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1958-06-24 第29回国会 衆議院 商工委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十三年六月二十四日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 長谷川 四郎君    理事 小川 平二君 理事 小泉 純也君    理事 小平 久雄君 理事 中垣 國男君    理事 中村 幸八君 理事 加藤 鐐造君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       新井 京太君    岡部 得三君       岡本  茂君    加藤 高藏君       川野 芳滿君    菅野和太郎君       木倉和一郎君    關谷 勝利君       田中 榮一君    高橋  等君       中井 一夫君    濱田 正信君       渡邊 本治君    板川 正吾君       今村  等君    内海  清君       大矢 省三君    勝澤 芳雄君       小林 正美君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    水谷長三郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  高碕達之助君  出席政府委員         通商産業政務次         官       中川 俊思君         通商産業政務次         官       大島 秀一君         通商産業事務次         官         (大臣官房長) 齋藤 正年君         通商産業事務次         官         (通商局長)  松尾泰一郎君         中小企業庁長官 川上 為治君  委員外出席者         通商産業事務官         (軽工業局長) 森  誓夫君         通商産業事務官         (繊維局繊政課         長)      佐々木彰一君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  小委員及び小委員長選任に関する件  通商産業基本施策に関する件  日本経済総合的基本施策に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件  鉱業一般公益との調整等に関する件      ————◇—————
  2. 長谷川四郎

    長谷川委員長 これより会議を開きます。  まず小委員会設置に関する件につきまし、お諮りいたします。先刻の理事会において協議いたしました結果、繊維不況問題の調査並びに対策樹立のため、小委員十名よりなる繊維不況対策に関する小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議ないと認め、同小委員会を設置するに決しました。  次に、小委員及び小委員長選任に関しましては、委員長より指名するごとに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 長谷川四郎

    長谷川委員長 御異議なしと認めます。よって小委員には、    奥村 又十郎君  菅野 和太郎君    關谷 勝利君   中井 一夫君    中垣 國男君   中村 幸八君    大矢 省三君   加藤 鐐造君    小林 正美君   堂森 芳夫君以上十名を指名し、小委員長には中村幸八君を指名いたします。     —————————————
  5. 長谷川四郎

    長谷川委員長 通商産業基本施策に関する件、日本経済総合的基本施策に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件及び鉱業一般公益との調整等に関する件につきまして質疑の通告があります。順次これを許可いたします。中村幸八君。
  6. 中村幸八

    中村(幸)委員 私は、現在わが国が直面いたしております繊維業界の、重大な危局突破の問題につきまして、その対策樹立のために委員長並びに通産大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  昨年の国際収支悪化に対処いたしまして、五月以来の緊急総合対策樹立によりまして、著しく不況に陥っていたわが国産業界も、この緊急対策がその後効果を現わして参りまして、十月以降は国際収支も黒字となってくる、こういうようなことで、この面における不安定もまず一応解消したと見るべきであると思うのであります。さらに不幸なことには、昨年十月以来世界的不況に見舞われ、またアジア請国におけるドル不足、あるいは輸入制限等によりまして輸出は思うように伸びず、不況はますます探測になってきつつあるようであります。この際政府におきましては、この不況対策をいかに考えておるか、特に昨日も東京九段の九段会館におきまして、全国綿スフ織物工業者危機突破大会が開かれました。千八百人に余るところの織布専業者が白はち巻きをして悲壮な決意を持って九段会館に集まって参りました。私もその席に列席いたしましてまことに胸を打たれたのでありしなす。由来織布専業者というものはいろいろの各自々々の思惑がありまして、なかなか一致した行動がとり得なかったのが実情でありますが、今回は全国一万八千の織布専業者が全く一本となって、そうしてこの悲壮きわまる全国大会を開くに至ったということは、いかに織布業界、ことに中小企業者はその不況が深刻であるかということがうかがわれるのであります。この織布専業者は御承知通りに、中小企業模範的体系をなしておるのでありまして、資本の力が弱く、また設備経営の面も劣悪である。その上に組織力団結力が弱いといういろいろな悪条件がありますので、今日の不況が織布専業者に全くしわ寄せされておるのであります。開くところによると、毎月の倒産破産者というものが百件あるいは百五十件の多きを数えておる。こうして私が質問をしている間にも続々と倒産者を出しておるというのが実情であると思うのであります。そこでただいま委員長から繊維に関する小委員会を設けて、この対策を専心検討するというお話があったのでありますが、できれば至急全国各地のおもだったところの業者東京に集めまして、そうして現地の偽わらざる実情を聴取いたしたい、かように思うのでありますが、この点につきまして委員長お答えをお願いする次第であります。  さらに通産大臣に対しましては、昨日のこの全国危機突破大会におきまして六項目にわたる決議をいたしております。私は今日ただいますぐここで通産大臣からその場当りの思いつきの答弁を聞こうとは思っておりません。それだけこの問題は深刻であります。十分政府におきましては検討検討を重ね、すみやかに危機突破対策を樹立せられたいと思うのであります。そこで昨日の決議に表われました六つの、項目、すなわち一、過剰綿スフ織機を買い上げ、廃棄するとともに、合成繊維用織機の新増設を禁止する措置を講ずること。二、過剰綿スフ織物賠償物資として処分すること。五、綿スフ布専業者操短資金を確保すること。四、綿スフ布専業者現行輸出リンク方式内地用原糸流通方式並びに喜取引条件を改善すること。五、綿スフ布専業者遊休設備に対する固定資産税を免除すること。六、綿スフ布専業者設備近代化製品向上技術の改善をはかる措置を講ずること。この六つ項目中心に、なおこのほかにもいろいろ対策もあろうと思いまするが、これらの問題を中心とするところの、政府の確固たる御方針をすみやかに承わりたいと思うのであります。  先ほど委員長から小委員会を設置することのお話がありました。今後この小委員会中心に極力政府当局と折衝いたしまして、問題の解決に当りたいと思っておりまするが、まずもって本日は通産大臣から、この危機突破、並びに今後いかにしたら恒久的に繊維業界が安定するか、こういう問題をあわせまして、一応の御見解、御意見を承わりまして、さらに今後すみやかなる機会におきまして、先ほど申しました六上項目中心とする対策につきまして、お答えを頂きたいと思います。
  7. 長谷川四郎

    長谷川委員長 お答えいたします。  繊維不況に対しまして、われわれ委員として常に苦慮している点でありますので、来週七月一日に各地百区から参考人出席をお願いして、調査を進めていきたいと考えているわけであります。特にそれによって本日の小委員の御指名を申し上げたわけでありますが、小委員の方々に基本的な政策と言いましょうか、これらを取り上げてもらって、どうやったならば御期待に沿うことができ得るかという点について、十分御検討を願いたいと考えております。
  8. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの中村委員の御質問に対しましてお答え申し上げます。  お説のごとく今日繊維工業があらゆる方面からの圧迫と申しましょうか、輸出振興についての障害を来たしておりますことはお説の通りでございます。特に最近繊維工業の市場である東南アジアに対して、中共が新しく進出して参りましたこと等において、今日の繊維工業がいかなる危機に立っておるかということは、全く私どもは同感でありまして、これをさらに小委員会おいて十分御検討を願うということも、これまた私どもとしては最も望ましいことと存ずる次第であります。何しろこの危機突破につきましては理屈よりも早く実行を要することだ、こう存じますから、なるべく早く実行に移すという方法で進んでいきたいということが一つの趣旨であります。また繊椎工業全体につきましては、これは全画的に、単に綿糸だけでなくて、全体的な繊維工業として総合的に考えて、将来の安定政策を立てたい所存でございます。昨日決議されました六項目のうち、機械買い上げの問題でございますが、これはよほど慎重にやらないと、財政資金等いろいろの関係もございますものですから、これはせっかく検討いたしたいと存じております。それから賠償物資の中に繰り入れるということにつきましては、ただいままでの考え方では、人絹と申しますか、化学繊維の方は大体意見は一致しておりますが、綿糸布の問題につきましては、一応外貨の負担率が多いものでございますから、今検討中でございますので、お答えいたしかねるわけでございます。  それから操短資金の問題、これは政府として十分考慮いたしまして、なるべくこれは早く実行に移すように努力いたしたいと存じております。  それから輸出リンク方式の問題、これは検討いたしますが、なかなか困難があるだろうと存じております。  固定資産に対する税金の軽減の問題でございますが、これはごもっともと思いますが、大蔵省との関係がございますから、大蔵省と十分検討いたしまして打ち合せた、と考えております。  それから設備近代化技術向上、これは私は特に中小企業である機業者に対しましては最も必要な重要な点と存じまして、この点につきましては、検討でなくてむしろ努力して、できるだけの実行をいたしたいと存じておるわけであります。  以上をもちまして、はなはだ簡単でございますが、この繊維工業の今日の現状につきましては、通産省といたしましては同様に痛感しておるわけでございますから、十分努力いたしたいと存じます。
  9. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいま通産大臣から、要はすみやかに実行するにあるというお言葉がありまして、大へんけっこうなことと存じますので、よろしくお願いする次第であります。  今各項目につきまして一応の大臣の御答弁がありました。しかしこれをもって私満足するものでは絶対ありません。よくここはふんどしを引き締めて通産当局大蔵当局、それぞれの関係の官庁とよく御相談になって、確固たる方針を樹立せられますようお願いする次第であります。中小企業者は特にわが国における最も健全なる中核体でありまして、またこの繊維工業というものは輸出物資の大宗であります。もしこれをこのまま放置するならば、わが国産業全体に及ぼす影響、また輸出貿易に及ぼす影響あるいは社会秩序に及ぼす影響というものははかり知れないものがあるようであります。よって政府におきましてはしっかりした方針を確立して、この危機を突破せられますよう、切にお願いいたします。私は一応これで終ります。
  10. 松平忠久

    松平委員 ただいまの繊維産業危機に関しまして、ちょっと関連して質問したいのですが、今出ました、昨日の全国綿スフ織物工業者危機突破大会で血の出るような叫び声が全国から集まった業者から託されたわけです。この大会には衆参両院関係者ももちろん出席いたしましてつぶさにその実情を聞いたわけですが、通産大臣はこの大会のあることをあらかじめ知っておったかどうか、また通産当局はこれを知っておったかどうかということと、それからこの大会大臣は出られたかどうか。出なかったとすれば、だれか代理者が出て、そうしてつぶさにこの状況を聞いておったかどうか。私も終始おりましたけれども通産省の役人はほとんどこれに出ておらない。こういうことで一体通産行政というものができるかどうか。今の綿スフのみならず、あらゆる方面操短があって、その民間の事情をよく把握しなくちやならぬにもかかわらず、こういう大会通産省当局がだれも出ない、繊維局長も出ない。こういうことで一体日本通産行政をやっていけるか、はなはだ心もとないのでありますが、その点に関する通産大臣の釈明を求めたいと思います。
  11. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの松平さんの御質問に対してお答えいたします。昨日の大会通産省としてはよく存じておりました。もちろん時間がございますれば、通産大臣出席すべきものと私は初めから希望しておったのでありますけれども、きのうは御承知予算委員会等におきまして非常に多忙をきわめておりましたから、関係当局をしてつ、ぶさにその状況を聞きとらしておるわけなんでございまして、担当官出席いたしておりましたわけでございます。
  12. 松平忠久

    松平委員 どなたが出席なさいましたか、私はずっとおったのだけれども知らなかった。繊維局長出席すべきたと思うけれども繊維局長もちっとも顔を見せなかったように思う。一体どういう用事があって繊維局長が出られなかったか、その出られなかった理由をこの委員会で釈明してもらいたい。
  13. 佐々木彰一

    佐々木説明員 昨日は繊維局長所用でお伺いできませんでした。それで担当課の課長の代理の者が終始出席しておりました。この様子はそのときどき私の方には連絡が入っております。それから、従来こういう種類の会議の場合には、通産省全体、大体そうなんでございますが、あまり出席は従来しておりませんので、そういう慣例に従っております。決して軽視云々というような趣旨ではございませんので、その点は御了承を願います。
  14. 松平忠久

    松平委員 驚くべきことを聞くのだけれども担当官がだれだか知りませんけれども、ランクのごく低い人でなかったかと思う。そういう人が終始出席しておって、あの空気とか、あの考え方、ああいう民間の声というものをやはり私は政治家としては聞くべきだと思う。それをただ単に担当官にまかしておいたというのは、私は大臣としてどうかと思うのだが、政務次官も出席されなかったのですか。
  15. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御、注意は私はごもっともと存じます。今後そういう問題につきましては十分注意いたしますが、昨日のことはまことに申しわけなかったと存じます。
  16. 松平忠久

    松平委員 それならいいんだが、もうちょっと伺いたいことは、今大臣中村君に対する御答弁によりますと、繊織の総合的な具体策というものを樹立する、それで不言実行でどんどんいくのだというお話があったわけであります。このことは私はなかなかむずかしいと思うが、結局繊維計画生産というものをしていかなければ私はだめだと思う。しかもこの繊維全体の中で綿スフの受け持つ部分あるいは化学繊維を今後どうして伸ばしていこうか、こういう考え方、またその中に立って絹、これも重大な関係があるので、これをどういう形に持っていくかということが、私はきわめて重要な課題であろうと思うのですが、その繊維の全般的な構想というものを、一体どう計画生産方向へ向けていく考えか、すなわちその中で絹はどういう部分を受け持ち、綿スフはどうであるか、あるいは新しくできている化学繊維というものは、どの程度のテンポをもってこれを進展させていくべきであるかという、日本状況世界状況等をあわせて、そういうことをお考えになっているかどうか。そのアウト・ラインだけでも、ここで御発表願った方がいいと思う。それに基いてどんどん実行していけばいい、そういうことになると思うのですが、御所見を承わりたいと思います。
  17. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 この問題につきましては、危機突破工作と別途において、根本的にこれを検討する必要がある、こう存ずるわけであります。大体の方向といたしますれば、お話のごとく絹と化繊と綿製品、この三つの問題をよく検討いたしまして、その間の関連性検討することは第一と思いまするが、常識的に申し上げまして、綿製品につきましては日本において原綿ができない。これは輸入品によらなければならぬということを第一に頭に置く必要があると思う。化学繊維につきましては今後の化学の進展のいかんによって、これは国内において原料は確保できるということを頭に置かなければならぬ。それから絹の製品につきましては、これは今後日本生糸事業というものは今斜陽的な状況にありますけれども、必ずしも前途につきましては輸出品として悲観すべきものでない。振興方策いかんによってはこれは十分に伸びるべきものだ。この三つ考え方基礎に置きまして、そして対策を講じたいと考えております。
  18. 松平忠久

    松平委員 関連ですからこれでやめますが、そのことはいずれ折を見て、後刻もっと質疑を継続したいと思います。
  19. 長谷川四郎

  20. 中井一夫

    中井(一)委員 この際私は日中貿易に関する問題と中小企業に関する問題につきまして、大臣の御所信伺いたいと思うのであります。  日中貿易の問題は、私どもが長年関心を持って継続してきたものなのでございますが、この問題につき私どものお伺いをいたさんといたしまする、要点は、本国会において開かれました外務委員会並びに予算委員会において、大体質疑並びに政府所信御開陳のことは尽きたようであります。私は本日ここにこれを繰り返すことはいたさないのでございますが、ただ一点、この問題の経過とまた本議会において現われました質疑応答関係いたした事実から考えまして、いかにしても遺憾に思いますることがございますから、特にこの点を具体的にお尋ねいたさんとするものなのであります。すなわちこの日中貿易の問題というものは、もとより日本と新中国とは隣同士で、しかも日本文化は昔は中国から輸入され、日本文化基礎は新中国の文明にあったとさえ言ってもよいものでありますから、両国関係が常に親善友好でなくてはならぬことは問題はないはずでございます。しかしややもすると両国の間に争いが生じまして、しかもその結果は東洋の平和だけでなく、世界の平和にも大悪影響を及ぼすことになる。言葉をかえて言うならば、日本と新中国とが友好親善を保ち得る間は世界に平和があるけれども、事問題が悪化したる場合においては世界の平和もこれがまた悪化をする、こういうような歴史をわれわれは見て参ったのであります。しかしながら今日におきましては、残念ながらいまだ日本は新中国承認を完了いたしておりません。この新中国承認の問題につきましては、すでに自由諸国の枢軸であるべきイギリスが、数年前に新中国承認いたしておるという重大なる問題を考慮いたしつつ考えて参りますると、これは日本におきましても今や考え方を新たにすべきときが来ているのではないかということを深く思うのでございます。この問題はただいま通産大臣たるあなたにお伺いをするということはないのでございますが、それにいたしましても、先般来現われましたこの国会における質問応答、それから見ますると、すべて外交上の問題として取り扱われて、ほとんど貿易の問題として取り扱われることがきわめて薄いことを発見いたすのであります。これを私が申しまするゆえんは、日本はいまだ新中国を承翻していないのだから、しかもなお貿易をやっていこうという以上は、政治政治外交外交貿易取引はまた別のものだという割り切った考えのもとに、両国が話を進めるより道はないのではないか、そうなればこそ今まで第四次貿易協定だけでなく、それぞれの協定におきましても、その割り切ったる考え基礎としてすべて話は進められてきておるのであります。従って私どもはあくまでもこの問題を、政治外交を離れたところの貿易であり、取引であるとして話を進めて参りたい、そうすることが両国親善友好のためにもなって、また両国の、ことに貿易によるところの取引を進めていく一番賢明な方策だと信じておるのであります。そうであるならばこの問題は終始通産省の所管でなくてはなりません。しかるにこの問題はすでに外交問題としてのみ取り上げられて、先ほども申しましたように、いかにも通産省ひいては通産大臣の発言と申しますか、これに関与されるその程度というものが薄いものであることを発見して私は残念に思うのであります。私はバンドン会議首席全権、また日比賠償日ソ交渉の代表としておいでになりましたあなたをこの岸内閣において通産大臣として迎え、経済商業だけでなく、経済外交のベテランであるあなたが、この重要なるときに大臣になる、担任の主管者でおありになるということは、きわめて時を得た、人を得たることだと信ずるのであります。この際通産大臣はいわゆる静観の立場かり一歩前進して、いな数歩躍進をして、この問題のイニシアチブをとる、主導権をとる、そうしてむしろ現政府を指導するような立場におなりになることが、この日中貿易のむずかしい問題解決のかぎになるのだと思うのでありますが、この点についての大臣の御町見を承わりたいのであります。
  21. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 中井委員の御質問お答え申し上げます。御説のごとく日本中国との関係は、地理的に考えても、歴史的に考えましても、一日も早くこの貿易なり国交が回復されんことを希望するわけでございますが、この問題につきましては、政治政治貿易貿易、すっかり離せ、こういうお言葉でございますか、私どももそういうふうな考え承認問題とは別途に、両国の間において通商協定なり、あるいは文化協定というものを進めたい、こういう所存で今日まで参ってきたのでございます。ところがいかなる理由か、今日のような事態に追い込まれたことは、まことに遺憾に存ずるのであります。この解決方法は、相手の国は貿易というものと政治というものはやはり一本でやっておるわけであります。その結果、いろいろ日本政治のあり方についての誤解が赴っておる、こういうわけでございますから、いかにしてこの両国の間にわだかまっておる誤解を解くかということは重要な問題だと存じまして、私は通商産業大臣意見としては、外務大臣なり総理に申し上げております。しかしこの取扱いにつきましては、これは外務大臣の責任においてやるわけでありまして、外務大臣なり、総理大臣は、言っておられます通りに、静観とはいうけれども決して手をつかねて静観しておるのではなくて、一日も早く妥結したいという方向において情勢を見ておる、こういうわけでございますから、さよう御承知願いたいと思います。
  22. 中井一夫

    中井(一)委員 そこで私はただいまも申し上げたように、なるほど政府の窓口としては外務省が主管でありましても、これは何としても通産大臣たるあなたが最も重要なるウエートをもって、この問題に積極的に当られんことを重ねて申し上げまして、国家のために大臣の御奮起を要求する次第であります。  そこで六月の初めに新中国の要人から大臣に対して、新中国へ来るように、訪問するようにという招請があったということが伝えられておりまして、わが国における情報紙数紙にはこれを明記しておるものさえあるのであります。すなわちその時期は、大臣がいまだこの内閣に御入閣の以前でございますから、個人のところに招請のあったものと存じますが、もしそういう事実があるならば、これはきわめて重要なる出来事でありまして、この際これを秘密にせず、私の考えから言うならば、まさにこれは公然の秘密であると思うのでありますが、それならばむしろこの機会をとらえて、すみやかに積極的な行動に出られることが両国のためだと信ずるのでございます。願わくは大臣におかれましては、率直にこの問題についての御一所見をお述べいただきたいと思うのであります。
  23. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問の点でございますが、これは私任官前に、通商産業大臣となる前に、そういう話が直接でなくて間接的に、中国に来たらどうか、こういう話があったことは事実でございます。私自身といたしましても、何か両国関係が打開できるならば、自分は老躯を捧げてこれに従事してみたい、こういう感じもあったのでございますが、はからずも、ほんとうにはからずも、でございますが、今回私通産大臣を引き受けたわけでございますから、私の今後の行動は、やはり閣僚としての考え方をせなければならぬわけでございますから、今後のことにつきましては、私は何とも申し上げかねます。
  24. 中井一夫

    中井(一)委員 秘密だとせられておったこの問題を、国会において大正臣のお立場で、そういう事実があったということを明らかにお述べになりましたことは非常にけっこうなことだと思うのであります。新中国の要人がたれ人であるかということも伝えられておりますけれども、この問題の円満に将来解決することを望みまして、ここではこれを申しません。しかしそういう事実があったということを大臣が御明言に相なりましたということは、非常にけっこうなことだと私は思います。願わくはこの問題をあらためて一つお考え直しになって、そうして静観から大いに、活躍をするというところへお進みあらんことを切に希望いたす次第であります。なおこれに関連いたしまして、先般の新聞ではワシントンの朝海大使が新聞記者に話しましたことが伝えられております。すなわち、日本と新中国との間の貿易関係がまことに残念な現状に陥っておる折から、アメリカが日本輸出品に対していろいろな、あるいは関税の引き上げあるいはこれを制限するというようなことで、これを規制をするような方法をとることは、日本国民のきわめて遺憾にたえないところでございますが、これを朝海大使が取り上げられて、アメリカがそういうような態度をとる以上は、日本は新中国との関係をさらに一層密接にして、アメリカで押えられた貿易のはけ口を新中国において取り戻さねばならない、こういうことを言われたということは、私はきわめて時宜に適したる意見であったと思うのであります。この点につきまして、願わくは大臣としてはこれはぜひともその趣旨でアメリカに対せられねばならぬ問題だと信ずるのでありますが、率直にこの国会を通じてアメリカに知らしめる意味も加えつつ所見を御披瀝いただきたいのであります。
  25. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 アメリカで今日起っております日貨の排斥と申しまするのは、関税引き上げ問題等詳細に検討いたしますと、日本が現在輸出しております品物はほとんど日本の中小工業者製品が多いのであります。ところが同様にアメリカにおきましてもこの樋類の製品はアメリカの中小工業者が作っていることも事実なのであります。そこで、アメリカ政府方針とすれば、なるべく日本から物を買いたい、こういうことの趣旨には変りないわけでありますけれども日本輸出する商品は向うの中小工業者と相抵触するわけでありますから、アメリカの中小工業者はこれを取り上げて非常に強く政府にこの阻止迎動をするというわけなのであります。それがためにこの打開策といたしましては、なるべくアメリカの中小工業者にじゃまにならぬように、そうしお互いに共存で行こうじゃないか、あるいは今後の製造等においても、よく数量の打ち合せをするとか、品種の打ち合せをするとかいうようなことをしてやっていく必要がある、こういうふうに存じまして、その方向におきまして、最近におきましても日本の当業者のある者を急速にアメリカに派遣いたしまして、アメリカの業者と接触するとい方針を今とりておるわけであります。そういう方法で妥結いたしたいと思いますが、朝海大使がどう言ったということは、私はまだ実はよく聞いておりません。まだよく調べておりませんが、朝海大使の言うようなことも一つの考え方と存じますけれども、今にわかに私は政府として、それはアメリカに対してお前の方が買ってくれなければ中共へ売るぞと、そういう極端なことを言うことはよいか悪いかということは私はまだ検討いたしておりませんから、何とも申し上げかねますが、ただいまの御質問趣旨につきましては、参考としてよく承わりまして善処することにいたします。
  26. 中井一夫

    中井(一)委員 朝海大使の言葉にこだわるわけではございません。しかしながら朝海大使の言われたと報ぜられておる事柄の真意は、まさに日本国民全体の考えであると申しても差しつかえないと思うのであります。何もこれは喜んで無理にアメリカに対し悪意を持っていたすのではございません。日本の今日の現状、小さい島に閉じ込められた一億に近い国民がいかにして生きていくかという上においては、何としても貿易によるほか道はない。みずからの生存のためにやむを得ざる態度として出でたる朝海大使の言葉と思うのでありまして、朝海大使の意見はまさに国民全体の意思であるということを深く思われて、通産省においても外務省を鞭撻して、そうして通産省みずからもその先頭に立って、その趣旨の徹底いたしますよう格別の御尽力を願いたいのであります。この新中国の問題に関連して、朝鮮の問題等もございますが、これは本日は時間がございませんから、あらためての機会にいたします。  次に、中小企業の問題につき御所見を伺いたいと存じます。事案自体に入ります前に伺いたいことがございますが、前の国会におきまして中小企業団体法というのが通過をいたしました。この団体法…(「組織法」と呼ぶ者あり)これは簡単に申しておるのであります。皆さんはよく御承知のことと存じて、省略をいたしておるのでありますから、さよう御承知を願います。この中小企業団体の組織に関する法律の第三章第八節によりますと、「中小企業安定審議会並びに中央中小企業調停審議会及び都道府県中小企業調停審議会」、これらのものが結成されなければならぬことになっておるのでありますが、中小企業安定審議会が先ほど結成されたということは承知をいたしておりますけれども、その他のものにつきましては果してどうなっておりますか、その現状を伺いたいのであります。
  27. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 中小企業の安定ということは最も大事なこと存じまして、ただいまそり問題につきましては、中小企業庁長官出席いたしておりますから、それからお答えいたします。
  28. 川上為治

    ○川上政府委員 中小企業団体組織法に基きます中小企業安定審議会につきましては、これは四月にできておりまして、それからすでに約六回くらいにわたりまして審議をやりまして、そうしてこの法律に基きますいわゆる不況要件の判定基準を作成いたしまして、これをもうすでに告示をいたしまして、そうして現在組合の設立を待っておるというような状況になっております。従いまして、中小企業安定審議会につきましては、すでに軌道に乗っておりまして、現在活動をいたしておるわけであります。  それからもう一つのお話のありました調停審議会につきましては、これは現在まだ発足するところまでいっておりません。これは今お話がありましたように、中央及び地方に設けられることになっておりますが、私どもとしましては、早急にこれを発足させるように、現在いろいろ人選も相談いたしております。これが少しおくれましたのは、いわゆる調整組合を商工組合に切りかえるのに相当日にちもかかりましたし、またいわゆる団体法に基く新しい組合ができる段階に、そろそろなっておるのですが、まだそこまでいっておりませんので、若干おくれましたけれども、実は早急に人選をきめて、そうして成立させるようにしたいと考えております。
  29. 中井一夫

    中井(一)委員 団体法のできましたのは昨年の十一月でございますが、この公布されたのは昨年の十一月二十五日でございます。そうすると、今日に至るまでまさに足かけ八ヵ月を経ておるのであります。しかもこの法案というものは、国会の内外において非常にやかましく言われた法案でありまして、いわば中小企業に関する筋骨を入れたのがこの団体法であると信ずるのであります。その筋骨のうちの筋骨がこの安定審議会であり、また調停審議会であるはずでありますが、安定審議会はできたけれども、いわば両翼の一つというべき調停審議会がいまだできていないということは、いかにも怠慢ではないかと思うのであります。先日大臣わが国産業政策の将来についての御所見の御披露がございまして、そのうちで中小企業というものを特に、取り立てて、ぜひその育成はやるんだということを言われておるにかかわらず、政府のこの行き方というものが大臣所信に沿わないものがある、そのくらいのことがなぜできないのであるか、これではいかにしても政府中小企業に対する態度というものがはなはだ手ぬるい、また熱意がない、口頭だけである、口先だけであるというような非難を受けてもやむを得ぬと思うのでありますが、何ゆえにかくのごとくおくれたのであるか、その点を御説明いただきたいのであります。
  30. 川上為治

    ○川上政府委員 おくれてまことに相済まないのですが、先ほども申し上げましたように、法律は御承知通りこの前の臨時国会で通過いたしたのですが、それから六カ月以内に施行するということになっておりまして、その結果いろいろその準備もございまして、この四月一日から実は法律を施行したわけであります。そこで私どもの方で一番最初に問題にしなければなりませんのは、何と申しましても、組合設立の要件、すなわちその不況要件の、判定基準というのが第一の問題でありますので、これができませんと結局組合は作れないということになりますので、私どもの方としましては、まず安定審議会を作りまして、そこで四月から五月の半ばにかけましていわゆる不況要件についていろいろ検討しまして、ようやく判定基準が五月の半ばにできたわけであります。それから告示をいたしましたのが五月の二十日であります。従いまして、組合のできますのはそれからということになっておりますので、実際組合ができましていよいよ活動するということになりますと、これからさらに若干おくれて参りますので、そういう時分までにこの調停審議会ができればよろしいのではないかというふうに考えまして、私どもとしましては、先ほど申し上げましたように、まず安定審議会を作るということが一番先決問題というふうに考えまして安定審議会を作り、それから調停審議会につきましては、大体今月中あるいは来月の初めまでに構成すればいいんじゃないかというふうに考えまして実はやっているわけであります。はなはだ怠慢とおっしゃられればまことにその通りでございますけれども、実はそういう気持で運営をいたしておるわけでございます。
  31. 中井一夫

    中井(一)委員 長官の御弁明は了承いたしましたが、願わくはすみやかにこれらの措置を講ぜられんことを希望いたします。次には、先日大臣がお述べになりました今後における通商産業政策についてという題目下の御説明であります。今後の通商産業政策については五項目をあ、げられまして、一つは輸出の振興、二つには経済協力の推進、三つには産業基盤の強化と産業体制の確立、四つには国民経済に占める中小企業の重要性にかんがみ、中小企業の育成強化をはかり、五つには産業技術の振興をはかるということでございます。そしてこの中小企業の問題につきましては、特に御説明がつけ加えられておるのでありますが、まずもって中小企業団体組織法の適切な運用、それから中小企業の税負担の軽減さらに中小企業金融の拡充円滑化をはかるということ、終りには中小企業の体質の改善、これらによって中小企業の積極的な育成に努力する、こういうことを言われておるのであります。そこで伺いたいのはその具体的な内容なのであります。この御説明のうちにも、税負担については事業税の軽減をあげられております。また中小企業関係政府金融機関の資金源の充実及び中小企業信用保険公庫の創設、こういうものもあげられておるのでありますが、これらの内容を具体的に、一体どういうことをせんとせられるかを承わりたいのであります。なお私はこれにつけ加えまして、中小企業者に対する社会保障に関する政府の施策、これをどういうふうにおやりになるか承わりたい。きのう、きょうの新聞で見ますと、倉石労働大臣中小企業の店員たちに対して週休を実施せしめる、こういうことを言うておられるのでありますが、これをおやりになりますることはきわめて時期を得たるものであるとは思いますが、今日のわが国のきわめて進歩していないところの、また力の弱いところの中小企業者にこれを実施になりますると、相当の問題が起ると思います。こういう問題につきまして果して通産省との間によく御協議があったのであろうか、そり長所、その欠点、実施したる後の影響、こういうものについてどの程度まで了解できておられるのであるか、これにつきましてはさらに最低賃金制の問題も関連いたしますし、また大きく健康保険の問題、退職金制度の問題等も関係いたすのでありますが、これは本日時間がございませんから、これらり疑いを申し上げておきまして、次の機会に、あるいは書面をもってお答えいただいてもけっこうであります、項目が多うございますから。これこそ中小企業に対する政府の抱負のあるとこりを申し述べられるよい機会でありますから、できるだけ具体的に詳しく、了算面等の関係も考慮しつつ御発表をいただきたいのであります。終りに私は一点だけ政府の御所信を伺って私の質問を終りたいと思います。それは前の国会におきまして政府か御提出になっておりましたところの小売商の特別措置法、また社会党から御提出になっておりました小売商の調整法、この二つの法案がついに審議未了になりましたことは、私どももまた政府とともに遺憾に存ずるところなのであります。しかるところ、国会のまさに終らんとする四月の二十二日、現に本委員会委員長になっておられまする長谷川委員の御提案で、一つの決議案が提出せられて確定をいたしております。すなわちこれによりますると「小売商二法案(小売商業特別措置法案及び商業調整法案)は、目下当委員会において鋭意審議中なるも、本国会においてはその成立は期し難い。よって政府は、来るべき国会において、中小企業振興審議会の答申及び前記二法案の趣旨を充分に尊重した小売商振興のための法案を提出すべきである。といって、これが委員会決議となって、政府にも送付されておるのであります。しかもこれに対しましては川上長官が所信を表明せられ、いわく、政府より提出した小売商業特別措置法案につきましては、長い間審議をしていただいたことについて感謝する。だが法案が成立し得なかったことはまことに残念である。しかし政府はただいまの決議を十分尊重し、よりよき法案を次期国会に必ず提案したい、その際は小売商のため必ず法案を成立さしていただきたいという趣旨所信表明まであるのでございます。この決議を尊重するということ、並びにこれを尊重して必ずその趣旨に沿うと政府を代表して所信を披瀝された川上長官、それはすなわち政府のまた責任でもございますが、この問題を政府はいかに取り扱われんといたしますか。本国会は特別国会でありますけれども、御用意があるならばこの国会にお出しになってもいいのではないか、またこれだけの大問題でございますから、出しておいて、本国会で審議ができぬというならば、これを継続審議にして、来たるべき国会においてこの決定を得るということも一策であろうと思うのであります。  いずれにしましても中小企業の問題は、わが国におけるきわめて重大なる、これは政治問題でなく一種の社会問題とさえ私は考えておるのでありますから、政府におかれましても、その御声明の通りこの問題を重要視されるならば、これを法案化されることこそさきの総選挙における公約を果すという意味において、岸内閣の名誉のために大切なる問題だと思うのであります。この点一つ所信を承わりたいと思います。
  32. 長谷川四郎

    長谷川委員長 中井さん、中小企業の問題は、今の御質問に対する御答弁は相当時間がかかると思います。よって明日政府の意あるところを十分にお述べいただきたいと思います。従って御答弁は時間の都合上明日に譲っていただきたいと思いますが、いかがでしよう。
  33. 中井一夫

    中井(一)委員 私の今お尋ねしている初めの分はこの際お答えいただかないでいいのです。これはただいまおっしゃる通り、内容も複雑でありますから非常に時間がかかります。それゆえにそれは書面なり次の機会でけっこうです。ただいまは法案提出の問題についてのみ御答弁をいただきたいと思います。
  34. 長谷川四郎

    長谷川委員長 では、簡単に一つお答え願います。
  35. 川上為治

    ○川上政府委員 ただいまこの前の国会で私どもの方から提案いたしました小売商業特別措置法案につきましてお話がありましたが、私どもとしましては、この特別国会におきましては、いろいろ準備の都合もありまして提案するところまでいきませんでしたが、次の臨時国会内にはぜひともこの法案を提案したいという考えで、現在いろいろ準備をいたしております。先ほども申し上げました通り、この前のこの委員会決議を十分尊重いたしまして、いろいろ私どもの方で検討もし、よりよい法案を出したいというふうに実は考えております。
  36. 長谷川四郎

  37. 永井勝次郎

    ○永井委員 私は、この際、高碕大臣に二、三お尋ねをいたしたい。先般大臣から、今後における通商産業政策についてという所信表明を承わることができたのであります。内容をお聞きいたしますと、当面問題となっているものの解説である。その解説のあとに、こういう考えである、こういう方針である、こういうように検討中であるという言葉が加わっただけであって、これはおそらく役所から書いたものが出て、それを大臣がただ棒読みされたものであろうと思うのであります。われわれは、通産大臣としての高崎さんに、こういう官僚的な発言や官僚的なものの考え方ではなしに、そういうものを消化した、実際の生きて動いておる経済の実態をつかまえて、それに対移る高崎さんらしい所信の表明、こういうものを期待したわけでありますが、組閣日浅く、直ちにこういうことの表明をしなければならない時期であり、あるいはまた閣議においていろいろな問題を十分討議するいとまなくして、ここに所信を表明しなければならないという時期的な関係で、いわばどこへ出しても無難なでき合いのあいさつを簡単にされたものだ、こう思うのであります。そこで私は、これはこれとして承わっておくが、やはりこの機会に今の通商産業に対する高崎さんらしい所信あなたの気持の中でまとまり、また今の内閣を代表して発言できる限界において、もっと血の通った所信を前回のあいさつの裏づけとして一つ承わりたいと思うのであります。私がここで心配になりますことは、これだけたくさんお話になった中に、現在の不況に対する把握の仕方と対策、こういうものがほとんどないことであります。いろいろな政策がそれに対する対策だと言えばそうであるかもしれませんけれども、少くも現在の時点において大臣がこういう問題を委員会で表明するからには、現在の不況というものがどういうもので、どんな実態で、これがどういうような見通しにあって、それに対してどう対処するのだという、もう少し不況というものを相当重点的に取り上げられた内容になって参りませんと、でき合い過ぎると思うのであります。でありますから、そういう点が一つ。それから貿易振興と言うからには、現在行き詰まっている中共貿易に対する所信が内容の中においてもう少し重く取り扱かわれなければならない、こう思うわけであります。でありますから、私はこのでき合いのものはでき合いで承わっておきますが、この中に血と神経とを通わした高崎さんらしい所信をあらためて伺いたい。
  38. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問通商産業政策に対しましてこれはでき合いだというお話でありますが、これはよく検討いたしまして、私も見ておるわけであります。しかし、不況対策というのは、現在の内閣として一番先に取り上ぐべき問題であろうと存じますことと、それに対処いたしますために、第二、第三、第四、第五で言ったようなことが一つの実行方法でございます。不況の現状につきましては、現在の日本の経済は、緊急対策を昨年末講じまして以来、国際収支は予定のごとく好化しております。よくなっております。けれども輸出の方はなかなか思うようによくいかない。これがために、輸出振興ということを第一にうたっておるわけであります。何としても、この不況を切り抜けていくためには、もっと生産をふやしていかなければならぬわけでありますが、現状におきましては、御承知のごとく、持っておる設備すらこれを押えつけて、そうして在庫で苦しんでおる、こういうわけであります。この在庫で苦しんでおるものは、だんだん在庫の数量が減って参りましたから、ここでつまり消費の面をふやしていけば生産がふえる。生産がふえれば、従って、ここに一つの不況対策になる、こういうことが根本でございます。それがために政府は第一に二厘の公定歩合の引き下げをした。その結果、財界におきましても投資意欲なり、あるいは在庫調整につきまして幾らかこれが増して参りまして、今後の生産に非常に寄与するだろう、言葉をかえれば不況対策になる、こう存じております。問題は輸出振興でございます。輸出振興の問題につきましては、従前とっておりました輸出振興策はもちろんとっていかなければならぬ。海外の情勢等も勘案し、それを調べて振興策を講じていくことは従前通りでありますが、さらにここで一つ転換しなけれならぬと私は考えております。幸いに、国際収支がだんだん黒字になってくる、こういうことでありますが、この黒字をどの程度輸出振興に活用していくかということに相なりますと、第二に書いてあります、貿易のほかに経済協力もする必要がある。経済協力に対する余力もそこに幾らか出てくるわけであります。またそのほかに、フラント輸出につきましては、従前の取引よりもっと延べ取引をやっても、国際収支の黒字である現状におきましては実行がしやすいのでありますから、プラント輸出、経済協力というふうな、国内の産業を振興すると同時に、輸出を振興するという面に重点を置いていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  中小商工業に対してましては、先ほど中井委員の御質問のごとく、単純な経済問題だけでなく、社会問題であるという観点から、これは別途に考慮いたしたい、こう思っているわけであります。いずれにいたしましても、科学技術を振興して、日本輸出商品にいたしましても、国内商品にいたしましても、技術向上させるということに持っていく必要がある。こういうふうなことのために私は通商産業政策を発表いたしたわけであります。この実行については今後よほど時宜に適するようにやっていかなければならない。特に輸出産業と申しましても、これは相手があることでありますから、中共貿易のごときも、われわれは三十一億五千万ドルの輸出予定のうち一億ドルということで織り込んでおったのでありますから、相当大きな重点を持ってやっております。これが阻止されるということは、まことに困難な問題でありまして、経済問題から考えまして、どうしても早期に妥結したいという熱意を持っております。また誠意を持って解決したいという考えでおるということもよく申し上げておきたいと存じます。
  39. 永井勝次郎

    ○永井委員 大臣のだんだんのお話でありましたが、どうも大臣はまだほんとうのことを言っていない。よそ行きの、道路の立ち話程度の話よりまだ話をしておらない、こう思うのであります。現在の不況の問題については、わが党は、特に、特別国会ではあるが、この国会で補正予算を出して対策を確立するのでなければ、今日の不況の事態の突破というものをスムーズに運んでいくことはできない、国際的な規模において発展している今日のこの不況を国内において対処しますためには、この特別国会の相当重点として、取り扱うくらいの意気込みでいかなければならないというほどに、不況というものを重視しておるわけです。その深さをわれわれは分析して、相当深いものである、また長期のものである、こういう見通しを立てておる。ところが政府の方では、いやこれはもうそうなんだから、八月か九月、ころになれば景気が立ち直ってくるだろう、こう簡単に口先では言っておる。口先では簡単に言っておるが、実場際には相当心配になるものですから、いろいろなことをちょこちょこ、補正予算をやらないという限界において小手先をごまかそうとしておる。ここに私はやはりほんとうにこの委員会において、時間が経過すればそれははっきり答えが出るわけですから、私は不況というものをこういうふうに考えておる、そしてそれに対する対策というものはこういうふうな考えを持っておるということがここに明確になりませんといけないと思う。ところが不況に対する論議というものが、今言ったように簡単なんだ、こう突っぱねて、そうしてほおかふりをしてしまう。これではこの国会を通して国民がたとえば農民にいたしますと、米の価格の問題もあるいは乳価の問題も、どんどん農産物が値下りになって、もう深刻な状態になっておる。あるいは先ほど中村委員からも話のありました通り繊維関係は相当深刻な状態にある、鉄鋼もその通りだ、化学肥料もその通りだ、造船もその通りだ、業種別に洗ってみれば相当に深刻な事態ができておる。できておるにもかかわらず、国会内における論議は、どこの国の国会かわからないほどに、国内の不景気というものはそっちの方にやってしまって、いや大した不景気ではないのだと言う。こういう問題の扱い方というものは、単に特別国会に補正予算を出さないからというだけの議会かけ引きとか、あるいは議会、答弁ということでは済まされない問題である、こう実は私は考えるわけです。でありますから、そういう点になると高崎さんなんかは、やはり実態をちゃんと皮膚の感覚でも感じておられる。そうしてどうしたらいいかということはもうあなたは勘でも対策が出てくる、方向づけられるということに私たちは期待しておるわけなんです。でありますから、国内における有効需要をどういうふうにして今後増していくのか、それにはどういう手をどういう順序でやるのか、あるいは国内における過剰設備、過剰生産というものを一体どんな形で業種別に、たとえば鉄鋼なら鉄鋼の関係、肥料なら肥料の関係、二、三の例をあげて、繊維関係においてはどういうふうな順序によってどういうふうにするのだ、これはこういうふうな現象が出ておるけれども、実態はこうなんだから、これは九月ごろになれば立ち直るし、こうなるんだ、こういうことをごの委員会を通じてはっきりすれば、この内閣政策というものが全国的に浸透することにもなりましょうし、またそれでけっこうなのではないか、こう私は思う。ところがそういう深刻な状態に院外が、わあわあ沸き立っておるときに、この院内では不況の問題について大臣はほとんど触れてないあいさつをしておる。そうしてその問題についてもほとんど触れないような、大したことはないのだというようなことで、ほおかぶりをしてしまうということになりますと、これは私たちは野党の立場ではなくて、国民の名においてこのままでは済まされない、こう思うのです。でありますから、国内における有効需要の刺激というものは、どういう順序でどういうふうにおやりになるか、それから過剰設備に対する制限というものをどういうふうにおやりになるか、そしてそういうものを通して、国内における産業機構の体質改善というようなことを盛んに言っておられるのであるから、どういうような体質改善をされるのか。実際は、政府不況に対する対策をほおかふりして、そうして診断を間違ったというような形にして、実際は時をかせいで、その中で中小企業なり何なり、そういう弱小産業というものを整理して、そうして大企業に集中して独占資本の強化をはかる、こういうことを今回の選挙を通して経団連等から選挙資金を多くみついでもらった結果に対する反対給付としてやるのではないかという心配を私は持つ、またそういう底意があるのではないか、われわれはそう考える。そうでなければ今日こんな大騒ぎになっている不況を、院内においてこんな簡単な扱いをされるわけはない、こう思うわけでありますから、まず、貿易の振興の前に、国内におけるところの産業体質改善というねらいを持つこれらの不況対策について、具体的にこの業種を二、三あげて、そうしてどういうプログラムでこれをおやりになるのか、これを明確にしていただきたい。
  40. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 政府といたしましても、現在の不況がそう甘いものではない、これはなかなか深刻であるということの考えは、ただいまのお話と全く同意見でございまして、この対策といたしましては、不況対策だとかいうものは、起死回生の妙薬があって一ぺんにやるということは非常によくないことでありまして、なだらかに持っていかなければ、あらゆる方面にフリクションが趨るわけでありますから、この不況対策をどういうふうに切り抜けるかということにつきましては、ただいまの政府の現状といたしましては、必ずしもこの特別国会に補正予算を出す必要も導ていない、こうい見解でございます。  また最後にお話しのごとく、この際に大企業に集中して中小工業を、圧迫するだろうとか、こういう御批評でございますが、これは全く私ども考えと反対でございます。そういう考えは断じて持っておりません。何といたしましても、中小工業を振興するということは動かすべからざる原則でございまして、輸出産業を振興いたしますにつきましても、現在大企業の輸出産業というものはそう永続性はないのであります。中小工業の製品における輸出産業というものは相当大きなウエートを持っておるのでございますから、経済的に考えましても社会的に考えましても、ただいまの御質問のようなことは断じてないということをはっきり申し上げておきます。  なお、具体的なことについて一々説明しろということでございますが、これはやればきりがないことでありますから、そういう方針で進むということで御了解を願いたいと思います。
  41. 永井勝次郎

    ○永井委員 それならば私は大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、昨年の総合緊急対策をとられてから、それによって経済界が非常に立ち直ってきたと、その効果を非常に吹聴されているのです。このあいさつの中にも吹聴されているが、そういうふうに立ち直ってきたのは、一体だれが立ち直ってだれがその犠牲になっているかということは、一目で見ればこれはよくおわかりだろうと思う。これは金融引き締めにおきましても、中小企業やなんかには現実にその引き締めが参りました。しかし、引き締めといいながら、現実に大企業にはかえって貸し出し超過になっている。前年に比べて多くなっている。こういうような逆なことをやっている。それから、緊急対策におけるところのしわ寄せというものはどこに来ているかといえば、今日非常に困窮を訴えている中小企業なり、あるいは農民なり、勤労者なり、こういうところに来ていることは明らか事実である。これはだれが何と言ったってこの事実は否定することができない。それならば、その犠牲になっているところに対してどのような対策がなされているか、施策が行き届いているかといえば、ほとんど考えられておらない。年度当初において簡単に扱われた予算措置で十分だという、こういうことでこれを済まされておる。こういう措置の中でどうして中小企業が、この渦巻く不況のあらしの中で自立していくことができますか。いまさら技術なりあるいは施設の近代化というようなことを言ったところで、直ちに間に合うものではないのでありますから、過去一年間における施策というものは中小企業、農民、勤労者の犠牲において、大企業の安定を中心にはかってきたやり方だ。その結果として現われた病状を是正するというならば、今日の機会においてやらなかったならば、もう時間をかせいだり救う時はなくなってしまう。棺おけへ入ってからカンフル注射したって脈は持ち直ってきません。そういう問題について大臣はどういうふうにお考えになっているか。昨年からの施策の結果としてこの実績が出ているのですが、それに対してどういうふうにお考えになるか承わりたい。そうしてそれに対する緊急措置として、現在どのような措置が適切にとられているか、それがどういう効果が期待できるのか、これを示していただきたい。
  42. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問日本国際収支はよくなってきた、緊急対策の結果、この問題につきまして一番心配されておりました国際収支は安定したということは事実であります。その国際収支を安定せしめるために、そのしわ寄せが全部勤労者、中小工業、農民についてしまって、大工業は依然としてわが世の春を楽しんでおる、こういうふうなお見方でありますけれども、これは私どもとだいぶ見解が違います。やはり不況になるということについては大工業はもちろんのこと、全部が全体に沈滞しておることは事実でございまして、このまま無政策で捨てておけば、永井委員のおっしゃるごとく、ときによると力の弱い人たちにしわ寄せがいくということは全く同感でございます。従いましてこの点につきましては、政府といたしましては昨年来中小企業安定法等も出しましてやっておるわけなんでありますが、中小企業対策というものにつきましてはなかなか困難な点がたくさんあるものでありますが、これはできるだけその方針に従って、しわ寄せが中小企業にいかぬように、また農民にいかぬように、勤労階級にいかぬように、困ったときは全体に困り、いいときはともに楽しむ、この方針でいきたいと思います。
  43. 永井勝次郎

    ○永井委員 高崎さんが通産大臣になられたのでありますから、これから大いに勉強していただいて、中小企業の実態等も把握して、それからまた通産省で大きな看板としております中小企業に対しては、中小企業団体の組織に関する法律を通し、これによって中小企業を育て上げるのだというこの法律の内容がどんなものか、もう一度御吟味を願いたいし、それからまた三十三年度の予算に中小企業に対する予算裏つけがどれだけあるのか、また中小企業の団体の組織に関する法律を実施するために、どれだけの予算が組んであるのか、こういうことも検討の上で、まああなたの常識からいえば通産省中小企業のためにあれだけやられているのだから、相当なことをやっているのだろう、こうお考えかもしれませんが、予算を調べたら驚くでしょう。こんなことで中小企業をやっているのだなんというなら、私はこれが保守党の中小企業に対するせいぜいの線香代だ、ろうそく代にもならない線香一本か二本代に値する予算しか組んでないんじゃないか、これで迷わず成仏せいという線本日の立て方、これがせめてもの保守党の中小企業に対するはなむけであるなら、これでもけっこうだと思うのでありますが、こういうことは大臣のお考えではないと思うから、私はこれは十分お考えをいただき、お調べをいただいて、次の機会中小企業がこれで救われるかという問題について、もう一度論議の機会があろうと思います。  それから先ほど来大臣は、盛んに国際収支が改善された改善されたと何回となくおしゃるのです。私はこれで改善されたとお考えであるならば、もうわれわれの期待している高崎さんは通産大臣は落第だと思うのです。ほんとうに国際収支はこれで改善されたのだ、こうお考えなのかどうか、私はあらためて伺いたい。
  44. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私は数字におきまして外貨がだんだんなくなってしまう、これは大へんなことだというので、昨年来緊急対策をとったのだと思います。その意味から申しますと、外貨の手持ちが少しふえてきた。一億五千万ドルとか一億五千万ドルとかふえてきたということは、これは成功だと思っております。けれどもお説のごとく、国際対策の改善ができたからといって断じて喜ぶべきことではありません。これは、質屋の後家さんが金がたまったからよいというような考え方で、政府方針はやるべきではなくて、たまったものをどういうふうに活用するかということが一番重要な問題でありまして、この点につきましては私どもは十分考慮して進んでいきたいと存じておるわけであります。
  45. 永井勝次郎

    ○永井委員 貿易の問題についてはまた別にいろいろお尋ねをいたしたいと思いますが、私はきょうよけい時間がありませんから中共貿易について一、二伺いたいと思います。先ほど中井委員からのお話お答えになりましたが、非常に抽象的なお答えだけに終ったと思う。両国の国際情勢が今日デリケートな関係にありますから、そうはっきりしたことは言われないでありましょうが、この内閣の中で中共貿易をほんとうに推進しよう、あるいはこれを改善しなければいけない、それから単に経済の取引の面からだけではなく、アジアにおける日本の地位を安定させていく、あるいは向上させていくという立場から中共との関係を無視しては今後はいけないというような考え方に立って、大きな視野に立ってこの問題を考えておるのは、やはり高崎さんなり、三木経済企画庁長官です。その他の人々は非常に強い考えを内部に包蔵しておる。表現はごまかしておるけれども、内部にはそういう意図を十分持っておる。また今の内閣においても主要な、少しもののわかる人は、中共貿易を無視して、日本の今後の貿易の振興とか改善とかいったり、あるいは世界平和をどうこうというようなことを言える義理ではないと思いますから、これくらいの常識は今の閣僚に期待しておるのでありますが、その中の推進力になるのは私は高崎さんや何かではないかと思うのです。そこで、抽象的に貿易の振興とか改善とか、こう言っても、一体対米関係がどうなっておるのだ、東南アジアがどうなっておるのだ、あるいはその他の近東がどうなっておるのだという地域別に検討していけば、そんな大きな口はきけないだろうと思う。  そこで私が大臣にお尋ねいたしたいのは、対米関係におけるところのペイン修正案、これは一応否決になったというようなことを言っておるのでありますが、これに対する考え方は、今後のアメリカにおける動きはどうなのか。これがまた盛り返してくる心配があるのではないかといろいろ心配されるわけですが、この関係はどうなのか。あるいはミルズ修正はどうなのか。互恵通商法の延長法案でありますが、これを通産大臣はどういうふうに考えられておるのか。あるいはペリー法案あるいはサドラック法案、キング法案、一連の対米関係におけるところのこれらの問題について、各法案別に大臣はどういうふうにお考えになっていて、これが今後の貿易にどんな影響があるかというような関係を一つお示し願いたい。  それとあわせて、私は中共貿易についてはいつでも改善されればそれでよいというものではなく、タイムリーに改・善されなければいけない、時間があると思う。やはり向うの五カ年計画なら五カ年計画というものの進行過程の中において、日本との取引が一単にすぽっとした取引ならばそれでよろしいでありましょうが、しかし計画的な一つの経済のシステムの中に入って動くということになれば、やはり相当急がなければならない。急ぐにしても、へそを出して交渉するということは、これはいろいろ問題がありましょうが、しかしいろいろな考え方の中には、やはり基本的なものの考え方を持ちながら今後対処していかなければならぬ、こう私は思うのです。そこでこれらの法案を当局においてはどう考えられていて、今後対米の貿易関係がどういうふうな推移をたどるかという見通しを商品別に、この次はこうなんだ、マグロのカン詰はどうなんだ、ベニザケのカン詰はこうなっていく、こういうことを示していただきたい。そうしてその上に立って中共貿易の重要性というものが自然に浮き彫りされてくるのではないか。この問題を単に強気なことを言っていて済まされるかどうか。国内にだけ強気なことを言っていてもだめではないかと私は思うのでありますが、この二つの関連と二つの見通しについて伺いたいと思います。ことに中共貿易については中井委員お答えになった程度の、聞いても聞かなくてもいいんだという時間つぶしの答弁なら私は必要としないので、もう少し腹を割ったお答えを願いたいと思います。
  46. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 対米関係につきましては、ペイン法案の問題は御承知のごとく今度葬られたのでありますが、これは必ずしも将来楽観することはできないと思いますことは、これは主としてアメリカの景気いかんによりまして、アメリカが不景気になってくるとアメリカ人はできる、たけ域外調達の物は国内調達の物を使えということでありますから、アメリカの景気いかんによりましては、これはよほど将来警戒を要するものだと思うのであります。幸いあれが今度葬られたことはありがたいことであります。そのほかペリーだとかサドラックだとかキングの法案は、さっき申しました通りに、これは先方が中小企業でありますから、中小企業者のやはり国会を通じての働きかけが多いわけですから、これは今後相当起ってくる問題だと考えておりますが、これに対処いたしましては、先ほど中井委員の御質問に答えました通りに、当事者同士が折衝するということが一番重要だと思っております。なお対米貿易につきましては、その製品は、かりにマグロのカン詰にいたしましても合板にいたしましても洋食器にいたしましても、主として中小工業の製品が多いので、問題は何としてもアメリカに対してもっと数量をふやしていくような方針をとっていく。ところがこれが一ぺんにふえるということは向うの同業者が困るわけでありますから、逐次提携をしつつ進めていかなければならぬわけであります。またこの種類の製品がアメリカをおいてほかになかなか出るのがないのであります。どうしても対米貿易日本の中小工業を育成する上におきましても、もっと積極的に進める必要がある。その方法としてはどうするかというと、先ほど中井さんのおっしゃったごとく、あるいは外交官のテクニックもあるでしょう。それも一つの方法でありましょうが、私はどこまでも正攻法をもって日本の現状を訴えて進んでいきたい、こう思っております。  それから中共貿易につきましては、非常にデリケートな問題でありますが、中共貿易の将来における大きなアイテムになりますものは、肥料だとか鉄鋼製品が主体なのでございます。その意味から言いますと、これは国際収支の上からいえば大きな問題でありますが、中小工業対策としてはそう大きな問題はないと思っております。しかし将来においてはまた別であります。さしあたった問題はそうした感じがいたしております。しかし日本においてこの取引をせなければ、貿易をせなければ中共は困るだろう、中共の方から何か手を打ってくるだろう、こういうふうな甘い考え方をしてはいけない、どうしてもこれは日本の経済の上からいいましても、何としてもこれは一日も早く妥結し、一日も早くこの取引が開始されんことを熱望しておるということは、はっきり言明いたしたいと思っております。
  47. 永井勝次郎

    ○永井委員 きょうは委員長から盛んに時間の催促が来ているので、私はあともう一言でやめたいと思いますが、これはまだ質問がずいぶん残っておりますから、いずれ理事の話し合いの中で継続していただきたいと思います。  最後に、やはり中共問題について、国内において一つの心がまえとしては、政治の問題と経済の問題とは違うのだ、こういうことはいいと思いますし、今後の交渉においても、すべて両国関係はこれはこれあれはあれと問題をからまないでやっていくということはよろしいと思うのでありますが、そういうことをあまり強調するために、政治の問題はどうなったって、取引とは無関係なんだ、こういうような形で、両国の間における政治問題なり何なりというものにこまかい配慮を払いながら、取引の面では政治問題はからまないのだというような扱いをしませんと、これはとんだ間違いが起ると私思う。その事実において起っている問題は、たとえば昨年の広州におけるこころの商品見本市においても、台湾とかなんとかといういろいろなデリケートな問題があるにもかかわらず、無神経にカタログをどんどん向うに回して、向うからやられてわびを入れた、あるいは前年においてその前の上海なりあるいは北京におけるところの商品見本市においては、向うの民度と合わないこっちのアフリカへ輸出するおもちゃのような万年筆をやったり何かして商品の上で問題を起したという点や、それからわれわれが先年向うへ行きましたときにも、日本の衆議院議員が向うの要人との会談においても、やはりこちらへ来てみたら軍備を盛んに拡張している、この軍備拡張の実情を見たら、日本の国の再軍備反対なんかやるといっておる者は問題になりぬ、こういうむちゃな言葉を吐いておる。そういうような発言が向うに出るということは、政治の問題とは違うのだ、こういうように国内では割り切ってもいいかもしれぬが、国際間においてはもっとやらなければいけないし、あるいは向うにおいて戦時中水田を作ったという人が、自分はいささかお国の産業振興に協力したものだなんというむちゃなことを言っている人たちもいる。だから議員においてすでにそういう関係が出る。これが一般関係に及ぼす影響というものは、私は両国の今後の接触が多くなればなるほど問題になってくる問題だと思います。これらの問題に対しては、向うは過去のことは忘れてというわれわれのなにに対しては、いや過去のことでも事実は事実として、歴史上の事実としてわれわれは忘れてはならないのだ、しかしこの歴史上の過去にあった事実を二度と繰り返さないようにわれわれは努めなければいけない、こう向うから一本さされるような状態でありますことは、われわれはやはり政治的にもう少し両国関係を、今後十分にしてやっていかなければならない。そういう関係において政府は非常に欠けているものがある、こう私は思うのであります。でありますから、こういう問題についてももう少し取り扱いなり何なりというものは慎重にしなければならぬし、表面の問題は貿易としても、隠れている問題については十分な国民の啓蒙と、政府の態度や何かはやはり国民に浸透させていかなければならない問題である。こう思うわけであります。  ただ中共問題に対して相当の熱意があるということは考えられますから、きょうはこの程度にしておきますが、重ねてこの内閣において中共問題はどんな方法において取り運ばれていこうとしておるのか、その順序や手続や何かというものがおありになったら一つ示していただきたい。
  48. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま永井さんの御質問の要点につきまして、政治と経済とは別々に進んでいっておるというふうな考え方を対中共問題に対しては私どもはいたしておりますが、これはやはり誤まりだと思います。ということは、先方は政治も経済も一つで、特に貿易政府自身がやっておるのでありますから、そのことをやはり眼中に置いて、ある程度政府としてもこれに対する理解を深めていく必要があることは永井委員と私は同感でございます。ただ今後どういう方針で進むか、ここで具体的に示せということでございますが、これは外務大臣によくお話せなければならぬことですから、きょうは一つこれでごかんべん願いたいと思います。
  49. 長谷川四郎

    長谷川委員長 次会は明日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後零時二十一分散会