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国務大臣(
三木武夫君) 昨日閣議の決定を経まして昭和三十三年度の下期及び来年度の
経済見通しの概略についてこれを発表いたしたのでございます。大体の
考え方を簡単に申し上げたいと存じます。
まず、下期の
経済の動向に関してでありますが、
経済の原動力となる最終需要の面について下期の見通しを、われわれの
考えておる見通しはこういうように
考えておるのであります。
設備投資については、下期は上期に比して三%程度下回る、しかし全体としては一兆四千億円程度の設備投資、大体予定をしておった設備投資は本年度に行われる。
それから消費の需要についてでありますが、これは引き続き堅実な基調をたどっておるわけで、ことに今年度は四年続きの豊作であると言われておるわけでありますが、こういう面からも農家所得の伸びが期待をされる。それで上期に比べて九%程度季節性の影響もあって消費の伸びは全体としては五%程度の増加である。
問題の輸出でありますが、これは御
承知のように
世界景気の影響を受けてこれは予定を相当修正を加えたのであります。輸出目標に修正を加えた。しかし、最近
アメリカの
経済も底入れの
状態であると言われますし、これ以上
世界景気が悪化するという徴候はない。そういうことを考慮に入れまして今年度の輸出目標は二十八億ドルに修正をする。輸入は二十七億ドル。まあ輸出入ともに物価が六・七%程度低落をしておりますから、数量の上においては目標にだいぶ接近をした数字である。しかし、金額の上においては目標額に相当な修正を加えざるを得なかった。そして全体としての国際収支は世銀のインパクト・ローンを除いて実質的な国際収支の黒は三億ドル程度を予定をする。
それから財政の面においては御
承知のように公共事業などの繰り上げ実施等もあるし、またいつも下期の方が財政的な支出というものは上期に比べてこれは増加するのであります。大体地方、中央を通じて財政の購買力は一千三百億円程度去年よりも増加と見ておりまして鉱工業生産、まあこれが今申し上げたのが最終需要でありまして、こういう全体の数字に現われておる最終需要の基調は非常に底固いものがある。いずれの要素をとっても最終需要というものが下期において設備投資を除いては上期に比して最終需要が低下するという要素はない。年間を通じて見れば、設備投資も大体の
考えておった程度、あるいは少し上回る程度の設備投資がある。最終需要とは言えないけれ
ども、中間的な需要になりますけれ
ども、在庫投資の面においては予定よりもこれは在庫調整をやっていく時代でありますから、そういうので在庫の新しい投資というものは予定を相当に下回る、これはまあマイナスの要素になる。しかし、全体としての最終需要というものは底固いものがあるので、
日本の景気というものが下期にずっとずれ込んでいくというようなことは
考えられない。そう大きな上向きということも期待できぬにしても、多少の上向きを予定されるという見通しを持つことができる。鉱工業生産は、これは下期には、上期に比べて、例年もそうでありますが、少しふえる。全体として鉱工業生産は四・五%という伸びを期待しておったけれ
ども、実際は〇・三%程度の伸びになる。これも予定の年度計画に修正を加えた項目の
一つであります。こういうこと、それから金融の面においては第三・四半期においては食管会計あるいは貿易の黒字、外為会計を通じて
一般財政な
ども加えて三千億円程度の払超になり、第三・四半期の金融も従って緩慢の
状態になる。ある程度日銀のオーバーローンも改善されていくに違いない。物価は大体少しまあ微騰、大体において横ばいであり、少しは微騰する程度にとどまるものである。こういうふうな下期の見通しから三十三年度の見通しを立てまして、そして
最後に国民総生産であります。いわゆる成長率と言われているものでありますが、これは大体三%程度の成長率を予定したのでございますが、実際はこれを実質ベースに直しますと一・八%程度の成長を予測される、昭和三十三年度は。しかし、まあ去年の昭和三十二年度が目標よりも一・八%程度多かったのでありますから、そういうものを加えて
考えれば、これは予定した三%程度の成長率にはなる。しかし、今年度だけをとってみれば、予定した三%を下回った。こういうことで、今年度の下期の
経済並びに昭和三十三年度全体の
経済の見通しをこのように
考えておるわけであります。
そこで三十四年度でありますが、これはいろいろ来年度のことでありますから、国際情勢等ももう少し見通しをつけて、そのいかんによっていろいろ投資
活動等にも影響があるわけでありますから、的確にここに……こういう非常に
経済政策としては困難な時期でもあるので、この際大担に明年度の
経済を予測することからくる弊害の点も考慮して、来年度の
経済の見通しにやや幅を持たした表現をいたしたのであります。それは来年度の
経済の成長率は、大体四ないし五%が中庸を得たものではないか。六%の成長率ということになってくると、国際収支の面において問題ができてくるのであります。去年、今年度を合わした三%程度の成長率では、雇用問題、企業の経営にもいろいろ問題が起ってくる。だから四ないし五%程度の成長率が中庸を得たものではないかという
見解を述べてあるわけでございます。これはもう少し時間を得たならば、これは来年度の
予算編成の
基礎になるものでありますから、的確な見通しを得たいとは
考えておりますが、現在の
段階では、そういう幅を持たした表現を使っております。しかし、今後の
経済政策の基調としては、われわれの
考えとしては、やはり
日本の
経済が長期的な
経済の発展をやっていく、そのためにどうしても産業の質的な面においてこれが充実をはからなければ、単に数量だけでは、やはり問題は解決できない。
世界の
経済の情勢もにらみ合わして
日本の産業の質的な充実をはかっていくことが必要である。こういう前提の上に立って今後の投資については、
日本の産業基盤を強化するようなやはり投資をやるべきである。今日では輸出の不振等も伴って供給過剰のような
状態にあるのでありますから、直ちに生産力の
効果が上るようなことよりかは、将来のために
日本の産業基盤を強化するような面における投資をやるべきである。それは
基礎的な産業部門ばかりでなく、道路、港湾とか、あるいは住宅とか、そういうふうな立ちおくれている公共
施設の面における投資、それと基幹産業、こういう面に対する投資というものに重点を置くべきである、これが第一点。また、さらに輸出の増進、
日本のような、やはり
海外貿易に
日本経済の依存度が非常に高いわけでありますから、どうしても輸出の増進というところから
経済の発展を切り開いていく必要があるので、輸出増進には幸いに国際収支の黒字もあることでありますから、ある程度のクレジットの設定も含んで、そうした輸出の増進というものをはかるべきである。ただ
日本がそういう輸出増進の政策をとるばかりでなく、
世界経済全体が縮小均衡の
状態に陥らないように、今日うわさに上っている第二
世界銀行であるとか、IMFの増資であるとか、いわゆる
アメリカを
中心とする国際
経済の流動性といいますか、こういうものをやはり強化するような機運を
日本自身が盛り上げていく必要がある。それに伴って
日本の輸出の増進策を相当思い切ってやっていく必要がある。またやはり今日国民の所得較差と申しますか、こういうものがやはり拡大していく傾向があるので、低額所得者の所得水準を高めて、これがやはり
一つの大きな購買力になり、産業発展の柱になるわけでありますから、そういう意味において低額所得者に対する減税あるいは社会保障制度の充実等によって、そういう低額所得者の水準を高めていくような点にも重点を置くべきである。なおまた中小企業あるいは雇用の面、えてしてこういう面にこういう
経済の沈滞期においては時期的にずれても、それが中小企業やあるいは勤労者の雇用の面にしわ寄せされてくる傾向があるから、中小企業や雇用の面についても特にやはりこれを重視していかなければならぬ。以上のことを頭に入れながら財政の運営は弾力的にやるべきである。ただまあ公式論的にやるのではなくして、やはりある程度の景気水準を維持するということは政治の責任でありますから、そういう意味において財政の弾力的運営をはかる必要がある。こういうことをいわゆる
一つのプリンシプルとして、今後の
日本経済の運営の基本的な態度として述べたわけでございます。
これが昨日閣議の決定を経た
経済の今年度下期、来年度の見通しに対する企画庁の
見解というわけでございます。