと深刻になるのじゃないか、輸出の見通しも当初の目標に達しないのではないか、国際収支黒字といいましても、これは輸入の減少によるもので、いわば縮少均衡にしかすぎない。設備投資も、今のところは別であるが、本年の下半期になるとこれが激減をして、鉱工業生産も低下し、それにもかかわらず、在庫は滞貨となって、各産業はなお引き続き操業短縮を切り上げるどころか、なお継続していくことに陥るのではないか、貿易の面の打開も八方ふさがりでうまくいかないし、失業者はふえ、農業面に対する災害と農産物の値下りで窮乏化していく、こういう見方一つにはあるわけであります。  そこで私はまず自分の意見を申し上げる前に、政府のただいまの御説明の立場に立って、一応それを信用して、それならば、政府の今の情勢把握の上に立ったならば、一体現在の経済状態、あなたの御説明でいいますと、底入れ状態はいつになったら立ち上りの方向にいくのか、これがきわめて長い時間になりますと、政府の見通しを誤ったというだけでなく、国民全般がそのために大へんな迷惑をこうむることになるわけであります。いつになったら今の底入れ状態はよくなるのか。そしてその基礎となるのは、どういうことをとらえて政府は見通しを立てておられるのか。この問題について、政府一つ政策を押し通しておるわけでありますから、確信の上に立った見通しを、御説明を願っておきたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなか、大へんむずかしいお話でありますが、同時に政府、政局を担当いたしております以上、一応の見通しは立てておらなければならない、これは当然でございます。私どもは今、先ほどの説明でちょっと申し上げましたのですが、調整がやや時間的にズレておるのじゃないかということを申しました。また生じておる社会的な摩擦面もあるいは予想したよりも少し深刻のものがあるのじゃないかということを申しました。こういう点が三十三年度予算編成のときとはやや情勢が違っておる。こういうことが言えるのではないかと思います。で、今日とっております対策については、ちょうど今IMFから日本経済の診察に来ている人がおりますが、きょうの新聞などにその診察の結果を発表いたしております。大体私どもが見てきたような、先ほど来御説明したようなことを率直に申しております。案外しろうとの勘も当ったんじゃないかという気がいたしております。  そこで今後の問題でございますが、本年度は御承知のように、四、五、六、まだ三月ばかり経過しておるばかりでございます。その数字等で、ただいま平林さんが言われるように貿易などは相当下回る数字じゃないかという、こういうことを御指摘なさっておられますが、この年度が始まったばかりのところで、今後の経済の見通しを的確のものを言えと言われましても、これはなかなか困難なことでございますが、私どもの希望をも含めての見方をいたしますならば、いわゆる三十三年の上半期を過ぎますれば、ここで経済の見通しを立て得ると、そういう際に、私どもの今日とっておるような政策、それについても、要すれば、必要があるならば、もちろん今日とっておる調整期間だから積極的な刺激を与えるようなことは避けたいということを申しておりますが、これについても変更を加えていくことに別にやぶさかではございません。今しばらく事態の推移を見させていただきたい。今日までのところは、まあ先ほど来申しますように、一応三十三年度予算編成の際に予想したような事態になっておるように思うのですが、これは何といっても、まだ四、五、六の三月のことでありますから、これがもう三、四ヵ月一つ模様を見させていただかなければ、今後の私どものとる政策についても、今日なかなかどうするということは実は言いかねる。ことに政府の一員といたしまして、責任のある所見を述べるのには、まだ時期は少し早いという感がいたしておるのでございます。で、特に私どもがそういう場合に、先ほど来、二、三生じた社会面摩擦が、あるいは予想以上であるということもあると思いますが、一面国際収支の面で黒字自身も私どもが予想したよりも大きいものがある。こういうようなところに、今後打ち得る素地はできておる、こういうようなことは申し上げられるように思うのであります。問題は今しばらく情勢の推移を見さしていただきたい。
  12. 平林剛

    平林剛君 当面の経済はどういうふうに把握するかということは、大へんむずかしいことだとは思います。しかし一日心々動いていく経済の動向によって国民は生活をしているのであります。大蔵大臣お答えとして、万々そつのないような答弁だけでは、国民として満足できない実情にあると思うのであります。特に政府は責任ある答えをしなければならぬから、もう少し様子を見たいと言われますが、責任ある立場にあるからこそ、できるだけ正確な判断をして、必要な施策を打っていくことが、ほんとうの責任でなければならぬと私どもは感じておるのであります。特に今のお話のように、ただいまは一応の見通しとしてはこら立てておるとか、希望を含めてとかというようなお話では、まことに国民はあなたに対して頼りなさを感ずることになりはしないでしょうか。むしろもっと確信を持って、おれにまかせてもらいたいという程度の立場で、政府政策を引きずっていくということでなければ、名大蔵大臣ということにはならないのではないだろうか。私のお尋ねいたしたポイントは、今後の景気の見通しについてでありましたが、明確なお答えがございませんでした。むしろ国民の側に立ちますと、大へん政府の指導に不安を感ずるといった方が濃くなって参りました。  そこで具体的にお尋ねをいたしますが、六月二十三日の衆議院予算委員会で、社会党の石村委員質問に答えた政府の答弁によりますと、在庫調整もまた生産調整も最終段階にある、品物によって違うかもしれないが、この七月から九月に入ると、大体需要と生産はマッチをして、秋ぐちになると景気は多少改善されると、きわめて明快に答えておるわけであります。これは政府方針でもあると思いますが、あなたは今このことについて、はっきりしたお答えがございませんでした。予算委員会議録には、はっきりと、やや国民に希望を持たせる答弁をなさっておるわけであります。当委員会において重ねてお伺いいたしますが、かように国民は期待してよろしいかどうか、一つ確信のある御答弁を願いたいと思います。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来お話申し上げており、あるいはニュアンスが幾分か違っておると思います。しかし私どもが当面しておる経済について、今しばらく情勢を見さしていただきたいというのは、この二、三ヵ月の情勢を見て、そうしてしかる上で、経済を上昇さす、そういう方向で物事を考えていくということを申しておるのでありまして、これはもう今までの委員会お話したことと別に変りはございません。これだけははっきり申し上げられると思います。
  14. 平林剛

    平林剛君 そうすると、大体秋ぐちになると、景気は多少改善されるという見通しの上に立って、政府はしばらく様子を見るということになると思いますが、いかがでしょうか。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) その通りでございます。
  16. 平林剛

    平林剛君 そこで問題は政府の御説明があるように、景気は底入れをしたのだから、なべ底の状態と同じように、もうこれ以上は悪くはならぬ、しばらく様子を見ていけば、日本の潜在経済力から見ても、漸次、あるいは政府の施策から見ても漸次景気は上昇して、この秋ぐちには上向きの状態になる、こういうふうな見方がほんとうにできるのか。それとも先ほど私が申し上げたように、現在の状態は昨年の予算編成の際の基礎と見通しがすべて崩れているから、このままいけば秋ぐちに立ち直るどころか、ことしの秋から明年の春にかけては、本格的に過剰生産恐慌がくるおそれがあるから、この際、国内供給過剰の是正のために、雇用の確保と失業の防止、低所得者の購買力引き上げを主体とする需要増加策をとるか、こういう二つの問題にかかってくると思うのであります。ところが残念ながら、今日まで、政府経済政策を眺めて参りますと、いつも手おくれになっているわけです。昨年の国際収支の見通しにつきまして議論をいたしたときもそうでした。昨年の公定歩合の引き上げの際も同様で、むしろ政府経済緊急対策を立てるのが少しずつおくれていって、そのためにかえって長い間苦しまなければならぬ、実際問題としてはそういう事態を繰り返してきたのであります。また先の国会におきまして、岸内閣経済の見通しを、本日と同じように、政府の責任者からお尋ねをいたしました。景気回復の見通しは、四月から六月にかけて景気調整は終って、景気は上昇することができる、こういう見通しをされたのに、これもまた破れている、ただいまお話を聞きますと、七月から九月だ、しかしこういう経済情勢の分析は大へんむずかしいことかもしれませんけれども、従来の政府の行なってきたことから考えてみると、少しずつ手おくれになっている、その手おくれになるたびに、国民は生活の安定を失われてきているわけであります。そこで私は、いずれはっきりすることであろうけれども、今日の段階に、われわれと違って政治の責任者に立っておられる大蔵大臣であり、岸内閣でありますから、多少ずれたということだけで済ますわけにはいかない。ほかの問題と違って、なかなかその見通しの誤りに対して責任をとるということは、困難であるかもしれませんけれども、見通しが誤まったならば責任をとるというその強い決心がないと、また国民政府を信頼を上ないということになるわけであります。今お話のように、しばらく様子をみて、今は積極的な手は打たないという態度は、言葉通り聞きますというと、きわめて慎重な態度のようにみえますが、逆の立場から言えば、無為無策でなかったかということにもなるわけであります。昨年の投資景気にこりて、あつものにこりてなますを吹くというようなことに結果的になりはしないか、残念ながら私ども指摘した通りになった場合、一体政府はどうするか、私はこの機会に別に大蔵大臣とどっちが正しかったかということを、あとでどうこうするということではありませんけれども、しかし一応責任ある立場として、もしあなたの方の見通しが誤まったならば、この責任はどういう形でおとりになるのだろうか、これを一つ大蔵大臣の今日の立場における所感としてお尋ねをしておきたいと思うのであります。
  17. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど簡単な見通しの結論を申しました。その結論について、いろいろの御批判をいただいたわけであります。もちろん景気を好転さすためには、いろいろの条件が備わることが前提としてもちろん必要でございます。先ほど全般の問題で申し上げましたように、日本経済だけが世界経済と別個の世界でこれがブームになるというわけにはなかなかいかない、こういう点は前提の大きな問題であることを一つ御了承いただきたいと思います。問題は先ほどから議論になっておると思いますが、国内消費をふやすこと、国内の需要をふやすこと、それが日本経済をほんとうに健全に発達さす上に効果があるのかないのかということに落ちてくるのだと思うのであります。私どもは、今日のところ世界経済不況ではあるが、日本経済不況状況のもとにおいても、昨年来の緊急措置は非常に時宜を得た措置であり、それは非常な効果を示してきている、世界経済不況を非常に深刻に影響を受けた日本経済ではない、幸いにして世界経済不況に対応する措置をとって比較的にその軽微な状況で今日まで推移してきた、こういうことを実は指摘いたしたいのであります。先ほど来の平林さんの御意見によりますと、日本のこの不況というものが、非常に格段な、日本だけが当面しておる非常な不況状況であるかのような印象を実は受けるのでございますが、私どもの見るところでは、世界経済不況から受けておる影響は、日本経済は他国に比してはややその程度が軽い、こういうように実は考えております。この軽い状況を招米しておることは、昨年来の緊急措置が効果を示した、この意味においては政府対策はりっぱに実を結んできておる、こういうことが言えると考えるのであります。今後の問題につきまして、ただいま申すようないろんな条件がある、これをもちろん前提として考えて、いかなければならぬ、この点ではあるいは私どもの見通しというものが、世界経済の見通しについて、好条件通りに進まないと、こういう場合もあるかもわかりません。しかしそういう場合におきましても、日本の買易収支が黒字である、これだけは特に私は声を大にして申し上げ得るところでありまして、この意味において日本経済の底力というか、これをさらに成長さす基本的な力を今日持ち得た、これを使うことによりまして、国内の生産、需給調整、こういう問題も、ただいままでとってきたような縮減方法だけでなくて、もう少し積極的な方法もとり得るのじゃないか、こういうことを実は考えている次第であります。
  18. 平林剛

    平林剛君 これは各委員会でいろいろ質疑を行なって、政府との考え方の違いについては、それぞれ指摘してありますから、いずれあとでしばらくたてばどちら側の分析が正しかったかということは、はっきりしてくるのではないかと思います。  ただ、そこで私は政府にお尋ねいたしたいのは、きのうの夕刊に自由民主党の幹事長が記者会見で明らかにした今後のスケジュールによりますと、臨時国会は九月中旬ころ会期一ヵ月の予定で開催をする。この国会では補正予算案と国民健康保険法などを提案するとございました。この臨時国会に提出する補正予算案というものは、それでは一体どういう内容のものであるか、内容が何もはっきりしないで、自由民主党の川島幹事長たるものが補正予算案を提出するなどということは発表するはずがないと思うのであります。どういう内容のものであるかはもう大体の構想があるものと私は思います。政党政治のもとで、自由民主党のスケジュールは同時に政府方針と見ることができますから、この機会に補正予算案の構想、内容について、一つ説明を願いたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 実は幹事長の談話が新聞に載っておりまして驚いいるのは社会党の平林さん、だけではなく、かく申す私も実は驚いております。まだこの話を具体的に伺っておりません。おそらく補正予算云々という記事が出ておるとすれば、要すればというその一語に尽きるだろうと思います。まだ実は具体的な話は伺っておりません。私自身も実は驚いておりまして、きょうも幹事長の意見をただしたい、かように思いましたが、当委員会に出るために実は幹事長との事前の打合わせができなくて、私自身もどういうことかと実は首をかしげておるわけであります。
  20. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ちょっと関連して、大事なことだから、私あと質問いたすときの問題もありますから確認しておきますが、要すれば補正予算を出すということであって、その裏から読めば、補正予算は大体出さない方針だ、こういう工合に伺ってよろしゅうございますか。
  21. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは私が今想像しただけでございまして、これは幹事長とよく相談してみないとどういうことを言っているのか実はわからない。今、記事だけから考えれば、そういうことかなあと考えておる、こういうことでございます。今出すとか出さないとか、そういう必要がそれじゃ今あるのか、こういうようなことを考えますと、ちょっと私了解に苦しんでおりますので、これはもう少し話を進めさしていただきたいと思います。
  22. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それはそれなりに伺っておきますが、大体予算編成権は大蔵省にあるのです、大蔵大臣にあるのです。しかも自民党の川島幹事長がそういうことを言明されるとすれば、これはやはり大蔵大臣と相談の上で行われるべきで、その点は政党政治、政党内閣としてきわめて私どもとして理解しにくいのですね、今のあなたの言葉というものは。ですから、これはいずれ私は佐藤大蔵大臣には、平林君のあと発言通告しておりますから、そのときに私は明らかにしたいと思いますので、そういうあやしげな答弁では、われわれ質問を続けていくわけに参りませんから、緊急に打ち合せをして正確な御返事がいただけるようにしていただきたい。
  23. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今の点はただいま申し上げますように、私出て参りますまでには連絡がとれておらない、まさかしろうとの大蔵大臣だからというので党が軽視したわけではないと思います。(「軽視している」と呼ぶ者あり)これはなかなか、いわゆる私も党におりまして幹事長あるいは総務会長をしましたが、記者会見等においての片言隻句が非常にはっきりした談話として掲載されることもございます。こういう点は、いずれ私もよく取り調べた上で、責任のある返事をいたします。これはきょうの午後でも私から申し上げたいと思います。
  24. 平林剛

    平林剛君 ただいまの補正予算案提出の問題については、私はただいままで申し上げた経済論争の結論がすでにここで出ておる、こういう見方をいたしておるわけであります。あなたは一時間にわたって私の質問に対して丁寧に答えてくれましたけれども、あなたの党の幹事長ではちゃんと補正予算案を九月の臨時国会に提出をするという結論を出しておるわけであります。早くも岸内閣経済情勢の分析というものは、私ども指摘した通りの深刻な状態にあるということを裏書きしておるのではないか。これは想像でありますからわかりませんけれども、お確めになっていただいて、のちほどこの問題については本格的な質問をさせていただきたい、こう思うのでございます。
  25. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの点、これはもう少しお話を申し上げておかなければならない。これは幹事長どういうつもりでああいう発言をしておるのか私にわかりません。しかし私どもが先ほど来申し上げておりますことは、経済を縮小均衡の方向に維持する考え方は毛頭ない。経済はもちろんこれを成長さし、向上さすという方向政治のあり方としては考えておる。この点は御了承をいただいたことだと思います。ただいまこの補正予算を組む、組まないということは、これは論外でございますが、議論として申し上げますならば、補正予算を組むという場合がありましても、平林さんの言われるように、不況対策としてのてこ入れの補正予算を組む、こういう考え方でなくて、もし組むことがあるならば経済を成長さすという方向において組むのである。そこにその意味の同じような補正予算が出るといたしましても、意味が違うことを、これは議論として私自身保留させていただきたいのであります。もし万一組むことがあったら、これは平林さんの言われるような意味において不況対策として組むのだ、こういう意味でないことを一つ御了承いただきいたい。
  26. 平林剛

    平林剛君 日本語というものは大ん便利なもので、経済の正常化と言おうとも、また不況対策と言おうとも、その中身によってはっきりすることだと私思います。いたずらに言葉でこれこれのものだというようなことでなく、やはり今日の経済情勢をお互いが真剣に議論をして、正しいと思う政策が補正予算として組まれるものと私は期待をいたしておるのであります。これはのちほどまた幹事長が記者会見の発言を取り消すと天下に公表しない限りは、その内容についてはあらためてじっくりお伺いをすることにいたしまして、あと一つ二つ残っておる問題について質問を続けたいと思います。  今度はアメリカからの借款の問題について簡単にお尋ねをいたします。九月の三十一日に、前の大蔵大臣一萬田蔵相が、新内閣経済基本政策として発表したところによりますと、当面の緊急対策として、東南アジアに対する輸出振興を取り上げ、このため東電アジアの輸出代金の処払方式を緩和拡大する。これによる外資の入金のズレを補う意味を込めて、米国から借款を受けるということが伝えられておるのであります。また場所を変えて、当時の大蔵大臣は、私は新しい考えとして、外資の導入を考えていいのではないか、それで観光事業を大規模にして特需収入の穴を埋めていく、こういう二つの記事を見るのであります。これは現在まで政府説明をいたして参りました輸出第一主義が、主として東南アジアに向けられるといたしますと、それらの国の経済状態から見て、のちに審議をする外為特別会計と同じような焦げつきになるのではないか。あるいは今日の経済不況を抜け出すためには、積極的に輸出をせねばならぬ多少危険があっても、やるという方針でありますから、その穴埋めに何か国際収支上の悪化を防ぐとか、あるいは外貨の穴埋めをするとかという措置は、今の政府方針からすると裏づけとして考えられなければならぬ。こういう意味では、一萬田大蔵大臣が言おうと、だれが言おうと、現在の岸内閣政策としては、当然予想せられる帰結だと私は見ておるわけであります。この問題について、最近岸総理大臣が渡米するとか、また大蔵大臣が同じく渡米するかもしれないという情報が流れておりますが、これらの問題に関連をしたものでございましょうか。それともただいま指摘をいたしましたようなことについて、政府は、具体的でなくてもけっこうです、何かそういう話し合いは行われておるかどうか、こういう二つのことについてこの機会に明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  27. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 借款のお話は、しばしば新聞その他で私もうわさを聞くのでございますが、政府といたしまして、ただいま具体的な借款計画は持っておりませんし、また進めておるような事態もございません。で、もうそれだけで答弁はいいのかと思いますが、輸出の問題は関連してのお話でございますので、少しその点に触れてみたいと思いますが、輸出振興、特にこの経済を成長さす意味において力を入れておるわけでございます。この点で考えなければならないことは、いわゆる後進諸国に対する輸出増進、これが一番ねらいになるだろう。こういうことは言えると思います。そういう国自身がドルを持っていない。そういうところでいろいろ問題があるわけでございます。わが方にそういう国を相手にしての輸出振興、これはいろいろ問題がある。ただいま御指摘になったような焦げつきという危険もありましょう。しかし同時にこの輸出振興考えます場合に、各国とも輸出競争がまことに激甚でございますので、各国が相手国に提供する程度条件緩和は、輸出振興をやる以上、日本の国といたしましても、この輸出競争におくれをとらないようにはやらなければならぬ。だからその意味において、ただいま御指摘になりました延払方式というようなことも、これは一案として考えられる。そういう場合に、相手国並びに事業等について、非常な見通しを立てるということ、これは非常に大半だと思います。ことに日本輸出国としてねらいますところは後進諸国である東南アジアを初めとして、中南米の後進諸国であるということを考えますと、これは十分に戒心し、慎重にしかも果敢に輸出競争におくれをとらないように処置すべきものだと、かように考えております。
  28. 平林剛

    平林剛君 私まだ質問が残っておるんですけれども、さっきの臨時国会に補正予算案を提出するという問題を確めてからですね、なお、質問を続けることにお許しを願いまして、またあとで適宜申し上げたいと思うのでありますから、一たん他の委員に御質問がございますから、中途でございますけれども質問を留保いたしまして、栗山委員あと質疑をお願いすることにいたします。
  29. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ちょっと速記をやめて下さい。
  30. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  31. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 速記をつけて下さい。
  32. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私もある程度筋道を追って、大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思っておりましたが、先ほど平林君との質疑応答を通じて印象の薄れないうちに確かめておきたいことが一、二ありますから、この点をまずお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、きのう川島幹年長が補正予算を臨時国会に出す、こういう発表をせられましたことについて、三木国務大臣経済企画庁の長官として御存じになっているかどうか、その内容を御存じになっているかどうか、これを伺いたい。
  33. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私も新聞記事でそういうことを見たのでございますが、存じておりませんし、今まだそういう補正予算を出すというようなことを政府が決定したものでもございませんし、臨時国会の開催を九月にやるということも、まあ党側の何か意見でしょうけれども政府と十分な打ち合せで、ああいう発言をしたものではないと承知いたしております。
  34. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 三木さんは前に政調会長をおやりになったことがあるのでありますから、その辺は裏の裏まで御承知のはずであります。予算編成権というのは大蔵省にあるわけでしょう、大蔵大臣に伺いましたところが、大蔵大臣も全然あずかり知らぬとおっしゃるのですが、自民党が組織されている岸内閣との関係はそういうものでございますか。
  35. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いろいろ新聞記事に対してですね、川島幹事長から話を聞いておりませんから、どういうことでああいうことを言われたのかよく承知しませんが、しかしこれは何らかの、まあ川島幹事長としての個人的な何らかの御見解だと思います。政府はあずかり知りません。
  36. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはいずれ午後明らかになることでありますから、そういう真相をお伺いしておけば、ただいまのところはよろしいわけです。  それから第二に、先ほど大蔵大臣が補正予算の問題について、さらに言葉を延ばされて、補正予算を出すとすれば、決して不況克服のために出すので、はないのだ、こういうことをおっしゃいました。それは御意見としてわれわれも伺うわけでありますが、経済の拡張のために、成長のためにやる、こうおっしゃいましたが、現実に日本経済はただいま不況ではありませんか。これは大蔵大臣にお伺いしたい。
  37. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど平林委員の御質問に対して、私の所見を申しましたが、現状についての見方は縮小の状況にはございます。しかしこれは三十三年度予算編成の際に、一応想定された事態でございまして、これは三十三年度予算にもこれの対策が盛られているのでございます。そういう意味で、今日の状況が停滞している状況ではございますし、また経済が縮小されていることは私どもも率直に認めておりますし、また調整の時期が少しずれているということは、これまた先ほど率直に申し上げた通りでございます。問題はいわゆるこの事態を、いわゆるてこ入れを必要とするような政策をとるかとらないか、言いかえますならば、刺激を与えるような政策をとるかとらないかという、その見方で、何と言いますか、結論が変ってくる、こういうふうに私は理解いたしているのであります。
  38. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしますと逆な、皮肉ではありませんが、質問を申し上げますと、あなたの言われる経済の成長のために必要であれば補正予算を組む、こういうことであったとしますと、その経済の成長という言葉の中には、不況克服も入っておりますか。
  39. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただどうも御質問がだんだんよそへいかないように一応私も申し上げておきたいのですが、ただいま補正予算を出すとか出さないとかという議論は、これは今しばらくお預けを願いたいのであります。私どもはその点は別といたしまして、経済はただいま底入れ状態である、調整状態であるから、調整の時期を早く過ごして、そしてこの調整期間の間に経済の推移を見て、しかる上でこれは対策を立てていくということを実は申し上げたわけであります。
  40. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そんなことじゃない、非常に大事なことだから、私くどくお尋ねしているのですが、先ほど要すれば補正予算を出すのだという意味だろうと川島幹事長の気持をそんたくすれば――そうおっしゃった。そこまではよろしゅうございますよ。それからあとに、そういう意味で補正予算を出すとすれば、不況克服の予算ではないのだ、経済成長のための予算だ、こうおっしゃったじゃございませんか。速記録に載っておりますよ、いかがですか。
  41. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) それは一つ意見として先ほど申した通りでございます。それで、具体的に予算を出すか出さないかということはきまっておらないということでございます。
  42. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それで、そういう意味ですが、かりにという字がつくわけでありますが、かりに出すとすれば、不況克服でなくて経済成長のためだ、こうおっしゃれば、経済成長という言葉の中には不況克服は入っていますか、いませんか、こういうことです。
  43. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 経済健全性、いわゆる経済の正常化というような言葉を使っておりますが、今日の不況は正常な状態だとは思いません。またこれは昨年の異常状態調整の時期だということを申しております。だからこれは経済が上昇するということは、これはもちろん不況が解消していくということに考えてしかるべきものだと思います。
  44. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは私どもはただいまの経済不況だと、こういうふうに断定しております。それを安定させ、さらに経済を成長させていく、こういうコースを歩んでいくものだと考えておるわけであります。従ってあなたのおっしゃった不況克服でなくて、経済成長だというお言葉は、途中で安定というコースを経て成長に向うわけでありまして、そのまま私は確認をいたしておきます。そこでこのことは、あとで私が質問をいたします上において非常に重要なことでありまするから、どうぞ忘れないように覚えておいていただきたい、こう思います。
  45. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 不況対策として特にあげます場合と、経済の健全な発達をねらってやる場合とは、その所置並びに扱い方が相当違っておる。たとえば昨年とりましたもので、特別な輸出品について、これが思うように伸びない。たとえば人絹織物等について、これが対策として滞荷保有会社を作り、特別金融措置をとる、こういうことをとりましたが、こういうのは明らかに不況対策ということが言えるかと思います。これはもちろん他の面からみれば、事業の自主性といいますか、その基盤をこわさないような意味もございますが、とにかく一時的現象に対する対策としてとられる。そういうことは経済の健全な発達という面からみまして必ずしも当を得たものと言えるかどうか、これは議論の存するところだと思います。こういうことを、まあ先ほど来意見として、申し上げておるのでございます。この点を誤解のないようにお願いいたします。
  46. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、それは私もよく経過はわかりますが、日本語を正確に理解する立場をとれば、成長という言葉の方が不況克服よりもはるかに意味が広いのであって、当然その中の一部分である。こういう工合に私は理解して一向差しつかえないと思うのです。そういうことを確認をしておいていただきたい、こう申し上げたわけであります。  それからその次に、一番最初に、昨年の積極経済から縮小経済に移ってきた、移らざるを得なかった根本原因というものをあなたおあげになりました。その根本原因は、技術の過剰投資が原因であると、こうおっしゃいましたが、これはいささかわれわれが今まで国会で議論をしてきた考え方と違います。従ってこの点をもう一度明確にしておいていただきたい。過大投資というのはやはり日本経済を麻痺させてきた一つの原因である、そうして結果としてわれわれが非常に困りましたのは、外貨の赤字を中心とした日本経済の混乱にあったわけであります。従ってあなたが昨年度の異常経済後の分析をせられたところの一番中心に取り上げられた原因が、設備の過剰投資だということをお挙げになっている、それからあといろいろと理由をお述べになりましたが、これは根本的に違うのではないか。私どもは少くとも通常国会以来の経済の論議を通じてさように考えておりますが、いかがでございましょうか。
  47. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはいろいろ御議論があろうかと思いますが、問題は設備投資、これは日本経済特質から見まして、先ほど指摘いたしましたように、技術的にも劣っているとか、設備が非常に老朽であるとか、こういうような面から見まして、これが近代化されることは望ましいことだと思います。ただしかし、それに対して時期的なものがある、速度がある、速度を誤まりますと昨年のような異常状態を招来する、問題は速度の問題だと思います。先ほど経済に対する対策として、成長の度合が非常に上昇の強い際には、ある程度ブレーキをかけなければならぬ、またしかし下降状態であるときには支えを必要とするということを申したのでございますが、これはこういう点についての私の所見でございます。
  48. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、あなたのおっしゃることはわかるのですが、少くとも昨年度から今年度への経済の動きをずっとわれわれ分析してきておるその流し方というものは、とにかく過剰投資ということが原因になって国際収支が赤字になっておる、転落してきた、これを何とかして国際均衡を保たなければ非常に日本経済が危いから、従って国内均衡を若干犠牲にしてでも、国際均衡を優先的にまず保つように努力をしよう、そういう方針である、こういうことをわれわれは昨年の通常国会以来ずっとくどくど前大臣、あるいは岸総理大臣を通じて伺ってきているわけです。そういう分析とちょと私は受けるニュアンスが違うのです。それですから、私はお伺いしているのです。
  49. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国際収支の赤字、これが日本経済の当面した症状とでも申しますか、症状として出てきて、非常に危険な様相だということで、心配された国際収支の赤字は、一体どういうところに起因しているか、これが私が先ほど来から申したようなことから出てきておる、これは一つの例をとって見ましても、非常に原材料の輸入が旺盛だ、これがアメリカに対する、対米貿易から見ても、昨年などは非常に輸出入がアンバランスであり、十億程度の輸入増加であるというようなことが、今申し上げたようなところに原因しておる、これが実は申し上げたいでのあります。現象としては国際収支がもう破局を導くのじゃないかという心配、そういうようなおそれを現出したということであります。
  50. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その点は大体わかりましたが、その次に、三木国務大臣にお尋ねいたしますが、 先ほど大蔵大臣は、IMFの代表が日本へ参られていろいろお話をした、ところが日本経済の分析批評をして、税内閣がとっておる方針が大体正しかった、こういう工合におほめの言葉があったということを聞いたのでず、その内容を私どもつまびらかにいたしません。新聞で拝見した程度でありすが、このIMFの代表の諸君が讃辞を表せられたという日本経済の分析と、われわれ日本人が批判をする日本経済の分析とは、そこに若干相違がなければいかぬ、IMFの代表が言ったことをそのままうのみにして、われわれは大へんよかったということでは、これは日本人の看板をお下しになった方がよくはないかと、私は考える。なぜかと申しますと、IMFの代表は、投資というものの保全ということを中心にして日本経済を分析していると私は思う。投資の保全ということ。ところが、われわれが考え日本経済の分析やり方、批判というものは、やはり終局的には国民生活の安定ということが中心でなければ政治論としておかしい。純経済問題ではない。広く政治問題を含めて国民生活の安定ということを考える。そういう意味で三木国務大臣はどういう工合にお考えになるか、これを伺っておきたい。
  51. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) どういうことをIMFの代表が言ったのか、よく承知しませんが、それはおほめにあずかろうが、あずかるまいが、日本経済政策としては、行き過ぎた日本経済はやはりアジアストメントせざるを得ないわけです。こういうような過程はこれはとらざるを得ない過程である。そういうことでわれわれは今の経済政策、これをとるよりほかには方法はないのだ、こう考えているわけでございます。
  52. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、今の経済政策というその中身のことでありますが、経済政策というものは、一部の資本の保全であるとか、そういうことでなくて、国民生活の安定ということが広い視野で計画せられて、それを運営していくという方向でなければならぬのではないかということをお尋ねしているわけです。
  53. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それはやはり国際的に、日本財政経済政策が国際的に信用を持たなければなりません。これは孤立した経済でないわけでありますから、従って、国際的なそういうIMFの代表者のごとき意見も、これは無視していいというわけではない、傾聴はしなければならぬが、お説のように、やはり国民生活というものを中心に、これは政治の焦点は国民生活の安定向上にあることはお説の通りであります。それがくずれてくれば、これは日本経済もくずれてくるし、国際的信用もなくなるわけでありますから、その抽象論としては御指摘通りだと私は考えます。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは誤解はないことだと思いますが、一言申し上げておきたいと思います。私の発言に関することでございますから、一言申し上げておきたいと思います。IMFは投資をする機関ではございません。(栗山良夫君「それは知っています」と述ぶ)この点は誤解はないだろうと思います。これは世界経済の動向を年次的に各国を回りまして、コンサルトしている機関でございます。今回参りましたのが第何回目でございますか、年次的なコンサルトしに来ているIMFの連中でございます。冒頭に私が今日の日本経済についての見方をし、これに対して政府のとっていることを申し上げ、さらにIMFの人が来て同じことを言っていると申しているので、これに私どもの主張と同じ意見を持つ者が他にあるということを実は申し上げて、これは別にIMFの考え方に私どもが同調しているわけではないので、むしろ調査に来ている連中が、私どもの説に実は賛意を表しているということを引用したのでございます。どうか誤解のないように願いたい。
  55. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それからこれも三木国務大臣にお尋ねいたしますが、先ほど大蔵大臣は、大体三十三年度の予算案の編成を通じて、要するに日本の国際均衡を保つためのいろいろな努力を盛られた措置というものが大体一段落して、今調整を急いでいる時期である。調整が終れば若干刺激的な政策考えないではない、こういうことをおっしゃいました。そこで将来考えられるであろう景気回復のための刺激的な政策というものは一体どんなことを構想に持っておられるか、それを伺いたい。
  56. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 刺激的というようなお話をされたかどうか存じませんが、(栗山良夫君「それは事実されました。速記録を見ればわかる。」と述ぶ)やはりある程度経済水準を維持するということは、政府経済政策の責任だと思いますけれども、従ってこの調整期は中途半端でない方がいいと私は思います。ある程度のあく抜きは必要だ、とそういうことで、それも長くはありますまい、現在の状態からみると、出荷が生産を上回ってきておるわけであります。それだけ在庫が整理されておるわけでありますから、これが数カ月後にはやはり需要と生産とが見合うような形になってきます。しかし、それ以上日本経済が非常な急角度に上昇するという要素はありません。しかし、少しは在庫も整理されてくるので、生産が上向いてこざるを得ない。有効需要というものは、大体において需要の中心である消費水準をとってみても、まあ底固いものがあるという見通しは持たれております。そういうことから考えてみましても、これは少しは上向いてくる。それはしかし非常な急角度ではない。なべ底が少し身が上ってくるという状態であると。そこで、そういうところからにらみ合せて、政府はある程度の景気水準を維持することは政府の責任でありますから、そのためにたな上げ資金のごときも、これは予定はいつかつきません。いつという予定はつかないけれども、景気の機動的な運営のために、あのたな上げ資金というものは用意しておるわけであります。必要に応じて、それは時期はいつかということは答えられるもんではない。いろんな、日本だけでなくて、世界の景気とか、今日本だけに考え得るほかに不況的な要素もございますからそのときの景気の状態もにらみ合せて、刺激といっていいかどうかも知りまませんが、ある程度の有効需要を喚起する政策は当然にとるべきだと、こう考えます。
  57. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今たな上げ資金の取りくずしのことを一つの例にあげられましたが、私はかつてあなたが政調会長であり、今経済閣僚のキャップとして、景気回復のために将来どういう手を打たなければならぬかということをお考えになっておると思いますから、それを一つ御披露いただきたい、こういうわけです。
  58. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) これは第一番にはやはり輸出増進の努力であります。これはどうしたところで、日本経済発展の突破口は輸出増進にあるのであります。これに対しては、政府も今衆知を集めて輸出振興策を検討を加えているわけであります。相当思い切りた手を打ちたいと考えておるのであります。今ここで御披露する具体策というものは成案を得ておりません。輸出振興に対しては努力を、輸出振興策を打ち立てたいと、こういうことで一つ。  それから財政の面において御承知のような、たな上げ資金のごときも、これは時期は別である、永久にたな上げするという性質のものではありません。適宜適切な政府経済政策にこれは利用すべき性質のものであります。そういう面、まあいろいろあるいはまた公共事業費などの繰り入れで支給する方法もありましょうし、いろいろなそのときの景気情勢を判断して政府が適切な手を打って、そして非常な日本経済下降せしめることのないような責任は政府が持たなければならぬと、こう考えております。
  59. 平林剛

    平林剛君 関連質問三木長官にお尋ねしますが、私は先ほど大蔵大臣質疑応答をやって、大へん言葉の使い方を慎重になさっておる政府お答えを聞いたわけであります。たとえば今度の補正予算案の中には、不況対策政策が織り込まれているのではないかとお尋ねしたところが、いやそうじゃない、経済の正常化の政策だと思うということで、あとで確めてから私どもお話があるということで、大へん言葉の使い方が慎重なのであります。岸内閣の閣僚は皆言葉づかい、そういう日本語の使い方を慎重になさっておる。今日まで論争してきた日本経済の情勢の分析について、今栗山委員質問に対して、生産調整は最終段階に入って、需要と生産がちょうどマッチする、そうして景気がよくなる、こういう方向には数カ月を要するという言葉を使っておられます。私は言葉にこだわるわけではありませんが、政府は大へん慎重にお話になっておるから、数カ月という言葉は非常にあいまいになってくるわけです。あなたは六月二十三日衆議院予算委員会で社会党の石村委員質問に対して、今のまま情勢を見て推移をしても、日本経済の潜在力があるのだから、七月から九月になると需要と生産がマッチをして、秋ぐちになると景気は改善をされていくという答弁をなさっております。秋ぐちというと、大体十月ごろのことを私さすと理解をするのであります。と、今数カ月という言葉を使うと冬に入ってしまう。そこでやはり予算委員会でお使いになる言葉と大蔵委員会でお使いになる言葉とがこういうふうに違いますと、われわれ今時期の問題を議論しているのです。今打てということと、いやそうでなくてもいいということの時期論争をやっておるのでありますから、やはり一番日本経済の中心に坐ってなるべく確実な情勢を把握して対策を立てるあなたは、なるべくあいまいな言葉を使わないようにしてもらいたい。それで責任がどうのこうのというわけではありませんけれども、二つの委員会における言葉が、数カ月ということと秋ぐちということで二カ月違ってくるわけです。もう一度その点をはっきりさしておいていただきたいと思います。そうでないと、私らここで議論していても無意味になるわけです。あとあとのことを考えて、だんだん政府の答弁が幅が広くなってきたのでは、何のために今日まで議論したのかわからなくなりますから、その点を間違いのないように一つもう一度念のためにお答えを願います。
  60. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 数カ月と申しますのは、まあものによればこれはいろいろ産業の実態が違いますから、ある産業によれば七月ごろ、まあ九月ごろまでには大体そういう状態、まだ多少それより延びるものもありましょうが、七月ごろから九月ごろまでには在庫の整理も一巡するであろうという見通しでございます。
  61. 平林剛

    平林剛君 そうすると、予算委員会における御発言は別に御訂正はないわけですね。秋ぐちになると景気は多少改善されるというふうに私は理解をいたしたいと思うのであります。しかもそれはいわゆる景気刺激策というものをとらないでも、自然に情勢を見ていけば、そうなるのだと、こういうふうに理解をいたすでありますが、それでよろしゅうございますか。
  62. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) まあ九月ごろまでに在庫の整理も一巡するから、それを秋ぐちと言ったわけであります。ただ今申したのは、需要と生産との関係はそういう形になっておる、しかしいろいろこの経済には心理的な作用というものもあるわけでありますから、これは政府が今言ったように、その間においても輸出の振興策のごときは、これは非常に積極的に輸出振興策を講じていかなければならぬのであります。じっと自然にほうっておくというわけではありません。努力すべきものは政府努力をしていく、そういう要素も加わって、まあ秋ぐちが来れば、大きなカーブでないかもしれぬが、景気は上向きにいくであろうということがわれわれの観測でございます。
  63. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 景気回復策として予想せられる点をお尋ねいたしたところが、二つお聞かせをいただきました。ところが景気回復政策というものは、今お述べになった二つ程度のものではないと私は思います。たとえばあなたが政調会長のときに、急遽発表せられましたあの減税政策ですね。これはやはり景気回復政策にはなりませんか。
  64. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やはり景気は、御説の通り、一方においては生産の拡大ということでしょう。一方においては国民の購買力というものの維持政策はこれはまあ近代の政治としては非常に重きを置かれている点だと思います。しかし減税は今年度のことではありません。明年度の減税、明年度の予算に対しての公約でございます。しかし明年度に対してはその減税によって、あるいは社会保障、そういうものが大衆の購買力をふやし、景気回復政策の一要素になることはお説の通りだと思います。
  65. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこでもう一つ聞きたいのですが、公定歩合の引き下げというのは、これは景気の回復政策ではございませんか。
  66. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) それもすでにやったことてありますから申し上げませんでしたが、これはやはり一面において、そういうことによって金利の水準が下っていくことは、投資意欲にも影響して参りましょうし、お説の通り景気振興策の一要素になると思います。
  67. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま四つ出しましたが、大体四つは景気回復政策である。しかも最初のたな上げ資金の取りくずし等につきましては、非常に慎重に、いっそういうものが行われるのか、適切な時期を選んでやりたい、こうおっしゃいました。ところが減税政策などというものは、私は大へん不可解に思っております。機会があったら一ペん三木さんに心からお聞きしたいと思っておりましたが、通常国会のときに、僕らは景気回復政策一つとして国際均衡はもとよりであるが、国内均衡を得るためには需要喚起の一翼として何としても減税をやるべきである、特に一千億の自然増収があるのだから、やるべきであるということを繰り返し繰り返し大蔵委員会等を通じまして、私自身も発言をいたしましたが、一萬田蔵相に迫ったわけであります。そうするというと、間接税の問題についてはしかるべき機関を作って大いに研究をして整理統合してやりたい、そういうつもりであるとおっしゃいましたが、その他の税の軽減についてはすべてノー・コメント、その意思を表明せられなかったのであります。これは四月末の国会までずっと続いたのです。ところが大蔵省がそういう態度をとっているのに、選挙が近くなって参ったせいかしりませんが、三木会長の方ではにわかに七百億の減税を発表せられまして、私ども実際与党が、先ほども申しました岸内閣との連絡の点について、ほんとうにどういう工合に判断していいか困った問題です。私ども選挙演説でそのことをそのまま国民に訴えて参りましたが、そういうことに対しまして、その減税政策は来年実行するとおっしゃる、長期の見通しにおいても七百億という減税をもって需要喚起をしようということでありますが、それほどの見通しがあれば、今ここでもうすでに公定歩合は下げられた、たな上げ資金の取りくずしなどということについては、わずかな金でありますから、もう少し早く結論が出そうなものであります。そういう点はいかがでございますか。
  68. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) やはりこのたな上げ資金の一つの方式というものは、一つの景気政策の一環として、こういうものは政府が弾力的に運用ができるように資金を持っておるということは、これは今まであまり例がなかったようでありますが、やはり将来の一つ方向を示唆するものだと私は考えます。そういうことで、このことと来年度から減税をして、その減税というものも、御承知のように、勤労者、中小企業という中以下の所得階層を中心とした減税で、租税政策を通じて所得の不均衡を是正するということが近代政治方向だと思います。それは矛盾をしたものだとは考えていないわけであります。
  69. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 いや、あの減税に対する理論的な立て方はその通りだと思います。思いますが、それをひっくるめて全体を外から見れば、景気回復策の一翼であることは、先ほどお認めになった通りであります。しかも私この大蔵省の中嶋さんの書かれた本を読みますと、これは三十三年版でありますが、ちゃんとそこに書いてあります。財政の面から国民経済に刺激を与えることを避けたいという観点から、経済基盤の法案を作ってたな上げしてあるのだ、こう書いてある。ところが今伺っておる所論は、もうあなたは九月からは景気は底入れをして若干上向いていって回復していくのだ、しかも昭和三十四年度の予算においては、七百億の減税をやるのだ、こうはっきりおっしゃっておる。そこまで腹がきまり、そこまで強い見通しをつけておるならば、この経済基盤の中に盛られておるわずかなたな上け資金の取りくずしくらいのことは、この中嶋君の本でも刺激を与えないということを一つ条件にして、こういうものを作ったと、はっきり二百五十円かで売っておる本に書いてあるのですよ、ですから当然あなたそうすべきじゃありませんか。
  70. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今、やはりいろいろ批判はありましょう、しかし行き過ぎた日本経済というものは、ある程度調整をしないと、中途半端なものになってくると、その矛盾というものはやはり将来に持ち越される。在庫というものもそうです。必要以上に在庫をかかえていくということは、これはやはり経済の正常な姿ではない。そういう点でこの際――それは予算のワク内ですることはよろしいですよ、しかし補正予算を組んで、この三十三年度予算を取りくずして、それでここに有効需要を喚起するというようなやり方は、この調整期において、つまり一つ財政経済政策そしては、政府は適当だとは思っていない、こういう考え方でございます。金額は大した大きいものではないとしても、この調整期にそういうふうな形で補正予算まで組んで、有効需要をつけるということに対して政府は同意できない。
  71. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで私は本論に戻りますが、政党内閣として、あなた方は過日の総選挙選挙の公約を発表せられました。従ってこの選挙公約というものは、やはり公党の責任と義務において、誠実に実行せられるものであると私は確信をいたしております。従ってこれはいつから実行いたしますか。
  72. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この選挙公約は予算に関連する事項が多いわけであります。それでこれは明年度の予算に計上されなければ実行は不可能でありますから、まあ予算に関連のないようなものもありましょうが、いわゆる選挙公約なりとして国民が自民党内閣に対して実行の責任を負わしておるような選挙公約というものは、大部分が明年度の予算編成を通じて実行さるべきものである、こう考えております。
  73. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、少くとも経済的な措置を要する選挙公約というものは、本会計年度においては出ない、明年度からである、こういう工合にはっきり確認してよろしゅうございますか。
  74. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) そのように考えております。
  75. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうしまするというと、ここで問題になるのは、この経済基盤の強化の法案を今審議しておるわけではありませんが、いずれこれに関係するわけでしょう。関係するわけでしょうが、(笑声)問題は非常に重要な問題だと思うのです、今の御発言というものは。そこでですね、もう一度、くどいようですけれどもお尋ねしておきますが、この秋開かれる臨時国会に、少くとも補正予算は提出をしないと、するべきものでないと、こういう私は結論になると伺いますので、この点は、先ほどの川島幹事長きわめて潜越で、みずからの党から送っている国務大臣の足をさらうような言明を、一夜のうちに突如として行うなどということは、きわめて不謹慎でありますから、それで、先ほど大蔵大臣、三木国務大臣も党へ帰ってよく相談をして返事をするというお話でありましたが、その返事の内容は、与党、大蔵省、経済企画庁とよく相談の上、三十三年度の会計年度中においては補正予算の提出はしないのである、こういう工合にはっきり態度をきめて、ここへ御出席を願って、われわれに御答弁を賜わりたい、こう思うわけであります。
  76. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 私は、栗山さんの今のお話は無理だと思う。これはやはり、経済状態の変化も激しいときでありますから、何をしないとか、するとかいって、政府を拘束することは、政治のやっぱり弾力性を失わす。だから、今のところは、政府としては考えていないのでありますが、必要があればそういうこともやることもあるのだということでなければ、補正予算は臨時国会を開いても絶対に組まぬのだということで拘束することは、政治の弾力性を失うことで、その約束はできぬと思います。
  77. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 お約束していただくのが無理であれば、これは強要するわけにいきませんが、そうすると、その可能性のパーセンテージはどれくらいですか。(笑声)出すと出さないとの可能性のパーセンテージ。
  78. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 今は可能性は考えておりませんが、しかし、それは今申したように、そういう状態が出てくれば、政府の情勢判断において、そういうこともあり得るということで、現在大蔵大臣もそういうふうな御答弁であったと思いますが、補正予算を九月に臨時国会で組むのだというふうな考え方は、今ここで持っていないので、そういうふうな政府の意思はきめておらぬわけでありますが、今申したように、必要に応じて、そういうこともやる必要があったらやらなきやならぬのでありますから、何と申しますか、可能性のパーセンテージというものは、ちょっとお答えすることはできません。
  79. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは種あかししてしまえば何もないことになりますが、例えば、あの経済基盤強化の法案ですよ、あれを、本会計年度内においては補正予算は絶対組まぬ、こういうお約束をいただけるならば、これは私筋が通ると思うのです、取りくずしをしないであのままいくということで。ところが、あれは通す、臨時国会には補正予算を出すということであれば、これははなはだもってロジックの合わないことになる。これは全く支離滅裂ですよ。あれの法案を出した通常国会における衆参両院における速記録を綻んでごらんなさい。そんな公定歩合の引き下げをやったり、減税をやったり――輸出振興はありましたが、これは私触れませんけれども、そういう景気回復政策は絶対やらないのだ、こういう強い表現のもとにあの法案は出ている。そちらの方はくずしてしまって、しかも本会計年度内においてやるということであれば、あれを審議する意欲というものは、われわれはなくなっちゃう。その点について賢明な政策のベテランである三木元自由民主党政調会長は、矛盾をお感じになりませんか。
  80. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) いろいろお話を承わっても、今、九月に補正予算を組んでこれをくずそうという意図を持っておるわけじゃないのであります、しかし、それを絶対にやらんかと言われたときに、やらんのだと答えることは、このたな上げ資金の本来の性質を抹殺する。そういうことで、これは必要が起ればそういうことも考えるのだが、今のところは九月にこのたな上げ資金をくずすために補正予算を組むという意図はないのであります。必要が起ればそれもやり得る自由だけは持っておる、こういうことであります。
  81. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これからあとはこまかい財政経済の問題になりますから、後刻に譲りまして、大体、私、何となく何かキツネにつままれたような格好で、よく理解できません。やっぱりあなた方の頭が数段いいわけでありましょう。(笑声)よくわかりませんが、まあそれはそれなりに承っておきます。  そこで、問題は、今度この書物のことでちょっと伺いたいのですが、その前に、国家公務員というものは――これは一般職でありますが、国家公務員というものは、その仕事をやっていく上におきまして、どういう態度でやっていかなきゃならんのですか、これを伺いたいと思います。
  82. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 発言中ですが、三木経済企画庁長官は、御質疑を済まして、午後は大蔵大臣見えますから、この場所をはずさしていただきたいと思います。
  83. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今の私の質問ですね、あまり簡単過ぎてよくおわかりなかったろうと思いますから、日本国憲法の第七十三条「内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。」というのがあります。そこの第四号で「法律の定める基準に従い、有史に関する事務を掌理すること。」とあります。これは一体どういうことかということを伺います。
  84. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも、私も法科は卒業いたしましたが、ずいぶん古いことであり、今この解釈をやりましても、なかなか有権的な解釈はできないと思います。これで一つ……。
  85. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それでは、これをちょっとお持ちになっていないだろうと思いますけれども、ごらんいただきたいんですが、二百五十一ページの「国土の防衛」というところがあります。これを読みまするというと、最初の方は私どもへんにうれしくなって拍手して読んでいたんです。原子力の解放、人工衛星の出現、その他、究極兵器ができて、世界戦略というものは大きく変って、もう世界戦争はない、もしそういうことを考えるやつは神の英知を持たない者である、というようなことが書いてありまして、まあとにかく世界戦争はないんだ、そうしてしかも、世界の世論はだんだん局地戦争に限定するように努力されている、これが二百五十二ページまでずうっと書いてあります。私この意味においては全然意見はございません。ところが、そこで突然変異が起きまして、その中段のところです、上から九行目。「人工衛星が次々に乱舞する宇宙時代に入った今日、世界大戦はなくなったとか、原水爆の時代に国防は無用であるというような意見もきかれるが、これは現実をはなれた空論といえよう。」と書いてある。前段からそこまでわれわれが拍手を送るような論文を書きながら、どうしてここで突然変異のような考えが出てきたのか、われわれは非常に理解に苦しむのです。で、このことはまあこの内容から筆者と私が議論すればいいが、そうじゃなくて、これは大蔵大臣の部下ですから大蔵大臣に伺いたい。しかもこういう書物は主として経済関係のものに随所に出るのです。ですからこれは三木国務大臣にもお聞き願っておきたいのだが、そもそも憲法に定めるところの官吏というものは、国家公務員法によって規制をされておる。従って国家公務員法によって規制をされている問題はたくさんありまするが、まず私ちょっと読んでみますると、国家公務員法の九十六条には服務の根本基準というものがあります。「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」と書いてある。これがもとになって人事院規則ができているわけですが、そういう精神に沿っているかどうか。これは今指摘いたしました点をよくお読みを願って御返答願いたい。たとえば、なぜそういうことを私が申し上げるかといいますと、この筆者の二百五十三ページの上段までの思想はその通りであるし、私は非常に賛成するわけですが、そこで突然変異のように起きてきたこの言葉というものは、きわめて政治的である。一党一派に編してはいかぬというのが国家公務員の立場である、そういうことであるからあなた方は――これは非組合員ですよ。組合員である国家公務員、団結権を保障されている組合員に向ってはあなた方はしばしば警察権を使ってずいぶん弾圧された。お前たちは国家公務員として政治の中立を守っていないじゃないかとやられるが、この文章に書いてあることは、これは明らかに政治的な自由党内閣支持ですよ。はっきりしている。しかも私はなはだ納得ができないことは、「無用であるというような意見もきかれるが」という、これは意見じゃないですよ。この間の衆議院選挙の結果どうでしたか。あなた方の取った票は二千万票足らず、わが日本社会党の取った票は一千二百万票です。これだけはっきりと神聖なる投票を通じて、わが日本社会党の終戦以来の平和に対するところの意見というものは支持者があるのです。それをさらに言葉をついで、「これは現実をはなれた空論といえよう」といっている。こういうことを一公務員がこの二百五十円で売る本に書いていいですか。しかも表には何と書いてある。大蔵省大臣官房調査課長中島晴雄と書いてある。大蔵大臣の所信を伺いたい。
  86. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 栗山委員はこの本を最初から最後までよく読んでいらっしゃる。実は私はまだこの本をよく見ておりません。この本は一体どういうような政府自身が権威づけているのか、まあこういうことが一つの問題になるのだと思います。ただいま御指摘になりましたような点、これ自身はおそらく中島君個人の著作にかかるものだと思います。個人の思想、これを他からいろいろと批評することは、これは私ども今の建前でいかがかと思います。ただ公務員であります以上、国の秘密といいますか、自分の掌理しておる業務についての秘密といいますか、機密、これはもちろん保持しなければならない。しかし公務員自身の個人の思想の中身にまでタッチすることは、これは人権を無視することであるし、そこまでの自由を拘束してはいけないと思う。ただいまこの思想についての御批判が主体でございましたので、批判なさることは、これまた御自由だと思います。同時に私も大蔵大臣としてこの個人の思想にまで実はタッチすることはできない。かように私は考えております。これは問題は肩書がついておりますために、大蔵省が特に監修し、あるいは編集し、あるいは実かせたかのような言い方をしておられますけれども、これはおそらく個人を紹介する意味の経歴が載っておるだけでございまして、ただいまのような御議論は必ずしも当らないのじゃないか、私はこの程度のことは、中身のことはわかりません。わかりませんが、公務員としてもりっぱな思想の自由は持っておるのじゃないか、かように考えますので、これについての責任という点は、私は別に私どもと直接関係はない、かように考えております。
  87. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私は中島晴雄個人が個人の名前で筆を取って発表されておる点については一向追及いたしません。これははっきり申し上げておきます。追及いたしません。これは先ほど定価を二百五十円と申しましたが、間違いであります。三百八十円であります。(笑声)この書物は東洋経済新報社から出されておるものであって、「日本財政」として大蔵省が毎年発行されておるもので、大蔵省の内部で、しかも執筆者が、編となっておりますから、おそらく各担当部局の方が全部英知を集めて忙しい業務のかたわら執筆をされたものであると思う。その意味においては大へん敬意を表しますし、私ども毎年これをいただいて通読しておる。不勉強でもこれくらいはやはり拝見しなければいけないと思って通読しておる。しかもそういう書物の中に、われわれの不愉快と思うようなことを書かれるということは、これは何としても慎しむべきものであろうと私は思いますよ。特に今個人の自由とおっしゃいましたが、これは佐藤大蔵大臣にもう少し読んで御披露申し上げておきますが、国家公務員法の中にあるものとして、人事院規則には、政治的な行為というものを規制しております。政治的な行為、これは昭和二十四年九月十九日施行であります。その中にはどういうことが書いてあるかというと、「特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに、反対すること。」、これはいけないと書いてある。それから政治的行為の定義という中には、「法第百二条一項の規定する政治的行為とは、次に掲げるものをいう」と、一つとして、「政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること」はいかぬと書いてある。これは職名がちゃんと入って書いてあります。それから最後に私は、そういうことでありまするから、別に思いつきでこれの問題について発言しておるわけではございません。この間読んでみて、あまりにも奇異に感じました。そういう文章そのものがおかしい。最初の方とそこでぱっと変っておる点はおかしい。それだけでも筆者は訂正される義務があると思いますから、大蔵大臣そこで読んで下さい、短いものですから。それでそういう状態にあるときでありますから、私はいろいろなことを調査いたしまして、これは穏当であるかないかということを調査したのであります。そして穏当でないという自己判断をいたしましたから、大蔵大臣の耳にも入れ、また三木国務大臣にも、こういうものはしばしば各官庁で発行されますので、そういうことのないようにしていただきたい、こういう意味で私は申し上げておる。特に人事院規則には「各省各庁の長は、法又は規則に定める政治的行為の禁止又は制限に違反する行為又は事実があったことを知ったときは、直ちに人事院に通知するとともに、違反行為の防止又は矯正のために適切な措置をとらなければならない。」と、こう書いてある。この条文は、あなた方が、官公労に入っておるいわゆる団結権を保障されておる組合員にだけ適用されるのではなくて、非組合員といえども一般職である限りにおいては、全部包括されるわけですから、片手落のないように一つ処理を願いたい。こういうことを私は申し上げておるのです。今大蔵大臣の言明を聞きまするというと、思想は自由であって、これくらいは書いても一向かまわないという話でございましたが、そういう御答弁をいただくとすれば、私はこの追及はしばらく保留をいたしまして、さらに党にも相談をして、そして問題にいたしたいと思います。
  88. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) だんだんこの「日本財政」、まず第一のはしがきを開いて読んだのですがはしがきに「本書のなかに意見にわたるものがあるとすれば、それはすべて編者個人のものであることを御了承願いたい。」、これははっきり断っておる。ただいま御指摘になりましたことは、編者個人の意見にわたるものであるということ、かように私は考えております。  なお、公務員法のお話を、条項を引用されたのでございますが、政治目的のためというはっきりした目的が明示されております。そういうことは公務員として許されておらない、この本自身が政治目的のために書かれたものとは私思いません。従って個人の意見、これはただいま栗山さん御自身が賛成できぬと言われるように、おそらくこれを読む人によっていろいろの批判がある、こういうものは賛成できない、これは前段はおれは賛成だけれども、後段は違う、文章はなっておらぬ、これを御批判なさることが御自由であるように、やはり個人の意見が書かれることは、今言われるような公務員法云々には私は該当しないものだと思います。
  89. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、そこはあなた方と私ども意見の食い違いがあるから、これ以上議論をしてもしょうがございません。少くとも国家公務員の常識というか、道徳というか、そういう観点から一歩譲って考えて見た場合に、かりに筆者個人の見解のものであるから御了承願いたい、こう言われましても、官姓名を除いてある個人の著作であるならば、何をお書きになっても追求しません言っておる。これだけりっぱに官姓名を書き、しかも、編集者としての責任の態度を明らかにしておられるその限りにおいてはよろしいのですけれども、そういう立場において、ほんとうの個人、肩書きのない個人で本を著わすときと同じような態度で何でも書いてよろしいか、国家公務員としてこういうものは書いてよろしいかということになると、これは非常に私は議論が分れると思う。だから大蔵大臣が、今事もなげにおっしゃいましたが、そういう簡単なものでは私はないと思う。いかがです。ただ特に文章の突然変異のようにぱっと飛躍しているところのごときは、これは御本人に忠告をしなければいかぬと私は思いますが、そういうことを書いてそのまま堂々とこれがあちらこちらへ、あたかも大蔵省の意見であるがごとき錯覚を起すような格好で出されていくということはよろしくないのではないか、こういうことを申し上げているのです。だからもう少し筆をとるときに慎重であらねばならぬのではないか、こういうことを申し上げているのであります。
  90. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) よく御趣旨はわかりました。またおそらく公務員といたしましても、そういう思想というか、意見を吐くことの自由は御了承いただけたことであろうと思いますが、ただ問題はその発表の形式その他において、もっと慎重であるべきだ、この点は私もそういう点については同感でございます。よく本人にも扱い方の問題として、これは内容の問題でなくて、意見やあるいは思想の問題じゃなしに、扱い方の問題として研究の余地があれば、よく私相談をしてみます。
  91. 前田久吉

    委員長前田久吉君) それでは一たん休憩いたします。    午後零時四十四分休憩    ――――・――――    午後二時二十三分開会
  92. 前田久吉

    委員長前田久吉君) では、ただいまから委員会を再開いたします。  午前に引き続き、財政一般について質疑を続行いたします。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 午前中の審議に際しまして、川島幹群長談話、これらについてのお尋ねをいただきまして、私全然川島幹事長から話を聞いておらないのでありまして、審議に支障を来たしたやに見受けたのでございます。大へん遺憾に思います。先ほど川島幹事長と昨日の記者会見の模様を詳しく聞き取ったのでございます。その話によりますと、御承知のように総理の外遊、この問題から記者諸君からいろいろ質問を受け、外遊するならば、臨時国会を開く時期、その時期をはずすのであろう、で社会党側も成規の手続により臨時国会の召集を要求されておるようだから、そうすると政府はその前に、外遊をはずした時期に国会を召集することになるんじゃないか、まあそういうところから、九月云々という時期の問題が出た。そして開く以上、一体何を議するのか、補正予算を出すのか、こういうことらしいのですが、もちろん川島君も予想しなかったことらしいのです。で、けさほど私が想像いたしましたように、要すれば、補正予算も出したいというような話をしたということであります。そこで、要すればという――どういうことをね予想して要すればと言ったのかと重て伺ってみますと、御承知のように、ちょうど今から台風時期に向って参りますが、過去におきましても数回災害等をこうむり、災害対策としての補正予算を組んだこともあるので、まず考えられるものは、この災害に対する対策だというような意味に一応考えたと、今日当面しておる経済問題について、特に補正予算を組むというような考え方お話をしたわけではない、いずれにいたしましても、まだ構想のできておらない話であり、問い詰められたと申しますか、問い詰められた結果、かような話をして、各方面に事態についていろいろ誤解等を受け、まことに残念だったと、こういうことでございます。この点で川島幹事長の真意を確かめましたので、皆様方に御披露いたしまして、御了承をお願いする次第であります。
  94. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 その経過はよくわかりました。問題は先ほど三木国務大臣もおっしゃったのでありますが、さらに事態が明白になったことは、天災等のことはもちろん補正せられるべきでありましょうが、そうでなくて、純経済問題で予算を補正することはただいまは考えていない、こういうことでありまするから、従って、川島幹事長のお考えというものはよくわかりました。先ほどの三木国務大臣お話とも勘案いたしまするというと、そこでわれわれが想像できるのは、この秋行われる臨時国会には、少くとも経済政策の公約を実行するための補正予算というものは考えておられない、こういう工合に受け取れるのであります。そこで、それはそれでありますが、予算編成権をお持ちになっておる大蔵大臣としてはどういうお考えであるか、これを伺っておきたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今川島幹事長の国会召集についての所見、これを御説明いたしたのでございます。国会召集はもちろん政府が決定する問題でございますし、ただいま社会党からも開会要求というものが出るというように伺っておりますが、当然それが出ますれば、法規に基きまして召集しなければならない。ただその召集する時期が、川島幹事長が申しておるように、九月の中旬だとか、下旬だとか、これが決定されておるわけのものではございません。この点は誤解のないように願いたいと思います。成規の手続があれば、もちろん開かなければならない国会ではございますが、その召集の時期は政府自身が決定すべき問題なんであります。まだその点は政府の意思決定がないと申しますか、まだ話し合いをした段階でもございません。下話が出ておるというような段階でもございません。この点はまず前提として誤解のないようにお願いいたしたいと思います。  それからもう一つ、いずれにしても開かれるだろう、時期は九月になるかいつになるかは別として、これはもう成規も手続があれば、どうしても開かなければならないのですが、その開いたときに一体どういうようなことになるのか、補正了算は必ず出さないのか、必ず出すのか、こういうお尋ねだと思います。まあ先ほど三木企画庁長官の話も、また私の話も、その点では一致しておると私は理解いたしたのでございますが、これは必ず出すとか、絶対に出さないとか、こういうような話は三木君の話の中にもなかった。従いまして、出すということがない以上、出さないということじゃないかと、こう理屈をお詰めになりますが、積極的に出すとか出さないとかという問題がまだきまらないのでありますから、その点は誤解のないようにお願いをいたしたと思います。三木君なり、また予算編成の担当省である大蔵省として申し上げ得ることは、今の経済情勢は調整の時期に入ておる、いましばらくその推移を見る、推移を見た結果、これも要すればというか、必要があるなら、予算補正をやるということも考えなきゃならぬでしょうし、また事態の推移から見まして、さような措置をとることが不適当だと考えますならば、補正予算は出さない、こういうことにもなると思います。ただいまのところ、もう少し経済の推移を見るという、その点に実は重点を置いておりますので、推移の経過を予想して、右になればどうするとか、左になればどうするとか、こういうことを申し上げる段階でないということを、けさほどから御説明申し上げておるのであります。どうかその点誤解のないようにお願いいたします。
  96. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大蔵大臣としての御所信もこれで明らかになりましたが、そうすると、私どもとして大へん注意をしてもう一ぺんお尋ねをしておかなければならぬことがあります。それは先ほど三木国務大臣がおっしゃったように、昭和三十四年度の通常予算には七百億の減税を行うということをはっきりされました。それから過日公定歩合の引き下げが行われたこともこれは事実であります。従って、それらのことが行われました背景というものは、経済の見通しがそういう刺激政策、景気振興政策をとっても十分日本経済は混乱を起さないでやっていけるのだ、こういう認識の上に立っておいでになると思います。従ってこの公定歩合の引き下げを断行した、昭和三十四年度の減税断行するその中間に今度臨時国会が入ってくるわけであります。その臨時国会にどういう態度をおとりになるかということは、非常に慎重に推移を見なければならぬとお考えになっておりますが、これはちょうどまん中でありまして、推移を考えなくても、おのずから結論として私どもはお出しになれるのじゃないかと思います。公定歩合の引き下げをおやりになった、三十四年度には七百億の減税をやって日本経済は一向差しつかえないのだと、こういうように結論が出ておるのに、今臨時国会問題が起きたときに、なぜ補正予算が必要でないのか、これをはっきりおっしゃれないのは奇異に思います。従って私はあなたの先ほどからの御答弁を伺っていると、補正予算を出さないとも言わないし、出すとも言わないとおっしゃるのですが、裏を言えば、出すこともあるし出さぬこともあるということになります、大へん不可解に思います。
  97. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今結論として栗山さんが御指摘になるように、出すこともあるし、あるいは出さぬこともある、この結論には間違いございません。そこで一体公定歩合の引き下げを断行した、それでまあ一段落ついた、次に公約事項、その間に何もやらないのか、こういうお話でございますが、今回経済基盤強化のための資金及び基金に関する法律を出しておりますが、これが今三十三年予算編成の際の一貫の施策でありますので、まずこれをぜひとも御協賛を経て成立させたい、これで大体三十三年度予算編成当時の問題は一応片づく、ただいま御指摘になりました公定歩合もなるほど二厘引き下げを行いましたが緊急対策といたしましては、公定歩合は三厘引き上げる、その一部を実は下げた、これも下げたことがいろいろ不況対策ではないかとか、あるいは金融緩慢に対する需要喚起じゃないか、こういう見方もあるようでございますが、私並びに日銀総裁などの見るところでは、金融の正常化という表現をいたしております。これは前回の金利の引き上げ自身が緊急措置緊急対策としてとられた、経済状態が正常状況になるならば、金利は正常なものに下げてゆく、いわゆる金融の正常化政策をとる、こういう考え方で実は行なったのであります。なるほど結果から見ますれば、資金に対する需要は金利が安くなれば、これは増すというまあ普通の理屈は一応あるかと思います。ただしかし、今回下げた金利がしからば需要を喚起する程度に強い引き下げ方かと、こう申しますと、必ずしもそうでもないだろう。ことに日本国内の金利、これは古い歴史というか、経歴は積んではおりますが、国際的な金利水準に比べてみますと、なお非常な高水準である。今後経済の正常化が進むにつれ、いわゆる調整の時期が進むにつれ、金利の問題といたしましても、国際水準に近いものに持ってゆくということ、持ってゆき方なり、その時期なり、これはもちろん問題があると思いますが、これは工夫しなければならない問題でしょう。ことに、輸出振興ということに強く力を入れて参ります以上、外国の安い金利のもとで生産され、安い金利のもとで貿易が進められておるということを考えますなら、やはり貿易の競争に負けないように当方も考えていかなければならない。そういうように考えますと、公定歩合の引き下げというものは、緊急対策としてとりましたおもしの一つを、まず不十分にとったと、そのおもしも完全に前の状況に、もとの状況に返すものじゃない、一応この程度ならば、金融の正常化という観点に立ち、また経済の堅実な推移、そういうことにも支障を来たさないということで、まず一応取り上げたのでございます。  で、今後経済の推移を見ていかなければならない幾つの問題があると思います。輸出の問題もそういうことでございましょうし、国内需給調整の問題もございましょうし、さらにまた三十三年度予算の実行に当りましても、いよいよ第一・四半期を過ごして第二・四半期に入るとか、こういうようなところからいろいろ予算の実行に当ってどういうように経済の面に影響が来ているか、こういうようなことも考えなければならない。まず大事なのは、そういう点の経過を見るのが第一番、そうしてどこまでも経済は健全でなければならない、そうして着実な発展でなければならない、そういう観点に立っていろいろ推移を見てゆく。従いまして、今日国会自身の開会の時期も未確定と申すと、それは非常に言葉が不適当かもわかりませんが、必らず開かれるだろう、ただその時期がいつの時期になるかということについて、もう少し問題が残っておる。そういう事態に開かれるといたしましたら、来年度の予算編成の中間に行われる臨時国会だから、何らか手を打てと言われることもわからないわけでもありませんが、私ども政府当局といたしましては、経済の推移をもう少し見て、そうして開かれた臨時国会でいかなる措置をとるか、これをきめて参りたい、かように実は申しておるわけでございます。
  98. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいまの御答弁の中で、言葉を返すわけではありませんが、公定歩合の引き下げについての御所論は、私はそのままちょっとちょうだいいたしかねる二、三の問題点があります。それは金利、いわゆる適正金利論としてあなたがおっしゃったことは、それはその通りでしょう。しかし、そういうことがありながらも、公定歩合をあるいは引き上げをし、あるいは引き下げをしたということは、やはり日本の神武景気のあとに迫った外貨の赤字を始末するための一つ政治的の方便としておやりになったんで、でありますから、従って先ほど三木国務大臣がおっしゃった通りに、景気振興政策でありますと、今度公定歩合を下げたのは、景気振興政策であるということをはっきりおっしゃったのでありますから、そういう意味での御認識をいただきたいと思います。  それから第二の問題は、金利の引き下げで、輸出貿易振興のためにやはり低物価政策は必要だということをおっしゃったのでありますが、これもただいまの輸出貿易輸出関係を考えてみれば、日本物価が割高だから輸出できないのじゃないので、外国の経済が不振で、そして購買力が落ちている、そういうことが原因で日本物価が依然として安いために、アメリカ等においてはボイコットを受けておるわけでありますから、これも大へん認識が相違していると思います。従ってそういう点のことはもう少しよく掘り下げてお考えいただくとしまして、僕がどうしても納得できないことは、先ほどあなたは通常国会からの一貫政策として経済基盤の法案もぜひ通過させたい、そういうときに。今臨時国会がかりにあるとしたときに、それに対して予算補正を云々するということはまだ考える段階ではない、こういうことをおっしゃいましたが、通常国会のときに経済基盤の法案が提出された当時の経済事情と今日とは、もうがらっと変っていることはあなたもお認めになっておるわけであります。あのときにはいかにして不景気を作るかということが中心になって、三十三年度の通常予算を組まれております。不承気を作るというのは非常に言葉が悪いのですが、要するに縮小均衡をやろうということで組まれた、今の場合は先ほどからのお話ではっきりしておりますように、もう底へきてこれからは上向きになる、三十四年度には七百億の減税もあえて行える、こういう状況になっておるのでありますから、そういうときに依然として一貫政策としてやらなきやならぬとおっしゃる意味はわからない。ここが一番の問題点なのであります。われわれが今ずっと議論の焦点をしぼってきているのはおわかりいただけると思うのですが、ここなんですよ、そこのところを明確に大蔵大臣は言明をしていただかぬと、前進しないと思うのです。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来、実は今御指摘の点について私がお話をしたつもりでございますが、あるいは言葉が足らないためになお御了承を得ることができなかったかと思います。私が申し上げたいのは、今日経済状態は底をついた、そして同時にこれはこういうような変化を生ずるであろうということを一応想定して三十三年度予算を作った、その三十三年度予算の一環としてただいま御審議をいただいている法律案もあるわけでございます。この底入れ状態をいましばらく推移を見ないと、底入れになったから直ちにこれから上向きができはしないか、こういう御議論と、もうしばらくその期間をみる必要がある、ここにまあ意見の相違があると思うのです。これは一つの例にとって説明をしてみれば、たとえば腸チブスになって、非常な熱も出るし、なかなか口からは食物をとるわけにはいかない、幸いにして腸チブスに対する手当を講じて、その結果病気は快方に向ってきた、快方に向ってきても、やはり滋養を摂取する場合でも、まず流動物から始めていくように、この辺なら運動してもいい、かたいものを食ってもいいというときに初めて運動をさせたり、かたいものを食わして、これはもう腸チブスの病後、健康を回復するようになっていく。で今の状況は一応その腸チブスの病気自身は手当――経済自身の病気は緊急対策、並びに三十三年度予算で一応とまった。とまったから、もともと経済を成長さすのが目的だから、この際一つ滋養分である財政措置一つとってみよう、こういう御議論と、私どもはこれは病後だからもうしばらく模様をみたい、そうしてかたいものを食っても大丈夫だというときに財政措置を必要ならとったらどうだ、もうみずからの力で健康を回復するような状況であるなら、あえてそれをとる必要もないのです。しかしながらそういう病後の回復、これをできるだけ早くする必要がある、あるいは一そう健康を回復さすためにはこうしたい、そういう時期の見方の問題だと思います。今日の経済状態調整の時期に入っていると申しますが、調整の時期に入っているということは、とりもなおさずいわゆる病気の根源はいやすことができたが、なお次の段階、次の飛躍をするための準備期間、あるいは蓄積期間とでも申しますか、そういう状況ではないかと思います。  そこで私どもが申し上げたいのは、今経済情勢の推移をみる期間は、やはり三十三年度予算編成のときの構想をそのまま持続したいし、やっぱり経済基盤の法律案も一応成立させていただきまして、さらに次の段階で、要すればこの経済基盤の資金だってこれは長い間このままにしておく考え方のものでもないのですから、そういう必要ができれば、そういう際に考えていこうじゃないか、こういうことを実は申し上げておるのであります。
  100. 平林剛

    平林剛君 補正予算のことについて私午前中質問をいたしまして、その事情は今御説明をいただいたわけでありますが、どうも額面通りに受け取れないのです。大体来るか来ないかわからない台風のことを予想して、かりそめにも自由民主党の幹事長が、それは新聞記者諸君の誘導尋問にかかったといたしましても、補正予算を出すと発表をされるような言葉を与えたことは、私はいなめないと思います。ですから、今の御説明があったように、台風の時期であるからその災害対策だというようなことは、いやしくもあなた大蔵大臣がついていて、経済政策をこれから背負って立とうというあなたがついていて、内閣と政党は違うとはいうものの、やっぱり経済閣僚の一人がついていて、こういう発表をやらせる、これは話はあべこべだと思いますけれども、額面通りに私は受け取ることはできない。今のお話は、大へんいろいろな法律を審議中のときに、不用意にこの言葉が漏れたことは困ったことだというのでつじつまを合せているとしか私は聞けないが、しかしこれはあなたの説明通り、一応聞くにいたしましても、それならさらに一歩進めてお尋ねいたしますが、補正予算は絶対に出すとは言えない、またその逆に絶対に出さないとも言えない、こういう態度であるということが結論的に御説明がありましたが、それでは補正予算を出す、あるいは出さないということをきめる基準はどこにおいて御判定なさるのか、大蔵大臣は、現在の経済不況を私どもがみるほど深刻には考えておらない模様でありますが、しばらく様子をみたいというお話ですが、一体どこの様子をみていくのか。すなわち補正予算を出す出さないの基礎になる条件ですね、どこの様子をみていて、どういう工合になったならば補正予算についても明確な結論をお出しになるのか、この根拠を御説明願いたい。まあ私は、あなたが政治的に発言されて、勘だけのお答えではがまんできない。やっぱりお互い心配しているところですから、どこに基礎をおいてその判断をおきめになるのか、これを一つ明らかにしておいていただきたい。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはなかなかむずかしいお尋ねだと思います。まあもともと必ず開かれるであろう国会、しかしその時期が明確でないその国会、それに対して補正予算を出すとか出さぬとかいう議論をしていること自身が、実は答弁を非常に困難ならしめておると思います。ただ、私不用意に申したわけではない。要すれば補正予算を出すということを申しました。そういう意味で、要すればというのはどういう意味だというお尋ねだと思います。これはあるいは議論に終るかもわかりません。また、けさほどの御質問で、補正予算を出すか出さないか、どういうパーセンテージか、こういうようなお話でございましたが、そういうことと関連して申しまして、別にこだわって私申すわけではございませんが、今災害のお話をしました。これはもう過去にもそういう例もあることでございますから、こういう事柄が全然ないとは、これはだれも言えないし、必ずあるとも、これも言えないことだと思います。それからさらに、この国会で御審議をいただいております繭糸価の安定の措置の問題、これなどは、今回の法律案で補正予算を必要としない解決条を出して参りましたが、今後経済の推移等を見て参りますと、場合によれば、そういう意味でも、どういう事態が起らないとも限らない、こういうこともそれはやはり念頭に入れておかなければならぬと思います。また社会党の方々がよく批判される問題にも、失業者が非常にふえるじゃないか、こういうお話がございますが、しかし、三十三年度予算においては、失業者はある程度ふえるだろうけれども、そういう想定のもとに、いわゆる失業対策事業費をふやしたり、一般公共事業費をふやしたり、あるいは失業保険等についても一応の見当はつけて参っております。こういう点から見れば、別に特に対策を必要とはしないと考えております。しかし、他の方面における経済調整が順調に進んでいき、経済がさらに発展していくような段階になって、あるいは貿易状況が非常に伸びる、あるいは思うほど進まないというような場合があります際に、経済を維持していく上においては、国際貿易の面と国内需給の面とやはり二つを考えていかなければならない、こういうようなことが、今後の経済の推移から、いかなる処置をとるべきかという一つの問題を提供してくるのじゃないか、こういうことを申すわけでございます。ただいま、ただ単に議論あるいは意見程度にしかなっておらぬ、これを前提にされますので、ただいま申し上げるようなことを私の意見として申し上げておる次第であります。
  102. 平林剛

    平林剛君 補正予算を出す条件が、台風が来たらという一つのことは、これは明白であります。しかし、今こんなことを議論しているということはまことに無意味なことであります。私は問題は、やはり現在の経済情勢の変化によって、次に打つべき手は政府としても当然変らなければだめだ。われわれとしては、むしろ今のうちに出すべきだという主張をしておったのでありますが、これは政府と見解を異にするのでありますから、繰り返しては言いません。ただ、もっと大蔵大臣としては、明確な基準というものを考えられて、そして正確な把握の上に立って補正予算国民的立場から出すという考えを持っていただきたい。それには、今の御説明ではまことにあいまいなお話です。今まで私ども議論してきた、たとえば在庫調整も、三木長官やあなたの御説明からいきますと、七月から九月には大体調整が終って、そして需要と供給のバランスがとれる、これがもし当てがはずれたならば、一つ条件が生れてくるのではないか。もう一つは、輸出の振興をしきりに急いでおられますけれども、今日、予算編成されましてから今の段階までは、どうも政府の予想した通りでない。あと二ヵ月たって、それが著しい変化がもしなかったとすれば、政府考え直さなければならぬ。同時に、設備投資につきましても、一番はっきりしている統計数字では、われわれ議論しやすいのは、月別の機械の受注額であります。これは昨年の七月八百五十一億円をピークとして、ことしの四月では二百六十九億円に激減をしている。今の状態からいきますと、これは五月、六月、七月になってもおそらく二百億円台を低迷するのではないか。機械の受注額は、割合と今後の産業面においては長期間の計画のもとに受注をするという建前によっておりますから、あと二ヵ月たってもこれがふえないということに相なりますれば、政府考えも変ってくる。雇用についても、あなたは今までは、予算編成した当時と今の雇用状態ではそう悪くなっていないと申されますが、しかし、雇用関係というのは、不況の時期から半年ずれるというのが通例でありますから、もっとふえていく、横ばいでなく、ふえていくということが明瞭になる。九月あたりに明瞭になったならば、そこで考えるとか、まあ私はもっと具体的な基準というものがなくちゃうそだと思う。ただいまのお話でありますと、まことにばく然としておるのでありますが、もう少しその基準というものを中心にしてお話をしていただきたい。われわれ、あまり政治的な御答弁だけでありますと、なかなか理解しがたいのであります。あなたが困難であれば、一つそういう計数をいじっている方から、いつどういうふうになったならばやる必要があるということでもあれば、一つ補足していただきたい。大臣から一つお答えいただきたい。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一つの基準を設けて、その基準になったら処置をとる、こういうことも一応言われるかわかりませんが、私ども経済を預かっておる面からいたしますならば、これは基準ではなくて、やはり経済自身を現実に上昇さすこと、これは政治として当然考えていかなければならない。あらゆる機会やあらゆる時期におきまして、堅実な経済発展、そういうことに資するように政策をとってもらわなければならないと思います。ことに、こういう経済激変のあとを受けて参りますと、各経済部門が非常に均衡がとれて、それが立ち直るということにはなかなか困難でありましょう。ただいま失業者の問題についてお話しでしたが、経済の立ち直りと時期がずれる、これは確かにそういうことが言われております。その通りでございますが、これと同じように、各産業部門においても、それは鉄だとか、あるいは石炭だとか、あるいはまた繊維だとか、あるいは海運であるとか、それぞれの部門においてそれぞれ影響を受けて参っていると思います。だから、その抽象的一般的な議論もさることですが、経済を預かっておる者からいたしますれば、経済の推移に対して、それはやはり十分見通しも立てなければなりませんが、時々刻々変ってくるものに対しても十分警戒をする対策をとらなければならぬ。これはやはり一般的ないわゆる基準、こういうことを申し上げるよりも、生きている経済を預かっているという観点に立って政治を遂行していく方がいいじゃないか。ただ、その場合に、いつも私どもの念頭を離れないのは、一時的な刺激ということもさることだが、経済の健全な発展向上、これをいつも準縄とでも言いますか、基準にして、そういう方向で物事を考えていく、かように申し上げる以外には方法はないと思います。
  104. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 大体補正予算の問題はわかりました、あなたの考えはですよ。しかし、私としては、なぜそんなに問題を複雑にして、わかりにくくなさるかということについてよく意味がわかりません。それは、慎重に経済の推移を考える、それまでは絶対に方針を変えないのだとおっしゃるならば、そこで初めて経済基盤の法案も生きてくるのだから、昭和三十四年度の通常予算編成までは絶対補正予算なんか組まないのだ、今の天災のことは別です。組まないのだ、こういうようにはっきりおっしゃれば、われわれももう議論する道もないですよ。あるいはまた、補正予算を出すべきだ、景気回復が上向き調子だから、公定歩合の引き下げを七百億減税の中間のつなぎとして出すのだとおっしゃる。この点はわれわれ理解できるのです。ところがそのどちらもはっきりしないで、しかも予算は出さぬとも言わないし、出すとも言わない。裏を読んでみると、出すこともあり得ると、こういうことなのですから、それでさっぱり問題がわからなくなる。頭脳明晰な大蔵大臣の答弁としては、はなはだわれわれは混迷に陥れられておる。この点はもう一歩突き進んでお尋ねをいたしたいと思います。なぜ大蔵大臣が、そういう工合に物事をはっきりおっしゃらないか、私はほぼ想像がつくのであります。それはなぜかというと、さる新聞紙の報道するところによると、二十六日の経済閣僚懇談会ですか、ここにおきまして、川島幹事長とあなたの関係でなくて、同じ経済閣僚懇談会の中において――新聞に出ておりますから、名前を申し上げてもかまいませんが、某無任所国務大臣は、輸出振興一本やりではだめだ、国内均衡を保つために、何としてもこの際は景気振興策をとらなくちゃいかん、要するに、これを伸ばしていけば臨時国会における補正予算につながってくるでしょう。こういう強い意見を述べられて、それと大蔵大臣と、あとだれだれか知りませんが、その辺と若干意見が対立したやに承わっておるのであります。従って、これは閣議の内容ではありませんから、別に秘密にされる必要はないので、二十六日の経済閣僚懇談会にそういうふうなことが論議せられたのかどうか、それを一つ承わりたいと思います。
  105. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 経済閣僚懇談会で、ただいま粟山さんが御指摘になるような意見の検討があったか、こういうお尋ねでございますが、実は不幸にいたしまして、そういう議論はないのでございます。ただ池田君の持論もその通りですが、私どもの持論といたしましても、経済を上昇さす、これを成長さす、こういうことは、意見は一致いたしております。そういう場合に、先ほど来午前中からいろいろ御説明申し上げましたように、経済を上昇させるには、貿易の面と国内需給の面と、二つあるのだということを申し上げたと思いますが、これはやはり二つを均衡をとっていくことが、これは経済の正常な、また着実な発展に資すると、こういう考え方には実はちっとも食い違いはない。ただ問題は、時期的な問題を議論したかしないかということ、これは時期的な議論はまだ全然いたしておらない。そしていろいろの誤解を受けておるやに聞くのでございますが、そういう点まで入っての議論はまだいたしておらないのであります。この点は一つ御了承願いたいと思います。
  106. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それではっきりしてきました。時期的なものはともかく、基本的な考え方はそろっていると、あなたもしばしば経済の成長までおっしゃたのですから、それはそうでしょう。時期的な問題まで触れていない、結論が出てないとおっしゃったが、そうであるからこそ、来たるべき臨時国会における補正予算論というものがちっともコンクリートにならない要因がここにあると私は思う。その後、二十六日の経済閣僚懇談会以後におきましても、いよいよ政府は、自民党内に臨時財政経済対策特別委員会委員長に水田三喜男氏、これを立てて、そして今の問題について閣内で議論が分かれている、同じような問題を議論が分かれておると言うと、あなたからまた釈明があるかも知れませんが、とにかく意見が一致してないものについて、自民党の中においても水田氏を委員長に立てて、真剣に論議をして、そうして臨時国会開会前までに意見をまとめたい、こういう動きがあるということを新聞が報じている。ですから、この新聞の報じている新聞のかんぐり、これをあなたは全面的に御否定になるか、あるいは肯定せられるか、あるいはどの程度まで肯定せられるか、これを承わりたい。
  107. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろの意見のあることは第二といたしまして、自民党と社会党との間において大きな差異がございます。おそらく社会党の内部におきましても、種々の御意見があるかも知れませんが自民党の中においてもいろいろな意見があることも、これは事実であります。私は大蔵大臣といたしまして、けさほど来、繰り返し御説明いたしておりますように、現在の経済情勢、これに対しまして、直ちに恒久的な対策を立てる考え方は持っておらない。いましばらく経済の推移を見、しかる後において、要すれば、かような考え方といいますか、対策を立てる、こういうことを実は申し上げた。この点は責任を持って申し上げたことでございます。いましばらく経済の情勢、推移を見なければ、補正予算を出すとか出さないとか、こういう筋のものではない。特にその点を強調いたしますゆえんは、三十三年度が始まったと申しましても、四、五、六のまだ三ヵ月でございます。もうその三ヵ月で大体の傾向はわかるじゃないか、こういう御議論もあろうかと思います。あろうかと思いますが、事柄は補正予算を出すか出さないかということは、これは重大な問題でございます。そういうことを考えますと、いましばらく担当大臣といたしまして、経過を見たい。これは御了承いただきたいと思います。
  108. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そこで新聞は大へんやはり微妙な点を工合よくついて、国民に報道いたしておりますが、その報道の結論を私けさ読みましたところによりますと、要するに池田無任所大臣の所論に対して反対の立場をとる人も、腹の中ではだいぶ動いておる。しかし今ここでほんとうに腹の中で動いたものを公けにしてしまえば、この国会でぜひとも通さなければならぬ経済基盤の法案の審議が大へんぐらつくから、この際特別国会の終るまでは、ほおかぶりをしていこう、こういう魂胆のようであると書いてありますが、この辺の真相はいかがですか。
  109. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも新聞記事の推測されておることに対する適否を私が批判するのは、これは当らないと思います。私はただいま御審議をいただいております法律案そのもの、これはもう資金ということでよくおわかりだと思いますが、前回の予算編成の際にたな上げされたものが四百三十六億ある。この金自身が今言われるような法律案を通さないで、直ちにくずしたらどうかという御議論にも発展しておる。私どものように経済情勢の推移を一応見たいというところからいきますると、あの法律で書いておるように、これは必要なときにこの資金をくずすのですから、そういう状況にまずしていただくことが先決のように実は考えております。いろいろ今日の当面しております経済問題は、これは別な言い方をいたしますれば、私ども別に楽観しておるわけではございません。しかし、一部の論者のように悲観もいたしておるわけではない。むしろその……大へん自分の心境を申して恐縮でございますが、ほんとうにありのままを写しとるというか、まあ一つ鏡になって経済実情を写しとって、そうしてそれに対する対策をとっていきたい、こういう非常に指針あるいは一応の目標を持たないで経済の推移を見たい、これがほんとうに偽わらない状況でございます。
  110. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 さらに、ちょっとこまかいことでありますが、所管大臣であります大蔵大臣にお尋ねをしておきます。それは昭和三十四年度に予定されておる減税のうちで、所得税は二万五千円以下を免税にするというお話であります、この二万五千円以下の所得を免税にいたしました場合の減税総額は幾らになるか。それから事業税、二十万円以下の事業税を免税にするというお話でありますが、これの減税総額は幾らになるか。それから固定資産税の減税をされるそうでありますが、それが幾らになるか。その他、法定外の普通税あるいは間接税、こういうものを減税されるそうでありますが、それに対して総額どのくらいになるか。これを項目別にお願いしたいと思います。
  111. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは自民党で公約いたしましたものでございまするが、この自民党の税制改正案としての減収見込額、国税におきまして、所得税で初年度二百五十億、これは平年度二百八十億でございます。これは公約事項にはっきり述べておりますように、月収二万五千円までを免税にするという建前でございます。  地方税におきまして、事業税で、個人事業税は初年度六十五億、これは平年度も同額でございまして、六十五億、それから法人事業税の場合は、初年度百億、平年度百六十億、以上が特に公約事項として強く出ているものでございます。  その他、固定資産税の軽減、あるいは法定外普通税、これも数字を言わないと金額が合わないのでありますが、固定資産税が初年度百八十億、これは平年度も百八十億、法定外普通税が初年度十億、平年度も十億、それで大体初年度六百五億、それから平年度六百九十五億、こういうことでございます。そうして間接税その他、これは金額は出ておりませんが、間接税の中には、全部軽減ばかりでもないでございましょう。いろいろ税制の再検討の問題もあると思いますが、そういうようなものも入れまして、合計初年度七百億、平年度八百億、こういうふうな金額になっております。これは誤解のないようにお願いいたしますが、自民党の改正案でございますので、やはり私どもの手にかかって参りますと、こういうような金額が果してきっちり出てくるのかどうか、これはもう少し精査を必要といたします。大体私の方の事務当局といたしましても、押えるところは、ただいま御説明いたしましたように、勤労所得税の月収二万五千円以下、あるいは事業税の個人並びに法人について、あるいはその他の事項等について、さらに精査いたさないと、数字が――これは大きく狂うことはございませんが、幾分か相違するかと思います。
  112. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 今まで私どもも一番問題にして参りましたが、法人税の軽減ということが大へん今までにも力説されて参りましたが、特に中小法人から巨大法人まで非常に千差万別であります。そうして税率はほとんど変らない、特に上の方は、税の特免措置がありますから、そういうものを勘案いたしました実質効果というものは非常に不公平であります。従って、中小企業対策として法人税を大いに減らせ、こういう要望がありましたが、これについて全然お触れになっていないというのは、どういうわけでありますか。
  113. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) あるいは今の私の説明が不十分だったので、誤解を受けたかと思いますが、事業税として個人で払い、あるいは法人で払う場合の事業税の軽減でありまして、いわゆる法人税ということではございません。事業税を支払っておりますのは、個人経営の場合もございましょうし、中小企業の法人の場合もございましょうし、そういう意味のものでございます。いわゆる法人税とは違うのであります。
  114. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 要するに法人なり個人の負担しておった課税総額の中から、名目は問わないが、とにかく減らしてやろう、こういう考え方と理解していいわけですね。  そこでもう一つ問題になるのは、直接国税の方はよろしいのですけれども、地方税がこれだけ大幅に減額を受けるのですが、まだ公共団体の再建整備も完了していないわけです。そういうときに、こういう大幅な減税を地方税においてやりましたときに、果してただいまの公共団体というものは、完全な運営ができるかどうかということに、非常に問題があると思いますが、この点は大蔵大臣としてどうお考えになるか、どういう工合に処理しようとしておいでになるか。
  115. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 地方公共団体の税収入、これは自然増収もありまするし、また、最近は財政状態の基礎も相当強化されておるということは、一般的には言えると思います。しかし今回のような大幅な税制の改正をいたしますと、私は、これはやはり地方財政に対して、国の財政と地方財政と十分にらみ合していかなければならぬことはもちろんだと思います。その財政の問題は、ただいまにらみ合してみると申しましたが、事業税自体が、なるほど大きな金額でございますから、地方財政の面で大きな部分を占めるごとだとは思いますが、事業税は申すまでもなく、景気、不景気で相当変動のある税種でございますし、さらにまた、事業税がまん、べんなく各公共団体にいっておるわけのものでも実はないのでございますので、事業税に非常にたよる地方財政というものは、果して健全な財政といえるかどらか、こういうような問題も一つあるわけであります。ただ、取り上げてしまう場合に、地方の財源が自然増があったり、あるいは当然増があったりして、また事業税の全国分布の状況等も勘案して、国会全体の歳入と、またこれを中央と地方というものをよくにらみ合して、最終的にはきめなければならないものなのです。だから事業税で軽減した分を全部が全部直ちに補てんするというような考え方は、これは行き過ぎの考え方であろうと思います。一面において、国の財政、地方公共団体の財政、これが健全であり、強固であることはやはり必要でございますが、納税者の立場に立って考えますと、国税であろうが地方税であろうが、負担には変りはないのでございますし、こういう意味で負担の軽減を一つの目標として減税考えます以上、また、その税の性格等をも十分勘案して参りたいこういう意味で、特に今回は事業税の軽減ということを取り上げておるわけでございます。これは、ただいま目標といいますか、大きな目の子勘定と申しますか、そういうものを一応考えて、いま公約事項として発表いたしておるのでございますが、いずれにいたしましても、これを事務的に仕上げますまでには、もっと必要な手数なり、また工夫をしなければならないものであると思います。
  116. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 社会党は、今まで事業税の撤廃論をずっと力説してきました。ところが、常に自民党が、この事業税の撤廃論に答えるのに、これは地方公共団体の有力なる収入源でありまして、従ってこれににわかに手をつけるわけにはいかない、こういうことを終始一貫力説をしてこられた。ところが中政連ができ、その他いろいろ中小企業団体の活動も活発になってきて、選挙直前に、事業税二十万円以下は免税する、こういうことを御発表になったのでわれわれもちょっとびっくりいたしましたが、しかし、びっくりしついでというか、大へん喜んではいるわけで、事業税がほんとうに軽減されるということはいいことでありますが、しかし、そのために、せっかく再建が軌道に乗りかけている地方公共団体にしわ寄せが来るというようなことになれば、これはゆゆしいことだと思います。そこで、もう少し突っ込んで質問をいたしますが、もし大蔵省で事務的に作業を進めて、二十万円以下ということは、これは公約されたのですから動かないと思いますが、事務的な作業をするとしても、その財源のやりくりの問題だと思います。従って、そういう場合に地方公共団体の経営に支障を絶対になからしめないようにというような配慮をせられると思いますが、その一つの方法として、将来どうしてもうまくいかない、事業税は減税をする、しかし地方公共団体に支障を来たす、こういう結論が出たときには、交付税率の引き上げに手をつけられますかどうか、それまでお考えになっておるかどうか、それを伺っておきたいと思います。
  117. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しますように、これは一面において地方財政の健全化、また強固といいますか、安定化と申しますか、そういうことに資したいと思いますし、一面納税者の負担軽減ということも考えて、まあ二つのものを出していきたいというふうに考えておるのでございますが、今日までのところ、幸いにして地方税収も相当自然増収がある、こういう状況でございますので、比較的この跡始末は容易ではないかと実は思っておるのであります。ことに、先ほど指摘いたしましたように、事業税そのものが各地方団体に均分されておるものではない、そういうことも考えて参りますと、地方財政の面におきましても、これはもっと数字を検討してみなければいけないことでございまするが、直ちに今御指摘になりましたように、交付税をふやすかどうか、こういうまあ簡単な結論は実は出ないように思いますが、よく全体を一つ勘案してみてしかる上でこの二つの目的、いわゆる納税者の負担軽減と同時に、また地方財政の健全化、これに資するように考えていきたいと思います。
  118. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 一つ気がかりになりますのは、地方公共団体の収入も自然増で相当安定してきておるというお話を聞きましたが、私はこれはやはり見方、また地方公共団体の実態にも触れなければならぬと思いますが、何と申しましても、終戦後赤字経営をやってきた地方公共団体が多いのです。そうして、しかもやっと国の援助もあり、いろいろな総合政策で軌道に乗り出してきたのですけれども、地方公共団体としてはやらなければならぬ仕事をたくさん持っておるのです。従って地方公共団体の地方債の起債能力を高める意味においても、若干その自然増があってふえたというので、それをすぐむしり取ってしまうようなことをやれば、地方公共団体のほんとうの発展というものは、私はあり得ないと思います。従ってそういう意味で、今まで難儀してきて、ここまで持ってきたのですから、その自然増くらいはやはり地方公共団体に保留してあげて、そして国と地方との総合的な財政を確立していくということでなければならぬと思います。そういう意味で、もし事業税の軽減に手をつけるならば、交付税率を引き上げるというくらいの――どうしてもうまくいかないときは引き上げるというくらいの覚悟がなければ、これに私は手はつかないと思うのです。そういう意味で私はあなたにくどいようですけれども、申し上げておきます。
  119. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 今のお話、別に議論をするわけではございませんが、やはり減税をやるということは、負担者の、国民の負担軽減、これが第一の目標でなければならぬことは、これはもう申すまでもないことだと思います。従って、この減税ができる時期というのは、いろいろの時期があると思いますが、けさほど三木企画庁長官に対するお尋ねのうちに、購買力を増す意味において減税というようなお話も出ておりますが、それはまあ効果から見まして、そういうことが出てくるかわかりませんが、いずれにしても国民が富んでいくと言いますか、負担軽減をするというこの方法でなければならない。地方財政ももちろんこれは大事なことでございますし、一面地方財政を苦しめるような考え方はもちろん持つわけのものではございませんが、国、地方を通じてを財政の健全化、安定化をはかっていかなけれならばない。そうしてこの国民負担を軽減さすということもちろんでございます。幸いにいたしまして、ただいまいろいろ御注意がございましたことは、もちろん実施案を作るといいますか、これから研究する場合に、御意見のある点は十分伺っておいて、そういうものを作って参りたいと思いますが、どうか基本的な問題としては、国民負担の軽減ということにに重点が置かれておるという、この一事だけをぜひとも御了承賜わりたい。幸いにいたしまして、事業税なり、また勤労所得税なりが、社会党と公約されたものよりも自民党の方が金額的には下でございます。おそらくこういう案が出ました場合には、国民負担の軽減ということの立場から社会党の御協力も得られることじゃないか。どうか一つ具体案が出ましたら、よろしくお願いいたします。
  120. 平林剛

    平林剛君 私、先ほど補正予算のことを中途で終っておりますから、もう一回補正予算のごとに関してお尋ねをいたしたいと思います。  大蔵大臣お話を聞いておりますと、非常に抽象的でわからないのですよ。やはり経済は生き物だと言うけれども、そういう抽象的なことで大蔵委員会審議を済ませるということはどうも納得ができない。あなた、大蔵大臣の性格かもしれませんけれども、もう少し具体的なお話をぜひ聞かせてもらいたい。どうも最近の経済政策を見ますと、言葉にとらわれているのじゃないか。たとえば、私どもは現在の状況が、不況が深刻化しておると見ておるから、不況対策と名ずけて政府に補正予算の提出を迫っておるわけでありますが、政府はそう言いたくないものだから、そう言うと昨年来の責任の追求ということまで言及してくるものだから、経済の正常化とか金融の正常化とかいう言葉で対立なさっておる。やはり経済実情を見るときは、そういう言葉でなく、具体的な資料、ケースというものから議論をなさるのがほんとうじやないか。そういう意味で、私は、補正予算を提出するとするならば、一体どういうファクターを見てお考えになるのかとお尋ねをいたしたわけであります。大蔵大臣は率直に今目標というものを考えないで様子を見たい。経済の動向を、推移を見たい。こういうお話でありますけれども、めくらめっぽう見ているわけじゃないと思います。どういう経済の推移を見るかということは、政府経済関係の発表しているような統計数字が結論として出てこなきゃならぬはずです。申すまでもなく、外貨の準備高の状況であるとか、完全失業者の状況がどうであるとか、鉱工業の生産指数がどうだとか、あるいは月別機械受注額がどうか、卸売物価がどうか、消費物価がどうか、こういうものを基礎にして経済の動向を見て適切な手を打たなきゃならぬと思います。その場合に、大体どういうことになったならば補正予算考えねばならぬと大蔵大臣もお考えになりますか、こういうことをお尋ねしておるわけであります。もっと丁寧に――政治的な話はわからないですよ、私には。もう少しちゃんとした基礎を立てて御説明を願って、国民とともに政府はどういう考えでおるかということを理解をしたいと思うのです。どうか一つそういう意味でお願いをいたします。
  121. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大へん率直なお尋ねでございましたが、もちろん経済の推移を見るということは、ただいま御指摘になりましたような数字を基礎にして見ていくわけでございますが、これは私は申し上げるまでもないことだと思ったので、実はその数字までは申しませんでした。ただ、しかしその数字が幾らになったらどうなるのか、その最低線は一体どこに置いておるのか、こういうことを言われますと、これはなかなかむずかしい問題だと思います。今一番議論が集中しておりますのは、岸内閣と申しますか、自民党の経済長期計画と申しますか、この長期計画の初年度、第一年度においてもうすでに貿易――輸出入の目標の三十一億五千万ドル、これの達成は困難でないか、貿易額の維持は困難ではないか、こういうことをいろいろ御指摘をいただいておるのでございます。これにいたしましても、この金額で明示しておるものも、やはり国際物価の下落というようなことありますので、金額そのものももちろん大事なことでありますけれども物価の下落に基いて金額がそれに伴わない場合には、輸出の数量の面で一体数量はふえているのか減っているのか、目標の数字の金額に達しているのか、輸出の数量は一体どうなっているのか、というように考えますと、これは金額が減っていることに対応して数量が下っておるわけではなく、数量はふえておる、こういうような状況があることも経済の推移の上から考えなければならないことなのです。いまの数字の問題ももちろん必要なことでございます。たとえば出鉱工業生産の指数が下っておる、こういうことだの、あるいは生産の面におきましても、稼働の状況等から見て、必ずしも需給のバランスはとれても、相当の生産制限をしているのではないか、こういうような状況であれば、これはまだ経済といたしまして、苦しい状況に置かれておるということを、示すものでございます。こういうような事柄を一々含めて経済の推移を見る。こういうことを実は申しておるのでございまして、数字が経済の基礎であることはもちろんわかっております。ただ何分にも私自身が数字については非常にうとい方でございますので、もし必要がりますならば、これは政府委員説明さしてもいいと思います。ただいま御指摘になりましたようなアイテムについて、その数字をやはり十分検討していかなければならない。しかも、その数字も内容的に見ていかないと、ただ数字が多いとか少いとかいうだけでは、なかなか私ども経済の実態を把握することはできないので、その内応を十分に理解してみたい、こういうことでございます。
  122. 平林剛

    平林剛君 結局今日まで政府との間に経済情勢の分析をいろいろやって参りまして、政府が現在は情勢を見たいというお話の基礎になったたのは、それぞれの統計数字であります。しかし今’日まで政府が御説明になったのでは、たとえば在庫の調整は、品物によっては違うけれども、七月ないし九月に終る、そこでバランスがとれるだろう、しかしそのバランスがとれなかったということになりますと、やはり政府としては補正予算考えて、経済の動向というものは思ったより悪かったなとお感じになってもらわなければ困るわけです。そうでなければ、あれほどがんばる必要はないわけです。私はやはりそれが一つの線ではないかと思う。  もう一つ輸出の振興につきましても、三ヵ月ではわからぬ、こう言っておる。しかし、まあ九月あたりになりますと、大体半年ぐらいたつわけでありますから、そこに行けば、予定通り三十一億五千万ドル達成できるものかどうかということも、目安を立てなければならないわけです。半年だからわからないということでは済まされないわけです。四ヵ月か五ヵ月たてば、大体世界情勢の動きということもわかって参りますから、そこで今日のごとき状態であるならば、当然政府は次の手を考えなければならぬ、私はこうなると思います。  それから雇用の状態につきましても、政府は当初予算を組んだときの数字よりもまだ達していないのだから、それをこえた場合は、やはり考えなければならぬということになってくる。設備投資、いわゆる投資状況がどうだということは、おそらく政府が――私どもは統計数字から見ますと、一番はっきりするのは月別機械受注額でわかるのではないか。だから今日適切な手を打ったらどうか、こう迫っておるのでありますが、政府はまだ潜在的な力があるように見ておる。いわば公定歩合の引き下げの問題も、丸橋忠弥が江戸城の堀の深さをはかったようなもので、とにかく公定歩合の引き下げをやってみて、様子を見ようという考えのように思われます。しかし、この結果が思ったほど昔のような投資率がないとすれば、経済全般が萎縮したという証拠にもなるわけでありますから、そういう意味では、やはり補正予算考えなければならぬ、こういうことは言えるのじゃないかと思います。いかがでしょう。
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうも先ほど来お話を伺っておりまして、私もお尋ねの趣旨が理解しにくいものがあります。また私も実は誠意をもってお答えしたつもりでございましたが、なかなか御理解がいかない。いろいろどういう点にあるのかと首をひねってみまして、おそらく私どもがとっております立場、自由経済の立場に立っておるので、物の考え方が相違してくるのじゃないか。計画経済、こういう面で、場合によりましては非常に強力でも用いてやる。従ってそのある一定の基準、それをこわしたら直ちに何らかの処置をとる。計画経済において採用されるような方式を云々しておられるのじゃないかと思うのであります。私どもはいわゆる強力な統制経済とか計画経済考えていない。どこまでも自由経済の立場で物事を考えて言っている。従って強権、強力を持って経済状態に処していくという考え方は、私ども実は採用しないところのものでございます。もちろんそれかといって、生きている経済が生じてくる事象に対しては、それぞれの対策を講じていく。だから数字を検討いたすにつきましても、あるいは長期経済から見ると、幾分かのそごがございました場合に、それを努力的な方向で数字達成に各方面の協力と奮起とをばお願いする、こういう形をとっていくのであります。また、生きておる経済ということを申しましたが、ちょうど繭糸価格維持のため零細農民、養蚕家の利益確保のために、たとえば百五十億の生糸や繭の買上げをする、こういうような措置をとり、あるいは昨年は福井、石川両県においてインドネシア向けの人絹織物の輸出が停滞して困っている、こういうのに対しては特別な滞荷金融をする、同時に業界の自粛生産によってこの調整を合わしていくようなことをとる、こういうものは臨機の処置として実は考えていかなければならない、先ほど来経済が生きておるのだからということを申しましたのは、こういうことを実はさしたつもりでございます。しかし全体の経済のスケール、また経済全体の健全性といいますか、そういうものについての判断は、これは総体のものとして考えていく。今日のところ経済のあり方として特に輸出を第一に考え、それから国内生産においては、ただいま機械の発注も一つの基準じゃないか、こういう御指摘がございましたが、この機械の発注もさることですが、あるいは鉱工業化産、これに一つの大きなウェートを置いて、経済のあり方を考えていく場合もあると思います。今日は国内需給の問題よりも、貿易収支に特に重点を置いておりますから、その意味輸出ということについては、特に重点を置いた考え方を持って進めておるのであります。  先ほど来、栗山さんからもいろいろお尋ねがありまして、経済懇談会で今の経済状態について深くメスを入れたのじゃないかというお話がございましたが、今予定いたしておりますが、経済懇談会は輸出振興対策一つ協議してみようということを申しておるのであります。これはもちろん経済の上昇といいますか、これを大きくしていくために、やはり輸出一つ増進さしていく、これに一つ力を入れていく、関係省で歩調を合せて具体案を練ってみようということを実は申しておるのであります。事態の推移を見るとは申しましても、いわゆる静観、傍観ということをする考えはもちろんございません。この点は、重ねて御披露いたします。私ども経済の推移というものには非常に敏感に対処する考え方でございます。しかし一つのそういうこまかな波としての対策は別として、経済全体の動向に対しては、これはやはり経緯をしばらく見通し、そうして総体を動かすような対策については、その推移を見たのちに手を打つべきじゃないか。要すればそういう際に打つべきじゃないか、この考え方で終始いたしておる。基本的に自由経済の建前で物事を考えておる。そういう点でいかにも平林さんなどお考えになりますと、隔靴掻痒の感がある、どうしてぴちっとやらないのだ、こういうようなお気持があろうかと思いますが、これは基本的な態度が相違しておる、こういう点ではないか。これは私が説明でしいるわけではございません。私の感じを率直に申し上げておるので、私も特に抽象的な議論ばかりをする考え方で申しておるわけではないのです。物のあり方についての考え方がこういう点から相違しているのじゃないか、かように考えましたので、私の考えを御披露を申し上げました。
  124. 平林剛

    平林剛君 私は自由経済か計画経済かなんて、そういうむずかしい議論を前提にしてお尋ねをしておるわけではないのです。政府の長期経済計画にいたしましても、それぞれの計数があって、そしてお立てになって政策を遂行なさっておるわけでありますから、私の言っておることをそういう変な方に向けて答弁をずらさないように一つ願いたいです。政府の今までの委員会においてお答えになったことがはずれたならば、補正予算ということは当然考えなきゃならぬことになるのではありませんか、こういうことをお尋ねしておるのです。
  125. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府が予想したことがはずれたら補正予算を組むのじゃないか、それは表現はいかようでもよろしゅうございますが、私どもはそういうものに対しまして、先ほど来申しておるように、要すれば補正予算を組むことにやぶさかではないということを申し上げておる。必ず組まないとか、必ず組むとかは実は申しておるわけではございません。その点では表現は違うかもわかりませんが、あるいは同一かと思います。
  126. 平林剛

    平林剛君 「要すれば補正予算を組む」ということは、今言ったいろいろな政府が発表なさっておる統計数字も重要な参考として、それが今まで言明なさっておった見通しをはずれたならば、やはり組まなきゃならぬ、私は今のお答えをそう理解をいたしたのであります。決して社会党がこう言ったから、だからそれに対抗して別なことを考えるということを私希望しておるのではありません。現在の経済状況は、私どもは大へん国民生活の安定の上からいって不安にたえないのであります。政府に適切な手を打ってもらいたい。しかし遺憾ながら今日政府及び自由民主党の判断が私どもと多少時期的にずれがございますので、国会としては補正予算を組まないことになりましたが、しかし今不用意であるか、あるいは腹の中では私どもの主張も全面的には否定しておるわけではなくて、情勢の推移を見て、要すれば補正予算を組むことがある、こう言っておられるのでありますから、その基礎は、先ほど言ったようなことがもしずれたならば、積極的に言葉や、面子にとらわれることなく、適切な手を打ってもらいたい、私はそれを申し上げたいのであります。どうでしょうか。
  127. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) どうぞ「要すれば」という大事な表現のついておること、これだけはお忘れのないように願いたい。経済の推移を見ると申しましても、ただ感じだけで申しておるわけではございません。これは先ほど来のお話のありました通りでございます。ただ問題は、補正予算を組むというような大きな問題になるのでございますから、これはもう性質といたしまして、経済全般の問題について私どもが必要を感じたときだと、こういうように御了承賜わりたいのであります。この点が先ほど来大へん時期的に食い違っておる、また内容的にも幾分違うのではないかという実はおそれをなしておる。私どもは補正予算を組むというような大事な事柄は、やはり経済全般の問題として、取っ組んでいきたいと、こういうように思っております。御了承願いたい。
  128. 平林剛

    平林剛君 私は結論的に申し上げると、結局時期的な問題でありまして、与党が言ったから、野党が言ったからということで右左すべきものではない。経済政策というものはそうあっては困る、こう思っておるのであります。従ってそういう場合には、仮定の問題でありますから、「要すれば」の中に入るかどうかわかりませんが、私ども今度の国会で強調いたしましたように、現在の不況を上向きにさせるために、世界情勢の推移や、あるいは、政府がたのみの綱に考えておる東南アジアの貿易等から判断をしてみますと、同時に国内においても需要増加の政策をとらなければならぬことがあるのではないか。社会党がああ言っていたからどうということでなく、そういう「要すれば」の時代に入りましたならば、積極的に需要増加のことを考えるべきではないか、こういうことを申し上げておきたい。  そこで少しこまかいことに入りますが、公定歩合の二厘引き下げ措置でございます。私は先ほど丸橋忠弥の例をとって、日本経済の成り行きが一体どういうものか。潜在的な経済力があって、この公定歩合の引き下げ措置経済界がぴんと来て、そうして昨年と同じような投資熱に戻ってしまうのかどうか、こういうことを確かめるためにやったのではないかというお尋ねをいたしたのでありますが、この措置はどういう観測とそれからどういう目的を持っておやりになったのであるか、この際一つお聞かせを願いたい。
  129. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来公定歩合の引き下げについての断片的なものは御披露いたしました。問題は昨年緊急措置として公定歩合の引き上げを断行し、そうして国内需要を押えるといいますか、そういうような形で経済の正常化あるいは金融の異常な状態に対処して行った。そうして、ねらいは異常経済に対処する一つの方法として公定歩合の引き下げをいたしたのでございます。この点は正常化という盲葉を使うと、いろいろ御疑問もあろうかと思いますか。各国、世界経済の情勢等を勘案いたしますと、一本の公定歩合の引き上げは少しは時期的におくれておるくらいの慎重な態度をとって公定歩合の引き上げを行なったのでございます。その引き上げ効果――これだけが効果を示したものとは申しませんが、あらゆる面においてあの引き上げを断行せざるを得なかった経済状態とは、よほど経済の模様が変ってきておる。そういう状態で、私が喜んで使う言葉ですが、この辺で金融の正常化をはかりたい、異常金利を今度は正常的な金利にするのだ、こういうことでまず一段下げたわけであります。当時におきまして、三厘上ったものを二厘下げろという議論もあったように聞きますし、あるいは三厘一ぺんに下げろという御議論もあったように聞きますが、この辺が、経済状態に対応する処置として、まず二厘程度が適当だろうということで、まず第一段階として二厘引き下げた、こういうことであります。ただ公定歩合の金利を下げましたが、この結果、市中金利にどういう影響を持つであろうか市中金利がいわゆる公定歩合の引き下げに順応してくれなければ、これは効果が十分上らない。こういうふうに考えておったのでありますが、市中金融機関も、日銀の公定歩合の引き下げに大体順応いたしまして、金利の引き下げの処置をとってくれた。これは申すまでもないことですが、歩合の引き下げをいたしましたからといって、その翌日から直ちに効果が生ずるわけのものでもございません。これは順次低金利の方向に、しばらくの期間をかしていただくことで、そろって参るわけでございます。ただその金利の今後の行き方といいますか、あり方として考えることは、今すぐの時期にやるとか、いつの時期にやるとかいうことを申すわけじゃございませんが、一般的に申して、やはり国際金利にさや寄せするということが適当ではないか、まずそういう方向で物事を見ていきたいこういうことを先ほど実は申したのであります。今回の金利の引き下げでは、ただいまのようなことを考えております。ただ問題が一つありますのは、日銀の貸出残高、それがどんなに変動しておるかという点でございますが、まだもう少し時間がかからないと、私どもが所期するような数字にはなかなかならないのではないか、こういうふうに思っております。
  130. 平林剛

    平林剛君 この公定歩合の問題については、従来各委員会大臣が御説明になっておりますから、重ねてお伺いする必要もないくらいでありますが、私の御説明を聞いて非常に疑問に感じますのは、今まで大蔵大臣が、ときどき御説明を聞きますと、確かに金融正常化のために重過ぎる公定歩合の引き下げをやった、金融の正常化の措置だ、こういう御説明をなさっています。同時に国際収支の改善の実が上った脱段階で、緊急総合対策のおもしをとる意味であって、経済の正常化をはかるためだ、こういう説明をなさっている。また、ところを変えますと、この公定歩合の引き下げ措置国内経済の成長にも役立つし、貿易の面でも、高金利に悩んでいた経済界では大へん仕合せではないか、国際競争の場面でも有利に活動できる期待が持てる、こういう説明もなさっておる。これは衆議院予算委員会、六月二十三日の御発言であります。これから見ますと、政府は公定歩く一の二厘引き下げ措置を、いわゆる現在の経済状態において一つの刺激策として考えておられるのではないか、こう理解できるのでありますが、よろしゅうございますか。
  131. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 刺激剤で考えたわけではなくて、特に、またお叱りを受けるのじゃないかと申したいわゆる正常化という考え方で実は終始いたしておるのであります。これは刺激剤としてこれを処置したわけじゃない。この点は私どもまあ正常化あるいは平常化とでも申しますか、異常金利だったから、この異常金利を普通金利に近寄らした、こういう実は考え方をいたしておるのであります、いかにも刺激剤にするといえば、高金利がこれが恒常の金利体系だ、こういう感じを持つのですが、前回引き上げをいたしましたのが、これは異常金利なんで、す。異常金利を持続する必要がなくなったから、そこで正常化の方法としてそれを下げた、こういうことでございます。これはこの説明には偽わりはございません。その通りでございますからどうか文字通りお受け取りいただきたいと思います。
  132. 平林剛

    平林剛君 文字通り受け取ると、経済の刺激策にとれるのです。つまりこの公定歩合の効果として、国内経済の成長にも役立つし、買切の面でも馬金利に悩んでいた経済界では大へん仕合せではないか、国際競争の場面でも有利に活動できる期待が持てる、こう言っているのですから、もう明へかに経済の刺激策として――いや高金利であることは認めますよ。高金利であるということは認めますけれども、当面の状況からみて、一つの刺激策として考えられているのではないか。言葉通りとればそうとれるのですよ。そうでしょう。
  133. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは大へんむずかしいお尋ねのようでございますが、私どもは高金利であったというこの高金利は、これは異常金利であるということを御指摘したいのです。絶えず高金利であったものなら、これで差しつかえないと思います。しかしこれが異常金利で、公定歩合を引き上げた。異常金利である必要はないからそれをおろした。これが正常化でございます。正常化した結果は、これはおそらく効果として、国際競争の場面でまず不利な条件が取り除かれたということになる。だから、これは問題はその刺激云々の問題じゃなくて、見方の問題でございます。私どもは特にそれをねらって、競争に有利にするためにこれを実はやった、こういうものではない。その点を、特に正常化々々々と申しているのはその意味なんです。たとえば、こういうことをやることによって、なるほど需要を増すことにはなるかわかりませんが、需要を増したいという意味で金利を下げた、こういうものではない。だからどこまでもありのままの姿、あの高金利は異常金利としてああいうのを昨年やったのだ。そういう必要がなくなったからそのおもしを取った。これこそ正常化である、こういうことでございます。ただ、その正常化の効果があらゆる面に出て参る。その面に対しても必要な注意は同時に私ども喚起いたしているはずでございます。金利が安くなったからといって、国内の需要の面でこれを放漫に流れないように、従前通り考えてもらいたい。これは公定歩合を引き下げた際、同時に日銀総裁なり、大蔵大臣として財界等に注意を促していることでもあり、また金融を預っておられる市中銀行の方に対しても、金利を下げたのは、これは正常化の方法でやっているのだ。この際に放漫な貸付その他はこれはごめんこうむる、十分一そう注意してほしい、こういうことを実は注意いたしているのであります。
  134. 平林剛

    平林剛君 言葉の使い方について、私はあまり議論はしたくありませんけれども、どうも政府経済政策状態が微妙なだけにいろいろな使いわけをしておって、岸総理大臣が言うように、ホトトギスの鳴き方は聞く人によって違う。同じように金融政策の公定歩合の引き下げのことにつきましても、どうも所論がわかれている。大蔵大臣もあまりおなれにならないから、ときどきの委員会ではどうも日本銀行の総裁と食い違ったお話などしている。たとえばこの公定歩合の引き下げについても、これは経済活動の縮小や沈滞を反映したものだ、こう見る人もいるわです。そうしてその背景は、好況への転換を示唆する何ものもない。銀行の貸出しも鈍化している。日銀の貸出しもわずかながら減少の傾向にある。金融は緩和の方向にはあるけれども、それは資金需要の減退が見られるから、そこで政府はこの措置をとったのではないか。従ってこれは金融緩和ではなくて、刺激策を意味するものではないと、一方の旗頭である日本銀行総裁が発言をするかと思うと、大蔵大臣予算委員会に出かけていって、そして、これは経済の刺激策と見られるような発言をなさる。こういう点でどうも正体がつかめなかった。決して日銀総裁と意見が相違しているわけではないのでしょうね。それから先ほど私がお尋ねしてよだ答えがありませんが、この石を打っておいて、あとの波紋を見るというお考えが今度の措置にあったのかないのか、これをお答え願いたいと思います。
  135. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来の御説明で今の日銀総裁の話と私の話が食い違ってはいないことは御了承いただけたろうと思います。先ほど来申しますように、どこまでも正常化の問題ということで、異常金利を正常に近づけるその第一段の措置をとったのだといことで御了承を願いたいと思います。そして起るであろう事態に対しては十分警戒を促しておく、この一事で御了承いただきたいのであります。問題は二厘下げた、二厘下げたのでももうこれで終りかということになろうかと思いますが、この点は先ほど来申しますように、金利は国際水準にさや害せするということが望ましいのだという、この表現でもってこれまた御了承いただけると思います。ただ経済に対する対策といたしまして、こういう公定歩合を引き下げたのも一つの方法でございます。もちろんしかし金利というものは公定歩合だけではない。御承知のように非常に複雑な金利体系があるわけでございます。こういうものについての、やはりバランスの問題をとっていかなければならないでございましょう。ただいまのように金利が高いということであれば、公定歩合は一応下りましても、まだまだ平常化の金利体系とはなかなか言いかねる、こういうことに問題があることは御承知通りでございます。さらにまた他面あるいは為替政策の面に問題があったり、あるいはまた先ほど来御議論がありますように、国内金融政策と同時に財政政策、これが並行して行われるべきじゃないかという議論がもちろん残っておるのでございます。そういう点は、財政金融の一体化ということを絶えず主張して参っております私どもといたしましては、もちろん等閑に付すべき問題ではない。これが先ほど来御指摘になっておる補正予算をこの際組むか組まぬかという問題になるのです。こういう点は私は重ねて申しますが、今後の推移を見た上で、私どもの態度を決定したい、この一語に尽きるのであります。
  136. 平林剛

    平林剛君 またあと経済問題に関係のある法律案も、いずれこまかに説明があって質疑があす、あさって行われると思いますから、またその際に。きょうはオーソドックス的にお尋ねしたわけであります。各論にわたってはお尋ねする機会があると思います。そこでまたこの次にこまかにあなたの御意見を聞かせていただきたいと思いますが、最後に先ほど栗山委員がお尋ねをいたしました中で、少し気にかかることがあります。それは税金の制度のことについてであります。このことについて確かめておきたいと思います。それは直接税につきましてはまた適当な機会にお尋ねいたしますが、間接税について先ほど御答弁になった中で、間接税についても目下検討しておる、その結論は全部軽減ばかりではないと思いますがというお話があったのであります。そうすると、大体大蔵大臣就任なさってから、この税金の制度についてもいろいろ御検討をなさって、間接税の今後の動向についても一応事務引き継ぎをなさったものと思われる。そういう把握があるからこそ、別に聞かなかった間接税の問題について軽減ばかりではないというお言葉をお使いになったと思うのであります。そうすると、大蔵大臣は今この職務を御担当になりましてから、間接税については何か増徴をしなければならぬというものがあるとお考えになっているのでありましょうか。この点、どうも心配になりましたので、お尋をいたしておきます。
  137. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど間接税でも幾分かということを申しましたが、これは自民党の公約の中に数字が実は入っていない、アルフアー・ピーターと書いてあるだけのものですから、これはアルフアー・ビーターの実は税引をいたしたのであります。問題は税の問題でございますが、いろいろ過去の、過去というと少し言いすぎかもわかりませんが、この国会において衆参両院において、間接税等についてほいろいろな決議事項等もいござます。もちろん私ども国会の御意見を尊重する考え方でございますし、ただその間接税全般の問題につきまして、これはこういう機会といいますか、国税地方税、こういうもので大がかりな調整をはかっていくというような場合におきまして、やはり過去において問題になっております間接税、これはおそらくその軽減の御議論が非常に強いのだろう、しかし必らずしも軽減ばかりではないのだろうと思いますけれども、これは非常に衆参両院とも間接税がどうあるべきか、こういうようなことについては付帯決議等でも今まで御意見も出ております。今回の税制改正に当りましては、もちろんこういう点を尊重した最終的な措置を講じたい、ただいま間接税をどうするかという問題はもちろんまだきまっておりません、これは参議院においてはさような御意見を伺いませんが、衆議院におきましては、間接税を必らず軽減する、こう政務次官が言ったが、大蔵大臣責任とれるかということでだいぶやかましく言われました。政務次官は別に必らず軽減するという表現をいたしておらなかったのです。あとでよく速記録を調べてみますと、そういう断定的な話はいたしておりませんが、少くともこういう点についてのお尋ねが出ましたゆえんは、おそらく大蔵委員会等で前あるいは前々国会等でいろいろ御意見が出た結果だろうと思います。もちろん間接税の問題もそういう意味で慎重な扱い方をする、これだけは申し上げ得ることでございます。ただいまそれじゃどういうふうにするのか、そういう問題はもちろんまだ手がけておりません。そういう状況であることを御了承願います。
  138. 平林剛

    平林剛君 間接税の問題については、いろいろ専門的に検討いたして参りますと、議論が分れるということはもちろんあり得ると思います。ただ大蔵大臣としては今どういうお考えであるかということをお尋ねしたところが、慎重におやりになる、しかし先般の本会議場におきましては、少くとも大蔵大臣はこう答えている、間接税を増徴する考えで調査会その他に臨む考えはない、こういう考えで私はおられると理解をしたのであります。先ほどはどうも少しそれと感じが違ったお答えがありましたので確かめたのであります。本会議場における御答弁は別に変更ないと思いますが、それをお答えを聞きまして私の質問は一応終りたいと思います。
  139. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この税制改革の場合に、党が公約いたしましたような事柄について、これを忠実に、実現するということはもちろんでございます。しかし税制改正というような問題の場合に一つのはっきりした意図をもって、そしてその意図のもとで一般の方々をリードしていくという考え方がない、こういうことを実は特に強調したのであります。当時の質問はただいまの御指摘で思い起すのでございますが、税制改正に当って間接税を増徴する、こういう考え方でやるんじゃないのか、こういうお話でございましたので、私どもがはっきりした意図を持って、この税制改正をやる考え方はございませんので、十分各方面の意見を聞いた上で結論を出すのです、こういうことを実は申し上げたかったのです。この点は誤解のないようにお願い申し上げます。
  140. 前田久吉

    委員長前田久吉君) これにて財政一般についての大蔵大臣に対する質疑は終了いたしました。   ―――――――――――――
  141. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 次に、国有財産法第十三条第二項の規定に基き、国会の議決を求むるの件について、質疑を行います。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  142. 前田久吉

    委員長前田久吉君) それでは速記をつけて下さい。
  143. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 ただいま案件になりました議決案件につきまして、一、二お尋ねをいたします。実は私がお尋ねをいたしたいことは、この前の委員会で、要点は申し上げてあります。大蔵大臣がお見えになっておりませんでしたが、申し上げてありますので、その線に沿って御答弁をいただきたいと思います。  まず第一にお尋ねをいたしたいことは、過日、宮内庁が宮殿造営のために、その参考資料を得るのを目的として、諸外国の宮殿の実地調査をせられたのであります。その報告書は資料として提出を願い、われわれも説明を聴取いたしました。その中で非常に私、参考になりましたことは二つあります。一つは、どういうことかというと、宮殿の規模に関する問題であります。非常に荘厳な宮殿があるという報告を受けましたが、私どもがやはり現地で外国の宮殿を参観いたしたりなどいたしまして得ておる印象は、何と申しましても、数世紀前に作られた絶対王政時代の、絶対権力下に作られた豪壮な建物が多いわけです。従って、近代社会において、事、宮殿といえども、ああいう意味の豪壮さというものが必要であるのかどうか。あるいはまた、その規模等においても、近代生活を中心にし、新しく非常に変ってきておる近代社会の生活というものを中心にして宮殿を眺めてみた場合には、やはり建築様式の問題もありましょうが、ずいぶん変革をしなければならないと思う点もあると思うのです。従って、宮殿を造営するという基本的な考え方について、大蔵大臣なり宮内庁なりは、どういう構想で今後おやりになるのか、それをまず承わりたいと思います。
  144. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 宮殿の造営につきましては、現在調査中でございまして、昨年各国の宮殿の模様も視察して参り、今年はそういうふうな資料並びにいろいろ学者、まあ最高顧問としては、内田祥三博士を最高顧問として、その他数名の学者を嘱託いたしまして、いろいろのそういう人の意見も聞きながら検討中でありますので、今こういうふうにするという結論的のものは出ておりません。しかしながら、いろいろ検討しておるときに話に出ておる模様を申し上げますると、この新しい宮殿を作る場合においては、やはり現在の民主日本の国の象徴としての天皇の公けの御活動をなさり、また、お住まいになるのに適当なところである必要があります。多数の方が以前から比較すると、前の宮殿の場合よりも、多数の力がいろいろな行事の場合においでになるもの、また、おいでになれるように考える方がよかろう、そういうような考えで、部屋の作り力なんかも、普通の方が入られるように考えよう。なお、自動車で皆さん来られますから、昔の古い宮殿なんかは、ヨーロッパなんかの例で見ますと、自動車なんか発達していないころの宮殿なんかは、そういう点が非常に不便でありますので、そういうような点も非常に便利になるように、車回し等も便利に考える。なお、建物といたしましては、外国の寝殿を見て参りましたが、これはヨーロッパ式な建築でありますが、それと同じようなまねをしたような西洋建築でいくというよりは、やはり耐震耐火の建物であるが、日本的な味のある、諸外国から最近は国賓もたくさん見えまして、国賓に準ずるお客さんもまたたくさん見えまするが、そういち方がおいでになってごらんになっても、西洋建築のまねをしたようなもので比較をされて、何だこういうのは、というように見られるよりも、やはり日本式な感じのもので、西洋の宮殿と同じようにすぐ比較のできないような、そういうような感じのものがいいのじゃないか。従って、この耐震耐火の建物であるが、日本的な屋根をつけたような、前の宮殿と同じようなものだというわけじゃありませんけれども、やはり前ありました宮殿の感じも出るような、日本的な屋根のあるような、そういうようなものにしたらどうだろうというようなことで、いろいろ検討をいたしております。そういうような状況でございます。
  145. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それから、これはちょっと数分をかけてお尋ねしても、なかなかお互いに理解しにくいような、非常に重要な問題でありますが、従って、大体今の程度で理解するよりいたし方ないと思いますが、第二は、私、この外国の実地視察報告書を見て非常にいいと思い、そうして、しかも、私自身も感銘してきておりますが、諸外国の中には、王室の私生活と公生活というものを完全に分離申し上げて、そうして王室が常にお住まいになっておるところは、場所のことは云々いたしませんが、その例によると、都心から相当離れたところで静かな、非常に落ちついた生活をなさっておる、公式のいわゆる国事のあるときは、宮殿へおいでになって、いろいろな仕事をおやりになる、こういうような建前をとっておられる。しかも、宮殿たるものは、非常に国民の視野に開放せられておりまして、王室というものと国民というものとが、いかにも親しくなれるような、そういう雰囲気の中にあるものが多いと私は見て参りました。従って、わが国で新しく宮殿を造営されるということであれば、その周囲はもちろんでありますが、新憲法によって天皇は人間天皇に新しく再出発をなさったわけでありますから、やはりそういう意味での構想というものが考えられてしかるべきではないか、こういう工合に考えるのです。事実この間私ども宮内庁のお世話で吹上御苑の中まで拝観させていただきました。そして私ども予想しなかったような、実際には素朴な生活の環境にあるように拝見いたしまして、おそらく一般国民の方はああいう状態でおられるということはだれも想像しないと思います。そういう意味で、ありのままのやはり姿が出るようになった方がよくはないかと考えられるわけであります。ですから私も実は二、三の人とそういう意味でごく個人的に話し合ったときも、皆さんも御賛成でありましたが、何しろあの歴史的な建物である江戸城というものが、できるならばあそこの中へ国民がだれでも入って重要文化財としてあれを参観できるような工合にする、そしてそこの中にりっぱな宮殿ができるならばできるで、そして天皇の私生活の方はどっか閑静なところでおやりになって、あそこへ、しょっちゅう公けの建物としての宮殿へお出ましになって国来をおとりになると、こういうようなことをすると非常に明るくなりやしないか、皇室と国民とのつながりというものが非常に近親感を増すのではないかというようなことを話し合ったことがあります。従って一つの大きな城郭をめぐらして国民はなかなか中へ近寄りがたいという構想のものにしてしまえば私の今の感じと全然違ったものになるわけであります。そういうような点についてどうお考えになりますか。
  146. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) この陛下のお住居と公けの活動をなさいます宮殿とは離した方がどうかという点でございますが、その点については、われわれ調査をいたしております段階におきましても、いろいろ検討いたしましたのですが、どっかほかに適当なところがというのでいろいろ検討もしましたが、閑静で、ある程度の広さもあっていいというような適当なところもなかなかちょっと見つかりません。あまり遠いところ、中にはあるいは富士山麓の方へおいでになって、高速道路でこられたらどうかというようなことを書面でよこされた方もありますけれども、そういう遠いところも感心しません。それでいろいろやってみましたが、結局陛下のお住居は先日御視察いただきましたあの吹上御苑の中にお作りしたらどうか、陛下もあそこの環境を非常にお好みになっておられますので、前の宮殿は下の方が寝殿で上の方がお住居というふうに、公けの活動をなさるところと引き続きお住居がすぐくっついていましたが、こういうふうなのは御生活に何か落ちつきがなくてよろしくないだろうと、そこで幾らか元の宮殿のあるところと吹上御苑は離れておりますし、吹上御苑は武蔵野の面影がありまして、見ていただきましたように、前に草がはえておりまして、花壇がありましたが、あの先の方にお住居に適するような、それはそんなに大きくなくてもいいということで考える、で、公けの活動をなさるところは元の宮殿のありましたあの跡を中心にして考えるというように、われわれ現在としてはそういうふうに考えているわけでございます。  それから国民に親しみを持たれるようにもっとしたらという点、これはあそこの場所については、今おっしゃいましたように、旧江戸城の跡でありまして、石垣に囲まれ、門が昔風の入口の狭い、ああいうふうな門でありますので、将来あの門のうちでいわゆる文化財としてぜひ保存せねばいかぬものはあまりこわしてもいけませんが、文化財として保存しなくてもいいところは、その門をこわすか、あるいは移築をしまして、そうして入口をもっと広くしまして、そうして見えた皆さんがお入りになりやすいように、今の狭い門で閉じ込められたような感じのものでない……。これはちょっと固まっておりませんが、宮内庁の下に坂下門というのがありましたが、必ずしもああいうものは保存しなくてもいいようです。昔は道も違っておったんですが、一応あそこをこわして、あそこを広くして、それから宮殿の方ヘ上れるような広い道をつける、そうすれば一般の方が今よりも親しい感じで出入りができるようになるのではないか。これは今申し上げたのは、調査書に出た意見でございまして、これを決定的なものとお考えいただきますと困りますが、そういうようなことも考えまして、今おっしゃいましたような御趣旨に沿うようにしようというような考えもしながら、寄り寄り調査をいたしておる次第でございます。
  147. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 私が申し上げたのは、大体御答弁でお考えになっている点はわかりましたが、あの大江戸城の何か三十万坪をこえる大区画ですね、これを戦争前のように完全に城壁にしてしまう、そうして国民は全然内部へは入ることができない、そういうようなことでなくて、今おっしゃったように適当な門は開放せられて、国民は礼儀を失しない程度に中へ自由に出入りができ、そうしてあの江戸城の重要文化財を十分拝観しながら、皇室との間を手近に見ることができる、こういうようなふうにするのが大へん好ましいと思うんですが、そこまでお考えになっておりますか、どうでございますか。
  148. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 皇居に一般の方ももっと気軽にお入りになって、親しまれるようにというような線に向っては、だんだん進んでいこうと思っておるのでありまするが、戦後、三年くらい前からいわゆる一般参観というので午前千人、午後千人の範囲では資格なんかを問わないで参観に来ていただいて御案内しておるわけであります。それも一つの現われであります。なおそれじゃもっと楽に入れるようにしたらどうかという問題があるわけでございます。これは宮殿造営の機会にそういう問題もあわせて考えよう、で、宮殿造営ができたならば、今は非常にむずかしくて本館に入ったりしているところもあるのについては、そこから自由に入れるようにするとかいうふうなことも、寝殿との関係において、あそこは自由にしておいても別にどうということもないと特に宮殿の今の建前でありますと、自由に入ってこられますと、あの前で国民とか外国の使臣とかいろいろお見えになるが、それとごっちゃになって混雑して、何か宮殿らしくない混雑が見えてもいけないというような点もありますので、そういう混雑の感じのしない適当な方法も宮殿の造営のこの設計とあわせて考えれば、あるいはうまい考えもありゃせぬだろうかというようなことも寄り寄り協議して検討をいたしておる次第でございます。
  149. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 これはいずれ正式に案が決定されれば、国会の議決を得て予算化されて工事に着手されると思うんですが、その最終案が決定されるまでは、どういう事務的な経過というか、機関の決定をずっと得てなさるのか、その点を一つお聞かせいただきたい。
  150. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 宮内庁の方としての調査は、先日も申し上げましたように、三十三年度――今年庭中に終えます。大体三月までに一応調査が、役所としての分が一段落つきますると、それを、内閣の方、あるいは国会の方、あるいは建築とかそういう方面の専門の方、そういうような方で場合によっては何か審議会、協議会のようなものでも作っていただいて、それをいろいろ検討していただく。それで、おおむねまあこれでよかろうということがめどがつきますと、そのめどに基いてほんとうの設計に移りまして、その設計がある程度のものがついてきますと、それから工事にかかる。工事にかかる場合には、これはもちろん予算を伴いますし、その予算として国会の議決をお願いして、なお皇室用財産としての取得ということで、またその面からも議決をお願いしなければならぬと思いますが、そういうようなことででき上ってという順序になるだろうと思います。
  151. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 皇太子の宮殿というのですか、正確には何というのですか、東宮御所ですか、その東宮御所の造営ですが、これはやはり、一たび作られますというと、ずっと永久に東宮御所としてお使いになるわけですか。
  152. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 東宮御所として作りますから、まあ永久ということが言えますかどうか、これはまあ東宮さんがおいでになられないある期間がありますと、別の用に使われることもありましょうけれども、まあ東宮御所として向くように作って、長くそういうふうに使うというつもりでございます。
  153. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 それは、今調査計画中の宮殿の総合計画の中に入っているのですか、全然入っていないのですか。
  154. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 宮殿の方は、象徴としての公けの活動をなさる場所、なお象徴としておいでになられる――両陛下のおいでになる場所ということでありますので、東宮御所はそれとは別個に考えておりますので、宮殿の総合計画とは別個になっております。
  155. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 わかりました。そうすると、将来の宮中の御用に立てる国有の施設として、東宮御所と同じような他の施設、こういうようなものを造営する必要がありますか、あるいは全然ございませんか。
  156. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 御質問の趣旨がちょっとはっきりしませんが、私の推察したところで考えますと、あるいは他の宮さんの御殿、お住まいになるところでも作るような場合のことだろうかと思いまするが、将来そういう場合も考え得ると思うのでございますけれども、これは、三笠宮さんあたりが今お住まいになっているのは、終戦後お買いになってお住まいになっているのですが、最近のように外国使臣などの交際が多くて、いろいろお客さんがおいでになりますと、これは建物が中流の建物で貧弱なものですから、皇族として活動なさるにはあれではどうもというような声もちょいちょい聞かれます。あるいは、皇族として活動されるにふさわしいものを作ったらどうかというような声もあります。大宮御所の一角に、以前三笠官邸のあったところも、そのままあいているわけであります。その跡にすぐ建てるかどうかということは疑問もございますが、財政の事情その他も勘案して、そういうことが適当であるという時期が参りますれば、そういうようなこともあり得ると思います。
  157. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 天皇並びに皇太子は大体わかりましたが、そのほかの皇族のお住まいになるいわゆる御所等につきましては、これは敷地の問題もありましょうが、そういうものについて大体ある程度の将来を見通しての総合的な計画というものは、今度お立てになるわけですか、そこまではお立にならないのですか。
  158. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 総合的なものをすでに立ててあるかという点は、きまったはっきりしたものは立てておりませんのですけれども、三笠宮さんに必要な場合には大宮御所のあの一角の土地とか、なお義宮さんの問題があるのですが、今は皇居の中におられますが、独立して宮家を立てられれば外へお出になる。そういう場合の考えとして、あるいは今東宮仮御所になっている常盤松の家を改造してということも考えられる。あるいは、その建物は非常に古くて何だから別途に作ると、もしも別途に作るようなことが可能ならば、やはりあの大宮御所の一帯の地域は、先日もごらんになりましたけれども、そういう余地もありますから、そういうような宮さんの殿邸を作ることが必要な場合には、そういう用に充てようと、そういうような構想を大体持っているわけであります。
  159. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 この宮殿の方の大体最終的な案ができるのは来年の三月末と、こうおっしゃったのでありますが、それまでは国会の方には全然どういうような構想で進まれるかということは、連絡をとられるお考えはございませんか。
  160. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 来年三月末までに宮内庁の事務的な一応の案ができるということで、それができたところで、政府の関係とか、国会の関係の方あたりに御相談をする。来年の三月末までに案ができてしまうというのではなくて、御相談をする下案ができるというので、そういう下案ができて、それから御相談をするということであります。
  161. 栗山良夫

    ○栗山良夫君 そうすると、先ほど宮殿造営の審議会ですか、何かそういうものを考えているということでありましたが、やはり国民は、それぞれの立場、それぞれの考え方で、宮殿の造営ということについてはいろいろ関心を深く持っていると思いますから、従って、宮内庁である案を作って、それがよく消化されないうちにすぐ国会の正式の問題になってしまうというようなことのないように、やはり今あなたの御構想のように、審議会を作られて、そうして各界の意見というものが十分に尊重せられて、そうして名実ともに新しい憲法の天皇にふさわしい皇居なり、宮殿なり、そういうような造営ができるように、せっかく努力せらたいと思います。強くそれを要望いたしまして質問を終ります。
  162. 大矢正

    ○大矢正君 これはちょっとわからないので、この際お尋ねしてみたいと思うのでありますが、かりに、今度東宮御所が二億一千万円の予算で新築されるわけですが、将来において皇太子が即位するというような事態が起きた場合には、この建物は一体どういうことになるのですか。
  163. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) そういう場合であって、まだそのあとの皇太子がないというような場合ですね。そういう場合、やはり東宮御所川の建物として維持して置くべきじゃないか、そのうちにおできになるというふうにも考えられるわけですから、やはりそれはそのまま維持して置くということになるのじゃないかと思います。
  164. 大矢正

    ○大矢正君 そうすると、そういう場合には、東宮御所として建てられた建物というものは、他に使用するということはないという原則がどこかにあるのですか。
  165. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) そういう原則はございませんですが、ただこれも想像ですけれども、あるいは皇太子殿下が即位されても、半分ここに住んでいた方が自分としてはいいというような御意見の場合には、あるいはそのまましばらく住んでおられるというようなことも、それは、まあ想像ですけれども、あるかもしれません。従って、東宮御所以外には絶対住まわれないというものではございません。しかし、東宮御所を本来とするものであるということでございます。
  166. 大矢正

    ○大矢正君 たとえば皇太子が即位をして、結果として東宮御所が使用の必要性がなくなったというような場合に、ただいまあなたの御意見を承わりますと、さらに皇太子がそこをお使いになるという話ですが、今度二億一千万円かけて作られる建物というのは、たとえば外国の多くの方々が来訪したりして、なかなか現在の建物では不便だと、こういうのが中心的な課題になっているわけですからね、そうすると、その幼少の皇太子が外国から人を招く云々なんということは必要性がなくなるのじゃないか。そうずると、そんな膨大な、二億一千万円もかかるいわば建物が必要がないということにもなる、一定期間は、十年なり、十五年なりは……。
  167. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) これはいろいろの場合を想定いたしますと、まあ今おっしゃいましたようなこともあるいはあるかもしれませんけれども、しかしながら皇太子殿下が御成婚になり、王子さんもできるということも大体予想されますが、今の陛下も御壮健ですから、相当おいでになる。そうすると、必ずしも御幼少かどうか、それもわかりませんし、そこらあたりはなかなか確定しかねるので、外国の――先日のノウルウエーでしたか、皇太子がもうたしか五十か六十で、その下の人はずっと三十代になっておられというようなこともありますので、必ずしも御幼少とは言えない。やはり皇太子としてお使いになるのを準備しておくということがやはり必要だろうと思うのであります。
  168. 大矢正

    ○大矢正君 参考のために承わっておきたいと思うのですけれども、今議決をするのは、皇太子の東宿御所として議決をするわけですかね。将来においてもしこれが他に使用される場合には、やっぱり議会の議決を得るのですか。他に使用する場合、たとえば宮家なら宮家が使用するということですね、あるいは今の義宮様がかわって使用になるというような場合には、これは議会の議決を得るのですか。
  169. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 国有財産法上から申しますと、皇室用財産を取得するときに議決を得るということでございますので、目的を限定しておりませんから、他に使用するという場合、皇室関係には議決は必要はないということになります。
  170. 大矢正

    ○大矢正君 そうすると、目的は違ってもかまわぬわけですか。
  171. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 皇室用財産であります限りはあらためて議決を要しません。
  172. 大矢正

    ○大矢正君 さっき栗山委員からも発言があったのでありますが、やはりお住居を建てられるからには、なるべく天皇御一家が集中をされて生活をされることの方がいいのではないかという気がするのですが、たとえば今の二億一千万円かけて建物を立ててみても、また将来においては宮殿を作らなければならないということもあり得ますから、そういう意味では、もしむだな部分が将来起り得る可能性があれば、今からそういう将来を展望した上に立って、宮殿総体を検討し、宮家を含めた天皇御一家全体として考えるべきではないかと、私はそう思うのですが、どうもその点理解がしにくいのですが、こういうように部分的に切り離して、国有財産として、また皇室用財産として提案をするということはどらも好ましくないのではないか。むしろ根本的な上に立って、多少時間的なズレがあっても、私は出すべきじゃないかと思うのですが、その点いかがですか。
  173. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) お住居は同時に総合的に計画してやったらどうか。従って東宮御所についても総合的計画ができるまで考えたらどうかという御趣旨じゃないかと思うのでございますが、皇太子殿下につきましては、今おいでになります常盤松の、あれはもと東伏見さんの屋敷で、それも狭いところでありますし、最近のように国賓なんかたくさん見えますときには、どらも……、あの建物でお会いになることはお会いになりますが、ときによると、皇太子殿下も食事を一緒にされた方が親しくなれていいというような場合でも、あすこはそういう部屋がととのっていないものですから、そういうふうにできない。ですからやはりこういうような時局になりますと、あの建物では不便だという点が一つあります。もう一つは皇太子殿下ももう二十四才半になります。結婚適令期にもなっておいでになりますので、そのうち御結婚にもなると思います。まあ他の委員会にも申し上げましたのですが、その東宮妃の内定はできれば今年度中である。そうなると、御成婚が来年くらいというような見通しになるのですから、やはりそうしますと、今の建物ではどうも無理だと思う。それで東宮御所の点は切り離して、早く一つまあ作っていただきたいということなのでございまして、なお、他の宮家の関係とは、これはやはり皇居の中へ一緒に作るという意味じゃなくて、外へそれぞれ作られるわけで、財政の事情その他を比べて、そのときによってまた考えるということでいった方が実際の実情に沿うのではないか、こう思っているわけでございます。
  174. 大矢正

    ○大矢正君 東宮御所の新築は三十三年度、三十四年度の予算、両年度にまたがっているわけですが、今説明によると、来年御成婚だという話ですが、建物が建たないうちに、新築が建たないうちに結婚されるのですか。
  175. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 建物は本年度と来年度でありますが、来年の暮ごろにはまあ完成するという見通しでありまして、まあ御成婚はそれより先になるか、場合によっておそくなるか、そこはわかりません。かりに早くなられる場合があれば、しばらくであれば、常盤松仮御所でがまんしていただく。先にもうすぐできるという見通しがあれば、がまんしていただくというようなこともあります。できてからになれば、なおいいところへいかれるということで、その点とのにらみ合わせもとりつつ、ちょうど来年の暮くらいにできればいいのではないかと思っております。
  176. 大矢正

    ○大矢正君 結局この際、次長に念のためにお尋ねをしておきたいのですが、天皇御一家が一ヵ所にお住まいになられる。建物はもちろん多少違うでしょう。同じような所にまあお住まいになる、こういうことはこれはあなたの今の考え方としていかがでしょうかね。好ましくないのか、そうすべきなのか。
  177. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 御一家としては必ずしもそう別々においでにならないでもいいと思います。各宮家との関係は、これはまあやはり宮家はそれぞれ別にいろいろ御活動なさいますから、いくらかやはり別のところにおいでになった方が宮家らしいお暮しができると思います。なお、今度の東宮御所の考え方の中には、王子さん、王女さんがおふえになった場合ならば、やはり一緒にお住みになるというような構想で、まあ王子室というものを考えた次第でございます。なお、将来その考えてある部屋で足らない場合は、増設できるようにその余地を、設計する際に考えるというように私ども考えておりまして、その点は、現在の陛下の場合とは違った考えになっております。
  178. 大矢正

    ○大矢正君 私は同じ二億一千万円の予算をかけて御所を新築するならば、それからもう一つはあなたのお考えの中に、天皇御一家ができる限り同一の場所にお住まいになることがよろしい。もちろん建物は違いますけれども、そういう考え方があるとすれば、あえて大宮御所に新築をしないでも、今の宮城の中に新たにお作りになって、さほど、三十三万七千坪ですから土地がないというわけでもないし、建てる所がないというわけでもないように思いますが、こういう私の考え方は、何か飛躍しているか、間違っておりますかね。
  179. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 御一家が御一緒にと申しましたのは、皇子さん、皇女さんがお若いようなころというようなことを考えて申し上げたわけで、それぞれ独立の活動をされるような場合は、やはり別の所でお住みになるということの力が御活動をなさりやすい。なお、特に天皇陛下と皇太子殿下の場合は、やはりちょっと離れた所にお住まいになった方がいいという考えもあるのであります。そこに何か特別の天災でもあったような場合は、ちょっと離れておられる方が危険分散の意味もあるというようなことも考えまして、そういうこともいろいろの方から言われておるわけであります。なお、今の皇居の中に東宮御所を作ったらどうかということも、検討した際には、一応考えた題目でありまするが、あの中は、先ほど栗山さんもお話になりましたが、どうも城の中の関係で、皇太子殿下の御所を作るにしては、どうも適当なふうに考えません。大宮御所のあそこは、ああした土地もありますし、庭なんかもああいうふうにありますから、いろいろお客をされる場合も、あそこの方がよかろうというふうに考えておるわけであります。
  180. 大矢正

    ○大矢正君 今、かりに大宮御所に二億一千万円かけて東宮御所を新築をすると、この間私どもが見せていただいた今の宮内庁の建物ですが、陛下が外国の方々をお招きになったりする建物と不つり合いのことになりはしないか。天皇陛下が外国の使臣を謁見されたりなんかする場所が非常に落ちておる。新しくできた皇太子の建物が実に二億一千万かかるのですから、りっぱなものになっちゃう。どうもこれは同じ外交団や、国内の名士を招いて、かりに行事を催すにしても、私はちぐはぐな感じがしないかと思いますが、それがそれだからいけないという意味でこう言うのじゃなくて、すみやかにやはり宮城の中に宮殿を作らなければならぬという結果に私はなるのじゃないかと思いますが、どうでしょう。
  181. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 現在考えております東宿御所の設計は、現在の仮御所、仮宮殿、先日ごらんになりました、あれよりも部屋の中なんかがりっぱになるという、それほどの金額ではございません。皇太子殿下のお使いになる御殿回りというものが約六百坪、それが一億、五千万円、坪あたりが二十五万円、事務の関係、それから機械室 やはりこれがそういうような関係で五百坪、それが坪あたり十万円、その他の付帯施設で二億一千万円でありますが、最近の都内あたりでできる相当な一級の建物を見ますと、坪あたり三十万円、四十万円あたりのものも相当あるわけです。皇太子殿下として外国の貴賓にお会いになる公けの部屋というものの方は、お住居になる部分よりはかけますから、二十五万円より多くなります。その感じも、現在の仮宮殿と比較して非常にりっぱだというような、そういう感じにならない程度予算でございます。これは日本の現在の財政事情から、そういうふうになってきていると思います。
  182. 大矢正

    ○大矢正君 大蔵省に資料をお願いしたいのですが、できるかどうか伺いますが、現在の皇室用財産は九十五億とかたしか書いてあったのですが、こまかい内容まで列挙してもらいたいとは思いませんが、でき得る限りの範囲で皇室用財産というものを資料として提示していただくことができるかどうか。
  183. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) 宮内庁と打ち合せをいたしまして、至急提出いたしたいと思います。
  184. 平林剛

    平林剛君 私も二つ三つちょっとお尋ねをいたしたい。簡単であります。先ほど大矢委員から、宮殿造営の計画についてお尋ねがありました。大体その計画もおありのようであります。その場合、一体どのくらい経費がかかるのかということなのであります。まあこの間、中を見せていただきまして、二重橋を渡った広場のところが前の宮殿あとだという御説明を受けましたけれども、新たにもし建てられるということになると、大体どのくらいかかるものだろうかということを疑問に思ったのであります。それは規模にもよりますし、あるいは国の経済力とか、いろいろなことも考えなければならぬと思いますが、日本国民感情と、それから現在の経済規模などから考えまして、常識的にどのくらいかかるものだろうか、こういう疑問を感じたのでありますが、差しつかえけなれば御説明を願っておきたい。
  185. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) その点は、今宮殿造営の調査をいたしておるので、その調査がある程度できませんと、幾らかかるということも出てこないのであります。来年の三月までで下案というものが一応できますと、このくらいの広さならばこのくらいかかるということが出るので、今のところはその金額は出てないわけです。
  186. 平林剛

    平林剛君 かなり漠然とした質問でありますから、お答えがしにくいと思います。私もあえてお尋ねをする気持もありませんけれども、前に建てられておった宮殿程度のものを、現在の物価に直しましたらどのくらいになるのでしょうか。
  187. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 前の宮殿は明治十七年ですか、そのときに金額でたしか五百万、今の物価に直しますと、私の聞いたところでは七、八十億です。
  188. 平林剛

    平林剛君 今度はこまかいことですが、中を見まして、私率直に申し上げて、付属建物の中では大へんきたないものがあるわけです。未だに戦災に会った跡を想像させるようなトタンを使っておったり、かなり修理を要するようなものもあったように見てきました。これは率直に言って、現在宮城外にある官庁の建物から比較いたしますと、大へんお粗末なものであったということは認められるわけなんです。そこで本年度の予算の中に、約六百六十万三千円の各所修繕費というものが計上されておりますけれども、ああいう場所の修理などは、今年の予算で一体おやりになるのかどうか。  それからもう一つは覆馬場の建物を移築するために取得しようとする財産の予定価格は八百十二万九千円とございますが、これは本年度予算の中に含まれている金額を幾らか持っていってやるものか。私の質問がちょっとわかりにくいかと思いますが、これとは別にですね、別に今回国会に対して議決を求めておるのか、その関係を少し説明をしていただきたいと思います。
  189. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) このまん中の、ごらんになりますと、相当荒れたものもございまするが、これはやはり今年度の財産の維持管理費で順次直しておりますのですけれども、まあ予算の範囲内でありまするから、急を要するものからいたしておりまするので、まだ十分手が回っていない点があります点は感じておる次第であります。できるだけ努力をしてもっときれいにしたいと思っております。  それからこの覆馬場を参観人の休所にします場合の八百万円という点は、これは今度はあれを移築します予算が六百万、あの材料なんかが台帳価格で二百万ばかりになっている。その価格と合せたものでそういうふうになる……。
  190. 平林剛

    平林剛君 それはわかりました。  それからもう一つ感じたことは、あのかなり広い土地がですね、幾つかの省によって分割管理をされておりますね。ある場所は厚生省が管理をする、ある場所は大蔵省が管理をしておる、または宮内庁の所管になっておると、こういう工合に所管が分れているために、まあ国の全般の一つの象徴として見る場合、美観の程度も場所によってずいぶん違うわけでございます。結局予算の関係で掃除をする場合も、あるいは何か行う場合でも、金額に左右されるとか、それを使い方によって時期がずれるために、半分はきれいだが半分はよごれているというような工合に、どうも全般的な美観というものがない。こういうことは一体何か今後まとめてやるような御計画なりお考えがあるのでしょうか。これを一つお聞きしておきたいと思います。
  191. 賀屋正雄

    政府委員賀屋正雄君) お答え申し上げます。御指摘になりましたように、脱衣の皇居内には、大蔵省が所管いたしております普通財産も相当あるのでございますが、これは財産税法によりまして物納せられました財産等でございます。それからその土地の上にあるいは宮内庁の建物あるいは皇居警察本部の建物あるいは賞勲局等が建物を持っておるというような関係もございます。将来の方針といたしましては、同じ江戸城の中の土地でございまして、隣りは宮殿が建つということでございますので、これらの土地の管理をできるだけ一元的にするということが好ましいと考えられますので、将来は皇室用財産に移すというおよその考え方のもとに、とりあえず宮内庁の公用財産として大蔵省から所管がえするという方針をもちまして、関係当局と打ち合せをいたしたいと考えております。
  192. 平林剛

    平林剛君 私がお尋ねしたことについてはっきりした結論を得られませんけれども、時間もだいぶん経過しておりますから、今お話のように、私が指摘した趣旨で、何か統一したものがあったらいいのではないかという感じをいたしましたので、この機会指摘をしておきたいと思います。  それから最後に、東宮御所の建築の終るのは、今回の説明によりますと、三十四年度の予算を得て、それからということになりますから、まあ三十四年度一ぱいかあるいは半ばであるかということになるわけでありますが、大体いつごろになったらその建築が終るのか、何か計画がおありと思いますが、その計画がもしありましたならばこの機会お答えを願いたいと思います。
  193. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) 今年度中に主体工事つまり鉄筋コンクリートのワクだけはできるわけであります。来年度に入りましていろいろ中をきれいにする方の仕上げをいたしまして、来年度の暮くらいまでに完成するという予定でございます。
  194. 平林剛

    平林剛君 来年度の幕というと、昭和三十四年の暮ということ、皇太子殿下の御成婚というものは大体そのころと国民は大へん関心を寄せておりますから、そこで勘定をしてお尋ねをするわけですが、大体来年の秋から暮にかけてと、こういうふうに想像されるのですが、そうですか。
  195. 瓜生順良

    説明員(瓜生順良君) この東宮妃御決定の問題は、これはいろいろ考えておりまするが、いつまでと、きちっとなかなか計画的に立ちにくい点もあります。現在もまだ内定もいたしておりませんので、いろいろお話をして話がまとまる。それから一年くらいたってから、あるいはもう少し延びる場合もありましょうが、順調に参りますれば、今年度中に内定して、来年の秋から暮ぐらいには御成婚と、しかしながら延びれば再来年というふうに一応お世話をいたしておりますわれわれは考えておりますが、ほかのことと違いまして、その通りにいきますかどうか、その点はわかりかねます。
  196. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 質疑がなければ、質疑は終局したものと認めます。   ―――――――――――――
  197. 前田久吉

    委員長前田久吉君) この際お諮りいたします。去る六月二十六日、商工委員長より、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律案について、連合審査会開催の申し入れを受けておりますので、これを開くことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  198. 前田久吉

    委員長前田久吉君) 御異議ないと認め、さよう決します。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十三分散会    ――――・――――