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1958-07-31 第29回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月三十一日(木曜日)    午前十時十八分開会   —————————————   委員異動 七月八日委員宗雄三君及び井上清一辞任につき、その補欠として青柳秀 夫君及び横山フク君を議長において指 名した。 七月十六日委員横山フク辞任につ き、その補欠として井上清一君を議長 において指名した。 本日委員鹿島守之助辞任につき、そ の補欠として山本利壽君を議長におい て指名した。   委員長補欠 七月八日寺本広作委員長辞任につ き、その補欠として青柳秀夫君を議院 において委員長に選任した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     青柳 秀夫君    理事            井上 清一君            鶴見 祐輔君            森 元治郎君            佐藤 尚武君    委員            笹森 順造君            杉原 荒太君            寺本 広作君            苫米地英俊君            野村吉三郎君            山本 利壽君            岡田 宗司君            加藤シヅエ君            曾祢  益君            羽生 三七君            安部 清美君   国務大臣    外 務 大 臣 藤山愛一郎君   事務局側    常任委員会専門    員       渡辺 信雄君   説明員    外務省条約局長 高橋 通敏君    外務省国際連合    局長      宮崎  章君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠互選国際情勢等に関する調査の件  (国際情勢に関する件)   —————————————
  2. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それではただいまから外務委員会を開会いたします。  本日は、初めに理事補欠互選についてお諮りをいたします。理事井上清一君が本月八日に委員辞任されましたので、理事に一名の欠員を生じておりましたところ、十六日に再び委員になられました。よって井上君を理事に指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 御異議ないと認め、さように決定いたします。   —————————————
  4. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 次に、国際情勢等に関する調査を議題とし、藤山外務大臣に対し質疑を行うことといたします。  藤山外務大臣から発言を求められておりますから、これを許可いたします。
  5. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 七月十四日イラクに起りました革命契機といたしまして急激に緊張を増したレバノン及びジョルダンにおける情勢に関し、安全保障理事会等を通じ、わが国がとった態度を簡単に御説明申し上げたいと存じます。  レバノン問題は、アラブ連合共和国からの人員、武器等不法浸透により内政干渉を受けているというレバノン安保理事会に対する提訴以来、世界の注目を集めておったのでありますが、安保理事会は六月十一日、スエーデン提案に基きまして、これらの浸透が行われないことを確保するため、国連監察団レバノン派遣することを決議いたしまして、事態の改善をはかったのであります。わが国は、レバノンにおける騒擾が果して外部からの干渉によるものであるかいなかにつきましては、調査を要するという見解をとっておるのでありまして、前述のような不法浸透の事実が立証されない段階にあっては、監察団派遣が最も現実的な解決法と認め、これに賛成いたしたのであります。事務総長は、直ちにこの決議を実施するため現地におもむき、約百名からなる軍人をレバノン国境に配置し、飛行機、車両等をも利用し、国境地帯を監察するための措置をとったのであります。  七月十四日、イラクに起きた革命契機といたしまして、米国は、即日、レバノン問題の再審議のため、安保理事会緊急集会要請いたしまして、翌十五日には、レバノン政府要請に基き、レバノン主権領土保全を擁護するため、及び在留米国人の保護のため、海兵隊レバノンに上陸させる措置をとったのであります。この派兵が今回の理事会において最も重要な問題であったことは御承知の通りであります。  そもそもわが国は、中近東諸国アラブナショナリズムについては、それが健全な民族感情の発露である限り、これに深い同情と理解とを持つべきものと考えております。従いまして、かかる民族感情を無視し、またはこれを抑圧するごとき政策は、これら諸国自由諸国群から共産勢力に追いやる結果となることをおそれるのであります。その意味で、大国の武力による介入は、いかにそれがやむを得ぬものであっても、長い目で見て果して当を得た政策であるやいなや疑問とするところであります。特に、米国レバノン派兵は、安保理事会がすでにレバノン問題解決のため前述のような措置をとっていた最中であっただけに問題であったと考えられます。かかる観点から、私は、「わが国としては国連における関係国との協力により、一日も早く事態平和的収拾に対する適切な措置が講ぜられ、レバノン独立領土保全か確保されるとともに 米軍撤退を見る運びとなるよう希望し、かつこれに努力をしていきたい」旨、所信を明らかにしたわけであります。  今回の安保理事会では、この事態に対処しまして、国連軍派遣する旨の米国決議案米軍即時撤退を要求するソ連決議案及び国連監察団の機能を一時停止する旨のスエーデン決議案が提出されたのであります。  米国決議案は新たに国連軍を創設し、これが派遣を予想するもので、わが国考え方と必ずしも一致するものではありませんでしたが、ソ連決議案及びスエーデン決議案と異なり、米軍撤退を可能ならしめる現実的解決策を含んでいるのでありますから、これに賛成したものであります。賛成に当って、米軍派兵自体は望ましくないことを明らかにし、かつ、同決議案アラブ連合共和国からの不法浸透の存在を前提としている点及びわが国国連軍への参加について、それぞれ態度を留保いたしたのであります。この留保は、前者はレバノン騒擾が果して外部からの干渉によるものであるかいなかは明らかでないという観点に基くものであり、後者は、わが国として国連軍が成立してもこれには参加し得ないとの立場に基くものであります。  ソ連決議案は、米軍即時撤退を要求しております。撤退それ自体にはわが国賛成でありますが、武力介入の適否は別として、これを直ちに憲章違反として非難している点については疑問があり、レバノン情勢を改善する措置に何ら触れておらず、問題を建設的に解決する面に欠けていたので棄権したわけであります。  スエーデン決議案は、米国派兵により事態が変ったのにかんがみまして、国連監察団の行動を当分停止するという趣旨のものであったわけであります。わが国としましては、スエーデン立場は了解し得るところでありますが、かかる事態に直面してこそ、国連問題解決に積極的に努力すべきであって、事態を一時的にせよ、国連の手から離すことは、安保理事会としてその責任を果すゆえんにあらずとの立場から、これに反対せざるを得なかったのであります。  わが国は、右三決議案について、いずれの決議案も可決される可能性のないことを察知し、何とかして安保理事会として有効な措置をとり、問題の国連を通ずる解決により、国連権威を保つよう努力いたしますことは、安保理事会メンバーとして当然の責務であるとの信念に基きまして、わが国独自の決議案として、国連監察団を増強することによって米軍撤退を可能にする趣旨決議案を提出するごとに決定いたしたのであります。  わが国決議案は、現に活躍中の監察団強化をはかるものであります。国連軍のごときものの設立を予想しておりません。これは外部からの不法浸透の事実は未確定であるとの国連事務総長立場を支持するわが国としては当然であります。また、わが決議案は、米軍撤退を可能ならしめるという目的をはっきり規定しております。この二点は、米国決議案と本質的に異なる点であり、米案支持に当って留保した点を決議案の形に整えるとともに、三国案がすべて否決された事態において、なおかつ理事会メンバー諸国が合意し得る点をまとめ上げたものであります。  前記決議案は、いずれも予想通り否決されました。わが国は、わが決議案を何とかして可決させる以外に、問題を解決して安保理事会権威を保つ方法がないことを感じまして、まず、スエーデンをしてわが決議案賛成させるための努力を行なったのであります。すなわち、スエーデンがとっていた立場、すなわち米軍レバノン介入により国連監察団はその使命を果し得なくなったとの主張をわが方案と両立せしめるため、スエーデン修正意見をいれて、わが決議案の本文第一項を削除いたすとともに、ソ連に対し、スエーデンを含みソ連以外の全理事国はわが方案を支持しておる新情勢のもとに、わが国の真意を説明いたしますとともに、もし賛成が困難ならば棄権してほしい旨を要請いたしたのであります。これらの努力にもかかわらず、わが決議案は、ソ連反対により否決し去られたことは遺憾であったと思います。  しかし、米案に棄権したスエーデンを含み、ソ連以外の全理事国賛成したほか、理事会外でインド、アラブ連合共和国等が案を支持してくれたことは、米国派兵反対の国もわが案の趣旨には賛成したことを示すものであり、米国決議案と本質的に異なるわが決議案意義が理解されたものと考えておる次第であります。  なお、わが決議案表決の直前、ソ連はこれに対する修正案を提出いたしまして、監察団の任務を限定するほか、米国派兵を非難して、その即時撤退を要求する趣旨の規定を加えましたが、前回のソ連案同様否決されたのであります。わが国は、この修正案趣旨ソ連提出決議案と全く同様のものであると認め、同決議案の場合と同様棄権をいたしたのであります。  このように、日本としましては、安保理事会メンバーとしての責任から、中東問題の平和的解決のため少しでも役立ちたいと考え努力したわけでありますが、ソ連拒否権行使により、この努力が結実しなかったのはまことに残念ではあります。しかし、安保理事会の他の全員が日本案を支持してくれたことは、わが国外交担当者としてまことに喜びとするところでありまして、これらの国々の協力、また、特にハマーショルド事務総長協力に謝意を表したいと思うものであります。日本案は敗れたとはいえ、将来の時局収拾に必ず役立つことあるべしと信じております。この点は世界各国言論機関が、広くわが方案意義わが国努力に対し、讃辞を呈していることより見るも明かであると思います。  今後のことについては、いまだ情勢もはっきりしていないので、今具体的な方針をいう段階ではないと考えまするが、中東問題ができるだけすみやかに平和的に解決されるよう切望する日本といたしましては、この目的に役立つならば、適当な方法で今後ともできるだけの努力をいたしたいと考えます。  英国は、七月十六日、ジョルダン政府要請に基きまして、その領土保全独立を擁護するためジョルダン派兵するとともに、右派兵措置国連に通告をし、安保理事会ジョルダン正当政府外部からの脅威から擁護するための措置をとるならば派兵をやめると声明いたしました。一方、ジョルダン政府右派兵と同時に、「アラブ連合共和国ジョルダンに対する内政干渉に関する訴え」を安保理事会に提訴いたしております。  わが国は、米国レバノン派兵と同様の理由により、英国派兵も望ましくないと考えますが、国連としてとるべき措置に関しては、ジョルダン英国との主張を十分聞いた上で、今後検討することとし、前記わが決議案でも、とりあえず、レバノン問題のみを取扱うことにいたした次第であります。  以上、大体の経過を御報告申し上げました。
  6. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) 質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 外交問題、ことに国際紛争が起きたときに大事なことは、その紛争情勢に巻き込まれないで、ほんとうの姿はどこにあるのかということを見るのが非常に大事だと思うのです。今度の中東問題を見て、日本政府のとった態度は、初っぱなから具体策まで入ってしまったということは、私はまずいと思う。やはり政府が初め言ったように、アメリカ派兵は好ましくない、派兵の事情についてもいろいろ疑問があるという点を強く推し進めて、かような介入は悪いのだということ一本を強く打つべきだと私は思うのです。ところが、松平代表談話でもあるいは外務大臣総理大臣談話でも、ただ派兵を否認するだけでは問題の解決にはならない、早く撤兵ができるようなチャンスを作ることが大事だと、こういう点に非常に力を置き過ぎたと、こういうデリケートな紛争のときにはまずいと思う、初っぱな米英派兵は不当である、撤兵すべきであるというこの一本でいくことが大事だったと思うのでございますが、いかがでございますか。
  8. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今回レバノン問題が起りまして、私どものとりました態度というものは、アラブナショナリズムというものが決して共産主義というものと同意語ではない、従って、これを自由主義陣営としてはやはりあたたかい目で見てアラブナショナリズムがすなおに発達していくことが一番中近東情勢において適当ではないか、そういう意味から言いまして、やはりこの問題を武力によっていろいろ解決するということは適当であろうとは考えておらなかった。従いまして、外務省といたしましても、アメリカ等に対しても数次にわたってわれわれの見解を申し述べて参ったわけであります。そして今日でもその意味におけるわれわれの態度というものは変更はいたしておらないのであります。しかし、イラク革命が起りまして、事態が非常に急激に激しさを加えて参り、アメリカが直ちにレバノンシャムーン大統領要請に応じて出兵をいたすことになったのであります。問題はそういうふうに好ましくない状態に発展して参ったのでありますが、もしこのアメリカ軍派兵というものを一日も早く何らかの形でもってわれわれが希望しておりますように、撤退せしめなければ当時の事態といたしましては、急激に中近東情勢が悪化し、あるいはソ連アメリカも好まないにもかかわらず、第三次大戦というような混乱に、紛争に突入することが起りはしないかというような緊迫した情勢であったと思います。従いまして、何はともあれその事態を改善いたしませんければ、ただ兵を出したのが悪いというだけを難詰しておりまして、いつまでも問題が解決いたしませんければ、やはり事態はますます悪化していくことになる、従って、アメリカが兵を引き得る方法考えて参りますと、そうしてそれが一日も早く引くことができますならば、やはり中近東事態を改善することになるわけであります。でありますから、その意味におきまして、アメリカ案というものはとにかく一応国連軍が、警察軍ができますれば兵を引くということでありますので、そういう措置に対して賛成することが必要であろうという結論のもとに、私どもはただいま申し上げたような措置をとったわけであります。むろん一つ理想論と当面の問題を処理いたします具体的処理方法との間に若干の隔たりができたようにも考えられます。しかしながら、中近東の平和と安全、しかもアラブナショナリズムの健全な発展ということを考えてみまして、兵を引き、また、そういう状況が安定してゆくことが望ましいというふうにわれわれ考えておりますので、その考えを一貫して貫きました次第であります。   —————————————
  9. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) ただいま委員異動がございました。鹿島守之助君が辞任されまして、山本利壽君が補欠選任されましたので御報告申し上げます。   —————————————
  10. 森元治郎

    森元治郎君 私の申し上げた趣旨は十分おわかりだと思うんですが、アメリカ態度を見ると、何か国連がぐずぐずしているから、おれが出ていったんだと、国連責任を転嫁するような言いっぷりをしておる。これは問題を非常にごまかしてしまうので、とにかく政府の言うように、出てきたことが悪いんだということをよく世界に認識さして、その次の段階として国連警察軍政府の言う国連監察団の充実とか強化というのが第二段階として出てくると思うんですが、そこへ逃げてしまったのが私はまずいんじゃないか、こう言うんです。初っぱな撤兵一本、君の介入は適当でないから撤兵一本でいって、次の段階ではどうするのか、こういうところにいっていろいろな具体案が出るんではないか、こういうことを伺っておるんです。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど申し上げましたように、われわれとしてもレバノン問題が起りまして、六月十一日のスエーデン決議案も出まして監察団ができた、それによって国境侵犯の事実があったかないかという問題も調査が始まったわけで、アイク・ドクトリンを適用するというような事態になりますることは、私どもは必ずしもこれがわれわれの見ておりまする中東情勢に対していい影響を与えるとは思いません。従って、その点については、たびたび日本としての意見アメリカにも言っております。また、われわれの態度もそういう態度で出ておったわけであります。従って、日本としてその態度というものは今でも変っておらぬ、従って、一日も早くアメリカが兵を引かなければならぬというその態度から具体的問題の解決に入ってゆきたい、こういうことになっておるので、今のお話のような趣旨とそう大きな開きはないんではないか、こういうふうに考えておるわけなんであります。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 次に移りまして、何といっても問題解決は、米英が引くことにあることは、これはだれにもわかっておることであります。米英軍大騒ぎをして侵略事態があるといって飛び込んではみたものの、その後の情勢を見れば、米英進駐理由をうなずかせるような事態は起きていない、むしろ平静である、振り上げた刀の下しようがないような事態であると思うんですが、どういうように認識されておるんですか。今の出兵後の事態、彼らが世界に訴えた条件はちょっと違うんじゃないか、やり過ぎだ、むしろ内政干渉のにおいさえある結果になっているんじゃないかということが一つと、自主的な撤兵勧告というものを今からでも米英に向ってやるお考えはないか、これを一つ伺います。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) レバノンの今回の紛争でありますけれども、私どもの見ておりますところは、必ずしも外部から大きな侵略があって事態が起っておるというよりも、むしろレバノンの国内における政治的ないろいろの訌争、それがむろん中近東の方面の民衆の生活等から見まして、また、置かれておる環境から——たとえば、砂漠地帯であるから、武器を平素でも携行しておるというような状態から、そうした国内的な政争が、相当過激に武力的になっていったということが大筋の見方だと思います。ただ、それに対して、全然外部から武器が入ったかどうかというような問題が一つ起ってくると思うのであります。これに対しては、十分われわれも、それがどの程度の外部からのそうした武器によって侵略的に考えられるか、この問題は六月十一日の決議によります国連監察団の報告に待つべきが適当であろうということを私ども考えておったのであります。その後の事態も、まずそういう線に沿って大体考えていってそう大きな間違いはないのではないか。ただ、われわれとしまして、たとえば、シャムーン大統領が、合法政府主権者として、アメリカ出兵を要求した、アメリカが、それによって出兵したというのが一つ理由でありますが、そういうような見方については、いろいろ見方もあろうかと思います。ただ現在の実情から申しますと、大統領選挙が延期されまして、二十四日にやりますのがきょうに延期されたが、あるいはさらに延期されることになるかどうかという問題になっておりますが、まあ適当な話し合いがつきますれば、問題は解決していくのじゃないかというふうに考えられるわけであります。そういう意味におきまして、われわれとしては考えておるわけなので、レバノン情勢を見ておるわけであります。  同時にただいまお話のありました第二の、この状態のままで、レバノンにおけるアメリカ撤兵をさらに勧告するかという問題でありますが、問題は、安保理事会の中で考え、討議されております。また、ソ連が五ヵ国会議提案をいたしております。各国もそれに応じて、安保理事会の中で、あるいは国連ワクの中で、何らかの形で独立会議を持って問題の解決をはかろうという現実的立場に入っております。そういう事態でありますから、われわれが今日まで表明してきております意思以上に、何ら特段意思を表明することも必要はないのではないか、現在の段階では、そういうように思っております。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 私は、問題のアメリカが引けば一切問題がないので、国連ワク内でやるか、外でやるかという論議とは別個に、自主的に撤兵勧告をする条件ができていると先ほど申し上げたのですが、とにかく、大騒ぎをして入り込んでみたが、きわめて平静である。間接侵略にしろ、直接侵略にしろ、それらしきものが、いわゆる常識的なそれらしき騒擾も何もない。鉄砲のたま一つも飛ばない、住民は平静である、こういうのですから、国連米ソ間の話し合いをやっておるあの問題とは別個にやって私は当然だろうと思っております。ちょうど、スエズ事件のときに、アメリカが、友邦である英仏に向って、断固として彼の主張を押え、アジアアラブの連中と手を携えて押えたあの立場を、現在の日本がとることが、政府がよく言うところの日米協調ほんとうの友情と思いますが、そういう点はどうでしょうか。
  15. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもは率直にアメリカに今回の問題について意見を申し述べることは、決してやぶさかでありませんし、またそれを必要と思いますので、今日まででも、武力行使による問題の解決ということは中近東情勢解決する上において適当でないということは再三申してきておるわけであります。また、それがやはり、私が主張しております日米友好関係——率直に言いますと、アメリカのためになるということを考えておりますので、そういう意味において、率直に、必要がありますれば、また、必要がありましたつど、今日まででも、そういうことを申しておるわけであります。そのこと自体が、決して日米友好感情を害するとは思っておりませんし、またお話のように、むしろわれわれのアジア人的感覚をもって見ておりますこれらの問題について、率直にアメリカに忠告いたしますことこそ、日米友好関係を深める一つの道だと私は考えております。が、現在の事態は、とにかく一応フルシチョフの書簡に始まりまして、何らかの形で問題の具体的解決をはかろうという段階に入っております。今日何かそうした意思だけを表明するのは特段に必要のないことではないかと、こう考えております。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 今度の、出てみたが事件がないというところから見て、予防戦争、いわゆる、じっと待っていれば相手が強くなってしまうから、自分の強いときに先手を打って、戦争を防止していこうというような予防戦争措置だというふうな印象を私受けるのですが、外務大臣はどんなふうに感じられますか。
  17. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) むろん、今回のアメリカ出兵、あるいはその後のソ連態度等も、局面を非常に大きく危険状態に持っていこうという考え方でないことはむろんでありまして、おそらく、アメリカとしては、自分が信頼を受けている小国が、かりに危殆に瀕したような事態があるならば、アメリカとしては、それを助けることがアメリカの信義であろうというような立場アメリカとしてはとっておると思います。しかし、事が起りましたときの前後の勢いから申しますと、若干今日はお互いに冷静になっております。当時は、あのままでいきますと、どういう状態に突入していくのかもわからないような状態に、一歩誤まればあったのではないかという感じもするわけであります。おそらく、レバノン事態が、適当に国内問題が解決していけば、アメリカとしてもそう長く駐兵をする気持はないじゃないか。そのこと自体がやはり大きな問題を投げかけるので、国内的な政争の解決等を待って、また、国境侵犯等の問題が、国連日本案は否決されましたけれども、六月十一日の決議によるハマーショルドの処置し得る範囲内においての強化をやって参るという結果とも見合わせて、アメリカもそういう考えでおるのではないかというふうに見られるようなわけであります。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 二つの点を一括してお伺いしますが、マーフィー特使が、今レバノン、最近はヨルダンにも回っておりますが、どうも不当介入をした自国軍隊の庇護のもとに政治工作をやっておるということは、内政干渉ということによく当てはまるような感じがするのであります。進駐軍部隊が出ないうちの反政府側との話し合いにいろいろ調停の労をとるということはわかりますけれども、どうも軍隊の庇護を予期してやっておるような感じがするので、それならば私は内政干渉ではないかということが一つと、もう一つは、今度のレバノン事件が起きてから、レバノン政府あるいはアメリカ政府が、アメリカ出兵を願い、アメリカがまた出兵した理由として、レバノン領を越えて人員とか武器などが不法に浸透したり、供給されておる。秩序の攪乱がある。政府管理のラジオその他の情報機関によるレバノン政府に対する攻撃、こういうことを長々とパンフレットだとか、いろいろなもので訴えております。私は五十一条が云々という法律論を伺うのではなくて、彼らが訴えてきておるのを見た、調査した日本政府考え、すなわちこういうのがいわゆる自衛権を発動する十分の根拠を与えるものと思うのか。なるほど間接侵略というようなものはこういうことに当てはまると思うのか。あるいは武力攻撃ということに当てはまるのか。この訴えをどういうふうに政府は受け取っておるのか。それを伺いたい。
  19. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題は、私どももとにかく六月十一日の安保理事会決議によりまして、監察団が出ております。そして、その後ハマーショルド事務総長もカイロにも行かれ、レバノンにも行かれ、国境監察団の活動も見ておられる。また、政府及び反政府の人たちとも会談されて、そして、そう結論として、ある程度報告をしておられます。それには大した国境侵犯はないのじゃないかという点が出ておるわけであります。こうしたハマーショルドの決議によります報道というものをもう少し慎重に安保理事会で検討をしてみて、そうして、この問題のいかんを言うべきではないか。アメリカとしては、当時の国境監察団としては全線行動できないのじゃなかったか、また、人員も少いし、全線行動できないので、果して監察団が見て、行動し得る可能な範囲内だけでハマーショルドのような結論を出し得るかどうかはわからないという意見を言っておるわけであります。でありますから、そうした問題については、いま少しく安保理事会の中で討議をしてみることが私は適当であったのじゃないかというふうに考えております。イランの革命が起きまして、むろん国境の侵犯の事実もあったが、アメリカとしてはシャムーン大統領要請によって出兵したわけであります。そういう事態に対する問題の解決というものが、イランの革命契機として、出兵した事態解決に向わなければならないという状況があったと思うのであります。国境侵犯、その他の問題については、やはりハマーショルドが報告をしておりますように、全線への接近も可能となり、また、ハマーショルドも、日本決議案の執行はできぬにしても、ハマーショルドの与えられておる権限内において監察団強化を企てて、いま少しく監察団の活動を強化することによって、これらの問題は最終的にはきまってくるのではないかというふうに考えておるわけであります。  マーフィーがレバノンに参りまして、いろいろの活動をいたしておるわけでありまして、軍が入っておりますから、お説のような見方も全然ないとは言えませんけれども、まあ、事態を早く解決するという意味において、調停、あっせんをするということは好ましいことであると思うのでありまして、それ自体をすぐに不当な内政干渉だと言い切るのは少し強過ぎるのではないかというふうに考えます。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 私が伺っているのは、安保理事会で今度の、先ほど申し上げた、人だの物だのが裏から不法に入ってくるとか、あるいはラジオの放送がけしからぬとか、こういうような、ああいった事実が間接侵略という定義をつけられるものか、あるいは武力攻撃というのか。安保理事会としての結論をどうするかということを伺っているのじゃなくて、そういう訴えを聞いた理事国日本として、向うの、聞いたものを日本政府としてはどう考えるのか。それがどういう定義に結論づけられるかということを、私は伺っているのじゃないので、どんなラジオ放送をしたか。向うがどんな武器を持ってきたか。私はパンフレットが手元にないんですが、そういうものを受け取って、政府はどう考えるかということを聞いているんです。
  21. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この間接侵略というものの定義というのは非常にむずかしいと思うのでありまして、武力侵略というものをどの程度まで国連憲章五十一条を拡張解釈するかというような問題については、今日まででも国連内で、委員会を作って検討をしておりますし、あるいは、それぞれの国が意見を出しておりまして、ただ、今、ラジオであるとか、そうしたものだけがすぐに間接侵略になるかどうか。たとえば、中共が、今日、非常な岸内閣の悪口を言っておる。そういうこと自体が、すぐに間接侵略になるのかどうかということは、相当私どもは、これは疑問に思うのです。ただ、国境を越えて武器等が非常に入ってくる。それが供給されるというような問題は、これは、やはり、相当の間接侵略になる。計画的にもしそういう武器等のあれがありますれば、相当、間接侵略考えられるかと思います。ですから、そういう意味において、間接侵略というものの定義はどの辺まで——これは、量と質等にもよりましょうし、非常にむずかしいのですが、かりに、アメリカがいろいろ言っております点で、相当ラジオ等で非常に激しいことを呼びかけているのだ。そのことまで広げていきますと、そのこと自体間接侵略と見るのは、まだちょっとどうかと私ども思います。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 どうも衆議院の方で、盛んに、間接だ、直接だ。あるいは五十一条の法理論ばかりでつつき回されたもんだから。間接侵略に当るかということを聞いているんじゃない。そんなこまかいことを聞いているんじゃない。私が先ほど伺ったこと、レバノンアメリカが言うことは、出兵を裏づけるだけの条件に一体なるほどのものであるかどうかということを聞いているんです。日本政府の——そういう訴えを受けておった政府は、どう考えるのか、事情を聞いているわけです。鉄砲が何丁で、カービン銃がどうという、入っているわけですね、こまかい訴えが。それをとった政府としては、どういうふうに考えているか。外務大臣は、きのう、一昨日ですか、そういうふうなものは、個々の具体的な場合について考えなければわからないと答弁がありましたが、その具体的な訴えがあったはずだが、それを見て、一体、出兵を十分に裏づけるだけのものがあるとお考えになるのか。これではちょっと無理だ、あるいは、全然いけない。どういうふうにお考えになるかということを伺っている。
  23. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) いわゆる国境侵犯の問題だけで言いますれば、今回のアメリカ出兵というものがそう早急にきめられなければならぬという理由は、私は非常に薄いのではないかとこう思っておるのです。ただしかし、アメリカシャムーン大統領の、合法政府主権者要請によってこれを出すということも大きな理由として言っておるわけでありますし、そういう意味からいいますと、その面での理由があったかと思いますけれども、今のようなお話でいえば、まだこれらの問題はもっといろいろな情報なりあるいは材料なりで的確に判断をする余地があったものじゃないかと思います。
  24. 森元治郎

    森元治郎君 もう一点伺いますが、ただいまのお話は、やはりわれわれはしろうとが考えても、彼らの訴えている条件は、出兵を裏づける理由がないというふうに私は了解をします。ただ合法政府が呼んだから行ったのだというところでわずかに逃げを打っているだけで、彼らの訴えている条件出兵を裏づけない、すなわち出兵しないでもいいことであるというふうに理解をします。  もう一点は、イラクの承認についての問題ですが、新しい政権の承認の問題ですが、総理も外務大臣もよく現地の情報を、英米なんかに追従しないでやる。ことに総理などは、きのうは独自の判断でやるんだと大へん力み返っておりますが、そんなに力み返らなくてもいいので、こんなものはこれまた常識で見てもイラクの石黒公使が新しい政府に顔を出して、人民の支持による政府の成立をおめでとうございますというあいつも述べておるらしい、これは新聞に伝えられております。それで中東のほんとうの平和を願うならば、期待されている日本が英米より先に、むしろこの場合は英米ということを頭に入れて先に承認をすることによって、ヨルダンやあるいは米英イラクの方に何かの理由武力紛争を起させるのをやめさせるということに非常に効果があると思うのです。すみやかにきょうでもやるべきだと思うのです。この点はどうですか。その何かよその顔を見なければやらないのか、そうじゃない、独自の判断だとおっしゃるならば、そんなことは必要もないので、たまには一つくらい、どうせ承認するものならばたまにはまっ先にやる。これは非常に私は外交効果があり、紛争拡大の阻止に役立つ積極的なものになるのです。
  25. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イラクの承認問題につきましては、英米より先にやるとかあとにやるとかということを考えませんで、ただいまお話のすみやかに処置をいたします。
  26. 森元治郎

    森元治郎君 すみやかとは、もうすみやかとは——けさの電報ではイギリスの大野大使も心配して早くやったらどうか。あっちこっちからそういうことを言われておる。もったいをつける必要もなければ、独自の判断でやるというむずかしいことを言う必要もないので、たんたんとしてきょうにでもやるお考えありますか。
  27. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 森委員のすみやかという意味において、われわれれはすみやかにやる準備をしております。
  28. 森元治郎

    森元治郎君 それではしつこくは聞きませんが、こういうことはほんとうにもう普通の、政府の承認として条件がそろっていることは、そんなに判断したり情報を集めたりしなくてもそういうことはわかっておる。公使もすでにそういうことを言うておる。だからすみやかにおやりになることを望みます。
  29. 井上清一

    井上清一君 私、外務大臣に二、三御質問を申し上げたいと思います。  本月の十日に主要地域の五大使の会議を東京でお開きになりました。私ども非常に時宜に適した会議であり、この会議によって多大の最近の重要な国際情勢に関して外務大臣として御認識を得られ、かつまた、今後の外交を展開されていく上において非常な御参考になって非常なけっこうな計画だと思うのです。ただここでお伺い申し上げたいことは、今後の五大使の会議の内容の発表の問題なんで、新聞ではどうも何か一種の声明みたいな形で会議の内容が世間に公表された。また、これは従来あまり前例のないことのように私思いますし、今度こうしたことが一つの先例になりはしないかというふうな感じもするのであります。それでお伺いするわけでございますが、たとえば、ナセル支持強調ということが他の問題に比べまして、少し比重が大き過ぎる。特にあまり鮮明過ぎたのじゃないかというような感じを抱いたわけでございます。  新聞によりますと、「ナセル大統領の唱える積極中立主義がアラブ諸国の歴史的条件からいって東西両陣営のいずれにも入らないことが世界平和の貢献に促進するという強い確信のもとにとられたもので日本としても世界平和維持のために積極的に協力すべきである。」と非常にはっきりした内容が出ているわけでございます。(「何が悪いのだ」と呼ぶ者あり)いやいやちょっとよく聞きたまえ。それで新聞紙の報道によりますと、この反響が非常に大きくて、カイロにおいては日本アラブ連合の盟友だというようなことを言っておりますし、また、当日その発言された日本の駐アラブ連合大使は現地において非常に英雄視されておるというような状況、ところが、逆にイラン、レバノン、イスラエルなどの親西欧派の在日大公使からはいろいろな抗議や問い合せがあったことが新聞紙に出ておりますし、レバノンの駐日公使は「イラク事件の原因は日本外務省の発表が青年将校を奮起させたことにあるかもしれない。」と、うらめしげな発言をしたと、こういうことが新聞に書いてあるのです。で私はこうした非常な複雑な国際環境にあります場合において、これほど端的に、そしてまた、この発表するということはどうかと思うのです。これはむしろ抽象的に表明して、腹の中にしまっておいた方がよかったのじゃないかというような気もするのでございますが、これらの点については何か外務大臣の御意見を承わりたいと思います。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般五大使を集めまして、そうして、いろいろ任地国から見た世界情勢または任地国におけるそうした問題の扱い方、また、それらを基礎にしてのお互いの意見の交換ということをやったわけであります。従いまして、先般は御承知のように、ソ連アメリカあるいは中近東、東南アジアというふうに集まりましたもので、議論は非常に活発に行われたわけであります。それでこの会議自体は必ずしも結論をそうはっきりつけるのではありませんけれども、ある程度まあ考え方も同じようにそろってきた問題もあり、必ずしも意見のそろわぬ問題もあるわけであります。ただやはりああいう会議をやりました場合に、ある程度やはり日本の国民に対して、いろいろな注目をあびております五大使の会議における意見というものを、しかもそれがある程度そろってきた意見でありますれば、ある程度言うことは必要だと思います。ただ表現の方法等が、これは別に文書で書いたわけではございませんし、会談のあれをブリーフィングしたことでありますが、それぞれの説明の場合に若干いろいろなウエートがあったかと思います。そういう問題につきましては注意を今後ともいたして参りますが、今申し上げたような事情で、そういう新聞紙上の発表が行われて、しかもそれはブリーフィングのことでありますから、必ずしもそれは正確に出ているとも思えませんけれども、若干そういう点ではいろいろあれもあろうかと思いますが、そういう経過でありますので、さよう御了解願いたいと思います。
  31. 井上清一

    井上清一君 では別の問題に移りますが、ただいまイラク政府の承認の問題について森委員からの御質問があったのでございますが、先般のラジオでしたか、新聞でしたかでも、すみやかに承認という政府の方針が出ております。イラク政府の承認という問題につきましては、ソ連圏を中心とする諸国によってまず承認されております現状でありますだけに、その実情を深く考慮しないで、とかく日本が承認するんだというニュースが非常に早く世界に流れ出たのは私はどうかと、こう思うわけでありますが、やはりイラクの新政府の承認ということは、十分やはり国際情勢とにらみ合せた上で、ことに新政権の安定度というものを十分に分析した上で、独自な立場において承認をすべきものであるというふうに考えますが、この点について重ねてお聞きしたいと思います。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) イラク政府の承認というのは、むろんただいまお話のありましたように、革命後のイラクの状況を見まして、十分検討すべきは当然でありますが、現在のイラク革命後の状況は私ども公電をもって知っております範囲内、また、関係国を通じての、われわれ入手しております情報によれば、国内的には非常に安定した状態になっております。また、新政府政策等も穏健でありまして、大体外国人を排斥するという状況にもございませんし、また、共産主義等に対する態度等も、表明されておりますところを見ますれば、穏健な政策を続けていくと考えられます。また、外国の石油その他の問題に対する保護等につきましても、相当な慎重な態度をもっておるわけであります。イギリスも従いまして凍結資産を解除いたしております。イギリスに対しても数回そういう石油の問題等については、新イラク政府の方から接触をいたしておりまして、その態度というのは決して苛烈な態度をとっておらぬように思います。従いまして、イラクの現在の事情は革命後安定してきているし、また、対外的に問題を起すような状況にないというふうに考えられるわけなんでありまして、私どもイラクがそういう状況にありますれば、われわれアラブナショナリズムが、やはり共産側に走らぬためには、自由主義陣営のものとしても、やはりイラクのそうした態度を十分考えて、その上に立って処置をして参りますことが、イラクのためばかりでなく、あるいは自由主義陣営のためでもあろうかと、こう考えておるのであります。そういう見地に立ちまして、承認の問題をただいま検討いたしております。
  33. 井上清一

    井上清一君 イラク政府の承認の問題については、ただいま外務大臣からお話がございまして了承いたしたのでございますが、私もイラクの新政権は、現在のシリアやエジプトほど親ソ的な性格を持っていないものであるというふうに、これは新聞なり、あるいはまた雑誌等から判断しているわけでございますが、従って、ただいま外務大臣がおっしゃいましたように、日本自由主義陣営立場において、積極的に一つイラク新政権との国交を厚くして経済協力の実を上げ得るように、どうぞ今後とも外交的施策に一そうの努力を切望いたしたいと、こう思うのでございますが、ことにただいま外務大臣からお話がありましたように、石油事情が順調に継続されていきますというと、このイラクの経済開発というのは、エジプトに劣らずシリアよりももっと高い水準において遂行されていくだろうと私ども考えるのです。日本が経済的に協力する可能性はきわめて大きいと思いますので、どうぞ一つ経済協力の増進に今後とも一そう御努力をお願い申し上げたいと、こう思うわけであります。  これに関連いたしまして、中東諸国全般に関しまして一言私の考え方を申し上げ、御意見を承わりたいと思うのでございますが、現在経済協力につきましては、東南アジアに対するものが非常に強調されておるわけでございますけれども、輸入力から見ますというと、中東は年間約三十億ドルの商品の輸入をしておる、東南アジア全体の購買力の半ばに近い購買力を持っておるわけでございます。東南アジア全体の人口はざっと六億、中東は一億、そういう点から考えるというと、中東の購買力というものは非常に高いというふうに私ども考えておるわけであります。現在は西欧及びアメリカがその市場の大部分を支配しておりまして、日本は劣勢な状態に立っております。しかるに中東諸国は、日本に対しましては深い近親感を持っており、また、日本に非常に期待しておる状態でございますので、日本は中東の輸出市場を拡大する可能性を大いに持っておるわけであります。また、この拡大に努力をしなければならぬというふうに思うのでございます。その経済協力の上にはわが国の輸出競争力を強化いたしますとともに、輸出に対する国家的支持ということがきわめて大事ではないかというふうに思います。そういう点で経済外交体制の強化ということは、この際わが国としてきわめて大事なことである、このことのためにも、経済外交を推進して参りますためにも、中東諸国の民心の獲得がなければ私は不可能であるというふうに考えるわけです。中東諸国に対しまする一貫した外交態度、すなわち中東各国の民族の独立あるいけ国家建設の熱意に十分こたえ得る政策を今後日本としても外交政策として積極的にとっていかなければならぬ、こう思うのでございますが、この点に関しましての外務大臣のお考えを承わりたいと思います。
  34. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 中近東日本との関係でありますけれども、これは基本的に非常な親善関係の空気を持っております。そうして日本に対して中近東諸国の方々が相当な親近感を持っておられることも事実であります。同時に中近東は石油等の資源がありますので、どちらかと申すと、東南アジアよりもそういう資源による収入によって経済的には地盤が強い点もあるわけです。ただ、まだ開発が十分に進んでおらない点もありますから、必ずしも今日経済的に強力な立場だとは思いませんが、そうしたことを考えて参りますと、当然今のお話のありましたように、日本中近東諸国間との親善関係をできるだけ厚くし、政治的にも厚くし、また、経済的にもそれぞれ戦後独立された国の経済建設を助けて、そうして政治的独立を全うさせる方向に協力していきますことは、日本の外交方針として非常に必要なことであり、重要なことだと思うのであります。従って、その線に沿って、われわれも今後中近東に対する外交的措置をとって参りたいと、こう思っております。ただいま井上議員の言われましたような考え方で私どもも問題を進めて参りたいと、こう考えております。
  35. 井上清一

    井上清一君 最後に、一般的な問題になりますが、一言お伺い申し上げたいと思うのでございますが、最近内政不干渉ということが非常に大きく叫ばれておるわけでありまして、今度のレバノン革命に際しても、内政不干渉だとかいろいろいわれている。ところが、これは非常によく考えてみなければならぬ問題を含んでおると思うのであります。小国が内政不干渉、内政不干渉という反面、小さな国が内乱を鎮圧する実力を持っていない場合にどうするかというような点について、国際政治の面から十分考えなければならぬ問題を含んでいるのじゃないかというふうに思うのです。それは、小国が平和的な改革の手段をとることができないで、多くの場合、革命的な手段をとる。そういう場合に、世界平和の立場から、大国がこれを傍観しなければならぬかどうかというような点で、われわれはいろいろ考えなければならぬ問題を含んでおると思うのです。平和的な改革に導くような世界的な世論が沸き立ってくれば別ですが、そうでない場合、たとえば共産主義による政権争奪の暴力革命に対して、内政不干渉、内政不干渉ということがいわれる。そうしてそのたびに、いろいろな国が黙っていなければならぬというような事態も相当あると思うのですが、こういう場合も、大国にはさまれた小国、実力のない小国には私はあると思うのですが、世界平和の観点から、こうした場合にどういうふうな措置をとっていった方が一番いいのか、これらの点について、外務大臣のお考えを伺っておきたいと思うのであります。
  36. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 小国が健全に発達していくために、また、われわれ自由主義陣営に属しています国としては、その立場から小国の健全に発達していくような方途を平生からとって参らなければならぬと思うのでありまして、問題が起りましたときだけに力を尽すのでは、ほんとう解決ではないのじゃないかと、こう思います。従いまして、常時、そういうような考え方で、自由主義陣営のものとしては、共産陣営にも対処して参らなければならぬと、こう考えるのであります。でありますから、そういう意味において、平素から、できるだけ小国の立場考えて、十分な正しい援助の手を差し伸べていく。これは政治的にも経済的にも私は必要なことだと思っております。ただ、国内における政争自体がどういうふうに動くかということは、それは原則として、その国の人がきめることが原則であると思う。やはり平素から自由主義陣営の人たちが十分なあたたかい手をもって小国の政治的安定と経済的発展に貢献して参りますれば、政変、政争自体もやはり自由主義革命に沿った線にいくのではないか。また、それが一番正しい道ではないか、こういうふうに考えておるのであります。むろん共産陣営としては、特殊のいろいろな手を用うる場合がありましょうけれども、やはり民生の安定ということが達しられてきますれば、必ずしも共産主義に国内的に同調していくということではなく、いき得る例がたくさんあるわけですし、また、そうなるのが私ども自由主義を信奉しているものからすれば、当然だと思っているわけであります。でありますから、そういう意味において平素から十分考えておりますことが、今お話しのような問題の私は起らないための一つ解決策だと思うのであります。ただ、新しく植民地から解放されたいろいろの国においては、過去のいろいろな政治的な習慣も残っておりますし、あるいは政治的な弊害を含んだ政府等もあるわけでありましょうから、それが自由主義的に改革されるということでありますれば、それは一番望ましいことだと、それ自体がわれわれ陣営と飛び離れた意味における暴力的な、また思想的な立場解決されるということは、自由主義陣営におりますものとしては望ましいことではない。でありますから、そういう意味において、内政不干渉というような究極における事態がいずれの場合にも起らぬようにまず措置をしていくことが大事じゃないかというのが、私の考えているところであります。
  37. 井上清一

    井上清一君 私の質問はこれで終ります。
  38. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、やはり中東問題でお尋ねをするのですが、重複を避けながら、二、三の問題をお伺いをいたします。  今の御質問にもあったように、イラクの承認も時間の問題となると思いますが、しかし、日本はもとより、場合によったら英米すらイラクを承認しなければならない条件が出てきているところを見れば、しかも今日まで世界の何十ヵ国が承認している事実に徴すれば、イラク革命はこれは世界各国によって承認されるということを意味している。レバノンもまた私はイラク革命とは本質的に違わないと思う。レバノン革命イラクのそれも、ほとんど本質的に何らの相違がないことをこのことは意味している。のみならず、レバノンに対する今度のアメリカ出兵は、これを肯定せしめるだけの客観的な事実の存在を確認することが非常に不確定的な要素を持っている。これはハマーショルド国連事務総長の報告にも明らかであるように、それを裏づける客観的な事実の確認がないのです。だからこれはアメリカの主観的な一方的な意図に基くものだということは、全く明白なんです。そうなると、先ほどの井上さんの御質問にも関連することですが、問題は、アメリカは自国の利益と世界平和のためと言っております。全く私はこれはアメリカの自国の利益のためを中心にしていると思うし、また、世界平和と言っておりますが、問題の重点は、これが世界平和に役だったかどうか、アメリカの行為というものは。これは私どもの判断からいえば、むしろ逆に世界の緊張を深める。これはもう事態の発展が明白にこれを証明している。これはまぎれもない事実であります。だから、そうであると、私どもとしてはアメリカレバノン派兵といい、イギリスのヨルダン派兵といい、これはもう資本主義諸国の植民地に対する圧力を強化して自己陣営の保全のためにとった予防手段であることは、もはや明確なんです。これは一点疑いの余地がなかろうと思う。もとより今後国連調査によって、あるいは異なった報告がなされないという保証はありませんが、しかし、他国に対する侵略というのは、だれの目から見てももう疑いもなく実証される。こういう場合には、これはもう何らの余地はありませんが、しかし、何人の目にもそれを立証する客観的な事実の存在の確認が困難であるしいうような事態において、アメリカのような行為がなされるということは、私はこれは世界の緊張をかえって深めて、危機を拡大する結果になる、こう言いえると思うのです。これはもう全く明瞭だと思う。だから私は——国庫憲章の五十一条の解釈をかれこれしません。しかし、平和のためにアメリカのやった行為が役立っておるかどうかという点で言うならば、私はむしろ危機を深めておる、こういう立場に立たざるを得ない。しかも今後私は中近東におけるアラブ諸国独立運動は日を追ってこれは激化するでありましょうし、この民族の方向というものを阻止するということは困難であろうと思う。そうなってくると、日本の外交が今日どういう態度をとるかということは、きわめて重要な問題になると思いますが、そこで、私は政府見解をただし、かつ注文を申し入れたいことは、政府の今日までの方針は国連中心主義であった。もちろん自由陣営にも協力をするが、まあ国連中心ということを言ってこられた。その政府国連中心ということが今日まで維持されてきた理由——とにもかくにも今日まで維持されてきた理由は何かというと、これは国連内における米国の政治的比重が非常に大きかったということなんです。国連の中におけるアメリカの政治的比重が非常に大きかった。だから国連のとった方針とアメリカのとった方針が根本的にときには矛盾するときがあっても大した違いはなかった。大体国連アメリカの方向というものが今日までの過去の経過では似通っておった、率直に言えば。その上に日本国連中心主義というものが、悪い言葉で言えば、これを隠れみのとしてあぐらをかいてきた。ところが、たまたま今度はアメリカ政府のとった行動が国連の中ではきびしい批判を受けたi全くきびしい批判を受けた。だからここではさすがに日本アメリカと同一行動をなかなかとらないで、最初に外務省の今度の事件が起った際に発表した見解に示されるように、われわれ野党から見てもこれは大いによろしい、若干拍手も送りたいような気持で受け取ったところが、やはり本質的にはアメリカに依存をするというか、追随するというか、ついに、たとえ条件つきにしろアメリカ案賛成するという態度に落ちついた。このことは非常に私は重大だと思う。つまり日本国連中心主義を言っておりながら、今度ついにアメリカにたとえ条件つきにしろ踏み切らざるを得なくなった、アラブ諸国を大いに失望さした。それからわれわれの期待にも反するようなことになった。これは私は政府も十分考えなければいかぬと思う。だから、私は根本的な食い違いが今後起ってくる場合、たとえば、アメリカ国連ことごとく起るとは思いませんが、今後、アメリカ国連との間のこの問題の取り扱い方に幾多の違いが起ってくる場合には、私は日本政府は一体どちらの立場に立つかということで非常に困難を来たすことがあると思う。だから、私はこの際政府に注文をしたいことは——外務大臣の所見を承わりたいことは、今後も激化するであろうし、また、発展するであろうこのアラブ諸国の民族運動を、われわれも公正な立場からむしろ理解を持って支援しなければならない。そうであるならば、やはり国連中心といっても、今度はアメリカ出兵が行われる一時間後にはすでに国連が討議を開始しておる。一時間を争うようなそんな緊急事態ではなかった。しかもそれを裏づける客観的な条件は存在しなかったのであるならば、先ほど森君も指摘しましたように、むしろ事態の推移を見て国連監察団強化への処置に協力できると、アメリカ案には棄権するような態度が私は望ましかったと思う。従って、私は今後の日本アラブ諸国に対する外交の基本的な方針としては、やはりこの何といいましても、世界の大勢にもっと目を開くということだと思う。この大勢を阻止することはできない。それをアメリカのような今のやり方を一から十まで悪いとは言いませんが、これはやがて世界のあらゆる国からきびしい批判の対象になると思う。このことは、私はソ連のいうことは一から十まで正しいということを証明するということではないのであります。それはまた別の話であります。われわれはまたソ連についても批判の余地を持っておる。しかし、このアメリカの今日までの行為を見たときに、私は日本政府がもっと是々非々、明白な是々非々の立場に立たないと、国連中心とかあるいはアラブ諸国に対する理解ある態度を保持することは非常に困難であると思う。そういう立場から、今後日本政府がとるべき対米の外交としては、あくまで問題の性質によって是々非々でいく、今までのところは是々非々です、これは。是々非々でいくと  いうことを私は確認してもらわないと、今後も今度と同じようなことが起るのではないかということを深く憂うるわけであります。まあ第一番にこういう意味合いから、今後も起るであろうアラブ諸国の民族運動に対して、政府はもっと明白な態度をとるべきである。それからアメリカとの外交については、もっと是々非々を強く貫くべきであるということを私は強く要望したいと思いますが、外務大臣考え方はいかがでありますか。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私は中近東をながめまして、アラブナショナリズムというものが一つの大きな運動であって、先ほど申しましたように、それ自体共産主義運動というふうにきめつけてしまって、反対側に追いやるということは、私は自由主義陣営立場に立って適当であろうと考えておらぬ。従って、そういう考え方のもとに今後も行動をして参りたいと、こう思っております。でそのこと自体が私はやはり自由主義陣営の中でも十分理解を深めて参らなければならぬのでありますから、アメリカに対してもわれわれの見ておりますところは率直かつ友好的にそういう問題について話し合いをしていく。また、そういう意味において、アメリカの参考になるようにわれわれは努力していかなければならぬ。何と申しましても、やはり自由主義陣営の中の大きな力を持った国でありますから、この国がやはり世界政治の上で、間違うとは申せないかもしれませんけれども事態の認識を誤まってもらいますことは、われわれ自由主義陣営に属しておるものとして非常に困るわけでありますから、そういう意味において努力して参りたいと思っております。むろんわれわれは、問題によりまして、今お話のように、われわれの見ておるところを率直に言うことこそ日米親善を深めるゆえんでもあり、また、自由主義陣営のために必要なことだと、こう思っております。ただ何か観念的に中立主義だとか是々非々主義だとかいうようなことだけを唱えてもいかぬのじゃないか、実際の問題に当りましてわれわれはそういう態度で今後ともやって参りたいというふうに考えておるわけであります。
  40. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、それは観念的ではないのです。私の言うのはもっと現実的なんで、たとえばアメリカ出兵してしまったから、もうその事態に基いて行動をするのだということは、いかにも現実的に見えますが、大国が既成事実を作っておいて、あとからそれを合理化するための口実を見つけようとしておるアメリカのこの事実に協力をするのが今の日本外務省態度ですよ。これは何と言われましても、大国が既成事実を作ってそれを合理化するという、また、日本がそれにこの合理化に協力するというような今の態度は、私はこれはもう絶対に反省しなければいけないと思う。特に先ほども指摘いたしましたように、それを、アメリカ出兵を立証するに足る客観的な事実が存在しておらぬ、これは明白に存在しておらぬということを今言い切るのはいささか言い過ぎかもしれませんけれども、何人の目にもおよそ常識的に見てこれはイラクと同じ性質のものだ、しかも今までのおそらく私の想像では、近い将来早ければ二、三日、今明日中にも承認しようというのでしょう。そんなに先にいったって意味がないのですからすみやかにやられると思いますが、しかし、そういうときにレバノンとどう違いますか。イギリスですら承認せざるを得ない状況に来ている。レバノンとどう違いますか。レバノンの内乱も、イラクの内乱も同じことなんですよ。片っ方は出兵の口実になり、片っ方は国際外交上近く承認をする。これはもう全然私は意味のないことだと思う。それほどに、私はけさニュースを聞いてイラクの承認ということを聞いたときに、レバノン問題も片づくかと錯覚を起すぐらいに同じ性質のものです。私はちょっと錯覚を起した。同じ性質のものです。だから、そうであればあるほど私は今度のアメリカ出兵を合理化するこの事実というものは何も存在しない。この事実はどこから来ておるかというと、私はこれはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、対中共問題、それから、今度のレバノンに対する問題等を見ても、日本政府の何といいますか、一貫したあまりにも親米ということの意味が、むしろ依存、追随といえるような性格が多過ぎる、このことが結局今度の政府の処置となるようなことになったと思っている。私はこれは、今アラブのことを申し上げましたが、アジア問題の解決にとってもこれは同じ性格を意味していると思う。だから先ほど承わっておると、ちょっと私は心配になることは、一種のイデオロギー外交のにおいがする。だから、岸政府が、今の自民党政府アメリカが好きなのは自由なのである一それから自由主義であることもわれわれは何もかれこれ言う余地はない。だからアメリカ協力せなければならぬがゆえに、大国でまた力を持っているがゆえに、このやった事実を既成事実として合理化するようなことに協力することは適当でない。また、そんなことでアラブ諸国協力が得られるものでもない。しかも世界の方向は必ず資本主義的な今の大国の弱小国に対する植民地的支配というものが終えんを告げる時期が来ることは確実だ。来るのです。時間の問題です。そんなときに日本がなおまだそれを十分認識することができず、依然としてこのような外交方針を続けるということは非常に遺憾なんです。問題の起ったときに、最初の外務省態度は大いによろしい。これは実に私はほんとうに大いに拍手を送りたかったと思うのですが、その後の事態を見るならばやはりもとへ戻って、なるほどやっぱり争われぬわいということになるので、そこでやはり政府ほんとうにもっと世界の大局をお考えになって、こういうことを二度と繰り返さないようにお考えをいただきたい。そういう意味で、五十一条の解釈はいざ知らず、もっと国連中心主義というならば国連事務総長の行動なんか、あるいは監査団のとった報告等についてもっと尊重すべき態度であるべきだと思う。そういうことについての政府としての反省はないのでありますか、お伺いいたします。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、私としても必ずしも今度アメリカのとった態度が全部が全部適当であったとは今日も考えておりません。ただ国連というところに問題が提起されまして、そうして国連の中ではやはり紛争解決をする、一番努力をするところだと思うのであります、国連というところは。でありますから、国連で仕事をする場合には相当現実的な立場に立って仕事をしていくことがまあ必要なことなんではないか。でありますから、理想だけを言ってそうして国連で言説を戦わせているというのではなくて、実際にたとえばアメリカ出兵した問題をどう片づけるか。そうしますと、とにかくアメリカにはいろいろの理由をつけなければなりませんし、原則として私どもも必ずしもその出兵が適当と思っておらぬ立場からいえば、アメリカ出兵を一日も早く引かせるという方法をつけさせることがやはり国連ワク内における現実的な解決の方途だと思うのであります。その点について国連警察軍ができれば兵を引かせるということを言っておるのでありますから、そういうこと自体ができますならば、やはり一つ国連の中における現実問題の解決だと思います。そういう意味において、国連の中で現実的に問題を解決するという立場は、今後も国連の場においてもやはり私は各国がそういう立場をとって問題を一日も早く解決する。本質的に問題の所在を批判し、あるいは問題の経過についての批評というものは当然それはその国々の立場で決してそれを捨ててはおらぬと思います、どの国の立場からいいましても。が、しかし、やはり国連ワク内では、何か起った事態をできるだけすみやかに解決していく方途を見つけるというのが私は必要なんじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  42. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう一ぺん誤解のないように申し上げておきます。私は国連中心と言ったのは、政府国連中心と言っておるから、そうであるならば、もっと事務総長等の言に耳を傾けるべきであったということを申し上げるので、問題の性質によって国連ワク外でも政治的な処理をしなければならぬこともありますから、私はあえて問題の処理を国連だけに限定するわけではないのであります。  そこでもう一点は、今外務大臣が言われましたすでに行われているアメリカ撤兵をすみやかに行わしめるためには、何らかの具体的な方途が要ったと言われますが、これは気持としてはよくわかります。しかし、同時に私は、むしろこのアメリカのとった行為について日本が批判する。アメリカ案について、あの場合においたらむしろ棄権をして、むしろアラブ諸国に対して同情と理解ある立場をとる、この方がむしろ問題の解決に役立ったかもしれない。その点は必ずしもあの解決案を出したから問題が片づくというのではなしに、むしろ日本アメリカのとった行為を正当化づける、条件付にしろ正当化するというような態度をとらなかった方がむしろ問題の解決に役立つ、そういうケースもある、こういうことを私は申し上げておるのであります。いずれにしても、私は先ほどのことをもう一度繰り返しますが、日本の外交が今まで比較的何のかんのと言われながらやってこられた一番大きな理由は、国連アメリカとがほぼ同じ方向で今まで歩んできた。しかし、今度によって明白にアメリカ世界から大きな批判を受けた。そうすると、日本外交も初めてここで大きな矛盾にぶち当って、二者択一であるが、ついに最後に朝海大使の言われたことか何か知りませんが、アメリカ案支持に踏み切った、これが事実だろうと思います。これはまぎれもない事実であります。だからこういう動揺を繰り返さないように、確固たる立場を今後とも保持するためには、先ほど来私が申し上げますように、もっと世界の大局的な判断に立って政府が行動されることが必要であろうと思う。これはまあお答えがなければなくてもよろしいのでありますが、私の意見であります。私の質問は何かお答えがあればしていただきたいが、以上で終ります。なければよろしゅうございます。
  43. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まず、イラクの承認問題についてお伺いします。  先ほども外務大臣の御見解ですと、とにかくイラクの新しい革命政府は落ちついておって、そうして国民の支持も受けておる。さらにまた、イラク革命政府の外交政策も特に他国との間にトラブルを起すようなことはない。従って、まあ承認をすべきであるということであったのであります。このことは私は大へんよろしいと思うのでありますが、なおもう一つ私は、イラク政府をすみやかに多くの国々が承認することが中近東のあの紛争、危機を落ちつける大きなステップになると思うのであります。それはイラク革命アメリカ出兵の原因となったのであります。従って、イラクにおける事態が急速に解決をするということ、そしてそのイラク革命の波及がレバノンに及ばない。レバノンのことはレバノンの国内で片づくという事態になれば、アメリカがあそこに駐兵しておる理由というものは完全になくなってしまうわけであります。従いまして、私は各国がすみやかにイラクの新政府を承認する。そしてそこに正常な外交関係を結ぶということが紛争解決にとられるステップであると思うのですが、それは急速でなければならぬのであります。ところで、現在バグダッド条約加盟国でさえ、すなわちイランでもあるいはトルコでもイラクをすみやかに承認しようとしておる。英米はまだ従来の出兵との関係がありまして、もたもたしておるようでありますが、これも承認せざるを得なくなる時期がくると思う。ところで、日本は当然先ほど藤山外相の言われたような理由があるならば、もうとっくの昔に承認しておってもよかった。またすみやかに、すみやかにと言ってその時期を示されなのいは一体何の理由があってぐずぐずしておられるのか。それは一つ米英との了解を求めるためにそれで遷延をしておるのかどうか、あるいは米英の了解を求めるに至らずしても、米英がやるであろうということをこちら側で見ておってぐずぐずしておるのか。そのぐずぐずしておる理由をまずお伺いしたい。
  44. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 新しい国の承認でありますから、やはり新しい国の状況を十分に判断することは前提として大事なことだと思います。私はその意味での大体のまとまった判断を火曜日の閣議に報告をいたしておるわけであります。ただいま事務的手続を進行しておりますから、おそらく先ほど森さんの言われましたようなすみやかな機会に事実が現われてくると思います。
  45. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 事務的手続が進行しておることはけっこうなことでありますが、その事務的手続の進行もこれは非常に複雑であるならば相当な時間も要するでありましょうが、しかし、そう事務的手続が長くかかるようなことであるとは思えない。そうすれば、私は今明日中であっても何ら差しつかえないと思うのですが、これは今週中に、いや今明日中に行われるかどうか、そのすみやかな範囲を一つはっきりしていただきたい。
  46. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいまの時刻で、すみやかにというのは、今岡田委員の言われましたような来週にはなりません。
  47. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、今週中とはっきり言われたと、こう確認してよろしゅうございますね。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま書類上の手続をいたしておりますので、おそらく今明日中には発表されると思います。
  49. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 それはけっこうでございます。なるたけ早く、一時間でも早くやっていただきたいと思います。
  50. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 手続をいたしておりますので、私からちょっと手続中申し上げかねるのでございますけれども……。
  51. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次に、お伺いしたいことは、ヨルダンに関する問題であります。ヨルダンは御承知のように、前々から革命の形勢があった。これは当然のことでありまして、アラブの今日民族主義が封建王政に対しまして、どこの国においても強い民族の反撃を受けておる。そうしてサウジ・アラビアのイブン・サウドも引かなければならなかったし、イラクにおいてはついに王政が転覆された。ヨルダンもそういう運命にある。ところで、ヨルダンのそういう王様がイギリスの出兵要請いたしましたのは、もちろん自己の立場を——自己の王政を維持していこう、そのためにイギリスの出兵を要求したと私どもは解しておるわけであります。しかし、単に国内における王政の維持というだけではないのでありまして、私はどうもヨルダンに対するイギリスの出兵は、イラクの問題が今日落ちつきかけておるのに非常に大きな危険を残しておる問題だと思うのです。もしヨルダンの内部におきまして、イギリス軍が駐屯しておるにもかかわりませず、あるいはヨルダンの王制に対する軍隊なり、あるいはまた、民衆の革命行動というものが起された場合に、このイギリス軍がどういう行動をとるかということは非常に重大な問題だ。また、ヨルダンとイラクとはアラブ連邦を形成している。そうしてあの革命後ヨルダンの王様はアラブ連邦の最高権者であることを宣言している。そこで、イラクとヨルダンとの関係を見ますというと、これはその主義において、方針において全く食い違っている。従って、この問題も非常に重大な問題を含んでいると思うのであります。そこで、現在イラクの問題がだんだんに落ちついて、各国イラク政府を承認するというようなことになって、まあアメリカレバノン出兵した理由の大半が失われていく。そうしてレバノンにおきましても新しい国内情勢の展開によって、なおアメリカ出兵理由がなくなった場合に、イギリスだけヨルダンに残っているということになりますれば、これはまた、中近東における紛争をさらにかき立てることになってくると思います。従って、イラクの承認の行われますと同時に、そうしてアメリカレバノンにおける駐兵の理由をだんだんに失わせて撤兵の方向に圧力を加えていくと同時に、ヨルダンにおけるイギリス兵の撤兵も私は強く要求していかなければならぬと思います。ところが、まあこの問題については、特にまだ日本政府としてはっきりした態度をお示しになっておらぬ。そういう行動には出ておらないのですが、まずわれわれは、当然日本政府はイギリス政府に対してヨルダンから撤兵すべきことを要求すべきであると思うし、また、国連安保理事会がまあ開かれない事態にありますけれども、やはりこれは国連の代表部において、イギリスの国連の代表部に対して、すみやかにヨルダンから撤兵すべきことを交渉すべきであると思うし、とにかくヨルダンの撤兵もまた日本としては積極的にこれを行わしめるようにしなければならぬと思うのですが、これはまあまあそのうちに引くだろうとか、巨頭会談で片づけてくれるだろうとかいうのでお待ちになっているのか。それとも積極的にヨルダンからの撤兵日本としては進めようというお考えなのか。その点承わっておきたいと思います。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般の安保理事会でまあレバノンの問題が非常に大きく各国から重要に取り上げられておったわけであります。従って、ヨルダンの問題については審議を並行して進められなかったわけであります。しかし、安保理事会に提訴もありますし、おそらく近く安保理事会としてもこの問題を取り上げていくと思います。なお、イギリスの態度は、やはり非常に私はまあ現実的な取扱いをもって問題の解決をはかっていく方向にいろいろ努力をしているものではないかと思うのでありますが、ただヨルダンの実際の実情等から見ますと、イギリスが非常に苦心のあるところだと思うのですが、いろいろの意味で現在イギリスとしては問題の扱い方をまあ考えているような、まあいろいろな情報もあるわけであります。で、当然われわれとしてはやはり中近東におきます平和のために長くイギリス兵がヨルダンにおりますこと自体が、必ずしも適当とは思っておりません。しかし、イギリス兵が引きましたあとの状態等を現実にイギリスがいろいろ考えている事情もありますし、そういう点を見ながら、むろんわれわれとしても実際問題の解決という問題については、できるだけ安保理事会を通じて努力をしていきたい、こう考えております。
  53. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 今のお話ですと、イギリスは袋だたきにあって、やはりしまった、ヨルダンから撤兵しなければならぬと考えておるけれども撤兵するというとヨルダンの王制はたちまちひっくり返る、そこで苦心をしておるように見受けるのだということでありますが、われわれにすれば、それこそ内政問題に対して武力干渉しておることなのです。従って、ヨルダンのイギリス兵の撤兵ということが、これは中近東における緊張の緩和に役に立つことでありますならば、それをまずやるべきであると思う。それで王制がどうなるかこうなるかという問題は、これは国内の問題でありまして、私どもはこれはアラブ諸国の民族主義の運動の展開にまかせればいい、そこまで何も気を使う必要はない、従って、そういうふうな気を使わないで率直にイギリスに対してヨルダンからの撤兵を要求すべきであると思うのですが、それを積極的に進められるつもりがあるのかないのか。どうも今のお考えのようですと、はなはだ消極的のように見えるのですが、その点一つはっきりお答えを願います。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 初めから申しておりますように、われわれとしては、中近東事態を、兵力によって解決するということは、かえって中寺東の事態を非常に悪化するのじゃないかという考え方を持っておるわけであります。ただ、具体的にそれではどういうふうな方法をとっていくと言えば、やはり安保理事会の中で、各国話し合いながら適当な解決方法を見出していくということになっていくのが実際的な解決方法だと思うのです。従いまして、ヨルダンの問題につきましても、一日も早くレバノンの問題なり、あるいは今言われておりますむろんこれはフルシチョフとアイゼンハワーとが相談をいたしております五カ国会議等でも解決の方途ができるかもしれませんし、また、それ自体安保理事会解決の基礎になる問題であると思うのでありますけれども、そういうこともありますけれども安保理事会等が開かれて、具体的に問題を審議していくということも必要かと思って、われわれはそういう意味安保理事会が開かれることについて期待をいたしております。
  55. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 どうもあまり積極的にヨルダンの撤兵の問題について御努力になっているように思われないのですけれども、まあ今後また緊急の安保理事会の開かれるような事態も起ると思うのですが、それに対して日本としては、やはりヨルダンの撤兵問題について日本が積極的に活動するなら、今のうちから安保理事会諸国、特に非常任理事国等にも働きかけまして、このヨルダンの問題もまた安保理事会で取り上げられて、そうして適切な解決ができるように積極的な方策を講ずべきだと思うのですが、そういうふうに訓令をなさいますかどうかお伺いしたい。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) この問題につきましては、総括的な訓令はしておりますし、松平常駐代表が国連ワク内において各国政府のそれぞれの代表者と毎日接触をいたしておるわけでありまして、そういう意味において、安保理事会が行動を開始するという時期をわれわれは期待しておるわけであります。
  57. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、これはまた蒸し返しになりますけれども日本政府のこの中近東問題に対するよろめきの態度の問題であります。先ほど羽生君も指摘しましたように、最初、岸総理なりあるいは藤山外相なりが、このレバノンに対するアメリカ出兵について見解を発表されました。私どももあれを見たとき、実は目をこすったのです。ははあ珍しいことがあるものだと、これはどういうことだろう、こう思っておりましたところが、とたんにあとで変って、羽生君の言われますように、ああ、また地金が出てきたなと、こういうことです。  そこで、国連の、国連警察軍派遣を要求するアメリカ決議案の支持でありますが、これは条件付で賛成したようであります。しかしながら、条件付にせよ何にせよ、あのアメリカ提案を支持したということは、最初に総理なり外相なりが示された見解からひん曲つちまったということは、これは事実であろうと思う。それからまた、どうもあの国連警察軍派遣するということについては、これはまあこの監視団の報告なり、あるいはまた、ハマーショルド事務総長の報告と相反することである、必要のない措置であろうと思うのでございますが、それに対して、条件付にせよ何にせよ、賛成したというのはどういうことだか私どもにはよくわからない。どうもその間に、やはり伝えられるところによりますれば、朝海大使が、あの首相なりあるいは外相なりの見解に対して、びっくりして飛んできて文句を言ったということも伝えられておりますし、あるいは党内の有力者の方から、あれじゃいかぬ、アメリカと離れてしまうからいかぬというようなことで文句が出たというようなことも伝えられおります。また、これはうそかほんとかわかりませんが、アメリカ側の方からも強い要請があって、そうして日本態度が変ったのだと言われておるのであります。理屈はともかく、そういうようなことが伝えられて、ああいうふうに態度が変ったのだということになってきますというと、これはもう明らかに日本の外交というものは自主性を失っておると言わざるを得ない。そういうふうな事実があってああいうふうにきまったのかどうか、そこのところをはっきりさせていただきたい。
  58. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 初めからむろんこういう問題を扱います場合に、私としましてはいろいろな意見を聞くことは当然であります。しかし、初めから大体方針は、そう変ってよろめいたとは思っておりません。何か十六日でありましたか、夕刊に、非常に強硬な態度で総理が外務大臣に指示をしたというようなことがあるのですが、ああいう事実は実はないのでありまして、私は午前中、主としてソ連関係の案について審議をいたしておったのです。そういう報告はいたしました、総理に電話で報告しましたけれども、総理から何らのそれについて特別の指示があったわけじゃないのです。夕刊を見て私自身驚いた、そういうようなことでありまして、方法として私がとりました態度が途中で何らかの形でいろいろ変ってきたということはないし、また、外部からいろいろな意見が出たために変ったのだろうということは、これはございません。朝海大使の意見は前からずっと聞いておるわけでありまして、何かきまってから特に朝海大使が抗議を申し込んできたということは全然ございません。また、アメリカからの何か抗議があった、あるいは申し入れがあったということも、これは全然ございません。でありますから、まあ私としては外務大臣談話というものを発表しておりますので、その線を通して参りますと、必ずしも当時二転三転したというふうには私自身は動いておらぬことであります。何か大へんに動いたように言われるのでありますが、そういう事実はございません。
  59. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 まあ朝海大使から抗議を受けて変ったとか、党内からいろいろ言われて変ったとか、あるいは外国の方から言われて変ったとかいうことを、それを外務大臣がここで承認されたということになれば、これは大へんなことですから御否認になるのは当然だと思うのでありますけれども、しかし、私どもはその間にそういうことがあったんじゃないかということを疑わざるを得ないようなものがあるんです。たとえば、最初にはアメリカ出兵を非常に遺憾とすると、そうしてすみやかに撤兵を希望するようなことを言っておられた、これはもう私どもいいと思っておったのでありますが、その後、これは外務省の方でどこでおやりになったか知りませんけれでも、新聞に出ておるところを見ますと、米英出兵国連憲章に違反するものではないということを強調されて、米英出兵を暗に支持されるような言動が外務省筋から出ておるのが新聞に出ておる。これなどはどうも最初の言明と大へん食い違っておるようでありますし、その後の外務大臣あるいは総理の議会等における答弁とも大へん食い違っておるようなんですけれども、五十一条の解釈についてではあろうと思うのでありますけれども、その解釈がどうも私ども米英出兵を何か合理化するように聞えるふうにとられるものが出たんですが、あれは一体外務大臣の方でああいうものをお出しになるようにさせたのかどうか、それをお伺いしたい。
  60. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) こういう事態が起りました場合に、外務省の人が言動を慎しむことはむろんでありますし、また、他面事態を国民によく知らして参ることも必要なんでありまして、そういう意味においてはできるだけ推移を新聞等にも発表していくということを考えておるわけであります。従って、その間に若干のそごがあったかもしれないのでありますけれども、もしあったとすれば遺憾であります。しかし、今お話のように、他の何かの形から方針が変ったということは、これは全然ないのでありまして、単にここで言えないということでなく、どこででも私は言えることだと思うのであります。それでありますから、そういう意味においてわれわれの態度は変っておらぬということを私は言っておるわけなんです。先ほどお話のありましたように、必ずしもアメリカ出兵そのものが適当であったとは思わないということは現在も私言っておるわけであります。ただ、事態を現実的に国連ワク内で解決して一日も問題をすみやかに終息させたい、しかもそのままにしておきますと、あのときの情勢から見ればあるいは第三次世界大戦にも間違えば突入しかねないような緊迫した事態も起り得る情勢であった。そういう点から現実的な措置をとったということでありまして、そういう点について理解がしにくいことがあるいはあったかと思いますけれども、私としてはそういう意味において、今日まで国連でとってきました国連外交の面においても、そういうふうに考えておるわけであります。
  61. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 ちょっとここで事務当局の方にお伺いするのですが、あの新聞記事ですね。米英出兵は五十一条に違反しないのだというように、暗に米英出兵は法的根拠を有するのだということを外務省の当局の方から言われたことが新聞に出ておるが、今でもそういうふうな態度を持っておられるのかどうか、それをお伺いしたい。これはまあ局長の方からでもいいと思うのです。
  62. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあ一応アメリカ出兵理由としては、表に出ている言葉、あるいは出てない言葉を含めまして三つあるのじゃないかと思うのです。一つは合法的政府の首脳者の要請によって出たと、それから一つは、居留民保護、それからもう一つは、五十一条の侵犯があったという事実、これはまあおそらく言葉に現われているいないにかかわりませず、気持の上でもこの三つ、また言葉に現われてもそういうことであったかと思うのであります。  五十一条の武力侵略があったかどうかという問題については、先ほどから申し上げておりますように、ハマーショルドの報告、その他から見ても必ずしも——むろん全線を監察団が監査できない状態のもとにおける監査でもあるわけでありますが、必ずしも侵犯があったとまで言い切れないということをハマーショルドが言っております。従って、これらの問題については、やはり安保理事会において最終的にそういう問題を考えていくことが必要なんじゃないかというのがわれわれの態度であります。  それから合法政府の要求によってと、これは従来の国際法の観念からいって別に不正当なわけではないように解釈されるのであります。ただそのこと自体は——必ずしもアメリカがそういう解釈をとりましたことは、将来のために果していいのかどうかということは私は非常に疑問であります。たとえばハンガリー問題というような問題を考えてみますと、やはりアメリカとしてはそういうことも理由にしなかった方がいいのじゃないかという感じは持っております。が、しかし、一応法理論的に言えばこれは成り立ち得る議論であると、こう立場を私ども認めております。
  63. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 合法政府が要求すれば出てかまわないのだということでもってどんどん兵隊を出すということになりますというと、これはたとえばアラブ連合が危機を感じてソ連から兵隊を入れる、これも合法的なんです。そうなってくると、国際緊張は緩和どころじゃない、それこそ激発の方向へいくわけです。だからそれは、いわゆる合法政府の要求だから兵隊を入れてかまわないというようなことをもって、それだけの解釈でもって、あれは認められてしかるべしだということになったらとんでもない間違いだと思うのです。それこそ国連の精神というものをじゅうりんすることになる、従って、やはり五十一条というものについては、日本なんかにいたしましても厳密な解釈をしておかなければならぬと思うのです。ところがそれにもかかわりませず、外務当局の方は米英出兵が何か根拠のあるようなことを言っておるのでありますが、それがたまたま国連監視軍の派遣アメリカ提案日本が支持をするのと、そう時がずれてない、ほとんど時を同じゅうしておるということから見ますというと、私どもはどうしても日本政府態度というものはおかしいなと思わざるを得なくなるのでありますが、五十一条について、これは一つ、条約局長なり国連局長なりは、この米英出兵と五十一条の解釈はどういう関係にあるのか、一つはっきりここでもって当局の見解を披瀝していただきたい。
  64. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) ただいまの五十一条の問題でございますが、実は結論から申し上げまして恐縮でございますが、実はまだはっきりした見解、確定的な、政府と申しますか、事務当局と申しますか、見解がなかなか出しにくい問題じゃないかと考えております。これは純国際法と申しますか、法律的に見まして、そのように考えておる次第であります。と申しますのは、一応は五十一条では武力攻撃ということを言っておりますので、われわれとしましては、アームド・アタックとございますから、これは通常アームド・アタック、すなわち言葉自身の武力攻撃ではないかというふうにわれわれは一応考える次第でございます。ところが御承知の通り、第五総会だったと思いますが、それから間接侵略という問題が、非常に大きな問題になっております。そこで毎総会及び特別委員会で侵略の定義とそれから間接侵略とは何を意味するかというようなことが、盛んに論議されてきましたので、それから考えますと、この武力攻撃を単に厳格に武力攻撃だけと見るべきかどうかという点も、多少考えなければならないのじゃないか。と申しますのは、武力攻撃と申しましても、武力攻撃をする国がみずからの手で武力攻撃することだけを考えるのか、それとも少くとも他の領域で武装団体が構成せられまして、また武装団体を構成することをエンカレッジして、それが国境を侵入して相手国を攻撃するということも、すなわちみずからの手では攻撃してないかしれませんが、そういう点も攻撃と考えられるべきではないか、いわば国内法の間接正犯的な考え方でございますが、そういうようなことも考えられるべきじゃないかということになりますと、この武力攻撃という解釈の問題というものが多少問題になってくるというような現況でございます。それからもう一つは、アメリカが五十一条の集団的自衛権ということを引用いたしておりますが、アメリカの声明を見ましても五十一条に従って派兵したのだというふうなことをはっきりは言っていないようでございます。ただ五十一条における集団的な自衛権があるというようなことを申し述べておるところを見ますと、私、その点はどの程度のものかよくわからないのでありますが、やはりその集団的自衛権というのはあるいは基点をなす連帯関係というようなものを強調したものではないかというふうにも考える次第でございます。
  65. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 五十一条の英文には、確かにアームド・アタックと書いてありますが、そのアームド・アタックが、まだ、間接侵略というような、あとでは問題になったけれども、そこまで拡張されたということが確定してないわけなんです。そうすればアームド・アタックということがやはり現代では文字通りのアームド・アタックでなければならぬ。そうすればどうもアームド・アタックの事実はなかったということにもなる。さらに間接侵略の問題については、ハマーショルド事務総長の報告にもある通り、これは間接侵略と認められるような事態がなかったと言わざるを得ない。少くともあの当時においてはなかった。そうすればどの道アメリカ出兵というものは是認さるべきものじゃないと私どもは思う。ただ一つ是認されるものがあるとすれば、その合法政府アメリカ出兵してくれと要求したという一点だろうと思うのであります。その点をもって条約局長の方では、英米の出兵は合理的であったと言って支持、擁護するような態度をとられるのかどうか、新聞に出たような態度、解釈をとられるのかどうか、ここではっきり一つ当局側の御意見を伺いたい。
  66. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) お答え申し上げます。結局先ほど御指摘になりました五十一条で、外務省の事務当局が五十一条違反でないと言い切ったことはあるいはないのじゃないかと考えております。その点は私詳しいことは存じませんが、その点はっきり言ったような点はちょっと記憶にございません。  他の点の要請があったという点でございますが、これはやはり純粋な法律的に考えますと、やはり一国の正統政府要請があった場合、一方がそれに承諾した場合はそこに兵を入れるということは、これは従来の国際法上許されることである。この入れたことが適当、不適当その他の問題はございますが、純粋法律的に見れば、従来の国際法上それは認めざるを得ない、こういうふうに思うのです。
  67. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 従来の国際法上入れることは認めるべきではないかという御意見のようですが、そうすると、五十一条との関連ですね、これは重大な問題になってくるのですが、一体条約局長はどっちの方を重く見られるのですか、従来の国際法上を重く見てあの米英出兵は合法的であったということをお認めになるのか。どうも五十一条に従わないような、五十一条に準拠しない出兵である、従って、これは明らかに世界平和にとって危険なものであるというふうな結論をお出しになるのか、そこら一つはっきりさしていただきたい。
  68. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) その行動が世界平和にとって適当なものであったかどうかというようなアプリシェーションの問題は、これは事実の報道のアプリシェーションの問題になるかと思います。そこで私からお答え申し上げるのは差し控えたいと思いますが、純粋法律的に見ますと、先ほど申し上げたことを繰り返すことになるのですが、一国の正統政府要請し、そしてこれに承諾するということは、一応従来の国際法上は合法であるというように考えられている。そこで、武力攻撃との関係でありますが、五十一条の集団的自衛関係があります場合、そして武力攻撃がありました場合にはもはや承諾するとかそういう問題ではなくて、お互いに自己の自衛権の発動として反撃に出ていいという規定でございますので、その点は問題はちょっと違っておるように考える次第であります。
  69. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 次にお伺いしたいのは、国連警察軍派遣に対して日本が支持を与えた、これが法的根拠ですね、それは先ほどから藤山外相は、政治的判断によってあのとき国連警察軍派遣するというアメリカ案を支持することがアメリカ撤兵を早からしめるという理由でもって言われておった、ところが、まあ国連警察軍派遣ということは、これは国連憲章の四十二条の問題、それは四十一条とも関連があって、四十一条の、まあいろいろなことがあって四十一条にきめる措置では不十分であると、こう認められたときとか、あるいは不十分なことが判明したと認めるときは、となっておる、こういうようなことを十分に法律的に研究された上で、国連警察軍派遣を支持されたのかどうか一つここに書いてある解釈と、政府国連警察軍派遣を支持したその間の関連を一つ明らかにしていただきたい。
  70. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) ただいまの御指摘の点でございますが、監察団派遣をするという措置の問題は、これは私第七章の措置ではなくて……。
  71. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 観察団じゃない、アメリカ国連警察軍派遣提案を支持したそのときの、それを支持する法的根拠は何か、あとの日本提案の法的根拠の問題ではないのです。
  72. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) ただいまの御指摘の国連警察軍という言葉は使っておりません。ただ、そういう国連の軍隊でございますが、その措置は第七章の措置ではなくて、第六章の「紛争平和的解決」と、その章における安保理事会措置ではないかと考えております。従いまして、第七章の「平和の破壊または侵略行為の存在を決定し」と、それ以後の一連の引き続く、第四十条、第四十一条、第四十二条の措置の一環として行われたものではないと思っております。
  73. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、一体何の目的のために、国連警察軍を出すということ……。
  74. 高橋通敏

    説明員(高橋通敏君) その趣旨はやはり監察団の設置のときと同じ趣旨がうたわれております。第一点は、不法な浸透がないことを確保するためというふうな措置一つだと思います。それからその他この第六章の「紛争平和的解決のための調整の手続と方法勧告」というようなことがございますから、そういう点についての根拠と申しますか、に基いてこういう措置がなされているというふうに考えます。
  75. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 国連監察団の方は、これは何も戦争する準備をするわけでも何でもない。戦争というか、戦闘行為をする用意はしてない。しかし、国連警察軍ということになってきますと、これはちゃんと武装をして、もし何かのことがあれば、直ちに武力行使をやるわけなんですね。そうすると、その武力行使をやるような事態が予想されない限りは、何も国連警察軍のようなものを出す必要はないじゃないですか。それにもかかわらず、そういうような事態がないということが報告されておるにもかかわらず、ハマーショルド事務総長の報告にもかかわらず、そういうものを出そうということになったわけなんですけれども、それにはその間に、やはり何か緊急な事態で、少くともそういう兵力、武力を出さなければならないという、新しい事態が生じたのでなければ、そういうことにならぬ。ところが、日本側では、アメリカの案を支持する場合に、ハマーショルド事務総長の報告からそのあとの事態において、そういう武力派遣しなければならぬような新しい事態があったと認めたのかどうか、それを一つお伺いしたい。
  76. 宮崎章

    説明員(宮崎章君) 私からお答えいたします。アメリカ案にありました、軍を出すという項目のところは、原文ではコンテインヂェンツという字が使ってございまして、ただこれは軍の小部隊ということを意味する言葉だろうと思いますが、それを含んだ追加措置をとる。その追加と申しますのは、六月十一日に出しました決議におって、国連監察団というものが出ております。それに対しての追加の措置ということをいっております。その一部にそのコンティンヂェンツを出すということが出ております。それからその出す目的といたしましては、さっき条約局長から言われましたように、不法な浸透がないことを確保するという目的と、もう一つは、レバノンの領土及び政治的独立を保護するということになっております。それでこの政治的独立及び領土を保護するということが加わりましたので、果してレバノンがそういうふうに外部から政治的独立なり、領土なりが脅かされておるかどうかという点につきましては、日本は留保いたしましてこれに賛成したわけであります。それでそのレバノン自身の領土の保全や独立の維持ということについては日本としては何らの反対もないわけでありますから、それでこの案に賛成したわけでありまして、もう一つの考慮は、当時におきましては、これが少くともアメリカ撤兵ということを表面に表わしておる案でありますから、もし採択されましたならば、それが撤兵一つの足がかりになるということを考えた次第であります。
  77. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 初めの御説明ですと、いよいよもってああいうものを出す必要はない。むしろやるならば日本があとから出したような監察団強化で足りるわけですね。それにもかかわりませず、少くともアメリカ派兵目的にかわるべきものでありますならば、相当な武力を持つものでなければならないということがどうも論理的に考えられるわけです。そうすると、これは四十一条の方のものになる方が多いのじゃないかと私ども思うのです。何も初めから監視団を強化するようなものという意味ならば、あんな決議案にちっとも賛成する必要はないのだし、大体あんな決議案を出すのがおかしいのです。だから日本政府があれに賛成する場合には、アメリカの方から要請があって、仕方がなくて、何でもアメリカの方に反対してはどうもまずいというので、事情をよく研究をしないで、単にアメリカと離れてはまずいという政治判断から、多少留保条件はつけたけれども賛成をしたというふうに見られるのです。どうもあまり、あんな案に賛成したのははっきりした根拠がなかったのじゃないのですか。これは藤山さん、どうですか。
  78. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 私どもはとにかくアメリカが兵を入れておるということ自体が、あのときの緊迫した事情から申しますれば、一日も早くアメリカが兵を引かなければ一われわれ兵を入れたということが必ずしも適当だとは考えておらぬのでありまして、一日も早く実際的に兵を引く方法考えなければならない。従って、とにかくアメリカ案によって、アメリカ自身も兵を引く方法考えておるわけですから、そういうことができますことが必要ということが私の最終的判断でございます。
  79. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 そうすると、ますますどうも私はおかしいと思うのですがね。とにかくアメリカが兵隊を入れた。それは千や二千入れたのではないのです。とにかく海兵隊をまず入れ、それからドイツから空輸部隊でもって、全部でもって一万ぐらい。しかも原子砲を持った部隊まで入れておるのですが、こういうものにかわってレバノンの現状維持をはかるような国連警察軍といいますか、それの派遣ということになりますと、これはもうそんな監視団を増強して、そうしてその仕事を受け持つという程度のものではないようですね。そんなことじゃできない。してみると、どうも研究が足りなかったのではないか。あのアメリカ案支持については十分な法的な研究も足りなかったし、それから事実認識においても欠けるところがあったのではないか。それで結局まあまあアメリカの方の顔をつぶしても悪いから、何とかあれは支持しなければということになって、そういうきわめてお粗末な政治判断があの案を支持する訓令を出さしたのではないか。それが尾を引いて結局日本が出しました案がソ連の拒否権によってつぶれたというふうになったんじゃないかと思う。私は、川崎秀二君も指摘しておりますように、あのときにアメリカ案に対して日本が棄権をしておるという態度でありますならば、あとで日本の出しました案というものはりっぱに筋が通ったことになり、また、ソ連もあれを否認することはできなかったと思うのです。しかるに日本が大へんお粗末な考え方からアメリカ案を支持したために、一事が万事すっかり狂ってしまって日本のプレスティジを落した。これはアラブ諸国の方からも、どうも日本態度におかしいと、こういうことになり、国連でもまあソ連を除く国が支持をしたんだからといって大へん自画自賛をしておるようでありますけれども、その実は私は大失敗であったと思うのです。その点はどうですか。
  80. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) まあまあアメリカ案を支持しておけというような、そういう程度の気持でやったわけではございません。あの問題が起りまして、瞬間的にと言いますか、あの当時の事情から見ますと、今岡田さんの言われますように、アメリカが最初に入れました海兵隊以外に状況によってはどんどん増強してくるというような態度もありますし、また、ヨルダンの問題も相当問題になっております。まかり間違えばというか、当時の情勢からいえば、当時はヨルダンがイラクに兵を入れるんじゃないかというようなことでもあり、うっかりいたしますと事態は非常に大きく進展するんじゃないか。もしイラクに入れればアラブ連合共和国が援護に立つというような状況判断もされます。でありますから、当時の事情から言いますれば、とにかくアメリカがそれ以上に兵を増強しない、あるいはアメリカ軍が現地から早く撤兵する方法ができますれば一日も早くその方法をとるのが実際の現実的解決であって、若干の議論はありましょうが、そういうことを現実の面から言えばやるべきが私は適当だという判断をいたしたわけであります。
  81. 羽生三七

    ○羽生三七君 ちょっと関連して。これは事務当局からでいいのですが、レバノン大統領のアメリカ軍派兵要請というものは国会の議決を経ておらぬ。それから国会議長はこれに対して、アメリカ内政干渉反対議決抗議を申し入れておるようでありますが、これは確認しておりますか。
  82. 宮崎章

    説明員(宮崎章君) 国内法的に見ますると、レバノンの国内法に合わなかったようなことになっておるかもしれません。しかし、国際的に見ますると、一国の元首の表明した意思でありますから、これはその国の意思であると見てかまわないわけでありまして、そこに国内法と国際法との両方の観点からの撞着というものはありますけれども、一応レバノン意思として受け取ってかまわないであろうと、そういうふうに考えております。
  83. 森元治郎

    森元治郎君 関連して一つ。たいぶアメリカの兵隊のレバノン進駐はスピードが早い。これは商売で連中はあそこでやっておるのだから早いことは当りまえでしょうけれどもレバノン政府じゃない、今のおっしゃる大統領のあわてて要請した時間と、アメリカ海兵隊の最初の一兵があの海岸に足をおろした時間、こういうものを知っておられたら教えてほしい。
  84. 宮崎章

    説明員(宮崎章君) レバノンシャムーン大統領アメリカ要請をしたという時間は発表せられておりませんので、われわれとしてはいつそれが起ったかということはわからないわけであります。しかし、その要請後に直ちにアメリカで白亜館において会議をした。それがまあ二時間半くらいかかって国連に達しておるということを聞いておりまするが、それから命令が出てそうして軍が動いた。しかし、相当早く一まあ軍が臨戦体制というか、始終準備しておったということから想像しまして、割合こう短かい時間で上陸が始まったと思います。それから、上陸も非常に短時間で三十分以内で第一次分遣隊は上陸したというふうに聞いております。
  85. 森元治郎

    森元治郎君 その点は一つ調べて——ヨルダン、レバノンにもわが方の公使がおられるようですから——要請した時間、それから乗っかった時間を一つ調べて報告してもらいたい。これは非常に早過ぎる。幾ら軍隊でもだいぶ早いですよ。部隊の、しかも空艇隊で飛び込んだのでなくて、海兵隊が行ったにしては、もうレバノンの水平線の向うにいなければ間に合わないくらいの早さなんです。そこで、この点は一つ調べ御返答願います。
  86. 曾禰益

    ○曾祢益君 きょう外務大臣から中東問題に関する御説明があったのです。率直に言って、これだけ重大な問題に関して、しかもまあ大きな中東問題に対する基本方針、アラブナショナリズムに対する問題、あるいは小国に対する大国の内政干渉の問題、あるいは国連憲章に関するいろいろな問題、これだけの問題があるのに、全く事務当局が書いたと言わんばかりの文章を、外務大臣がただすらすらと読む。これは全く十日くらい前の緊迫した事態から見れば考えられない。われわれが、まあこの問題は今直ちに大戦になりそうもないというお互いに気持を持っているからこんなのんきなことで済むのかもしれませんけれども、私は非常に遺憾だと思う。ただ単にこれは国際連合における安保理事会における手続の説明みたいなものであって、基本方針についての政府の信念というものはほとんどここに出していない。まずそういう態度そのものを私は非常に遺憾に思う。これはまあ抽象論を言ってもしょうがございませんから、大きな点だけを伺いたい。  まず第一に、井上外務理事が——私は内容と考え方反対ですけれども、非常に重要な問題を出されておる。たとえば、アラブナショナリズムに対する日本態度などがきわめてあいまいである。のんきな——五大使会議ではきわめてあっきりとやっておったけれども、現実の事態にぶつかって、これはくずれかけておるというのがほんとうだと思う。そこで、まあこの文章だけ読んでみると、アラブナショナリズムについては、それが健全な民族感情の発露である限り、深い同情と理解を持つべきである。これはいかにも外務省らしいフレーズです。表現です。肝心なところをぼかしている。何が健全な民族感情の発露なのか。たとえばわれわれ同僚の委員がしばしば指摘されたように、旧秩序、資本主義にもいかないような封建土侯制度に対する現状打破の……これはやはりそういうものを健全な発露だと認めるのか。これが一つ。それから、まあ国際的な石油資本に対する反発、これもやっぱり健全なナショナリズムなのかどうか。それからいま一つの問題は、これは第二の大国の小国に対する内政干渉の問題になるかもしれません。アラブ一国々々はとにかくでありまして、少くともナセル、アラブ連合共和国のある種の宣伝は、これは声の弾丸だとも言われるくらい、少くとも内政干渉という面から見ると、これは多少行き過ぎであろう。つまりナッセリズムというものが、アラブ全地域に対してこれを一つにしようという形をとるならば、これは少くとも現秩序と現政府というものを認めた上に国際秩序を守ろうという点からいくとこれは行き過ぎだと言えるかもしれない。そうすると、各国における内政的に旧秩序を破ろうとするものは、これはわれわれは正しいナショナリズムだと思う。それから帝国主義的な支配に対する反対に対してはこれは正しい。それから五大使会議のとき、少くともナセルの国内でやっておる外交路線、積極的中立アラブナショナリズム即赤というのは、いかにもばかばかしくて話にならない。そうでなくて、あれはやはり積極的中立、ああいう外交路線はいい。しかし、全アラブを統一するというのは果して健全なものかどうか。いろいろ私は重大な問題があると思う。そういうものを十分に検討もしないで、ただアラブナショナリズムはそれが健全な民族感情の発露である限り理解と同情を持つなんということでうかうかといこうというようなところにほんとうに腰骨がきまっていない外交の姿がある。それであってはならないと思う。ですから、一体健全な民族感情の発露である限り云々ということはどういうことか。まず、このアラブナショナリズムについてはっきりした見解を伺いたい。
  87. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 個々の国の事例は私から申し上げるわけには参りませんけれどもアラブナショナリズムの中にとにかく今日動いております世界の新しい考え方、そういうものによって自由主義的な立場でもって国内の政治を運用していこう。そのためにアラブナショナリズムが何か新しい旧来の政治方式だけでなしに、新しい考え方をもって考えていくということは、私はその考え方が自由主義的である限りにおいては、旧秩序との相剋摩擦は起ってもそれは必ずしも不健全だとは言えない。ただどの国のどういうことは申し上げかねるわけですけれども。それからまた、われわれとしては、むろんアラブナショナリズムというものが起った原因というものは、一国内の旧秩序でなくて、世界的に新していわゆる植民地主義から脱却する秩序を打ち立てていこうという面について、そのこと事態は私は健全なナショナリズムの方向だと思います。それが第二次大戦以後、現実に世界に起っておる一つの流れであります。ですから、そういう意味において、われわれ自由主義陣営におりますものが、自由主義的な思想と感情とのもとにおいて、アラブナショナリズムが行動していくというならば、私は健全だと思うのです。ただ、私は自由主義陣営におります。従って、共産主義の人から見れば、全く反対のようなことが言えるかもしれませんけれども、その反対考え方は私たちは不健全だと言わざるを得ない。それから同時に、こうした問題が、やはりでき得る限り暴力的な行動を取らぬで平和的に行われることが好ましいことであって、そういうことについては、先ほど申し上げたように、やはり自由主義陣営としては、平素からそれぞれの国の、いわゆる後進国と言えると思いますが、これらの国の経済建設なり、そして、国民生活の安定なり、あるいはその上に立って、教育その他の普及なりによって、おのずから旧秩序から平和的に脱皮していくという道がとれればこれはいい。これはしいて暴力的に過激にやらない方が、私は健全な行き方だと思っております。しかしながら、事情によって、若干の——こういう後進国のことでありますから、ある場合に若干の暴力的と申しますか、武力的なことがあるもの、ある場合には現実の問題としてそれぞれの立場でやむを得ないであろう。ですから全部を全部、そうしたことそのものを否認するわけにいかぬ場合もあるだろうと思いますけれども、健全な運動としてはやはりそういうことであって、それに対してはやはり自由主義国も力をかしていかなければならぬのじゃないか。まあ、特定の人が、何か一大王国でも作るというような考え方が、どこの場合にでもあるというそのことは、必ずしもこれはアラブナショナリズムと離れて適当なことではない。かってのヒットラーのような形は。しかしそれは、私、今、そういうことが起っているとも申しておるわけじゃありませんし、また、そういうことが将来起ろうと考えもせず、また、そうでないことを希望するわけであります。私は、そういう意味において、やはり健全なナショナリズムというものを考えてもおり、また、そういう健全なナショナリズムが、アラブナショナリズムとなっていくことを望んでおるわけであります。私の立場から、非常に言いにくい点もございますけれども、大体の趣旨は御了承いただきたい。
  88. 曾禰益

    ○曾祢益君 その問題について、自由主義的に云々の点については、私は非常に異論があるのですが、あなたのお気持についてはややわかりました。そこで、この問題についてはしばらくおきまして、第二に、これと関連があるのは、やはり大国の小国に対する内政干渉の問題だと思います。これはいろいろ法律論それから政治論、いろいろあると思います。平和論からも論じなければならない。その最も典型的なのは、すでに岡田君が十分に質問された点に関連するのですが、少くとも米英の今度の派兵の論拠が、五十一条を援用している。それ全部でないにしても。これらについては明確な態度を法律的にとっておかなければ、国際連合という一つの機構は、これはくずれると思う。そこで、今、非常にあいまいな五十一条の解釈は、私はこういうふうに解釈するから、これに対するお答えを願いたい。  第一に、五十一条は五十二条の存在と切っても切れない、いわゆる地域的取りきめというものとのうらはらであって、それなしの集団的自衛権ということはおかしい。従って、この地域的取りきめが、まずアメリカレバノンの間にあったのか。あるいはイギリスとヨルダンの間にあったのか。これも非常に問題だと思う。第一、アメリカレバノンとの関係においては、アイク・ドクトリンという一つの政治的な宣言がある。それをシヤムーン大統領が受けた、受けたことがレバノンの内乱の原因になったわけです。それが果して法律的に見て、あれは慣行上、地域的取りきめ五十二条に該当するかどうか。これが第一問題だと思う。私は該当するということは言えないのじゃないかと思う。それから、今度は、イギリスとヨルダンの場合でも、イギリスとヨルダンとの間のいわゆる同盟条約は、少くとも破棄通告してある。だからその場合にかかってくるのは、ヨルダンがアラブ連邦の一国であるからバクダッド条約の関係を援用して、そうして地域的取りきめというのか。これも果してそう言えるかどうか疑問だと思う。どっちの場合もはっきりした地域的取りきめがあったとは私は言えないと思う。第二は、ない、ないからすでに問題ではないんですが、その場合でも、先ほど議論があったように、五十一条を発動するためには、少くとも武力攻撃というものは厳然としてなければいけない。それを日本政府立場から、いや、間接侵略の場合なんか云々というのはおかしい、もっと厳格に解釈すべきである。これは経過的にみても、チャプルテペック条約のときには、これは侵略の危険があった場合には云々ということがあったのですが、厳格に武力攻撃があった——これは原則として外部からの武力攻撃ということになるわけです。外部からの武力攻撃がないときに、五十一条の集団的自衛権を発動されたのでは、危険でたまらないと思う。平和に対するこれは脅威です。そういうことになれば、断じて自衛権として認められないと思う。だからその二つの理由から、五十一条を、さすがに米英も明確にこれだけを援用することはできなかった。法律的にまことに根拠がないのです。それから、自国の利益を保護するために出兵するに至っては、これは昔の日本軍閥のやったことと何ら変りはない、そんなのは全然話にならない、これは平和の破壊です。  それから第三に、その国から要請があった場合、これは法律論の域を離れた問題だと私は思う。これはもっと大きな世界平和の維持という点から考えるならば、皆さんはどうか知りませんけれども、私は今度のケースは、エジプトに対する英仏侵略よりも、むしろハンガリー事件に似た事件で、果してゲレ政権から出兵要請があったのか、あるいはカダル政権を無理やりに作って出兵の請求をさせたのかもしれない、ああいう大国が、いかにその国の政府から要請があったにせよ、ないにせよ、大国がある政権を維持し、その政権の突っかい俸のために兵隊を出すということは、これは認めてはいけない、そういうことは、アラブ世界のみならず、中東のみならず、全世界的に日本の正しい議論としてそういうことは認められない、こういう一つの道義的規範というものをはっきり確立しなければいかぬ、だからあらゆる点からみて、米英出兵は何らこれは合理づけられないのです。だからアメリカだって、レバノン事態だけのときには、むしろシャムーンから頼まれては大へんだというわけで、大騒ぎしてシャムーンから要請がないように、ないようにという工作をやった、だが、たまたまイラクのあれがあったので、イラク事態レバノンに波及しては困るということと、もう一つは、裏心としては、イラク革命があれほど完全にすっぱりいかないだろうからという、まだそういう救う道があるかもしれないというので出兵した、こういう政治的動機があっての出兵は、断固としてこれを排撃すべきだ、だからそういう一つの規律を作って、即時無条件撤兵をすべきである、それでピリオドを打つのだ、そういうことをしないで、政府の方は、現状を何とかすべきであるのに、こういうふうにそこでさっと体をかわそうとするから、そういうつじつまの一合わないものが出てくる。そこでやはりはっきりと、大国の出兵はいかぬ、それは内政干渉である、断じてそれはいけない、ことにレバノンの場合は、レバノン事件については、国際連合の安全保障理事会で扱っているのに、集団的自衛権の発動とは何ごとですか、これは明瞭に国際連合の権威を失墜する——これはアメリカの行動は、あえて強い言葉で言えば反逆です。そういうことを理論づけた上で、しからばどうするかということにしていかなければ、日本の外交の姿というものは全くすっきりしない、みじめなものになると思う。こういう過去のことを言ってもしょうがありませんから、それは言いませんが、とにかく朝令暮改か朝令昼改か知りませんけれども、こういう姿は断じて国民として認められない、こういうことは今後ともあるから、はっきりしたそういうりっぱな一つのノルマをここに作っていただきたい。しかる後に、それじゃ事態をどうしたらいいか、これはいろいろなるべく国際連合のワクの中で話をつけることに努力した方がいいと思うのです。だから安全保障理事会会議でも何でもやってみて、それがどうしてもいかなければ、それは大国会議が国際連合の外でやられる場合もあるだろうし、あるいはまた、国際連合の緊急総会もあるだろうし、そういうあらゆる手段を通じて、そうして国際連合がこれ以上紛糾を拡大させないように対処していくということが、道義的な判断があった上に考えられないと、そこが非常にあいまいもことして、日本の操というものは貫けないと思うのです。こういう意味において、私は今、五十一条なりその他の、米英の行動をいろいろジャスティファイする理屈はありましても、それがいずれも成り立たない、これは法律論から見ても成り立たない、いわんや平和論から見て成り立たないということを考えるのですが、それに対する外務大臣のお答えをいただきたいと思うのです。
  89. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま曽祢さんから言われました問題については、私はそう大きな開きはないと思っております。アメリカの今度とりました行動が必ずしも適当でなかったということは、私としても今日でも思っております。先ほどお話がありましたように、実はこれは将来にわたって、アメリカがとった今回の行動には、たとえば今お話に出ました、先ほど私も引用したのですが、ハンガリー事件というようなときにおける態度、あるいは今後——さっきどなたかからもお話が出ましたが、何かソ連がかいらい政府を使って、そこで出兵していくというような問題が起ったような場合に、今回の行動は、今後アメリカに対して、非常に不利な立場をとらせるのではないか、そういう影響を与えるのではないかというふうに私ども考えるわけです。そういう意味からいいまして、私は適当ではなかったし、残念だと思っておる、一番の友好国であるアメリカのとりました態度としては、まず不得策でもあったとはっきりそう思っております。ただ当時の事情からいえば、実際、あの時期に問題を少しでも撤兵の方向に持っていかなければ、非常に危険な状態にあったのではないかと思っております。で、その点については、おそらく曽祢さんも認めていただけると私は思うのでして、そういう意味で、何らかの形でアメリカが、とにかく大国の間ですから、お互いに面子論ばかりやっておったのでは、あるいはそういう議論だけやっておったのでは、問題は解決しないのでありまして、とにかく一応何かの形で撤兵する方法が実際的にとられることが必要である、それにはやはりアメリカが一応撤兵することを趣旨として考えておるわけでありますから、それができますれば、いわゆる次々に波及していくような状態、あるいは兵を置いておくことのために起ってくる混乱というようなものが、あの当時の事情から見れば私は救えるのではないか、こう思って私は処置をしたわけです。
  90. 曾禰益

    ○曾祢益君 時間がありませんからこの程度でやめておきます。
  91. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 残った時間が大へん少いようでありますから簡単に申し上げたいと思います。いろいろな質問がありましたので、外務大臣の御意向もだいぶはっきりしてきたように思うのです。ことにただいまの曽祢委員の御質問は、大へんに私自身も重要な発言であったと傾聴したわけであります。ただ私は端的に申しまして、中東地方がかりに赤化されるというようなことがあったとしまするならば、これは世界全体の問題であり、世界平和のために非常に大きな脅威になる、問題があるところだと思うのであります。昨年一月、アイゼンハワー・ドクトリンが突如として発表されたときに、ちょうど国連総会の開会中であったのでありますが、非常に大きな衝動を与えたのであります。そうして当時、どういうわけでアイゼンハワー大統領がああいったような重大な声明を発表することになったのかというその動機については、ついに発表されないでしまったのであります。上院におきまする論議をみましても、その真の動機については、何ら論議されていなかったように私は見ております。ニューヨークタイムズのごときも、その真の動機は国務省がこれを知っているのみであるというようなことを論じたことさえあったのであります。今回のレバノンの問題というものは、それの続きであって、非常に重要な必要があったればこそ、アメリカはあいったような重大な決意に出てそうして出兵をしたのだろうと思うのですけれども、とにかく問題の根本は中東を正常な情勢に存続せしめる、それが世界の平和維持のために不可欠のことであるという観点から出ておるに相違ない、そういうことになりますならば、これは単に両陣営の間の問題というばかりでなく、私は自由国家群全体に対しての非常に大きな関心事でなければならないと思うのであります。従って、今回の結末一をつけるに当りましても、そういう点においても自由国家群の安心を得るような形にもっていって、アメリカ撤兵なら撤兵を促進すべき問題であると私は感ずるのであります。それが日本提案のごとき形、すなわち国際監察団強化という形でもってアメリカも満足し、そうして自由国家群も満足して、そうして事件解決がはかれるとするならそれでもけっこうだと思うのであります。いずれにしましても、今度の大国間の首脳会議が開かれるという段取りになりまするならば、それはお互いの心配をなくする、ソビエト側にはソビエト側の心配もあるでありましょうから、お互いに話し合って、そうしてその心配をなくして、中東に平和をもたらすということになれば、きわめてこれは望ましいことだと思うのであります。そういう問題に対しまして、これは私自身の見解でありまするので、ただお聞き取り願っておけばいいのでありますけれども、いずれにしましても中東の問題をはっきり把握するためには、日本として十分な情報を持たなければならないと私は思うのであります。そんなことは当りまえのことだと言われるかもしれませんが、実は昨年、国際連合においてイスラエルとアラブの争いが起きたというときに現地からのわが方の情報というものが非常に貧弱であったということを私は申し上げなければならないのであります。当時は現地におきまする日本の代表機関というものが充実していなかったという弱点もあったでありましょう。そのときに比べれば、今はずっと充実しておるということもありまするので、現在においては私の言うような心配はないかもしれませんけれども、とにかく言葉が違い、国情が違い、そうしてアラブ民族の間でもいろいろな複雑な関係がある、そういう国情に照らし合せるならば、的確な情報を得るということは非常に困難じゃないかと思うのであります。その情報なくして、そうして情勢を判断しようということは無理なことだと思うのであります。従いまして、私は、こういう情勢になって参りました以上、一そう現地を督促して、そうして的確な情報をつかむということ、もしその機関がまだ充実していないとしますならば、できるだけ早くそれを充実されることが必要じゃないかと思う。その点だけ外務大臣のお考えを伺っておきたいと思うのであります。
  92. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 各国から情報を十分とりますことは大へん必要なことなんでありまして、今回の場合もできるだけ情報の収集に最善の努力をいたしております。で、中近東の問題でありますから、ともあれ関係地方の国々からはもちろんでありますが、各国の動向というものをできるだけすみやかに直接当該外務省等に当って情報をとるように訓令を出しておりますし、また、それぞれの大公使諸君には、任地においてそれらの情報を十分出していただいております。ただ、やはりもう少し平生からこういう事態についての情報収集ということを十分やっておきませんければ、問題が起りましたときだけ情報の収集をやるのでは、やはりいかぬのではないか。ただ今度のイラクの問題にいたしましても、これはアメリカもあまり知らなかったようであります。実際は事が起るまでわれわれも全く実は知らなかったのでありましてあれなんですが、そういう意味で、かりに情報網がもっとありましても、あるいはイラクの問題についてはわからなかったのではないかと思いますが、それほど一つの勢いとして、また、急遽行われた問題だと思うのであります。それだけに、まあ国民感情からすれば根強いものがあったのだということもむしろ理解しなければならないと思うのです。
  93. 佐藤尚武

    ○佐藤尚武君 私が申し上げたいと思いますることは、アラブ民族の間の、民族としてほんとうにどういうことを希望し、どういう方向に向いているのかということに対します情報、そういうことも、この際としてはできるだけ十分にぜひ収集されるということが必要じゃないかと思いますので、それだけつけ加えておきます。
  94. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほどイラクの承認問題がありましたのですが、実はこの問題は、一昨日の閣議において実は了承を得まして、時期と方法につきましては総理に一任をするということで、本朝、私は総理と電話連絡をいたしまして承認に決定をいたしました。ただいま持ち回りでサインをとっております。
  95. 青柳秀夫

    委員長青柳秀夫君) それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会