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1958-08-28 第29回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月二十八日(木曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 稻葉  修君 理事 臼井 莊一君    理事 木村 武雄君 理事 原田  憲君    理事 小牧 次生君 理事 櫻井 奎夫君    理事 辻原 弘市君       天野 公義君    大坪 保雄君       加藤 精三君    鍛冶 良作君       清瀬 一郎君    鈴木 正吾君       竹下  登君    田中伊三次君       田邉 國男君    徳安 實藏君       丹羽喬四郎君    増田甲子七君       八木 徹雄君    田中織之進君       西村 力弥君    野口 忠夫君       長谷川 保君    原   彪君       堀  昌雄君    松前 重義君       門司  亮君    本島百合子君       山崎 始男君  出席国務大臣         法 務 大 臣 愛知 揆一君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         国 務 大 臣 青木  正君  委員外出席者         警察庁次長   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      江口 俊男君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (人権擁護局調         査課長)    齋藤  巖君         公安調査庁次長 関   之君         文部政務次官  高見 三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (大学学術局         長)      緒方 信一君         労働事務官         (労政局長)  亀井  光君         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 七月三十日  委員稻葉修辞任につき、その補欠として池田  正之輔君議長指名委員選任された。 同日  委員池田正之輔君辞任につき、その補欠として  稻葉修君が議長指名委員選任された。 八月二十八日  委員永山忠則君、福井順一君、福田赳夫君、松  永東君、北村徳太郎君、山本勝市君、野口忠夫  君及び松前重義辞任につき、その補欠として  田中伊三次君、大坪保雄君、鍛冶良作君、天野  公義君、田邉國男君、丹羽喬四郎君、門司亮君  及び田中織之進君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員田中伊三次君、大坪保雄君、鍛冶良作君、  天野公義君、田邉國男君、丹羽喬四郎君、門司  亮君及び田中織之進君辞任につき、その補欠と  して永山忠則君、福井順一君、福田赳夫君、松  永東君、北村徳太郎君、山本勝市君、野口忠夫  君及び松前重義君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  稻葉修君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 七月八日  一、国立及び公立の義務教育学校の児童及び  生徒の災害補償に関する法律案山崎始男君外  三名提出、衆法第一号)  二、学校教育に関する件  三、社会教育に関する件  四、教育制度に関する件  五、学術及び宗教に関する件  六、文化財保護に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  学校教育に関する件  社会教育に関する件      ――――◇―――――
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  去る八月十九自及び二十一日の両日に自由民主党並び社会党の両党より、衆議院規則の定めるところにより、成規手続をもって委員会開会要求がなされました。委員長は、この要求に基き、所要の日数等を考慮の上、本日緊急に委員会開会を決定し、各位の御出席をわずらわした次第であります。  御承知のごとく世論あげて文教行政の動向を注視し、特に教職員勤務評定問題は、和歌山、福岡の両県を初め、全国にわたって社会問題となり、重大な関心事を引き起しておる現状でありまして、当委員会といたしましても、学校教育上、社会教育上きわめて重大な問題と考えるものであります。国会閉会中ではありますが、この重要なときに委員会開会し、国会を通じて実情を国民の前に明らかにし、健全な文教行政を期待いたすものであります。     ―――――――――――――
  3. 坂田道太

    坂田委員長 この際まず理事補欠選挙を行います。去る七月三十日稻葉修君が委員辞任され、再び委員選任されました。これがため理事一名が欠員となっております。この際先例によりその選挙手続を省略し、私より同君理事指名いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 坂田道太

    坂田委員長 御異議なしと認め、同君理事指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 坂田道太

    坂田委員長 それでは学校教育に関する件、社会教育に関する件につきまして調査を進めます。本件に関し、教職員勤務評定に関し質疑の申し出があります。これを許します。臼井莊一君
  6. 臼井莊一

    臼井委員 私は勤務評定中心といたしまして、政府文教政策並びに大臣の御所見を一つ伺いたいと思うのであります。  文教政策の問題として従来いろいろ議論のあった勤務評定問題が、最近はこれがむしろ労働問題、さらに政治問題、こういう方面に問題の重点が移って参りまして、勤務評定是非あしというその内容の問題よりは、今申し上げたようにこれが政治闘争、さらに一つ権力闘争というような様相を呈しつつあることは、文教政策立場文教行政立場から非常にこの点遺憾とするものであります。しかしながら事実はそうなりつつあるのでありまして、私どもはこの点につきまして正面から率直にこれと取り組み、またこれに対する世間世論等にも十分耳を傾けまして、そしてこれに対する解決策に当らなければならぬと考えるのでありますが、今申し上げたように、ひとりこれが文教行政文教政策という立揚から離れておるところに非常にその解決困難性があると考えるのであります。この点につきまして文部大臣はどのようにしたならばこの教育行政秩序が回復できるか、これから申し上げます問題につきましてはすでに新聞で御承知かと思うのでありますが、すでに総評日教組と合同してというより、むしろ日教組総評がこれを取り巻いて包んで、そうして総評立場から、勤務評定反対するという口実のもとに一つの労働争議的な様相を帯びつつあるというふうに考えるのであります。この点につきまして、労働大臣もいずれお見えいただけると思いますが、まず文部大臣のこれに対するお考えと、何らかの解決の方法を講ずる御所信についての御意見一つ伺いたいと思います。
  7. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お答えいたします。勤務評定実施の問題をめぐりましていろいろ紛議が生じておりますことは、まことに残念に思います。もともと御承知通りにこの勤務評定実施ということは、国会において議決せられました法律実施の問題でございます。われわれといたしましてはこの実施をはかって参りたいと考えまして、今日努力をいたしておる次第でございますが、この国家法律に基く行政執行につきまして、教職員団体におきまして絶対にこれが実施を阻止する、こういう態度でもっていわゆる反対闘争が行われておるのでありまして、私は最も良識のある、また品格を重んずべき教職員諸君が、国法に対してかような態度に出るということを心から残念に思っております。願わくは国法施行に対しては協力していただきたいものと念願をいたしておる次第であります。  事実は御承知通りでございまして、今日この勤務評定実施をめぐりまして、地方教育委員会において責任者としていろいろ計画を立てておるわけでありますが、これに対しましてあくまでもいわゆる実力闘争をもってこれを阻止するという態度に出ておるのであります。かえすがえすも私は残念に存じております。  今日までの経過から申しますると、東京都を初めといたしまして、四十都県におきまして実施計画を立て、規則も制定をいたしております。残るところ六道府県でございますが、これらの道府県におきましても、教育委員会当局といたしましてはそれぞれ実施方向に向って努力をいたしておるように承知をいたしておるのであります。なるべくすみやかにその実施を見るように私どもは期待をいたしておるところでございますが、これに対する反対闘争は依然として行われておるわけでございます。ことに最近におきましては、ひとり日教組だけでなくて、外部の総評を初め各種団体におきまして、これをいわゆる総評なら総評闘争題目として取り上げまして、総評としてあくまでも勤評実施を阻止する、こういうふうな態度も打ち出されておるように新聞紙上等承知いたしておるのであります。何ゆえにかようなことをしなければならないのか、私どもは全く理解に苦しんでおる次第でございます。政府といたしましては行政執行責任当局といたしまして、この法律実施ということにつきましてはあくまでもこれを推進して参るつもりでございます。同時に地方教育委員会に対しましても、その趣旨をもってこれを督励して参りたい。願わくはこの絶対阻止というような反対闘争をすみやかにやめていただきたいと思っておるのであります。民主的なあり方において法の改正についての運動をするとか、あるいは法の改正についての意見を述べるとかいうことは御自由でございますけれども、いやしくも国法施行実力をもって阻止するというようなことは、絶対にないようにお願いしたいと思います。  さような意味におきまして、われわれは地方教育委員会等に対しましても、この法の趣旨徹底について努力するように依頼もいたしておりますし、また関係の向きに対しましても、ぜひ考え直していただきたい、そうしてこの法の実施には御協力を願いたい、かような態度をもって進んでおるわけでございます。たといどういうふうな反対がございましても、実施の線だけはくずすわけには参らないのでございます。その趣旨をもって善処いたしたいと考えております。
  8. 臼井莊一

    臼井委員 ただいまの大臣の御答弁で、政府当局といたしましても、行政秩序と立て直す上においても勤務評定はぜひ実施しなければならぬ、法律にもきめられております。ただしかしどういうわけで日教組根本的にこれに反対するのか理由がわからない、こういうようなお話でございましたが、この点につきましては前の松永文部大臣も、私の承知している範囲内ではずいぶん日教組とも会見いたしまして、その陳情等はいろいろ受けました。率直にいろいろ意見も聞いたようでありまするが、その間においてはやはり根本的に勤務評定は教員にはできないのだ、こういうような信念というか、そういう考えにこり固まっておるようであります。まあ世間では何か文部省ももう少し話し合ったらいいだろうとか、あまりに断行するということばかりでは能のない話だというような意見もないではないのでありますが、しかしその内部を検討してみると、ひとり勤務評定反対というよりは、現在の政府文部行政根本的に反対だ、そこにねらいがあるように思うのであります。従いまして道徳教育の特修時間を設ける、あるいはまた現在の科学技術教育を充実させる上においても、時勢に沿って教育課程内容を改善していこうということに対しても、これは改悪である、こういう現在の文部行政政府文部省に対する根本的な反対考えからきているのでありまして、この点については日教組としてはほとんど妥協余地がないのであります。この点については私は日教組そのもの一つ性格というものを掘り下げないと、理解ができないのではないかと思います。日教組の方では、勤評というのは表面だけのことで、これを根本において反対する、今の政策根本を掘り下げなければならぬ、こういうふうにまた反対建前から言っておるのでありますが、これにつきましていろいろ私ども承知している資料を見ますと、日教組の最近の主張についてでありまするが、第十八回の臨時大会、これは本年七月二十八、二十九日に開かれたのでありますが、その原案を修正いたしておるのです。それは勤務評定闘争中心としたもので、闘争推進基本的態度ということが出ております。その修正内容を見ると、勤評政策本質的なねらいは、日本の未来の主権者である日本の全青少年を政治権力独占資本支配のもとに盲従させ、彼らの政治的野望を満たすために日本教育骨抜きにし、御用化しようとするきわめて正悪質なおそるべき政治的陰謀に基くものである、従ってこれに対する修正妥協は絶対にあり得ないものであり、長期かつ粘り強く勤評粉砕の日まで徹底的に戦い、平和と民主主義を擁護することがわれらの歴史的課題であることを確認する、こういうことを言っておるのでありますが、こういうふうに絶対に妥協余地のないということが、先ほど申し上げたように、こういう根本の観念からくるのでありまして、しかも根本においては、政府政治的野望を満たすために日本教育骨抜きにしようという、――これは立場が違うからそうごらんになるのかもしれませんが、しかもさらにその内容におきましては、政治闘争目標としつつあるようであります。というのは、昨年十二月二十二百に、日教組大会におきまして民主教育を守るためのと称して教育非常事態宣言をいたしております。そのときの発表にも、勤評を阻止する決定的な手段は、言うまでもなく政治的な彼我力関係を逆転させることである。勤評本質的に民主教育を破壊し、この国の民主主義そのものを破壊させることをねらいとしている限り、日本教師責任として、不退転の決意をもって長期に巻き返し戦いを組み、粘り強く抵抗組織を拡大し、闘争政治的な彼我力関係を逆転させるまで運動を発展させなければならない、こういうことを申しておりまして、これは明瞭な政治闘争であります。すなわち続けて、教育委員任命制であり、教育委員会自体がその自主性を失い、一部政党のかいらい化しておる限り、教育国民の手に取り返すために、当面総選挙並びに明後年に迫った地方自治体の選挙を重視する必要がある、こういうふうに政治目標を明瞭にしておるのであります。ただここで教育国民の手に取り返すためということを言っておるのでありますが、これは一体国民がどういうことを感じておるかということは、選挙を通じてやるのが現在のわが国のとっておる民主主義議会政治あり方でありますが、これが総選挙の結果勝敗が明瞭になっておる。それにもかかわらず政治闘争を押し進めようとしておって、そうしてこれが権力闘争になっていく、そうして校長をはさんで、次に述べておるように、すなわちおよそ――愛媛における闘争を指すのでありますが、今次闘争のごとき、校長評定票を出さないことそれ自体権力機構をくずす結果になるような、権力との戦いは彼らの本質を徹底的に暴露し、敵に打撃を与え、彼らの意図を事実によって阻止する抵抗運動ということが重視されなければならない。その意味で今次闘争を通じて、狂暴化した自民党の任命教育委員本質を露呈させ、団結をくずさず、一人々々自覚の上に教育権力支配を排除する確認が生まれたとしたら、彼らの組織破壊権力支配の目的は一応排除し得たと言えよう。この成果は粘り強い激しい戦いなくしては得られない。しかも継続的に抵抗戦いを繰り返さぬ限り必ず反撃されるであろう、こういうふうに一つ権力闘争になっておるのであります。こういう点につきまして私どもは非常に遺憾に感ずるのでありまして、ことに勤務評定の問題は最初に国家公務員法ができたのは昭和二十二年の十月であります。このときは片山内閣のときでありまして、要するに今の社会党の元老の片山さんのときにこの法律ができたのであります。そういう点からいいましても、社会党としては、この勤務評定につきましても、当然法律建前もあり、協力なさらなければならぬと思うのであります。ところがこれに対しても反対闘争協力をする、こういう建前をとっているようであります。  そこで、今申し上げたように、私どもの調べた限りでは、勤評問題でこれまでこのように根強い反対のあるということは、日教組根本的な考え方にあると思う。それで日教組の方では政府文部省、またわれわれを敵と称しておるのでありますが、しかし私どもは何も敵とは考えませんが、この点につきまして文部省日教組に対する見解をお伺いしたいと思います。
  9. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員団体は、御承知通りに、法律に基いて作られておるわけであります。この教職員団体の連合体と申しますか、中央団体として日本教職員組合があるということは御承知通りであります。これは別に法律に基くものでもない、任意な団体でございます。この教職員団体はいわゆる職員団体でありまして、普通の労働組合とは性格を異にするものと私ども考えておるのでございます。しかし実際の日本教職員組合に属するいわゆる教職員団体は、ややもすれば、その本来の性格を逸脱するような考え方、あるいはまた行動があるやに見受けられるのであります。ことにその大会決議でありますとか、あるいはこれに基いて行う実際運動等を見ておりますと、明らかに本来の教職員団体性格を逸脱した点がたくさんあるように私ども思うのであります。  今お述べになりましたいろいろな事例でございますが、私どもも大体これは承知いたしております。それらの事例から考えまするならば、単なる職員団体にあらずして、政治闘争を行う団体ではないか、権力闘争を行う団体ではないか、こういうふうに考えざるを得ないような事態がしばしばあるのであります。これは私どもといたしましてはまことに遺憾なことと存じております。すみやかに本来の職員団体たる性格に返ってもらいたいというのが、払ども念願でございます。今やその実際行動なり、ものの考え方は一体それが五十万を数える組合員個々諸君の意思であるのかどうかということについても、私は疑いを持つのであります。全国学校教職員諸君が、あの大会宣言決議ないしはこれに基く各種行動をそのままほんとうに心から支持しておるのかどうかということについては多大の疑いを持つものでありますけれども現状、御承知のように、その中央の指令に基いていろいろのことが行われておる。しかもその内容は明らかに職員団体である性格を逸脱いたしました権力闘争ないしは政治闘争というような色彩がきわめて濃厚であります。すみやかに本来の姿に返ってもらいたいというのが、私ども考え方でございます。
  10. 臼井莊一

    臼井委員 さらに今の勤評反対闘争内部日教組指導等の面について深く探ってみますと、日本共産党が非常にこれを指導しているという惑じを受けるのであります。これも七月九日の共産党のアカハタの主張から見ましても、政治的思想的な戦いとしての勤評反対闘争という観点から、「その深さにおいても、その広がりにおいても、勤評反対闘争のように深刻な闘争を今の労働者階級が戦ったのは初めての経験である。しかもこの闘争は一昨年の愛媛闘争以来二カ年にわたって戦われている。岸内閣が続く限り、この闘争はますます激しくなる必然性を持っている。」として、さらに「勤務評定は、教師に点をつけることによって教師の間に不団結を生み出すような単純なねらいからだけでやられているのではない。勤務評定は、子供にどのような教育をするか、どのような青年を作るかという問題と不可分に結びついているのであって、日本の将来をどの方向に向けるかをきめる重要な政治の問題である。だからこそ、政府はあれほど頑強に勤評を強行しようとしているのである。」こう述べましたあとに、日教組考え方共産党考え方と一致している点を表明しております。すなわち「独占資本とその政府教育を彼らの思うままになるものにするか、国民が平和と民主主義を固めるのに役立つ教育を守るか――ここに勤評反対闘争本質がある。このことがわかれば、当然、国民の大多数は教師を支持し、勤評反対するのである。」こういうことをいっておるのでありまして、この点から見ましても、共産党指導理念日教組指導理念というものが非常に似ているばかりでなく、むしろ共産党指導しているのではないかというふうに考えられる。その点は、先般、十五日、十六日に和歌山において行われました勤評反対国民大会の際に、私ども行って見た限りにおいてはやはりどうもそういう傾向があるのではないか。ということは、まず共産党放送カーが朝から市中を宣伝して歩く、デモの際にもその先頭に立って列を激励して歩く、こういう行き方であり、また全学連諸君中心とした若い人たちが、最も先鋭的なデモ行進をやって、ジグザグ行進をやったことは御承知通りであり、十六日にはそれが一番ごたごたの問題になって、不祥事、流血の事態まで引き起したのでありますが、この点につきまして政府の方にお伺いいたします。これはどちらでもいいのですけれども全学連の中に相当共産党正式党員、シンパもあるように伺っておりますが、それがどの程度あるものであるか。さらに和歌山におきましての指導ども、こういう全学連共産党系の者が行って指導したのではないかと思うのでありますが、その点につきまして、御承知の点がありましたら、伺いたいと思います。
  11. 関之

    関説明員 お答えいたします。全学連の問題について、まずお答えいたします。全学連構成員は約二十四万、こういうふうに判断いたされます。その中における共産党員としての学生はどれくらいいるかという問題でありますが、どうもあまり正確につかめないで困っておりますが、二千人前後であろうか、こういうふうに一応考えられるのであります。  次の問題として、和歌山闘争における全学連活動でありまするが、その中における党員活動を調査いたしてみますると、闘争の始まったすでに数カ月前から、全学連はこの闘争をきわめて重要な闘争として、その共闘会議においてはかなり入り込みまして、各地からオルグあるいは活動分子を送り込んでやっているのであります。その全学連に派遣された分子の中には、これは正確にわかりませんが、相当分子共産党員たる学生がそこに乗り込んで、それを指揮、指導しているというふうに考えられるのであります。
  12. 臼井莊一

    臼井委員 共産党で正常なる党活動をされていることは、われわれとしてもどうこう言う筋では一向ないのでありまするが、どうもあの事態を見ますると、全学連中心としたそういう精鋭分子が、約束と県条例公安条例を踏みにじって、ジグザグデモを強行するという、そこにあの混乱を起す一つの原因があったのですが、求めて何か勇ましくぶつかりたいという意欲があるように思われる。十五日の割合平静に行われた、二万五千といっておりますが、われわれの見たところでは、まず八千から九千くらいデモ行進の際でも、やはり全学連中心である若い青年たちが一番尖鋭的にやっておる、私ずっとデモ行進を見ていて、ふとこういうふうに考えたのであります。というのは、先ほど申し上げたように、日教組が昨年の暮れに非常事態宣言をする、そしてデモ行進をやるにいたしましても、和歌山というところに当初は五万とか十万とかいう勤評反対デモをやるための人を乗り込ませて、ああいう狭いところへ大ぜいやるということは、一つ和歌山県の教育委員会に対して圧力をかけるということとともに、世間ではこれを評して、革命の予行演習ではないかとまで言っておるくらいの激しさの、悪くいえばなぐり込みみたいなことをやるという事態なんですが、ちょうど大東亜戦争の初めには、国民は実際のことは知らないけれども、当時の軍部か指導いたしまして、そして特に青年将校中心になって国民をかり立てて、戦争に持ち込んだ。今の日教組のやり方を見ますると、口には平和を守るんだ、民主教育を守るんだ、とこう称しながら、やること、また言うこと自体がすべて戦闘的である。反対意見のものはすべて敵と称する。そしてどうも闘争とか、実力行使であるというような行き方で、先日もある雑誌で大宅壮一さんが、竹やり兵団日教組五十万ということを書いたのでありますが、この大宅さんは、昔陸軍今総評という言葉を作った人だといわれておりますが、この文章を見て私どもはまことに同感に感ずるのです。ただがむしゃらに戦え戦えというふうに闘争意識をかり立てて、そうして団結に持っていこうというようなねらいがあることはまことに遺憾でありまして、先ほど大臣がおっしゃったように、地方の先生方は私どもの見る範囲内においても、きわめて穏健であり、従順である。しかしこの穏健従順というものがあまりに過ぎるがために、独自性というものがなくなってきているのではないか。生徒に対しては、たとい親の言うことでも批判しろ、権威者の言うことでも批判しろとお教えなさりながら、その先生方自身が、政府教育行政に対しては反抗するように仕込まれておりますが、これも自発的というよりは日教組の組織の団結の圧力によって指導されている。ちょうど戦時中国民政府の言う通りに従ったと同じように、日教組の意のままに非常に動かされておって、そうして全学連が当時の青年将校という形であるというふうに私たちは思わざるを得ない。しかもあのとき私はぞっとしたことは、そのデモ行進の中に小学生かおそらく中学生の低学年と思われるような者が、数はそう多くはありませんでしたけれども、はち巻をしてこれに参加をしている。この点は戦争当時の学徒動員を思わせるものがある。いよいよ苦しくなって手段を選ばずに何でもかんでもやるんだ、こういうことで父兄の意思を無視し、児童の意思も無視して、そうして戦闘の先端に児童をかり立てつつあるということは、これはゆゆしい問題であって、今世論がきびしく総評の行き方、日教組の行き方を非難しているというのは、私は実はこの点にあると思う。政治闘争をし、権力闘争をする場合に、その正しい手段をもってやるならばよろしいのでありますが、このいたいけない子供まで動員しているということは私は人道的にもまことによろしくないと思うのでありますが、最近の決定によりますと、十五日の勤評反対総評日教組反対闘争に際しては、先生の一斉休暇、あるいは午後からやるものもあるでありましょうが、それとともに総評組合員の児童の登校をとめるということであります。これに対しては各新聞におきましても、教蹄の良識と反省を求むるというような意味で、いろいろ書いておるのでありますが、さっき申し上げたように、根本的な点から、果してこの世論を聞くかどうかという点には疑問があるのでありますが、これに対して文部省としていかなる御対策を持っておられるか、一つお伺いいたしたいと思います。
  13. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の問題は、さきにも申し上げましたが、文部行政、いわゆる教育行政の問題でございます。この教育行政の問題につきまして、全く間違った手段、方法によって争いをいどんできておるのが今日の状況ではないかと私は思うのであります。それが非常に残念に思うのであります。しかもその争いに対しまして、教育関係自体も、総評とか、あるいは日本共産党であるとか、また伝うるところによれば、日本社会党諸君もこれを支持せられるように伺っておるのであります。どうもわれわれには納得のいかない、理解のいかない問題でございます。先ほどお話もございましたが、今回のこの争いには、確かに日本共産党も相当力こぶを入れていらっしゃるようにうかがえるのであります。またいわゆる全学連諸君は、最も強烈な戦闘部隊としてこれに参加しておられるように見受けられるのであります。いずれにいたしましても、何とか一つ考え直していただきたい。実に遺憾な事態であると私は考えるのであります。学校教職員は、自分たちの属しております組合の性格、ないしはその活動の範囲というようなことについては、よくわかるはずであります。十分その点を考えて理知的にものを判断し、その行動にあやまちなきを期していただきたいのであります。これが私どもの心持でございます。さような意味合いにおきまして、今日までいろいろ教職員の反省を促し、また警告もして参ったような次第でございます。最近の事態につきましても、文部省としましても、また地方教育委員会等を通じましても、問題の本質、問題の性質等について十分理解をしてもらいますように、そうして間違った行動に出ないように極力努力して参るつもりでございます。
  14. 臼井莊一

    臼井委員 この点はさっき申し上げたように、勤評反対という、題目はそうでありますが、実際は教育の場を利用して、そして今の政権を倒そう、そこまで持っていかなければだめだということなんでありますが、そのまた日教組根本を見ると、なるほどここまでくるのは当然だというふうにうなずけることは、教師の倫理綱領を見ましても、教師は労働者だと端的に言い切って、その労働者の意思というもののみを強調し、そして団結こそは教師の最高の倫理だ。――私は今この問題をいろいろ論じている時間はございませんけれども団結こそが教師の最高の倫理だというのはまことにおかしな理論だと思う。一体団結してその力を何に利用するかによって教師の最高の倫理というものは決定すべきであると思うのでありますが、さっきお話ししたように、従順な地方の先生方に、ただお前らは黙って団結していればいいのだ、あとは命令するからというところに、私はこの倫理綱領の根本的な大きな問題がひそんでいると思うのであります。文部省におきましても教師に関する倫理綱領というものについても十分御研究だと思うのでありますが、何かもう少し教師に対する民主主義に基いての指導理念といいますか、そういうものを私は政府としても文部省考えていかなくちゃならぬのじゃないか、かように思うのであります。戦前は教育勅語がありまして、これが教育全般を通じての指導理念であったのですが、これが今日そのまま通用しないことはもとよりであります。従ってこれは用いない。何もその内容全部が間違っておるというのではありませんけれども、戦後国民に主権が移ったということから教育勅語は用いない。そこで先生方が教育指導理念というものに迷った結果が、教育勅語にかわって、この教師の倫理綱領に従って、その内容に包蔵されておるところのマルクス・レーニン主義の唯物史観に立ったところの理念に基いての、この倫理綱領に盲従しておるのが現状ではなかろうかと思うのですが、これに対して文部省の御見解も伺いたいのであります。しかしそれを論じておる時間がございませんので、後日に譲ることにいたします。いずれにしても、非常に行き過ぎているということは、さっき申し上げたように、各新聞の社説においてきびしくこれを批判しておるのであります。全部読み上げる時間がありませんけれども、「勤評闘争の激化は遺憾だ」という中に、「これでは教組が教育を私し、闘争の手段としてはばからないもの、との非難が生じかねない。」というようなことをいう新聞もありますし、「日教組の近ごろの一連の闘争が、経済闘争でも、労働闘争でもなく、それらからはるかに離れたものであることは明らかである。」「日教組闘争は、暴力革命の予行演習のほかの何ものでもないというような酷評さえ浴びることになるのである。」まあそのほか一番私ども同感を禁じ得ないのは、慶応大学教授の池田潔氏がこう言っておる事態であります。「勤務評定の問題はそれ自体本質的に考えれば、決してそんなむずかしい問題ではないはずなのだ。少くとも、一年余りの歳月を、日本人同士が憎み合ってまで争い戦うほどの難問題では絶対あり得ないと言ってよいだろう。」「この先解決の見通しもつかない状態にあるというのは、この問題に対する当事者たちの考え方のバランスが破れており、いつの間にか本質的価値以上の重要さをこの問題が持たされてしまっているからと見るほかない。そしてそのバランスを破った最大の力は、政治的要素の介入、はっきり言って、この問題が一部の勢力により政治闘争の道具として利用されている事実によるといわねばならない。もちろん文部当局側にも行き過ぎの点はあり、」そうして「いろいろ論議の余地は残されていると思うが、だからといってそれと日教組側のやり方の不当を相殺することは理に合わない。事の軽重が違うからである。今根本的に一つはっきり断言できることは、日教組がこの問題を政治闘争の道具として利用する限り、だれがどんな手を打っても解決は思いも寄らないこと、しかも勤評問題が片づいたと仮定しても、組合のこの指導原理が変らない限り、同じ性質の問題が続々と起ってくるであろうことである。文部当局として軽率な妥協はできないし、国民としても安易な糊塗策は望んでいないはずだ。」こういうふうにきめつけておるのであります。この世論の動向を無視して、果して総評なり日教組が協同してどれだけ押し切るかわからないのでありますが、先ほど申し上げた、子供を動員するというようなことはまことに非人道的なことであると思う。  この機会に非人道的な問題について二、三お尋ねをしたいのでありますが、このほかに、全国各地で勤評反対問題を中心として人権じゅうりん的な問題があるように思われる。その一つ和歌山におきまして、私ども調査して参りました結果では、あの和歌山市の雑賀崎小学校という学校で、一先生がこの闘争のやり方に反対して組合を抜けるということになりました際に、前後二回にわたってこれをつるし上げて、そうして高血圧のためにその先生が倒れる、こういう問題がございます。しかしこれはひとりその先生ばかりでなく、子供に対しても、その受け持ちの小学校の四年生に対して実にひどい仕打をしておる。たとえばお隣のクラスの相持ちの女子の先生が、そのつるし上げられて休まれた先生のクラスに対しては、自分のクラスには紙芝居を見せても、隣のそのクラスには見せてやらない。生徒が体操をやりたいと言ってもやらせない。そして大きな声でどなったといってはその横っつらをなぐったというようなことで問題になっておる。そのほか、給食が急にやめになったのに、その前の日に教えないで、ついに児童は弁当を持ってこなかったということや、ほかのクラスが全部、糾弾された先生のクラスをおいてきぼりにして映画を見に行ったとか、こういうような問題が起っておるのでありまするが、これにつきまして、人権擁護局まではまだどうですかわかりませんが、相当当局においてもお調べになっておると思うのでありまするが、この点について一つお伺いしたいと思います。
  15. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまお尋ねの件につきましては、情報その他によりまして調査いたしましたところでは人権侵犯の疑いが濃厚であるように私は感ずるわけであります。従いまして法務省といたしましては、地方の法務局にまず詳細な事実の調べを命じてあるわけでありますが、一方警察当局におきましてもすでに捜査をいたしておるようであります。この点については全国注視の的の問題でもございますから、詳細に取り調べまして、その調査の結果によりまして措置をいたしたいと考えます。
  16. 臼井莊一

    臼井委員 その点御調査のようでありまするから、それに信頼いたしますが、これなども先生方の実に行き過ぎのつるし上げをやっておるのでありまして、校長に対しての回答を求めた文書などにも、藪田という先生でありまするが、この先生の思想とか動向の見解を明確に答弁しろというようなことを言っておる。平素から思想の調査などというとやかましく言う先生方が、意見が違うというと、その藪田という先生の思想を校長に回答しろというような十数カ条の回答書を求めております。それから藪田教諭自身に対しましても思想、行動等について反省するところがないかどうかというようなことを言っておる。こういう矛盾した行動というものもあらゆるところに出ておるのでありまして、たとえば先ほどの総評傘下の組合員の児童を学校に出さないということも、これは私は児童に対する大きな差別だと思う。和歌山におきましてああいうふうに反対運動が激しかった一つの大きな原因は、責善教育す、なわち部落解放運動の方が、この勤務評定というものは人間を差別することであるというような━━━━━━━━━━━、見解の相違から参加いたしたのでありまするが、私は子供を、総評の組合員の子供であるから、おやじが反対運動をやっているのだから学校へ行くなというのは、私はこれ以上の差別はないと思う。これくらい私は教育上遺憾な問題はないというふうに思うのでありますが、この点につきましても手段を選ばない結果がそういう自己矛盾した点に陥るのではないか、こう考えるのであります。  さらに、ついでに人権問題でなおお伺いしたいことは、そのほかに福島県の教育委員会教育長が県庁内の一室でつるし上げられたとかカン詰めにされたとかいう問題がありますが、それとは別に、例の四日市の教育長の染川清一郎氏が自殺した問題であります。この点につきましては、津の地方法務局から人権擁護局に、日教組側のつるし上げによる圧迫ではない、こういう回答が来ているそうでありますが、しかし、もう少し今言ったような原因以外に、何らか御調査になった点がありましたならば、お伺いしたいと思います。
  17. 齋藤巖

    ○齋藤説明員 お答えいたします。四日市の教育委員会教育長の自殺事件に関しましては、去る七月六日付で各新聞に報道されましたので、早速津の法務局に電信で調査を指示いたしました。その結果、目下津の地方法務局で調査いたしておりまするが、今までのところわかりました事情は、一つは去る七月の一日に四日市の市の教育委員会が組合側の申し出によって団体交渉をなした。その交渉が午後の三時ごろから翌二日の四時ころまでにわたりまして、その間いろいろな勤評問題に関する交渉がございましたが、その交渉の結果、組合側に、勤務評定実施が民主的な方法によらなかったことは遺憾である。今後いろいろな事態が起ったときに委員会責任を負う、こういうような一札を書いたという事情が判明しておりますが、そのほかに今までのところ詳細な事情はまだ調査いたしておりませんので、今後調査を続けたいと思っております。  それからそれに関連しまして、その教育長が自殺したことについての関連性でございまするが、その点はまだ調査中でございまするが、教育長は非常に責任感の強い方でありまして、そういうことも自殺に至った原因の一つとも考えられるのであります。なお人権擁護局としましては津の地方法務局と連絡いたしまして、今後調査を続けるつもりでおります。
  18. 臼井莊一

    臼井委員 この問題はすでに七月の初めに起った問題でありまして、単に津地方法務局の教組側のつるし上げによる圧迫で死んだものとは思われないというような簡単な報告のようでありますが、こちらの方で調べたところによりますと、裏面に非常に複雑な問題があるように承知いたしておるのであります。というのは、この染川清一郎氏の娘さんが先生である。そしてそれの夫、すなわちむこさんの兄さんが三重の教組の幹部で、勤評反対闘争の先頭に立っている。こういうようなことで、勤評問題に関する折衝の際に、その娘をいやがるのを無理に、きょうはお前の当番だから出ていけというので――お父さんが教育長で出てくるところに教師として反対側の立揚で出された。最初はうしろの方で小さくなっていたが、お前は前の方へ出ろというので、激しい折衝の矢面に出された。それで勤評反対立場にある娘を前にして、そこでみんなと激しい折衝をしてやらなければならなかったというところに、ますます悩みを感じて教育長は自殺したのではないか、そういう推測も成り立つのです。もしそうだとするならば、教組側のやり方というものは、まことに人情を解せざるというよりは、人情の弱点を利用して、そして手段を選ばざる方法の一つであり、まことに非人道的なやり方である。なるほどこれは法律には違反しないかもしれないけれども、いやしくも先生といわれる人が、法律に違反しないならば何でもやってよろしいというような行き方は、私は先生方の良識として最も慎しまなければならぬことだと思う。ところが現在の闘争のやり方を見ますと、法律に違反さえしなければ何でもよろしいんだという行き方、この点につきましては他の諸君からもまた話があると思いますから、私はこの程度にいたしておきますけれども、十五日の闘争におきまして子供をかり立てるということも、法律には違反しないのだということ、しかし文部省の見解によると法律的にも確かに違反する、こういうことなんです。なるほど処罰までできるかどうか知りませんけれども、少くとも法律一つできた以上は、法律は最小限度に規制するというのが、私は法の建前ではなかろうかと思うのです。それを立法の精神も度外視して、そして法律さえうまくもぐれば何をやってもよろしいということを、いやしくも先生というような方がやられることは、私は将来の日本の国を背負って立つ子弟の教育上、実に寒心にたえないものがあるというふうに考えざるを得ないのです。ヒューマニズムはどこかにとんでいってしまって、むしろ人情の弱点を利用するということは、私は非常に遺憾千万なことであります。そこで人権擁護局にお願いしたいことは、今の四日市の問題につきましても、そういう内面の問題につきましても、十分掘り下げて御調査をいただきたいと思うのであります。  ちょっとお伺いいたしますが、非常に調査がおくれているという原因はどういうところからおくれておるのでありますか。その点をもう一度人権擁護局にお願いしたいと思います。
  19. 齋藤巖

    ○齋藤説明員 津の法務局におきましては人権擁護局からの調査指示によりまして、さっそく調査を開始いたしておるのでありますけれども、今申しましたように、まだ詳細な調査ができておりませんので、私どもの方からさっそく現地に参りまして、調査をいたしたいと思っております。
  20. 臼井莊一

    臼井委員 この点につきましては、教育上の問題でありますから、文部省でも御調査があると思うのですが、その点内藤初中局長も御存じでありましたら、一つ意見を伺いたい。
  21. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 本件につきまして私どもで調査したところをかいつまんで申しますと、最初の日が七月一日の午後二時から七月二日の午前四時三十分、実に十三時間半にわたって、ここで交渉が続けられたわけであります。この間におきまして、教育長は食事もとらなかった。しかも非常に疲労がきた。それから一札とられたのでありまして、非民主的手段で決定したことは遺憾である。今後このような決定で引き起される一切の責任は、市教委がとることを確認する。この文書を取りかわされたのであります。これが将来非常に染川教育長の良心にこたえたようでございます。その後七月二日、七月三日、七月四日と前後三十八時間にわたって交渉が持たれた。さらに多いときには三百人にも及んだ交渉が持たれた。こういう点も非常に私どもは遺憾に思うのであります。先ほど臼井委員からお尋ねのように、自分の娘が最前列に立たされておった。そうして娘があとでなくなった父親に対して、組合がお父さんを殺した、こう言って泣いたとも伝えられておるのであります。非常に私どもは遺憾に思っておるのであります。  なおこの当時四日市市の教育委員会から声明が出ておりますが、こういうようなことを申しておるのであります。話し合いは教育長単独の場合を含み七月一日、二日、三日、四日と毎夜おそくまでかかり、多いときは三百人にも及ぶ多数に取りかこまれて行われ、話し合いというにはその環境なり内容があまりにもかけ離れたものであったのであります。こういうようなことを言っておるのであります。しかし私たちは何とかして円満な話し合いで終るものならとこれに耐えてきました。七月五日の教育長の死は、一部に伝えられるように県の圧迫によるものであるということは当っていません。善意と誠意を持って手交した文書が実に拡大利用され、事が円満におさまるように願ったことが逆の結果を来たしたことはまことに残念である。教育長は死をもってあがなったのであるというようなことを述べて、最後に私たちはこれ以上話し合いの無意味なことを思い、さらに話し合いを続けるようなことはしたくない。本七日この交渉を打ち切ったということを声明いたしております。
  22. 臼井莊一

    臼井委員 文部省でも相当その点のあれはお調べになっておるようでありますが、事いやしくも人命に関する問題であり、こういう重大な問題につきましては、やはり人権擁護局が簡単な一片の報告だけで承認されることでなく、今後そういう人命に関することは私はそうないと思うのでありますが、人権擁護の立場から相当注目して御調査を願わなければならぬ問題が起るのではないか、というのは、今日までも各所で話し合いと称して、先ほど申し上げたように根本的に勤評反対でありまするから、幾ら話し合いしても話し合いがつくわけはないのでありまするが、それをそう称して夜から夜明けまで、ひどいのになる十二時間もぶっ通しで交渉と称してつるし上げ的なことをやる。こういうような問題がありまして、今後地方教育委員の方に相当重点が置かれるように私は日教組反対運動の対策として聞いております。また校長教職員にも先ほど申し上げたような問題がありますので、どうぞ十分そういう点を注意して御調査を擁護局の方ではお願いいたしたいと思うのであります。  そのほか群馬県や山形におきまする理科の実験講習に対してもボイコットというような問題が起されておるのであります。この点につきましては後ほどに譲りたいと思うのでありますが、ただ一つ和歌山の十六日の闘争におきまして、日教組側の――総評側ですか、全学連、あちらの方の発表によると、警察が右翼と共同してデモ隊を圧迫したというような宣伝をいたしておるようでありますが、しかしこの点は、私ども調査に参りましたに者からすると、全然そういうことはない、こういうことなんです。実はその前の十五日におきまして、そういうような右翼と称するような人が十五名だか二十名だか、何名かいるというようなこともうわさには出ておりまして、そこでこれがもし何か妨害するようなことがあってはいかぬというので、警察側の方に、集会を計画しておった主催者の側の方からも十分注意してくれということで、警察側もこれに協力して十分注意するということであったそうであります。そういう意味において、各集会所のところ――休憩所と称して会場に学校を利用したのでありますが、その集会所にはできるだけ警察の方面でも注意をして、別段の問題がなかったということを聞いたのであります。私どもの調査においてはもちろんそういうことは絶対にないということでありますが、しかしなおこの点につきまして、私は関係当局の御意見も一応伺っておきたいと思うのであります。
  23. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまのお尋ねてございますが、右翼が警察その他と結託して云々というような事実は、調査をいたしましたが、ございません。  それからなお先ほどの人権擁護の問題につきまして、ちょっと私から申し上げますが、最近の世相等にかんがみまして、管理当局と申しますか、あるいは取締り当局等に対しても私は人権の擁護ということは非常に大事なことであると信ずるのでございます。被害者あるいは捜査に当るような人に対しての人権擁護ということがますます大切になったと思いますので、私といたしましてもあらゆる努力をあげて人権擁護に邁進いたしたいと思います。
  24. 臼井莊一

    臼井委員 この点につきましては、ある新聞に、今東光氏が「デモばか」と称して比喩的な批判をしておるのであります。「去る八月十六日、和歌山市の勤評反対デモがついに流血の惨事を引き起したことを、まるで警察と右翼の挑発のように言っているのはこっけいだ。だれの目にも日教組勤務評定反対という教育問題は、とうの昔に問題の焦点からはずれて、明らかに政治問題として行動していることは明白じゃないか。その証拠に、全学連中心日教組社会党共産党総評傘下の各単産、青年婦人部代表など、一連の左翼のゼネスト的運動だ、いかに白ばくれても、オオカミが衣を着たデモであることは偽われない。口に平和を唱え、民主教育を叫んでも、勤評阻止の手段を「闘争」とするからには、警官に弾圧されようが、右翼になぐられようが、闘争主張する限りなくられるのは当りまえだ。」これらはどうも私が見ても少し行き過ぎだと思いますか、しかし第三者から見ると、実際こういう意見がある。さらに続いて、「なぐられるのがいやだったら、闘争なんてなまいきなことを言わぬがよい。警官となぐり合いを演ずるばかやろうを「先生」と呼ばなくちゃならない生徒の身になってみろ。何かというと警察官か悪いように言うのが流行だが、僕だけはあくまでも日本の警察官を支持する。こんな重労働の中で誠実に勤務する官吏は少いのだ。日教組など、あまりいい気になってラジカルな闘争をしていると、たたきつぶしてしまえと言いたくなる。純正な教育を守るためにだ。」こういう批判さえ起りつつあるのであります。これは東京新聞に出ておりますが、今東光氏の著名で明瞭に書いてある。  しかも毎朝の「私たちの言葉」を聞いても、いかに近ごろ日教組に対する批判が強いか、たとえばきょう朝あたりの「私たちの言葉」においても、教師として広い教育の世界にというような題で、先生の言葉が出ております。東京都の先生であるが、もう七年前に自分は組合を抜けた、そして広々としたほんとうに中正な立場教育に専念できる、こういうような批判等もあるのであります。私どもはこういう材料を拾い上げていけば幾らでも限りなくあるのでありますけれども、私どもは少くともまじめな先生に対してはどこまでもその立場を擁護して、日本教育のためにやっていただきたいと思いますけれども、なるほど憲法にも学問の自由ということはあるけれども、少くとも義務教育においては、私はやはり国の大方針というものを、大筋だけは守っていくだけの義務教育としての先生の使命というものがあると考えるのであります。一番進歩的な、教育方面のことについて発言されておるという東京工大助教授の永井道雄さんさえ、ある冊子にこういうことを言っております。「なるほど教育面については専門家でないから低いかもしれないが、一般社会のことに関しては父母の方が、教師より先輩である。これからは父母からも学ぶという謙虚な態度で接することが望ましい。」こういう進歩的と称せられるいわゆる学者でも言われておるのであります。  ただ私ども最後に一言つけ加えたいことは、この進歩的学者の問題が出たからでありますが、国立大学の先生が日教組の講師団と称してだいぶん方々に講演に行かれているようでありますが、少くとも国の費用で経営している国立学校において、学問の自由という点から自由に学問を研究され、一部そういう点を発表されるということは、その点につきましては自由であると思うのでありますが、ただしかし、ややともするとこの点が私は政治的行為に陥る心配があるのではないかと考えるのであります。ということは、人事院の規則に、政治的行為の定義といたしまして「政治的目的のために職名、職権又はその他の公私の影響力を利用すること。」こういう規定があります。この勤評反対ということは、やはり人事院規則の中の「国の機関、又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条件に包含されたものを含む。)の実施を妨害すること。」ということ。勤務評定ということは国の機関すなわち国会におきましても、また公けの機関、地方の議会等におきましても、条例等において規定されておる政策であります。この実施を妨害するような行為というものは、明らかに政治目的のためであり、政治行動である、こういうふうに推定されるのであります。そういたしますると、現在でも地方におきましては特に事大思想がまだあって、大学の教授、ことに国立大学の教授というと、学問においては確かに権威があるせいでありましょうが、非常に権威があるごとく考えて、これがあらゆる面にその権威があるごとく一面には誤解される点があって、そうして地方に非常に誤まった考えを肩書きによって流布されるという心配があるのであります。この条文だけでは、先ほど申し上げたような学問の発表の自由ということである程度言いわけはつくかと思うのでありますが、ただ地方によっては明瞭に実施を妨害するというような事例があるのではないかと思うのでありまするが、この点について一つ文部当局に、そういう懸念が、この法律に反するような疑いがあるのではないか、そういう場合も起るのではないかというようなこと、あるいはまた実際にそういう事例がもしあったならば伺いたいと思います。
  25. 緒方信一

    ○緒方説明員 大学教授も国家公務員でございますので、政治行為の制限禁止の規定の適用を受けますことは当然でございます。  そこで、ただいまの問題でございますが、勤務評定に関しまして、一般的の意見を公表するということはともかくといたしまして、地方におきまするこの実施の権限を持っておりまする教育委員会実施を、具体的行為によって妨害するような態様にわたるようなことがかりにあったといたしますならば、これは私はこの政治行為の取締りの規定に違反することになるのじゃないかという心配を持っております。従いまして、私どもといたしましては、機会のあるごとに、大学の先生方にもこのことをわかってもらいたいと思っております。この規定等につきまして、十分わかっていない先生方もあると思いますので、わかってもらうように努力をしておる次第でございます。
  26. 坂田道太

    坂田委員長 先ほどの臼井委員の発言中誤解を招く点があれば、速記録を調査の上委員長において善処いたします。  午前の会議はこの程度として、午後一時三十分より再開いたします。     午後零時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後二時十二分開議
  27. 坂田道太

    坂田委員長 休憩前に引き続き、会議を続行いたします。  辻原弘市君。
  28. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは委員長に申し上げますけれども、午後の開会は、午前中に委員長から宣言された通り、一時半が定刻になっておりますが、すでに時間を過ぎること四十分、われわれも定刻からここに待ちましたけれども、いまだ通告をいたしました政府委員関係が、警察関係の担当大臣その他政府委員だけでありまして、文部大臣あるいは法務大臣等々の出席がないのでありますが、これは一体どういうことでございますか。われわれの質問に対して誠意を持って出席するという意思がなければ、われわれにおいても考えるところがあるのですけれども、一応委員長の所見を一つ……。
  29. 坂田道太

    坂田委員長 委員長から申し上げます。ただいまの辻原君の御意見、私も同感に思いますので、政府委員とされましても、すみやかに御出席をいただきたいし、またわれわれの要求があったら答弁ができるように、今後御協力願うようにお願いを申し上げたいと思います。
  30. 辻原弘市

    ○辻原委員 けさ来、立場は違いますけれども臼井委員の真剣な質問を、われわれもきわめて静粛に、きわめて慎重にこの発言を伺って参ったのであります。本日取り上げております問題は、教育に関連し、さらに私がただいまから質問をいたそうという問題は、警察官という特別公務員の暴行に関する問題でありますだけに、本委員会で取り上げている問題は、国民にとって重要なケースの問題であると思います。従って、われわれも真剣にこの問題をこの席上で論じたいと考えておるのでありますが、政府においても、一つそういう観点から、暑中でありますけれども、真剣にお取り組みを願いたいと思います。  私の質問と申しますよりは、特にこの委員会を通じましてただしておきたいのは、去る十六日の夕刻和歌山市において起きました、勤務評定反対に関連をいたしましたデモ行進の際、警察の実力行使によって巻き起された、あの警察官による傷害事件であります。すでにこの件に対しては、それぞれ警察庁には詳細な報告が参っておると思いますが、特に私がこの件を取り上げましたゆえんのものは、警察官の実力行使によって、約百五十名に及ぶデモ隊あるいは若干の警察官の負傷というこの事態を引き起しているということと、しかもただデモ隊と警察官が、そうした場面で衝突をして、偶発的に軽微な負傷、重傷を負ったという事件でなしに、故意に警察官がこのデモ隊に対してこん棒その他をもって殴打をして、幸い一命はとりとめましたけれども、ほとんど死に至らしめるのではないかと想像されたほど致命的な打撃を与えている事件、さらに当事者である警察官とデモ隊だけではなしに、第三者、特にその場に居合せましたところの報道関係、こういった第三者をも無差別に実力行使の中に巻き込んで殴打あるいはその職務を妨害しておるという事態は、いかに取締りのためであるとはいえ、さようなことが今日の警察官に許されておるとは解しないのであります。従って逐次私は事実の真相を申し上げつつ、しかも警察が得られておるところの報告あるいは情報を私もお聞きいたしつつ、この事態を解明し、あくまで警察の実力行使という名に隠れた不法な行為を追及して参りたいと私は思うのであります。  最初に私は青木大臣に伺っておきたいと思うのでありますが、警察は取締りのためであるなれば、どういうような手段を用いてもいいということにはなっていないはずだと思います。この当夜起きました問題については、あなたが報告を受けられた範囲に基けば、その定められた許された合法的な範囲内において取り締ったというふうにあなたは判断せられておるのかどうか、この点を最初に承わっておきます。
  31. 青木正

    ○青木国務大臣 去る八月十六日和歌山市においてデモ隊と申しますか、行進隊と警察官とが衝突を起した事件、ああいう事態を起しましたことは私どもまことに残念に思います。ただしかし警察といたしましては、御指摘のありました通り、定められたる警察官としての定められたる範囲内においてこのデモ隊の規制に当った、私どもはさように考えておるのであります。何分混乱のことでありますので、その間においていろいろと御批判もあろうかと思うのでありますが、しかし全体として見ますときに、私は警察が故意にあるいは計画的に警察官としてあるまじき暴行をするというふうには承知していないのであります。大局から申しますれば、あの当時とりました警察官の行動というものは警察官としての職務を果すために当然やるべきことをやった、その間におけるあるいは多少の御批判等もあろうかと思うのでありますけれども、決して警察官が故意にあるいは悪意をもって職責を離脱して暴行を働いたというふうには私は考えていないのであります。なおまた個々の事実問題につきましては、申し上げるまでもなく、公安委員会の方に一々そうした報告が参るわけではないのでありまして、もっぱらその直接の報告を受けておりまする警察庁の当局から詳細の点はお聞き取り願えばおわかりかと思います。かように存じます。
  32. 辻原弘市

    ○辻原委員 担当大臣の青木さんのお答えによりますれば、この取締りについては、全体としては定められた範囲内のものであって、警察としては当然の措置をとったまでである、こういうふうにお話がありました。あくまでも定められた範囲内という話でありましたが、私の貧弱な知識をもっていたしましても、かりに警察隊という名による取締りでありましても、個々の警察官の行動あるいはその集団を指揮したところの指揮者等に、法に定められた範囲外のものがあるなれば、当然それは個人が法によって処罰を受けなければならぬと規定されておると私は思います。従って全体としてどうであったということが一つの問題であるが、いま一つ個々が果してどうであったかということがこれまた重要な問題である。従って全体として、あるいは個々の警察官、あるいは指揮者、こういった範囲の中に、定められた範囲を逸脱しておった行為がもし具体的に存在をし、そのことが立証せられるという場合に至ったときには、これはもちろんそれぞれの法の手段がありましょうが、担当大臣としてのあなたはその場合に処するにどういう御決意がありますか。このことをあらかじめ承わっておきたい。
  33. 青木正

    ○青木国務大臣 お話のごとく個々の警察官に万一職務を逸脱した行為等がございまして、そのことが多数の民衆に迷惑をかけた、あるいはまた何か傷害事件を起したというようなこと――果して個々の警察官が行き過ぎな行為であったかどうか、事実を詳細に調べなければなりませんが、万々一そういうことがあるとするならば、これは当然警察官としてあるまじきことでありますので、それぞれ適当な処置をしなければならぬことは当然であります。しかし私ども今日まで報告を受けておるところによりますと、そういうようなことは果してあったかどうか、私はここで断言するだけの根拠は持っておりません。今のところさようなことはなかったのではないか、かように考えておるわけであります。  なお事実問題等につきましては、警察庁からお聞き取り願えばおわかりと存じます。
  34. 辻原弘市

    ○辻原委員 事実問題は警察庁の責任者に聞いてくれということでありまするから、警察庁の長官に伺いたいと思うのでありますが、聞くところによりますと、長官は何かかわられたような話でありまするから、責任者として次長から伺いたいと思います。  まず事件の概貌は、これは政府委員の皆さんもあるいは当委員会の皆さんも当夜その現場を目撃したわけではありませんから、あくまでもこれは客観的な資料によって私も質問をいたさなければならぬのであります。そこで一つの参考でありますが、この十六日の衝突、この問題につきましては、けさほども臼井委員が少し触れておりましたけれども臼井委員が取り上げられましたように、やはり客観的に報道されているものを参考にいたしてみますると、八月十九日の読売新聞にはこの当夜の事件の真相が一体いかなるものであったかを物語るに足る、きわめて有力な報道がなされておると私は思う。その他の新聞も大同小異で、その取り上げている内容の経過というものはやはりほぼ同じであったと思うのであります。その三面を見ますると、「血に狂った警官隊の暴力」、こういうきわめて大きな表題でもって、天下の大新聞である読売新聞が事態の経過を目撃した記者団の座談会を通じて報道しておるのであります。私はこの記事をもってその一端がうかがえると思う。私もまたその後現地を見、さらに被害者にも会って、当夜の状況について客観的な資料を得ました。各新聞が報道しておりますように、血に狂った警察官の暴行とわれわれは遺憾ながらそう言わざるを得ないような当夜のその警察官の行動をこの席上において皆さんに申し上げなければならぬ。このような報道について警察庁は、これは全く新聞の報道の誤まりであると否定せられるかどうか、承わっておきたいと思います。
  35. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答えを申し上げます。八月十六日の事件につきまして、読売新聞その他が報道をいたしておることは、私も承知をいたしております。  ここで私は十六日に起りました事件の概要をかいつまんであらかじめ申し上げておきたいと思います。八月十六日に和歌山市におきましては、十五日の勤評反対国民大会の行事の一環といたしまして、青年学生勤評反対共闘会議計画いたしました勤評阻止、平和と民主主義を守る青年、婦人、学生全国大会というものを和歌山市の城北小学校において約九百名が参加して開催したのであります。午後六時三十三分からデモに移りまして、その後デモ隊の不法行為を規制しようとしました警察官を、旗ざおでなぐるなどの暴行を加えて混乱に陥った事件があるわけであります。さらにその際公務執行妨害等のために検挙者を若干見ておりますが、その釈放を要求しまして和歌山西警察署に押しかけまして、すわり込みに入りましたデモ隊に対しまして、再三――数で申しますと百数十回に及ぶ警告をいたして、なお退去しないということで、これに対する実力排除が行われたわけでありますが、この際にも相当多数の負傷者を双方に出しておるという状況のようであります。  大体この大会は、八月十六日の午前十時から午後六時二十分ころまで、和歌山市の城北小学校において開催されて、この大会の済んだあとデモに移ったわけでありますが、デモ行進の許可は、届出通りに午後四時から午後七時ということにきめられて許可されていたのであります。ところが大会の終了したのが六時二十分ごろでありますので、予定コースの行進には一時間を要するというふうに認められますので、所轄の警察署長は午後六時ごろに会場におもむきまして、午後七時以降に及ぶデモ行進は認められないという意味の警告をいたしております。午後六時二十三分ころ全学連を先頭にいたしまして、日教組その他の指揮によって、約五百名が会場を出発いたしたのでありますが、市電の宇治停留所付近で軌道上を約四分間ジグザグ行進を行い、この間に電車などが九台ほど立ち往生をいたしております。午後六時五十二分ごろに本町二丁目、これは和歌山市の非常な繁華街でございますが、この付近に差しかかると、再び旗ざおを横にかまえまして、道幅一ぱいにジグザグ行進に入った。警察広報車の警告を無視しまして、約十二分にわたってこれを行なったのでありまして、この間通行を著しく妨害しておるのであります。当日はお盆のために相当の人出があったというふうに聞いております。こうしておりますときに、スクーターで同所をデモ隊と並行して南進しようとした通行者がありまして、これに対してデモ隊員がじゃまだということで、スクーターをけった。これに憤激しました同人がスクーターを下りて、けったデモ隊員にかかっていった。そうしたら一人でありますので、デモ隊に巻き込まれました。そこで警察官が一個分隊ほどこれの救出にかかっておるのであります。ちょうどそれとほぼ時間を同じくしまして、日本教育対策協議会の宣伝カー、これはオープン・カーでございますが、これが初めは警察の警告によりましてデモ隊とトラブルを起すことなしにデモ隊の方向に進んで、これを行き過きたのでありますが、これがまた引き返してきて、道路一ぱいに広がっておりますデモ隊に差しかかったわけです。しかしこれが前進できないで、逆に十メートルほどデモ隊に押し返されたわけです。一たん十メートルほど後退した宣伝カーは、さらに角度をかえて進行し、若干そこでデモ隊との間に旗の奪い合いなどがあって、混乱に陥っております。  午後六時五十五分ごろ警備部隊が現場に出動いたしまして、こういうふうに交通を妨害しておりますデモ隊でありますので、これに対して混乱の収拾、ジグザグの制止に移ったのでありますが、デモ隊は全学連、民青同などを中心にいたしまして、旗ざおを振り回して警察官になぐりかかるという暴挙をあえてしたのであります。あるいは付近の工事場にありました丸太をなげつけるというようなことがありましたので、この際に公務執行妨害罪や傷害罪の現行犯といたしまして、三名を検挙いたしております。この混乱のために双方に負傷者を出したわけでありますが、この警察部隊の実力排除によりまして、デモ隊の方でも脱落する者がかなりあって、約三百名ぐらいになりまして、その後は道路の右側を平穏に行進しておるのであります。公安条例によります許可時限でございます午後七時に、デモ隊は医大付属病院前に差しかかっておりましたので、警察といたしましては広報車をもって解散を警告しました。そうしましたところが七時五分ごろにこの病院前に停止いたしまして、警察署に抗議しなければならないということで、労働歌を高唱して気勢を上げておった、そういう状況があったのであります。この際見物中の一般市民からは、病院の前でやかましくするのは常識がない、それでも教員かという非難がありまして、この間は一時沈黙をいたしております。さらにその後七時半過ぎにデモ隊は和歌山の西警察署に到着をいたしまして、表玄関から押し入ろうといたしましたが、これは警察部隊によって制止をされております。午後七時四十五分ごろ警察署前の歩道上に六列横隊くらいで坐り込んだのであります。西警察署におきましてはこの坐り込みに対しましてマイクを通じて解散するように百数十回にわたって警告をしておるが一向に応じない。この間見物中の市民も多数出ておりまして、デモ隊に対して罵声を送る……     〔辻原委員「僕の質問したのはそんな長ったらしいことではなく……」と呼ぶ〕
  36. 坂田道太

    坂田委員長 事件の背景を申しておりますから、なるたけ簡単に要点を御説明願いたいと思います。
  37. 柏村信雄

    ○柏村説明員 あるいは砂や石などを投げつけるなどの行為がありまして、警察はこれを制止いたしたのであります。また午後九時過ぎころ……。     〔辻原委員委員長委員長、それは違う。報告書を読んでおるではないか。私が質問したのは読売新聞に出ておるのがほんとうかどうかということを聞いておるのです。もう少し要約してやってもらいたい」と呼ぶ〕     〔「現場からの報告だという前提がないではないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  38. 坂田道太

    坂田委員長 もっと静かに願います。     〔「警察からの一方的な報告ではないか」「質問に対して端的に答えろ」と呼びその他発言する者多し〕
  39. 坂田道太

    坂田委員長 お静かに願います――ちょっとお静かに願います――要点だけを願います。
  40. 柏村信雄

    ○柏村説明員 そういう事態がございまして、そこで民衆の間からもその坐り込みデモ隊員の肩や手を引っ張るというような若干小ぜり合いもありまして、警備中の警察官がこれを制止したこともあったような状況であります。午後九時二十五分に至りまして、警察は百十数回の解散警告にも応じないので、その坐り込み隊に対しまして排除に移ったのでありますが、そこでもみ合いになりまして、公務執行妨害罪現行犯として一名を検挙したというような状況がございます。その間においてけがの問題でございますが、警察官の方も非常に多数のけが人が出ております。またデモ隊の方にも出ておる。百数十名ということが報告されておりますが、警察の方でその実情を調べようとして病院について聞きただしても何らの答えがない。(「きまっておるじゃないか」と呼ぶ者あり)そういう状況で現在デモ隊の方は何人の負傷者があるのかわからない状況でございます。     〔発言する者多し〕
  41. 坂田道太

    坂田委員長 静かに願います。田中君、静かに願います。
  42. 柏村信雄

    ○柏村説明員 午後九時四十五分に、すわり込みデモ隊全員を排除いたしまして、排除されましたデモ隊は、一たん筋向いの市役所前庭に集合し、さらに三々五々教育会館に向い、そこで解散したようであります。そういう事情でございまして、それはけが人が出ましたから、記事が誇大に書かれるということはあったかもしれませんが、警察だけがデモ隊員をたたいて、そしてこれに血を流さしたというような事態ではない。むしろわれわれ現地から報告を受けている範囲におきましては、防御のために警棒を振り上げる場合はもちろんあったと思いますけれども、これによって頭部その他積極的にこれをなぐるというようなことはなかったように聞いておるわけであります。
  43. 辻原弘市

    ○辻原委員 今のは警察側の報告でありますから、おのずからわれわれのこれについての実相の把握とは異なっております。従って個々について私は反駁はいたしません。しかし総じてあなたが今述べられた言葉の中には、私は聞きのがしがたいあなた方の考えの根底がにじみ出ておったことをここに述べなければならぬ。それは警察と民衆、それからデモ隊、これは、すべて民衆でありますが、これがただ一般の一つの集団と集団がけんかをした、けんかをしたならば双方にけがができる、おれの方だけ悪いのじゃない、相手がやったからおれもやったのだ、これは普通通例の、たとえばお祭騒ぎの中で二つの集団が争うとか、あるいは個々の個人がけんかをする、そういった場合にはそういうものの言い方はできると思います。しかし警察と民衆が対したときは、そういうような相手がやったからおれたちもやったのだというようなものの言い方――私にはそう聞えた。そういうようなものの言い方は、私は今日の警察官という特別公務員の任務にはないはずだと思うのです。そういうような考え方において、あなた方が治安に当っているということならば、これはゆゆしい問題だと思う。少くとも特別公務員たる警察官の行為というものは、あくまでも生命に危険を及ぼすとか、あるいは非常に激しい凶悪犯によって生命が脅かされるというような場合においては、法律は正当防衛を許しているかもしれません。しかしながら、自然偶発的に起ったような場合においても、それに先んじて、ともかくその集団に対して攻勢をかける、攻撃をかけるというようなことをしばしば警察官がやるということになれば、これは一体治安という根本的な問題に立ったときには、治安を守ろうとして逆に治安を乱す結果が起るではありませんか。今回の和歌山の問題につきましても、あるいはデモ隊が時間を守らなかったり、あるいは若干のジグザグの問題についてその制止を聞かなかったとか、いろいろそういう点をとらえればあるかもしれません。しかし、そういうことよりも、根本は一体警察がどういう観点からこのデモというものに対処していったか。またそれのデモが整然として行われ、少くとも憲法が保障している集会あるいは表現の自由というものを最大限度守らしていくというような見地から、もしこの治安あるいは警備ということに当っておったならば、このような事態は起らなかったであろうと思うから言うのであります。今のあなたの御答弁からすれば、何か同じように四つに組んで、そうしてお互いががたがたやるような、そういうものの考え方で今の報告がなされたと私は思う。そういうことはけしからぬと思う。これは一体どうなんですか。
  44. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答えいたします。警察官が厳正公平に秩序の保持に当るということは当然のことでございまして、決して民衆を相手にしてこれと争い合うというようなことは考えておりません。今度のデモ隊に対する規制措置にいたしましても、先ほど申し上げましたように、十五メートルの道幅をほとんど一ぱいにして旗ざおを横にしてジグザグ行進をする、こういうことでは一般市民が非常に迷惑する、許可の条件にも反するということで、これに対して適当な規制を加えるに当って、暴徒がこれに対して旗ざお等を持ってなぐりかかって参った、従って警察官が多くけがを受けておるという事実を見ても明らかだろうと思います。決して先生が御心配になるような、警察が善良な民衆と相対してこれと闘争するというような考えは持っておりません。その点ははっきり申し上げます。
  45. 辻原弘市

    ○辻原委員 新聞が報道しておるデモ隊あるいは第三者側の負傷者百数十名というものについては、調べたけれども何らそれについてはわからなかったという。私はその報告にも非常に合点がいかないのでありますが、現に現地の新聞においては入院しておる場所まで報道されておるのですよ。それすら警察がわからないという怠慢なことがありますか。またあなたは、デモ隊や第三者のみでなく、警察官の方にも多数の負傷があったと言うが、果してどのような傷をどういう人が何人負って一体現布どうなっておりますか。われわれは遺憾ながら警察官に脳底骨折をするようなけが人が出たということは聞いておらない。あるいは腹を靴で踏みにじられて、その靴の底のびょうのあとまでがついておるというようなけが人のあったことも聞いておらない。そういうようなことがあったかどうか。あったならばあなた方が具体的に述べればよろしい。ありますか。
  46. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警察官のけが人は、ここに私ちょっと資料を持っておりませんのではっきりしませんが、六十数名というふうに聞いております。入院した者は数名であります。しかしそれは脳底骨折というような傷を受けた者ではありません
  47. 辻原弘市

    ○辻原委員 六十数名が傷を負って、そうして入院した者が数名ということでありますが、これはあなた方の側だからもう少し正確な資料があると思いますが、どの程度の傷を負われたのですか。
  48. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警察官の負傷者は八月十五日が十七名、これはやはり十五日のデモ行進で渦巻行進に巻き込まれて負傷した者であります。八月十六日が六十五名。それでその中で二週閥程度の者が八月十五日が一名、十六日が四名。十日間程度の者が八月十五日が一名、十六日が六名。一週間程度の者が十五日が三名、十六日が三十四名。五日閥程度の者が十五日が一名、十六日が十九名。三日間程度の者が十五日が二名、十六日が二名。その他十五日に擦過傷九名ということになっております。
  49. 辻原弘市

    ○辻原委員 警察側の傷は二週間とか一週間とか言われております。第三者及びデモ隊の方での重傷者、負傷者は先ほど言いましたように百数十名ということがどの新聞にも報道されております。その重傷を負った者の中の一、二を申し上げると、先ほどもちょっと触れましたように、同志社の学生でありますが、これは脳底に達するこん棒の傷であります。おそらく事件は、あとでも申し上げますように、本人その他からは一つの刑事事件として告発されておりますから、そこで明らかになると思いますが、私が行って調べたのによりますと、明らかにこん棒によると思う傷であります。そうして脳底に達しておるその痕跡がレントンゲ写真においても明瞭に出ておるということがいわれております。さらにいま一人、これは和歌山市の丸山君という教職員でありますが、胸部を骨折しておる。私はその病院に実情を調査に参りました。靴の鋲が、下腹部に踏みにじられたあとが、靴の型がそのままになっておる。それから胸の上部、胸骨の折れたその上部には、やはり同様靴のあとがべったり踏みにじられておる。そのことを新聞が報じておる記事を見ますと、かくのように新聞は書いておる。これは読売の記事であります。あるいはその他、先ほどほかの新聞はということでありましたが、毎日も朝日もたくさんあります。代表として読売の記事を申し上げますと、これは目撃した新聞記者の記事でありますが、こういうふうに書いてある。学生たちと同じように制服トンネルヘ突き込まれた。和歌山市支部の丸山書記長が殴打をされて袋だたきに会いながら、お前らの顔は全部覚えているぞとどなったところ、警官の一人は、見えないようにしてやれと左の目をなぐり、彼の左眼はまだ見えないそうだと、こう書いてあります。その通りでありまして、左眼が殴打されておる。ここかおそらく毛細血管の破裂でありましょう。そしてその当夜はほとんど目が見えないという状態であり、満身創痍でありました。このような事件について警察が、知らない、調べに行ったがわからないとして放置しておる。もちろん私は、職務のために多少の行き過ぎはあっても、傷を負われたということであれば、警察官も気の毒であるとは思います。しかしそういう一線の警察官の問題でなしに、私が主としてたださんとするのは、そういう警察行動をとらしめた指揮者及び命令系統に対しては後刻触れて参りたいと思いますけれども、気の毒ではあるが、一力にこういったような一般民衆が警察官によって直接傷害を受けているというこの事実、これについて警察が詳しくデータを持っていない、あるいは調べたけれどもわからないというような態度でおられるということは、私はこれは見のがせないと思うのです。そういう事実についてはあなた方は調べられたことはないのでありますか。
  50. 柏村信雄

    ○柏村説明員 お答えいたします。先ほど百数十名の発表があったが、その状況がよくわからないと申しましたのは、大部分の人が教えてくれないのでわからないのでありまして、現在まで確認しておりますのは四名であります。その一人は和歌山市教組書記長の丸山輝夫君。これは今お話のように肋骨亀裂、骨折、左眼打撲傷、左足関節捻挫など全治二週間ということになっております。それから第二は公務執行妨害罪などで検挙をいたしました井上章という人間であります。これは頭部打撲傷、右指擦過傷など全治一週間、これは警察で逮捕中でありますので、医者に見せてわかっておるわけであります。同じく早大生の松永毅士、これは左ひじに軽い擦過傷。これも警察で逮捕中でありますので、医師の診断によってわかった。第四人目が大和高田市の堀江静三、これは十六日の本町二丁目のデモ隊混乱の際負傷して、本町四丁目の松岡病院に入院しているということを聞いておるわけでありまして、これに対して所轄署の警察官が直ちに同医院におもむいて負傷者の実情を尋ねようとしたところが、ここはデモ隊の人々で一ぱいであって、警察官に対しては何しに来たというような詰問をするだけでありまして、ようやくにして松岡医師に会いましたが、これも詳しい話はしてくれないのであります。それでこのときには、後頭部が傷ついておる。警棒ようのもので強く殴打された様子で、脳底骨折、安静を要し、臨床尋問は無理だというふうに語って、カルテを見せてもらっただけで帰ったのであります。  そこで私はさっきわからないと申しましたが、これは実際幾ら聞いても教えてもらえないという問題と、もう一つは、これの原因が果して警察官によってやられたものであるか、あるいは一般市民が石を投げたりしてやったものであるか、その辺の原因も実ははっきりしないのであります。たとえば丸山輝夫君のごときに至っては、はっきり傷害を与えた者が出ておるのでありますが、これは太田垣泰明というものがやっておるのでありまして、これは警察の者ではございません。なお今申し上げました堀江静三その他、こういう負傷者については、検察庁に告発がなされておるそうでございますので、これの検察庁側における解明によって明らかになることと思います。
  51. 辻原弘市

    ○辻原委員 たまたま具体的な事実がだいぶ先に出てきましたので、それならば一つ私は今の最後に言われた、丸山君のけがの原因について少し聞いてみたいと思います。  今あなたがこれは警察官がやったのではない、太田垣何某という全国教育対策協議会のメンバーである者がやったのだ、こう言う。ところがこのときは、この当夜の警察の実力行使というものは二回にわたって行われた。第一回は先ほどあんたが言われたように、和歌山市本町二丁目の丸正という百貨店の前。それから二回目やったのが西警察署前。そのときはデモ隊は抗議のためにすわり込みをやった。だからここの現象から言うと、すわっておる。特に丸山君については私も面識がありますから、どういう状況か、われわれもその点について十分信頼に足るそばの目撃者あるいは本人からも、いろいろ直接聞いてみた。本人は、私はすわっておって、そういうような暴力をやるというようなことは断じてない、こう言っておる。そのときに今あなたが言われた太田垣某という者がズボンをぬがした。そして丸山君を引きずって行こうとしたという一つの暴力行為があった。かりにその際に丸山君に対して警察官でない第三者が、暴行を加えておるという事実があったとしたならば、なぜそれを警察官が取り締らなかったかという問題である。なぜ取り締らなかったか。制止をし取り締まっておったならば、多数の警察官に守られて、丸山君は全治三週間ないしは一カ月というような骨折に至るような、あるいは靴あとがからだにつくような傷は負わなかったはずだと思う。常識的にそう思う。ところがそれを助けるどころか、警察官が引きずっていって、警察官が暴行を加えたというような、先ほど私が新聞で読み上げたように、新聞は報道しておるじゃありませんか。そういうことは読売の記者の把握が誤まりである、新聞の報道が誤まりであるというならば、この席上で新聞が誤まっておるということをあなたがおっしゃればよろしい。また私の発言が事実と違うというならば、その点に関する限り私は自信をもって申し上げる。常識的にいっても、集団的な暴行で、そういう傷を負うような暴行事件がそばにありながら、それを救い得なかったということはどういうことであるか。第三者が暴行をやったんで、警察官はあづかり知らぬところだ、これで逃げて済みますか、これは一体どうなんです。
  52. 柏村信雄

    ○柏村説明員 ただいまお尋ねの丸山書記長に対して、警察官が暴行を加えたというお話でありますが、われわれの調査では、暴行を加えたような事実はないのでありまして、警察は、丸山書記長が太田垣らから暴行を受けておるのを見て、交通整理中の警察官が、これを救出しておるという報告を受けておるのであります。しかしながらこのことは丸山書記長について当時の状況を詳細に調査すれば一そう明白になると思いますけれども、丸山君は現在和歌山大学の付属病院に入院しておりまして、警察官との面会を拒否しております。従って警察においてこれ以上その当時の状況を知るに由ないと思います。
  53. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは事実と違いますそ。そのときにも、丸山君は泣いてくやし涙を流しておった。どうするんだ。けさから西警察に電話をかけて、警察官に臨床尋問に来てくれということを何回も言ったが、警察は来ないと言う。仕方がないから、本人は検察庁でもいいから告発をすると言っておる。おかしいじゃありませんか。そういう報告はどこから聞いたんですか。私は警察著長にも、人を介して言った。くつあととか、こういうのは本人が言っているんだから、明らかにそれだけの傷を負わしているんだから、今のうちに事実をとっておかなければ、これは何といったって、本人が幾らくやしがろうと問題にならぬから、臨床尋問をしようじゃないか。それを、丸山君が警察を拒否しておるということはまっかなうそですよ。あなたは、警察官がやったんじゃない、第三者がやったんだとおっしゃるけれども、そのときに、その大田垣某外十数人がおったということを私も聞いておる。しかしその人たちは、いずれも警察のくつをはいておりませんぞ。びょうを打ったくつをはいておりませんぞ。しかし丸山君の全身に傷がついているのは、全部警察官のはいているあのびょうを打ったくつで受けた傷ですよ。救出しに行ったものならば、被害を受けている者を、どうして上から踏みつけますか。私ならそういうことをしません。ほんとうにかばおうとして救出しようとするならば、自分のからだを挺してでもその人間を守る。ところが救いにいった人間のくつのびょうが、その被害を受けたからだに歴然と証拠として残っておるという、この事実はどういうことなんですか。だから、なぜそれを警察が調べなかったかということなんです。本人が臨床尋問に来てくれと言っておるのに、臨床尋問に来なかったということなんですが、これは一体どうなんですか。
  54. 柏村信雄

    ○柏村説明員 臨床尋問を要求したと仰せになりますが、警察では面会を拒まれておると申しておるのでありまして……     〔「それは事実と違う。そんなことはない。西署の署長はそういうことを言っておらぬ」と呼ぶ者あり〕
  55. 坂田道太

    坂田委員長 お静かに願います。
  56. 辻原弘市

    ○辻原委員 そういうふうな報告を受けられているそうであります。しかし私は先ほど個々については申しませんと言いましたけれども、いかにもその報告があなた方のすべてであるとするならば、真相と違うし、またおそらく現地で西署長及びその部下である捜査官の人たちがとった態度ともこれは違う、まるっきり正反対なことをあなたがここで述べられておる。ただそういう報告があったとおっしゃれば、この席上でわれわれは違う違うということで水かけ論になりますが、これは違うことは事実であります。私は違わぬことは申しません。だからその問題は今後はっきりして参ると思います。これは検察庁の問題にもなっておりますから、われわれも事態をさらに明らかにいたします。  もう一つは、あなたがそれは警察官じゃないと言って、まあ部下をかばわれるということは、気持はわかりますよ。しかしこういう重大な件については、事実は事実として、やはり常識的に考えてもらわなくちゃならない。常識的に考えたときに不思議に思われませんか。あなたはこの丸山君を警察官が救出に行ったんだと言う。太田垣何某というのは、丸山君の話によると、あるいは目撃者の話によると、彼のくつをぬがして、その次にズボンをぬがした。そうこうしているうちに警察官がわあっと来た。丸山君は、そのときは自分がすわっておったから、警察官が助けに来てくれたんだろうと思っておった。ところが、あにはからんや、引きずられていって殴打されたというのです。それで、知っておる者がおったので、先ほどの新聞に書いてありましたように、お前の顔を知っているぞ、やられながら彼はそう言った。それならというのでばっと目をやられたというのです。そういうことを、救出に行った警察官がどうしてするのですか。また救出に行ったならば、なぜくつのびょうがからだにつくのですか。ころんでたまたまついた、そんな傷じゃありませんよ。無意識にぽんとさわったような程度であれば、人間のからだにくつのあとなんかつきません。意識的に踏みにじられて、しかも下腹部についておるあとなどというのはにじっておりますよ。びょうでぐっとにじられたあとが紫色になっている。これは医者がちゃんと診断をとっているから明瞭です。それをしも、警察官が救出に行って何ら手を出していない、こういうふうにあなた方はおっしゃるのですか。取締りの中で、大勢の集団の中で、ちょっと手をひっかく、あるいはちょっとくつが相手の足を踏んだとか、こういうことは、往々派生的に起りがちなものなんです。そういうことを今申し上げているのではない。意識的な警官のそういう暴力行為を私は今ここで糾弾している。事のよし悪しということはそれは二の次なんです。取締りあるいは警備、治安、重要な任務を帯びている警察官が、個人の私憤とか感情とか、そういうものにかられて、そうして無辜の住民に対して殴打するということは、私は今日の日本の憲法では断じて許していないと思う。そのことを私は申し上げている。そういうことは断じてない。特に法務省に人権擁護局が設けられ、特に人権の宣言にうたっているゆえんのものの中に、重要な問題として指摘されておるのは、これは刑法の中にもある通りだ。特別公務員のいわゆる傷害あるいは陵虐ということについては特に重刑を課しているのです。その趣旨というものは、取締りという権限を持っているとえてしてそういう行為を偶発的にしろ起しがちなものですから、そこにこれを規制するために、特に一般の場合の刑法とは別個に、この特別公務員のそういうような事犯というものについては厳に戒めているはずなんです。そこを私は強調しているのですよ。ただ二人、三人の人間が集団的にぶつかって、お祭の騒ぎの中でけんかしてけがをしたという事件とは違うのですぞ。それを言っている。事実そういうような行為があったらどういうことになるのですか。告発事件になったら法務大臣はどうするか。なぜ関連がないということを明言したか、おかしい。
  57. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私は警察官が不法を犯したことまで、かわいいからかばうためにこれをうやむやにするという気は毛頭ございません。しかし現在までの詳細な報告によりまして、今までの調査の可能な範囲におきまして、丸山君から詳細聞くことができない、しかも警察官としてはそういうことをやっていないということなんでありますから、それは御信用願うよりほかないと思うのです。  なおこれにつきましては丸山君から太田垣に対する告訴が出ておりますので、太田垣を逮捕いたしまして取調べをいたしております。この取調べの過程においてもある程度そういうことがはっきりしてくるかと思います。
  58. 辻原弘市

    ○辻原委員 この際私は法務省の関係に聞いておきたいと思うのでありますが、人権擁護局の局長はいないのですか。
  59. 坂田道太

    坂田委員長 局長は出張中であります。
  60. 辻原弘市

    ○辻原委員 これは午前中にも人権の問題で論じられましたが、特別公務員による傷害事件、これは疑わしいとしておいてもいいでしょう。こういう事件がすでに発生しているのですから、当然これは生命の危険にまで及ぼうとした事件です。調査をされていると思うがどうなんです。
  61. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これはまことに重大な御質問であると思いますから、私からお答え申し上げます。先ほど申し上げました通りでございまして、本件に関連する人権擁護の問題につきましては、詳細に調査をいたしました上で、適切な措置を講じたいと思っております。  なおただいま御指摘がございましたが、特別公務員の立場というものは、ただいまの御指摘のような環境にあるだけに、半面においてはこの人権の擁護ということについても、十分の戒心をいたしたいと考えております。
  62. 辻原弘市

    ○辻原委員 私は法務大臣の答弁を求めたわけではなかったのでありますが、出られてきたので、私一言申し上げておきたいと思います。具体的には事実があったかということを私は事務的に尋ねた。大臣はしかし何かその件に関しては関連があるのか、ばくとした答弁をされた。私の質問は、こういう特別公務員の犯した傷害事犯については、特に私は今日の人権擁護の建前、あるいは今日の法規の定めるところに従えば、これはきわめて重要な問題だから、人権擁護局としてもいち早くその実体を調査しなければならぬ。そういう観点から調査しているだろうかということを伺った。ところが法務大臣のお答えは、その反面特別公務員の人権を云々ということを言われた。もちろん人権に変りがないのでありますから、いずれの人権もひとしく尊重しなければなりません。しかし特に、そういう一つの武器を帯し、権限を持っておる側の、いわゆる取締り官が犯す一つの暴力行為というものは、何らそういうものを携行しない一般大衆からいえば、非常に重要な問題だから、特にそのことを私は強調している。だから一般的な人権の尊重はしなければならぬということは、これはだれしも百もわかっているわけです。今私が具体的に指摘しているのは、特別公務員によるこの事犯については一体どうかということを聞いているのですから、法務大臣が擁護局の事務官のかわりにお答えになるなら、一つそういうふうに正確にお答えを願いたいと思います。
  63. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 人権擁護局長が本日不在でございますから、私からかわってお答えいたしますが、先ほど申し上げた通りであります。
  64. 辻原弘市

    ○辻原委員 こういう事犯については、人権擁護局の任務というものはやはり人権擁護について絶えず調査をし、目を光らせておって、そういう事犯があれば絶えず取り上げて、積極的に調査をするという立場だと思いますが、あなたのお答えでは、さらに関連する事項は調査するというお話でありますが、そうすると、裏を返してみますと、今までこれについては何ら調査をされていないということなんでしょうか。そういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  65. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先きほど申し上げました通り、十分調査をいたします。
  66. 辻原弘市

    ○辻原委員 法務大臣がだいぶ答弁に出て来られますので、ここで一ぺん言っておきたいのでありますが、先ほどあなたは、前質問者の右翼との関連についてはどうかという質問に対して、そういう関連はなかった、こう断定づけて答弁をされておる。ところが私の先ほどからの質問の中で、警察庁長官ですか、今個人が告発をして、そうして係争中の問題だから、その中でわかってくるというふうにこの暴行事件でお答えになった。同様当夜におけるいろいろな傷害事件の問題については、これは告発事件として取り扱われておって、これは和歌山の地検でただいま全貌を調査中だと思います。そのさなかにあなたがそういう関連がなかったと断定づけられるということは、一体どういうことなんですか。普通の場合であれば、そういう係争中の問題については、むしろわれわれが聞きただそうと思っても、目下これは調査中の事件だから、その進展を待たなければはっきりわからないというのが普通であるが、この事件に関してだけはそういうことはありませんでしたと断言づけられている。われわれはそこに何らかのにおいを感ずるのです。現地の地検では、少くともこれは公正に判断して調べるという態度を見せられておるわけです。われわれもそれに信頼をしておる。だからやはり過誤があり、またそういう批判があるならば、それぞれいかなる立場にあろうとも、法の厳正を守る上からやってよろしいでしょう。だからわれわれは特にその中で特別公務員の暴行事件というものを重視して、今ここで問題を取り上げているわけです。当夜の事件を突発せしめた一つの大きな要素となっている右翼団体の問題について、これは何ら警察との関係はなかったということを断定づけられるということはあなたの言葉としてはいささか行き過ぎではありませんか。これは一体どうなんです。
  67. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど私が申し上げましたのは、こういう趣旨でございます。今回こういう事件が起ったことについてあらかじめ警察が右翼と共同謀議をし、結託をしという言葉が出たようでございますが、いわゆる結託をして云々というようなことは、私の受けた印象から言えばないと思います。かような趣旨で申し上げたつもりでございますから、言葉の足りなかったところは、ただいま補わせていただきます。
  68. 辻原弘市

    ○辻原委員 私はその件についてあらかじめ共同謀議があったかどうかということは、これはつまびらかにいたしておりません。われわれも何らそれについて確証を握っておりません。しかしながら当夜の事件の発生の原因あるいは最近の和歌山県における右翼団体の動き等々を見ますと、そこに警察と何ら関連なしにああいう行動がとれるということについては非常に不思議な点があるわけです。まず十六日の晩の事件の発端は何かといえば、右翼団体の宣伝カーが、まさにジグザグ。コースを終って正常な行進に移ろうとして、後尾の約三分の一が残って――これはある現地の新聞記者の話でありますが、何で警察が一分二分待てなかったか。しかしこういうことが何も実証できなかったから残念だなと言っておる。あと一分二分待てばおしりの方のジグザグが正常な姿に戻ったろうと言っておる。そういう一、二分を待てないで、宣伝カーがうしろへ突っ込んでいく。それを待ってましたとばかり警察の実力行使が、しかもうしろからこん棒を振りかざして、だっと行っておる。こう言っているのです。これが一つです。  それから西警察署の前ですわり込みをやっているときに警察が実力行使をやった。その直前においてもやはり先ほどから話に出ているところの丸山君に対する右翼団体の暴行行為、それを契機として警察官が実力行使をやっておる。私が先ほど指摘しましたように、そういう紛争が起らないようにということで警察が警備し、警戒し、そこに暴力的行為があるならば、すぐさま大きくならないうちに排除する。これが公正なまた常識的な取締り、警備の態度だと思う。ところが、その中に一緒くたに警官が巻き込まれて、その中へ突入して――あなた方は新聞を信じませんからあえて言いませんけれども、ちゃんとこの読売新聞にもこん棒を振りかぶってといっておる。また現に目撃した者も、警察官がそのデモ隊のすわり込んでいるのを排除するために、決しておとなしく実力行使をやったのではないということを言っておる。そうしてこん棒を振りかざしてなぐりつけておる。だからみんな傷を負った者は頭をやられている。これをしも全然警察と右翼団体とが無関係であったとおっしゃるならば、それは常識外です。しかし全然関係がありませんとしらを切ることも、それは言葉でありますから自由でありましょう。しかし私は事実その勃発の契機一つから、真相を曲げることはできないと思う。これは水かけ論になりますから、今後の質問者に譲りたいと思います。  そこで伺っておきたいと思いますことは、先ほどから私が具体的に申し上げました通り、脳底骨折で頭からやられた。そして脳底にまでこん棒の跡が達するような傷を負っておる。これは一人ではありません。一人ならば偶然に不心得な者がおってそういうことをやったのでしょうと個人の責めに帰せられるかもわかりません。先ほど次長が言われた井上君の頭の傷と言い、それからその晩ほとんど昏酔状態で一命も危ぶまれた堀江という同志社大学の学生の傷のごときは、これは全くまっ正面から頭をやられておる。こういうような一つ実力行使の仕方というものが許されているのかどうか。この点、どの事件についてもそうでありまするが、今後の警察の取締りということの重要な点でありまするから、十分伺っておきたい。そういうような行為が許されておるかどうか、これを一つ聞いておきたい。
  69. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警棒の使用について頭部をねらわないように注意するということはございます。しかし警棒を肩から振り上げてはならない、上からたたかれても下で制止をしていなければならないというようなことにはなっておらないのでありまして、防御のために警棒を振り上げるという場合もあり得るわけであります。先ほども申し上げましたように、警察官の傷のうち多く人さし指のっけ根のところをやられておるという実情から見てもよくわかると思います。
  70. 辻原弘市

    ○辻原委員 それでは、私はまず一般的に聞きましょう。あなたは警棒を振り上げる、あるいは頭部をたたいてはいかぬとは書いてないというふうに言われたんですが、その通りですか。私らの見るところでは、警察官警棒、警じよう使用及び取扱規程の四条第二号には「警棒又は警じようをふり上げ又は頭部を打つことのないように注意すること。」という規定が設けられておる。頭部を打っちゃいかぬと書いてある。しばしばあなたは先ほど何かやられたから身を守るために行使する場合は何をやってもいいのだというようなことを言われておりますけれども、そういうことに便乗されて、取締り規定まで設けてある警棒を軽々に使用されるというようなことになりますと、とんでもないことだ。そういうことになりますと、各地でそういう騒乱が起きますよ。現に慎しんでも慎しんでもやはりまま警官の警棒による殴打事件というものが起きてくる。ところがそれがあたかも正当防衛であるというふうなことを大義名分化して、もしあなた方が今言ったような答弁を全国の警察官が聞いたならば、ああ正当防衛だから何をやってもいいのだと、個人の正当防衛と同じような観点で警察官がやるというようなことになりますと、これはとんでもないことですよ。どうなんですか。この規定は原則として振り上げたり頭部をたたくということを禁じておると私は解釈するのです。あなたの解釈は非常にゆるやかなように見受けるのですが、これはどうですか。
  71. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほど申し上げましたように、警棒で頭部をたたかないように注意するということはございます。従って積極的に攻撃的に使うということについては極力これを戒めておるわけでありまして、私がここで申したからといって、私の言葉から警察官が勝手にやるようになるというふうには決して考えられないのであります。ただ防御の場合においてこれを常に肩から上げないということはとうていできることではないのでありまして、そういう場合は当然あるということを申し上げた次第であります。
  72. 辻原弘市

    ○辻原委員 私はあなた方の法の解釈の精神が非常に違っておると思う。防御防御というが、たとえば警察官職務執行法を見れば、この第七条が警察官に所持を許されておる拳銃、あるいはこの取締り規定にいうところの警棒あるいは警じょうの行使についての定めをしている条項だと思う。私の調べた範囲によると、この条項以外にはない。ところがこれによれば、あなたは攻撃には振り上げたりあるいは頭部をたたいてはいかぬが、防御の場合には、はっきりは言わぬけれども、たたいていいような答弁なんです。ところがここでは防御という書き方はしていませぬぞ。警官がその警棒あるいは武器を使用する場合には厳密に規定してあるはずだ。(「答弁を曲解するな」と呼ぶ者あり)いや、そうじゃない。私は答弁の精神を聞いておる。端々を聞いていない。どうなんですか。違うでしょう。明らかに規制されておるのは、単なる正当防衛じゃない。列挙しておるのは重大犯人、それから逮捕状によって逮捕あるいは拘引をする場合に抵抗を受けた場合、その点だけの正当防衛と、それから緊急避難という刑法の一般的な条項を掲げて、その場合にはできるとあります。しかしどこにも防御なんということは書いていないのです。緊急避難あるいは正当防衛というのは、一般の人間である場合においても、これは諸種の判例にもあるように、少くとも自分の生命に重大な危害が加えられた、こういう場合において正当防衛が得られるでしょう。あるいは緊急避難、これもやはりそういう重大な事態だということです。しかしデモの取締りにおいて、あなたたちは旗でたたいたとか、かみついたとか、ひっかいたとか言いますが、鉄帽までかぶって厳重な身ごしらえをしておる警察官が緊急避難をしなければならぬ、あるいは正当防衛でその携帯しておる武器及び武器に準ずべきものを行使しなければならぬような事態でしょうか。私はそこに常識上あなた方の答弁を疑問に思うのです。そのことを言うのです。警棒やあるいは拳銃を使用するという場合には、何人も常識的にやむを得ないと考えるような重大な凶悪犯人が逃走をしようとした、ほっておけば、警棒でやらなければ自分が殺される、そういう場合はこれは緊急避難あるいは正当防衛あるいは職務執行上の重要な問題だということで、七条には該当するかもしれませんけれども、しかし今論ぜられておるようなデモ取締りの中においてこれで防御だというのは一体どういうことなんですか。取締りの警察官が防御をしなければならぬ、これは、こういうことなんですか。これが私はわからないのです。
  73. 柏村信雄

    ○柏村説明員 通常のデモ行進がやや乱れたという程度でありますれば、これを警告によって規制をするということが可能だろうと思います。さらに強くなった場合は警棒を使用することがございますが、これはいわゆる斜めのかまえでこうやって押して制御をする。しかしながら旗ざおや何かを持ってかかってくる者を警察官が受けてはならないということは、論外だろうと思うのであります。そういう場合は当然受けてしかるべきものとわれわれは考えております。
  74. 田中織之進

    ○田中(織)委員 関連して。先ほどからの本件に対する答弁を伺っておりますと、あまりにも現地の警察からの一方的な報告を取り上げておると思うのです。警察庁長官に伺いたいのですけれども、この報告には、少くとも十五日の事態についても何らか報告が私はあったはずだと思うのです。実はあるはずなんです。しかもそれは警察当局だけではなくて、自民党の諸君もおられますけれども、十五日、十六日のこの集会の関係から不測の事態が起らぬように、私ら社会党和歌山県連といたしましては、自民党の和歌山県連、特に幹事長の県会議長の平越君をわずらわしまして、いろいろ事前にお話し合いをいたしまして、平越自民党県連幹事長の、特に警察の――十五日の問題の会場として学校施設を使用する件についても、いろいろ配慮を願っておる事実があるのであります。しかもその点は最終的には私らと考え方が非常に違いますけれども和歌山県知事の小野直次君も最後の瞬間には、特に会場問題についてはこれまでの態度を変更されたから、少くとも前日二万七千名の大集会が――今伺えば当日のデモ関係で警察側に十五名の負傷者があるということで、中には二週間の傷を負うた人も一名あるという。先ほどの報告を聞いて、実は十五日にはそういうけが人が警察側に出たということは私初耳なので、もし長官の報告が事実といたしまするならば、非常に警察側に対して申しわけない、お気の毒な事態だと、私は率直に認めます。しかし問題は、二万七千名のデモ行進――今若干報告されたように、デモの途中でとぎれたこともあります、若干ジグザグ行進等の関係で。しかし、それに対してよく警察側もこらえられたという点は、われわれデモ隊あるいは実行委員会の名においても、少くとも十五日の警察側の態度に対しては十分感謝の気持を持って見守っていたのであります。ところが十六日に、前日の二万七千名の一割のまた三分の一にしか当らない、わずか九百名のデモ行進関係から、警察側六十五名とデモ隊側で百数十名、合せるならば二百名からの重軽傷者が出たという事態は、一体これは正常な状態であるかどうかということを、私は警察庁長官においても、また公安委員長である青木国務大臣においても、またいろいろ右翼と警察との関係、特別公務員の特別暴行罪という観点から問題を処理していただかなければならぬ愛知法務大臣の方からも、問題はそういう観点に立って私は考えていただきたいと思うのです。そこで、私も実は当夜は六時ごろまで和歌山にいたのでありますが、上京いたしたいと思いまして、出発して、名古屋を出発したところでその流血事件の電報を受け取りました。私は静岡から和歌山へ引き返したのであります。当夜の事実は、私は新聞関係その他の報道を通じてしか承知をいたさないのでありますけれども、少くとも読売、朝日、毎日、それから私持ってきておりますが、現地の和歌山新聞等の報道におきましても、私は公正な報道がなされておると思うのであります。従いまして前日三万名に近い人たちデモが、今伺えば警察側で十五人の負傷者が出た、まことに気の毒です。しかし警棒一つ持たずに、しかも警官は近畿管区から応援をされた警官が数百名あったはずです。しかし裏通りに待機いたしまして、デモ隊を刺激することのないようにとの配慮を県警の本部長の金田君が私らとの約束に従って行われたのであります。それにもかかわらず、なぜ十六日になれば、しかも当日あとで本田警備部長等に伺いますると、十五日のそういう事情にかんがみて、朝から警棒使用の許可を与え、警察の方でてぐすね引いて待ちかまえるような態勢をとっているということが、県警の本部長がわれわれに対して認めざるを得ない事態になった。ということがこの事件を誘発しているということを私は率直に一つ考えてもらいたいと思う。その証拠には、十六日に、もしも十五日のそういうジグザグ行進等の経緯があるならば、先ほどあなたが言われたように、西署の署長が、デモ行進を早くやってもらわないと許可期間がはずれるということを注意したときに、なぜそのデモ行進について重ねて十五日のことを署長が言わないのですか。私は西署の署長にも中村次長にも翌々日でありますけれども、会いましたときに、十六日の日に一言注意をしておけばよかったということを、当該の問題を起した警察署長が私に率直に認めているのです。従いまして、私は関連で申し上げておるのでありまするから、これで終りまするけれども、警察庁の長官といたしましても、担当国務大臣の青木さんにしても、愛知法務大臣にしても、また問題が教育問題を契機として起ったという点において文部大臣の方にも考えていただきたい、問題はここにあると思うのです。ただ単にそれは共産党関係諸君の革命の予行演習だ、そういうような簡単な形で片づけるべき問題でないと私は思うのです。そういう点からこの問題をさらに十分調査してもらいたいと思うのですが、その用意が政府側にあるかどうか、お答えを願いたい。
  75. 柏村信雄

    ○柏村説明員 今のお尋ねでございますが、確かにあのときの状況は平常な状況とは申せないと思うのです。十五日にけが人が出たと申し上げまして、あの通りでありますが、十五日は数の多いわりに全体的には静粛に行われたということでありまして、若干行進に正常でないところがあって、警察官との間にもみ合いがあった。しかしながら積極的な抵抗という程度のものは感じなかったのであります。しかしその間においてけが人は出たという実情でございます。なおこの問題についてはただいまお話もございましたので、これで調査を打ち切るというような考えは毛頭ございません。なおさらによく調査をいたしたいと思います。
  76. 辻原弘市

    ○辻原委員 時間も経過いたしますから、警察庁長官に私は最後に締めくくりとして一点ただしておきたい。それは先ほど青木大臣にもお伺いをいたしましたが、もし現実にこん棒によって傷を受けた者がある。こん棒を持つ者は警察官でありまするから、その傷を負わした者は明らかに警察官であるということは言える。しかしあなた方は、長官の答弁によれば、それは防御だと言う。そうじゃなしに、それが少くとも警察官の職務執行法の第七条を逸脱する行為として現実にその事実が現われてきたときには、これは先ほど大臣が、そういうことがもしあれば、当然それは処置しなければならぬ。あなたは先ほどからそういうような行為は今日においてはない、あくまでも防御のためだ、こういうふうに言われた。あなたははっきりここで明言されますか、あるいはさらに事実を調べた上で、もしそういうような必要があるなれば、それは当然警察庁としてもしかるべき処置をとると言われるか、私はその言葉をその件について承わっておきたい。
  77. 柏村信雄

    ○柏村説明員 現在までの調査によりましては先ほどお答え申した通りでございますが、さらに別個な新しい事情というものが解明されて、これは仮定の上に立ってこうであるということを申し上げるわけには参りませんが、事実お話のように警察官に不当な行動があったということであれは、その地位地位に応じて相当の措置をとらなければならないと思っております。これは一般的な問題でありまして、この問題についてもその点は同様に考えております。
  78. 辻原弘市

    ○辻原委員 私がかように申し上げるのは、これはすでに告発、告訴の問題として地検において取調べ、審理中であります。そこで私は事態が明らかになると思う。個々の警察官には何ら恩怨はありませんけれども、その点についてはお気の毒であるけれども、しかし集団的に引き起されたこの種の事件については、これはわれわれとしては黙過できません。現に被害者が存在しているのです。そういう意味合いでわれわれは私心を殺して、この事件については真相を糾明して、そうして今後再び特別公務員によるそういったような、あるいは死に至るのではないかというような重傷を負わすような事件を惹起しないということを厳にわれわれは戒めたいのであります。そういう意味で私は申し上げておるのです。
  79. 坂田道太

    坂田委員長 関連して西村力弥君。
  80. 西村力弥

    ○西村(力)委員 警察官が約八十名ほどけがをなさったこと、まことにお気の毒に存じますが、今までの例を見ますと、たとえば山形県の大高根の軍事基地の場合は、あすこの山は野原でございますので、ススキの葉で切った。こういうのが全治三日間という診断になっておるのであります。それから昨年の砂川の場合ですと、あの有刺鉄線のところにひっかかって、少し傷をなされたという方が全治十日間となっておる。むろんその傷がおさまって血餅がはがれるまでは、十日間くらいはかかるかもしれません。しかしそういう御診断をなさって、そして八十何名全治何日間、こういうような行き方をとられたんではないだろうか。こういう疑いを私は今までの経験から持つわけなんです。それはそれとしまして、愛知法務大臣にお聞きいたしたいのは、特別公務員の人権擁護の問題について、これから特別な考慮を払いたい、こうあなたは御答弁なさった。その件はまことに私たちは重大と思うのです。確かに特別公務員である方が人権を無視されていいはずはない。しかし私たちが人権云々を言う場合においては、常識的には権力を持つものに対する国民一般大衆の立場を守るために、その人権擁護の思想というのは基盤をなしておるのだ。こういう考え方を持っておる。ところがあなたは特別公務員の人権擁護について、これから積極的な対策を立てたい、こう申された。それでこの際その具体的な構想を一つ聞かなければならぬと思うのです。どういう方法でやるか。もっと装備を厳にするか、あるいは武器、準武器、そういうものに対する使用の限界というものを、今警察庁長官が言うたように、防御のためには頭をぶんなぐって、頭蓋骨折までやっても、それは自己の正当防衛だというような思想、今はそういう考え方まで進んでおるわけなんです。それ以上にどこまでそういうものの使用の限界を広げられようとするのか、あるいはまたそういう特別公務員で傷害を受け、不幸にして死亡なさった場合に対する弔意措置を強化する、こういうような方法を考えるのかどうか、その構想をこの際はっきり示してもらわなければならぬ、こういうことを痛切に感ずる。その点を一つ御答弁願いたい。
  81. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど来私が申しておりますことは二つあります。最近の世相から申しまして、今日の午前にも御指摘がございましたような、いわゆる管理側に立ちまする者としても、きぜんたる態度において法の秩序を守る必要があると私は思いますが、そういったような人や、あるいは自分の意見をはっきりと表明しようとする場合に、いわゆる村八分とか、そのほか仲間からつまはじきをされて、非常に人権が侵害されるというような事態が往々にしてあるように見受けられますので、これらに対しても、十分の配意をしたいということが一つでございます。  それから特別公務員の関係では、現在以上に武器とか、その他のもので補強するというようなことを考えているわけではさらさらないのでありまして、現行法の範囲内におきまして、ただいま御指摘の、どちらかといえば後段の方の気持でもってやって参りたい、こういうふうに考えております。
  82. 西村力弥

    ○西村(力)委員 しかし、基本的な考え方は、私が申し上げましたように特別公務員が公務を執行する場合においての人権というものが、その公務員と、その対象となる一般民衆との人権という場合、これは人間と人間、国民国民という場合じゃなく、そういう公務執行の場合においてはその人権は対等に考えられるかどうか、こういう点あなたの考えを明確に願いたい。私は、公務執行中は、公務執行をする者の人権擁護というものは、あくまでも消極的なものである。それを権力を持って向ってこられる一般民衆の人権は、積極的な意味もある程度考えられる、そういうような考えを持つのです。法務大臣の御見解はいかがですか。
  83. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま御指摘の点は、大体私の考えと同様であると思います。特別公務員につきましてはその職責上から申しまして一定の制約が法制上あるということは、御指摘の通りでございますから、その範囲内において人権を十分守ってやりたい。こういうあれでありますから、考え方がそこに段階があるということは特別公務員の立場上私は当然のことと思いますので、大体あなたの言われることと同様に考えます。
  84. 西村力弥

    ○西村(力)委員 次にお聞きしたいのは、あなたは公務員の人権を擁護すると言うが、ところがなぐられた側がその特定の警察官を指定することはできない。またその場合がんとやられても、お前がおれをなぐったと押えて、逆に公務執行妨害でくくられるだけだ。また証人にしても、警察内部では自分たちの仲間の悪い証言をするはずはない。しかも服装は全部同じ。どれがどれやらわからない。ああいう警察が集団をもって職務執行する場合においては、今までずっと陳述を聞いておりましてもわかる通り、なぐり得なんです。ほんとうにやられたならばどこの警察のだれにやられたか指名しろ、こう言われる。そういうことはできないのです。だからなぐられ損です。あなたは特別公務員の人権擁護を強化すると仰せられるが、その逆の、そういう事態解決する努力をしなきゃならない。そのためには、団体として警察官が行動する場合においては、そこに人権無視の職権乱用の行為があった場合においては、その指揮者が刑事罰の対象になるという工合にはっきり法律改正する、こういう努力を並行して行わなきゃならない。それをやらずして一方的に今のような工合に言われるとなれば、これは公正なる法務行政という工合に言われないということになってしまう。それを一つぜひ並行してなさるべきであると私は主張するのですが、御答弁はいかがですか。
  85. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま特別に立法を考えるというようなことは考えておりません。先ほど申し上げましたことで、私の気持は御了察願います。
  86. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは一方的じゃないか、こう思う。しかし今考えてはいないにしても、私の主張に対しては原則的に了解せられる、こういうお考えはお持ちでございませんか、どうですか。
  87. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 抽象論になって恐縮でございますが、特別公務員が現行法のもとにおいて忠実に活躍をして、実際はなぐられ損になる場合も、私は相当あると思うのであります。そういう場合におきましては、現行法の定めるところに従って、これに対して十分な措置を講じてあげるべきである、こういうふうに考えております。
  88. 辻原弘市

    ○辻原委員 個々の事実を指摘いたしましてこの事案を検討して参りますと、まだこれは幾らでもあるのでありますが、現地からの報告は先刻申し上げましたように、かなり事実と違っている点があります。しかも今西村君も言われたように、やはり警察官仲間同士の問題でありますから、かりにそういうような行き過ぎた行為がありましょうとも、かばい合うというのが私は人情だろうと思います。また今度の事件の中ででも、あとに警察官の暴行あるいは暴力事件云々ということの問題を引き起さないようにというので、たとえば、たしか日本テレビであったと思うのでありますが、日本テレビの記者がその警察官の暴行現場を撮影しようとすれば、その撮影を妨害したという事実もこれは現にあったのであります。しかもテープのコードは引きちぎられておるという現実なんで、これは警察記者クラブあるいは関西記者クラブ等から厳重な警察に対する抗議もあった事実から言って、これをしも否定はできないだろうと思います。そういうような行為自体が何を物語るかといえば、それぞれの非行をこれは隠すためのとっさの行為だったと私は思うのです。一々ここでそういうことをあげつらいませんけれども、そういうような事態を見るにつけても、あなた方が何ら警察官の非行はございませんでしたということは、後日これは公正な検察官が審理を進めた場合において、あなた方の答弁が食言であったというようなことにならなければよいと私は考えておるのです。ともかくこういった紛争の事態ということは、大局的な見地に立てば、決して何人も喜ぶべき事象ではないのであります。ましてや重傷者が出ているというこのことは遺憾しごくである。まことに遺憾しごくであると思います。しかしいずれの大臣からも責任者からも、そういう傷を負わしたことについてははなはだ遺憾であったという言葉がないということに、私はこれまた非常に遺憾な気持がするんです。愛知法相のように、特別公務員の人権の問題あるいは補償の問題について考えなければならないというようなことも、理解できないわけではございませんけれども、問題はそうではなしに、権力の前に立って、その権力がむやみに行使されないようにそれを防止することが、私は民主社会における人権の問題の取り上げ方の方向だと思います。そういうことを今席強調せられなかったということは、私は自民党内閣のために惜しむものであります。まあいずれこの件については法務委員会あるいはその他適当な機会にやられますから、私は以上の点でとどめたいと思います。  そこで最後に文部大臣に伺っておきたいのでありますが、勤評反対の十五日の大会に、われわれは何とかこれを平穏な正常な姿において、警察官側も挑発しなければ、また大会を主催する側においてもこれまた堂々とした大会に持っていって、静々として終っていただきたいということを私は個人的にも念願しておった。ところがこの大会がやや興奮状態に当初からあったというその理由の中には、たとえば会場を貸さない、こういう問題がありました。今日現に施行されている国の基本法である憲法ですら、これを改正しようとして堂々と国家法律でもって憲法調査会を作り、さらにその点においてはそれぞれ有志が集まって改正についての論議を重ね、賛成、反対の論議が自由に行われておる。よし勤務評定反対であろうとも、それらの大会をやるということを故意に妨げる行為などということは、私は良識ある民主主義下の行政者としてはきわめて不適当だと思う。だからわれわれは極力努力をして、そういうことのないようにということを当事者にも理解を持つべく話をしたのであります。このことがやはりこの集会をして異常な雰囲気をもたらした原因であると思います。  さらにその遠因をたどれば、今日勤務評定の問題に対して反対をする日教組中心とした側においては、強硬にこれに反対し、政府はまたこれに対して一歩も引かない。そうして反対運動から起る派生的な問題について絶えず文部大臣談話あるいはそこにおられるところの内藤局長通達とかいう形においてただ強行一点張りの態度でもって押しまくっているうちに、固い壁と壁とがぶつかって随所に派生的な問題が起きているのです。このことをわれわれは考える。少くとも政府というのはこれは為政者であります。政治を行うものであります。そうなれば私はいま少し高い観点に立って、そういうような個々の派生的な現象が起るということを根本的にとどめる方策を、政治的な判断でもってやることがほんとうの政治であろうと私は思う。そういう意味から、一歩下ってこの勤評の問題について考え余地が今日私は残されていないものかどうか。少くともそういうような見解に何とか局面を打開して、円満裡に今日各地に引き起されているような紛争を根本から一つなくしていこうという努力を、ただ押しの一手、ただ強引に強硬な態度一つしかその中から生れてこないことを、私ははなはだ遺憾に思うのであります。この点について私は大臣に見解を承わっておきたいと思います。
  89. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の勤評実施をめぐる問題についての所見は、午前中にも申し上げたつもりでございます。政府といたしましては、格別これを強行するとか押しつけるとかいうようなつもりでやっておるのではございません。単純に法を施行いたしたいと考えておるのでございます。問題はむしろこの法を施行しようといたしております努力に対しまして、実力をもって反対を押しつけてこられておることであります。従いましてこれが解決の問題について、政府として手かげんをするとかどうするとかいう性質の問題じゃないのであります。反対闘争をしておられる側において十分一つ考え直しを願いたいというのが私の考え方であります。     〔「明快」と呼ぶ者あり〕
  90. 辻原弘市

    ○辻原委員 それは非常に明快ではないのです。明快ではなしに、それは今の時限に立ってそう言えるだけの話でありまして、これはこの委員会でもしばしば私も申しました通り、この勤務評定実施については、法律が成立をいたしましてから七年も八年もこれを放置しておったのです。そうしてこの勤務評定によってなにがしかの成果が得られるということを考えて、それからしゃにむに実施しなければならぬということを政府は言い出した。ほんとうに厳正に法律を守るということならば、成立と同時になぜこれを政府が取り上げてやらなかったかということに問題があると私は思う。さらにまた法律に定められてあるから必ず実施しなければならぬのだと言われる、もちろんそうであります。しかしながら他の文教関係法律にしても、法律に定められておりながらいまだ実施できない問題がたくさんあるわけです。たとえば一学級の定員は五十人と定められておりながら実際においてはそれができていない。そういうように個々にあげて参りますと、法律上規定されておりながら実施が非常におくれ、あるいは実施に至らず放置している問題が他にもあるはずだと思います。そういうことを全部片すみに置いて、ただおくれたけれどもこれに取りついてしまったからしゃにむに押さなければいかぬというのが今日の政府態度だろうと思います。だから法治国である以上、大臣が言われておるように、法律に定められているから実施しなければならぬということは私は一応の筋だと思う。しかしそれを実施する時期、これは八年間も放置しておいて、あと一年や一年半それについてさらにスムーズに実施するための余力があなた方に全然ないなどということはあり得ないと思う。私はそのことを言っている。そこをなぜもう少し冷静に、大局に立って考えられないかというのです。今日国民の世論もおそらくそうだろうと私は思うのです。理屈はみなわかっておる。しかしながら、これだけの現状においていろいろな混乱が起きてきている。それを静める手段が、ただ押しの一手、警察の弾圧、またあらゆる手段を講ずる文部省のこの反対運動に対する阻止、こういうものだけだと良識ある国民はおそらく言っておる。もう少し高い観点の政治的判断をもって、根本的に相手も納得するようなそういう方法を講じて、これの終結を見るような、そういう努力が今日の文部省においてはないのか、政府においてはないのか。政治力の貧困ということになれば、それはそれまでの話でありますけれども、少くとも私は多年練達の灘尾大臣においてはそのくらいの判断ができないことはないと思います。この点において、私も率直に申し上げておりますので、率直な意見一つお聞かせ願いたい。通り一ぺん、法律にきまっておるのだからやらなければならないのだということは、私は百ぺんも千べんも聞いております。そういうことではなしに、何がし方法はないものか。私は衆知をしぼってよいと思うのです。あなたが午前中に言われた通り教育問題のワクからはずれて大きな労働問題になっている。それを教育の問題として解決する責任文部省にもあると思うのであります。またわれわれ文教委員としても、ただ個々の現象に、そうではない、ああではないということを言い合うだけではわれわれの責任も勤まらない。根本的に解決策はないか。与党野党とが衆知をしぼっていいはずです。こういうことを私は申し上げておるのであります。どうでしよう。
  91. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の申し上げております筋については、辻原君もお認めを願ったようであります。大へん仕合せに思います。今日までなぜやらなかったかというお尋ねであります。その事情につきましては、しばしば申し上げたことでもございますし、辻原君もよく御承知と思うのでございますが、とにかくこの場合に、なぜやらなかったかというおしかりをこうむることにつきましては、私はよくわかるのでございます。いろいろな事情があってやれなかったということもございましょうけれども政府といたしましては、すみやかにやるために努力するのが当然であったと思うのでございます。そういう意味において今日までの怠慢をお責めになるというのでございますれば、私もそれはわからぬわけではございません。しかしなぜやるかということについておしかりをこうむるのは、ちょっと理解に苦しむのであります。同時に、先ほど来申し上げておりますように、われわれただ法を施行しようといたしております。これに対しまして、是非にかかわらずあくまでも実力をもって反対しょうといたしておるのであります。かような点につきまして、一つその方の側に対する御批判も承わりたいと私は思うのでございます。どうぞそういう点についてもよく一つ考えを願いたい。高いところに立って政治的に判断をしろ、こういうお話でございますが、私は日本の文教を進めて参ります上におきまして、文教界の秩序を維持するということがきわめて大切なことだと考えておるのであります。その政治的判断に基きまして、この問題につきましてはどこまでもやって参りたいと思うのでございます。
  92. 辻原弘市

    ○辻原委員 秩序を維持したいと申しながら、現に秩序が守られていないわけです。現に各地において紛争が起きておるわけであります。だから、本来のそういうような事態を回復するために、ここで高い政治的判断を私は文相がすべきだと思う。また私が八年間やらなかったという怠慢を責めたのではないことは、聞いておる委員の方がよくおわかりの通りです。八年もほったらかしにしておいたものを、今ここでやろう、やろう、やらなければならないという心理状態がわからないのです。八年やらなくて教育が行われてきたものであるならば、よし半年や一年おくれたところで、特別に大きな支障はないはずだということを私は申している。その一年、半年という時間を置くことによって、今全国に起っているような紛争がなくなってしまうことの方が、より教育にとって今日大事ではないかと言っている。これは私は世論だと思う。そのことを言っているのに、大臣がその端々をとらまえて、依然としてただこれはやるのだということでは、事態解決はますます困難になるだろうと思います。そういうことをこの際私は特に大臣に注意を申し上げて、私の質問を終りたいと思います。
  93. 坂田道太

    坂田委員長 原田憲君。
  94. 原田憲

    ○原田委員 私は昨日新聞に発表されております「勤務評定闘争総評が前面に立つ、「子弟の登校拒否」強行、来月十五日職場大会も」という見出しで、これは毎日新聞でありますが、朝日新聞その他の新聞にも大体同じ内容の、「日教組は来たる九月十五日に、正午授業打ち切りを最低とする勤評反対第一次統一行動を行うことを二十四日きめたが、総評は二十六日の常任幹事会でこれを援護する全労働者の子弟登校拒否の実施計画をきめ」云々というこの記事を全国民が見ておるのでありますが、非常に教育の場において起らんとしておるところの憂慮すべきこの事件について、文部大臣並びに法務大臣、公安調査庁長官その他関係者に質問をいたさんとするものでございます。  先ほどからの各員の質問を聞いておりましても、和歌山県に起った一つの事件をつかまえて、大体非常に遺憾であるということで結論を結ばれておりますが、こういう遺憾な事件がどうして起るかということについて考えますときに、それは根本的にルール、法律を守らないというところから各種の問題が起っておるのだと考えるのであります。この法律とかルールを守らないということは、現在の日本政治らいいますと、現在の政治態勢が気に入らないという人たち考えることであって、右翼、左翼というようなことは、そういうことでよく使われるのでありますが、現在の日本の国の右翼の状況はどうかということについて、先般の和歌山闘争のときにも、職業的な右翼団体が、この大会反対に乗り込んできている。そこで警察と大会を開く前に打ち合せをした際に、日教組の代表また社会党の議員さんもこの仲介の労をとって出ておられるその際に、右翼団体が来て衝突をすると困るから、警察の方で何とか考えなければならぬと思いますが、とこういうことを言うと、日教組の代表の一人は、これははっきり名前はわかっているのですが、右翼なんて問題ではない、数も少いのだから問題ではない、こういうことを言っている。また現実に和歌山の状況を見ましても、職業右翼といわれるような人たちは、十五日の大会に、新聞では二万五千というように発表されておりますが、実際には一万人ぐらいであったらしいですが、自動車四台ぐらいで乗りつけてきて、少々いやがらせをやって、小ぜり合いをやって、あくる日これでわれわれの目的は達したとよそで一ぱい飲んで行った、こういうような状況であった。現在は右翼そのものの勢力は大したことはない。ところが、左翼ということになりますと、日本の国で左翼という場合には常識的に共産党をさしておるのであります。共産党諸君の勢力というものは非常に大きい。国会議員にも現に出ておられる。この共産党諸君の動きというものは、われわれなかなか把握することができないのです。合法政党でありますけれども大会を開いてもなかなか公開をしない。実際私どもがどういう動きがあるかということを的確に把握することができないので、これを一ぺん公安調査庁で調べたところを聞きたいと思うのでありますが、先般上ノ山で日教組大会が持たれたときに、共産党の代表者が行って、今の日本義務教育はうまいこといっておる、こういう工合に教育を十年間続けてもらったら新しくできてくる有権者がみな共産党に投票するから、自然と革命ができる、まことにけっこうなことであるという祝辞を述べられたということを聞くのであります。教育の場というものは、特に義務教育学校というようなものは、教育の中立ということを強く言われておる。ところが極左といわれておる共産党諸君が非常にけっこうだ、十年たったら革命ができるというような、常識的に考えても偏向的な動きというものがあることになると、これは慎重に考えなければならぬ。この共産党の中でも私ども承知しておる範囲内において、先般の大会では綱領もできなかった、まことによろめいておるようでありますが、全学連という組織の中に非常に強い共産党分子がおって、この連中は代々木の共産党の本部を占領した。そうして今の日本共産党指導者が手こずってこれを首切ったというような動きがあったやに新聞で読んだりしておるのでありますが、一体どういう状況になっておるかということを、公安調査庁の関係者から聞きたいと思うのであります。
  95. 関之

    関説明員 お答えいたします。全学連の問題についてのお尋ねですが、全学連全国の大学などを中心とする学生の自治会の連合体で、その総数は約三十万に近い数字を持っておるのであります。それでその中に共産党員は約二千人前後と考えるのであります。ところで青年の血気の至りと申しましょうか、全学連系統の、その中の二千人を中心とする共産党員並びに共産主義者は共産党員の中できわめて極左的な立場にいるようであります。非常に元気がよろしい。そうして矯激な方向に走りやすいというような現状にあるのであります。この現状をとらえて、共産党自体も、どうも全学連系統の若干の連中はトロッキストになっておる現状があるといってしかっているような状態であります。  さてこの二千人の共産党員中心とした彼らはどういうことを考えているかという問題ですが、結局学生青年の前進性、前進性というのは先に進む、要するに世の中の動きに非常に敏感である。従ってわれわれはいろいろな問題を敏感に感じている。そうしていろいろなほかの部隊を引っぱっていくんだ、これがわれわれ学生の使命だというような規定づけをしているようであります。これはその規定の根拠として外国の革命がどうであったとかいうようなことをあげて、要するにわれわれは学生青年の敏感性、行動性を利用して他の部隊を引っぱっていくんだ、そしてある意識を盛り上げる、こういうような考え方がその出しておる文書の中から感知できるわけであります。そういうような立場でありまして、これらが要するに共産党の本部派を引っぱっていく。おれたちはわれわれの前進件、要するに世の中を引っぱっていく、先に歩いて進んでいく、これがわれわれの使命だというようなことを言って、その立場から行動をしているということになっているのであります。  それから今の本部の問題でごたごたが起きた件でありまするが、全学連は全般といたしまして今申し上げたようにその二千人前後の共産党員が完全に指導権を握っている、こういうふうに申し上げてよろしいかと思うのであります。そこでその二千人の共産党員が実は派閥がありまして、主流派と反主流派に分れておりまして、そこらの間でいろいろトラブルを起している。そうして派閥の少数の方に党の指導が加えられている。そこで六月に大会を開き、いろいろ協議したが、どうもその問題がうまくおさまらない。そこでその妥協といおうか、まるくおさめる意味で本部へ呼んで、そこで会議を開きましたが、その会議の運営その他で反本部派の学生の多数派と党中央の方々との間に意見の相違を来たして、議長の問題とかいろいろな問題でトラブルが起きました。そこで全学連諸君が本部を占拠して、党本部の出席者をぶんなぐったというような事態がそこに起きたわけであります。これに対しまして、党でもだいぶ心配いたしまして、大よそ全世界の共産党の中で、このような事実があった共産党は初めてだというような声明までいたしまして、大会前の七月の五、六日でありましたでしょうか、全学連の中の十数名に対して、除名あるいは活動停止というような処分をして、一応ピリオドを打ったようなことになったのであります。  以上申し上げたような実情であります。
  96. 原田憲

    ○原田委員 今全学連の中の党員の動きを聞いたのでありますが、同時に、われわれの聞き及ぶところでは、日教組の書記局の中に非常に党員が多くあって、日教組の動きはそれらの書記局の共産党の有力者によって動かされておるというようなことを聞き及んでおるのであります。  昭和二十九年でございましたか、今参議院に出ておる斎藤さんが長官のときに質問したときに、日教組の中に共産党の党員が六百何十人おるというような説明があったのでありますが、現在ではどのような状況になっておるか、あわせて承わりたいと思います。
  97. 関之

    関説明員 お答えいたします。日教組構成員約五十万と称せられておりますが、その中でどうも共産党員であろうと疑われる者が、約千数百人おるわけであります。それらの方が党本部と連絡をいたしまして、それぞれの日教組会議あるいは今度の闘争その他においては、いわゆるオルグ活動ないしは、グループ活動を通じて、本部との連絡のもとにこの運動指導し、扇動しておる、こういう実情であります。
  98. 原田憲

    ○原田委員 私は今全学連内部共産党の動き、あるいは日教組内部共産党諸君の動きということを承わったのでありますが、今度の和歌山の騒擾事件を実地に調査してみましても、大会の始まる八月十五日以前において、関係者、すなわち市教育委員会あるいは県教育委員会、警察本部、当該警察署その他各関係者において、この大会運営についての交渉がなされておる。その交渉は先ほど辻原君が言いましたように、会場を貸さない。これは教育委員会が貸さなかった。しかしそれについて、炎天下であるから、もしけが人が出たりしたら困るからというので、それもそうだなということで、休憩所として貸そう、しかし憩休所として貸すんだから、これを勤務評定反対大会の場にしてもらっては困る、その詳細の打ち合せについては、翌十四日に打ち合せましょうということで話し合いを済ませた。ところが十四日になりますと、もう許可してもらったものとして、この約束を守って、どういう条件でどうしようということを、待っておったが一方的に言ってこない。そうしてこれでは困るというので、教育委員会の方でこういう目的以外に使ってもらったら困るということをそれぞれの関係者にはっきりと手渡しておる。しかるに実際に開かれたら、その約束はほごにされておる、こういう約束に違反するということが大体騒ぎを起すもとになるのでありますが、それでもまだ十五日は割合に円満にいった。実は私もその当日よそにおったのでありますが、騒ぎが起きたら困ると思っておりましたので、聞いておりますと、割合平穏にいったようだというので、けっこうなことであると思っておりますと、十七日の朝刊を見ますると、和歌山で流血の惨事が起きたというので、和歌山へ行ってみたのであります。そうして実際にその現場を見ました。十七日の抗議集会で、警察の前でジグザグをやっておったところを、短時間でありましたが、私はちょうど見てきたのでありますが、十六日の紛争が起きたということで――今聞いておったら、田中さんは、十五日が済んですぐ東京へ行って、その話を聞いて静岡から引き返したという話でありましたが、おそらく十五日の大会が円満にいったということで、これでいいだろうということはみんな思っておったのじゃないか。しかるに十六日にこういう事件が起きたということはこれを作った構成メンバーを見てみますると、全学連中心として日教組青年部あるいは婦人部というような、先ほど説明があった非常に激しい先鋭分子が集まっておる。そしてこれも聞いたのでありますが、その中にはやはり良識のある人がおって、きょうはもう人数も少いし、デモをやっても気勢が上らぬからやめたらどうだろうということを言っておる。ところが何を言うかという先鋭分子意見で圧倒されて、当日デモをやっておる。しかも七時までしか許されてないのに、一時間ほどかかるところを六時三十二分にデモが開始されたというように、頭からこの約束事、ルールを破壊するのは当然だというような考えでやられるから、そこにこのルールを守らんとするものが警察である。これは民衆のためにある。そして衝突が起り、けが人が出、こうして国会でわあわあやっておる。約束だけはっきり守ったらこういう騒ぎは起きないんだ。しかるに約束事を破ってもかまわないと考えておる先鋭分子は、そういうことは頭から考えておらない。だからもっと突き詰めて言うと、和歌山のような警察力の少い、全部集めても市で五百人くらいしか集められないところへ持ってきて、そして洗濯デモ――洗濯デモというのは何だということを私は労働運動をする人にいろいろ聞いてみたのです。そうしたら洗濯デモというのは巻き込むのだ、洗濯するように人が来たらうずの中へ巻き込んでしまうのだ、大衆の力で少数の者なら打破するんだということで、洗濯デモという言葉が出てきたそうでございますが、そういう力で警察でも何でも来いというような考えを持ってやられるところに、こういうことが起きてくるのじゃないか。すなわちこれは一つの革命の予行演習じゃないかということを世間で言うのはむべなるかなと私は感ずるのであります。今東光氏の東京新聞における記事を朝の質問で臼井さんがやられましたが、ああいうものの考え方をしておる人は相当あります。また事実私は和歌山であの警察署前のジグザク行進をやっておるときに、庶民の声をそれとなく聞いておりましたけれども、そういう声が相当あった。こんなことなら警察も何も要らぬじゃないか、こういうことを言っておる人があった。一体、警察は何をしているのかと言っている人もあった。こういうことを考えるときに、これは革命の予行演習だと言われても無理からぬと私は思うのでありますが、一体これについて当局ではどういうお考えであるか。まず法務大臣にお尋ねいたしたいと思います。
  99. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま筋道を立てていろいろと今回の騒擾について分析をされたわけでございますが、実は私一個の考えでございますけれども、ただいまの御説、あるいは御懸念に対しまして同様な考えを持たざるを得ないような、非常に深刻な状態ではなかろうかと考えておるわけでございます。ただ、しかしながらこれはただいまもお断わり申し上げましたように、私一個の印象を申し上げたわけでございまして、これに対して政府としてどうするかという点については、あくまで私は法の秩序を維持し、現行法が的確に施行されるようにやって参りますことが政府としての根本的な考え方である、かように考えております。
  100. 原田憲

    ○原田委員 法務大臣も、これらのことに対して、法を守るためにしっかりやらなければならぬと考えておるというお話でございましたが、私は和歌山の状況を見ましたときに、最も憂慮することは、この抗議大会が次々と持たれて、十九日の日には三千人集まったというが、実数は千五百人くらいですが、これらの人がデモをやった。このときは市民が相当たくさん集まってこれを取り巻いております。これらの市民はその大半が、今度もし何かあったら、いわゆる千五百人の人、それもよそから来て和歌山の町をめちゃくちゃにしてしまった。いわしてしまえということを口々に叫んでおる人が相当あった。これが衝突した場合、これこそ大きな問題が生ずると思う。これらを守るものは何か、これは警察以外にないのだ。これらのことについてただいまいろいろ論議されておりましたけれども、実際に法を守るものは第一線の警察である。ルールを破る者に対しては断固として取り締らなければならぬという決意でなければならぬと私は考えるのでありますが、青木国務大臣の御意見を伺いたい。
  101. 青木正

    ○青木国務大臣 お話のように法秩序を守ることは法治国家として当然そうなければならぬことで、特に警察といたしましては法を守ることを職責としておりますので、いやしくも違法の事態ができた場合には、あくまでもこれを敢然として守らなければならぬと存ずるのであります。その点におきまして警察官に欠くる点がありましたならば、私どもはそういうことのないようにしなければならぬと思っております。同時にまた警察官のそうした本来の使命を達成するための職責の遂行につきましては、国民の皆様方も正しい御理解をいただきたい、かように存ずる次第であります。
  102. 原田憲

    ○原田委員 重ねて私は青木大臣に、これは要望したいのでありますが、先ほど西村君から、たとえば現場においてこいつがやったのだということをはっきりしなければそれが立証できない。だからこういうことについて警察並びに法務省がしっかりしなければならぬというような質問があったと思うのでありますが、私はこの点について全く同感なんです。それは往々にして集団暴力ということがこのごろ非常に流行しておる。交渉事をするのには四人対四人、あるいは五人対五人というのが常識の話し合いだ。しかるに会わぬと言ったら会わぬのはむちゃだ、会うと言ったらどっと押しかけてくる。そうして集団の力をもって交渉をやる。交渉というよりこれは威圧だ。こういうことをやっておる。こういうことについて、私は先般高知県へ行ってきたのですが、高知県においてもこの勤評問題で高知県の県教育長の安岡君というのが、十八時圏も監禁されて小便にも行けない。しようがないからバケツに小便をしたというような事実がある。私はこれは明らかな人権じゅうりんというよりか、監禁として犯罪が成立すると思う。そのときに安岡氏が外へ出ようと思ったら、外側からかぎを締めておる。そのかぎを締めておるやつが、顔を見て、あけたらいかぬ。上の人の許可を得なければあけられないと言って締めてしまった。この室内には電話もない。外へ連絡することもできない。そこへ押し込めて外からかぎをかけて、上の方から許しがなければあけられない。この場合の上の人というのはだれか、それはこれを指導しておるところの教組の責任者が上の人である、そういうふうに私は解釈する。こういうように明らかに犯罪行為が集団の名において行われても、これを取り締ることがてきないということなら、こういう集団暴力というものは幾らでもこれからふえてくる。現にまた、檮原村へも参りましたが、檮原村でも暴力団が四、五十名やってきて、そして教育委員会と話し合いをして、これも一昼夜にわたるような強談があって、委員長が卒倒したら初めてその場は引き揚げたというような集団的な暴力、集団的な犯罪、これらに対して一体警察庁の長官は取り締ろうと思っておるのかどうか、はっきりしたお返事を聞きたい。
  103. 柏村信雄

    ○柏村説明員 集団の威力によりまして不法行為が行われるような場合には、断固として取り締る考えであります。
  104. 原田憲

    ○原田委員 警察の方では断固として取り締るということをはっきりされたのでありますが、往々にして警察がやっても検察庁は知らぬ顔だというような風評も聞くのであります。私はこういうようなことでは第一線はほんとうに動けない。私が今質疑しました点について、法務大臣の御答弁を煩わしたい。
  105. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまもいろいろ話がございましたように、私はあらゆる場合において暴力行為というものは許されないと考えるのでありまして、特に話し合いの場において集団的な暴力が用いられるというような事案に対しましては、警察庁と相協力いたしまして、今後とも断固たる措置をとりたいと思うのであります。ただ御承知のように、現行の訴訟法の関係その他から申しまして、なかなかやりにくい点も率直に言ってございますけれども、そういう制約のもとにおきまして、適正に法の執行ということにはこの上とも力を用いたいと思うのであります。ただいまのお話は、私は警察当局に対する激励のお言葉と拝承いたしました。御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  106. 原田憲

    ○原田委員 その集団暴力の点について、私はなお質問を続けたいと思うのでありますが、先般高知県の檮原という村で騒ぎが起きた。これはやはり勤務評定反対問題にからみまして、六月二十六日に高知県下一斉にストライキをやった。この事件の起ります前に、檮原村の各校下で、各校下民が学校の先生たちと話し合いをして、どうか学校を休んでくれるな、どうぞ一斉休暇だけはやめにしてくれ、今まで先生たちには勤務評定反対に署名してくれと言われたら署名もしてきた、しかしながら子供をほったらかしにして学校を休むことだけはやめにしてくれ、何なら五割休暇でもいいから、半分だけでも学校に残って一つ授業をやってくれ、こういう交渉をしておる。しかるに先生の方では、私たちはそう思っても日教組の指令であるから、われわれも組織委員であるから、この組織の指令というものは守らなければならぬ、こういうことで、結局先生たちは六月二十六日に一斉ストに参加した。この檮原村において起った事件は、三、四のほかの学校では一日、二日で片ついておりますが、西ノ川の小学校におきましては、これが十五日間も解決に手間取った。これはどういうことかというと、これが参議院の文教委員会で取り上げられて、先生に対する部落民の集団暴力であるというようなこと、人権じゅうりん問題であるというようなことで取り上げられたのでございますが、私も実地へ行ってみまして、参議院で論議されておることは、これはもうだいぶ違うということをはっきり見きわめてきたのでありますが、それは今言いましたような過程を踏んで、二十六日に先生が学校を休んだ。そこで父兄は、今まで先生たちのためにできるだけのことをしてきた、ここの小学校は大半父兄の醵出によって、父兄の金によって建てられた小中学校である、それから別に先生の舎宅が建っておる、これも去年父兄が先生に住んでもらうためにということで、自分たちの金を出して建てて、現在もその所有は部落民が持っておるというようなことで、先生のために、今までの教育ということに対して非常に熱心である先生に対して、尊敬の念を払ってきたが、今度の場合に、ここまでわれわれが頼んでおるのに、先生たちは――子供があるがゆえに教育というものはある、その大事な子供をほっぽり出しても、日教組の指令に従わなければならぬ、こういう先生に子供を頂けておいても教育効果が上らないじゃないかというところから、同盟休校をやろうということを言い出した。それから先生が住んでおるところの家に、去年特に便所と炊事場とふろ場とを増設しておる。それまで先生たちは学校の便所、炊事場、ふろ場を使っておった。学校の門の中にその家があるのですが、校庭を伝わって、そうして学校の施設に行って先生たちは炊事をやっておった。それでは気の毒だということで炊事場を建てたのでありますが、そこまで一生懸命やってきておるのに、先生たちが言うことを聞いてくれないなら、これはもう先生たちに出ていってもらわなければしようがないじゃないか、こういう意見にまとまった。しかしながらこのことはやはり考えて、それでは炊事場というものは今までは先生たちは学校のものを使っておったから、これは閉めてもらおうということで、二十七日先生たちが帰ってきたので校長さんと代表者が会って、きのうあれだけ頼んだのに先生たちはほうって行ってしまった、これは先生どうだ、あやまりなさいと言ったら、校長はあやまっておる。済まなんだ、これは校長さんからじかに私は聞いた。校長以下教員にも全部会いました。それで、家を明け渡せといってもすぐに出るということは困るからということで、しかし炊事場などは閉めてもらう、これはしようがないということで、先生がついていって、そうして置いてあった荷物なんか出して、そうして住宅の方は、出入口をあけておいて、いやがらせに窓ガラスをとんとんと打ちつけておる。そして通路は二カ所あって、一カ所は閉めておるが、一カ所はこういう工合にさんをしてまん中から通れるようにしてある。先生たちに、あなた方は脅迫されたかということを聞いてみたら、脅迫されたとは思っていない。それからいろいろなことを聞き、また警察官にもその人権問題についても、法的措置はどうかということを尋ねたが、そういう疑いもない。こういうことを国会においてれいれいしく、人権問題だとかいやどうだとかいうことで取り上げられておるのであります。実態は、ほんとうに先生たちのために父兄が一生懸命に尽してきた。今日まで一ぺんも騒ぎがなかった。(「それは文部省のやることだ」と呼ぶ者あり)今言われるように、これは文部省がやらなければならぬ仕事に違いないが、なかなかこれが理屈通りいかない。そこで父兄が金を出して作っておる。こういう努力が重ねられて、現在まで十年の間義務教育というものは残念ながらこういうことが積み重ねられてきて、教育というものが維持されておる。それらの父兄の願いを打破して、教組の指令の方が大事だということで、学校の先生が授業を放擲するということは、これは明らかに法律違反であると私は考える。また部落の人がなぜそのようないやがらせをするか。これは私の推測、だけれども教育長を押し込めて小便にもいかせない。このバケツの中で小便をしたという事件は、高知県下で非常に有名な事件になっておる。だから、実際西ノ川の先生がやったのではなく教組がやったのだけれども、先生も教組の言うことはよく聞くのだから、あなた方も一ぺん便所くらいへ行ったらどうか、去年までは校庭を通って行っておったのだから。これは何か報復的な魂胆があったのじゃないかというように私は考えるのであります。こういうことで、集団の力によって圧迫を加える、卒倒するまでやる、小便もさせないというような犯罪を平気でやっておる。これを警察が取締りをしなかったら、今度警察がやらなければおれたちがやるという形で現われたときに、国家の治安が乱れる。この国家の治安が乱れることを望む者はだれか。社会党諸君は、先ほど聞いておったら、冷却期間を置けと言うが、実際はどないしたらよいかわからぬ。日教組には突き上げられ、といって法律は曲げられぬ、これが実態なんだ。だから、法律をほんとうに守るということは政府が真剣に考えなければならぬ。この集団暴力事件について、一つ青木長官並びに法務大臣から特にもう一度御答弁をわずらわしたい。
  107. 青木正

    ○青木国務大臣 ただいまのお話の実態につきまして、私詳しく聴取しておりませんので、具体的の問題についてお答え申し上げかねるのでありますが、一般論といたしまして、もちろんそうした場合、かりに違法の事態があるといたしますれば、警察といたしましては警察の職責において適当の処置をとらなければならぬのは当然じゃないかと思います。万一そういう点において欠くるところがあった場合には今後さようなことのないように十分警察の職責を果すように注意いたしたいと考えておるわけであります。
  108. 原田憲

    ○原田委員 法務大臣には、これは人権問題として参議院の委員会で取り上げられておるので、おそらく私は人権擁護委員会へ報告がきておると思う。私の調査したところによれば、これは問題はないというようにはっきり思っておるのでありますが、それらをあわせて一つ御答弁を願いたい。
  109. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまお尋ねの事案は、私の承知しておりますのはこういうことなんであります。刑事事件といたしましては、調査をいたしましたところが本人の承諾ありという形になっておりますために、刑事事件として捜査をすることはできないというので、一応刑事事件としては打ち切りになっております。それから一方、今後こういったようなことにどう処置をするかというようなことにつきましてはいろいろと各般にわたって検討しなければならぬことと考えておるわけでありますが、御承知のように人権問題として参議院で問題になっております。法務省といたしましても、事実をなお一そう詳細に検討いたしたいと考えております。
  110. 原田憲

    ○原田委員 法務大臣のお答えでは、事実をなおよく調査したいというようなお話でございましたが、私はこれは明らかに人権問題でないという結論がはっきり出ておると思うのです。これをやっておらないということは、人権擁護委員会は先ほど午前中も雑賀崎事件について質問があった場合に、よく調査が行き届いておらないようでございますが、一つ人権擁護委員会は、わあわあ騒がれてやかましく言われて動き出すということでなしに、実際に起っておる事件で雑賀崎事件あるいは今の檮原事件等ももう日にちはだいぶたっておりますから、はっきりしたことを打ち出していただきたいということを要望しておきます。  それから最後に、私は例の最初に申し上げましたところの九月十五日一せいストに対する措置について、政府にお聞きいたしたいのでございます。先般から、今言いました六月二十六日の一せいストまたは和歌山県下におけるところの勤評反対大会、こういうことが持たれ、そうしてこれは治安問題となり、また政治問題化し、権力闘争であるというように言われてきておりますが、問題はこれは教育問題であって、この教育問題に総評が介入してきて、そうして問題をより大きくしておる。九月の十五日には一せいストを先生たちはやる。そして総評関係の子弟は学校へやらないというようなことを決定したというのでありますが、これに対するところの世間の批評というものは、きょう、きのうの新聞の論調を見ましても、非常に批判的ではございますが、批判的であるといって物事は解決するものではございません。実際こういうことをきめられたということは、こういうことが起ったらこれは明らかに法律違反である。すなわち、地方公務員法三十七条の明らかな違反行為であるというように考えるのでありますが、これに対するところの政府の所見を、法務大臣並びに文部大臣から伺いたいと思う。
  111. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまのお尋ねの点は二つ問題があると思います。まず一つは、中小学校に在学中の児童の父兄が教職員組合の闘争を支持する目的をもって児童生徒を登校させないというようなことが、何らかの団体その他の指令等によって行われる場合には法律上どうなるかということが第一点であると思いますが、これは学校教育法二十二条及び三十九条によりますると、学令児童、学令生徒の保護者はその児童、生徒を就学させる義務があるということになっております。しかもその義務の履行は、単純に子弟を中小学校に在籍をさせるというだけの義務ではないと私は考えるわけでございます。義務教育期間中引き続いて就学させることを必要とするのでありまして、保護者が病気その他の正当な理由のないのに、児童、生徒を就学させないということは学校教育法に定める就学義務の違反行為である、かように考えます。  それから第二は、前々からの問題でございますけれども日教組等が指令をして一せいの休暇、いわゆる一せいの休暇闘争というようなことをあおり扇動するということが地方公務員法に明瞭に該当する違法行為であり、かつその行為をあおり、扇動することが罰条に触れるということは累次私どもの声明しておるところであり、また現に法の執行としてやっておることでありまして、それによりまして明確に私ども態度はなっておる、かように考えるわけであります。なお、詳細につきましては、さらに御説明してもけっこうです。
  112. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの事項に対する法律上の見解につきましては、ただいま法務大臣がお答えを申した通りでございまして、私もさように考えております。なお私といたしましてはこの勤務評定の問題をめぐりまして、いまだに反省の色がなく、この九月の十五日を期して全国的に教職員組合の指令によって一せいストを行うとか、あるいはまたこれに呼応して総評の方で組合員の千弟の登校を拒否する、こういうふうなことは法律問題はともあれ、私は子供の教育という点から考えましてまことに遺憾に存じております。切にさようなことの実行せられざらんことを祈っております。
  113. 原田憲

    ○原田委員 文部大臣はこのような行動が起らないことを念願するというお話でありますが、日教組の小林委員長は、これも新聞に「勤評闘争に三大拠点」というような見出しで、出血も覚悟というような過激な言葉で表現されておりますが、これなんかはもう完全に法律を無視してかかってきておる。冷却期間を置いたらどうかというような意見も出されておりましたけれども、われわれ常識で判断しますときに、冷却期間を置いて解決するといたしましたならば、この勤務評定実施ということにからんで何度かの交渉を各教育委員会が持っておりますが、その段階において何らかの結論を出せるはずじゃないか。しかるに一方的にこれに反対する、国の法律反対する、しかも出血をしても辞さぬというような態度で臨んでこられることはこれは大臣としても――私もそう思います。こういうことの起らないことを念願といたしますけれども、これが起りました際ははっきりとこれは法律違反である、この法律違反をあえてやるということに対しては断固たる態度でなければならぬ。先ほど質問中に、末端の何よりも責任者の問題をどうするのだということが取り上げられておりましたが、これなんかは明らかに責任者ははっきりしておる。これらのことについて断固たる態度というものを示されなければ、ほんとうに日本の文教の中立性、文教行政の正しい秩序というものは維持されないと私は思う。これは文教問題ではありますが、必然的に警察関係の問題を引き起してくることでありますので、どうかこの点において政府が断固とした態度をおとりにならんことを切望いたします。(「政治的に解決しろ」と呼ぶ者あり)政治的に解決せよというような発言が盛んに不規則発言でなされておりますけれども、現在まで大半の府県の教育委員会はこれを実施するということをきめておる。教育委員会というものは日本教育の実際の権限を持っておるのです。それに対して反対をする、騒ぎが起きるのがこわかったら冷却期間を置け、政治的に解決しろ、こういうようななまりはんじゃくなことが今日まで、いわゆる何か一本日本に足らぬというのはそこにある。それを政府当局においてはっきりしてもらいたい。どうぞ、政府の強固な態度、意思の統一した態度というものを要望いたしまして私の質問を終ります。
  114. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の問題につきまして先ほどお答え申しましたように、私はさような不祥な事態が起らないことをひたすら念願するものであります。しかしかようなことが万一あった場合にはこうなるということはしばしば警告いたしておるところであります。従いまして再三の注意にもかかわらず依然としてさようなことをするということでありますれば、行政上あるいは司法上それぞれ必要な処分は政府としてはっきりとってもらいたい、かように考えまして、その旨は地方教育委員会に明確に伝えております。
  115. 坂田道太

  116. 門司亮

    門司委員 それでは最初に警察庁の長官に誤まりをただしておきたいと思いますが、警察庁長官の言葉の中に、何かデモ隊が石を投げたというような事件があったように私聞いておりますが、この事実のないということだけはこの際はっきりしておきたいと思います。そのことは、御承知のようにあの問題の起りました場所はいずれも舗装してございまして、石はないはずであります。私はこのことを実地に参りまして見た。諸君は石でも投げなかったかと聞いたところが、石は投げなかった、石はない、こう言っておる。ただ問題は、新聞を通じて見ましても、砂をかき集めてほうったということは新聞に書いてある、私はこの程度だと思います。従って石合戦はなかったということだけはこの際一つはっきりしておきたいと思います。
  117. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私先ほど申し上げましたのはデモ隊が投げたというのでなくて、民衆が石や砂を投げたというふうに報告を受けておるわけであります。
  118. 門司亮

    門司委員 デモ隊がおった場所、それからもし民衆が投げたという事実があるならば、その民衆に対する取締りをどうされたかということを私はさらに追及したくなる。これは民衆が何に向って投げたのか、現地に行ってごらんなさい。石を拾おうたってない。デモ隊が石を拾って投げたなんということは考えられない。ことに十六日の事件は、新聞の記事等を見てみましても、むちゃくちゃに警察官の暴行が行われるので、やむを得ざる抵抗として砂をかき集めて投げたということだけは記事に書いてある、私はその程度だと思います。最初からデモ隊が石を投げたという事実はないと思うがどうですか。
  119. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほども申し上げましたように、相当激高しました民衆が、西署の前で石や砂を投げたというふうに報告を受けております。
  120. 門司亮

    門司委員 民衆が石や砂を投げたというのは、どっちに向って投げたのですか、それを一つはっきりして下さい。
  121. 柏村信雄

    ○柏村説明員 それはデモ隊に対して投げたのであります。
  122. 門司亮

    門司委員 そうなると問題はかなりこんがらがってきますが、デモ隊といえどもこれは人であります。関係のない人がそれに向って石をぶっつけた場合、警察がどういう態度をとったか、それを警察が知っておって、これを一人でも検挙したというなら言ってもらいたい。
  123. 柏村信雄

    ○柏村説明員 わかった者についてはもちろん制止なり適当な措置をとっておったと思いますが、大勢の民衆の中から投げられる砂や石でしたから、特定できなかったのじゃないかと思います。
  124. 門司亮

    門司委員 問題はそこにあるのでありまして、私はデも隊が石を投げたとは毛頭考えておらない。今警察側でもデモ隊ではない、民衆だということをはっきりされましたが、それならデモ隊も人であります。人の集団にいかなる状態でございましょうとも、無関係諸君が石をほうりつけたという事実に対して、これはあるいは人命に危害を及ぼすもので危険なものである、人命に危害を及ぼすような危険な行動に対して、警察が今のような答弁であなたよろしいとお考えですか。なぜそれを取り締らないのか、なぜそれを検挙しないのか、事実があるならそれをはっきり出しなさい。(「交通妨害だよ」と呼ぶ者あり)交通妨害であろうと何であろうと、第三者が他人に傷をつけていいという規則は、日本のどこの法律にもないはずだ。現に石をほうられたという事実があるならば、その事実に対してなぜ警察ははっきりした態度をとらないか、一人も検挙しておらないじゃないか。
  125. 柏村信雄

    ○柏村説明員 先ほどから申し上げますように、非常に大勢の民衆で特定できないので、そういう方向に対して制止をし、警告をいたしております。
  126. 門司亮

    門司委員 警告をいたしておると言うが、かりにそういう行為があったとするならば、私ははっきり問題が出てこなければならないと思う。なぜそれに向って警察官は警告だけでなくて――これは人に危害を加える行動ですよ。デモジグザグする行為とほ違いますよ。直接石をぶっつけるということは、ぶっかった人は明らかに生命に支障があると思う。こういうふうな重大な事件を片方がやっておるのに、特定のだれだかわからないというて警告だけで済ませられるかどうか。なぜその中に警察官を突っ込ませて取り締らないのか。この日は警察官の動員は四百名ですよ。しかも私服がたくさんおったでしょう。これは警察が認めておる。私服を出したということは金田君がはっきり認めておる。この警察の警備の中でデモ隊に対して石を投ずる者にはただ警告だけで済ませるという警察の態度は一体何事です。民衆がそういう形におるという事態をそのまま放任しておいて、ただデモ隊だけが悪いことをするような扱い方をするというところに、警察の考え方の誤まりがあるのではないか。(「交通妨害をしていたのだ」と呼ぶ者あり)交通妨害をしていたというが、交通を妨害した人間には石を投げつけていいのか。警察官はそれをそのままほうっておいていいのか。警察はデモ隊に対する実力の行使を行おうとするならば、こういう暴力を働く者に対する実力の行使がなぜ行われなかったか。警察官がたくさん動員されておったということは事実ですよ。こういう激突をする原因を作るものを警察官がそのまま見ておって、それで警察官の任務が足りているとお考えですか。
  127. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警察はこれを放置していたのではなくて、警告し、もし特定してわかれば当然これを検挙するなり取調べをするということになると思いますが、とにかく千名余の人間の中でだれが投げたかということはわからないという状況であったろうと思うのであります。
  128. 門司亮

    門司委員 だれが投げたかわからぬということですが、デモ隊には勇敢に行動されております。石を投げた者については、ただ警告だけでだれだかわからぬからということで済まされるということに、私は警察側の今日のものの考え方に誤まりがあるのではないかと思うのです。デモをしておる者はいかにも悪い者である、犯罪人であるという考え方の上に立って処置がなされていはしないか。警察がいわゆる公平な交通行政を――たとえばデモの問題であるから、交通行政秩序を保持するというお考えでありましても、交通行政を保持するという中から生まれてくる一つの事件として石をほうるというような者があるならば、必ずしもその方針が満足に行われないことは当りまえなのです。(「すわり込んでいたんだ」と呼ぶ者あり)すわり込みをしておったならなお悪い。すわり込んでおる者に石を当てれば的が的確になるからなお悪い。この石を投げた者に対して、ここで石を投げたという御認識をはっきりなさるならば、これに対する取締りをどうされたか。今のような千人もの人間がおったから、だれだかわからぬというようなことで取締りができますか。なぜこれに対して実力行使をしないのか。
  129. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私の承知しておりますのは、西署前でデモ隊が百数十回にわたって警告を受けても解散しない。これに実力行使を行なって解散させていく際に、そこから別れていく者に石や砂を投げた者があったということを聞いておりまして、そういうつど警告をしておるものと認めておるのであります。
  130. 門司亮

    門司委員 これは警察では痛いところでしょうけれども、もう少しはっきりしなさいよ。警察官は一方的にデモをやる行為については暴行を働くというようなことを平気でやるが、石を投げた、これも暴徒ですよ。暴漢ですよ。決して善良な人間とは言えませんよ。人の生命に危険を与えるような行為を平気でやることが常識のある正しい人間と言えますか。これは明らかな暴漢ですよ。明らかな暴徒ですよ。これに対してどうしてあなた方警察は取り締らないのです。わからないから警告をして、そのままにしておいたという理屈が立ちますか。たくさんの警察官がおってなぜそれが取締りできないのです。デモ隊だけを取り締るというものの考え方、ここに私はそういう大きな問題を見のがす危険があると思う。
  131. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警察官がすわり込みを実力をもって排除して解散させておる際に石を投げたのはごく少数だと思います。そういうものが特定されないでおる際にこれに対してその方向に向って警告をする、制止をするということはあり得たと思います。もちろん私は人に向って石を投げる行為がお説の通りよくないことである、悪いことであると思いますが、その千名の群衆の中に警察官が突入して、それを捕えるというそのときは状況でなかったと考えます。
  132. 門司亮

    門司委員 私はその点は実におかしいと思うのです。警察庁は石を投げたということを明瞭に認めておる。それがさっきの答弁では、そのデモ隊を取り締る行為の一つの原因として石を投げたということをあなた言われておる。そうして今これは大衆が投げたのだということを言われておる。そうしますとこの問題は今の警察庁の答弁だけでは承服はできない。ことに集団を持っておりますものに対して多少の刺激なりあるいは挑発行為があれば、よけいに集団は激昂して問題を引き起すであろうということは常識的に考えられることである。いわゆる事件の誘発に非常に大きく役立つであろうということは考えられる。従来日本のいろいろな騒擾事件を見てごらんなさい、実につまらない話である。子供が石を投げたとか、あるいはつまずいて転んだということがものの動機となって大きな騒動が起った事実は日本にたくさんある。片方はたくさんの人間が集団しておる。しかも状況はかなりお互いに興奮しておる。その中に石を投げ込んでごらんなさい。どういう波紋を描くか。これがデモ隊の一つの激昂となってああいう事件を引き起した原因の一つであるとさえ言えると思う。そうするならば、警察がその石を投げた者を検挙しない、そのまま警告程度でこれを認めたというところに、警察のものの考え方の上に大きな落度があるのではないか。なぜそれに向って警察が行動しなかったか。何らの行動も起していないでしょう。これでよろしいのですか。
  133. 柏村信雄

    ○柏村説明員 私は石を投げることが悪いことであるとは考えておりますが、あのときの情勢においては警察がとった措置は間違いないと思います。
  134. 門司亮

    門司委員 おそらくその程度しか答弁ができないでしょう。(「学問の問題について質問しろ」と呼ぶ者あり)私は学問の問題より和歌山の問題についてもう少し究明しておきたい。  次に聞いておきたいのは、同日の警察の交通の取締りに対し私服の警察官がたくさん配置されておったという事実を和歌山の警察本部長の金田君が認めておるが、警察庁はその報告を受けておられるかどうか。
  135. 柏村信雄

    ○柏村説明員 集団のデモ等に対しては不測の事態が起る場合がございます。そういうときには証拠を収集するとか、あるいは検挙するということに対して私服をある程度配置するということは、警察の態勢としては当然とる措置であります。
  136. 門司亮

    門司委員 警察の見方から一応そういう答弁をされるだろうと思いますが、デモの行為は交通の範疇にある行為であります。従ってデモの取締りは少くとも交通に関する取締りを主体として行われますならば、当然制服の警察官でなければできないはずである。一線に多くの私服警察官を配置しておったということは、今警察庁の長官が言ったように私は何らかの警察側に意図するものがあったという解釈しかできないのであります。通常デモ隊に対する取締りについては、ほとんど私服警察官の配置は一線にはないはずである。この写真を見てみますと、私服警察官が仕事をしておる。私服であれば検束を受けるものは警察官であるか何であるかわからないから、結局通常の人がよけいなことをするのだと考えてこれに抵抗するのは当り前である。警備の配置が悪いから、ことさらに問題を大きくしたものだと考えてもちっとも差しつかえないでしょう。この点はどうなんですか。
  137. 柏村信雄

    ○柏村説明員 きわめて静粛に行われます集団行進であるという場合は、これは完全に交通取締りの警察官だけで当然これの指揮に従って、規制に従って行動すると考えられるわけでありますが、先ほどからお話のありましたように、この集団は各所でジグザグデモをし、しかも旗ざおを持って警察官になぐりかかるというような暴挙をあえてしておるわけであります。こういうものに対しては、やはり私服の警察官を配置して、証拠の収集というようなことに万全を期するということが当然のことであると思います。
  138. 門司亮

    門司委員 私服の警察官をして証拠を収集させると言いますが、この場合は私服の警察官は、さっき申し上げたように一線に出て検挙に当っております。これはよけい混乱させたと思います。これは通常あり得ることです。われわれはデモにはしばしば経験を持っております。私服の警察官である場合は、これは通常の人であるか警察官であるかということは見分けがつかない。従って見分けがつかない通常の人が、デモ行進に対してとやかく申し上げることは、これはデモの行進をやっている人たちはそれらの人たちの制止に一々従っていくわけにいかない。だから反抗するということはあり得る。あなた方は長らく警察のことをやっておいでになるから、このくらいのことはおわかりでしょう。当日は私服の警察官がたくさんおった。この写真をごらんなさい、書いてあるではありませんか。第一線に出て検挙に当っておる。従ってよけいな混乱を巻き起したものであると言ってもちっとも差しつかえないでしょう。従って私は、当時の警察の配備に手落ちがあったということをあなた方はっきり認めてもらいたい。認めざるを得ないのです。(「私服だって現行犯ならできる」と呼ぶ者あり)現行犯なら私服でなくたってたくさんじゃないか。警察官の配備の仕方が悪いからこういう問題が起っているのです。この配備の仕方について警察庁はどう考えていますか。
  139. 柏村信雄

    ○柏村説明員 このようなデモ行進に対して、私服警察官を配置するということは、通常行われておることでありますし、私はこの際の私服警察官の配置がこういう事態を引き起した原因であるとは考えておりません。
  140. 門司亮

    門司委員 今の答弁でありますが、私は通常のわれわれの今日までの常識から考えて参りますときに、こういう配備は従来なかったのであります。そうしてやはりできるだけデモ行進は、交通行政の一環としてあくまでも警察は秩序を保持させるためにということでなければならない。ところがこの点われわれはどう考えても、私服をたくさん配備をしておったという事実は、明らかに最初から何らかの意図を持ってやっておった行為と解釈するより方法がないのであります。それはあなた方はくろうとだからよくおわかりでしょうが、デモ行進取締りに対する方針としては、先ほども言われたように、問題は交通取締りの配備でなければならぬはずのものが、こういうことが行われておる。しかもなお、私はもう一度聞いておきますが、この行進に対して中途並びに後尾に警察のトラックが五台ないし六台絶えずこれに尾行し、側面について歩いたという事実があるそうでありますが、これもお認めになりますか。
  141. 柏村信雄

    ○柏村説明員 警察の広報車が近くについていろいろ警告を与えておる事実はあるようであります。それから先ほどもたびたびお話がございましたが、私服の警察官を配置したということは、特別の意図を持って行なったものではなくて、ああいうデモについて必要限度の要員を配置したというふうに聞いております。
  142. 門司亮

    門司委員 私はおそらくそういう答弁をされるだろうと考えておりましたが、現地の状況必ずしも私はこれで万全ではなかった。いわゆる警備の配置については、私はかなり警察側に行き過ぎというか、思い過ぎというか手落ちがあったということが、この事件を起した一つの原因だと思う。  その次に私が聞いておきたいと思いますことは、当時警察官のとった行動の中で、ニュースを報道しまするカメラ・マン諸君の行為に対して、これに非常に大きな妨害を加えて、いわゆる報道陣から警察本部は抗議を申し込まれております。警察の方針をこの際はっきり承わっておきたいと思いますが、この種の問題について警察は報道陣に対する自由を妨害するというようなことをお認めになるかどうか。
  143. 柏村信雄

    ○柏村説明員 報道陣に対する取材妨害のお話でありますが、私の聞いておりますのは、二件ほど今お話の点に触れるものがあるのではないかと思われますが、一つは本町二丁目でありますか、あのジグザグ行進が行われて、ほぼ態勢がもとに戻った、しかも警察官の方の態勢もデモ隊とこんがらがっておりましたのから引いて態勢を整えるというときに、指揮官が警棒を上ぎて集まれという号令をかけたその際に、警察官は当然指揮官の命で集まるのでありますが、その警察官を押しのけて写真をとろうとした人に対して、これは報道班員というしるしもしておらなかったそうでありますので、これに対して若干押して横の道に出したということがあったということを聞いております。もう一つは、西警察署ですわり込みの排除を行なっておる際だと思いますが、その際に裏門から、たしか読売新聞だったと思いますが、記者が入ってこられて、それでそこに警備に当っておりましたのは他署からの応援の警察官で出入りの記者を知らない。しかも報道班員のしるしをつけておらないので、なぜ入るのかと言ってこれを押し返したという事実があることを聞いております。その点があとで考えますれば、報道班員に対してそこまでするに当らなかったということは考えられますけれども、しかしその前に暴徒が入りかけたのを押し返したということもありますので、そのときにとった警察官の措置が必ずしも不当であったというふうには考えられないのです。
  144. 門司亮

    門司委員 必ずしも不当でなかったというお話でございますが、公正にしかも厳正にありのままを報道しなければならない任務を持つ報道陣が、カメラを向けました場合に、しかも身分を明確にいたしましても、なおかつ――この新聞の記事を読んでごらんなさい。これは記者の談話として書いてあるのだから、そう間違いないと思いますが、同時に大阪におきましても和歌山におきましても、報道陣から警察本部に対しまして抗議を申し込んでおりますので、これは事実だと思う。警察官にそういう教育をされておるかどうか。自分たちの都合の悪いところは新聞報道陣といえどもその撮影を妨害するという行為を認められるかどうかということであります。こういうことをあなた方は警察官自身に日ごろ教育されておるかどうか、その点をもう少し明らかにしてもらいたいと思います。
  145. 柏村信雄

    ○柏村説明員 報道班員に対して故意にこれを妨害するというようなことは許されないことだと思います。従ってこの事態は、私は結果的に遺憾であったと思うのでありますが、あのときの状況において、その措置をとった警察官を、直ちに行き過ぎだ、不法な行為だとして責めることは酷であるというふうに考えたので、申し上げた次第であります。
  146. 門司亮

    門司委員 これは警察の答弁はおかしいのですよ。身分を明らかにしているのですから、身分を明らかにした以上は、やはり報道を正確にやらせるという方針でなければ、――私は別に警察をいじめようと思って申し上げているのじゃないのです。今日の日本の警察は、民衆からだんだんだんだん離反しているでしょう。警察というものは無理なことをするものだ、ちょうど昔の警察と同じ形になっている。少くとも報道陣には、こういう問題については、そのニュースなりあるいは新聞の報道写真なりに正確に事実が伝えられるような、警察側に襟度があってこそ、初めて正しい警察ができるのであって、こういうものは隠せる、こういうものは妨害ができるというようなことになりますと、警察官の素行はだんだん悪くなる。だからこの今の問題につきましても、この身分の証明をしてもなおかつこれに単なる行き過ぎがあって遺憾の点があったというだけでなく、将来こういうものに対して、一体警察庁は警察に対してどういう指示をされるのか、その点をこの機会にもう一度承わっておきたいと思います。
  147. 柏村信雄

    ○柏村説明員 報道班員に対しましては、ただいまお話のように、できるだけ正確に事態を報道するように、警察としては十分心がけるべきであるというふうに考えておりますし、今後ともできるだけ教養を高めて参りたいと思います。
  148. 門司亮

    門司委員 これはいずれ警察の問題につきましては、私の所管する委員会でさらに詳細にお聞きをしていきたいと思います。  もう一つ聞いておきたいと思いますことは、先ほど来右翼だ、左翼だという言葉がよく言われますが、これは関係のどなたからでもよろしいからはっきりしていただきたいと思います。当日デモ並びに集会に対していろいろ妨害をして参りました新日本教育対策協議会という団体があるということを言われておりますが、その団体性格並びに構成、責任者はだれであるか、この際明らかにしてもらいたいと思います。
  149. 関之

    関説明員 和歌山の事件に右翼がどういうふうな関係をしたかという御質問のことと存じます。どうも調べてみますと、全日本右翼団体協議会というものが八月の十三日に結成されました。これは大日本国民党、治安確立同志会、愛国青年同志会、皇紀社、建青社というような団体がこれに入っておるようであります。そしてそこへ行きましたものは、東京あるいは九州あたりから総勢で三十名くらいのものと存ずるのであります。それに地元の者が加わると約百名前後の者が行ったであろうというようなふうに大体のことは判断されるのであります。
  150. 門司亮

    門司委員 今私の聞いておりますのは、構成のメンバーと、それからさらに責任者はだれであるかということを聞いておるのです。責任者はだれですか。
  151. 関之

    関説明員 今のお話は日本教育対策協議会の問題かと思いますが、それは一応私どもの調べたところによりますと、名誉会長は野村吉三郎さん、副会長は橘浩三、こういうふうに聞いております。
  152. 門司亮

    門司委員 私は今度の事件で、従来のこの種の事件と異なった問題が――こういう右翼団体と目される、いわゆる新日本教育対策協議会というのは今右翼でないというお話でありますが、今おっしゃった治安確立同志会あるいは愛国青年同志会というようなものが、今日まで一応右翼団体として見られていたもの、これらのものが構成メンバーになっておるのであります。構成メンバーになっております以上は、少くともこれは協議会体制でありましても、これが全然右翼でないというような解釈は当らないと思う。同時にこの問題の最もわれわれが気をつけなければならないことは、この種の問題にこういう右翼団体を懇請した。団体が来てそして妨害をする。いわゆる集会を妨害するというような行為は今日までなかったのであります。これは新いし一つのケースであります。従ってこのケースは、この種の事件を私ども調査いたします場合に見のがすことのできない一つの大きな問題だと考えております。もしこういうことが平然として行われるということになると、あらゆるこれらの行為に対しては、必ずこういう騒動がつきものになってくる。いわゆる思想と思想との対立というようなものが出て参ります。このことについては当局はどういうお考えをお持ちになっておりますか。その点についての一つはっきりした御答弁を煩わしたいと思います。
  153. 関之

    関説明員 そこへ参加いたしました全日本右翼団体協議会というものが、私先に説明したような五つの団体が参加しております。この最後の日本教育対策協議会、これはそういう団体がそこにあるというわけでありまして、これが右翼であるかいなかは私どもとして判断いたしかねる、こういうふうに思っております。
  154. 門司亮

    門司委員 今のような答弁を私は聞いておるのではありません。この種のものが将来出てきては、ああいう会合で絶えずこういう騒動を引き起す原因になると思う。従ってこういう思想的衝突のないような措置を、当局は講ずべきではなかったか。今度の事件も新聞その他をごらんなさい、右翼の挑発によりという字句がたくさん使われておる。私はこういう問題が将来日本の正常な労働運動、正常なデモ運動に対して、もし横やりが入って、こういう騒動を起すということになると、いたずらに混乱を導く原因になる。この点に対して政府はどういうふうにお考えになっておるか、どういうふうに取り締られるおつもりであるか、これを一つはっきりしておきたい。
  155. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいまの御質問でございますが、私の承知しておる限りについてお答えいたしますと、こういうことになると思います。あの紛争のときに登場いたしました小型トラック、これを利用したものが、ただいま御指摘の団体であります。これは和歌山県下における勤評の賛成を趣旨とする人たちの結成した団体であって、いわゆる右翼団体とは私は性質が根本的に違うと思います。もしそれ勤評に賛成の者は、みな右翼といわれるならばまた別問題でありますが、私はさように考えないのでございます。従ってこういう勤評に賛成であるということを、その人たち意見として公正にこれを発表する限りにおきましてはこれは何ら取締りの対象にならない、私はこう考えております。
  156. 門司亮

    門司委員 せっかく大臣のお言葉ですが、協議会でありますからむろんいろいろな団体が入っておると思います。さきにも申し上げました通り、この中に入っておる治安確立同志会であるとか、受国青年同志会とか、その他の団体は一体どういう団体であるかということです。こういう団体がここに事実来ておる。
  157. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど関次長からお答えいたしましたことを補足いたすわけなんでありますが、和歌山市に八月の十日前後から、いわゆる右翼といわれるような人が何名か集まった事実は、これは否定することはできない。これは関君の申しました通りでございます。しかし私の理解しておるところでは、小型トラックを利用して勤評賛成の意見を発表した団体は、先ほど申しましたように和歌山県における地元の勤評賛成の人たちで結成されておるものであって、いわゆる右翼団体の中の協議会等に入っておるものではない、さような報告を私は聞いております。
  158. 門司亮

    門司委員 その点はさっきから聞いておりますが、中のメンバーをずっと見てごらんなさい。このときにいろいろ暴れた人のメンバー、それから当時検挙されております太田垣泰明ですか、そういう名前が出ておりますが、これらの人たちは、たとえば渡瀬、高津、荒原とか名前が出ておりますが、いろいろな人物がたくさん交錯しておる。その中でこういう問題があります。協議会であるからこれは違うんだと言う。一つの協議会自体と見れば今のような御答弁になるかもしれません。しかしこれを構成しております分子というものの中には、かなりそういうものが入っておるのではないかと思う。この事実をお認めになっておるでしよう。従ってその性格を私は聞いておるのです。
  159. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 私の手元に来ておりまする、私として信憑いたしております資料でございますが、先ほど来問題になっておりまする太田垣泰明という人は日本教育対策協議会の会員である、こういうふうに私は承知いたしております。そうしてこの日本教育対策協議会というものは、先ほど来繰り返して申し上げておりますように、勤評には賛成である、これはやるべきであるという地元の人たちの任意に作りました団体である、こういうふうに理解しております。さらに先ほど申しましたように、勤評に賛成であるから右翼であるということは私の納得し得ざるところであります。
  160. 門司亮

    門司委員 その構成のメンバーは必ずしも今の大臣のお話のような純真な者ではないと私は考えておる。それから同時にそういう報告を受けておるのであります。この中にはかなり右翼的な諸君がたくさん入っておるという報告を受けておるのであります。しかしここでそれを一々申し上げましても水かけ論になりますし、非常に急いでおいでになるようでありますから、その次の問題に移りたいと思います。  次に私が聞いておきたいと思いますことは、これもかなり問題になるかと思いますが、今度の問題があまりにも政治性をたくさん持ち過ぎておるきらいはないかということであります。単なる教組との争いということでなくして、私はここにはいろいろ問題があると思いますが、あるいはこれは違うと言われるかもしれない。私の知っておる範囲におきましては、自民党の和歌山支部から出された指令――六月九日付と記憶いたしておりますが、この問題に対する方針の第四項に、暴力的左翼勢力を県下から追放し、和歌山県教組の寸断をねらう、一斉追い落しの反撃の体制を整える、こう書いてあります。これは私も書類を見ただけでありまして、果して自民党の諸君がこういう書類をお出しになったのかどうかというところまでは確かめておりませんが、少くともこういう書類があるのであります。そうだといたしますと、この事件はかなり複雑な政治性を持っておるというように解釈せざるを得ない。もし政党がこういう考え方のもとに、教組の勢力を分断するんだという意図があって行われておるといたしますならば、この紛争はどこまでも絶えないと思う。もう純真な紛争ではなくて、泥沼の紛争に与党みずからが引き入れるような態度に出ていると思う。こういう問題について一体当局はどういうふうにお考えになるか、この際お聞きをしておきたいと思います。
  161. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今日勤評問題をめぐる争いの姿がきわめて政治的な色彩が濃厚になっておるということは、私もさように考えるのであります。非常に残念なことと思っております。私は、問題は教育行政上の問題である、そのつもりでやって参りたいと思っておりますが、遺憾ながら事態は単なる勤評問題ではなくして、すでに政治的な争いになってきておるというような印象を受けるのであります。まことに残念なことと思っております。これにつきましては、自民党がどういう指示をいたしましたか、どういう書類を出しましたか、私は全然関知いたしておりません。しかしながら自民党といたしましても、この勤務評定実施に関する問題については重大な関心を持っておるわけであります。すなわち政党といたしまして法律実施ということにつきましては常に行政府を監視しておる立場にあるわけであります。この法律は果して実施せられるのか実施せられないのかということについては、もちろん重大な関心を払っておるわけであります。この実施をめぐりまして絶対に反対をするというのが、ひとり日教組のみならず、他の政治団体におきましてもこれに協力してやっておるのが今日の姿であります。これに対しまして自民党として重大な関心を持ち、これに反対する動きをすることも、これまたやむを得ない、かように考えておる次第であります。
  162. 門司亮

    門司委員 私は大臣がそこまでこの問題をお認めになるならば何をかいわんやでありますが、この問題はもしそういうお考えであるとするならば、私は相当尾を引いた、長い、もっと深刻な闘争に必然的にならざるを得ないだろうという考え方を持つわけであります。このことは非常に遺憾に考えております。  さらにこの問題と相関連いたしましてかようなものが出て参りました。今大臣が御答弁のように、やむを得ざるような状態になっているのだというようなお考えだといたしまするならば、これと相関連してやはり一応聞かなければならないと思いますことは、福岡県の参議院の選挙の最中に、社会党の支持団体の最も強力な一つであると考えられる日教組に対して、ああいう手入れが行われたという事実、これは当時、きわめて政治性を持つものであるというように新聞その他にも多少の非難はあったように考えておりますが、これと一連の関連を持って、私は現在の政府考えておる日教組への弾圧の方針であるというように考えざるを得ないのでありますが、そう解釈してよろしゅうございますか。
  163. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お答えいたします。まず結論から申し上げますが、教組の逮捕の問題は選挙に対する不当の干渉その他の意図を持つものでは毛頭ございません、これは御承知のように、実は五月以来の問題でございまして、非常に広範に詳細にわたる関係者の捜査からだんだんに積み上げて参りまして、遂に逮捕を必要とするということになったわけであります。  なおでき得るならば、お休み中にこの問題を解決することが教育の正常な運行のために適当であろうという配意が、現地の警察並びに検察の方にもございました。従って八月に最終的な措置としてさような次第になったのであります。これは全然政治的意図はございません。
  164. 門司亮

    門司委員 私はむろん政治的意図があったという御答弁は願えないということは、最初から承知しております。そういうことは言えないでしょう。しかしどう考えて参りましても、和歌山のさっき私が読みましたような状態があり、さらに大臣はそういう事態は遺憾なことであるが、なるであろうというような御答弁をされましたものと関連をいたして参りますことは、私は当然考えられるのである。ことに東京都におきます教組に対する三十七条違反等に対しましては、これは抗告、準抗告というようなものが却下されておる。しかし福岡においてはやはりこれまで取り上げられておるというような事実もあるわけでありまして、これらの一連の教組に対します措置というものは、私は明らかに政府の意図する何ものかがあるのであるというように憶測をするのでありますが、これに対して、もう一応愛知大臣から御答弁を願っておきたいと思います。
  165. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 どうも答弁を申し上げても、そういう答弁は予想したという御批評でございますから、申し上げる必要もないのでありますが、繰り返して申し上げますと、政治的な意図は全然ございません。
  166. 門司亮

    門司委員 政治的な意図がないという御答弁でありますので、私はそのことは事実とは違うということをここに申し上げて――私の観点から申し上げますならば、当局としての御答弁、閥違いのあったということを率直に認めるだけの雅量と、事態を収拾する考え方のない諸君の答弁としては、私はそういうことが言われるだろうということを申し上げたのであります。  私はその次に法務大臣に聞いておきたいと思いますことは、先ほど問題になりました警察官の暴力行為に対する人権擁護に関しまする委員会のとられた処置に対する政府考え方を、この際ただしておきたいと思います。そのことは、去る八月十一日地方行政委員会におきまして、私がかつて問題になりました本州製紙の乱闘事件に対しまする問題に対して、七月二十二日付の東京新聞の記事には、明らかに「法務省人権擁護局は、会社、漁民側の関係者約百人から事情を聞く一方、警視庁に当時の状況について書類の提出を求め、さらに負傷した警官からも事情を聞いた。しかし「漁民が投石などの不法行為に出たのでやむなく実力を行使したが、警棒で漁民を殴った事実はない」といい張る警察側と「無抵抗の年寄りや中学生はおろか、デモ隊に関係のない見物人まで殴られた」と主張する漁民側が最後まで対立した。このため同局はあらためて現場を調査し、負傷者を治療した浦安町の葛南病院などからカルテ、傷の写真の提出を受け医師の証言をもとめて総合判断した結果「傷は警棒で強打されたもの」という結論を出した。さらに1大部分の者が二、三週間の傷だが、一人で何カ所も殴られている。2十数人の見物人も門外で殴打されている、などの点も明らかになったので、警察官職務執行法の「警棒等使用及び取扱規程」に違反すると認定、警察当局に勧告することになった」。という記事のあったことを申し上げておったのでありまするが、この事実があったかどうかということをこの際御答弁願っておきたいと思います。
  167. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま読み上げられました記事につきましては、私、実は詳細に読んでおりませんので、正確にここで御答弁ができませんが、本件につきましては、実は人権擁護局の方でも調査しておると同時に、東京地方検察庁においてただいま鋭意捜査中で、近く公正な結論が出るものと期待いたしております。
  168. 門司亮

    門司委員 私は今申し上げましたようなことをなぜ聞くかということはそのときの警察庁の石井長官の答弁の中にも、今大臣の言われたような言葉があり、さらにそういう事実があるならば、厳粛に取り締るということが約束されておるのであります。ところが砂川の事件を見ましても、あるいはまた本州製紙の事件を見ましても、今度の事件を見ましても、警察官の暴行と思われるものがかなりあるわけであります。そのたびごとに警察官がそういう行為をしたということについての事実が明らかになっていないのであります。全部これはうやむやになっておる。私は今日の日本の警察のあり方というものは、真に権力警察から民主警察に移行されて、民衆の親しむ警察でなければならない実態であるときに、いかなる事情がありましょうとも、警察官が民衆に非常に大きな傷害を与えて、そうしてそれが事実が明確にならなかった。警察官の行為はいかなる行為をしても、これはうやむやにほうむられるものであるというような印象を国民に与えることは警察行政の上においてきわめて遺憾なことである。従ってこのことを私は大臣に聞くのであります。今度の事件におきましても、私は現地における検事正の方にもお目にかかりました。よくお話は申し上げました。御承知のように負傷された個所が、告発しておる者はことごとく後頭部であります。もし暴力行為によって警察官との対立の立場におって闘争が行われておったときの傷害であるならば、前額部でなければならないと私は考える、あるいは面でなければならないと考える。しかし告訴しております五人の傷害の個所を見てごらんなさい。ことごとくこれは後頭部であります。後頭部をなぐられるということは抵抗しておる者でなくして、逃げるか何かしておる者をうしろから追っかけてたたいたとしか考えられない。もしそうだといたしまするならば、この真相は明らかにしなければならない。たといあなた方のかわいい警察官でございましょうとも、間違いのあった警察官に対しては、厳正にこれを処分していくことこそが警察の品位を高めるものである。砂川事件といい、さっき申しました本州製紙の事件といい、またこの事件もそういう形でほうむられることを、私は非常に悲しむものでございます。従ってこの事件に対しましては法務省といたしましてはたとい警察官の中からけが人が出ようとも、断固としてこれが糾明をするという決意がおありになるかどうか、この点を一つはっきりしておきたいと思います。
  169. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 お話しの点を十分参考にいたしまして適当な措置をとりたいと考えます。
  170. 門司亮

    門司委員 どうも今までちょっともそういうことは行われていませんので、今の答弁をほんとうに実行してもらいたい。  その次に聞いておきたいと思いますことは、先ほどからいろいろ問題になっております、いわゆる九月十五日に行われようとしておる、これは予測の問題でありますが、総評できめられた、たとえば子供を学校にやらないというようなこと、これの是非は別にいたしまして、こういうことが一応新聞に発表された。それに対して政府の方では総理大臣までそういうことを言われておるのでありますが、法的に厳重に処分するというようなお話しを新聞その他で拝見をするのでありますが、文部省はほんとうにそういうことをお考えになっておりますか。
  171. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 たびたび申し上げておりますように、さような不祥事が起らないようにということを私は念願しております。その意味におきまして、地方教育委員会等におきましても事前によく関係者を指導するようにということも申しておるわけであります。しかし不幸にしてさような事態が起りました場合には、法に照らして処断すべきものははっきり処断いたしたいと考えております。
  172. 門司亮

    門司委員 法に照らしてとおっしゃっております。前質問者に対する法務大臣の答弁も、学校教育法二十二条のいわゆる就学の義務でありまするか、さらに施行令によっておそらく処断されるものだと私は考える。しかしこの問題は、法律的にここで一々条文を引き出して議論すると非常に長くなりますし、非常に急がれているようでありますから避けたいと思いますが、就学の義務の中には、父兄が子供を休ませるということ自体については、これを罰する規則はどこにもないと思う。また従来日本ではそういうことをやっていないと思う。事実が起らない前にこういうことを発表されたのは、何らかの意図があったんじゃないかと考えますが、法的にはっきりそういうことがやれますか。
  173. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、教育法ですかの第二十二条並びに三十九条に、法律としてこれは義務に違反するという規定がある次第でございます。それから罰則についてはさらに施行規則等と関連いたしましてなら問題でございますが、しかし罰則の有無というようなことは別問題といたしましても、先ほど文部大臣の言われましたように、法律に厳然として就学の義務ということが掲げられておるのでございますから、これは一方においては大いに良識において考えていただかなければならないと思います。  それから、たとえば九月十五日には学校長の承認とか許可がなくとも一斉の休暇をすべしというようなことを指令し、あおり扇動するというようなことが始められるというようなことも情報で伺っておりまするが、仮定の問題でございますが、さようなことをする場合におきましても、これが事情のいかんを問わず、たとえば日教組学校長に対して一斉の休暇を全部許可してしまえというようなことを指令したり、あおったり扇動したりするということは、これは地方公務員法に違反をするということを私は考えておるわけでございます。もちろん今後においてこういう問題はケース・バイ・ケースに考えなければなりませんし、またただいまのところは仮定の問題でございますから、今後の処置をいかにするかというようなことについて、ここに明白に申し上げるべきではございませんけれども、さような点のあることも、私はこの際明確にいたしておきたいと考えます。
  174. 門司亮

    門司委員 今の御答弁は、新聞や何かに書いてあるように、必ず処分するんだということを断定された意見とは多少違ったようで、仮定のことだとおっしゃっておりますけれども、私はその前の事実として一つ聞いておきたいと思いますことは、学校の子供を父兄が休ませるという行為はたくさんあるのであります。今度九月十五日にやるということが発表されたからといって、驚いてあなた方がされるのはおかしいと思う。ここに写真を持っております。これを見てごらんなさい。これは昭和三十二年の六月二十日から、はっきり申し上げますならば山形県の湯ノ浜で四百名の児童が盟休をいたしております。これも全部父兄の処置であります。こういうものに対して政府は何らか処置いたしましたか。これは事実ですよ。何日間もやったことなんです。これに対して政府は何か処罰をしましたか。何も処罰していないでしょう。もし処罰したという事実があれば、一つこの際お示しを願いたい。
  175. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま山形県の事件をおあげになりましたが、これは処罰してはおりません。先ほど申しましたように、こういう件については、その個々のやり方等について十分に検討いたしました上でわれわれとしての措置をきめるべきものであります。ただ、今新聞に出ておりますように、全国一斉に子供を学校に上げないなどということをおやりになることは、こういう法律においても予想しない、これはやむを得ざることであると規定しておるのであるということを申し上げたわけでございますから、さよう御了承願います。
  176. 門司亮

    門司委員 私はその点が明確にならぬのです。なるほど一つの大きな団体が指令を出せば、あるいは全国一斉ということが言えるかもしれません。しかしこれも一つの仮定の問題であり、事実として現われた問題でもありませんし、また同時に総評が出したからといって、総評全国を代表するものでも決してないのであります。事件の性質というものは、たといこれが今申し上げましたような事件であっても、四百名という一つの部落における大きな集団の同盟休校であります。これには何らの処置がとられておらない。そうしてやるであろうというようなことを発表すると、いち早く政府はそれには処罰をするんだというような態度をとられるということは、私はおかしいと思う。もし厳密に政府がお考えになっているなら、ああいうおどかしのことばでなくして、こういう事態の起らぬうちに事態解決したいという意思表示こそこの際望ましいのであって、おどかしてこれを終息させようという考え方に私は非常に大きな問題があると思う。片一方では事実上行なっているんですよ。それも一口や二口じゃない。相当長い期間同盟休校が行われておる。これは性質が違おうと違うまいと、法律に照らしてごらんなさい、同じなんですよ。これをやっていない。やっていないから聞いておる。私はさっき申し上げましたように、あの総評の発表がいいか悪いかということは別問題であります。この問題がいいとか悪いとかいうことを議論しているのではない。しかし法の取扱いとしては平等でなければならない。一方においては従来この種の事件はたくさんあるのであります。また今度の町村合併その他に起因する問題がたくさんある。たくさんあるが、それらの問題はみな見のがされておる。そうしてこの問題だけがいかにも犯罪であり罪悪であるかのごとき印象を国民に与える。しかも事実上問題が起っておらないのである。こういう取扱いが行われるということは私は非常に遺憾であると思う。その点に関する態度一つはっきりしてもらいたい。
  177. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、法律の解釈としてはこうなります。しかし個々のケース・バイ・ケースによりまして、警察権をいかに発動するか、政府態度はどうきめるかということについては今ここで申し上げる段階ではない。私が、総評であるか日教組であるか知りませんが、新聞で報道されておるようなことが事実であって、全国一斉にさようなことをおやりになるようなことがあれば、まさにこの法律に触れますよということを申し上げておるのはおどかしでも何でもない、現行法律を守るべきわれわれの立場としての解釈であることをこの際明確にしておきたいというだけであります。
  178. 門司亮

    門司委員 これは水かけ論になるようでありますが、規模が違うから、あるいは事情が違うからと言われることも、一応あなた方の立場としてはそうかもしれません。しかし問題になりますのは学校教育法並びに就学に対する施行令等に照らしまして解釈されて、これが犯罪である、違法であるというようにお考えになるとするならば、今申し上げたようなこともこれは違法であったということに間違いはないのであります。この間違いでない事実が日本にはたくさんあるのであります。今さら文部省が探して歩いたところで探し切れないほどあると私は思います。それらの問題は、やはりその事件が起ったときにそういう注意がされるなり、あるいは処分がされておれば、今度の問題についても私は納得がいくのでありますが、そういう問題が全部放任されておる。そうして起るか起らぬかわからないものが新聞に発表されると同時に、政府の方はそれを罰するようなことを言われる。そうして国民に何か非常に悪いことをするような印象を与えられるということは、やはり政治的に大きな意図があると私は思う。事実上四百人という一つの村ですよ。この村の大多数の児童が同盟休校をやっておるのである。しかもそれは一日でもなければ二日でもない。相当長い間やっているのです。これに対して文部省は何らの処置をとっていない。だからそういう点に対して一体大臣はどう考えられますか。それを最初に発表されたことに私は問題があると思う。だからともかく、大臣はなはだ迷惑のような顔をされておりますけれども、もう一度この問題をはっきり答えていただきたい。
  179. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 これは幾ら申し上げても、結局おわかりいただいておると思いますから、これ以上お答えする必要も私はないだろうと思います。先ほど申し上げた通りのことを繰り返すだけでございますから、どうぞこれで御了承願いたいと思います。
  180. 門司亮

    門司委員 最後に私は文部大臣に聞いておきますが、この法のできた精神は全部の子供を就学させるということが基本の精神であります。従ってそれを行いますのには、経済的に就学の不能な諸君がある、あるいは親の仕事の関係、たとえばはしけ等に乗っている諸君で、非常に就学に不便な諸君がある。それらの諸君を救済することを目的とした法律だ、こう私どもは解釈しているのであります。またそういうことが書いてあるのであります。就学させる義務はあっても、事実上経済的にできない諸君がある。できない諸君に対しては政府は援助の便益を与えて、そうして就学させるということがこの法律の基本の方針であると思う。就学をさせない親を処罰するためにこしらえた法律では断じてないのである。そういたしますならば、この法律をとって直ちに今のように解釈されることは少し誤まりではないか、そういう考え方でできておる法律であればこそ、従来行われた同盟休校等に対して、政府は何らの処置をとらなかったのである。今度の場合は、この法律を曲げた解釈がされておるのではないかというように考えるのでありますが、文部大臣はこの点についてどうお考えになるか。
  181. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 経済上の理由によりまして、就学困難なものに対して就学を容易にすることが大切であるということは申すまでもないことであります。しかしこの学校教育法で就学義務を期待いたしておりますことはその主眼は、経済的援助とかそういうものじゃないと私は思います。全国民に就学の義務を課しておるというところに最大眼目があると思うのであります。もちろん義務を課したというところが眼目でありますから、罰則を適用するとかしないとかいうことは枝葉末節のことである、かように私は考えております。罰則を本意としての規定でないととは明瞭であります。ただ就学義務を怠りました場合に、こういうような場合にはこうなるということを書いておるにすぎない。また先ほど来いろいろお話もございましたが、学校を休んだからといって、すぐ罰にかけるのかというとそうじゃないと私も思っております。しかし今回の総評計画は、これは日本教育界始まって以来のことであろうと私は思います。これが現実化しないことを望んでおるのであります。どうか門司君におかれましても、さようなことが一つ現実化しないようにぜひ御協力願いたいと思います。
  182. 門司亮

    門司委員 どうも私に協力を求められましても、私は当該の責任者じゃございません。むしろこの問題を収拾するというためには、政府がかようなだれが考えても少し無理だ、法律の解釈は少しこじつけではないかというような、いわゆるこの字句の解釈を私はやかましく言うわけではございませんが、就学と学校にやるかどうかということは、非常に大きな違いなんであります。学校を休ませるか休ませないかということは、就学をさせないということではございませんで、休ませるということでありまして、非常に意味が違うのであります。従って、さっきも申し上げましたように、政府はこういう考え方で、今までの同盟休校その他に対しては寛容な措置で臨んでおいでになります。私はその点のことについてはやはりはっきり政府は解釈しておったと考えております。ところがたまたまこの問題について一日休ませるということが、いかにも犯罪であるかのようなことが宣伝されている事態について、私は非常に遺憾なことだと考えておるのであります。この問題については大臣はもう少し慎重に……(発言する者多し)僕にもぜひ一つ協力してもらいたいというお話でありますが、私は大臣に伺いたいこと、政府はこの問題について不祥事の起らぬように、より以上積極的に善処するというはっきりした態度を、この際文部大臣が表明できますならば、一つお願いしたい。
  183. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題について冷静にやれ、もっと頭を冷やしてやれ、こういうような御忠告もしばしば伺っておるのでありますが、私はきわめて冷静なつもりでおります。冷静に日本法律施行しようといたしておるのであります。これに対しまして御承知のような実態でございます。かような反対闘争は私は誤まっていると思います。これはぜひ一つ考え直しを願いたいと思っております。さような誤まった反対運動に対しまして、総評の方においてその闘争の手段として登校拒否というような手段に訴えられるということは、いかにしても納得のできないことであります。私は教育界始まって以来の暴挙ではないかと思うのであります。そういうようなことでありますので、どうのこうのと言いますよりも、いわゆる就学義務を課している学校教育法の精神に照らしまして、何とか一つさようなことのないように、総評諸君においても考え直していただきたいことを切に願っているものであります。
  184. 坂田道太

    坂田委員長 この際一言申し上げます。長時間にわたり有意義な御論議を賜り、委員長といたしまして各位に対しまして衷心より深く感謝いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三分散会