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柴谷要君 それでは
四国、
中国班の
調査報告をいたします。
派遣委員は
三浦委員、
松浦委員と私との三名でありましたが、
三浦委員は
出発直前、急に差しつかえができ参加できませんでした。
さて、私どもは八月二十七日より六日間にわたりまして、
産業強化の
関連港及び
離島航路並びに
国鉄の
輸送事情等の実情を調査して参りました。
まず、
訪問個所を申し上げますと、香川県では
四国海運局、
四国鉄道管理局を、愛媛県では
松山港を、
山口県では
徳山下松港及び
岩国港を、
広島県では
広島鉄道管理局、
広島陸運局をそれぞれたずね、
所管事項及び
港湾事情につき聴取いたしました。以下調査の結果を、おもな
事項別に御
報告いたします。
第一に、
国鉄輸送の現状について申し上げます。まず、
四国管内について申しますと、御
承知のごとく、
四国地方は
離島航路及び
機帆船等による本土間との貨客
輸送が活発であるとともに、近来の
自動車輸送の発達並びに最近の
経済界不況により、その影響を受けておりますが、これを昨
年度の
営業係数で見ますと、
旅客一三五、
貨物一八七、
平均一五〇を示しております。なお、本
年度第一・
四半期についてみますと、
旅客輸送は対前年比二%減、
旅客収入五%増で
運賃値上げに伴う影響と見受けられますが、同じく
貨物輸送実績では、
発送トン数が対前年比四%減、
貨物収入七%減ということになっており、特に七月における沿線在貨は戦後
最低実績を示しております。また、
当局の将来
計画として、
高松−多度津間が現在
併結列車六〇%で
線路容量が限界に達しているため、これが
複線化に十九億、
高松−高知間の
無煙化をはかるための
ディーゼル気動車の投入並びに
利用債九千三百万円をもって
高松駅、棧橋駅の一元化をはかる意味から総合駅の新築を行うという問題があります。従って、これらの
実現をはかるべく鋭意努力中とのことでありました。
次に、
広島管内では、まず、昨
年度の
営業係数を見るに、
鉄道は貨客合せて九三、
航路一六〇というように、
鉄道では比較的良好な
営業成績をあげております。これは
山陽本線及び美禰線のごとき
黒字線区をかかえておる
関係であると思われますが、
航路では、いずれも
民間航路との
関係及び
輸送原価の点から、なお一そうの
合理化に努めたいとのことでした。なお、当面の
問題点としては、
昭和三十七
年度完成予定の岡山−
下関間の
電化に二百三十三億、
山口線の
気動車十七両及び
地上設備七百万円、計二億八千万円、
広島地区改良計画として、
広島本駅等に六億三千万円、
合理化計画として可部線の
列車頻発により、
自動車輸送との調整をはかるということでありました。
第二は、
国鉄宇高航路における
輸送力増強の問題であります。まず、当
航路の現状について
概要を申し上げますと、当
航路は宇野−
高松を結ぶ
航路でありまして、
昭和三十年七月新設されました
宇高船舶管理部が当
航路の
経営管理を行なっており、貨車航送の
客船として総トン数千五百トン
級船三隻、貨車航送船として三百トン
級船二隻、千二百トン
級船一隻、合せて六隻の
連絡船が配属され、一日
客便九
往復、
貨物便十五
往復を行い、本
年度第一・
四半期の
輸送実績によりますと、一日
平均旅客約一万千三百人、
貨物ワム換算六百三十七両を
輸送いたしております。さて、
宇高航路といえば、
昭和三十年五月十一日、不幸にも発生いたしました
紫雲丸事件は、私どもの記憶に新しいところでありますが、
国鉄当局におきましては、
安全運航を確保するため、
全面的検討を加えました結果、
連絡船業務の
管理機構を改革して、現在の
宇高船舶管理部を新設し、
紫雲丸についてのみならず、他の二隻の
客船についても
改造工事を施行し、
基準航路を設定して、
上り便航路と
下り便航路を完全に分離し、
航路の
保安をはかり、その他
警戒体制、船員の
技術指導、
気象災害対策、船員の勤務、船員の
養成等について、それぞれ対策が講ぜられているのでありますが、これらの詳細な内容につきましては、別途、
委員長のお手元まで書類を提出いたしておきましたので、ごらん願いたいと存ずるのであります。
紫雲丸は引き上げ後改造され、
瀬戸丸と改称され、現在再び当
航路において運航されておることは、すでに御
承知のところと存じます。
さて、当
航路における
輸送力の
増強の問題でありますが、先ほど申し上げましたように、当
航路の貨車航送船は三百トン
級船二隻、千二百トン
級船一隻であります。
宇高船舶管理部の
説明によりますと、三百トン
級船二隻は著しく老朽化しておりますので、
宇高航路の
輸送力強化の問題は、貨車航送力の
増強に重点が置かれ、貨車航送
船新造の
計画であったのでありますが、本土対
四国の
旅客増加に伴う
宇野線の
電化、
四国各線の
ディーゼル化による
陸上輸送体制強化の将来
計画に対応するため、貨車のみならず
旅客を搭載し得るよう変更する必要に迫られているのであります。すなわち、
陸上側の将来
計画、すなわち
宇野線、予讃線及び土讃線の
増強計画に対応し、
連絡船としては現行の
客便一日九
往復を十二ないし十三
往復に増加し、この
増加分を新
造船によりまかなうこととするためには、五百名ないし七百名
程度旅客を搭載し得るよう変更することが必要とされておるのであります。
第三には、
港湾関係について申し上げます。
視察しました
港湾は、
高松、
松山、
徳山下松、
岩国でありますが、まず、
高松港で問題は、
同港拡張のため
防波堤の改善であります。
高松港は
昭和三年にほぼ現在のような修築を終ったのでありますが、当時並びに戦前における
国鉄連絡船は三百トンないし五百トン
級船で、いずれも全長五十メートル以下の
小型船であり、現在の
港内面積でも操船に
十分余裕があったのでありますが、戦後
輸送要請にこたえて新造されて就航をみました
連絡船は、
客船としては千五百トン
級船三隻、貨車航送船としては千二百トン
級船一隻でありますが、いずれも全長七十六メートルをこえる
大型船でありますので、狭隘な特に奥行きの非常に浅い港内での操船には著しい困難を伴うに至り、また、
高松港
防波堤前面の最強二・五ノットに達する潮流は、港内への出入りを一そう困難にしており、かてて加えて
高松港に出入りする
船舶は著しく増加しており、
港内拡張の
必要性については、
宇高船舶管理部のみならず、
高松海上保安部よりも
海上保安の面から
防波堤改喜について
要望があったのであります。香川県
当局の
説明によりますと、本
年度においても
国鉄の
港湾工事費負担が確定しないので
懸案事項になっているとのことであり、かかる事例は本港のみならず、函館港においても同様の
事情にあるやに聞き及んでいるのでありますが、多数の
旅客を取扱う
国鉄連絡航路の
港湾の
整備が不測の
事態発生の危険をはらみつつこのような事由によっていたずらに遷延することは許されないことと思うのであります。
次に、
松山港について申しますと、本港は
昭和二十六年に
重要港湾に指定されて以来急激に
港勢を拡張し、内港を
小型船、外港を
大型船専用に使用しております。現在
松山港は
石油港としての意義を加え、
整備計画を樹立して、第一次五カ年
計画では三十七
年度末完了を目標に
工事施行中でありますが、さしあたり本
年度分としてスーパー・
タンカー受け入れ態勢整備のための
マイナス十二メートルに浚渫する
工事に約一億を要し、その他
防波堤の延長、
物揚場の
築造等の
工事計画があるのであります。さらに
高浜関係では、棧橋、
防波堤建設工事施行中であります。従って、第一次五カ年
計画完成の暁に予想される
取扱い貨物数量は外、内港合せて六百八十四万トンに達し、三十二
年度に比して二三%増を見込まれております。
次は、
徳山下松港及び
岩国港でありますが、御
承知のごとく
昭和二十六年に
徳山下松港が、同二十七年に
岩国港が
重要港湾の指定を受けて以来
港勢が著しく伸展し、前者は
出光興産徳山製油所、
日本石油下松製油所、後者は
三井石油化学、
日本鉱業等が好
立地条件を利して工場を建設し、
石油港、
産業関連港として従来の面目を一新し、新たに時代の脚光を受けるに至ったのであります。まず、
昭和三十二
年度における以上二港の
汽船荷役並びに
外国貿易船荷役実績につき一括して申し上げますと、
汽船荷役実績では荷揚げ、荷積み合せて
徳山下松五百九十二隻、百五十六万
重量トン、
貨物六十九万八千トン、
岩国三十五隻、九千
重量トン、
貨物八万五千トンを示し、前者は対前年比二%増、後者は三一%減となっております。また、
外貿関係では、
徳山下松のみで百十三隻、百四十三万
重量トン、
貨物五十六万トン、対前年比三%増を示しております。
工事関係について申しますと、
徳山下松港は本
年度重要港湾補助事業として六千五百万円が計上され、それぞれ
マイナス十二メートルに浚渫する
工事を施行し、スーパー・タンカー受け入れ態勢を完了することになっておりまして、その他
マイナス九メートル浚渫
工事を施行する
計画であります。
岩国港もやはり大型タンカー受け入れのため、
マイナス十二メートルの浚渫
工事が三十二
年度完成を見、引き続き本
年度から一億八千万円をもって係留施設、泊地等の
港湾施設修築
工事を施行し、三十七
年度完成を見ることになっております。
第四は、
高松−日比間自動車航送事業
計画についてであります。香川県
当局の
陳情によりますと、本土と
四国を結ぶ水陸一貫の
輸送径路としては
国鉄の
宇高航路のほかに明石、鳴門の両市を結ぶ国道二十八号線と岡山、
高松の両市を結ぶ国道三十号線との二つのルートがあり、明石−鳴門間には、御
承知のようにすでに自動車航送が行われておるのでありますが、国道三十号線のルートは、現在空車
輸送にとどまり、年々増加する
貨物と自動車交通の異常な発展により水陸一貫の
輸送力に不足を来たしている現状でありまして、このため香川、岡山の両県は一部事務組合を組織し、この組合が
高松港−日比港間にフェリー・ボートを就航せしめ、本土−
四国間を連絡いたしまして、
貨物輸送時間の短縮と
輸送費の軽減をはかろうとする
計画であり、目下定期
航路事業の免許について
運輸大臣に申請中との趣きでありました。
第五は、香川−岡山間橋梁架設
計画であります。香川県
当局の
陳情によりますと、香川、岡山両県の一部事務組合によるフェリー・ボート
計画は
実現する見込みであるが、産業経済の発達に伴う強い交通
輸送の要求に対しては、なお貧弱であるので、
四国と本土間の連絡強化のため、抜本的方策が必要であり、瀬戸内海に点在する島嶼を利用して本土に連絡する橋梁を架設することが最も緊急の要請であるとしております。県
当局は、明石−淡路間は
水深も深くまた潮流も速いが、岡山−香川間は
水深も浅く、地形から見て技術的にも楽と思われるので、架設
計画について明石−淡路ルートを調査するなら岡山−香川ルートも調査されたい旨を強く
要望いたしておりました。
第六は、
船舶検査業務についてであります。
四国海運局長の
説明によりますと、
四国海運局管内における
船舶検査官は現在わずか十五人でありますが、
船舶検査実績は逐年激増いたしまして、
昭和三十二
年度は実に二千五百五十隻、三十三万五千トン、また、臨検回数は八千七百回をこえておるのであります。このため、
船舶検査官は過労に陥り、健康を害する者多く、
船舶検査官はこのような過重な業務に苦悩する一方、検査旅費も相当窮屈で、これまた、
船舶検査業務を制約する一原因となっている実情にあるのであります。
船舶検査業務の重要性にかんがみまして、このような事態は放置するを許されないと存ずるのであります。
次に第七として、第六管区
海上保安業務につき申しますと、管轄区域は
広島、岡山、香川、愛媛及び
山口県の一部にまたがる瀬戸内海の大半と豊後水道東部で、海域、海岸線、海象、気象、漁業及び
船舶交通等の特殊
事情のため、かなり
管内業務が複雑となっております。まず、海上犯罪では、密航、密輸が南北朝鮮と台湾、沖縄等から瀬戸内海の自然的地勢を利用して最近二、三年来急増しております。また、各漁業区、境界線の不明確による密漁もかなりの数に達しており、犯罪検挙実績としては、海事法令違反、経済事犯等を含め三十二
年度において一万五千件、一万六千人に上っている実情であります。
さらに、海難につきましても、内海の自然的要因と人為的要固がからみ、全国的に見て、海難発生が多く、特に衝突件数において全国の二五%、乗り揚げ件数二〇%を数え、三十二
年度で六百六隻、四千二百人に達しておるとのことでした。
第六
管区海上保安本部より、現有船艇劣勢のため、海上犯罪の取締り及び海難救助上、過去における幾多の苦い経験にかんがみ、巡視船艇
増強の
要望があったのでありますが、巡視船艇のうちには旧海軍使用老朽船が多い現状にかんがみ、その必要を認めざるを得ないのであります。
なお、一言しなければならないことは、先ほど申し上げました通り、海上犯罪や海難事故の多い当管区において、劣勢な現有船艇により幾多の困難を克服しつつ黙々として海上業務に挺進している乗組員の姿でありまして、私どもは心から敬意を表した次第であります。
第八は、海技従事者国家試験の施行についてであります。
四国海運局長の
説明によりますと、本
年度は乙種一等航海士及び乙種一等機関士以下の資格の臨時試験を十回施行の予定であって、すでに四回施行し、受験者数は六百二十八名であり、また、本
年度は六月、十二月の二回にわたり定期試験を施行することになっており、六月に施行した定期試験の受験者数二百三十三名であり、これら試験はわずか二名の試験官によって行われているのでありまして、すなわち五カ月間に八百六十名の試験が二名の試験官によって行われたのであります。特に臨時試験は年に十回も行われることを考えますと、わずかに二名の試験官では試験官に過重な負担となっているのではないかということと、同時に、かかる状態にあって地方において施行される海技従事者国家試験が適切に行われ得るかどうかについて、若干の懸念を感ぜざるを得ないのであります。
第九に、
陸運局の
管内事情について申しますと、まず、
高松では定員、予算が相対的に自動車数の激増と業務軍増大に反比例して逐年減少していることが著しく、特に
車両検査業務に携わる検査官に対する作業労務が過重傾向にあり、一方、旅費も削減されているので、
四国周辺に存在する島嶼の
車両検査にも円滑を欠く懸念があり得るとのことでありました。なお、
管内自動車車両数は現在約八万台、最近五年間に約三倍増加しており、
輸送実績では、一般経済の伸長を反映して、三十二
年度では貨客合せて二十七
年度の約二倍に達しておるのが実情であります。さらに、交通事故では三十二
年度は百十五件で、二十七
年度六十一件に比し約一・九倍に達しておりますが、将来
整備の不良あるいは法規違反等悪質な重大事故の再発防止のため、指導監督を厳にして実効を高めたいとのことでありました。
広島についても
高松と同じく定員、予算ともに減少しており、
車両検査業務に携わる検査官の労務過重が著しいとのことでありました。
広島局内の自動車車両数は現在十四万五千台で、過去十年間に約二・七倍増加し、最近の
輸送状況においては、
経済不況により特に
貨物が小口に細分化されているとのことであります。さらに、交通事故ではやはり逐年増加傾向にあり、従って、本年五月より当
陸運局内に事故防止対策
委員会を設けてその対策をはかっておるとのことでありました。
なお、私どもは小豆島に参りまして、同島における交通並びに
観光施設を
視察したのでありますが、小豆島は幾多の
観光資源に恵まれた風光明眉な島嶼でありまして、映画「二十四の瞳」以来、あまねくその名を知られるに及んだことは御
承知の通りであり、
観光客も多いのでありますが、一方、島内における道路及び
観光航路並びに
港湾施設については、地元の
要望もありましたが、これらを
整備する必要を認めたのであります。
最後に、各地において受けました
陳情について、前段触れておりません分の要領を申し上げます。
岩国におきましては、
岩国港改修は
昭和三十三
年度より着工されることとなったが、工場進出による出入
船舶の漸増、加うるに岩日
鉄道完成の切迫に伴い早急なる完成を地元で希望しておりました。
徳山におきましては、中国
定期船協会より、
旅客船公社の立法化を次期国会に提案されるよう、これが促進方と、
離島航路指定のワクが現在狭義に解釈されているから、これを広義に解釈して指定されたいという瀬戸内海沿岸七県知事の
要望並びに現在においてすら乱立傾向にある
航路を現在以上増加させぬよう、現状維持に努められたい旨の
陳情がありました。
次に、
松山から徳山に向う途中、上関町長より、離島である八島の
事情につき
陳情を受けました。すなわち、本島は町村合併により上関町に編入されたのでありますが、本島は文化、医療施設に至るまで、いまだに前時代的生活状態にありまして、島民の生活安定及び福祉の向上をはかるため、離島振興法の適用を十分受けられるよう、これが善処方を強く
要望されたのであります。
以上御
報告申し上げます。