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1958-07-01 第29回国会 参議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月一日(火曜日)    午前十時五十一分開会   —————————————   委員異動 六月二十七日委員有馬英二辞任にっ き、その補欠として草葉隆圓君を議長 において指名した。 六月三十日委員坂本昭辞任につき、 その補欠として山本經勝君議長にお いて指名した。 本日委員横山フク辞任につき、その 補欠として高野一夫君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            草葉 隆圓君            紅露 みつ君            榊原  亨君            鈴木 万平君            高野 一夫君            谷口弥三郎君            西岡 ハル君            木下 友敬君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君            山本 經勝君            竹中 恒夫君   国務大臣    法 務 大 臣 愛知 揆一君    厚 生 大 臣 橋本 龍伍君   政府委員    厚生大臣官房長 太宰 博邦君    厚生省保険局長 高田 正巳君   —————————————    最高裁判所長官    代理者    (家庭局長)  菰淵 鋭夫君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    法務省刑事局刑    事課長     河井信太郎君    厚生省社会局長 安田  巌君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○社会保障制度に関する調査の件  (最近の父親殺し社会福祉施策に  関する件)  (社会保険診療報酬単価改訂に関  する件)  (汚水問題に関する件) ○派遣委員の報告   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) これより社会労働委員会を開きます。  まず、委員異動を報告いたします。  六月二十七日付をもって有馬英二君が辞任し、その補欠として草葉隆圓君が選任されました。  六月三十日付をもって坂本昭君が辞任し、その補欠として山本經勝君が選任されました。   —————————————
  3. 久保等

    委員長久保等君) 社会保障制度に関する調査の一環として、一般厚生問題に関する件を議題といたします。  まず、最近の父親殺し社会福祉について御質疑を願います。
  4. 山下義信

    山下義信君 去る六月十五日都内におきまして、近来にない児童少年関係といいますか、社会事件といいますか、非常に私どもの胸を痛ましめるような大きな事件発生をいたしました。関係者は言うに及ばず、全国民に非常なショックを与えておるのであります。問題が非常に大きいだけに、まだその及ぼしまする影響、その波紋というものは、おそらく時日が経るに従いまして、いろいろと各界各方面から、この事件に対しまして大きな反省といろいろな批評が加えられていくことであろうと思うのであります。私どもも、これを軽々に看過することはできないので、時あたかも国会開会中でありまするので、国会といたしましても、この問題を重視いたして、深くこの問題の本質あるいはまたその影響いたしまする諸般の問題につきまして、われわれの検討を加えていかなければならぬ。そういう考えで、本日は社会労働委員会におきましてお取り上げを願うことにいたしたのであります。直接は、ただいま事件法務省の方でお取扱いでございますので、とりあえず法務大臣の御出席をお願いして、御所見を承わりたいと、こういうことにしていただいたのであります。本日委員会事件てんまつ並びにその真相等をつまびらかにさせていただきまして、今後この問題につきましてのわれわれの国会における所見と申しますか、今後の対策等は、逐次本委員会で御検討願う考えでございます。  そういうわけでございますので法務大臣に伺うのでございますが、言うまでもなく、ただいま申し上げましたように、去る六月十五日の昼東京都足立区本木町のバタ屋部落一隅におきまして、十六才の少女父親を殺害いたしたという事件でございます。この件につきまして、まず犯罪少年の問題をお取扱いになりまする法務大臣とされまして、どういうお感じをお持ちでございましょうか。とりあえず法務大臣としての御所感を承わりたいと思うのであります。
  5. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 山下委員お尋ね事件につきましては、私といたしましても、御同様に、全く心の痛む事件でございます。このことは、いろいろの点におきまして、今後においても対策と申しますか、それにはいろいろの広い意味があろうかと思いまするが、いろいろの面において示唆を与えるものが相当に多いように考えるわけでございます。私は、法務大臣立場においてはもちろんでございますが、私個人といたしましても、就任早々にこういうような事件がございましたことは、全く何とも言えないような悲痛な感じがいたすわけであります。  とりあえず私の気持というお尋ねでございましたが、率直に私の気持を申しあげました。
  6. 山下義信

    山下義信君 私は、本件処理が、法務省の御所管として、法に照らされまして御処理になることでございますが、従来とも、この非行少年のお取扱いにつきましては、すでに制度がありまして、相当の年数もたち、多くの事件もお扱いになってあるわけでございまして、従来と今日と相違があるべきはずはないのでありますが、こういう大問題、大事件が起きましたのを契機にいたしまして、この犯罪少年と申しますか、非行少年と申しますか、それらに対しまする当局の御処理状況あるいは御方針というものが、大きく国民の前にクローズ・アップされてくることでありまして、従いまして、これを機会に、事件そのものの遺憾なき御処理は申すまでもないことでありますが、関係の裁判あるいは行政等あり方等につきましても、われわれといたしましても、この現状並びに将来の御方針を承わらなければならぬわけでございますが、この父親殺しの大きな問題の処理につきましては、法務大臣とされまして、いろいろな意味において、いろいろな観点からいたしまして、特別に関心をお払い願いまして、十分な一つ行き届いた御処理を願いたいと思うので、全般的なことを先に伺いまして、あるいは本末が転倒するかもわかりませんが、大臣の御在席の時間の関係もありますので、この問題についての御処理のお心づかいと申しますか、お心持というものを、大臣としてお示しを願いたいと思うわけであります。
  7. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 先ほども申しましたように、また私といたしましても、できるだけ行き届いた心組みで関係の者がこの処理に当りたい、また、当らなければならない、こういうふうに考えているのでございます。ただ、何と申しましても、現在の法律や、あるいは機構というものの関係から、できるだけきて届いた措置を期待いたしますけれども、やはりこれは、冷静に法の規定するところに従って処理しなければならないというのが、法の秩序を守る者としての立場でもございます。そこが非常な私どもの、何と申しますか、気持あるいは心づかいの大切なところだと思うのでございますが、御案内のように、姉妹のうちの姉さんの方は、すでに十六才になっておるということと、それから、この法律から申しますと、何と申しましても、現実の事態はいわゆる尊属殺しということになるわけでございまして、現在は、御案内のように、検察庁から家庭裁判所に送致いたしまして、家庭裁判所において調査をいたしておるのが現在の段階でございます。今後の問題として、家庭裁判所から将来検察庁にいわゆる逆送されて参りましたような場合には、検察庁といたしましても、万全の措置をいたしたいと考えておりますが、現在は、今申しましたように、家裁調査中である、こういうふうな段階でございます。
  8. 山下義信

    山下義信君 ただいま全般的な、何と申しますか、御処理と申しますか、お扱いにつきましての最高の御方針を、きわめてあたたかい、しかも非常に深い示唆に富んだ根本的方針をお示しいただきまして、大いに法務大臣の御良識を多といたしますと同時に、十分一つ御配慮をお願いするわけでありまして、あとはまた、関係当局から承わりますが、私は、ただいまの御方針を十分御信頼を申し上げたいと思うのであります。  つきましては、この機会に、法務省におかれましては、非行少年対策とされまして、あるいは、一部に伝えられておるところによりますと、少年法改正あるいは少年法に規定しておるところの児童年令引き下げ等々につきまして、全面的に御改正になるというような御意図があるやに承わっておりますが、その辺につきましては、どういう御方針おいでになりましょうか、この際承わりたいと思います。
  9. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 最近におきましても、一部の報道に、少年法改正して、年令引き下げるというようなことが、そういう趣旨の記事や報道が伝えられておったようでございますが、実は、法務省といたしましては、この少年法の問題についていろいろ慎重な検討はいたしておりますけれども年令引き下げというようなことにつきましては、御承知のように、過去における慎重な検討の結果、二十才というようなことが規定されておるような状況でございまして、ただいまのところ、これを引き下げるというところまではまだ考えてはおらないわけでございます。
  10. 山下義信

    山下義信君 そういたしますと、少年法改正の御意思はないと、かように了承してよろしゅうございますか。
  11. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私といたしましても、御承知のように、就任早々でもございますが、ただいまのところは、改正意図を私は持っておりません。
  12. 山下義信

    山下義信君 法務大臣にもう一つ伺いたいと思います。少年院の運営につきましては、詳しく申し上げるまでもなく、いろいろお骨折りを願っておるのでありますが、しかしながら、われわれがそばから見ておりますというと、少年院の功罪といいますか、あり方といいますか、なかなかこれは問題ではないかと思うのです。言うまでもなく、ほとんど一カ月に数回といわんほど少年院脱走事件暴行事件というようなものが報道されるのであります。これは、どこに欠点がありまするのか。ただ年令を幅広くして大目で見ておるから、実際おとな同様の悪質の者であるにもかかわらず、寛大な扱いをするから、こういうようなのがあるのは当りまえだというので、年令を切り下げるということが一部に考えられているというようなことを伺いましたが、そういうことは当分考えていないということでありますが、どこに欠点があるのか。一体こういうようないわゆる非行少年犯罪少年を、ああいうようなやり方で果して矯正ができるのかできないのか、非常に一部において疑問を持たれる。こういう点につきまして、根本的に何か法務省で大いに改善されるというお考えがあるのか。あるいは別の施策でも考えておられるかどうか。これは、たとえばですよ、今回の父親殺しというような不幸を惹起いたしました可憐な少女、これをかりに少年院に送るということになりますと、ひとしく概念的には犯罪少年少女といいましても、おそらく少年院の大多数の者は、あるいは窃盗あるいは強盗を働き、あるいは悪質な性的犯罪を行なったような、ほんとうに手のつけられぬような少年が多いのです。これから細部にわたって伺わなければわかりませんけれども父親殺し関係をいたしました不幸な可憐な少女を、かような強盗殺人のような——それも殺人ではございましたけれども、悪質な犯罪とは異なる、そういうところへ一緒にぶち込んで、これは、世間でしばしば聞きますが、少年院へ行くというと、かえって悪いことを教わって、そうして出て来ればひどく悪くなる。かえって色あげされて、鍛えられて、非常に悪質になって出て来るというような世情も承わる。少年院あり方等につきまして、法務省としては、お考えを何かお持ちになっておられるでしょうかどうか、承わりたいと思います。
  13. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私も、実は少年院の問題につきましては、すでにいろいろな民間の方々からも御意見を伺っておるわけでございます。一つ十分に研究をいたしまして、ただいまお尋ねのような事例も実は相当あるように伺っておりますので、今後どういうふうにやって参ったらば、非行少年のことに自後における矯正については、どういう方向が一番正しいか、あるいは効果があるかということを中心にして検討をいたしたいと思うのでございます。従来の事務当局考え方もいろいろあるかと思いますが、これらにつきましては、御説明を申し上げたいと思いますが、ただ私といたしましては、新しい総合的な観点から十分に検討をいたしまして、何とか国民的に納得のできるようなやり方漸次改善をして参りたい、かように考えておるわけであります。
  14. 山下義信

    山下義信君 改善の御意思があるようでございますが、何か具体的なこと等でもありますか。関係局長担当局長か、見えておりましたら承わりたいと思います。
  15. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 関係当局から、私としてこういうやり方一つ改善策であろうかということで意見が出ておりますものの中に、一つの中心問題、少年保護団体の建設といいますか、これの育成強化ということが急務であろう、こういうふうに考えられておりまして、私も、これは一つの着想として取り上げて参りたいと考えておるわけであります。で、御案内のように、たとえば終戦の当時には、少年保護団体というものが約百四十ほどの数がございましたが、現在はわずかに三十二団体になっておる。収容の人員数から申しましても、終戦時には、約四千名が児童保護団体に収容されておりましたが、今日では、これがわずかに六百名であるというようなところにも一つ改善の道が示唆されておるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。
  16. 山下義信

    山下義信君 私は、非常にこれまた法務大臣の御所見に非常に共鳴するものがあるのでありまして、当初の少年法あるいは少年院関係制度厚生省関係いろいろ整理をいたしまして、現在の制度に分ちました当時に、私の記憶によりますというと、民間のただいま御指摘になりましたような保護団体いろいろ整理いたしまして、整理というよりは、一口に申しますれば、つぶしまして、そうして今のような現在のいわゆる官営方式に切りかえて、今日に参ったのでありますが、こういう段階になってきますと、法務省系統といわず、厚生省系統といわず、全般的に見て、不良少年対策といいますか、あるいは種々なる問題の児童対策といいますか、そういうような問題に対しまして、民間の力をうんと活用して、そうして盲点といいますか、すきといいますか、手の及ばないところに一つ対策を講ずべき段階に来ておるように私どもも感ずるのでありまして、法務大臣が、その点につきまして、基本的な構想のもとに改善案を指示されておいでになるということを聞きまして、深く共感を覚えるところがあるのですが、具体的な御構想がまとまりましたときに、あらためてまた承わりたいと思うのであります。  いま一度法務大臣に伺っておきたいと思いますことは、世間でも指摘しておりますが、何も世間がいろいろ申したことや、あるいは新聞に出たようなことをここで取り立てて聞くのではございません。しかしながら、この事件に関連をいたしまして、何か法務省の方に御名案でもあるのか、承わっておきたいと思いますことは、いわゆる、何と申しますか、アルコール中毒と申しますか、泥酔をいたしまして、ややもすると常軌を逸して、社会環境に対しましていろいろな好ましからぬ影響を与えますような、そういうような異常者等に対しまして、何か取締り関係の法規でもお考えになっておられますか。あるいは現在ありまする種々な法令で、それを運用によりまして、いろいろな諸問題の防止ができる方法でもあるでございましょうか。そういう点について、法務省で何か御検討のものがございましょうか、承りたいと思います。
  17. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) アルコール中毒あるいは、もっと平たく言えば、泥酔して意識をなくしておった者は、私のこれは常識としての御答弁になりますが、刑法上罪にならないような扱い方になっておるということは、私個人としてはいかがかと思うのであります。私、自分でも酒をたしなみますけれども、しかし、それが意識を喪失するくらいに泥酔して、そうしてそこで犯した犯罪は、意識がないから犯罪にならないのだというような扱いになるということは、私は常識としていかがかと思うのでございますが、しかし、これはやはり、従来の長きにわたるわが国の刑法考え方というものが、純粋の法律立場から申しまして、従来の刑法という根本法がそういうことになっておるのであると承知いたします。また、それについては、それぞれのいろいろな考え方もあるかと思うのでございますが、この点につきましては、私といたしましては、今後慎重に検討いたしたいと思います。実は、第一次岸内閣の当時におきましても、御承知米軍関係問題等契機といたしまして、汚酔者あるいはアルコール中毒者に対する法律しの措置を再検討してはどうかというような空気が出たわけでございます。私は、これももっともなことと思いますので、今申しましたように、私の私見でございますが、本件については、研究を続けて参りたいと考えております。
  18. 山下義信

    山下義信君 法務大臣に対する私の質問は、以上であります。実は、本件に関しまする現在の取調べ状況等、あるいはどういうような方法処理されますか、一般のこのお取扱い問題等家庭局長その他関係者に伺いたいと思う。大臣に対する質疑は、以上の通りであります。他の委員の方の御質問がありましたら、どうかほかの委員にお願いします。
  19. 久保等

    委員長久保等君) 速記をとめて下さい。    〔速記中止
  20. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  21. 中山福藏

    中山福藏君 微細な点につきましては、次回あるいはその次の機会に譲りたいと思いますが、根本的な問題をただ一点この場合確かめておきたいと思います。本件の問題、は、結局父親というもの、いわゆる斎藤という人は、戦前には石屋を営んでおった。三十人の使用人を使うくらい盛大に事業をやっておった、こうあるわけです。たまたま敗戦後事業がうまく運ばないという結果、自暴自棄になって、いわゆる飲酒の常習者になったと、こう書かれてある。そういうこまかい点は、この際省略いたしまして、私は、ただこういう点を一つ法務大臣がどう見ておられるか、これは、いわゆる生活保護に関する制度欠陥から生まれたものであるか、あるいは、子供立場から見れば、教育上の欠陥がここにこの事件というものを惹起せしめたものであるか、あるいはいわゆる道義の頽廃というものがここにこの問題を作り上げたものであるか、あるいはせつな的な感情のもつれのために父親殺しというものを決行するに至ったものか、それをどういうふうに大体法務大臣はお考えになっておるか、一応この四つの点を、その中のどれに該当するかということだけをきょうは聞いておきたいと思うのですが、法務大臣は、法律家としてではなく、いわゆる政治家として、大まかな、基本的なこの問題に対する考え方をここにお示しを願いたい、こう思うのです。
  22. 愛知揆一

    国務大臣愛知揆一君) 私は、先ほど来申し上げておりますように、私といたしましては、全くこれはもう悲痛な事件であって、ともすると、感傷的にならざるを得ないのでございます。ただいま四つの点をおあげになりまして、そのいずれに該当するかということについては、私は、常識的に申しますと、その全部に関連しておるのではないかと考えますが、ただ、先ほど来申しておりますように、事件としてこれは家庭裁判所でただいま慎重に取り調べ中でございますので、すでに裁判所取調べが移っておりまするので、私としては、軽々にこれ以上断定的に、こういう原因であろうということを断定するのは差し控えたいと思います。まあ常識的に、いずれも、あるいはまた、それ以外の原因もあろうかと思いますが、これはまず家裁におきまして慎重にかつ懇切に取調べをし、その上で所見を申し上げることにいたしたいと思います。
  23. 中山福藏

    中山福藏君 これは、全部であるとおっしゃることが妥当なお答えであると私は考えます。いわゆる妥当と考えられるほど社会全般にわたって今日改正を必要としておるときに通過しておると私は見ておる。従って、この全般的ないわゆる国政の対象というものは国民である。だから、国民に少しでも不幸な人があり、また不幸な事件というものが起りました際には、やはり国政全般にわたっての一つ基本方針というものを樹立する必要があると、私はふだんから考えておるわけです。ところが、戦後どうもその国の目的、国の目安というものが非常にないのじゃないかというような感じを私は持っているのです。何らかのそこに国そのもの一つ目安をちゃんと定めて、こういう方面に国家全体を引きずっていく、こういう目安が現在では日本の国にないのじゃないかというふうに考えております。そういうふうな観点から、どうか一つよく慎重に御考慮を賜わりまして、いわゆる基本方針的なものを全般にわたって打ち出していただいて、次には、この問題のよって起った由来というものを一応鮮明にしていただいて、将来はこういうふうにすべての社会上の、少年指導方針というものを持っていきたいということを一つ示しを願いたい、こう考えるのです、その点だけお願いして、私の質疑はこれで終ります。
  24. 山下義信

    山下義信君 委員長にお願いしておきますが、議事進行につきましてでありますが、続いて法務省系統のことを伺いたいと思うのですが、厚生大臣が御出席でございますので、厚生大臣に対する御質問を申し上げて、そうして法務省系統の責任の局長さんから、事件真相等も承わりたいと思います。私は、従来の新聞報道されましたものとは真相が違うのではないか、こういう気持もいたしますので、家庭局長さんその他から、いろいろ事件状況等を承りたいと思うのです。
  25. 久保等

    委員長久保等君) 承知しました。
  26. 山下義信

    山下義信君 厚生大臣に次の質問をさしていただきたいと思います。  法務大臣にも伺ったのでございますが、去る六月十五日の夜、都内足立木木町バタ屋部落一隅におきまして、十才の長女と十三才の妹が、父親である斎藤正躬さんを殺害をいたしたという事件発生をいたしまして、お互いに非常に胸を痛めておる次第であります。これは、厚生省といたしましても至大な関係がありますので、当面の事件処理いたしますのは法務省でございますから、法務大臣以下の出席を求め、また、その詳細な事件真相につきましては、引き続いてあとで伺うことになっておりますが、とりあえず全国民生活福祉を掌握しておいでになります厚生大臣とされまして、ことに関係者が年少の児童であるという点からいたしましても、またそれが非常に気の毒な生活困窮の世帯であるという点からいたしましても、厚生大臣とされまして、全般的にこの事件に対していかなる所感をお持ちでございましょうか、お示しを願いたいと思うのであります。
  27. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 私も、先般の事件新聞で拝見をいたしまして、胸を打たれるものを感じたのでございます。確かにこれは、刑法の面からいいました場合、親を殺すということは悪いことでありまするし、おそろしいことであります。ただ、現実の問題といたしまして、あのように与えられた環境のもとで、子供たちほんとうに黙っておれば、始終ひどい目にあっていかなければならない。母親もひどい目にあっていかなければならないといったときに、一体そうしたら、どうしてあの環境からのがれられるかということを考えましたときに、あの幼い姉妹がああいう挙に出るまでに、救いの手を差しのべることのできなかったのは、非常に残念だと考えておるのでございます。ああいうふうなおとなにつきまして、なるほど犯罪も犯していないし、一応、平素気違いでないかもしれませんけれども、家庭にとって、どうにもこのまま生きていかれないような人物を、これは法務省関係の仕事となると思いますが、何かやはり保護して矯正していくという方法をお願いいたしたいと同時に、厚生省関係の問題といたしましては、今日までの間、やはり全然親のいない子供、あるいはまた、それに準じたような子供だけが保護の対象になるわけでございまするし、やはり現実社会生活の面で、ある場合には、親が死んでいるよりももっと子供たちにとって生きにくいといったような環境子供たちを引き取る方策を何らかやはり考えていかなければならぬと考えておる次第でございます。  今回の問題につきまして、事がここまでに至るまでに、十分な手を伸ばすことのできませんでしたのは、私は非常に遺憾に思いますし、今後何らか、ただいま私の申しましたような趣旨で、一体その認定をどうするかといったような、いろいろな問題があると思いますが、将来も研究を進めて参りたいと思う次第でございます。
  28. 山下義信

    山下義信君 私は、ただいまの厚生大臣御所感を承わりまして、大へんけっこうだと思います。私が申し上げたいと思う通りをおっしゃった。厚生大臣の所感として二点おっしゃった。事前に救いの手が行き届かなかったという点についての反省、それから、こういう環境に置かれてある児童に対する対策の考究という点を、非常に考えるということをおっしゃり、そうしてだれが悪かった、かれが悪かったということをおっしゃらない。それで、貧困からくる、こうした生きるか死ぬるかの瀬戸際にかような不幸な事件が起きたということを御所感としておっしゃった。全幅的な同感の意を表します。そういう角度から、一つこれを大きな教訓とされまして、今後の適当な対策をお願いをいたしたいと思うのです。  新聞などによりますというと、父親が飲んだくれで、そうして酒を飲むというと乱暴を働いて、母親があいそをつかして、子を捨てて逃げて行って、そうして、もうこんな仕方のないお父ちゃんは殺してしまえというので、子供が殺したというふうに、大体において伝えられておりますが、私ども調査しましたところによると、これからあと法務省系統からお取調べ状況を伺わなければなりませんが、先走って私の予想を申し上げては済みませんが、ただいま法務大臣に対して中山委員が御指摘になりましたように、この父親というのも、戦前は三十人余りの使用人を使っておった大きな石屋さん、そうして戦争中は召集にあって応召して行きました。そうして帰って来て、なかなか家業の立て直しができないので、だんだんと落ちぶれていって、もうやるせない状況になって、つまりもんもんの情を若干の酒でまぎらわしておったという気の毒な身の上の人である。母親というのは、一言に言えば、いいおかみさんだなという感じのするような婦人であるということ、これは、子供を捨てたり夫を捨てたり、やけになって出て行ったりしたのでなく、事件の前日に、もうこの貧苦しいことは、あとでまた担当局長等とにやつれた生活に行き詰まって、自殺をするつもりで前日に家出をしたという状態でありまして、わけのわからぬようなそこらあたりの女性が、何でも父親の責任である、父親教育をするがいいなどということをほざいたということでありますが、父親が悪いとか、母親が悪いとかいう問題ではないのでありまして、結局の根本原因は、この社会から追い詰められて、生か死かというせとぎわまで、貧困というものが徹底的にそこまでいったという、あと委員会で、だんだんと事件なり真相なりを一つ御調杏になりまして、事態が明確になると思いますが、私どもといたしましては、これは、ただ単に、父親が酒に酔っ払って始末におえぬような悪い父親であったとか、そういったような、きわめて浅薄な見方で、ごく一部分からものを判断するような事件ではないと考える。言いかえますと、善良な家庭がだんだんと転落をしていく、沈没していって一家が離散して、そうしてこういうような事件をまき起したという問題というのは、非常に私ども、この社会保障、社会福祉関係のわれわれといたしましては、非常に考えさせられるものがある。  私は、この際大臣に伺う点が三つございます。これは、基本的な御方針を伺いたいと思います。  第一点は、社会福祉事務所のあり方、私は、これはもう根本的に一つ整備強化を願わなければなりません。今の社会福祉事務所のあり方がいいとか悪いとかという議論をしているひまはございません。悪いとは申し上げません。私は不十分ではないかと思う。詳しいことは、あとでまた担当局長等と質疑応答をいたしますが、どこかに手薄いところがありはしないかという、この社会福祉事務所の整備充実というものについての基本方針を伺いたい。この社会福祉事務所の機構というようなものはどうなっておりますか。これは、おそらく数年前厚生省の通牒で、こうあるべき姿ということが定められてあるが、今日までどれだけそれが強化されているか、充実されているかということは、私は寡聞にして知らない。できていないだろうと思う。少数の社会福祉主事がやっとこせ日々の連絡のあった事件処理するのに追われておるというような状態、換言いたしますと、社会福祉事務所の機能というものは実に弱い。思ったほど強くない。言葉をかえて申しますと、厚生大臣が御承知のごとく、民生委員制度、それがよい悪いは別といたしまして、その民生委員制度等の網が張ってあって、それがボス化しているとかいうような弊害ほ別といたしまして、そういう外部の網が張ってあったときと、そういうやり方をかえて、公的責任を明確にするといって、今の社会福祉主事、これでもって全責任でやるという現在の制度というものとの間に、こういうようなことが起る前に予防措置、行き届いたやり方というものがどうだろうかということを考えさせられるのであります。従いまして私は、社会福祉事務所の現在の制度の強化充実という点について、基本的にはどう考えるか、また、人的な整備といたしましては、社会福祉主事、これは社会福祉事業法で高い資格が要求されております。人格が高潔で、思慮が円熟しておる。年令は三十才以上、大学卒業以上というような資格が要求されておる。このケース・ワーカー、しかるにその待遇、所遇というものは実に低い。そうしてこれが地方公共団体の費用でまかなうのであって、これに対する国の補助というものは、平衡交付金に入れるとか入れぬとか言っているのでありまして、国の補助というようなものが何ら表立ってはできていないために、資格は高いものを要求いたしますが、待遇はきわめて低い。この事件につきましては、慶応大学の教授の池田潔さんが、その付近のおかみさんたちが、この家庭ではありませんが、付近のバタ屋のおかみさんたちが言うことには、社会福祉事務所へ何べんも生活扶助の申請に行って、一ぺん来てみて下さい、来てみて下さいと言って、数回足を運ぶけれども、行ってみてやると言ったけれども、来てもらえませんでした。この部落のおかみさんたちが証言をしているということを取り上げられて、血の通わない役人の仕事と、毎日新聞にこれが論評されております。私は、社会福祉事務所のあり方につきまして、基本的にはどういうように厚生大臣はお考えであるかということを承わりたいのが第一点。  第二点は、生活保護法の適用でございます。多くは申し上げません。これも長い間の懸案、長い間国会があらゆる機会におきまして、本会議なり予算委員会なり社労なり、今のところありませんが、今日まで未解決でありますのは、もうこの収入の認定を非常にきびしくして、内職でかせげば、それを引き去ってしまう。これは、最近市町村長が要望しておりますことですが、これもこの際に大臣から承わりたい。たとえばニコヨンにやる三日分の手当、前回のこの委員会では、日雇いの手当を増額しないかといって、労働大臣との間に激しい応酬がありましたが、現在の三日分の夏季手当、これをもらってくると、生活保護法で引き去るという、そういうようなやり方をしたのでは、勤労意欲がもう全部なくなってしまうのじゃないかと、これは長い間の議論になっております。高等学校に行けば生活保護法を中止する。高等学校ぐらいは、生活保護の世帯でもやらせていいじゃないかということは高い世論になっておる。こういう生活保護法の適用の問題につきまして、それらの諸点にどう厚生大臣は新方針をお示し下さるでしょうか。  最後に、第三点といたしましては、スラム街に対するところの厚生省対策を私は近年承わったことはございません。在野においでなすったときに、厚生大臣もこれはお聞きでなかったであろうと思います。ただ浮浪者をどうとかという程度のことである。わが国に欠けておりますのは、根本的のスラム街の総合対策、これは、あらゆる意味におきまして、生活困窮の救済、児童環境からの福祉あるいは犯罪防止のあらゆる面から見ましても、スラム街の総合的な対策は、どうしてもわが国の喫緊の急務であろうかと思います。  この三点ににつてまして、基本的な御方針を承わりたいと思います。
  29. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまの御質問で、ことに第一点は、今日の社会福祉事務所を設置いたしましたのは、昭和二十六年の十月に私がいたしたのでありまして、当時民生委員制度を改革してこれをやるということについて、いろいろ問題等がありました。最後までもめた暁に、張り切ってこういう制度を作ったのであります。これは、私自身心配しながらやっておりました。仕事の結果につきまして、ただいま山下委員から仰せがございましたが、まことに私として責任を感じておる次第でございます。で、従来民生委員制度がボス化いたしまして、社会福祉事務所を作り、公的責任を明瞭にするということはけっこうでございますが、私は、その当時から感じておりましたのは、保健所の機能を実施いたしますためには、やはり衛生隣組のようなものだとか、母子愛育委員会というようなものがうまくくっついていませんとうまくいきませんで、そういう方向での努力を厚生省は別途いたしておるのであります。ことに社会福祉事務所の仕事については、事務所自身は、何といたしましてもそうたくさんの職員を置けない。有資格者を撒いてお役所の形をしておるわけでありまして、福祉隣組といったような趣旨での民生委員制度とうまく結びつかないといけないと考えておるのであります。私、実は就任早々でありまして、社会福祉事務所の問題も、みずから一つの懸念を持ちながら設置をいたしました問題でありますので、この煙用の方法について、少し検討いたしてみたいと考えておった次第でございます。私、現状をよく把握いたしておりませんけれども、現在のところ、いろいろな情勢から見まして、福祉事務所としては、相当一生懸命働いておるのであると思います。やはりそうそう福祉事務所の職員をふやし、出張所を作って、むやみに一日中回って歩くということはできませんし、やはりこれは、民生委員制度の有機的な活用ということが、まあ何といいますか、これをうまく動かす当面の対策としては大事なんじゃないかと思っております。ただ、はなはだ恐縮でありますが、現状をまだ十分つかんでおりません。  それから、生活保護法の適用の問題、これも長い問題でございまして、ただいま御指摘のございました、高等学校へ行く場合の問題、これは、実はこのたび全額公費負担の育英制度等に関連をいたしまして、私、就任いたしましてから早々、少くともこの全額負担の育英制度に該当するような優秀な青少年については、これは生活保護法の適用で考慮すべきでありましょうし、それから、そこまでいかないでも、まあこれは、東京の大学に入学するというようなところまでぜいたくはできませんけれども、特別な範囲内で優秀な子供を高等学校に入れるというようなことについては、ぜひ一つ考慮をしようじゃないかということを持ち出しまして話をいたしましたところ、社会局長から報告を受けたところによりますと、同一世帯の中では生活保護法の建前でやりにくいけれども、世帯を分つという形式において教育関係の問題はすでに解決をしておるということでございました。ただ、仕組みはそうでありましても、現実の運用については、いろいろまた心して参らなければならぬ点があると考えております。夏季手当等の問題につきましても、なかなかむずかしいいろいろな問題がございますが、お話の趣旨の点は十分わかりますし、新しいまた国民年金の年金給付に関連しても、この点はまた解決してかからなきゃならぬ問題がございますので、いろいろ総合いたしまして、もう少し研究をさせていただきたいと考えております。  それから、第三番目のスラム街の総合対策の点は、まことに御指摘の通り、ぜひ考えていかなきゃならぬ大事な仕事であると考えております。ただ私、はなはだ恐縮でございますが、まだ全国でどの程度に存在して、どの程度の状態にあるかということを把握いたしておりませんので、至急検討いたしてみたいと考えております。
  30. 山下義信

    山下義信君 法務省系統法務省関係者に伺う前に、総合的に、全般的に、私は、大臣お尋ね申し上げるといわんよりは、むしろ社会局長に伺いますが、私どもは、一つ々々の具体的事例をもってあなた方の方に証拠をあげて詰め寄るというよりは、全般的に、この問題の非常に多い貧困な世帯の実情が現実社会福祉事務所等によく把握されてありましょうか。どうでしょうか。どういうふうに全般的にごらんでありましょうか、そういう点につきまして不十分な点がありましょうか、どうでしょうか。制度の上では、たとえば、民生委員等は、そういう問題の世帯について社会福祉事務所に通告をし、協力をし、そういったような諸君には要望をしてあります。社会福祉事務所の所掌規定にはどうあるか存じませんが、私の見るところでは、もういろいろ扶助の申請が出てきたのを取り扱うのに精一ぱい、今申し上げたように、具体的な事例、数字等はここに二、三ありますが、精一ぱい、そうして自分の受け持ち区域をそれぞれ区分けした担当のケースワーカーが、落ちなく実態を把握して、事前に善処するというほどの余裕がたいように私にはどうも感ぜられてなりません。そういう点につきまして、社会局長は実際はどういうふうに見ておられましょうか、お示しを願いたいと思います。
  31. 安田巌

    説明員(安田巌君) 福祉事務所の運営につきましては、いろいろかねがね御心配いただいておりまして、私ども、その点につきましては十分考慮いたしておるつもりでございますけれども先ほども御指摘のように、現在大体府県の福祉事務所と市が持っています福祉事務所が半分半分くらいになっておるわけであります。法律示しております現業員の充足率に対しましては、大体八五%弱が調査されております。以前から見ますというと、だいぶんよくなってきたわけでありますが、まあしかし、先ほど御指摘のような事情もございまして、それ以上のところがなかなかむずかしい問題点がございます。今後ともそういう点につきまして、一そう努力をして参りたいと思います。  それから、福祉事務所の運営の状況でございますが、これは、やはり自分の福祉事務所の管内につきまして、漏れなくケースワーカーが事情をよく知っておるというのが理想でございますけれども、しかし、個々の世帯の全部につきましてよく事情を知るということも、なかなかむずかしゅうございますから、先ほど大臣から答弁申し上げましたように、民生委員を協力機関といたしまして、そういった場合の足りないところを補うような仕組みになっておるわけでございます。今度の事件の場合も、これは、東京都等からいろいろと聞きましたところでございますというと、この世帯は、非常に住所を転々といたしております。最近一年の間にも、約四回ばかり変っておりまして、最後の本木町に参りましたときも、約一月くらい前というようなことでございます。ちょうどこの父親の属しておりますところの仕切場の主人というのが、実はそこの民生委員になっておったわけであります。しかし、一月程度でございますし、それはど生活に困るということも、その仕切場の主人は知らなかったというようなことで、別段扶助の申請とか、あるいは本人からそういう申し出でがなかったというようなことが実はあとでわかっておるわけでございます。まあいろいろそういった貧困者の特に密集いたしておりますような場所につきましては、今後も特にそういった点につきまして力を入れて運営して参りたいと思います。
  32. 山下義信

    山下義信君 社会局長に重ねて伺いますが、私は、今の社会福祉事務所の人員等の配置状況から見ましても、非常に私は手簿い状態ではないかと思う。先ほどこの事件に対して総括的な御感想として、厚生大臣が、救済の手が届かなかったという遺憾な面があるのではないかと、心配されるということでありましたが、私は非常に手薄いのではないかと思う。手薄いようであれば、定員の増加、また能率が十分でないようであれば、その職員の身分待遇、あるいはこれを国の直接な補助職員にするとか何とか、やはり活を入れていかなければならぬのではないかと思う。現状におきましては大した欠点はございません、現状におきましては別にこれという改善の必要もございませんと言わんばかりの印象をわれわれに与えられたのでは、どうも安心ができないような気持がするので、そうおっしゃったとは言わぬのでありまするけれども、そういうふうにとれるようではいかない。こういう機会に、福祉事務所を大いに強化拡充する必要があるならあると、率直にお示しを願いたい。たとえば、現在の社会福祉主事の担当の事務ば、私間違ったら御指摘を願いたいが、市部においては、保護世帯八十世帯がおそらく担当ではないか。郡部においては、六十五世帯が多分一人の社会福祉主事の受け持ちの世帯数ではないか。これは、もうずっと昔にきめたことで、きのうやきょうにきめた基準ではない。ずっと昔にきめたことが、私は、貧困世帯に対していかにこれを観察するか、どうしていくかという国としての心づかい、運営というもの、いろいろそういうことに対する注意すべき諸点は、数年前と今日とは雲泥の差があると思う。また、その貧困の状態、またその把握の状態というようなものも、今日と以前とはうんと違う。数年前は、これを保護世帯にするかどうか、一目瞭然であった。今日は、これを保護の対象にするかどうかというボーダー・ラインの限界点が非常に微妙になってきて、そういうようないろいろ観察する、調査する、そのしからいきましても、何からいっても、以前の八十世帯、六十世帯というような担当の当時の事務の運び方というものと今日というものとは、私は大へん内容が、性質が違ってきておるのではないかと思う。たとえば、あなた方の方で、ここに児童局長もきておると思うが、児童局長社会局長名で、いろいろ厚生省から児童関係社会関係で下部機構に調査や報告を徴せられる。そういったような御通知は、数年前と今日とお比べになりますと、私は相当違うのではないか。何からいきましても、今の社会福祉事務所主事の受け持っておる事務分量というものは逐次増大をしておる。それが、事務の受け持ち担当の世帯数というものは昔と同じで、行き届いていないのではないか。いわんやこれら未発表のどういう述語で申しまするかわかりませんけれども、未届けというのですか、未発表というのですか、未調査というのですか、そういうところに向って福祉事務所が事前に調査をして、よく実情を知っていくというだけの余裕というものが福祉事務所にあるかないか、私は疑わしい。ないのではないか。このバタ屋部落に私は参りました。去んぬる金曜日に参りました。惨たんたるものです。行って五分間もいられやしない。その状態の悲惨なこと、またその環境の汚穢なこと、もうとても弊をつままなければ五分間といられません。行ってきました。これが人間の生活かというような状態、一ぺんも社会福祉司が行ったことはない。一ぺんも民生委員——そこの仕切場の親方は民生委員というなら、それでよろしい。それなら二十数軒の集団の部落、これが人間の生活かと思われるようなその状態のその部落に、何人の被保護世帯があったか、御存じでございましょうか。おそらく私の思うところでは一軒もない、一世帯もないのではないかと思う。福祉事務所はそこへ行ってみたことがない。私は、福祉事務所だけを責めるのではない。交番所も行ってみたことがない。西新井警察暑所管である。交番所へ寄りました。事件があれば行くでしょう。事件がなければ行かないでしょう、警察は。しかしながら、その種の部落の中には行ったことがないということです。ですから、だれもそういうようなところに足を踏み入れ、手を伸ばしておる形跡がない。私は、この社会福祉事務所の充実する機動力、活動力というものは考えなければならぬ。まあ社会福祉事務所の医者にも、さあ見にきてくれ、急病じゃというわけでもありますまいが、一体自動車でもありますか。あるいはスクーターでもありますか。社会福祉事務所の持っている機動力に、そういう設備が何かありますか。貧困世帯をずっと見て回るような何か乗り物がありますか。ないのだろうかと思う。今日の時代、自転車か、あるいは歩いてこつこつ行くというようなことで、行き届くわけがありません。スクーターもないのでしょう。オート三輪車も、自転車にモーターをつけて飛ばすような乗り物もないのでしょう。私は、そういう社会福祉事務所の機能の脆弱さを心配いたしますが、社会局長いかがでしょう。
  33. 安田巌

    説明員(安田巌君) 福祉事務所の充実ということでございますが、これは、なお今後もだんだんとそういうところに持っていきたいと思っておるのでありますが、現業員の貧困世帯の担当の率というものは、これは山下先生のおっしゃった、まさにその通りでございまして、市部で八十世帯、郡部で六十五世帯というのが現在の基準になっておるわけでございます。その世帯の内容につきましても、これもお説の通りで、昔と違いますというと、私どもすぐ気がうくことでも、児童関係の仕事がだいぶ伸びております関係上、私もその点御指摘の通りじゃないかと思います。それを充実いたしますにつきまして、少くとも現在の法定数までは実はさしあたり持っていきたいということで、いろいろ努力いたしておりますが、これもまた御指摘がありましたように、現在のところでは、これは交付税交付金の制度になっておるわけでございます。これを補助金にして、はっきり福祉事務所の職員のための費用であるというふうにいたしたいと、二、三努力をいたしたことがあったのでございますが、何と申しましても、交付税交付金の本質から言いまして、そういった人件費のようなものが一番代表的なものであるというふうな意見もございまして、なかなか思うようにいかなかったというふうな状況でございます。今後また一そう努力をして参りたいと思います。  それから本木町は、私ども二、三度参ったことがあるのでございますが、これは、調べてみないとわかりませんけれども、おそらく保護を受けている者は私は入っているのじゃないかという気がいたしております。それから福祉事務所も行きまして、調査もいたしておりまして、実は、ここに持ってきております本木町の調査も、福祉事務所の職員がいたしました調査もあるわけでありますが、しかし、何と申しましても、非常にそういった、特に貧困の状態がそこに集約されているような場所でございますので、そういった場所に対する福祉事務所の運営ということにつきましては、今後さらに研究努力をさせていただきたいと思います。
  34. 山下義信

    山下義信君 問題もたくさんあとでありますから、同一の問題を繰り返しませんが、私は、この事件に対しまして、管轄の民生委員が何をしておったか、管轄の福祉事務所が何をしておったかということは、これは根本的にお互いが検討しなくちゃならぬと思うのです。これは冠大な問題です。事前にこの種の世帯に対する対策をせなければならぬという法律上の責任はありませんけれども社会福祉事務所の所管の事項といたしましては、私は職責上重大な責任があると思うのです。担当の民生委員もまたしかり、それで、民生委員でも、その地域の民生委員として当然尽すべき手段が尽されてない、あるいは通報すべき事柄が通報されていないというような事績があったならば、即座に民生委員の委嘱を解くべきですよ。そうして他に適当な民生委員と交代させるべきですよ。その地域に起きました民生委員の適切な事績に対してはこれを賞揚し、またその職務上にどうかと思われる節があったらばこれを更迭し、やはり民生委員に対しても、信賞必罰を励行していかなければならぬと私は思う。これは民間の篤志活動ではありましても、政府が委嘱する以上は、適宜対策を講ずべきですよ。いわんや法律上当然の所掌事務である社会福祉事務所がどうあったかということは問題ですよ。私は、社会福祉事務所の調査は他の専門室にゆだねておきましたが、直接行くことは刺激があるので、行くことを避けましたが、所轄の社会福祉事務所がどういうような対策をとっておったかというようなことは、詳細にあとでまた委員会で承わることにいたしますが、これは十分に考えなければならぬ。これだけの大事件が起きて、生活保護関係の機関に対する根本的な再検討をしよう、再検討ということは毎日していいのです。こうして論議しておる間に、何か国民として協議すべき問題が起きたら、また再検討すべきですよ。タベにまた事件が起きたら、それをそのときにまた考え直すべきですよ。再検討することを惜しむ必要はない。一日に三たび顧みるべきですよ。これだけの事件が起きて、民生安定、生活の保障をつかさどる所管の厚生省をあげて、このわれわれの機構やわれわれの力、どうあるべきかということは、驚きの目をもって検討すべきですよ。私はそう思う。上がそういう気持を持って下されば、旧套な、陳腐なことを言うようですが、末端の機構皆注意をいたしますよ。反省をいたしますよ。それを当りまえのことをしておったんでは、どこにも落度がありません、今別に機構についても欠点もありません。別に改善をさしあたって急ぐこともございませんでは、私は、おそるべきそれが根本原因で、何べんでもこの種の事態が繰り返されてきますよ。世人はあげて、このありさまを見よと、こうして指摘しておるのです。私はそうけ思いませんが、一つどうか分に御検討を願いたいと思います。  そこで、家庭局長から私は、この事件の今日まで御調査になりました実情を本席において御報告を願いたいと、お差しつかえのない程度に、この事件状況について御説明をわずらわしたいと思う。
  35. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 事件真相というお申し出でございますけれども、この事件を東京の家庭裁判所が受けましたのは、先月の二十六日の午後でございまして、その日すぐに少年法の規定によります観護措置という、わかりやすく申しますと、少年鑑別所、これは法務省の所管でございますが、少年鑑別所に原則として、二週間ほど収容しておきまして、その間に身心とかその他の資質の鑑別をするのでございますが、その観護措置をとりましたのがその日でございまして、そうしてただいま長谷川裁判官の係になって、徳峯家庭裁判所調査官の係になっておりますが、ただいま調査中でございまして、裁判の結果も、つまり審判の結果もまだわかりませんし、また、事件関係者も、御承知通りに、母、あるいは兄三人、あるいは妹というように、別々になっておりまして、はなはだ申しわけないことでございますが、真相というものは全然わかっておりません。ただ、長谷川裁判官のお話によりますと、その事件少年はつまり十六才、これは、昭和十七年の三月幾日に生まれております。この人は、見たところは普通の精神状態の人のように思われる。しかし、個人的にどういう精神欠陥を蔵しておるかといへことは、まだ詳細に鑑別なりしておりませんので、申しかねますけれども、大体そういうような状況でございまして、おそらく裁判にかかるのは、一応は今月の十六日に審判期日を指定しておられますから、その十六日までに詳細な関係がわかると思います。そうして検察官が十日の請求をしておられますので、検察官の請求による裁判官の勾留が十日でございます。これが終りまして、二十六日に参りましたのでございますが、検察官の御意見は、刑事手続に移すのが相当であるというような御意見のように承わっております。しかしこれは、私記録を拝見いたしたわけでございませんので、あるいは間違っているかもしれませんが、そのような報告でございましたので、それ以上は、ただいまの段階では申し上げることができませんので、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  36. 山下義信

    山下義信君 こういうことの取り扱いもなんですか、裁判の秘密というようなことで、御調査になりました程度のことを、いわゆる私どもしろうとで、法律上のことがわかりませんが、一般の司法裁判と同じように、この国会等におきましても、お尋ねしましても、お答えのいただけないようなことがございますか。
  37. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 言葉が足らないで、あるいは申し上げることがおわかりにくかったと思いますが、そうでございませんので、少年事件は、原則といたしまして、少年の名誉を尊重いたしまして、未来を考えまして、皆様の御承知通りに、少年法の規定によりまして、普通の刑事事件のように、あるいは民事事件のように、公判の公開の裁判をいたしませんので、名前やなんかも秘しております。そういうわけで、なるべくなら事件の内容は申し上げないようにしておりますが、この事件につきましては、いろいろのことに関係しておりますので、審判の結果が判明いたしましたならば、東京の家庭裁判所の方から詳細な報告を得まして申し述べることは、何も遠慮することないと思います。差しつかえない範囲で申しあげたいと思います。
  38. 山下義信

    山下義信君 私も、御趣旨、御方針はそうだろうと思う。元来少年法の精神から申しましても、家庭裁判所のまた精神から申しましても、ことに一般の世道人心に関係のありますような、また国民といたしましても心配いたしておりますような事件等につきましては、できるだけ、よい意味におきまして問題の取り扱い方関係者が心配しておりますることは、国民に知らせることは、当然何と申しますか、司法政策上といますか、刑事政策上から申しましても、適当ではないかと思いますので、法規によりまして不可能な点までも承わろうとはいたさない。私の伺いたいと思いますのは、警察で一応取り調べましたことを、検事局でまたお取り調べになったと思いますが、警察の御調査と検事局の御調査と、検事局の御調査になりました結果が、家庭裁判所へ御送置になられたのでございましょうから、その点に、御調査の結果に、多少の相違点あるいは注意すべき点等が出て参りましたでしょうか、いかがでしょうか、その点は。
  39. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 実は、その記録が家庭裁判所にございまして、昨日こちらの方からお尋ねの趣旨がございましたので、私の方から家庭裁判所の方へお伺いいたしたのでございますが、ただいま審理中であるというので、その内容につきまして、家庭裁判所から報告をいただくことができなかったのでございます。で、審理中でございますので、私の方からしいてそれで、警察の記録がこうであるし、検察官の取り調べがこうであるというような、こういう微細の点までお尋ねすることはやっぱり差し控えるべきじゃないか、ある意味におきまして、裁判官の方の気持を何か阻害するようなことになるのじゃないか。私の方は、そういうふうに、第一線の裁判官の方が自由な気持であくまで審理、裁判ができますように取り計らっておりますので、そういう趣旨におきまして、どうも詳細にわたりましてお答えできないのは、非常に残念でございますが、どうぞそういう意味におきまして御了承願いたいと思います。
  40. 山下義信

    山下義信君 この地検の方でお取調べになり、ましたことは、あなたの方へ報告が行きますか行きませんか、どうでありますか。
  41. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 記録は全部家庭裁判所に参りまして、その記録を拝見するということは、審理中一応差し控えるべきではないか。で、報告は全然参りません。審理いたしまして、あるいは刑事処分に付すべきが相当としてまた検察庁の方に送致するか、あるいは保護処分といたしまして、少年院あるいは保護観察に付するのを相当とするかというような御決定を裁判所がなさいました後に私どもの方に報告がありまして、事件を受理した、このような有名な事件を受理したということは報告はございますが、その内容につきましては、特に報告を求める場合を除きましては参っておりません。で、この事件お尋ねの趣旨もございましたので、昨日、先ほども申しました通りに、家庭裁判所の方にお願いしたのでございますが、係の裁判官の考えで、そういうような詳しいことは得られませんでした。これも、それ以上私の方で押すということも法規上でき得ませんので、そういう結果になりまして、大へん申しわけないのでありますが、どうぞそれで御了承願いたいと思います。
  42. 山下義信

    山下義信君 警察の調査の結果あるいは地検の取調べの結果というものは、刑事課と申しますか、検察庁の方にも報告がいくと思いますが、刑事課長今見えておられたようでありますが、おられますか。家庭局長の方へは御連絡がいかない建前になっているのでしょうけれども、すべてのあらゆる事件、ことに重大な事件等につきましては、取調べの結果等については、警察あるいはことに検事局関係は、刑事課長の手元までいくのじゃないかと思いますが、刑事課長の方ではわかるのでしょうか。
  43. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 家庭裁判所あるいは地方裁判所事件でありましても、裁判いたしましたことでしたら参るのでございますけれども検察庁あるいは警察の取調べの結果とか内容につきましては、あるいはそれぞれの庁で上の方に報告しておられると思いますけれども、こういう事件取扱いは、原則といたしまして、一件書類は全部警察から検察庁に参ります。普通の事件でございましたら、起訴状が裁判所に参りまして、すべての証拠書類、つまり取調べの記録は、検察官の手元に保留されております。家庭裁判所事件でございますから、そういう証拠書類は保留されずして、全部裁判官の手元に参りますけれども、原則といたしまして、裁判官以外は見ることができませんという建前になっております。報告は、ごくおそらく必要な場合、特に求められる場合を除きまして、有名な事件におきましても、あまり詳細にわたっていないのじゃないかと考ええております。
  44. 山下義信

    山下義信君 今、刑事課長おられませんから、どうなっているかわかりませんので、出席一つ求めたいと思いますから、委員部を通じまして出席を促して下さい。それで今、事件をほじくって、調査の結果をすぐここで承わろうとは思いません。またどこかで承わって明白になることでありましょうが、一体この事件のお扱いはどうなるんですか。今おっしゃったように、少年の資質鑑別所に送りまして、そこで資質を見る、アメリカ式ですね。アメリカがやらせた、そういうやり方をやらせるんです。その通りやっていいんです。心理学で知能を調べてやらせるんです。それによって、学理的に、この少年はどうすれば素行状態が直るだろうかというアメリカ式のやり方を持ってきてやらせているのがそのやり方なんです。資質鑑別所では、それで一応見て、医者にも見せたり、いろいろするんでしょう。心理学者に見せたりするんでしょう。そういうことも当然必要でしょう。それが済んで、あなたの方で、どういうふうにこの種の事件、しかもこういうような殺人といわれた、殺人という範囲に扱われておるこの種の事件取扱い方はどういうふうにされるんですか、教えて下さい、わからぬから。そして従来ともどういうふうな処分をしておられたか。一、二の事例もかきまぜて話して下さい。よくわからぬ。家庭裁判所というのは、夫婦げんかの仲裁ばかりしていると思っていたんです。慰謝料の請求の示談ばかりやっておる所と思っておった。こういうような問題が起きたときに、どういうふうにこれを処理されるか。それが刑事事件の一般のおとなの裁判所扱い方とどういうふうに違うのか、心配でなりませんから。どうも自分の子供が悪いことをしたような気がして、大へん心配で、私も嘆願に行こうかと思うほどですが、何も私は無罪にしてもらいたいということを、ここでそういうことをあなたにお願いするんでもない。そういう気持があふれるほどございますが、どういうふうに処理されていくんでしょうかということですね。どういう御心配がしていただけるのでしょうかということもそれとなしに聞きたいんです。
  45. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 家庭裁判所は、国民の方々にもう少し理解されていますと大へんけっこうなんでございますが、こういう機会に申し述べます。ただいまのところは、二十才未満の少年家庭裁判所に警察あるいは検察庁から送られて参りますと、身柄つきと申しまして、身柄が拘束のまま送られて参りますときに、家庭裁判所におきましては、その少年を拘束しておいた方がいいか、あるいは家庭に帰した方がいいかということを判断いたしまして、それは記録等で、またあるいは観護措置、ただいま申し上げました観護措置少年に会いまして、少年の人柄、保護者の関係というようなところを見きわめまして、これは相当よく深く調べなくちゃいかぬというようなことになりますと、観護措置ということをいたします。これは原則として二週間でございますが、さらに二週間延長できまして、四週間はこえることができません。で、少年鑑別所に入れますと、これは法務省の御管轄でございますけれども、原則といたしまして、三日あるいは四日ぐらい一人でいる部屋に入れておきまして、少年の心身の動揺を落ちつかせまして、そうした後において少年の心身、資質の鑑別をいたすのでございます。鑑別所には、医学の方あるいは心理学の技官がおられまして、それぞれ少年が何か精神的あるいは肉体的の欠陥を持っているんじゃないかというようなことを鑑別いたします。と同時に、裁判官は、この事件を受け取りますと、少年を拘束するかしないかとは関係なく、家庭裁判所調査官に対しまして、この種事件の審理に必要なことの調査を命じます。この調査は、御承知通りに、少年法に規定がございまして、少年並びに少年の家族、ことに保護者あるいは兄弟、非常に影響を及ぼすべき人とずっと生活し、あるいは心身の状況、遺伝というような、あらゆることを調べさせます。その間に少年鑑別所の方で、少年に対するいろいろの鑑別の結果が家庭裁判所の方に送られて参りますので、少年調査官は、それも参考といたしまして、この少年はどういう処分をしたらいいかということを裁判官に報告いたします。そして、われわれの考え方は、少年をいたずらに罰するのではなくて、どういうことからしてこういうことになったか、少年個人が悪いのか、あるいはその家庭が悪いのか、あるいはその環境が悪いのか、あるいはその家庭を包む社会のあれが悪いのか、そういうようなところを判断いたしまして、この少年が非行——つまり犯罪をいたしました原因を突きとめて、そしてどうしたら少年を将来そういう犯罪、非行から防御して、社会に完全なる人間として復帰させる、そしてわれわれの次の時代をになうべきりっぱな人間に更生させるというところに少年法のねらいがございます。ただいまの事件でございますと、これは刑法上尊族殺人でございますので、しかも既遂でございますから、死刑または無期懲役でございます。刑法の裁判によりますと、詳細のことはわかりませんけれども、自首ということにいたしまして、なお情状が気の毒であるというので、酌量減軽いたしましても、懲役はかりに無期懲役を選択されるといたしましても、最低三年六カ月以上の懲役に付せられなければならないことになっております。しかし、少年法がある関係上、こういう十六才に三カ月くらいの少年がこういう罪を犯したということに対しまして刑法の制裁を加えるというのはあまりに酷である。あるいは、これは周囲の人の罪ではないかというようなところに少年法のねらいが、ございまして、裁判官は、審判官はそういうところをよく調査官の報告あるいは少年鑑別所の報告をしんしゃくいたしまして、処分を決定するのでございます。それで、裁判官の心がまえといたしましては、少年に刑罰を課するのでなくて、少年がこういう非行をいたしました原因は何にあるか、そしてある原因があって、その原因が除去できれば、再び少年はこういうような非行をするのでないのだ、これは、こういう環境を調整してやれば、これで大丈夫だというようなことがわかりますれば、その方針に従って処分をするはずでございます。で、かりに刑事手続に付することが相当といたしまして、少年法の手続によりましてまた検察庁に送ります。検察庁は、原則として少年を起訴しなければなりませんが、起訴した結果、普通の刑事手続によりまして公判の裁判にかかりましても、また公判の裁判官が、少年法に定める保護処分、すなわち少年院送致あるいは保護観察、あるいは、場合によりましてほ、不処分というようなことが適当と思われますならば、また家庭裁判所に戻すことができるのでございます。で、このような類似な事件はあまりございませんけれども、多くの場合に、父親あるいは母親を殺したというような場合は、たとえば各所でございますけれども、十のうち、三つぐらいは起訴にならずにして、少年院というふうな所に送られている例もございます。これは、それぞれ事件の特有な事情がございますので、裁判官はその特有な事情をしんしゃくして、それをお考えになっておやりになったと思います。少年法は、御承知通り、個別化ということを非常に重んじておりまして、決して前の事件考え方がこの事件考え方に当てはまるものでない、それぞれ事件は特有な性格を持って、特有な環境のもとに生まれたものであるというような考えが根本の考え方でございますので、あまり前例はしんしゃくすべきものじゃないと考えますけれども、こういう事件におきましても、家庭裁判所で取り扱いました中で、刑事裁判手続に行かずして、少年法所定の保護処分になった例がございます。この事件がいかなる結果になりますかは、裁判官がおきめになると思いますが、そのためには、この少年の兄弟、親あるいはこのもう一つ前のいろいろの祖父とか祖母とか、そういう人たちの環境あるいは遺伝的環境あるいは精神的の遺伝があるかどうか、あるいはこの経済的の窮迫の原因がどこにあるか、またこういうような家庭が、形の上では両親がそろっておりまして、欠損している家庭ではないのでございますけれども、実質は非常なはなはだしい欠損家庭だと思います。その欠損家庭がなぜ発見されなかったか。かりに発見されたとして、なぜそれを援助する措置がとられなかったかというようなことも考えられますし、また、この少年個人のことについて考えても、赤ん坊で生まれたときからずっと今までの、十六才何カ月になるまでのこの少年生活史を詳細に調査官が調べます。その間に相当な時間がかかりますので、これは、二十六日に観護措置にしたのでございますので、原則の二週間から申しますと、十日で観護措置が切れるのでありますが、すでに裁判官が十六日というところに審判期日を指定しているところを見ますと、十日に観護措置が切れますときに当って、もう一ぺん二週間の観護措置の更新をはかって、あくまでもこの少年の持つ特有な環境、性格を再び調査して、それから裁判をしたいという決心だと思われます。  ただいまの説明でおわかりになったと思いますが、少年事件につきましては、私の方では、罰するのじゃなくして、少年の健全な育成ということを終局の目的としてやっております。また、この事件につきまして、私が考えますのは、家庭裁判所ば、ただいま御指摘ございましたように、少年事件と家事事件と、両方やっております。家事事件と申しますと、戦後やや表立って参りました離婚事件につきまして世間の注目を浴びているようでありますが、本来の目的は、離婚事件とか家庭の紛争を明らかにすることによりまして、この家庭の両親の懸隔あるいは経済の窮迫、そういうことから少年が非行に陥る、それを事前に防止したいというところにほんとうの目的があるのでありますが、そうでなくて、家庭裁判所に家事部と少年部の両方を持つということは考えられなかったのでありますが、ただ、いろいろな関係上、最初のりっぱな理想を現実化することができなかったが、少年につきましては、御承知通り、通告という手続がございまして、だれでも、少年について非行のあるところを知った方が家庭裁判所に通知して下されば、少年の愛護の手続をとるのであります。こういう事件につきまして、いろいろ原因はありましょうけれども、こういうような窮迫な状態にあったものとしては、せめて夫婦間の愛情を取り戻しておったならば、少年もこういう措置に出なかったのじゃないか、そういうことによりまして、近所の人も忙がしかったというのでござまいすので、家庭裁判所に今当事者、あるいは関係者から——と申しますと、子供さんのようなものでありますが、そういう人から申し立てがなければ、そこに手を染めることができないのであります。この事件につきまして私が痛感いたしましたのは、いろいろ経済的な措置厚生省その他でお考えになると思いますが、それだけでは解決できないいろいろ精神的な葛藤や何かでございますので、そういう場合によくお考え下さいまして、立法府の方で、家庭裁判所の家事事件につきましても、第三者が憂えるべき紛争状態にあるならば、家庭裁判所に通知していただきまして、家庭裁判所調査いたしまして、これは何か調整すべき手を打った方がいいということがわかりましたならば、何か能動的な手を打つことのできる措置が願わしいと思います。家庭裁判所は元来そういうためにございますのですが、一応平面的に家事部、少年部に分れておりまして、何らの連絡もないように見えますけれども、今度の事件契機として、本来の理想の姿に立ち返るべきだと考えております。
  46. 山下義信

    山下義信君 ただいま詳細に御説明下さって、また、今後の御方針を明確にお示しになりまして、私ども考えさせられる点がありました。御答弁を多といたします。  今、少年鑑別所では、大体異常のない、通常の状態であったというようなことでありますが、通常の状態というのは、どれが通常の状態であるかわからないが、せっかく少年鑑別所で鑑別したのでしょうが、ほんとうにいろいろな面からお調べになりまして、今回の事件少女は、いろいろ資質等において欠けるところがなかったのでございましょうかね、これは、再鑑別というようなことをなさるのでございましょうか。それからもう一点は、つまり、言いかえますと、この少年鑑別所の鑑別というものは最終的なものでしょうか、あるいはまた、場合によっては、何べんも鑑別して見ることができるのでしょうか。それからまた、家庭裁判所というものは、何かお取調べには、俗に言う陪審的な人の立ち会いでもあるのでしょうか。余人を交えず、ほんとの特別裁判制度として、だれも審理の状況をうかがい知ることができないのでしょうか。だれかそこに立ち合いをするような役目の人でもいるのでしょうか、いかがでございますか。
  47. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) ただいま私申述べました普通の人のようだと申しましたのは、係の長谷川裁判官が、二十六日の午後にこの少年裁判所に参りましたときに会いまして、一応いわゆる刑事裁判の勾留尋問と同じような形において、少年に対して一通り犯罪事実あるいはいろいろの考えを聞きます。そのときの問答の様子から見て、裁判官のお話では、普通の精神の状態にある少女のようだというようなお話でございました。ただいままだ鑑別所はおそらく鑑別に着手したときだろうと思います。そして鑑別所の結果は、普通の場合はそれが最終でございますけれども、必要がございましたならば、裁判所にも医務室がございまして、そこにやはり精神科のお医者が多くおりますので、その人の鑑定を求めることもできますし、またさらに、必要とございますならば、その道の権威の方の鑑定をお願いすることも可能と思います。それは、裁判官がお考えになりまして、必要と思われればそういう措置をおとりになると思います。それから裁判の状態でございますけれども、原則として、少年の名誉を重んずる関係上、少年の保護者その他の関係人、たとえば先生とかいう方も入りますが、そういう方と、調査に従事いたしました調査官、あるいはこれは保護観察が相当と思われる場合には、法務省の保護観察所というお役所もございますが、その保護観察官というような方もお立ち会いを願いますし、あるいは児童福祉司の方もお立ち会い願う場合もございます。また、つき添いといたしまして、弁護士さんその他の方も、特に裁判所の裁判官の許可を得てお立ち会いになれます。また、そうでなくても、何か特別の御関心を持っておられまして、この少年の審判を外部に漏らすおそれがないというような方でございましたら、裁判官からそういう許可が得られるのじゃないかというように考えております。それから、民間の裁判官以外の方が、こういう審判に関係されるかどうかということでございますが、原則といたしましては、ただいまはそういう制度はございません。これは考えられていいじゃないか、特にこういうような事件につきまして、少年問題のエキスパート、またあるいは精神病のエキスパート、あるいは社会福祉事業のエキスパートというような方に特に入っていただきまして、陪審、あるいは意見を述べる程度の参審、そういうような制度考えていいのじゃないかということが研究されておりまして、私らもそういうふうに思っております。ただ、予算なんかの関係で、非常に困難だと思いますので、ちゅうちょしておる次第でございますが、少年裁判も、やはり参審制度でもとらなければ、裁判官だけの考えでやっておりますと、いろいろ少年法に対する批判の問題として出てくるのじゃないかというふうに考えておりますが、ただいまのところは、そういう制度になっておりません。
  48. 山下義信

    山下義信君 詳細に御答弁いただきましてありがとうございました。大体従来の例等から見て、本事件の審理が終結するのはいつごろと想像されるか、お見通しはいかがでございますか。
  49. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 先ほど申し上げましたように、七月十六日が審判期日、これは、ただいま申し上げました調査あるいは保護者、関係人全部集めまして、そこで審判官が、最後の締めくくりをつける意味におきまして、いろいろ尋問されたり、お話しなすって、決定を言い渡されるわけでございますが、ですから大体十六日に終ると思います。
  50. 山下義信

    山下義信君 わかりました。河井さんが来て下さいましたので、御足労かけましたが、私の伺いたいと思いますのは、警察で調べました調査というものは、私はしろうとでわかりませんが、あれは、一つには、警察本部ですか、それから法務省の刑事課の方へ著名な事件につきましては御報告があるでしょう。それから今度地検で御調査になりました分は、少年法関係であろうと、一般の問題であろうと、またお手元に御報告が行くんじゃろうと思う。そこで、われわれは新聞記事でこの問題を承知いたしておるだけでございます。ただ、本員は、去んぬる二十七日の日に、所轄警察署並びにその事件のありましたその地点に参りまして、若干の自分なりの訓育もいたしたのでございます。一番問題は、私のここで承わりたいと思いますのは、この悲しい事件が起きましたいわゆるてんまつでございますか、どうも私の印象としましては、早くからその少女たちが、どうも悪いお父さんだから、もう突き殺しちまわにゃ、突き殺しちまわにゃと平素恨みに思うておって、その父親をなくしようという時期をねらっておったような犯罪でなくて、どうもおっかさんが家出して、三百円のニコヨンのその日の賃金と職安の手帳を主人の宅に置いておいて、もしたずねて来たらこれを渡してくれといってお母さんが帰らぬものですから、行ったその前後の様子から見ると、どうも死にに行ったじゃないか、どこかへ家出してしまって、お父さんと一緒に子供たちがおっかさんの行方を探しあぐんでいるその前日の状況、当日の昼の状況などをそれとなく聞きますと、やはりお父さんも娘たちも仲よくくるくる回って、おっかさんの行方を心配して探して、三百円の賃金が置いてあったものですから、そのお父さんが酒が好きなので、疲れて一ぱい飲んだか、泥酔して、家へ連れて帰って、いろいろいらいらしたその状況から、ふいっと、ふいっとそういうことをしたときのその気持というものの、そこの動機、でありません、そういう行為に及びました瞬間の気持というものが警察で十分に入念にお取調べがっくでありましょうか。検察局でも入念にお取調べができておりましょうかという点を伺いたい。私ども平素でも、あすは首をくくろうか、自殺しようか、どうしようかと思いつめた生活とは違いましょうけれども、お互いの家庭でも、親子が酒の上でももつれ合いました時分には、お父さんいやあと言うて子供がのどを締めたりして、親の上に馬乗りになったり、腹の上に乗ってみたり、のどを締めてみたり、いろいろやる場合もあるわけでございますが、親子の間というものは、もつれますると、連獅子の踊りじゃありませんけれども、親子のもつれ合いというものは、どこまでが犯罪で、どこまでが甘えて、どこまでがふざけて、どこまでが子供として親に甘えごして、抵抗して親に向っているのかということは、私は微妙であろうと思う。そういう点詳細に警察や地検当局でお取調べができておりましょうかという点を一つ承わりたいと思いまして、重ねて御出席をわずらわしたのであります。
  51. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) お尋ねの点につきましては、東京地方検察庁の方から法務省の方へ報告が参っております。本件は、その報告によりますと、初めから犯行は認めておる。いわゆる自白しておる事件でございますので、問題は、どのような動機あるいは事情で、父親を殺害しなければならないような事情に至ったかということが、本件犯罪捜査の重要な一つの要点になっているわけでございます。ただいま御指摘のように、あるいは長い間そういうことを思ったり、あるいは思いとどまったり、またときには考えたりしたのではなかろうか、あるいは全く偶発的な事情によって行われたものであるのではないかというふうな点を、警察でも、検察官も、さらに家庭裁判所でも、十分取調べをいたしまして、さらにこれが刑事処分相当ということになりますと、地方裁判所の公判廷におきまして、さらに綿密な裁判が行われまして、その上で処分がきまる、こういうふうになっておりますので、この事件だけではございませんが、殺人事件におきましての犯罪捜査の、特に自白いたしておりますような事件の捜査の重点はどこにあるかと申しますれば、今御指摘になりましたような点にほとんど全勢力が傾注せられて、事案の真相を究明するということに向けられておりますので、この事件につきまして調書をしさいに検討いたしたわけではございませんが、これは当然そういう方向に操作が進められているというふうに確信いたしている次第でございます。
  52. 山下義信

    山下義信君 ただいまの段階で、この席で御説明のできる程度のことがございましたならば、事件の経過につきまして重要な点をお示し願いたいと思いますが、お示しが願えなければそれでよろしゅうございます。
  53. 河井信太郎

    説明員河井信太郎君) ただいまのところは、ただ御承知のように、法定刑が、尊属殺というのは死刑、無期ということになっておりますので、自首の取扱いといたしますれば法律上の減刑がございます。さらに情状酌量すべき事情がございますれば、法律の規定によりまして、酌量減刑が加えられる余地があるのでございます。しかしそれにいたしましても、執行猶予の恩典に浴するという減刑は出て参らないのであります。実際に、処分につきましては、検察官も、家庭裁判所の係官も、そういう点についておそらく一番大きな悩みを持って、この事件処理を雇えておられることと存ずるのでございます。
  54. 山下義信

    山下義信君 私の質問はこの程度にいたしておきますが、本件は当委員会におきまして、いろいろ各般の社会的な影響が非常に大きな毛のがございますので、だんだんと事態の、いわゆる事案の真相等も明らかにしていただいて、法務省当局の御協力を待て、国会といたしましても、当委員会で本問題を十分に検討していただいて、場合によりましては、各界の権威者を参考人として招致いたしまして、本問題のわが国社会に与える教訓、今後の関係者の深い反省の資料といたしまして、国会の責務を十分に果すように、委員長においてお取り計らいを願いたい、かように希望を申し上げまして、私の質疑を一応終了いたします。
  55. 中山福藏

    中山福藏君 この際、一つ家庭局長お尋ねしておきますが、もし御答弁ができないというなら、資料として提供していただきたいと思うのです。それは、戦後少年の尊属殺人というようなことがどれくないあったものか、それからその殺人の動機というものについての研究が行われておるかどうか、そうしてその判決はどうなったかということについて、これは即時にお答えはむずかしいと思いますので、最高裁判所にはたくさん資料があると思いますから、一応全部それをプリントぐらいにしていただいて、委員長を通じて各委員の参考のために一つ提供していただきたいと思うのです。これは非常に参考になると思うので、こういうことを一つお願いしたいのですが、どうでしょう。
  56. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 少年のでございますか。
  57. 中山福藏

    中山福藏君 ええ、少年です。いわゆる十九才未満の者が、こういう犯罪を犯した件数がどれくらいあるのか。
  58. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) そうすると、昭和二十四年からでよろしゅうございますか。
  59. 中山福藏

    中山福藏君 それはそれでよろしいのですけれども、戦後の法律ができる前のことも、一つ参考のために、普通、刑法の適用を受けておるでしょうから、それについてどういう取扱いがあったかということも、一つ示しを願いたいと思うのですが。
  60. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) もし戦前、家庭裁判所ができます以前のことにわたりますと、相当時間がかかりますが、今、家事事件におきましては、昭和二十四年家庭裁判所ができました以後のことになりますと、資料があるのですが、それ以前でございますと、制度がだいぶ変りましたものですから……。
  61. 中山福藏

    中山福藏君 いや、そのことは、私としても一応存じておるのでありますが、今日この委員会で、この問題を取り上げなければならぬというのは、生活面とか、あるいは道義面とか、あるいは社会保障制度の面とか、あらゆる方面から一つ検討を加えてみたい、こういうようなことから、少しめんどうではございましょうが、少年法の施行前の、いわゆる戦後の期間における状態をも一応参考にして、いろいろ考えてみたいと思うのですが、もしできれば、一つそういうふうにお骨折りを願いたい、こういうように思うのです。
  62. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) それじゃ多少時間をいただきまして、できるだけ御要望に沿うようにいたしたいと思います。
  63. 山下義信

    山下義信君 関連して。家庭裁判所の機能並びに運営、また取扱い件数、現在の家庭裁判所関係者の人員の配置等々の、家庭裁判所の運営制度に関しまする。われわれによくわかりますような資料を、中山委員の御要求になりましたのに関連いたしまして、当委員会として法務省に御請求願いたいと思うのです。
  64. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) 家事事件も含めましてですか、少年事件だけでよろしゅうございますか。
  65. 山下義信

    山下義信君 家事も合せて全部。
  66. 久保等

    委員長久保等君) それじゃ、その点委員長の方からもお願いいたします。  ちょっと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  67. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  68. 中山福藏

    中山福藏君 もう一つ家庭局長にお願いしておきたい。先ほど山下委員質疑に対する家庭局長の答弁を黙って聞いておりますと、できるだけ捜査の方針を失意の状態にあったというところに持っていって、無理やりこれを一つ免訴の方式でもとろうというようなにおいが私ども感ぜられるのです。で、失意というような、あるいは精神鑑定ということになりますと、断種法の適用というものが当然ある場合に起ってくるわけでございますが、そういうふうな悲惨な境遇に本人を追い込むということもいろいろ考えさせられる。しかし、幸いにして刑事訴訟法の規定には、事情を参酌して、周囲の事情からやむを得なかったというような場合には、起訴猶予の制度を適用してよいということになっておりますから、万一検察庁がこの事案について最後の判断を求められるという場合には、いわゆる失意とか精神鑑定というような問題ではなくして、刑事訴訟法の起訴猶予の規定を適用される方が一番私はよい方法ではないかと、こう考えておるのですが、そういう方面については、何かまだそのときにならなければそういう考えは起らないわけですが、しかし先ほどから聞いておりますと、いかにも精神喪失の状態にもっていこうとされるような感じを持つのですが、いかがですか。
  69. 菰淵鋭夫

    最高裁判所長官代理者菰淵鋭夫君) これは意外な御質問でございまして、私はこの事件に何にも関係がございません。この事件の審判について、かりにそうお取り下さいましても、家事裁判官は別の立場からあれをされると思います。また、私はそういうふうに申し述べたつもりはないのでございますが、言葉が足りないのははなはだ申しわけございませんけれども、つまり犯罪というもの、少年が非行をするにつきまして、ただ犯罪のことだけを考えずに、もっと犯罪をなすに至った原因を詳細に掘り下げて考えるということが少年法考えでありまして、ただ掘り下げて考えるというのではなくして、積極的に、この少年をどういうふうにしたら普通の人間として社会に出して使えるかということを考えてやるのが少年法の精神であります。ただそれを申し述べたにすぎませんので、決して、これを今おっしゃる通りの失意の方に持っていこうという考えば毛頭ございませんので、どうぞ御了承願いたいと思います。
  70. 久保等

    委員長久保等君) 委員異動を報告いたします。  七月一日付をもって横山フク君辞任、その補欠として高野一夫君が選任されました。  ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  71. 久保等

    委員長久保等君) 速記起して。  本案の質疑は、この程度にいたしまして、次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、次に移ります。   —————————————
  73. 久保等

    委員長久保等君) 次に、社会保険の診療報酬単価改定について厚生大臣の報告を求めます。
  74. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまの委員長からの御発言に御報告申し上げます。  新点数表は、昨日付で告示をいたしました。各方面のいろいろの御意見を十分心したつもりでございますが、六月中告示という方針に従いまして措置をいたしました次第でございます。厚生省原案に対しまして若干の修正をいたしましたが、これは総医療費の引き上げ率八・五%のワク内でありまして、総体といたしまして、被保険者の負担は変らないはずであります。また物と技術を分離して、医療担当者の技術料を尊重するという合理化の線も貫いておりまするし、単価も十円に統一をいたしました。私が就任いたしましてから、前内閣時代に決定いたしました方針に基きまして、医師会その他の関係団体と話し合いをいたして参ったのでございます。関係団体のうち薬剤師会、病院長会、健保連合会、国保中央会、日経連、全労等の労働団体は原案支持でありまするが、医師会、歯科医師会は、これまで現存の点数表そのままにして、医師会は単価を十八円幾ら、歯科医師会はこれを十九円幾らにするという主張を続けて参ったのであります。いろいろ話し合いをいたしました結果、医師会につきましては、単価一円上げに相当する八・五%の引き上げでがまんをする。また甲表はそのまま承認をする。乙表についても原案と多少立て方は違いますが、最も弊害の多い注射、投薬に関しては、物と技術の分離を原案より一そう徹底した形でやる。また単価は十円にするということで、ここまでは関係団体の意向がそろって参ったわけであります。ただ一点、乙表の地域差を五%にするという点につきましては、医師会側が甲地乙地とも実質一円上げということにしてくれという主張をいたしまして、この点はどうしても折れ合うことができませんでした。歯科医師会の側は八・五%の引き上げ、合理化、十円単価を了承いたしました。甲表のうち普通処置料を若干修正すれば乙表を捨てて甲表一本にしてもよいということになって参ったのであります。  医療費の問題は、非常に複雑なものでございまして、全関係団体意見をまとめることはきわめて困難なことでございますし、今回関係団体にはそれぞれ御不満もあろうかと思いまするが、すべての問題を考慮いたしました結果、やむを得ないものとして告示の運びに至りました次第でございます。  医療報酬の改正問題がこれまで円滑に進みませんでしたのは、大多数の関係者が支払い方式を合理化しつつ引き上げを行うべきであるという考えをもって臨んだのに対しまして、日本医師会及び歯科医師会は、これに対して強い反対でありました。単純な単価の引き上げを主張して参った。かつまた、引き上げの程度についても大きな開きがあったわけであります。しかし、最近懇談をいたしました結果、医師会、歯科医師会ともに医療報酬を合理化するという基本方針及び引き上げの程度を了承いたしまして、かかる考えのもとに医療報酬の問題を協議するという態度をとるに至りましたため、ここに医療報酬問題を正しく解決していく共通の基盤ができるのに至りました。せっかくここまで歩み寄って話し合いをする基盤ができることになりましたので、今月中という時日の制約上、事の運びにおいて至らざる点があったことはまことに遺憾でございますが、せっかくできた合理化の推進という共通の地盤に立って事の解決をはかることが最も適当であると信じまして、今回の措置をとった次第でございます。従いまして、こういう見地に立ちまして、各団体となお話し合いをいたしまして、これらの団体意見も十分に尊重いたして善処方に努力を重ねて、この上とも円満な推進をはかりたいと考えておる次第でございます。  ただいま申し上げましたところで、大体新点数表告示につきましての経緯を御報告申し上げた次第でございます。
  75. 久保等

    委員長久保等君) 特別御質疑がなければ次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  77. 久保等

    委員長久保等君) 次に、その他一般厚生問題について御質疑を願います。
  78. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 直接の担当官がおいでになるかどうか存じませんが、もしおられなければ、おそれ入りますが大臣から御答弁願います。  先般来、参議院の決算委員会で本州製紙の江戸川工場の廃液が江戸川に流れまして、魚介並びにノリの養殖等が困難になって、沿岸の東京都の都民及び千葉県の漁民が非常な損害を受けておるということで、相当決算委員会で論議が戦わされた。ところが、決算委員会の方の考え方は、いわゆる国から保護水面の管理に対する補助費として百万円ばかりの金を出しておられる関係で、管理の面、国庫補助に対する面からの論議が戦わされたわけでありまするが、従いまして廃液の浄化設備が完了するまでは放流してはいかぬとか、あるいは被害者に対する補償をどうしろとか、あるいは汚水防止に対する立法措置考えろとかというような決議がなされたわけでございまするが、社会労働委員立場で、私も実は決算委員でありまするので、社会労働委員立場からその論議を開いておりますというと、主として今申し上げましたように、補償問題について論議がされておるわけなんです。最近中毒事件が各地にあって、はなはだ私どもは憂えておるわけなんですが、なるほど死滅した魚介類は、これは販売しないと思いますが、現在あの江戸川からとれた魚介類が販売されておるということになりますというと、果してその魚介類が中毒症状を人間に及ぼすものかどうか、急激な下痢症状は起さないにしても、蓄積的な、長年にわたってこれを食させるとなると、あるいは起すのであろうかというような懸念があるわけです。中毒問題等は、起ってからこれを処理するということでは、非常に予防医学なり公衆衛生の立場からいうても、おもしろくないのでありまして、当然そうした河川の修理だとか、水面の管理というようなことは、あるいは河川局なりその他がやるんでしょうが、そういう予防的な問題、特にそういう魚介類を販売することの可否等については、やはり水質検査をなさると同時に、魚介そのものについて相当医学的な見地から検査をする必要があったんじゃなかろうか。一昨日、昨日かの御答弁では、厚生省としては、千葉県ないし東京都の衛生試験所方面にお願いして、一応調査はしたかしなかったかはっきりしませんが、そういうような御答弁があったのですが、少くともおひざ元である帝都であり、厚生省の所管なさっておるりっぱな国立の衛生試験所があるわけなんですから、よろしくそういう方面で急速にそうしたことについての、今後魚介類の販売等をした場合に、一時的な中毒症状しかなくても、人体に被害があるかないかというようなことについては、当然厚生当局としておやりになる仕事であろうと思う。実は、昨日はそういう点については、当局は怠慢であるというようなそしりが決算委員会でもあったわけなんです。私もそうした点につきましてははなはだ遺憾に思う。一応その点についての御釈明を承わりたいと思います。
  79. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御質問の御趣旨はまことにごもっともでありまして、急速にやらなければならないと考えております。そこで、この間の水俣の事件もございまして、単純なそのときの中毒のみならず、将来の影響も大事な問題でございます。そこで東京都の、都庁の当局では従来から水産担当の部局で検査を行なったりしましたが、最近になりまして都の水産部局からの要請によって、衛生当局でもこの問題について検査を行うようになって参ったのであります。衛生当局では関係の部課間の打ち合せを行なって、それぞれ連絡をとりながら今週中に検査に着手することになっております。生鮮魚介類の衛生を担当する獣医衛生課では予算の見通しもつきましたので、直ちに汚泥貝殻、魚類等について共同して検査を行うことになりまして、厚生省ではこの都の衛生局の検査について連絡をとりながら、厚生省みずからもやり得る面についてはできるだけやって参りたいと考えております。なお、担当課としては生産者に与える影響もありますので、別途水産庁ともこの問題につきまして打ち合せ中であります。
  80. 竹中恒夫

    ○竹中恒夫君 この事件発生以来、四月から三カ月たっておるのであります。はなはだそうした処置が緩慢であったと思われます。どうか今後善処をお願いしたいと思います。  いま一点お聞きしたいことは、ことしのひでりで非常に水不足になりまして、昨日の——これはこまかい話なんですが、私テレビ見て驚いたのです。東京都の消防署がこの渇水に対して消防の、防火、いろんな研究をしておられるらしいのですが、下水をためてその中にポンプを突っ込んで消火の演習をしておるわけです。下水の中に突っ込んで、そしてホースを突っ込んでわざわざ試験しなくてもポンプは水が出るわけなんだが、一体そういうようなことを、下水の水をためて消防の演習をするということは、はなはだこの夏に危険な話なんです。そういうことについてはもとより当局としては、全国の衛生部あたりに対しても、絶えず予防医学の面についてもそういうことについての御指示等もあったと思うのですが、所管官庁が違いますので、消防署のすることばいたし方ないと思われるということかもしれませんが、少くともそういう問題についてはよく連絡をとっていただきまして、公衆衛生の見地から、いかに渇水であるからといって、防火演習をするのに下水の水をためてメタンガスがぶくぶくわくような水の中にホースを突っ込んで、きのう演習をやっている状況をテレビ見たんです。このことについては、厚生省として公衆衛生の見地から、消防当局と話し合いをお願いしたいと思います。この夏のひでりのときに、ああいう細菌のたくさんいる汚水を放出して、そして防火演習をするということ自体実はおかしいと思うのです。そういうことについて、大津はどういうお考えを持っておられますか、やはり所管外だからやむを得ぬということではなく、適当に御協議願って私やっていただきたいと思います。
  81. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御指摘いただいたことを気づきませんでしたけれども、それはまさしく御指摘の通り、非常に不衛生なことであります。どういうふうなつもりで消防署の方で、よほど事情に困ってやっていることだと思いますけれども、そういうことのないように、一つ至急連絡をとって善処したいと思います。
  82. 久保等

    ○医院長(久保等君) ちょっと速記をとめて。    〔速記中止
  83. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて下さい。
  84. 高野一夫

    高野一夫君 大臣一つ見解を伺っておきたいと思うのですが、各委員会で汚水問題が非常にやかましく取り上げられておる。私の方は、決算委員会でさきに取り上げて、きのう結論を出したわけなんでありますが、きのう厚生省から政府委員を呼んで私が質問をしたところが、その答弁はまことに意外なる答弁で、私もいささか憤慨したのでありますが、あとで聞きますと、食品衛生課長が実情を知らないでおって答弁をされたのじゃないかとも思うので、昨日はもう結論が出たあとですから当委員会におきまして、訂正なら訂正をされて、厚生省がどういうことをされておるかということを明確にされておくことが必要なんじゃないか。  それは御承知通りの、江戸川に本州製紙の廃液が出て、そうして魚介類が非常な損害を受けたという問題。これに対しまして、水産庁あるいは通産省、建設省、各方面それぞれ乗り出していろいろ試験に当っている。直接の監督官庁としては、東京都と千葉県庁が出ていろいろ監督指導をやっているわけで、水質の試験やらいろいろやっている。ところが問題は、その汚水の防止の立法化をする必要があるかどうか、こういう議論になりまして、各関係省を呼んでいろいろ吟味いたしたのでありますが、ついうっかりしでおりまして、厚生省を漏らしまして、これはもうわれわれの方で申しわけなかったのでありますが、厚生省の御倉見を聞く機会がなかったのであります。きのうはおいで願って伺ったのは、魚介類が死滅して、その損害をどうするこうするということは、これは当委員会の問題でもないと思いますから、やめますけれども、死滅した魚介類ならこれは食わないからいい。厚生省に、この問題で、今度の問題で、私がきのう聞いたのは、死滅したくとも、その廃液の中に、それが下流にいって、あるいは河口に拡散されて廃液がある、その中に生息している魚介類を人間が食べた場合に、何か有害な影響が起ることがないかどうかということなんです。そこで、そういう点について、厚生省はお調べになったかということを聞いたところが、調べておらないと、こういう話である。そこで、過去においてさような事実があったかどうか、とにかく一年に四百七十八件も一昨年もあったというこういう事件でありますので、これに厚生省が、公衆衛生局の立場から、食品衛生の立場から、何らかタッチされて、調査試験をされたことがあるかどうかということを聞きましたところが、中毒が魚を食って起ったことがある、それによって調べたことがある、こういう話だ、それはけっこうでありますが、中毒が起ってから調べるのでなくして、そういうような騒ぎが起ったならば、いち早く、漁業でありますから、その生息している魚介類を食って差しつかえないかどうか、その水質はどういう水質であるかどうかということが、事件が起らない前に、ほかの省と同様の立場において厚生省は水質の試験なり、漁場のそうした魚介類の検査なりすべきじゃないか、これが私の考え方なんです。それを申し上げたところが、まあそういったことはない、しかも今度の江戸川の廃水放流問題は、四月から四、五、六月、すでに三カ月になって大騒ぎをしておる。その間に、厚生省がそれではのほほんとかまえておって何もやらなかったのか、こういうことになりますれば、汚水防止の今後立法化をやる、そこで経済企画庁が中心になって各省相談を進めつつある。その相談を進めつつある中に、厚生省の名も上っている。ところが、今度のような問題に厚生省は何らこれに関心を持たなかったということであるならば、汚水防止の立法化に対して発言権なんというものは全然失ってもいいようなことになると、こう私は思うわけであります。  そこで、浄水の問題も出てくるわけでありますから、特に今度みたいな問題については、生きた魚介類についての問題、それからその辺の水質の問題を厚生省立場からなぜいち早くこれを調査にかかられなかったか、こういうわけであります。  そこで、この点について昨日食品衛生課長の答弁は、全然手をつけてないということであったので、あとから話も出ましたが、全く全員あいた口がふさがらなかった話である。ところが、あとで聞けば、食品衛生課長が事情を知らなかったので、ほんとうはやっておったというようなふうにも聞くわけでありますから、ほんとうにおやりになっておったならば、これはもうぜひそういう事情を説明を願って、明確に厚生省はこういう方向で、こういうような試験調査をやっておったということを、せめて専門の社会労働委員会において私は明確にしておいていただきたい、こう思うわけであります。
  85. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 高野委員の御質問の趣旨はごもっとも千万でありまして、私も非常にうかつで恐縮でありますが、正直に申しまして、今までのところ厚生省の直轄ではやっておらないようであります。ただ、前の委員会で御指摘がございましてからは、急いで手配をいたしているのでありますが、従来からはこういう場合に、各都道府県の衛生当局調査をいたしまして、技術的に不十分な場合に、国の試験機関が援助をしてきている慣例だそうでございまして、こうした新しい工場建設に伴っての汚水の問題は非常に重要でありまするだけに、ただ従前ありましたような、ただの魚の中毒というようなことでなしに、本式に厚生省としても取り上げてやって参らなければならぬことだと考えております。はなはだ不敏で恐縮でありまして、今後十分注意して参りたいと思います。御指摘がございましてから、生鮮魚介類の衛生を担当いたしまする獣医衛生課におきまして、直ちに汚泥貝類、魚類について、主として重金属関係問題等を心に入れながら、都の衛生研究所と共同して検査研究を行うことにいたしております。そのほかの面につきましても、都の衛生局の検査について連絡をとりながら、御指摘のありましたような研究を進めて参るつもりでございまして、手配を始めました。なお、担当課といたしましては、生産者に与える影響等もございまして、水産庁とも別途この問題について打ち合せ中でございます。
  86. 高野一夫

    高野一夫君 今度のような問題は、年々各地で起るわけでありますが、これは漁民の生業権を確保するという建前でみんなが騒ぎ出したし、われわれもそれをまず第一に念頭に置いて取り上げたわけでありますけれども、この漁業が非常に被害を受けるという、その漁業なるものは、人間が食べる魚介類をとるわけであります。人間に食べさせるために魚介類をとる。それが死滅するとかあるいは非常な影響を受けるとかいうのが廃液の問題、そうすると、そのことは新聞に盛んに出ているのだし、また、国会速記録を関係者がごらんになれば、どういうような議論が戦わされているか。たとえば工場側は全然無害無毒だと言っている。千葉県庁、東京都庁は非常に有害であって死滅すると言っている。そういうようなことならば、これは私はまっ先に衛生試験等に重点を置いて仕事をやっている厚生省が、そういうようないろいろと食い違った意見をもとにしてまっ先にこれを取り上げて、人間の口に入れる魚介類にどういう影響があるか、それがひいて漁業にどういう関係があるかということについて、ほかの水産庁あるいはそのほかと協力して私は調査に当るべきだと思うのであります。今度のこういうような大きい問題について、厚生省が今までほとんど何も手をかけられなかったということは、まことに私は遺憾千万だと思いますし、しかもその機関がないならともかく、こういう方面の試験機関としては、おそらく各省にもないような、一番優秀な、一番りっぱな試験機関を持っているのが厚生省だと私は思う。そういうような試験機閥、科学的の、あるいは細菌学的にも、医学上、薬学上、衛生試験上りっぱな、各省にもないような試験機関をかかえている厚生省で、しかも食品衛生法の行政をやって、それでかつては、マグロが放射能に汚染された、それが有害であるかどうか試験もしないで、数千万円にわたるマグロの廃棄を命じたのも厚生省、そういうことをやっておって、今度のような問題についてわれ関せず、これから一つ調査するというようなことになりますれば、われわれは厚生省の食品衛生に対するやり方というものについては、全くの信頼感は持てないということになります。  そこで今大臣のお話では、昨日私が食品衛生課長から聞いたことが、もしも間違いであるならば、まことにこれは幸いだと、こう思って当委員会を特に選びまして伺ったわけでありまするが、ところが今の大臣のお話でも、昨日の食品衛生課長の答弁を裏書きをなさっている。今までやっておらなかった、これから一つ手配をしてやることにするのだと、こういうお話でありまして、まことに意外であると同時に遺憾にたえません。そこで、どうか一つこれは自民党におきましても、社会党においても、そのほかの各会派においても、またあらゆるどの常任委員会においても、河川の汚水汚濁の防止の立法化をしなければならぬという声が強く出ている。そこで、経済企画庁が中心になって、各省と連絡をとって法案の立案にかかろうとしている。その重要なメンバーの中に厚生省は入っているはずです。こういうようなことでは、私は厚生省は一体何の所管で、どういう関係で水質汚濁防止のことについて発言権を持てるかということを疑わざるを得ないわけです。どうか、ただ河川がきたなくなるということだけでなくして、人間の食べる魚介類のことでありますから、その面から各省に先んじてこういう問題は厚生省がまず取り上げられる。厚生省が持っているりっぱな試験機関において調査をされて、そして地方庁を督励して地方の試験機関にやらせるのもよかろうし、いろいろされて十分のデータをおあげになるべきだと思います。今までおやりにならなかったというのでありますから、これ以上追及しても仕方がないことでありますから、速急にこういうような問題については、今後のやり方を改めていただきたいと思います。
  87. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) ただいまの御忠告を十分体しまして今後そういうふうにいたします。
  88. 榊原亨

    ○榊原亨君 汚水の問題について、厚生省当局から水質汚濁並びに中毒のことについてのいろいろお話がありましたが、この際特に、私は一つの問題を厚生省にお願いいたしたいと思うのであります。  それは、日本の工業化に伴いまして、御承知通りいろいろの問題が起ってきているのでございますが、厚生省の御所管になっておりますところの観光の問題についてもこの汚水が相当問題だと私は思います。先般私が北海道へ参りましたときに、石狩川の神居古湾、これは御承知通り非常に水の清浄なきれいなところでありますが、そこに一面まっ黒の水が流れております。これはどうしたのだと言いますと、上の方に工場があって、製紙工場だと思いますが、その廃液が流れて来るので、今は神居古湾はすっかり黒くなっているのだ、こういうふうなお話でございましたが、それが魚介類に対してどういうことだということに対しては、このごろは魚がとれぬということを言っておったのでありますが、魚がとれるとれぬは、今、高野君が言われた通りでございますが、日本といたしましても、外貨をかせぐ上から申しましても、観光の問題も非常に重要な問題で、従いまして、河川がまっ黒だということになりますと、これがまた観光上にも非常な影響を及ぼすことだと思うのであります。そこで、もしこの北海道の汚水が害がないものといたしますならば、これを夜放流をして汚水を流す。昼のある一定時間はきれいな水を流すというような規制をすべきであると私は思います。御承知でございましょうが、十和田湖の国立公園の水は、夜のうちはせきとめまして水を流さないで、観光客が来ます昼だけ水を流すという規制を国立公園はいたしております。従いまして、もちろん工業も必要でございまするが、観光の上から、これはささいなことであると思いますが、たとえば、観光客の来る昼のうちは汚水は流さない。害がないなら夜のうちに流すというような規制をすべきだと思います。これらの問題についても、汚水に関連して一応の御調査を願っておきたいと思います。
  89. 橋本龍伍

    国務大臣橋本龍伍君) 御指摘の点について調査をいたしたいと存じます。
  90. 高野一夫

    高野一夫君 私は、一般質問に対しましてはきょうはやりませんが、厚生大臣に対して新医療費の問題について質疑をしたいのでありますが、昨日告示をなさったということでありますけれども、いまだに官報の号外なるものも配付されておりません。そこで、先ほど保険局長に聞きましたらば、きょうはプリントでも配られるのかと思ったところが、そのプリントもまだでき上っておらないので、お配りになっておらない。こういうことでは、質疑をしたくても質疑をする材料がない。新聞に出ている程度で、特に大きい梗概の点にすぎないわけでありますから、詳細なる材料、プリントが出まして、あるいは官報を見ました上で御質疑をする機会があるかもしれませんから、そのことを今日申し上げておきます。
  91. 久保等

    委員長久保等君) それでは、本問題に対する質疑は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  92. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。  一般厚生問題に対する本日の調査は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  94. 久保等

    委員長久保等君) この際、派遣委員の報告についてお諮りいたします。  去る五月二十日から委員派遣を行いました、中共地区引揚者の実情調査のための委員派遣の報告は、口頭報告にかえ、委員会会議録に掲載してごらんを願うということにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  95. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認め、さよう決定いたしました。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時三十六分散会