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1958-06-24 第29回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十四日(火曜日)     午前十時二十分閣議  出席委員    委員長 楢橋  渡君    理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君    理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君    理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君    理事 小平  忠君 理事 田中織之進君       井出一太郎君    小澤佐重喜君       大倉 三郎君    大平 正芳君       岡本  茂君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    北澤 直吉君       北村徳太郎君    小坂善太郎君       周東 英雄君    田中伊三次君       田中 正巳君    田村  元君       綱島 正興君    床次 徳二君       中曽根康弘君    船田  中君       古井 喜實君    保利  茂君       町村 金五君    水田三喜男君       南  好雄君    八木 一郎君       山口六郎次君    山崎  巖君     早稲田柳右エ門君    阿部 五郎君       淡谷 悠藏君    石村 英雄君       今澄  勇君    岡  良一君       加藤 勘十君    北山 愛郎君       黒田 寿男君    小松  幹君       佐々木良作君    島上善五郎君       稲 兼次郎君    成田 知巳君       西村 榮一君    廣瀬 勝邦君       森 三樹二君  出席国務大臣         内閣総理大臣  岸  信介君         法 務 大 臣 愛知 揆一君         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         厚 生 大 臣 橋本 龍伍君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         通商産業大臣  高碕達之助君         運 輸 大 臣 永野  護君         郵 政 大 臣 寺尾  豊君         労 働 大 臣 倉石 忠雄君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 青木  正君         国 務 大 臣 池田 勇人君         国 務 大 臣 左藤 義詮君  出席政府委員         内閣官房長官  赤城 宗徳君         内閣官房長官 松本 俊一君         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (アジア局長) 板垣  修君         食糧庁長官   小倉 武一君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君  委員外出席者         最高裁判所事務         総長      横田 正俊君         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 六月二十四日  委員篠田弘作君、山崎巖君、岡田春夫君及び森  三樹二君辞任につき、その補欠として田中正巳  君、大倉三郎君、佐々木良作君及び廣瀬勝邦君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員大倉三郎君、田中正巳君及び廣瀬勝邦君辞  任につき、その補欠として山崎巖君、篠田弘作  君及び森三樹二君が議長指名委員に選任さ  れた。     ――――――――――――― 本日の会議に付した条件  予算実施状況に関する件      ━━━━◇━━━━━
  2. 楢橋渡

    楢橋委員長 これより会議を開きます。  予算実施状況について調査を進めます。今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 私は今度の総理施政演説を見て、アメリカとの折衝で一番大事な防衛の問題、それからお隣の国の軸国との美術品返還等を含んだいろいろの重大な問題がありますが、これが今度の施政演説の中には全然聞くことができなかった。そこで私はこの防衛の問題と日韓問題について、総理一つお尋ねしたいと思っておるのであります。  日韓会談四つ委員会が設けられて、文化財百六点を引き渡しただけで、何らその後の進展が見られておりません。私は日韓会談の従来の経緯にかんがみて、いろいろと追及しなければならぬ点があったのを、今日まで持ち越したのでありますが、まず私は総理から、この日韓会談のこれまでの経過、並びに近く本会談に入って折衝が始まるわけですが、その見通し等についてお伺いをいたしたいと思います。
  4. 岸信介

    岸国務大臣 日韓会談は御承知のように、過去数回の会談がいずれも停頓いたしたのでありますが、昨年来私が外務大臣に就任いたしましてから、この問題を取り上げて、日韓の国交の正常化友好関係を作り上げるために、まずその前提となっておる、釜山に抑留されておる邦人の釈放、帰国並びにそれに関連いたしまして、大村に収容しておる韓国人、これを両国の間で釈放し会って、そして冷静な立場において、日韓の間に存しておる幾多の懸案の問題を、正式会談に取り上げて会談しょう、こういう趣旨のもとで話し合いをいたしまして、本年の四月以降、両国においてそれぞれ会談責任者を任命をいたしまして、両国会談を開いておるわけであります。今日まだ会談中でございまして、いろいろな会談の進行しておる際でございますので、具体的な問題につきましては微妙な関係もありますので、詳しく申し上げることは差し控えたいと思いますが、もちろん過去の経験にかんがみまして、この問題が非常に容易にすらすらと、われわれの望むように妥結されるということは、私はなかなか困難であると思います。しかしながら日韓両国が過去においても、また地理的にも経済的にも、いろいろな意味において最も近い国として存しておりまして、これか両国の間におけるところのいろいろな懸案問題を解決して、そして両国友好関係を作り上げるということは、両国のため、また極東の平和増進のためから望ましいことであると思っておりまして、ぜひともこれは成功させたいという非常な熟思を持っております。しかし今申しますように、問題がなかなか簡単でございませんので、今後とも十分な努力をいたして、ぜひとも成功させたい、かように考えております。
  5. 今澄勇

    今澄委員 日韓会談を成功させ、善隣友好関係日本韓国が立つということには、われわれももろ手をあげて賛成であります。だが、ただ単に頭を下げておるだけ、あるいは向うの要望を聞いておるだけでは、この問題はなかなかわれわれは片づかないと思うのであります。  そこで外務大臣にお伺いしたいのは、四つ委員会ができたが、その中で日本側が希望しております漁業関係委員会は、今日まで全然活動しておらない、聞かれておらない。韓国財産請求権委員会や、在日韓国人に関する委員会だけが動いておるということは、今日までの経過では、向うの一方的な要求に屈服したとしか思われない節が多々あります。私はこの基本的な委員会を含めて四つ委員会は、今一体どういうふうな状態になっておるか、外務大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  6. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話がありましたように、四つ委員会を構成して、ただいま会合を開いておるわけであります。三回もしくは四回と開いておる委員会もあります。なお漁業問題につきましては、向う選挙等関係もありまして、日本に来ますのがおくれておりまして、従いまして向うの代表が来てから聞くということでおくれたわけでありまして、ほかに他意あっておくれたわけではございません。
  7. 今澄勇

    今澄委員 私はこの委員会四つ並んだ名称を見るに、まず第一番に請求権委員会ですが、この委員会名称韓国請求権委員会、こういうことになっておる。これは日本側からも韓国に対するいろいろな問題もあり、韓国日本要求するいろいろな問題もある。アメリカの正式な見解講和条約第四条に関して出されておる。私はこの際、どうして韓国請求権委員会というふうに韓国という名前をこの委員会につけなければならぬのか、疑問でならない。ただ単なる請求委員会なら、韓国要求するいろいろの問題については日本は正当な立場を打ち出せるが、韓国請求権委員会では一方的な韓国要求だけがこの委員会で取り上げられる、こういう印象を与えられておるのですが、実際に韓国要求だけをこの委員会は取り上げるかどうかということを、外務大臣からお答えを願いたいと思います。
  8. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 名称の問題はとにかくといたしまして、委員会におきましては両方が同じ立場に立ちまして、根本的に問題を検討し、話し今合いをいたしておるわけであります。
  9. 今澄勇

    今澄委員 一九五七年十二月三十一日の予備会談約束した協約に関して、金裕沢大使韓国記者団と談話をいたしておる。これは四月三日ソウル放送韓国公報室発表であります。スクリップ・ハワード新聞同盟特派員キム・ルーカス氏の質問に答えて李承晩大統領は、十二月三十一日予備会談の際に密約を行なった、それは米国国務省講和条約第四条解説覚書を本会談までは発表しないということになっておるのに、日本発表したと言っておるのですが、この密約は一体あったのかどうか。もう一つは、日韓会談韓国日本に対する財産請求権を討議することを約束した協約を作っておる。こういう二つが四月三日のソウル放送韓国公報室発表で出ておる。私が言いたいことは、日韓会談に関する限りは、日本国内は全部これを隠して、韓国の方は新聞、ラジオを通じて堂々と日本の主張を発表して、国民の批判に訴える。しかも韓国公報室はこういう二つ協定をしたということを発表しておる。外務大臣、こういう協定をしたのですか。
  10. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまお話のありました問題は、おそらく財産請求権に関するアメリカ解釈だと思います。その問題については、アメリカ側から国務省解釈を受け取っております。
  11. 今澄勇

    今澄委員 私が聞いておるのは、十二月三十一日の予備会談の際、日本政府米国務省講和条約第四条解説覚書は本会談までは発表しないということの密約と、もう一つは、日韓会談を開いたならば、韓国日本に対する財産請求権についてはこれを討議するということの約束、この二つ約束日本国はしたかどうかということを聞いておるのですよ。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまのアメリカ解釈につきましては、発表するときにはお互いに協議をして発表するということにいたしております。  それからただいまの請求権の問題は、当然日韓会談主要議題として取り行われるべきことはむろんであります。
  13. 今澄勇

    今澄委員 私は外務大臣に、これは問題の性質上、もし日本がそういうことを約束しておらぬのに、韓国側約束したということを李承晩大統領公報発表するということになれば、うそだということになるのですから、私はもっとあなたに腹を据えて答弁してもらいたいのは、今のお話で、米国務省講和条約第四条解説覚書、これは日韓両国がある時期に合意に達するまで発表をしないということを約束したということでわかりました。日韓会談韓国日本に対する財産請求権を討議することも、あなた約束したのですね。今のお話ではそうとしか受け取れない。その約束をしたかどうか、一つここで答弁してもらいたい。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 請求権の問題は、日韓会談において重要な議題として討議されることは当然なことでありまして、その前提のもとに私ども話し合いをいたしております。
  15. 今澄勇

    今澄委員 あなたが約束したということをどうしても言わないのだが、私は韓国公報室がまさかうそは書かぬと思います。そういうことを約束したに違いない。約束したからこそ、今度の請求権委員会名前韓国請求権委員会となったに違いがない。私は、事の折衝というものは頭を下げてばかりおったのではだめなので、憎まれ口を聞きたくありませんけれども、私は日本国民の一人として、日韓会談についての日本国民としての意思を、この機会を通じて明らかにしておきたいと思うのです。とにかくそういう約束をして、一方的な韓国請求権委員会を作ったということは、これはもうこの委員会を作るときに、すでに一歩大きく後退をしておるといわなくちゃなりません。われわれはそういう委員会韓国請求権委員会という名前をつけないで、請求権委員会ということで出発をして、いわゆる講和条約第四条に基いて、アメリカが在韓日本資産韓国に引き渡したのであるから、それによって韓国日本財産を請求する韓国請求権がどの程度消滅したか、その講和条約の結果、韓国に引き渡した財産韓国はどの程度日本に対する請求権の充足を認めておるかという具体的な問題をこの委員会検討するわけであるから、それは請求権委員会とすることが当然であったと思います。外務大臣はそういう密約に伴って、請求権委員会という名前の上に韓国という名前をつけたことは、この会談のスタートにおいて、もう日本側は百歩をすでに讓っておるという点を私は非常に残念に思います。私はぜひ一つもっと堂々と主張すべきことは主張してやってもらいたいと思います。  それでは外務大臣にお伺いをいたしますが、財産請求権に関するアメリカ側正式見解というのは、一言で簡単にいえば、一体どういうことになるのですか。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 簡単に申し上げますと、日本が正平和条約第四条の(b)項によって引き渡しました、それに見合って問題を解決するということであります。
  17. 今澄勇

    今澄委員 このアメリカ正式見解ソウル放送によると、日本は一九五七年十二月正三十一日の予備会談約束した協約を無視して、米国覚書を公開したばかりでなく云々、こうあって、日本側が公開したということになって、韓国側はその内容をみな発表しておるのです。これを知らないのは日本国民だけということになっておる。そこで今あなたは簡単に申しましたが、そのアメリカUSメモランダム世界資料にも載っておるし、ジャパン・タイムズにも載っておるし、これはすでに周知徹底されておる。ただ論議せられないのは国会だけという、こういう今日の政府態度はまことにけしからぬと私は思います。アメリカ平和条約第四条(a)項、すなわち日本国及び国民韓国及び国民との相互間の財産及び請求権処理は、日本韓国当局との間の特別取りきめの問題であるということを、平和条約第四条の(a)項に定め、そうして在韓の日本資産平和条約により韓国政府が引き取った。そこでこのメモランダムにおいては、そのため、特別取りきめとは左記の事項、の程度問題にかかっておる。第一は、どの程度まで日本政府に対する韓国側請求権が消滅したのか。第二番目は、どの程度まで韓国側正式請求権を充足したと認めるべきであるか。アメリカ政府は、右の特別取りきめに当って、在韓日本財産処理日韓両国でどのように勘案すべきかについては意見はここで述べない。特別取りきめは両国政府間の問題である。その問題の処理日韓両国で提示する事実と法理論とを十分に検討して行うべきであるというのがこのアメリカ見解のおもな要旨であります。藤山外務大臣は今簡単に言ったが、今私が述べた要旨がこのアメリカメモランダム要旨であるということをあなたも認めますか。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私がただいま申し上げました要旨なんでありまして、それ以上この際申し上げることはできないと思いますが、ただ、そういうことを念頭に置いて、今後日韓正式会談におきまして請求権の問題を処理し、お互いにその討議をしていくということであります。
  19. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣立場もありますから、これ以上はこの問題では言いませんが、私はそういう背景で日韓問題というものは討議すべきものであって、ただ単なる韓国請求権を、もっぱら日本が受け身でどうするかということだけを討議するというような態度であってはならぬと思います。  それに続いて伺いたいことは、政府は、五月三十一日参議院外務委員会において、こういう答弁をしている。実は昨年の十二月三十一日に協定ができまするときに、日本側としては若干のものを向うへ贈与することに口頭紳士協定ができております。こう森元治郎氏の質問に答えているのだが、この「口頭紳士協定ができております」という、文化財に関する紳士協定とはいかなるものか、藤山外務大臣から答弁を願いたい。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 予備会談を開いておりましたときに、韓国側では膨大な日本に対する文化財要求をいたしております。そうしてその解決によって予備会談を終了いたしたいということでありましたけれども、私どもはそういう問題につきましては、当然全面会談に譲るべきことでありまして、それを強く主張して参りました。ただ若干の文化財について、もし引き渡せるものがあったならば、全集側会談の前に、若干のものは、もし可能ならば考えてみようということは申したわけでありますけれども、それ以上申さなかったわけであります。特別に約束をいたしたわけじゃございません。その後正式会談を開きます前後に抑留漁夫釈放等がありまして、韓国側からそれらについてさらに十分検討をしてもらいたいということがあったわけであります。われわれも検討をいたしました結果、百六点の文化財は支障なく渡しても差しつかえないものと思いまして、これを渡したわけであります。全画的な問題とは別個ではありますが、これはあわせて、やはり今後行われます。全面会談文化財の問題と考えるべきものである、こう考えております。
  21. 今澄勇

    今澄委員 この文化財を引き渡して四十七、八日もたってから韓国新聞発表をして、百六点の内容等向う新聞に出て、そうして参議院で追及を受けるや、政府はしぶしぶそういう口頭の申し合せがあったから、この文化財を渡したなんということを言われるが、これは国民文化財です。それはやっぱり国会にも相談をし、こういう問題についてはいろいろ国民の世論も聞いて政府は動かなくちゃならぬ。それを一方的に隠してやって、ばれればしょうがない、これを公表しよう国の財産なんです。私はこういう政府態度は実にけしからぬと思います。  金裕沢大使韓国記者団発表しておる内容韓国公報室発表その他の資料によって見ますと、十二月三十一日の秘密協定事項として一九一〇年から四五年までの間に日本朝鮮半島から持ち去った文化財美術品返還する協定秘密協定一つとしていたということを向うは言っておる。それは要するに第一の協定は、アメリカ財産権に関する公式な見解については発表しないということ、第二番目は、請求権については日本請求権はもう問題にしない、韓国側請求権だけを日韓会談で討議することを約束する協定、第三番目は、一九一〇年から四五年までの間日本朝鮮半島から持ち去った文化財美術品返還する協定、この三つの協定秘密協定として行われたということは、もう韓国の方は全部国民に徹底しておる。なかなか李承晩大統領日本に対して腰が強い、やるなという国民の支持と協力を得ようとしておる。わが日本の方は、向うは全部周知徹底しておるが、これを全然国会にも報告しなければどこにも言わない。何かの調子で向う新聞で出たのを追及すると、少しずつ政府はこれを国民に告げるというような態度で、あなたは日韓会談が成功すると思いますか。この美術品に関する協定について外務大臣はもう少し明確に答えてもらいたい。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように美術品に関する協定はございません。この問題は全面的に会談におきまして討議されるわけでありまして、百六点につきましてはただいま御説明申し上げた通りであります。
  23. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、外務大臣がどうしてもそういう協定がないと言われるならば、私はやめるつもりであったけれども質問をしなければなりません。この百六点の美術品返還は、これは条約を結び協定を結べば日本国内法に優先する、それらの協定条約があるからこれは違法行為ではありません。それは国際的な合意協定によって日本財産向うへ行くのですから。だがこの文化財はそういう協定が全然ないのに勝手に韓国へ引き渡したということになると、政府財政法第九条による規定に照らして、どの法律でこの日本財産韓国に渡したのですか、御答弁を願いたい。
  24. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 法律的な問題につきましては政府委員から答弁いたさせます。
  25. 板垣修

    板垣政府委員 このたび行政措置で百六点を韓国側文化財として引き渡しました根拠昭和二十二年の法律、すなわち物品無償貸付及び譲与等に関する法律の第三号に基いたものでありまして、法律的根拠があると存じております。
  26. 今澄勇

    今澄委員 その法律に関する三号というのは、第三条の三号ですか。
  27. 板垣修

    板垣政府委員 そうです。
  28. 今澄勇

    今澄委員 第三条の三号を見ると、「教育、試験、研究及び調査のため必要な印刷物写真その他これに準ずる物品及び見本用又は標本用物品を譲渡するとき」とある。その第三号を適用する前段となる第三条は、「物品を国以外のものに譲与又は時価よりも低い対価で譲渡することができるのは、他の法官に定める場合の外、左に掲げる場合に限る。」とあって、国家の物品の貸与がきめてある。これは日本国内のいろいろな教育の必要その他の問題のときにこれを適用すべき国内法なのです。だから国際的な外国へ引き渡すためにこの法律が作られたものでないことはとく承知通りでありましょう協約も何もないのに日本財産韓国に引渡してその第三条の適用のあるものであるというが、一体第三条で引き渡したものは印刷物ですか、それとも写真ですか、何ですか。
  29. 板垣修

    板垣政府委員 第三条の標本用物品というものに該当するものと判定をいたしております。引き渡しました品物は、御承知のように韓国の慶尚南道の昌寧郡の古墳から出た出土品でありまして、主として考古学用物品でございます。従いましてこれにつきましては日本にも他に類似品もありますし、標本用物品と認定をいたした次第であります。  ただいまの国内法という問題につきまして、この法律趣旨は大体そうでありましょうけれども、必ずしも国内的のもののみでないという根拠といたしましては、第四号に「予算に定める交際費又は報償費を以て購入した物品を贈与するとき」、こういう工合に国内にあります美術品をたとえば報償費で買い上げて外国に寄贈するということは、この条項によって今までも事施いたしておりますので、必ずしも国内だけではないという判定をいたしておる次第であります。
  30. 今澄勇

    今澄委員 私は局長のあげ足を取ろうという気はないが、重大な問題だから言っておきますが、日本から韓国に渡した百六点の物品が、韓国の歴史的な標本類である場合においては該当するかもしれない。だが、しかし、彫刻であるとか絵画であるとかいうようなものは、ここへ出ておる標本用物品というものには該当しないのです。おそらく政府はそういう協定を結んだから、その結んだ協定に基いてこれを渡すのであるから、あとで日韓会談でこの問題をやれば問題はないであろうということで渡したに違いないと私は思うのです。  だから根垣さんに聞きますが、参議院で、十二月三十一日に協定ができますときに日本側としては若干のものを向うへ贈与することに口頭紳士協定ができておりますが、今はまだこれを言える段階でないので正式の発表にきておりませんということをあなたは言っておりますが、あなたは当時折衝に当っておりますが、具体的にどういう協定ですか。
  31. 板垣修

    板垣政府委員 ただいま外務大臣より御答弁がありました通り予備会談及び来たるべき全面会談を円滑に進行させるという意味におきまして、日本政府として好意的なしるしといたしまして、若干の美術品行政措置で引き渡し可能なものがあれば渡すという一方的意思表示をなした次第であります。従いましてその後としまして果して行政的措置でもって渡せるものがあるかどうか、その当時はまだはっきりいたしておりませんので不発表ということにいたした次第であります。後に、ただいま申し上げましたような品物で、絵画であるとか彫刻であるとかいう品物はございません。大体考古学的な、類似品物がまだ日本に相当ある一つのグループにつきまして、それを行政措置で渡すことにした次第でありまして、その当時の一方的意思表示は、ただいま大臣より御答弁がありました通り、そういうような若干の引き渡し可能なものは引き渡す。その他の問題については全面会談で討議をする。それだけのことでありまして、それ以上の約束はございません。
  32. 今澄勇

    今澄委員 そこでで外務大臣伺いますが、今の第三号で標本用の物品その値であれば、なるほど国内法を無理にこじつけたのだけれども、違反にはならぬと思います。だが、しからば標本用のものであったのか、あるいは何かその他の芸術品であったのかということはわからない。どうしてもそういうことになると、渡した百六点の物品についてその内容をあとで報告してもらわなければならぬ。外務大臣がこれを報告しなければ、これが違法であるかどうかということをわれわれは判定する資料がないのです。報告してくれますか。
  33. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいまの問題は、将来全面会談等におきましてもさらに最終的に討議が行われるわけであります。そういう時期にあわせて御報告申し上げます。
  34. 今澄勇

    今澄委員 それは私はおかしいと思うのですよ。今言った論争の中心は標本用の物品であればこれはかからないのですね。だがそれがどうかということはわからないですから、この予算委員会へきょうでなくてもいいですが、きょうなりあしたなり政府からその渡したものはこれこれであるということを明示しなければ、これが財政法第九条の物品無償貸付譲与法律に違反するかどうかという審議はできないと思うのです。それじゃ外務大臣、だめです。私どもは話をするわけにいかぬ。出しますか、どうしますか。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 最終的には全面会談のときに出しますけれども、その渡したものにつきまして御説明申し上げるということはできると思います。
  36. 今澄勇

    今澄委員 大臣の立場もありましょう。これは予算委員長を通じて――今外務大臣から、それは説明できないものではないという話がありましたから、一つ予算委員長を通じて、この百六点の資料国会へ出していただくようにお願いします。  そこで私は、六月十四日ソウルKP電報を見ると、韓国外務当局の言明として、日本政府が四百八十九点の韓国返還する文化財リストを韓国側に手交したと出ております。日本政府は四百八十九点の文化財のリストを韓国側に手交したかどうかということを外務大臣に聞きます。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問題は、現在正式会談を聞いておりまして、その会談内容の問題でありますので、今言明をいたすわけには参りません。
  38. 今澄勇

    今澄委員 とにかく韓国外務当局は、正式に六月十四日向う発表しているのです。それが日本の方ではまだ言えないというような、一体そういう国民をばかにした外交がありますか。これは政府の必要上やったことで、何もとがめようとするのではないのですが、日本国民にも会談の実態を知らせて、韓国国民と同様、わが日本国民がこの日韓会談について、わが国が譲るべきところを讓っているのか、譲るべからざるところを譲っているのか、お互いに判断しなくちゃならぬ。この四百八十九点の文化財リストを韓国側に手交したと、韓国外務省の曽外務部長が発表しているのです。向う責任者発表しているのです。日本責任者はどうですか。向う責任者はやったといっておるのですが、こっちはやらぬというのですか。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま会談が進行しておりますので、会談につきましてはいろいろな資料が拠出されておりますことは当然であります。しかしながらこの資料の一々につきまして、私どもはすぐにこれ許諸するとか許諸しないとかという問題ではないのでありまして、資料についていろいろ検討しており、非常にデリケートな会議の段階でありますので、韓国側はどういうように発表したかわかりませんけれども、私といたしましては、慎重な態度で今後それらのものを折衝したいと考えております。
  40. 今澄勇

    今澄委員 それでは外務大臣に、私は国会議員の一人として聞きますが、韓国側要求に基いて、韓国がこれだけ戻してくれというてきておるのなら話がわかる。だが日本側からリストを作って渡したということは、私はどうしても外務大臣に聞かなければいかぬのです。だから、私は六月十四日ソウルKPに出ている向うの外務当局の話はその通りであると思います。あなたはそんなことをいって隠してもだめです。だが四百八十九点のリストを渡したかどうかということを、日本国会に報告する義務がありますよ。何を言っているのですか。みんな隠しているのですか。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 会談の進行中に、ただいま申し上上げましたように、向う側が出しました資料検討しなければなりませんし、こちら側としても資料を出して検討をいたしているわけであります。向う側に何かコミットしたような書類を出したということはございません。
  42. 今澄勇

    今澄委員 時間もたちましたが、いろいろまだ聞かなくちゃならぬのですが、四百八十九点の重要文化財のリストを日本向うへ渡したことは、韓国外務大臣発表できるが、日本外務大臣日本国民発表できない。会談というのはお互いに対等の立場でやるべきものだ。そんな状態だから何もかも押されて、言うべきことも言わない。言うべきことを言わなければ、李承晩大統領のことですから、なかなか会談においては次から次に押されて、まとまるものじゃない。私はこの際にこの四百八十九点の日本が渡したというリストの内容、これもぜひ一つ聞きたいと思っておりますが、外務大臣がしいて立場上そうおっしゃることならこれ以上はつきませんが、しかしながら外務大臣に一言言うておきますが、先ほど渡した百六点の文化財、それから今リストを渡した四百八十九点の文化財、それは韓国側に贈与したのか、それとも日本返還をしたのか、それともその中間的な姿で引き渡しであるという言葉を用いておるが、私は引き渡しという言葉はないと思うのですが、これは贈与したのか、返還したのか、どちらかでなければならぬと思うのですが、外務大臣は一体どうしたというのですか。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、今、日韓会談でこれらの問題を討議いたしておるのでありまして、会談内容を一々申し上げますことはこの会談の進行上非常に困難だと思います。しかし私どもとしては慎重にやっていくわけでありまして、むしろ今日の会談国民的後援を得るために、できるだけスムーズにいくようにやりますことは当然のことでありまして、私もその趣旨は十分了解はいたしておりますが、しかし何といたしましても日本韓国との長年の間の会談であり、数回決裂した会談でありまして、そういう会談を扱いますためには、相当慎重にやって参らなければならぬことと考えております。
  44. 今澄勇

    今澄委員 外務大臣、その答弁はだめですよ。それはものを渡さないで、贈与か返還会談で協議するというなら、これは話はわかります。しかしやってしまって、事実は行われて、そのあとからあれは返還だったかあるいは贈与だったかということを言えぬということじゃしょうがない。率直に言うて、日本が略奪したものではない、だからこれは贈与したものであるということを主張してもらいたい。韓国はもとよりそれは返還であると言いたいでしょうが、会談に臨む日本側の基本的態度はしからば返還であるか贈与であるか、外務大臣どうです。その態度もないのですか。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まだ最終的に返還はいたしておりません。今、今澄さんの言われるような考え方で私ども会談の中で善処をいたしておるわけであります。
  46. 今澄勇

    今澄委員 藤山さん、私がきょう憎まれ口をきいているが、政府はもっと強腰になってもらわなければだめなんですよ。日本態度は、会談に臨むに当って一体返還か贈与か、どっちかというのです。そこであなたが政府態度として、今治さんの言う通りですという答弁でどうしますか。政府はこれは贈与であるということで臨むのか、あるいは返還であるという態度であるか。まだきまらなければきまらぬとおっしゃっていただきたい。
  47. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども会談に臨む態度といたしまして、もしそういう問題が取り上けられますならば、贈与の態度をとって参りたい、こう考えております。
  48. 今澄勇

    今澄委員 私はぜひそういうことでやってもらいたいと思います。  なおもう一つ、船舶のことについて私は聞かなくちゃなりません。会談委員会を構成するに当って船舶委員会というのが、韓国請求権委員会の中の小委員会としてできております。これは外務大臣も御承知通り。これは韓国請求権委員会の中の船舶小委員会というのですから、韓国日本に船舶の返還を求める委員会ということになるので、日本立場はこれまたまことに弱いのです。向うの一方的な言いなりになり切っているのです。そこで六月十五日付東亜日報――これは李承晩政府の機関紙で朝鮮語の新聞ですが、これに前途遼遠な韓日会談と題して詳しく載せている。この向う新聞を見ると、船舶十六万トンを韓国側日本要求すべき権利と根拠を持っているが、古い船を返してもらっても仕方がないので、九万四千トンの船舶を、日韓会談を通じて日本側返還要求すると向う新聞は出しておる。向うの方は李承晩の機関紙新聞が、日本要求する船舶の数量等も堂々と国民に訴えて宣伝しているわけだ。わが国の方はこれに対して一体政府はどういう見解を持っているのだか、全然知ることができません。政府はこの九万四千トンの韓国側の船舶返還要求について、いかなる見解を持っているか。日本はこれに対してどの程度の船舶を返還すれば妥当なのか、また返還しなければならないような理由がそこにあるのかどうか、私は藤山さんからこれもあわせて聞いておきたいと思います。
  49. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 韓国側はむろんそれぞれの委員会においていろいろな要求をいたしてきております。むろんこれは今後会談の進行につれまして、われわれは折衡をいたしていくわけてありまして、妥当な線に落ちつくように努力することが、今会談を進行する上において必要だと思います。むろん今澄委員が言われましたように、何か私どもが非常に軟弱な態度でというおしかりがあるわけでありますけれども、私どもとしては、やはり十分日本の権益を守りながら、日韓会談が円満に進行するように努力いたして参るつもりでございます。
  50. 今澄勇

    今澄委員 この船についても、日本の漁船が百四十何隻拿捕されておる。なおそのほかにもいろいろ向うへつかまって百五、六十隻になっておるはずです。それらの問題も、やはり日本側としては言うべきなんであって、一方的に、向うの膨大な要求ばかりを聞いて、こちらのそういうものは全然取り上げないというのじゃ、これは片手落ちなんです。そこで日本がとられた船は一体どうなるのか。なお日本側は、この小委員会において六千トンの船舶の譲渡ならばどうかということを申し出ておると、これまた向うの、今申した東亜日報は大々的に書いておる。日本は、一体六千トンという数字をどこからはじき出されたのですか。それから日本がとられた漁船はどうなるのですか。外務大臣一つ答弁願いたい。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように、ただいま韓国側では、むろんいろいろな意味で宣伝的なことを発表いたしておるかもしれませんが、われわれとしては、会談を通じまして、十分根拠のある数字によって、そうしてこの会談に臨んでいきたいと思っております。船舶の委員会につきましても、御承知のように開始早々でありますので、今後の経過等につきましては十分留意しながら進めて参りたい、こう思っております。
  52. 今澄勇

    今澄委員 これも外務大臣向う会談経過を逐一全韓国民に報道する。日本の方は、もう向う要求する数字も、こっちのいう数字も全然隠して――向うは独裁国なんです。日本は民主国ですよ。その独裁国が全国民に伝えて、日本日韓会談すら国民に伝えないんだから、アメリカ日本との間に行われておる防衛についてのいろいろアメリカ合意の上にできたことが、日本国会で論議せられないからこそ、日本国民国会に対して不信の念を抱くんですよ。あなたは民主政治家として、韓国のこの新聞に堂々と出している態度と、日本国会外務大臣答弁の自分の姿とを比べてごらんなさい。私はこういうことではどうにも国民の理解を得る、いわゆる国民外交ということにならぬのではないかということをあなたに申し上げなくちゃならぬと思うのです。  時間がありませんから、もう一つだけにしておきましょう。李承晩ラインというのが、これまでは引かれておって、これはマッカサー・ラインからクラーク・ラインに変り、李承晩ラインとなって、海の上にさっと筋を引いて、それから入った日本の漁船を拿捕する、機関銃で撃ち殺す。さんざんむちゃくちゃなことをしたのが、今度委員会名前を見ると、これは漁業及び平和ライン委員会ということになっておる。平和ラインということを日本国政府は、委員会を作るときに認めた趣旨はどこにあるんですか。政府はいかなる理由で李承晩ラインを平和ラインと認めたか、外務大臣から御答弁を願いたい。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 季ラインの問題につきましては、今日までの方針通り、李ラインそのものを認めておりませんし、認める態度でこの会談には臨んでおりません。従いまして、この問題は相当困難な問題ではあると思います。ただ漁業の上において、何らか魚族保存の見地から、両国国民が、また漁民が満足するような結論に達することを望んでおるわけであります。
  54. 今澄勇

    今澄委員 私がきょう一つずつあげているように、日本側が軟弱で、押されて、すべての問題は全部後退しておる。私は日韓の親善を一日も早く確立したいということにおいては同じなんだ。だがしかしよくごらんなさい。ことごとに、一つ一つみんな讓歩しておる。何もかも名称に至るまで、李承晩ラインはもうやめて、いつの間にか平和ラインになっている。こういう状態で、こんなに日本国民意思を無視されて行われている外交は、あまりないと思うのです。  もう一つは、在日韓国人の法的地位、これは終戦後十年たっておる。韓国側在日韓国人はすべて韓国籍を持つ外国人として特殊の立場日本政府に認めさせるということを、先ほどの六月十五日の東亜日報は出しておるが、これに対して一体日本在日韓国人の法的地位についてはどういう見解をとろうとしておるのか、今日政府の統一した見解があるのかどうか、これを一つ外務大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 詳しくは法務省から御答弁すると思いますが、終戦後、現在日本に残留しております韓国人につきましては、韓国人もしくは北鮮系、それぞれの立場を認めておるわけであります。
  56. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いわゆる在日韓人の法的の取扱いにつきましては、平和条約が発効いたしましてから、これは申すまでもございませんが、日本の国籍は失ったわけでございます。そうして韓国側は、すなわち現在日韓交渉の相手になっております韓国側としては、原則的にそれらの人は韓国の国籍を取得すべきものであると考えております。それからわが方といたしましても、原則的にはさような見解をとるのが妥当かとも思いますけれども、しかし現実に北鮮に一つの政権があり、それから在日韓人の中にはそちらの方の政権を支持しておる、そちらの方につきたいという人もある。これは現実の事態であります。まことに初雑な状態になっておりますが、これらの点も含めまして、これは日韓会談におきましてしるかべく解決をいたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  57. 今澄勇

    今澄委員 この在日韓人の地位は、連合軍総司令部がかつて日本におったきに、特殊地位の国民という解釈を下して取り扱われた。そのまま日本国政府は付らこれには検討を加えておらぬのですよ。そういう日本自身の検討なくして日韓会談に臨んで、この問題が一体どういふうに解決ができるかということを考えてみると、これはまことにたよりない話です。日韓会談日韓会談というてただ頭を下げて話し合いするばかりではなしに、私はぜひこういう具体的な問題について一つ一つ政府態度を固めて臨んでもらいたいと思います。時間がありませんからこれもこの程度にいたしましょう。  最後は基本的な条約の問題、この基本条約の第一回は、官房副長官としておられる松本俊一さんと、向うの今アメリカの大使をしておる架裕燦、この両氏が第一回の日韓会談に臨んだわけです。その第一回の日韓会談でだめになった問題もあるが、大体妥結したいろいろな問題がある。今度の日韓会談に臨む基本的な態度としては、第一回の会談できまったものか大体そのまま用いられるのか、それとも全然別個の立場からやられるのか、外務大臣一つお聞きをしておきたいと思います。
  58. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 過去の数回にわたります日韓会談のある程度の決定を参考にいたしますことは当然であります。しかしながら、今回最終的に日韓会談を成功させたいと思っております。従ってそれらの問題を十分考慮しながらただいま進んでおるわけでございます。
  59. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は松本官房副長官にお聞きをしたいが、あなたが第一回の日韓会談に臨んだ際、韓国側日本統治について謝罪の意を表せよという意味の文句を主張した。あなたがそれに対しては非常に努力をされてその文句を取り除く了解を得られた。今日の日本韓国との交渉の現状に当って、あなたは第一回の交渉に当られた人として、その基本的な立場からこれらの問題についてのそのときの模様、あなたの見解を聞いておきたいと思います。
  60. 松本俊一

    ○松本政府委員 ただいまのお尋ねの前半を、私ちょっとほかの相談をいたしておりまして聞き落しましたけれども、大体第一回の日韓会談のときの先方の態度についてお尋ねのあったことと思いますので、その根本的な向う態度につきまして私の知っておりますことを申し上げたいと思います。  別に先方が日本に対して謝罪を求めたようなことはございません。ただ、日韓の間に全般的、基本的な条約のようなものを作りたいというわれわれの方の当時の提案でごさいました。その際に、日韓併合の法律上の性質について、日本側韓国側に根本的な差異がありましたことは私も記憶いたしております。しかし、先方はその条約の中あるいはその他の方法で謝罪を求めたような事実はございません。
  61. 今澄勇

    今澄委員 その松本さんの御意見はあとで関連するのですが、次にお尋ねしたいのは藤山さんです。去る四月二十三日の衆議院外務委員会において、わが党の松本委員がこう質問している。全面会談について、外交ルート以外に、矢次某その他が相当向う折衝したと聞いているが、そういう事実があるか。この質問に対して、あなたは、日韓会談の非公式推進は外務省の者が話し合った結果であって、外務省としてはさような外務省以外の雑音を一々取り上げないという答弁をあなたは行なっているのです。それからさらに松本委員が、今後正規のルート以外に矢次某のような立場の人を派潰する考えは全然ないかどうかと念を押したところ、あなたは、この委員会で、外務省としてはそういう考えは持っていないとはっきり答弁して、議事録に載っているのです。しかるにそれからわずか一カ月もたたぬ五月の十九日に、この外務委員会名前の出た矢次某が、首相の特使か何か知らぬが使節として韓国に派遣されておるということは、あなたが外務大臣として衆議院において発言したところとはまるきり違っているが、どういうことですか。
  62. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 日韓会談の予備的な折衝につきましては、当然外務省の当該担当者がやっておるわけであります。むろんことしの会談に当って民間各個人からいろいろ御意見もありますし、あるいはいろいろ情報等の御提供もあります。それらも参考にすべきものは参考にして参っておりますけれども、しかし外務省の担当官がそれぞれ予備的な折価をいたしておるわけであります。
  63. 今澄勇

    今澄委員 幾らしろうとでも言うたことを答えてくれなくちゃ困る。その矢次某というのが特使か付かで行ったのはあなたの答弁とはまるきり違うが、どういうことかと言うのです。
  64. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 民間の人がそれぞれの立場でもっていろいろ韓国に行く場合があり得ることは当然なことだと思うのでありまして、外務省としては、特に特使を派遣したことはありません。
  65. 今澄勇

    今澄委員 外務省は特使を派遣したことはないという話は聞いておきますが、あなたは手紙をことずけておるがどういうわけですか。
  66. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 矢次氏が行くということを聞きましたので、私は公式の手紙を柳公使に話したわけでございます。
  67. 今澄勇

    今澄委員 とにかく外務大臣、お気の毒だからこの点は総理に聞くことにしましょう。岸総理大臣、お聞きの通り、とにかく日韓問題のいいところばかり日本国民に伝えられて、もう何もかも韓国の言いなりになって譲歩したところはみな隠しておいて、それで日韓会談が成功であるというような印象を与えて、これを妥結することには、私は国民の一人として反対であります。われわれは主張すべきわれわれの意見を主張しなければなりません。その矢次といの人を今外務省は派遣しておらぬと言うのだが、一体あなたのどういう関係ですか。特使ですか、あなたの個人的な代表ですか。矢次さん韓国派潰について岸さんの意見をお伺いします。
  68. 岸信介

    岸国務大臣 韓国との関係は、先ほど来いろいろお話がありましたが、当然日本として日本の守るべき権益を守っていかなければならぬことは言うを待ちません。しかし、今までの会談等を通じて現われておるところの微妙複雑な関係等もございますので、私どもは、決して秘密外交という意味ではありませんけれども会談の途中においていろいろな内容、いきさつを一切公表するというようなことは、決して会談をうまく友好的に進めるゆえんではないと思います。いろいろ韓国側においてこれに対して発表やあるいは新聞記事等もございますが、そういうことをなるべくお互いに途中においてはしないようにして、そして会談の最後の目的を達成するように努力しなければならぬと、この会談態度としては考えておるわけであります。  矢次君の問題につきましては、これは従来とも韓国側に相当の友人を持っており、また韓国側の知人等の間におきましても、一ぺん韓国に来て、李承晩にも会って、日本側のこの会談に対する熱意を伝えてもらうと、会談そのものを進行する上において非常に雰囲気がよくなるというふうな意見もありました。私自身別に公けの資格ではなしにそういう意味において矢次君に行ってもらいまして、韓国側のいろいろな方面の意見も聞き、またわれわれが、とにかくこういうように日韓の間がなっておることは非常に望ましくない。従って、これを一日も早く打開して、正常な関係を作っていくという熱意を持って考えておる。従って、従来いろいろ懸案になっておる諸問題についても、率直にお互いが百年の将来を考えて、一つ大局的に処置していくような雰囲気を作りたいという気持を私は向う側に伝えると同時に、向う側の意向も十分に了承して、向う側でもそういう気持でおる。途中においてのいろいろな両国国民を刺戟するような言動はお互いにできるだけ避けて、そうして大局的な結論を導き出すように今後とも努力しようという話を非公式に私は向う側から受けておるし、私の気持も伝えたい、こういうのが矢次君を韓国に私が派遣したゆえんであります。
  69. 今澄勇

    今澄委員 それでは総理、それは個人的な使節ですね。
  70. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように公けの特使としての意味を持っておるわけではございません。
  71. 今澄勇

    今澄委員 だけど個人的なあなたの使節であることだけは確かですね。
  72. 岸信介

    岸国務大臣 今私が申し上上げましたように、私の考えを向うの李承晩やあるいはその他の人々に伝え、またそれらの人々の意見も聞くという意味を持って向うへ出したわけでございます。
  73. 今澄勇

    今澄委員 あなたの考えを矢次氏を通じて伝えさした、その矢次氏は京城でこういう声明をしておる。私は今あなたが私の考えをと言われたから申し上げます。矢次氏の京城での声明の内容は、「岸首相は、伊藤博文が日韓関係について犯した誤まりを償わねばならぬと強く感じておる」と発表いたしております。なお、矢次氏は文芸春秋にも、「岸首相は日帝統治時代日本軍閥が韓国国民に対して犯した蛮行をいつも済まなく思っており、また当時の日本の世界政策がどうあったにしても、伊藤博文が輝国を合併したことは大きな失策であったと考えている。」とはっきり書いております。戦時中軍務局の機密費をもらって活動いたしたこの矢次某の言としては、私はまことにこっけいな言いぐさであると思いますけれども、私はこの矢次氏が韓国で「岸総理が」とつけて発表したのは、あなたが矢次氏に自分の意見をかわりに述べさせたということになると、この発言はこれはあなたの発言でありますな。あなたの発言と同じでありますか。
  74. 岸信介

    岸国務大臣 私は矢次君が京城でどういう発言をしたかということをつまびらかにいたしておりませんが、私の申しましたのは、私の意向を李承晩大統領に伝え、また向う側の要人の意向を打診するという意味でありまして、その見解は矢次君一個の見解として述べたもので、私の見解ではざいません。
  75. 今澄勇

    今澄委員 あなたはここで私の見解ではございませんと言っても、出すときにさっきあなたが言ったように、これは公式ではないが、自分の個人的な使節で、自分の意見にかわって――速記録に残っておる。その矢次が李承晩と会見したときも、京城の声明でも向う新聞に全部出ておるのです。こういう声明をやったその背景は、韓国では伊藤博文を暗殺した安重根という暗殺者はもう英雄になっておる。その銅像計画が近く立てられる。その銅像を建てる前に、日本国総理がその安重根がいかに救国の英雄であったかということを裏づけるような発言をされる。それは韓国としてはほしいでしょう。だが私は日本の岸総理の使節ともあろう者が、先ほど松本さんが言ったように、韓国日本日韓併合について謝言を求めてはおらぬのである。求めてもおらぬものを、わが日本国総理が、そういう矢次某の個人的な見解については何だから申し上げません。この人の過去についてはいろいろありますが、それは申し上げません。一介の浪人を韓国に送って、一体そういう状態のもとで日本韓国との間をすべてのものを譲歩して取り持たなければならぬということは、日本国民は望んでおらぬと私は思います。岸さん、あなたはそれは自分の意思ではないと言われているけれども、矢次が、私がこれをあえて公表したのは、矢次はそういうことを堂々と述べているのです。声明に出しているのてすが、あなたの責任はどうです。
  76. 岸信介

    岸国務大臣 その内容は私つまびらかにいたしませんけれども、それは矢次君の一個の見解であって、私自身そういう何らの意見を今まで矢次に述べたこともございませんし、またそういうことを託したことは一切ございません。私は先ほど申しましたように、私の意思李承晩大統領に伝え、李承晩大統領の意向、その他要人の意向を打診しただけでありまして、そのことにつきましては、私は将来の日韓会談を進める上において一つの参考にいたしております。そういう一切の言動について私が全部責任を持ち、その言っておることも、私がこう言っておるということを言っておるとは私は思いません。そんなことを言うわけはございません。
  77. 今澄勇

    今澄委員 それは向うにおいて岸総理がそう言っていると発表しているのです。外務省刊では十分調べられておると思いますが、とにかく外務省は正式なルートで外交をする。その背後からこういうわけのわからない人が出て、岸さんの意向を受けた外交をする。向うからも来ているのです。外務大臣は金思牧という人に会われたことがありますか。
  78. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 会ったことはございません。
  79. 今澄勇

    今澄委員 二年前から李承晩大統領の使節と称して、金思牧という人が日本の政界の各上層部に会っておる。その人は正式な入管手続を経ておらない。おらないはずである。私は日本の法務当局はどういうわけでこういう金思牧なる人を――日本国内日韓問題等で非常な暗躍をして、いろいろ政府要人が日本要求日本立場を強く出そうとすると、あれこれ動いておる。こういったように向うはそういう者が来る、こちらは矢次某なる者を送る。大体近代的な今日の様相から見ると、私岸炭内閣のこの外交に対する態度は非常に遺憾だと思います。外務大臣はこういう外交のあり方について、あなたは外務省の責任者として感想はどうですか、賛成ですか。
  80. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は外交の当事者として、外交ルートによって外交をやっておるわけでありまして、むろん外交をやります場合、各方面からの情報等を参酌することは当然のことであります。
  81. 今澄勇

    今澄委員 ソウル二十一日発APによると、矢次某は京城で記者会見しておる。「李承晩大統領は、日韓関係正常化に対する岸首相の意思に信頼の念を示し、私の韓国訪問の成果は大いに上りました、私は李承晩大統領の岸首相あて返書を持って帰る。」こう言っておる。あなたは李承晩から返書をもらったわけです。そこでその返書は一体どういう意味のことが書かれてあったか、返書をもらったかどうか、その内容はどういう意味のものであるか。あなたの親書を託されて向うに渡されたものであるから向うから返書が来て、それをおもらいになったと思いますが、一つ御報告を願いたいと思います。
  82. 岸信介

    岸国務大臣 李承晩大統領から返書を私は矢次君を通じて受け取りました。しかしその内容につきましては、これは大統領の私に対する親書でございますので、この機会に発表することを差し控えたいと思います。
  83. 今澄勇

    今澄委員 矢次君の言ったことは自分の意思ではないと言い、それで自分の親書はその矢次に託して向うの大統領に渡し、その大統領がことずけた手紙は自分ももらう。外務大臣はそういうものは知らぬと言っておるが、五月二十一日のAPによると、外務大臣藤山氏にも書簡を託したと言っておる。あなたは書簡をもらいましたか。
  84. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は李承晩大統領から書簡をいただいておりません。
  85. 今澄勇

    今澄委員 五月二十二日の共同通信世界資料の一の六号を見ると、「五月二十二日午前矢次は岸首相を訪問、李承晩の書簡を渡すとともに、会談経過を報告した。そのあと午後藤出外相と会見、再外務大臣からの書簡を渡し報告を行なった。」とあるから、それでは外務大臣からの書簡はもらいましたか。
  86. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は日韓会談を進めます上において、友好的にやろうというごく簡単なあいさつ状を外務大臣に出しました。それに対しまして、同じような意味の簡単なあいさつ状を外務大臣から私はもらいました。
  87. 今澄勇

    今澄委員 私は、一国の外務大臣が、外務委員会の質疑応答の中で、そういう特使なんか出しませんとこの間あなた言うたばかりで、今度はその矢次という人に、向う外務大臣からの手紙をことずかってもらって、それをあなたがもらって、それで日本国外務大臣か外交をやろうというのだから私は驚きましたよ。私はやはりこれらの問題は日本国民に知らせる必要があると思って、あえて今ここに立っておるわけです。あなたは日本外務大臣としてこういう重大な韓国の外交を、そういう戦時中の軍務局の大さな機密費を使って努力したような人を韓国にやって解決をはかるということになると、手段を選ばずということになると思うのです。日本の外交はもっと正式なルートからしっかりした方針で、外務省も一つ総力をあげて、こんなことぐらいできぬことはないと思うのです。外務大臣に私はこの際一つ警告しておきます。  もう一つは、その矢次氏の報告と韓国の報道の中に、「岸氏は李承晩氏との会見を約した上ということを言うておるのですが、岸総理李承晩大統領とお会いになる予定がありますか、李承晩大統領との会見についての矢次氏のそういった取り持ちその他についてはどういうことになりますか。
  88. 岸信介

    岸国務大臣 李承晩大流領と会見の約束をした覚えもありませんし、また今日そういう予定は持っておりません。
  89. 今澄勇

    今澄委員 台湾政府日華協力委員会代表団長谷正綱という人がこの間日本と台湾との協力会議に見えましたが、総理はこの谷正綱氏に会われましたか。
  90. 岸信介

    岸国務大臣 会いました。
  91. 今澄勇

    今澄委員 そのときに矢次一夫氏と同席で会われたということですが、事実ですか。
  92. 岸信介

    岸国務大臣 その際には谷正綱氏及び台湾側の代表数人と日本側委員の足止君その他数名と一緒であったと思います。矢次君もその委員でありますから、矢次君も一緒だったと思います。
  93. 今澄勇

    今澄委員 岸総理が、私の手に入れておる情報によると、谷正綱台湾の団長と矢次氏を交えて会談をしておるのです。あなたは矢次氏を通じて李承晩大統領には、先ほど来私が言うような、そういう外交の方針をとり、かたわら台湾の谷正綱氏とはこれまた矢次代を通じて会談をいたしたことは、これで明らかになりました。私は非常に今日国民がおそれておる方向へこの日韓会談というものはだんだんと向いているということを、遺憾ながら痛感せざるを得ません。そこで私はもう一つこれは聞いておかなくちゃならぬのだが、李承晩大統領は昨年の十一月群山における演説で、日本に対し八十億ドルの賠償を要求すると言明しております。この賠償要求は、しかしながら理由は薄弱であります。日本がフィリピン統治四年に対して八億ドルの賠償をするならば、韓国統治は約その十倍であったから八十億ドルを賠償せよという、これは概算の話にすぎないのです。それにしても途方もない演説をしたものです。ところが、もし矢次氏が岸総理は伊藤博文の何々というようなことを言ったということになると、日韓会談がまとまらないで再び決裂をいたしたときは、今度は韓国日本に対する賠償の要求根拠を持つことになるのであって、私はこの矢次特使の韓国における発言は、非常にこれは重大な結果をもたらすと思う。現に六月十五日の東亜日報によると、韓国側財産請求権委員会において五億を要求日本側は一億でどうかという主張をして、一億と五億でなかなか主張が合わぬから、この日韓会談がこの五億と一億の問題をめぐっては二、三カ月かかるであろうということを、六月の十五日堂々と書いておるのです。私はこういう日本の政治家の不注意な言動、そういうものが日韓会談における日本態度を次々と、不利にして、わが国の今日置かれておる状態がだんだん困る。私はここまで見ておりましたが、これではどうしても一度岸内閣の閣僚の皆さんにこの日韓の間における不明朗な事態を明らかにして、国民の世論を求めたいと思って、この質問をいたしたわけです。  最後に私はもう一つ申し上げなければならぬのは、六月十一日日本側の首席全権澤田兼三氏は、銀行倶楽部で開かれた朝鮮問題懇談会、この懇談会には私にも案内状が来て私も招かれておる。その席上で注目すベき発言をいたしました。これは岸総理に申し上げる。澤田氏いわく、日韓会談は李承晩が三十八度線を鴨緑江の線まて押し上げるのに、日本人が武器をとって応援するかわりに、日韓会談でできる限り讓ってこれを援助することが必要であると述べおるのであります。この澤田兼三氏の発言はいろいろ新聞にも出て、もう天下周知のことになりました。あなたは矢次長は自分の個人的な使節であるとかなんとか言っておりましたが、澤田氏はこれは日韓会談における日本の首席全てであります。この首席全権が公式の会合でこういうことを――これは速記録もあればテープもあるのですが、こういうことを堂々と述べるということで、一体あなたは日韓会談が成功すると思いますか。また日本政府はそういう意味において韓国に議っているのですか、私は一つ総理の御答弁を願いたいと思います。
  94. 岸信介

    岸国務大臣 日韓会談に対する根本的の考えは、先ほど私申し上げましたように、日本としては日本の正当なる権益はあくまでもこれを保持して、しかも向う側との間に折衝をして、そこに円満に結論を見出そう、こういうことでありまして、途中におけるいろいろな賞伝や刺激は避けていくことが望ましいというのが私の根本の考えであります。私は、いたずらにわれわれが当然主張しなければならぬものを初めから譲るという考えもございませんし、また大局的に見て両国友好関係を作り上げることが両国のために、また平和のために必要であるという見地から、大局的に渡るべき点があるならばこれは譲るということを考えることは、これはこういう交渉の当然のことである。従いまして途中におけるいろいろな刺激的な言動は、これは厳に慎しむべぎ慎重な態度で臨んでいくべきである、かように考えております。
  95. 今澄勇

    今澄委員 澤田全権の先ほど申した話については、それは政府態度ですか。
  96. 岸信介

    岸国務大臣 今私が申し上げましたことが政府態度であって、澤田全権がいろいろな場所において言っていることが、ことごとく政府態度というわけではない、こういうふうに考えております。
  97. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は岸総理、閣僚の皆さんに申し上げたいが、在日朝鮮人に対して日本の国家の予算で、これははっきり分けて外務省の所管にしてその生活を援護したらいいと思うのだけれども、今失業救済対策その他みな日本人を相手とすべきこれらの法律が適用されているから言わないが、年間巨額の金かこれには流れておる。暴力的な犯罪も行われておる。麻薬その他の密輸も朝鮮ノリを初めとして、経済的にも大きな問題をはらんでいる。教育の上にも、在日韓国人の学校では排日教育を公然とやっている。なお経済界においては、名前をあげてもいいが、私の調査したところ、三十億以上の財産を持つと見られる者は東京に三人、大阪で二人、名古屋で二人、その他全国で十人、一億以上の財産を持つ者は数百人もあるような状態で、経済界におけるこれらの力も大へんなものです。私は今日韓国の問題はそんな小さな問題ではないと思う。私は政府が――なるほど日韓親善はけっこうですよ。けれども日韓親善のためには日本国がきぜんとしてなすべきことはなし、そうして主張すべきは主張し、信念と勇気ある態度をもってこれに当らないと、ずるずる引っぱられては手放され、ずるずる引っぱられては手放され、結局これが日本の外交の一番大きな盲点になるのではないか。だからこそ今回の施政演説の中にも、お隣の国である韓国の問題が一言もなかったのではないかということを私は痛感したのです。どうか一つ答弁は求めませんが、これらの点を勘案されて、政府は気魄ある外交をぜひこの際展開してもらいたいと思います。  さてもう一つ防衛の問題についてお伺いしますが、トルコのメンデレス首相が先般来朝しました。岸総理はこれにお会いになっておられますが、そのときに日本韓国と台湾を結ぶ三国防衛協定について、あるいは日本と台湾と韓国の三国が手を握って、共産圏の国家に対抗すべきであるという提案がなされなかったかどうか、総理一つ伺いをいたします。
  98. 岸信介

    岸国務大臣 そういう提案は私全然承知いたしておりません。
  99. 今澄勇

    今澄委員 アンカラにおけるメンデルス首相の帰国後の談話を見ると、日本において岸首相に対し、この韓国日本・台湾の防衛協定についての構想を提案したとメンデルス氏は声明をしておりますが、そうするとそういう事実はうその声明ですか。
  100. 岸信介

    岸国務大臣 今お答え申し上げました通り、私との会見において、そういう提案は一切なかったと思います。
  101. 今澄勇

    今澄委員 お二人で話されたことですから、われわれもそばにテープ・レコーダーを置いたわけではないし、お二人の間のことで、これは私の類推にすぎないから、これ以上追及しませんが、少くともメンデルス総理はアンカラにおいてそういう声明をしているのです。メンデルス氏は韓国李承晩大統領にも会って、それと同じ意見を伝えたということを書いております。なお四月八日、駐米韓国大使梁裕燦氏は李承晩大統領のヴェトナム訪問、ゴ・ジンジェム大統領の対米訪問の成果によって、日・韓・台の三国同盟はどうなるかという、ヴォイス・オブ・フリー・チャイナ放送ではっきり談話を発表しておる。その談話の中を見ると、こう書いてある。「形式的な同盟の形よりも、三国の政府国民が団結し、決意し、共産主義とともに戦うことが大切である」、こういう談話が出ておるのです。その談話と、先ほどのあなたと谷正綱氏との会談、矢次某氏を通ずる李承晩との接触。われわれは日本韓国と台湾が防衛同盟その他のかたい軍事的な結集に入るのではないかということを、率直に言っておそれております。岸総理に私は質問をいたしますが。日本は、そういう日本韓国と台湾の三国軍事同盟のようなものは、断じて結ぶ意思もなければ、今後ともそういうことについて締結をする考えはないと、将来の見通しにわたって、一つ岸さんにこの際はっきりした答弁をいただいておかなければならないと思います。
  102. 岸信介

    岸国務大臣 私ども内閣として、今お話のような事実同盟を結ぶ意思は全然持っておりませんし、将来も私はそういうことは考えられない、かように思っております。
  103. 今澄勇

    今澄委員 これで私は今の韓国日本・台湾を通ずる防衛同盟の線については、岸さんの今のはっきりしたお答えで、一応の質問を終ります。  もう一つ問題なのは、五月二十五日のAP電によれば、「米軍の中距離ミサィル、ソアーが沖縄に展示せられ、これに対して、日本防衛庁制服者がこの展示会に参加をしておる。」ということになっているが、防衛庁長官にちょっとお伺いしますが、このソアーの展示会には日本からも行かれましたか。
  104. 左藤義詮

    左藤国務大臣 参っております。
  105. 今澄勇

    今澄委員 私は沖縄にソアーが置かれておるということは、重大な問題であると思って注目をしたのであります。これは攻撃専門の核兵器なんです。そこで沖縄にこういう攻撃専門の中距離核兵器誘導弾が置かれるということになると、日本も米ソ両陣営のいわゆる核戦争に巻き込まれるおそれがなしとしない。われわれは将来の核兵器のそういう紛争、あるいはそういった、核兵器のソアーが沖縄にできた際における日本自衛隊というものは、一体どういう建前をとっているいか、その際は一体どういう心がまえがあるのか、私は一つ防衛庁長官に聞いておきたいと思います。
  106. 左藤義詮

    左藤国務大臣 ソアーは沖縄で展示をせられただけでございまして、それを見学をいたしましたが、ソアーは直ちに米国に持ち帰られたものというように伺っております。
  107. 今澄勇

    今澄委員 第二の質問に対して――そういうソアーが置かれて原子戦争が起る可能性が多いが、そういう場合に、日本防衛庁というものは一体どういう態度でこれに臨むかということですが……。
  108. 左藤義詮

    左藤国務大臣 これは展示のために便宜持ってこられたものであって、これを使用するというような状況にはない、私どもはさような心配はないというように勘案をしております。
  109. 今澄勇

    今澄委員 日本防衛庁の計画を見ると、飛行機の乗員の養成も、これもどんどん死んでだめ、それから飛行機の数の増加も、今度のF11Fは金が高くて、アメリカとの折衡もうまく思うようにいかない、飛行場もなかなかだめ、予定計画に達しておるのは落ちた飛行機だけ。墜落した飛行機の数は予定計画を上回っておるという状態であります。あなたは防衛庁に見えておられるけれども、私は今日の日本防衛の一番重大なかなめは、沖縄であると思うのです。その沖縄にソアーが置かれておるのに、いや、それは展示会だ。アメリカの基本的な方針は、沖縄にソアー、西ドイツにソアーとジュピター、この二つを置くということになっておるのです。だからそういう際においては、これは日本は大へん重大な影響を受けるわけです。あなたは防衛庁の長官に就任されて、ぜひそれらの問題もなるべく御検討を願わなければならぬ。飛行機の乗組員が落ちてお弔いをするのに便利だというのでは、何にもならぬ。なぜ防衛庁は沖縄のソアーの展示会に代表者を送ったかということを長官から聞きたいと思います。
  110. 左藤義詮

    左藤国務大臣 お答えいたします。フィリピンの演習を見学いたしましたが、その帰途、沖縄に展示されておるというので見学をしてきたのでございまして、私どもの現在持っております情報では、ソアーが沖縄に配備されておるというようなことは、私ども伺っておりません。
  111. 今澄勇

    今澄委員 そこで、岸さんは過ぐる本年三月三十一日の内閣委員会において、「沖縄には潜在的主権があるのであるから、アメリカが全部そこを放棄して逃げたという場合には、私は日本本土であるからには、これに対する侵略に対して、日本が祖国防衛意味から出動して行くのは当然であろうと考えます」という答弁をされておる。そこで沖縄にソアーが装備せられる、中距離弾頭兵器であるから、沖縄から仮想敵国に対してこれを撃ち上げる。そこで仮想敵国がこの沖縄に、それじゃどうもならぬというので押し寄せてくる。そこでアメリカが後退をする。そうすると日本の自衛隊が、これはわが国の領土であるからということで出動しなければならぬということになると思うのですが、こういうソアーというような重大なものが沖縄に置かれ、そのあなたの言明と考え合せると、これはなかなか重大なことになると思う。総理見解を聞いておきたいと思います。
  112. 岸信介

    岸国務大臣 ソアーの問題については、今防衛庁長官がお答え申し上げましたように、今日沖縄がそれで装備されておるという事実は、私ども認めておりません。ただ展示会が行われただけだと思います。今引用されました、三月三十一日でありましたか、内閣委員会においての私の答弁は、いろいろな場合を仮定して、いろいろな質問が出たわけであります。私はそのお答えは、沖縄の防衛ということは、これは第一段において言うまでもなく、米軍がこれに当るものであることは言うを待たないのであります。しかし、それでは米軍が一切なくなった場合において、一体ほおっておくのかどうかという問題については、われわれはやはり潜在的主権があるのだから、日本の祖国防衛という、他から不当に侵略されない、またその侵略に対して防衛するというのが自衛隊の本旨でありますから、その任務の範囲に入るということを言ったのであります。作戦的とか、そのときの場合において、果して日本の自衛隊を送り得るかどうか、四囲の状況その他が米軍が敗退してそこを捨てたというような非常事態において、現実にとうするかという問題ではなしに、法律問題として一体沖縄に対して日本の自衛隊というものは、いかなる場合においてもこれはアメリカにまかして何もしないのかどうかというような質問に対しまして、法律的にこれはやはり潜在主権を持っており、この防衛というものはそういうふうにアメリカが第一段に当るけれどもアメリカが捨てるという場合においは、われわれはやはり祖国の一部として考えなければならぬということを申し上げたわけです。現実にそのときに自衛隊が行ってこれを防衛することができるかどうか、またそれが適当あるかどうかというようなことは、そのときの事態に即して考えなければならぬにとでありますが、法律論としてはやはり私のただいま申し上げたしように考えなければならぬ、かように思います。
  113. 今澄勇

    今澄委員 私はここで総理のあげ足をとって法律論をやろうとは思いません。時間もありませんが、ただ大事なのは沖縄にもソアーが来た。韓国はもとより今核兵器でもう装備をしております。日本も近く防衛庁はナイキをアメリカから分けてもらおうということが非公式な折衝をして、アメリカのレムニッツアー氏の大体の非公式的な了解を得て、いつでももらえるようになっている。そこで私はこういう今日の状態に立ち到った際は、わが日本の自衛隊というのは何といったって、昔の小銃は一分間に四発しか撃てなかったが、今はもうアメリカの自動小銃で三十二発も出るのですから、火力の場合は小銃においても何倍も上っているのです。そうすると二・二六的な国会を取り巻くとか、あるいは国内の治安とかいうようなときには、今の日本の自衛隊の一中隊も使ったならば上等なんです。だから国内の内乱だとか国内の治安確保のためには、もう今の自衛隊というのは大きくなり過ぎて、全然国内の治安どころの騒ぎじゃない。一つの戦争に向いているわけです。しからば世界のどの国もだんだん核兵器を持ち、わが日本の沖縄にも核兵器が来た。こうなると、人が機関銃をもっておるのに、こちらは小銃で日本防衛日本の自衛隊は一体やるのがということになる。だからほんとうに核兵器を持たないのである、核兵器の製造、核兵器の実験、核兵器の使用、核兵器の保有、全部これを禁止するのであるという岸さんの話がほんとうならば、わが日本自衛隊の存立の意味は、岸さん、ないですよ。もし日本の自衛隊にも核兵器を持たせ、よそが機関銃なら日本も機関銃を持たせ、そうしてやるのならこれは存在の意味もあるのです。だから私はもし岸さんが言われる核兵器の保有、実験、使用その施すべてを禁止するのであるならば、わが国の自衛隊は当然旧警察予備隊以下、日本国内治安が保てる程度の軽微なものでけっこうではないか。もしそれじゃだめなんだ、大きな戦いがあるのだということになると――私どもの分析ではわが日本国内には小さなそういう対立はあるかもしれないが、大きな内乱はないと私は思うのです。まず宗教的な対立がない。民族的な対立がない。わが日本国内で今日世界各国で見られるような大規模の内乱、騒擾があるとは思われない。これは防衛庁の見解も同じだろうと私は思うのです。そうなると、日本防衛庁が持っておるあの部隊というものは、もうこの際大きくこれをふやすか、それとももうこれは全然別個なものに切りかえるかという段階に来ておるのじゃないか。もし岸さんが核兵器についてその四つを断じて自分はやり抜くということを言われるならば、もう自衛隊は縮小するよりほかに道はない。私はそう思うが岸さんの見解はどうです。
  114. 岸信介

    岸国務大臣 私は核兵器の製造、使用、保有、貯蔵というようなことを一切世界的にやめ、また、原水爆の実験等もこれは絶対にやめなければいかぬそうして国際的にそういう協定が作られて、今持っておる大国間においてそういうものを兵器として使わない。またそういう製造をしないということを全世界に向って訴える、そういうことをすべきものであると思います。しかしあの際に、さらにこれをきっかけとして、一般的軍縮ということも行われていかなければならないということを私としては考えております。しかし現状はそれができておらない。しかしわれわれがこれに対して熱心な努力をし、また私はどういう場合においても自衛隊を核武装しないということを言っておる考え方も、この理想をどうしても世界的に、国際的に成立せしめなければならぬという考えであります。しかしそれを禁止した場合において、いわゆる通常兵器――通常兵器と申しましても、言うまでもなくいろいろな科学的な発達がありますから、そういう技術の研究はしていくことは当然でありますが、その場合において、通常兵器によるところのそういう実力あるいは軍備が、一切世界からなくなるということにはまだほど遠いだろうと思います。こういう意味において、今お話のようにわれわれが自衛隊を核兵器をもって武装しないということが、直ちに自衛隊というものは意味をなさないものであり、これを縮小しなければならないというような見解は私は持っておりません。いかなる場合においても、日本の外部から、また内部からの侵略に対して、日本の平和を保っていくことは自衛隊の本旨であり、今の国際情勢から見ますると、内外情勢として、決して私は自衛隊を縮小し、なくさなければならない事態ではない、その根本の認識については、あるいは今澄委員と私は違うかもしれないが、私はそう思っております。しかし今言ったような意味において、核兵器そのものの製造、使用、保有というものは、人道的見地からあくまでもこれを禁止し、そうして原子力はもっぱら平和利用に向けるように努力していくことは当然であります。
  115. 今澄勇

    今澄委員 そこで岸さんにもう一つ伺いしたいのは、アメリカ日本との関係は、もう日本の自衛力を増強しなければ、アメリカ日本に協力しないぞという段階に来ておると私は思うのです。だから日本アメリカとの安保条約、行政協定の改訂、沖縄の施政権の返還あるいは東南アジアに対するフアンドを作って、日本が経済の苦境を中共貿易その他以外で乗り切ろうとする構想を実現するためには、どうしても自衛隊のある程度の強化に踏み切って、この点アメリカ意思に沿うことなくしては、なかなかアメリカとの提携は困難なのではないか。だからこそ岸さんは最初池田さんを防衛庁の長官に求めて、池田・ロバートソン会談以来、日本の自衛隊を核装備に踏み切るべきであるという主張を平時非常にされておる池田さんを防衛庁の長官に迎えて、アメリカとの折衝をして、これらの問題で岸内閣が一歩大きく前進しようとしたのではないか、これは私の思いですよ。今日アメリカとの間には、もう日本防衛力をアメリカとの外交折衝の引出物に出さなければどうにもならぬというそのことは、日本防衛というものは日本自体のためにあるのではなくて、これはアメリカの世界的な防衛の一環として、アメリカの求めに応じなければ、日本が求めておるところのものが取れないのではないか。  もう一つは、韓国と台湾は日本が中共貿易などやれば、すぐボイコットをするという東洋におけるアメリカの憲兵的な立場を持つ役割をも果しておると思うのです。日本日本立場から貿易においても防衛においてもやろうとすれば、そういう台湾、韓国等の大使が話し合って、ボイコットが行われ、日本の経済に圧迫が加えられるということは、やはりアメリカの憲兵的な態度日本に行われておると見ております。だから日本防衛というものは、日本を中心とした立場で、あなたの党の中でも辻さんなどが言っておるような日本中心の立場で――われわれと考えは違います。これは軍人さんですから違いますが、そういう考えではなしに、日本の今の防衛なり今の日本のすべての立場が、そういうアメリカの世界的な政策に沿えなければ、多くの反撃を受け、援助ももらえなければ、いろいろ圧力が加わるということが、日中貿易を今日まで困らせ、日本立場を非常に困らせておる原因であるから、岸内閣というのはアメリカと手を握って片方は踏み切って、池田さんが言うたようにがっちりアメリカ陣営でいこうとするのか、それともアメリカ陣営と手を握っておるが、表向きは国会答弁その他をやわくして、やわらかくいこうというのか、それともこの両陣営の意見を入れて、日本独自の立場から日本の外交を割り出そうとするのか、私は非常に重大な岐路に来ておると思うのです。もし岸さんがよろめけばこちらの人は痛烈な批判をするし、こちらの人も痛烈な批判をして、今やもう日本の外交路線というものはそう世界をごまかしていくわけにはいかぬと思うのです。アメリカに接近し日本の自衛隊を増加するより、中共貿易その他の問題から来るマイナスを東南アジアの救済その他をもって切り抜けながら日本はやっていくのだという考えを岸さんが持っておられるというならば、その意見をそのまま率直にここでお答えを願いたいし、そうでない、別な意見をわれわれは持っておるというなら、それを率直にお答え願うことが、国民がどうも岸内閣に対して、一体何を考えておるのだろうかという両岸々々という批判を払拭するゆえんになると思うのです。岸さんのお答えをお願いして私の質問を終りたいと思います。
  116. 岸信介

    岸国務大臣 今澄君の日米の関係が、防衛問題についてアメリカからの要求をいれなければ日米関係というものがうまくいかない、あるいはそれがアジアにおける日本の進路にも非常な影響があるというふうな御意見でありましたが、私はそうは思っておりません。この防衛の問題は、あくまでも日本の憲法と自衛隊法がその本来の趣旨を明確ならしめておるのでありまして、われわれは国力及び国情に応じて防衛力を増強する、そうしてみずからの手で祖国を守る、他から不当な侵略を受けない、安全に平和に国民が生活できるというこの安心感を得るために、われわれは国情と国力に応じてわれわれの自衛力を増していくという方針を貫いております。さらにしかしながら、日本の国際的における防衛の力が十分でない問題において、安保条約によるアメリカ軍の駐留によって日本の安全を果していくというのが現在の態勢でございますが、われわれの念願は、われわれの手でわれわれの祖国を他から侵略されるようなことのないように、安全を保障していくということに向って努力しておるわけでありまして、決してこの点において私は日本の自衛隊というものがアメリカ要求に従い、その考えを迎えるためにわれわれがこれを増強しておるのでは絶対にないのであります。その考え方は常にアメリカ日本との交渉におきましても折価におきましても明確ならしめておるのであって、今、今澄さんの御説のような事態では絶対にない。あくまで私は日本の自主的な立場でこの問題を扱って解決していかなければならぬ、これは一貫した考えでございます。
  117. 楢橋渡

    楢橋委員長 淡谷悠藏君。
  118. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はまず岸総理日本の農政の基本的な問題、特に差し迫っております米価等の問題について、総理としての抱負と決意をお聞きしたいと思うのであります。と申しますのは、日本の農政は今一つの大きな危機に立っております。これは農林省一省、あるいは農林大臣一人の意思ではどうにもならない大きな転換が要求されております。予算の編成に当りましても、しばしば農林当局の要求が、財政の必要からあるいはその他の事情で大幅に削られておるといったような場合もありますし、また外国の食糧の問題等にも関連がございますので、何といってもこの際、私は、岸総理にはっきでり日本の農業、日本の農民の危機の認識を持たれまして、この際非常に大胆なしかも勇気のある日本農政の転換を決意してもらわなければならぬと思うのであります。と申しますのは、御承知通り日本の農業は戦争当時にめちゃくちゃに破壊されてしまいました。生産力においても農民の生活においても、全く目も当てられないほどやっつけられてしまったのは、岸総理自体もよく御承知だろうと思います。しかもこの間に農民は、生産いたしました食糧はほとんど飢餓供出の形で取られてしまった。その結果終戦後も大へんに日本の食糧問題は混乱を来たしまして、この急場を救うためにはどのようなことでも一応は受け入れて、できるだけ農民の食糧は供出させようという意欲から、あるいはなけなしの農具を配給したり、あるいは放出のジュースとか衣類とかあるいは酒類を配給したりして、何とか必要最小限度の食糧だけは補充しようといったような考えから、今日まで日本の農業は持って参りましたが、どうも最近になりますと、この食糧事情がやや安心ができるような状態になったように思われております。しかし内部に入ってみますと、決して基本的な線で安心ができないのであります。たとえば今年もまたおそらくはだいぶたくさんの外国食糧の輸入が必要とされているでございましょうけれども、まず第一に日本の食糧をこれからいつまでも外国からの輸入に待って補っていくのか。それともこの際日本国内において、食糧の自給をはかるのか。この二つの方向について、総理としてはどのようにお考えでありましょうか、その点を聞きたいのであります。
  119. 岸信介

    岸国務大臣 日本の食糧の問題につきましては、日本の食料政策に関する過去のわれわれの経験から見ましても、また日本農業の立場や人口の増加の状況から見ましても、非常にむずかしい問題でございますが、しかし私の根本的の考えとしてば、なるべく完全に自給自足するということにつきましては、相当な困難があると私は思いますが、その食糧の自給度を高めていくような方向にあらゆる政策をとっていきたい、かように考えております。
  120. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 自給度を高めていくと申しましても、これはいろいろな方法がございましょう。これはできるだけ早く自給策をとった方が、日本としては最も賢明な道だろうと思いますが、この可能性に対する認識がございますかどうか。     〔委員長退席、西村(直)委員長代理着席〕 これは総理が詳しくおわかりにならなければ、農林大臣からでもけっこうですが、向う何年ぐらいでどの程度の自給ができるのか、詳しく承わっておきたいと思います。
  121. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 食糧の自給度の問題でございますが、わが国の農地の狭小でありますこと、これらは現在深く耕し、同時にまた最高度の農業技術を活用いたしまして、そして高度の生産を上げているのでございますが、これを年次的に長期の計画もって推進するということはいたしておりますけれども、全部自給をするということに持ち来たる点につきましては、困難性があることは認めざるを得ないと思います。従いまして長期の経済計画等におきましても、その計画にのっとって最高度の自給態勢をとって参りたい、こういうことに進んでおります。
  122. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも今の御答弁では満足いかないのでありますが、食糧の自給度を高める方法を、深耕その他の高度の技術にたよるというのでははなはだ徹底しない。根本はやはり土地の問題であります。日本は土地が狭いと申しますが、全国土の一割五分か一割六分しかまだ耕地になっていない。これは世界的にいいましても非常に少いのでありますが、日本の国土内で拡張し得る耕地は一体どれくらいあるか、お調べになりましたろうか。
  123. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 終戦後におきます緊急開拓等におきましても、すでに四十四万町歩程度の耕地の拡張はいたして参りました。なお今後、客観的に見まして耕地の拡張を期持し得るものは、今のところ大体百十万町歩程度予定して、それに即応した計画を立てたい、こういうことになっております。
  124. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは岸総理にも一ぺんお答え願いたいのですが、やはり食糧問題をできるだけ自給していこうといたしますには、土地の開墾、これを基盤にいたしまして、あるいは資金その他の方法でバック・アップしていかなければ、これは何年待ってもだめなんです。私はやはり食糧関係が、外国の輸入から若干小康を得ましたので、農林当局も政府体休も安心しているのじゃないかと思う。決して事態は安心できるような状態ではございません。農業生産品が、よしんば外国の輸入品と一緒にして問に合ったにいたしましても、この農業生産物を作る農民自体の生活は、今のような状態では大へんなことになっている。ここにやはり私は、基本的に日本の農業というものが転換しなければ、農民自体が立っていかない、農民を食糧生産の用具とするような考えは、もう日本の農政から脱却してもらいたいと思う。あくまでも農民本位の農業政策に大胆に転換すべきだと思いますが、その点は総理、いかがでございましょうか。
  125. 岸信介

    岸国務大臣 もちろん農業政策の根底は、私は今淡谷君の言われるように農民を中心にして、その生活安定及び向上、その農業経済の安定、向上ということを通じて、これらの農民の生活の安定、向上をはかるべきことが中心問題でなければならぬ、かように考えております。
  126. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それには、やはり日本の農業の基本的な線というものをもう一ぺん太く引き直して、たとえば耕地にしましても、向う何年間でどれくらいの耕地を得て、どれくらいの自給度をとるかということを、まず基本的にはっきり立てておく必要があると思う。  一方また、現在あります耕地が、工場あるいは演習地等のためにつぶれていっているのであります。現在ある耕地をつぶしていって、また新しく困難な開墾をするという形では、永久に耕地はふえない。特に私が総理にお伺いしたいのは、自衛隊が、かつて日本の軍隊が持っておりました演習地を、失地回復みたいに片っ端からまたもとの演習地に返そうというので、開墾に入植しておりますものをどんどん演習地に要求しておるところが、全国に非常用にたくさんある。これに対して総理はどういうお考えを持っておりますか。
  127. 岸信介

    岸国務大臣 御質問の、自衛隊の必要な演習地あるいは訓練をする場所、あるいは工場の用地等々と農地との関係につきましては、これは具体的のそれぞれの場所によって、適切な解決をしていかなければならぬと思いますが、先ほど来お話がありましたように、日本の耕地、あるいは開墾適地とかあるいは耕地にし得るという場所も相当あると思いますが、ある意味から言うと、やはり先ほどお話があったように、農民の生活というものの安定、農家経済の向上、安定をはかる意味から言って、ただ技術的に開墾が可能であるからということよりは、むしろ経営的な見地をよほど重要視しないと、それによって食糧ができても農家の経済はよくなっていないということもございますので、そういう各般のことも頭に置いて処理していかなければならない問題であると考えます。ただ自衛隊がかつての陸海軍が持っておったようなところを、失地回復のような意味においてどんどん演習地等に要求するというような事態がありとすれば、それに対しましては十分に考慮をしていかなければならぬ。今申しましたような見地で私は開墾の問題を処理していきたい、こう思っております。
  128. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は総理に事実の認識をはっきりしてもらいたいのですが、具体的に申しますと、日本原、すぐ近くには茨城の百里原というのがあります。あそこでは、今総理がおっしゃったように確かにりっぱな耕地です。りっぱな耕地ですが、生活しております開拓民が非常に経済的に恵まれないので、むしろそんな農業をやっているよりは、自衛隊に土地を高く売った方がいいじゃないかという形で、これがどんどん買い取られている。この開拓地の生活の苦しさというのは、私は日本の農政の方向に非常に大きな責任があると思う。開墾地の中でも、まじめにやっている人は土地を放したがりません。同じ開拓地でも、どうも農業があまりうまくなく、また経営が上手にやれないで、もう百姓なんかいやだというのが、むしろ自衛隊の方に土地を高く売りつけようという動きが見えてきている。こういう傾向が一般的に出ますならば、農民が自分たちの農産物を作るのじゃなく、土地を売って逃げようという傾向が見えますならば、私は日本の開墾問題は根本的にひっくり返ると思う。これはやはり一たん入植さした以上は、あくまでも農林省がその土地の上に立って経営指導もりっぱにやって、一ぺん入った者を追い出して演習地にするというような方針はとってもらいたくないと思います。総理並びに農林大臣から御所見を承わりたい。
  129. 岸信介

    岸国務大臣 今お話のように、開墾、そういう新しく入植した人々の農家経営というものには、いろいろな困難があることは想像できますが、これはもちろん関係官庁によって十分指導もし、必要なら助成も政府としては行なっていかなければならぬと思います。今の具体的におあげになりました事例は、私事実をよく承知いたしておりませんけれども、ただ方針としては、先ほど申したような方針で進む他は農林大臣からお答えをいたします。
  130. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ただいま開拓地の問題にお触れになりましたが、これは率直に私たちも体験しているのでございますが、従前のやり力では十全を期し得ないと考えております。そこで先般農林省におきましても、将来の開拓地の問題等をもっと前進させたいという考え方から、ほぼかような施策をとってきておるのであります。一つは、従来は土地の取得を急ぎまして、いわば緊急対策の名のもとに入植さしておる。ただいま淡谷君が御発言になった通り、非常に農業に精進して成功している人もありますし、そこに追随し得ないというのもずいぶんありますが、今度大体こういう三つのカテゴリーに分けました。一つは特定中業地区と申しますか、特定の一つの大規模な開拓地等につきましては、これは用地の獲得の前に予備的な調査を周到に進めまして、その上に営農方針なりあるいは開拓の諸計画等を吟味いたしまして、そうして土地を購入した上に大規模な入植をさせるということにしている。もう一つは、その次の中間の段階でございますが、市町村のいわば開拓事業区とでも申しますか、そういうふうなものにいたしまして、これは主として市町村等の協力によってその開拓の事業を進めて参りたい。第三番目には、小規模のものでございますが、主として地元の増反等に充てるものでございまして、これらはその増反の方向に即応いたしまして農業経営を見てやる。こういう三つの範疇に分けまして、この線に沿うてそれぞれ計画の推進なり、あるいは営農方針の指導なり、さらにまた資金等につきましても、その区分に従いまして適応の措置を講ずるように、だんだん改めて参ります。この方針は逐次強化徹底させることによって、従来おくれております開拓地等の問題をも解決して参りたい、こういう所存でございます。
  131. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっきの総理の御答弁で私はちょっと不安を感ずるのですが、開墾地の立地条件だけではなくて、経営状態によっても演習場に使用するようなお話があったのですが、私は経営状態がうまくいってないというのは、入植する場合の慎重なる調査があったはずですから、そう間違った計画は立てておるまいと思う。立てておったら大へんなことになる。ですから、少くとも農林省が計画を立てておったものがうまくいってないというのは、どこか計画の違いがあるのですからすでにできておった、いわゆる入植者の入っておる開墾地に防衛庁が演習場を要求した場合に、農林大臣としては、はっきりこれを断われる自信がございますか。あるいは総理大臣はやれとおっしゃることがあるかもしれませんけれども、あなたはどう思いますか。
  132. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 基地の扱いでございますが、農林省といたしましては関係の大蔵省でありますとかあるいは防衛庁、それぞれと相談するばかりでなく、地元の県その他と十分に打ち合せしておるのでございますが、既墾地等をいわばそれに充てます場合におきましても、慎重な考慮の上にその決定をお願いしておるわけでございます。従いまして、ただ一、二の例をとられまして、直ちにそのために営農の問題をどうするかということじゃなくて、やはりこれは国の、大きな利益の比較考量によって決定されなければならぬことでございますから、その点は一つ御了承を求めなければならないと思います。われわれとしましては、入植者はどこまでも保護し、そうして農業経営の安定しますようには最大の努力を傾注する考えでございます。
  133. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私がくどく申し上げますのは、さっきの総理並びに農林大臣の御答弁によりまして、できるだけ食糧の自給度を高めるという基本方針が変らないのでありますから、それには現在の水田による米だけではなかなかこれはむずかしいでしょう。勢いこれは酪農その他の方法によって、麦の食糧等も取り入れなければ永久に自給はできないと思う。そうなりますと、やはり大きな問題は開墾地の問題であります。まだ開かれない土地もたくさんあるのですから、この開墾の農政というものがはっきりしていなければ、幾ら待っても自給というものはできないと思う。さしあたりことしもまた外国食糧が入るわけになりましょうけれども、最近起っております配給辞退の問題であります。一方では外米を入れあるいは外麦を入れる、一方では配給を辞退する、これは一体食糧問題の根本をどこでつかまえたらいいのか、迷わざるを得ないのです。それでもなおかつこうやって外国食糧をどんどん入れていく方針でございますかどうか。特に麦作等は、もうかなり値段が下って困っておるようですが、これに対していつまでも外国の食糧を輸入するということは必要ないのじゃないかと思いますが、この点はどうですか。
  134. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 麦作のことでございますが、現状の日本の食糧実情としましては、なお外国の麦を入れざるを得ない客観情勢にあると考えます。同時に内地の麦の問題でございますが、これはただ単に開拓地ばかりでなくて、日本全体の農業経営の上から非常に重大な問題でございますので、農林省としましては畑作の改善という政策をも打ち出しておりますが、重要な課題として、これはその増産なり、さらにまた、それが農家経済に及ぼす影響なり、さらにまた食糧としての外麦等々のむずかしい問題もありますけれども、これらを勘案しまして、そうして安定した方向に持っていきたい考えであります。  なお開拓地の営農の問題でございますが、これは立地条件が悪いためにかなり困っておりますことは、もう御指摘の通りでございまして、これは先ほど申し上げました通りな方法によって、もっと周到な指導も加え、同時に金融その他の措置も改善しまして、そうして自立できるような方向に強く打ち出したい考えでございます。
  135. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は、日本の農業は終戦後機械が入ってきたり、あるいはさまざまな農法が入ってきましたので、従来の自給自足的農業から商品生産農業に変ってきたと思う。しかるに農政の指導方針というものは、昔ながらの、百姓は飯米農家であるという観念に立って、新しい流通過程に対する指導が少しも行われていないというふうに考えます。これは大体統計によって調べてみればわかりますけれども日本の農家の階層分化は非常にはなはだしいのであります。三割農政といわれますけれども、純粋に農業で立っておるのは三割よりもなお少いくらいにいわれております。供出の米等を見ましても、大体はこの三割の農家が出すのが多くて、あとは配給を受ける農家が多い、ひどいのは農村労働者の形態に落ちてしまって、今や新しく労働問題として扱わなければならないというような農民も出てきておるわけであります。こういった階層分化を農政の上から見て、どういうような指導方針をもってするのか、どのような農家を中心にして農政を進められるのか、その点もはっきり伺っておきたい。
  136. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 零細農対策の問題におのずからなるわけでございますが、これは先ほども申し上げましたけれども、なお日本には乏しいとはいいながら開拓すべき農地の予定地等もございます。かような方面に農家が進出し得る余地のあるものにつきましては、いわゆる地元増反という小規模なものではなくて、さらに拡大したものとしてさような零細農もこれに収容するような方策をも強化しなければなりませんし、小さいとはいいながら地元増反も非常に大切なことでございますので、この方面にも強く打ち出したいと考えております。  なお、農村の累増していきますところの労働力は、やはり長期な経済計画の推進によりまして、相当部分は第二次産業、第三次産業等に収容してもらうという方策をもあわせて行わなければならぬものと考えておるわけであります。
  137. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は、そういう広範な農政の方向があるがゆえに、特に総理大臣の答弁を求めておるわけでありますが、第一日本の食糧の自給ができないと申しますけれども、どうも最近になりますと、米、麦を食糧とする考え方から、むしろ一歩進んだ質的変化を遂げた食糧の需要も増してきているようであります。たとえば肉とか野菜とか果物、牛乳とかいうものが、非常に要求されてきておる。これに対してまた農政の指導方針が動いていることも事実でありますが、これが酪農その他を奨励いたしましても、乳価などが非常に下りますので、せっかく伸びてきました酪農が、これからまた減っていくのじゃないかという心配も多分にある、この根本的な方策は一体どう持っていきますか。商品経済農業になってきたこの新しい農政の打ち出し方はどういうふうにお考えでございましょうか、お伺いいたします。
  138. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 酪農の推進は必ずしも商品化をねらったものとは私は考えておりませんが、わが国の農家の生活自体が、御承知通り、われわれとしましてはいわば北欧の酪農地帯におきますようにだんだん質的変化を遂げ、そうして一面においては自給度を高めて参る、そして乳なりあるいは肉なりあるいは酪農製品等によって食糧を得る、こういう傾向に行きますことは非常に望ましいことでございまして、これは酪農のだんだん進んで参りました町村等には、微弱ではございますがその傾向が出て参っております。しかしながら何といいましても日本の固有の国民生活の態様と申しますか、数千年来の生活経験からこれは来ておりますから、本格的にはなかなかいかぬのであります。ここに一つの難点がありますことは淡谷さんも御承知通りであります。しかしながら流通の関係におきまして、これを改善し、そうして商品として非常に不安定なものにしないということはもう当然のことでございますので、当面だんだん下向を強くしてきておりますところの乳価の問題につきましても、今後直接にはまずさしあたりの問題としましては、消費を増進するということ、同時にまた生産の過程におきましてもやはり生産費を低下する方策をとって、そうしてこれにたえ得るだけの力を養わなければならぬ。生産過程における合理化と同時に、また消費の増進に伴っての問題をあわせて進めて参りたいという考えに即しておるのでございます。
  139. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣にもう一ぺんお聞きしたいのですが、今酪農の行き方は必ずしも商品生産を旨としないということがありましたが、米や麦と違うのです。米や麦の生産は現在も農家一戸でもう一人の国民を養うに足らぬほどのまことに生産性の低い農業でありますが、酪農になりますと、一戸の農家がもう何十軒、何百軒という人の需要を満たすような乳その他の酪農製品を出します。そうしますと、農家自体の自給の目的だけでやるのであってはすぐ行き詰まるのです。特に最近においてはそこまで行きませんけれども、農家か貧しいから自分のうちでは乳を飲まないで、できるだけ乳を売って肥料に変えてしまうという傾向が強い。飯米でさえも売って、金を求めておる農家が多いのであります。これはどうしても農家自体としては、自給経済から脱却して現金収入を得なければ立っていかないというのが、最近の資本主義制度下における日本農業の実態であります。これに対して酪農家なんというものも、うちで使うのは当然でありまするが、うちで使ってもどうにも解決のつかない面は、大胆率直に商品経済の線に乗せなければ、私は酪農は成り立たないと思うのでありますが、この点は大臣はどうですか。
  140. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 いろいろの見方がありますが、私も今の淡谷君のお説につきましては反対はいたしません。従いましてこの現実に即して、流通過程における乳価等の問題も適切な方策を立てたい、こういう信念で進んでいこうと思っております。
  141. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私の説とは正反対だと言われますと私はもう少しお聞きしたいのですが、一体酪農家というものを商品経済の線に乗せないで、自給的な農業の線で持ちこたえていこうというのが大臣の考えであるならば、具体的にどういう形をとりますか。たとえば一戸一戸の農家で牛一頭、二頭養って、とった乳を飲む、あるいは鶏の卵を食べて、しまいにはとった米まで自分で食べればいいということになったら、日本の農業の破滅だと思うのです。やはり食糧生産は農家自体のためにも生産するが、社会性を持った食糧生産に転換していかなければ、新しい農政の転換はないと私は見ておる。そこまで大臣はお考えになっておるかどうかという点を伺います。
  142. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 私はあなたの認識に反対だと申しておりません。あなたの認識には首肯する理由があると私は言うたのであります。従いまして、流通過程における重要方策としてわれわれはこの面に取り組みたい、こう申し上げたのであります。論議を進めるについては誤解があってはいけないと思います。
  143. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そう言われますと私は言いたくなります。やはりこの段階に来たら、日本の農業というものは従来の農本主義を脱却しまして、近代的な農業に踏み込んでいく必要があると思う。そのためには総理あるいは大蔵大臣にも、思い切って農業投融資というものを財政投融資で出してもらわなければ立っていかない。これはもう自滅するばかりであります。そういう観点からしまして、今の酪農等もここで足踏みしないで、少くとも農業団体に加工、貯蔵、販売の線まで大胆に打ち出すような構想を持たなければ、これは幾ら乳牛の飼育を奨励いたしましても、片っぱしからなくなってしまいます。その構想はございますか。
  144. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 酪農の発展の過程におきまして、かつては農協を中心にして相当な発展の段階に達しておりましたことは、淡谷君も御承知通りです。遺憾ながらその後経営の事情がだんだん変って参りまして、現在農業協同組合等が中心になって、そうしてこれのてこ入れをするというようなことに発達して参りませんことは、私はこれらの問題の推進上からいきましても遺憾を感するのであります。しかしながら政府は一方的にこれをただ単に助長しようといたしましても必ずしもこれは適切なこととは考えません。従いましてやはり農業協同組合側から、同時にまた酪農に従事しております側からも強力なそれだけの一つの意欲を持っていただき、これに対応して政府は適切な施策を講じて参るということが自然のわき方だと思うのでございまして、決してこれは手をこまねいておる意味ではございませんので、情勢を見つつこの情勢に即応した一つの施策をも将来は立てて参らなければならぬ、こう考えておるようなわけであります。
  145. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はこれからの農業というものは、生産の面だけで増強しましても、流通過程において破れたらもう生産した者はひどい目にあうと思うのです。米価においてしかりです。あるいは蚕糸の値段においてしかりです。乳価もしかりです。青森県のリンゴなどは絶えずこういう目にあっておることは、これは農林大臣自体がよくおわかりだと思う。どうしても農政はこの流通過程に手を入れなければ農民自体の解放がない。それには農業行政の根は非常に浅いし、力は弱いという認識を持っております。そこでこの酪農の問題でも、これは深遠ないろいろの理想はお持ちでございましょうけれども、当面この乳価の維持をはかってやらなければ、これは生きものですから急速には伸びないものです。ここで繁殖をなまけたりいたしますと、せっかくの酪農に対する計画が挫折してしまう。当面の乳価維持の方策はどこに持っておりますか。
  146. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 先ほども申し上げました通り、生産過程におきましてその経営の合理化をはかって、やはり生産費を低減するというのも一つの方策でございましょう。第二番目には、消費をどうしてもやはり増進いたさなければなりません。集団的にこれを消費するという仕組みを今度考えていかなければならぬと思いますし、同時にまた乳製品等を作りますメーカーにおきましても、これはやはり国民経済運営の見地から合理化をはかってもらいまして、そうしていやしくも乳価をたたくことのないように極力その経営の合理化をはかってもらって、同時に、いわば国民経済の全体の運営の一環として協力を要請するという態度をとってもらいたいと思います。同時にまたわが自由民主党は、学童給食等におきまして乳製品を相当供給しておったのでありますが、相当この面につきましては拡充して参りまして、そうしてその消費増進の一つの方策にもいたしたい、こういう考えで進んでおります。
  147. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 今三浦農林大臣から自由民主党の政策が出ましたが、総理大臣は、今の農林大臣の言われた自由民主党の政策に対して賛成して下さいますか。政府としてはいかがでございますか。
  148. 岸信介

    岸国務大臣 一般的に申しまして、今淡谷委員お話のように、私も従来からそういう感じを非常に強くしておったのでありますが、農業政策は生産増強の政策があまりに重点であって、流通過程におけるところの市場、マーケッティングの問題の政策がやや不十分である。農業経営そのものが根本的に変っているとも思いませんけれども、しかし流通経済のもとにおけるマーケッティングの問題を考えなければならなぬ。この問題は非常に農業の経営の上からみると重大問題であると思うのであります。酪農の問題に関しまして酪農奨励、それが直らに乳価の下落に対してこれをどうするかという問題が起ってくるわけであります。私どもとしては十分それらの問題については各般の問題を検討をいたし、そうして、これに対処していくつもりでありまして、その点に関して農林大臣が所管の大臣として考えておりますことは、政府としてもこれを、推進して参りたい、かように考えております。
  149. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは一つ総理にお聞きしたいのでありますが、乳価に限らず、最近の農村の傾向というのは、農産物の価格に対する関心が大へん高まっています。これを自由経済のままにしておきますと、今の農民は太刀打ちする実力を持っておりません。ほとんど粗生産の形で、また加工する力もないし、貯蔵力もないし、販売の機構も持っておりませんので、買いたたきをされますのは当然で、繭の値段などでもそういう傾向が非常に強い。今の米価を政府がきめるという点も、こういう点の配慮がだいぶあったろうと思いまするが、米価審議会に対する諮問案も近く出されると思いますが、この米価を決定するにつきましても、私は一時的な便宜主義じゃなくて、遠い日本農業の政策の樹立の上から見て、この際立方を変えた方が適切じゃないかと私は思う。従来はパリティ計算でやってきましたが、このパリティ計算ではどうもまずい面が出てきたのです。この点は一つ総理はいかにお考えでございますか。
  150. 岸信介

    岸国務大臣 米価の問題については、御承知通り、米価審議会において審議して、そうして政府においてきめることになっておるのでありますが、近くこれが開催されることになっておるのは御承知通りであります。これの米価を決定する形式、フォームをどういうふうにするかということにつきましては、専門家におきましても、長い間いろいろな点から検討されまして、従来一つのパリティ方式によってきめるという方式が出ておるので、これを中心としてある程度の是正をした、修正をしたものをもって最後の決定をするという方式が従来とられてきております。この方式そのものに対して、根本的に違う議論も最近起ってきておることは私承知いたしております。しかし問題はきわめて重要な問題でございますので、私は米価審議会において十分に審議してもらって、適当なものを立ててもらうということにしたい。今その形式をどうするかという問題に関しましては、それぞれの責任ある官庁におきまして検討さしております。
  151. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも今までの例を見ますと、米価審議会でどう決定しましても、政府のさまざまな家庭の事情から、これを聞かれないという例が出てくる。ときには財政上の問題で聞かれなかった例が多分にございます。やはりこの際米価を立てるにしましても、農政との強い関連性に立って、はっきりした自信を持って私は進んでもらいたいと思う。パリティ計算というのは二十二年からやっておるようであります。これでやっていきますと、一時のインフレーションに対応した速効的な農民の救済は確かにできます。あの当時は食糧が困っていましたから、苦しいというと注射をし、こうやくをはったような工合に、抜本的な措置に出ないできたのでありますが、もう落ちつきもできましたし、当面外国食糧も急にとまるなんということもないようでありますから、この際私は基本的に米価の立て方というものを変えなければ、決して日本の食糧生産の方式は変っていかないと思うのです。     〔西村(直)委員長代理退席、委員長着席〕 パリティ方式は、なるほど物価が上れば米価も上るというのですから、合理的に見えまするけれども、あとの物価の下りますのは、生産の力が変ってきて、生産の力が強まって、自然に経済的に下る。日本の米の生産の形というものは変ってこない。他の物価が下ったからといって、機械的に米価だけを下げられたのであっては現実に合わない。総理もお忙しいから、汽車の中で見られる程度でございましょうけれども、あのたくさんあるたんぼですね。大体現在では五百四十五万町歩といわれていますけれども、この広いたんぼが一本々々農民の指先で苗を植えられたんだという、この非常に立ちおくれた日本の農業技術というものを頭に置いて考えませんと、とうていこの米価の立て方というものは納得いかないだろうと思う。私はやはりこの際、政府は財政的な犠牲を払っても、これは農政確立のためですから、仕方がありません。危機は、自衛隊によって守られなければならない治安上のものよりも、今農村の方に深いのです。今何とか強い自衛方法をとらなければ、農民自体が滅んでいきます。米さえあれば、外国米さえ入れば、農民はどうなってもいいといった考えは、おそらく首相はお持ちになっていないと思いますので、あえて私は強く申し上げるのでありまするが、やはり農民が喜んでこれを政府に売れるような、生産費を償うだけではなくて、生産は拡大生産するような形に、資本蓄積ができるような形に、この値段をつけてやらなければ、これは自給ができないのです。私は今日日本の農政を阻害していますものは、農民を裸にしておった形で、これは非常に大きなものがあると思う。貧乏農民はたくさんおります。飯米も売ります。娘も売ります。土地も売ります。あの開墾地の問題なども、古い観念から、土地所有を先に立てますので、経営が安心できる前に土地の所有を許しますので、農産物を安く売るよりは地面を売った方がいいというので、入植者の七割はいないのです。離農しています。そこでどうしても私はこの際強く農政の転換を主張したいし、そのためにはやはりさしあたり直面しております米価の立て方を、生産費と所得の補償方式で今年あたりは踏み切るのが正しいのじゃないかと私は思う。この点はどうですか。
  152. 岸信介

    岸国務大臣 今お答えを申し上げましたように、私は従来からやってきておる方式と、そういう今淡谷委員の言われるようなお考えや御意見等も参酌して、農林省において原案を作るようにいたしておる、その結果は米価審議会において十分に審議されまして結論を出してもらいたい。今私はその方式を、いずれの方式をとるのだとか、変えるとか、どうするということをはっきり申し上げるまでに――この問題は淡谷君よく御承知のように、いろいろ農政に関する人々の間に意見があり、また財政上その他の見地もございまして、十分に審議会において検討し、それに出すべきで原案につきましては、所管官庁において十分に各般の事情を考えて出すようにということで、研究をさしておるわけでございます。
  153. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういう点がございますので、実は私忙しい総理をわずらわして質問しておりますので、三浦農林大臣は同郷でもございますし、親しくしておりますので、話が大へんしやすいのですが、どうも三浦農林大臣だけではおさまりがつかぬ問題が農政にはございますので、特に私は総理にお聞きしておるのでありますが、さまざま農政上の問題もあると思いますが、私は農政上の意見は、むしろ生産所得補償方式にした方がずっとプラスだと思う。ただ問題は財政問題だろうと思います。なかなか大蔵省がうんと言わないので、これがそういうふうになっているのだろうと私は思うのです。これは農林予算を上げたといわれましても、パーセンテージから見ますとどんどん下ってきておる。これは国民の主食をなす米の問題でございまするから、多少金の点で当面損をしたと思っても、私は大胆に大蔵省でも納得されて、この際抜本的な価格方式に変えた方がいいと思う。第一は今までの農民に対するさまざまなやり方というものは、その当座を糊塗すればいい、農民をどうでも納得させればいいというような形で、大へん安価に扱われておったのです。ですからパリティ方式なんかでも、絶えず動いてきております。けれどもそれがちっとも日本の農業の生産様式の転換にもならなければ、日本の農家の経営の進展にもならない。この生産所得補償方式に従って米価を立てるならば、やはり政府自体ももっと国民に安い米を食わせようと思うと、農家の生産様式に対して関心が強まってくると私は思う。もう直接に財政に響くような形が現われて参ります。私は日本の米の生産様式の問題でも、機械化の問題でも、この辺が経済と同じように底をついていると思うのであります。何とかここで国が力を入れてこれを変えなければ解決がつきません。結局、それでもしも米価を安くしようと思うならば、国が責任を持って、安くしても農家がもうかるような形で、安くしても農家が人並みの生活ができるような方式で、生産様式を変える必要がある、あるいは栽培様式を進める責任が生じてきます。そこにやはり農政と農家の生産とが密着するということは、私は疑いのないところだと思うのであります。ことしは何といってもその点で大胆に踏み切ってもらいたい。これは確かに高くなるでしょう。現在のような非常に封建的な作り方をしておる時代には、米価は高くなりましょう。けれども、国が本気になってその方式を改めようと思うならば、私は道は幾らでもあると思う真剣になりまして、一年、二年高い米価を払っても、農業のためにも農民のためにもこれは絶対損にならない。現在国が持っております外米の量は相当ある、黄変米も相当あると思います。この点をまず私は農林大臣にお聞きしたい。現在手持ちの外米、特に問題になりました黄変米などは、この倉敷料をだいぶたくさん払って、たくさんあるはずですが、実数量がどれくらいございますか、これはむしろ総理に聞かしてもらいたいと思う。
  154. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは計数的にわたりますから、政府委員から答弁いたさせます。
  155. 小倉武一

    ○小倉政府委員 ただいまお尋ねの黄変米の在庫につきましては、四月一日現在で約四万トンでございます。なおこの大部分はすでに通産省のアルコール特別会計に引き渡すことになっておりまして、その引き渡しを完了いたしますと六、七千トンに相なります。これにつきましては、食糧以外の加工用に本年度中に大体処分できるという見込みでございます。
  156. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 外米並びに外麦の数量もついでに御答弁願いたい。
  157. 小倉武一

    ○小倉政府委員 外米と外麦の在庫でございますが、外麦から申し上げますと、小麦は約四十六万トン程度、大麦が、ライ、大麦でございますが十三万トン程度でございます。  次は外米について申し上げますと、準内地米でございますが、これが十四万トン程度でございます。普通外米が二十四万トンというようになっております。
  158. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは、米だけで自給するのは相当つらいだろうと思いますけれども、これくらいの外米、外麦を入れるような金がございますと、日本の農業というものは相当開発できるのです。これは早急にはできますまいが、自給を高度にするという形でいくならば、やはり方針だけは打ち出して、米価なども生産と農政とが密着するような立て方をしなければ、これは一歩も踏み出せない。今まで長い聞苦しんできた農民ですから、一年や二年や三年や四年は政府が少しこの資本を出してやり、金を出してやっても、日本の農政の百年の大計のためならば、これは決してむだにならぬと思います。ちょうど今がいい時期であり、これくらいの手持ちの米があり麦がある。この米があり麦がある間に、根本的な食糧対策というものをはっきり立ててもらいたい。そうして農業を裸にしないことであります。農業を裸にするから一切のものを売り尽してしまうということを、さっき申し上げましたけれども、これがまた農業の発展を阻害するのです。やはり農民には、自分の力で貯蔵設備を持ち、自分の力で販売機構を立てるような資本蓄積を許さなければ、近代的な農業とはいえない。食っていけるからいいだろうという形では、新しい農民とはいえない。米価の算定に当っても、この点は十分に考えられて、一定の生産費の中には拡大再生産のためにする資本蓄積の面までも考慮してやって、そうして発展させなければとうてい持っていけないと私は思う。国民の半分に近いものが農民なんですから、この農民をなくして日本の農業の意味はない。それをどうも今までは農業生産費だけの農業でしたから、生産品ができれば農民はどうなってもかまわぬというような形が強く支配して参りましたが、これは民主主義の今日、とてもがまんできないことであります。どうかそういう点で十分お考えを願いたい。ことに麦なども、開拓さえ進むならば、私はまだまだ国内的にたくさんのものができると思います。今九州では雨害というのがまたできたそうでありますが、本来ならば一回や二回の災害で音を上げなくてもいいくらいな底力を農民に持たしてやるのが正しい道なんであります。一年や二年凶作になっても独自の力でやれるぞという力になってくればいいのですが、現在の農業というものは、災害のたびに悲鳴を上げざるを得ない、ほうっておけば死んでしまいます。そこに一面裸農民の苦しい観点がございます。やはりこの際も災害の対策に対して十分な考慮を払ってやっていただきたいのであります。特に麦などは、国内でできる麦は、できるだけこれを買い上げて、外麦に依存することをなるべく少くしなければならぬと思うのでありますが、現在あれほどたくさんの小麦を入れるというのは、何かこれは食糧上の問題でございましょうか。それともまた別な関係で外麦の輸入をしなければならないのですか。これは通産大臣がおられますといいのですが、大蔵大臣にお答え願いたいのであります。麦は食糧の必要上から入れるのか、他の貿易上の必要から入ってくるのか、この点はどうですか。
  159. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 わが国の食糧の需給の点から外麦を入れておりますので、別に他の理由はございません。
  160. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 ちょっとお答えが違っておったようですから……。外麦の輸入をしますのは、食糧の不足を補うために入れるのか、あるいはこの輸入をしなければ、こっちの輸出がとまるからやっているのか、その点はどうかという問題です。食糧必要上の絶対的な点から入れるのかどうか。
  161. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 貿易のバーターであるとか、あるいは経済の協定だとか、そういう意味の何ではございませんので、主として食糧の需給をする、食糧の調整をするという観点から入れておるのでございまして、他に制約は受けておらぬ、こう考えております。
  162. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも外の麦だけがどんどん入ってきて、内地の麦が売れ余るという傾向もあるようでございます。こういう点は、大臣も新任早々でございますから、まだ十分お考えないかもしれませんけれども、特にこの際は必要量以外は輸入しないという方針を立ててもらいたい。これはどうでしょうか、必要以上の小麦は入れない、この基本線に立って、私はやはり自給度の高進に尽してもらいたいのです。これは総理にも聞いておいていただきたい。
  163. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 麦類の輸入につきましては、先ほど申し上げた通りでございまして、食糧を調整する、食糧の対策として入れるだけでございまして、ただこのために貿易に便宜になるとか、あるいはこれを促進するということは、それから流れてくる効果でございまして、それは別に主としてねらっているわけではございません。それから最小限度に輸入量をとどめるということは、もう根本義でございますので、それはぜひともさようなことにしたい、いやしくも余剰なものは入れない、ぎりぎりにしても輸入はむしろ押えていくというのが、やはりわれわれの食糧管理の要点であると考えております。
  164. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 総理はお急ぎのようですから、一応総理に対して質問をまとめたいと思いますが、米価に対しては、今全国の農民が大へんに気をつけてこれを見守っているわけです。昨日も農林省の方にはすわり込みがあったりなんかしまして、漸次真剣な形が外部に出てきているようであります。米価審議会も開かれることはわかっております。どうか米価審議会における審議の経過を十分慎重にお考え願いたい。大蔵大臣にもさまざま犠牲はありましょうけれども日本の農政の根本的な立て直しのために、この際犠牲を払ってもらいたい。やはりパリテイ計算から生産所得補償方式に変ってきますと、これは非常な違いが出てくると思います。また違いが出てこなければ、農民が騒ぐわけもないのであります。その際、きのうからのお話を聞いておりますと、だいぶたくさんのたな上げ資金もあるようでありますから、この際そういうものを使ってくれると、私は金が生きてくると思います。農民を殺して金をためる必要はないと思います。その点でいろいろ御審議のあれもありましょうけれども、この際そういう財政的な面での十分なる御援助を願いたいと思います。岸総理もその点は決して御異はないと思いますので、その点はどうでございますか。一つ大蔵大臣からも聞いておきたい。
  165. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 米価につきましては、先ほど総理大臣から扱い方のお話がございまして、ただいま政府といたしましても、関係省の間でいろいろ審議はいたしております。しかし最終的には米価審議会で決定を見ることだと思います。まだ結論を得ておらない、この点を御披露申し上げておきます。
  166. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 審議会でその辺の答申が出、多少の財政的な犠牲があっても、そういう点が正しいという線が出ましたならば、これはむろん大蔵大臣御異はないでしょう。念を押しておきます。
  167. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 米価審議会の答申を待って、最終的に決定する考え方でございます。もちろん筋の正しい、理論の通った米価でありますならば、私どもも異存はございません。
  168. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 岸総理に最後に一つ念を押しておきたい。あとは三浦農林大臣にまたこまかしい点をお聞きしたいと存じますが、この米価の方式が変って、これはどうせまたいろいろな予算上の変化もあると思います。災害なども起っております。それからその他農業以外の問題等でもたくさんございますが、この際やはり補正予算を出して、農民に不安をなくした方がいいように思います。いろいろな事情もございましょうが、補正予算を組む意思はございませんか。
  169. 岸信介

    岸国務大臣 いろいろ緊急総合対策に関連しての農民やあるいは中小企業等に対する関係から、補正予算を組んだらどうかという御意見もありましたが、これに対しましては、大体三十三年度の予算が一応そういうことも見込んで編成をされておる場合には、その必要ないということを申し上上げました。しかしその後における災害とか何とかに対する問題が出ておりますから、これらに対しましては、それぞれ予備金や金融その他の方法において対策を立てておりまして、私どもとしてはこの際補正予算を編成する必要はない、かように考えております。
  170. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 しかし、ただ私心配になりますのは、米価審議会などでこういう方式でいくのが正しい、このためには予算措置が必要だという場合、これは予算上の関係でできないというふうに逃げられるのがいつもの例であります。予算上の関係で逃げたんじゃいつまでたっても解決はつきませんから、米価審議会の方に重点を置いて、今大蔵大臣が言った通り、筋の通った決定ならば、これは一つ補正予算を組んでも、農政革新のためにやり抜こうというお考えはございませんか。災害も大きい問題です。しかし災害は一時的に起りましょうけれども日本の農政の根本を立て直すということは、特に半分に近い農民のやっております米の価格の立て方を変えるというのは、非常に大きな問題でございますから、その点一つ踏み切っていただいていいと私は思いますが、どうでしょう。
  171. 岸信介

    岸国務大臣 先ほどお答え申し上げましたが、現在のところ政府として補正予算を組む必要なし、こういうことを申しているわけであります。将来いろいろな事態が起りましてその必要があれば、あるいは臨時国会を召集して補正予算を出すというようなことも、それはあると思いますが、現在のところではそう考えておりません。  なお米価の問題についてのお話でありますが、これは先ほど来私がお答え申し上げておるように、まだ未決定の問題でありますし、一つ十分米価審議会においても審議してもらって、そして政府として適当であると信ずるところの米価をきめるのであります。そのために予算の補正が必要になってくれば、それはあるいは補正予算を出すという問題も出てくるだろうと思いますが、それは将来の問題で、現在そういうことを予定して補正予算を組むということは考えておらない、こうお答え申し上げます。
  172. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 総理はお忙しいようですから、あとは農林大臣に重ねて二、三点お聞きしたいと思いますが、今の米価の問題にも関連いたします。陸稲との間に価格差を設けるということがいわれておりますが、陸稲の数は幾らもないし、安いものは当然安くなるのじゃないかということもいわれますけれども、私これもさっき話をしました、日本の農業の転換の上に非常に大きな意義を持つと思います。開拓地が非常に困っているのは食糧なんです。おかしいようだけれども、米代に非常に困っている。その場合山の中の開拓地でも、平地の農家のように水稲の食糧政策だけでやっていくということは、これは将来非常に大きな問題だと思います。その点はこれに関連いたしますが、一体大臣は開拓地の食糧問題はどうお扱いになるつもりでありますか。
  173. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 開拓地におきましては、やはり穀蔵類の重点はどうしても麦であり、あるいは温暖地においては水稲等が主要なものになることは、認めざるを得ないと思います。ただ食管会計において収資する場合においては、品質等に差等がありますので、それだけはやはり認めざるを得ないじゃないかと思っております。
  174. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私はここしばらくの間は、農産物の価格というものは、明らかに政治価格でいいと思います。やはり農政の方向を打ち出そうとする場合には、奨励、補助の意味が多分になければやれませんから……。特に開拓地の食糧としては、麦食もありますけれども日本人の特性として米を食べたいというのが非常に多いので、陸稲に対してももっと改良を加えていき、耕耘その他について工夫をいたしましたら、今までのようなまずい陸稲じゃなく、もっとうまいものができると思います。やはりこんな場合は小さい問題ですからいじらずに、奨励の意味で一本の価格にした方がいいと思いますが、その点はどうでしょうか。
  175. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 いろいろ御意見がございますが、ただ価格一点張りでもって推進するわけにも参らぬ、こう存じておるわけでございます。
  176. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さらに価格問題でお聞きしたいのは繭の価格の問題です。これは大へんやかましくなっておりまして、政府の方でもだいぶ思い切って金を出すように聞いておりますが、これなども一体どういう形でおやりになるのですか。
  177. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 御承知通り、繭は昨年の秋未曽有の近年にない農作を受けまして、さらに本年の春蚕におきましても増産の気がまえになっておる。従いまして需要の減退に逆比例いたしまして糸価が低落し、従ってこれが繭価に響くわけでございます。本年の春以来繭価は大体貫当り千四百円を保持していきたいという方針を打ち出しておったのでございますから、その低落の傾向にかんがみまして、このたびの臨時施策といたしまして、糸の買い上げと同時に乾繭の共同保管に対します措置をあわせ講じまして、そうしてそのために日本輸出生糸保管会社をして操作をさせるという措置をとりまして、大体の対策を進めたいと思うのでございまして、本日本会議にその所要の法案を出すつもりでございます。これによって所期の効果を上げ得るものと確信いたしております。
  178. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それに対する資金的な措置は、一体どうされるつもりてすか。
  179. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 これは臨機の措置でございまして、日本輸出生糸保管会社をして運用させるのでございますが、この資金は農林中央金庫の資金を運用させて所面責の措置を講ずるつもりでございます。
  180. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さらに災害の問題で一点聞いておきますが、雨害によりまして麦が赤さびのために大へんに減収しているようであります。これなども減収加算はしないということを聞いておりますが、果してその通りでございましょうか。
  181. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 麦価決定につきましても、率直に申し上げて、ただいま検討中でございます。世上麦価につきまして加算をせよ、こういういろいろの問題もございますが、これも全体として総合的に検討中でございますので、ただいまつけるともつけぬとも申し上げかねます。
  182. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 あなたも御承知通り、農民は検討中々々々で大へん困っておるのです。やはりもっと的確に線を出してもらいたい。ことに赤さびの問題は少し取扱いの規定を直せばできることなんでして、減収は減収なんですから減収加算を認めることは当然だと思いますが、その点もっとはっきりした線を大臣打ち出せませんか。
  183. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 なおこれは米価審議会等でも御審議をいただく問題でございますので、ただいまの段階では、私一存だけで申し上げることはむしろ不適当だと考えております。
  184. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 最後にもう一点お聞きしたいのですが、さっき大臣から農家の牛乳飲用等についてお話がございましたが、乳価維持の方法として、学校給食あるいは工場等における集団飲用をこの際徹底的にやらせようという御意思はございませんか。これは酪農にとっては非常に大事な問題です。
  185. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 当局といたしましても、そこに重点を置いて推進いたしたい考えでございます。
  186. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 具体的な方策はできておりませんか。
  187. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 学童給食につきましては、後期の分については今後の問題でございますので、これは将来におきまして、先ほど総理大臣のお話もございましたが、必要がありますればその際に予算的措置も講じたいと考えております。それから集団的に大量な消費を拡大するという問題につきましては、今関係方面と協議もしたり、いろいろな方策を現に進めつつある、さような事情でございます。
  188. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 酪農家を圧迫しておりますものの一つに、飼料の価格があります。どうも飼料の価格が最近高過ぎる。場合によっては麦よりもふすまの方が高いという声もあるようでございますが、これに対して抜本的な措置をお考えになっておりますか。
  189. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 ふすまは実は少し低落ぎみであるのでございますけれども、これはもう要点は下げることにあるのでございますが、どうもこれに対して助成をするとか補償をするというような行き方もなかなかいかないものでございますから、この飼料の価格引き下げにつきましては、考究して所要の効果を上げたいという存念でおります。
  190. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 飼料は購買飼料だけではなくて酪農家自体が自給するような方式に進んだ方が正しいと思いますが、現在では農民が自分の食糧を作るような形で牛の食糧を作りますからなかなか作れない。牛の食糧を作るためには思い切って機械化をし、牛くらいの労力をもってやらなければできないことです。そういう点について飼料自給の抜本的な方策をお立てになっておりますか。
  191. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 まずこれは生産面の方におきましては、やはり草地の改良等につきましてももっと推進をしなければならぬと思います。第二には飼料作物のことでございますが、これをだんだん指導いたしまして、従来でありますと、同じ飼料を作るにいたしましても、飼料にするものと食糧にするものとのなにがありますが、これらはやはりもっと効果的な飼料作物に転換させるために、種子を供給するような措置を講ずるとか、あるいは共同してこれを推進するようなことも必要だと思いますし、同時にまた購入飼料の面におきましても、先ほど御指摘がございました価格を安定させ、かつ下げるという方策をあわせて進めたいと思います。抜本的というように言われますが、今後この問題等に十分に取り組んでそうして推進して参りたい、こう考えております。
  192. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは開墾地の農業と非常に関係があるのですが、開墾地の経営、開拓者の経営を、既存の農家をモデルとしてやるようなことであっては将来発展性がない。やはり開拓地の農家は開拓地の農家としての持ち味を生かさなければだめだと思います。それには酪農方面でもだいぶやれましょうが、さっき申しました通り流通過程において非常な悩みを持っておる。それから飼料の自給と簡単に言われますが、一番大きなものは耕耘の方法です。あとあとの種を改良するとか、まきつけをするのはよいが、土地を耕す過程というものは非常に大事です。この酪農家の耕耘機その他に対して国が大幅に援助をして飼料の自給をはかるというような構想をお持ちになりませんか。
  193. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 耕耘機その他の奨励につきましては、共同設置を中心として推進して参っておるわけでありまして、この線は強く進めて参りたいと存じております。かつこれらの問題に寄与するために、先年来畜産局等においては相当機械力を利用するような措置もだんだん進めて参りまして、これを拡充して今御指摘になったような趣旨に沿うようにいたすのが近道ではないか、こう存じておる次第であります。
  194. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 飼料は輸入飼料に依存せずに国内だけで自給できますか。
  195. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 現状におきましては、国内のいわゆる自給飼料では不十分であろうと思いまして、なおここ当分の間は外国からの輸入食糧とあわせて供給するという方策をとらざるを得ない、こう考えておるわけであります。
  196. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 現在輸入計画はできておりますか。豆かすをソ連から新しく輸入したらどうかという話が出ているということを聞きましたけれども、これはうわさにすぎないのでしょうか。業者が非常に希望しているが、農林省はこれを承知しないということを聞いておりまするが、いかがでしょうか。
  197. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 それらの話は若干巷間出て参っておるそうでありますが、ただいまのところこれを農林省としまして輸入するということには、まだ方向づけられてはおりません。
  198. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうしますと、輸入というのはどこの国を相手に輸入されておるのか。現在はどこが一番多いのですか。
  199. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 主として外麦の輸入によって、この方面の操作によって飼料の方面に相当回っております。これをさして言っておるわけであります。
  200. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 具体的なことを申し上げますと、まだ続くのでございますけれども、まだ機会がたくさんございましょうからあとに譲りますが、ただ出題は、目の前に迫っております米価の決定あるいは繭の価格の問題、乳価の問題、麦価の問題等について、やはり当面の単なる間に合せ施策じゃなくて、農政の根本に立ち入つた万策を立てて、大胆に勇気を持って臨んでもらいたいということを希望いたしまして、質問を終ります。(拍手)
  201. 楢橋渡

    楢橋委員長 本会終了後、午後四時を目途として再開することといたしまして、暫時休憩いたします。     午後一時二十二分休憩      ――――◇―――――     午後四時十九分開議
  202. 楢橋渡

    楢橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算実施状況について調査を進めます。  昨日の岡良一君の質問に対し、内閣総理大臣より発言を求められております。この際これを許します。岸内閣総理大臣
  203. 岸信介

    岸国務大臣 日米原子力協定に関連して、プルトニウムの問題について岡委員より御質問があったのでありますが、すでに御承知のように、日米協定の第七条F項におきまして、米国から入手した燃料を使用する原子炉で生産されたプルトニウムで、日本が平和的利用をする所要量をこえたものについて、アメリカ政府は優先買取権があるということが規定されております。すなわち、わが方で生産するところのプルトニウムが日本の平和利用の量の範囲内であるという場合におきましては、もちろんこういうこともないのであります。それをこえる場合において、こえる部分についての問題であります。しこうして、この協定上におきましては、わが国のプルトニウムの平和所要量の算出基礎ないし算出方法等につきましては、何らの規定がないのでありまして、わが国の増殖炉開発計画等の自主的な計画でこれを算定して差しつかえないことになっておると解釈しております。  第二に、日米両国の間においてこの協定を作ります際に、われわれは、アメリカにおいて買い取ったものが軍事的目的に使用されることは困る、これをやめさせるようにいろいろ交渉をいたしたのでありますが、その結果、条約には現われておりませんが、覚書によりまして、大統領のこの問題に関するアメリカの方針が明らかにされております。もちろんこの覚書条約の一部ではございませんから、条約と同じ効力を持っていると言うことはできないと思います。しかし、単なるメモのような性質のものではございませんで、やはり日付が明らかにされており、シゲネチャーもあると私は承知しておる。従いまして、このアメリカの方針は、もちろんアメリカ一つの方針でありますから、これが全然将来とも不変であるということは言えないことは御質問通りであります。しかし、私どもは一応アメリカが異例なこういう措置を講じ、日本側の意向をいれて、こういう措置をしたということは、アメリカにおきましても、日本側の意向を十分尊重する趣旨に出ておることを考え、一応これに信頼を置くことは適当であると思っております。しかし、それでは将来変更された場合においてどうだということにつきましては、日米両国関係から申しまして、一方的に変更されるというようなことは私はないと思います。両方の話し合い等の方法が、そういう場合には講ぜられると考えておりますが、しかし、条約の規定の上から申しますと、この協定の第十一条に規定しております国際原子力機関に査察を移管する問題に関する両国政府の協調という際に、米国政府の優先買取権を国際原子力機関憲章第十二条に規定する同機関への寄託の方針に変更することを主張し得るものであり、かつ、米国政府が右に関するわが方の要求をいれないときは、理論上は、日本政府としては、同条B項の規定に基いて協定を破棄することができる、これが条約上の解釈でございます。私どもは、岡委員の御心配になっているような点がないように、あらゆる努力をいたしまして、今までの経過から申しまして、今申しましたような条約解釈でもございますし、事実上日米のこの交渉過程を通じ、また両国関係から申しまして、大統領のこの覚書を一応信頼するということが適当である、かように考えております。
  204. 岡良一

    ○岡委員 内閣総理大臣の御答弁については、なお、私は納得いたしかねるのでございます。  まず、わが国において運転した炉から出てくるプルトニウムについては、まず第一点として、総理はこれをわが国の増殖炉のために、平和目的のために利用し得るであろうということを言われました。しかし、日本における増殖炉の研究は、少くとも将来十年以上たたなくては、実用化されないであろうといわれておるのであり、現在わが原子力研究所として必要なものは、わずかに十グラム余りでございます。ところが、一カ年に十五万キロワットの原子力発電をいたしまするためには、年間納戸五十キロのプルトニウムというものが出てくるのでございます。百五十キロと申しますから、約一万五千倍の余剰プルトニウムが出てくるのでございまして、こういうものが将来わが国の平和目的の増殖炉のために必要であろうというようなことは、全く非科学的な予断と申さねばなりません。また、国際原子力機関の寄話し得る道がある、こう申されますけれども、この前の予算委員会で、また先般も、国際原子力機関が果してこのようなものを預かり得る機能を持ち得るかどうかということは将来の問題でありまして、これまた一個の予断にすぎません。従いまして、私は、これらの予断に基いて、余剰のプルトニウムというものが平和目的に使われるという覚書の効力というものが多大な関心事となってくると思うのでございます。そこで、はっきりと率直な御意見を承わりたいのでございますが、今、御指摘の覚書なるものは、果して平和目的にアメリカをして使用せしめるという拘束力を持っておるところの権威ある文書であるかどうか、この点でございます。この点についての御所見を承わりたい。
  205. 岸信介

    岸国務大臣 ただいまお答えを申し上げましたように、これはアメリカ側の大統領の一方的声明に属するものでありまして、条約の一部をなすものとして見ることはできないと思います。そういう意味において、条約と同じような効力のあるものというべきではないと思います。しかしながら、先ほど申しましたように、この交渉過程において、アメリカが異例なそういう制限に関する覚書を当方によこしたということは、この問題についてのアメリカ側の意向を明瞭ならしめているものでありまして、それが決して不変なものであると私は考えてもおりません、それが拘束力があるというふうには考えておりませんけれども、しかし、それでは全然それが意味をなさないものであるというふうに考えるべき問題ではない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  206. 岡良一

    ○岡委員 アメリカの原子力法百二十三条によりまして、わが方との協力に関する取りきめ並びにそれに伴う交換公文なり、こうしたものは、アメリカ国会に一定期間公示しなければならないということになっております。ところが、この覚書は公示されておりません。これは調印のときに提出されておらないのであります。そうなりますれば、この覚書というものは、アメリカ国会の関知しないものである。アメリカ国会の承認を得る機会を持たないものである。アメリカの原子力政策は、アイゼンハワーの教書にしても、原子力委員会の決定にしても、国会が最終的にこれを決定するわけであります。従って、プルトニウム政策というものは、アメリカ国会が最終的に決定する。この国会が関知しないこのような文書というものが、果してプルトニウムの平和利用の保障になり得ると総理はお考えでございましょうか。
  207. 岸信介

    岸国務大臣 ただいまお答え申し上げましたように、私は、これが条約の一部というような意味における保障ではないことはもちろんでありますけれども、この交渉の経緯と日米の関係並びにこういう異例な措置をとっての覚書というものから申しまして、それが全然何らの保障のないものであると考えることは適当でない、相当の信頼を置いて、アメリカのそういう政策として私はこれを信頼していい、かように解釈をいたしております。
  208. 岡良一

    ○岡委員 私は、従来日本がプルトニウムを提供する、しかも濃縮ウランを日本が買い取って、日本が運転をして、そうして提供するのであるから、日本は提供国としての立場から当然査察権を要求すべきだ、あくまでも平和目的に利用されるかどうかという査察権を要求する、これが主権の平等な、対等な国家間の協定でなければならないという主張を持っております。ところが、交渉の経過というものは、一方的に押しまくられる。この覚書そのものも、国会に公示さえもされておらない。そうして、いわばやみからやみの申し子のようなものであって、日本人であるわれわれに対しては多少の安易感を与えるかもしれないが、何ら平和利用の保障にはなり得ない。そこで、たとえばユーラトムとアメリカとの協定について申し上げますが、ヨーロッパにおけるユーラトムとアメリカとの協定におきましては、ユーラトムがアメリカから原子力施設を導入する、これを運転して、ここに発生をしたところのプルトニウムというものは、これをアメリカ返還を求めるという権利をアメリカは放棄しておる。これが事実であります。きょうの夕刊に出ておる。ところが、日本はそうでなくて、優先買収権を認める。しかも、われわれとしてはきわめて安心いたしかねるようなこの覚書によって、平和利用であるだろうというような一抹の安堵感で満足しなければならぬ。一体ユーラトムとアメリカとの関係においては、このような平和利用の保障のためには、アメリカの優先買取権というものをアメリカに放棄さしておる。日本としてはそれを認め、しかもその怪しげな覚書でもって平和利用というものの保障を得よう、全くこれでは不平等な条約であると私は言わざるを得ない。総理は、きょうの午前にも、核兵器の全面的禁止ということは私の宿願であると言っておられる。してみれば、われわれが原子力平和利用によって発電をやる。そこから出てくるところの副産物というものを対国に供与する。それによって核兵器が生産されるということならば、われわれの核兵器禁止という九千万の悲願であり、超党的な最高の国策というものは、全く意味がないことになるのであります。ユーラトムとアメリカとの協定をごらんなさい。いかに日本は不平等であるか。これではMSAよりも悪質な、不平等な軍事同盟であると言っても私は差しつかえないと思う。岸総理は、この点について、重ねて、いかようにお考えになりますか。
  209. 岸信介

    岸国務大臣 今申し上げましたように、岡委員のお考えと私どもの根本に違うことは、もちろん条約上のはっきりした保障でないという点において形式上の不満があることは、私も同様でございますけれども、しかし、この交渉の経過にかんがみて、またアメリカが他の国との間に結んだ協定の取扱いにおいては全く異例てある覚書を特に日本に対しては与えたということ自体は、私は相当これに信頼関係を置いていいものであると思います。  それからなお将来の問題につきましては、いろいろの何がありますけれども、もちろんこの増殖炉の開発計画の問題やあるいは国際正原子力磯間の問題等は、将来の問題に属することが非常に多いのでございまして、これをもって直ちに大丈夫ということを私は申し上げるわけじゃございませんけれども、そういう恒久的な問題とあわせて、長い目で考えるべきものであり、一時的な問題としては、大統飲のそういう責任を持っての声明に対して信頼していい、こういう考えでございます。
  210. 岡良一

    ○岡委員 それでは、究明はあとに譲りまして、この程度にいたします。
  211. 楢橋渡

    楢橋委員長 楯兼次郎君。
  212. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、労働問題につきまして、二、三点質問をいたしたいと思います。時間も制約をされておりますので、簡潔に質問をいたしますから、一つ簡潔にお答えを願いたいと思います。  第一番は、仲裁裁定に対する考え方であります。前の第一次岸内閣のときには、石田労相ともども、仲裁裁定は完全に実施をする、こういうことを私どもはたびたび委員会において聞いておるのでありますが、過日の本会議の席上、倉石新労働大臣から、中村高一議員の質問に対しまして、尊重をする、こういう御答弁がございました。これでは、われわれは、完全実施をするという前内閣の線からまた最初の線に後退をした、こういうふうに受け取れるわけでありますが、この点について、総理大臣の御見解を承わりたいと思います。
  213. 岸信介

    岸国務大臣 前内閣の時代と今日と、仲裁裁定に対する政府態度は何ら変更はございません。ただ、説明の仕方として、おそらく倉石労働大臣は、法律的な見地から、法律の用語としてそういう言葉を使ったのだと思います。また完全実施をするということは、これは法律的なことではございませんで、われわれの行政方針の問題だと思います。尊重するというのが法律の建前でありますが、専重する内容として、行政上は完全実施する、こういう考えでございますので、前の内閣と少しも変っていない、後退をしておるということは少しもないということを御了承願います。
  214. 楯兼次郎

    ○楯委員 総理の方ではそうおっしゃいますが、受け取るわれわれの方では、完全実施と尊重とは、大いに実行の面において違うわけであります。といいますのは、昭和二十四年に公社が発足をいたしましてから、たびたび仲裁裁定が出されました。ところが、その都度政府は尊重をする、こういう言明をしながら、実際に実施をして参りましたのは、その一部であります。たとえば、仲裁裁定は、千円を実施せよ、こういう裁定の内容でありますと、百円だけ尊重をして実施をした。こういうのが岸内閣以前の内閣の方針であったわけです。従ってこの前の岸内閣の場合には、私どもは、尊重ではいけない、完全実施してもらわなくては困る、こういう要請をし、かつ完全実施をするという御答辨をたびたび承わっておるわけです。ところが、倉石さんは前にも労働大臣をされておりますので、その関係で尊重すると言われたかわかりませんけれども、だいぶ受け取り方が私どもは違いますので、この点をはっきりと一つ答弁をしていただきたい。
  215. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 本会議で申し上げましたのは、私が当初就任のときに新聞社に申しましたことと違ってはいけませんから、同じ言い方をいたしたのでありますが、官邸詰めとか政党詰めの記者諸君と違いまして、労働省詰めの労政クラブの方々でありますから、法律的にも専門家ぞろいであると存じましたから、法律的に懇切丁寧にお話をいたしたのであります。それが若干誤まり伝えられておるようでありますが、御承知のように、仲裁裁定は当然これは尊重せらるべきものであります。ことにこの前払が就任しております間に公労法を改正いたしましたときに、特に、仲裁裁定が出たならば、政府はこれを実施でぎるように努力しなければならないという、政府に努力義務を加えたことは御承知通りであります。そういう建前をとっておる者が同じ内閣で同じ人間が労働大臣になったのでありますから、趣旨はちっとも変っておりません。ただ楯さんも御存じのように、政府が努カ義務をいたしましても、結局補正予算か何か組まなければならないようなことになりました場合には、その最終的決定は国会にあるのだ、これが法の建前でございますから、政府としては法律的に申せばこれを尊重する、こういうふうに申し上げることが一番正しいのだ、しかし政治的にはできるだけこれが実施可能のように努力をするという石田前労働大臣とは、少しも変っておらないのであります。  もう一つ、仲裁裁定が過去何回か行われたが、ほとんど実施しておらないというお話でございますが、何かの誤まりではないかと思います。自由民主党の政調会でそういう調査はしてありますから、あとでお入り用ならば差し上げますが、実施しておらないことはないのでありまして、これは一々議論する必要はありませんが、今までずっと、公労法の仲裁裁定というものは、大体において実施されておる、こういうことであります。
  216. 楯兼次郎

    ○楯委員 ただいま倉石さんは、過去において実施をされておる、こうおっしゃいました。ところが、実施をされたということが、冒頭私が申し上げましたように、たとえば裁定は千円上げよといいます、その千円のうもで百円上げて実施をした、こういうのが今までの保守党内閣の実施をしたという言葉の裏です。私どもにも発足当時からの資料がございますが、完全に実施をされておる例はまれであります。今これを両方つき合せて論議をいたしましても時間がかかりますので、それはやりません。倉石さんはうまいことを言って逃げられますが、石田労働大臣の完全に実施をするという言葉と、今あなたがおっしゃる尊重も同じであるということは違います。私はこの前の国会の速記録を持ってきておりますが、岸総理大臣も完全実施をするとおっしゃっています。石田労働大臣は特に、百パーセント実施をするとか、つまり裁定を百パーセント実施をすることが私どもは完全実施をすることだ、こういうように速記録にちゃんと残っておるのです。今これを読み上げる必要はないと思いますが、まあ大体総理大臣の意向は裁定通り実施をする、いわゆる完全実施をするということでありますから、一つ総理大臣と労働大臣と意見の一致をされて、そういう御答弁を願えれば、私はこの質問についてやめますので、一つ御言明願いたいと思います。
  217. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 先ほど申し上げましたように、政府としては、裁定が下りました場合には、法の命ずるところによって努力義務を実施する。なおかつそれで間に合わないときには、補正予算という手段を講ずるか、さもなければ十日以内に国会の議決を求める。その議決がございましたならば、政府がどういうふうに考えようとも、国会の議決が優先することはあなたもよく御存じでございます。そこで、法の建前は、やはり最終的には国会が議決をするのであります。政府はそういう手続をとるまでの努力はもちろんいたします。それが完全実施、最終的に御決定を願うのは国会であります。そういうことは、法律の建前がそうなっているのでありますから、何べん言われても同じことであります。
  218. 楯兼次郎

    ○楯委員 裁定に対する国会の上程の仕方が違うのてす。総理大臣あるいは前石田労働大臣の考えをもってすれば、裁定の資金はこれだけ要る、従って予算の修正なりあるいは補正をしたい、ここれを論議していただきたい、こういって国会に上程をすることになると思うのです。ところが今倉石さんの話では、これをやるかやらぬかということは、一つあなた方が審議をしていただきたい。その資金の裏づけをせずに、どっちでも勝手にして下さいといって国会に上程をしてきたのが、過去の全部の例なんです。従って、国会で最終的に補正了算を組むなりあるいは予算を修正するということには間違いはありませんけれども、これを実施したいから予算を補正してもらいたいといって国会に上程するのでなく、どうも裁定は出たけれども、われわれの方ではあまり実施をしたくないが、一つ多数決で否決をしてもらいたいといって、資金の裏づけをつけずに国会に上程する仕方が、今あなたがおっしゃった国会の最終的な議決でやるのだ、こういうことだと思う。従って、裁定が出ましたならば、完全実施をするためには、それに要する資金の捻出をして、そうして補正するなりあるいは修正するという立場国会の議決を求める、そういう出し方をしていただかなければ、総理大臣の合今言われた完全実施という意向には沿わないと思います。こういう点どうですか。
  219. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 よくわかりました。すなわち、仲裁裁定が下りましたときには、努力義務の許される範囲で努力をする、それで間に合わないときには補正予算をつけて国会に出す、そこまでは私とあなたとちっとも変っていないのです。そこで出した予算はこれは国会で議決して下さる、これもわかりました。そこで仲裁裁定が出ましたとき、十日以内にこれの議決を求めるために提出しなければならないという制約が法律にございますから、補正予算をかりに政府が組むということを考えましても、ぐずぐずしておると十日が切れてしまうおそれがありますから、従来の歴代内閣のやっておりましたことは、一応法律に命ぜられてある十日以内に国会に議決を求める案を出しておったのであります。そのときには、どういうふうな意思表示であるかというような政府の考え方をつけて出さなくてはならないということになっておりませんから、一応これは議決を求めるという形で出して、その間に政府の方の考えで検討いたした結果、これは努力義務だけでいいとか、あるいは補正予算正を組んで御審議を願わなければならぬかということをきめて――この前のときはそうでございますが、補任予算を出しましたら、そこで国会法の命ずるところによって、審議に及ばずということで、議決を求めることは自然消滅のような格好になりました。そういうことでありまして、岸総理が前々から言っておいでになる事柄と、私が申し上げておることはちっとも変っていないのであります。その精神はちっとも変っていない。ただ法律論の御説明をいたしましたことが、世の中に誤解を生じて、あなたの御心配になっているようなことだと思うのでありますが、その点はきわめて明快になっていると思います。
  220. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういたしますと、岸総理と同じ意向である、表現の仕方が違う、いわゆる受け取るわれわれの方では、裁定は完全に実施をする、そういうふうに受け取っておいてよろしゅうございますね。  それからせっかくの機会でありますから、私は総理に考えていただきたいと思いますが、二十四年に公社が発足をいたしました。電電とかあるいは国鉄です。そして給料であるとか手当であるとかの給与総額というものは、発足当時はなかったのです。従って、どんな裁定が出ても、いわゆる国鉄の総裁なりあるいは電電の総裁がよろしいと言えば、その裁定が実施できたわけです。ところが、これは池心さんのときであったと思いますが、これではいかぬというわけで、給与総額制度を作りまして、縛ってしまった。そこで今度は裁定が出ましても――最終的決定で両者が服従をしなければならない裁定が出ましても、給与総額制度を作って縛ってしまったので、それから国会に上程という形になったわけです。ところが、この前の二十七国会では、御承知のように、給与総額の中をさらに細分をいたしまして、いわゆる基準内、基準外にして、この資金の流用すらやってはいかぬ、こういうように縛ってしまったわけです。だから、私は時間の関係でここでは論議をいたしませんけれども、今公労法でいう組合、公社の組合では、総裁と団体交渉はいたしておりますけれども、これは何にもならないわけです。幾ら団体交渉をいたしましても、一文も金は出ません。いわゆる給与総額制で縛ってあります。基準内、外の資金の流用すらできません。従ってこれをむずかしくいえば、一応労働組合は認めておるけれども、いわゆる労働運動の否定です。団体交渉はできることになっておりますけれども、これも団体交渉の否認です。こういうのが現在の公社の実態である。こういうことをくお考えを願って、ぜひ一つ――今は出ておりませんけれども、やがてまた仲裁裁定をめぐりまして、大きな労働争議といいますか、運動が起きて参りますので、そのときにはぜひこれを完全実施の方向にやっていただきたい。こういうふうに要望いたしまして、この問題は打ち切りたいと思います。  次に私がお伺いをいたしたいのは、例のILO条約の批准の問題であります。これは八十七号の結社の自由及び団結権の擁護に関する条約の取扱いにつきまして、前の国会から、いろいろ総理大臣の方にもあるいは労働大臣の方にも、われわれ社会党は要請をいたしておりました。ところが、なかなか批准の手続をとられないわけです。今このILOの総会が行われておると思いますが、この総会においてこの八十七号がどんな議題になり、状態になっておるか、もしおわかりになったら、一つお知らせ願いたいと思います。
  221. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 ただいま開かれておりますジュネーヴにおけるILO総会において、条約第八十七号は、論議の中心になって議題になっておりません。ただ日本の労働代表として出席いたしておりまする原口総評議長からこの問題について提案があったようでありますが、――提案ではありません、意見を述べられた、日本政府はこれを批准する意思がないんだというふうな意見が述べられた模様であります。しかし、政府側の者は、そういうことではなくて、目下政府においても検討中であるというふうなことを申し述べたように情報を受けております。
  222. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは労働大臣にお伺いしたいと思いますが、もっぱら検討中であるということは、解散前の国会から聞いておるのです。石田労働大臣も検討中であると言い、それからあなたも検討中であるとおっしゃいますが、一体いつまで検討しておられるのか、実際この批准を行う意思があるかどうか、こういう点をお聞きしたいと思います。
  223. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 この八十七号条約は、日本がまだILOに参加しておりません戦争中、一九四九年だと思いますが、結ばれた条約でありまして、これを批准するかどうかということにつきましては、政府も研究をいたしております。もちろんこればかりではありません。なるべくILO条約の批准は促進した方がいいという考えはずっと変りはないのでありますが、ことにこのILO条約は他の日本国内で持っておる法律に若干抵触するおそれもあるということで、そういう点を目下研究をしておる。御承知のように、ILO条約は、日本は参加国の中では比較的多く批准を済ましておる国柄でありますし、また私どももせっかく参加いたしておるILOでありますから、できでるだけ批准ができることを希望するのでありますが、本案につきましては、前労働大臣の時代にも、労働省に労働問題懇談会という第三者及び労使双方の御参加を願っておるものがございますが、それにお尋ねをいたしておりまして、そこでもっぱら研究をしてやっていただく、そういう過程に現在あるわけでございます。
  224. 楯兼次郎

    ○楯委員 いつまで研究をされるのかわかりませんけれども、抵触するところも、大体そう広範ではなくて、限定をされておると思います。従って、研究より、これを批准した場合に、国内法をそれに合わせるということに労働大臣はちゅうちょなさっておるというのが私は実態だと思います。そこで私は岸総理にぜひ考えていただきたいと思いますが、この八十七号は、三十一カ国が批准をいたしておリます。それから本年の三月十一日から十五日まで開かれましたこの国際労働機関の理事会の決定事項は、こういうことを言っております。「理事会は、米批准のすべての政府に対し、結社の自由及び団結権の擁護に関する条約、並びに団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約を批准し適用することを可能ならしめる必要な措置をとるよう、特別かつ緊急に要請をしたい。」こういうふうに理事会は決定をして、これに賛成した国が三十八ヵ国、反対なしです。保留は日本ただ一国、こういう状態になっておりまするから――なるほど国内法のいろいろな問題もあるかもしれません。しかし、岸さんは、外交の問題については特に国連を中心にして日本の外交を進めていく、こういうことをおっしゃいます。国連の正式機関ではないのですけれども、そうおっしゃっておりまする総理大臣でありますから、もうよその各国かこれを批准しておるのですから、多少の国内の支障があっても、私は批准の手続をとられるのが至当であると思うのでありますが、この点について総理の御見解をお伺いしたいと思います。
  225. 岸信介

    岸国務大臣 今問題になっておりますILO条約の批准の問題につきましては、前内閣時代から、われわれは真剣にこれを検討いたしておりまして、労働問題懇談会に諮問をいたし、そこで審議を重ねておるわけであります。今御意見かありましたように、国内法との関係もございまして、多少の国内法の問題は度外視してやるべきだという御意見でありますけれども、この問題については、政府として責任ある立場から、そう簡単に結論を見出すことはできないことであります。しかし、それは批准をしないという腹のもとに考えておるわけじゃございませんて、できるだけILO条約の批准――従って今問題になっております団結権に関する問題等につきましても、われわれとしては現在は検討の時代でございます。御説のように、国内的な多少の問題は度外視してこれをやるようにしたらどうかというふうに今日直ちに結論を出すことは、適当でないと私は考えております。
  226. 楯兼次郎

    ○楯委員 労働大臣は、先ほど労働問題懇談会で検討しておる、その結論が出たならば考えよう、こういうことをおっしゃいますが、労働問題懇談会で、こういう世界各国が承認をしておる条約でありますから、否認のような結論は出ないと思いますが、もしいけないというような結論が出たらどういう態度をおとりになりますか。
  227. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 労働問題懇談会は、私が最も尊敬しておる人たちにお願いをしておるのでありまして、そこで今研究していただいているさなかに、どういう結論が出たらどうするなどというそんたくをすることは失禮だと思いますので、そういうことについては御遠慮いたしまして、御研究の結果を待っておりたいと思っております。
  228. 楯兼次郎

    ○楯委員 私はこのILO条約の批准はもう時期の問題だと思うのです。多少国内で労働大臣の気にさわる去年の修正をやらなくてはならない点もあるかと思いますが、もう世界の大勢で、やがて近い将来に批准の手続をやられると思うのでありますが、もし総会等で調査団でも日本に派遣をされて、そうして外国からつつかれてからそのような手続をおとりになるということでは、まことに不面目だと思うわけです。従って、そうこだわらずに、一つできるだけ早い機会に批准の手続をおとりになるように特にお願いを申し上げておきたいと思います。  それから、どうせ批准をしなければならないと思いますが、国内法との関連から、われわれ社会党としては、どうもけしからぬ方向に動きりつつあるしような気がするのです。まあ倉石労働大臣がけしからぬと言っては失禮かもしれませんが、そういう方向に動きつつあるといいますのは、あとで質問をいたしたいと思いますが、今までは大体公労法一本で労働組合の、たとえば刑罰というものが行われてきました。ところが、この前の国会では、鉄道営業法を一つ改正をして、そうして鉄道営業法で労働運動を拘束していこう、あるいは最近では、郵便法によって労働組合を弾圧拘束をする、もしILO条約が批准になれば、公労法の第四条第三項が修正をされる、従って、それでは間に合わないから、違った法規によって労働運動を抑圧していこう、こういう気配がわれわれには最近濃厚に感じられるのです。こういう点について、意識的かどうか知りませんが、労働大臣のお考えを承わりたいと思います。
  229. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 夏になってサングラスをかけて町を歩けば、みんなそのサングラスの色と同じようにものが見えるようなもので、初めから色めがねとをかけてごらんになったならば、それはわれわれのやっていることに邪推を生じるかもしれませんが、私はただいまのお話には実は非常に驚いたのでありまして、歴代の自由民主党の内閣というものは――たとえば鉄道営業法はこの前も若干の問題になりましたけれども、これは政府がしばしば言明いたしておるように、鉄急道営業というもの自体に関係して考えておることであって、決してこれは労働政策として考えておるものではないということを、当時の政府も説明いたしておりました。われわれもさように解釈しております。なおまた郵便法のことでございますが、郵便法の問題についてこの国会でもしばしば御議論がありましたけれども、私の立場としては、郵便法によって検挙されたことについてとやこう申すことは遠慮いたしますが、とにかく法律によって保護を受ける労働組合運動というものは、ちゃんと組合法に書いてありますように、正当なる労働運動という限界がございます。この限界を越えた行為は、これは逸脱した行為であるということで、やはり取締りの対象になるということは当然なことであると思うのでありまして、私は労働運動についていたずらな弾圧などする意思は毛頭持たないのでありますから、さよう御了承願います。
  230. 楯兼次郎

    ○楯委員 弾圧の問題については、このあとで私は質問をいたしたいと思います。  そこで、ちょっとこまかい問題になりますが、お聞きをしたいと思います。今一つの例を機関車労働組合にとりますが、機関車労働組合は、公労法上の労働組合であるかとうかということてす。
  231. 倉石忠雄

    ○倉石国務大臣 公労法上の組合であるとは存じますが、正当なる代長者を持たない組合である、こういうふうに解釈いたしております。
  232. 楯兼次郎

    ○楯委員 実は、団体交渉について、私はこの間ちょっと公労法を読んでみまして、疑義が出たのです。機関車労働組合が公労法上の組合であるということは、労働省も裁判所も大体認めておるところです。そういたしますと、団体交渉ができない、こういうことをあなた方はよくおっしゃいますが、そういうことはないはずです。なぜないはずであるかといいますと、団体交渉というのは、いわゆる公共企業体と労働組合が団体交渉するのではないはずですね。両方の交渉委員が委嘱を受けて団体交渉を行うわけです。そこで、公労法の交渉委員の項の第九条を見ますと、選出をされます交渉委員の資格条件というものがないのです。たとえば、私でもあるいはたとい首を切られておろうと、あるいは組合員てあろうと、労働組合が交渉委員として指名をした場合には、当然団体交渉ができる、こういうことになっておると思います。なぜ、首を切った連中のおる場合には団体交渉をやらぬ、こういうことをおっしゃるのか、私は団体交渉のできない法的根拠一つお示しを願いたいと思います。これは倉石さんではちよっと無理だと思いますので、労働省のだれでもけっこうですから、なぜ団体交渉ができないのか、法的根拠をお示し願いたい。
  233. 亀井光

    ○亀井政府委員 御承知通り、現在の機関車労働組合は、公労法第十七条に違反しました結果、第十八条によって解雇された三役で占められておるわけでございます。団体交渉の最終目的は、協約の締結でございます。従いまして、協約の締結をいたしまするには、その組会合を代表する者は、法律上正当な代表権を持つ者でなければならないはずでございます。従って、現在の機関車労働組合は、正当な代表者を欠く労働組合であるわけでございます。従いまして、団体交渉をいたしましても、労働協約を締結する能力がないわけでございます。従って、法律的に申しますると、その団体交渉は拒否しましても、労組法上不当労働行為にならないというのがわれわれの見解でございます。
  234. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういたしますと、協定を結ぶまでの段階の交渉はできるということですか。
  235. 亀井光

    ○亀井政府委員 団体交渉は、労働協約を締結するのが主たる目的でございます。従いまして、その主たる目的を達成するための適格条件を欠いておるわけでございますから、団体交渉を拒否しますることは、何ら正当な理由のないわけではございません。従いまして、労組法上不当労働行為にならないというのがわれわれの見解でございます。
  236. 楯兼次郎

    ○楯委員 私の聞いているのは、団体交渉はできるということですね。いわゆる第十八条によって処分をされた人がおっても、その人を交渉委員として組合か指名をすれば、団体交渉はできるわけですね。
  237. 亀井光

    ○亀井政府委員 団体交渉をやりましても、団体交渉の目的としまする結果を達成し得ないわけでございますから、その団体交渉は意味のない団体交渉であるということでございます。
  238. 楯兼次郎

    ○楯委員 協定の確認は、交渉委員の代表がやると思っているんですが、どうでしょうか。
  239. 亀井光

    ○亀井政府委員 交渉委員は交渉の手続をいたすだけでございまして、それは一つの手続にすぎません。従いまして、最終的には団体交渉というものの結果生まれてきまする法律的な効果が発生する労働協約というものが締結できないとなれば、その交渉は意味のない交渉であるということになるわけでございます。
  240. 楯兼次郎

    ○楯委員 そうしたら、どこに代表者云々というのがあるんですか、その法的根拠をおっしゃって下さい。
  241. 亀井光

    ○亀井政府委員 法律上明文がありましてその根拠があるわけではありませんで、これは公労法の全体を通じまする法の精神でございます。
  242. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は冒頭に申しましたように、どこにそういうできない法的根拠があるかということを聞いているわけです。それをあなたの頭で勝手に解釈して、どこに明文があるかと言ったんですが、ないけれどもとは何という答弁ですか、おかしいじゃないてすか、だから、あなたの方はそう解釈するのだが、われわれの方はやれると解釈していたって、これは間違いじゃないですか。
  243. 亀井光

    ○亀井政府委員 機労の問題は、ただいま裁判所で論議されておりますから、最終的にはあるいは裁判所がその決定をいたすかと思いますが、われわれの行政解釈としましては、ただいま御説明しましたような解釈をとっておるわけでございます。
  244. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは私もやはりそういうことのできないという法規はないと思います。だから、あなた方が、勝手に首を切った場合には団体交渉ができぬ、こう勝手に解釈をしておるにすぎぬ、こういうふうに思います。この問題はここであなたと論議をいたしておりましてもどうかと思いますので、われわれも大いに考え直してやっていかなくちゃならぬ、こう思っております。だから、自分の勝手な頭でいいかげんな答弁をしておったのでは、ほんとうにしますよ。  それから、次に私は、今弾圧を受けておりまする各組合の問題についてお伺いいたしたいと思いますが、私は社会党の立場でなく、率直に言いまして、岸内閣というものができてから、労働組合に対する処分が大量に行われてきた、こう考えます。といいますのは、法律も改正されておらない、いわゆる争議行為も大体吉田内閣時代から慣例となっておる争議を繰り返しております。それから組合の指導者もそう変っておりません。変ったのは岸内閣だけです。何にも変らないのに、昨年の春闘から、国鉄が二万何千名、それから今年は全逓がやはり三万名近いような処分を受けておる。各組合とも多少なりとも処分を受けまして、今この問題でごたごたしておるわけてあります。こういう点を考えますると、岸内閣ができてから私は特に労働組合の弾圧処分というものが大きく行われるようになった、こういうふうに考えるのでありますが、総理大臣はこの点どうお考えになりますか。
  245. 岸信介

    岸国務大臣 私はしばしば私の所信を明らかにしておるように、民主政治を正しく育て上げていくためには、やはり法律、制度、秩序というものを尊重して、これを前提として考えていく、もし法律や制度において適当ならざるものがあれば、民主主義の精神によって国会でこれを修正していく、こういう立場お互いにとっていくことが正しい民主政治を完成するゆえんであり、またわれわれが望んでおる労使関係もこれによって正しく望ましい形になるものである、かように考えております。戦後の日本の社会秩序なりあるいはいろいろの理想は、必ずしも私の言うようになっていっておらなかったと思います。ようやく諸般の事情が正常な状態に返ってき、われわれとしてはやはりこの点に関しては十分に労使ともに考える、また国民全体が、今私が申し上げましたような前提を十分に反省して、そして正しい平和な民主政治の姿を作り上げる必要があると思います。特に私は弾圧をするとかいうふうな考え方ではございませんけれども、今申しました私の所信、考え方の前提は、これをやはり国民全体が十分に尊重して、そして民主政治を完成し、労働問題についても労使の間の正しい、望ましい慣行を作り上げていく、こういうふうに考えておるのであります。
  246. 楯兼次郎

    ○楯委員 特に岸さんを前に置いてこういうことを申してはどうかと思いますが、最近は警察と検察庁が非常に組合運動に介入をしておるということ、いま一つは選挙がございましたのでそういうことになったのかどうか知りませんけれども、あなた方保守党の手によって労働問題が選挙に利用されておる、こういう感を、率直に言って私は深めるわけです。といいますのは、昨年の春闘から秋にかけまして、岸内閣は解放のきっかけに困っておった。従って、労働組合を刺激して、この闘争が盛り上ったら、それを契機に解放をやって選挙に突入をしたい。岸さんは御存じかどうか知りませんけれども、そういう空気が相当流れておるのです。だから、われわれから見ますると、労働運動を解散の契機に利用しておる、こういうふうにとれるわけです。こういう感が非常に深かったというのと、それから解散になりまして選挙になってから、これはあなたの方で警察や検察庁を督励したわけではないでしょうけれども、あるいは警察や検察庁が岸内閣に忠勤を励んだのかもしれませんけれども、選挙になりましてから、たとえば全逓や電通の弾圧が行われております。それから日教組の逮捕が行われておる。特にはなはだしいのになりますと、ある県においては、ちょうど選挙の告示の日に勤務評定を実施をする、こういうことを県の教育委員会がやっておるわけです。労働組合の弾圧を選挙中に行う、こういう傾向が非常に強くなってきたと私は思います。これは岸さんが意識されてやっておるかどうかはわかりませんけれども、そういう傾向が非常に強いので、この点だけは今後ともよく注意をされてやっていただいた方が私はいいのじゃないか、こういうふうに思いますので、この点一つ警告を申し上げておきたいと思います。  それから、郵政省の問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、四月の二十八日に、郵政省は解雇七人、停職二百九十七人、それから減俸、戒告等で二万二千五百六十八人というような膨大なる処分を発表をいたしております。私は、労働運動として見た場合には、もし違法行為があれば、これは当然指令を出した責任者が処分をされてしかるべきだと思うのでありますが、なぜこんなに二万数千名というような人に対して処分を行うのか、この点か一つ法務大臣あるいは労働大臣からお伺いをしたいと思います。
  247. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私にお名ざしがございましたが、これは郵政大臣の所管である行政処分の問題でございますから、郵政大臣からお答えをいたします。
  248. 寺尾豊

    ○寺尾国務大臣 お答えいたします。昨年九月ごろから組合運動の行き過ぎが予想をされましたので、当時の田中郵政大臣が再三再四にわたって警告を発して参ったのであります。あるいはまた各組合員にも書面等を差し出しまして、そうした行き過ぎのないように注意を喚起したにもかかわりませず、御承知のように、三月十三日、あるいは二十日、あるいは二十七日、こういったような数次にわたりまする三十分ないし二時間食い込みの、職場のきわめて行き過ぎた戦術が行使せられた。同時に、三月二十日の中郵、あるいはその他の名古屋、大阪等における職場離脱という、最近ほとんどその類例を見ない大規模な行き過ぎの行為があったわけであります。このことにつきましては、ただいま申し上げましたように、郵政大臣の名をもってこれに警告を発し、そういうことのないようにということをしばしば組合員に対しても書面をもって注意を喚起したにもかかわらず、最近類例を見ないこういうふうな職場離脱ということがあったために、これは断固こういったようなことに対する処分を行なった、こういうことでございます。
  249. 楯兼次郎

    ○楯委員 だいぶ郵政大臣力を入れて答弁なさいましたが、一体それは労働運動としてそういうことをやったのか、あるいは各個人が、お互いに、二万数千人の人が個人々々としてそういうことをされたのか、どちらですか。
  250. 寺尾豊

    ○寺尾国務大臣 お答えいたします。これは私がここで社会党の諸君にお釈迦様に説法のような形で申し上げるまでもない。公労法の第十七条においては、明らかにこれは労働争議ということにおいては禁止をされておる。従いまして、これに違反をすることにおいては、同法第十八条によって処分をされる。あるいはなおそういう違法行為というものは、労働組合法第一条第二項にいう正当なものではないのでありまするから、従って、刑法第三十五条は適用されないというようなことになってくると、さらに郵便法第七十九条にその行為が該当するということになれば、これはいわゆる刑法に関する責めを免れない、こういうふうにきわめて明らかにこの法が明示しておるわけであります。これらに違反をしたことにおいて、おのおの行政処分をいたした、こういうわけであります。
  251. 楯兼次郎

    ○楯委員 郵政大臣の御答弁なら公労法の第十八条による処分者を出しただけでいいのです。要するに、中闘の指令によってこの人たちは行動した。従って、そういう争議行為と見れば第十八条によって責任者だけを処分すればいいじゃないですか。何で郵便法なり公務員法なりのあっちこっち集めてきて二万数千人の人たちを処分するのか、こういうことを私は聞いておる。
  252. 寺尾豊

    ○寺尾国務大臣 お答え申し上げます。組合指令に従ってこうした行き過ぎをいたしました者につきましては、国家公務員法によって行政処分をいたしたわけであります。
  253. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体郵政大臣は労働運動というものを知らないと思う。中闘の指令によって、その指令を順守して動いているわけです。だから明らかにこれは労働運動である。従って公労法に違反すれば、これは責任者だけを処分すればいいのです。それをあっちからこっちから持ってきて処分をしなくてもいいじゃないですか。  時間の関係もありますので、私は話を進めますが、郵便法違反事件として法務大臣にお尋ねしたいのですが、郵便法違反事件として五月十日全国三十三カ所の家宅捜索を行なっております。そうして六十三人の検挙をしております。ところが、これは二月たったあとに選挙中に行われておるわけです。事件が起きてから二月たったあとに検挙をして、そうして検察側は証拠隠滅のおそれがあると称して勾留請求をしております。ところが、これは全部却下をされております。準抗告も特別抗告も全部却下されておる。事件が起きてから二月もたって、何が証拠隠滅のおそれがあるかとわれわれは言いたくなるのですが、なぜ正当な労働運動に対してこういう郵便法を適用してこのような検挙を行い、家宅捜索をしたか、その点についてお伺いしたい。
  254. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。今回の全逓の事件につきましては、申すまでもございませんが、公労法の第十七条によりまして、明白に違法行為であると私は断定いたしておるわけであります。その公労法違反の関係によりまして、違反したところの行為が郵便法第七十九条に触れますから、刑罰法規に該当する。従って捜査を行なったわけであります。  次にお尋ねの点でございますが、かようなきわめて広範な国民の福祉にも甚大なる影響のありまするような事案に対しましては、これは捜査にも相当の日数がかかります。かつ広範にわたり捜査を行わなければならないということで相当の時日がかかります。また捜査をいたしましたところが、証拠隠滅のおそれもございますから勾留の請求をするというのは、これは法の秩序を守らなければならない私ども立場としては当然であると思います。不幸にして裁判所の見解はこれと異なりましたから、勾留の請求の却下が行われましたけれども、刑事訴訟法の規定するところに従いまして、準抗告あるいは特別抗告を行なったわけでございまして、かくのごとき行動をとりましたことは、何ら正当なる労働運動を弾圧するというようなことでは毛頭ございませんことは、本会議でも明らかにいたしたところでございます。
  255. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は法務大臣にお伺いしたいと思いますが、郵便法の七十九条でありますか、これが制定をされますときの参議院の通信委員会における議事録がここにございます。読めば時間がかかりますので要点だけ申し上げますと、決して争議行為には適用しない、こういうことを政府委員が何回も繰り返して答弁しておる。労働問題には適用しないということを立法当時何回も繰り返しておる。なせこれが守られないのですか。あなたの場合ではないかもしれませんが、岸内閣になってから、立法当時に、労働運動には使わない、争議行為はこれに抵触しないといって繰り返しておることがはっきりしておるにもかかわらず、なぜこの郵便法を適用してこのような行為を行うのか、この点についてお伺いしたい。
  256. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 それは実情が異なるのでございまして、立法当時の速記録によりましても明白でございますように、正当なる労働行為ということが明白に政府委員答弁にも現われておるのでございます。さらにいま一つ違います点は、当時は現行の公労法がまだ行われておりません。その後におきまして公労法の十七条が制定せられまして、従って現行の公労法によっては、争議行為が禁止されておる違法行為であるということが明確になったのでありまして、この二点から申しましても、ただいまお尋ねの点は当らないのであります。
  257. 楯兼次郎

    ○楯委員 今後の争議は、これは全逓の組合の指令によって下部は動いているのです。明らかに違法であろうとなかろうと、いわゆる公労法上の争議行為なんです。下部が個人々々の意思によっていわゆるこれに抵触をする行動をしたならば、あるいは今法務大臣の言われるような事項が該当するかもわかりません。しかし、中闘の指令によって、労働運動として動いておる。従って、もしそれが違反であるとするならば、これは十七条違反であり、十八条によって処分をされるということにならなくちゃならぬと思う。私はいかなる場合にも、いわゆる労働組合法上の免責条項というものは、この場合には当てはまると思う。なぜ十八条だけで処分をしないのか、こういうことをさっきからお伺いをしておる。幾らあなた方が強弁をされましても、これは明らかに労働運動の意識的な弾圧だと私は考えざるを得ない。これは法を歪曲して使っておる。こういうふうにしか、公平な立場に立ってもそれ以外には考えられないのですが、どうですか。中間指令によって下部の組合員が動いても、なおかつ個人々々の行動であるとあなた方は認識をされて、個人個人を対象に家宅捜集や逮捕をされるのですか。これは中鬪の指令によって動いておる労働運動です。十八条の解雇だけで十分だと思うが、どうですか。
  258. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に、労働組合法の一条二項のお話がございましたが、公労法の第十七条というものはその後に制定せられたものでございますし、争議行為自体が違法になっておるのであります。従って組合法の一条二項によるところのいわゆる違法性の阻却という問題までいかないのでありまして、公労法がぴしゃりとそこに適用されるわけなのであります。そうして公労法に違反をするその行動が郵便法第七十九条の刑罰法規に浮び上って、これはぶつかって参りますから、その点で明白に刑罰法規に触れますから、中闘の指令であろうとなかろうと、これは明白に刑罰法規に違反するものとして捜査をしなければならない。これが私の解釈であり、これはもう定説で明白なことであります。
  259. 楯兼次郎

    ○楯委員 そういうばかな解釈をされたら労働運動はできぬじゃないですか。これは事実上の労働運動の否認じゃないですか。(「中闘がまじめならできる」と呼ぶ者あり)だから、まじめでないとすれば、まじめでない中闘を処分すればいい。指令に従って動いた下部の人たちに何の罪があるか。そういう拡大解釈は困る。吉田内閣、鳩山内閣時代にはこういうことはやらなかったのです。公労法十八条によって処分をしてきたのです。ところが岸内閣になってから、たとえば国鉄の場合は、日本国有鉄道法の刑罰規定を適用する。そうして今度は郵便法を適用するというふうに、冒頭私が申しましたように、これをうんと拡大をして、いわゆる弾圧をしておる。最近岸内閣になってからこういう形になってきた。こういう点は――時間もございませんので、一つよく考えていただきたい。  それからもう少しでありますが、同じように全司法労組に対する弾圧について簡単に私はお伺いしておきたいと思います。全司法に対する処分は、免職が十三名、停職が六名、それからまた非常に大きな処分が行われております。これはどうしてこういう処分が行われたかといいますると、裁判書の作成なんです。裁判書の作成を拒否したというので、書記官を免職十三名、停職六名をやっておるわけです。こういう点については、学者のお話や裁判官の一部の人の意見を聞きましても、非常に不当である。こういうことが最近言われておるわけでありますが、この点について――最高裁からだれか見えておられますか。
  260. 楢橋渡

    楢橋委員長 最高裁判所の事務当局から回答を求められるのですね。それだったら、ちょっとお諮りいたします。最高裁判所事務当局よりの発言を求められておりますから、これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  261. 楢橋渡

    楢橋委員長 御異議なしと認めます。これより許可することにいたします。最高裁判所事務総長横田正俊君。
  262. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 先般裁判所職員の一部に対しまして行政処分で懲戒をいたしましたことは御承知通りでございます。原因はただいま申されましたように、ここ数十年来書記官あるいは書記官補あるいは事務官等がやって参りました裁判書浄書、いわゆる原本となるべき書面を作成するこの仕事を、突如昨年に至りまして、いわゆる奉仕労働返上という名目をもちまして拒絶をしたということになったわけでございます。これは結局、労働組合の中央の指令によるものではございますが、その指令に基きまして一、二の裁判所におきましてその実行が行われたわけでございます。これは裁判史上かつてない重要なことでございまして、その意味におきまして、われわれといたしましてはこれは黙過することはできないという立場で今回の処分をいたした次第でございます。
  263. 楯兼次郎

    ○楯委員 裁判点の作成は書記官はやらなくてもいいということになっているわけです。それを今までやらしておった。従って、やらないことをやりませんと言ったら何で処分しなければいけないのですか。(「やること自体が違法じゃないか」と呼ぶ者あり)書記官が裁判書の作成などということは、執務規則を見ましても、何を見ましても出ていない。従ってこれを拒否したら、なぜ今度は首を切らなければいけないのですか。それはだれがやる仕事ですか。
  264. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 裁判は、これは私から申すまでもなく裁判の内容を決定いたしまして、それを書面に作成し、最後に裁判官が署名捺印をすることによって完成をする、こういう段階があるわけです。この内容の決定は裁判官自身がいたすべきことであります。最後の署名捺印、これももちろん裁判官のいたすべきことでございますが、その中間の裁判官の決定いたしました内容につきまして現実に書面を作る、こういういわば事務的な事柄は、これは判決について申しますれば、日本全国の裁判所ではほとんどタイピストがやっております。その他のものにつきましては裁判所書記官、官補あるいは事務官がやることになっておるわけでございます。(「便宜上じゃないか」と呼ぶ者あり)それは決して便宜上のことじゃございません。これは裁判所法、裁判所規則その他によりましてはっきりしておる。つい昨年までこれが書記官の職務でないと言った人はおそらく一人もないので、この点はそのことがいかにはっきりしておることかおわかりいただけると思います。
  265. 楯兼次郎

    ○楯委員 今最高裁の方が力説をされましたが、私の見る限りでは、書記官が裁判書の作成をするという項目はございません。それから裁判官が――刑訴法の規則でありますが、何条だかに作るのだということは載っております。これはあなたから講義をされなくても、私は見てきたばかりですから間違いないのです。人のやる仕事をやらしておいて拒否したら首ということはあまりひどいじゃないか。これは考え直していただかなければならぬと思います。特にこの処分をいたしました内容でこういうひどいのがある。これは法務大臣も一つ聞いておいていただきたいと思います。全司法新聞に全司法の組合の教育宣伝部長が「命令に抵抗する力」という論文をあげたわけです。あげたらこの教宣部長は首です。この十三人のうちの一人です。その教宣部長がこの新聞にそういう論文をあげるのに同意したのは委員長である。委員長の処分の理由に、この論文をあげさしたといいますか、同意したということが処分の理由の一つにあるわけです。しかも「命令に抵抗する力」という文章を幾ら読んでも、いわゆるこの裁判書の浄書を拒否せよということは一つも書いてない。書いてなくてもけしからぬといわれて首です。委員長も黙過したというので首になっておる。だから、これは法務大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、いわゆる憲法の三十一条の言論の自由に違反しておるのではないかと思います。  それから最高裁の方にお伺いしたいと思いますが、これはあまりひどいじゃないか、これはもう論議のほかだと思うのです。この点についてどうですか。
  266. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 申すまでもありませんが、裁判所は独立いたしておりますので、裁判所の職員に対する行政処分に関する限りにおきましては、最高裁判所の当局からお答えを申し上げることにいたしたいと思います。なお、ただいまの御指摘の点については、私は憲法違反というふうには考えておりません。
  267. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 全司法の論説につきまして、今それは行き過ぎではないかというお話でございますが、これがいわゆる中央の指令に基きまする、そういうことを前提といたしました一つの論文でございました。先ほど社会党さんも申しますように、そういう中央の違法行為をそそのかすような者こそ最もきつく処分しなければならぬという先ほどおっしゃったその線に沿って処分いたしたわけであります。(笑声)
  268. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間もありませんので、さらにお伺いしたいのでございますが、一般の行政管庁の職員がこういうふうになった場合には、人事院に審査の請求をすることができるわけです。ところが、この裁判所の書記官というのは、この処分に不服で裁判所に行政訴訟を起しましても、やはりこれまた裁判するのが首を切った人なんですね。こういう点について非常に私は不公平だと思うし、誤まれる処分がそのまま葬られてしまうと思うのです。こういう点については最高裁ではどういうふうにお考えになっておりますか。首を切った人に再度異議の審査を申請し、あるいは行政訴訟を起しましても、最後は首を切った人がまた判決をする。これじゃ身もふたもないと思うのですが、そういう点についてどう考えますか。
  269. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 その点は裁判所の独立をはっきり認めまする以上は、結局第三者的な他の官庁等がその裁判所のやりましたことをとやかく判断する、裁判事務そのものでございませんでも、司法行政事務というものについて、第三者がとやかく言うことは、やはり裁判所の独立ということに反する結果になりますので、やむを得ない結果ではございますが、こういう制度になっておるわけでございます。もちろん、この異議審査につきましては公平委員会というものがてきまして、この構成につきましては、できる限り第三者的な人も入れまして、公平な調査ができまするように、いろいろ私どもは研究はいたしたいと考えます。
  270. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは自民党の方もひやかされておりますが、私も、この処分の内容を聞いて驚いたのです。ほかの場合と非常に違います。ただ裁判官が当然作成すべき裁判書を、慣例として書かせられておる。これじゃ困る、こう言って拒否したらとたんに首だ。論文一つ書けばとたんに首だ。そうして異議の申請をしても、これが通らない。こういうような状態であるわけです。これはおそらく岸さんもあるいは各大臣の力も、内容を聞けば驚嘆するだろうと思います。ぜひ一つこういう問題について、私は時間もございませんのでやめますが、十分一つ考えて、冒頭申し上げましたように、あなたの内閣になってから、警察あるいは検察庁が労働組合を積極的に弾圧をしておる。こういうことでありますので、この点よくお考え願いたいと思います。  私は質問をやめます。     ―――――――――――――
  271. 楢橋渡

    楢橋委員長 田中織之進君外十七名より、昭和三十三年度一般会計予算昭和三十三年度特別会計予算及び昭和三十三年度政府関係機関予算の補正を求めるの動議が提出されております。本動議について議事を進めます。まず趣旨の説明を求めます。小平忠君。
  272. 小平忠

    ○小平(忠)委員 私は日本社会党を代表し、政府に対して本年度一般会計予算その他二予算の補正を行い、直ちに国会に提出するよう要求するものであります。  私どもの提出した動議の提案理由並びに予算補正の要旨につきましては、お手元に動議案として配付してございますから、御参照いただきたいと存じます。  日本社会党が政府に対して予算補正を要求する最大の理由は、最近の経済不況はますます深刻となり、雇用の伸びは鈍くなり、失業者は激増し、農漁民は相次ぐ災害と農産物の値下りのために窮乏しております。このまま放置するならば、本年夏以降には重大な社会不安すら懸念されておる現状であります。しかるに政府は現在の不況の実態については、事実を事実として国民の前に明らかにしようとしておりません。昨日の本委員会におきましても、工業関係の稼働率がどうなっておるか、三木経企長官はさっぱり御存じない始末でであります。しかも岸総理以下経済閣僚は口を開けば経済不況はすでに底をついたとごまかしの答弁をしておりますが、国民だれ一人としてこれを信用する者はおりません。しかも政府が手をつけた不況対策とは日銀公定歩合の引き下げ、輸出代金延べ払いの緩和など、依然として大企業本位の金融緩和のみに集中しておりまして、現在進行しております経済不況がいかに勤労国民を苦しめておるか、また今後いかに苦しめるようになるかについては全く無視しておるのであります。日本社会党が要求する予算補正は、政府に対して不可能な措置をしいるものではございません。政府が本年度予算編成当時に立てた経済見通しが全くくずれ去った現在、政府の責任として最小限度にとるべき財政措置を私ども政府要求いたしておるのであります。  歳出補正の第一の問題は、激増していく失業者の生活保障問題であります。労働省すら本年度の失業者の大幅増加が必至であると予測しており、しかも雇用吸収がますます鈍くなっておる現在、当面緊急を要する対策は失業対策事業の拡大であります。私ども要求は、本年七月より本年度末までの七カ月間、一日当りの吸収人員を十万人ふやして三十五万人とし、かつ月平均就労日数を全国平均二十五日間とすることであります。また失業対策事業に働く登録労務者の夏季手当を少くとも四日分は増額支給することであります。さらに失業対策の一環として、私どもは暫定的に失業保険金の給付期間を三カ月間延長し、これに要する経費については、国庫負担を増額するよう要求いたしておるのであります。現在の不況下におきまして、三カ月から九カ月の失業保険金の給付期間が終了したからとて、次の就職はほとんど保障されておりません。全く収入の道を閉ざされた完全失業者になるだけであります。このような不況下において、失業保険金の給付期間の延長は、まことにやむを得ざると不可避の措置なのであります。しかも失業対策としては、完全失業して一銭のたくわえもない人々のためには生活保護の準備が必要であります。私どもとしては、本年度予算が生活保護対象人員を百五十万人分計上しているのを、これに三十万人分増額することを要求するものであります。  第二に、不況下において雇用を確保し、全般的に健全なる需要を増大するために、私どもは公共事業費の増額を要求いたします。政府は公共事業の繰り上げ実施を考慮しておられるようだが、不況対策として大切なことは、需要をふやして健全な購買力を増大する保障を行うことであります。われわれは、不況対策の本筋として財政負担による公共事業の増大、それも土地改良、灌漑、漁港、港湾、道路、住宅などの建設工事など、直接雇用吸収度の高い事業に重点を置くべきであることを主張いたしております。  さらに、不況対策の第三として、農林漁業の所得減退を防止するために、第一に、当面する糸価安定の一日も早い解決、第二に、相次ぐ旱魃、雨害、凍霜害、ひょう害などに対して大災融資法を適用して直ちに融資を増額すべき問題、第三に、本州製紙事件で問題となった水質汚濁の被害防止と損失補償の問題、第四に、酪農品の需要の確保と価格安定の問題、第五に、開拓農民の窮乏にかんがみてこの開拓資金の増額の問題であります。これらの要求項目は、いずれも政府当局も自民党の諸君も直ちに予算補正を早急に行う必要があることを重々承知している問題ばかりなのであります。  われわれは不況対策の第四として、中小企業にとりあえず少くとも二百億円、農林漁業に百億円の近代化資金を財政融資することを要求いたします。この追加融資を必要とする理由につきましては、今さら説明するまでもありません。不況下にあっても、大企業の近代化資金は十分に確保され、中小企業、農林漁業方面のみは金詰りが継続している現状では、景気回復とは大企業の立ち直りであり、その陰にあって、中小企業、農林漁業に対してはあらゆる犠牲のしわよせが行われているのであります。これでは依然として経済の二重構造が続き、景気立ち直りはまことに薄弱な土台の上に立つことになるのであります。われわれは政府に対して本格的な景気回復対策に取り組むよう要求いたすものでございます。  われわれが不況対策の第五として要求する項目は、勤労国民の生活向上に備えて、第一に、とりあえず夜勤手当及び五千円以下の期末不当に対する所得税を免除して、実質所得を若干ながら増額すべき要求であります。第二に、政府も公約している最低賃金法、家内労働法、国民年金法を明年度には成立実施に移すための実行準備費を計上する問題であります。  以上、日本社会党は不況対策として五つの対策に分けて歳出補正を要求するものであります。これが費用としては、われわれの推計では、一般会計予算関係では五百億ないし六百億程度を見込まれますが、これが財源は四百三十六億円の財源たな上げを一切取りやめて、これを一般会計予算の財源に繰り入れ、かつ本年度の自衛隊増強は中止して、さらに学校長の管理職手当を削除することによって確保する財源をもって充てるべきであります。また、財政投融資計画関係では、およそ糸価安定のための二百億円を合せて五百億円程度の追加融資が見込まれるのであります。これが原資は産業投資特別会計の余裕財源及び今後確実に期待し得る簡保資金及び資金運用部資金の余裕金などをもって充当することが可能であると考えられるのであります。私どもは失業対策事業、公共事業関係が地方財政負担と関連することは万々承知しておりますが、ここにわれわれが要求した予算補正は、あえて予算編成の財政技術上の問題には触れず、緊急不況対策として何をなすべきかに焦点をしぼったのであります。  何とぞ自民党の諸君も真剣にこの不況対策に取り組んで、本動議に賛成されんことを強く希望いたしまして、趣旨の説明を終ります。(拍手)
  273. 楢橋渡

    楢橋委員長 討論の通告があります。順次これを許します。西村直己君。
  274. 西村直己

    西村(直)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、ただいま日本社会党提出の動議に対しまして反対の意見を表明し、各位の御賛成を得たいと思います。  ます景気に対する認識の問題であります。なるほど今日の景気につきましては、なべ底と言う者もありまして、特に中小企業方面において相当強い各種の要求もわれわれ承わっております。しかし、さればといって、これに対する見方ないし見通しの問題があるのでありまして、すでに当委員会でも政府側からしばしば発言がありました通り、昨年の緊急対策以来国際収支も漸次黒字に転じておりますし、鉱工業生産も四月、五月から横ばいでありますし、物価も横ばい状態、失業者の数も五月に入りましてからはわずかとは申しながら減少に転じております。また在庫調整による在庫補充をするための投資や、今後わが党、わが政府としまして積極的に推進したい輸出振興策、本年度の予算または財政面からするところの公共投融資が本格的にこれから始まるのであります。こういう点から、わが国の産業経済は漸進的であり、長期的ではありますが、上向きに転ずると確信いたしておるのであります。この点は、野党攻勢の立場をとっておられ、いたずらに悲観論によって国民をあおっていきたいような立場に立ちがちな社会党と、漸進的ではありますけれども、長期繁栄の基盤を築かんとするわが党とはだいぶ認識が違うのであります。  この認識の上に立ちまして、わが党はさきの国会におきまして、予算の編成成立に際しましては十分の検討を加えたものでありまして、それからまだ三月にすぎないのであります。従って、本年度の予算及びこれに関連する財政投融資計画の中にはこの事態に対処すべき失業対策費や、農林漁業等の対策費その他公共事業費等が十分織り込んであるのであります。一例を申し上げます。時間がございませんから、失業対策費について言えば、三十二年度に比べて二万五千人の増であります二十五万人であります。最近の状況から見まして、予算の見通しの範囲内で十分対処し得ます。失業保険の問題にしましても、予備費を十分計上してありますし、また農林漁業対策につきましても、一般会計千八百億円、前年度に比して百十三億円増、さらにこれに加うるに財政投融資においては関係機関の資金を非常に充実しておるのであります。  こう考えて参りますと、なるほど最近の経済面が生産調整の進行に伴なって停滞的様相を示しておることは事実でありますが、これは昨年の急激拡大の跡始末からくるところの影響下にあってやむを得ない動きを示しておると思います。しかしこれに対して直ちに財政面から補強するよりは、まず金融面から弾力性ある政策を通じて、適時かつきめのこまかい政策で、漸進的であるが、だんだんに積極政策に入るべきだと思うのであります。最近の輸出の伸び悩みなどから見ましても、今直ちに財政面から急激なてこ入れをすることは、景気を一時刺激をするかもしれませんが、これは妥当ではない。従って糸価安定や災害対策、中小企業対策なども、本年の予算のワク内において、また財政投融資などの資金操作によりまして、十分その効果が期待し得ると考えております。いわんやことしの予算その他財政資金の運用は、いよいよこれから本格化するのでありまして、その運用に時期を得、効率を上げますならば、景気を好転せしむる健全かつ穏当なる道は十分開けておると思うのであります。  今社会党提案の四百三十六億を放出して積極的刺激を与えることは、一時かつ一部分に拍手は得ましても、長期にわたる景気対策としては、われわれはとることができないと思います。わが党はこの間の選挙で国民大多数の支援を得ましたが、今後四年たっぷり長期的に繁栄の道に向って漸進する態勢にあるのでありまして、来たるべき臨時国会、通常国会をも通じまして、この経済基盤強化の基金、資金等を運用し、ますます健全かつ長期繁栄の施策を打ち立てたいと考えております。  特に一言社会党のお立場に触れておきますが、中小企業が不況だとおっしゃる、なるほどその通りであります。そのためにわが党もいろいろ手を打って、たとえば経営者に対しては中小企業団体法あるいは最低賃金法等によって従業者の安定をはかろうとする、それに対しまして社会党の方々でも一部は非常にこれに積極的になっていらっしゃるが、不幸にしまして一部の方は反対投票まで参議院においてなさったという最近の事例であります。どうか願わくは社会党の各位が中小企業対策を真剣に論ぜられるならば、まず党内の態勢において十分これに対する一致した理解を持っていただきたいことを、お願いしたいのであります。  私はこの意味で、今回の社会党の提案に対しましては反対をはっきり申し上げまして、各位の御賛成を得たいと思うのであります。(拍手)
  275. 楢橋渡

    楢橋委員長 小松幹君。
  276. 小松幹

    ○小松(幹)委員 私は日本社会党を代表して、三十三年度一般会計予算、同特別会計予算、並びに政府関係機関予算の補正を行うただいまの動議に賛成の討論を行うものであります。  自由民主党はさきの総撰挙に当って、わが社会党と同じような表現において、すみやかに今次の不況対策を行うことを公約として発表しております。すなわち、国際収支は黒字の基調で、危機は一応克服されたようだが、今後は適切なる景気調整策を行いたい。さらに、たな上げされた経済基盤強化資金を活用して、失業対策と経済基盤強化をはかり、財政投融資の余裕金の放出をしても景気の回復をはかりたい、とこういうように選挙中も言っておるわけであります。はっきりした言明を今日まで繰り返しておる。  しかるに、選挙後岸内閣が形成されましたが、この選挙中あるいは選挙前に言われた自由民主党の公約に対しては、はっきりした責任あるものを感じていない、何らの具体策も立てていないわけであります。ただいま西村君の意見によりますと、まことに言いのがれか、今の不況対策はそのまますべっても大したことはないのだというような意見を今も言っておることは、まことに遺憾のきわみであります。  日本社会党は自由民主党がかつて国民に公約したことをそのまま今次の国会において補正予算に組めと動議を出しておる。これは自民党の公約を社会党が動議の形で出しておるようなものである。これがただいま提出したわれわれの動議であります。自由民主党がこの動議に反対するということは、まことに公党として遺憾のきわみであり、また国民に対してこれは背信行為である。選挙中はうまいことを言ったけれども、選挙が終った後は適当にすべる、こういうような格好になる、かように私は考えます。心ある自由民主党員も、この私の言うことには必ずそうだと賛成するでありましょう。  政府は経済不況に対して、あるいは佐藤大蔵大臣も言っておるように、緊急財政対策を行うことは時期が早い、こういうようなことを言って、まだその時期ではないと言っておるが、しかしながら不況はますます深刻になっておる。先ほど西村君も不況はそれほどセンチメンタルに深刻ではないというようなことを言ったけれども、事実はもう何とも説明のしようのないような深刻さになっておる。経済は末端において破壊されようとしておる。現在をおいて私は緊急対策はあり得ないと思う。この緊急対策はもうあとになっては出しおくれの証文となり、今をおいてはないと私は考える。政府の考えるようにもしこの国会を見送るとするならば、時期はいつか。おそらく結果としては十一月を過ぎるでありましょう。そうすればいよいよ昭和三十四年度の予算編成期に入り、それがためにまた遷延されるという結果になる。この六月より十一月までのいわゆる夏枯れの半年間こそ、まことに当面の緊急対策が最も必要な時期である。もはやこのことは当然の常識でなくちゃならぬと思うのであります。  政府が先日発表したところの失業状態の見通しについて、政府発表したのを見ましても、今度の不況の深刻化に伴い失業も多くなり、完全失業者は五十万に増加するであろうと、政府自身から説明をしておるではありませんか。さらに統計的に見ましても、昨年までは離職者が月に八千人の程度である。ところが本年に入って一月から三月までの統計を見ておりますと、月平均二万七十人の離職者が出ておる。こういう情勢を見たときに、このような資本主義経済の犠牲者、いわゆる操業短縮による失業者を半年間も緊急対策をしないでほったらかしにしておいて、静観しておいてよいかどうかということが問題になると思います。これこそ私は政治が政治なき政治であり、そして無手勝流の静観といわなければならないと思う。昨日岸総理は黒田委員質問に対しても、全く日中貿易は静観の態度のような説明をしておりました。何もかにも、官僚主義というものは苦しいときには静観をする、そしてあとになって脱兎のごとく自分の利害に走っていくのが官僚主義の骨頂なんです。この官僚主義こそ私は放擲すべきであると思う。官僚主義はそつがない。しかしながら斬新性もないわけです。親切さもないわけです。あるものは命令があり、法令があるのみだ。そうして命令や法令を、先ほど質問があったように労働者にはびしびし適用していくけれども、現時の不況対策に対してはなまぬるく、緊急対策もやり得ない、これが今の実態だと私は思う。岸内閣に政治的な良心があるならば、今直ちにこの失業対策に対しても、二百億程度失業対策緊急措置を行うべきが当然である。本予算補正の要求の要点は、まことにここにあると私は考えております。日雇い労務者の夏季手当のわずか四日分の増額もし得ないで、いかにしてあたたかい政治であるというか、私はこのことをよく考えていただきたいと思います。  さらに当面最も緊急を要するものは、農村の凍霜害であり、旱魃であり、あるいは水害あるいは九州方面、西日本方面の長雨等の大災に伴う農業被害の問題であります。このような被害農家の回復は、私は時間を置くことはできないと思う。このまま緊急対策を時期でないというような格好ですべることはどうしてもできない。一刻を争って財政措置を講ずることが、特にこの農村回復には必要であります。  また最近の繭糸価格の暴落は深刻であって、この緊急措置は焦慮の急にもなっております。当初糸価安定特別会計の繰り入れの資金は七十億円を見ておりますが、これではとうてい不足である。百億のワクの必要は、自由民主党ですらもこれを認めておるような状態であります。自民党の中にもこの両三日後には織物危機突破対策が緊急に党内において持ち上るであろうと私も想像しておりますが、織物危機突破対策は、自由民主党の内閣はそういうようなすべるような考え方でおるけれども、党内はなかなかそうはおさまらない。これは今の織物あるいは繭糸の暴落に対するところの国民の声が自由民主党の内からゆさぶっておると私は考えざるを得ないのであります。  また農家の酪農も同様であります。今日日本農業並びに日本国民の食生活において、酪農の持つ比重はきわめて大きくなって参りました。この酪農が最近乳価の下落、乳製品資本の買いたたきによって採算がとれない緊急事態を引き起しておりますが、これに対して大幅な財政措置を講じて救済しなければ、酪農の衰退はもちろんでありますが、酪農農民の経済破綻も多大であると私は考えるのであります。  またさらに動議にも説明されましたように、政府は故意に経済の見通しを見誤まっておるか、あるいは見過しておるか、不況は夏枯れを通じて秋へとさらに深刻になってくるという予想に対して、今は不況のなべ底だというように経済の見通しを甘く見て、あるいは今次の経済不況を経済的な論点から妥当であるとしてすべろうとしておるような感じもいたします。すなわち最近の見通しから見ますと、新規投資、需要の減退はますます深刻になっております。また設備投資の過剰生産力がさらにこの七月、八月、九月ごろに発動されるような趣きもある。また輸出も八方ふさがりでますます輸出状況は悪い。こういう観点から見て、今の不況はさらに秋になってますます深刻化してくると私は見ております。この点政府は経済的に政策の上で甘く見て現在をなべ底景気だ、こういうように言っておりますが、私はそうは考えない。まあその経済の見通しのことは一応おくとしましても、長期にわたる不況の犠牲はさらに操短の圧力、下請代金遅払いの圧力、金詰まりの深刻化、さらには売れ行きの不振、日中貿易の杜絶、こういうような理由をかてて加えて、中小企業やあるいは零細企業に対してしわ寄せされてくるということも当然でありまして、いよいよ経済破綻はこの中小企業、零細企業に来ることは必至になっております。経済基盤の強化をはかるという現内閣は、そのことを裏返せば経済基盤の強化は大資本のみ考ええておるらしい。経済基盤の強化は大資本のみの配慮で足りるものであるかどうか私は問題があると思います。大資本のみが優先であって、中小企業、零細企業は経済基盤の強化の対象にならないというならば別であります。しかしながらいかに自由民主党であろうとも、大資本のみの経済基盤を考えて、中小企業はどうでもいいというわけではないと思う。私は中小企業こそ経済基盤の強化をはかるべき時期が今だと考えざるを得ないのであります。この夏枯れから不況深刻の秋に入る現在の時期こそ、私は緊急経済措置として適切なる時期である、こう思うわけであります。またこの程度の、今動議として提出されておるところの財政投資の力くらいでは、経済そのものを、あるいはインフレとか、そういうように経済を悪化させる要因にはなり得ない、こういうように考えます。  以上のように私は考えまして、政府は緊急不況対策を明確にして、今次国会に大きく打ち出して国民を納得させ、そうして不況にあえぎ、あるいは経済の破綻に苦しんでおるところの国民を安心させることこそ政治の要諦であると考えるならば、その措置として補正予算を出して、そうして今次の国会に花を添えることこそ、私は政治の進む道である、かようなことを申し上げまして、ただいま小平君から社会党を代表して提出されました動議に賛成をいたす次第でございます。(拍手)
  277. 楢橋渡

    楢橋委員長 これにて討論は終りました。  これより採決いたします。田中織之進君外十七名提出の昭和三十三年度一般会計予算昭和三十三年度特別会計予算、及び昭和三十三年度政府関係機関予算の補正を求めるの動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  278. 楢橋渡

    楢橋委員長 起立少数。よって、田中織之推君外十七名提出の動議は否決されました。  本日はこれにて散会いたしします。     午後六時六分散会