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1958-09-10 第29回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年九月十日(水曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 福田  一君 理事 坊  秀男君    理事 石野 久男君 理事 佐藤觀次郎君    理事 平岡忠次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       奧村又十郎君    鴨田 宗一君       小山 長規君    西村 英一君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山下 春江君       山村庄之助君    山本 勝市君       石村 英雄君    春日 一幸君       久保田鶴松君    田万 廣文君       竹谷源太郎君    廣瀬 勝邦君       松尾トシ子君    山本 幸一君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  委員外出席者         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     石井 通則君         総理府事務官         (調達庁次長) 真子 伝次君         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (財務参事官) 西原 直廉君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         通商産業事務官         (繊維局長)  今井 善衛君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 八月二十八日  委員内田常雄辞任につき、その補欠として濱  地文平君が議長指名委員に選任された。 同月二十九日  委員濱地文平君、毛利松平君及び山下春江君辞  任につき、その補欠として内田常雄君、内藤隆  君及び金丸信君が議長指名委員に選任され  た。 同日  委員金丸信君及び内藤隆辞任につき、その補  欠として山下春江君及び毛利松平君が議長の指  名で委員に選任された。 九月二日  委員小山長規辞任につき、その補欠として大  久保留次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大久保留次郎辞任につき、その補欠とし  て小山長規君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員細田義安辞任につき、その補欠として森  清君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員石坂繁君及び久野忠治辞任につき、その  補欠として濱地文平君及び加藤常太郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員加藤常太郎君及び濱地文平辞任につき、  その補欠として久野忠治君及び石坂繁君が議長  の指名委員に選任された。 同月十日  委員久野忠治君、森清君及び山花秀雄辞任に  つき、その補欠として奧村又十郎君、細田義安  君及び石村英雄君が議長指名委員に選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  派遣委員より報告聴取      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。本委員会におきまして、去る七月、議長承認を得て、各地に委員を派遣し、国政に関する調査をいたしましたが、各派遣委員よりその報告書が提出されております。これを印刷配付の上、会議録に参照として掲載することとし、なおその概要について派遣委員より報告を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。それでは順次報告を求めます。  第一班、山下春江君。
  4. 山下春江

    山下(春)委員 先般議長承認を得て行いました当大蔵委員会国政調査東北班調査概要を申し上げます。詳細な点につきましては皆様のお手元報告書を配付してありますから省略させていただき、簡単に問題となるべき点にとどめたいと存じます。  今回のおもな調査の対象は、仙台国税局東北財務局日本専売公社仙台地方局等所管事項でありますが、まず第一に、各局の共通の問題として、他の局に見られないきわめて広い管轄面積を有していることであります。それに加えて、交通機関は最もおくれた地方に属し、冬季の積雪をあわせ考えると、管内指導監督連絡に最も不便を感ずる地域であるということであります。その一例を日本専売公社仙台地方局をとって見ましても、福島県を除く東北五県を管轄しており、そのうち、岩手県一県のみで四国全体に匹敵する面積でありますが、その四国には高松徳島と二つの地方局が置かれていること、さらに茨城、栃木、福島はそれぞれ一県一局が置かれておることを見ても、当地方の局が広い管轄を持って、いかに困難な条件下にあるかが判然とするものでございます。  次に、東北地方租税事情について申し上げます。申告所得税は、その業種構成を見ると、全体の半分以上が農業所得者で占め、その所得額についても常に五〇%をこえているのであります。これは東北の大きな特殊性とも考えられるのであります。  次に、法人税でありますが、東北管内は人口に比べて全国平均より法人組織事業体が少いが、これは全国に比較して法人成りの傾向が僅少である結果とも思われます。  次に、酒税状況を申し上げますと、仙台局管内の三十二年度の租税収入の中における酒税割合は四一%を占めており、そのうち清酒課税高は六三%で、清酒のウエートが半分以上を占めている状況で、これが仙台局の特徴の一つとも言えるのであります。  また、東北地方で見のがすことのできないものは、密造酒の問題であります。集団的大規模密造は、取締りにより漸次減少しておりますが、長年の風習である農村密造はなお根強く残っており、その根絶は取締りだけではとうてい困難かと思われます。この地方では、俗にいう米どころ、酒どころという関係から、清酒下級酒を大幅に値下げすることが、密造対策一つではないかと考えられます。  次に、金融事情並びに国有財産について申し上げます。  管内三十二年度の貯蓄実績は、営業性預金の伸び悩み、または農村方面預金不振などの問題がありましたが、一応目標額の約九〇%に当る五百八十八億円に達しております。一方、貸し出しについては、各金融機関について見ても一般的に低調でありますが、実際資金需要は依然として旺盛であり、特に開発事業とか中小企業については強いものがあります。預金と貸出しの割合を資料によって見ますると、都市銀行の支店が最も悪く、中には二七・一%というものがあり、この点都市銀行地方預金中央へ吸収するという非難を受ける結果ともなり得ることが考えられます。  国有財産について特に問題とすべき点は、昨年度において在日米軍の撤退によって不要となり返還された膨大な提供財産でありますが、これら財産は、この地方と歴史的にまた経済的に密接な関係のあるものでありますから、今後有効適切な処理をいたしませんと、あとに大きな問題を残すものと考えられます。  最後に、専売事業について申し上げますが、前に一例としてすでに述べましたごとく、仙台地方局管内は、地理的事情等によりまして事業経費が比較的高くつくことと相待って、企業採算の面から見てもきわめて不利な地方であるということであります。  以上、今回の調査の結果感じました点を、簡単ではありますが、御報告申し上げます。
  5. 早川崇

    早川委員長 次に、第二班の毛利松平君。
  6. 毛利松平

    毛利委員 第二班の国政調査の結果を簡単に御報告いたします。別紙書類にしておりますので、ごらんいただきます。  第二班は、去る七月二十二日より五日間、東海近畿四国の各地方へ参りまして、税制金融国有財産及び専売事業実情調査いたしました。  まず、東海地方は、七月二十二日、名古屋東海財務局へ参りまして、財務局長より東海地区財政金融経済に関する一般概況説明を聴取し、次いで名古屋国税局長より徴収状況その他について、また専売公社名古屋地方局長より管内専売事業概況をそれぞれ聴取いたしました。さらに、名古屋税関におもむき、税関長より税関行政概況を聞き、特に名古屋港の港湾整備拡充計画港湾行政機構改善合理化につき、名古屋港湾管理組合、さらに商工会議所貿易海運関係者等懇談会を開き、隔意なき意見交換をいたしました。  次に、近畿地方に参りまして、近畿財務局大阪国税局大阪税関神戸税関等、各機関の長よりそれぞれ所管事項について説明を聴取いたしましたほか、京都府庁大阪府庁和歌山県庁京都市役所等々、地方行政官庁へも参りまして、事業税を中心とする地方税制改正問題について、地方自治体側意見をも十分聴取し、実情の把握に努めました。また、大阪証券取引所では、株式の配当所得課税預貯金等利子所得課税との不均衡の問題が取り上げられ、証券税制の改正についていろいろと陳情を受けました。また、酒造組合代表等との懇談会では、酒税の税率を引き下げ、酒税の不均衡是正清酒原料米希望加配制度復活復元問題等について意見交換を行いました。特にアローアンス等については、強き要望がありました。  さらに、四国地方におきましては、四国財務局高松国税局日本専売公社高松地方局及び徳島地方局において、それぞれ管内状況説明を聴取しました。特に徳島県におきましては、塩の収納価格引き下げをめぐって、塩業者の間に多大の不安と脅威をもたらしており、また塩業労務者のストライキが行われて、相当深刻な様相を呈しております。塩業問題の円滑なる解決のためには、さらに一そうの努力を要するものと認められます。高松では、果樹農作物に対する塩害問題が相当強く訴えられておりました。  最後に、四国酒造組合代表者との懇談会においては、清酒原料米希望加配制度、いわゆるアローアンスの問題は、近畿業者意見を全く異にし、アローアンス絶対反対の陳情もありました。これもつけ加えておきます。  なお、詳細については別紙書類で配付してありますので見ていただきまして、簡単ではありますが、第二班の御報告をこれで終ります。
  7. 早川崇

    早川委員長 第三班、佐藤觀次郎君。
  8. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 第三班、九州地方国政調査について御報告申し上げます。詳しくはお手元にお配りしてあります報告書に譲りたいと思いますので、御承知を願います。  調査の期間は七月二十二日より二十六日までの五日間でありまして、おもなる調査先福岡国税局北九州財務局長崎税関長崎県庁及び酒造組合等であります。  以下、事項別に順次御説明申し上げます。  まず第一に、租税事情について福岡国税局管内状況を申し上げます。  当局管内国税収入全国の五%程度で、関東信越局に次ぎほぼ全国の中位であります。その租税構造は、所得税の三四・三%を筆頭とし、酒税の二六・六%がこれに次ぎ、法人税は第三位で二四・八%を示し、酒税の比率がやや高い。三十二年度における租税印紙収入収納済額は四百八十三億円で、その収入歩合は九一%となっており、全国平均を若干下回るようであります。  国税局及び酒造組合より要望された事項は次の通りであります。  まず、国税局よりは、(1)税務職員特殊性として、他官庁に比し転勤が頻繁であるが、その住宅事情はきわめて悪条件下にあるので、早急に国設宿舎を増設されたい。(2)久留米飯塚税務署等老朽庁舎を早急に整備されたい。  また、酒造組合よりは、(1)清酒二級の小売価格を一升三百五十円(現行四百九十円)になる程度まで酒税を引き下げて、清酒の安価なる供給をはかり、大衆の嗜好に投ずるとともに、密造を根絶する必要がある。(2)原料米払い下げ価格主食用同一価格になるまで引き下げられたい。  第二に、金融事情について北九州財務局管内状況を申し上げます。  北九州経済構成石炭鉄鋼等基礎産業を基幹としており、これら主要産業の浮沈は同地方経済に大きな影響を与えているのでありますが、炭況は本年四月以降急速に悪化し、貯炭量は、六月末で前年同期に比べて二三%の増を示し、なお累増傾向にあるため、関連産業への代金支払い遅延等が顕著に現われているようであります。このような状況にあるため、金融機関に対する資金需要は、炭界以外は減退傾向にあるが、石炭関係では恒例の夏場資金貯炭融資、スト負担金等旺盛な需要が予想され、従って、銀行資金事情は七—八月の公金流入供米予約代金のはね返りもさして期待できないため、資金ポジションは一時かなり悪化するのではないかと予想されるのであります。  第三に、港湾行政の合理化問題について申し上げます。  本件につきましては、長崎税関より管内事情を聴取するとともに、現地において関係官庁長崎県、市、商工会議所及び貿易業者等との懇談会を開いたのでありますが、管内諸港における隘路の実態並びに要望された事項は次の通りであります。  (1)港湾行政が多元化しているため、同一記載内容書類を多数の機関に提出しなければならない。(2)港湾行政機関が遠隔離散して存在しているために生ずるロス、並びに、各機関検査が、同一貨物に対し、それぞれ時期を異にして、二重、三重三重に行われるための時間的、経済損失は甚大である。(3)港湾施設管理運営をする機関が多元化しているため、手続の繁雑を免れない。(4)行政機関による運営が円滑を欠いているため、船舶の入港、貨物検査等に支障を来たしている。以上のような実情にあるので、税関のもとにすべての機関を統合運営されるのが最も望ましいが、さしあたっては、所管中央官庁を異にしても、港湾における手続事務の窓口は早急に一本化されたいとの強い要望がありました。  なお、長崎県庁より、干害対策干拓事業早期着工及び離島振興対策事業等について、要望がありましたが、その内容は省略させていただきます。  簡単でありますが、以上御報告申し上げます。     —————————————
  9. 早川崇

    早川委員長 税制に関する件、金融に関する件及び外国為替に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。佐藤觀次郎君。
  10. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣に質問します。  昨日経済企画庁並びに政府より来年度の経済見通しについて発表されましたが、三十四年度の見通しのあいまいな点があり、また、経済見通しについて政府の今までの考え方と実際といろいろ違っており、各方面から非難がありますので、予算担当者として現段階をどのように解釈されているか、その具体的な考え方をまず伺いたいと思います。
  11. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 昨日経済企画庁より経済見通しについて政府として発表いたしたのでありますが、大蔵大臣としてもその所信は同様でございます。
  12. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そうすると、今度の経済企画庁の発表をもとにして予算を組まれるわけでありますが、大蔵大臣は、今まで、十一月ごろの見通しをつけないと三十四年度の予算は組めないというような意見を、ときどき述べておられました。一体現在もそういうようなお考えであるのかどうか、この点についての所信を承わっておきます。
  13. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お尋ねのように、基本的な見方経済企画庁の発表した通りであります。来年度予算編成いたしますに際して、そのような見方を基盤にして予算を組んで参るわけでございます。問題は、歳入がどういう状況になるのか、こういう点を十分確保しないと、実際的な予算編成はできかねるのであります。言いかえますならば、予算規模等見方はもう少し時間をかけなければきまらないという状況でございます。
  14. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 一般に予想されておりますのは、明年度予算規模において——三十三年度は一兆三千八百億でありましたが、今まで政府は盛んに減税公約をしておられましたし、過ぐる選挙におきまして、自民党は、減税その他の問題について処理をするということを公表されておりました。そこで、数字を少し申し上げないとわかりませんが、私たちの見解によりますと、来年度一兆三千八百億の予算が組まれるかどうかにつきまして、いろいろ疑問があるわけです。少くとも来年度は六、七百億の自然増収があると見ておられますけれども、しかし、政府が今まで公約されたところでは、来年度三十万円以下免税として大体二百四十億、酒税減税が五十億、地方税減税が三百億、合計六百億ばかりどうしても減税されることになるわけであります。これが大体自然増収に当てはまるわけでありますが、そのほかになお七、八百億の金が考えられるわけであります。それは恩給、それから医療費、これだけでも大体六、七百億の金が要るわけであります。そのほかに、再軍備の問題は将来あるといたしまして、すし詰め学級、これは文部省の予算でありますが、すし詰め学級の解消ということで大体百億、そのほかにもなお養老年金の三百五十億でありますが、これは別にいたしましても、道路の五カ年間における——これは財政投融資でありますけれども、少くとも七、八百億の金がどうしても足らなくなるわけでございますが、一体それをあえてしても減税されるお考えがあるのかどうか。このつじつまの合わない予算をどのようにして編成されるかということを、一応大蔵大臣から伺いたいと思います。
  15. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 公約事項につきましては、毎回お話いたしましたように、政府といたしましては、これを忠実に実現する最善の努力をいたす考えでございます。  減税の問題については、ただいま懇談会を開きまして、減税具体案をいろいろ研究いたしておる最中であります。ただいまお話しになりましたような点は、これまであるいは党において研究され、あるいは新聞等で報道されておるお話だろうと思いますが、政府並びに大蔵当局といたしましては、具体的な案をまだ十分作っておりません。ただ、予算編成に当りまして、非常な困難に当面するだろうということは、御指摘通り予想のできることでございまして、なかなか容易なことはございませんが、私どもの考えといたしまして、財源として考えられますものは、自然増収分並びに前年度の剰余金、さらに既定経費の節減、この三点を骨子にいたしまして、所要の経費を作り出してみたい、かように考えておる次第であります。
  16. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ただいまの御意見の中に、臨時税制懇談会お話がございましたが、実はこれは行政組織法にも問題があるのでございまして、先国会において、横山委員からも、この税制懇談会というようなあいまいなものでなくて、やはり各方面からの意見を尊重するような、重要な従来の臨時租税特別委員会のようなものの答申を得る必要があるのじゃないかというようなことのために、社会党からも案を出しておりました。ところが、大蔵省は、勝手にそういうような主張を無視して、井藤半弥を議長とした懇談会でありますが、こういうようなやり方は、やはり戦前のようなやり方に復帰する危険を持つ。少くとも政府行政組織法に疑義のあるようなことを勝手にやられることについては、われわれとしては納得いかないわけでありますが、こういう点は大蔵大臣はどういうように考えておられるのか。減税のような重要な問題は、しかも今度の選挙において自民党減税九百億というような公約をされた以上は、これは当然各方面意見を網羅したところの臨時税制調査会のようなものを設けるのが妥当じゃなかったかと思うのでございますが、大蔵大臣はどういう見解を持っておられるのか、それを伺いたいと思います。
  17. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘になりましたような行政上の弊害を生じないように、今後とも一そう注意するつもりでおりますが、今回の懇談会を設けましたことは、これが時期的に非常に急を要しましたことと、同時にまた純然たる臨時の措置であるということで、懇談会の形式をとっておる次第であります。
  18. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それは、せっかくの御意見でありますけれども、やはり国家というような大きな問題のときには、ただその場の間に合せのようなやり方は、はなはだ納得いかない点でございますので、この点については、他日、今度の議会が開かれましたときにも伺いますが、少くともこういう点についての十分の反省を一つしていただきたいと思うのであります。  それから、先回横山委員からもいろいろ質問がありましたが、私は、今度の臨時国会補正予算を組まなければ、現在の実情ではやっていけないのじゃないか。今の予備費におきましても、今までの支出分風水害三十五億、旱害が十七億で、差引五億しか現在金が余ってないわけでございますが、今後要するであろうと予想される金は学校給食の四億か五億かと思うのです。その他十一号、十七号の風水害の損害の問題、その他いろいろ問題がありまして、少くとも七十億か八十億の金が、現在われわれの概算でも足りないことになっておりますが、今度の臨時議会補正予算を組まないのかどうか。この点については前回もいろいろ議論がありましたが、われわれ予算を審議する立場として、こういう問題について大蔵大臣がはっきりとした見通しを立てて、現在五億しかない予備費をどういうように処理されていくのか、具体的に御意見を承わりたいと思います。
  19. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済不況に対処する対策といたしましては、さき公共事業費の繰り上げ使用ということをいたしました。この結果は、資材あるいは雇用の面におきまして大へん効果があったように思います。そこで、特に、政府といたしましては、この際補正予算を組む必要を感じておらないのでございます。  ただいまお尋ねになりました予備費使用状況でありますが、当初予算は八十億でございます。今日まではっきりこれが使途としてきまりましたものは、さき支出いたしました災害復旧の五億、これを否めて災害関係で二十八億円に上るのであります。その他の残額五十一億円につきましては、もうすでにその使途の予定されておるものもございますが、今日のように幸いにして災害を受けないでこの秋を終ることができますならば、この予備費で十分まかなえるというような考え方を持っておる次第であります。
  20. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 まだ生糸価格の問題がありまして、あれが六十億支出になっておりますが、それでもなお予備費が余るということになりますか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのは生糸対策あるいは繭糸価安定のための処置の問題だろうと思いますが、これはただいまのところ金融で処置して参っております。
  22. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、今度、大蔵省の御意見として、補助金制度打ち切りたいというような意見が十日ばかり前に出ました。この問題については党内にもいろいろ議論がありますが、公共事業費補助事業に入っているもの、公民館の補助費打ち切り等、そういうようなものについて補助費を打ち切るということは、言いやすくしてなかなか実行されないような問題があります。これは地方との関係がありまして非常にむずかしい問題でありますが、大蔵省は今後補助事業をほんとうに打ち切りをやられるかどうか。ただかけ声だけで終りはしないかと考えておりますが、こういう点についてのはっきりした見通し大蔵大臣から伺いたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 全面的に補助金を打ち切るというような考え方ではもちろんございません。補助金につきましては、いろいろの議論が過去においてもございますので、一般の御意見等も十分拝聴いたしまして、補助金の整理と申しますか、一般事業自立性というものをとにかく進めて参りたい、こういう考え方で、これは毎回かような方針を打ち出しておることだと思います。もちろん、御指摘になりました通り、問題は各方面の協力を得なければならない問題でございます。ことに国会方面の強力なる御支援をいただかないと、なかなか成長の上らない問題だと思います。ただいま具体的なものをつかまえておるわけではございません。
  24. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 補助金打ち切り地方との関係が非常に強いのでありますが、今度の自民党公約の中で、地方税の軽減ということでいろいろと政策を発表されましたが、実は、これは知事会などでも反対がありまして、われわれの県でも地方税の問題についていろいろ議論がありますが、現在のような地方の貧弱な財政において、大蔵省考えておるような考え方で果して地方財政がまかなっていけるかどうかということについての疑問をわれわれは持っております。大蔵大臣は、自民党公約したように、地方税のことについての減税を断行されるのかどうか、この点も、地方との関係もありますが、一応伺っておきたいと思います。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これも、佐藤委員の御指摘になりましたように、実行上におきまして非常な摩擦のある問題であります。先ほど申しましたように、減税案を目下審議中でありまして、まだ具体的な案ができ上っておりませんが、ものの考え方といたしましては、中央における自然増というものを、納税者に還元すると申しますか、国民に減税の形で還元する。地方税におきましても同様な自然増が見込まれるのでございますから、やはり減税という方式をとることがいいことだと思います。問題は別途の問題になりますが、地方財政を非常に減税が痛めつけるかどうかという問題になるのでありまして、この点で、この減税分に対する穴埋めといいますか、補てんの議論はなかなか強いのではないかと思います。私どもは、ただいま基本的に申しますように、国においての自然増収分も国民に還元をいたし、地方においても地方自然増収分はやはり地方に還元するという政治の基本的な態度が望ましいと思います。十分地方財政中央財政の間の均衡もとって参らなければならないと思います。こういう点で、減税後の処置としての財政的措置が議論対象になるのではないか、かように考えております。
  26. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣は自然増を非常に当てにされておりますが、昨日閣議で出されました経済企画庁経済見通しについてはかなり楽観ができない。三十四年度のことにつきましても非常にあいまいな結論が出ております。そういうような段階において、政府考えておるように、果して自然増収が期待できるかどうかということについての疑問が出てくるわけでありますが、どのような確信を持って来年度たくさんの自然増収が出るという見通しを立てておるか、一つ聞かしていただきたいと思います。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 見通しを立てることは、ただいまの材料だけではまだ不十分でございます。私が申し上げますのは、金額の多少は別といたしまして、少くとも過去の例から申しまして相当額の自然増収は見込み得る、こういう確信を持っている次第であります。問題はその金額が幾らになるかということですが、これはもう少し時間をかしていただかないと、私どもの見通しを申し上げる時期にならないのでございます。
  28. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 大蔵大臣も就任以来きのうきようではありませんので、少くとも佐藤財政のはっきりした見通しをつけていただかないと困る。最初はしろうとでいいけれども、少くとも今日はもうすでに百日以上の日がたっておりますので、借りものでない一つ見通しをつけていただきたいと思います。  そこで、先ごろ私たち九州を視察に参りましたが、一班、二班等の報告を聞いてみましてもわかりますように、御承知のように、現在は、何と申しましても余剰生産で、繊維、石炭、非鉄鉱を初めとして、あらゆる業態に操短が行われて、しかも余剰物資が国内に充満しているわけでございます。若松港なんかも五十万トンの石炭の滞貨がありまして、地元でも非常に困っておりましたが、こういうように、一方においては操短をやり、一方においては過剰生産に悩んでおる日本の経済に対して、政府は、これらの問題を解決するために特別な機関を設けて、操短をさせないような、また滞貨をいつまでも持続させないような方法をとるために、積極的な不況対策をとる意思があるかどうか。きょうは通産大臣はあとで見えますが、このままではおそらくますます業態は不況になりまして、そういうような点で非常に社会不安を増長するような事態が次々と起きてくるということが考えられますが、こういう点について、今までしろうと大蔵大臣と言われておった佐藤大蔵大臣は、積極的にこういうような新しい考え方をもって佐藤財政をやるというような考え方があるのかないのか、あるいは、ただのんべんだらりと今までのようなあり方をそのままやっておれば、佐藤大蔵大臣の意味がなかったということになりますが、こういう点に何か積極的な考え方がおありになるのかどうかということを伺っておきたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済見通し並びにこれに対する対策、対処方針といたしましては、私就任以来申し上げておりますように、経済の着実なまた同時に健全な発達、この方向で当面生じて参ります事象に対処していきたい、こういう方針を堅持しております。従いまして、この対策にいたしましても、非常に刺激を与えるようなことは避けて、経済の下降がはなはだしい場合におきましては、もちろん財政の面においての支柱もいたしますし、また上昇が非常に急激である、かように考えますならば、これにブレーキをかけるということもいたしたいということで、すでに申し上げた通りであります。さきに、最近の金融情勢から見まして、金融の正常化をはかるつもりで、過去において緊急措置としてとられた公定歩合の引き上げ、二段階にわたって行われたものも、大体旧に復することができました。ことに、今回は金融の措置では輸出に重点を置くという観点に立ちまして、貿手についての余剰の一厘引き下げ等も行なって参っておるのであります。今日のような経済の状態、非常に緊縮といいますか、引き締めをいたしました後において生ずる社会的な摩擦の面、これは、ただいま御指摘になりました繊維関係であるとか、あるいは石炭関係であるとか等の特殊事業に対する対策といたしましては、今日までもそれぞれの処置をとって参っております。今後ももちろんこういう産業に対する特殊的な措置は講じて参るつもりでおります。しかし、何を申しましても、全体の経済が堅実に発展すること、その方向の政治を強く推進することが望ましいことは申すまでもないのでございます。すでに、過去における整理段階と申しますか、引き締め後の経済に対する大体の見通しを立て得たように考えますので、今後におきましては、経済を積極的に伸ばす方向の措置も考えなければならないのじゃないか、かように実は考えておる次第であります。
  30. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 政府は、これは十日ほど前にも、岸首相を初め経済閣僚が輸出の増進ということを盛んに言っておられますけれども、しかし、われわれといたしましても、なるほど輸出振興というようなことは言葉では言いますけれども、実際には実行されないというような面があるわけであります。御承知のように、中共貿易が行き詰まっているときにおいて、われわれの一番公約であるところの東南アジア中共の貿易が非常に進んできておるということも、これは通産省の見通しでもいっておりますが、こういうような問題がどんどん起きてきている。一体日本は中共貿易もできない、東南アジアも市場を奪われるような状態でどういう見通しで、大蔵大臣は、日本の外国貿易がどこに今後の明るい見通しができるかということについての具体的な御意見があるのかどうか。今のような状態では、幾ら政府が輸出振興をいっておりましても、幾ら政府から海外貿易の視察のために財界の方々を派遣されましても、実質的には明るい見通しが何一つわれわれとしては考えられないのでありますが、この点について、大蔵大臣は、どういうような見通しで日本の輸出振興ができるのかどうか、この点の見通し一つ私たちに聞かせていただきたいと思います。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 昨日発表いたしました経済企画庁のあの数字をごらんになりましても、はっきりいたしますように、輸出は金額的に見ますと前年度とほぼ同額と見込まれますが、数量的には一割近い伸びとなる見込みであります。言いかえますならば、金額的には三十一億五千万ドルという低いところにとまっておるが、数量的には必ずしも悲観すべき数字の状況ではない。もちろん、長期経済計画から見ますと、もう少し伸びがあってしかるべきだということはいえると思いますが、数量的の問題から考えますと、これは必ずしも悲観すべき状況ではない。最近、賠償の実施に関連し、あるいはまた円クレジットの設定であるとか、あるいは延べ払い方式の改善等によりまして、将来に対する貿易も私どもは希望を持ち得る状況にあるということを申し上げ得るのでございます。
  32. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 通産大臣がおられると、佐藤大蔵大臣のそういう甘い考え方でやっていけるかどうかということがわかると思いますけれども、実際の面といたしましては、この秋ごろからは何とか見通しがよくなるだろうというような予想もだんだん裏切られまして、ますます憂うつな日本経済の段階が出てきたわけであります。その一つの例として、失業者が非常にふえて参りました。たとえば、六月の統計を見ましても、前年度よりも八万くらいの失業者の増加で、大体五十九万人くらい現在予想されております。こういうふうで失業者がどんどんふえる。それから、各工場の閉鎖が行われて、あらゆる面においてわれわれはかつてない不景気の現状をにがにがしい気持で考えておりますが、大体今までの政府見通しは、神武景気といいながら現実的には逆な形がどんどん出ております。大産業はこれがためにどうにかやっておりますけれども、中小企業は現在の実情では全く苦しい立場で、われわれが自分の選挙区に帰りましても、あるいは地方の視察に参りましても、この甘い見通しはどこを聞いてもないのでありますが、一体、こういう点について、今佐藤大蔵大臣は、自分の都合のいいような考え方で、何とかうまく明るい見通しがあるということを言っておりますけれども、具体的にこういう根拠があるからよくなる、少くとも貿易の振興についても、こういうような方面でこうなるというような具体的なことを聞かしていただかないと、これは、われわればかりでなく、国民の人々が現在の実情において大きな失敗をする、こういうような形が出てくるわけであります。なるほど、経済企画庁なんかの報告、あるいは政府報告は、一応報告としてはりっぱであるかもしれませんけれども、実際に日々仕事をやっている者は命がけでございます。十一月ごろでなければ見通しができないというような甘い考え方では、そういうような先の見通しでどうにかこうにかということはできないわけでございますが、そういう点について一体大蔵大臣はどのような考え方を持っておられるのか。私たちは、どう考えましても、現在の日本の実情において、何らかの不況対策を講じなければ中小企業が倒れていく、いろいろな事業が行き詰まっていくというように、非常に心配しておるわけでございますが、こういう点についても、大蔵大臣は、絶対大丈夫だ、こういう点があるから、国民は安心して企業につけというようなことが言われるのかどうかということについて、一つここではっきり御返答を承わりたいと思っております。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これも経済企画庁報告ですでに発表したところでございますが、今日の日本の生産の総量の約六〇%は国内消費といって差しつかえないかと思います。この六〇%の国民消費の面を見ますと、あらゆる機会にお示しいたしましたように、大へん個人消費の面は底力の強いものがございます。この点は皆さんもおそらく御承認になる事柄だと思います。この点が私どもが非常に期待をかけ得ることでございます。ただいま御指摘になりました失業者の数、これは景気とはやや変動して参りますので、楽観するつもりではもちろんございませんが、三十三年度予算を作ります際は、失業者六十五万人ベースということで大体見当をつけて参り、そういう面で予算を作って参ったことは、これはすでに御承知の通りでございます。ただいま御指摘になりましたように五十九万人、この数字で私楽観するつもりではございませんが、この予算編成当時の見込みから申しますと、まだその状態にはなっておらない、こういう点も私どもが将来に対して希望を持ち得る一つの材料でございます。もちろん、失業者六十五万ベースというものは、これは非常に大きな失業ベースになっておりますので、この状態がいいと申すわけではもちろんございません。ことに政治の基本といたし、ことに経済問題とぶつかって参ります場合に、特に私どもが政治の面で力を、また注意を置かなければならぬのは雇用関係でございますから、決してこの数字で満足する、こういうわけのものではございませんが、三十二年度予算編成当時に一応想定したものよりか、まだ楽な状況にあるということがいえるのでございます。こういう点が、日本経済は一面において非常に弱いといわれるけれども、同時に将来の発展に対して希望を持ち得ることでございます。ただ最近起りましたあるいは鐘紡その他の面等の場合もございます。こういうのが社会的な摩擦の面として今後二、三おそらく起るであろうと思います。しかしながら、今日の経営者の対策等から見ましても、一そう社会不安を醸成するような危険はないものである、かように私どもは考えております。
  34. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 佐藤大蔵大臣は腹が大きいから、何でも見通していけというような楽観論でございますが、われわれといたしましては、必ずしもそういう御意見には賛成できないのでありまして、次々と現われてくるこれらの事情を見ましても、佐藤大蔵大臣考え方のような甘い考え方では大へんなことが起きる。起きても、経済見通しがまずかったのじゃない、これは世界の事情が悪かったから仕方がないというようなことで、逃げられると思うのでございますが、それでは国民がたまらないのでございますから、よくそういう点も一つ検討して、これだけの事情があるからこうやるというような確信のあることを、一つ今後ともやっていただきたいと思います。  それから、減税の問題であります。さき委員会でもいろいろ発言がありましたが、私たちが今考えておる中で、いろいろ減税をしてもらいたいものがやまやまありますけれども、一番われわれとして不合理な、不十分な税金は物品税であります。物品税は、私たちも大蔵委員を長くやっておりますが、絶えずいろいろな商品が削られまして、そして現在残っておる面はだんだん減りまして、一部の弱いもの、あるいは不合理なものが物品税の一部として残っておるわけでございます。ところが、今度、自民党減税委員会あるいはそういうような方面で、物品税の一部を直していこうというような考えが出たことは、そのこと自体としては、私たちは現在の実情に即してそういうことを考えたということに対して敬意を払いますが、われわれは、物品税を全廃してはどうか、社会党は今まで物品税の廃止を唱えておりましたが、こういうように減税をやかましくいわれるときに、こういう不合理は一部の物品だけに税金をかけて、そしてその業者だけ泣くというようなやり方は、この際思い切って廃止すべきではないかというふうに考えております。政府は、今度三十四年度の税制改革その他で、物品税の問題について思い切った施策を行う意思があるのかどうか。これは党内においてもいろいろ議論があると思いますが、こういうような非常に一部の人だけに過重な負担をかけるような物品税について、何らかの処置をとられる御意思があるかどうかを、一つ大蔵大臣並びに主税局長に伺っておきたいと思います。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 基本的な取扱い方は先ほど申し上げた通りで、まだ具体的な問題に今入っておりません。ただ、物品税につきましては、過去におきましても、当委員会初め各方面からいろいろ御要望もございまして、この扱い方もなかなかむずかしい問題だと思います。ことに与党におきましてもいろいろ研究しておるようでありますし、また、今申しましたように、委員会におきましても皆様方からいろいろな御意見を伺っておりますが、問題は、物品税が全面的に整理可能かどうか、こういう問題ではないだろうと思います。これはできる事柄ではないと思います。負担その他の点から物品税が設けられておることは、御承知の通りだと思います。しかし、物品相互間において非常な不均衡があるとか、あるいは特にそれが中小企業に対して圧迫をかけるとか、こういうような政策の面から、時に整理したり、あるいは新しいものもいろいろできておりますから時に追加したり、いろいろの処置をとって参りたい、かように考えておる次第であります。
  36. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つは先ほども各調査員から報告がありましたが、二級酒の税金の引き下げという問題であります。これは、御承知のように、戦前と比較して、いろいろ米の問題等意見もありますが、酒の消費量は戦前の七〇%より復活しておりませんが、ビールなどは戦前の七倍、洋酒などは三、四倍になっております。この二級酒の税金が高いために、一般大衆がどぶろくを飲むとか、あるいはこれが密造酒のような形になって各地々々にいろいろな弊害が出ております。こういう点について、今度酒税減税という問題も出ておりまして、政府考えておられると思いすけれども、何といっても酒の税金、二級酒の税金が安くなるということは、大衆が直接——もうほとんど今酒の九割程度は二級酒が販売されておるそうでありますが、こういう点についての政府考え方酒税に対しての減税をどのようにやられるかということについても、この際あらためて伺っておきたいと思いますので、大蔵大臣のお考え方を伺いたいと思います。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 酒税につきましては、特殊のものを除きまして、前国会で御審議をいただきました。その結果、二級酒、合成酒、雑酒等の減税をいたしました。ただいまこの酒税については一段落がついているという考え方をいたしております。
  38. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ承わりたいことはありますが、なおほかの委員もたくさんありますから、私、最後に、いろいろ今までの大蔵大臣やり方、あるいは政府やり方は、自分たちの今までの言い方にこだわって、税制懇談会のような問題でも、あるいはその他の問題でも、自分たちの立場を固持して、かえって正しい考え方が行われないようなことが幾多あります。今度の経済企画庁見通しについても、これは抽象論が非常に多くて、一番大事な三十四年度はどうするかという問題があいまいにしてあります。こういう点について、もし見通しが誤まっておったならば、やはり率直にこれを認めて、新しい政策をやるというような方法を講じなければ、困るのは国民でありまして、現在の実情は、政府が今までのいきさつにこだわって、国民が不幸を見るような状態が続いているわけであります。今度は、佐藤さんが大蔵大臣になって、今までの大蔵大臣とは違った一つの新しい形で出てこられたのでありますから、いずれ臨時会あるいは通常国会においても議論いたすつもりでありますけれども、どうか、そういう点は今までにとらわれないで、この際思い切って国民のためになるような財政施策をやられることを要望いたしまして、私の質疑を終ります。
  39. 石野久男

    ○石野委員 関連で大臣にお尋ねいたします。  今、佐藤委員の質問に答えて、大蔵大臣は、輸出の増強については、賠償問題等もからみ合せて、非常に明るい見通しがあるような返事をしておりましたが、その賠償問題とからみ合せて、輸出にどういうような明るい見通しを持たれるのか、その点についてもう少し詳しく御説明願いたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 賠償問題にからんでと申しますのは、賠償では一応賠償の対象になる品目をきめておりますが、相手国の要望によりましては消費物資も加えることが可能だ、かような考え方である、こういう点が輸出には効果があるだろう、さらにまた後年次の賠償計画等が立っておらない場合に、将来の支払いを賠償担保にすることも可能ではないか、こういう点も工夫している次第であります。
  41. 石野久男

    ○石野委員 今の御答弁によりますと、延べ払い云々の問題があったり、ちょっとわかりにくい点がありましたのですが、それ自体からしますと、国際収支の上からいく外貨収入の問題については、必ずしもプラスになるいい面が出てこないというふうに見受けられるのです。それで、将来の輸出増強という面からいたしまして、それをどういうふうに考えておられるか。それからなお、賠償問題というものは、大体において東南アジアを主にする地域の問題になるわけですが、その東南アジア各地域における輸出の増強の明るい見通しの場というものはどういうふうになっているかという点についても、大蔵大臣のお考えを聞かしていただきたい。私は最近国会から派遣されて東南アジアを見て参りましたが、ここでは、たとえばインドなんかにおけるクレジットの設定がせっかくことしの初めにできたのに、いまだにそれが実施されていない。今ではほとんどその効果は薄れている。むしろ、日本の五千万ドルのクレジットの問題は、その後中共やソ連あるいはドイツ等各国の援助態勢ができていて、日本のクレジット設定の効果がほとんどないという実情にあり、東南アジアにおける輸出増強についてはいろいろな点で考慮しなければならないものがあると思いますので、ただ賠償だけの問題で輸出増強というようなことは考えられないような事情にあると思うのです。大蔵大臣はこういう問題を通産省との間でどういうように話し合いをし、どういう観点から輸出増強のめどを開いていこうとされているのかというような点について、もう少し親切な御答弁をしてもらいたい。なお答弁が十分でなかったら、また質問をさせてもらいます。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  石野委員は最近東南アジアを視察なすったばかりでございますから、事情はよく御承知だと思って、きわめて簡単なお答えをいたしたのです。ところが、ただいまのお尋ねでは、あるいは事態についての私どもの考え方とは見方の相違しておるものもあるようですから、少し詳しく申し上げてみましょう。  第一点の延べ払いは、これはどこまでも当方の受け入れでございまして、延べ払いというものは棒引きではございません。貿易の面から見まして、現実にその年に金が入るとか入らないとかいう問題はございますけれども、これは同時に品物を金額が入るのに順応して出すわけではございませんで、品物は出ていって決済方法が年賦払いになるというものでございますので、この点では、消費されるというか、外国貿易に品物が向けられるということで役立つことは、申すまでもないのであります。一つの具体的なお話をすれば、この賠償問題との関係がもっと明確になるかと思いますが、多分お出かけになります際にマニラを訪問なすったと思います。ただいまフィリピンにおきましてはマリキナ・ダムの開発計画というものがあります。これを直ちに、一年払いというか、現金払いにすることにつきましては、フィリピンも非常に困る。しかし、当方といたしましても、ただ単に担保なしの延べ払いでは、その債権確保の点で非常な心配があるわけであります。こういう場合に、フィリピンが賠償、将来予定しておらないところの金額を、このマリキナ・ダムの支払いの担保にする、こういうことにいたしますならば、マリキナ・ダム開発が延べ払い方式で可能であるということでございます。このマリキナ・ダムの開発をいたしますならば、セメント、鉄材その他機械等の輸出がされていく、これは想像がつくことであります。これなども大へん効果のあることであります。  その次に、問題のインドでございます。インドにつきましては不幸にして石野委員考え方と私どもの考え方は相違いたしております。ただいまインドの財政状態はまことに苦しい状況にあるやに伺います。最近、自由諸国で、国際基金なりあるいは輸出入銀行その他から、これに対しての援助方法をいろいろ考えております。わが国はすでに円クレジットを設定して、今日までそのプロジェクトの話し合いがつかないでそのままになっております。しかし、この円クレジットが実施されておらない点は、これは双方に責任があるといわなければならないので、今日向うで希望しておらないわけではない。これがまとまらないのは、相手国におきましても非常に希望が多くて、そのいずれを先にするかということで、なかなか政府も苦心しておるように伺います。同時に、当方からの品物の売り込み等もあるので、いろいろ両方がうまく話が合わないために、今日まで実施されておらない。しかし、この円クレジットは必ず実施する、今日の財政状態から見ましても、優先的にこれを実施してくれという向うの強い要望でもあります。これ以外にも、さらに、インドの国際収支の状況に対処するために、わが国におきましても所要の援助をする決意で、ただいまいるのでございます。  そういうように考えて参りますと、資金的にはふえて参ります。こういう点が輸出貿易に必ず好影響をもたらすだろう、かように考えております。問題は、それぞれの窓口というか、構想はそれぞれできてはおるのでございますが、おくれておるのが実施の面でございますから、この実施の面を、通産省等におきまして、積極的に、また迅速に処理することが最も望ましいのではないか、かように考えます。さらにまた、先ほど申しました、皆様がお出かけになった結果だと思いますが、ビルマ等におきましては繊維等もぜひほしい、こういうような話も伺っておりますので、こういう点も積極的に、ぜせとも早期に解決するようにしたい、こういうように考えておる次第であります。
  43. 石野久男

    ○石野委員 ただいまのお話、時間がありませんから端折ってお尋ねしますが、今インドとの問題やその他のことを考えまして、確かに、ビルマなどの問題は、賠償と引きかえで繊維類を要求しておるのです。このことは私たちとしても非常にいい傾向ではあると思いますが、しかし、賠償の問題というのは、たとえばビルマとか、あるいはインドネシアとか、ヴェトナムとか、あるいはフィリピンとかというごくわずかの国々であって、東南アジア全域からすれば半数に満たない。東南アジア全域におけるところの輸出増強の問題を考えますと、賠償問題だけでは解決できない。そこで、岸内閣並びに自民党としては、東南アジアに対する輸出増強の問題として、そのほかにたとえば無為替輸出の問題であるとか、現地通貨で決済する問題であるとか、あるいは先ほど言われた延べ払いとか、クレジットの設定とか、いろいろの構想が持たれておるようでございます。また、そういう問題を考えなければならぬような情勢にあるように見られております。そういう問題について大蔵省、通産省との間の話し合いの問題や、それからなお、クレジットの問題にすれば、大臣が今言われたように資金の問題があるわけです。これは相当膨大な資金を持たなければ、クレジットの設定というものはできないのであって、それらの資金の問題などを今の日本の経済力からするということは、非常に困難だろうと思うのですが、あなたは、そういう問題について、通産省が東南アジア輸出増強の施策をするうしろだてとしてのポンドの問題を、大蔵省としてはどういうふうに考えるのかという問題、それから賠償問題と、それ以外の地域における輸出増強の問題とのからみ合せの御説明一つ願いたい。
  44. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これもよく御承知のことでございますが、ことしの国際収支の状況は大へん黒字が多くなっております。大体三億以上、あるいは人によりましては四億にも黒字がなるのじゃないか、こういうことを申しております。もちろん、この三億なり四億という金を全部ただいま申すような延べ払いやクレジットにする考えではございませんが、過去における借金等も返して参りたいと思いますけれども、相当国際収支の面において余裕のあること、これは大へんな強みであること、これは申し上げるまでもないのであります。そこで、最近も——きょうちょうど帰るばかりになっておると思いますが、エジプトもアラブ連合の方も、この際工業大臣が参りまして、いろいろ協定をして帰るわけであります。あるいはパキスタンであるとか、その他の国からも円クレジット設定の要望がある。また私どもは後進国の開発等についても特に力を入れておるのであります。こういう点で通産省との連係はただいま十分とっておるつもりであります。ことに、国力としては、相当の円クレジットを設定いたしましても、別に困るような状況ではないと思います。こういう点も勘案いたしまして、この際は国内生産をできるだけ落さないように維持していく、そうしてこれは十分決済の見込みのある方法をとって、そうして日本経済の発展を期していきたいというのが、私どもの念願であります。中南米であるとか、またその他の地域におきましても、こういう意味で私どもはいろいろ工夫して参っております。さきには、委員会において、オープン・アカウントの問題についてもいろいろのお話を伺って参りましたが、これらも今日の状況では大体順調にいくのではないかと思います。ブラジルとのオープン協定も、新協定を締結し得るような見通しもある程度今日立っております。こういうことも幸いするのではないか。問題は、わが国の輸出を進めていく場合におきまして、皆様方御承知のように、外国も大へん輸出に重点を置いております。わが国の競争相手は、共産国である中共あるいはソ連等も競争相手であることはもちろんでありますが、同時に自由主義諸国の間における競争も非常に激烈である。これらの点も勘案いたしまして、輸出の面で一そうの工夫と便宜を与えてわが国の輸出を増強し、これがひいて国内生産に好影響をもたらすように私ども努力して参るつもりであります。この点では、考え方としては通産省と完全に意見が一致しておる。ただ、大蔵省といたしましては、十分支払いの見通しを立てると申しますか、こういう意味で国民に損失の及ばないような点を特に念頭に置いて、通産省ともよく話し合いを進めておる、こういう状況でございます。御了承をいただきたいと思います。
  45. 早川崇

    早川委員長 福田一君。
  46. 福田一

    ○福田(一)委員 私は、繊維産業の問題について、政府の、というか、主として大蔵大臣と通産大臣の御意見を承わりたい、かように考えておるのでありますが、通産大臣がまだお見えにならないようでありますから、通産大臣に対する質問は私は留保をいたしまして、話を進めさしていただきたい。  もうこれはわかりきったことではありますが、日本の繊維産業というものは、日本の産業のうちでも非常に重要な部門を占めておりまして、またこれに関係しておる人を考えてみましても、綿業だけでも六十万人、スフ、人絹等で四十万前後だと推定されるのでありまして、百万人以上の人たちが関係をしておる重大な産業であります。そのうちでも、綿の方は、アメリカから主として原料を輸入いたしまして、これに加工をして輸出をするというような形をとっておるわけでありますが、今日非常に重大な問題になっておることは、綿にも関係はありますが、実は人絹問題が非常に大事な問題になっておると思います。人絹は、御承知のごとく日本の国内の原料を使いまして、これに加工をして輸出をするのでありますからして、そういう意味から言いますと、輸出した総額全部が日本のプロフィットになる、利益になっておるという判定もできるわけでありまして、二十八億ドルと予定されております年間輸出のうちで、二億ドル以上を占めておりますこの人絹の持っておる価値というものは、これは絶対に軽視ができないわけであります。  ところが、最近はいろいろの繊維ができて参りました。合成繊維その他化学繊維ができて参りました関係やら、あるいはまた、世界各国における経済の事情というか、競争者がふえてきたということやら、また需要方面においてもいろいろの面において特殊な事情が出てきた関係上、実は人絹織物は今非常に困っておる状況にあるのであります。過般、政府の方では、この繊維の不況対策についていろいろの対策を大体おきめになっておるのでありますが、これについて、まず繊維局長から、政府は過般どういうような対策でこの問題を切り抜けようとしたのか、それについて詳しい説明をしてもらいたい。
  47. 今井善衛

    ○今井説明員 特に人絹織物につきまして御質問がありましたので、人絹織物につきまして政府のこれまでとりました処置について御説明いたします。  人絹織物につきましては、その生産の約六割を輸出されている状態でございまして、従いまして、輸出が不振であるかどうかということが最も強く響く業界でございます。私どもといたしましては、昨年の金融引き締めのころから世界の景気も漸次停滞して参りましたし、また東南アジアにつきましては、特に購買力が、農産物その他の売れ行きが悪いために不足しているという関係もございまして、輸出が非常に細って参り、特にインドネシア向け等に主力を置いている織物につきましては、輸出不振の著しい関係があったのでございます。  かような次第でございましたので、昨年の秋から人絹糸、人絹織物ともに自主操短を開始したのでございますが、本年の一月以降におきましても、織物につきましては、中小企業団体組織法に基きまして、命令操短を実施しておるのでございます。一月以降さような状態で、糸、織物ともに減産して参ったのでございますが、特にこのうちいわゆる三銘品という銘柄がございまして、これはフジエット、しゅす、塩瀬の三品種でございますが、生産は主として石川及び福井の両県に固まっておるわけでございます。これは従来もちろん全世界に輸出されておりますけれども、その半分近くはインドネシア向けに輸出されておったのでございます。インドネシアが外貨が不足のためにこの買付がうまくいかないという関係もございまして、この三銘品だけにつきましては、特に買い上げ会社を作りまして、四月一日以降買い上げ会社で買い上げをしておる次第でございます。この買い上げ会社と申しますのは、機屋さんはもちろんのこと、人絹会社並びに輸出商でもって出資をいたしまして、約二十億ばかりの金を銀行から借りまして、買い取っておるわけでございます。三銘品につきましては、できましたものは必ずこの会社において買い上げる、そして全部輸出をするということでやっておるわけでございますが、不幸にしまして輸出が進捗いたしませんために、現在滞貨が累増しておるという関係で、私ども非常に対策に難渋をしておる次第でございますが、どうしても滞貨をはかしませんと、十月以降の生産は、非常に機屋さんの生産を急激に縮小しなければならぬというふうな羽目に陥っているわけでございますが、私どもとしてはあらゆる努力を尽してこの問題の解決をはかりたい、かように考えております。
  48. 福田一

    ○福田(一)委員 その事情は大体私了承しておるのでありますが、その問題ではなくて、過般、政府において、繊維事業というものは、これはこのままの形でやらしておいてはだめだから、何とかこれに対しては特殊な手を打たなければいかぬといって、織機の買い上げその他について大体手を打つ方法をやられた。そのときの事情をもう一度説明してもらいたい。
  49. 今井善衛

    ○今井説明員 繊維工業につきましては戦後急速に設備がふえて参ったわけでございまして、一方需要の方は、戦後十数年を経過いたしますと、一応買うべき品物は買ったというふうな関係で、比較的停滞ぎみになりつつある。また、輸出につきましては、もちろん伸びておりますけれども、先ほど申しましたような関係で、これまたはかばかしくは伸びないというふうな関係がございまして、従いまして、繊維業界全般におきまして、過剰設備の問題が起きてきたわけでございます。要するに、需要に対しまして供給が過剰であるという関係が起きて参りましたので、三十年におきまして繊維工業設備臨時措置法というものを制定いたしまして、紡機並びに織機につきましては、許可制によりまして今後ふやすことをやめるという政策をとっておるわけでございますが、特に、織機につきましては、全体といたしまして現在約三割程度の過剰というふうに考えられるわけでございます。従いまして、過剰分というものをできるだけ処理したい。その際に、当然この過剰分の処理につきましては民間が自主的にやるのが望ましいわけでございますけれども、ただ現在繊維業界が非常な不況であるという場合には、民間が自主的にやると申しましても、自己負担がなかなかできないという関係がありまして、三十一年度以降におきまして、国がある程度補助金を出して買い上げるということにしているわけでございます。三十一年、三十二年と実施して参りまして、三十三年度におきましては、当初におきましては、人絹織機だけについて六千台買い上げるという補助金を一億二千万円計上しておったのでございますが、こういう不況が深刻になりまして、過剰設備の問題がますます強く前面に出て参ったわけでございます。  そこで、この際やはりこの不況の根源を直すためには、過剰と見られる設備を大幅に買い上げて、買いつぶして整理をすることが望ましいという方針のもとに、三十三年度、本年度におきましては、当初人絹設備、人絹織機六千台を買い上げるというのを改めまして、これを一万五千台買い上げる。それから綿織機につきましても新たに二万台買い上げる。これらの所要資金といたしまして両方合せまして七億円計上する。そのうち、すでに当初予算にございました一億二千万円のほかに、予備費でもって五億八千万円補助金を出すということに決定になりまして、そういう方針で現在進んでおる次第でございます。
  50. 福田一

    ○福田(一)委員 私が今そういうことを聞いておるのは、繊維工業というものについては、この際政府の抜本塞源的な一つ考え方を立ててもらわなければならない時代であるというときにおいて、織機の分布状態というようなことが非常に私は大事な問題であると思う。これをよく理解しておいてもらわないと、この問題の解決ができないのだということを申し上げてみたいから、私はわざとこういう質問をしておるのです。人絹の織機というものは約二十一万台ということになっておりますが、やみが一万台くらい出ておるだろうといわれておりますので、合せて二十二万台であります。ところが、人絹織物をやっておりますものは二万四千軒くらいの織物業者がやっておるわけです。ところが、その二万四千軒のうちで、六〇%、すなわち一万五千軒くらいは、五台か六台の織機を持って実は操業をしておるのでありまして、こういう場合に、政府として買い上げをして、とにかく一定の整理をして、そうして海外に対してもあまり見劣りのない一つの工業として日本の産業を育てていこうという考えになる場合には、どちらかといえば、こういう小さいのを何とか統合するとかいうような工夫も必要になってくるわけであります。私の見ておるところでは、今度の買い上げの基礎のデータになっておるものが、非常に困っておるもの、それから過剰織機、余っておる分を一つ買い上げてしまおうじゃないかという観点に立って、そうしてそれについてはわずか六千台ぐらい整理したのではだめだから、人絹に関しては三万台、紡績に関しては四万台、政府が一台について二万円補助して、価格として一つ三万円で買い上げることにしよう、そうしてこれを二年間にやろう、こういう考え方をお持ちになったのですが、しかし、そういうことをお考えになった場合の裏には、そういうこまかいものは、もうさんざん困っておって、もうからないだろうから、こういうものはやめるだろう、だからそういうものはだんだん整理されて、大きいものが残っていくだろうというような一つの甘い考え方があったのじゃないかということを、私は非常に心配しておるわけです。実をいうと、五百台とか千台とかいうところが合理化されていくのでなければ——これは産業構造の問題になってくるのでありますが、そういう小さいのはどうでもいいという意味でなくて、産業をほんとうに合理的に育てていくというのには、ある程度の単位を持ったものをやっていかなければとうていいかないわけです。ところが、今度そういうような買い上げの案を出されても、私の見るところでは、五台や六台持っておるものは、庭先操業といいまして、お百姓さんが自分の庭のところにちょっと工場を建てて、そうして自分の奥さんとだんなさんと二人でもって、糸繰りから織るのからみんなやっておるわけです。五台や六台の機台でありますから、それに必要な糸の代金というものは知れたものであります。そう何も借金しないでできるわけです。そうすると、そういうようなものは、今度たとえば買い上げるというようなことになっても、ちっとも対象にならない。出そうという気はないのであります。むしろ今は、五十台とか七十台とか百台とかいうような、ある程度大きな単位を持った、むしろ産業自体からすれば、あるいは輸出とかなんとかいう関係からいえば、むしろこういう面も大いに考えてやらなければいかぬというところが、実は出さなければならないということになってくる。そういうことになった場合に、これは私の地元でありますが、福井県あたりは一台について十万円から十一万円の銀行借金をしておる。この状態でそのうちの二十台、三十台を出すという場合に、非常に値段が安いということになると、整理がしにくいという面がある。また全廃したいという希望があっても、大体百台作るという場合には、一千万円くらいの資産を持った人が百台くらい買って、そうして工場を建てながらそれをやってきた。そうすると、だんだん借金ができる、銀行から借りておるというようなことになりまして、これを売るというときに、転廃業してしまうというときになると、実は三万円くらいということでは非常にむずかしい。そこにむずかしさがある。ここのところが実は——繊維局長は最近かわられたばかりで、どうも繊維局長にそう突っ込んでそれを聞いてみても、果してそこら辺のことをよくのみ込んでおいてもらえるかどうかわからないので、私は困るのだけれども、実はこの点、閣議で買い上げ等の問題が起きたときに、こういうこまかい説明があったのかどうか、こういうことに関する説明があったか、一つ大蔵大臣からお伺いしてみたい。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま福田委員が御指摘になりましたように、日本の繊維問題については、根本的に考えなければならない問題が幾つもあると思います。それは、ただいま御指摘になりましたように、一口に繊維と申しておりますが、最近の化学繊維の発達等から見ますと、設備は大へん能力を持ってきまして、消費の面から見ますと、なかなか消費ではそれに追随できない、こういう状況ではないかと思います。貿易の面におきましても、おそらく化繊を含めれば第一位に位するような、わが国の輸出を唱える場合に一番大事である繊維でございますが、これは同時に諸外国との競争も激甚な産業でありますだけに、ただいまのような設備を持っておるといたしますと、これは非常に問題が多いことだと思います。ことに糸を作る紡機と織機との関係を見ますと、どうも私どもしろうとにわからないような状態になっておる。むしろ織機の方が紡機を上回っておる、こういうようにも実はうかがうのであります。こういう点にも繊維の問題の解決にはむずかしい問題がある。そういう点から紡機と織機とをとにかく合してみるというので、人絹については、過去もうすでに三年前ですか、二年前ですか、織機を買い上げる、こういう計画を立てて参っております。三十三年度は大体六千台をつぶすということになっておる。これは先ほど繊維局長説明した通りであります。そうして織機をつぶします際の一番最初から比べてみますと、三十三年度などは政府の助成金は金額が多くなっている。一台当り二万円というものを計上しておる。そこで六千台で一億二千万円というものを計上しておるのであります。ところが、先ほど来のお尋ねがありましたように、最近特に繊維関係が、在米の整理方針だけでは不十分だ、もっと積極的な整理をこの際しないと、生産の制限、操短だけではおさまらない、こういう状況になって参っておる。そこで、政府におきましても、党におきましても、とにかく品物を作るということ、そうしてその品物が売れることを考えなければならない。消費されることを考えなければならないが、総体の生産能力が消費をはるかに上回っておるという状況ならば、ある程度の生産制限もやむを得ないのじゃないか。しかも、業界の自主的な操短だけにまかすわけにいかない。やはり積極的に織機を減らしてみること、これが必要だろうというので、ただいまお話しになりましたように、政府の助成金としては一台当り二万円、しかし民間業者の協力も得、さらにスクラップ代等も考えて、大体一台当り三万五千円程度でとにかく織機を整理してみよう、こういう処置をとって参ったのであります。閣議におきましても、この処置はまことに残念なことだが、産業の状態から見ますと、かような処置をとることはやむを得ないんじゃないか。将来の問題といたしましても、今の庭先で簡単にできるというような関係もありまして、今日整理をしてもまたすぐ好況の波に乗ればふえてくる心配もあるが、そういうものについても、ある程度の届け出制その他によりまして、将来重ねてこういうような混乱を起さないような処置をとりたい、こういうことで参ったのであります。もちろん基本的な問題としての価格等を決定いたします。この価格が非常に少額に失するというような御意見もあると思います。しかし、実際の整理をどういうことにしていくか、業界をいかに指導していくか、こういう点にも金額が、でき、ふできということにもからんで参るんだろうと思います。閣議におきましての基本的な問題としては、織機の整理方針並びに政府の助成金額、同時にまた民間の協力をどの程度得るかというような見通しを立てまして大体七万台、綿、スフをも含めて七万台という台数を決定し、これを二カ年間に処理していく、その処理の実際は通産省の事務の方で処理してもらうということで、通産省に実施をやらしておるのが現状でございます。閣議におきましては、具体的にどういう方法でこれを整理していくかというような話までには進んでおらなかったように思います。
  52. 福田一

    ○福田(一)委員 そこで、私は、実は、ある機会に、繊維局の関係者にも申したし、通産大臣にも、実はおいでにならないが、申し上げたことがあるのですが、先ほど私が申し上げておるように、五台、六台の庭先操業というものがこれから何度もできるということになると困るという意味合いにおいても、また将来台数をむやみにふやしていくことができないようにしたという処置は、私は非常に画期的な処置であると思う。政府として思い切ってこれを執行されたということについては、われわれは非常に賛意を表しておるわけです。非常にけっこうだ。しかし、将来増設されないようにしても、そういうこまかいものがたくさん残っておるというような状況において、これをどういうふうにしていくかということになりますと、処理の方法としても、たとえば五台とか十台というのは、機台からいくと大体三分の一以上になるわけです。十台までだったらおそらく半分になるでしょう。五台以下で三割何分、十台までで半分になるというような状況である。こういうような人たちが転廃業するという場合には、むしろ一つプレミアムでもつけて、小さいものは気の毒だから何とかしてやろう、せめて、片一方が三万円なら、そういうものは五万円にするとか、これは例でありますが、そういうような考え一つ考えである。これは脱法行為がいろいろ考えられるので、すぐはできなかったと思うのでありますけれども、こういうように完全に今後は増設ができないということになってくると、今度はもう場所がはっきりしてきますから、どこそこにどれだけあるということを登録して、全部調べてしまうということになると、こういう措置も考えられる。これは私は関連して申し上げておるのでありますが、しかし、何といっても今の業界が非常に疲弊混乱をしておるという状況において、織機として買い上げを要望することは、要望してみてもあまりにも値段が安いということになると、どうせもう借金が払えないなら、もう何とでもしてくれという点に追いやられる。機の買い上げに応じないという傾向が私は多分にあるのじゃないかということを非常に心配しておる。これについては繊維局長はどういう見通しを持っておられるか、承わりたい。
  53. 今井善衛

    ○今井説明員 ただいまお話がございましたように、織機として一台当りの単価といたしましては、補助金が二万円、それから業界の残存業者の負担いたします負担金が一万円、スクラップ代約五千円ということで、三万五千円で買い上げたい、一応そういうことでやっておるわけでございます。この供出方法につきましては非常にむずかしい問題がございまして、織機を一律に強制的に供出するという方法もございますし、あるいは任意供出の方法もございますし、今いろいろ意見が分れておりまして、業界内部におきましても、供出方法自体については、まだ最終的にきまっていない、こういう状態でございます。それからまた、先ほどおっしゃいましたように、転廃業する者については特に厚くしたらどうかという意見もございますけれども、ただ織機の新設は禁止されておりますが、登録織機を譲り受けるということは禁止されていない。従いまして、一度転廃業いたしまして、あとでもって登録された織機を買いましてまた仕事を始めるということも、必ずしも不可能じゃない。こういうふうな関係もございまして、私ども今その間の調整に苦慮しておるわけでございます。大体の見込みといたしましては、府県別に責任を持ってもらいまして、その県内でもって話し合いを進めまして、できるだけ強制権は持たないで、任意供出的にやらせることになると思います。そこで、この計画通り今年度におきまして一万五千台、来年度におきましても一万五千台出るかどうかという問題でございますが、これはいろいろ見方はございます。業界の方では単価その他によりまして供出が非常にスムーズに進まないという見方もございますが、私どもといたしましては、これは、かようにきまりました以上、全力をあげまして業界と協力しまして、ぜひやっていきたい。たとえば、残存業者の負担金等につきまして、金融機関ともよく相談いたしまして、一部金融でもってつなぐとか、そういうあらゆる方法を講じまして実現に努力して参りたい、かように考えております。
  54. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの繊維局長の話で御理解がいただけたと思いますが、どこまでも、今回の措置は、私どもの考え方からいたしますれば、業界の自主的な考え方政府は援助していくという考え方で進みたいと思っております。御承知のように、統制経済は私どもの望むところではございません。また、国の強権、政府の強権を発動するということは避けたいと思います。どこまでもよく話し合いを進めて参りたいと思いますが、ここで一番問題になりますのは小業者、人絹は、御指摘通り、平均いたしますと一業者当り十一台弱になっておるかと思います。十一台弱というのは非常に小業者が多いということで、先ほど御指摘通りだと思う。こういう点は家内工業としての得失がありまして、大へんいいという面もございますが、同時に、今日のような供給と需要との関係を調整するというような場合におきましては、非常な困難さを伴う業態でございます。こういう場合において、特に組合の協力なり、また残存業者なりの共助と申しますか、そういうものを強く大きく伸ばしていくことが望ましいことである。今回の織機の整理に当りましても、家庭工業的なもの、これが同時に日本の産業の特質でもございますので、これを特に痛めつけるというようなことは、もちろん避けて参らなければならないと思います。しかし、同時に、産業が輸出の対象になる。ことに先ほど来話のあります三銘品を作っておるような場所におきましては、その大部分が輸出だということになるのでございます。こういう意味では、品質の向上なりあるいは規格の統制なり、いろいろの問題があるだろうと思います。やはり業界がある程度規模になることは、政府としても勧めたいことだと思う。こういう意味では、組合なり業界自身もやはり自粛していただきたいと思う。これは非常に残念なことであったと思いますが、先ほどの説明にありましたように、買い上げ機関を設けることによって一時を糊塗することができたという感じもいたすのでありますが、非常に成功いたしますならば、二十億の資金の買い上げ機関、これはおそらくこの業界をある程度ささえることができただろうと思う。しかし、不幸にして生産の面においての自粛が十分できなかったということになりますと、この買い上げ機関というものがますます資金一ぱいのストックを抱きかかえるということになり、先行きに対しての不安を醸成しておるということにもなったと思う。こういう点が、どこまでも業界相互の理解また共助という考え方で、全体のために十分の認識を持ってやはり協力していただく、これが望ましいと思います。また、政府におきましても、この金額自身は、在来の経過から申しまして、私は、今日この二万円が少いと申されましても、これを増加することは、他の産業等との関係から見ましても、これは至難なことのように思いますが、産業の特質にかんがみまして、資金の面なり、あるいは転廃業等についても資金等が入用でありますならば、これらにつきましても協力することにやぶさかでない。この点もつけ加えて御披露いたしておきます。
  55. 福田一

    ○福田(一)委員 今、大蔵大臣から、業者一つ自主的にしかも協力的な態度でやってもらいたいというお話があったのでありますが、これは非常によくわかるのでありまして、ごもっともだと思う。ただ、私が今遺憾に思うのは、大臣はそうおっしゃるけれども、この問題が解決するまでには、業者からずいぶん、あなたに対して、買い上げの価格その他についてはこれはむずかしい、幾らわれわれが協力しようと思っても、この程度ではどうしてもむずかしいということをしばしば申し上げておったことは、あなた御承知の通りだと思う。もちろん、今大臣の仰せられるように、他産業との関係もあるという言葉はよくわかるのでありますが、しかし、輸出産業としての三銘品その他を育てていくという場合においては、やはりここで相当思い切った処置をしていくようにしなければならない。一方においては整理をし、一方においては残ったものの合理化をやり、今言われた通りのいい品物を作るということに骨折らなければいかぬということも出てくるわけで、二つの問題があるのでありますが、私は、今政府がここでおきめになって、すぐもう一ぺんその値段を上げてくれ、こういうやぼなことを言うてみても、それはできないと思う。事実問題としてこれは非常にむずかしいのじゃないかと私は思っておるのです。これは私が何も業者のために請願を受けて言っているのではなしに、最初からの経緯を見て言っておる。なぜむずかしいかといえば、今までは六千台、五千台もが出るというのは、非常に古いもの、非常によくないものがあった。そういうものなら出しても大して損はないというので出した。今になると、だんだんいい織機を出さなければならぬ。そうすると、値打があるのに、それを手離すということになると、これは非常に惜しい、残念だという気持になる。果してこれだけの値段で出てくるかどうかということはむずかしい。そこで、私が申し上げてみたいのは、仮定の上に立ってあなたに答弁してくれというような意味ではなくて、政府はこの非常にいい問題に手をつけられたのだから、それがなかなかうまくいかぬという場合には、ある一定の年月を経てから後になるだろうけれども、一つ政府としてももう一ぺん考慮してもらわなければ困る。その場合には、一つもう一度よく業者の言うことも聞いて、そうしてこれに対する手を打ってもらう、そういう御好意があるかどうか、一つ承わっておきたいと思います。
  56. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 将来の輸出等を増強する施策はもちろん講じて参るつもりでおりますし、また、先ほど来申し上げましたように、資金の面等においての援助は従前通り続けて参りたいと思います。ただ、ただいまお話しになりましたように、これからの整理織機は大へん能率のいいものだ、こういうお話をなさいましたが、この人絹織物の状況等から見ますと、これはひとり人絹ばかりではございませんが、こういう機会に古い機械がスクラップにされて、新しい機械に代替される、こういうことが災いを転じて福となし、将来の発展のためにも幸いするかと思います。そこで、私の今まで伺っておるところでは、石川、福井両県におきまして三銘品を作っておられますが、この織物業者の業態はそれぞれの相違があるやに実は伺います。こういう点もやはり全体の問題として解決していく、石川、福井両県を通じて考えていく、こういう方向もとりたいものだと思います。おそらく大部分は、あの買い取り機関を設けましたように、いわゆる賃織りをしておるのが実は今日まで非常に大部分を占めて参ったのだろうと思います。こういう意味では、大企業というか、糸屋さんの方で十分めんどうを見てきた、こういうように思うが、糸屋さんの方も買い取り機関の限度に達した、こういう状況になっておるやに見受けますので、石川、福井両県の織物組合相互の組合においても十分の協調、話し合いを進めていただきたいと思いますし、同時に、糸屋の親筋とでも申しますか、その方の協力、同時にこれが政府との関係等についての資金の円滑、こういうものを十分はかっていきたい。問題は、事業を縮小していくということは、本来の望みでないし、私どもも希望するところでない。これはどこまでも育成していかなければならない。そういう場合に、この業界に不均衡を来たさないで正常な発達をするように、一そう私どもは考えて参りたいと思います。こういう意味で、ただいま通産省において織機の処理に当っておられると思いますが、今後その処理に当って具体的な案を進めていかれる上においても、いろいろな問題があるだろうと思います。そういう場合におきましては、私どもはこの事業に携わられる皆様方の立場についても深い理解を持ち、特に福田委員のお気持を十分体得して、その上できるだけの相談に乗って参りたい、かように考えておる次第であります。
  57. 福田一

    ○福田(一)委員 今の大臣のお話はよくわかるのですが、これからの織物業界に対する育成的な、また業者の協力的な気持を望まれる気持はよくわかるし、また業者もそうであるだろうと思いますが、私が今質問しておる点は、ぼかしてもらっては困るのでありまして、実は買い上げの価格があまり僅少であるために効果が上らなかった場合には、政府はどういうお考えをお持ちになっておられるかということを、実は端的に聞いておるつもりなんです。それについて、私は、あなたが、それはやってみなければわからぬじゃないか、そういうことを言うことはかえって阻害するじゃないかということを言われるかもしれぬが、好意ある気持で見守っておるのだということ、そういう気持でおられるかどうかということを私は承わりたいのであります。
  58. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 非常に端的なお尋ねでございます。私どもは、業界については深い理解と御同情をいたしておる。これは、この案を実施するに当りまして生ずる各場合につきまして、私どもの深い理解並びに同情が必要なんだという問題があろうと思う。そういう意味で十分相談に応ずるということを実は申し上げておる次第であります。ただ、問題は、すでにきめて参りました基本的な線、これだけはぜひとも守っていただきたい。そしてこの線で業界の協力をぜひとも強くお願いしたい。もっと具体的に申しますならば、政府の助成金というものについては、これは一つ限度だということをお考えいただきたい。しかし、他の方法で業界が救える、あるいは業者が利益する、こういう問題がありますならば、もちろん私どもも虚心たんかいにこれに協力するのにやぶさかでないということを申し上げたいのであります。これは業界における特殊性でもあると思うのでありますが、人絹に対する織機の残存業者の協力方法と、綿、スフ関係の残存業者の協力方法は、やや違っておるように伺うのであります。こういう点は、人絹業者自身が平均十一台である、こういう意味で非常に弱いというところからもきておると思いますが、こういう点も、よく業界の方とも話し合う要のある問題ではないか、かように考えております。
  59. 福田一

    ○福田(一)委員 どうも水かけ論になるというか、逃げられておるのですが、しかし、私は、あまり今ここで、閣議の席上でこういうことがあったじゃないか、どこそこでどうあったじゃないかというようなことまで言いたくないが、しかし、これは考え方の問題で、いろいろ御意見があると思う。閣内においても意見が分れておるところであろうと思うが、あえてここではそういうことを言わぬことにいたします。やはり大蔵大臣としても、何でも金を出すのが能ではないじゃないかという気持はよくわかるけれども、もし効果が上らないような場合における考えというものは、十分考慮しておいていただきたいということを申し上げておく次第であります。  次に、私は、先ほど来あなたからいろいろ御説明をいただいて、気持はわかっておるのでありますが、先ほど繊維局長からも話があったことでありますけれども、実は、三銘品については、買取会社を作りまして、そうして現在はどういう状況になっておるかというと、すでに買取会社は百四十万匹買い取ったのでありますが、売れているのはわずかに三十五万匹であります。百五万匹が残っておる。そうして九月中に全部買いますと、これは多分百五十万匹くらい買い取ることになるだろうといわれておるのであります。その百五十万匹も残りますというと、金額にいたしますと、これは三十億円に匹敵するのであります。ところが、この買取会社の資金というものは、今二十億円ほど買ってやっておる。それは先ほど御説明があった通りであります。ところが、これは三十億円も買ってまだ売れないでいるということで、見通しがつかないという状況になると、この二十億円を貸すことについても、人絹会社がみんな損失を負担するという条件がついておるから銀行も貸しておるわけであります。ところが、もうすでに資金がだんだんそれでも足りない、まだ足りないということになってきて、いよいよこの九月の十五日には、人絹会社と機屋との間で、十、十一、十二の注文を人絹会社が機屋さんに出すという時期が来ておる。それが差し迫った五日後の九月十五日になっておるのであります。人絹会社の方からすれば幾らでも織ってもらいたいと思っても、それは全部また三銘品を買取会社で買い取る、その補償を人絹会社がするということになったのでは、先行きの見通しが立たないので、注文が出せないじゃないか、こういうことで、両三日前に人絹会社と機屋の組合とで非常に協議したけれども、議がまとまらないで、それでは十五日まで待ってもらいたい、十五日になったら何とか考えようじゃないか、もう一ぺん相談しようじゃないかということで別れておるのです。その間の事情は大蔵大臣もおそらくいろいろ聞いておられると私は思いますけれども、そういう状態にある。そこでこの滞貨を処理するという問題は非常に深刻な問題になってきておるわけであります。  それについて、各方面でいろいろ心配をされ、この間水田先生以下石野君あたりもビルマへ行っていろいろ話を聞いてこられたということを聞いて、私は非常に喜んでおる。これはあえて社会党が行ってきたからどうとか、自由党が行ってどうしたからどうと、こういう問題ではない。政治というものは、国民のためにわれわれは政治をするのだからけっこうなことであります。ビルマ等においてそういう繊維等を賠償物資として取り上げたいというような意向があるということを承わることは、非常に喜びにたえませんが、しかし実は人絹三銘品等を使うのはビルマだけではない。むしろビルマよりはインドネシアというのが一番大きな市場になっておることは、すでに御承知の通りであります。そこで、こういう方面から申し込みがあった場合には、政府としてはこれに応じられるお考えがあるかどうか、まずこれを承わりたいと思うのであります。
  60. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府は応ずる用意がございます。ただこの際に一言御注意申し上げておきたいのは、インドネシア——かねて人絹あるいは陶磁器等についても、消耗品も賠償物資としてよこしてはという話があったのでありますが、その当時時期を失した関係もありましたし、同時に、先ほどどなたからかお話がありましたように、中共の繊維が相当東南アジア諸国に流れておる。そういう関係等から一時立ち消えになっておる。この賠償物資は、先方から消費物資を指定して参れば、これを当方で受け入れることは容易でございますが、当方から干渉するということは実は筋が違うのであります。そういう意味のことをいたしますと、市況に対しては先行きを向うから軽視される、こういう結果になりまして、中共貿易を非常に阻害するという結果にもなります。そういう意味で、この問題の取扱い方は非常な政治的考慮を要する問題だと実は考えております。御指摘になりました通り、三銘品はインドネシアが中心である。これはもう私どもも承知いたしおります。最近の状況は、直接インドネシアに行かないで、あるいはシンガポール、香港等を通じて三銘品がインドネシアに流れて参る、こういうような観測をしておる向きもございます。大へん数量的には減っておるのでございます。やはり在来のような直接取引が最も望ましい姿だ、かように考えておるのであります。そこで、ビルマの話は、先だって水田委員長あるいは久野委員なりからさようなお話を伺いまして、これは大へんけっこうな話だ、インドネシアの方の問題を解決するにしても、どこかで先鞭をつけることが望ましいのではないか、そういう意味で、通産省においてもこの問題を真剣に取り上げ、通産大臣も非常に力を入れておられるやに伺うのであります。こういう問題が一つ解決するとなりますと、やはり次々に解決を見るのであります。問題の扱い方としてやはり慎重な方法をとらないと、こちらの方から非常にそれを望むと、一そう向うから軽く扱われるということになるのであります。こういう扱い上のテクニックの問題はございますが、問題の扱い方としては差しつかえない、かように考えております。
  61. 福田一

    ○福田(一)委員 それは今大臣が説明された通りで、これはデリケートな問題であります。ただ、私は、ここまで来ると——ここまでという意味は、業界がこれまで困ってきて、これらの事情というものはつうつうに向うの仕向け地にもわかっているわけです。また、もし、それが非常にデリケートな問題であって、そういうことを言うことがいけないというなら、この委員会はほんとうは秘密会にするだけの用意がなければならぬ。私としてもそこまでの考慮をしなければならぬと考えて、委員長と相談したのです。しかし、業者その他から聞いてみても、もうそういうことはすっかりわかってしまっておる。そのわかっておるデータの上に立って、今後いかにするかということでなければならぬということでありましたので、実は今お伺いしたようなわけであります。あえてあなたに逆らう意味ではないのであるが、しかし、私は、この問題は非常に業界をあげて今困難を感じておる。十五日に機屋の注文を差し出してもらいたいということを言うておるのですが、これに対して、人絹会社の方では、そこのところの見通しがつかぬので出せぬのではないかというところまでいっているくらいなので、そこは政府としてもどういう方法でおやりになるかわかりません。あるいは円借款を起すとか、いろいろな方法もあるでしょう。しかし、私は、賠償でやるのもよい。またほかにいい方法があればいいが、とにかく、人絹業というものは、ある意味では私は斜陽産業だと思うのです。実を言うと、関係している人には非常に気の毒だと思うが、何か一つここで抜本塞源的な手術をしなければならぬ。その手術の一つの方法は、先ほど言ったような機場の織機の買い上げ、又絶対にふやさないという一つのいい薬を投げてもらった。しかし、これをやっていくには、人絹関係業者としては、二年なり三年なりというものは非常に苦しい間をくぐり抜けて、そうして将来への更生の道を開いていかなければならないというときにおいて、自力だけでこれが開けるかということになってくると、非常に私はむずかしいと思のであります。特に、今日の段階において、銀行その他が人絹会社に保証によって買い上げの融資をしておるけれども、この融資等についても問題が非常にあると思う。三十億円しか金を貸せません、それ以上貸せませんということになると、今度は人絹会社は注文を出しませんということになると、十月一日から福井、石川を中心とする三銘品の機場というものは全部お手あげしなければならないという、非常におもしろくない事態にまできておるということを一つ御理解願いたい。そうして関係方面、特に銀行その他についても融資の面その他についても一つ十分御考慮願いたい、かように考えるわけであります。
  62. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お話はよく了承して、十分考えて参りたいと思います。
  63. 福田一

    ○福田(一)委員 そこで、私は、いろいろまだ具体的に円借款の問題だとか、あるいは賠償の問題についても、いろいろお伺いしてみたいということもあります。これは政府としてもいろいろお考えになっておることだろうと思いますので、これ以上は政府の今後の善処にゆだねるということにいたしまして、質問を終らせていただきますが、私が今日申し上げたのは二点あるのでありまして、一つは織機の整理の問題について、政府考えが甘きに過ぎるということを実は端的に指摘したつもりであります。もう一つは、今言ったように、滞貨の一掃という意味において、ぜひとも政府が強力な援助をしていただきたい、そうして輸出産業としてのこの化繊を盛り立てていっていただきたいということを要望したわけであります。今日はまだ通産大臣も来ておりませんので、どうも通産大臣に対する質問ができないのは遺憾でありますが、これは保留することにいたしまして、特に大蔵大臣にこの点に対する十分なる認識を持っていただきたいということをお願いをして、私の質問を終ります。
  64. 春日一幸

    ○春日委員 ちょっと関連をいたしまして、午前中の時間を十分か二十分いただいて、お伺いをいたしたいと思います。  問題は、ただいま佐藤委員と石野委員の質問に答えられまして、賠償と輸出との関係について大臣が所見を述べられたのであります。伺ったところによりますと、フィリピンの例のマリキナ・ダム、これは賠償担保の延べ払い方式を認める、こういう御発言がございました。これは私は初めてのケースであり、財政政策の上においてもまた産業政策の見地からしても、特にまた法律問題としてこれは予算事項でありますので、いろいろと関連するところが深かろうと思いますので、ちょっと伺っておきたいと思うのであります。  申し上げるまでもなく、四百十七億円でありましたか、本年度の賠償総額、これは当然金融政策、外貨政策、輸出政策、さまざまにらみ合せて、この限度において国会が議決をいたしておるわけであります。現在の輸入指数がどうなっておるか知りませんけれども、かりに昭和三十二年当初の経済企画庁が明らかにいたしましたその指数は、消費物資では大体一九%、設備投資では大体二七%、こういう数字が明らかにされております。そこで、四百十七億円の賠償の年次計画というものも、やはり為替管理考え方の上に立って、これも十分な検討がかけられておると考えておるわけであります。そこで、思いますには、大臣の方では大体消費物資が四百十七億円出ておるのと、それから設備投資にたぐいするものが四百十七億円出ておるのとでは、日本の保有する外貨関係に相当開きが出てくることは、これは十分御検討になっておると思うのであります。それで、こういうような観点において、特に外貨をより多く確保しなければならないという為替管理の政策の上に立って判断いたしますとき、年次計画をこえて相当の額を賠償担保の延べ払いを認めていくということは、今申し上げたように、財政政策と産業政策に相当の影響を与えることだと思うが、かりにフィリピンにこれを認めていけば、インドネシアもビルマも同様の要求をしてきて、その場合これを拒否するというわけには参らぬ。そういう意味でこれは重大な問題だろうと私は思うのだが、この点について、政府はどういう検討を加えられてそれを可とする結論を下されたのか、この点を伺っておきたいと思います。
  65. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘通り、これはまことに重大な問題であります。今日の技術増進という観点に立ちまして、可能な範囲という法律的な結論を出し、ことに私どもが一番心配いたしておりますのは、ただいま御指摘になりましたように、賠償の繰り上げになるかならないかという点を、実は一番研究をいたしたつもりでございます。ただいままでのところ、これは賠償の繰り上げではないということに結論としてはなっております。こまかな議論はいたしません。そこで、まず一応可能ではないか。可能だといたしますならば、今日当面しておる経済にも好影響を及ぼすものとして、これが実施できますならば、仕合せじゃないかというような考え方でございます。
  66. 春日一幸

    ○春日委員 けれども、賠償を担保としての延べ払いを認めるということは、実質的にこれは賠償の繰り上げであろうと思うのです。現実にそれだけのものが日本から出ていって、対価というものは入ってこないのですから、賠償が繰り上げされて実施されるという形になってくることは、現実の問題として動かないところであろうと思うのです。そうして、賠償総額は予算で決定したことだから、この財政法上の疑義は十分あると私は思うのだが、それはあなたの方が所要の手続をとられたといたしましても、かりにそういうような方式を認めていくという形になると、あの賠償の総額というものは膨大なものになっておりますから、かりに疑義のあることをやって、便宜に甘えて基本を曲げていくという形になりますと、ビルマからも同様の要求がなされ、インドネシアからも、フィリピンにもやったのなら、おれにもやってくれ、こういうことになりまして、年次計画の額をこえて膨大な賠償の実施をその年度内に行わざるを得ないという状態に立ち至ることを、最もおそれるわけであります。相互契約でありますから、私はそういう日本の外交関係に悪い影響を与えるような契約については、その都度これを拒否する自由もあるであろうけれども、しかし一国に認めて他国に認めないということになれば、これはやはり外交上の問題として必ずしもいい影響ではないと思うのです。だから、一たん国会において決定されておる事柄は、あらゆる角度から衆知を網羅して、国の意思として決定したことでありますから、便宜に甘えてその基本を曲げるというようなことのないように、これは慎重に検討していただかなければならぬと思う。私は、本日、大臣の発言の中で、初めてこういうような意思のあることが明らかにされまして、私も非常に異様なことに考えて、今の質問をいたしているわけであります。これは、当然、産業政策その他為替政策、法律関係の問題として、党において十分検討してみたいとは考えますが、私が今気づきました範囲のことを申し述べて、特に政府の注意を喚起いたしたいと思うのです。  なお、ついででありますから、一言伺っておくのでありますが、賠償協定によりますと、消費物資も相手方の要望がある場合は賠償に繰り入れることができる、こういうことになっておるようであります。ならば、なおこれは、相手方の要求に基いて、その年度初めに両国代表が協議をして妥結をする、そしてあとの進行は貿易と同じ手続によるものと理解いたしておりますが、その場合、日本国政府の意思というものも賠償協定の品目の中へ相当大きく影響力を持ち得るといたしますならば、私は、この際、できるだけ産業政策とにらみ合して、その品目の決定について一つ配慮を加えていただきたいと思うわけであります。具体的に申し上げまするならば、今のマリキナ・ダムなどの一契約に膨大な契約が取り結ばれているという形になりますと、結局その工事関係者がその利益をやはり独占するという形になって、あるいは一業界に賠償計画を通じての救済が過剰に行われていくというきらいなしとはしないと思うわけであります。私は、バラエティを広くして、わが国の全産業が——国家の犠牲においてなされる賠償でありまするから、そのことが、やはり産業政策の中において、さらに一歩進んで、可能であるならば、社会政策を含む中小企業政策の観点等からも十分検討されてしかるべきではないかと思うわけであります。さらに具体的に申しまするならば、今国内で過剰生産で困っておる、今福田さんがお話しになったような繊維関係の問題もあろうし、さらには陶磁器関係の問題もあろうし、あるいは過剰生産のために輸出が伸び悩んで困っておるいろいろな物資があろうと思う。こういうようなものもできるだけその賠償の中に取り入れるための外交交渉を行なっていただいて、そうして外貨政策、財政政策、産業政策、その中において四百十七億の年次計画ができるだけ貢献できる態勢で問題を処理していただくべきであると思うが、これに対して大臣はどのような考え方をお持ちになっておりまするか。この際、将来の展望も含めて、一つ見解をお述べいただきたいと思います。
  67. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 少し御趣旨をつかみかねておりましたので、あるいは違ったことを申すかもわかりません。でしたら重ねてお尋ねいただきたいと思います。  私ども、この賠償を、これは日本の責任とは申しまするが、同時に両国間の産業開発並びに経済発展に寄与する、こういう観点に賠償が使われることは、両国とも期待しておることだと思います。こういう意味で、この賠償の実施、支払いに当りましても、これは双方の経済開発なり双方の産業に寄与すという考え方で、具体的問題に取り組んで参るのであります。そういう意味で、当方だけの意見で賠償を左右することもできませんが、相手方の意思だけでこれを私どもがそのまま受け入れるわけのものでもない。そこに双方賠償の実施に当っての十分の相談はいたすのであります。先ほどのダム建設の場合におきましても、こういう意味から見まして、双方で意見が一致する、こういうことが一つの問題であることは申すまでもないのであります。ことに相手国自身がマリキナ・ダムというような大きなものを開発する場合に、これを短期間の契約にするとか、あるいは担保等の提供が不十分な状況のもとにおいて、わが方の力でこれを開発するということは困難であるということが考えられるのは当然でありますが、これを賠償の実施に当って有効に使うことができるならば、法律的な疑義のあることは先ほど来の議論でわかりました。そういう点が解決ができる問題であるならば、これは確かに一つの方法だと思います。また、賠償の問題においての消費物資の選択等、これも先ほど福田委員お尋ねに対して詳細にお答えしたような考え方をいたしておりますので、相手方の御希望によりまして当方もこれに協力するという考え方が望ましいのではないかと思います。同時にまた、私ども、賠償の実施に当っては、どこまでも日本の特殊の産業に対して特殊の利便を与える、こういうことはもちろん避けなければいけない。どこまでも国家的見地に立ちましてこの賠償の実施を忠実に実行する、こういう心がまえであることが必要だと思います。そういう工合に、わが国産業に及ぼす影響も十分考えて参るつもりであります。
  68. 春日一幸

    ○春日委員 大体私の質問に答えていただいておると思いますが、さらに明確にいたしておきたいのは、たとえばマリキナ・ダムの開発計画がどの程度の資金を要するものか私は知りませんけれども、かりにそこに何十億というような巨大な計画がありますれば、結局、その契約を通じて利益を受けるものは、国内的にはその契約当事者という形に局限されて参るわけであります。私は、その国の経済開発にも寄与しなければなりませんけれども、しかし、賠償を行う当事国日本といたしましては、やはりそのことが日本の経済計画の中において広い福祉を与え得るような形で配慮することが先決である。巷間伝えられておるところによりますと、これは単なる疑心暗鬼かもしれませんけれども、この賠償計画を通じて一部独占大企業が膨大な利潤を確保しておるのだ、国民の税金の犠牲において、膨大企業がその賠償契約にからんでその利益を独占しておるのだ、こういう非難が相当顕著に行われておることは、大臣のお耳にも入っておることだろうと思うのであります。でありますから、私は契約が長い年次契約で支払いを受けなければならぬような問題は、ことさらにこれは慎重を期して、向うはただでもらうのでありますから、またもらう理由もあってもらうのでありますから、権利の主張もおのずから別個の理由があると思うけれども、しかしこれが年次々々の契約であるというのが協定の建前であるとすれば、これは私はその年度内においてなすべきものである。従って、フィリピンとの間における本年度の賠償計画の金額の範囲内において、これを広く日本の各産業に分布していくような形に配慮なさるべきではないか。賠償の年次計画額で足らぬ差額については、当然正常貿易での支払い方を要求なさるべきで、この賠償の中でことごとく支弁せしめるやり方は当を失したものではないか。この点を私は指摘いたしておるわけであります。こういう考え方の上に立って、両国政府が年初に賠償品目の協定を行う機会があるとするならば、そのときには、全産業の中で滞貨で困っておる産業等もあろうと思うのであります。そういう消費物資をできるだけ取り上げることによって、相手も喜ぶであろうし、そうして国内のそういうような救済政策の実も上る。でありますから、どうか賠償計画が大企業、大財閥に独占されるとか、あるいは偏向が著しいというようなことのありませんように、その点十分御配慮願いたいということを強く要望いたしておきます。  なお、午後は、ただいま委員長の御配慮で、三時半から大臣の御出席を願えるということでありましたから、私は、過ぐる第二十八国会において予算委員会と本委員会において論議されました外国映画の輸入問題について、その後大蔵省は国会の要望にこたえて、七月二日にこの修正措置をとられたと聞いておりますから、この問題について大臣にいろいろお伺いをいたしたいと思いますので、この問題については、三時半からの御出席を待って御質問することにいたします。
  69. 早川崇

    早川委員長 二時からになりましたから……。
  70. 春日一幸

    ○春日委員 三十分ごとに予定を変更しては困りますね。
  71. 早川崇

    早川委員長 これは与党との連絡会議の都合で変りましたので、二時からお願いいたします。
  72. 春日一幸

    ○春日委員 それでは午後二時からまた質問を行います。
  73. 早川崇

    早川委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。     午後零時五十五分休憩      ————◇—————     午後二時十八分開議
  74. 早川崇

    早川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。春日一幸君。
  75. 春日一幸

    ○春日委員 私は、外国映画の輸入制度の問題につきまして、大蔵当局にお伺いいたしたいと存ずるのであります。すなわち、この問題につきましては、過ぐる第二十八国会において、予算委員会において今澄君から、なお本委員会において本員から、それぞれ質問を行いまして、政府の善処方を強く要望いたしておるのであります。問題を集約いたしますると、すなわち、現行制度は占領政策の所産であって、これははなはだしく不当なものであって、不公正とおぼしき点が随所に見受けられる。独立国たる日本の権威においてこれはすみやかに是正をされなければならぬという観点の上に立ちまして、かつは重点は次の三点にしぼられておると思うのであります。御答弁を願う便宜のために、問題を集約をいたしまして申し述べますから、お聞き取りを願っておきたいと思うのであります。  まず第一番は、外国映画の輸入割当が、現在の制度はアメリカにはなはだしく多くして、日本側にはなはだしく少い。ヨーロッパ地方のそれと比べてはなはだしくこれは不当である。すなわち、現在は、長編百六十六本の割当のうちで、米国商社は実に六六%の百十本を占めておる。これに比べて日本の商社は五十一本であって、対比率は三四%、特に全外国商社に対する比率というものは、イギリスの六本を加えると三〇%になる。すなわち、外国商社に認められておる輸入比率と日本の業社とは七〇対三〇であって、はなはだしく不当である。これは、当時、ジョンストンと大蔵大臣との間で、占領治下において取りきめられたものが基準となって、今日までこれが悪く継続されておるので、これはすみやかに是正すべきである。少くとも五〇対五〇という対比率にまで、すなわち日本側商社に割当をふやせ、これが主張の一点でありました。  それから、もう一つの山は、すなわち米国商社は歩合制を維持しておって、米国商社が本邦であげる配給総収入高のうちで七〇%収奪しておる。日本に残されるものはわずか三〇%でしかない。このことが、よってもって映画館などのこういう興行企業というものの経営をはなはだしく危殆に瀕せしめておる。だから、この率も、不公正な取引とおぼしき点があり、非常に疑義が深いから、これをやはりすみやかに是正せしめるの適切な措置をとれ、こういうことでありました。  それから、もう一つの山は、米国商社の本社対支社、米国に本社を持っておるものと、それから別の法人格ではあるけれども日本に支社を置いておる、その所得の配分率が、現行国税庁が認めておるところは、すなわち本社の取り分七〇%、支社の取り分三〇%、そこで課税適用の例ですが、国内支社の関係については四〇%であり、それから米国に本社を持っておる企業体に対する課税税率が一五%であるという現状から考えて、この配分率ははなはだしき国損になっておる。だからこれは当然是正されなければならない。フィリピンですら、この比率というものは四〇対六〇ではないか。今日日本国が、少くとも七〇%を本社勘定としてこれを容認してわずかに三〇%だけを国内課税の対象としておるということは、これは徴税行政上きわめて不当なことである、こういう点でこれをすみやかに是正しろ、これが三つの柱であったと存ずるのでございます。  少くとも予算委員会と本委員会において、この趣旨に基いて政府に対して質問をいたしまして、かつはこれが是正方を強く要望したのでありますが、予算委員会においては一萬田大蔵大臣、本委員会においては坊政務次官、両者から、御指摘通りであるから、これは深く検討して、すみやかに是正の方向に持っていきたいという確答が得られておるのでございます。しかるところ、七月二日、この国会の意見を尊重して、そうして是正されたと称するところの本年度の輸入方針なるものは、われわれとしてははなはだしくこれは不当なものではないかと思われる。国会の意思というものが何らくみ入れられていないのみならず、かえって中小企業を圧迫するとか、非常な弊害がさらにしわを深くいたしておるような感があるのでございます。従いまして、この際お伺いをいたしたいことは、政府は、この予算委員会と本委員会における要望にこたえて、これら三つの柱に対していかなる努力をしたか、努力の結果、どうしてこんな形になったのか、経過並びにそのてんまつについて、この際御報告、御説明を願いたいと思います。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、予算委員会等で問題になりまして、皆様方の御趣旨を体して、大蔵当局においても折衝を重ねて参ったのであります。御指摘のうちにはなかったのでございまするが、同時に、業界は、真の経営者といいますか、権利の上に眠るというようなことのないように、そういうようなことをも勘案いたしまして、今回の処置をとった次第でございます。お尋ねの三点につきましては、詳細にわたりまして、為替局長から折衝の経過並びに結論等を報告いたさせたいと思います。
  77. 酒井俊彦

    ○酒井説明員 春日委員お尋ねの、七月二日付の新方針がきまりましたまでの経過、及び、どうしてそういうふうな割当をしたかという私どもの考え方について、お答え申し上げます。  まず第一に、御指摘をいただきました、外国映画の輸入割当について、外国系の商社に対して割当が多いではないかという点でございますが、これは、この方針におきましては、本年度の割当本数は、配給実績を考えないで、昨年度通りの本数を入れるということにいたしました。これは、配給実績を入れますと、どうしても外国映画社の入れます、ことにアメリカ映画の方に配給収入のウエートがかかりますので、それは本年はとらない。それから、本年に入りましてから、既存の配給業者でありまして、しかも今まで割当を持っていなかったものに対して、一本二万ドルという映画を二本ずつ割り当てる。これは国内で全国的に配給組織を持っておる配給業者を対象にいたしております。そういうことによりまして、日本業者に対して若干ふやしております。  それからさらに、輸出ボーナス制の映画を五本ふやしております。これは、特に日本の映画会社が外国に映画を輸出しました場合に、これは三段階に分けておりまして、御承知と思いますが、今までは二段階で五万ドルと十万ドルの二つでございましたが、輸出奨励の目的をもちまして、五万ドル以上のものには一本、さらに七万ドル以上のものはさらに一本、そして十五万ドル以上のものにはさらに一本追加するということにいたしまして、しかもその十五万ドル以上かせいだ分につきましての本数一本の価格は二万ドルということで、普通の価格よりも高いものを割り当てることにいたしております。そのようにいたしまして、総体的に日本の業者の入れる割合を逐次ふやしていこう、こういう格好にいたしております。もちろん外国の映画輸入業者はそのままでございますが、これは通商航海条約等における内国民待遇とか、あるいは映画の需要とか、いろいろな問題がありまして、一挙に本年で片づけてしまうということはむずかしいものでございますから、逐次そういうふうにやっていきたいということで、今度の割当をきめたわけであります。  それから、第二の歩合制でございますが、これも従来は大体七と三、ひどいのになりますと七割五分と二割五分というのもございました。これを、本年は、包括契約の場合は七と三にする、しかし一本ずつ契約していくものについては六と四にしよう、六と四でなければ許可しないということにいたしました。  なお、三番目と関連するのでありますが、その歩合制の場合にも、輸入をいたしましてからプリントいたしますまで、つまり輸入税から倉庫の保管料、そういう一切の経費が外国の本社持ち、それで七と三ということで、今まで明確を欠いておりました経費の負担率を明確にしまして、フィルム・コストは全部外国の本店にかけるということにいたしたわけであります。  本社対支社の取り分の割合でございますが、これはただいま申し上げましたように、第三点は、一応七と三にいたしまして、しかし、現在七対三よりも有利な条件でやっておる場合は、それ以上のものは認めない。包括契約の場合でも認めない。それから、一本ずつやります場合には、六対四でなければ認めない。なおプリント・コストは全部向う持ちということで改革をはかったわけでございます。  改革のスピード等につきまして、いろいろ問題があるかと思いますけれども、漸次こういうふうにして改善をしていきたいという気持で、この案ができたわけでございます。
  78. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま為替局長から御答弁がありましたように、なるほど国会の論議にこたえたと称する二、三の改革がなされた気配があるのでありまするけれども、しかし、実際的には、これをもって国会の要望にこたえたかどうか。これは、私は、大蔵当局でも十分顧みられて心にこたえられるものがあろうと思うのであります。われわれが激しい論議を行いましたのは、少くともアメリカが、この映画の輸入とその配給を通じて、とにもかくにも膨大な利益をあげておる。所得のあるどころには課税をするということで、国内税法ははなはだしく手きびしいにもかかわらず、アメリカは、今まで、プリント・チャージから人件費から宣伝費から、ことごとくその支社勘定の中からこれを差し引かせて、そうして本社の方の七〇%は、これことごとく一五%の低率課税の適用の所得と、これを区分することを容認しておった。これは全く不当であるというので、われわれも諸外国の実例等を調べてみたのだが、こんなひどいところは全くないわけです。だから、われわれは、大臣が高度の政治的視野に立って、外交交渉をもってこの率はとにかく変革をなさるべきものであると指摘して、強く要望したのです。今為替局長の御答弁によりますると、わずかにプリント・チャージだけ七〇%の中から払わせる。こういうことであるけれども、一〇〇%の所得を上げるために必要なるチャージというものは、プリント・チャージだけではないのです。人件費も宣伝費も、ことごとく事務経費というものはその一〇〇%の中において支払わしむべき性質のものなんです。そういうような観点からすれば、わずかにプリント・チャージだけをアメリカの本社に負わせて、これをもって要望にこたえたとなすがごときは、私はごまかしもはなはだしいと思うのです。われわれの主張は、理想的にはフィフティ・フィフティでいける。けれども、いきなりフィフティ・フィフティにいけなければ、フィリピンの前例も、現実のベースもあるのだから、少くとも四〇対六〇までこぎつけるべきじゃないか。しかも、そのところからするところの国損というものは、われわれの概算をもってしても、かれこれ十五億にもなんなんとするのだから、アメリカのような大金持ちに、当然の所得に対して課税を免れしめるというような不当な執行があるが、これは、日本国の権威において、いわゆる外交交渉をもって解決しろと言ったが、何もやっていないじゃありませんか。一体これはどういうわけですか。大臣、御答弁を願います。
  79. 酒井俊彦

    ○酒井説明員 ちょっと私さっき申し忘れたので、答弁を補足させていただきたいのでありますが、ただいまの七対三の割合は、現在そうなっておりますが、将来は引き下げますよということを予告いたしました。こちらの関係者に対しても、そういうことを私どもは申しておるのであります。ただ本年いきなりすぐやりますと、御承知のように、映画を選定して入れて、そして上映するまでには相当日にちがかかりますので、いきなりやるというわけには参りません。できるだけ話し合いでやるという方が、行政としては適当でございますし、この方針の中にも書いてございますが、将来は七対三は引き下げるぞということをうたいまして、それをはっきり通じてあります。ちょっと補足させていただきます。
  80. 春日一幸

    ○春日委員 近い将来に七〇対三〇という区分率を、六〇対四〇に直すぞという予告がされておるということは、私どもも仄聞をいたしております。われわれの要求はそうじゃないのです。少くとも五〇対五〇にして下さい、こう言っておるのです。だったら五〇対五〇にする、こういう工合にとにかく話を切り出して、そして相手がそれじゃ困るからどうこうという、いわゆる商談というものがそこにあるだろうと思うのです。私は、その過程をお踏み下さったかどうか、これを聞いているのですよ。
  81. 酒井俊彦

    ○酒井説明員 歩合税の率を変えるということは通告いたしておりますが、六対四にするということは、私どもまだ申しておりません。これから五対五にするとかなんとか、それは向うとの折衝でございますから、折衝方についてはいろいろまた考えなければならぬと思います。
  82. 春日一幸

    ○春日委員 この問題が国会の問題になるまでには、業界にごうごうたる非難が起ってきて、国民もこういう不当なことは許しておくべきじゃない、大蔵委員会は一体何をやっているのだという世論にもこたえて、なおかつあらゆる角度からこれを検討して、これは是正さるべきであるという確信の上に立って、われわれの所論をなしたわけです。それはたしか二月二十日前後であったと思う。ところが、最終決定がなされたのは七月です。実に五ヵ月間を経過している。このような長い期間をけみして、なおかつこういうような中間的な案というか、将来は云々と言っておられるけれども、少くとも映画とかレコードとかいうものは水商売です。酒井さん、映画とかあるいはレコードとかいうものは、これは実際経済ベースで、コストがこれだからどうという問題じゃないのです。作ってみてヒットになれば膨大な収益が上ってくるし、コストが高くても、それがヒットしなければ損になってくるわけです。だから、製作から上映まで時間がかかるから、この対比率というものを早急に変えることはちゅうちょされるというような御答弁であったと思いますが、少くとも映画とかなんとかいうものについては、そういうような勘定がないのです。アメリカ側にしてみれば、ひとり日本に輸出しているだけではない。すべての諸外国へことごとく輸出している。しかも、諸外国においては、対比率というか、区分率というものは、実際問題として三〇対七〇というような国は一国もございません。それは日本の腰が弱いからだ。当然踏むべき手続を踏んでおらぬからこそ、相手がなめ切ってしまって、ちっとも要求に応じてこない。横車を押して押しっぱなしの状態で今日に至っているということです。だから、私があなたに申し上げることを正当に要求して、そして日本国の権威において、今後は五〇対五〇でなければ輸入を許可しないのだ、これが日本の方針だ、悪かったらよせ、これでやったらいいじゃありませんか。フィリピンでも、あるいはヨーロッパ諸国だって、アメリカ映画をみな輸入しております。少くとも四〇対六〇でみな輸入しているのですよ。ひとり日本だけ三〇対七〇でなければ輸入できぬというような条件はあり得ないじゃありませんか。私どもは日本だけ余分に利益を得ようと言うのじゃない。諸外国並みの執行をやれと言うのです。それでなければ税金が損だと言うのです。中小企業者に対しては差し押えをやるような、そういう手きびしい税の執行をやって、どうしてアメリカだけそんなに宥怒しているのです。国会で論議があったにもかかわらず、何らそれにこたえていない。不当ではありませんか。大臣、いかがですか。
  83. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 外国映画の輸入につきまして、いろいろ問題のあることは、過ぐる二月に皆様方から指摘された通りであります。大蔵当局も御趣旨を体して交渉をいたしたのであります。  まず第一のおしかりは、非常に長い期間かかっている、こういうことでございますが、私、就任早々最終的な断を下した次第であります。それは春日君御承知のことだと思いますが、国内的な事情も多分にありまして、なかなか興行界は理屈一点ばりでもいかないところがございます。そういう意味で解決案を作るのになかなか骨が折れたようでございます。  第二の点として、もっと当方で強く主張ができないものかというお話ですが、これも、お説の通り、私ども、わが国の利益を確保するという観点につきましては、決して皆さんに劣るつもりはございません。ただ、この際特に指摘しておきたいことは、どうしてかくまでもアメリカ映画が日本人に好かれておるかということでございます。私は、ただいま、フィフティ・フィフティでないならアメリカ映画の輸入の許可しない、こうまで春日さんは強く御要望になりましたけれども、これなどはあまりにも実情についての認識が強過ぎはしないか、こういう感じが実はいたすのであります。私どもは、今日の状況のもとにおきまして、外国映画が一本も入らなくてもいいというような状態が実はほしい。だから、この点に対しましては、そういう状況になればこれは問題がないと思いますが、アメリカ映画が非常に好まれておる。欧州ものより以上に関心があり、映画フアンには大きな魅力である。こういう現状を見ますと、私どもの方の交渉もときに意気阻喪するのであります。しかし、今回の交渉をもちまして、もうこれが最後だとはもちろん考えておりません。機会あるごとに私どもはこの率を改善していく。外国の例がどうあろうとも、もっとわが国に有利な条件に改善していくということは、私どもが考えなければならぬことだと思います。
  84. 春日一幸

    ○春日委員 私が申し上げているのは、大臣、芸術的価値とか娯楽的な価値とかいうことはインター・ナショナルなものです。それは中には日本民族の嗜好に合う合わぬという問題があると思う。ところが、アメリカ映画というものが興行価値からして高く評価されていることは、ひとり日本ばかりではないのです。フィリピンだって、ヨーロッパだって——私も三回ばかり世界漫遊をしたけれども、アメリカ映画のその地域における興行界において占めるウエートというものは、一番高いのですよ。それで、アメリカとしては、大体において万国へ輸出しているのです。そういう条件がどうであるかということ。最悪の国といえども四十対六十である。イギリスなんかは五十一対四十九とか、こういう工合に、輸入国が日本に比較すれば非常に有利な条件下においてアメリカ映画が輸入されておるのです。だからそのベースまで持っていってちょうだいというのですよ。そしてそのために努力しろということを政府に言っておる。だからそれをやったかやらぬかと言うたら、そういうことを予告しただけだと言うでしょう。だから、私は、そういうことは不当なんだと言うのです。諸外国がやっておってやれないはずはない。日本もやりなさい。日本だけがアメリカ映画に夢中になっておるわけのものでなく、アメリカ映画の市場というものは広く世界にまたがっておる。日本と同じような立場にある輸入国がことごとくそこまで交渉をとりつけておるのに、日本国の大蔵省が、あの占領政策の残津をそのまま容認した形において、結局大きな国損を招いておるということ、この輸入許可制度をめぐってのあり方というものは手落ちがあるから、これをやり直せと言っておるのです。なぜやらないのですか。おやりなさい。
  85. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 春日委員お話、よく了承いたしたのであります。私は、先ほど申し上げましたように、前回の交渉だけで目的は達しなかったが、あらゆる機会をつかまえてその目的達成のためにさらに努力を払うということを申し上げておるのでございます。どうかこの上とも御鞭撻のほどお願い申し上げます。
  86. 春日一幸

    ○春日委員 まあ大臣も次官も御就任早々で、こういう長年にわたる懸案を匁々の間に解決できなかったことは遺憾であります。しかし、両氏の責任においてこの大きな政治問題を解決しよう、こういう御決意の表明がありましたから、われわれは、少くともこの臨時国会が召集されるまでの間に、御両所の努力によって、長年の懸案解決のためにいい結論を出されることを強く要望いたしておきます。  そこで、私は、今回の措置で断じて容認し得ない事柄がある。それは、輸入業者に対する割当を三十五年度以降は切ってしまうぞと予告せられたことです。それから、本年度からの輸入については配給業者の副書を添えなければ輸入を許可しないということです。そこで、私は非常に責任を痛感しているのだが、二月の本委員会において、私は、輸入業者が実績の上にあぐらをかいて不労所得を得ているということを糾弾いたしました。この糾弾にこたえて、輸入業者を全部切ってしまったということです。私はこんな手ひどい措置はないと思う。たとえば、リューマチで悪いから足をなおせと言ったら、またのつけ根からぽつんと切ってしまったようなひどいもので、こういうむちゃなやり方というものは、国会の要望にこたえたということに籍口して、中小企業を圧迫し、大企業に対してはより有利な、あの要望と逆行する執行をしたということです。こんなむちゃな執行は断じて許さるべきものではないと思う。私はこの問題については、いろいろと責任があるので、この一点だけについては、単なる質問とか攻撃ということでなしに、特に大臣、副大臣並びに局長に深甚なる配慮をお願いいたしたい。そうして、行き過ぎたことや間違ったことはすみやかに是正願わなければならぬと思う。  まず第一点として申し上げたいことは、自由経済の原則から考えて、こういうようなばかげたことが許されるかどうかということです。ここに経済学博士の山本君もおられますが、これは傾聴願いたいと思う。実際問題として、自由経済というものが発展をして参りますれば、だんだんとこれが分業の形態を持っていくことは明らかなんです。あるいは分業の形態の中において数個の兼業をする場合があるけれども、まず自由経済発展の段階においては、一つの分業の形態を持つ。世界経済も、最終段階においては、山本君もこの間言われたけれども、国際分業という形になってくると思う。だから、私は、この分業の形態というものは尊重されなければならぬと思う。従いまして、この映画企業がいかなる分業の形態を持っているかということを分析すれば、まず映画の製作、それから輸出入業者、配給業者、それを上映する興行者、こういう工合に四つの段階に分類されていって、それぞれが分業の形態を持ってくる。そうしてその分業の幾つかの段階を兼業する形態を持ってくると思う。そういう段階において温良公正な輸入専業者というものがあり得てよいと思うし、それは自由経済構造の中において自然発生的に生まれてくる一つの形態であると思う。それを今度やめさせてしまうという、これはむちゃくちゃです。独占禁止法とか、憲法の保障する職業選択の自由の原則とか、こういういろいろな立場から考えてみると、為替管理の名において行き過ぎた執行をすることは、断じて許されてはならぬと思う。幾ら為替管理ということが至上命令であるとはいえ、後者における職業自由の原則、自由にして公正なる競争の原則という独占禁止法の規定、こういうものをじゅうりんして為替管理が独行することは許されないと思うが、どういうわけでこういうむちゃなことをやったのですか、ちょっと伺いたい。
  87. 山中貞則

    ○山中説明員 せっかく言及になったことでありますから、政務次官としても一言申し上げておきますが、この結論は、ただいま春日委員からるる述べられましたような、要望されました中に感られた、学識経験者等も加えまして設けました審議会の結論を、ほぼその線通り実行いたしたのでありまして、私どもは、目下のこの混乱せる御指摘のように事業界を裁くのには正しい案だと考えております。  なお、諸外国との比率が、日本のみ屈辱的比率でもってアメリカ業界に屈服しているという発言でありましたが、私どもの調査では別段そういう数字は出てこないのでありまして、フィリピンにつきましても日本と同等もしくは以上の八十数パーセントというような向うの手取りの慣行が今日行われおるようでありますが、各社ごとに調べました場合に、世界で日本よりか非常に有利であると考えられるような国は、わずか四、五件しかない。それも特定の社であるというようなこと等もありまして、御指摘もありましたように、これは商取引でございまするから、一方的にこれを命令でもって強制的にやらせて、果してそれで実際上運営ができるかどうかということは、大臣からもお話がありましたように、現在の世界各国の映画の各国に受け取られておりまする受け取り方と申しますか、売手市場のような感じのところでは、ことに日本においてはアメリカ映画は入れさえすれば一応採算はとれる。しかし、ヨーロッパ映画は、いいものはべらぼうに当るものがありますが、これを同じようにどんどん入れてみると、実際には業者としてもそういうことは採算上困るというような現象もあるというようなこと等を、いろいろ私どもも考えたわけであります。それで、一応、先ほど局長から説明いたしましたように、将来においてその比率が妥当なる線に近づくようにバック・アップして進めていく、春日委員の御指摘のような方向に行くということであります。  それから、ただいま御指摘になりました点の、輸入業者の三十五年度までの限定によって全部やめさせるということについてでありますが、これは国会の大体要約されました御意思、御意見を述べられました方の気分には、占領中の特殊なる環境において取得した輸入権利の上にあぐらをかいておる。そうして入れる権利だけ持っていて、入れてしまうと転売して、何千万ドルという利益の上で食っているじゃないかというような御指摘もありました。やはりこれは是正すべきだということに審議会でも意見が一致いたしまして、最初からこれをばっさり認めないということは、やはり混乱を非常に大きくするばかりであるから、その基本方針を三十五年度までということで、これをなしくずしにしていこう、従って現在入れている輸入だけの専門の業者でも、それだけの基準に合致する配給機構を自分が持つというならば、それは当然続いて認められるし、自分で配給機構まで持つ意思はないというのならば、それは配給機構を持つ者と話し合いの上において、あらためて再出発をするというような構想で、期限を切って、一応の猶予を置いて出発をしておるわけであります。こういうような問題については、どうしても絶対に反対はないという案は私ないと思うのでありまして、今回の案は、一応、国会の意思をくんで、そうして現実に処理するには最も妥当な方法である、こ考えております。
  88. 春日一幸

    ○春日委員 時間もないし、あと石村君が重要な問題があるようでありますが、この輸入の専業者に対する問題に集約をして、意見を相互に調整されなければならぬと思うのでありますが、今政務次官のおっしゃった配慮というものは、ほんとうにあなた方がそう思ってやられたとするならば、これは、とんでもないことというか、知らずして大きな間違いを犯しておると思う。知ってやったとするならば、これは全く気違いじみたやり方といわなければならぬような——私たちの言ったのは、輸入権利を転売して、不労の所得をしておるやつはけしからぬから処分しろ、こういうことを許してはいかぬじゃないかということを言った。正当に輸入した映画を、経済行為として正当に販売しているような者を切れというようなことは、僕だって今澄君って言ったはずはない。ほかのだれだって言った覚えはない。正当なる経済行為から出た正当なる所得を切れということは、自由経済の秩序の中において、こんなことは許されるはずはないのですよ。私は重ねて申し上げますが、公正かつ自由の原則というものはわが国経済の大本である。金科玉条である。この金科玉条を人為的に是正せんと欲するならば、公共の福祉という名前において、立法によって法的措置を講じて後初めてこれをなし得るのである。法的措置を講ずることなくして、また公共の福祉という問題についても十分なる論議の過程を経ずして、国会において、そういう実績を転売して不労所得をしている者があるから輸入専業者を切れ、こんなことを言ったわけじゃないのです。今ちょっとたとえ話を申し上げたのだが、つま先が悪いから、このつま先をなおしてくれと言って医者のところに行ったら、またのつけ根から切り落した。こんな執行をしたら、中小業者、零細業者はどうなるのですか。憲法で保障する財産権を侵害することじゃないですか。私有財産の保護は基本的人権になっておる。こんなことをあなた方が御存じないはずはないと思う。そういうむちゃなやり方——せっかくの予告だから十分御検討を願って、中小輸入業者が生きていける、為替管理によって既得権を不当に侵害されない、公正な経済活動がこれによって否認されることがないように、為替管理というものの行政活動にはおのずから一つの振幅の限界があるのです。為替管理の名において無制限に一切の経済行為を規制するということはできないのです。やろうとすれば立法事項です。法律によらなければならぬのです。特に私はこの問題について申し上げておきたいのでありますが、これは独占禁止法から考えても重要な問題です。ということは、独占禁止法の中において特に不公正取引の基準という十一項目がありますが、とにかく本人が優位にある立場を利用して相手に不利な契約をしうるの行為、これは明らかに不公正取引なんです。そうすると、輸入業者が三十五年度から、輸入ができないということが予告されると、これらの諸君は一体どうするのですか。その輸入権をほんとうに今までトラの子のように大事にしまっておった。それで多くの人間が暮しておった。その諸君はどうするのですか。自分で配給会社を作るか、あるいは配給会社に合併するにあらざれば、今後活路はないというわけです。事業の継続はできないわけです。そのときに、たとえば合併の場合は一体どうなりますか。現実の問題として合併しなければならぬでしょう。今六社協定か何かで大企業間には激甚な競争が行われているときに、零細な輸入専業者がここに配給会社を作って、そこの中に進出していくと言ったって、これはできるものじゃない。優勝劣敗じゃない。弱肉強食なんです。これは一ぺんに死んでしまうのです。それじゃ一つ合併という形になる場合、問題はここなんです。この場合は、私が今申し上げた不公正な取引の基準、独占禁止法が厳重に禁止している不公正取引を誘発するおそれがある。たとえば、配給会社が、あいつらの権利は三十五年度からおじゃんになってしまう、だからいずれは売り込みにくるだろう、こういうことが予測されるわけです。そうすると、彼らは、自分たちは配給業者だから今後輸入をする権利を確保されておる。輸入専業者の権利というものは時限があって、やがてこれは死んでしまうのだ、そうすると売り込みにくるだろう、おれは有利だが、相手は不利だ。有利な立場にあることを利用して相手に不利な契約をしいる行為がそこに必ず誘発される。独占禁止法の違反をしいるような執行を為替管理政策の中でやるということは、これは大へんな悪事ですよ。実際問題として、あなた方は、そんな深い考えがなくて——輸入権利を転売しておる連中がある、こういうものは不労所得である、国民は毎日手に汗をして働いておってもなかなか暮しがむずかしいときに、そういう輸入権利を持っているだけで、それを転売することによって大きな所得を得ておる、これは経済秩序にも道義にも反する、だから整理しなさいとは、われわれは言ったけれども、正当に外国へ行って、どれがいいだろうか、あなた方から許されているところの最高限度額、一本三万五千ドルですか、その三万五千ドルの範囲内においてほんとうに興行価値のある映画を探そうというわけで、彼らは商業活動を一生懸命にやって輸入をして、それを売って、それで水揚げをして正当な経済活動をやっている輸入専業者を、一緒くたにして、一網打尽にやってしまおうというような、そんなむちゃなことをやってはいけませんよ。学校の自分の教室の中で、一人どろぼうをやったかといって、全部の生徒を退学させるようなものではないか。そんなむちゃくちゃなことをやってはいけないと思うのです。ヒステリックな執行をしてはいかぬですよ。また冷静に考えて、これは、憲法というものと、独占禁止法というものと、それから為替管理政策のクロスする点があるわけなんですよ。行き過ぎはいかぬ。行き過ぎは法律違反です。そうして法規と条理にはずれた執行はいけません。こういう意味で大臣、副大臣、為替局長さん、責任者に特に私は熱意を込めてお願いをいたしておきたいことは、はからずも私のこの発言によって、そういう中小商工業者たちがあなた方によってなま首をねじちぎられようとしておる。私の責任は重いです。実際問題としては、私はそんな気持で言ったのではない。私は、明らかに、速記録を見ていただけばわかるように、少くとも外国に対して、アメリカに対して、大きな国損の徴税行政が行われておるから、これを是正してちょうだい、それから、この映画輸入行政を通じて、日本の業者たちがはなはだしく不利な立場に置かれておるから、これはジョンストンと大蔵大臣との契約で、力関係でこんな不当な契約ができたものだから、これは独立した現段階においては是正してちょうだいということを言いつつ、こういう不当なものが介在しておるからこれは整理しましょう、こういうことを言っておるのです。だから、私たちの主張は公正かつ正当に受け入れていただかなければならぬ。春日の言い方がそうだったからといって、この際その言葉に乗じて、むちゃくちゃなことをやってもらっては、私の立つ瀬もないし、政治というものは乱れてしまう。この点については、憲法の立場から、すなわち職業が保障されておる立場から、なおわが国における経済秩序というものが自由経済の立場にある以上、自由経済の発展段階においては分業形態をとることはこれは無視できぬ。こればかりではない。一切の問題は、輸入専業者というものがある。輸入車業者を全部切ってしまうということになったら、日本の経済秩序は大変動しますよ。このことは他に累を及ぼす面も少くないので、十分一つ再検討願いたいと思う。この問題について、大臣からなり——大臣よりも山中君はこの問題で処理の衝に当られたと聞いておりますので、輸入業者をぶった切ってしまおう、みな殺しにしてしまおうというやり方は、私が今言々句々肺腑をしぼる思いで申し上げたことが一つでも御理解願えるならば、十分正再検討願って、彼らの生きていける道を、当然の権利を行使できる道を確保してもらうことができるかどうか、この点について一つ御答弁を願います。
  89. 山中貞則

    ○山中説明員 春日医師の調合によって薬を作って投薬したようなことになったわけでありますが、先ほど申し上げたように、中間においては、最も公正なる各位の御指摘されたような方面のこともいれて、審議会で結論が出たわけであります。ただ、御指摘の中にありました権利の上に眠って転売して、年間に膨大な利益を上げて、安閑として食っている者はけしからぬ、一方においては、まじめに商取引して輸入業者としての生活をしている者はいいのだとおっしゃるのですが、しかし、権利だけを持って、配給機構を持たないで、その権利によって生まれる所得だけで食っていく、どうせ転売することは同じなんですからというところにおいて、(「転売じゃなく、販売だ」と呼ぶ者あり)販売と言われてもいいですが、区別をつけるとなると、それは実際上はなかなか困難だと私は思います。だれだって、自分は決して権利の上に眠っているわけではありませんとみな言うに違いないと思うのです。だから、私は、筋を逆にこう考えていただいて、輸入の権利を持つ者は、同時に実質上の、ただいま御指摘のような商取引のできる、いわゆるそれによって販売機構を持って、そうして実際上の活動のできる者ということを今回促進するというわけです。ですから、自分はほかの配給業者と一緒になるのもいやだ、あるいはもちろんこのまま座死するのもいやだというならば、それは今までのいろいろの関係輸入業者の人たちで組合等を作って、それが実際上の配給機構に合致し、法律上も条件を完備して、その組合に対して過去のわれわれの持っていた既得権というものを許せということならば、これは私は筋道が立つと思う。要は、そういうような言い方をされずに、御心情は多といたします、よくわかりますが、結局輸入をする者は配給もするのだ、だから輸入の権利だけで勝手に振り回して食っていくのではないということを実現するために努力したと、一つお受け取りを願いたいと思います。
  90. 早川崇

    早川委員長 ちょっと春日委員に申し上げますが、大蔵大臣は三時までというお約束で出席願っておるのですが、あと石村君の質問があるので……。
  91. 春日一幸

    ○春日委員 これはせっかく私が申し上げたことが、そのまま山中君の方に御理解願っていないと思うのです。今委員長の御注意もありますから、私は集約をいたしまして結論に入りますが、これは深甚なる御配慮を願わなければならぬと思います。と申しますのは、わが国の経済秩序というものは、やはり公正かつ自由な経済活動というものが原則的に確保されて、それを制限するものは法律によって、しかもそれは公共の福祉の名において制限ができるのです。これをくずしたらめちゃくちゃになってしまう。行政が一切優先してしまって、法律がなくして何もかもできてしまうという形になるのです。だから、これは、為替管理政策の中でも、おのずからなし得ることとなし得ざる、越え得ざるところの限界というものがあるのです。この点について私は十分なる御検討がなされていないと思うのです。だから私はこの際申し上げるが、今政務次官の御答弁によると、それらの諸君は協同組合を作って配給の仕事もあわせてやったらやれるじゃないか、よそへ安く身売りしなければならぬという事態はそれによって回避できるんじゃないかとおっしゃるけれども、そのこと自体が事実はできないのです。あなたも特に御検討願いたいと思うのだが、現在、映画界というものは、上映館といわず、配給機関といわず、猛烈な競争の中にあるのです。競争は激甚をきわめているのです。そういう中において、そんなわずかな配給実績を持つ諸君が共同組織を持って、私たちは今十何本か、十一本か配給実績があるから、それで一つ配給会社を作るからと言ったところで、これはとてもとてもやっていけるものじゃないのです。これは自由競争、優勝劣敗の原則はあるけれども、現実には、あなたも御承知の通り、弱肉強食的な百鬼夜行の状態です。これは極言すれば修羅八荒の状態です。こういうところで零細業者が共同組織を持ってやったら、一ぺんに埋没してしまう。転覆してしまう。そういうわけで、あなたも今何か党の首脳部会議に行かなければならぬが、そういうときにこういう大きな問題、彼らにしてみれば死活問題です。しかも彼らの——そういう不公正な権利を売買して、それで食っているやつを整理しなければならぬ、こういうことに籍口して——そうして彼らは輸入をして、転売じゃないのです。輸入したものは本人の所有物件です。所有商品ですから、それを配給業者に販売するのです。転売じゃない。販売です。正常なる経済行為なんです。これを阻止するということは不当なことだ。内輪もめしてはいけませんから結論に入りますが、これは大臣一つ十分お考えをいただいて、これらの連中が、不当に虐殺されることのないように、幸いにこれは再来年に対する予告措置ですから、時間的にも十分余裕がある。十分私の意見をもいれて、かつはそれらの業者陳情、嘆願等もしんしゃくされて、かつは経済全般の秩序とそれから輸入管理というものの全般的な一つの方針とにらみ合せ、そうしてこの問題について非難を緩和するための措置を講ずるの意思はないかどうか。おありになるならば、この際検討するという御答弁を願い、ないならば、われわれはこの問題は断じて承服できない。だからさらに問題を掘り下げて検討していかなければならぬ。論議もさらに継続していかなければならぬ。一体いかがでありますか。この際大臣に高い角度から御答弁願います。
  92. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この問題はなかなか複雑な問題でもありますし、なかなか大蔵省の一存だけでもいかない。皆様方の御意見もその意味におきましては十分拝借いたしたつもりであります。そこで、いわゆる委員会を作りまして、関係方面、それに第三者の有識者にも集まっていただき、そして結論を出したものでございます。先ほど来自由経済の理論についてのお話をいろいろ伺いました。私は自由経済と申しましても、自由経済のもとにある状況が全部是認されるかどうかということは一つの問題だと思うのです。私どもはそういう意味におきまして、今回の問題も自由経済のもとに行われておるこの外国映画の取扱い、それには違いございませんが、そのもとにおきましても、なお社会的にいろいろ考えなければならないこういう問題を包蔵しておる、こういうことを認めるのであります。これらの点は、表現の仕方は違うかわかりませんが、二月以来の国会の審議においても指摘されたことだと思います。もちろんそういう場合に業界の実態を十分認識して、そうして善良な人たちが特に損害をこうむることのないようにしたいものだとは思います。かような努力はもちろんしなければならないものだと思いますが、これは、理論だけの問題ではなくて、業界の実態を十分に把握することが先決問題ではないかと思います。そういう意味で、自由経済のもとにおいて最も弊害の少い方法は一体どうか、かように考えますと、この輸入業者が同時に販売機構を持つ、販売もやる、こういうことが一番望ましい形ではないかというので、せんだって示したような結論を出しておるのでございます。これはもちろん将来のあり方として最も望ましい姿、こういうような観点に立って考え出された結論でございます。この考え方については、春日委員が御指摘になりましたことと私は大筋に間違いはないんじゃないか。問題はこれから一カ年半後に実施に移るという問題でございますその間に、将来のあり方として最も望ましい業界のあり方、これを実現するようにぜひとも協力していただきたい、かように考えております。
  93. 早川崇

    早川委員長 春日君、時間がないので……。あと石村君に少しでも質問のチャンスを与えたいので……。
  94. 春日一幸

    ○春日委員 私が今申し上げたことは、あなたの方も省議によって一応決定しておるから、この一問一答において、せっかくきめた省議を直ちに変更するという御答弁を得ることは困難であろうとは思うが、さりとて、あなた方のきめた法律違反、あるいはわれわれの理解し得ざるところの行政処置というものは、じゃやむを得ないというわけで私が引き下るわけには参らない。従いまして、本日はこの問題はそういうようなわけで質問は留保しますが、次会開かれる最初の機会にさらに私は時間を十分かけて論述して、そうしてそういう行き過ぎを是正し、法律違反の執行はこれを政府をしてため直させなければならぬと思うので、あとの私の質問は次会に譲ります。
  95. 早川崇

    早川委員長 石村君に申し上げますが、予定の時間が少し過ぎましたので、最初大臣に関する質問を十分ぐらいに願って、そのあと総理府の石井特別地域連絡局長と、酒井為替局長が主としてB円の所管政府委員でありますので、一つそのように御質問をお取り計らい願いたと思います。石村君。
  96. 石村英雄

    石村委員 大臣に十分ぐらい聞けということですが、十分が五分でも、十分な御答弁がいただければ、それでけっこうなんです。もし不十分なら、委員会は明日もあるわけですから、明日やはり大蔵大臣に御出席願いたいと思います。何か特別な事情があって御出席できないものなら、それは、人間のことですから、あしたの日にちがあるからぜひ出ろというわけにもいきませんから、こういうわけで出席できないのだという御説明をお願いしたいと思います。委員長としてただいけない、いけないじゃ困るわけなんです。まあそんなことを言っていると時間がなくなりますから、その点だけは委員長にお含み願って、明日にも物理的に出席できないということが起らない以上、場合によっては出席していただくということで、質問に入りたいと思います。  八月二十三日に、沖縄のブース高等弁務官が、従来の通貨であるB円をドルに切りかえる、こういう声明を出したそうでございます。ところで、この問題で沖縄ではてんやわんやの大騒動が起っておる。しかも、こういうドル切りかえということは前から予想されておったので、沖縄政府の中の経済議会というものが意見書を出しておる。やはり沖縄政府に通貨発行権及び管理権を与えるようにという意見書を八月十六日に出したそうですが、それが当麻主席からブース中将に渡らないうちにこういう切りかえの声明が出たそうでございます。この問題につきましては先般、九月一日の外務委員会で、わが党の戸叶委員が質問いたしておりますが、藤山外務大臣の御答弁は、ただ単に抽象的に、従来の政府の方針は変りませんということだけで、具体的には何の御説明もありません。ただそれではから念仏に終るわけでありますが、一体政府として、このドル切りかえということはいかなる意義を持っておるものかということを、どのように理解していらっしゃるか、その御説明をお願いしたいと思います。
  97. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘通り沖縄におきましてはB円をアメリカ・ドルに切りかえる。そのときの米国側の説明といたしましては、これはどこまでも行政的、技術的措置であって、沖縄についてのステータスは変更はない、こういうことを実は申しております。この米国側の説明はそのまま受けていいのではないかと思いますが、もちろん、沖縄と日本との関係におきましては、経済的な面におきまして私どももいろいろ対策を立てなければならないものがあるのであります。これらの点については、今日までのところ比較的に準備がよく行き届いていたと申しますか、ただいま非常な混乱を来たしたというお話がございますが、ことしの四月時分に米軍は軍票の使用を廃止いたしましてB円に切りかえ、順次かような行政的、技術的な面に不都合のないような準備を続けてきて、そうしてこれを行なたっということでございますので、おそらく御指摘のような混乱なしに米ドルに切りかえができたのではないかと私は想像いたしております。問題は、今日までB号円でありました場合に、日本との貿易決済はどういうことになっていたか。これはもちろんドル決済になるわけでございますが、これがB号円であるために特に不便等はなかった。非常に近くにドル圏がないだけに、いわゆるドルの使用ということについての為替上のいろいろの不都合などは避け得られたと思いますが、今回沖縄がドル使用地域になるということになりますと、これはちょうどアメリカと日本との関係のようなことになるのでありまして、その意味においては、これから出かけて沖縄で工事をする、工事の支払代金はドルでなされる、そういう米ドルが今度は順調に日本国内に送金されないで、また外国で使われるというような危険なしとしない、こういうような問題が一つあるだろうと思います。同時にまた、もう一つ、私どもが政治的に考えていかなければならない問題として、この沖縄に対する日本の宗主権という問題があります。同時にまた教育自身も日本国民としての教育が今日なされておる、そういうところで通貨が米ドルであるということ、これはそういう点では何かと不都合があろうかと思いますが、一部指摘されるような大きな不都合は、私どもはただいま痛感はいたしておらない状況でございます。
  98. 石村英雄

    石村委員 実はまだドルに切りかえられておるわけではありません。伝えられるところによると、この十五日ごろから正式にドルに切りかえられるであろう。実施は十五日であろう。これは記憶違いがあると思いますから問題にはいたしませんが、しかし、沖縄が、これは日本としては沖縄県ということになると思いますが、日本の一部である沖縄の通貨がアメリカのドルになってしまうということは、経済的に見たら大へんなことじゃないか。日本の一部分で、外国の紙幣が通貨になってしまうということは、これはもう沖縄の外国の通貨となったところの経済というものは、沖縄の場合でいえば、完全にアメリカの経済ということになってしまうと思うのです。この事実は否定できないと思うのです。伝えられるところによりますと、この五日でしたか、朝日新聞か何かの夕刊を見ますと、ドルに切りかえても貿易管理をやる、あるいは外資の外人企業の規制をするというようなことが計画されているようでございます。そういう沖縄政府の計画が、そのままアメリカ政府の容認するところとなるかどうか知りませんが、通貨がドルになってしまって、輸入についての管理はあるいはあるかもしれませんが、しかしドルのグリーン・バック紙幣自体が入ってきて沖縄の経済を支配するということは、防ぎようがないのじゃないか。いろいろ新聞なんかを見ると、商業資本なんかが入ってくるのは困るが、企業的な資本ならいいということが書いてあります。もちろん商業資本が入っては困るだろうと思いますけれども、企業資本についても同じことです。完全に経済的に沖縄がアメリカの一部になってしまうことだと思うのです。日本政府として藤山さんは従来の根本態度は変えない、こういうことです。おそらく根本態度というのは沖縄の将来の返還ということを意味するものと思いますが、経済自体がアメリカのドルに完全に支配されてしまう。国の通貨というものが外国の通貨になってしまって、そしてそれが日本に返るとか返らぬとかと言っても、話にならぬと思う。そういうことを果して日本政府として、ただ大したことはあるまいということで見のがしていいことであるか、こうお考えでございましょうか。どうか、これは大問題でございますから、一つ単に今までの行きがかりにとらわれずに、御答弁を願いたいと思います。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、これが米ドルになると沖縄の経済がアメリカ経済の一環になるだろう、こういうことを言われることは、おそらくそういうことに非常に近くなるだろうということは今日から容易に想像のできることであります。このことはいろいろ沖縄の将来にとりまして重大な問題であるに違いございません。しかし、沖縄自身が現在のような状況のもとにおいて統治されておるといたしますならば、その方面における行政的、技術的な必要による措置、これはわが方といたしまして、十分将来のことについての留意、関心は持っておりますけれども、今日の状況のもとにおいては、これは米軍の処置を承認せざるを得ないのじゃないか、かように実は考えておるのでございます。もちろん、今回の問題につきましては、事前にも連絡のあったことはありまして、外務当局もちろん承知の上であること、これは申し上げるまでもないのでございます。
  100. 石村英雄

    石村委員 現在の沖縄における施政権がアメリカにある、従ってこれは日本とすれば処置なしだというような御答弁に承わったのでありますが、なるほど法律的には現在そうかもしれません。しかし日本としては実に重大な問題だと思います。施政権はあなたの方にあるのだから、煮て食おうと焼いて食おうと御勝手にしなさい、どうもいたし方ありませんということでは、日本政府として、あまりに沖縄に対して考え方が冷淡と申しますか、無責任だと思います。アメリカに対して、一体何の理由があってドルに切りかえなければならぬのか、従来のB円でいったって一向差しつかえないと思います。従来のように百二十円を一ドルという換算でやっていいわけであります。しいてドルに切りかえて完全なアメリカの通貨にしなくとも、私は一向差しつかえないと思います。ほんとう沖縄のことを考えるならば、たとい施政権が現在あるとしても、アメリカ政府として措置をしなければならぬという積極的理由がどこにあるか。ただ沖縄を完全なアメリカの支配下に一切がっさい置こうというねらいがあれば別でありますが、それがないとするならば、将来日本に返すという意思があるならば、こういうことをやる必要はどこにもないと思います。一体どうした理由でこういうことがされると政府は判断していらっしゃるのか。施政権があるのだからやむを得ないという答弁はいただきかねますが、判断はどこにあるのですか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 一体B円を米ドルにかえるということはどういう理由かと言われますが、これは、先ほど申し上げましたように、私どもがかえたわけではない。この点は私にお聞きになりましても、私はアメリカのブース中将というか、米軍当局が説明したことをそのまま皆様方に御披露する以外には方法がない。アメリカの説明は、どこまでも、この沖縄についてのステータスそのものをかえる考えは毛頭ない、今回の変更はどこまでも技術的な問題なんだ、こういう説明をしておる。これ以外に皆様に御披露することはないと思います。同時に、その後におきまして、経済上に起るであろうところの問題につきましては、当方といたしましてそれに対処していかなければならない。これについてはいろいろ研究もいたしております。同時にまた、沖縄の島民、本来の日本人である沖縄島民に対しての経済的活動なり、あるいは今後についてこれが特に支障を来たす、かように考えますれば、これは特段の措置もとるべきだと思いますが、今日までのところ私どもはさような問題等は実は伺っておらない。なおまた、ただいまB円のお話が出ておりましたが、占領後における沖縄の通貨の変遷の状況をずっと観察して参りますと、これは、日本円がそのまま行われておるものでもなく、中間的なB円が行われておる。それが日本円の三倍である。それは御指摘通りであります。同時にまた、この四月の終りに米軍がいわゆる軍票の使用を切りかえた。こういう際にやはり通貨の規定というものをいろいろ考えて参っておる。その準備の一端であった。こういうことも看取できるのであります。今日の米軍そのものが、米国の国会の承認を経て、その方からの支払いによって行動しておる、こういうところから、おそらく、米軍が説明しておるように、これは技術的な面から参っておるものじゃないか、かように私どもはその声明をそのまま受け取っておる次第であります。
  102. 早川崇

    早川委員長 ちょっと速記をとめて。     〔速記中止〕
  103. 早川崇

    早川委員長 速記を始めて。  平岡忠次郎君。
  104. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私がこれからなさんとする質問は、必ずしも大蔵委員会に付議すべきものであるかどうかは少し疑問がございますが、法務委員会等がすでにきのう終りまして、そのチャンスがございませんので、まげてこれはお許し願いたいと思います。  九月七日に、ジョンソン基地におきまして、第二のジラード事件ともいうべき不祥事件が勃発いたしたことは、皆さんの御承知の通りであります。こ  れは電車射撃殺人事件でありまして、加害者はピーター・E・ロングプリーという航空三等兵、被害者の方は武蔵野音楽大学の学生の宮村祥之君。現在捜査中でございまして、これが公務上に生じた事故であるか、あるいは公務外の事故であるか、従いまして、裁判権の帰属が米国側にあるか日本側にあるか、こういう問題が起っておりますが、ここではそのことは直接問題にいたしません。私が質問いたしますのは、この刑事事犯から当然起ってきますところの補償問題につきまして、調達庁側の見解をただしておきたいのです。およそかかる刑事事犯が起った場合におきまして、これが収拾の基本的な課題というものは、まず第一にかかる事犯の再発を防ぐの措置がとらるべきである。それから、第二段目におきまして、この事犯における被害者への補償が、政府の責任において十全に行わるべきものである、私はかように考えますが、きょうの質問は、この後段の補償問題に限定いたしたいと思います。現在のところ、公務によるものであるかそうでないものであるかが明確になっておりませんので、想像される補償ないし慰謝の問題は、おおよそ次の二つの方法が予想されます。  まず第一は、公務上の事故ときまった場合の補償、これが一つ。それから他の一つは、公務外と判定された場合のことであります。この二つの予想されるコースがございますが、それぞれにつきましてお伺いしたいと思います。  まず、公務上の事故ときまった場合に、被害者宮村君に対しまして交付さるべき慰謝料なり葬祭料がどの程度につくか、一つ説明をお願いします。それからその算出根拠、そういうものはどういう法律なりとりきめに依存するか、この点を明らかにされたいのであります。
  105. 真子伝次

    ○真子説明員 お答えを申し上げます。  事故大様につきましては、すでに先生の方で御承知の通りでございます。まことに、全く被害過失のない、落度のない被害者に対して、決定的な打撃を与えて、ああいう結果を引き起しておるということは、まことにお気の毒に存じておりまして、こういった規定による補償といった以外にも、できるだけ被害者の霊をとむらい、また遺族の救済を考えていかなければならぬものと存じておる次第でございます。しこうして、お尋ねのように、本件が、犯人が公務上犯した事犯であるということがきまりますれば、行政協定十八条によりましてその補償をいたすわけでございますが、私ども役人といたしましては、御承知のように昭和三十一年十月二日の改正閣議決定に基きまして、被害者に対し補償をいたすわけでございます。そこで、被害者が現在のところ無収入者であるか、収入があったものであるかどうかということについて調べがついておりませんし、また収入があったとしても、どういった収入であったか。と申しますのは、有職者の場合で収入のあった場合と、無職者あるいは収入のなかった場合というのは非常に違って参りますので、この点が金額を割り出す重要なポイントになるわけでございます。学生のことでございますので、かりに収入がありましても、大した収入があったかどうかということについて疑念はございますけれども、この点は十分調べた上で金額を割り出したい、こういうつもりでおるわけでございます。閣議決定では有職者、収入のある場合におきましては、日収の千日分、そしてその日収は最低三百円から千五百円の範囲内に、千五百円を越えるものについては千五百円で打ち切る。三百円以下のものにつきましては、三百円に引き上げて計算する、こういうことでございます。すなわち日収三百円のものにつきましては三十万円、千五百円の日収の者に対しては百五十万円まで出せる、こういうことでございます。しこうして、無職者の場合には、これまた場合を分けまして、幼児、就学児童、生徒、大学生、妻、その他無職者というように分類いたしております。大学生の場合は、仮定収入日額を三百五十円と計算するということにきまっております。それでございますので、その千日分を払う、それからそのほかに、その仮定収入日額三百五十円の六十日分を葬祭料として払う、こういうことに相なります。また、本件の場合に、母親がこの学生に扶養を受けておったというような関係にありますれば、別に十万円の加算がございます。こういう勘定になるわけでございます。大体そういう取扱いをいたしております。
  106. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大体宮村君に支払うべきおおよその金額がここで明らかになりました。私がこの質問を申し上げるのは、実は、この事件が起る前に、御承知の通り、七月にやはり狭山市の入間川地区に飛行機が落ちまして、幸か不幸かそこに居合せました中学生二人が殺されたのです。そこで、その学生たちの補償が、今あなたが言われたような計算根拠から、一人あて三十万円の補償料と、それからやはり三百円の六十日分、すなわち一万八千円が葬式の費用として給付されることが計算されまして、被害者の方に調印方を求めたところ、拒否されているのです。その事実はどうでございますか。
  107. 真子伝次

    ○真子説明員 お答え申し上げます。  今申し上げた遺族に対する加算、母親の場合十万円と申し上げたのは間違いで、五万円でございます。  それから、狭山市における墜落事故のただいまのお尋ねの被害者につきましては、お尋ね通りまだ被害者の御遺族の納得がいかないので、話し合いがついておらない現状でございます。
  108. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 あなたのお答え通り、被害者の方で納得しないために調印をしていないのです。一週間ほど前に私どものところに中学生の父親の伊藤徳次さんが参りまして、私どもここで調印してもいいのだけれども、これが先例になると実におかしな話だ、今どき一万八千円で葬式ができるかどうか、こういう無理もない申し出がありました。そこで、私は、予定された九月の十日、本日、この問題につきまして質問申し上げたい、かように考えておりました。そこのところに持ってきまして、先ほどの第二のジラード事件が起りまして、重ねてこの機会にこのことはぜひともただしておかなければならぬ、そういう考えから質問するわけです。要するに三十一年の十月二日の閣議決定の算定基礎というものは、アップ・ツー・デートでないのです。これは全然問題にならないと思うのです。  それを具体的な他の比較の数字から申し上げますと、一昨年参宮線の事故が六軒町の駅に起りましたことは御承知であろうと思います。そのとき国鉄の補償というものはどういう金額でなされたかという事例を申し上げたいのです。国鉄におきましては、これは坂戸町の高校生が死亡者のほとんど大部分を占めたのですが、一人当り七十五万円、これが補償料です。それからなおお葬式の香典といたしまして、十河総裁による五万円の支出、それから天王寺管理局長の名による一万円、六万円を別に支出されております。合計八十一万円です。今度の音楽大学の学生は、高等学校の生徒より上級の学籍ががあるわけです。そこで、今あなたの言われたことから推算する最高額が、三十五万円プラス扶養の加算を加えましても四十万円を出ないですね。それから三百五十円を基準にしての葬祭料は、その計算からいきますと、六十日分で二万一千円ですから、私は不当に低いと思うのです。従って、現在あなた方は幸か不幸かこの補償の計算の衝にあるのですが、三十一年の十月二日の閣議決定が直ちに改正できないとしても、何らか実情に沿うところの計算上の結論が得られないかどうか、この点につきまして政務次官からお答えを願いたいのです。まずこの点をお伺いいたします。
  109. 真子伝次

    ○真子説明員 結論から先に申しますと、私どもとしてはこの基準によってできるだけもちろん被害者に有利のように扱いますけれども、事実関係がきまりますれば、収入のないただ単なる学生であったということでございますと、先ほど申し上げました数額しか出ないのでございまして、手かげんのしょうが私どもにないわけでございます。この点一つ御了解願いたいと思います。
  110. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 私が最初に申し上げましたこういう刑事事犯が起った場合に、その収拾のための基本的な課題が二つある。かかる事犯の再発を防ぐ処置がまず第一。それからこの事犯における被害者への補償が政府の責任で十分になされなければならないということ。決して今の計算基礎からは十分なる補償が算出できないのですよ。ですから、この点につきまして、これは事務当局ではちょっと工合が悪いかもしれませんから、政務次官がおられますので、政治的に弾力性を持って、この問題が解決できるかどうか、この点につきましての御見解を明らかにされたいと思います。
  111. 山中貞則

    ○山中説明員 ただいま調達庁次長が答弁を繰り返していたしておりますように、事務的にはあるいはそういうことがあるかと思います。しかし、この問題につきましては、先般似たようなケースのジラード事件があった、こういうことであります。これは、取りきめの内容は別といたしまして、一方の方にも手落ちが若干あった問題でありますが、今回の場合は、全く本人はそこに基地があろうとなかろうと関係のない通行人でありますから、私は全く別のケースだと思います。従って、当然今純粋に事務的に答弁をいたしておるのでありますが、その範囲をかりに出ることができないとしても、しかし今後在日米軍将兵に戒めとなるべき何らかの私どもの要請というものはなされなければならないと思うのです。第一、本人は若い兵士だそうでありまして、ではアメリカの母国におったならば、そういうような行為を果してやったであろうか。日本に対して、向うの若い連中が、一体今日講和条約も成立して独立している国ですが、それでも安全保障条約によって日本に駐留をしておるその事実を、果してアメリカの兵隊たちはどういうふうに感じて日本に来ているのであろうか、というような疑問を私は持たざるを得ないのです。しかも、お母さんを扶養しておったかどうかという事務的な認定を問題に論議しておるようでありますが、私は、明らかに、一人の母が、たった一人の子供だけを老後のたよりに生きていることは、間違いないと思うのです。そうすると、扶養していたかいないかということよりも、棺の中にともにほうむってくれと叫んだという、その一人の母親というものが、今後生きていくのに、精神的にも、物質的にも、年はとる一方ですから、そういうことは当然私は考えられていくべきことが至当だと思います。ただ事務的に私はこういうふうに考えますが、果してその解決の道があるかどうかが——私も唐突でありましたから、今どういう方向があるだろうかということまでは申せませんけれども、十分調査いたしまして、慰謝料等の形式によって、それだけの背景において行われ、しかもとった事態が、全く罪のない通行人であり、その子供だけをたよっていた母親の一生はここに葬られたという事態でありますから、当然、向う側も、母親が参りましたときには駅まで出迎えてもおりますし、そういうものには応ずる用意があると私は思いますので、大臣とも相談をいたし、あるいはまたその他の事務的な方面とも相談いたしまして、そういう気持でこの問題に私も当ってみたいと思います。
  112. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 政務次官から、政治的に弾力性をもって処理さるべしというような御見解が披瀝されましたので、その限りにおいては、私も政務次官の御処理に期待をいたします。ただ、法律というものは、事実というものがある程度先行してからできる気配があります。ミネルヴアのフクロウは、日暮れてから飛び出すということでありますが、三十一年十月二日のこの閣議決定そのものが、もう現状にマッチしないということ、それにもかかわらず、そういう規定がある限りにおいては、事務局自体がこれにいろいろ理屈をつけることはむずかしいと思うのです。あるいは、事務局では、よけい支出したために、あとの会計検査院の検査がこわいというようなことがあろうと思います。そういう点では、政府の方において政治的な配慮があれば、それから事前にそういう点を関係当局と打ち合せられるならば、これは私は可能であろうと思うのです。そこでまず、この救済策、要するに増額して救済するという方途は、まずオーソドックスの形からいえば、三十一年の十月二日の閣議決定の更正をしていただけることができるかどうか。ただし、私の判断では、これは日本の閣議の決定だけではなしに、なおそこに米国との間の協定がありまして、たとえば、支出の比重におきましても、米側が七五%を出し、日本側が二五%を出すというような形になっておりまするから、すぐこれが増額改正ができるとは私は考えがたいのです。できればけっこうです。そこで、結局現実のこの閣議決定を基礎にして算出されたとするならば、収入の認定において配慮してもらうよりほかはないと思います。幸か不幸か、宮村君は、音楽学校の生徒としまして、グループを作ってバンドを編成して、そうしてアルバイトをやっておられるわけです。ですからバンドの売り込みが安いときもあるし、高いときもあろうと思います。これが、普通の観念からいって、基準収入日額というものを厳密にとらえれば理屈があろうけれども、宮村君の割前が一日たとえば八百円とか千円もらったことが一回でもあれば、一応それをそのときの日収としてみなす配慮をしてほしいのです。私が先まで見通して、そのへんのところで落着をしてやっていた、だきたいということを示唆申し上げるのですが、さような配慮をぜひともしてほしいと思うのです。少くとも高校生に対しましての国鉄の補償より下回ることのないように、御配慮いただきたいのです。このことを結論的に申し上げておきます。  それから、問題をもとに返しまして、先ほど未調印のまま捨て置かれておりますところの狭山市居住の中学生の遺族の方に対しまして、今の一万八千円の葬式料というようなもの、これは虚心に反省せられて、この点におきましても遺族の納得のいく線、これは五万円とか六万円とか、ここで一つ考慮してほしいのです。そうでないと、第二のジラード事件に先行する飛行機事故にからまる補償問題もいまだ解決されていないということになりますれば、住民の人気というものがなかなか険悪になっておりまして、こういう点で不信を表明しているのですから、この点早急に政府の方で善処されたいと思うのです。政務次官、この飛行機事故の方の補償問題につきまして、一つあなたの色よい見通しをお聞かせいただきたいと思うのですが、いかがですか。
  113. 山中貞則

    ○山中説明員 飛行機事故につきましては、私今回提起された事件とは少し性格が異なると思うのです。だからといって、結論が違うわけではないのですが、ケースはやはり違うと思うのです。日本の土であれ、やはり落ちる飛行機は落ちるということもあるわけですから、今言ったことでいいというのではなくて、今回の不可抗力でなかったという射殺事件とは私は少し違うと思います。先ほど慰謝料と私が申し上げましたのは、日本の政府が慰謝料を払うという気持ではなくて、今回の問題に対して衷心から済まなかったという米軍の態度の表明が一応見られるわけですから、そういう意味で、取りきめられました金額以外に、慰謝料という名目なり、あるいは見舞金という名目で、当然米軍の立場が表明されてしかるべきだ、そういうことを私どもは主張すべきだということを申しているわけでありまして、それに関する限りにおいては、やはり飛行機の墜落事故等も、もし算定の基礎がはっきり定められて、そういう金額しか出ないとすれば、やはり調達庁においても当事者として同じような考えで当るべきが至当だと思います。
  114. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 今の二つのケースに対しまする事務当局の御見解を伺いたいと思います。
  115. 真子伝次

    ○真子説明員 狭山の墜落事故は公務上ということがはっきりいたしておりますが、ジョンソン基地で発生した宮村さんの事件は、まだ公務上か公務外か決定いたしておりませんので、非常に疑問があるわけでございますが、公務外となりますれば、一応われわれは、被害の実体と、それから被害の実情を米軍側へ通告するわけでございまして、それに基いて米軍側は被害者に見舞金を提供する、こういう順序になっていくわけでございます。  なお、今政務次官からお答えがございましたが、米側においては、今回のジョンソン基地における事件については非常に心配をいたしておりまして、司令官以下、御遺族に対してもできるだけお見舞の措置をとりたいという気持が現われているわけでございますし、何分の金額を集めて見舞金を差し上げるという気持はあるということは聞いております。
  116. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 一応問題を整理しましょう。あとの射殺事件につきまして、昭和三十一年十月二日の閣議決定の線で処理する場合に、この基準日額というものを私が先ほど示唆申し上げたような方式できめる。そのことによって、常識上受け入れられるような金額に実際算出できるように配慮していただく。そういうことでよろしゅうございますか。それとも、この三十一年の十月二日の閣議決定も、だんだん更新してきまして三回目の改正だと私は聞いております。二十七年の五月十六日のものが補償見舞金支給に関する規程の最初のもので、現在適用される先ほど来の三十一年十月二日の改訂分は、三回目の改訂だそうです。そうしますと、現在では時勢が違ってきましたので、なお改訂さるべき義務の上に眠っているものだと私は思っている。しかし、今直ちにこれが早急に改訂を見るということ、閣議の決定をさらに改めるということが時間的にもできないとするならば、今言うた基準日額の査定において配慮するほかないと思うのです。結論的にはそうした処理がとらるべしと私は考えておりますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  117. 真子伝次

    ○真子説明員 その点につきましては、私がさきに御答弁申し上げました範囲内で御推定いただきたいのですが、私どもといたしましては、現在きめられておりますところの三十一年十月二日の閣議決定のこの規定に従って措置すると言うほかはございませんわけでございます。  なお、お尋ねの中に、二十七年の五月から三十一年の十月二日まで途中一ぺん改正があるじゃないかということでございますが、それは何かのお間違いでございまして、二十七年の講和発効後におきましては、昭和二十七年五月十六日の閣議決定が最初のもので、三十一年十月二日のは第一回の改正でございます。その間四年の経過がありまして、社会情勢の変化、あるいは実際に政府がいろいろの事故で見舞金をやる、あるいは補償をするというような事例、それから一般の会社とか個人とかでいろいろ払われている実情、それから裁判例というようなものをいろいろ検討しまして、四年間の実績を勘案しまして、昭和三十一年十月二日の閣議決定に至っておるわけでございまして、この決定が永久不変のものであるとはもちろん考えておりませんけれども、今日直ちにあるいは早急にこれを改正するという意向は、今のところ内部にございません。
  118. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 また堂々めぐりになりましたが、最近の事例は、国鉄の支払い、参宮線の事故における高校生に対する葬祭料ともの補償料が八十一万円、これが私どもが持ち出し得る具体的な数字です。そこで国鉄だけが何かの理由でとんでもない補償額を与えたというふうにあなた方がお考えになっているかどうか、このことをお伺いします。
  119. 真子伝次

    ○真子説明員 国鉄の場合は、今までも洞爺丸だとか、あるいは紫雲丸だとか、あるいはずっと前にさかのぼりますれば桜木町事件とか、いろいろありまして、政府の補償、見舞といった場合に比較しまして、割合に高い率を払っておるようでございます。しかし、調達庁は、この基準を定めますについて、関係各省といろいろ協議し、いろいろな事例を検討いたしまして作ったものでございます。閣議の決定を経たわけでございまして、国鉄並みにというようにこの行政協定十八条の事件を扱うというわけにいかないのでございます。
  120. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 国鉄がばかに気前よく出したのかと思って私どももその事情を調べてみたのです。今度の事件に対して予想される補償料——国鉄の高校生に対する補償料があまり違い過ぎるので、国鉄の方に行きまして私は調べてみました。そうしますと、民事に持ち出して裁判所においてその金額がきまるとするならば、大体今言うた八十一万円くらいのものが出てくる。裁判所の判決による金額の決定というものは大体ホフマン方式なんです。そこで計算しますと、高等学校の生徒でもそのくらい出るのです。ですから、結局閣議決定のものが全然現状に即していないというのが私の見解なんです。いずれにいたしましても、国鉄自身が算出しました金額自身が、特別な大きな特例的な算定ではなしに、現状においてはその程度のものが高等学校の生徒に対しても補償さるべしという、かなり客観性を持った数字であるわけです。この閣議決定の数字というものが見直されなければならない、こういうふうに考えているのです。でも直ちに今物理的に間に合うようにこれが改訂もされ得ないでしょうから、結論として、今言うた高校生に対する補償に相応するような結論が出るように、この宮村君の基準日収の算定において御配慮いただきたい、こういうことなんです。ですから、あまりくどくどは要らぬですけれども、結論が八十一万円より下回ることのないように、この行政協定によるところの閣議決定、これを一つ弾力的に運用してほしいということを私は申し上げたいのです。その点につきまして、政務次官は物わかりがいいですから、すでにそういうことは腹に置いてやってくれると思うのだけれども、事務局の方が、これは法の番人だかどうか知りませんが、なかなかそこまで踏み切れないと思うのですが、そういう点は、政府当局において、政務次官等この点を十分にリードしまして、妥当な結論の出るようにおはかりを願いたいのです。どうですか、政務次官、ちょっとこれをはっきり答えてくれませんか。
  121. 山中貞則

    ○山中説明員 そこまで詰まりますと、私の所管事項でございませんので、私ではどうするということはちょっと言えないと思いますが、私は、きょうの御質問の趣旨を体して、大臣に連絡をいたしますとともに、閣議等でそういうことが提議されるような努力を続けてみたいと思っております。
  122. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 じゃその問題は政務次官及び事務当局の善処に期待いたします。  それからなお、まだ結論が出ていないのですが、一万八千円を過小なりとして拒否している現状を何とか打解してほしいのですが、その点に対して見通し一つお願いしたいのです。
  123. 真子伝次

    ○真子説明員 言葉を返すようでございますが、私ども事務当局といたしましては、やはりこの基準によって取り扱いますので、それを越すということはできないわけでございます。
  124. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうすると、中学生であるにせよ、子供であるにせよ、現在の御時勢で一万八千円が葬式料として妥当かどうかということです。大事な子供を失って、それが実際の出費に償わないような葬祭料というものはない。もし現存の取りきめにおいてそのことが不可能だとするならば、この葬祭料と補償料の額も含めて、これをもっと増額するように、米国との間に、合同委員会において大いに折衝を開始してほしいのです。  それから、もう一つお伺いしますが、この遺族の方が今までも調印しておりませんで三ヵ月もたちますが、これがずっと調印を拒否し続けた場合には、どういうことになりますか。あなた方は道義的に責任を負わなければならぬ。かまわずおっぽっておくということですか。
  125. 真子伝次

    ○真子説明員 私どもはやはりどこまでも御納得を得て解決いたしたいつもりでおるのでございます。しかし、私どもこういうことを申し上げる立場でございませんが、これはもう、それじゃ調達庁のいうことを聞かなければ、ほかに方法がないかというと、そうではございませんで、御承知のように、行政協定は訴訟の道も開かれておるわけでございます。しかし、そういうことをいたしますと、結局いろいろ費用がかかったり、あるいは時間がかかったりしますので、できるだけそういう方へ行かれないように、金額はあるいは少くても、御納得を得たいと思って努力いたしておるところでございます。
  126. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 答えになっておらぬ。三ヵ月間拒否しているのです。今後もずっと拒否するという見通しが強いのです。その場合にはどういうことになるのですか。三十一万八千円が宙ぶらりんになっているということですね。しかも三十万円の方は容認した、ところが一万八千円の方は容認しない、こういう立場に立ったといたしましても、現在ではつっくるめて両方押さなければ金を出さぬという建前になっているらしいんです。そのためによけいこじれて、調印ができておらぬのです。こういうことは区分できないのかどうか。それから一万八千円にプラス・アルフアか何かの増額ができないかどうか。私は、どうも規則だから、そうだといって三ヵ月間もほっておくのは、社会人心に及ぼす影響が大きいと思うのだ。そういうことでなしに、何とか便法を講じて、一万八千円を多少でも増額して救済策に出るべきだと思うのですが、どうですか。おっぽっておく場合には、永久におっぽりっぱなしにしておくということですか。
  127. 真子伝次

    ○真子説明員 葬祭料と補償金の方は別にというわけに参りませんので、さっき申し上げましたように、一つ何とか御納得を得たいと思います。狭山市の事件の起りました地元の方は、こういった基地問題で従来あらゆることについて非常に御協力をいただいておりましたので、そこへこういう不当な事件が起りまして、私ども非常に困ったことだと思っておるわけでございます。被害者の御遺族の方とは十分なお御懇談を重ねたいと思っているわけでございます。現在でも努力はいたしておりますが、なお一段と努力を重ねたいと思います。
  128. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そのままで努力してもしょうがないんです。これはデッド・ロックに乗り上げ、三カ月間妥結していない。だから何とか方向転換をしてほしいというんです。それから、とどのつまり三十一年の十月二日の支払い基準、補償基準というものが低いということです。ロングプリーの射撃しました電車、これは西武鉄道ですが、これに私ども始終乗っているんです。かりに私がそういうことに出つくわして射殺されたとした場合には、さっき言いましたように、三百円から千五百円までの間でこれを計算する、千五百円以上は千五百円にとどめるということになりますれば、私どもがやられた場合には、大体百五十万円もらえるわけです。これは非常に低いと思う。だからこういう規定それ自身がもう現在の情勢に妥当せぬのだ。だからこれをどうしても変えなければならぬ。だから、結論は、この閣議決定というものは早急に見直されなければならぬということです。見直されなければならぬということは、今日以後それが見直されなければならぬということではなしに、すでに七月のケースにおいても、今度の九月七日のケースにおいても、やはり実質的に見直されて、何らかの救済措置が別の角度でとられなければならぬということを私は申し上げたいんです。これは、あなたと問答していても、から回りになりますから、何か方向を変えて、遺族の方に納得してもらうというお考えはございますか。
  129. 真子伝次

    ○真子説明員 先に申し上げましたように、この基準は永久不変のものではない。時期が来れば、あるいは情勢が変われば、改変することはあり得る。しかし、今日までのところそういった意向はございませんということを申し上げたわけでございまして、長い将来といたしましては、これは考える余地はございますが、それを申し上げますと、議論になりますので、私が申し上げることはこれで御了解を願いたいと思います。
  130. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、質疑より要望をいたしておきます。まず飛行機墜落にまつわる事故の葬祭料については、何らか角度を変えて、少しく政治的にでも処理していただきたい。同様に、今回のロングプリー事件においての補償も、少くとも参宮線の事故にまつわる補償、高校生八十一万円より下回らざる金額が算出され得るように御考慮いただくことを強く要望いたしまして、私の質問を終ります。御善処を願います。     —————————————
  131. 早川崇

    早川委員長 参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。専売事業に関する件について、明十一日午前十時より、全専売労働組合中央執行委員長佐藤新次郎君、全専売労働組合中央執行委員松井秋寿君、以上二名の諸君を参考人として出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  132. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、参考人招致の手続等につきましては委員長に御一任願っておきたいと存じます。  本日はこの程度にとどめ、次会は明十一日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会      ————◇—————