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1958-09-25 第29回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十三年九月二十五日(木曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 稻葉  修君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 武雄君 理事 永山 忠則君    理事 原田  憲君 理事 小牧 次生君    理事 櫻井 奎夫君 理事 辻原 弘市君       加藤 精三君    清瀬 一郎君       鈴木 正吾君    徳安 實藏君       松永  東君    八木 徹雄君       山本 勝市君    河野  密君       西村 力弥君    長谷川 保君       原   彪君    堀  昌雄君       松前 重義君    本島百合子君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  委員外出席者         内閣官房長官  赤城 宗徳君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局公安課         長)      川井 英良君         検     事         (公安調査庁次         長)      関   之君         文部政務次官  高見 三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤譽三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  木田  宏君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 九月二十五日  委員野口忠夫辞任につき、その補欠として河  野密君が議長指名委員に選任された。 同日  委員河野密辞任につき、その補欠として野口  忠夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 八月十九日  次の委員会開会要求書が提出された。文教委員  会開会要求書和歌山県における勤評反対運動弾  圧事件及び福岡県における教組幹部不当逮捕  事件、其の他につき、直ちに委員会を開会致さ  れたく、衆議院規則第六十七条第二項の規定に  より左記連名にて要求します。   昭和三十三年八月十九日    文教委員長 坂田 道太殿      文教委員        小牧 次生                  櫻井 奎夫                  辻原 弘市                  西村 力弥                  野口 忠夫                  長谷川 保                  原   彪                  堀  昌雄                  松前 重義                  本島百合子                  山崎 始男 九月十九日  次の委員会開会要求書が提出された。文教委員  会開会要求書勤評問題、其の他の審議につき、  昭和三十三年九月二十六日委員会を開会致され  たく、衆議院規則第六十七条第二項の規定によ  り左記連名にて要求します。   昭和三十三年九月十九日    文教委員長 坂田道太殿       文教委員       小牧 次生                  櫻井 奎夫                  辻原 弘市                  西村 力弥                  野口 忠夫                  長谷川 保                  原   彪                  堀  昌雄                  松前 重義                  本島百合子                  山崎 始男     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育に関する件社会教育に関する件教育制  度に関する件      ————◇—————
  2. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 これより会議を開きます。  本日は学校教育社会教育及び教育制度に関し調査を進めます。質疑の通告がありますので順次これを許します。加藤精三君。
  3. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 当初に文部当局、特に最も詳しく知つておられる文部当局説明員でけつこうでございますが、本年の九月十五日の闘争の具体的な状況を詳細に承わりたいのであります。
  4. 木田説明員(木田宏)

    木田説明員 御説明申し上げます。九月十五日に日教組全国統一行動をとつて、正午授業打ち切りを行うということで、各県におきましてそれぞれ日教組統一行動従つた行動がとられたわけでありますが、全国的に見まして、正午授業打ち切り行動に出たと伝えられております県は、青森、岩手山形福島群馬、埼玉、東京、新潟、京都、大阪、兵庫、和歌山、鳥取、山口愛媛、高知の十六都府県というふうに伝えられております。そのうち福島は正午授業打ち切りよりも強い線で、終日十割の全日休暇闘争を行うというふうに伝えられておりました。それらの各県におきましては、次に述べますように、若干数の学校授業を打ち切るとか、あるいは普通の正常授業と異なつた授業行なつておるということが報告されておりますが、多くの府県におきましては、おおむね平常通り授業が行われております。一部の学校授業打ち切りの行われました都府県状況は次のようでございます。  まず小中学校におきましては、全日授業打ち切りましたもの、福島県で三校、正午授業打ち切り学校数が、現在まで私どものところへ教育委員会から報告されておりますものでは千九十八校、午後三時以後の授業打ち切り合併授業あるいは時間短縮等の不正常授業を行なつた学校が七百校、他日に授業を振りかえた学校が八百校、大体関係県の学校総数に対しまして正午の授業打ち切りをいたしましたものが約言〇%というふうに現在までの報告では出ております。高等学校におきましては、全日授業打ち切りました高等学校ニ校、これは福島県立学校でございます。正午授業打ち切り学校数が五十校、また平常授業と異なつた不正常な授業を行いました高等学校が二十八校で、これらの報告のありました県の学校総数六百七十二校に対しまして、約七・四%の学校が正午授業打ち切りをいたしておる。小、中学校高等学校と合せまして、十六都府県におきましては、正午授業打ち切りをいたしました学校数が千百四十八校、不正常の授業行なつたものが七百二十八校、このように報告を受けておるわけでございます。  それから、ただいまの統一行動関連をいたしまして、登校拒否または児童早退を行わせるという動きが伝えられたのでございますが、このことが現実に起りました府県はごくわずかでございまして、全般的に見ますとほとんどそのような影響はなかつたというふうに私ども県から聞いております。一部児童登校拒否早退等が行われましたのは和歌山京都群馬山口愛媛福岡の県にあつた、このように報告を聞いております。  それから当日行われました教職員勤務状況でございますが、現在まで全部の県からの報告がきておるわけではございませんので、総数をまとめて申し上げるわけには参りませんけれども、おおむね集会参加した教員参加は三時以後でございまして、それよりもおそいものもございますし、教員として集会参加いたしておりますものは、現在まとまつております段階では約十万三千七百人、未報告の県を合せまして、推計でございますが、現在の状況から推定いたしますと十五、六万の見当になるのではないかというふうに考えております。ただしこれは若干の県におきましてまだ報告がそろつておりませんので、直ちに全部について申し上げるわけには参りません。現在その報告に載つております十万三千七百八十九名のうち、勤務時間中に集会参加したというふうに報告されております者が二万二千七百六十一名でございます。他の七万六千人ほどは勤務時間外に集会参加したのだ、このように連絡を受けておるわけでございます。この勤務時間内に集会参加いたしました者の中で、相当部分校長の承認を得ることなく組合の行動従つておるということが報告されております。また県別に見てみまして、この教職員集会参加状況の高い府県は、岩手山形、千葉、神奈川、福井、三重、岡山、広島等でございまして、大体教職員数の四割程度先生方参加しておられるようでございます。  当日の状況につきましては、ただいま申し上げました程度しか私ども報告がまだ整理されておらないわけでございますけれども、一般に予定されておりましたよりも、各県の教職員が慎重な行動をとつたというふうに、私ども自体としても見ておるわけでございます。なお申し上げ足りない点等がございましたら、重ねて御質問によつてお答えしたいと思います。
  5. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 ただいまの御報告をお聞きしますと、わが国の大多数の教職員は、職能倫理というか、そういう点にとうとい自覚を持つておられるように思うのでございますが、あれだけものすごい日本共産党背面指導にかかわりませず、よく日本国民たるの本分を自覚してくれたということにつきましては、私たち敬意を表するものでございますが、われわれ東北生まれの者でありまするので、特に福島県で教壇放棄というような非常に忌まわしい仕事を多くの先生がやられたということにつきましては、私たち東北人といたしましても、まことに胸がふさがる思いがするのでございます。聞くところによると、福島大学学芸部長という人が、そうした問題に対して学生が騒ぐのをあまり規律することをやらなかつた、あるいはむしろこれにある程度容認的な態度をとつたというような事例があり、県下の先生を養成する立場にあるそういうような先生が、そういう態度であつたということを聞かされているわけでございます。そして県の教委におきましても、それらにつきまして事情を知ろうと思いましても、これを拒否したということが、新聞紙に出ておるようでございますが、これらの事情につきまして、何か文部当局の方で御存じのことがありましたならば承わりたいのでございます。まだ調査が十分でなかつたならば、人権に関することでざいますから、調査の上お答えいただけばけつこうでございますが、一言お尋ねいたします。
  6. 内藤説明員(内藤譽三郎)

    内藤説明員 福島大学教育学部学生が動いたことにつきましては、目下調査しておりますので、いずれ調査いたしました結果を御報告申し上げたいと思います。
  7. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 その点は至急御調査になつていただきたいと思うのでございますが、特に福島大学学芸部長という人に対して、いろいろ疑惑が持たれているのじやないかと思いますので、そういうような点を詳細に御調査になつていただきまして、立法の資料にいたしたいと考えております。 (発言する者あり)  委員長に申し上げますが、私が発言権を得ましたのは、もう数回の文教委員会において発言の自由がなかつたので、きようやつとたまに関連質問をするだけであります。なるべく与党野党とも一つ静粛にお願いしたい。  次に、最近この勤務評定問題に関しまして、いわゆる学長グループのあつせんに対して、文部大臣が非常にすげなく拒否したというような、いろいろなことが世上非常に話題に乗つているのでございまして、どうも私それらの点につきまして、天下の大新聞、大雑誌その他が非常にそれを云々しているので……。     〔発言する者あり〕
  8. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 お静かに願います。
  9. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 私非常に長年現在の文部大臣灘尾弘吉氏を知つているのでございまして、三十数年前の高等学校時代から大学内務省、それから国会議員生活一緒に始めたので、ずつと今日まで一緒にいるわけでございますが、灘尾という人は、かつて人間神様に対してのエアフルヒト、敬慶の念というものを欠いたことのない人間だと私は考えています。それが非常な悪人のように、冷酷無情な人間のように、大学学長さんたちに対しても敬慶の念、尊敬の念を全然持たぬ、非常な人格の低い人間のように言われるということは、私実にわけがわからない。三十年以上前でございますが、私灘尾氏と一緒高等学校に入つたころに、かつて言うておつたのでありますが、何か瀬戸内海の島の中の村長さんのむすこに生まれた、そして少数同胞の部落もそこにあつて、いろいろな悲惨なこと等があつたときに、お父さんの村長がこれを非常にあたたかい目でもつてつてくれていた、そのとき自分がそれを見ておつて、そして政治というもののとうとさがわかつて、それで行政官自分は志しているのだという話をされた記憶があるのでございます。灘尾氏は、その後内務省社会局であつたと思いますが、かの有名な環境改善の、少数同胞に対する実に画期的な大事業をなし遂げられた。今日その事績が継続しておるわけであります。そうした人柄から見まして、人間神様に対する敬虔の念を失つたことがない人が、果して天下の大新聞等の掲げるように、学長連中に対して非常にばかにした言葉を乱発した、何の責任資格でお前らは来たか、何の資格で、何の責任諸君はとるのかということを非常に露骨に言つたというようなことがございますので、私非常にあり得べからざることのように思うのでございますが、それらの点を特に詳細にお話をいただきながら、この学長あつせんそんまつを明らかにしていただきたい、こう思うのでございます。大臣の御答弁をお願いします。
  10. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 お答え申し上げます。去る九月十三、及び十四日二回にわたりまして、いわゆる学長グループ方々とお目にかかりまして、いろいろお話伺つたのであります。私のところにおいでになりましたのは、下中弥三郎さん、上代たのさん、それから蝋山政道さん、このお三方が十二日においでになつたのであります。おいでになりました御趣旨は、九月十五日のいわゆる勤評ストでありますが、まことに子供の教育の上から申しまして不幸なことであり、憂慮すべき事態であると思うので、何とかこれを回避したい、そのために政府日教組との間に立つて何か話し合いを進めたい、こういうお心持おいでになつたように私は伺つたのであります。主たる目的は、要するに日教組委員長小林君と私とそれから学長グループの方とこの三者会談の形において何かそこに打開する道を発見したい、そこで一体それについてどう考えるか、こういうふうなところから私はお話伺つたのであります。その際に学長グループと称せられる方々のお考えといたしましては、九月十五日の混乱を避けるために勤務評定実施は現在の段階において進行をとめる、そして審議会を設けて内容、方法等について検討する期間は一年ぐらいが適当であると思う、このために日教組委員長学者グループ、そして私とが会見していろいろ話し合いをする、こういうふうなことを考えておるというふうなお話でございました。しかし御趣旨は、要するに三者会談をやつて何かそこに話し合いをしたらどうか、こういう点にあつたように伺つたのであります。私は従来、皆さんも御承知の通り日教組諸君からときどき交渉申し入れを受けたのであります。これに対しましては私はお断わりをいたしておつたのであります。すなわち日教組において勤務評定実施ということは認めてもらいたいのだ、それからあの闘争体制を解いて平静な状態に返つてもらいたい、その上において日教組諸君にお目にかかつてお話を伺い、また話し合いをすることは何ら私は拒むものでもないということはしばしば申し上げておる通りであります。そういう趣旨のことも申し上げましたが、当日はこの学者グループ皆さんのお申し出に対しまして、先方さんも、きようは返事をしてもらわなくてよろしい、これからほかを回るのだから、そのあとでまた連絡をするから、その上で一つ返事をしてもらいたい、こういうようなお話でございました。いろいろ御懇談をいたしましたけれども、別段私の回答というようなことはいたさないでお別れいたしたのであります。それからあと、このお三人の方は小林委員長とも会見せられ、また自民党の本部で川島幹事長赤城官房長官とも会見せられて、また院内で社会党の鈴木委員長浅沼書記長会見せられたように伺つたのであります。  日教組の方におきましては当日このお三人の方のお申し出によりまして、その態度を決定するために中央執行委員会を開いた、こういうふうに聞いております。その結果といたしまして、日本の教師は平和と民主主義を守り、教え子を再び戦場に送らないためにあくまで政府勤評政策に反対する。日教組国民世論にこたえるため次の態度をきめた。現在実施中の勤評白紙に返す。審議機関を措置し、勤評の可否を含めて審議する。以上を政府責任において全国一斉に措置する。これらを認めない場合には予定通り九月十五日を期して全国一斉行動実施する。当日そういうふうに決定をせられたように私は新聞で承知いたしたのであります。なおまた日教組は十三日の夜各県教組にあてまして、勤評あつせん動きに目をくらまされず、十五日の正午授業打ち切り闘争体制をさらに強化せよというような指令を出したようにも伝えられておつたのであります。  十四日の日に適山、上代下中の三氏と今度は茅東大学長矢部拓学長、この五人の方が日教組小林委員長会見せられましたあと文部省の方に私をお尋ね下さつたのであります。そのときのお話によりますと、先ほど私が新聞の報道として申しましたようなことを、小林委員長からこの五人の方に回答せられたような模様でございました。そのお話がございまして、私の態度、私の回答をお求めになつたわけであります。私はいろいろ考えましたけれども、この十五日のストを回避するということは、私も熱望するところであります。ぜひそういう事態にならないようにということを心から念願をいたしておるものであります。従つてまた学長グループと言われる皆さん方が、この問題のために非常に御心配になり、日教組と私との間に立つてあつせんしようというお心持に対しましては、私は心から敬意を表するものであります。同時にまたありがたいという心持もいたすのでございます。しかしながら私はその際においでになりました方々に申し上げたのでございます。一一速記をとつておるわけでございませんので、言葉を正確に今日申し上げるということも困難でございますが、私といたしましては、かような趣旨のことを申し上げたのであります。日教組諸君と私が会見をするということについては、先ほど申し上げましたような状態のもとにおいてなら、いつでも会見をするということをしばしば私が申し上げておるところであります。また今度の勤務評定闘争に対する政府なり私の態度につきましても、しばしば国会においてまたその他の機会において明らかにいたしておるところでございます。私はさような従来発表いたしました私の態度を変える意思はございません。ことに日教組の今回行いました勤務評定実施に対する反対闘争は、私から申せば一から十まで間違つておる。なすべからざることをやつておる。こういうように私は考えるのであります。その意味合いにおきましては、まず日教組反対闘争間違つておるということをはつきりいたしたいのであります。その間これがあいまいになるというようなことは、私としてはたえられないことである。従つて私と日教組との間に立つていろいろお骨折りを願うということは、まことにありがたいことでございますけれども、その結果、日教組勤務評定反対闘争、ことに九月十五日の闘争性格があいまいになるということは、私としては忍びがたいことである、その点は明確にいたしたいと思うのであります。従つて九月十五日の勤評スト打ち切りということは無条件であつてほしかつたのであります。これに対しまして政府の方で何らかのことをする、そのことによつてこの勤評闘争ストを回避するということは私としてはできないというような心持ちがいたしておりましたので、率直にそのことを申し上げまして、日教組学者グループに対してお示しになりました条件はすでにかつて私が日教組委員長から直接伺つたことのあることでありまして、それに対しまして当時私はこれをお断わりする、同時にぜひ勤評実施に協力していただきたいということをお願いしたのであります。そういうふうなその当時の、いわゆる現在の勤評というものを白紙に返し、あらためて審議機関を設けてやるかやらないかということから出発しての審議をやつていこうということに対しましては、私は同意をいたしかねるのであります。さような状態のもとにおきまして、せつかくのごあつせんでありますけれども小林委員長と会いまして、私がいろいろお互いの間で話し合いをいたしましたところで、一体どれだけの効果があるであろうというふうなことを考え、同時にまたこのスト性格をあいまいにするということは、私としてはとるべからざる態度である、かように考えましたので、遺憾ながら、そういうふうな何かお互い条件でも出してその話し合いを進めていくということについては、私としましては一つこの辺で打ち切つていただきたい、こういうことを申し上げましたわけでございます。これにつきましてはせつかくのお骨折りに対しましてまことに恐縮に存じましたけれども、従来私が声明し、あるいは国会等において言明した線を忠実に守つて参りたいという心持ちから申し上げましたようなわけでございます。それによつて学者グループの方も一応あつせんを打ち切られたとい、ことになつたのでありまして、その御労苦に対しましてはまことに申しわけない心持ちがいたしますけれども、私としてはさように申し上げざるを得なかつたということを御了承願いたいと思うのであります。  なお、この御尽力に対しまして、私がこれに応ずることができなかつたことについての御批判はいろいろあろうかと思います。御批判は御批判として私もこれを伺うのほかはないのでございますが、ただその際私が何か学者グループ方々に対し非常に敬意を失し、あるいは礼儀を失するような言辞を弄したというようなことが新聞に伝えられておる。またいかにも冷淡であつた、こういうふうな新聞の記事もあつたようでございますが、これは見る人によつていろいろございましようけれども、私どもとしましては、決してさような心持ちで応接はいたしておらないつもりでございまして、十分な敬意礼儀をもつて応接いたしたつもりでございますが、不幸にして御希望に沿うことができなかつたというだけのことでございます。何かおいでになつた方に対して資格を云々したということまで新聞に出ておるようでございますが、さような事実はございませんということを、はつきりと申し上げておきたいと思います。
  11. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 ただいまの御回答で真相が判然といたしまして、私の心配しておりますような誤解が全部解けたと私考えております。ただいまの答弁の端々につきましても、国民教育を、心配してくれる学長さんたちのお心はありがたい、またいろいろ苦心して下さつた御心労は恐縮だというような言葉を使つておられるところを見ましても、私は世上いろいろ誤解されている事実は絶対ないものと信ずるのでございますが、そういう絶対ないものをあらしめるというのがどこからきているか、そういう謀略はどこからきているかということにつきましては、私は国民とともにある怒りをもつてこれを考えざるを得ない。それとともに、週刊朝日の九月二十八日号に、学長グループのあつせん者の一人下中弥三郎氏は、こういう感想を漏らしている。「敗軍の将兵を語らずという言葉があるが、私は間違つていたとは思わない。私らの出した三つの線はやはり正しいものと思う。教組側も最後には折れて、勤評実施基本線をのんだ。しかし、それを文部省にいうと、カサにかぶつて、いよいよ強圧的に出ると思い、そのことは三者会談の席上で、持ち出すつもりでいた。」こういうことを言うているのであります。これは天下晴れてのわが国での最高の教育界の権威着たちの中に、前教育者として、下中弥三郎先生が出られたということにつきましては、私、文部大臣とともに国の教育を憂うる立場で非常にありがたいのでございますが、その下中氏その他が、日教組勤評実施してもいいという基本線をあつせん者に対してちやんとのんでいるのにかかわらず、それをのんでいないこととして、そして文部大臣に交渉しているという事実は、これこそ私は大きな問題じやないかと思うのでございます。しかしながらこの下中氏が言うたごとく、日教組勤評実施の線はのんでいなかつたとすれば、これはまた話が違つてくるのでございますが、私はこの問題につきまして一つの体験を持つているのでございます。と申しますのは、この週刊朝日が報じておりまするごとく、この学長あつせんの発端は高良女史の手紙にある。「学長グループ勤評あつせんに立ち上る前に、参議院議員高良とみさん(緑風会)を中心にした、あつせん動きがあつた。八月初めのことである。軽井沢に避暑していた東京工大教授宮城音弥氏のもとへ、高良さんから手紙がとどいた。「文部省日教組の対立は避けられそうもない。もはや国民の手で勤評問題を解決するよりしかたがないと思うので、ぜひ御協力を願いたい……」」こういう手紙が発端になつて徐々に学長グループのあつせんにまでなつたというてんまつが週刊朝日の九月二十八日号に事こまかに載つているのでございます。その中におきまして、「高良女史はそれでもあきらめず、自民党顧問、衆院議長星島二郎氏、社会党顧問片山哲氏の両党の長老を説いて、勤評のあつせん運動に乗り出した。」というくだりがございます。この高良女史の初めての動きの際に、実は偶然の機会で私立ち会つてつたのでございます。と申しますのは、西ドイツの教会連合から衆議院の前副議長の杉山代議士に対して、教会のアカデミーに対する招待状が参つたのでございまして、それに関しまして、われわれ国会におきましてのキリスト教信者の国会議員が、衆議院の議長室に集合するということでございまして、八月の上旬に私たちが衆議院の議長室に集合したのでございます。休会中でございましたので、参会しました者は、星島議長と片山哲氏と私と杉山氏、それだけでございましたが、その席に偶然高良女史もクリスチャンでございますけれども、それとは別に星島議長に面会にこられたのでございます。そのときに高良女史は私にとりあえず自分の企図を話されたのでありまして、自分はどうしても今度の勤評紛争の調停に動きたいと思う、それで自分はすでに学習院の安倍学長にも話した、それから天野前文想にも連絡した、それから日本学術会議議長の茅さんにも話した、それから下中さんは乗り気だというようなことでございまして、勤評実施を中止して、そして一年間ぐらいわが国の教育の最高峰と思われる四、五人の方に勤評実施やその方法について一任したらどうか、こういうお話でございました。私はたまたま自由民主党の政務調査会の文教部長をしているので、この問題についてはある程度筋道を知つている、それだから申し上げるのだが、それはとうていだめだ、勤務評定の妨害ということ、これは違法行為だ、こういうものに対して一定期間これの進行をとめるというようなことはとうていできることではない、政府としても与党としてもそういうことについては引き受けられるものじやないということを話したところが、大へんごきげんが悪かつたのでございます。申しおくれましたが、その席にはドイツ大使館の神学博士である大使館員と、それから杉山先生一緒に西ドイツに行かれますところのシュミット博士という牧師さんと、それからそれの通訳兼随行のような立場におられる日本人の牧師さんとが一緒でございました。それから食事になりまして、議長応接室で質素な食事をいたしまして、そこで一同祈祷をささげまして、杉山氏の使命の果されんことをお願いいたしたのでございます。その食事が終りましてから高良氏は、ぜひ一つ話を聞いてくれというので、星島議長、それから片山哲先生、杉山元治郎先生にお願いしまして、私も立ち会わしていただいたのでございますが、そこで高良氏は綿々とお話をされたのでございます。星島議長さんは、議会内のできごとに関するあつせんということはあるけれども、国政についてのあつせんということを今まで議長というものはしたことがないだろうと思う、片山君どうですかというふうに片山先生にお聞きになつた。片山先生もそういうことは今まで例のないことだ、そして現段階では政府も強硬だし、社会党の方も強硬だし、とうていそれはできぬだろうというお話でございました。一体日教組の方はどうなんだということを高良女史に対して尋ねましたところが、高良女史は意外な返事でございました。これは日教組委員長その他本部の方と相当な連絡があるのだ、その連絡は朝日新聞の伊藤氏とか中島健藏氏とか、そういう方が立つているのだ、そして小林委員長は側近には明らかに絶対反対はもはやできない、何とかここで調停しなければならぬということを漏らしているのだというお話でございます。それだからあつせんの可能性があるのだと言われるのであります。私は、果してしからば、日教組は何のためにそれだけ強硬なそぶりをしているのかということを疑つたのでございますが、それらの際に、私特に痛感いたしましたことは、天野前文相が相当好意を持つておられる、それから、安倍学習院長との連絡もとれているというような自信あるお話でございましたので、その後諸多の方法を通じてそれらの情報も調べてみたのでございますが、決して高良氏が言われるごとく、天野氏、安倍氏が踏み切つているわけでも何でもないのであります。そうした関係から、これはいろいろな誤解や仮定のもとに立つているあつせんじやないかということの心配を相当深くしておつたのでございます。そこへ現われて出ましたのが、私の察するところ、世界平和アッピール七人委員会の日高一輝という人物でございます。この人物は自分の郷里の者でございまして、よくその性質、経歴等をも知つているのでございますが、この日高一輝なる人物が諸多のあつせんをしているようでございまして、私これら高名の学長が、日高氏のいろいろな伝言その他電話等で動員されている姿を見まして、相当な心配をしておるのでございます。ところが先ほど朗読いたしましたごとく、教組側は最後には折れて勤評実施基本線をのんだ、そういうことまで隠して、そしてあつせんを成功させようという点につきまして下中先生のごとき高名の教育者のお立場としては、少しどうも厳粛なこうした国家的な大事件を国民の前で白日のもとに処理される御態度としては、若干欠けるところがあつたのじやないか、こういうふうに考えておるのでございます。私考えまするのに、灘尾文相がそういう天下を憂え、国家の教育を憂える大学者がわざわざおいでになつたことを、ありがたいとももつたいないとも思われて、できるならばそのあつせんに乗りたいというお気持はあつただろうと思う。しかしながらこの日教組の活動というものが、本質的にこれは自由を破壊することの自由を主張するものである、私はそう考えるのでございまして、文部大臣が筋を通されたことは、非常にやりにくい立場にありましても、敢然と筋を通されたことを多とするものでございます。感情、人情と道理とは違うのであります。われわれは、わが国での高名の禅僧が、断わるという勇気が現代の日本にとつては最も大事な道徳であると喝破されていることを最近著書で読んだのでございますが、まことにその感を強くするのでございます。文部大臣の勇気こそほんとうの勇気だと私は考えるのでございます。  これらに関連いたしまして、なお国民の中には、九月十五言の闘争のあのゆゆしい事態を避ける方法として、学者のあつせんは成功しなかつたにしても、それでもなお何か手段がなかつたかという、そういう気持が胸の中にわだかまつているものがなおあると思うのでありますが、その点につきまして、再び文部大臣の御所信を卒直に述べていただきたいと考えるのであります。
  12. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 九月十五日は、先はど御報告申し上げましたような状態のもとに経過いたしたのでございます。われわれはかような闘争を二度と繰り返してもらいたくないのであります。新聞で伝えるところによりますれば、さらに第二波あるいは第三波の闘争計画もあるやに聞くのでありますけれども、あの勤評ストに対する国民の世論がどうであつたかというようなことについては、教職員諸君も十分一つ考えてもらいたいと思うのであります。私の願うところは、ただそれのみでございます。このスト、ああいう闘争を回避するために何かうまい筋の通つた名案があれば、私はこれを聞くにやぶさかではございません。願わくは、国の秩序を乱り、法的秩序、社会秩序というようなものを乱るようなことは、一切一つやめてもらいたいと思つております。そうしてお互いに平和に、なごやかに、いろいろな問題について意見を交換する、こういうような事態が現われることが一番望ましいことと私は思うのでございます。不幸にいたしまして、今日の日教組に対しまして、私はこれという名案を実は持ち合わしておらぬのであります。何か皆さんの方で筋の通つたうまい解決策があれば、御教示願いたいと思います。
  13. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 ただいま文部大臣から御所信を承わつたのでありますが、よく世間では、大臣ともなれば、普通の行政長官の態度よりもなお違つた一つの政治的態度というものもあるじやないかというようなことを俗に言うのでございまするが、そういう政治的態度というようなことに関連して、何かお考えになることはないか、重ねて文部大臣にお伺いしたいのでございます。
  14. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 私のやつておりますことにつきまして、もつと政治的なやり方はないか、もつと政治的に考えたらどうか、こういうような御忠告は実はしばしば受けております。私が政治に志しておりますけれども、未熟なために、いろいろと御批判を牽けることもあろうかと存じます。さような意味におきましては、今後さらに皆さんの御指導、御鞭撻のもとに修練を積んで参りたいと思うのであります。  ただ今回の勤務評定の問題を処理するにつきまして、政治的な解決はないか、こういうようなことを言われますけれども、私は日本の今日の教育界というものをながめまして、また教育行政の実情というものをながめました場合において、この規律、秩序というものを確立することが何よりも大切ではないかと思うのであります。現在当然なすべきことをやつておる、そういうことについても、ぜがひでもしやにむに反対しろというようなことがしばしばあるのでありまして、これでは円滑に文教行政をやつていくということも困難であります。私は行政がスムーズに円滑に取り運ぶことができるような事態を心から念願いたしておりますために、教育界における秩序を確立する、節度をお互いに守るということが大切なことと思いますので、私の政治的感覚から申しまするならば、今日このことに努力するのが政治家としての私の任務ではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  15. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 次に具体的な問題につきましてお尋ねいたしますが、千葉県、長崎県等では、研究機関を設けることによつて、この最悪の事態を回避した、九月十五日闘争事態を回避した。また地方ごとに審議会を設置すべきだ、そういうふうな意見もあり、また川島幹事長が、勤評実施を前提とするならば、第三者による審議会を作つてもよいと述べたと九月十八日の読売新聞で伝えているのでありますが、文部大臣のこれに対する見解はどうでありますか。これは現今国民教育関係者が最も知りたがつていることでございまするので、そうした点を一つ明瞭にお示しいただきたいと考えるのであります。
  16. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 勤務評定実施に対する反対闘争がなかなか激しいので、さようなことから、あるいは大事な子供までこの闘争の中に巻き込んでしまうというような不幸な事態さえ起りかねまじき形勢であつたわけでございます。そういうふうなことから、何とかこの事態を回避しようという努力がいろいろな方面においてなされましたことは、当然でもあるし、また自然の成り行きであろうかと私は思うのであります。そういうふうな問題の一つといたしまして、先ほど御質問のありましたように、中央においては学者グループ皆さん方が御心配になつたという事態もございます。また地方におきましても、あるいは長崎県とか、あるいは千葉県というようなところで、調停の試みがなされたことはお話通りでございます。私は、勤務評定実施ということは、しばしば私の申しておることでございますが、申すまでもなく、これは地方においてなすことであります。地方においてこれが実施をうまくやつていくというために、いろいろな努力をなすべきことも、これも当然であろうかと考えるのであります。そのために地方であるいは審議会を設けるとか、あるいは研究会を設けるとかいうふうなことも考えられないことではない。私の考えを率直に申し上げますならば、現在大多数の府県におきましては、すでに勤務評定の計画は立つておるわけです。これが実施に向つて進んでおるわけでございます。これにつきましても、いろいろ見る人によつて御意見もあろうかと思うのでございますが、今日まで地方でやつております計画は、それぞれの地方において自主的に決定をいたしておるのでございます。よく引き合いに出されるのでありますけれども教育長の協議会で作りましたところの試案が、そのままそつくり行われているというふうな府県は少いようであります。それぞれ地方の状況によりましてきめておることでございますので、今後この実施につきましても、もちろん地方の自主的な判断によつて実施をしてもらえばけつこうだと思うのでございます、たた政府といたしましては、勤務評定を実権するということにつきましては、どこまでも推進して参りたいと思つておるのであります。私の立場は、申すまでもなく勤務評定実施を促進ずるにあると思うのであります。この実施することを中止したりやめたりすることを勧告する立場にはいないのであります。そういう意味におきまして、地方でいろいろ考えられましてものを進められることはけつこうだと思いますけれども、願わくば、この実施の線に沿つてつてつていただきたいと思うのです。あるいは審議会を作るとか、あるいは研究会を作るにいたしましても、まず実施の結果を見て、その結果によつてまた地方も今後さらによりよきものにする、こういうふうな意味合いにおきまして、研究を重ねていくとか、討議を重ねていくということもけつこうだろうと思います。そういう意味合いにおいて、実施後において研究会を作るとか審議会を作るというふうなことに何ら異存はございませんけれども、この実施を延ばすとか、あるいは教育委員会責任が不明確になるような形においてそのことが取り運ばれるということは、私の望まざるところであります。また政府といたしましても、この勤務評定実施の結果を見まして、さらにまたこれに対して十分検討するというようなことにつきましては、何ら異存はございません。行政を進めていく者の心がまえといたしましても、この実施状況を常に注意をして見ていくということが必要だと思いますので、そういう意味における検討をするに決して私はやぶさかなものではございません。ただ、今中央に審議会を作つて、それと引きかえに闘争を打ち切るとかなんとかいう話は、私のちよつと納得いたしかねるところでございます。審議会を作る必要があるかないか、それらについては、今後の経過によつて私は考えていけばよろしい問題だと思うのでありまして、今日の場合、中央に何らかの審議会を設けるというようなばく然とした審議会設置説というものに対して、にわかに賛成するわけには参らない。私といたしましてもさような考えは持つておりません実施の結果によつていろいろ検討は加えて参りたいということを申し上げるにとどめたいと思うのであります。
  17. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 ただいまの御説明で事態は九割九分くらいはつきりしたと思いますが、私、長年地方行政に携わつて国会でも地方行政の方をずつと継続してやつてつたものでございますが、この勤評実施ということは、地方教育行政の一つの問題のように思うのでありますが、第三者が行政に参加するということは、この国会で第三者の行政参加を認めたときに参加するもののように思うのであります。みだりに第三者が行政に参加する、審議会その他の形式で参加するということになつて、そしてその第三者同士で意見が合わなくて、その審議会あるいはこの研究会の場を討論の紛糾の場にしたり、そうしたようなことになるということは大へん困ることのように思うのですが、地方行政の専門家としてのお立場も文部大臣は持つておられるので、その点をちよつとお尋ねしたいのでございます。
  18. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 勤評実施につきまして、すでに各県でやつておるわけでございますが、将来の問題として考えました場合に、いろいろこれに対する意見もあり、希望もあるわけであります。そういうふうな点については、県の教育委員会といたしましても、一ぺんやればそれでおしまいだというような気持でなくて、謙虚な心持で、今日正しい、今日よろしいと考えておることにつきましても、行政の改善をはかるという意味におきましては、常に研究を怠らないと思うのであります。そういうふうな意味合いにおきまして、県の教育委員会が第三者の意見を聞くとかいうふうなことは、一がいに排すべきことではもちろんないと思うのであります。しかし問題はきわめて技術的と申しますか、専門的な事項であると思いますので、そういう方々の意見を聞くというのは望ましいのじやないかと思いますけれども、とにかくそういうふうな研究を重ねていくという意味合いにおいて審議会を設けることはけつこうだと思いますが、これによりまして、本来地方教育委員会責任に属する事項がはなはだあいまいになつてきた、あるいはまたその委員会に現在の争いがそのまま持ち込まれまして、いたずらに争いを繰り返すにすぎないということは、これは望ましくないということは申すまでもないことであります。さように御了承願います。
  19. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 大体私の質問するところに合言つたような御答弁だと思うのでありますが、若干食い違いがありますので申し上げますが、私はこういうことを言うのです。県教委とか市町村教委で審議会を設けて、そこで勤評の可否を決する、あるいは勤評実施時期を延ばして冷却期間にどれくらい間を置くとか、そういうようなことを第三者たる権威者、すなわち市町村長とか知事とかがあつせんをしてやつたというようなことを新聞によつて伝聞するのでありますが、そういうことは私は地方行政としてはあり得べからざることのように思うが、どうかということなのであります。その点につきましては、ちよつと時間がかかりますので、質問が残つておりますから、さらに先に進むことにいたします。  次の質問は、総理が勤評実施する方針は動かさない、しかし日教組実施を認めるならば、県ごとに内容をきめるわけだし、内容は十分検討する用意がある、こういうことを言つたといわれているのです。九月十九日の朝日の朝刊であります。文部大臣もこれに同一意見であるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  20. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 総理はどういうふうな言葉を用いてお話しになりましたのか、私は承知いたしませんけれども、総理の考えと私の考えの間には何らそごはないと私は確信をいたしております。総理といたしましては、先般、九月十三日でございましたか、談話を発表しておられますが、それによりましてもわかりますように、勤評実施の結果を見てということを言つておられる。将来の問題としてこの問題について検討することにおいては何らやぶさかでない、かような心持で言われたものと私は考えている次第であります。
  21. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 次の質問はこういう質問でございます。東京都教組が戦術転換を提案していると伝えられておりますが、文部大臣はこれをどういうふうに見ておられるか。東京都教組は日教組の代表者会議とか中央執行委員会等において相当発言権を持つているようでございますが、それが転換するということは相当な事項だと思うのであります。これについて文部大臣としてはどういうふうに考えられているか、それをお尋ねしたいのであります。
  22. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 その間の事情についてはまだ私はつまびらかにいたしておりませんので、お答え申し上げられないのであります。
  23. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 次は、数県で勤務評定に関する計画は樹立されていないようでありますが、これに対して文部省はどういうふうに対処していかれるかという具体的問題につきまして、これは実際に局に当つておられる内藤局長からでけつこうでございますが、御答弁をお願いしたいと思います。
  24. 内藤説明員(内藤譽三郎)

    内藤説明員 ただいま勤評の規則がきまらない県が北海道、神奈川、長野、兵庫、大阪、京都の六道府県でございます。このうち現在長野と大阪、兵庫の三県につきましては、相当進捗いたしておるようでございます。近く何らかの案が発表されると私どもは期待しております。その他の道府県におかれましても、目下着々準備をされ、実施の方向に向つて努力されておりますので、私どももいましばらく事態を見守りたいと考えております。
  25. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 たとえば、県では勤務評定の計画ができたのに、市町村でその計画に従わない、勤務評定実施しないのだ、実施を延期するのだ、そういうことを決定しているところがあると伝えられておりまするが、それに対してどういうふうに考えておられるか。これも局に当つておられる内藤局長にお聞きしたいと思います。
  26. 内藤説明員(内藤譽三郎)

    内藤説明員 九月十五日までの提出の分でございますが、埼玉、茨城は一〇〇%の提出を見たのでございます。東京都におきましては、遺憾ながら数カ町村においてまだ提出を見ていないのでございます。この点につきまして都道府県教育長協議会では実施の勧告をいたしまして、なお応じない場合には措置要求をもつてこれに対処し、各市町村が確実に勤評の提出を終るように最善の努力をするということを申し合せたようでございます。
  27. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 次に、最近の新聞によりますと、都道府県教育長協議会が勤務評定実施関連して、法の改正を要請したということを伝えておるのでありますが、これについてはどういうふうに考えておりますか。
  28. 内藤説明員(内藤譽三郎)

    内藤説明員 ただいま申しましたように、都道府県教育委員会といたしまして、未実施の市町村に対しまして措置要求をするということが現行法上の建前でございまして、それ以上には現在の法規ではなかなか困難である、かように判断をされまして、何らかの措置が必要であるという点については、意見が一致したようでございます。しかしながら、この問題につきましては、さらにいろいろと検討しなければならぬ問題があろうかと思います。私どもは、まだ具体的に都道府県教育長協議会から何らの提案を見ておりませんが、さような提案がございました場合には、慎重に検討いたしたいと考えております。
  29. 加藤(精)委員(加藤精三)

    加藤(精)委員 次に道徳教育指導者講習会というものの受講拒否ないし受講妨害の運動というきわめていまわしい事件が起つておるのでございますが、この問題につきましては、国家の前途を憂え、国民教育を憂える者のひとしく深憂にたえないところと考えておるのでございます。この問題だけにつきましては特に詳細に、文部省側と警察庁長官の方からと、この両方から御説明をいただきたいのでございます。これは東京の場合、それから仙台の場合、奈良の場合につきまして、特に日時を追つて御説明いただきたい。それから特に目立ちますのは、今回の妨害活動につきまして、全学連とそれから社会主義学生同盟ですか、社学同、元の反戦学生同盟ですね。これの活動が非常に活発のようでございまして、むしろ日教組をリードしたかのように見える。また日教組がこれを利用し、社会党またこれを利用しているような形跡がある。これらの点につきまして、この全学連、社学同、日本共産党等の動向を御調査になつておられる公安調査庁側の御観察もあわせて承わりたい。そしてそれに関連いたしまして、この全学連、社学同、日本共産党の、社会主義国家を急に建設するための運動の最近の足取りにつきまして、綱領やそうした連中の言動というような面から、十分な御解明をいただきたいのでございます。これを申し上げますのは、わが国のまじめな——それは魂をソ連や中共においている連中は別として、それ以外の九割九分のまじめな国民は、みなその真相を非常に心配しておりますので、この機会にそれを明らかにしていただきたい、こう考えるのでございます。
  30. 内藤説明員(内藤譽三郎)

    内藤説明員 道徳教育の指導者講習会につきましては、これは昭和三十三年度予算に四百万円の予算が計上されたわけでございます。これは三十三年度から道徳教育実施したいという私どもの考え方に基くのでございまして、去る三月に発表いたしました道徳教育の指導要領によつて、本年の四月から道徳教育が実つ施されているわけでありまして、私ども調査によりましても、朝日新聞調査によりましても、実は七、八割はすでに実施されておるのでございます。そこで残りの府県におきましても、なお実施すべく研究、準備中でございますので、本年の九月から全国一斉に道徳教育実施できるような態勢をとつたのでございます。これは国民の大多数の御要望もあり、また現場の教師の熱心な御希望にもこたえるためでございます。特に最近は非常に各府県におきまして道徳教育が盛んに行われまして、指導計画等がりつぼに作成されているのでございます。こういう点で、私どもはさらに不十分な点を補うという趣旨から、指導者講習会を計画いたしました。この計画は本年の年度当初にすでに計画済みでございまして、東京、仙台、奈良、徳島、大分、この五地区において指導者講習会を計画したわけでございます。  東京の地区は九月六日の土曜日から始めたわけでございます。ところが当初の予定した会場はお茶ノ水の大学でございました。私どもが入手した情報によりますと、当日六千人のピケ隊が動員されて、この道徳教育の指導者講習会を阻止するという情報が入つたわけでございます。そこでお茶の水の大学は当時幼稚園から高等学校までが授業が再開されておるのであります。あの当時の情勢を考えてみますと、あの小さな幼稚園の子供たちが避難訓練をいたしまして、特定の場所に集合いたしまして、教師が引率するという態勢をとり、父兄が非常におどおどしておるという情報も入つたわけであります。私どもは何の罪もない子供たちをこの講習会の混乱に巻き込むことははなはだ忍びないので、やむを得ず上野の国立博物値に会場変更をしたわけでございます。私どもはできるだけ混乱と摩擦を避けるために、会場変更については発表せず、当日文部省に七時半までに集合を終りました。それから上野の国立博物館に誘導するという建前をとつたわけであります。当日の状況を申しますと、文部省の前に約二百人の日教組諸君がピケ隊を張つたわけであります。これは排除いたしまして、全員三百三十四名が集結を終りました。ところが、お茶の水の方には約三百の教組が中心で待機しておつたわけであります。上野の国立博物館には、情報が漏れたせいか、百名ほどの全学連の学生諸君が待機しておつたわけであります。そこで当日は全部の会場の情報が確実に相手側に入手できていなかつたために、幸いに無事に上野の国立博物館に入場できたわけであります。私どもは、会場につきましては、それ以後発表をいたさなかつた。初日は通用門から入りましたのですが、二日目は、ちようど通用門の方は上野の高等学校あるいは芸術大学等がございまして、道が非常に曲りくねつており、所々方々に全学連の学生あるいは日教組諸君がおるということで、通行上非常に困難を感じ、またピケ隊の予想外の妨害を受けるというようなことが懸念されましたので、正門から入つたわけであります。以後四百間にわたりまして、ずつと正門から入場したわけであります。この間におきましても、連日、三百、五百あるいは七百名程度が動員されまして、猛烈な攻撃を受けたわけであります。特に労働歌を高唱し、あるいは革命歌を歌い、面会を強要される等、非常な妨害を受けたのであります。しかしともかく四日間で大体の日程が終了できましたので、当初五日間の日程を一日繰り上げたわけであります。これは早朝から受講を開始いたしましたので、受講が予定よりも進捗したためでございます。この間受講生は非常にまじめに受講されたのであります。内容についても何ら懸念のないりつぱな内容であつたことを受講生は一様に申しておるのであります。特に国立博物館の会場におきまして問題が起きましたのは、最終日でございました。最終日に、全学連の主力がピケ隊を張つたわけであります。そのときに正門におきまして、十数名の者がばらばらと飛び込んだ。これはバスの前に、ちようど特攻隊のように前面にふさがつて寝ころんでしまつた。そのためにバスの進行を一時停止せざるを得なかつた。しかし幸いに警官の抑制によりまして、大した事故を起さずに無事に終了したのであります。  東京会場につきましては以上でございますが、北海道、東北地区の仙台における道徳教育指導者講習会の概要について申しますと、当初の予定は九月の十五日からの予定になつておりました。ところが御承知の通り九月十五日は教員の正午授業則ち切りの一斉ストライキが計画されておりましたので、この日は避けたわけであります。十六百から十九日まで四日間実施いたしたわけであります。仙台の地区におきましては、当初会場は第一高等学校、女子の高等学校を予定したわけであります。ところが当日は、第一高等女学校におきましては試験の日でございましたが、このために試験ができなかつた。特にピケ隊によつて、受講生のバスは辛うじて入りましたけれども学生が試験を受けられないというような状況に立ち至りました。学校側から何とか会場を変更してほしいという強い御要望がありましたので、第二日目以後をどこにするかという点でいろいろ協議いたしましたが、会場につきましては各方面に妨害を受けまして、どうしても第ニ高等学校以外に場所がないということになりました。しかしここは警備の点から見ますと非常によくなかつた。一万数千坪もございまして、生けがきである。なかなか警備のしにくいところでございましたが、その他の会場は全部労組及び関係者によつて会場の貸与を阻止された、こういうような状況にあつたわけであります。そこでやむを得ず第二高等学校を選びましたのですが、第二高等学校におきましては、今申しましたように生けがきであつたためにピケ隊が闖入いたしまして、校庭の中でジグザグ行進をやる、あるいはデモをやる、労働歌あるいは革命歌を高唱して、学校の正常なる授業の妨害を行なつた。このため、二日、三日はどうやら第二高等学校で受講をいたしましたけれども学校側としても、これ以上子供たちに迷惑をかけてはいかぬし、子供たちも教師も非常な不安の中に陥れられたために、何とかして会場を変更してくれ、こういうように第二高等学校からも強い会場変更の要望が出た。そこで第四日目につきましては、できるだけ第三日に受講を繰り上げまして、残つた分をどこでやるかということでいろいろ協議した結果、ついに適当な会場がなかつたので、やむを得ず宿舎において最後の受請をせざるを得なかつたところが当日におきましても、これは特に災害があつたせいもありまして、十分な警備もできなかつたし、また主催者側といたしましても、台風のためにいろいろ被害を受けておる際に、受講生の方にまで警官の手をわずらわすことは御迷惑と思いまして、実は警官の要請をしなかつた。ところがこの日におきまして、へいを乗り越え、あるいは裏門から、朝四時ごろからピケ隊が動員されまして、旅館の中に闖入してしまつた。そして面会を強要するというような事態に立ち至つたわけであります。仕方がないので、平常通り開議を希望しておつたのですが、ついに平常通り開議ができない。五時から七時まで受講をいたしまして、その後適当に閉講式を行なつて九時ごろには大体終了したようでございます。この間におきまして、旅館には朝四時ごろからピケ隊が動員され、革命歌、労働歌を歌い、そして安眠を妨害し、受講生に面会を強要する等さまざまな妨害が企てられ、旅館側からも一日も早く立ちのきを要求された。特にはなはだしいのは、デモ隊と警官隊のもみ合いによつてへいがこわれたり、あるいは樹木が倒れたり、こういうような損傷があつて、旅館側からは非常な苦情が出たのですが、大へんに御協力いただきまして、ともかく四日間の行事を済ませたのであります。この間において、いつでも朝四時か五時くらいに集結されて、旅館を出るときに各バスが三十分ないし五十分は必ず遅延した。これは非常なピケ隊の妨害によつて乗車ができなかつたという事情であります。  なお輸送については、宮城県の労評の手によつてバスがほとんど押えられてしまつた。県教委が契約した市街のバス会社の労組に対しては総評から圧力がかけられ、解約のやむなきに至つた。最もバスの確保については困難をきわめた。やつと民間のバス会社ニ社、県議会のバスが一台、七台だけを確保しましたけれども、このうちの五台は午前七時から労評がすでに契約をしておりまして——別にこれは使う意味ではない。妨害のために七時以後はバスは貸せない、こういうように先手を打たれましたので、やむを得ず六時五十分までに会場に入らなければならない、こういうような事態に陥りまして、受講生も大へん疲労こんぱいに陥つたわけであります。私どもは受講生の皆さん方は非常に御熱心であつたけれども、こういう点で大へん御迷惑をかけたことを申しわけなく思つておるのであります。  さような次第でございまして、著しい妨害の中にともかく仙台の会場は終つたわけですが、この間における妨害の二、三を申しますと、受講生が郷里を出発する前から教員組合による説得がまず行われ、会場への車中、下車駅、宿舎等において、あるいは早朝からあるいは深夜まで執拗な精神的な圧迫が加えられた。それからスピーカーによる賞伝が非常に巧妙であり、学校の生徒及び教職員の神経を非常にいらだたせ、平静な授業ができなかつた。こういう点で、文部省及び県教委の講習会実施に対する公務執行の妨害であり、公務出張命令による受講者の受講妨害である。民家や宿舎あるいは会場に対しましては、非常に不安と御迷惑をかけた点を心苦しく思つておるのであります。ピケ隊の中には宮城県の現場教員参加はほとんどなく、全学連が主力であり、これも東京、京都からの参加音が大部分であつたように聞いておるのであります。特に日本共産党員が最も戦闘的であつたという報告が参つておるのであります。  次に、奈良会場についてお話をいたしたいと思います。奈良の会場は実は昨二十四日から始まつたわけでございます。ただいま申しましたように、東京、仙台の例にかんがみまして、できるだけ摩擦を避ける、混乱を少くする、こういう趣旨から、宿舎と会場を一つにしたわけでございます。当初実は奈良学芸大学の現在の校舎を予定しておりましたけれども、ここは授業が行われておりますので、学校内に混乱を持ち込むことはいかがかと存じまして、米軍が使用しておりましたキヤンプがございます。俗にC地区といわれておる地域でございますが、このC地区に集結いたしまして、ここに寝具を用意いたしまして、食糧を持ち込むことによつて、宿舎と会場を一つにしたわけでございます。二十三日の午後三時半に集結を終つたわけでございます。ところが相手側は二十三日から実は集結いたしまして、約五百人が二十四日の早朝五時ごろに校門にピケを張つたわけでございます。このうち十数名が、裏門の鉄条網の柵がございますが、この柵を約五十センチほど切り取つてしまつて闖入した。まさに住居侵入でございます。これが表門におけるデモ隊と合流するように計画したわけです。表門のピケ隊は約五百名でございまして、これが校門を押し倒してついに一つの門は破れてしまつた。こういうような状況でございまして、約十九人が検挙されるような事態になつたのであります。とにかく初日はそういう事態がございましたが、予定通り九時から開議ができたわけであります。本日も実はピケ隊が数百名動員されまして、やはり警官隊と押し合いへし合いをやつて、本日もまた昨日修理した校門が再びこわされてしまつた、こういうような状況でございまして、私どもは非常に遺憾に思つておる次第でございます。
  31. 江口説明員(江口俊男)

    ○江口説明員 道徳教育指導者講習会に関しまして、主として警察と関連のある事柄について御報告を申し上げます。  ただいま文部省からお答えになりましたのと多少重複をいたしたり、あるいは人数等の点で若干でございまするけれども食い違いがあることは、調べたところが違うという意味で御了承願いたいと思います。  文部省主催の道徳教育講習会は、九月六日から東京の関東・甲信越・静岡ブロックの受講者三百三十九名の講習会を皮切りに、来月の中ごろまでに全国五ブロックの講習会が終了する予定になつておりますことは御承知の通りでありますが、これに対しまして都教連や東京地評などにおきましては、この九月十五日を控えて、文部省がこういうことをおやりになるということについて、これは明らかに挑戦的な計画であるというふうに考え、九月六、七、八日の三日間は労組員を相当数動員をして、この講習会をあくまで阻止するということにきめたのであります。そのためでございましよう、文部省におきましては、当初会場を先ほどのお話通りお茶の水の女子大の講堂ということにきめておられたようでございますが、ひそかに東京国立博物館の別館に変更されましておやりになつた結果、受講者は六日には三百三十二人、七日には三百二十九名というふうに、全員を一たん文部省に集められて、そこからバスに分乗させ会場に送り込むという方法をとられたのであります。これに対し、これを阻止しようとする労組員は早朝から文部省、お茶の水女子大、上野国立博物館付近等にピケを張り、受講者の入場等を妨害しようといたしましたけれども、事前配備中の警視庁の機動部隊によつてその都度阻止をされ、講習会は予定通り進行いたしましたこともまた御承知の通りであります。  詳しく説明せよというお話でございますから多少旧聞に嘱しまするけれども……。
  32. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 警備局長にちよつと申し上げますけれども、大体問題点をやつていただいたらけつこうじやないかと思います。
  33. 江口説明員(江口俊男)

    ○江口説明員 それでは、第一日の九月六日の状況は、文部省が先ほど申し上げましたように、お茶の水の女子大学を使うという予定のところを上野の博物館にお変えになりましたために、これを阻止しようという側におきましても相当のそごがあつたということで大した事件は起きておりません。ただその日に動員された人員を申し上げますと、労組側の方は約八百名、学生、都教組、応援の教組等を含めまして八百名になつております。これに対して警察は相当数の予備員を置きましたけれども、実際に出たのは六百内外でございます。第二日目は九月七日、これも前日と大同小異でございまするが、動員の数が第一日より相当滅つておりまして、労組員の数が五百名、こちらの方の警察官の数は一日目と大差はございません。三日目の状況は、さらにこれを阻止するという側の動員が減りまして三百名になつております。警察は前日と同様でありますけれども、その際一人検挙者を出しております。四日目の状況は、初めのうちはさらに人数が滅つておるのであります。しかしながら、先ほど内藤局長のお話にもございましたように、全学連の学生が博物館前でバスの進路を妨げて寝ころんだというようなことから、相当のもみ合いを生じまして、学生十名というものが傷害あるいは公務執行妨害、業務妨害あるいは道交法違反という疑いで現行犯逮捕をされておるのであります。この日の動員は、初めそういう問題が起りましたときには学生が七、八十人でございましたけれども、その後多少学生もふえ、あるいは教組等の数もふえまして、最後には四百人くらいの動員と相なつております。警察官は大体毎日同じような出動をいたしておつたわけでございます。  次に、仙台におきまする北海道・東北地区の道徳教育指導者講習会の阻止状況、あるいはそれに対しまする警備の措置について申し上げます。事前動向は御要望によつて省略いたしまするが、第一日の九月十六日の状況から申し上げます。  九月十六日は、旅館前のピケ及び会場到着の際の妨害でございまするが、まず受講者二百五十五名はあさかや旅館、永明荘というような五つの宿屋に分宿をいたしておつたのでありまするが、あさかや旅館以外のほかの四旅館にはピケはございませんでしたので、午前五時五十八分バスで何らの妨害も受けずに会場に到達いたしております。しかし受講者の中で一番よけいに百一名泊ておりましたあさかや旅館前には、四時半ごろから付近に泊つておりましたピケ隊十六名が姿を見せまして、五時ちよつと過ぎには学生五十名を含む三百名が同所の付近にたむろして、受講者輸送用バス二台が五時半に到着いたしましたけれども、旅館の敷地内の玄関口にその三百名程度の者がスクラムを組んだりあるいはすわり込むというような方法によりまして、強硬に受講者の乗車を阻止するという状態になりましたので、旅館主は営業妨害になるということからピケの排除方をそのときに旅館の前に配備しておりました警備部隊に要請をしたのであります。要請を受けました警備部隊は三百二十七名でございまするが、これが実力によつてこのピケを排除しまして、午前六時十分に完全にこれを排除いたしたのであります。その際に警察側にもピケの側にも多少の軽傷者を出しております。  それから次に講習会場前の状況でありまするが、会場は第一日は先ほどの話の通り第一女子高校でございます。その会場前のピケは六時ちよつと過ぎからだんだん増加して、八時ごろには約五百名になつてつて、会場の正門の前で警察部隊と対峙のままに抗議大会を開催しておつたのであります。その朝のあさかや旅館前における警察官の暴力に対する責任を追及するというようなことや、あるいは文部省係官に抗議するというような二項目を決議して、八時二十五分ごろ大会を終了しております。大会の終了後共闘側は警備部隊と対峙のまま労働歌などで気勢を上げておりましたが、十時ごろスクラムを組みまして警備部隊の人がきを突破して校庭に入ろうという意図に出たのであります。そこで両者の間にもちろんもみ合いがございまして、この際日教組の中央委員小田という人、東北大学学生の両名を公務執行妨害罪の現行犯として逮捕しております。こちらの方にも実力排除の際に多少のけが人が出ております。しかしながら講習会は午後二時過ぎ無事に終了しまして、受講者は何ら妨害を受けることなくそれぞれの旅館に行かれたのが第一日の状況であります。この日の共闘側の動員は六百二十名に及んでおりまするが、その内訳は労組員が三百五十名、県外の労組から百七十名、日共二十、学生七十、その他ということになつておるのであります。  第二日目の状況は、九月十七日でありまするが、やはり旅館前のピケと会場到着後のもみ合いというものがございます。今度は、きのうやつた旅館のあさかやというものを除きまして、第一ホテルとか白萩荘というところに分宿しておるところに来たのでありまするが、第一ホテルと白萩荘を除いてはピケの妨害はなかつた、その二軒について妨害がございました。この二軒にはそれぞれ百五十名くらいのピケを張つたのであまするが、これも五時二十分ごろ警備部隊によつて実力で排除をいたしております。受講者二百七十一名はそれによつて午前六時までに無事に講習会場に入場して、予定通り七時から講習を受けられた模様であります。  会場前の状況は、今度は県立の第二高等学校に、先ほどのお話通りつておりまするが、この門前には七時ごろからピケ隊が集合し始めまして、八時半ごろには五百名になり、抗議大会を開いて気勢を上げ、そして十時近くには二百名くらいが強引に校庭に入ろうとしましたけれども、警備部隊でこれを阻止いたしております。その後共闘側は約七百名にふえて警備部隊と対峙しておりましたけれども、十一時近くになつてピケを解除いたしております。講習会は午後二時にやはり予定通り終りまして、受講者はそれぞれバスで旅館に帰つております。この日の動員も、共闘側約七百名でありまするが、内訳は前日と大同小異であります。警察部隊も八百名程度が出て警備に当つたのであります。  次に第三日の状況でございまするが、これもやはり前の日と大同小異の状況でございまするけれども、旅館前において先はどの話に出たようにもみ合いの際にへいがこわれたというような、その日は雨が相当降つていて、凄惨をきわめたと出しまするか、非常にシリアスな状態になつたのであります。まず旅館前におきます状況は、受講者の分宿しておる五旅館のうち、旅籠町のあさかや旅館及び二寿美荘に対しましてピケが張られました。もさかや旅館の状況は、午前四時ごろから行動を起しました。ヒケ隊が、あさかや旅館前に集結を始めまして、労働歌などで気勢を上げて五時半にはその数が三百名に達しております。あさかや、第一ホテル間をジグザグ行進をいたしておりましたけれども、あさかや旅館に比し二寿美荘に対する警備部隊が若干手薄であることを察知しまして、また宮城県の受講者四十二名が二寿美荘に宿泊しておるということもありまして、この方に主力を注ぐため、約百五十名が五時半ごろに貸し切りバス二台で急遽その旅館の方に移動いたしております。このためにあさかや旅館の方におりました受講者は、五時半ごろピケ隊の大した抵抗もなく会場に向けて出発しました。一番多くなりました二寿美という旅館の前の状況でございますが、ここはあさかや旅館前から来たピケ隊の百五十人が旅館の玄関口付近に四列のピケを張つてスクラムを組んで、同旅館の出入りを阻止するとともに、裏側等にもピケを張つて包囲態勢をとり、またピケ隊が乗車してきましたバス二台を、故障と称してピケの前面に停車させて、ピケ排除の障害物としたのであります。その後ピケ隊は逐次増強されまして、その二寿美荘の前は四百名に達しております。このため警備部隊は二百八十三名を午前六時現場に出動させ、六時五分にピケを排除いたしております。それによつて受講者は当然会場に出発したのであります。この際もみ合つて旅館の隣の弁護士さんのへいが二、三尺、半ば倒壊したというような事件も起つておるのであります。受講者は六時半ごろには全員会場に到着しまして、この日も予定通り講習を行なつておるのであります。会場前には百名くらいのピケがおり、なお八時半ごろには四百名くらいのピケとなつたのでありますが、この日は大した気勢も上らずに十一時半ごろ五台のバスに分乗して引き揚げております。この日は講習会が相当おそくまで行われまして、前の日は二時に済んでおりますけれども、この日は四時二十分までおやりになつて、妨害を受けずに旅館に帰つておるのであります。共闘側の動員は六百名弱でございます。  第四日は先ほど内藤局長からお話がありましたように、各旅館で分科会の報告会と、それから閉講式をやつておられます。ただどういうことで四日の日はそういうことになつたのかということにつきましては、多少見解が違うのでありますが、前の口で済むというふうに了解しておつたことがそうじやなかつたということ、及び翌日やるにしても、これは旅館でおやりになるということで、そういうときに妨害があるはずがないといいますか、外で大きなもみ合いがあるはずがないのだからということで、制服部隊は七百二十名動員はしましたけれども、実際に出しましたのは四十三名の私服を旅館の周囲に情勢を見るという程度で出したのであります。この点御了承願いたいと思います。  それから最後に奈良の状況を簡単に申し上げますが、奈良につきましては先ほど来お話がございますように、先般まで占領軍が使つておりましたところをお使いになるということがきまつたのであります。これは非常に広いところでありますけれども、相当外部的には厳重に阻隔できるというようなところであつたはずでありまするが、これが針金を切るような機械で切ればやはり厳重であつても切れるというわけでございまして、正門のところ、あるいは裏の針金のさくを破つて入られたというような事故も起つております。しかしながら二十三日の午後に、場所がわかつておらなかつたためでありますか、妨害を受けることなく講習員はその場所に入つておられます。しかしこれを妨害しようという計画のあつた立場としては、入つたあとそれを黙つて見のがすというわけにはもちろんいかぬのでありましよう、それを気づきました側におきましては、一昨晩からその外をうろうろしているという状態が朝の三時ごろからございましたけれども、夜明けに至つて正門と裏の金網のところから多少の者が押し切つてつた。このために十九名を建造物侵入で現行犯逮捕いたしたのであります。それに対して昨日は正門にピケを張ると同時に、警察署に対して被逮捕者の釈放要求ということで、二隊に分れてすわり込みなりあるいはスクラムなりを組んだわけでございます。そうして昨晩おそくに至りまして、署の前のすわり込みの中からまた署内に侵入しようとした男を一名逮捕し、またけさ方正門のところを引き上げて入ろうとした男を二名検挙いたしておりまするので、合計二十二名の検挙者を奈良において出しております。これを妨害しようとする労組員の数については私昨日いろいろ連絡を受けておりまするが、その時間によつて非常な数の違いがありまするから、はつきり申し上げられませんけれども、まあ六、七百から千名以内ということでございます。ただああいうところに対しましては、われわれの方の警備力というものが平常であれば非常に弱いわけであります。奈良県全部を動員いたしましても、そこにさき得るのは三、四百ということでございますので、これは大阪管区警察局において慎重に計画を練りまして、足らない分は管区学校の生徒あるいは大阪府の機動隊、京都府の機動隊等の応援を得まして、警備上万遺憾なきを期しておるのが現状でございます。  以上簡単でございますが……。
  34. 関説明員(関之)

    ○関説明員 お答えいたします。お尋ねが、この勤評闘争などにおける学生の運動がやや矯激に走つているのではないか、その実情はどうかというような点かと存ずるのであります。その概要について御報告申し上げることといたします。  学生運動と申しますと、結局全学連及び社会主義学生同盟、すなわち社学同などの実態がどうなつて、それがどういうことを考えているか、そうしていかなる戦略、戦術をもつてこの勤評闘争に臨んでいるかというような問題に相なろうかと思うのであります。  それでお尋ねによりますと、綱領がどうなつておるかというようなお話がございましたから、綱領などの問題から、いろいろの資料、情報に基いて、彼らが現在何を考えておるかというような点にわたつて御説明申し上げてみたいと思います。  全学連の綱領的なものでありますが、これは規約第二条を見てみますると、「この連合は、日本学生の自主的な自治会の全国的単一連合組織であり、学生戦線を統一し、内外の民主勢力と提携して次の目的を達成するために努力する。1、われわれは、恒久平和の実現のため国際緊張緩和と日本の完全独立のため闘う。2、われわれは、民主主義の擁護と学問の自由、学園の自治のため闘う。3、われわれは、民主的教育を擁護し、文化、科学の創造的発展のため、学生生活の向上のため闘う。」第三条として、「この連合は右の目的を達成するため、左の諸活動を行う。これらの活動は全国大会の決議にもとずき、中央執行委員会および中央委員会の指導の下にこの連合の各組織によつて遂行される。1、基本方針にもとずき、大衆運動を展開する。2、学生戦線を統一し、国内諸民主勢力と提携する。3、国際学連のもとに、各国学生組織と提携し、平和愛好諸国民との連帯を強める。4、内外情勢の分析、調査とその周知徹底。う、学生運動に関する情報、経験の交換。」というようなところがおもに相なつておるわけであります。これが全学連がいかなることを目的とし、どういう対策をとるかという基本的な規定に相なつておるわけであります。  次に社会主義学生同盟でありますが、これはことしの五月の大会できまりました新しい綱領でありますが、それのおもなところを読んでみますと、「社会主義の権威の全世界的な拡大と学生運動の力最の増大という条件の上に立つて、この合本反戦学生同盟の革命的な伝統をうけつぎ、学生運動の活動家を社会主義の旗の下に結集し、学生運動を更に発展させ、それを労働者階級の解放運動と結びつけ、全世界の人民と共に社会主義の実現をかちとることを目的とする。(一)戦争と搾取と抑圧の原因である帝国主義に反対し、労働者階級の解放の闘いを支持し、日本と世界における社会主義の実現のために闘う。(ニ)全世界の労働者階級を中心とする人民の解放闘争を支持し、これと固く団結してその発展のために闘う。(三)帝国主義の戦争と搾取と抑圧の政策に反対する人民の反戦民主的権利擁護、生活擁護の闘いを支持し、その発展のために闘う。(四)労働者階級の諸闘争と結びつき、その発展のためにたたかう。(五)社会主義の理論を研究し、その発展、普及のためにたたかう。(六)社会主義をめざす日本の青年戦線の統一のために、特に労働青年との統一のために闘う。」こういうことに相なつておるわけであります。  それで、これはしばしば御説明申し上げたごとく、全学連は今日約その数二十九万でありまして、その中に約二千前後の共産党員がいる。社学同は総数約千八百で、その中に約千人くらいの党員がおる。  そこで全学連と社学同の関係でありますが、社学同は要するに全学連の中における活動分子の結集体、全学連の運動を推進する活動分子の結集体、こういうように大体考えてよろしいかと思うのであります。  さて問題は、この綱領などは一店文書に書いて掲げておりますが、ほんとうのところは何を考えておるかという問題があるわけであります。これは具体的に若干の事例で申し上げてみますると、去る七月に共産党が大会を開きまして、革命方針について論争があつたわけであります。それでいわゆる代々木本部派の革命手段をどうするかという問題についての考え方は、結局暴力を用いるかは相手方の出方いかんである、相手方が武装しそして実力を持つならば、これに立ち向うのにやはりわれわれも暴力をもつて立ち上らざるを得ないじやないか、そこは相手方の出方いかん。しかし革命方式は、平和的方法も全然考えられない段階ではない。これが代々木本部派の方針なのであります。ところがこれに対しまして、全学連がどういうふうに反対したかと申しますと、この社会主義学生国盟の綱領の前文にもある通り、全学連全体あるいは社会主義学生同盟全体の意見、その団体としての意見というふうにまで申し上げかねるのでありますが、少くともこれらを指導する共産党員の学生の大多数の意見は、次のようなところになつているかと私は思うのであります。  すなわち、今日全世界的に社会主義の勢力が圧倒的優位になつた、自由主義陣営よりはるかに上位になつた、まずこういう世界情勢の分析をいたしまして、従つて日本において内戦を伴つた革命を起しても、アメリカは出てこない。従つて国内における暴力行使の革命の遂行は可能である。こういうような意見に立つていると思われるのでありますが、これらは今申し上げたように、全学連全体の意見あるいは社会主義学生同盟全体の意見というわけではありませんが、その中の指導分子のときどきの論文あるいは二、三の意見の発表等を通じて見ますと、大体そういうことに考えられるのであります。そういうような社会情勢のもとに立つて日本でもつて暴力をもつて政権奪取をはかつても、アメリカは出てこないからやれる、これらが彼らの一つの考え方の基盤になつている。そういう考え方をもつて代々木本部を攻撃し、これと争つている、こういう状況であります。この考え方は、一方においては本部がトロッキストと呼び、極左的な冒険主義であるという非難をいたし、六月一日の例の代々木本部を占拠した事件以来、しばしばこれに対してその行き過ぎを戒め、そうして学生党員を除名ないしは活動停止処分に処して、その行き過ぎを戒めて、共産党の指導、支配に従えこういうことを言つているわけであります。そこでどうも共産党の代々木本部さえてこずつているというのが、全学連及び社学同を指導する学生党員の大体の意向じやないかと思うのであります。もちろん中には代々木本部派に通ずる者がありますが、これはいわゆる少数派と称して、あまり多くないようであります。こういうのが、大体全学連及び社学同を流れているその底流と私は判断いたす次第であります。  さて、こういう考え方から見てみますと、これは今のような考え方のもとに、とにかく日本の革命を推進する。もちろんこの革命というものは、ことしどうするとか来年どうするとか、そういうような現実的な日程に上せるということは、彼らは考えていないようであります。これはもちろん、いわゆる革命の主体的勢力がいまだ微弱であつて、当然その段階ではない。現在の段階は、その主体的勢力の増大、拡大をはかるべきである、これが彼らの見解に相なるわけであります。従つて彼らの各種の闘争の方式は、すべてそういう観点から、はるかかなたにそのような革命を望みながら、それに対する次善のステップ、次善の踏み石というように考えて、問題を提起し、闘争方針を固め、そうしてやつているわけであります。  さて、ここでそういう考え方の彼らが、勤評闘争ないしは道徳教育指導者講習会の闘争をどういうふうに評価しているかと申しますと、これは彼らから見ますならば、日教組その他の闘争形態が、国家の権力に向つてかみついた、権力を否定し、法律を否定する、こういう考え方であるように一応形式上見えるのでありますから、きわめて絶好の闘争の場である、こういうふうにまず考え、そうして、しからば勤評その他の問題をどういふに申しておるかと申しますと、これは文教場面における砂川闘争である、あるいは、これはプロレタリア解放途上における一里塚の解放運動である、絶対にこの問題については条件的なことは考えられない、あくまで階級闘争に徹して、そうしてこの問題を中心にし、さらに多くの問題をこれに結集して、出政権に対決を迫る。従つてこの問題は、たとえば人権思想であるとかあるいは人民の権利の擁護であるとかいうような、単純な問題に置きかえてはならない。あくまで徹底せる階級闘争に持ち込め、こういうところが全学連、社学同の基本的な考え方に相なるわけであります。これらの考え方は、勤評闘争の前に全学連、社学同がそれぞれ大会を開きまして、これらの考え方のもとに思想を統一し、そのもとに各種の運動のスケジュールを立てて、そうして運動を展開したのであります。運動の展開は、ただいま文部省及び警察の方からお話のあつた通り、全般から見まして、やはり全学連、社学同の学生党員の諸君が、積極的に全体の運動の先頭に立つというようなことが、概観して申し上げることができるかと思うのであります。そんなわけで、たとえば八月十六日の和歌山闘争においても、また九月十五日の闘争——これは全国で約八十八校がストを行い、これに動員された者が約一万五、六千ということに相なるのでありますが、この場合におきましても、また九月九日の上野におきましても、最後にバスの前に飛び込んだのは全学連の学生党員でありまして、学生党員を主体とするものであるわけであります。  以上申し上げたような次第でありまして、こういうような全学連あるいは社会主義学生同盟というものが、今申し上げた考え方のもとにこの闘争に強力に入り込んでいるというところに、実は問題があろうかと存ずるのであります。もちろん、申し上げるまでもなく、今度の闘争というものは各種団体の共闘という形で行われておるわけであります。総評、日教組などを主軸とし、それに今の全学連、社学同あるいは、日本共産党というようなものの共闘という形態で行われておるわけであります。しかし運動の推進、その発展の経過をずつと見ておりますと、だんだん月日がたち、そこに各種の攻撃、反撃のいろいろな形が繰り返されていくに従つて、運動が矯激化する。そうしてその中における動きを見てみますと、今の社学同、全学連ないしは共産党などのその動きの支配権、主導権というものが漸次浸透していく、こういうような状況が看取されるわけであります。以上の次第が大体学生運動についての概要なのであります。
  35. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 午前の会議はこの程度とし、午後は二時より再開いたします。  暫時休憩いたします。     午後一時二十八分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  36. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑の通告があります。これを許します。櫻井奎夫君。
  37. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 私は今日日本教育界の非常な問題となつております勤務評定の問題を中心として御質問を申し上げたいと思うのであります。本日私は、岸総理の出席を要求しておいたはずでございますが、総理が所用のために本委員会に出席ができないということで、赤城官房長官の出席を要求しておいたわけでありますが、これもまだお見えにならない。こういうことであまり時間を空費するのも何でございますので、私は長官が見えるまで文教の最高責任者でありますところの灘尾文部大臣に対して二、三の質疑をいたすものでございます。それでは官房長官がお見えになつて、所要時間が十分くらいだそうでございますから、質問しておる途中であるいは打ち切つて、官房長官の方に質問を移すかもわかりませんが、その点一つ御了承願いたいと思います。  この勤評の問題は、実は九月十五日を境といたしまして、国民の世論と申しますか、わが国の世論というのが相当大きく変つてきておる、こういうふうに私どもは考えておるのであります。九月十五日以後あらゆる新聞雑誌等が、この問題を取り上げております。特に最近の週刊誌のごときはほとんど勤評問題に触れていない週刊誌はないのであります。こういうものに目を通しますと、やはりそれは日教組授業打ち切りという点については非常な批判もございますけれども、それと同時に、文部省の今日の強引な、法律をたてにとつた勤務評定実施強行一点ばりの行き方に対して、非常な批判があることは、これは大臣も御承知のことだと思います。これは特定の、一方的な雑誌や新聞に載つたのではなく、きわめて大衆的なこういう雑誌、週刊誌でありますから、思想的偏向、そういう問題ではなくして、やはりこういう雑誌等の記事、論説というものは大きな国民の声として今日聞くべきものではなかろうかと思うのであります。私は参考までにここにサンデー毎日、週刊朝日等を持つてきておりますが、この中にも詳細に九月十五日を頂点とする勤評問題が扱われておるのであります。これらの記事を見ましても、やはり文部省の今日の態度というものについては相当強い批判を下しておる。特にまた朝日新聞が九月二十三日に一面トップに掲載いたしました勤務評定をどう思うかという朝日新聞全国世論調査、これもおそらく大臣はお目通しであろうと思うのでありますが、これは非常に良心的に日本の一流新聞として、いわゆる確率比例抽出法という方法を用いまして、非常に客観的な世論調査行なつておるわけでありますが、この中においてもやはり現在文部省がやつておる勤評早急実施、これに対して実施を急ぐな、こういう世論が四九%も出ておる。こういう客観的事実がございます。なおまたここで私どもが特に注意を要する点は、その調査の結果日教組の実力行使が世論の支持を得られないのと同じように、政府勤務評定実施を急ぐ方針も世論の支持を得ていない。四九%が政府の方針に反対であり、賛成は二一%にすぎない。自民党を支持するという人でもその四四%が実施を急ぐ方針に反対である。賛成は三四%。また日教組の言い分に同調しない人の中でも、四七%は実施を急ぐことに反対している。賛成は三九%。さらに日教組の実力行使に反対だという人たちの中でも、その五二%が実施を急ぐことに反対なのである。賛成二五%。今までの調査でこのように政府側に立つ人たちから、政府の方針に反対する比率が高く出たのも珍しい。こういう結論を下しているのでありますが、このような最近の世論の動きというものに対して、文部大臣はやはりそれは一方的な考え方であり、大臣の今までの所信というものは微動だもしないのだ。やはりこれは法律にあるのだから何が何でも今まで通り少しも変らずにこれは実施を急ぐのだ、こういう考えでおられるかどうか。大臣の御所信をお聞きしたいと思います。
  38. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 お答えいたします。九月十五日が過ぎましてから後、新聞あるいは雑誌等にいろいろな意見なり批評が出ておまりすことは私も承知しております。ただいま朝日新聞の記事をお述べになりましたが、私もこれは拝見いたしました。いろいろ御意見はございまするし、確かに政府が少しせつかち過ぎるのじやないか、もつとゆつくりやつたらどうかというような意味の御批判もかなりたくさんあるということは、私も承知いたしておまりす。ただ、私の考えといたしましては、別に政府はせつかちなことをやつておるわけでもなんでもないのであります。私どもの説明が不十分であるとか、あるいは周知方法が不徹底であつたというようなうらみも確かにあると思うのでございますが、この問題はきのう急にやつたという問題ではないわけでございまして、相当な期間を経過いたしまして今日まで進行いたしておるわけでございます。しかも大多数の府県におきましてはすでにその計画が立つておる、こういう状況でございますので、一日二日を急ぐとか一時間二時間を争うというような問題ではもちろんないと思いますけれども、私は、今日まで文部省のとつておりました実施の方針においては何ら変更をする必要のないもの、従来通りの考え方でもつて地方で進めていただきたいものと思つておる次第でございます。
  39. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 ただいまの説明では、政府はこれは何も実施を急がないのだ、しかし大多数の府県がすでに実施することを決定しておるから、文部省としてはその実施をやつてもらいたい、こういう御意思のようでありますが、今日大多数の都道府県勤務評定をどうしてもやろうというふうに踏み切つたのは、大多数の府県が自発的にそういうことになつたのではないのです。今日の勤務評定動きというものは、昨年度から文部大臣は詳細に見ておられると思う。昨年の秋に起つたところの愛媛勤評闘争というものを境にして、私どもはあの当時、当時の大臣である松永文部大臣と、この勤評問題について相当突つ込んだ議論をしたはずである。しかも当時松永文部大臣は、このような問題はやはり日本の大きな教育上の問題であるから、政府としてはこの勤評については十分研究をし、そして納得のいくところの結論を得たい、こういうことは、昨年の今ごろ、ちようど九月ごろでありましたか、この国会において再三答弁されておる。私の質問に対しても大臣自身がそういう答弁をしておる。これは議事録を見れば明瞭であります。しかも私どもは、従つて文部省においてはもつと慎重に、この勤務評定というその内容についても十分の検討が行われ、多くの衆知を集めたところのものが出される、そうしてやはり文教委員会あたりにこの内容の一応の提示がある、こういうふうに考えておつたわけでございますが、そのようなことは何らなされず、文部省は一方的にその責任をのがれるために全国教育連絡協議会というものに圧力をかけて、そうして早急に、昨年の十二月二十三日にこの全国教育長協議会の勤務評定規則の原案というものができておる。この原案作成に当つて文部当局から、特にそこにおられるところの木田課長、内藤初等中等教育局長、こういう文部省の官僚から、この全国教育長協議会の評定規則原案の作成に当つては相当なる指導助言であるか、あるいは圧力等があつた、そういうもとにこの評定票の原案ができたということは、今日おおうべくもない明々白々たる事実なんです。そうしてその教育長協議会がこれは自発的に作つたのだ、文部省責任ではないのだ、こういうことで、全国教育委員会に向つて、この試案というものを早く実施しろというふうにあなた方の方ではやつておられるのである。そういう裏の事実というものをおおい隠して、いかにもこれは大多数の都道府県が自発的に決定したかのごとき文部大臣のただいまのお答えに対しましては、私どもはどうも納得がいかない。やはりこの勤務評定全国的に早く、もう三十三年度中は実施するのだということが文部省の方針でしよう。その強硬方針に対して今日このような混乱が起きている。そういう一つの流れというものを見てくる場合、今日こういう国民の世論がほうはいとして起きているときに、文部省は一歩下つて十分考えられる余地があるのではないかというふうに私は考えるのでありますが、文部大臣はいかがお考えでございましよう。
  40. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 先ほどのお答えで、私は勤評実施文部省としては急ぐ必要はないのだというふうにお答えしたつもりはないのであります。今日までの間に相当な日子を費しておるわけでありまして、別に今急に急いでどうとかという問題ではないのであります。さような意味でお答えを申し上げましたわけでございますので、さように御承知を願いたいと思うのであらます。  なお、この勤評のいわゆる教育長の試案と申しますか、基準案と申しますか、さようなものの作成に当りまして、文部省の職員がその相談に乗つておる、あるいは指導しておるという事実はおそらくあつたと私は思うのであります。しかしそのことが直ちに、府県教育長の基準案というものが自主性のないものである、文部省の押しつけたものであるということにはならぬと私は思うのであります。あくまでも教育長の自主性を持つた試案とわれわれは心得ておる次第であります。決してこれを押しつけて、強制して、何月何日までにこれをやれというようなことを命令した事実はないと私は思うのでございます。やはりそれぞれの教育委員会におきまして実際の推移をごらんいただきましても、必ずしも基準通りにはやつておらない、また提出の期日等につきましても、県によつていろいろ違つておるのも御承知の通りであります。その間特に押しつけたとか強制したとかいうふうな事実はなかつたものと私は承知いたしております。
  41. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 大臣としては、文部省の当局がこれを指導したということをこの席上で認めるわけには参らないでございましよう。しかしそれはもう今日常識となつている、そういうことを私はあえて申し上げたいのでございます。それと、これは相当の日数を今日費してきているといわれる。そういう言い方をなさるならば、今日行われようとしているところの勤務評定というものの内容に、果して十分の論議が尽され、それが法制的に見ても十分の納得のいくものであるかどうか。そういうことがなされておるならば、このような今日の大きな混乱はなかつたと私は思う。私どもの方から考えても、今日実施されようとしている勤務評定は、なるほど文部大臣が言われるように全国一律のものではございません。これはもうすでに今日の日本教育行政というものが、教育委員会を中心にして行われておるのでございまするから、各都道府県で相当いろいろニュアンスが出てくるのは当然であります。これがまた一律であつては大へんなことであります。昔と同じことであります。こういういろいろな差異はありましようとも、底に流れておるところのものはやはり一貫した考え方である、私は、法制的にも今日実施されようとしている勤務評定というものについては疑義なきを得ない。これが相当の日数を費して、そういう一切の疑惑を、法制的にも内容的にもそういうもののないという段階に至つた勤務評定であるならば、今日こんな混乱は起きないと思う。日数は費しておるでありましようけれども、その形式、内容ともにはなはだ今日まぎらわしき点がある。こういう点について文部大臣は、これは法律できまつたのであるから、ただ法律を実施していくというのが行政官庁の建前であるから、文部省はそれを実施していくんだ、法律を実施していくんだ、いわゆる秩序を守つていくんだ、こういうことをおつしやつておられますけれども、この内容については、多大の疑問がある。私はその点について文部大臣からじかにお答えを願いたいのでございますが、内容に入る前に、官房長官が見えたようでありますから、官房長官の方に質問を移します。  あなたは非常に時間がないということですが、実は私がただいま質問しておるのは、今日本教育界で大きな問題となつておりますところの勤務評定の問題についてでございます。これは先ほど文部大臣にも御所信を承わりましたけれども、九月十五日を境にいた、しまして、日本の国の中の世論というものは相当変つてきておる、こういうふうに私どもは見ておる。今日専門的な雑誌あるいは一つの思想を持つた雑誌、こういうものでなくて、そういう色彩の全然ないようなこのような週刊雑誌も全部これに触れておる。これは長官も読まれたと思う。週刊朝日にしろ、サンデー毎日にしろ、週刊雑誌、みんな勤評問題を取り扱つております。新聞もとよりそうであります。そういう記事を見ますと、これはやはり日教組授業放棄のああいう態勢を批判すると同時に、やはり文部省の今日の法律一点ばりで強行していこうというこの態度にも非常な批判が出ておる。これは官房長官もお読みになつたと思う。従つて、私はそういう観点に立つて、今日は岸内閣の最高責任者である内閣総理大臣がこういう国民の世論というものを一体どういうふうに考えておられるか、これをただしたかつたのでございますけれども、遺憾ながら総理はここに御出席願えませんので、代理としてあなたにお伺いするわけです。  先ほども読み上げたのでございますが、特に朝日新聞の二十三日の調査であります。これは非常に誠意を持つた、きわめて科学的な、現在の段階で考え得るところの確率比例抽出法によつて調査をいたしておる。これは私どもは大体国民の世論として今日の段階では信頼していいのではないか、こういうふうに考える。その上に立つて、その出てきました結果を見ますと、やはり実施をあまり急ぐんじやない、実施を急ぐなというのが四九%の高率を占めておる。特にもう一度読むことではなはだ恐縮でございますけれども、結論として出ておる言葉は「日教組の実力行使が世論の支持をえられないのと同じように、政府勤務評定実施を急ぐ方針も世論の支持をえていない。四九%が政府の方針に反対であり、賛成は一二%にすぎない。自民党を支持するという人でもその四四%が実施を急ぐ方針に反対である。また日教組の言分に同調しない人のなかでも四七%は実施を急ぐことに反対している。さらに日教組の実力行使に反対だという人たちのなかでも、その五二%が、実施を急ぐことに反対なのである。いままでの調査でこのように、政府側にたつ人たちから政府の方針に反対する比率が高く出たのも珍しい。」こういう結論を下しておるのであります。こういう今日の世論の高まりに対して、一体政府はやはり今までの方針通り——特に十五日を前後として学者グループのああいう第三者による調停というものもあつたわけでありますが、あれも顧みられず今日このような事態になつておるわけですが、こういう世論の高まりの中においても政府はやはり今までの方針通り、今までの方針を一つも変えない、やはりこれは法律にあるのだから、法律を施行するのは政府責任だ、こういう一点ばりの強気で押していこうとされておるのかどうか、その点をお伺いいたしたいのであります。
  42. 赤城説明員(赤城宗徳)

    赤城説明員 勤務評定につきましては、私どもの考えとして、勤務評定そのものはあらゆる社会に行わるべきものだ、ことに公務員は国民に対する奉仕者であるという立場にあるので、公務員は国家公務員であると地方公務員であるとを問わず勤務評定を受けるべきである、こういう建前に立つておるわけであります。そこで、もちろん法律上にもきめてありますが、法律上にきめてあることを離れても、勤務評定は国家公務員は受けるべきだ、また勤務評定実施すべきである。なおさら法律にあるのですから、これを施行するという方針において変りはないのであります。お話のように、九月十五日を契機として、その分析についていろいろ考え方に違いがあるかと思いますが、いろいろな問題が起きておることはわれわれも承知しております。しかし勤務評定実施するということに至るまでには、文部当局におきましても、あるいは教育委員会等におきましても、相当検討を加えた上において実施をする運びに立ち至つておるわけであります。問題は九月十五日を契機として大きくなりましたが、その前におきましてもいろいろ問題もあり、その問題を検討し、研究して実施を決定した県も相当多いのであります。こういう事情にありますので、政府といたしましても、この勤務評定実施する、この方針においては変つてはおらない、これを実施することを進めたい、こういうふうに考えております。
  43. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 それは私の今聞きましたことに対する答弁にはなつていないのです。そのあなた方が相当の時間をかけて研究されたという勤務評定実施することについて、今こういう世論が出ておるわけです。だから、これを何が何でもやはり実施する、そういう全然含みがないことになるのかどうか。これは実施を待てと言つているのですよ。ここにあるのは、実施を急ぐなと言つている。この調査勤務評定を全然実施するなと言つているのじやないのです。だから、勤務評定はどこにもあるから、教員にもやるとか、そういうことを私は聞いているのじやない。今あなた方が研究をされたと称するその勤務評定というものは、提出の期限がきまつているはずでありますが、そういう提出期限までにどうしても実施していく、今までそういう態度つたんです。その態度から一つも変つていないのかどうか、こういうことを私は聞いているのです。
  44. 赤城説明員(赤城宗徳)

    赤城説明員 実施を急ぐなという声もあると思いますが、先ほど御答弁申し上げましたように、実施するまでには相当な検討を続けてきたので、何といいますか、今急いでおるというよりも、もう相当な時間をかけてここまできたので、これを私の方では急いでおるとかなんとかいうことではなくて、もうおそきに失するような気持で実施をしよう、こういうことでありますので、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  45. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 今日まで相当研究をしてきたから、これは予定された時期に実施するのだと言われるが、世論は実施を急ぐなといつているのです。これはまだ実施をしない県もありますよ。計画そのものを持つていない県もあります。また勤務評定の提出が九月であつたり十月であつたり十一月であつたり、各県においてまちまちでございましよう。そういうところをさして、こういう中で期日もたがえずに強引に実施していくのかどうか。こういうことに対して世論は実施を急ぐなといつておる。全然評定の計画もされてない県があるのだから、そういうところに実施を急ぐということはない。こういう一種の国民の声というものが出たけれども、もう予定したことは一つもここで考慮する必要はなく、まつしぐらにただ実施一点あるのみ、こういうふうに了解してよろしゆうございますか。
  46. 赤城説明員(赤城宗徳)

    赤城説明員 先ほど申し上げましたように、おそきに失するようなことで、これを実施しようということにいたしたのでありますが、今お話のようにいろいろな議論もあるかと思います。しかし政府といたしましてはいろいろな議論はあるといたしましても、これを実施の上において検討することにはやぶさかではありませんけれども実施しない前からこれを延ばすとか中止するとかいうような考えを持ちませんで、ともかくも相当検討の結果実施することにいたしたのでありますから、実施というすべり出しはどうしてもしたい。その後におけるいろいろなことに対しましては、これはよりよい勤務評定がなされることは私ども期待しておるのでありますから、そういうことにつきましては考える余地があるといたしましても、すべり出しといたしましては既定の方針通り勤務評定実施していく。無理にも強引にもというわけではなく、相当検討を加えた結果この案でいこうということでありまするから、ふれは実施して進めていく、こういう考えであります。
  47. 辻原委員(辻原弘市)

    辻原委員 関連して。総理のおかわりで官房長官が来られましたので、特に私は内閣全体の態度というものについてもう少し伺いたい。櫻井委員の方から問題が提起されましたが、何かくつの裏から足をかいているような御答弁でありますので、はつきりいたしません。岸内閣として今のこの勤評の問題についての世論の動向を一体どうお考えになるかということは、私は実は重要な問題だと思うので、この点について官房長官の一つはつきりした御見解を承わつておきたいと思います。  それは今櫻井委員から指摘をいたしました二、三日前に朝日が発表いたしました世論調査の動向についても、話のあつたように四九%、すなわち五〇%、半分の者は少くともこの段階において強引な勤評実施ということについては一応政府も反省をして、公正な第三者をまじえた審議機関においてその取扱いをやつてもらいたい、こういうような世論がはつきり現われておる。この間の七人の学者を中心にあつせんされた学者のお考えも、われわれ仄聞するところによると、また新聞の発表によりましても、その表現等についてもかなり苦心をされておりますが、そうして言つていることは、結局はやはり審議会において公正な第三者、あるいは特に専門的な立場にある中立的な学者の方々の意見を十分反映さすために、この際審議機関を設けてやるべし、こういうふうなやはり世論の動向と同じような見解を表明された。さらに十二日に、これは新聞の報道によりますと、あなたも同席をせられておりまするが、読売新聞社が委嘱をいたしました十三人の有識者の方々が、かなり詳細に現地にわたつて調査をせられた結論をまとめられて、それをわれわれ社会党の党首である鈴木委員長、それから自民党の総裁である岸総理にそれぞれ具体的に現地の状況を述べて、それに基く結論を申し入れられております。それを見ましても、やはりその最終的な取りまとめの結論というものは、一つこの際独立した審議会を設けて、そうして公正な行政を行うための十分なる資料にしてもらいたいということを申し入れられておるのであります。  こういうふうに考えて参りますと、結局世論調査という形において現われた世論の動向、それから常識的に良識を持つ人々といわれておる方々の意見も帰するところは同じであります。またわれわれ社会党の今日とつている立場、また見解も、いろいろ論議はありましよう。しかしながら論議があるからこそ、論議が予想されるからこそ、従来これは岸内閣といわずあらゆる内閣は、いろいろ世論の動向の中に問題が出てくるであろうということを予測した場合には、必ず審議機関を設けるかあるいは諮問機関を設けるか、何がしか補助的役割を果すそういつた民意聴取の世論の動向を見きわめる委員会において検討して、できるだけ行政の中で摩擦を引き起さないようにという配慮が行われた、これが私は民主政治だと思う。ところが今回の場合だけは、かくのごとく的確に世論の動向というものが現われてきておるのに、政府としては今なお一向にこの世論の動向の中の最終結論である審議会については、その必要を認めないと文部大臣も言われる、またあなたもそのような見解を今表明されておる、われわれまことに不可思議であると同時に、岸内閣のいわゆる行政運用というものが、すでに国民の世論を聞く必要を認めていない、こういうように判断をせざるを得ない。この点について一体官房長官であられる赤城さんは、私は個人的にはあなたは文教の問題についてはベテランでもいらつしやるし、また長く議会生活をおやりになつて政治家としてもまことに卓見を持つていらつしや、るので、その人たちがこの席上において世論に何ら耳を傾けないような御意見を発表されるということは、これはまことに私個人としても遺憾にたえない。従つて一体世論というものについてどういうふうに御判断をされておるのか、この点をまず一つ承わりたいと思います。
  48. 赤城説明員(赤城宗徳)

    赤城説明員 おつしやる通り議会政治におきましては世論の動向を見きわめ、あるいは察知して政治を行うというにとは当然のことでありますので、私どもといたしましてもそういう気持で、やつておるわけであります。ただこのたびの勤評問題に対する世論、この世論がどういうところから出たかというにとも一つの問題点ではないかと思います。あまりこういうことは言い過ぎるかもしれませんが、九月十五日の一斉勤務評定反対闘争といいますか、あるいは学童、父兄を巻き込むというようなことに対して、それを直接の動機としての判断ということもあり得ると思うのであります。かりにそういうような、何といいますか、大きな事態というものを冷静に考えたあとの世論ということもまた考えられるんじやないか。そういう点から考えますると、世論は尊重いたしますが、また国会でありますから、国会における反対党である社会党の御意見につきましても、聞くべきものは聞くべきであるというふうに考えております。ただこの問題は先ほどから申し上げましたように、相当研究をした結果実施をするということにいたしておりますので、その実施ということがなければ、ほんとうにこの評定の方法等についてよくいつているのか、よくいつていないのかということについての判断というものはまだ早い、こういうふうに私どもは考えておるのであります。ことにその実施の内容等につきましても、相当研究をした結果、私どもとしてはこの方針でやるべきだ、しかもこの評定の内容等につきましても、御承知の通り教育委員会等で地方の教員諸君との間の相談、話し合いといいますか、検討を続けた結果でありますので、検討はいたしたわけであります。こういうふうなことで実施をすることにしたのでありますので、この点につきましてはやはり実施するということが政府の考え方としては当然だと私は思うのであります。今お話もありましたが、九月十三日に岸内閣総理大臣が談話を発表いたしました。その中におきましても、御承知のように政府としても実施の結果によつて今後さらに検討を加える用意があることは申すまでもないところであります、というふうに談話でも言つているのでありますので、決して世論や実施の結果を無視するということはありません実施をして、その結果によつては検討を加える用意がある、すなわち世論や実際の運営についてはなお検討を加える用意があるのでありますけれども、しかしその前提としてはどうしても実施してその結果を見る、こういうことが現在の段階では必要であり、また当然そうすべきである、こういうふうに考えております。
  49. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 官房長官は非常に時間を急いでおられますので、簡単にお願いいたします。
  50. 辻原委員(辻原弘市)

    辻原委員 急いでおられますけれども、重要な問題でありますので、もう二、三分いただきたいと思いますが、先ほど櫻井委員に対するお答えも、今日すでに十分研究を遂げた状態であるから、従つて今始めるということも早過ぎるのではないので、むしろおそきに失するうらみがある、こういうことを言われておるのですが、私は遺憾にして文部省が十分な研究を遂げたとは考えられない。それはしばしば大臣の御答弁を聞きましても、また今回の勤評実施の経過を見ましても、あの今全国教育委員会が採用せんとしているのは、あれは教育長協議会の案であつて文部省の案ではないと私は思う。従つて文部省が独自でその案を立案せられて、独自にそれを指導要領のように各府県に通達をされて、それに準拠しておやりになるということであるならば、これは文部省が十分研究を遂げたということを言えるでありましよう。しかしながらあれは教育長協議会案であつて、しかもさつきも文部大臣文部省勤評実施を促進したという具体的な事実はない、非常に強制したというような事実はないと言われた。その言葉を少し味わつてみれば、これは文部省は、勤評実施は各府県でやるから、文部省はそれについて、とかく府県の行政について左右するようなそういう行き方をとつていないということを申されたのであろうと思う。そういうことを考えてみれば、文部省だけを考えてみましても、まだまだ私は、——まだまだというよりも、その研究が独自に行われておる、独自に十分研究が積まれておるとは判断できない。赤城さんが今おつしやられた十分研究を積んでおるというのはどこのお話ですか。そのことをまず一つつておきたい。  それからこれは時間がないようでありますから、一問一答をやるわけにはいきませんので、もう一つ伺いたいのですが、かりに文部省が何がしかの方法で、たとえば内藤局長なりあるいはは木田地方課長なりが、文部省の案ではないと称しつつも、実際には教育長協議会と具体的に相談を遂げて、そうして一つの成案をまとめてそれが教育長協議会の試案なるものになつた、こういうふうにかりにおつしやるとするならば、一応文部省の方ではそれは十分その研究に参画され、その研究の成果をもつてあの試案に現われたのだ、こういうふうにいえるかもしれませんが、しかしよしそうであつたといたしましても、今日世論が希望しておることは、やはり行政官庁たるの文部省はどうも最近少し強きに過ぎる、あつちこつちで道徳教育の問題もがたがた起つております。しかしこれとても結果論から見れば、あなた方はすぐ学生がけしからぬ、あるいは教組がけしからぬとおつしやるかもわからない。しかしやはりそこに勤評の問題と同じように、世論にかなりのそのやり万、方法というものについて反対の意見があるにかかわらず、無理押しをしようというところに激発をしておる原因があるのです。第三者的な世論というかあるいは公正といわれる方々を交えての一つの研究、検討の過程を経ないでこれをやろうという文部行政が、今日の根本的な紛争の原因となつておるといわざるを得ない。だから赤城さんが先ほど言われた十分な研究を遂げておるということは、かりに文部省が遂げておるといたしましても、どこに一体世論の要望するようなそういう公正な審議機関、私が冒頭に申し上げたように、たとえば教員養成の大学をどうするか、中央教育審議会の議によつて検討しておる、あながち立法化を要する問題ばかりが審議会にかけられておるのではありません。指導要領の改訂にしてもそう、いずれの場合でも適切な審議会の議を経て、そうしてスムーズに運営するというのが今日までの態度である。ところが事勤評の問題に至つてはそういうような過程を経ていない。また同時にかりに文部省がいろいろ理屈があろうといたしましても、世論の期待するところは、教育上の混乱はこれはどちらがいい悪いの問題でなしに現実に困る。現実に困るから現実に困らないようにしてくれというのがこれが国民大多数の素朴な要望だろうと思う。だからこの間の学長あつせんの最終的な声明書を見ましても、われわれ政治家としては——政治家というのははなはだおこがましいかもわからぬけれども、少くとも政治に参画するものは、あの声明書の末尾はやはりそのまま沈み下してそつちのけにするわけには参らない。政治の良識に期待するとある。これは私は単に学者の方々の御意見だけではなしに、あなたもまた文部大臣もそれぞれ選挙区の地方をお回りになつたらいろいろな御意見を聞かれるだろうと思うけれども、その中には何とかならないだろうかという素朴な意見があります。これが私は文学的な表現をもつてせられた学長の声明の中にある政治の良識に期待する、こういう意見に通じておるのだろうと思うのであります。そういう意味であなたは十分研究を積んで今日に至つておるというのが、われわれの判断はそういう機会はなかつたのではないかと思う。もしそういうような十分な過程を経ておられたならば——われわれはそのことの事実を知りませんが、おありてあるならば、ここで申していただきたい。同町にまた文部省が研究を積まれたとあなたが言われるのが、どこで研究を積まれたか、そのことについてもこの際参考に承わつておきたいと思います。
  51. 赤城説明員(赤城宗徳)

    赤城説明員 もちろん御承知の知り勤務評定実施するということにつきましては都道府県において十分研児した、こういうふうに私は考えております。また文部省文部大臣の権限としては、指導とか助言あるいは勧告というような権限も持つておるのでありますから、文部省自体としても勤務評定は大事なことだというふうに考えて、相当研究を続けており、都道府県等において十分検討したものば適当なものだ、こういうふうに私は考えておると思います。  それから審議会の問題でありますが、一般公務員は御承知の通り勤務評定が行われております。勤務評定が行われて、もしその評定の内容等において直すべきものがあるということでありますならば、各省等におきましても評定を実施して、その結果によつてはいろいろ研究をいたしておるのであります。でありますから、一般公務員の勤務評定実施した場合においても、別に審議会とか委員会とかいうものを設けずに、やはり実施をして、その結果によつて是正をすべきものは是正をするという態度をとつているわけであります。まあ教育につきましては特に重大な問題でありますから、勤務評定も検討を続けているうちにおくれたというような形になつておると思いますけれども、一般公務員におきましても別に審議会を設けているというようなことはありません。しかし今のようなことでありますから、この実施をして、そうして実施の結果によつてはそういうことも考えられないとは申しません。しかし何よりもこの時期においては実施することが先決だ、十分の研究も都道府県でしたことでありますし、いろいろ問題は起きておりますけれども、しかし私は、これは実施をして、その結果によつていろいろ考えるべきものだ、こういうふうに考えておりますので、政府の方針としては、御意見もよくわかつておりますので、まず実施をしてこういうことを進めて、その結果によつては御意見のある点も取り入れたい、そういう態度実施をしたいと思います。
  52. 辻原委員(辻原弘市)

    辻原委員 都道府県で十分な研究を遂げているということは、これは私はちよつと当らぬのじやないかと思います。  それから、実施をしたあとで正すべきは正そうという行き方も、まことにこれは現実から見れば、はなはだ失礼ながら、私はその論拠は空疎だと思います。なぜならば、すでに東京都においてもこれは実施をしてそのことをやつておる。ところが常にその内容については問題がある。だからこれを一つ検討しよう、そういう態度理事者も出てきておる。愛媛においてもやはりそういうふうに検討機関を設けて検討しなければいかぬ、また私の県などでは、かなりこの問題の賛成、反対が激しく争われた、そういう県でありましても、賛成の側においてもこの内容については無理なところがあるということで、一般にはこの内容についてはあまり見られてないわけです。この間「サンデー毎日」ですか、いろいろアンケートを取られて、私も回答し、ここにおられる臼井さんもやつておられましたが、あれをぱらぱらと見せられると、かなりいろいろ見ているつもりでも、あるいは唐突に見せられて、これは一体どういうことですかとやられたら、これは即答できがたいほど内容の点については知られていない。勤務を評定する具体的な項目についてはまだよく知られていない。だからそれがどんどん実施になり、あるいは一般国民に知られていけば、非常に不備な点があるのは実施をしなくてもわかつているのです。だから私たちは言つているのです。そういうふうにすでに実施をしている県もあるのですが、その内容たるや大同小異です。そうなればあの試案を中心にした内容などというものは、これは実施したあとに何するということよりも、それに気がつけば先んじてそれを是正するというのが行政当局の態度であり、行政を執行していく場合の能率的なやり方です。われわれはこういうふうに、政府に非常に好意的な意味ででもこういうことを申し上げるのです。ところが赤城さんのは実施をしてみなければわからぬという前提に立つている、都道府県で十分研究を遂げているという前提に立つている、文部省も研究している、ところがその間に抜けたものがたくさんある、抜けていなければ学者は意見を申しません。世論も、十分研究を遂げておるのを知つているのだつたら、この内容でけつこうだ、こういうふうに言うかもしれません。しかしいろいろ知らない疑問が出る、あるいはいけないという疑問が出るのは、十分そういう各般の意見を取りまとめていない証拠なんです。ですから、この際、幸いに組合の方も一応審議会を作つて、そして第三者を入れて検討するならば、そこに一つおまかせをしよう、こういうふうに出てきておるのに、なぜ政府はそれをもけ飛ばしてまで急がなければならぬのか、ここに今日の世論の大きな疑問があるのです。それほど行政というものが無理押しをするということには別な危険性を感ずるというのが、今日の世論の中にある良識の声だと私は思う。しかもその中には警察官が動員され、いろいろな派生的な問題が起り、カメラ・マン、新聞記者までが警察官に殴打されるという事態は、何と考えても、これは賛成、反対というような一つの議論以上に問題が発展し過ぎている。従つてこの際政府も冷静に国民の声を聞いて、大所高所からの政治的な判断でもつて、幸い世論の帰結するこの審議会を設けて、そこにおいて政治に対する信頼感、行政に対する信頼感を取り戻すべきではないかというのがわれわれの議論なんです。いま一度官房長官のこれについての御見解を承わつて、あなたの意見に聞くべきところがあるならば、われわれも既往にこだわらずにその方針に協力いたしましよう。また政府としても与党自民党におかれても、ただ教育の問題でこういう事態を招致しておるということは、何人が考えても好ましい姿ではないのでありますから、ここらで私はお互いの政治的良識というか、あるいは国民の期待にこたえるというか、そういうような腹をはつきり打ち出して、問題の解決に当るべきだと思います。承わりたい。
  53. 赤城説明員(赤城宗徳)

    赤城説明員 勤務評定の内容についてあまり知つていないのじやないか、こういうお話がありました。事実そういうこともあるかと思いますが、勤務評定は御承知のように四つか五つの標準で勤務評定をするということになつております。しかしそれについては、教育委員会が校長に対する勤務評定をする場合の心がまえの標準、あるいはまた校長の教員に対して勤務評定をする場合の標準というものが相当こまかく出ています。勤務評定そのものは三つか四つか五つの点で評定をするということになつておりますので、それを評定するに際しての一つの心がまえというか標準といいますか、そういうものについては詳しく出ておるかと思うのであります。でありますので、評定そのものは四つ、五つのもので、その心がまえを、標準をきめてあるということでありますから、その標準そのものはそう科学的にそろばんで出るようなものではなかなかないと思います。しかし標準そのものは決して私は悪いものだとは思つておりません。こういうことでできておるのでありますから、これに従つて実施をして、そうしてその実施の結果によつていろいろ御意見等を承わつて検討する、これが私は筋だと思つております。ことに今までよりも、絶対反対という立場でなくて、辻原さんも櫻井さんも、非常に建設的に考えていただいてきておることは、政府としても非常に力強く感ずる次第であります。
  54. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 それでは文部大臣の方に質疑を続行いたしますが、ただいまの官房長官の答弁を聞きましても、公務員にもやつているからというようなことでありますけれども、職階制がはつきりしておる一般公務員と教育公務員とは違うのです。そういう根本的なことでさえもわからずに、ただばく然と、公務員もやつており一般もやつておるから、教師もやらなければならない、こういう素朴な議論では、やはり納得できないのです。それはそれといたしまして、大臣答弁によりますと、相当の期日をかけて研究をしてきておる、文部省も、はつきり研究をしてきておる、こういうことりをおつしやつておるわけであります。従つて、相当な期間をかけて研究してこられたということになれば、やはりこれは法制的にも何らの疑点のないすつきりしたものでなければならないと思うのです。ところが私どもとして、今日出されておる勤務評定というものが、内容的においても非常な疑義の点がある。そういう勤務評定実施する前に、まず政府としてやるべきことがたくさんあるのであります。そういうものを放置しておつて、ここに勤務評定を強行しようとなさるところに、今日の大きな問題があるのではないか、こういうふうに私どもは存じております。従つて私は、一体勤務評定とは何であるか、この問題から入りたいと思います。大臣がしばしば、これは法律にあるからやるんだ、こうおつしやつております。なるほどこれは法律にある。その唯一の法的根拠は御承知のように地方公務員法第四十条で、職員の執務について「任命権者は、職員の執務について定期的に勤務成績の評定を行い、」云々とある。これがこの唯一の法的根拠です。この地方公務員法第四十条の流れてきた根元というのは、国家公務員法第七十二条、「職員の執務については、その所轄庁の長は、定期的に勤務成績の評定を行い、その評定の結果に応じた措置を講じなければならない。」今この法的根拠というものはこの二つしかないのです。特に、国家公務員法は置くといたしまして、ただいま行われておる教職員勤務評定の法的根拠はこの法律です。しからばここでいうところの職員の執務について、職員の執務とは何であるか、こういうところからやはりはつきりしていかないと、勤務評定実施するという意義はなくなつてくる。教員の執務については人事院規則の十の二にはつきりしておるように、「勤務評定とは、職員が割り当てられた職務と責任を遂行した実績を」、当該官庁の「職務遂行の基準に照らして」、云々ということが出ております。従つてこの職務というのは職員が割り当てられた職務、こういうことになる。しからば学校の教師が割当てられたところの職務というものは何であるか、これを法律的に立証するものは何であるかといえば、これは学校教育法第二十八条以外にはないでしよう。教職員の場合の職務内容は何であるか。これは二十八条に出てくる、いわゆる「校長は校務を掌り、所属職員を監督する。」それから「教諭は、児童教育を掌る。養護教諭は児童の養護を掌る。」これが教職員の職務であります。これ以外の法的根拠というものは出てこない。しからばこれがいわゆる学校教育法二十八条の教職員の職務内容であるとするならば、当然教職員勤務評定というものは、その職員の教育活動の評定でなければならない。従つてその教員が、割り当てられたところの教育活動をどのように果しておるか、こういうことを中心にして、これを規準にして評定することが教職員勤務評定の規準でなければならない。またこの人事院規則第二条の二項には、この勤務評定というものは、あらかじめ試験的な実施その他の調査行なつて、評定の結果に識別力、信頼性、及び妥当性があり、かつ容易に実施できるものである、こういうことを確めたものでなければならないとある。どうしてもこの三つの条件というものは、勤務評定実施するときの前提条件なんです。こういう結果からこの人事院規則十の二の一条、二条、こういうものに拘束されて、今日考えられておるところの教職員勤務評定というものが、教師の資質をこまかく各項目に分解して、それぞれについて評定するといういわゆる品等尺度法という立場をとつておるので、これは一応形式的にはきめて科学的な観察のごとく見える。しかしながら学校先生である場合は、その教育活動を判定することが品等尺度法によつてほんとうにできるかどうか、こういう点については私どもは多大の疑問点を抱かざるを得ない。特に今日行われようとしておるところのこの勤務評定を見ると、個人の資質あるいは個人の特性、能力、適性、性格あるいは平生の教師としての態度、素行はどうであつたか、こういうものが評定の内容としてかなりの比重を占めておる。そういうことになれば、これは教師各個の世界観であるとか、政治的見解であるとか、あるいは私生活であるとか、あるいは個人的な性格、こういうものまでも評定をしていくわけであります。ここに今日考えられておる、あなた方が多年にわたつて研究してきたという勤務評定というものが、実は勤務評定の範囲を逸脱をして、さらにそれよりも大きな人物評定的要素を持つてきている。そしてこの評定というものは、一切本人には見せない、丸秘文書になつておる。そしてそれはその人の行くところについて、一生涯評定というものがまわつていく。こういう勤務評定というものを一体どこの国で採用しておるか。おそらく世界各国において勤務評定実施しておる国もあるでありましよう。特に先般長谷川氏はアメリカに行つてこれを調査してきておられる。先般の当委員会においても調査の結果が報告されたわけでありますが、そのような一方的な、上の方が下の方を本人に一切これを見せないで評定していくというような評定方式、こういうものについて特にそれが個人の私生活、こういうものにわたるという場合は、本人はそれに対して一言も、半言も弁解することを許されないというような、このような評定方式というものは、明らかに憲法上基本的人権を侵害するおそれがある。特にこのような個人の世界観なり政治的見解なり、私生活、こういう問題を行政力が上の方から規制していくということ、私生活においてもし間違いがあるとするならば、それはお互いの自己批判なり相互批判によつて改めるべきものであつて、それを上の方で評定をしていく、こういう行き方というものは、はなはだ矛盾をしたところの行き方である。これをしもあなた方は長い期日をかけて研究した結果だとおつしやるならば、私はこの立案者の今日の考え方、これを疑わざるを得ない。文部大臣いかがです。昔の先生であれば、公私両生活を無制限に制限され、いわゆる至誠、全く忠誠を天皇に誓つたところの、天皇のための教師であつたかもしれない。今日新憲法下におけるところの公務員というものは、そのようなものではないと思う。こういう点について長い間研究したとおつしやるが、この点は文部大臣いかがお考えです。
  55. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 今回の勤務評定につきましては、またおしかりをこうむるか存じませんけれども、現行法に即して勤務評定の計画が立てられておると思うのであります。立法上の議論になりますれば、これはまた別のことになろうかと思いますけれども、さような意味合いにきおりまして計画が立てられて、これが実施に移されておるわけであります。内容にわたつていろいろ御疑問の点をおあげになつておりますから、詳細な点は局長からお答えいたさせます。
  56. 内藤説明員(内藤譽三郎)

    内藤説明員 ただいま櫻井委員から人事院規則の一〇—二を御引用になつたわけですが、法的体系といたしましては、国家公務員と地方公務員は別でございますので、必ずしも人事院規則が適用になるわけでございません。しかしながら地方公務員につきましても、勤務評定に関しましてはこの人事院規則一〇—二を十分尊重をしておるのであります。今おあげになりました職務と責任を遂行した実績を——こういうお話でございましたが、これは勤務のしぶりの問題でありまして、この活動を、教師の場合ですと、学級経営なりあるいは学習指導なりあるいは生徒の生活指導あるいは研修、修養の面から、あるいは校務分担等の面から、いろいろとこれを捕捉しておるのであります。特に後段にあげられました特性、能力の点でございますが、これも人事院規則一〇—二に、職務に関達して見られた職員の性格、能力及び適性を公正に示すものでなければならぬ、こういうふうに、勤務評定につきましては職務の性質の方から一つ見る。同時に、他面職務に関連して見られた職員の性格、能力及び適性というものを職務の性質の方から一つ見る。同時に、他面職務に関連して見られた職員の性格、能力及び適性というものを把握しなければならぬ、かように規定されておりますので、この二つの面から勤務評定が行われるわけであります。ただいまお述べになりましたような教師の世界観あるいは人生観、あるいは私生活にわたるようなことはないと考えるし、またそうあつてはならぬものと考えております。  それからもう一つお尋ねの件で、いわゆるライト・オブ・アピールといわれておる制度、なのでありますが、職員の勤務評定に関して不満があつた場合にはどうするか、こういうお尋ねでございますが、この場合アメリカのように勤務評定の制度が進んでおるし、また民主主義が普及しておる国におきましては、これは本人に一応見せまして、本人の意見を聞くことがあります。しかしこれは必ずしも聞かなければならぬという趣旨じやなくて、決定権はあくまでも評定者にあるわけであります。この制度を日本がとつておりませんのは、これはすでに人事院が判定をしておるのであります。日本の現段階におきましては、本人に勤務評定の内容を見せるということが適切でない、むしろ見せた方が弊害が多いという点から、これは人事院でそういう判決を下しておりますので、この判決に従つたまでであります。しかしこのことは決して将来のことを約束しておるのではなくて、日本の民主化が進み、評定者が自信を持つて評定できる、こういう段階になりますならば、これは本人に示すことも一つの方法かと考えるのであります。この制度が各国全部に取られておるかというと、必ずしもそうでない。諸外国においては、日本と同じように、評定の機密を保持するという点に重点を置いている国々もあるわけであります。この点を申し上げておきたいと思います。
  57. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 内藤さんの答弁は、私はあまり必要としないのです。大臣に大きなところからお答えを願いたいのです。法的にこまかい何条々々というようなことになれば、あるいはあなたのお答えも必要とするかもしれない。あなたは都合のいいときには人事院の判定を引き出し、それから都合の悪いときには人事院を伏せておく。そういう答弁じや困る。人事院規則の一〇—二というのは、明らかに勤務評定を拘束しておるのです。地方教育行政の組織並びに運営に関する法律の四十何条ですか、あれはだれが計画し実施するかということをきめておるのであつて勤務評定そのものの内容は、この法的体系の上から言つて、やはり人事院規則の一〇—二というものが大きな法規なんです。必ずしもこういうものにとらわれぬでもいいというようなことをおつしやつておる。これはとんでもない見解の相違だと思う。  次に、これはこの前少し堀君も触れておられたような問題でございますが、やはり大きな問題点があるわけです。いわゆる評定をする人と評定をこうむる人との間の問題点が残つておる。これは地方教育行政法の四十六条に明らかに、この間堀君が言つたように、実施者はやはり地教委です。法文の建前から読んでいきますと、決して都道府県教委ではない。計画権というのは都道府県教委にありますが、実施権はやはり一番身近にあるところの地教委にある。ところが今日、この地教委は御承知の通り任命制になつておりまして、教育に関する専門的知識、教育に関する専門的指導力というものは、国民はだれもこれを信頼してない。地教委に教育に対する専門的知識があり、専門的指導力があるかどうかということは、今日ほとんど——たまには地教委の中にも、専門的な人が委員になつておられるところもありますけれども、それはごくまれなんです。日本全国の、特にいなかに行つてごらんなさい。ほとんど教育に関係のないような人が委員になつて、それが実施者になつておる。特に教育委員会委員教育長をかねて、この教育長というのは、今日しろうとの人が多い。こういう者が、学校教職員という免状を有する専門職を評定しようという、ここに私はやはり法的な非常な矛盾があると思う。特に評定内容は、先ほど言つたように、教員教育活動そのものを評定する。それをましろうとの地教委というものが評定することが可能であるかどうか。なるほどそういう建前から、第二十六条による事務の委任をやつて、第一次評定者として校長を充てた、こういうことがあるのでありますが、しかし第一次評定者があるから、第二次評定者というか、この教育委員は第一次評定者よりも専門的知識がなくともいいという、そういうのが科学的評定であるかどうかということについては、はなはだ疑念なきを得ない。こういうところにも多大の問題点を残しておる。特に校長が専用的立場に立つて評定するというのでありますが、この場合も——灘尾さん、よく聞いておいてもらいたいのですが、あなたがこういう問題を部下にだけまかして、その内容を十分お知りにならないと、やはり部下の言う通り、法律通りつているに違いないから、何が何でも強行するんだ、こういうことが出てくる。私どもが指摘しているこういう矛盾をどういうふうに解決しようとしているのか。今日行われようとしている勤務評定には、多大の矛盾があります。特に校長に第一次評定をまかしたところで、校長というものは全教科にわたつて精通しているのではない。特に中学あたりは各専門教科になつていて、英語の免許状を持つておる校長が、理科とかいろいろなものの内容にまで精通するはずがない。この評定に校長を参加させたということだけで、勤務評定が果して完全にできるのだというような科学的根拠は出てこない。ほんとうの勤務評定をやろうとするならば、やはり教員教員会議を母体にして、お互い教員同士の相互批判というものをこの中に取り入れ、自己批判もこの中に取り入れられなければ、この教員が果してその職務にどれくらいの実績を上げておるかどうかということを外から判定することは不可能なんです。これがやはり教育の実態なんです。そういうところに非常な矛盾点があるということ。あなたは法律できまつたからこれはもう非常にりつぱなものだ、こういうような観点に立つておられるから、私はこの評定者と被評定者の間における、現在の日本教育行政の中におけるこのような大きな矛盾、こういうものもこの反対の大きな理由になつておるということを文部大臣に申し上げたいのです。  次に、第三点といたしましては、地方の小規模の小中学校における教員の免許状の問題でございます。今日小規つ模学校には、教員定数の問題から十分な教員が配置されていない。そうして免許状以外の学科を教えているという事態がたくさん出てきておる。これは明らかに免許法上の違反です。免許法というはつきりした法律があるのに、この免許法に基かないで授業をやらしておる。理科の免許しか持たない者が免許外の数学も教えている。こういう実態は、少しいなかに行けばたくさんございます。そういう事実を一体文部大臣は知つておられるのかどうか。免許法上の不正常な授業が今日公然として行われておる。免許状を持たない学科を教えているその先生教育活動を、どれくらい教育の効果を上げておるかどうかということを評定することにも大きな矛盾点が存在する。さらに文部大臣御承知のすし詰め学級の問題、こういう周題は今さら言うまでもないのです。これは文部省の統計がここにはつきり出ておる。今日五十一人から五十五人までの生徒を詰め込んでおる学級は、小学校で六万五千五、中学校で三万一千七百九十二、五十六人から六十人までの学級が、これは概算ですが、小学校で三万、中学校で七千、六十一人以上の学級というものは、小学校で四千、中学校で一千、これは明らかに教師の負担能力以上のものをしいておる。私は五十人というこの教育法の規定をたてにとつてつているわけではない。しかし今日だれが考えても、五十六人、六十人の生徒を預けて、それで果して教育効果を上げ得るかどうかということは、これは多大の疑問なきを得ないのです。こういうことも一つも整備されていない。そうしてそういうもので教育内容を評定しようとする。それからさらに養護教諭の問題でございますが、これは先般大臣が新潟においでになつたときに、私は祝辞としてあの場所で申し上げましたから、ここでは簡単に申し上げますけれども、ああいうふうに法律で、学校には校長、教諭、養護教諭を置くとはつきり明記してあるでしよう。しかるに今日この養護教諭の配置状況を見ると、小学校はわずか三〇・一七%しかないのです。中学校は二三・一五%、あとは養護教諭というものはいないのです。そうして普通の教育をつかさどるべき教諭が養護教諭の行う児童の養護までやつておる。虫歯の始末から腹下しの始末、そういうことをみんな先生がやるのです。さつと割り切つた職階制のあるところの職務における勤務評定でなく、こういう条件というものがまだ雑然としていて、はつきり分限化していないようなところにおける先生方のこの勤務を、一体どこを中心として評定するのであるか。六十人、七十人の生徒を受け持ち、あるいは養護教員もいない、事務職員もいない、虫歯の心配をしたり、給食費の徴収をやつたり、ぞうきんの配当、PTAの会費の徴収、こういう雑務に追われているのです。そういう環境の中に置きながら、この職務の能率的な評定をするということ自体が大きな矛盾をはらむ。この点については大臣はどういうふうに考えられるか。こういう環境、その周囲の状況というものが整備してない学校の万が多い。そういう中で、全国一律ではないが、一県一律の勤務評定を強行していこうとする。ここに私は非常に疑点を持つのでありますが、大臣はどのようにお考えになりますか。
  58. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 今回の勤務評定につきまして、もちろん人事院規則、その趣旨については十分これを尊重していくべきであると私も考える次第でありますが、ただ法律の体系から申しますと、先ほど局長が申しましたように、別の問題である、こういうふうに考え、ている次第であります。  評定者と被評定者の関係等についてのお尋ねでございましたが、現在の任命権者が勤務評定をやるという建前から申しまして、今日のような計画でもつてやる以外に私は方法が見つからぬのではないかと思います。別の制度の立て方をすればこれは別でございますけれども、現在の制度のもとにおきましてはただいま地方で計画せられておりますようなやり方でもつてやる以外に道はないかと思うのでございます。また教職員勤務評定について、第一次に校長がやるというのが一番現状に即した適当な方法ではないかと思うのでございます。従来も職員の人事につきましては、校長がいろいろ意見を申請するというふうなこともございましたが、従来のやり方に比べますと、今度のやり方の方がよほど進歩しており、よほど改善せられたものというふうに私は思うのでございます。  なお免許状のない者が教科を担任しているというふうな事例をおあげになりました。あるいはまた養護教諭のことについてお話もございましたが、免許状のない者が他の教科について教えるというふうなことについては、それぞれその手続はとつていることと思いますが、決してこれは望ましい姿ではございません。できるだけちやんとした状態に持つていくように努力しなければならぬと私も思うのであります。また養護教員等につきましても、できるだけその整備充実をはかつて参らなければならぬということは、私もさように考えるものでございます。そういうふうに今日教育の上におきまして改善を要する点がまだたくさんあるということは私も率直に認めなくちやならない、同時にまたその解消に向つて皆さんとともに努力して参りたいと思うのでございます。ただそういうふうな状態があるから、それじや勤務評定はむずかしいじやないか、こういうようなお尋ねでございますけれども、私はやはり勤務評定につきましては、その人その人の現実の環境、現実の状況というものは十分頭に入れて公正な評定をなすべきである、かように考えておる次第でございます。山の中の僻地の先生勤務状況、都会地の先生勤務状況、これは確かに違つておると思うのです。その違つておる事実というものについては、もちろんこれをよく見まして、山の中の先生に対しましては、やはりそれに応ずるように適切な勤務評定が行われなければならないと考える次第でありまして、校長諸君もそういう点については十分考慮の上で、公平な評定を下すと私は期待いたしております。
  59. 櫻井委員(櫻井奎夫)

    櫻井委員 そういう教育環境、条件と申しますか、そういうものの非常な不整備であるということは、これは大臣も認めておられる。そういう中でどうしても強行していこうと言われるが、まだそういうものが残つておるならば、それを完備してからと私は申しているわけじやないのであります。そういうものを十分条件に入れたところのものが考えられなければならない。今日の評定票というものを見れば、そういうものを度外視する傾向の方が強いのじやないか。あなたの言われたように、それぞれに運営によつてそういうことがなされないことが望ましいということでありますが、そこまで私どもは今日の評定票というものに安心しておるわけにいかない。そういう危惧の念が非常に多い。そこで私どもが言つておる十分これは審議をする、まだ審議すべきものが残つておる、相当の期間をかけて研究に研究をした結果だから、これは最上のものである——最上のものともおつしやらないけれども、まずまずこれで実施しようというお考えのようであるけれども、まだそういう段階に至つていない。そういう日本教育現場の特殊条件が果して加味されたものであるかどうか、こういう点についてははなはだ疑念なきを得ないのであります。この教師の勤務評定というものを実施していくためには、ただこの地方教育行政の法律にこれがあるからというようなことでなく、関連法規である日本国憲法あるいは教育基本法、こういうものの精神が関連してその勤務評定の中に十分いかされておるかどうかということ、このことがやはり基本的考え方でなければならないのです。詳しく言うならば、基本法に規定しておるいわゆる第一条にある、あのような人間像を作るという教育の目的、「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な」教育実施していく。これが今日の日本教育の大きな目標でなくちやならない。そういうものを実施できるような、いわゆる自主的な学校の運営を阻害することのないような勤務評定というものがなされなくちやならない、そういう観点からするならば、今日の政府が強行しようとしておる、まあこれは都道府県教育委員会がやるのだとおつしやるでありましようが、この今日強行されようとしておるところの勤務評定というものは内容、形式ともに非常な疑点がある。従つて私はまだたくさん述べたいことはあります。法律のこまかい点にわたるのでございますが、結論的に申しますならば、そういうたくさんの不備をかかえつつ、今日これを実施し、そうしてその実施したあとに改めるべきは改めたらいいじやないか、こういうことを官房長官もおつしやるし、大臣もそういう考えのようでありますが、これは私ははなはだ無責任な感度であるといわざるを得ない。とにかく食うものは食つて、当つたら医者にかかつたらどうだと言つておるのと同じなんです。やはり非常に法的にも内容的にも疑義があるというような勤務評定であるならば、ここにやはり静かに一歩退いて、十方な今日の日本教育現場の実情に即したところの内容、形式ともに完備した勤務評定実施するだけの研究、こういうことをなされることが私は当然であると思う。やはり実施した上で不備があつたら改めるということは、あなたが先ほど導車するとおつしやつたところの人事院規則の一〇—二の二項、この法規の精神をくんでいない、これを今日実施されるのはあなた方は試験というように言つておられると思いますが、そういうふうに考えられるということは、これは非常な拡大解釈である。何らかやはり試験的にやつてみて調査をする、こういうことがなされ、そうして容易にこれが実施できるものである、こういう確信の上に立つたときになさるべきであるということが人事院規則にも明瞭に書いてある。今私はそういう段階だと思う。従つてやはり政府はここで慎重にもう一度考え直す時期がきておるのではないか、こういうことを私は申し上げるのであります。大臣はおそらく前と同じ答弁をなさると思う。あなたの答弁は全く汽車のレールのごとく何の味もない。一本すうつと通つておるだけで何度聞いても同じ答弁をなさる。馬糞紙をかむようです。あなたの答弁は全く味もそつけもない。もう少し政治家の立場に立たれるならば——あなたは日本教育行政の最高責任者である。事務官僚ではない。法律の一字一句を間違いないようにけんけん服費しておる官僚ではない。教育行政の最高の責任者である。教育行政の最高の責任者の立場に立たれるならば、もう少し政治家としての幅のある考えと、幅のある答弁がほしいのでありますが、大臣、どうですか。
  60. 灘尾国務大臣(灘尾弘吉)

    灘尾国務大臣 大体私の答弁はすでに予測せられておるのでかれこれ申し上げるのもどうかと思うのであります。私が政治家としての修練が足りない、もつと勉強しろという御忠告につきましては、これはありがたくちようだいいたしますが、御答弁は先般来しばしば繰り返して申し上げておることと同じであります。われわれといたしましては、今日まで実施の結果に徴しまして、さらに検討すべきものは検討して参りたい、こういうふうな心持でおるので、さよう御了承を願います。
  61. 坂田委員長(坂田道太)

    坂田委員長 本日の会議はこの程度とし、これにて散会いたします。     午後四時三十八分散会