○橘
参考人 私は
機械工業の現況を見通し及び対策につきまして、初め
概略を申し上げたいと存じます。
冒頭におきまして、ただいま
委員長からもお話がございましたように、
機械産業はわが国におきまして近い将来、産業構造の最もウエートの重い期持を持たれておるのでございます。、あた同時に、輸出面におきましてもさらに大きな使命を預けられておるのであります。お話を簡潔にいたしつまして、概説におきましては五項目ほどをとりまとめまして、簡単に出し上げたいと存じはす。
まず前提といたしまして
機械工業の現状と見通しを述べますに当りまして、
機械工業の範囲と、同工業がわが国に占めます地位につきまして申し上げたいと存じます。
機械工業の範囲は、行政面から分類されまして、船舶、鉄道車両、産業
機械、重電気
機械、電気通信
機械、自動車、繊維
機械等の重
機械及びミシン、光学
機械、軽電気
機械、
自転車、農機具、内燃
機械、ベアリング、工具、時計というような軽
機械に反んでおるのでございまして、わが国の現状におきまして、産業において占めるその地位を申し上げますと、従業員の数におきましては、全産業に対しまして二六・三%、それから生産額におきまして、わが国全産業の六兆九千六百億円に対しまして、
機械工業の生産は一兆三千九百億を占めておりますが、これを百分比で申し上げますとおよそ二〇%に当るわけでございます。
以上が
機械工業の前提でございますが、過日数年間の推移はどういうふうな足取りになるかということを申し上げますと、
基準年度を昭和三十年にとりますと、昭和二十八年におきましては八七・七、二十九年には九八・八、三十一年は一四五・二、三十二年が二〇二・一、三十三年には二〇四・三、これは今年度は一月から六月までの調べを一年換算にした
数字でございます。というような非常に順調な生産の伸びを示しておる次第でございます。また輸出におきましても昭和三十年に二億八千二百万ドル、三十一年には五億三千七百万ドル、三十二年には六億九千三二百万ドル、昨年までは非常な伸びを示しておるわけでございます。この間
機械工業は相当の
合理化が進められて参りまして、小産規模も拡大しており、また新技術の採用も活発に行われまして、ただいまでは世界最高水準の
機械も多数生産の
目的に使われておる次第でございます。
ついては、現状はどうであるかという点を申し上げてみますと、目下不況の段階が相当進んで参りましたけれ
ども、
機械工業全体を概括的に見まして、設備投資が旺盛であったときの受注残が相当ございますので、いまだ生産は低下を来たしておりません。通産省の
機械実生帝指数によりますと、昨年の平均が二〇二に対しまして、今年の四十六の第一期間におきましては平均が二〇八程度になっておりまして、決して下ってはおらぬのでございます。電気
機械あるいは産業
機械等は、今でもなお平均一カ年近い受注残を持っております。また自動車、電気
関係耐久消費財等は、比較的好調を続けておるのでございます。ただ一部には繊維
機械あるいはベアリング、工具等のように、生産の減少が顕著なものも、この中には見出すことができるのでございます。国内の新規注文はその動向を見ますと、昨年七、八月ごろから次第に減少を来たしておりまして、たとえば産業
機械では昨年の三月の一カ月の受注が三百五十九億円を頂点として現われておりますが、一月から五月までは二百二十億ないし二百六十億の水準でありましたが、昨年の七、八月ごろから受注は次第に減少いたしまして、今年に入りまして三月は官公署の
予算の
関係等もありまして、多少はいいのでありますが、その他の月の平均が百億というような
数字にダウンしておるのっでございます。また特に激しいのは、工作
機械でございまして、昨年の四月の一カ月の受注が十二億円を表わして、ピークとなっておりますが、それ以来激減の傾向にございまして、本年の四月現在では一カ月たった三億というようなふうに落ち込んでおるのでございます。このような国内需要の減少に伴いまして、業界の輸出に対する努力はますます盛んになっておりますが、何分世界経済がまた下降を示しておりますので、思うようにこの改善がつかめりないというのが現状でございます。
なお、世界主要国における
機械輸出の現状を参考までに申し述べてみますと、わが国の総輸出額に対する
機械の輸出額は二四・六%でございますが、西独は四三・十五%、イギリスは三九・六%、米国は三五・八%に及んでおります。フランスは一八・四でございます。また国連統計によりまして一九五六年、昭和三十一年の世界における
機械の総輸出量はどのくらいであるかということを申し上げたいと存じます。この点が非常に大事な問題でございまして、昭和三十一年の世界の
機械の総輸出量は、実に百七十三億ドルという膨大な需要があるのでございます。わが国はその年におきましてわずか三%というものを占めたにすぎないのでございます。これに対しまして、アメリカが三九%、イギリスが二〇・三%、西独が一八・五%、フランスが四・八%となっておりまして、世界の四位まで拾いますと、今のような
数字になるのでございます。私
どもは急速なる発展を望みますが、わが国の
機械輸出を、少くとも近い将来においてフランス並みくらいの状態に、あるいはこれを上回る目標をとって努力すべきでないかということを念じておる次第でございます。
さて見通しでございますが、今後の見通しは最近ますます受注の減少が顕著となっておりまして、現在では前年同期に対しまして、平均して半分以下となっておるような状況でございます。過去の受注残を食いつぶしている状態でありますので、経済情勢がこのまま推移するとすれば、他産業よりはおくれて、しかも
機械産業としては一段と深刻な情勢を来たすであろうということを極力心配する次第でございます。そされならばどんな対策があるかということでございますが、この際輸出
振興の
強化がまず第一にあげらるべきものでありまして、特に船舶の輸出が不振の今日におきましては、プラント類の輸出を積極的にはからなければならぬのでございまして、また
機械工業は、国内の各産業に対する
合理化設備の供給ともあわせて考えなければならぬのでございます。これに対処しますためその基盤を
強化いたしまするためには、常にある限度以上の需要が持ち越されておらなければならぬ産業の
一つであります。そのため輸出
振興とあわせて国内需要の対策という二面を、常に考慮しなければならぬと信じておる次第でございます。
輸出対策は今非常に大きな問題でございますが、その中から区要約いたしまして
一言申し上げたいと存じますが、輸出対策につきましては、すでにあらゆる対策が出尽しておるのでありまして、要は私
どもがこの対策が機動的に総合的に実行を誤らないことと思います。岡崎に輸出炭
振興策の根幹は、
政府が長期的な視野に立ちまして輸出
振興策を確立することが、最も私
どもの要望するところでございまして、このようにして輸出
振興は
機械に関する限りは長川的のものでなければならぬのでございます。すなわち多少輸出が伸びたからといいまして、あるいは財政資金の節減ということからとか、IMFあるいはガットとの見合いというような
関係から、そのときどきの情勢によって急変あるいは後退するような政策は、絶対に避けなければならぬものと思っております。
また貿易行政につきましては、
関係各省間の歩調の統一がきわめて必要でありまして、貿易に関する諸制度の運用、特に輸出承認の面等におきまして、大蔵、通産の間で意見の相違を来たす場合がしばしばでありまして、これは輸出
振興の上に大きな妨げとなっております。最近当局では、
延べ払い輸出の承認制につきまして、従来に比べまして弾力のある運用をすることになったのでございますが、ブラジルとか、アルゼンチン、インド等主要輸出国に対しまして弾力のある運用方針が適用されていないような感じが強くされるのでございます。その後輸出承認に関する手続状況等を主要会社について調べてみますと、たとい承認される場合でも、自最終的には依然として相当の期間と、いろいろの
説明を非常に多く要しますので、必ずしも緩和された方針
通りに運用されてないという声も大きいのでございます。
次は、わが国としては戦後画期的なものでありますが、イントとの通商の盛んになってきたことでございますが、本年二月円クレジットというものを制定されたのでございます。この円クレジットは通常の
延べ払い輸出にプラスの効果をねらったものでありますけれ
ども、実際はそういうふうな運用になっておらない点が非常に心用なわけでございます。現実の運用面では全くこれの立案された当時と変った形になっておる、むしろ正常の輸出が円クレができたために縮小されておるというような奇異なことが起きておるのでございます。またプラント輸出の増大をはかりますには、他の大きな要因でありますが、コンサルティングの機能の
強化とプラントの設計技術等に対する補償の問題が大きく要求されておるのでございます。数年前からこの面におきましては、業界がこぞって強い要望をやって参ったのでありますが、幸いこのたび
政府では来年度の重要施策としてこれを取り上げられたのでございますが、非常に私
どもは適切なることと思って歓迎しておる次第でございます。
また軽
機械につきましては、わが国は強い国際競争力を有しておる国でございます。しかしながらそれらの製品は中小企業等が中心になりがちなものが多いのでございまして、とかく過当競争に陥りやすいのでございます。これに対する強力な対策が必要とされますと同時に、従来海外市場に対する知識もあまり深くはございません。でありますから、積極的なマーケッティング活動が不十分になりがちでございます。業界は
政府と一体となりまして、この面の解決をはかることが必要と考える次第でございます。
最後に、アフターサービスの問題でございますが、これはもう申すまでもございません。輸出特に
機械の輸出におきまして、これを広く海外に宣伝いたしますことは当然のことでございますが、これはジェトロが今年非常な力をつけられましたので、この運用を今後誤まりなく最も資金効率を上げるように運用されますことによりまして、おそらく従来より数段効果が現われると思っております。しかしながらアフターサービスということが
機械にはつかなければ、決して安定市場を作る結果にはならないのでございます。金をかけてものを宣伝し、金をかけて輸出をしながら、しまいには信用失墜ということは、アフターサービスが完結されなければならぬのでありまして、私
ども機械産業といたしましては、
機械業界が共同出資で三年前に海外
機械興発株式会社というものを設立いたしまして、
政府のあっせんで
自転車競技の方からの補助も仰ぎながらやっておりますが、なかなか一国において、完全な大きなプラントから小さな部品に至るまでのサービスというものはきわめてむずかしいという実例を今日持っている次第でございまして、これらにつきましては
政府の資金ももっと投じて、そうしてアフターサービスというものをぜひ確立するというふうに、
政府も動いていただきたいと思う次第でございます。
以上のほか早急に
実施を必要とする輸出対策といたしましては
延べ払いの緩和、為替損失補償制度の運用改善、対イン円クレジットの運用問題、
特定国に対する輸出制限の緩和、双務主議の採用、それから特別外貨制度の改善、現有諸制度の拡充
強化による原価の引き下げ
措置、在外公館の商務機能の
強化、インド以外の国に対する円クレジットの設定、技術センターの設置等がありますが、これは後刻時間がございましたならば、御
質問に応じて具体的の御
説明をつけ加えたいと思う次第でございます。
概論の
最後に国内対策でございますが、国内対策といたしましては、
合理化実現のための設備資金については、財政的
措置を講じて必要な資金の供給をはかっていただきたい。また新規産業の育成をあるいは
公共事業の積極的川遂行が必要であります。同時にまた
合理化資金及び輸出由金融についての金利を国際水準並みに引き下げること、また税制
措置といたしましては法人税の軽減、固定資産の耐用年数の短縮等々がある次第でございまして、以上概論を申し上げまして、後刻御
質問等がございますれば
お答えを出し上土げたいと思います。