○飛鳥田
委員 それではその次に、これは少し法律の問題になるかもしれませんが、「昭和三十三年六月二日」、「
最高裁判所人公第二六号」というので、
最高裁判所から全国司法部職員
労働組合中央執行副
委員長木村広志あてに、「職員団体の登録に関する是正措置命令」というのをお出しになっておると私は知りましたが、しかし、この場合における文章を拝見していきますと、一番最後のところですが、「同規則第五項の
規定に基き、命令する。」と書いてあるわけです。一体労使双方が対等であるべき
関係の中で、命令をするというようなことがあり得ていいものかどうか、これを伺いたいと思うわけであります。使用者である
最高裁判所が
労働組合に対して命令をする、こういうことが今の日本の労働法体系の中で許されるとお
考えになるかどうか。こう伺いますと、きっとあなたの方は、人事院規則の一四ノ三、これの第五項「職員団体が、次に掲げる
行為をした場合には、人事院は、その団体に適切な是正措置をとることを命じ又は六十日をこえない範囲内でその団体の登録の効力を停止し若しくはその登録を取り消すことができる。」というこの文言をお引きになるだろうと思いますが、しかし、この人事院規則一四ノ三は、当然先ほど申し上げましたように、裁判所職員臨時措置法によって準用されているわけです。そして、この場合に、「人事院」は「
最高裁判所」と読みかえるという形になっているだろうと思います。従って、そのまま文章を読めば、「人事院は」というところを「
最高裁判所は」と読めば、命ずることができるということになるだろうと思いますが、しかし、この際における人事院の立場というものをやはり当然お
考えにならなければならないでしょう。たとえば、厚生省なり大蔵省なりにおいて、職員団体にこの人事院規則が
規定をいたしておりますような
事態が発生した場合、たとえば今問題になっております場合であげますならば、その幹部が懲戒免職になった、停職になった、こういう場合に、その人が職員である地位を失ったから、幹部である資格はなくなったはずだ、こういう場合であります。この場合には、処分、いわゆる懲戒免職した官庁と人事院とは別人格であります。そうして、人事院と
労働組合とは、団体交渉の相互に相手方となっているわけではありません。いわゆる第三者であります。従って、第三者が、いわゆる登録事務としてその変更を命ずるということは、決して労使双方対等の条件をこわすものではないはずであります。従って、この人事院規則そのものは、
労働組合法における精神、あるいは日本の労働法体系をくずすものではありません。しかし、これをただそのままに、今申し上げましたように、「人事院」を「
最高裁判所」と読みかえてしまいますと、純然たる第三者のかわりに、当事者をすりかえていく結果になるのでありまして、そういうことは私は許されないだろう、こう思うわけです。当然、準用であります以上は、この点について、ここの
規定をそのまま
解釈をするのではなしに、労働
関係法の精神に照らして、ここは十分に
意味をとった読み方をしなければならないはずです。そういう点から
考えて参りますと、
最高裁判所は、自分と対等の立場において交渉すべき
労働組合に対して、命令をするなどという権限はないはずである、こう私は思うわけです。なぜ私はこんな小さな文言をとらえて申し上げるのかと申しますと、どうも今回の処分を通じて私たちの感じとれますことは、
最高裁判所は、自分のところの職員団体に対して、あたかも、かつての封建的な君主のごとく命令をする、こういう根本的な立場を捨て切っていないんじゃないか。ともすれば、命令をし、指揮をし、自分の意に沿わぬ者を直ちに解雇する、こういうような根本的な精神が横たわっておるような気がいたしますので、この問題を取り上げてみたわけです。
最高裁判所は、法律の
解釈の専門家であられるわけですから、単純に「人事院」を「
最高裁判所」と読みかえることによって、日本の、現にある労働法体系を完全にくずすようなことをおやりになれるはずはない、こう私は思いますが、この点についてはどうでしょうか。裁判所は今後も、この人事院規則という当事者と第三者とをはっきり区別しておるごの法律をたてにして、当事者であるにもかかわらず、
労働組合に命令し、指揮していかれるお気持かどうか、これを伺いたいと思います。