運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1958-06-26 第29回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 小島 徹三君    理事 鍛冶 良作君 理事 小林かなえ君    理事 福井 盛太君 理事 村瀬 宣親君    理事 井伊 誠一君 理事 菊地養之輔君    理事 坂本 泰良君       綾部健太郎君    犬養  健君       竹山祐太郎君    辻  政信君       三田村武夫君    飛鳥田一雄君       猪俣 浩三君    神近 市子君       菊川 君子君    田中幾三郎君       中村 高一君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         郵政事務官         (監察局長)  荒巻伊勢雄君  委員外出席者         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     佐方 信博君         最高裁判所事務         総長      横田 正俊君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      関根 小郷君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    海部 安昌君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      守田  直君         専  門  員 小木 貞一君 六月二十五日  委員辻政信辞任につき、その補欠として石田  博英君が議長指名委員に選任された。 同日  委員石田博英辞任につき、その補欠として辻  政信君が議長指名委員に選任された。 同月二十六日  委員勝間田清一辞任につき、その補欠として  飛鳥田一雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十四日  府中第六小学校正面婦人補導院建設反対に関  する請願(山花秀雄紹介)(第四三号)  戸籍改製に要する経費全額国庫負担に関する請  願(丹羽兵助紹介)(第八九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  司法行政に関する件  法務行政に関する件  検察行政に関する件      ————◇—————
  2. 小島徹三

    小島委員長 これより会議を開きます。  司法行政に関する件、法務行政に関する件、検察行政に関する件及び裁判事務についての件、以上につきまして調査を進めます。  質疑通告がありますので、順次ご  れを許します。  田中幾三郎君。
  3. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 最近労働組合に対する弾圧の問題が非常に大きく浮び上って参りました。ことに刑事事件に関値して、この背後にはやはり労働組合運動を圧迫するというような傾向が琳われてきておるのであります。私は特にこの問題に関連して、全逓——全備信従業員組合に対する事件の検挙を中心といたしまして、政府質問をいたすつもりであります。  全逓に対する政府弾圧でありますが、総括的なことを申しますと、一つは、この全逓問題をめぐって今回特に労働組合事務所の貸付あるいは使用認可に対する取り消しを突然にやって、夜中に事務所を明け渡ししろというような通告が発せられた。私はこれは法務行政の範囲でないと思いますから、郵政関係質問いたしたいと思うわけですが、組合活動の本拠であるところの事務所に対し、一夜のうちに明け渡しを要求するということは、やはり、これは大きな弾圧であると思う。それからやはり多数の処分者を出しまして、組合に対する分裂工作あるいは活動に非常な圧迫をするというような傾向であります。第三には、今度のように組合運動としての行政処罰を一歩踏み越えて、刑事事件として扱った。それに対して非常な行き過ぎがあるという点であります。しかも、これを逮捕するに当りましては、必要以上の拘禁を要求いたしまして、不当に人権をじゅうりんしたという事実が、仕果的に現われてきているのであります。私は、こういう幾つかの点が、一連の政府労働組合に対する弾圧の次として現われてきておるということを指摘したいのでありますが、特に法務大臣、関係当局に向って、先ほど申しました刑事事件中心として御質疑を申し上げたいと存ずるのであります。  それに入ります前に、東京中央郵価局労働組合、それから名古屋全逓古海地方本部に対する関係、それから大阪中央郵便局そのほか一カ所に対する刑事上の逮捕の問題でありますが、これらに対する被疑者氏名逮捕の日時、それから罪名、そういう点をまず法務当局から説明を伺いたいと思います。
  4. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 被疑者氏名につきましては、ちょっと、捜査中でございますので、資料としては作っておりませんが、人数についてはわかっておりますので、まずその点から御報告を申し上げたいと思います。  全逓事件では、現在逮捕を見ましたのは、東京で四十四名、大阪十二名、名古屋五名、計六十一名でございます。東京関係から申しますと、五月十三日に二十三名の逮捕がございました。次いで五月二十八日九名、その翌二十九日一名、六月二日一名、六月四日六名、六月五日一名、六月十二日三名、以上合計四十四名となります。次に大阪関係におきましては、五月二十九日十二名の逮捕を見ております。さらに名古屋関係におきましては、五月二十六日二名、六月九日三名、以上五名でございまして、全部を寄せますと、冒頭申し上げましたように六十一名になるわけでございます。
  5. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それでは、罪名ですね。これをやはり今の通り地区別に……。
  6. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 東京関係につきましては、郵便法第七十九条違反と同教唆罪でございます。大阪につきましては、今の第七十九条違反と同教唆罪のほかに、建造物侵入公務執行妨害で検挙されたものもございます。それから名古屋につきましては、これはやり大阪と同様に郵便法第七十九条違反とその教唆罪並び建造物侵入公務執行妨害、こういうふうに罪名はなっております。
  7. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そのうちで、大阪の分については、郵便法違反というのは、四十四名のうちで何名ありますか。大阪の方は郵便法違反事件はほとんどごくわずかであって、ほかの建造物侵入その他に聞いておるのですが、大阪の方も東京の方も名古屋の方も……。
  8. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 公安課長からその点の詳細を申し上げます。
  9. 川井英良

    川井説明員 大阪関係は、ただいま局長が述べましたように、郵便法第七十九条違反建造物侵入公務執行妨害家宅捜索をやりましたけれども身柄逮捕の場合の逮捕令状罪名は、郵便法第七十九条が落ちまして、建造物侵入とそれから公務執行妨害の二罪になっております。東京名古屋はさようなことはございません。
  10. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私がなぜこの点を伺っておるかというと、この事件は、ケースとしては三カ所とも大体同じようなケースであるが、大阪の方におきましては郵便法違反というのが落ちまして、建造物不法侵入公務執行妨害、この点についての犯罪になってきておるのであります。この件は、郵便法違反犯罪事実については非常に疑いがある。私どもはこれは無罪だと思っております。そういう点でありますから、この大阪の方は、調べた結果郵便法違反の事実はないというふうな結果になったのではないかと思うのでありまして、この点をもう少し詳細に、何の何がしは郵便法違反逮捕されたけれどもあと家宅侵入公務執行妨害になったというふうに、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  11. 川井英良

    川井説明員 東京大阪名古屋も、いずれも郵便法第七十九条違反、またはその教唆というふうな見込みでもって、一せいに家宅捜索を、五月十日であったと思いますが、行なったわけでございます。その資料に基きまして検討をし、さらにその間任意捜査関係人の取調べを進めて参りましたところ、大阪だけは、名古屋東京事例とやや事案内容が違っているようにうかがわれてきたわけでございます。と申しますのは、捜査中でございまして、まだごく詳細な報告は受けておりませんけれども、概括的な報告によりますと、いわゆる運動者と申しますか、オルグが参りまして、職場を離脱するように慫慂したという疑いでございますけれども、その際に、大阪の場合におきましては、職場を離れるという意思が必ずしもないような態度を示した者について、いわゆる暴力的なと思われる程度の行為を用いて、無理に連れ出したというふうな事案大阪の方の事案だった。東京の方においては、そういうようなことはないというふうなことになって参りましたので、最初家宅捜索見込みといたしましては、なるほど郵便法第七十九条でございましたけれどもその後の調べによりまして、郵便法第七十九条は、本件の場合においては成立がむずかしいのであって、無理に引っぱり出したということになりますれば、結局建造物侵入ないしは公務執行妨害ということが見方としては正しいのではないかということになりまして、大阪の場合に限りましては、第七十九条の適用はないということで落ちて、ほかの罪名身柄逮捕が行われている、こういうような報告を受けております。
  12. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 今の指令の問題でありますが、当局は、一体どういう指令が出たということに基いてこの調査をしておりますか。あるいは報告がなされておりますか。全逓本部の下部に流した指令内容、この指令内容が、すなわち教唆になったり、あるいは犯罪内容を構成していると思う。ですから、その指令内容を一ぺんお示し願いたいと思う。
  13. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 この指令内容ということでございますけれども、先ほど申しましたように、ただいま捜査中の事件でございまして、この時期においてこの内容を、この議場において公表いたしますことは、いろいろ捜査に支障を生じますので、この段階においては、申し上げることを控えさせていただきたいというふうに私どもとしては考える次第でございます。
  14. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは東京地方裁判所検察庁から、最高裁判所にも出されておりますし、地方裁判所にも出されておるのでありますが、勾留請求棄却に対する準抗告と申しますもの、この中に指令内容が明らかにされているのですが、これはこの通り認めてよろしいのですか。この要旨によれば、特別抗告要旨の方で申しますと、「勤務中の従業員をして、所属上司の許可なくして当該職場から雑脱させて、ことさらに郵便物の取り扱いをさせないようにしようと企て」云々、こういうふうに書いてある。ところが、中央本部指令は、ことさらに郵便物をおくらせようとすることが指令内容になっていないのであります。何月何日何時に、どこどこに集合しろという、いわゆる職場集会指令を出しているにすぎない。この点はどうでしょう、当局でお認めになりましょうか。
  15. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 今、準抗告申立書に基いて御質問でございましたが、仰せのように、郵便物取扱いをしないようにという趣旨指令でないということは、これは仰せ通りだと思います。しかしながら、そのような指令が、郵便法第七十九条との関係において、どういうふうに解せられるべきであるかということは、捜査官憲が準抗告申立書において明らかにしておりますように、そういう解釈に基いて準抗告をしておるというふうに私ども理解いたしております。
  16. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 準抗告の問題は、証拠隠滅のおそれがあるかどうかということが中心点でありまして、郵便法違反になるかならぬかという、実体法の問題を決定したのでないのでありますから、私はこの点だけではこの点を追及しようとしないのでありますけれども、私が今、質問申し上げた理由というものは、郵便法の第七十九条の解釈関係するからであります。私どもは、職場大会をやるということで、一定の場所に集まるという指令をしたことは、刑法上から見れば、職場に集まれということの指令でありますから、教唆といいますか、扇動といいますか、それになろうかと思うのであります。この郵便法第七十九条の規定は、いわゆることさらに郵便物遅延をさせるという、それ自体目的としているところの目的罪であります。御承知のように、刑法には、目的罪には、特に何々する「目的以テ」ということを書いてあるのでありまして、この「ことさらに」という言葉も、やはり何々する「目的以テ」というふうに解釈しておることが、検察庁番数解釈によってわかるだろうと私は思うのであります。この「ことさらに」という解釈を、刑法の何々する「目的以テ」という言葉解釈と同じように解釈をしてよろしいか、その点はいかがでしょう。
  17. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 検察当局は、何々する「目的以テ」というふうには解していないと思います。「ことさらに」の解釈につきましては、いろいろ組合側法律解釈上の御見解も私ども承わって承知いたしておりますが、ここに言う「ごとさらに」という解釈につきましては、政府としましては、行政解釈としてすでに郵便法改正以来終始一貫してとっておる解釈があるわけでございまして、その解釈は今でも変更すべきものであるというふうには考えておらないのでございます。その一貫した行政解釈によって、今回の事件取扱い法的解釈をいたしておるのでございます。それによりますと、ここに「ことさらに」というのは、主として犯意観点から処罰することにつきましては、故意を必要とするという趣旨を明らかにしたものであるというふうに私ども理解しておるのでございます。この点は、郵便法——旧旧郵便法でございますが、これは明治三十三年にできた郵便法の第五十三条には「正当ノ事由ナクシテ」とございますが、さらに大正五年の改正の旧郵便法におきましても「正当ノ率由ナクシテ」というふうに書いてございます。それを新郵便法——現行郵便法におきましては、この「正当ノ事山ナクシテ」という字句を避けて、「ことさらに」という字句を入れたのでございます。この経緯につきましては、私ども立法の当時の事情は存じませんけれども、聞いておるところによりますと、当時これは占領事と申しますか、そういう方面のリーガル・アドヴァイスに基きまして入ったように聞いております。日本の刑罰体系におきましては、非常に特異な条文でございます。こういう字句を用いた刑罰法令は、私は寡聞にして存じないのでございますが、それでは入れようとした趣旨は何かといっていろいろ尋ねてみますと、英語でウイルフルリーとかマリシャスリーという字句を使って表現したのが「ことさらに」ということだそうでございます。そういういきさつは、この法文の上からはどうこうということはないわけでございますが、この立法経緯から見ましても、これは故意を必要とするという趣旨を明らかにしたものであるということに解されるのでございます。なぜそのようなことを特に入れたかと申しますと、郵便取扱いというのは、故意がなくて、あるいは過失によって、あるいは技術的ないろいろな観点から、郵便物取扱いをしないといったような客観的な事態が発生する場合があるわけであります。あるいは遅延させるような事態が起ることが考えられる。そういうものは含まない趣旨であって、故意をもって取り扱わなかった、あるいは遅延せしめた、こういう場合だけが処罰されるのだという趣旨を表わそうとしたのが、このウイルフルリー・アンド・マリシャスリーという趣旨である、こういうふうに私どもは聞いておるわけでございます。そういう点も考えまして、刑罰体系全体とにらみ合せて理解をいたしますと、この「ことさらに」という意味は、「当ノ事由ナクシテ」あるいは何々する「目的以テ」というふうな意味ではなくして、犯意を持って犯した場合ということを現わした規定であるというふうに解釈をいたしておる次第でございます。
  18. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうすると、非常に割り切れないような解釈のように思うのですが、故意をもってやるというと、故意のない犯罪はおそらくないだろうと思う。故意のない場合は過失であります。故意というのは、結果に対する認識があれば、特にこれこれをするという意欲と申しますか、特別の目的がなくとも、いわゆる普通の刑法故意があれば、犯罪が成立するのであります。ですから、刑法上の故意とこれを解釈するならば、「ことさらに」という文字を入れる必要はないだろうと私は思う。ですから、ここに「ことさらに」という文字を入れた以上は、このこと自体、それをするということ自体が、この犯罪一つ形成要件をなすのではないかと私ども解釈しておるのであります。ですから、やはり私はこの刑法に使っておるところの何々の「目的以テ」ということと同じように解釈すべきではないか。本件の場合は、直接に郵便物遅延をさせるということを目的としてはおらぬのであります。これは、職場集会をやろうということそれ自体が、すなわち労働組合考え方からすれば、労働組合団体活動をするということそれ自体目的であるのでありまして、彼らの考えからいたしまするならば、この職場大会というものは、公労法のもとにおいても、なおかつ労働運動の一環としてできるのであるという解釈のもとに、この集会をやっておるのでありまして、郵便物遅延ということそれ自体に対しては、何らの意欲もまた目的も持っていなかったのであります。この指令そのものによっても明らかなように、職場集会をするのが目的でありますから、その間接の結果として郵便物の遅引ができても、この郵便法第七十九条には違反しないと私ども考えておるのであります。そのために、この三つ地区の中のある地区においては、特に同じようなケースであるのにかかわらず、ほとんどこの郵便法違反というものを取り上げていないで、家宅侵入建造物侵入あるいは公務執行妨害としてこれを取り上げておるのであります。そういう非常に不明確な、犯罪証拠が明らかでない、犯罪の成否が明瞭でないのに、しかもこれを理由にして逮捕したというところに、私は捜査行き過ぎがあると思う。従って、これは犯罪捜査それ自体目的でなくして、労働運動弾圧するという手段にこの犯罪捜査ということを使ったのではないかというわれわれは十分なる疑いを持っておるのであります。この点について、法務当局のお考えはいかがでありましょうか。
  19. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 お答え申し上げますが、この「ことさらに」の解釈でありますが、「ことさらに」というのをひらがなで書いてございますが、昔風に書けば「故」という字を当てるのではないかと私は思うのであります。それから、立案の趣旨も、先ほど申したように、故意を表現する悪意とか、あるいは故意というようなことを表現する字句として出てきたと思うのでございます。仰せのように、何も刑罰法令——故意のない犯罪があろうはずがないわけでございまして、これは私も冒頭に申した通り、全くその点は同感でございます。できた経緯から申し上げまして、さように解釈するのが妥当である。決してこれは、今回の全逓事件を検挙するに当りまして、そのような解釈を出しておるのではないということは、もう前々から申し上げておるところでございます。それからまた、大阪の一件を建造物侵入あるいは公務執行妨害というような容疑をかけましたのは、先ほど公安課長から説明をいたしましたように、事案内容が違うのでございまして、それは「ことさらに」の解釈に措いた結果、そういうふうになったのではないのでございます。もちろんこれは犯罪捜査でございまして、証拠を追って捜査を進めていくわけでございます。いかにも弾圧とかいろいろおっしゃいますけれども刑事手続の進行にすぎないのでありまして、私どもはそのような意図はむろんない次第でございます。
  20. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私が先ほど申しましたように、一方においては建造物侵入公務執行妨害であるということは、本件三つ場所においての一つ闘争をめぐったところの事例であるのでありまして、それにかかわらず、その闘争の間に起った一つ一つ事件については、あるいは今言ったように手を持って引っぱり出してやるというふうな、公務執行妨害のようなことが起るかもしれませんけれども、全部これは中央一つ指令によって職場大会をやったということに発端があるのでありますから、捜査方針として一貫しておるならば、この指令職場放棄の、あるいは郵便法第七十九条の犯罪を犯す扇動であり教唆であると考えられるならば、これは東京名古屋大阪各地とも、この郵便法第七十九条の違反事件であるべきなんだ。あるべきにかかわらず、一方においては、特にその闘争の間にできた個々の一つ事件をとらえて犯罪とする。そして、大きく指令を出した基本的な問題の郵便法違反については取り上げていない地区がある。こういうことについて一貫した方針がないということを申し上げたいと同時に、この郵便法第七十九条の違反についての割り切った解釈が、この係あるいは当局において統一されていないのではないかということを私は申し上げておるのであります。この点に対する御見解を承わりたいと存じます。
  21. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 解釈につきましては、捜査官憲の中に違った考えを持っておる者はないので、いずれも法律家でございまして、それぞれ合理的な解釈というものはおのずから一致するわけでございます。この解釈につきましては、捜査官憲の中に異論があるとは私存じておりません。なお、指令はなるほど一本で出ておるのでございますので、当初、家宅捜索、押収、差押の令状をもらいますときには、第七十九条違反の容疑あり、あるいはその教唆の容疑ありということでやったのでありますが、その後内容調べて見ますと、指令通りに動いていない事実がここに出てきたのでございます。そういう事実がありますならば、その具体的事実をとらえて調べを進めていくというのが、この検察官、あるいは警察の捜査の行き方でございますので、大阪東京との問にそういうニュアンスが現われてきましたということは、一方的に政治的に事を運んでおるのではないという証拠にもなるわけでございまして、あくまで事実に即した手続を進めておるというふうに御理解を願いたいのでございます。
  22. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは、労働組合本部の方では、職場大会というものを団体行動権一つとして考えてやっておるようでございますが、かりにこれが公労法の第十七条の違反になるといたしますならば、これには刑罰法規の制裁はないのでありますから、第十七条違反として処罰するならば、公労法の第十八条によるそれぞれの行政処分で事が足りたと思う。そのためにおそらく——私はあとで郵政省に伺いたいのでありますが、二万数千名という処罰をしたのだろうと思うのでありますけれども刑罰に関する限りは、第十七条違反でとどめて、それ以上郵便法違反まで持っていって、これを刑事処分にするということは、どうも少し行き過ぎのように思うのであります。その点に対してはいかがですか。
  23. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せのように、公労法第十七条に違反した場合には、同法第十八条によって行政処分ができるわけでございます。その行政処分をした上に、なお郵便法違反刑事手続を進めることの可否という点につきましては、これは御議論の存するところであろうと存じます。しかしながら、第十七条に違反することによって——つまり争議行為は許されないことになっております。そのことが、職場を離脱してしまうということによって、その職場を離脱することの効果として、郵便法第七十九条の構成要件を満たす場合——満たさないものは、これは幾ら第十七条の適用を受けて違法視された争議行為でございましても、郵便法第七十九条の適用を見ることがあるはずはございませんが、第十七条の違法争議行為と見られた本件の案件におきまして、第七十九条の構成要件を満たす場合には、これを刑事処分として取り扱うかどうかということは、捜査官憲と申しますか、刑罰法令の執行を担当します者の判断によってきまることでございます。この点につきましては、検察当局はもちろん、警察当局におきましても慎重に検討いたしたことと思いますが、要するところ、法の命ずるところによりまして、秩序を正していくということが捜査官憲に課せられた義務でございます。この義務を果していくという趣意にほかならぬと私は考えております。
  24. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 ここでこの犯罪の事実を決定するわけではないのですから、私はこの程度にとどめておきますが、今申しましたように、全逓職場集会というものが公労法第十七条に違反するならば、この行動自体は第十七条に違反しておる。これは事実です。その結果として現われてきたのが郵便物遅延であります。行のうを隠すとか、あるいはそこに出入りをとめるような特殊なことをやったのなら、郵便物遅延そのものを目的としてやった行動であると言えましょうけれども、事の事実は第十七条の違反なんですから、第十七条の違反違反として、一つ行政処分を受けるところの違反行為としての性質があるわけです。その結果として郵便物の遅配ができたからといって、刑事上の犯罪行為に持っていくというところに問題があろうかと思うのであります。この点は、今、刑事局長からその判決をここでつけられても、その通りきまるわけではないのですから、なお検察当局は、書類のうちでも、「ことさらに」ということの解釈で書いた文章になっておりますから、そういう点も調べた後に質問いたしますが、私どもはそういう考えをもって、第七十九条違反でないということでこの問題については追及しておるわけであります。  それから、逮捕の問題についてお伺いしたいのでありますが、御承知のように、勾留の請求をいたしまして、それがいずれも却下されておるわけであります。この点につきましては、東京三つの区において決定がなされておるわけでありまして、その理由はいずれも同じようなことになっておると思うのであります。問題は、勾留をしておって却下の決定をいたしましたならば、決定をしたときには、被疑者が自由のからだにならなければならぬ、かように考える。それを却下の決定があったにもかかわらず、なお身柄を釈放しないで、そのまま警察へ連れていこうとしたところに、私は人権のじゅうりんが起りはしないかと思うのであります。具体的に申しますならば、大阪事件についてであります。大阪事件につきまして、五月の三十一日に勾留請求の棄却が行われております。それは三十一日の午後六時ごろであります。そのときに、二人は即時に帰宅を許しており、それから三人の者は、留置されたまま警察署に持っていかれておるのであります。残りの四名について、これはもう勾留する権利がないのであるから帰せというので、弁護士その他被疑者関係者がいろいろ交渉した結果、検事がそれでは帰れという指示をして、これは帰っておるのであります。私はここに間融があるのじゃないかと思うのであります。一体取扱いといたしまして、勾留期間が切れたりあるいは勾留の請求が却下されて勾留する権利がなくなった際には、直ちに釈放すべきものではないかと思うのでありますが、いかがでありましょう。
  25. 竹内壽平

    竹内(壽)政府委員 仰せ通り、勾留請求の棄却の決定がございました場合には、その内容として身柄を釈放すべしという命令を含んでおると思うのでございまして、その裁判の執行ということは、すなわち身柄を釈放するということであろうかと思います。その釈放の時期でありますが、これは監獄法等にも規定がございますが、身柄の釈放の裁判を執行します場合に、品物を預かっておったり、その他いろいろ、今度は預かっておる方の、勾留しておる官憲の方の側の若干の手続があるわけでございます。そういう手続を終了して釈放すべきものである。そして、その期間は十時間をこえてはならぬという監獄法第六十五条の規定がございます。この監獄法の場合もそうと思いますが、警察の留置場というのは代用監獄でございますので、その趣旨をくんで、手続上必要なお預かりしておる品物は本人に返すとか、何時何分に釈放しなければならないというような書面上のいろいろな手続があるわけでございます。その手続を終了して放すということに実際の運用はなっておるわけでございます。建前としては、そういう命令でございますから、その命令を執行するのに妥当なる時間、ある程度警察まで来てもらいたいということはやむを得ないのじゃないかと思いますが、そういうふうにして釈放すべきものであると私たちは考えております。
  26. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 しかし、今の問題は、現実において、四名の者については、交渉した結果、検事がすぐに釈放しておるのであります。ですから、私はやはり裁判所もしくは警察に勾留しておるような場合においては、権利が切れたならば、一分といえども勾留しておくべきでないと思う。私ども実際に弁護士として携わる場合におきましても、かりに保釈の場合でも、決定ができたら、すぐに急いで指示をするようにわれわれは申し入れておるのであります。いやしくも人の権利を拘束する効力が消滅しておるのに、それを事務の手続であるからということでとめ置くべきものではないと思うのであります。そういうことをいたしますると、そのとめておいた間にまた別の手をもってこれを捜査して、継続してやるというようなことになるのでありまして、そういうことが人権じゅうりんの起ってくるもとであると思うのでありますから、私はもう少し検察当局において厳重にこういう人権を守るということについては御注意をしていただきたい、かように存ずるのであります。逮捕問題につきましては、私はそれだけにいたします。  私は、郵政省の関係の方がおいでにならぬ前に、労働組合に対する弾圧一つの方法として、いろいろな手をもって組合運動に制約を加え、弾圧を加えておるということを申したのでありますが、特に私がこの際お伺いをいたしたいのは、東京中央郵便局における闘争のさなかにおける中央郵便局労働組合に事務室として貸しておった部屋の返還の問題であります。三月二十日の午前一時半ごろ、その事務室の明け渡しを要求していったということを聞いておりますが、この事実について御説明を願いたいと思います。
  27. 佐方信博

    ○佐方説明員 お答えを申し上げます。職場大会が行われるという話がありまして、働いておる人たちが職場から離脱しないようにという対策を考えておったわけであります。前の晩から中央郵便局以外の人たちがオルグとして来まして、そうして早く出るようにとかいろいろな問題があったものですから、中央郵便局長といたしましては、あの事務室を出ていってくれというような請求をしたように聞いております。
  28. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 この点については、文書でもって通告が行っております。東厚労特第一号、これによりまして、三十三年三月二十日付で小笠原郵便局長の名前で、全逓中央郵便局支部長に出しておるのでありますが、「庁舎の一部を組合事務室として使用することを許可していたが、許可の条件に違反する行為があるので、午前一時半限りこれを取り消す。」、一体労働組合事務所というものは、組合活動中心であります。この中心であるところの事務室を、役所から借りておったのでありましょうが、使用を許可するというのは、これは「許可」とは書いてありますけれども、一体法律上の性質としては、使用貸借か、賃貸借か、これは何か貸し借りの権利関係の発生する行為としてやっておるのか。
  29. 佐方信博

    ○佐方説明員 別に借料をとっておりませんので、いわゆる正当な労働運動をやらないときにはいつでも立ちのいてもらうという意味で貸しておるわけであります。
  30. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 使用料をとっておらなければ、使用貸借になるわけです。使用料をとっておれば賃貸借に性質が当然なってくるわけであります。使用貸借であるとするならば、たとい役所とその使用人がやっておっても、これはやはり平等の契約であると私は思うのであります。でありまするから、貸借の法律関係の終了する一つの事由が発生しなければ、この契約は終了できないのでありますが、当局の方においては、条件に反しておるというので取り消したのでありましょうけれども、この貸借の権利関係の消滅それ自体に対しては、直ちに明け渡しを強要することができないのは御承知の通りであります。裁判によって、明け渡しの訴訟をやって、判決を待って執行吏がやらなければ私は明け渡しの請求はできないと考えておるのでありますが、本件の場合においても、労働組合事務所として借りておるのでありますから、やはりそういう法律上の段階を経てでなければ明け渡しはできない、私はこういうふうに解釈いたしますが、いかがでございますか。
  31. 佐方信博

    ○佐方説明員 勤務時間に食い込むような職場大会はわれわれとしては認めておりませんし、そこが策源地となって盛んに、何といいますか、違法な闘争指令を出しておるものでありますから、私どもとしては、どうぞ出て行って下さいと言うのは当然ではなかろうか、こういうふうに考えたわけであります。
  32. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは全国の労働組合に対する大きなケースであると思うから特にお尋ねしておるのでありますが、事務所労働組合運動の本拠です。この本拠をたとい条件に反したからといって、すぐに明け渡しをしろというような、いわゆる城明け渡しを要求するということは、これは労働運動に対する一つ弾圧ではないかと私は考える。それで、この事務所の明け渡しについての結果はどういうことになったんですか。あなたの方ではこのことを一つの問題にして、労働組合の方で団体交渉を求めたところが、これは管理事務であるから団体交渉の対象にならないとして拒否した。拒否はよろしい。あなたの方としては理由があって拒否したのでございましょうけれども、そういう段階を経ないで、一方的に、役所であるからというので、借りて使う権利のあるものに対して、即刻出ていけというような権力を持って要求したところに、私は問題があると思うのです。この結果は一体どういうふうになりましたですか。
  33. 佐方信博

    ○佐方説明員 そういうような動きがあるならば、とても朝までは待っておれぬだろうというようなことで、夜中の職場離脱をしたのだというふうに組合の方は主張しております。
  34. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 これは明け渡して、結局役所の方としては目的を達したのですか。
  35. 佐方信博

    ○佐方説明員 目的を達したかと言われましても、ちょっとお答えいたしかねるわけでございますけれども、そこが中心となりまして、いろいろ業務をやってもらいたいという話をしておるのに、全部その仕事をするなというような指令が出ておりましたので、そうしてくれるなということを申し上げたわけでありまして、目的を果したかというのはどういうふうにお答えしたらいいか、苦しんでおるわけであります。
  36. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 私の言葉が悪かったかもしれませんが、結局明け渡しをしてもらって、局の方へ返ったのか、あるいはまた、またもとに戻して組合の方で継続して使っておるのかということです。
  37. 佐方信博

    ○佐方説明員 結局組合としましては、事務室を明け渡すときに、中に入っておる人をみんな職場から連れ出したというふうになっております。
  38. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 そうすると、もうそこは、全逓中央郵便局支部の組合事務所という看板ははずしたのですか。
  39. 佐方信博

    ○佐方説明員 ただいまはまた事務所として使っておるわけであります。
  40. 田中幾三郎

    田中(幾)委員 それならけっこうでありますけれども組合活動の本拠である役所の一部を、おそらぐどこの官公労の労働組合でも一部を拝借して、そこで組合活動をやっておると思う。ところが、そういう労働運動に関連して、即刻これを明け渡ししろというような、一つの役所の威力でもって明け渡しを要求するということは、やはり私は民法の法律を無視した、権力をかさにきたやり方であろうと思う。そういうことをやっておりまするから、使用者と雇人との間の問題がだんだんと感情的になってくるのです。平たくいえば、家主とたな子のけんかですよ。そういうことにまで発展していったら、この労使関係というものは、私はとうてい円満にいくことはできないと思うのです。こういう点については、あなたの方に対して反省を求めると同時に、こういうケースが方々にあるのでしたら、これは大きな問題だと思いますので、私はその一つを取り出して質問したわけであります。
  41. 小島徹三

  42. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 全司法の労働組合幹部諸公に懲戒解雇が出、あるいは停職の問題が出たことに関連いたしまして、最高裁の横田事務総長にお伺いをいたしたいと思います。  まず第一にお伺いをいたしたいのは、先般衆議院の内閣委員会で事務総長にお出ましをいただきたいということを要請いたしましたところ、その理由は明白でありませんが、現実にはその日にはお出ましになりませんでした。さらに続いて参議院の内閣委員会で事務総長にお出ましをいただきたいというお願いをいたしましたところ、これはいろいろな法律上の理由をお述べになって、拒否をしてこられた、こういうことを私は参議院の内閣委員長から伺いました。法務委員会にはお出になる、そうして、予算委員会にもお出になるが、内閣委員会には出なかったというのは、一体どういうわけなんですか。それを一つ伺わしていただきたいと思います。
  43. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 国会と裁判所の関係は、これは私から申し上げるまでもなく、一般の行政官庁とだいぶ扱い方が違っております。しかし、私どもは、国会に出て参る義務があるとかないとか、そういうことをとやかく申し上げて出席いたすことを拒否したわけではございませんので、せっかくこの司法務に関しまする問題は、長年の慣習といいますか、衆議院も参議院も法務委員会において大体お取扱いいただき、また法務委員会には私ども出向きまして、いろいろ御質疑にもお答えいたすということになっておると聞いておりますので、今回の問題も、できますならばわれわれも国会に対して御協力をいたすつもりでございますから、国会側も私どもの立場を御了承いただきまして、なるたけ法務委員会へ問題を集中していただきたい、こういう意味で申し上げました次第でございまして、特に内閣委員会に御協力をしないというような積極的な気持があったわけではございません。
  44. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 法律上の根拠に基いておやりになるのではない、法務委員会最高裁判所との関連性が一番深いし、法務委員会で大体片づく、こういうお説のようでありますが、しかし、定員法の問題とか設置法の問題とかいうものは、内閣委員会の所管であることは御存じであろうと思うのです。現にそういう意味において、今までも内閣委員会に再々御出席になられた事例があるはずです。今まで内閣委員会に御出席になられた事例があるにもかかわらず、今後内閣委員会には出ない、法務委員会だけに出る、こういうふうに態度をお変えになった原因を一つ伺いたいと思うのです。法律上の御主張でなければ、裁判所が国会の中の内閣委員会に対してはわれわれと関連性が薄い、法務委員会については関連性が濃い、こういうふうな国会に対する一つの判断をなさった根拠を伺わしていただきたい。
  45. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 私は、先ほど申しました趣旨以外に、別段の意図はないわけでございます。結局、国会に出まして、いろいろ私どもの意見を申し上げ、御質疑にもお答えするという立場はとっております。しかし、これは国会側もなるべくわれわれの方の立場を尊重していただきまして、できるならば、先ほど申しました線でやっていただきたい。場合によりましては、以前に内閣委員会にまかり出たこともあるかもしれません。大体今申しましたような線で、今後もお取扱い願いたいというのが私どもの気持でございます。
  46. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 定員法の問題やあるいは設置法の問題をこの法務委員会でお取扱いを願いたいなどとおっしゃっても、これは国会の方でも困るだろうと私は思います。やはり人事の関係については内閣委員会の所管事項でありますから、そういう問題も発生した以上は、そしてそういうことについて国会があなた方に御意見を伺いたいと考えますときには、これは内閣委員会にお出ましをいただくことが、私は少くとも裁判所の態度として正しいのではないか、裁判所が国会のいろいろな職務分担を否認して、なるべくそういうふうに私たちの立場からお願いをしたい、こういうふうな御要求はできないだろうと私は思いますが、いかがですか。
  47. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 私の聞いておりますところでは、定員法も設置法も大体法務委員会で今までお取扱いいただきまして、場合によりまして内閣委員会の方へも伺ったことがあるようでございます。どうも私はそういうふうに今までのお取扱いがなっているように聞いております。
  48. 坂本泰良

    ○坂本委員 ちょっと関連して一つ聞きたいのですが、旧憲法時代は、大審院というのは裁判だけをやるものだったのです。新憲法になりまして、最高裁判所においては、最高裁判所の長官が、人事問題、予算問題その他を取り扱う、こういうことになっておるわけなんです。ところが、最高裁判所の長官は、当法務委員会において御出席を求めて出るような風であって、なかなか実際上は出ずに現在まできておるわけです。私は、もとの大審院のような裁判事務の件だけであって、人事とかあるいは設置その他の問題については、いわゆる昔の司法大臣、今の法務大臣の所管に関連しておるときは、それでもよかったと思いまするが、現在のように、裁判だけでなくて、設置の関係、人事関係、予算関係最高裁判所みずからやるにおいては、長官はやはり国会に出席をして、委員質問その他に答えるべきものである、こういうふうに考えますが、その点についての所見を承わりたい。
  49. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 長官ももし必要がございますれば、もちろん国会に伺っていろいろ意見も申し上げるでございましょう。現においでになったこともあるように私も承わっておりますが、できますならば、私どもで間に合うことでございましたならば、やはり事務総局の者で間に合わしていただきたいというのが、私ども考えておるところであります。
  50. 坂本泰良

    ○坂本委員 国会法の解釈についても、多少の疑義のある点は私どもも存じておりますが、しかしながら、最高裁判所の長官として、その人事問題、予算問題の衝に当る責任者としては、やはり進んで委員会に出席して、最高裁判所内部のいろいろの関係について質問に答え、またわれわれ委員もその運用について協力をしなければならぬ、こういうふうに考えまするが、長官であるから、もちろん裁判事務は片一方にとっておる。司法権についてわれわれは云々するわけじゃありませんが、行政事務については、やはり進んで出てきて、そうして説明もするし、また委員質問にも答えて、われわれ委員会としても協力しなければならぬ、こういうふうに考えまするから、やはり事務総長で足らない場合は、長官の御出席もわれわれは求めたい。やはりそういうようなことで出席してもらいたいと思いますが、事務総長いかがですか。
  51. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 御趣旨はよくわかります。御趣旨のほどは長官にお伝えいたすことにいたします。
  52. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 今、定員法その他の点について法務委員会でも取り扱ったことがある、こういうお話ですが、しかし、それ以外にもたくさんあるわけです。たとえば裁判所職員臨時措置法というものによって、人事の関係は人事院規則が準用せられておる、こういうことになっております。この人事院関係の業務は、内閣委員会で所管をいたしております。そうなって参りますならば、人事院規則を準用せられて、最高裁判所が行われる行為について伺いたいときには、当然内閣委員会がその主たる場であろうと私は考えます。そういう国会内部の事務配分を裁判所の方で勝手に、内閣委員会は要らない、法務委員会の方で十分事足りるはずだという判断をなさることが一体できるでしょうか。私はそういう判断はお互いに権限を侵し合うことになるだろうと考えるのであります。従ってもし、そういった事態にからんであなたが、いわゆる最高裁判所が発言をなさる場合には、私は当然内閣委員会でなければならないと思う。その間における選択は、最高裁判所の側では不可能であります。にもかかわらず、現実にそういう問題が公平委員会の制度その他の問題について起っておるにもかかわらず、法務委員会には出席をする、内閣委員会には出席をしないという法律上の根拠は、一体どこにあるのでしょうか。
  53. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 法律上の根拠と申されますと、私どもといたしましては、意見を述べるためにまかり出るということがあるだけでございまして、その他の点はやはり御協力という意味で出て参っておるわけでございます。先ほどから申しておりますように、人事院規則そのものが問題ではございませんので、ただいまお示しの臨時措置法にいたしても、結局それはやはり法務委員会ということになるのではないかと思います。公平委員会と申しましても、やはりそれは措置法から引いて参っておるものでございますから、これはそのもの自体ではないように私は考えますので、そんな関係で、おそらく今までも法務委員会でそういうものが取り扱われて参ったのではないかと思います。
  54. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 お互いにくだくだ議論をいたすことは避けましょう。それではこういうふうに伺います。今までは内閣委員会にも最高裁判所は御出席になられた事実をあなたはお認めになっていらっしゃる。今後は内閣委員会には御出席にならないというのですか。イエスかノーでお答えをいただきましょう。
  55. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 御協力の問題でございますので、ここではっきり、もう絶対に出ないというようなことは申し上げません。
  56. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではお出ましになる気持は持っていらっしゃるのですか。
  57. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 具体的の場合々々によって、考えさしていただきたいと思います。
  58. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 具体的の場合々々とおっしゃいますが、その具体的な事案という問題について、裁判所はただ自分の裁判所としての利益、不利益という判断からだけお考えになるのでしょうか。それとも日本国民全体の問題をお考えになって判断をなさるのでしょうか。これもくどいようですが、念を押して伺っておきます。
  59. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 私どもは何も、裁判所の利益になりそうな場合だけ出て参るつもりはございません。
  60. 小島徹三

    小島委員長 飛鳥田君に申し上げますが、法務委員会と内閣委員会との権限の問題も起きると思いますから、その問題はその程度にお願いしておきます。
  61. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それではその次に、これは少し法律の問題になるかもしれませんが、「昭和三十三年六月二日」、「最高裁判所人公第二六号」というので、最高裁判所から全国司法部職員労働組合中央執行副委員長木村広志あてに、「職員団体の登録に関する是正措置命令」というのをお出しになっておると私は知りましたが、しかし、この場合における文章を拝見していきますと、一番最後のところですが、「同規則第五項の規定に基き、命令する。」と書いてあるわけです。一体労使双方が対等であるべき関係の中で、命令をするというようなことがあり得ていいものかどうか、これを伺いたいと思うわけであります。使用者である最高裁判所労働組合に対して命令をする、こういうことが今の日本の労働法体系の中で許されるとお考えになるかどうか。こう伺いますと、きっとあなたの方は、人事院規則の一四ノ三、これの第五項「職員団体が、次に掲げる行為をした場合には、人事院は、その団体に適切な是正措置をとることを命じ又は六十日をこえない範囲内でその団体の登録の効力を停止し若しくはその登録を取り消すことができる。」というこの文言をお引きになるだろうと思いますが、しかし、この人事院規則一四ノ三は、当然先ほど申し上げましたように、裁判所職員臨時措置法によって準用されているわけです。そして、この場合に、「人事院」は「最高裁判所」と読みかえるという形になっているだろうと思います。従って、そのまま文章を読めば、「人事院は」というところを「最高裁判所は」と読めば、命ずることができるということになるだろうと思いますが、しかし、この際における人事院の立場というものをやはり当然お考えにならなければならないでしょう。たとえば、厚生省なり大蔵省なりにおいて、職員団体にこの人事院規則が規定をいたしておりますような事態が発生した場合、たとえば今問題になっております場合であげますならば、その幹部が懲戒免職になった、停職になった、こういう場合に、その人が職員である地位を失ったから、幹部である資格はなくなったはずだ、こういう場合であります。この場合には、処分、いわゆる懲戒免職した官庁と人事院とは別人格であります。そうして、人事院と労働組合とは、団体交渉の相互に相手方となっているわけではありません。いわゆる第三者であります。従って、第三者が、いわゆる登録事務としてその変更を命ずるということは、決して労使双方対等の条件をこわすものではないはずであります。従って、この人事院規則そのものは、労働組合法における精神、あるいは日本の労働法体系をくずすものではありません。しかし、これをただそのままに、今申し上げましたように、「人事院」を「最高裁判所」と読みかえてしまいますと、純然たる第三者のかわりに、当事者をすりかえていく結果になるのでありまして、そういうことは私は許されないだろう、こう思うわけです。当然、準用であります以上は、この点について、ここの規定をそのまま解釈をするのではなしに、労働関係法の精神に照らして、ここは十分に意味をとった読み方をしなければならないはずです。そういう点から考えて参りますと、最高裁判所は、自分と対等の立場において交渉すべき労働組合に対して、命令をするなどという権限はないはずである、こう私は思うわけです。なぜ私はこんな小さな文言をとらえて申し上げるのかと申しますと、どうも今回の処分を通じて私たちの感じとれますことは、最高裁判所は、自分のところの職員団体に対して、あたかも、かつての封建的な君主のごとく命令をする、こういう根本的な立場を捨て切っていないんじゃないか。ともすれば、命令をし、指揮をし、自分の意に沿わぬ者を直ちに解雇する、こういうような根本的な精神が横たわっておるような気がいたしますので、この問題を取り上げてみたわけです。最高裁判所は、法律の解釈の専門家であられるわけですから、単純に「人事院」を「最高裁判所」と読みかえることによって、日本の、現にある労働法体系を完全にくずすようなことをおやりになれるはずはない、こう私は思いますが、この点についてはどうでしょうか。裁判所は今後も、この人事院規則という当事者と第三者とをはっきり区別しておるごの法律をたてにして、当事者であるにもかかわらず、労働組合に命令し、指揮していかれるお気持かどうか、これを伺いたいと思います。
  62. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 ただいまの問題は、確かにお示しのような面がございますが、これはどうも裁判所という特殊の機関の性格から参ります問題でございまして、もちろん根本的には組合の登録制度、従いまして、その変更登録というようなところにいろいろ問題はあるかと思いますが、現在こういう形になっております以上は、登録はしてもらいたい。変更がございました場合には、その変更の登録をしてもらわなければ困るわけであります。従いまして、もしその変更の登録をしないというものがありました場合には、やはりこの際には最高裁判所しかその変更を命ずるものはないわけでございますから、これは何も準用のこの規定そのものをとかく申すわけではございませんが、やはり役所の性質上、どうもここは最高裁判所を持ってこなければならないということになるわけでございます。なるほどお示しのような面がないではないのでございますが、これはやむを得ない結果であろうと考えます。
  63. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最高裁判所の特殊な立場とおっしゃいますが、最高裁判所は、ただ最高裁判所なるがゆえに、勝手気ままなことができる、労働法の体系をくずしてしまってもいいという権利はないはずです。裁判所が特に立法府に対して持っておられる特権、こういうものは三権分立の精神に基くものでありまして、なるべく裁判官の裁判が独立して、そのときの政治的な勢力あるいはその他の影響を受けずに行われるように、そのことを担保するためにこそ最高裁判所の独立制というものが出ておるわけです。そういう立場から、最高裁判所の特殊性が出ているといたしました場合に、一体その立場を利用して——利用してと言わざるを得ないと思うのですが、労働法体系をくずしてしまって、使用者が労働組合に対して命令をする、こういうようなことがあっていいかどうか。今の段階ではやむを得ないとおっしゃる。とんでもありません。やむを得なくないはずです。当然「登録の申請の措置をとるように要請する」、こうお書きになってけっこうです。私はそう思います。そうしてもしその登録義務を怠った場合には、当然団体の登録の効力の停止または登録の取り消しが行われることは別個の問題ですから、命令をしなくても要請をし、その要請をせられたことに対して、組合の側がそれに応じてこない場合には、あなた方の第二のステップはちゃんと用意されている。決して命令するとおっしゃらぬでもやれるはずです。にもかかわらず、命令するなどという強い言葉を使われて、組合と使用者との関係を混乱させてしまうような解釈をおとりになることが、一体やむを得ないかどうか、やむを得なくないのじゃないでしょうか。こういうように法律を厳格に解釈していただくことが、あなた方の責務のはずだと思いますが、そういう面もあると思うけれどもやむを得ないという、それが一体日本人が最終的に信頼をしなければならない最高裁判所の法解釈でしょうか。こんなことを実際やっていきますと、やがて裁判所は大衆からその信頼性を失ってしまいます。もう一度この点について、やむを得なくないという私の意見に対して、どうでしょうか。
  64. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 こまかいことを申し上げるようで恐縮でございますが、今お示しの通り手続をその前にとったのでございます。それは登録の変更の申請がないのでございます。大体役員が変更されました場合に、たとえば懲戒免職というような場合に、その変更登録がすぐにこないでも——この司法労組の場合で申しますと、この六月に大会が開かれまして、これは規約の上ではっきりそうきまっておりますが、その大会においておそらく新しい役員が選任せられるであろうということを、私どもは、当然のことでございますが、期待しておりましたところが、その大会は当分の間開かない、このままほおかぶりしていくのだということがはっきりいたしましたので、それでは困るということで、実は事務総長名をもちまして、組合に対して登録をしたらどうかということを、おっしゃる通り命令などではなく、警告と申しますか注意をいたしました。ところが、その書面を受け取りませんで、私どもの方に突っ返して参った。そこで第二段といたしまして、やむを得ずこの法律の規定に基きまして、文字通りの措置をとったわけであります。前のは事務総長でございましたが、その次はこの法律の規定通り最高裁判所で直接にこの法律の規定に従った措置をとったわけでございます。その前に一つの段階を経てございますことを、十分御了承いただきたいと思います。
  65. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もう当然その段階でとどめらるべきじゃないでしょうか。その上になおかつ今申し上げましたように、あやまちである命令をなさるということは越権じゃないだろうか、行き過ぎじゃないだろうか、こういう感じがするわけです。この問題については、問題は小そうございますが、一つ言葉にしかすぎませんが、しかし、最高裁判所組合に対して臨んでおられる根本的なおなかの中をちゃんとちらつかせている言葉としか私にはとれないわけです。おそらくこの問題について、将来、人事院規則の準用の仕方、その読み方、こういう問題についていろいろな法律家の意見も出てくるでしょうし、おそらく大衆も批判をするでしょう。  そこで、関連をいたしますので、今回の秋田の裁判所あるいは熊谷の裁判所において行われた懲戒免官あるいは停職の処分に対して、異議の申し立てがあったと思いますが、これについて公平委員会を組織せられるということになると思いますが、この公平委員会の組織について、どのようなお考えを持っていらっしゃるのか、これを伺いたいと思います。
  66. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 この公平委員会につきましては、御承知のように、やはり人事院関係の規則が準用になっておりまして、三名または五名の公平委員によって構成されます公平委員会に問題が移されまして、そこで独立の地位を持った、他の干渉を受けない立場でもって公正な判断が行われるはずでございます。ただこの人事院規則によりますと、原則として人事院の場合は人事院職員ということになりますが、最高裁判所の場合については、最高裁判所の事務総局の職員というのが原則になっております。そのほかに学識経験のある他の官庁の職員でもよい、あるいはさらに役所に関係のない第三者の方でもよいことになっておりますので、でき得る限りこの公平審査を適正に行いますために、現在その人選については検討中でございます。近日中に具体的な人がきまるわけでございまして、従って、ここでこの際あまり詳細なことは申し上げられないのでございます。ただ私の考えといたしましては、あるいは裁判所の考えといたしましては、この原則に対しまして、できる限り第三者的な人も加えまして、公正な審査ができるようにいたしたいと考えております。
  67. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 まだ人選の最中であられるようですから、具体的な人の問題については私は伺いません。ただ、私の疑問に思いますことは、人事院規則が準用される、すなわち人事院規則一三—一の第十七項に「第一項に定める審査の請求が受理された場合においては、人事院は、人事官及び事務総局の職員の中から、三名文は五名の公平委員指名し、公平委員会を設置するものとする。」こういう原則が書かれ、そうして例外として公益の代表者、学識経験ある他官庁の職員、こういう人を加えることができるように書かれております。私はそこで疑問が出るわけです。当然この第十七項の原則規定は、本件のような場合には適用できないと思うのですが、どうでしょうか。と申しますのは、この人事院規則一三—一の場合には、人事院は処分を現になした官庁ではありません。それに対して第三者的な公平な立場をとって働く人々を保護することを目的とするように、国家によって設立された機関です。すなわち第三者です。従って第三者である以上は、その第三者の中で非常に学識経験のある、そういうことについてたくさんの知識を持っておられる人事官及び事務総局の職員の中から公平委員を選ぶことが正しい。だがしかし、これが準用せられました場合には、「人事院」は「最高裁判所」と読みかえられます。そうしますと、最高裁判所は処分した当の本人です。処分した官庁です。そうすると、その処分した官庁の、しかもその処分の決定にあずかったであろう事務官、処分の決定にあずかった公平課長なり他の課長なりを今度は公平委員会の中に入れてくる。こんなことならば、裁判官と被害者あるいは当事者と混同させてしまう結果になるのでありまして、そういうことは当然許さるべきはずはないと私は思うわけです。これは最高裁判所の特殊的な立場からだなんというお話は、きっとなかろうと思います。被害者が同時に裁判官になったり、原告が同時に裁判官になったりするようなことを、まさかあなた方はお認めになるはずはないと私は思います。そういうことがありますために、あなた方もちゃんとその点をお考えになって——裁判所職員に関する臨時措置規則というのを拝見いたしますと、「他の最高裁判所規則に特別の定のあるものを除くほか、当分の間、その性質に反しない限り、裁判所職員臨時措置法に掲げる法律の規定に基く人事院規則の規定を準用する。」こうお書きになっているわけです。「当分の間、その性質に反しない限り、」というのは、今の私の申し上げた意味だろうと思います。さらに、同時に、これを適用するのでなく、「準用する。」、こういうふうにはっきりとお書きになっていらっしゃるわけです。こういう点から考えてみますと、まさか処分した者が今度は公平委員になってやるなんというばかばかしいことをお考えになるはずはなかろうと思います。従って、準用された公平委員会の規則、すなわち第十七項は、原則規定適用できない。そうして例外規定である他官庁の経験豊富な方及び公益を代表する第三者の方、こういう方方によって公平委員会は構成せらるべきものだ。これは具体的な人選の話でなく、法律の解釈としてそうあるべきだと私は考えますが、いかがでしょうか。
  68. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 この公平審査の問題につきましては、確かに御指摘のような面がございます。しかし、これは人事院の場合も、人事院が自分のところの職員を処分いたしました場合に、やはり同じ問題があるわけでございます。ちょうど最高裁が処分したものを、最高裁に設けられました公平委員会でやります場合と似たような関係が出て参ります。私どもは、この法律の規定を、そういうふうに原則の適用がなくて、そのあとのただし書きの方だけが適用されるというようなむずかしい読み方をいたしませんで、一応そういう場合にも適用がございますが、しかし、実際の運営につきましては十分考慮いたしますために、ただし書きをある程度活用いたしたい、こういう気持なのでございます。
  69. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 運営の問題として、もうあなた方が公平な運用をなすって下さるだろうことを私は期待しておりますから、そう文句を言うつもりはないわけです。ただ、法律の解釈として最高裁判所御みずから、原告が裁判官になるような制度をそのままよしと是認されるのかどうかということを私は伺っているわけです。そうして、それは当然法解釈として私のような解釈をして差しつかえないと思うのですが、どうでしょうか。この点について——単なるこの問題だけではなしに、やがてはこういうことを積み重ねていきますと、最高裁判所の構成の問題について国民の疑問を生ずる余地が多くなってくるのじゃないか。昔から李下に冠を正さずという話があります。少くとも裁判所として公正を疑うに足るようなことを、法の規定があるから仕方がないというようなことでおやりになるはずはないと私は思うわけです。運用ではなく、解釈として私はそう解釈せねばならぬと思うのですが、どうでしょうか。
  70. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 私は、解釈論はどうもそうならないように思います。ただ、最高裁判所が直接に職員を処分するというような非常に悲しむべきことは、今まで大阪に一回ございました、この場合は、やはりこの人事院規則の準用規定によりまして、たしか事務総局内の人が委員となりまして処理をいたしたように聞いておりますが、今回はその点はやはりお示しのような趣旨によりまして、できる限り公平な審査ができますような構成に持っていきたい、今回の場合はそういうふうに考えております。
  71. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 もしそういう工合で最高裁判所の公平課長なり何なり、そういう最高裁判所内部の方が公平委員になられた場合は、私は当然当事者側から忌避の申し立てがあるだろうと思いますが、当然そういう申し立てがありました場合には、理由ありとせられなければならないだろう、こう私は思います。そういうような忌避の申し立てを受け、その理由ありとしなければならないような法解釈を今やっていくということは、一体どんなものだろうか、こう私は思います。いかがでしょうか。もしそういう最高裁判所の職員の方が公平委員になられ、忌避の申し立てがありましたような場合に、その申し立てば理由ありとお考えになれないでしょうか。現に私が申し上げた問題についても、そういう筋は重々あるということをお認めになっておるのですから、お認めになる以上は、忌避の理由になると思いますが、どうですか。
  72. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 事務総局の公平課長と特定して言われますが、今までの処分についても、できる限りそれに関与いたしましたそちらに近い職員は避けるように構成はしてございますが、さらに今回はその上にもう少し工夫をしていく必要があるというふうに考えます。これは今までも忌避の例はあるようでございますが、この忌避が理由があるかどうかということは、結局最高裁判所が決定するわけでございまして、全くこれはその場合々々の問題になろうと思います。
  73. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 こういうふうに、当然最高裁判所の方々はこうした諸規定を厳格に、法の理念に立って解釈をせられなければならない。不当な拡張解釈をしてはならないと私は思うが、しかし、現実には、今も御答弁のように、いろいろ不当な拡張解釈が行われておる。書かれておるからその通りだ、こういうことで、処分当局としての最高裁判所と人事院の性格を混同してやるというようなやり方がほかにもたくさんあるだろうと思います。たとえば、その一例をあげますと、これは参議院の内閣委員会でも問題になっておることですが、裁判所法の第五十九条に、「各高等裁判所、各地方裁判所及び各家庭裁判所に事務局長を置き、裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する。」、こういうように書いてあるのですが、現実には裁判所事務官の中からではなしに、裁判官の中から、判事の中からこれを補しておられるというのが現実なんです。ともすれば裁判の遅延その他の点について練達なる裁判官が少いからおくれるんだ、こういうふうにおっしゃるわけです。そんなにおくれておるにもかかわらず、当然裁判所事務官の中から最高裁判所がこれを補さなければならないこの事務局長について、そんな大平な裁判官を回してしまう。こういうことを平然となすっておるわけです。しかも、参議院における関根さんの御答弁によりますと、「裁判所事務官の中から、最高裁判所が、これを補する」と書いてあるが、これは裁判官から、いわゆる判事の中から選任してはならないということが書いてあるんじゃないんだ、こういうような詭弁といっては申しわけないのですが、詭弁に類似の御説明をなすっていらっしゃるわけです。これなども明らかに法の不当解釈じゃないでしょうか。もっと法律に対する解釈——おれ達は本家本元だという御自覚をお持ちになることはけっこうですが、公正にやっていただけないものでしょうか。第五十九条に関する御意見を伺わしていただきたいと思います。
  74. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 この第五十九条の従来の解釈は、御指摘の関根局長が参議院でお答えした通りでございまして、結局規則によってそれを補い、裁判官をもってこれに充てることができるようになっておるわけでございます。またそれはなるほど裁判をすべきものが事務局長の仕事をするために、そこに裁判官の不足ということに拍車をかける結果になるわけではないかという御議論も確かにございます。しかし、これは御承知のように、八人の人だけでございます。また実際に裁判官がこの事務局長をいたしますことは、非常に裁判所も人事行政事務を円滑に行なわしめるゆえんでございます。これが全体といたしまして、裁判所もマイナスになっておるとは私は考えないわけでございます。
  75. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 どうもお話がずれて困るのですが、どうでしょうか。現実にそれが便利であるならば法律は無視してもいい、不当に解釈をしてもいいということが言えるのでしょうか。そしてそれが裁判所のマイナスにならなければ、裁判のマイナスにならなければ、法律の解釈はどのようにあってもいいとおっしゃるのでしょうか。私は純粋な法律を守るという立場で御意見を申し上げる。しかも、裁判所の現実の態度は、いつもおっしゃることと矛盾してはいないだろうかということを申し上げたのです。実際に都合よければ、法律というものは、どう解釈してもよろしいのでしょうか。
  76. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 そういうことは全然ございませんので、先ほど申しましたようなそういう解釈の上で、いわゆる便宜的な解釈というふうに申されるようでございますが、私どもは決して便宜的な解釈とは考えておりません。従いまして、こういう扱いは法律にかなった扱いだというふうに考えております。
  77. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そうしますと、なおわからなくなるのですが、第五十九条で今事務局長について伺いましたが、それでは第四十二条をちょっと見ていただきたいと思います。第四十二条を見ますと、「高等裁判所長官及び判事は、左の各号に掲げる職の一又は二以上に在ってその年数を通算して十年以上になる者の中からこれを任命する。」これこれの者の中からこれを任命する。第五十九条の場合には、裁判所事務官の中からこれを補す。規定の仕方は同じです。ちっとも違いはないはずです。そういたしますと、この第四十二条に定められた判事補、簡易裁判所判事、検察官、弁護士、裁判所調査官、司法研修所教官または裁判所書記官研修所教官、前条第一項第六号の大学の法律学の教授または助教授、こういう人々の年数を通算した十年以上になる人以外から選ぶということもできますか、現実に便利であれば。そういう形になったら大へんじゃないでしょうか。裁判官というものは、少くとも厳格な資格を要求せられておるはずです。この規定も第五十九条の規定も、何々の「中から」——同じ規定の仕方です。何かここに区別をすべき理由があるでしょうか。第五十九条では、便利だからそういう解釈ができるという。第四十二条では、決してあなた方はこれと違うことをおっしゃるはずはないと私は思います。あまりにも便宜主義じゃないでしょうか。
  78. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 裁判官につきましては、法律ではっきりきまった者が裁判をするということが、これは憲法の精神であろうと思います。その他の職員につきましては、そういう関係はないわけでございますが、規則によってその職員の範囲をきめるということは、一向差しつかえないと思います。
  79. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 最高裁判所の規則制定権による権限は、法律にはっきりと定まっているものをかえていいのですか。
  80. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 それがそれだけに限るという規定ではないというふうに見まするから、そこに規則制定権の範囲があるわけでございます。
  81. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 それだけに限るものではないとおっしゃるけれども、この条文からそういう解釈が出ますか。私はもう二度とお聞きしません。もしそうだとおっしゃるならば、私は少くともあなた方の今までおやりになってきた学問と違うのではないかということを言わざるを得ないわけです。僕らは少くとも長年法律をやってきて、そんな、ことはなかったと思うのですが、私これははなはだ申しわけないのですが、法律屋の端くれに連なっている一人として、率直に申し上げて、あんまり悲し過ぎますな。これから出るのでしょうか、そういう解釈が。私はこの間参議院の速記録を読んでみまして、どうしても納得できませんでした。水かけ論ですからいいのですが、この場はお過しになれるでしょう。しかし、大衆が見、われわれの胸の中に巣くっている法律への良心、そういうものがきっとこの問題を解決してくれると私は思います。大先輩に対してこういうことを申し上げるのは、はなはだ恐縮でありますが、そういう感じがいたします。  それでは、続いて裁判官の問題について伺いたいと思いますが、今まであなたの方で、予算委員会等でお答えになりましたお答えを総合いたしますと、浄書、いわゆるきれいに書き直す、こういうことは、裁判所書記官の任務だという御規定のようですが、しかし現実に行われておる裁判の実態は、清め書きなどというような程度をはるかに越しておるのではなかろうか、こう私は思うわけです。たとえば、刑事事件における略式命令などを見ますと、検察官の方から略式裁判の請求がありますと、書記官の方々はそのまま検察官の請求、いわゆる科刑意見を主文のところに書き、その請求の理由を判決理由のところに書き、そうして一切がっさい作り上げて、それから裁判官のところへ持っていく。裁判官はそれを一読なすっただけで、あるいは一読をなさらないで判を押す、こうして略式命令裁判が、できる上るわけです。これが今の実態ではないでしょうか。こういうことまでいわゆる浄書、清め書きとおっしゃるのでしょうか。この点を伺いたいと思います。
  82. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 私どもはそういう範囲までいわゆる浄書に入るというふうに考えております。
  83. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 そういたしますと、最高裁判所の字引きでは、浄書というものは起案から完成までをいうのですか。
  84. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 この前予算委員会でも申しましたし、この法務委員会でも詳しく申しましたので、ここで繰り返すのは恐縮でございますが、裁判というものは、申すまでもなく、裁判の内容を決定をする裁判官の活動、その決定されましたものが書面に書かれまする段階と、最後に裁判官御自身の署名捺印というものがありまして完成いたすわけであります。この内容の決定ということは、一番正確なやり方といたしましては、裁判官が原稿を全部調べまして、これを書記官等の方へ渡して、それをいわゆる浄書する、これが最も完全な形でございます。しかし、これもその後に裁判官が署名するまでの間に直されるということは、幾らもあることでございます。結局、内容の判断ということは、裁判官が書面を受け取られてから、最後の署名捺印の段階に至ります間、ずっと行われるわけでございます。私の申しますのは、中の段階の、書面に裁判を書き現わすというこのことは、全く事務的なことでありまして、ただ裁判官御自身がやられる必要もなし、またそれはその他の職員の、補助的な平務をいたします人々の仕事であるというふうに考えておるわけでございます。先ほどお示しの略式命令は、すぐ書記官の手に渡りまして、書記官において一応書面を作る、これは、そういうことになって参ります。というのは、非常に長年、そこに今までの慣行があるわけでございます。おそらく最初は、記録が裁判官のところに行きまして、それを特に書記官の方に渡して、これで一つ書面を作ってもらうというような、一一の指示があったことでございましょが、しかし、だんだんそういうことが繰り返されて参ります場合には、おそらくその書面がいきなり書記官のところに渡りまして、当然裁判官の意向はわかるわけでありますから、書記官の方で原本になる書面を用意いたしまして、それが裁判官のもとに出される。それに基きまして裁判官が最後の判断を下し、署名捺印をせられる、こういうことになっておるものと思います。ことに最高裁判所においては、そういう慣行になっておると思います。というのは、一応裁判官の指示があって、書記官、書記官補等がそういう仕事をやっておるわけであります。これは裁判の趣旨に反するものではなく、広い意味で裁判官の命令によって書記官がやっておると見て、一向差しつかえないのでございます。これは何もそれがゆえに書記官が裁判をやっておるということには絶対にならないと私は考えます。
  85. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 裁判官が事件を見て、裁判の具体的な結論を作る、そしてその結論をどう文章に表現するか、そして表現された文章がタイプで打たれるかあるいは手書きされるか、こういう形で具体的な書面になる。そして、その書面になったものに、最終的に署名捺印される、こういうことでありますならば、その間のタイプで打つとか手書きをするとか、こういうことは私は決して差しつかえないと思うのです。ところが、現実には略式裁判の請求が検察庁からあった、こういうことを裁判官は全然御存じない。検察庁の方から請求書が回ってくる。その請求書の回ってきたものを、裁判官に告げもせず知らせもせず、どんどん書記官が勝手に主文のところに科刑意見を書き、理由のところに記載事実を書き移して、すっかりあと署名するだけに作って、裁判官はAという被疑者に対して、略式請求があった事実を知るわけです。知るときにはサインをするときです。署名捺印をするときです。これが包括的な裁判権の指示あるいは裁判権の許可、こういうものと解釈せられることがいいでしょうか。少くとも日本国民は、法律によって定められた裁判官の裁判を受ける権利があるわけです。そしてまた、それを書記官によって書かれようと、書記官によって捺印されようと、現実には裁判として受け取っていく。ある人は罰金五千円の前科一犯を持ち、ある人は罰金三千円の前科一犯を持っていく。これは五年間消えないのですよ。こういう人生の上に大きな影響を残すものが、今言ったような形で行われていいでしょうか。それは裁判官の自己侮辱だと思います。無理にそれを浄書という概念の中に当てはめて問題を解決しようなどということは、私は大へんな憲法違反じゃないかと思う。裁判官にあらざる者が裁判をする、こういうことではなかろうかと私は思います。現に実例を申し上げてみますならば、大阪の裁判所ですが、略式命令事件を一日に二人の裁判官で九百数十件処理しておられる。九百数十件ですよ。そうすると一件あたりの審理時間は、たった四十秒です。せいぜい手間取っても五十秒です。四十秒か五十秒で人間の運命がきまるのですよ。それをしもあなた方は裁判官という立場にお立ちになって是認せられるのかどうか。もしそういうことを是認せられるとするならば、それは少くとも愛情に基く、あるいはヒューマニズムに基く裁判ではなかろうと私は思う。権威主義に基いた、上からの押しつけだと私は思うわけです。ここに最も市大な問題がありますよ。略式命令についても、刑事訴訟法の規定を読んでみますと、裁判官は、「検察官の請求により、その管轄に属する事件について、公判前、略式命令で、五千円〔五万円〕以下の罰金又は科料を科することができる。この場合には、刑の執行猶予をし、没収を科し、その他附随の処分をすることができる。」ということです。検察官の言う通りにしなくてもいいわけです。記録を見て執行猶予もできるのですよ。執行猶予ができるという以上は、少くとも裁判官は、その検察官から送付せられた一切の書類を見てこの事件が執行猶予に値するものかどうか、検察官の言う通りに科刑をすべきものかどうか、これの判断をすべき義務がある。そういう判断を一切さぼっておいて、自分の目の前に来たときには、もうあと名前を書いて判こを押せばいいだけの裁判処理になっているということ。こういうことは、刑事訴訟法第四百六十一条に規定された精神を没却していないだろうか。しかも現実には一件あたりの審理時間が四十秒ないし五十秒。これでは国民泣きますよ。しかもなお、こういう立場に立って、裁判は公正である、国民はこれを信じろということを言えるのでしょうか。またこれも水かけ論で、言えるとおっしゃるなら私はもう何も申しません。     〔委員長退席、村瀬委員長代理着席〕 こんなことがこの日本の国家の中にあり得ていいはずはないと私は確信をいたします。一体こういう裁判官が当然おやりになるべきことを書記官にゆだねてしまう、そこからこういうことが発生するのではないでしょうか。少くとも裁判所法の第六十条の二によって、書記官にその任務がないと私は思うわけです。書記官が裁判をしていいなどという法律はないと私は思います。こういう大阪事例、そして刑事訴訟法第四百六十一条に規定してある裁判官の義務、こういう問題は一体どうお考えになるのでしょうか。この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  86. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 大阪の問題は、おそらく東京の場合もそうでございますが、具体的にそういう数字になっておるかとも思いますが、私どもの聞いておりますところでは、大体略式命令のほとんど八〇%が、御承知の交通違反事件でございます。これは全く型のごときもので、これこそきわめて簡単に処理されておるわけでございます。従いまして、それだけの数字の処理ができておるのだと思うのであります。なお、この執行猶予その他の点につきましては、なるほど裁判官が最初から見て主文を決定して、それを書記官に書かせるということも一つのやり方だと思います。しかし、あらかじめ書記官にそういう書面を用意させました後に、最終的な判断を加えて、もしそれが不適当であれば、またあらためて書面を作らせるという方法があるわけでございます。これもやはり書記官が裁判をしているというようなおっしゃり方でございまするが、それは全然法律的にはそうではないので、書記官はただある準備をいたしておるというふうに私は考えております。
  87. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 失礼ですが、一件四十秒、五十秒で処理しなければならないものに、あとから訂正して執行猶予をつけるなんということをやった例がありますか。あなた御自分の頭の中だけでお考えになってそういうことをおっしゃるから、こういうイリーガル事態がそのままぬけぬけと残っていってしまうのです。現実に略式命令で執行猶予のついた例を、私は少くとも十六、七年弁護士をやっておりますが知りません。私ども狭い経験でありますが、ここにいらっしゃる方々も、弁護士の業を持っておる方が多いのですが、おそらく御存じないだろうと思う。現実に行われていないのですよ。そしてまたできないのです、四十秒や五十秒では。そしてなおかつ、現に私などの事務所の中にたくさんありますが、略式命令書を見ますと、誤字があります。あるいは罰金の金額を、三千円と書いてあるところを消して四千円に書き改めてあったり、なるほど訂正印が押してありますから、法律的には間違いないでしょう。だがしかし、そういうようなことで一体裁判を受ける側が満足するかどうか、自分の一生がある程度左右せられる判決の中に誤字があったり何かする。重要な部分において訂正印が押してある。どうしておれは三千円が四千円になったんだろうという疑問を持たざるを得ないのです。裁判を受ける側から納得される裁判ということが理想のはずです。結局問題は、そういう形で、書記官の任務にあらざるにもかかわらず、これを書記官に押しつけていくというところに問題があるのではないでしょうか。私は、お説のように、頭の中で考えた御議論を聞いているのではないのです。現実に即して、執行猶予になった略式命令書があるなら見せていただきましょう。
  88. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 私も詳しくは存じておりませんが、事件が非常に多いために、かなりスピーディにものを扱うという結果になっておることは、これは現実が示しておる通りでございますが、そこにいろいろ問題はあろうと思います。しかし、このいわゆる浄書が、書記官の仕事であって、裁判官のやらなければならないものでないという点は、これは私ども考え方でございますし、またその考え方で何十年来やってきていると私は考えております。
  89. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田委員 何十年やっていらっしゃるという習慣が、誤まったことを正当化するものではないと私は思うのです。何十年間続こうが、何万年続こうが、誤まりは誤まりです。私はそういう点について法の解釈をなさる、正義を追求していかれる裁判官、裁判所として、厳格な態度を持っていただくことが望ましいと思います。それから今お話の中に、大部分交通違反だ、従って形式的に処理していくことができるのだ、こういうふうなお話ですが、しかし、一人の無実の者を出すくらいならば、十人の有罪な者は放せというくらい裁判については厳格な正義の追求が行われていることは御存じの通りです。たった一人の無実な者を出してもいけない。そういう者を出さないためには、十人の有罪者を放してもいいというくらいの決意が裁判の中にみなぎっていなければならないにもかかわらず、現実には、判こでも押すように、ぽんぽんと機械的に裁判が大量生産される。これは資本主義社会ですから、ある程度やむを得ないと思いますが、しかし、イリーガルなやり方をとってまで大量生産をとっていいというはずはないと思います。そういう点で私たちは、現実の習慣とか事態とかいうものから法解釈をなさらずに、国民の利益という立場から法解釈をなさっていただくことをお願いしたいと思うのです。少くとも浄書という限りは、原案は裁判官によって示されなければならないはずです。ところが、その原案が裁判官に示されないで、原案がまず第一に書記官によって作られて、そうして後に理論的には裁判官が判を押す際に訂正する機会がわずかに存在するというだけでは、大体この裁判のイニシアチーブを握っているのはだれだ、こういうことを私たちは疑わないわけにはいかないと思うわけです。当然ここで裁判を行なっているのは書記官の方ではないか。これは広く国民全体にこの事実を出して聞いてごらんなさい。おそらく国民は私と同じすなおな考え方をするだろうと思います。  今、略式命令のお話をいたしましたが、それでは勾留状あるいは逮捕状の発行についてどういう方法がとられているか、この問題も一つ聞いていただきたいと思います。名古屋の管内だそうですが、逮捕状を請求いたします場合に、あるいは勾留状を請求いたします場合に、検察官が被疑者の名前を書いて、請求者の自分の名前を書いて判こを押す。あとの部分はブランクにしておく。そういたしますと、令状を請求にきた警察官が、被疑事実とかその他所定の罪となるべき条文とか、こういうものをみな書き込んで、それを持って裁判所へ行く。そうして裁判所の令状係に行って、裁判所の令状係にあるいろいろな書類、すなわち勾留尋問の調書とかあるいは被疑事実とか、こういうものをその書類に警察官が書いて、あとは判こを押すだけにして、令状係の書記官にお渡しをする。そうすると書記官がそれを裁判官に渡す。裁判官はぺらぺらと読んで、それに従って勾留尋問して終る。裁判官の仕事は、ただ名前を書いて判を押すだけ、こういうのが現実に名古屋で行われている事態です。それほど激しくはありませんが、似たり寄ったりの事態が全国で行われているはずです。一体勾留状を発するとか逮捕令状を出すとかいうこの仕事は、だれがやっているのでしょうか。こういうような状態がありますために、こういう基盤に立って初めて白紙の逮捕状などというものが出てくる余地が生ずるわけであります。そういう点で、私はこの点についてもあなた方の御意見を伺いたいと思います。この逮捕状なり勾留状によって、人は何時間あるいは十何日その自由を束縛されるわけです。非常に大きな結果を国民の上にもたらすものですから、厳格にこの点は御解釈いただきたいと思いますが、どうでしょうか。
  90. 横田正俊

    ○横田最高裁判所説明員 今の名古屋の例は私初めて聞くことでありまして、警察官に手伝わせるというようなことは、なるほどいろいろ弊害も考えられると思います。ただ、先ほどからいろいろ申し上げておりますように、逮捕状につきましても、いろいろ他の文書を援用するとか——逮捕状についてはおそらくそういうことは少い例であろうと思いますが、そういうような方法によって原簿となるべきものが作成され、結局最後は裁判官が自己の責任をもって逮捕状を出すわけでございまして、その前の段階のやり方につきましては、いろいろなやり方があろうと思いますが、逮捕状自身は、裁判官が出しておることに間違いはないと私は考えております。
  91. 村瀬宣親

    ○村瀬委員長代理 次会は追って公報をもって御通知いたします。  本日はこの程度にとどめ、散会いたします。    午後、零時三十四分散会