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1958-06-26 第29回国会 参議院 社会労働委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)    午前十時四十四分開会   —————————————   委員異動 六月二十五日委員斎藤昇辞任につ き、その補欠として柴田栄君を議長に おいて指名した。 本日委員草葉隆圓君、片岡文重君及び 山本經勝君辞任につき、その補欠とし て斎藤昇君、阿具根登君及び坂本昭君 を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     久保  等君    理事            勝俣  稔君            柴田  栄君            山下 義信君            中山 福藏君    委員            紅露 みつ君            斎藤  昇君            谷口弥三郎君            阿具根 登君            木下 友敬君            坂本  昭君            藤田藤太郎君            松澤 靖介君   国務大臣    労 働 大 臣 倉石 忠雄君   政府委員    総理府総務長官 松野 頼三君    総理府総務副長    官       佐藤 朝生君    調達庁長官   丸山  佶君    調達庁労務部長 小里  玲君   事務局側    常任委員会専門    員       増本 甲吉君   説明員    労働省職業安定    局長      百田 正弘君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働情勢に関する調査の件  (一般労働問題に関する件)  (日雇労務者期末手当等に関する  件)  (駐留軍労務者離職対策に関する  件) ○理事補欠互選   —————————————
  2. 久保等

    委員長久保等君) これより委員会を開会いたします。  委員異動を報告いたします。  六月二十五日付をもって斎藤昇君が辞任し、その補欠として柴田栄君が選任されました。  六月二十六日付をもって片岡文重君、草葉隆圓君が辞任され、その補欠として阿具根登君、斎藤昇君が選任されました。   —————————————
  3. 久保等

    委員長久保等君) 労働情勢に関する調査の一環として一般労働問題に関する件を議題といたします。  この際、過日新任されました倉石労働大臣から発言を求められています。これを許可いたします。
  4. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、このたび労働省を担当いたすことになりました倉石でございます。この機会に、これからの労働政策運営について私の所信を申し上げたいと存じます。  政府は、昨年末新長期経済計画を樹立し、国際収支の均衡と通貨の安定を維持しつつ、最大限の経済成長を図ることによって、新規労働力の吸収と雇用の改善を促進し、できるだけ完全雇用に近づけることを理想として諸般施策を推進して参っておるのであります。  私は、第二次岸内閣発足に際しまして、労働政策分野におきましても、長期経済計画基本線に沿ってさらに具体的な施策を強力に推進する必要を痛感いたしておるものでありまして、今後におきましては、最低賃金制実施中小企業労働者福祉の増進、雇用失業対策の推進をはかるとともに、近代的労使関係確立することによってわが国経済発展に寄与して参りたいと考えておるのであります。以下、これらの施策のおもなる点について、その概要を申し上げたいと存じます。  第一に、雇用失業対策についてでありますが、雇用失業対策の究極の目標であるところの完全雇用達成は、非常に困難な課題ではございますが、これが実現なくしては、わが国経済発展国民生活水準向上も期待できないところでありまして、今後政府におきましては、長期経済計画に基いて諸般財政経済施策を強力に推進するとともに、労働行政の面においても、この完全雇用達成を支柱として最大の努力を傾注して参りたいと考えておる次第であります。  このような基本的な考え方の上に立って、当面の施策といたしましては、まず第一に、すべての求職者に対し適職をあっせんすることに努め、特に新規労働力として年々労働市場に送り出される学校卒業者完全就職をほかることとし、このために職業安定機関機能強化充実を期して参りたいと存ずるのであります。  第二には、前国会成立を見ました職業訓練法に基く職業訓練拡充強化することによって、失業者その他の労働力技能化技能水準向上をはかり、もって労働者職業の安定と地位の向上、ひいてはわが国産業なかんずく中小企業振興に資したいと存ずるのであります。  第三には、失業対策の問題でありますが、雇用政策を推進する過程において発生する失業に対処するため、本年度予算において失業対策事業予算充実をはかったのでありますが、今後におきましても、情勢に応じて万全を期するとともに、現在の失業対策事業を改善して、事業経済的効果を高めて参りたいと考えておるのであります。  また、駐留軍離職者対策につきましては、前国会において成立を見た駐留軍関係離職者等臨時措置法の線に沿ってこれが対策を推進するとともに、これらの駐留軍離職者を含めて失業者の多数発生する地域におきましては、総額百三十八億円に及ぶ公共事業を重点的に実施する等の措置をとり、これが対策に遺憾なきを期して参っておるのであります。  このほか失業保険の五人未満の零細事業所への適用拡張につきましても、前国会における失業保険法の一部改正に基き零細企業労働者に対する保護努力して参る所存であります。  次に、最低賃金制について申し上げたいと存じます。  政府は、昨年末提出された中央償金審議会の答申を基礎として最低賃金法案を作成したのでありますが、これは、わが国経済特に中小企業実情に即して業種別職種別地域別最低賃金を決定する方式をとり、漸次これを拡大してゆくことを基本的な考え方としているのでありますが、同法案は、前国会におきまして衆議院を通過したにとどまり、ついに審議未了に終ったことば、すでに御承知通りであります。しかしながら、最低賃金制実施は、ただに低賃金労働者保護のみにとどまらず、労働力質的向上企業公正競争の確保、国際信用維持向上等国民経済の健全な発展のためにも極めて重要な意義を有するものでありまして、今や世論もそのすみやかなる実現を要望するところとなっておりますので、政府といたしましては、できるだけ早い機会最低賃金法案を再び提出することとし、本制度のすみやかなる実現を期しておる次第であります。  また、前国会において成立を見ましたけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法につきましては、その円滑な運営努力いたしておりますが、ことにけい肺及び外傷性せき髄障害にかかった労働者に対する保護措置根本的検討につきましては、近く正式にけい肺審議会に諮問することとし、明年末までには改正法案国会に提出できるよう努力いたす所存であります。  次に、中小企業労働者福祉対策について申し上げます。わが国産業労働実情を見ますると、中小零細企業における労働条件は、大企業に比し著しい格差が存在し、劣悪な状態に置かれていることは周知の事実であります。その原因は、深くわが国産業構造に由来する複雑にして特殊な性格に根ざすものであり、これが対策といたしましては、全般的な経済政策ないしは中小企業振興策を積極的に推進することが必要であります。これとともに、労働行政の面においても、まず労働条件の下からのささえとして最低賃金制実現することによって低賃金労働者賃金の引上げをはかる一方において、主としてこれら中小企業労働者対象とする各種福祉施策充実を期したいと考えるのであります。労働者のための福祉施設としては、既に労働金庫労災病院総合職業訓練所、働く婦人の家、勤労青少年ホーム等がありますが、この際さらに進んで、中小企業労働者退職金等の給付に関する共済制度を含め、総合的な福祉対策を推進することが必要であります。このため、近く労働者労働福祉審議室を設置することとし、これを中心として総合的な労働福祉対策検討し、できるだけすみやかに成案を得たいと考えておるのであります。  次に、労使関係について申し上げます。わが国労使関係は、逐年健全化の道をたどってきておりますが、他面なお未成熟の、面がかなり多く残存しておりまして、特に遺憾に考えられますのは、一部労使において依然として違法な行為やその他の行き過ぎがみられ、労使協力体制を築き上げようとする努力に欠けるものがあることであります。労使関係のかかる現状にかんがみ、労働秩序確立をはかり、近代的労使関係の形成を促進することが最も必要であるとともに、国民世論の要請にもこたえるゆえんであると考えるのであります。従って、そのためには、労使がおのおのその社会的責任を自覚し、共通の当盤の上に立って対等の立場で話し合い、生産性向上、ひいては国民経済の繁栄に協力し得る体制確立を促進するとともに、特に、近く発足を期待される日本労働協会の活動を通じて、労使はもとより国民全体の労働問題に対する理解と良識をつちかい、よき労働慣行確立に努めて参りたい所存であります。  次に、賃金問題は労使関係中心的課題であると同時に、国民経済にとっても重要な問題であります。従って、賃金の決定に当っては、単に労使間の関係のみではなく、広く国民経済的基盤に立って公正に定められなければならないことは申すまでもないところであり、この意味において職務給能率給定期昇給制等に十分の検討を加え、合理的賃金制度確立する必要が痛感せられるのであります。また、賃金問題の合理的解決をはかるためには、まず、賃金及び労働実態について正確な基礎資料を完備することが必要であります。労働省におきましては、従来より労働者賛金労働時間、雇用及び生産性等一連労働統計調査実施し、その実態の正確な把握に努めるとともに、諸外国における労働実情に関する資料をも整備して参ったのでありますが、今後さらにこれらに関する統計調査整備をはかり、合理的な賃金制度に対する労使関係者の認識を深め、国民経済実情に即した公正な賃金労使間で合理的に定められるような慣行確立するよう努力して参りたいと考えるのであります。  婦人年少労働者保護につきましては、さきに申し上げました各種福祉施設拡充をはかるとともに、未亡人等中心とする家庭婦人職業対策を推進するため内職公共職業補導所拡充強化家事サービス公共職業補導所整備充実をはかることとし、また本年度予算においてこれらの行政にたずさわる婦人少年室機能強化をはかって参ったところでありますが、今後さらにその充実婦人年少労働者保護に特段の努力を払って参る所存であります。  最後に、労働関係法規についての私の考え方を申し上げておきたいと存じます。現行の労働関係法につきましては、わが国実情にそぐわない点や、あるいは法律技術の面において必ずしも適切でないと考えられる点などがあるので、改正すべきであるという意見も一部においてみられるのであります。政府といたしましては、従来とも労働法上の問題点労使関係実情等について、あらゆる角度から慎重な検討は加えて参っておるのでありますが、これらの法律は、いずれも労働者の権利ときわめて密接な関係を有するものであり、軽々に取り扱うべきものではないので、慎重な態度をもって臨みたいと考えておるのであります。  以上、きわめて簡単でありますが、労働行政についての私の所見を申し述べた次第でありますが、今後とも各方面の御意見を十分拝聴して、労働行政を推進して参る所存でございますので、何とぞよろしく御協力賜わらんことをお願い申し上げる次第でございます。   —————————————
  5. 久保等

    委員長久保等君) この際、報告いたします。  六月二十六日付をもって山本經勝君辞任され、その補欠として坂本昭君が選任せられました。   —————————————
  6. 久保等

    委員長久保等君) それでは、これより一般労働問題に対する質疑を行います。御質疑を願います。
  7. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今、労働大臣所信の表明がございました。私は、二、三の点について質問をしたいと思うのです。  まず第一に承わりたいことは、日本労働行政というのは、今日の行政立場から見ても、基準行政、または職安行政社会保障行政、要するに社会保障制度、こういうものを中心に、どうして盛り上げていくかというところに労働行政の本質があると私は考えておる。ところが、どうも大臣がおかわりになるときの発言やその他を聞いておりますと、何か労使の問題に労働行政中心が置かれて、労使関係がどうだとか、労働運動がどうだとかというところに労働行政の主点がおかれているような気でおるわけです。私は、こういうことは間違っているのじゃないか、本来労働者保護ということが労働行政中心になるべきことであって、今のような労使関係をどうするとか、労働運動がどうだとかというようなことは、少し違うのじゃないかと私は思うのです。労働大臣はどうお考えになっているか、所信を聞きたいと思います。
  8. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が就任いたしまして、すぐに多くの新聞社諸君記者会見がありまして、そういうときに私は、やはり今お話のありましたような、まず第一に、労働大臣として一番大事な問題は、今の日本では、政府が言っております新長期経済計画に基いて、どうやって雇用量の拡大をしていくか、同時にまた、失業問題についてはどうやっていくかというふうなこと、これが一番大事なことであるというふうなことを発言いたしておりますが、質問される方の側で、当面問題になっておりましたようなILOの条約の問題、あるいは労働三法はどうするつもりかというふうな御質問があるもんですから、そういうことについてお答えをいたした。そしてそれだけが大きく取り扱われておった。従って、私の労働政策に対する所信というものは、公式に申し上げておるのは、先般衆議院社会労働委員会、本日参議院の社会労働委員会において申し上げましたのが公式の私の見解でございまして、これが私ども所信である、こういうふうに御了解を願いたいと存じます。
  9. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、たとえば労使関係を見てみるときに、労使が自主的に問題を解決していくというのが本筋であって、その自主的解決をしていくために、労働組合が団結して労働運動をやっていく、こういうところが私は本筋、本来自主的なものである。労働省としては、もっと今いわれるような雇用の問題、それから保険社会保障関係した問題、こういうものをもっと積極的におやりにならなければいかぬのじゃないかと私は考える。たとえば、最近に出ている基準行政の問題を取りしげてみましても、企業者の負担の面から議論がされ、そこで働いている労働者生活とかという問題が——基準法改正云々というような問題でも、そういうところに問題が置かれておる。たとえば、最低賃金の問題にしましても、政府は、経済政策の上で中小企業零細企業を守っていくというのが私は本筋だと思う。一面において社会保障中心にしていく。ところが、政府のお考えは、今度の国会にお出しになりませんけれども最低賃金制度をするにしても、痛められている中小企業零細企業支払い能力云々というようなことで業者協定ということになってくる。こういうものが中心になってきて、労働者生活を守るのだ、今日もごあいさつにありましたように、そういう格好になってくると、われわれはなかなか理解がしにくいのです。だから私は、やはり労働行政というものは、どうか本筋に帰ってもらって、職安の問題や社会保険の問題や、そういうものを真剣に、労働者生活を守るという立場から進めてもらう。対象になるものは、経済政策の中でカバーをしていく。こういう本筋に私は帰ってもらいたいと思う。この点について御所見を承わりたい。
  10. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) まことにごもっともなことでございまして、私どもは、政治運動でも労働運動でも、何でもそうでありますが、結局国民大衆理解ある同情が得られなければ、それは成功するものではないと思うのです。国民全般に納得してもらえる政治国民になるほどいいことをやってくれるものだなあという信頼感を持たせるということが、政治の一番大事な眼目だと存じます。  そこで、私が先般大阪に参りましても、大阪問屋街人たちを集めまして、週休制実施感謝状を渡しましたときに私があいさつをいたしたのでありますが、要するに今までやらなかった新しいことをやるには、それをとび越えていくときに一つの勇気が必要であります。しかし、そのことが国民一般から歓迎されるような行動であるならば、やはりやった本人も非常に満足であり、利益になりますし、それによって受ける恩恵というものは、みんなが喜んでくれるものであります。そういう意味で私は、今ちょっとお話のございました最低賃金制に対する政府側考え方におきましても、藤田さんのよく御存じのように、日本産業構造というのは、世界の一流の産業国に比べて劣らないような大規模産業を一面に持っておるかと思うと、アメリカや西独などにはおよそ今日跡形もないと思われるようなきわめて零細な部分まで幅広く抱えております。そういうところの零細企業の方では、やはり賃金というものを支払って、そうしてその小さな経営を継続していくということについて、ほとんどすれすれのところの生活をしておる。こういう人々の分野において働く従業員についても、最低賃金というようなものをきめて生活向上をしていくという考え方を持ちますには、やはり企業形態支払い能力というものも助成していかなければならない。で、私先ほども申し上げましたように、中小企業ことに零細企業がやっていかれるような援助を一方においてやりつつ、その従業員賃金向上していくことをはかる、こういう二つの面がやはり政治分野においては必要であると存じまして、最低賃金制等におきましても、十分とは言われませんが、今日の日本経済状態においては、この程度から差手していく方がいいではないか、こういう広い考え方を持ってやっていくつもりであります。
  11. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 最低賃金の問題については、私はきょうは多く触れまいと思います。しかし、先ほど労働大臣が言われた日本長期経済計画という経済政策の中で、中小企業零細企業を守っていくというところが明らかにされなければならない。ある程度賃金を決定する面の最賃法の中で、そういう法によって縛りつけ、労働者生活というものを考えない——考えないと言ったら、そうじゃないとおっしゃるかもしれませんが、考えられないような業者が支払われる賃金を協定した最低賃金制度にするというような考え方が出てくるところに、私は納得できない面がある。だから、長期経済計画をやるなら、中小企業零細企業をどう保護育成していくか、こういうところの政策というものを経済政策の中でも明らかに私はしなきゃならぬのじゃないか、こう思う。私は、だからそういう立場から御理解をいただきたいと思う。  そこで私は、日本経済の問題について話が出て参りましたから、日本の今の政府の行われている長期経済計画の中で、日本労働力というものをどう配置していくか、どういう形で労働者生活を守っていくか、この問題が非常に重要な問題だと思う。失業雇用就職の面から見て、これは重要な問題でありますから、一つ冒頭に、ここで倉石大臣から、今日の日本経済の見通しについて承わりたい。
  12. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 第二次岸内閣が世の中に発表いたしておりますいわゆる新長期経済計画については、他の閣僚から申し上げるのが筋かもしれませんが、私どもといたしましては、かねがね私が考えておりますのは、かりに新長期経済計画計画通り成功することができましても、日本の国の現在の状態においては、雇用失業問題というものは、やはり非常に困難な関係に立つと思っております。御承知のように、ただいま出て参りますいわゆる生産力人口生産年令人口、この増加率というものは、これからなお十年間ほどの傾向は、ふえていく傾向であります。従って、新長期経済計画のもとにおいても、私どもは、なおかつ失業者というものはさらに十万人ぐらいの増加があるであろう、こういう想定のもとに立っておるわけでありますが、しかも、御承知のように、昭和三十七年までにおいて産業規模伸び政府において計画いたしておるのは、六・五の伸びを見て、そうして完全失業者十万人がふえていく、こういう計画であります。これにつきましては、しかもその長期経済計画を推進していくためには、輸出というものが相当量伸びをその中に計画をしている。世界的不況の段階に立っておる今日、この長期経済計画というものを成功させるということについての苦労は、なみなみたらないものであると存じまして、われわれは、その面から、雇用失業対策については決して楽観をいたしておらないのであります。
  13. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今労働大臣は、楽観をしていない、その計画の中で十万人がふえるということを予想しておると、こうおっしゃる。ところが、私たち政府の代表的な発言を聞いておりますと、先日の衆議院予算委員会においても、八月がもう底なんだというようなことを政府の当事者が答弁をしている。ところが、日本を取り巻く経済圏の中を見てみますと、アメリカじゃ来年一ぱいこの不況は直らないということに国会で論じられている。日本現実のそれじゃ不況はどうかということになると、非常に深刻な状態というものが報告をされている。そこでその問題は、きょうの新聞を見ますと、輸出や輸入のバランスの問題を見ても、三十一億五千万ドルが二十七、八億になる、経済規模が三億から小さくなってくるというようなことがまあ論じられている。経済計画そのものについて政府自身検討しなきゃならぬというところまで今日は論じている、報道をいたしておるわけでございます。そこで私は、今度の、二十八国会から今日までの労働失業雇用情勢について、大臣はよく御存じの上で御発言をされていると思うのですが、今のお話にありましたように、この長期経済計画の中で、雇用の問題に非常に熱意があるように言われ、そして失業対策も拡大されたと言われますけれども、昨年よりことしは、二万五千人しか失業対策対象人員をふやしていない。これが今日の状態なんでございます。それで、経審労働省労働力配置の問題に入って参りますと、非常にわれわれが納得せないような状態において今度の雇用配置の問題が社労委員会質疑がされたわけであります。私は当時、今日の日本失業者というのは、操業短縮から来る失業者を含めて二百万を突破するのじゃないかということを申し上げました。その理由というのは、今年政府の言われる六十五万の失業と、政府計画にある四十五万の自家就労というのもこれは失業者……日本のこの労働者雇用労働者に転換するのは今年は十万で押えると、その差額は何十万という人が出てくる。不況対策から出る首切りの問題がやはりそこで今日四、五十万の人を重ねれば、二百万を突破するのじゃないかという私はここで議論をしたと思っております。そういう現実の中におって、今のような通り一ぺんといったら失礼でございますけれども、そういう私は雇用対策について御発言があっても、どうも私らには納得がいかぬ。私は、根本的に、今の労働省労働行政の中で、雇用失業の問題を考えておられる労働力調査の問題なんかについても、根本的にもう検討するときが来ているのじゃないか。この労働力調査では、日本の今日の失業なんてつかめるものじゃない。私たちはそう考えている。だから、この一連の問題について、一つ大臣の御所見を承わりたい。
  14. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) まことに適切な意見でありますが、御承知のように、今の政府の出しております労働力調査というものが信頼できないものであるというお話でありますけれども、私どもは、いろいろな調査の統計から見まして、これは政府も出しておることでありますが、最近の失業者の出方というものは横ばいになっておることは、御承知通りであります。その統計の基礎が当てにならないと言われるならば、これはなかなかむずかしい問題でありますが、そこで、今お話の海外の景気の状態、それから日本計画いたしておる貿易の伸び計画が、これはやはり、それだけの計画を遂行していくことは困難ではないかと、こういうお話につきましては、われわれも、この計画実現するための努力については、政府も最善の努力をしなければ、もちろんそうやすやすと目的を達せられるものではないと存じますが、政府の言っております新長期経済計画の目標を達成して、そうしてなおかつ、今申し上げましたような十万人程度の失業者の増ということで一応押えて、そうして雇用失業対策をやっていこうと、こういう考えでそれの目標に努力をいたしておると、こういうことであります。
  15. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、なぜこの経済の問題を質問するかというと、経済の動きが雇用失業関係に一番的確に関係するものだと私は思っている。だから、この点が明らかにならないと、失業計画雇用対策完全雇用とおっしゃいますけれども、そういうことがなかなか私らには理解ができない。問題は、たとえば私も、労働大臣もよく外国へお行きになりますけれども、外国の工業国といわれている、要するに今日の機械科学——オートメーション化の設備、日本の全部とは言いませんけれども、多くの企業の中の設備状態を外国と比べてみて、どこに劣るところがあるか、そういうところまで、私は進んでいると思う。生産性というものが、戦前の標準年度の昭和九年から十一年に比べて三百倍にならんとしている。ところが、国民生活というものは、一一三%ですかぐらいのところにとどまっている。これがもう根本的な私は大きな問題だと思うのです。賃金の面にしても、生活の水準にしても、欧州の国は、大体日本の三倍から四倍の水準にあると思うのです。一面は、賃金の問題と社会保障の問題が並行されて、国内における購買力というものがつちかわれている。問題は、私は、これだけ科学や機械が発達してくれば、今の雇用対策、非常に六反以下の農家があって、どんどんと雇用労働者に転換したいというこの農業労働者の生き口をどうするか。農村の二、三男ばかりじゃない。私たちの子供でも、学校を出たって行くところがないという状態に、勤めるところがないという状態に置かれている。こういう状態の中で、雇用対策というものは、もう抜本的な方針を立てなければならないときに今日来ているのじゃないか、私はそう思う。それには、何といっても、日本の生産力に応じて国民生活を守って、購買力を向上していく。これは一つは、何といっても、壮年者にはやはり勤労の喜びの中に生活を築き上げていくということになれば、私は、時間短縮によって就労の機会をふやし、老年者には、社会保障によって購買力、生活を守っていくという以外にないのじゃないか。それをやらぬ限り、この操業短縮というものは、だんだん雪だるまになっていくのじゃないか。昨年が一兆ですか、本年が一兆三千億という設備投資が行われておるということを私は聞いておりますけれども、設備ができても回転はしない。操業短縮、首切りというものを追っかけているような片方の経済政策の中で、完全雇用をなんぼ論じてみても、私はそれは功をなすものじゃないと思うのです。だから、ここで私は一番大きな手として打つべきことは、労働時間の短縮の問題と、社会保障のもっと具体的な推進ということ、これがひいては国内の経済回転というところにつながると私は思うのです。ですから、そういうお考えについて一つお聞きしたいのです。
  16. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 生産力を増強して雇用を拡大していかなければならないという藤田さんの御意見は、全く同感であります。その意味で、私ども生産性向上と、それから雇用面を開拓する意味において、産業規模の拡大ということを新長期経済計画で示しておるのは、みな今あなたの申されたと同じような考え方に立脚しておるのでありますが、そこで、御承知のように、国際収支が悪化いたして参りましたために、これに対する対応策、景気の調整策として引き締めを行なった。その引き締めのあおりを食って、やはり民間産業の求職の方向が明らかに減少してきたことも統計のやはり示しておる通りでございますが、それが、おかげさまで国際収支の改善もでき、しかも、その調整による失業者というものの出方を、統計によって見ましてもやはり明らかに出ておりますけれども、前回の、昭和二十八、九年のデフレの時代と、それから今回の状態を比較検討いたしてみまするというと、やや似た傾向でありますけれども、その間において若干の相違を来たしております。それは何であるかといえば、やはり日本経済基盤が、それだけ昭和二十八、九年に比べてしっかりしたものを持ってきたということがその原因であるとわれわれは考えておりますが、そこで、今世間でいわれている、なべ底式の日本の景気の状態、こういうことをいわれておりますけれども、そのなべ底式の景気がやや安定をしてきた、それはやはり、失業の出方によって私どもは観測することができると思います。ただ、そこに現われてきている一つの現象は、失業保険を要求する人員がだんだんふえた、このことをもっても、やはり引き締め政策のしわ寄せがこの段階にきて失業問題に現われてきているということも争えない事実であります。しかし、私どもは、今政府の打っております施策、それからまた、現状の日本産業規模のあり方に見て、これ以上失業状況が悪化していくということは考えておらないわけであります。
  17. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これ以上悪化するということは考えてないと言われるけれども、私は何も、生産力という、生産性が上ることについてとやかく言っているのじゃない。新しい科学や機械の進むことによって、オートメーションの設備によって生産力が国内に増強したら、それだけ国民生活水準が上るということでなければ意味がないのじゃないか。新しい機械設備をして失業者がふえるというようなことなら、これは政治の大きな欠陥じゃないかというところを言っているわけです。それは、一つ誤解のないようにしてもらいたいと思うのです。  そこで大臣は、非常に政府も長期計画について努力中だとおっしゃいますけれども、この状態の中で、私は、今の失業者が十万くらいふえるということだけで理解ができるかというと、私は理解ができないと思う。たとえば公益事業公共事業の問題がごあいさつの中にございました。しかし、公共事業といったところで、どれだけのそれでは失業者を吸収する力を持っているか。法律では六割ときめておっても、吸収力が一割にも達していないというようなのが今の現状じゃないかと思うのです。それで、今の二十五万の失対事業、これも私は、日雇労働者の中から非常に、稼働日数を何とか二十五日にしてくれても八千円くらいじゃないか、それを今二十一日、ひどいところになったら十日くらいのところがあるというような状態に置かれているわけです。これはいずれにしたって二十五万人です。これだけではほんとうにどうにもならぬときに私は来ていると思う。  そこで私は、もう少し深く触れたいのでありますけれども、具体的な一つ今の失業実態というものを、今つかんでおられる実態というものを御報告していただきたいと思うのです。これは、事務局からでもけっこうですから、その上に立ってどういう工合にことしは雇用対策というものをおやりになるかということを御説明いただきたいと思うのです。このような経済の中では、私は、失業者がふえるばかりで、十万ぐらいというようなことではとても私は見通しがつかぬ、こういう考え方を持っておりますので、どうか政府考え方をお聞かせ願いたい。
  18. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 最近の失業情勢でございますが、第一に、労働力調査による完全失業者につきまして、これは御承知かと思いますが、本年の三月に八十五万だというところで、新聞等でもだいぶ大きく宣伝せられたのでございますが、これは、季節的な関係もございまして、四月におきましては、五十五万ということで、前年の五十八万よりも三万ぐらい少いというようなことになっております。ただ、今藤田先生から御指摘のように、労働力調査による完全失業者のみがわが国実態における失業を完全に示すものではあるまいというようなお話がございました。不完全就業者の問題ということも、これは看過できない問題でございます。端的に表われまする、今大臣からもお話がありました失業保険の受給者につきましては、本年の一月以降の状況を見ますと、特に一月におきましては、化繊の操短あるいは特に季節的条件も多かったのでございますが、本年の一月以降全般的に見まして、失業保険につきましては、相当に昨年よりも増加いたして参っております。なお、企業整備等につきましては、昨年と比較いたしまして、本年におきましては、特に一月以降におきましては、本年の四月までの平均が整理人員で約二万八千人ということで、この面におきましては、昨年よりも相当増加している状況でございます。ただ、全般的に申し上げまして全体の就業者ないし正規雇用者の状況を労働力調査で見て参りますと、昨年の一−四月と本年の一−四月と比較いたしまして、本年の方がややふえておるというような状況になっております。
  19. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 失業保険の受給者は、五月で何人です。
  20. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 五月分につきましては、まだ正確な統計が出ておりませんが、三月におきまして五十万、四月におきまして四十九万六千、五月は、これよりわれわれの見通しでは多少下るのではないかと見ておりますが、正確な数字はまだ入っておりません。
  21. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ここで今、百田さんが言われましたけれども労働力調査というものを先ほど大臣に私はちょっと申し上げたのですけれども労働力調査という——日本人の今の潜在失業者は、五、六百万ともいわれ、一千万ともいわれる。ところが、労働力調査というものの推計統計を見ていると、失業者という名前をつけたくないというような意識が日本人には相当あって、非常に困難な生活をしておる。だから、失業の統計の面に現われてこないというのが私は実態じゃないかと、こう思うのです。だから、この労働力調査だけを御基礎にして、推計統計だけを基礎にして失業者を把握するということには問題があるのじゃないかと私は思うのですがね。今不況で、働くところはありません。失業保険をもらっておる人が四十九万、五十万として、四月の失業者が五十五万だと言われているのですけれども失業保険が切れて、食えなくて困っておる人が町々にはうようよしておる。今失業しておる人が、今日就業できる機会というようなものはほとんどないと思う。それが同じような状態で、失業保険の支給の率がことしになってから五十万だと思うのです、大体が。それで、ここに現われておる失業者の数が五十万から六十万という統計の状態がここに出て、失業者の統計はこれだけでございますということで、それは発表だから、発表でいいかもしれないけれども、実際労働行政をやって、日本労働者の今日の状態を見て、それで済まされるかどうか。労働力調査というものが適確であるかないかという論議は労働省の中でうんとされて、適確に失業をつかまえるという状態というものを考え出されるべきときに来ているのじゃないかと私は思うのです。ところが、その点はおざなりに、やはり労働力調査失業者がこれだけだと言われるということについては、私はもっと生きた労働行政というものをやってもらいたいと思う。その点についてどうですか。労働力調査についてもう一度御意見を承わりたい。
  22. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) ただいま労働力調査についての御意見がございましたが、確かに先生のおっしゃるように、労働力調査による完全失業者の数につきまして失業率を見ますと、一・四、五%というような状態、外国におきましては、近代化された就業形態における外国におきましては三ないし四%の失業率、これがまあ大体完全雇用状態である。その点からいいますと、わが国の場合、数字だけ見れば、超完全雇用状態にあるということが言えるわけでございます。ところがこれが、わが国の場合にそうは言えないというのは、これは、今御指摘がございましたように、完全失業者の数のみをもってわが国失業問題の全般と考えちゃならぬ、その近代化されないわが国産業構造のもとにおきましては、なお御指摘になりましたような不完全就業者の問題が大きな問題として存在いたしておる、そういう意味からいたしまして、総理府の統計局の調査におきましても、単にこの労働力調査完全失業者のみならず、その後あるいは労働力調査の臨時調査によりまして、あるいは三十一年に行われました就業構造基本調査といったようなもので、不完全就業者状態等を集計いたしておるわけであります。新長期経済計画におきましても、従って、かっての前の五カ年計画のときに、完全失業者を一%にとどめるというような計画と別個の観点から、特にこの目標を、雇用政策長期経済計画における目標を、今後年々ここ当分は増加してくるであろうところの新規労働力雇用者としての完全吸収を、第二期には、現在の就業構造をできるだけ近代化し、第一次産業部門を減らして、これを第二次、第三次に吸収していく。それから家族従業者の率をできるだけ減らすことによって、これを雇用者として吸収していく。こういう状態を通じて、不完全就業の状態を解消、できるだけ改善していくというような目標を定めましたのも、今先生の御指摘になったような点と軌を一にするものだと考えております。
  23. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、大臣にお伺いしたいと思うのですが、先ほど私が申し上げました、日本の今日の経済状態の中で、完全雇用を目標にされている政府の方針との関連で、非常に重大な関係があるのですけれども、たとえば、今年の計画を見て、私は農業労働者の移動ということは取り上げないにしても、四十五万の自家就労なんていうのは、これは、仕事をしたいけれども仕事がない。自家就労と名前をつけただけのことで、政府のいっている四十五万なんていうのは当てにならない。完全な失業者が百十五万くらいおるということがここにある。それで、そのほかに今度の操業短縮失業者が出るけれども、これを加えると、私は相当な数になると思うのだが、抜本的にこれを措置しようとするなら、私は、時間短縮以外に大幅に就労の機会をふやす道がない。そうでなければ、日本経済能力、生産性に応じて国民生活が守られないと思うのだが、この点についての明確なお答えを一つ願いたい。  第一点は、今年の失業対策は、当初今度の予算でおきめになった二十五万の日雇い就労の対策があるわけですけれども、このほかにどういう失業対策をおとりになろうとしているか、これを一つお聞かせを願いたい。
  24. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、生産性向上されることによって、この生産性向上の恩典に浴するものは、まず第一に、一般消費者大衆に対して恩恵に浴するようにやるべきだと思っております。これは経営者も、それからそこに就労する労働者も、やっぱり同じ目標に向って進んでいくべきだと思うのです。そうしてさらに、その恩典というのは、やっぱり経営と労働者が分け合うと、こういうことになると思います。それからまた、きわめて近代産業の発達しておる国では、やはり生産性向上することによって、労働時間等についてもいろいろな施策の行われておることも、藤田さんよく御存じ通りでありますが、今日本で、単に今御指摘になりました自営業者、家族従業者、こういうものがふえているのは、これは、職業があるように書いてはあるけれども、事実は業がないのではないか、こういうふうなお尋ねでございますが、やっぱり私は、今安定局長が申し上げましたように、日本雇用構造というものを、いわゆる第二次産業の方にできるだけ吸収するように、そうしてまたりっぱな雇用契約をもって安定した職場につかれるように仕向けるということについては、長期経済計画の中でも流れておる考え方でありますから、そういう考え方の上においては、政府努力をして参るつもりでありますが、やはりこの自営業、こういうものが全部職業を持っておらないものと同じだと、こういう解釈はできないのじゃないかと思うのです。で、雇用条件のしっかりした、たとえばドイツ、英国、アメリカなどに比較して、日本のいわゆる雇用関係を正式に持っておる従業員のパーセンテージというものは、なるほど日本は低い。しかし、日本の一般の社会生活を見ますというと、やはりそういう自党業者というものも、相当それぞれの役割を果しておるのでありますから、これが全く仕事を持たない者と同じように見るべきではないかということについては、私どもは、にわかにそうだと、百パーセントその御意見に同調することは危険ではないか、こう思います。
  25. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そのあとのやつはどうですか。
  26. 山下義信

    ○山下義信君 関連して。今、藤田委員質疑の、失業者の現状並びに将来の見通しについてのお尋ねがあって、お答えがあったのですが、よく聞きそこねてわからないのですが、百田安定局長の御説明に、現在の完全失業者の数と前年同期を比較されて——昨年の何月と比較したのですか、三月ですか。
  27. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 四月です。
  28. 山下義信

    ○山下義信君 一−四と比較して、昨年は五十五万であったが、今年は五十二万人だと、こういうことですね。そういうことの御説明を聞くと、雇用状況が予想したよりは好転しているような政府の御所見のように聞えるのですがね。今後の見通しのこともはっきりおっしゃらなかったが、しかし、あなたの方からの藤田委員要求の資料を見ますと、将来の見通しについてもはっきり——題目は今後の見通しと、こうありますけれども、はっきりしたものが出ておりませんが、しかし、大体から受ける印象は、まあ大した急激な変化はないような御所見のようです。ことにオートメ等による失業者が急に出るような様子もない、一般的に失業情勢は、予想よりは——言いかえると、具体的に言えば、三十三年度平均して六十五万と、こう見込んだが、そんな状態にはならないで、比較的予想よりは下回ったような情勢で推移するのではないかというような見通しのように聞えたのですがね。あらためて現在の失業情勢、ことに具体的には不完全失業者の現状分析、それが昨年同期に比較して約三万人ほどの減少でとどまったというのはどういうわけであるか。言いかえるというと、三十三年度に予想したよりは意外に少い状態で現在がいるのだということは、一体どういうわけであるか、またこの現在の情勢の上に立ってみて、今後の失業者の増減の趨勢はどういうふうに考えられるのかということの政府の見通しですね。これは一つ明確にお示しを願わなければ、それがあいまいでは、失業問題の議論にならない。われわれ社会党の方では、言うまでもなく、この不況状態でいけば、失業者が出るのはこれからなんです。不況状態はすでに半年以前、少くとも一年近い以前にその情勢が出てきたが、ほんとうの失業者の出るのは、自他周知のごとく、半年ないし一年後が相当深刻なものが出てくるのであって、これから失業者が増大するだろう、これが社会党の見解なんです。政府はどういうふうに見ておるかというところが明確にならなければ、私は、失業問題の議論にならぬと思う。この際、労働大臣から、現状の分析並びにその見解、今後のお見通し並びにその理由等につきまして、御所見を承わりたいと思います。
  29. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) その点につきましては、私が先ほど申し上げたことが、言葉が足りなかったかも存じませんが、政府は、国際収支の改善等の調整のためにやりました施策によって、やはり約十万人くらいな失業者が多く出るということは想定しなければならない。こういうことをやはり長期経済計画実施の中で、私ども雇用問題を取り扱っておる方では、そういうふうに見ておるわけであります。しかし、先ほど私から申し上げましたのは、先々月、先月等に比べて、雇用の状況というものは横ばいになっておると、そういうことを申し上げたわけであります。そこで、政府委員から藤田さんの御質問に対してお答えいたしましたのは、昨年の同期と本年の同期の失業者の出方の数字を申し上げたのだと、こういうふうに解釈いたしております。それを比較いたしますと、三十三年の一・四半期の六十五万というのと三十三年の一−四月平均が六十三万人になっておりますと、こういう数字を申し上げたわけであります。
  30. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今、山下先生から御質問がございましたが、私の申し上げ方が悪かったためにそういう印象を与えたとするならば、私の本意じゃございません。私が藤田先生の御質問にお答えいたしまして申し上げたかったのは、労働力調査のあれでいいのかというようなお話がございましたが、労働力調査というのは、ああいう調査でやっておりますので、一つ傾向ということはつかみ取れるわけであります。ただ、先ほど申し上げましたように、三月八十五万だから大へんだ、それじゃ四月の数字を見ると、昨年より三万百以下というようなことだけで日本失業状態というのを必ずしも律するわけにいかぬのじゃないか、従って私は、完全失業者の数が一つのすべての基礎になっておりますためにその状況を申し上げたので、しかしながら、端的に失業情勢を、現実に出て参ります——全部じゃありませんけれども、出て参りますのが、失業保険受給者の状況であり、あるいは企業整備の状況であるということで、その数字の傾向を後に申し上げた次第であります。  今後の見通しでございますけれども、今大臣からも申し上げましたように、本年の一月以降、昨年と比べまして非常にふえてきておるわけであります。ただ、一−三月というのは、季節的な要素もだいぶ入っておりますので、あと一、二カ月、五月、六月等の様子を見て、将来の見通しをつけなければなりませんが、この一−四月におきまして、非常な季節的な要素の多いときにおきましても、本年の一月以降はふえております。ただその中には、化繊操短その他の問題がございましたので、たとえば失業保険の初回受給者の状況なんかを見ますと、化繊なんかは一月にどっと出ましたが、その後はほとんど出ておらない。今後の見通しでございますが、大体におきまして、今の状況が今後の経済政策によって変っては参ると思いますけれども、これが失業雇用面に現われてくるというのは、多少ズレがあるのが例でございますので、私は、この状況はもうしばらくは急に悪化することもないけれども、急に改善されるような状態ではないというふうになると思います。
  31. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 僕は、さっきの大臣の答弁について申し上げたいのは、私の聞いたのは、適確に労働時間の短縮によって雇用拡大をするということについてどうか。今年度の失業対策についてどうかということをお聞きしたのです。ところが、何かこう、自営業がどやこやという返事になってしまって、そこのところが適確性がぼけてしまったんです。私は、それじゃちょっと困ると思う。私の質問に対してはちょっと困る。だから、それをまず先にお答えを願いたいと思います。
  32. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) ちょっとよくわからなかったんですが、失業者を減らすために、企業の時間短縮をしたらどうかと、こういう意味でございますか。
  33. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうです。
  34. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 時間短縮の問題につきましては、先ほど私が申し上げましたように、生産性向上に伴なってそれぞれの企業でそういう協約を結ばれるということについて、私どもは、それぞれの企業実態に応じてなさることについては、これはけっこうなことだと思いますが、失業者というものをなくするために、すべての企業の時間短縮をしなければならない、こういうことについては、私どもとしては、なお研究の余地が多くあるのではないか、これは、今申しました企業の内部のそれぞれの企業形態に応じて、従業員と経営者との間に協約を結んで時間をきめられる。それは、業種によっていろいろ御承知のようにございます。そういうことについて政府がとやこう申すことはございませんけれども、時間短縮をすることによってすべての失業者を吸収する意味で時間短縮をすることについては、政府がにわかにそういうことをどうこうするということをここで申し上げることは慎重を要するのではないかと、こういうふうに思っております。
  35. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 どうも僕は、労働大臣はこの問題について理解が少し足らないのじゃないかと思うのです。あなたも、国際労働関係についてILOにでもお行きになって、演説でもぶとうかというような優秀な日本労働大臣なんです。ILOに加盟しているほとんどの世界の国がどういう趨勢の中で労働保護をやっているか。一九三五年、六年、七年ごろに、一週四十時間労働制というものがILOの機関で取り上げられて、労働者保護、これは、直接経済関係するとは言っておりませんけれども、こういうことによって一人の失業者もない、一人の貧困者もないという、社会福祉国家というものが経済労働保護と並行して生まれてきているということは、私は労働大臣よく御存じだと思います。その問題に今日、日本がオートメーション、機械の発達と生産増強によって突き当ってきているという問題から、ここで私は今話をしている。それは、企業でも話してどうこうというような問題しか……日本の今日の労働力配置という問題は、そこまで考えなきゃできないのじゃないか。失業の問題が出ましたが、外国における失業というのは摩擦失業です。日本失業というのは、摩擦失業というのは一部なんです。潜在失業なんです。この前の委員会で、潜在失業はどうつかんでいるかと言ったら、労働省はまだやってない。失業対策審議会でやったものを、一年間二万五千円だ、十九才以下三千円だという統計が、二十七年の統計がここに出されたのが初めてなんです。そういう格好で、六百何十万、八十万ですか、そういう潜在失業者がおるということがここで言われたんです。そういう、片一方でその労働力保護に対して無関心でおりながら、今労働力配置をどうするか、農業労働者の貧困というものをどこで生活さすようにするかという重大な問題が来ているときの重大課題は、どうして今職のない人を職につけるかという重大問題がここに来ている。今やらなきゃならぬ重大問題じゃないですか。それをそういう物の見方で私は見てもらっちゃ困る。本来の労働行政に立ち帰ってもらいたいと思います。
  36. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 一昨年、まだ私が労働大臣をいたしております当時に、この生産性向上問題について、あるいはオートメーションの問題について、衆参両院の社会労働委員会お話がございましたが、私は、そのときにお答えをいたしたことを今も記憶いたしておるのでありますが、私はこう考えております。生産性向上というものがだんだん行われてきて、そうしてその国の経済が国際競争力を持ってちゃんと立っていくような規模になることが望ましい。そういう場合には、その利益に均霑するものは、第一に一般大衆であり、第二には経営者と労働者が分配すべきであると思います。そういうときには、当然賃金の上昇も考えられるでしょうし、時間の短縮ということも、その結果当然考えられてくるべきものだと、日本企業というものは、そういう方向にいくべきものではないかと私は思っておりますということを、一昨年委員会でお答えしております。そういう気持は私は持っておりますが、それを今、日本の現在の状況で、政府制度としてそういうものをどういうふうにするかといったようなことについては、これはなお慎重を要するのだ、こういうことであります。
  37. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 たとえばですよ、倉石さん、申し上げますがね。今の機械化やオートメーション化によって設備されているところは、生産は五割も八割も上っている。そこに雇用されている労働者は減っていくのですよ。大臣よく統計を見ておられると思うのです。そこで働いている者はどうなんですか。生産は五割も八割も上っていくが、そこで働いている人は減っていく、これはどうするのですか、将来。
  38. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) オートメーションシステムというふうなものがやっぱり世界の一方国で始まったときに、われわれはそれを相手にしないということで経済上の相剋などは当然できないことはわかり切っていることであります。われわれもそれと立ち向って競争していかなければならない。そういう場合に、やはり私どもは、一時的には、オートメーションあるいは非常な技術の改良等による生産性向上が行われたときにおいては、その部分だけは一時に職を失う者が出てくることは、その限りにおいてはあり得ると思います。しかし、そういうことのために、やはり日本の国際競争力を維持するためには、同時に、産業規模の拡大をその他の面においてしていかなければ持っていかないのでありますから、そういう方面に配置転換をして、これを吸収するようにしなくてはならない。そうでなければ、また太刀打ちをしていくことはできないのだ、だから、生産性向上というものは、究極において労働者の職を失うものではない、われわれはそういう考えを持ち、またそういう方向に日本経済というものを推進していかなければだめだと思っております。
  39. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 非常に言葉はいい言い回しをされるのですけれども、それじゃ、その生産性はどんどん上っ、ていくわ、国全体として。それで多くの貧困者の生活を守らないというなら、どこへ行くのですか。そこが問題だから、われわれはこの経済の問題を論じている。だから私は、今の失業対策という問題は、そういう深刻な問題を考えていかなければ私はどうにもならぬ。だから、ことしの経済計画に出ているように、四十五万自家就労というようなあいまいもこたるものが雇用対策の中に出てくるのですよ。もうごまかし以外に何もない。こういうものが出てくるのです。そういうことで労働行政の中の職安行政をとってもらっては困るというのが私の考え方なんです。だからこの点は、きょう初めておいでになった大臣ですから、私は、この経済の問題はこれ以上追及いたしませんけれども、あらためて一つ考えを承わりたいと思うのです。そこで私は、今年の、今の、私は納得しませんが、五十五万が十万ふえるという失業に対して、どういう工合に対策をお立てになりますか、それを一つ聞きたいということ。もう一つつけ加えておきますけれども、今日失業は、政府でも十万と言われたのだが、たとえば今の政府が、アメリカとの協力という問題をいつも国会で言われている。ところがアメリカは、今日五百三十万、潜在失業、顕在失業を含めたら数百万、アメリカ産業労働力から見たら少いでしょうけれども、しかし大統領命令で、二十六週の失業保険を三十九週にするという処置を講じているのですが、日本失業保険の延長をおやりになる考え方ありませんか。その二つの問題を聞きたい。
  40. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 御承知のように、三十三年度予算においては、先ほどお話のございましたように、一日平均二万五千人の失業対策人員をふやしまして、さらに私どもは、さっき申しました景気調整の施策としてしわ寄せのして参ります失業問題については、公共事業等をさらに拡大すると同時に、また財政投融資等による公共事業等の拡大によって、できるだけこれを吸収していくように努力をしなければならないと思っております。  それから失業保険でございますが、失業保険については、御承知のように、長く勤めた者については、七ヵ月ないし九ヵ月と、支給を延ばしておることも御承知通りでありますが、これを今さらに改めるということは考えておりません。
  41. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、失業対策の問題は、どうもあなたのおっしゃることから言うと、具体的には、失業対策事業を拡大する意思は今のところはない。予算が通ったから、失業保険の延長の問題についてもない。そのために、たとえば今問題になっている四百三十六億の棚上げ資金なんかを使ってやるという問題が今日国会で論じられておる。国民の納得する方向はどこかという建前からそういう議論が行われている。政府は、あっさりとそれを否決しましたけれども、それくらいに今の労働者保護国民生活というものは真剣に考えなきゃならぬときに来ているのじゃないか。どうか一つ労働大臣も、労政のベテランであるけれども、本来の仕事について、閣内でも有力な大臣でありますから、力を入れてもらって、労働保護というものを建前にしなければ経済政策を作らないというくらいのかまえを私はここで持ってもらいたいと思うのです。そうでなきゃ、私は、少しあとからお聞きしたいと思うのだが、ILOの関係についても、それが延長して、国際的な経済との関係についても、だんだんと日本の国というものは置いてきぼりになってしまうのじゃないかと、そういう感じを持っているわけです。ですから、ぜひ一つ労働大臣としては、その点、労働問題というものを非常に長期におやりになるようでございますから、しっかりと一つ労働行政と取っ組んでもらいたいということを私はお願いしておきます。経済の見通しなんかについては、もっともっと私は的確にお話を願いたいと思うけれども、きょうは、この問題はこれで打ち切ります。  問題は、事務当局に聞いておきたいのですが、失業保険の受給者が今五十万人おるわけです。失業保険の受給の切れた人ですね、切れた人は今どういう状態にあるかという統計があったら、お聞かせを願いたい。
  42. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) ただいま手元に統計がございませんが、以前に——去年でございましたか、一昨年でございましたか、失業保険受給終了者のその後の状況について調査したことがございます。これは、三ヵ月後と六ヵ月後について調査をいたしたのでございますが、的確な数字は覚えておりませんが、三ヵ月以内では、その六〇%以上が就職をしている。あるいは全然就業の必要がないといったような状況になっておりまして、たしか二週間以内というのも、ある程度のパーセンテージになっておったと思いますが、ただいま数字を持っておりませんので、後ほどまた御提出いたしたいと思います。
  43. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ぜひ明確に、二ヵ月や三ヵ月の問題じゃないのですから、これは、失業というのは、もうだんだん固定化していっているのですから、この実態をぜひ一つ資料で出してもらいたい。そうでなきゃ、表面だけやってもらったってどうにもならぬのですよ。
  44. 坂本昭

    坂本昭君 先ほど藤田委員経済政策に関連しまして、もう少し問題を明確にする意味において、私から大臣にお伺いいたします。  先ほどから大臣は、長期経済政策に沿った労働政策を推進するということをしばしば述べられて参りましたが、実は、この現在の経済の見通しについて、これは、与党と野党であれば、基本的に立場が違っております。私たちは、現在のこの不景気を過剰生産恐慌というふうに見て、そのためにまず減税をやれ、労働者には賃上げをやれ、社会保障充実して、国内の有効需要を高めて、この現在の不景気を克服すべきである、こういうふうに実は考えて、主張してきたのであります。もちろん大臣労働大臣として、与党の長期経済政策の線に沿うということは、これは当然のことでありますけれども労働大臣としては、またおのずから特別の見解を持って、この長期経済政策の中における労働政策を行う義務があると思う。先ほど藤田委員が繰り返して申されたところで、大臣の焦点がどうも合っていないような感じがするのです。それは要するに、われわれは与党であれ野党であれ、とにかく日本人の全体として生きていかなければならない。そのためには、完全雇用の条件というものはどうしても必要なんです。皆なん方与党の方では、これは、ことしは三十一億五千万ドルの輸出貿易第一主義で日本の景気を回復して、民生の安定をはかる、そう言っておられるのですね。ところが、先ほど来いろいろ藤田委員から指摘のあった通り、だんだんと近代工業ができてくる。たとえば、私は四国でございますけれども、四国に新しい近代パルプ工場ができておりますが、労働者一人当り一千万円くらいかかっています。つまり十億の設備投資をやって、百人くらいの労働者しか働いていない。ところがその新しい工場では、従前の、三百人ほど働いておったパルプ工場の二倍も三倍も能率を上げている。だから、そういうところでどんどん失業者がふえていく。それでその失業者を、先ほどはその他の面で吸収すると言ったのですけれども、よもやまた、満州国だとか朝鮮だとか、あんな所へ吸収することはなかろうと思う。あるいはまた、自衛隊とか兵隊の中へ吸収することはなかろうと思うのですけれども、実際はそれを吸収する方法がないのですよ。だから、当面の一当大きな具体的な労働政策だ。そのときに当って、ほかに工場を建てるとして、かりに今十万人の労働人口を吸収するために一人当り一千万円かかる近代工場を作れば、十万人なら一兆かかりますけれども、一兆かかっても、たった十万人しか収容することはできない。なかなかこれは困難というよりも不可能ではないかと思う。だから、就労時間というものを短縮して、少くとも日本人という名のつくところの民族すべての者に働く喜びと働く義務と、それによるところの報酬を与えなくちゃならぬ。だから、就労時間というものは一番大事な問題になってくる。生産性向上やあるいはオートメーション化や、こういうことについては、非常に与党の方が熱心であればあるほと——一昨年度の労働大臣ではないのです、昭和三十三年度の労働大臣でありますから、だから私は、もっと真剣にこの就労問題について御発言があると思う。ところが、何とか検討するということでごまかしてしまっているのです。これはどうも前々回の労働大臣、再度の出陣としては、はなはだ遺憾であります。特にこういうような大事なことについて、検討を十分にしないでおいて、できることといえば、弾圧よりほかに何もできない。こんなことでは、全く日本国民を侮辱したものと言わざるを得ないのです。どうかそういう点をもう一度、就労時間については、何かもっと具体的な御意見を一言言っていただきたいと思うのです。
  45. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 雇用量の増大ということについては、今お話のありましたように、私ども、やはり政府の策定いたしました長期経済計画、これは私どもは、今日の状況においては、こういう計画のもとに推進していくことがまず妥当であろう。しかし、その目標に到達するためには、非常な努力を要することである、これも私ども考えております。そこで結局、今、あなたの御指摘になりましたように、今の日本不況を克服するためには、働く人々の購買力が景気を振興する原動力になるのですから、そこで、貸金の値上げ、同時にまた、失業者を吸収するために時間の短縮、これは一応考えられるごりっぱな御意見だと思います。ただ、今は賃金の問題につきましては、あなたも御承知のように、国によりましては、やはり生産性伸びよりも賃金の上昇率の方が高い国々においては、いわゆるコスト・インフレというふうなことをいわれている。私が一昨年イギリスに行きましたときも、やはり完全雇用であるために、非常に購買力が旺盛である。そこで、これを抑制しなければならないというふうなことで、テレビだとかそういうものの月賦販売を許可制にするというふうなことをやっておりました。やはり私は、今の日本経済全体をにらみ合して、賃金というものはきわめて合理的にきめられるべきものだと思っております。そういうことについては、先ほど私が所信の表明の中でも申しましたように、労働省労働省として、やはり合理的賃金というもののあり方については、まったく公平な立場で研究をさらに進めて、その基礎になるべき体系を作っていきたい、こう思っておりますが、そのことは、今あなたのお尋ねの重点ではございませんようで、失業の問題について、雇用量を増大する意味においては、どうしても企業の時間短縮をはかっていくことが一番いいではないかということでありますが、そのことは、私が先ほど申し上げましたように、やはり生産性向上に伴ってその利益に均霑する、その一つの事柄として、当該企業において、やはり労働時間の短縮もそれぞれ考えられるでありましょうが、今、政府としてどういうことをして、制度としてそれをやらせるかというふうなことについては、今にわかにここで私どものどうするかというふうなことについては、これは慎重に検討しなくちゃならない。これは、先ほど藤田さんにお答えいたした以外のことを今申し上げる段階に来ておりません。
  46. 坂本昭

    坂本昭君 一言。今ちょうど、イギリスの何か例が出たのですけれども、私は、もう少し古い例として、アメリカの第一次大戦直後のあの不景気のときのルーズベルト大統領のやったことを申し上げます。ルーズベルトが、いわゆる社会保障制度というような言葉、ソーシャル・セキュリティという言葉を初めてあのときに作ったんですよ。そうしてあのときやったことは、減税、賃上げ、社会保障という具体的なことをやって、あの第一次大戦後の不景気を克服して、いわゆるニュー・ディールをやったんです。今、大臣は、もうあのときから何十年もたったこの新しい人工衛星の時代に、まだ完全雇用についていろいろと検討しなくちゃならぬ……、イギリスよりもおくれている。アメリカの第一次大戦時代よりもおくれている。これは、ちょっとおくれ方がひど過ぎると思うのですよ。これは不勉強です。だから、こういうことじゃいけません。私は、もっといろいろ聞きたいのですけれども、そういうことでは、はなはだ怠慢と言わざるを得ないのであります。でありますから、もっと大臣としては、弾圧やら何やら、いろいろやりたいこともあるでしょうけれども、もっとしなくちやならぬことがあるということ、それを頭に入れて、しっかりやっていただきたいと思う。  一応私は、これで質問を終ります。
  47. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと、今の問題に関連して。  言いたいことをみな言っておるようであるけれども大臣の答えはぴんときておらないと思うのですよ。それは、生産性向上については、政府は口を開けば言われる。しかも、莫大な金まで出しておられる。それと呼応する、雇用の問題、労働者の待遇の問題は、生産性向上が上ったならば、労使間できめなさい。これじゃ片手落ちじゃないかと思う。生産性向上にそれだけ力を入れられるならば、それと車の両輪のごとく、これに連れ立って、労働問題はどう解決すべきだということを言うべきじゃないか。それを、一方の生産性向上の方については、相当な資金も注ぎ込んで、政府がうしろから大いに応援して、やれやれということをやっておって、そうして事実生産性向上はずいぶん進んでいる。オートメーション化は相当な速度で進んでおる。生産は上っておる。それにもかかわらず、それに携わっておる労働者は少くなっていっておるのに対して、労使間で話し合いなさいというのは、あまり考え方が幼稚ではないか、一方的ではないかということをお互い言っておるようでございますが、それを一つお答弁願いたい。はっきりしていただきたいと思うのです。
  48. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私ども生産性に対する考え方というものは、企業の利潤を増して、企業者に利益を得させるのが生産性向上だとは考えておらないわけであります。生産性向上のないところには、労働者生活向上もなかなか困難であるし、ことに国際競争力ということを一番先に考えていかなければ、日本経済は維持していかれないのでありますから、その立場に立って、われわれは生産性向上というものは当然上げねばならぬ、その生産性向上によって受ける利益の均霑は、さっき申し上げましたように、一般国民が第一に受けるべきものだ、それから、経営者と労働者がその配分を考えられるべきものである、こういう考え方であります。あなたのおっしゃったように、労働者だけ置いてきぼりにするような生産性向上なんというものはあり得ないのじゃないかと思うのです。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは堂々めぐりで、それを聞いているわけじゃない、労働大臣に。その考え方が古いではないか、失業者がおらない、労働者が足りないようなところで生産性向上を叫んでおるような気持で労働大臣はおりはしないか。そこで今、坂本委員が言っているように、ニュー・ディール政策まで出てくるわけなんです。そういうところでは、生産性向上じゃなくて、まず失業者を救い、まず国民生活を安定せよと叫んだではないか、アメリカで。しかもそれを重ねたような、失業者はうんと出ておる、生産性向上はされぬ。これは、一番あとの線だけをとっておられはしないか。いわゆる失業者もおらないような国で、生産性向上を叫んでやられるのは、これはいいでしょう。しかし日本には、完全失業者は五十五万と今度出ておりますが、先ほどからもお述べになったように、六百万から八百万近い潜在失業者がおるのだというところに、そういうところだけを取り上げて、一つ政策はないではないか。それでは、長期経済計画でどれだけ失業者を吸収しますかということになれば、三十七年でもおそらく十万人くらいふえるでしょう。ちっともそれは政策になっておらぬじゃないですか。だから、逆立ちしてはおりなさらぬか、いわゆる二度目の労働大臣でございますから、今度はりっぱな政策を持ってお見えになったと思っておった。ところが、やはり逆立ちしてはおりなさらぬかというのがみんなの質問なんですよ。どうですか。
  50. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 今、労働大臣という立場でお答えいたしておるのですから、こういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、自由民主党で新労働政策というものを出しました。あれの原稿は私が書いたのでありますが、あの中に一番先にうたっておるのは、阿具根さん御指摘のように、まず日本の国家としてやるべきことは福祉国家の建設だ。それには働く人々の福祉向上考えなければ、いけないのではないかということが見出しであります。それが私の考えだ。そこで、今の生産性向上運動というものは、今、あなたのおっしゃったのは、生産性向上されると失業者が出てくる。これを完全雇用失業者のないところと同じような考え方でやってはだめではないかと、こういう御指摘でありますが、私は、さっき申し上げましたように、岸内閣が言っております新長期経済計画というものが打パーセント成功したとしても、なおかつ、雇用失業の問題というものは頭の痛い問題でありますと、こういうことを言っております。それは、今の西独やあるいはイギリスのような雇用関係にない、ことに、ここ十年間ぐらいは、生産年令人口というものがやはり一定の速度をもってふえていく、こういうところに日本雇用問題を扱う困難性の宿命があるのだと私は思います。しかし、人口がふえていくということは、必ずしもそれ自体少しも憂えることはないのでありまして、それに相当した収入を与えられる職業があるということなら、人口増加は決して心配はないと、私どもはけっこうなことだと思うのでありますが、その困難な問題を取り扱っているのが労働省であります。そこで、労働省としては、一応経済計画の見通しとしては、政府の策定いたしておる新長期経済計画がまず妥当だと思う。その間において、私どもは、生産性向上というものが期待されて、その向上に伴って、一時的には、さっき申しましたように、職を失う者が出るかもしれぬ。しかし、総合的にこれは生産性向上が行われて、そしてコストダウンがされることになれば、国際競争力というものはそれだけ増強せられるのでありますから、従って、設備の拡大ということもそこにおいて行われる。従って、一時的には配置転換のことを心配しなけりゃならないが、終局においては、生産性向上というものは結局労働者の職場を拡大する結果になるし、また、そういうふうに努めていかなければならない。新長期経済計画の範疇の中において労働大臣が苦慮いたしますのはそういう点でありますから、結局においては、皆さんが心配していただいておる理想と合致することだと思うのです。言葉が下手だから、理解ができないかもしれないけれども……。
  51. 阿具根登

    ○阿具根登君 いや、言葉が下手だからと言って、言葉が非常に上手で、合致しておるではないかと言いながら、合致していないでしょう。しゃにむに合致させようと、そういうようにこじつけに言っておられるけれども、それは労働大臣の言葉が上手なんであって、先ほどからも藤田君の言っておられるように、生産性向上が他の先進国でそれだけ進んでおるならば、他の先進国がとっておるような労働時間の短縮等はなぜとらないのかと、こういうことなんです。私の言っておることは、生産性向上が進んだから、進めばそれだけ失業者がふえるじゃないかと、それだけじゃなくて、五十五万も今まで一年間平均出ておるけれども、ほとんど五十万から五十五万もの完全失業者を持っておる。そのうしろには、各国で見られない潜在失業者日本にはいるのだと、この実態を見るならば、それじゃあなぜ、世界各国で四十時間とか四十六時間とかいって失業者を食いとめておるのに、日本はより以上の多くの失業者を持っておるのに、それに合う政策を持っていかないのかと……。究極の目的は一緒じゃないかと言われるけれども、三十七年に至っても六十五万人の完全失業者が出てくる。究極の目的は一緒じゃないんです。全然違うのです。それは、いつの時代になっても、今の労働大臣考えでいけば、いかに生産性向上が進んできても、私は失業者は減らないと思う。今の考えであるならば、これとタイアップしてこれと一緒に労働時間を短縮するなら、あるいは他の産業を持ってくる、開発するとか、長期経済計画をやるならば、どれだけの失業者をそこで吸収するのだ、五年間ではどれだけの失業者が減るんだ、どのくらいになるのだというようなやつがちゃんと出されないことには、ただ大臣は理想的にものを言われて、そうして、物がうんと出てくれば国民に均霑するのだ、それは、とりもなおさず生産機構を拡大して労働者を吸収する道になるのだと、こういう絵にかいたようなことをおっしゃっても、実際の長期経済計画の中にもそれは織り込まれてない。だから、それであるならば、一応計画を十年なら十年——五年計画と見ておりますが、五年なら五年で、どれだけ失業者をこれで吸収するのだ、どれだけ労働者生活が安定されるのだ、国民の購買力がどれだけふえるのだということを、もう少し具体的に示してもらわないことには、ただ六・五%国民の収入が上るのだというようなことでは、これは納得できない。そこで、大臣が言われるのと私たち考えているのとは違うのだと……。私は口が下手ですから、大臣のようにうまくごまかしできないのですが、どうなんでしょうか。
  52. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) どうも究極において考え方は同じだと、私は今の阿具根さんのお話を承わっても感じるのでありますが、まあ新長期経済計画政府が世の中にお示しいたしておる方向に基いて私どもはこの経済計画を進める、そして雇用対策の万全を期する、こういうことで一つ御了承を願いたいと思います。
  53. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 多少意見が出ましたから言っておきますが、大臣一つしっかり勉強してもらいたいと思うのだが、たとえば、生産性向上々々と言われて、たとえば戦後に産業の合理化という問題が出てきて、労働者しんぼうせいと言って、労働者全部犠牲になってしまった。資本家連中も、ほんとうに資本家だけもうけになりましたと自己反省しているというのだが、今度の生産性向上でも、今大臣がおっしゃるように、三分の一ずつ、経営者と労働者国民が利益を得るのだというような打ち出し方でその生産性向上運動というものが出されているけれども、日銀の一年間の統計なんか見てみても、その中で資本家の受けた利益というのは二五%以上、労働者の受けたのは、長時間オーバー・タイムで六%幾らにしかなっていないという現実ですよ。だから、いかにうまく言っても、その生産性が上るに応じて国民生活を守っていくという施策というものをやるのは、これは政府政治なんですから、この政治というものをしっかり把握してやってもらわなければ、労働者はだまされやしませんよ、だんだんと。だから、そこのところあたりは、もっともっと国際舞台の中で、十六産業国とか、六大産業の工業国と言われている日本の新しい近代工業化と言われるなら、そういうセンスをうんと労働行政の中に取り入れてもらって私はやってもらいたいと思うのです。今議論が出たから、最後に私は言っておきますけれども、そういう立場から、労働力配置をどうするか、経済の問題をどうするかということを、この次の機会にどうか明確に一つお答え願いたいと思います。  もう一つ私は、私ばかりでなんですけれども、尋ねておきたいのですけれども、ILOの問題について、盛んに労働大臣記者会見その他で触れられていると思うのですが、どういう工合にお考えになっているのか。私は、どうもいろいろの記事を見て、どうも信が置けないわけですが、この前の国会終末のときに、ここで約束されたことは、ILOの特別小委員会を作って、ILOの条約勧告、その他ILOのあらゆる問題の検討をするという特別委員会が作られることになっております。御存じの八十七号については懇談会の結論に従って処置をする、百五号の強制労働については批准いたします。その国内法の整備を直ちにはかって早急に処理をします。こういう工合に、ここで政府の代表、労働大臣との間に約束ができている。私は、どうも労働大臣の真のねらいというものはよくわからないものだから、一つILOの問題について、どうお考えになっておるか、聞いておきたいと思うのです。
  54. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 数年前に、衆議院でILOの条約をなるべく多くすみやかに批准すべしという与野党一致した決議案が出ました。そのとき、その趣旨弁明をいたしましたのが私でありまして、ILOの条約をできるだけ多く批准せよというのは、われわれの変らない考え方でございます。私がこのたび就任後、いろいろ新聞記事で、何か違った考えを持っておるような印象を受ける記事がありまして、多少御迷惑をかけた筋もあるかもしれませんが、あれは、官邸詰めの新聞記者諸君とか何とかという方々でなくして、労働省詰めの方々でありますから、私は、もし間違った筋道を説明しては悪いと思いまして、丁寧懇切に法律論をやったわけであります。それが誤まり伝えられた。これは、私の本意ではありません。私がそのときに御説明いたしましたのは、何か世間では考え違いしているのではないか、批准ということは、御承知のように、国会の同意を得るということが条件でありますから、国会議員の諸君の気持がそこになければ、政府がうかつにこれをすぽっと、同意を求めるという出し方をするというわけにはいかないじゃありませんが、こういうことを御説明したのです。で、その後事務引き継ぎのときの石田前労働大臣とのお話のときにも、それから石田前労働大臣の今まで答えられてきたこともよく伺いました。やはり労働問題懇談会という権威者が集まって、労働省でいろいろ研究をしていただいておる会があるのでありますから、そこに御相談をしておる。その結論が出たら、それに基いて善処するということを前労働大臣がお答えになった。そのことについては、私の方針はちっとも変っておりません。
  55. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ただその純粋の法律論というような格好で、いつも労働大臣は、そこらあたりが労働大臣発言のみそになるのかしらないけれども、本来、仲裁裁定の問題にしてもそうでしょう。ILOの問題にしてもそうでございましょう。国会が決議をする。単に行政府がとやかくいうことではないと言えば、それはそうであるかもわかりませんけれども、しかし、今日政府を構成している多数党である与党が内閣を作って、党が内閣を作ってその一般的な行政政策というものは、与党の内閣に与党がさしているわけです。まるで他人がきめることで、知らぬようなものの言い方というものは、私は、国民が聞いても、本筋……組織上の問題はそうでしょうけれども本筋的な問題とごっちゃにせぬように一つしてもらいたい。それは、法律的な問題だけを言えば、それはそうでしょう。だけれども、与党の多数党が内閣を作っているものがそこらあたりで、たとえば仲裁裁定の問題でも、僕は一部の新聞を見たのだけれども、あれは国会でどうのこうのというようなことを言うてみたり、この問題についても、あれは国会が独自できめる、そのことについては、組織上の問題はそうでしょう。だけれども、それを多数党である与党が内閣を組織してその行政権を担当さしておるということであれば、そこのところあたりは、よほどうまいこと使い分けをされるようですけれども、もっと熱意を持って、内閣がやはり与党に諮って実現をするということ、これが適切であるということだけはあいまいにせんとものを言ってもらいたい。そうでないと、われわれは、いや一般の社会の人は非常に今自民党の内閣と国会は別だと思っている社会人はおらぬと思うのです。ですから、そこのところあたりは一つ明確に、今後は、そういうどっちともつかぬような発言の仕方は社会の誤解を生みますから、もう少し熱意を持っていろいろな問題に対処してもらいたい。私はそう思うのです。この問題も、さっきの経済計画労働法関係がたくさんありますから、これは次に譲ります。  もう一つだけ聞いておきたいのは、賃金の問題について、こういうことを今大臣が言われた。「貸金の決定に当っては、単に労使間の関係のみではなく」ということを言っておられるのだが、これはどういうところをさしておられるのか。「国民経済」云々ということがあとに書いてございます。もう一つあとの方に、「従来より労働者賃金労働時間、雇用及び生産性等一連労働統計調査実施し、その実態の正確な把握に努めるとともに、諸外国における労働実情に関する資料をも整備して参ったのでありますが」と、こうおっしゃっておるのです。資料整備したということと、それをどう政治の上に実現していくかということが、これは私は政治の道だと思うのです。だから、この前の最低貸金のときにも出て参りましたように、私は、労働者整備されたことと、それから法案に出てくることと違うのか。世界の四十九カ国の最低賛金をきめている実態は、四つの条項に分けて、裁判方式と最低賃金審議会方式、それから一律方式、地域協定方式という工合に、いずれも労働者が入って賃金をきめているということを書いておるけれども、出てきたやつはああいう格好の法案が出てくるわけです。だから私は、資料をお集めになって、その資料というものは外国の方法によって、ピンとどこの国と一緒になるかならぬか、それは日本の自主性があるでしょうが、趨勢というものはやはり的確に把握して、一つその判断を下していただきたい、こう思うのです。さっきの「労使間の関係のみではなく」ということはどういうことをさしておられるのか、そこのところだけ聞いておきたい。
  56. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、基本的には、勤労しておられる人々のところに購買力をできるだけ多く持たせるということは、その国の景気を刺激する原動力になることでありますので、その事自体は非常にけっこうなことかと思います。ただ、そのことが国民経済全般にどういうふうな影響をもたらしてくるか、こういうこともやはり考慮に入れて考えなければならない、こういう意味なんでございます。それから、従って今労働省では、私が就任後も特に希望いたしておるのでありますが、統計調査というものをうんと充実いたしまして、そうして日本の今の経済状況のもとにおいて、賃金というものは一体どういうような状態にあるべきであるかというふうなことを勉強しておる、こういう意味であります。それがまたすべての考え中心になるのじゃないか、こういう統計資料整備したい、こういうことであります。
  57. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 賃金をきめるのに、労使間の関係のみでなく、労使間の自主的な結論じゃなしに、政府が干渉するということですか。
  58. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) そういうことではないのです。つまり、常に民間でも、それから官庁側でも、貸金の問題についてとかくトラブルもありますけれども、やはりたとえば日本の平均賃金というものは、アメリカに比して何分の一だとか、英国に比べて何割低いというふうな数字がよく出て参ります。しかし、それは一体為替レートだけで換算して、そういう比較をすることが果して正しいものであろうか。例の食糧賃金というふうなものにして、パン一ポンド買うためには、ソ連では幾ら、日本では幾ら、アメリカでは幾らというふうな、そういうことを比較検討をしておるものもございます。従ってそういう賃金体系の基礎になるような統計を、日本政府としては、やっぱり多くの産業人にも、それから人事院などにも、参考資料としてそういうものを整備することが必要ではないか。こういう統計調査が完備しておって、それを土台にして、やはり賃金体系というものがじみちに論ぜられることが必要なことだと私ども考えている。そういう統計がまだ日本には十分完備しておりませんから、そういうことについてできるだけ勉強しなければいけない、こういう意味で、政府が民間産業賃金協定にくちばしを入れる、そういうようなことでは全然ないのであります。
  59. 阿具根登

    ○阿具根登君 時間がありませんから、一、二御質問申し上げますが、先ほどのILOの純法律論についてちょっとお伺いしたいと思うのです。法律論で言われるならば、この批准は国会がやるのであるから、政府が云々と言うのは間違っておる、こういうことを言われる。私もその通りだと思うのです。その法律論で行くなら、政府は、批准をするために国会に提出する義務がある。それは言っておられない。そのところは、今度は政治論になってきている。だから、多数政党を持っておる与党の意見を聞いて、与党の気が熟したならば出しましょうと言うのは、法律論をはずされていると私は思うのですが、その点、どういうふうにお考えでしょうか。
  60. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私が申しましたのは、政府はなるほど党と一体ではありますけれども、党の方で、こういうILOの八十七号についてやはり勉強しておるそれぞれのグループがございます。そういう人たちの御意見も、十分に私どもは提案をいたすときにしんしゃくをして、そうしてまた私どもが、必要とあれば、そういう方々にも同調するように願って、そうした上でこれを出して、そして批准を仰ぐなら批准を仰ぐという手続をとるのであって、簡単に労働大臣が腹をきめたから、そいつはすぐできるのだというふうな安直なものの考え方はすべきでないということを丁寧懇切にしゃべったものでありますから、それが誤解をされたということであります。
  61. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると労働大臣は、労働大臣の性格と、それから自民党の労働政策委員会長ですか、二つを混同して言っておられる。都合のいいときには法律論を言われ、都合が悪ければ政治論で、これはそういういろいろなグループに相談してやらなければできない、これは、実際政府が出されても、自民党が反対すれば通る問題でもないし、また自民党の政府であるならば、これは相談するのは当然のことだ、私はそう思うのです。そこに法律論と政治論と混同されて、そして倉石労相が三つの色分けを使っておられる。一方では自民党の労働対策部長か何かの性格でものを言っておられる、一方では労働大臣としてものを言っておられる、こういうふうに私は聞えるのですよ。だからこれは、政党人として非常にむずかしいところであるかもしれないけれども、純法律論として一本でやられるならば、やはりこれは、政府の性格と義務という問題をはっきり言わなければならない、私はこう思うのですが、その点いかがでしょうか。
  62. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私の考え方では、やはり政府としては、労働問題懇談会のお話があれば、それによって善処をいたしていきたいと思っておりますが、そういうときには、やはりこの八十七号条約に限りません。今まででも、その批准を願うときには、大体政務調査会あるいは労働問題特別調査会等にるる説明をして、これは政府が今回批准すべきものであると考えるから、提案をするからよろしくと、そのことは、阿具根さんの方でもやはり同じだろうと思います。委員長がおきめになっても、やはり大衆討議でそれが通らないこともあり得るのでありますから、政府がそういうことがあっては醜態であるから、そういうことは十分そういう手も尽さなければならないと、こういう説明が安直に一行だけ、批准せずとかなんとか出てしまうので、非常にセンセーショナルな記事になるということでありますが、私が申したのはそういう意味であります。
  63. 阿具根登

    ○阿具根登君 ILOの問題は、八十七号にほとんどしぼられた形になっておるけれども、たとえば、四十六号であったかと思いますが、鉱山、炭鉱等における坑内に勤務する者は、入坑から出坑まで、坑内の時間は七時間四十五分でなければならないと、こういう問題等もあると思うのです。またその他にも、きめようと思えばたくさんきめられる問題があると思うのですが、そういう点について、今後どういうふうにお考えになっていくか、歴代の大臣は、ILOの決定事項はあまりに粗末に扱っておられるのではないかと思うのですが……。
  64. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私は、今御指摘の条約についての知識をあまり詳しく持っておりませんが、趣旨としては、御承知のように、ILO条約を批准しておる数は多い方の部類であります。多分二十四ぐらいは批准してあると思います。そこで、先ほど申しましたように、あとう限りILOに参加しているのでありますし、ILO条約については、できるだけ数多く批准をしたい、こういうことは変ってはおりませんです。
  65. 阿具根登

    ○阿具根登君 ILOの問題は後日に譲ります。  ただいま説明願いました中に、駐留軍関係等の失業者の多数発生地域においては、総額百三十八億に及ぶ公共事業を重点的に実施すると、こういうことが言われておりますが、この百三十八億というのは、一般失業対策、緊急臨時就労対策等の別ワクで百三十八億だというふうに私は考えておるのですが、予算でもそうなっておると思うのですが、そうですが、一応お尋ねしておきます。
  66. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) この百三十八億は、駐留軍関係その他の者も含めまして、公共事業臨時就労対策事業、特別失対事業であります。
  67. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは、一般失対事業とか臨時就労規則とかというのと別ですか。別ワクの百三十八億ですね。
  68. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 一般失対事業に全然別でございますが、臨時就労あるいは特別失対、これは全部入っております。
  69. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこにごまかしがあるので、百三十八億というやつをわざわざきめてもらっても、そういう緊急失対とか臨時就労に今までやっておるそのままを認められておる、こういう傾向があるわけなんですよ。そうしたら、百三十八億というのは、これは絵にかいたもちであって実際に今までやっておるのとちっとも変らぬという結果になってくるわけですよ。これは、こういう多発地帯であるから、特別に措置として百三十八億出したのだという、こういうのならわかる。ところが、実際やっておるやつを肩がわりして、多発地帯だから特に優遇されたかと思っておると、今までとちっとも変っておらない。こういう実情ができておるのはどういう理由であるか。
  70. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) これは、予算におきましてたとえば失業者の発生状況その他に応じまして、本年度におきましても、公共事業において九十六億増額になったわけでございますが、これが決定いたしました後におきまして、特に重点的に失業者の多数発生する地域におきまする計画をこの中で集中的に取り上げる、こういう形になっておるのでございます。
  71. 阿具根登

    ○阿具根登君 集中的に取り上げるようになっておりますが、現実を見てみると、労働省はこういう対策を持っておるのだと言っておられるだけであって、実際は建設省や農林省の言うがままになっておって、ちっともプラスになっておらないと、こういう現実が出てきておる。そうすれば、これは多発地帯についてこれだけ失業対策についてわれわれは考えておるのだ、公共事業をこれだけ重点的にやろうと言っておられるけれども、重点的な公共事業、多発地帯の特別措置事業だというようなことを言われておるけれども、実際は、今までやっておられるものを、それを多発地帯のこの百三十八億で振りかえられておる、こういう現実ができておる、こういう問題は、どういうふうに解決しようとされるのか。
  72. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今お話のように、振りかえられておると申しますか、そうした公共事業なり臨時就労、これを特に重点的にそうした失業者の多数発生する地域において実施するように持っていくというのが、運用としては最も大切なことであろうと思うのであります。ただ、従来の状況を見ますと、一部の地区についてもございますが、一応のそうした計画がきまりました後におきまして、状況が変って失業者が多数発生した。従いましてその地区における実際の事業と、それから吸収を要する人間との間に食い違いがある。あるいはまた、場所的にも多少不十分であるというような点が現実にあることは、われわれも承知いたしております。従いまして、こういうふうに指定された地域につきましては、今後の計画等におきまして、早期にそうした計画を立てることによりまして、実際とマッチしたような吸収計画になるように、今後はわれわれも努力して参りたいと思っております。
  73. 阿具根登

    ○阿具根登君 これもあとに回しますから、一応要望いたしておきますが、大臣が今国会の冒頭に、百三十八億の金を駐留軍その他の多発地帯に公共事業として重点的に実施するためにこの金を出したのだと、こういうふうに説明されておるわけなんです。ところが、事実はこれはそうなっておらない。百三十八億というのは相当減ってくると思うのです。そういう点を、一つこれは資料で御提出願いたいと思うのですが、現在、今のとどれだけ違っておるのか。百三十八億はどう出されておるのかという問題を、資料によって一つ御提出を願います。  それから、もう一点だけ簡単に質問いたしますが、労働者福祉施設として、労働金庫労災病院総合職業訓練所云々というのがございますが、なるほどその通りでございますが、労働者福祉施設として労働金庫を作っていただいておりますが、この労働金庫に対して、政府がより以上これを育ててやるという気がまえがあるかどうか。そのためには、たとえば厚生年金等は、数千億の金が今大蔵省の方にあると思う。このうちの一部は、これは労働者が出した金である。そういう金こそは、労働金庫に預け入れるべきではなかろうか。労働者福祉施設として作った金庫であるならば、労使双方で出した金であるならば、その二千億余りある金を、全部ということは、それは反対もあるでしょうが、労働者が出したくらいの金額は労働金庫に預け入れてはどうかと、こういうふうに思うのですが、労働大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  74. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 私ども労働金庫法を決定いたしますときに、できるだけ労働者福祉考えるという意味で、これは法制化する方がいいだろうということでいたしましたことは、御承知通りであります。ただ、今の御指摘のように、具体的な問題につきましては、御承知のように、直接監督が大蔵省でありますし、なお相談をいたしてみないと、私にははっきりお答えをいたすことがただいまはできない状態であります。
  75. 阿具根登

    ○阿具根登君 それは、直接担当は大蔵大臣であるし、これは再三問題になったのであるから、これは、直ちに持ってくるということは、大臣としては言えないと思うのです。しかし、大臣としては、労働省所管として、労働者福祉施設として作ったのに、労働者が出した金がそれだけあるとするならば、これは持ってきたいのだというくらいの考えは、私は述べてもらってしかるべきだと思う。そうしてそういう考えを持って大蔵省に当らなければ、何の大蔵省が金を出しますか。それは、労働大臣がそういう考えであったら、これは一銭も大蔵大臣は出しゃしませんぞ。なんぼ岸株式会社といっても、岸株式会社とまでいわれている岸さんの弟さんが出すわけがないじゃないですか。そこで労働大臣は、岸株式会社の中にも、労働大臣としてはちっと骨が違いますぞというところで、このくらいのものくらいやってみせるというような考えがなければ、あなたも岸株式内閣の一員だということになると思う。私は労働大臣だけはそんな方でなくて、もっと気がまえのある、労働者福祉のためには力を入れていただくと思うので、こういう質問をしたので、一つ取るように努力をお願いいたします。   —————————————
  76. 久保等

    委員長久保等君) この際、理事補欠互選についてお諮りいたします。  委員外転出のために欠員となりました前理事木島虎藏君の補欠互選を行いたいと存じます。互選の方法は、成規の手続を省略して、便宜その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。それでは、私から柴田栄君を理事に指名いたします。  午前の質疑はこの程度にし、午後は一時三十分より再開することとして、休憩をいたします。    午後零時五十五分休憩    ————・————    午後二時二十二分開会
  78. 久保等

    委員長久保等君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続き、一般労働問題に関して質疑を行います。  まず、日雇労務者期末手当等について質疑を行います。御質疑を願います。
  79. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 大臣にお尋ねしたいのですが、大臣は、この日雇労働者、全日本自由労働組合から、夏季手当、賃金の値上げその他の八つの項目についての要求がされていると思うのです。この項目について、大臣所見を承わりたいと思うわけであります。  第一の問題としては、夏季手当の問題なんですが、今、夏季に三日、年末に八日という手当が支給されております。この日雇労働者賃金というのは、御承知通り三百六円で、地方に行きますと、非常に低い貸金で働いておる。それも具体的には、二十一日就労ということになっておるのですけれども、実際には二十一日就労をしているところが少くて、十五日とか十八日くらいしか就労をしていない。これは、失業者の多いところが目立つわけですけれども、そういう状態であって、地域的に賛金が地方では安いということで、あわせてこの三日分の夏季手当で、人並みの盆暮れの、貧しいぎりぎりの生活をしておって、盆暮れの、人並みといかなくとも、少しは潤う状態に自分の生活を置きたい。また周囲の中に置きたい。これには、どうも三日間ではその条件がそろわないし、何とか、そう多くは要求をしないけれども、世間の労働者を見ると、一カ月とか、これは月雇労働者は特別職になっておりますけれども、公務員も〇・七五、これでも今少いという要求や戦いが行われているわけでありまして、この三日分じゃとても少くて、われわれとしてはこれは見ていられないので、この全日労の要求である七百分支給をするというお考えがないのかどうか。この七日分支給という夏季手当に対する考え方はどういう工合にお待ちになっておるか。こういう点を一つ所見を承わりたいと、まず第一に思います。
  80. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 失対事業の夏季手当につきましては、いろいろな事情を総合いたしまして、現在の三日というのを、今回も昨年通り実施いたしていきたい、こういうふうに考えております。
  81. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 昨年通りに支給していきたいというのですが、実際に三日というと、二百五十円ぐらいですと、七百五十円ぐらいにしかならぬ。もっと低いとこもあるわけですが、そういう状態で、この夏季に三日分という手当については、政府はどういう工合にお考えになっておるか。盆のときにおけるこの夏季手当の三日分、これだけの金額を支給されるのですけれども、それで何かどういうことがたとえばできるというお考えなんですか。その点の考え方一つ聞かしていただきたいと思うのです。
  82. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 日雇いの方々に対する政府の夏季手当云々の問題につきましては、今申し上げましたように、手当という形で出すことはできないことは、もう御承知通りでありますが、そこで、従来通り慣行に従って、三日分の就労をふやすという形で去年は取り扱いました。いろいろ研究いたしました結果、本年も昨年程度のことをしてあげたい、こういうふうに考えておるのでありますが、私どもは、今日の日本経済状態で、できるだけその金額が、入手される金額が多いことを希望することはもちろんでありますけれども、現在の状況では、やはり昨年通りの処置をとることが最大限度の努力である、こういうふうに御了解を願いたいと思います。
  83. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これは、二十八年から三日分支給ということになっておるのですけれども、昨年通り三日分という、その根拠を聞きたいわけです、私は。たとえば、何を根拠にして三日分というものを支給されておるか、これを労働大臣から承わりたい。
  84. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) いわゆる夏季に支給するものにつきましては、この前も国会において両院でいろいろ御相談願って、三日ということになりまして、本年は、やはり国家公務員に対する夏季手当の支給も前年通りということでございますし、失対事業関係者に対しても、やはりいろいろ研究いたしました結果、昨年程度よりいたし方がない、こういうことであります。
  85. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 昨年程度よりいたし方がない、三日分しか処置がないとおっしゃるのですけれども、これはもう昨年から問題になっておるところなんです。しかし、たとえば二十八年のときに、要するに夏の期末手当は、一般職の公務員では〇・五であって、今は〇・七五というものが支給されておる。これに準拠して三日というものをきめるというなら、それに比率してこの問題も考慮しなければならないという事態が一つ出てくるわけです。ですから、それと関係ないということできめるなら、三日分という金、七百円か、せいぜい八百円くらいの金が、それじゃどういう趣旨のもとにこれを出されているかという問題になってくると、あまりにも気の毒じゃないかという議論がここに出てくるわけなんです。いずれのものを基礎にして、この三日分というものがきめられているのか。それをまず私はお聞きしたいと思うのです。
  86. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) その辺の経過につきまして御説明申し上げますが、失対労務者につきましての年末手当というものは、日々就労する者に対しまして、日雇い労働者に対しましても、民間にはこういう制度はございませんし、そういう関係からいたしまして全然、昭和二十五年、二十六年等におきまして、国家公務員に年末の手当等が支給せられた時代におきましても、そういうものはなかったわけでございますけれども昭和二十七年の暮れ、十二月に、衆議院労働委員会におきまして、これの決議がなされまして、国家公務員に対しても、ちょうどその年に増額の措置がとられたわけでございますが、そうした一方に状況があり、失業対策事業の労務者につきまして、その生活実態にかんがみて、何らかのやはり賃金増の措置をしてやるのが適当ではないかというようなことからいたしまして、昭和二十七年の暮れに、年末特別措置として、三日分というものがきめられたわけでございます。翌二十八年に至りまして、国家公務員に対しまして、二十八年におきましては、夏の手当におきまして〇・二五増、それから、冬の手当におきましてさらに〇・二五増ということになったわけでございます。その際におきまして、二十八年の夏に、前の年の年末にきめました三日とにらみ合わせまして、三日というようなことがきまったわけでございます。自後、その後年末の手当につきましては、大体国家公務員が〇・二五程度上るときに、一日分づつを増額してきたような状況になっております。ただ、昨年並びにその前におきましては、〇・一五程度でございましたけれども、われわれはこれを一日ということで、一日増額をいたしたわけでございます。夏季につきましては、その後国家公務員につきましても全然こうした措置も行われませんでした。われわれといたしましても、これを三日分がどうである、三日分がどうであるという、いろいろ議論がございますけれども、こうしたいきさつをたどって参りましたので、これにかわるべき適切な基準もございませんので、今日までこのままになってきておるような状況でございます。
  87. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 二十七年から二十八年に対して、国家公務員の〇・二五がふえた。二十八年の夏に三日分を支給した。その三日分は、金にしたら、私がここで申し上げるまでもなしに、七百円、八百円なんです。私は、暮れが今八日分になっておると思う。八日分で、まだこれだけではとても問題がある。そういう状態にあるわけですが、夏が三日分、この日雇い労働者の分析をしてみますと、午前中の論議にもあったように、今五十万の登録者がおって、適格を受けた人が三十六万人ですか、それくらい、その五十万の失業者の八割までがもう二年も薫年も固定化しておる。だから、労働力調査の問題もおかしくなってくる。保険をもらっている者が五十万で、ここが四十万というと、そこで九十万になるんだが、そこらの失業問題はあとに譲りますけれども、そういう工合に、ここでも日雇い労働者の登録者というものは、八割まで固定をしておる。それで、その登録した人に対して、非常に厳格な、一戸一人であるとか、または生活の主体者であるとかいう適格のいろいろな条件の中で登録されて、そういう工合になってきておるわけなんですが、そういう固定化しておる失業者の方々が、やはり民間就労もありますけれども、国の事業として失業対策事業、主として公共事業失業対策事業、みな公共性を持っておる事業というものが私は主体をなしておると思うのです。地方自治体が主体ですけれども、たとえば、区画整理であるとか、道路の問題であるとか、治山治水であるとか、国民生活に必要な公共事業の中で、この方々がやはりほとんどが働いておられる。そういうことになってくると、やはり日雇いであるけれども、国の直接の雇用関係にある準公務員といいますか、特別職という、地方公務員法では特別職という形の中に入っておると私は記憶するのですが、そういう方々に三日分ぐらいをやっておいて、去年の処置だからこうだということだけでおいておけるかどうか、これこそほんとうに政治問題として人間生活を守っていく政治問題として政府は真剣に考えるべき問題ではないかと、私はそう思う。今のような、昨年並みだということだけで、何らそこに合理的な説明、解明がないままに、三日分だということで突っ張る。政府立場から突っ張ることはいいのですけれども、実際の五十万の登録の失業者の方々は、ほんとうに血の出るような苦しい生活をしておられる。これをこのまま置いておいて、昨年並みで、もう知らぬのだということでは、少し行政のあたたかみというものが私はなさすぎはせぬか。だからこの問題は、もっと真剣に処置をする。今ここで私たちがこの質疑をするという問題より、政府自身がこの問題とほんとうに取り組んで、日雇い労働者生活をどう守っていくか、後ほど出て参りますけれども、就労の問題や、たくさんありますけれども、この夏季手当の問題は、私は真剣に政府としてはこれと取り組んで考えてもらいたい。そういう点についてどうなんですか、労働大臣
  88. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 失対事業に就労しておいでになる方々に対する思いやりというものは、私どもも十分持っておるつもりでありますが、現在、この失対事業のいわゆる夏季手当という問題につきましては、いろいろ検討いたしましたが、やはり前年通りにいたしたいと、こういうことできめておるわけであります。
  89. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、日雇いの労働者の組合の全日労との間に、いろいろと事務当局を通じて、この実情が訴えられたと思うのですけれども大臣もきょうお会いになって、いろいろ事情をより詳しくお聞きになると思うのですけれども、私はその中で、大臣の気持というものを十分に言ってもらいたいと思うのだが、実際問題として私は、だれが聞いても、事務当局も何回もこれを聞いておられると思うのだが、このような状態で置いていっていいのかどうかというのは、ほんとうにそれは重大な問題だと私は考えておる。だから、その立場から、これはもう根本的に一つ夏季手当の問題は考え直してもらいたい。いずれ組合の方、代表とお会いになるときに、十分に懇談をしてもらいたい、私はそう思う。そうでなければ、その状況いかんによって、私たちもこの問題については、院議で何とかきめるような方法をみんなで努力しなければならぬというところに今日来ているんじゃないか、そういう工合に思います。だから、特別の配慮を労働大臣一つこの問題についてはお願いをしておきたいと思います。  次の問題は、就労の問題なんですが、これは、局長に聞いた方が詳しくわかるかもしれませんが、二十一日就労だといわれておるけれども、実際問題として地域的にアンバランスがあることをどういう工合に調整していくか。二十一日についてアンバランスがあり、そうしてまた、二十一日の質金では食っていけない。だから、少くとも普通の社会で行われている二十五日、月二十五日ぐらいのところの就労確保というのを労働省はやはりやるべきじゃないかと私は思うのですが、その点の見解を一つ聞かせていただきたい。
  90. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 就労日数の問題につきましては、たびたびこの委員会におきましても御要望があり、われわれといたしましても、できるだけ今お話のような線に沿っていくということに努力いたしておるところでございますが、本年度の予算におきましても、漸進的にこれを増加していくということに努力して参ったのでありますが、遺憾ながら、本年度におきまして失業者の救済のワクを広げる必要がありましたが、予算関係上これが実現できなかったので、ただいま藤田先生のお話のようにアンバランスが、あるところは十七、八日、あるところは二十四、五日だといったような状態は、われわれとしてもあってはならない。いろいろな事情があるかもしれませんが、少くともわれわれはその日数を伸ばしたいのでございますが、本年度におきましては、予算的に二十一日ときまっておりまして、二十一日の線はどうしても最低線として確保していきたい、こういうふうに現在われわれは考えております。
  91. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると何ですか。二十一日まで達しているところの就労の状況……。私の申し上げているのは、二十五日というのがほんとうに妥当である。それだけいっても八千円、一番高いところで八千円ぐらいにしかならないのですから、低いところになれば、二十五日行ったって六千円足らずほどだと思う。そういうことになると、二十五日就労の機会を作るというのは大原則ですけれども、今の、たとえば政府がきめている二十一日就労ですね。昨年は二十二日でしたね。一昨年ですか、それはどうですか。二十一日に達しないところについてはどういう処置を講じられているか、地域的に、府県別に……。
  92. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今お話のように、非常にアンバランスがあるところにつきましては、これを調整いたしまして、できるだけ二十一日に達しないようなところが二十一日に達するようにいたしたいと思っております。なお、就労日数につきましては、二十二日とおっしゃいましたが、予算としては二十一日ということにずっとなって参っておりますので、そのワク内におきましてわれわれはやっていかなければいけないわけでございますので、できるだけそのワク内におきましてアンバランスが起らないような処置はとって参りたいと思っております。
  93. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ところが、たとえば二十五日就労しているようなところもありますけれども、それは、民間の就労が多くて、たとえば処置としては十五、六日、民間就労であとをカバーして二十五日になるというようなところがある。その民間就労の全然ないところでは十七、八日せいぜい、二十五日稼働の一般府県より、より以上二、三日多く予算を組んでいても、十七、八日でとまってしまう。そういうところに、私は高額の補助とかなんとか処置があるはずだと思うのだが、国家が特別失対で全額負担してやるくらいのかまえというものが出てこなければ、地方、府県の自治体の財政力ではまかないきれない問題がある。これは、やはり今アンバランスの問題の根本なんだと思うのですよ。その点は、今後どうしてそれをバランスしていこうとしているのか。たとえば、府県の負担とならずに、国が全額負担をしてやっていく、こういうことをしてあげなければ、アンバランスというものがバランスにならないと思う。そういう特別な処置を労働省としてはとろうとする気があるのかどうか。これをやらなければ、バランスにするといったところで、バランスにならないと思うんですよ。一つ大臣の御所見を承わりたい。
  94. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) その点は、先ほど政府委員からお答えいたしましたことと同じお答えになると思いますが、就労日数のことにつきましては、実は、私どももよく各地方の実情を知っております。今年度の予算は、もうすでに御承知通りでありますが、こういう問題については、さらに労働省としては十分に検討いたしていく必要の多いことだと思っております。
  95. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 検討していく問題が多いことだと言われるけれども、実際問題としてこれはずっと続いているわけでしょう。そういう赤字府県といいましょうか、自治体に力のない府県というのはずっと続いてきているのですから、こういうものにはどういう処置をするということがはっきりしてこなければ、検討するだけで過ごしたのでは困ると思う。
  96. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) ただいま藤田さんの御指摘になりましたように、財政状態が悪い、しかも失業者が多いというところで、それだけの財政力、経費が出しきれない。従いまして、就労口数が一十一日ですら確保できないというような状況にあるというようなことも承知いたしているわけでございますが、これに対しまして、労働省といたしましては、現在一応負担の問題といたしまして、二つの方法で措置いたしている次第でございます。  一つは、財政の状況の悪いところにつきましては、いわゆる高率補助制度を適用いたしまして、国家負担分につきましては、三分の二の補助率を五分の四ということで措置をいたし、昨年度に一億九千円円の予算措置をいたしたわけでございます。  もう一つの方法といたしましては、失業者の発生している状況によりまして、地方の財政の基礎となりまする普通交付税の算定の中にその点を含ませてあるわけでございます。本年度におきましては、自治庁と交渉いたしまして、昨年度におきますよりも約二割以上の増額をこれについて見たのでございます。従いまして、地方の負担分から言いますと、約九〇%まではこれでカバーできるというような状況になっているわけでございます。この点につきましては、その両面において、地方の財政が苦しくて、しかも失業者が多い、負担をよけいしなければならぬという点につきましては、今後ともこの両面から考慮して参りたい、こういうふうに考えております。
  97. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それで、実際問題として、二十五日就労ということについては、どういう工合にお考えになっているのですか。
  98. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 二十五日就労ということにつきましては、われわれもそれが理想とは存じますが、今直ちにこれを実現することはきわめて困難である。できるだけ今後の努力によりまして、漸進的に解決して参りたいと思っております。
  99. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つ突っ込んで聞きますが、今後の問題というのは、今会期中にこの問題をやるということですか。
  100. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 先ほど来申し上げましたように、本年度予算におきましては、二十一日ということで予算基礎ができておりますので、われわれが直ちに、予算がきまってから三カ月しかなりませんので、これを三十五日にするというわけには、われわれ事務当局としては参りません。今後この一十一日を予算的には二十二日にするというようなことで、来年度以降の努力に待たなければならないと思っております。
  101. 阿具根登

    ○阿具根登君 今、藤田君の意見に御答弁願ったのを聞いていると、もうこれはできぬできぬの一点張りのようですが、倉石労働大臣は、非常に議会の決議を御尊重下さる方で非常に私御信頼申し上げているので申し上げるのですが、昭和二十八年に公務員の期末手当の問題がきまりましたときに、参議院の労働委員会において決定したことを申し入れてあります。これは御承知通りだと思いますが、これは、与党の方々も野党も全部一致してきまった問題でございまして、結論だけ申し上げますと、日雇い労働者生活を改善するために、全国平均賃金の日額を三百五十円に引き上げること、二番目に夏季手当を十五百分支給すること、三番目に、稼働日数を二十五百にすること、四番目に、日雇失業保険の待機期間六日を撤廃すること、これが実現のために所要の措置を講ぜられたい。こういうことを委員会は満場一致で政府に申し入れておるわけでございます。ところが、それから今日に至るまで一歩も前進しておらないということは、どういう理由によるのですか。
  102. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 申し入れというのは、本院の労働委員会の……。
  103. 阿具根登

    ○阿具根登君 御存じないようですから、読み上げてみましょう。  「参議院労働委員会は、昭和二十八年七月八日の委員会において、失業対策事業の労務に従事する日雇労働者の待遇を改善する必要を認めて、別紙の通り要望することに決定したから申入れをする。」こういうのがあるわけです。その要望の内容は、「緊急失業対策法は、占領下経済九原則の強力な実施により発生を予想された大量失業に対処し、民間事業等に就職するまでの暫定期間、失業者を救済する目的を以て制定されたものであるが、最近の失業対策事業は、その内容が質的に向上して労務規律は確立され、労務形態は民間一般産業と異なるところなく、経済効果は著しくあがり、単なる臨時の失業救済対策として取扱う時期は過ぎ去ったと思われる。従って本委員会は、緊急失業対策法をはじめ、日雇失業保険制度実情に即するよう改正するため、再検討する必要があるものと考える。  日雇労働者生活を改善するため云々……。」こういうのが委員会の決定によって出されておるはずでございます。これを御存じないとすると、委員会の決定は一顧も与えられなかった。それから、今日まですでに五年間一つの進歩も見ておらないということは、委員会では何を決議しても、何を要望しても、時の為政者がいれるところとならなければ何にもならない、こういう結論になるものと思うのですが、この点について、大臣はどういうお考えをお持ちでしょうか。
  104. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) その昭和二十八年の委員会の決定ということについて、私、今その資料を持っておりませんので、お読みになったことで承知をいたしました。至急にその当時の事情を調べて、お答えいたしたいと思います。
  105. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣が前のことを御存じないとおっしゃれば、それはそれで、あとで調べていただくとおわかりになることと思いますが、それにしましても、本委員会がすでに四年前、ちょうどこの夏季手当が審議されておる七月にこういう問題を出して、年年、この期末手当の時期になれば、政府にして申し入れをしてきた。こういうことをお考えになるならば、たとえ私どもが要望した三日が十五日にならなくとも、現在の失対労務者の生活困窮の実態から考えてみても、私は、現在要望されておるような線くらいは考えらるべきではなかろうか。また、それが予算上できないということになっても、政府が直接管掌しておるこの失対労務者に対して、もう少しあたたかい手を伸べなければならないのじゃなかろうか、こう思うわけなんです。先ほどの、午前中の質問にもありましたように、失業者はまだふえるということをはっきり確認されておる、そうして失業対策となれば、これは前年度の通り、こういうことで切り捨てられていったんでは、私は、これは社会不安のもとにもなってくると思うし、実際私が読み上げた中に言っておるように、すでに失業者というものは固定されてしまって、民間の作業と何ら変りない作業をやっておるとするならば、民間の作業の相当上ってきておる今日、何の裏づけもないこの失対労務者に対して、夏季手当を少しぐらい上げるようなことは、倉石労働大臣としては、人情大臣の名にふさわしいように、そのくらいの政策は、この際私は打ち出してもらって当然ではなかろうかと思うのですが、いかがですか。
  106. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) こういう問題について直接一番頭を悩ましているのは、だれよりもやはり政府であります。政府は、やはりいろいろな角度から研究をいたして、そして予算的にもできるだけの努力をし、予算編成のときには、労働省は非常な努力をして、こういう予算の獲得にも努めていることは、御承知通りでありますが、現在の段階では、種々検討いたしました結果、いわゆる夏季手当云々の問題は、昨年通り以外には処置のしょうがない、こういうことでございますから、御了承願いたいと思います。
  107. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういうことならば、わざわざこれを取り上げて御質問申し上げる必要もないし、予算がきまっているのであるから、もうすでに出す必要もないのだ。こういうことならば、これは木で鼻をくくったようで、こういうことを質問する必要もないし、日雇い労働者の皆さんがこの暑い中をすわり込みをやったり、陳情をやったりする必要もないのです。またそこに政治というものがあるのではないかと思うのです。予算は通った問題であるから、ここで云々はいたしませんけれども、四百三十六億の予算がたな上げになっている。できない相談ではない。そのときの責任者の方がほんとうに熱意をもってやろうとすれば、私は、三日を何日間か伸ばすぐらいは、これは政治問題としてできるのではなかろうか、かように思うのですが、こういう意思は全くない。こういうふうに、にべもなく言い切るかどうか、重ねてお伺いいたします。
  108. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 先ほどから申し上げておりますように、いろいろな角度から検討いたしましたけれども、本年は前年度通りよりいたし方ない、こういうことであります。
  109. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうすると、夏季手当の問題は、面接労働者の方々からいろいろ話を聞いて、その上で何とか処置してもらいたいというくらいに、私はニュアンスを残して、質問をさっき打ち切ったのでありますが、重ねてそういうことをお言いになるなら、私は、たとえば日雇い労賃の値上げの問題、これを一つ追及していっても、PWの八割、そのPWも一年も時期がおくれて確定がされない。こういう状態において、その八割ぐらいしか賃金をよこさない。生活を守ってやるということが基本にならない。とにかく何か与えておけば、それで労働者は黙っている。権力によって上から抑えていく、こういうものの考え方で私は日雇い労働者の問題が貫かれているように思う。政府は、経済計画の中で、完全就労、完全雇用政策を打ち出しているということを盛んにおっしゃっている。おっしゃっているけれども、実際問題として失業者を具体的に救済するには、今年は三十五万、その他失業者は毎日どんどんふえていくという状態において、失業が固定化する、職のない困っている人に対して、福祉国家を目標にする今の政府考え方がそれでいいのですか。僕はそういうことが言いたくなるのです。福祉国家を目標にして労働政策を、自民党の会長として、冒頭に政策として掲げていることを朝から大臣は言われた。その言われたこととこの日雇いの問題はどうなんですか。日雇い労働者というのをどういう工合に見ておられるのか、私はそういうことを聞きたくなってくる。大臣から……。
  110. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) 藤田さんもよく御存じのように、わが国は、敗戦直後の経済の混乱時代に、やはり多くの階層の中で、社会環境が変りましたために職を奪われた者がたくさんあります。そういう応急の措置をどうやって解決していくかということで、まず、実際にはどういう仕事をしてもらって、その経済効果が上ったから幾ら賃金を払うというふうなことでなくて、そしてまず仕事をしていただいたということで、一つ現金収入をあげるようにしなくちゃいけない、こういう混乱時代に対処したものの考え方が、ご存じのように、失業対策事業であります。これは、われわれが終戦直後の議会で法律をこしらえてきめた当時の考え方はそういう考え方であったのが、いわゆる失業対策でありまして、だんだん世の中が安定して参りますというと、今度は、そのいわゆる失業対策事業というものに対して国民の血税をもってああいう事業をやっておるのだから、経済効果の上るような仕事をしたらどうだというふうな社会的批判も起きて参りまして、そこで私どもは、それは当然なことであるから、いわゆる失対事業の中でも、なるべく経済効果の上るように、一般の納税者にも満足してもらえるように、この失業事業というものの経済効果を上げるようにしたい、こういうことで、いろいろな特別失対その他の施策を講じてきたことも、御承知通りでありますが、なおかつ今日では、失業者の出ておるところと、それから、そういう経済効果の上る事業所とがマッチしない点がだんだん出てきました。しかしながら、それを放っておくわけにいきませんけれども、われわれはその失業、いわゆる失業登録をしておいでになる人人に対して、できるだけな収入を与えてあげて少しずつでも生活の安定を得てもらいたいという考え方は、初めから変ってないのであります。これは、歴代の内閣がそうであるように、われわれは、法律をきめた立法者の一人として、もちろん同じ考え方なんであります。でありますから、できるだけ就労日数もふやしてあげたいし、あるいは個人の、今お話のありましたPWを基礎にして計算する一日の賃金についても、それではきるだけ多い方がいい。しかし政府は、皆さんが政府をおやりになっても同じだと思いますが、やはり諸般の財政状況等にらみ合せまして、そうして財政当局との相談の上に、今日では、PWを基礎として今決定いたしておる程度の賃金でやむを得ないではないか、こういうことなんでありますから、福祉国家を考えておるのに、もっとふやさぬのはどういうことだというお説でありますけれども、気持はそこにあっても、やはり今日諸般の状況を勘案して、遺憾ながらこの程度でがまんをしてもらいたいし、いわゆる夏季手当というものも、種々それぞれ関係しますところとも懇談し、研究をしましたけれども、今年は前年通りでがまんをしていただきたい。皆さんが非常に熱心な要求をされる日雇いの方々の御要望を、私どもは非常な御同情の気持をもって慎重にこれを考えたのでありますが、諸般の状況で、今年はやむを得ないから御了承を願いたい。ただ、先ほど政府委員も申し上げておりますように、これはこのままでいいと考えておるのではないのでありまして、夏季手当は、これは仕方がないとして、就労日数その他のことを勘案して、もう少しゆとりのある方法がとれないかということは、私ども考えております。
  111. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 緊急失業対策事業ができた経緯についておっしゃられましたけれども、緊急失業対策事業ができたときの最初の予算措置は、八億だったと私は記憶するのです。それが今日三百何十億になっておる。私も、それに非常に長い間関係して参った。本来政府はいつもそういうことを言う。本来失業という状態が好ましくないのだから、他に就職機会政治の面から作り上げていって、これは、その間のつなぎとして、緊急な失業対策事業ということでやっていくのだ。幾らかその間のつなぎとして生活のめんどうを見ていこうということでできたのが、緊急失業対策事業法だ。これは、私はほんとうにいつも聞いてきた。いつも聞いてきたけれども現実の問題として、それでは、本来の就労の機会というものは、政府政策としてどういう工合にお作りになるか。今日非常に問題があるように、非常にあいまいな失業状況というものが政府から発表され、われわれは納得いたしませんけれども、その政府すら、十万人に失業者がふえると、こう言っておる。実際問題として、公共事業の就労の吸収の効果を上げるとか何とかいう議論にまで発展しておる。しかし、いずれにしても、失業対策事業というものをふやしていただかねばしょうがないというところに追い込まれておる。基本的な、失業者のない就労の機会というものは、政治政策として政府はとっておらないだから、こういう初期の緊急失業対策は本来ではない本来ではないと言いながら、この処置をせざるを得ないじゃないですか。  そこで、事業効果の問題を言われますけれども、二十八年に参議院が……今、阿具根委員が言われましたように、実際に経済効果、事業効果の上る事業というものを労働者諸君は一生懸命にやっておる。それは、一部その問題があるかわからないけれども失業している方々は、いかにして固定した常雇い、普通の仕事につきたいという願望の中においても、今食えないので、ここで政府の、地方自治体が主として直轄する事業ですけれども、やはり経済効果や事業効果を上げる事業について一生懸命働いておる。そういうところに働かなくても、ほかに就職機会があるということならば別ですよ。そういうことがないのに。そういうことが作られないから、やむを得ずこの中にしがみつかなければ生活ができないといって、それも、公共的な仕事に自分の労働力を提供して、建設的な仕事をしておる。だから私は、今大臣が言われたように、予算がきまったからもう処置がないというようなことでなしに、われわれに言わせれば、阿具根委員が言ったように、四百三十六億のたな上げ資金もあります。これこそ、ほんとうに、ここで真剣に考えなければならないときじゃないかと思う。これは、日雇いばかりの問題ではありませんけれども、そういう問題については、労働者保護とか、社会保障とか、そういう問題については非常に無関心で、あの四百三十六億の二百二十一億まで財閥の予備金に取っておるようなことでたな上げ資金をつぶそうという考え方基礎でこういうことを見てもらいたくない。私たちは、こんな議論労働大臣とするようなことは、非常に悲しい問題だと思う。労働大臣というものは、労働者のほんとうに親として、みんなめんどうを見なければならない立場に置かれておるのが労働行政だと思う。それがどうも、さっきからの話を聞いておるというと、私は非常に残念でしょうがない。これは一つ、どうかもう一ぺん考え直してもらいたい。そうでなければ、われわれ社会労働委員会で何を審議し、せっかくきめた問題はほうりっぱなしにされて、具体的な処置が予算できまっているから、これは知りませんというような格好で答弁されて、何を審議するのですか。そんな労働法社会保障に熱意のないことで、何を審議するのです。私はそういうものじゃないと思う。どうですか。
  112. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) あなたのお話のお気持は、私もよくわかっておるのでありますが、ただ、今の景気調整資金という四百三十億のお話もございましたけれども、これは、この間予算委員会等においてもしばしば論議されておりますように、私どもは、なべ底の景気というものがこのまま横ばいでいくという見方を、御承知のように、長期経済計画ではいたしておらない。それは、うまくいくとかいかないということは、これは水かけ論かもしれませんが、私どもはそう思ってはならないという気持で、そして今の十万人のお話は、国際収支改善のために処置をいたしました結果、十万人ぐらいなものの失業者増を見なければなるまいといったのは、去年から今年に対する考え方であります。将来はどうかということは、現にすでに先ほども御説明いたしましたように、横ばいの状態になっておるのだから、これからはそう悪化しないとわれわれは見ておる。さらにその先はどうなるかといえば、私どもとしては、御承知のように、ああいう設備投資の金融引き締めというものは、もうすでに限界にきておる。従って、日銀の公定歩合も二厘引き下げて若干の投資意欲もそこに出してきておる。こういうような状態でありますから、私は、雇用の前途に対しても、日本経済全体についても、さように悲観をいたしておらないのであります、政府は。従って、何もしないではないかというふうなことではございませんので、やはりそういう方向を日本経済の伸長のためにとっていく。そういう将来明るい見通しを立ててなおかつやっているのでありますから、その点については、私はそれほど心配するようにはならぬと思うし、また、そういうふうにしていかなければなりません。もう一つ、しかも、なおかつ、その間に立ちおくれになっておるいわゆる失業者というものに対しては何もしていないではないか、こういうことでありますが、私どもは、比較的恵まれざる階層に属する人たちに対しては、社会保障充実は、日本の財政の許す限り予算措置でもいたしておることは、藤田さんもよくお認めになって下さっておる通りであります。昨年度の予算と本年度の予算を比較して検討していただいても、いわゆる社会保障に使っておる費用というものは、各項目とも、若干ずつの増強を見ておるのであります。まあ一連考え方は、決して失業雇用の問題について楽観をいたしておるのではありませんが、今申しましたように、全力をあげて日本経済規模の拡大に伴う雇用量の増大、しかも、なおかつ立ちおくれておる人々に対しては、政府の財政の許す限り、社会保障の施設は充実してやっていきたい、こういう方向でありますから、おそらく私が申し上げました気持は、藤田さんと全くぴったり一致しておると思うのであります。
  113. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣の話は、午前中も、質問をすれば、全く反対な立場にありながら、気持は一致しておると、結果は同じことだと、こういうふうに言われる。私は、先ほど大臣から断定的な言葉を聞いたので、これ以上の質問は無用だと思って、やめたのでございますが、私の質問をしている気持を一言だけ申し上げておきますと、私ども選ばれて政治を担当している者は、こういう問題を審議している場合には、自分の責任を感じなければならないと私は思っている。私どもがいかに少数であっても、私どもの責任なしとは、私は決して申し上げておらない。だから私は、へりくだって、あなたに少しでもふやしていただけませんかというような言葉を使った次第です。これだけの失業者を出してそして四年も五年も、夏季手当にしても、三日から一つも上っておらない。生活実態を見てみると、ほんとうは生きるために食っているというだけである。これを見る場合に、与党であれ野党であれ私は、お互いの責任だと思って考えなければならないと思うのですよ。だからこそ、この問題でも、日雇い労働者の諸君が、満足でなくても人並みの生活をしておるなら、私はこうした卑下した言葉は使いません。自分自身の責任だと思うからこそ、こういう私はあなたに卑下した言葉でお願いを申し上げた次第でございます。しかし、それに対しても一顧だに与えられない。予算がきまっているからできない。四百三十六億の金は、すでに審議されたのであるから、一つも回されない。少くとも私は、その衝の責任者であり、自分の所管の国民がこれだけの苦しみをしているならば、たといできなくても、大蔵大臣なりあるいは閣議に諮って、何とかやりましょう、そうしてできなかった場合はまた別として、そこまでの熱意もなかったかと思うと、倉石労働大臣に対する期待が全くなくなってしまわざるを得ないのでございます。大臣を責めるばかりでなくて、私は私自身を責めている。私も政治家の一人として、あれだけの人々がその日の生活も楽にできなくて、まるで穴倉生活をしておる、これが憲法に示された日本の姿であろうかと、こういうことを考える場合に、少くとも私は、やはり大臣としてこれに対する考え方は、もっと責任のある、あたたかみのある御返答があると思って期待しておったけれども、全然それは一顧だにもされなかった。全然期待できないのですか。夏季手当にしても、就労日数にしても、ベース・アップにしても、全然倉石労働大臣には期待できないのですか。もう一回念を押してお聞きいたします。
  114. 倉石忠雄

    国務大臣倉石忠雄君) お話のような件につきましては、私が今回第二次岸内閣成立いたしまして入閣いたしました当時から、すでに事務当局から詳しく聞いておりました。従って組閣後は、それぞれの方面と、こういう問題についても、一体どうにかならないのかというふうなことについて、それぞれ研究もいたしてみましたけれども、結論だけを申し上げれば、今回は前年通りに処置をいたすより仕方がない。こういうことに決定いたしたわけであります。将来のことについて、この就労日数を何とかならないかというふうな問題につきましては、私どもも事情を十分よく承知をいたしておるわけでありますから、そういう点については、さらにそれぞれの方面とも研究をいたして、できるだけあたたかい手を差し伸べていきたい、こういうふうに考えております。
  115. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私は、今、社会保障の問題やなんかが出ましたけれども議論になりますから、これはこの次の機会に譲りますけれども、しかし、明確に、同情にたえないとか、お気の毒だとかいう言葉を言うなら、もっとしっかり一つ、どう処置するということを明確にして、この次の委員会にそのお考え方を聞かしていただきたい。それだけ言っておきます。
  116. 久保等

    委員長久保等君) 本問題に対する質疑はこの程度にして、次に移りたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。   —————————————
  118. 久保等

    委員長久保等君) 次に、駐留軍関係労務者の離職対策について御質疑を願います。
  119. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この駐留軍の労務者の失業対策というのは、緊急に閣議決定をされたり、また、臨時措置法を、この前の国会には、与野党全会一致でこの特別措置法を作っておるわけです。見えていますね、調達庁長官、官房長……。
  120. 久保等

    委員長久保等君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  121. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。
  122. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 この駐留軍の問題は、昨年から今年にかけて、大体十万の特需をまぜて失業者が出ている。緊急な、特別の閣議が開かれて駐留軍の失業者の処置を、この前の国会で特別措置法を作って、駐留軍労務者の何とか処置をしようということできまったのであるけれども、具体的な効果としては出てきていない。たとえば就労の問題を見ても、総なべて、何ぼよく見ても一六、七%しか就労がしてない。こういうことで、かけ声だけで、駐留軍の労務者の処置を政府がどういう工合にお考えになっているか、上村さんがこの前責任者で、私たちも話をして、やりますということは言うてくれるけれども一つも処置してくれない。新しい今度は陣容が立て直されたから、一つ見解を、調達庁長官、総務長官がおいでですから、駐留軍労務者の失業対策、今後の対策についてお聞きしたいと思うのです。
  123. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) お答えいたします前に、私、今般総務長官に就任いたしました松野頼三でございます。不なれな者でございますが、皆さん方の御協力を得まして、大過なきを期したいと思います。一言ごあいさつを申し上げます。  ただいまの御質問でございますが、せっかく実は就任いたしまして以来先般可決されました法律に従いまして協議会を先般開きまして、私どもの方としては、各省の関係もございますので、極力その督促をいたしております。お説のごとく、昨年以来相当な離職者が今日までおりましたので、その審議の状況あるいは進行状況は、必ずしも完全ではございません。各省においても、もちろんいろいろなこともございましょうが、私としましては、その協議会を通じて、中央、地方を通じて、万遺憾なきを期すつもりで督促いたしております。その中でもことに大きな問題は、いろいろな免許許可事業という直接政府関係のあるものも、この転業の中の希望者の中におりますので、それを一つ各省、関係省については、まず政府でできるものについては、至急これを対策を立てて、次の幹事会までに報告をしろというので、今週早々開きまして、その問題をまず私からも実は促進をいたしておきました。何といいましてもこの問題は、急激なことでもございますが、最も私の感ずるもので大きなものでございますので、過去においてあるいは御満足がいただけなかったかもしれませんが、今後は、一つ最大の努力を、少くとも政府機関でできますものについては、早急な対策を立てて実行に移す覚悟でおります。
  124. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話通り、昨年の六月、岸総理の渡米、それに基く米国政府側との打ち合せによる岸・アイク声明というものが出まして、それに基きまして、在日の米軍というものが急激に縮小し、従って、基地その他の業務も減少してくる状況が顕著になって参りました。それに基きまして、労務者の解雇というものも急速に行われておる。これらの状況は、原因がそのようなものに基くものでありますので、整理そのものをなかなか縮小する、あるいはとどめるということがむずかしい状況にありますので、それに基きまして、調達庁は、政府を代表する労務者の雇用主の立場もありますので、その離職者の対策を至急に政府全体としてしなければいけない。そのようなことから、今、総務長官もお話がありましたように、すでに一昨年来、内閣に特需等の対策協議会を開催していただき、関係各省全般の協力を得まして、この離職する、その具体的の事項といたしまして、昨年の九月に閣議決定を見まして、これに基いて諸種の施策を進めていく。これが昨国会におきまして特別な法律も通過いたしましたので、それに切りかわりまして、そのもとにまた中央協議会というものもでき、従来からの引き続きの内閣における推進本部というようなものも、最近開かれました中央協議会においてきめられ、そして総理府等にもそういうものを置いていただく、こういうことによりまして、全般の問題を関係局長こぞってやっていただく、こういうことで、その対策を進めて参っておる次第でございます。
  125. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 新しくおかわりになって、十分過去の事情がわからないといえばそれまででございましょうけれども、しかし、この駐留軍労務者の処置というものは、私は引き継ぎがあったことだと思う。だから、特に調達庁の長官は、具体的にはもう雇い主なんですから、雇い主の責任というものは、この前の長官にも非常に私は強くお話を申し上げたんですけれども、責任を持って処置をしていただく。自後の将来の対策についても、責任を持って処置してもらうということが、私は重要な問題として一つ考えてもらいたいと思うんです。いつもここへ来ると、どこかに相談しますとか、どこの省にお願いしてみますというようなことを言われて、非常に私は腹が立ったんですが、今度の長官はそういうことのないように、一つぜひしていただきたいと思うのであります。で、問題をたくさん私は、皆さんのところに駐留軍の労務者の組合の方々が要求を持って行っておられると思うんです。たとえば、ハイヤー、タクシーの問題を一つ取り上げてみても、一つも進まない。金融の処置、保護するための金融の問題にしても、なかなかこの問題が進まない。国有財産の払い下げの問題についても、なかなかこの問題が話が進まない。どれを取り上げてみても、全部頭打ちをしているというのが問題なんです。で、今度失業多発地区で失業対策事業をやるというて、一つの例をとってみましても、北海道の札幌地区などで、千歳から苫小牧ですか、ああいう所に百三十四人が就労するという事業が行われたというけれども、実際に就労できるのは、住宅が固定しておりますから、二十人ぐらいしかそれが就労できない。ここでけさも労働大臣あいさつがあったんだが、公共事業に百三十八億やるんだというけれども、別個かというと、そういうところの隣接事業にやるんだというので、実際の失業救済にはそれが効果を現わしてこない。まして今日PD切りかえの問題が、次から次へと問題を起してきている。これについても十分なる処置を講じられない。この前の社会労働委員会で、こういうことでけしからんじゃないかと言うと、まことにけしからんことです。しっかり相手方と交渉してみますと言うてくれることは言うてくれるんだけれども、さっぱりそれが効果を現わしてこない。どんどんPD切りかえが進められてくる。これじゃ法律を作っても何にも私はならぬじゃないか。庁の長官は、形の上からいっても実質的にいっても、完全に雇主なんですから、自分の雇っている者の将来の問題、今日の問題、失業したときにはどういう工合に振り向けていく、こういう問題なんかを、もっと真剣に考えてもらいたいと思うんです。職業訓練の問題もそうだと思います。これはもう、数え上げたらきりがないほどたくさん問題を提起しているわけなんです。それを、私が申し上げました問題について順番に一つ、どういう工合に動いているか、御説明を願いたいと思うんです。
  126. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 調達庁長官といたしましては、今御指摘もありましたように、確かに政府を代表する労務者の雇用主の立場にあります。従いまして、これが駐留軍の撤退に伴いまして減少する、その離職対策については、全般的に非常なる関心をもって努力いたしてきておるつもりでございます。今後もそのつもりでおるわけでございます。ただ、今回通りました法律とても、御承知通り、たとえば職業訓練の問題、あるいは就職のあっせんの問題、あるいは企業組合等による事業の育成援助の問題、金融の問題、れるいは国有財産の利用計画の問題、それぞれの事項につきまして、それぞれのやはり政府の所管省というものがあるわけでございます。従いまして、政府全体としてこれに処置していただくために、法律にもありますように、協議会が設けられ、また中央に推進本部を設けられて、個々の事項、あるいは連絡推進に当られるこれらのものを、調達庁長官といたしましては、全般的に推進し、連絡に当り、今のそれぞれの所管省に実施方を促進する努力を尽しておるつもりなんであります。具体的に、特に調達庁自体で直接にやり得る事項といたしましては、離職してから職業の訓練というよりも、すでにその前において、まだ離職しない前であっても、基地内に勤務中であっても、いずれはそういう事態になるのであるから、それについての転職の便宜をはかることが非常に効果があるんじゃないか、こういうことから、昨年以来、基地内におけるところの訓練ということ、これらは、まだ身分が調達庁にある時代でございますので、直接に調達庁が軍と連絡をとり、必要な予算をもってでき得る、こういうことで、基地内補導に努め、それから、本年もやはりそれに現在努めておるわけでございます。その他国有の物件でありまして、軍側から返還しておるようなもの、それらも離職者が利用することによって今後の新規職業に従事すること、あるいは新規企業に役立つこと、これらのものの処分も当庁の所管でございますので、それらも努めている。その他の事項等に関係いたしましては、繰り返すようですが、いずれも関係各省の所管省がある。それを、内閣における協議会があって、とりまとめる、それによってまあ推進していく、これの私は原動力になって、努めている、このような状況であります。
  127. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その気持はわかりました。気持はわかりましたけれども、たとえばタクシーの問題を一つ取り上げてみても、東京で幾つですか。東京で十件、神奈川四件、大阪三件、宮城五件、北海道一件という工合に出ているのですね。だけれども、それは一つも進まぬというわけですね。これは、各関係の省があるから、その関係の省との連絡云々というお話がありましたけれども、私は、だから一番最初に言ったでしょう。雇い主である、政府の雇い主代表である調達長官がこのめんどうを、やはり自分の部下として働いている方々のめんどうを、これもやはり運輸省の関係でしょうけれども、積極的にこのハイヤー認可の許可が取れるように努力をしていただかなければ、私は実を結ばないのじゃないかと思うのです。たとえばその返還基地の問題で、兵庫県の甲子園地区には、五万坪の住宅計画をしてやるということもお話しになっていると思うのです。調達庁長官聞いておられると思うが、こういう問題についてもどうなっているのか。それからまあ呉には、幸い基地のあとに日立精器が工場を建てて、就職の転換をやりましたけれども、こういう処置も、私はやはり具体的な事例がたくさんあると思う。そういうところには、どの地区ではどうやるとか、どの地区ではどうやるとかというような措置を講じられたのかどうか。私はその点は、まず二つだけお聞きしたいと思うのです。
  128. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 個々の具体的なケースのまず第一に取り上げられました自動車の運送関係でございますが、お話通り、申請の出ているもので、ただいま調べているところでは、五十数件あると思います、全国で。そのうちすでに免許になりましたものが、北海道、神奈川、兵庫、福岡等、あわせて七県ほどになっていると思います。なおそれ以外に、今もお話がありましたように、東京地区あるいは京都地区等においても、前々から申請が出ており、その必要性も非常に私としては感じているものもあります。それらにつきましての免許等の推進、これに関しましては、当局である運輸省筆には絶えず連絡をとり、絶えず促進措置を講ずる。今の協議会を通じ、あるいはその他のルートを通じまして、その促進方に大いに努力をしている次第でございます。  それからなお、今の返還基地の利用問題に関しましても、九州の小倉あるいは群馬県の太田、小泉地区等の問題、または仙台のキャンプ苦竹と申しますか、それらの返還処置、あるいはお話にありました兵庫県のものも、もちろん私ども承知しておりまして、これらに関する措置の促進に関しましても、大蔵省を始め関係省と、具体的な促進方について十分に協議し、その促進に当っておる次第でございます。
  129. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 基地外における職業のあっせんですね。相談というようなものを具体的におやりになっていますか。私らの聞いているところによると、一日か二日ほど形式的に見えて、そのままほうっておくというだけの形に終っているということですが、そういう相談や何か、やっておられますか。
  130. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 強制離職が発生いたしました場合の職業相談につきましては、基地に安定局から行きまして、求職受付をするということで現在まで行なって参っておるのでございます。しかしながら、人員その他の関係もありまして、それから数も多いというようなことで、特に大量出る所におきましては、いろいろ十分な相談ができかねるというような声も聞いております。従いまして、われわれの方におきましても、それぞれの基地の近所にある安定所へ特に多数の人が出てくる場合におきましては、何らかの特別の窓口といったようなものをこしらえまして、これでそうした御不満がないようにいたしたいというふうに考えております。
  131. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 国有財産の払い下げについてちょっと聞いておきたいのですけれども、その予決令というものがあって、随時契約ということの項をとりますと、十万円以上のものは払い下げができないということで、衆議院の大蔵委員会では、五十万までこれをワクを引き上げるということがきまっておるということなんですが、この点なんかについては、調達庁や本省は、どういうふうな工合に措置されておりますか。
  132. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話通り、随意契約の制限が従来の法令にございますので、これではこの対策上の十分な処置がいたしかねる。特に今回の法律の事項の実施にも支障がある。まあこういうことで、先般来その改正方を、調達庁は案を持ち出しまして、大蔵省と協議中なのでございます。これは、近く何らか具体的に法令改正もできまして所要の目的にかなうようなことになると思っております。
  133. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それから、この臨時措置法の第二条ですか。第二条の七項、一項から六項あって、七項に「前各号に掲げる者に準ずる者であって政令で定める」というところで、ここで私の聞いているのでは、宿舎要員、駐留軍のメイドさんですね。そういうのがこの軍直労働者として、この適用に入っていない、政令に入っていないということで、適用からはずされている。なぜ、政令にこの七項まで作ってこれに準ずる者で政令によって定めるものと書いてあるのに、宿舎要員の方々ははずされるのですか。
  134. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 調達庁との雇用関係にあります者以外の者でございますが、特にこの今回の、個人々々が直接雇うておる者、あるいは個人々々ではなくても、軍の中のある種のグループ、団体等の者との間の雇用契約にある者の問題だと思いますが、これらの点に関しましては、調達庁との直接雇用関係のある者等といろいろ事槽を異にしておりまして、その実態、実槽等をも、実は私どもも十分に把握しておらないわけであります。でありますので、この問題については、なお目下実情に対する、これに関する措置調査検討する、こういうことに今いたしております。
  135. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それでは、この問題は政令に入ってないんだけれども、特別に考慮をしていただけるですね。
  136. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 法令に基く協議会においても、実はこの問題も取り上げておりますので、これを検討を加えて、しかるべく処置をすると、こえいう方向に進んでおります。
  137. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そうですか。それからもう一つ、その国連軍関係労務者ですね。この方々に特別給付金の支給がないのですが、これはどういう工合にお考えになっておりますか。
  138. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 特別給付金の問題は、御承知通り、昨年の六月二十二日に岸、アイク声明が出された。それ以後の米軍の離職者に適用しよう、こういうことに法律もなっております。その趣旨と申しますのは、とにかく六月の二十二日以降の事態といえものは、それ以前の事態とは違う。それ以前の事態というものは、軍側の都合で膨張したり縮小したり、あるいは漸減的には縮小はいたしておりますが、向うの一方的事情である。しかしながら、六月二十二日以降の声明以来の問題というものは、日本政府といたしましても、米軍のすみやかなる撤退縮小を望む、その線によって措置しよう、こういう申し入れに基く措置であるので、これらに関するものには、日本政府としても十分の責任をそこに持つべき必要がある。まあこういう論点から、格別にそれ以後のものに政府として措置をする、これが重要なる問題なのでございます。従いまして、その点からこの国連軍のを見ますというと、国連軍の引き揚げはそれ以前の問題であり、しかもその撤退について、格別日本側としてのそのような措置等の結果に基くものではない事情にあるということがまず第一で、それからなお、御承知通り、特別給付金を六月二十二日以降のものにするには、三年以上等の年限の制約も設けてあるわけでございますが、その点から申しましても、国連軍の関係は異なるところがある。まあこういうようなことで、これはあの法律においてもはずれている。このようなまあ事情にあるわけです。しかしながら呉の国連軍の全面撤退ということを、それをそのまま放置しておいていいのかという問題は相変らず残っておりますので、これもなお検討を続けていく、このようなことに考えております。
  139. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 ではこの問題も、今の宿舎要員の問題とをあわせて検討して処置をする、こう理解していいわけですね。いいですね。
  140. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) そのように、これからやはり検討の問題と考えております。
  141. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 それから問題なのは、PD切換えの問題なんですが、これは私は、きのうちょっと見せてもらったところによると、ものすごく出ておるわけですね。たとえば、青森から東京、神奈川、福岡という工合に、その軍が勝手に業者と契約をして処置をする、こういうことは、この前の調達長官のときには、これはどうも、日本との今までの話とは違うというので、これは困るから、強力にアメリカ軍に要求をして、こういうことのないようにするということで、合同委員会も開く、こういう工合なお話でしたが、その後の経過を一つお話を願いたい。
  142. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) お話通り、昨年の末からこの問題が起って参りまして、これのよって来たるものは、やはり六月二十二日以降の日米間特に駐留軍配置問題の新事態ということに基くアメリカ側の措置から出ておるのでございます。これに関しまして、雇用主である調達庁並びに日本政府関係機関といたしましては、そのような新事態であるので、基地の閉鎖あるいはある仕事の縮小等によって整理員数が出てくると、これらは、当然の帰結としてやむを得ぬが、しかしながら、仕事は続くにもかかわらず、この仕事の使用形態と申しますか、それを変更することによってなおかつ整理者を多く出されると、こういうようなことは、目下の日本実情から、また特に私ども調達庁の雇用主の立場から言えば、はなはだ遺憾しごくな問題である。そのような方針、計画は変更すべしということで、折衝して参ったのでございます。これに関しましては、調達庁自体が軍司令部と折衝するとともに、日米合同委員会等にも持ち上げて、事の重大性を説き、米軍側と折衝して参ったのであります。しかしながら、米軍側の主張と申しますか、やむを得ざる実情としてかかる処置をとらざるを得ない、と申すことには、いわゆる共同声明以来の新事態に伴って、米軍側の所要の職員、軍人、人員というものが急激に縮小していく状況である。のみならず、従っていろいろな経費、予算面も、在日米軍に割当てられるものがどんどん縮小される。にもかかわらず、当分の間というものは、ある種の仕事をすぐやめるというわけにはいかない。やむを得ざる処置であるとしてそういう処置をとるのであるから了承されたい、こういう立場であります。これに対しまして、それはそうであろうが、こちらとしては、当然の整理員数以外に、なおそのような形態変更によって減らされるということは、何らかの処置を講じてやめてもらいたいという折衝をして参ったのでございますが、向う側がそういう基本的事情から了承されたいということで、再三折衝のあげく、その米軍側としては、自分の方としては、それらのことはやむを得ざる処置であるから、それらのことをどういう工合にやるかということは、自分たちの自由は制限されておらないと思うけれども、しかしながら、日本側の実情もよくわかるので、それでは実態に合うように、できる限り調節を加えて実行していこうということで、三月の末になりまして、今後かかることをやろうという場合には、事前に日本政府関係機関と調整を加えて実行いたしていこう、このようなことに相なったわけでございます。従いまして、それ以後今日まで、なお今日といえども、問題のケースにつきまして、向うと調整に努めてきておるのが実情でございます。
  143. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その三月末以降は調整を行なっているというのですけれども、調整をせずにやったというのがありますね、福岡県で。これが一つ問題だと思うんです。しかしその前に、たくさんのこの輸送バスの問題とか、タンカーとか、チェッカーとか、変電所とか、いろいろPD切りかえをされて、それで十年も勤めていた者に、転換のところへ一万円近くも安い給料でなら使ってやろう、そこで生活ができぬから、そこらへ送られるという状態になる、こういうことで問題が起きているのですが、何を根拠としてPD切りかえというようなことをやるのですか、条約とか法律の根拠というのは何ですかね。
  144. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 根拠と申しますか、向う側がそういうような処置に出られるということを、向う側として正当づけておる理由といたしましては、ある種の必要な仕事を軍が日本でやる際に、直接に自分が労務者を雇って実施することもできるし、なおその仕事を日本の会社なり何なりの業者に請け負わせてやることもできる、これについては行政協定上においても制限はないはずである、こういうところでございます。
  145. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 そこで、まあ行政協定の問題が出てくると思うのですけれども行政協定の十二条の一項ですか、ここには軍が直接に役務、需品の契約ができる、しかし二項には、必要な資材、需品、役務の調達が日本経済に不利な影響があるときは日本政府と調整をする、こういう文句が二項にあると思うのです。問題はNATOなんかの関係を見てみると、政府機関が直接需品や役務の契約というものを政府機関を通じてやっておる、日本だけがなぜ軍が勝手にそういうことをやっているのか、私は日本政府に腰がないからだと思うのです、何でもっとがんばらないのか、この問題が出てくると思う。こういう点はどうなんですか、松野さん。
  146. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私から一応今までの関係を御説明いたしましてから、あと総務長官に……。  これは実は、私も調達庁に古い人間でございまして、相当今まで研究もし、またいろいろ関係方面との話もしたことでございますが、NATOとの問題は、私の記憶する範囲では、やはりその駐在国の機関を通じてという、機関に一つの問題があると承知しております。向うの、たしか米軍がNATO諸国のある機関を通じてというのは、米軍と同じ軍隊のような、そういうものの機関を通じてということに根本的な原理があるかと存じます。その辺が日本と若干事情を異にするというような点から、行政協定が結ばれるときにも、あるいはその後若干その議論が起きたときにおいても、NATO並みにその辺がなっておらない、このような事情と私は今記憶しております。  それから第二点の十二条の二項の問題なんですが、これの解釈も私は権威をもって解釈を下す立場でもございませんけれども、今までの経験、実例、あるいは外務省当局等の説明を承わっておるところによりますというと、これらの日本経済に及ぼす影響あるときに調整を加えるのだ、これは駐留米軍のために、日本経済の安定上必要な鉄、石炭その他いろいろな物資、そういうものが軍側に皆ごっそり取られて、日本経済その他が動かなくなるような状況あるいは希少価値のあるようなもの等に関するもの、それらが自由に占領軍に調達されては困る、このような事情からできたいきさつがある。このようなことから、ただいまのPD切りかえという問題ですが、それらのことが直ちにこの問題に当てはめて、ごうごうというところにはなっておらない、こういうのがまあ実情でございますので、ちょっと総務長官のお話の前に一応……。
  147. 松野頼三

    政府委員(松野頼三君) 事務的な話は、今のような状況かと存じますが、昨年実は法律ができまして以来、私たちもこの問題が必ずしも条文ばかりにとらわれるわけに参りませんので、この内閣早々にこの問題を取り上げました際に、アメリカ軍と当然事前に予告あるいは協調の上にはからなければ、すでに昨年以来相当の離職者が出て、その対策に苦慮しておる今日、なおPD切りかえに拍車をかけるようでは、政府施策があたかもざるに水をつぐようなことでは、私納得できないので、私も就任最初の協議会でこの点強く主張して、今後は日本雇用状況を勘案して、この問題は一方的なことは断じてやらないように、外務省を通じて交渉させるように、私はすでに申しつけておりますので、この効果は私は現われると信じております。なお、経済状況等いろいろありますが、今日の日本の状況では、私はこの問題は大きな問題だ、そう考えて、この法律ができました以前と今後とは状況も変るし、政府としても責任を負わなければならぬので、われわれとしてはそのつもりで今後は対策も進めて参りたい、このように考えております。
  148. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 今の話よくわかりました。本腰を入れてこれからやるとおっしゃるのですから、それは信頼いたしましょう。ただ私たちが残念に思うのは、今の調達庁長官は最近おかわりになったのですが、自分の使っておる労働者、その提供しておる労働者が軍によって簡単に処置をされて、切りかえられたあとの実態を見ると、吸収されたというのはほとんどない。みんな職場から追い出されている。何が原因しておるかというと、ものすごい安い値段が買いたたかれて、それでそこに中小業者が食らいついて低賃金で引き継いで使おうという——出てきたあとの現象面だけ見てもそういう状態になっておる。それより前に、あなたが使っておられる労働者、提供されておる労働者が、勝手にそういうことをやられておるということは重大問題だと思う。今、総務長官が今後は一切ないようにしっかり交渉して、これを明確にするとおっしゃいましたから、私はそれを信頼いたすといたしましても、これは実際に非常に重大な問題だと私は考えます。どうかこれは、一つしっかりがんばってやっていただきたい。ところが、残念ながら、福岡の板付の輸送バスの問題で、国際興業が西鉄と入札をやって、国際興業がやったというのですけれども、これは三月末に政府と調整をするということになっておりながら、こういうことが行われて、それで具体的には福岡県知事がそんな相談は受けていないという確認書まで出しておられるということを聞いておる。またこれでかごから水が漏れるというということになってやしませんか、これはどうなんですか。
  149. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 私自身が一両目前にもこれを取り扱いましたので、よく実情を存じておりますから申し上げますが、今のお話のようなことが福岡県に起きておる。それに対して当方側に何ら連絡がない、はなはだけしからぬということで、調達庁が第五空軍に連絡をとったわけでございますが、それに関しては、軍側としては、PDに切りかえるけれども、決してそのために整理者、離職者を出さない。このような問題があるから、調達庁で非常に御心配だが、その点は大丈夫でございますと、こういうものなんでございます。そこで、いよいよ実施段階に至りまして、どういうような事情であるかということで、福岡県庁とも、それから軍側ともよく連絡をとっておったのでございますが、数日前に福岡県庁の報告によりまして、確かに現地の軍司令官もこの切りかえによっては整理者を出さないということを県の代表団に言明しておる、こういうことであります。そこで、これでは、そんなら大丈夫であるということでございますが、なお私も一昨日こちらの空軍の司令部に参りまして、その点について念を押しましたが、これについて司令部でも、その点間違いないのであるから御心配なさらぬようにと、こういう次第になっておるのでございます。
  150. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 その犠牲者を出さないというのは、単に首切りはしないということなんですか。しかし問題は、それは私はここのことは、それ以後のことはよくわかりませんけれども、今日起きているものを見てみますと、さっき言いましたよう、に、非常にコスト安で買いたたかれて、首を切らぬでもそこで働けぬような、生活できぬような安い賃金で、それでも首は切らぬのだ、どんな安い賃金でも、環境の悪い所でも、とにかく首を切らなければいいということにならないと思うのですが、私は調達庁長官に申し上げたいのは、今日までの待遇と勤続年数というものが新しいPDに強引にやられた、PDに切りかえられること反対です。しかし、切りかえられたときには、それを補償するくらいの心がまえを、やはり調達庁長官が持ってやってもらわなければ困ると思うのですが、この福岡の問題はどうなんです。今の事情をもう少し詳しく聞かして下さい。
  151. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 首を切らないというのは、何もその今のPD業者の方でやって、賃金を下げて、首を切らないという意味じゃございません。その方じゃなしに、軍側の方にそのまま従来通り勤務いたしまして、あるいはその若干の職種、職域あるいは勤務場所が変るかもしれませんが、そういうような意味合いの首を切らない、整理者を出さない、こういう意味でございますので、それによって債金切り下げ云々にして首を切らないというものじゃございません。
  152. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 私の聞いているのには、初めは車だけを提供して、その次には車の修理、運転手まで国際興業へ入れるという工合に、順番に契約が更新されているということを聞いているのですが、あなたのおっしゃる通りですか。
  153. 丸山佶

    政府委員(丸山佶君) 今の国際興業が仕事をするについて、従来軍のバス運転に従事いたしておった労務者がそれに伴って整理されることはないと、この通りに私は承知しております。
  154. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 これはまた、明らかになりませんから、もう一度私は調べてみたいと思います。  それかう、関連して労働省の方に、もう一つ伺っておきたいのですが、この多摩の草刈作業の件は、大成建設に職業安定法違反の通告がされた。それからまた、東京で上下水道の問題で協和企業というのが職安法違反の疑いがある。ところがそうなると、ボイラーもやるのだということにして、何かそこのところ形式だけは、軍と、そこに働いている幹部の方だけが、何か企業組合、事業組合のような格好をして、その職安法違反のやつをのがれようというような格好のものが出つつある。そのほかにもジャニター・ビル清掃というような問題も、そういう計画が行われているということなんですが、労働省調べておられますか。
  155. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 今お話に出ておりますPD切りかえの問題につきましては、この切りかえの請負の仕方いかんによりましては職業安定法違反になるおそれのあるものもあるわけでございます。そういう点につきましては、われわれといたしましては職業安定法違反のものにつきましては、これは違反として認定していってこれを切りかえさしていくというふうな方針をもちまして情報の入るごとにこれを調査さしておるわけでありまして、今お話のありましたように、立川の草刈にきましては、すでに警告を発したわけでございます。その他のものにつきましても同様に、各府県について注意さしておりますし、さらにまた、つい一週間ばかり前に、この点につきまして最近そういう傾向があるようであるからして、厳重にこの点も調査するように指示いたしておるところでございます。
  156. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 もう一つ聞いておきたいと思うのですけれども、この離職者対策協議会というものは、各府県に今度持たれることになっていますね。ところが、職業訓練の面から見ても費用がないのでできない。ただしかし、予備費から支出して、その緊急な措置を講ずるという話まで出ているようですけれどもなかなか予備費とか補助というものが明確にならないので、府県でなかなか話が進まないということを聞いておるのですが、どうなんですか。
  157. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) 昨年の閣議決定によりまして、関係府県に離職者対策の推進本部を、対策本部を作らして参ったわけでございます。これに対しまして国庫で二分の一の補助をするということでやって参りました。この離職者対策本部は今回の法律成立によりまして、都道府県の離職者対策の協議会ということに切りかわるわけでございますが、これは条例で都道府県が措置することになっております。この実際の働きは従来と同じように、県にこの対策を進めていってもらいたいということに各地方には通達いたしておるところでございます。その費用の関係でございますが、離職者対策自体に要する費用といたしましては、たとえば職業紹介につきましては労働省、あるいは基地内訓練におきましては調達庁というふうに、それぞれの対策に要する費用はそれぞれで補助なり支出いたしておるわけでございまして、対策本部、今度の協議会に要する経費といたしましては、これは一つの会議質的なものでございますので、決して現状で十分だとは私たち考えておりませんけれども、特にまた本年におきまして、多少今後協議会を設置する数もふえますので、十分とは存じておりませんが、今後の運営の状況とにらみ合せて考えて参りたいと思います。
  158. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 重ねてお尋ねしておきますが、訓練所の施設の件について、国の補助金が明確にならぬから、府県が手を出さないという話ですが、そういう点はどうでしょうか。
  159. 百田正弘

    説明員(百田正弘君) その点、私もはっきりその事情がわかりかねますけれども、すでに各府県に対しましては、本年度の駐留垣対策としての職業訓練予算というものを計画も話してございます。各府県からその計画を現在取っております。中には誤解いたしまして、昨年みたいな臨時訓練所、つまり一般の訓練所を使えないようなところに臨時訓練所を設置するというのを去年の予備費で措置いたしたわけでございますが、本年におきましても同様な措置を講じて参る、各府県の実情に即し、その計画に即しまして、われわれの方も考えて参りたいと思っております。現在までのところは、一応各府県のそうした計画をまず承認できていける見込みである、こういうふうに考えておりますので、具体的な事件あるいは事案々々の必要に応じて処理いたしたい。
  160. 藤田藤太郎

    藤田藤太郎君 駐留軍の労務者は高齢者が多いのですね、平均年令が三十五ぐらいになっておって、いろいろ十分に考えて、よく補導といいますか、援助をしていただかないと、その人の適職でないようなところがあって、定着ができないようなことで、問題が起きているということも聞いておるので、この点なんかは特に十分な配慮を一つお願いをしたいということ。  それから、私は調達庁にお願いしておきたいのですが、昨年とことしとまぜて十万からの失業者が出て、その中に特需も入っておりますけれども、その中で一七%ぐらいしか就職していないというと、大体八〇何%というのが失職の状態にずっとあるということですね。そういう重大な問題でありますので、これはもう労働関係雇用失業——就労対策の問題になってくると思いますけれども、直接の雇用責任者としての調達庁という立場においては、この問題も上分なめんどうを一つ見てもらいたい。それで、こんな悲惨な状態に駐留軍労務者の離職者を置いてもらっちゃ困る。それからそのためには、たとえば払い下げの問題や、ハイヤーの問題や、金融の問題でも聞いてみますと、もう三分の一くらいは手続がむずかしくなって、玄関品でもうあとじさりをせざるを得ないというようなこと、ようやく借りることができても五万円ぐらいしか、国民金融公庫が主としてでしょうけれども、その緊急な処置として借り得ないというような状態に置かれているということを聞いてみると、それじゃほんとうに、今まで調達庁を通じて労務を提供された方々が離職されると、もうあとは世の中にほっぽらかしだ、これじゃあまりにも気の毒過ぎる。私らもその話を聞いて残念でしょうがないわけです。だからこの点なんかは、先ほど中央協議会の本部長があれだけ言われたのですから、PDの切りかえの問題は、政府政治責任をもってでも処理をされるでしょうけれども、しかしあとの一般の問題についても、私、本部長に言おうと思ったけれども、所用で帰られましたから、長官によくその点は含んでもらって、処置をしていただきたいということを、労働省、中央協議会、調達庁にお願いをしておきたいと思います。いずれまたあらためまして、その具体的な、その後の経過についてはお聞かせ願う機会を作りたいと思いますから、そのときには、きょう問題になりました問題の処理ということを、次の機会には明確に、詳しく一つ御報告をいただきまして、われわれを安心さしてもらうと同時に、PDの切りかえの問題なんかは、それこそ一体となってやらなければならぬ問題だと思いますので、どうか一つこの点はよろしくお願いしたいと思います。そのときに、アメリカ軍との交渉されたいきさつや、実態という問題なんかも一つよくわれわれに知らして下さいよ。来週にはやりますから、来週までにそれを一つプリントか何かにして、実情というものを資料として下さい。われわれが一見してわかるようにしていただきたいと思います。きょうも資料一つもないので、私らは皆さん方に、あっちへ行ったり、こっちで聞いたりしている。こういうことが心配ですからお尋ねしているわけですから、そういうことのないように、一つこの次の委員会にはお願いをしておきます。
  161. 久保等

    委員長久保等君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  162. 久保等

    委員長久保等君) 速記を始めて。  本問題に対する質疑は、この程度にいたしまして御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 久保等

    委員長久保等君) 一般労働問題に対する本百の調査は、この程度にいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  164. 久保等

    委員長久保等君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時二十五分散会    ————・————