○小松(幹)
委員 私は
日本社会党を代表して、三十三年度一般会計
予算、同特別会計
予算、並びに
政府関係機関
予算の補正を行うただいまの動議に賛成の討論を行うものであります。
自由民主党はさきの総撰挙に当って、わが社会党と同じような表現において、すみやかに今次の不況対策を行うことを公約として
発表しております。すなわち、国際収支は黒字の基調で、危機は一応克服されたようだが、今後は適切なる景気調整策を行いたい。さらに、たな上げされた経済基盤強化資金を活用して、失業対策と経済基盤強化をはかり、財政投融資の余裕金の放出をしても景気の回復をはかりたい、とこういうように選挙中も言っておるわけであります。はっきりした言明を今日まで繰り返しておる。
しかるに、選挙後岸
内閣が形成されましたが、この選挙中あるいは選挙前に言われた自由民主党の公約に対しては、はっきりした責任あるものを感じていない、何らの具体策も立てていないわけであります。ただいま
西村君の意見によりますと、まことに言いのがれか、今の不況対策はそのまますべっても大したことはないのだというような意見を今も言っておることは、まことに遺憾のきわみであります。
日本社会党は自由民主党がかつて
国民に公約したことをそのまま今次の
国会において補正
予算に組めと動議を出しておる。これは自民党の公約を社会党が動議の形で出しておるようなものである。これがただいま提出したわれわれの動議であります。自由民主党がこの動議に反対するということは、まことに公党として遺憾のきわみであり、また
国民に対してこれは背信行為である。選挙中はうまいことを言ったけれ
ども、選挙が終った後は適当にすべる、こういうような格好になる、かように私は考えます。心ある自由民主党員も、この私の言うことには必ずそうだと賛成するでありましょう。
政府は経済不況に対して、あるいは佐藤大蔵大臣も言っておるように、緊急財政対策を行うことは時期が早い、こういうようなことを言って、まだその時期ではないと言っておるが、しかしながら不況はますます深刻になっておる。先ほど
西村君も不況はそれほどセンチメンタルに深刻ではないというようなことを言ったけれ
ども、事実はもう何とも説明のしようのないような深刻さになっておる。経済は末端において破壊されようとしておる。現在をおいて私は緊急対策はあり得ないと思う。この緊急対策はもうあとになっては出しおくれの証文となり、今をおいてはないと私は考える。
政府の考えるようにもしこの
国会を見送るとするならば、時期はいつか。おそらく結果としては十一月を過ぎるでありましょう。そうすればいよいよ
昭和三十四年度の
予算編成期に入り、それがためにまた遷延されるという結果になる。この六月より十一月までのいわゆる夏枯れの半年間こそ、まことに当面の緊急対策が最も必要な時期である。もはやこのことは当然の常識でなくちゃならぬと思うのであります。
政府が先日
発表したところの失業状態の見通しについて、
政府の
発表したのを見ましても、今度の不況の深刻化に伴い失業も多くなり、完全失業者は五十万に増加するであろうと、
政府自身から説明をしておるではありませんか。さらに統計的に見ましても、昨年までは離職者が月に八千人の
程度である。ところが本年に入って一月から三月までの統計を見ておりますと、月平均二万七十人の離職者が出ておる。こういう情勢を見たときに、このような資本主義経済の犠牲者、いわゆる操業短縮による失業者を半年間も緊急対策をしないでほったらかしにしておいて、静観しておいてよいかどうかということが問題になると思います。これこそ私は政治が政治なき政治であり、そして無手勝流の静観といわなければならないと思う。昨日岸
総理は黒田
委員の
質問に対しても、全く日中貿易は静観の
態度のような説明をしておりました。何もかにも、官僚主義というものは苦しいときには静観をする、そしてあとになって脱兎のごとく自分の利害に走っていくのが官僚主義の骨頂なんです。この官僚主義こそ私は放擲すべきであると思う。官僚主義はそつがない。しかしながら斬新性もないわけです。親切さもないわけです。あるものは命令があり、法令があるのみだ。そうして命令や法令を、先ほど
質問があったように労働者にはびしびし適用していくけれ
ども、現時の不況対策に対してはなまぬるく、緊急対策もやり得ない、これが今の実態だと私は思う。岸
内閣に政治的な良心があるならば、今直ちにこの失業対策に対しても、二百億
程度失業対策緊急措置を行うべきが当然である。本
予算補正の
要求の要点は、まことにここにあると私は考えております。日雇い労務者の夏季手当のわずか四日分の増額もし得ないで、いかにしてあたたかい政治であるというか、私はこのことをよく考えていただきたいと思います。
さらに当面最も緊急を要するものは、農村の凍霜害であり、旱魃であり、あるいは水害あるいは九州方面、西
日本方面の長雨等の大災に伴う農業被害の問題であります。このような被害農家の回復は、私は時間を置くことはできないと思う。このまま緊急対策を時期でないというような格好ですべることはどうしてもできない。一刻を争って財政措置を講ずることが、特にこの農村回復には必要であります。
また最近の繭糸価格の暴落は深刻であって、この緊急措置は焦慮の急にもなっております。当初糸価安定特別会計の繰り入れの資金は七十億円を見ておりますが、これではとうてい不足である。百億のワクの必要は、自由民主党ですらもこれを認めておるような状態であります。自民党の中にもこの両三日後には織物危機突破対策が緊急に党内において持ち上るであろうと私も想像しておりますが、織物危機突破対策は、自由民主党の
内閣はそういうようなすべるような考え方でおるけれ
ども、党内はなかなかそうはおさまらない。これは今の織物あるいは繭糸の暴落に対するところの
国民の声が自由民主党の内からゆさぶっておると私は考えざるを得ないのであります。
また農家の酪農も同様であります。今日
日本農業並びに
日本の
国民の食生活において、酪農の持つ比重はきわめて大きくなって参りました。この酪農が最近乳価の下落、乳製品資本の買いたたきによって採算がとれない緊急事態を引き起しておりますが、これに対して大幅な財政措置を講じて救済しなければ、酪農の衰退はもちろんでありますが、酪農農民の経済破綻も多大であると私は考えるのであります。
またさらに動議にも説明されましたように、
政府は故意に経済の見通しを見誤まっておるか、あるいは見過しておるか、不況は夏枯れを通じて秋へとさらに深刻になってくるという予想に対して、今は不況のなべ底だというように経済の見通しを甘く見て、あるいは今次の経済不況を経済的な論点から妥当であるとしてすべろうとしておるような感じもいたします。すなわち最近の見通しから見ますと、新規投資、需要の減退はますます深刻になっております。また設備投資の過剰生産力がさらにこの七月、八月、九月ごろに発動されるような趣きもある。また輸出も八方ふさがりでますます輸出状況は悪い。こういう観点から見て、今の不況はさらに秋になってますます深刻化してくると私は見ております。この点
政府は経済的に政策の上で甘く見て現在をなべ底景気だ、こういうように言っておりますが、私はそうは考えない。まあその経済の見通しのことは一応おくとしましても、長期にわたる不況の犠牲はさらに操短の圧力、下請代金遅払いの圧力、金詰まりの深刻化、さらには売れ行きの不振、日中貿易の杜絶、こういうような理由をかてて加えて、中小企業やあるいは零細企業に対してしわ寄せされてくるということも当然でありまして、いよいよ経済破綻はこの中小企業、零細企業に来ることは必至になっております。経済基盤の強化をはかるという現
内閣は、そのことを裏返せば経済基盤の強化は大資本のみ考ええておるらしい。経済基盤の強化は大資本のみの配慮で足りるものであるかどうか私は問題があると思います。大資本のみが優先であって、中小企業、零細企業は経済基盤の強化の対象にならないというならば別であります。しかしながらいかに自由民主党であろうとも、大資本のみの経済基盤を考えて、中小企業はどうでもいいというわけではないと思う。私は中小企業こそ経済基盤の強化をはかるべき時期が今だと考えざるを得ないのであります。この夏枯れから不況深刻の秋に入る現在の時期こそ、私は緊急経済措置として適切なる時期である、こう思うわけであります。またこの
程度の、今動議として提出されておるところの財政投資の力くらいでは、経済そのものを、あるいはインフレとか、そういうように経済を悪化させる要因にはなり得ない、こういうように考えます。
以上のように私は考えまして、
政府は緊急不況対策を明確にして、今次
国会に大きく打ち出して
国民を納得させ、そうして不況にあえぎ、あるいは経済の破綻に苦しんでおるところの
国民を安心させることこそ政治の要諦であると考えるならば、その措置として補正
予算を出して、そうして今次の
国会に花を添えることこそ、私は政治の進む道である、かようなことを申し上げまして、ただいま小平君から社会党を代表して提出されました動議に賛成をいたす次第でございます。(拍手)