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1958-06-26 第29回国会 衆議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

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  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十六日(木曜日)     午後四時二分開議  出席委員    委員長 早川  崇君    理事 足立 篤郎君 理事 福田  一君    理事 坊  秀男君 理事 石野 久男君    理事 佐藤觀次郎君 理事 平岡忠次郎君       内田 常雄君    鴨田 宗一君       小山 長規君    西村 英一君       古川 丈吉君    細田 義安君       毛利 松平君    山村庄之助君       山本 勝市君    春日 一幸君       久保田鶴松君    田万 廣文君       竹谷源太郎君    廣瀬 勝邦君       松尾トシ子君    山下 榮二君       山花 秀雄君    横路 節雄君       横山 利秋君  出席国務大臣         外 務 大 臣 藤山愛一郎君         大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (理財局長)  正示啓次郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  石田  正君         大蔵事務官         (為替局長)  酒井 俊彦君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      小熊 孝次君         専  門  員 椎木 文也君     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済基盤強化のための資金及び特別の法人の基  金に関する法律案内閣提出第一号)  外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)      ————◇—————
  2. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 これより会議を開きます。  経済基盤強化のための資金及び特別の法人基金に関する法律案及び外国為替資金特別会計法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。春日一幸君。
  3. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 昨日に引き続いてお伺いするのでありますが、質問の要点は第十一条の一の三号についてであります。すなわち、日本輸出入銀行に対する基金として今般政府出資せんとする五十億の基金についてでありますが、私はこの問題について昨日お伺いをいたしましたのは、大体まだこれは言うならばこのような国際協力機構というものが将来できるかもしれない、こういうことが一部の人々によって考えられておる。言うならばこれは一つスケッチ程度のものであって、まだ青写真にすらなっていないものである。いわんやまだ建設されたものではない。だから対象自体が実在してはいない。だから、このような実在していない仮想のものに、今国内において諸問題が解決されないままに山積しておるときに、こういうような出資行為を行うことが果して政治論として許されるかどうか、この点について質問をいたしたのでありますが、昨日の御答弁をもってしては、何らこれに対して本員をして納得せしめる御答弁がなかったことは、きわめて遺憾であります。昨日から本日までの間に、大臣においてもこの問題についてはさらに御検討になったことと思うのでありますが、本日あらためてさらに何か本員を納得せしめるに足る御答弁がいただけますかどうか、この点について重ねてお伺いをいたします。
  4. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 ぜひとも趣旨を御了承願いたいと思いまして、重ねて御説明申し上げます、ただいま御指摘東南アジア開発協力機構、その機構そのものは御指摘通りでありまして、ただいまいろいろ構想のうちにあることだと思います。しかし、これが実現するまでは一体この基金はどうするのかと申しますと、これは、実現するまでは、第三号に書いてありますように、将来それができるであろう、そのために使う基金として日本輸出入銀行出資するということでございます。この基金として出資するというこの事態は、将来そういう機構が生まれるであろうということを一応考えてはおりますが、この基金そのものは、他の基金並びに資金と合せて、いわゆる経済基盤強化基金資金として今日たな上げしておるのでありまして、この意味においての財政的な意義は、これを基金にすることで何らそこなわれていない。従って、春日さんの言われるように、基金としても直ちに使う、そういう状況のものならば、基金に設置するのもいいけれども、まだ使うか使わないかわからないものをかような形で取り扱うことは困るではないか、よろしくないのではないか、こういう御意見に対しましては、今回の御審議をいただいておる法案全体が、基金並びに資金としていわゆるたな上げされる、こういう性格のものであることを一つ御了承賜わりまして、将来ぜひとも御賛同を得て、早い機会に東南アジア開発機構、これを設立さすように御協力が賜わりたいとお願いをいたす次第であります。
  5. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 第三章に掲げられております「公庫等基金」、この十条の中にずっと一から五まであります。たとえば農林漁業金融公庫にしても、また中小企業信用保険公庫貿易振興会日本労働協会、ことごとくこの基金をもって経済効果もまた政策効果も上るのであります。しかるところ、ひとり日本輸出入銀行に対しまする分に対しましては、政策効果も上らない、経済効果も上らない、ただその金をたな上げしておくというだけのことにとどまるのでございまして、これは言うならばあなたのこの法の立て方が正しい、立法上正しいとわれわれが百歩退いてこれを認めたといたしましても、これはむしろ基金に繰り入れるべき性格のものでなくして、資金的な内容を持つものである。資金は、御承知の通り第七条には「将来における」云々と書きまして、将来こういうような事業のために必要だから、年度内には使わないけれども、他の年度において使う必要がある、こういう必要を認めて財政支出が行われておる。だから、将来の必要に備えるという意味におきましては、この七条にいう資金使用と、それから十一条の一の三号にいうところの輸出入銀行に対する五十億の使用とは同じ内容のものであり、かつは形態も同じ形態のものであると思うのであります。私は、かかる意味において、政府がかくのごとく財政支出のたな上げ措置を行う、そしてまた経済基盤を強化することのために、このような将来における政策を予測して財政の裏づけを行うというのであるならば、すべからくこの五十億円はこの二百二十一億三千万円の方へ加えるべき性質のものであって、基金的性格も機能も持たないものをこういうところへ分類するということは、明らかに不当なことであると私は指摘をいたしておるのでございます。昨日来この点について質問をいたしておりまして答弁を得ました。本日重ねてなお答弁を得ましたが、本員をしてこれは納得させ得るに足るものではございません。この点はいかがでありますか。
  6. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 春日委員にお答えいたします。  ただいま御指摘になりました御意見の内答は、第十一条一項三号の前段についての御意見としては、私も賛成できる御意見のように伺うのでございますが、後段に書いてあります「将来当該機構出資に振り替えることができる性質国際的協力による投資財源に充てるための東南アジア開発協力基金」かように申しております後段の点については、これはそのうちこういう性格のものが出てくることが考えられるのでありまして、いわゆる二百二十一億三千万円の資金とは性格を異にする、かように考えておる次第であります。
  7. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 私は、この第七条の「資金使用」のこの法意——語意はともかくといたしまして、法意は、この二百二十一億三千万円なる資金は、道路整備、港湾の整備等五つのカテゴリーに限って、これを予算補正措置を講じて、それぞれの財源に充てることができることになっておるわけであります。また、ただいま大臣指摘をされました後段といえども、「投資財源に充てるための」となっておる。何にも違わないじゃありませんか。ともかく将来の財源に充てる。この第十一条の一の三号も、将来の投資財源に充てる、何にも変りないじゃありませんか。まるきり資金です。言うならば資金的区分をしなければならぬ性格のものです。だから、私は、昨日も申し上げたように、ハマグリとスズメのような異質のものを一つ法律の中で取り扱おうとしているところに、さまざまな紛淆が生じて参る、こういうことを申し上げた。財政法上非常に疑義があって、資金というものが否決されるというような場合があっても、基金という問題については、本日一般会計の中で所要の歳出が行われていないから、あるいはこれは通さなければ政策上困るような面もある。困るような面と、通してはならぬ面と一緒にある。方向の相違うような内容のものがここに一緒に抱き合わされておる。問題はここにあるのであります。問題を整理いたしまするが、将来の財源に充てるための資金と、将来の財源に充てるための基金と一体どこが違うか。読んでも同じことだ。法意語意も同じこと、納得できぬじゃありませんか。間違いなら間違いと率直に改めたらどうですか。
  8. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 別に間違いではございません。この問題は基金資金相違でございます。
  9. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 それはまるでひょうたんでナマズを押えるようなものです。私は、もう少し手ごたえのある御答弁を願わなければ、それはまるきり答弁になりませんよ。委員長、これは大臣にちょっと注意してもらわなければ困ると思うのです。私が申し上げておることは、聡明な大蔵大臣は十分御理解ができないはずはない。腹の底では、本員のこの正当なる、公正なる解釈に、おそらく同感されておるのではないかと思うのです。けれども、原案がこういうものだから、今さら間違っておるとは言えないので、かたくなにその説を支持されておるのではないかと思うのですけれども、私は、誤まっておることはこれは改めるにしかずと思うのです。どう考えたってそれは理解できないじゃありませんか。だれが読んだってそうですよ。第七条は将来における経費の財源に充てるのでしょう。それから、第十一条の一の三号も、とにかく東南アジア開発協力機構というものは今何らできていない。言うならまだ星雲状態、何ら固形を示していない。架空のものです。その点においては、実質的に、道路整備やあるいは異常災害がどういう状態に起きるか、その起き方によって復旧の規模も変ってくる、そういうふうに将来を予測して、そして一会計年度の歳入をもって他の会計年度歳出に充てるという、この考え方については、この輸出入銀行の五十億と二百二十一億三千万円とは、内容性格、形式、何にも違わないじゃありませんか。まるきり同一のものではありませんか。同一のものを同じようにたな上げしておいて、片方資金片方基金、これはへんちくりんなものだと思う。その点の御理解はいきませんか。あくまで、事務当局の作られたものを、しかも前内閣の作ったものを、あなたの明敏をもって、間違ったことを正そう、これだけの勇気をお持ちになることはできないのですか。不思議ですね。自民党のかっての大幹事長としてその名をうたわれた佐藤榮作氏、一つ勇気を持って、間違っておるなら間違っておる、変なら変、検討するなら検討すると、大臣らしい政治的責任を持って、私のこの正当な質問に対して胸襟を開いた御答弁を願いたい。
  10. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 先ほど基金資金相違はございますということを申し上げました。昨日来基金資金相違についていろいろお尋ねがあったと思いますが、ただ単に便宜的な措置資金基金に区分したわけではございません。資金として今計上しておりますというか、掲げておりますものについては、補正予算を必要とすることはよくおわかりだと思います。今回の東南アジア開発機構に対するものとしては、今日これを基金として出資し、そして必要が生ずれば、補正予算を必要としないでこれを使い得るということに実はなるので、これは、その経済開発機構並びに将来この開発機構に移るであろうと考えられるような出資事項に対して、やはり今日から基金としてこれを作っておきたいというのがこの考え方でございます。これは昨日事務当局から詳しく法律的な説明を申し上げて、会計法等の関連についての詳しいお話をいたしましたが、政治的にこれを考えてみますと、今日東南アジア開発機構というものを作ろうとするので、なるほど御指摘のようにただいま星雲状態ではございますが、そういうものを扱い得る日本輸出入銀行というれっきとした法人があるのであります。これに対して基金としてこの際出資をしておくことは、これは他の二百二十一億三千万円とはおよそ性格が違う、かように理解いたしておるのであります。またぜひその意味において本法への御協賛を心からお願いいたしておるのでございます。
  11. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 これは軽率のそしりを免れないと思うのです。あなたの御答弁によりますと、資金の方は予算補正措置を講じなければ歳出が許されない。ところが基金の方はこうしておきさえすればいつ何時でも出資ができる、こういうふうにあなたは断定していらっしゃる。私はあなたにお伺いをいたしますが、たとえば国際経済協力機構ができた場合、この東南アジア開発の場合でもけっこうですけれども、この輸出入銀行をして必ずこれにこの五十億で事に当らしめ得るとあなたは考えられますか。将来こういうものが予測されたようにできるかもしれない、御努力によってあるいはこういうものが固まってくるかもしれないけれども、そのときは果してこの日本輸出入銀行がその出資に当り得るかどうか。あなたはそれを断定できますか。この点を伺います。
  12. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 あるいは説明がまことに不十分だったから、ただいまのような御疑念を生じたかと思います。私が申し上げたいのは、第三号の後段の「出資」というような場合においては、これは可能ではないかということを申し上げたいのであります。はっきりした東南アジア開発機構というものが生まれました際においては、これは、ただいま御指摘になりましたように、日本輸出入銀行に取り扱わしめる、かように断定することはまことに軽率といわなければならないと思います。
  13. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 そういう軽率なことをやるべきであるか、あるいは軽率なことは断じて国のまつりごとの中で——いやしくも大蔵大臣たるものは、軽率のそしりを免れないような、あるいはそのような疑義があるような事柄は慎しむべきではないかと思うのが、われわれの考え方なんです。と申しますのは、私は例のないことを申し上げるわけではないけれども、たとえば世界銀行にいたしましても、あるいはまた国際金融公社でありますか、こういうような国際経済協力機関、これはさまざま、エカフェやポイント・フォア計画や、その他いろいろあると思う。そういうことに当っていく国際経済協力機構というものは、現実に二つばかり例があると思うのだが、これに対する出資は、その定款によって明らかなように、これはその国の政府の直接出資でなければならぬと私は理解しておるが、これはいかがでありますか。また現実にそういうふうになっておると思うが、いかがでありますか。
  14. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 主計局長答弁いたさせます。
  15. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 世界銀行国際金融公社に対しましては、政府出資をいたしております。ただ、中央銀行一定額債務保証書をもって出すことが認められておりまして、出資の主体は政府であるというふうに承知しております。
  16. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 たとえば国際経済協力機構出資の条件は今お聞きの通りなんです。これは尊重すべき特に注意すべき前例であると思う。従いまして、もしここにあげられております東南アジア開発機構というものができ上ったときに、この前例に徴して——私は、前例というものは、これは偶然にあるものではない。これはそういう必要があってこういう結果になっておると思うのです。従って、私は、この世界銀行国際金融公社のような形で、これは国際的な問題でありますから、これは日本国の恣意によってどうにでもできるものではない。これは複数国家のやはりそれぞれの主張に基いてこういう結果が生じてくるわけなんですが、今まであったものが、ことごとくこれは政府の直接出資である前例に徴して、将来できるこの東南アジア開発機構なるものも政府の直接出資でなければならぬ。今までのような形で、そのような定款が定められたときに、政府は一体これはどうしますか。そういうような場合には、結局、輸出入銀行に五十億の金を基金として作っておいても、輸出入銀行から出資することはできなくなるじゃありませんか。この点はいかがです。
  17. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 今東南アジア開発機構というものができて、日本輸出入銀行から出資ができない、こう言って断定しておられるようですが、それはそういう機構ができるときにどういう方面の出資をきめるか、それをきめてからかかるべきであろうと思います。それまでとにかく政府はこの際基金として出資はいたしますが、日本輸出入銀行に対する出資に対しては特別な経理方法を命じております。その意味においては他の資金と混淆することはないと思います。
  18. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 私が申し上げんとするところは、さまざまの要素を含んでおりますけれども、まず一点に集約するならば、現に世界銀行国際金融公社政府の直接出資にあらざれば出資することが認められてはいない前例に徴して、ここに将来設置されるかもしれないところの東南アジア開発機構に対する出資日本政府の直接出資でなければならぬと定款が定められたときにはどうなるかということなんです。そのときには、これはあらためて国会議決を必要とする事態が起きてくると思うが、この点はいかがでありますか。
  19. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 ただいま私が申し上げましたのは、春日さんの言われる通り定款になるかあるいはならないか、そこのところはただいまからきめてかかることができない。もしただいま御指摘になりましたような事態が起れば、日本輸出入銀行に対する今回の基金としての出資の分についても、あらためて処置を講じなければならぬということはもちろんといわなければなりません。
  20. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 さすれば、ちょうどこれは第七条に書いてある基金が後日予算補正措置を講ずるにあらざれば五つ目的に対して支出が行えないと同じように、結局この日本輸出入銀行の五十億はむだになる。支出することができなくなる。そこで、今大臣が、どういう工合に定款ができるかわからない、出資形態がどのような形で進められるかわからないが、しかし、これは、直接出資が認められる場合においては、そのまま出資ができるんだ、こうおっしゃっているんですね。ところが、私は、今までのところ、その民間会社が直接出資がなし得るところの国際金融機構というものはないと言う。だから前例というものはやはり今後の処理においても重きをなす。私は問題をしぼって伺いまするが、世界銀行やあるいは国際金融公社と同じような規模構想でこの金融機構ができたときにはこれは役に立たなくなるものでありますか。この点しぼって御答弁を願いたい。
  21. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 役に立たなくなるというのは、どういう意味お尋ねか、ちょっと伺いたい。
  22. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 役に立たなくなるというのは、たとえば政府の直接の出資でなければならぬとその定款がきめられたときは、これは日本輸出入銀行出資をするの資格を持たぬわけである。そうでございましょう。そうすれば、そのときにはこれはあらためて別の財政措置を講じなければならぬ。従って、政府としては国会のあらためての議決を必要とするものであって、今ここで取りきめておいたって、これは何にもならなくなるんだ、このことを申し上げておるのであります。
  23. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 もちろんそういうような場合だと、これはあらためて出資しなければならぬことは御指摘通りだと思う。ただ、問題は、重ねてくどく御説明申し上げますが、第十一条第三号の後段の点についてはいろいろ議論の余地もあるのではないかと思います。従って、今日基金として出資することが無意味だとは考えておりません。その意味において多少は違う、かように考えておるのであります。
  24. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 かりにたとえば網を張っておいて、そこへ鳥が通ってたまたまひっかかれば、それは目的を達する形になるけれども、そういう形で国際協力機構なるものができなければ何にもならぬ。鳥が網を張ってあるところへ飛んでこなければ何にもならないのです。従って、空間というものは無限にある。国際経済協力機構作り方というものは、たとえば世界銀行あり方もあるだろうし、国際金融公社あり方もあるだろうし、あるいは輸出入銀行をして当らしめる方法もあるだろうし、その他幾つかの方法が無限にあると思う。網を一ところに張っておいて空間が無限にあると同じように、ただ一つ方法だけきめて金をここに用意せんとするものだから——いろいろな案がある。いろいろな方法がある。国際情勢は千変万化で予測しがたい。そういうようなときに、五十億円という——これは国民血税ですよ。余裕財源と言っておるけれども、これは国民が納めたところの血税なんだ。差し押えや競売や何かでみんなねじ伏せて取ってきたとんでもない金なんだ。血と涙がまじっている金なんだ。そのような五十億の金を、そんなわけのわからぬ、飛んでくるか飛んでこないかわからぬかすみ網のかわりに使うなんという、こんなばかげた政治あり方財政の立て方というものは許されないと思う。大蔵大臣政治的良心にかけてこの点いかがでありますか。
  25. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 大へんくどいお答えをしてまことに恐縮ですが、十一条第三号の後段、こういうことがいろいろ考えられるのではないかと思います。これはただいま事務当局からもいろいろ説明を聞いておるのですが、やや事態は違います。やや事態は違いますが、今日ビルマに対する経済協力という場合には輸銀が実施できるようにもなっております。問題は東南アジア開発機構というものの作り方いかんだと思いますが、それができ上ります前に、いろいろな形において、経済協力の形においての出資があり、そして将来東南アジア開発機構というものがすっかりできれば、そういうものがそこへ移っていくことも今日から予想ができておると思います。従いまして、これは全然架空なものではない、こういうことが言えるのではないかと思います。
  26. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 それでは端的にしぼって伺いますが、もし私がいろいろな前例に徴して心配しておるように、政府が予測したような形でこないで、今まであったような方法で、すなわち政府の直接出資でなければだめだ、こういう形になった場合、政府はどうしますか。
  27. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 そのときの会計的な処理はどういうようにいたしますか、おそらく組みかえの処置をとるのではないかと思います。
  28. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 組みかえの措置をとらなければならぬ危険性というか、そういう可能性あるいは必然性もあり得るのですか。現在の見通しの中で責任ある答弁を願います。これは一年か二年の間に結果が現われてくるのだから、あなたたちの命のある間に結果が現われてくるのだから、政治責任をとっていただかなければ承知しませんよ。
  29. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 必ず組みかえをするような事態が起る、こういうことも言い切れませんし、絶対に組みかえを必要としないと言い切ることもできない。これは先ほど来くどく御説明申し上げている通りであります。     〔「水かけ論だ」と呼ぶ者あり〕
  30. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 私が申し上げたいのは、今福田君が水かけ論だと言うけれども、水かけ論ではない。これは結果が現われてくる。現在、アメリカにおいても、東南アジアにおいても、これが東南アジア開発のための一つ国際協力機構として真剣に論じられておるのでありますから、福田たちはしろうとだからわからないけれども、われわれベテランをもってすれば、この結果は、一年半かあるいはことしじゅうか、とにかく近い将来に結果が現われてくる。従って、あなたの今ここで述べられることは結果によって証明されるのですよ。そこで、私はあなたにお伺いしますが、たとえばその可能性ですね。ポシビリティ、これは一体どの程度のパーセンテージですか。
  31. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 ただいまその可能性についてお答えするだけの材料がございません。
  32. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 では、私はこの際あなたに強く申し上げておきますが、とにかくこれは輸出入銀行出資者たり得るであろうという確信のもとにこの予算が組まれておる。少くとも五十億円という国民血税は重大なものです。従いまして、見通しがもし誤まって、政府が直接出資をしなければならぬというような結果、要するに政府の見通しと違った結果が現われてきたときには、少くとも主計局長は責任をとってもらわなければいかぬ。私はこの点を厳重に御銘記願うように申し述べておきます。  さらに、私は、この問題、いろいろな経済的な効果が多角的、有機的に波及していくと思うのですが、一体この出資の方式はどういうような形態がとられるのでありますか。たとえば株式を保有するのか、債券を持つのか、一体どういう形になるのか。五十億というような膨大な金を今ここに予算措置をとらんとする限りにおいては、これについても、輸出入銀行の大体現行銀行法に照らしてどういう形になるのか。これは重大な要素であると思うので、この点も責任ある答弁を願います。
  33. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 お答え申し上げます。  全体の輪郭がまだ明らかでないものでございますから、具体的な形につきまして申し上げることが困難な点がございますが、一つ考えられますることは、融資という形ではなくして、出資という形に相なるだろうという点であります。それがどういうような形のものに相なるか、いわゆる出資金のようなものか、あるいは何か持ち分権のようなものになるのか、そういうものにつきましては、でき上りまする機構そのものの輪郭が明らかになりましてのことになります。とりあえず申し上げられますことは、出資という形になるであろうということであります。
  34. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 私は、ここへ五十億のこういう基金措置をとること自体における法理上の疑義、それからまた輸出入銀行をしてそのことに当らしめるということの機構上の疑義、非常な不安があるわけなんです。この輸出入銀行は、申すまでもなく投資出資を行うことを本来の任務とする金融機関ではありません。これは輸出金融をもって本来の任務としておる。それを通じて、さらにまたそれを敷衍して、そういうような社債を持ったり株式を持ったりすることによって投資的な活動をすることも容認しておる。けれども、それは本来の仕事ではない。言うなればサイド・ワークだ。金融事業に付随する、避けがたき場合においてそういうこともあわせてなし得ることになっておる。そういう金融機関に投資業務を行わせていくということについては、私は、この輸出入銀行が設置された当時のいろいろな経緯にかんがみて、必ずしもオーソドックスなあり方ではないと思う。さらにもう少し検討していきますると、特に輸出入銀行資金量が十分であって、ことごとく単独融資を行なっておれば私はいいと思うのです。これは、輸出入銀行だけにその事業会社が依存することによって、すなわち輸出入銀行の責任と、それから融資を受けたもののその責任とにおいて問題の処理がされる。ところが、輸出入銀行の融資は、実際的には市中銀行との協調融資でございましょう。輸出入銀行だけの資金をもってそれぞれの事柄がことごとく弁じ得るものではない。これは補完的な役割を果しておることはもう当然であります。だから、そういうような無限の市中銀行との協調的な性格を持っておるのです。こういう金融機関がその同じ機構の中において純粋のこういう投資活動を行なっていく、こういうことから伝わり、関連して、産業界に及ぼすような影響が相当ありはしないかというような点について、主計局長は十分検討されておると思うのだが、この点いかがでありますか。
  35. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 輸出入銀行が融資をいたします場合におきまして、協調融資という建前になっておりますことはおっしゃる通りであります。ただ輸出入銀行は融資だけを職務といたしておるものではございませんので、投資をいたしますことが認められておるわけであります。従いまして、今般の東南アジア開発基金というものは、本法律によりまする一種特別な基金でございますが、本来の業務である投資業務というものと、その形におきましては類似をいたしたものでございますし、信用の調査でありますとか、いろいろな投資に伴いまする事業の採算、そういうようないろいろな調査をいたします観点におきましても、業務的に同じようなことになっております。そういうような点におきまして、輸出入銀行の本来の業務と相並びまして、この基金輸出入銀行をして扱わしむることが適当であろうかと考えております。     〔委員長退席、福田(一)委員長代理着席〕
  36. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 この問題は申すまでもなく御理解を願ったと思うのですけれども、これは、実体が、ほんとうに単なるたな上げして封鎖されておる金であるという立場において、資金とちっとも変らない。大体、資金そのものが、財政法四十四条にいう資金であるか、あるいはそれを粉飾したところの仮装の脱法行為であるのか、これはさらに論議を尽さなければならぬ問題だと考えますけれども、かりに資金の制度が認められるといたしましても、この東南アジア開発機構に対する五十億円というものは、断じてこれは基金ではない。これは、第七条にうたっておるところの資金と、形式も内容も実体もことごとく一緒なんです。今の論議で、これは聞く人が聞いたらよくわかると思う。だからこういうような誤まった立法のあり方というものは許されてはならぬということなんです。しかし、これは何回申し上げても、佐藤大蔵大臣はすなおな御答弁がなくて、これも官僚の最も悪いくせだと思うのだけれども、私は相当鍛練されて変っておられると思うのだけれども、自分が言い出した以上はあくまでも自説を曲げない。これは全く日本官僚の病的な欠点だとされておるのだが、その欠点の残滓が残っておることをきわめて遺憾とする。しかしこの点はなお十分御検討願いたい。  時間で制約がありますので、私は問題を他に転じまして、この際まず第一番に主計局長にお伺いをいたしますが、昭和三十二年——昔ではない。去年だ。九月十日に、閣議決定で、昭和三十三年度予算に関する基本構想、これが発表されました。そのとき、余裕財源をどうするかということについて、どういうような扱いに決定されましたか。それを一つここで読み上げていただきたいと思います。
  37. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 今手元に編成方針はございますが、今おっしゃいました九月の構想がございませんので、もし構想の字句がお入り用でしたら、すぐ取り寄せまして申し上げますが、一応編成方針が大体の構想でございますので、それでごかんべん願えますか。
  38. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 編成方針ではいけません。それでは、私の手元にありますから、私が特に読んで差し上げますが、この基本構想によれば、昭和三十一年度剰余金はもとより、本年度財源の余裕はこれを将来における景気調節の財源とする等の措置を講ずる、こういうような決定がされたことは事実でありますか。
  39. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 実は今私手元にございませんが、お読み上げのようなものだと記憶しております。今の景気調節という言葉が後の閣議決定で変っております。ちょっとそのことをつけ加えておきます。
  40. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 そうすると、この四百三十六億三千万円というのは、やはり景気調節という性格を持っておるものであるということは、昨日の本員の質問に対して三木さんの御答弁されたところであります。この景気調節のためのたな上げ資金ということ、この構想のもとにおいてこういう法案が出たことは間違いがありませんか。いきさつはいかがでありますか。
  41. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 九月の構想を考えましたときに、景気調節というような言葉を使ったかとも思いますが、ただ、だんだん話を具体的に考えて参りますに伴いまして——結果的には景気調節というような結果を生じますことはもちろん否定できないのでありますが、建前といたしましては、昨年の十二月の二十日に三十三年度の編成方針を決定いたしました。その中では、お読みだとも思いますが、将来において経済基盤の育成強化のため必要となる経費の財源として活用するという言葉にいたしまして、景気調節という言葉を使うことを避けております。それは、そういうような構想によりまして、これからの資金を作り上げていくということを、この編成方針のときに考えたわけであります。九月三十日は、まだ大ざっぱなある構想といいますか、筋書きだけを書いたものでありますから、そこら辺はまだ考え方も練れていなかった点もあるわけであります。
  42. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 そういたしますと、この経過をたどりますと、経済基盤の強化のための資金ということは、景気調節のための資金と大体シノニムですね。
  43. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 シノニムではございませんで、特定の限定せられた目的を持ちました資金にいたすということを考えまして、経済基盤強化という言葉を用いたのであります。
  44. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 閣議決定というものは、これは町内会でおじさんやおばさんが寄り集まってごちゃごちゃときめた井戸ばた会議の決定と違うのですよ。少くとも諸大臣が集まって閣議で決定した景気調節のための資金というこのことを、ことさらに経済基盤強化のための資金とこれを変更せなければならなかったことについては、相当の理由がなければならぬ。その理由について大臣から御答弁を願います。それはどうです。
  45. 石原政府委員(石原周夫)

    石原政府委員 直接の事柄でございますので、私から便宜お答えを申し上げます。  私が今までお答えを申し上げました趣旨も、今のようなことを申し上げておったわけであります。すなわち、景気調節ということで資金を直接打ち出すという方式を避けまして、ある考え方一つ考え方に基いておりますが、具体的な資金を作りまする構想といたしましては、今申し上げました特定の目的を持ちまする経経基盤の強化資金というような形にいたすというふうに、構想を具体化いたしたと申しますか、形をそういうふうに考えて練って参ったというふうに御理解を願いたいと思います。
  46. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 私が申し上げるのは、閣議決定ということは、特殊な行政の実態において法律にかわるほどオーソライズされる場合が実際問題としてしばしばあるのです。少くとも、予算決定の基本構想の中に、閣議決定で、すなわち景気調節のためのというこの用語が作られて印刷されて、これが天下にその当時発表されたところであるが、その文字が使えないというところに問題があるのですね。ここに法規課長がおられますが、私は法規課長に純粋の立法論としてお伺いをいたしますが、これはどうなんですか。景気調節のためにこういうような財源のたな上げ措置を講ずるということは、会計法上違反になるのですか、あるいは重大な疑義があるのですか、この点の関係はどうです。問題の本体に触れて私は質問をいたします。これは日本の法律の番人としてあなたは重大な責任があるのだから、政治的な配慮なくして御答弁を願いたい。
  47. 小熊説明員(小熊孝次)

    ○小熊説明員 お答えいたします。  景気調節のための資金ということが財政法上、会計法上考えられないことはないのかというお尋ねでございますが、これは財政法上、財政制度の運用なりあるいは財政法なりをいろいろ改正して、またその景気調節の機構にもよると思いますが、それによって全然できないかどうかということになりますと、これはいろいろ問題があると思います。ただ、われわれ、今度の資金につきましては、財政法上景気調節資金のフアンクションの問題でございますが、そのフアンクションをどういうふうに働かせるかという問題になりますと、財政法を改正するなりあるいは単独立法をするなりということで、当然法的措置が必要になるという問題があると考えております。ただ、今度の関係は、明らかに財政法四十四条の規定によりまして……。     〔福田(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 今度のことは聞いておりません。これはもうはっきりしてきたのですね、大蔵大臣。私は閣議決定というものは、今後の日本の政府の権威のために、これは明確にしておかなければならぬと思う。少くとも閣議決定というものは実際問題として権威の高いものなんです。ところが、その閣議決定が、景気調節のための財源として、余裕財源やあるいは剰余財源の、剰余金の、こういうたな上げ措置を講ずるということを基本構想の中で述べておるのですよ。日本における最高の権威ともいって差しつかえないほどの閣議決定がそういうことをいったのです。ところが、現行財政法のもとにおいてそのような執行をするには、単独立法を行うか、あるいは現行財政法を改正するにあらざれば、そのことはできない、こういうことなんですね。だから、現行財政法を改正しないでやる方法はあるまいかと、悪知恵を働かせてやったところの法的措置財政措置なるものがすなわち今回ここに法律となって現われてきたところの経済基盤強化のための基金の悪法律なんです。これは全く財政法をじゅうりんする、あるいは財政法の制約をのがれんとするところの法律違反行為とは断じがたいかもしらぬけれども、明らかに脱法行為、少くとも政府が国の財政の基本法であるところのこの財政法をまげて、同一の効果をこのような陰険なる方法によって上げんとするがごときは、許されると思いますか。この点いかがでありますか。
  49. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 閣議決定の持つ重大なる意義、こういう点は御指摘通り私も賛成でございますが、結論を少しお急ぎになったのではないか。その結論に対しては、私は直ちに賛成しがたい。今回の経済基盤強化は、こうして財政法四十四条に基いて法律案の御審議をいただいておるのでございますので、これが憲法違反である、あるいは非常な脱法的な悪意のある処置、こういうことにはならないように思います。
  50. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 これははなはだもってけしからぬと思うのです。私は今唐突にこの問題を出しておるわけではない。昨日私は三木経企長官に伺って、この四百三十六億円の政策内容というものは、その目的経済基盤強化のためか、あるいはまた景気調節のためにこれだけのものをたな上げせんとするのか、それは一体いずれにより大きくウエートがかかっておるのかと質問をしたのです。そのとき、三木国務大臣は、両方であります、言うならばフィフティ・フィフティだと言った。よろしいか。だといたしますれば、この三十二年九月の十日における予算編成に対する基本構想と、十二月十日でありましたか、その予算編成方針との間には、ずっと一脈貫いたものがあるのです。四百三十六億円を、これは景気調節のためのたな上げ資金としてやろう。きのうも三木さんはそれを言っておるんですね。ところがそれは財政法上どうしてもやれない。それをやると財政法上違反になる。だから、その表現を変えて、経済基盤強化のためなどという、現実には何にも強化になりはしない金をたな上げしておいて、将来強化するというのだから、現実に何も強化になりませんよ。けれども、将来強化するというような詭弁を弄して、そうしてこういう財政法上の脱法行為をやろうとしておるのです。だから、そういうような事柄は政府に許されておるかという問題なのです。憲法の中において、政府法律に基いて行政を執行しなければならないという法律尊重の義務を課しておることは、申し上げるまでもないことです。法律違反だから、この法律は私は無効だと思うが、どうです、委員長。私は、大臣がほんとうに良心的に——われわれ社会党は、何もただ反対せんがために反対しておるのではありませんよ。実際日本国の将来を重んじ、日本国の法的秩序を保たなければならぬという国会議員としての共通の責任感の上に立って、少くとも国の基本法である財政法が、このような悪い魂胆によってこれがじゅうりんされようとしておるこの事態をむしろ重視しておる。このような前例が将来ともに許されるならば、法律というものはあってなきがごとし。事実上無政府状態になってしまうのですね。これについて何か文句がありますか。
  51. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 三木君にいたしましても、私にいたしましても、置かれておる経済情勢に対処するために、政府としては必要なことを率直に実は申し上げておるのでございまして、別に遠謀深慮を持ってお答えしておるわけではないのであります。春日委員より、大へん遠謀深慮のもとにお尋ねをいただいておるようでありますが、私どもは率直にありのままを実は申し上げておるのであります。この点御了承いただきたい。
  52. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 立憲法治国においては、ことごとく、必要ならば法律を作るのです。こういうことをすることが必要ならば、財政法を直しさえすればいい。あるいは他に単独立法を作りさえすればいい。ただ、現在の法律は、法律相互間の一つのコンストラクションによって法律秩序というものが保たれておる。法律の均衡が保たれておるのです。だから、一つ法律を直そうとすれば、他に必要ないろいろなものを直してきておる。均衡をあくまでも保つ意味において、一つ法律を直せば他の法律も直されていく。だから法律を直すということに心配はない。ただ法律を直さないで脱法行為をやっていくと、そこに政治秩序、法律秩序、経済秩序が混乱してくる。それをおそれておるのです。だから、私は、こういうような経済基盤を強化する必要があるならば、あるいはこういうようなたな上げをする必要があるならば、大いにやりなさい。そのとき、私の考え方ではあの当時昭和の三十一年の十月に十四億ドルあったものが、三十二年の一月になって十億ドルにずっと減ってきておる。私は、あの当時、三十一年の十一月期における日本銀行関根調査局長の関根報告を見て、これはなるほど重大な事態だ、それは、日本の投資たちのこの過剰投資は、必ずや、あのころの限界輸入性向にかんがみ、おそるべき外貨の減少を来たすであろう、すみやかにこれは公定歩合の引き上げをなすべきであろうと私たちは考えたし、これは、一萬田さんであろうと、だれであろうと、事実上なし得る手は一つしかないだろうと思う。それからまた、昨年の九月期においては、あのような情勢下においては、これはどうしてもたな上げ措置を講ずるか何かしなければ、やはりこれは外貨の減少を来たすであろうし、これをそのまま減税に回すということについては、なおいろいろな方法もあるであろうが、慎重を期さなければならぬといって考えたところなんですね。問題は、そのときにそういう必要があるならば、これは財政法を直せばいいじゃないか、直すことによって関連する法律が不均衡を生じてきたら、その法律を直すだけの誠実さがなければならぬと思う。直せば問題があるし、ややこしいから、こんなものはほおかぶりで、事実を仮装して、実体を偽わって、国会の目を瞞着し、社会党をたぶらかして、そうしてこんな悪い法律を通そうということは、その罪万死に値すると思うのです。(笑声)だから法律を直しなさいよ。財政法を直しなさいよ。財政法を直して、こんな法律は撤回しなさいよ。あるいは出し直しなさいよ。私はそうすることが公正なる良識ある政治家のとるべき態度であると思います。いかがでありますか。
  53. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 この法律は昨日来お話し申し上げておるように、財政法四十四条に基いて提案いたしておるのであります。ただいま御指摘になるような違法の問題では絶対にございません。従って、現存する法律でりっぱに法案を提案し得る権能が政府にはあるのでございます。先ほど来景気調節のためかあるいは経済基盤の強化のためかというお話がございました。その意味では、三木企画庁長官から、どちらともつかないような話をしておられました。私ども、これを率直に考えまして、今日の経済基盤強化のためにこの法案を提出いたしますその目的はそういうところにあるだろうと思いますが、同時にこの効果自身があるいは景気調節にも役立つかもわからない。やはり、提案しております、資金なり基金を設置しておるその目的と、同時にまたその目的から生じてくる効果、それはやはり経済基盤も強化されるでございましょうし、同時に、私どもの考えをもってすれば、景気調節の役立ちもする、こういうことだと、かように考えますので、先ほど来お話しになりましたように、事態を特に曲げて、脱法、違法とは申しませんが、どこか法を悪用したというような考え方のものでないことは、重ねて御了承を得たいと思います。
  54. 春日委員(春日一幸)

    春日委員 これは本員をしてほんとうに納得せしめません。何とあなたが巧みな論議を展開されても、これは何人も納得しませんよ。それは、ずっとよって来たる渕源が、すでに閣議決定によって、景気調節のたな上げ資金としてこれを封鎖していくということは岸内閣がはっきり言っておるのです。そうして、大蔵省の法規課長が、そういうようなたな上げ資金として財源のたな上げをすることは、財政法を改正するにあらざればそれはできないことだと、はっきりと本委員会のこの場において答弁しておることなんです。しかも、昨日三木さんは、これは景気たな上げの資金でもあり、また経済基盤強化のための資金でもあると言っておる。物の本体はこの二つの答弁によって明らかなんですね。なおまた、これをあなたは脱法行為でないと言われますが、現実の問題といたしまして、法規課長が言っておるのですよ。あなたの最も信頼する法規課長が、現行財政法のもとにおいては——法規課長にはまことに済まぬので、あとで一つとりなしをしようと思っておるが、(笑声)この点は実際問題として明確なことなんでございまして、十分一つ御判断を願って、この問題については十分御再考願いたいと思う。  今、理事から、時間が迫ったから結論に入れということでありまするから、私は他の同僚に譲りたいと思いまするが、これを集約いたしますると、これは、立法論といたしましても、また経済理論といたしましても、非常に疑義のあるやり方なんです。これは、私たち財政法第六条の解釈によれば、余裕財源は明らかに、その一部分は国債の償還に充てて、残ったものは予算に組むか減税に回すか、これはほんとうに均衡をはかったことをやらなければならぬときまっておる。われわれ明確に申し上げたいことは、大臣、私があなたに明確にこの点だけを御理解願っておきたいことは、本年度予算編成期も迫っておるので、特に申し上げておきたいことは、この財政の立て方というもの、予算の組み方というものは、国民が税金を払うことによって受ける犠牲の量と、政府がこれを政策に組んで国民に還元するところの福祉量と、この量と量との合致した一点においてのみ予算を組み、均衡予算の原則というのがこの財政法の建前なんでございましょう。だとすれば、そんな余ったものはどうしても返さなければいかぬ。国民に返すかあるいはこれを政策に組んで国民に福祉として還元するかしなければならぬ。国民の金なんだから……。私は、今後の予算の組み方の中において、そんな余裕をこんな工合にたな上げできるという前例を開くと、これは本年度はわずか四百三十六億だからいいですけれども、こんな前例を開くと、五百億でも一千億でも二千億でも、こういう措置ができるのです。そうすると、政府に対しては国民が徴税の権限を与えておる。こういう強権を持ったところの政府は幾らでも税金をとれる。もし使うことによって悪性インフレーションになったり、国際収支を悪くするようになったら、たな上げをしていけばいい、こういう形になったら、それは、今申し上げましたような税金の犠牲と政策の福祉と、量と量との合致の均衡予算の根本の原則というものはくずれてきてしまう。そうして政府は幾らでも税金がとれる形ができてくる。苛斂誅求まさにおそるべき事態が予想される。このことを私は言っておる。でありまするから、これは単なる財政法上の疑義ではなくして、このような前例を認めることによって今の徴税権、国民の納税の負担、担税力の限界、こういう経済万般にわたって重大なる混乱を生じてくる。私は、このことを憂えて、昨日来この問題について特にいろいろと深くただして参ったわけでありまするが、結局何一つ誠意ある答弁の得られなかったことはきわめて遺憾であります。いずれこれらの問題は他の機会に譲りまして、さらに論議を尽すことにいたしまして、私の質問はこれで終ります。
  55. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 平岡忠次郎君に質疑を許します。
  56. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 ただいま議題となっておりまする外国為替資金特別会計法の一部改正法案につきまして、質問をいたしたいと思います。  この法案の提出理由といたしまして、政府説明によりますれば、旧清算勘定その他の諸勘定の残高に関する請求権の処理に関する日本国政府とインドネシア共和国政府との間の議定書第二条の規定に基き、日本国がインドネシア共和国に対して有する請求権を放棄したことにより、外国為替資金に生じた損失の処理を定める必要がある、これがこの法律案を提出する理由であると、きわめて事務的に淡々と述べられております。しかし、しかく事務的な問題ではなしに、この政府法律案は、われわれが究明すべき幾多の問題を持っておるのであります。本日私は数時間にわたる質問を準備したのですが、しかし、事情によりまして、あすの討論に多くを譲りまして、本日は二、三点に問題を限りたいと思っております。その方が答弁者の方にも都合がよいと思いますので、さようにいたしたいと思います。これは大蔵大臣よりはむしろ外務大臣にお聞きしたいのですが、まだ外務大臣が入られませんから、大蔵大臣の方からお答えをいただきたいと思います。この法律案は前国会からの課題でございますから、前国会においてかなり論議が進んでおりました。そこで、問題になりましたのは、棒引きは結局賠償の一部ではないか、こういう質問に対しまして、政府の方はかたくなに、これはインドネシアとの友好のためである、こういうことでお答えになっております。また多額の焦げつき債権を生じたのはどういう理由によるか、こういう質問に対しましては、結局、相手方が払ってくれないからお手あげだ、こういうことに帰着いたしました。それに問題となりますのは、債権が焦げつこうが、そういうことにはおかまいなしに、何でも輸出さえすればよろしい、こういうまことに無責任な政府のお考えがその答弁のうちから看取できたのであります。こうした問題につきましては、あすの討論で私は究明いたすつもりでございます。本日の私の質問は、外為特別会計の貸方の資金を減資し、そしてそれに見合うところの借方の焦げつき債権を棒引きにする、こういった処置が対外的にどう影響をするか。このことに問題を限定します。もっと具体的にいいますならば、こうした決済処理のためにビルマと日本との間に締結されました賠償協定にどういう影響が来るか、これが質問の第一点であります。  それから、第二には、韓国に対する四千六百六十余万ドルの債権に対しまして、どういう影響が来るか、これが質問の第二点であります。  逐次一点から申し上げますが、最初に大づかみにお答えをいただきたい。
  57. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 お答え申し上げます。  インドネシアの債権を棒引きいたしましたのは、賠償には関係ございません。賠償ができました機会に今後の日本とインドネシアとの関係をさらに一そう友好親善に進めていく、またインドネシアの経済建設その他を助けるという趣旨のもとに、この問題の解決をいたしたわけでございます。他の焦げつりき債権——初めの御質問はビルマの関係にどういう影響があるかということでしたが、ビルマに対しましては、インドネシアとの賠償締結以後、特段の問題がビルマから提起されておりませんし、私は別段差しつかえない関係にあるのではないかと存じております。また、韓国の問題については、今後全面会談等におきまして、これらの問題を検討していくわけであります。われわれは簡単にこういうものを整理するような考え方でなしに進んでおるわけであります
  58. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 重ねてお伺いします。ビルマ国は、日本政府の対インドネシア賠償を四億ドルと前提いたしまして、一九五四年にビルマ国と日本国との間に締結された賠償協定の再検討条項を持ち出す、こういう気配が濃厚であります。これに対しまして、そういうことは外務大臣は聞き及んでおりませんのですか。
  59. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 現在までビルマ政府が再検討条項を出すということは聞いておりません。
  60. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 これについては、もしお聞きになっておらぬとするならば、私は新事実として申し上げましょう。実は、私は、二月の終りから四月の初めにかけまして、ネパール国に開かれましたアジア社会党会議に出席しました。そのときに、御承知の通りビルマは社会党の政権下にございますが、その閣僚の一人であるタキン・サン・ミン、これは土地国有化大臣ですか、その方もネパールの会議に出席しまして、行きしなも帰りしなも一緒なんです。そこで私どもの国会で問題になっておりますこのレビュー・クローズの問題についての所見をただしました。担当大臣ではございませんが、そのときにこのレビュー・クローズは当然持ち出すということを言うたのです。そこで、私はタキン・サン・ミン氏が担当閣僚でないので、これはビルマに行ってよく調べてこよう、こういう考えを持ちまして、帰途ビルマのラングーンに寄りまして、ウ・チョー・ニェンとウ・バ・スエに会ったのです。結論からいうと、レビュー・クローズは完全な権利として提出するということであります。もうこれはかたい決意でございました。四月一日に私は会ったのですが、三月三十一日の夕刻、念のために、日本の大使館で、原馨さんが大使でございますが、原さんにお会いいたしまして、こうした気配があるかどうかを確かめました。そうしますと、原馨大使の言うのには、実は議会においてこの問題は質問されておるということであります。すなわち、ペグ・ノース州の選出議員のボ・バ・アングという人から政府に向いまして質問書が二月十一日に出され、翌日の十二日に担当副大臣が答えております。その質問は三つに要約されております。それは現在日本とインドネシアの間に取りきめられんとするところの平和条約における賠償額が、一九五四年にビルマと日本との間に締結された平和条約による賠償額より上回っておると聞いているが、これが事実かどうかという質問が第一点、それから、ここでは直接関係ありませんが、日本からビルマに送られてきた賠償物資の価格が、ともすれば国際価格以上であるということ、このことは事実であるかどうか、これが質問でございまして、もし如上二つの事柄が真実であるとするならば、ビルマは非常に歩の悪い立場に立たされておる。そこで、政府としては、前記日本・ビルマ間の平和条約を再検討する用意はないか、もし必要なしとするならば、その理由を明示されたし、こういう質問でございます。翌日担当副大臣でありますところのサオ・クン・キョ副大臣は、この質問に対しまして次のように答えております。インドネシアと日本との間にまさに締結せられんとしておるところの平和条約に基くインドネシアに対する賠償額は、ビルマに与えられる賠償額よりも多いことは事実である、こういうふうに答えております。これから第二段の、国際価格よりいつも高いものを押しつけられていはせぬかという問題に対しましては、国際価格というものはしょっちゅう浮動があるから、あるものは国際価格より高いし、あるものは安い。しかし、これは入札制度によって最大の注意を払っておるから、この点についてはどうとも言えぬ、こういう回答であります。しかして、最初のインドネシアに与えられんとするところの日本の賠償額がビルマより多いという問題に関しましては、一九五四年のビルマと日本の平和条約の第五条1の(a)の三項によって再検討する用意がある、こういう回答をいたしておるのです。このことが大使館でわかりましたので、あとがどういうことになるであろうか、大使館の方でおわかりかと言ったら、かいもくわかっておらぬのです。それならば、私どもは社会党の立場で行ったアジア社会党の会議の帰途でありますし、ビルマが幸いにして社会党の天下というのですか、政権下にございますので、私は、社会党同士ということで非公式に当ってみたい、むしろそういうところでさぐりを入れてみたい、こういうことを話しまして、先ほど申しましたように、ウ・チョー・ニェンとウ・バ・スエに会ったのです。そうしたら、この問題に対しては、不退転な決意をもって、レビュー・クローズを持ち出して再検討にかける、こういうことでありました。話の前段に、ビルマに対しまして二億ドルの賠償額がきまっておる、ほかに、十年間に、商業ベーシスにおいて、ジョイント・ヴェンチャー、合弁事業に対しましては五千ドルのクレジットを供与する、こういう付帯的条項があるわけですが、そこで、ビルマの方としましては、現在四カ年間経過したけれども、一年当りの五百万ドルのジョイント・ヴェンチャーに対するクレジットはまだ一回も受けていない。合弁事業は始まっておらぬから受けておらぬ。そこで、現在まで二千万ドル、その分がたまっておるので、これをコンシューマーズ・グッズ、消費物資の買い入れということに約款を緩和してもらえないかというような話がありました。このことは、岸総理がビルマに来た際にも、すでにこの申し出をしておるが、岸さんの方から何ら回答がないということで、相当むくれておったのですが、いずれにいたしましても、インフレ下のビルマにとって切実な問題として、日本からの消費物資を入れてくれ、こういうことを非公式に私の方に申しました。そこで、もしそれを日本政府が許容するならば、賠償額二億ドルの絶対額の方にはさわらないかということを問いましたが、これは問題が別だということで、ほんとうにレビュー・クローズを持ち出すという不退転の決意をいたしております。ですから、私の実際に調査した限りにおいては、あなたの楽観的見通しは誤まっておるのです。おそかれ早かれ賠償増額の問題は当然持ち出されてくる。私どもは、従来このインドネシアに対するところの支払い四億ドルのうち、一部が賠償であって、一部が債権の棒引きであるということは、とても無理があるということで、あなた方の見解をただしてきました。今ビルマから、四億ドルが賠償額であるという前提に立ってのレビュー・クーロズの提起がなされてくる可能性がありますから、もしそういうレビュー・クローズが持ち出されてきたときに、あなた方は、合理的説得をもって、このビルマの提案を押え得るかどうか、この点につきましてあらためて御所見をお伺いしたいと思います。
  61. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、棒引き債権の問題は、われわれは賠償額とは別個に考えておりますので、かりにビルマ側が、ただいまいろいろ現地の事情等を伺いましたが、そういうような意味でレビュー・クローズを持ち出しましても、われわれ説明がつくのじゃないか、こう考えております。
  62. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 私ども、前国会におきましても、政府がどうしてこの四億ドルを二手に分けて、賠償の方が二億二千三百万ドル、片やいわゆる債権棒引きが一億七千七百万ドルとしなければならぬかということを、くどいほど質問したのですが、どうしても納得がいかなかったのです。債権棒引きと申しましても、たとえば、日本が大東亜戦争を起しまして、たまたま日本の在外資産があったとして、これを押えられたというふうな事柄なら話は別でありますが、戦後平和的な通商によって積み上げられたところの日本の債権であります以上、その債権をどうして簡単に棒引きしなければならぬのか。これは、単なるインドネシアとの友好関係のためというだけでは、国民は納得しません。こんなことでは納得し得るはずがないのです。一億七千万ドルというと大きな金でございます。おぎゃあと生まれた子供からおばあさんまで、日本の国民全部が一人当り七百円以上の醵出を強いられるわけです。なぜわれわれはこの債権を棒引きしなければならぬか、私はここであらためてまたあなたの答弁を聞きたいと思います。
  63. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 インドネシアと日本との賠償問題は、長い間の懸案でありまして、ずいぶんいろいろな討議を尽したわけであります。従いまして、その討議の過程におきましては、金額においても、あるいは方法においても、いろいろな過程を経てきておりますが、しかし、最終的にきまりましたものは、御説明申し上げました通り、二億二千三百万ドルの賠償でありまして、そうしたところに落ちつきましたにつきましては、われわれといたしましても、将来の日イ関係、ことにインドネシアが独立後間もなくで、経済再建も浅い国でありまして、それらの経済再建が十分できまして、インドネシアが経済情勢を改善するということに協力して参りますことは、必要なことであろうという考え方から、そういう処理をいたしたわけでございます。
  64. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 インドネシアという国は、もともとオランダの治下にありました。オランダという国は、ダッチ・アカウントで世界で有名です。そういう合理的な訓練を、インドネシアの人は知らず知らずのうちにされていると思うのです。そういう人たちが、やぶから棒みたいな債権の棒引きというものは、私は理解がいかなかったのではないかと思う。だから、ジュアンダ・小林会談の途次におきましても、インドネシア側は、結局それが理解がいかなかったという過程を踏んでいるのです。これは結局は同じだろうというようなことで押しつけているわけです。そうすると、これは自民党、社会党を問わず、日本人共通の利益として、何とかビルマの賠償の総額を、レビュー・クローズを持ち出すことを押えようという考え方に立って——こういうことはいいことではないのですけれども、そういうことからこうした政府の提案がなされているのかどうか。このこと自体はわれわれは賛成ではありませんけれども、そういうように考えれば、理由として考えられないことはないんです。ですから、せめてそういう効果が上るのかと思っておったら、ビルマは、不退転の決意で、四億ドルが当然賠償なんだから、その前提に立ってレビュー・クローズを持ち出してくるということなのです。これは押え得るとは思いません。押え得たとするならば、貴重な、大きな代償として、日本の外交というものに対して不信を買うだけだ。あなたはそういう無形の損失というものを計算されたことがあるかどうか。どうですか。
  65. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 私どもは、インドネシアとの賠償に当りまして、ただいま申し上げたような経過でもってこの債権を清算いたしたわけであります。それが、何か、東南アジア全体もしくはインドネシアに対して、無形の非常に大きな損害的影響を与えたということは考えられないと思います。
  66. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 これは後日明白になってきます。おそらくあなた方はビルマの要求を制御できないだろうと私は見通しています。そのことは議論になりますからさておきまして、それならば、こうした先例が、すなわち、日本は焦げつき債権を処理するのにどうも甘い傾向があるんだからということで、あなたが今やっておりまする日韓会談におきましてこの問題が提起され、インドネシア同様に四千六百余万ドルの対韓焦げつき債権は日本の方で撤回してくれ、そういう口実を与えることになりはしないか。むしろそういう懸念の方が多いように思うのですが、あなたは韓国に対して四千六百余万ドルは断じて棒引きせぬということを言明できますか。
  67. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 お話のような態度でもって交渉に当っていきたいと思います。
  68. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 確信がございますか。
  69. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 私は、今申し上げたような態度でもって、最終的に処理をいたしていきたいということで、会談に臨むつもりであります。
  70. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 私の見通しでは、ビルマからはビルマの言う通り、この点は日本が屈服されると思う。それから、朝鮮に対しては、逆な効果として、日本がこれを放棄せざるを得ないような羽目になる、こういう可能性の方が多いと思う。ですから、この棒引き処置の仕方というものに対しては、いまだ疑問は解けません。国民自身があなたの答弁では納得せぬはずです。この点は議論になります。議論になるけれども、私の議論の方が正しいと思う。この程度でこの問題はやめます。  ただ、いずれにいたしましても、インドネシアとの国交を回復し、なおかつ将来に向って大きな観点からこの債権を棒引きするということは納得いきません。私は、この債権棒引き案件は、もう片がついた問題だと自民党の諸君は考えておると思います。こうなると、話が少しきたなくなるけれども、インドネシアのオープン・アカウントが一億七千余万ドルほど累積されたという経過に対して、私は不信を表明します。現在、御承知の通り、日本は外貨集中政策をとっております。従いまして、オープン・アカウント勘定決済地域に対しまして、日本の輸出商社あるいはメーカーが外貨建てで輸出をいたしました際には、それの等価たる円価をもって支払いが船積みと同時に日本の政府において行われるわけです。従いまして、将来の受け取りの外貨というものは政府の手に帰着しますが、同時に不渡りの危険も政府の手に移るのです。もう売った方の人は全然補償を求められることはないのです。ですから、これでけりがついている。日本の輸出メーカーは、ほんとうに何らリスクを負わずに、いわば勝手に輸出できる。その対価はもらって安全である。ノー・リスクである。政府だけがそのリスクを負う。そういう決済の仕組みにおいて、政府が、焦げつき問題に対しまして、もう輸出したからそれでかまわぬのだということは、いかがなものであろうか。商売は契約を締結することが商売であるのか、締結された取引に対し船積み等の実際上の処置をするまでが商売なのか。そうではなく、まだ金を取るまでは商売は完了していない。ところが、このわかり切ったことを政府はやっておらぬのです。現在おそらく十億ドル前後のいわゆる名目上の保有外貨があると思います。しかし、そのうちの三〇%前後というものが、不渡り手形にも比すべきところのいわゆる政府の非流動的債権です。これでは輸出振興、輸出振興といっても、その名に値しない。そのために国民は耐乏しろといっても、国民は聞きません。私どもは、今までは、日本の経済が外国貿易に依存する度合いが高いだけに、貿易振興というものに対して協力してきた。ところが、こうした体たらくで結局一部特定の人たちの補助金に堕するようなところの決済方式を改めないということになりますと、輸出なんか振興しないでいい、極論すればそういうことになります。私どもは、このインドネシアの焦げつきの債権がよってもって累積される過程において、政府がほおかぶり的な立場をとるならば、これは国民とともに糾弾しなければならぬと考えております。私はこうしたインドネシアに対するところの累積債権の経過に対しまして、不信を持つものであります。外務大臣、あなたは実業界の出身ですが、こういう金を取らない商売というものが、日本の貿易政策として、白昼公然ととられておる事態に対してどうお考えですか。
  71. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 終戦後日本の貿易があらためて復活いたします過程におきまして、オープン・アカウントのような制度をもちまして貿易をやりましたことは、やむを得なかった事態だと思いますが、漸次日本の経済も正常化して参り、また輸出方面におきましてもだんだん振興してくるに従いまして、オープン・アカウント勘定もだんだん減少させて参りたい、このように私どもは考えております。
  72. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 お言葉ですが、オープン・アカウント勘定はだんだんやめていく、こういうことですが、ブラジルについて延期したのはどういうことですか。
  73. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 その問題につきましては、現在新しい協定を作るべく、外務省、通産省、大蔵省の方から人が行って現在折衝中でありますので、最終的には若干の期限を延ばして折衝を続けてみて、そうして結論を得たい、かように思っております。
  74. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 私どもが仄聞しますと、二カ月間の延期ですね。この延期が問題ですよ。従来アルゼンチンに対しましても鉄鋼の輸出がたくさんあり、行き過ぎた。そこで六千五百万ドルくらいのところで押えようとしましたが、その最後の段階で鉄鋼メーカーはかけ込み輸出をしておるんですね。それがやはり二千万ドルほどありました。インドネシアの場合でも同じじゃないですか。インドネシアの場合は、昭和三十二年の六月から七月にかけまして、そのときには一億五千万ドルほどだったものが、かけ込み輸出が二千万ドル出た。こういう事例に徴しますと、この二カ月間の、ブラジルとの間のオープン・アカウント協定延期ということは、業者に乗せられるおそれがあるし、迎合的な政府の意図がありはせぬかとわれわれは疑わざるを得ないのですが、どうですか。
  75. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 この点につきましては、大蔵大臣、通産大臣とも御相談がありまして、通産大臣もそういう面について十分留意をしながらやるということであります。将来オープン・アカウントをやめるような事態になりましたら、そういう問題についても大蔵、通産両当局とも話し合いが進むことと思うのでありますが、直接協定に行っております人の手続上二カ月間延ばした、こういうことでございます。
  76. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 もと全然前科がなければいいのですが、前科が二度ある。今度で三度目です。この問題では大蔵大臣は相談にあずかったと思うのですけれども、あなたの御所見は。そうした国民の負担において一部商社の腹を肥やしかねない不当な今回の協定延期というものに対して、あなたはどのようにお感じになっておりますか。
  77. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 オープン・アカウントに対する考え方は、今の御意見通りの趣旨に私も考えております。従いまして、今回ブラジルに対するオープン・アカウントの問題も、無協定の状態になることは実は好ましい状態ではございません。そこで、オープン・アカウントの期限がきました際に、今日までもあらゆる努力を続けて参ったのですが、新しい協定を作るということを前提にいたしまして、今回特に二カ月の猶予期間をまた設定いたしたわけであります。それで、先ほど来お述べになりました御意見については私全面的に賛成であります。
  78. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 大蔵大臣、今日までその衝になかったから、いろいろな事情は御承知ないかもしれません。あるいは最もよく知っておるかもしれません。しかし、この問題は、国民は従来の悪例に徴しまして納得していないのです。自民党が今までやってきまして——それは財界をもって立党の基盤としていまする貴党の立場はわれわれ社会党と対照的な立場にあることもよく知りておりますゆえ、ある程度貴党がサービスをするのはいいとは思うのですが、私どもはそれを数え立てて言いたくもありませんが、大体今までの保守党内閣と財界との経済政策におけるところの結託関係——こういう言葉でいいかどうか知らないけれども、そして、大臣の個人的な事柄に触れるつもりはないけれども、造船利子補給の問題で天下を驚倒させた事例、要するに予算の上に補助金を組むということ、これは運営がよろしければいいのですが、おのずから限度があると思うのです。私は、かたくなに、こうした行き方自体が悪いとは思っておりません。日本の造船を何とか戦前のレベルに早く回復させる、こういうことのためにということがあるので、私は反対せんがための反対はしません。限度をはずさなければ、このこともいいと思うのです。しかし、補助金による助成が巷間では不当に行われたとされておりました。ところが、これは予算面にはっきりと出てくるんだ。助成金、補助金というものはどうも目について工合が悪いというので、今度は朝鮮事変以降は、これは朝鮮事変という特殊な事態によって非常なブームがきたのだけれども、これが終りますと、いわゆる不況に転じまして、そのときに朝鮮事変を契機として一般の法人税とか所得税が上げられたけれども、平和不況になったのだからこれを一般的に下げろという世論があったときに、一般的な問題として取り上げずに、一部財界の租税特別措置の陳情を全部受け入れて、その方面だけにこたえていった。そして二カ年ほどは四二%の不当に高い法人税を据え置いて、特定な陳情請願に対しましてのみ租税特別措置としまして約一カ年平均一千億ドルを減税した。そしてそれが五カ年間も続いた。これが昨年あたりの神武景気の根底をつちかっていると私は断ずるものなのでありますが、こうした租税特別措置法という特例によって財界を援助した。この点もそろそろ世の指弾にあいまして、この問題に対しましても、自民党あるいは政府としましても、こればかりではいかぬというような、大体反省的な立場に立ったと思うのです、なかなか根強いものがございますが。それから今度はどう形をとって財界の要望にこたえたかといいますと、オープン勘定で商社、メーカーの危険負担を国民に転嫁する、こういう方式を結果としてはとってきたといわざるを得ないのです。それから、私どもがおそれるのは、このインドネシアの債権棒引きによって一定のメーカーにとシッパー対して特典を与え、そのしりぬぐいを国民の税金によってまかなう、国民全般に転嫁していく、こういう一つのコースをとってきましたので、これからどういうことをやるかという疑問があるのです。賠償輸出、円借款供与というような問題も、かくして私どもはどうもすなおには考えるわけにはいかぬのです。  エカフェの調査によりますと、東南アジアの生活レベルを二%だけ高めるためには十七億ドルの金が要る。約六千億円です。ところが日本が、いかにも名目的にはアジア経済のリーダーシップをとるのだから、そこで日本の方も円借款をインドに与えようとか、あるいは世銀に要請して世銀の円資金を解除して。パキスタンの要望にこたえよう、こういうようにうわべはなかなかきれいなんですが、ところが、今言ったような六千億円のところに持っていって、インドに対して初年度五十億円ですか、こんなものは問題にならぬと思うのです。日本がアジアにおける先進国だからそのリーダーシップをとる、こういう貴重な一つの費用なんだと言ったっても、客観的に見れば、今言いましたアジア諸国が必要とする額からははるかに低いものなんです。そうなると、効果のない金をばら巻くことになる。インドに対して五十億円の円借款を与えるということは、円を別段インドに送るわけではなくて、日本銀行にインド勘定として五十億円を置いて、あなたの好きなものを買いなさい、こういうことで買わせます。そうして特定のメーカーがそれを輸出します。そのときに預けられました日銀の勘定から、そのメーカーが金をすぐ受け取ることができる。プラント輸出なら、普通ならばメーカーはえらい犠牲をしいられるのですけれども、その点が、円借款をインドに与えておけば、日本銀行からすぐ金を支払われるのですから、特定のメーカーそれ自体には、えらい恩典になるのです。ですから、近ごろあなた方が言っておられる賠償輸出とか円借款供与とかいうものは、アジアにおける日本の対外政策と言わんよりは、特定層に結びついた対内政策ではないか、こういうふうに疑いを持ちたくなる。私どもは、こういう点で、国民に対してあなた方の明快な、しからざるゆえんを開陳してほしいのです。その問題は、先ほど春日君の言われた経済基盤強化法律に対する質問の要点あたりが、そこいらにやはり関連があるように思うので、そういう点をわれわれの納得のできるように一つ御開陳いただきたい。
  79. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 経済開発協力のための円借款のお話がるる出ておりましたが、大体円借款の取扱い方はいいようであります。ただ、日本銀行にインド勘定を設ける。たとえば、インドに対する円借款の場合、日本銀行にというのは何かのお考え違いではないか。これは輸出入銀行にそういう勘定を持つわけでありますが、これは別に大した問題ではありません。  そこで、円借款の問題ですが、円借款の行い方については、一面に輸出を振興するとかあるいた後進国の経済開発に資するとか、こういう利益もありますが、一面御指摘のような弊害も、もし注意を怠りますならば起りやすいのであります。先ほどはオープン・アカウントについていろいろの御意見を拝聴いたしました。それより以上に、この円借款については、正常の輸出の伸びという問題とも関連して参りますし、なかなか容易に決定のできるものではないと思います。上積みとしての円借款、しかも、その投資事業が非常に信用のおけるもの、あるいは成功度の高いものである、こういうようなことが十分検討されますならば、その弊害は比較的避け得るかと思います。従いまして、円借款を供与するという問題につきましては、そういう点に特に注意を怠らないようにしなければならない。これはもう御指摘通りでございます。私ども政府といたしましても、ただいま御指摘になりましたような点にあらゆる留意をいたしまして、そうしてわが国の負担に過重をしないように、しかも正常の貿易は進めることができる、さらにまた相手国の経済開発協力ができる、あるいは国際親善の目的を達する、こういうような場合にこの円借款の供与というようなことを考えて参りたい、かように考えております。
  80. 平岡委員(平岡忠次郎)

    ○平岡委員 輸出それ自体は必ずしも目的ではない、日本の国利民福をはかるための手段なんだ、それがどうやら転倒しておるように私どもは思うのです。近ごろの政府のやり方を見ると。内閣の統計によりますと、昨年の今ごろの統計で古いのですが、これが、標準家族において、家計費が二十九万三千円と私は記憶しておりますが、その後例の米価が上ったりいろいろなことで多少インフレ的なことになりまして、私どもは腰だめで、それに約一割を加えた三十二万円が標準家族の家計に絶対必要なものと思っております。ですからこれは税の世界的原則である生活費には課税せずというところからいくならば、三十二万円までは非課税でなければならないのです。ところが現在では税金が必要家計に食い込んでおるのです。現行法で二十七万円だけが非課税、自民党が提案している——これは来年やるのでしょうが、それをもってしても三十万円です。そういうように、国民は食うや食わずで、自分の生活というものを切り詰めておる、そういう状況でやっておるのです。それが日本の輸出のコストを下げていることにも連なっておるわけなのです。そういう国民の犠牲の上に取り立てられた税金が、わけのわからぬところの経済基金拡充の資に充てられたり、それから今言うたインドネシアの焦げつき債権を処理したり——これは賠償に引っかけて解決はしていますけれども、その内実におきましては大衆に転嫁させられておる事態は、私どもは見のがすわけにはいかぬのです。きょうは私の持ち時間に制限がございますから、この程度でやめておきますけれども、日本の貿易振興は野党だって一生懸命考えています。だからまじめにこの問題と取り組んでほしいのです。せっかく第二次岸内閣ができたのですから、こういう点でぜひとも日本の政治を引っぱっていくところの衝にある皆さんの高い識見と理解によって、ほんとうにいい成果をもたらすようにやっていただきたいと思うのです。この点について大蔵大臣と外務大臣の御所見を最後に承わっておきたいと存じます。
  81. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 大へんありがたい御声援をいただきまして、どうかこの上ともよろしくお願いいたします。
  82. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 御趣旨を体しまして努力いたします。
  83. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 石野久男君より外務大臣に対する質疑の通告があります。これを許します。石野君。
  84. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私は、昨日高碕通産大臣お尋ねをいたしました際に、外務大臣との関連事項で問題が残されておりますので、本日は外務大臣にこれからお尋ねしますが、その前に、大蔵大臣——大蔵大臣は、たびたび、たな上げ資金はなるべくこの際出して予算化すべきであるというわれわれの主張に対する御答弁の中で、積極的な方針をとると心理的影響をおそれるのだということを言われておるのですが、大蔵大臣の言われておるその心理的影響というものは、どういう形で出てくることをおそれているのか、その点をこの際一つ明確にお聞かせ願いたい。
  85. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 ただいまの経済の段階、この見方からいろいろ私ども心配しておるところのものがあるのでございます。毎回御説明申し上げておりますように、ようやく緊急、応急の措置を講じて一応小康は得ておりますが、まだまだなかなか楽観のできない状況にございます。そういう際に、この経済を健全に持っていこうという場合に、積極的な財政政策をとりますことが、心理的な影響を与えまして、当面しておる経済の実態についての認識をもしも誤まるようなことがあれば非常に危険である、こういうような意味でございます。
  86. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私の聞いておるのは、そういう抽象的なことじゃなしに、われわれとしては今日の経済を非常にシビヤーに考えておりますから、大臣が言われるような心理的な影響が具体的にどういうように出てくることをおそれておるのか、そういうことを私たちはよく聞いた上で、また判断しなければならぬ。だから、具体的にはどういうように出てくるかということを、金融的な面、財政的な面、諸般の事情を一つこの際御説明願いたいと思います。
  87. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 おそらく、まず第一に出て参りますのは、消費の面だろうと思いますが、一面消費がふえますことは、経済に仕合せだという考え方もございますが、これは一時的な現象に終る危険も多分にあるのであります。こういう点を私は一例として申し上げ得るかと思います。
  88. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私はそれではちょっと納得しないのです。時間の関係もありますから多くを申しませんが、大臣の心理的影響をおそれるということは、どうも抽象的で、われわれにとっては具体的にはわからないのです。国民にもっとわかるようにすべきだと思うのです。そういう考え方でしますと、たとえば、きょうの新聞によって、大蔵省がこの二十五日にまとめた三十二年度の税収入を見ますと、またここでも約一千億円くらいの自然増収があります。この経済基盤強化法案を設定された趣旨によりますと、また千億円というものをたな上げするというような考え方を持っておられますか。
  89. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 きょうの新聞記事は、私も見ましてびっくりしておるのでございます。まだ年度が始まって二、三カ月のことでございます。今日から年度内の見通しを立てるというのは、大体早いのではないかと思います。
  90. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 いや、びっくりしなくてもよろしいのです。これは三十二年度の決算、租税収入をまとめたことを言っておるのでありますから、具体的にあなたのところでまとめた数字なんです。だから、こういう数字が出ておるから、来年度予算で、またやはりあなたが三十三年度予算を編成するときに考えたと同じように、これをたな上げする意思があるかどうかということを聞いておる。
  91. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 もちろん今のは補正財源その他を引いて六百億円程度のものがあるだろうということだと思いますが、もちろんこれは予算編成の際に考えることでありまして、今まだそこまで案を掘り下げておりません。
  92. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 大蔵大臣は日本の経済のこれから先の見通しを立てていろいろとやはり国会に法案を出しておるだろうし、また、今度の経済基盤強化法案についても、そういう見通しのもとにこの国会に提出しておると思うのです。私たちは再三にわたってもうこのたな上げ資金というものは取りくずして予算化すべきだと言っておるし、昨日の大蔵委員会の席上でも、三木企画庁長官、それから佐藤さん自身も、これは早晩、特に近い時期に、きのうの話では臨時国会あたりにこれを取りくずしてもいいというようなことまで言っておる。そういうような見通しを持っておるなら、これに対する発言ははっきりしてもいいと思いますが、そういう見定めはまだできませんか。
  93. 佐藤国務大臣(佐藤榮作)

    佐藤国務大臣 まだ見定めはできません。
  94. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 見定めできていないものを聞いても仕方がありませんので、それでは外務大臣お尋ねいたします。  経済基盤強化に対するこの法案は、その提案理由の説明にもいっているように、「財政が国内経済に過度の刺激を与えることを避け、輸出の伸長に対してあらゆる努力を傾注する」、この観点からこの法案が出ておるのであり、また、たな上げ資金という構想も出ておるわけです。そういう建前から輸出を増強するということは非常に重要なことでございますので、私は担当の高碕通産大臣にいろいろとお尋ねしました。今日三十一億五千万ドルの輸出を達成するということは、三木長官の言葉をかりても非常に困難であるということを言っておりますし、また高碕さんからお聞きしても困難だという予想をあらわに出しております。その間今の日本の貿易の各国との関係を考えましたときに、自由主義諸国の間におけるところの貿易の困難性というものは、各国の経済事情の非常に深刻な不況傾向の中においては——これから先貿易上の輸出を増進することは困難であるということを高碕さんもまた認めておられます。そこで中国は市場としては特にわれわれにとって非常に有望であり、また至近地にあるこの環境を強化しなければいけない。中国との貿易の問題は非常に重要だということは私も考えておるし、高碕さんもそのことは非常に大事なことだ、こういうように言われている。しかし、今日の状況では、中国との貿易はもう御承知のように途絶する状態になっておるので、それに対してどういうような方針を持っているのかを聞いたところが、これは外務大臣に聞いてくれ、こういう話なんです。私はここでお尋ねいたしますが、藤山外務大臣は、中国と日本との貿易について、どういうようにしてこれを切り開こうとする考え方をお持ちになっているか、この際御所見を承わりたい。
  95. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 お話のありましたように、今日日本は貿易に依存をいたしております。しかも、置かれております日本の経済的な諸般の事情から考えまして、中共との貿易を増進し、円滑に伸展させるということについては、前岸内閣以来そういう方針を堅持してきておるわけであります。たまたま今回いろいろな事情のために途絶するに至りましたことは、まことに遺憾だと思っております。ただ、これにつきましては、両国にそれぞれ若干の誤解その他があるのではないかとも思われますので、私どもは今とかくの言説を弄しますよりも、しばらく静かにいたしておりまして、そうしておのずから感情の高ぶり——あるいは誤解に基くか、あるいは正解に基くかは存じませんけれども、そういうような感情の高ぶりを冷静にいたした上で、逐次貿易問題という問題を解決していくのが適当じゃないか、そういう意味において、静観というような言葉を使っておる次第でございます。
  96. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 たびたび岸内閣が静観という言葉を使うし、外務大臣も今静観という言葉を使っておるのですが、大体外務大臣は、特にこの中国貿易に対する静観というものが、日本の経済の今の逼迫した状態と見合わされて、特に貿易を増進するという意味からいうと、大体いつごろまで続いて、新しい道を開いたらいいというふうにお考えになっているわけでしょうか。
  97. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 私どもは貿易をできるだけ早い機会に再開するような方途が講ぜられるためには、今静観をしている方がいいということを考えているわけであります。従いまして、できるだけ早い時期にそういう方向に進むことを望んでいるわけであり、またわれわれもその点について今後努力をしていくという考え方でございます。
  98. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今静観をしているが、しかし、それをなるべく打開するように努力をするとおっしゃったが、政府の努力する方向というのはどういうことを意味しておりますか。
  99. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 現在の段階においては非常にデリケートな関係でありまして、いろいろな言説が誤解を生むというようなことがあってはいかぬと思いまして、私どもとしてはそういう意味で静観という言葉を使っているのであります。貿易再開についても、いろいろな問題については十分考慮をして、そうしてスムーズに行けるように考えていきたい、こう思っております。
  100. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 三十一億五千万ドルの貿易の予定、そういう計画を達成させようということについては、もとより外務大臣としても関心をお持ちになっておるのだろうと思いますが、全然そのことは考えていないのでしょうか。
  101. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 三十一億五千万ドルの輸出目標というものは、前内閣以来の、あるいは本年度予算をきめましたときの目標でありまして、われわれ閣僚の全員がこれに協力して、達成する意気込みで努力していかなければならないことは申すまでもないことであります。
  102. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 三十一億五千万ドルの貿易を達成させるということは非常に困難だというような見方が政府の中にもある。藤山大臣も、外務大臣ではあるけれども、その出身は経済界に長いことおられたわけでありますから、より一そう切実なそれに対する関心をお持ちだろうと思いますが、今のあなたの見通しでは三十一億五千万ドルを達成できるというふうに考えておりますか。
  103. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 三十一億五千万ドルが目標にされましたのも、必ずこれができるというよりも、むしろ、ある意味からいえば、少々きつ目な努力目標をきめたのではないか。努力目標に対してできるだけわれわれが努力していくということが本質だと思います。現在の段階において、これがやすやすとできるとは私どもも思っておりません。物価も下落しておりますし、また、国際関係事情におきましても、ドル不足あるいは西欧経済の不振というような問題もございます。従いまして、これが簡単に達成されるとは思わないのであります。しかし、そうかといって、今この目標を引き下げるよりも、目標を掲げてそれに向ってできるだけの努力を引き続いてしていくということの方がいいと思います。
  104. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私は、そのことについては、先ほど高碕通産大臣とも、それではどういうふうにするかということで、具体的にわが国と貿易をしている各国の情勢についてのいろいろな論議をかわしました。結局、自由主義諸国におけるところの貿易の発展ということは非常に困難だということを、高碕さんも言われているわけであります。そういうところから、三十一億五千万ドルの達成をするためには、どうしても製品についての市場転換もやらなければならないし、わが国と各国との間においてもまた市場的な転換をしなければならない。そういう立場から、中国の市場というものは非常に大事だということを高碕さんも言っております。今この際三十一億五千万ドルの目的達成のみならず、今後の日本の経済の基盤を強化する意味において、貿易の相手国であるところの各国に対して、特に中国市場というものを考慮しなければならないのだろうという私の質問に対して、それは積極的にそうだということを高碕さんは言われております。藤山さんもそういうふうにお考えになっておりますか。
  105. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 現在日本が貿易を振興いたします上におきまして、困難ではありますけれども、自由主義諸国への輸出増進の方法を講じて参らなければならないことはむろんでありますが、その中には、御指摘のありましたように、輸出地の問題、あるいは輸出内容の問題、あるいは逆に向うから輸入する物の仕入地の転換というような問題も考えられると思います。高碕さんが言われましたように、そういう環境の中におきまして、中共との貿易というものは、相当重視すべきだということは、通産大臣と同意見でございます。
  106. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 外務大臣も通産大臣と同様に中国との貿易は非常に重視すべきものだということを申されておる。当然、政府の一員として、わが国の経済外交を進める上において、そういうようにただ痛感しているだけじゃいけないので、具体的にこれを切り開いていくことをしてもらわなければ、われわれとしては困ると思うのです。当面それ対して外務大臣としてどのように切り開くかということは、われわれが刮目しておるところなんです。もちろん静観という言葉はいろいろの意味がありましょうけれども、いたずらに静観しておったのでは、われわれは食っていくことができなくなってくる。だから、おのずから静観するにも時期があるし、わが国の経済規模の実勢というものをよく考えた上で、その静観にも度合いがあるということを私は考えます。そういう意味から、外務大臣はそういうことについても具体的に、この時期まではこうあっても、この時期はこうなければならぬという構想はお持ちにならなければいけないのじゃないかと思いますが、そういう構想はお持ちになっておりませんか。
  107. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 御理解いただきましたように、私が静観しているということは、貿易問題を解決する上においていたずらに誤解を招くような議論が出てもいけませんから、そういう意味で静観をしたい、こういうことなんであります。従いまして、そういうような誤解が積み重なっていくことが自然に解消してくるような状態になり、お互いの感情も冷静になってくるような時期になりますれば、そういうときにわれわれとしては徐々に次の手を打って参る必要があろうかと思います。それらの点については、相手方のある問題でありますから、いつまでということを申し上げることはいかがかと思いますけれども、われわれとして最善の努力をする必要があろうということは承知いたしております。
  108. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今の御答弁の中に、静観をしている間に何か積み上ってきて両国の合致点を持つようにしていきたいということですが、その積み上げられていくということはどういうことなのですか。
  109. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 いろいろ両国の関係につきまして貿易あるいは文化、そういう方面からおのずから解け合っていくということと、おのずから誤解を解消するというような方法なり、またいろいろな考え方でもって、民間方面にも接触をしていくというような問題もあり得ると思いますが、それらの問題についてはいろいろ今後の問題でありますから、今ここでこうした方法で必ずやるんだということを申し上げるということはいかがかと思いますけれども、そういう方法をとっていきたいと考えております。
  110. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 静観をしておるということは、もちろんあなた方の考えだからそれをとかく言いませんが、今日の日本の経済は中国との貿易を非常に切望しておりまして、実際に実業界だけじゃなくて、メーカーの段階でも一切の経済部門においてそれは要求しておる問題なんです。これが政府の中に席を置かない方々が今の藤山さんのようなことを言うなら、私はそれでもいいと思う。しかし、高碕さんに聞くと、中共貿易については藤山大臣の所管になってくるんだ、こういうことを言われる。その藤山さんが、だんだん時期を待っておればお互いに理解し合うだろ——ただ時期を待っておったってだめだろうと思うのです。やはり理解を深めるためにはそれだけの動きがなければできない。そういう動きに対して静観してほっておくということではいけないのです。やはりこの国の政治を担当しておるあなたとすれば、そしてまた今後の経済を発展させようとする考えからすれば、当然そこに何かの構想がなければいけない。その構想を私たちは聞きたい。それによって私たちはまたいろいろ考えなければいけないと思う。そうしなければ、この国はおそらく窒息してしまうのではないかということさえわれわれは心配するわけですから、そういう意味で、あなたのその積み上げの構想というものはどういうものなのかということを聞いておるわけです。
  111. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 むろん私どもは今後の打開の上において無為無策であっては相ならぬわけでありまして、いろいろな面において考えて参らなければならぬと思います。ただ一つ方法だけが最善の方法とも考えておりません。従いまして、今後は、いろいろな問題について、徐々にそういう問題をどういうふうに展開していくかというような方法として、十分考えて参る必要があろうと思います。ただ、現在の段階において静観しているということは、何かほったらかしておくのだ、あるいは、再び貿易をやらないでいいから、ほったらかしておくのだというようにおとりいただくと、大へん残念なんであります。そういう意味ではなしに、あまりいろいろな言説が起って参りますと、せっかく理解を得つつあるような状況が、また逆戻りをしてはいけない、なるべく多くを言わないで、しばらく見ていた方が適当ではないかというような気持で、静観ということを申し上げたのであります。
  112. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 多くを言うと外交上に差しつかえがくるからという御配慮かもしれませんが、私は、やはり、この際外務大臣としては、経済外交の建前からいたしましても、そしてまたこの国を背負っておる外務大臣としても、一つの方向というものはやはり出すべきだと思うのです。当面する問題としては、第四次貿易協定があるわけです。この第四次貿易協定が行き詰まったために、一切のものがストップされておるという現実に直面しております。こういう問題に対して外務大臣はどういうふうに考えるか、またそれをどういうふうに切り開いていく意図を持っておられるかということを、この際お聞かせを願いたいと思います。
  113. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 先般、第四次協定につきまして、その中の一つの条項のために、いろいろな摩擦が起ったことは、私どもも十分考えておるわけであります。そういう問題を今後どういうふうにして打開していくかというような問題については、両国民の気持がしっくりして参りますれば、おのずから理解し得るのではないかと思うのであります。そういうふうに、お前は慎重過ぎると言われますれば言われるかもしれませんが、非常にデリケートな段階にありますので、慎重に、しかし熱意を持ってそういうものを切り開いていきたいという考え方は、御了承をいただきたいと思います。
  114. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私は慎重過ぎるというふうには考えていない。今の日本と中国との間の貿易というものは、御承知のように民間でこれを進めてきたものなんです。その間政府は傍観者的立場をとってきました。その後若干の協力をするというようなこともありましたが、大体主軸は民間でやってきたわけなんです。その民間で貿易をやるということについては、むしろ中国側が、日本のいろいろな政治的な事情はあるけれども、それに対してはあまりやかましいことを言わないで、貿易をやろうという好意によって進められてきたと見ても、大体間違いでないと私は思います。従って、中国側はそういう意図を持っておるのです。持っておるものをこちらから遮断したということは、やはりこちらに要因があるというふうに見なければならぬと思うが、そういう見方は間違いですか。
  115. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 今お話がありましたように、今日まで民間の間で努力をされたことをわれわれ認めております。また、今後こういう問題について民間において十分努力をされることが、やはり一つ方法であろうとは考えております。従いまして、そういう問題につきまして、政府としても十分民間の動き等も見ながら進んで参らなければならぬと思っております。従って、今日まで中共貿易に対しまして支持と協力を与えるという立場をとっておるわけであります。そういう意味においての協力ということも考えられると思います。
  116. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 民間側との間における話し合いについて、なるべく両国の間の了解ができるような情勢を作っていくことを期待しているというような御意見がございました。それならお尋ねしますが、第四次協定にくるまでの間、民間では三団体がこれと真剣に取り組んで参ったわけです。そういうような三団体の今までやって参ったような動きに対して、政府はそれを協力的に支持するという態勢をとるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  117. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 民間の方々が貿易について今日まで努力をされた。これは三団体以外にも業者団体等でもございます。そういう意味で民間の団体が純経済的にこういう問題を考えるということは、好ましい状態だと思っております。
  118. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 民間団体がそういうようなことをやることは好ましいことだということは、政府としては民間団体がいろいろやってきたことに対して協力するというふうに理解してよろしいのですね。
  119. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 貿易経済の問題について特に今日までそう非協力であったとも思っておりませんが、今後民間団体の活動に対してわれわれ十分今までの方針でありまする支持と協力を与えていく考えでおります。
  120. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 中国と日本との間に感情上の摩擦があり、食い違いがあるのだ、誤解があるのだということをたびたび言われると思うのです。その中国側の日本に対する誤解というのは、大体どういうことを意味しておられるのですか。
  121. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 この際私の口からいろいろそういう問題について言及いたしますことが、かえっていろいろな誤解とそごを招くのではないか、また感情的にもおもしろくないことが起るのではないかという意味において、私は静観をいたしておるわけであります。
  122. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 石野君に申し上げますが、お約束の時間をだいぶ過ぎましたので、結論的な御質問をお願いいたします。
  123. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 民間団体がこれからも中国との間に貿易協定をしようという意図をもっておる。従来の形において積極的に貿易協定の何を打開しようとするときに必要なのは、やはり政府の態度だと思います。ところが、民間でできるだけそういう態勢を作ることを期待するというけれども、実は今まで民間は一生懸命やってきた。やってきたのだけれども、政府の態度がいろいろとそれに対して協力しないから、これをぶちこわしにしてしまった。こういうことに対する政府の責任というものがあると思うのです。それのみならず、このことによって従来行われてきたところの貿易は途絶してしまったし、本年予定されておりましたところの一億ドルというものもふいになってしまったということになっているわけです。この問題は切実な問題なのです。藤山外務大臣はこういう問題を切実さをもって感じていないとするならば、これは静観もそれでよろしい。しかし、ほんとうに切実さをもって考えるならば、そういうことで言いのがれてはだめだろうと思うのです。私は、ここで政府がこういう民間団体の積み上げてきたものをぶちこわすようなことをすべきではない。むしろそれを育てるべきだというふうに考える。そういう考え方に基いて、これからこの民間団体と中国との間における貿易の問題について、真剣な協力態勢が出てこなければいけないと思うのですが、そういうことをする考え方——やはり静観するのですか。
  124. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 お話のありましたように、私といたしましても切実に考えておりますから、現在静観の態度をとるのが適当だと考えるわけであります。今日まででも、鉄鋼協定その他に対して政府が特にじゃまをしたようなこともないわけでありまして、そういうような問題について、できるだけ経済問題としては円滑にいくように協力することは、従来の方針と変らないわけであります。
  125. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 中国と日本との間の貿易協定が行き詰まっておる一番大きな問題に、やはり中国を承認するという問題がとことん突き詰めていくと出てくると思うのです、私は、この際、経済基盤強化法案の考え方の基礎について、経済の基盤を拡大し貿易量をふやしていくという問題と関連してアジア貿易を考える。アジア貿易の中で当然中国が出てくるし、その中国との貿易を広げていこうとすれば、どうしても中国との関係を考えなければいけない。高碕通産大臣は、中国との貿易を考えるときに、どうしても政治の問題と切り離して考えることはできないというふうにきのう言われておりますが、外務大臣はその点についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  126. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私の立場からそういう問題について今発言することは適当でないと考えております。
  127. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 私も、外務大臣がその立場上非常に慎重であるということは、そういうこともあるかと思いますが、しかし、この問題は今日火のついておる問題です。しかも国民はこの方向がどういうふうにきまるかということを非常に目を大きくして見ておるのです。そういう問題については、外務大臣が、そういうふうな静観とか、私は立場を明確にできないということになっておると、いつまでたっても実勢が動いていかない。そういう問題についてはあなたは全く無関心なままでほうりっぱなしにしておくという意味ですか。
  128. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 私は無関心でほうりっぱなしておくつもりは毛頭ございません。
  129. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 無関心でないという御答弁でありますが、しかし、そういう問題について積極的な打開策がなければ、これは策がないということなんです。外務大臣は、貿易の問題について非常に重要な位置であるところの中国貿易については、むしろ高碕通産大臣の権限を押えるくらいの力を持っておられる。そうしてまた、一般の国民は、中国に対する貿易を、今は少いけれども広げていこうという努力を考えておるわけです。そういうときに、私たちはやはりここではどうしても政府の態度というものをはっきりさせなければならない。そういうような考えを持っておるときに、政府がそれに対して全く傍観的な立場に立っておるということは、許さるべきことではない。私は、あなたが、政府を代表する外務大臣として、しかも経済外交を進める立場からして、その問題に対して明確な態度をここに出すべきだと思うのです。それがなければ私は無策であると思います。国民を愚弄するものです。これはもっと責任のある答弁をしてもらわなくちゃ困ると思うのです。
  130. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 高碕大臣の言われるように、貿易を振興する、またこれを円滑にしていく、拡大していくという問題について、私は決して熱意を持っておらないわけでもございません。しかしながら、今日の立場におきまして、とかく経済問題、政治問題その他が混淆されがちになりますし、また発言のいかんによってはそれが誤解を生むような場合もありまして、従って感情上おもしろくない問題も出てくるということでありますれば、かえって貿易を将来円滑にする道を早めるということに差しつかえが起る懸念もあろうかと考えますので、そういう意味において私は静観をいたしておる、こう申しておるわけであります。
  131. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 それでは、最後に一言だけ聞いておきます。中国貿易を考える場合に、私たちは、中国との貿易はただ経済的な問題だけではとてもだめだというふうなところまできたと思うのです。これはどうしても政治問題の上で解決しなければならないというふうに私たちは考えております。またそのことがはっきりしないと、めどがついてこないと思うのです。これはやはり幾ら静観しておる藤山さんでも、この問題については一応の考えを持っておられると思うのです。従って、私はここでは、もしあなたが公的な立場でいけなければ、個人的な考えでもいいのです。とにかく政治の問題と経済の問題とを全く切り離してやられるという考え方を持っておるのかどうか、またこれを一緒にしていかなければならないというふうに考えておるのかどうか、ここを明確にしてもらいたい。もしあなたが政治と経済との問題という関連性の中で考えなくてもいいのだというならば、経済問題は経済問題として、貿易を進めるためにはどういう方法があるかということをここではっきり言ってもらいたい。それを聞けば私はこの質問を終ります。
  132. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 日中貿易を経済問題としてできるだけ拡大し、円滑に進めていくということをまずやるのが、私の当面の静観の態度であります。
  133. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 今、藤山外務大臣は、中国との貿易を経済的な問題として発展させていきたい、こういうふうに言われた。それについてはどういうふうにすればいいかということについてのあなたの考え方を、私はこの際はっきりしておいてほしいということを言うわけです。だから、この問題について、もう政府と関係がないなら関係がないでよろしゅうございますから、経済的に発展させるにはどういうふうにしたらいいかということを、少くとも経済外交をやっておるあなたが、しかも中国の問題については高碕さんの上に立って押えておるのだから、そういう問題についてのあなたの構想一つ聞かせておいていただきたいと思います。
  134. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 ただいま申しましたように経済の問題として扱います前提として、現在いろいろの感情上のそごがあり誤解があるということを一日も早く払拭することが必要ではないかと思うのであります。そういう意味において、とかくの言論をいたすことは適当ではないのではないかというふうに思っております。
  135. 石野委員(石野久男)

    ○石野委員 それでは、藤山大臣一つお聞きしますけれども、政治の問題でやるということは非常に微妙だから、その点は言えないということならそれでよろしい。しかし、われわれは中国との貿易が非常に大事だと思っておるのです。それはあなたも認めておられる。そこでわれわれは何とかこれを切り開いていきたいと思う。このままほうっておくと、ずるずる延びてしまって、当分の間日中間の貿易は開かれないというようにわれわれは予測を立てておる。だから、それではいけないから、一日も早く開くために、経済的にどうするか、ただ感情上の問題とかなんとかいうことでなしに、それじゃ具体的な経済的な問題について、向うから持ってきているいろいろな問題に対してはこうしなければならぬということ、またあなたが、通産省とかあるいは大蔵省等に、いろいろな決済の問題やなんかについては、こういうふうにさせるべきだということについて、お考えを一つこの際聞かしておいていただきたい。それで私は質問を終ります。
  136. 藤山国務大臣(藤山愛一郎)

    ○藤山国務大臣 経済問題としては、前回の協定でも、通商代表部の問題でありますとか、その他の問題でありますとかいうことにつきまして、そう大きな問題があったとは思っておりません。そういう意味では、やはり問題は経済問題として、今後両国の民間業者が進んで、ただいま起っておりますような事態が終って参りますれば、おのずから私は話はついてくるのじゃないかということを考えるわけであります。そういう意味において私としてはただいま考えておるわけで、ただ、いたずらに何か手をこまぬいておる、あるいは貿易を再開しないために静観しておるというのでなくて、再開するためには、私の立場としてはあまりいろいろな言辞を弄しない方がいい、こういうことを申しておるのであります。
  137. 早川委員長(早川崇)

    早川委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十七日午前十時十五分より開会することとし、これにて散会いたします。     午後六時三十二分散会