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1958-08-12 第29回国会 衆議院 大蔵委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年八月十二日(火曜日)     午前十一時三十二分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 福田  一君 理事 坊  秀男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       鴨田 宗一君    竹下  登君       濱田 幸雄君    古川 丈吉君       細田 義安君    山下 春江君       山村庄之助君    山本 勝市君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    廣瀬 勝邦君       松尾トシ子君    山下 榮二君       山本 幸一君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         通商産業大臣  高碕達之助君         国 務 大 臣 左藤 義詮君         国 務 大 臣 三木 武夫君  委員外出席者         防衛政務次官  辻  寛一君         防衛庁参事官         (経理局長)  山下 武利君         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   宮川新一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         大蔵政務次官  山中 貞則君         大蔵事務官         (大臣官房長) 石野 信一君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    大月  高君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    谷村  裕君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (管財局長)  賀屋 正雄君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金蔵君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 七月八日  委員石村英雄辞任につき、その補欠として山  本幸一君が議長指名委員に選任された。 同月九日  委員久野忠治君及び古川丈吉辞任につき、そ  の補欠として林唯義君及び志賀健次郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員林唯義君及び志賀健次郎辞任につき、そ  の補欠として久野忠治君及び古川丈吉君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十一日  委員久野忠治辞任につき、その補欠として薄  田美朝君が議長指名委員に選任された。 同日  委員薄田美朝君辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員古川丈吉辞任につき、その補欠として石  田博英君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員石田博英君及び久野忠治辞任につき、そ  の補欠として古川丈吉君及び森下國雄君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員森下國雄辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月八日  一、所得税法の一部を改正する法律案佐藤觀   次郎君外十三名提出、衆法第七号)  二、税制に関する件  三、金融に関する件  四、外国為替に関する件  五、国有財産に関する件  六、専売事業に関する件  七、印刷事業に関する件  八、造幣事業に関する件  九、補助金等に係る予算の執行の適正化に関す  る件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制に関する件  金融に関する件  外国為替に関する件  国有財産に関する件      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び国有財産に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 正示理財局長質問いたしますが、去る五日の閣議において、銀の地金を約五百トン、銀貨地金として使うことが決定されました。これは、この前の接収貴金属法案が流れておりまして、法案ができないのに、政府のものを勝手に貨幣に使うということはいろいろ問題になると思いますが、どういう根拠でこれをやられるのか、伺いたい。
  4. 正示啓次郎

    ○正示説明員 御承知のように、私の方では、百円銀貨を製造することを、かねて臨時通貨法について法律を改正していただきまして、お認め願っておるわけであります。これの地金接収貴金属の中の政府帰属する銀を使うということを申し上げておったことは、御承知通りでありますが、非常に遺憾なことに、この法律案がまだ成立をいたす運びになっておりません。この法律案につきましては、これは管財局において所掌いたしておりますが、いろいろ法律解釈については議論のあったことは申し上げるまでもございませんが、一応政府帰属すべき銀のうちで、明白に政府所有であることのはっきりいたしておりますものが数百トンあるわけでございます。これにつきまして、管財局では、目下所要手続を経まして必要の場合には造幣局で使用するということについて研究を進めておるようであります。閣議におきましては、その方針を一応確認をいたしまして、今後所要手続を進めるということになっておるように承知いたしております。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そんなばかなことはない。法律を作らないでできるならば、国会は要らないわけなんだ。接収貴金属処理法というものが通ってないのに——この法案は非常にむずかしい法案でありまして、三度流れたわけです。しかも、そういう法案を現に政府が出して、それが通らないのに勝手に処分するということになれば、国会無視と同時に法律無視だと思うのですが、こういうことがどんどん行われれば、これは不公平な問題が起ると思う。民間の人もいろいろ不平が出てくるし、いろいろ問題があると思うので、そういう点についてはどういう解釈でおやりになっているのか。われわれは納得できないので、これは大臣から聞きたいのですけれども、正示局長にもう少し……。
  6. 正示啓次郎

    ○正示説明員 御指摘通りに、法律問題としましてはいろいろ議論のあったことは、先ほど申し上げた通りでありますが、いわゆる特定するものにつきましては、政府であろうと民間であろうと、法理論といたしましては、現在の民法その他の法律によりましても、その所有関係というものは一応説明がつくわけであります。問題は、民間帰属するといいますか、民間の方の所有に属しておりますものにつきましては、一応所有関係がはっきりいたしましても、長い間政府は一種の事務管理的に保存をして参った関係もございます。また、これにつきましては、社会党の方からも、この返還についてはいろいろ政策的に御意見のあったことは、私から申し上げるまでもないことと思います。そういうような意味合いをもちまして、民間返還あるいは帰属という関係の分につきましては、一応法律を制定するまでやはり慎重な態度で臨まなければならない。ただ、政府部内におきまして明確に政府所有であることのはっきりいたしたものにつきましては、たびたび提案いたした法案の中におきましても、これは政府において処理することになっておることは御承知通りであります。  問題は、その明確度いかんということに帰着するのではないかということに相なって参りまするので、先ほども申し上げましたように、主管局におきましては、所要手続によりまして議論なく政府所有であるというものの限界をはっきりいたしまして、これを政府において処理する。しかしながら、その処理をする過程におきまして、なお国会において法案を御審議いただくこともあわせ考えていることはもちろんでございます。先例といたしましては、かつてIMFに出資した場合の処理等のこともあることでございますので、それらをあわせ主管局において慎重に自後の処理を検討するように承知いたしております。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 非常にあいまいな答弁でありまして、民間のもので確実になったものはどうするかという問題であります。政府ならば勝手なことをやってもいいということになっておるのか。しかも、今度は、御承知のように百円銀貨材料が足らぬからやるというような便宜的なことでありますが、こういうことならば法律というものは要らなくなると思うのです。しかも、これは、今までそういうことに全然触れなければいいけれども、三度も法案が流れて、これからどういうふうにお出しになるかしれませんけれども、今はそういう問題が起っておるときだけに、便宜的にこういうことをやられれば、これは法律無視ということになるんですが、そういう点は局長はどう考えておられるか。
  8. 正示啓次郎

    ○正示説明員 ただいまの御質問は二つの事柄を御指摘になったように承知いたします。  まず、民間について、きわめて明白に特定して、しかも所有関係がはっきりしたものをどうするのかという御質問でございます。この点は従来たびたび国会法律案を出しまして御審議をいただきました考え方を一貫して踏襲するように私は承知いたしております。すなわち、民間帰属し、よって返還をするものにつきましては、やはり法律規定に従って、一応一定の納付金をちょうだいする、こういう考え方をもって処理したいという考えのように承知いたしております。  これに対しまして、政府の分は便宜的ではないかという第二の御質問のように承知いたしたのでありますが、この点は、法律をもって所有関係を新しく規定していくという考え方ではございませんで、所有関係はあくまでも現在の法律のもとにおいてもはっきりいたしております。問題は、それを返還するところの手続について法律をもって規定していく、こういう考え方であったかと承知をいたすのでありますが、政府帰属し、従って返還する分については、納付金等の問題もございませんので、一応これは、必要によりまして、しかも疑義なく政府帰属しておることの明白なるもののみを処理するという考え方に立脚をいたしまして、さような手続を進めておるわけであります。しかしながら、どこまでも、そういう手続によって政府部内で処理をした分についても、なお法律関係につきましては、国会接収貴金属処理法律案提案をいたします前に、その規定対象として、事実関係は明確にこれをいたしておくわけでございますから、いずれ法律案の御審議をいただきます場合に、全体を通じて御議論を願うことにおいては、何ら変りはないものと考えておるわけであります。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 正示さんがいろいろ言われる点も首尾一貫してないことで、まことに残念でありますが、これはいつから実施されるのか、また、銀の地金の不足のことについても調査があると思いますが、そういう点についての御説明を願いたいと思います。
  10. 正示啓次郎

    ○正示説明員 御承知通り、百円銀貨はすでに前年度においても若干鋳造をいたしました。現に流通をいたしておりますのは三十数億でございますが、本年度においてなお若干の鋳造を予定いたしておるわけであります。これに対しまして、造幣局手持ち銀は、すでにいわゆる業務用のものを除いてほとんど鋳造使用済みでございますので、できますれば、大体八月一ぱいに、ただいま申し上げたような部内手続を経まして、九月ごろからは、明白に政府所有帰属、従って部内における処理を許されるようなものにつきまして鋳造のできるようにいたしたい、こういう考え方を持っておるわけであります。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 事後承認のような形になるので、こういうことは大臣責任なんですが、非常に残念だと思います。しかも、今の百円銀貨というのはいろいろ非難がありまして、五十円と比べて考えてもらっても、いろいろ鋳造の問題で問題になっておると思うのです。そういう点について何か変えるお考えがあるのかどうか、今の百円銀貨のままでずっとやっていかれるのか、五十円とどういう関連があるか、その点の問題をついでに承わっておきたいと思います。
  12. 正示啓次郎

    ○正示説明員 お答えいたします。  百円銀貨鋳造して以来、これが昨年末に発行されたのでありますが、いろいろ世論において必ずしも芳ばしくないという点については、ただいまのお話通りであります。そのよってきたるところを私ども静かに考えてみますると、先ほど申し上げたように、まだ発行額が三十数億というふうにきわめて微々たるものであるために、一般に習熟されていない、また慣用されていないというふうな点が基本的な事由になっておるように承知をいたします。しかしながら、中には、五十円銀貨——五十円ニッケル貨でございまして、銀貨と申し上げたのは間違いであります。それと間違えるために思わざる損失をこうむるというふうな民間の切実な御批判もございます。そこで、この点につきましては私ども虚心に反省をいたしまして、これは審議会と申し上げると非常に差しさわりがあるのでございますが、審議会というふうなかた苦しいものでは全然ありませんで、いわば使用される国民の各層を代表されるような方々、しかもきわめて肩のこらないような平易なお話をしていただくという意味におきまして、民間の有識者十一人をお願いいたしまして、幸いいわゆる司会の権威と申しますか、司会者のベテランである徳川夢声老に座長になっていただきまして、今週を入れますと三回ぐらい、きわめて肩のこらない御意見拝聴会をいたしておるわけであります。ただいまのところ、徳川夢声老の予定によりまして、おそらく今週の金曜日の懇談会におきまして、委員の各位から若干コンクリートな御意見が出る段階ではないかと思っております。第一回は当局側から今までの経緯、実情等をつぶさに御説明申し上げまして、第二回は委員方々から腹蔵なくいろいろと御質問をいただいたのであります。百円銀貨臨時通貨法国会審議の際に、国会におかれましてもいろいろ御意見があったことは申し上げるまでもございません。これらの御意見につきましては、私どもできるだけ忠実にその御意見を尊重いたしたつもりでございますが、佐藤委員も御承知のように、何しろ廃墟の中から立ち上りました日本の戦後の通貨の系列ともいうべきものはきわめて一貫性を欠いております。たとえば、今も私申し違えましたように、五十円はニッケルでございます。十円、五円は青銅を使っております。一円はアルミを使っております。そこへ百円の銀貨というふうに、素材関係からいたしましても全くばらばらになっておりまして、しかも、御案内のように、各国の補助貨幣等をごらんになりますと、ギザのあるのは貴金属を使ったものだけがふちがギザになっておるにかかわらず、日本は、百円銀貨も、五十円ニッケル貨も、十円青銅貨すらもギザがついておるというような状態でございます。これは、結局、そのときの最高の補助貨幣ギザをつけるというような慣行が、日本に新しくできたためかと思うのでありますが、これらの点につきましても、委員の方に盲人の方もお入り願っておるのでありますが、手ざわり等で識別をいたします際に、みんなにギザがついておるために非常にまぎらわしいというような御意見が出ておったようにも承知いたしております。いずれにいたしましても、ただいま申し上げましたような各方面の御意見を出し尽していただきまして、私どもといたしましては、今後新しい鋳造の際にできる限り今の御批判のような点について何らかの策を講じまして、できる限り補助貨幣が愛されて、皆様から親しまれて通用していくように持っていきたい、こう考えて、ただいませっかく研究を進めておる次第であります。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 正示局長からいろいろお伺いいたしましたが、徳川夢声は漫談にはいいけれども貨幣審議する司会者としていいかどうかということは問題だろうと思います。ちょっと大蔵省としては気のきいたことをやり過ぎてまずいと思う。まあそういうことは別の問題でありますが、ともかく今の補助貨幣の問題についてもいろいろ議論があって、戦後いろいろな非難があり、現に百円と五十円の問題も非常にとり違えられて民間が不便を感じておることは事実である。そういうことを当局が認識されておる以上は、早く改正することが必要だと思うが、今問題になっておる政府手持ちの銀を使うことについての問題は、それとは別個の問題でありまして、いずれ大蔵大臣にも質問しようと思っておりますけれども政府法律無視して勝手に何でもやるということなら、国会は要らなくなる。政令やあるいは省令でやるようなことがどんどん行われれば、結局法律を作る必要がないというような結果になる。まことに簡単なことのようでありますけれども、重要な問題だと考えます。どうか、そういう点について、われわれは、法律を作る国会において審議がされないのに、勝手に政府がやるというようなことについては、十分なる検討をしていただきたいと思う。そういう点についても大臣責任でありますから、大臣が来られてから質問するつもりでありますが、今後とも十分に注意をして、これは事務当局にそんなことを言ってもしようがありませんけれども、とにかくこういう問題が起きて、政府は勝手なことをやるが、民間人民間人所有がはっきりいたしておるものでも処置ができないようなことでは非常に困るわけでありますから、今後そういうようなことが行われるかどうかということについても、一つこの際承わっておきたいと思います。
  14. 賀屋正雄

    賀屋説明員 出席が大へんおくれまして申しわけございません。御質問を完全に承わっておりませんので、あるいは見当違いのお答えをいたすかもしれませんが、推測いたしますのに、おそらく、このほど閣議決定に基きまして、百円硬貨素材に充てますために接収されております国の銀を使おうということを決定いたしまして、近くその処理をいたすことにいたしたわけでございますが、しからば、御承知のように、十九国会から長年にわたって御審議を経て参りまして、前国会においてついに流産いたしました接収貴金属処理法案との関係はどうなるか、今後出す法案との関係はどうなるかというような点に、御疑問があろうかと思うのでございますが、もともとこの御審議をわずらわして参りました処理法案は、何分にも接収という異例な事実に基きまして、貴重な貴金属を国が事務管理をいたすことになりましたので、厳密に申しますれば、民法上の事務管理でございますから、決して没収ではありません。従いまして所有権は元の所有者に残っておる、こういう考えでございますので、政府が一方的に返還をいたして差しつかえない筋合いのものではあるのでありますが、しかしながら、こういった異例の事実でございますので、できるだけ全部を法案対象といたしまして、国会の御承認を得ました法律によって処理するのが適当であろう、こういう考え方のもとに法案を出しておったわけでございます。しかしながら、今申しましたような次第で、はっきりとこれは国のものであるということが決定しております分につきましては、その分について、特に国家の緊急あるいは公共の必要性——通貨法に基きまして百円硬貨を作るということを御承認を得ておりますので、その百円硬貨を作りますために銀をどうしても使わなければならぬ、こういう緊急の目的のために特定されております分を使いますことは、これは例外的な措置として、決して法律的に違法でないという考え方のもとに、今度の処理をいたすことにいたしたのでございます。しかしながら、これはあくまで例外でございますので、私どものただいま考えておりますところでは、来たるべき国会におきまして、やはり前の考え通り、そのときに国が保管しております分は全部法の対象として国会の御承認を得ました法律によって処理するのが適当であろう、こう考えておるわけでございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ちょっと管財局長考え方はおかしいんじゃないかと思います。法律でやらなくてもそれはかまわないということを言いながら、またこれから法律を作ってやるということで、どうもその点つじつまが合わぬと思います。法律でやらぬでいいようなものなら、何で今まで処理しなかったか、こういうことになると思いますが、どうですか。
  16. 賀屋正雄

    賀屋説明員 お答えいたします。  接収いたしております貴金属の中には、今申しました百円硬貨素材に使います銀のようにはっきり特定いたしております分もありますれば、あるいは接収中に駐留軍溶解等をいたしまして、他の民間の分あるいは国の分と混合いたしておる分もあるわけでございますので、そういういわゆる不特定物につきましては、どうしてもやはり民法の原則の例外と申しますか、完全な配分方法規定する意味におきまして、この法律がどうしても必要となってくるわけでございます。しからば、特定している分だけを法案対象からはずしたらどうかということも言えるわけでございますが、これはなかなか特定限界がむずかしいのでございまして、ことに国の所有のものが民間接収を受けたというものもありますれば、民間所有貴金属が国が占有中接収されたというものもありまして、権利関係、事実関係の不明確なものがありますので、やはり法律に基きまして処理するのが適当であろうと考えたのであります。今回銀貨に使います分は、そういった法律関係、事実関係が諸般の事情からきわめて明瞭なもののみを対象といたしたわけであります。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それでは、五百トンのものをなぜ早く使わなかったか。現に銀の地金が少いということで使われるようでありますけれども、何でそれを早くやらなかったか。今ごろになって急にそれをやるということはおかしいじゃないか。処理法案が流れて今になってそれをやるということは疑問の余地を残すと思いますが、なぜ早くやらなかったかということを伺いたいと思います。
  18. 賀屋正雄

    賀屋説明員 国会において法案を御審議いただいております間に自由に使うということは、いかにも妥当を欠くということでございますし、なお百円硬貨素材といたしまして銀が多少ともストックがあったように聞いておりまして、それが八月になってほとんど枯渇するということでありますので、それに先だって処理することを決意いたしたわけであります。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 首尾一貫しない点がたくさんありまして疑問がありますけれども大蔵大臣にあとで聞くことにして、私の質問をこれで終ることにいたします。
  20. 平岡忠次郎

    平岡委員 この問題に関連しまして少しお聞きします。  前回の接収貴金属処理法案は、政府がぜひ通してくれと強調された理由一つとしまして、百円銀貨材料が足りないからということをおっしゃった。ですから、処理法案提案理由の大きな部分がそこにあったわけです。それを、今回その処理法案を出さなくてもやれるというのはおかしいのじゃありませんか。矛盾はありませんか。
  21. 賀屋正雄

    賀屋説明員 お答えいたします。  前国会において流産いたしました処理法案を早く成立させていただきたいと願っておりました一つ理由に、百円銀貨素材として政府所有の銀を使いたいということは確かにあったのでございますが、しかしながらそれは一つ理由でございます。ことに法案継続審議にかかっております間に自由にこれを使う、いかに法律上まぎれのないものであろうとも、これを自由に使うということは穏当を欠きますので、なるべく早く通していただきたい、こう考えておったわけであります。しかしながら、この法案は必ずしも百円銀貨のためのみに成立を急いでおったわけではありません。接収後すでに十年以上もたっておりますにもかかわらず、その帰趨がはっきりしないということはきわめて不安定な状態でありますのみならず、預かっております貴金属は、すべて国家的に重要と申しますか、役立つものばかりでございまして、これをいたずらに死蔵しておきますことは、国のためにまことに不経済なことであるということで、早く成立をさせていただきたいと考えておった次第でございます。
  22. 平岡忠次郎

    平岡委員 全体を通じましてあなた方の説明はとても便宜主義だと思う。抵抗が強いと便宜主義でやる。これは例がないことはないのです。例の教科書の問題につきましも、法律でむずかしいということになると、政令でやってしまうとか、行政措置でやるとか、こういう今までのあまりオーソドックスでない行き方がまたここに顔を出しているような気がいたします。こういう点は大いに政府の御自戒を求めなければならぬと思っております。それから、だんだん皆さんの説明を聞いていますと、結局銀貨鋳造材料がなくなって枯渇しておるから、この際手当したいというのが本音らしいのですね。そういうことですが、その鋳造さるべき銀貨それ自体が、形態において、品質において、相当世論の風当りが強いのですから、こういう形態とか銀の含有率とか、そういう問題をもっと世論に沿うようなものにして、その後にやってもおそくないと思うのです。ばかに急ぎながら、急がれる銀貨それ自身に大いに非難があるのだから、そんなに急ぐことはないのではないですか。それから、もう一つお聞きしたいことは、結局、現在の百円銀貨を、形状において、品位において改める意思がありますか。そのことをお伺いをいたします。
  23. 正示啓次郎

    ○正示説明員 お答え申し上げます。  今の御意見は、百円銀貨が非常にいろいろ欠陥というか世評かんばしくないこの際、もう少し百円銀貨について慎重に研究してやれという第一段の御意見であったように思います。この点につきましては、先ほど申し上げましたように、臨時補助貨幣法律案の御審議の際に、いろいろと衆参両院から御意見が出ておりまして、たとえば銀の使用量はどの程度にすべきである、また百円硬貨の大きさはどのくらいにすべきであるというふうなことは、国会の意思において表明されておったことは平岡委員も御承知通りであります。私どもは大体その大きな線は国会の御意思をそのまま体してやったつもりでございます。問題は、出ました上で、先ほど申し上げたように、在来の五十円ニッケル、あるいは十円青銅貨とまぎらわしいということが、実際の使用に当って問題になっておるわけであります。しかしながら、この点についての基本的な理由は、先ほど申し上げましたように、今日なお三十五、六億しか流通していない、百円銀貨にはめったにお目にかからない、こういうところにあるかと存じまして、この点については、国会で慎重御審議を願いまして、その施策に従って出しました百円銀貨でございまするから、できる限り私どもはこれをプリヴェイルしていきたい、そうして一般にこれを習熟をしていただきたい、こういう気持で造幣局の作業計画等も御承知のように組み立てられておりますので、この基本的な方針はあまりくずしたくないと考えておるのであります。従って、先ほど来申し上げましたように、今まで手持ちの材料品で作業いたして参りましたが、それが枯渇いたしましたから、一応支障のない限りお認めをいただきまして、作業を継続していきたい、こういうことが第一段の御質問に対するお答えでございます。  第二段に、百円銀貨について何か改むる意思ありやいなやという御趣旨のように拝聴いたしたのでありますが、大体今申し上げたような考え方をとっておりますので、でき得るならば、基本的に百円銀貨という、この銀を主要材料にするところの補助貨幣の最高単位、これはあまり変えたくないという気持を私どもは持っております。のみならず、それはまだ三十数億しか出ていない段階にございまするから、やはりこれをもう少し一般に普及して参るということの方が先決ではないかという考え方を持っております。しかし、これが五十円なり十円とまぎらわしいという事実が一方にあるわけでありますから、これがまぎらわしくないようにするにはどうするかという点については、一つ虚心に各方面の御意見を承わりたいと存じております。その結論がどうなりましょうか。従って、基本的に百円を今改めるという考えよりは、できればまぎらわしいという点についての解決方法を、今の基本線をくずさない方向において求めたい、大体かような考えを持っておる次第であります。
  24. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうすると、正示さん、徳川夢声委員会、この委員会の知恵を借りるというのは、結局形状だけの問題なんですか。
  25. 正示啓次郎

    ○正示説明員 形状それからデザイン、たとえば感触によっていろいろ違っておるというふうな点についても、いろいろ御意見を出していただいております。
  26. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうしましたら、この問題は一応これでおきますが、正示さんに質問ついでに、あなた株式関係はどうですか。——それでは、前回の七月の大蔵委員会の直後、各新聞社が報じたところでありますが、例の自己株所有の問題、この問題は商法違反であることは明らかでありまして、尋ね当てたところだけでも会社の数が二百数十社に及んでおると聞いておりますが、この問題につきまして御調査済みの事情を御説明いただきたいのです。
  27. 正示啓次郎

    ○正示説明員 私の方の所管は証券取引所の方で、商法の施行は御承知通り法務省の民事局が所掌いたしておるわけです。ただ、取引所の関係あるいは証券市場の関係等から、若干関係もありますので、あるいは私は不適任かと存じますが、一応のことを、間接に承知しておる点だけを申し上げます。  この自己株の問題でございますが、御承知のように商法にも規定がございまして、一定の場合以外は自己株を取得することは禁止されておることは、申し上げるまでもございません。大体戦前におきましてはそういう規定がありましたが、戦前におきましてはこれに触れるような事例はあまり見られなかったのでありますが、戦後経済のいろいろな関係で、会社が増資をいたすような場合、あるいは会社の自己保全と申しますか、いろんな理由から、自己株を取得せざるを得ないというような一般的な傾向があったように承知いたします。これに対しまして、そういう必要性と、一方におきましてはそういうことが一般の慣行として行われてきたために、これを、法律規定があるにかかわらず、その規定をほとんど無視して行われるというふうな弊害、この両面をにらみ合せまして、平岡委員の御指摘のように二百数十社につきましての事実について検察庁でお調べになりました結果、特に悪質なる事例を取り上げて、先般これについて処断をされたように承知をいたしておるのであります。従って、私の間接的な知識でございますが、要するに、一般的に今日経済のいろいろの要請から、ある程度まで、この商法の規定というものに対しまして、若干それをそのまま施行していくという点に無理があるのではないかというふうな見解もあるようでありますが、一方においては、さような事実があるからといって乱に流れてはいけない、基本的にいわゆる会社の保全、健実なる経営、従ってまた一般の投資者の保全、保護という点に欠くるところのないように、この法益をにらみ合せまして、極端なる事例につきましては検察当局が処断を下されたものと、さように一応承知いたしております。
  28. 平岡忠次郎

    平岡委員 そういう商習慣ですか、慣行があるということをお認めになっておるわけです。是認するかどうか知りませんが、事実あるわけですね。それでお伺いしたいのは、結局自己株所有を認める考えであるかどうか、すなわちこの点から商法を改正する意図があるかどうかをお伺いします。
  29. 正示啓次郎

    ○正示説明員 最初に申し上げましたように、商法につきましては法務省が主管省であられますので、私からとやかく申し上げるのは差し控えたいと思います。ただ、私の方も、証券市場の育成あるいはこれの発達というふうな見地から、いろいろ考えは持っております。要するに一般経済の状態というものには現実に一つの慣行的なものがあるという事実に対しましては、目をおおうわけには参らないと思うのでございまして、さような事実を一方において事実として認識しながら、これに対して、先ほど申し上げましたように、一般投資家の保護という、より高度の、また経済の発達に応じましては当然さらに強く尊重していくべき情勢というものを考えながら、この問題は解決していかなければならないのじゃないか、こういうように考えます。法務省に設けられております商法改正の委員会などがございますので、それらの委員会において慎重に御審議になることと考えます。ただいまのところ私からはっきりどういう方向ということを申し上げることは不適当かと存じますが、今平岡委員の御指摘になりましたような現実の事実というものについてはそれを相当重く考えながら処理していきたい、大体かように考えております。
  30. 平岡忠次郎

    平岡委員 私は一応これで終り、質問を保留して、あとからまたお伺いいたします。
  31. 早川崇

    早川委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時半まで休憩いたします。     午後零時十四分休憩      ————◇—————     午後一時五十一分開議
  32. 早川崇

    早川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件、金融に関する件、外国為替に関する件及び国有財産に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。  福田一君。
  33. 福田一

    ○福田(一)委員 本日は、開会が非常におくれましたし、また時間の割り振り等もあるようでありますので、私は簡単に国有財産の問題について質問をいたしたいと思います。ただし、簡単ということは、決してその問題が軽微な問題であるとか、ネグレクトしてよいという意味で申し上げているのではないのであって、この点については政府当局責任ある御答弁がいただきたいのであります。  申し上げようといたしますることは、実は、国有財産として今大蔵省の所管に移っておりまして、その残骸を横須賀港の港壁に横たえておりますところの旧軍艦三笠の問題について質問いたしたいのであります。  この軍艦三笠が、かつて、明治三十八年の五月二十八日、日本海海戦に当って完全な勝利を得た軍艦として、世界的に名誉あるこの名前を持っておるということについて、今申し上げようというのではないのでありまして、とかく、終戦後の今日に至りますと、われわれの祖先が非常に名誉ある活動をいたしたり、あるいはまた、国民の総意を受けて、ほんとうに決死の気持で戦ったことに対しても、あたかもそういうことは非常な不名誉なことであるかのような印象を与えておる、そういうような感じを持っておるような人があるやに見受けられることは、われわれとしては非常に遺憾に考えておる点でありますが、今日あの残骸を横たえておるみじめな姿を見たときに、私は、怒りと憤りなくしては、これは見ることができなかった、またその実情を聞くことができなかったのであります。こういうようなこの三笠のごとき国有財産を持っておるということについては、大蔵大臣は果して今までにその認識を持っておいでになったかどうか。まずその点から承わりたいと思います。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 率直にお答えいたします。  三笠が大蔵省の所管だということは伺ったことがございますが、まだ実物を見たことはございません。
  35. 福田一

    ○福田(一)委員 それはまことに遺憾千万のことであります。ただし、先ほど政務次官から聞いたところが、政務次官はきのうわざわざ横須賀まで行って軍艦三笠を見てきたということを言われるのであります。してみると、政府としては決してこれを無視するとか、この問題について冷淡であるという意味ではないだろうと思うのでありますが、私は適当な時期に一つ大蔵大臣にぜひともあの軍艦三笠の姿を見ていただきたいと思う。去る七月われわれ大蔵委員が視察に参りましたときには、非常な雨降りでありまして、私たちは、雨の中、暴風の中をついて三笠の艦橋に立ち、そして中まで入ってみたのでありますが、あの有名な三笠がこんな姿であるのかということを、私は説明を聞きながら心のうちで泣いておりました。また私はこんなことでよいのかということをつくづく考えさせられたのであります。このことにつきましてはいろいろ言う者がありますけれども、歴史というものについてはどこの国でも非常に重要視いたしておりまして、これを保存するということについてはいずれの国においても非常な努力を払っておる。そして、精神作興に資しておる面もあり、あるいはまた、このような間違いをしてはいけないんだという意味において、これを顕彰しておる面も多々あるのであります。私がそういうような例を一々申し上げることにいたしますと、あまりに時間がかかり過ぎる。実はここに資料を相当そろえたのでありますが、これを一々読み上げておると、おそらく二時間ぐらいかかるだろうと思う。あまりにもわかり切ったことをそのようにする必要はないと思いますので、そこまではいたしませんが、その一、二の例を申し上げてみたいと思うのであります。  すなわち、伊藤正徳さん、これは皆さんも御承知のように、日本の軍事問題に関する記者としては第一等のお方であります。私の先輩でもありますので、深く尊敬をいたしておりますが、この『戦艦「三笠」の光栄と悲惨』ということについて書いておられますうちに、海外ではどういうふうにしておるかという意味で、イギリスあるいはまたアメリカ等についての例をいろいろと申されておるのであります。すなわち、   イギリスに於いて、ネルソン提督の乗艦ヴィクトリー号が、ポーツマス軍港に保存され、広く国民の観覧に供せられていることは周知されていると思う。ヴィクトリー号はそこに記念艦として繋留されること今年で百六十六年である。艦齢実に百九十四年に達する木造艦をよくも保全したものである。最近は腐蝕がひどいので特に乾ドツクを提供し、三笠式——艦側底をコンクリートで固める——を採用して更に百年の寿命を期している。そしてヴィクトリー号は政府の財産、その管理は海軍省が当っているのである。   同じようにアメリカでは、独立戦争その他の海戦で奮闘し、オールド・アイアンサイドの愛称で知られた軍艦コンスチチューション号を保存すること百三十年に及ぶ。   同艦は一八二七年に廃棄処分と決まったが、それを聞いた青年詩人オリバー・ホルムス君が愛惜禁じ難く、有名な「オールド・アイアンサイドの歌」を新聞に発表して忽ち全国民の感激を呼び、醵金立ちどころに集まって之を買い取り、改めて海軍省に保管を要請した。議会は満場一致で採択、同艦を今日に残し、最近は腐朽の故に、これも「三笠式」に固めることになった。云々とありますが、その他にも例はたくさんあるのであります。  私が申し上げてみたいと思いますことは、これは英米だけではないのでありまして、ソ連等におきましてもまた同じような、それ以上の努力をこの面に払っておるということをわれわれは認識しなければなりません。すなわち、ソ連における軍功労者顕彰の実例をここで例をあげてみますと、一九五五年二月の八日、巡洋艦ワリヤーグ——五十年前日露開戦の劈頭、仁川沖で日本海軍に攻撃された——乗組の生存者十五名に対し勇敢記章を授与し、各新聞はワリヤーグの敢闘をたたえる記事を大きく掲げ、またモスクワの「ソ軍中央の家——軍人のクラブ——では、クズネツオフ海軍元帥司令のもとにワリヤーグの敢闘をしのぶ記念会合が開かれました。  次に、一九五五年四月の十三日は帝政ロシヤ海軍のマカロフ海軍中将の死後五十年に当ったので、彼の名を記念するために、太平洋上級海軍兵学校に対してマカロフ海軍兵学校の名称が授与されております。このころから、海軍軍人であると同時に、学者であり、さらに太平洋及び北氷洋探検者として活躍した彼の功績が新聞やラジオでしばしば賞賛されておることは、ここに申し上げるまでもありません。  次に、一九五五年五月十七日はクロンシュタット海軍要塞、軍港の建設二百五十年に当ったので、各新聞紙はこれに関する記事を掲げ、ソ連当局は、この日を記念して、法令により次のことをきめております。すなわち、クロンシュタットに赤旗勲章を授与し、海軍の優れた先覚者マカロフやラザーレフ——海軍指揮官、学者、北極探検者として有名であります。——が住んだ家を記念の家とする。  一九五五年五月二十七日には、モスクワの「ソ軍中央会館」で、「一九〇五年対馬海戦参加者の夕」を催し、生存者を招待いたしました。これは日本海海戦であります。同日のソ軍機関紙「赤い星」紙にはユトウホフ海軍大佐の「ロシヤ海軍軍人のヒロイズム」と題する論文が載せられ、この論文は、対馬海戦、すなわち日本海海戦は、ロシヤ海軍軍人の敗北ではなくて、ロ長官や海軍軍令部が無能であったからだとこれを非難するとともに、各艦長以下将兵の奮戦ぶりを詳述し、ロシヤ海軍軍人の英雄主義を大いに賛美いたしております。  また、レニングラードのネバ河畔にはピーター大帝の馬上姿の銅像が建てられておるのであります。御承知のごとく、ピーター大帝はロシヤを再建した有名な王様というか帝王でありますけれども、こういうピーター大帝の考え方に今のソビエト・ロシヤの人たちが共鳴しておる道理はありません。しかし、このことは決してピーター大帝の馬上姿の銅像をつぶさなければならないということにはならないのであります。  レニングラードのイサコフスキー寺院の前の広場にはニコライ一世の馬上姿の銅像が建てられております。さらにまた、レニングラードの冬宮博物館にはピーター大帝以来の各皇帝、皇后、おもな権臣の肖像が掲げられております。  さらにまた、露土戦争中激戦の行われたシプカ村——現在ブルガリア領にあります。——には雄大なる記念碑があり、この前で毎年盛大なる祭典が行われている。  また、一九五五年十月十三日、セバストポール市に対して、クリミア戦役百周年記念として赤旗勲章を授与し、盛大な式典が行われております等々、まだこういうような材料を私が集めればいろいろあるのでありますが、私が申し上げたいと思いますことは、このように主義が違っておるからといって歴史を軽視しておらないということを、われわれは深く認識しなければならない。この点から見まして、私は、世界の各国が、自分の歴史というものに対してこれを尊重し、またこれによって教訓を受け、さらにまた国民精神を作興するというような方途をとっておるのに、日本においてどうしてこのようなことが放置されておったかということに対して非常な不満を覚えるのでありますが、これについて大蔵大臣の御答弁を一つお願いいたしたい。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えいたします。  ただいま福田委員から外国に関する幾らもの事例について詳細な御報告がございました。私は、その御指摘になりました事案そのものは、福田君のお説にもありますように、歴史を尊重するということ、この一語に尽きると思います。過去をたずねることは、将来に対するとうとい教訓である、あるいはまた民族的な精神作興のかてになっておる、こういう御指摘、これまた私も全面的に共感を覚ゆる次第であります。  特に私お話の中で強く感じました点は、いわゆる主義が違うというような点にとらわれることなしに、過去の歴史に対して、各国とも、イギリスにしても、あるいはソ連にしても、またその他の国にいたしましても、この事実をどこまでも尊重していく、そしてそういうものに対して十分の敬意を表すると同時に、これが保存等についても万全を期している、この点を御指摘になりましたことについて強く打たれた次第であります。先ほど来お話しになりました三笠につきましても、同様の考え方からいろいろの結論が出てくることだろう、かように考える次第であります。
  37. 福田一

    ○福田(一)委員 そこで、一つお伺いをいたしたいのでありますが、かつて、この戦争前のことでありますけれども、軍艦三笠を保存することが議題に上りまして、明治時代のことではありますけれども、当時三笠は海軍省所属の艦艇としてありまして、海軍省所管の財産であった。そこで、海軍省は、三笠は御承知のように一ぺん爆沈したことがありますので、これを保存するために、今の金にして約一億円以上の金を投入いたしまして、これを修復し、修復した上でこれの管理を——三笠保存会という民間団体がありまして、この保存会に移して、そうして終戦の直前まで実はこの三笠保存会がこの管理をしてきておった事実があるのであります。今日三笠は大蔵省の国有財産としてあるのでありますが、これに対して政府は何らかの予算的措置を講じて、先ほど大蔵大臣が私の説に御共鳴をしていただいたように、主義主張は別にして、歴史を尊重するという意味においても、このために一つ相当な経費を出してこれを保存していく、こういうお考えがあるかどうか、一つこの点について御意見を承わりたいと思います。
  38. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 三笠の問題につきましては、ただいま御指摘になりましたように、かつては、三笠保存会が中心になりまして、これが保存、維持をいたしておったと思います。前大戦後におきまして、この扱い等も従前と事変りまして、大蔵省が所管するようになっております。最近は、政務次官などの実地をごらんになりましたところから申しましても、非常に荒廃に帰している、かような話であります。大へん残念しごくに思います。適当な保存の方法を考えるべきものだ、かように考えております。
  39. 福田一

    ○福田(一)委員 来年の予算の話をするのはいささか早いかもしれませんが、このように、今まで忘れられておった——事実私なども知らなかったのでありまして、この間見せてもらって初めてびっくりしたようなわけでありますから、私もその責任の一半を負うべき者の一人であるかと思います。しかし、知った以上は、そのまま放任するということは、私の政治的良心がこれを許さないのであります。そこで実は申し上げておるのでありますが、この際来年度予算の編成に当って大蔵省としては一つこれを十分考えてもらいたいと思う。聞くところによると、これは仄聞したことでありますから事実かどうかは知りませんが、大蔵省でも、この問題については、大臣をまじえてではないかもしれませんが、いろいろと研究されておるという話も聞いております。まだ結論がどういうふうに出たかよくは存じませんけれども、しかし、いろいろ正しいこと、国民として聞けば、なるほどそれは一つ何とかしておこうじゃないか、こういうふうな、だれでもがそれに反対できないこういう仕事に対して、私は国が一つの予算を組むということは決してむだなことではないと思うのでありまして、この点について大蔵大臣のお考え一つ承わりたいと思います。
  40. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 軍艦三笠を保存すること、これはもちろん私どもが果さなければならない責任を感ずるようなものかと思います。大へん意義のある事柄だと思います。従いまして、この保存を、また保管をどこでするが、また真に国民のためになるような方法で保管する、その具体的な方法も考究しなければならないと思います。また荒廃に帰しておる現在の状態を復元する処置もとらなければならないと思います。気持の上において三笠をぜひとも保存したい。先ほど来お話しになりましたように、これを保存すること、また復元すること、これは絶対に必要なことだ、かように考える次第であります。さように考えますと、もちろん予算等においても善処しなければならぬことは、申すまでもないところであります。問題は、具体的にどういうような保管方法を講ずるか、またどういうような方法で国民にこれを公開するか、復元するとしてどういうふうにこれを復元していくか、具体的に考究を要する点が多々あると思います。しかしながら、事柄の性質といたしましては、ただいま御指摘になりましたように、これはどうしても保存し、長く記念すべきものとしてこれを扱うべきである、この点につきましては私お説の通りに感じておりますので、予算編成等に当りましても十分御意向を体して善処したい、かように考えておる次第であります。
  41. 福田一

    ○福田(一)委員 大体私は大蔵大臣のお考えを承わりまして、非常に喜んでおるのであります。そこで、実は軍艦のことでありますから、方法論としますと、場合によっては今の自衛隊、防衛庁がその所管の財産としてこれを大蔵省から譲り受けて、防衛庁予算でこれを復元する。そして管理の方は三笠保存会にまかせるというような、従前のようなやり方をするのも一つ考え方であると私は思っておるのでありますが、これについて一つ防衛庁長官のお考えを承わりたい。
  42. 左藤義詮

    左藤国務大臣 三笠がまことに悲惨な現状に置かれておることは、国民の一員として私どもまことに遺憾に存ずるのでございまして、これが復元をせられ、国民の精神的な教訓として後世に伝えますことは、切望いたすところでございます。その福田委員のような御精神を生かしますためには、真に国民全体から盛り上ってきて、一紙半銭、国民の真心によって維持管理されることがふさわしいと存ずるのでございます。しかし、直ちに戦前のような保存会というものもなかなか十分な資力も集まらない。先ほど米国では立ちどころに集まったというようなお話がございましたが、なかなかそういうようにいかない。その間大蔵省で所要の、予算をおつけいただきまして、私どもの方でお世話をいたすことにつきましては、決してこれを辞するものではございません。
  43. 福田一

    ○福田(一)委員 どうも、防衛庁長官のお話は、実は私が今ここでこういう質問をしておりますと、軍国主義だ、またそういうおかしな質問をしておるというような言葉があるのに対して、少し遠慮をされているんじゃないかと私は思う。私はあまり御遠慮は必要ないと思うのでありまして、私たちは決して、軍艦三笠を復元したりあるいはまたこれを保存する方法を講じたからといって、平和に対する反逆をしようと思ってはおらない。それは現にロシヤあるいは中共等をごらんになってもそういう事実がたくさんある。そんなことを少しも御心配になる必要はないのであります。あえて今日そういうことを言うのは、いかに、われわれ日本人のうちに、敗戦がわれわれの魂を虫食っておるか。その虫食っておることを知らないでおるというところから、そういう言葉が出てきておるのだと私は思う。私は恥を知ってもらいたいと考えておるような次第であります。実は先ほどの防衛庁長官のお話では、いささかもの足らない感じがするのであります。私は、そういうような御遠慮をなさらないで、そうして、自衛という意味において今長官は責任を持っておるのだと思う。これは自衛という意味においては責任を持っておいでになるのですから、その責任を果すという意味においても、あの日露戦争当時ロシヤにずっと侵略をされてきて、もう押えに押えて押え切れなくなって、やむを得ず国民が一致団結して一丸となって戦ったあのときのあの気持、あの気持は、時と場合によっては自衛上今度われわれがやらなければならないことにつながらないとはいえない。私はそういう意味であまり遠慮をされる必要はないのではないかというふうに考えるのでありまして、この点についてもう一度長官のお話を承わっておきたいと思います。
  44. 左藤義詮

    左藤国務大臣 急迫不正の侵略に対して子孫民族を守ることには、私は全責任を背負っておるのでございまするが、三笠の問題につきましては、私は、ただいまの福田委員の熱烈なる御意見、また一方には野党のいろいろな御意見もあるのでございまするが、私は、国民全体が納得をして、これがほんとうに子孫に伝えるべきものであるという盛り上る熱情を期待いたすものでございます。しかし、現在見るも無惨な姿になっておりますので、これをどこかの役所が所管をいたしまして、国民の保存をするための熱意の盛り上ってくるまでの間、何とか一つ処置をしていただくということになりますれば、私どもは、軍国主義とか侵略主義とかいうものとは全然離れた意味におきまして、御縁のあるものとしてこれをお世話することは、喜んでお引き受けをするつもりでございまして、その点については福田委員の御熱意を私どもはよく体しまして善処いたしたいと思います。
  45. 福田一

    ○福田(一)委員 これ以上私がいろいろ申し上げることはむしろ蛇足でありまして、また事実はみんなわかっておる。わかっているが、それを今端的に出さない方がいいだろうという配慮に基いて答弁をされておるのだ、こういうふうに私は解釈しておきます。  そこで、こういうことは決してわれわれおとなが考えておるのじゃなくて、子供などには一つもこういう歴史などは教えてない。ところが、あれを見に行った子供は、みんないろいろ作文を作りまして、そして保存会あるいは伊藤さんのところその他へいろいろと作文を送ってきているというような事実があるのであります。その一、二の例をここへ持ってきておりますので、二、三分のことでありますから、これを読むことをお許し願いたい。一つは愛知県の半田市の人で山岡君という十五歳の少年でありますが、その少年の作文であります。これを読んでみます。   僕が三笠の現状を知ったのは昨年でした。ある雑誌の誌上にその記事を発見したからでした。三笠が横須賀にある事は前から知っていましたがそれほど無惨であったとは知りませんでした。かって連合艦隊の旗艦として世界に名をとどろかせた事を思えばあまりにもあわれであります。終戦と同時に日本のあらゆる伝統と誇りをきづつけられたにしろ戦後十有余年立派に独立国として立直り経済的にも安定し外国の車に乗るほどでありながら放置されて消滅寸前にある三笠を顧みようとしない大人に対して少なからぬ憤りを感じます。又日本海々戦や三笠を知らぬ友達を見る度にアメリカの民主主義の受け売教育をしている先生達にも不信の念をおぼえずにはいられません。今多くの大人達は三笠の再建や保存が再軍備と結びつきそして再軍備をすぐに戦争と結びつけて考えているようです。しかしこの考えは大いにまちがっていると思います。再軍備の賛否とこの問題とはこの際全く切り離して考えなければならないのです。三笠を作った目的は戦争にはちがいありませんが国家の安全を計る為であったからです。そして三笠は国民の熱望に答えて作られたからです。考えて見ればこの小国日本が世界最大の国ロシアを相手に戦いこれを破ったのです。これは国民の団結が旅順を落しバルチック艦隊を破ったのです。東郷元帥も乃木大将も国民の為国家の為に戦ったのです。三笠がその第一線に立って働き又傷ついた艦です。この大事業を誇り記念する為にこの老艦を保存するのは当然でありましょう。三笠は軍人の物ではありませんでした。国民全体の誇りでした。ここで三笠を消滅させたなら四千万人の当時の国民に何といって申し分けが立ちましょう。未来の数知れぬ国民に何の面目が有りましょう。私達はこのまま政府の力に期待してはおられません。それまで待ってはおられません。国民全体でやらねばならぬ仕事なのです。外国でもいろいろな国の誇りを保存しています。そして国民の胸の中にもそれをしまっております。いまの日本はつまらぬ外国のまねをするよりもこの事を学んで日本を世界の国々と肩をならべるような国にする事がもっとも大切であります。民主主義を再けんとうし外国かぶれの流行を廃してしまうべきではありませんか。私達は先輩の残してくれた伝統をそして歴史をほこるべきです。そして三笠を再建し保存するべきです。それが幾代も後の人に感謝される時が必ず来るでありましょう。僕も人がやらねば一人でもと思った事もありますが学生一人でなにが出来ましょう。三笠保存協会に大いに期待しております。全国の有志諸君願わくば御協力あれこういうことが書いてある。まだたくさんここにありますが、同工異曲といいますか、大体同じような趣旨のものであります。どうか一つ政府当局におかれては、こういう人たちのほんとうの声を気持をよく尊重され、主義とは別にこの歴史を尊重するのであるという観点に立ち、また精神を作興するためにはこういうことが非常に必要だということをよく認識され、そしてこの問題について善処されることを期待いたしまして、私の質問を終らせていただきます。
  46. 早川崇

    早川委員長 横山利秋君に質問を許します。
  47. 横山利秋

    ○横山委員 三笠は荒廃をしているそうでありますが、それよりも深く日本経済の荒廃の方が私どもにとってはきわめて重大だと思うのであります。  そこで、いろいろと御質問があるのでありますが、時間を節約いたしますために、まずもって大蔵大臣が今の日本の経済をどいうふうに見ておられるか、それを率直に伺った方が、あとの話が早そうであります。申すまでもなく、今日経済白書が出、水田報告が出、さらに加えて日銀総裁の山際さんから、新しい論理といいますか、そういう説すら出ておって、全く現状分析それ自体がこんとんとしておるわけです。この際財政金融の大元締めである大蔵大臣から、今の日本の経済をどういふうに見ておるかという現状認識についてお伺いをいたしたい。
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現在の経済状態をどう見ておるかというお尋ねでございます。最近の経済情勢を分析いたしましたものは、御指摘になりましたように幾つも出ております。私は、前特別国会を通じて、すでに特異な経済状態は一応解消した、またこの状態がさらに悪化するとは考えないということを実は申し上げました。同時にまた、当時申し上げたと記憶いたしておりますことは、昨年の暮あるいは秋時分に予想したよりも違っておる事態が三つばかりある。その一つは、在庫調整が相当おくれてきておる。もっと早い、もっと短かい期間に調整を終るかと考えたが、ここに調整のズレがある。もう一つは、国際収支の面におきまして、外貨の黒字の状況が予想以上に大きくなっておる。その原因は、輸出が非常に伸びたという意味でなくて、むしろこれは御承知のように輸入が縮小されて、その結果国際収支の面において黒字を現出しておる。その黒字が昨年想定したよりも大きい数字に上っておる。さらにまたもう一つは、わが国経済に重大な影響を及ぼすところの国際経済がいわゆる不況の状況にある。これがなかなか深刻なものがある。この三点が昨年暮れ時分に想定しない状況のものではないかと思う。そういう意味から申しまして、今日当面しております国内の経済情勢、これは特別国会時分におきましてはしばらく模様を見たいということを申したのでございましたが、今日になりまして一、二カ月たちました状況から申しますと、ただいま指摘するような三点について、今日の経済不況というか、不振の状況は、この三つの条件のもとにおいて引き続いておるのでありまして、これを短期間に脱却することはなかなか容易でないのじゃないか、かような見方をいたしております。  くれぐれも誤解のないように願いたいと思いますことは、私はただいま申すような三点を指摘し、同時にまた当面しておる経済が容易でないということは申し上げますが、さらにこれが下降していき、もっと苦しい状況になる、いわゆる二重なべ底とでも申しますか、そういうような状態になるんだというような見方はいたしておりません。悲観するような状況だとは思わない。これは他の消費の力等なかなか根強いものがある。あるいは経済の面におきましても、設備投資の面もそれぞれ働きかけつつあるし、あるいはまた在庫そのものも調整の段階に入っておる。そのスピードはいかにものろい。のろいが、とにかく幾分かずつでも調整が進みつつある、さようなことを考えますと、悲観するような気持にはもちろんならない。それかといって、二、三カ月前に一部の人が申しましたように急速にこれが上昇するとも考えられない、かような考え方をいたしておるのであります。かように経済の不振の状況が長期化いたして参りますと、それぞれの産業の面等におきましても、長期化されたもとにおきましていろいろ対応策を講ずべきような事態も起きてきておる。繊維関係等がそういう意味では最もはっきりと苦しい状況を現出して参っております。しかし、これとても、今日それぞれの対策をとることによりまして、今日当面しておる苦境を脱出することができるのじゃないか、かような意味で、決して悲観はしておらない。それかと申して楽観はしておらない。やはりきめこまかな措置をそれぞれとっていく。そしてより悪くしない。これをできるだけわれわれの力も加えて上昇さしていくような努力を払っていきたい、かように考えておる次第であります。
  49. 横山利秋

    ○横山委員 今の景気の情勢の分析については、あなたは、底入れはないけれども、それが上昇に転ずるようなことはなかなかない、もうしばらくこれは続くであろう。その意味では、この間本委員会でおっしゃったように、将来楽観もしないが、悲観もしないということらしいのでありますが、少くとも経済白書や水田報告やあるいは山際さんの話やまた私ども社会党が考えておりますものをいろいろ分析をしますと、三つの方向に分れると思うわけであります。一つは、景気の下降局面はまだまだ続いて、底入れはこれからであるという見方であります。もう一つは、あなたのおっしゃるような、当分はなべ底がずっと続くという見方、もう一つは、景気は底入れしてほどなく上昇に向うであろうという楽観の説がございます。あなたは、そのまん中をとられて、これ以上は悪くならないだろうという判断だそうであります。ただ、そういう判断をしながら、今お話しになった三点のうちの第一点は、在庫調整がさらにおくれる、これは見通しを誤まった、それから国際経済がこれほど不況になるとは思わなかった、こういう点については明らかにあなたも去年予想しなかったことであると言っておられる。しかりとすれば、当分なべ底状態が続くであろうという判断はどこから一体出ているのであるか。私は、これから具体的に、第一の私どもの言っておるような底入れがさらにこれからある、二重底かあるいは底割れがするという判断を私どもは持っておりますが、なべ底状態が続くという判断は一体どこから出てくるのであろうか。このまま放置しておいてなべ底が続くというのか、なべ底を続かせる施策をこれからやるからなべ底になるのか、そのどちらであるかを明らかにしてもらいたい。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん今日の経済そのものを自由に放任しておくような考え方は持ってはおりません。いわゆる自由経済だとは申しましても、今日必要がありますならば経済に対するささえもしなければならないし、また必要があればもちろんブレーキもかけていかなければならないのであります。そこで、今日の当面しておる状況、これは苦しい状況であることはもう私どもも了承いたしております。それに対する処置が、あるいは金融の面、あるいは財政の面等からそれぞれ行われる。また、特殊の産業に対しましては特殊の処置を講じていく、こういうことがあるわけであります。そういう一つ二つの話をしてみますならば、第一に、財政の面から申しますと、三十三年度予算は編成をいたし、すでに協賛を得てこれを公布いたしておりますが、この実施の面においてなお私どもが工夫する余地があるのではないか。言いかえますならば、公共事業費等は繰り上げて使用することができはしないか、そういう点が一体どういうような経済的な効果をもたらすか、こういうような意味から、まず私どもが採用いたしましたことは、今日公布されておる三十三年度予算、これを一つ十分働かしてみることが第一の方法じゃないか。その意味で公共事業費等の繰り上げの方法をただいまとっておる最中でございます。また、金融の面におきましては、前特別国会ですでに問題になりましたように、公定歩合を二厘下げた、あるいは市中金融の金利もこれに追随して安くなった、こういうような事柄があるわけであります。特に大きな問題として申し上げるのは、この二つが今日までとられておるように思います。
  51. 横山利秋

    ○横山委員 とおっしゃることは、私が質問をいたしましたように、何かの施策をこれからやって、また今やって、そうしてあなたの所懐する当分なべ底状態を続かせるという政策に基いておるのであるかということであります。もしもあなたの施策をしなかったならば、底入れがこれからさらにひどくなる、こういう判断に立って、そのために、あなたのいうなべ底を当分続かせるためにそういう施策をしているのかどうか、それをお伺いしているのです。
  52. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん、今日の状況から脱却するという意味で、ただいま申し上げるような処置をとっておる。しかし、もう一つは、国際的な経済の不況というものに対しましては、これは私どもなかなか処置のできにくい問題であります。これはわが国経済が世界経済の影響を受ける、拘束を受けておることは、これは横山さんも御承知通りだろうと思います。この世界経済の見方についていろいろの見方もあるようでございます。最近のアメリカ自身における約一カ月ばかり前のアメリカ経済の見通し等についての意見は、もうすでに一応底をついて、これからは上昇の方向に向っておるというような予測を立てておるところもあるのでございます。従いまして、世界経済の状態が総体として底から立ち上るような状況になってくれば、これまたわが国経済にも好影響を与えることは容易に想像がつくのであります。しかし、私どもは、この経済のあり方というものを、自由経済とは申しましても、ありのままにこれを放任しておくという考え方はもちろんございません。この点では、統制経済のような強力は用いませんが、その経済のあり方について必要であればささえもやるし、必要であればブレーキもかける、こういう措置をとっていく。だから、特別国会の際に一、二カ月の情勢の推移を見たいということを申しましたが、これは、ただ静観し、ただ手をこまぬいて見ているわけではない。この経済の情勢に対しましては、やはり時々またそれぞれの部門に対しまして時機を失さない対策はもちろんとっていく、こういう考え方で終始しておるつもりでございます。
  53. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問にまともに答えていない。なぜそれが言えないんだろうか。私は自分の意見は別として佐藤さんの意見を整理している。私が言っているのは、あなたが今やろうとしておる公定歩合の引き下げ、それから公共事業を一割繰り上げるとかというものは、実は当分なべ底状態が続くという判断でなくして、そういう状態を続かせるという考えに基いてやっているのではないか、こう言っているのですよ。これを、そうではないならそうではない、そうであるならそうであると一つ言っていただければ、次の問題に移れるのです。
  54. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来その通り言っている。それを抜けるためにこういう処置をとっているとはっきり言っています。
  55. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、大蔵大臣考えとしては、当分このなべ底状態を続かせるのだ、そのための施策を今やっているのだ、こういうふうに了解をいたしました。  そこで三木さんにお伺いをしたいのでありますが、少くとも経済白書というものが年々歳々出ておりますが、これは、単に経済企画庁の仕事でなくして、政府が国民に訴える規模と内容を持ったものであり、その経済の認識というものは広く政府意見として考えられるのが当然である。従って、三木さんは、この経済白書について全責任を持たれるばかりでなくて、政府が経済白書について全責任を持っておる、こういうふうに考えておりますが、いかがでありますか。
  56. 三木武夫

    ○三木国務大臣 総括論としてはそうであります。
  57. 横山利秋

    ○横山委員 どういう意味か私にはよくわからないのですが、そうすると中には政府意見でないものもある、個人的意見があるのだ、こういうふうにお逃げなさろうとするわけですが、骨格を貫く一つのものの考え方がある。それをあなたの言うように総括論というふまじめな御答弁では、それはよそならともかく、国会としては理解ができません。
  58. 三木武夫

    ○三木国務大臣 企画庁長官としては全責任を持っておる。政府としても、やはり、あの白書は膨大なものですから、一々読んでおるわけではないので、「てにをは」は知りませんけれども、荒筋は政府の方針として政府の了承も得ております。
  59. 横山利秋

    ○横山委員 私もきょうもらった経済白書を詳細に全部読んだわけではないのですけれども、しかし、お互いに政治家としてものを語る上においては「てにをは」は私は知りませんよということは、こういうところでおっしゃることではない。用心深くおっしゃったか知りませんけれども、これは私もあげ足をとろうとは思いませんから、責任を持って一つ理解をしてもらいたい。  そこで、経済白書は明らかに今日の経済の事態というものを深い意味で認識をして、かなり積極策といわれる立場に立っておる。これに対して、水田報告なるものは、水田さんそれ自身はきわめて積極的な人であるにかかわらず、水田報告は、きわめて消極策といいますか、経済白書と少し段階の違った考え方に立っておることは自明の理であります。企画庁長官として、この問題についてどういうふうに理解をされ、どういうふうに対処をなさっているわけですか。
  60. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現在の段階として一応水田報告というものはおおむね妥当である、こう考えております。
  61. 横山利秋

    ○横山委員 そういう問答を続けておりますと時間がたつばかりなんでありますから、一つ問題の焦点だけをお互いにはっきりして、これは政府として首肯しがたい点があるとか、こういう点はどうも政府としてもまだ結論がついていないとか、こういうふうにお答えを願いたいと私は思います。少くとも経済白書の指向しておりますものは、山高ければ谷深しと言われておりますように、昨年の山が非常に高かった、従ってその反動というものは谷が深いんだ、この深い問題についての経済政策、景気政策のあり方というものが次々に書いてあるわけであります。それに対して、水田報告というものは、そういうふうには理解しないで、景気の循環論というふうには見ないで、経済成長率の渋滞というふうに見ているわけであります。しかも、これは議論のあるところではありますけれども、在庫調整による景気後退であるという見方に対して、そうではなく前段では設備投資過剰というふうにも見ておるわけであります。そう考えますと、これは三木さんが腹の中ではちゃんと御存じであるほど見方としては懸隔のはなはだしいものであると私は存じているが、経済白書の全責任をとられるあなたは、この水田報告に対してどういうようにお考えになっておられるかという点をいま少し明確にされて、そうしてこれからのものの考え方を明らかにしてもらいたいと思うわけであります。
  62. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今御指摘になりました点ですが、水田君は、これを、景気循環という声もあるけれども、経済成長の渋滞であると見た。そういうふうな言い方であります。今日のような一つの近代政治といいますか、そういう場合には、昔経験したような景気循環はない。非常な極端な不況というものはない。それはなぜかというならば、それをささえるべき諸般の経済政策というものができている。そういう点で、極端な景気変動というものが、昔のようなものはないけれども、しかし、その波動は、非常に深く大波ではなくても、しかし景気の循環はあるのだ。今日においてもあるのだ。それは端的にいえば水田君の言うような経済成長率というものが伸び悩んでいくということが、われわれとすれば景気循環の一つの波動であるということで、両方のものの考え方がそう違ったものではない。大体根底においてはそんな大きな懸隔はあるものではない。言葉の表現で多少言い回しが違っておるけれども、認識というものはそんなに違った点から出発しているのではない、こう考えておるのであります。
  63. 横山利秋

    ○横山委員 ここで経済理論に関する学説をやっても仕方がないから、私は時間の節約上やめますけれども、しかし、経済渋滞の理論と、それから経済循環の理論と、山際さんのおっしゃるようなあのシュンペーターのような理論と、理論の形の上ではずいぶん違いがあるということは、これはもう私どもの大先輩であるあなたが腹の中では承知をしていらっしゃると私は思う。ただ、そういう学説の理論をやるよりも、現実の事態としてはどうなのか、どういうふうに理解をするかの方が大事でありますから、一つ現実の事態からいって、ではどうあるべきかという点で私は進めてみたいと思うわけです。  先ほどの大蔵大臣お話は、言うなれば、先ほど分析した第一の、このままこうやっておけばまた悪くなるという認識に基いて、それを手直ししてなべ底を続かせる政策に立つ、こういうふうに私は理解いたしましたが、従って、このままほおっておけばさらに悪くなるという認識については、佐藤さんと私とそうは違いはないと思うのです。では、今の話のような、公共事業投資を一割繰り上げるとか、あるいは公定歩合を秋になったらまた下げるくらいのことで、これ以上悪くなるものが横ばいにできるであろうかいなかというところが肝心の問題だと私は思います。私はそのために以下数項目の問題を取り出して政府の認識をただしたいと思うのでありますが、第一は、今のこの状態は、ある意味では形の上では横ばいのように見えるけれども、累積された近代設備とか生産能力に強度の操短をしている実情である。しかもその意味では過剰の労働力をまだかかえたままの不安定なものではないか。この問題を考えてみますときに、強度の操短を一体いつまで続けられるであろうか。操短をしておればそのままコストが余分にかさんでいくのであります。いつまでも続けられるものではないのではないか。これが第一です。第二番目には、八月の企画庁の月例経済報告を見ましても、在庫調整は、大蔵大臣のおっしゃるようにずっと長引いている、いつ一体これが終るのか予想がまだつかぬ、こういう状態ではないか。在庫調整が長引けば、その間いろいろそれに伴ってまた問題が出てくるではないか。第三番目に、盛んな設備投資に基く新規生産能力は、ここで飛躍的に増大する可能性を持っているではないか。去年からの状況というものが設備投資によるものだという定説はかなり強いものであります。その設備投資が今度は稼働力を飛躍的に倍増してくることになるのではないか。いかに操短といっても、操業度の低下に伴うコスト増と企業の負担能力が、先ほど言ったように問題ではないか。第四番目には、国際収支の黒字は輸出の裏づけのない不安定なものではないか。これが一体脱却できるという見通しは政府に今日あるであろうか。第五番目に、底入れ指標の卸売物価を見ましても、五月以降ずっとこれが下降の状態です。かりにこれが反騰に多少転じたといたしましても、生産者に、コスト高を伴えば、利潤の増大を約束されるわけにはいかぬのではないか。第六番目に、継続工事の問題です。三十二年度の財政投融資の八割までが継続工事であったことを考えますときに、継続工事がここで終るのです。終ったあとの仕事というものは一体どうなるであろうか。あなたは、公共事業を一割繰り上げると、こう言っていらっしゃる。しかし、その口うらから、大蔵省の首脳部の意見を聞きますと、そんなに、用意も計画も準備もできていないところへ、金だけやったってしょうがないという意見が実際問題としてある。そうすると、その一割繰り上げという問題も、実行性という意味においてはどうであろうか。第七番目に、滞貨金融限界がやはりある。第八番目に、九月期の決算をずっと見てみますと、無配が続出をしておる。大企業の利益の状況を見ますと、そうひどくないような気がするという、形の上ではそうは見られるけれども、それは明らかに今日までの余剰利益をそこで食いつぶした格好になっている。今後の問題としては、私どもこの間国政調査をずっとして参りましたけれども、もうこれ以上労働者をかかえておれない、秋になったら首を切るというところが現にある。ここまではともかくもやってきたけれども、これからはもうだめだ、これからはやっぱりなたを振わなければならぬという意見が各所にあるわけであります。これらの状況を考えてみますと、単に公共事業の一割繰り延べや、あるいは財政投融資をどうなさるか知りませんが、それらのことで今日の状態というものが脱却できるものではない。このなべ底状態を大蔵大臣の所期するように続かせるという方向にはならぬ。はるかにこれよりもさらに深い谷間というものが待っておるのではないか。このこと自体が、経済白書が端的に言ったように、第一幕は在庫調整劇である、第二幕は設備投資の過剰劇である、そういうふうに言ったように、第三にはさらに不況の谷間というものがここに待っておると私は思う。これらは具体的な例証を引いたのでありますから、政府側におきましても、今私の言ったような点からいって、これまでなおかつなべ底状態が続けられるんだという確信があるであろうか。そういう確信のあるものがあったら、一つここに出してもらって、私と論戦してみたい、こう考えるのであります。
  64. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いろいろ現在の経済情勢を分析するについて各方面から見ておられる。私どもも、もちろん各方面から経済情勢を分析して、先ほど来申すような結論を実は出しておるのでございます。  もう一つ、非常に抽象的なお話をして恐縮でございますが、やはり、年度の状況等から見ても、下半期と上半期は財政資金の揚超あるいは払い超とでも申しますか、そういうような関係一つは影響して参っております。金融の面におきましても緩急がそれぞれあるわけでございます。総体的に申しまして、私どもは、今日当面しておる経済に対しては、輸出第一で、輸出を振興することによって需給の調整をある程度はかり得るのではないか。もちろん輸出の面におきましても非常な困難さはある。しかし、その困難さを克服するような条件緩和等もそれぞれの国に対して考えていく。これらも具体的にただいま進めつつあるのであります。しかし、一面において、特殊の産業において強度の操短が行われておる。これは見のがすことのできないものであります。あるいは、横山君の御指摘になりましたように、設備が非常に近代化されておる。そういう意味で、これが非常に能率的な働きをするということになると、供給の面では非常な余裕をもってやらなければいかぬ。そういうような際に需給の調整をどうしてやるか。今のままの操短をさらに長期化するならば、あるいは失業者も出てくるだろう、こういうような心配もあるわけでございますが、しかし、私どもは、在庫調整の面において、製品の面ももちろん考えて参りますが、あるいは原材料等の在庫の状況であるとか、あるいは設備投資に対する意欲の強度の問題——強いか、弱いか、これらの点を勘案して参りますと、もうすでに昨年のような一時のぼせ上った状況からはそれぞれさめてきておる。しかし、御承知のように、近代設備をするといたしましても、それを急に昨年からことしになってばったりとめるわけのものではない。やはり継続的な設備の管理はある程度やっておりますから、そういう意味においては、投資は必ずしも急激には減退をしない。しかし、新しい投資は少くとも押えてきておる。こういう点から見ますと、新しく増加するという点についての意欲はよほど減退してきておる。ここに一つの落ちつきがあるのではないかと思う。  物価そのものについて、卸売物価についての見方もいろいろございますが、これも大体一通りただいまのところでは横ばいの状況をたどっていはしないか。物によりましては、調整の進んできたようなもの、供給の減退のあるようなものについては、上向きの状況すら示しておる。こういう点は私どもは好材料に実は考えるものでございます。また、滞貨金融等に限度があるということは、もう御指摘通りでございます。また、かような滞貨金融というような処置をとること自身が、経済の正常なものとはいえない。私どもは、今日当面しておる経済に対しては、なるほど不振であり、不況ではあるが、この際にやはり質をきれいにしていくといいますか、質の向上に特に重点を向けていく、そうして需給の調節は主として輸出の面においてこれをまかなっていくという方法をとってみたい。  輸出の金額そのものとしては予想したものをはるかに下回っておるということで、貿易を非常に悲観する向きもございますが、国際価格の下落等を考えてみますと、数量的には必ずしも悲観する状態ではない。  これらの問題を勘案いたしますと、これはいろいろの議論になり、また見解が分れて参ってくることとは思いますが、私どもは、ただいまの状況は横ばいの状況であり、これに対して適切にして時期を失しないような措置がそれぞれとられていくならば、これはさらに下降するような危険なものではない。実はかように考えておるのでございます。
  65. 横山利秋

    ○横山委員 私の論理も不十分かもしれませんが、少くとも私は総括的にとらえているわけです。しかし、今の大臣お話は、引例的にとらえられて、そうして全体を見ておりません。かりにあなたのおっしゃる輸出の面を取り上げてみましょうか。輸出は三十一億五千万ドル達成できるというふうにお考えの方は政府部内に一人もおらぬと思うのです。なるほど延べ払いやいろいろな方式を考えていらっしゃる。しかし、それらが、今日の輸出を飛躍的に増加させて、目標額を達成し得るものであるかどうかということについては、だれしもそうは思っていない。衰えんとするものを何とかしようというて、ろうそくの火をかき立てているにすぎないのではないか。もしも輸出の飛躍的増加をせんと欲するならば、政府首脳部の一部でもお考えのように、中国の問題を百尺竿頭一歩を進むべきことこそ今日必要なのではないか、アメリカとの片貿易を是正することこそが根本的に必要なのではないか、あなたが反対しておられるブラジルのオープン・アカウントの問題についても考え直すべきではないか、こういうことが言われると思う。従って、あなたの言う輸出についての諸般の措置といったところで、これが今日好材料の原因には何らならないと私は思う。  それから、設備意欲が減退した。これはまあ認めましょう。しかし、私の言っているのは、設備意欲が今日大きくなっておるということを言っているのではなくして、あなたの言う設備意欲が去年からべらぼうになった、その跡始末をどうするかということなのであります。ここに巨大にできた設備投資、通産省の試算の稼働能力調査を見ますと、製造工業主要六十六品目のうち、三十一年三月から三十二年九月までには三三%の上昇を示しておる。これが大体稼働力を持ってきた。その設備がこれから動き出すという段階にある。あなたは動かしてはならぬとお考えらしい。しかしこれはもう現に動いておるわけです。これをどうするか。いわゆる白書にいう第二幕がこれからでき上るのではないかということを私は心配している。あなたは意欲が減退しているから心配しないと言っているが、でき上ったそのものが心配なんです。こういうふうに私は言っておるから、あなたの論拠もここに成り立たない。  卸売物価の問題についてはある程度認めます。認めますけれども、先ほど言ったように、かりに反騰に転ずるにしても、生産者のコスト高が伴うと、利潤の増大は約束するわけにはいかぬということになってくる。そう考えて参りますと、大蔵大臣のいわゆる楽観説なるものは何ら根拠がないのではないか。それをしも、あなたが多少の、公共事業の一割とかあるいは公定歩合の引き下げを——おやりになるかならぬか私知らないのですけれども、水田報告に言っておることだけではいかぬ。あなたはどうも水田報告すらも一生懸命防衛線を張っていらっしゃるらしいのでありますが、そういうことで今日の経済というものが保てるのであろうか。具体的なあなたの引用を引いて申し上げたのですが、重ねてあなたの所信のほどを一つ披瀝してもらいたい。
  66. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 総体の経済の把握が大蔵省でできてないというおしかりのようですが、私は責任を持って把握しておる。このことははっきり申し上げ得るのであります。私は一、二の例について申し上げました。不幸にして横山君の所説とやや違っておるようでございますが、横山君のお話はどうも私が申し上げたところの真意をつかんでいただいておらないんじゃないかという、実は心配を持っておるのでございます。それは何か。私は、現状そのものが、これが好況だという表現はもちろんしておりません。また現状そのものがほうっておけば必ず上向いていくのだというような考え方も持ってはおりません。今日当面しておる強度の操短というか、この操短の事態はこれは一日も早く解消されなければならない。これはもう私どもの今日対策の問題としてまず第一に取り上げるべきものなんです。経済を正常化するということです。しかし、今の状況では、そういうことを望んでもできない。操短をしなくてもいいような状態を作る、経済が正常化する、そういう状態にする、この努力はどこまでも私どもしていかなければならないのでございます。実はそういう意味においての努力をただいまやっておる最中でございます。しかし、それが、今言われるように、どうもやっておることが二階から目薬じゃないのか、あるいは非常にけちけちしたやり方じゃないか、こういうような御批判はあろうかと思います。あろうかと思いますが、私は経済そのものに対する対策としては、そういう行き方が望ましい。こういうものに対してこれが名案だといって打ち出すことの方の危険を、実は前から警戒をいたしておるのであります。私の考えるところでは、もう先ほど来何度も申し上げたのでございますが、経済そのものは質的に非常に弱い経済なのかどうなのか、こういう点が一つ問題があろうと思います。外国の例をとって申せば、これは大へん当らないことになるでございましょうが、先ほどの答弁のうちに一言触れましたアメリカの経済については、もうすでに上昇、上向いてきたというような見方をしておる向きがあるということを指摘いたしましたが、これなども、かような予想を立てておるものの一つには、その経済が健全であるかどうか、本質的な問題が一つある。アメリカの経済はそういう意味では本来非常に健全だ、そういう意味で、特殊な財政的な措置等が時間を与えたことによって効果を上げつつある、もうそういう意味で二重底に落ち込むというような危険を感じないという予想を立てておるのであります。私ども日本の経済そのものについて見ますと、日本の経済くらい国際的な影響を敏感に受ける経済はあるいはないということが言えるかもしれない。これは、企画庁の報告その他を見ましても、また昨年の好況というものを感じましても、いいにつけ悪いにつけ非常に敏感に感じておる。そこに経済に対しての実態というものがある程度わかるような気がするのであります。そういうような日本経済に対する処置として、これは国際的経済情勢の影響も多分に受けるから、その四囲から受ける影響もさることながら、せっかく経済の実態として持っておるこの設備能力とか、生産能力だとかいうものが十分に働くような素地を作らなければならぬ。これにはやはり需要の面でいろいろ喚起していかなければならぬと思いますが、この需要喚起の方法としては、やはり輸出による需要の喚起の方法をまず私どもとしては採用していく。現在日本の当面しておる日本の国内経済そのものも、本質的にはなお力もあり、また敏感な影響を受けるというが、やはり健全な面もあるのでございます。そういう意味ではこの需要喚起を輸出にたよる、こういう方法が望ましいだろうし、また、民間金融にのみたよるということでなしに、せっかくこの三十三年の経済を予想して作った三十三年度予算というものがあるのだから、この三十三年度予算が十分に効果を発揮するように、この予算の運用に当っても、そういうことがまず第一に日本経済に対して対処すべき方法だ、かように実は考えておるのであります。私はこの方法をもっていたしますならば、今日当面しておる経済については十分対策が立ち得るのだ、実はかような見方をいたしておるのでありまして、最後にこの点をつけ加えまして、一部でいわれますように、今日当面しておる日本経済は非常に弱体で危険なものでないということだけ強く御披露いたす次第でございます。
  67. 横山利秋

    ○横山委員 最後の言葉がどうも気になるというか、考え方が問題だと思うのですが、日本の経済が弱体でなくて健全である、それから最初の話の非常に底が浅いということと、どういう関係をもって言っていらっしゃるかわかりませんが、少くもと私は日本の経済がいわゆる俗にいうところの底が浅いものだとは思っておりません。なぜそういうことを言うかというと、実は日本経済自体の問題でなくて、日本経済が特にアメリカ経済によって影響させられておるから、アメリカ経済の動揺によって日本の経済の底が浅く見えるのだ、こういう考えを私は持っておるわけであります。ですから、かりに、あなたがおっしゃるように、今後日本経済の安定的発展をするというのであるならば、小手先の問題でなくて、根本に触れた貿易構造の問題や経済の仕組みの問題に触れなければ、これは決して話のつく問題ではないと思っております。しかし、これは意見が相対立するところかもしたませんから、もう少し具体的に問題を進めてみたいと思いますが、今少くとも政府部内においては経済白書が出て、それから水田報告が出たという段階にあります。そのいずれの対策を採用なさるのであるかどうかということが、世間の見ておるところであります。聞くところによりますと、今月末か来月初めに、経済企画庁で、さらに明年度の見通しというものをお作りになるそうであります。これは一体どういう内容のものでありましょうか。内容というのはわかるのですけれども、どういう性格を持つものでありましょうか。少くとも経済白書を出した企画庁が明年度の見通しを作る際に、経済白書からひどく離れた、いわゆる水田報告を政治的に採用するというようなばかなことはなさるまいと私は思う。政府として経済白書と水田報告の取扱いをこれからどうなさるのであるかということを、どなたでもけっこうですが、お伺いをいたしたいと思います。
  68. 三木武夫

    ○三木国務大臣 企画庁の作業は、たとえば今御指摘になった輸出の目標にしても、あるいは経済成長率、いろいろな経済の指標になっておる問題があるわけであります。ところが、実際の経済の推移によって多少それらに再検討を加えなければならぬ必要も起っていることは、御指摘通りであります。そういう点、下半期並びに来年度の日本の経済の見通しというものを多少数字的に検討してみたい、その数字が今後政府の基本的な経済政策を出す場合の基礎になるものである、こういうふうに考えておるわけであります。
  69. 横山利秋

    ○横山委員 三木さんのお話というのは、どうも防衛的にお話しなさって、私の言っていることにちっともすなおに答えていらっしゃらないのですが、私の言っているのは経済白書と水田報告との矛盾をどういうふうに調整なさっていくつもりであるかどうか。それが今月末か来月初めに出る経済企画庁の長期見通し、これが実は予算編成の波に乗るのではないか、その意味でどうお考えなのかとお伺いしておるのです。
  70. 三木武夫

    ○三木国務大臣 盛んに経済白書の考え方と水田君の述べられたものに矛盾撞着があるようなお話でありますが、まあ多少ニュアンスの違いはあるでしょうけれども、根本的に大きな違いがあるとは考えられない。従って、水田報告なども政党内閣でありますから尊重もいたしますし、われわれはわれわれとして、企画庁は長い経済の動向に対していろいろな機関を持ち、経験を持ち、そういう基礎の上に立って、そう政治的にものを考え考えはありません。やはりもう少し合理性の上に立って、日本の経済の動向に対して見通しを立てる、その上に立ってどういう経済政策を立てるかという場合に、それは政治的な考慮も必要でしょう。企画庁の作業はそういうものである。その上に立って政府の今後の経済施策というものを打ち立てていきたいと思います。
  71. 横山利秋

    ○横山委員 では、大蔵大臣にお伺いをいたしますが、水田報告は、臨時国会においては補正予算を出さない、一月から十五カ月予算を組む、こういっておるのでありますが、これはどういうことなのでありましょうか。臨時国会において景気対策として国会に上程する法律案、予算案はなし、こういうお考えでありましょうか。それからもう一つは、十五カ月予算というものは一月から三月までの補正予算を出し、そうして四月からの明年度予算を出す、こういうことでありましょうか。
  72. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 臨時国会に補正予算を出さないということは、これは政府並びに党のはっきりした考え方でございます。しかし、もちろん非常な慎重な言い方をいたしますならば、もし非常な災害でも起れば、その災害予算というものを考えるかもわかりませんが、当面する経済に対する対策としての補正予算は組まない、こういうことで、これは政府も党もはっきり意見は一致しておるのでございます。問題は、通常国会に入った際に一体どうなるか、ただいま言われた十五カ月予算というものに対してどういう見方をしておるかということでございますが、これは今日当面しておる経済がなかなか困難なものであるから、これは容易なものでないのだ、そういう意味で、もちろん当面する経済に対してはそれぞれの処置をとってきておるだろう、ことに、水田委員会におきましてのあの報告を見ましても、一面輸出振興による需要の喚起、さらにまた公共事業費等財政の面における運用によりまして対策を立てていくということを、実は申しておるのであります。ただ、問題は、予算の繰り上げ使用等をいたしてみた際に、来年度との間に相当の空白事態が起るという危険があるのではないかというところまで心配をして、来年度予算は来年度予算だが、ことしの暮れ以後の動きというものについても十分な注意をしろというのが骨子のように、私は理解しております。で、お尋ねを当然受けることであろうと思いますので、もう一言つけ加えておきたいことは、ただいま繰り上げ支給で公共事業費等十分の効果を上げておる方法を、建設省あるいはその他の関係省に対しまして慫慂いたしております。これは、繰り上げ支給ということを申しましても、三十三年度予算全般について繰り上げ支給というような考え方をいたしておるわけではもちろんございません。特に公共事業費等について、しかもそれが経済に及ぼす影響等をも勘案しての考え方であるということ、これは申し上げるまでもないところであります。そこで、実際の各会計年度における予算の実施状況等を考えてみますと、相当多額のものがいつも翌年に対して継続工事として施行されておる。これは予算の完全実施の面から見まして必ずしも望ましいことでないし、こういう際に、この経済に対する対策から見ましても、これを是正することができるならば、これに越したことはないのであります。こういう意味で継続工事を減少させる。しかし、何と申しましても二千億に近い金の公共事業でございますから、全然繰り越しがない、かような状態はもちろん起らないと思いますが、過去毎年のように出て参りましたような多額のものは繰り越さない、できるだけこれを年度内で消化していく、こういう方針をとることが当面する経済に対しても好影響を及ぼす、かように実は考えておるのであります。従いまして、この十五カ月予算というものは、あるいは通常国会において当然補正を考えておるのではないか、前提としておるのではないかと思われるが、これはさにあらずとはっきりお答えをいたしたいと思います。私はこの補正予算を組むことに絶対に反対するものではもちろんございません。しかしながら、一部で言われますように、何でも補正予算を組むことが現在の経済に対する対策としてきめ手であるかのような言われ方をするについては、私には異存がある。そういうものでないのだということを実ははっきり申し上げたいのであります。問題は、経済に対する当面の対策として予算を一体どうするかという問題としてお考えになりますと、ただいま申し上げるようなことが私の考え方でございます。しかし、もちろん必要な場合においてもこれは絶対に組まないというようなきゅうくつな考え方でないことは、誤解のないように願いたいと思う次第でございます。
  73. 横山利秋

    ○横山委員 お伺いを具体的にすればするほど、佐藤大蔵大臣のお考えは消極的である。これは驚いたことだと私は思うわけです。あなたの今お話しになった公共事業費の繰り上げ支給というのはおかしいので、これは繰り上げ実施だと思いますけれども、このこと自体でも、失礼ですが、何か官僚から教え込まれたような感じが非常にいたします。誤まりですよ。なぜかといいますと、あなたの論を採用して議論いたしてみましょうか。繰り上げる、繰り上げれば継続工事がなくなる、だから三月一ぱいまでの仕事には困らない、こうおっしゃっておられる。しかし、そのこと自体は、四月から予算が発動して、実際に仕事をする四、五、六の仕事がなくなるということなんです。勘定合って銭足らずということはこのことです。だから、あなたの言うように、補正予算を組まずに三月まで仕事がないようなことにはならぬとかりにいたしましても、四月、五月、六月は、予算が三月三十一日に通ったけれども、しかし実際に発動するのは六月ごろになるから、全くこの間ブランクができることになる。そういう点ではあなたのお話はきわめて官僚的なお話で、勘定合って銭足らずの説に当てはまるわけです。同時に、私が政治家としての佐藤さんにお尋ねしたいことは、かりに公共事業費を一割なり二割なり繰り上げたところで、これは大した金額ではない。そのことは私も知っている。知っているけれども、そうすることの政治的意味ということをお互いに理解しておるはずです。少くとも臨時国会では補正予算を組む、その組んだものが少いか多いかはわからぬ。一月から三月についての補正予算も同様なことである。しかし、政治は生きものであり、また経済も生きものでありますから、政府が少し積極策に出たという感じがするかしないかということもまた問題です。これはもちろん弊害はございますよ。弊害はございますけれども、ただ勘定ずくでばらばらの補正予算を一月から三月まで組まなくたってさしつかえないのだということは、形の問題と実質的な問題で佐藤さんは両方とも誤謬を犯している、私はこういうふうに考えるのです。あなたが今どっち側についてものを言っていらっしゃるか知りませんけれども、一体どうなんですか。一月から三月までの補正予算を組まないという方向に動いているのですか、組むという方向に動いているのですか。
  74. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 補正予算についての考え方はただいま申し上げた通りでございまして、非常に詰めたお話で、一月から二月まで組む方向か組まぬ方向かと言われますが、私は、大蔵大臣に就任以来、補正予算、ことに通常国会における補正予算あるいはたな上げ資金の取りくずし等を前提にしての補正予算を組むということについては、三十四年度の予算と十分関係を持って考慮するということを前国会においてもお話をいたした次第でございます。その考え方に変りはございません。従って、今非常に端的な、組むか組まないかというようなお尋ねでございますが、そういうような見方で予算を作っては相ならぬ。これは三十四年度予算編成と関連を持ってやはり考えて参るこの考え方に変りはございません。  それからまた、繰り上げの場合において、これは非常に議論のあるところでございますが、四月、五月がブランクになるじゃないかというお話でございます。過去におきまして、これは継続事業があったのだから、全然ブランクがないという状況かもわかりませんが、三十三年度の予算の効果がこの実施の際におきまして大体二カ月くらいおくれているということをいわれております。最近は土木工事など相当盛んで、セメントなどの値段も変ってきた、あるいは建設資材等についても価格が安定してきた、こういうことがいわれておりますが、財界の人の話を聞きますと、やはり二カ月くらいおくれておる。これはやはり三十三年度の引き合いというものが非常におそいということです。私は、経済が非常に不況だ、対策を必要とするという際においては、何はとりあえず使い得る金がある、なぜそれを、こういう際ならば、二カ月おくらすのではなくて、一カ月前から十分に働かすような処置をとらなかったか、またとるべきじゃないか、こういうのが実はものの考え方の筋であります。これは別に官僚から教えられて、それでその通りやっておるわけではございません。私はこういう地道な行き方こそが実は望ましいのではないかと心から考えております。先ほど来御指摘になりました水田君の報告にいたしましても、思想的に持っておるものは非常に積極的なものだと思います。あの書いてある報告書を読んでみると、非常に積極的な内容を包蔵しておると思います。しかしながら、具体的な処置としてとっておるのは、私どもがかねてから主張しておることと別に変りはない。こういうところに経済に対する実際のあり方といいますか、政治のあり方というものが決定される、かように実は信じておる次第でございます。つけ加えて申し上げます。
  75. 横山利秋

    ○横山委員 次の問題に移ります。先ほど一つお答えがなかったのでありますが、臨時国会に補正予算を出さない、こうおっしゃいました。私どもとは意見が決定的に相違するところでありますが、しかし臨時国会に補正予算を出さぬということは、不況対策の法律案その他も用意をしないということでありましょうか。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん経済対策の法律案は用意しておるつもりでございます。ただ予算は計上しないという考え方でございます。
  77. 横山利秋

    ○横山委員 これは両大臣お答え願えるかどうかわかりませんが、経済対策の諸法案というのは、伝えられるところによりますと、独禁法の問題がそうでありますが、そのほかに景気対策等に関係するものとしては何がありますか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま内閣の方で整理いたしておりまして、私詳細を知っておりませんから、お答えする材料はございません。ただ臨時国会の会期の問題等もございますので、あるいはそう変ったものは出て参らないかとも思います。この点は十分事情がわかりません。
  79. 横山利秋

    ○横山委員 そこで三木さんに少しお伺いしたいのでありますが、この間うち新聞で見ますと、独禁法の改正、緩和をするということが伝えられて、それが総理府でやるか、経済企画庁で引き取るかということで議論になっておるそうであります。この独禁法の改正案が伝えられるような話でありますと、不況カルテルを相当重視をするという考えのようであります。聞きますところによりますと、不況の要件を緩和して、不況のおそれある場合というものをつけ加えるそうであります。今日の経済白書の中の一つの弱点だと思いますのは、今日の経済体制下においての中小企業問題というものに何ら触れていないということであります。この不況の状況の中で中小企業がどんな実態にあるかということは御存じのはずだと思うのでありますが、それにさらに輪を加えて、独禁法を緩和して、大企業の不況カルテルあるいは輸出カルテル、合理化カルテルを実施するということの意味はどういうところにあるか。それによってさらに中小企業が非常な抑圧を受けるということになるのではないか。その点を一体どういうふうに考えておるか。これは三木さんにお答え願った方がいいのか、高碕さんの方が専門家であるか、どちらでございますか、経済白書の一つの弱点としても私は考えておるのでありますから、どちらからでもけっこうです。
  80. 三木武夫

    ○三木国務大臣 独禁法の改正は臨時国会に出したいという意向であります。その理由は、やはりわれわれは自由経済というものの原則の上に立って必要な計画性あるいは調整を加えてやっていく、こういうわけでございます。統制経済というものをやる意思はないのであります。しかし、今日のようえに企業の内部においても非常な過当競争が行われて、そのことが経済の安定的な成長を阻害する面がある。たとえば、今日の問題になっておる投資ブームといわれているものを見ましても、これは相当行き過ぎた投資が今日の反動的な景気の沈滞にもなっておる。これに対して自主的な投資の調整をする調整カルテルというようなものを認めて、そして業界自身で自主的に調整をする、こういうような法的な根拠を与える。その他にもいわゆる過当競争からくる弊害に対して経済に一つの秩序を与えるという意味において、独禁法を改正することが今日の状態においては必要である、こういう判断で独禁法の改正をやる、カルテルの結成に対してこれを緩和しようというわけであります。しかし、それは、大企業が利益を受けるというものではなくして、中小企業においてもそれは同じことであるわけです。大企業擁護という考え方ではない。日本の国民経済全体の一つの安定的な点を築くためには、やはりそれが必要である。しかし、一方において、消費者であるとか、あるいは中小企業もそうでありましょうが、そういう人々がこの改正によって不利益をこうむらないように、一方は緩和するけれども、経済の運営が公正に行われるかどうかということに対して、公正取引委員会の経済司法的な機能というものは強化していきたいという考え方であって、独禁法の改正が大企業に利益を与えるという、そういう精神に出発したものでは毛頭ないということであります。
  81. 横山利秋

    ○横山委員 それは明らかに言葉の上の問題で、私は実体論に触れたものではないと思う。なぜわれわれが団体組織法を先国会において作ったか。この経済情勢下に団体組織法を作ったゆえんのものは、明らかに独占資本に対する一つの防波堤として作ったものだと理解するのが順当であります。その団体組織法のあとにきたものが今度の独禁法の緩和であります。独禁法によって実際に悲鳴をあげ、かつ独禁法によって実際に緩和をしてもらいたいといっているのは、ほかならぬ大企業の諸君であります。景気のいいときには勝手にもうけさせろ、景気が悪くなったら官僚や政府の手をかりて利潤を極力温存しようという観点からできたものであるということは、私は十分に考えなければならぬ。同時に、それがしょせん結果するところは、団体組織法に対する圧力になってくることもまた考えなければならぬところではないか。私は、あなた方が、三木さんも含んでそうだろうと思うのでありますが、自由主義経済、それから資本主義経済を一つ道筋にとっておられるあなた方が、今日自由主義経済、資本主義経済の問題点である独禁法の緩和をここに考えられていることについて、先ほどもルードウィヒ・エアハルトの本を山本先生からもらったのでありますが、エアハルトの言葉をかりて言うなら、こういうことを言っておる。「企業者が自由競争の中で、優劣を争うという国民経済的使命を、もはや果そうとしないならば、自由企業経済の命みゃくもまさに旦夕に迫るであろう。すなわち、個人の力、想像、能力ないし創造力をもはや必要としない秩序が確立され、あるいは有能な者が無能な者にもはや勝つことができず、また勝つことを許されないような場合には、自由企業経済はもはや存在し得なくなるであろう。ここでは保身的責任回避が一般的風潮となるに違いない。すなわち、安全と安定を得ようとする努力が、もはや真の企業者精神とは合致しない別個の気質を生まずにはいないであろう。」こう言っているわけであります。私はこの自由主義経済というものについての批判者の立場ではありますけれども、しかし、あなた方が今この自由主義経済というものをたてにとって政治をせられておりながら、このエアハルトの言っているように、もうかるときには勝手にもうけさしてくれ、損するようになったら政府や官僚の手をかりて利潤を温存したいというようなものの考え方にくみされるということは私はおかしいのではないかと思う。しかも、単にそれがおかしいばかりでなくて、せっかく野党が共通して作った団体組合法の力を弱める結果になるのではないか。そういうことを私は考える。佐藤さん、あなたは首をひねっていらっしゃるけれども、これは必然のことわりです。その点について通産大臣は一体どういうふうにお考えになっていますか。中小企業問題です。
  82. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 独禁法の緩和という問題につきましてのその起った動機は、むしろ中小企業者の立場を擁護するためである。これは、いかんとなれば、今日中小工業者が集まって彼らの力を一本にしてあんばいするとか一掃するとかいう場合には、あるいは組合を作り、あるいは自主団体を作ったというところに、いろいろと独禁法には無理がある、こういうふうなことがこれを改正する根本の趣旨であった、こう存ずるわけであります。従いまして、大企業者があるいは不況のためにあるいは合理化のためにカルテルを作るという場合にも、その趣旨からいえばほぼ一致しておる点でありますが、むしろ、大企業者は、今日委員のおっしゃったごとく、自由競争によって今日の生産原価をもっと下げ、そうしてやるところに大企業者の使命があるということは、彼らが生きんがためにはそうするのが当然であると私は存じております。従いまして、そういう場合に、不況カルテルを作って、その上にあぐらをかいて、一定の価格をもって自分たちが努力しないというふうな結果になれば、これはその不況カルテルを悪用したものと見て、公正取引委員会はこれに対する制裁を加えるべきものだと存じております。現在の独禁法の改正される根本の理由は、中小工業者が不当なる競争をして、あるいは輸出にあるいは国内市場において彼らが立ち行かなくなるということは困る、こういうことの点が根本の方針だと私は存じております。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 きわめて奇妙な意見を承わったものであります。独禁法緩和が中小企業の団結と安定を助長するものであるというようなお話でありました。そうですね。しかりといたしますならば、なぜ今日日本の中小企業者が独禁法緩和に圧倒的な反対をいたしておるのでありましょうか。なぜ独禁法緩和に大企業が圧倒的な賛成をしておるのでありましょうか。もしもあなたの言うようなことであるならば、団体組織法を改正すべきことこそ今日の話題ではありませんか。あなたの言うようなお話で、もしも大企業が独禁法緩和の上にあぐらをかくようなことがあるならば、公正取引委員会がこれを認めないであろうとおっしゃるならば、独禁法緩和の必要はない。現状をもって何が一体大企業に対して問題があるのでありましょうか。私は本末転倒したようなあなたの議論だと思わざるを得ない。この独禁法緩和が中小企業を擁護するものなりというお説は、天にも地にも私は聞いたことはないのであります。どこの中小企業団体が独禁法緩和に賛成をしておりますか。
  84. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 実際問題といたしまして、ここに合板の製造業者が多数あったとする。あるいはカン詰の製造業者が多数あったとする。私どもが実際に知っておりますことは、かりにミカンのカン詰業者があったとする。これは全国において三百軒、四百軒とあります。それが各自てんでにいろいろ輸出をする結果、価格が統制されていないというならば、これは一本の輸出会社に作るとかあるいは共同販売組織をとるとかいうことに持っていけば、これは現在の状態からいえば明らかに独禁法に違反する、こういうことでありますから、そういうものの共同販売組織を作ったりカルテルを作るということにつきましては、今日の中小企業者が悩んでおる不当競争を防止するということについては一つの進歩と存じております。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 そういうことであるならば、団体組織法によってなぜそれが実行できないのでありましょう。団体組織法の適用緩和をすることによって、あなたの言うようなことは実行できるではありませんか。団体組織法は、大企業をもワクの中に入れることを例外的に認めておるわけで、それが必要であるならば、中小企業者でない大企業もその中に入れて、調整行為をすることが認められておるわけです。あなたの言うような例であるならば、団体組織法によって実際に実現が可能であるか、いかがでありますか。
  86. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 団体組織法をもって実行するということも一つの案でございましょう。しかし、独禁法を緩和することによっても、これは実行できるわけでありますから、両々相待っていっていいことだと思います。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 何といいますか、失礼な言葉でありますが、度しがたき解釈と私は言わざるを得ません。団体組織法と独禁法を、あなたは一緒に並べていらっしゃる。独禁法というものは、戦後においてマッカーサーがやって参りまして、財閥解体や集中排除をした。大企業をこの際解体をするところに目的がある。その後の独禁法の適用というものが、必ずしもそうではないことは私は認めるにやぶさかではありません。しかし、立法の趣意というものは明らかに大企業向けのものである。団体組織法は明らかに中小企業向けのものであります。ラップするところはあります。しかし、あなたが少くとも中小企業擁護の立場をもってするならば、当然これは中小企業団体組織法をもってなすべきではありませんか。独占禁止法によってそれを実現するというのは、その結果をあなたはお考えになれば、ただ大企業に益するだけではありませんか。どうしてそういうお考えをお持ちになりますか。
  88. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 独禁法の改正と中小企業団体法というものと並行的にやるということは、さらにこの価格を維持するというふうな点につきましては、これはいいと思います。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 何のことだかよくわからないのですが、あなたのお説は、独禁法緩和と中小企業団体組織法を両方並行的に緩和する腹だ、こういう意味でありますか。運用上両方やるというのですか。——そうですが。そうすると法律改正は、両方ともしないということですか。
  90. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 独禁法を緩和するということはこれからやりたい。それから中小企業団体法というものは、これはそのままでもっと強化していくということになれば、これは相一致する点だと思っております。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 独禁法は緩和する、中小企業団体組織法は緩和しない、運用上考える、こういうことでありますか。それでは話がもとへ返るわけでありますが、私の言っていることが高碕さんには理解されていないようであります。私はあなたに重大な反省を一つ促しておきたいと思うのであります。もう一ぺんあらためて聞きますが、独禁法の緩和というものは、あなたは、中小企業擁護の立場に立っておる、こう責任を持っておっしゃるわけですね。それであるとするならば、そのあなたが擁護しておるといっておる中小企業が、圧倒的に独禁法緩和に反対をしたならばどうなさる。
  92. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 中小企業の団体が全部これについて反対をするということになれば、考慮すべき点があると存じます。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。中小企業団体が独禁法緩和に反対するならば考慮するという点については、しかとわかりました。ただ、私はこの際申し上げておきますけれども、高碕さんともあろう方が、今日独禁法緩和に中小企業がどういう態度をとっておるかということを御存じないはずはないと思うのであります。これはもう一ぺん中小企業団体の意見を十分に聞いていただきたいと思います。  ついでに、高碕さん時間がないそうでありますから、もう一つだけ高碕さんにお伺いしたいのであります。私は、今日の中小企業の中の零細企業に従事している者は、四百万に達しておると思うのでありますが、大体、今まで与党も野党も、中小企業の政策というものは包括的に議論をし過ぎたきらいがある。今日中小企業もピンからキリまである。業種業態も全く多様にわたっておりますために、中小企業政策というものは非常に複雑でありまして、労働政策や農業政策と違って、一発打てばなおるという注射はないのであります。ただ、その中で、最近、中小企業の中でも、経済ベースに合うものと、社会政策的に考えなければならぬものと大体分けるべきではないかという意見が非常に強いのであります。現実に与党も野党も共通のベースで、中小企業政策をいろいろ立案し、意見の相違があって対立することもあり、妥協もありますけれども、今日実行されておりますすべての政策が、いわゆる零細企業と申しますか、社会政策的な立場に立つこの人々に対しては、恩恵がないのであります。本来、中小企業とは、一千万以下、従業員三百人以下といっておりますが、あまりにも包括的過ぎるのではないか。しかも、今日業界が発達をいたしますれば、一千万円と二千万円の中小企業の違いというものは一体どうなのかという意見もあります。一千万円の資本金と五十万円の資本金の中小企業を並べることはどうかという意見も強いのであります。そこでこの際中小企業の定義というものを二つに分ける必要があるのではないか。一つは一千万円、三百人という規定をもう少し上にずらしたらどうか。もう一つは、約四百万人になんなんとする零細企業、たとえば工業関係では十二人以下とか、商業サービス関係では五人以下とか、そういうようなところについては、一つ格別な考え方を持つことが必要なのではないか。このために立法措置をする必要があるのではないか。私は、国民金融公庫や中小金融公庫をずっと回っておるわけでありますけれども、国民金融公庫と中小企業公庫二つ並べましても、明らかに階層が違うのであります。同時に、中小企業公庫に参りましても、一千万円の人は貸してあげるけれども、一千五百万円の人には貸してあげないという理屈は成り立たない。どこが正しいかは議論がありますが、少くともここ何年か知りませんけれども、政治の中心となって参りました中小企業の定義については、産業の発展とともに変えるべき段階ではないか、こう考えますが、いかがでありますか。
  94. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまのお説私はごもっともと存じます。現在われわれが称しております中小企業というものは、一千万の資本とか、三百人の従業員、それ以下となっておりますけれども、中にはわずか三人か五人の人を使い、あるいは企業者の中には商業者も入っておりますが、商業者の中には、天びん棒一本かついでおっても、一つの企業者でありますから、そういったものを十ぱ一からげに考えていくということには非常に無理があると思うのであります。また、上の方の金額にいたしましても、今日の一千万円というものが、果して現在の状態に即していて、それ以上のものは大資本かということも考えなければならぬという点がありますから、これはさらに一段とよく考慮いたしまして、むしろ、私は、これに従事しておる人たちの数ということに重点を置いて、そしてある程度の分類をするというふうな点が必要だと存じております。
  95. 横山利秋

    ○横山委員 共感を得ていただいてけっこうと存じます。私はどうしてもそれが今日必要であると痛感をします。一つには金融上の問題であります。一つには税制上の問題であります。一つにはまた組織上の問題でもあります。一つにはまた社会保障の、五人以下は保障を適用しないという問題もあります。そのほか多くの問題がありますけれども、今日の中小企業政策の恩典というものを、皆無といっていいほど受けていない圧倒的な人々があるわけであります。いわゆる零細企業と申しますか、小規模企業の、今日の不況のしわ寄せを一番下で受けておる人々のために、何かやはり現実政策としてやる必要があり、同時に、根本政策として、中小企業を二つに分ける必要がある。そのためには、いろいろ具体的な措置がございますが、根本的には、いろいろな諸法律の中にございます中小企業の定義をこの際まず変えるどんぶりを一つ作る、そのことが先決ではないか。もちろん私も、大蔵委員をやっております建前上、金融とか税制とかいろいろ考えておりますが、政府としてはまずどんぶりを一つ作る。どんぶりを作れば、そのどんぶりに何か入れなければならなくなるであろうから、さしあたりは——具体的な措置は個々にいたすにいたしましても、この諸法律の改正をすべき段階ではないか、通産省としてそれをおやりになる気持はないか、重ねてあなたの御意見をお伺いいたします。
  96. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 全く同感でありまして、その点につきましては、十分検討を加えて、善処いたしたいと存じます。
  97. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 関連して。  今横山委員大蔵大臣にいろいろ質問されました中で、大蔵大臣は輸出に対して非常な期待を持っておられるように思う。そこで高碕通産大臣に伺いますが、今まで、三十三年度には三十一億五千万ドルという輸出目標を持っておられましたが、今日いろいろな情勢が悪くなりまして、おそらくこの目標は達成しないだろうということが予想されてきました。率直に、通産大臣はどれほどまでにそれがいくものと考えられるかということを、あらかじめここで伺いたいと思います。
  98. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 現在まで経過いたしました本年度に入ってからの状況から推測いたしますと、現状でいけば三十一億五千万ドルははなはだ困難である、大体二十九億六千万ドルくらいになるだろう、こういうふうな数字が出ておるのでありますが、しかし、今後の努力によりまして、これを持っていきたいと存じております。ただ、私は、この際考えておりますことは、金額はなるほどそこまで到達いたさないかと存じますけれども、数量的に申しまして、現在日本の不況を切り抜けるためには、物を早く片づけるということが問題でありますから、これをさらに努力いたしますれば、大体数量におきましては予定の数量に達するというふうな感じを持っております。
  99. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 非常に抽象論でありますが、政府は輸出振興に力を入れておられることは、大蔵大臣も通産大臣も同じ意見だと思う。ところが、現在の日本の実情では、アメリカには日貨排斥の問題があるし、それから中共貿易の問題についてはもう手のつけようがないというような状態になっております。しかし、一国の通産大臣として、この苦境をどういうふうにして切り抜けられるのか。これはいろいろ問題になっておりますが、日本の苦境は何と言ってもこの問題にあると思うのですが、率直に通産大臣はこの事実を認められて、どういう方法でこれを打開されるのか、この点を一つ伺いたいと思います。
  100. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 外貨をかせぐという点から論じますと、今日外貨を手持ちしておる国はどこかと申しますれば、アメリカ、濠州、ニュージーランド、ヨーロッパだけでございます。これに対しましては、外貨をかせぐということの意味から進んでいきたいと存じております。また、物をはかすという方面から考えていきますと、これは、外貨をかせぐ面におきましては、すぐに外貨としては入りませんが、これはある一定の期間になれば取れるという見込みで、経済協力なりによるプラント輸出あるいはある程度のドル取引をもってこれを実行する。これは主として外貨の手持ちのない東南アジアあるいは中南米あるいは中近東、アフリカという方面に持っていきたいと思っております。従いまして、輸出振興のやり方につきましては、一定の方式でなく、相手方によってこの方式を進めていきたい、こう存じております。
  101. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 相手方のいかんによると言われますが、相手方は日本に好意を持っていない。先日私は国政調査に参りましたときに、長崎で通産大臣とちょうど一緒におりましたが、おそらく北九州の現状、石炭の滞貨、鉄の不況、水産の不況、それから貿易の不況については、中共貿易、日韓対策のうまく行かないために非常に困っておられることは、通産大臣もごらんになったことと思う。こういう点について何らかの打開策がなければ、幾らプラント輸出をどうこう言っても、現実の事実として現われておると思う。通産大臣も、現場を見てこられた関係上、どのくらい不況であるかということは御想像になれると思う。一体政府は、中共貿易に対して静観々々と言っておりますが、いつまで静観を続けられるのか。通産大臣は、良心を持っておられ、しかも実業界の出身でもありますから、この打開策を何らかお考えになっておらぬければならぬはずでございますが、その点を具体的にお伺いしたいと思います。
  102. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ひとり九州だけでなく、日本全体をながめました場合に、やはり九州同様の状態にあるということは、私どもよく痛感いたしておるわけであります。それがためにできるだけ輸出を振興させたい。輸出の振興の一環として、中共貿易というものについては、その過去における実績なり今後の方策等からいたしまして、一日も早くこれを解決いたしたいという熱意と信念を持っておるわけでありますが、ただ、現在におきましては、相手方が政治と経済というものを切り離すことのできない相手でございます。日本だけが経済だけの問題として解決するということにも無理があるわけでありまして、その点につきましては、政府は、いたずらに静観しているのじゃなくて、十分努力しつつ現在の状態をながめておるようなわけでありますから、近いうちに打開されることを希望しております。
  103. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 高碕大臣は外交問題についてはおそらく逃げられると思いましたので、きょうは藤山外務大臣出席を求めたのでありますけれども、アメリカに行かれるので、おそらく来られないと思います。そういうような、通産大臣が外務大臣にまかせるのでなくて、第四次貿易協定はすでにできて、今不調に終っておるわけですがこういう点について、一体どういう方法で処理するのか。現に私どもの方の党の佐多忠隆君がこの二十二、三日ごろに帰ってくると思いますが、社会党としても、このことが重要だと思いますので、これは独自の立場でやっております。しかし、少くとも一国の通産大臣がただ静観では済まされないと思う問題があるわけです。だから、第四次貿易協定を何らかの形で処理する方法はないのか。あるいは、静観々々と言っている間に、日本の中小企業者は倒れてしまう。現にいろいろの問題で貿易商その他の者が相当期待を持っていましたが、あなた御承知のように、関西初め名古屋あるいは九州の方面にも、この点についての非常な不安があり、たくさんの業者が倒れているような状態でございます。政治と経済とは違う問題でありますし、また中共は日本が認めていない国でありますから、むずかしいけれども、しかし今までやってきたわけです。それならば、いっそのきっかけができるかということについては、これは通産大臣あたりがやらなければやる方法はないと思いますので、通産大臣としてその点についての決意のほどを一つ伺っておきたいと思います。
  104. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問でございますが、決意と申しますれば、一日も早くこの打開をいたしたいという考えで進んでおることは事実でございますが、またそういうふうに、決して手をつかねて静観しておるわけではないということに、一つ御了承願いたいと思います。しからば、これを具体的に示せ、こういうお話でございますが、これを今日申すことは、私は差し控えたい、ごかんべん願いたいと思います。
  105. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 高碕さんの良心的な答弁でありますから、これ以上追及しませんけれども、もう一点中近東の問題、レバノン、それからヨルダンの問題ができまして、最近イラクの承認という問題がありますが、この中近東の貿易については一体どういう処理をされておるのか、またイラクの革命後におけるところの日本の貿易対策はどういうようになっているのか、一つ通産大臣からお示しを願いたいと思います。
  106. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 先般来の中近東における問題は、その後御承知のごとく平穏の状態に帰しておりまして、一時どうなるかということを多少懸念しておったのでありますが、イラクの問題等につきましても、従前と変らないような方法で今取引が逐次開始されつつあるわけであります。それで、イランにいたしましても、クェートにいたしましても、サウジ・アラビアにいたしましても、これらの国々は相当持っている国でありますから、これにつきましてはもっともっと積極的に日本の品物を売り出すということに進んでいきたい、こう存ずるわけであります。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 三木さんにお伺いをいたします。白書の中心をなす考え方、それから、佐藤さんも先般来言っておられるのでありますが、国際収支のワク内において景気対策を考えるという点については、お二人とも一致をされておるようであります。その範囲内において通産行政もあり得るような話でありますが、ここにいうところの国際収支のワク内という意味はどういう意味であるか。国際収支が現状においては三億ドルですか、大体四億ドルですか、黒字が出る見通しがある。その見通しの中でならば景気政策をやろうというのでありますが、第一にお伺いしたいことは、国際収支という意味が、現状における国際収支であるか、それとも国際収支それ自体について何か考え方があるのかどうか、この言葉を一番最初におっしゃった三木さんにお伺いいたします。
  108. 三木武夫

    ○三木国務大臣 経済の発展のためにはやはり輸出が伸びることが一番好ましい形である。そういう意味において、輸出が伸びて輸入が——承知のように輸入物価というものは一五、六%ぐらい下っておるわけであります。そういう点で今日の輸入水準というものはそんなに低いものだとは思わない。だから、輸出が伸びて、多少は輸入もふえてきましょうけれども、輸出が伸びていくことが一番望ましい。そういう意味において輸出が伸びれば、国際収支の上においても黒字がふえていくわけです。多少の輸入もふえるでしょう。そういうことで、国際収支ということは、できれば国際収支の黒字がふえる形というものは、日本の経済として健全な姿で好ましい。ただ国際収支の許す範囲内で政府はこの景気政策を考えていくんだということは、それを伸ばし得る国際収支のことも頭に入れて、一つのプリンシプルとして言ったわけであります。それは景気政策をとる場合における一番大きなワクだ、これはやはり国際収支の許す範囲内、そういう意味において、一つの経済政策の目安としてそういうことを申したのであります。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 明らかに、昨年における国際収支の論点と、本年における国際収支の論点とは変っているのではないかと私は思う。それはどういう意味かといいますと、去年はとにかく黒字が出るということが焦点であった。今年は、そうではなくして、輸出をするということが焦点ではないか。その意味においては、去年あれほどいやだいやだと言った延べ払いも認める立場ではないか。オープン勘定にしても、何とかかんとか言いながら、やっぱり佐藤さんが譲歩することになるのではないか、それが一つのものの考え方ではないか。国際収支のワク内というその言葉、定義よりも、輸出をとにかく増進をするということが政府の今の立場ではないか。非常にデリケートな点ではありますが、今言っておられる政策というものはそういうものではないか。私ども意見は別にいたしますが、理解を明確にするために私はお伺いをしておるのです。いかがですか。
  110. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それはお説の通りだと思います。今の場合に日本経済のこれからの景気政策の機動力となる輸出の増進ということが一番好ましいことはわかる。しかし、今後景気政策を政府がやる場合の限界は一体どこだ、それが日本の場合においては国際収支というものが経済の大きな天井になる、その限度においてというのでありますから、お説のように輸出が大事だということはむろんその通りだと思いますけれども、経済政策の一つのものの考え方として、それは天井は国際収支であるということは、日本経済としては原則として言い得ることだと思っております。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 私の言いたいのは、今延べ払いやあるいはオープン勘定のような諸問題は、明らかに昨年言った国際収支論とは形態が違ってきた、こういうことを言いたいのです。その意味からいうならば、国際収支の許すワク内ということは三木さんも厳密にお考えになっていないのではないか。ある場合には焦げつきもやむを得ない——と言うと語弊がございますけれども、その危険をも冒すという気持が去年よりは変った内容としてあるのではないか、こういう感じが私にはするわけです。その点で、一例としてオープン勘定の問題についてがんばっていらっしゃる佐藤さんにお伺いしたいのですが、たしかブラジルとのオープン勘定は八月二十五日かで切れるわけです。もはや目前に迫っておる。この八月二十五日に切れるオープン勘定をどうしようとなさるのか。少くとも今私が分析した政府の方向からいうならば、あなたの言っておられることも少し問題があるのではないか、どうしようとなさるのか、お伺いをいたしたい。
  112. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ブラジルのオープン・アカウントの問題はただいまお話をいたしますが、ただ、私が横山君のお話についての受け取りました感じを申しますと、輸出振興なら焦げつこうがどうしようがいいんだというようにちょっととれるような感じが実はいたしました。この点はおそらく私の聞き方が悪かったので、やはりそれは、円クレジットを設定しようが、延べ払いを設定しようが、売ったものについての代価は正当に日本が収受し得るということを前提にしておられることだと思います。私どもも、輸出の振興ということを申しますが、もちろん代価は十分入ってくるという自信がなくては、これは輸出にならない。その点については、私ども、クレジットを設定する場合においても、また延べ払いを設定する場合におきましても、十分資力、信用を考えていく考え方でございます。この点は、輸出の増強、これに走る余り、資力、信用等を考えないような危険なことはやっていく考えはない。この点は誤解のないように願いたいと思います。  ブラジルに対するオープン・アカウントの問題でございますが、御指摘通り期限が到来しておるのでございますので、最近政府の対案を通産省、外務省、大蔵省、この三省の間で決定をいたしまして、ただいま交渉を開始いたしておるはずでございます。オープン・アカウントは、できるだけというか、前回の取りきめの際におきましても、重ねてやらないという前提のもとに、特別な二カ月延期を承認したのでございます。その期間中に新しい決済方法を考える。新しい決済方法といたしましては、これは何と申しましてもやはり現金決済が望ましい。しかし、ブラジルの外貨事情その他等もございますので、現金決済ができないからこそ過去においてオープン・アカウントをしておったのでございます。この点で対案というものを考えております。こういう席で申すことがいいかどうか、しばらく私どもにまかしておいて下されば大へん幸せに思うのでございますが、ただ単に現金決済だけという非常に厳格なものでなしに、やや余裕を認めるような方法でただいま指示して、これが交渉中であるということを一つ御了承いただきたいと思います。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 重ねて三木さんにお伺いをいたしますが、今の経済情勢からいって、端的にいって経済計画を変更する必要がもう来たのではないか、私はそう考えるのであります。先般の臨時国会におきましては御両者とももう少し待ってもらいたいというお話でございました。しかし、先ほど高碕さんのおっしゃるように、三十一億ドルの達成はもはや不可能であるということが明確になって参りましたし、鉱工業生産にしましても、六月現在で、企画庁の指標では二三〇であります。しかし、年次計画では、年内平均は二六五・九であります。明らかにこの鉱工業生産の達成目標も実現は不可能であることが明確になって参りました。加うるに、その根底をなす長期経済計画——昭和三十七年度に終る新長期五カ年計画では、重工業は八二%増、軽工業は三六%増でありますけれども、この問題につきましても、今日設備投資あるいはその他の非常な山ができれば、これを達成するためには谷をでかさなければならぬということにもなって参ります。そう考えますと、今後の雇用の減少、失業増大、中小企業対策等付随的な問題を考えてみましても、経済計画の変更はやむを得ざる事態として、現実に即応して修正をさるべきではないか、そう考えますが、いかがでありますか。
  114. 三木武夫

    ○三木国務大臣 五カ年計画は長期的の経済を見ておるわけであります。これは簡単に変える意思は持っておりません。しかし、年次計画については、これは今年度の計画は御指摘のような鉱工業の生産にしても輸出の目標にしても目標通り達成は困難だと思いますので、八月中にわれわれがやろうとしておる作業は、この年次計画に対しては修正を加えることを考えて作業をやっておるわけであります。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 長期計画にいたしましても、ここまで来ますと同様なことが言えるのではなかろうかと思う。もうすでに、今日までの経済の推移を見て参りますと、それこそ高い。また、最終の目標に到達をいたしますためには、今度は押えなければならぬということも理論的にはなって参ります。設備投資にしたって同様なことでありましょう。それが一体妥当なことであるかどうかとなりますと、現時点においてこれから考える、現時点において長期計画のあり方について考えるということの方が妥当なのではないか。それが一つ言える。それからもう一つは、今日までの体験から言いますと、これからの仕事としてはさらに計画的な規模というものを綿密にしなければならぬのではないか。少くとも三木さんであれば私の言っていることはおわかりになると思うのでありますが、計画性をさらに強めなければならぬのではないか。その規模と構造と内容について考えらるべき点があるのではなかろうか。その点はいかがでありますか。
  116. 三木武夫

    ○三木国務大臣 五カ年計画は長期の計画でありますから、これは必ずしも年度内に目標を達成しない場合においても、かなり弾力性を持って五カ年計画は考えていくことが妥当だ、こう思うのであります。五カ年計画全体については、これは軽々しく変更しょうという考えはない。これは、絶えず経済の動向とにらみ合せて、長期計画自体に対しても検討を加えるだけの周到さは要ると思いますけれども、今五カ年計画全体について修正を加える考え方は持ってはいない。これは検討を加えたい。  ただ、自由経済といっても、今日は相当高度の経済性というものが要求されておることは事実であります。今後も長期経済計画を立ててこれを運営するについては、いろいろな反省が経済白書の上に出ていることは御承知通りであります。これに対しては、計画経済というものではありませんから、やはり自由経済の中に計画性を与えようということで、社会主義的な計画経済をわれわれは考えるわけではないので、多少の齟齬はあるということはやむを得ない。ただ、相当な計画性を持たなければ、国民経済の上においてロスがあるということは事実でありますから、これに対しては今ここでこうするんだということを申し上げる段階に至っておりませんが、これに対しては反省を加える、こう考えておる次第であります。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 大蔵大臣にお伺いをしたいのでありますが、水田報告は、公定歩合をさらに秋になって引き下げる、こういう報告をいたしております。これを実施なさるかなさらぬかという聞き方は、佐藤さんは、おそらく、私の関係したことではないとお答えになるかと思いますが、私の聞きたいのは、要はそういうことであります。実施に至るか至らぬか、どういう条件でそれをなさるかということであります。なぜこれを聞くかといいますと、この間公定歩合の引き下げが行われました。しかし、国勢調査をずっとやって参りました一つの結論として、それにもかかわらず一般貸付金利は下っていないということであります。これは、日銀から貸し出しを受けていないところは、ある程度やむを得ないという議論は横行してはおりますものの、それに便乗して申し合せほど実行していない。けしからぬことではないかと私は言いたいのであります。一体政府は何をしているんだということも言いたいのであります。いろいろ聞いてみますると、資金需要が依然強いとか、日銀貸し出しが依然高水準にあって、資金量の進捗も特に好調というほどではないとか、貸し出し金利の引き下げは銀行経理の圧迫のおそれがあるとか、事業不振で資金需要がない上に金利引きとげの要求がないとか、いろいろ言っています。言っていますけれども、そんなことは公定歩合引き下げ前からあったことであって、何も今に始まったことではないのであります。この際金利の引き下げという方向において公定歩合を引き下げたものが、なぜ市中金利はそれに追随しないのか。なぜしないかということと、今度おやりになる公定歩合の引き下げというものは、こういうことであればあまり意味がないではないか、一体大蔵大臣としては何をお考えになっておられるかということをお伺いしたい。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 横山委員よく御承知通りでございまして、私の答弁も大体予想しておられるので、もしそういうようにお答えしたんでは、これは私が非常に不熱心だと言われるかもわかりませんが、御承知のように、公定歩合の問題は、政府自身に権能のないことは御指摘通りであります。これはもちろん日銀が政策委員会の議を経て決定し、実施するものである、これはもう御指摘通りであります。しかし、今日の経済に対する対策といたしましていろいろの問題がございますが、金利が安いこと、これはその中でも大きな条件である。これまた御指摘通りだろうと思います。過去において公定歩合を二回にわたって三厘引き上げましたが、その際に、金利は一体どうなるか、市中金利は一体どうなるかと申しますと、三厘引き上げに対して二厘程度上ったというのが実情であったかと思います。従いまして、今回二厘引き下げをして、市中銀行もこの公定歩合の二厘引き下げに追随するという決議をいたしております。それが国勢調査等でまだ十分の効果が出ておらない、こういうことを御指摘でございますが、もちろん、金利は、二厘公定歩合を下げた、また市中銀行が二厘引き下げを追随することを決議したと申しましても、その日から市中銀行二厘引き下げにならないことは、これはもう金融の実情から御承知のことだと思います。私ども指摘いたしたいことは、コールあたりの状況等を見ますと、公定歩合を二厘引き下げたことはコールの面にはっきり出てきている。これは指摘のできることであります。また、市中銀行も、日銀の公定歩合二厘引き下げに対して追随するということを申して、順次そういう状況になっておることは、これは私どもの御指摘ができることだと思います。ただ時期的に同時に行えない。これはもう金融の実情から申してやむを得ない状況であると思います。そこで、水田委員会の報告でございますが、水田委員会は、公定歩合が過去において二回にわたって引き上げされたんだから、今日のような経済状態に対しては、やはりもとの状況に落すか、あるいはまた、国際金利等と日本の金利と比べてみて日本の方が高金利であるから、思い切ってもっと公定歩合を下げたらどうかということを意見として決定して、これを発表いたしておると思います。金融の問題につきましては、やかましい議論といいますか、金融の中立性、ニュートラルということが絶えずいわれております。こういうような考え方、ニュートラルであることが最も望ましい姿だと申しますならば、あまり公定歩合の金利についての議論は実はしない方がいい。私自身も、権限の有無にかかわらず、金融の中立性という観点に立ってものごとを見て参りますと、公定歩合についての議論はなるべく避けたいという私自身の考え方を持っております。しかし、産業を育成し、あるいは今日当面しておるような景気に対処するという面から、また、国際競争場裏に立ちましてわが国産業が有利な立場に立つ、こういう見方から申しますならば、低金利であることが望ましい。これは申すまでもないことであります。ことに、最近の非常な不振の状態におきまして最も負担になっておるものが、市中金融の金利がかさんでおることである、こういうふうに感じておるのであります。この意味では、将来の対策と申しますか、あるいはあり方といたしまして、低金利の方向においてものごとを考えていきたい。これはもちろん私どもの念願し、またねらいとするところでもあります。ただ、申し上げたいのは、金利自身もそのときどきによって上下はいたして参りますけれども、その性質上から申しまして、これが未熟な状況のもとにおいて金利だけを左右することは、経済に対する対策としては避けるべきじゃないかというのが私の考え方でもあります。一般的な議論並びに対策としての考え方の一端を御披露いたしました。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 いや、それではあまり一般的なことであって、そのくらいのことでは私の質問にまだ答えてないと思います。私は、佐藤さん、こう思うのです。それは、景気を引き締めるためには金融は使ってもいいけれども、景気を上げるためには金融を使うべきではないという意見が一部にあるわけである。そのために主として財政政策をもって景気政策をとるという考え方がある。経済企画庁はどういうつもりで白書の景気対策をやっているかわかりませんけれども金融の問題について逃げている。これは一体どういう政治的な含みがあるか知りませんが、景気対策の面について金融をさらに重視をすべきではないか。なぜ一体、経済企画庁は、財政政策に中心をとって、金融政策を景気対策の中で逃げているかということが言いたいのであります。財政的手段というものは、先ほどからいろいろ分析をやって、政治的には効果があるけれども、現実的には、あなたも言っていらっしゃるように、おいそれと土木工事をすぐやるわけにはいかぬのであります。従って、金融は融通性があり、機動力を持っておるのであるから、この際景気政策の一環としてやるべきだというのが、私の考え方なんであります。さて、そうなるとすると、表向きの話をすれば、あなたの所管ではないということが言える。言えるけれども、実質的にはこれはそんなことで人をごまかすわけには参らぬ。だから景気政策としての金融政策をこの際実行すべきではないかという点を主張する立場に私は立っておる。で、三木さんには、なぜ経済白書の中で金融政策を逃げているか。それから、佐藤さんには、それを実際実行する用意があるかということをお伺いします。
  120. 三木武夫

    ○三木国務大臣 逃げているようなお話でありますが、よくお読み下されば、財政金融政策のあり方というものについて項目を設けて——これはどうしたって、今日においては、財政金融一体のものだとして考えなければ、経済政策は成り立たないのであります。財政の受け持つ面よりも、金融の受け持つ面の方がはるかに大きいのであります。そういう意味において、われわれは、今大蔵大臣の主張されておるように、日本の金利水準は高いと思っております。そういうことで、金利が引き下げられることは好ましいという考え方を持っております。そうすることが景気政策にもなるし、日本の企業の健全な育成のためには、この高金利の状態を脱却することが必要である、こういうことで、われわれの白書にも触れております。逃げておるわけではありません。(横山委員「触れ方が非常に足りない」と呼ぶ)
  121. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 横山君にお答えいたしますが、少し議論めいたことになって恐縮に存じますが、実は、私は、経済に対する財政あるいは金融の影響度ということについて、自分は自分なりにいろいろ感じて参っておるのであります。特に昨年の神武以来の好景気といわれておる状態のあの状況で、最も経済に影響を及ぼしたものは、申すまでもなく、財政にあらずして、金融措置だということがはっきり言えると思います。ことに、在庫の問題等を考えてみますと、そういう点は非常にはっきり出ている。従いまして、今日財政的な措置を経済の対策としてぜひとれという強い主張も出ておりますが、財政の面は、先ほど来何度も繰り返して申し上げますように、三十三年度予算を十分効果的に使うことが最も望ましい方法であり、それによってある程度の目的を達し得るんじゃないか。残されている面は、ただいま御指摘になりました金融のあり方なり金融の実際の活動状況、これに非常にかかっておる、こういうことを実は感じておるのであります。こういう観点に立ちまして、先ほど来お話のありました金利政策とも取り組んで参りますし、また、資金量の点についても、実は絶えず目を光らしておるつもりであります。ただいま特に御質問がございませんでしたが、預金の状況等を実は今この席へ取り寄せて見たのでございますが、銀行等の預金の状況は前年に比べまして大へん成績がいい。郵便貯金はやや減ったと申しますが、銀行と郵便貯金と合せてみますと、預金額は総体といたしまして前年同期よりも約千三百十億ばかり増加しておる。これは、四月から六月までの銀行、郵便貯金の合計を前同期と比べてみて、そういうような数字が出ておるのでございます。こういうように国民の貯蓄が銀行や郵便貯金になっておりますが、こういうものが同時に産業をまかなっておることは、申すまでもないことであります。この銀行における資金量というものはなかなか窮屈だという話もありますし、あるいはそれほど窮屈じゃないはずだという議論もあります。皆さんが国政調査にお出かけになりまして、こういう意味では大へん詳しい調査を進めておられることだと思います。しかし、貯蓄の状況が、ただいま申し上げるように、前年よりも相当金額がふえておる。さらにまた、ことしは幸いにして豊作であります。もうすでに三千万石近い予約申し込みを受けておる。この状況で参りますならば、年内に三千三百万石と申しますか、予定しておる二千九百万石を上回る四百万石の予約買付も実現するのじゃないか。そうなって参りますと、これで約四百万石ふえれば、四百億の財政支出増というか、資金増になるわけであります。こういうようなことを考えて参りますと、この下期における金融が持つ役割というものは一そう大きく浮んでくるのじゃないか。これは、資金の総額の問題があると同時に、金利の面においてこれを適正化していくようなことができますなら、必ず現在の経済に対しても好影響をもたらすだろうと、実はかようなことを考えておる次第であります。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 議論のあるところでありますが、時間がございませんから、端折って次の問題に移りたいと思います。  今後の景気政策の一つの焦点となっておりますものに、減税の問題がございます。減税の問題についていろいろお伺いしたいことがあるのでありますが、二、三の問題に集約をいたしますと、一つは、案外佐藤さん、この前の大蔵委員会であれほど言いながら、面子にこだわっておるという問題があります。それは臨時税制審議会の問題です。あの際に、私の質問に答えて、あなたは、社会党であろうと、何党であろうと、必要なものはやるというふうに、度量の大きいところを見せたにかかわらず、その問題を放置して、国会が終るに際して、何だかよく聞いてみると委員会でもないそうでありますが、臨時税制委員懇談会とかなんとか妙なものを設けて、一体答申をとるのかとらぬのかわかりませんが、きわめて不体裁きわまるものをお出しになっている。集まってきた委員の諸君の意見を聞いてみますと、おとなげないではないかという意見があるわけであります。済んだことは申しませんが、ほんとうにそれが必要なものであるならば、臨時国会に臨時税制審議会を法的に設置を堂々となさったらどうであるか。それは、奥深い議論をすれば政府のいろいろな問題もございましょうが、しかし、あなたが委員会でおっしゃった気持に変りないといたしますならば、堂々と臨時国会において社会党案を成立させる——どももあれを金科玉条としておるわけではありませんから、あの法案について、政府側の要望があるならば、修正するにやぶさかでないわけであります。次の国会において臨時税制審議会法を制定させる必要があるのではないか。そしてまた毎年々々臨時々々とやっておるのもおかしなことではないか。恒久的なことをやって、昭和三十三年度の減税案、昭和三十四年度の減税案というふうに、一つの一貫した審議会の方向、骨格を持つことも必要でありますから、場合によっては恒久的なものをお作りになってもよろしいのではないか。これが第一の問題です。  第二番目の問題として、経済白書に特に出て、閣議で問題になったそうでありますが、低所得層に対する施策の問題があります。これは新聞も取り上げて、政府の頭隠してしり隠さずというところを笑っておるわけでありますが、冒頭の方では所得の格差が開いてきたということを削除しながら、最後の方では、二段にわたって、「消費面においては低所得階層に対する施策があげられる。今後国民生活の引き上げは、単なる平均水準の引き上げでなくて、低い部分の向上でなければならぬ。」こういうふうに白書の中でも結んでおるところであります。従って、この戦後のいわゆる経済不況の場合の下ささえ要因というものが戦後の国民生活の向上にありというふうに、政府においてもついに断定をしておるのでありますから、次の景気政策なり三十四年度の政策の中において、あるいは年末の政策の中において、低所得者の所得の増加ということが、単に労働組合が言ったとかあるいは言わなかったとかいうことからもう一つ高い立場で、経済政策の一環として、低所得者の所得の増大ということを真剣に考える必要があるのではないか。その一環としてもこの減税の問題が考えられる。  そこで、減税は実施をされるかいなかという第三番目の問題になるわけです。聞くところによりますと、事業税、所得税合計七百億、この与党の公約がすでに退歩をして、来年の話ではなくて平年度の話であるというふうに佐藤大蔵大臣は言われておるそうであります。これは国民を欺瞞するもはなはだしいものでありまして、少くとも、本年の公約であるならば、当然平年度の問題としてこれは理解さるべきではない。国民がまたそう考えておるのではないか。来年の予算の中では、政府は政党政治として七百億の減税を実現する責任を持っておるが、どうか。  第四番目は、その中で特に低所得者、たとえば先ほど私が申しました小規模企業、零細企業の問題、そういう広範にしてしかも低所得の階層に対して、たとえば勤労所得税の問題で、特別な考えをすべき段階ではないか。  第五番目の問題として、国政調査の結果でありますが、至るところ減税貯蓄に対する不信といいますか、その声が聞かれました。減税貯蓄については、当時、政府においても、呼び水的な性格は持つけれども、これに対して大きくは期待できないと言っていました。しかし、現状は、大きくは期待できないどころか、手続ばかり繁雑であって実際の効果はなかったという答えしか出てこなかったのであります。この際減税貯蓄を廃止をして、そうしてこれらも含んで低所得者の減税をする気持はないか。これは、朝令暮改とは言いますけれども、かつて私どもが選択課税に反対をし、そして政府がこれを強行したにかかわらず、次の段階において選択課税を廃止されたことも、すでに歴史的にあるわけであります。悪いと思ったならば、これは勇敢にお考えなさるべきではないか。  最後に、こまかい問題でありますけれども一つ白書の中でも取り上げておりますが、老兵は死なずという文句を引用して、老朽機械についての議論をしております。つまり設備の投資をして新しい機械ができてきたから古い機械は姿を消すかというと、消さないのである、それが問題であるという意味のことを、老兵は死なずという意味において言っておるわけであります。私は、この老朽機械というものは、大企業になくて、実は中小企業だけに圧倒的にあるのであって、設備の更新をしておるのでは実はないのである。そこの零細小規模企業が持っております老朽機械を改良することが必要なのではないか。そのため税制上の特別償却その他の措置をとってやることが必要なのではないか。かって耐用年数圧縮ということが繊維設備機械制限の法律の中で議会の決議になりました。しかし、大蔵省は、耐用年数圧縮を一割としたところで、三百億になるからこれはいかぬと言うて、国会の決議を無視しておるわけであります。このことは大いに議論がありますけれども、さしあたりの問題としては、中小企業の老朽設備の問題について特別措置をはかる必要がありはしないか。  以上、時間の関係上羅列をいたしましたけれども、それらの点について御答弁が願いたい。
  123. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 第一点は、税制懇談会についての御批判をいただきました。別に面子にとらわれておるわけではございませんが、税制の問題は国会において御審議をいただくのが最も大事なポイントでございます。ただ、私どもがいろいろ案を出すにいたしましても、全然官僚独善の方法でやることは望ましくないことだ。税制という制度から申しまして、これは当然だと思います。従いまして、私どもは、各方面の意見を伺う、こういう方法で実は懇談会をこしらえまして、そうしてその処置をただいまとっておるわけでございます。臨時国会においてこれを法制化する意向がありやいなやということでございますが、ただいまさような考え方まで発展をいたしておりません。  第二の問題といたしまして、低所得階層についていろいろ御高説を拝聴いたしました。この低所得階層に対しましてその生活を向上する、これはもちろん必要なことであり、これに対して、特に減税であるとか、あるいは社会保障制度を設けるとかいうような対策はもちろんとらなければならないところでございますが、国民構造の面から見まして、この低所得者に対する優遇措置というか、生活向上措置が日本経済におきましては非常に大きなウエートを持つであろう。これは御指摘通りでございます。従いまして、これについては今回の減税に当りましても十分考えて参りたいと思います。公約事項を主にいたしまして、同時に、こういう際に中央、地方の税制を通じて制度をもう一度再検討するという考え方で、ただいまいろいろ案を審議中でございます。この八月というわけには参りませんが、九月になりますならば、もっと今日の審査状況は進んで参るかと思います。  次に、零細企業についてのお話がございましたが、その前に減税の金額でございます。金額等については、ただいま月収二万五千円までを無税にするとか、あるいは事業税について個人並びに法人事業税についての軽減方法等をただいま研究しておる最中でございます。なお、こればかりでなく、他の面におきましても税についての意見を調整する考え方で検討を進めておる。そのことだけ御披露いたしておきます。  さらに、零細企業に対する特別措置のお話が出ておりましたが、おそらくこれは、企業といわず個人といわず、税の負担の公平というか、これは十分考えて参らなければならない。こういう点で、今回の懇談会等も、負担の公平という点から特に意を用いておるようでございます。  次に、貯蓄減税についてどうも成績が悪いというお話でございます。これはいずれ事態をよく取り調べました上で、成績が非常に不良でありますれば、その際にあらためて対策を立てて、やめるなりあるいは変えていくなり、それを研究さしてみたいと思います。  最後に、老朽機械について御指摘がございました。老朽機械については、これこそ非常に議論が分れる点であろうと思います。いわゆる大事業会社の老朽施設と申しましても、能率が非常に悪いと申しましても、すでに償却済みである。こういうような意味では生産コストは非常に安くなっておる。そういう意味で老朽施設もなかなかやめにくいというようなお話もしばしば聞くのであります。非常に成績がいいからといって新しいものを作ると、生産コストは高くなる、こういうようなお話も実は聞きます。しかし、耐用年数をきめて税の基本をきめております考え方から申せば、ただいまも御指摘になりましたように、老朽施設が消えていくということが前提でないと、耐用年数の制度は生きていかないのであります。御指摘になりましたように、耐用年数を一割圧縮すれば、二百五十億ないし三百億は直ちに減税になる、こういう実情でもありますので、施設の交代というか、変っていくということが一つの問題でなければならない。これまた御指摘通りなんでありまして、ここには非常に議論が分れておると思います。ただ、しかし、最近のように技術が非常に進んで参ります場合に、新しい技術を導入していくということになりますと、やはり、機械は、普通の状況のもとにおいては、短かい期間中にどんどん更新していく、そしてその老朽施設が姿を消していくということになれば、産業自体は絶えず若返っていく、こういうことになるのだと思います。これは大事業においてもそういう問題がございますが、中小企業の面においては、この点はまた一そうはなはだしい状況を現出しているのじゃないか。最近当面しております綿、スフあるいは絹、人絹等の織機の買い上げの場合におきましても、非常に機械がまちまちである。そういう意味では償却の問題も問題であり、また事業のあり方としての非常に近代的な装備と言うと言葉が少しかたいようですが、近代的な機械設備に変えるということが、産業の発展という意味から申しますと望ましいことである。今回綿、スフや絹、人絹等の不況対策におきまして織機等を買い上げ処理する方針を決定いたしておりますが、こういう際に当りましては、災いを転じて福となすというような意味において、やはり設備の近代化の方向に、買い上げ等も十分効果を上げるようにいたして参りたいと思います。  いろいろお話をいたしましたが、この老朽機械、ことに耐用年数等の問題については、これこそそう短かい期間の間に結論を出すということはおそらくできることではないのであります。これこそほんとうに、この耐用年数の問題などは、少くとも三年くらいは取り組んでいかなければならない問題ではないかと考えます。ただいま横山委員が御指摘になった点は、私も、同憂といいますか、同じような心配を持つ問題であります。ただその点だけを御披露いたしまして、老朽機械の処置等については、あるいはその耐用年数、償却年限等については、もっと時間をかしていただきたいということを申し上げておきます。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 一つだけ答弁がありませんでしたが、七百億減税は平年度のものであるか、来年度のものであるか。
  125. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、公約事項を忠実にするという意味で、最初の懇談会の席上で、私最も権威のあるものとして発表をいたしましたものが、青色申告会の質問に対する党の答えでございます。その答えが最も権威のあるものではないかと思って、これを御披露いたしたのでございます。この中にただいま申し上げるような点は明確になっておったと思います。一口に減税七百億ということを申しておりますが、この七百億を目標にしてという点で処理されておる、こういうふうに私は理解しております。
  126. 横山利秋

    ○横山委員 ということは……。
  127. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ということは、平年度というか完全の年度というように私は考えております。
  128. 横山利秋

    ○横山委員 来年のことではないというわけですね。
  129. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、来年度というか、一年フルの場合のことだというふうに解釈しております。
  130. 早川崇

    早川委員長 春日一幸君の質問を許します。
  131. 春日一幸

    ○春日委員 では、だいぶ時間も経過いたしておりますから、端折ってお伺いをいたします。  まず第一番にお伺いをいたしたいことは、御両所は岸内閣のヘッドクォーターであられますが、昨日の新聞報道によりますと、臨時国会の召集日は六役会議の決定によって十月中旬以降にずらされたというような驚くべき報道がございました。当時第二十九特別国会において政府当局があらゆる機会に言明されたところによりますと、これは九月中旬ということでありました。その後、わが日本社会党では、不況事態の激化、また特に外交関係その他農山村の不況というようないろいろな事態にかんがみまして、早期に臨時国会を召集されたい、できるならば九月一日に召集されたいと政府に要請をいたしました。当時赤城官房長官も、できるだけ期待に沿うよう善処したいという御答弁でありました。従いまして、わが党の国会対策といたしましては、少くとも九月に早期に召集さるべきものと予定して、諸般の準備を進めておるのであります。しかるに、昨日の報道によりますと、これが十月中旬にずれたというような報道がございました。御両所は当然責任的立場にあられますので、この間についても相当の御研究等があると思います。党とのお打ち合せ等もあると思いますが、現実の見通しは、臨時国会の召集日は幾日ごろが予定されておりますか。まずこの点からお伺いをいたします。
  132. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 実は、今春日委員の御指摘のように、私も新聞記事を見ましてびっくりしたのです。今日まで伺っておりましたのは、九月下旬、九月二十日過ぎに臨時国会を開く、こういうことでございました。私ども大蔵省も実は張り切って、九月下旬ということでいろいろ準備を進めておった、そういう状況でございます。本日も閣議がございましたが、これは非公式に新聞記事に出ておる点を確かめてみましたが、政府責任者としては、さような点について在来の予定を変更しておらないということをはっきり実は申しております。新聞記事あるいは党側の考え方、あるいは六役会議でさような意見が出ておる。これは記事も間違いではないだろうと思いますが、ただ私自身閣僚の一人としてまだその点のお話を伺っておりませんし、総理自身の意向を聞きましても、ただいまそういうように予定を変更したということを伺っておりません。
  133. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますと、わが党の理解といたしましては、今まで政府が公的立場でしばしば言明されておりまする通り、九月中旬、おそくとも九月下旬までには臨時国会は召集されるものであると、かくのごとくに理解をいたしておりまして間違いはありませんか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 間違いはありませんかといって念を押されますが、私実は大へん何ですが、ただいまきょう伺ったところでは、さような変更は私自身看取しておりません。従いまして、私、大蔵省に関する限り、九月の下旬に臨時国会が開かれるものとして、在来通りの予定の準備を進めている、その考え方でおります。
  135. 春日一幸

    ○春日委員 第二十九特別国会は、申し上げるまでもなく首班指名の特別性格を持つ国会であって、選挙後に開かれた国会としての政策論議が行われておりません。そういうような意味合いからして、国内外の急迫をいたしておりまする諸情勢にかんがみまして、どうしてもこれは早期にお開きをいただく必要があろうと考えまして、わが党もしばしばこの点については政府に対して申し入れをいたしておるところでありますが、そのつどそれにこたえる御答弁を得ておりました。従いまして、どういう事情があるかは知りませんけれども、これは従来通りの御方針で早期に臨時国会を御召集あられまするよう、一つ御両所が閣内において十分御努力あらんことをまずお願いをいたしておきます。  そこで、私はお伺いをいたしますが、この臨時国会において政府は相当の法案なりあるいは行財政の措置を講ぜられると思うのでありますが、その重点は何になりますか。そうしてどのような法律案を出し、かつはまたどのような財政措置をとろうと考えておられるか。時間がありませんので、その大綱だけでけっこうでありますから、具体的にお知らせを願います。
  136. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私もよく記憶いたしておりませんが、一番最初に問題になりましたのは国民健康保険法の一部改正法律案、これは十月一日から実施したいということでございますので、もう期限はちゃんと押えられている。そういうことで、これなどは一番先に考えられているようであります。それから、もう一つの方針といたしまして、通常国会の負担をできるだけ軽くしたいというか、先行させたいという意味で、前国会において審議未了あるいは不成立を見た重要法案をできるだけ取り上げていきたい。また、予算につきましてはいろいろの御意見はあるのでございますが、政府といたしましては、この機会において補正予算を伴うような法律案は避けるという方針で、法律案をただいま整理している。その段階でございます。
  137. 春日一幸

    ○春日委員 当然この不況対策は重点になろうと思いまするし、三木大臣佐藤大臣も、特別国会における御答弁に徴しましても、臨時国会あたりにおいてさらに具体的な措置を講ずることになろう、今その時期ではないという五月、六月ごろの御答弁でございました。従いまして、不況対策として政府が予算を伴わずして講ぜられんとするところの対策は何々でありますか、この際伺います。
  138. 三木武夫

    ○三木国務大臣 不況対策という意味法律案考えていないわけであります。関連するようなものはあるかもしれぬが、不況対策と銘打っての法律案というものは今のところ考えていないのです。予算を伴わないでやるとするならば、今大蔵大臣もしばしば答弁されておられるようなことで、財政投融資も考えられるでありましょう。そういうふうなことであります。むろん輸出の増進などは景気対策のオーソドックスのものであります。そういうことであります。
  139. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、関連してちょっと三木さんにお伺いをいたしておきます。独占禁止法が今度改正か改悪かされると聞いておりますが、そこで、その所管を現在のような内閣のもとに置くか、あるいは経済企画庁に置くか、このことが、この公正取引委員会の機能、性格から考えて、わが国の経済現象として重要な問題を含んでいると思うのであります。この際私は三木さんにお伺いをいたしますが、あなたは、公正取引委員会を現在の通り内閣の直属のもとに置くべきだとお考えになるか、あるいは、巷間伝えられているように、経済企画庁のもとにこれを移管すべきだと考えておられますか、この二つの措置のうちいずれをおとりになっておりますか、お伺いをいたしておきます。
  140. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現在のところは企画庁に移すという考えを持っておりません。これは将来はやはり検討してみたい。しかし、もしそういうものがあっても、通常国会の課題だ、現在はやはり独禁法を臨時国会に出そうということでまだ検討を加えておるわけですが、成案を得ておるわけではない。提案はやはり内閣において提案する、従って、公正取引委員会も内閣に所属をする、こう考えます。
  141. 春日一幸

    ○春日委員 公正取引委員会がいずれに所属するかということは、やはり公取の運営、独占禁止法の運営の中において重要な内容を含んでおると思います。そこでお伺いをいたしますが、独占禁止法は臨時国会に御提出になりますか、なりませんか。この点お伺いいたします。
  142. 三木武夫

    ○三木国務大臣 現在は提出をしようということで準備を進めておるわけであります。まだ決定はいたしておりません。
  143. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますると、提出をされますと、大体公正取引委員会の機能、性格からも、独禁法に触れてこれは当然議題にならざるを得ないと思うわけであります。この場合、公正取引委員会は、今三木大臣の御答弁によりますと、当然内閣のもとに直属せしめるというのが正しいあり方である、こういう工合にお考えになっておる様子であります。従いまして、その独占禁止法の改正案の提出をめぐって、公取の所属が、これは内閣のもとに置かれるという形で提案されてくるものと理解をいたしまして、間違いありませんか。
  144. 三木武夫

    ○三木国務大臣 それでけっこうだと思います。
  145. 春日一幸

    ○春日委員 そこで、重ねてお伺いをいたしますが、予算を伴わない不況対策の中で、財政投融資、公共事業の繰り上げ等の問題が考えられると大臣は述べられました。そこで、私は、この際特に佐藤大蔵大臣の御注意を喚起をいたしたいのでありますが、政府関係中小企業金融機関に対する資金量の問題であります。この問題については、過ぐる第二十九特別国会において、わが党から、国会対策の決定に基いて、大蔵大臣所要の措置をとるべき旨申し入れをいたしました。そのとき、大臣の御答弁では、資金が全く不足の状態であるならばその措置をとりましょうということで、御調査を願ったのでありまするが、その後調査の結果、新聞に発表されたところによりますると、少くとも、中小企業金融公庫等については、資金量はおおむねその需要を満たし得る情勢にある、従って今特別措置を講ずる必要はない、こういうような結論であったと記憶をいたしておるのであります。そこで、私は、われわれがちまたを実地においていろいろと検討いたしておりまする事柄と実情がはなはだしく違っておりまするし、今中小企業金融公庫の資金量がその需要を満たし得るほど大きな量であるとは考えられませんので、従ってその資料についてさらに検討をいたした次第でございます。しかるところ、われわれが発見をいたしましたのは、その資料なるものがはなはだしくインチキである。どういう工合にインチキであるかと申しますと、ここに酒井君、石田君がお見えになっておりまするが、銀行局長責任でなければならぬと思うのでありまするが、中小企業金融公庫は各代理店に対してその資金量を計画的に分配をいたしております。そこで、あそこの資料の中に掲げられております資金の需要額というものは、すなわち中小企業金融公庫の代理店がその資金配分に応じてその資金の送付方を依頼しておる、申し込んでおる額である、こういうことであるわけですね。ということは、商工中金がその計画量を各代理店に割り当てておる、その割り当てられた金額を本店に送金方を依頼しておる、その送金依頼の額をもって需要額であると、こういう工合に資料を作成しておる。でありますから、あなたの資料によりますと、九七%も出しておるというようなとぼけた資料が出てくるわけです。これは明らかに、事実を捏造したというか、全くとんでもない資料なんです。私たちが各地方で銀行の窓口について国政調査を通じて調べてみますると、とにかく資金量におのずから限度があるので、従って本店の方に申し込んだってもらえやしない、従って、窓口限りにおいて、供給し得る量に応じて申し込みを調整しておる、こういうことなんです。これらの資料は、その後大臣の手元において調査の結果明らかになっておると私は思うが、こういうようなばかげた資料によってものごとを判断してもらっては非常に困る。当時は、あなたは、大臣としてまるでずぶのしろうとであるから、そういうようなばかげた資料にたぶらかされた経過になっておったと思うが、今やあなたは半ばベテランになっておると考えるわけですから、これはよく実態に即した処理をしていただかなければならぬと思う。  そこで、私は、予算を組まずしてなし得るところの不況対策というものの中に当然中小企業金融対策が講ぜられなければならないし、中小企業金融対策をとるときには、政府関係金融機関の資金量というものが当然考慮せられなければならぬと思う。従いまして、後にお伺いいたしたいと思うが、水田委員会の中間報告によると、十五カ月予算編成の構想等も立てられておるわけであります。そうすると、第四・四半期のこれら三公庫の資金量を第三・四半期に繰り上げてこれを使用するというよう事柄も、現在の中小企業金融梗塞の実情にかんがみ、当然なし得ることであり、またなさなければならぬ事柄であると思う。先般の中小企業金融公庫の資金需給のバランス・シートなんかをあなたは再検討されたかどうか。それから今私が申し上げましたような点についてお気づきになっておるかどうか。それから、不足であるという事態を考えられるならば財政投資の手直しの中において、これら三公庫の資金量、第四・四半期の資金量を第三・四半期に繰り上げてこれを流していくということについて、どういうお考えをお持ちになっておるか。この点をお伺いします。
  146. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中小企業対策で最も重要な点は、御指摘のように、資金並びに税の問題、この二つに最後は詰まるでございましょう。特にこういう際におきまして最も私どもが気をつけなければならないのは、中小企業に対する金融が円滑に行われるかどうか。またその資金総額において非常な不足を来たしておる。この点は私ども最も意を用いなければならぬ点でございます。この点については、春日委員を初め皆さん方からも特に注意を喚起されて参りました。当時私も御指摘通りずぶのしろうとでございましたので、皆さんと懇談をいたしまして、当時の状況においては、私もまた、ただいまお述べになった通り、誠意を持ってこの問題と取り組んだつもりでございます。当時の資料といたしましては、十分の資金であるという結論になり、皆さん方の一応の御了承を得たかと思ったのでございます。しかし、なおその際に十分検討してくれという御注意でございました。問題は、資金総額については不足がないようである、実際の窓口の扱い方においてもっと徹底することが望ましいではないかということを、私は申し上げて参ったのでございます。ただいま、春日委員から、当時出した資料はとんでもない資料だというお話でございます。私もただいま初めてその点を伺ったような次第でございます。その点は私なお事務当局から詳細な報告を一つ伺ってみたいと思います。そうして、冒頭に申し上げましたように、中小企業対策、ことに今日のような経済情勢のもとにおいての金融——これは金融が最も大事なキー・ポイントだと思いますので、御注意がありましたこの際、従前の考え方を一そう徹底さす意味においても、十分私も留意して参るつもりでございます。さらに、かつて春日委員その他のお骨折りによって緊急措置をとったような措置を今回もとったらどうだ、こういう御指摘のように伺いましたが、この点につきましては、まず第一に資金総額についてもう一度私十分検討してみないことには、直ちにどういう処置をとるということも実は申し上げかねると思います。これは十分私調査し、十分の確信を持った上で、今後の処置をきめて参りたいと存じます。私は、一度言ったからといって、面子にとらわれて窮屈なお話をする考え方はもちろんございません。生きものである経済の実情に即するような措置をとることには、もちろんやぶさかでありません。この一事だけ御披露いたしてお答えといたします。
  147. 春日一幸

    ○春日委員 私は、昨年の六月、七月でありましたか、三木さんが政調会長であられたときに、とにもかくにも当時の総合緊急対策がことごとく中小企業にしわが寄るので、当時の池田さんと本大蔵委員会とが、あの忘れもしない委員長室で長い時間懇談をいたしまして、そこでかれこれ百五十億円にわたる特別措置をとりました。そうしてこれは大きな効果をおさめたと思うのであります。私は、昨年度の経験にかんがみまして、本年度もそのことあるべしという理解に立って、大臣に申し込んだところでありました。しかるところ、果して資金の需給のバランスがどうなっておるかという検討をあなたがされたとき、提出された資料なるものが間違っておらなければいい。すなわちその需要の額に対して供給し得る準備があれば何も申すことはございません。私は、非常に異様なことに考えまして、中小企業金融公庫について調査をいたしてみました。そうすると、あの九七%の供給率なるものは、これは各代理店から資金送付方の依頼を要求してきたその額の総合修正であるといわれておる。各代理店が金を送ってくれという額は、これは当然本部から割り当てられた額をこえることは許されておりません。そういうわけだから、計画配分をしたのだから当然配分区要求をしてくる。この率と率が合致することは当然のことである。これが九七%に至ることは、これまた論ずる余地のないことである。だから、こういうような資料をもってあなたが判断されて、その儀に及ばずという結論が出されることは、これはあなたの職責を汚すことになろうと私は思う。あやまたざる的確なる資料によってあなたの明鑑を承わりたい。石田君がおられたらこの際御答弁を願って差しつかえないと思いますが、この問題は一つまとめていきたいと思います。
  148. 大月高

    ○大月説明員 数字の問題でございますので、私からお答え申し上げます。  先般春日委員の御要求によりまして大臣からお話し申し上げました数字につきまして、インチキというお話がございましたのでございますが、われわれが作成いたしました資料は、中小公庫から正式にとりまして大臣の資料としてお出し申し上げたわけでございますので、数字については全然作為はなかったわけでございます。ただ要するにその数字の解釈ということになるかと思うのでございますが、春日委員のおっしゃいましたように、その際申込額として掲げてありましたものは、代理金融機関の方からの送金申し込みであることは事実でございます。それで、大体において代理金融機関に対しましてどのくらいの送金が可能であるか、それから従来どのくらい送金いたしておるかということも相手にわかっておりますので、その送金に対して大体予算要求的に少々ふっかけてくる、こういうこともあると思いますから、そこで一〇〇%ということにはならない。しかしそんなにまたけたはずれた数字にはなるまいというのが大体の空気だと思います。ただ、統計として見ます場合に、それは窓口の実態の需要を反映しないのではないか、こういうお話だろうと思うのでございますが、それはその点に関する限り事実だと思います。ただ従来とっておりました統計が同じペースでとっておるといたしますれば、結局去年の率に比べましてことしの率がかりに高いということは、需要全般に対しまして供給力がやはり強かったのだ、こういう一つの推定になります。需要の絶対額が、たとえば百億なら百億という数字についてははっきり実態を現わしておりませんけれども、果して本年度の需要に対して供給力が強かったのか弱かったのか、こういう相対的な判断の資料には役に立つのじゃなかろうか、こういう意味に御解釈願いたいと思います。  それから、第二点でございますが、そういう実態を現わさないという問題がございますので、本年の四月からは春日委員のおっしゃっておりますほんとうの意味の毎月の需要を推測いたしまして、これに対する充足率をとる、こういうふうに方式を改めておりますので、さらに正確にそういう感じが出てくるのじゃないか、こういうふうに考えます。
  149. 春日一幸

    ○春日委員 私の論議は、この臨時国会において財政投融資について手直しをされる、繰り上げ支出をされるということがあるとするならば、この際必要あらばこの中小企業金融公庫と国民金融公庫に対する措置も合せておとりになるべきであるという所論の上に立っておるのであります。従いまして、私は、資料の提出方については、ひとり銀行局のみならず、中小企業金融公庫の側においても、あるいは昨年度のそれと本年度のそれとのスタンダードにあるいは狂いがあるかもしれません。問題は実態そのものにあるので、従いまして、私は、この際大臣が親しく中小企業金融公庫の関係者、責任者をお呼びになって、窓口需要はいかにあるか、すなわち中小企業者の資金需要はいかにあるかということを、十分あやまたざる数字を把握されて、その供給が需要に対してはるかに及ばずとするならば、どうか一つ財政投融資の中において昨年とった方式をおとりにならんことを強く要望するものであります。これはこれにいたします。  次は、今横山委員から御質問がありましたが、例の減税問題なんです。これを本年度は一体どうされるのでありますか。私は臨時国会の持つ意義は特に大きいと思うのです。あの特別国会においてわれわれは減税論を出しました。ところが、両大臣とも、この特別国会というものは、首班指名と院の構成に重点があるのだから、選挙公約にまたがるところの政策論議はあげて臨時国会に譲る、こういうことでありました。われわれも、そうもあらんかと思って、深くこれを論じ合うことを避けて、すべてのものがペンディングのまま臨時国会に期待されておるわけであります。そういうわけで、国民の最も大きな関心事である減税の問題が臨時国会の議題にならないということは、私はあり得ないと思うのです。わけて、あなた方は、平年度七百億であろうと、完年度七百億であろうと、とにかく減税を行うと言われたからには、とにもかくにも、この次の場において、たちまちあなた方はそれを実現する義務があると思う。これは昭和三十四年度から減税を行うということがあなた方の公約ではない。私はあるいは昭和三十四年度から減税することかと思って、あなたの方の文献をいろいろ調べてみたのだが、七百億の減税を行うということは、選挙直後のそういう政策論議の場においてこの問題が論ぜられるべきものと、私どもは理解をいたしておる。従いまして、本年度において減税を行わないというのであるのか、それともいつか本年度において減税を行うというお考えであるのか、それとも、減税は昭和三十四年度から行うということが、あのあなたの方の選挙公約の一体どこに明確にけじめがつけてあるのか、この点一つ御答弁願います。
  150. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、減税法案の御審議をいただかなければできないことですが、大体今懇談会でいろいろ調査研究いたしております。ずいぶん結論は急いでおりますけれども、今しばらくかかることだと思います。従いまして、九月の下旬に予定されております臨時国会までに成案を得ることは、まず私は困難だと思います。来年度以降において——来年度以降と申しますとまた言葉が不十分ですが、三十四年度においては必ず実施する、この考え方のもとに、ただいま懇談会で成案を得るべく急いでおる最中であります。さように考えますと、減税法案国会で御審議をいただきますのは通常国会ということになろうかと思います。
  151. 春日一幸

    ○春日委員 それは私はまことにカニングなあり方だと思うのです。と申し上げまするのは、とにかく自民党の選挙公約の中の一番大きなタイトルであるところの減税公約、これは昭和三十四年度からとか、あるいは三十六年度からとか、あるいはまた臨時税制調査会か懇談会かに諮ってその答申を待つとかいうことではない。自民党が政権をとったならば、とにかくこれだけの減税をやる、七百億の減税をやる。これは明確に印刷物、文書の中に表示されて、各候補者あるいは応援者の方々が全国においてこれを叫んできたのです。従いまして、特別国会が首班指名と院の構成というところにウエートが置かれておるから政策論議は次の機会ということならば、減税問題は、この選挙における公約にかんがみて、当然私はこの臨時国会において論ぜられるべき性質のものであると考えるし、またそうでなければ、これは天下の公党の面目いずれにかありといわなければならない。そういう意味で、今大臣が答えられたところによると、責任は一にかかって臨時税制懇談会なるものの作業能力にあるかのごとき御答弁ですが、これはその責任を転嫁するもはなはだしい。今横山君が言ったように、臨時税制懇談会などというものは——私は別にその紳士諸君と会ったこともないし、恨みも何もないが、これは言うならば私生児みたいなものです。とにかく、われわれは、公文書でもって、あなた方の方に、これは行政法に違反をするから、当然法律によってこういう行政委員会は設置さるべきであるということをあなたに申し入れまして、あなたも、これについてはなるほどなあと言って、とにかく頭をかたげて、これは必要ならばそうしなければなるまいかと、そういう態度を示されておりました。断じてその必要はない、というような態度ではなかった。いわんや、その調査会という名前を懇談会というふうにぼやかして、懇談のつどいというようなものに直されて、そうして言うならば責任を晦冥しておられる。政党政治の中において、責任内閣制のもとにおいて、こういうように、あたかも責任をそんなような集いに転嫁して、そうしてその答申が臨時国会には間に合うまいからことしはやめるのだ。こんなばかげたことをあの選挙のときにおっしゃってごらんなさい。実際の話が、一票だって入りはしないと思う。票数を瞞着するもはなはだしいといわねばならない。私は、こういうような意味合いにおいて、今この場所になってくれば、われわれがこういうような論議にふけっておったところで問題の解決にはならない。何とかして実際的な解決をはかるということであるならば、やればやれるのです。すなわち、すでに討論済みになっておる諸問題があります。たとえば、物品税に関する諸問題であるとか、あるいは零細業者に対する、担税力なきものに対する減税措置とか、いろいろ今まですでにその論議が尽されておおむね結論を得ておるけれども、その実質の実施期は総合的な税制改革のときに譲らんとする諸懸案が相当あると思う。これはあなた御承知でないかもしれないが、これは原君の腹の中には相当まとまっておると思う。だから、そのまとまっておるものだけでも、これは臨時国会においてそれぞれの法的措置を講ずべきであると私は考える。そうでなければ私は意味をなさぬと思う。臨時国会意味をなさないと思う。現実の問題といたしまして本年度は相当の自然増収があろうとする。この自然増収の限界において、そういうすでに論議が尽され、討論が終結をしておる問題の法的措置というものは、やればやれるだけの可能性はあると思うし、なおかつこれは、選挙の公約にかんがみて、政府はそのことをなす義務があると思う。こういう意味で、臨時国会において、とにもかくにも全的な総合的な税制改革はいろんないきがかりがあってなし得ないといえども、どうか、今大臣がみずから申されたように、面子にこだわらざる釈然たる大蔵大臣の矜恃とその責任において、一つ臨時国会においておやりになる意思はございませんか。また、そのことをなさずして、十五カ月予算というものの構想とか効果とかいうものはありませんよ。十五カ月予算というものの構想は、これはやはり、一月から三月に至るまでに、少くともその減税のフェーバーが実際的に本年度においてもたらされてくる。しかも選挙のあとを受けたこの政策の論議の場において、そのことが実現せしめられるということは、重要なことであろうと思うのです。従いまして臨時国会においてなし得るところの減税の問題を処理される御意思はないかどうか、この点重ねて御答弁を願いたい。
  152. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へんけっこうなお話を伺いました。実は、御承知のように、税の問題はなかなか一つ一つ引き抜いてやるということにいきかねる。やはり税体系ということは非常に大事なことでございます。なるほど主税局長の原君の腹のうちにあるというお話ではございますが、原君の腹のうちだけで済むものではない。今度は、御承知のように、国税と地方税とを通じまして、総合的にいろいろ税の分配、構想を整備していく、ただいまお話しになりました物品税その他の間接税も合せて考えて参る、こういう実は段階であります。従いまして、在来もきまっておる、かように仰せられましても、今回の税制の各方面の意見等を総合してみたり、あるいは税の建前のあり方等を考えたりいたしますと、なお工夫を要する点もあるのであります。そういうことを考えて参りますと、なかなか容易にいかないのであります。また、公約履行の問題にいたしましても、これは別に言葉を逃げるわけではありませんが、この大きな税制改正、減税などをいたします場合においては、これは本予算と並行してやるのが通例でもございます。これまた常識でもあると思う。この点は一つ御了承をいただきたいと思います。
  153. 春日一幸

    ○春日委員 常識とかなんとか言われたところで、常識どころではない。政府法律に違反するような事柄でも始終執行しておられるのですから、そういうような遁辞を設けて問題を糊塗し去るということではなくして、選挙公約に減税をやると言っておきながら、本年度は一銭の減税もやらないというばかなことはない。これは私が言うのではない。ちまたのどんな次郎さん太郎さんに聞いても、言うことは同じことです。わが党が天下を取ったら七百億円の減税をすると公約しておきながら、何々懇談会がまだ答申してくれないからやらないのだというばかなことを言ったら、大蔵大臣、ひどい目にあいますよ。ですから、私は、やはり政治論としても、また大蔵委員会における長い論議の帰結といたしましても、当然なし得ることをなしていく。一ぺんにやらなければどうという問題ではない。税というものはすでに均衡を欠いて凸凹が随所にあるのですから、一つでも調整するということは当然なさねばならないことです。なし得る段階からやろう。税制懇談会の答申を待つまでもなく、このことは責任政党において当然あなたの方が公約したことなんですから、今やその政権の座にあられるあなたが、なすと言って公約したことをなさぬというばかなことはない。しかも、そのなし得ないということが、税制懇談会の作業能率にかかっておる。そんなばかなことを言ったって論理は通らないです。この点は一つあなたの良心に訴えて、どうか臨時税制懇談会においてなし得るところのものからでも、これは一つ手がけていただきたい。(「三十四年度からだ」と呼ぶ者あり)三十四年度といわれたが、三十四年度という文字がありましたら、私はこの説をことごとく取り消します。だからその点は一つ明確にしていただきたい。わが党が天下をとったら、とにかくこれは七百億円の減税をやると言ったんだから、天下をとっておいて一銭もやらぬというばかなことはないのだから——何といったってこれはインチキかペテンなんだから、これは許しがたき背信行為といわなければならぬ。この点は一つ明確に再検討を願いたいと思います。  時間がありませんので、さらに問題を一、二点だけお伺いいたしたいと思います。水田委員会の中間報告書によりますと、やはり不況対策といたしまして、特に消費財の賠償指定を行うべきであるという答申が行われておる。それからこれは要路の人々の断片的な新聞談話でありますけれども、繊維、陶磁器については賠償指定を行おうとういうような御意見を三木さんもお述べになっておるようでございます。従いまして、この水田委員会の中間報告書と相呼応して、かつはこの不況事態の対策として、こういうようなものを賠償指定を行わんとするこの構想はどの程度固まりつつあるのか。その規模と構想、大体どの程度のバラエティにまたがって、どの程度のアマウントを本年度指定せんとするのであるか。この点を一つお示しを願いたいと思います。
  154. 三木武夫

    ○三木国務大臣 これは相手のあることで、そういうことを賠償予定国に対してただいま折衝の段階でございます。現在のところどういう程度ということを申し上げるところまでいっていない。そういう意図のもとにいわゆる折衝をしておるわけであります。
  155. 春日一幸

    ○春日委員 折衝をされるからには、ある程度政府に腹づもりというものがなければならぬと考えます。従いまして、大体ビルマ、インドネシア、フィリピン・ヴェトナムというように、相手国はわかっておる。だから相手国の欲しそうなものもわかっておる。なお不況対策として取り上げ得るであろう商品科目についても、大体において衆目の見るところ見当がついておると思うのです。従いまして、今まで具体的に述べられたところによると、繊維並びに陶磁器といわれておりますが、繊維についてどの程度、陶磁器についてどの程度の金額か。これは一つ漫然とした数字でもよろしいですから、この際お示し願えませんか。
  156. 三木武夫

    ○三木国務大臣 こういう事情があるのです。向うの相手国の方でそういうことを希望した段階であるのです。ところが、それが、事情の変化もあって、まだ具体的に数量を折衝する段階でなしに、そういうことが受け入れられるかどうかということの折衝の段階であります。だから、今のところ数量をどの程度ということでなしに、日本はそういう考えを持ってもいるのだ、ただそれを受け入れられるかどうかというような段階である。これは正直な話であります。知っておって言わないのではないのです。
  157. 春日一幸

    ○春日委員 それでは、もう時間がありませんから、先へ進みます。  そこで、私がこれはどうしても論理を明らかに立てておかなければならぬと思う問題は、この外国為替管理制度なんですと申しますのは、今や独占禁止法を改正するということで、これが日程に上って参りました。そうして、われわれが承わっておるところでは、今回、この取引については、合理化カルテル、不況カルテル、輸出カルテルというように、カルテルがもうふんだんにできるというような状態になってきて、この大企業の独占的カルテル支配がどういう工合に中小企業と消費生活に及んでいくかということが、私は重要な問題であろうと考えております。従いまして、わが党においても、この問題を深く検討いたしまして、その被害を最小限度に食いとめるためのいろいろな検討をいたしておるのでございますが、私は、両大臣に、特に高碕さんを交えて三大臣に深く御留意を願いたいことは、今この外国為替管理すなわち輸入許可を通じまして、とにかくわが国における経済行為の中で、ずいぶんの域にわたって現実に計画経済が行われております。たとえば輸入許可を受けまする最も顕著な例を言うならば、外国映画なんか一本の輸入権利が一千万円、一千五百万円で売買されておる。従って、そのクォータの上にあぐらをかいて、そうして徒食をしておる連中が非常に多い。この問題は、現実に砂糖の割当、綿花の割当、鉄鉱石、マンガン、重油、ことごとくしかりであると思うのです。そういたしますると、三十一億五千万ドルの輸入総量がおおむね実績割当というような形になって参りますると、これは幾らになりますか、一兆円でありますか、とにかく膨大な取引が——実際の話がカルテルもへったくれもない。一般大衆、実績を持たないところの連中は、とにかく自由にして公正なる競争の原則の中でしのぎを削って戦っておる。ところが、輸入関係の物資を取り扱っておりまする諸君は、そういうような正常なる経済活動のほかに、実績クォータというものに対して膨大な利益が確保されておる。わが国の経済活動のアマウントが幾らでありますか、かりに十兆円でありますか、その中で、まず輸入において一兆円、専売関係で、酒なんか相当なものであろう。それから私鉄運賃の許可、タクシー料金の許可、こういうような行政的な支配を受けるところの経済行為で、独占禁止法のらち外にあるものが、私は四〇%に及ぶのではないかと思う。目くじらを立てて独占禁止法をああだこうだ論じておるのは、わずかにその中の一部分——小部分とはいいませんけれども、一部分に対して論じておるのであって、独占禁止法の威力というものは、改正されようとされまいと、わずかにわが国経済活動の中の一部分にしかその効力を及ぼさない、こういうことではないかと思う。従いまして、今とにかく国家の管理によって不当の利益を得ておるところの輸入業者、それから酒の醸造であるとか、あるいはタクシーの料金の許可であるとか、そういうようなことで相当の不当な利益を得ておる者に対するその利益の帰属について、これは私は国家は検討をする必要がありはしないかと思うし、また、そういうような不当の利益の淵源について、われわれはこれを探索をして調整する必要があると思うのだが、こういう問題について二木大臣はどういうふうにお考えになっておりますか。お考えになったことはございませんか。またこういうような経済行為に対して何ら矛盾撞着はないとお考えになりますか。いかがでありますか。
  158. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今お話しの点でありますが、それに類したような行為は好ましいことではないと思う。ただ、しかし、具体的に今どうしようということは考えておりませんが、よく検討いたしたいと思います。
  159. 春日一幸

    ○春日委員 それはずいぶんとぼけた話で、私は重要問題だと思うのです。たとえば、酒の許可を受けておる、しょうちゅうの醸造許可を受けておる者が、一石の権利を譲渡するだけで一万五千円、二万円という権利金をもらう。また外国映画の輸入の権利を持っておる者が、その一本の権利を売って一千万円という金をもらう。あるいは綿の輸入の権利を持っておる者が、その一俵を何千円という権利で売りますね。こういうような国家の管理行為から発生したところのそういうような不当の所得、コマーシャル・ベースによる以外の所得ですね、財産、こういうようにある者は幾らでももうかっていくし、そうでない、その場にいない者は非常な困窮の中にさらされている。こういうような不均衡な事態というものは、この先長く見のがしておくべきではないと思う。今や独占禁止法が再検討されんとするこの段階において——私は、砂糖の割当なんかだって、一トンの割当が今や時価は一万五千円から一万七、八千円していると思うのですよ。その割当をその書類だけで売買が行われておりますね。こういうようなことが公正な経済行為を律する独占禁止法のらち外に置かれておるのですね。しかも、それは、外国為替管理法、輸入を調整するという立場においてこういうようなしわが寄ってきて、国内経済活動の中に凹凸のはなはだしいものがある。しかもそれがわずかなことなら私は論じない。けれども、これが今やわが国全経済活動の何十パーセントかの大きなパーセンテージを占めるに至っていると思う。私は、独占禁止法の改正と相呼応して、こういうような問題についても調整が加えらるべきではないか。少くとも、経済活動というものは、単なる経済活動そのものによってその所得を追求すべきものであって、ただ単なる国家の管理のその盲点の中にあぐらをかいて、そしてそこで恩給がついたみたような工合でそういう所得が発生してくるというような、不公正な経済行為というものが見のがされておいていいはずがない。しかし、この問題は非常に深遠な問題であって、このわずかな時間で結論を得ることは困難であろうと思いますから、私は、言うならば宿題を出したような気持で、一つ大臣において深くこの問題を——佐藤大蔵大臣は、この外国為替の管理責任者といたしまして、十分一つ御検討を願いたいと思います。  その他いろいろたくさんありますけれども、時間がありませんので、これでやめます。  なお、私は最後に申し上げておきますが、本日はとにかく朝の午前十時から委員会が開かれるということで、これは政府にも十分連絡済みのことなんです。しかるに、閣議において云々というようなことで、午後の二時になってからでなければ委員会が開かれない。従いまして、わが党においても質問しなければならぬ問題がたくさんあるし、たださなければならない問題がずいぶん山積しておる。けれども、ごらんの通りこんな早口で言ってしまって、言いたいことも何も言われもしない。こんなばかなことはありませんよ。少くとも、国会は国権の最高機関、閣議なんというものは延ばしておいてしかるべきである。閣議というものは、国会においてきめたことを、あなた方それに従ってそれを執行するだけのことなんです。それなのに、国会を遊ばしておいて、閣議でゴルフの話に花が咲くのか何か知らぬけれども、あまりひどいと思う。今後は、少くとも月にわずか一回しか開かれない大蔵委員会だから、定められた時間に、各局長しつらえて、ここに必ず御出席あらんことを強く要望いたしまして、私は質問を終ります。
  160. 早川崇

    早川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は九月十日開会することにし、これにて散会いたします。  なお、明十三日の委員会は都合にて取りやめることにいたしますから、御了承下さい。     午後五時四十四分散会