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1958-07-08 第29回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年七月八日(火曜日)     午前十一時二十九分開議  出席委員    委員長 坂田 道太君    理事 臼井 莊一君 理事 木村 武雄君    理事 永山 忠則君 理事 原田  憲君    理事 小牧 次生君 理事 辻原 弘市君       加藤 精三君    鈴木 正吾君       竹下  登君    谷川 和穗君       増田甲子七君    八木 徹雄君       山本 勝市君    小林 正美君       堀  昌雄君    松前 重義君       本島百合子君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  高見 三郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         防犯課長)   増井正次郎君         文部事務官         (大臣官房総務         参事官)    斎藤  正君         文部事務官         (大学学術局長         事務取扱)   稻田 清助君         文部事務官         (社会教育局         長)      福田  繁君         厚生事務官         (児童局長)  高田 浩運君         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 七月一日  委員平井義一辞任につき、その補欠として福  田赳夫君が議長指名委員に選任された。 同月三日  小松幹辞任につき、その補欠として松浦定義  君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員松浦定義辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長指名委員に選任された。 同月八日  委員川村継義君、受田新吉君及び小松幹辞任  につき、その補欠として小林正美君、松前重義  君及び原彪君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小林正美辞任につき、その補欠として長  谷川保君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 六月二十八日  幼稚園教育振興に関する請願栗原俊夫君紹  介)(第一一〇号)  公立文教施設費国庫補助に関する請願飯塚定  輔君紹介)(第一一一号)  杷木町の中学校統合反対に関する請願河野正  君紹介)(第一九四号) 同月三十日  学校建築物等焼失による再建費国庫補助等に関  する請願伊藤よし子紹介)(第二三九号)  公立学校設置に要する土地購入費等国庫補助  及び起債制度確立に関する請願伊藤よし子君  紹介)(第二四〇号)  未解放部落児童生徒学力充実等に関する請  願(田中織之進君紹介)(第二七六号) 七月二日  愛知学芸大学名古屋分校教員養成機関四年課  程設置に関する請願加藤鐐五郎紹介)(第  三三五号)  幼稚園教育振興に関する請願西村直己君紹  介)(第三三六号)  同(臼井莊一君紹介)(第三七六号)  公立文教施設費国庫補助に関する請願石山權  作君紹介)(第三七七号) 同月三日  愛知学芸大学名古屋分校後期設置反対に関す  る請願小林かなえ紹介)(第四一一号) の審査を本委員会に付託された。 六月三十日  公民舘建築費補助増額等に関する陳情書  (第七号)  教職員に対する勤務評定実施反対に関する陳情  書  (第一六号)  準要保護児童生徒に対する学校給食費補助増額  に関する陳情書  (第一八号)  宮城県に専科大学設置に関する陳情書  (第六五号)  工業高等学校教員に対する産業教育手当支給に  関する陳情書(第  六七号) を本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  学校教育に関する件  社会教育に関する件  学術に関する件   請願  一 勤務評定実施反対に関する請願西村力弥    君紹介)(第八号)  二 学校建築物等焼失による再建費国庫補助等    に関する請願丹羽兵助紹介)(第九二    号)  三 公立学校設置に要する土地購入費等国庫    補助及び起債制度確立に関する請願丹羽    兵助紹介)(第九三号)  四 幼稚園教育振興に関する請願栗原俊夫君    紹介)(第一一〇号)  五 公立文教施設費国庫補助に関する請願(飯    塚定輔君紹介)(第一一一号)  六 杷木町の中学校統合反対に関する請願(河    野正紹介)(第一九四号)  七 学校建築物等焼失による再建費国庫補助等    に関する請願伊藤よし子紹介)(第二    三九号)  八 公立学校設置に要する土地購入費等国庫    補助及び起債制度確立に関する請願伊藤    よし子紹介)(第二四〇号)  九 未解放部落児童生徒学力充実等に関す    る請願(田中織之進君紹介)(第二七六    号) 一〇 愛知学芸大学名古屋分校教員養成機関四   年課程設置に関する請願加藤鐐五郎君紹   介)(第三三五号) 一一 幼稚園教育振興に関する請願西村直己君    紹介)(第三三六号) 一二 同(臼井莊一君紹介)(第三七六号) 一三 公立文教施設費国庫補助に関する請願(石    山權作君紹介)(第三七七号) 一四 愛知学芸大学名古屋分校後期設置反対に    関する請願小林かなえ紹介)(第四一    一号)      ――――◇―――――
  2. 坂田道太

    坂田委員長 これより会議を開きます。  閉会審査に関する件についてお諮りいたします。今国会閉会中も、国立及び公立義務教育学校児童及び生徒災害補償に関する法律案並びに学校教育に関する件、社会教育に関する件、教育制度に関する件、学術及び宗教に関する件及び文化財保護に関する件につき、審査並びに調査を進めたいと存じます。以上六件について閉会審査承認を得るため、その審査申出書を議長に提出いたしたいと思います。これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 坂田道太

    坂田委員長 御異議なしと認めます。よってさように決定いたしました。  次に、閉会審査承認を得ましたならば、調査の必要上委員派遣のことも生じてくると思います。その際の委員派遣承認申請書提出手続等に関しまして、あらかじめ委員長に御一任を願っておきたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 坂田道太

    坂田委員長 御異議ないものと認めます。よって委員長に御一任願うことに決しました。     —————————————
  5. 坂田道太

    坂田委員長 次に、請願審査に入ります。本委員会に付託された請願は全部で十四件であります。先刻理事の各位の御協議を願い、請願審査を行いました。  お諮りいたします。日程第三、第四、第五、第八、第九、第十一、第十二、第十三、以上八件の各請願は、議院の会議に付することを要するものとして採択し、採択の上は内閣に送付すべきものと議決するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 坂田道太

    坂田委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  その他の各請願は保留すべきものとし、その採否の決定を延期すべきものと決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 坂田道太

    坂田委員長 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  ただいま議決いたしました請願委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 坂田道太

    坂田委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  次に、陳情書につきましては、文書表について御精査のことと存じます。委員会に送付された陳情書は五件であります。右報告いたしておきます。     —————————————
  9. 坂田道太

    坂田委員長 次に、学校教育及び社会教育に関する件につきまして調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。本島百合子君。
  10. 本島百合子

    本島委員 大臣おいでになっていらっしゃらないようでございますけれどもおいでになりましたならば、総括して御見解を聞きたいと存じますから、その点は保留しておいていただきます。  最初にお伺いいたしたいことは、非常に長欠児童が多いようでございますし、家庭事情によって出られない子供さんというのが増加しておると思いますが、ことしは特に不況でございますので、さきごろ私が要求いたしました資料で見ましても、これは非常に少い数になっておるようです。たとえば東京都の実例を申し上げても、ボーダーライン家庭の中で学校教育が十分に受けられないという人のために教育扶助をいたしておるわけです。小学校中学校でこの人の数が大体三万九千人くらいになっております。それから見ますと、ちょうだいいたしました資料による全国数は非常に少いように感じられます。従ってこの長欠児童に対しまして、文部省としてはどういう措置をとっておられますのか。また新たに起ってくる学童に対しましては、今の生活保護に準じてやっておったのでは、とうてい学校に行くことができない。根本的にこうした学童に対しての御施策があるかどうかということを承わりたいと思います。
  11. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 この前本島委員からお尋ねがございました資料によりますと、長欠児童のうち、家庭事由によるものと本人事由によるものの二つに分けたのでございます。本人事由のうち一番大きいのが病欠でございます。これは特にトラホームとかあるいは虫歯とかあるいは十二指腸虫、回虫とか、こういうような学校病もあるし、また結核その他の病気もあろうと思います。何と申しましても児童を健康にいたさなければならぬので、実は先国会において学校保健法の制定を見ましたので、そこでこれらの児童を健全にいたすために、学校身体検査を励行いたしまして、該当の児童生徒に対しては治療をさせるように、治療費に困るような子供につきましては、特に生活保護に該当する者は二・五%を見ております。準保護児童につきましては二%のものについて国と地方財政援助をいたしまして、子供の健康を守るという点が第一点でございます。  それから家庭の無理解等事情も相当多いのでございます。これは特に貧困家庭でございますので、こういう点につきましては従来から厚生省の方で生活保護に該当する者は、これは教科書学用品通学用品等支給をいたしておるわけであります。なおそれ以上のもので、いわゆるボーダーラインにあるところの児童に対しましては、教科書については約二%、国と地方公共団体無償で見るようにいたしております。なお給食についても同様な措置を講じておりますので、漸次長欠児童が減少しておると思うのであります。特に本人勉強ぎらい等もございますので、こういう点につきましては教師の家庭訪問等をよく行いまして、学校に通学するように指導いたしておるわけであります。特に中学校段階に参りますと、ある程度家庭援助をしておるというような実情もございまして、実は新制中学夜間に通っておるというような——これは法律的には認められていませんけれども、やむを得ず夜間に授業を受けておるものが全国で数千人程度あります。私どもはできるだけ長欠児童をなくして、正常に学校教育ができますように今後とも努力をして参りたい、このように考えております。
  12. 本島百合子

    本島委員 その御説明はいつも聞くことだろうと思いますが、今お答えの程度ではとうてい学校に行けないのです。たとえば学校に行かないで就職している子供を調べてみますと、家庭経済を補うという子供が非常に多いのです。そうして最近では月額大体三千円程度を取っておるわけなんです。ところが中央、地方を通じて援助いたします程度は、教科書とか給食とか、そういう程度でございますから、家計の補いは全然できない。そうすると親の方でも学校へ行くよりは職業をというふうになって参っておるわけですから、経済的理由による長欠学童というものに対して、現在の生活保護に準じてやられるということでは、とうてい解消できないだろうということがいわれておるわけなんです。児童憲章もあることでございますので、私ども地方行政体の中にあってずいぶん努力いたしまして、全国にはそういう制度ができていないようですけれども、たとえば東京都で小学校月額百四十円、中学校で二百六十円という修学資金を出しているわけです。これでさえもどうにもならないという家庭が多いわけなんです。ですから、こういう学童に対して特別な何か措置をするという御意思があるのかないのか、しなければこの子供たちはやはり学校に行かないだろうということが察知できるわけなんです。あと警察庁の方にもお尋ねするわけですが、大体犯罪者などの履歴を見てみますと、義務教育を受けていない子供が非常に多いわけなんです。最近起りました世田谷方面であったあの殺人事件でも、義務教育を満足に受けておらない。そういたしますと、やはり長欠児童を根本的に家庭調査してみて、生活保護に準じて学校へ行きなさいと言ったところで行けない。この状態子供に対する保護をどうするかというようなことをお考えになられたことがあるかどうか、そにれ対して大蔵省とも折衝されたことがあるかどうか、そういう点を聞かしていただきたいと思います。
  13. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 お尋ねの点、ちょっと私御質問の意味をあるいは取り違えているかもしれませんが、もし間違っておったら御訂正願いたいと思いますが、私どもとしては、一応国民生活を営む上において、最低生活というものは、生活保護法で保障されているわけなんです。この生活保護の限度が十分かどうかという点は、これは御議論があろうかと思います。しかし一応今の政府の方針としては、最低生活については生活保護費で保障していって、その上に義務教育段階においてどういう措置を講ずるか、こういう問題になろうと思います。そこで生活保護法適用を受けております者は、生活費のほかに教育扶助が行われております。この教育扶助の中には、教科書給食あるいは学用品通学用品等支給されるように建前はなっておるわけであります。御指摘の点は、生活保護法は受けないけれども、それに準ずる程度家庭の問題ではなかろうかと思うのです。その準ずる程度家庭はごく貧困というわけではないけれども貧困に準ずる程度生活の能力しかない。これにつきまして、私どもとしては、大体この階層が二%程度と見込んでおるのであります。二%程度のものに対しては、一方においては教科書無償支給する、他面学校給食無償支給する、こういうような建前で進んでおるのでありまして、それ以上に何か家庭経済援助をするということは、これは現在の生活保護法の問題とも関連がございまして、それ以上に私の方の教育問題では、実はないのではなかろうかと思うのであります。
  14. 本島百合子

    本島委員 教育問題でないというお考え方が根本的に違っておるのではないかと思うのです。義務教育を受けるのは当然ですけれども、実際上受けられないのです。生活保護を受けていて、教科書なんかもらっているからと言われますが、現実には家計費を補わなければならない状態しかいただいていないものですから、どうしても学校に行けないのです。調査をしてみれば、それはよくわかることなんですが、生活保護に準じていけばよろしいんだということでは、義務教育の受けられない子供が減ってきていることはないわけで、最近また増加しているということが言われておるわけなんです。今後そうした点について、統計は出ていないようでありますが、やはり児童を特別に考えるという立場で、これら家庭経済的理由による長欠子供については、特別措置考えていかなければ、子供たち全員学校に行くことはできないであろうということが言われておるだけに、私はこの点を考えていただきたいと思うわけであります。これは就学資金となぜうたうかというと、生活保護でいくと扶助が出るわけですが、それではだめなので、就学について不足をするから、それを出してやろう、こういうことになっておるわけなんです。地方について二、三あるようでありますが、そういうことを考えれば、政府の方としてはこれに対しては特別な金は出されていないわけなんです。ですから都道府県で実際めんどうを見てやりたいと思っても、財政の豊かでないところでは、そうめんどうを見てやれないということが出ておるわけなんです。従って厚生省の方ともお打ち合せ願って、特別措置考えていただきたいということが私の願いなんです。  それに関連いたしまして、青少年の問題でございますが、青少年犯罪が非常にふえておる。その子供たちを見れば「精薄児童が非常に多い。青少年犯罪者の中で、大体四〇%が精薄だと言われておる。それから売春婦の、売春防止法案が出ましてから調査したものの中で、四一%は精薄であるということになっておる。ですから精薄子供たち学校に行くことができない。施設がないんだということにもなって参りまして、野放しになっておるから、幼いときから何ら保護も受けられない。あたたかい手も差し伸べられない。そうして成長いたしまして就職しようとしても、雇ってくれる人がないというようなことで、自然に青春期になれば、生きるということから犯罪の方へ向っていくということになるわけです。こういう児童に対しましては、文部省として、予算あるいは施設というものを見てみましても、一割前後程度収容施設しかないという状態になっておりますが、特に今年は選挙もありまして、政府与党では青少年健全育成ということをうたっておったわけなんですから、そういう点では、今年の秋に開かれる臨時国会あたりででも、こうした面の操作をするというようなお考えはございましょうか。
  15. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 前段の、生活保護の中で十分教育扶助が見られないというような点がございますれば、これは生活保護の中で別に教育扶助という出し方もございますので、教育扶助として現物で校長が支給するという建前にもなっておりますので、さような道を使うことがいいのではなかろうか。ただ先ほどおっしゃったように、保護費全体が足らないから、教育扶助の方も生活費に回るというのが実情だ、こういう点は私どもある程度そういうことを認めざるを得ないかもしれませんが、これは厚生省におかれて生活保護費全体の問題を御検討される場合に、教育扶助が配慮されるように、文部省は常に厚生省とも密接な連絡のもとに相談をいたしておるわけでございます。  次にお尋ね精薄でございますが、お話のように、精薄児童が特に特殊児童の中では多いと思います。これがまた青少年犯罪の温床になっておることも事実でございます。かような趣旨から、文部省といたしましては、養護学校が実は義務制になっておりませんけれども義務制に準じて精薄あるいは肢体不自由のような子供たちにつきましては、養護学校設置を促進するために、教員の俸給につきましては、義務教育と同様に二分の一の補助を出し、建築費学校の建物の経費につきましても二分の一の補助を出し、また教材費につきましても、義務教育に準じて国が負担する、こういう建前をとっておるのであります。同時に、今度は特殊なそういう学校のほかに、各学校においても、精薄児童収容するために特殊学級設置を奨励して参っておるのであります。これは、特殊学級を作るのに、まず第一に教員数を確保してやらなければならぬ。この教員数を確保するために、先国会で通過いたしました学級規模適正化、いわゆるすし詰め学級の解消と教員職員定数の確保に関する法律がございます。この法律では十五人をもって一学級とする、こういうふうな建前になっておりますので、これを十五人で一学級できるようにいたしますれば、国の方は二分の一補助をしますし、また地方財政計画の中で、交付税単位費用にもこの数が計算の基礎になりますので、地方財政にも御迷惑がかからぬように配慮しているわけでございます。同時に、教員数をそういうふうにして確保しながら設備充実してやる。この設備充実につきましては、約一千万円近くの経費を計上しておりまして、毎年特殊学級の増加を奨励しているわけです。本年も大体二、三百程度学級を増加すべく設備費補助を行なっておるわけでございます。今後ともこの特殊学級増設拡充については努力するつもりでおりますが、これが臨時国会の問題になるかどうか、これは私どもちょっと疑問に思っております。本来通常国会の性格ではなかろうかと、かように考えておりますので、臨時国会についてはまだ検討を十分いたしておりません。
  16. 高田浩運

    高田説明員 ただいま御質問のありました精薄児童保護の問題、厚生省といたしましても文部省の方とよく連絡をとってこれが対策を進めているわけでございます。特に私どもの方としては、児童福祉立場から、最近特にこの精神薄弱児保護対策を強化して参っておるわけでございます。従来御承知のように、公立でありますとか私立の精神薄弱児施設、言いかえれば収容施設がありまして、これに収容して生活上の、あるいは学習上の、あるいは職業上の訓練をしておりまして、最近さらに日々通わせて訓練をするための通園の施設制度を設けて、また三十二年度からは特に重症の精薄、あるいは盲でありますとか、ろうあでありますとか、そういうものとダブルになっておりますいわゆる手のかかります精薄児童収容いたしますために、国立施設を設けて目下収容中でございます。なおまた職業の根本的な訓練をする必要もございますので、職業指導方面にもそういう施設を中心にして進めているような次第でございます。何しろこういった対策が発足いたしましてから日もまだ浅いために、収容力その他について不十分な点がありますけれども、私どもとしてはそういうわけで態勢を整え、また年々これらの施設の整備のためには一億以上の国費を投入してこれが拡充に努めておるわけでございます。今お話のように、これはいわゆる不良化の問題とも密接な関係がございますし、今後とも文部厚生よく連絡し合って、この精薄児対策の完璧を期して参りたいと考えます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 関連。実は今内藤局長がおっしゃった問題は、形式的にはそうだろうと思うのですが、もうちょっと本質的に問題があるのじゃないかと思うのです。その本質的な問題というのは、家庭事情長欠になっているというのは、子供のせいではなくて、親が無理解のために子供学校へ行かれない。子供自体学校へ行きたいのだけれども、親が働かせるために行けないという問題がある。この間もお酒飲みの親を殺したという事件が起きたりするのですが、現実にこの低所得階層の中には、親の無理解ということのために子供が非常に困難な状態に置かれておる。そうすると、ただ教育扶助をやればいいとか、あるいは生活保護適用を受ければいいとかいう問題以前の問題が本質的にあるのじゃないかと思うのです。そこで私は、これは少しむずかしい問題になるかもしれないのですけれども、そういう実情調査して、長欠児童で親の無理解のために学校へ行けない子供たちを、たとえば船で生活をしておられる方たち子供をどこかに集めて、寄宿舎のようなものに入れて学校にやっておられる制度があるように存じておるのですけれども、何かああいうふうな施設に、長欠児童の中で親の無理解のために学校へ行けない子供たちを集めて、そこでその子供たちに対する生活保護費用を出してやる。そこで何かそういう子供たちを指導しながら学校へやってやるということになれば、今度は子供たち学校へ行けるのじゃないか、こういうふうに私思うのですが、そういう問題については何かお考えがあるかどうか承わりたいと思います。
  18. 高田浩運

    高田説明員 ただいまお話の点は、直接的には文部省に対する御質問のようでございましたけれども、実態におきましては厚生省に非常に関係の深い問題でございますので、一応私からお話し申し上げまして、足らなければまた内藤局長から補ってもらうということにいたしたいと思います。  先ほど御引例になりました船乗りの子供の問題等につきましては、御承知のように、これは家庭というものが普通の家庭と違った格好になっておりますし、従って通学あるいは就学問題についても違った格好になっておるわけでございます。従ってそういう特殊な児童のためには特別の養護施設と申しますか、普通でいえば、たとえば親のない子供でありますとか、あるいは親がありましても、いろいろな事情子供の養育なりあるいはお世話ができない、そういう者を収容いたします養護施設という施設がございます。そういう施設を、たとえばそういう児童のおります近くに作りまして、そこに収容をして、そこから通学をさせる、そういうような事例も広島県その他各地にございます。これらについては、もちろんその経営費等について国としては法律に基きまして相当額の補助金を出しておる状況でございます。  それから一般的な問題といたしましては、御承知のように児童委員ないし民生委員という制度がございまして、全国に十二万五千の人が任命されておるわけであります。結局御引例の低所得者の問題でありますとか、あるいは子供の問題にからんだ親の問題であるとか、あるいは家庭の問題というようなものについて、その地域社会におりまして、そうしてその地域社会に通じておる人たちが、十分に家庭事情もかみ分けて、また子供立場考えて世話をし、あるいは必要であれば、今の施設に入れるように世話をする、そういうようなことをするのが児童委員の役割でありまして、これらの人は、社会福祉事務所を中心として、もちろん学校の御当局とも密接な連絡をとりながらやるように、文部省とも打ち合せて先般来指導いたしておるわけであります。何しろ具体的の事例になりますと、いろいろむずかしい事例もございまして、手の届きかねておる点が、あることはもちろん十分考えなければならないわけでございますけれども、今後そういうようなことで役所自体の手の及ばないところと申しますか、そういう点を含めて児童委員等の活躍、それから学校当局との密接な連繋というものについて、さらに両省打ち合せをし協力して参りたいと思います。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そういう特別な生活環境の相違ということで現在のようなものがあるのですし、長欠児童の基本的な問題は、今私が申し上げたように、親の無理解ということのためにあるのですから、義務教育というものの性格が一体どこまで親を拘束できるかということを考えてみますと、現実にはそういう制度があっても子供を働きに出す親がいて、学校としてはそれ以上学校に出して下さいということを言う以上には何もできない。親の方に言わせると、学校によこせと言ったってうちは暮しに困っておるのだから子供を働きに出さなければ食えない。費用の問題はここで論ずるわけにはいきませんが、そういう環境があるのを是正するための何らかの方法というものは、今私が具体的に申したように、貧困家庭の中で子供学校に行きたいと言っておるが、親の無理解で行けない子供たちというものは、やはり親があってもなきにひとしいような状態にあるわけですから、そういう子供のための養護施設ということになると、今度は文部省を離れて、厚生省の所管になっていくのかもしれませんが、そこのところの所管上の問題は私にはわかりにくいのですが、そういうようなことをやはり政府としてお考えになる余地があるかないかということです。今後、今の特殊の養護施設というものの意味の解釈の仕方を拡張して、ことに都会に問題があると思いますので、各都会にそういうものを作って、長欠児童のために主としてそれを開放するような手を打っていこうというお考えがあるかどうか。これはそうすると児童局、厚生省の方のワクの中のようでありますから、その点私の申し上げたことについてちょっと御答弁が違ったようですから……。
  20. 高田浩運

    高田説明員 先ほども申しました養護施設は十分に御理解のことと思いますが、親がめんどうを見られないというための施設でありますので、従って親がめんどうを見られるけれども学校にはやらない、そういうものだけの子供を云々ということになりますと、養護施設の趣旨とは違った格好になるわけであります。直接教育目的のためにそういう施設子供収容するということは、これは法律建前からいってむずかしいことだと思います。ただ今申し上げましたように、実際問題としてそういう家庭は非常に貧困であるとか、親が刑務所に入っているとか、あるいは親が特別に酒に深い関係があって、子供めんどうが見れないというようなそういう条件とダブっている、こういう現実がありますので、そういった後者の条件に適合する限りにおいては、十分児童の福祉というものを考え措置をするのが当然だと思います。
  21. 内藤誉三郎

    内藤政府委員 お話のように長欠児童を分析してみますと、一つは本人の病欠でございます。一つは家庭の無理解でありますが、この家庭の無理解というのは必ずしも経済貧困ではないと思います。むしろ経済貧困よりは親の教育に対するほんとうの無理解である。これをどうするのかということが教育上の一番大きな問題です。先生方はしばしば家庭訪問にもおいでになる。ところが家庭訪問に行くと、おやじさんはのんだくれでどなりつけて先生を追い帰す。先生は何べんもおいでになって御理解をいただくように努力していらっしゃる、これが今日の実相でございまして、私どもはできるだけ父兄の協力を得て、就学させる道を講じていきたい。もちろん就学義務教育でありますので、罰則等の規定もございますけれども、罰則を適用する前にできるだけ父兄の協力を願っていきたい、かように考えております。
  22. 本島百合子

    本島委員 今堀委員から言われたことは私も考えておったことなんですが、一つそこのところで法律々々と言われても、現実にはその間にはさまってどうにもならないところがあるわけであります。ですから、そういう児童に対してはやはり学校と民生委員の方方と連繋をとって、親は学校へやるつもりでおります、とこう言うのですが、つもりでおりますと言うだけで、それ以上には一歩も入れないわけです。従ってその点を義務教育だから義務的にどうしてもやらせるんだという強い指導をしていただいて、今言われた通りの経済的理由によってどうしてもやれない子供は、特別な養護学校というような形においてでも義務教育はやらせるんだという強い要求をしていただきたいと思うのです。そこで私が考えておりますことは、こういう子供たちがほうってあって就職ができない。これは労働基準法や何かに抵触いたしますから、幼い者は雇えないのです。だから正規に雇われるところがありませんから、町に放浪して犯罪の温床になっていくわけなんです。こういう者については特に御調査をなさればわかることですから、強力な力でもって学校へやるという形を生み出していくということをこの機会にお考え願いたいと思います。それから青少年問題協議会の方は文部省の所管だと思いますが、最近深夜喫茶店の問題で、青少年問題協議会から、また東京都からも、特に昨年もことしもこれを禁止してもらいたいという要望が出ております。これが青少年の悪の温床になるということから、この問題を取り上げたのは青少年問題協議会でございます。従ってこの意見書が東京都から出ておるのを見ましても、青少年を中心として、環境の整備ということから、根本的な法的な措置をとってもらいたい、こういうふうに出ておるわけでありますが、こういう点でどういうお考えがおありになるのか、聞かしていただきたい。その実例といたしましては憲法違反になるということで、都道府県では青少年の問題を何とかしたいと考えてもどうにもならない、そこでたとえば子供は十時から後は外で遊んではいけないというような鐘を鳴らすとかいうようなこともやっておるところがかなりあるわけなんですが、そういうことでは、とうてい今日の不良化防止には役立ってこないというようなことで、一つずつその悪の温床になるべきものの芽をつんでいくということが大きく言われておるわけです。この場合におきましては、青少年問題協議会から提案をされておったと思いますが、どういう審議状態になっておりますか。また文部省としては青少年の育成のためには、特に、そういう学校以外の過程においてどういう措置をとっていかれようとしておるのか、夏休みを控えて、何か特別な御施策があるのかどうかということをあわせて聞かせていただきたい。
  23. 福田繁

    ○福田説明員 ただいま御質問のありました青少年の非行、不良化問題は、非常に重要な問題でございまして、おっしゃるように青少年問題協議会等におかれても、そういった問題についていろいろ研究いたしております。最近御承知のように青少年の凶悪犯と申しますか、そういうものがふえてきておる。また一般の犯罪にならないような非行というものがかなりふえておるように聞いております。こういった問題につきまして、もちろん学校教育の面におきまして指導することは非常に大事な問題でありますけれども学校以外のあるいは社会教育の場におきますそういった指導なり保護というものは、また非常に重要な問題でありますので、私どもといたしましてもできるだけ社会教育の関係する機会におきまして、そういった青少年不良化防止ということにつきまして対策を講じて参ったのであります。今おっしゃるように、青少年不良化防止という見地から、中央青少年問題協議会等におきまして取り上げられました問題は、関係各省においてこれを実際に具体化していくというような建前をとっておりますので、文部省だけでなく、あるいは警察方面あるいはまた法務省関係の仕事なり、あるいはまた厚生省なり、そういった関係各省のそれぞれの所管事項におきまして、それを取り上げておるわけであります。文部省といたしましては、教育問題としてこれを取り上げていくという建前から、特に夏を対象とした関係ではございませんけれども、最近の数年間における青少年犯罪の増加という見地から、青少年保護育成という建前教育委員会等を通じまして指導を強化していくという対策を講じておるわけでございます。これにつきましては五月二十日でございますか、私どもとしては全国教育委員会に対しまして、不良化防止について従来の措置をさらに強化するようにという通達も出しております。そういった関係から、なかなか効果の上りにくい問題でありますけれども、できるだけの手は尽してみたい、かように考えておるわけであります。一方今おあげになりました深夜喫茶の問題でありますけれども、こういった一つの例はやはり教育上に非常に影響のある問題でございまして、東京都におきましては深夜喫茶に関する条例を制定いたしております。この条例によりますと、午後十一時から翌日日の出までは営業主は十八才未満の者を出入りさしてはいけないというような条例が制定されておりますので、そういった取締り方面におきましても、この条例の趣旨を厳格に施行されるということが非常に必要だと思います。しかしながら警察の取締り等のみにも依存できないというような事情もございますので、青少年保護育成条例というものを制定している県が十県ぐらいございます。この中では今おっしゃいましたような青少年夜間の外出、たとえば午後十時から午前四時くらいまでは、同伴者がなければ外出してはならないというような規制を設けております。これは全くこの青少年保護育成の見地から、こういう条例を作っておるわけでありますが、これはやはり教育的な見地からこういった条例を各地で制定されることが私どもは望ましいと考えております。ただいま十県ぐらいでありますが、できるだけこういった条例が各県に実施されることを期待しておるわけであります。それ以外に私ども社会教育の面で青少年対策として考えなければならない点はできるだけ今後も取り上げて参りたい、かように考えております。
  24. 本島百合子

    本島委員 ただいまおっしゃった社会教育の面からは大体予算がどのくらい組まれておるか、それからなさろうとしておられることはどういうことかということを聞きたいと思うのであります。同時に、大体地方行政で見ますと、会議費くらいに終って、実際の青少年の育成のために使っていく費用というものは組まれていないと思います。従って青少年育成という上からは、特に重大なときでありますだけに、ここで画期的な面を、健全娯楽なら健全娯楽の面で考えていかなければならないだろうし、またそのあり方の問題といたしましても、体育の方面に目を向けさせるとするならば、それはどのような形においてすればいいのかというような、文部省としての考え方を聞かしていただきたいと思います。
  25. 福田繁

    ○福田説明員 私ども社会教育の面におきまして取り上げておる問題は、先ほど申しましたような不良化防止あるいは青少年の健全な育成というような見地から考えておるわけであります。これにつきましては、たとえば最近の映画とか録音教材の面におきましても、悪い映画が青少年に悪影響を及ぼすことは御承知の通りであります。そういった面から映画の選定をいたしまして、その選定の結果を地方に知らせる、またいい映画を文部省として買い上げまして、そして地方教育委員会を通じてできるだけ青少年にその映画等を見てもらうというような機会を作る、そういうことを映画関係ではやっております。それからまた今年から青少年のために特に青少年のみの一般の映画館を使った早朝興行を実施するように、東京都の一部では今まで実施されておりますが、これを全国のできるだけ広い地域の都市等に広げるようなことをやっております。それからまた読書の巡回指導というような点から、従来社会教育の一つの方策として、地方青少年にいいものを読んでもらうという意味で、読書指導あるいは図書の巡回閲覧といったような施設を県を通じてやっております。こういった面は一つの方法でありますが、そのほか単にそういう面だけでなくて、先ほどお話しのような、私の直接の所管ではありませんけれども、体育あるいはリクリエーションを振興するというような見地から、青少年に対しまして体育を普及するとか、あるいはまたリクリエーションを大いに奨励するというような方策も相当予算を持って実行しております。それからさらに健全な青少年の育成という見地から、ことしは文部省といたしましては約六千万円の経費をもって青年の家を全国に十五カ所でありますが、建設することになっております。そういった施設を通じまして青少年を規律ある労働生活というものになれさして、青少年の健全な育成に資するというような対策を講じております。その具体的な予算の面になりますと、今申しました青年の家の六千万円。そのほかに映画その他読書指導というような一般の社会教育関係の対策費を合せますと、社会教育の中に社会教育特別助成金というのが六千万円ございます。それが大体地方補助金として出まして、一般の青少年指導あるいは青少年対策として使われる経費であります。これは私どもの関係の予算でございます。
  26. 本島百合子

    本島委員 青少年問題について文部省が今御発表になりました程度で、今日不良化が減っておるかというと減ってはおらないわけです。不良化ということになりますと、戦後最大かといわれた二十五年くらいのときから見ると、倍以上にもふえておるという状態、刑法上の犯罪者、それから不良化は四倍くらいになっているということでありますので、やはり青少年問題をもっと大きく打ち出していただかなければならぬのではないかと思います。  それから警察庁にお聞きいたしたいのですが、警察庁の方と文部省厚生省と三者合同でこの問題を取り上げてやっていただいておるのですが、特に目立ってくるのは、警察関係の方で防犯の立場からなさるものが多いわけです。予算も大体多いようでありますが、一般には何となく犯罪者になっているか、なるんだという印象を与えることが大きいわけですから、これはあくまでも文部省としてのワクの中で、悪に陥らない前の手を打つということが必要だということになるわけであります。映倫の問題にいたしましても、どんなにお勧めになっても最近の広告などを見ますと、扇情的なものが非常に多いし、絵にいたしましてもその通りで、粛正されたというようなところは見受けられないわけであります。町に出ますと、そういうものが出て参りますから、もう少し権限を持って法的に阻止することができないものか、それができないというのにどういう理由か、また保護条令というようなものが地方にあるとおっしゃるけれども地方条例では、とうてい取り締れないということになるわけです。深夜喫茶店の問題も、どうにかして青少年を守ろうとしたけれども法律に抵触する、憲法に抵触するということでできないで、食品衛生法によってやっているわけなんです。そうしてたまたま十八才未満というところで警察が関与することができるというふうにうたったわけでありますが、これは窮余の一策であって、根本的には逆になっているわけであります。深夜喫茶店というのは、公衆の福祉の面からいうと、百害あって一利もないということは、だれも考えているわけですが、これを阻止することができない。ほんとうは深夜喫茶店をなくそうということと、それからかりにあった場合としても、健全な行き方でということで作ったわけですが、これが世間でいわれているところの保護条例みたいなものになってしまって、東京都のような場合にはむしろ条例ができましてから軒数が三倍以上にもふえているし、青少年ばかりでなく、中年以上の人たちが安上りな旅館みたいな感じで利用しているのが多いのです。これに対しては営業権の自由ということから営業に手を入れることができないという現状になっているわけであります。しかし子を持つ親としては、こういうところに出入りして、しかも酒なんかを飲んで、そこで知り合って、いろいろの悪を働いているという実例がたくさん出ているわけでありますが、警察庁ではどの程度に把握されているかわかりませんが、警察庁の見解としても、おそらくこういうものはない方がいいだろうというふうにお考えになっていると思います。そうだとするならば、これは文部省の所管ではないと思いますが、こういうものをなくせということが、たしか昨年の三月か四月ごろに意見書が提出されているのでありますから、そういう点についてどういう審議をされ、どういう結論を生み出そうとしておられるのかということを聞かせていただきたいと思います。
  27. 増井正次郎

    ○増井説明員 防犯課長でございますが、お答えいたしたいと思います。青少年不良化防止の全体の問題といたしましては、私どもはやはり関係機関、中央青少年問題協議会を中心といたしまして寄り集まりまして、いろいろと問題を協議して、どういうふうな対策を立てたらよかろうかということで努力して参ったのであります。警察の青少年不良化防止の役割と申しますか、そういう役割につきましては、まず犯罪少年あるいは問題少年を出さないということ、早いうちに発見すること、こういうことが一つの任務であろうと思います。それから一つは環境の浄化です。青少年に有害な環境の浄化ということにねらいを置きまして、なるべくそれを健全化していくという方向に努力して参りたいと思います。取締り権限を通じまして、健全化の方向に努力して参りたい、こういうふうに考えております。その一つとして、青少年不良化の原因の一つである深夜喫茶店の問題が一昨年来非常に大きな問題になりまして、東京都におきましては、先生御承知だと思いますが、条例を作られまして、これをもって規制をしていこう、これによってなるべく数を減らしていこうということになったと聞いております。ところが事実は逆の結果でふえておる、こういうことのようであります。しかもまたそれがいろいろと犯罪の温床になっていったり、あるいは不良のたまり場になったり、あるいは愚連隊がそこに泊まり込んでおる、こういう問題があるようです。私どもといたしましては、現在東京都におきましては条例、あるいは大阪、兵庫県におきましても青少年保護育成条例ができておるのでありますから、そういう条例のもとにおいて、もっと現行条例においてうまくやっていただける余地がある方法がなかろうか、それからもう一つは、いわゆる深夜喫茶という営業の実態が風俗営業類似行為をやっている面がなかろうか、接待をして、遊興あるいは飲食させるという営業行為の実態がありますならば、これは当然風俗営業に照らしまして時間制限なり、営業の内容を健全化していただく、こういうことが必要であろうかと思っておるのであります。そしてこの問題につきましてもやはり六大府県——おそらく大都市を中心とした問題ではなかろうかと思うのであります。そういう方面実情等もよく調査いたしました上で、今後どういうふうにしていただくか、中央の青少年問題協議会その他におきましてもいろいろと御意見を承わりながら問題点を検討して参りたいと考えておる次第でございます。
  28. 本島百合子

    本島委員 特殊な都市であるということを言われておりますが、売春防止法が通過いたしました後は、各県で昔の赤線、青線という地域におきましても出てきてないということが言えないのです。問題にいたしますのは、十八才未満の者は入ってはいけないと銘を打ちました映画の場合でもその通りですが、こういう銘を打つとよけいに見よう、よけいにそういうところへ行ってみよう、こういうような心理があると見えまして、逆に利用するような形になっていくわけなんです。ですからこの条例等において青少年を守ろうといたしましても、今申し上げたように児童に対する特別な法律というものはないわけですから、児童憲章程度では防ぎとめることができないという結論が出てくるわけなんです。ですから、それならば先ほどおっしゃったように、風俗営業というワクをどの程度にして、そしてそれはできないのだというふうな形をとっていくよりしようがないのだということになるわけです。映画にいたしましても十八才未満の者は入ってはいけないといえば、よけい売り上げがあるということがいわれておるのです。そうすると、文部省社会教育の面で努力をされておるとは逆な効果を生んできていることになるわけです。従ってこの機会に東京都あたりから、また青少年問題協議会でも審議されておるところの、悪のもとになるということがはっきりわかっておる深夜喫茶店は廃止するというような見解を持って努力されていくかどうかということが一点。それから児童に対します特別の法律を作る意思が文部省あたりにあるかどうかということを承わりたいと思います。
  29. 増井正次郎

    ○増井説明員 深夜喫茶を廃止するかどうかという問題でありますが、先ほども申しましたように、深夜喫茶の営業の内容によりましていろいろと実情が異なっておると思うのでございます。特に深夜の営業であるからということなのか、あるいは営業内容が非常に不健全であるかどうかという問題か、区別さるべきじゃなかろうかと思います。特に夜間の勤務を持っております大都市におきましても、やはり深夜の喫茶あるいは深夜のすし屋さんですか、そういう方を利用される向きもあろうかと思うのであります。やはり営業の内容がどういう内容のものであるか、それからその内容の構造、設備がどういうような構造、設備になっておるか、照明がどういうような照明になっておるか、いろいろな問題があろうかと思います。そういう問題の実態をつかみながら私どもは関係方面とも連絡の上検討して参りたいと考えております。
  30. 福田繁

    ○福田説明員 ただいま立法の問題でありますが、先ほど申しましたように、各県におきましては青少年保護育成条例というものをかなり設けておりますので、こういう条例が全国の府県にできることを望ましいと私ども考えております。従ってそれらの関係も出て参ると思いますが、立法の問題につきましては内容その他、あるいはいろいろむずかしい問題があるとも存じますので、今後十分研究いたして参りたいと考えております。
  31. 本島百合子

    本島委員 こういう問題はもうかなり論議されてきているわけなのであります。立法の問題でむずかしいという御答弁ですけれども、むずかしい問題ということはだれもがわかっておるけれども、どんな国でも子供を守るためには、不良出版物、映画あるいは先ほどいったような業態のものについては画然と児童を守るところの法律があると思っております。日本だけが憲法違反だという言葉において児童に対する特別の法律がないという状態になっておるんですが、こういう点について中央の青少年問題協議会でも非常な論争をされておったのでございますが、そういう経過から見て、文部省としては特に作る段階であるかどうかというお見通しはどうなっておるでしょうか。
  32. 福田繁

    ○福田説明員 大へんむずかしいと申しますのは、たとえば映画の例をとってみましても、最近御承知のように、映倫におきましては、この問題につきましてはいろいろ議論をされて、最近映倫で審査されます映画は大体私どもの望むような方向にいっているのではないかと考えております。  それから先ほど申しました広告の問題にいたしましても、だんだん映倫におきまして広告の審査もやっております。間にはいろいろ不都合な広告もあるようであります。大体見ますと、映画館の前に書いてあります非常に大きな看板というか、これはかなり影響があるようでありまして、そういった面についても、これはむしろ興業館側の自粛に待つ面がたくさんあると思います。最近われわれ興業館側といろいろ話し合った結果によりますと、興業館におきましては、先だってできました環境衛生法に基きまして、今後文部省選定等の映画とそうでない成人向き映画との抱き合せ営業をやらない、あるいは十八才未満の青少年を成人映画を上映している間は入れないというような点、そういった幾つかの現在最も問題になっております。ような点については、自発的にこれを自粛措置によってやっていくというようなことを言っております。そういったことを考えますと、ある程度現在のいろいろな問題も、業界の自粛等によって、あるいはまた映倫の審査を強化することによって、実施できる面がたくさんあると思います。そういった状況を私どもとしては今後十分見守りながらなお検討していきたいと考克ておりますので、映画の問題でございますけれども、立法の問題等はなかなか慎重を要するのではないかと考えます。
  33. 高田浩運

    高田説明員 今のお話は、結局は児童福祉の問題との関連であろうかと思います。これにつきましては、御承知のように児童福祉法がございます。もちろん不備な点もございますので、不備な点は今後よく検討いたしまして改めていくようにしなければならぬと思いますが、根本問題としては、今福田局長からお話し申し上げましたように、児童の福祉の問題でありますとか、あるいは不良化防止の問題は、法律の問題もさることながら、やはり親の自覚の問題、あるいは地域社会の協力の問題、あるいは直接の関係者の協力問題、そういった面が非常に重要な契機をなすわけであります。たとえば不良化の防止の問題につきましても、直接的な深夜喫茶への出入りの問題もさることながら、やはり一面においては健全な児童文化等の供給の問題でありますとか、あるいは環境の浄化の問題でありますとか、その辺と一緒になって、いわゆる総合対策というものによって初めて現実不良化防止というものの成果が十分に期待し得るものだと思うのでありまして、法律の問題も、それらの問題と総合的な関連において検討することが第一の問題じゃないかと思うのでございます。法律自体に伴ういろいろの問題があることは言うまでもありませんが、そういう観点から、私どもの方としましては、青少年問題協議会等を中心にし、関係者一同よく打ち合せをして、本来の目的であります不良化の防止、あるいは健全な育成という面に一つ十分努力して参りたいと思っております。
  34. 本島百合子

    本島委員 これで最後にいたしますが、防犯課長さんに承わりたいと思うのです。青少年犯罪者の中で義務教育を受けていなかった者の数が最近の数でわかりましょうか。それから同時に私は、先ほどから一連の関連性をもって、児童児童憲章で守られていないということから起ってくる問題を大体御質問したわけなんです。そこで経済的理由によって義務教育の受けられない子供に対する措置としては、中学校において夜間学校の設けられていることも事実であるけれども、その児童にいたしましても、昼間の方々と同じような恩恵は受けていないわけですね。それで特別そういう子供に対しては気を配っていただきたい。同時に学校へ来られない実態の調査をしていただいて、親の無理解経済的理由、こういう両方の面から合せてどうしても教育を受けさしてやることのできない児童に対しては、特別な措置を講ずることを考えてもらいたいということなんです。それから深夜喫茶店は、青少年犯罪の最も芽になるものでありますから、こうしたものについては廃止の方向に持っていっていただくような法的措置を講じたいということが、昨年も出され、ことしも出されておるようですから、研究していただきたい。同時に今の御答弁によると、児童に対する特別保護の立法をする意思はないように承わったのですが、悪に入っていかないために——おとなと同じような状態に置いておいても、子供というものは判断力がない場合もあって、非常に犯罪者もふえてくるという傾向になっておるわけですから、やはり特別児童に対する立法というものが必要じゃないかと考えておりますので、今後も研究していただいて、私どもの方もいたしますが、できるだけ悪の芽をつんでいくための措置を講じていただきたいということを申し上げておきます。また大臣が見えましたならば青少年に対する見解も聞きたいと考えておりますが、これで質問を打ち切ります。  防犯課長さん、大体ここ三年くらいでけっこうですが、青少年犯罪者で、そのうち義務教育を受けてなかったという子供、あるいは精薄であるというような状態子供がどのくらいあったか、その犯罪者の数と、そういう児童の数をおわかりでしたら知らしていただきたいと思います。
  35. 増井正次郎

    ○増井説明員 青少年犯罪者の中において、精薄児童あるいは義務教育を受けてなかった子供が幾らくらいあるかということでございますが、ただいま手元にちょうど正確な資料を持ち合せてございませんので、何でございましたら後ほどお届けいたしたいと思います。
  36. 西村力弥

    ○西村(力)委員 社会教育局長にお尋ねしますが、外国映画は映倫その他の関門をどういう工合に通ってきておるのか、その点についてお尋ねしたい。
  37. 福田繁

    ○福田説明員 外国映画の問題でございますが、これは従来はアメリカのメージャー系の会社のものは映倫を通っていなかったのであります。ところで映倫が新しく改組されましてから、メージャー系の劇映画等につきましては映倫を一応通るという建前で、これは外国映画会社の方の協力によって実施されておるわけでございます。
  38. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは厳格に実施されておりますか。
  39. 福田繁

    ○福田説明員 私どもの聞いております範囲では、メージャー系の映画は映倫を全部通っておるというふうに聞いております。
  40. 堀昌雄

    堀委員 メージャー系のは通っておる。そうすると通らないのがあるということになるわけですね、今の御答弁は。
  41. 福田繁

    ○福田説明員 私の申し上げようが悪かったかと思いますが、従来ヨーロッパ関係の映画につきましては映倫を通っております。従ってアメリカ関係はほとんどメージャー系のみと言ってもいいくらいでありますので、メージャー系の映画が審査されますと、ほとんど全部通っておるということになります。
  42. 堀昌雄

    堀委員 今の言葉でほとんど全部という表現ですね。ですからほとんど全部ということは、率直に言いますと、やはり例外があるというように聞えるのです。だから例外があるなら例外がある、その例外についてはどういうふうに考えていくということがあれば私ども了解できるのですが、今のお話ですと、ほとんど全部とか、いろいろ例外がありそうな御発言があって、その例外の部分には何ら対策がないように感じられるのです。その点はどういうようにしておられるかということです。
  43. 福田繁

    ○福田説明員 メージャー系以外の会社の作品につきましては、従来映倫を通っておったと思います。しかしこれは本数等の割当が、輸入される本数によってその年その年きまるわけでありますので、おそらくそれ以外のものは従来あまりなかったのではないか、かように考えております。入ってくればおそらく現在は映倫の審査を受けることになっております。
  44. 坂田道太

    坂田委員長 本島百合子委員大臣が見えましたので……。
  45. 本島百合子

    本島委員 大臣が来られます前に文部省厚生省、警察庁の方にいろいろ青少年の問題に関連した御質問をいたしたわけでありますが、満足できるような御答弁がいただけなかったし、私の方も予算の要求をした質問をしたわけではなかったのですが、ただ大臣としての御見解を二、三点お聞きしておきたいと思います。  一点は、貧しいために経済事情によって学校に行けない、義務教育を受けられない学童に対しては生活保護がある。あるいはまた地方におきまして二%程度保護を与えるということにおいて大体学校に行けるようになっておると思うということを答弁されたのでありますが、現実にはその事情、実態を調査いたしますと、学校に行けない、どうしても働きに行って家計の一部を補わせなければならないという状態子供もあるわけです。親が無理解であるばかりではなくて、背に腹はかえられないという児童たちに対して、大臣としてはどういう措置を講じていかれるのか、所見を伺いたいということが一点でございます。  それから精薄児童、肢体不自由児、あるいは虚弱児童、こういう児童たちに対しましてのことをお尋ねいたしたわけでございますが、大体適用する児童数の一割前後しか収容施設がない。その残る子供たちは野放し状態になって教育も受けられない。成長いたしましても職業補導その他が受けられないために、犯罪者になる子供が非常に多いということから、今日の予算で参りましても十分な施設が増設されるということは考えられない、そこで全国のこうした父兄たちから増設の要求が出されておるわけなんです。従って本年度においては、大体特殊学級を先ほど三百教室くらいでしょうか増設するということが言われたわけであります。現実には地方公共団体財政の豊かでないところでは、一人当り学童にかかる費用が非常に高いものですから、財政負担にたえられないということで、この増設が思うようにいっていないということと同時に、これに対しましての補助率なりあるいはまた増設に対して大幅に来年度あたりお考えがあるかどうかということをお尋ねしたいと思います。  それからもう一点は、青少年不良化関連いたしまして、今日戦後最大になるだろうといわれるほどの不良化の傾向があるわけなんですが、それに関連いたしまして、不良図書だとかあるいは映画、あるいは深夜喫茶店等、こういうものを青少年から遮断するような、児童を守る法律をお作りになる意思があるかどうかということを承わりたいと思います。
  46. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 家庭が貧しいために学校に行きにくいという学童が相当あるということは御指摘の通りでございます。これにつきましては、あるいは生活保護法でありますとか、あるいは準要保護児童に対する措置でありますとか、だんだんと施策を講じて参っておりますけれども、しかしそれでもって完全にはこれらの人たち就学しておらないという事実も認めざるを得ないのであります。私といたしましては、もちろんこの学童に対する各種の施設あるいは制度というものをもっと徹底的に活用してもらうという必要があろうと思う。生活保護児童にいたしましても、果してそれが完全に法律適用せられておるのかどうかというふうな点もあろうかと思いますので、その関係の向きに対しまして示そうの活動を促したいと思うのであります。各種の施設、施策を総合的にさらに徹底的に行うことによりまして、かなり目的を達することができるのではないかと思うのでございますが、御指摘の次第もありますので、十分注意いたしまして、御期待に沿うように努力をしたいと考えております。  それから精薄児童お話でございます。これらのきわめて気の毒な状態にあります児童に対する保護施設というものも、戦前に比べてみますと、よほど戦後は進んで参ったような心持がいたしております。また学校教育の面におきましても漸次そういう方面施設が進んで参っておるのでございますが、しかし現状から申しますと、すべての精薄児童に対してあたたかい保護施設というものが利用せられておるという点までは至っておらないように私も思います。実際また近ごろの世間の御要望からいたしましても、精薄児童ないしは肢体不自由児、こうした児童に対する施設拡充の要望の声も高いのであります。これは一つは厚生省関係のいろいろな施設拡充する必要もございましょうけれども、また学校の面におきましてもさらに一そうの努力をもってこれらの施設拡充して参りたい。一ぺんに片づけるということはなかなかむずかしいと思いますけれども、やはり不遇な境遇にあるそのような児童に対する教育施設の整備ということは、文部省としても重要な任務の一つだと私は考えます。できるだけ皆さんの御協力のもとにこういう方面施設についてもさらに整備拡充を見ますように努力をいたしたいと考えます。  また青少年不良化の問題につきましては、お互いに心配を同じくするものでございます。あるいは不良な図書であるとか、あるいは映画であるとか、あるいはまあいろいろ町の妙な喫茶店であるとか、こういうふうな状態を見ます場合に、このままではいけないということはだれしも感ずる問題であろうかと思うのであります。図書とかあるいは映画等の関係につきましても、法律でもって出版をどうするとか、映画をどうするとかいうような問題になるとなかなか議論のあるところであります。よほど考究を要する問題でございますけれども、何とか自粛自戒によりまして、さようなことのないようにしてもらいたいものと考えますと同時に、私どもとしましては、積極的に優良な図書とか、あるいはまた推奨すべき映画であるとか、こういうふうなものが広く若い人たちによって見られるようにやって参りたいと思うのでございます。社会教育の活動がもっともっと活発にならなければならぬということも申すまでもないことであります。今後の私の仕事の一つといたしまして、さような点につきましてもできるだけ努力をして参りたい、こう申し上げたいと思うのでございます。
  47. 坂田道太

  48. 小林正美

    小林(正)委員 去る五日の午後でありますが、三重県の四日市市の教育委員会の事務室で四日市の教育長の染川清一郎君が電気のコードで首をくくって死んだ、こういうできごとがあるのでありますが、これに対して大臣の御所見を承わりたいと思います。
  49. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 四日市の教育長の不幸なことにつきましては、ほんとうに私は痛ましいことと思っておる次第であります。いろいろ心労が多かった関係ではないかと思うのでございますが、かような最期を遂げられましたことについては何とも申しようのない痛ましさを私は覚える次第でございます。
  50. 小林正美

    小林(正)委員 どうもただいまの御答弁では私も満足ができないのでありまして、大体この問題について私も一昨々日急遽四日市に帰りまして、私の地元でもありますので、いろいろと各方面状態について調査をいたしたのでありますが、この点を少し申し上げて、さらに大臣のお考えを聞きたいと存じます。実は先月の二十八日に、この勤務評定の問題についてはきわめて重大であるから、よく一つ今後話し合っていきたい、決して一方的に押しつけはしない、こういうことを市の金子教育委員長は教職員組合の代表者に約束をいたしております。ところが五月の一日に教育委員会が開催せられまして、しかも突然追加議案として勤務評定をやるのだ、九月の末までに出せという通告を、五月一日付で各校長に指令するということを教育委員会で決定をいたしまして、その通告が校長あてに出されたのであります。これを聞いて教職員組合の代表者の諸君が押しかけて参りまして、その後二日、三日、四日、連日これについてのいろいろと団交が行われたわけであります。こういうような中で私が感じましたことは、非常に大きな二つの特徴がある。その第一は、教育委員に四名の人たちがおるのでありますが、いずれも何と申しますか、任命制によって任命せられた教育委員でありまするがために、教育行政に対して確固たる信念がない、自信がない、きわめて熱意が乏しい、そこで教育長の染川君がただ一人この問題の中心にあって非常な苦労をした、こういうことが言えます。それからもう一つは、非常に大きな世論のごうごうたる中で、県の教育委員会があくまでも勤務評定を実施するということで、これを一方的に市の教育委員会に押しつけて参った。そこで市の教育委員会でもこれをやろうということできめて、そうして通告を出したわけであります。そういう一方的な勤務評定を実施しようという押しつけがましい態度が、ついにこの善良な染川氏をして殺してしまった、こう私は考えるのでありますが、こういう問題について、もう少し文部大臣のお考えを、私は突っ込んで御表明をいただきたいと考えます。
  51. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の七月一日以来の経過につきまして、内容的に詳細なことは私承知いたしておりませんが、私はこれらの経過を通じまして、教育委員会側に反省すべき点があればもちろん反省してしかるべきものだと思います。ただ一方的に押しつけたというふうなお話でございますが、これはまあ現地のことはよくわかりませんので、私はっきりしたことは申し上げかねますけれども、事柄の性質といたしましては、団体交渉をもって片づけるべき性質の問題ではないということを私は実は考えておるのであります。交渉せられることもいいといたしまして、その交渉されるについても、もう少し妥当な交渉の仕方もあるのじゃないか、四日間にわたって、連続して毎日毎日相当な人が詰めかけて、そうして話し合いをしておるというふうな状態は、私はあまり賛成しかねる。もう少し穏やかに、お互いに合理的な意見をもって、あるいは建設的な意見をもって話し合われるというふうな状態が望ましいと思うのでございまして、どういう動機で、どういうつもりでああいうふうになされたか、御本人のことはよくわかりませんけれども、しかし非常に疲労こんぱいいたしておったということは、どうも間違いない事実のように思うのでありまして、まことにお気の毒に存じておる次第でございます。
  52. 小林正美

    小林(正)委員 少し三重県の実情を御存じないと思いますので、私は中部日本新聞に出ております四日市の市民の声をここで読んで、大臣のお考えをいただきたいと思います。これはPTAの副会長の言であるますが、これ以上教育界の混乱を防ぐため、染川さんは死をもって抗議したのだ。今はあえて勤務評定を実施すべきでないと思う。今後はもっとよく話し合って、再びこのようなことが繰り返されないようにわれわれは希望する。これはPTAの副会長が言っております。それから、やはり三重県で、マザークラブという会がありまして、その三重県の支部長の藤井さんという人がこういうことを言っております。もっと多くの人たちと話し合い相談してきめる方法もあったのではないでしょうか。今後も問題が続くと思うが、もう一度よく練り直し、世論に従ってきめるのが最もよい方法でしょう、こう言っております。こういう考え方が、大体四日市を中心とした県民市民の私は考え方であると思うのであります。従いまして教職員の諸君が大ぜい詰めかけて、団交でもってぎゅうぎゅういじめ抜いた、そういうことではなくて、やはり長い間教育に携わっておった染川氏が教育者としての良心また良識から、非常に政府の強い意図と、自分の教育に対する一つの考え方とのジレンマに陥って、こういう態度をとられたのじゃないかと考えるわけであります。そこで私は文部大臣にもう一度お尋ねしたいのでありますが、県民、市民がこういうような考え方をもって、染川教育長の死を非常に悲しんでおる。もう一ぺんよくこの問題を話し合って、そう実施を急ぐべきでないという考え方に対して、文部大臣はどういう工合にお考えになるかということと、もう一つは今度のこの問題を引き起したやはり一番大きな原因は、任命制によるところの教育委員というものが、私はいかにこういった問題について無能であるかということを暴露した一つの事例であると考えます。これについてもちょっと御説明をいたしたいのでありますが、こういう工合に地元の新聞は言っております。任命制からくるいわば宿命的な性格の弱さは否定できない。委員長の金子真二氏は塩浜にある近鉄診療所の所長で、外科の専門医、人柄はすなお過ぎるくらいおとなしく、それに仕事の性質上自由な時間が乏しい。伊藤吉兵衛氏は、現在四光商事社長であるが、以前市会議員をやっており、またおもちゃの収集家。文化人として知られているが、昨年一月脳溢血で倒れて以来療養しておって、ことしの委員会からようやくぼつぼつ出席できるようになったが、まだ大声でものも言えないような人である。坂倉タマ氏は四日市地区婦人連合会長であるが、学校の先生をしていまだ後アメリカで二十余年を暮したきわめて温厚な女性、三井啓策氏は東海硫安四日市工場長で工学博士、いざというときははっきりものを言う人であるけれども東京本社との打ち合せその他できわめて多忙である。これら四人の委員から押され、実際に教育委員会の仕事を運営しておるのが染川清一郎氏である。同氏はかって県視学、市教育課長なども勤めた教育行政のベテラン、性格は謹厳で熱心、人のあげ足をとったり言葉じりをとってとっちめるということは、今までに一度もなかった。結論として染川氏を除いた四人の委員は、文化人としてはりっぱな人たちばかりであるが、きわめて線が弱く、自分の意思をはっきりと表明できるのは三井氏一人くらいのものである。それにきわめてこの方々は多忙であり、会議出席がおくれたり、欠席が多かったり、事前打ち合せのこともできないで、そのために委員会の意思統一などもむずかしかったと思われる、こういうような工合に、地元の新聞は教育委員会実情を批判をいたしておりますが、こういう任命制の教育委員会が生んだこれも私は実例であろうと考えるのでありますが、こういった任命制の問題に対してもとのような、国民が直接選挙する教育委員会制度に改めるようなお考えが、この際文部大臣にはないかどうか、その点を一つお聞きしたい。
  53. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今回の染川教育長の不幸なできごとに対しまして、地元の人たちの見るところをお話しになったわけであります。どういうわけで染川君がああいう道を選ばれたかということは、私は的確によく承知いたしておりませんが、ただ私の想像するところでは、今日までのいわゆる団交の経過におきまして、染川君の信念とするところと相反したような経過をだんだんとたどっていった、こういうところに非常な苦しみを感じたのではなかろうか、こういうふうに私は思うのであります。これらのことは的確なことを申し上げるわけにも参りませんが、私の今まで報告を受けたところによりますれば、さような想像ができるような心持がいたしておるのであります。それから、こういう事態において実施を引き伸ばすべきではないかということでございますが、私は実施の時期等は教育委員会で定めるわけであります。いつにしなければならぬとかいうふうなことをそう文部省が干渉するつもりももちろんございません。教育委員会として適当と考えた時期をもってやっていけばいいことだろうと思うのであります。九月にしろ十月にしろ、そういう時期を選んでおるところが多いようであります。これだけの期間がありますれば、私は勤務評定を実施するということについては十分な日数であると思うのであります。問題はこの勤務評定を実施することそれ自体に対して、非常に強い反対がある、非常に強い抵抗があるというところに私はあると思うのであります。実施するという建前に立ってものを進めていくことになりますれば、それほど短かい期間じゃないと私は思うのであります。願わくは日教組の諸君といたしましても、この勤務評定の実施という建前は一つ認めて、それに協力していただきたいと思うのであります。そうしてその建前の上に立って、いろいろ穏やかに話し合いをせられるということになりますれば、そうむずかしい問題は私はないだろう、かように考えておる次第であります。私自身がかれこれ申し上げるべきことではありませんが、私は勤務評定の実施ということを、政府としてこれを引き延ばすとかなんとかというふうな考え方はいたしておりません。  それから教育委員会委員の任命制と公選制の問題でございますが、御承知のような経過をたどりまして任命制に移ってきておるわけでございます。この任命制に移って参りましてから、まだそれほど長い年月がたったわけでもございません。教育委員会としては、むしろこれから大いに任命制の効果を発揮すると申しますか、力を発揮すべき段階になっておることと思うのでありまして、政府はこの教育委員会をさらに育成し、さらに強化していくという考え方をいたしておるのでございまして、それをもとのような公選制に引き戻すということは、少くとも現在は考えておりません。
  54. 小林正美

    小林(正)委員 染川氏の死なれたその気持について、少し大臣は都合のいいように解釈をされておるように思うのでありますが、これについては、たとえば四日市の教職員組合の書記長の尾崎君は、やはり新聞でこういう工合に言っております。任命制度という地方教育委員会の弱点をこれほどはっきりと暴露したものはないだろう県の教育委員会が一方的に実施をきめ、あとのことは市町村の委員会にまかせるということでは、全く無責任だ。染川氏は以前から、まだ勤務評定は時期尚早であるという意見を唱えておったが、正直一本の人だから、県から指示された以上やらなければならぬという責任感が、ついに彼を死に追いやったものと考えて、この責任はすべて県の教育委員会のとるべきところだと考える、こういう工合に言っております。従いまして、私は染川氏の気持を察するに、どうしても勤務評定をみずからやらなければならぬと考えて死んだのではなくて、非常に強い県からの圧力で自分の信念をゆがめてまでもやらなければならぬというところに、彼を死に追いやった大きな原因があるのではないか、私はこういう工合に考えるものであります。  それからもう一つここで文部大臣に、私は自分の知っておる範囲で申し上げておきたいことは、勤務評定を実施しないところの町や村の教育委員会に対して、ひんぴんとして怪電話がかかっております。たとえばどういうことかといいますと、三重県に阿保町、柘植町という町がございますが、この阿保町と柘植町が勤務評定を実施するということをなかなかやりませんので、しばしばわけのわからない怪電話がこの教育委員会の方へかかって参りまして、もしも勤務評定を実施しなければ、一切の国、県の補助金はこれを出さないぞ、こういうようなことが再三電話でかかってきて、非常に大きな圧力が阿保町なり柘植町なりの教育委員会にかけられておる。全くこれはわれわれとしても不可思議なできごとであると言わなければならぬと思うのでありますが、こういうような一連の非常に強い県の教育委員会の動きなり、それを取り巻く一つの勢力が、私は三重県でこういう事件を起したのだと考えますが、もう少しこういう点について文部大臣は、適切な指導をなさるお気持はないかどうか、この点最後にお尋ねします。
  55. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 怪電話のことは何も承知いたしておりませんが、私はこれは勤務評定を実施する側におきましても、またこれは平和のうちに、また民主的に事を運んでいくということは当然だと思うのであります。同時に、これに反対せられる側におきましても、やはり同じように平和に、かつまた民主的に行動してもらいたいと思うのであります。なごやかにかような問題が地方において進められていくということが、私の最も切望するところでございます。事実がよくわかりませんけれども、何にいたしましても、妙な不合理なやり方でもって事を進めるということは、私のとらざるところであります。どこまでも公明に平和に、民主的にという建前教育委員会にもやってもらいたいと思いますし、また教組の諸君においても同じように、さような態度でもってこの問題に処していただきたい、これを心から念願いたしておる次第であります。
  56. 小林正美

    小林(正)委員 これはさらに明日県に帰りまして、もう少し具体的にいろいろとその後の動きも調査をいたしまして、あらためて文部大臣にお伺いしたいと思います。きょうはこれで打ち切ります。     —————————————
  57. 坂田道太

    坂田委員長 次に、学術に関する件について調査を進めます。質疑を許します。松前重義君。
  58. 松前重義

    松前委員 その前に、先ほどの本島委員の御質問関連いたしまして、簡単に質問いたします。  それは教育の機会均等の実現の問題です。私は青少年の問題を考えるときには、これは社会教育の面において考えることも必要でありましょうが、また中学校、高等学校等の教育面においても考える必要がある。ただその教育の内容の問題でなくて、むしろ教育の機会をいかにして与えるかという問題であろうと思うのであります。根本的にこういう非常にまずい現象を一応是正いたしまするためには、やはりそこに目を注がなければならぬと私は思うのであります。警察だけの処置がそこに一応でき上りましても、ただそれを法律やその他によってしばったり、束縛したりするだけが政治の要諦じゃない。やはりその人たちを希望ある生活に引き入れてやるというところに、問題があると思うのであります。そういう点からいたしまして、私はどうしても教育の機会均等、いかなる手段をもって彼らに希望を与え、将来の向上への望みを与えてやるか、これが私は文部大臣の今日のこの社会情勢に対処する重大なる御責任ではないかと思うのであります。具体的に一、二この点について御答弁を願いたいし、またもしございませんでしたら、御就任早々でありまするから、御研究いただいて、そうしてこの教育の機会均等の実現の今後における具体的な施策について一つ御研究とその結論をお聞かせ願いたと思うのであります。
  59. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育の機会均等をはかっていくということは、今日の日本の教育の一つの大きな目標であろうと私は考えます。今日までもいろいろその趣旨をもって趣策を講じて参っておる次第でございますが、何さままだ十分とは言いがたいと思います。いろいろ検討を要する問題もたくさんあろうと思います。また御教示も得たいと思うのでございますが、少くとも現在声として勤労青少年を対象といたしておりますところの各種の施設、特に定時制高校の問題でございますとか、あるいは通信教育の問題でございますとか、あるいは社会教育の領分かもしれませんけれども、成年学級なり各種の施設に手はつけております、手はつけておりますけれども、決して十分でない、こういうふうな点がございますので、さしあたって私はこれらの施設の整備、充実については、私としましても十分努力しなければならぬ問題じゃないか、こういうように考えている次第でございます。なかなか思うにまかせないのが残念でございますけれども、その方向に向っては今後ますます努力して参るつもりでございます。また、いろいろ御意見がございましたら、これまた松前君の御教示を得たいと思います。
  60. 松前重義

    松前委員 これは非常に重要な問題で、御就任になりました新任の大きな課題として、ことに社会情勢が最近このような情勢にありますので、ただいまの御答弁の中にも、誠意をもって考えるというお話でございましたが、一つ十分の御検討をお願い申し上げたいと思います。いずれまた委員会等におきまして所見を申し上げたいと存じますけれども、お考え願いたいことは、最近においてアメリカやドイツなどにおいて非常に利用されておりまするコミュニケーション、すなわちFM放送による教育放送、すなわち教育的放送でなくして、学校の講義そのものを放送することによって勤労青少年教育をやる。このようないわゆる印刷による通信教育でなくて、電波による通信教育、こういう方面が展開されておるのであります。われわれもそういう点についてはとくと現在考慮しておる次第でございますので、特に一つお考え願って、勤労青少年教育に対して急速に具体策をお立ていただくことを希望いたします。  それから簡単にお尋ね申し上げたいと思いますのは、科学教育の問題であります。岸総理の施政演説の中にもありましたように、科学技術の振興をはかり、その教育体制の整備をはかるというような意味のお話がありました。まことにけっこうな話でございまして、われわれも双手をあげてこの点については賛成をいたしまするけれども、その内容がいかなる内容であるかということについて伺いたいと思います。今日は実は一応の御説明をして、それに適応する資料をいただけば幸いであります。また簡単な御答弁をいただけば幸いであると思います。  まず第一に、理科系統と文科系統との学生数の比率の問題であります。最近アメリカや英国等におきましても、このような国際情勢に対処いたしまして、平和的にもどうしてもこれは科学技術の教育を盛んにしなければならないということでございまして、ソビエトは理科系七で、文科系三でありましたか、その程度の比率に対しまして、米英がそれに追いついていない、理科系が非常に少いということで、盛んに理科系教育充実を最近はかっておることは御承知の通りであります。それにならって、文部省も多少ここに意を用いられまして、理科教育拡充ということをお考えになっておいでになるかのごとくに伺っておりますけれども、これらに対する具体的な御計画と、過去における三年間くらいと今年の予算の内容、これらの資料を一ついただきたいと存じます。同時に、新任の大臣のこれに対する御所見を簡垣にお伺いしたいと思います。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 科学技術教育の振興ということは、申すまでもなく今日の急務中の急務だというような心持ちが私はいたしておるのでございます。やきもきしておるような気持でございますが、この前に文部大臣をいたしております際に、私は中央教育審議会に科学技術教育振興に関する方策を問うたわけでございます。その後その結論が出ておりますので、文部省といたしましては、この趣旨に沿ってこれを具体化していくということをやってきておるわけでございます。また御承知のように、経済五カ年計画というふうなものも樹立せられておるわけでございますから、これらにも即応して科学技術を身につけた諸君を世の中に送り出したい、こういうふうな考えをもちまして、いろいろ予算等についてもやっておるわけでございますが、なかなか思うにまかせません。思うにまかせませんが、しかしこれはきわめて重要な問題と考えますので、来年度予算の編成等に当りましては、できるだけの努力はしてみたい、こう考えておる次第でございます。御要求の資料につきましては、あとでまた差し上げることにいたしたいと存じます。
  62. 松前重義

    松前委員 資料をいただきまして、またいろいろ所見を申し上げ、御意見も承わりたいと思います。  その次にお伺いしたいのは、国立大学の新設と申しますか、建築に必要な経費、教室やその他建物を作るに必要な経費の総額、これを過去三カ年間くらいはいただきたいと思います。  それから科学技術振興に必要なる経費というものがこの中に含まれておるかどうか、従来のいわゆる校舎建築に必要なる経費のうちに科学技術振興費というものが含まれておるかどうか、これらの資料を一ついただきたいと思います。  これは資料の要求でございますが、その次にお伺いしたいのは、私学の問題であります。この私学に対しまして、私はもう少し勉強しなければわかりませんけれども政府の態度は、どうも新しい科学的な学部を設けることに対して非常に峻厳である、このように私どもはうわさに聞いておるのであります。私は私学を経営しておりまして、科学技術の学部を持っておりますから、新しく作ろうというのではありませんけれども、ほかの学校でこれを作ろうとするときに、非常に厳格である、なかなか作れない、こういううわさを聞くのです。大体私学において科学技術的な学部を作ろうということは非常に困難であるのは、経済的な問題であることは申すまでもありません。従って従来私学において工学部や理学部を作るような大学は、大体法科経済等の多数の学生を収容して、言いかえるとこれで相当経済的に豊かになって、そこで仕入れたお金で工学部や理学部を作る順序にならなければいけないようにどうも仕向けておるような気がいたします。そうなりますと、結局私学においてはやはり文科系の方をうんと収容することによって、その犠牲において理科系を作るということになります。政府の助成金も大してございませんので、当然そうなる。そうすればここに施策をもって文科系と理科系の学生の数を、もう少し理科系の方をふやそうといたしましても、これはできない。官学の方は大して理科系と文科系は差がないのですが、私学においては非常に文科系が多い。というのは、あまりお金がかからないで月謝も取れるからです。しかしそういうことを相変らずやっておったのでは、どうも私学における理科教育の振興ということはできないのではないか。これは不可能であると思う。今まで政府の態度は、いたずらに峻厳であったといううわさを聞いておりますが、そうであったならば、これでは私学の振興はできないばかりか、私学における理科教育の振興はできないし、文科と理科との比率を今よりも変えていくということもできない。ただ口には科学振興を唱えながら現実にはできない、こうなると思うのです。これに対して新大臣はどう御抱負をお持ちであるか、今後における日本の教育体系をお考えになる上においてどのようなお考え方をお持ちになっておるか、簡単に伺いたいと思います。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 科学技術の振興につきまして、私学の方面においてもいろいろやっていただきたいということについては、これはもう申すまでもないことだと思うのであります。問題は結局国の財政ということに帰着するかと思うのでございますけれども、何さま今日直接かかえておりますところの国立大学そのものが、きわめて充実を要するような状態にあるわけでございますから、その面に主として経費が振り向けられておる。私学の方につきましても近来だんだん科学関係の助成等も増額して参りましたが、まだ思うにまかせない状況にあるわけでございますから、別に私学に対して特に峻厳な態度をもって臨んでおるというようなことは、私としては考えておりません。問題は予算その他の関係から非常な制約を受けておるというふうに考えるわけでございます。なお詳細の点につきましては政府委員も来ておりますので、その方から御説明いたしたいと思います。
  64. 稻田清助

    ○稻田説明員 ただいま大臣からお答えになりました通りでございまして、われわれといたしましても、常に私学の大学に対しましては、ぜひ理科系の充実をお願いしたいということで参っております。従いまして、この大学設置審議会における審査の場合におきましても、気持といたしましては理科系は大歓迎でございまして、特に理科系に対しまして峻厳に臨むという気持なり態度はないわけでございます。ただ理科系は自然設備施設もあるいは教援陣容も相当設置審議会の審査基準が高いものでございますから、私学において相当苦痛を感ぜられる場合が多かろうと思うのでありますが、よく私学の当時者と話し合いをいたしまして、これらの点につきまして急速に拡充をいたすようにはからいたいと思っております。
  65. 松前重義

    松前委員 新しく理科系のものを起そうとする私学があると仮定すると、相当に条件を暖和されなければなかなか設置というものはできない。ところが認可の条件なるものは、相当に峻厳であります。経済的に峻厳である。何も文部省がやかましいことを言って峻厳であるというのではない。経済的にお金がないからできないというだけであります。政府がお金がないといたしますならば、なおさらのこと、これをある程度暖和して、学校ができさえすれば今は希望者が相当にありますからこの拡充はおのずからできてくると思う。何しろ芽ばえを作らせないで、頭から完全な条件をしいるようなことでは、設置審議会その他に対する文部省の指導方針としても、私はその芽ばえさえも見ることができない、こういうことになると思うのでありますが、これを非常に憂えております。この点につきまして特に御留意願って、そうしてただ形式にはまって何億円以上の予算がなければ学部の設置は許さぬとかというようなしゃくし定木のことではなくて、大学の施設なんか新しい機械を入れなくてもよろしい、古いものが入ってもよろしい、こういうこともございますので、一つその辺は政治的な立場において新大臣において御指導になりまして、どんどんこれらの私学が勃興していくように誘導していただきたい、引き上げていただきたい、これを押えつけないでいただきたい。しかも単なる意識的な押えつけではなくて、経済的な押えつけでありますから、その条件をもう少し緩和して、一つこれを親切に誘導するようにしていただきたい、こういうように私は希望いたすのであります。これに対して文部大臣から一つ……。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 御趣旨のあるところはよくわかりました。一つ十分検討させていただきたいと思います。
  67. 松前重義

    松前委員 いずれまた詳しいことはあとでもう少し勉強してやりたいと思いますが、ただ一言今私が非常に懸念をしておりますのは、学位の問題であります。この学位というものは、何か近ごろは大学院というものがあって、そこでつまらぬ仕事をして論文を書けば博士になれるというようなことだそうでありますが、近ごろは修士というものができてきて、あまりありがたくないようでありますが、これらのアメリカのまねごと、これは憲法以上のアメリカのまねごとだと思うのでありますが、とにかくアメリカのまねごとをずっと続けておいでになるつもりかどうか、この点について伺いたいと思います。
  68. 稻田清助

    ○稻田説明員 今日の大学の制度におきましては、ただいまお話のように学位を獲得いたします条件といたしましては、大学院に在籍することを建前といたしておりますが、御承知のように日本の国情等からいたしまして、当時学界のいろいろな意見を取り入れまして、当分の間この論文博士をこれに伴わしめる制度で今日に至っております。ことに一昨年でありましたか、さらにこの論文博士審査の期限をそれぞれ延長いたしまして臨んでおるわけであります。今後大学院の充実状態なり、学位獲得者の状況なりとにらみ合せまして、この暫定措置を継続するか、あるいはさらにさかのぼって検討を加えるか、いましばらくそれらの実績を見て研究いたしたいと考えております。
  69. 松前重義

    松前委員 やはり先ほど申しましたように、勤労青少年に希望を与え、そうして向上の機会を与えるということが非常に大事なことであると同じように、大学を出た人間にもやはりそれが必要であると思います。そうしてまたその方に優秀な者がむしろ多いにもかかわらず、宿命的に大学院に行けなかったがゆえに学位もとれないというようなことでは、私は矛盾もはなはだしいと思います。非常な貴族主義であり、封建的な制度であると思います。やはり実力のある者はどんどん学位もやるという態勢を作らなくちゃいけないと思います。むしろ大学院を出ないでもどんどん学位がとれるような者を引き出すような制度を作らなくちゃならないと思う。そういう点につきまして特に新大臣のお考えを願いたいと思いますが、一言御答弁を願いたいと思います。
  70. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 まだそういう方面のことについてまことに暗いものでありますから、はっきりしたお答えもいたしにくいのでございますが、今の学制に関係する問題のような気持もいたしておりますが、ただいまお述べになりました大学卒業生に対して希望を与えろというような御趣旨はよくわかるような心持もいたしております。十分に一つ今後研究させていただきたいと思います。
  71. 坂田道太

    坂田委員長 本日の質疑はこれにて終了いたしました。この際一言ごあいさつ申し上げます。委員の皆様にはこれからますます暑さに向う折柄、特に御健康に御留意下さいまして、閉会中の委員会にも御出席下さいますようお願いいたします。委員会閉会中月一度は御都合のよい日時を選んで開会いたしたいと存じます。御多忙のときとは存じますが、その際は定足数の関係もあり、できるだけ御出席を賜わりますようお願いいたします。次会は七月三十一日、八月一日を予定しておりますが、公報並びに文書をもってお知らせいたします。  この際暫時休憩いたします。     午後一時二十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————