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1958-07-01 第29回国会 衆議院 法務委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月一日(火曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 福井 盛太君 理事 村瀬 宣親君    理事 井伊 誠一君 理事 菊地養之輔君    理事 坂本 泰良君       綾部健太郎君    犬養  健君       竹山祐太郎君    辻  政信君       馬場 元治君    猪俣 浩三君       大貫 大八君    神近 市子君       菊川 君子君    島上善五郎君       田中幾三郎君    中村 高一君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         防犯課長)   増井正次郎君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木 才藏君         検     事         (刑事局刑事課         長)      河井信太郎君         厚生事務官         (社会局生活課         長)      加藤 威二君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月一日  委員飛鳥田一雄君辞任につき、その補欠として  島上善五郎君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月二十八日  占領軍による被害者補償等に関する請願(田  中稔男紹介)(第一五〇号)  同(岡部得三紹介)(第一五九号)  同(松本七郎紹介)(第一八七号) 同月三十日  占領軍による被害者補償等に関する請願(宇  都宮徳馬紹介)(第二三一号)  戸籍改製に要する経費全額国庫負担に関する請  願(伊藤よし子紹介)(第二三六号)  都城拘置支所新設に関する請願瀬戸山三男君  紹介)(第二六九号)  の審査を本委員会に付託された。 六月三十日  府中第六小学校正面婦人補導院建設反対に関  する陳情書(第六  六号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ――――◇―――――
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  まず、法務行政及び検察行政に関する件について、調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。  坂本泰良君。
  3. 坂本泰良

    坂本委員 法務大臣が来られましてからその所信を聞きたいと思いますが、その前提となるようなものを刑事局長にお聞きしておきたいと思います。  まず第一に、千葉銀行事件取調べ進行状況についてお聞きしたいのであります。これは先国会におきまして大蔵委員会で問題になった事案でございますが、古荘元頭取不良貸付についての特別背任の問題がありますし、さらに当時検挙されましたレインボー坂内社長釈放されたいきさつその他がございますから、そういう点も含めまして、取調べ進行状況についてお伺いしたいと思います。
  4. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 千葉銀行事件と申します事件は、千葉地検東京地検でそれぞれ捜査をいたしておりますし、内容はかなり複雑になっておりますが、まず最近の捜査状況といたしまして、東京地検が取り扱いましたレインボー融資事件から概略を申し上げてみたいと思います。東京地検におきましては、レインボー坂内社長千葉銀行当局をだまして、担保抜きを行なったという詐欺の事実で捜査を開始いたしました。その関係におきましては、千葉銀行被害者の立場に立っていたのでございます。捜査の進展に伴いまして、古荘元頭取貸付に関する背任容疑も生じましたので、ただいま古荘元頭取取調べに当っておるわけでございます。従いまして、レインボー事件処分留保のままに現在なっておるわけでございます。もし特別背任というような事案が固まって参りますならば、詐欺したということから詐欺ではないということになるわけで、この関係は、両者捜査が終了いたしませんと、最終的に処分することが適当でございませんので、レインボーの方は現在処分留保のままになっております。古荘元頭取の方は、先般来数回取調べを進めておるのでございますが、ただいま病気でございますので、少し捜査は停滞しておるような状況でございます。
  5. 坂本泰良

    坂本委員 これは大きな問題でありまして、また当時新聞並びに雑誌等にも出ておりまして、国民疑惑を持っておるようなものでありますから、その疑惑を解くためにも明瞭にすべきだと思うわけでございます。でありますから、古荘元頭取病気捜査が停滞しているという今のお話でありますが、どういう病気であるか、捜査困難の状態にあるのかどうか、ある方面からの話によると、逮捕してやるべきを病気だというので逮捕を免れておるのではないか、そういうような疑惑もあるわけであります。なお、坂内レインボー社長詐欺の問題についても、さきのお話では、特別背任に銀行の方がなれば、片一方は背任になるのでははいか。法律上はそうなるかもしれませんが、詐欺にならなかったら特別背任共犯関係になりはしないか、そういうような関係も非常に疑惑に包まれているわけですが、ただ、病気と称して捜査を遅延させているのではないかという疑惑もあるわけです。その点についてはいかがでございますか。
  6. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 病気の点につきましては、本人病気であるから出頭できぬというだけで捜査当局が了承しているのでなくして、病院並びに治療の状況等を詳細に検察庁としては検討して待っているわけでありまして、そういうことに籍目して捜査を渋帯しているわけではないのでございます。
  7. 坂本泰良

    坂本委員 また、一方から聞くとこりによりますと、第一線の捜査に当る検事捜査を進めようとするが、上層部政界方面から圧迫があるから捜査が停滞しているのではないか、こういうような疑惑があるわけですが、そういう点があるかないかお伺いしたい。
  8. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 一線の検事がもっと捜査を強力に進めたいが、上部検察庁の方で押えているというような疑いがあるというお話でございますか、これはもう申すまでもなく、さようなことがあろうはずはないのでございまして、一部新聞坂内ミノブ氏を逮捕しましてこれを釈放したときに、そんな記事が出たことを私も記憶しておりますけれども、これは全く捜査技術上の問題でございまして、任意捜査に移してやった方がよいという観点からそうしたのでございます。この捜査会議には、関係者一同が集まって、何らそこに意見の不一致はなかったと聞いております。さようなわけで、上部からの圧力によって捜査を停滞させておるというようなことは、全然根拠のないことでございますので、その点御了承を願いたいと思います。
  9. 坂本泰良

    坂本委員 この点については、大臣見えられてからさらにお聞きすることにします。  次に、福岡の高等裁判所で問題になりました菅生事件は、駐在所爆破の方は事実なしとして無罪判決になったわけですが、それに対して、事実問題に限られるならば上告はできない、こういうふうにも考えられますが、上告を先般やったわけですけれども、その上告理由をお聞きしたい。
  10. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せ通り高裁判決に対しまして上告します場合には、刑事訴訟法第四百五条によりまして、判例に違反するか、あるいは憲法の条章に違反するという違憲の判決があるということの二つの理由を除きましては、上告はできないのは御指摘通りでございます。菅生事件無罪判決に対しまして検事上告を先般いたしましたが、その理由としましては、もちろん事実誤認ではできないわけでございまして、判例違反ということによったものでございます。また検察側から最高裁に出される上告趣意書というものがあるわけでございます。それがまだ出されておりませんので、内容の詳細をここで御説明申し上げることはできないのでございますが、判例違反といたしました法律上の問題点だけを御報告申し上げますと、事実の認定をいたします場合には、理由を付せなければならぬことは申すまでもないのでございますけれども、その理由つけ方におきまして食い違いがあったり、あるいは理由の摘示にそごがあったりということは許されないのでございます。そういう理由不備の問題、そごの問題、食い違いの問題というものは、やはり一般証拠法の原則に従って処理されるわけでありまして、この理由不備に関する幾多の判例があるわけでございます。ひるがえって本件菅生事件の二審判決を見ますと、これまで示されました理由不備に関する判例、そういうものと照し合せてみまして、この高裁判決には、その判例趣旨を無視した判断がなされておるという点において、理由不備判例に違反するという見解に立っての上告、こういうふうに承知いたしております。
  11. 坂本泰良

    坂本委員 次に、菅生事件におきましては、被告に有利な証拠である脅迫文書というものが、先国会からの問題になっております。検察庁においては、紛失しておる、そう言っておるのでありまするが、もしそうとすれば、これは検察官証拠物取扱いについての問題になるわけです。検察当局の前国会までの御答弁は、極力探すということになっていたわけです。現在どのようになっておるか、紛失している点が明らかになっておるかどうか、もし紛失しておるとすれば、その証拠物取扱いについて責任所在はどこにあるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  12. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せ通り菅生事件前提になりました脅迫事件があるのでございまして、その脅迫文書菅生事件証拠書類の中にも出てくるのでございますけれども、その原本の所在がわからなくなっておるのでございます。この点につきましては、警察当局におきましても徹底的な所在調査をしておるのでございますし、もちろん検察庁におきましても綿密な、倉庫までも、全部出してしまいまして、そして他の関係記録の中に間違ってとじ込んでありはしないか、あるいは何か封筒に入れたままどこかの倉庫に入っておりはしないかというので、証拠品倉庫を全部調査をいたして調べたのでございますが、残念ながら今もって発見ができないのでございます。ただ、そういうことは、検察側自分の都合のいいように、紛失してしまったのではないかというようなお疑いもあろうかと思いますが、御案内のように、この脅迫文がありますことは、検察官調書の中に脅迫文が援用されておるのでございまして、検察官としましては、いやしくも調書に援用しました脅迫文でございますので、それを故意紛失するということはあるはずがないのでございます。また、警察におきましても、この脅迫事件が現にあるわけでございますから、これまた紛失する理由は少しもないのでございます。そういうわけで、双方ともに、紛失することについて何らの利益もないこの脅迫文でございますので、双方捜査機関において鋭意調査をしたのでございますが、今申しましたように、今もって発見ができないというのが現状でございます。  しからば、そのような紛失の事態について、責任はだれにあるのだという問題は、これはまさしく証拠物件紛失しているのでございますから、責任は明らかにしなければならぬのでございますが、今までの調査いきさつによりますと、この証拠物件は、正式に検察庁の方へ送致されていないもののようでございます。検事の方は、警察側からこの脅迫文を一時借用して調べをして、その際に使ったということが明らかになっておるのでございますが、検事側が済んだあとですぐ警察へ返したのやら、あるいは警察側が受け取ったのやら受け取らぬのやら、その辺がもうすでに数年を経ておるのでわからないのでございますが、いずれにしましても、その間の事情が明瞭になりますれば、おのずから責任所在もはっきりするわけでございまして、私どもとしては、この問題の解決にさらに努力をしている現状でございます。どうぞ御了承願いたいと思います。
  13. 坂本泰良

    坂本委員 今の御説明とは反対に、これは検察側に不利な証拠であり、被告に有利な証拠であるから、検察官故意法廷に提出しないのではないか、こういう疑いがあるわけなんです。もしもそうであったらこれは重大な問題であります。検察官は、民事裁判と違いまして、刑事裁判においてはやはり公益の代表もしておりますから、被告に有利な証拠も提出しなければならぬと思います。それを故意に提出しないということになれば、これは重大な問題でありまして、もしそういうようなことがありましたならば、その責任はだれが負うか。この問題が一つ。  なお、一年以上もかかって所在がわからない、そういうものについて、今になって、一時借用したものであるからというような文言で、責任所在もはっきりさせずに上告をする、そういうようなことはできないのではないか、こういうふうにも考えられるわけでありますが、その点についての所見を伺いたいと思います。
  14. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 紛失責任問題は、依然として今日も厳存するわけでございまして、これは明らかにしなければならぬ筋合いでございますが、問題の脅迫文が、菅生事件においていかなる証拠価値を持つか、これはむしろ証拠物としての値打を持っておる脅迫文でございます。これはどういう意味かといいますと、市木春秋、後に戸高氏であることがわかりましたが、この市木氏がこの脅迫文を書いたのではないかという意味において、この脅迫文意味を持っておったわけであります。それはどういう意味かというと、これが市木筆跡でありますならば、その筆跡を照合することによって、市木という人物が戸高であるという同一性を立証しますのに役立つ証拠物であるわけでございます。ところが、これは二審の公判過程におきまして、戸高氏がはっきりと、自分がこの菅生事件に関与しておったということを名乗り出て、現にその行き過ぎについては裁判を受けておる現状でございまして、この脅迫文が持っておった意味は、戸高氏の出現によりましてもうすでに解決しておる問題でございまして、これはことさら検察側にとって不利益な文書であるというふうには考えておらないのでございます。
  15. 坂本泰良

    坂本委員 あと大臣見えてから質問したいと思いますが、今のに関連して、市木春秋が出てきたから証拠価値がないじゃないかということは、これは検察側の一方的な考え方であって、裁判所記録の取り寄せをしておるが、その書類の取り寄せの中に脅迫文がない、こういうような状態なんですから、有利であるか不利であるかは、やはり被告人側弁護人側においてもこれを調査してやらなければきまらないわけであります。従って、問題は、やはりこの脅迫文をなくしたという点については、これは重大な責任がある、さらに、あるのを故意法廷に提出しないということになれば、これはまた重大な問題であるし、もしも検察側において被告人に有利な証拠を押えて出さないということになったならば、人権問題にも影響するし、刑事訴訟法実体真実発見趣旨にも反することになるわけですから、これは単なる脅迫文価値の問題だけでなくて、刑事訴訟法全般並びに裁判運用についての大きい問題だと思うわけであります。われわれは、すでに証拠価値検察官判断でなくなったということだけでは、満足できないわけなんです。やはりこれをどうしても出してもらわなければならぬ。その上で、これだけに大きく問題になったものでありますから、それの検討をし、もし紛失をしておるならば、責任をだれが負うかということをやはりはっきりしておかなければ、今後の運用にも関係すると思うわけでありますが、その点についてはいかがですか。
  16. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せ通り、これは証拠価値の問題からいってどういうふうになりましょうとも、そういう脅迫文検事調書の中に援用しておるのでありまして、裁判所から提出命令が出ておるにかかわらずそれが出せないということは、はなはだ責任重大であると申さなければなりません。これは、ありますものは出さなければならぬ。これは検事が援用しておることから見ましても、当然出したいのであります。それからなお、戸高公判におきましても、さらに検事側にとっても必要な証拠でございますので、これはことさら隠しておくといったような筋合い証拠でない点だけを一つ御了承願いたいと思うのであります。  なお、責任の問題、さらに捜査していくという問題につきましては、全く御指摘通りでございまして、私どももそういうふうにして参りたいと思っております。
  17. 小島徹三

  18. 島上善五郎

    島上委員 私はどちらかというと、警察関係の方に伺いたいのですが、まだお見えになってないようですから…。
  19. 小島徹三

    小島委員長 島上君に申しますが、警察庁から増井防犯課長がお見えになっております。
  20. 島上善五郎

    島上委員 それでは伺うことにしまして、最初人権擁護局長に伺いたい。  それは、先月の十日に、本州製紙江戸川工場で、漁民集団陳情の際に起りました事件についてであります。これは当時新聞紙上でもかなり詳しく報道されましたが、その後事実が判明するに従いまして、警察官の行動に著しい行き過ぎがあったと思われる点が次から次へと出て参りました。これは国民の側に立つべき民主的警察が、国民を敵視して、善良な住民に不当不法な暴行を加えておる。人権じゅうりん職権乱用暴行疑いがきわめて濃厚であります。私はあとでだんだんに、事実についても特に警察関係の方に指摘して、その責任を伺いたいのでありますが、人権擁護局におきましては、伝えられるところによりますと、この事件について調査をしておるということでございます。その調査が今日どの程度に進んでおるかということについて、まず概略をお伺いしたいと思う。
  21. 鈴木才藏

    鈴木説明員 人権擁護局におきましても、本件浦安漁民等本州製紙工場における負傷にかんがみまして、その負傷がその当時本州製紙工場におりました警官によるものであるかどうか。またその警官による負傷であるとすれば、どういう状況において、またその警棒使用等においてあやまちがなかったかどうか。そういう観点からと、またもう一つは、その現場において逮捕されました佐藤金蔵という方の負傷の原因、また負傷後において留置されましたその留置場における留置場管理人処置が妥当であったかどうか、こういう点から一つの人権問題として、人権侵害疑いがあるかもしれない、そういう点から調査をいたしました。その大体の今日までの調査の経過を申し上げます。  去る六月の二十一日から私の方では本格的な調査を始めました。まず工場、いわゆる本州製紙小松川工場の実況と申しますか、その状況と、それから六月二十三日には浦安町に出張いたしまして、負傷をしたという漁民の方約五十名に面接をいたしまして、その負傷程度、また負傷がどこで起きたか、いつ起きたか、どういう状況のもとに起きたかという調査をいたしました。それからさらにその当時の状況につきまして、乱闘中に起きたものであるかどうか、そういうことに関心を持ちまして、その現場におりました報道関係者から、その当時の状況を聞いたのであります。さらに、この漁民手当をいたしました医師から、その傷の程度、あるいはどういうものによって生じた傷であるか、そういうことを調査いたしました。大体今までのところでは、被害者側の方の調査は一応完了をいたした程度であります。これからさらに当時の出動いたしておりました警察官の方の調べを開始しようと思っておるのであります。大体今までのところでは、漁民側調査によりますと、調査の対象になりました者の大半警棒でなぐられたという状況であります。ただ、警棒でなぐられて傷を負ったという場所が、いろいろまちまちであります。それから、どういう状況のもとにおいて、あるいは警察官乱闘状況のもとにおいてそういう傷を受けたかどうか、そういう点がまだ十分に明確にはなっておらないわけであります。ただいまその供述調書を整理いたしておりますので、おいおいその点がはっきりしてくると考えております。それから漁民負傷程度でありますが、中には投石による傷を受けた者もございますが、大半は鈍器様のものによる打撲傷あるいは挫傷というようなものであります。そうして入院の患者が四、五名おるのであります。大体今のところはそのような状況であります。
  22. 島上善五郎

    島上委員 佐藤金蔵という人が肋骨を二本折られておりますが、小松川警察署へ留置して、本人が非常に苦痛を訴えているのに、そうして他の留置人病気診察のために医者が来た機会にぜひ私も見てもらいたい、こういうことを訴えたのに、それを全然聞き入れないで、二日間も放置しておいた。手ぬぐいで漏四布したと称しますけれども、これは本人苦痛に耐えかねて、自分で持っていた手ぬぐいをぬらして、負傷した個所に当てておった程度で、警察手当として、医療の手当としてしたのではないという事実が、私ども調べではっきりしております。それから二日たった後、つまり三日目に医者へ福これていって、それも手錠をはめて連れていって、ようやく医師の診断を受け、初めて肋骨が折れておるということがわかっておりますが、こういうようなことは、負傷に対する手当としましても、ずいぶん時期を失しておりまするし、警察からいえば容疑者ですけれども、かなり重傷である者に対して、こういうような放任にひとしい状態にしておったという事実をお調べになったと思いますが、そのお調べになった状況をもう少し詳しく、それからこういうことに対してはどのようにお考えになっておるかということを伺いたい。私どもは、かりにこれが容跡著でありましても、あるいは結果において犯罪者でありましょうとも、こういうような取扱いをなすべきものではないと考えておるわけであります。この点に対して、調査の結果とお考えを承りたいと思います。
  23. 鈴木才藏

    鈴木説明員 最初は、私の方では、佐藤金蔵さんの留置場における処遇をまず重点的に調べたのであります。その後小松川警察署に私の方の調査員あるいは法務局の者が参りまして、いろいろその当時の実情を聞いたのでありますが、最初佐藤金蔵さんの供述とこの小松川警察署留置場管理者のその当時の状況についての供述とがやや食い違っております。今どちらが真相であるかということをよくもう一度調査をいたしておるのであります。ただ、私の方では、留置場における処遇の問題もこれはまた問題でありますが、さらにその現行犯として逮捕されたそのときの一つ暴行と申しますか、佐藤金城さんの傷はその逮捕のときに生じた傷だと思うのでありますが、今のところでは、その逮捕のときの状況、その逮捕の仕方についての問題、それからまた留置場における処遇が、果して佐藤さんの言うように、留置場管理者が、佐藤さんが苦痛を訴えておるにかかわらず、全然これを問題にしないでほっておいたかどうか、その点を今調べておりますが、ややその両者の間に食い違いがあるのであります。それはとにかくといたしまして、こういう被疑者を留置いたしました場合の処置でありますが、これにつきましては、今までのところでは、やや妥当を欠いておったようなきらいがないでもないのであります。もう少し事実をよく確かめまして、また御報告いたしたいと思うのであります。
  24. 小島徹三

    小島委員長 それでは、法務大臣がお見えになりましたから、法務大臣所信表明に対する質疑を許します。坂本泰良君。
  25. 坂本泰良

    坂本委員 千葉銀行取調べ進行状況について、先ほど刑事局長にはお聞きしたのでありますが、この問題は、すでに御存じのように、前国会大蔵委員会で問題になりましたし、さらに東京地検におきましては、坂内レインボー社長逮捕となり、それが釈放になったのでありますが、その釈放に大きな疑惑があるわけであります。その後、千葉銀行におきましては、古荘元総裁が特別背任をやったのじゃないかという背任の問題が起りまして、千葉銀行においては、十名の全部の重役が責任を負うて辞職をしておる、こういうようないきさつになっておるわけであります。この問題は当時新聞、週刊誌等に掲載されて、全国の国民は、その後どうなっておるか疑惑を持っておるのでありますから、この疑惑を解くためにも明瞭にすべきじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。さらに伝えられるところによると、十数億円の貸付レインボーにやっておられるが、そのレインボーが、不動産を買ったとかその他使途が明瞭になっておるのはその半分であって、その半分は使途が不明瞭になっておる、こういうようなことも聞くわけであります。さらに、この捜査に対しては、第一線の検事捜査を進めようとするのに対して、上層部に対することに政界方面からの圧迫があって、上層部がこれを押えておるのではないかというような疑惑があるわけであります。従いまして、ただいま刑事局長の話によると、古荘総裁は病気であるから捜査が中止されておるような状況である、こういうように言われておるのでありまするが、病気を名として捜査を遅延し、第一線の捜査は進めようとするけれども上層部から押えられておる、だからそういう理由をつけてやっておるのじゃないか、こういうような疑惑があるのでありまするから、この点について大臣所信と、この取調べの進行についていかなるお考えを持っておられるか、それをお伺いしたいと思います。
  26. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 千葉銀行の問題あるいは古荘氏の問題につきまして、非常に世間からいろいろの目で見られておる、国会の中でも、前国会で大いに問題になったということも、すべて私もよく承知いたしておるところでございます。そこで、刑事局長から御説明申し上げたかと思いますが、この千葉銀行及び古荘氏に対する問題としては、昭和三十一年にさかのぼりまして、背任の告訴があったことがまず第一に事実でございますが、この件については、当時検察庁におきまして詳細に捜査をいたしまして、その事実がないということで結論が出たわけであります。また、今度は古荘氏の方から、これに対して名誉棄損の訴えが出たということもあるのでございます。それからさらに現在の段階におきましては、いわゆるレインボー事件に関連いたしまして捜査を進めておりましたところ、古荘氏に対しまして背任の行為があるのではなかろうかというようなことか、今日の段階においてまたございますので、これについて捜査を進めておるわけでございます。そこで、私のところへ参っておりまする報告は、古荘氏が老齢であり、かつ病床にありまするために、若干予定通り捜査が進行できなかったという事実もあったようでございます。しかし、私といたしましては、就任早々ではございますが、検察権の運営につきましては、公正にこれを行い、法の秩序を維持し、かつ国民疑惑を解くということが私の任務であると心得ておりまするので、本件につきましても、すみやかに捜査を進めまして結論を得たい、かような決心でおるわけでございます。
  27. 坂本泰良

    坂本委員 決心はけっこうですが、しかし、具体的にこれをやらなければだめであると思っております。  そこで、もう一点だけお聞きしておきたいのは、古荘元総裁は老齢で病気であるというならば、ほかの九名ですか、この取締役は全部責任を負うて辞職をしておるこの現実、こういう他の重役その他についても取調べを進めておられるかどうか。ただ古荘氏の老齢、病気だということでこの捜査を停滞しておるのじゃないかという疑惑もあるわけでありますが、その点についてはいかがでございますか。
  28. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まずこれについては、ただいまも決心はいいがという仰せでございましたが、検察庁法を持ち出すまでもございませんけれども法務大臣といたしましては、個々の事件につきましては、検事総長を通じて処理を運ぶことになっておりますので、ただいま私が申し上げました決心に基きまして、私としてとるべき措置に誤まりなきを期するようにいたしております。また、今日までもさような配意でやっておるのでございます。そういう次第でございますから、他の何某をいつ捜査したか、取り調べたか、あるいは取り調べなかったかということにつきましては、捜査中の現実の事案でもございますので、ただいま私からはお答えがいたしかねるわけでございます。
  29. 坂本泰良

    坂本委員 この問題は、先般坂内女社長が逮捕される際には、政界に影響を及ぼさないということが条件になって逮捕を許した、こういうようなこともわれわれは聞いておるわけであります。従いまして、検察庁上層部に対する政界方面からの圧迫があって、それでこの捜査を押えておるのではないか、こういうような疑惑があるわけでありますから、この点については、早急に捜査を進められて、近いうちに当法務委員会に御報告をいただくように要望をいたしておく次第であります。  次にもう一つ、去る二十六日午前五時を期して、和歌山県警察本部によって、和歌山教組本部、それから九つの支部、和歌山県下の二十三の小中学校、岩尾和歌山教組委員長宅ほか四十三個所、計七十五個所が一斉捜査を受けたのであります。これは立場は政府と違いましょうが、やはり教育を守るための勤評反対闘争を進めておるそのさなかに、七十五個所も一斉に捜索をするということは、あるいは捜査は法が許しておるということでやったかもわかりませんが、七十五個所も一斉にやるというところに、さらに勤評反対闘争を進めておるそのなかにこれをやるというのは、これはやはり組合運動の弾圧ではないか、かようにわれわれは考えるわけでありますが、この点についての大臣の所見を伺いたいと思います。
  30. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 まず第一に私は、現内閣の方針といたしまして、労働運動等に対しまする態度といたしまして、これが保護さるべきものは、法によって許されておるいわゆる正当なるものであるということを、第一に私としては心得ておるわけでございます。第二には、法の秩序を守るという立場からいたしまして、あるいは地方公務員法その他の刑罰法令に該当する事案に対しましては、捜査をするということは、当然私どものなさねばならない職責であると考えます。そういう考え方から、ただいまお示しの事件に対しましても、捜査に着手いたしたものでございまして、こまかい具体的な事実につきましては、事務当局から御説明をいたさせたいと思いますが、基本の気持はそういう気持でございます。従って、正当なる労働行為に対して弾圧を加えるというようなことは、毛頭考えておりませんことを明らかにいたしておきます。
  31. 坂本泰良

    坂本委員 反対闘争をやっている際に、七十五個所も一斉捜査をするという時期の問題があると思います。何も勤評反対闘争は、普通の破廉恥罪なんかと違って、隠してやっているものではない。やはりこの勤評には教育を守るために反対すべきであるというので、正々堂々と組織的にやっておるわけであります。その行為に対して、その闘争のさなかにやるということは弾圧ではないか、こう断ぜざるを得ないわけです。東京都の教組に対する前後二回の一斉捜査、あるいは逮捕、さらに全逓に対するところのものは、われわれとしては法律逮捕状を出すべきものじゃないと思う。郵便法の規定によって、全国的にわたって一斉に捜査をし、逮捕をする。そしてその逮捕された者は、二日間、四十八時間過ぎますると、勾留の請求をしなければならぬ。それは全部却下される。さらに抗告をしてもその抗告が却下される。こういうような点を考えると、何も逮捕をしたりあるいは一斉捜査をしなくても、任意捜査で十分調べられる。ところが任意捜査調べたことは、一斉捜査をやる前提としてやっておるとしかわれわれには考えられないわけなんです。こういうような点から考え合せますと、やはり反対運動を弾圧するというふうにしか考えられないと思うのです。もちろん、選挙中に岸総裁は、日教組を敵にすると言って全国を遊説したわけです。これは日経連その他から多額の選挙資金の応援を受けてやっておるから、資本家の立場である自民党の総裁としては、あるいはいいかもわかりません。しかしながら、ここに総理大臣として第二次岸内閣を組織された以上は、やはり全国民の総理大臣であるし、選挙の際のような日教組を敵にするというようなことは、でき得ないと思うのです。しかしながら、現実の事実を見ますと、やはり国家の権力をもって一斉捜査をやる。逮捕状あるいは捜査令状の点については、裁判事務の点で、当委員会においても白紙逮捕状などと申されるように、乱発をしておる。そういうことをするから、勾留請求が、今度は被疑事実があるかないかを確かめ、さらに勾留の必要があるかどうかで、刑事訴訟法の条件に基くと該当しないというので、却下される。いやしくも逮捕をし、あるいは一斉捜査をやる以上は、これは憲法上保障されておる国民の権利を侵害するわけでありますから、その点からもよほど注意をしなければならない。それを集団的に一斉捜査をやるというごときは、組合運動の弾圧である、こういうふうにしか考えられないのであります。この点については、十分の反省と、こういうことがないようにすべきである、こういうふうに考えまするが、所見はいかがでございますか。
  32. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 いろいろと御意見を承わりまして、私どもとしても大いに参考になる点が多いのでございます。しかしながら、先ほども申し上げましたように、ただいまお尋ねの点は非常に広範にわたっておりますので、一つ一つについてこまかくお答えすべきでございますが、こまかいことは省略させていただきます。私どもとしてはただいまお示しのように、日教組を頭から敵にするというようなことを考えているわけではございませんので、検察に当る者の心がまえといたしましては、公正に法を守って参りたい、一言にすればこの気持で私は終始いたしておるし、また今後もそうしたいと思います。  そこで、たとえば全逓の問題についても、先般来田中委員からもいろいろ御質疑があったようでございますが、私の見解を簡単に申しますと、私も就任早々でございますが、法律の細部にわたりまして、私としてもあらためて十分慎重に検討いたしました。その結果、全逓の問題については、ただいまお示しがございましたけれども、公労法というものが制定され、かつこの第十七条というものを考えます場合に、明白に法で禁止されておる争議行為に該当する行為があり、その行為が郵便法の第七十九条の刑罰法令に触れるということが、われわれの見解としては正しいと考えるのでございます。正しいと考えます以上、捜査をやらなければならない。その捜査をやります場合に、ただいま、公然と争議行為をやっているのじゃないかというような御趣旨がございましたが、それなればこそ、お言葉を返すようで恐縮でございますけれども検察当局としては、非常に広範に及ぶものでもございますから、これはどうしても広きにわたりまして、必要の場合にはやむを得ず逮捕というような措置にも出ざるを得なかったのである、こういうふうに考えるわけでございます。  それから、教組の関係につきましても、地公法の第三十七条並びに第六十一条、これを読みますと、どうしても今回のような一斉に授業を放棄する、そして児童、少年の教育上にも非常な迷惑がかかるというようなことの行為を指令によって—法律で申しますいわゆる「そそのかし」または「あおる」ということに該当いたします以上は、遺憾ながらこれは一斉の捜査、検挙をいたさなければならなかったのでございます。検察当局といたしましても、こういう確信によってやっているわけでございます。  最後に、勾留の請求等の問題についてお尋ねがございましたが、私は率直に申しますけれども、これは遺憾ながら裁判所の見解が私どもの見解と相違いたしましたために却下されたのでございますが、却下された以上は、これは釈放されるのは当然でございます。しかし、私どもといたしましては、刑事訴訟法の規定するところに従いまして、準抗告並びに特別抗告を引き続いて行いまして、現在最高裁判所裁判を持つ段階になっておることは、御承知の通りであります。
  33. 坂本泰良

    坂本委員 裁判所が却下をするような事案でございますから、こういうようなことについては検察当局は十分考えなければならぬと思う。もちろん公労法、地公法の解釈については問題があるわけです。一方では違反しない、扇動にも当らない、こういうような見解でやっている。それを検察庁は該当するといってやって、盛んに捜索をし、あるいは逮捕をする。ところが全部釈放しなければならない。これがやはり、政府のやっている政策と反対の立場に立っている者はあくまでも弾圧する、こういうことになる。しかしながら、この状態を見るときに、政府の勤評の実施が、果して日本の教育のために正しいかどうかということは、日本の国内における大きい問題であるのでありまして、これをやはり政府の考えている通りに実施するために、裁判になって五年、六年先の将来、無罪になろうが有罪になろうがかまわぬ、とにかく今は法の許す範囲において一斉に逮捕し、一斉に家宅捜索をする、こういうことをやること自体が、日本の政治の上においての、やはり反対の立場をとっている、反対の見解を持っている者に対するところの不法なる弾圧である、こう断ぜざるを得ないと思う。町の暴力もこれはないようにしなければなりませんが、政府がその権力を利用して、反対の立場に立つものをその権力によって弾圧することが、私は最も大きい暴力ではないかと思うわけであります。こういう点も考えてやらなければならぬ。当面の問題としては、この法の悪用によって弾圧もできるのでありましょう。しかしながら、正しい政治の実行のためには、やはり相手方の話も聞かなければならない。少数の意見を尊重する。多数決によるというのは、少数の意見もこれを聞かなければならない。私は、勤評の問題について政府がこれを強行せよと言うのは、日本の教育から考えても、少数ではないかと考えるのです。それを国家の権力によって捜査令状をとり、あるいは逮捕令状をとり、そうしてこれを全国的に一斉にやる、これは私は弾圧と言わざるを得ないわけでありまして、こういう点については、いかに保守党の政府であってもやはり国民の政府でありますから、今後十分考えてもらわなければならないと思うのです。その点の見解と、時間がありませんからもう一つお聞きいたしたいのは、この勤評実施に対しまして、この勤評実施は差別を強行するものである、こういうような考え方に立って、全国の部落解放同盟の方々は、この勤評実施に反対をしているわけであります。そうして、和歌山においてあるいは高知県におきまして—私は高知県の三原村というところに行って参りましたが、やはり部落の人が同盟休校をしている。そうすると、隣の部落の人もやはりそれはその通りだといって同情の休校をしておる。和歌山においても、やはり勤評実施反対に対して、部落同盟はこぞってこれに反対をしておるのであります。この勤評を実施することは同盟休校となり、さらには差別を助長するものでありまして、同和教育を破壊するものでもあるから、こういう点から考えると、私はこの部落の問題については、人権の差別をやってはならないという憲法違反の問題ではないか、こういうふうに考えられるわけですが、この点についての所見と、以上二つの所見をお伺いしたい。
  34. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 前段の問題に対しましては、従来もそうでございますが、今後におきましても私は十分注意をし、そうして行き過ぎのないようにという点については万全の配意をいたして参りたいと思っております。ただ、根本の法律解釈等につきましては、どうしても私ども考え方はあなたの御趣旨と非常に違いがあるように思うことを遺憾に存ずるわけでございます。  それから、第二の部落の問題でございますが、これは現在の私としてはあるいは言い過ぎかもしれませんけれども、私はこう考えるのであります。部落の解放の問題ということは、むしろ国民全体に溶け込んで、一体としての対策ということが私は気持の上において非常に必要なことではなかろうかと思うのでありまして、一つの特殊問題として、全体の国民のワクの外にはずすような考え方でこれを取り上げるという、その取り上げ方の感覚が、私はいかがかと思うのでありまして、私見といたしましては、あくまでこれは全国民一体の問題として、たとえば非常に貧窮で困っておられる方が多いことは事実で、まことに遺憾でございますが、これは一般国民の貧乏追放の対策として取り上げる。しかし、その経過においては、長年の沿革もあることでございますから、もちろん特殊の配慮ということもあわせ講じなければなりませんが、基本の考え方はただいまもお話通りでございまして、私は無差別平等の原則であくまでこれは解決していかなければならない、こういうふうに部落問題については考えるわけであります。  それから、勤評の問題と部落の問題と同じようなところがあるという仰せでございましたが、この点は私はこれまた遺憾ながら意見が違うのでございまして、勤評の問題についてはすでに法律も制定されておりますが、教職員の方々に対しまして勤務評定をやろうということなんでございまして、これは部落問題等の関係とは私は違う性質の問題であると思うのでございます。
  35. 坂本泰良

    坂本委員 しかし、この部落の問題は、これは勤評を実施されると、部落は一番しいたげられるのでございます。それから、貧乏人の子供はやはりなおざりにされて、秀才というか金持とか裕福な家庭の子供に対しては、やはりその方のことをしっかりやらなければ、勤評に対する先生方の成績その他に関するということで、そういうことをやるから、勤評を実施されると差別が大きくなるんだ。結局部落の子供はなおざりにされてしまって、憲法上の人種の差別とか教育の平等が破壊されるから反対をし、同盟休校をしておる。こういう現実を見まするときに、この勤評反対の問題が、政府側からすれば勤評実施の問題が、憲法違反の差別を助長する人権問題に触れるのじゃないか。これは重大なる問題でありますから、この点についてもう一度所見を伺っておきたいと思います。
  36. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私、誤解をいたしまして大へん失礼いたしましたが、ただいまお話のようなことであれば、私は同感でございます。私は勤務評定は実施すべきものであると確信をいたしますが、その勤務評定のやり方、内容等につきましては、こういったような部落出身の教員に差別的な扱いをするとか、あるいはそのために部落の子弟の方に思わざる悪影響を及ぼすというようなことは絶対に避けなければならないと思います。その点は私の所管ではございませんけれども、ただいまお示しの点はまことに御同感でございますから、文部大臣等にも十分連絡をいたします。
  37. 小島徹三

    小島委員長 それでは、法務大臣所信表明に対する質疑はこの程度にいたしまして、引き続き法務行政及び検察行政についての質疑を続行いたします。島上善五郎君。
  38. 島上善五郎

    島上委員 先の人権擁護局長に対する質問をもう少し行うことにいたします。それから大臣にもちょっと伺いたいと思いますから……。
  39. 小島徹三

    小島委員長 大臣は参議院の予算委員会で待っておるという状態でございますから……。
  40. 島上善五郎

    島上委員 では、大臣に対し一点だけ。先ほど人権擁護局長浦安漁民事件について伺っておりましたが、まだ全部済まないうちにあなたがおいでになりました。人権擁護局での調査はまだ完了しませんが、現在の段階においてでも警察官行き過ぎと思われる点が若干ある、こういうことでございます。それで、その御答弁の中ですでに明らかにされましたのは、警棒によってなぐられてけがをした者が相当数あるということ、それから肋骨が折れて重傷になった者が留置場に入れられて、二日間も放任状態になっておるというようなこと、それから、これは私が今から伺おうと思っておりますが、集団陳情の当事者でない第三者と申しますか傍観者と申しますか、そういう者がなぐられている事実もある。それから、元の町会議員で、町民に対しては相当顔のきく人が、事件を聞いて、警察官責任者と交渉しようと思ってあとからかけつけて行ったら、今度はその人までなぐられた。まるで狂気のさたとも言うべき行為があった。これは警察当局に対してあとで詳しく伺うつもりですが、国民に法に違反する行為があれば、法によって処断すると同時に、容疑者を検挙するとか、あるいは犯罪を防止するという名によって、警察官が法に照らして行き過ぎた行為があるというような現実の事件が起っており、これが扱いいかんによっては、今後もまた起る心配が国民の中にあるわけです。こういうことに対して、人権擁護局調査が最終結論に達していない今日ではありまするけれども、少くとも若干の行ぎ過ぎがあった事実は、今日の段階において認められておる。私どもの立場から見れば、若干の行き過ぎではない、もう大いなるものがある。こういうことに対して、法務大臣はどのようにお考えになっておりますか。その所信を伺っておきたい。
  41. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私はもし—もしと申し上げるのは大へん失礼でありますが、事態を調べてみまして、お示しのようなことがございましたならば、これは法に照らしまして処理をしなければならないと思います。私は第一に、こういったような場合に処置をする事別の心がまえなり、行き過ぎなりというものは、絶対にこれは押えなければ、先ほど私の強調いたしました法の秩序というものは維持できない。また同時に、警察とか検察とかいうものは、いわゆる権力行政でございます。万々一行き過ぎのありました場合には、これを率直に修正しなければならぬ。そのために、法務省といたしましても、人権擁護局を中心にいたしまして、遺憾のないような措置をとりたい。これは要するに事前の心がまえ、あるいは行為の問題であり、また事後における矯正方式、修正方式の問題であると思います。私は就任早々ではございますけれども、こういった面につきましては、先般も申し上げましたように、何とかして国民に信頼されるよりなやり方をやりたい、これを私の信条としてやって参りたいと思います。
  42. 島上善五郎

    島上委員 簡単に人権擁護局長に伺いますけれどもあと警察関係は当の責任者が来るまで保留しておきますから……。
  43. 小島徹三

    小島委員長 警察庁増井防犯課長かおいでになっておりますから……。
  44. 島上善五郎

    島上委員 防犯課長でなく、警察庁長官か警視総監に伺いたい。  それで、人権擁護局長に伺いますか、私が今指摘しましたように、抗議文を手交する代表とともに行った人人、かりにこれを当事者と呼びますが、その人々でないいわば第三者、何か騒ぎが起っているといって近所の人が見に行ったその第三者、傍観者の中にも負傷者があった、これをお調べになったかどうか。お調べになって、おわかりになったら、それをはっきりしてもらいたい。それからもう一つは、その町民大会には参加したが、参議院への陳情、都庁への陳情それから本州製紙への抗議、こういうふうにバスで歩きましたが、その中に加わらずに、用事があって町におった人で、あと本州製紙で何か騒ぎが起っているということを聞いて、これは大へんだというのでかけつけた人があるのです。これは柳町金太郎という人ですが、この人は元町会議員をしておった人で、何か町民に対してもある程度信頼を受けている人で、私はその人から直接聞いたのですが、自分としてはその話を聞いて急いでかけつけたら、どうも形勢が不穏な状態で対峙しておった。このままにして放任しておくと、また衝突するような事態になるおそれがある。またというのは、その前にも何か一ぺんもみ合いがあったらしいのですが、行ったときにはもみ合いはやってなかったが、対峙しておった。このままだとまたもう一ぺん衝突が起る危険があるというので、その人は警察官の方へ行って、向うの警備の責任者はだれだ、責任者と話し合いをしたいから、そうしてこの事態をおさめるために一つ何か警察側としての処置もとってもらいたい、こういうことで話し合いに行った。その人がやはりやられているのです。これなどもやはりめちゃめちゃにやられておる。一人の男を五、六でやっておる。あと本人の言うところによりますと、ネズミ色の服を着た指揮者と思われる人が来て、もうよせよせと言ってみんなをとめた。この人の言葉をかりていえば、この人が来たので私は一命を取りとめた、来なかったらもう死んでおったかもしれないという、それほどひどい目にあった。ちゃんとここに本人のあれが書いてあります。こういうような事実も多分お調べになったと思いますが、そういたしますと、さっきあなたの御答弁の中にもありましたように、こういう事実があるとすれば、明らかに行き過ぎである。この行き過ぎに対して、もう一つ片方をお調べになるでしょうけれども、この結論を見ました場合には、人権護局としてどのような措置をおとりになる考えであるか、その点を伺いたい。
  45. 鈴木才藏

    鈴木説明員 まず第一点の本州製紙の問題について、全然関係のない第三者がけがをした。最初は二、三十名もけがをしておるというふうなうわさを聞きまして、私の方でも重視いたしまして、でき得る限り調査をいたしたのであります。それがどういうものか、その事情はよくわかりませんが、漁民関係のない傍観者で傷を受けたという人が、なかなか現実に出にくいのであります。これはやはり実際傷を受けていなかったのか、あるいは傷を受けたれども工場関係等のいろいろな問題であるいは申し出がないのでありますか、今のところはようやく一人くらい何があったというような調査で、その点は非常に調査が行き悩んでおります。おいおいまたこの点ももう少し突っ込んで参りますと、あるいは真相が出るのではないかと思っております。  それから、二番目の問題でありますが、先ほど御指摘の柳町金太郎君の問題であります。これは最初から、各委員会においても、その当時の事情は御本人から詳しく、今お述べになりました通りの事情が出ております。ところが、そのときの状況から見ますると、御本人供述によりますと、全然乱暴しておるわけでもない。交渉をしておるときに、突然かかれかなんかの号令一下、ぽかぽかとなぐられた。この点がほんとうにその通りかどうか。御本人供述だけなんでありますが、警察の万は大体まだその点の調査がはっきりしておらないようでありまして、柳町さんのおっしゃる通りであるかどうか、この点も大体私の方ではその通りであろうという気持を持っておりますけれども、やはりもう少し裏づけを持ちたいと思っております。明日から警察側調査に入りますので、おいおい真相はわかると思います。私の方では、万一柳町さんのおっしゃる通り、あるいは佐藤金蔵さんのおっしゃる通りであるといたしますれば、やはり警察官の多くのグループによる警備の方法、あるいは群集を退去せしめるときの方法、その場合における警棒の使用方法、その点によって、また留置場処置等によって、行き過ぎがある、またそうして人権じゅうりんの事実が認定されるならば、何らかの形において勧告はいたさなければならぬと思っております。もう少し事情をよく調査いたしまして、その結論を得たいと思っております。
  46. 坂本泰良

    坂本委員 関連して。警棒の使用については、警棒使用規程と申しますか、そういう規定があると思うのです。そうして警棒を使用いたしましたならば、その使用について報告しなければならない、こういうことが、今条文がありませんからはっきりしませんが、そういう規定が多分あると思います。警察があの際こん棒をどういうふうに使用したか、何名が使用したか、これは当然報告するし、また調査もしなければならぬ、こう思っておりますが、その点について局長は何か調査されたかどうか、聞かれたかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  47. 鈴木才藏

    鈴木説明員 まだその点は聞いておりません。これから聞くつもりでおります。ただ、どこかの委員会においては、警察の方でまだ報告がしてなかったという報告はあったように思っております。
  48. 坂本泰良

    坂本委員 この警棒の使用の問題は、厳格にしなければならぬと思うのです。ことに本州製紙のこの問題については、こん棒によって漁民の方々が負傷をする、そういうような結果が出ておるのでありますから、この点はやはり人権擁護の立場からも厳重に調査をしておいてもらいたい。さらに、この法の正しい運用についてもやはり規定があると思いますから、その規定に沿うような善後措置を警察当局はやっておるかどうか、そういう点も一つ、きょうは警察当局は来ていないから、警察当局にも私は要望しておきたいと思うのですが、人権擁護局の方でも、やはりその点までよく、正しい警棒の使用の点についても調査されなければ、擁護局の目的も達せられないのではないかと思いますから、その点をお願いしておきたいと思います。
  49. 鈴木才藏

    鈴木説明員 人権擁護局におきましては、この本州製紙工場に起きました事件を重視いたしまして、特に警棒の使用の点につきまして重視いたしまして、さっそく調査いたしたわけであります。今御質問の御趣旨というものが、私ども調査を始めましたほんとうの意味であります。この点は徹底的に調査をするつもりであります。
  50. 島上善五郎

    島上委員 浦安問題は、主として私は警察庁長官並びに警視総監に伺いたいので、あとを保留しておきますが、一つ人権擁護局におきましては、ほんとうに人権を擁護するという立場から、しっかりしたお調べを願って、一つきびしい勧告と措置をとってほしいと思います。警察ではなかなか事実を出さぬように、警察行き過ぎがないようにいるいろ調査の際に逃げると思いますけれども、しっかりと一つやつてほしいと思います。これはもう行き過ぎの事実は、われわれの調査によりますれば明白です。せめて人権擁護局でしっかりした公正な調査をして、きびしい勧告でもしますれば、国民も今後の行き過ぎが防止されることについて多少の信頼を持てますけれども、その人権擁護局があいまいな調査で、何をしたかわからぬということになりますれば、国民は全く警察官を信頼しなくなる。浦安の町民はこう言っているのです。これはもう漁民ですから、単純な人たちだと思いますが、要する警察官本州製紙の番犬なんだ、こう言っているのです。ですからぜひこの事件調査及び措置については、しっかりとおやり願いたいと思います。私は本日はこれで終ります。     —————————————
  51. 小島徹三

    小島委員長 それでは、売春防止法の施行についての調査を進めることにいたします。神近市子君。
  52. 神近市子

    ○神近委員 今日警察庁からここへ報告が出ております。多分増井さんが御作成下さったのだろうと思います。今ざっと拝見したところですけれども、時間も切迫しましたので、あまり詳しく御質問できませんから、要点だけちょっとお尋ねしたいと思うのです。  まず、この報告について、増井さんから簡単にこの内容を御説明いただきたいのです。最近非常に隠れた売春というものが行われて、それが売春防止法のできた弊だというようにマス・コミでは言われております。実態をいろいろ聞いておりますと、やはりよほど悪い状態に追い込まれておると思いますけれども、この報告の内容の感想というか、所感というか、防止法施行以来の状態をごく簡単にお話いただきたいと思います。
  53. 増井正次郎

    ○増井説明員 取締りの概況につきまして、お手元に資料が配付されておりますが、要点を申し上げますと、前年施行になりました四月、五月間の統計の数字をまとめてみますと、全体では三千三十六件、二千七百八十六人という検挙の数字を見ております。そのうちで、売春防止法だけの関係を申し上げますと、二千六百八十九件で二千四百七十三人という数字でございます。児童福祉法関係、その他の関係では、三百四十七件、三百十三人という数字になっております。四月、五月の状況を比較しますと、四月に比べまして五月では約二二%ほど全体で増加いたしております。増加いたしましたおもなものは、周旋それから管理売春であります。売春をさせる業、それから場所提供、契約売春、それから婦女自身の本人の勧誘行為というのがおもな数字であります。婦女自身の勧誘というのは、全体で見ますと、千二百四十六人という数を示しております。それから助長売春、売春行為を助長するような管理売春その他の関係が全体で千二百二十五人という数字でございます。全体といたしますと、数的にはただいま申しましたような状況を示しております。特に法施行後の従来の集娼地域の違反状況はどうかという問題でございまするが、従来の業者関係の違反という数字は、全体では比較的少い数字に上っております。全体では五十九人でございまして、数字は比較的少い数字であります。従いまして、従来の集娼地域における売春行為、特に管理売春というものは、現在のところ目立った動きは示しておりませんけれども、今後この状況につきましては十分注意を要するものがあるのではないか、こう考えます。特に私どもの注意をいたしたいと思いまするのは、売春に関係ある、介入しました暴力団の関係が、四、五月分では全体としまして、数字的に申し上げますると五十二名、八十六件というような数字を示しておりまして、全体の中では少い数字でございます。しかしながら、昨年の十二月でございましたか、私どもが売春に関係のあるような暴力団の実態を一つ調査したいということで調べたところによりますと、大体九百件近い数字が上っておりますので、こういったような暴力団の今後の動きというものについては十分注意をいたして参りたい、こう考えております。特に、これに関連いたしまして、ポン引きでありますとかあるいはひも、こういったような違反を犯すおそれのあるような人たちの取締りということも十分注意をしていく必要がある、こんなふうに考えております。
  54. 神近市子

    ○神近委員 四月から五月にはふえているわけで、それで、新聞なんかの観察でも、こう言っているんです。結局、法の不備があるので、そっとやれべやってもいいんだという考え方がずうっと浸透してきて、だんだんふえる傾向にあるというので、その点で私は、これは現状以上に非常にひどくなるということも予想されると思うのです。検挙の場合にどういうところに隘路があるかということがおっしゃれますか。いろいろやってはいらっしゃるのだろうと思うのですけれど、私どもから考えれば、国民全体が予期していた効果が上らないというのが現状だ、そうすれば、どこに盲点があるということをあなた方は感じていらっしゃるか、それをお尋ねします。
  55. 増井正次郎

    ○増井説明員 法が施行になりましてから取締り上、私どもといたしましていろいろ苦慮いたしております。特に人権の問題、人権の尊重という問題を十分に注意をいたしながら、保護更生につながるような要保護女子の方々を発見して、しかるべき機関へ送っていく。それから、売春助長の行為、管理売春といったような問題については十分取締りを徹底する、こういう方針でやって参っておるのでございまするが、取締りは、事柄の性質上、非常にむずかしい問題でございます。しかしながら、第一線におきましては、取締本部というものを設けまして、十分な態勢もしいておりますし、また技術上の問題につきましても、いろいろと技術的な研究もいたしておるようでございます。しかし、何にいたしましても、先ほど申し上げましたが、暴力関係のあるような売春という問題につきましては、知能的な性格も持ち、他面暴力的な性格も持って参ってくる、いわば知能犯あるいは強力犯というようなものをかね備えたような場合も少くないようでございまして、私どもといたしましては十分、非常に困難なことでございますけれども、法の趣旨に即応するような取締りを徹底して参りたいと考えております。
  56. 神近市子

    ○神近委員 その人権の問題がこの前から必ず出ます。私どもからいえば、人権は尊重しなくちゃならないけれども、一般にこれほど害毒を流している状態をほっておかれないというふうなことが、今度の立法の趣旨だと思っております。竹内刑事局長はこの法律が成立しますときにはおいでにならなかったので、いろいろ今日の事情も御存じないのじゃないかと思うのですけれど、この売春行為そのものを罰しないで、公然の勧誘を罰するということは、筋が通らないという議論がひどくあったのでございます。それで、今は結局人目につかないところでやればいいという通念になりつつあるようでございまして、私どもはこういうことを予想いたしましたから、行為そのものをほっておくわけにはいかないじゃないか、法の形態としても不完全なものであるというので、これは少数意見として婦人が全体でこの点を非常に論議したのでございますけれど、今、増井防犯課長が言われましたように、人権の問題とからむので捜査が非常に困難だ、あるいは今の刑訴法の関係で、証拠をあげることが非常にむずかしいというようなことで、便宜的に、ざる法といわれる法律ができ上った。そのときに、ここにおいでになったと思いますが、猪俣法務委員が、今もそうでございますが、おっしゃったんですが、売春そのものを罰しないで、たとえば疑わしいという場合に調査するということは、人権じゅうりんになるだろう、しかし、そこに犯罪の内容があるという予想でこれを調査するということは、人権じゅうりんということにならないのではないかというようなことをおっしゃった。それは私もそうだと思いました。あなた方が、犯罪が起ったときどんどんと捜査なさる、あるいは聞込みをなさる、それに似たようなことがどうして売春の問題だけできないかということが、私ども疑いであった。きょうは中川さんはお見えになっていないが、中川さんも、この問題の取締りには、そのものずばりの法律がないからやれないということを二十二国会ではしきりにおっしゃったんです。法務省が非常に力を入れて、売春対策協議会というものをお作りになって、山崎佐さんが中心になって作られた売春対策協議会の答申がある。それにも、売春行為そのものと相手の男を罰するということがあります。これは名目だけの婦人の罰し方にしようと考えたんですけれども、今日この売春防止法のざるの目がはっきりわかってきたということになれば、第二国会でも政府が提案され、また協議会が答申の中に入れられ、二十二国会の売春禁止法ではそれは否決されましたけれども、ともかくわれわれはその考え方がいいと考えて入れておいた。ことに今の段階ではどうしてもその点をお考え願わなくちゃならぬときに来ているのではないか。婦人相談員の懇談会でも、そのことを、どうしてもそのものずばりで罰するということができなければ、どうにもならないということを婦人相談員がみな集まって話し合っているんです。このことについては、どういうふうな空気であるのか、これほどの弊害をかもし出して、また再びもっと悪質なものになっていく。これは、売春行為はいけないんだ、罰せられるんだということを知らせることが必要ではないかということを考えまずけれど、これを法務省は一度でも御考慮になったことがあるのか、このままのざる法でやっていこうというお考えなのか、その有無をちょっと伺わしていただきたい。
  57. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私この法案の通りました当時は、御指摘のようにその衝にありませんでしたが、前国会で売春法の一部改正の補導処分を制定するに際しまして、過去のいろいろな記録も読みましたし、その法律の立案当時のいきさつも承知いたしました。それによりますと、売春行為それ自体を罰する規定の可否が、慎重に論ぜられたことも承知いたしております。しかし、私自身としましては、いろいろな観点から見まして、間接取締りになろうかと思いますが、売春そのものを罰しないで、外形に現われた行為によってまず第五条で罰する、その他のものについては管理売春を罰し、あるいは周旋を罰し、場所の提供を罰するということによって、いわば売春という行為を抹殺してしまおうという、いわば直接取り締るのじゃなくして、間接に取り締ることによって売春そのものをなくしていこうという法律趣旨であろうと存ずるのでございます。今、御指摘のように、先般の新聞等にもざる法の正体が現われたということで、ずばり売春行為それ自体を罰しないということが、この種のもぐり売春を一そう助長するという傾向を示しておるんだということ—そのほかにもいろいろ理由はあげておりますが、そういうことも確かに議論になっておることも承知いたしております。それじゃ法の改正というところに考えが及んでおるかどうかという御質疑であったと思いますが、私は本月の七日に全国の風紀担当の検事を東京に集めまして、この問題の取締りの過去の実績に徴しまして慎重に検討したいということで、もうすでに手配済みで集まることになっておりますが、その検討の結果を待ちましてお答え申し上げるのが正確を期するわけでありますけれども、私の感じといたしましては、この問題を直ちに今論議する段階ではないように思うのでございます。もちろん、ずばりということで取締りができますならば、一そう簡明直截でございましょうけれども、増井君からもお話がありましたように、これにはいろいろと捜査上過誤に陥りやすい人権問題があるわけでございます。むしろ私ども検察庁捜査を通じて見ますると第十二条の管理売春の違反とかあるいは第十一条の場所提供の問題、こういったようないわば一番売春防止法の骨格をなす部分、一番悪性の強い部分、こういうものに対する検察的なメスが、法律的に入れにくいかどうかというところが問題であるようでございます。これにはいろいろ民事関係の解釈ともかね合いがございまして、特に情を知って場所を提供したということの認定が、すこぶるむずかしい問題がある。これは今の直截的に売春そのものを罰するということとは別の問題でございますが、むしろそういうところに問題が一つあるように思います。それからまた、その種の事犯におきましては、物的証拠というものが比較的少いのでございます。やはり関係者の供述によって、相互に裏づけた証拠を集めていくということが必要になってくる。そういうことになりますと、汚職もそうでございますが、その他供述だけに依存する捜査ということがかなりの犯罪にあるのでございますが、そういう種類の犯罪と同様な意味において、この売春防止法の取締り規定がむずかしい運用になっておるということは、私も認めざるを得ないと思うのでございます。しかしながら、この取締りの実績を見て、なるほど人数は若干ふえておるようでございますが、これは私の観察が間違っておるかもしれませんけれども、今までどう取締り当局がこの売春に対して出てくるかということを、売春業者あるいは売春婦等が見守っておったと思うのでございます。それが若干選挙その他の関係で取締り官憲の手が薄れてきたというようなことや何かが重なりまして、また最近少し動きが目立ってきたと思うのでございまして、この辺をよく考えてみますと、捜査面における一つの新しい方法の発見とかいうようなことも考えなければなりませんが、かすに、もう少ししんぼう強く取締りをやってみて、その上でこの問題を反省してみるのが相当ではなかろうかというふうに、これには忍耐が必要じゃないかというふうに私は考える次第でございます。
  58. 神近市子

    ○神近委員 大体検察庁関係の方々を集めて、そうして御協議になるということですが、その御報告と、あるいは御協議の模様を知らせていただきたいと思います。あなたは、直接処罰ではなくて、間接取締りということをおっしゃる。今、場所提供とかあるいは管理売春だとか、そういう事犯がたくさん起っておるとおっしゃる、そして、それの判別がなかなかむずかしいということをおっしゃっておるが、たとえば業者に言わせますと、警察に前に立たれたら商売はもう上ったりだ、こう言うのです。入らないでも、前に監視されておるだけで……。ところが警察は、予算の関係だとか、あるいは私どもから言えば、よけいな人権じゅうりん的な、今も問題になっておりますようなところに警察の精力が政治的目的のためにたくさん使わせられて、そして、悪習というか悪弊というか、ほんとうに国民が困っておるものについては、あまり手が回らない。選挙があったからとおっしゃいますけれども、そうでなくても、これは手が回らないとおっしゃるにきまっておる。それで、これはたとえば何とかやらなくちゃならぬというときに考えられることは、警察の手もあまりかけないで考えられることは、御存じだと思うのですけれども、アメリカの売春撲滅法といって、カリフォルこア州だとかあるいはニューヨーク州だとかいうところにある形態ですね。たとえば、聞き込み—その点日本の民度とアメリカの民度と非常に違っておるので、どうもこれは幾らか危険があると思うのですけれども、少くとも三十人か五十人のその地域の人たちの考えが、全部が全部個人的な憎悪だとかあるいは羨望から起るとは思われない、あの組織を婦人の中には考えている人があるようです。インジャンクション・アンド・アベットメント・ローという法律ですね、そのことを御婦人の方はみんな考えている。もし間接にやるならば、これよりほかにないというふうなことを考えていらしゃいますけれども、そういうことをお考えになったことがありますか。
  59. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 私どもの立法の事務を担当いたしております参事官室では、その資料を集めまして、研究したことがあるようでございますが、私自身はあまりつまびらかにいたしておりませんので、ここで御説明等はいたしかねる次第でございますけれども、私の感じといたしましては、少し様子を見たいという気持を抱いておるのでございます。私の考えが間違っておるということで、あるいはこの七日の会議によりまして訂正をしなければならぬことに相なるかもしれませんが、ただいまの段階といたしましては、まだ施行後三カ月でございまして、もう少ししんぼう強い取締りをしてみた上で考えても、おそくはないのじゃなかろうかというふうに考えております。
  60. 神近市子

    ○神近委員 この問題で、もう一つどうしても申さなくちゃならぬのは、暴力団の問題です。法務大臣のこの間のごあいさつにも、汚職と暴力をぜひ取り締りたいということを一つの所見としておっしゃった。この暴力団を一体どうするおつもりなんですか。もう歴然とした、横井という人をピストルで撃ったというような犯罪になれば、それは全力をあげて捜査もなさるし、逮捕もなさるけれども、あの周辺にはまだたくさんいるんですよ。あのグループの中だけでなく、もう全国的にああいう人たちがいる。これは何で今から取り締ろうと考えていらっしゃるのか。犯罪の起るのを待って、いろいろ暴行とか脅迫という名前でこれを規制なさるおつもりなのか。この間暴力取締法ができましたけれども、あれでも、結局やれないということになる。それはお礼参りだとか、あるいは恐喝だとかゆすりだとか、そういう形が出たときのものであって、一体、犯罪あるいは非常にいやなことが起るという内攻したものを、そのままどうすることもできないのがわれわれの実情なのか、それともこれは中国でございますが、遊人教養所というのがあるそうです。私どもも婦人たちの労働教養所というのは見せてもらいましたけれど、この遊人教養所というのは見ておりません。結局少年院的なものじゃないかと思うのですけれど、それをおとなに及ぼしたというものらしいのですけれど、どういうふうに取り締ったらいいか。これは売春の問題だけではございません。あらゆる盛り場という盛り場が、今日男も女も安心して歩けないというような状態を、どういうふうにしたらいいとお考えになっていますか。
  61. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 非常にむずかしい問題でございます。仰せのように、前国会で御審議をいただきまして成立を見ました暴力立法—いわゆる刑法、刑訴法の改正の規定をもってしましても、—これは出てきた暴力事犯の検察、裁判における処理を円滑ならしめるというような目的が主たるものでございまして、これをもって暴力事犯が一掃されるというようなことは、私どもとしても、とうていそのような大きな望みをあの立法にかけていなかったわけでございます。しかしながら、数年来の暴力に対する間断のない取締りというものは、かなり暴力団の実態を変形させておりますことは、これは警察庁のたびたびの当委員会での御答弁等によってもうかがわれるのでございまして、私ども検察庁の方から見ましても、暴力団の実態というものはだんだん形が変ったものになっておる。これはやはり取締りが継続的に根強く行われるということによって生じた結果だと思っております。だからといって、まだ撲滅の域に達しないことは、御指摘通りでございます。  そこで、この種の暴力団の取締りにつきましては、ある暴力が具体的に発生したということによって、それをあるいは暴行罪、あるいは傷害罪、あるいは暴力行為等処罰に関する法律といったようもので取り締まっていくのがいいか—それはやらざるを得ないのでございますが、そういうことだけで能事足れりとするのであるか、それともそのような暴力団—はっきり子分をかかえ、その地位等も明確になっておる親分、何とか総長だとかいったような式にはっきりしております階級組織を持って組織されておるこのような暴力団を団体として否定してしまって、そしてそれに加入し、あるいはそれに携わるというようなことを処罰しますか、今、神近委員のおっしゃたように、そういったような収容所のようなものへ保安処分として送るといったようなことも、確かにそれは考えてみなければならないりっぱな御構想だと私は思います。そういう点も今後の暴力の実態を見詰めながら、私どもとしては研究を続けて参りたいと思っております。なお、これにはいろいろ民事くずれの暴力もありますし、売春につながった暴力もございますし、少年だけをとってみましても、青少年だけの暴力という問題がございますし、それはもう簡単にある一カ所をくずせば暴力が消えてなくなるというのではなくして、社会全体の環境が暴力を許さぬというような環境になって参りませんと、これは消滅するものではない。そうだといたしますと、いろいろな面から対策を講じなきゃならぬと思いますが、私どものあずかっております検察あるいは予防検察面から、本年は何らかの形で画期的な対策を打ち立てまして、予算措置等も考えて参りたいというふうに一応は考えておるのでございます。具体的にそれじゃどういう立法をするかということになりますと、まだそこまで構想を固めるに至っておらないのでございます。
  62. 神近市子

    ○神近委員 時間が非常に過ぎますので、その問題はもっと伺いたいのですけれど、また別の機会といたします。同じ問題でございますけれど、今、赤線や青線は、きょうの調査を拝見しましても、元業者というものは非常に謹慎しておる、というのは、吉原に行ったときにそう申しておりました。われわれが動くと、警察の取締りが来るから、何もできないのだというようなことを言って、実際にこれにも前業者は少いのです。ですけれど、この人たちから非常にうらまれていることは、赤線、青線だけをやっておいて、芸者さんは野放しじゃないかということなんです。芸者さんの実態というものについて、いろいろ厚生省でも懇談会を持っていただいたし、私どもも別に個人的にいろいろ調べてみますと、あの中は売春がもう非常に自由に行われている。いろいろ制限はございますね。部屋が六畳以上の畳数でなくちゃならぬ、押し入れをつけておいてはいけない、時間は何時とか、そういうふうな制限はありますけれど、いろいろ聞きますと、中では売春が自由に行われている。おそらく一流どころと二流、三流どころとは、そのパーセンテージは違うでしょう。ころぶ婦人が多い少いは幾らか違うでしょう。しかし、全体を通じてみますと、必ずこの待合—東京では料亭というふうにいっておりまずけれど、料亭というところは、そういう場所になっている。やはりこの点も、赤線、青線の売春行為規制と同じ程度のものは、芸者さんにもなくてはならないのではないか。芸者さん自身が芸者置屋さん自身が、割によい人たちは、自分たちの仲間の状態を非常に心配いたしまして、陳情書をよこしております。それから、どういうふうにして更生するかという案を立てて、いろいろ来ているわけです。それから深夜喫茶、これは程度が低いだけで、いわば待合が非常に高級的なものである。あるいは深夜喫茶は非常に庶民的な大衆的な場所であるが、この二つは、性質においてはあらかた似ているものだと思うのです。深夜喫茶は十一時の規制はないでしょう。だからその点が違う。これはどうしてもこれから御研究いただきたい。東京都の議会でも、深夜喫茶は閉鎖しなければならないという決議をしております。国会で何か動いていただきたいという要望が来ているはずでございます。この二つをどういうふうにしたらばいいか、芸者屋、料亭の組合長あるいは置屋の組合長というものは、純粋な芸能によるサービスをするというようなことによって存続したいという気持があるのですけれど、これもやっぱりさっき申し上げた売春行為そのものを問題にするのでなければ、あるいはカリフォルニア法、ニューヨーク法の方法を用いるのでなければ、なかなか問題は解決しないと思うのです。芸者屋をどういうふうにこの売春防止法でやろうとお考えになっているのか、あるいは別の芸能風俗営業法とかいうふうなもので規制しようというふうなことを考えているのか、あるいは料亭だけには一ぺんも手をつけないというような態度でいらっしゃるのか、そこを一ぺん伺わしていただきたい。非常に悲しいことですけれど、国会はどうしても男性が多い。それで私どもに忠告してくれる人たちは、ともかく男子の国会議員さんは、料亭、別の言葉でいえば待合ですが、待合に手をつけることは絶対に反対だということを言われる。ところか婦人は、どこにいきましても、片手落ちだということをしきりに言うのです。結局また婦人団体と国会の保守的な政党との争いになるのですけれども、法務省では今の政府の方針で、ノー・タッチでいくというようなことがうわさとして流されているということなのですが、法務省は一体この点はとういうふうに考えていらっしゃいますか。
  63. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 これは法務省がノー・タッチでいくと申しますよりも、私どもは芸者の実態というものにうとうございまして、こういう問題がもう少し実態が解明されますれば、果して売春防止法の方でいくべきか、あるいは御指摘のように風俗営業取締りといったような面からいくべきかというようなことも、何とか方向が立つと思いますけれども、今のところは、まずまず一番経験の深い売春対策審議会の諸先生方にだんだんと御研究をいただきまして、その向うところによって、私どもは事務的な作業をするといいことがよくはないかというふうに考えております。今おっしゃるように、法務省はノー・タッチだというような方針が決してあるわけではございません。
  64. 神近市子

    ○神近委員 審議会は、私も審議会の委員ですから熱心にやりますよ。だけれども、この前の売春防止法を提案なさったときのように、今、米価審議会で問題になっておりますように、案をちゃん持っていらっしゃって、それよりは一歩も負けないというような審議の仕方なら、私は無意味だと思います。幾らでも審議会でやります。しかし、芸者さんたちの実態を知らない。これは芸者遊び、待合遊びのお好きな方々にお聞きになればよくわかると思うのですけれども、私どもも実際知りません。それで、この間、その方の人に来てもらって、いろいろ婦人たちが懇談しました。そのときに、結局ふとんを出すか出さぬかということが問題の焦点だったのです。いろいろ聞いてみますと、彼らはこの防止法に引っかかるまいと思って、いろいろ恋愛の自由でございますとか、あるいは人間の行動の自由でございますとか言い立てる。自分たちはノー・タッチだと言うけれども、じゃ、ふとんを敷くかというと敷くということになる。お客さんたちが自分たちで敷くかということになると、やはりちゃんとサービスで、それは敷いてあげなければならないから敷きます、そこで問題は大体片づいたのです。私どもはそれは売春だと言うし、業者はそれは自由な恋愛で話し合いだと言い、私どもはそういうものは恋愛と言わないのだということをこの間言ったわけですけれども、実態はそうです。そして七十代の婦人が売春した事例がどこかに出ておりました。これは売春対策全国協議会ですか、あそこでとった調査によりますと、六十代、七十代の売春という事例がございました。けれども、大体において芸者さんたちは、四十を過ぎたあるいは五十を過ぎたという人たちは、おそらくごく少数で、それはやらないだろうと思う。一番多いのは二十代、三十代でございます。それで、その点ですけれども、とりあえずその対策を考えていただきたい。そうして、私ども審議会でもあるいは立案して持って参ってもいいと考えています。ぜひともこれは一つ御研究と対策をお願いしなければならない。婦人相談員たちがしきりに求めておりますのは、この売春行為、個人売春というものをやはり改正の中に加えていただきたいことと、それかり待合、料亭なんかで買った男なんというものは、あげたら、ずいぶん影響こしてはよい効果を出すだろうと思う。そうでなくとも、今日のたとえば早純売春をあさっている人たち、これほ検察庁あるいは警察にちゃんと姓名は参考のために記録してあるそうです。それを何らかの形で、たとえば一回とか二回というようなのはやめても、常習的な人くらいなところを何か発表するようなことにしたならばどうだろう。中国に婦人たちが行って帰ってきての話でありますが、売春婦を買った男の人の名前を、地域にちゃんこ掲示するのだそうであります。それで、ほかの方法をしないでもやめる。これは人権じゅうりんになるとおっしゃるかもしれない、名誉毀損になるとおっしゃるかもしれないけれども自分の行為の結果でありますから、そうひどく非難は受けないので、そういうふうなことも考えていただきたい。大体その三つが婦人相談員たちの懇談会で出たことです。実際にその衝に当って、単純売春を罰するようにしてもらいたいということ、それから芸者さんの問題をどうするおつもりかということを確かめたいということ、もう一つは、今の法律ではどの条文によっても買った男は罰せられない。ところが、第二国会の分にも、あるいは売春対策協議会の分にも、あるいは二十二国会で私ども婦人議員が提出しました法案にも、全部買った者も罰するようになっている。その点、一番買った人たちを罰するということが無理のないやり方ではないかと思うのです。婦人を罰するということに非常に御反対があって、今日の防止法になったのですけれども、婦人以上に、買う人が悪いのです。特に青年が買いに行くのでなくて、年配の人が買いにいく。そういうふうな状態ですから、一つこのことをぜひ考慮していただきたいと思います。  それから、深夜喫茶の問題です。私どもは、深夜喫茶がこわくて、近づくことができないのです。行ってみたいと思っても、みることができない。いろいろ聞かせてもらいますと、特にタクシーの運転手に一つ聞いて下さい、これはものすごいものだそうでございます。愚連隊、やくざ、そういうものと青少年が男女とも、女の子も行って、ほとんど家へ帰らないで夜明けまでそこで何かやっている。そういうふうなこと、これは東京都議会で問題になっていたのですけれども、この間私は新聞で見て、どうしても国会でこれは協議していただかなくちゃならぬと思いました。これは簡単に、風俗営業取締法の第四条ですか、公安委員会は公共の安寧あるいは秩序を乱す場合には営業を取り消すことができる、あれでやれるわけですか、ちょっとそれを伺っておきたいと思います。
  65. 増井正次郎

    ○増井説明員 深夜喫茶の問題でございますが、深夜喫茶の弊害と申しますか、神近先生御指摘通りの点がございますので、あるいは暴力団、愚連隊はその場所がその温床であるとか、あるいは青少年の問題に影響があるとかいうことがございまして、東京都議会では、深夜喫茶の条例を廃して、そういう業態を禁止しようというような議決もやるということを私ども新聞で承わっております。ただいまのお話は、風俗営業取締法によって、直ちにこれを対象として、取締りできるではないか、こういう御質問かと存じますが、深夜喫茶の業態によりましては、風俗営業取締法によって、無届営業として規定の対象にできるものもございます。しかしながら、業態によりますと、風俗営業の対象にならないような深夜喫茶というものもございまして、直ちにこれか風俗営業取締法の違反になるということで、取締り規則の実施が困難なものもございますので、私ども実際の問題なんかを考えまして、今後の対策を研究する必要があるのではないかと思います。
  66. 神近市子

    ○神近委員 今、何軒くらい東京あるいは全国にございますか。
  67. 増井正次郎

    ○増井説明員 全国の状況を、手元に資料料を持っておりませんが、東京都内では大体六千軒近い届出数でございます。そのうちで深夜、午後十二時以後、夜ずっと朝までやるというのは大体一割程度、六百軒くらい、こういうふうに言われております。
  68. 神近市子

    ○神近委員 それは、深夜喫茶だから夜明けまで許可してあるのですか。十一時という風俗営業取締りの制限は、それにはないわけですか。そしてこれはあまり古いことではなかったようですけれども、何年前からですか。
  69. 増井正次郎

    ○増井説明員 東京都の場合ですと、昨年でございましたか、深夜喫茶に関する条例ができまして、届出主義になっておりまして、大体光度、設備の条件にかなっており、そしてまた深夜営業をしたいということを届出をすれば、ずっとやれる、こういうことになっております。
  70. 神近市子

    ○神近委員 私はもう一つ問題を持っているのですけれども委員長も大へんお急ぎになっているし、本会議もございますから、次にでも機会があったときに伺いますけれども、どうしてもこれはやめていただきたい。深夜に営業するということは、大衆が働いてきて、どうしてもおなかのすいたときの大衆食堂的なものだけに、私は深夜営業を許すべきだと思うのです。こういう深夜営業をどんどん許してあるために、どれだけ日本人の家庭の幸福が破壊されているかわからない。  私はもう一つ、ぜひ竹内局長にごく一言でよろしいから伺いたいのは、さっき法務大臣があちらにおいでになるときに、父親を殺した子供たちの問題だということを伺ったのですが、きのうも新聞社の人がその意見を聞きに来られたときに、私は言ったのです。野放図の飲酒というものを何とか制限する必要があると思う。日本人は—私も日本人でございましてお酒はいただきますよ。だけれども、私は禁酒会員にはそういう意味で賛成でございませんので、入っておりませんけれども、ともかく無制限にお酒を飲んで交通事故を起す、あるいは犯罪を起す、あるいは人殺しを起す、こういうことはやはり考えていただかなければならないと思うのです。専売の酒税だけが上るということを、政府としては絶対に考えるべきではないと私は思うのです。私は前に井本局長のときに、アメリカの兵隊の日本人殺しが泥酔の結果で起ったことがあったときにお尋ねしたことがございましたが、そのときに井本さんは、考えているということをおっしゃっておった。その後新聞にも、泥酔罪というのか、あるいは深酒罪というのか、そういう意味のものを規制しなければならないということが出ましたが、それは今、案としてはどの程度進んでおりますか。御存じだったらちょっと聞かせていただいて、きょうの私の質問を終りといたします。
  71. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 泥酔者の刑事的な処分につきまして、これは理論的に申しますと、全く泥酔の状態で心神喪失の状況になりますと、刑法の考え方としましては、責任を負わせるわけにはいかない。これはドイツの刑法におきましても、その他諸外国の例みなそうでございます。しかしながら、そのような状態にあります者は、刑事責任としてではなく、社会防衛というような考え方からしまして、酒癖を矯正するような保安処分、そういうものを考えておる諸外国の例はたくさんあるわけでございます。そういうものにつきまして、私の方でもずっと研究をいたして、それぞれの各国の例ももうすべて用意されておりますが、さてこれを実施をするということになりますと、酒飲みの処分だけを特別に保安処分として取り上げるのがいいか、その地酒に関連して麻薬のようなものをやった場合とか、そのほか保安処分として課すべきものが若干の例がございますが、そういうものを一括してやった方がいいか、それは刑法の建前としましては非常に大きな変化になるわけでございます。売春の補導処分も、防止法の中に保安処分というものを取り入れましたけれども、今度は刑法の規定の中に保安処分を取り入れるということになりますと、刑法の全体系を考える場合に考慮すべきではないかという学者の議論もありまして、ただいま刑法の改正準備は本年末ごろを一応めどとして進めておりますが、そのような問題も一応の解決を見ておるわけでございます。そういう段階でございますが、さて断行の時期ということになりますと、もう少し研究さしていただきたいと思う事項がございます。そういう点を考慮しておるのでございまして、決して酒税のために延期しておるわけではないのでございます。
  72. 神近市子

    ○神近委員 さっき調査の問題が出ておりましたけれども、深夜喫茶店だったら、別に旅行する必要はないのですから、何か不意打ちにちょっと情勢を見ておいていただきたい。非常に悪いそうです。実際に年少者の犯罪がここで相当教育されているようですから、私はこわくて行けませんから、一つ男の方々の委員で御視察下さるように提案いたしておきます。
  73. 小島徹三

    小島委員長 追って考慮いたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は明後三日、午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後一時八分散会