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説明員(村田恒君) 本
年度五千六百万トンの出炭は、さきに
経済企画庁を中心にして練られました
長期エネルギー
計画の一環として、昭和五十
年度において七千二百万トンの出炭まで持っていく。そういう最低七千二百万トンの出炭を行うということが、外貨負担を軽減し、将来増大していくエネルギー需要に対応するために、
国内出炭七千二百万トンが最低要請されるということを基礎にいたしまして、五千六百万トンの出炭
体制というものを維持するようにはかってきたわけでございます。で、現実に各炭鉱、各山別の工事の、本
年度大幅な開銀の投資もございますし、そういう面から見まして各山別の出炭の態勢、物理的な出炭の態勢というものは、あくまで七千二百万トンの将来の姿を
計画の中に織り込みながら、それが行われているわけでございます。
ところで、たまたまこれが阿部
委員がきわめてよく御
承知だと思いますが、
長期の
計画と、それから短期的な需給の変動に伴います場合における
石炭鉱業が、非常に
生産の
弾力性が乏しいために影響をこうむることが、ほかの
産業よりも非常にはなはだしいということのために、現在起っております。いろいろな、もろもろの矛盾が露呈されておるわけでございますが、大勢といたしましては、各山とも五千六百万トンの出炭
体制というものはまだくずれてない、そういうふうに
考えております。
ところで、それならば一体どういうわけでこのような、その貯炭増というものが出てきたか、一番大きな原因は何と申しましても、電力部門に対します、これまでのところ、きわめて
計画よりも非常な豊水でございまして、電力部門に対します
石炭の引き取り、並びに電力部門に対します消費というものは、非常に予想よりも低かったということが大きな原因でございます。たとえて五月の例をとって申し上げますと、電力部門におきます
石炭の消費というものが、八十万トン
程度のものが予想されておりましたのが、実にその半分四十万トンぐらいしか、たかなかったという
状況であります。現在水の方から申しますと、非常に心配でございますが、逆に
石炭の方から申しますと、ありがたいことには、非常に天気が続いておりまして、現在三万トンぐらいたいております。従って電力部門の消費はこの二、三週間ぐらいはだんだんふえておりますが、いずれにいたしましても、これまでにおきまして非常に貯炭が増加しております。ただいま一千万トンというお言葉がございましたけれ
ども、われわれの方で調査いたしましたとこによりますと、五月末で全国の貯炭の総計は八百三十五万トンでございます。この八百三十五万トンの内訳を見ますと、いわゆる
業者貯炭、すなわち坑所、港頭、
市場、それらの合計いたしました
業者貯炭が三百十五万トン、さらに大口の工場、大口の消費工場でございます。需要者工場におきます貯炭が五百二十万トン、そのうちで、この五百二十万トンのうちで、電力部門がどのくらい持っているかと申しますと、三百二十万トン持っております。非常に膨大な貯炭であります。その結果、八百三十五万トンの貯炭を持っているわけでございます。この数字がいかに大きいかということは、昨年の五月に比較いたしますと、昨年の五月末の貯炭は、全国でもって四百六十一万七千トンでございます。約倍の貯炭がふえておることになります。で、特にこの注目すべきところは、大体
業者貯炭というものは、二百三十万から二百五十万の間をもって正常な貯炭と
考えておりますが、現在のところ、三百万トンちょっとでございまするから、
業者貯炭の方が、それほど憂慮すべき
状態でないにかかわらず、消費者の方の貯炭というものは非常に多いわけでございます。すなわち、需要者の方に片寄ってしまって、それがいろいろな事情でたまって、それを消費することが非常に少かったというためにこのような
状況を生じたわけであります。ところで、これだけの大きな貯炭があるものを、しかも片一方において五千六百万トンの出炭
体制を持っていくという矛盾、これをどういうふうにしていくかということでございますが、今申し上げましたように、将来におきます大きなエネルギーの需要に対応しまして、出炭
体制をくずさないでいこうということは、これは何といっても、膨大なる労働人口をかかえております
石炭鉱業といたしましては、そう軽々に出炭の抑制とか何とかいうことは、簡単にできないことと存じます。ところが、たまたま今回の
長期にわたります炭労のストライキによりまして、相当大幅な減産が行われております。すなわち四月に入りましてから六月十日までの炭労と経営者側との協定ができまして、それによってストライキがやみましたが、そのときまでの減産が百五十八万トンの減産を現実に生じております。そのうち原料炭は百余万トンの減産でございますが、そのほかに、需要面におきまして、今申し上げましたように、電力の方で非常に引き取りが少くて消費が少なかった。と同時に、原料炭を中心にしてのストライキのために、鉄鋼、ガスの部門では、手持ち輸入炭を極力食ったわけでございます。そういう
関係で、何とかつないできておりますが、いずれにいたしましても、ここに現実の姿として百五十八万トンの現実の
生産減が行われております。同時に、これを具体的に何%の出炭制限になるかということは簡単に申し上げられないと思いますが、何と申しましても、現在の炭況というものを見まして、全体として各山別に大幅なる増産
体制というものが、少しずつ少しずつ士気阻喪しているというふうな現象は、これはいなめないと
考えられます。その意味におきまして、必ずしも本
年度最終的に五千六百万トンというものは、すでに五千六百万トンの
体制があったとしても、今日までにストライキが行われて、百五十八万トンというものは現実に減産になっておるわけでございます。その意味におきまして本
年度におきまして、まだ下期におきます需要あるいは下期におきます豊渇水の
状況、それらの点を今後十分に実態を見きわめなければわかりませんけれ
ども、まあ
体制は五千六百万トンといたしましても、現実の出炭というものは、五千四百万トンを下回るんではないか、こういうふうに
考えております。