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1958-06-26 第29回国会 参議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)    午前十時四十八分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     田畑 金光君    理事            青柳 秀夫君            高橋進太郎君            阿部 竹松君            大竹平八郎君    委員            小沢久太郎君            小幡 治和君            古池 信三君            小西 英雄君            高橋  衛君            島   清君            相馬 助治君            豊田 雅孝君   国務大臣    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    経済企画政務次    官       河本 敏夫君    経済企画庁長官    官房長     宮川新一郎君    経済企画庁調整    局長      大堀  弘君    科学技術政務次    官       石井  桂君    科学技術庁長官    官房長     原田  久君    科学技術庁原子    力局長     佐々木義武君  事務局側    常任委員会専門    員       小田橋貞寿君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○経済の自立の発展に関する調査の件  (経済計画に関する件)  (科学技術政策に関する件)  (原子力政策に関する件) ○連合審査会開会の件   —————————————
  2. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより商工委員会開会いたします。  先ほど委員長及び理事打合会を開き協議をいたしました結果、本日は、まず午前中経済企画庁関係について審議し、午後二時から科学技術庁関係の審議を行います。  なお、来週は七月一日火曜日に、繊維業及び石炭業不況対策について調査を行い、また参考人からも意見を徴する予定でおります。二日には先日お知らせいたしましたように、千葉市の東京電力火力発電所及び川崎製鉄工場を視察する予定でおりますから、多数御参加願います。なお、三日以後の日程については、委員長において諸般の情勢に応じて企画することに御了承を得ました。  右のように、委員会運営していくことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないものと存じ、さよう取り計らいます。  ついては、一日の参考人の件ですが、その人選等委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認めます。
  5. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 それに関連して、参考人を呼ぶとき、紡績とか化繊はわかっておりますが、それから特に不況地の、たとえば福井とか何とかそれを一つ頭に置いて選考願います。
  6. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 承知いたしました。  速記をやめて。   〔速記中止
  7. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは速記を起して。   —————————————
  8. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより日程に入り、経済計画に関する件を議題といたします。  まず、経済企画庁長官三木武夫君より所信表明を願います。
  9. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) このたび経済企画庁長官に就任いたしましたにつきましては、この機会に所信一端を申し述べて各位の御協力を得たいと存じます。わが国経済自由経済基調として運営せられていることは今さら申すまでもないのでありますが、それが均衡のとれた安定的成長をはかるためには、計画性をもあわせ持つべきことは、これまた当然のことであります。昨年末、新長期経済計画が策定せられましたのもこの趣旨に基くものであります。私は、この計画を今後の経済運営の指針として、長期にわたるわが国経済安定成長に努力いたしたいと考えるものであります。  さらに、政府の重要な経済政策は、かような長期的方針のほかに、絶えず変動推移する現実経済適確現状把握見通しに基き、総合的な方針のもとに、機動性をもって実施されることがきわめて必要であることは申すまでもありません。そのため、経済企画庁は、関係方面とさらに連絡を緊密にし、その協力を得て、経済に関する総合企画官庁としての機能をより一そう発揮いたしたいと存じております。  翻って、当面の経済動向を概観いたしまするに、最近の経済指標が示している通り引き締め政策による景気下降も次第に底をつき、経済は新しい局面に移りつつあるものと考えられます。  もっとも、海外景気低迷も影響して輸出は当面必ずしも好調ではなく、また、その先行きもあまり楽観を許しませんが、設備投資個人消費など需要一般はかなり底がたいものがありますので、ここしばらくの間、現在程度生産水準を維持するならば、やがて、在庫正常化し、これに伴って生産の立ち直りと景気上昇期待することができると思われます。  従いまして、以上のごとき経済の現局面に対しましては、この際、公定歩合の引き下げなど従来の引き締め政策による「おもし」を取りはずし、これによって経済正常化を実現し、あわせて将来の安定成長への道を開くべき段階に達していると考えられるのであります。その意味で、現在、ことざらに内需刺激目的とするいわゆる景気振興策のごときを安易に採用することは、せっかくここまで正常化してきた経済を再び逆行させるおそれがあり、これを避くべきであることは言うまでもありません。  私は、今後の経済安定成長の中軸をあくまで輸出伸張に求めることにし、ここに官民の総力を結集して、各般の輸出振興策を実施して参る決意であります。最近のわが国輸出動向は、前述の通り停滞気味ではありますが、米国の景気もようやく底入れ気配が見え始め、これとともに世界景気動向も今後は漸次低迷状態を脱していくことが期待されます。さらに、わが国の物価はかなり低落し、国際比価も改善せられつつある上に、ここ二、三年来の思い切った設備投資によって企業近代化も進展し、ものによっては相当の国際競争力を備えるに至っております。従いまして、こうした基盤の上に積極的な輸出振興策を積み重ねるなどにより、長期にわたるわが国経済安定成長の実現をはかって参りたいと思いますので、今後とも一そうの御協力を得たいと存ずる次第であります。
  10. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 以上で所信表明は終りました。  御質疑のある方は順次御発言願います。
  11. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ただいまの経済企画庁長官所信表明に対しまして、二点ばかりお尋ねをいたしたいと思います。  ただいまの所信表明の中に、景気下降も次第に底をついた、経済は新しい局面に移りつつある。個人消費など需要は一般的に見てかなり底がたいものがある。また、世界景気動向も、今後は漸次低迷状態を脱していくことが期待されるというふうに見ておられるようであります。これに対して内需刺激目的とするいわゆる景気振興策のごときは安易に採用できないということを言っておられるのでありますが、これは非常に私は楽観し過ぎる見方じゃないかと思うのであります。現に六月のLCを基調としまする輸出実績などを見ましても、上旬が四千九百二十万ドル、中旬が七千八十万ドル、合せて一億二千万ドル程度でありまして、六月全体を見通しても、昨年だいぶ心配をしておった六月よりもかえって悪いのじゃないかということであります。この点については、輸出の悪いという見通しは大体ただいまの所信表明でも認められておるようでありますが、これは世界景気動向と非常に緊密なる関係があるわけでありまして、この一事から見ましても世界景気動向がようやく低迷状態を脱しておるというふうになかなか楽観はできないというふうに考えるのであります。しかも、この個人消費などの需要一般先行きまだ不況であろうというような点から仮需要などは非常に少い。これは御承知でありましょうが、綿スフ業界などでは非常に問題を起しておるのであります。また絹人絹等も同様であります。石炭業界もまた同様であります。さらにまた輸出関係の軽工業品雑貨、これらにつきましては合板初めゆゆしき状態にあるのであります。従って、町では依然として神武不景気であり、しかもこれはなかなか容易でないというような声が非常に強いのでありますが、要するに、これは昨年の五月以降とられた総合経済施策の結果、国際収支均衡は得がちになってきましたけれども、一面において、健全なる仮需要すらすべて見送られてきておるというところからくる非常な生産過剰、それからまた、過剰の滞貨、これらからゆゆしき事態が出てきておるのでありまして、こういう点から見ますると、去る総選挙の際に公約せられた国際収支均衡範囲内において景気調節をやるということをおやりになる必要があるのじゃないか、その段階にきておるんじゃないか、それでないと、結局角をためて牛を殺すような状態に追い込まれてきておる、今にしてここで手をお打ちになる必要があるということを痛感をいたすのであります。  その点について、実はこの所信表明にもう少し積極味のある一 もちろんそれは国際収支均衡範囲内ではありまするが、もう少し、一つの曲り角に来ておるだけに、新しみのある行き方を明らかにせられるんじゃないかというふうに考えておったのであります。しかも、三木長官政調会長以来、特にただいま申しますような点については非常に憂慮をせられてきておるのでありまして、それだけに、従来の経済企画庁基本方針というものに大きなメスが入ってくるんじゃないかということを期待しておったのでありますが、まあ刷りものにするといろいろな関係もあるでありましょうし、勇敢なる三木長官として言いたいことも言われないという点があろうと、私は大いに好意的に推察をいたしております。それだけに、この商工委員会において、端的率直に今後はいかにあるべきかという点を明らかにしていただきたい。これをまず第一にお聞きしておきたいと思います。
  12. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今お話しの中にもございましたように、行き過ぎた日本経済調整期に入ってきて、在庫整理生産調整、それらが本格的に始まったと、一月、あるいは物によっては三月ごろになった……。そういうことで、一応今は日本経済調整期である。この調整期を中途半端に終らしますと、日本経済の持っておる悪夢を抜けない。それで、ある程度在庫整理も、これは統計などを見ましても、相当在庫は減っていっておる。三月、四月の統計などを見ても、三十年を基準にして一〇〇とすれば、一六六・一が一四六・一と、一二%ばかり減っておる。五月も、まだ集計はできておりませんが、そういう傾向がある。次第に在庫整理されて、一方において有効需要というものは、消費のごときも、これは強含みの横ばい——やはり毎月消費はふえておる。設備投資の面においても、これは将来、来年度は問題になって参りますが、ことしはまあ大体設備投資規模というのは計画に近いものにいくんじゃないか。それは、八二%も継続工事があるということも、これは大きな要素になっておる。財政の面から見ても、これは昨年度に比べて、予算が千二百億円ばかり増加しておることは御承知通り。こういう、有効需要の面においては相当プラス要素もある。輸出の点がこれは問題である。しかし、相当プラス要素もある。そこへもってきて在庫整理が次第に行われて、また、従って、在庫整理が行われることは、一面において生産調整が進んでおるということであります。こういう状態が続けば生産需要とがマッチして、物によったならば七月、……九月にズレる物があるけれども、そこで一つ生産と今言った需要というものとが……、そうして下期には相当有効需要プラスの面か生まれてくる。財政もそうでしょう、輸出もそうでしょう、消費もそういう形をとってくる、そうなってくると、そこで非常に楽観はできないけれども、これ以上日本経済が次第に不況が深刻化してくるようには考えられない。まあ少しは上向いていくような状態になるのではないか。しかし、景気が俗になべ底と言われているように、非常に大きなカーブをもって景気上昇というものを期待しているのではない。まあ少しなべ底が上向いていくような状態、決して景気前途楽観しておるわけではないので、このあいさつの中の文句をよくごらんを願えれば、そう楽観に終始しておるわけではない、そういう点で、われわれの今後の輸出振興策とも、これは積極的に輸出振興をはかりたい、こういういろいろ、まあ全体の経済状態が今言ったような点でありますし、政府施策というプラスの面も生まれて参りますので、景気前途というものが非常に悲観的に——楽観もできないけれども、そう非常に悲観的に見るという考え方もとってはいないわけであります。  そこで御指摘の、もう少し国際収支ワク内において、国内の有効需要を喚起していったらどうか、というお話であります。これは御承知のように、たな上げ資金もございますし、財政投融資余裕金もあって必要があれば政府はやはりそういうものも景気の弾力的な運営にこれは使うべきが当然でありましょう。しかし、そういうことを、景気政策などをとるためには、もう少し経済の推移というものを見きわめることが必要なのと、今経済調整時期において、新たなる有効需要を喚起することが、かえって経済のノーマルの状態調整しようとする時期としては適当ではないのではないか、もうしばらくこの様子を見たいということで、現在の予算ワク内においてやっていく、新しくこの追加需要というものをここでいろいろ予算的な措置、その他によってやろうという考え方は持っていない、こういうのが荒筋の考え方でございます。
  13. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 有効需要は漸次ふえてもきているというお話でありまして、楽観しておるんではないが、というお話でありますが、やはりそのお話の実質は私は楽観しておると思うのです。というのは、綿スフ業界現実の事例を見ましても、現在製品ストックというものは、これを綿糸に換算して五十四万コリある、そうして普通の場合のストックは三十四、五万コリあるということに比べて見ますると、すでに二十万コリものそこに過剰な滞貨がある。従って業者は、ただいま思い切って織機の買い上げまでやらなければならぬ、そうしてさらに製品買い上げも積極的にやらなければならぬ、操短率も二割や三割ではとてもいかぬ、五割までやらなければならぬという状態であります。そうして危機突破大会などを各地でやっておるのは御承知通りであります。業界としては、先行きがいいということなら、何を好んで操短を激しくやろう、あるいは製品買い上げを金まで使ってやろうとかということになるかと・こういうわけなんでありまして、こういう現実の事実をどういうふうにごらんになっておられるか、非常にそういう点はセンスの鋭い三木長官であると私ども確信しておるのでありますが、その三木長官が非常に雲の上の、しかもあんまり見通しのつきにくい雲を通して見ておるような感じがするのでありまして、御答弁を伺っておっても、ちょっとぴりっとこないのですが、いかがでありましょうか。
  14. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今個々産業自体、御指摘になった繊維などにおいては、われわれ非常にそういうふうな、これがこの経済調整過程個々産業にどういうふうに影響を与えておるかということに対しては絶えず関心を持ち、統計などを通じてもながめておるんですけれども、それは個々産業についてはいろいろ御指摘問題点があろうと思います。しかし、まあ全体の経済の大きな見通しとしては、今私が申し上げたように考える。個々の問題については、個々に解決しなければならぬ問題が、いろいろそういう特殊な産業中小企業いろいろ起ることに対しては、これはその関係官庁とも相談して適宜な処置は打たなきゃならぬ必要は起ってくると思う。全体としての経済流れというものは、そう雲の上から見ておるとも思わないのであります。
  15. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 全体というのは、もちろん部分の集積でありまして、部分がそれぞれ悪いということになりや、全体がいいということは、これは言えぬのでありますから、そういう点じゃ私はまだ納得がいかぬのです。そろばん合って銭足らずにもなりつつあるような気がするのでありますが、しかしまあこれ以上申しましても、時間をとることになると思いますので、部分的な、しかもその部分が、ごく一小部分じゃなくて、ある意味においてはほとんど全面的です。石炭にしましても、輸出雑貨にしても、合板についても、容易ならぬ状態でありますので、これはまあ経済企画庁長官とせられては、あるいは個人としちゃもう少し深刻にお考えになっておられるのかもしれませんが、従来の経済企画庁行き方もあるでありましょうし、まあきょうはこの程度にしますけれども、深刻なるこの状態をよくお見通しになりまして、しかも部分の集積するところが全体に非常に大きく出てくるんじゃないかということを強くこの際お考えになるように、私は深刻な気持で要請をいたしておきます。  それから次には、これに関連いたしてでありますが、経済基盤強化資金、このたな上げをやめるわけにもいかぬということ、すでにお答えになったのでありますが、これについては、私は御検討になる必要があると思うのでありますけれども、もう一つ従来財政投融資あるいは公共事業費、これにつきまして昨年などは御承知のように総合経済施策一端としてあのときには繰り延べをせられた。しかし今申しまするように、部分的に、それがある意味ではほとんど全面的に容易ならぬ情勢を示しつつあるということになりますと、予算範囲内においても逆に繰り一上げ使用というようなことはお考えになっていいんじゃないかというふうに思うのであります。私の言っておりますのも、むやみに野放しにやっていこうというんじゃないんでありまして、国際収支均衡範囲内においてやる、あるいは予算規模範囲内において適時適切なる弾力性のある行き方をやられた方がいいんじゃないか、こういう意味であります。この点伺いたいと思います。
  16. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは同じように考えております。
  17. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 それでは、公共事業費あるいは財政投融資関係につきましては、繰り上げ使用を必要とするというふうに了解してよろしいですか。
  18. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今お話しのように、そういうことも適宜適切な景気動向とにらみ合せて考えるべきだというその原則には私も同感でございます。今、繰り延べるというようなことを言っておるわけではない。その原則で、経済政府施策としてはそういう心持でやるべきであるプリンシプルには賛成である、こう申します。
  19. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 もうちょっと足りませんけれども、プリンシプルはお認めになったようでありますから、これを適時におやりになるようにその点強く要望をいたしまして次の問題に移ります。  それは経済計画それ自体の問題でありますが、経済計画を、従来経済企画庁として非常に努力をせられてやってこられたのでありますけれども、常に私が追及してきておりますのは、裏づけ政策があるのかどうか、追及しておりますと一向裏づけ政策がない、これは資金計画につきましてもそうであります。特に資金計画を、民間の資金まで見通すということは困難かもしれませんが、政府資金計画などについても、相当規模がちゃんとあってしかるべきではないか、それらの年次計画があってしかるべきではないかというように考えるのですが、それがない。いわんや予算規模というものは、年次的にどういうふうになっていくかということも全然触れておらぬ、そして計画自身一つ積算基礎を持たれ、おそらく算術平均などでだんだん数字を出しておるだろうと思うのでありますが、しからばそれに伴う資金計画あるいは予算規模というものもかくあらねばならぬということが当然あってしかるべきだと思うのでありますけれども、それもない。ことに貿易計画につきまして将来、御承知のように三十七年度には非常に伸びることになっておりますが、これについても市場別貿易計画等がよほどしっかりしたものがないといかぬだろうと思うのですが、それがない。たとえば従来、中共貿易等にどの程度依存しようとしておるかということを聞いても全くお先まつ暗です。計画といっても計画というものではない。極端に言いますと、かれこれ五十人の人を半年以上も使ってやっておるようでありますけれども、ある意味においては一種の失業救済みたいです。一向しっかりしたものが裏づけになっておらぬ。ここにも非常に問題があるのではないかと思うのであります。従って、経済計画というものをせっかく立てるけれども、何に利用しておるのか、道路計画にはこれが利用せられるとかいって、一部が喜んでおられる向きがあるそうでありますが、そのほかに一体何にこれを利用しておるか、どれだけの効果を上げておるか、そういう点について今後どうあらねばならぬというふうに、三木長官として御就任早々であるだけに、そして私どももその業績に非常に期待をかけますだけに、この点をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  20. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、程度の差はありますけれども、日本経済の大きな指標にはなっております。将来のあるべき姿、好ましい姿というものが出ておるわけであります。ことに日本のような場合は、雇用問題というもの、一番大きな労働人口というものを将来消化していくためには、あの人くらいのやはり経済規模を持たなければならぬということは大きな経済指標にはなっております。しかし、豊田委員の御指摘のように、やはり長期経済計画実施面との結びつきというものは、きわめて弱いということは御指摘通りであります。それはおのずからやはり一つ自由経済ワク内における計画性というものにも限度がある、統制経済をやらないというわけでありますから限度があるわけでありますが、もう少しやはり一つ産業計画資金計画の面において結びつきを持つべきではないかということを私も痛感をしておる、そういう点で今後の実施面との結びつきに対しては検討を加えたい。今、ここで私は結論は持ってないけれども、もう少し計画性というものが自由経済ワク内においても、もう一歩進んだものは考えられないのかという点は、今私自身考えておると申し上げておきます。
  21. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 今度は上手にお逃げにならぬで答えていただきたいのですが、大体これもプリンシプルはお認めになったようでありますが、政府資金計画ないしは市場別貿易計画などは、大いに具体的にやってみようというお考えがあるのじゃないかと思うのでありますけれども、その点一つ抽象的ではなく、少し具体的に——まあこれは三木さんが経済企画庁長官になられた以上は、従来の経済計画に少し趣きの変った、内容の充実した、しっかりしたものにならないと、私はほんとうに意味がないと思うのです。その点、一つ端的にお聞かせいただきたい。
  22. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今検討してみようということは、一つはやっぱり資金配分計画、これはいろいろ個々資金に対してどうというような、そういう煩瑣なことは考えられないが、大きな資金流れというものに対して、もう少し、一歩進んだ経済計画というものを持たないと……という点。また貿易に対しても、市場別のような貿易計画というようなものは私は要ると思っております。そういう点で、これはしかし、今どうするんだということではないけれども、心境を問われたので、私もそういう必要を感じておるということを申し上げておるわけでございます。
  23. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 完全雇用お話が出ましたわけですが、完全雇用をやる上において経済五カ年計画では、商業部門サービス部門に非常に期待をかけられておる。ところが、今の状態でいきますというと、商業部門あたりには、かえって失業者が出てくるのではないか。これは御承知のように、百貨店の依然とした攻勢、そこに持つてきて消費生活協同組合購買会、共済組合、これらの異常な進出、それから公営に近いマーケットのようなものの過当進出、これらによって商業部門は雇用の力というものは、むしろ今のままいくと減ってくるのではないか。むしろ失業対策というものを考えなければいかぬのじゃないかというふうに考えられるので、そういう点においては、これもその裏づけの政策の問題なんでありますが、たとえば小売商業特別措置法案なんというものを出してみたり、引っ込めてみたりしているのでありますけれども、これを経済五カ年計画完全雇用政策の裏づけ政策として必ずやらなければいかぬということに私はなると思うのでありますが、どうもその面において、きわめて従来関係のあるごとくないごとくのような、責任のあるかのごとくないかのごとく、むしろ見ておると、経済計画ではなく、経済計画ではないかというふうに思われるので、その点についていかにお考えになりますか。
  24. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあ小売商の振興策でありますが、これは通産省でもいろいろお考えになっておる点だと思うのです。しかし、私の個人考えでは、やはり日本の場合は小売商とか、中小企業とか、そういう中以下の所得階層の安定策を積極的に考えなければ、日本全体の安定にはならない。そういう点で小売商の、企業の地位の安定ということは大きな問題——また雇用面でも御指摘のような結果になる。これはやはり大きな課題の一つであるというふうに考えております。
  25. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 そうすると、小売商業特別措置法、これは与野党から案も出ておるようでありますが、これを調整して、次の通常国会あたりにお出しになることが私は経済計画実施の面から必要になってくると思うので、そういう面で通産省にこれをまかしておくというのではいかぬのじゃないか。完全雇用をやかましく言われる以上は、それの裏づけの重要な施策としてこの問題を経済企画庁自身が推進される必要があると思うのでありますが、この点重ねてお伺いします。
  26. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 何らかの小売商の振興策はとりたいと考えております。それはわれわれも非常な関心を持っております。
  27. 豊田雅孝

    豊田雅孝君 ほかに質問せられる方もあるのじゃないかと思いますので、一応私はこの程度で終ります。
  28. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 簡単に二、三の点につきまして大臣の御所信を伺いたいのでありますが、先ほど御所信の中に、現在非常にやかましく言われておる不況対策、こういう問題においてはこそくな手段はとらないで、むしろ輸出の伸張に努力をしたい——私まことに同感なんであります。  しかし、今、豊田委員の質問に対する大臣のお答えを聞いておりますと、何かいかにも抽象的なような点が多いので、これは就任早々の点でもございますので、もっともなことだと思うのでありますが、しかし結論といたしまして、どうしても輸出が現在の日本経済を立て直す上において、第一のものであるということははっきりするわけであります。  それで、私はその問題につきまして、二、三具体的な問題について御所見を伺いたいと思うのでありますが、三十一億五千万ドルの輸出目標につきましては、先般の本委員会においての大臣の御答弁にもあった通りでございまして、それについて私はとかくは申しませんが、しかし実際面の総合した観測から申しますと、現在の見通しというものは、どう見ても二十九億ドルあるいは悪くいくと二十八億五千万ドル、しかしこれは、物価が非常に下っておるという点もむろんにらみ合せなければならないのであります。  私どもは政党政派を超越して、できるだけ大臣が御答弁なされておるその目標に向って、私どもは協力するということについてはもちろんなんであります。しかし実際面から言いまして、相手のある貿易の問題でありますので、私どもはこれはやはりある程度その見通しを縮小すべきものはざっくばらんに縮小して、そうしてその緊急な推進対策というものを行われるのが道じゃないか。かように実は考えておるのでありますが、これについてはあえて私は御答弁をいただこうとは思いません。  それで、輸出の問題から参りますというと、大きく申しまするならば、アメリカの不景気の問題、それから後進諸国のドルの不足の問題、それからあげられるのに中共の貿易というようなことが、これは常識的に言われておるわけでありますが、先ほどお話の中にも、大臣は米国の景気下降というものはある程度底をついたというような意味お話、これは今回だけではなく、この前の本会議でもさように私は聞いております。また新聞記者諸君との会談におきましても、そういうお話を私ども承わっておるのでありますが、私どもはまたいろいろなデータをとりまして私どもの考えを統一いたしますると、大臣がお考えになっておるように、米国の不景気というものが決して底をついておるとは判断をいたしておらないのであります。  ことにこれは、私はソ連のいろいろな情報を、これを唯一のものとして申し上げるのではないのでありますが、ソ進の最近の、例のフルシチョフを中心とするところのこの対外強硬政策の中心の第一は何であるかというと、米国の長期景気、いわゆる資本主義の崩落ということとスプートニク打ち上げのこの問題を非常に高くとって、例のユーゴに対するところの大きな弾圧を加えておるというように私ども聞いておるのです。これは、何も私どもはソ連の情報を頭から信用しているわけじゃないのですが、いろいろな意味におきまして米国の景気というものが、あなたがお考えになっておるほど私は楽観的なものではない、こう思うのでありますが、何か特にこのことにつきまして御自信のある御答弁をいただけまするならば、この米国の景気見通しについて一つお聞かせを願いたい。
  29. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 数字の上では五月ごろに、多少ごくわずかなパーセンテージですけれども、生産が上ってきておるような数字も出ておるけれども、しかし、それが大きな根拠にはならない。ただしかし、アメリカとしても減税こそやらなかったけれども、やはり景気の維持政策に対してはあらゆる努力をしておるし、大体いろいろなアメリカ人自身によるアメリカの景気見通しについても、これ以上非常に悪化するようなことはないのでないかという見通しの方が多いのであります。今、御指摘のようなソ連の観測もございますけれども、一つの近代の資本主義というものが、やはり景気循環に対してやっぱり政府がてこ入れをする一つの術を覚えたところに、一つの近代の資本主義というものの姿がある。そういう点で、自然に放置するのではなくしてやっぱり必要な景気政策というものはとるわけです。そういう意味において、これ以上アメリカ自身経済が悪化するということは——悪化するような方向を放置するということは、アメリカ自身としても中間選挙もありましょうし、いろいろな点でいろいろな施策というものが伴って景気の維持をやっていくのではないか、ことに最近はやはりIMFの増資の問題、第二世界銀行の構想なども打ち出されておるわけであります。ああいう世論もアメリカの中には起ってきておる。単に国内の景気維持政策ばかりでなくて、自由世界との団結のためにも、やはり貿易が縮小均衡の方向をたどっておる現状というものは、団結の方向にならないと、そういうことでIMFの出資金も、これはアメリカが中心になるわけであります。増加して、そうしてやっぱり短期の貿易資金というものを提供したらどうか、これは一つの大きな動きであります。第二世界銀行でも、後進諸国に対して何もひものつかない一つのコマーシャル・ベースでない形で、後進国に対して資金を出すべきじゃないか、こういう背景にあるものはすべてやっぱりアメリカ国内にも関連がありますけれども、世界景気の維持に対するアメリカの責任感というものが出てきておる姿だと思う。そういうことで、なかなか私も企画庁へ参りまして、海外における一つ経済動向に対する調査ですね、そういう日本のやはり海外における調査の機能というものは弱いと思います。これはいろいろ強化していきたいと思うのですが、しかしまあそういう、大体アメリカのいろいろな人々の一つ経済動向に対しての観測、それから今のIMFや第二世界銀行などに現われておるそのアメリカの——一つのアメリカの指導者のものの考え方、こういう点からいって、なべの底は長いかもしれませんよ、それは長い期間で、そんなに簡単ななべ底でないかもしれぬけれども、非常にアメリカの景気がこれ以上悪化をして、日本の対米輸出にも非常な影響を持つというふうにも、今日まあ上向きの速度はおそいけれども、現状を維持し、むしろ何らかのアメリカ政府の政策等に伴って多少のやっぱり景気の上向きは、速度はおそいにしても考えられるのじゃないか、こう見ておるのです。また日本貿易としても、これは対米貿易などは、将来のやっぱり輸出振興には経済外交というものはもっと活発にやる必要はあるのですね。対米の貿易考えてみても、やはり特需も入れてアメリカの輸入よりもまだ一つの下回るという状態は、これはやはり日本はアメリカに対しても反省を求めなければならぬ。輸入制限などこれは、日本自身のやはり節度のある貿易のやり方という点にも反省は要りますけれども、全体としてはそういう考えも持ってもらわなければならない。まあいずれにしても、非常にアメリカの景気動向というものは、これ以上ずっとずれ込んでいくのだというふうには観測はしていないということをお答え申し上げます。
  30. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 次に、これはまあ大臣自身も御視察をせられて、そうしてまた岸内閣のある意味においての一枚看板でありますところの、東南アジアを中心とするところの後進国への進出の問題なんでありますが、御承知通り、現在は石油を輸出をする国以外は、非常な、おそらく役所の方々の想像以上のドル不足で悩んでおるわけであります。これはまあ、実際の貿易の状況を見ればはっきり出ておるのであります。これにつきまして、国によりましては、従来の機械とかあるいはいわゆるプラント輸出に対しての、まあ無条件に近いような延べ払い政策というものを用いて、輸出振興に当っているというような面が最近は非常に多いのであります。私もつい最近向うに行って参りまして、各方面の人たちに会いましても、非常な各国の競争というものは激しいわけなんでありますが、これにつきまして現在政府といたしましては、ただ東南アの開発あるいは貿易の促進と申しましても、私どもは寡聞ながら具体的に一体政府はどういうような施策を講じたかということについては知らないのであります。それで、こういう国でございまするので、むろん借款とか延べ払いの問題ということが出るのでございますが、まあ借款問題につきましては、インド以外には現在はまだ具体的に話は進んでいないのでありますが、しかし、貿易輸出の全体の約三六%に近いものが大体東南アジアによって占められておる。しかも、最近も私は高碕通産大臣にも申し上げたのでありますが、中共の政治的な輸出によりまして、いわゆるダンピングによりまして、繊維のごときが四、五年前の千五百万ヤードからインドネシア自体におきましても何億ヤードというものが進出をいたしまして日本のこの綿布の首位が、マラヤにおいてもそうでありますが、片っ端から脱落をしておるというような状態もあるのであります。これはむろん、何であるかというと、値段の安いということが第一でありますし、それと同時に、そういった政治的な諸施策というものが、ことにインドネシアなどは、ただいま国会で審議をいたしております一億七千万ドルの焦げつきの問題すらもわれわれはこれを容認をしようとしておる、こういうときに当りましても、あえて中共からたくさんの綿布を買って、そうして日本の王座が脱落をしていくというような、こういう材料といたしましては、悲観材料が非常に多いのでありますので、これは尋常一様の私は方法ではなかなか予定通りに運んではいかない、こう思うのでありますが、特にあなたは先方をよく御承知でもありますので、せっかく大臣になられたのでありますが、特にこの問題等に対しまして、新しい一つ施策等がございますれば、この機会においてお聞かせ願いたいと思います。
  31. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) まあこれが、どう岸内閣の施策の上に生かしていくかということは問題でございますが、とにかく日本の長い将来を考えてみると、アジアの経済圏の一員であることは間違いないわけであります。そういうことで、将来東南アジア諸国との経済協力というものは非常に大きな国策の一つだと私は思うのであります。現在貿易もありますけれども、東南アジアの状態が商品の流れと資本の流れというものは大体軌を一にしておる。物を買え買えと言っても、東南諸国は工業化をやりたいという一つの大きな希望を持っておるわけですから、その要請にある程度こたえなければ商品の市場としても非常に狭くなっていく、そこで日本も自分を振り返って、明治以来の日本の歩みを振り返ってみたときに、農業国でやっていくということでは、いつまでたってもうだつが上らない、やはり経済的な独立のためには、ある程度工業化を後進国が考えるということは歴史の推移である、そういう点で多少のリスクはやむ得をない、後進国に対して。これは、非常ないわゆる安全なものではないかもしれぬが、それは大きなリスクというわけにもいきませんけれども、やはりそれぐらいの覚悟で東南アジア諸国の工業化と申しますか、せめて日常に使う必要物資ぐらいは自分の国で作りたいという現地の要望にこたえていくべきである、そのためには、輸出増進ということばかりでなく、将来長い目で見たアジアの経済地図、政治地図、そういうことを考えてやはり日本の能力に応じて協力をすべきであります。幸い国際収支も黒字の状態でありますから、金額は多少の変動はあっても見通しはそういうわけでありまして、プラント輸出などに対していろいろ条件を緩和してこれはやるべきである、現在でもいろいろ話し合いが、東南アジアの方面から延べ払いなんかの条件で、プラント輸出の引き合いがあるのは相当大きな金額であります。これは全部というわけにはいきませんが、いろいろケース・バイ・ケースで検討しなければならぬけれども、やっぱりある程度はただ輸出振興策ばかりでなしに、将来のやっぱりアジアというものを考えて、これは日本経済協力というものを強力にすべきである、そういう考え方を私は持っておるわけであります。
  32. 大竹平八郎

    大竹平八郎君 時間がございませんから、まとめてあと二点だけ伺いたいのでありますが、これは立場が今度は全然違った質問でありますが、この貿易の過当競争の問題でありますが、これはあえて貿易だけではなく、現在の日本生産状況を見てもそうでございます。この過当競争というものが国内はもとより、国外に対しまして、非常な日本にとってまずい影響を与えておることはこれは、大臣も御承知通りだと思うのでありますが、この間の独禁法の問題のときにもちょっと触れたのでありますが、戦前は何らかの意味においてこの過当競争に対するブレーキというものがかけられていたわけです。金融の面におきましてしかり、あるいはまた産業の面においてしかり、ところが独禁法もできまして、それから民主主義の最近の時代になりまして、非常な競争が激しくなって至るところに過当競争というものが行われてこれが海外に対するダンピングとなり、かえって国家の信用を失するというようなこと、これはもとより通産省といたしましては非常な大きな問題でありましてこれに対する対策というものはいろいろ考えておるとは思うのでありますが、これもあなたの三十一億五千万ドルをあくまで遂行するという建前から、これは重要な一つのファクターになると思うのでありますが、これにつきましての御意見。  それからいま一つ、これは全然違う  ことなんでありますが、むろん経済企画庁だけがやることではないのでありますが、貿易の実相に対するところのPRの問題でありますが、この間も私は高碕大臣に申し上げたのでありますが、どうも政府のPRのやり方というものが、ときに実質以上に何か宣伝をし過ぎる、あるいはまた実質というものがそのまま一般民衆に通らない、こういう場合が非常に多いのであります。この間二つの例をあげたのは、中共貿易とアメリカの輸入制限の問題、たとえば中共は、各通産大臣が就任をするというと、これは歴代、終戦後歴代といっていいんでありますが、大阪等に参りまして言うことは、中共貿易によって日本経済というものが立て直るんだ、こういう認識を一般に与え、その積み重ねたものが今日一つの中共貿易に対するところの一つの世論なんです。ところが、実際の問題はどうかというと、これは過去の数字がはっきりいたしておるわけであります。昨年は非常によく貿易が行ったと申しましても五千万の輸出に対して約八千万ドルの輸入なんであります、ところが一般はこういうことはわかりません。とかく中共貿易によって日本中小企業というものは救われる、日本経済というものは立て直るんだという、こういうような認識、それに貿易というものにあまり関係のない者がわっしょわっしょ持ってくる。それからアメリカの問題にいたしましても、私はあえてアメリカの弁護士をするわけではありませんが、日本とアメリカは特別な国交を結んでおるにもかかわらず、一体ああいうことをするのはけしからぬじゃないかと、これは一般論としてあるわけなんです。ところが、御承知通りアメリカの輸入制限というものは、これは日を見ない、いわゆる日本の軽工業と同じ弱小業者がやむにやまれずやっておることなんでありまして、大統領あたりはたびたびの関税の値上げに対する申請に対し、ほとんどこれを拒否しておる、ところが一般は、何だアメリカはけしからぬじゃないかと、アメリカ政府自体がそういうことをやっておるような、こういう感想を持っておる。これなんかは私は、やはり政府は真相を知って、そういうことが将来の日本輸出を増進する要素になっていくんじゃないか、かように考えるのでありますが、この二点の御所見を伺って私の質問を終りたいと思います。
  33. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 過当競争は、御承知通り、これから来る日本経済のロスというものははかり知れないものがあるわけであります。しかし、現在のような政治の態勢のもとで企業整備のようなことも、これはできるわけじゃない、やはり自主的に、あるいは多少のいろいろな方法論もありましょうが、要は自主的にそういう過当競争の弊害をなくしていくという努力が中心になると思う。そういうことで、日本輸出貿易でも輸入の場合でもそうでありますが、これは非常に大きなやはり障害点になっておるわけでありますから、政府の方といたしましても、きょうもいろいろこういう問題について相談をしようということになっておりますので、何かやはり前進したことを考えたい、過当競争の弊害を除去するという点について。  それから貿易に対するPRが足らぬじゃないかと、お説の通りだと思います。やはり輸出振興の基礎になるものは輸出マインドというものが国民の間にあるということが、これは目には見えぬけれども、やはり一つの大き輸出振興の原動力になる。そういう点で、今中共、アメリカの例をとってお話しになりましたが、そういう点もそうだろうと思いますし、またやはり輸出を伸ばしていかなければ日本経済の健全な成長はないんだという意識、国民生活の、やはり日常の生活を通じてそういう輸出のマインドというものは養われなければならない、そういう点で御指摘の点、政府貿易に対するPRはまずいし、弱いじゃないかということは、率直にその御意見は承わって、今後是正をしていきたいと考えております。
  34. 島清

    ○島清君 一、二点大臣にお尋ねをしておきたいと思いますが、経済の正常な安定と発展の基調貿易の振興に求められているようでございますが、その点については私たちも別に異存はございません。しかしながら、貿易の振興をはかって参るということになりますというと、日本経済機構それ自体産業機構それ自体貿易の振興を促進するような機構に私は変えられなければならないと思うんです。たとえば貿易の実績を見ましても、まあ不振ではありながら、中小企業の工場において作られる製品の方が貿易の総体から相当のウエートを占めておる、こういうような状態でございまするけれども、しかしながら、政府施策をながめてみまするというと、必ずしも、貿易振興を唱えられながら中小企業貿易の振興のための険路に対しては、必ずしも私は貿易振興を唱えられるその声がその施策には伴っているとは思えないのであります。たとえば金融の問題にいたしましても、設備の近代化をはからなければならないと言いながらも、中小企業の設備近代化のためには、私は大企業と比較をいたしました場合に、必ずしもその貿易振興とマッチした国内施策であるとは考られないのであります。従いまして、まあ長官は政調の会長をやっておられましたので、従来の惰性によりまして、必ずしも貿易振興を唱えておられるとは考えておりませんし、もっと思い切って、これに国内の産業機構を貿易振興にマッチさせるような産業機構の改革をも考えておられるかどうか。そうしなければ私は貿易振興を唱えても、これは口頭禅として、ただ単に貿易振興を効果あらしむるためには、世界の景気、客観的な情勢にその運命がかけられている、こういうような形で、私はこれは卵と鶏の論法みたいに、世界の景気が回復すると貿易が振興するんだ、こういうことで他力本願になるんじゃないかと思うのです。そうなりまするというと、今のような中小企業のありさまで、産業構造の中に非常に脆弱な立場におきまして、日本の品物は悪かろう安かろう、競争ばかりが激甚になりまして、一、二年のうちはあるいは景気が回復いたしまするというと、貿易も振興するかもしれませんが、そのうちには私は国際競争にたえかねて、そうして国際市場から日本商品が脱落していくんだ、こういうようなことにもなりかねないと思うのでありまするが、そこらの——品質の向上を期するためにはどうしてもやっぱり国際競争にたえていくような、中小企業日本産業構造の中に確固たる私は地位を占めていなければならないと思うのですが、そういう方面についての御配慮のほどを承わっておきたいと思います。
  35. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御指摘のように、貿易に占める中小企業のウエートというものは非常に大きい、ことにまあ雑貨類などに対して圧倒的に中小企業が多いようであります。そういう中小企業が適宜の輸出振興の条件を整備するような努力は、輸出振興策の上にもこれは早急に立てていきたい、そういう、まあ当面の施策の中にそういうものを取り入れていきたい。しかしお話のあった点は、もっと深いところに触れてのお話のようであります。私もやっぱり同じような考えを持っておるわけであります。現在のような状態においては、中小企業国際競争力というものはやっぱり強化されていかないのである。そこでまあ御指摘のように、私は自民党の政調会長をしておったわけであります。そのときの一つ考え方、これはやっぱり今後の岸内閣の施策の上においても生かしたいと思っていることは、やはり中小企業産業構造の中でもう少し二重構造といわれるものを改善するためには、一つにはやはり中小企業の組織化という問題が私はあると思います。どこの国の中小企業を見ましても、やはり個々中小企業に対して——中小企業対策というもので、政府個々のものを相手にするということは、これだけ零細、広範囲であってはなかなかやりにくいと、そこにやはり中小企業のいろいろな形態はございましょう、組織化するのに対して。いずれにしても一つの組織化という、その上に立って政府中小企業対策というものがその組織を対象にして起ってこなければいけないと、その対策の中心というものは、御指摘になったように中小企業の設備の近代化という問題がある。大企業は世界的水準といったところで、中小企業の設備あるいは技術の面からいってやはり非常な立ちおくれがあるわけであります。そういう点で今後やはり政府が、ただ困れば救済するということも必要でありましょうが、そういうことよりも産業構造における中小企業の地位を高めていくのだと、そのために設備の近代化のごときは、これは思い切って設備の近代化のためにも金を出していきたい。設備の近代化のために無利子の金を使えるような施設もあるのでありまして、私の政調会時代に少し金額はふやしたけれども、不徹底な金額であります。これはやはり将来においてもっと大幅に金額をふやして、そうして中小企業の設備を近代化していく機運というものを日本中小企業の中から起るようにしていきたい。これはただここで言うだけでなしに、来年度の予算の上にもこの考え方というものは相当重点的にやはり取り入れたい。技術の面においても、今までの既設設備を通じて技術の再訓練のような施設も拡充しましたけれども、これもやはり足りないと思います。そういう面で設備の近代化、技術水準の向上、こういうものを中小企業の組織化の上に立って今後推進していって、とにかく今一時の問題でなく、長い将来で見れば、やはり中小企業が経営の基盤も安定し、また安くよい品物ができるようにすることが中小企業の永遠の安定策でありますから、そういう点に力を入れて、今後の輸出の増進とも基本的には結びついていくわけでありますから、やっていきたいということが私の今考えておる点でございます。
  36. 島清

    ○島清君 まあ私どもが他の大臣以上に三木長官期待をしておりまするのは、自民党内の実力者のお一人であるということもそうでありますが、しかし、なかんずくそのうちに進歩的な政策を持っておられるということに大きな期待をお寄せしておるわけでございますが、私どもと同様に、国民の諸君もそうだと思いますが、ぜひ一つ今おっしゃったような形で御推進いただきたいと思いますが、私はそのためには、やはり銀行法の改正をして融資の制限をするなり、いろいろと諸般の施策がそれに伴っていかなければならないと考えておりまするけれども、それはまあ他の機会においてお尋ねするといたしましても、私は二十六年に、中小企業の、そういったような国際競争力にたえ得るような設備の近代化をはかるためには、国家の大きな施策として取り上げなければならないのじゃないかと、その当時は昭和二十六年でございましたが、中小企業の合理化という問題が唱えられておりましたので、そのときに本会議で、合理化金庫というようなものをお作りになるお考えはないかというて、そのときの総理大臣と通産大臣にお尋ねをしたことがあったのでありまするけれども、それは今のところ考えていないというので断わられたことがあるのでありますけれども、それに近いようなお考えをお持ちでないかどうか、お持ちでございましたらお聞かせをいただきたいと思いますか……。  もう一点は、私は貿易振興と中小企業の健全なる発展という問題と結びつけて考えますることは、団体法ができましたからというて、必ずしも私は中小企業は現段階におきましては助かってはいないと、こういうふうに考えております。それが福井などの繊維不況の問題をながめましても、何ら利益のないところの系列化のみが促進されまして、そしていたずらに弱小の企業が非常に困っていると、こういうふうな実態が出て参っておるのでありまして——それはもう日本経済の発展の姿からいたしますると、当然なことだと思うのでありますが、これは申し上げるまでもございませんけれども、資本が海外に流れていくというような道が閉ざされておるのでありまするからして、蓄積をされた資本というものは中小企業の分野にどんどん、どんどんと侵食をして参りまして、従いましてその姿が中小企業にしわ寄せになって現われてきておるのでありまするけれども、そういったような基本的なアカデミックな問題はともかくといたしましても、しかし今日貿易の振興をはかっていかなければならないことは当然でございますけれども、しかしながら、今長官が御指摘になりました雑貨類にいたしましても、これは東南アジア方面に大いに振興をはかっていかなければなりませんけれども、しかしながら、残念ながらドルが足りない。ドルがございませんので、この振興も思わしくない、こういうことで、何らか一つ打開の道を講じていかなければならぬと思いまするけれども、そこで考えられますることは、東南アジアの諸国に対しましては、私たちは賠償の責任を負っておりまするので、そこでこういったような消費物資を賠償物資といたしまして、海外の方へ流していく、こういうようなお考えをお持ちになったことがあるかどうか、お考えでありまするならば、その考え方一つお聞かせいただきたい、こういうふうに思うのであります。
  37. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 中小企業の合理化ということに対して御質問があったのでありますが、合理化ということは、どういうことを内容としておるのか、今のお話で、その内容については詳細に承わることはできなかったわけでございますが、しかし、私はこういう考え方を持っておるのです。設備を近代化する場合に、古い設備というものは、これはやはり新しい設備と取りかえていかなければならない、スクラップにするくらいの勇気があってほしい、そうして、政府財政資金を出そうというのですから、それだけのことでなければ、古い施設もそのまま残っている、また新しい設備も、ということになってくると、ますます供給過剰になってくる、これは合理化にならないわけですから、そういう意味において政府が相当財政資金も出して中小企業の設備近代化を促進しようという以上は、そういう形において、やはりそれも合理化の一面だ、そういう形の合理化というものが促進されなければ、非常な新しい設備をしたわ、古い今までの設備もかかえ込んで、そうしていくということでは、これはやはり国際競争力はつかない、新しい設備を作る以上は、低廉なよい製品をそれによって出そうというのでありますから、政府財政資金を出そうということは、そういうことによって大きい眼で見れば、やはり輸出の増進にもなるだろうし、国際競争力も強化になるということでありますから、そういう形の合理化というならば、設備近代化ということはやはり大きな合理化の一面である、こういうように考えておるわけであります。  それから、賠償に関して消費物資も一部は考えたらどうかということでありますが、これはまあ御承知のように、賠償は生産資材、役務というように原則はなっておるわけです。だからその原則というものは、これは動かすべきではないわけでありますが、しかし、やっぱり一部の消費物資は私も検討すべきじゃないかという、これは政府で相談したわけでございませんが、私自身もそういう見解を持っておるわけです。
  38. 田畑金光

    委員長田畑金光君) この際、河本経済企画庁政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。
  39. 河本敏夫

    政府委員(河本敏夫君) このたび、経済企画庁の政務次官に任命せられました。きわめて浅学非才でございますので、よくその職にたえ得るかどうか、非常に心配しておりまするが、今後懸命に努力いたす所存でございます。どうか皆様方の御指導のほどをお願いいたしまして簡単でございますが、ごあいさつといたします。(拍手)
  40. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは暫時休憩いたします。    午後零時六分休憩    ————————    午後二時三十七分開会
  41. 田畑金光

    委員長田畑金光君) これより委員会を再開いたします。  まず、午前中に申し上げましたように、経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基金に関する法律案について、大蔵委員会と連合審査会を開会することにいたしたいと思いますが、この点御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  ただいまの決議に基き、委員長は大蔵委員会に申し入れることといたします。   —————————————
  43. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは、これより午前に引き続き、経済企画庁関係の質疑を続行いたします。御質疑のある方は、御発言願います。
  44. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 三木長官に二、三点お尋ねするわけですが、午前中各委員の質問に対する長官の御答弁は、まことにごりっぱで、懇切丁寧をきわめておるわけでございまして、本席におって、私は長官の御答弁の内容が、そのまま一冊の本にしてもりっぱなものであるというように判断いたしました。ただ、私はそこで奇々怪々に、不思議に思ったことは、三木長官が今まで野党であって大臣のいすにつかれるとか、あるいはまた、時の与党の政策の枢要な位置を占めておられない人であれば、あのようなりっぱな方針お話をされて、しかる後これを今後実施するのであるということがうなずけるわけでございますけれども、十数年の長い間長官は時の台閣に列したということもございまするし、あるいは近年二、三年の間には与党の重要な政策マンとしてやられてこられてとたんにりっぱなお話を承わったのでは、今までなぜ私はやっていただけなかったのかというように非常に不思議に思ったわけです。あのくらい拘負経綸がおありになるならば、あの半分でも、三分の一でも、なぜ今まで、一昨年、昨年というこの歳月の間に生かしていただけなかったかというように、私は非常に奇異に感じてお話を伺ったわけです、そこで午前の御答弁はきわめてりっぱな御論議でありましたが、抽象的な面もございましたので、具体的に二つ三つお尋ねをいたします。  第一点は、二十六国会だと記憶しておりますが、そのときに、当時の大蔵大臣は池田さんで、三木長官政調会長をやっておられたと思います。そのときに、たまたま三木長官は、政府の大臣でもございませんし、委員でもないので、私は論争をしたことはございませんけれども、時の自民党のそれぞれ政府当局の方と論争をしたときに、とにかく神武景気だと言って景気を謳歌して、そうしてどんどんと投融資をやる。そのためにまず膨大な投融資を日立がやり、それに負けじと東芝がやり、これはたまらぬということで三菱がやり、横河電機がやるということで、競争を始めればこれはとんだことにならぬですかというように話をしたところが、それは心配ございません。日本にドルがたくさんあるのですから、これは御心配御無用です。もしそういうことで、どんどん物ができても、やはり裏づけがあるから大丈夫である。ところが、そのドルがどんどんどんどん品物にかわるのではないかと  いう逆質問をしましたところ、当時の池田さんは、ドルで持っておっても、品物で持っておっても、結論的に同じである。ドルで持っておっても、品物で持っておっても同じだということは、品物で持っておれば、必ずこれを輸出して外貨にかえることができるから、結論的に同じであるというような御答弁で、それはどうもあなたの見通しは甘いというようなことを言いましたけれども、 鎧袖一触で、われわれ微力なものですから、われわれの意見が通らなかったわけです。  ところが、その国会が終って幾らもたたぬうちに、六月の二十三日に、これはどうも世の中が怪しくなってきた。ドルも不足だということで、財政投融資の引締めをやった。これは長官御承知だと思うわけです。政府の席には列席しておらなくても、政調会の責任者として、やはり参画しておられると思う。そういうことで、一切がっさい世の中が不景気になって、ドルがないということで、中小企業に膨大に影響してきたわけです。大手企業が今度は投融資をやって 品物をどんどん作り出す。怪しいということで影響は中小に来る。中小はたまらぬから、ダンピングをやる。これが率直に言ってそのときの実相であります。日本で大手と言われる会社は二百七十ほどございます。二百七十ほどの会社が、今期あるいは今年度の第二四半期、これの決算で黒字を出して、配当をやる所は、ほとんど総合的に中小企業の仕事までやっている会社が利潤を得ておるということになりますと、当然中小企業が次から次へと倒れていくという現状であります。  そこで、長官にお尋ねしたいことは、長官の方針として、午前中に話はよく承わりましたけれども、どこに中心を置いて、その日本経済の建て直しというものをやるのか、日本経済というものを振興さしていくのか。強いものは強いものでよろしい。中小企業は倒れても仕方がないという御方針が、昨年から今年まで理屈は抜きにしての現状の姿としてやられてきたわけなんで、この経済の大体の点の置き方を、まずお尋ねいたします。
  45. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 私はこういう感じを持っておるわけです。これはやはり政治の目標は、一つの安定というものが政治の目標です。その安定というものが、しかし現状での安定というものでなしに、やはり進歩していく安定でなければならない。そういうことを考えてみると、日本産業構造、社会構造の中で、やはり問題は、今御指摘のような中小企業であるとか、農業であるとか、あるいはそのほか勤労者、こういう中以下の所得階層というものが問題だと思う。政治の焦点だと思う。これをどのようにしてやはりそれはなるほど国民の所得でも非常に大きな較差がついていくという状態は、安定の姿ではない。それではしかし、われわれの経済というものはやはり一つの、ただ国民の所得を強制的にこれを均分化するというのが、われわれの立場ではない。やはり生産というところに立ってこれを考えていくところに、自民党の立場があるわけです。そういう意味において、今後政治の焦点というものは、今御指摘のような中小企業であるとか、農業であるとか、いわゆる前近代的な産業、これにやはり全力を注いでいかなければ保守党といっても国民の安定、政治の目標である安定ということを達成できない。だから私は、これは今いろいろお話があって、私自身考えているようにもいかないけれども、自民党の勢力に対して多少の影響力も持っておる、私自身はそういう考え方を貫きたい、こういうことでございます。
  46. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 長官は自民党のお考えと、長官のお考えと、二つに分けて御答弁になったわけですが、私は自民党の皆さんといえども、中小企業を育成強化する、農業を抜本的に振興するという政策で進んでおることは、私も承知しております。しかしながら、長官、現実の問題として一例をあげてみますと、特別税制調査会等から言われて、いろいろな業種に対して、産業振興とか、貿易振興とかいって免税しておりますね。この大企業の免税、これは昨年度などは一千五十億、本年度は八百六十五億、こういう大企業の黒字になる会社が、貿易振興とか、輸出産業振興という美名に隠れて免税を受けておるわけです。長官の話がもし事実だとするならば、なぜこういう金を中金なり、あるいは農業金庫に回して使っていただけないものかということを私は申し上げたいわけです。おっしゃることと、現実に政治の面に行われているその日その日の政治は、違うのではないかということを私は申し上げているので、その点はいかがでしょうか。
  47. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 税制全般については御承知のように税制調査会というようなものを、形はどういうふうになりますか、これを早急に作って、来年度の予算に対しては、地方税、国税全般にわたって再検討をするということを選挙でもお約束しました。こういう手続を進めておるわけでございます。ただ、こういう点が私は考えなければならぬと思うのでありますが、やはり大企業などに対してでありますが、どうも資本家というものと、大企業というものとを混同してはならない。どうしても企業の健全な育成ということは、これは資本家を育成するということではない。日本企業などの資本構成などを見てみますと、非常に不健全である。まあ、自己資本というものは四割ぐらいで、他人資本というものが六割である。そういう企業は世界にはない。少くとも六割程度のものは自己資本でやっておるのだ、これは戦後の荒廃から日本企業が立ち上った変態的な姿、資本構成の不健全な姿が今日まで持ち越されている。そういう意味において、企業の資本の自己蓄積力というものをふやして資本構成を是正するということは、資本家を利するとか何とかというものでなくして、私は必要だと思う。そういう点において、税のいろいろな特別措置というものの合理性がある。ただ経営者が、そういう税の措置というものが浪費されておるかどうかという点に、問題点がある。そうでなければ、この企業の持っている資本構成を是正するということは、これは必要なことで、企業が健全でないならば、雇用の問題にも結びつくわけです。企業が健全であるかどうかということは、資本家、労働者ということではなくしてこれは全般の問題でありますから、そういう意味において、企業の健全な育成と資本家擁護というものは混同しない方がいい。そういうふうに考えてそういう点で税の特別措置も合理性があったが、必要性のないものは、それはやめればいい。全体としてはそれは分けて考えるべきじゃないか、こういう考えを持っております。
  48. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 確かに長官のおっしゃる通り、資本家と経営者、あるいはそういうものがいろいろこれは違うということは、私もはっきり知っております。ただ、税制の改革とか、自民党さんが七百億の減税だということで選挙に打ち出したのは知っております。しかし、自民党さんが七百億の減税をするという数字の額と内容と、私が今申し上げておる数字の内容と額とは違うわけです。今たまたま長官も触れられましたが、隣の部屋で社会労働委員会をやっております。社会労働委員会では、倉石労働大臣が、これはとっても今年は労働省が想像したより十万人多く失業者が出ます。これはどうもなりません、というような意味お話をなさっておるのを、ここへ来るとき聞いて参りました。そうなりますと、大企業の方には、どんどんとにかく免税を認めて会社の経理を黒字にする。ということは、私は日本は資本主義国家ですから、三木長官の言う通り、修正資本主義であるかどうか別として資本主義国家ですから、資本の蓄積を一銭もやるなというようなけちくさいことを私は言いません。しかし、あまりにも差があり過ぎる。ということは、日本経済がとにかく貧富の差が激しくて、西ドイツでは社会保障費大体一五%、日本はわすか五%。また貧乏人はアメリカは一五%おるのですが、日本人は一二%、ところが、貧乏人はアメリカの方が多いようですが、アメリカの貧乏人といったら、一年に大体三十二万五千円以下の収入の人が貧乏人です。日本人は一万八千円取るのが貧乏人ですから、けたが違うのです。三木長官のような、やはり近代的感覚を持った保守党といえども、政治家とされるエキス。ハートが、なぜこういうものをそのまま認めて資本の蓄積とか何とかということをやっておかなければならぬ。資本の蓄積も必要かもしれないが、膨大な黒字を出すところを認めておって路頭に迷うような何十万の失業者をかかえて、何とかこういうものに  ローラーを少しでもかける必要がないか。こういうことをお尋ねしている。
  49. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) この間の選挙公約をごらんになっても、私は政調会長として立案に参画したものですから、七百億円の減税というものも、私が冒頭に、一つ日本の政治の心がまえとしてこう考えておる。それから割り出されておる。たとえば、七百億円というのは、大企業の減税はその間に含んでいない。いわゆる勤労者のために所得税の月収二万五千円以下を免税にしよう。個人事業税は年所得二十万円以下は免税にしよう。法人事業税は中小企業に限って税率を大幅に引き下げる、農民、漁民のために固定資産税の税率を引き下げる。これが減税七百億の内容であります。それをごらんになっても、それはみなやはり中以下の所得階層に対して租税政策を通じて所得の不均衡是正をしようという私の精神が、その七百億の中にも貫かれておる。今、一ぺんにそういう所得の不均衡を革命的にするということは、好ましいことでもないし、できることでもないが、目標はそこに置いてやるのだ。減税もそうじゃないか。こういうことを、まあただ抽象論じゃなくて現実の具体的な、これから減税案も具体化してくるわけでありますから、そういう現実施策とも通じて、私の言っておることが架空のことじゃないのだ。それは御期待とスピードの点はありますよ。もっと早くそうやれというような、そういう速度の点には、御批判はあろうけれども、自民党のやはり政治の方向として焦点を合せておるのは、そういう方向である、そういう方向に向ってこれからの政治をやっていこうとしているのだ。それが一つ一つ具体化していくことが、本年度においても予算編成の方針である。こういうことを申し上げておるようなわけであります。
  50. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、端的に判断して、今選挙に公約された、長官のお話しになった七百億ですね。これはどの方面にかかるかわかりませんが、法人税であるか、事業税であるかわかりませんけれども、総体的に税制はどうあるべきかという検討の結果、とにかく七百億の減税を行う。そのほか私の言う特免の方はどうなりますか。これも加えて七百億減税ですか。
  51. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これも今申し上げたように、中以下の所得階層を対象にして七百億の減税をする。これだけはね。それ以外の税制一般については、これは再検討を加えて、そうして税制のいろいろな不合理な点は是正しよう。金額で約束はしていない。七百億円は大法人を主体とする減税ではない。全部中以下の所得階層である。これを対象として七百億円の減税をやるということが選挙の公約であるし、われわれは公約を忠実に守りたいと思っておりますから、来年度の予算の、税制ほかの一般に対しては、調査会で検討をいたすのでありますから、どういう結論が出るかここで予測はできませんが、少くとも具体的に選挙で約束したことは必ず実行をする。来年度の予算編成の中に、今申したような減税というものは、実現をするのだということを、申し上げておきたい。
  52. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その七百億については、両三度のお話しでよく理解しました。ただくどいようですが、私のお尋ねするのは、そのほかに特別税制調査会から答申等があって、こういうものを一切整理せよと言われております。一昨年の千五十億とか、本年度の八百六十五億、こういうものに対しての長官の御見解を承わっておきたい。
  53. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは、再検討を加えて必要のないものは、廃止をいたしますし、十分な再検討を加えたいと思っております。
  54. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その次に、本年度の予算委員会において、三木長官の前の、河野経企長官ですか、河野経企長官と、通商産業大臣の前尾さんと若干表現の方法は違いましたけれども、三十一億五千万ドルの本年度の貿易額、これを必ずやるというお話しでございましたが、三カ月たった今日、これは大体二十七億ドルくらいしかできないのじゃなかろうかということを、貿易業者とか、この道に携わっておる人々から、ときどき聞くのですが、これが二十七億ドルで、三十一億五千万ドルが大体五億五千万ドルもとにかく減った。こういうことになれば、ことしの計画が相当がたがになってくるということは、これはもう疑うことができない事実になってくる。こういう点についてまだ今始まったばかりだから、わからぬではないかという御答弁になるかもしれませんけれども、心配なのでその点をお尋ねしますが、これはいかがですか。
  55. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御心配になることはごもっともなことで、率直に言って、なかなか私は三十一億五千万ドルは困難だと思います。ただしかし、今、御指摘になったような、二十七億ドル程度とは思っておりません。そんなことはありません。今の水準から考えてみて、こういうふうだとは思わないが、しかし目標である三十一億五千万ドルというものはなかなか困難だ。そこでしかし、困難であっても、できる限りその数字に近づけるということが、これは政府としても好ましいし、日本経済の発展のために好ましいので、あらゆる手を打ってみたい。輸出の増進に対しては、そうしてその目標額にできる限り接近をするような努力をしてみたい。ただ、十二カ月のいわゆる貿易の年度の中で、まだ四月、五月終ったばかりですから、十二カ月の中で、二カ月経過したから、これはもうすぐに計画を変更しなければいかんじゃないかというのも、少しせっかちじゃないか。こういうことで、日本政府の、あるいは民間の協力を得て、輸出の努力と相待って、世界の景気状態等も、推移もながめて、もう少し輸出動向というものには、もう少しそういうことを検討する時間を得たい。だから今、三十一億五千万ドルは、この目標は変更するのだ、そういうふうにせっかちにする必要はないじゃないか。もっと努力もするし、世界の経済情勢も少し見通しをつけたらどうかということでありまして、何も数字にこだわって、できないものをいつまでも掲げておったって意味はないのでありますが、今は少し気が早過ぎるのじゃないか、これをおろすのは。こういう考えであります。
  56. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 出発してから、まだ二カ月や二カ月半ですから、確かに長官のおっしゃる通り、まだ十カ月あるのだから、やはり十二カ月で見てくれというお話は、これは理解できます。しかし私が本で読んだり、あるいはあちらから来た人とか、それの衝に携わっておる人の話を承わっておると、最前申し上げました通り、午前中同僚委員からも若干発言がございましたが、東南アジアに一ドルもないといったら、あまり極端な例になりまするけれども、ほとんど日本の品物を買うなんていうドルはございません。若干あれば、とにかくタイ国ぐらいである。あとほとんどまあ、これこれくらいだといって積み重ねて船を買うとか、自動車を買うとか、あるいは発電機を買うとかいうドルは、ほとんどございませんという話しなんです。しからばアメリカとやったら、イギリス、ドイツなどといってみたところで、これは限度が大体あるわけで、確かに十二カ月のものを二カ月たった今日、さあこれは心配だ、心配だ、長官どうですかというのも、これはおとなげない話しなんだけれども、やはりそういう話を聞けば心配になるわけです。そこで長官にお尋ねするのは、やはりまだ就任日が浅いのですから、事務局の方がおられまするから、大体どこへ何ドル、どこへ何ドル、州でもいいですから、国でもけっこうですから、数字を一つ聞かしていただけませんか。
  57. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) ちょっと今探しますから、時間の御猶予を。
  58. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それではその次に、独禁法の改正ですが、これは直接長官には御関係ないと思います。ただこういう問題は、経済閣僚会議ですか、懇談会というのですか、そこで十分論議をして結論を出されるというように承わりましたので、お尋ねいたしますが、前国会でも総理からも若干お聞きしておりましたが、今度独禁法が改正されるというようなことで、審議会の中山会長さんから答申案が出ておるわけです。答申案がどういう結果で、法文化されて国会に提出されるかわかりませんけれども、答申案の内容これを見ると、現在ある法案よりも、若干大企業の方が有利になって中小企業がやはり困る、端的にいえばこういうような法案の内容になっておるのでございます。この点については、長官いかがでしょうか。
  59. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 独禁法の内容、答申案の内容については、私十分検討しておるわけではないのでありますが、中小企業を非常な不利に追い込むようなことは避けねばならぬと考えておるわけであります。全体としての孝え方では、やはりある程度私も必要なんじゃないかという論者です。独禁法の改正は、たとえばわれわれと関係のある一つ長期経済計画の場合において考えてみましても、その民間の投資などに対して政府財政投融資を通じて基礎産業部門などに対してのある程度の大きな影響力を持っておるわけです。しかし、民間企業というものに対してこれが長期経済計画の線に沿うて民間企業というもののこの産業計画というものは、一つ指標にはなっておるのでしょう、民間の目標には。しかし、その結びつきというものが、私は弱いと思っておる。長期経済計画の中で。しかし、われわれの立場というものは、自由経済というものが原則でありますから、統制経済でやろうとしておるのではないのです。やっぱり民間の自主的な規制というものがある程度伴わないと、やはり長期経済計画一の達成の上において、いろんな支障が来る。投資の行き過ぎなどもそうであります。そういう意味において、たとえば投資調整のカルテルのごときものは、こういうものは必要なんじゃないか。この資本主義というものの陥りやすいそういう弊害、これをある程度私はやはり権力的にではなしに、自主的に規制していく工夫を見出すことが新しい資本主義の方向ではないか。そういう意味において一例をあげたのでありますが、それは独禁法の改正を伴わなければならぬことで、そういうことは必要なんではないかという感じを私は持っておる。しかし、全般の問題としては、今申したようにこれは政府全体として検討すべきで、今、独禁法の改正案を国会に出すという決定を行なったわけでもございませんし、これは御指摘のように中小企業にも関連することが多いし、十分な検討を加えなければならぬわけで、私はこの関連する長期計画と関連してこういう考えを自分は持っておると、個人的な見解でありますけれども、せっかくのお尋ねでありますので、自分の率直な見解を申し述べた次第であります。
  60. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 この次に、国会に出すのもきまったものでもありませんということになれば、これが出るのじゃないかと言って、「幽霊見たり枯尾花」で質問するのもどうかと思いますが、独禁法は御承知通り三木逓信大臣が初めて少壮政治家として大臣になられた、今より十年 前に。あるいはGHQの指令でカルテル行為はけしからぬというところで御承知通り法案ができたわけです。あれは何も中小企業を助けるためにあの法案ができだのじゃない。大財閥とか、ああいうのがとにかくカルテル行為をやったら、また軍閥が復活するのじゃないかということで、あれができ上ったわけです。それから二回ほど大修正やっている。しかしGHQの方でどういう方針だったかは別として、GHQが大企業を金縛りにして寸断しようとしたのが、たまたま今日では中小企業経済憲法、守り本尊になっているわけです。あれがぱあぱあっとなくなると、大企業がまた共同行為、カルテル行為をやるので、中小企業はたまらぬということになるわけです。ですから、午前中のような御答弁の方針中小企業を育成されるのであれば、なかなかこれは一つの政策ですから大手もよろしい、中小もよろしいという政策が一番よろしいけれども、やはり日本経済基盤が浅いと申しましょうか、何といおうか、やはり中小をよくするために、大手は押えなきゃいかぬと思うのです。全部いいというわけにいかぬやつは、やはりいい方ががまんしてもらわなければならぬ。あいつを直すと全然その意味がなくなる。ですから、長官にお願いしたいことは、やはり現在の独禁法を改正しないでほしいと、僕はこう考えるのですが、どうなんですかね、その点は。
  61. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) そのお約束はいたしかねますけれども、その改正によって、中小企業を不当に不利に陥れたり、圧迫するような事態を避けなければならぬ。そういうことによって、その影響が中小企業に波及することは防がなけりゃいかぬという意見には、同感の意を表しておきます。
  62. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その次に、政府委員の方で、おいでになっておると思いますが、前の河野経企長官の当時に、本年度の燃料政策の一環として石炭は一体幾ら必要かという実は質問したときに、五千六百万トン本年は使います。こういうように御答弁された方が、どっかその辺におると思います。しかし、今、それはどうもあまいようだぞという話をして、これは速記録を持ってきて読んでもいいのですが、必ずことしは需給のバランスがこれこれですよと、こういう御答弁でございましたが、これもまた二カ月たった今日のというお答えになるかもしれませんけれども、二カ月たった今日、一千万トンに近い石炭日本全国に過剰貯炭としてとにかくうようよあるのですね。これは私責任とれとは言いませんけれども、一体これをどう処置しようとするのか。これは大臣、当時のことを知りませんから、大臣に聞くのはどうかと思いまするけれども、その当時御答弁になった局長さんがおられれば、局長さんでもけっこうですから、一つ御回答願いたいと思います。
  63. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 先ほど貿易の御質問がございましたが、これは後ほどお答えすることにいたしまして、ただいま御指摘石炭の問題につきましては、私当時官房長、今のポストと同じでございました。当時の調整局長がただいまこの席に見えておりませんが、五千六百万トンを予想いたしまして需給のバランスをとるという見通しでございましたが、御指摘のように豊水等の関係、電力関係石炭需要が減ったというような関係もございまして、貯炭がふえております。それでできるだけ大口消費者の方に山元の貯炭を減らしまして大口の消費者に、長期的な需給計画をもとに買い取っていただくというような方法をとります等の措置を講じまして、長期的に石炭が過不足を生じないような方向に処置していきたい、かような考え方で、ただいま通産当局とも話し合いをいたしております。
  64. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 電力用炭で、雨が降ったために火力発電所が使わなかったという数字は、百八十万トンですよ。そうすると、今九百万トンぐらいございますから、その電力用は、これはもうあなた方の責任ではないでしょう。大体雨が降ったり降らなかったりするのですから、これはいかに経済企画庁で調べようと言ってもこれはむちゃくちゃで、これは天災地変としてその点は責めませんけれども、あと七百万トンをどうしてくれるかということです。これは多過ぎると、私は当時大いに力説したのだけれども、こういう計画ですとおっしゃるけれども、大口貯炭でやるとおっしゃったけれども、大口貯炭は、各大手工場は買って余ってその処置に困っているのです。大口に買ってもらって貯炭しますというのは、それは経済企画庁では、それで通るかもしれませんけれども、少くとも商工委員会では通りませんよ。そういうでたらめな答弁ではなくして五千六百万トンは多うございましたとか、少うございましたとか、これはどうどうしますという答弁でなければ、大口工場で買うと言っても大口工場は余ってもてあましているのですから、そこをどうするか、ということをお聞きしておるのです。
  65. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 率直に申し上げまして五千六百万トンは今年の消化の見込みから申しまして多いと思います。しかし、かねて企画庁が申し上げておりますように、エネルギー対策といたしまして、今後の外貨負担を軽減いたしますためにも、長期的に石炭の採掘というものは積極的にやっていくべきである。かような見地から今年一ぱいを考えますと、供給過剰という現象が起って参りましたけれども、長い目で見てやはり石炭の採掘によるエネルギー対策というものが押し進められていくべきである、かような考え方を持っておる次第であります。
  66. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 長い目で見ると言っても、石炭は掘って外へ出してしまうと風化してしまって、一年も二年も貯炭して置くわけにいかない、自然発火したりして。鉄ならそうして保存して置くこともできる、銅もその通り、鉛も金も。しかし、石炭はそういうわけにはいかないのです。そうすると、大体四、五百万トンほど多い石炭をどうするか、あと二カ月ぐらい石炭を掘らずにおくということになってくるわけです。経済企画庁を幾ら責めても、どうにもならないかもしれませんけれども、あなた方の計画に基いて出炭計画をした炭鉱経営者と、そこで唯々諾々として働いた炭鉱労働者はどうなるのか。九州では今山は次から次へと、小さい炭鉱からですが、つぶれ始まっているのです。あなた方は長期計画ですと言って、五千六百万トン必要だから掘りなさい、そうすると、経済企画庁日本経済全般をとにかく判断してあれするのですから、通産大臣は今度はもう三木さんと匹敵する高碕さんがあれですから、今度はどうかわかりませんけれども、前は通商産業省というものは、河野経済企画庁長官の一部局であるなんと言われたのですから、通商産業省としては、唯々諾々として五千六百万トンというあなた方の指令によって掘ったわけですが、その跡始末はどうするのですか。石炭を掘って、一年もたったら全部だめになってしまうのです。あなた方の無計画に基いて地下資源を掘って、外へ放り出して、風化させて五〇%の効率のものを二〇%にしてしまうというばかげたことをやる経済企画庁は、三木長官時代から改めてもらわなければならぬと同時に、官房長が担当官かどうかわかりませんけれども、長官の前だけで名答弁をやられずに、悪うございましたなら悪うございましたと言ってもらわぬと困ります。
  67. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 企画庁が  独走したかのような御質問でございましたが、本年度の出炭計画につきましては、通商産業省とも相談をいたしましてきめた数字でございまして、ただ、御指摘のような事情がございまして、五千六百万トン今年度掘ることはいかがかというようなことから、目下多少の減産体制をとっておるというようなことを進めておりまして、できるだけ経過的に起って参るピンチは避けるように努めて参っておるわけでございます。
  68. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 減産計画ということは、どうなんですか。五千六百万トンに対する減産計画、これを今からやるというわけですか。
  69. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) おおむねさしあたり五%程度毎月の出炭を落していくというような計画で進んでおります。
  70. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうすると、やはり五%の鉱業所を減らすのですか。三十万の従業員がいれば、その五%を休業させるか、それとも首切りをするか、そういうことですね。当りまえの人間がおって当りまえの賃金を払って、五%の減炭では、石炭コストが五%高くなるという結論になりますね。
  71. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 具体的なやり方は、通商産業省でやっておりまして、私詳細に承知いたしておりません。当分の間五%程度生産のベースを落すというようなことでいこうとしておりまして、具体的なやり方については、私承知いたしておりません。
  72. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 具体的な話を聞かなければ、これは問題にならぬわけです、抽象論で五%減らすと言っても。具体的にどこで五%減らすか、しかし、官房長ですから、担当以外の業務だと思いますので、これ以上御質問いたしません。  最後に、三木長官にもう一点だけお尋ねしたいのですが、実は電力料金の問題ですね。北陸電力から東北電力に始まった一昨年から長官も政調会長として苦労されたでしょうけれども、上げてくれと言って二一%から一四%七になったりして、ともかく一応きまったわけです。ところが、これは行政措置ですから、われわれが衆参両院で上げてもらっちゆ困るというような要望をつけたが、行政措置として時の通商産業大臣がやった。やったとたんに、今度は河野さんが乗り込んできて、どうも電気料金は高い、だから電気料金を上げちゃいかぬということをここで言明したわけです。そこで、私どもは、あなたは閣内の一人として片方の大臣は上げなければならぬ、片方の大臣は上げないということは、スタンド・プレーかというような話もありましたが、その当時のことはさておいて今は問題にならぬかもわからぬが、来年になったらまた問題になります。その当時まで岸内閣があるかどうかわかりませんが、ともかく大臣は電力料金についてどうお考えになるのか、最後にお尋ねいたします。
  73. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) これは電力料金のみならず、一般のいろいろな料金に対して、値上げ一つの潜在的な圧力があるわけであります。しかし、私はやはり全般の料金というものは抑制していきたい、大きな方針としては。しかし、どうしても値上げにストップをかける、値上げを全部いかぬという権限は、政府にもないのです。それはまたすべきものでもない。しかし、それが最終的にもうこれ以上に方法がないのだ、できるだけの合理化をやって、料金の値上げに求めざるを得ないものであるかどうかということについては、きわめて厳格な態度で企画庁は臨んでいきたい。簡単に料金の値上げ申請というものに対しては応じない方針でいきたい、こういうことでございます。
  74. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 それと合わせて長官、電力会社を一本化するとか、ブロック別に統合されるというようなことが伝えられておりますね。これについて通産大臣が当面の責任者でしょうが、経済企画庁長官であり、実力者である長官は、どのように判断しておりますかどうか、その点を一つお尋ねいたします。
  75. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 前の内閣当時に広域運営ということで一歩前進したことは、事実であります。だからこの経過を見てみたい。広域運営の成果というものを見てから、将来の電力のあり方というものに検討を加えたい。今まだ始まったばかりですが、相当の効果は上がるに違いない。それをしばらく見てみたいという態度でございます。
  76. 宮川新一郎

    政府委員宮川新一郎君) 先ほどのをちょっとブロック別に申し上げますと、ヨーロッパが三億九千七百万ドル、北米が七億七千五百万ドル、近隣諸国が四億六千五百万ドル、東南アジアが六億七千四百万ドル、中近東が一億三千五百万ドル、中南米が一億九千四百万ドル、アフリカが五億一千七百万ドル、大洋州が九千五百万ドル、合計三十二億六千万ドル、これは通関ベースでございまして、この通関ベースの数字を過去の経験値によりまして為替ベースに改めまして三十一億、かようになっております。   —————————————
  77. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それでは、経済企画庁関係の質疑はこの程度とし、次に、科学技術庁長官から、科学技術振興施策について所信表明を願います。
  78. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今日世界においては新らしい産業革命が進行しつつあります。まことに、ここ数年来の世界の科学技術の進歩には驚くべきものがあり、世界の産業構造、社会構造に大きな変革をもたらしつつあります。このような時代にあって、天賦の資源に恵まれないわが国が、欧米諸国に伍しつつ、なお一そうの発展を期するためには、長期経済計画に示される通り、国内資源の有効利用と輸出の飛躍的伸張とにより、産業活動を活発化し、国民所得と雇用の増大をはからなければならないことは言うまでもありません。このため政府においては、今後とも産業基盤の確立、産業合理化の推進、国際経済協力の強化等、各般の施策を実施する方針でありますが、なかんずくこれら諸施策の推進力ともなるべき科学技術振興のための施策には、特に重点を置いて推進して参りたい所存であります。すなわちこの科学技術革新の時代においては、輸出の飛躍的な伸張も、国内資源の効率的な活用も、優れた国産技術の背景なしには、その実効をあげ得ないからであります。  この観点に立ってわが国の科学技術の現状を見まするに、原子力平和利用、電子技術の応用等の高度の科学技術に関してはおくればせながら研究開発の努力が払われつつありますが、科学技術全般にわたり均衡のとれた発展を示しているとは言いがたく、科学技術水準は、遺憾ながら先進諸国のそれにいまだ及ばないと言わざるを得ないのであります。このため、前内閣においても、科学技術振興はその重要施策一つに掲げられたが、今後においてもこの方針には何ら変りはありません。  今般科学技術庁長官を拝命いたしました私としては、わが国国民生活と文化の向上に重大なる役割を演ずる科学技術の重要性を深く認識をいたし、そのすみやかなる振興のためにあとう限りの努力を傾注する所存であり、具体的には、次のごとき施策の推進を考慮しているのであります。  まず第一に、科学技術振興を最も効率的に実現するためには、科学技術全般にわたる確固たる基本的な政策の樹立をはかるとともに、長期経済計画との関連においてその実現のために解決を必要とされる各分野における研究項目を摘出検討し、長期的かつ総目的な研究目標を設定し、この研究目標達成に最も適した研究体制の確立をはかる所存であります。このような基本的重要事項は、単に政府部内のみにおいて審議することは適当でないと考えられますので、科学技術に関する優れた有識者とともに慎重審議いたしたく、前国会に提出され、審議未了となった科学技術会議設置法案の成立を期待しているのであります。本法案は、日本学術会議等各界の意向を十分参酌して、原案に若干の修正を加え、再度国会に提出して御審議をお願いする所存であります。  なお科学技術振興に関する長期的基本施策を樹立するに当っては、国内資源を海外資源との関連において最も有効に利用する方策を考慮すべきであり、このため資源の総合的調査を強力に進めて参りたいと思っております。  第二に、科学技術振興に直接つながる基礎及び応用研究並びにその研究成果の実用化の強力なる推進をはかりたい。このため、各研究機関の自主性を尊重しつつ、最大の研究成果を上げるべく、国立試験研究機関、新設される理化学研究所等については、研究施設の近代化、研究環境の整備、研究費の充実、研究者の待遇改善等に努力し、また、民間企業に対しては、資金措置、税制措置、委託研究費の交付等を通じて、その研究の促進に努力したいと思っております。  また、わが国における科学技術は、学問的には世界の水準に比肩し得るものも相当あるが、その成果が実用化されがたいために、外国技術への依存度が高く、これがわが国技術界の大きな欠陥とされております。このことを十分に反省してこの欠陥を克服するために、国家的援助により新技術の開発を大いに促進し、優れた国産技術の育成確立に努力をいたしたいと思っております。  第三に、最近における科学技術の高度化とこれに伴う専門化により、優れた研究者を多数確保することが要請されております。また、科学技術水準向上のためには、国民全般の科学技術に対する関心を高め、科学技術水準の向上に適した社会的環境を醸成することが必要である。このため、科学技術に重点を置く教育制度の確立と、科学技術に関する情報広報活動の活発化に努力いたしたいのであります。教育制度に関しては、別途主管官庁においてその施策を推進中であり、その施策の一そうの促進に協力いたしたいと思っております。情報広報活動の活発化のためには、日本科学技術情報センターの強化をはかるほか、ラジオ、テレビ、映画等を通じて、広く国民全般に科学技術知識を浸透せしめ、その科学技術思想を酒養いたしたいのであります。また、科学技術功労者を国家的に顕賞する制度を確立することは、国民全般に科学技術の重要性を再認識せしめるばかりでなく、科学技術者の研究意欲向上にも一役をになうものと考えられますので、その具体的方策について、関係者とともに検討を進めて実現を期したいと思っております。  第四に、原子力平和利用に関しては、今日ようやくその創世期を脱し、研究体制を一応整備し得たかの感があります。今後においては、なお一そうの基礎研究の深化をはかるとともに、従来つちかった基盤をもとに、研究成果の応用化、実用化に努め、産業、文化の各分野において原子力の平和利用を強力に展開したいのでございます。  原子力平和利用の展開に当っては、緊密なる国際的協力が必要でありますが、米英両国との原子力一般協定は過般調印をみたところであり、これらの双務協定によって各国との協調を深めるとともに、さらに昨年設立をみた国際原子力機関の活動に対しても積極的に参加し、その発展に力をいたしたいと考えております。  一方国内においては、日本原子力研究所に動力試験炉を導入することとし、将来のエネルギー源として大いに期待されている濃縮ウラン型発電炉の導入及びその国産化並びに原子力船の研究開発の促進に大いに貢献せしめたいと考えております。なお実用規模発電炉の導入については、その安全性及び経済性について目下慎重なる検討を加えており、その結果を待ってすみやかなる実現をはかりたいと考えております。このような原子力平和利用の展開に伴い、核燃料の確保をはかるため、核原料物質の探鉱を促進するとともに、原子燃料公社の充実をはかり、精錬施設の整備強化に努め、核燃料国産化の緒を開く一方、放射線による障害の防止についても万全を期する必要があるので、昨年度発足した放射線医学総合研究所の充実をはかり、その研究を促進するとともに、原子炉の設置あるいはアイソトープ等使用の許可に当っては、特に慎重に安全性の審査を行い、原子力平和利用の展開に遺漏なきを期したいと考えております。  最後に、科学技術全般の国際的協力関係について言及いたしますると、先進諸国及び国際機関との科学技術の交流を促進し、すぐれた科学技術の導入消化に努める一方、東南アジア、中近東、中南米等いわゆる低開発地域に対しては、彼我双方の資源賦存状況、産業構造、技術水準等を調査勘案の上、国産技術の進出をはかり、これら地域の開発と産業振興に協力するとともに、これら諸国との経済協力体制を確立し、もって将来のわが国経済の発展に寄与せしめることといたしたいのであります。  以上わが国経済、文化の発展を期するために、目下考慮している科学技術振興施策の大綱を述べたのでございますが、もとより国民全般の協力なくしては、これらの施策の十分の効果を上げることは困難であります。政府においても以上の諸施策基盤に、さらに世界の大勢とわが国の実情に即応した施策を進め、もって、科学技術振興に万全を期する所存でありますので、議員各位をはじめ関係各位の、切なる御協力をお願いいたしたい次第でございます。   —————————————
  79. 田畑金光

    委員長田畑金光君) 以上で所信表明は終りましたが、この際新たに御就任になられた石井政務次官から発言を求められております。
  80. 石井桂

    政府委員(石井桂君) 私は今回はからずも科学技術政務次官を命ぜられました。  もとよりふびんな者でございますが、皆様の御指導によりまして 一生懸命で自分の職責を果したいと存じます。  何とぞ御支援のほどをお願いいたします。(拍手)   —————————————
  81. 田畑金光

    委員長田畑金光君) それではこれより質疑を行います。御質疑のある方は、順次御発言を願います。
  82. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 二、三点お尋ねいたしますが、前に正力さんが担当大臣だった当時お尋ねしたわけですが、その間、今日まで、アメリカあるいはイギリスと原子力の動力協定が結ばれたわけですが、当時からアメリカの濃縮ウランがよろしいとか、あるいは英国の方がよろしいというふうな話がいろいろなされておりましたけれども、一度に両国と協定を結ぶということについてはあまりにもせっかちではないのか、それほどまでに急がなければならなかったのかという、こういう点についてお尋ねしたいと思います。
  83. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 御承知のように、日本の燃料の長期見通しというものは、やはり原子力に依存せざるを得ないことだと思うのです。水力、電力、あるいは石炭、あるいは石油なども、これはやっぱり一つの限界がある。あるいは国際収支にも関係してくる。そういうことで原子力による、エネルギー源を原子力に求めるということは、長い見通しを立てればそういう傾向になってくる。そこで、そうなったならば、ある時期には、やっぱり踏み切るべきである。新規な産業というものに踏み切るには、私は勇気が要ると思う。そういう点でイギリスから初めて試験炉ではなくして産業開発の面においてコールダーホールの原子燃料発電炉にしようということに踏み切った。そこでイギリスとの間に原子力協定がなければ輸入できぬというものではないのですけれども、御承知のように、今向うの方に見積りを出すことを求めておるわけです。七月ころまでに出てくる。それでその見積りによって、これは詳細な検討を加えて、まあ予定としては、十月ころまでには仮契約でもしたらというタイム・テーブルでありますが、これは検討の時間があれば十分やる。とにかくこういうことですから、イギリスとの間に一般協定は結んでないといろいろな不便があるのです。これからは今までのようなことよりも、もっとやっぱり設計の内容にわたってくるわけです。それで、イギリスとの間には協定を結んだ。どうせ輸入をするのですから、その先方便利だとするならば、これは何もおくらす理由はないじゃないか。——イギリスとの協定を……。  アメリカとは、御承知のように、研究協定によってウランをもらって、研究の必要な燃料というものは確保できておったのですが、それは数量の制限があって、一ぱい一ぱいで、これからわが国がアメリカからも濃縮ウランの試験炉を輸入するという計画があるので、どうしても今までの研究協定だけでは、これを改訂しないと、これはもうそれだけでは、日本の原子力の研究というか、その原子力開発というものがだいぶ進んで参りますと、研究協定だけでは間に合わなくなってきた。そういうことで、アメリカとの間にも一般協定を結ぶことが、日本の原子力開発のためにその方がベターだということで、これはアメリカとイギリスとちょうどタイミングが、必ずしも一緒にせんならぬということはないが、タイミングが合ってきた。それなら一緒にすればよいじゃないかということで、両方が待ち合せてどうということではない、そういうことになったわけでございます。
  84. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 お話はごもっとものように聞こえますが、実はイギリスの電力事情と日本の電力事情、石炭のとにかく採掘している実情、コスト、これは日本とイギリスと似ている。従って私は長官のおっしゃる原子力に踏み切るという説には、私は賛成します。しかし、問題になるのは、なぜアメリカとイギリスと一緒に判を押したかということを言ったのですが、長官の答弁を聞くと理路整然としておりますが、私の聞いた範囲内では、今申し上げたような、イギリスは電力事情、燃料事情ですから、日本と同じなんで、電力の生産コストは二円二、三十銭、日本も大体それに似ている。ですから原子力発電をすると、これはとんとんにいくか、将来は原子力の方がよいことなる。アメリカの方は水も豊富だし、石炭も安い。大体コストが一円二、三十銭。アメリカが一生懸命勉強しても、だれも買ってくれないから、日本三木さんにこの際押し売りせいというので、イギリスから買いたいというのもよろしいという前提条件で、アメリカから強引に押し切られたといううわさがもっぱら飛んでおる。これはあまりうかがった話しになりますか。
  85. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) それは正力さんの時代だったでしょう。そういう押しつけられるということはないと思います。やはりコールダーホール型の方も、これは実際において実用炉としてイギリスの方が一番世界で進んでおるわけであります。大体経済性の点も、これは今までのところ、正力さんが国会等で説明したのと大きな変更をするような材料は、あまり出ないと思う。そういう意味において、イギリスのコールダーホール型の発電炉は一つの特徴を持っておる。一方において濃縮ウラン、将来のやはり原子力発電というものが、今のこういう新規産業というものは、創成期であります。また、アメリカのやはり濃縮ウランの発電炉も、一つの特徴を持っている。やがで日本のエネルギーの運命というものが、原子力に踏み切らなければならないとすると、やはりアメリカ型のも、一つ日本でこれは試験研究してみるということは、だいぶ外国にエネルギー源を依存しなければならぬものがあるとするならば、これは悪いことではない。アメリカから押しつけられたという事実は、私は全然ないと信じでおります。そういうことではない、この問題は両方とも日本のイニシアチブである。
  86. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私も今、長官の御答弁のようにそうあってほしいし、あまりうがった話をやりたくございません。しかし、私どもこういう問題については、しろうとでございまして、それぞれやはり専門家なりその道に通暁しておる人に聞くと、そういう心配をなさっておる。ということは、日本はややはり原子力に踏み切ったといえども、持たざる国ですから、そうするとまさか、ソヴィエトが打ち上げたような人工衛生は一発七兆円かかるそうです。あれを研究しようとしても無理なわけで、原子力はそれよりもスケールは小さい、金額も小さいが、一回にわが国が二つも三つも買わなければならぬという理由はない。一つずつ研究して、一つ一つ地固めしてもいいのじゃないかということを大いに主張している学者、あるいはそれを専門に研究している人が言っているのです。ところが、今言ったように、アメリカは自分のところで研究してもどこかに売らなければならぬ、そうすると、日本が一番いいお得意さんだというので、強引に調印したという話を聞いたのですが、事実無根であれば、私は日本の国のためにけっこうだと思います。  ところで、一緒に調印したのですが、イギリスの、これは局長さんにお尋ねすることになるのですが、イギリスの原子炉は黒鉛のれんがを積み重ねた膨大なものだそうですね、日本に持ってきて、日本の実態に合うのですか。世界で一、二といわれる地震国なんですが、どこに一体つけるのですか。
  87. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 私からかわってお答え申し上げます。英国の炉は、お話しにございましたように、原子炉といたしまして、大へんたくさんの黒鉛を使います。従いましてこの積み重ねました黒鉛が、一朝地震がありました際に、事故なしにそのまま耐えるかどうかということは、非常に前々から問題でございまして、英国から炉を輸入する第一番目の発案者と申しますか、発案者であります石川一郎さんの持ってきました調査団でも、結論といたしましては、その点を非常に懸念いたしまして、地震を十分研究してもらいたいという結論になっております。そういうのもございまして、無慮一年有半、この問題を日本のこの方面の一番エキスパートと思われる学者の方方、あるいは実際の研究に当っておる人々にお集まり願いまして、ずいぶん長い間研究を重ね、その問題点を持って、今度の安川ミッションが英国に参りまして、そしてその問題点一つ一つたんねんに向うとディスカッションして、一応の見通しといたしましては、完全に地震に対しては耐え得るという設計を完成いたしました。それでこちらの仕様書等に従って、さらに向うでもその後の研究も加えて、先ほど大臣からお話がありましたように、七月の末ごろテンダーを出すようになっております。それにつきましてわが方といたしましては、その検討を待つまでもなしに、さらに実際の実験をした方が、理論の裏づけにもなってよかろうということで、ただいまのところ、いろいろ実際に実験をしながら理論的な裏づけをする一方、東海村にははっきりきまっておりませんけれども、まあ今のところは一応の候補地として、いろいろな地盤その他の調査を進めておりますが、やはりこれも地震の点を考慮したのが、一つの大きな理由になっておりまして、東海村は、ここら辺は日本としては一番小さいとまではいきませんけれども、非常に地震の少い地盤でございますので、そういう点も合せて、一応東海村を選んだような事情でございます。
  88. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 そうしますと、最近はイギリスでこの炉を動かすのですね、そうしてその同じ燃料を長期間使うと、そのプラスの温度計数ですか、そういうことで非常に危険だということを書いた本を私は読んだのですが、今イギリスでは非常に自慢しているようですし、あなた方も夢中になって錦の御旗のように考えているわけですが、こういう点、全然御心配はございませんか。
  89. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 技術的な点でありますので私からお答え申し上げますが、温度計数の問題に関しましては、最近と申しますか、調査団が参りました際、英国でも問題になりまして、私どもの考えでは、この温度計数の問題に対して対策さへ十分練れば、設計上におきましても理論上においても、十分安全性が確保できると確信いたしております。ただ、これはあくまでも実際は動かしてみませんと、確実だというふうには言えない点もあろうかと思います。幸い、英国では、今まで、従来の設計のままでブラッドレー、バークレー等、英国内部で一基十五万キロ以上の発電所を何ら変えずにそのまま建設いたしまして、近く一部運転の手順になっておりますので、わが方でこれを動かす五年先のときには、十分実証済みのことになりますので、安全の点に関しましては、私はあまり問題に、もちろん研究の要はありますけれども、それほど重大に考える必要はないと思います。ただ、経済問題といたしまして、あるいは燃料棒等を取りかえる必要が出て参りますと、あるいは経済性に若干の影響を持つという可能性も考えられますが、これとても英国等から入りました最近の情報によりますと、決して設計そのものを変えるのじゃなくして、燃料棒を変える装置を一部、従来の設計に付加する程度であって、経済性その他に対しても、影響は及ぼさないつもりであるというふうに申して、日本に今まで契約いたしたいというものに関しては、何ら影響はないというふうな情報が来ておりますので、私この方もあまりそれほど経済性の問題も大きく変るということはなかろうというふうに考えております。
  90. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 その経済の点ですが、国際連合で昨年ですか、やはりこの原子力の開発機関を作ったのですね、国際連合でもこの問題を処理しようということで。それで平和利用とか技術の面で、ことしの九月、スイスのジュネーブですか、そこで一切がっさいを論議しましょうということになっておるのでございましょう。そうすると、私は今まで日本でも日本なりに研究してきたのですから、九月のジュネーブの国際会議で、経済の面から、平和利用の面から、技術の面から、一切がっさい明確に論議された後に、イギリスへ注文するなり、アメリカへ注文するのでもおそくなかったのではないか、何もあわてて二つ一ぺんにやらなくてもよかったのじゃないかという気もするのですが、やはり国際連合で、そういう問題を問題にする前にやらなければならなかった理由の最大のものは何ですか。これは大臣が御答弁するのが当然だと思いますが。
  91. 三木武夫

    国務大臣三木武夫君) 今まで石川ミッションなども参りますし、そのほかいつか宇田原子力委員長なども参りまして、いろいろな点から検討をしてみて、大体これでは、最初のやはり原子力の平和利用としては、大体これならば採算がとれていくのじゃないかということで、これには私も詳しいことは知らぬのでありますが、ずいぶん日本から調査団が行って、あらゆる角度から検討して、これならば踏み切ってよかろうということになった結果だと思う。その間の事情を、私は詳しくは知らぬが、しかし、この問題に限ってどれだけの人が行ったか、私が記憶しておるのでも、ずいぶんの人が行って調査研究した結果、ここらで踏み切ってよかろうという結論に達した結果だと思うのであります。
  92. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私の質問と違うのです。私は、スイスのゼネバで、この問題について国際連合の中の機構で論議することになっておるのです、平和利用の面から、技術の面から、経済問題で。ですから、その後でもよくなかったでしょうかということをお尋ねしたわけです。
  93. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 私かわってお答え申し上げます。ジュネーブの会議は、御承知のように九月から開かれまして各国とも非常に注目をし、それぞれ優秀な論文を提出して、その検討をすることになっておりますが、ただいま大臣からお話がございましたように、私どもの今までの考えておりますところでは、この原子力の発電あるいは実験、試験等の過程におきましては、今まで研究いたしました範囲から類推いたしますと、まずまずジュネーブで大きく政策が、日本の今までの原子力政策が転換するというふうにまで考えんでもいいんじゃなかろうかというふうな考えをしておりました。ただ誤解がありますといけませんので、少し釈明的に付加させていただきたいのは、この条約を結んだから、すぐそのままどんどん炉を買わなければいかぬという、そういうものじゃないのでありまして、これを結びますと、いろいろな燃料の入手、あるいは炉の購入等がなし得るという可能性が生まれてきただけでございまして、実際、今後英国あるいは米国等から、試験動力炉あるいは実用動力炉を入れるに際しましても、輸入するに際しましても、ただいまの足どりでは、大臣からもお答えがありましたように、実際、英国と本契約を結ぶのは、おそらく来年の三月ごろでありましょうし、米国との試験動力炉等も、おそらく本年の末ころということになりますので、九月から三週間くらい開かれますジュネーブの成果は、取り入れようといたしますれば、これからでも十分原子炉としては取り入れられるような、時間的な足どりになろうというように考えております。今一番ジュネーブの会議で期待されると申しますか、問題になりますのは、むしろ、その問題もございまするけれども、核融合の面等の問題の方が、はるかに大きな問題として展開するのじゃなかろうかというふうに期待する面が多いように聞いております。
  94. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 局長、私も、一般協定を結んだからといって、あすから東海村へイギリスから炉が入ってきて火がつくというふうには思っておりませんよ。その点については、あとでお尋ねするわけですが、しかしながら、一つ一つ積み重ねられていって結論が出るのですから、ジュネーブでは本件は論議しません、ほかの問題であるということであれば、何をか言わんやで、けっこうです、九月にやれば、その内容がわかるのですからね。そこでその協定の内容で、私はもうしろうとですから、よくわかりませんが、その中に免責条項というのがありますね。向うさんで、たとえばアメリカでも、イギリスでも、燃料を買ってきますね。買ってきた以上は、もう一切責任はアメリカやイギリスにないわけで、一切がっさい、よかろうが悪かろうが、それによって災害が起きても、一切当方の責任であると、こういうことですね。売った方は一切責任を負いませんと、こういうことなんですか。
  95. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) お説の通りでございまして、一たん向うからこちらが引き渡しを受けたあとは、責任の一切は、当方でこれを負うというふうな申し合せになっております。
  96. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 もう一つお尋ねしますが、私はこの条約がいいとか、条文が悪いとか、申し上げているのではないのです。正直に理解しておかなければ、ほかの人に聞かれたときに困りますからね。それからもう一点合せてお尋ねするのですが、日本へ入ってきて何年か後に燃料をたいて動くようになります。その燃料の数量から何から、ここで一切がっさい向うさんが、アメリカ、イギリスから日本が買ってきた以外の、日本の国産の炉でも、向うの方では査察ができる。おそらく向うへ行って、わが国はこれはどうだ、あれはどうだという、とにかく権限はない。そうすると、双務協定とおっしゃっておるけれども、法文上はあなたの方でそうおっしゃっておるようですけれども、双務協定と言えぬような気がするのですが、そのあたりの理解の仕方について御説明いただきたいと思います。
  97. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 日本でかりに自分で設計をいたして、自分の資材で、あるいは外国からコンマーシャルの範囲で入手した資材等をもって運転した炉に対しましては、もちろん英米、国連といえども、これを査察する権限はございません。これは問題ないのでありますが、そうじゃなくて、向うからもらいました特殊核分裂物質等、ややもいたしますと、戦時目的等に使われる可能性があるものに対しましては、原子力の世界的な平和利用と申しますか、この点を保持したいというのが、今までの条約並びに国連原子力機関ができた本旨でございますので、その点を国家で保障してもらいたい。その保障に際しましては、もちろん相互に信用するわけでありますけれども、なお、ときに当っては実際に査察をして、そうしてそれを現実に確かめたいというような保障条項がございますので、これに対しましては、わが方でも一応承諾したわけでございますが、逆に、ただいまお話のありましたように、それでは同じように対等に、向うに返したプラトニウム等に対して査察したらいいじゃないか、こういう御質問のようでありますが、これに関しましては、非常に燃料の提供国と、それを受けた国との間には、単に双務協定のみならず、国連の、八十何カ国加盟しております国連憲章におきましても、事情は同じでございまして、提供国に対しましては、この査察等は国連自体でも行わない、受けた方のみが査察を受けるというような、非常に何といいますか、その意味におきましては、一応バランスを失したような状態になっておりますけれども、ただいまの国際的な動きといたしましては、段階といたしましては、やむを得ざる状況ではなかろうか。従いまして、もし、かりに国内でどんどんウランでも出して、自分の手で開発したものを自分で使って何ら外国のお世話を受けずに、堂々と自分の手でやれば、先ほど申し上げましたように、問題がないわけでありますけれども、ただいまの状況では、国際通念と申しますか、国際上の段階からいたしまして、やむを得ざる事情ではなかろうかというように考えております。
  98. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 世界各国が、国連に参加しておる国々が、一切供与を受けた場合には、日本と同じである、まことにやむを得ないということになれば、それまででしょうが、しかし、局長さん、むちゃくちゃじゃございませんか。外国からもらったやつは、とにかく一切こちらが責任を負わなければならぬ、しかも査察はびしびしやるのだということになれば、僕は法律学者じゃございませんけれども、しかし、これは一方的だというように、あなたと議論するわけじゃございませんけれども、そのように考えるのですが、一方的だとは全然思いませんか。アメリカとの協定、イギリスとの協定、大ブリテン国との協定も、全く同じだということですか。
  99. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) その点は研究協定の当時からもはや問題になりました点でありまして、長い間わが国でも、そういう条約でも受けて、なおかつ平和利用ということを促進する必要ありやいなや、むしろ、そういうものは受けないで、おくれてもいいから国内でゆっくり開発したらどうだろうという議論は、繰り返し繰り返し今まど戦わされておったわけでありますけれども、しかし、先ほど申し上げましたように、それぞれウランを持っていない、燃料を持っていない国々でも、この問題をぜひ早く研究いたしたいというので、十数カ国、これは米国だけでありますけれども、あるいは研究協定におきましては三十数カ国というように考えておりますけれども、協定を結びましてそういう精神でも、この際はやむを得ない。しかし一方大局的に見ますと、原子力の平和利用研究の方がはるかに重要であるというふうな認定に立って、繰返された議論にもかかわらず、研究を早めようという方に、大臣のおっしゃったように踏み切ったのじゃないかと、私自身はそういうふうに考えております。
  100. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 理屈を言うようですが、ウランを持っておらぬというのはどこから割り出しているのですか、局長は。日本だって持っておらぬということは断言できないでしょう、ただ国でお金を使って鉱脈を探さぬから、現在は持っておらぬけれども、外国から膨大な金を使って炉を持ってくるくらいなら、その金を探鉱につぎ込めばこれはないとは言えませんぞ。フランスにおいても、局長は僕よりも詳しいでしょうけれども、三年も四年もかかって探鉱をやったのです。フランスには初めありませんということでした。ところが、フランスはウラニムウの鉱脈を発見して世界でも持てる国の一つになったのであります。あなたの言うように、持てぬという前提に立つということは、将来大きなあやまちを犯すと思うのです。今はやむを得ないけれども、日進月歩でおくれてしまうから、イギリスあるいはアメリカから買うという理屈も成り立つけれども、やはり反面ないという前提じゃなくて、日本も少し金を使って探しましょうという気がまえがなくちゃ局長は務まりませんよ。そこで最後に……。
  101. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) ただいまの探鉱探査の問題ですけれども、これは十分阿部先生御存じのはずでありまして、非常にわが方といたしましても、フランスに負けずにただいま探鉱探査の方に力を入れておりますが、どんどん優秀なものも見つかりつつあります。一方それを取り出したので、製練をこの暮れまで中間工場は燃料公社の手で完成いたします。ただ、これがやっぱり大きく見ますと、まだ実験、試験の段階でありまして、企業化をし、そうしてわが国で出した燃料を加工してどんどん使っていくというところまでは、量的に見ましても、質的に見ましても、まだまだ時期がございますので、すぐそれを一つの対象として日本の原子炉の開発計画というものを作る段階には参らぬわけでございますので、といって決してこの探鉱なりそういうものを怠って、いたずらに輸入のみを急ぐという態度は、毛頭とっておりませんので、その点は御了承願いたいと思います。
  102. 阿部竹松

    ○阿部竹松君 私だけ時間をいただきまして、長官をくぎづけにしておくのもどうかと思いますので、この辺で質問を打ち切りますが、最後に大体昭和五十年まで、まだ明確でないでしょうけれども、石炭に換算して日本の総エネルギーは、総カロリーは一億五千万トン必要だ、そのうち石炭が七千二百五十万トンですか、残りは原子力を使うか重油を使うかわかりませんが、大体仮協定を結んで、これからぼつぼつ本協定から炉が入ってきて燃料が入ってくるという段階になるのでしょうが、いつごろ大体、この前にも正力さんにお伺いしましたが、仮協定も結ばんうちはわからぬということでしたが、大体いつごろ、この十日ぐらいからでけっこうですが、いつごろ炉に火が入って市販として電気が入るものか、目安があればその目安と、まず第一回の炉から出る電気は大体一キロ、日本の現在の電気のコストと比較して高いものか安いものか、その点を最後にお尋ねして、一人で時間を取るのも何ですから、あとはひざ詰め談判で局長に御質問申し上げます。どうもわからぬところがたくさんありますので。
  103. 佐々木義武

    政府委員佐々木義武君) 原子力の開発のテンポでございますけれども、試験じゃなくて発電に限ってお話を申し上げますと、ただいまの段階では日本原子炉発電会社で英国から購入いたしますけれども、天然ウラン様式の炉は、大体五年後に完成したい予定になっております。その後逐次これは十五万キロを計画しておりますが、増加いたしまして、約十年後には六十万キロ程度のものを日本では持ちたい。その後順次新鋭火力と申しますか、原子炉の方に置きかえて申しますか、新建設に対しましては、原子力の方にウエートを置いてゆくというように考えまして、昭和五十年には大きい方の計画をとりますと、大体七百五万キロを百原子力で発電いたしたい、で、七百五万キロというのは、経済企画庁で持っております計画の昭和五十年現在の発電の設備能力に比較してどのくらいのウエートを占めるものかというふうに考えますと、大体総設備に対しましては約二割、それから火力に対しましては四四・三%、約半分は原子力でまかなってゆきたいというふうに考えております。なぜこういうふうに考えるかと申しますと、一つはコストの面、一つは外貨の節約の面でござまして第一一点のコストの点に関しましては、ただいま一キロワット・アワーにいたしまして英国型のは大体四円四十銭から四円七十五銭くらいの間というふうにお考え願えればけっこうだと思います。従いまして普通の火力から見ますと、若干高うございます、なかんずく重油専用の発電炉から見ますと、相当高い割増しの値段になりますけれども、昭和五十年ごろには、一体どうなるかと申しますと、非常に安くなる見通しでございます。これは英国のメーカー、あるいはAEA等でも確信をもって言っております、われわれの検討におきましても、それは裏づけされますので言えますが、大体まあ三円くらいまでには下ってゆくんじゃなかろうかというふうに考えます。従いまして普通の火力の方はそれほど大幅にコスト・ダウンするということは将来むずかしかろうと思いますが、原子力発電に関しましては、まず燃料の点あるいは設備の改善の点、その設備の改善に伴って能率が非常に上る、あるいは建設コストが安くなるといったような面から、だんだん改善されましてコストが下ってゆくということは、これはほぼ確実な見通しと申してもいい状況かと思いますので、こちらの方にだんだんウエートをかけたらどうかというふうな結論になっております。  それから後者の外貨の節約の問題でございますが、御承知のように昭和五十年になりますと、日本で必要とするエネルギーの半分は、外国から輸入せざるを得ない状況になるように想定されますので、その輸入する燃料が主として石炭、特に石油、重油と申しますか、油の関係がおもかと思いますけれども、これと比較いたしまして、それでは天然ウランあるいは濃縮ウランを輸入した場合に同じ燃料でございますから、どちらが外貨をよけい使わないで済むかという問題が、輸出振興と申しますか、国際収支が非常に重要なわが国にとりましては、最大な眼目になってくるわけでございます。その点をいろいろ計算して参りますると、少くとも重油あるいは石炭を輸入するよりは、天然ウランで換算した数でございますので、濃縮ウランで換算しますと、もっと開きが大きくなるわけでございますが、大体五十年まで計算いたしますと、一億ドル近くこちらの方が安くなるという計算が出ておりますので、こちらのコストの面、あるいは輸入する燃料の競争の面からいたしましても、国際的に有利じゃないかという観点から、先ほど申しましたような計画でただいま進めております。
  104. 田畑金光

    委員長田畑金光君) ほかに御質疑ございませんか。——御質疑なければ、本日の委員会は、これで散会いたします。    午後四時九分散会