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1958-06-26 第29回国会 衆議院 地方行政委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 鈴木 善幸君    理事 亀山 孝一君 理事 纐纈 彌三君    理事 渡海元三郎君 理事 丹羽喬四郎君    理事 吉田 重延君 理事 川村 継義君    理事 中井徳次郎君 理事 門司  亮君       相川 勝六君    天野 光晴君       飯塚 定輔君    金子 岩三君       津島 文治君    三田村武夫君       太田 一夫君    加賀田 進君       佐野 憲治君    北條 秀一君       安井 吉典君  出席国務大臣         国 務 大 臣  青木 正君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      中川 董治君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      山口 喜雄君  委員外出席者         警 視 総 監 川合 壽人君         警  視  正         (警視庁第七方         面本部長)   片桐 徳永君         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 六月二十四日  小選挙制実施及び参議院全国制廃止反対に  関する請願西村力弥紹介)(第一号)  獣医師地方公務員に任用の際の処遇に関する  請願足鹿覺紹介)(第四二号)  市庁舎新増築費起債に関する請願丹羽兵助君  紹介)(第八七号)  地方公共団体における違法支出等監査請求及  び納税者訴訟制度の改廃に関する請願丹羽兵  助君紹介)(第八八号)  自転車荷車税廃止に伴う代替財源に関する請願  (丹羽兵助紹介)(第九〇号)  市町村立高等学校教職員退職年金通算に関す  る請願丹羽兵助紹介)(第九一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地方自治に関する件  警察に関する件      ————◇—————
  2. 鈴木善幸

    鈴木委員長 これより会議を開きます。  警察に関する件につき調査を進めます。質疑の通告があります。順次これを許します。天野光晴君。
  3. 天野光晴

    天野(光)委員 私、警察行政に関する問題について二、三質問したいと思います。  この前の委員会でも相当問題になっておるようですが、最近の警察官行動とでも言いましょうか、非常に越権行為が多い。人権じゅうりんなどということをやらない警察官はほとんどないといっていいくらいの警察状態であるかのように承知しているのでございます。そういう点で、民主警察の基本的な精神が最近欠除してきたのではないかという考え方を私はしているのですが、当局としては、この警察官教養問題等について、相当重点的に考えるべき大きな過渡的段階にきているのではないか。新しく入る警察官はもとよりそうでございますが、それよりも今までの警察官の再教育とでも言いますか、特に終戦以前の警察官の再教育に重点を置いてやらないと、なかなか民主的な、国民に愛され親しまれる警察官たり得るには相当距離があるように考えられるわけでございます。そういう点で、現在の警察制度下において、今まで通りのように考えておられるか、これからまた新たにこういうふうな教養面についてやりたいというような新しいものがあるかどうかという点について、とりあえず質問いたします。
  4. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 警察官教養重要性につきましては、あらためて申し上げるまでもないところでございます。民主主義下警察運営に当る者といたしまして、民主主義の理念に徹し、国民のための警察国民に奉仕する警察官でなければならぬことは申すまでもないと存じます。私ども、警察官教養にはかなり力を入れ、経質的にも、時間的にもそうでございますが、相当力をいたして今日に至っておるつもりでございます。しかしながら、教養というものはなかなかむずかしいものでございます。短日月において直ちに実を結ぶものではなく、お互いにじみちな努力を積み重ねて、初めて効果が現われるものと思っておる次第で、ございまして、今後とも教養にはさらに力を尽していきたい、かように考えます。先ほど特に御指摘のありました新しい警察官教養のみならず、在来の警察官の再教育という点は、確かにお説の通りでございます。そうした点にも思いをいたしまして、今日御承知でもございましょうが、新しく警察官に採用いたします者は、各都道府県警察学校におきまして、一年間の基礎訓練をいたしまして配置につけるわけでございますが、配置についた後の警察官にも、絶えず繰り返しあらゆる訓練をいたしておるのでございます。その方法といたしまして、各管区ごと管区警察学校というのがございまして、これに巡査部長巡査諸君を絶えず交代で入校せしめまして、必要なる訓練をいたしておるのでございます。なお、さらに幹部たるべき者の警察官教養もこれまたきわめて大事でございますので、それぞれの昇任試験に合格いたしました者を警察大学あるいは管区学校等において幹部警察官としての必要なる訓練をいたしておる次第でございます。今後とも警察官教養その他につきましては、深く思いをいたし、さらに創意工夫をこらしまして、十分に実績の上りますよう最善の努力をいたしたい、かように考えております。
  5. 天野光晴

    天野(光)委員 それはごもっともな話ですからその通りなんでしょうが、ただ最近非常に表面化している人権じゅうりんの問題が数多くあるわけでございます。一つ犯罪を検挙するのに人権じゅうりんを数多く侵しておるという現実の問題を、私は数多くの事例を持っておるのですが、きょうは、具体的な問題になりますからそのうち機会のあるときにその問題は申し上げたいのでありますが、特に人権じゅうりんを侵す行為警察官に対する訓辞とでも申しますか、どういうような指導をされておられるか、それをもう一つ伺いたい。
  6. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 捜査に当る警察官が特に人権侵犯の問題を起しやすい立場にあるという点を考慮いたしまして、捜査係官教養につきましては特に力をいたしておるつもりでございます。およそ捜査あり方といたしましては、申すまでもなく基本的人権を尊重しつつ、科学的、合理的に捜査を進めまして真実発見に努めるというあり方でなければならぬということを、私どもは絶えず第一線関係官に強調いたしておるのでございます。昔のように、いわゆる勘による捜査といったようなことは、えてして人権を侵犯する危険性を伴うものでございます。先ほど申します通り、科学的、合理的な捜査、理詰めの捜査によりまして真実発見に努める。こういう点を中心といたしまして、捜査に当る者に対しましては絶えず教養訓練を続けておるのでございます。数多い警察官の中に、まだ教養が十分徹底しないために、時折人権侵犯のような問題を起しますことはまことに遺憾でございますが、今後絶無を期して、さらに一そう努力精進をいたしたい、かように考えております。
  7. 天野光晴

    天野(光)委員 そこで結論に入るのですが、警察官法律行為を犯した者の取締りをし、あるいは起さないように指導する役割を果すものであると思うのです。その法律行為を犯した者の取締りをする警察官みずからが法律行為をそのために犯すということは、もう前から申し上げておるように非常に数多くあるわけでございます。ところが、慣習的な考え方とでも言いましょうか、とりものコンクール的な考え方で、犯罪件数を上げれば成績があがるとか、あるいは賞与がもらえるとかいうような考え方ではないと思いますが、ともかく、あえて人権じゅうりんをやっても、上司はこれを見のがして見て見ないふりをしておるというような事例が数多くあるわけでございます。たとえば一昨日も、本州製紙の問題で警視総監質問されたその答弁の中にも、何かしら——自分下僚であるからこれはやむを得ないのであろうと思いますが、自分の同僚あるいは下僚人権じゅうりんを侵した問題について、かばうというような空気がある。どこの警察署でも、そういうような行き方を習慣的な考え方でやっておるようです。ですから、警察官人権じゅうりんが処分されたというような事例は、ほとんど九牛の一毛だに足らないくらいしか現われていないのでありますが、そういうところに、あえて人権じゅうりんを侵してもいいんだというような安易な考え方人権じゅうりんが常に起されておるという現実の点があるように私は考えるのですが、その点いかがです。
  8. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 法秩序を守ることを任務といたします警察官みずからが、法をよく守る者でなければならぬことは申すまでもないところでございます。警察官が法にたがうような行為あるいは人権を侵すような行為があったとき、上司がこれをいわゆるくさいものにふたをする傾向があるのではないかという御指摘でございますが、遺憾ながら、過去においてはあるいはそういったような傾向があったかもしれません。今日は、そうしたことは絶対に排除すべきであるというふうに私は考えまして、先ほども申します通り、たえず教養機会を通じましてその点の心がまえの徹底と申しますか、警察官行動につきまして、法に従うという態度を失わないように十分戒心をしておるつもりでございます。不幸にいたしまし、警察官みずからが法に触れるようなことをする、あるいは人権を侵すような行為があったという場合には、これに対しましては、十分その責任を追及し、その程度に応じてしかるべき処置をとっていくのであります。いわゆるくさいものにふたをするような態度は決してあってはならない、かように私は考えまして、第一線幹部諸君にも、機会あるごとに強調をしておるのでございます。警察官も人間でございますから、ときに失敗をすることはあり得るのでございますが、あやまちはあやまちとして男らしく率直にこれを認め、将来再びあやまちを犯すことがないように反省することによって、初めて向上進歩があるものと考えるのでございます。部下非行上司がかばうということは、いかにもうるわしい人情のようでございますが、これは結局警察官素質を向上せしむるゆえんでないと考えるのでございまして、いわゆる泣いて馬護を切るという言葉もあります通り、非は非としてその責任を追及し、将来再び過誤を犯すことのないように戒めていく、教養を高めていくということこそ、警察全体の素質向上に寄与するのではないか、かように考えまして、私は、機会あるごとにそういうように第一線幹部諸君に要望しておるのでございます。
  9. 天野光晴

    天野(光)委員 そうしますと、長官考えておることは、教養の面でそうした侵犯行為を起さないような警察官に仕上げるように努力する。もしそうしても侵犯事犯を起すような現実の問題に直面した場合には、厳重に処断する。そう解して差しつかえありませんか。
  10. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 御説の通りでございます。
  11. 天野光晴

    天野(光)委員 そうしますと、問題はその事犯が起きたという場合の扱い方になってくると思いますが、現在監察制度というのがあるということでございますが、現在の監察制度は、私の関係しておった県の監察制度のような状態であったのでは、ほんとうの第三者が納得できるような監察の結果がもたらされていないようでございます。そこでたとえば人権じゅうりんが起きた。犯罪の検挙をするのに任意捜査で、任意出頭容疑者を呼んでおいて取調べをしておったのが、たまたまそれが忘れたのかどうか、強制捜査的な行政処分的扱いをしたというような問題が起きたというような事案がかりにあったといたしまして、その被疑者の方から申し出があったような場合におけるその処置については、だれが一体その警察官侵犯行為を犯したということを処断するような機構とでもいいますか、その警察みずからが警察官調べて出されるものでしょうか。今までの機構ですか、いわゆる監察制度だけにたよってその始末をされておったかどうかということをお聞きしたいと思います。
  12. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 お説の通り警察官非行防止と申しますか、さらに非行が起されたときにこれを摘発して措置すると申しますか、そういう意味をもちまして監察官制度が各都道府県ともとられております。各府県の実情に即して必要なる人員をもってこうした仕事に当っておるわけでございます。今日まで、不幸にしまして各府県とも何がしか警察官非行事件の発生を見ております。監察官制度によりまして厳重にこれが真相を究明し、必要なる行政処分をする場合もあります。また、不幸にして刑事責任を問うべき性質のものでありますならば、これはまた捜査関係の者をして十分にこれを追及して処分するというふうにいたしております。
  13. 天野光晴

    天野(光)委員 今までもそのようにやっておったわけですが、不幸にしてその事犯が相次いで起きておるわけでございます。これはないとおっしゃられれば、私の方は具体的な問題を取り上げてお話し合いをいたしたいと思いますが、きょうは時間もございませんので、この程度で私の質問を打ち切りたいと思います。ただ問題は、今までの監察制度状態警察官のそうした事犯の摘発といいますか、調査捜査をするという状態では、とても緩慢でどうにもならないと私は思います。そこでこれは私が断定したのではどうもはなはだ問題であるかもしれませんが、そういう点から今まで、おそらく終戦後の新しい刑事訴訟法ができてから現在までの警察官教育に当っては、そういう基本的な考え方において教育をされてきておったことは間違いないと思いますから、現在まで警察庁長官が話のやりとりをされておったのは、理論的にその通りだと思います。しかし、それであっても非常にその事犯が数多く起きており、その始末をほとんどされないというのが現在の段階であろうと思います。ゆえに、きょうからの警察官のそうした越権行為あるいは人権じゅうりん等が発生した場合におきましては、より以上厳重に処断する、刑の判定においても強くこれを処断するという意思表示長官みずからがされておるのですから、私は了承するのですが、そういう事犯のあった場合にはちゅうちょなくその処断がしていただけるものというふうに了承して差しつかえございませんか。
  14. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 全くお説の通りでございます。先ほども申します通り教養に今後さらに力をいたしまして、教養ひとり学校教養のみならず、一般教養と申しますか、日常職場において、執務を通して上司部下に対する教養を絶えず繰り返し行うことによりまして、警察官一人々々の質的向上をはかると同時に、警察官みずからの心がまえの点につきましても、先ほど申しましたように、民主主義の原理に徹した人権を尊重することを基礎として日常執行業務に当るというように、いわゆる紳士たる警察官を作り上げるように今後とも一そう努力をいたしたいと思うのでありまして、目下その努力継続中でございます。数多い警察官の中に、そうした努力の中にもかかわらず、なお非行をあえてするものがあります場合には、これに対しましては断固たる処置をとって、再びそういうあやまちを起すことのないように一そう教養を加えて参りたいと思っております。
  15. 天野光晴

    天野(光)委員 刑事局長がお見えのようですから伺いますが、任意捜査、いわゆる任意出頭を求めて警察署へその容疑者出頭した場合、第三者面会を求めて、その面会を許さなかったというような問題は、人権じゅうりんになるかどうか、刑事局長にお尋ねいたします。
  16. 中川董治

    中川(董)政府委員 任意捜査の場合におきましては、本人任意性ということを中心としております。任意性ということを中心として事を処理しなければなりませんので、任意の場合でありますので、むりにこれを処理するということになれば行き過ぎだろうと思います。
  17. 天野光晴

    天野(光)委員 もちろん強制捜査逮捕状を出して身柄を留置しても、これは私の考えですが、面会第三者が求めた場合においては、当然面会を許されなければならないと思うのですが、それがまだ強制捜査に入っていない、いわゆる任意捜査任意出頭を求めておる者に対して面会を求めた場合、これを面会させるか、今調べ中だからだめだ、会わせるわけにはいかないというように、会わせなかったような事態は人権じゅうりんになるのかどうかということです。
  18. 中川董治

    中川(董)政府委員 事案態様によって違うと思うのですが、任意で取り調べられておる人と取り調べておる人との間の契約に基いて話しておるうちに、第三者おいでになる場合において、話し中であるからちょっと待って下さいということはあり得ると思います。要するに、任意捜査の本質というのは、捜査に協力していただいておる人と捜査官との間でありますから、第三者との関係につきましては、そのときの状況、そのとき場所を管理する者がありますので、場所を管理する者の意に反してそこに入って行くということは拒否する、こういう場合もあろうかと考えております。
  19. 天野光晴

    天野(光)委員 何かあげ足をとるように聞かれても困るのですが、具体的な事件があることとして言っておるのです。とかく強制捜査を開始しても、人権じゅうりんは侵してはいけないということは基本的な問題であります。ところが、任意捜査でいかに話し合いを行ったとしても、あくまでも任意捜査ですから拘束権はないはずです。拘束権のないものに対して、いかに話し合い捜査継続中であるといいながら、第三者であろうと、第四者であろうと、面会を求めた場合において、捜査の最中であるから面会させるわけにいかないということで、警察の方で断わるということは、人権じゅうりんになるのではないかというふうに考えるのです。これは司法警察官に非常に多いから刑事局長に聞いておくのです。刑事局長自体がそれがはっきりわからないようでは、末端刑事なんか、てんで問題にならないと思うのですが、その点をもう少しわかるように説明していただきたいと思います。
  20. 中川董治

    中川(董)政府委員 これはこういうことだと思うのです。例をあげて申しましょう。甲という方を、乙という捜査員が甲の同意を求めて、ある乙の管理する部屋調べておる。この場合に丙という方が甲に会いたい、こう言っておいでになる場合においては、会っていただくことをお断りすることもあり得る。こういうことをお答えいたしたいと思います。と申しますのは、甲と乙との話し合いによって、甲の調べ捜査に協力しようという状態にあるときに、丙という第三者が来て、一つ打ち合せしたいのだということになると、任意調べておるということに対して、その任意真実性その他に対して将来の問題として問題も起り得ますので、甲と乙との話し合いの上で取り調べておる際に、その場所がおおむね警察署である場合も多いものでございますから、警察署管理権もございますので、ちょっと待って下さい、こう言うことはあり得ようかと思うのであります。
  21. 天野光晴

    天野(光)委員 そうすると、丙が面会に行った場合に、甲が乙に、一応面会したらどうだというふうに言われて、甲が会わぬというならいいが、それを乙自体が、甲に取り次ぎもしないで会わせないということ自体については、どうですか。
  22. 中川董治

    中川(董)政府委員 多くの場合、そういった場合におきまして、あなたに面会でございますが、どういうふうになさいますか、こう言ってやりとりをすることが、最も合理的であろうと思います。ところが、いろいろ態様にもよろうかと思いますが、大体調べている最中で、管理権に基いてその部屋を占拠してやっている場合に、どやどやと入ってくる、こういう場合においては、ちょっと待って下さい、こう言う場合はあり得ると思うのであります。
  23. 天野光晴

    天野(光)委員 私のほんとに言いたいことは、逮捕状は御承知のように四十八時間という時間制限があるのであります。四十八時間ではなかなか容易でないので、任意の名目で警察に持ってきて、そうして時間かせぎをするというやり方が、現在の司法事件には非常に多い。そういう場合に、証拠の隠滅をはかるとかなんとかいう問題があるならば、初めから強制処分をしてやればいい。強制処分もしないで任意調査継続している場合には、第三者が入ってきても、警察の都合で会わせないというようなこと自体が、私は人権じゅうりんであると思うけれども、その点どうですか。
  24. 中川董治

    中川(董)政府委員 これは任意ですから、無理に事を処理すべきものではない。やはり関係者の間において、お互い任意捜査に協力して、真相を明らかにしようじゃないか、こういう建前でやっていらっしゃいますので、その考え方を前提にしておいでになった場合に、取り次ぐ場合もありましょうし、今お話し中ですから、ちょっとお待ち願えませんか。こういうことで、話をしておった場合には、第三者に、ちょっとお待ち下さい、こう言う場合もあり得ると思います。今話し合いの最中でございます、ちょっとお待ち下さいと言ったことのみをもって、人権じゅうりんということはどうかと思うのであります。態様のいかんと思うのであります。  それからもう一つは、先ほどお話しになりましたように、強制処分につきましては、時間の制限が確かにあるのであります。時間の制限をかせぐという目的を持ってやるということは適当でございません。ところが、御案内かと思いますが、逮捕状をとりまして、初めから道ばたで、大衆の前で逮捕権を執行するよりも、ちょっとおいで下さいと言って、任意同行を求めて、人が知らないところで逮捕権を執行する場合等もございまして、逮捕状を執行する場合には、なるべく常識的にやりたい、こういう念慮でやる場合もございますので、その辺の関係はどうぞ御了承願いたいと思います。
  25. 天野光晴

    天野(光)委員 ここで架室の問題の格好で進めたんではどうにもなりませんし、具体的な問題でやったのではまた問題が残ると思いますので、以上で質問を打ち切ります。が、しかし、刑事局長自体がそういうお考え方では、民主的な捜査末端においては行われていないことは事実だと思う。というのは、私は逮捕状に何のために四十八時間という時間の制限をしたか。多数の前で逮捕状を示して逮捕していかれては困るから、本人が了解して、どうか警察の方へ行ってから逮捕状に切りかえてほしいという話があるならともかく、逮捕状を請求して持っていく、そのときの逮捕状の時間は、どっから数えて四十八時間の制限をするのか。逮捕を執行する時間というものはどこできめて、一分間でも超過するといけないのか。四十八時間の制限があるものだから、その扱い方については慎重に扱わなければいけないと思う。ところが往々——じゃない、ほとんどが、逮捕状に明記する記載の事実すら完全でない逮捕状を持参する。この間の選挙違反でも問題になったものがあるようですが、そういうことは、いわゆる教養程度が足りないのか、幾ら法律行為を犯してやってもいいという指導を、警察の方で末端にしているのかという大きな問題が起きてくるので、一応私は善意に解釈して、良心的に指導しておるんだが、物覚えの悪い警察官ばかり多くて、なかなか指導が思うようにいかないんだ、そういうふうに聞いておきたいのですが、今の刑事局長答弁では、私は了解することができないのですが、これを今一々質問しておっても何だから、そのうち一対一で話をして、それでもどうしても納得がいかない場合には、また委員会の席上でやることにいたします。
  26. 鈴木善幸

  27. 北條秀一

    北條委員 私は、この前の委員会において、警視総監に三つの問題を出しておきましたので、きょうはその問題から質問をすべきでありますが、せっかく青木国務大臣がお見えになっておりますので、一つだけ、質問というよりは問題を出しまして、次の委員会までにぜひお考えを聞かせていただきたいと思います。  それは、前回の委員会において承わりました町村合併の問題でございますが、これは早急におやりになるということでありますけれども、これこそまさに九月三十日という期限が切られております。従って、一日も早く、一刻も早く、どういう方針かということをはっきりとお示し願わなければ、時間切れになっては困るわけであります。従って、次の委員会において、政府の御方針をはっきりと打ち出していただきますように、その方針とは、いつまでに結論を出すか、総理大臣の決裁をされる予定かということをはっきりしていただきたいと思いますか、この点いかがでょうか。
  28. 青木正

    青木国務大臣 お話しの問題は、この前の委員会においても申し上げました通り、私が引き継ぎました案件のうち最も重大であり、また、すみやかに決定しなければならぬ問題でありますので、私は、その後も事務当局を督励いたしまして、いろいろ準備を進めておるのであります。そこで、先日も申し上げましたが、政府の責任においていずれに決定いたすといたしましても、やはりできるだけ調整のとれるものは調整をとりまして、円満に解決するようにすることが当然のことと考えますので、その調整の方法、あるいはまた、それをどういう順序で話を進めていくか、こういうことにつきましても実は検討いたしておるのであります。しからば、それがいつになれば結論が出るか、こういう具体的な御質問でありますが、現在の段階において、いつ幾日までに結論を出すということは、実は私、申し上げかねるのであります。しかしそのことは、決してじんぜん日を送るというような意味ではないのでありまして、いろいろ関係各県の方々、あるいはその他の事情等も承わらなければなりませんし、こちらだけの考えで日を決定するわけに参らぬ点もありますので、その点は一つ御了承いただきたいと思うのであります。しかし、北條委員のお気持はよくわかります。また私の考えも、ざっくばらんに言えば、こういう問題をなるべく早くさっぱりしたい——と言うと語弊がありますけれども、そういう気持でやっておるのであります。しかし、いろいろな関係方面がありますので、それとの調整等のことがありますから、日をいつ幾日ということは、ちょっと申し上げかねるのですが、御期待に沿うように最善を尽して参りたい、かように思っております。
  29. 北條秀一

    北條委員 私が今大臣にお聞きしましたのは、大体最後の決断をするまでにどれくらいの時間がかかるか、たとえば先回申し上げましたが、この特別国会中に結論は出なくとも、少くとも一ヵ月なら一ヵ月以内にやれるという、段取りだけでもお示し願えないかということなんです。いかがですか。
  30. 青木正

    青木国務大臣 御承知のように、もう終点が九月三十日にきまっておるのでありますが、しかし、終点まで待つという意味じゃ決してないのでありまして、国会中でもすぐそういう作業に入れということは、ごもっともであります。事務的にはもちろん国会中にもいろいろ検討いたしておりますが、しかし、私自身まだいろいろ御意見を承わらなければならぬ方面等もありますので、国会中に、国会の方の職務を放擲してそういうことに没頭するわけに参りませんし、他の町村合併の問題もあるのでありますが、国会が終了いたしましたら、まつ先に真剣に取り上げる問題としてはこの問題を取り上げていきたい、かように存じておる次第であります。それが幾日かかるということにつきまして、具体的に幾日ということは、ちょっとめどがっきかねるわけでありますが、できるだけ一つ急速に処置したいと考えております。
  31. 北條秀一

    北條委員 それでは、この際大臣に特にこの点だけをお示しいただきたいと思いますが、行政当局に明示せられることはできるわけでありますから——さきの委員会において行政当局で調整する点が残っておる、こういうことでありました。ところが、私が質問したのに対して、ある点は答えたけれども、ある点はみんなぼかしちゃった。でありますから次の委員会に、調整するとすればどういう点が残っているか、こういう点をはっきりしていただければ、私どもも協力できる。自由民主党ももとより協力されると考えます。この点を行政当局に明示せられていただいて、次の委員会においてはっきりしていただくことはできないか、こういうことです。
  32. 青木正

    青木国務大臣 できる限りのことを次の委員会に……。(「できる限りじゃ困る」と呼ぶ者あり)と言いますのは、めどのついているところとついていないところがあるものですから、ついている限りは……。
  33. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 ちょっとそれに関連して。今町村合併問題等もありましたが、急げといい、また急がぬという議論も出てきております。そういたしまして結論は、事務的にきわめてきれいに法の精神でやられたのならばいいのであるが、実は必ずしもそうではないというふうなうわさも最近非常に流れておりますので、私どももここ二、三日両方から陳情を受けてまことに困っておる。そこで何か最後の委員会の調書があるようでございます。この調書は非常にみごとにできておるように私は承わっておるので、これを一つ委員会に資料として出していただきたい、私そう思うのです。きょう行政局長もおりませんのに、大臣に直接お願いをして恐縮でありますが、委員長どうぞ一つそういうふうにはからっていただきたい。調書のみごとなやつができておるようでありますから、一つお願いいたしたい。
  34. 鈴木善幸

    鈴木委員長 ただいまの中井委員のお申し出につきましては、委員長において適当に取り計らうことにいたします。
  35. 北條秀一

    北條委員 それでは、さきの委員会において警視総監にお願いしておきました三点について、まずお話しを願いたい。
  36. 川合壽人

    ○川合説明員 第一の問題におきまして、警察がこの問題を知って、それについて最初補償ということが割合に頭にこびりついておったのでありますが、その経緯を簡単に申し上げます。警察といたしまして、この問題について最初に情報を受けましたのは、四月の二十六日に東京水上署員からのものでありまして、これはこの工場から汚水を放流されるため、投網業者その他が死活の問題として非常に困っておるという意味の注意報告であったのであります。これにつきましては、五月の二日に都の設備課の化学係長に電話をいたしまして、善処方の通報をいたしたのであります。五月十九日になりますと、小松川警察署巡査から、やはり同じように汚水のために貝類が死ぬ、浦安と葛西の漁業組合が工場に対して厳重抗議を申し込んでおるという意味の、私どもの用語で申しますと注意報告と申しますが、注意報告がありまして、これを私どもの方では関係筋へ伝えておるのでありますが、五月二十四日の例の事案の前におきましては、私ども、工場につきましての設備その他の技術上の知識が浅いために、これはきっと補償の出し方、金額等において相当もめてくるのではないかというふうな考えを持っておったのであります。ところが、五月二十四日に御案内の事件が起きまして、単にこれは経済上の問題ではなく、非常に深刻な警備事案と化するという心配を持ちだしまして、そのあとの私どもの態度は、工場に対しましても、それから都の関係部局に対しましても、漁民にとっては生活権の問題であって、非常に不祥なことが起るかもしれぬから、十分に関係の人々においては善処するようにという意味のことを、あるいは本社にあるいは工場長に、それから都の水産課、設備課というふうなところに警告を出したのであります。  第二に御質問になりました警察官の負傷の状況を調べよということでございますが、これは前回にもお話いたしました経緯によって大体御承知通りでありますが、正確に数を申し上げますと、警察官で負傷いたしました者が三十七名でございます。一ヵ月以上の者が一名、三週間以上の者が一名、二週間以上が六名、十日以上が七名で、十日未満が二十二名であります。目下二名だけが入院をいたしております。  第三番目に警棒の使用は二分間というが、時間が違っておるんじゃないか、違っていないとすれば、これはよほど激烈な所業をやったためにあのように負傷者をよけい出したんじゃないかという御質問であります。二分間というのも、私どもとしましては、あらゆる幹部につきまして錯覚はないかということを問いただすのでありますが、大体二分間を出なかった。と申しますのは、あの情景を詳しくお話しするとよろしいのでありますが、オート三輪車をもって突っ込んできましたのは、部隊のごく一部に対してでありまして、この一部の者が隊長の命によりまして、非常に危険だと思われるし、また門外に排除するについてはどうしても警棒の使用は不可避であるということで、警棒はずせという命令を下しておるのであります。ところがその号令を聞きますと、漁民の方では非常に緊張しまして、さっと前面の警察官から約五メートルぐらいまで退いておられるのであります。そのままの姿で実は一度門のところまで押したのであります。従って隊長としましては、目的を達したというふうに考えたものですから、警棒おさめという号令をかけておるのであります。ところが、そのあと約四回にわたりまして押し返しがあって、門における激突は相当激しかったのであります。私ども一昨日の門司委員の御指示もありまして、現在負傷の原因その他詳細につきまして、警察官側はもとよりのこと、漁民の方方につきましても今慎重に調査を進めておる次第でございます。
  37. 北條秀一

    北條委員 今、総監からお話を承わったのでありますが、要するに警察の方には、漁民が暴徒化するであろうという先入観が私は当初からあったと考えるのです。そういう先入観のもとに、これはあとで質問いたしますが、いろいろな準備をしていった。でありますから、従って上部におけるそういった先入観は、おのずから下部に以心伝心で伝わって参りますから、結局私は、こういった騒擾事件が発生した挑発の根本の原因は警察側にあったのであって、漁民の方にはなかった、こういうふうに考えるのでございます。  そこで本州製紙の工場にSCPという機械を据え付けて、その機械が悪い水を出すというので、小松川警察署の報告によって、貝類が死ぬ、あるいは投網業者が仕事ができないというような情報を受けられて、関係当局に警告を発生したと言われますけれども、その警告がきわめてなまぬるい警告で、ほんとうに人命を尊重し、財産を尊重していくという使命に警視庁が徹しておられましたならば、もう少し私はやり方があった、警告の仕方があった、こういうふうに考える。その点ははなはだ遺憾であります。  そこで、きょう新しくまた問題がここにむしろ警視庁から提起されたのでありますが、ここに「衆議院地方行政委員会提出資料」として、昭和三十三年六月二十六日現在で警視庁がこういった書類を出しておられますが、警察は、元来人民からとる調書というものを絶対視される。調書をとって拇印を押せば、この調書は絶対本人の自由な告白であって、間違いないのだというふうに言われるわけであります。そういたしますと、今日警視庁がお出しになりましたこの書類は、私どもはそういった絶対的なものと受け取ってよろしいかどうか、まずその点からお聞きしたいと思う。
  38. 川合壽人

    ○川合説明員 今、北條委員はどういう書類をお持ちか知りませんが、警視庁で作りましたものは、現在までの段階では信憑力のあるものでございます。
  39. 北條秀一

    北條委員 失礼しました。ここにありますのは、「昭和三十三年六月二十六日 衆議院地方行政委員会提出資料警察庁」となっておりますが、これは警察庁では、今言いましたように絶対のものと考えてよろしいかどうか。
  40. 山口喜雄

    ○山口政府委員 委員会に、警察庁として提出しております資料は間違いないものと思っておりますが、念のためにちょっとお見せをいただきますれば……。これは警視庁の方からの報告に基いて作成をいたしたものであります。
  41. 北條秀一

    北條委員 それでは私は、きょうここに出されました新しい問題で、いろいろな点において問題があると考えるのであります。従ってその問題点を最初に申し上げますと、「本州製紙江戸川事件関係」の二ページの一行目の下の方に「警視庁としては問題の深刻さに鑑み、」と、まず書いてある。この点は非常に問題だと思うのであります。「深刻さ」とは、どういうふうに深刻に考えておるのだろうかという点であります。その次は、二行目の最後の方でありますが、「もとより紛争そのものには全く関与せずに経過してきた。」こういうふうに書いてあります。これは紛争に全く関与せずとは書いてありますが、実は非常に紛争が起るであろうということについて深い関心を持っておったという内容であろうと私は思うのであります。それからその六行目に、「第一段階は、群集による不法行為を」と書いてあります。今までの当委員会における説明によりますと、必ずしも彼らは群集とは考えておられない。町長が指揮をとって参議院に来るまでは粛然として来た。ところが、参議院において多少行き違いがあってらんぼうな行為をやったのでありますが、彼らは、私は決して当初から群集でなかったと思う。ところが、ここには冒頭から「群集」というふうに書いてある。これは非常に問題だと思う。第四点は、それからずっと離れまして、一段階ついて、「そのような実績に鑑み、」と書いてありますが、その「実績」とは一体何か。五月二十四日のことであろうかと思いますが、実績とは一体何か。その次のページには、「第二段階は、現に集団的暴力行為が発生し、人の生命、身体、財産に重大な損害が生じており、」と書いてある。事実、人の生命に重大な損害が生じておったかどうか、あるいは財産に重大な損害を生じておったかどうか。マンホールに石を投げたとか、あるいはマンホールが詰まって構内に汚水が流れた、こういうようなことがあったようでありますが、しかしそういうわずかな事態を、こういうふうな誇張された表現にしなければならぬ理由があるかどうか、私は非常に疑問だと考えるのであります。  そこで絶対的な権威を持って警察庁がお出しになりました資料も、こういうふうなところに非常な間違いがあると思うのでありますが、以上申し上げました五つの点について、皆さんの方の見解を明らかにしていただきたいと考えるのであります。
  42. 山口喜雄

    ○山口政府委員 第一の「問題の深刻さに鑑み、」と申しますのは、事が多数の漁民の生活の問題にも直接関連をしておる。問題が非常に関係者にとって深刻な問題である。こういう意味で警察としましても事態の成り行きを注視しておった、こういう意味であります。それから「紛争そのものには全く関与せず」と書いてありますのは、その紛争の解決につきましては、それぞれ会社あるいは行政官庁として責任を持っておられるところがあるわけであります。警察が、そういう紛争そのものの解決に直接積極的に乗り出すということは、やはり警察といたしましては、むしろ差し控えるのが普通の場合には妥当であろうと思うのであります。そういう意味であります。「群集による」というように書いてありますが、これは当日警察が、この浦安の人人の行動について注意をし、何らかの措置をとらなければならないと思いましたのは、参議院において若干のトラブルがありましたあのあとであります。あの状態は、御承知のようにすでに町長あるいは組合長さん方の統制力というものは、もうほとんど失われておった状態であったと思うのであります。そういう意味におきまして「群集による不法行為」というように書いたのであります。「そのような実績に鑑み、」と申しますのは、そのときまでにここに書いてありますようないろいろな事柄が起っておりますので、それでと、こういう意味でございます。それから「人の生命、身体、財産に重大な損害」を生じ「この警戒上急を要する状況に発展したので、これを制止、鎮圧するために部隊を追加し、出動させた。」これが第二の段階でありますが、御承知のように、この本州製紙の工場の正門に到着するや、直ちに閉ざされてある正門を乗り越え、へいを乗り越えて、七百名の方が約二百メートル近く、百六、七十メートルの間をなだれをうって乱入——乱入という言葉はあるいは適当でないかもわかりませんが、状況はそうであったと思うのであります。そうしてその通路に当る工場の建物のガラス、あるいは工場職員、会議室、事務室の中の机等までについても、いろいろ暴行といいますか、らんぼうをされて、そして百六、七十メートル工場の中に入ってこられて、初めてそこで警察官と対峙をしたわけです。それまでは警察は、警察官の姿が町民の方の目に触れますと、またかえって刺激をしていろいろと問題を大きくしてはいけないというので、工場の正門から二百メートル中に入りました食堂の中に警察官を秘匿しておいたのであります。そこで正門からどっと入られた。それが百五、六十メートル入ってこられて、そこで初めて警察部隊が出ていって対峙をした、こういう状況であります。なおその後、対峙のあと、いろいろ石を投げるとかということで、警察側にも負傷者が出ております。また工場側にも守衛等が負傷いたしておりますので、これではいけない、夜にもなるということで部隊を追加出動させた、こういう次第であります。
  43. 北條秀一

    北條委員 前々回の委員会において警視総監は、第一段階はきわめておとなしくいったんだというように言われた。ただいまの御答弁は、第一段階から彼らはすでに群集だったというように考えておられる。しからば第一ページを見ますと、警察の出動日時、部隊名をあげて、「六月十日午後五時三十分」と書いてある。これはすなわち第一段階警察のとった態度は、五時三十分にはすでに浦安の漁民は群集であったかという点について警察側の認識を聞きたい。
  44. 山口喜雄

    ○山口政府委員 第一段階は、群集による不法行為を未然に防止するために警察官を工場に持っていった、こういう意味であります。
  45. 北條秀一

    北條委員 私の本日の質問の集約点を申し上げますと、要するに警察先ほどから先入観ということを言っておりますが、先入観でものを処理していくから常にあやまちが起きるのだ。これが私のきょうのねらいの焦点でございます。従って群集による不法行為を未然に防止するためという先入観を持っているからいけないのだ。整然として行動しておる。整然として町長のもとに統制ある行動をしている。参議院に参りまして、参議院で話が済んで、そうして本州製紙の本社を訪れようと考えたけれども、川島幹事長のとりなしによって、悪水はただちに放流をとめるということで、漁民の諸君は万歳を叫んでほこをおさめて——これは語弊がありますが、おとなしく帰ろうとした。だから統制ある団体なのであります。もしこの統制ある団体を群集という先入観で律せられたならば、当時五時三十分に出動した方面隊も初めから群集だった。結局群集との争いだったというように認識せざるを得ないのでありますが、その点が私は、警察側の考え方は根本から誤まっておるというように判断するのであります。なぜこういうふうな今の御答弁のように——答弁は、群集による不法行為を未然に防止する、それは確かに未然に防止することはけっこうでありますけれども、なぜ群集という字を使わなければならなかったか。群集という観念でもってこれらに対する措置を考えなくちゃならぬか、この点を私は聞いているのであります。この点についてのお考えをあらためて開陳していただきたいのであります。
  46. 山口喜雄

    ○山口政府委員 群集という字が、何か非常に悪い御印象を与えるようであれば、これは別に多数によるというように訂正いたしてもかまいませんですが、ただ当日は、参議院の常任委員会の玄関前におきまして相当の事例が起っておる。それは町長さんやみんなが極力とめられたのですけれども、なかなかおさまらなかったという事例一つ起っておりますし、事が非常に生活そのものに大きな影響を持つ問題でありますから、警察側といたしましても注意をしたのです。そのときにすでに群集だとそれを判断したわけではありませんが直接汚水が出ておる工場に行きますと、大ぜいの人でもありますし、群集心理等もありまして、どういうことになるかもわからない。しかも五月二十四日にはその工場でやはり一つの問題が起っておるということで、未然に防止するために派遣をしたということであります。群集という言葉が非常にお目ざわりでございますれば、多数によるというように訂正いたしてもけっこうであります。
  47. 北條秀一

    北條委員 私の言っている点がまだ御理解願えないかと思うのでありますが、また私の言葉が足りない点かと思います。私の言っているのは、群集という字を使ったか使わないかではなしに、警察側は常にこういった統制ある団体に対しても、初めから群集だ、こういう観念でもって物事を律し、ものに対する予防措置を講ぜられる。その先入観にあやまちの原因があるのだということを私は指摘しておるわけであります。もう一つ、御説明によりましても、三百何名の警察官本州製紙の工場の中に秘匿配置させたという警視総監のお言葉でございましたが、要するところ、あれだけの漁民諸君が江戸川工場の正門まで行って、江戸川工場がもし門を閉ざさず、あるいは無断入門を禁止するというようなプラカードを出さなかったならば、漁民諸君はそうまで激高しなかったと思うのであります。従って多少の人がへいを乗り越えましても、そう大した事件にならなかったと思うのでありますペいを乗り越してみたところが、警察側の伏兵がすでに存在しておって、やみ討ちを食らわされたということで、いよいよ群集が激高したわけであります。いつでも警察側のやり方で群集側を挑発する責任はいつでも警察側にあるのだという判断を私は持つのであります。従って今回の事件について、先般の委員会において門司委員からいろいろと警察責任を追及されておりましたが、要するところは、この事件によってあれだけ大ぜいの負傷者を出し、またきょうの説明によりますと、警察側は三十七名の負傷者が出て、そのうち二人がまだ入院しておるそうであります。いずれにしましても、非のあるところ、すなわち間違いのある点はどこにあるかということを早急に調べ上げて、そうして非のある点については信賞必罰と申しますか、直ちにこれは処罰するものは処罰し、そうしてあやまるところはあやまるという態度を公明に発表する、こういうことが何よりも必要である。これは私の衷心から願うところであります。従って警察庁においては、この問題についての跡始末を現在それぞれやっておられると思いますが、跡始末をするというだけでは意味がないのであります。問題は時間なんです。タイミングなんです。それを一体どういうふうにお考えになっておるか、警察庁長官に私は伺いたいと思います。
  48. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 今回のこの本州製紙江戸川工場をめぐる事案真相究明につきましては、たびたび申し上げます通り、早急に実態を把握すべく目下努力中なのであります。その真相究明の結果、もし警察側にいろいろの行き過ぎの点がありますならば、それはその程度に応じましてそれぞれ適切な措置をすべきことは当然でございます。これは警視総監においてこの措置をなすべきものと思います。私、直接これをなすべき権限を持っておらないのでありますが、しかし幹部の指揮統制等につきまして欠くるところがあるというようなことで、その責任を追及する場合には、場合によってはそれが国家公務員の身分を持っております者でありますならば、十分私どものところで詮議をしなければならぬという問題になろうかと思います。いずれもそれぞれの事案程度により、全貌を明らかにいたしまして、中央においてなすべきものは、もとより私どもで十分検討をいたして善処いたしたいと考えております。
  49. 北條秀一

    北條委員 それでは警視総監にただいまのお言葉でお伺いをいたしますが、いずれにしても事件をうやむやにするわけには参りません。従って、警察側は警察側としての責任あり方をはっきりさせられると思いますが、その終結をいつごろまでにやられるつもりか、またいつごろまでにできるか、こういう点について御意見を承わりたいと考えます。
  50. 川合壽人

    ○川合説明員 この事件につきまして、私どもの方では、最初に警察官を全部取り調べて、目下負傷者あるいはその他の関係者、それから町長さん以下の当日つき添われた方々につきまして、いろいろと御意見を承わったり、取調べをいたしておるのでありますが、何分にも関係の者が非常に多数でございまして、今、私どもここにも若干の現在まで取り調べました資料はございますが、何月何日までということは申し上げかねますが、できるだけ早く終結いたしたい、かように考えております。
  51. 北條秀一

    北條委員 これまた先ほど警察庁長官のお話の中にあったのでありますが、法を守らせんとする警察官は、警察官自身が法を守らなくちゃならぬのだということを言われました。まさに私はその通りだと思うのであります。従いまして、今回の事件によって、あなたの方からそれぞれ客観的に調べるのではなしに、六百三十名の警察官に、あなた方は警棒の使用その他について、かねて上司から命ぜられておる通りにやったかやらぬか、もし違反を起した者は申し出ろ、こう通達を出されると、善良なる、正直なる警察官は、たちどころに、確かに私は悪うございましたといって名乗り出るのが石井長官の御主張の通りだと思うのでありますが、そういう方法はとれないものですか。
  52. 川合壽人

    ○川合説明員 警察官の取調べ方は、事案によりましていろいろと違いまして、先ほど警察庁長官も申しましたごとく、部下に対して上官が何となく庇護的な態度に出る。それから部下警察官も、上司に迷惑を及ぼすことを何となくいさぎよしとしないで、事実の真相をぶちまけることを遷延するというふうな傾向があることを私も遺憾に存じておるのであります。ただ、この警棒使用云々ということは、私どもの規程にもありまして、こういうことをしてはいけないということと、事故の経過報告は、私に対する報告、警察庁長官に対する報告は、非常に綿密なることを要求されておりまして、その点につきましての措置は第一段階としてなし、自己のやりました具体的な行為につきまして——もちろんこれは暗い中でもって相当興奮状態でやっておることでありますから、逐一述べるというわけにはいかぬであろうけれども、何か思い当る節はないかということを隊員全部につきまして、内幕を申しますが、現在までに二回いたしましたが、個々人につきまして部隊長が取調べをいたしておるのであります。大へん上すべりな調査ではないか、また、良心に従ってもっと画一的に正直に名乗り出るような方がいいのではないかとおっしゃいましたが、今北條委員が申された方法では、なかなか真相をっくということは、残念ながらできないのであります。
  53. 北條秀一

    北條委員 こういうときに、警察官の精神において、あるいはその指導者の精神においては、あくまでも法を守っていくのだ、社会秩序を守っていくのだ、規則を守っていくのだ、上司の命令は守るのだという精神に徹するように努力しておるというのが、先ほどのお話だし、従来警察官としてとってきた態度だと思う。同時に、規則ではちゃんと警棒を使用してこうした場合には報告しろ、もし人に損害を与えた場合には、こういうように報告しなさいというふうに規則にはなっておる。あなたの方で六百三十人の警察官の中に、不法に警棒を使用して人命を傷つけた者がおる。現に百人おるのですから、この事実に対して、諸君の中に行き過ぎた人間はいないかと質問を発せられれば、それに対して、堂々と自己の責任を名乗り出るのが当然であり、それでこそ私は人民に愛される民主警察になると思うのであります。ところが、それはなかなかやれない、調査もぐずぐずしておるということでは、結局警察官の方は、何をやったところで、最後は処罰もされなければうやむやに済むのだということになって、いつまでたってもこういうことを繰り返しておるというにすぎない。結局、当委員会においていかに皆さんが——私は別に皆さんを軽べつするわけではありません。非常に尊重するがゆえに申し上げるのでありますが、いかにここで美辞麗句を並べて答弁をされましたところで、それは要するところ絵に描いたもちでありまして、実際問題としては親心を子知らずで、実際には逆のことがどんどんと行われておる。こういうことになると思うのであります。従いまして、なるべく早急にということでありますが、今回の国会も、もう期日も少いことであり、すでに事件が起きてから半カ月以上もたっておるわけでありますから、できるたらばここ一週間か二週間のうちに、この事件についての最後的な処置をされるように、特に私は希望したい。これに対して警視総監のお考えをあらためて明らかにしておいていただきたいと思うのであります。
  54. 川合壽人

    ○川合説明員 ただいまの北條委員の御意見、非常にごもっともでございますし、私どももそういうように事件以来心がけておりますので、一そうこの調査を促進いたしたい、かように考身ております。
  55. 北條秀一

    北條委員 順序が逆になりましてはなはだ恐縮でありますが、最後に、私は先ほど質問いたしました中で聞き漏らしました点がありましたので、補足して質問をいたします。それは警察庁の出された先ほどの提出資料の中で「第二段階は、現に集団的暴力行為が発生し、人の生命、身体、財産に重大な損害が生じており、」こう断定しておるのでありますが、当時人の生命、身体、財産にどれほどの重大な損害が生じておったか、この点をはっきりしていただきたい。
  56. 山口喜雄

    ○山口政府委員 六時過ぎに正門の前に到着をいたしまして、正門あるいはへいを乗り越えてだっと工場の敷地内に入って来たのであります。そのときに、先ほど言いましたように倉庫、会議室あるいは事務室等の窓ガラスを、石あるいは付近にあった丸太などを振るって破り、あるいは建物の中に入りまして、机その他をひっくり返して、非常に乱暴されたのであります。そして百七、八十メートルいきましたところで、初めて奥の方から出てきた警察官と、あまり広くない工場内の道で相対峙するような状況になった。そこで非常に石を投げられましたので、このとき警察官が二十数名負傷しております。そういう状況でありましたので、夜分にもなりますし、七百名に対して三百名くらいの警察官では十分な措置も講じられないというので、そこで初めて応援要請をいたしておるのであります。対峙しました時期が六時十五分ごろで、上応事態が納まりましたのが六時半過ぎごろであります。
  57. 北條秀一

    北條委員 それではここに書いてあります「人の生命、身体」というのは警察官のことですか。
  58. 山口喜雄

    ○山口政府委員 警察官も含んでおりますが、工場側の守衛も入っております。
  59. 北條秀一

    北條委員 警察官が二十名ばかりけがしたという先ほどの御説明でありましたが、では工場の守衛あるいは工場の職員であって負傷した連中の名前は、わかっておりましょうか。
  60. 山口喜雄

    ○山口政府委員 手元に持ち合せておりませんので、後ほど提出いたします。
  61. 北條秀一

    北條委員 それでは、その際に人の生命、身体に重大な損害を生じておったということでありますから、後ほどこれをお出し下さるということですので、次会にはぜひ一つ出していただきたい。  最後に、私はこれで質問を終りますが、要するにこういうように報告が出ておりますけれども、とどのつまりは、警察が最初から錯覚を起し、そして必ず漁民諸君は暴徒なのだというような先入観を持って部隊をここに構成していかれるものですから、こういう問題が起きてくるのであって、これを警察としては、特に全体を指揮される総監あるいは警察署長においては、十分にこういう点を警戒をされていかないと、今後こういう問題が必ず次から次に起きてくると考えます。従って、その点について警視総監は、この際、一つ今後は絶対にこういうことは起さないということを言われると思いますが、あらためて総監としての決意をはっきりと披瀝をしておいていただきたい。
  62. 川合壽人

    ○川合説明員 御注意の点はよく了承いたしまして、将来におきまする、いろいろな形の警備事犯が起ると思いますが、真相をきわめる上におきまして、私どもの触覚も働かせ、また私どもの態度も、十分に先入観念なり錯覚にとらわれないようにいたしたい、かように思っております。
  63. 北條秀一

    北條委員 非常にくどいようでありますが、政府側の御答弁は、いつもまくら言葉が入るものですから焦点がぼけるのです。ですから、これからも事件が起きましょう。その際には、警察側に責任があるときには、はっきり責任をとりますということでけっこうなんです。
  64. 川合壽人

    ○川合説明員 お話の通りいたしたいと思います。
  65. 鈴木善幸

    鈴木委員長 川村継義君。
  66. 川村継義

    ○川村委員 二、三点当局の皆さんにお尋ねいたします。石井警察庁長官には、これまでこの委員会等において、警察行政に対する御方針なりあるいは実際の警官の教養の問題、いわゆる指導問題等についてたびたびお話しいただきまして、実は長官のお気持もよくわかっておりますし、またその誠意に対しては、われわれは非常に敬意を表しているわけであります。ところが御承知通りに、たびたび問題になって参りますように、警察取締り等について、人権じゅうりんの問題、あるいはいろいろ行き過ぎの問題等が近時累増してきている傾向があるんじゃないか、こう思われてなりません。それで、長官としてもずいぶん心を痛めておられるとは思いますけれども、一体これはどうしたことであろう、こういう疑問が起ってくるわけです。長官としては鋭意努力をなさって、そういう事態の起らないように、取締り等についても行き過ぎのないように、十分と御配慮をいただいて指導行政の任に当っていただいておるようでありますけれども、そういう点が非常に多く見受けられるような事案が起きておる。どうしてこういうことになるだろうか。これは多い警察官の中でありますから、中にはそういうことも起り得るということは了解できます。また、数多い警察官の中には、実に世人の感謝と賞賛を受けておられる警察官もおられるわけでありますけれども、しかし、今日問題となるような、いろいろのじゅうりん問題であるとか、行き過ぎの問題等が起るということについては、これは何としても、今日の民主警察あり方からいたしましても寒心にたえないわけであります。  そこでまず第一にお伺いをいたしますことは、昨年ごろからでございますか、犯罪の検挙の能率が非常に上っているということを聞いておるわけでありますが、数年前に比べて、あるいは二、三年前に比べて、今日検挙、犯罪捜査そういうものの能率が上ったというようなことは、その通りに受け取ってよろしゅうございますか。大体どうようような実績を示しておるか。この点を刑事局長からでも一つ初めにお聞かせいただきたい。
  67. 中川董治

    中川(董)政府委員 警察犯罪捜査の能率といいますか、状態についてあらまし申し上げてみたいと思います。現行警察制度になりまして、供述というものを軽く見て、証拠主義を重く見るという建前になったときには、うんと警察の能率も落ちました。届け出を受けました犯罪のうちで、検挙されるものが非常に少かった。その後われわれの方で、証拠集めの方法についていろいろ苦心いたしました。皆さんの御指導もいただきまして、鑑識その他の施設を整備いたしまして、その後だんだん上って参りまして、近来検挙率というのは六割くらいでございます。われわれその六割の数字をどういうふうに考えるかという問題があるのですが、率というものにあまりこだわりますと、比較的こまかい犯罪を多くやって、非常に大きな犯罪がどうもおそくなる、こういう傾向になるわけです。私どもは、率というのは、統計というものを確かにとりますけれども、その率というものにあまり拘泥しない。問題の要点は、住民の皆様を犯罪から保護するということに力点を置く。たとい一件でも、非常に大きな凶悪犯罪を未然に防止したり検挙するということを非常に重視するというふうなことになりまして、率というものはそういうふうに考えるべきだという態度をとりまして、そうすることによって多くの犯罪が顕在化して防止の効果が現われる、こういうふうに考えますので、率そのものについてはあまり問題にいたしませんけれども、大体今日の状態におきましては、完全とは申しませんけれども、だんだん住民の方々の御期待に沿いつつあるのだ、足りないところは幾らもありますけれども、そういうふうに考えております。数字といたしましては、ここしばらく検挙率は横ばいの状態でございます。
  68. 川村継義

    ○川村委員 今お答えがありましたものの内容は大体わかるような気がいたします。私がお尋ねしておるのは、長官もたびたび言っておられたように、科学的な捜査というような面に力点を置かれて、われわれしろうとが考えて、三ヵ月かかった捜査が短時日ででき上るというようなこともあるだろうと思います。それからその衝に当られる人たちの努力と研究がそのような能率を上げておるのではないか、こういうことも考えてみるわけですが、それらについて、刑事部長はどのようにお考えでありますか。
  69. 中川董治

    中川(董)政府委員 犯罪捜査に直接当っておる人間の能率でございますか。
  70. 川村継義

    ○川村委員 以前に比べて近々非常に犯罪捜査の能率が上ってきたというようなことは、今私が申し上げたような原因も含まっておるだろうと私考えているわけですが、そのように考えてよろしいか、これにお答えいただきたいわけです。
  71. 中川董治

    中川(董)政府委員 科学的な方法、鑑識的な方法ということがあずかって力がある、こう考えております。
  72. 川村継義

    ○川村委員 それからもう一つ先ほどのあなたのお答えの中で、私、ちょっとにおいを察したわけですけれども、科学的な捜査あるいは鑑識の方法というものが進歩したのでそのように能率を上げておる、それはおそらくだれでも考えられることだと思います。もう一つは、警察官、その衝に当られる人たちの努力、研究ということも非常にあるのではないかと思うわけでありますが、いま一つの原因として、次のようなことがいえるかどうか、この点を一つお答え願いたい。それは、これはちょっと話が別になるようでありますけれども、今教育界に勤務評定を先生方にやる、あるいはやらない、こういうものをやっては日本の正しい民主教育を阻害するといって先生方は反対、文部省当局はこれを強行しようとして、好ましくない混乱が起っておるのは御承知通りであります。ところが、そのような勤務評定という言葉が当るか当らぬかわかりませんけれども、皆さんの方では、警察官に対するいわゆる勤務評定というものを、昨年からですか、おととしからですか、廃止をされた。それがために犯罪捜査に非常に能率が上ってきておる。私、こういうことを聞いているのですが、これは一体どのように考えておられるか、これは長官からでもいいですから、一つお答えを願いたい。
  73. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 勤務評定は、私どもの方では廃止はいたしておりません。ずっと前からこれは実施いたしております。今お尋ねの点は、あるいは私、想像でお答えしては恐縮でございますが、よく昔から検挙コンクールなどで競争させて、点数を上げたものにはほうびをやるとか、あるいは栄進その他の場合の参考にするのではないかというようなことがいわれておった時代があるのでございます。これは過去のことでございます。そういったようなやり方は、きわめて弊害こそあれ、得るところはないというふうに反省をいたしまして、今日はそういうやり方はいたしておりません。
  74. 川村継義

    ○川村委員 勤務評定は廃止してないとおっしゃったのですが、私、今のお話のその点が、警察の中では大きな勤務評定の中心項目であったと思うのです。私が勤務評定という言葉を使ったのが妥当であるかどうかということはお断わりいたしましたが、それはわれわれからいったら、警察官の勤務評定の重要事項であったところのいわゆる点数制というものを廃止された。このことが警察官行動に実に明則な状態をもたらしたというようなこと、それが今日の犯罪捜査、あるいは防犯に大きな効果を上げているということをわれわれは見ているわけです。私が申し上げるまでもなく、たとえば基礎点であるとか、防犯点であるとか、勤務適切点であるとか、検挙点であるとか、特別加算等々、こういうものはちゃんと項目の中に入っておる。こういうような点数制がなくなったということは、今日の警察の、今の検挙あるいは防犯等の能率向上を非常にもたらしておる。こういうふうにわれわれは見てとっておるわけなんですが、そのように考えて間違いないと思うのですが、その点も一つお聞きいたしたいと思います。
  75. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほど申し上げました通り、今お話しになりましたようなやり方の勤務評定というものは適当でないというので、われわれの方では、もうすでに廃止をいたしておるのでございます。勤務評定は、要は、そのやり方にあろうと思います。やり方がまずければ、これは決して目的を達成できないのでございまして、勤務評定の実施の方法につきましては、いろいろ慎重に検討して、実効の上る方法を講じる、かように考えておるのでございます。私どもにおきましては、それによって早くから、いわゆる勤務評定に当るような方法はとっておりましたが、犯罪捜査に関する限りにおいては、先ほど来申します通り、そういう妙な競争意識を起し、かえってマイナス面を来たすようないわゆる勤務評定のやり方は廃止をいたしております。
  76. 川村継義

    ○川村委員 私がお尋ねいたしておるのは、今、教育界に問題が起っているから、それに結びつけてどうこうというわけじゃありません。結局私も、今お話のような点数制をもってつまらない競争意識をあおり立てる、無理な捜査をやらせるというようなばかげた従来の行き方をおとりになっていないことについては非常に敬意を表しております。それは結局、今日警察の方にはいろいろプラスになった面が出てきておる。私はこう見ておって、その処置について、実は私としては敬意を表しているわけなんです。ところが、今度の選挙等について考えてみますと、まだまだどうも、せっかくのそのような御処置であったけれども、そういう事態が各警察に見られるような気がしてならなかった。そこで、ここでついでにお尋ねいたすわけでありますけれども、選挙取締り等については、やはりそのつど、——これはもう基本的な方針というものはお持ちでございましょうが、それぞれの選挙の事前において、それぞれの情勢のもとにおいて、一つ取締りの指針と申しますか、基本的な態度、基本方針というようなものをお示しになるだろうと思いますが、大体どういうような態度でお臨みになったか、それをお話し願えれば、一つ率直にお話しいただきたい。と申し上げますのは、今度の選挙で、私ちょっと理解がいかないのが——具体的な例を一つ申し上げますが、あるのです。それは一つ選挙区から十名なら十名立候補している。ところが、その候補者のいわゆる選挙運動を取り締るについて、どの警察はどの候補者を、どの警察はどの候補者をというようなねらいでやっているのじゃないか、こう思われてならない節が、一つの例としてあるわけです。というのは、どうも選挙が済んだあとの選挙違反のいわゆる検挙等を見てみると、一つ警察にどんどん呼び出されておるのは、ある限られた一つの候補者に集中されている。またBという警察に呼び出されているのは、Bという候補者の関係者が呼び出されている。これは偶然であるかどうかわかりませんけれども、そういうようなことが起きておるわけです。そこでどうも警察当局で、この選挙の違反事実をあげるということに、何かしら競争しているような状態が生まれておるように見受けられてならないのであります。これは実際考えると、この場では愚問かもしれませんが、実際そういう形になって現われてきておる。そこで私ありのままの一つの具体的な例をあげて申し上げたのでありますが、今度の選挙に対する警察当局の取締りというものについて、どういう態度でお臨みになったか、そういう点を一つお話し願えればこの際お聞かせを願いたい。
  77. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 選挙違反取締りに当る警察態度といたしましては、申すまでもなく公明選挙の実をあげるべく、警察といたしましてはまず関係方面の啓蒙指導によって十分その効果を上げることを期待しつつ、不幸にして違反の事態がありますならば、警察は厳正なる態度をもってこれが取締りに当らなければならぬ。従って、一党一派に偏することなく、また特定の候補者をねらっての取締りというようなことは断じてないのであります。私どもは、そういう基本的な態度につきましては、第一線警察官諸君には機会あるごとに強調いたしております。今回の総選挙取締りにつきましても、重ねてそれは強調いたしておいたのでございます。今、具体的事例をおあげになりましたのでございますが、私は、そうしたことはあり得ないと思うのでございます。ある警察署がたまたまある候補の違反の端緒を得まして、捜査を続けた結果において、その関係者が次々あがってくるということで、結果的には、何かある特定の候補をその警察署が担当してもっぱら取締りをやっておるかのごとき印象を与えるということが、あるいは現象的に一、二あったかどうか。現実には、私は全国の各警察署取締りの実情を存じておりませんから、断定はいたしかねますけれども、方針といたしましては、私ども中央から第一線諸君に示しております基本的態度というものは、先ほど申しました通りでございます。特定の候補を特定の警察官取締りを担当するといったようなことは決してない、かように確信をいたしております。なお十分実情を見きわめて、もしかりに多くの全国の警察官の中で、そうした好ましからざるやり方をやっておる点がありますならば、十分反省させたいと思いますので、できますならば具体的にお教えをいただきますならば、真相を十分調査いたしまして、将来のために参考にさしていただきたい、かように存じております。
  78. 川村継義

    ○川村委員 長官のお話ももっともでありまして、そうなければならないと思いますけれども、これは偶然であるかもしれませんが、私が申し上げたような、そういう疑惑を持たれるような状態が生まれておるということをぜひ一つ承知おき願いたい。  それからもう一つ、これは小さい事例でありますけれども、警察の人が選挙取締りのときに、私、少し行き過ぎが出てくる場合があると思う。たとえば個人演説会をある晩三カ所で開いた。ところが、そこにちゃんと私服の人が来られて、その演説会で聞いておられた。まあそれはそれでいいわけです。ところが候補者が次の会場に移動すると、ちゃんとあとをつけて次の会場にまた同じように来ておられる。こういうようなことは、私はどうも少し行き過ぎじゃないかと思う。こういう事例も知っておるわけです。おそらく、移動する間にどこかに立ち寄って何か悪いことをするのじゃなかろうか、そういうねらいも持ってやっておるのじゃなかろうかと邪推するわけです。そこまで悪質な考え方はないと思うのですけれども、そういうこともある。  それからいま一つは、何か小さい町の、これはちゃんと認可を受けた新聞社が、その発行しておる新聞を町に配っておる。ところが、ここに私服の人がおりまして、それは配ると違反だぞと、こう言った。そこで配っておる者が驚きまして、それを見せて、これは違反でしょうか、違反なら違反とはっきり言って下さい、配布するのを中止しますから、そう言われた。ところが、それは違反かどうかはわからぬと言ってそのまま去られましたので、その新聞の配達をしておる者が配った。配ったところが、選挙が済んだらこれを呼び出して結局つかまえた。こういう事例があるわけです。実際皆さん方がそこにすわってお考えなさると、そんなばかなことがとおっしゃるかもしれませんが、そういうことがあるわけです。そこでこういう点をよほど気をつけていただきませんと、長官がたびたび、いろいろの防犯の問題であるとか、あるいは警察官教養の問題であるとか、そういうことで非常に鋭意努力されておりますけれども、末端では、やはりそういうようなことが起って、法務委員会であるとか、あるいは地方行政であるとか、その他の関係で、この国会におきましても、やれ人権じゅうりんであるとか、行き過ぎであるとか、こういうようなことが叫ばれてくるような事態になる。こういうことを私はおそれるわけであります。  それから労働組合に対する取扱いでありますが、これはもうここでいろいろ私が事例を申し上げてどうこうというそういう時間はいただきませんが、ただこの際お聞きいたしておきたいと思いますことは、この前の委員会でも門司委員から、今北條委員から、いわゆる浦安事件のことについていろいろと御質問、追及がなされた。今警察の山口さんからも話がありましたように、この本州製紙事件について、出動した理由としてちゃんとそこに書いてあります。つまり、一般的な基本的な考え方としては、群集による不法行為を未然に防止するための警戒措置として考えた。この具体的な事例としては、浦安の漁民の人たちが、どうも集団的に行動して、不法行為が発生するおそれが十分あうたので、その予防警戒措置として出動させた。こういうふうに説明しておられますけれども、この事件に出動いたしました警察隊の責任者は警視庁の警備部長、こういうことになっておりますが、出動の命令を下したのは、これは警視総監であったわけですか。あるいは警察庁長官から警視総監にそのような指揮をなさったのか。警視総監がちゃんとこの措置をして、それを事後に警察庁長官には報告承認というような形をとられたのか、その辺のところをまず一つお聞かせおきを願いたい。
  79. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 御承知通り、現行警察法の建前からいたしまして、個々のこうした事案につきまして、私は何ら指揮命令権は持っておりません。従って、今回の本州製紙江戸川工場の事案につきましても、これが最高の執行責任者は警視総監であります。現実にあの当日出動命令を警視総監がじきじきにされましたか、あるいは警視総監の直接の補佐者である担当部長の警備部長が出動命令を総監にかわってされましたか、その辺のところは、内部事情を私承知いたしておりませんが、もし何でしたら警視総監からお答えになったら適当だと思います。
  80. 川村継義

    ○川村委員 警察法の精神からいたしまして、犯罪を予防するというようなことが一つの眼目でありましょうから、皆さんの方の判断によって、本州製紙に対してこのような部隊を出動させた、このことについてはわかる。ただし、それがよかったか悪かったかということについては、いろいろ批判も出てくると思います。この委員会でもいろいろ論議がなされたように、皆さん方の予防措置として、あのような大量の警官を連れていって食堂に隠しておいて、いざというときにこれにやらせる。そういうような措置がよかったか悪かったかということについては、いろいろ論議が分れるところでありましょうけれども、それはそれといたしまして、今までこのような事態が起きたときに、これは三年ばかり前の委員会であったと思うのですけれども、こういうような大部隊を動かしてこのような警戒態勢をとる、あるいは行われておるところの事態を静めるということについては、その当時者がやはり相当の手続をもって要請をしなければ、こういう部隊の出動というものはあり得ない。こういうようなことをこの委員会お話しいただいたことを私覚えておる。それは労働組合の諸君が要求を掲げて官庁にすわり込みにいったときに、少しいざこざが起った。そういうときに、その点についていろいろ論議をしたときに、そのようにお答えになっておったのでありますけれども、今度の本州製紙の場合には、警視庁の方で自主的にそういう態度をとられたか。そこでそれはそれといたしまして、こういう部隊を出動させる場合には両面あると思うのですけれども、それらについて、部隊を動かす場合のそのような指揮系統あるいは手続、そういうものについて一つ警視総監からこの際はっきりお話し願いたいと思います。
  81. 川合壽人

    ○川合説明員 私は、仕事の立場上いつも自分部屋におりますし、また電話その他が直ちにききますところの都内公舎等におりますので、事柄の重要なものが起きます場合には、全部私のところに情報が入りまして、大乗的な命令は私から出すのでございます。ただ、こまかい部隊の配置、運用につきましては、警備部長が部下の警備課長を使いまして、いろいろと策を練るのでございます。
  82. 川村継義

    ○川村委員 もうちょっと具体的にお聞きしたいのですが、その場合に、本州製紙にとられたような、こういうことを本体としてお考えになっておるのか、あるいはその本州製紙工場長なら工場長の名前において、こういう事態のおそれがあるから出動してもらいたいというような要請に基いて出動されるのを皆さんの方で本体としてお考えになっておるのか。その場合に、だれがその指揮あるいはその出動の命令を下すのであるか、これはそのときの部隊の大小によって違いましょうけれども、その辺のところを具体的にお話し願いたい。こういうわけであります。
  83. 川合壽人

    ○川合説明員 本州製紙事件が、ただいまとしましては一番適切だと思いますので、これの具体的な事案について申し上げますが、先般来申し上げますような事態が進みまして、どうしてもこれは、刺激しない意味において、一個中隊を門から見えないところに置くことがよろしいというように、私どもの方では決意したのでありますが、それとたまたま時を同じゅういたしまして、工場の方でも、非常に不安に思われるので、警察官の出動を願いたいという要請があったのでございます。
  84. 川村継義

    ○川村委員 そのことはこの報告書には一言も書いてはありませんね。それはそれとして、長官にお尋ねしますが、地方の府県の場合は本部長がやるのですか、あるいはその地方の警察署長にその権限があるのですか。その辺はどうなっておりますか。
  85. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 東京都における警視総監の立場が、東京都以外の各府県におきましては、本部長がそれに当る立場であるわけでありますから、警視庁におきましても、いろいろ事案の規模の大小に応じまして、総監がみずから指揮をとる場合と、総監にかわる直接の担当者である警備部長が指揮をとる場合があると同じように、府県本部においても、同様な取扱いをしておるものと存じます。
  86. 川村継義

    ○川村委員 そうすると、地方の場合を考えますと、一警察署長が独断で部隊を出動させるということはありませんか。
  87. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 その警察署管内に発生しました軽微な事案でありますならば、自署警備威力のみをもって事足りる場合には、署長みずからが最高の指揮官となって事に当るわけであります。
  88. 川村継義

    ○川村委員 その場合は、その署長は、やはり本部長なら本部長に、それを事後に承認を受けるというふうになっておりますか。あるいは、その承認等は要らないというようなことになっておりますか。
  89. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 事後において必ず報告をすべきものであると思います。また事実そういうふうにやっておると思います。
  90. 川村継義

    ○川村委員 そこで出動の問題について、私、一つはっきりさせていただきたいと思って、疑問に思っておりますことは、実はたくさんの中で一つ二つ事例を申し上げますが、私の郷里であります熊本の八代市というところに、興国人絹という工場があります。ここで約八百名ほどの人員整理が言い渡された。そこでそこの労働組合の諸君は、この人員整理、いわゆる首切りに反対をして、会社に要求を出して、そうして争議に入った。この争議が相当長期にわたりまして、事態は、最後にはある点会社側が要求をいれておさめましたけれども、その途中において相当緊迫した状況が出てきた。その会社には駅から引込線が入っております。その引込線によって、工場で製造されたものを搬出するわけですけれども、その場合に、われわれが聞いたところでは、工場内に入った部分の引込線の管理は工場側にあって鉄道の方にはないそうであります。ところが、この争議の中途において、貨車が入ってきて製品を出そうとするときに、工場内の一画において、組合員の諸君が、品物を搬出されることを阻止するためにその線路上にすわり込んでおった。そこで鉄道関係の公安官の諸君が同乗して参りまして、それを排除しようとしたけれども、ここは工場内の線路上であるから、鉄道公安官の権限は及ばないからといって、そのまま機関車は駅の方に引き返していった。こういうことがあるわけです。ところが、そのときにその町の警察署長からは、再三鉄道に対して、あるいは工場に対して、警察の出動を要請し、あるいは強要したという問題が起った。早くおれたちが出ていけるように鉄道の方から要請をしろ、こういうことが行われておるわけです。ところが、幸いに鉄道も、工場側も、これは二回目のことでありますけれども、そのような要請をしなかったので、結局紛争は混乱をしなくておさまった。こういう事例があるわけですが、そういう場合に、警察側から、おれたちが出ていけるように要請をしてくれ、こういうような申し出をするなどということは、これは実際どうでしょうかね。私どもとしては、ちょっとこれは警察側としての行き過ぎではないかと思うんですが、長官、それについてどのようにお考えでございますか。一つ私が今申し上げたような事実に基いて長官の御答弁を願いたい。
  91. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 具体的な事案につきまして私は承知をいたしておりませんので、それを直ちに中心にしてのお答えはいかがかと思いますが、一般論といたしまして、会社なり工場からの要請がなければ警察は出動できないものではないのでございまして、むしろ警察独自の判断で、事態がこのまま放任しておくことは適当でない、犯罪の予防のために警察が出動すべきだという判断を下した場合には、進んで出動してしかるべきものであると思うのであります。同時に、会社、工場等から出動の要請もあり、それもきわめてもっともであり、かつ警察みずからも独自の判断において、先ほど申します通り、出動が適当であると判断する場合もあり得るわけであります。要は、警察警察の独自の立場において事態の真相を慎重に検討いたしまして、警官は、この段階においては犯罪の予防のため、また事態の収拾のために出動一するのが適当であると判断した場合に出動すべきものである、かように思うのでございまして、警察の出動を頼みにして事態を有利に解決しようと思って相手方が要請するのに、軽々に警察が乗ると申しますか、要請があったからといって、直ちにみずからの慎重な判断も下さずして出動するということは、かえって行き過ぎと申しますか、適切でない場合もあり得ることではないかと思うのでございます。要は警察警察みずからの立場において、冷静に事態の真相を見きわめまして、出動するのが適当であると判断した場合にのみ出動すべきもの、かように考えます。
  92. 川村継義

    ○川村委員 今の長官のお答え、大体その通りだと思っておりますが、先ほど申し上げましたように、事態によっては、一応本州製紙の問題を、ここで批判を抜きにして認めることになると、こういう態度をおとりになることが、それはあるかもしれません。しかし先ほど申し上げましたように、相手は、労働組合の正当に行使されるところの権利に基いて労使が対立してる中に、われわれを早く出動できるように要請してくれ、こういうようなことを鉄道なりあるいは工場側に要請をする、警察側から要請をするということについて、私は問題があると思う。そういう出動の必要があると認めたならば、なぜ警察独自の判断によってやらないか、こういうことです。それを今長官の言葉のように慎重にやってもらわなければ、各地に問題を惹起しておるように、労働組合運動そのものの弾圧だと思われたって、やむを得ないことだと思う。今農林省で、きょうはもういないと思いますけれども、東北の、あるいは全国の農民の代表が、いわゆる米価の問題で、農林省の入口で要求を言って、うまくいかなかったのでありましょう、玄関口にすわり込みをしておる。ところがそれについて、今私が申し上げるような、どうもやはり不可怪な話を聞く。つまり麹町の警察であるか知りませんが、警視総監のところの警備部長であるかどうか知りませんけれども、だれかがやってきて、農林省に、早くおれたちが来て、このすわっている農家の連中を引っぱり出せるようにやってくれと盛んに申し入れをしておる。農林省は、さすがにそのときは賢明であった。農林省がそれを要請しなかったから、あそこの玄関横で二日か三日すわって、農林省の諸君は、中にはまゆをしかめた者がおったかもしれませんが、トラブルが起っていない。これは農林省の人たちが要請しなかったからです。その要請を待つような申し込みを、何とか部長といっておりましたが、そういうのがわざわざ出かけて来て、要請をしろ、こういうようなことは、先ほど私が申し上げたところの問題とあわせて、どうもやり方がおかしいんじゃないかと思うのですが、いかがでございましょうか、長官の所信をお聞きしておきたい。
  93. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 先ほどお答えした通りでございます。私の考え方はそれで御理解が願えると思うのでございます。農林省の具体的な問題について、どういういきさつがあったか、私どもは承知をいたしておりませんが、先ほど私がお答えしたような線において、警察としては行動すべきものである、かように考えております。
  94. 川村継義

    ○川村委員 私、きょうは何か一般的なことでございましたが、たびたび申し上げますように、われわれは長官警察行政に対する御苦心あるいはその指導、そういうものについては非常に多といたしております。ところが、先ほど申し上げましたように、やはり末端に参りますと、非常に今日の警察行政、特に青木公安委員長のあいさつの中にありましたように、民主的警察というような考え方で進むんだ、こうおっしゃったのでありますけれども、やはり行政上それにそぐわない事態が起っている。これは数多い中でありますから、いろいろな事態が起るということはわからぬでもありませんけれども、今日、いろいろ労働運動に対する警察権の介入の問題であるとか、あるいは先ほど申しましたような選挙運動あるいはその他の問題について心を払っていかなければならぬところの問題が相当惹起しておる。しかもそういう事態が年々多くなるような感じさえしてならないのでありますから、こういう点は、この上とも十分皆さん方の末端に対する指導を徹底していただきたい。このことを重ねてお願いをし、長官の最後のお気持を聞いて、私、きょうはこれで終っておきます。
  95. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 民主主義の真髄を身に体することは、国民全般にとってきわめて大事な問題であり、その中にあって特に民主警察の仕事を担当する警察官としましては、その必要を切に感ずるのでございます。私ども今日まで、いわゆる民主警察官の育成のためにあらゆる努力を払っておりますが、何分にもいまだ十分末端まで浸透しないことをはなはだ遺憾に存ずるのであります。これは私初めすべてのいまだ努力の足らざるところであります。今後さらに一そう努力をいたしまして、御期待に沿うように努めたいと思います。
  96. 鈴木善幸

    鈴木委員長 門司亮君。
  97. 門司亮

    ○門司委員 この前、前提をいたしておきました二、三のことについてお聞きをしたいと思いますが、その前に、この前のことに関してちょっとお願いといいますか、要求をいたしておきたいと思います。そのことは先ほどのお話、それからこの前の委員会での答弁の中に、警棒を使用した時間が二分間くらいだというお話がありましたが、負傷者の総数は全部総合いたして参りますと、百余人なの百であります。以の手元にある名簿だけを見て参りましても大体八十九人、これに留置されておりまする者を加えますと九十一名ぐらいが負傷しておるのであります。どうも二分間ぐらいの間に百名の者がけがをし、警察官が三十七名けがをするということは、どのくらい激しい乱闘をやったかということです。横に並べておいてなぐっていっても、百何人もたたくのには二分間ぐらいかかりますよ。そういういいかげんなことは言わぬ方がいいと思うのです。それでもし二分間くらいしか命令していなかったということになれば、命令を聞かないで警察官行為をした、こういうことになると思う。命令を聞かないで警察官が暴行を働いたということになれば、これはおだやかでないので、当然警察官の職務、いわゆる官吏の職権の乱用もはなはだしいということであって、これは民衆としては許すことのできない問題になると思う。だからほんとうに二分間であったのかどうか。従って、もしあなた方の方が二分間だと言われて、そしてこれだけたくさんの負傷者が出るという実証があげられるなら、その実証を一つこの際あげておいてもらいたい。そういたしませんと、私たちは、この事件に対して真相をどこまでも究明するわけには参りません。一体ほんとうに二分間ですか。それ以後において負傷した人は、これは命令外ですから警察官の乱暴なんです。いわゆる職権の乱用なんです。これは許すわけにはいかぬと思うのですが、どうなんです。いいかげんな体裁のいいことを言ってのがれられては困ると思うのです。
  98. 川合壽人

    ○川合説明員 警棒の使用は二分間でありまして、負傷者は、浦安の漁民が到着いたしましたのが六時二十二分でございましたか、それから門の外に最終的に排除いたしましたの九時四十五分でございまして、その間のいろいろなトラブルの内容は種々雑多でありまして、負傷者は警察官の三十七名、それから漁民側の負傷者、私どものところでは七十三名と調査してあるのでありますが、人数は別といたしまして、多数の人の負傷者ができましたのは、前後六時半前から十時前までの間なのでございます。
  99. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、さらに突っ込んで聞いておきますが、私の手元にある被害者名簿をずっと調べてみますと、大体警棒を使ってはならないと書かれておる頭部並びに顔面に負傷した人がちょうど三十人あります。これは名前もわかっておりますし、病院の名前もわかっております。どういう治療をしたかということもはっきりここに書いてある。だからこれはすぐわかると思うのです。それじゃこの間絶対に警棒を使わなかったと言えるかどうか。何によって負傷したかということです。こういうものの実証ができますか。
  100. 川合壽人

    ○川合説明員 その点の調査のために、現在非常に苦労しておるのでございます。
  101. 門司亮

    ○門司委員 この頭と顔面のけがというのは、大体情報によりますと、こん棒でうしろからたたかれたということがいわれております。これは診断書もありますし、それに書いてある。そうすると、げんこつで頭をなぐったところで、そうむやみに頭の骨が折れたり、ひどいことにはならないと思う。それらの点については、もう少し親切にやってもらいたい。それから同時に、ここに書いてあります頭部並びに顔面をけがした諸君については、この前も申し上げましたように、警察側ではっきりした態度をとってもらいたい。明らかに警棒の使用の規則に違反をいたしておりますし、従って警察自身としてこれは処分をすべきだと考える。ただこの前の砂川の事件と同じように、個々の人間がだれがだれをなぐったかわからない、大勢ごたごたして調査ができないと言われるなら、当然統率しておった責任者が責任を負うべきである。この点をこの際一つ明らかにしておいていただきたいと考えております。  これをまず要求いたしておきまして、最初に警察庁長官に聞いておきたいと思いますことは、本日、実は和歌山の県教組の勤務評定の反対闘争にかかわる地方公務員法三十七条違反の疑いで検挙しているという情報があるのでありますが、これはどのくらい逮捕しておりますか、情報があったら、この際それを明らかにしておいていただきたい。
  102. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 私の報告に接しているところによりますと、今朝和歌山県警察におきまして、和歌山県教組が、過般六月五日でございましたか、県下一斉に十割休暇闘争をやられ、かつ六月二十三日から昨二十五日にわたって三日間場、三割、四割の休暇闘争を実施されたということに対しまして、地方公務員法三十七条違反容疑のゆえをもって、関係の個所内の捜索を実施したというふうに聞いております。捜索を実施しただけでございまして、関係者逮捕ということは聞いておりません。
  103. 門司亮

    ○門司委員 捜査の個所はどのくらいですか。
  104. 山口喜雄

    ○山口政府委員 全部で七十八カ所でございます。本部事務所、これは県教組の本部事務所の中に七者共闘会議の事務所と日教組の近畿地方の共闘本部が併置されておりましたので、これを一つ一つ数えまして三カ所、なお支部の事務所八カ所、分会の事務所二十三カ所それから本部役員、支部長等の自宅四十三カ所、電話局一カ所、合計七十八カ所であります。
  105. 門司亮

    ○門司委員 この問題を議論していると長くなりますので、この前話しておいた事件について少し聞きたいと思います。最近警察官の思想調査の動向が非常に強いのでありますが、警察庁としては、そういうことを指令しておりますか。
  106. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 思想調査をするようにという指示はいたしておりません。
  107. 門司亮

    ○門司委員 私もそういうことだと思いますが、そうすると、思想調査に類する、あるいは思想調査と思われる行為を行なった警察に対しましては、どういう処置をとられるつもりですか。
  108. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 いわゆる思想調査に類する疑わしい行為と申しますか、それに限らず、すべて警察官は行き過ぎ行為がありますれば、その程度に応じまして将来を戒め、あるいは責任をとらせるべきものは責任をとらせるというふうにいたしております。
  109. 門司亮

    ○門司委員 一つの事実を申し上げてみますと、この前の委員会で冒頭に申し上げましたように、六月十三日の午後五時四十分ごろでありますが、横浜市の京浜急行金沢駅の構内で、市大の生徒大宮某という者と北村という者、これらの諸君が、七、八人で原水爆禁止の署名運動をしておったのでありますが、この署名運動をするに当りまして、一応市大の諸君は、駅の構内でありますから、当然管理者であり責任者である駅長に、一応了解を求めて署名運動をしておったのであります。ところがこれに対して、金沢警察の警備主任といわれておりますが、渡辺という私服の、係長でありますからおそらく警部補だと思いますが、制服の警官を連れて参りまして、道路交通取締りの違反であるとしてこれを交番に連れていって、ここで身体検査をし、さらに持っておるカバンの中まで全部調べておる。交通取締りに関する違反であるならば、これは見方によって非常に議論がありますが、警察の方からいわせると、駅の構内であろうとどこであろうと、人間の通るところに対して交通に支障のある場合は、警察権の発動ができるのだという解釈は一応成り立つと思う。駅の構内だから、どんなに混乱しても駅長が一切の責任を負えということではないと思います。しかし、それにいたしましても、単に道路交通の取締りだけであるというならば、何もお門違いの警備係の諸君が行って身体検査をしたり、持っておるものを調査する必要はなかったのじゃないか。これは原水爆禁止の運動をするという思想を持つ学生に対する、交通取締りという一つの名前に隠れた明らかな思想調査だと私は考えます。思想調査でなければ、そこはじゃまになるからほかへ行ったらいいだろう、やめたらいいだろうと注意すれば、それで足りるのであります。何のためにカバンの中まで捜索をするのか。あるいはとっておる言動の中には、お前たちはこういうことをやっておると、警察で処分をされて戸籍に赤いまるがつくぞ、あるいは就職にこれが影響するぞというようなおどかし文句を使っております。これは明らかに思想調査だと思います。この点に対して警察庁長官は思想調査とお考えになるか、あるいは単なる道路交通取締法違反の取調べ方だとお考えになるかどうか、その点をこの際お伺いしておきたいと思います。
  110. 山口喜雄

    ○山口政府委員 その前に私から当日の事柄の概要を御説明申し上げます。  十三日の四時四十五分ごろ、金沢署の警備係の係長渡辺警部補が、たまたま京浜急行の金沢駅におりたのであります。そうしましたところが、そこで署名運動をしておる人を見かけたので、その駅前の派出所に行って——承知のように道路その他公衆のたくさん行き来する場所で署名運動をやります場合には、警察署長の許可が要るわけであります。そこで許可をとっておるかどうかを確かめましたところが、全然警察の方では知らないということなので、そこで派出所におりました巡査一人を連れて現場に参りまして警告をしたのであります。その場所は、バスの発着その他交通も相当混雑しておる状況でありましたので、駅前の派出所に来てもらいまして、いろいろと聞きましたところが、一番初めの人は氏名を聞いたときお答えになりましたが、二番目の人は、名前を言われたので、念のために学生証を見せていただきたいと言いましたら、学生証を出した。さらにパスがあったらパスも見せていただきたい、こう言いましたところが、出したパスの名前と学生証の名前が違っておったのであります。それから三番目の人に名前を聞きましたところが、これはお答えにならない。そこで身体検査をしたというようにおっしゃいましたが、洋服の上から、学生証かパスか何か持っていないかというので押えて調べたのであります。それからカバンを調べたというのは、やはりその学生について氏名を確かめたいと思いまして、カバンの中にノートでも持っておればノートに名前が書いてあるだろうと思って、カバンの中にノートでもあれば出して見せてくれ、こういうことは確かに言ったのであります。別にノートの中にどういうことが書いてあるのかということを知る必要もございませんし、要するに氏名を確かめたかったというのであります。事実の関係はそういうことでございます。
  111. 門司亮

    ○門司委員 私は、警察といたしましてはそう言わざるを得ないと思います。思想調査をいたしましたとは言えないと思います。言えないと思いますが、それならば、問題は脅迫の事実がるんですよ。さっき言いましたように、たとえば就職に差しつかえるとか、あるいは戸籍がよごれるとか、くだらないことを言っておるのです。そうして脅迫しておる事実がある。いわゆる自白の強要といいますか、そういうことが平気で行われておる。単なる道路交通の取締りの問題がそこまで発展するということは、しかも、これが交通を取り締っておる警官の諸君ならばまだいいのでありますが、私服の警備係のおまわりさんが行って交通取締りをやるということはどうかと考えられる。だからこの事件は、単にそれだけの事件ならばそれでよろしゅうございますが、これは警察の思想に対する一つの動向だと考えます。明らかに思想を調査する一つの動向である。  その次に、長官がおりませんが、聞いておきたいのは、すでに皆さんも御承知だと思いますが、和歌山県の西警察署の松江警部補派出所の警備係から出ております送達簿の事件、その次にもう一つありまするのは新潟県の例の六日町にありました——これは作業簿と書いてありますが、作業簿の事件、これらの警察が使っておりまするものをずっと調べて参りますると、この中には、明らかに思想調査と思われるものがたくさん書いてある。どういうところにこういうものが現われておるかといいますと、たとえば和歌山県の例を見て参りますると、この中には隠語と思われるもの、いわゆる符牒が使ってある。たとえば一例をあげてみまするならば、この中に「ハタ入手」と書いてある。「ハタとは何だ。これはアカハタだと私は思う。それを裏づけるものに「ハタ入手」とずっと書いてあって、その最後に出てくるものは「住友Sハタ読者G判明す」こう書いてある。だからこれはアカハタの購読者を調べていることだと私は思う。最初のうちは「ハタ」「ハタ」と書いてあるからよくわからぬが、しまいにはちゃんとそう書いてある。それからそのほかの問題として、ある特定の人の名前が書いてあって「アジト判明す」こう書いてある。こういうものを幾つかずっと拾い合せてみますると、それらのものの頭の上には、ちゃんと八百屋さんか、魚屋さんの符牒のように(ト)と書いてあったり、マルセと書いてある。こういうことを見てみますと、どうしてもこれは単なる警備活動の中にある問題だけではなくして、明らかに何らかの目的のもとに思想調査が行われておるというよりほかに考えようがないのでありますが、これらの事実に基いて、警察庁がすでにお知りになっておると思う。同時に法務委員会でこのことについてはかなり突っ込んで話がされているはずだと思う。だから今の山口警備部長のお話のように、思想調査ではないのだということでございますが、実際こういう問題に対してどういう処置をとられたのか、今後こういう問題についてどう処置をされようとするのか、あるいはこういう事実をすでにお知りになっていられると思うが、知られているかどうか、それらの点について一つこの際御答弁願っておきたいと思います。
  112. 山口喜雄

    ○山口政府委員 和歌山の西警察署の送達簿の事件は報告を受けております。これは松江という警部派出所から署に対していろいろと日常仕事の間に見聞したようなこと、あるいは管内のできごとを報告、連絡するわけであります。その報告、連絡の書類を送った件名を書いてあるいわゆる送達簿というものであります。その中に「ハタ入手」と書いてあるのは、おっしゃいます通りにアカハタ入手でございます。この「ハタ」というのは、党の関係者が全部ハタといっておりますので、ついわれわれの方もハタというように言っております。
  113. 門司亮

    ○門司委員 私は、そんなことを聞いているのじゃありません。今申し上げましたように、こういう事件に対してどう対処されるかということであります。御承知のようにこの中には「ハタ購読者の調査」と書いてありますよ。それから問題になりますのは、いろいろな事件じゃございませんよ。この中に書いてありますものは政治関係と労働組合の運動関係、思想関係だけしか書いてない。ほかのものはちっとも書いてない。中にはちゃんと——名前は言うとはばかりますから申し上げませんが、現職の代議士さんまで名前がちゃんと書いてありますよ。演説会をどこでやった、こういうことまでちゃんと書いてある。だから、これはただどういうことをやったらそれの日常の、たとえば交番であるとか、派出所から本部に対する報告書じゃないのですよ。それならばどこでどういうあき巣があったとか、どこでどういう無銭飲食があったとか、そういうことを書いてなければならぬ。そんなことは書いてない。書いてあることは全部政治の問題しか書いてない。そうすると、これは思想を見る以外にはない。はなはだしいのは人間の名前が書いてあって「最近の動向」と書いてある。  その次には、もう一つ隠語で書いてあるが、「はがね入手す」と書いてある。「はがね入手す」とは一体何ですか。普通の者はわからないでしょう。「ハタ」というのはずっと読んでみると、さっき言いましたように、「住友Sハタ読者G判明す」とあるから、アカハタだということがわかった。ここで「はがね」という言葉を使われてもわからぬ。これは警察用語だと思うが、警察用語としてこういう隠語があれば、はっきりしておいた方がいい。
  114. 山口喜雄

    ○山口政府委員 それは警備係の送達簿ですから、警備関係の事柄だけしか書いてないのです。一番上をごらんになると、警備とたしか書いてあったと思います。一番上の表紙に書いてあるのです。  それからアカハタ等の調査をなぜするかということにつきましては、前から申し上げておりますが、共産党の関係につきましては、われわれとしましては、関心を持ちまして調査をいたしております。従って、その結果を本署に報告をするということはあり得ることかと思います。なお、「はがね」というのは、おそらく和歌山の住友金属の労組か何かの発行しておられる機関紙ではないか、これは私の推測でありますが、そうではないかと思っております。
  115. 門司亮

    ○門司委員 そういうものを拾ってみますと「住友Sの動向」、それからもう一つは「トの地方選挙結果表」なんていうものがある。これは明らかに思想を調査されるに間違いない。  新潟県の分を見てみましょう。これは新潟県の警察署から出たものでありますよ。これは警備課かどうか知りませんが、これにも別に警備課と書いてないが、問題は、こういうことを書いてある。これは上にある字句が問題だとすれば大きな、問題でありますが、この中でわれわれわからぬのは、「接触日時場所、接触者氏名」と書いてある。この「接触者」というものはだれであるかということである。しかもこの上欄に書いてありますのは、「協力者」として名前が書いてある。従ってこれが警察官であるのか、あるいはスパイであるのかという問題です。われわれには疑義が残るのであります。これに協力者あるいは接触者と書いてあるが、警察官が接触をした人、その人が協力者であるというならば、これはある程度警察の職務から来るスパイの行為が完全に行われておると思う。この人からそういう情報を得たということだと考えられる。それを証拠づけるものは、ここに書いてありますが、新潟県の分では「新潟鉄工所六日町工場応接室」と書いてある。その次には、「協力者宅並に美松食堂」と書いてある。これは警察官でないことははっきりしておる。これはある程度警察官自分の職務の範囲で知り得たというのではなくて、こういう協力者というものをちゃんと置いておると考える。「協力者」と書いてある。そうして「協力者宅」と書いてある。あるいはどこの食堂と書いてある。これなどは明らかにスパイ行為だと考える。なるほど警察官一つ犯罪を追って参ります場合に、協力者を求める、あるいは聞き込みをするということはあり得ると思う。一つ犯罪を追う場合には、こういう問題もないではないと考える。しかし、単にそうして得た情報というものは、ほとんど全部といっていいほど、さっき申し上げましたような政治活動に関係するものがずっと書いてある。こういうものは、思想調査でないと言われたところで、明らかに思想調査をやっておるにきまっておるのである。従って、これらの問題についてほんとうに警察は思想調査をやっていないのだという御答弁の実証があるなら、この際明らかにしておいてもらいたい。
  116. 山口喜雄

    ○山口政府委員 思想調査とおっしゃいますが、私どもは、その方がどういう思想なり心情を持っておられるかというようなことについて、それを目的として調査はいたしておりません。その事項をごらんになればわかりますように、あるいは共産党の関係者についてその行動を見ております。あるいはまた組合関係等につきましては、たとえば争議が起りそうだというような情勢の場合には、その動向については、これは警察といたしましてもいろいろと知っておかなければならないこともあろうと思います。要するに、その人がどういう思想を持っておるかということがわれわれの問題としておるところではなくして、その人が治安上警察から見ましてどういう行動をされるかという点が問題であります。この点は一つよろしく御了承をいただきたい、かように存じます。
  117. 門司亮

    ○門司委員 そういう点もおかしいと思うのです。争議といっても、昔のストライキではありません。今のストライキは公然とやるのです。そして何時間か前に届け出る。届出をしておかなければ山ネコ争議としていじめられますから、ストライキをやろうとすれば、労働協約に基いて何時間か前にまず通告するということになっておる。通告しないで山ネコをやれば争議者の方が非常に工合が悪くなる。抜き打ちの争議などないはずです。公然と今日は行われておる。しかも、ストライキを行う前には全員の投票によってこれをきめることになっておる。従って、ストライキを行うまでの間には相当の長い間の時間があるはずです。同時に相手方には公然と文書で通告をするわけであります。何とも警察がこういう変なスパイの行為をしなくてもわかるはずであります。だから私の聞いておりますのは、こういうものが現実に出てきておりますことについては、どう考えても思想調査をやっておるとしか考えられない。従って、思想調査に対する態度をどういうふうにおとりになっておるか。思想調査はやっておらないと言われておるが、現実にこういうものがあるのでありまして、こういうものに対する警察側の取締りあるいは警察側の注意というものは、どういうように行われておるか、この点をもう少し明らかにしてもらいたい。
  118. 山口喜雄

    ○山口政府委員 思想調査等につきましては、私どもはこれを行う考えも持っておりませんし、またそういう指令も出しておりません。ただ私が先ほどから申し上げましたように、警察の職務として当然知っておく必要のある事柄、あるいはそれに関連する人々の行動につきましては、警察といたしましては調査をすることは、これはあり得るわけであります。その点は御了承をいただきたい。ただし、そういう調査にいたしましても、これが行き過ぎますと、またいろいろと御迷惑をおかけする場合もあろうと思いますので、行き過ぎのないようには今後におきましても一そう注意はいたしたい、かように存じております。
  119. 門司亮

    ○門司委員 調査の必要があると言われますが、犯罪を犯そうとする者、あるいは犯罪を犯した者等に対する警察調査ということは考えられる。しかし犯罪を犯そうとする者という場合における解釈というものは非常にむずかしい。今日治安維持法はありませんし、思想的犯罪というものはないはずである。ただ国家を暴力で破壊しようとするような破壊行為に対する罪というようなものはありますけれども、これらの問題についても、そういう事実のない限りにおいては、個人の動向その他を、あとからつけていってこれを調べるということはあり得ないと思う。ところがこの送達簿並びに作業簿を見ると、これはわれわれの方にくる前にあなた方の方に先にちゃんと入っているはずと思うのですが、こういうものをよく見て参りますと、いろいろ書いてあるのです。たとえば、マルトの字が書いてあって、党員の動向、マルトでは、どこの政党だかわかりませんが、とにかく党員の動向が書いてある。その次には、まるにトの字が書いてあって、「党員の筆跡入手」、筆跡まで調べておる。これはいかなる犯罪捜査に必要であったのか、少し度が過ぎてはいませんか。筆跡調査なんというものはそう簡単に行える筋合いのものではないと思う。こういうことは、今のような答弁だけでは、私ども承知するわけには参りません。こういうことが事実としてあることに間違いないようでありますが、これに対して警察庁としては、一体どういう処置なり、態度なりをとられたかということが、この際お話しできればお話ししておいてもらいたい。
  120. 山口喜雄

    ○山口政府委員 ちょっと御質問の御趣旨を解しかねましたが、そういう作業簿に書いてあるような事柄を調査することについての問題でございましょうか。
  121. 門司亮

    ○門司委員 それでははっきり言っておきますが、こういうものはすでにあなた方の方にあるはずですね。これをあなた方はこのままお認めになって、よろしいというお考えなのか、もしこういうことがいけないということならば、これに対してどういう処置をとられたか伺いたい。
  122. 山口喜雄

    ○山口政府委員 その作業簿に書いてありますこと、中には必ずしもそういう問題まで調査あるいは報告する必要がないと思われるものもあると思います。しかしながら、全般的に申し上げまして、先ほどから申しておりますように、警察といたしまして、その職責を果す上におきまして必要な事柄を調査いたすことは、これは御了解をいただけるものと存じております。もちろん、そういう調査に当りまして行き過ぎのないように、あるいはまたいろいろな面におきまして強制にわたるとか、また人権を侵すことのないように、これは厳重に注意をいたしております。皆さん方に御迷惑のかからないようにして、警察といたしまして必要な調査を進めていきますことは、これは一つ御了承をいただきたい、かように存じます。
  123. 門司亮

    ○門司委員 警察としても必要だからと言われままが、警察としての必要な限界ですが、この中にもう一点書いてありますが、上に「ハタ」と書いてあって、「ハタ橋記者利用について」と書いてある。これはおそらくこの事業に従事している者の利用した、あるいは利用しようとする者の考え方についての報告だと思いますけれども、こういう事柄が事実上の問題として平気でやられている。最近の警察の動向というものにはこういうものがある。これは単に和歌山県にあっただけではないと思う。全国に行われていると思う。ただそれがたまたま手に入ったということ。作業簿におきましても、この入手経路ははつきりしておりますが、これも警察から出ているのに間違いない。これをあなた方の方で否定するわけにいかぬでしょう。こういうものがあるということを否定することができないといたしますと、先ほど申しましたようなことがちゃんと書いてありまして、明らかに個人の思想を調査していると考えられる。単にその人の動きが法律に触れるとか、犯罪を犯そうとするものだということはないはずである。いわゆる政党に関係のある者、あるいは労働組合に関係のある者、今日思想の自由は許されておるはずであります。それらの問題を、組合なりあるいはそのほかの団体なり、さらには個人に至るまでこういうことがずっと書いてある。そしてこれが警察庁との間に連絡がとられておるということになって参りますと、これはどう考えても、われわれは、思想調査を行なっていると言う以外に言いようがないのでありまして、これでも警察当局としては思想調査でないというように実はお考えになるのか。こういうことが一体必要あるかどうかということです。個人の行動調査するというようなことが、いつでも必要なのかどうかということです。その点を一つお話し願いたい。
  124. 山口喜雄

    ○山口政府委員 そこに書いてございます項目をごらんいただけばわかりますように、大体二種類その中にあると思います。一つは、はっきり申し上げまして、共産党の活動をしております者の、いわゆる専従職員と言っておりますが、共産党の日常活動をしております者の動向は、これは調査をいたしております。それから組合の中における共産党のグループの活動につきましても調査いたしております。もう一種類の方は、その管内で起りましたいろいろな事柄で、日常見聞したようなこと、たとえばその中に、おそらく選挙演説会のことが書いてあると思いますが、いつ幾日だれだれの政談演説会があったというようなことも、これは駐在所としては本署にときによりましては報告することはあると思いますが、そういうように、日常見聞した事柄を報告しておるという二種類がありますので、これを一緒に混同されて、同じ比重で両方を警察が見ておるというようには、一つ考えいただかないようにお願いをいたしたいと思います。
  125. 門司亮

    ○門司委員 考えないでくれと言われても、ちゃんと書いてある。代議士の名前も書いて、それが国会報告をやったと書いてある。それから選挙に対して推薦をやったと書いてある。あるいは何々の推薦演説会を開催したというようなことも書いてある。参議院選挙に関することもちゃんと書いてある。こういうことは一つの常日、ころの動向である。何も私どもはこれをあなた方にとがめるのではないが、この中には、共産党員であろうとなかろうと、問題は、個人の動向に関してちゃんと報告がなされておるという事実でありまして、いわゆる共産党員であろうと、社会党員であろうと、自由党員であろうとも、党員になることは今日何ら制限をされておらない。ただ今日警察で禁じられておるものの中には、いわゆる犯罪を犯そうとするもの、その中に一つの思想関係のあるものとしておるのは、国家を非合法の手段でくつがえそうとするものというのが一つある。それにいたしましても、必ずしも共産党員の諸君がこれをやるという断定はできないでしょう。もしやるなら、それを禁止すればいい。一方において、天下の公党として認めておいて、一方においては、どうも犯罪を犯そうとする傾向があるからとつけて回って、本人の動向を調べて歩くということになりますと、これは何も、共産党だけを書いてあるとは思いません。共産党とおっしゃるがこの中には社会党の諸君もあれば、自民党の諸君もあるかもしれない。あるいはいずれの政党に属さない者もあるかもしれません。こういうことは、どう考えても、私どもとしては思想調査が行われておると考える以外に方法はないのでありまして、もしこれが思想調査でないと言われるなら、犯罪事実というものを明確にして、そうしてそれらの諸君一つ逮捕するなり、あるいは任意出頭を求めるなりして、犯罪の予防に尽力さるべきである。あとをつけて清報を集めるというようなことは、昔の特高そっくりです。昔の特高の諸君はみなこれをやった。われわれ十分記憶を持っております。もうしばらくして本物になるから見ておけ、見ておいて何か行動があったらちょっと引っぱっていくというやり方を昔やった。そこまで犯罪を犯そうという前に、こういうことをしてはいけませんという注意を与えれば済んだかもしれないが、ちゃんとマークをして、二人も三人もスパイをつけて歩いて、大体この辺で犯罪を構成するなと考えたときに引っぱる。そしてこれを犯罪人にでっち上げる。こういうことが昔行われておった。それと同じようなことが行われやしないかと私ども考える。もしそうなって参りますと、警察行政は非常に暗い影が出てくる。民主警察でなくなる。なるほど、共産党の動向が知りたい、あるいはこれがどういうふうに動いておるかということを考えたいということは、わからぬわけではない。しかし、これは自由党にしても、社会党にしても同じことだと思う。その場合に、こういうことが平気で行われておりますことについて私は遺憾に考えております。今の御答弁だけでは私ども承認をするわけには参りません。私がはっきりこの際聞いておきたいと思いますことは、こういう思想調査が平気で行われておるという事実に対して、警察庁としては、警察に対して善処をするようにというような指示を出されるようなお考えが一体あるかないか、これを伺いたい。
  126. 山口喜雄

    ○山口政府委員 その文書に記載されておりますような事柄の調査が全部いわゆる思想調査であるというようなことは、私は考えておりません。しかしながら、中にはいわばよけいのものも入っておると考えます。私どもとしましては、今後警察がいろいろ調査をします場合には、そういう行き過ぎのないようにこれは十分に注意をいたして参りたい。その点は御安心をいただきたいと存じております。
  127. 門司亮

    ○門司委員 これはくどいようですが、これを見てごらんなさい。あなたの方の符牒がついておるんだ。これは世間ではわからぬ。まるの中にトの字を書いたり、セの字を書いたりしておる。そうすると警察一つの隠語なんです。こういうものは警察を暗くする。まるの中にトの字を書いたり、まるの中に自の字が書いてある。自民党の諸君かもしれない。こういうように一般にはわからない文句が使ってある。たとえばまるにトの字が書いてあって、「文書入手す(政策遂行、大衆との結合の強化の中にこそ党の統一と民主勢力の団結がある」。それから同じようにセの字が書いてあって「文書入手す(財政方針)」、あるいは「教師の氏名判明す」というようなことが符牒で書いてある。こういう問題についてはどうなんです。警察はやはりこういう隠語を使わなければいけないのですか。何か八百屋や魚屋のせり市にいったようなもので、普通の人にはわからないのですよ。
  128. 山口喜雄

    ○山口政府委員 隠語ではなくて、要するに事務を早くするためで、まるにトというのは共産党員です。共産党員と書くより、トと書いてまるをつければ早いですから……。
  129. 門司亮

    ○門司委員 しかし、内容を見てみますと、必ずしも共産党員とは書いてありませんよ。マルセの字が書いてあって「松江地区夜学再開す」とある。一体これは何か。
  130. 山口喜雄

    ○山口政府委員 セは朝連関係です。それは略号のつもりで使っております。簡単にするために書いてあるのです。全く他意はございません。
  131. 門司亮

    ○門司委員 まるに労の字、まるに自の字、こういうものを拾い上げてみれば幾らでもある。それからまるにシの字があって「マルシの最近の動向」と書いてある。こういうものは幾らでも出てくる。こういうものを警察が使っておって、そして個人の動向を調べるということは、これは私は、今日の警口察としてはどうしても行き過ぎだと思う。作業簿にしても同じことであります。大体趣旨はそう変らない。作業簿の方は符牒は使ってありませんが、ある程度内容がはっきり書いてある。そうしてこれはほとんど「入手情報資料等の概要」というようなものを書いてある。そうして一番私が気になるのは、この中で協力者小出と書いてありますが、これは注釈を読んでみますと「対象者と酒宴を催す」と書いてある。これはあまりいい言葉じゃないですね。正直に書き過ぎたかもしれない。「対象者と酒宴を催す」ということになりますと、一体何をやったかということになる。私は、警察が必ずしも暴力を使うとは申し上げませんが、今日の警察というものは、一方においては、ほんとうに暴力団にひとしいような行き過ぎの行為が平気で行われておる。一方においては、こういう思想調査がだんだん芽ばえてきておる。この警察の動向というものは、これは見のがすことができない。私は、将来警察の誤まりを犯す動向だと考える。従ってこの点については、警察庁なり、きょうは公安委員長おいでになりませんが、公安委員会では、ほんとうに真剣に考えてもらいたい。そうして警察がだんだん権力に甘えて、民衆にかぶさってくるということになって参りますと、ほんとうの正しい意味の民主警察というものは、私はできなくなってくると思う。だから一応きょうはここに警察庁長官にすぐ来てもらうことになっておりましたが、まだおいでにならないし、公安委員長おいでになりませんが、いずれまた機会があれば、この点については、私は明確に一つ警察の腹を聞いておきたいと思う。  きょうはこれ以上聞きませんが、最後に警視総監一つ聞いておきたいと思います。私は、警視総監がおかわりになった冒頭に申し上げたので、今さら繰り返して申し上げることもないと思いますが、警視庁の予備隊のあり方なんです。これは警視総監がおわかりになるたびにしばしば申し上げているが、一向変らない。そうして出てくるのはこういう問題だ。これはどう考えてみても、昔、御承知のように新撰組というものがあった。警察が例の新撰組とちっとも違わない組織を持っておる。そうして一般警察官としての教養というものはしておらない。一カ所に集めておいて、そうして集団行動に対する訓練だけしかいたしておらない。まごまごすると、集まった人間はみんな暴徒と心得て、これの鎮圧のためにその訓練をやっておる。だから人間が集まると暴徒と考える。暴徒だから少しくらいなぐってもいいというくらいに考えておりはせぬかと思う。だから、どうしても一般の警察官としての教養を与える。そうして時間があるのですから、各警察から非常招集をしても、二百人や三百人の警察官は、東京都内からすぐ集められる。ほんとうに一般の警察官としての教養を身につけた警察官なら、そう民衆に対して乱暴はしないと思う。もう出動するときから何かやりたくてしょうがないのです。またやらなければ自分たちの存在価値が危うくなるということを彼らは思っているかもしれない。だからどう考えても、今持っておいでになる予備隊については再検討をする時期だと私は考える。そうしてもう少し民主警察としての教養を身につけることをお考えになりませんか。これはどう考えても、われわれにはそうとしか考えられませんよ。もしあれが普通の常識を備えた警察官なら、そうむやみなことはしませんよ。まるで気違いですよ、やっていることは。正気の警察官とはいえないのです。私などの体験を申し上げてもちっとも差しつかえないのですけれども、ここで私の体験談を申し上げても始まらぬから申し上げませんが、どうですか、一つあの警察予備隊について再検討を加える——私は集団の大きないろいろな暴動あるいは騒擾というようなものが起らないものとは考えておらない。人間には必ず行き過ぎがあるということはわかり切ったことである。しかも、それが群集心理でもって動くということもわかったことである。それらの行き過ぎが、ややもすると大きな問題を引き起すということもよくわかっておる。従って、そういうものに対処する一つの何かがなければならぬということはわかるのである。しかし、そうかといって、今のような組織で、何でもかんでも人を見さえすればこれを暴徒と心得て対処するような考え方、従って、砂川事件でも今度の事件でも同じでございますが、情容赦なく——被害者の被害申告書があなたの方にもあろうと思いますが、これを一つ読んでこらんなさい、こういうことが書いてある。あなたの方は二分間ぐらいで警棒の使用をやめさせたと書いてあるけれども、この被害申告の被告書を読んでごらんなさい。個人個人の住所氏名が書いてあるし、これは間違いないと思う。全然関係のなかった諸君、門の外のハスのところで待っておった諸君まで追っかけていってひっぱたいた。こういうことから見ると、さっき申し上げたような二分間ぐらいの警棒の使用ではなかったと思う。そういうようなことはわれわれには考えられないことであって、これらの問題が起らぬようにするためには、どうしても今の警察予備隊に再検討を加える時期だと私は考えておる。その点についてのお考えをこの際聞かせていただきたい。
  132. 川合壽人

    ○川合説明員 最後の方で、門司委員もおっしゃったように、東京都の中にはいろいろな事案が起るから全く必要がないとは言わぬが、こうおっしゃったのでありますが、現在の警視庁の機動隊につきましては、十分存じていらっしゃいますので、くだくだしくは申しませんが、人為的なもの、天災的なもの一これだけの人間がこの地域におりまして、しかも天災も必ずしも一年に一回、二回にとどまりませんので、その場合の鎮圧といいますか、防止といいますか、あるいはいろいろな事態の被害を最小限度に食いとめると申しますか、そういうことにつきましては、私は、現在の警視庁の機動隊のごとき機構がどうしても必要である、こういうふうに考えます。ただ人数ですとか、教養ですとか、あるいは出動のときの心がまえというふうなことにつきましては、今お説のように検討の余地があろうかと思います。現に、私が参りましたときには二千五百名おったわけであります。その前は記録をお持ちだと思いますけれども、警視庁の機動隊は昭和二十四、五年におきましては三千百名おったのであります。それが二千五百名になりまして、私、いろいろと考えまして、これを最小限度にいたしたいということで、七、八百名の者を各警察署に分割したわけでございます。で、出動のスピーディなこと、それから水害その他につきましてのいろいろな事態についての処理の仕方、たとえば今年の正月に東京宝塚劇場の火災がありましたが、あのときに最初にかけつけましたのは、第一機動隊でありまして、丸の内署員がきびすを接して参っておりますが、その活動ぶりは丸の内署員の遠く及ばざるところなのであります。ああいうふうなときに、もう寸刻を争うというふうなことは一年に数あるわけで、待機の姿勢その他も、一般の署員とはまるで違っておるのであります。ただお示しのようないろいろな誤解を招いたり、あるいは行き過ぎがあったり、あるいは教養が足りなかったりする点は、これは若い警察官でありますので、心配が多分にございます。いとまああときには、ほんとうの民主警察官としての教養を十分につけるようにやつておるのでございます。考えようによりましては、極端に申しますと、千八百名の者を全部ちぎりまして、各警察署に持っていって、各方面警察隊というものでもって機動性を持たせるやり方も全然考えられないことはないのでございます。ところが、そういうふうにした暁におきまして、私は、東京の中にできますところの事柄については、全部切って各警察署長のもとに置きました場合には、自信がございません。いろいろと御不満な点もあるかと思いますが、私は、現在の二万四千二百名の定員の中で千八百名というものをこのように使い、あとのものを一般の事務に服せしめまして、なお代替性を持たせまして、二年ないし三年たちました隊員を徐々に交代をいたしておるのであります。どうしても年の若い、体力旺盛な者が集まるということは、これは必然の成り行きなのであります。御注意の点よく注意をいたして参りたいと思います。
  133. 鈴木善幸

    鈴木委員長 中井徳次君。
  134. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 大へんどうも時間がおくれて、委員長、同僚の皆さんに御迷惑だと思いますが日を改めてというのなら日を改めてやりますが、警察問題について、簡単でありまするから五時ごろまで一つ……。  私、お尋ねいたしたいのは二点ばかりございます。第一点は、これは私うかつでありまして、その後の事態を知らないのですが、この間東京のどまん中で、日本郵船でもないし、東洋汽船でもない、東洋郵船といいますか、そこの社長が撃たれた、暴力団にやられたという、あれはその後どうなっておりますか。その犯人は逮捕されておりますか、これをちょっと聞かせて下さい。
  135. 中川董治

    中川(董)政府委員 御指摘事件が起りまして、これはピストルで横井という被害者に重要な傷害を与えた事件でございますが、この関係事件は都民の方々にとって重要な事件でありますので、全力をあげて捜査しています。現在本件関係の傷害事件そのものの実行行為者についてはいろいろ内偵を進めておりますけれども、事件に関連して脅迫行為、恐喝行為、こういった事件がからまった事件だと捜査当局は見ております。脅迫罪、恐喝罪、それから銃砲刀剣不法所持、こういう罪名で四人ばかりの被疑者を今割り出しております。逐次逮捕しておりまして、真相は逐次明らかになろうと思うのでありますが、本件につきましては、重要な事件でありますので、警視庁を初め関係警察協力いたしまして、熱心に捜査を進めております。
  136. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そうしますと、ピストルでほんとうに撃ったヨタモノですか子分ですか、それはまだとっつかまっておらぬ、こういうことなんですか。私は、先ほどの皆さんの御質問にも関連がありまするし、また本委員会でもたびたび議論をするわけでありますが、右翼団体に対する警察の取調べ、これがいつもどうもあやふやになって、いいがげんなところへいってしまう。先ほども俗語がずいぶん出ましたが、サツはなめられておるというようなことで、現実国民生活から考えますると、例の十条製紙の問題だとか、実際ストライキや何かで——労働争議は、先ほどの門司委員のお話のように、これは労働者に認められた当然の権利にもかかわりませず、そういうものについてはきわめて神経過敏であるが、暴力団その他の行為は一向跡を断たないで、それでどうもなめられていっておる。こういうことについて、何か国民の側から見ましても理解しがたいような、何か裏で平生つきあいがあるからとか、そういったことがほとんど一般国民の常識になっているのですよ。これを、いわゆる民主警察だから、あなた方が抜本的におやりになるということが、今の日本の警察で私は一番重要でないかと思うのですが、どうなんですか。最もはっきりした事件、僕らに言わせると、しろうとだけれども、系統も何も実にはっきりしていると思うのだ。日本はそんなに広くはありませんよ。これは全警察を動員すれば、一週間以内には、どこに隠れておりましても、これぐらいのものはわかりそうなものだと思うのですが、どうですか。あなた方の、「なかなかとっつかまらぬ原因とか真因、どういうところに欠陥があるか、それを一つお話を願いたいと思うのですがね。国民は切歯拒腕しておりますよ。どうです。
  137. 中川董治

    中川(董)政府委員 お説のように暴力行為が社会生活を脅かす根底で、弊察の使命の根本であります。この点につきましては、お説の通り徹底した力を注いでおります。今回の事件につきましても、大体暴力団関係者が実行行為者だ、こういうふうに現在の捜査では見ております。この人物につきましては、逐次関係者逮捕は進んでおるわけですけれども、現実にピストルを持って犯罪を行なった行為者につきましては、大体捜査の範囲も狭まっておりますけれども、ただいま逮捕するに至っておりません。おそいじゃないかというおしかりでございますけれども、この点につきましては、われわれも最善を尽すということについては固くお約束いたしたいと思うのですけれども、ひとりこの種の犯罪に限らないのですが、なかなかつかまらないじゃないかというお考えもうなずけるのでありますが、ああいう関係者が組織をもってかくまって、証拠隠滅して、そして相当の金を使って逃走するということになりますと、われわれとしても、もちろん徹底的に追うことについて、勇気を持ってやっておりますけれども、何といいましても、それぞれ手続を経て人の家に入らなければいかぬ、あるいは手続を経て措置しなければいかぬということがすべて共通することでありますので、なかなか逮捕がおそいという御批判に対しましては、われわれは深く反省いたしますけれども、本件事犯のごときを、いわゆる暴力団の親分と取引したという形をとりますと、問題の終局の解明になりません。だいぶ大昔に、こういった事件がありますと、親分らしい人間に会って、一つこの際タマを出せよといって話した例もあるのですが、そういうことをやっておりますと、やはり根本的の解決になりませんので、そういう意味の協力は求めない。国民全部の方々の御協力はぜひお願いいたしたいと思うのですけれども、そういう意味で変な取引をしないで、じみちに、徹底的にこれを逮捕して参るということが根本対策だと思っておりますので、そういう方法でやっておるわけであります。そうすると、いろいろ取調べするにいたしましても、下手なことをやっておっては能率が上りませんので、ああいう行為をする人間の行動につきましては、警察としては十分把握する。こういうことで警視庁初め関係府県におきましては、あの種の行為をやるおそれがあるという人物あるいは組織というものの解明に努めております。今回の事件に限らず、あの種の事件が起った場合には、いち早くその組織がわかってしまう、彼らの行きそうな場所がわかってしまうという組織の解明は全国的に整備して努力しておりまして、現在そういった人間六万人ぐらいは把握しておる状況でございますので、だんだんこういう方策が徹底することによって御期待に沿えるのではないか、こういうことについて責任を持って申し上げたいと思います。
  138. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 どうも中川君あたりは非常に熱心にやっておられるようだが、先ほどの話に戻りますが、これは二、三年前に警察法の改正のときに強く言いましたが、今の警察法は組織法だ、現在の警察官教養程度からいって、これは世の中の方が進んでいる。そこで先ほどもいろいろお話がありましたように、警察官といってもたくさんおるのだから、知能程度なんかもまだずいぶん古いのがおる。あるいはそれに適当しないのがずいぶんある。そういうところに実際盲点があるのじゃないですか。首脳部はそう考えているけれども、最近の騒擾事件など私も一、二の例を具体的に申し上げますが、最近たとえば映画とかラジオなどに出てくるおまわりさんは、昔と違いまして、非常に親切で丁寧で、なかなかいいですよ。町のおまわりさんがみなそうかと思うと、必ずしもそうじゃありません。私も三日ほど前にちょっと急用がありまして、銀座の裏の方の交番に飛び込みまして、ある会社の名前を聞きました。円タクに乗っていって、初め運転手に聞かしましたところが、けんもほろろのあいさつ、そんなもの知らないと言う。そこで私が出ていきまして、わざわざ上着を着て、マークがついておるから、国会議員だとわかって親切に返事してくれるだろう。(笑声)これは率直なところです。そして「今日は」と言って、こういう会社、はどこにございましょうかと聞いたら、名前は聞いたことがあるが、場所は知らぬね、これでおしまいですね。私は、半時間かかった。またよその交番に行って聞いたら、結局のところ、前の交番のすぐ二百メートルぐらいのところにありました。これは事実なんです。方々で騒擾事件が起っておりますが、本州製紙の問題なんかでも、もしその日に総監が現場で指揮しておったら、あそこまでいっておらぬと思いますよ。こんなことを言ったら、あなた方は部下思いだから、そんなことはありませんという返事をなさるけれども、現実はそうなんです。四ヵ月ほど前にありました全逓の騒動のときに、私の出身地三重県の津市ですが、郵便局員が。ヒゲを張っておった。そこに津の警察署長が参りまして、勝手に機熟せりと思ったのでしょう、突っ込めというようなことで、何も騒動が起っておらぬのに、警察官の方から突っ込みまして乱闘が起った。私は、今度は四日市でやるというので、おまわりさんが来ておりましたから、幹部の人に会いまして、あんなことしたらあかへんでえ、きょうはやらんとけよと言った。それで何もやらなかったら、実に静かで全然問題が起っていない。逆なんです。そういう面から、暴力団との関係におきましても、長官は極力警察官教養を言われますけれども、現実は、人権じゅうりんその他と、言われておることと事実が逆の方向にきておる。この事実が問題なんです。この事実をどうして片づけていくか。私は、やはり今のようなおまわりさんの教養程度であれば、警察の組織を——初めは簡単なものでいいと思いましたが、それじゃいけません。相当こまかく、朝起きたらお早うと言いなさいぐらいのところからやる必要があるのじゃないかと思う。そういう意味からお尋ねするので、暴力団の関係など、首脳部の皆さん並びに優秀な刑事諸君が幾らがんばっておられても、あなた方が幾ら指令を出されても、下には浸透しておらぬ。それが今問題だと思うのです。こういう点について何かあなた方は抜本的——抜本的というのはむずかしい、それには時日を要するかもしれませんけれども、現状でいいとはお考えにならないと思うのですが、何かいい手はありませんか。この前の暴力団の問題なんか、簡単明瞭なことですよ。すぐ手配をしてやれば、箱根へ行っておるとか、東京都内とかいろんなことを言いますが、私はつかめると思うのだ。その手配の末端の方が麻痺しておるというか、そこまでいっておらぬということが、この問題をこじらしておる原因のように思いますが、こういうことについていかがですか。
  139. 中川董治

    中川(董)政府委員 まず一般論といたしましては、御指摘の点につきましての根本対策は、警察の仕事の重要な事項を上司の指揮にかからしめる、こういうことによって職務執行の正確を保持いたしたいと思います。ただし、それを全部指揮にかからしめるわけにいきませんので、たとえば地理案内のことまで上司の指揮でやるわけに参りませんから、最終的には個々の警察官教養ということになろうと思います。個々の警察官教養につきましては、観念的な教養でなしに、たとえば道案内の場合の教養ということについて、具体的に教養するということに努力して参りたい。こういうことが根本的な対策だと思うのであります。  また暴力団の問題につきましては、そういうようにして警察を動かすということが根本でございますけれども、暴力団の取締りにつきましては、そのほかに必要な点は、やはりまんべんなく日本国じゅう行っておっても能率が査上りませんので、それぞれそういう行為を行う人間の具体的行動関係をつぶさに警察が把握するということが一番重要であろう、こう考えておるわけであります。その対策を、今度こういう事件が起ったとたんに考えるということでは間に合いませんので、全国的に暴力団の組織の把握をしていく。そうすれば横井事件が起ったというような場合にも、すぐに解決して参る。こういう方法で具体的に考えておるわけであります。
  140. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そういう基本的な問題と関連いたしまして、第八条の第五に、「頭部等を打撃することのないようにつとめて心掛けること」と書いてあるが、この間からいろいろと本州製紙の問題で現実に負傷した人から聞きますと、君は幾つなぐられたと言ったら、幾つなぐられたかそれがわからぬ、二つぐらいで昏倒しましたと言うのだから、やはり現実になぐられておる。そういう形から見ますと、今まで警棒などを持たして、幾ら皆さんが訓令、指令を出しましても、このままでいったら、こういう騒動があると——これまでは幸い死亡者は出ませんでしたが、私は将来出る可能性があると思うのだが、そういうことがあっちゃ大へんだと思うのです。一体あの警棒はどれくらいの重さで、長さなどどんなものですか。個人の警察官が持たれる装備、これはどういうものを持っておられるか。平生はピストルと警棒を持っておられるか、これは大へんこまかいようなことでありますが、ちょっと伺っておきたい。
  141. 山口喜雄

    ○山口政府委員 警棒の重さ及び長さの正確な点は、私ちょっと記憶しておりませんので後ほど申し上げたいと思います。警察官の服装は、警棒と拳銃を携帯しますのが常装であります。ときどき新聞等にも、武装警察官という言葉が出ておりますが、拳銃を携帯して出る状態が通常の状態でございます。ことさらに武装して出たというわけではございません。ただ事柄によりましては、いろいろな状況を考えまして、拳銃を携帯せずに出動させる場合も、まれな場合にはございます。これはむしろ例外の場合でございます。警棒は絶えず携帯をさせております。ただし、これの使用は、具体的活動の場合には指揮官の命令によるということが建前になっております。
  142. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 その警棒の長さ、重さは御存じないというのですが、実はここにも纐纈さんのような剣道の達人がおられますが、あれはたしかカシの棒であったと思います。それでおきめになったときには、アメリカと同じような警棒になさったのですか。そういうことについて、わかっておれば御返事願いたい。
  143. 山口喜雄

    ○山口政府委員 カシの棒をところによっては使ってあるかと思いますが、カシの棒で作るというようには定めてはおりません。それからあの警棒は御承知のように、占領時代にアメリカのMPの持っております警棒を参考にして作られたものでありますが、あれは日本人のからだの状態その他日本人として使いやすいように工夫をして作られたものであります。
  144. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そこで問題になるのです。世界の方々の警察官の装備など、私も多少回ってきまして知っておりますが、いろいろ千差万別であります。アメリカ人はフェンシングはやりますが、剣道などはやりません。あの警棒は、カシで作られて、これくらいのものだと思いますが、あれは剣道の有段者が、ほんとうにまじめに頭をやりますと死にますよ。私はどうもこんな大へんこまかい、つまらぬようなことを申し上げるようですけれども、この間からの事件を見ておりますと、心配でならないのです。私に貸してもらえば、私もいささか心得ているのですが笑声横つつらやりますと、ほんとうに即死しますよ、あれはカシの俸でできておりましたから。皆さんのうちにも御体験の人はあろうと思います。今やはり警察官は武道を奨励されて、柔道と剣道をやっておられますから、ピストルを持っておられるなら、警棒の問題等についても、こういうふうに、皆さんの意思にもかかわらず、現実にはそういう騒動が砂川事件、その他方々で起っている現状においては、今のやつは少し武器としては、率直に言いまして強過ぎると思うのです。これはまじめな議論として私は考えております。死亡者などが出ましたらえらいことですから、こういうことについて、ぜひ私は警察がこの際慎重に検討をしてもらいたい、こう思うのですが、どうですか、そういうことについて研究されたことなどございますか。
  145. 山口喜雄

    ○山口政府委員 平生から警棒の使用等につきましては、十分に注意をいたしております。警察官が部隊で出動します事例は、御承知のように、最近では非常に各方面にわたっておりますが、警棒を使用しますのはきわめてまれであると申し上げることができると思います。最近におきましては、御承知の砂川の問題のとき、それから先般の本州製紙というようなことになっております。本来ならば、あれをそういう傷害を与える目的でなくして、たとえば排除をするとか、いろいろもう少し使い方を工夫しまして、有効に使えばいいんじゃないかと思われる面もございます。この点は十分検討いたしておりますが、使用しました場合に、間々いろいろ間違いも起りがちでございます。現在のとろは、警棒の使用につきまして十分に注意をさせて参っておりますが、なお今後の問題につきましては、いろいろと御意見も承わりましたので、十分に検討をさせていただきたい、かように存じます。
  146. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 私、時間がありましたら、この次にでも警棒やピストルをここで見せてもらいたいと思っているのです。きょうは何ですが……。今の警棒の使用の話なども、外国人と日本人と棒に対する考え方が違うのです。基本観念が違うのです。われわれは、子供のときからチャンバラの練習をやっているのですから、そこに問題があるのです。そういう意味から、やはり日本人に合った形において——ピストルも持っておるのですから、あれはちょっと強過ぎやしないかというようなおそれがあるのです。しばしば使わないと言いますけれども、現実に使ったときには、必ずこういうように負傷者がたくさん出ているわけです。こういうことについては、慎重に検討してもらいたいと思います。  それから石井さんが今帰って見えたから伺います。これは私の持論ですが、現在の警察法は組織法であります。それ以外の、警察官行為ということについて、あなた方はいつも研究してみます、こういうことでありますが、私も、実はぜひ作らなければならぬものかどうかということについては、非常に疑問であります。これは全く個人の意見で、党にも諮っておりませんが、このような事件が山積する限りはやはり慣行、内規でも何でも非常に親切丁寧なもので、警察官初級の者によくわかるようなものを作らぬごとには、これは防げないように思うのですが、いかがですか、こういう点お尋ねいたします。
  147. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 お説はまことにごもっともでございます。警察官の個々の行為につきまして行き過ぎのないようにするために、あらゆる面から慎重に検討いたしまして、日ごろから十分指導教養を加えまして、行き過ぎのないようにさせることは私も全く同感でございます。日ごろ教養を通じまして、そういう点においては努力をいたしているのであります。なお不十分なために間々行き過ぎ行為がありますことは遺憾に思っております。今後さらにそういう点につきましては、一そう研究を重ねまして、御希望に沿うように努力いたします。
  148. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 そういうおぎないのお答えでは困るのです。ほんとうの話が。私は、組織にも欠陥があるならあると言ってもらってもいいと思います。しかし、一応ああやってきたものですから、皆さんあれがいいといっておやりになったのですが、どうもそれだけじゃないと思うのです、個々のおまわりさんの状況を見ますと。給与の面もあれば大いにやったらいいと思います。先ほどそういう意味のお話はなかったが、おそらく犯罪捜査に経費の面がずいぶん影響しているのではないかと私は思っております。そういう面からももっと行動的に——こういうものはいろいろ議論をしたり何かいたしましても、から回りなんです。具体的の個々のケースをつかんでもっと親切に手を引いてやる。私、それじゃ一点だけ言いますが、私の思いつきですが、皆さんが命令を出される。下の方の警察官は民主教育を受けておりますから、案外わかりがいいのです。まん中におるのが、ちょうど戦時中の新規採用のおまわりさんというので、統制問題その他非常に乱暴な時代のおまわりさんがちょうど今地方のいなかの警察なんかで署長をやっておる。そういう事態が実は多いのです。さっき選挙違反のことなんかでもありましたけれども、皆さんはそう思っておりましても、下へいくと、ちょうど指揮命令をする側がいわゆる民主主義の谷間にある。それで私は、今の日本の警察現場の指揮官だとかなんとかいうところにどうも穴があるように思えてなりませんのです。そういう点でどういうふうな処置をしておられるか。もういいつらして四十、五十になった人に教育もできぬわいというようなことでは、これはなかなか改まらない、こういうふうに考えるのですが、いかがですか、そういう点は……。
  149. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 最下級の巡査教養のみならず、監督する立場にある者の教養もきわめて重要なことであります。私どもといたしましては、現に各階級に応じた教養を実施いたしておりまして、四十づらだからといって全然教養を実施しないわけではございません。警視の階級にある者、警部の階級にある者、警部補の階級にある者、巡査部長、いずれの階級にある者も漏れなく教養を繰り返しやっております。ただ警視あるいは警部というような比較的上級の幹部ともなりますと、現についているポストの関係上、責任のあるポストでございますので、長い期間そのポストをはずれてひたすら教養を受けるというわけに参りません。そういう制約がございますので、十分と申すことはできませんけれども、一通り幹部たる者の教養ということは、あらゆる機会をとらえてやっておるのでございます。警視、警部の現任教養もやっておりますし、警部補についても同様であります。今後そういう点につきましては、さらに工夫をこらしまして、実効の上る計画を立て、これを実行して参りたい、かように考えております。
  150. 中井徳次郎

    ○中井(徳)委員 何回繰り返しても何ですからやめますが、効果は上っておりませんよ。それを下からもう一度掘り返して下さい。私は希望しておきます。おまわりさんというものは、昔から命令系統で動いておりますから、たとえば事件がありまして、私どもは、皆さんから調書をとり、それから被害者の方から調書をとると、どちらがうそを言うておるか知らぬが、もう大へんな隔たりですよ。こういうことがそのままずっと続いておってはいけないと私は思うのです。さっきの問題なども、もう繰り返しませんけれども、実効が上っておりませんよ。それを私心配するのです。おまわりさんでも国民ですから、何も日本の現状でそうすばらしいものができるとは私も期待しませんが、今のところは、やはり少しおくれてやしませんか。非常におくれておるように実は思うのです。そういうことについて私はそれだけ希望しておきます。今のようなことで皆さんが満足されておっては、これは大へんなことになりますよということだけを申し上げておきたいと思います。
  151. 鈴木善幸

    鈴木委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後五時十一分散会