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1958-08-27 第29回国会 衆議院 農林水産委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月二十七日(水曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 松浦周太郎君    理事 吉川 久衛君 理事 丹羽 兵助君    理事 本名  武君 理事 石田 宥全君    理事 日野 吉夫君       秋山 利恭君    五十嵐吉藏君       大森 玉木君    金丸  信君       倉成  正君    佐藤洋之助君       田口長治郎君    高石幸三郎君       内藤  隆君    三和 精一君       八木 徹雄君    保岡 武久君       足鹿  覺君    淡谷 悠藏君       角屋堅次郎君    神田 大作君       久保田 豊君    小松  幹君       島口重次郎君    實川 清之君       高田 富之君    中澤 茂一君       中村 時雄君    西村 関一君       西村 力弥君    芳賀  貢君       松浦 定義君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政局         理財課長)   山野 幸吉君         防衛政務次官  辻  寛一君         防衛庁参事官         (長官官房長) 門叶 宗雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  加藤 陽三君         大蔵事務官         (主計官)   高木 文雄君         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (大臣官房長) 齋藤  誠君         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    小林 誠一君         農林事務官         (農林経済局金         融課長)    大田 康二君         農 林 技 官         (農林経済局統         計調査部作物統         計課長)    安孫子孝一君         農林事務官         (農地局参事         官)      正井 保之君         農林事務官         (農地局管理部         入植営農課長) 安藤文一郎君         農 林 技 官         (農地局建設部         長)      清野  保君         農 林 技 官         (農地局建設部         災害復旧議長) 櫻井 史郎君         農 林 技 官         (振興局農産課         長)      江川  了君         農林事務官         (蚕糸局長)  大澤  融君         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      保坂 信男君         農林事務官         (蚕糸局繭糸課         長)      森   博君         農林事務官         (食糧庁業務第         一部長)    諌山 忠幸君         農林事務官         (林野庁指導部         治山課長)   若江 則忠君         建 設 技 官         (河川局治水課         長)      川村 滿雄君         参  考  人         (全国養蚕販売         農業協同組合連         合会会長)   田原  徳君         参  考  人         (全国養蚕販売         農業協同組合連         合会参事)   梶原 東一君         参  考  人         (長野県養蚕販         売農業協同組合         連合会会長)  中村兼治郎君         参  考  人         (群馬県磯部町         農業協同組合組         合長)     萩原 運平君         参  考  人         (養蚕農民)  金井 武三君         参  考  人         (全国桑苗協会         会長)     稻葉 芳藏君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 八月二十七日  委員篠田弘作君、田中正巳君、松田鐵藏君、毛  利松平君、吉田重延君、赤路友藏君、神田大作  君、栗林三郎君、實川清之君及び松浦定義君辞  任につき、その補欠として赤澤正道君、五十嵐  吉藏君、加藤常太郎君、八木徹雄君、今井耕君、  島口重次郎君、西村力弥君、小松幹君、淡谷悠  藏君及び高田富之君が議長の指名で委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業災害に関する件  蚕糸に関する件      ————◇—————
  2. 松浦周太郎

    松浦委員長 これより会議を開きます。  農業災害に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。倉成正君。
  3. 倉成正

    倉成委員 今次の北九州の旱害につきまして御質問申し上げたいと思います。  今度の旱害につきましては、御承知通り、私どもがこの委員会でもいろいろ討議をし、また議論をしたわけでございますが、現地へ行ってみますと、この被害が非常に深刻でございました。思った以上にこの被害が深刻なために、現地農民がどうやってこの対策考えていいかわからないというのが実情でございます。     〔委員長退席吉川(久)委員長代理着席〕 特に畑作、カンショあるいは大分県の七島藺あるいは果樹、こういうものについていろいろ大きな問題があったようでございます。また、一般に、雨が降ると日旱害が解消する、こういった誤まった考え方がややもすれば行われる点をわれわれは反省しなければならないと思うのであります。  そういった点で、まず政府にお尋ね申し上げたいのは、この旱害応急実施対策要綱締め切りを八月十日までというふうに先般の委員会大臣は言明されたようでございますが、実情を見ますと、具体的に申しますと、たとえば佐賀で深い井戸を掘っております。この井戸が八月十日までに完成したのは五十一本のうち十八本くらいで、あとはまだ完成していない。しかし一生懸命になって農民方々井戸を掘っている。こういった井戸助成は、八月十日以降に完成した井戸についても助成をされる御意思があるかどうか、当然助成をされるべきであると本員は考えるわけでございますが、政府の明確な御意思を伺いたいと思うのであります。同時に、八月十日以降にポンプを使って揚水をして灌漑をやるこの旱害対策は、単に植付だけが問題ではなくて、その後の管理が非常に大事でございます。従って、八月十日以降にも灌漑をして、この枯死を防ぐということに対して当然助成措置を講ぜられるべきであると考えるわけでございますが、この点についての明確な御答弁をお伺いしたいと思います。
  4. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの倉成委員の今回の旱害に対する対策に関しての御質疑でございますが、倉成委員お話通りに、今回の旱害は異常な旱害でありまして、私もとりあえず七月の半ば及び八月の半ばに熊本、佐賀福岡方面旱害地を視察いたしたのであります。予想以上のひどい実情と、この異常な旱害に処しましての農民方々の涙ぐましい努力とたくましい農魂に対しましては、おのずから私は頭の下るものがあったのであります。そこで、政府といたしましては、七月四日の閣議決定要綱に基きましてすでに旱害対策を実施いたしておりますることも御承知通りであります。しかるに、ただいまの旱害に対する措置締め切りの時期でありますが、これは最初一応七月十五日までといたしましたが、現地の陳情を聞き、現地を見、実情考えまして、八月十日まで延ばしたのであります。しかるに、ただいまの倉成委員の御質疑は、八月十日以後の問題についてどうするかという点でございますが、一応私どもは八月十日までと締め切ったのでありますが、ただし、八月十日までに施設が完成いたしませんでも、それまでに着手いたしておるものはこの要綱の範囲に入れる考えであります。なお、八月十日以降の状況はそれまでとはおのずから旱害の様相も違って参ります。対策もおのずから異なるものがあろうと思いますので、八月十日以後につきましては別途に適当な考慮を払わなければならぬと思っております。
  5. 倉成正

    倉成委員 ただいまの八月十日以降に完成してもけっこうだという点では、非常にあたたかい配慮で、ありがたいと思うのでございますが、具体的に八月十日以降の油代の問題、これを一つはっきりさせていただきたいと思います。
  6. 齋藤誠

    齋藤説明員 ただいまの油代についての御質問でございますが、ただいま政務次官から御答弁がございましたように、一応植付期までの万全の措置を講じたい、こういう考え方で、八月十日という期限を置きまして、今回の措置を講じたわけでございます。従って、工事中のものにつきましては、今政務次官から答弁がありました通り、十日以後に完成するものにつきましてももちろん助成の対象にするというふうに考えておりますけれども、今お話しになりました、今後それらが植付期を過ぎまして果してどの程度に運営されるものであるかどうかということになりますと、八月十日ということで、大体の植付期に備える期限としては一応適期である、こういうことで考えておりますので、その後の事態におきましてどのような運営が果してできるのであるかどうか、それはよほど事情によって違ってくるのではなかろうか、そういう点も含めまして、先ほど政務次官から、措置を検討していきたい、こういうことを申し上げたのでございますので、それをおわせて考えて参りたいと思います。
  7. 倉成正

    倉成委員 ただいまの官房長の御答弁にはまことに不満でございます。また全く実情を御承知ない御答弁と思うのでございます。と申しますのは、現在はすでに八月も余すところ数日でございますし、稲は植付さえすればいいというのではなくて、それからいかにこれを管理していくかということは、農民にとって生活の問題である。自分の子供を育てていくような痛切な問題であります。それについて、せっかく助成法があって、それをどのように運用していくかということを、今後実情を調べてとか、なまぬるい対策では、真剣になって政府旱害対策をやっておられるというふうには考えられないわけです。この点について政務次官から明確に御答弁をいただきたいと思います。
  8. 石坂繁

    石坂説明員 重ねての八月十日以後の問題についての御質問でございますが、これにつきましては、私及び官房長からただいま答弁いたしましたような考えをもってやっておるわけでございます。八月十日以前と八月十日以後は、おのずから事情は異なって参る。ただし私の承知しておるところによりましても、今日なお旱害の状態が続いておるということも承知いたしております。従いまして、事情は違いますけれども、その違った事情におきましても何らかの対策を講ずる必要があることは、私もこれは認めておるのでありますから、別途に適当なる考慮を払おう、こういうことでございます。
  9. 倉成正

    倉成委員 別途に適当なというのは、はっきり油代を払うか。これは入るのでありますか入らないのでありましようか。いろいろ誠意をもって政務次官の言われておることはよくわかるのでございますが、今日農民にとって一番大切なこと、明確にされて、安心をして仕事をするということが大切でございます。そういった意味において、あまり不明確な含みのある御答弁では、なかなか農民政府の施策を安心して聞くことができないというわけでございます。もしできますならば、一つこの席ではっきりさせていただきたいと思います。
  10. 石坂繁

    石坂説明員 別に含みを持たせるつもりでお答えをいたしたわけではないのでありますが、私の言葉が足りませんために再三の御質問でございます。しかし、これも、油を含めまして別に適当な考慮をいたそう、こういうことでございます。と申しますのは、ずっと期限を延ばして参りますと、補助金の交付の時期も自然おくれることになり、そうなりますれば、農民方々地方方々もかえって迷惑の点もありますので、一応八月十日という時期にいたしました。これとあわせまして、おのずから状況の相違もございますので、重ねて申しますけれども、八月十日以後の面につきまして、油を含めましての適当な別途の考慮を払おう、こういうことでございます。
  11. 倉成正

    倉成委員 ただいまの政務次官の御答弁では必ずしも明確ではございませんが、一応政務次官誠意を信頼いたしまして、いろいろ申し上げることもございますから、続いて御質問を申し上げたいと思います。  まず、被害農業者に対してのいわゆる天災融資適用の御意思があるかどうか。また、その被害激甚地域に対して政令による地域指定を行なって二分五厘の資金を融通する、こういう点についての御意思を明らかにしていただきたいと思うのでございます。
  12. 石坂繁

    石坂説明員 被災地に対する天災法適用の問題でありますが、この点は、天災法適用いたしたい、かように考えておるのであります。統計調査部被害調査の結果が近日中に出て参ります。そこで、その結果によりまして、天災法適用をいたしまして、経営資金融資措置を講ずるように、ただいま検討いたしております。なお、この際つけ加えて申しますが、この場合、植付不能の農家につきましても、天災法上の被害農業者として取り扱う方針でございます。さらにまた、被災開拓農家に対しましては、その被害程度いかんによりまして、天災融資法の基準に合致しない場合につきましては、開拓融資保証制度を活用いたしまして保証協会保証によって営農資金の貸し出しが円滑に行われるように指導いたして参りたい、かような考えであります。
  13. 倉成正

    倉成委員 天災法適用、また開拓者に対する処置については、ただいまの御答弁で了承するわけでございますが、次にお尋ね申し上げたいのは畑作の問題でございます。九州地方農業特殊性から見まして、畑作が非常に多いわけでございますが、この畑作に対する応急措置というものはなかなか十分な処置が見られないわけでございます。たとえば、陸稲に対する灌漑、その他水田作に匹敵するような畑作についてのいろいろな施設については、やはり水田と同様の措置を講ぜられるというふうに聞いておりますけれども、この点を明確にしていただきたいと思います。
  14. 石坂繁

    石坂説明員 御承知通りに、当初決定いたしました旱害措置要綱は、明らかに水田に関して書いてあります。しかしながら、ただいまの倉成委員お話し通りに、畑作地帯旱害は、場所によりましては非常にひどい。全く処置なしの状況でございますから、当然畑作地帯にもこれを適用すべきものである、こういうふうに考えております。御説の通りであります。
  15. 倉成正

    倉成委員 次に、少しこまかい問題に入って参りますが、植付不能田に対する対策、いわゆる植付をしようとしてもすることができなかった田に対して、現在の処置では大体共済金の五割を払うということになっておるようでございます。一般的に申しますと、確かに、植付をして枯死した田と、植付をしなかった田とは、区別をするということは当然のことでございます。しかし、今度の旱害現地をつぶさに見て参りました実情から見ますと、たとえば、にわか雨が降りまして、そこに植付をやって、すぐ枯死して、一方の田は、この程度の雨ではなかなか心配だからというので、しばらく様子を見ておって、植付をしなかった。そこで、共済金植付をして枯死した人の半額しか取れないということになると、非常にここに不公平を生じてくるわけであります。従って、その点をどのように取り扱おうとされておるか。植付をしようとして毎日田植えの時期を待っておったそういう方々に対する救済措置をどのようにお考えになるか、お伺いいたしたいと思います。
  16. 石坂繁

    石坂説明員 植付不能の現地に対する救済の方法でありますが、なるほど、植付の準備を整え、あるいは肥料を投下した、こういう実情にあって、田植えを待っておったが、結局植付ができなかった、そういう気の毒な事情のあることを承知いたしておりますが、植付不能の場合と、植え付けましたあとなお苦労いたしましたが、結局収穫皆無になったという場合とは、やはり事情がおのずから異なることがあると私は考えます。従いまして、農林省考えといたしましては、植付不能に対するところの共済金の払い渡し等は五割ということにきめております。
  17. 倉成正

    倉成委員 ただいま石坂政務次官お話の、植付をして、苦労をして追肥をやりあるいは追加労働を投下した、こういったものと、植付不能と、区別するのは当然だ、これは一般論でございます。しかし、今度の旱害は、石坂政務次官現地ごらんになりましたように、農民の心理としては、一本の苗でも植えたいというので、非常な努力をして、穴を掘ってそこにひしゃくで水をくんで植えておる。一方のところでは、そういう植え方をしては枯死するかもしれないからというので、植付を差し控えておる。ところが、不幸にして植えた方が枯死してしまった。一方の植えなかった方は枯死しなかった。その区別、判断です。これはおのおの農民の知識の程度その他にもよりましょうが、植えた人を非難するには当らない。さればといって、これを差し控えておって、たまたま植え付ける時期を失したのを、そのまま捨ておくということも、非常に気の毒じゃないか、不均衡になるのじゃないか。この点をお伺いしているのでありまして、一般論についての議論をしているわけではないのでございます。現地についての実情をつぶさに御承知政務次官から、もっとあたたかい、もっと適切な御答弁をいただきたいというふうに考えるのでございます。
  18. 石坂繁

    石坂説明員 植付をいたしますために実に苦労をしておられる実情を私も承知いたしております。従いまして、倉成委員からただいまのようなことを指摘されますと、私も内心はなはだつらいのでありますけれども、やはり、植付不能の場合と収穫皆無の場合は、重ねて申しまするけれども、おのずから事情は違う。しかも従来の取扱いの例もございますので、農林省といたしましては、先ほど申し上げましたように、五割ということにいたしておるわけであります。
  19. 倉成正

    倉成委員 どうも、ただいまの政務次官の御答弁は非常に事務的なお答えのような感じがするのでございます。実情ほんとうによく御承知であるならば、もっと極端な表現をいたしますならば、あの際に、もし共済金をもらおうという考えであれば、多少危険を冒してでも植える。しかし、良心的に、きょう雨が降るか、あす雨が降るかということで、何回も何回も苗代を作り、地ごしらえをして待っておった。これは現実に植えた農民よりもむしろほんとうに良心的に行動した農民でなければならないと思うのであります。こういう農民を、ただ形式的に、従来こうであったからこれは半分だというふうに言われるのは、非常に事務的な御答弁じゃないか。現地をよく御承知の、また、あたたかい御配慮をいただいた政務次官の御答弁としては、まことに不本意でございますので、これについては、共済法の大きな盲点であると同時に、法律改正ということが不可能であるならば、何らかの措置をしてこの救済をお考えになる余地があるかどうか、この点についてお尋ねをしたいのでございます。
  20. 石坂繁

    石坂説明員 単に植付不能と収穫皆無との対比ばかりでなしに、この法律自体に改正すべき点がありまするならば、これを改正することには決してやぶさかではございません。今後の法律問題といたしましては検討いたしたいと思います。
  21. 倉成正

    倉成委員 ちょっとくどいようでございますが、ただいま私が設例を申し上げた点は、現実の実感として申し上げておるのであります。政務次官も、穴を掘ってひしゃくで水をくんでおられる状況ごらんになったと思うのであります。ところが、一方、のそのすぐ隣のたんぼでは、植付をしないでおって、共済金が半分しかもらえない。ですから、共済金をもらうためなら、危険を冒してでも植えた方がいいと指導されてもやむを得ないということになってくるわけです。ですから、農民が正直にやろうとしておって、これが損害を受けるというようなのは、政治のあり方としてはまことにおもしろくないわけです。この点について、やはり、現実をよく御認識であるならば、何らかの救済措置一つ講じていただきたいことをお願いする次第でございます。  次に、いろいろ問題がございますので、進みまして、あとでさらに総括して御質問申し上げたいと思いますが、共同施行者が購入した揚水ポンプの問題でございますが、これについては、府県やあるいは市町村の購入したものに比較しまして非常に補助率が低いわけであります。ところが、この補助率が低いということと関連して、前回の委員会安田農地局長から、ポンプ種類を問わず買い上げる、このような御答弁がございましたので、現地農民は非常に安心をしたわけでございます。この点は万々間違いないと信ずるものでございますが、もう一度政務次官にはっきりいたしていただきたいと思うのでございます。
  22. 石坂繁

    石坂説明員 一応官房長から……。
  23. 齋藤誠

    齋藤説明員 今御質問になりました点につきましては、先般農地局長から答弁した通りでございます。ただ、われわれといたしましては、その際局長から付言して申し上げたと思いますが、たとえば口径の問題であるとか、あるいは使用した結果によって著しく損傷を来たしたといったような例外的なものについての取扱いについては、また別に検討いたしたいと思います。先般農地局長から答弁した通りであります。
  24. 倉成正

    倉成委員 それでは、ただいまの官房長の御答弁で、先ほど農地局長お話しになりましたように、ポンプ種類を問わず買い上げる、しかし、特別な破損をしたとか、そういうのだけを例外的に買い上げない、このように御理解してよろしゅうございますか。
  25. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの倉成委員の御理解の通りでございます。
  26. 倉成正

    倉成委員 ありがとうございました。この点は現地で非常に混乱を来たしておりまして、ただいま政務次官官房長の御答弁と違った指導現地でなされておるのでございます。その点について、現地のやり方が間違いであって、本委員会政務次官並びに官房長が私に御答弁になりましたものが正しいと思いますので、この点は念のためにはっきりさしておきたいと思います。  次の問題でございますが、現地のいろいろな旱害対策につきましては、農民最大工夫をして植えつけをし、またその後の管理について非常な努力と無理をいたしておるのでございます。従って、これを単に経済的なそろばんだけで考えていくということについては、いろいろ問題があろうかと思うのでありますが、その点について、まず第一に、福岡県等で二キロ以上に及ぶヒューム管を使用して灌漑をいたしておるのであります。現地実情から見ますと、このヒューム管の使用というのはやむを得ないものと思うのでございますが、これについて、応急対策として、あるいは恒久対策に引き継いでいく、このような御意思があるかどうか、この点について明確な御答弁をお願いしたいと思います。
  27. 石坂繁

    石坂説明員 説明員から答えさせてもらいます。
  28. 正井保之

    正井説明員 ただいまのヒューム管の問題でございますが、これにつきましては応急対策として措置して参りたい。なお、応急対策として扱いがたいものについては恒久対策として取り上げて参りたいということで、ただいまこれに引き続きまして検討いたしておりますので、その検討の結果を待って処置して参りたいと思います。
  29. 倉成正

    倉成委員 こういった恒久的施設に類するものについても恒久対策として引き継ぐようにしたいという御説明のようでございますが、この点については、特に現地最大工夫をして処置いたしておりますので、十分慎重なお取扱いをお願いしたいと思うのでございます。  次にお尋ね申し上げたい点は、今度の災害について政府がいろいろ施策を講ぜられておるのでございますが、必ずしもこの施策で十分でない。その点についてしわ寄せが参りますのが地方公共団体と農業協同組合でございます。この地方公共団体の問題は自治庁の所管の問題でございますからおくといたしまして、農協等が貯金の引き出し等で非常に財政困難になってくるという実情がだんだん現われてきておるようでございます。この点について特別の御配慮をお願いしたいと思うのでありますが、どのような具体策をお持ちでございますか、お尋ねをいたしたいと思います。
  30. 齋藤誠

    齋藤説明員 倉成委員の御質問の要点が明確につかめなかったのでございます。たとえば、今次の災害に伴って農協等の貯蓄資金、天災資金の融通、あるいはその他の資金で農協から貸し出しが行われて、その結果に基いて非常に農協の資金が枯渇をするという意味であるのか、あるいは、経営上それによって支障を来たすという意味であるのか、よくわかりませんでしたが、もし後者でありますならば、それぞれの資金につきまして、天災法であれば、もちろん利子補給なり、あるいは損失補償なり、それぞれの資金につきましても、系統金融のコストのもとにおいて金融を受けることになろうと思います。後者の点については、その面から農協が非常に経営上困るという点は、必ずしもそうとばかりは言えないと思います。もし前者の方でありますならば、これに伴っての資金が、かりにその単協なり災害地域における農協の資金繰りにおいて支障を来たすというふうなことがありますならば、これは系統金融全体としての資金繰りを考えて参ることは当然であろうと考えております。
  31. 倉成正

    倉成委員 私の質疑についての御認識が十分でなかったと思いますが、今次の九州、山口の災害被害総額は、いろいろ計算のしょうがあろうかと思いますが、各県で集計したところによりますと、百八十二億でございます。従って、天災資金あるいは自作農資金で幾らカバーしましても、百八十二億の被害をカバーすることは、従来の実情から見て非常にむずかしいことじゃないかと思うのであります。このしわが当然農協にやってくる。そうすると、尋常の手段では——間接的に天災資金、自作農資金を流すことによって農協等がカバ一されるというのは原則論であって、実際の農協等に個々に当ってみますと、非常に困難しておるのであります。それで、単なる今までのやり方ではいかないのじゃないか、何とかこれに特別な配慮が必要じゃないか、こういった意味であります。この点について御答弁いただきたい。
  32. 齋藤誠

    齋藤説明員 御指摘されました点につきましては、十分理解のいく問題でございますけれども、これは災害に伴う農協あるいは経済団体に対してどういうふうな影響を一般的に与えるかというふうな問題とも関連し、今後における一般的な農政の問題としてつながる問題だと考えるのであります。さしあたりの対策といたしまして、かりにそれらの農協についての運転資金に事欠くとか、あるいは災害によって直接的な影響を受けるとかいうようなことに対する措置につきましては、たとえば天災法におきましてもそのような資金を対象といたしておるわけであります。しかし、今御指摘になりました一般的な今後の災害に伴う農協その他に対する影響をどう考えるべきかということになりますれば、これは農政全般の問題としていろいろの点から考えて参るということにならざるを得ないのではなかろうかと思うのであります。
  33. 倉成正

    倉成委員 ただいまの御答弁では非常に明確でございませんので、一般的に考えなければならないというのはお説の通りでございますが、現実にその問題はもう起っておるわけです。ですから、それをどうするかというのがこの委員会で明らかにしなければならない点でございます。今すぐ御答弁を求めることは無理かと思いますので、十分御研究いただきまして、農協等にあたたかい御配慮をいただきたいと思うのでございます。  次にお尋ね申し上げたいのは、何と申しましても、畑作等について考えて参りますと、特別な方法がもうないわけでございます。どうしても二毛作農家あるいは大分の七島藺農家、果樹農家、こういう方々に対して、また水田作農家に対して、生活が十分できるように、今後の再生産ができるような資金の手当が必要じゃないかと思います。その点について、天災法適用はもちろんでありますが、まず農民が要求いたしますのは、長期低利の資金、現在の制度で申しますと、自作農維持資金でございます。それから、これと関連しまして、農家の現金収入の道となる救農土木事業でございます。従って、自作農維持資金につきましては、現在九州各県で集計した要求額が約二十二億というふうに承わっておるわけでございます。自作農維持資金についてどのくらいのワクを今度の旱害についてお考えになっておるかという問題が一点。  それから、第二点は、救農土木事業について、先回の委員会で、私の質問に対しまして、農林大臣から、建設省あるいは農林省は現在の予算を総合的に考えていくべきだ、——まことにごもっともな御答弁でございましたが、具体的にどのような処置を講ぜられておるか伺いたいと思うのであります。と申しますのは、私ども現地に参りまして、具体的に旱害地で一体土木事業としてあるいは農林事業としてどういう事業があるかということを一々聞いて参るのです。しかし、現実にそういった事業によって今度の旱害農民を救うことは非常にむずかしい、不可能に近いということをつぶさに調査いたしたのでございます。従って、そういうことについて前回の大臣の御説明が必ずしも実情に適しないということが明らかになったわけでございますが、その点についてどのような認識を持っておられるか、お伺いいたしたいのでございます。
  34. 石坂繁

    石坂説明員 ただいま倉成委員の御質疑の第一点、すなわち自作農維持創設資金の問題でありますが、今回の災害によりまして資金を必要といたします農家で、その自作しておる土地を売らなければ資金が手に入らない、土地を売却する等の、農業経営に著しい支障を来たす方法によらなければ資金ができないという農家に対しましては、これは自作農資金の貸付を行うことにいたしております。しかるに、本年度の同資金につきましては、さきに霜雪害がありまして、これを加味いたしまして各都道府県に現在すでに配分しておる額が五十二億に達しておるのであります。これだけの額では不足を来たすこともあろうと考えられるのであります。従いまして、被害程度、金額の判明次第必要に応じまして追加割り当てたいと考えております。
  35. 倉成正

    倉成委員 自作農維持資金について、被害をよく調査して、それによって割り当てたいということで、まことにごもっともな御答弁でございますが、七十五億の中に五十二億すでに配分がされておる。しかもこれは麦作の被害あるいは今度の旱害については考慮されない配分であったと聞いておるのであります。それから、なお、五十二億のほかに開拓その他の資金が配分されておるやに聞いておりますので、実際残っているのは十数億というのが実情ではないかと思うのであります。そうすると、今度の災害は、県の集計によりますと百八十二億という巨額に達するわけでございますが、この旱害のみならず、各県の水害その他起っておるわけでございます。現在の自作農維持資金のワクではとうてい足らないということが考えられるわけでございますが、その点について、一体どのようにしてこの自作農維持資金の追加をどの程度そのワク内でなさろうとするのか、さらに予備費でこれを追加する、あるいは補正予算等でこの資金を増加する、こういうお考えであるか、この点を明確にしていただきたいと思うのであります。
  36. 石坂繁

    石坂説明員 自作農維持資金のワクをどれだけ広げるかという質問でありますが、この点につきましては、先ほども申し上げましたように、被害程度、金額等を明確にいたしましてその点を考えたいと思っておりますが、なおこの点につきましては官房長から補充をしていただきます。  なお、先ほど倉成委員の第二点の御質問に対して答弁を抜かしておりまして恐縮でございますが、これはもっとものことであります。この被害農家の現金収入のない方々に対しまして、すみやかに救農事業的な就労対策を講ぜねばならないのでありまして、この点につきましては、倉成委員が引用されました農林大臣のさきの答弁の趣旨に沿って進んでおります。現に、とりあえずの処置といたしまして、国有林事業におきましてすでに八千五百万円の繰り上げをいたしまして実施中であります。また、その他の農地関係、林野関係におきましては、継続事業等の繰り上げ施行、または保留額の早期解除等によりまして救農割当事業を行うことといたしまして、目下関係庁の計画ともにらみ合せまして検討をいたしております。
  37. 倉成正

    倉成委員 自作農維持資金については、こまかい計算については、政務次官お話通り、いろいろ御検討の余地があろうかと思いますが、被害総額が百八十億以上に及んでおる、このうちからしぼって、どうしてほしいのが二十二億に及んでおる。これは九州だけでございます。こういう状況でありますから、現在のワクで足らないということはもうはっきりしておるわけです。従って、十分御検討になるのはけっこうでございますけれども、これを実情に即するように、現地農民はもう九月になりますと生活資金の問題でさっそく困ってくるわけであります。検討しているうちに時期を失してしまって、かりに希望通りの額が割り当てられるとしても、非常におくれた形で自作農資金農民の手に渡る。手続が非常にめんどうなことは政務次官承知通りでございます。従って、この点について、現在のワクが足らないという御認識と、それから、早急に資金の割当を各県にしていただく、この二点を御要望申し上げたいと思うのでございます。  救農土木事業につきましては、いろいろ現在の予算を活用して国有林等について努力をしておられるという点は非常にけっこうなことと思うのでございますが、先ほども申し上げましたように、これで足りるという実情ではない。特に、現地をつぶさに回りまして、政務次官その他政府方々もお回りになっておわかりになりますように、災害地の農民がそう十里も二十里も離れたところに行って仕事をするというわけにはいかない。どうしてもこの旱害に対して現地農民が生活の資を得ることができるような事業を興す、それには特別の起債を考える、現地農民は労力を提供すればいいという、実情に即した救農土木事業が必要ではないかというふうに考えるのでございます。この点についてのもう少し具体的な構想、すでに九月の雨季を数日で迎えようとしておる今日でございますから、現地農民安心をして生活ができるように、そういった具体策を一つお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  38. 齋藤誠

    齋藤説明員 ただいま御質問のありました旱害地における救農土木事業の実施の必要性につきましては、われわれ、現地におけるいろいろの視察の結果なり、あるいはその後の現地における報告等によりまして、その実情につきましては十分考えておるところでございます。ただ、これを進めます場合におきまして、まず第一には、先般本委員会におきましても農林大臣から御答弁申しましたように、既定経費の中で災害地等におきまして充当できるものがあります場合におきましては、まずもってこれを重点的に処置して参りたい。現にそういう方向で事務当局といたしましては検討いたしておるところでございます。また、一部は、先ほど政務次官から申しましたように、できるものにつきましてはすでに実施をいたしておるところでございます。今後の措置といたしましては、どのような規模、どのような実態にあるか、その程度につきまして今検討を進めて参りたいということでせっかく準備をいたしておるわけであります。ただ、救農土木事業ということになりますと、その規模いかんによりましては、あるいは、支出関係につきまして、既定の経費でどの程度できるのか、さらに予備費の支出になるのであるかどうか、これらの点も検討いたさなければならぬと考えております。いずれにいたしましても、それらの点につきまして、現在われわれといたしましてもそういう方向で検討いたしておる次第であります。
  39. 倉成正

    倉成委員 救農土木事業についてのいろいろ具体策を御検討いただいておるということでございますので、私もこれ以上この救農土木事業については追及いたしませんけれども、ただ、一言申し上げておきたいのは、現在の予算を運用して今次の災害農家を救っていく、まことにけっこうでございます。しかし、現実の問題として、農民の立場に立って考えますと、これはなかなかむずかしいことである。やはり特別の措置を講じていかなければむずかしいということを、現地災害地をつぶさに回った結論として申し上げておるわけです。これは、現地ごらんになり、現地農民の声を聞き、その付近の土木事業、農林事業の実態を御調査になった方々であれば、少くとも私と同意見と思うのでございます。従って、そういうことを背景にして申し上げておりますので、十分現地実情を御承知になりまして、机の上で予算が幾らあるからこれで何人救えるというようなことでなくして、ほんとうに具体的な実情に即するような施策を講じていただきたいということを御要望申し上げる次第でございます。  それから、資金の点で、現在まで借りております天災資金、あるいは農林漁業金融公庫、あるいは開拓者営農資金等の貸付金に対して、被害地域実情に応じて償還期の延期を申し出た場合に、政府はどのような抜本措置を講ずる意思があるかという点につきましてお伺いをいたしたいと思います。
  40. 齋藤誠

    齋藤説明員 本件につきましては天災法の運用によりまして、従来営農資金を借りております者が連年災害を受けておるといったような場合における取扱いでございます。この点につきまして、法律上は償還延期の道を開いておりますけれども種々の運用、取扱いの便宜の点を考えまして、かような場合におきましては、大体従来は借りかえの方法によって同じ目的を達するということにいたしております。従って、御質問のような場合におきましても、天災法適用がありました場合には、連年被害を受けた被害農家でありますれば、当然同様な措置を講ずることにいたしたいと考えております。
  41. 倉成正

    倉成委員 借りかえでなくて、償還延期についてはお考えになっていらっしゃいますか。
  42. 齋藤誠

    齋藤説明員 ちょっと事務的なことを申し上げて恐縮なのでございますが、償還延期の方法を考えることについては、その趣旨自身については問題ない。ただ、御承知のように、天災融資法におきましては利子補給をいたします。ところが、利子補給をいたす前提になりますところの金利がそれぞれ変ってくるわけであります。そのときによりましてまた変ってくるわけであります。そこで、あるものについてはその前提になるべきものが幾ら、それから償還延期になるものについては幾らというような、非常なめんどうを生じますので、むしろ、現在この金融を扱っておる金融機関としましても、償還延期の方法よりも、むしろ借りかえでいくという方法の方が便宜であるというような実務的な理由に基きまして、借りかえの方法をとっておる次第でございます。
  43. 倉成正

    倉成委員 実情に適するように一つ配慮をいただきたいと思います。  なお、先ほど市町村財政のことについて申し上げましたが、自治庁から理財課長がお見えのようですから、こういった旱害に対する不時の支出をした場合に、特別交付税その他でどのような処置を講ぜられるお考えであるか、御説明いただきたい。
  44. 山野幸吉

    ○山野説明員 お答えします。  災害がございまして、当該地方公共団体が不時の歳出があり、それからまた、歳入の面で思わない免税措置その他で減収が生じたというような場合には、これは申し上げるまでもなく実収入と支出と勘案いたしまして特別交付税等で措置されることになっております。それからまた、災害債に関する面につきましては、現年債、公共債、単独債等につきまして、それぞれ起債の面で措置することになっております。
  45. 倉成正

    倉成委員 ただいまお答えがございましたが、地方公共団体が旱害で身近かな団体として支出をしなければならない、どうしても現地農民実情を見るに見かねて措置をした、これについて一つあたたかい配慮でめんどうを見ていただきたいと思うのであります。  だんだん時間が過ぎましたので、あと一、二点簡単に申し上げますが、今度の田植えを実施したところで病虫害防除を実施した地域が相当あるわけであります。今後も病虫害を予想して防除しなければならないということがありますが、農薬について補助の意思があるかどうか、これについてお伺いいたしたいと思います。
  46. 齋藤誠

    齋藤説明員 農薬に対する補助につきましては、ただいま大蔵省と折衝をいたしております。
  47. 倉成正

    倉成委員 アカダニの防除について林野庁長官から承わりましたところでは、現行の予算でやるというように聞いておりますが、現行の予算では非常に少額でありますし、これでは足らないような気がするわけであります。また、法定病害虫として指定されるというふうに聞いておりますが、この点について明らかにしていただきたいと思います。
  48. 石坂繁

    石坂説明員 今回の旱害によりまして、杉、檜等の造林地にお話のアカダニが発生いたしまして、かなりの被害があることを承知いたしております。その他、スギハムシ等も発生いたして、これまた被害が相当のものがあります。そこで、これに対しましては、現在の予算のうちで、突発害虫駆除費というものが御承知通りございます。これと、それからマツクイムシの駆除費の流用措置によりまして補助をいたしたい、こういうふうに考えております。  なお、アカダニの問題でありますが、これは、法律を改正いたしまして、法定害虫に加える方針でおります。
  49. 倉成正

    倉成委員 いろいろ御質問申し上げましたが、全般を通じて、今次の旱害に対しまして、先般の麦作の対策と関連して農林当局は非常に迅速にいろいろ手配をされましたし、麦の被害の概算払い等も、現地実情を聞きますと、非常に迅速であったということを聞いておるわけでございます。また、食糧庁で旱害地に対する米の集荷の期間を十日間延長していただくというふうに、非常に適切な対策を講じられたことについて、深い敬意を表する次第でございます。また、現地で自衛隊がこの旱害対策についていろいろな御援助をいただいたことについても、深い敬意を表するものでございますが、今度の旱害実情が、東京で考えておりますより、現地へ参りますと非常に深刻なものがある。そして、雨が降ったりなんかすると、旱害が解消したというような錯覚に襲われてくる。それでいろいろ旱害対策がぼけておる。この点を一つ十分お考えいただいて、今後の施策を進めていただきたいと思うのでございます。  それと同時に、もう一点、今度の旱害で、現地へ参りまして見ますると、水稲の早期栽培、あるいはイモの早植え、いわゆる麦間挿苗、こういうのが非常な好成績をおさめておるのでございます。従って、九州地方農業は絶えず災害を受け、また旱害を受けておるのでございますから、こういう技術対策について十分な御研究をいただきますことをお願いして、私の質疑を終りたいと思います。
  50. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 倉成君の政務次官に対する質疑のうちで、共済の問題について明確を欠いていると私も思うので、委員長から農林省に、特にこの問題については十分検討の余地があると思いますから、特に関心を持っていただくことを要請しておきます。  石田宥全君。
  51. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農業災害については、ある程度質疑応答の中で明らかになっておりまするし、また時間の関係もありますので、私はきわめて要点だけを質問いたしたいと思うのであります。  ただいま答弁のありました天災融資の問題でありますが、これは一括して質問をいたしますから、それにお答えを願いたいのであります。各県に対して一応のワクの金額を定めておろされるようでありますが、このワクは、災害状況、すなわち災害程度、金額等を基準にしてやられるのか、あるいは、市町村からの要請、要望の金額を積み上げた金額を基礎にしてやられるのか、この点が一つ。  それから、融資をされるに当っては、とかく償還第一主義で末端においては融資をされるのでありまして、実は、どうしても天災融資法の融資を受けなければ営農がきわめて困難であるというようなところにはどうも手が届きにくい、こういう実情があるのであります。天災融資法による融資こそはほかに融資の道がないという貧農や小農等にこれを及ぼすということが第一義的ではないかと思うのでありますが、現在の実情は必ずしもそうではないのでありまして、これに対する御答弁を願いたい。  第三点といたしましては、天災融資法によりますれば、法律の明文で十五万円以内においてと決定をされておるのでありまするけれども、従来の例では、五万円ないし七万円、最高が七万円と私は記憶をいたしておるのでありますが、本年のように収穫皆無の場合に、全耕作地が一粒もとれないというような深刻な災害に襲われた場合において、五万円ないし七万円というようなことでは営農は継続できるはずがないのであります。せっかく法律では十五万円の範囲においてということが明確になっておる次第でございますので、これはなぜ一体五万円ないし七万円というような限度を作っておるのか、なぜその制限をしておるのかということを明確にしていただきたい。  なお、ただいまも御質疑の中にありました、従来、天災融資法の融資を受けておる場合にさらにまた融資を受ける際には、積み上げ方式をとっておられるのでありますが、積み上げをいたしましても、やはり一定の年限のうちに償還をしなければならないということになりますと、これは事実上償還が不能に陥るのでありますが、これはやはり、従来の積み上げ方式ということでなしに、借りかえを認めるということを明確にして、その上に指導をすべきであると思いますが、どうでありますか。  これらの点についてまず御質問を申し上げます。
  52. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの石田委員の御質疑でありますが、天災法の精神に基き、できるだけ罹災農家にためになるようにこれを運用いたして参りたいという根本的の考えに立っております。なお、具体的な詳細のことにつきましては官房長から御答弁することを御了承願います。
  53. 齋藤誠

    齋藤説明員 御質問の第一点の、営農資金についてのワクのきめ方はいかなる根拠に基いて、またどのような方法でやっておるかという点でございます。従来、営農資金の総額を出します場合におきましては、本委員会におきましても御説明したと思いますが、被害程度によりまして総額を計算いたすという方法をとっております。具体的に申し上げますれば、被害によって損失をこうむった総額中営農資金として現金支出を必要とするものがどのくらいあるだろうかということに計算の基礎を置きまして、従来それによって金を借りておったというような実績も考慮いたしまして総額を算定いたしたのであります。先般の長雨並びに霜雪害の場合は、そういう計算で五十二億という計算をしたのであります。これを各県に振り分ける場合にどうなるか、同じような方法を県別にとって配付するのであるか、あるいは県の要望によってやるのであるか、こういう御質問でございますが、県に割り振る場合におきましては、これを大体各県の申請額をもとにいたしまして各県の割り振りを行なっております。従いまして、従来の例でありますれば、大体各県の要望を生かして運用されておるというのが大体の実情でございます。  それから、第二点の御質問でありますが、つまり、営農資金農民資金としてはきわめて重要な資金であるにかかわらず、えてして末端まで借り受けられないのではないかという点でございます。この点につきましては、本天災法に基く営農資金は、御承知のように、国は利子補給と損失補償をやっておるのでありまして、その原資となるべき資金そのものは、系統資金を活用して、これによってまかなうという方法をとっておるわけでございます。従って、これを担当する事務当局といたしましては、こういう制度に基く資金であり、特にまた災害に伴うところの営農資金でございますから、系統金融機関については、資金が適期に敏速に流れるようにという指導を従来もいたしておりますし、また、今回の災害等におきましても、十分留意をいたして指導をいたしておるのでございます。かようなことが本資金についてはないようにということで指導もいたし、また、他の資金と比べますれば、この資金は比較的末端まで行っておるのではなかろうかとわれわれは考えておる次第でございます。  それから、第三点の、法律では営農資金については十五万円という限度があるにかかわらず、従来は五万ないし七万であったではないかという御質問でございますが、先般の霜雪害の場合におきましては、特別被害農業者につきましては十二万、果樹栽培農家につきましては十五万円ということで、一応法律の限度一ぱいまでには貸しておるわけでございます。これの算定につきましては、それぞれ作物についての現金支出分、つまり、災害に伴うところの翌年度の営農資金でございますので、十五万円も金を借りて支出するというふうな作物につきましては果樹のごとき特殊な場合でございまして、農家経済調査あるいは生産費調査におきまして、名作物別にかような多額の資金を出すという傾向には、平均的に見ますと、ほとんどないのであります。またそういう意味で五万、七万という計算が出ておりますが、これで資金災害農家として非常に足りないという実情を必ずしもわれわれは聞いておらないわけでございます。御承知のように、果樹であるとか、あるいは特殊なものにつきましては、われわれといたしましても、五万、七万というふうに必ずしも限らない。その実態に応じて資金を算定していくという考えをもちろん持っております。しかし、実情におきましては、必ずしもそれほどの営農資金としての支出金額にならない。その作物について考えますならばならない。また、今までの要望も、大体五万、七万というようなことで非常に不足するという声も必ずしも聞いておらない。しかし、いろいろの地域なり、あるいは経営の内容によりまして、もちろんその点は差があるだろうと思います。この点は災害の実態によりまして検討をしていきたいと考えております。
  54. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 さっきの、まだ未償還のところにさらにまた借り受けをしなければならないという場合の、積み上げ方式では困る、これに対してはやはり借りかえの措置をしてやるべきだ、こういうことについてはどう考えておりますか。
  55. 齋藤誠

    齋藤説明員 連年災害の場合におきまして、先ほど倉成委員から御質問のありました際にも申し上げましたように、むしろ、そういう場合におきましては、従来のやつについての借りかえを行なっていった方がいいのじゃないか、こういう考え方をとっております。
  56. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 次に、自農法でございますが、今のところ十七億の残額がある、さらに、石坂次官の御意見では、農林省としてはさらに増額も考えておる、こういうことでありますから、この点はぜひそのようにお願いしたい。ただ、問題は、従来の自農法による融資はきわめて手続が繁雑でございまして、最近は改良普及員がこれを担当しておるようでありますが、この事務を担当いたしますると、実際の技術指導などがほとんどできないような状態でありますし、農民の手をもってしてはとうていこの書類が作成できない。これは、前に農林漁業金融公庫の総裁を呼んで、簡素化すべきことを主張いたしまして、多少簡素化されたようでありまするけれども、やはりまだきわめて複雑な、繁雑を手続を要するわけでありますが、これに対して、やはり手続の簡素化ということについてどのようにお考えになりますか。できるならばこの法律の改正等によって簡素化すべきものではないかと考えておるわけであります。  次に、自農法の問題では、従来の貸付の標準が、その地方における耕作反別の中程度以下の農民に融資をするということになっておるわけでありますが、今次の災害のごとき深刻な被害を受けた場合に、相当な反別を持っておりましても収穫皆無の農家が多いわけでありまして、この標準は、公庫の業務方法書か何かによって、大臣と御協議の上できまっておる手続上の問題であろうと思うのでありまして、これの手続については、特別な配慮、行政指導をやることが可能であると由思いますが、いかがでございますか。
  57. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの石田委員の御質疑の、自農法の融資についての手続の簡素化という点ありますが、これは私どももたびたび承わっておることでありまするし、また自分自身が主張いたしたこともあるのであります。従いまして、これは、事柄の確実性を期すると同時に、でき得る限り簡素化の方向へ進めて参りたい、こう考えております。  第二の点でありますが、結局真に融資を必要とする人たちが受けられない、こういうこともごもっともに存じます。私も、区平素、一体農政というものが、いうところの三割農政になってははなはだ相済まぬ、こういう考えを持っておるのでありまするけれども、事柄は金融の機関でありまするし、いろいろその点についてのわれわれの平素の考えと必ずしも合致しない点もあろうかと思うのでありますが、これは、しかしながら、御趣旨に沿うように行政指導の面でできること、できるだけさように行政指導をしていきたいと思います。
  58. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 農薬の問題で先ほど質疑があったようでありますが、農薬については、従来の災害のつど、凍霜害その他災害のたびに相当金額の補助が行われておったわけであります。ただいま政務次官の御答弁で、大蔵省と折衝中であるというお話でありますが、これは、従来の例にかんがみましても、私どもは当然補助が行わるべきものであると考えておるのでありますが、その交渉の経過を一つ承わっておきたいと思います。
  59. 石坂繁

    石坂説明員 交渉の経過につきましては、私詳しく承知いたしておりませんから、係官から答弁させます。
  60. 江川了

    ○江川説明員 大蔵省と旱害及び水害の関係の病害虫防除農薬等について交渉いたしておりますが、今御指摘のような凍霜害あるいは風水害等についての農薬購入は、前例もございまして、それについてももちろん最終的には話し合いはついておりませんが、認められ得るんじゃないかというような傾向にあります。ただし、旱魃の際の病虫害防除農薬購入については従来あまり例がないので、なかなか認めがたいというような情勢にあります。大体、旱魃被害対策の苗輸送だとかあるいは予備苗代の施設というようなものについては、明確に支出をするということの当局の返事を得ましたが、病害虫については、先ほど政務次官からの御答弁のように、まだ最終的に確答を得ておりません。まだ交渉中でございます。
  61. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 水害の直後におきましては、県並びに市町村がそれぞれ集団防除をいたしまして多額の経費を投入しておる実情でありますので、これは大蔵省といえども否定するあたわざる事実でありまするし、従来も、一定の金額は限りますけれども、およそ二分の一程度の補助が行われておるのでありますから、事務当局だけでできなければ、大臣が帰られたならば一つ大臣にもお伝えを願って、確実に農家のところにこの補助が行われるようにお手配を要望いたしておきます。  次に予約概算金の問題でございますが、これは、収穫皆無となりますると全然予約が実行されないのであります。若干の減収であって補正が行われたような場合におきまして、それぞれその程度によって利子の額が若干違うような救済措置があるようでありまするけれども、収穫皆無等の場合におきましては、利率の減少等によってはとうていこれは救われないのでありまして、どうしてもこれは無利子にし、かつ相当長期に延納の道が講ぜられなければならないと考えるのでありますが、この点について政務次官はどのようにお考えになっておりますか。
  62. 石坂繁

    石坂説明員 災害等によりまして、売り渡しが予約しただけできないということにつきましては、市町村長に減額補正をすることができることは御承知通りであります。しかるに、予約金の概算払いを受けました生産者が災害のために売り渡しができませず、従いまして、概算金を返納しなければならぬというときに、指定の期限までに返納することができない場合は、従来手続上は指定集荷者が納めておるようであります。従って、従来の例といたしましては、どういう災害の場合でも概算金を延納させた例はないのでありまして、政府といたしましては、ただいまの予約制度の基礎である概算制度を維持するという建前からいたしまして、ただいま石田さんの御主張のようなことにはいたしかねるわけであります。
  63. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これは事務的にはその通りである。事務的にはその通りでありますが、事務的処理をもって収穫皆無の農家から概算金を返納せしめるということは事実上これは不可能に属する。天災融資営農資金に充てなければならないのでありますし、その他に一体救済の道がありますか。救済の道はないのです。これは現在の法律の範囲内における事務的な手続をもって救済することができないとするならば、これこそは臨時立法をやるべき性質のものではないか。今度の旱害、水害を通じていろいろな問題がありますけれども、特に水害による収穫皆無地における概算金の延納の問題こそは、これは一番大きな問題の一つであり、当然立法措置が行われなければならない性格のものであると私は信ずる。この点についてもう一度御答弁を要求します。
  64. 石坂繁

    石坂説明員 現段階においてのことを従来の取扱い例に徴しまして御答弁申し上げたわけでありますが、石田委員御指摘の御趣旨は全くその通りであります。収穫皆無の人から返納させるということの困難であるということもわれわれ十分了解できます。そこで、将来の立法措置によってこれを解決するかどうかという点についての重ねての御指摘でありますが、この点につきまして事務当局といたしまして今日までどういう考慮を払って参っておるかを、一応官房長から御答弁申し上げます。
  65. 齋藤誠

    齋藤説明員 概算金の延納問題につきまして、われわれが現在までこの取扱いについて考えておりまする事務当局としての立場からの考え方を率直に申し上げてみたいと思います。  お話の点は、まさに個々のケースにおきましてよく理解できるところでございますけれども、御承知のように、概算金の利子につきましては、すでに今年度から、売買条件ということで、大体天災法の例にならいまして、賦課すべき金利を六分五厘、あるいは三分五厘、あるいはゼロといったように、それぞれ免税といいますか利子軽減の条件を売買条件につけておるところでございます。従って、御指摘になりました収穫皆無のような場合、あるいは非常に減収の多いところといったようなところにおきましては、今も申し上げました概算金返納に伴うところの利子につきましては、それぞれ軽減措置を明らかにいたしておるわけであります。従来はこれを契約条項にいたしておりましたが、今回はそれを売買条件ということで初めから打ち出しておるところであります。従って、軽減の問題につきましてはそのような措置で行われるといたしますならば、返済すべき資金の問題になるわけでございますが、この資金につきましては、元来農協なりあるいはその他の指定集荷業者を通じて支払うという方法を従来からもとっておる次第でございます。従って、そういたしますと、結局集荷業者が立てかえした場合における金利負担部分ということに相なるわけでございまして、しかも、その金利につきましては、先ほど申しました軽減措置をとっておる次第でありますから、その差額ということになりまして、集荷業者として負担すべき立てかえに伴う負担部分というものは、その差額の金利負担部分だけになるということに理論上相なるのではなかろうか。もしそうだといたしますならば、これらにつきましては、当然集荷業者としての各種の手数料あるいは奨励金といったものの中から、どの程度まかなえないものがあるのかないのかという点も、十分検討しなければならないと考えるわけであります。  また、農民の方に対する最終的な返納資金をいかに考えるかということにつきましては、これも石田先生から営農資金としての借り入れば必ずしもこれによってはまかなえないではないかというお話がありましたけれども、理論上はその通りでございますけれども、実際上におきましては、結果的に経営資金の中からこのような資金が返済されるということも考慮いたしまして支出される場合も、われわれは必ずしも否定していないのであります。それらの取扱い考えてみました場合に、また本年度どの程度農家が果してそういうような延納措置を必要とするものに相なるのであるかどうかという点もあわせて検討しなければならないと考えますけれども、今申し上げましたような個々のケースにつきまして検討した段階におきまして、今直ちに立法的な措置までとる必要があるかどうかということについては、さらに今後の状態も見なければならないのではなかろうか、こういうのが、率直に申し上げまして事務当局の考えでございます。
  66. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 申し合せの時間もございますので、お含みの上でお願いいたします。
  67. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 予定を変更いたしましたから、若干延長いたしたいと思います。御了承願います。  高木主計官が見えましたが、今度の水害でかなり冠水の時間が長かったので、稲が虚弱になって、ひき水を待って集団防除を相当徹底的に行なっておるわけでありまして、これに対する補助金の問題で農民はいろいろ心配をいたしておるのでありますが、農林省答弁では目下大蔵当局と交渉中であるということでありますが、これについて一つ主計官の御意見を承わりたいと思います。
  68. 高木文雄

    ○高木説明員 水害時の病虫害対策としての農薬経費を災害対策費として補助金として支出するかどうかという問題につきましては、数年来本委員会におきましてもしばしば御指摘があり、私どもといたしますと、そのつどいろいろ問題があったわけでございますが、私ども考え方はこれまでと変っておりませんので、幸いにして漸次病中害防除についての効果というものも農民方々の間に普及して参っておることでもございますし、農薬補助はとかく金額もわずかなものになるものですから、一般論といたしましては、私どもとしては漸次やめていきたい。災害対策のうちでいろいろなものがございますが、非常に多くの金がかかる、従って農民として負担し切れないものについては補助金の支出をいたして参るつもりでございまして、たとえば今回の旱害対策についてもかなりの金額を支出するつもりでございますが、金額の少いものについてはできるだけやめる方向にしていきたいということは、従来の通りでございます。ただし、従来から申し上げております通り災害程度が非常に大きいという場合、従って農民としてとうてい負担し切れないという場合には、必ずしも絶対補助金は出しませんというわけではございませんので、従って、ただいま御指摘の点につきましては、農林省から今お話は承わっておりますが、ただ、本年の災害の態様は、これまでの場合と比べまして、これは見方々々でございますけれども、金額的に申しましても、あるいは地域の面積その他から申しましても、非常に大きいというわけにはいかぬのじゃないかということで、私どもとしては、現在までにわかっている程度災害の場合については、種類によってはいろいろと考えますけれども、農薬費については支出しない方針でいきたいという考えでおります。ただし、これにつきましては、今後の状況の推移も見なければならぬと存じております。
  69. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 高木主計官はどうも認識不足なようです。第十一号台風にいたしましても、新潟、石川、長野、岐阜等四県にまたがっておりますし、長く冠水をしておったところは二週間以上にも及んで、稲が完全に腐ってしまう、また穂が完全に枯死してしまっておるというような状況でありまして、その面積は相当広範にわたっておるわけであります。従来の凍霜害等に比較してむしろ深刻であり、かつ広範であるということが言えるのであります。さらに、その次に青森その他を襲った豪雨はこれまた相当な面積に及んでおるのでありまして、少額であるとか、あるいは部分的であるというような考えを持っておられるとするならば、これは認識不足もはなはだしいのです。一般論としては、従来は農薬に対しては国庫が相当な助成をいたしましたが、これはなくなっておる。しかし、災害に対しては、常に災労のつど一定の金額を定めて、その金額の二分の一等の補助金を出しておったわけでありますが、まだ最終的な考えがまとまったわけではないけれども、今の答弁によればはなはだ認識が足らないと思うのです。これはなお具体的な資料に基いて御検討をさるべきであると私は考える。どうも、農林予算というものに対する大蔵省の考え方が、いつでも、非常に甘いというか、農民に対して少しも同情的でない。災害復旧等でもその通りでありますが、原形復旧という一つの規定がある。その次にただし書きでそれを緩和することができるにもかかわらず、原形復旧を固持されて、それがために、せっかく災害は復旧したけれども、原形復旧のために、またもや災害を起したという事例をわれわれは幾つも知っている。そういう問題について、農林省から要求された予算を削減をするという大きな権限を持っておられる大蔵省の農林関係の担当官が、そのような認識であってはわれわれは了承できない。  具体的な例で申しますならば、新潟県の福島潟の沿岸の災害のごときも、一千町歩に及ぶところの収穫皆無地を出している。しかも、農林省が年々要求しているところの新井郷川のポンプを九台つけなければならないところが六台きりつけておらない。あるいは新井郷川の浚渫についても予算措置をやっておらない。だから、前の安田農地局長は、これは予算災害だとはっきり言っている。そういうふうなものを大蔵省はよくわかるからといって予算の査定を行なっておる。その予算の査定をやる主計官が今のような認識のもとに予算の査定を行われるのでは、農民は立っていけない。これは根本的に一つ農業について認識を改めてもらわなければならないと思うのです。今例を引いた、たとえば新井郷川のポンプの問題、あるいは新井郷川の浚渫の問題等についても、一体どう考えておる。もし農林省の予定通りの予算がついて、予定通りの支出が行われておれば、あの被害額というものは、大よそ半分くらいに、あるいは三分の一にも減ずることができたでありましょう。それを大蔵省が予算をつけてくれないから、既定計画が進まないじゃないですか。それを今のような考え方で臨まれるとすれば、われわれも大いに考えなければならぬ。一体、福島潟を中心とするポンプの問題や、新井郷川の浚渫の問題についてはどのように考えておられるのです。この機会に一つ承わっておきたい。
  70. 高木文雄

    ○高木説明員 病虫害の問題につきましては、先ほども申しました通りでございまして、確かに、おしかりを受けましたように、まだ私どものところでは現在全国被害状況を十分つかんでおりませんので、ここでどちらとも申し上げかねますが、考え方は先ほど申し上げつた通りでございます。  それから、新井郷川の問題につきましては、これは非常に大きな問題でございまして、御指摘の通り、毎年予算要求としては相当の金額の予算要求を受けております。その額はおおむね毎年度の予算額の二倍ないし三倍という程度でございます。従いまして、これは、農地関係の予算全体をどの程度の大きさにするか、なるべく多い方が望ましいことでございますが、これまた予算全体との関係でなかなか思うようになりません次第でございまして、あの地区の事業が着工以来非常に時間が経過しておりますのに、今日なお十分進捗いたしませんことにつきましては、私どもも、御指摘の通り非常に遺憾なことであると同時に、今までの投資額が十分生きないということでありますので、なるべく早く完成しなければ意味がないということは痛切に感じておる次第でございます。しからば、すでに着工した工事を何とか早く完成をしてしまいたいということのためには、予算額を増額いたしますと同時に、また、片方におきましては、新たに着工する地区をなるべく待っていただいて、そうして、すでに着工した地区はどんどん進捗させていくというような措置も必要であるというようなことを考えて、いつも申し上げておるわけでございます。しかし、一方で、全然未着工の地区につきましても緊急を要するということで、さようなこともなかなか現実問題としては実現しかねておるような次第でございます。今の問題につきましては、今後とも、できる限りの範囲内ではございますけれども、阿賀野川地区の土地改良事業を促進する方向については、私としてもそのような方向で考えたいと思っております。  なお、今回の湛水の問題につきましては、不幸にして、すでに完成いたしました阿賀野川左岸地区におきましては、まあ異常降雨ということもありましたが、相当な湛水ぶりを見たわけでございまして、御存じの通り、あるいは地盤沈下の影響ではないかというようなことも聞いておりますので、つい先ごろの新潟におきます地盤沈下対策の予算を緊急に予備費をもって追加をする措置をいたしました際に、金額としてはわずかでございますが、阿賀野川地区全体の水位の変動状況を調べる予算を計上することにいたしまして、先週でございましたか閣議決定をした次第でございます。今後とも、地盤変動との関連を考えまして、ことし起りましたような湛水の基本対策は大いに考えていかなければならないというふうに考えております。
  71. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 時間の関係がありまして意を尽しませんが、建設省からせっかく治水課長が見ておりますので、お尋ねいたします。  今回の水害に当りまして、水害防除のために新潟県の北蒲、中蒲、西蒲だけで四十五万俵といわれる俵、かますないし麻袋等を使っておるのでありまして、それがために若干被害を免かれた地方もあり、なおそれによっては防止できなかった地区もあるのでございますが、この俵の代金が相当な金額に上っておるのでありまして、これは当然水防法の三十三条二項以下の適用があってしかるべきであると考えられるのでありますが、治水課長の御意見を承わりたいと思います。
  72. 川村滿雄

    ○川村説明員 石田委員の御質問につきまして御答弁したいと思います。  今まで、水防法につきましては、水防の施設につきましては補助を政令でつけられるようになっておりますが、資材の点につきましては、補助の対象にならないという実情になっておりまして、ただし、昭和二十八年の各地に非常に災害が起きた場合に、特例によりまして、使用した資材につきまして補助をするということがあっただけで、それ以後水防資材の補助につきましては全然補助がついておりませんので、われわれの方といたしましては、それでは地元の各位が非常に困られるだろうというので、水防資材の補助を毎年要求しておる現状でございますが、法律にもございませんような実情で、予算補助というような形なものですから、十分な迫力がございませんで、いまだに水防資材の補助につきましては補助はついたことはございません実情でございます。
  73. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 これらの堤防のかさ上げ等による資材というか、これは解釈の仕方で当然一つ施設ということができるのじゃないか、それは、その地区により、事業によることでございましょうけれども、私どもはやはり当然一つ施設であるということができると思うのでありますが、そういうふうな広義の解釈で適用するわけには参りませんか。
  74. 川村滿雄

    ○川村説明員 お答えいたしますが、石田委員の言われる御趣旨には、ちょっとなかなか判定がむずかしゅうございまして、今のようになっておるような実情でございます。
  75. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 先般新潟県からの陳情団が参りましたときに、どなたがお会いになったか、実ははっきり聞いておかなかったのでありますが、この資材問題は、破堤をした場合、それにかさ上げをしたりあるいは復旧をしたような場合には補助の対象にできるけれども、破堤をしなかった場合においては適用にならないということをおっしゃった、これを私は数人から聞いておるのですが、これは川村課長ではなかったのですか。
  76. 川村滿雄

    ○川村説明員 ただいまのにお答えいたしますけれども、それは災害復旧の査定の中の一つの方針でございます。それは防災課の所管事項でございまして、治水課ではそういうことに関係しておりませんことをお答えいたします。
  77. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 三和精一君。
  78. 三和精一

    ○三和委員 今回、水害、旱害等が随所に起りましたが、先ほど、どなたか、自衛隊が非常に協力いたしまして、そうして農民が助かったというようなことを聞きましたが、不幸にして、私の方の青森県では、自衛隊が日本の自衛隊であるのか敵国の自衛隊であるのかというような疑惑をさえ持たれておるのであります。というのは、もちろん、今度の水害におきましては、農作物の被害あるいは家屋、建造物の被害等は申すまでもない、もしこれが旱害、水害等によって国民が困った場合、あげて国はこれを救済しなければなりません。もちろん予算が足らなかったならば補正予算を作ってでも出す、私はかように考える。ところが、さような場合に、農作物その他に対しましては関心を持つけれども、人命に対してはあまり関心を持っておらぬように考える。今度青森県で起きました事件は——まずあなた方から聞きたいことは、防衛庁設置法第五条のうち、十五、十六の御説明を願いたい。私も書いておりますけれども、あなた方は覚えておるはずだと思う。これを一応聞いてから質問いたします。
  79. 加藤陽三

    加藤説明員 お答え申し上げます。  防衛庁設置法の第五条の十五号は、「海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合において行動すること。」、第十六号は、「天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要がある場合において行動すること。」、かように相なっております。
  80. 三和精一

    ○三和委員 もう一つ、自衛隊法というのがありますが、これの八十三条一項、二項に、これは私が読んだ方が早い。「都道府県知事その他政令で定める者は、天災地変その他の災害に際して、人命又は財産の保護のため必要があると認める場合には、部隊等の派遣を長官又はその指定する者に要請することができる。」、二項は、「長官又はその指定する者は、前項の要請があり、事態やむを得ないと認める場合には、部隊等を救援のため派遣することができる。」、こうなっております。そこで、今回、去る八月十一日でありますが、ちょうどこの雨というものは局部的に降られたわけでありまして、わずか二十三時間でもって三百ミリ以上降った。御承知通り、青森県の岩木山麓というのは立体的な地盤でありまして、ちょうどそのときの状況を見ますると、たらいの水をくつがえしたように一ぺんに出た。当時あたかもそこに砂利の採取のトラックが六台もいました。さらにキャンプの学生が十数名おりました。それから魚とりの連中も十数名おった。トラックの場合は水が来たというときには逃げるいとまがない。川の中で砂利をとっているトラックですよ。一ぺんに出た水ですから、これは山津波のように出てきた。そこで、とうとう逃げ場を失って四人死んだ。こういうようなひどい目にあっている。従って、トラックが埋没した。一台のトラックは辛うじて屋根が出ておる。そこで助けを求めておる者がある。さらに、その上流では、一部落七軒ですが、十五名の者がことごとく屋根の一番上に乗って救いを求めておる。そこで、消防団並びに警察総動員で救援作業をやったのですが、どうにも方法がない。濁流であり急流である。やむなく、あなたの方の大湊に海上自衛隊があるそうですが、そこに、弘前市長、警察署長から警察電話でもって急遽救援をお願いした。ところが、あなたの方の海上自衛隊では、知事の要請でなければ応じられぬという。それはそうでしょう。しかし、水は人の命を待っていません。そこで、警察本部長は知事を探しまして、そうしてやっと正式な救援策をとった。それを要請したのは午前十時半です。午前十時半に大湊の方に知事名で救援を要請した。ところが、あなたの方の大湊の方では、幹部会を開いてでなければこれに応ずることができないという。そういうことになっておりますかどうか知りませんが、ともかくマンマンデーだ。今人が何百人も死のうとしている。市長、署長がじだんだ踏んでおる。そこでゆうゆうと幹部会を開いて、やっと結論が出て、救援しようということになった。十時半に要請を受けて、十一時四十分になって幹部会の結論ですから、一時間十分くらいかかった。なかなか長い幹部会です。その間、今濁流にのまれようとしておる岸の方では、親類縁者の者が泣いて騒いでおる。その間ゆうゆうと幹部会です。やおらその後立ち上って大湊から青森に向って出発した。わずかこの間三十キロか二十キロです。大湊を出たのは、幹部会を開いてその後一時間たった十二時四十分。十二時四十分にヘリコプターが飛んできた。青森でもって油を入れた。どういうヘリコプターか知りませんが、東北配電のヘリポートに降りて油を入れて、さて今度はいよいよ現地に行くというので、エンジンをかけようとしたが、かからないのです。その間一時間。いよいよだめだ、ヘリコプターのエンジンがかからないので、あきらめようじゃないかと言った。ところが、どうしたことか、かかったのです。そうして現地へ飛んできたときは午後三時半。十時半に要請して、現地へ飛んできて、姿が見えて、避難民が涙を流して万歳した。やっとこれで一家族の者が救われると思った。ところが、旋回して着陸した。私どもは人命救助の命令を受けておらぬから救助するわけにいかない、従って道具を持ってこなかったということで、綱一本持ってこないのですよ。そこで飛び去っておる。そして、トラックの上に九時間も十時間も乗っかっておった人は——これはここに新聞に出ておりますから読んできかせます。驚いたことだ。「仕事を続けてふと気がついたら、わずか三、四分の間に増水したからどうにもならなかった。それから米軍ヘリコプターに助けられるまで九時間余り、激流にゆらぐトラックの上で救いを求めたわけだが、三時十分ごろ海上自衛隊のヘリコプターが来たまではよかったが、頭の上を旋回しただけで飛び去ったときは、もうこれで終りだと思った」、こういうことです。そこで、日本の自衛隊が飛び去ったので、これではとても問題にならぬ、あきらめようじゃないかというので、アメリカの三沢の進駐軍に電話した。一時間で飛んできました。一台のヘリコプターで百六十四名助けました。日本の自衛隊は、頭の上を飛んで帰るときに一人か二人さらっていったようですが、あちらは誠心誠意であったと思います。しかも、その将校が降りてきて、弘前市長の手を握って、事人命に関する限りは、いかなる難事といえども私たちは必ず遂行する、市長さん、何でも申し入れなさいと言われた。しかも、准将といわれるえらい人が別な飛行機でもって災害地の上を無電でもって指揮し、あれも助けろ、これも助けろと言っておる。二日にわたって百六十四名助けた。もしあれが日本の自衛隊のみをたよりにしておったならば、おそらくこの半分の百名近いものが死んだのではなかろうか。  われわれは、この災害に対しまして、農作物その他の被害は甚大だ、これは政治家として当然何とかしなければならぬものではあるが、事人命に関する限りは、自衛隊ではどう考えておるか知りませんが、私が疑問に思っておるのは、千二百億余の予算を防衛庁では持っているはずだけれども、大湊にぼろ飛行機、ぼろヘリコプター二台しかないのかどうか、そうして、幹部会を開いてからでなければ飛べないのか、人命救助の任務があるのかないのかを聞きたい。これは辻次官よりも局長の方がいい。
  81. 加藤陽三

    加藤説明員 先ほども御指摘なさいましたごとく、人命救助につきましては、防衛庁としては優先的に考えておるわけでございまして、私どもとしてももちろん全力を尽してやってきたというふうに思っております。  大湊には現在S51というヘリコプターが三機ございます。その当時の状況を調べてみますと、三機のうち一機はオーバー・ホールのために新明和工場の方へ行っておったようであります。あとの一機は整備をしておった段階であったようでございます。稼動できるものは一機だったというように聞いております。幹部会を開かなければ出せないということはないのでありまして、大湊地方総監なり飛行隊長の権限でこれはできるわけであります。どういう事情で幹部会を開いたのか、あるいはいろいろのやり方、燃料の関係等につきまして打ち合せをすることがあったのかどうかということは承知しておりませんけれども、建前といたしましては、その責任者の判断一つでできることであります。
  82. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 三和君、ちょっと申し上げますが、人命救助の問題はただいまの農業災害とは直接の関係……。
  83. 三和精一

    ○三和委員 いや、あります。
  84. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 人命救助だけでございましたら所管外でありますから、なるべくそれに関連をしてお願いいたします。
  85. 三和精一

    ○三和委員 災害、水害というものは、稲作や建造物だけではありません。最もとうといところの人命に必ず関係がある。日本の自衛隊は、今や廃止するとか要らないとか騒いでおる場合に、国民から信用を失っては一体どうなる。千二百億余の防衛庁費を持っておるあなた方の任務は、外敵と戦うということじゃないでしょう。大災害の場合は、命令がなければ動かぬとか——私はアメリカの例を引くわけじゃありませんが、今度の場合も、ちょうど青森から電話が来たときに倉庫番の将校がいなかった。事急だというのでMPが倉庫をぶちこわしてガソリン・タンクを出して飛び立たせた。こっちは上の命令がないから人命救助ができないという。向うはガソリン倉庫をぶちこわしてまでも持ってきて飛ばした。その結果百六十四名助けた。あなた方の調査はもう済んでおると思いますが、これでもって青森県民が——いや、これはひとり青森県民だけではありませんよ。日本という国はたびたび水害に見舞われている。これはもう年々歳々十数回ある。その場合に、あなた方はどういう立場にあるか知りませんけれども、人命救助をしなくてもいいような感覚を持たれては困る。今後の方針を私はお聞きしたい。もし予算がないならば、予算をもらってヘリコプターでも何でも作る。国民が人命だけは安心して農業に従事できるような方途を考えるほかはないだろう。その頭の切りかえができないのかどうか、もう一つ……。
  86. 辻寛一

    ○辻説明員 この災害派遣につきましては、御要請がありましたときには万難を排しまして活動いたしておるわけでございます。特に人命救助の場合におきましては、適宜の処置をとりまして、ほんとうに全力をあげて今までやって参っておるわけでございまして、今まで、人命救助も含めまして、件数にいたしましても約五百件、派遣いたしましたのは、延べ人員にいたしまして五十四万ほどになっておるわけでございまして、特に人命救助には重点を置いておるわけでございます。  今お話をだんだん承わりましたが、実は、私どもの方の調査いたしましたところによりますると、当日、今のお話にあったと思いますが、中州でございますか、砂利でもとっておったのでございましょう、約十六人が増水のために退路を遮断されて遭難しておるという人命救助の御要請がございました。ところが、今防衛局長お答えを申し上げましたように、大湊には稼動できるヘリコプターが残念ながらただいまのところ一機しかございませんので、すぐ警察へ電話をいたしまして、米軍の方へこちらからもよく協力方を頼むが、あなたの方からも一つお願いをなさるようにということを申し上げまして、そしてとりあえず出たわけです。なるほど、その間の、こちらの報告によりましても、時間が少しおそいようでございます。十一時に私の方は御要請を受けまして、十二時五十五分に立ったということになっておりますので、燃料の整備とかいろいろあるにいたしましても、この間の間があるようでございまするが、そして、何しろ私の方のただいまのへリコプターは一人しか乗せることができぬわけでございます。乗員二人でございます。三回に分けましてその三人を救いました。ところが、もう大体燃料もなくなりかけている。これは大体四時間くらいの燃料しか積めぬそうでございます。それで、米軍のヘリコプターは十名は乗せられるわけでございます。その米軍のヘリコプターも救難に来てくれたという状態を見定めましたので、後事を託して、そして基地に帰りましたのが、燃料ぎりぎりの十五時五十何分、こういうことに報告を受けておるわけでございまして、米軍によって救われましたのが十三名、まだ二人残っておりますので、翌朝またヘリコプターが出て参りましたが、天候不良のため帰りまして、これはやっぱり米軍によって救助された、こういうような報告に実は接しておるわけでございますが、承わりますことと、だいぶ違いますので、一応よく調査をいたしたいと存じております。
  87. 三和精一

    ○三和委員 最後に一つ。今下の方からの報告をあなた方がそのままうのみにしておるようですが、これは私はノーとかイエスとかいう議論をここでしたくありません。ただ、災害のつどこういうことが必ず起きる。起きた場合に、自衛隊というものは人命救助もするんだというような安心感を国民に持っておる。それがとんでもない。今度のような事件が起きたならば、初めからできないということならば、米軍を初めから頼むとか、あるいは別な方法をとる。たとえば県でヘリコプターを買って準備しておる、あるいは警察で持っておるということになりますが、安心感を持たせておいて、結果において、五時間もかけて会議を開いて、途中で故障を起している。そうして、現場へ行ったならば、人命救助の命令を受けておらぬというので引き返した。これはまた言語道断ですよ。こういうことは、今日自衛隊不要論ということを声を高くして言っている者の全くよき材料になるということを私は心配する。と同時に、災害というものは、決して農作物ばかりでない、建造物ばかりでない。もっと大事なものは人命であるということをお考えを願いたい。これだけ申し上げまして終ります。
  88. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 倉成君の質問に対して関連をして政務次官から発言を求められております。石坂政務次官
  89. 石坂繁

    石坂説明員 先ほど倉成君の質疑のうちのポンプ購入に関する私の答弁の内容が誤解を生じてはいかがかという懸念もございますので、若干補充させていただきたいと思います。  ポンプ政府が購入いたしましたのは、旱魃の応急対策として共同で購入したものを買い上げるということになりますが、これは、今後の旱害や水害に際しまして、灌漑施設が機能を失って参りました場合に、将来応急的に貸し出しの措置がとれるようにするためであります。そこで、助成要綱の中にも、一定規格のものについてということを断わっておりますが、官房長からも答弁いたしましたように、さような目的のために買い上げるのでありますから、あまり口径の大きいもの、あるいはまた逆にあまり口径の小さいものはその目的に合わない点がある、あるいはまた、性能のはなはだしく劣ったものなども買い上げの目的に達しないものもありまするから、申請通り全部無条件に購入するというわけには参らぬ節もあろうと存じますから、さような趣旨に御了解願いたいと思います。
  90. 吉川久衛

    吉川(久)委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開しまして、蚕糸に関して参考人より意見を聴取し、それからあと、ただいまの続きをいたしますから、お含みを願います。  これにて休憩いたします。     午後一時二分休憩      ————◇—————     午後二時二十七分開議
  91. 松浦周太郎

    松浦委員長 再開いたします。  蚕糸に関する件について調査を進めます。  本日は、蚕糸価格安定の問題につきまして、全養連会長の田原君、全養連参事の梶原君、長野県養連会長中村君、群馬県磯部町農協組合長の萩原君、養蚕農家代表として金井君、全国桑苗協会会長の稻葉君の皆様に参考人として御出席を願いました。各位のそれぞれのお立場から忌憚のない御意見を拝聴し、蚕糸対策の参考に資したいと存じます。  参考人の各位には御多用のところ御出席いただき、厚くお礼を申し上げます。  それでは順次御意見の陳述を願いたいと存じます。なお、時間の都合もありますので、おおむねお一人当り十分くらいにお願いいたしたいと存じます。田原参考人。
  92. 田原徳

    ○田原参考人 私どものお願いを申し上げる前に、一言お礼を申し上げたいと存じますので、お許しを願いたいと思います。  本年春以来蚕糸業界には非常な問題が重なりまして、われわれ全国八十万余の養蚕農民は常に一喜一憂いたしておったのでございますが、最近に至りましてその状態がますます悪化をいたしております。この間におきまして、国会の諸先生、ことに農林委員の皆さんが常にわれわれのために格別の御配慮を賜わりましたことを、全国養蚕農民にかわりましてここに厚くお礼を申し上げる次第でございます。  実は、本日は諸先生から御質問をいただきましたことに対しお答えをするものという心がまえで出て参りましたので、私の方から先にお願いを申し上げる言葉の準備をいたして参りませんでした。従いまして、ただいま委員長から、私から陳述しろと、こう言われましたので、実は戸惑ったのでございますが、率直に私の現在申し上げたいと思うことを申し上げまして、お許しを願いたいと存じます。  先ほど申し上げましたように、繭糸価格安定法が現在あるにもかかわらず、本年の春以来その最低繭価である十九万円を、あるときには、相当と申しますか、約三万円もこれが価格の暴落を見ております。私どもは、法治国家として法律によって保証をされておるという安心の上に立って、終戦後昨年まで増産の一途をまっしぐらに進んで参ったのでございます。これに対しましては、政府、国会におきましても、この増産こそ蚕糸業振興のもとであり、農家経済の向上のために絶対的なものであるという御指導を、しかもこれに対しましては奨励の諸施設も講じていただいたわけでございます。ところが、本年になりましてこれが異常な暴落を見た。しかも、その原因は、あるいは世界の経済界の後退と言い、あるいは増産をしたからというようなことまで言われて参ったのでございます。私どもは、養蚕農民の代表者として、これが対策を国会を通じ政府に常にお願いいたして参ったのでございますが、本年の五月末と心得ます、繭糸価格安定のために大幅な予算措置をしなければならない、今までの安定資金は切れてしまう、そこで、その予算措置をするためには、どうしても製糸家においても相当の生産調整をしなければならない、また、養蚕農家におきましては、夏秋蚕において二割の生産制限をしてほしい、こういうことによって、政府の予算措置と相待ってこの三本建でいきまするならば、繭糸価格は安定する、昭和三十三年の産繭価格並びに糸の価格はこれで安定をするのだ、こういう話を承わったのでございます。繭糸価格安定法は輸出を増進すると同時に農家経済の安定を目的としておる。農家経済の安定を目的とするのに、農家の犠牲においてそれをなすということはおかしいじゃないか、生産制限をして需給調査をするならば、法に基く国家の保証を求めるものでなく、みずからこれをすると同じことになる、これができないからこういうことをお願いしてあったのだというようなことで、私はこれに対しまして絶対に反対をいたしたのでございます。と同時に、昨年までやって参りました国の施策に基き、増産をいたして参り、本年の夏秋蚕は昨年度におそらく二割増産するとわれわれは予想し、また養蚕農家もその心がまえでおったと思います。それに昨年度の二割減ということになりますれば、実質的に四割の減産になるのではないかというふうに推定をいたしましたので、私はこのようなことはどうもお引き受けできませんと申し上げたのでございますが、その後関係団体の方々といろいろ話し合いをいたしました上に、蚕糸業の将来を考え、そして今安定価格の上に立って安心して養蚕をいたしておる農民の期待にこたえるためには、どうしてもやむを得ないというようなことも考えられましたので、緊急に全国の都道府県会長会を招集いたしまして、これにお諮りをいたしました。全養連といたしまして、役員会においてこれを決定しようかという話もあったのでございますが、そのような天下り的なことをいたすべきでない、これは、あくまでも、民主的に決定するためには、各都道府県の会長さんにお集まりを願いまして、十分にこれが検討をいたし、その上にこれを一つきめていきたい、こういうことをいたしたわけでございます。まことに悲壮な決意のもとに県養連の会長のお集まりを願いましたところが、いろいろと情勢分析の上、本年の夏秋蚕だけは、これはどうも将来の発展のために、しかもこの繭糸価格安定法をお互いに守り抜くためにはやむを得ないのではないかというような結論に到達をいたしましたので、直ちに役員会を招集いたしましてこれが決定をいたしたわけでございます。その間危機突破のために全国養蚕農民の大会を開催いたしまして皆さんの御意見も承わったのでございますが、われわれはこの二割生産制限による損害の賠償と団体に対する補償とを要求いたしたのでございましたが、大会におきましてはこの反対の決議をいたされたのでございます。従いまして、私どもの方といたしましては、直ちにまた全国会長会の招集をいたしまして、この状況をお諮り申し上げた。しかしながら、今日の段階に至りましては、涙をのんでこれに応ぜざるを得ないということになりましたので、再びこれを確認いたしまして、生産調整ということになってきたわけでございます。  従いまして、春蚕におきましては八千七百五十掛という掛値の決定を見ることに相なった。この点に対しましては感謝をいたしておりますが、さて、引き続きました夏秋蚕の価格は、先ほど申し上げましたように八千七百五十掛の最低繭価というものはこの生産調整によって維持されるものである、昭和三十三年度の繭はこの価格で維持されるものであるという、それにわれわれは信頼をいたしましてこの生産を調整いたしたのでございますが、今日に至りますと、その価格はまたまた非常な暴落ということに相なってきたわけでございます。こういうことになりますと、一体われわれが生産制限をし犠牲になって価格維持のために、繭糸価格安定法を維持するためにやって参ったことがどこへ行くのかというような声が農家の間から出て参りました。そこで、私どもといたしましては、さきに政府において発表されました御意見を信頼いたしておりますがゆえに、現段階におきましては、これが対策を一日も早く立てていただきますことをお願いいたしますと同時に、この繭の処置は一応自主的に乾繭保管をするということのやむなきに立ち至っておるわけでございます。ところが、最近ごく新しいある新聞の報ずるところによりますと、政府の責任ある方が、養蚕家は生産制限をしておらないから、価格の保証ができない、あるいは予算措置ができないというような意味の談話があったように見たのでございますが、まことに遺憾千万なことでございまして、私ども現実にあらゆる苦難を排しまして生産制限に努力をいたしております。あるいは数字の誤まち等ございましたから、当初の数字を多少訂正をしたところはありましたけれども、生産制限はあくまで最初の約束通り守っております。何か対策を立てないためにそのような煙幕を張られておるような感じを抱きまして、われわれの間には不満の声が出ておりますが、しかし、これは一つの話題として出たものだと考えまして、今日に至りましても、私は、政府並びに国会ことに農林委員の諸先生におかれましては、春の臨時措置法制定当時あそこに附帯決議をつけられましたと同様のお考えでおられることと信じ、一日も早くこれが対策を立てていただきまして、八十万戸の養蚕農民に対して安心を与えていただきますことを心からお願い申し上げまして、私の陳述を終ります。
  93. 松浦周太郎

    松浦委員長 次に中村兼治郎君。
  94. 中村兼治郎

    中村参考人 私が長野県養蚕販農業協同組合連合会会長中村兼治郎であります。  ただいま全養連の会長からお話がございましたが、春繭の処置に対して、皆さん方の御配慮によりましてその処理がやや適当に処分されましたことに対しまして、特にお礼を申し上げたいと思うのであります。私ども長野県は、繭の出荷が他府県の事情と違いましておそかったものでございますから、政府の格段の御心配をいただきまして、その恩恵に多分に浴しましたことを特に申し上げまして、厚く御礼を申し上げたいと思うのであります。  長野県の春繭は大体百五十万貫程度の産繭でございます。このうち乾繭保管に持ち込むという申し込みを県養連にいたしましたものが百五万貫でございまして、組合製糸関係の方もございましたり、全乾連の方へ乾繭をしたものもございますが、長野県の春繭といたしましては、その大部分がこの恩恵に浴したと申し上げてはばからない次第であります。幸いに、春蚕の処理におきましては、ただいま申し上げましたようにスムーズに参ったのでありますが、その後、長野県には特殊な夏蚕というものがございまして、この産額が約八十五万貫ばかりございます。その処理に対しましてどうすればよいかというようなことで、私どもは頭を集めて相談をいたしたのでございますが、ただいま会長お話がございましたように、夏秋蚕に対しては何らの裏づけというものがないので、非常に周章ろうばいいたしました。しかし、臨時措置法によりますると、三十三年度の繭、生糸というものは安定法によって処置して下さるという法律に承知をいたしておるものでございますから、私どもは、必ずやその処置ができ得るものと信じて、自主乾繭を奨励いたしたのでございますが、この夏蚕のときにおいては、製糸家の方面からの誘いもあり、ただいま申し上げますように裏づけがないので、ついに四万貫程度で、その他のもののうち約五十万貫というものは組合製糸関係へ送繭ができて、三十万貫というものは営業製糸家に買収されたと考えられるような状況でございまして、その三十万貫というものと四万貫というものは、その恩恵に浴さないでおる現状でございます。  そこで、秋蚕の問題でございまするが、長野県におきましても九月当初から出荷されることと思うのでありますが、全養連の会長がただいま申し上げましたように、私どもは、この全養連の方針に従いまして、実は自主乾繭をする考え方で、ただいまはそれぞれ手続をいたしておるというわけでございます。  実は、ただいまも会長からお話がございましたけれども、私どもは何らかこの夏秋蚕において政府対策が必ずやでき得るものと信じておりまする一端といたしましては、本年度のこの二割制限をする際の蚕糸局長さんの御説明では、かように申されておるのであります。三十三年度生産の春繭というものは千五百五十万貫であろう、三十二年度の持ち越しの繭が五十万貫あるから、合せて春繭というものは千六百万貫であろう、夏秋蚕は生産制限を行うといたしまして千四百万貫程度にとどまるであろう、合計三十三年度の産繭額を三千万貫と見まして、これからできる生糸というものを大体三十一万俵と見る、輸出を六万俵、国内の引き渡しと申しますか、内需を二十万俵、それにたな上げを五万俵といたしますると、三十一万俵の生糸になりますから、必ず諸君がこの二割制限をやれば夏秋蚕というものは八千七百五十掛というものが維持されるのだ、こういうお話でございまして、この御意見に私どもは深い信頼を申し上げて、まじめに二割制限の実行に入ったわけでございます。もちろん、この夏秋蚕の二割制限をいたしまするには、私ども団体の会長といたしまして非常な苦労をいたしました。けれども、あくまでも八千七百五十掛が維持できるからおやりなさい、こういうお話でございまして、長野県には蚕糸業審議会という県自体の作りました審議会がございますが、この審議会におきましても、二割制限をするということは絶対反対である、お前は中央に行って養連の会長として二割制限を引き受けて来たではないかというようなことで、私は非常にしかられたのでございまするけれども、ただいま申し上げましたように、政府お話を御信頼申し上げて、そうしてあくまでも養蚕農民の農産物価の維持のために諸君が犠牲になってくれろということを申し上げて了解を得ようといたしたのでありまするが、今日でもなおかつ、この二割制限に対するところの補償をしろということで、今もってその御意見があるような次第でございまして、この点についても政府において何とかお考えをいただかなければならぬというようなことで、実は私どもは間にはさまって非常な苦しみをいたしておというようなわけでございます。たまたま承わるところによりますと、どうも全養連というものが二割制限というものを自主的にやったのではないかというようなお話がございまして、政府の要路ではあるいは責任をおのがれになるようなお考えもあるやに私どもは推察できるのでございますが、もってのほかのことであろうと私は思うのであります。第一、「夏秋蚕繭生産調整実務打合会資料」という冊子を私どもに配付になりまして、そうして「繭糸価格対策の大綱」というものを五月の二十九日付けで私どもにお示しになった。その一項には、「本年の夏秋蚕繭は、前年実績の二割を抑制するよう生産者団体の協力を求めて強力に指導する。」、こういう御意見でございました。従いまして、御案内ではあろうと存じまするが、蚕種製造家の種繭を規制をいたしまして、私どもは全養連の委託によりましてこの乾燥した種繭を販売いたしてそれぞれ処置をいたしました。この種繭に対してはりっぱにこれを政府が補償をいたしておるのであります。そうして、養蚕農家には、この二割制限をいたした補償もなければ、なおかつ現在この糸値あるいは繭値が維持できないということであれば、一体養蚕家はどうすればいいかということで、実は私どもは日夜責められておるような次第でございます。われわれ団体を預かっておる者の立場といたしましては断腸の思いをいたしておるような次第であります。何とぞこのような現地の事実を御了察いただきまして、先生方の格段の御配慮を願いたいと存ずる次第であります。  以上簡単に私の考え方を申し上げてお願いを申し上げます。
  95. 松浦周太郎

    松浦委員長 次は金井武三君。
  96. 金井武三

    ○金井参考人 私は埼玉県の深谷市に住んでいる養蚕農民でございます。  ただいま、全養連の会長さんやら、中村さんやら、上の人の意見は大体出されていると思うので、私は、ほんとうに自分で蚕を飼っている者としての立場から、今度の二割制限で農民がどんな不安と困惑状態になったかということを申し上げて参考にしたいと思うのであります。  私どもは、ともかく、野菜を作れば安い、陸稲を作れば日照りにあうというので、やはり何だかんだといっても政府が奨励しているお蚕というものもそんなに悪くないのだということで、指導されるままに漸次桑もよけいに植えてきました。そうして、ことしの正月あたりになって、なおかつその上に、今度からはいい繭を作らなくちゃならないのだということで、昔あったようなかごで改良まぶしというようなものでやっていたのじゃいい繭が作れないからというので、製糸家がみんな回転まぶしやなんかをぜひ買えというので、われわれも、ほんとうにない金で、借金でみんな買ったわけです。そして何とかして現金収入のあるお蚕を続けて農家の経営を維持していきたい、こういうふうに考えていたところが、結局今度の問題に出つくわしまして、先ほども申し上げました通り、いろいろ事情はありましたが、ともかく春繭だけは千四百円、うちの方は非常に糸目が出まして、十九匁、十八匁というような糸目が出ましたので、おそらく千五百円以上になると思うのです。そういうところへ持ってきまして、今度出されたのが二割制限という問題でございまして、ちょうど七月の十五日のお盆ごろに末端割当が出たわけです。  そうして、埼玉県としてはともかく二割制限を何でもかんでもやるのだということで、末端へその数字がおりてきたわけですが、その実際に掃いた数字を集計してみますと、おそらくこの分でいくと五割制限になるのじゃないかということで、みんな近々の農家が騒ぎ出したわけなんです。と申しますのは、ともかく今度の種というものは、今まで種屋さんが、おまけはしちゃならぬといいながらも大体二割くらいのおまけはあったのです。ところが、今度は絶対おまけはない。はっきり言って、もうこれだけで二割制限です。それから、病気でやれなかったという人、それから、埼玉県で一番大きい藤沢村では千五百町歩もある土地改良をやったのですが、去年土地改良のために桑園が極端に減ったというような人が去年の実績でやられて、桑園は植えた桑がことし非常によかったものですから、普通の年からいくと三割ぐらいよけい掃けるのではないかというようによい桑になったわけですが、そこへ持ってきて去年の実績でやられたので、調整が五割以上になるのではないかと思います。  それから、もう一つは、ことしは特別な理由ですが、去年、おととしあたりまでは、養連の手を経ないでいわゆるばた売りというのですが、百姓は商人に売れば養連に売ったより大体百円か二百円よけい高く売れるのです。そういう問題と、共済の方は、はずれても、いつまでも金がこないというような関係で、共済に数字を乗せないでやった人が相当あったわけなんです。そういう人がぴしゃっと首を切られちゃったので、これがほんとうに帳簿を当って見ると五割以上、六割以上も制限になってしまった。それから、種屋が宣伝のためにあっちこっちの部落へ種をくれて、ぜひうちの種を掃いてくれないか、よい種だからというので、一部落に二十グラムか三十グラムを無償でくれたのです。そういうところからも全然来なくなってしまった。こんなことでは大へんだというので、農協へ行って聞いてみたところが、何としても上からの指令でぴしゃっと切られちゃった、一分の余地もございません、じゃ蚕業指導所の方へ行ったらどうだというので、すぐさま熊谷の蚕業指導所の方へ行って所長と会ってお願いしたのですが、私の方では上の県段階から数字を示されたのでどうしようもありませんと言う。しかし、自主調整だと言いながら、何としてもこれじゃ無理じゃないかというので、電話をかけてもらったところが、病気でどうにも掃けなかった人、こういう人で桑園を三反歩も持っているというような人は気の毒だから、晩秋から繰り上げて掃いて下さいというようなわけで、公文書で出してもらったのです。ちょうど埼玉では、晩秋から初秋に、病気で特に去年休んだというような人に限り繰り上げて下さいという通知で、大体埼玉県で五万グラムですが、これだけは繰り上げて掃いたわけなんです。  それで、いよいよ今度は初秋を掃いたのですが、八月十三日になっていよいよ掃くのは掃いたけれども、全体の中の数字から数字を動かしただけで、あとの補てんが来なかったらやはりどうにもならぬということで、やはりそのときには種に困っている人は県庁へ陳情に行こうじゃないかということで話をしたところが、九時半に県庁前に百人以上の農民が集まって、今度の二割調整というものはどうしても仕方がなければ認めるけれども、全然掃けないというような人の場合は認めてくれというわけで陳情したわけなんです。それで、現在、晩秋のときになって、ほんとうに理由があってちゃんとした証明のある人たちに限っては、それじゃ幾らか不満を解消するくらいのものは出そうというので、現在スズメの涙ほどの補てんが来たために、農民もまあまあがまんしているような状況です。  そういうわけで、ほんとうに、今度の二割制限というものは、自主調整だと言いながら、ほんとうははっきり上の方から来たので、自主もへちまもない強制調整だというようなわけで、いくら政府のやることでも、今まで桑を植えろ植えろで蚕具や何かもない金で買わしておいて、あまり無理じゃないか、こういうのが百姓の持っている感じです。  それで、現在どういう状態になっておるかというと、埼玉で座繰り製糸というのがありますが、その座繰り製糸に出している養蚕組合は、座繰りだけは千四百円で買ってもらえないのだから、とにかく百五十円だけは協定掛目より負けてくれというので、強引に今全部やってきています。それで、どうしたらいいのかと思っているのですが、どうにも負けてくれなければ今度から買わないと言われているので、泣き寝入りの状態のようなものも出ていますし、今度も、あしたあたりからみんな繭を出すわけですが、先々見通しをつけても、製糸は要らないというし、それで、全面乾繭した場合に、晩秋がすぐ出てくるのだから、結局来年の二月ごろまでは値段がきまらない。そういうことになったら金利や何かで差し引かれて、どこまでいっても千円か千二百円でいくのだったら、千円くらいで売ってしまおうかという農家もあるし、また、その弱みに業者がみんな入ってきて、とても政府の言うことはあてにならないから売らないかと言ってきている。ほんとうにどうしたらいいかというので悩むのですよ。  それで、山部だって桑を抜けば米麦が作れるのですが、借金で買った回転まぶしや何かはどこへも持っていき場がない。そういうような状況ですから、この百姓の不安だけはぜひとも取り除くような手を何とか打ってもらわぬことには非常に困るということだけを申し上げて、終りたいと思うのです。
  97. 松浦周太郎

    松浦委員長 萩原運平君。
  98. 萩原運平

    ○萩原参考人 重大な蚕糸業の問題に対しましてこういう機会をお与えいただきましたことを衷心から御礼を申し上げる次第でございます。私、群馬県の一単協の組合長をしております萩原でございます。春の産繭の取引については諸先生方には非常に大きな御配慮をいただきまして、不安定のうちにも非常に大きな御心配をいただきましたことを、またここに重ねて御礼を申し上げる次第でございます。  蚕糸業の安定という問題につきましては、政府におきましても、この安定法によって蚕糸業をきわめて順調に推進をするという大きな考え方から、私ども養蚕業を営む者にとりまして非常に力強い法案を作られまして、自来、私どもは、この政府の大きな方向に向いまして、忠実に養蚕農民と取り組んで、産繭あるいはまた産繭の処理をいたして参ったわけでございます。生糸の価格安定を政府がおやりになりました動機は、私どもが申すまでもなく、生糸を消費する外国から、戦前、戦後を通じまして、日本の生糸は非常に価格が乱調子で、機屋さんとしても仕事を進めるのに非常に危険が伴うから、ぜひ日本の生糸は価格を安定してくれるようにという要望が非常に強かったことは、先生方もよく御案内の通りでございまして、この海外の需要者の要望にこたえるために、政府におきまして、こうした施策をいたしまして、円滑な蚕糸業の推進に大きなお力添えをいただいて参ったわけでございます。私どももまたその線によりまして蚕糸業を強く推進をして参ったのでございます。こうしたいわゆる繭糸価格の安定がたまたま何となくくずれんとするような様相を呈したのかどうか、非常に最近の糸価が、混迷といいますか、こんとんといたしまして、その後落ちつくところがわからないというような方向に暴落の一途をたどって参ったようでございますが、これらは、やはり大きな蚕糸行政のあり方等があずかってこの生糸価格の乱高下を示したものではなかろうか、そういう印象を私は強く持っておるわけでございます。もちろん、繊維界の一般の浮沈の波に落ち込んできたと言えばそれまででございますけれども、いわゆる繊維の全体の量に比較いたしまして、蚕糸の占める分野は非常に少いのでございますから、当初政府がお立てになりました蚕糸の基本法をほんとうに堅持するというふうな方向をはっきりいたしたとするならば、あるいはまた、これを堅持するというふうな方向が釈然といたしましたら、これほど蚕糸業がくずれる、いわゆる生糸価格がくずれはしないのではないかというふうな印象も——私ども群馬の場合は、米を売っても三十五億、麦を売っても三十五億、合せて七十億にしか換金分野はならないのでございますけれども蚕糸業は三季を通じまして七十億以上のウェートを占めておる仕事だけに、私ども強く強くこの問題について常に神経を過敏に考えておりますだけに、いわゆる産繭処理の問題あるいは蚕糸行政の動きに対しましては常に大きな関心を持っておるのでございます。  蚕糸業の安定法に何となく不安感を持つような印象を私ども持っておるわけでございますが、先生方にはこれらのことは申すまでもなく十分よくよくお見通しのことでございまして、この大きな方向につきましては、誤まらざる施策によってこれをやっていかれることはもちろんでございますけれども、どうか、私どもの願うところは、蚕糸業をほんとう政府の力でがっちり一つ方向づけていただいて、輸出の産業でございますので、かつてはこの蚕糸業は七十万俵の生糸を生産しまして五十万俵の輸出をいたしまして、非常に日本経済に寄与したような事実は先生方も御案内の通りでございまして、現在は三十万俵前後でございますから、政府ほんとうに力強くこの仕事に対して大きなお力添えを願いましたら、いわゆる販売等に対しまして十分ごめんどうが願えましたら、それほど不安な蚕糸業でもないのではないかというふうな私ども考えを持っております、またそこに期待をかけておるわけでございますので、どうか、私ども養蚕農民といたしましては非常にろうばいをいたしておるこの事実を、ぜひ一つ先生方の特段の御配慮によりまして、三十三生糸年度の蚕糸業の安定化はもちろん、今後におきましてもぜひ一つ蚕糸業の問題につきましては安定方向によってこれをお救い下さることをひたすらお願い申し上げる次第でございます。  そこで、私どもも、この蚕糸業につきましては、ここにいらっしゃる五十嵐先生等の教えを受けまして、常に関心を持っておることでございますが、この二、三項、あるいは四項、五項の程度のものもぜひ政府において今後より強く実施いたしまして、法の上においてはっきり蚕糸業を救済するような方向を打ち立てていただきたいということを心からお願いを申し上げる次第でございます。  その一つは蚕種の製造についてであります。ただいま申されたように、蚕種の数量は、二割制限するといえば二割を制限するというふうなことで、忠実に実施をいたしておりますけれども、その需給の安定、バランスをとるためには蚕種の製造を国家が管理いたしまして、いわゆる製造の制限をするくらいにまで蚕種業を割り切っていただきたい。しかも国家が蚕種の製造管理をいたすと同時に、蚕品種の統制をはかっていただきまして、いわゆる製糸家の希望するところのりっぱな生糸を作るということと、能率を上げてコストを切り下げるというふうな製糸ができるような繭をとりまして、合理的な蚕糸政策をお立てを願いたいということがその一つでありますし、生糸の販売等に対しましては、国家が管理を願いまして、いわゆる公団方式のようなことで、無益な売りくずし等を避けるようなことで、強力な販売体制を確立していただきたいということがその二点でございます。なお三点といたしましては、生糸の消費宣伝ということを非常に政府も大きく取り上げていらっしゃるようでありますが、生産農民に対して宣伝費を出せと言えば、生糸のことについては非常に神経過敏であり真剣でございますから、喜んで一貫目四円を出すというのが農業協同組合のわれわれが扱う現実の姿でございます。そういうことから、ぜひ宣伝を最も合理的に願い、なお生糸の製品の科学的研究をも十分国家の力でお尽しを下すって、原糸を売るなり製品を売るなりの処置を真剣に一つお取り上げ願いたいということがその四項でございます。なお、生産制限をするということに対しましては、政府からお示しを願いましたことをわれわれも忠実に実行しておるのでございますが、これを実施するには、なお桑の掘り取りというようなことも今後織り込まれて参りましょうけれども、これらの問題に対しましては、あくまでも、掘り取った桑園の作付転換に対しましては、大幅な助成措置を講じていただきたいということでございます。なお、土地改良等もあわせ含めたところの畑地転換を願うことに対する助成を願いたいということでございます。  以上を中心として、今後の蚕糸行政をさらにより強くお進めいただくことをひたすら希望申し上げる次第でございます。  今回の農業協同組合の立場から自主的乾繭をするという問題に対しましては、私ども合長としては非常に大きな責任負荷でございます。繭の乾燥は生糸を製造する過程の生命といわれておる仕事でございます。このいわゆる製糸の生命をかけての乾燥処置を、自主的の乾燥によらなければ助成しないかのようなことも、事実はどうか知りませんけれども、私聞き及んでおるのでございますが、こういう重大なことを農業協同組合の責任によって進めさせるということは、実にわれわれとしてはその責任を負い切れないというふうなことも考えますので、今回のこの蚕糸対策に対しましての政府のお考えのあるところ、いわゆる繭に対する価格の問題等に対しましては、団体協約の線で推進いたしましたいわゆる相手方製糸あるいはその団体、養蚕農民との間に結ばれた契約によって行う取引に対しては、これまた乾繭取引と同様な措置において御配慮いただきたいということを、私協同組合の立場からひたすらお願いを申し上げる次第でございます。  申し上げることは先生方に非常に御無礼なことであったかと存じますが、何としても真剣な蚕糸業界だけに、あえて申し上げたことを、お許しいただきたいと存じます。
  99. 松浦周太郎

    松浦委員長 稻葉芳藏君。
  100. 稻葉芳藏

    ○稻葉参考人 全国の桑の苗木を生産いたしておりまする農民機関の代表の稻葉でございます。非常に調弁で、お聞き苦しい、理解に苦しむような言葉が出るかも存じませんが、御賢明なる諸先生方のよりよき理解をいただきたいと存ずる次第でございます。  先ほど養連の会長さんが申されましたように、安定した基盤の上に立っての養蚕業であった、千四百円を堅持された養蚕業であったということでございます。その養蚕業を維持するに必要なるところのお蚕の食糧、つまり桑、その桑の畑は、寿命が大体植えつけてから十五年ないし二十年というのが常識でございます。それ以上経過しますと、生産力が低下いたしまして、引き合わないような状態が出て参ります。いわゆる老廃桑園、老朽桑園というような姿になって参りまして、低能率の桑畑になって参ります。それを補う意味におきまして、養蚕農民は年々多少ずつの植えかえをいたしております。これを補うのが桑苗を作っておりまする生産農民でございます。終戦後生産量が著しく増加いたしまして、その数量は一億数千万本に達しているのでございますが、それも、お互い組合員の自粛自戒によりまして、逐次軌道に乗りまして、今日では大体七、八千万本の桑の芸田木が生産されておる次第でございます。  そういたしまして、この苗木を生産いたしまするには、一反に投下する資本金といたしまして約五、六万円の投下資本が要るのでございます。生産に要する年月は二カ年でございます。昨年度原苗というものを作りまして、それをことし本苗に直すのでございます。でございますので、桑の苗を植え付けられるようになりますのには二カ年の年月を要するのでございます。その投下いたしました資本が、一反歩に五万ないし六万投下されておるのでございます。そういうふうに、貴重なるところの農家のやりくりの金を投下して桑の苗が作られておるということを、まずよく知っていただきたいのでございます。  ことしの六月に、突如といたしまして、国の政策といたしまして夏秋蚕の二割の生産制限の問題が生まれて参りました。なお、閣議の了解事項といたしまして、ことしの暮れから来年にかけて低能率の桑園の作付転換ということが取りきめられた模様でございます。低能率桑園はどんどん引き抜け、こういう政策のようでございます。これを実施いたしますと、私どもの作りました桑の苗木は本年度は要らないものである、こういうことに結論づけられるのでございます。桑の苗木は、人気によりまして多少価格の上下がございます。ことしの夏秋蚕期に二割の桑の葉が余るのでございます。そうすると、さなきだに、桑の苗木は安かろうということに養蚕農民はぴんと頭にくるのでございます。そこに持ってきまして、老廃、いわゆる低能率桑園の作付転換、こういうことでございますから、これはもう、植えなくてもよろしいんだ、生産を制限するなら植えなくてもよろしいんだという結論になりまするので、桑の苗木はもう今後は植えないのだという見通しに立たざるを得ないのでございます。これは、とりもなおさず、二カ年かかってようやく資本金を蓄積して、そうして投下した資本金、おおよそ五億一千八百五十万円という金額を生産農民が投下しておるのでございますが、この資金が返ってこないのでございます。よりまして、桑苗の生産農民の塗炭の苦しみがこれから始まろうといたしておるのでございます。桑を専業にいたしておる方も相当ございます。これが従来は八月から九月に桑の苗木の契約が始まります。十一月初旬には受け渡しが始まります。取引は十月をもって終了いたします。そうしたいわゆる売買双方とも十月には勝負が終ってしまうというような状況下にある桑の苗木が、今日まだ一本も、ほしい、御相談しようというような声が起らないのでございます。このままにいたしておりますると、私ども関係いたしておりますところの生産農民は、泣いても泣き切れない、死んでも死に切れない。餓死するばかりでございます。  これらの事情をよりよく御認識いただきまして、これの対策を緊急に当農林委員会として御樹立いただきまして、私ども農民のこの苦しみを一刻も早くお救いいただきまするように、諸先生方に伏して御願い申し上げる次第でございます。
  101. 松浦周太郎

    松浦委員長 これにて参考人の意見陳述は終りました。  これより参考人並びに政府当局に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。高田富之君。
  102. 高田富之

    高田委員 ただいま関係のそれぞれの方々からいろいろな実情をお伺いいたしまして、現在の状況が大へんな苦境にあるということにつきまして、非常に参考になる御意見を承わったわけでございます。養連関係の方々にはいろいろ今回の政府のやり方等について、苦しい中で御努力をなさっておることにつきまして、ほんとうに敬意を表しておる次第でございます。  そこで、まずお伺いいたしたいのですが、今度の二割調整のことにつきまして、実はこの前の農林委員会大臣にお尋ねいたしましたが、二割調整の状況等については政府当局から何らの説明がないわけであります。そこで、重ねてお伺いしましたところ、ごく概略は説明しましたが、これも責任ある説明ではないのでありまして、二割調整はもっぱら農民団体が自主的にやったことであって、全養連に尋ねてもらいたい、政府の関知するところでないという御答弁であったわけであります。そのために、私ども非常に遺憾に思いまして、名前はなるほど自主調整であるかもしれないが、私ども考えとしては自主調整とは受け取っておらないのであります。そこで、その実態をもう少し明確にしないことには、この問題はきわめて重大な問題であるということで、きょうの機会をいただきまして真相を突きとめたい、こう実は考えております。  ただいま全養連の御説明によりますと、あなた御自身も二割調整には本来大反対を主張された方であると承わったのであります。そこで、非常に不可解なんでありますが、会長さんも反対論者であり、また、全養連の主催する全国養連大会におきまして、六月十七日であったかと思いますが、全会一致をもって夏秋蚕二割調整の反対が決議されている。各主要県の県養連の責任者の方々も全部おいでになっておったように思うのであります。そういうふうにいたしまして、養蚕団体といたしましては、実際問題として組合の規約なんかはどうあろうとも、あれ以上の意思決定はないと私は思います。そういうようにしてきめられたものが、いつの間にか、しかもわずかの期間であると思いますが、最末端に至るまでぱっと行われるという実情は、私は非常に不可解なのです。  それで、先ほどの御説明によりますと、会長会をお開きになって、会長会で全体の大会の決定をくつがえされたような御説明があったように承わりましたのですが、中央会の規約かなんかで、こういう会長会というようなものは全体の大会よりはもっと権限のあるようなものになっているのですか。まずその点をお伺いいたします。
  103. 田原徳

    ○田原参考人 お答えをいたします。  大会におきまして満場一致をもって反対という御意見があったわけでございます。私どもといたしましては、大会の意思を尊重いたして反対をいたすか、あるいは、これに対しまして、別に規約の上ではございませんが、全養連という一つの決議機関がございます。大会においてそういうような御意見がございましたので、直ちに全国の会長会を招集いたしまして会長の皆様方にお諮りいたしました。そこで、しかし今日の事態といたしましては、どうしても繭糸価格を維持し、安定法を守る上においては政府の出資と、政府の生産調整と、われわれの生産制限というものが相一致していかなければいけないのだというお話がございましたので、会長会においてこのことを諮りましたところが、大会においてああいうお話はあったけれども、これを一つやらざるを得ない、やらなければ価格が維持されないというような印象を受けましたので、そういう決議になりました。従いまして、これを役員会にかけまして再確認をいたした、こういうことでございます。
  104. 高田富之

    高田委員 先ほど県養連の中村さんのお話によりますと、五月二十九日付の実務要綱というようなもので、農林省はすでに種繭を二割夏秋蚕については規制するということを強力に指導する旨の指令のようなものが出ておったということも今承わったわけでありますが、いずれにしましても、そうしますとだいぶ日付が古い話でありまして、農林省においてはずっと前からすでにその既定方針で、蚕種業者等に対しては相当の強い指示をやって、態勢を整えてしまっておって、ただ形式を自主的なものにするために、あなた方の方に対して——おそらくこれは、大会等のああいう決議もあったことでありますから、さらに強いお小言か何かがありまして、そうしてあなた方の方でほとんど手をかけないように割当表なり何なりをもう手早く全国の各県へ邊されてしまったんで、万策尽きてあなた方はついにこれを承認せざるを得ない破目に陥ったんじゃないかというふうにわれわれ想像するのですが、その間の事情はどういうふうになっているのですか。
  105. 中村兼治郎

    中村参考人 ただいまの御質問でございますが、その生産制限に対する実務打ち合せ要綱というものは、先ほど事務局の方でお入り用だというので、御参考に差し上げておきました。実は、私どもも、やはり長野県の会長といたしましては、この生産制限には反対をしなければならないので、会長会議においても私は反対をいたしました。それを政府の補償もなくて持ち帰ることはできない、こういうことを申し上げましたが、先刻来申し上げますように、繭値を維持するためにこれはやむを得ない措置だからこれをのめ、こういうお話でありまして、全養蚕家が八千七百五十掛の繭値を維持することができれば満足すべきじゃないかというようなことで、一応県へ帰りまして説得はいたしましたものの、やはり今日でもなおくすぶっておるというのが現状でございます。なおかつ、その二割制限を私どもが実行いたしましても、その繭値が維持されない現在におきまして、一そう私ども指導者といたしましての立場が窮地に陥っておるというのが現状の姿でございます。
  106. 高田富之

    高田委員 そうすると、大会後開かれました役員会で、これを全養連が承諾したというのですか何ですか、やむを得ず認めた。そのときに補償のことについては何か当局に言ってありますか。補償要求は出してありますか。
  107. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。  数字をあげてどれどれというようなことは別に要求はいたしませんけれども、生産制限に伴う損失と、それから、団体がたくさんの職員をかかえておりますが、それがために運営が非常に困って参る、従いまして、農民と団体に対しまして損失の補償をお願いいたす、こういうことを申し述べてあります。
  108. 高田富之

    高田委員 この間の群馬県の大会は、やはり養連の参加された、何か全養連主催だったかと思いますが、大会がありまして、群馬県においてはこのたびの損害が、どういう計算であったかよく聞いておりませんけれども、九億とかいうことで決議をされたというような話でございます。これはいろいろ計算の仕方はあろうかと思うのですけれども、補償を要求されるからには、あなた方全養連で全般的に考えられて、おおよそ各府県に大体このくらい、全体としてこのくらいのところは最低限ぎりぎり要求したい、また団体としてはこうだというような、何かめどをお立てになっておりますか。
  109. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。  当初二割の生産制限という数字をはじき出しました際に、昨年の秋繭実績は千七百余万貫、五十万貫という数字も出ておりますが、はっきり記憶いたしておりません。千七百余万の貫数がある。これを制限いたしまして千四百万貫という目安を一応立てたわけでございます。そこで、そういうようなことにおいて補償を要求しようではないかというような意見を出し、そうして、先ほど申し上げましたように、数字をもって要求はいたしませんでしたけれども、損害に対しては補償をしてもらいたいということは、大会においても相談をいたし、またわれわれとしてもいたしたわけであります。しかし、これに対しまして、いろいろ意見の中には、価格を支持されることが、これが補償である、千四百円という価格を支持するためにする制限であるから、その価格を保証されることがすなわち補償である、こういうような意見が出まして、その後、私どもとしては数字をどれこれというふうにまとめたもので政府要求はいたしておりません。ただ、内部にそういう話し合いがあったことは事実でございます。
  110. 高田富之

    高田委員 あなた方の御苦心のほどは、また立場もよくわかります。決して攻撃するわけではないのです。わけではありませんが、いやしくも大会であれだけ皆さんが熱烈に反対を主張され、また、あなた方の意見も、大体価格を維持するために、農民を保護するための法律だ、しかるに、価格を維持するためにといって、農民を犠牲にして維持したのでは法の精神がくずれる、あなたのおっしゃる通りだと思うのです。これは二割制限をして価格を維持しようということ自体が根本から間違っておる。これは法律の精神に違反しておる。農民にしてみれば、価格を維持してもらうため生産を制限されたのでは、ちっともありがたくない。まして、価格が下って制限をされたのでは、これは補償にも何もならない。だから、これから制限に反対しても、やってしまったことですから仕方がないですが、問題は、これに対する補償要求は農民ほんとうの声だと思うので、あなた方の主張も、もっと自信を持って、数字的根拠をあげて徹底的に要求すべきだ。そうでないと、今言われたような態度では、結局補償要求をしていないことになりますよ。価格がどうのこうのと言っておるが、それとこれとは別の問題ですからね、だから、相当強く出ていく必要がある。今農民が一番不安に思っておることは、この段階で一人々々の農民ではどうすることもできない、結局全国段階で、全国のまとまった養連の力で何とかこの農民の声を政府に強く反映させたい、こういう声が末端には非常に強いわけです。ですから、この際筋の通ることはもっと強く主張されなければ、今度は逆にあなた方が農民の不信を買うということになっては遺憾でありますから、この点について、ただいまお聞きしたところではまだそこまで考えておらないようですけれども、これは非常に困ると思うのですが、早急にそのことは考えておいてもらいたい。群馬県の養連が参加した大会で九億という数字を出している。ですから、それらの点についてもぜひ十分御検討願って、早急に強い声を出し、またそういうことが夏秋蚕対策に強く手を打たせることになるのですから、いわばおとなしく引っ込むのでは話にならない。この二割制限くらい人をばかにした話はないとあなたもおっしゃったが、全くその通りだ。自主調整ということもあるけれども、いよいよもってあなたの方でも責任を持てない。政府でも責任は持っていない。だから、末端に行くと、割当自体がでたらめになって、めちゃくちゃになってしまう。  そこで、次に割当をお伺いするのですが、いよいよ自主調整という形にされたために、今度は、割当の基準とか、昨年の実績をどうしろとか、こういうものには割当をやらなくともいいとかなんとか、こまかい割当実務要綱といいますか、そういうようなものはあなたの方がこしらえられたものですか、それとも農林省が作ったものなんですか。
  111. 田原徳

    ○田原参考人 案は農林省で作られたものであります。
  112. 高田富之

    高田委員 そうしますと、基礎数字、各府県別数字まで農林省がすっかり出してきて、何々県にはこれこれ、そしてこれを割る割り方については、昨年度作った個人冷々の実績のある者に、その実績の何割減かのものを割り当てるようにしろ、こういうところまで農林省は指示したのですか。
  113. 田原徳

    ○田原参考人 案は農林省が作ったものでございます。数字は私どもが一緒になって作ったものでございます。
  114. 高田富之

    高田委員 そうすると、数字にはあなた方も多少参加をして、農林省の案に多少手を入れたわけですか。そうすると、今度は各府県別割当ができますね。これは相当重要なことなんです。法律があればちゃんとできますけれども、自主ですから、思った通りどうにでもできるわけです。それじゃ困るわけですから、割当をさせるには何らかのこういう方法でこういう基準でやれ、去年なら去年の実績とか、そういうこまかい割当の仕方について全国で統一した指示は、あなたの方でされたのですか、農林省でしたのですか。
  115. 田原徳

    ○田原参考人 府県の方に対しては農林省の方で蚕糸主任官会議ということでやったわけであります。
  116. 高田富之

    高田委員 そうしますと、数字は農林省で出してきて、一応府県別に分けて、それをあなた方は一応目を通した。そうして、あとは、府県別に割当られたものは農林省会議で各府県の蚕糸課の方へこまかい指示をやって、そうして蚕糸課の方でこまかい割当の方は一切やった、こういうことですね。
  117. 田原徳

    ○田原参考人 それは違います。農林省が案を作ったものに対しまして、われわれが数字をきめまして、それで農林省の方でいろいろ主任官の方にこういうような案があるということで審議された。われわれの方では、ブロック別会議というものをやりまして、各府県の参事を集めましてブロック別に数字の割当をした。
  118. 高田富之

    高田委員 それじゃ、梶原さん、一つその点お答えを願いたいのですが。
  119. 梶原東一

    ○梶原参考人 先ほど田原会長から申し上げましたように、いろいろの数字につきましては、私どもの方で正確な数字を持っておりませんために、農林省の方で数字的のいろいろな問題はやっていただきました。しかし、それは一応農林省と私どもの方と打ち合せまして、農林省では蚕糸主任官会議を開き、私どもの方では全国蚕糸会を開き、さらに各ブロック別に分けましてその数字を示して協力方を求めた、こういうことになっております。
  120. 高田富之

    高田委員 両方でやったということですが、そうしますと、要は農林省の方で基本的なものは作成して割当をしたわけですね。それに対してあなた方の方はむしろ協力したという形ですな。そう受け取っていいですね。
  121. 梶原東一

    ○梶原参考人 形はあくまでも自主的でございますということを申し上げておきます。
  122. 高田富之

    高田委員 われわれは、ここでは正直な実態を知りたいのです。形の自主的なことは初めからわかっているんです。ほんとうのことを教えていただきたいんです。ですから、おっしゃる通り、実質的には農林省で数字を出して農林省で割り当てて、そうして全国の主任官会議でこれを指示していった、その線に沿ってあなた方も協力態勢を整えた、こういうことにとっていいと思うのですが、いいですね。——そうしますと、今度はそれの各部別とか市町村別、個人別の割当ということは非常に重要な問題なんです。何を基準にしてどうやって割り当てるかということは、中央段階ではあなた方の方で割当の基準なり方法を決定して自主的に——農林省に相談をしたか報告したか知らないですが、自主的にやったものか、それとも、全然中央ではかまわないで、そんなことは一切府県にまかせちゃったというのか。割当基準、その方法ですね。その点を一つ個人割当まで御説明願いたい。
  123. 梶原東一

    ○梶原参考人 中央では、お説の通りに町村とか個人まで割り当てる資料もございませんし、そういう能力もございません。従いまして、府県別にその割当をいたしまして、あとは県の蚕糸課あるいは主務課と県の養蚕団体とが相談をして末端に割当をする、こういうことになっております。
  124. 高田富之

    高田委員 そうしますと、各府県で割当の仕方がまちまちであり得るわけですね。
  125. 萩原運平

    ○萩原参考人 まちまちであるとは存じません。一応一つの方針を示しまして、結局昨年度の収繭数量に対して八割になるような、たとえばグラム当りの収繭量とか、その他のいろいろなものを勘案いたしまして、そうした割当を府県にいたしました。府県ではそれぞれを同様な方法で郡なり市町村に落した、こういうことになると思います。従いまして、いろいろな面に、先ほど先生からもお話がございましたし、先ほど金井さんからお話もございましたように、特殊ないろいろな事情がございます。そういうような事情に対しましては、県におきまして特に調整をしていただくように、ある程度の予備蚕種といいますか、そういったようなものをお与えしてあるわけです。ですから、これは府県の全然まちまちな方法だとは言えないと思います。一応は一つのまとまった方法でやるようになっておる。いろいろな特殊事情については府県においてそれぞれ違う事情も出てきておるだろう、こういうように考えます。
  126. 高田富之

    高田委員 単協の萩原さんにお聞きしたいと思いますが、あなたの方では、上から割り当ててきたものを個人別に割り当てなさるときには、何を基準にして割当をなさいましたか。
  127. 萩原運平

    ○萩原参考人 単位協同組合が二割制限の蚕種を配分することは、県の方から郡の養連へ示されまして、その郡の養連から示されたものを単協へ流しまして、単協では、その数字を基本にいたしまして、部落の組合長と養蚕部長というものがございまして、それの会議を持ちまして、前年度の実績を基礎にいわゆる二割制限をいたしたわけでございます。しかし、個々について部落がやるということはなかなか計算的に困難であるから、ぜひ組合の方で前年度の実績に徴して二割の制限の数字を個々に示してくれるということから、組合が大きな方向に基いて個々については計算をして各部落に流し、部落はそれを基礎にして部落が自主的にまた相談し合って決定したということでございます。
  128. 高田富之

    高田委員 そうしますと、萩原さんの方で割り当てられたものを部落でもって全体をプールするような考えでもって部落の実態に応じて割ったというふうなことのようですが、そういうふうにおやりになっておるとすると、個々の農民から、自分のところには割当がなかったとか、自分のところは特別に去年病気でやらなかったので、なかったとか、そういうような苦情はなかったのですね。
  129. 萩原運平

    ○萩原参考人 個々につきましては状態はおのおの変っておりまして、労力の関係で、初秋は幾らか内輪にして晩秋をやろうとか、あるいは初秋を多くして晩秋を少くするとかいうような、個々の経営の実情に即して、部落ではそれを自主的に相談し合って結論をつけたということでございます。
  130. 高田富之

    高田委員 私がしつこくこのことをお聞きしますのは、実は、他県のことはよく存じないのですが、埼玉県の場合特にひどかったんじゃないかと思うのですが、土地改良なんかやりました広範な地域は、去年度は特別実績が少いのです。そのためにそこが非常に悪い。去年の実績の三割くらいしか割当がなかった。それから、病気をしたなどという人は全然ゼロということになりますし、それから、養連を通さないで買ったという、いわゆるやみ種——やみでも何でもないわけですが、こういう人の分がゼロなんです。割当ゼロというのが非常に多かったわけです。そのために大へんなことになりまして、県へ行って聞いたら、調整用というのはほとんどないわけです。今あなたは調整用ということを言われましたが、これは普通の場合に考えられる連作や何かのときに取りかえたりする調整用の部分が三%とかなんとかある、その程度であって、そういう割当が特に少かった地帯とか、そういうものに対して追加割当をする分の調整というのは全然ない、県の御答弁はこういうことなんです。そういうことになりますと、これは末端へ行きまして生活権の剥奪みたいになる。しかも法に基かないのですから、勝手に種がいつの間にか来なくなったという形で、ゆゆしい人権じゅうりんの問題にもなると思う。法に基かない自主調整ということになりますから、こういうことがどこにも責任がないことで行われたのでは大へんだということがありますので、お伺いしたわけです。  それから、もう一つは、自主調整ということでほんとうに自発的に何から何までおやりになったのなら、損害賠償とか補償や何かを要求することは筋が通らぬことになる。自分の利益のために自分が調整して何かするということになりますから。私はそうではないと思うのです。結局ずるい形で自主の名前をおっかぶされてえらい迷惑をしているわけですよ。自主でも何でもないのに、おっかぶされて、それで、相場が下っても、これは調整の仕方が悪いからだというくらいになってしまう。そういうわけですから、私は、その点でもう少し強く、先ほど申しましたように要求を出していただきたいと思うのです。  それから、もう一つお伺いしたいことは、初秋の繭がもう出始まっておるわけですが、これにつきまして、全養連並びに県養連では、一応各府県とも現在のところでは製糸の方で引き取るというのはほとんどごくわずかのようですから、大体みんな乾繭ということになろうと思うのですが、これに対しまして、農民が、さっきの農家の方の御発言もあった通り、非常に不安なんですね。そうしてもらったのはいいけれども、非常に不安なんです。このまま長引きますと、これはもう早く何とか金にしなければならぬという叫びが下の方から出てくる。そのうちに相場は下るということになって、ますます不利になると思うのですが、これに対しまして、あなた方の方で打つ手としては、政府に要求するのはもちろんなんですが、政府がぐずぐずしている間に何か手を打たなければならぬ。それには、今の現金取引をやっているのにほぼ匹敵するくらいの、近いくらいの内渡し金を渡しておけば、ある程度長引いてもじりじりしてこないですから、持久戦ができると思うのですけれども、八百円ではしようがないと思うのです。この点について、全養連あたりでは、全国の養連の方々に対して、内渡し金をどういうふうにしてどうする、資金措置をどうするということについて方針を立て、御相談をなすっておるのですか。
  131. 田原徳

    ○田原参考人 内渡し金の問題につきましては、私どもの方としては、ただいま高田先生の御意見のように、一日も早く対策を立ててもらいたいという要求と同時に、資金のごあっせんを願いたいということをお願いをいたしたわけでございましたけれども、系統機関で——御意見は、どの程度までだということになりますとおそらく千円ということになるのだと思いますが、そこまでの手配ができませんので、一応九百円とか八百円とかいうようなものを系統機関を通じて各自調達をいたしまして、そして渡しておきますけれども、これに対しましては、私が冒頭お願いを申し上げましたように、国会において春の措置法に附帯決議もつけておられますし、法律は依然としてあるものである、こういうようなことはあり得ないという考えで実はおったのです。それで、この対策政府に一日も早く立ててもらいたい。それから、今の不足金の問題でございますが、これにつきましては、実は中金の方にもお願いをしたりいたしておりますし、日製協の方にも相談をいたしておりますが、私は、あくまでも乾繭をいたす、自主乾繭という名前で、自主という言葉はいささか身ぶるいものなんですが、しかし、やはりこの問題は自主乾繭ということでやっておりますので、手配をするべく努力はいたしておりますけれども、現在では、やはり九百円ということで、できておらないという実情なのでございます。
  132. 高田富之

    高田委員 こういう重大な段階各府県が条件が違うということは、やっぱり養蚕家全体の立場を弱くすると思うのですよ。たとえば、掛目協定のときに、指導費が内輪になったところもあったり外輪になったところもあったり、これは外輪にやるところさえあるくらいなのですから、もう少し強く全養連あたりで結束を固めて当れば、全部外輪にできると思うのです。それを個々にやらしてほっぽらかしておくと、戦いをしたところは外に持っていきますし、だめなところは内に持っていかれる。結局内へ持っていかれる方が多くなってしまうということで、今度の内渡し金でも、八百円のところもあるかと思うと九百円のところもある、あるいは千円のところもあると思いますが、そういうようなところは、全養連で集約しまして、最高のところで内渡し金も出すべきだと思う。繭価を下げたことを前提にしていますから内渡し金も下る。あきらめてしまって内渡し金から下げてかかる必要はないと思うのです。ですから、その点は対抗して、養連の手で全国的に結集して、その線で資金措置もし、内渡し金は千円なら千円という線で戦う、こういうふうにしなければ、全養連の存在価値もなくなってしまうと思うのです。その点はいかがですか。
  133. 田原徳

    ○田原参考人 実は、昨日役員会を開きましてその問題についていろいろ話し合いをいたしましたが、これはさきに御意見がありましたように、役員だけでこれをやっていくというようなことになりますと、全国的な問題としてやるためにはいささか力弱いというように考えまして——弱いというのは、もし至らないことがあってはいけないということでございますが、そういうような意味で、来月の三日に各府県の役員の合同会議を開こうじゃないか、ということは、そのころになりますと晩秋蚕の掃き立てということにもなって参りますので、取り急ぎ夏秋蚕対策を立てていただくためにも、全国の都道府県の養連の役員の、従来のいわゆる役員会というものの拡大会議一つやろうじゃないかということに決定をいたしまして、各府県の役員の方のお集まりをお願いするように、本日案内を出したようなわけでございます。従いまして、これに対しましては、われわれとしてでき得る限り事務的に方々にお願いをいたしておきますと同時に、そういうような全国の役員の結集した力によって、これをあくまでもわれわれが自衛の道を講じていきたい、かように考えております。
  134. 梶原東一

    ○梶原参考人 それから、今高田先生のお話のように、仮渡し金の問題等でございますが、初秋蚕等につきましては、仮渡し金どころではなくて、製糸の方で全然繭を引き取らぬと言っている府県が多い。それは仮渡し金どころじゃないのですね。八百円とか九百円じゃない。繭を引き取らぬ、こういうことを言っておる。なぜそう言うかということは、これはもう御承知通りに先物が非常に不安である。おそらく政府の百億が切れれば十六万とか十五万とかいったようなことになるであろうという考え方が多いわけです。それでは、製糸が実際今の清算相場で先物十五万台で品物を売りつないでおくか、あるいは現物の先売りをしておるかというと、そうではない。これはあくまでも相場師が金にするための清算の取扱い方であって、実際に十五万台で今のものを製糸側がつないでおると私ども考えてない。従いまして、私どもがきょうこういうふうにして参考人として呼ばれるという報が伝わりますと、きのうは先物四十円一躍上げております。これは非常な大暴騰であります。さらにきょうは二十円上げております。おとといから比べますと一挙に六十円の暴騰を示しております。そんなような状態ですから、いわゆる先生方の御努力、国会の動きといったようなものに市場は非常な細心の注意を払っている。ですから、先生方が必ずこれをやるぞというお言葉があれば、この市況は、十九万円までに先物が回復するかどうかわかりませんが、ある程度までは必ず回復する、そうすると、製糸だって、買わぬと言ったやつが必ず買ってくる、こういう段階になる、かように存じます。
  135. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 関連。  全養連の皆さんが大へんお骨折りをいただいたことはよくわかるし、今日非常につらい立場におられることもよくわかるのです。そこで、第一にお伺いしたいことは、要するに、さっきの御答弁では、夏秋蚕以降の二割制限をのむに当っては、政府が年間を通じて大体において糸価十九万円、繭価千四百円を維持する、こういう確約をとられ、もしくは具体的にそういう措置がとられるということを皆さんの方として十分検討をされて、その結果の上で、これならば大丈夫だということで皆さんが承諾されたのか、その間の経緯を少しはっきりしていただきたいと思います。これが第一点。と申しますのは、御承知通り、あの当時は、春蚕ないしは夏秋蚕の繭価維持対策として、政府の方は当初与党と一緒に百億というような線を出しておった。その後与党の皆さんや各方面のいろいろな関係から百五十億、こういうことであります。これでは足りないことは、少し専門家なら大体わかっているはずであります。政府も、この前の臨時措置法をきめるときは、百億で足りる、これで年間を通じて、夏秋蚕まで二割制限をすれば、価格維持はできるということでしたが、現実はもうすでに夏秋蚕については下落必至というような状況になってきた。この点について、皆さんの方、の見当なり、見通しと、また、政府側とはどういう約束があったのか。われわれの方にははっきり伝わりませんけれども、伝わるところによりますと、政府の方では、農林省と大蔵省との関係で、大体において百五十億をもって繭糸価維持対策についてはいけるんだというふうに、首を押えられている点がある。これらについて皆さんの方でどれだけの検討をされた上で政府の二割制限案をのまれたのか、そうしてその間に、政府とどういう約束なり何なりが取りかわされた上で二割制限案をのまされたのか。さっきの皆さんのお話では、とにかく二割制限をすれば繭価維持ができる、あるいは政府がするとこう言ったから、われわれは苦しいけれどもこれを大会の決議をくつがえして会長会議で決定した、こういうことでございますが、この点の経緯をもっと具体的に正直にお話しをいただきたいということ。  それから、もう一つは、二割制限の問題についても、さっきのお話では生産者が二割制限によってこうむるところの損害なり、あるいは団体についても皆さんの方で指導しておられるでしょうが、そういう損失補償については政府と約束しておると言っておりますが、これは具体的にどういう形の約束になっているのか。はっきり文書として補償の措置をとっておられるのか、あるいはだれが何と皆さんにはっきりした約束をしたから、それを信じたというのか、これらの経緯を明確にしてもらいたい。  それでありませんと、今まで政府の方では、全体としてはおそらくこれは次の問題になろうと思いますが、今までの答弁の範囲においては、これは全養連が責任を持った自主調整であるから、要するに二割制限についての農民のこうむる損害については補償する責任はないといって片方は逃げている、片方においては百五十億によって大体において夏秋蚕まで含めて千四百円の繭価維持ができるから、それでいいのだという建前で来ているわけです。ところが、今両方くずれているわけです。そのしわ寄せが全部農民に来ようとしておる。これから私どもがいろいろ政府に迫り、いろいろ与党の皆さんと相談をしなければならない点は、さしあたりの問題としてはこの問題です。恒久対策についてはいろいろありましょうけれども、さしあたりの問題としてはこの二点が中心になろうかと思うのであります。この二点ついて、どういう点があったかということ、形式その他内容、具体的に、だれとどういう約束をしたのかという点もはっきりしてもらいたいと思います。それでないと、今言われているように、政府の方の宣伝が勝って、全養連の自主調整でやったということになりますと、責任はもっぱらあなた方が負わなければならぬということになります。こういうことになりますので、一つこの点を率直にお話しいただきたいと思います。
  136. 田原徳

    ○田原参考人 ただいまの御質問でございますが、私どもは日本の国民として日本の法律を信頼しておったのでございます。従いまして、この繭糸価格安定というものは、われわれもまた要求すると同時に、国会の諸先生方が国会を通じて政府に対して十分に要求され、この法令に従って価格支持をされるものであると、私どもは、この蚕糸業法ばかりではございません、その他のすべての問題に対しましても、そのつもりで、安心して生活にいそしみ、仕事に励んでいるわけでございます。従って、過般国会を通じて社会党の足鹿先生でございましたか、大蔵大臣に対しまして、この百五十億というものは手切金という話を聞いているがどうかという御質問があったのに対しまして、大蔵大臣あるいは総理大臣もですか、重要産業であるから、これは決してそういうものではないという意味の答弁があったとわれわれは聞いております。当時のわれわれの心境から申しますと、御承知のように、春繭が掃き立てられまして、繭糸価格はまさに十六万円というような相場が出てきたのでございます。今十九万円を約束し、昨年まで増産一途で進んで参り、しかも十九万円の価格は維持されるものであるという保証をしてきているわれわれが、その場に来て十六万円という価格を見て全く動転してしまったという当時の気持を回顧してみまして、何ものでも、少しの材料でもすがりたいという気持で実は出ておったわけでございます。ところが、国会の審議の過程において、毎日のように人も出し、自分も来ていろいろ見聞きいたしておりますと、この二割制限をいたしますれば需給の調整ができる。これに対しては農林省からもわれわれの方からもいろいろ数字を運んでおります。ところが、昨年までの実績と輸出の見込みというものを考えあわせますと、数字の上からはやや需給の調整が維持されるという数字が出て参りますが、現実は今までの別の姿に作用されまして、横浜市場では人気がいろいろなことで左右されておりますから、いろいろ変ったものが出ておりますけれども、数字の上から言うと、一応は需給のできるような数字が出て参ります。従って、われわれは、先生方の御質問のことや、それから、私どもの方でも関係の国会の先生方のところにも毎日参りまして、いろいろ御意見を伺いますと、これは自主調整ができるものであると私どもは信じましたがゆえに、別に書いたもので補償してやるというようなことはありませんけれども、こういうところでそういうふうにお話しになっているということを聞きましたので、実はそれを信頼してやったのでございます。もしそれが手抜かりであったと言われますれば、これはどうもそのときのわれわれの気持が動転して、ついその手続がとれなかったということでございまして、これに対しましては、諸先生方の今後の対策、しかも附帯決議というものがあとで出ておりますので、これが対策を立てていただけるものと、かたく信じております。  第二点の補償の関係ですが、先ほど申しましたように、要求をいたしましたのですけれども、これに対しまして別に約束はございません。従いまして、まず価格維持をしてもらうということを前提といたしまして、そうしてこれらに対しましてはぜひ補償の道を講じてもらいたいということを、私は何回も局の方へ参りましてお願いを申しております。
  137. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 その点について聞いているのは、政府側のこれに対する回答なり何なりをあなたの方で要望されるのは当然だと思います。それに対して政府からどういう約束なりあるいは確認なりを得ておられるかということです。
  138. 田原徳

    ○田原参考人 これだけ補償してやるぞというお話しは別にございません。補償してくれろということは要求をいたしました。その要求は強くお願いをいたしております。
  139. 松浦周太郎

    松浦委員長 中澤君。
  140. 中澤茂一

    ○中澤委員 田原さんのその勢いで当初から政府に当っていれば、こういう問題も起きなかったと思います。しかし、本日はばかにお元気をお出しになっておりますが、一面、これは私に入った情報によると、閣議で百億を決定した、あとの五十億を何とかもらいたいという非常に弱い気持で、その間に、やみ取引と言えば語弊があるかしらぬが、五十億を出してくれるならば二割制限に協力しようという言質を当初取られたというような情報が入っておるのですが、その点は一体いかがなんですか。
  141. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。ただいまのような約束は毛頭ございません。
  142. 中澤茂一

    ○中澤委員 とにかく、われわれとすれば、昭和二十九年に繭糸価格安定法を作って、政府保証責任を持っておるのですから、政府がいかなることを言っても、はね飛ばしてもらいたかった。計算的に考えてみても、二割の制限で六百万貫の減産になる。これが千二百円で売って七十二億円、実際の日本の養蚕農民の減収なるものは六十億です。そこで、片方三千万貫に対して千二百円で売れば、これも同じ六十億なんです。日本の養蚕農民の立場から考えれば、千二百円になっても今の青立ち桑を作らない方がいいという計算も出るのです。だから、当初から私はその責任追及をただするのではないのですよ。皆さん参考人ですから、責任追及するのではないけれども、そういうものをのむ前に、そのために国会があるのですから、皆さんの方から委員長の方に申し入れをして、重大な問題が出たから一つ国会でやってもらいたい、こういう形をとってもらえば、われわれはこういう問題はどこまでも政府の責任を追及して処理する決意でおるのですよ。そういう点において皆さんの御連絡も非常に悪い。  そこで、この夏秋蚕に対しての対策というものは御承知のように全然できていないわけです。秋蚕対策のとき、三浦氏に、夏秋蚕は八方破れじゃないか、二割制限というものは不可能であると申した。たとえば、糸量の面から見ましても、十六匁というのが、ことしはばかに当ってしまって十八匁だ。長野県の場合は十九匁六というのが出ている。明らかに糸量の面からも二割制限なんというものはくずれてしまう。そういうことについて言えば、当初自民党の蚕糸対策特別委員会においても二百億という数字を出しておる。われわれ社会党も二百億という数字を出しておる。六万五千俵をたな上げ、七十億を乾繭とそれの補助率、こういう基本策を立てている。それを政府は二割制限は可能であると言う。さっき高田君が言ったように、二割制限が可能だというのはどういうことかというと、養連が実質的な二割制限をやるという。全然あなたの方にげたを預けている。そのあなたの方にげたを預けているところに、われわれが政府追及に非常に困難を感じている。だから、そういう点において何らのいきさつもなかったとしたならば、一体五十億ばかりのものを増額させるために何ゆえに二割制限というものをのんだかという問題が、やはり養蚕農民の立場からすれば全養連に対する不満があるのは当然だと思う。私も長野県で、養蚕地帯で、当委員会の前に少し意見を聞いて歩いたのですが、これはけしからぬと言っている。もう協力者を出さぬと言っている。こういう声が養蚕農民に非常に多い。そういうことから言っても、何かここに経過があったのでしょう。これは会長がわからない間にあるいは梶原参事が何か五十億増額の経過があったと考えるが、梶原参事、どうですか。
  143. 梶原東一

    ○梶原参考人 会長が申し上げた通りでありまして、私どもがそういったような約束を政府との間に取りかわした事実はありません。
  144. 中澤茂一

    ○中澤委員 もしなかったとすれば、これは完全に全養連というものは相当重大な責任を負わなければならぬ。されば、二割制限は、先ほど田原会長は、私の方も半分協力したのだと言って、だんだん泥を吐いて真相を言って、政府が、数字を作ってこれに協力せよ、そのかわり千四百円を維持してやる、だんだん泥を吐いたわけです。それならば、二割制限といっても、上から押しつけてきたならば、当然これに対する補償をどうするという問題はなぜ一札取らなかったかということを、私は会長を前にして言いたいのです。当然これは取れると思うのです。政府がそういうように頭から押しつけてきたものならば、当然、今まで増産奨励をやっていたのだから、二割の補償というものは政府は必ずとれという確約を取っていないというところに、私は全養連の大きなミスがあると思う。その点についてどうお考えですか。責任はないのだ、先ほど申したように、私は政府を信頼したのだ、政府の方はひどいのだ、こういうお考えだけですか。
  145. 田原徳

    ○田原参考人 先ほど申し上げましたように、すでに昭和三十三年の春蚕というものは掃き立てられ、繭になり、その処置は、製糸に持って参りましても、乾繭をしろと言ってもされなかったというような現状は、諸先生方においてもすでに御承知のことだと思います。こういうような十六万円という価格で現実に横浜で取引をされておりますから、実勢取引ということになりますと、ただいま先生が御計算になりましたのと少し違う数字が出て参ると思います。当時十六万円という価格から繭が取引されたといたしましたならば、相当違った価格が出て参ります。私どもは、そういう数字の問題よりも、むしろ千四百円というもので約束して安心してやれる、それから、今後も蚕糸業はこの繭糸価格定安法によって、しかも蚕糸業振興審議会が昨年初めてできて、この蚕糸業振興審議会が増産計画を立てておりますので、こういうようなことにあわせていくのには、この裏づけとして繭糸価格安定法というものがここにあって初めて成り立っていくのだということを考えまして、私は、この繭糸価格安定法をあくまで維持するためにどのような努力もしなければならない。従いまして、当初申し上げましたように、この夏秋蚕において——夏秋蚕だけのことですよ。夏秋蚕に対しましては制限もやむを得ないのではないか、当時の事情がそうでありましたので、気が転倒をいたしておりましたからと、こう申し上げたのは、そのことでございます。御了承を願います。
  146. 中澤茂一

    ○中澤委員 これは実際は前の須賀蚕糸局長を呼んで対決させたい。実際この経過がどうであったか、これは水かけ論であると思います。ほかの者から話を聞いてもわからない。だから須賀君と対決させるのが一番正しいと思う。  それについて、きょうは一体委員長けしからぬじゃないか。僕は文句を言いたいのですが、農林大臣は、この重大な問題をかかえて委員会をやっておるのに、大阪営林局の起工式に行っておるのは何事だと言いたい。きょうは農林大臣は出てきていると考えていたのです。それを完全にずらかってしまった。そこで、一応石坂政務次官が来ておりますので、今参考人の意見を聞いて石坂政務次官の所感はいかん、こういうことをお伺いしたい。
  147. 石坂繁

    石坂説明員 先ほどから参考人のお話を聞き、委員諸君との質疑応答を聞いておりますが、ただいまの中澤委員の御要求は、この質疑応答を聞いて石坂政務次官の感想いかんという点であります。しかし、この問題につきましては、中澤委員からもお話がありました通り、私からいろいろ申し上げますよりは、農林大臣がこの席で御答弁を申し上げるか、ないしは前蚕糸局長から申し上げた方が事柄の真相が得られるだろうと思います。私は別に感想を申し上げることは差し控えたいと思います。
  148. 中澤茂一

    ○中澤委員 これはどうしても前蚕糸局長を呼んでもらいたい。
  149. 松浦周太郎

    松浦委員長 おるかおらぬか、呼んでみます。そのほかの質問をして下さい。
  150. 中澤茂一

    ○中澤委員 さて、そこで、問題は夏秋蚕に対する対策です。二割制限をいかに追及しても、これは皆さんも御了承になって現に実施しておることだから仕方がないとして、夏秋蚕に対しては、一体全養連というものは、養蚕農民をどの方向に指導して、いかなる対策を持っていくお考えであるか。
  151. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。  先ほど来申し上げましたように、夏秋蚕は二割の生産制限をすれば価格は安定するものであるということを信じておりました。また、あの百億、五十億というようなことで一応価格は十九万円になった。また、それに近い価格でずっとおりましたことは御承知通りでございます。このようなものが不安人気というようなものに支配をされなければ、あるいは、政府が、またわれわれが計算をいたしました需給のバランスがとれて参りますならば、一応価格は安定していくものであるという考え——当時、私どもは、安定しなければ措置して保証されるという考えでありますから、安定するものだという考えでおった。ところが、ただいまのような安い価格が出て参りました。そこで、実は、この価格がこれほどまでにはならなかったのでございますけれども、夏秋蚕に対する対策もございません。日製協と相談をいたしましたところが、先ほど梶原参事から申し上げましたように、今年の夏秋蚕は最低繭価では保証できない、要するに、そのまま引き取れない、最初はある程度、半数以上は引き取れるものというふうに解釈いたしましたけれども、その後ますます暴落の一途を辿っております関係上、今度は全額引き取れないという事情が出てきたのであります。そこで、実は、国会の常に御配慮をいただいております先生方にお願いをし、あるいは特別委員会等もございましたのでお願いをいたしますと同時に、政府に対しまして、早くこれが対策を立てて、農民安心してこの夏秋蚕処理ができるように、そして、その対策が出ますれば——われわれの方といたしましては自主的に乾繭共同保管をして対策を待つ以外に方法がないというような状態も考えられましたので、会長会を開きまして乾繭共同保管をしておる。早く出たものは、長野県の問題が実は早く出たわけですが、長野県の八十万貫ばかりの繭が夏秋蚕という名前で——よその地方では初秋蚕という名で今出ておる繭ですが、長野では非常に早くて、先月の終りごろそういう話が出てきた。そこで、こんなことではいけないというので、一体どうしてくれるのだ、こういう問題が出まして、蚕糸局の方にいろいろとお願いをいたしましたけれども、これに対してわれわれが安心のいくような確たる御回答がございません。そこで、余儀なく、緊急に会長会を開きまして、一応これは自主的にというと身ぶるいするような話だけれども、これはやむを得ないから自主的に保管してしまえというので、これを全部保管をしたのでございます。保管をいたして、繭を一応持っておけるような形にして、しかも、仮渡し金は、先ほど申しましたように製糸の方から出ませんので、自分の方でできるだけ調達をいたしました。そこで、政府に対してこれに対する対策を一応立てろということを毎日要求しておるようなわけであります。
  152. 中澤茂一

    ○中澤委員 だから、自主乾繭という強力な措置をとって政府と責任を持たせて対決するのだという腹がまえができない限りはだめなのです。ところが、今長野県の中村会長は、長野県の場合も御承知のように農民資本による組合製糸が五つある。この組合製糸が五十万貫、それから四万貫を別に養連としての乾繭、三十万貫が営業製糸に渡っておる、こういう数字をさっき中村君が言っておる。そうすると、組合製糸があるから、われわれはその地区は乾繭しろ、組合製糸に持ち込め、こういう指令を郡へ出せば五十万貫というものはできるわけです。ところが、全国的に見た場合、これは不可能なのです。そうなると、自主乾繭自主乾繭と言って大声を立てながらも、一体自主乾繭を何割と押える自信を全養連会長として持っておりますか。
  153. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。  現在は十四県自主乾繭の決議をしております。これは全国の数の半数だろうと思いますが、この夏秋蚕繭の生産数から計算をいたしますと、これで八割程度になるのではないか。これは決議をいたした分でございますよ。  それから、一例でございますが、東北は初秋蚕が早いのでございまして、私どもの方の山形県は、私は福島でございますが、早いのでございますが、これは乾繭共同保管をいたしまして、昨日私どもの方の信連から一応県養連が資金を調達して、各部連に送繭いたしました。こういうように、これから漸次出て参ります県におきまして、強力にこの自主保管の件を昨日決定をいたしましたけれども、なお、今中村会長からお話のありましたのは、夏蚕繭のことでしょう。夏蚕繭の非常に時期の早い、こういうような全体の空気が出ない時代でございましたから、何ぼかということではないかと思いますが、私どもの方は十四県、八割程度のものは乾繭共同保管をして、諸先生方の対策をお待ちする、こういう態勢を整えております。
  154. 中澤茂一

    ○中澤委員 実際八割乾繭ができれば、これは戦いになるんですよ。ところが、今、さっき田原君が言ったように、いろいろ弱味につけ込んで相当な切りくずしが行われているということは事実です。そうなってくると、全養連として八割の自主乾繭を完全にやるという自信は果しておありですか。そこで、われわれは対策考えなければならぬ重大なことなんです。八割実際にやれれば、これは戦いになるんですよ。八割やれなかった場合は、これは再び敗北をしなければならぬ。そこで、あなたで数字がわからなければ梶原さんでもけっこうです。八割できるのかできないのかという問題です。
  155. 梶原東一

    ○梶原参考人 ごもっともな御質問でございます。私どももその点は非常に懸念をいたしております。従いまして、先ほど会長が申し上げました通りに、ただに全養連の役員だけでなく、あるいは府県の会長だけでなく、府県の養連の役員全員の御参集を願いまして、この趣旨徹底をはかると同時に、夏秋蚕対策をやりたいというようなことで、来月の三日にその大会をやることにいたしております。さらに、数日前の二十四日でございましたか、長野県におきまして、長野、埼玉、群馬、山梨の全国で上から四番までの主要県の会長さんがお集まりになりまして、この四県においては今度絶対に乾繭保管をやるんだ、つまり、乾繭保管ということに持っていかないと、今繭をただ渡してしまったということになりますと、いわゆる最低繭価を保証するというその権利をみずからが放棄することになる。従いまして、これはあくまでも乾繭保管をやって最低繭価を維持してもらう、こういうようなことで、一番産繭額の多い四県においてもそういうような決議をしました。先ほど申し上げました通りに、三日には全国の県段階の役員全部の御参集を願ってその徹底をはかる、こういうような計画でおります。
  156. 中澤茂一

    ○中澤委員 僕は会議のことを聞いておるのではない。大体これは勘でわかるんですよ。僕は長野県の場合八割できないという感じを持っておるのです。これはわれわれの養連会長が来ておりますから、養連会長ができると言えばやるでしょうが、今のままで会議ばかりやっていたって、八割できないという感じを持っている。大体本県の場合で六割から六割五分にとどまるのではないかという感じを持っておる。相当切りくずしの買い込みをやっておる。だから、そういう点について、全養連が実際八割十四県を指揮してできるという確信を持つならば、戦いに完全に勝ちます。だから、会長より梶原参事の方がわかると思うが、一体、あなたの勘で、何割くらいはとめてみせるというあれを持っておるか。
  157. 中村兼治郎

    中村参考人 ただいま中澤先生から、長野県の場合六割くらいしか乾繭ができないだろう、こういうような御推察のお話でございましたが、御案内のように、長野県は組合製糸がございまして、夏秋蚕の場合におきましては約六割が組合製糸に供繭されることになっております。あとが四割。産繭額の四割でございます。私は、先生方にいろいろなお話もお聞きしており、全養連へも参りまして、中央の情勢等も知悉いたしておりますので、来月の一日から県下各郡を回りまして、これが趣旨の徹底に努めるつもりでおります。春蚕の場合におきましては、私はそういう手段をとってはおらなかったのでございまするが、まだあの措置法のできない前に、すでに長野県においては九割の共同乾繭をするという申し入れがございました。その後、製糸の手になまで渡ったものも乾繭をするということで、八千七百五十掛と集荷指導費の三十七円というものを、それぞれ契約書にのんで、すなわち覚書にのんでなま繭で渡した単協はございます。それがために、ある程度まで、約二十万貫程度のなまで渡したものはございますけれども、それも乾繭共同保管をやったと同じ相場で製糸に引き取られておるという事実でございます。夏秋蚕におきまして、もし政府の裏づけというものがございますれば、あるいはこれはなまで、乾繭の必要はございませんけれども、現状のところでその裏づけがないのでございまするから、私どもは、あくまでも、先ほど来全養連の会長の言われますように、法律の精神を信頼して、あくまでこの自主乾繭に持って参る、こういう決意をいたしております。一昨日私が上京する前にも、ある郡へ参りましたところが、ちょうど養蚕危機突破大会をやっておいでになりました。須坂の養蚕危機突破大会で中澤先生からもお祝辞をいただいておるようなわけで、これらの会合にも私は出かけました。そうして、これが全面乾繭をするという決議をいたしておるような事情でございます。必ず先生方の御期待に沿うように、私どもはこれを推進して参るつもりでございます。この点は、私は、長野県といたしましてはお引き受け申し上げてよろしいと思うのであります。
  158. 松浦周太郎

    松浦委員長 中澤さんに御相談申し上げます。きょう災害まで全部やってしまいたいので、なるたけ簡潔にお願いいたします。
  159. 中澤茂一

    ○中澤委員 向うの答弁がだめなんです。
  160. 松浦周太郎

    松浦委員長 あなたはエキスパートだから、答弁しやすいように聞いて下さい。
  161. 中澤茂一

    ○中澤委員 今質問したことは、梶原参事に、長野県の場合を聞いておるのではない。おれの方は組合製糸が五つあるからやれる。全国的に一体何割とめる自信があるかということです。
  162. 梶原東一

    ○梶原参考人 私は、これは今後の市況の動きが非常に重大な関係があると思う。この調子で市況が、先ほども申し上げました通りに、ある程度回復するならば、これは完全にできるのです。と申しますのは、結局市場の先行きが不安であるから、先ほどちょっと高田先生からお話がございましたし、金井さんからもお話がございましたように、先になるとどうかわからぬ、それよりか今売ってしまった方が得だというような切りくずしが行われておることも事実であります。従いまして、この市況がこれより悪化するとか、この程度でとまっておるとかということになれば、なかなか容易ではないと思います。しかし、これが漸次上に上ってくるという態勢を示すならば、私は必ず八割程度のものは確保できる、こういうふうに考えておるわけであります。従いまして、市況のいかんで、これは結局先生方の影響でこういうことになっておりますから、それを一つぜひやっていただけば、八割はぜひ確保できる、こういうことであります。
  163. 中澤茂一

    ○中澤委員 それは、梶原さん、げたの預けっこをやっておる。あなたに政府のげたが預けられて、あなた方がわれわれ農林委員にげたを預ける。そんな手はないんだよ。養連というものは養蚕農民の団体なのですよ。相場の問題じゃなく、あなた方の指導力が一体何割までとめる力があるかということを聞いておる。相場なんか十五万になろうが、六割絶対乾繭させる自信があるかどうかということを聞いておる。指導力の問題である。それで何割の自信があるか。
  164. 梶原東一

    ○梶原参考人 相場の問題に関係なしにとおっしゃいますけれども、それはなかなかむずかしい問題だと思う。それは先生御承知通りだと思います。従いまして、私どもとすれば八割を絶対に下らぬように努力をする。自信と言われましても、それは今の段階においては非常におこがましいことになるのでありますので、最大努力を払う、こういうことにいたしたいと思います。
  165. 中澤茂一

    ○中澤委員 あと、時間がないし、災害をやるようですから、一、二問にしようと思いますが、全養連の田原さんにお伺いしますが、生糸織物消費宣伝費、これを農民から取っておるですね。一体幾ら取っておるか、その取る理由はどこにあるのか。
  166. 田原徳

    ○田原参考人 今日、繊維ばかりでなく、いろいろな製品が新聞、ラジオ、テレビを通じまして常に消費宣伝をいたしております。昨年までは、売手市場とでも言いましょうか、外国から、あるいは国内の消費者から買いにくるのを待って、いろいろな有利な条件を持ち出しながら販売いたしておったのが蚕糸業の実態であったことは御承知通りでございます。ところが、昨年以来不況になりましたとたんに消費が減ってきた。このときになって、消費の宣伝が全然ないことがいかに大きなわれわれの市場の逆転に速度を加えたかということ、また、私は、昨年から二回養蚕代表として外国に使いをいたしましたが、そういうような方面からの勧告もあり、また国内の消費の実態を見ましても、どの面から見ましても、絹のようなものでも、他のすべての商品がそうであると同様に、消費宣伝をしなければならないということを考えましたので、実は、これに対しまして、絹を着てもらうために消費宣伝の費用を作ろうではないかということをJSAに申し入れをした。ところが、これはすべて生産団体もまざって消費宣伝をしておるのだから、需要増進のために養蚕家の方でも出すべきだ、私どももそういうふうに考えましたので、今度はわれわれの方も一緒になって新しい宣伝機関を作って大いに絹の需要増進のために消費宣伝をしようではないか、こういうような話し合いが出まして、このことは蚕糸振興審議会においてもいろいろ御論議があったのでございますが、そういうような示唆もあり、それによりまして私どもは一応の目安を立てまして、今年から、われわれ生産者も一緒に消費宣伝をすることに乗り出そうではないか、こういうことになったわけであります。
  167. 梶原東一

    ○梶原参考人 養蚕団体が支出する総額を一億円といたしました。その一億円は、農林統計によります上繭数量によりまして各県に割り当てまして、その割り当てた額の養蚕家からのもらい方については各府県におまかせする。たとえば現物で繭を一つまみずつもらってやるというような府県もあるようでございますし、あるいはまた金額で幾ら幾らというようなふうにお集めになる県もあるようでございます。従いまして、府県で幾らになるかということは、大体金額にいたしますと三円から四円の間程度だと思いますが、取り方その他については一切その府県の地方実情において最も集めいい方法でお集め願いたい、こういうようなことでいたしております。
  168. 中澤茂一

    ○中澤委員 私は、それは一体養連のやるべきことであるかどうか、それは大きな疑問だと思う。これはむしろ農産物ジェトロを強化して、海外宣伝を政府の責任においてやるべきで、協力という気持はいいけれども養蚕農民の上からそれを取るということでは全養連のやり方は養蚕農民の立場だか何だかわからなくなってきてしまう。それは、皆さんがこういう勢いのいい田原会長をいただいておるのだから、政府に農産物ジェトロを強化せよ、これだけ予算を出せ、海外宣伝は政府がこれだけやれと言って、これは政府にさせることだと思う。その点については、田原会長、どうでしょう。
  169. 田原徳

    ○田原参考人 政府に対しましては、宣伝費の大幅な増額ということを、振興審議会を通じ、またわれわれの方でも強く申し入れをいたしております。その一助として——われわれ生産団体もいつもしわ寄せを受けるというのではございません。最終の生産者の方にいろいろな問題が出て参りますので、これに対して協力をしていく。政府に対してはもちろん大幅な増額を要求いたしております。それで、各団体で、蚕糸業界で、従来は製糸と輸出団体の方で現在までは三十万ドルをISAという方面へ送って宣伝機関にやっておったわけでございますが、相当大幅に消費宣伝というようなものもこれからいたさなければなりませんので、大幅な予算の増額をいたしました。と同時に、われわれの方で今まで出さなかった団体も、蚕糸業関係団体はみなでこれは出す。と同時に、同額以上のものを政府に対して出していただきたい、こういうことを新しい機構で申し入れをするのです。
  170. 中澤茂一

    ○中澤委員 そこで、養連としては、もう少し養蚕農民の立場から考えてもらいたいのです。それはそういう協力は私は悪いと言うのじゃない。しかし、全養連の大政治力をもってするならば、そんなものは政府の責任であって、そういう費用こそ、私は、養蚕農民からそうやって取った費用をむしろ団体の指導協力費に使うべきであって、政府の宣伝のお先棒をかつぐ必要はないと思う。そこで、さっき質問したように、われわれが腹をきめれば八割は集まるというだけの指導強化態勢を作って、そうやることによって常時に——今まで製糸家の方へ頭を下げて変ななれ合いみたいなことをたまたまやるのだが、そういうことはやめて、新しい養連の行き方というものを立て直しをやらなければ、養連は養蚕農民から信頼されません。だから、取るならば、お前ら農民の繭をわれわれが戦って保証するのだから、お前らは繭の中からよこせ、製糸家からもらうのはやめだ、こういうような態勢にまで持っていかなければならぬと思う。  そこで、問題を最後に移しますが、集荷指導費というものは、御承知通り、繭糸価格安定法の中へわれわれは織り込んである。三十四円六十六銭でしたか、それを今回の場合は一体どういうふうになっているのですか。集荷指導費というものは当然十九万円の中に織り込んであるのだから、あなた方の方とすれば製糸家から取る権利があるわけです。それは各県の実情によって違うでしょうが、一体どういうふうになっていますか、梶原さん。
  171. 梶原東一

    ○梶原参考人 お答えいたします。御指摘の通り、現在の情勢では、一府県を除きまして、あとはほとんど春繭の繭価協定においては指導費は繭価の中にということで一応きまっておるような状態でございます。けれども、私どもの方といたしましては、これはあくまで承認しているわけではございません。これは今後の機会におきまして何らかの方法でその指導費はある程度は出してもらうという交渉を続けておるわけです。これは、実は、中央段階において、ことしは八千七百五十掛ということに一応なるのだから、そうすれば地方々々でやる必要はないじゃないか。中央で一括してまとめて繭価協定と集荷指導費の問題も解決しろというような要望もありましたので、中央においてそういうようなことを何回もやって、ある程度までうまく行きそうでございましたときに、どうも糸価の暴落に出会ったのです。それから、お盆という問題がございまして、話が長引きますと、お盆前にどうしてもあとの清算金を養蚕家がほしいのだ、どうも中央にまかしておくとまとまらないから、地方にまかせれば、これは今までの関係もあるし、今後も製糸家は繭が要らぬのではないのだ、ほしいのだから、これは必ず何とか、希望を達することができるというようなお話が相当強かったものですから、結局再び地方にまかせて、地方段階において御決定を願うようにお願いをしたわけであります。ところが、その後の糸価の情勢がおもしろくないといったようなことのために、先生御指摘の通りのような状態になってしまったわけであります。従いまして、長野県を除く府県におきましては、繭価の中に一応指導集荷費が入っておるような格好になっておる。しかし、これは、先生がおっしゃいましたように、十九万円という価格の中に私どもは当然入っておるものだという考え方から、この問題につきましては、現在におきましても交渉を続けておりまして、決してそれで泣き寝入りをするというような考え方はございません。
  172. 中澤茂一

    ○中澤委員 そういうふうに梶原さんはおっしゃるが、実際は全部一、二を除いては繭価のうちにきまりつつあるというので、これは製糸家が集荷指導費の二重取りなんです。この前足鹿委員がこの問題で政府を追及したのですが、明らかに集荷指導費の二重取りです。政府から十九万円で取っておいて、そしてそれを払わない。払わないということは、明らかに二重取りなんです。そういうことを全養連から、この十九万円の中に入っているじゃないかというので強力な交渉をしてもらわないと——一体全養連には一つの悩みはあると思う。十九万円で集荷指導費の問題をあまり突っ込めば、これは、今政府の相当の幹部級の中にでも、高過ぎるじゃないか、下げようじゃないかという考えはあるのです。それに拍車をかける口火になるから、あなた方はジレンマだから出せないという問題はわかるが、この問題は製糸家の二重取りということは間違いないのです。だから、それを強力に指導していける態勢というものをもっと強化してもらいたい。だから、私は、そういうところに全養連に疑問を持っている。一体あなたは自主乾繭にあまりの自信があるから聞くのです。そういう点について、もっと強力なあなたの指導措置なり、政府に対してもっと強力な働きかけをやる必要があると思う。  それから、最後に一点お聞きしておくが、養蚕農民の大会だったか、全養連の役員会だったか、どっちだかわかりませんが、市場閉鎖、清算取引を閉鎖しろ、こういう決議をしておる。私も、この前の委員会で農林大臣に、最悪の事態が来たら清算取引市場だけは短期間でも閉鎖する必要があると——これは今でも考えている。これは明らかに、春繭が出たときも、実勢相場という製糸家の基本的な立場に立って春繭の買いたたきをやった。清算取引市場における作戦は私はあると思う。現在いよいよ夏繭が出、秋繭がこれから最盛期になってくるというときに、また先物が十六万円を割ったという現状は、どうしても清算取引市場に問題があると思う。そういう点について皆さんは決議をされておる。ほんとうは何だか裏に問題があれば独禁で追及する手もあるのですが、そういう証拠はわれわれにも見えないのですが、そういう点について、清算取引市場についての全養連としての考え方を一応述べてもらいたい。これで質問は最後です。
  173. 田原徳

    ○田原参考人 ただいまの御説、まことにごもっともでございまして、私はこの清算取引市場閉鎖の問題は声を大にして政府また各界にもこれを呼びかけておるのでございます。これは、今日の市場、また春繭のときも、ただいま先生がお話がありましたように、また先ほど私もちょっと触れましたが、姿のないものに支配されるということをちょっと申し上げましたけれども、こういうようなものは、われわれだけでなく、先般ウィーンで開かれましたISAの理事会におきまして、日本の清算市場は絹業界をミスリードするものであるから、あれは閉鎖したらどうだという勧告を実は受けてきております。そこで、帰りますと直ちにこの問題を大きく掲げまして、こういう問題が現実に出ていないときでございましたが、清算市場はこういう危険なときにはどうしても閉鎖してもらいたい、このことが糸価を不安定にさせ、そうして、あとからあとからと御高配を願いましても、それよりも先ばしって行ってしまう。こういうミスリードする機関は一日も早く閉鎖してもらいたいのだというこのお願いは、今もって変りなくいたしております。
  174. 松浦周太郎

  175. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 参考人の皆さん、まことにお暑いところを御苦労さまでございます。  二割制限のいきさつを承わりましたが、とにかく、二割制限が実質的にはできなかった。一割くらいは伸びているのでしょう。夏秋蚕としては千五百万貫くらいはできておりましょう。どうです、実質の点において。
  176. 梶原東一

    ○梶原参考人 私ども二割制限がそんなに緩和されているとは思っておりません。それは大体、先ほども高田先生なんかからいろいろお話がございましたように、いろいろな面で調整の数字をある程度出しております。しかし、これはきわめて少い数量でございます。従いまして、数字上におきましても、二割制限は、いわゆる証紙の上においての二割は多少切れるかもしれません。しかし、これはごく少数であって、実際においては、中澤先生あたりから糸目が出るとかなんとかいうお話もございましたが、それとプラス・マイナスする面では、先ほど金井さんから話があったように、いわゆる今まで種屋のおまけと称するものが全然入っていない、そういったような面を見ますと、私どもは、二割というよりか、かえって上になっているのじゃないか、こういうようなことを考えております。まだはっきりした数字はつかめませんが、各県の事情を承わってみましても、いよいよ二割制限がだめだだめだというようなことに——農林大臣の談話が旅先で発表されるなんということで、あるいは大蔵大臣もそういったことを言われたというようなことが載っておりますけれども、私どもはそういうような二割制限が行われないという実績はないというふうに考えております。先ほどの金井さんの御意見も、それがために非常に苦労されておる。私どもは養蚕家に対してはそのことについて同情をいたしますが、二割制限は完全に行われておる、証紙の面ではこれは少し切れるかもしれませんが、ごくわずかである、かように思っております。
  177. 佐藤洋之助

    ○佐藤(洋)委員 二割制限という建前である夏秋繭対策として、春繭は千五百万貰の生産に対し二百八十万貫の乾繭に対する処置はできたわけですね。そういうふうに心得ております。二割が実行されるというならばよろしいのですが、問題は、要するに、今後価格の断層も現われるし、いつかはやはり十九万円という最低価格の改定が行われれば、今後の問題についてやはり養蚕農家としては価格政策よりは生産制限の方が苦痛だというくらいに聞いておるのです。しかし、今回二割制限を実施した結果は、今全国桑苗組合長の稻葉芳藏君の説明を聞いて、まことにえらい悲惨な状況にある。桑苗業者に食べさせなくちゃならない。約八千万本、金額約五億何千万というような損失がふりかかってきたわけです。これはきわめて重大であって、今倒産に瀕するような状況になっておるから、これは、委員長、あした農林大臣も出てくると言っておるのですし、大澤蚕糸局長さんは最近おかわりになったばかりですから、あした三浦農林大臣のおいでになる席上において私はこの救済対策をさらに述べさせていただくことにして、質問を保留しますが、要するに、この問題についても、養連としても一つ協力の姿をもって、この桑苗の死滅に対しては相当な援助をしてもらわなければならぬと思っております。あす三浦さんの出席を待って私はこの桑苗対策に対する救済方法を一つ打ち出していきたいと考えておりますが、これに対して何かありましたら……。
  178. 田原徳

    ○田原参考人 二割の生産調整ということにつきましては、先ほど来申し上げましたような事情でございまして、このことが直ちに桑苗業者の方にしわ寄せられるというような御意見もございますが、反面また、われわれの方では、あくまでも養蚕業、農業生産性の向上というような関係から、これに対しましては、先ほど御説明がありましたように、相当老朽桑園を整理いたしますと同時に、新しい方向に向ってこれから進んでいかなければならない。今日のような蚕糸業が沈滞したような格好でいつまでもおるとは考えておりません。日本農業の現状から考えまして、よく新農建設とか適地適作とかいろいろなことが言われておりますけれども、しからばどのような構造においてするかといえば、私どもは決して蚕糸業というものは捨てておりません。これからまた必ず振興していくものというふうに考えておりますので、桑苗というものに対しまして、今当面はそういうことが多少出てくるかもしれませんけれども、前途に対しましては決して稻葉さんの言われるような心配はいたしておりません。
  179. 松浦周太郎

    松浦委員長 足鹿覺君。
  180. 足鹿覺

    足鹿委員 他の委員質問で大体尽きておると思うのですが、若干お尋ねしたいと思います。  私は、この前、第二十九特別国会で、本会議で岸総理並びに大蔵大臣、農林大臣に繭糸価格の安定対策について質問したときに、さっき田原会長も言っておられましたが、百五十億は手切金だという、大蔵省内部にそういう説をなす者があるが、不遜きわまる言辞ではないか、そういうことについてどう思うかということを聞いたのです。そうしたら、佐藤大蔵大臣なり三浦農林大臣からは、色をなして、そういうことは絶対ないという言明があったわけです。この問題は、続けて審議される時間があるならば、明日でも大蔵大臣にもお出かけを願い、また三浦さんにも来てもらって、そうして私はさらにお尋ねをし追及をしたいと思っております。そういう経過があったにもかかわらず、昨日自民党は、二割制限をやらないならば夏秋蚕対策については対策を講じない、そういう政府の態度に対して、特に大蔵大臣に申し入れをしったというふうに聞いておるのですが、そのときに、佐藤さんは、二割の制限を条件として春蚕対策をやったのだから、それが行われておらない限り夏秋蚕対策というものはやれないのだという意味のことを言ったと伝えられておるのです。その間の真相について、われわれは、ほかのいろいろな問題もありますし、十分経過がわからないのでありますが、自民党が申し入れをし、大蔵大臣がそのような言明をされたということが、さっきからの質疑応答を聞いておりまして、さもありそうに私は思えるのです。これは党と大蔵省との関係でありますから、その真疑のほども、仄聞でありますから、さらに大蔵大臣にこの問題は追及して、そして財政当局の確たる対策というものも確かめないと、仄聞程度では断定はできませんが、その間にあって、今一番注目を浴びておるあなた方のこれらに対するところのお考え、その背景について何かお聞きになっておることがあり、また感じになっておられることがあれば、一つ伺いたいと思うのです。
  181. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。  率直に申し上げますが、私は、足鹿先生が国会において大蔵大臣、農林大臣にこれは手切れ金かという御質問をなされたものに対しましての答えを新聞で承知をいたしております。これをかたく信じまして、あらゆる反対を押し切って今皆さんに御納得を願い、涙をのんで私は二割の生産調整に努力をいたして参ったのでございます。今日に至りまして、まだ夏秋蚕の半ばにも達しないにもかかわらず——ということは、資料の上で、夏秋蚕、晩秋蚕を加えましてこの半ばにも達しないにもかかわらず、農家は二割制限をしないから夏秋蚕対策はできないのだなどということは、あまりにも心外な言葉でございまして、そういうことを新聞で見まして、私はまことに心外にたえない。これは何か夏秋蚕対策をのがれるための煙幕でも張られるつもりでおっしゃられたのならば格別、そのようなことは毛頭ないのでございまして、今後もまた、これに対しまして、先ほど諸先生から御意見がございましたが、この生産調整はむずかしいことを了承しておりますけれども、涙をのんで御報告した以上、努力をするつもりでおりますので、どうか、そういうようなことでなく、それは新聞は新聞でけっこうでございますが、一日も早くこれが対策を立てていただくように先生方の御協力をお願い申し上げます。
  182. 足鹿覺

    足鹿委員 それから、全養連は昨日製糸業者が市況の先行き不安から夏秋蚕の取引を拒否しておるという情勢判断をしておるように聞いておりますが、そういう判断をされたことは事実であるか、また、そういう判断をされた根拠といいますか、そういうことについていかがでしよう。
  183. 田原徳

    ○田原参考人 お答えいたします。  あの春繭のときもそうでございますが、これは製糸の方に対しまして、最低繭価でお引き取りを願えるか、最低繭価の保証ができるかということを私どもの方から申し入れをいたしました。そういたしまして、最低繭価で八千七百五十掛で引き取りますというなら、それでよいと思います。それができないということならばわれわれが日製協を相手にいたしますが、各府県におきましては、各県養連と各県の製糸協会において話し合いをいたしました結果、今回は共同保管に協力をするから、先ほど中澤先生からちょっとお話がございましたが、乾繭の保管の施設に対しましては、今度は善良なる管理をするからという話し合いのもとに、現在この保管の対策をお待ちしておるわけでございます。
  184. 足鹿覺

    足鹿委員 私の聞いておるのは、間違いなら間違いだと言っていただいていいのでございますが、夏秋蚕の取引を製糸業者側が拒否しておるというふうに伝えられておるのでありますが、そういう判断に立たれたのはほんとうかうそかということを聞いておるのです。
  185. 田原徳

    ○田原参考人 最低繭価での取引はできないということになっております。そういう話し合いから、乾繭保管に向ったわけでございます。
  186. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、その対抗策として乾繭保管をやっておる、保管の態度をきめた、その趣旨徹底なり実行上の点で来月早々に大会を招集する。そこで、先ほどから中澤委員その他からの質問で、果して迫力のある乾繭保管が可能なりやいなやということが先刻来論議の中心になっていると思うのですが、これはいろいろ法的な研究もしなければならぬのでありますが、田原会長の解釈によれば、政府がそう言う、佐藤蔵相がそう言う、二割制限をやっておらないから夏秋蚕対策についてはどうも対策を講ずることはできないという意味のことを言われたことに対しては非常に遺憾である、そういうことはないと思っているということでありますが、といたしますならば、製糸業者側がこの市況の先行き不安を感ずるような原因は突き詰めて考えてみれば何にあるかということになると思うのです。田原会長の判断をもってすれば、繭糸価格安定法を信ずる、また今後も信じてこれを守っていくのだ、こういうお考えのもとに立っておられる。ところが、一方、製糸業者側から夏秋蚕の取引拒否を一応受ける、それは安定帯価格による取引は保証できないということについて、直ちに乾繭対策に乗り出していくということは非常な後退ではないですか。先ほどからのあなたの御意見を拝聴しておりまして、一方においては、繭糸価格安定法を守り、それに基いてやるんだ、今私が聞いたその大蔵大臣の言明ということは、自分らの仄聞であって、それは信じないということでありまして、そうすれば、そういうことはないということであれば、何が原因でこの製糸業者が夏秋蚕以後における安定帯価格による取引を拒否したかということについて疑問が出てくると思う。政府自身に動揺がない、確固としてその対策を貫くということであれば、別に製糸業界はそういう措置に出る必要はないわけです。政府がどんどん安定帯価格で買い入れを進めていけば、その必要はないわけです。何かそこに非常に——私どもあなたと他の委員との熱心な論戦を聞いておって、何かすべてが、裏面においては話し合いもつき、やむを得ぬこととして、あなたも一応了承しておりながら、何か表になるとそれが言えぬというところに苦しい立場もあると思うのですが、どうもそこら辺が少し私はあなたの判断が矛盾しておるように思うのです。そうすると、政府は既定方針でいくんだし、また、いかせるんだということであなた方は二割の生産制限について涙をのんである程度自主的にこれをやるんだということまで腹をきめておられるならば、政府自身がこの業界に不安を与えるようなことはなおさらないはずだと思うのです。にもかかわらず、二割の制限をきめてもなお、そういう腹をきめながらなお夏秋蚕以降の取引拒否を受けるようなことは、全くゆゆしいことですよ。これは考えようによっては独禁法違反の疑いが多分に出てくると私は思うのです。さっきも中澤君は指摘しておりますが、独禁法の違反に事と次第によっては多分に該当してくると私は思う。少くともここまであなた方も追い詰められてきて、その確信のほどもわからない。乾繭対策によって果してこの窮境が打開できるかということだと思うのです。その点について、何か私どもは、もう内輪においては話し合いが済んでおりながら、いろいろな角度から形がつけられる、というふうに思うのは邪推でしょうか。そういうことは実際なしにおって、純真な立場でわれわれも本気になって先ほどからのあなたの熱心な議論を聞いておって、あなたの言葉通り信用するならばわれわれもやらざるを得ぬと思うのですが、何かその間に納得のいかぬものを、魂に触れるといいますか、何かそういう点が抜けているように思うのですが、私の考えは間違っているでしょうか。その点、もう少しざっくばらんに。昨日の自民党が大蔵大臣に申し入れたことに対して大蔵大臣がけった。一面、あなた方は、機をひとしゅうして、会長会議を開いて二割生産制限をやったにもかかわらず、なお夏秋蚕におけるところの安定帯価格によるところの取引を拒否された、さあ乾繭保管だという強い態度をおとりになった。それを今後実行していかれる上に、ただ乾繭保管に対する全面的な政府の支援を求めたいということが結論であって、安定帯価格そのものに対して戦っていくほんとうの決意なり、それが具体策として貫かれるかどうかという不安を私は持つのですが、その点、くどいようですけれどもなお……。
  187. 田原徳

    ○田原参考人 諸先生方の熱烈なる御支援をいただきますれば、私は安定帯を貫くことは完全にできると信じております。今製糸が引き取らないということには先行き不安というものがあるということを申し上げましたが、先行き不安とは何であるか。いわゆる政府が準備いたしました百億の生糸買い上げ資金というものが予定した日にちよりも早く切れるのではないか、繭糸価格安定法の第二条には、予算の範囲内においてこれを買い上げるとございます。予算が切れた場合にはどうなるのだ、そこに断層ができるだろう、そのときに糸の値段が下る、それをだれが保証するのだということが先行き不安の大きな原因ではないかと思います。従いまして、ここに諸先生方の御努力によりまして大幅な予算の増額を求めることができまするならば、本日このような会合があるということだけですら、すでに横浜の相場は、先ほど梶原参事が言うところによれば四十円か五十円上った。これが現実にそういう諸先生方の御協力を得たということになりますれば、直ちに十九万円に引き上げることができる。しかも、それが一度軌道に乗りますれば、それが生産制限と相待って価格は維持されるものと固く信じております。
  188. 足鹿覺

    足鹿委員 生産制限がきわめて困難だということは、最終的には桑園の登録にまでいかないと、実際においてはこれはできないことだと思う。従来の経験から見まして、戦時の制限の場合も登録主義をとった。また、それと同時に、やろうと思えば、生産者の生産制限のみが今問題になっておるようですが、製糸側の生産制限は相並行すべきものではないかと思う。生産制限を認めるわけではありませんが、たとえば、かまに封印をするとか、あるいは一昼夜の二交代制をチェックするとか、いろいろやはり製糸側に対して——政府もよく聞いておいてもらいたいのですが、全養連とある程度話し合いで自主調整をあなた方がのましめた、またのまさざるを得ぬようになったということは、これも政府に一体の責任があると思うのです。そうした場合に、従来は製糸施設に見合うように増産を政府指導したのじゃないですか。そうしておって、質問がないことをいいことにして、黙ってにやにやして聞いておられるが、一体、生産者に対して、二割の生産制限をやむなしとして、知らず知らずのうちにそういう雰囲気に持っていくようにし、また持っていこうということになって、一つの事実がそこに生まれかけておるのです。事実よりこわいものはないのでありまして、一旦制限したものをまた戻すということは、農林委員会にいろいろ御要望がありますが、そんなことはなかなか当委員会としては私はできぬと思うのです。従って、そういう既成事実を作っておいて物事をそこからまたさらに一つの政策を生み出していくということは、私は卑怯だと思うのです。今の段階になって。そういう点で、政府もよく聞いてもらいたいし、田原会長にも伺いたいが、あなた方は、二割の自主調整ということを、角度を変えて、全製協なら全製協の方、日製協の動きをどう観察をされるか。たとえば製糸設備をいわゆる制限をする、従来養蚕家が犠牲になったのは、過剰な製糸設備に見合うような増産政策をとり、たったこの間まで第二次五カ年計画においてもやはり増産政策がとられておる、そこに一つの問題があるのです。ですから、それに対して、あなた方は、一つの判断を持ち、やはり言うべきことは政府当局にも言わなければならぬ。こういう一つの既成事実をあなた方はみんながかりで作るような結果に陥れられておる。われわれはそんなことは絶対に承服しておらぬが、事実としてだんだんそういう方向に行っておる。そうすると、製糸業界におけるところの制限問題に対してはどういう情勢判断をしておられるか、田原会長の御意見と、それから政府当局からもこの点について責任のある御答弁を願いたい。
  189. 田原徳

    ○田原参考人 私は、この二割生産制限ということが政府から出されてお話がありました際に、製糸においても必ず調整をさせるということでなければ、われわれの方でのみこれをやっても、昨年と同じことになるのではないか、これは製糸にもあくまで二割の生産調整というものもやらせることにしてもらわなければならない、それを条件にしてもらわなければならないということを申し上げてございます。それは、先ほど申し上げました、百億というものがある軌道に乗るまでこれをずっとつないでいきますればいけるという考え方から出ている言葉でございます。ところが、最近に至りまして、あの市場が非常に混乱をいたし、暴落をいたしました。と同時に、製糸に持ち込まれる数量というものが、われわれが当初計算をいたしましたものよりも非常に早い速度で、要するに大量に持ち込まれておるという事実を聞いております。このようなことになりますれば、これを放任されることになりますれば、ただいま先生からお話があられましたように、ここに一つの断層というものができ、自分たちの手で、蚕糸業者みずからこの断層を作っていくということを容認するような格好になる。政府もこれを黙って見ていられるということは、初めのお話とは私は違うと思う。それで、これはどうしても製糸の方においても生産調整をしていただくように、やはり軌道に乗るまで、次の処置方法ができるまで、どうしても生産調整はしてもらわなければならない。予算措置をしていただけるまでの間、この価格を暴落させると、これをまた戻すということは、ただいま先生の御意見の通り、容易ならざるものがございます。また、生産農民においても非常な不安が出て参ります。こういうようなことは、どうしても生産調整というのは、われわれが努力いたしておりますと同じように製糸においてもこれをやっていただかなければ、容易ならざる問題になる。最近に至りまして何か非常な速度で持ち込まれるということを聞いておりまして、実は私は非常に心配をいたしております。
  190. 足鹿覺

    足鹿委員 政府なり蚕糸当局から、今私が伺っておる点、それから、ついでに、一番最近の時点において何ぼ生糸を買い入れておるのか、それから、乾繭に対してどの程度資金を使っておるのか、現在残額がどうであるのか、将来の見通しも、一番最近の時点において正確な説明をしていただきたい。
  191. 大澤融

    ○大澤説明員 私、新任間もなくて、詳しくお答えすることができませんのが非常に残念でありますが、製糸の方でも生産制限をいたしておりまして、工業組合の調整規程によりまして、前年実績の一〇%の生産制限ということを目下やって、着々制限の成績は現われておるようであります。  それから、第二段の御質問でありますが、保管会社の買い入れております生糸の量でありますが、六月に二千二百八十六俵、それから七月が六千百八十一俵、八月の二十三日現在でありますが、八千百七十五俵、合計いたしまして一万六千六百四十二俵、こういうふうになっております。それから、乾繭の方でございますが、これは百四十五万貫、金額にいたしまして大体三十二億というような結果になっております。
  192. 足鹿覺

    足鹿委員 その一般に心配されておる、田原会長もおっしゃったが、一つの断層を予想して先行き不安という判断が醸成されてくる。それで、蚕糸当局が今もその買上数量なり金額を御発表になったが、それに対するあなた方主管局としての判断はどうなんですか。そうでないという確証があるんですか。一体今後どうしようと言われるのか。その点、これだけ参考人が切々として、とにかく自分たちの立場からは最大一ぱいやっておられるでしょう。われわれから見ればいろいろ不満もありますが、あなた方の立場としては最大限度一ぱいやっておられることは一応認めますが、こういう段階にきておって、今製糸業者は一割の生産制限をやったんだと軽く言っておられるが、生産者には二割の制限を持ってきておる。そうして、もし製糸業者に対しても均衡をとっていくならば、見合っていかなければならぬとも思われます。そういう点について、現在こういう事態が起きておるのですが、政務次官大臣にかわって——明日大臣がおいでになればさらに伺いますが、どういうふうに御判断になりますか。また、さっき私が言いました自民党が大蔵大臣に申し入れたということに対して、実際この蚕糸問題がこういう重大な段階にきておることについて知っておられるか、その内容についてはどういうふうに理解をせられ、その事実の有無、真疑のほどについてもどういうふうに見ておられますか。そういう点を、事務的な判断ではなしに、あなたの……。
  193. 石坂繁

    石坂説明員 特に私に対する足鹿委員の御質疑でございますが、第二の問題を先に申し上げますと、自民党におきまして先般来特別委員会を作って蚕糸問題の応急対策並びに恒久対策について真剣なる調査をいたしておることは私も承知いたしておりますが、この特別委員会のそのつどの詳細なる経過は承知いたしておりません。なお、昨日の周東委員長の大蔵大臣に対する会見のことも、私も実はけさの新聞で承知した程度でございまして、その経過も聞いておりませんが、党の特別委員会政府との間の終局的な結論にはまだ到達いたしておらないと思います。  なお、第一段の問題につきましての製糸の方の生産制限でございますが、それにつきましては、先ほど局長からも申し上げました通りに、製糸といたしましてもこれに対応した生産制限をやっておる、こういうことを承知いたしております。
  194. 足鹿覺

    足鹿委員 私は委員長にお願いを申し上げたいのですが、けさの新聞では、はっきり、佐藤蔵相は、「春蚕対策政府がとった際、夏秋蚕の二割減産を条件としていた。しかし減産は行われず、その結果ふたたび糸価が暴落したのだから、夏秋蚕の政府買上げは行わない」、こうはっきり、カッコをつけて、特に談話が直話のごとく発表されておる。しかも、それを訪問した者は自民党の福田政調会長、周東蚕糸対策特別委員長、同野田副委員長、三氏が昨日の午後大蔵大臣に会談をされた結果として報じられておるのです。これは私は非常に重大な問題だと思うのです。自民党の同僚委員もたくさんおられるし、蚕糸政策については五十嵐氏などは特に堪能な方でありますし、これは私は当委員会としては見のがすことのできない重大な問題だと思うのです。従って、これはあと理事会でよく御検討を願って、三浦農林大臣並びに佐藤大蔵大臣を明日の当委員会に出席を求めて、この真疑のほどを徹底的に追究して、政府が現在とらんとしておる今後の夏秋蚕対策、あるいは現在全養連の諸君がいろいろと考えておられるところの問題に対する政府考え方、いろいろな問題について十分私は追究する必要があると思う。ないならないで、はっきりこれを否定するとか、農林省は大蔵省に抗議を申し込むなり、あるいは党と連絡をするなりして、事の真疑を確かめて、明日の当委員会にその真相を発表せられる責任が私はあると思うのです。こういうようなものが累積して、だんだん本物にでっち上げてしまう。そういう点で、委員長において、今私が述べたようなことについてお取扱いが願えるかどうか。
  195. 松浦周太郎

    松浦委員長 先ほどの中澤さんの要求によって大蔵省に交渉させましたら、目下その対策について検討しているそうであります。明日大蔵大臣と主計局長を出席させるつもりでありますが、それはおっしゃったようにあと理事会でよく相談した上にしたいと思います。
  196. 足鹿覺

    足鹿委員 これは農林省もとても大へんな問題ですよ。ですから、この際農林省としても、主管局を督励されまして、この真疑のほどを確かめ、農林省農林省としての一つ責任ある立場から、最近の党なり大蔵省内のこういう経過について御報告をしていただきたいと思います。
  197. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの足鹿委員の御要望の点は、確かに承知いたしました。
  198. 足鹿覺

    足鹿委員 大体私はこれでよろしいです。
  199. 松浦周太郎

    松浦委員長 五十嵐君。簡潔に願います。
  200. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員 私は政府にお尋ねしたいと思うのですが、それは国用生糸に対する対策についてお尋ねしたいと思います。  一体国用製糸が年間六万俵も生産をされているわけですが、これに対して何らの対策もとっていない。現に何の手も打っていないわけですが、国用製糸に対してはどうして対策をとられないか、まずこの点を一つ伺います。
  201. 大澤融

    ○大澤説明員 御承知のように、価格安定法を中心として糸価の安定をはかっているわけでありますが、やり方といたしましては、流通量が最も大きい、大部分を占めておるというようなものを取り上げて、それを買い上げて糸価の安定をはかっていくというやり方をやっておるわけでありまして、国用製糸業者の生糸は、それによって間接に安定をしているという考え方で、特にこれに対して手を下しておるという方法をとっていないわけです。しかしながら、別の問題といたしまして、国用製糸業者の経営がどうなるかというようなことがあった場合には、別個の点から考えなければならぬと思うのでありますが、さしあたりはそういうような状態に相なっていないように私ども承知しております。
  202. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員 それが実際問題としては非常に困ることなんで、あなた方の方がもう十分御承知になっておることですから、くどいことは申しませんが、問題は、国用製糸の原料も同じく八千七百五十掛で買い入れをしておるわけです。そうすると、何ら対策をとっていないんだから、これは千四百円で繭を買っているのですから、今の状態ではこれは企業が成り立たぬということは、だれが考えてもその通りです。そうすると、この春繭による生産も非常に苦しい立場に追い込まれているわけです。そうすると、一体どこへそのしわが寄るかといえば、養蚕家への支払いが非常に困難になってくる。そういうことは当然来ることなんです。しかも、国用製糸は、御承知のようにちゃんと生産制限もやっており、同時に、この問題はもう再三再四製糸業者が陳情してある。先ほども全国国用製糸協会の茂木会長から陳情がありましたが、そういうことをこのまま放任しておけば、繭代の支払いにも窮してきますよ。そういう実情になっているわけです。これをほうっておくということは、何としても私は片手落ちだと思うのです。ですから、さっきの陳情にもありましたように、低格の生糸の買い入れをおやりになれば、この問題は解決すると思うのです。大体、高級の、高い生糸だけを買って市場を安定させようということの考え方自体に、よほど再検討しなければならぬ点があるんじゃないかと思う。やはり、低格の生糸を政府が買い入れるということによって、糸価安定という作用は大きな作用をすると思うのです。そういう意味から見ても、また業者の現実の状態から見ても、さらに、これが養蚕家へ及ぼす影響、こういう問題から見ても、当然やはり低格生糸というものを買い上げるべきだと思う。これをやりさえすれば問題は解決するのだから、なぜこれをやらぬかということですが、これに対するお考えはどうですか。
  203. 大澤融

    ○大澤説明員 先生の言われるようなお考え方もあるかと思いますが、やはり、従来通りの方針で、流通の大部分を占めるものが糸価形成の中心になるという考えで、従来通りやっていくということがいいのではなかろうかと思います。ただ、申されましたように、国用製糸業者の経営状態はいろいろ問題があるということは、いろいろの見方があると思うのでありますが、話によりますと、ただいま国用製糸の生産量は二、三割上っておる、今必ずしもそう経営が苦しいというような状態でもないようでありますが、もし先生の言われるような事態が来ますれば、やはり一つ研究して、よく検討してみなければならない問題の一つだ、こう考えております。
  204. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員 そうすると、ただいまのところではこの買い入れのワクを広げるお考えはないわけですか。
  205. 石坂繁

    石坂説明員 ただいま局長から答弁いたしました通りでありまして、糸価形成の最も重要なものを買い上げておるのでありまして、国用製糸に対する生糸までを買い上げるということになりますと、ただいまの銘柄をもっと低くしなければならない。低い銘柄のものまでも買い上げるということになれば、限りある資金をもってなかなか困難なことになるのでありまして、適当でないという考えを持っておるわけであります。しかしながら、今後の推移を見ました上で 必要があれば所要の措置を講じなければなるまい、こういう考えでいるのが現段階の政府考えであります。
  206. 五十嵐吉藏

    五十嵐委員 蚕糸局長お話では国用製糸業者の経営の状態がそうまで苦しくはない、だから対策を今すぐに立てなければならぬというような段階ではないというようなお話でした。石坂政務次官からは、事態によっては対策を何とか考えよう、こういうお話であったわけでありますが、いずれにいたしましても、千四百円で繭を買わしておいて、政府の買い入れの対象には一切していない。対象には現実にならないのですよ。だから、盛んに今まで陳情されてきたように、もっと買い上げの範囲を広げてもらいたい、こういう問題なのです。とにかく、だれが考えてみても、千四百円という繭を当然買っているのだから。それで何ら買い上げの対象にもなっていない。方法は、買い上げが唯一無二の方法だと言っているのではないので、いずれにいたしましても、国用製糸業者がそういう立場に置かれているということは、一方は全然この業者はかまわれていないわけです。そういう点がありますので、この点は一つ十分にお考えを願って、とにかく糸価安定という政府の施策に対しましては片手落ちのないようにお考えを願いたいことを希望して、一応これで質問を打ち切ります。
  207. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの点でありますが、国用業者の経営の状況の内容はつまびらかにいたしておりませんが、しかし、私どもの聞いておるところでは、その生産が少くなるよりは、むしろ前年に比して二割、三割はふえておる、こういうことが私ども調査の結果出ておるのであります。しかし、それはとにかくといたしまして、この推移によりまして、必要があれば、先ほど申し上げましたように何らかの措置を講じなければならないと考えておりますので、ただいまの御注意の点はよく含んでおきます。
  208. 松浦周太郎

    松浦委員長 これにて蚕糸価格安定問題に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には長時間にわたり御苦労さまでした。厚く御礼申し上げます。     —————————————
  209. 松浦周太郎

    松浦委員長 次に、農林災害に関する件について質疑を続けます。  質疑の通告がありますので、これを許します。小松幹君。
  210. 小松幹

    小松(幹)委員 午前中倉成委員から九州の旱害について、まあ緊急対策について克明な質問がありまして、私は、緊急対策のことは重大なことでありますが、一応あとにしまして、最も大事な問題、いうならば恒久対策あるいは救農対策について二、三質問したい。  九州としては、緊急対策は徐々に県、町村、あるいは国の助成等でやっておりますが、残る問題は、植付不能であった農民、それから収穫皆無であった農民のこれから先のいわゆる生活設計に対してどういう手を打つか、どういう救済的な施策をやるか、それが重大な問題でありますが、農林省としては、この点について——そういう農家が富農であれば別でありますが、大体そういう農家は富農ではない部類である、こういう観点に立って、農林省は今後植付不能あるいは収穫皆無のほんとうの貧農の将来に対してどういうような施策をするかをお尋ねします。
  211. 石坂繁

    石坂説明員 植付不能を来たしたような貧農に対してこの後どうするかという御質問でありますが、第一は、何と申しましても応急対策を講じなければならぬことは申すまでもないのでございます。従いまして、応急対策は、すでに御承知通りに、ひとり植付不能の人たちばかりを対象としたのではないのでありますけれども、とりあえず、旱害に対しましては、七月四日の閣議決定要綱に沿いまして助成要綱を決定し、これを実施いたしておるのであります。この実施要綱のうちで、水田に対する施策をさらに畑作に拡張する、これも一つの方法。それから、農業共済金の早期の支払いというようなものを考えなければならぬ。あるいはまた、飯米の不足を来たしておる農家、ことに開拓地等におきましてはこれらの農家が若干出ております。これに対する飯米の手当をいかにするかということにつきまして、これも対策を講じております。さらにまた、とりあえず、さような場所におきましては、現金収入が現在絶えておるような状況がございますから、救農事業を実施いたしたい。これは午前中の御質問に対しましてもあらかた答弁をいたしたのであります。  かような切迫いたしました応急対策を樹立実行いたしますと同時に、恒久対策を講じていかなければならぬことはもちろんであります。     〔委員長退席、日野委員長代理着席〕 すなわち、将来かりにひどい旱魃がありましても、植付不能等のことがないように、あるいはまた、旱魃のみならず水害等がありましても、植付不能ということがありませんように、これは、生産基盤の強化拡充ということを基本といたしまして、この基本線に立ちまして、明年度予算につきましてはできるだけこの具体的政策に対する予算の獲得に努力いたしたいと存じております。一例を申しますと、水田につきましては、水系を調節する、あるいは水資源を確保するというような施策を講じなければならぬ。あるいはまた、畑作につきましては、本年度のような旱魃に対しましては全く処置なしであります。畑作地方におきまして畑地灌漑というものが非常に強い要望がございます。従いまして、畑地灌漑という問題はことに畑作振興に対するところの重点的施策だと思いますので、かような方法を講ずることによりまして、将来植付不能等のことが出ませんように、十分の施策を講じて参りたい、かように考えております。
  212. 小松幹

    小松(幹)委員 今の次官の御答弁によりますと、来年度予算に緊急農業土木のそうした事業を予算化するという御答弁のように伺いましたが、それはお間違いないことでございますか。
  213. 石坂繁

    石坂説明員 現金収入のない農家に対しましての救農事業は、明年度の予算を待ってやるというのではなしに、現に熊本営林局管内のごときはこの関1係において事業を始めております。その他既定の費用あるいは予備費等によりまして、これらの事業を進めて参る考えであります。救農土木は急を要することでありますから、明年度予算を待ってという意味ではないのであります。
  214. 小松幹

    小松(幹)委員 明年度予算を待たないで、本年度に救農土木工事を起すというお考え、まことに適切であって、私もできればそれ以上のことをしてもらいたいと思いますが、それは口だけでなくて、実際的にどういうような格好になっておるかということ、また、その御構想を承わりたいのですが、けさほど承わったところによりますと、事業繰り上げというような一つのケースも出ておりますが、これは今大蔵省が各省々々にわたって不況対策一つとして一カ月、二カ月の事業繰り上げを急いでおるような向きもあるので、それとかち合っている面もありますが、それはかち合っている面で救農土木になればいいと思いますが、今九州各県農村民あるいは関係当局等が考えておるのは、災害農民をどうするかという救農土木であって、ただ単に三十三年度既定予算のワク内の繰り上げ操作によって救農土木対策ができればこれに越したことはないのですが、おそらくそれはケースが違うと思う。たとえば、福岡県でもよければ大分県でもいいですが、その県で、いわゆる建設関係であろうが山林関係の予算であろうが、かりに一カ月、二カ月早く繰り上げて仕事をやったとしても、それは旱害地ではなかった。こういうことになれば、旱害農民は遠くの方で——自分に及んでこない繰り上げ土木工事というものは何にもならぬことになりますから、やはりケースが違うと思う。ただ単に今の予算化してあるものを恒常的に繰り上げて仕事をしたのでは救農土木と言えない。私はそう考える。また、地方の者もそう考えておりますが、次官の考え、来年度予算を待たずして今年も急いで救農的なものをやりたいという構想の内容をもう少し承わりたい。
  215. 石坂繁

    石坂説明員 実は、今回の災害につきましての調査事項は、次々に農林省の方でも集計いたしておりますが、この災害地の救農事業につきましての種々の具体的な計画、各都道府県の要望を求めております。それがだんだん集まってきておるような現状でありますが、現に実施いたしておりますものは、先ほど熊本営林局管内での国有林事業関係の災害復旧費におきましてのことを御答弁申し上げましたが、これは、熊本営林局管内におきましては、国有林事業の災害復旧費のうちから八千五百万円を繰り上げ実施いたしております。また、その他農地林野関係においての継続事業の繰り上げ、保留額の早期解除並びに林野関係における追加事業の実施等によりまして救農事業を行なって参りたいという考えで、なおその余の具体的なことは検討いたしております。  もっとも、ただいまも御指摘になりました通りに、なるべくその地場において、その部落々々において事業をいたしませんと、十里も二十里も離れたところでやるということは必ずしもその地方の現金収入のない人たちの救済事業になりませんので、その点は十分注意をいたしております。今回の旱害は御承知通り、非常に局地的と申しましょうか、局部的と申しましょうか、台風もしくは水害であれは、一村、一郡全面的に被害を受けるようなこともありますけれども旱害の性質上、隣の田は植付ができても、隣の田は亀裂を生じておるというような状況がままございます。従って、一村全部が被害者であるというようなこともないのでありますから、実施の面から申しますと、どうしても早急にこれを実施せなければならない必要と事情は十分わかっておりまするけれども、いろいろ事務的にさようなめんどうなことのあることも一応御了承願いたいと思います。
  216. 小松幹

    小松(幹)委員 事務的にはかどらないということはよくわかります。  それでは、一応角度を変えまして、次官も九州御出身でありますから実情はよく存じておると思いますが、九州が今まで例年台風常襲地帯としていつも騒がれておったのが、ことしは全く正反対な旱害に見舞われたということは、従来は台風が来るので雨が何とかこぼれている。一応何十年か植付ができたという既成事実の上に立って、九州方面のいわゆる農業改良というものが基本的にできていなかったということが根本的な問題だと思うのです。それで、矢つぎばやにこれを恒久的な問題としてここ一年で解決しようということは、とてもむずかしいと思います。しかしながら、この機をはずして九州の農業改良というものはあり得ない。そこで、思い切って、これは農林行政全般が、あるいは北海道なりあるいは関東、東北等に農業改良の巨歩を進めたごとく、振り返って九州の方面に農業改良の大幅なる力をこの際入れなければ、九州の農業はこれでもうしまいだ。台風が来ればこうなる、ひでりが来ればもうだめになる、こういうがたぴしゃの九州の営農法は、段々畑の、しかもため池をまた掘り出して灌漑用水にしておるような現状からすれば、今度は農林省全体として恒久対策という格好の救農土木工事をまずまず手引きとして起してもらいたい。そのためには来年度予算を待たずして、今年の——今度は大体今のところ十五カ月予算になるかもしれないといっておりますから、三十二年度の補正ということから考えて、何とか救農土木事業、時にこの台風常襲地帯等、ひでりと両方ではさみ撃ちになる九州の農業施設最大限の力を入れてもらいたいと思うが、次官のそうしたお考えを承わりたい。
  217. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの小松委員の御意見は私も全然同感でございます。お話通りに、私も九州熊本の出身でありますが、ことに、私の育ちました村は、畑作地帯でありまして、今回の被害のごときは最も痛切な被害を受けております。その他、宮崎にいたしましても、鹿児島にいたしましても、特殊土壌地帯であり、また傾斜地が多いところでありまして、台風が来れば台風の被害甚大、しかるに、今回は逆に旱害という、お話通りでございます。従いまして、西南暖地、九州方面の農業は、水田といわず畑作といわず、この際積極的に大きく改善に乗り出すべきだということは、私は前からさように考えておる次第でございまして、水系の調節あるいはため池の改造——現に農林省は各地に深層地下水の探求をやっております。これも水源を得ようという努力であります。あるいはまた、畑作地帯においての土壌の改良、土壌の試験等にも積極的に乗り出そう、その他恒久対策につきましては大きく踏み出すつもりでおります。  もしそれ、補正予算を組むか組まないかという問題でありますが、現在の段階におきましては、政府は補正予算を組まないという方針をとっておるのでありまして、これは私から政府のこういう高級なる政策についてこの際どうこう申し上げることは出過ぎだと思いますから差し控えますが、問題は、要するに、大いに積極的にやりたい。政務次官としても政務次官のマキシマムな努力をいたしたい、かような考えであります。
  218. 小松幹

    小松(幹)委員 本年度の予備金も大体五億円程度で、もう枯渇しておる、こういうように承わっております。そうすれば、私は、これはもう農林省をあげて、政治的にはもう少し大きなあれがあるかもしれませんけれども、少くとも農林行政の分野においては、ぜがひでも追加予算でもしてこの瀬を乗り切らなければならぬというお含みの上の御活動を願えるかどうか。問題はそこなんです。もっとも、次官が政治的な面まではできぬとおっしゃるならば、その点は私もわからぬことはない。しかし、農林省としてそれだけの巨歩を踏み出す考えがおありかどうか。このまま、補正予算に手もつけない、あるいは予備金もないから、ただ口ではそういうように意気込むけれども、できぬのだということでは、一番先私が質問した、植付不能、あるいは収穫皆無、あるいは畑作が参っておるところの開拓、あるいは畑作農民に対しては、これは救農土木というお題目だけがちらちらするだけで、何らの意味がない。この点、やはり政治はきびしい現実でありますから、現実を踏み出していかなければならぬと思うのです。そのためには、敢治的な問題は抜きにしても、農林省のお考え、あるいは農林省の一角がそういうような気魄で乗り出していくということは、この前私は、先月の終りと今月の初めにも、大蔵省の関係当局に予算委員会の席上でそのことを申し上げて、農林省がどのような救農土木事業の予算を出そうと、顔色を変えないで大蔵省は一つ受けて立ってごらん、こういうようなことを申し上げておいたのであります。自民党の倉成さんあたりも、口をきわめて、九州の農業施設には力を入れなければならぬということを申し上げておりますが、その点、農林省自体が本腰にならなければ、補正予算も何もお題目にすぎぬ、私はこういうふうに考えるわけで、補正予算ということは一応抜きにしても、そういう覚悟でぶち当って救農土木をやる腹があるかどうか、その辺を承わりたい。
  219. 石坂繁

    石坂説明員 金がなければやりたい仕事もできない、ことに、救農事業、また恒久対策について、どうしても先立つものは金であるということは、私も十分承知をいたしております。補正予算の問題はしばらく抜きにしてというお話でありますから、再び触れませんけれども、私はさような願望を持って今後全力をあげて努力いたしたいということで御了承を願いたいと思います。
  220. 小松幹

    小松(幹)委員 ここで次官を問い詰めても仕方がないことでありますが、私の言わんとするところは、政党政派を超越しての九州の農民の気持なんです。きのう九州の知事会あるいは九州の農業団体、議会筋の代表者、全部九州関係が集まりまして、結論としてはもう各県はそれぞれきめておるわけです。救農土木対策として予算まではじいて積極的にやるという気がまえを農民にも——農民大会が各地方にありまして、ほんとうにこれでは行かれぬというわけで、打ち上げて突き上げられておるのが各県の実情だと思うわけであります。それで、きのうもおとといも、二十五日あたりから大分県あたりは全員何十人と上京してきて、それぞれの分野において動いておるわけなんでありますが、緊急な農民の死活にかかわる問題であり、いわゆる豊作と凶作が隣合せにあるだけに、最もヒステリカルに考えておるわけです。こういう意味において、九州の基本的な農業施策と、それに救農的な農業施策というものを農林省あげてお考えおき願いたい。これは、次官だけでなく、そこにお並びの官房長の方にも一つこの御意図を鮮明にしていただきたいのですが、御答弁をいただけませんか。
  221. 齋藤誠

    齋藤説明員 旱害地における救農土木事業につきましては、今政務次官から御答弁がありました通り、われわれも、今回の災害地帯に対しましては何らかのそういう措置が必要であるということについては御説の通り考えておる次第であります。従いまして、現在の段階におきましては、さきに当委員会におきましても農林大臣答弁いたしましたように、現在の経費の中からできるものにつきましては、まずそれによって措置して参りたい、こういう考え方を申し述べたのでありますが、現にそういう方向へ一歩踏み出し、さらにまた、今後の対策につきましても、繰り上げ施行、あるいは、さらに、繰り上げ施行において困難なような事態——特にまた、今回の救農土木事業を実施するといたしましても、地域なり、あるいはその事業の性質によりまして、相当考慮を要するような、工夫をいたす必要があると思われるところもあるわけであります。従って、そういうふうな実態にもかんがみまして、現在の段階におきましては、さような救農事業をやるといたしますれば、どのような規模において、どのような程度において、どのような状況にあるかということの検討を目下進めておるというのが率直な事務当局の段階でございます。
  222. 小松幹

    小松(幹)委員 各府県もそれぞれの構想を持ってあなたたちのところに打ち合せにも参ると思いますから、この点は一つ十二分に胸襟を開いて設計に乗っていただきたい、このことを申し添えておきます。  さらに、金融の問題でありますが、けさほどの次官の答弁で承わりますと、営農、いわゆる自作農維持創設資金が十七億しか残っていない、どうするかという質問に対して、まあ追加したい、こういうような御答弁でありました。まことにけっこうでありますが、どういう形でどういうふうな額をねらっておるか、その点を一つ承わりたい。
  223. 石坂繁

    石坂説明員 官房長からお答えいたします。
  224. 齋藤誠

    齋藤説明員 御指摘の通り、自作農維持資金につきまして、七十五億のうち五十二億がすでに割り当てられまして、残り二十三億のうち、開拓関係あるいはその他の方の関係で、十七億というものがこれに充てられた資金として現在残っておるわけであります。先般の五十二億の中におきましても、霜雪害あるいはその他の長雨等の非常な災害を受けた農家でこれらの資金について必要なものについては優先的に利用させても差しつかえないという意味で、各府県に指示いたしたわけでございますが、御指摘の通り、今回の災害は必ずしもそれに入ってないという面も県によってはあろうかと思います。十七億では不足するとかしないとかいうことにつきましては、今の段階で申し上げる用意をいたしておりませんけれども、まず、五十二億の中で不足する分について、今回の災害を受けて御要望のあった地域につきましては、さらにこの十七億の中から追加の割当をする、こういうことで現在準備を進めておるというのが現状でございます。  さらに、これから十七億自身も不足するかどうか、あるいは、先ほどのほかの委員の方からの、二十二億の要望が九州だけでもある、従って十七億では不足するではないか、こういうことでございますが、よく各県の追加要求の実情につきまして検討いたしまして、まず十七億の中から消化できるものについては進めて、その上で、どの程度全般的に足りるか足らぬかということを検討いたして参りたい、かように考えております。
  225. 小松幹

    小松(幹)委員 次官の答弁とあなたの御答弁を聞いていると、あなたの御意見では追加しないような意見でありましたが、どっちなんですか。次官は十七億では足りないから何とかするとおっしゃった。あなたは、何とかすると言わないで、十七億で操作するんだというふうに聞いた。どうなんでしょうか。
  226. 齋藤誠

    齋藤説明員 次官のお話も同様だと思いますが、十七億というものはまだ出さないままで保留してあるわけでございますから、その保留した額の中からまず使用すべきものに対して出して参ることが当然の筋道だと存じます。さらにそれ以上に各県の御要望が満たし切れないということになりますれば、第二段の問題になりまして、その資金量につきましては、あるいは補正の問題あるいは投融資の変更の問題というような問題にもなりますので、十七億の追加については、かりに必要がありましても、こういうふうにいたしますということを直ちに今申し上げる段階ではないと思います。
  227. 小松幹

    小松(幹)委員 私の聞いているのは、凍霜害に五十二億出しているのですから、あと、九州の長雨と、かてて加えて旱魃——これはちぐはぐですが、長雨は麦の被害、米は旱魃ですが、それに出すのに十七億では足りない。これは、幾らどう考えても、九州あたりに来て凍霜害といっても、ほんの山のてっぺんのところが、針で押したようなくらいのところが凍霜害の資金で、大部分はその目にあずからないのですが、別個に考えるとすれば十七億では足りない。全部くれても足りない。また被害額から逆算してきた数字から言うても実際足りないのですから、その辺は、足りると思っているのですか足りないと思っているのですか、どうなんです。
  228. 齋藤誠

    齋藤説明員 災害に対する営農資金としての五十二億、それから自作農創設資金としての五十二億は、たまたま同額でございますので、あるいはその点御了承の上での御質問かと思いますけれども、五十二億の営農資金につきましては、御承知のように霜雪害あるいは長雨等で天災法の発動によって御尽力を願ったわけでございます。今回の旱魃等に伴う営農資金につきましては、午前中もお答えいたしましたように、天災法適用について今準備検討中でございます。従って、これらの資金営農資金として出すということに相なろうかと思います。従って、旱魃その他の営農資金については、まず天災法資金の活用というものが第一段階でございまして、そうして、なおかつそれらの資金によりましても経営に支障を来たす、あるいはまた、その他の債務等の関係から農地を手放す等の、経営に著しい支障を来たすような農家について自作農資金を出す、こういうことになりますので、自作農資金自身を今切り離して、災害資金でどうこうという計算をいたす前に、営農資金としてどれだけ資金が必要であるか、そのうち天災法でいくような資金がどのくらいになるか、あるいは保険で考えられるものがどのくらいあるか、そうして、どうしても足りないで経営上支障を来たすという場合に、最後に自作農資金というものが出るわけでございますから、私といたしまして、現在直ちに、十七億が九州地方の旱魃資金として不足であるとか、あるいは十分であるとかということを申し上げる用意をいたしておらないのであります。それらの点を検討いたしまして、最終的に調整していくべきものと、かように考えております。
  229. 小松幹

    小松(幹)委員 資金関係ではまだ全部のいわゆる調整なりあるいは統計的な結論が出ていないからわからぬ、こういう言い方だと思います。それはそういう点もあるかと思います。私は今の被害農家の実態から見て、結局は農民が金融にたよるということは根本的に誤まっていると思う。しかし、背に腹はかえられなければ貸りるより仕方がない。その金融の道もできないというならば、食わぬで指をくわえていなければならないというのが、今後の出来秋からの実態だと思う。それで、間に合せにでも金融の問題が大きく浮び上ってくるということで、私は今のいわゆるあてがわれておる金融のワク内ではとても足りないと思う。こういう見込みをもって、足りないからどうするのかと、こう言っているわけで、結局、私は、財政投融資のワクの拡大、ここまで積極的にならなければ、この問題の解決にはならぬと思う。今まであるところの営農資金なり、あるいはその他の資金をフルに回したとしても、それはワクを拡大しない限りはとても実際問題として——口ではいろいろ言っても、実際問題として金融をほんとう農民の線まで持ってくることはむずかしい。この点、ワクの拡大というものをどういうふうに考えているか。やらねばならぬという強い御意思があるかどうか、ワク内でやろうというお考えか、その辺はどうなんですか。
  230. 齋藤誠

    齋藤説明員 繰り返して申し上げてはなはだ恐縮でございますが、まず保有いたしておりますところの資金を放出するということで、当面の御要望にできるだけ応じたい。しかる上において、さらにこの資金が不足するかしないか、これは予算の問題、投融資の問題にも関連いたしますので、ここでお答えいたしかねることを御了承願いたいと思います。
  231. 小松幹

    小松(幹)委員 さらに、借りるにしても、利子が六分五厘という場合、特殊な場合のいわゆる指定をやれば三分五厘ですが、その点、今度の旱害地帯について指定を拡大してこれをやるという御意思があるかどうか、伺いたい。
  232. 齋藤誠

    齋藤説明員 今の御質問は、自作農維持資金ではなくて、天災法に基く営農資金のことだと存じますが、今回の場合は、麦と違いまして、米、陸稲等の被害も相当含まれていると考えられます。従いまして、もちろん、これにつきましては、天災法にありますように、二分五厘の適用地域につきましては、三割以上の被害で、そのこうむる農業収入が平年収量の五割以上になるといったような地帯につきまして二分五厘の適用を受けることになります。従って、現在そのような調査も一方進めておりますが、今申し上げましたように、麦と違いまして、陸稲も含まれ、水稲も場合によっては含まれる地域も相当あろうと思いますので、そういう場合におきましては、おそらくそれに該当する地域も出てくるのではなかろうか、かように考えます。
  233. 小松幹

    小松(幹)委員 私は、ここで次官や官房長最大限の確定的な結調を出してもらうということは、今その段階でもないことは知っておりますが、九月、十月にかけてあるいは臨時国会が開かれるかわかりませんが、そういう段階にいくに従って資料もだんだん整備してくると思います。その段階にくれば、金融の面ではどうしても財政投融資のワクの拡大ということが、農業災害——農業災害には旱魃だけではなくていろいろケースの変った災害もあるわけですから、一般に足りないのではないか。そこで、ワクの拡大ということを当然考える段階がくるのではないかということもまた予想しております。同時に、このワクの拡大をしてもらわなければ、実際に解決できない分野がたくさんある。開拓の問題にしても、畑作拡大の問題にしても、みんなそういう問題が出てくると思います。それで、相なるべくは、救農土木、いわゆる救農対策というものと同時に、金融のワクの拡大ということを抜本的な面で考えてもらいたい。それができなければ、小手先の技術だけでは今次の災害あるいは旱害等は救えないと私は考えておりますから、この点を特に強調して、次官にもう一度その辺の御決意を承わりたい。
  234. 石坂繁

    石坂説明員 ただいま御指摘の点は、私も十分に考えます。
  235. 小松幹

    小松(幹)委員 あと一、二点でございますが、人工降雨や、自衛隊に加勢してもらったのを、府県や市町村が金を払う。人工降雨の場合はどうせ払わなければならぬということはありますが、そういう問題に対して農林省はどういうような助成考えているか。それから、自衛隊にやはり金が要るのかどうかという問題についても伺っておきたいと思います。
  236. 齋藤誠

    齋藤説明員 従来、災害等につきまして自衛隊が出動いたしました場合には、この前の災害の場合における例を申し上げますれば、自衛隊の方でそれらの資金を支出してまかなってもらうということにいたしまして、農林省の方は助成措置をとっていなかったと思います。
  237. 小松幹

    小松(幹)委員 そこが問題なんです。今度の大分県、福岡県も自衛隊を動かしておりますが、やはり自衛隊が金をくれということなんです。農林省に言えば、農林省は自衛隊の助成費用はないと言う。しかし、現実に金が要るわけでありますから、それについての助成措置はないけれども、緊急ですから、手前でどんどん出しているわけですが、そういうところはどういうふうに考えているのですか。
  238. 正井保之

    正井説明員 お答え申し上げます。  自衛隊が出動しました場合に特に自衛隊自体で経費を全額持つという場合は、自衛隊法の八十三条で規定されておりまして、人命の救助、こういうふうな非常に緊急差し迫った場合でありまして、その他の場合につきましては、たとえば今度の旱害等で、あるいは井戸を掘りますとか、あるいはポンプを出動して水をくみ上げてもらう、こういった場合につきましては、演習の一つというふうな意味合いにおきまして、燃料等の消耗品、そういった実費につきましては自衛隊に支払うという建前になっております。その際も、もちろん、出動した人たちの給与でありますとか、演習費でありますとか、そういったものは自衛隊で当然持つわけであります。従って、通常の請負人にお願いした場合に比べますと非常に安く事業ができる。こういう意味でありまして、これはやはり所要の経費は自衛隊の方に払う、こういう建前になっております。
  239. 小松幹

    小松(幹)委員 これは農林省にどうというわけではないのでありますけれども、町村や県が自衛隊に金を持っていって払わなければならぬという組織そのものもどうも変だと思うのです。ですから、これには自衛隊なら自衛隊の言い分があると思う。あるいは自衛隊の何とかの何条でとかあると思うが、これはここで問題にしてもしょうがないと思います。実は、府県も市町村もこれについて陳情をしている。自衛隊の費用を何とかしてくれといって、まるで自衛隊を呼んだのが普通の民間を呼んだと同じような格好になって、陳情書が出ているわけです。これはおかしいというくらいは政治的にわかるわけです。この点はもう少し農林省の方で積極的にやってもらいたい。この問題の解決をここで問い詰めたってしょうがないことだし、また自衛隊を呼び出して内閣委員会なんかで別にやりますけれども、自衛隊の費用を国で助成しろと農林省に陳情しているわけですから、この点はあなたたちも身につまされて何とか解決をしてあげていただきたい。農林省よりも自衛隊の方がよけいに予算を持っておるのですから、その予算をよけいに持っている自衛隊が市町村や県に金をくれ、それを今度は府県が農林省に金をくれと言ってきているのは珍現象です。だから、これを一つ軌道に乗せてもらいたい。これはまだ問題が残りますけれども、私はあまり言わぬでこの程度にとめておきたいと思います。
  240. 石坂繁

    石坂説明員 自衛隊関係の問題は、私らの方へも九州各県知事等からも陳情書が参っております。そこで、農林省内部の意見ももう少し詰めまして、その結果自衛隊の方にも話してみたいと思います。     〔「自衛隊を呼べ」と呼ぶ者あり〕
  241. 小松幹

    小松(幹)委員 きよう自衛隊を呼べという話もありますけれども、時刻が時刻でありますから、そんなに無理をしても、またそういうことを論ずる機会は多々ありますから、そのときにします。  それから、福岡県と大分県は人工降雨をやって、幸いそれが結果がよかったということになっておるのです。これに対する助成措置はどうお考えになっておられますか。
  242. 齋藤誠

    齋藤説明員 人工降雨に対しましては、従来からもこれについての効果なりあるいは実施の結果等につきましては、そのときの状況によりまして、非常に効果があった場合もあるし、そうでない場合もありまして、今回の場合におきましても、お話通り、一部の県におきましては行われたのでございますが、これを助成するかしないかということにつきましては、直接農民の負担になるものにつきましては、これは農林省としましてもできるだけ負担の軽減をはかる意味におきまして助成措置を講じたいと考えておりますけれども、人工降雨につきましては、必ずしも農林省の統一的な指導というわけでもございませんし、県の独自の見解に基いて行われた点もございますので、検討はいたしてみたいと思いますけれども、若干他の助成と性質が異なるのではなかろうかという意味におきまして困難な点があると思いますが、そういう意味で検討をいたしておるわけであります。
  243. 小松幹

    小松(幹)委員 今の人工降雨ですが、これは、あなたの考えからすると、予算外であるし、所管外であるからどうにもならぬということになっておりますが、府県は所管外では済まされない。一つのケースとしてやっておるわけで、これはたまたま農業災害対策としての人工降雨であったとすれば、打つ手は、農林省でなくても、農林省から積極的に施策の進言をする場所はどこにあるか。その場所は各県庁あるいは内閣にないのかどうか。あなたは官房長だから一番その点は詳しいと思うのですが、どうですか。
  244. 齋藤誠

    齋藤説明員 もちろん、人工降雨につきましては、農業関係と最も深い関係がございますので、ドライ・アイスによる人工降雨あるいはその他の人工降雨の方法につきまして、もちろん農林省としてもいろいろの研究はいたしておるわけであります。そういう意味におきましては、農林省の方におきましても、技術会議におきまして当然所管すべき事項の一端でございます。
  245. 小松幹

    小松(幹)委員 技術会議ではどうにもならぬですが、あなたは官房長として、おれはそれは所管外だから知らぬのだとはねるのではなくて、どこそこへ持っていったらいいという場所を教えていただきたい。その訴え先です。そういう訴え先がないというわけはない。その訴え先を教えてもらいたい。官房長だから一番よく知っておるでしょう。それはどこですか。
  246. 齋藤誠

    齋藤説明員 今申し上げましたように、当初、直接的な効果あるいは状況等につきましては、いろいろの条件があって、成功する場合もあるし、成功しない場合もある、そういうことで、技術会議、試験場等において農林省では検討いたしております。そういうことについての的確な資料なりあるいは方法等につきましては、一つ農林省におきましては技術会議に御連絡を願えればいいと思います。
  247. 小松幹

    小松(幹)委員 金を出すところです。技術会議へ行けばそんなものは受け付けてくれるわけですね。どうですか。
  248. 齋藤誠

    齋藤説明員 その点につきましては、一番初めにお答えをいたしましたように、災害に伴う農民負担の軽減という意味におきましては、種々の助成というものを農林省においても考えたいということで、各種の助成をいたしておるわけでございますが、人工降雨につきましては、直接農民の負担というものではなくて、府県なりあるいは市町村なりが独自の判断におきましてそういう方法をとられたわけでありますので、農民災害に対する助成とは若干性質が違うのではないか、そういう意味で、私どもはもちろん人工降雨の助成問題につきましては大蔵省とも交渉をいたしたわけでありますが、しかし、そういう性質の差もあり、また実行方法についての的確なる効果ということにつきましても検討を要する面もあるというようなことで、この助成については、農林省としても、もちろん扱えれば扱うべきものでありますけれども、非常に困難であるということを申し上げたわけであります。
  249. 小松幹

    小松(幹)委員 私は寡聞にしてそういう訴え先を知らないから、あなたなら知っているだろうと思って、農林省以外でこういうものを訴えるところがどこか、あるのかないのかということを聞いておるのです。知事が一括ぽっとやることを国がやり切れぬことはないのだから、所管はここだというところがあれば教えていただきたい。
  250. 齋藤誠

    齋藤説明員 農業災害に関連する以外の所管については、私存じておりません。
  251. 小松幹

    小松(幹)委員 これは農業災害に関連する人工降雨ですから、どこか訴え先がありそうなものだと思います。農林省以外に訴えるところはない。そうなれば、全然見込みなしということになるのですか。
  252. 齋藤誠

    齋藤説明員 さきに申し上げた通りでございます。農業災害に関連いたしましては農林省の所管でございますけれども農林省としましては今申し上げたような見解に立っておるわけであります。
  253. 足鹿覺

    足鹿委員 二、三関連して一つお尋ねしたいのですが、今小松君からはいろいろ農作物被害に伴う農民の所得補償の点について御質疑があったわけです。これに関連をしまして、水害の場合も出てきますが、特に旱魃の際における農業災害補償法に基く評価上の問題です。午前中も問題になりましたが、用水不足のために植付が不能になった、これを収穫皆無とみなすかどうかということについて非常に問題があると思うのです。法の建前から言って、収穫皆無と同様の取扱いをするということは、法の改正を必要とするのか、あるいは行政上の運営面においてそういう取扱いが可能であるのか、その辺の政府の研究された御見解をお聞きしたい。
  254. 石坂繁

    石坂説明員 法の解釈の問題でもございますし、官房長から一応お答え願うことにいたします。
  255. 齋藤誠

    齋藤説明員 この方面につきましては御専門の足鹿先生でございますので、あるいは私から答弁するまでもなかろうかと思いますが、植付不能についての評価の方法につきましては、御承知のように、現在五割ということに扱っておるわけであります。もっと具体的に申し上げますと、共済金の支払い額の前提になる損害評価の準則を農林省告示で定めておる。その損害評価の認定準則によりまして、当該耕地の平年における収穫量の百分の三十五と認定するということにいたしておるわけであります。従って、百分の三十五ということは、通常の場合は百分の七十でございますので、結局通常の場合の五割、共済金の支払い額は半分になっておるということになっておるわけであります。従って、法律上の問題といたしましては、この告示による準則を改定するということでございますので、必ずしも法律改正でなしに、告示の改正で事足りる、言いかえれば行政措置で改正するということができるということになろうと思います。
  256. 足鹿覺

    足鹿委員 その場合、告示を改正して——これは農民の所得を補償していくために設けられた立法でありますので、その趣旨に即応するような運営にこの際持っていかれることが、被災地における一番端的な農民への救済策であろうと思うし、救農土木事業について小松委員から熱心な御質疑がありましたが、それはもちろん根本的に大きな問題でありますが、現実に起きておる用水不足で全く植付ができなかった者に対して、最も簡明直截に救済の手を伸べていくことができる立法ですから、法律改正ということになりますと、現在はまだ当委員会は休会中の審査ですから、臨時国会まで待たねばならぬ。しかし、大臣の権限においてその準則を改廃できる、行政面において解決がつくというお話でありますが、これを解決される御意思はないでしょうか。そうたいした面積でもないようですし、一つ新例をこの際開いて、評判の悪いこの農業災害補償法に基く農民救済に手を伸べられる必要が私はあると思うのです。これは一番端的な方法ですから、この際おやりになる御意思はないでしょうか。
  257. 齋藤誠

    齋藤説明員 植付不能の場合において収穫皆無の扱いにしろ、こういう御意見であろうかと思いますが、これについては、足鹿先生もちろんこの経緯については御存じのことだろうと思います。つまり、植え付けて収穫皆無になった場合と、全然植付しない場合における共済金の支払いについては、この補償の経緯から見まして、おのずから取扱いに差異があるべきである。つまり、これらの補償の方法が、現在の内容におきましては、収穫皆無に伴う現金支出の補償という要素が相当入っているのじゃなかろうかと思われるのであります。従って、そういう意味からしますと、植付を全然しない場合を、植付して収穫皆無になったような場合と全然同様に取り扱うということにつきましては、若干そこに疑問なしとしないのであります。おそらく、そういう意味で、共済法ができましてから現在までこういう取扱いで終始してきたものと考えます。また、それが一応適当であると考えられて今日に至ったと私は考えておるのであります。従って、先ほどの手続の関係から申し上げれば、告示でございますから、法の改正をしないですべて処置できるということになろうかと思いますけれども、今のような基本的な考え方、さらにまた、一応そういう前提で、つまり告示で損害認定準則を出しまして、そういう建前で現在の料率等ができて、そうして引き受けが行われている、こういう前提のもとにおいて考えます場合におきましては、かりに準則でありましても、引き受けた前提そのものを変えるような支払い方法をとるということにつきましては、私としては、若干そこに問題があるのではないか。言いかえれば、料率改定のときにそういう問題を考えてやるべきだ。そういう引き受けなり料率を前提として、途中で支払い方法を変更するということにつきましては、私は、若干問題があるのじゃないか。そういう意味におきまして、事務当局として現在これを改定するという考え方は持っておらないのでございます。
  258. 足鹿覺

    足鹿委員 現在の農業災害補償法に基く農業保険金は、社会保険はおろかなこと、収穫保険にも至っておらぬ。要するに、支出した生産費に対して補償するという建前をとっているという立場から、官房長のおっしゃることも一応わかるんですが、かりに水田の場合、耕起をし、肥料を投入し、一切の準備を行い、苗しろも整い、そして植付が不能になったという場合と、頭からそこまで至らぬ、荒起しも植付準備もしないというときにたまたま旱魃で用水不足のために植付が不能になった、いろいろなケースがあろうと思うんです。それには、最終的に準備はしたが、結局その植付不能になったという場合と、そうでない場合との差は出てきますが、しかし、いずれにしてみても、農家が所得を得ることができないという実際の事実には何も変りはないわけです。ですから、法の建前が生産費の補償を建前にしておるから掛金その他の関連事項の面から見て無理だという御説は、事務当局としてはそれを曲げて言うことはちょっと困難だろうと思うのですが、少くとも私ども農業災害補償法について今まで検討を加えてきたことは、本年一月一日から改正法が実施されたときの検討の経過から見ましても、やはり収穫保険の線に沿っていくような建前において法の改正をやったと私は思うんです。官房長もその経緯は御存じだろうと思うんです。従って、今、真正面から私が申し上げたから、真正面からお答えになったと思うんですが、そういう一つの改正された現行法におきましても、そういう方向に向っており、そして七、五、三、二という主張をもちまして、私どもも法改正に臨んだわけです。結果は若干違ってきましたが、前よりもよほど収穫保険の線に近づいてきておることは間違いないと思うんです。また、そうでなければ、この法というものは、法そのものにこだわって実情適用上においていよいよ役に立たぬという非難は当然受けなければならぬと思うんです。また、これは改正問題が大きく取り上げられなければならぬ、こういう事態だろうと思うんです。そういう観点から、法を曲げよというのではありません。行政面において弾力を持たせて、実際の適用において事実に即応するような取扱いをされたいということが私ども質問の要旨になるわけですが、そのために必要な研究を行わなければならぬと私は思うんですが、その点について検討をされる御意思があるかどうかということです。これは、政治的な面も含めて、九州の災害、あるいは関東の災害、東北方面における災害、いろいろな旱魃が局地的に頻発をして、いわゆる隣貧乏の様相が深刻であります。一方においては近来にない豊作である、一方においては食う飯米にも困る、こういう顕著な開きが出ておるときに、これが全国的に一斉な大旱魃で財政的にも困るということではないでしょうし、これくらいの弾力的な運営ができないこの農業災害補償法に対するところの魅力は、全くゼロに近いことになると思うんです。私は問題をこの点にしぼって質問しておりますのは、法の運営の面、またこの災害補償制度の将来に及ぼす具体的な現実の問題を突きつけられておって、これに目を開かぬというようなことでは、この災害補償制度の維持存続も非常に困難な事態が起きてくると思うんです。この際踏み切るべきだと私は思うんです。そういう点について、内部で御相談にもなっておらないものを、いきなりこういう質問を突きつけて責任のある御答弁を求めるということも困難だろうと思いますけれども、どうでしょう、政務次官、これは一つ真剣に取り上げられて問題を解決される必要があると私は思いますが、どんなものでしょう。
  259. 石坂繁

    石坂説明員 重ねての足鹿委員の熱心な御質疑でありますが、この点につきましては、午前中倉成委員の御質疑の際も申し上げたかと思いますが、単にこの問題だけを切り離してでなしに、制度の問題と一括いたしまして検討いたしたいと存じます。しかし、この点につきまして、足鹿君も御想像の通りに、内部でもまだいろいろ相談したこともありませんので、私といたしましては、これはよく事務当局とも相談、検討いたしてみたいと思います。
  260. 足鹿覺

    足鹿委員 他の一般的な制度の改廃ということを言われると、これはなかなか大問題になってくるのです。今言いましたように、制度改正の方向というものは、少くとも基準反収を上げ得た一つの事例をとってお考えになっても、収穫保険の線へ持っていこうという政府の方針でもあり、われわれもそういう方針でやったことなのです。そうでないということになりますと、私ども、この制度に対して、今後運営上において非常に疑問を持たざるを得ぬ。こういう悲惨な現実があって、なお元の災害補償法ができたときの気持にとらわれて運営をしていくということになりますと、これは各地においても共済組合の解散騒ぎが相当起きております。私どもも、今度東北方面の国政調査に行きまして、そういう現実を見てきました。陳情も受けました。しかし、まあまあ、やっぱり忘れたときに災害は起るもので、君たちがすぐにこれをなくしていこうというような考え方は誤りである、いわゆる市町村の公営の道も開かれておるし、ある程度の自由選択の方途も一応は出ておるし、いい方向へ向っておるんだというので、いろいろその説明を加えて私どもは説得をしております。そういうわれわれも努力を払い、この制度が完璧に近いものになることを念願して今日まで非常な努力を続けてきておる。たまたまこの局地的なこういう災害が起きたときに、まだこれに目をおおうというようなことでは、この制度自体の私は根本問題にも触れてくると思うのです。ですから、少くともほかの問題は問題として、現在起きておるこの農民への所得をある程度補償してやる、救済をする、こういう立場から、この用水不足に基く植付不能による水田等につきましては、収穫皆無の取扱いをする、そういう方向へやるんだという一つ考え方でもって必要な措置を御検討願いたい。私はこのことを特に強く申し上げて御善処を願いたいと思います。  それから、ついででありますので、午前中に石田君からも水害問題で御質問があったようでありますので、重複を避けますが、農作物被害に対する対策と水害関係の場合は、施設被害に対する復旧対策ということが中心になっておるようでありますが、今度の水害の特性を見ておりますと、これも集中豪雨でありまして、非常に局地的な被害を随所に与えております。従って、一箇所十万円というような額にも達せないようなものが各地に非常に多いのです。私の知っておる地帯におきましてもそういう事態がありまして、現地を見たときに切々として訴えられた。政府は、八月の下旬から緊急査定を行なって、九月初旬には予備費の要求を行う予定であると、七月三十日の対策要綱に述べておられますが、現在までの施設被害については、本日いただいた被害状況調査によって、大体百億未満のように一応拝見をいたしておりますが、この中で相当小災害が多いのではないかと思うのです。全国的に被害があるにもかかわらず、被害金額はその割にかさぼっておらぬ。相当各地に局地的な被害を与えておるようでありますが、十万円未満の小災害の頻発に対して、実情に沿うような査定を行われたかどうか。特に、五十メートル間隔の問題等には、相当その運用上弾力ある運用がなされないと、非常に困ることになると思うのです。自治庁を呼んでおりますが、自治庁が見えておらぬそうでありますので、特に市町村の財政再建の指定を受けておる地帯あたりにおきましても、見るに忍びないから応急措置をしなければならぬ、いろいろ支出はかさんでも国の直接的な補助の対象にもならぬというようなものが、今度の被害の面から言って相当多いと私は思うのです。それはほんの局地的なものであるからそう心配はないとおっしゃれば別でありますが、緊急査定をやられました結果はどうでありますか。それから、予備費の要求に対するところの当局の考え方は、どういう考え方、方針でやろうとしておられますか。その点について少し詳細に御説明を願いたいと思います。
  261. 石坂繁

    石坂説明員 本年の災害につきまして、融雪の水害、四月、五月、六月の水害、これは七月の上旬に査定を終っております。これと、七月上旬の水害につきましては八月の上旬に査定を終りまして、以上述べましたのはすでに閣議に予備費の請求をいたしております。その後の十一号台風の水害及び八月の水害につきましては、八月の下旬及び九月の上旬に緊急査定を終りまして、九月中旬に予備費の要求をいたす予定でございますが、その過程の詳細な点につきましては、建設部長が参っておりますので、建設部長からお答えいたさせます。
  262. 清野保

    ○清野説明員 本年度発生災害に対しましての予備金要求につきましては、ただいま政務次官から申し上げた通りであります。重ねて詳細に申し上げますと、本年の融雪水害、四月、五月、六月水害並びに七月水害のうちの広島、島根県両県の分に対しましては、すでに査定を終り、それらの緊急なるものに対しましては、それぞれ二五%ないし三〇%の予備金を要求いたしまして、その合計額約一億円の予備金がすでに支出されまして、各県にすでに配付済みであります。  なお、御質問の中に小災害に関する御質問がございましたが、これは当委員会でいつも問題になっておりますので、われわれもよくその問題の重要性については深い関心を持っておるつもりであります。小災害取扱いにつきましては、御承知と思いますが、五十メートルの間で連続しておるものにつきましては、これは災害取扱いといたしましてはいずれも一カ所の工事とみなしておりますが、なお、五十メートルをこえる場合でも、当該工事を分離して施行することが施設の効用上困難である、あるいは不適当な場合には、一カ所の行為とみなす、こういうような規定もございますので、これは極力、運用によりまして、五十メートルをこえておる場合でも、一カ所の工事とみなすような指導をいたしております。問題は、こういう場合でなくて、諸所に転々とするような災害の場合に、小災害のいわゆる十万円という範囲以内の災害の場合かと存じます。これにつきましては、先般三十二年災で長崎県で適用いたしました方針、すなわち建設省の河川法による準用河川以外の小河川につきましてはこれを一つ農林省所管の河川とみなしまして、その河川の中に存在しますところの護岸あるいは橋梁あるいは井せき、水路等のものを全部包含して一事業とみなすような一つの事例を作ったのでありますが、今回の災害につきましても、この事例を極力府県の方に説明いたしまして、これによって小災害を救うように、県営事業によって災害復旧事業を施行いたすようにしております。この方法をとりますと、県営事業の場合には県費の負担額に対して地方交付税の交付がありますので、県の方といたしましても負担も少く、おおむね所期の目的が達成できる、こういうふうに考えて、こういうような方法で処置をいたしております。
  263. 足鹿覺

    足鹿委員 八月下旬からの緊急査定の結果、私が述べたような実情がないならば、きわめて少いとおっしゃれば別でありますが、今お話を聞きますと、そうでもない模様でありますが、大体、あなた方の査定に乗ってくるもののうちには、今私が述べるようなものはすでに落ちておるわけなんです。もうおそいかもしれませんが、現地にはすでに係官が出られて、中央に帰って取りまとめをされる段階だろうと思うのですが、その査定から落ちた、あるいはちょっとの運用上の点でかかるというようなところのものが、実際はその地方ではまことに困った存在なんです。これに対する救済の方法として今清野部長からお話がありましたが、現在の市町村の窮迫した財政状況によりましては、なかなか満足すべき災害復旧にならない場合が多いのであります。結局それは、必要上、農民の負担とか、あるいはその他部落あるいはその周辺におけるところの負債等の形で無理な形において復旧せざるを得ない。従ってまた、何か事あるとそこが大きい災害のもとになるというようなことも、悪循環でなってくると思う。そういう点で、でき得れば自治庁においでを願って、いろいろと詰めた話を私はしたかったんでありますが、十分時間もありませんので、残念ながらきょうはこの点については一応打ち切っておきますが、さらに、地方から出てくる、一応査定の通知を受けて、どうもこれでは実情に沿わぬのではないか、何とかもう少し考えてもらいたいというようなことに対しては、もう少し弾力のある取扱いを——再査定ということもいかぬでしょうが、もう少し弾力のある余裕のある救済の方法というものは講ずる必要はないものでしょうか、私は何かそこに道を開いてやる必要があると思う。今度の災害の模様を見まして、非常に小さいものが——はたから見ると小さいが、その部落なりその地帯にとっては全く致命的なものが多い。五十メートル間隔という場合も、運用上においては若干の幅を持たせて運営されておるわけですから、別段それをさらにどうということはございませんが、何かその間に、この査定から漏れて、しかもどうしても実情に合わぬというようなものについても、何らかの手を伸べていく必要がありはしないかと私は思う。その点について一つ考えがあればこの際承わっておきたいと思います。  林野当局がおいでになっておるかどうかは存じませんが、最後に砂防堰堤の問題ですが、今度の集中豪雨の状態を見ておりますと、同じ地形のところでも、隣の部落の上流には砂防堰堤があったために被害を免れておる、ところが、堰堤が全然ないというところには致命的な被害を与えておるという実情がありまして、その点について、この砂防堰堤の充実徹底ということを私は非常に痛感をしておるものであります。それらの点について、特に積極的な大きな洪水調整という点については、多目的ダム法等もすでにできておりますし、これを経費をかけて強力に執行していくことだと思うのですが、そういうとかく忘れられがちな点につきましては、砂防堰堤の徹底が非常に大切だろうと思うのです。そういう点について、特に今度の地方的な集中豪雨が局地的な被害を与えておる実情から見て、砂防堰堤について積極的な措置を講ずる御意思があるかどうか、その点をお尋ね申し上げまして、時間もありませんし、他の委員質疑の通告もたくさんありますから、関連の質問は終りますが、御答弁を願います。
  264. 清野保

    ○清野説明員 小災害の査定につきましては、極力、われわれとしましては、先ほど申し上げましたような精神で指導して参っておるつもりでありますが、指導の徹底を欠きましたために、もしそういうような欠陥があるとしたならば、まことに申しわけないと存じております。なお、小災害指導につきまして、今のようなことがもしあるとするならば、直ちにその事情を調べまして、ただいま申し上げたような方法で再申請なり何かをさせまして、それによって当面を切り抜けていきたい。小災害の問題につきまして私いろいろと考えておりますが、特に問題になりますのが、農業施設の場合にはただいま申し上げたような方法でもって相当程度救われるのでありますが、農地の復旧の場合には十万円というものに対して面積の制限がございませんのでございます。これは当然ある程度面積の制限を加えまして、たとえば、一カ所十万円でなしに、反当何万円以上の被害復旧額の場合にはこれは助成するという措置をすべきじゃないかという点を、現在大蔵省とも、過去において折衝したことがありますが、なおそういう点について検討を加えまして、農地の災害復旧につきましては、今後そういう線で指導いたしたいと考えております。
  265. 石坂繁

    石坂説明員 足鹿委員のもう一つの御質疑である砂防堰堤の充実の点につきましては、治山課長が参っておりますので、治山課長からお答えいたします。
  266. 若江則忠

    ○若江説明員 砂防堰堤の件につきまして補足いたします。  仰せのように、予防治山事業の拡充が必要であることは言を待たないと思いますが、実は、三十二年度から予防治山事業といたしまして崩壊防止施設のチェック・ダムを予算で四千万円ばかりもらって、当年度は約三倍の一億二千万に増額されまして、金額から申しますとわずかでありますが、それでも、地質条件、気象条件を勘案いたしまして施設を拡充いたしております。明年度以降も、五カ年計画の線に沿いまして、さらに一そう拡充いたしたい、かように考えております。
  267. 日野吉夫

    ○日野委員長代理 西村君。
  268. 西村関一

    西村(関)委員 先ほどの小松幹委員質問に関連をいたしまして、一、二の点を御質問いたしたいと思います。主として石坂政務次官にお尋ねをいたしたいと思います。時間がありませんから、簡単に要点だけ申し上げて参ります。  小松委員質問をせられました中の前段におきまして、農業災害、特に九州旱害対策の恒久施策についての御質問があり、次官からも御答弁があったのでございますが、私は、午前中質問をせられました倉成委員とともに九州の旱害地調査いたしました責任者の一人といたしまして、大体において倉成委員質問をせられました点、また他の同僚委員から質問のありました点に問題は尽きると思うのでございますが、恒久対策につきましては、この調査の際、九州農業試験場をおとずれまして、場長の熊澤三郎氏を初め他の係官の説明をいろいろ聞いたのでありますが、その際、九州におけるところの旱害は、本年度のような甚大な被害を及ぼしたものは近年まれであるけれども、しかし、気象その他のいろいろなデータから言っても、毎年九州各地に旱害が起っておるということは事実なのであって、こういうことに関してこの試験場から出しておる報告なり調査資料なりによって、当然恒久的な施策が九州地方において講ぜられなければならないはずであるにかかわらず、これがなされていなかったというところに一つの問題があるということを私は感じたのであります。     〔日野委員長代理退席、委員長着席〕 災害というものは、やはり備えがあればこれを予防できるということは、今さら私が申し上げるまでもないところでございますが、この旱害対策につまましても、恒久対策といたしましては、特に水源地を瘤養いたしますところの植林事業、また灌漑用水路に対するところの浚渫、補修が大切であり、あるいはまた、このたびの旱害における著明な現象の一つとして、ほとんど全部のため池が干上ってしまう、こういうことを多く見たのであります。こういう状態になったということは、このため池が非常に古く、底抜けであり、少しの旱魃のためにすぐに干上ってしまうというような状態のまま放置されてきておる。こういうため池を浚渫し補修する、あるいはまた、小さなため池を新しく作るという、そういったようなことに対して、恒久的な対策として農林当局には助成をせられるところのお考えがあるかどうか。あるいはまた、特にわが国の現状から申しまして、九州においてもそのことを感じたのでございますが、地下水の利用ということが旱害対策として非常に重要な点であると思うのであります。今度の旱害対策として、たとえば佐賀県のごときは、知事の英断によって、相当な多額の経費を使って、一つ井戸に三百万円くらい使って数十カ所の井戸を掘ってこの旱害を防いだというような事例も見て参ったのでありますが、地下水を利用するというこの旱害対策に対しても、ただ少しばかりの小さな井戸を掘るというだけでなしに、相当恒久的な考えのもとに地下水の利用を考えるというようなことに対する指導助成をするというようなことに対して、農林当局はどういう考えを持っておられるか。それからまた、先ほど足鹿委員も触れておられましたが、総合的な施策をいたしまして九州の国土開発総合計画を進められておるということでございまするが、その中において、このたびの旱害に関連をして多目的ダムの促進をはかる必要がある。多目的ダムを作るということは一府県ではできないことなのでありますから、農林当局が強くそういう要請をいたして、そういったような事柄を通じまして恒久的な対策を講ずるということがこの際非常に大事だと思う。救農対策ということが言われますが、救農ではなくて、こういうことは一種の救国運動である。災害は必ず来るのでありますから、こういう災害に対して根本的な施策をするということがこの際非常に大事じゃないかと思うのでございます。その点が第一点。  第二点は応急対策についてでございますが、今朝の倉成委員質問に対するお答え、ただいまの足鹿委員質問に対するお答えにもありました、植付不能田に対する農災の問題でございまするが、事務当局の御答弁としてはなるほど官房長官が言われた通りであろうと思うのでございまするが、これでは私は政治にならないと思うのであります。現地を見て参りましたが、事実正直に指導員の指導のもとに植付を待っておった。今植え付けてもむだだというので、植付を待って、ついに植付不能になった。その前には肥料も施し、苗しろももちろん作り、たくさんな金をかけ、労力を払って、しかも植付不能になったというような農家と、また、間に合せの植付をやって、どうせ植え付けたって収穫がないんだということがわかっておっても、ただ間に合せの植付をしたというだけで農災を受けるというような事態が、同じ場所において起るといたしますならば、これは、正直者がばかを見る、農民の経営意欲を著しく阻害するというような結果を見ることは明らかでございまして、そういう点に対して、この委員会におきましても今朝来論議がかわされたと思うのであります。こういう点に対しては、ただ事務的な答えでなくて、真に農民の心理、農民ほんとうに血のにじみ出るような、この稲は自分たちの子供である、この水は自分たちの血であるというような悲痛な叫びを私ども現地で聞いたのであります。そういう農民の心理にこたえる農業政策を打ち出してもらいたいと思うのであります。それから、もう一つは、農業災害の補償に関しまして、閣議決定によれば、一団地五万円というワクがあるということでございますが、これは九州地区においては当てはまらない。長崎県のようなああいう畑地農業をたくさんやっておるところを見て参りましたが、小さな団地でずいぶん困っているところがある。だから、一団地五万円というワクではなくて、一地区五万円といったような援用解釈を適用していただいて、こういうところも一つ救済してもらわなければいけない。また、もう一つは、すべてのこういう災害に対する補助助成といったようなことにつきましても、これはいろいろな手続がございましょうけれども、時期を失しますならば、どのような施策をいたしましても、これは何にもならないという結果を来たすのでございまして、できるだけすみやかに金が現地に回るように進めていただく、むしろ拙速をたっとぶというところが応急対策として非常に大事じゃないかということを考えるのであります。そういうことが非常に強い現地の要望でもあったということを申し上げまして、これらに対する次官のお考えをお伺いいたしたいと思います。
  269. 石坂繁

    石坂説明員 主として九州の今回の旱害に対する点についての御質疑でございますが、私も九州でありますし、今回の旱害の全部ではございませんけれども、ある程度旱害地は回って参りました。西村委員お話しの試験場にも行って、九州の農業全体についても一応伺って参りました。この結果は、全く西村さん御指摘と同様の感じを持っております。今日までわれわれは、九州地方は台風常襲地帯だということで、この委員会におきましてもかつて台風常襲地帯における農林水産災害防除特別措置法というものを議員立法で出したこともございます。自民党並びに社会党の同僚議員の諸君御協力のもとに出したこともございます。それが変遷いたしまして、ようやくこの春の国会に災害常襲地帯に対する特別措置法を通過いたしましたが、ことしはひどい旱魃になりました。これとても、従来当然施設をしておかなければならなかった諸施設に大いに欠けるところがあった。西村さん御指摘のように、ため池はあるけれども、非常に老廃している老朽ため池である、従いまして天水がたまらない、こういう点をわれわれも多くこれを見るのであります。従いまして、恒久対策といたしましては、水資源の総合的の利用計画、これはいろいろ具体的の施策はあるのでありますけれども、私どもといたしましては、水資源に対しまして総合的の開発計画をいたそう、こういう計画でありまして、現に明年度の農地局関係の予算等にもそういう項目について要求いたすつもりでおります。なお、現に実施いたしておりましてそこここやっておりますることは、深層地下水の探求を電波あるいは爆発等によって試験をいたしまして、深層の地下水をポンプ・アップしよう、こういう計画もいたしております。あるいはまた、老廃ため池の改良等につきましては、三十三年度の予算におきましても大体二億円程度の予算は計上いたしておりますが、なお、さらに、明年度及びその以降におきましても、こういう点について重点を用いて参りたいと存じております。要するに、水田及び、特にことしのようなことになりますと、畑地の旱害は実に惨たんたるものがございます。従いまして、畑地灌漑の要求というものは、西村委員もお聞きだと思いまするけれども、至るところ非常に強いものがある。私も同様に考えておりまするので、これらの点につきましての恒久対策につきましては、技術的に十分検討もいたしまするけれども、逐次積極的に大いにやっていきたい、こういう所存でございます。  緊急対策に対しましての午前中の植付不能及び収穫皆無の場合に対するだんだんの御意見でございましたが、これにつきましては、事務当局の現在の考え方は、先ほど官房長答弁をお聞き取りの通りであります。しかし、足鹿君からも私どもに対する御忠告がございましたし、なおこの点につきましては私もよく事務当局とも相談し、検討いたして参りたいと思っております。ただ、私は決して青葉じりをとらえるわけではございませんけれども、間に合せの植付をやった人と、つまり、植付をした人と植付をしなかった人ということで、正直者がばかを見るというようなお話がございましたが、私は必ずしもそう思っておりません。政治の上で正直者がばかを見ては相ならぬことでございまして、この段は私のごとき愚直の者は特にその点を感ずるのでありますが、私ども一面見ました農村の人たちの心理というものは、何とかして植えたい、今植えたらそろばん勘定でいけば結局損しますぞという忠告をいたしましても、その指導員の忠告を聞かずして、何とかして植えたいという一面の農民の心理状態があることも、これまた御承知のところだと思います。まあいずれにいたしましても、植付不能の問題と収穫皆無の問題につきまして、先ほどからいろいろ質疑応答が重ねられて参りましたけれども、この点につきましては、事務当局の考えは、重ねて申しますけれどもお聞きの通りでございます。なお、しかし、私といたしましては、十分に相談もし、検討をしてみたいと思っております。
  270. 西村関一

    西村(関)委員 ただいまの次官が言われました、農民が収穫がなくても植えたいという気持で植えておる、そういうところは私は申しておらないのであります。私どもの申しておりますのは、ただ農災を得たいために植付指導して、そうして植え付けたというようなところがあれば、そういうところに対していろいろな不公平があるということはいけないということを申し上げたので、その点については重ねて御答弁をいただかなくてもけっこうでございますけれども、私の申し上げたのはそういう点であって、そういうことはないと思いますけれども、そういうことがもしあれば、そういうところに対して不公平が起ってくるということを申し上げたのであります。今次官が申されましたような農民心理の点につきましては、私も十分承知しておるつもりであります。  それから、ただいまの御答弁の中で、来年度の予算に恒久対策として考慮して計画を立てておるという御答弁でありましたが、大体水の問題に関係いたしましてどのくらいの総額予算を考慮しておられるのですか、その点をお伺いしたい。
  271. 石坂繁

    石坂説明員 これはまだ省議として決定いたしておるものではありませんで、現在の農林省予算編成の段階は、各局で重点施策をピックアップしておるような状態で、それぞれの金額等もまだ固まっておりませんので、今日まだ金額を申し上げる段階ではありませんが、項目は先ほど申し上げた通りであります。
  272. 西村関一

    西村(関)委員 その点につきましては、一つ大臣ともよく御相談下すって、十二分に重点的にお取り上げをいただきたいと思います。ただ九州だけではなくて、日本全国にわたるところの農業災害に対するところ恒久的な施策については、農林当局がうんと力を入れてやっていただきたいということを要望いたします。  それから、先ほどちょっと、小さな問題ですが、一団地五万円という閣議決定の問題について答弁を願います。
  273. 石坂繁

    石坂説明員 答弁をすっかり失念いたしまして失礼いたしましたが、私からよりも、むしろ建設部長の方からお答え願った方がよろしかろうと思います。
  274. 清野保

    ○清野説明員 一団地五万円と申しますのは、私どもの方の考えでは、隣接しますところの地区を合併しまして一団地五万円、こういう考えであります。従いまして、一地区五万円としますと、むしろ解釈が狭くなります。旱害応急事業の範囲が狭くなりますので、私たちとしましては、現在の一団地五万円でけっこうだと考えております。
  275. 西村関一

    西村(関)委員 今の建設部長の御答弁で了解をしたのでありますが、現地農民はその点を非常に心配しておりますから、その点は、できるだけ拡大して解釈して農民の心配を取り除くように御努力を願いたいということを、現地の各機関に通達を出していただきたい。そういうことに対する解釈がまちまちのようでございますから、そういう点についても十二分に手を尽していただきたいということをお願いしておきます。  以上をもって私の質問を終ります。
  276. 松浦周太郎

  277. 島口重次郎

    ○島口委員 政務次官にお尋ねいたします。  自作農維持資金の問題ですが、未配分の予算額が十七億だと聞いております。そういたしますと、具体的に申し上げますと、九州では二十二億を要請しておる、青森県では三億五千万要請しておる、さらに新潟県、和歌山県をも計算いたしますと、幾らのトータルになるか、そういう面を考えますと、未配分の十七億では消化をされないと考えます。その点に関する御見解をお尋ねしたいと思います。
  278. 石坂繁

    石坂説明員 この被害の限度、金額等が確定いたしまさなければ、どれだけ災害のための自作農資金が必要であるかということは確定しないわけでありますが、私といたしましては、これはワクを広げなければならぬ、こういう考えを持っております。ただ、それにつきましてのいろいろの事務的の考え方は先ほどお聞きだと思いますけれども官房長からいろいろ申し上げておりますこれと決して話が矛盾するわけでなしに、私は、これはワクは拡大しなければいかぬ、こういうふうな考えを持っております。ただ、その方法等につきましては、私不案内でありますから、ここでどうして拡大するということは申し上げかねますけれども、ワクを広げる必要があるということは私も痛感いたしております。
  279. 島口重次郎

    ○島口委員 この問題は事務的な問題で解決をされる性質のものではない、こう考えます。従いまして、ワクを拡大するということは、補正予算を組んで今度の臨時国会に提案いたしますというように解釈をしてよろしいか、それとも別個な方法でワクを拡大いたしまする方法がありまするならば、その見解をお尋ねしたいと思います。
  280. 石坂繁

    石坂説明員 現在の段階におきましては、臨時国会では補正予算を組まないという政府の方針であります。補正予算を組むか組まないかということは閣議で決定すべき問題でございまして、私は今ここでこれについてのどうこうを申し上ぐべき性質のものではなかろうと思います。従いまして、その点は私は差し控えますが、ワクを拡大するとすればどういう方法で拡大するか、あるいはまた、金額をどのくらい拡大するかという点も関連して参りますが、この点につきまして先ほど官房長説明いたしております。なお一応官房長からその点を説明していただきます。
  281. 齋藤誠

    齋藤説明員 十七億の保留分がかりに足りなくなった場合にどのような方法で拡大するかということでございますが、昨年におきましては農林漁業金融公庫の資金の中の予備ワクから回したという事例もございます。しかし、また、予備ワクそのものは他の用途にも振り向ける場合もあります。たとえば災害資金等に振り向けるというような場合もございまして、全体の資金量をさらにまた拡大するということになりますれば、投融資の増大ということにもなります。しかし、もう少し——事務的なことを申し上げて恐縮でございますけれども、御承知のように、自作農資金は、五分の二十年償還計画ということになりますと、全体の公庫の資金繰りも考えるということになりますと、一般会計からの出資というようなことも考えまするならば補正というような場合も起りますので、それらの全体の状況考えて、どうするかということを事務当局としては検討しなければならぬかと考えております。
  282. 島口重次郎

    ○島口委員 補正予算をやらないという建前でものを考えるということで、農林公庫の資金等の金繰り操作で調整をしたいというような、こういうような御答弁だと解釈いたしましたが、そういたしますと、農林公庫の資金の状態がどうなっているか、どうなっているからこの可能性があるという具体的な説明をいただかなければ了承できないと思うが、単なる抽象論や原則論ではこの問題は解決するものではないと思う。従いまして、全体の金繰り操作がどの面で可能であるかということを具体的に説明を願いたいと思います。
  283. 齋藤誠

    齋藤説明員 先ほど他の委員から御質問がありました際に、私から現在のこれについての処理の考え方を申し上げたのでございますが、営農資金につきましては、これからワクをきめて参るわけでございます。お尋ねの自作農創設維持資金につきましては、それらの資金の需要、今後の各県からの要望等の資金量を見合いまして、そうして、果して十七億でどの程度カバーできるかどうかということをきめて参るわけでございます。いずれにしても、天災法に基く営農資金の確定は、これからワクをきめるわけであります。それらの資金と見合って、さらに自作農資金としてどういうふうに配分するかということになりますので、まず現在保留しておりまする十七億の中から使うべきものは使って、そうして足らざるものが一体どれだけあるかということによって、初めて資金ワクの問題を検討しなければならないわけでございます。もしその場合に資金ワクを拡大するということになりました場合に、公庫資金の中から補正を組まないでも増額をする方法もあり得るということを申し上げたのであります。現在全体の資金でどうするかということについては、今具体的に御答弁する用意を持っておりません。
  284. 島口重次郎

    ○島口委員 営農資金の配分もこれから検討いたします、あるいは公庫の資金から捻出するというような御答弁です。そういう方法もあり得るという答弁だったと解釈しております。私の質問しておるのは、しからば、営農資金の方でどれだけの余裕があり、公庫資金の方からどれだけの操作ができるという具体性を持たなければ、われわれの質問に対する答弁にはならないということを考えておるのであります。そうでなければ、質問の本論であるいわゆる十七億の配分——全国から要望いたしておりますのはおそらくその倍以上だと思いますが、この問題が解決されないと思いますから、解決のできる具体性のある御答弁願いたいのであります。
  285. 齋藤誠

    齋藤説明員 自作農資金なり営農資金なりにつきましていろいろの要望があることは承知いたしております。しかし、午前中にも申し上げましたように、営農資金につきましては、天災法の発動をまず前提としなければならないわけであります。これは、事務的に申し上げますと、今月末ぐらいに大体の被害程度が判明することになりますので、それに基きまして営農資金額を算定するということになるのであります。これは天災法に基く営農資金でございますから、系統資金の上からまかなうということに相なろうかと思います。そこで、天災法に基く資金ワクがきまりますれば、その資金ワクと見合って、自作農創設資金の方からこういうような各県の割り振りをするということをきめることになると思います。
  286. 島口重次郎

    ○島口委員 政務次官がおらなくなるそうですから、政務次官の方へ先にお尋ねしたいと思います。  この自作農維持創設資金につきましては、年間所得が三十五万以上、それから零細農は貸付の対象にならない、こう聞いておりまするけれども、明確に返済の計画が立たないというような零細農、貧農に対する政治的な救済方法をどう考えておられるか。さらに、三十五万の年間所得の者につきましては、今度の被害あるいは旱害等によりましては、全面的な所得が不可能であります。収穫もないのであります。それに関しましては、三十五万というような一つのワクで解釈をいたしますることは妥当ではないと思いますが、どういう解釈であるかを御答弁願いたいと思います。
  287. 石坂繁

    石坂説明員 これは償還をしてもらわなければならない金でありますので、償還の点から考えまして一応の条件をつけるのも、これまたやむを得ないと思います。
  288. 島口重次郎

    ○島口委員 そこで、もっと広い立場から考えまして、たとい零細農でありましても貧農でありましても、今度の災害で農地を放棄しなければならないというような最後の段階なのであります。その面に関しましては何か別個の救済対策があるか、政府の見解をお尋ねしたいのであります。
  289. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの御質問のように、今回の災害のためにどうしても農地を手放さなければならないような境遇に落ちた人、こういう人に対しまして、その後の営農計画を立てさせまして資金の融通をいたしたい、その点は私どもも同様に考えております。
  290. 島口重次郎

    ○島口委員 それは、営農資金の方で考慮するんですか、それとも自作農資金の方で操作をするのですか、その点を明確にしてもらいたい。
  291. 石坂繁

    石坂説明員 私の言葉が不十分であったと思いますが、ただいま私がお答えいたしましたのは、自作農創設維持資金でやる、こういうわけであります。
  292. 島口重次郎

    ○島口委員 それでは、その点は打ち切りまして、次の問題をお尋ねしたいと思います。このたびの青森県の水害は岩木山ろくを中心とする大豪雨でありますが、この付近は原始河川でありまして、約百ミリ内外の豪雨がありますると、ほとんど堤防が決壊する、はんらんするという状況であります。ところが、今度の災害は、わずか三日間におきまして三百八十ミリの豪雨であります。そういう面から、いかにその被害が大きいかということも想像に余りあるものがあると思います。そういう面で、青森県産のリンゴ畑の問題ですが、このリンゴ畑の荒廃いたしました耕地も約一千町歩あるのであります。この一千町歩のリンゴ畑に災害復旧の助成金はないのでございますけれども、これとて、このまま放置いたしますならば、勢いこのリンゴ畑を放棄しなければならない、手放さなければならないというような状況でございますから、災害復旧の補助金を出してもらえるかどうか。
  293. 清野保

    ○清野説明員 災害復旧につきましては、農地及びその施設災害復旧についてはそれぞれ暫定法によって補助が行われております。従いまして、リンゴ畑といえども、土砂の崩壊あるいは流入等によりまして、リンゴ畑がリンゴ畑としての機能を発揮できない場合には、当然農地の復旧としましての補助がございます。
  294. 島口重次郎

    ○島口委員 どうもよく聞こえなかったので、もう一度再確認したいと思います。リンゴ畑でありましても、耕地が荒廃する、あるいは泥沼となった際には、災害復旧費の助成金がつく、こう解釈してよろしいのですか。
  295. 清野保

    ○清野説明員 その通りでございます。
  296. 淡谷悠藏

    淡谷委員 果樹の問題が出ましたので、一言関連して御質問します。  これは次官に一つお聞きしたいのですが、果樹園は、普通の畑作あるいは水田作と違いまして、永年作物の関係がある。土砂などが流入して農地が荒廃しませんでも、果樹そのものがだめになってしまう場合もある。特に今度のような豪雨の際などには、最後に散布しましたボルドー液が分解して、硫酸銅の酸化に、よる落葉落花を招いて、ひいては木を枯死もしくは多年の間衰弱させるという現象が起る。果樹栽培につきましては、前年もしばしば営農資金の問題で討議されまして、ようやく営農資金のワクに入った事情もございますが、災害の復旧につきましても、畑地だけじゃなくて、果樹そのものについても御配慮を願えるかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  297. 齋藤誠

    齋藤説明員 お話のような点につきましては、実は県の方からもそういう話は聞いておるわけであります。果樹そのものについての補償の問題になるのかどうなるのか、まだその点はっきりはいたしていませんが、どうも今まで聞いたところでは前例のない措置でございますので、これの助成については非常に困難だと思っておりますが、しかし、それぞれの担当課におきまして、県の事情がどうなっておるのか、目下照会いたしておるところでございます。
  298. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは単に青森県だけではなくて、岡山あるいは静岡、和歌山等のミカン、ナシ等の被害についてもやはり言えることです。非常に今後の農業経営には大事な要素でありまして、この地価などを見ましても、果樹の価格が非常に高く見積られている。果樹園としての売買が行われている実情から見ましても、それはやはり、一つの資産として、財産としての損害を見積っていただかなければ、実際には合わない。これは初めてのケースでありましょうけれども、これからどんどん出てくるケースでございますから、思い切って果断な処置をとっていただきたいと思いますが、その御用意があるかどうか、もう一ぺんお聞きしたい。
  299. 齋藤誠

    齋藤説明員 なお検討さしていただきたいと思います。
  300. 島口重次郎

    ○島口委員 先ほど政務次官答弁を聞いておりましたが、七月までの災害は八月で打ち切りまして予備費を請求するとありましたが、八月中の災害は、具体的な事務的な扱いはどうなるかをお尋ねしたいと思います。
  301. 石坂繁

    石坂説明員 最初の助成要綱では、一応七月の十五日までにやった施設に対するということで打ち切ったわけであります。しかし、その後九州の災害実情からいたしまして、七月十五日でははなはだ不適当であるということで、八月十日までに延ばしました。ただし、八月十日までに施設が、たとえば井戸を掘りまして、八月十日以前にさく井に着手いたしまして、十日までに完成いたしておりませんでも、それは助成の対象にすることにいたしております。八月十日以後に着手いたしました施設につきましては、それ以前とそれ以後とでは事情がおのずから異なる点もございますので、これは別途に考慮する必要があろう、こういう考え方で現在おるわけであります。
  302. 島口重次郎

    ○島口委員 私は関連して質問いたしましたけれども、九州の内容ではないのであります。青森県の水害が八月の十二日から十五日にわたっているのであります。この災害に関する査定やら打ち切りやら具体的な事務的な行使はどうなるかをお尋ねいたしておるのであります。
  303. 石坂繁

    石坂説明員 ただいまの点は、私はうっかりいたしまして、旱害の点についてばかり気をとられておりましたものですから、つい旱害について申し上げましたが、青森の大へんな水害々失念いたしまして、まことに失礼でございました。(笑声)それで、青森の水害についての査定は、八月の末から九月の上旬までに終りまして、九月の中旬ごろ閣議で予備費を請求する、こういうふうな段取りにいたしております。
  304. 淡谷悠藏

    淡谷委員 二、三関連質問をいたします。  今後、施設だけではなくていろいろ農作物そのものの評価も行われると思いますが、例年、各県が申請してきます損害補償の額と、農林省が最後に査定される額との間には開きがある。現在までに大体ことしの災害は各都道府県の要求では総額どれぐらいになっておりますか。各都道府県からの報告があった分です。
  305. 齋藤誠

    齋藤説明員 現在まで各県からの報告によりますと、農地及び農業施設関係の損害額は五十四億三千四百万円と相なっております。  農作物の関係につきましては、いまだ県別の詳細はわかりませんが、現在までわかっております概数を申し上げますと、六月以降の農作物の風水害による被害額は、現在まで水陸稲だけが判明しておりますが、約四十二億ございます。それから、旱魃による農作物の被害につきましては、八月十五日現在で全国的な概数としてわかっておりますものは、水陸稲合計で被害見込み金額は約九十六億、カンショが七十三億、大豆が約六億と相なっておる次第であります。
  306. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは各都道府県の報告に基くものですか、あるいは若干の査定を加えたものでございますか。
  307. 齋藤誠

    齋藤説明員 これは現在統計調査部で取りまとめ中のものの概算でございます。
  308. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私のお聞きしたいのは、各都道府県の報告に基いたものです。
  309. 齋藤誠

    齋藤説明員 農作物被害につきましては、各府県から同一的なものとして参ったものを取りまとめたものは現在ございません。
  310. 淡谷悠藏

    淡谷委員 私はその点非常に災害対策の誤まりがあると思う。さっき足鹿委員から話がございましたが、全国的に共済組合脱退運動が起っていることは次官もお聞きだろうと思うのです。その最大の原因は何であるかと申しますと、自分たちが災害を受けて申請した数字が全然認められてこないということなのです。非常に多額なものが削減されまして、そのために、保険金をかけても受け取る金が全然ないので、どうも勘定に合わぬからやめようというのが圧倒的な素朴な農民の声なのです。統計事務所の数字は農林省としては十分信頼されましょうけれども、その数字が都道府県の報告とどれぐらいの差があるかということは、これは重大問題だと思う。やはり一応各都道府県の報告を取りまとめて十分参考にする必要があると思うのですが、今のお話では、農林省の系統の統計事務所の数字は重大視するけれども、あの通りたくさんの人が多大の陳情費を使って陳情に来ているのに、その材料に一顧も払われないというならば、むしろあのむだな陳情はやめなさいと言いたい。その点は全然あなたの方では参考にしないのであるか、その根本的な方針を伺いたい。陳情があろうがなかろうが、報告があろうがなかろうが、これは農林統計事務所の報告に基いて決定するのである、各都道府県の報告は何も意に介してないという態度かどうか、その点を明らかにしてもらいたい。
  311. 石坂繁

    石坂説明員 遠方から時間と金を使ってのわざわざの陳情でありますから、私は就任以来できるだけこれらの方々にはねんごろにお目にかかって陳情の趣きは聞くことにしております。そうして、陳情の趣旨に沿いましてできるだけの努力はいたしております。ただ、私どもといたしまして、一々添付の数字などを克明に検討するまでの時間の余裕が実は常にないわけでありまして、それは見たり見なかったりの点もありますけれども、しかし、役所の統計部としては、それは相当参考にしておるわけであります。
  312. 淡谷悠藏

    淡谷委員 その点をもう少し科学的にかつ合理的に御処置にならなければ、この共済組合の脱退運動なんかますます広がる一方です。統計事務所の報告もむろん十分信用するあれがありましょうけれども、おのずから見方の違った点もあるだろうし、都道府県といえども、ただ金がほしいためにでたらめな数字で出してくるとは私は思いません。従って、大体報告の何%くらいが査定されるものか、また、従来の例をもってすれば何割くらいが削られてきたものか、そういう点はやはりつかまえておかなければ、災害復旧対策は立たぬと私は思うのです。それを、陳情に来たんだから聞いておく、あとはこっちがきめるんだ、こういう一方的な態度では、私は納得させるような態度は生まれてこないと思いますが、この点は次官はどうお考えになりますか。明らかに政治問題なんですが。
  313. 石坂繁

    石坂説明員 できるだけ陳情の人には親切に面接し、その資料も一つの尊重すべき資料として私はいただいておるわけであります。
  314. 淡谷悠藏

    淡谷委員 これは親切丁寧に追っ払うのじやありませんか。(笑声)親切丁寧に追っ払わないで、少くともこの委員会には、報告にはこれこれの報告があったんだが、農林統計調査事務所との開きはこれくらいあるんだ、このうち何%くらいは切るべきものだ、これくらいの数字の処置をされても、私は何も農政の欠陥になるまいと思うのですがね。
  315. 齋藤誠

    齋藤説明員 県の報告あるいは統計調査部におきます報告につきましては、いずれをどうということによって取扱いを異にするというようなことはございません。それぞれの数字についての意義はもちろん持っておるわけであります。たとえば、霜雪害の場合におきます被害状況を見ますならば、統計調査部の数字と各県の数字がほとんど同じであるか、県によりましてはかえって統計調査部被害額の方が大きいというような結果も出ておりますので、だんだん、統計の調査につきましても、信用度、正値を得て参っておりますから、非常に大きな差が出てくるということは必ずしもないと思います。ただ、状況によって、あるいは見方によったら差が出てくることは、これは方法が違いますので当然でありますが、同時にまた、それぞれの統計調査の結果、あるいは県の報告の結果は、使う場所がそれぞれ違うわけであります。そういう意味におきまして、われわれは必ずしも軽視するというような考えを持っておるわけではございません。
  316. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、前年度の方は言ってもしようがありませんから、今年度各府県から上ってきた報告の数字を当委員会にお出し願いたい。これとあなた方の方で査定された額との開きがいつも重大な問題になる。もしも報告をいたずらに大きくして、その報告に応じて金がとれるといったような迷信を抱かせれば、これは地方行政の問題として非常に大きいのです。その点ははっきりとした方針を打ち立ててもらいたい。特にこれは共済組合運動との関連もございますので、一つ数字をはっきりお出し願って、次官の懇切丁寧なる実証をお示し願いたいと思う。もし今できなければ明日でもかまいませんが、今まで上りました各都道府県の数字をお出し願いたい。  それから、次官が大へんもじもじしておられますから、あと五分くらいありますので、重大な一項をお尋ねいたしますが、あなたは、査定額がどの程度でとどまれば補正予算を組まなくともいいか、そのお見きわめをなされましたか。これはやはり、非常に大きな災害であれば、大蔵省がどうも予算的に困るからもっと削ってくれといったような申し入れもしばしばなされているようで、むしろ災害の実際の査定は大蔵省がやるのだということさえしばしば言われます。従って、この際、補正予算を組まないという点を固執されないで、実際の災害に基いてやるならば、大体この程度災害ならば補正予算を組まなくとも済むし、これ以上になれば補正予算を組まなければならぬという態度を、もうそろそろ腹を据えなければ間に合わぬと思うのですが、その大体のお見積りがございますか。
  317. 石坂繁

    石坂説明員 補正予算を組まないということは今日まで政府のきめてきておる方針でございます。しかるに、どの程度までの被害があれば補正を組むかということを農林省の一政務次官にこの席で言明せよとおっしゃられるのは、淡谷さんも少し御無理ではないかと思います。
  318. 淡谷悠藏

    淡谷委員 そうなってくれば私も言いたいのですが、大臣が出席されておればあなたには聞きません。大臣が、きのうきょう農林水産委員会が開かれることを知っていながら、あえて起工式に行ったというのは、万事信頼すべき農林次官に一任して、答弁の権利も与えていると私了解しますが、そうじゃないのですか。そうじやなかったら私はあした大臣質問します。
  319. 石坂繁

    石坂説明員 どう答弁していいか、私も非常に迷わざるを得ない御質問でございますが、もうおっつけ大臣も東京に帰ると思います。明日は出席できると思いますから、ぜひ一つ明日大臣にあらためてお聞きを願いたいと思います。
  320. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、もう約束の時間ですから私もやめますけれども、明日大臣は出席されますか。この点を次官にはっきり——あなたは留守番です。亭主の帰宅を知らぬような女房では勤まりませんよ。
  321. 石坂繁

    石坂説明員 帰京の予定は、きょうの七時何分かに羽田に着く予定であります。(「もう帰っている」と呼ぶ者あり)明日はぜひとも出席いたしますように懇請いたします。
  322. 淡谷悠藏

    淡谷委員 それでは、大臣が来てなければしょうがないから、やめておきましょう。
  323. 松浦周太郎

    松浦委員長 本日の会議はこの程度にとどめ、明日午前十時より開会し、水産、酪農、蚕糸その他の問題について調査を行うこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後七時五十八分散会