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1958-06-27 第29回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十七日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 綱島 正興君    理事 夏堀源三郎君 理事 福田  一君    理事 坊  秀男君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君       荒木萬壽夫君    内田 常雄君       鴨田 宗一君    小山 長規君       田中 角榮君    竹下  登君       西村 英一君    濱田 幸雄君       福永 一臣君    藤枝 泉介君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山村庄之助君       山本 勝市君    石村 英雄君       春日 一幸君    久保田鶴松君       田万 廣文君    竹谷源太郎君       廣瀬 勝邦君    松尾トシ子君       山花 秀雄君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君         農 林 大 臣 三浦 一雄君         運 輸 大 臣 永野  護君         建 設 大 臣 遠藤 三郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁長         官官房長)   宮川新一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    大堀  弘君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  原  純夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君         農林政務次官  石坂  繁君         農林事務官         (農地局長)  安田善一郎君         運 輸 技 官         (港湾局長)  天埜 良吉君  委員外出席者         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  高柳  保君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 六月二十七日  委員山下榮二君辞任につき、その補欠として石  村英雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第一号)  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)      ————◇—————
  2. 早川崇

    早川委員長 これより会議を開きます。  経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案及び外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 農林大臣はあとですか。——それでは大蔵大臣お尋ねをしますが、財政投融資資金計画がすでに決定を見ておるわけですが、この資金運用部資金の二千四百三十七億、産業投資特別会計資金運用部資金簡保資金を合せて、合計三千五百七十億、この資金運用部資金の二千四百三十七億、とりわけ郵便貯金の千百五十億、これはわれわれの見る点では減少してきているのではないか。従って、政府としては、当然、この三十三年度予算関連として、昭和三十三年度財政投融資資金計画を発表したが、これを変更する必要があるのではないかと思いますが、その点はどうですか。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 郵便貯金の面で、計画をやや下回っておる数字が四、五の両月の間に出ております。しかし、何と申しましても、わずか二カ月でございますので、今直ちに対策を変える、こういう時期ではまだないように思います。他の資金等で当面しておるところでは、資金繰りに支障を来たしておる、こういうことはございません。
  5. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣お話通り、当分は変更する必要はないであろうが、しかし四月、五月に計画よりも減少している。この郵便貯金の伸び悩みは、これは一時的なものなのか、それとも、すでに当初の計画よりは下回っているのであるから、従って年度最終段階では同じになるというのか、その点見通しとしてはどうなんですか。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも、この預金状況というものが、私どもちょっとわかりかねているのは、いわゆる銀行預金は相当増加いたしております。しかし、ただいま御指摘になりました郵便貯金の面では、四、五は予定したというか、計画数字を下回っておる。しかし、私ども考え方から申せば、ただいまこの両月ではさような結果が出ておりますが、今後の推移によりましては、やはり目的達成になお一段の努力をすれば、それを達成することができるのではないか、こういうような見方をいたしております。
  7. 横路節雄

    横路委員 そのほかに、大蔵大臣資金運用部資金としては、ただいまのところ当初計画よりは減少するおそれのあるものはございませんか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 あとはないそうであります。
  9. 横路節雄

    横路委員 それでは、大蔵大臣お尋ねしますが、昭和三十三年度失業保険特別会計予算、これは、政府の方では、失業保険特別会計において決算上生じた剰余金昭和三十三年度における運用部預託を五百三十九億円と見込んでいるわけですが、この失業保険特別会計については、当初考えた失業保険支払い人員よりは非常に支払い人数が多くなっているのではありませんか。その点はどうなんですか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 失業者は、今のところ、私どもが想定しておるのよりは少しふえております。しかし失業保険特別会計資金にただいま支障を来たすような状況ではもちろんございません。
  11. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣の今の御答弁は、だいぶ実情とは違っていませんか。初め、政府の方では、失業保険特別会計における失業保険受給者は三十七万三千人と見込んでいる。ところが、実際には、失業保険受給者は、この三月で五十方四千人、昨年三月の三十四万六千人に比べて実に十六万人ふえておる。こういう点はどうなんですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりました数字そのものは、私ども了承いたします。ただ、失業保険特別会計には予備費といたしまして百五十億ございますので、ただいまの状況ではこの保険支払い支障を来たすようなことはない、こういうことを申しているのであります。
  13. 横路節雄

    横路委員 それでは、大蔵大臣お尋ねしますが、政府の方では、当初、失業保険受給者については、これを昨年に比べて六万八千人の増の三十七万三千人と、いわゆる積算の数字を出した。ところが、実際には、この三月の受給者は五十万四千人なんです。昨年三月の三十四万六千人に比べて十六万ふえておる。見通しはどうなんですか。三月すでに十六万の違いが出ている。それを政府の方は昨年に比べてわずか六万八千人の増しか見ていない。この辺についてはどういうように見通しを立てておりますか。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは、しばしば申し上げておりますように、失業者の出て参ります時期と経済のある姿、これに少し時期的な差のあることは御承知の通りだと思います。経済が下降した場合でも、下降するからといってすぐ失業者が出るものでもない。また、それと同様に、上向いたと申しましても、すぐ求人数が急速にふえる、こういうものでもない。やはり経済失業状況というものは、必ずしも時期的に関連を持っては出て参っておりません。で、過日来たびたび御説明いたしておりますように、ただいまの経済状態は一応底入れの状況を呈しております。今後のわれわれの努力なり見通しも、いましばらくこの模様を見た上で、推移を見た上で、さらに要すればいろいろな方策もとっていきたい、こういうことを実は申しておるのであります。今日五十万になったという事柄が、今後の経済あり方から見まして、さらにどんどんふえていくのだ、こういうような数字だとは私ども実は見ておらない。そういう意味でいましばらく模様を見る必要があるのじゃないか。もちろんかような失業というような社会摩擦の面につきましては、私ども絶えずこれに留意し、こういう摩擦をできるだけなくしていく、そういう方向努力することはもちろんでございますが、今日失業保険特別会計そのものについて直ちに処置を講じなければならない、こういう段階にはまだきておらないということを実は申し上げるのでございまして、今日出ております失業状態を軽く見たり、あるいはこれに対して非常に楽観的な見方をしているというわけではございません。誤解のないように願います。
  15. 横路節雄

    横路委員 それでは大蔵大臣としては、その失業保険受給者につきまして、今申し上げましたように三月は昨年の三月に比して十六万ふえており、年間として三十七万というのと三月の五十万とではずいぶん差があるわけです。三月にすでに五十万出ている。ところが年間としてあなたの方では三十七万三千人しか見ていない。それでは今後失業保険受給者はどういうように変化する、どういうように減少するというふうにあなたの方では判断をされているのですか、お尋ねをいたしたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりました点は、一に今後のあり方についての見通しの問題だと思います。私どもは、一つ経済あり方希望し、その実現に努力はして参りますが、これはただ希望であり努力であって、現実にそういう姿が出てくれば非常にけっこうだ、こういうように思うのであります。今の失業自体につきましても、今日から見通し云々よりも、失業者状況に対して政府としては対策を怠らないようにすること、その方がもっと基本的な問題ではないかと思うのでございます。先ほど来のお話を伺いまして、一体失業者の数はどうなるか、こういうお尋ねでございますが、ただいまその見通しを申し上げることはまことに困難な状態ではないかと思います。
  17. 横路節雄

    横路委員 それでは、大蔵大臣お尋ねをしますが、現実数字はふえておるのです。現に予定の三十七万よりは十三万ふえているのだが、そうすると、この五十万を年間三十七万に近づけるためには、下半期において失業保険受給者が相当減ってこなければ、当初予算の三十七万に近づいてこないわけです。そこで、大蔵大臣は今いろいろな方途があるというが、一つ雇用の問題もあろうと思う。雇用拡大していくということがある。しかし、もう一つは、失業発生を防止しなければならぬ。さしあたりこれから失業者がふえないようにするためには、大蔵大臣はどういうお考えがおありなのですか。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 過日来、その点について、経済あり方なり経済見通しについてのいろいろのお尋ねがございました。また、同時に経済をどうしていくのかというお尋ねもございました。たびたび申し上げておりますように、今日の経済自身が異常な状態からようやく調整の時期に入ってきていると思いますので、この調整の時期にある経済に対しまして、非常な特段のてこ入れ政策はまず避けていきたい、しばらく様子を見たい、そして健全な経済状態を醸成することがこの失業対策に対する基本的な考え方ではないか、かように考えておるのでございます。
  19. 横路節雄

    横路委員 私が今大蔵大臣お尋ねしておるのは、これから雇用拡大していくというのにはいろいろ方途がございましょう。しかし、今直ちに起きてくる失業発生をどうやって防止していくか。今わが国の労働者にとって一番大きい問題は、労働時間が非常に延長されているということ。従って、いわゆる熟練工については労働時間を延長して、臨時工についてはこれを逐次首を切っていく、こういうところにも一つの大きな原因があろうと思う。これは、雇用拡大ということとは別に、ただいまの失業者がなぜ多く出てくるかということです。そこで、今の失業保険受給者がこんなにふえておる現状からすれば、とりあえず失業者発生を防止するためには、労働時間を短縮するという方向政府は持っていって、できるだけ失業者発生を防止するということでなければならないと私は思うのです。現にここに一つ資料がございます。千九百五十六年における製造業の実労働時間については、ILOの資料がございますが、米国では四〇・五時間、英国では四六時間、フランスでは四五・五時間、ところが日本では五〇・三時間になっておる。ですから、熟練工はどんどん時間延長をして、従って、臨時工は全部はみ出して、首を切っていくという格好になっておるわけであります。従って、政府としては、今急速にふえておる失業保険受給者、これ以上失業者をふやさないためには、とりあえず労働時間の短縮という方向に持っていくように努力すべきだと私は思うが、この点はいかがですか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたことも一案かと思います。ただいま経済の面で生産制限が行われております。現実的には形の上で生産制限の実施の方向でどういう形をとりますか、ただいま横路さんの言われることも一案だろうと思います。ただ、私ども申し上げたいのは、生産制限方式という事柄は、本来長くとるべき筋のものではないので、やはり経済拡大方向へ持っていくべきものである、この基本線だけはどこまでも守っていきたい、こういう考え方でおりますので、非常に変態的な今の労働時間の短縮の問題という事柄が、時期的な労働政策の面から出てくることについては一案と思いますが、必ずしも全面的に賛成はいたしてはおりません。
  21. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、今の点は正しくは労働基準法を守ってもらいたいということ。ところが、実際には労働基準法による時間内における賃金では生活ができないから、従って超過勤務によって給与を支払っておるというのが現状なのであります。さらに、失業者の問題については、重ねてお尋ねをしたいと思うのですが、農林大臣がお見えになりましたので、農林委員会に出席するための時間の制限があるそうでありますから、農林大臣お尋ねをしたと思います。  それは経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案の第十一条の第一号の「農林漁業金融公庫にあっては」、というところの非補助小団地等土地改良事業助成基金のことなのであります。そのことをお尋ねしたいと思うのであります。この点について私がまず初めに農林大臣お尋ねしたいのは、この法律だけではわからないわけであります。私たちお聞きするのに非補助小団地等土地改良事業助成基金運用要綱というものを農林省としてはおきめになって、それによっておやりになるのではないか。この第十一条の第一号けだでは趣旨がわからぬ。あなたの方は、今私が申し上げましたような非補助小団地等土地改良事業助成基金運用要綱については、もうすでにおきめになっておるのではありませんか。もしもおきめになっておるのであるならば、当然ここに出していただいてどういう要綱によっておやりになるのか、それをお示しいただいてから論議するのでなければ、法律だけはここで通しておいて、運用要綱については農林省が勝手にやるということでは、法が曲げられる、そういうものができておるのかできていないのか、その点をまず第一番目にお尋ねをいたします。
  22. 安田善一郎

    安田政府委員 私からかわってお答えを申し上げます。  昨日、大蔵農林連合審査委員会で、農林省大蔵省と打ち合せて目下持っております運営要綱を御説明申し上げまして御了承願ったかと思いますが、もちろん、運営要綱でございますから、国会の御審議を待ちまして、その御意見を参照しまして最終的に決定する予定であります。
  23. 横路節雄

    横路委員 それは資料として配付されてありますか。今の農地局長の話の運用要綱資料として配付されてありますか。それはどうなんですか。今の運用要綱については皆さんの合同審査の御了承を得ておるという話だけれども運用要綱配付になっておるのですか。——委員部の方からの話でわかりましたが、別に資料としては配付になっていないということですが、あなたの方が口頭として説明をされたということなのでありますか。——口頭としてあなたの方が話をされたそうでありますが、一番問題になっておるのは、従来国庫補助になっておる事業についてはどうなるのか。あなたの方の説明は、多分、従来の国庫補助対象になっておる継続事業従前通りやります、こういうことだろうと思う。新規事業は一体どうなるのですか。新規事業の場合はどうなるのですか。農林大臣どうなるのですか。
  24. 安田善一郎

    安田政府委員 まず私から御説明申し上げることで御了承願いたいと思います。継続事業につきましては、御指摘通りでございます。また新規事業につきましても、この制度運用するのは、あくまで、地元農民の御要請に応じ、またその御同意を得て行うことでございまして、目的事業推進の効果もあるということでございます。そうしまして、新規事業でありましても、小規模の土地改良事業は二割から五割までいろいろ補助率がございます。北海道等は一律に四割五分以上でございます。三分五厘という利子を引き下げた結果の低利でありましても、補助率との関係をもちまして、農民負担を増高する程度のものは、従来通り補助によりまして、新規事業を特にお勧めすることはしないように努めたいと思います。しかし、低率の農道客土等一般の場合の内地におきまする二割補助のような場合は、三分五厘の非補助融資事業は優に匹敵すると思いますので、なるべく事業進捗を考えて補助も出しますが、三分五厘の非補助融資事業を使っていただきたい。また三割補助適用になりますような内地におきまする区画整理暗渠排水等におきましては、地元農民の御要請に応じてやるわけでございますが、事業農民受益負担の度合いを考えまして、両者申請を認めまして、補助でいく場合、三分五厘でいく場合、双方の適用対象として考えたらいいんじゃないかと思っておるわけで、それ以上の補助率の場合は、三分五厘融資事業としては、補助の方が農民の気持に合いますし、農民負担も少いかと思いますので、補助原則としてやりたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  25. 横路節雄

    横路委員 今のお話はあれですか、「本州における一般客土事業及び農道事業国庫補助率二〇%適用)については、継続事業及びこれとの均衡上必要のある新規事業については、従来通り国庫補助対象とし、その他は利子補給事業対象とする。」これは二割の場合は、利子補給の方が得なんだからするということですか、今のあなたの御説明では。
  26. 安田善一郎

    安田政府委員 損得という場合は、地域と工事の担当事業費で違うかと思いますけれども一般的に見ますると、言いかえますと、自己労力等を出して事業費の一部に充てる場合はどっちが有利か不利かわかりませんが、一般的に申しますれば、三分五厘非補助融資については、二割補助という場合とは少くともそう悪くはないだろうから、地元農民の要望に応じて事業進捗目的を達する場合には、三分五厘のお勧めをしたり、その結果は同意を得てやらなくちゃいけませんが、そういうふうに運用できるかと思っております。
  27. 横路節雄

    横路委員 今のは国庫補助率が二〇%の場合にはそうであろうと思う。ところが、その次に、同じく、「本州における国県営事業に直接関連する区画整理事業及び暗渠排水事業国庫補助率三〇%適用)については」、今あなたがお話しのように、継続事業国庫補助対象とし、その他は国庫補助利子補給とを併用することとし、その適用の区分は地元農民要請に基き、当該事業事業費農民負担額等を勘案して国が決定する。」こうなっているが、これは今のあなたのお話のように、国の補助が二〇%という場合には、それはどちらが有利かということはございましょうが、しかし、国の補助が三割であるという場合には、補助をしてもらうことの方が農民としては有利ではないでしょうか。その場合に、あなたの方で、農民要請に基いて、農民と話をして利子補給をするのか、国が負担をするのか、どちらにしますということは、あなたの方で無限大利子を持っているならいいが、利子はわずか三億七千万かそこらなんです。そこで、あなたが農民と話し合いをしてということは、逆に言えば、あなたの方で農民を説得して、そして新規事業についてはこれを全部いわゆる利子補給に切りかえるのではないか。この点に農民としては非常に危惧の念を持ち、われわれとしては、法律はこうきめておいても、あげて運用農林省が全部国の方針として押しつけるのではないか、こういうことを懸念しておるわけです。この点はどうなんですか。
  28. 安田善一郎

    安田政府委員 そういう御心配はないようにしたいと思います。農林省は、農業の生産性を向上し、農民負担を増高させないように努める役所でございますから、御心配ないようにしたいと思います。内容にわたりますと、補助ワクも非補助融資ワクも、毎年国会の御審議を経ましてきめたワク内でその年度事業をするわけでございますので、その補助申請、非補助融資申請に応じて、そのワクのある限り国がきめるという意味であります。両者申請になります場合は、三割補助の例でございますが、農民負担が過重にならぬ方をまず採択いたしまして、国全体としてワクがなくなりましたならば三分五厘の方、三分五厘もなくなりましたならば一般補助融資の利率の方にならざるを得ないと思います。しかし、三割の補助率の場合が三分五厘の非補助融資事業より必ず有利であるというほどのものではない。ほぼパーくらいであると私どもは考えております。
  29. 横路節雄

    横路委員 今のあなたの話を聞いていると、やはり心配になる点がある。あなたの方ではあらかじめ予算がきまっておるのだ。補助ワクがきまっておる。だから、そのワクの中で検討して、それから漏れれば利子補給の方に回る。われわれがここで審議しておるのは、あなたの方では、地元農民意向をくんでやるのだ、こう言うけれども、あなたの方では最終的にはワクがなければ支払えないから国が決定するのだ、こういうことになるのですか。それはどっちなんです。
  30. 安田善一郎

    安田政府委員 両者、すなわち補助と三分五厘の非補助融資事業両者申請がある場合に国がやるのでありまして、申請がない場合はもちろん強制的に貸し付けるわけではありません。翌年度補助予算を待っていただくことは従前通りであります。補助ワクがない場合に、非補助公庫融資事業の方で希望があればいくということで、従来五分の利子が行われておる。昨年度は五十五億のワクで用意しておりまして、その点においては、三分五厘の融資事業制度ができましても、同一であると思います。
  31. 横路節雄

    横路委員 どうも、あなたの話を聞いておると、この法律をもとにして逐次国の補助を削っていく意向であるというようにしか受け取れない。  次にこういうことがある。「本州における国県営事業に直接関連する団体営かんがい排水事業のうち、水路新設及び水路の改修(ともに国庫補助四〇%適用)については、継続事業国庫補助対象とし、新規事業国庫補助原則とし、国県営事業の採択と同時にこれを採択する場合または国県営事業計画変更が行われる場合において」次が問題なんです。「農民申請同意に基き、かつ農民負担が過重でないと認められる場合においてこれらの事業に対し、利子補給適用事業対象とすることを考慮する。」こうなっておる。四〇%国の補助がいいのか、それとも利子補給がいいのかということになれば、これは、だれが算術、そろばんでやってみたって、明らかに四〇%の国の補助農民としては負担が軽い。ところが、今あなたの方の御説明を読んでみると、「農民申請同意に基き、かつ農民負担が過重でないと認められる場合」とあるが、初めから過重なんです。利子補給と国の負担は国の負担が軽くて利子補給の方が重いのだ。重いのに勝手に国が「農民負担が過重でないと認められる場合においてこれらの事業に対し、利子補給適用事業対象とすることを考慮する。」となっている。どういう場合に過重でないのですか。国の四割負担利子補給とある場合に、利子補給の方が負担は重いのです。どういうときに過重でないと判断するのですか。
  32. 安田善一郎

    安田政府委員 これは、原則としては四割国庫補助のようなものの場合、具体的に言いますと、団体営灌漑排水事業のような場合でございますが、御質問の中のお言葉は水路でございます。一般的には三分五厘と匹敵するものでないといった考えで差しつかえないと私どもも思っておるわけでありますが、国営事業、県営事業、団体営事業がつながりましたり、さらにそのもとに耕地整理、小団地事業等がつながります場合、最近いろいろ努力しておりますけれども、国営、団体営がばらばらに従来採択された。ことにその全体を通ずる進捗度が農民の気持に合いませんので、具体的にも新潟県の阿賀野川とか千葉の両総用水の関連工事費においては、県営の補助ワクのもとで補助金が行くのを待ちかねまして、従来五分の標準融資事業を使っておる地区も、本年度またそういう要請が来ておるところも相当ございます。その場合に、団体営関係の国庫補助の四割とその事業量、三分五厘の標準融資事業とその一年の事業量というものを単純に比較いたしませんで、国県営、団体営を通じて、全体で農民負担がそう多くない県営事業をそれにとったり、また団体事業が割合少い場合、これが団体事業の融資の仕方によりまして非常に事業量が多く、事業進捗する場合等においては、その早期完成の利益もありまして、現実地元農民側からの要望もございますから、その場合には、御要望があり同意がありましたら、三分五厘の適用をしてもいいではないか、こういうことを申しておるだけであります。
  33. 横路節雄

    横路委員 しかし、今の場合、農民としては、やはり希望としては四割の補助希望しておるのでございましょう。ただ、そちらの予算がないから、従来五分であったものが三分五厘だから三分五厘でいくということで、それは何も四割の負担と二分五厘でなく、従来予算ワクが足りなくて五分でやっているから、農民としてはぜひ急いでやってくれというから、その場合には三分五厘にしよう、こういうことではありませんか。そうすると、当然われわれが心配しているのは、ただ国県営事業関連をしている団体営の灌漑排水事業水路の新設、連絡の点について、やはりあなたの方では、将来はこれを逐次三分五厘の利子補給に切りかえていこうという意図でないかと思う。しかし、あなたの方では、予算ワクを広げて、これは絶対に従来通り四割の国庫負担でやるというならば、それはわれわれとしてはうなづけますが、この点はどうなんですか。
  34. 安田善一郎

    安田政府委員 横路委員のおっしゃる通りであります。
  35. 横路節雄

    横路委員 次に、もう一つお尋ねしておきたいのは、さらにあなたの方の昭和三十三年度運用に、この法律運用について「北海道についてはさしあたり国営または道営事業関連する小団地改良事業に対してのみ、利子補給事業対象とする」こうですね。今のは本州について聞いてみたのですが、北海道についてはさしあたり国営及び道営事業関連する小団地改良事業に対してのみ利子補給事業対象とする、こういうふうになっているわけですか。
  36. 安田善一郎

    安田政府委員 御承知のように、北海道はいわば最も新しい開発地域でありまして、また耕地面積等も広く、経営面積も広いのであります。それに応じて、現行の補助事業の比率は、小規模の土地改良事業——各種の業種はございますが、いずれも四割五分の補助率以上でございます。従いまして、この場合は、北海道では従来通り補助事業の重みで適用していくのがいいという断定をしているわけであります。しかるに、小団地につきましては、本州と北海道との現行補助率は、補助のある場合は二割ないし四割、平均三割でありまして、同じでありまして、適用の採択基準と申しますか、地域面積が二十町歩以下のような小団地開発等は、内外地とも補助率が同様でございますから、北海道を除く要はなかろうという意味で、御希望があれば三分五厘を適用してよかろうという意味で、そう内定しているのでございます。
  37. 横路節雄

    横路委員 そうすると、北海道についての今の場合は、小団地改良事業というのが二十町歩未満のもので、二十町以上については従前通り国庫補助をやる。それは継続、新規を問わずですね。
  38. 安田善一郎

    安田政府委員 その通りでございます。もしお手元に書類をお持ちでありましたら、その次に、以上掲げなかったものは補助事業でいきますと書いてあるのが、その意味であります。
  39. 横路節雄

    横路委員 農林大臣お尋ねします。これで大体土地改良事業はどれくらいやれるわけですか。
  40. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 計数にわたりますから、農地局長から御説明した方が的確と思いますが、総工事にして約三十億の土地改良事業が進められる計画でございます。
  41. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、今のは面積にしてどれくらいですか。
  42. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 政府委員からお答えさせます。
  43. 安田善一郎

    安田政府委員 大臣がただいま申されましたのは、新規事業の量の平年次くらいで、本年度はもうちょっと少いかと思いますが、四十万町くらいでございます。
  44. 横路節雄

    横路委員 本年度ですか。
  45. 安田善一郎

    安田政府委員 二年目ないし三年目の平年次くらいです。
  46. 横路節雄

    横路委員 農林大臣お尋ねしますが、小団地でどうしても土地改良をしなければならない事業の総面積は今どのくらいあるんですか。
  47. 安田善一郎

    安田政府委員 かわってお答えさせていただきます。小団地と御質問になりました意味は、団体営灌排事業以下耕地整理、その下の小規模な団地だと思いますが、純粋の小団地開発事業ということでございますか。その総体でありましたならば、百万町歩はあると思いますが、狭い意味の小団地は三、四十万町歩と思います。
  48. 横路節雄

    横路委員 農林大臣お尋ねします。せっかく農林大臣においでいただいたのに答弁がないんですが、やはりこれは経済基盤強化に関する法案で、今農村で一番不況の一つの問題は、乳価がどんどん下っていき、消化に農民は一番困っている。農林大臣としては乳価安定についてどういうことをお考えになっておるのか。これは農林大臣から御答弁いただきたい。
  49. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 基本的には生産の過程において生産費のコストの切り下げに重点を置く施策を今後一そうやって参りたいと存じます。第二番目には、技術過程におきましてなお改善の余地が多々あろうと思いますが、さしあたって今後やりたいと思って今計画中のことは、中小学校の学童の給食等は強く推進して参りたいと存じます。さらに、消費の増進等につきましても、集団的な消費を進めるという方策等につきましても進めて参りたい。要するに、生産の過程におきましても、生産費の切り下げによって乳価の安定を期するということであります。第二段には、消費の面を増進しまして対応の政策を講じて参るということで、今申し上げましたような線で、だんだん具体的な政策の準備をいたしているわけであります。
  50. 横路節雄

    横路委員 農林大臣お尋ねしますが、今の学童給食ですが、これはあなたの方でどれくらい拡大をしようというのですか。それが第一点。それから、第二の点は、集団飲用について今あなたはお述べになったが、集団飲用についてはどういうようになさろうとするのか。それから、第三は、一般の市乳はまだ高いので、一般の乳価はもっと下げる必要がある。これは中間の小売販売店のマージンが高過ぎる。それで、あなたの方は集団飲用をなさろうとするのだが、しかしなかなかそういかない点もあるから、集団飲用は集団飲用として、あなたはどういう方策をお考えになっているのか。それから、もう一つは、一般の市乳というものについて、中間のマージンはできるだけ下げて、これを多くの人に飲ませようとする考えが一体あるのかどうか。それから、あなたは今生産の過程においてコストを切り下げるように努力すると言うが、具体的にどういうふうにされるのか、その点を一つお答え願いたい。
  51. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 第一の点でありますが、これは地方によっても違うので、たとえば北海道のごときは、基本的には道路の問題等を解決しなければ容易にこの問題は期待できないことは、横路君御承知の通りであります。従いまして、私たちは、そういう面におきましては北海道の開発計画等の促進を期待し、同時にまた、農林省といたしましても、それに即応するだけの施設をだんだん進めて参りたい。それからまた、現在飼料作物等につきましてもなおこれは徹底しておりません。われわれとしましては、輪作形態の合理化、さらにはまた飼料作物等の品種を選ぶ指導将励を加えまして、だんだん改善の方途を講じて参りたいと存じます。それから、第二段の集団的な消費の増進の問題でございますが、これはやはり、何としましても、需要者方面と供給する方面との結びつきにおいて、だんだんその態勢を整えていく。また、これに関連しまして、集団的な相当大規模な消費を目ざすということになりますと、保存すべき施設が必要でございますから、この面についてもあるいは減税あるいはまた共同施設等の助成等の方策を進めて参りたい考えでございます。第三番目の、市乳のマージンの切り下げ等につきましていかような考えを持っておるかということでありますが、努めてこれは切り下げるという方向で進めていきたいと考えております。
  52. 横路節雄

    横路委員 今お話しの中の学童給食の問題についてですが、これを拡大するというのは具体的にどういうふうになされるのか、それを一つ……。
  53. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 現在のところ大体二十万石程度を予定しておりますが、これを倍加する程度にふやして学童給食に充てたい考えでございます。だんだん具体的に今検討中でございます。
  54. 横路節雄

    横路委員 ちょうどいいところなので、大蔵大臣お尋ねしますが、今農林大臣から、学童給食の飲用は二十万石だというが、これを四十万石にするのだという御答弁があった。この点は、大蔵大臣、間違いないですね。
  55. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もとの二十万石は、農林大臣の言われた通りでございます。これをさらに倍加したいというのは、これは農林大臣努力目標で、まだそこまで協議にはいっておりません。
  56. 横路節雄

    横路委員 今考えておりませんというお答えのようでしたが、これは非常に重大な問題です。これは、去年、ちょうど一年前くらいに、農林当局と大蔵当局で御相談の結果、とりあえず消費の面でこれをできるだけ拡大しようというので、ことしの一月一日から来年の三月三十一日まで、今お話しのように二十万石、七億五千万ということでやっているのだが、これを農林大臣が四十万石にぜひしたいということは、あなたの方では考えていないというように聞いたのですが、そうではなしに、農林大臣とよく相談してこれからやるというのですか、その点私は最後にちょっと聞いておりませんでしたから……。
  57. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 考えていないとは申し上げません。まだ協議をいたしておりませんということで、これは農林大臣努力目標でございまして、今初めて伺ったことであります。
  58. 横路節雄

    横路委員 農林大臣お尋ねしますが、努力目標だという、これはどうなんですか。きょうは幸いお二人並んでおられる。農林大臣努力目標はおれの知ったことではない、そういうあれはないと思う。
  59. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 大蔵大臣に持っていきますには、具体的ないろいろな計数の整理もあります。その準備がありますから、ただいま畜産当局をして具体的な案を立てさしてあります。追ってその成案を得ましたならば、大蔵当局にも御相談申し上げる考えでございますから……。
  60. 横路節雄

    横路委員 農林大臣、このことは急ぎの問題です。牛を飼っている農民は乳価を下げられて大問題です。これから計数をはじいて相談するというのではなしに、農林大臣としては初めてのお仕事だから……。ちょうどこれから米価審議会へ行かれておやりになるのでしょうが、ここでは責任をもってやるというふうにおっしゃっていただいたらどうですか。
  61. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 やる決心であることは、先ほど申し上げた通りです。
  62. 横路節雄

    横路委員 それならけっこうです。決心だというのと希望とはだいぶ違う。  そこで、農林大臣、生産の過程においてコストを切り下げるというのは、どういうようになさるのですか。
  63. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 その生産の客観的な条件を改善するということが、一つの方法だと私は思います。私前年北海道を見ましたが、非常に土地が僻遠でございますから、道路もない。輸送費等に非常にかかっている。この面に非常に負担が多いのでありますから、これはやはり国策等の線でもってだんだん改善しなければならぬ一つの方策であろうと思います。同時にまた、先ほど申し上げました通り、飼料作物等につきましても、まだ遺憾ながら十全は期しておりません。われわれは品種の改良なり農業経営の改善等を逐次計画しまして、そして高めて参る、こういうことであります。
  64. 横路節雄

    横路委員 もう一つ農林大臣、直ちに今やれることがある。学童給食に使っている輸入の学童用の脱脂粉乳は一時やめたらどうですか。子供はあれは非常にいやがって飲んでいる。あなたのところもお孫さんが学校に行っていらっしゃると思うが、あれは子供がみんないやがって飲んでいる。それよりは牛乳を飲ました方がはるかにいい。そういう意味で、農林省としては、昨年以来実施している学童に牛乳を飲ませることは、近来ない傑作です。そういう意味で、学童給食の脱脂粉乳の輸入を押えて、全部牛乳を飲ませた方がはるかに子供は喜ぶし、体位も向上します。しかも一般の酪農界も安定する。これは通産大臣、大蔵大臣と相談してすぐやれると思う。これはどうですか。
  65. 三浦一雄

    ○三浦国務大臣 横路さんはいやがっておるとおっしゃいますけれども、これはそう主観的には断定できぬ。同時に、現に入っておりますのは、これは合理的に解決するというのが私の任務でありまして、将来の方向としては、一つの御意見として私は傾聴しておきます。
  66. 早川崇

    早川委員長 横路君に申し上げますが、建設大臣、企画庁長官もお見えであります。また、農林委員会の関係上、農林政務次官が居残りますから、農林大臣に対する質問は簡単にお願いします。
  67. 横路節雄

    横路委員 農林大臣の時間の約束もありますし、ちょうどお二人並んでいていい機会ですが……。  それでは、経済企画庁長官にお尋ねいたしますが、初め、政府の方では、経済五カ年計画を立てるに当って、ことしは完全失業者六十五万人、こういうことでお立てになって、去年は失業対策事業の人員が二十二万五千人を二万五千人ふやして二十五万ということになっている。ところが、三月の労働力の調査によりますと、政府の方で初め六十五万くらいの完全失業者であると考えてやってみたが、完全失業者は八十五万という数字が出ている。そうすると、やはり政府の方の本年度経済見通しというものについて、やや誤まりを来たしておるのではないか、こういうように考えるのであります。先ほど大蔵大臣にもお尋ねをしたのですが、初め政府の方では、本年度失業保険特別会計失業保険受給者は三十七万三千人と見ておったが、それが実際には三月の失業保険受給者は五十万と出ている。こういう点も明らかに政府経済五カ年計画の第一年度のその見通しに誤まりがあったのではないかと思うが、一体そういう点についてはどういうようにお考えになられているか。まず長官にお尋ねをしたいと思います。
  68. 三木武夫

    ○三木国務大臣 今御指摘のように、三月の完全失業者が八十五万だったということは事実であります。ところが四月には五十五万に減っておる。毎年三月は新規の卒業生があるわけでありますから、たとえば三十一年度は百六万というような数字も出ておる。こういうことで季節的な三月という新しい卒業者の出る新規な事情であって、その後の失業者予定数字より非常な変化があるとは考えていないのであります。
  69. 横路節雄

    横路委員 それでは、初め政府の方でお考えになられた失業者の人員と、三月の失業保険受給者が五十万四千人。昨年の三月に比べて約十六万から違っている。政府の方の見通しに比べても十二万違う。これは一体どういうように判断されるわけですか。
  70. 三木武夫

    ○三木国務大臣 多少最近の動向が悪化しておることは事実であります。しかし、全体としての政府雇用計画というものについて、この際に非常に大きな変更を加えなければ政府見通しが大きな誤まりを犯すというふうには考えていない。御指摘のように、考えておったよりも多少ふえておる傾向であることは事実でありますが、雇用計画というものに大修正を加えなければならぬほどの傾向とは考えていない。
  71. 横路節雄

    横路委員 計画に修正を加える必要はないというお話でございますが、私は一つ具体的に建設大臣にお尋ねをします。ことしの失業者失業対策事業については、道路特別会計をもって、そうしてあなたの方では特別失対並びに臨時就労についてやっているわけだが、具体的な例がありますから、一つの例を申し上げる。実は駐留軍の労務者がたくさん解雇になっている、そこで失業者発生してきた、あるいは、石炭の供給が思うようにいかないので、炭鉱地帯に失業者発生してきた、あるいは、塩田事業についても、価格等の問題で失業者が出てきたというので、失業者の多発地域の指定というものが行われている。そこでは、一般のいわゆる労働省でやっている失業対策事業ではなしに、これは明らかに特別の技術を要するので、特別失業対策事業あるいは臨時就労対策事業、もちろん一般の公共事業に入れてやっておるわけです。そこで、一つの例ですが、北海道の千歳に、ことし政府の方では一億六千四百二十万円ということで、大体百二十三名の離職者をそこで十分一般公共事業やその他について受け入れることができるのだ、こういうように発表になった。予算もそれぞれ建設省の方では割付をした。ところが、実際に見ますと、千歳の場合においては、百二十三人の場合にわずかに就労できるのは千歳—苫小牧間の道路舗装で二十四人で、あとの百人ほどは全然就労できていない。労働省の方に話をすると、一般失業対策事業でやったらどうかと言う。ところが、建設省の方で、道路特別会計の中で特別失対並びに臨時就労をこういうように一般の公共事業等の関係でやることは、一般失業対策事業というのは将来生産と結びつかないのです。特別な技術を要しない。だから、とりわけそんなもの——百二十三人として予算の割当としてやってみたら二十四人しかいない。これは建設大臣初めてお聞きになるかもしれない。これはこのことだけの例ではなしに、この間駐留軍の労働組合が集まって、私たちも中に入って、すでにおやめになられたが、上村副長官にも話をして、政府としては、駐留軍の労務者その他の諸君で、政府の方が指定した失業者多発地域について、全部特別失対その他で就労できるように計画をし直して回答してもらいたい——ちょうどその直後に副長官その他がかわられたので、あるいは大臣には話がないかもしれませんが、これは一体どうなんでしょう。予算面では百二十三人なるほどいくようになっているが、実際にいってみると二十四人しかいけない。これはどうなんでしょうか。
  72. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 公共事業失業対策の問題につきましては、御承知のように、臨時就労の関係で大体七十四億、それから特別失対の関係で二十八億八千万円の予算をとってやっておるわけであります。その事業をただいま急速に進めるべく、それぞれ手配をいたしております。ただいま御指摘の千歳の問題でございますが、この具体的な話は私は詳しくまだ伺っておりませんが、北海道の長官も来られて、われわれの方の公共事業で救い得る部分と一般失業対策の方で救い得る部分とを打ち合せをしまして、そうしてこの残っておる部分が消滅するようにしたいということで、ただいま話し合いを進めておる段階だというふうに私は伺っております。
  73. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣お尋ねをしますが、実は今の問題は建設省としてはすでに個所の格づけが終ったわけです。それを変更するということは容易でないだろうと思う。そこで、あとやれることは、これも一つのあらかじめ予定されていたことではあるけれども、しかし、実際には地域を指定したことと、失業者発生状況と、それから公共事業の格づけとは一緒になっていない。そこで、当然こういう場合には私は予備費でまかなうべきだと思う。そうでなければ、建設大臣としては、それぞれの格づけを終ったものを取り上げてやるということはなかなか困難だろうと思う。そういう意味で、大蔵大臣として、そういう場合においては予備費においてこれをまかなう、その実施については建設省でやる。建設大臣どうですか、今の私の話は。
  74. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 そういう場合には、内閣で全体の協議会を持っておりまして、その部分でもって救えないものは一般の方の失業対策でやるというふうに、全体を包括して、失業対策に遺憾のないようにしよう、こういう仕組みになっておるのであります。今その具体的な話を進めておる段階でございますから、一つ御了承いただきたいと思います。
  75. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣お尋ねをしますが、これは建設大臣としては具体的にというが、実際にもう個所づけが終って作業を開始するばかりになっている。それをとりあえず中止、計画変更ということは、おそらく容易でないだろうと思う。これは私は当然予備費でまかなうべきだと思う。建設大臣はこれからまた大蔵大臣と相談なさるそうですが、大蔵大臣としてはいかがですか。
  76. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 予備費で使うという御質問ですが、予備費で使うということは、ちょっと私は御意見のほどを理解しかねておるのですが、どういう意味でしょうか。予算実行に当ってその通りやれない、だからそれだけふやせという意味予備費支出をおっしゃるのでしょうか。
  77. 横路節雄

    横路委員 実は大蔵大臣は今のことは御理解できないかもしれませんが、失業者がたくさん出る地域は失業者多発地域というものを指定している。これは駐留軍労務者の離職者がたくさん出たとか、あるいは炭鉱等についても、塩田事業等についても、それぞれ指定されている。ところが、今私が申し上げたのは一つの例ですが、実際に失業者の地域においては一二〇とか一二三というものが吸収できるように予算上組んでおるが、実際にはそれは地域的にできないことが明らかなんです。そこで、今建設大臣から、もう一ぺん再検討して、これは一般の失対ではなしに、公共事業、臨時就労、特別失対ということで、特別の技術を要するものとしてやろう、計画しようということだが、既定の予算ではできない。だから、失業者発生するということも、これはやはり一つの災害です。そういう意味で、私が大蔵大臣お尋ねをしているのは、予備費のうちからそれを出すことが至当ではないか、こう言っておるわけです。おわかりでしょうか。
  78. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 わかったような、わからないような点がございます。と申しますのは、予算は皆様方の協賛を経てでき上っておる予算でございますので、簡単に融通、流通のできるものではないだろうと思います。ただ、今建設大臣のお話を聞いてみますと、失業者多発地帯の処置については各省でただいま協議をしておるということでございますので、その協議の結果にまかしていただきたいと思います。一般的に申しますと、何でも予定しなかったことだから予備費で出せばいいじゃないか、こう簡単に片づけていらっしゃるようですが、そう簡単に片づける筋のものではない、こういうふうに思いますので、ただいまの協議の結果を待って対策を講じたいと思っております。
  79. 横路節雄

    横路委員 それでは、建設大臣にお尋ねしますが、そうすると、具体的にいつごろおきめになるのですか。
  80. 遠藤三郎

    ○遠藤国務大臣 ただいま大蔵大臣からもお答えがありましたが、この問題は北海道へ割り当てました公共事業費あるいは特別失対あるいは臨時就労等をやりくりをしまして、その調整をはかるのでありまして、他府県に割り当てたものを北海道へ振り向けるというような措置までは必要としないと思うのであります。従って、北海道の内部でもって調整をすれば済む問題と考えておりますので、近いうちにその相談はまとまる、そのはっきりした結論が出てくるというふうに御了承いただきたいと思います。
  81. 横路節雄

    横路委員 それでは、私の質問は以上で終ります。ただ、企画庁長官にお尋ねしておきますが、先ほどお話しの失業保険受給者については、これは、当初予算の見込みの通り、本年度は最終までいけるという見通しで、それについては政府の大きな誤りはない。それから、もう一つは、完全失業者については、三月はなるほど八十五万だが、四月からは減っているから、従って当初考えた失業対策事業の二十五万というものについて、いわゆる日雇い労働者が完全に就労できる、こういうように企画庁長官はお考えであるというようにわれわれは承わっておいていいわけですか。
  82. 三木武夫

    ○三木国務大臣 大体今年度雇用計画として六十五万、これはできるだけ達成したいということでありますが、ただ、御指摘のように、最近においては、経済調整期を通じて、中小企業の整備等も行われて、そういう面から雇用の悪化しておる要素というものも多分にあるわけであります。従って、完全失業者の数が政府の当初考えておったような数でいけるかどうか、これに対しては私として相当疑問を持っております。やはり、完全失業者に対しては、御承知のように失業保険特別会計に百五十億の予備費を持っておりますから、これに手をつけざるを得ないような事態も起ってくるという場合も考えておるわけでありまして、完全失業者に対してこれが計画通りだというふうに考えておるということではないのであります。その点は多少悪化の傾向を持っておる。そういうふうに見ておる、こう申し上げておきたいと思います。
  83. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣にもう一つお伺いしておきますが、財政投融資資金計画については、先ほど私からお尋ねしましたが、今お話しの失業保険特別会計についても、これは大体においてまず従前通りやれるのではないか、それから、郵便貯金の伸びについても、四月、五月は少いが、六月以降はもとに戻るから、財政投融資資金計画には変更する余地はない、こういうふうに承わっていいわけですね。
  84. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの点は、その通りでございます。
  85. 早川崇

    早川委員長 横山利秋君の質疑を許します。横山君、運輸大臣は運輸委員会に出席を要求されていますから、その方を先に願いたいと思います。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、先に運輸大臣にお伺いいたしたいと思います。  この間大蔵大臣にお伺いをいたしました点は、二百二十一億の完全たな上げ資金のうちの道路、港湾について、大臣がなみなみならぬ御意見を持っておられるということをお伺いして、これは欣懐の至りだと私は思ったわけです。そこで、かりに私どもの意見のように、直ちにこれに対してたな上げを取りくずして使うべきであるという意見は対立のままでありますが、しかし、どういう考えをもって港湾に臨まれるかということを、この際一つ両大臣からお伺いいたしたいと思います。先般、運輸省港湾局及び通商産業省企業局の監修と伝えられております、特定産業関連港湾緊急整備事業特別会計の案の内容を見ますと、まことにこれは膨大なものであります。これが本年度予算で実現が不可能となりました。そこで、これに要する費用は、当初二百三億円の要求が出て、大蔵省の査定は全くこれがゼロとなっておるわけでありますが、この計画を担当いたしました運輸省として、今後この計画をどういうふうに実現をされるお気持であるか、これをお伺いいたしたい。
  87. 永野護

    ○永野国務大臣 日本の産業の発展のために港湾の整備、修築が基本的の問題であるということは、その通りであります。私も、自由民主党の重要産業特別委員会において、絶えずそれを力説して参ってきておるのであります。私、御指摘のごとく、本年度予算で二百三億の港湾改良費が削減されましたことは、まことに遺憾千万だと存じております。私は、私の在任中の仕事の最も重点を置く仕事として、港湾の修築ということに尽力して参るつもりでありますし、具体的の案は相当に研究されております。従いまして、最も早い機会に、これは大蔵大臣の御了解を得なければ実現いたさないことでありますから、そこらの折衝はまだ十分残っておりますけれども、ことしこそは、この長年の私どもの待望しております港湾修築に、御期待になるたけ沿うような具体案を実現して参りたい、こう考えております。
  88. 横山利秋

    ○横山委員 時間がありませんから、その緊急整備の内容について言及をするのは避けたいと思うのでありますが、しかし、少くともここ三、四年の間に今日の能力の二倍程度の力をつけなければならぬ。もしそうだといたしますと、この二百三億の額が少くとも相当充実をされなければ、この計画はできないのであります。今われわれが議論をしております二百二十一億の中で、一体運輸大臣はこの港湾の整備のためにどのくらいを要求せられ、その要求の規模というものは一体この計画の中でどういう地位を占めておるか、それを一つ説明をしていただきたい。
  89. 永野護

    ○永野国務大臣 具体的の数字につきましては、今ここでこまかく申し上げる時期には達しておりません。全体として、先ほど申しましたような少くも二百億に上る膨大なる計画を持っておるのであります。国の財政の全体とにらみ合せまして、大蔵省が港湾修築のためにさいて下さり得る限度の大体の目標がきまりましたならば、その範囲内において、その優先順位に従って考えてみたいと思いますけれども、まだ来年度の問題につきましては具体的の交渉をする段階に達しておりませんから、いましばらくの時間の御猶予を願いたいと思います。
  90. 横山利秋

    ○横山委員 運輸大臣はどういうお考えでありましょうか。少くとも二百二十一億の今日のたな上げは、本委員会における論争を通じては、いつのことだかわからぬと言っておられるのであります。現に、大蔵大臣すらも、次の国会で取りはずすとも言えないし、取りはずさないとも言えないと答えておる。その意味では、次の国会でこの二百二十一億というものを取りはずす可能性もあるわけであります。その点について、一体運輸大臣はこの港湾の問題を、本年度の問題としては全く見送り、来年度以降の問題としてお考えになっておるのかどうか、それを明確にされたいのであります。
  91. 永野護

    ○永野国務大臣 運輸大臣の立場から申しましたならば、私どもは港湾第一に考えたいと存じております。しかし、国家全体の立場から見ましたら、道路の方にも非常に大きな要求もあるようですし、そのほか各般の省の要求を大蔵大臣の手元で整理をしてもらいまして、その結果運輸省に回してもらいます具体的の数字がきまりましたら、その数字に見合って具体的の成案を立てたいと存じております。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 運輸大臣はどうも私とちょっとピントが合っていないようです。あなたは正確な意味における一般会計における来年度予算を議論しておられる。どうもそんな気がする。二百二十一億の中に占める港湾の整備という問題、それから佐藤大蔵大臣が持っておられる特別会計に関する問題、もちろん特別会計の中に投入される金は、一般会計からもあるであろうし、二百二十一億からも投入されるであろうし、あるいは地元負担の問題もあるであろうが、私が今焦点を置いておるのは、この二百二十一億における港湾の整備をどうお考えになっておるか、こう言っておるのでありますから、ピントが狂ってなければいいのでありますが、どうも狂っておるようです。
  93. 永野護

    ○永野国務大臣 少しも狂っておりません。私は、二百二十一億のその用途について、道路その他の大きい要求がありますから、そのうち港湾のためにどれだけさいてもらうかという見当が全然ついておりません。従いまして、その見当がついたあとで、その範範囲内における具体案を立てたい、こう申しております。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 わかりました。私は、それについて、先ほども建設関係の話をちょっとほかの意味で聞いておったわけでありますが、大蔵大臣にお伺いしますけれども、この二百二十一億というものは、そういう意味合いでは一体必要であるのかないのかという議論でなくして、余った金だから積んでおくというだけで、二百二十一億をどこへどういうふうに使うか、そこに必要性がどういうふうにあるかという理由というものは、きわめて希薄であり、私どもに提示をされる内容というものは何もないように思うのでありますが、そう理解して、大臣、よろしゅうございますか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 経済基盤強化のための基金並びに資金につきましては、過日来皆様方に私ども考え方を、るる、またしばしばお話し申し上げて参っておるのであります。ただいまたな上げ資金という言葉で表現されております資金は、その性格はどうか、これは今までの説明で御了承いただきたいと思います。
  96. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、これは意見の分れたままではありますけれども、次の問題へ移りたいと思います。  少くとも両大臣が港湾の整備に相当の力を注ぐという点が本委員会で明らかにされたわけであります。私は、この港湾の整備をするということが今日の日本産業の上に重要であり、しかも特に国際収支の均衡ということが、多少立場は違おうとも、与野党の間で重要な問題とされておる際に、特に注意をしなければならぬのは、それだけ膨大な資金を港湾の中につぎ込む前に、港湾の問題でなすべき重要な問題がある。それは港湾行政機構の問題であります。先般、私は、こういう委員会における時間が十分になかろうことを憂いまして、質問主意書という形で政府の見解をただしました。まだ回答に接してはおりませんが、ごらんになったと思いますから、どういうお考えであるか端的に明らかにされたいのであります。今を去ること四年ばかり前、行政管理庁において港湾行政の監察をやりました。ここにその監察報告があるのでありますが、どういうものだか結果というものはまことにぼやけておる。まあ出発まぎわで、しようがないと言えるかもしれませんけれども、港湾行政についての行政管理庁の監察結果というものは、何を言っているんだかわからないのであります。この監察結果というものは、端的にいってどういうものであり、そしてその後の経過はどうなっておるかということを、まず担当のところから明らかにしていただきたいのであります。
  97. 高柳保

    ○高柳説明員 この監察は昭和二十八年に実施いたしましたが、その成案を得ることは見込みが十分でありませんでしたので、実際は実態調査という格好で始めたわけです。従いまして、結論も勧告という形にはいたしませんで、実態を連絡して所見を表示する、こういう形にいたしました。その所見表示の内容でございますが、概略を申し上げますと、非常に錯綜、複雑な行政である。従って、これについては相当簡素化の余地がある。それについて御検討願いたい。こういう趣旨におきまして、まず港湾における港長と港湾管理者の業務の調整が必要である。いま一つは、出先機関が非常に多い。十一の多きに達しておる。しかも、そのうちの簡略なものは、他の出先機関に委託するというような格好で、簡素化はできないであろうかという問題。次に、海運局の行う港湾荷役、上屋、倉庫等に関する業務は、湾湾管理者に一本化できるではないかという問題。それから倉庫業者及び港湾運送業者の届出の問題がございます。これは、船舶の出入湾等に際し、関係機関に提出する書類は非常に多い。二十八種類、七十四通の多きに達しておる。従って、これはもっと簡素化できるのではないかというような結論しか出ておりません、そういう事情でございますので、一応関係の機関に通知をいたしまして、参考に供するという形をとっております。以上きわめて簡単でありますが……。
  98. 横山利秋

    ○横山委員 きわめて簡単でありますが、要を得ておると思います。しかしながら、今お話しのように、勧告にも至らない参考のために送られて、それ以来というものは何らの結果も出ていないのであります。すでに早く昭和二十六年の八月に、関税協力がこれを指摘をして政府に要望し、二十九年に行政管理庁が今のような報告をされ、二十九年には貿易関係の八団体がそれについて政府に要望し、各方面に指摘をしておる。三十二年には船主協会が、本年の三月にはまた関税協会が、もうすでに今日に至るまで十数回となくこの問題について指摘をされておりますが、政府に何ら改善の跡がない。今やごうごうたる非難の的になっておる。かりにその事例を申しますと、港湾行政機関が多元化しておることによって生じておりますロスを、たとえて申しますと、大阪を例にとりますと、税関への書類が、入港届二通、積荷目録四通、積荷目録提出前貨物積卸承認申請書二通、船用品目録一枚、麻薬目録一枚、本船搭載銃砲火薬目録一枚、乗組員携帯品目録一枚、乗組員タバコリスト一枚、托送品目録二枚、船客名簿二枚、船用金積込許可申請書二枚、指定地外交通許可証二枚、厚生省検疫所には、船長陳述書一枚、乗組員名簿一枚、船客名簿一枚、入出国管理庁には、乗組員名簿一枚、パスポートまたは船員手帳の掲示、入港届一枚、植物防疫所には、要検疫物件明細書の乗組員分が一枚、船客分が一枚、動物検疫所には要検疫物件明細書、大阪海上保安監部には、入港届一枚、危険物積卸許可申請書二枚、危険物運搬許可申請書二枚、合計四枚、大阪市港湾局には入港届一枚、税関には入港屯税の納付一枚、今ようやく半分言っただけでございますが、そのほか税関、海上保安監部、水上消防署、近畿海運局、大阪市港湾局等全部合せますと、船が一つ入って仕事をいたしますために膨大なもので、しかもこれらは全部輻湊しておるのであります。これが第一の行政機関多元化のためのロスです。  それから、港湾行政機関が設置されていないために生じているロスが、たとえば博多に例をとりますと、博多港に廻航検疫終了後、入港をみている唐津でも入港船はいずれも午後入港の関係上、荷役開始は翌日となり、その間丸二十四時間のロスを生じておる。それから、その次が港湾行政機関の権限が重複しているために生じておるロスは、大阪に例をとりますと、近畿海運局、大阪市港湾局の同一的統計事務があり、海上保安監部と大阪市水上消防署における危険物に対する双方同一の許可申請事務があり、海上保安監部と大阪市水上警察署の港内取締りの同一事務があり、警察署と入出国管理庁における外国船員に対しての同一事務がある。その次に、出先行政機関に権限がないため生ずるロスが、また小樽支部に例をとりますと、フィシュミールの承認権限が本庁であるために、莫大な損害、時間的なあるいは経済的なロスがある。また、民間機関と政府行政機関とが重複しているために生じているロスを、東京支部で例をとりますと、輸出カン詰の品質検査は農林省と財団法人鑵詰検査協会の二本建となっておる。また、第七番目に、港湾の施設管理運営をする機関が多元化する面から生ずるロスを考えますと、門司においては、洞海湾においては戸畑四区、新川は港務局、牧山岩壁は運輸省、ブイ繋船は海運局、その他は保安部と、全く多元化しているために生じておるロスがあり、行政機関による運営が円滑を欠いておるために生じておるロスもまた多大であります。これらは港を見た人が必ず同様に港の諸君から陳情を受けることであり、だれが考えてももっともなことであります。しかも、数年間いわれておるにかかわらず、これが実現していないという理由は一体何であろうか。一語をもって評すれば官庁のなわ張り争いであります。少くとも大蔵省にその焦点を合せるか、あるいは運輸省に焦点を合せるか、農林省の権限を取られたら困る、厚生省の権限を取られたら困る、こういうところに根本の原因があるわけであります。少くともこれから港湾を強化をして多大の税金をつぎ込むといたしましたならば、まず一番最初にやることはこのことではないか。これをしなければ今日絵に書いたぼたもちのような図面と資金が投入されるのではないか。たとえば、日常喫緊の問題として、港湾関係の諸団体並びに下部のお役人の皆さんが望んでおるのは、実はここにあるのではないか、こういうことを私は痛感するのでありますが、両大臣として一体御存じのことであろうか。御存じであるとすれば、これからどういうふうにこの根本問題を解決なさるか。これなくして、その次のこの港湾の整備というものは意味がないではないかとすら私は感ずるのであります。両大臣のこれに対する具体的な御所見をお伺いしたいのであります。
  99. 永野護

    ○永野国務大臣 横山委員の御質問の御趣意は、実はついこの間ごろまで私が訴えておったことをそのまま言われたような感じがするのであります。先日まで私は事業をしておりまして、港湾行政の複雑なことがいかに大きなロスであるかということは、議論でなくて血と涙で体験して参っておるのであります。従いまして、決していわゆる質問せんがための質問であるというような受け取り方はいたしません。特に横山委員のお出しになりました港湾行政合理化に関する質問主意書は、今回の閣議にかかりまして、これはぜひ真剣に取り上げて研究しようではないか、ここに御列席の大蔵大臣特に御発言がありまして、これはいいかげんなというとまことに失礼でありますが、そういう取扱い方でなくて、どこが主管になるか、各省が関与しておりますから、あるいは行管あたりにやってもらうのがいいかどうか、そういうことまで発言されて、この問題は具体化するようにまじめに取り上げて研究しようではないかという閣議決定になったのであります。それはきょうの午前であります。右様の次第でありますので、横山委員の御質問の趣意は必ず真剣に実現すると私は確信いたしております。
  100. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま運輸大臣から委細御答弁がありましたが、私も全然同感であります。
  101. 横山利秋

    ○横山委員 与党質問だというお話がございましたが、もしそうだとしたならば、与党の皆さんにも格別の御協力をいただきたいと思います。もちろん私どもはこれによって生ずる諸問題について憂えなしとしないではありません、具体的な問題については。この点については私どもは大いに異論のあるところであります。しかし、今日のこの港湾行政の複雑化というものが、貿易における重大な隘路と思えばこそ申し上げるのでありますから、ぜひとも、その誠意ある答弁が、この資金が投入される以前に刻々実現されるように私はお願いをいたしておきたいと思います。  そこで、大蔵大臣に、先般私が質問をいたしました問題の締めくくりをいたしたいと思うのであります。時間がございませんから、十分今の誠意ある答弁に引き続いた御答弁をいただきたい。これは、この間あなたに私がお伺いいたしました税制の審議会を法制化しろという意見について、日本社会党が申し入れをいたしましたところ、きのうの新聞を見ますと、まことに遺憾千万なお話があるようであります。つまり、こういう種類のものは議員提案をするということは筋が違うから、否決をしようというような気持があるそうであります。このことでありましたら、私は、あらゆる例をひっさげて、あなたに対して対抗する決心であります。しかし、もしそうでないとしたならば、その間の経緯を明らかにしていただきたい。少くとも、先般申しましたように、一萬田大蔵大臣は、この私どもの長年の主張に対しまして、これを了といたしまして、その方向において善処をするという確答を本委員会でいただいておるのであります。いろいろと内閣に審議会がございます。審議会を整理することについては私ども賛成だ。賛成だけれども、現にあるいろいろな審議会と匹敵をいたしまして、国民の血税である税金をいかにするかということについて、他の審議会と比べ何ら遜色のあるものではないし、来年度における税制については、政府が適当な人間を集めて適当にやるよりも、堂々と法制化をして、各方面の人材を集めて臨時税制調査会を設置すべきだという私どもの主張は、どこへ行っても私はあなた方と論戦をする用意がある。その臨時税制調査会設置についてのあなたの御検討の結果を承わりたいと思います。
  102. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 結論から先に申し上げますが、ただいまどういうような扱い方をするかまだきめておりません。ただいま研究中でございます。そこで、社会党から提案になりました法律案についての私ども考え方でございますが、新聞でいかような記事が出ておるか私は存じません。特にこの法律案の取扱い方は、もちろん国会において行われることでございまして、個人個人の考え方でこれをとやかく批判すべきものじゃないことは、私も、選ばれた代議士として、そのくらいのことは十分わかっておるつもりでございます。ことに、政党政治のもとにおきましては、党におきまして法案の取扱い方等を協議し、最終的に決定するものでございます。従いまして、今日までの段階において、私自身が社会党提案の税制調査会設置のこの法律案についての批判を加えたことはないことだけは、はっきり申し上げておきます。同時に、この社会党提案の法律案に対する私の態度は、それでおわかりがいただけたと思いますが、ただいま冒頭に申しましたように、結論としてまだ研究中であるということを申しました。これはどういうことを研究しておるのか。もちろん、今後の税制のあり方等について、いかにすることが最も望ましい方法かということで研究をいたしておるのでございますが、これが研究に際しまして、過去の委員会その他において出ております考え方等は、もちろん基本をなすものでございます。従いまして、今日まで、政府当局がしばしば委員会等において申し上げて参りましたことについて、これを頭から無視してかかる、かような考え方ももちろんございません。これまた御了承いただきたいのでございます。ただ、問題は、税制調査会そのものが、非常な臨時的な措置としてこれを行い得るかどうかということが、実は私どもの最も頭を突っ込んで研究しておるポイントでございます。特に今回の税制改正というものは、自由民主党の公約事項であり、与党の公約事項を実施する、こういうことが選挙後の処置として行われ、取り上げられ、同時にその問題が臨時的な機関として処理される、こういうような点も勘案いたしまして、いかように取り計らうべきか、目下研究しておる次第でございます。どうか御了承いただきたいと思います。
  103. 横山利秋

    ○横山委員 前段の方につきましては了承いたしました。ただ、今あなたのお話としてはよくわかるわけでありますが、根本的な問題として、今日まで千億の減税だとか、あるいは二百六十億の減税だとかいうことが行われておるのでありますが、この税の問題が、大臣は今回初めて直接に担当されるわけでありますが、いかに国民の重大な関心事であるか、また何から始めるべきかということが政治上の一大問題であるかということを考えますと、少くとも他のいろいろな事情を通り越して、この際新しい大臣の手で各層の人材を集めて、それこそ公平公正な税制改正がなされるように、一部の資本家の社長の皆さんや、あるいは一部の方々ばかり集めずに、農民とか中小企業者とか、あるいは労働者とか、特に今回所得税と事業税をおやりになるとするならば、よけいにこの方面の意見を聞く方式を公正堂々と法制化をもってなさるべきことが当然のことではないか、私はそう信じて疑わないのです。御検討といいますから、もし法制化するといたしましたならば、国会の時間はあまりないのであります。少くともきょうあすのうちにおきめにならなければなりませんが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  104. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 法制化も一つの方法だと思います。しかし、要は、ただいま横山委員お話しになりましたように、各方面の意見、特に納税者、負担者の意見等を十分取り入れて調査することが最も望ましいことだと思います。問題は、その形にとらわれるまでもなく、実質的な問題としてこの問題の処理に当りたい。この点はただいまの御意見を十分拝聴しておきたいと思います。
  105. 横山利秋

    ○横山委員 それでは、十分に一つ検討していただきたい。私どもは、すでに本日議員提案の形をもちまして国会に臨時税制調査会の提案をいたしました。もし、大臣が先ほどおっしゃるように、そういう議員提案ということにとらわれず、その本質について十分検討するとおっしゃるならば、すみやかにその結論を得られるように希望しておきます。  第二番目に、この間大臣が予算委員会におられたものですから、山中政務次官を通じて政府の所見をただした二、三のことがございます。時間の節約上申し上げますけれども、政務次官から承わったことは、即政府の答弁なり大臣のお考えと変らない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  106. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん代表してお答えしたことでございます。
  107. 横山利秋

    ○横山委員 そういたしますならば、あとあと問題になるといけませんから、念のために申し上げておきましょう。山中政務次官から、次の税制改正においては、先般お話がありましたような所得税及び事業税とあわせて、間接税の減税をするとお答えになりました。よろしゅうございますか。
  108. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 間接税の減税をするという点はいかがかと思いますが、間接税も研究の対象にするということを申しておるのではないかと思います。
  109. 横山利秋

    ○横山委員 だからこそ私ははっきり申し上げる。今一分前におっしゃったことをすぐ話が違うように言われたら困るのです。あなたが政務次官の発言に対して責任をとるとおっしゃった以上は——もしも与党の諸君が言うように聞き間違いだというならば、山中政務次官の速記録に掲載してある通りのことについてあなたは責任をとる、こういうふうに申し上げますが、よろしゅうございますか。
  110. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 公約事項の面につきましては、私どももぜひこれを実施したい、こういう考え方をいたしております。同時に、税制を、国税、地方税を通じて十分調査研究するということを申しておるのでございます。あるいは下ることがありあるいは上ることがあるかもわかりませんが、これは、新調査会と申しますか、懇談会というか、そういうところの答申を待って最終的に決定すべき事柄でございまして、今日から特に間接税の面あるいは物品税等の面においてかくかくするという前提でやる考えはございません。もしも政務次官が減税するというような表現をしたといたしますれば、これはこの機会に訂正さしていただきたいと思います。
  111. 横山利秋

    ○横山委員 それは大臣まことに失礼な話じゃありませんか。だから私は最初から念を押しているのです。あなたは政務次官の答弁については責任をとると今答えたばかりではありませんか。それに何ですか。それでは前のことはうそで、今の言葉がほんとうですか。それではあなたの政治家としての力量を疑いますよ。少くとも政務次官がおれにかわって言ったことには責任をとると、今一分前におっしゃったばかりではありませんか。それなのになぜあなたは責任をとらないのですか。かりに政務次官が間違ったことを言ったとしても、あなたは一分前に言ったことに責任をとらなければいけませんよ。
  112. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん政務次官も政府を代表して答弁いたしたことでございます。しかし、私は、ただいま、もしそういうようなお話であれば訂正させていただきたいということを申している。私は政務次官が言ったことがうそだとかほんとうだとか言っているわけではない。訂正させていただきたいと言っているのです。
  113. 横山利秋

    ○横山委員 訂正させていただきたいということもまた同様であります。先ほど政務次官の言ったことについては責任をとると言いながら、その言ったことに対して訂正さしてもらいたいということもまた矛盾きわまる話であります。こうなったら、もうこれから政務次官に対して質問をして、どんな答弁をしたって、あとになってあなたから訂正されたらおしまいじゃありませんか。どうしてくれますか。これから私どもは政務次官を相手にしませんぞ。どうします。
  114. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん基本的な問題でございますから、場合によったら訂正させてもらわなければならないと思います。しかし、ただいまほかの委員の方のお話では、横山委員お話のように間接税を軽減するとはっきり言ったことはないと申しておりますので、その点は後ほど十分に研究してみたいと思います。
  115. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはそう言っているけれども、だから私は速記録の通り責任を持つかという言い方を今したのです。あのときの経緯は、いろいろ質疑応答があって、原さんが答えて、そして私がさらに追及して、政務次官が最後に言ったのです。その言った言葉がもし人によって誤解があるなら、私は速記録通りに責任をとってもらいたい、こう言ったのに対して、あなたは訂正をすると言う。そうなったら、大蔵委員会はこれから山中政務次官に質問をしませんよ。どんな貴重な答弁を得ても、山中さんがどんなに誠意ある答弁をしても、あなたが最後に出てきて訂正すると言ったら、それでおしまいじゃありませんか。委員長、これはどうお考えになりますか。私どもは山中政務次官に対してこれから考え方を変えなければなりません。私は少くとも人をひっかけるような気持はありません。だから、この間も私は最初原さんに答弁させて、事の経緯を十分に承知してもらった上聞いておるのであります。そういうようなやり方をしたのに、なおあなたが最後に出て来て、山中君の言ったことは訂正させてもらうというようなことを言われては、私は政務次官を忌避せざるを得ない。
  116. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私は、ただいまの問題はどう言ったかということが結局ポイントだと思います。おそらく軽減するとはっきりは言っておらないだろうと思いますが、もしもそういうことを言っているとすれば、横山委員が言われるように、そういう考え方であるならば、これは訂正さしていただかなければなりません。しかし、先ほど来お話しのように、間接税の軽減について研究するとか、あるいは努力するとかいうような表現であるなら、もちろん差しつかえないことでございます。
  117. 横山利秋

    ○横山委員 問題の本質は変って参りました。私は、あなたが山中君の言ったことに対してすべて責任をとり得ない、こういう表現をなさっておるというふうに感ぜざるを得ないのです。山中さんも一個の歴戦のつわものとして、大蔵委員会におけるしろうとではあっても、政務次官としての責任と権限を持って、あなたに代行してここへ出席される。だから私はいきなり山中さんに聞くようなことはしない。すべて政府委員の答えを得て、その経過を十分に承知してもらって、最後に山中さんに質問したわけです。そういう慎重なやり方をとりながら、さて重大な問題は、山中さんがかりに今後言われたとしても、もはや山中さんを信頼することはできないという実績をここであなたは生み出そうとしておる。ですから、間接税を減税するとかしないとかいうことよりも、今後の大蔵委員会運営についてのもっと重大な発言をあなたはされておる。それを御記憶なされなければなりませんが、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。政務次官がこれから言っても、あなたが訂正されることがあるということですよ。
  118. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん、重大な錯誤があれば、これは訂正を願わなければなりません。これは国政担当者の当然の責任でございます。しかし、私は、政務次官は、横山さんが言われるよう一に間接税を軽減する、こういうような言い切ったお話ではないだろうと思います。また他の委員の諸君もそうは聞かなかったと言っておられる。こういう点から見れば、あえて訂正を必要としないかもわかりません。しかし、基本的な重要なポイントについては、これはときに訂正をお願いすることもあると思います。
  119. 横山利秋

    ○横山委員 これは断じて錯誤の問題ではありません。質疑応答を通じて明らかになってきて、最後に政務次官の所見をお伺いしたのでありますから、断じて錯誤ではありません。あなたは、重大な錯誤であれば、最後になっておれが頭を下げて取り消してもらうことがあるということをおっしゃる。それはまた私うなずけないでもありません。しかし、これはまさに錯誤の場合に限られると私は思うのです。また、あなたがそう言う以上は、何か私どもに対しての理解と協力を得られる立場でなければだめだと私は思うのであります。これは一つ山中さんと、速記録を調査して、私どもの今後の山中さんに対する態度をきめざるを得ない。きわめて遺憾なことではありますけれども、今後の大蔵委員会運営に重大な支障を来たすことを私はおそれるのであります。ぜひともこれを、政府部内におきましても一つ速記録を確かめられて、大臣も山中さんと打ち合せの上で、本国会中に、その間接税についての態度、それから政務次官の今後の本委員会におけるあり方等について、重ねて明白なる態度を表明せられることをお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  120. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 よろしゅうございます。
  121. 横山利秋

    ○横山委員 私の質問はこれで終ります。
  122. 早川崇

    早川委員長 石村英雄君の質疑を許可します。
  123. 石村英雄

    ○石村委員 それでは、ごく簡単に大蔵大臣にお伺いいたします。  まず第一点、議会政治の根幹に関する問題であります。それは佐藤大蔵大臣が選挙中に選挙区でお話しになったことに関することなんです。選挙中におっしゃったと申しましても、佐藤さん自身が御演説をなさったわけではないですが、代理者として、しかし一時的なにわかに作られた代理者ではない。最初の五日から最後まで終始変らない代理者の演説ですから、これは佐藤さんの演説だ、お考えだと理解していいと思うのです。今日大蔵大臣としてのお考えを聞きますと、財政政策というものは、非常に慎重というか渋いというか、そういう政策をとっていらっしゃるのですが、選挙中のあなたの演説は、非常に積極政策であったわけでございます。その内容をここに一々私は御披露いたしませんが、奇想天外といったような積極論であったわけです。それが、今回大蔵大臣になったとたんに、まるで急に百八十度の転換を必要とした理由はどこにあるか。一つ選挙中の演説とかみ合せて御説明をお願いしたい。
  124. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石村君は同じ選挙区でございますので、おそらく立会演説会等において私の代理者がいろいろ話をしたことについてのお話だろうと思います。ただいま横山委員から指摘されたばかりでございますので、代理者の弁といえども、もちろん私どもがその趣旨について全面的にこれを没却あるいは頭から取り消すような考え方はございません。おそらく代理者といたしましても、どういう話をしたかわかりませんが、経済を伸ばしていくべきだ、あるいは民生安定のために一そう積極的な政策をとって生活向上をはかるべきだ、こういう議論をいたしておるに違いないと思います。私の政治家としての構想もそういう点ではもちろん変りはございません。ただ問題は、時期的な問題なり、あるいは財政規模の問題等で、ただいま申すような遠大な理想を表現いたしましても、実行の面において時期的に相当ずれがあることは御了承いただかなければならないと思います。おそらく、ただいま御指摘になりました点は、そういう意味において理解をいただけることではないかと思います。
  125. 石村英雄

    ○石村委員 ただこの問題をあまり深く追及しようとは思いませんが、今後こうした場合にはよほど慎重に代理者に演説させていただきたい。勝手な放言をさせて、あとで大臣になったらまるで真反対なことをおやりになったのでは、これは、議会政治というものを愚弄するというか、国民を愚弄することです。そこで、同席の方々はこれを簡単に考えてお笑いになるのですが、私は笑うべきではないと思う。賢明なる佐藤さんは十分お考えのことだろうと思いますが、いま一度このことはさらにお考えを願いたい。  さらに、いま一点お尋ねしておきますが、今度佐藤さんの財政政策、金融政策というものをながめて見ますと、財政政策では、非常に緊縮と申しますか、慎重な政策をとる、ところが金融政策では積極的な政策をおとりになっておるように見受けられるわけです。日本銀行の金利を引き下げるとか、あるいは財政投融資計画にいたしましても、当初計画自体が昨年同様横ばいというようなことで、昨年の状態とほぼ同じような投融資をおやりになるということは、今まで政府説明しておった日本経済状態からいえば、積極的な財政投融資ともいえると思うのです。しかもまた、当初計画になかった興銀や長期信用銀行の金融債を百億引き受けることをおやりになった、あるいは不動産銀行の十五億、放送協会の三十五億という、当初計画にない百五十億をさらに投融資でふやされるというような処置をおとりになっていることを考えますと、純然たる財政政策は緊縮、金融政策は積極、こういうように二つの使い分けをなさっていらっしゃるわけですが、財政の方で、そのような慎重と申しますか、緊縮と申しますか、そういう措置をおとりになって、金融の方は、いわば緩和と申しますか、そういう処置をおとりになる、そういう処置の生まれてくる理由なんです。これはどこにあるかお尋ねしたいと思います。今度の問題になっておりますたな上げ資金にいたしましても、これはいわば国民がかって働いて生産物ができた、それに見合う金が政府の手に集まっておるわけです。その方は解放しない。日本銀行の金利二厘引き下げとか、それ自体貸し出し増というわけではないかもしれませんが、少くとも考え方においては金融は緩和、日本銀行が信用を出していくということは、政府の手にある税金でとった金とは全く違って、いわば架空な金を出していくようなものでございます。こういうやり方の違い——われわれ考えますと、この間の予算委員会でも言いましたが、政府の手にある税金としてとった金こそまっ先に出すのなら出す、そうして金融の方はあと回しにするという方が、経済的に見ても穏当ではないか、妥当ではないかと考えるのですが、政府があえて金融の緩和の方に先に手をつけられるその理由だけを、大臣に御説明願いたいと思います。
  126. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 財政政策、金融政策、これが一体でなければならぬことは申すまでもないところでございます。ただいま御指摘になりましたように、金融政策では非常に甘い、財政政策では非常に渋い、こういう御批判でございましたが、私自身としては、さように両者の間に懸隔があるとはただいま考えておりません。同じように渋い考え方でいく、これは変りのないことであります。御指摘の点は公定歩合を引き下げたということ自身が非常に甘い考え方だとお考えになるとしたら、これは私どもの引き下げの趣旨とはおよそ違っておるのでございます。公定歩合を引き下げたことは、ただ単に金融の正常化の一端としてかような方法をとったにすぎないのであります。どうかこの一体的な運営に当っておるということを御了承願いたいと思います。
  127. 石村英雄

    ○石村委員 日本銀行の金利引き下げ自体が政府としては何も金融緩和ではない、金融正常化だという大蔵大臣の御答弁です。これについては私は全然考えを異にしておりますが、議論になりますから、この点は差し控えます。しかし、財政投融資で今の百五十億を新たにおやりになるということは、これは少くとも積極的な方策だといわなければならない。なぜ、興長銀の百億を、当初計画にないのを新たに引き受けられ、不動産銀行の十五億あるいは放送協会の三十五億合計百五十億、こちらのたな上げ資金を四百二十六億と見るか二百二十一億と見るか別として、二百二十一億と見ても、これと百五十億と比較すれば、性質から考えれば、ほぼ二百二十一億の方を解放すべきだということに意見としてはなってくるのが常道ではないか。これが同じことだ、決してゆるめるわけじゃないという御説明は、どうも受け取りかねるわけです。もう一度お考えを明らかにしていただきたいと思います。
  128. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 財政投融資につきましての御質問でございますが、内容につきまして一応私から御説明を申し上げたいと思います。  御指摘通り、三十三年度財政投融資計画につきまして、先般の計画を決定いたしました後に百五十億円を追加いたしましたことは事実でございます。この内容は、ただいま石村委員から御指摘通りに、興長銀債におきまして百億、不動産債券十五億、日本放送協会三十五億、合せて百五十億でございます。この基本的な考え方でございますが、たとえば興長銀債の百億、これが一番大口でございますから、これをとって申し上げますと、これは海運と鉄鋼向けの資金ということに大体なっておりますが、この考え方は、海運、鉄鋼等の事業量をこれだけふやすという考えではございません。本来興銀なり長銀におきましてこの程度の事業をファイナンスすることになっておったのでございますが、御承知のような金融情勢でございまして、興銀債、長銀債の消化が、市中の消化によることが非常に困難である。そこでこの消化を財政資金によって行なったということでございます。それで、一萬田前大臣以来やって参りましたように、全体の投資のボリュームをふやすという考えではなくて、同じボリュームをファイナンスいたす場合に、先年来日本銀行の貸出金が非常にふえておることは御承知の通りでございますが、これは漸次正常化の方向に向く、そのかわりに財政資金が必要な役割を果す、こういう基本的な考え方になっておりますから、先ほど大蔵大臣が申し上げました通りに、これをもって非常に積極的に事業量をふやすという考え方ではないという点を御了解いただきたいと思います。
  129. 石村英雄

    ○石村委員 正示さんの御説明では納得できないので、ちょっと念のために聞いておきますが、この興長銀の百億なり合計五十億というものは、きわめて短期の融資ですか。
  130. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。  これは正規の興銀債、長銀債でございますから、長期の運用でございます。
  131. 石村英雄

    ○石村委員 そうすると、正示さんのせっかくの御説明だが、矛盾があると思うのです。これは少くとも百五十億という金が市中で募集できない、消化ができないというので、政府の手元にある金をそれだけ市中に出すわけなんです。積極的に出すわけなんです。二百二十一億のたな上げというのは、その金を出しちゃいかぬといって押えるわけです。興銀、長銀を通じて、ある事業会社に対しての金を出すことはいいが、国民経済一般に関する道路だとか土地改良だとかあるいは港湾の整備に二百二十一億という金を出すということは経済支障があるということはおかしいじゃないですか。それだけ百五十億というものは積極的に出るわけです。
  132. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。  さらに資金といたしましては、民間金融でまかなう筋合いの場合に、いわゆる民間の蓄積と、私の方で郵便貯金その他による蓄積と二つあるわけでございます。しかし、これももとをただせば民間の蓄積でございまして、ただそのチャンネルが、銀行を通じてきておるか郵便局を通じてきておるかの違いでございます。そこで、私の方といたしましては、そういう資金を出す場合に、従来は、銀行がやって参りますると、銀行の手元資金が窮屈でございまして、日本銀行からの借り入れによってやっておったわけであります。この点は御承知の通りであります。これをだんだんと、国庫金の散布超過の傾向に対応いたしまして、回収をして参るという線に沿いまして、私の方の余裕金をもちまして、この長興銀債を引き受けたわけでございまして、もとをただせば資金のチャンネルが違っておるだけでございまして、それによりまして、今石村委員がおっしゃいましたように、より多くの事業をやるということではございませんで、同じ十三次造船の船を作ることは、その量は違わないわけでございます。違ったチャンネルによって出てきた金を使っておる、こういうふうに御了解を願いたいと思います。
  133. 石村英雄

    ○石村委員 大蔵大臣お尋ねしますが、ただいま理財局長の御説明なんですが、なるほどこれは郵便貯金とかなんとか国民の貯蓄だと思うのです。しかし、これは銀行であろうが、郵便貯金であろうが、金融的なものには間違いないわけなんです。従って私が金融政策において緩和だと言っているのはここなんです。これは政府の手で締める締めぬが勝手にできることなんです。普通の銀行が貸し出しをするというのなら、大蔵省がいってみたり日本銀行がいってみても、直接に締めることはできないと思うのです。日本銀行は、ただ、自分のところへ借りに来たとき、それを窓口規制で押えるだけにすぎないわけです。これは政府が直接動かすことのできる金なんです。この二百二十一億という税金の金と預金の金とは違うわけなんですが、しかし政府が直接統制のできる金なんです。そこで、私は、冒頭で、財政的にはきわめて渋いと申しますか、慎重と申しますか、そういう純然たる財政政策においては慎重であるが、金融的な政府の政策が緩和しておるのはなぜか、これを聞いているわけです。正示局長の答弁は、私の質問をそのままその通りでございますという事実の御答弁にすぎない。私は、その事実に対する考え方政府はなぜその方なら容易に金をお出しになる、税金の方はなぜお出しにならぬかということをお尋ねしておるわけです。
  134. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いわゆる予算というものと財政投融資、その相違からきておるのでございます。これは、私がかような説明をいたすことは、あるいは不十分かわかりませんが、予算につきましてはなかなか窮屈な使い方であることは、もうすでに御承知の通りでございますが、三十三年度予算編成方針の際におきましてもはっきり申し上げており、おそらくこれは説明して御了承を得ておることだと思いますが、財政投融資運用に当っては、経済情勢の推移に応じ弾力的に行うことを考慮すると、実ははっきりいたしておるのでございます。これが財政投融資の特質と申しますか、それはただいま正示君から御説明申し上げましたように、なるほどその蓄積のチャンネルが違っておるが、民間のものであるという点もあるだろうと思います。この予算の面になりますと、そういうような弾力的な運用、これは避けるというのが予算の本質でもございましょう。今日出ております経済基盤強化資金なり基金なりというものは、予算編成の際の一環の政策であり、その一部をなすものである、かようにも一つ御理解をいただきたいのでございます。
  135. 石村英雄

    ○石村委員 もちろん、予算で作られたものを、勝手に予算の補正をせずにおやりなさいということを言っているわけじゃないのです。また予算というものも弾力性があるのは当然のことだと思うのですが、その弾力性は、国会を開いて補正予算を組んで、弾力性を発揮させるべきだ。ちょうど特別国会というものが開かれておる。それをやらないでおって、投融資の方は弾力性があるのか。この方は、予算は弾力性がございません。それは、国会が開かれていないならできないということはいわれます。国会の開かれていないときに二百二十一億を出せなんて私は言っておるわけじゃない。社会党が言っておるのは、この特別国会でこれをやれと言っておるわけなんです。金融の方は、そのように予算にこの場合必要のない、予算総則に関係のないことはやれると思います。しかし、国会が開かれておる、この方はやらない、弾力は持たせない、依然として当初の方針通りいくという考え方が私は理解できない。御説明が不十分だと考えておるわけなんです。もう一度、予算予算編成なしに勝手に動かせるなんということは、まことに失礼ですが、私よく承知いたしておるつもりですから……。
  136. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それならば非常にはっきりいたして参りました、お尋ねの点が。予算の方は非常に窮屈だ、財政投融資は弾力的に運用しておるじゃないか、大体どういうわけだというような御議論のように伺ったので、これは予算財政投融資の相違、この点にあるいは誤解が幾分かあるのじゃないかと思ったのでございますが、ただいまのお話で、予算については補正予算を組んでこの弾力性を持たせばいいじゃないか、財政投融資はなるほど弾力的に使われるだろうが、なぜ今回の予算には補正予算を組まぬのか、こういう御議論のように伺うのでございます。この点はもう、この委員会を通じまして、再三再四今回補正予算を組まない理由を御説明して参りました、これは予算財政投融資の性格の相違からきておるのでございまして、この財政投融資の方につきましては非常な弾力的な運用、こういう意味ではなくて、財政投融資そのものの性格から弾力的な運用をすることがあることを前もって予定しておるのでございます。ここに相違点がある。前もって弾力的運用予定しておる金と弾力的運営、これを予定しない金、これをやるためには補正予算を組み、予算の編成をもう一度やる、そこに相違がある。これは一つ御了承いただき、同時に、今日の状況のもとにおいては、私どもは補正予算を組む考え方がないということを再三御説明申しておるのでございます。
  137. 石村英雄

    ○石村委員 議論になると思いますから控えたいと思いますが、やはり金融の方は弾力ということを口実に適当におやりになる。国民経済全般に関することに対しては非常に冷淡だという政府の方針を確認いたしまして、私の質問を終りたいと思います。
  138. 早川崇

    早川委員長 両案につきましての質疑は以上をもって終了いたしました。  これより討論採決を行います。  まず、経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案につきまして討論に入ります。通告があります。これを許します、横山利秋君。
  139. 横山利秋

    ○横山委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案について絶対反対いたすものであります。  しろうと大臣をもって自任し自負される佐藤大蔵大臣に期待するゆえんのものは、変転はなはだしかった今日までの経済の施策の行きがかりにこだわらず、移り変る経済情勢を客観的にすなおにながめ、適切な処置に英断をふるうことにあろうと存ずるのであります。しかりといたしますならば、この経済基盤強化のための法案、俗にいうたな上げ法案は、前国会で文字通りたな上げされて審議未了となり、処置のついた法案でありますから、清新はつらつと登場したはずの大蔵大臣が、死んだはずのお富さんを後生大事に墓場から取り出してくるということは、就任早々とりあえずといたしましても、まずもって世間の期待を裏切るものといわなければなりません。  そもそも、この法案の基礎をなす余裕財源のたな上げ構想は、昨年春、政府の景気見通しの誤まりによって、神武以来の景気が突如として神武以来の不景気に転落したことから生まれ出た構想でありました。すなわち、経済の激変にろうばいした第一次岸内閣は、去年春以来金融引き締めの手を強力に打ち続ける一方、九月十日の三十三年度基本構想において、昭和三十三年度におけるわが国経済運営の第一義目標は、国際収支を大幅に改善することにあり、そのため、さしあたり昭和三十三年度においては経済の発展を控えぎみとして、将来における安定した経済発展の条件を整備しなければならない。三十一年度剰余金はもとより、財源の余裕は将来の景気調節の財源とするという徹底した前提に立ちました。しかし、十二月二十日の閣議では、昭和三十一年度剰余金のうち、法定の財源に充当される分を除く四百三十六億円は、全額これを特定の資金として保留し、将来において経済基盤の育成強化のため必要となる経費の財源として活用するということになり、その後さらに国会へ上程されたときは、経済基盤強化資金二百二十一億と、五特別法人基金出資二百十五億とに分割されることと相なったのであります。何がゆえにこのように当初の計画を変化せざるを得なかったか。言うならば、それは、あつものにこりてなますを吹くたとえの通り経済政策の失敗にこりて冷たいなますをふうふうと吹いてさますようなやり方が内外の批判を浴びて、ついには自民党内における反対論にも屈したからであります。  問題とすべきことは、この法案の基礎理念が閣議で決定されたときの経済情勢と今日の経済情勢とが全く異なっていることであります。鉱工業生産指数は、昨年平均二五七・二が本年四月には二三三・四に落ちました。原材料在庫は、昨年平均一六三・一から本年四月一六四・七にふえました。機械受注高は、昨年月平均六百十一億から本年四月何と二百六十九億に激減しました。失業保険金の受給件数は、昨年平均の三十万九千人から本年三月には五十万四千人に激増しました。中小企業向け金融は、三十一年と三十二年に比較して五四%という驚くべき引き締めとなり、皮肉にも大企業向けには一八%の貸し出し増となっているのであります。しかも、引き締めの根本原因となった外国為替収支は、四月には名目じりで三千二百万ドル、実質では四千百万ドルの黒字となっており、この分では来年度の収支は年間三億ドルの黒字は必至であると大蔵省内部ですらいわれているのであります。明らかに、日本経済は、国際収支は黒字基調であり、国内経済は生産過剰、設備過剰の段階にあって、この法案が作られた当時の国際収支の危機という経済情勢とは全く異なるのみならず、働く各層の国民は、不況による失業と倒産と生活苦など、今日の引き締め政策の犠牲に耐え得ない実情であり、まさに法案を提案すべき理由はなくなっていると断言してはばからないのであります。  今考うべきことは、この新しい経済情勢に対処する方途でなくてはなりません。今日の経済対策については各方面でいろいろ議論されているのでありますが、私は、先日も申しましたが、特に池田勇人氏の所説に傾聴すべき点のあることを考えます。お断わりをいたしますが、私は与党内部の問題に介入する意思は毛頭ありません。より正しい政策追求の一点にあるのでありますが、池田さんの所説は、簡単にいえば、国際収支が黒字基調で、国内需給バランスが供給過剰の場合には、有効需要の上昇を指向すべきであることは自明の理である。このわかり切った根本理念について明快な理解がないために、世上往々にして混迷した議論が行われているのは、はなはだ遺憾であると言っているのであります。三木経済企画庁長官は底入れの状態だから、国際収支の均衡というワク内で経済政策を進めたいと言い、佐藤大蔵大臣は、これに反して、今日特別な人為的措置をとる必要はないと答弁されました。それでいて、公定歩合の引き下げは引き締めのおもしを一つとったのだ、今後一つ一つとっていくと付言をされたのでありますが、それが何の意味やらちっともわからなかったのであります。今日までたび重なる見通しの誤まりに加えて、閣内にあって経済閣僚の一人々々が意見が異なるようでは、遺憾千万といわなければなりますまい。  この法案の根底が国際収支の改善にあるとするならば、国際収支の展望についても、また政府は誤まりを繰り返しているのであります。世界的な不況は、一萬田前蔵相の期待にかかわらず、またアイクの言明にかかわらず、改善の見通しは何らありません。政府は輸出の増強に施策の最重点を置いているのでありますが、一方ではアメリカとの片貿易をそのままに放置し、他方では日中貿易を頓挫させるようなことで、三十一億五千万ドルの輸出目標は達成されるはずがないのであります。高碕通産大臣、先般本会議で不可能ではないと答弁されましたが、足元の通産省の役人が二十七億ドル台といっているのでありまして、今や何人もその実現を信ずるものはありません。政府は、東南アジア貿易が中国などとの熾烈な競争になっているのを考えて、支払いの延べ払い方式の推進をしております。これは、去年以来の借款は控え目に、海外投資や延べ払い輸出も代金回収を確保するよう慎重にという一萬田政策から見れば、明らかに大転換であるのみならず、国際収支の改善に矛盾する措置といわなければなりません。これを強行するためには、ついには外貨を別な形で獲得しなければなりますまい。政府は、明年度予算に備えて、今から米国との新たな外貨借款を秘密裏に折衝し、これをてこにして東南アジア対策を考えているとのことでありますが、これらがもし事実であるといたしますならば、日本経済はますます米国に従属し、中国との関係は決定的な危機を招来すると思われるのであります。  政府は、また、不況は底をついた、なべ底だと強弁しています。しかし、先日の国際連合の発表は、世界の不況がなお継続することを発表していますし、形の上で底をついたかに見える日本の不況というものは、広範な生産制限と、秋までには終るであろう継続工事と、一般的な滞貨金融によって、わずかにささえられているのにすぎません。政府希望的観測にかかわらず、本年秋から来年春にかけて、これらのささえは次第に失われるか、あるいはささえの意義を失って、世界的不況の深刻とともに、本格的不況に突入する危機はきわめて強いのであります。  今日なすべきことは、この四百三十六億を中心として、公共投資、一般財政支出、国民消費支出の適度の増加によって国内有効需要を刺激するとともに、将来生産力の拡充発展を可能にするための外部的、環境的条件を生み出すことであります。同時に、相互の信頼に立って、閉ざされた日中貿易を打開することであります。これなくして東南アジア貿易を円満に推し進めることはできません。なぜならば、政府の選んでいる道は、日本経済に外貨危機と米国従属という犠牲を加えるばかりで、日中関係の打開をさらに向うへ押しやるからであります。  かく考えて参りますと、この法案は、ますますその緊急性、必要性はごうもないばかりか、むしろ失業者と倒産と重税の今日、日本の経済をさらに不況べ導くのであって、有害と断じてはばからないのであります。  本来、この四百二十六億の財源は、収入目標を超過した取り過ぎの税金であります。一萬田前大蔵大臣は、昨年来、国会において、これは臨時的財源であるから、減税や施策には回せないと述べてきたのでありますが、解散になるや、政府与党は、明年度も一千億の自然増収がある、これをもって七百億の減税をすると呼号し始めたのでありまして、国民を偽わること、これよりはなはだしいものはないのであります。もしその減税を行う誠意があるならば、その財源の一部は減税にこそ回さるべきでありましょう。  二百二十一億の経済基盤強化資金は、将来の道路整備、港湾整備、科学技術の振興、異常災害の復旧または産投への繰り入れに予定されているのでありますが、前国会以来、世論はほうはいとしてこれがすみやかな実行を望んでいるのであります。何がゆえに今これができないのか。あくまでこれをたな上げして、それでいて次期国会でこれを取りくずし、補正予算を組むことになると思うのでありますが、このような愚を冒そうとする理由は何であるか。一にかかってこれは政府見通し対策の誤まりであると思うのであります。  二百十五億の基金についても同様であります。農林漁業金融公庫に六十五億、中小企業信用保険公庫に六十五億、日本輸出入銀行に五十億、日本貿易振興会へ二十億、日本労働協会に十五億をそれぞれ出資するのでありますが、信用保険公庫の一部例外を別として、基金を使わせるのが目的ではなく、この金を資金運用部に預けて、その利息で事業運営利子の値下げをするのが目的でありまして、まことに人を食ったやり方です。明らかにこれは補助金である。補助金ならば補助金らしく堂々と毎年計上すればよい。そして二百十五億は堂々と運用することが政治を明朗にする道であると信ずるのであります。政府は、これらの基金資金運用部へ回させて、政府短期証券の買い入れに充当する予定といわれていますが、時期条件次第では財政投融資計画に繰り込むつもりではないか、明確になっておりません。ここにも国民を偽わるやり方が隠されていると思うのであります。  本法案に含まれる日本労働協会について一言申し上げたいのでありますが、労使の自主的な交渉と妥結こそ、労使問題の基本的な原理であります。これに向って、当事者はもとより、関係者もあらゆる施策も努力もさるべきであります。協会の目的とする啓蒙宣伝についても、昔と違って、労使がそれぞれ憲法によって自主的な組織を持ち、十年にわたる実績を持っているのでありますから、ほかからとやかく言う必要はない。それとも、協会という隠れみのを使って、政府資本家の労働政策の御用機関たらしめようとするのでありましょうか。きわめてその意図は明瞭であります。かくのごときは、国民の税金を二重三重に無為に使用する結果となるのであります。  考えまするに、この法案は、新内閣がいまだ経済見通しも、また対策についても、内部に意見の不統一があり、大蔵大臣経済の認識不十分であるから、一応前の程度で提出しておこうというその場限りの感が前提となっておるように思われます。しかも、そのやり方は、今日不況に呻吟ずる農民、中小企業者、労働者を放置し、いな、ますますその犠牲によって、大企業中心の経済政策を進める橋頭堡となるものであります。  総選挙に際し、与党の総裁として岸総理は適当な景気調整策を行うと天下に公約しました。佐藤蔵相の言うごとく、特別な人為的措置を必要としないなどということは、民主政治を口にするならば断じて言えるはずではありません。新内閣はこの公約について今何を実行するのか、具体的に国民の前に明らかにする義務と責任があり、この法案は全くその公約に逆行するものであります。  重ねて申しますが、法案が考えられたときの基礎条件は変り、働く各層の国民は苦しみにあえいでいる今日であります。行きがかりを捨てて、再検討する新内閣の絶好の機会と思うのであります。いわんや、本委員会で明らかにされたように、与党の心ある人は、われわれの主張に同意されておるのでありますから、この際与党の諸君の真摯なる考慮を求めつつ、私は本法案の反対討論を終るものであります。(拍手)
  140. 早川崇

    早川委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決をいたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  141. 早川崇

    早川委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決いたしました。  次に、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案について討論に入ります。討論の通告があります。これを許します。石野久男君。
  142. 石野久男

    ○石野委員 私は、外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案に対しまして、日本社会党を代表して反対の意見を申し述べんとするものであります。  本法案は、法案の中にも書かれてあるように、日本国がインドネシア共和国に対して有する一億七千六百九十一万三千九百五十八万アメリカ合衆国ドル四十一セントの巨額の請求権を放棄したことによって、外国為替資金に生じた損失についてこれを処理しようとする内容を持っておるのでございます。この法案に対してわれわれが考えなければならぬことは、まずここに損失といわれるものが、果して特別会計法の内容として考えられるものであるかどうかという点に問題があります。それと同時に、これの扱いはどうあるべきかという、この二点に問題があると思うのです。われわれは、基金を取りくずすに当っては、少くとも特別会計自体から出たものでなければいけないという考え方を持っております。債権の放棄という問題は、本質的には賠償の内容として扱われたものであるとわれわれは断じております。すでにこの債権を放棄するということになったその議定書を承認した際にも問題になっておることでありますが、インドネシアに対する債権のインドネシア側の支払いは、決してインドネシアの方から拒否されておるものではなかった。むしろ、インドネシアの方は債権についてはこれを払いたい、こういうことを重ねて言われておった問題であります。しかるに、これを、藤山外相が、賠償を交渉する過程の中で、両国の将来に対する友好関係についてはどうしてもこれを棒引きをしなければならないと判断した、そのゆえをもってこれを棒引きしたのだ、こういうふうに説明されておるのでありますが、インドネシアとの間におけるこの債権棒引きの結果、その後の貿易の推移などを見ましても、決して、藤山外相が言い、あるいは政府が期待しておるように、そんなに貿易事情は改善されておるものではありません。その後の事情を見ましても、依然としてやはり輸出超過でありますし、しかもまた、その額においても決して政府が期待したように増額していっておるわけではありません。ここでは数字を省きますが、この三月前のものを見ましても、まだ依然として昨年末におけるような額にまで達していないという実情であります。われわれは、政府が言われたような意図においてこの債権の棒引きが行われたというふうには考えられないのであります。むしろ、この債権を放棄したということは、岸内閣並びに藤山外交の不手ぎわを糊塗しようとして、賠償の内容であるべきものを一特別会計の操作の中に転嫁させようとする苦肉の策としてこれがとられたものである、このようにわれわれは見ておるのであります。その放棄した結果は、決してよくなってはいないのであります。のみならず、このことはむしろ、この放棄することによって、この国が持っております債権を放棄するという結果から、血税として出されておりました特別会計の資産をそこでは食いつぶしてしまい、むしろ国民に対してはそれだけ大きな負担をかけておるということを、われわれは考えなければいけないと思うのです。しかも、今日持っておるところの外国に対する債務を見ますと、われわれは依然として長い期間にわたる債務を持っております。昨年末における債務の実態を見ますと、四千三百六十二億九千万円の債務を持っておる。しかもその債務の約四分の一を占める千五十八億というものは、これは明治三十二年以来あるいはまた四十三年以来のものであります。そういう債務を依然としてわれわれは持っておるし、それの利子も払い、今後もそれを払わなければならない責任を持っておるのであります。しかるに、私たちは、今日一億七千万ドル、約六百七十億円という膨大な債権の放棄をしてしまったのです。こういうことは、国民の側からすると、とても理解できないことであります。政府与党は、わが党の反対を押し切ってこの棒引きをしてしまったのでありますが、こういうようなやり方をしてまでも賠償問題の解決をしなければならなかったというところに、岸内閣と藤山外交の不手ぎわがあるのであり、そのまずさがあったはずであります。だから、われわれから言わせれば、この棒引きの内容というものは、明らかにこれは日本とインドネシアとの間におけるところの賠償交渉に関連する内容として処理さるべきものであって、決して外為特別会計の内容として処理さるべきものであるとはわれわれは見ないのであります。従って、私たちは、こういう債権棒引きの額に相当すべき一億七千六百九十一万ドルという額の処理に当っては、これは政府がその政治的理由によって棒引きしたのであるから、これを一外為特別会計の内容として処理すべきではないという観点に立ってこれを見ております。われわれは、その処理に当っては、当然外為会計からこれを落して一般会計に入れて、一般会計の中で新たに棒引きの対象として処理すべきものであると考えます。そして、外為会計の資金としては、これは減額すべきものではない。特に三十一億五千万ドルという膨大な外国貿易の達成を必要としておる段階において、貿易の総額はますます拡大しなければならないときに、この外為資金は当然今後もますます必要になってくるものであります。だから、われわれとしては、こういう段階において、しかも政治的意図の中で棒引きされたものを外為会計の中から落すというやり方は間違いであるという考え方を日本社会党はとっておるのでありまして、これを政府がこういうような法案の形で抹殺しようということは間違いであるということを、ここで指摘するわけであります。しかも、それのみならず、こういうような操作をすることによって、国民に、外国貿易に対する考え方、国際収支に対するものの考え方に対して、非常に誤まった考え方を持ち来たすことになることを私はおそれるのであります。私たちは、こういうような処理の仕方をすることによって、賠償の問題といわゆる債権取消しの問題、また貿易上出ておりますところのわれわれの債権の取扱いの問題等をますます混迷化させてしまう、はっきりさせないという、そういうあやまちをここで犯すことになりますし、なお、いま一つ考えなければならないことは、財政法、会計法上の処理の仕方からいたしましても、ただいたずらに貸し方と借り方とを相殺すればいいのだというような考え方で特別会計の処理をしてはならないということであります。私たちは、特別会計には一つの任務があると思う。その与えられた任務によって会計上の処理はなされなければならないのである。われわれが今日持っておる外国との取引の関係で出てきた債権は、その業務目的の中において解消すべきであると存じております。依然としてわれわれが持っておる諸外国に対する債務はこれを持ち続けるのでありまするから、われわれは、今回の、今日持っておるこの債権も、依然とし外国に対する債権として持ち続けるべきであるという考え方を外為会計の上では持つべきでありまして、従って、政治的理由のもとにおいてこれを処理するとするならば、われわれは特別会計の中でこれを処理してはならないという考え方を明確にしておくべきであると存じております。にもかかわらず、政治的な目的経済的な問題とを混同して会計法上において処理をするということはあやまちでありまして、私は、こういうような立場からも、この問題、こういう法案の提案の仕方に対しては、これは間違いであると考えております。私たちは、このような理由によりまして、一般会計の上で処理すべきものを外為会計の上で処理しているということは間違いであるということを強く指摘するとともに、もし政府にしてこういうようなことをしようとするならば、どうしてもしなければならないとするならば、一般会計の上ですべきだということを指摘いたしまして、これに反対いたします。  私は、最後に、このような処置の結果として、賠償として取り扱われた問題を一取引関係の損失だというふうに見るということは間違いであるということを、ここでは指摘しておかなければならない。会計法上の処理としては、この法案が成立すれば外為会計で処理されてしまうでしょうけれども、実質的には、これは賠償の問題である。むしろ、政府は、戦争の負担が強く今日残されておるということを国民に知らせるためにも、賠償の実態を明確にして、国民にその責任を痛感させるべきであるはずであります。それをしないで、一特別会計の内容の操作として処理することは間違いであるということを指摘し、私たちは、ここでは、この特別会計上処理として持たれておりまする内容は、明らかに戦争の事後処理の問題であるということを指摘し、これは明らかに賠償内容の一端であるということを国民にも訴えて、そうしてこの会計処理上の問題があやまちであるということを強く指摘して、本法案に対する日本社会党の反対の討論をする次第であります。
  143. 早川崇

    早川委員長 これにて討論は終結いたしました。  採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  144. 早川崇

    早川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、この際お諮りいたします。ただいま可決いたしました両法案に関する委員会報告書の作成並びに提出等の手続につきましては委員長の御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 早川崇

    早川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる七月一日午前十時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後一時二十九分散会