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1958-09-26 第29回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年九月二十六日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 田中伊三次君 理事 福井 盛太君    理事 井伊 誠一君       綾部健太郎君    犬養  健君       小澤佐重喜君    薄田 美朝君       辻  寛一君    辻  政信君       中村 梅吉君    馬場 元治君       淡谷 悠藏君    大貫 大八君       菊川 君子君    田中幾三郎君       中村 高一君    西村 関一君       志賀 義雄君  委員外出席者         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         警 視 総 監 小倉  謙君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 九月十六日  委員辻政信辞任につき、その補欠として賀屋  興宣君が議長指名委員に選任された。 同日  委員賀屋興宣辞任につき、その補欠として辻  政信君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員神近市子辞任につき、その補欠として杉  山元治郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員杉山元治郎辞任につき、その補欠として  神近市子君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員勝間田清一君及び神近市子辞任につき、  その補欠として西村関一君及び淡谷悠藏君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員西村関一君及び淡谷悠藏辞任につき、そ  の補欠として勝間田清一君及び神近市子君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 八月十九日  次の委員会開会要求書が提出された。    法務委員会開会要求書  和歌山県における勤評反対運動弾圧事件及び福  岡県における教組幹部不当逮捕事件、其の他  につき、直ちに委員会を開会致されたく、衆議  院規則第六十七条第二項の規定により左記連名  にて要求します。   昭和三十三年八月十九日    法務委員長小島徹三殿       法務委員                  井伊 誠一                  菊地養之輔                  坂本 泰良                  猪俣 浩三                  大貫 大八                  勝間田清一                  神近 市子                  菊川 君子                  田中幾三郎                  中村 高一     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  法務行政及び検察行政に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますから、順次これを許します。  中村高一君。
  3. 中村高一

    中村(高)委員 法務大臣は何時ごろになれば来られますか。
  4. 小島徹三

    小島委員長 閣議の都合ですから、ちよつとはつきりわかりません。できるだけ早く来るように申し伝えます。
  5. 中村高一

    中村(高)委員 それでは、法務大臣には一つさつそく手配をしていただきたいと思います。  最近の労働争議あるいは先般来行われております勤評等をめぐりまして、警察官暴行事件が非常にふえておるのであります。従来、警察官がこんなに暴行を働くというようなことが、これほどはつきりいたして参りましたことはないくらいでありますが、特にこのごろは、労働組合の者ばかりでなく、全然争議関係のない新聞報道取材記者あるいはカメラマン、そういう別の任務を帯びておりまする者にまで暴行を加えるという事件が非常にふえてきたのであります。今までも、和歌山県の新聞記者並びにテレビのカメラマンなどに加えられました暴行事件、それから水戸でも同じような報道陣の人に警察官暴行を加えております。さらに、九月の十六日に最高裁判所の前で行われました新聞記者に対しまする暴行事件、こういうもので、いかにむちやなことを警察官がやつておるかということがはつきりいろいろの資料からも出ておりますし、すでに警視総監あるいは警察庁等にも新聞協会その他から抗議が出ておるようであります。全然争議関係のない、報道をもっぱら職務といたしておりまする方面にさえも、かくのごときむちやくちやな暴行が行われておる事実から見まして、労働争議に加えられますところの警察官の最近のやり方がいかにひどいかということも想像できるのであります。ここに北海道におきまする王子製紙争議の、警察官の加えております暴行写真がたくさん集まつておりますから、警察庁長官と、今警視総監が見えておりますから、後ほどこの写真ごらんになつていただきたいと思うのであります。特に私はきよう警察庁長官警視総監がおられますから伺いたいと思いますが、新聞記者を検束して暴行を加えましたときなどに使つておる言葉がはなはだ下品で、まるでそこらにおります暴力団か何かのような言葉を使つておるのであります。「お前もいただいてやろう」という言葉が出るのです。みなそういう言葉を使つておる。見ると、何か暴力団仁義みたいな言葉です。いただいてやるとは何ですか。こういう言葉をほかにも使つているのですね。引つぱるときにはお前もいただく、何という品の悪い、警察官としてあるまじき言葉だと思うのです。あんな言葉訓練するときに教えているのですか。一人でないのですから、大ぜいの警察官そばに寄つてきて、「お前もいただくぞ」、何ですか、一体。やくざの仁義みたいな言葉を使つておるのであります。そのうちの一つであります九月十六日に起りました、警察庁警視庁もすぐそばでありますから、この事件についての御答弁を願いたいと思うのでありますが、最高裁判所の前で勤評反対の、これは学連デモでありますけれども、その取材に当つてつた東京新聞の香原記者と日本経済新聞の秋山両記者が、警察官に二人とも—一人は道ばたに引きずり出されて、一人は庭に引きずり出されまして、そこで、なぐる、けるの暴行を加えられ、二人とも一週間の傷を負わせられた。しかもその傷を負わせられましたときに、明らかに二人とも新聞記者であることを証明するための記者章を見せたり、あるいはおれは新聞記者であるということを、その暴行を受ける最中もたびたび言つておるのにもかかわらず、その際は新聞記者もくそもあるものかと言つて、襲いかかつてきたという事件であります。約二十人の警官から、かわるがわる、なぐる、ける、突くという暴行を加えられました。しかもこの状況写真にとろうといたしていた報道陣の者に対しては、ここでも使つておるのですね、「そういうことをすればお前もいただくぞ」と言つておどかしております。こういうことについて、すでに新聞協会からも抗議が出ております。また警視庁でも岡本警視を主任にして、その後暴行を行いました警察官に対して取調べをいたしておるそうでありますが、これについては警視庁警察庁等において調べられておりまする内容と、現在取調べの結果、どういう状況になつておるかをまずお尋ねをいたしておきたいと思います。
  6. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお尋ねの、九月十六日の警視庁前におきます新聞記者に対する警察官暴行事件ということは、私はまことに遺憾に存じておるのでございます。新聞記者であろうとなかろうと、とにかく市民に対して警察官暴行するということは、これは許すべからざることでございまして、何とも申し上げようのない遺憾な事態であると思うのであります。私、今まで聞いておりますところでは、最初新聞記者に対して警察官がそれをデモ隊の残りというふうに考えて、デモ隊がばらばらにおるということの状況をなくすために、これをデモ隊の方に誘導しようということで始まつた事件だと思いますけれども、とにもかくにも新聞記者に対して暴行を加えたという事実は、確かにあつたように思います。それで、これは告発もされておりますが、告発のあるなしにかかわらず、真相を十分に究明して、適当な措置をとらなければならないというふうに考えておるのであります。従いまして、この事件につきましては、単に内部規律の問題として行政処分ということを考えるばかりでなしに、警視庁刑事部捜査二課におきまして、捜査専門家をしてこの捜査に当らしておるわけでありまして、現在まで二十一名の者について調査をいたしておるわけでございます。もちろんこの二十一名が全部暴行を加えたということではないと思うのでありますが、こういうふうにして慎重に捜査を進めておる次第であります。  重ねて申し上げますが、われわれも日ごろから警察官の品性の陶冶、訓練の徹底ということにつきましては意を用いておるのでございますが、今回のような事件が起りましたことを非常に遺憾に思つておる次第でございます。重ねてこの点を申し上げておきます。
  7. 中村高一

    中村(高)委員 この事件について、現在二十一名の者について取調べ中だと言うのでありますから、その二十一名の中におると思うのでありますが、直接暴行を働いた中隊中隊長上原新三郎という警部でありますか警部補でありますか、指揮官などは最もそういう場合には冷静であらねばならぬと思うのであります。当時現場におつた新聞社諸君の一致した意見によりますと、中隊長みずからが自分でも出てきて、そうして突いたりけ飛ばしたりしているのをみんなが目撃しておる。からだの非常に大きい人であつて、みんな見ておつた諸君は、でぶの中隊長だと言つておるのでありますから、みんな見ておるのでありますが、現場指揮に当つておる者がみずから突いたり、なぐつたりというのも、私は少い事犯だと思います。第一線の者がやつた例はないとは言えませんけれども、指揮をとつておる者が自分で出ていつて、そして、なぐつたり、けつたりするということは、これはよほど私は悪質だと思うのであります。こういう取締りに対して、日ごろどんな訓練をしておるのか、その辺のところはまことに問題でありますが、指揮官みずからがこういうようなことをやるということであれば、第一線の者はむろんあばれるに違いないのであります。その事実はもうすでにお調べになつておるからわかつておるはずでありますけれども、中隊長みずからあばれ回つたという事実は、おわかりになつておりますか。
  8. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほど申し上げましたように、この事件は慎重に捜査を進めている段階であります。しかし、今お尋ね隊長行動に出たということは、聞いております。ただ、隊長はやはりこれがデモ隊の一部の者であるというふうに考えて、これを数回押したということだけは私聞いておりますが、詳細の点につきましては、先ほど申し上げましたように刑事部捜査いたしておる段階でありますので、この程度以上に申し上げるわけに参らぬと思います。あの日は、十五日の例のデモがございまして、これがようやく片づいてほつとしておつたときに、また夜間のああいう問題が起つたということで、警察官気持の中にも冷静を欠いた面があるかというふうにも思うのでありますが、隊長がそうした事態において冷静さを失うということがあつてはもちろんならない問題だと思います。これは日ごろから訓練をいたしておるわけでありますが、今後もそういうことにつきまして十分注意を怠らないで訓育をいたして参りたいと思つております。
  9. 中村高一

    中村(高)委員 混乱をいたしておりまするときに、新聞社諸君カメラを向けますね。私は、あばれておる警察官などとしては、とられちや困ると思うのはわかります。自分が乱暴しておるところを写真にとられちや工合が悪いですから。けれども、いつも写真班との間に混乱が起つて、この日もやはりカメラを向けるとすぐにそれに対して写させまいとするのですね。これは正しい取締りをいたしておるのであるならば、写真にとられようが、一向おそれることはないのであります。またそういうところを写させてはいけないという法律もありませんし、むしろそういう法を逸脱したような取締りをする者に対しては、写真をとつておくということも私は必要だと思うのであります。特にカメラマンに対しては、どの警察官も襲いかかるのであります。そういうことに対しては日ごろどういう扱いをしておるのか、写真をとらせるという指導はしてないかもしれませんけれども、写真をとるということに対して、一致して写真機をたたき落したりあるいは襲いかかつたりしておりますけれども、こういう点については、みずから法を逸脱しておるということを写されるのがいやだということから出ておると思います。今度もそういう問題が起きておりますけれども、お調べになつたところでは、どういう状況になつておりますか、お尋ねします。
  10. 柏村信雄

    ○柏村説明員 十六日の事件におきまして、取材カメラマンに対して暴行を働いたということは、私は聞いておりません。元来、報道の自由と申しますか、取材の自由と申しますか、当然そういうことに携わる人に対しましては、むしろできるだけ便宜を与えるべきでありまして、これを妨害するというようなことは、筋としてなすべきことでもないと思います。ただ、非常に混乱の際に、それと意識しないで、記者側から見れば妨害されたというような事態が起ることもあり得るかと思いますし、また多くの警察官の中には、行き過ぎてじやまをするという者も出るかと思いますが、われわれといたしましては、こういうことについてはできるだけ報道の自由を守つて参りたいと考えておるわけであります。また現に警察自体といたしましても、できるだけ現場写真を多くとるように、これは単に証拠保全という意味の採証業務としてやるばかりでなしに、今後における警備実施等につきましての教訓ともなり、これは行き過ぎであつたとか、あるいはこういうときはこうした方がいいというような教訓にもなるのであります。警察自体としても、できるだけそういうことについては意をはかつておるような次第でございます。いわんやそれを業務とされる報道陣に対して、建前としてこれを阻害するというような気持は毛頭ないのであります。その点だけは御了承をお願いします。
  11. 中村高一

    中村(高)委員 カメラマンに対しては、何か写しておるのに対して、そういうことをするのは公務執行妨害だ、こう言つておるというのですね。公務をやつておるのを写真にとるのは公務執行妨害だと言うて、カメラを持つておる人に対して、右手をつかんで、そうして公務執行妨害だとおどかしておる警察官があるのであります。そんなばかなことがあるとは思いませんが、そういうことに対してお調べになつておられますかどうですか。
  12. 柏村信雄

    ○柏村説明員 そういう事実は私聞いておりません。
  13. 中村高一

    中村(高)委員 この問題が起つてからすでにもう十日以上を経過いたしておりますけれども、警視庁自分のところにおる警察官でありますから、そういつまでも調べがかかるとは思わないのでありますけれども、いつごろこの事件取調べの経過が発表になるなり、結末を告げるなり、あるいは国会に報告されるなり、その点を一つあらかじめお話を願いたいと思います。
  14. 小倉謙

    小倉説明員 今回の事件につきましては、その当日直ちに刑事部において特別な調査班を設けまして捜査を進めておるのであります。先ほどお話がありましたように、今日まで二十何名かの関係者調べておりまするが、まだ多少調べも残つておりますし、相互の供述に合致しない点もございますので、なるべく早く捜査を完了いたしたいと思いますが、いましばらく時日をおかしいただきたい。いずれにしても、警視庁にしましてもなるべく早くこの事件結末をつけたいと思いますので、近くこの事件を検察庁の方に送付いたしまして、さらに公明を期していきたい、こう思つております。
  15. 中村高一

    中村(高)委員 それでは、この問題は目下警視庁でお調べになつておることでありますから、調べの進行の状況によつてまた質問をすることにいたしまして、一つすみやかにこの事件についても結末をつけるように、調べを促進してもらいたいと思うのであります。  それから、もう一つは、北海道王子製紙ストに対して、警察官がこれも非常な暴行を加えまして、多数の負傷者を出しておるのであります。これは現場写真等もたくさんありまするので、その幾つかを—書記方ちよつと来て下さい。これを警視総監に見せてもらいたい。  これは北海道王子製紙ストに関連をしまして、第二組合ができてこれが就労をするということから裁判所経営者側が仮処分の申請をして第二組合就労をするということを契機にして衝突が起つたのは事実でありまするが、これに対して、警察官が非常に多数の組合員に対して暴行を加え、その写真最初に出ておるようでありますが、家族の者、婦人に対してまで警察官うしろからこれを突いたり、なぐつたりいたしておるのでありますか、多数の重傷者も出しております。この警察官暴行問題についても、現地警察から警察庁の方に報告が来ておると思いますけれども、これに対します政府側の詳細な報告一つお聞きいたしたいと思います。
  16. 柏村信雄

    ○柏村説明員 王子製紙苫小牧におきます争議状況、これは非常に長期間にわたりまして行われております。ことに組合が二つに分れまして、就労しようとする第二組合員をピケをもつて第一組合員がはばむということで、相当時日にわたりまして幾たびかのこぜり合いということがございます。そういうときに警察官が、その混乱を防ぐ意味におきまして中に割つて出て、これを制止するという行動はしばしば行なつておるわけでございますが、今御指摘のように、警棒でこづくとか、けるとか、なぐるというような、何もしないでおる者に警察官がそういう暴行を加えたという事実は、私はこれは全く聞いておらないのであります。
  17. 中村高一

    中村(高)委員 これだけいろいろの現地新聞などにみんな材料として出ておりまして、たくさんの負傷者も出しておりますけれども、これに対して警察官暴行一つ報告がないというのもおかしいようであります。全然来ておらないのですか。
  18. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警察官不法行為を行なつた者に対しては、強権をもつてこれを逮捕するということはございます。従いまして、逮捕に当つてこれをまた妨害するということになりますならば、この妨害を排除するために、事実、力を用いるということはございます。これを直ちに警察官暴行事件というふうに判断されることはどうかというふうに考えるのであります。もちろん常に手をこまぬいて警察官は何も手出しをしないということではないのでありまして、警察官がことさらに不法のない事態において暴行を加えるということは聞いていないということを申し上げたのでございます。
  19. 中村高一

    中村(高)委員 今、長官のところに出している写真の中にも、警察官が四人も五人もかかつて引きずり出している写真もありますけれども、それは何ですか、一体。保護のために引きずり出したわけでもないでありましようが、ああいう写真を見て、大ぜいの中から、ごぼう抜きというのですけれども、引きずり出して、そして警察官まん中に連れていつたりなどいたして、これはむろんそこでなぐつたり、けつたりいたしておるのでありますけれども、全然そういうことに対して調べがないというのはまことに怠慢だと思うのであります。委員長もそこにごらんになるように、ただ一人の者を十人くらいの警察官まん中に入れているのです。これはなぐつているところは写真に出ていませんけれども、これはその中に入つたら、もうなぐり、けられるのです。その写真ごらんになつてもわかると思います。
  20. 柏村信雄

    ○柏村説明員 この写真が直ちにいつの事件であるかということを、私はここで判断できないのでありますが、確かに公務執行妨害をいたした者を逮捕した事実はございます。ところが、逮捕するに当つて、一人で悪いことをしているというのでなくて、スクラムを組み、いわゆる洗濯デモというようなことをやつて、そしてなかなか一人で一人を引き抜くということは実際困難でございます。そういう際に、大ぜいの人間が一人の者を逮捕する、そしてこれを連行しているところだろうと私は思うのであります。
  21. 中村高一

    中村(高)委員 それは長官自分でもおわかりになると思うのですが、なぐつたり、けつたりするところは、写真にはなかなかとれませんよ。とても巧妙にやるし、最近は何かこういううわさを聞いておるのですが、警視庁では、見えるところ、写真にとられるような上の方はやるな、もつぱら下の方をやれという練習をしておるということです。そんなことをやつておるかどうかわからぬが、もつぱら下からけ上げろ、そしたら写真もとられないし、だれがやつたかわからないからというので、警備隊でもそういう訓練をしておるというようなことを聞くのであります。おそらくそれも私は事実だと思う。今までのいろいろな資料から判断ができるのであります。  もう一つこの写真ごらん願いたいのであります。これはまだ全然混乱のないうちに態勢を整えて、警棒突進態勢を組んでおります。もう初めから、まだ何も混乱のないうちに警棒でもつて構えをして、突進態勢という形でありますか、突つ込めというのか、とにかくそういう形で、まだ問題の起きないのにそういう態勢を整えさせるということは、われわれよろしくないと思う。混乱が起きた際これを取り締るというならばいいのでありますけれども、もう初めからそういう態勢で、警棒を持つていつでも突つ込む態勢をとるのは、これは戦争か何かなら別でありますけれども、一体労働争議にそういう写真のようなやり方をやることはおかしいと思います。その写真は何のところでしようか。警察庁長官ごらんになつて、その写真から一つ判断をして答弁していただきたい。
  22. 柏村信雄

    ○柏村説明員 これは非常によくとれておりますが……。(笑声)大体一人で行動を起す場合は、これは簡単に身構えもできますし、行動も自由にできる。ところが、相当部隊が相当多数に対してある気勢を加えるというようなときには、やはりあらかじめ態勢を整えるということは、これは中村先生もよくおわかりだろうと思う。警察官部隊活動をするという際には、やはり事前にある程度の態勢を整える。しかし、事態がそうする必要がないというときは、これを解くということでありまして、こういう構えをしたから、いつも大へんな騒ぎを警察官が起すのだということにはならないのであります。
  23. 中村高一

    中村(高)委員 その写真ごらんになつても、警察官は冷静ではありませんよ。労働争議ですから、取り締るなら取り締るで、第三者の立場に立つて国家権力に基いて平静にしようということが、警察官任務であることは言うまでもないのであります。初めから警棒を持つて突つ込めの態勢なんかは、内乱でも起つたとか、戦争でも起つたときはいざ知らず、労働争議に初めからそういう、警棒を全部一斉にそれつと言つてざーつと取るなんという態勢は、どうもよろしくないのです。これはおそらく現地最高指揮官をやつております署長の態度にもあると思うのでありますが、新聞に前もつてこういう発表をしておるのです。三浦苫小牧署長です。「今後解散にも警告にも応じない者はどしどし検束する。」これは前もつてこういう声明を署長がしておるのです。まだこれはひどい。「道内警官で足りなければ、本州から動員して不法行為に対処する。」本州つてどこですか。大へんなことになつて、おそらくはこちらの方からみんな動員しようというのでしようが、道内警官で足りなければ本州から動員するということは、何かもう大へん内乱みたいなものにでも対処するような興奮ぶりですね。これは新聞社の人がとつたのですから、談話でありますから、おそらくはもういたけだかになつて署長はやつておるのだろうと思う。「足りなければ本州から、」そして、「今後実力行使をする場合には、全部警察官に鉄かぶとをかぶせ、警棒を使用することを許可する」と、こうきている。警棒を使用することを許可するなんて初めから、まだやらない前から署長がこういうふうに興奮しておるということは、私はよくないと思います。もう戦闘態勢です。初めから警察官に鉄かぶとをかぶせ、警棒を使用することを許可するとまで言い切つておるというのですから、新聞社の人が驚いてびつくりしているのです。こういう態度というものが、私は現地に行き過ぎを来たしておるものだと思うのであります。署長がこういうふうに興奮してしまうのは、北海道などには労働争議が少いので、訓練されていないせいもありましよう。もう何か大へん事態のように考えて、そしてやはり行き過ぎをさせるということのようにわれわれには考えられるのであります。この署長の態度なり、言葉なりは、私は労働争議に対しては行き過ぎだと思いますけれども、長官はいかがお考えになりますか。こんな態度は争議に臨む態度ではないと思いますけれども、どうお考えになりますか。
  24. 柏村信雄

    ○柏村説明員 新聞報道されております限り、おそらくそれに近い話をしたかと思いますが、私はその事実を承知いたしておりません。あそこの警察署は、非常に長きにわたつて、そうした第一組合、第二組合のいざこざがありまして、その他に平常のいろいろな事案があるということで、非常に忙しい業務に携わつてつたことと思うのであります。あるいは言葉の調子で話が少し大げさになつたかとも思いますが、結局あの程度の争議でいわゆる本州から人を持つていくというようなことは、われわれは全く考えておりません。ただ、事態によつては、そういう道もあるということは言えると思いますけれども、わずかに王子製紙苫小牧工場の争議で、それはもちろん単にあそこにおる労働者のみならず、各地から苫小牧工場の労働者よりも多くの者が応援に行つて、第一組合を応援しておるという状況でありますから、争議自体としては、相当大きなものでありますけれども、あの程度のことが道内警察力で措置できないというふうには考えておりません。言葉の調子で、それに近いことを申したかと思います。
  25. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私はこの際今の中村委員の発言に関連して一つお伺いしたいのですが、長官にいま一度警察法の第一条と第二条をごらん願いたい。最近の警察の幹部並びに以下の職員は、おそらくここにうたつてある民主警察の理念というものをお忘れになつているのじやないか。今の態勢のごときも、民主警察という理念を忘れて、ただ相手に向つて突つ込んでいくという態勢です。ですから、この第一条と第二条に警察法の責務を明らかにしておりますが、あなたの方から見れば、これは警察権の内容だろうと思う。そこで最近のように大衆運動が盛り上つてきて、これに対して警察当局の動きも、中村委員の言う通り、少し行き過ぎである。そうなると力と力の衝突になる。この警察法によつて、個人の自由と財産、権利を保護するというのが民主的な理念ですよ。警察の方では最近は非常にいたけだかになつて、いわゆる弾圧を加えておる。私がここでこれに関連して伺いたいのは、警察権の限界というものです。一体どこに限界があるのか。警察法の第二条にある。御承知の通り、犯罪の予防、鎮圧、捜査もできます。逮捕もできますよ。できますが、しかし今のような犯罪が起つていない先に、威勢を張つて、これに圧力、弾圧を加える。これは予防でなくて、私はむしろ挑発ではないかと思う。ここに問題がある。ですから、今日の民主警察におけるところの警察権の限界というものを一体どこに置いておるか。ただいまも申しましたように、逮捕するのに、ける方法を考えるというのは暴力です。けつたり、つついたりするということは、明らかに暴力です。ですから、暴力でない警察権の限界というものをどこに置いてあなた方は指導し、活動しておるのであるか。これが明らかにならないと、今日団体の大衆運動がだんだん盛んになつてくる。警察警察権の限界を越えてこれにぶつかつていくということになれば、一体衝突の責任はどこにありますか。私はこういうことの起らないように、警察権というものは民主的保護に当らなければならぬと思うのでありますが、あなたは一体この警察権の限界というものをどこに置いて部下を指導し監督しておられるか、その点を一点伺いたい。
  26. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまのお話は全くごもつともだと思うのであります。私も全警察の動きとして、民主的でなければならないというふうに痛感をいたしております。特に労働争議等に対しまして、これが正当な争議である限りにおいては、警察は何らこれに介入するものではございません。しかしながら、かりに労働争議でございましても、これが不法越軌にわたるという際には、警察権を発動して不法をなくすということが必要になろうと思うのであります。ただ、不法を排除するという場合におきましても、できるだけその犠牲を少くするという配慮は必要であろう。しかしながら、不法をやたらに見のがしてそういう不法状態が次第にびまんしていくということは許されない。これを許すことは警察の責務を遂行するゆえんでないというふうに考えております。あくまでも警察争議そのものには介入しない、しかし不法は見のがさない。しかしこれを排除するについても、できるだけ民主的に、犠牲を少くし、強権をできるだけ用いないという方向でいくということについては、常々指導をいたしておるつもりでおります。
  27. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 今の強権をあまり発動しない、私もそういうふうに考えます。なるべく権利の発動というところは消極的に、なるべく限界を小さくやつてもらわないと、先ほど中村委員の質問なさつた新聞記者逮捕のごときも、自分の権力を過信しておるからこういうあやまちが起る。これは明らかにあやまちですよ。もうすでに自分新聞記者だ、こう言つておるのにそれを逮捕するということは、これは明らかにあやまちであります。このあやまちを起すという原因は、自分の権力を過信しておるからです。自分たちは何でもやれるんだ、何でもこれを公務執行に持つていけるんだという思い上り、過信をすることが、こういう間違いを起すのでありますから、なるべくこの権利を縮小して考えて、そうして、よほど注意をなさらぬと、こういう問題が起るし、また全般的にいいましても、弾圧ということを頭に置かないで、権利というものを過信しないで、なるべく譲歩してこれを考えるということをやらないと、衝突が起つてくる。この責任はむしろ警察の方にあると私は思うのでありますが、今後の指導に当りましても、警察権の限界というものを厳重に申し渡しておかないと、下の方のあまり知識のない者、教養の足りない者に権力を持たすということは、凶器を持たすということと同じことですから、十分に御注意を願いたい、かように思う次第であります。
  28. 小島徹三

  29. 淡谷悠藏

    淡谷委員 九月七日にジョンソン基地で米軍が音楽大学の学生を射殺した事件があつた。それより一月ほど前でございますが、八月一日の午後九時半ごろに、青森県の三沢町の米軍基地の中で、ジェミー・L・ウイリアムズという三級空兵が、タクシーの座席から運転手の加賀昭さんを拳銃で撃ち殺した事件が起つておるのであります。この犯人のウイリアムズは、翌朝基地内の特別捜査機関のOSIに自首して、続いて大三沢署で、青森県の警察本部とOSIと日米行政協定適用をめぐつて慎重協議をしました結果、この犯行は公務外に行われたものとして、この米兵の身柄は日本側で引き取りました。そして殺人容疑で逮捕状を執行したのであります。このウイリアムズは最初ストルの暴発によつてあやまつて殺したものだと言つておりまするが、これをさまざまな観点から警察調べた結果、どうもこれは殺人であるという結論に到達いたしまして、自来取調べを進め、殺人で青森の地検八戸支部に起訴したのであります。しかるに、警察並びに米軍の方でも明らかに殺人であると決定し、共同声明までやつておりましたのを、どういうものか、青森地検の八戸支部では重過失致死で起訴しております。これはまことに時がたつておりますけれども、警察としましても、また地元民にしましても、当然強盗殺人罪として起訴され、適法の処分があるものとして見ておつたのが、突如重過失にすりかえられまして、あつさりこれを逃がしてしまおうというような状態から、非常な不安を感じ、また遺族の諸君も大きな不満を抱きまして、今や世間の大へんな非難を受けておる。一昨二十四日に八戸の裁判所で公判が行われました。私も公判を傍聴して参りましたが、この検察官の起訴状なるものがまことに児戯にひとしい簡単なもので、特にこの起訴をしました検事が新聞記者諸君に語つたところによりますると、とにかくこの問題は早く片づけてしまおうと言つたかのごときうわさを聞いております。これについて何かお調べになり、あるいは報告を受けていることがありましたら承わつておきたいと思います。
  30. 柏村信雄

    ○柏村説明員 八月一日に起りましたただいまお述べになりました事案は、事件そのものは私も大体今あ話のように承知をいたしております。そこで、警察といたしましてはいろいろ捜査をいたしまして、これを殺人容疑で検察庁に送致をいたしたのでございます。その後、検察庁でさらに慎重に御調査になつた結果、重過失致死という結論が出たのではないかと思います。ただいま公判に係属中だということまでは私聞いておりますが、公判の模様等は詳細存じておらないのでございます。
  31. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この種の事件は、ジラード事件以来ひんぴんと起つております。特に御注意申し上げたいのは、ジラード事件が表面化しましたとき、それよりも一年前に、静岡県の東富士の演習場で、ジラード事件と同じケースの問題が起つておるのであります。それに対して、警察側は一回も取調べをしていない事実が判明いたしました。一年もたつておりまするけれども、この事件調べたらどうかということを委員会で強く言われましたときに、警察の方では、さつそく取り調べると言つておりましたが、すでに犯人と認められておつた米兵は本国へ送還されまして、行方不明であるということで、うやむやになつております。実に日本人の人命を虫けら同然に考えて、ジラード事件といい、あるいはジョンソン基地の問題といい、慰み半分に発砲するといつたような事件が跡を断たないようでは、とうていわれわれは安心してこの事態を見のがしておくわけには参りません。しかも世間の評判にならなければ、ジョンソン基地の一ヵ月前に起つた事件が、あつさり重過失罪としてまたうやむやのうちに葬られようとしておる。特にこの事件があつた二日あとに、同じくタクシーに乗つた基地内の米兵が、タクシーのメーターの代金を値切つて、運転手がこれを拒みましたら、二、三日前に運転手がどんな目にあつたか知つているかというような脅迫的な言辞を弄しておる。これは同僚の運転手がはつきり言つておるのであります。こういう事態に対して、警察でさえも殺人と認めておるものを、検察庁があつさり重過失で三年以下の懲役で、口をぬぐつてしまえるような処分をしたならば、こういう事犯は跡を断たないと思うのであります。これに対して一体警察側の取調べと検察庁側の考えとが行き違つたことに対して、何かあなた方の方でお考えになつておることがないかどうか、率直に私はお答えいただきたいと思う。
  32. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほど申し上げましたように、こういう事件について、警察調べにおきましては、殺人容疑ということで送検をいたしておるわけでございますが、さらに検察庁がこれをお調べになつて、重過失致死ということで起訴されておるという事実関係だけ私は聞いております。これはこの事件そのものについてとくと考えてみたわけではございませんが、事件によりまして、そういうようなことになる場合は間々あるのでございまして、やはり検察庁に送検した以上は、検察庁のお考えによつて起訴、不起訴並びに起訴猶予をおきめいただくことになつております。これについて警察として特にこうすべきものであるというような考えをここで申し上げる段階ではない、かように思います。
  33. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは単なる一個人の生命を落したという問題ではなくて、非常に大きな、今後の基地行政の上から見ても、あるいは日本人の人命の尊重の上から見ても、見過ごしがたい事件だと私は考えておる。そこで、刑事局長にお聞きしたいのですが、八戸の地検の方からこの罪名を決定し犯人を起訴する場合に、あなた方の方に照会並びに協議があつたかどうか、お伺いしておきたい。八戸の地検が単独にやつたことであるか、こちらの方と打ち合せが終つて決定したことであるか、まず伺いたい。
  34. 竹内壽平

    ○竹内説明員 お答え申し上げます。八戸の事件でございますが、これはまず結論を先に申し上げますと、現地の検事正のもとで事実関係を十分調べをいたしまして、その結果に基いて、仙台の検事長に請訓をいたすことになつております。仙台の検事長が事実関係につきまして、つまり証拠の関係につきまして綿密な審査をした上で、最高検に指揮を求めるというような手続で事を運んでおるのでございまして、事実関係の協議に私どもが参画するということはいたしておりません。
  35. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは死体の解剖から、拳銃の構造から、かなり慎重に取調べを進めておつたようであります。八月二日の午前十一時半から基地軍の病院で、青森地検の八戸支部の武内検事、県警察本部の捜査一課の天童警部、俵谷警部補等が立ち会いの上で、弘前大学の医学部の赤石教授が解剖した結果、ピストルは四〇・五ミリ口径のコルト自動七連発軍用銃である。決して簡単に暴発などをするピストルではないのであります。これははつきり殺人であるということを、共同声明をやつているのです。そして特にこの殺人説を裏づけるものとして、タクシーがとまつているときに行われた犯罪である。全然スリップがないということが第一点。第二点には、殺されました運転手がクラッチにかけた足が少しも動いていない。走つている間に行われたものとは思われない。この現場は、両側が高さ七、八メートルの土手の上で、見通しが非常に悪い。そして警備員は約三百メートルおきに立つているのですが、その警備員の立つている中間で行われた事件である。しかも事件後にヘッドライトを消して、犯行が現われるのをおそれて、この兵隊が逃げているという事実。しかも、もしあやまちならば、この犯行後現場を通つたタクシーがありますので、そのタクシーに救いを求めるはずであつたのが、そのときはすでに現場を逃げて、いなかつたということであります。そして事件のあと一晩近くの松林で過ごしてピストルは投げて、自首したのは翌朝の十時であつた。しかもこのピストルは七連発のピストルでありますが、一発をこの犯行前に試射をしておる。それから、この兵隊さんは非常に経済的に困つて、酒を飲んで、ほとんど給料なども半額しか受領するものがなくて、非常に困つていたということ。これらを、警察等の調べによつて、明らかに起訴状には書いておるのです。これを検察庁がどういう観点から一蹴されたものであるか。もし協議にあずかつたならば、その観点もおあかしを願いたい。
  36. 竹内壽平

    ○竹内説明員 私ども協議にはあずかつておりませんが、なぜ殺人を重過失致死に直したかという点について説明をせよというお言葉でありますれば、ただいま資料を持つておりませんが、資料に基きまして説明をいたしたいと思います。ただ、しかしながら、今の殺人が重過失致死になるという判断をしたことにつきましては、淡谷先生もこまかく資料を御調査のようでございますけれども、検察庁におきましては、証拠を綿密に分析いたしました結果、そういう結論になつたと思うのでございまして、その当否につきましては、証拠関係を綿密に検査をしてみないと何とも言えないわけでありますが、何と申しましても今公判係属中でございますので、裁判に影響を及ぼすような事項に相なるかと思います。従いまして、あえて隠すのではございませんけれども、今その時期ではないのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  37. 淡谷悠藏

    淡谷委員 この事件は、警察が起訴いたしました通り、殺人で取調べが進んでおれば地元も騒ぐことはないのです。事件が起つて一ヵ月もの間、どうして黙つていたか。不特定の人間に向つて、しかも進行中の不確実な結果をねらつて発砲したジョンソン基地の問題があんなに大きく騒がれたのに、深夜車をとめて、座席から前におつた運転手を撃つておるという事実、しかも今列挙したようなさまざまの疑わしい点があるのに、これを急に警察の方の起訴の理由とは違つた、単なる重過失致死で起訴したということについて、地元は非常に憤激をしておる。それが事態をこじらせておる。少くとも検察庁の起訴というものは、みんなが納得し得るような裏づけがなければならぬと思うのでありますが、起訴状を聞いておりましても、その裏づけはございません。第一、十九になるウイリアムズという兵隊さんが、こういう強力な、人を殺すようなピストルを所有する権利があるのかないのか。この事実についてお調べになつたことがございますか。
  38. 竹内壽平

    ○竹内説明員 一般的に申し上げ得る事項もございますが、今のピストルを操作することを許されておる権限があつたかどうかというこまかい点につきましては。今資料を持つておりませんから、御説明申し上げる機会が来ましたら御説明申し上げたいと思います。  なお、警察の送致事実が検察庁において改められる場合は間々あるわけでありまして、これが何らかの意図を持つて、特別に軽く扱おうという意図において改められるということでありますならば、淡谷先生の仰せまでもなく、検察にとつては重大なことであります。しかしながら、捜査官としてみれば、何とかこういう事実で起訴したいと思いましても、証拠となるべきものの供述が得られないとか、あるいは物的証拠がそれに伴わないとか、あるいは四囲の環境がその判断を入れるだけの十分な裏づけとならないといつたような事態は、技術的に捜査官の経験に徴しまして判断をするわけでございまして、その判断にみじんも疑心を差しはさむものがないということになりますならば、私ども第三者として見ております場合には歯がゆい場面がありましても、これは、それにおまかせをしていくということにするほかはないというふうに考えておるのであります。
  39. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これはあなたのおつしやる通り、警察取調べ、あるいは起訴について検察庁がこれを直して—直した方が世間一般も十分なる納得がいき、またわれわれにしましても納得のいくものであれば、これはここまで持ち出しはしません。けれども、その直し方があまりにもひどいのです。こういうふうな事犯が続々として跡を断たない場合に、重過失でやつたならばどうなりますか。三年間の懲役で済む、ところが去年この地区で起つた犯罪で、基地のPXから外国製のたばこを三百カートン盗んで日本人に売つた米兵は、仙台の高裁で、専売法違反で七万五千円の罰金、米軍では窃盗罪として懲役五年に確定している。それから三十二年の二月には、富岡タクシーという会社のタクシーを、百四十円を踏み倒して、こん棒で運転手の頭をなぐつて逃げた米兵は、六月、仙台の高裁でやはり懲役三年六ヵ月の判決を受けている。運転手はこぶを出しただけで済んだ。しかし、今度のようにこういう重大な事件をさつさと片づけられるならば、これは現地の不安を引き出します。しかも、ただいま私が列挙した通りの事実が警察によつて出されておる場合に、どういう根拠でこういう事実を否定したのか、これはあなたが資料を取り寄せて説明をして下さるというのならば、この次また委員会を開いてもらつて伺います。私の方からも、この大三沢署で起訴した場合の起訴状と、それから今回の八戸の地検で起訴した起訴状を、これは委員会から正式にお取り寄せを願いたいと思うのです。  なお、私、この次の委員会に備えて、あなたにいろいろ御答弁を求めたいと思うので、あらかじめ申し上げておきます。この米兵は、ピストルが持てない。基地内から盗み出しておる。これは刑事局長だけでは御答弁できないかと思いますので、この次にはぜひ法務大臣に御出席願いたいのでありますが、十九の兵隊が、しかもこの重大な殺人罪を犯すような状態に置かれた兵隊が、勝手に兵器を盗み出せるようなルーズな軍紀をもつて基地内が取り締られておるのであれば、今後どういう事態が起るかわからない。このことに関して、十分な御調査と御答弁が願いたい。  それから、このウイリアムズの性行につきましても、一昨日の公判廷で弁護人が情状酌量を求めて発言している事実とわれわれの調査では、大へんつているのであります。このウイリアムズという兵隊は、米国のオクラホマ州のホミニーという町、トレッドウエー街の出身で、現在三沢米空軍基地の第六一三九作戦中隊通信課の三級空兵でございます。われわれの調査によりますと、性行は、非常に酒を飲んで、日本人に激しい敵意を持つている孤児でありますので、性格は非常にひねくれておつて、その当日もサージャンと口論をしまして、このサージャンを殺そうと思つてストルを盗み出したということを自供しているかのごとくわれわれは聞いている。こういう事実のあるなしも一つお伺いしたい。同時に、こういうことを検察庁でも十分お調べになつた上で今回の措置に出られたかどうか、これは私ははつきりあなたの方にお調べを願いたいと思います。それから、さらにこのことにつきまして、ピストルの実際の検査をした場合、八月五日にピストルの検査をしておりますが、青森県の警察本部では、科学捜査研究所の岸井物理課長、それから鑑識課の実験室で大友刑事部長、稲垣課長と相談しておりますが、この実験は、豚を的にしまして、実際にこれは撃つて調べているのであります。その結果、大三沢署では、タクシーのかせぎをねらつて殺したのだが、おそろつしくなつたので、何も取らずに逃げたと言つている。強盗未遂、殺人の疑いで追及しておつたのでありますが、六日になつて、過失で殺したというのはうそだということを犯人みずからが自供しているのであります。八日になつて、米軍の基地広報課と大三沢署の共同声明で、暴発ではない、明らかに殺人であるということを共同声明で発表しておきながら、さてこの事件を回されました地検八戸支部では、これをあつさり重過失で起訴したというところに、現地の感情がどうしてもおさまらない重大な理由がある。こういう点を詳細にあなたの方では考慮に入れて、この事件をもう一ぺん調べ直してもらいたい。検察庁の検事があつさり片づけようという事件ではない。これは時をかけましても、今後こういう事犯が起らないように、一つあなたの方で十分に手を入れてお調べにならなければ、現地の不安は消えやしません。しかも、おかしいのは、七連発のピストルの一つを撃つて、あとは六発残つているようなことを言つておりましたが、今度の起訴のあれで見ますと、からのたまだと思つてつたなどと言つているのですね。これは死体の状況を見ましても、明らかに顔面を貫通しています。それが自動車の座席でかちやかちやピストルを鳴らしたら、運転手がその物音で振り返つたとたんに、暴発で死んだというのであれば、これは大へんな偶然です。こんなみごとなあやまちがあるものじやない。こういう疑わしい点がたくさんございます。これをあつさり片づけて、またその事件のあとは本人を本国に帰して、それでこの事件が済むならば、今後こういう事犯はほとんど絶えることがないと思うのです。こういう点はあなたの方で十分にお調べになつて、この検察庁の措置に対して正すべきものは大胆に正してもらわなければいかぬ。それから、この犯人は地検の方で調べておつたのでしようが、釈放したのはいつか、御承知ですか。
  40. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ただいま申しました通り、ただいま資料を持つてきておりませんので、正確なことはお答えしにくいわけでございますが、次会の機会にこまかく御答弁申し上げたいと思います。
  41. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは起訴する前に釈放しているらしいのです。そして、釈放しておいて、本人を立川の基地に送りまして、精神鑑定をやらせている事実がある。これは一体日本の検察庁でやらせたものか、あるいは基地側でやらせたものか明らかではございません。公判には明らかに出ております。こういう事実もあつたかないか、私はあなたの方から十分に一つ調べを願いたいと思う。また、われわれも調べます。しかもこのジョンソン基地の過失罪でありますが、この重過失の方も、警備中にから撃ちの練習をして、たまの入つていたのを忘れたと言つているのです。今度も、盗み出した拳銃を一発試射をして、間もなく自動車をとめて中に乗つて、座席に座つて、やはりたまが入つているのを忘れたと言つているのです。まるでこれは殺人罪を重過失にすりかえるために、だれかが教えているように一致しているのです。これで一体日本の法の尊厳が保たれるかどうかですね。少くとも今度の事件は、公務中でないことは明らかであります。日本側に捜査の権利が十分あつても、検察庁がこういうふうに世間が納得できないような措置で、あつさりごまかしておくということになれば、これはとうてい日本人として許すことができない。あなたは資料がないから一切わからぬと申しますが、資料をそろえましてから、私はあらためて詳細にあなたに対して御質問申し上げたいへんぴないなかの検察庁あるいは裁判所というところで、この世論をいろいろもみ消すのじやなくて、次々と起るこういう人命軽視の問題、まるで日本人の生命を虫けら同然に考えて、から撃ちの練習や単なる過失であつさり殺して、本人は全く三年か幾らの、あるいは執行猶予で本国へ帰されて、のうのうと暮しているという事実があれば、今後取り締れるものじやない。こういう点についても、私は次会におきまして、法務大臣はつきりした御所信を伺いたいと思います。
  42. 小島徹三

    小島委員長 淡谷君に申し上げます。淡谷君御希望の書類につきましては、いずれ理事会を開いて、その可否を決定いたします。——志賀義雄君。
  43. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 竹内刑事局長に伺います。去る八月九日の当法務委員会において—松川事件について、当時被告の一人であつた佐藤一君が東芝工場で団体交渉に出席しておつた、そのことは諏訪労務課長のメモにもはつきりしておつたのであります。被告並びに弁護人の方からは、このメモのことを主張しておりました。そこで、仙台の弁護士会が弁護士法に基いてこのメモの提出を諏訪労務課長に求めましたところ、さきに検察庁に提出したというので、調べてみましたら、鈴木検事がこれを提出させて持つておるそうであります。そのことについて八月九日の法務委員会で、あなたは欠席されておつたので、川井課長に伺いました。そのメモの所在についてはわからない、最高検にあるのではないか、こう伺つておきました。まだわかりませんからお答えできかねます、こういうことでありましたから、きようそのことについて、そのメモが一体どこにあるかということを伺いたいのであります。
  44. 竹内壽平

    ○竹内説明員 前会の法務委員会でただいまお尋ねのような御質問がございまして、保有すべからざるものをもしわれわれが不当に今持つておるということでありますならば、これはお返ししなければならぬわけです。いたずらに持つておるということであつてはいかぬわけでございますので、志賀先生の方から、最高検にあるのじやないかというお言葉もあつたやに伺いまして、私どもの方は最高検にもしあるのならばということで、お願いして調べてもらつてつた。最高検においては、うちの方は持つてないということでありましたが、それではどこにあるのだろうということで、順次、当時捜査に当りました福島地検、仙台高検——二審の公判がありましたので、そういう方面にはないかということで、いろいろ調査しました結果、正確な日付は今宙に覚えておりませんが、先般、福島の検察庁の事務官ですか、副検事ですかがお預かりしているということであつたそうです。それはすぐ返さなければいかぬというので、お返しをしたというふうに私聞いております。
  45. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最近ですわ。
  46. 竹内壽平

    ○竹内説明員 最近です。
  47. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いつですか、日取りをはつきりして下さい。
  48. 竹内壽平

    ○竹内説明員 ちよつと日取りははつきりいたしませんが、そういうふうに伺つております。
  49. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうしますと、八月九日に私が伺つたあとでそういう手続が行われたように、今のお話は受け取つてよろしゆうございますね。
  50. 竹内壽平

    ○竹内説明員 さように私どもは理解しておるわけでございますが、時日はあるいはそれより前でありましたか、とにかく私どもはやいやい申しましてから後だつたと思います。
  51. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 御承知の通り、第一審、第二審では死刑の判決があつたわけです。このことについては、初めから佐藤一被告は、当日自分は東芝工場の団体交渉に出ておつたということを主張しておるのであります。弁護人側もそれを言つてつたのであります。第二審でも御承知の通りああいう乱暴な判決がされておる。そうしますと、そういう請求が前々から弁護人側からあつたにもかかわらずやられなかつたということになりますと、これは検察庁が被告にとつて有利な証拠となるものを故意に隠しておつたということになるのでありますが、その点については、事は重大でありますが、事務官が持つてつたということだけではなく、なぜそれを出さなかつたということは、お調べになりましたか。
  52. 竹内壽平

    ○竹内説明員 そのこまかいいきさつは詳しくは存じませんけれども、諏訪メモというのは、実はこの前志賀委員から御質問があつて、そういうメモがあつたのかなということを私は知つたような次第で、それが事件に非常に重大な関係があるかどうか、私つまびらかにいたしておりませんが、それを隠すことによつて問題を伏せてしまうとか、あるいは有利な証拠を検察側においても妨害するとかいうような意図ではなかつたというふうに聞いております。これは全くそのまま不要なものとして預つてつたように私は聞いておるわけであります。
  53. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どうも刑事局をそう信用するわけに参らない証拠があるのです。と申しますのは、菅生事件で、例の一木春秋といつた戸高公徳という警官が交番にほうり込んだ脅迫状があるわけです。その脅迫状について、私どもの方から当委員会でもたびたび質問しましたところ、あなたの前任者である井本君から、これは別に証拠となるような有力なものではございません、こういう答弁が最初はありました。次にだんだん私が当時の古屋委員と一緒に質問いたしましたところ、どこに行つたかわからない、こういうことを言われた。三回目に尋ねましたところ、あれは証拠として提出されておりません、こういうお答えだつたのです。四度目に今度は先般やめられた石井警察庁長官に伺いましたところ、警察の方では確かに証拠として提出し、その領置書——受取りまでもいただいております、こういうことだつたのです。だから、重大な証拠書類について、四回ほど刑事局の御答弁が変つてきたわけです。このことについては、わざわざ仙台の弁護士会が弁護士法に基いて当時の諏訪労務課長に対して提出を求めたところ、検察庁が持つてつた、こういうことなんです。そういう事件のいきさつがあるならば、事は重大でありますから、刑事局長の方でも最高検の方でも、われわれの方から—弁護人なり、あるいは被告なり、また当法務委員会において問題になる前に、当然提出されておるべきものなんです。ただいま淡谷委員から質問があつたが、基地の司令官と警察官がわざわざ殺人であつたという共同声明までも出しておるのに、御丁寧に検事正から検事総長の手元までその問題が出てきて、これを過失致死にするようにという念の入つたことをなさるのに、こういう松川事件については今まで知らなかつた、われわれの方から請求があつて初めてそれを提出したというようなことでは、これは片手落ちではありませんか。どうでしよう。
  54. 竹内壽平

    ○竹内説明員 いろいろ言い方によりましては、志賀委員のおつしやるような考え方もあると存じますが、事件そのものは重大な事件でございますけれども、訴訟の進行の過程において、弁護士と立会検事との間に、あるいは裁判所との間にやりとりしました点は、重大事件でありますればむろん報告があるわけでありますが、おそらくその検事は大した問題ではないと思つて、われわれの耳に入れなかつたと思うのでございます。しかし、さて志賀委員からこの委員会で開き直つて何じや、こういうようにおつしやられれば、それは重大な問題じやないかと思うわけです。そこで私どもとしては、あるものなら返したらどうだということでだんだん進めていつて、いやありました、返しました、こういうことになつたので、一つ御信用願いたいと思います。
  55. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では、その手元に持つてつた事務官の名前、これを一つつておきたい。これは、さつそくこの十一月五日から最高裁の異例の口頭弁論、事実審理もあることですから、それをはつきりしていただきたい。そうしませんと、これほど重大な問題について、弁護士会の方で、照会してないというから、それで今度は検察庁にもその話が弁護士会の方からあつたのです。それが法務委員会の問題になつて初めて調べてみたら、検察事務官のところにあつた。そうしますと、これはその検察事務官の重大な手落ちにもなります。それほど重大な証拠を勝手に所持しておつたということにもなるのでありますが、その際に、これは重大であつたというので、どういういきさつで、何という検察事務官がそれをあなた方がお調べになるまで手元に持つてつたか、そういうことはお調べになりましたか。
  56. 竹内壽平

    ○竹内説明員 調べたはずでございますから、そのお返ししました日時、それから預つておりましたのが事務官でございましたか副検事でございましたか、その辺を私今宙に申し上げられませんので、それも調べまして、それからどういうわけで持つてつたかという点も御疑念があるようでございますから、その点もはつきりさせるようにして、この委員会でお答え申し上げたいと思います。
  57. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 お聞きの通り、これはきわめて重大な事件で、今、日本だけでなく、世界の視聴を集めておる刑事事件でございます。ただいま刑事局長の御答弁のような粗漏がありますので、当委員会で問題になりました以上、ただいまの点について刑事局長の方からこちらに、正確な文書も添えて出してもらうように、この次の法務委員会ではつきり答弁できるように、一つ委員長の方から御尽力願いたいと思います。いいですな、その点は。
  58. 小島徹三

    小島委員長 文書でもつてするかどうかは別として、はつきりした答弁をするようにいたしましよう。
  59. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そこで、先ほどの中村委員の御質問でありますが、柏村警察庁長官の御答弁によりますと、先日の九月十五日の警察官暴行については目下調査中であるということでございますが、その際、最初に柏村警察庁長官の方から、はなはだ遺憾であつた、いかなる理由にもせよ、新聞記者に対してこういうことをやつたことは遺憾であつたということを言われました。そうすると、暴行があつたという事実は、柏村警察庁長官はつきりお認めになるのですね。
  60. 柏村信雄

    ○柏村説明員 暴行が加えられたという事実は確かなようでございます。
  61. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうしますと、これは明らかに警察官暴行でありますから、刑事上の問題になります。そこで、ただいま、何人がやつたか、二十一名の警察官調査中ということでございますが、たとい今警察官がだれであつたかということがわからないにもせよ、暴行であつたということを警察庁長官が認められたとするならば、この事件はただに行政上の処分だけにとどまり得ないものだと思います。ところが、新聞記者諸君の方では、行政上の処分で逃げるつもりじやないかというような疑念があるようでございます。よもや行政上の処分だけで終られるつもりじやないでしような。その点をちよつと伺いたい。暴行という事実があつた以上は……。
  62. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほど中村委員にも申し上げましたように、これは告発のあるなしにかかわらず、暴行事件として捜査当局の手によつて捜査すべきものという判断のもとに、警視庁におきましては、刑事部捜査二課で専門の捜査員をつけまして、慎重に詳細調査を進めている段階でございます。決して行政処分だけで片づけようというような気持は持つておらぬわけであります。
  63. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 その前に、警官暴行があつた場合に、これは傷害罪になるものでしようか。あるいは集団的暴行罪になるものでしようか。この点をまず伺いたいと思います。
  64. 柏村信雄

    ○柏村説明員 どうも私もその事案を正確に聞いておりません。ただ暴行が加えられて、ある程度の傷害を受けておるというふうに聞いておりますので、暴行傷害罪ということになりますか、暴行傷害の容疑で検察庁の方に送る。しかし、これは先ほど申し上げましたように、二十一名について捜査を進めておるわけでございます。このうちだれがどういう状況下において、どういう暴行を加えたということまで、これは全く客観的に調べなければならぬ問題でございますので、何人が暴行を加えたということを特定していかないと、これは捜査上の事実の問題でございますので、暴行傷害ということになるのではないかと思います。
  65. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ただいまのお話で、暴行傷害ということになりますと、刑法の傷害の罪になりますが、あのとき、あなたの方も二十一名お調べになつているのですから、明らかに集団的な暴行罪になります。そうしますと、これは暴力行為等取締法の問題になつて参ります。そこで、あなたのおつしやるのでは、これはただの傷害罪の問題になりますが、私が伺つたのは、集団的ということが加わる。これが一つあります。あなたの方でこれは集団的な暴行罪として捜査をなさつておられるのか、あるいは今伺つたところでは、どうも言葉のあやで、行政処分だけでは新聞記者が承知してくれまい。じや、傷害罪くらいでおさめようかと、こういうところも疑いたくなるのですが、集団的暴行罪としてはどうでしようか、その点について……。
  66. 柏村信雄

    ○柏村説明員 どうも、お疑いになるのはやむを得ませんけれども、そんな軽い気持新聞記者がおさまるか、おさまらぬかという顧慮に基いたものではなしに、こういう事件は非常に遺憾である。従つて行政処分は行政官庁として適当に措置をとるとしても、刑事事件としてこれを捜査すべきものという判断のもとに警視庁捜査をやつておるわけであります。私その捜査の一々の事情を承知いたしませんので、傷害があつたから傷害ということを申し上げたわけであります。それから、大ぜい寄つてたかつてつたのかどうか、その辺も集団的な暴力が行われたのかどうか、そういう点も捜査を進める過程において判明する問題だと思います。従つて、今何で送る、あるいは何で送れというようなことを私が指示してもおりませんし、また警視庁としましても、何で送るつもりでやるということで捜査を進めておるのでもないだろう、事実をよく究明する、究明して、法条に沿つて検察庁の方に送致するということになるだろうと思います。
  67. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 これは、事実を明らかにして、刑法の第何条に該当するかということをおきめになる、これは当然です。しかし、御参考までに申し上げておきますが、事は警官暴行に関して起つた傷害事件であります。ことに新聞記者取材について加えられた暴行であります。そういう意味におきまして、これは涜職の罪の中の刑法で申せば第百九十五条の特別公務員の暴行、陵虐の行為に当ります。「裁判、検察、警察ノ職務ヲ行ヒ又ハ之ヲ補助スル者其職務ヲ行フニ当リ刑事被告人其他ノ者ニ対シ暴行又ハ陵虐ノ行為ヲ為シタルトキハ七年以下ノ懲役又ハ禁錮ニ処ス」こういうことがありますが、その次の第百九十六条が非常に重要であります。結果的過重であります。「前二条ノ罪ヲ犯シ因テ人ヲ死傷ニ致シタル者ハ傷害ノ罪ニ比較シ重キニ従テ処断ス」とあります。こうなりますと、これは警察官の場合には特に厳重に処罰規定もあるのであります。これを御参考までに申し上げておきます。警察官だから、あなたの部下だから軽く扱うということになつては、これは世間もなかなか納得いたしかねる。その点を御参考までに申し上げておきたいと思います。と申しますのは、去る八月三十日の衆議院の文教委員会において辻原弘市委員から、和歌山の八月十六日の事件について警察官職務執行法—これを今改正することになつておりますから、なおさら重大な問題であります。これに関して警棒の使用の問題について質問がありました。警棒は振りかざしてはいけないことになつておるのを振りかざして、脳底骨折まで起しておる。今度私は和歌山へ参りまして、その病状も視察して参つたものでございますが、そのときに、あなたは、いや決して振りかぶつたのではございません、この指のところを警察官がやられるので、正当防衛上つい肩から警棒が上つたという御答弁でございました。これが重大なんです。と申しますのは、警察官が何をやろうと、うちの親分である警察庁長官は、あんなうまいことを言つてうまく言いのがれてくれるから、何をやつてもよろしい、こういうことになりがちなんです。だから、この間のような新聞記者に対する暴行も起る。御記憶でもございましようが、戦前では警察官暴行のところを写すキャメラ・マン、新聞記者、こういう者はもう非常に乱暴なことをやられておりました。戦後しばらくそれがなかつたのに、去る九月十六日の警視庁と法務省の間では、そういうことが起つておるのであります。あなたは何でもないことだとお考えになる答弁が、警察官には逆に悪い意味で士気を鼓舞することになる。そういう点は御注意になりませんと、今後もこういう事件が起りがちであります。あなたも新任早々、事件の責任でまたどこかへ行かなければならぬというようなことになるとお困りでしよう。もうちよつと慎重に事をお運びになりませんといけません。このことをあわせて御参考までに申し上げておきまして、特別公務員の刑法上の罪、暴行、陵虐については、ことに過重的な意味が加えられておる。この点で十分によくお調べになつて、世間の納得するようなことを発表していただきたいと思います。これを希望しまして、私の質問を終ります。
  68. 小島徹三

    小島委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十五分散会