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1958-07-03 第29回国会 参議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月三日(木曜日)    午後一時三十八分開会   —————————————   委員の異動 七月一日委員鶴見祐輔君及び苫米地英 俊君辞任につき、その補欠として黒川 武雄君及び最上英子君を議長において 指名した。 七月二日委員最上英子君及び黒川武雄辞任につき、その補欠として鶴見祐 輔君及び苫米地英俊君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     寺本 広作君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君            佐藤 尚武君    委員            井野 碩哉君            笹森 順造君            岡田 宗司君            佐多 忠隆君            曾祢  益君            羽生 三七君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    外務政務次官  竹内 俊吉君    外務省アジア局    長       板垣  修君    外務省アメリカ    局長      森  治樹君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際連合    局長      宮崎  章君   事務局側    常任委員会専門    員       渡邊 信雄君   —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠互選国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件) ○継続調査要求の件 ○委員派遣承認要求の件   —————————————
  2. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) ただいまから外務委員会を開会いたします。理事補欠互選についてお諮りいたします。理事鶴見祐輔君が一昨日委員辞任されましたため、理事に一名欠員を生じておりましたところ、昨日再び委員になられました。よって理事鶴見祐輔君を指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。   —————————————
  4. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、藤山外務大臣に対し質疑を行うことといたします。  質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 外務大臣お聞きの通り、この核兵器日本への持ち込み自衛隊の核非武装、この問題について野党のわれわれが総理大臣並びに外務大臣質問をすると、いつもわれわれと同じように自衛隊武装をさせません。持ち込みは申し入れがあったら断わる。総理大臣のごときは、自分の信念とまでおっしゃった。ところが、この決議案を出そうという自民党と接触してみますと、自民党の有力な方々が、実はわが党内にもいろいろ議論があって、なかなかまとまらないのだということで、この前の国会、最後の二十五日の午後五時までわれわれは自民党と折衝したのですが、そういうことでうやむやになってしまった。自民党から出しておる総理大臣は、われわれと同じようにまことにけっこうですとおっしゃる。ところが、総理大臣と各大臣を出している母体自民党がいろいろ議論があってまとまらないということは、私たち接触して見て非常におかしいことで、どっちが一体ほんとうなのか、藤山外務大臣一つお伺いをしてみたいと思う。党のことは知らないとおっしゃるかもしれぬけれども、どうもそれがはっきりしない。それがわれわれが口をすっぱくして、総理大臣が何べんおっしゃっても信用できないのは、それがあるためにこうやってしつつこく迫るわけです。行政府長官としてはけっこうです。そうして母体である政党はいろいろ議論があって、それも大きい声で言えないから、われわれの折衝の過程で、外務委員理事会等あたりでぼそぼそ言う、時期的には反対であるということを言っている、これは私は醜態だと思う。外務大臣いかにこういう事態をお考えになるか。もし党がそう言うならば、外務大臣自分の足元に向ってそれは違う、僕の言う通りやってもらわなければ困るというふうに、総理大臣なりに言うべきはずだ、二刀使いをやっているような感じを私は受ける、それをお伺いいたします。
  6. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 核武装の問題については、総理がたびたび言明しておられるように、日本でもって自衛隊核武装しない、また、現在のアメリカとの友好関係において、アメリカ側としては日本国民意思を無視して、相談なしに持ち込まないし、また、相談も受けていないことは、これはもう総理が一貫して言われている通りであります。われわれもそういう立場のもとに仕事をしておるわけであります。でありますから、当然政府としては、その趣旨を体してやっておるわけなんですが、ただそういうことで何かの取りきめをするというようなことについては、ただいま申し上げたようなことから言って適当でないだろう、今は時期でもないし、適当でないということを申し上げておるつもりであります。なお、党内においていろいろな議論があることは、これは社会党においても、自民党においても、党内にいろいろ議論があろうと思う。従って、党内における自由な意見の上で、最終的には決定されていくべきだと思う。おそらくこういう問題についてはいろいろ大きな問題でもありましょうから、党内でいろいろ議論をされておるということはあると思います。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 それは党内でいろいろあるけれども、その議論の末に、それを母体から出ておる外務大臣総理大臣その他国務大臣は、その上に立って発言しておるときに、これは一本であるというふうにわれわれは了解するのが当然だと思うのです。それが一点と、それから協定することについてはいろいろ議論があるとおっしゃるが、私が言うのは協定せよということをお話しているのではなくて、持ち込み反対自衛隊の核非武装、これについて決議をしろということです。同僚議員が去る参議院会議質問でも、岸総理はけっこうですと、ここでもおっしゃっている。ところが、いざ話してみると、総裁であり総理大臣がいいということが、一向その話が進まない、どういうふうに外務大臣はこれを解釈されますか。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) それは総裁として、党の一員としていろいろの考え方を述べておられ、なお、同時に一方、総理大臣としての立場をもって仕事をされるわけであり、行政府仕事をされるわけでありますから、おのずからそこには若干の区別はあり得るこ思います。しかし、最終的にはやはり党の政策、あるいは総裁が代表する政府としての意見というものはおのずから一致してくることになろうと思います。それは若干の党内異論があるこいうことは、これは当然であります。これは多数によって意見をきめていくことになりましょうから、党内に最終的にもいろいろな少数意見があり得るわけで、それはあり得ると思います。しかし、論議を尽されてきまってきたものというのは、一つの党の方針であります。党と総裁とは、片方行政府長官であり、片方は党の総裁でありましても、同じ政策が出てくることは当然でありまして、論議を尽されて同じ結果になると思います。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 どうもわれわれが接触した自民党参議院外交専門家筋の御意向では、十分その議を尽した様子がないのです。みんな一人のみ込みでもって、下手言うと大臣政務次官がもらえないかと思って、うろうろしたに違いない、まことに接触してみるとおかしな感じを受けるのですが、大臣こういうふうに了解してよろしゅうございますか。総理政党裁総としては、そういうわからずやのいる連中の顔を立てるために、持ち込むかもしれぬような顔をして、総理大臣としては、行政府長官として国民に向うときは、国民の感情を参酌して、核兵器持ち込み反対と言われる。こういうふうにわれわれは了解するのです。事実こういうふうに受け取らざるを得ないから、こうやって一生懸命攻め立てているわけであります。二面をお使い分けになるから。
  10. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 総理大臣がそういう意味使い分けをしておられるとは別段考えられません。総理大臣としては、やはり核武装並びに核兵器持ち込みについては党内に対しても、あるいは行政府長官としても、同じ態度であろうと思います。ただ先ほどからお話のありますように、そういう問題について、党内でいろいろ議論もありましょう、そういうものが一定の時間的過程を経て固まっていくことになるのでありましょうし、また、この問題についてどういうふうな扱いをするというようなことは、党としてもいろいろ論議を尽される必要もあろうと思うのでありまして、そういうことで現在党から出ておられます役員の方々が、全然違った立場でなしに、そういう意味でいろいろ方法論その他について、研究しておられるのではないかと私ども考えております。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 外相渡米に関連したことで、一言お伺いしたいのですが、一部新聞情報によると、渡米の際に日米安保条約について、改正意思でもって臨まれるというようなことも伝えられているわけであります。実はこの問題については、両院のわが党の外務委員の諸君が、昨年来しばしば触れている問題でありますが、昨年も私予算委員会岸総理にこの問題に触れたときに、約二時間、岸総理は、結果としては私ども考えたことと全く違ってはおったが、しかし、まあ日米安保条約性格について、二時間に近い質疑応答をやったわけです。従って、私は、この前も外相渡米に関連して若干お伺いしましたが、その際そういう一つ一つ案件に深く立ち入って、内容的に深く立ち入るということは、外相としても好まないでしょうし、私たち外交上の機微の関係上、あまり深入りすることを決して適当と思っているわけじゃない。しかし、今申し上げたように、総理大臣も長い時間をかけて、日米安保条約性格について言われ、また、その前の重光外務大臣等は、日ソ交渉の問題なんかではかなり深く立ち入って、差しつかえない限りの応答をこの委員会でやっておられます。だから私は、外交がちょうちょうはっしゃることがいいとは思いませんけれども、しかし、差しつかえのない範囲内で腹を割って、ある程度のお話を承わりたいと思う。  そこで、新聞情報によると、安保条約の今の性格を、つまり海外派兵を伴うような双務協定的なものでないものとして、しかもこの日本の今置かれておる片務的な協定を是正したいということを考えておられるように新聞は伝えておるわけですが、外相としてどういうようにお考えになっておるか、これはもちろん双務協定的なものになれば、常識的な意味双務協定ですが、そういうふうになれば派兵義務を伴うことも起るでしょうし、日本ではそんなことをやるはずはありませんが、性格的にはそういうことになる。そうでなくて、今の片務協定の是正というと一体どういうことになるのか、私はなかなか問題があると思う。しかし、一体外相として、今度向うにおいでになってそういう問題に触れられるとするならば、どういう基本的にはお考えの上に立ってこの問題に臨まれんとするのか、どうか差しつかえない範囲一つ総理大臣も二時間にわたってこの問題にかなり詳細な答弁をされて、速記録はいつでもお目にかけますが、答えられておるのですから、あまりまあ問題を避けられないように、一つ腹蔵のない意見を聞かしていただきたいと思います。
  12. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) そう官僚的に、森さんの言われるように答弁をしておるつもりでもないのでありますが、今度私がアメリカにまず行っていろいろ話し合いをしてみたい、こういう問題は基本的に言いますと、個々の問題、日米間のいろいろな問題があるわけであります、解決を要すべき問題が、それをずっと私も一年間外務大臣としてこうした問題等を扱ってみまして、また、議会等論議を通じ、われわれもいろいろ考えさせられる問題があると思うのです。決してないわけじゃない。また、考えてみなければならぬ問題がある、そういうことが何から起ってきておるかというと、いろいろ日米間の取りきめなり、条約なり、そういう問題のできたときの環境その他からやむを得ず起っているというような問題もあります。戦後すでに十二年くらいたちまして、そうして平和条約発効後もすでに相当の年月がたって日本としてもやはり戦争後の状態から社会的にも経済的にも立ち直ってきておりますし、また、国際情勢の中に対しましても、一昨年の暮れに国際連合に加盟して以来、日本国際的立場というものも重きをなしつつあるというような変化がきておるわけであります。そういう立場から考えてみましてほんとう日米親善外交を展開いたすためには、やはりいろいろ両国立場をもっとはっきりお互いに認識しあって、少くも現状を認識しあって、その上に立って今後の問題というものを考えていく必要があるのじゃないかというのが、私の一年間の経験から通じてそう感じられるわけであります。そこで、やはり一ぺん日米両国の間の問題というものを基本的に洗ってそうして話し合ってみる、それは国際情勢も、あるいは日本の国内の戦後の状況等も変った事情もありますから、そういう点をすっかり話し合ってみる、そうしてこういうところ意見が食い違うのだ、こういうところ意見が一致するのだ、あるいはなるほどアメリカからすれば日本側立場はそういうふうに変っている以上は、自分たちの方もなるほど考えてみなければならぬということも必要だと思うのであります。そういう意味において、まずそういう基本的ないろいろな問題を取り上げていく、そうしてそれを説明し何する場合には、安保条約の問題にも触れましょうし、あるいはその他いろいろな両国間の経済的な問題にも触れていくと思うのでありますが、そういうことを実例に出しながら話をしていくことが必要だと思います。しかし、そのもの自体を少くともここで解決するよりも、そういうお互いに認識をして、そうしてその上に立って新しい個々の問題の解決をしていくということが必要だ、でありますから、とりあえずアメリカに行きまして、そういうことについて忌憚なく私の考えておるところアメリカ側に率直に一つ言ってみる。また、それに対するアメリカ考え方を聞いてみる。そうしてどこが食い違うのか、また、どこがお互いに、なるほどそう話し合ってみれば、今までのことをそう考えなくても一致したことでいけるじゃないかというところも発見できるじゃないか、そういうことが基本的にきまってきますと、個々の条約なり、あるいは日米経済関係なり、そういうものに対する解決案と申しますか、そういうものがおのずから出てくるんじゃないか、こう思うのです。むろん私としてはいろいろ今のような安保条約双務的あるいは片務的という問題もあります。これは言葉の上でいろいろに解釈されましょうが、しかし、今日、日本自衛隊ほんとう防衛のものであって、そうしてそれが国外に進出するという立場にないことは十分了解しておりますから、その範囲内において、どうしたら安保条約日本現状のいわゆる総理アイゼンハワー会談による日米共同宣言に言われておりますような国民的願望その他に適合するようにできるかという問題にそこで触れてみたい、こう思っておるわけであります。これにはやはりわれわれも今お話しのありましたように、いろいろな材料も集め、検討もし、過去一年間、私自身の経験した国会その他政治上の論議を通じての啓発されたところ等も取り入れながら考えるということであろうかと思うのです。だからそういう意味において、まず今度参りますことは、何か一つの特殊な問題をとらえて、その交渉解決に行くのだというのではなしに、一応そういう考え方で話し合ってみたい、こういうふうに実は考えております。むろん行きます以上、若干こういう問題について具体的な問題の解決話し合いをしないということではありませんが、行く大きな目的がそういう目的で行ってみたい、こういうわけであります。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 よくわかりましたが、しかし、非常に抽象的で、ごもっともだと思いますが、安保条約の問題だけに触れられるわけじゃない、当面する日本の諸懸案みんなについて触れられるようでありますが、しかし、いずれにしてもこの片務協定的と言われる理由は、人によってみな解釈が違うと思うのです。人によれば、アメリカ日本を守ることが義務づけられておらないことが片務的だという人もあるし、あるいは相互にそういう義務を負っておらぬということがどうこうという、まあそれぞれ片務の解釈は違うと思うのです。しかし、サンフランシスコ条約のできたときに、この日本真空状態にあるということで安保条約をとりあえずの処置として作って、それ以後、日本自衛隊はオタマジャクシがカエルになってだんだん大きくなった。そういう中でしかも海外派兵というようなことがわが参議院でも鶴見先生等の御発議もあって、われわれも協力してやった海外派兵禁止決議案もあったわけでありますが、そういうこともあって憲法上はもちろんでありますが、日本ではそういうことには完全な制約を受けておるわけです。こんなことはあるはずはないと思います。しかし、そういう義務を負わない形で、もし安保条約改正があるとするならばどういう性格のものか、これは私なかなかむずかしい問題だろうと思う。しかし、それを私はもしおやりになるならば、何か新たなる義務を負うような形で話し合われるべきではなかろうと思う。おそらく前に重光さんが行かれて壁にぶち当ったこともそのことが一つの大きな原因だったと思うし、岸総理が行かれていわゆる日米新時代というものを強くかもし出したのも、また、その辺のところに大きな原因があろうと思う。しかし、私は今ここで何か特別に安保条約が当面緊急の日程になっておるとは思いませんが、しかし、これはサンフランシスコ条約成立以来の日本現状、それから安保条約の今の内容、それから自衛隊発展過程、そういうものを見たときに、やはり適当な時期に根本的なやはり解決を必要とするんじゃないか。ほおかぶりしておっていいという性質のものではないと思う。従って、私は立ち入った内容についてかれこれ申し上げることは避けますが、今のお話で、ある程度はわかりますけれども、もしかりに触れられるとすれば、どういうことを想定をされておるのか。個々のこまかいことはよろしゅうございます。精神としてはどういう基本的な考え方の上に立っておられるのか。これはあとから、会談からお帰りになって承わっては、私はちょっとおそいことだと思う。だからそれはお差しつかえがある場合はかまいませんが、私はこういう御出発になる前に一応のわれわれの意見を申し上げて大まかな意味一つ御見解を伺いたい。
  14. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) たとえば、極東の平和を確保するということは、私は単純に軍事力だけでは確保できない、やはり極東の平和を確保するには極東あるいは東南アジアと申しますか、そういうものの政治の安定、民生の安定、生活の向上ということがやはり一つの大きな極東の安定をする一つのゆえんではないかと思うのでありますが、で、そういう意味において、たとえば共産主義というものを私ども自民党立場として信奉しておらぬのでありますが、そういう問題を考えてみましても、たとえば経済生活が向上し、生活が安定してきているというような形に進んで参りますれば、必ずしも軍事上の問題だけでなしに、極東の安定というものはもっと期せられるのではないか、そういう意味において、やはり極東の安定というような基本的な問題についても、もっと私はやはり論議をしてみる必要があるのじゃないか。アメリカにも極東の安定という問題が、単に軍事力だけの安定じゃなくて、そういう面にもう少し心を使ってもらうということが非常に必要なことなんじゃないかというようなふうに考えます。しかし、その使う方法によっては、いろいろさまざまなことの起る場合もありまするから、その使い方その他についてもやはりアジア立場としての見地からこういうふうにやってもらわなきゃならぬというようなことを言わなければならぬのじゃないかと思うのであります。そういう意味において、やはり根本的にまあ極東の平和と安全ということを日本としてはどうしても確保していかなきゃならない。それがただ単に軍事力の造成だけでなしに、やはり現在の段階はむろん大きな二つの国が対立しておりますし、考え方によっては軍事力が全然不必要だとは言えません。私はある場合には必要だと思います。が、しかしながら、それだけにたよって、極東の平和と安全を保障し得るかというと、私はそれだけではないのじゃないかと思う。そういう点からやはり日米関係をもう少し検討してみる必要があるのじゃないかというようなふうにも考えるわけであります。そんなような、私はそこで十分アメリカの当局と全般的に話をして参りたいと、こういうことでございます。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 もう一点お伺いしますが、これはまあ抽象的にはその御議論には異論がないのです。しかし、私が主としてお伺いしたいことは、今度まあかりにそういう問題に触れられて、新しい形で問題を再検討される場合に、新しい形で義務ですね、防衛上の義務というものが負荷される、そういうものを日本が負わされてくる、そういうことのないことを私は期待をしているわけで、だから片務協定的なものがかりに双務的なものになった場合、その双務ということはどういうものを意味するか、人によって解釈が違うが、軍事的な意味日本が新たに負荷される特別な任務を負うというようなことは絶対ないという形でのみ、かりにもし検討があるならば検討されるべきものだと思うし、私はまた当然だろうと思う。そのことを私は強く要望しておるわけなのです。先ほどお話のあった精神は、もちろんこれは異存のあることではございませんが、今私の申し上げる点は、これは先ほど申し上げたように、あとからそういうことが起っては、そんなことは絶対ないと私は確信しておりますが、全くのこれは、老婆心にすぎませんが、念のためにそういう新たな義務を負う、双務的な協定の履行ということは絶対ない、こういうことを一つ御確言いただけませんか。
  16. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は今お話のありましたように、双務的、片務的という問題は、言葉の上で非常にむずかしいんで、双務的であることはかえって今のように困る場合もあるわけであります。そうかといってやはり日本の終戦後の事態と今日の事態とでは、日本みずからの世界における立場は違っておりますので、ある程度昨年アイゼンハワー大統領岸総理会談の結果として、両者が同じような平等の立場話し合いをしようという一歩を、すでに踏み出しておられる。そういう立場ででき上ったものは、必ずしも片務的とも私は言えないが、しかし、いろいろな意味考えていかなければならぬ問題もある。同時に、日本憲法にありますのに、日本が何か軍事的な新しい負担をするというようなことを私は現在考えておらぬ。そういうことが双務的であるというようなふうには必ずしもいかないと思いますが、まあそう負わないことが片務的であるとも、まあそう考えておらぬので、同じような立場話し合いをするということから出てくれば、あるときには片一方義務を負わない場合もあり、片一方が権利を持たない場合もあるかもしれぬと思います。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 それはまあよくわかるような気もするが、しかし、気にかかるような言葉が今あったと思いますが、もうくどいことは言いませんが、新しい日米軍事同盟同盟という言葉が語弊があれば何でもよろしゅうございますが、日米軍事同盟的な性格のものに移行することがないと、それならそれでよろしいのですが、あとのこまかいことは私伺っておりません。そういう性格のものは考えておらぬと、これは御確言いただけるでしょうか。どうでしょう。
  18. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今お話のような点が、つまり私はそう望んで、同時にそれだから何かの義務を負わないということ自体が片務的だとは、私は言えないのではないかということなんですが、そういう意味考えておる。
  19. 曾禰益

    ○曾祢益君 これも、今非常に抽象的な議論だから、やや哲学的な話になって非常にむずかしいのですが、これも決して言葉じりをとらえての問題ではないのですが、これは軍事的な日米安保条約を改訂するという問題から派生した問題だから、私はちょっと心配な点が起ったのは、まあ羽生委員が言われたように、この日米安全保障条約の発展とか変形ということは別に、今外務大臣が言われたように、アメリカがとかく軍事あるいは戦略面を強調した、あるいはそれにとらわれた考えで、アジアの平和なり安定を考えておるのは間違い。まあそういう言葉を用いられたかどうかは別として。じゃあそういうアジアの定安は経済からというような観点を主張されるとするならば、それはけっこうである。その形がどうなろうか。その形が岸総理のお得意のアメリカの資本と日本の技術と現地の労力と言うんでは、僕はそういう形をとることは反対だけれどもアメリカ軍事偏重主義ではいけないのだ。アジアの安定ということはやはり経済の不均衡の是正とか、ほんとうにひもつきでない援助ということが必要だろうという意味で言われたんだろうと思う。その点はいいんですが、ただ私がちょっと心配しかけたことは、たとえばこれをヨーロッパの場合に対比して考えてみると、これはヨーロッパのNATO諸国でも、とかくアメリカ政策がこれもまあ軍事、戦略偏重だと、ところが、NATO条約そのものにはもちろんできた経緯、マーシャル・プラン等の関係等から見て必ずしも軍事ばかりではないという関係があった。特に昨年のスプートニク以来、NATO諸国のヨーロッパ側からの要望としても、やはり経済というような面を、あるいは文化的、政治的の緊密化とか協力という面を強調しようという動きがあったわけです。それは他山の石なんだけど、そこで問題に返って、もし日米安保条約を変形する場合に軍事面はあまり強調しないで、経済面の方にかりにいくとしても、そのことがもし安全保障条約が質的に変っていく形だと考えれば、やはりそこに問題が出てきやしないか。つまり日本側の意図がどうであるにせよ、やはりアメリカ日本が、軍事プラス経済の二つのやはり軍事と経済と切り離せない面で、それでアジアの援助をほんとうにやっていこう、あるいはアジアの援助そのものは、安定への努力は主として経済の見地から言い出したとしても、それとやはり軍事がからんでいるような場合には、これまた問題を起すわけです。だからかりにそれをバイラテラルに、二国間の条約という形をとるにしても、そうして日米の協力というものは、日本軍事防衛ばかりでなく、たとえばアジアの平和安定と極東の平和安定を、これはしかし経済的に両国がささえていくように努力しようじゃないか、かりにそういう条約の新しい方向があるにしても、そういう形をとることがかえってアジア諸国から見ると、これは反発を受けるという場合もあり得る。いま一つ考えてわれわれが心配しているのは、そういう形がバイラテラルでなくてマルティラテラルに、多数国の条約、これは政府も先般の私の本会議総理に対する質問、すなわち日、韓、タイというような軍事同盟とか、あるいは反共同盟というようなことは、これは考えておられない、これはわれわれもそうであることは、そんなことはないだろうということで、総理の言を了としたわけです。しかし、かりにそういう形でなくても、アジア諸国の協力ということは、やはり軍事プラス経済という形で、多数国のもし条約になるということを考えるならば、これはやはり私は問題が出てくるのじゃないか。だからもちろん、今抽象論をお互いにやっているのだから、外相がそう言われたという意味じゃないけれども、もしそういう意味だとすれば、これはせっかくの善意であっても、ちょっとわれわれとしては危険な方向である、そういう意味ではないと思うのですが、もしそれ以上説明がおでき願えるならば、私の誤解というか、心配は危惧であるならば解明していただきたい。
  20. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は今原則的に申し上げた。つまり極東の平和を確保するということは、軍事的に非常に整備されるということばかりではいけない、経済的にも十分考えていかなければほんとう極東の平和はできない。それを直ちに私は現在の日米安保条約に織り込もうと考えておりませんし、また、われわれ岸総理が例のアジア開発基金を提唱されまして、それまでも私どもはある程度考えておったわけであります。また、アジア人の心理がそういうところにある。何か軍事援助に関係したような、ひもつき援助というものに対するアジア人の感情も承知しておりますので、今曾祢委員の御心配のようなことを私は考えているわけではない。ただしかし、それではどういうことを考えているかというと、具体的に問題を先ほど申し上げたように、展開するのには相当技術的にも考えていかなければならない。従って、まず第一に、基本的なある程度の考え方がつかなければ、新しい考え方も構想もできないのじゃないかというので、今はなはだばく然たることを申し上げておるようでありますけれども、必ずしもその後の構想がこういう形でいった方がいいのだという特別な考え方を持っているわけではございません。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 私これで終りますが、それであれですか、外相が向うに行かれた際は、単にそういうことを向うと話し合ってみるということだけか、場合によったら外相は問題の性質いかんによっては、それについてある程度の積極的な意見も述べられて、若干の新しい段階の糸口をつかまれるような努力をされるのか、ただ単に、行って意見交換をして、新たに外相に二度目になられた意味のあいさつもかねて意見交換をされる程度なのか、その辺はどうででありますか。
  22. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 新しく外相になったからあいさつに行くというような気持は毛頭ないのでございまして、今お話申し上げたような立場意見の交換をする。で、まあ私も今回外務大臣に再任し、先般、先ほど申し上げたように、議会なり、世論の論議外交を担当してみていろいろその中から批判される面も多かったわけであります。そういう問題を考えて、一体日米ほんとうの親善関係を打ち立てるためにはどうしたらいいかということで行くわけですから、そういうような話し合いの上で糸口を今お話のようにつかまえて、そうしてさっき曾祢委員質問にお答え申し上げましたように、とりあえず一つ方法論考えていく。従って、今度行くときに何か方法論を持っていくというよりも、でありますからそういう方法論が打ち立てられるとは今度の訪米ではいかぬと思います。そういう今もお話のように、糸口をつかんで、何かそういう問題を考えてみて、それをおのずから打ち立てていくことに、実現に向っていくことに最終的に調整ができていくのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 相当積極性があると考えていいですね。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 相当積極性をもって考えているわけであります。
  25. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 委員長、議事進行についてちょっと発言したいと思います。と申しまするのは、本日は外相質問の時間がまだ四十分くらい余っているのでありまして、野党代表の社会党諸君がずらりと頭を並べて質問されること、これは一向私ども異議はもちろん持ちませんが、しかし、同じ委員が二度も三度も発言されて時間を食われるということがありまするというと、半分野党の緑風会の発言の機会がなくなってしまうのでありまして、本日は私も数分間質問いたしたいと思いますので、どうぞ委員長において、適当な時間を繰り合せていただきたい、調整されていただくようにお願いいたします。
  26. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 承知いたしました。
  27. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日中関係についてお伺いいたします。  貿易の打開の問題についてはいろいろ御答弁があったようでありますが、同じようなことを繰り返して聞こうとは思わないのですが、たた一つ、私がお伺いしたいのは、貿易の問題がああいうふうにむずかしくなってくると同時に、日中の関係というものは悪化していくということ、これは単に今後貿易を再開するということだけでは片づかない問題が出てくるのであります。つまり、日本と中国との関係が、ある意味で新しい段階に入ってくる。ここで一体今後日本と中国との関係をどういうふうに持っていくかという基本的な考え方というものが政府の方で確立しておらなければ、貿易の打開の方法についてもなかなかはっきりした回答が出てこないのじゃないかと思うのです。まあ、前に非友交的であるというようなことに対して、いや今後国交回復していない国とも友交親善を打ち立てなければいかぬ。あるいはまた、長崎事件については遺憾なことであったということを表明をしている。それから第四次協定については、これはまあ無条件にやるということは言っておられないのですが、これも前に支持と協力を与えるといっているのだが、こういうことだけでは私はどうも打開できないんじゃないかと思います。そこで、一体中国と日本との関係について私も考えてみますると、とにかく中国は第一次五カ年計画も終え、第二次五カ年計画にも突入しておる。政権の方は、国内にいろいろ問題があったけれども、まず非常に強固なものである、こう見ていいわけです、そうして中国の世界における地位というものは、非常に高まってきておる。アジアにおいては、まず最有力国の一つであるというふうに私ども考える。しかもこの国と隣り合せになっておる日本との間にこういうまずい関係が続くということは、これは日本アジアにおける国際的地位を、将来にわたって長く不安ならしめるものである。日本にとってきわめて損なことである。そこで私がお伺いしたいのは、中国との関係というものを、今直ちに国交回復という、外交技術的な問題の解決ということは別といたしまして、どういうふうに持っていこうとしておるのかという点についてまず外相の御意見を承わりたいと思います。
  28. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中華人民共和国との関係は、総理も、あるいは私も申し上げておりますように、できるだけ友好善隣の立場から問題の焦点を持っていきたいというのが、少くも現在の考え方であることは申し上げるまでもないわけであります。先般来、いろいろ両国の間に、まあ誤解という言葉が適当でなければ、理解を欠いておる点がお互いにあったかと思います。そういう問題について、やはり誤まったいろいろな議論なり見解が出てきたというようなことは、お互いに反省をしていかなければならなう。これは日本が反省するばかりではなく、中共側においても反省をしてもらわなければならないと思います。そういう意味において、経済なり文化の関係を、お互いに友好的に進めていくというのが少くも現在の段階であり、一ぺんああいうような問題で相互の意思の疎通を欠くようになった現在においては、まず第一に、そうした状況を一日も早く回復して、そうして今申し上げたような、友好善隣の立場でもって、経済、文化の交流をはかっていくことが、おそらく現状に即した政府考え方であると思います。将来にわたりまする大きな問題については、現在なおまだ非常にデリケートな段階でありますので、とかくのことを申し上げることは、かえって誤解を生むゆえんでありまして、私としては差し控えたいと思います。
  29. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 デリケートであって、いろいろそれを今ここで述べるとむずかしい問題が生ずるであろうということですけれども、それを口実にして、対中国問題について根本的な考え方を持っていないということであっては私はならぬ。とにかく根本的な考え方というものを持っておるということが、この際、絶対に必要なんであります。ただ従来のように、中共との国交回復は時期尚早である、時期尚早でない、しないんだ。中共は承認しないんだということを強調しており、そして台湾が中国を代表する政府であると認めてきておるこの態度についても、これはなかなかむずかしい問題ではあろうけれども、私は検討を加えるべき段階にきておるのではないかと思うんです。そういうような点について、これはやはり日本としては、もう今すぐ発表するしないは別として、根本的に、内閣並びに外務省においては、十分に検討すべきではないか。そうしてその際に、私ども考えなければならぬことは、すでにアメリカが、今日、中国に対して、漸次その態度を変えつつあるということは御承知の通りであります。もちろんダレス長官の強硬政策は依然として続いておるようです。しかしながら、これは変えざるを得ない状態に今追い込められておる。たとえば最近のアメリカの有力な政治たちの間におきましても、対ソ連圏諸国に対する態度について再検討する、特に中国に対する問題について、まじめに再検討を始めておる状態にある。そしてまた、最近におきましては、ココムの制限についても、ああいうふうに緩和をしてくるようなことも起っておりますし、また、その前には、事実上チンコムが崩壊したような事態も起っておる。それからアメリカにしても、あれだけ中国に対して強い態度をとっておりながら、ジュネーブにおきましては、米・中大使会談は、とにかく継続しておる。長いこと中断をしておりますけれども、全然中絶の状態にあるのではないという事態、これまたアメリカ側は、今中国からこの会談の継続を申し込まれて、これから回答するわけでありますが、そういう事態である。ダレス自体も、中国に対する態度は、従来とはかなり違ったものが見られるようになってきているんです。このことは、私はやがてアメリカの対アジア政策というものが、全体について、やはり相当変ってくることになるのではないかというふうに考えられる。特にこのことは、私はやはり今の北京政府、これが実際に中国を支配してしかもこれはもはや無視することのできない勢力になっている。これを相手にしなければ何ごとも解決できないんだという事態になっておるということは、アメリカは、おそまきながら認識せざるを得なくなったことからきている。日本においても、こういうように、どうもアメリカ自体でも再検討しなければならぬような情勢になっておるときに、われわれ日本が、今まで通りの態度でもって処していこうというのではいかぬと思います。その点について根本的に検討をしておられるのかどうか。ただ、従来のオオム返しのようなことを言って、その上で、ただ友好善隣を進めるとか、そういうことだけであるのか、そこを一つお伺いいたしたいと思います。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今日世界のいろいろな事情が、いろいろな原因から、急角度に動いておるという現在の実情をわれわれはちゃんと把握しなければ、外交をやって参れないわけであります。お話のような中共の問題については、日本が近接国であるだけに、日本の各界各層の方々も、いろいろな御意見をお持ちだろうと思います。決して日本人がこうした問題について、だれでも心配をしながら、いろいろな意味で問題の角度は違いますかもしれませんけれども、将来の問題を考えておられる。私ども政治に当っておりましても、当然今のことを、いろいろの将来の問題として考えていく心がまえは持っておるので、決してそれはなおざりにしておるわけではないわけであります。岡田委員と同じような説になるか、ならぬかは別としまして、そういう問題についてやはり十分考えていることは考えているのであります。ただ現在、非常なデリケートな段階にありますので、従って、私としては責任のある仕事をしております以上、そういう問題についてとかくの発言をいたしますことは、かえって適当でないと思って、発言をいたさないわけであります。
  31. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 この対中国問題は、今の政府立場からすれば、日本と中国との間の関係だけで解決できるものではありません。つまりアメリカというものを考えのうちに入れなければ解決できないということになるだろうと思う。そこでまあ外相なり、あるいは首相なりがアメリカへ行かれることになるのでありますが、このアメリカへ行かれて向う側といろいろと話し合いをされる際に、この中国の問題ですね、これはアメリカと中国との関係もありましょうし、それから中国と台湾との関係もありましょう、日本と中国との関係もありましょう、そのほかいろいろな関係があると思いますが、そういう問題について話し合いをされるつもりであるかどうか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私としては、むろん極東から東南アジアのそれぞれの国に対するアメリカ考え方というものは、十分率直に聞く必要があると思っております。
  33. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 聞く必要があるだけで、こちら側から、こうすべきであるという意見は言わないのですか。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いや、私は先ほどから申し上げているように、日米親善外交を展開する意味において、私は自分の見ているところ考えているところを率直にアメリカ側に言うのがまず前提でありますが、しかし、同時に、アメリカの言うことも十分聞き、また、特にアジアの諸国に対して、単に中共といわず、インドネシアに対するアメリカ考え方、あるいはビルマ、そういう国に対する考え方というものをやはり聞きますことが必要だということを申し上げたのでありまして、こっちのことは何も言わないという意味ではないのであります。
  35. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 とにかく今の中国に対するアメリカ側政策なんかというものは非常に不自然な状態を基礎にしていると思うのです。で、そのためにいろいろなむずかしい問題が起ってきている。私はこういうような不自然な事態というものは、早く何らか、是正されなければならぬと思うのですが、それにはやはりアメリカの対中国政策というようなものがこの際是正されなければならぬと私は考えている。これは日本立場から見ても、アメリカが中国に対して間違った政策をとり、日本がそれによって、そのアメリカ政策によって、日本の対中国政策が牽制されているとするならば、これは日本にとって非常に不利でありますから、アメリカ側に対して中国に関する考え方なり、政策なりを改めるようにする、あるいは日本は堂々と主張すべきであると、まあこういうふうに考えているわけであります。  まあそれはそれとして、私は次にお伺いしたいのは、日本と中国との間がこういうふうに悪化してから、一つの動きが起っているわけであります。これは過日曾祢君も本会議で触れられましたいわゆる日・韓・台の反共連盟というような問題でありますが、中国と日本関係が悪くなりましてから、にわかに韓国の岸内閣に対する態度が変ってきたのであります。選挙の終りのころに矢次氏が行かれまして、そうして矢次氏がまあ向うで何か話してこられたのであります。その際に、李承晩大統領の岸総理に対する評価と言いますか、賞讃と言いますか、そのことが矢次氏によって伝えられておるわけでありますが、その後の韓国の新聞の論調を見ますというと、かなり強く、この日本が韓国と同じように反共の立場に立つこと、そして両国がそれを基礎にして提携することを強調しておる。それからさらに選挙が終りましてから、間もなく台湾の亜州反共連盟総裁の谷正綱氏がこちらに来られておるのであります。その表向きの任務はもちろん経済協力のための会議をやられるということであったようでありますけれども、そういうときに台湾の方でそういう動きをしておるのだというようなこと、しかもこれにはやはり矢次氏が深く関係をされておるようだというようなこと、これらを考えあわせてみますというと、私どもはこれに非常に危惧の念を抱かざるを得ない。その上に持ってきまして、この間の澤田全権の発言であります。これはまあ打ち消してはおられますけれども、ただ私はあれは不用意に飛び出したものではない。やはりそういう雰囲気が生まれておるところから出た言葉であると思うのであります。こういうことを考えてみますというと、どうも今申し上げました日・韓・台の反共連盟、しかもこれが軍事的なものに転化いたしますれば、北太平洋条約機構のようになることにもなりかねないと思います。そういうような点について、われわれは危惧の念を持っておるのでありますが、こういう点はどういうふうにお考えになっておりますか。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 何か日・韓・台三国による反共連盟が今にもできるような御心配であるようでありますけれども総理も明らかに否定しておられます。私もそういうものを作る意図は全然現在持っておりません。
  37. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 持っておられないということをはっきり言われるのは、私どもけっこうだと思うのでありますけれども、しかし、次から次への向う側からの働きかけもあるようであります。その働きかけが、やはり国内においてもある人々の間に反応をもたらしておると思いますね。そこで全然火のないところに煙は立たないわけでありまして、従って、そういうようなことがちらほらこちら側の方にも現われて参りました。先ほどの、私が聞きました澤田全権の発言なぞも、そういうところから出ております。矢次氏が取っておられます行動等も、そういうようなにおいが私どもには感ぜられるわけであります。ほんとう総理並びに外務大臣が、そういうことはないというようにはっきり否定されたら、私どもは与党なり、あるいはいやしくも外務省が、全権として任命した者が、それと思わせるような発言をすることがあっては非常に遺憾なことなんであります。まあそういう点について、本来ならば私はその責任をとるべきだと思うのでありますが、こういうことが今後起らないように抑制されるかどうか。
  38. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日本は非常に民主主義の国で、言論も自由でありますから、いろいろな言論が横行しておりますことは、まあ当然のことだと思うのでありますが、それについては、やはり議論によっておのずから問題は解決していくと思いますが、私どもとしては、現在申し上げましたように、三国の軍事的な関係を打ち立てるということは全然考えておりません。どうか外務大臣を御信頼願いたいと思うのであります。
  39. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 いや、もう言論が自由であって、いろいろな意見が出る。これはいいのですよ。しかし、いやしくも日韓会談の全権ともあろう者が、ああいう発言をしておることを、外務省がそのまま見のがしておるということは、私はどうもけしからぬ話だと思うのです。それが一つ。それから少くとも首相の特使か何かで向うへ行ったような人がそういうようなにおいのする動きをしておる、それは外務大臣も全然知らないわけではないと思うのですが、そういう人がそういう動きをしておるということを私は指摘しておるのであって、ただの新聞紙上に現われておる論説とかあるいは雑誌の論文とか、そういうことについて私は申し上げているのではないわけであります。
  40. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 澤田全権が言われましたことについて問題があったということは、私も澤田さんを呼びまして、そうして澤田氏が言ったその言い方について誤解を招くような点があったと思うので、澤田さん自身の考え方は言われたごときことでないということを了解しているわけであります。がしかし、同時に、今お話のありましたように、全権という立場でおられますので、今後とも言論等につきましては十分注意をしてもらいたいということは澤田氏にもはっきり申しておいたわけであります。
  41. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、今の日韓会談の問題について若干お伺いしたいのですが、日韓会談は今進行中でありますので、私は詳しいことはお伺いいたしませんが、どうしても私どもは解しかねることは、矢次氏の首相の特使として向うへ行かれたことなんであります。もちろん外交交渉は表向きの機関で行われるばかりでなく、側面から促進されるということもあるでありましょう。しかしながら、いやしくも日韓会談がすでに始まっておる、まだ何ら難関にも逢着していない、始まったばかりの状態のときに首相の特使が行ったということは、これはどうも私どもはふに落ちない点があると思うのです。矢次氏が行かれて何か非常にむずかしくなった問題についての打開ということをやられたとは私は思いません。むしろもし行かれたとすれば、この会談を促進するために何か一般的な、基本的な問題に触れて帰ってこられたのじゃないかと思うのです。ただ親善で握手をしに行っただけだとは私は思いません。親書の内容等についても外務省の方では御承知のはずであるわけであります。とにかく矢次氏が向うへ行って李承晩大統領と話し合いをしてくれば、そこに矢次氏の資格からいたしましてやはり一つのオブリゲーションが生ずると思うのです。そのことが今後外務省の韓国との交渉を私は制約することになるのではないかと思います。一体矢次氏の向うへ行ってなされた会談の結果生ずるオブリゲーションが今の外務省によって進められておる日韓会談を制約するものであるかどうか、それをお伺いしたい。
  42. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在、日韓会談はまあ外務省が正式に代表を任命して会談をやっておるわけでありまして、それは決して会談自身他からの制肘を加えられないで、総理もしくは外務大臣の方針に従ってやっておるわけなんでありまして、先般矢次氏が行かれたことによって、その会談に何らかの義務を生じ、あるいはその他の制約を受けるということは全然ございませんし、また、そういう制約を受けてやるべきものだとは私は考えておりません。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それでは矢次氏の行ったことは、この日韓の交渉については何にも意義はなかった、そしてまた、それは外務省にとっては全然必要のなかったことだというふうにお考えになっておるのかどうか、私はどうも首相がああいうことをやられたということは、国民にも疑惑を招いておるし、日本側立場にとりまして相当影響があると思うのです。外務大臣はそれをどうお考えになっておりますか。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 日韓会談を進める上において、できるだけ友好親善な雰囲気の中でこれをやっていきたいということは、これは私としても当然考えなければならぬことと思います。そういう意味において、先般矢次君が行かれたことがよき結果を生むのでありますれば、私はこれは幸いだと思っております。がしかし、決して会談内容その他についてわれわれは矢次氏に委嘱したこともございませんし、また、矢次君が帰ってきての話し合いによって何か制約を受けるというふうなことはむろんございません。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今制約を受けることはございませんと言っているけれども、たとえば、将来会談が何かむずかしい問題にぶつかりましたときに、あるいは韓国側から、矢次氏が来たときにこういうふうに言っていったじゃないか、あるいはこういうふうな話し合いをつけていったじゃないかということになってくれば、これは私は重大な問題が起ると思うんです。とにかく、それは将来のことですから別といたしまして、一体首相が、会談がまだ始まったか、始まらないという段階において、ああいうような特使を出すというやり方は、外務大臣として好ましいとお考えですか、好ましくないとお考えですか。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 外交を展開していく上において、外交責任は当然外務大臣が負うわけです。また、その方針によってやるわけであります。ただ、むろんいろいろな交渉をやります場合に、民間的な情報の収集でありますとか、あるいはニュースの獲得でありますとか、そういうふうな面において民間の方々の協力を得るということも、決してこれは不必要なことではないと思います。ただ、そういう問題が行き過ぎて、何か実際の外交上の扱いのような形に見られるようになってきますことは、外交を一元化する上において私は適当ではないと考えております。今回矢次君の行かれたのも、友好親善を深める、そういう意味の中で会談し、交渉するというような心づもりで総理がやられたと思いますし、その限りにおいて、私は現在必ずしも矢次君の行ったこと自体がこの問題に、日韓会談に影響するとは考えておりませんし、また、そういう意味で派遣されたとも思っておりません。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 日韓会談について韓国側は、金大使と柳公使との間にことごとににらみ会いがある。これは私どもはこちらで聞いているばかりでなく、韓国の新聞でもはっきり指摘しているところなんですね。そうして、外務省は金大使との間でいろいろ交渉をされている。ところが、矢次氏は柳公使との間に深い関係を持っている。そうしてその柳公使と一緒に向うへ行っているというようなことなんです。こういうことが、私は日韓会談の上にも大きな悪い影響を持つのではないかというふうに思うんですが、私は、これはこちらで得た情報でなく、韓国の新聞でも書いているのだから申し上げるんですが、韓国の代表団が二つに割れておって、ことごとにいがみ合って競争をしているというような事態は、交渉上好ましいことと思われるかどうか。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は交渉の当事者でありますから、相手国の内部の事情について詳しいことを言うことは、この際、避けたいと思います。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今後の日韓会談については、私は非常に危惧の念を持っていることは、今の日韓会談の進め方を見ておりますというと、向う側に都合のよろしいような委員会だけ開かれているんです。いわゆる請求権委員会といいますか、何を請求していくのだかわかりませんけれども、とにかく請求権委員会なる名の委員会だけ開かれておる。その次に開かれておるのが国内における朝鮮人の処遇の問題についての委員会、それから李ライン問題、あれはおかしな名前で平和ラインとか呼ばれておるのでありますが、ああいうような委員会は開かれておりません。口実は向うの委員の首席が来ないからということでありますけれども、どうもわれわれはふに落ちない点があると思う。それから基本問題に関する委員会というものは全然開かれておらぬと思います。たとえば日本における朝鮮人の処遇の問題にいたしましても、その他何の請求権か知りませんけれども、請求権の取扱いの問題にいたしましても、朝鮮における事態というものを根本的に検討しなければ、私はどうもほんとう解決はできないと思います。現在、朝鮮は三十八度線を境にして二つに分れておるという事実は、これはもう厳として動かすべからざる事実です。ところが、韓国の方は、これは全韓国を、全朝鮮を支配しておるというふうに主張しておるのであります。それがことごとに現われてきておるように思うのでありますが、これらのことは今後それぞれの委員会において大きな問題になることでありますが、その今の朝鮮における現実の事態、そのことを根本的にはっきりきめなければ、私は韓国との関係を、あるいはまた、今後北鮮との関係日本がどういうふうにしていくかということについてはっきりした方針が生まれないと思うのでありますが、この基本問題の委員会において現在の朝鮮の事態について検討をされておるかどうか。そうして韓国側と日本側において朝鮮における事態の認識について話し合いをしておられるかどうか、それをまたやるおつもりかどうか、お伺いしたいと思います。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまどうも委員会がうまく動いておらぬというようなお話があったわけであります。むろん思ったようにてきぱきとは動いておりませんことは事実でありますが、それがことごとく朝鮮側の何か悪意によるものとも私ども考えておらぬのでありまして、率直に、たとえば漁業代表が今日までまだ来ていない事情も、向うの説明を伺ってそれを承知しているわけであります。日本と韓国との会談は過去においても数回行われましたし、それらの経験からにらみ合せましても、日本としてもできるだけ慎重に事を取り進めて参らなければなりませんし、また、相当やはりこれは時間的にも余裕を持ちながら話し合いを持っていかなければならぬと思っております。従って、現在の事態だけでもって非常に進行がおそい、あるいは何か向うのために引きずり回されているというようなこと、あるいは向うの気持等をいたずらにそんたくいたしますことは、現在の私としては避けていきたい、こういうことで、できるだけねばり強く一々の問題について、おそくとも話し合いを進めていきたいというように考えております。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 もう一点です。藤山外務大臣は韓国との交渉に当って、韓国は朝鮮における南半分を支配している国家であるというふうにお考えになって、その立場を確認されて向うと交渉されているかどうか、その点、一点だけはっきりお伺いいたしたい。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 韓国が合法政府と現に認めておりますが、しかし、韓国の支配が三十八度線以上に必ずしも現実に動いていないことは、事実は私も認めております。
  53. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私は、去る十八日、本会議総理の施政演説に対する質問に立ちましたときに、この九月の国連の総会では、日本として経済方面に今まで以上に十分な力を入れなければならないと思うということを申し上げたのでありますが、ことに国連総会の経済委員会、つまり第二委員会でありますが、それに対してもっともっと政府として力を入れなければなりますまいということを申し上げたのです。それに関係しまして私は、自分考えとしては、その第二委員会にもう少し経済問題全般に対して、日本から財界の有能な人を代表として出される必要があると思うということを申し上げたのでありますが、それに対して総理大臣は、必ずしも財界といわず、日本政府としても十分注意を払ってきておる、経済問題に対して。ことに昨年の国連総会においては、日本の代表は第二委員会において大へんよくやったということを政府は認めておる、というような意味お話がありました。私自身もまさにその通りやったと思うのであります。ただしかし、以上の私は財界の人を出す必要があるということを痛感しまするのは、昨年のように日本の国連代表を外務省側からのみ出されるということであっては、少くとも財界の問題に対してはどうかと思うのであります。なるほど昨年の日本代表は、非常によくやられたということを私も伝え聞いております。第二委員会の副委員長に選ばれ、そうして委員長がほとんどその委員会に出席しなかったために、副委員長である日本委員委員長のかわりにその委員会を切り回していって、しかもりっぱに切り回していったということも聞いております。でありますればなおさらのことでありまして、もしそういうような有能な外務省の経済問題担当者が出ていくとしましたならば、あるいは今回は正式の委員長に選挙されないとも限らない。そうなりますというと、委員会に対しての日本の主張とか、あるいは全世界から集まってくるところの他の財界人、あるいは委員等との接触というものが非常に不利益になるということを私はおそれるのであります。しかも現在は世界が非常な不況に陥っている、この不況の対策をどうするかということは、おそらく今回の国連総会での大きな問題になろうと思うのでありますが、そういう際に日本委員委員長になって、そうして十分外国との接触もできないということであったならば、日本は非常な損をするということをおそれざるを得ないのであります。でありまするから、やはりその道の専門家である財界人を政府代表として派遣される必要が一そう私は高まってきているというふうに考えるのであります。その財界の代表者でありますならば、その委員会に出て他国の代表者と接触をしたり、あるいはアメリカなりその他世界から集まってくる財界人との有益な接触が起きたりするばかりでなく、その人が日本へ帰ってくるのでありまして、あちらでそれらの人々との接触によって得た印象なり話し合いなりというものを、日本の財界に伝えることができ、また、それによって必要な措置をとることもできるわけであります。しかるに外務省での政府代表ばかりであるとするならばそういうことはできないのでありまして、日本に帰ってきて、そして日本の財界に実際的な措置をとるなどということは、これは外務省を私は非難するわけではありませんけれども、事実それはできない相談だと思うのであります。でありまするから、どうしても私は財界から人をお出しになることがきわめて必要であると思いまするし、また、日本の財界は大きな財界でありまするので、それに適当した人が全くないというわけではない、こういうふうに思うのであります。その点に関しまして、外務大臣はどういうふうにお考えになりますか、伺いたいと思います。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 国連の場において政治問題だけじゃなく、経済問題が非常に重要性を帯びて取り上げられなければならぬこと、また、日本もそういう国連の場において、先ほど私が申し上げましたように、世界の平和と安定のためにはやはり経済問題が相当重要な役割をするわけでありますから、十分な関心を持って国連の機能を経済的に働かせることについて日本も進んで努力をして参らなければならぬということは、もう佐藤委員のお説と全く同感でございます。従って、適当の人があれば経済界方面の方を起用するということも考えられるわけなんであります。ただ国連の場においてのいろいろな動きを見ておりますと、何といってもあそこに三ヵ月という期間がございますし、また、実際的には語学の関係もあります。そうした長期間にわたって経済問題についてもあるいは語学の点においても、実際委員会等に出て即時にいろいろな問題についてやっていきます場合に、相当そういう問題を考慮してみますると、必ずしも適当な人が簡単に得られるとは私ども考えておらぬのであります。でありますから、御趣旨は私は決して反対ではないのでありますが、しかし、そうした人選その他ということは非常にむずかしくもあり、困難な場合もあるわけであります。従って、そういう点については十分考慮していかなければならぬのではないかと思います。むろん外務省の人だけで代表団を構成しようという気持もないわけであります。あるいは民間の方々に御参加を願う場合には、何らかの方法も別個に考えられる点もあるのではないかと思うのでありますが、そういう点については十分慎重に考えた上で善処して参りたいと思っておりますが、国連というあの会議の状況から見て、一がいに関係財界の人が適当だとばかりはいえない点もあるのではないか、こう思っております。
  55. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 いや、外務大臣は長年の財界での経験をお持ちになっておるのでありますからして、財界にどういう人物がおるかおらないかというようなことは、もちろん私よりずっとよく御存じのはずでありますが、なるほど人物を選定されるということは困難なことには相違ないと思いまするけれども、しかし、ぜひそういう人物がほしい、そういう人物を出したいという気持がおありでありましたならば、必ずしも人物が皆無とは私は申せないのではなかろうかと思うのであります。こういうことを申し上げたところで、私は何も一つのきまった考え方を持っておって、そして申し上げるというのではなくて、全くあの委員会を見まして、そして国連の空気を見たものといたしまして、その必要を痛感いたしますがゆえに、あえて申し上げるのでありまして、先ほども申しました通り、その財界の代表者があちらへ行って、いろいろな人と接触をする、そしてその話を日本へ持って帰ってきて、日本の財界に裨益をもたらすというようなこと、これは私は非常に必要なことだと思うのでありまして、なるほど三ヵ月日本から離れるということは、財界人にとっては困難なことかもしれませんけれども、しかし、それに値するだけの国家的なおみやげがあるに相違ないと思うのでありますからして、この点はぜひ外務大臣におかれましても、一つ人選をされますときに、よくいま一応お考えをお願いすることにいたしたいと思います。  それから時間はもうすでに過ぎましたけれども、中共問題について私も一言申し添えておきたいと思いますが、中共との関係の根本の日本の態度としては何かというようなことになりますならば、それはもうはっきりと私は日本としてきまっておる問題だと思っておるのであって、何と申しましても、日本国民政府とは南京もしくは北京政府として存在しておった時代から国交を保っておった関係でありますし、それが台湾に目下偏在しておるのでありますけれども、その国交は戦後回復されて、そうして依然友好関係が持続しておる。これがわれわれの中国政府として認めておる唯一の政府である、これは押しも押されもせぬ事実であります。でありますから、地理的には中共は大きな領域を占め、大きな勢力を持っておるということはもちろん明らかな事実でありますけれども、その中共との関係ということになりますならば、たとえば貿易の問題にしろ先般来非常にやかましい問題になりましたけれども、この貿易の問題というものはすべて国民政府の十分な了解を得た上で、その範囲内での中共貿易でなくてはならないということを私はこの前の委員会におきましても申し上げたわけでありまして、その考えは現在においても一向変っておらないのであります。その根本の問題は何かといいますならば、これは国民政府に対する日本の信義の問題だということを強くその際申し上げたのでありまして、終戦当時のあの蒋介石総統のとった態度、そのおかげでもって日本人は何百万という人が日本に無事に帰ってこられたということ、ないしは、そのときに私申し落したのでありますけれども、蒋介石総統が日本に対して賠償権を完全に放棄したということであります。これも日本にとってえらいことであった。これはその当時の日本人はみな蒋介石総統の態度に対して深い感謝を持ったわけでありまして、その感謝は十年たったから消えてしまったというわけのものであってはならないのであります。どこまでもそれに対しては日本は恩義を感じなければならない。その恩義を忘れてしまって、目下は台湾に偏在しておるがゆえにその国民政府との関係をないがしろにするというようなことであっては、日本は信義の国としては一文の値打もなくなってしまうということで、これは国際的に申しましても日本の大きな恥でなければならぬと思うのであります。そういうことから出発しますならば、現在の中共との貿易問題、また、経済問題に限らなければならぬ問題だと思いますが、その貿易問題に対しまする日本の態度というものははっきりしておかなければならぬところであります。また、中共との貿易について巷間非常に重きを置く向きが多々あるようでありまするが、私は、もちろんそういう点においては専門家ではありませんので、非常な権威を持って申し上げるというわけには参りませんけれども、果して日本は、大きな貿易を期待することができるかという問題になりましたならば、私は非常に疑いを持つものであります。なるほど中共側には日本の製品に対して大きな需要はありましょう。確かにそれは需要はあるに相違ない。何となれば、日本から持ってこなければ、多くの場合ソビエトの製品を買わなければならぬということになるのでありまして、その製品たるや、ソビエトの言い値で買わなければならぬということになっておるでありましょうし、これに対する支払いというものはどうかといいまするならば、たとえば原料でもって支払うにしましても、満州大豆のごとき、大部分はソビエト側にとられているようであります。この大豆の価格というようなものも、ソビエトの一方的にきめた価格でもって中共が売らざるを得ないような立場にあるに相違ないと思うのであります。でありまするからして、貿易の問題といたしましても、中共の買う製品に対しては向うの値段で買わなければならず、これに対して払う原料というものは、やっぱり向うが勝手にきめた値段で払わなければならぬというような、そういう非常な不利な立場にある中共といたしましては、日本の製品に対してあこがれを持つということ、よだれを流すということは当然でありまして、日本におきましては自由貿易をやるような関係からして、日本で買いたたいて、そうして安く製品を持っていく、向うからの原料に対しても、日本は一方的に値段をきめるという立場にないということ、これほど中共にとって有利な貿易はないはずでありますからして、向うからの注文がたくさんやってくるということは、これは想像にかたくないところであります。しかし、それならば、売った商品に対して何を代償としてとるか。満州大豆、大豆といいましても、日本の製油業者の中には、満州大豆は品質が非常に悪くて使うことはまっぴらごめんだという業者があることも私は承知しております。そのほか鉄鉱石にしろ何にしろ、原料という原料は、向うで第一に必要な原料ばかりで、日本の要求するのは向うの必要とする原料ばかりで、多くを期待することはできません。してみるというと、日本から売った品物に対しての代金の支払いは、だんだんだんだん重なってきて、ついには焦げついてしまうということになる。これは明らかだと思う。そういうことを考えないで、ただ中共貿易、中共貿易といってあたかも金がごろごろ日本に入ってくると考えるのは、私は間違いだと思うのであります。そういうことは、大臣はとくと御承知だと思うのでありまして、私の申しましたことは蛇足でありまするけれども、そうしてまた、こういう問題については、私はこの委員会大臣がどうお考えになるか、政治問題で中共との関係をどういうふうにお考えになるかということを、大臣の口からお聞きするということは、これは私としては避けたいと思うのであります。そういう重要な問題に対して、軽々しく大臣も言われるはずはないと思うのでありまするから、私の申し上げたことは、国民政府との関係、ないし中共との関係につきましては、大臣においてよく聞き取っておいていただけば、それでけっこうであります。
  56. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 大臣、衆議院の外務委員会から出席要求がきておりますから、お含みの上で……。
  57. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 これは、やはり中国との関係の問題でありますが、最後に一点だけ。  これは、どうも閣内においてあるいは内閣とそれから自民党の間において、中国に対する態度について、いろいろ食い違いがあって、不統一じゃないかと思うのです。たとえば、今国会が始まってから、赤城官房長官の談話によって、前向きに姿勢を変えていこうという意図があったことはわかるのでありますが、その際に、二つの中国という、中国側で一番きらう問題に触れて意見が述べられた。これはおそらく赤城さんが、中国の問題について十分に御承知ない結果だろうと思うのですが、それに対して、直ちに藤山外務大臣は、それを打ち消すような談話を発表しておられる。今度貿易の問題について、大したことはない、ただいまの佐藤さんのような御意見自民党の幹部諸君の間から放送されたと思うというと、今度は、通産大臣なりから、すみやかに打開をしなければいかぬというような発言をされておる。それから党の最も実力者であると言われておる河野一郎氏は、松江でもって、今度は、バーター貿易なんかやめてしまえ、現金を持っていって買えばいい、こういうような方針を示された。これは私見と断わってあるけれども、とにかく党の最高有力者の発言である。そうすると、四次貿易協定を、まあ、いわば旗の問題を除いて認めるというような態度をとられた。つまりバーター貿易を基礎とする日中の貿易を進めようという政府考え方と、これは完全に食い違う。池田元蔵相は、中国の貿易が一億ドルくらいだ、こんなものはほうっておけというような発言をされておると、今度は通産大臣が、今中国の貿易を失うことは、これはまことに遺憾なことであるから、すみやかにこれを再開する。何が何だかわからない。そこへもってきて、今度、日中貿易促進連盟、これは、まあ、四次協定の調印団体であったわけですが、私どもは、調印団体というものは、これは、もし四次貿易協定を行うということでありますならば、これはやはりその責任を有する団体でありますから、当然この団体の役割というものはあるわけでございます。また、これを解散させるというがごときことは、軽率きわまりない。もし軽率でなくて、慎重に考慮された上でそう決定されたならば、四次協定というものはもう認めないんだ。これは御破算にして、新たに何かほかの方式をもって中国貿易を再開するんだということを意味するわけです。そういうことを幹事長は軽々と発言をせられた。で、六役会議ではこれの解散を要求された。これの脱退を指令をされた。こういう状態であります。そうすると、その六役会議の決定がされました直後に、私はある閣僚に廊下で会いまして、この話をしたところが、いや、僕はそういうことには絶対反対、何べんも反対を言っておった、それにこういうことになったことは、どうも不統一で困ったもので申しわけない、こういうことを言っておられる。全く閣内においても、自民党政府との関係においても、自民党の中においても対中国の問題においては意見不統一はなはだしい。先ほど藤山外相は、言論の自由があるのだから、何を言おうがかまわないようなことを言われたのでありますけれども、閣内が不統一であり、自民党政府の間が意見がまちまちである。自民党は中でもって意見がまちまちである。これで対中国関係の打開ができますか。私は、まず閣内並びに党との関係において、あなた方の方の意見を統一して出直してもらいたいと思うのです。それは、外務大臣として、外交政策を行う場合に、これはどうしたって必要なことなんですから、あなたは、閣内並びに党内の見解を統一するために努力をされるつもりがあるのか、言論の自由のままほったらかしておやりになるつもりか、そこのところ一つお伺いしたいのです。これは、外務省の事務当局だって困りますよ。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ、先ほど申し上げましたように大きな問題についてそれぞれの立場でいろいろの御意見があることは、これはまあやむを得ぬと思います。その方々がいろんな議論をして、おのずから一に帰していくというのが民主主義の真諦であろうと思いますので、問題を解決する過程においてはそういう論議も行われるかと思いますが、ただ、私は外交を担当しております者として、外交に対する諸説というものはできるだけ各人がやはり慎重に考えて、そうして発表等についても慎重な態度をとっていただかなければ非常に困る。ことにいろいろな意見が調整される前に、外部に向って個々意見といえどもいろいろな意見が出てきますことは、相手国のあることでありまして外交を担当しております当事者としてはまことにそういう点は遺憾だと思います。従って、できるだけ外交問題について慎重に扱っていただきたいし、発言等にも注意をしていただきたいということは、私は閣僚に対しても、党に対しても当然私の立場から申しておることなんでありまして、今後とも一そう注意をしていただきたいと、こう考えています。むろんある時期に方針がきまって参りますれば、それはその方針に従って適当に表現していただくことも必要かと思うのでありますが、まだそうした過程の中においていろいろ議論をすることは迷惑だと私は存じています。
  59. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、まだほんとうに閣内並びに党内意見が帰一しておらぬ、こういうことなんですか。そうすると、その閣内並びに党内の諸説ふんぷんの一つ総理なり、あなたなりの意見だということになるわけなんです。従って、あなたの意見も、総理意見もまだ権威のあるもの、政府を代表するものと認められない、そういうことになるじゃないですか。私はいやしくも総理なり、あるいは外務大臣の言う意見というものがそれであっちゃならぬと思うのですが、あなたの今の御答弁からすると、そういうことになるのですが、あなたの御意見というのは、やはり諸説ふんぷんの一つであると、私どもは思っていいのか、それとも権威あるものと思ってお取扱いしていいのか、そこのところをはっきりさしていただきたい。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 政府として総理並びに私において意見の違っていることはございません。従って、政府としてははっきりした考え方で私を通じて出る意見のみが政府意見であるということを確信いたしております。御信じいただいてけっこうです。
  61. 森元治郎

    森元治郎君 初めに資料をちょっと政府側から用意して会期はあしたまでですから、早く出していただきたい。原水爆実験禁止の抗議をやっておられますが、その中で損失補償の権利を留保しておられるが、この権利を行使して、アメリカ側と折衝した回数が何回か、エニウエトクの場合、ジョンストンの場合は幾ら補償を要求をしているかなど、その交渉経過、向うの回答、そんなものを取りまとめて資料としていただきたい。  次に一つだけ伺いますが、時間がございませんから、政府側、あるいは政府委員の御答弁でけっこうであります。沖縄で最近あそこの住民の通貨になっている軍票B円が廃止されて、アメリカ・ドルが採用されるということがうわさされております。あるいはまた、沖縄の特殊の通貨を発行するというような話も聞いている。政府はさようなことを事前にアメリカ側から連絡があって知っているのか、今までの事情の解明を伺いたい。何しろ現地民は土地の一括払いでさんざんいじめられている上に、また、こういう通貨のかわりが出てきては、心理的影響も非常に大きいと思う。政府としても深甚の関係を持っていると思う。一つ政府委員でもけっこうでございますから、経過、事実の真否、わが国の関係する面、こういうことについて御答弁願いたい。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) B円の問題の担当のアメリカ局長が衆議院の外務委員会に出席しておりますので、大体のことだけを私から申し上げておきます。アメリカ政府の中でもって沖縄のB円をかえてドルを使おうという議論があるようであります。しかし、これはまだ確定していない、こういうことであります。経過としましては、四月でありましたか、沖縄に在留しておりますアメリカ軍人は、軍票から全部ドルに切りかえをいたしております。これは経済問題としていろいろな観点から見られるのでありますが、御承知のように、B円はドルに対して百二十円で換算されているわけであります。B円自体は裏づけのない実は通貨なのでありまして、換算はされておりまするが、確実な基礎を持った通貨ではございません。従って、このB円というものが果して経済的に十分信頼というと、大げさですが、信頼できると考えていいかどうかということは、問題があろうと思います。たとえば奄美大島が返還になりましたときに、あそこで通用しておりましたB円を円に取りかえます場合に、アメリカはこれに対してドルとの交換を一応拒否いたしたわけでございます。しかし、折衝の結果、直接ドルと交換はいたしませんけれどもアメリカ政府が奄美大島の信用組合等に出しておりました金額があるのであります。それがほぼ引きかえますと、B円と等額でありましたから、それと交換することによって措置をしたという事実もあるのであります。従って、将来の問題として経済的立場から考えますと、B円をいつまでも使用していることが、必ずしも日本に有利だと考えられない点もございます。こういう面について私は考究しなければならぬと、こう思っております。
  63. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 本日の国際情勢に関して外務大臣に対する質疑は、これで終局いたします。
  64. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、継続調査要求に関する件についてお諮りいたします。本委員会におきましては、今会期中国際情勢等に関する調査を行なって参ったのでありますが、会期中調査を完了することが困難であると認められますので、閉会中も引き続き調査を行うため、継続調査要求書を議長に提出したいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  65. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の内容及びその手続等は、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
  67. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 次に、委員派遣に関する件についてお諮りいたします。閉会中国際情勢等に関する調査のため、北海道及び九州方面に委員派遣を行いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。派遣委員、派遣期間及び手続等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 寺本廣作

    委員長寺本広作君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日の委員会はこれにて散会いたします。    午後三時三十分散会