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佐藤国務大臣 ただいまあるいは
意見の
対立かという
お話もございますので、特に申し上げる要はないかとも思いますが、
国際収支が
赤字であることか
日本経済に悪影響のあることは申すまでもないことでありますので、まず
重点を置いてこの
赤字克服に
努力をされました結果、昨年の九月以降は月三千万ドルないし四千万ドル
程度の
黒字に変っております。大体上期におきましてはこの
状況で参りますなら一億五千万ドルをこす
黒字、こういうように
国際収支の
状況は非常な改善を見るのではないかと思います。ただいまお尋ねがございましたので、少し私の
意見も申し上げてみたいと思いますか、この
国際収支の悪化から、また
日本経済の
あり方が
国際経済の制約を受けておるという立場から、何と申しましてもまず第一に
赤字を克服するということで
努力を注いで参ったと思います。それがただいま申すように
黒字に変った、改善された。さらにまた非常な
物価の下落がございましたが、大体
物価も横ばいの
状況に変ってきた。大きな
変動を見ないようになった。あるいはまた
在庫調整の面に
おきましても、ある
程度の
見通しが立ったと申しますか、
滞貨等も、数量がふえる
方向から、あるいは少しは減少の
方向にいくのではないか、こういうような
感じすら持てるような
状況になってきた。これらのこと、あるいは
経済変動で社会的な摩擦、失業者であるとか
事業の減産であるとか操短であるとか、いろいろ摩擦も生じて参りましたが、これらの非常な激動も、初期において見られたような状態から変って参りまして、まずただいまの
状況ならば一応
なべ底の状態に入ったのではないか、こういう
見方を実はしておるのであります。ただ日本の状態がそういう
状況であるばかりでなく、最近の
経済変動は、外国特にアメリカを初め諸外国においても同じような非常に苦しい状態に置かれていた。日本の
経済が特に影響を大きくこうむるアメリカ
経済におきましても、非常な
経済の不振を来たし、いわゆる縮小の
方向にいっておったと思いますが、これに対してもそれぞれの
措置はとられてきたものの、上向いておる。これを申すのはまだ早い
状況でありますが、さらにまた、
わが国経済の
あり方、輸出
振興ということに特に
重点を置きました場合に、いわゆる後進国等の第一次製品の価格下落というような関係もありまして、輸出自身もそう容易に進むというか、増進されるとも
考えておらない。もちろんそこらに非常に困難なものがあると思います。今日の日本の
経済の
あり方としてまず何としても
考えなければならないことは、
国際経済の制約を受けておるという、これだけは見のがせないことなのです。同時にまた、
日本国内の生産なりあるいは需給の状態というものも絶えず注意していかなければならない。この場合に、
日本経済が特に他の国に比べて特異性があると申しますか、非常に狭いところで多数の人口を持って、あるいはまた、あの戦争の直後でございますので、技術的に見ましても非常におくれているとか、いわゆる産業の近代化なりあるいは他の外国と競争しても劣らないというような
状況でなくして、非常におくれている。そういう
意味で、国内の需要は、
一般の不況の結果、もちろん停滞ではございますけれ
ども、
日本経済の特異性である非常な多数の人口を擁しておるとか、あるいは産業構造自身が他の国に比べておくれているとか、こういうような
意味で、ずいぶん
日本経済自身に、これから立ち上ろうとする、あるいはもっと大きくなろうとする傾向のあることだけはこれは
一つの
日本経済の特異性であろうと思うのです。この
意味におきまして
日本経済を見ます際に、ただいま申し上げるようないろいろの悪材料はございますけれ
ども、これは力のかし方によりましては
日本経済は今後大きくなろうとする力を持つ。それをただ力だけかすことによりましてでっち上げる、こういうことでありまして、企業の弱さといいますか、基盤が弱いところへ
日本経済を作るということになりますので、これは私
ども必ずしも賛成しない。幸いにいたしまして、現状自身が、昨年来とられました
措置によって
経済の状態が見直されるようになってきた。そうして、ある
程度の安定
状況といいますか、小康を得た
状況になってきておるから、今度はこれに
日本経済の持つ特異性を生かしくいく、こういう方法をとって参りますならば、現状の線を
一つ切り抜けてこれを上昇さすことももちろんできるのじゃないか。私の現状に対する
見方といたしましては、別に楽観論を申し上げておるわけでもない。しかし、同時に悲観論を申し上げておるわけでもございません。今日まで長期
経済計画を立てて参っておりますが、その線に沿って物事を
考えていくならば、常識的な発展も期待できるのではないか、これが私の
考え方でございます。